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1953-02-18 第15回国会 衆議院 行政監察特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年二月十八日(水曜日)     午前十時五十三分開議  出席委員    委員長 内藤  隆君    理事 荒舩清十郎君 理事 中野 四郎君    理事 矢尾喜三郎君 理事 久保田鶴松君       佐々木秀世君    中田 政美君       明禮輝三郎君    山本 正一君       栗田 英男君    田万 廣文君       前田榮之助君    横路 節雄君       武知 勇記君  委員外出席者         証     人         (元軍需省機械         局長)     橋井  真君         証     人         (閉鎖機関交易         営団清算人)  黒瀬 勘一君         証     人         (元交易営団雑         貨部長)    福田 廉三君     ————————————— 本日の会議に付した事件  接収解除貴金属及びダイヤモンド関係事件     —————————————     午前十時五十三分開議
  2. 内藤隆

    内藤委員長 会議を開きます。
  3. 中野四郎

    中野(四)委員 この際動議を提出したいと思います。それは、かねて十三日にこのダイヤモンド事件について証人を喚問いたしました結果、本日証人に喚問いたしておりまするところの橋井君並びに福田君、中田君、黒瀬君、巽君というような人々は、本件調査する上において重要なる証人でありまして、相当に時間をかけなければ、この真相を究明することはなかなかかなわぬことだと思いますので、この際、本日の証人尋問は、午前中においては橋井証人、午後においては黒瀬証人をば喚問されて、他の証人は後日適当なる機会を委員長の方において選ばれて喚問されんことをば提案いたします。どうぞお諮りを願つて、満場の御賛成を得たいと思います。
  4. 内藤隆

    内藤委員長 ただいまの中野四郎君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 内藤隆

    内藤委員長 御異議なければ、さよう決定いたします。  それでは、二月二十日に、福田廉三君、中田玉市君及び巽忠春君の出頭を求めることに変更いたします。さよう御了承願います。  前会に引続き接収解除貴金属及びダイヤモンド関係事件について調査を進めます。ただちに証人証言を求むることにいたします。  ただいまお見えになつておられる方は橋井真さんですね。
  6. 橋井真

    橋井証人 はあ。
  7. 内藤隆

    内藤委員長 あらかじめ文書をもつて承知の通り、正式に証人として証言を求むることに決定いたしましたから、さよう御了承を願います。  この際証人に申し上げますが、戦時中多数国民諸君より供出されましたダイヤモンド、金、白金等は、平和条約発効と同時に接収解除となりまして、現在日本銀行地下の倉庫に収納され、大蔵省によつて保管されておるのであります。このダイヤモンド収納、保管の経過、処理方法等につきましては、世上大いに疑惑を持ち、関心を抱いておる向きもありますので、これが真相を明らかにすることはきわめて意義のあることと考え、本委員会本件調査に着手した次第でありますので、証人におかれましては、率直なる証言をお願いしておきます。  それでは、ただいまより接収解除貴金属及びダイヤモンド関係事件について証言を求むることにいたします。  証言を求むる前に、証人に一言申し上げます。昭和二十二年法律第二百二十五号、議院における証人宣誓及び証言等に関する法律によりまして、証人証言を求むる場合には、その前に宣誓をさせなければならぬことに相なつておるのであります。宣誓または証言を拒むことのできるのは、証言が、証人または証人配偶者、四親等内の血族もしくは三親等内の姻族または証人とこれらの親族関係のあつた者、及び証人の後見人または証人の後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項に関するとき、またはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するとき、及び医師歯科医師、薬剤師、薬種商、産婆、弁護士、弁理士弁護人公証人、宗教または祷祀の職にある者またはこれらの職にあつた者が、その職務知つた事実であつて黙秘すべきものについて尋問を受けたときに限られておりまして、それ以外には証言を拒むことはできないことになつておるのであります。しかして、証人が正当の理由がなくて宣誓または証言を拒んだときは、一年以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられ、かつ宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処せられることとなつておるのであります。一応このことを御承知になつておいていただきたいと思います。  では、法律の定むるところによりまして、証人宣誓を求めます。御起立を願います。  宣誓書の御朗読を願います。     〔証人橋井真朗読〕     宣 誓 書   良心に従つて、真実を述べ、何事もかくさず、また何事もつけ加えないことを誓います。
  8. 内藤隆

    内藤委員長 それでは、宣誓書署名捺印を願います。     〔証人宣誓書署名捺印
  9. 内藤隆

    内藤委員長 これより証言を求むることになりますが、証言は、証言を求められた範囲を越えないこと、また御発言の際には、その都度委員長の許可を得てなされるようお願いしておきます。なお、こちらから質問をしておるときはそのままでよろしゆうございますが、お答えの際は起立してお答えになつてください。  橋井真さんは戦時軍需省においてダイヤ買上げ事務に当つておられた関係上、その当時の状況を中心としてお尋ねしたいと思いますが、まず証人経歴を簡単に述べてください。
  10. 橋井真

    橋井証人 簡単に経歴を申し上げます。昭和二年三月東京帝国大学法学部を卒業いたしまして、同年四月商工省商工属、五年七月商工事務官として愛知県に勤務いたしました。七年商工事務官になりまして商工省にもどりまして、昭和十年内閣調査局調査官、十一年五月企画庁調査官、十一年十一月企画院書記官昭和十一年十二月商工書記官になりまして、その後約十余の課長として各局部に勤務いたしております。十六年四月外務書記官を兼任いたしまして、支那に参りまして、南京政府経済顧問をいたしました。十七年五月商工省企業局整備課長、十八年六月大臣官房秘書課長文書課長、十八年十一月軍需大臣官房秘書課長、二十年三月軍需省機械局長、二十年八月商工参事官になりまして、終戦連絡部部長、次いで終戦連絡部長になり、二十年十一月内閣参事官、二十一年八月経済安定本部第一部副部長、二十一年十二月経済安定本部第一部長、二十二年五月依願退官、二十二年六月株式会社東京計器製作所取締役会長就任、二十三年十二月株式会社東京計器製作所の第二会社の株式会社東京計器製造所取締役会長、その後二十五年三月に取締役社長を兼任し、その後現在におきましては社長をいたしております。
  11. 内藤隆

    内藤委員長 軍需省秘書課長をしておいでになつたのは十八年の何月ですか。
  12. 橋井真

    橋井証人 十八年十一月から二十年の四月までの間であります。
  13. 内藤隆

    内藤委員長 機械局長をされたのは……。
  14. 橋井真

    橋井証人 昭和二十年の四月初めから二十年の八月のほぼ終りころまでであります。
  15. 内藤隆

    内藤委員長 その軍需省秘書課長をしておいでになるときに、東条英機大将の何か秘書官等やられたことはありますか。
  16. 橋井真

    橋井証人 東条内閣終りに、兼任総理大臣秘書官を約二箇月いたしました。
  17. 内藤隆

  18. 橋井真

    橋井証人 軍需大臣秘書官はいたしません。
  19. 内藤隆

    内藤委員長 そうすると、ダイヤ買上げは、証人所管局長である機械局長就任——二十年三月二十二日ごろにはすでに全部が終了したのですね。
  20. 橋井真

    橋井証人 それまでは、ほぼ全部終了しておつたと私は了解しております。
  21. 内藤隆

    内藤委員長 そうすると、これが戦力化に対して、どういう処置をとられましたか。その数量あるいはその取扱い等についてお述べを願います。
  22. 橋井真

    橋井証人 買上げ数量につきましては、当時所管しておりませんでしたので、存じておりません。ただ、買上げにつきましては、デパートその他の関係方面を通じて買い上げたと承知しております。
  23. 内藤隆

    内藤委員長 その程度しか御承知ないですか。
  24. 橋井真

    橋井証人 大体その程度であります。
  25. 内藤隆

    内藤委員長 この買上げダイヤ戦力化する処置等はどうですか。
  26. 橋井真

    橋井証人 私の存じている限りにおきましては、これを工具等に使うために、工業組合を通じて出してこれを各工場に、ある部分は配給されたということを承知しております。それ以外のことは存じておりません。
  27. 内藤隆

    内藤委員長 ある部分だから、数量等記憶はないというのですね。
  28. 橋井真

    橋井証人 存じておりません。記憶しておりません。
  29. 内藤隆

    内藤委員長 機械局長となつてから、皇室お下渡しになりました王冠の台と、それからその王冠にちりばめてありました五個の大粒のダイヤ、及びそのダイヤを引継いでこれを工具製作に配給したような御記憶はありませんか。
  30. 橋井真

    橋井証人 皇室お下渡しになりましたのは、私が秘書課長をいたしておつたときのことでありまして、機械局長になつてからのことではございません。
  31. 内藤隆

    内藤委員長 そうすると、昭和十八年……。
  32. 橋井真

    橋井証人 十九年の終り、もしくは二十年の初めであつたろうと思います。
  33. 内藤隆

    内藤委員長 それを何か工具製作に配給したような御記憶はありませんか。
  34. 橋井真

    橋井証人 そのことについては、私が当時聞きましたところでは、王冠についておつたのは三つか四つというように聞いたように覚えております。五個だつたかもしれません。これはわかりません。しかしながら、このものは非常に大きくて、りつぱでありますので、これを工具にばらして、小さくして使うのは、いかにももつたいない、現在工具に適するダイヤが相当数量あるので、これは一応皇室に何らかの形でお返し申し上げるのである、こういう程度のことを聞きました。そういうふうに処置したことと私は考えております。
  35. 内藤隆

    内藤委員長 その王冠が何個だつたか、御記憶はありませんか。
  36. 橋井真

    橋井証人 お冠の数でありますか。
  37. 内藤隆

    内藤委員長 そうです。
  38. 橋井真

    橋井証人 私、一個ははつきり記憶しておりますが、率直に言つてお冠というのは、私ども考えたようなお冠——大きな、絵に書いたようなお冠と形が違つてつたように思います。従いまして、いろいろなものをお下げ渡しになつたのでありますが、はつきりと一個か二個であつたというようなことを申し上げかねます。一個は確かにございました。
  39. 内藤隆

    内藤委員長 その他何個だつたという個数は、しつかり存じてないというのですね。
  40. 橋井真

    橋井証人 そうです。
  41. 内藤隆

    内藤委員長 そうすると、その王冠にちりばめてあつたダイヤは、まことに貴重品であり、それを工具にまわすのはあまりにもつたいないし、またそういうものはまわすべきものじやないという考えで、これを他に預託したような記憶があるわけですね。
  42. 橋井真

    橋井証人 預託その他の形式は存じません。ただ、お返し申し上げるということを申しております。お預け申し上げるという形であつたかもしれません。
  43. 内藤隆

    内藤委員長 発言の通告がありますから、順次これを許します。明禮輝三郎君。
  44. 明禮輝三郎

    明禮委員 先ほど証人が述べられました、機械局長としては——ちよつと聞き落したのですが、いつからでございますか。二十年の八月ごろとおつしやつたですか。
  45. 橋井真

    橋井証人 二十年の八月ごろまででございます。
  46. 明禮輝三郎

    明禮委員 いつからですか。
  47. 橋井真

    橋井証人 二十年の三月の終りか、四月の初めだつたと思います。
  48. 明禮輝三郎

    明禮委員 二十年の三月ごろには、この、ここで問題になつておりますダイヤの回収といいますか、買上げというものが、大体終つてつたのでございますか。
  49. 橋井真

    橋井証人 大体終つてつたと思います。
  50. 明禮輝三郎

    明禮委員 その時分責任者として、機械局長は、この買上げ数量について営団からいろいろな報告をお受けになつておりましようか。
  51. 橋井真

    橋井証人 営団が預かつてつたということ、並びにこれに渡しておつたということは存じておりますが、どの程度に当時そういう報告が来ておつたか、これははつきり記憶しておりません。
  52. 明禮輝三郎

    明禮委員 今お話の、預かつてつたということは、このダイヤは、もともと軍需省が、当時の工具のために必要であるから、これを買い集めることになつたので、その営団というものは買上げ機関であつた、これに軍需省が預けておつたというようなふうに承つてよろしゆうございましようか。
  53. 橋井真

    橋井証人 この問題は、はつきり申し上げかねます。ただ、これは軍需省が持つてつたものというふうに断定はいたしかねる。当時要綱のようなものがありまして、これは営団が預かつてつたということは、こういうことは明らなんであります。それから買う場合には、国家予算買つて、これを渡したものであります。しかし、これは軍需省のものであつたかどうかということは、はつきり私はいたしかねるのであります。
  54. 明禮輝三郎

    明禮委員 しかし、今証人お話のように、十九年七月二十一日付のダイヤモンド買上実施要綱、これに基いて——軍需省のつくられましたこれによつてつたことは間違いございませんな。
  55. 橋井真

    橋井証人 当時、私はその地位におりませんでした。従いまして、そういう何らかの要綱で買い上げたということは存じておりますけれども、これがだれの所属に属するか、持主はだれであつたかということにつきましては、明確に考え立場におりません。
  56. 明禮輝三郎

    明禮委員 しかし、その時分機械局長であられるあなたが総括しておられて、直接の監督者はあなたではなかつたかと思うのでありますが、そうすると、軍需省営団に対する直接の監督者であるあなたが、そういうものがあるということがわかつておりながら、だれのものかわからないし、どういう要綱に基いて買つたのか、それもわからぬのでは、いかがでありましようか。その機械局長としてのお立場上、いかがなものでございましたでしようか。それをお尋ねいたします。
  57. 橋井真

    橋井証人 率直に申し上げることをお許し願います。その当時のことは、八年前のことであります。買いましたのは、九年近く前のことであります。私は、証言を申し上げるときに、またこの間から、この問題についてお呼び出しがありましたので、いろいろのことをできるだけ記憶を呼び起すことに努力いたしましたが、宣誓を申し上げる場合に非常な勇気がいりましたのです。それは、敗戦前後のこと、そのあとのこと、いろいろの混乱がございまして、人間というものは非常に早く大事なことを忘れてしまうということをひしひしと感じたのであります。できるだけはつきり記憶を呼び起す努力をいたしますけれども、当時ぼんやりしておつたということでなくても、非常に早くわれわれの記憶から失われております。従いまして、できるだけ知つていることははつきり申し上げますけれども記憶いたしかねることがございます。ただいまのお尋ねのことは、率直に言つて、どうだつたのだろうかと、自分が迷うところでございます。
  58. 明禮輝三郎

    明禮委員 それでは、お忘れになつておるかもしれませんから、買上実施要綱証人事務局の方からお見せをして、見ていただきとうございます。
  59. 橋井真

    橋井証人 もう一つ申し上げます。買上実施要綱のできましたときは、私は軍需省秘書課長つたときでございます。
  60. 内藤隆

    内藤委員長 ちよつと明禮君証人機械局長をしたのは、二十年でございます。
  61. 明禮輝三郎

    明禮委員 それでもいいです。それでもいいが、要するに、買上げをしたものの責任者である人が、どんなふうにしてできたか、それを御承知ないということは、われわれは承認ができないから、その点を明らかにここでしておきたいのであります。     〔証人に書類を示す〕
  62. 内藤隆

    内藤委員長 それを見て、記憶を呼び起してください。
  63. 橋井真

    橋井証人 委員長、拝見いたしました。——拝見いたしました。
  64. 明禮輝三郎

    明禮委員 それによりますと、買上げ機関というものができておる。買上げ機関は、交易営団本部及び支所なつでおります。それからもう一つは、代行機関が、イとして中央物資活用協会、口として代行店、こうなつておるようでありますが、先ほど証人も、国費をもつて買つたというような御答弁だつたと思いますが、国費を出したとすれば、どれだけ金が出ておるか。それから、買上げを終つたときの収納者といいますか、責任者はあなたであると思われますから、この買上実施要綱に基いて買い上げたものは軍需省だ、ほんとうは軍需省あるいは国家買つたのだ、戦争に必要な工具その他の必要品を整えるために——趣旨として『「ダイヤモンド工具が航空機、電波兵器等ノ生産上不可欠ノ資材タルニ鑑ミ死蔵ダイヤモンド」ノ動員ヲ行ヒ之が急速ナル戦力化図ラントス』と書いてある。こういう点から行きまして、これは国家軍需省買つたのだ、それでこういつたようなところが代行したのだ、従つてその所有はやはり国家のものである、こういうことになるかどうか、この点についての御意見を承ります。
  65. 橋井真

    橋井証人 この要綱を拝見してはつきりいたしますことは、買い上げた機関交易営団本部及び支所であつて国家ではない、こういうことであります。従いまして、この所有は明らかに交易営団及び支所である、こういうふうに私は判断いたします。ただ、その当時の情勢におきまして、国家が必要であるから出してくださいとお願いし、われわれ国民大衆もこれに協力して出しましたゆえんのものは、これが国家のお役に立つものである、こういうような判断であります。そこに微妙な点があると私は思います。
  66. 明禮輝三郎

    明禮委員 先ほどの、国費をどれぐらいお使いになつたか、そのお尋ねであります。
  67. 橋井真

    橋井証人 これは、今申し上げたのでありますが、国費というのが国家予算という意味でありますと、私の申し上げ方が間違つてつた、これは交易営団の費用で買つたものである、こういうふうに判断いたします。訂正いたします。
  68. 明禮輝三郎

    明禮委員 ここで議論をするわけではありませんが、買い上げ機関という場合は、今のあなたのお話だと、交易営団本部あるいは支所買つたのだ、代行機関買つたのだということですが、それは買う手足となつて仕事をしただけであつて、実際は、この要綱から言つても、軍需省としてあるのでありますから、あなたの御見解は間違つておりませんですか。今のそういう説明から行ましても、買上げ物件が第一ダイヤであるということ、買上げの対象が、今のような、各方面から死蔵ダイヤといいますか、期間は三箇月とし、買上げ価格まで指定してある。買上げ実施区域も大体きまつている。買上げ方法買上げ物件の検査、買上品処分処分価格決定等、いずれも軍需省がこれをきめた。宣伝啓発について政府みずからがこれに当つておる。各地方長官には政府みずからいろいろな通牒を発して婦人団体、隣組まで総動員して、これらの交易営団あるいは中央物資活用協会をその機関としてやらしたのであることは明瞭であると思うのでありますが、いかがでありますか。
  69. 橋井真

    橋井証人 この買い上げたものが国家であるかどうかにつきましての御判定の方法につきましては、私自身の個人の考えを申し上げますと、予算国家予算としてその当時とられて、そうして国家機関が直接に買つたか、国家代行機関として買つたかどうかという点ではつきりするんじやないかと私は思います。それで、当時の交易営団仕事は、御承知の通り非常に範囲が広うございまして、非常に多くのものを、国家のごとき立場において、また国家目的のために買い、また持ち、また処分いたしております。その仕事の一部としてやつたのではないかと私は思います。
  70. 明禮輝三郎

    明禮委員 証人にもう一つお尋ねしますが、機械局長就任せられました当時、このダイヤが、今申し上げたように、国家所有権があるものであるという考えか、あるいはそれは営団買つたのであるから営団だという考えかについて、御研究になつたことがございましようか。
  71. 橋井真

    橋井証人 私の記憶いたしておりますところは、所有の主体の問題でなくて、営団にあるダイヤの中で工具にいるものがある場合には、機械局長がその工具に対して、これを出すことについて指令をする、こういうことを私はいたしました。
  72. 明禮輝三郎

    明禮委員 そういう指令を出す権限があるだけでなく、これはあなた方がお考えになつて機械局長として工具に出すのだが、これは国家のものだから自分が思うようにやれるのだという考え方と、一応どこかに持つているのだが、それを買い取つて、さらにこれをどこかの方面工具に使うのだということは、観念にたいへんな差がある。だから、御就任当時において、これは自分職務権限において証人が自由になさることができるものであるとお考えになつて処理せられつつあつたのか、いやそうじやないのだ、これは営団から買い取つて来てこれを処理しなければならぬという観念でお取扱いになつてつたものであるか、この点を伺いたい。
  73. 橋井真

    橋井証人 機械工業のために必要なものをその用途に出すということについて、さしずの権限あり、こういうことを考えたことをはつきり記憶しております。
  74. 明禮輝三郎

    明禮委員 このダイヤにつきましては、政府出資金二億五千万円を出して中央物資活用協会買上げをしておつたという事実があるはずでありますが、御承知でありますか。
  75. 橋井真

    橋井証人 その当時のことは存じておりません。少くとも記憶にございません。
  76. 明禮輝三郎

    明禮委員 アメリカの人から私は昭和二十一年ごろからよく言われたのですが、終戦後、話を聞くと、どうも責任者になる方は、お前が責任者じやないかというと、いや私じやない、ほかの者だ、——その人を呼び出して、お前が責任者だろうと聞いてみると、いや私じやない、ほかの者だ、——みんな順々にずるずるつと行つてしまうのが、日本のいいところでもあるかもしらぬが、悪いところだ、こう言つておる。証人は、機械局長として、その当時非常な責任者であられたと思うのでありますが、こういうことを全然考えたこともない、よく思い出していただきたいのですが、御就任の当時に、これの処理方法について、たとえば買い上げたものが何ほどあつたかということを御承知でありましようか。
  77. 橋井真

    橋井証人 相当多量であるということは承知いたしております。しかし、これが何万カラツトつたか、何十万カラツトつたかというようなことになりますと、記憶いたしておりません。
  78. 明禮輝三郎

    明禮委員 記憶いたしておりませんということであるが、調べればわかりますか。その当時の何かわかるものがあるのでございますか。全然その当時に関与していなかつたという意味ではないのでございましようが、忘れたということなんでございますか、知らなかつたということなんでありますか。相当あるということは聞いておつたが、どうもよく自分は知らなかつた証人はおつしやるような気がするのですが、そこのところはどうなんですか。
  79. 橋井真

    橋井証人 一番初めに買い上げました数量については存じておらなかつたというのが正確でございます。それから、その当時何個あつたかというようなことになりますと、数字があつたろうと思います。ただ私は、戦争中並びに戦後に資料を全部失つておりますので、現在たぐる方法がない、こう申し上げます。
  80. 明禮輝三郎

    明禮委員 このダイヤは、営団その他に保管されておるものがあるのでありますが、これは全部政府に引渡すべき性質のものでございましようか、証人のその点についての御承知になつておることを伺います。
  81. 橋井真

    橋井証人 その点につきましては、私は現在判断をいたしたことがありません。ただ、営団というものがどういうものであつたかという性格であります。これは、明らかに国家一つ機関として設けられたものだと私は考えております。それ以外に何ら私的な目的があつてできたものではございません。
  82. 明禮輝三郎

    明禮委員 営団または中央物資活用協会は、ともに法人であつて、それぞれ定款の目的内において仕事をして来ておつたのでありますが、これについての経費なんか、——手数料危険負担も、こういうことを全部計算をいたしまして、そうしてこれを精算して政府に渡さなければならないものであるということを私どもは伺つておるのでありますが、最後始末について証人の御承知になつておることを話していただきたい。
  83. 橋井真

    橋井証人 ただいま申し上げましたような性格のものでありますので、結局最後始末は、今おつしやつたような方向であるべきものだと私は考えております。
  84. 明禮輝三郎

    明禮委員 それから、これも証人はどうお考えになるか知りませんが、軍需省営団あるいは中央物資活用協会に頼んだということ、これは法律上は委任だと考えます。委任契約で買上げをさしたものであろうということが第一点。そうするならば、委任契約で買い上げさしたものであるならば、その取扱いについては、善良なる管理者の注意をもつて取扱わなければならないということは当然だと考えますが、この点についても証人は御承知がないのでありましようか、どうでありましようか。
  85. 橋井真

    橋井証人 買上げ当時私のやつておりましたことは違う問題であつたということを先ほど申し上げましたが、ただ私の考えだけ申し上げます。代行機関として、こういう目標で、こういうものを買い上げる、または渡すべきものとして、仕事の委任を受けたのでありますから、当然最善を尽してその事務に当るのだという管理者の責任はあつた考えます。
  86. 明禮輝三郎

    明禮委員 根本論は一応これにいたしまして、このダイヤについて、どのくらいあつた記憶もないという先ほどのお話でありますから、この点をお伺いするのはやぼかもしれませんが、空襲が激しかつた時分に、これらについての処理方法とか、今おつしやるように営団はもちろん善良なる管理者の注意をもつてつたでありましようが、監督者である証人といたしましては、そういつた場合についてのこれらの処理、監督はどういうふうになさいましたか、それを承りたい。
  87. 橋井真

    橋井証人 空襲のもとにおいて重要なものを管理いたしますことにつきましては、もちろんダイヤに限らず、すべてのものについて最善を尽しておつた次第であります。ダイヤモンドは、私の記憶しておりまするところでは、三井関係の倉庫に営団が預けておつた、それは非常に厳重な管理のもとに、安全な金庫に入れてあるというように承知いたしておりました。
  88. 明禮輝三郎

    明禮委員 それでは、もう一つお尋ねしますが、今の証人の御証言によりますと、三井の倉庫に入れてあるということを開いておつたということ。そうすれば、自然と、貴重なものでありますこのダイヤ、しかも国民が自分のうちの家宝としておるようなものばかりを戦争のために供出したのでございますから、この点についての思いやりからいたしましても、どのくらいの数量があつて、その管理はどういうふうにしなければならぬかというだけの、相当責任ある監督並びにそういつたような危険防止についての御注意があつたことと思われる。でありますと、これは何ぼあつたということは御承知じやつたと私は今考えますが、証人はやはり何カラツトつたか知らなかつたということに終りましようか。
  89. 橋井真

    橋井証人 当初買い上げたときの数字は存じておらなかつたと申し上げた。それから、当時どのくらいあつたかということは、あるいは私はよく承知しておつたかもしれません。ただ、数字の記憶がないのであります。私の就任いたしましたのは三月の終りか四月の初めであつたのでありますけれども、全国に対して激しい空襲がありまして、工場の被害をいかに復旧するか、またいかにこれを避けるか、戦争の最終段階において必要なだけの軍需の供給をいかにやつて、どうしてこの戦局を支えるかということに非常に追われておりました。率直に申し上げまして、相当大きな組織を使つて、また人を使いまして、全体の仕事をやつてつたのでありますが、非常に多くのものの中で、ダイヤ仕事は非常に重要なものでありますけれども、今覚えるほど数字を記憶に深くきざみ込めなかつたということを残念に思います。
  90. 明禮輝三郎

    明禮委員 その当時のダイヤの買入れについての鑑定は、軍需省の嘱託としてやられておつたということを聞いておりますが、その点についての証人の御記憶はありませんか。
  91. 橋井真

    橋井証人 軍需省の嘱託であつたかもしれません。はつきり記憶がございません。ただ非常に鑑定には注意しておつたようであります。
  92. 明禮輝三郎

    明禮委員 ダイヤ買上げは、証人秘書課長時代から、すなわち昭和十九年八月十五日ごろから始まつて、十二月の十五日ごろには大体終つたのでありますが、しかし国民は目標の九倍にも達するだけ供出を喜んでしたのであります。しかしながら、戦局が非常に激烈になつて来ますると同時に、不具としてもこれが第一線に出なければならなかつたものであるにかかわらず、航空機や電波兵器その他の工具の役に立つておりましたでしようか。ドんなふうでございましたでしようか。どの程度役に立ちましたか、証人はその点についての御承知になつておることをお話願いたい。
  93. 橋井真

    橋井証人 非常にこれは技術的な用途並びに判定のもとに行われるものであります。私が記憶しております一つは、このある数量を今度工具組合に附す、そしてそれをダイヤモンド工具につくつて機械工業に配給するような手続をとります、こういうことを部下の者から言われた。あるいは私はその際書類を見て決裁しておるかと思いますが、そのあとの始末は、はつきりした記憶はありません。とにかくそういう形でダイヤが使われたという筋合いだつたことを覚えております。
  94. 明禮輝三郎

    明禮委員 先ほども委員長の質問の中にあつたようでありますが、皇后、皇太后の冠のお下渡しがあつて、そのうちに特にダイヤが相当出ておる。このことについては、特に皇室のことでございましたから、どういうものが何ぼあつたかということは、事皇室に関する問題である以上、一層証人として、また証人性格から申しましても、御職務柄から申しましても、十分に取調べて、その点についてぬかりがないようにできておると私は思いますが、その点についての御処理の状況をいま一度お話を願いたい。
  95. 橋井真

    橋井証人 その当時は秘書課長でありまして、ありがたいおぼしめをもつてお下渡しになつたことも承知いたしますし、そのものも拝見する機会がございました。当時、関係した者は、いずれも非常に謹んで、間違いのないようにやつてつたというふうに私は認めます。ただ、私自身がこれのお取扱いを申し上げたことはございません。ただ、一点申し上げますと、これを軍需省の一室において相当数の人に拝観させたことがございます。その場合に、その部屋の提供を私がいたしました。
  96. 明禮輝三郎

    明禮委員 今のそういうような実情でございましたから、従つて、どういうものがどれだけあつたということを御承知のはずと思いますから、それをお話願いたい。
  97. 橋井真

    橋井証人 相当個数も多く、そして非常にりつぱなものであつたということは記憶いたしております。漠然と目にはそれが残つております。ただ私は、個数を一々数えること、並びにどういう品目であるかというようなことは、私自身扱いませんで、拝見いたした程度のことであります。
  98. 明禮輝三郎

    明禮委員 先日、私市証人が出て参りましてのお話には、お冠は三個であつた、こうここで証言したのでありますが、二個でございましたか三個でございましたか、この点について御承知になつておるところを……。
  99. 橋井真

    橋井証人 これは、お冠であるというように形の上で私が拝見してはつきり覚えておりますのは一個であります。ただ、お冠というものは、実は私どもは、お下渡しになる前は、西洋の王冠のような形を想像したのでありますが、拝見いたしますと、もつと軽いものであり、また形も西洋の王冠のようなものと非常に違つたお冠のようなものもあり、おかんざしのようなものもあり、ブローチのようなものもあつたかと思いますが、そういうものであります。従いまして、私自身として、三個であつたか二個であつたかということは、現在目に残つておる記憶では申し上げかねるのであります。
  100. 明禮輝三郎

    明禮委員 そのお下渡しになつたものは、あなたは一個だとおつしやるのですか。
  101. 橋井真

    橋井証人 一個はたしか私が拝見いたしましたということを……。
  102. 明禮輝三郎

    明禮委員 そうすると、一個だというわけでもないのですか。
  103. 橋井真

    橋井証人 限定したわけではございません。
  104. 明禮輝三郎

    明禮委員 そこで、そのダイヤの中に、大粒なものが五個ばかりあつたそうでありますが、それが現在どこにどういうふうに保管されているかということは、あとで機械局長におなりになつたので、秘書課長つた時分にごらんになつても、それをごらんになつて引続いて機械局長になつておられるのでありますから、その保管についての責任と申しますか、考え方は、十分はつきりしておらなければならぬはずでありますが、その点をいまひとつ明らかにおつしやつていただきたい。
  105. 橋井真

    橋井証人 先ほど申し上げました通り、非常におりつぱなものは、これをこわして工具にする必要は、当時ダイヤがたくさんありまして、ございませんでしたし、また工具にすべきものでもないという考えをもちまして、一応宮内省に、——これはお預け申し上げましたか、お返し申し上げましたか、その形式は存じません。とにかく宮内省に持つて上るんだということをはつきり聞きました。これは、お下渡しになつたただちにのことであります。従いまして、私がその後ダイヤ関係を担当いたしましたときには、それは宮内省にあるものと承知しておりました。
  106. 明禮輝三郎

    明禮委員 そこで、今のお下渡しになつたダイヤの点でありますが、皇后、皇太后の冠は、きわめて重要なる儀式等に御使用になるものと思われます。皇室としては歴代宝物としてお伝えになるものと考える。この重要な品さえも戦争完遂のためにお下渡しになつたのでありまするから、所管庁はきわめて慎重にこれを取扱い、御趣旨が十分に達せられるように努めなければならぬのであると考えます。しかるに、お下渡し品の処理要綱は、ようやく昭和二十年四月に決定したので、お下渡しがあつてから実に八箇月、しかもこれが工具となつたのは七月ごろで、おそらく航空機や電波兵器製作には役立たなかつたのではないかと思われるのであります。十九年の八月十五日に一般国民からの供出のことが決定いたしまするや、皇室におかれては、いち早く九月二十八日にすでにお下渡しになつたのである。そうでありまするにかかわらず、軍需省は、ようやく翌年の四月にこれが処理要綱をつくつておる。この間実に八箇月もたつておる。皇室に対して相済まないというお考えはないのであろうか。ことに、このお下渡し品の白金冠を初め大粒、小粒のダイヤが行方不明である。歴代皇室の宝物とも申すべき皇后、皇太后の冠が、しかも軍需省においてお下渡しを受けてから、その行方について、今日に至るまで発見ができないという奇怪千万なことがあるということは、一体どういうものでございましようか。終戦前ならば、係役人はほんとうに腹切り問題である。この宝物がこのまま行方不明で捨てておけると考えられるものかどうか。たとい今日役人をやめておられましても、当時の最高の責任者である証人はどういうお考えでいらつしやいますか。本日の証言は、私ども伺いまして、満足に答えられていない点があることを遺憾と存じますので、最後にこの点についての御感想を承りたいと思います。
  107. 橋井真

    橋井証人 お下渡し品の行方につきまして、ことに紛失したようなものがありますれば、これはまことに申訳ないことと思います。明らかにできることがありますれば、私も皆様方と一緒になつてできるだけ明らかにしたいと、こう考えます。それから、それ以外のダイヤ、白金につきましては、おそらくはかのものと一緒に扱われたと思います。私の記憶でありますが、その当時ある一部で、これはお下渡しダイヤであるというように、たとえげ菊の御紋章のようなものをつけて配付したらどうかということを言つた人があり、またこれに対して、結局においてはこの中にお下渡し品のダイヤが入つておるのである、だからさように心得よと言つて、これを一緒にした方がよいと言つた人がある、この二つのことを聞いております。結論としては、私はほかのものと一緒になつたものじやないかと思います。白金につきましても同じような処置があつたのではないかと思います。いずれも、私が大体そうであろうと相当な確率をもつて推察するところのものでありまして、問題になりますのは、五個とおつしやれば、五個であるかもしれません。——お返し申し上げたはずのダイヤがどこでどういうふうに失われたか、こういう問題であります。しかし、私の考えておりますところは、先ほど申し上げました通り、お下渡しになつた当初において、これはお返し申し上げるものであるということを聞き、そのように処置されたものと、私はそのときから了解いたしております。ただ、それを一々追究してはおりません。  それから、なぜそんなにダイヤの使われるのが遅れたか、こういう問題でありますが、その当時、陸海軍も相当に数量を持つておりまして、また民間にもある程度その前に輸入しました工具ダイヤがありました。しかしながら、これがなくなつてしまつたときのことを心配して、早く手を打つたものと私は解釈しております。従いまして、必要がここにありますれば、片方においてたくさんのダイヤが国民の熱誠によつて供出されておりながら、結局それらのダイヤが使われないで非常に困つた、こういう状況は出なかつたものと考えております。戦局がもつと長くなりまして、またその間にもつと生産が進んで、ダイヤの必要がありましたならば、もつと早く多量のダイヤが使われたと私は思います。実際においては、当初の目標より非常にたくさんのダイヤが集まりましたので、その大部分が結局使われないうちに戦争が済んだ、こういうふうに私は解釈をしております。
  108. 内藤隆

    内藤委員長 ちよつと証人に申しますが、証人証言中、機械局長であられたあなたとしては相当重要な証言があつたと思う。それは、ダイヤの帰属が営団のものであるような御証言つたと思います。これはすこぶる重大ですが、その点、もう一度どうです。
  109. 橋井真

    橋井証人 私は、この実施要綱を拝見いたしまして、これでありますと、買い上げ機関営団でございますから、営団が買い上げたものというように、この実施要綱から判断するということを申し上げたのであります。これが国家のものであつた営団のものであつたか、実は営団は、先ほど申し上げた通り、国家のためにできた機関でありますので、直接間接の関係はございましても、結論においてそう違いがないように私個人としては思うのであります。しかし、この点は非常に法律問題が複雑でありまして、私自身で証言の形で判定を申し上げることは不可能と申し上げたいと思います。
  110. 内藤隆

    内藤委員長 そうすると、機械局長であつたあなたのさいぜんの証言は、要するに、どこのもの——国家のものとも営団のものともここで判定することは不可能だという証言なんですね。それを、さいぜん営団のものであるようなあなたの証言がありましたから……。
  111. 橋井真

    橋井証人 それでは、その点を今のように訂正いたします。この要綱から見ますと、買上げ機関営団と書いてある、そこで申し上げたのであります。
  112. 内藤隆

  113. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 先ほどから委員長並びに明禮君の質問に対しての証言お答えは、機械局長という責任の立場にありながら、私たちの聞いた感じでは、何か核心からのがれようとするような感じを承つたのであります。どうかひとつ、国民の重大関心を持つている問題でありますので、あなたの判断を聞くのではなくして記憶にある点はひとつ率直にお答え願いたいということを前提として二、三御質問申し上げます。  第一に、その記憶をお聞きしたいのでありますから、ただいま明禮君の言われた、最後の方から入つて行きたいと思いますが、皇室からお下渡しになりましたダイヤが一個であつたか五個であつた記憶がない、しかし一個だということだけははつきり申し上げることができるという証言でございましたが、その当時、あなたは秘書課長として、そのダイヤ軍需省の省員かどうかしりませんが、多くの人に見せる機会を与える設備をやつたということでありましたが、部屋の設備をやつたというのですが、そういう設備をやる指令をどなたから受けたのか、承りたい。
  114. 橋井真

    橋井証人 部屋を貸していただきたいということを言つた来たのは、機械局の担当官であつたと思います。私の記憶では、その一人に技師の人がおります。  それから、今のお尋ねでございますが、一個であつたか五個であつたかというのは、一個もしくは一個以上ありましたと申し上げましたのは、お冠のことであまりして、ダイヤのことではございません。それから、皇室からお下渡しになりましたダイヤは非常に多うございます。お冠その他にたくさんついておりましたので、五個ではございません。  それから、今の個数の問題になりますが、私は、その当時聞いたところでは、たしか二、三個だつたと思います。大きくてお返し申し上げるというのは……。しかし、五個というお尋ねでありますと、五個であつたかもしれません。それは、私自身が聞きましたあとでふえておるかもしれません。私自身その当時直接担当いたしておりませんでしたので……。そういうことでございます。
  115. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 そうすると、その部屋の交渉をしたのは機械局の技師かどうかしりませんが、機械局の方から話があつたのでありますね。
  116. 橋井真

    橋井証人 はあ。
  117. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 それから、もう一つは、こういうりつぱなものは、こまかくして使うよりも、お返しした方がいいということを聞いたと言われるのですが、そういう、お返しをした方がいいということを言われたのはどなたですか。どなたから聞かれたのですか。
  118. 橋井真

    橋井証人 これは、そういうことになつたということを、私はまた聞き程度に聞きました。しかしこれは、直接に機械局の人であつたかどうかははつきりいたしません。これは、ダイヤお話はこちらで非常にたくさん出ておりましたので……。それから、部屋を拝借したいと言つて来たのは、機械局の人が一緒に来ております。
  119. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 ただ風聞か、だれが言つたかわからぬというようなことですが、大事なお冠なり、ダイヤ、そうしたものをあなた方が見て、しかも部屋の交渉を受けて、あなたが準備をやつて、しかもそのお返しするしないということの権限は、当時だれにあつたか、おわかりになりませんか。ただみんながそう言つた、そういう風聞を聞いたというだけでは、はつきりしないのですが、どの人が、そういう、お返しした方がいい、使つた方がいいという一つ権限を持つていたか、それを承りたい。
  120. 橋井真

    橋井証人 判定の権限を持つていた者は、もちろん上は大臣でありますけれども、直接の担当としては機械局当局であつたと思います。
  121. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 わかりました。それを承りたかつたのであります。要するに、当時はあなたは秘書課長でありましたけれどもダイヤのいわゆる保管ないし使用の権限機械局長にあつたのだということに間違いありませんですね。
  122. 橋井真

    橋井証人 役所の中で直接に担当いたしておりましたのは、その局であつたと私は思います。
  123. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 当然そうでなければならないと私は思うのです。その機械局長が役所としては全責任があるわけなんです。もちろん上は大臣ですけれども、その省の責任はやはり機械局長、その機械局長にその後あなたがなられたのです。なられたあなたが、ダイヤがどのくらい買つてつたか、どのくらい保管されていたか、どういう状態にあつたかということが記憶にないというならば、あなたがあとにその責任者になつておりながら、忘れたというのならいざ知らず、知らないということは私は言い切れないと思う。証言の中にときどき出て参りました、たとえばどこにしまつていたかという質問に対して、三井倉庫にあつたということもあとで言われたのではありませんか。そうすれば、三井倉庫にどういう状態で、しかも数量がどのくらい——現在記憶がないとするならば、いずれかの方法で調べればわかる過程にあつたと私は思うのですが、そういうことに対して、もう一回御証言が願いたい。
  124. 橋井真

    橋井証人 数字については、遺憾ながら記憶がないということを申し上げます。それから、保管の場所につきましても、先ほど申し上げたように私は承知いたしておりました。
  125. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 保管の数量記憶がないということはやむを得ないと思います。その数字については……。しかし、三井倉庫にあつたことがわかつておるのでありますから、数量がいずれあなたの手元に何らかの書面をもつて提出されたはずだと思うのですが、その提出されたことがありますかどうか。数字は記憶になくとも、これだけのものがこう保管されているという、下の者から、あるいは係の者から、あるいは買い上げた営団から、報告があつたかどうか、それを受けた記憶があるかどうか、それを承りたい。
  126. 橋井真

    橋井証人 ある個数をその中から使いたいということを言われた。そうして多分それについて、それだけのものをこう処理するということについて決裁をしたであろうと考えるということを申し上げた。そこは私の記憶であります。
  127. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 だんだんはつきりして来たのですが、要するに、これだけのものがある、その中からこれだけ使いたい、そこであなたが決裁なさつた記憶があるということでありますが、その決裁された書類、これだけ使いたいという書類を、あなたの方で、部下のだれが持つて来たか、記憶がありませんか。
  128. 橋井真

    橋井証人 これは記憶しておりません。
  129. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 記憶にないとすると、そういう使う場合に、あなたのもとに、使いたいと言つてつて来れる立場にある担当官の名称を言つてください。たとえば何課長とか何部長とか、そういうのが必ずあるはずです。名前は忘れても、その担当する係官の席の名前をひとつ言つていただきたい。
  130. 橋井真

    橋井証人 機械局内におきましては、局長、精密機械課長関係の事務官、技師であります。
  131. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 もちろんその人たちの相談はあると思いますが、その人たちが一緒になつて使いたいと言つて来たのではないと思いますが、その決裁されだ書類を、だれから、どの課長から持つて来られたか、それはわかりませんか。
  132. 橋井真

    橋井証人 特に大きな政策的のもの、ないしは直接に問題があつた場合を除きまして、普通の場合においては、局長の机の上に箱がございます。それで、右側に未決のもの、左に既決のものと書いてございます。それに判を押す、もしくはサインをして渡すだけでありまして、当人は特に呼びません。出て参りません。
  133. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 そういうごまかしのような証言では困るのです。私もこの間まで役所にいたから、書類を決裁する方法ぐらいわかつております。右側は未決で、左側は既決、それはわかつております。そこで、ただ箱に入つていたからといつても、しかしあなたが判を押すには、ずつと順を経て最後にあなたのところに持つて来る。その最後責任者があるはずです。あなたまで来る最後責任者、その判があればあなたが押すのでしよう。三段飛びして押すようなことはありません。だから、あなたのところに持つて来て、その書類に判を押した場合に、どの人の判があつて、その上にあなたが判を押したのか。それとも、その名前が記憶になかつたら、そういうダイヤの用途はどの立場の人が判を押して来るのかということを私は聞いているのです。
  134. 橋井真

    橋井証人 その順序は、先ほど申し上げた順でございます。局長最後に判を押す、その前に精密機械課長が判を押す、その前が事務官、その前が技師、これが普通の順序であります。
  135. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 その当時の精密機械課長の名前はわかりませんか。
  136. 橋井真

    橋井証人 私、はつきりその日にちを記憶いたしませんが、人がかわつておりますから、多分そうだつたろうと思いますのは、若林という海軍大佐ではなかつたかと思います。その前にもう一人海軍大佐がおりました。そのどちらであるかは、かわつておりますから、そこはひとつ調べてから……。
  137. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 これは大事なところですから、はつきり若林という海軍大佐かどうか……。
  138. 橋井真

    橋井証人 私が会つて、そのときになつてつたか、聞いてみてもよろしゆうございます。
  139. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 今はつきりしないというなら、どつちということを言つてもらうことは無理だと思いますが、若林大佐であつたか、もう一人であつたかというところまで近づいて来たのですから、どつちであつたかということは、はつきりするわけです。だから、どつちであつたか、ぜひこれははつきりさせて、どつちだということを、書類でも何でもよろしゆうございますから、委員長の手元まで出していただくことを要求いたします。
  140. 橋井真

    橋井証人 よろしゆうございます。
  141. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 もう一つは、先ほど委員長からもお話がありました営団の問題ですが、営団所有物であつたよう発言を後刻あなたは訂正されましたが、これはやはり、役人をしておれば、特に局長までなつておられたので、おわかりだと思いますが、交易営団とか何営団というものは民間のものではありません。これはもちろん国家目的によつて国家の要請によつてできているのであつて営団というものが国家一つ機関であるということだけははつきりしております。もちろん、ダイヤを買うときには、その営団を通じて、あるいはまた地方のいろいろの機関を通じてやられたろうと思いますが、この数量を買い上げた場合には、ことに御承知の通り二億五千万円という政府の資金を使つて買い上げたのですから、当然政府のものなんであります。政府といつても、その用途の衝に当る軍需省のものなんです。そうすると、軍需省におられ、しかもその最高の責任にあられるあなたが、数量報告されなかつたということは、私はないと思うのですが、報告されたけれども、その数量を忘れたのか、あるいは、あなたが報告された記憶が全然ないのか。——その点について、先ほどの用途でなく、今度いろいろな状態、こういう状況で買つている、こういうようにして保管されているのだ、こういう数量があるのだということは当然報告されていると私は確信するのですが、記憶はありませんか。
  142. 橋井真

    橋井証人 私は、おそらく数字の報告は受けておつたろうと思います。ただ、はつきりした記憶がないということだけのことであります。建前上は私は受けておつたろうと思います。
  143. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 受けていたろうというより、受けているはずです。私は、はつきり申し上げます。受けていなかつたとするならば、あなたは職務怠慢なんです。はつきり受けていなくてはならぬ。それを忘れたというならやむを得ない。しかし、受けていたとするならば、先ほど言つたように、当時たれから報告を受けたということを、もう一回記憶を呼びもとしていただいて、——委員長に申し上げますが、この問題については、重要でございますから、この橋井証人はきよう一日で終ることなく、後日またあらためて再証言を求めるということを保留しておいて、私はきようの証言をまだ続けたいと思うのですから、先にそれをきめてもらいたい。そうでないと、これで打切られると、大事なことですから……。この次にあるというなら、譲つておいて、別の問題に入りたいと思いますが、それをおきめいただけるかどうか、先にお諮りいただきたいと思います。
  144. 内藤隆

    内藤委員長 先例もありますから、これから理事会にお諮りして決定いたします。
  145. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 大体私が想像していたように、報告も受けていると思うのです。あるいはまた数量も大体、忘れてはいるが、わかつていると思うのです。その問題は、いずれあなた御自身も記憶を呼びもどさなくてはならぬので、これ以上つつ込みません。  ただ、そこで一つお伺いいたしたいのは、あなたは現在東京計器の社長をやつておられるようですが、東京計器というのは、どのくらいの資本で、どういう仕事をやつておられて、戦争中は軍需省関係があられたかどうか、その点について御証言を願いたい。
  146. 橋井真

    橋井証人 東京計器製造所は、元の東京計器製作所の第二会社であります。資本金は、ただいまの製造所は八千万円。おもな業務は精密機械一般の製造であります。特に航海計器につきましては、アメリカの特許を相当多数譲り受けており、——これが使用権をもらつておりまして、非常にたくさんつくつております。それから、新しいものとして、レーダーとか、ローランとか、原子的な計器をつくつております。並びに三島徳七博士の発明による永久磁石鋼の製造をいたしております。これにつきましては、こちらから外国に逆に特許を出しまして、特許料をとつております。人間は約八百人近くおります。
  147. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 もう一つ大事なことの御証言がないようですが、戦争中に軍需省との関係。……。
  148. 橋井真

    橋井証人 関係は、軍需省じやなくて、海軍と陸軍との関係が非常に深かつた会社であります。多少軍需省関係があつたかもしれませんが、軍需省の航空兵器総局との関係は、当時私どもの別系でありました東京航空計器株式会社の方が多くございまして、直接軍需省との関係はそう多くなかつたのじやないかと思います。ただ、飛行機のスターターをつくつておりますから、その点は航空兵器総局と関係があつた……。
  149. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 東京計器と軍需省との関係は、当時私は航空機関係の仕事をしておりましたので、よく知つております。全数量から言えば、そう多くはないと思いますが、しかし東京計器が軍需省から海軍用の発注を相当受けていたと私は記憶しているのですが、そういうことはなかつたですか。
  150. 橋井真

    橋井証人 よく御存じのようでありますから、あまり詳しくあれしませんが、航空計器関係は東京航空計器がおもでございました。ただ、ベンデイツクス、それから例のエクリツプス・スターターをやつておりましたから、それは軍需省と直接関係がありました。おもなものは御承知の陸海軍用の航海計器、それから特種兵器をつくつておりました。たとえば磁石を用います潜水艦探知機、赤外線を用いる通信装置、こういうものをやつておりました。従いまして、会社全体としては、軍需省関係は陸海軍のように深くはなかつた、こう見ております。
  151. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 その当時軍需省ないし海軍省関係の精密機械を製造していたことになるのですが、精密機械を製造するには、ことにダイヤモンド工具として非常に重要ですが、当時東京計器あたりから、あなたにダイヤモンドの話がございませんでしたか。
  152. 橋井真

    橋井証人 私自身に対しては、そういう話は、役人としては受けたことはございません。実は、この問題については、自分の会社で聞いてみるのが一番早いものですから、私自身、今おります古い人に、ダイヤでつくつた工具国家から配給を受けたかということを聞きましたが、私の聞きました範囲では、そういう記憶は持つてないのであります。
  153. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 軍需省のあなた自身がダイヤモンドの用途をはつきり証言できないような立場にあるのに、東京計器の社員に、これが配給ダイヤでつくつたものか、あるいは配給でないダイヤでつくつたものか、聞いたつて、わからないと思う。しかし、それはいずれにしても、東京計器は軍需省からダイヤを使つた機械の配給ないし購入のあつせんを受けたことがあるんじやないかと思います。あなた御自身は聞いたことがないという上手な御証言ですが、あなた御自身は聞かれなくても、あなたの方の係の方か何かから、東京計器に対してのそういう話の記憶はございませんか。
  154. 橋井真

    橋井証人 私どもの方でつくつております機械は、現在もそうでありますが、性質上から言つてダイヤモンド工具を使うことが非常に少い。絶無とは申しませんけれども、そういう関係でございます。これは、当時もそうであつた。率直に言いますと、主体が艦船計器であります。従いまして、ダイヤモンドを使う非常にこまかいものと違うのでございます。
  155. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 それは、電波探知機とか、その他軍に使われる機械から見れば少うございましようけれども数量は、考えようによつて多い少いということが言われるので、あなたのような大きくダイヤモンドを使つている面から見れば、少いかもしれません。しかし、一般の人から見れば、それだけのものを使うということで、多いということが言われますが、多い少いの議論は抜きにいたしまして、そういう関係があつたことだけは私もわかつたのですが、そこで、ひとつお伺いしたいのは、軍需省局長をやられていたあなたが、終戦後おやめになつて、東京計器の会長になられたというのですが、——つてお聞きするようですが、やはり物事は一応疑つて見なければ真意がつかめませんので、私はお聞きするのですが、どういう方法で会長になられたのか、どなたの御推薦があつたのか、同時にまた、現在社長であられますので、東京計器の株をどのくらいお持ちでありますか、その点も御証言願いたい。
  156. 橋井真

    橋井証人 立入つた御質問でありますが、御遠慮なくお尋ねいただきたいと思います。この東京計器を育てましたのは、和田嘉衡という人でございます。これは、私のうちの一番の親威になつておりまして、昔からの長い親類関係でございます。和田嘉衡を助けて東京計器を育てた人は、和田がおるという現在生きておる老夫人でありますが、これは私の非常に近い血縁であります。東京計器に参りましたのはその関係であります。戦後非常に困りまして、やつて来ないかということでたびたび勧められたのであります。その当時いろいろ迷つたのでありますけれども、結局自分らが一緒になつて助けるのがほんとうだと思つて、東京計器に入つたのであります。  それから、株の関係でありますが、私は十四万数千株持つております。それから、私の兄弟もしくは兄弟関係で持つておりますのが、かれこれ合せて二十五万から三十万の間だろうと思います。株は出たり入つたりしますから…。それから、アメリカのスペリー・コーポレーシヨンが四十万株持つております。八千万円でありますから、総数百六十万株であります。過半数をその両方で持つております。
  157. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 それでは、私の証人に対する質問はこの程度終りますが、先ほど申し上げました二点につきましては、なお記憶を呼び起しまして書面なり何なりで提出していただきたいということを申し上げておきます。
  158. 橋井真

    橋井証人 二点をもう一ぺん恐れ入りますが……。機械局の関係課長はだれであつたかというのが一点、もう一点は……。
  159. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 もう一つ数量、それから保管していた状況、——交易営団でどういう方法でどういう報告をかつてあなたのもとにしていたかという、その二点であります。
  160. 橋井真

    橋井証人 承知いたしました。
  161. 内藤隆

    内藤委員長 なるべく早い機会においてお願いいたします。
  162. 橋井真

    橋井証人 それでは来週早々に調べまして御報告いたします。
  163. 内藤隆

    内藤委員長 それでは、中野四郎君。
  164. 中野四郎

    中野(四)委員 今度のダイヤモンド事件をば調査いたしまするのに、その当面の責任者である軍需次官の竹内君並びに皇室等に関係をしたといわれる平賀技官、こういうような重要な証人がことごとく死亡しておる。私は、死者にむちうつわけではありませんが、こういううるさい問題になると、死んだ人間に責任を転嫁するのは世間ありふれたことであります。そこで、現存しておられる当時の関係の最高責任者は、大体機械局長をしておられたあなたということになるのです。あろいは前任者の局長であつたか、当時のあなたであつたかということが、きようお伺いをする焦点になると思うのです。第一番に、局長は、ダイヤ買上げ及び処分の重大なる責任の地位におられたのだと思います。ゆえに、その買上要綱は当然知つておらねばなりませんし、その処分も遅々として、戦争の役に立たなかつたという責任もとらねばならぬと私は思うのです。たとい当時あなたが二十年の四月から機械局長になつたから知らないという言葉をもつて一切の証言をされましても、事実上においては当然その責任の一端は負わねばならぬと思うのです。こういう観点に立つて、私はお伺いをしたいと思いまするから、先ほど来の明禮委員ないしは佐々木委員からの御質問と重複する点が一点、二点ありますが、それは、私が伺つてつて納得の行かぬ点がありますので、このことはひとつごしんぼうを願つてお答えを願いたいと思います。あなたに疑いを持つてとかくの論議をするにあらずして、御承知のごとく、終戦直後、進駐軍によつて十六万一千カラツトダイヤ並びに金、銀、白金というものを接収されました。そして実質上は昭和二十六年の六月十九日に日本側に引渡しの手続をいたしておりますけれども、形式上は昨年の四月二十八日、すなわち講和発効と同時に日本政府に対して接収解除をしてよこしたのであります。このダイヤモンド、貴金属等をば、現段階においていかに処理するかということが、今日国会に論議されておるのであります。と申しますのは、昨年の六、七月と記憶いたしますが、大蔵委員会に対しまして、接収貴金属等の数量等報告に関する法律案というものが提案されまして九月の三十日までに元の所有者は政府にその証拠書類をつけて届け出よ、政府は、返還その他の処置をするために必要だから、この法律を提案するという理由で参つたのであります。そして、今年の調査によりますれば、昨年の九月三十日までに約四百六十件にわたつて自分所有権を主張した人々が大蔵省に届け出て来たのであります。ところが、この所有権をめぐつて当時の軍需省責任者であつたあなたに伺わなければならぬ大事な点がある。それが今日あなたに伺う焦点と御了承願いたいと思うのです。  そこで第一番に伺いたいのは、たといあなたが二十年の四月に局長になられたにいたしましても、当時日本の国内には相当数工業用のダイヤはあつたはずであります。特に工具製作用のダイヤは、装飾用のダイヤよりもむしろ工業用ダイヤの方が結果において使いやすいし、よいという結論は、識者のひとしく知るところであります。当時軍関係では少くとも八万余カラツトの工業用ダイヤを持つてつたはずでありますが、証人はこういうことを御存じかどうかということが一点です。  それから、陸海軍に八万余カラツトの工業用ダイヤがありながら、もとより運転用として必要でもありましようけれども、どういう目的で、当時から考えれば価格の点においても十倍も十三倍も高いような一般国民の装飾用ダイヤ軍需省がきびしい次官命令を出して買い上げなければならなかつたか、この状況をお伺いしたいのであります。
  165. 橋井真

    橋井証人 第一点の、軍関係において八万カラツトつたはずであるがどうか、こういうことでありますが、     〔委員長退席、荒舩委員長代理着席〕 ダイヤの供出が当初起りました原因として、私がその前後に聞きましたことは、これはうわさ話のようで、悪口になるようでありますけれども、陸海軍には相当あるけれども、この協力が得られないので、民需用の工業用ダイヤを確保するために供出を頼まねばならないのだというようなことを聞きました。従いまして、軍関係には、私は数字は存じませんけれども、相当ダイヤがあつたというふうに承知いたしております。  それから、何ゆえに次官命令で買上げをしなければならなかつたかという問題であります。この大事なダイヤを供出することにつきましては、たとい国家に非常に必要があるといたしましても、ダイヤについては特別な愛情を持つ人が多いのであります。その供出を特に願うことに決意をきめるに至りましたのには、相当の必要があつたと私は見ます。その必要は何であるかと言いますれば、昭和十九年、ごろでありますと、まだ日本の工業生産が相当活発でありました。従いまして、従来の手持ちの工業用ダイヤは割合早くなくなる。とても輸入等の見込みがない以上、それから手を打つたのでは遅いので、早く手を打つたのではないかと私は思うのであります。ただ私は、この方針の決定には関与いたしておりませんので、そういうように察すると申し上げた方がいいと思います。
  166. 中野四郎

    中野(四)委員 今のお話によりますと、陸海軍には相当数の工業用のダイヤがあつたことをお認めでありますが、当時の軍需大臣は、あなたが秘書官をしておいでになつた独裁宰相と言われるような東条英機さんであつたはずであります。しかも、あなた方が当時の感覚から見ても、陸海両軍の間に相当数の工業用ダイヤがありながら、軍需省において、一般国民の愛着が非常に強い装飾用ダイヤを、必要欠くべからずとして買い上げなければならなかつたというそのダイヤは、どういう方面に使うために買い上げたのか。陸海軍の両方がどうして軍需省にまわしてくれなかつたか。東条ほどの人が、総理大臣でおりながら軍需大臣を兼任しておつて、どうして陸海軍の間から工業用のダイヤをまわしてもらえなかつたか。その点について伺いたいと思います。
  167. 橋井真

    橋井証人 私の印象を率直に申し上げます。東条英機という人は、総理大臣であり、軍需大臣を兼ね、陸軍大臣も兼ねておつたのであります。その力をもつてしても、陸海軍からダイヤをとれなかつたというのが、当時の日本の実情であつた考えます。従いまして、やむを得ず、とにかく戦争中は装飾品はみなつけなかつたのだから、供出を正当な価格で願うという決意をしたものと思います。
  168. 中野四郎

    中野(四)委員 どうして陸海軍からもらえなかつたんでしようか。また交渉したのでしようか。交渉の経緯等について伺いたい。ただもらえなかつたではわからない。当時の陸海軍の関係というだけではわからない。軍需省が陸海軍に向つて、この一般国民のダイヤを買い上げる前に、工業用ダイヤを配給してくれとか、分割してくれということについて交渉をした経緯とか、あるいは、いかなる理由に基いて陸海軍がこれを拒否したか、こういう点を、いま少し具体的に話をしていただきたいと思う。
  169. 橋井真

    橋井証人 だれがどこにどう話したか、そうして断られたか、もしくは最初からこれは持つてつてもだめだという印象をどこかで得たか、その経過は私は存じません。ただ、もらえないのだという見当でやつたのだ、こういうことだけしか私は承知しないのであります。率直に当時のいろいろな状況から言つて、よほど特殊の事情がなければ、軍関係の工業用ダイヤは、どちらも工廠で非常な生産をやつておりましたから、もらえなかつたのだろうと私は思います。
  170. 中野四郎

    中野(四)委員 あなたは、当時、十八年十一月から二十年の四月まで東条総理の秘書官をしていらつしやつたのだから、少くとも何かそういう方面において見聞しないわけはないと思うのですが、忘れたというような問題でなく、当時の熾烈な戦争の中にあつて秘書課長という重要な役割においでになるならば、その内容くらいはここで話せないことはないと思うのです。いま少し詳しく話をしてもらいたいと思う。
  171. 橋井真

    橋井証人 秘書課長は、人事をやりまして事務を扱わないのが原則であります。ただ大臣に行くような書類の判をとつたりする関係で、経由をしたり、また持つて行くことはあります。それで、ダイヤの問題については、秘書課長としては、先ほど申し上げましたような関係以外に、何にも私は関係がございません。  それから、申し上げますが、私が秘書官をいたしましたのは、東条内閣の末期二箇月だけでございます。あとは軍需省秘書課長でございます。各省の前例をもつていたしますと、秘書課長は大臣秘書官を当然兼ねるのでありますけれども、私はそれを避けまして、秘書官をいたしませんでした。
  172. 中野四郎

    中野(四)委員 どうして避けたのですか。
  173. 橋井真

    橋井証人 率直に申し上げます。北常に人間が多い役所でありまして、陸海軍の人も多かつたのでありまして、個人的にある程度ついて歩くような秘書官仕事は困難である、こう考えまたし。
  174. 中野四郎

    中野(四)委員 さらに、機械局長時代の点について伺いたいのですが、一体どのくらい機械局ではダイヤが供出される見通しであつたか。そしてどのくらいの数が集まつたということは、先ほどわからぬとおつしやいましたが、これはやむを得ぬとしても、その後の処分の問題については、あなたが昭和二十年の四月まで就任しておいでになれば、おわかりになると思いますが、概略どのくらい集まつて、これをどのくらい処置したかということについて、御記憶があるかどうか。     〔荒舩委員長代理退席、委員長着席〕
  175. 橋井真

    橋井証人 非常に恐縮でありますけれども、数字についての記憶はないのであります。これは、先ほど申し上げました通り、私の大体そうだつたろうと思います記憶は、一度、これを工具に加工するために組合に渡す、こういう書類を見たような気がするのであります。
  176. 中野四郎

    中野(四)委員 それから、ダイヤ買上げは、証人秘書課長時代、すなわち昭和十九年八月十五日から始まつて、十月二十五日には大体終了したはずであります。しかも目標額の九倍にも達したのですから、これが戦力化については、買上げの趣旨にもありますように、すみやかに処置をしなければならぬと思うのですが、それが遅々として進まず、遂にほとんど工具として航空機や電波機械の製造に役立たなかつたのでありまするが、どういうわけで、せつかくダイヤモンド買上要綱までつくつて、しかも急速に三箇月の間に買上げようとして、一般国民の愛国の情熱が高く燃え上つて、そうして九倍にも達したという段階において、なぜこのダイヤが使われなかつたのでしようか。これには何か相当な裏面にわけがあるか、あるいは、しからずんば、軍需省の怠慢的な傾向があつたのではないかと思うのですが、この点について御存じの点だけを詳細にお述べ願いたい。
  177. 橋井真

    橋井証人 先ほど申し上げました通り、先に、Lうなくなる前に手を打つというところに私は要点があつたのじやないかと思います。私自身は発案をいたしておりませんけれども、実情は、工業用グイヤはある程度ございましたので、それで工業生産をやつてつた、従いまして……。
  178. 中野四郎

    中野(四)委員 ちよつと待つてください。——証人は三時半に大阪に行かれるので、すでに飛行機の席もとつてあるそうですが、実は、きよう伺わなければならぬのは、大事な買上げダイヤ所有権の帰属について、当時の責任官としてのあなかに伺わなければならぬ点が十数点あるのであります。これは、何と申し上げても、当時の軍需省買上げ目的と、そして軍需省がこれを買い上げるについての予算的措置、あるいはその後の処置方法とか、そういうものに対する責任、ひいては金、銀、白金、ダイヤモンドというものの所有権の所属の問題に及ばなければならぬのですが、時間がたいへん切迫しておるというお話でございまするから、私は一応この質問をこの程度で打切つて、さらに証人の都合のいい日をきめていただきまして、大事な問題ですから、伺いたいと思いますが、やはり委員会としても、証人を喚問するには、やはり調査事項の順序があります。従つてあとのからすが先になりというか、大事なところをあなたにはずされてしまつて、違う証人がここへ出て来て、非常に調査のしにくい面がありますから、私の方にも都合があるから、証人の御都合はいつがいいかということを委員長と御相談願つて、きわめて早い時期に、ひとつもう一ぺん御出頭願いたい、こういうことを申し上げて、それでは一時質問を中止いたしておきます。
  179. 内藤隆

    内藤委員長 ちよつと速記をとめて。     〔速記中止〕
  180. 内藤隆

    内藤委員長 速記を始めてください。  それでは、橋井証人に対する尋問は一応この程度にいたしまして、二月二十三日午後一時、さらに再出頭を求めたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  181. 内藤隆

    内藤委員長 御異議なきものと認めます。それでは、さように決しました。  午後は引続いて黒瀬証人より証言を求めることにしまして、二時に開会いたします。  暫時休憩いたします。     午後零時五十一分休憩      ————◇—————     午後二時二十九分開議
  182. 内藤隆

    内藤委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  これより接収解除貴金属及びダイヤモンド関係事件につきまして調査を進めます。  ただちに証人より証言を求むることにいたします。ただいまお見えになつておられる方は、黒瀬勘一さんですか。
  183. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 そうです。
  184. 内藤隆

    内藤委員長 あらかじめ文書をもつて承知の通り、正式に証人として証言を求めることに決定いたしましたから、さよう御了承を願います。  この際証人に申し上げますが、戦時中多数国民諸君より供出されましたダイヤモソド、金、白金等は、平和条約発効と同時に接収解除となりまして、現在日本銀行地下の倉庫に収納され、大蔵省によつて保管されておるのであります。このダイヤモンド収納、保管の経過、処理方法等につきましては、世上大いに疑惑を持ち、関心を抱いている向きもあるのでございまして、これが真相を明らかにすることはきわめて意義のあることと考え、本委員会本件調査に着手した次第であります。証人におかれましては率直なる証言をお願いしておきます。  それでは、ただいまより接収解除貴金属及びダイヤモンド関係事件につきまして証言を求むることにいたします。  証言を求める前に証人に一言申し上げます。昭和二十二年法律第二百二十五号、議院における証人宣誓及び証言等に関する法律によりまして、証人証言を求める場合には、その前に宣誓をさせなければならないことと相なつております。宣誓または証言を拒むことのできるのは、証言が、証人または証人配偶者、四親等内の血族もしくは三親等内の姻族または証人とこれらの親族関係のあつた者、及び証人の後見人または証人の後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項に関するとき、またはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するとき、及び医師歯科医師、薬剤師、薬種商、産婆、弁護士、弁理士弁護人公証人、宗教または祷祀の職にある者またはこれらの職にあつた者が、その職務知つた事実であつて黙秘すべきものについて尋問を受けたときに限られておりまして、それ以外には証言を拒むことはできないことになつております。しかして、証人が正当の理由がなくて宣誓または証言を拒んだときは、一年以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられ、かつ宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは三月以上十年以下の懲役に処せられることとなつておるのであります。一応このことを御承知になつておいていただきたいと思います。  では、法律の定めるところによりまして、証人宣誓を求めます。御起立を願います。  宣誓書の御朗読を願います。     〔証人黒瀬勘一君朗読〕     宣 誓 書   良心に従つて、真実を述べ、何事もかくさず、また何事もつけ加えないことを誓います。
  185. 内藤隆

    内藤委員長 それでは宣誓書署名捺印してください。     〔証人宣誓書署名捺印
  186. 内藤隆

    内藤委員長 これより証言を求めることになりますが、証言証言を求められた範囲を越えないこと、また御発言の際には、その都度委員長の許可を得てなされるようお願いいたします。なお、こちらから質問をしておるときはおかけになつていてよろしゆうございますが、お答えの際は御起立を願います。  証人黒瀬勘一君の簡単な経歴をお述べ願いたいが、特に大蔵省との関係があるようですから、その関係について詳しくひとつ述べてもらいたい。
  187. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 ただいまの御質問でありますが、大正九年に東大を出まして、すぐ大蔵省に採用になり、大正九年の七月専売局に入りました。各地の専売局長をやり、最後本局の煙草事業部長をやりまして、昭和十七年の五月に商工組合中央金庫の理事を拝命しました。これは商工、大蔵大臣両方の任命であります。爾来九年ばかり商工組合中央金庫の理事仕事をやりまして、昭和二十六年の三月、閉鎖機関整理委員会の副委員長になりまして、爾来閉鎖機関整理委員会の副委員長仕事をやりました。昭和二十七年の四月に閉鎖機関整理委員会が解散になりまして今度四つのブロツクにわけて清算を続行することになりまして、私は特殊法人関係、つまり特殊法に基いて設立された法人関係の閉鎖機関特殊清算人を大蔵大臣から命ぜられて、現在に至つている次第であります。
  188. 内藤隆

    内藤委員長 証人が現に担当しております清算事務、特殊法人関係という中に、このダイヤモンド関係の清算事務もあるわけですな。
  189. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 その特殊法人関係は十九機関を担当しておりますが、その中で、交易営団法に基いて設立されました交易営団関係が、ダイヤモンド仕事になつております。
  190. 内藤隆

    内藤委員長 現在清算事務に携わつておられるようですが、その概要と終了の見通し等について述べてくれませんか。
  191. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 清算の現況を申し上げます。これは昭和二十七年十一月末現在の状況であります。まず資産について見ますと、閉鎖日の残高が二十九億五千七百十三万七千円に対しまして現在の残高は四億五千三百二十八万三千円、その率から申しますと、八四%清算が済んでおります。今問題になつておりますダイヤモンド等接収物資を除きますと、主要なるもので債権等の受取勘定で清算が終了しているのが九五%、それから商品等流動資産及び土地建物等固定資産等は、九九%清算が済んでおります。一方債務の方はどうかと申しますと、閉鎖日の残高が四十五億千七百五十八万八千円に対しまして現在債務の残高は十四億九千六百三万六千円、その清算率は六六%となつております。このうち、税金その他優先払いの債務は一〇〇%終了しておりまして、一方債務が四八%しか払つてない、新債務は別にない、こういうことであります。  それから清算の見通しでありますが、二十七年十一月末の残高を基準にいたしまして、これは大体そうやりたいという希望でありますが、二十九年の六月末という見通しを持つております。その場合にその見込みがどうなるかということでありますが、資産換価見込総額が九千四百五十九万七千円、現金が四億七百八十万九千円、清算経費が二千二百五十万円、差引債務弁済充当額が四億七千九百九十万六千円。一方債務の総額は、先ほど申しましたように、十五億五千九百三十六万二千円ということになつておりまして債務の弁済に不足する額が、十億七千九百四十五万六千円、従つて払込済みの出資金の弁済不能額が二億九千二百三十一万二千円、こういうことになりまして、差引債務の弁済不足額は十三億七千百七十六万八千円、こういうことになる見通しでありますが、これは今のダイヤモンドは全然計算外になつております。今のところ問題がああいうふうに変になつておりますので、これは全然計算に入れておりません。
  192. 内藤隆

    内藤委員長 交易営団の清算事務はいつからお始めになつたのですか。
  193. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 これは整理委員会が発足したときでありますから、私はその当時のことはよく存じません。私が入りましたのが二十六年の三月でありますから、それ以前のことは私全然状況を存じません。
  194. 内藤隆

    内藤委員長 お入りになつてからのことは御承知だけれども、その前のことは御存じないということですね。
  195. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 はい。
  196. 内藤隆

    内藤委員長 それで大体二十九年の六月ごろに、ダイヤを除いたものは一切清算できる、こういうことですね。
  197. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 はい。
  198. 内藤隆

    内藤委員長 現在清算事務に携わつておられます職員は、どういう機構か知りませんが、部課長というものがあるだろうと思うが、それはみな旧の交易営団の職員を引継いでそのままやつておられるのですか。
  199. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 現在の清算事務の組織は、ちよつと申し上げますと、特殊法人十九機関に対する閉鎖機関令に基きまして特殊清算をしておりますが、その機構は、部が総務部、業務第一部、第二部の三部、課が各部に三課ありまして、この交易営団の清算事務は、業務第二部の方で交易営団関係しておつたものが清算をしておるようなことでありまして、総人員現在百四十人で、十九機関の清算事務をやつております。
  200. 内藤隆

    内藤委員長 旧来の交易営団の職員をそのまま引継いでやつておるということなんですね。
  201. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 さようでございます。交易営団に関する事務につきましては……。
  202. 内藤隆

    内藤委員長 そこで、交易営団買上げダイヤ並びにこれが接収等についての調査等は、いつがらお始めになりましたか。
  203. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 これは私就任前のことは全然存じないのでありますが、整理委員会就任の後におきましても、私は大体人事とそれから法律室というものを担任しておりまして——委員がそれぞれ担任しておりましたが、副委員長としてはそういう担任でありました。これははつきり記憶しませんが、資産償却というものがありまして、そこの方で交易営団の清算を進行しておつたよう記憶しております。
  204. 内藤隆

    内藤委員長 なお、買上げ数量等は書類で提出を願つてあるのですが、提出さたものに違いありませんか。
  205. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 私の報告を受けておる範囲におきましては、現在までのところあの数字を相当信憑力あるものと推定するよりほかに方法がないのであります。なお数字の確実なる点については、あらゆる資料を今収集しつつあります。もう少し信憑性のあるものをつかみたいということでやらしておりますが、今のところこれは一応の推定数字であるかもしれませんが、あの数字よりほかにしかたがないと私は考えております。
  206. 内藤隆

    内藤委員長 こちらへ提出してあるあの数字について、一応簡単な御説明を願いましようか。
  207. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 申し上げます。買上げ数量の総計が十五万五千八百十六・五八カラツト、金額にして一億七千七百一万六千二百八十一円六十一銭、この中には、御下賜品でありました百二十四カラツト八〇というものを包含しております。右の数量は、営団が閉鎖のときに引継ぎを受けた資料の中で、昭和二十一年四月二十六日現在の調査表によつたものです。関係官庁、それから占領軍等に出しました報告書の中には、本数量、金額がとられておりまして、これはほぼ最終的な数字であろうと思われますが、今、清算事務所といたしましては、当時の帳簿、伝票等、裏づけのある資料に基くものを取出すように資料を調査中でありまして、この中には東京における各百貨店の関係の清算台帳というようなものがあるようでして、それらと対照をしております。軍需次官の通牒によりまして買い上げない——今申し上げたのは次官通牒に基く買上げでありますが、それによらない、別途に買い上げて保有しておつたものが現にあつたようでありまして、それは工業用のダイヤの原石ですが、五千四百十一カラツト七二、それから工具——これは仕掛品も包含しておりますが、工具として四千六百六十四個、こういうものがあります。この工業用の原石は営団の鉱産部というのが所管をし、工具の方は機械金属部が所管をしておつたものでありまして、これは装飾用とは違つたものであります。大体以上の通りであります。
  208. 内藤隆

    内藤委員長 その数字は、最終的には多少の動きはあるが、大体その線で押えられるお見込みですか。
  209. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 今のところ二百三、四十カラツトの違いがあるようです。これはどういうところから来ておるか、それを突きとめるために努力しております。全体から申しますと、それほど大きい数量じやないと考えられますが、なお多少食い違いがあるようです。
  210. 内藤隆

    内藤委員長 そこで、現にこの日本銀行の地下の倉庫に保管してありますダイヤモンド、その他白金等もありますが、特にこのダイヤモンドは、一体交易営団ダイヤモンドであるとお思いになつておられますか。
  211. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 私の結論としましては、あるいは確信と申しますか、交易営団が自己の資金——自己の資金と申しましても、これは借入金によつているようですが、銀行よりの借入金によりまして民間から買い上げたものでありますから、その限りにおいて、当然そのものの所有権交易営団にあるものと考えております。
  212. 内藤隆

    内藤委員長 ただいまの御説明はその資金の関係ですが、法的にはどうですか。
  213. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 法的にも、自己資金を使いまして、自己の——これは一つのりつぱな企業体でありますから、それが自己の資金を使いまして、その資金の出どこはいずれにしても、民間から買い上げたものでありますから、あくまでもこれは清算の対象になるものであり、所有権は当然交易営団にあるものと私は信じております。
  214. 内藤隆

    内藤委員長 そのダイヤだけを一つ例にとりますが、ダイヤ所有権営団だというあなたの根拠は単にその程度ですか。もつと何かありますか。
  215. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 法律的に考えまして、大体今申し上げた通りだと思いますが、そのほかに別に理由は持つておりません。
  216. 内藤隆

    内藤委員長 そこで、そのダイヤを買い上げられたのはもちろん営団であつたと思いますが、それを買い上げるについての買上げ要綱というものがあつたはずですな。
  217. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 それは私は全然タツチしませんし、またあまりよく聞いておりませんが、軍需省の方でそこまでの指示をいたしましたかどうですか。また価格、それから買上げ方法については、一応の記録はございます。大体記録から申しますと、カラツト千五百円くらいの価格を指示しておるようであります。これは聞いてみますると、当時の市場価格をちよつと上まわつた程度だということを聞いております。それから買上げ方法は、各百貨店を使いまして、範囲は全国にわたつておりますが、大体営団が使いましたのは、七大都市の百貨店の窓口を使いました。そのほかに白金等につきましては、信託会社あるいは銀行にやらしたという記録があるようであります。
  218. 内藤隆

    内藤委員長 証人としては、清算事務に携わつておる以前は、その買上げ等にはタツチしていなかつたのだから、清算人の立場においてはそう思つておられるわけですね。  そこで、もしかりにこれが営団所有のものであるとした場合に、これをどういうふうに処理処分しようとお考えになつておられますか。
  219. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 その点でありますが、私の清算人としての立場としましては、あくまでも債権債務その他物資の清算をしまして、債権者には返し、債務のあるものは払つて行かなければならぬ、これが原則であります。今申し上げたように、相当債務が残つております。そこで、もしダイヤ政府の保管から——政府の保管といいますか、政府の占有といいますか、営団に返還されますれば、これはいろいろな方法考えなければなりますまいが、これを換価して債権債務の決済をいたしまして、債権者に余つたものを返すというのが普通の方式なんであります。そういうことでやるのが清算人の当然の法律上の義務だと考えておりますので、従つて政府に対して、現在ダイヤを返還いたしていただきたい、こういうことを要請をいたして連絡中なのであります。これはあくまで所有権に基きましてそういうふうにやつております。
  220. 内藤隆

    内藤委員長 これは政府と申しますか、大蔵省へも何か書類的にやつておられるわけですね。
  221. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 ええ、大蔵大臣にあてまして書類で……。ここにその控えを持つてつておりますが、これは一月十四日付で大蔵大臣にあてまして、私の名前で、その要旨は、今申し上げた所有権交易営団にあり、現在清算、状況は先ほど申しましたような状況であつて清算の完了は一にこの問題が解決しなければできないという見地から、この所有権は私の方にあるということをはつきりうたいまして、これは閉鎖機関令に基いて——これは機関令に相当の規定があるようでありまして、その機関令を出しまして、それで返還をしてもらいたいという要請をいたしたのであります。それに対しまして昨日でありましたか、政府から回答——これは回答をよこしてもらいたいということで、強く要請しておつたんでありますが、昨日それの回答が参りまして、別にこれは申し上げてもさしつかえないと思いますが……。
  222. 内藤隆

    内藤委員長 読んでください。
  223. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 読み上げます。「閉鎖機関交易営団特殊清算人殿、大蔵省管財局長阪田泰二、二十八年一月十六日、接収貴金属等返還請求の回答について、昭和二十八年一月十四日附二七特法閉業二第五七六号をもつて接収貴金属等の返還請求がありましたが、これについてはその公平適正な処理方法及び手続等について目下検討中であり、立法措置を講ずる必要もありますので、近く処理方針が決定するまで返還はできませんから、御了承願います」こういう回答が十六日付で参りました。この内容については、どんなことを政府考えておりますか、全然聞いておりません。
  224. 内藤隆

    内藤委員長 最後に一点聞いておきますが、あなたの証言中にもあつたように、営団の自己資金でそれを買い入れたわけじやないでしような。
  225. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 営団というものは三億の資本金でありまして、その出資は、二億五千万は政府が出資する、公債で出資をしておるようであります。全額払込みになつております。あとの五千万円が、民間の貿易業者とかその他の関係業者が出資をしております。その出資によつて成り立つた一つの企業体、特別法に基く企業体、そういうことでありまして、その運営の資金はもちろん資本金も使いましたし、そのほかに足りないところは、別に資金的に政府の援助を得ておる形跡はないのでありまして、主として正金銀行を使いまして、借入金によつて運営をしておるように私は見ております。現にそういう記録になつております。
  226. 内藤隆

    内藤委員長 これは帳簿に載つておる。
  227. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 ええ。
  228. 内藤隆

    内藤委員長 どれほどですか。
  229. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 私の聞いておるところでは、約二十億を正金銀行から借りていまして、今正金銀行に対する債務は約十五億くらい残つておるかと思います。
  230. 内藤隆

    内藤委員長 委員長の質問はこの程度終ります。  それでは質問の通告がありまするから、順次これを許します。田万廣文君。
  231. 田万廣文

    ○田万委員 二、三お尋ねいたします。あなたがこの営団の清算人に御就任なさるようなことになりましたのは、どういう関係で清算人になられたのですか。それをまずお尋ねいたしたいと思います。
  232. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 別にこれということは私もないと思います。ただ私は、先ほど申しましたように、大蔵省に長い関係を持つておりまして、池田大臣から、整理委員会の方の清算人の副委員長としてやつてくれないか、こういうお話でありましたので、いろいろ考えた結果、私もお引受をしただけであります。
  233. 田万廣文

    ○田万委員 あなたを清算人に御推薦になつたのは、池田前大蔵大臣であつたわけですか。
  234. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 そうと思います。次官のところへ呼ばれたと思いますが、当時今の次官は銀行局長でありまして、私は商工組合中央金庫におりましたので、中央金庫の任期が満了しないで、まだ一年くらいあつたのでありますが、今の舟山次官から呼ばれまして、そういう大臣の話だということで……。
  235. 田万廣文

    ○田万委員 今までいろいろ清算事務なんかに御関係なさつた御経験があつてお宅もこれを引受けられるようになつたわけですか。どういう心境でこれを引受けたのですか。
  236. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 私は、別に清算事務に経験があるというので、引受けたわけでもありませんが、まず大蔵省からそういうお話があり、中金の方も任期が近くなり、大分めんどうな仕事のようですけれども、まあやろうということで引受けたわけであります。別に他意はない次第でございます。
  237. 田万廣文

    ○田万委員 お宅は就任になられたときに、ダイヤの問題について、いろいろ清算関係で内部で話が出たことがありますか、あるとすればその際どういう内容の話が清算事務として行われたか、ちよつとお漏らし願いたいと思います。その年月日もわかりますか。
  238. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 年月日は記憶いたしませんが、副委員長になりましてから、私の担任事務ではなかつたのですけれども、全般のこととして大きな一つの問題でありますので、担任を呼びまして、情勢はどうなつているんだと聞いた記憶があります。そのときに、当時まだ進駐軍の占領中でありまして、委員会としては、進駐軍に対して再三にわたつて接収ダイヤの返還要求を向うの係官に要求をしておるが、まだちよつと待てということでなかなか返還をしてくれない、こういう話を一、二回聞いたことがあります。その後は、これに対していろいろ新聞の記事が出たりしたことは承知しておりますが、別にかわつたことも聞いておりませんので、先ほど申しましたように、清算人としては、職務上これは早く整理しなければならぬということで、大蔵省に要請をしたような次第であります。
  239. 田万廣文

    ○田万委員 お宅は、このダイヤに関して御調査なさつたことはもちろんあると思うのでありますが、営団が百貨店その他で民間のダイヤを収集なさつた、その厳格な数量所有権を主張しておられるところの、今日の日銀の地下に眠つておるダイヤ数量、その総数量の点において、同一の数量であるか、あるいは現在保管されておるダイヤが、営団調査した数量よりも下まわつておるかという点について、もちろん御研究があつたことと思いますが、その点についてのお話をひとつ伺いたい。
  240. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 数量につきましては、先ほどわれわれのところの帳簿に載つておりますことを申し上げ、またこれによつて進駐軍に対する請求なり、政府に対する請求をしているわけでありますが、現実の問題といたしましては、日本銀行の地下室ということは聞いておりますが、私は現物を見たこともありませんし、確かめたこともありませんし、私どもの職員も、現物を見あるいは確かめた者は一人もありません。その点については、全然かれこれ申し上げることは、実はできないような実情なんであります。
  241. 田万廣文

    ○田万委員 少くとも今のお話を聞いていると、所有権を主張なさつているようですから、主張するとすれば、どれだけの数量があるということも、大体下調査なさつていると思う。現在残つているダイヤの量と、実際民間から収集したところのダイヤの総量というものとの間に、差ができているかいなやという問題は、清算人としては相当関心を持たるべき問題だと思いますが、これについて御研究にならなかつたのではなかろうかと思うが、その点の調査まではなさつておられないわけですか、重ねてひとつ、くどいようですが、お伺いをいたします。
  242. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 先ほど申しましたように、いろいろの資料で研究調査をまだ続行中であります。この現物は政府の保管、管理になつておりますので、私どもの方でどういうふうにも手をつけることができないのでありますから、占有権を移していただいて、初めてその方の仕事が進行できると存ずるのであります。われわれとしては、それ以上帳簿上の数量の確認調査ということは、今申し上げたように盛んにやつておりますが、そういう状態になつております。
  243. 田万廣文

    ○田万委員 今までわかつたところで、清算事務が進行している限度においてどうなつているか、それを現実にあなたが清算なさつているのですから、おわかりだと思いますが、さしつかえない限度で言つていただきたい。
  244. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 それは先ほど委員長の御質問に対して申し上げました通り、数量その他それで御了承願いたいと思います。
  245. 田万廣文

    ○田万委員 どうも目下調査中であるという御回答で逃げておられると思うのですが、すでにもう相当期間経過しているのですから、ある程度清算事務も進んでいると思う。今ちよつと承ると、相当清算の関係も終了しているというお話であります。従つてダイヤモンドの金額がどうなるか、とにかく計算外として十三億七千万円不足している、マイナスだという話があつた。これは私聞き間違いがなければそういう話があつたと思うのですが、そこまで調査しているとすれば、清算人として、実質的にいやしくも所有権を主張なされる立場にあるとすれば、どのくらいダイヤ営団が持つていなければならないか、どれだけ日銀にダイヤが保管されていなければならないかということを、計算されていなければならないと思う。私もいろいろ清算事務に関係したことがありますが、清算人としてはそこまでの調査はなさつているはずである。調査中であるとしても、現在までわかつている程度のものをおつしやつていただきたいということであつて、全然答弁できない筋合いのものではないと思う。従つて、現在までの進行状態におけるダイヤに関する数量をお示し願いたい。
  246. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 それは今申し上げたように、委員長に申し上げた通りであります。
  247. 田万廣文

    ○田万委員 もう一度おつしやつていただきたい。
  248. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 もう一度申し上げます。装飾用ダイヤ数量が十五万一千八百八・二二カラツトカラツト不明が二十個あるようであります。それから帳簿価格でありますが、金額にして一億八千三十五万七千七百三十八円四十七銭。次はダイヤモンド工具、これが一万三千三百六個、金額で九百九十三万三千四百二十二円二十二銭。それから工業用のダイヤモンドが五千四百十一カラツト七二、金額六十九万三千六百八十九円六十九銭、その他白金、金、銀もありますが、ダイヤはこれだけであります。
  249. 田万廣文

    ○田万委員 委員長からひとつ証人に要求していただきたいと思うのです。私のお尋ねしておるのは、総量の関係カラツトとの関係です。ダイヤカラツト関係が、お宅の清算事務においてはどれだけなければならない帳簿上の記載になつているか。同一であればけつこうであるが、実質的にはこれしかない、その差があるとすれば、その差はどこから来ておるかということを承りたいのであつて、現在おわかりにならなければ後日御調査なさつて——清算人としては当然その職務範囲と思いますから、その調査の結果を書類にして、当委員会に御提出相なりたいと思いますが、いかがですか。
  250. 内藤隆

    内藤委員長 田万君、今出ておる数字じやなく、最終的なものでいいですか。
  251. 田万廣文

    ○田万委員 最終的なものでけつこうです。
  252. 内藤隆

    内藤委員長 黒瀬君どうですか、最終的なものでいいというのですが。
  253. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 今のお話でありますが、当然私としてやらなければならないことでありますので、政府に対してこちらに占有を移してもらいたいということを要求しておるわけですが、政府の保管になつておりますので……。これは政府に要求して返還ができれば、私の手元ですつかり鑑定をし、数量も私の方の帳簿とはたして合つているかどうかということは全部確認できるのです。今のところそういうことで大蔵省に返還要求をしましたが、しばらく待てということでありますから、私の方としてもそれに立ち入つて、日本銀行に張り込んで、政府の占有下にあるものをやるということを政府が許しますかどうですか、まだそこまでつつ込んでおりませんですが……。
  254. 内藤隆

    内藤委員長 田万君、政府の引渡しを受けなければ最終的にきまらぬ、こういうわけなのです。大体の数量は今ここへ提出してある数だと思いますが、大体では御満足行かぬようですが、しかしそういう機会が参りますれば、当然そういう数字が出て来るものだと考えますから、その節でよろしゆうございますか。
  255. 田万廣文

    ○田万委員 けつこうです。それで一番大事なポイントですが、先ほど委員長の質問に対して、この日銀にあるダイヤ営団のものである、それはなぜそうなるかといえば、自己資金で買い上げた品物であるから、営団のものであるというお答えがあつたように思うのですが、その自己資金で買つたというだけで、営団の方は自分所有物であるという主張をなさるわけですか。委員長が先ほどお尋ねになつたが、はつきりした御答弁がなかつたのですが、それ以外に、自己の所有であるということを強く主張なさる理由、法律的な根拠がもしあるとすれば、いま一応承りたい。
  256. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 これは私もいろいろ法律的根拠その他を研究いたしたのでありますけれども、それ以外に別に営団のものであると主張する根拠は、今のところ見当らないようであります。
  257. 中野四郎

    中野(四)委員 ちよつと関連して。今、証人営団のものであるということを前提される法的根拠が、きわめて薄弱であるにもかかわらず、あなたは委員長の質問のときに、あえて営団のものであるということをはつきり言い切つておるのですから、それに対するところの憲法上あるいは民法上、商法上の法律的見解に基いて、営団のものであるということを明確にする必要がある。単なる自分の感覚で、営団のものであるというような軽卒な言葉をもつて委員会証言するということは、私はけしからぬと思う。営団のものであるとあなたが断定するならば、あなたはもつと民法上、商法上、憲法上の見地から、これを明らかにする責任があると思う。あいまいなことで、この委員会証言をば終ろうとすることはよくないと思いますから、証人がもしそういうふうな法的根拠を知らないとするならば、もう少し語尾に気をつけていただきたいと思うのです。
  258. 内藤隆

    内藤委員長 どうでしよう、ただいまの中野君の御発言に対して。
  259. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 大分おしかりをこうむつたんですが……。
  260. 中野四郎

    中野(四)委員 おしかりではないのです。大事な点です。
  261. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 私の考えている結論は今申し上げた通りであります。何かほかに誤謬がございますかもしれませんが、私は、当時営団の行政的な処置によりまして、営団が、命令を受けまして民間から買い入れて民間に対してはすつかりその金を払つた。その払つた金がここに出ております。私はそういうように思います。もし研究が足りないとするならば、もう少し研究しまして……。
  262. 中野四郎

    中野(四)委員 政府の命令によつて、公団の清算人としてその責任者でいらつしやるあなたが、単なる自分の感覚から割出したる結論によつて営団所有物だということを断定してかかるような先入観をもつてすべてのものを律せられては、本日証人して来ていただいた意味が徹底しない。従つてあなたが、自分の感覚で営団のものだと先ほど断定なさつたんですから、単なる自分調査資料だけで——あなたは清算人として権威ある証言をしなければならぬのですから、それ以外のものはないのですか。単にあなたの考えだけで営団のものだということを、先ほどのように断定されたのかどうか、一ぺん伺つておきたいと思います。関連して大事な問題でありますから伺つておきます。
  263. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 それに関連しまして、それでは大蔵大臣に対して要請をしました要請書を読み上げさしていただきます。  「閉鎖機関交易営団所有の被接収貴金属ダイヤモンド白金等の返還請求の件、閉鎖機関交易営団が予ねて所有していた貴金属、ダイヤモンド白金等(明細別紙被接収物資数量調査表)は昭和二十年十月より同二十七年三月まで、連合軍総司令部民間財産管理局の管理の下に置かれていた。交易営団昭和二十二年二月閉鎖機関に指定され爾来鋭意現務の急速なる結了に意をそそぎ、公正なる清算を実施して来たが、これら被接収物資は本機関の最大の所有財産なるにつき、これが速やかになる返還を得たきため、占領軍管理当時屡々諸報告書を提出するとともに、接収解除に関し早急に適切な措置を講ぜらるるよう要請したが、何らの解決も見ず今日に至つている。しかるに交易営団の清算は着々と進捗を示し、これら被接収物資返還の件及び掠奪物資の求償関係を除いては債権の九六%、流動資産及び固定資産九九%が清算済であり、なお少額の債権の回収及び債務の返済を残すのみとなつて清算の最終段階に達しつつあるが、被接収物資の返還なくしては単に枝葉の清算を終えるに等しく、公正妥当なる清算は一に本物件の整理にかかつており、本物件を除いては今後その清算計画の立案すら全く不可能であり」……。
  264. 田万廣文

    ○田万委員 お読み中ですが、今の営団所有物であるという点の根拠を、その要求書によつてお示しになつた点だけ読んでいただけばいい。ただいま聞いておると、大蔵省に対する要求書は、頭から所有であるということを前提にお書きになつておる。しからば、その所有者であるということは、いかなる法的根拠によつて所有であるということを主張なさつておるのか。それが大蔵省の要求書類のうちで明記されてあるかどうか。あれば読んでいただいてけつこうです。なければないでいい。
  265. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 所有であるということの根拠は、別にこの書類には出ておりません。
  266. 中野四郎

    中野(四)委員 関連して。ただいまの証人のお読みになつたものは、後ほど物的証拠もあげて一々これを反駁する用意を持つておる。しかしながら、ただいまあなたが営団のものであるという前提のもとにお話をなさいましたから、これについて伺いますが、あなたはダイヤ買上げ要綱というものを知つておいでになるかどうか、明確に自分がのみ込んでおるかどうかということを、まず伺いたいと思うのです。
  267. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 ダイヤ買上げ要綱というものは、今私手元に持つておりません。当時の事情を……(明禮委員「手元じやない、知つておるか」と呼ぶ)知つておりません。
  268. 中野四郎

    中野(四)委員 この要綱をまず研究するということが、所有権を確定する根拠なんです。この要綱を知らないでおつて、あなたは一体清算人としての資格があるのですか。しかも清算人たる者が、ダイヤ所有の根拠になるところのダイヤ買上げ要綱も知らないでおつて、単なる営団のものであるという前提のもとに証言なさる考え方が、私は根本的に違うと思うのです。だからあなたが、まず第一番に清算人としての資格を備えんとするならば、ダイヤ買上げ要綱をまず自分が十二分にのみ込んで、そうして国会における証言をなさるのがあたりまえだと思うのです。私は、清算人としての証言がはなはだ怠慢だと思いますから、一言申し上げたのですが、私は後ほど、あなたのお読みなさつた書類に対して、一一物的証拠をあげて、営団のものであるというあなたの感覚に対して反問するつもりですけれども要綱というものを知らないでおつて、そうして端的に営団のものだという断定のもとに、政府に選ばれたところの清算人としてのあなたが、そういう事件に関与するということは、はなはだけしからぬと思う。もう少し公平妥当な見地に立つて処分された方がいいのです。私は、後ほど質問しますから、あえてこれ以上申し上げませんが、これは田万君の質問中大事な要点になりますから、一応途中で質問したのですが、どうぞ田万君お進めくだすつてけつこうです。
  269. 田万廣文

    ○田万委員 ただいまお読上げになりつつあつた大蔵省に対する営団の要求書ですが、それに対して阪田という人から政府側の回答をいただいておる。その回答の文によつて所有権がすでに営団にあるというようなお考えを持つておられますか。
  270. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 この返還はできませんから、こういうことでありますから、私はこの裏づけは政府が持つておる…(中野委員「あるわけないじやないか。国会で立法措置をきめようというのだ。どこに断定する根拠があるのだ。国会の立法措置もなくて、どこに所有権が主張できるか」と呼ぶ)
  271. 内藤隆

    内藤委員長 静粛に願います。もう一度言つてください。
  272. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 最後のところは、近く処理方針が決定するまで返還はできません、こういうことであります。
  273. 田万廣文

    ○田万委員 清算人としてのあなたの感覚を聞いておきたいのですが、政府からの営団に対する回答書の文面に対して、問題のダイヤ営団所有権ありということを、政府が確認した立場において回答しておるというふうにあなたは考えますか。あるいはそうでないというふうにお考えになりますか。これをはつきり承つておきたいと思います。これは大事なことだと思います。またあなたの御感覚で、その回答書によつて営団所有物であるということを政府が確認したというお考えを持つおれば、われわれはさらに追究して行かなければならない問題がいろいろあるのです。従つて、あなたのその点に対するお答えは、重大な問題ですから、よく間違いのない冷静なお答えをいただきたいと思います。
  274. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 私は、この回答書によつて政府営団所有物であることを確認したということを申し上げることは、差控えたいと思います。
  275. 田万廣文

    ○田万委員 さらに一歩を進めてお尋ねしたい。所有権についてはあながち認めたものとは思わないという、反対の意思表示をなさつたわけですか。
  276. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 私の今の心境は先ほど申しました通りでありますが、政府はどういう処置をされるか、これは政府のお考えでありまして、私の知るところではありませんが、私としては先ほど申し上げている通りであります。所有権交易営団にある、従つてこれが返還されなければ——私は認めることもできぬし、清算も進行しないということを言つておるのです。
  277. 田万廣文

    ○田万委員 その政府からの回答書の内容は、立法措置というものだつたように今お読み上げになりましたね。現在の憲法下において財産権は保護されておる、何人も法律的措置なくしては財産権を侵されるということはあり得ないのですが、この所有権の問題は、あなたが営団所有であるという確信ある態度を持つておるとするならば、立法的措置といつても、あなたの方では、これに対して異議をさしはさんで、そこに打つ手を考えておられるかどうか、これをひとつさらに聞いておきたい。
  278. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 ここにはつきり立法措置を講ぜられということが出ておりまするので、私としてはその立法措置の内容をよく見まして、それに対して意見があれば、相当の筋に私の意見を申し上げるつもりでおります。
  279. 田万廣文

    ○田万委員 所有権の問題をめぐつて大きな渦巻が起つているわけですが、政府においてこのダイヤ所有権があるとかりに考えられた場合に、あなたの方といたしましては、対大蔵省の関係で国を相手にして訴訟をやるくらいの元気がありますか。
  280. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 私としては今のところそこまで別に考えておりませんが、事態の進展によりましては、あるいはそういう措置をとらなければならぬことになるかと思います。
  281. 田万廣文

    ○田万委員 事態の推移いかんと言つても、しからばどういう事態が起きた場合に事件の提訴をやるつもりですか。軽々しく言う発言ではないと思う。いかなる事態が起きた場合に、大蔵省、国を相手にして営団事件の提訴をやることになるのか、それを伺つておきたい。
  282. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 それは立法措置の内容が出て来ないと申し上げられないと思いますが、薄々何かそういう措置をということ——まだ具体的に連絡は全然来ておりませんから、内容は全然承知しておりません。
  283. 田万廣文

    ○田万委員 薄々聞いておる……。
  284. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 ここへ出ておる立法措置の内容がわからない。だからそれには憲法違反の問題があるいは起らないとも限らないし、あるいはいろいろそこに法律問題が起らぬとも限らないのです。
  285. 田万廣文

    ○田万委員 もう一点。中野君の質問がなかなか多いらしいので、私は譲ることにいたしますが、とにかくこういうような特殊な意味のあるダイヤ所有権の帰属問題については、容易に営団が自己の所有であるということを答弁なさることは、私は危険であろうと思う。その危険をあえて冒してまでも、営団所有であると強く主張されるところにも、また私どもといたしましては幾多の疑問を抱かざるを得ないのであります。問題の推移がいかように展開するか、予断を許しませんが、営団に少くとも所有権があるという立場をどこまでもあなたがとられるとすれば、私どもといたしましては、これに対して、断固としてその所有権の帰属については、法律的な解釈を今後進めて行かなければならぬ立場にあるわけであります。その所有権営団にあるということをあなたが単に言われるのではなくて、あなたの先ほどの言葉を聞くと、だれかについて研究したということを言われたのですが、その研究せられた方は専門の法律家であろうと思うが、どなたでございますか。
  286. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 実はこの問題につきまして、清算人の義務上の問題が起きて参りまして、私どもの嘱託の弁護士——中島広道、小田久蔵、岩城、金子という人にいろいろ研究していただいたのであります。この文書の内容についてもいろいろ研究してもらいました。
  287. 内藤隆

    内藤委員長 それは営団の顧問弁護士ですか。
  288. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 いずれも私どもの方の清算の顧問弁護士です。
  289. 田万廣文

    ○田万委員 現在日銀に保管されておるダイヤは、先ほどのお話によると、計算外として十九億七千何百万円という御証言があつたが、間違いありませんか。
  290. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 これはダイヤは全然計算に入つておりません。
  291. 田万廣文

    ○田万委員 そのダイヤをいかほどに金額としたら現在見積つておられるわけですか。
  292. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 現物を見たこともないし、鑑定したこともございませんから、現在どれほどに見積つていいか、全然見当がつかぬような状態であります。
  293. 田万廣文

    ○田万委員 大体の数量なりはわかつておると思うのですが、清算人としては大体の価格もおわかりでないですか。
  294. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 私はどうも貴金属の現在の価値その他については一向不案内でありまして、これはやはりその方の専門家を委嘱しまして鑑定をさせなければ、価値その他についてはわかりません。
  295. 田万廣文

    ○田万委員 現在あなたの感覚でわかりませんか。
  296. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 わかりません。
  297. 田万廣文

    ○田万委員 全然わかりませんか。
  298. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 全然わかりません。
  299. 内藤隆

  300. 中野四郎

    中野(四)委員 先ほどから横から口を出してははなはだ悪いと思つたのですが、しかしながら本日証人に出られた黒瀬証人は、初めから営団のものだという先入観のもとに答弁をしておられるので、私はこれに対して一つ一つ反証をあげて、あなたにお尋ねしたいと思うのです。しかしそれに先立つて一つお伺いしたいのは、買上げダイヤモンド数量について、十三国会において、委員長から交易営団の清算人に対して、営団から引継いだ書類によつて、各百貨店等において買い上げられたるダイヤ数量報告するよう照会をしましたのに対しまして、あなたの方の調査表を出しておられます。しかも、その数量を証明するに足るべき証拠となるものを添付するよう照会をいたしましたが、これが証拠はない。やむなく私の方ではいろいろと手だてを講じたのですが、一体あなたの方で第一番に報告されました数量の根拠はどこにありましたか、これをまず伺いたいと思うのです。
  301. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 一五五八一六・五八という数量は、先ほど申し上げましたように、交易営団から閉鎖機関になりまして清算で引継ぎを受けました資料のうちで、昭和二十一年四月二十六日現在における調査表によつたものでありまして、引継ぎの調査表を根拠にしてその数量が出ております。
  302. 中野四郎

    中野(四)委員 その際、この数量に対してどうも納得の行かぬものがあるから、私の方で各百貨店等を調べる手配をいたした結果、あなたの方からさらにまたあらためて数字を直して来たのは、どういう根拠によるものですか。あなたの方にそういう証拠書類があるならば、国会なり大蔵省、各方面へ出す書類は、その根拠によらなければならぬにかかわらず、あなたの方からあらためて国会の方に訂正して来たのはどういうわけですか、またどういう根拠によつて訂正して来たのですか、これを伺いたい。
  303. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 実は今申し上げたように、台帳というふうな的確な資料に乏しいのでありまして、それがためにこちらでも、百貨店の関係も調べておりますし、帳簿とか伝票とかいろいろ調べておりますが、その資料によつて調べて、これは暫定的の報告ということを御了解を得まして、一応の御報告をしておるはずであります。私はそういうふうに記憶しております。
  304. 中野四郎

    中野(四)委員 暫定的とおつしやいますけれども、こちらの方であなたの方に調べてくれといつたときには、それを裏づけるところの物的証拠がないというので、従つて私の方では百貨店に書類を求めた。ところが全国の百貨店から続々とその書類が出て来た。清算人としては当然こういうようなものは収集しておいて、そして国会なり大蔵省から要求があつた場合には、正確な数字を出すのがあたりまえじやありませんか。暫定的という言葉によつて逃げるというのは、私はけしからぬと思う。あなたがもし正確なる清算人でありりつぱな清算人であるならば、いわんやこのダイヤの問題は天下の耳目を聳動しておる問題だから、全国からあらゆる書類を集めるという責任があなたにあるはずなんです。なぜこれをなさらなつたか。国会が調査を始めるから、あわ食つてそういうものを集めて、そして新たに訂正して来るという気持が私にはわかりません。従つて暫定的というが、どこからどこまでが暫定的なんですか。
  305. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 今まだしきりに調査中でありまして、なかなか調査が進行しませんし、係の人間も三人くらいしかおりませんので、実は困つておるようなわけであります。ダイヤの方は一番調査が遅れておるような状態になつておるのであります。
  306. 中野四郎

    中野(四)委員 あなたの証言と大分食い違う事実があるのです。すなわち、すでに保管中の全帳簿を基礎として新しい数字を出したあなたの方の帳簿が、昨年の八月の中旬に全部倉庫において発見せられたということを、あなたのところのある係員が言つておる。名前を申し上げてもいい。根本係員というのが言つておる。この現在の数量報告は、当然そのものの分を出さなければならぬのであります。その結果総量においては、東京においても千五百七十四カラツト違つておる。現在の価格に換算しましても、十五万円という——今はダイヤが最高三十五万円です。そうして悪いものでも二十二万円ですが、かりに一番悪いダイヤとしまして、十五万円としましても、二億四千万円近く違つておるのです。一体あなたの方にはそういう書類がほんとうにないのですか。現にあなたの方で、そういう証言をしておる人がおる。私は、あなたの方の人間で、もし不正事件を働こうという者があつたとするならば、こういうものを隠蔽するために、次々とこの数字をかえて来るという疑いを持たれるわけなんです。その証拠書類があなたのところにないわけはないと思います。この係員の証言とあなたの証言とは食い違いがありますが、どういうわけですか、伺いたい。
  307. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 私は、今の係員のお話は聞いておりませんで、今初めてお聞きする次第ですが、その食い違いの理由は私にもわかりません。
  308. 中野四郎

    中野(四)委員 それでは事を少しこまかくして伺いましよう。そうすると、あなたの方で、これがあつたかないかということがおわかりになると思いますから——まず第一に、買上げ数量についてお尋ねをしますが、第一に、名古屋における買上げの総数量を、証人は清算人として一万百六十三カラツトと本委員会報告をしておられます。しかるに証人が大蔵省に報告をした文書の中には、一万三百四十八カラツトとなつておる。この差が百八十五カラツトあるのですが、どつちがほんとうの数ですか。しかもこのものは、二十年十月十八日、東京三井において魔法びんの中に入れて接収されたと言つておりますが、これが真実か、どうかこの点をまず第一に伺いたいと思うのです。
  309. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 どうも今のお話の点につきましては、私よく調べがついておりませんが、後日調査をしましてお答えいたします。
  310. 中野四郎

    中野(四)委員 後日調査せんでもいいのです。あなたの方でお出しになつた書類は、この通り証拠書類があるのです。この書類の中で、私らが探してみますと、明らかに黒瀬清算人から出しておいでになるものがあるのだから、あなたが知らぬわけはない。たとえば、証人は二十一年二月十五日、名古屋の帝銀から三千四百十七カラツトを接収せられたと、大蔵省に対しても、本委員会に対しても報告をしておるのです。これだけの数量は名古屋になかつたはずであります。すなわち名古屋における買上げ数量一万百六十三カラツトと照合すると、三千六百二カラツトなんであつて、この数量買上げ数量報告間違いがあるのか、あるいは接収数量報告間違いがあるのか、それともほかから名古屋帝銀に移動したものがあるのか、そのどつちかでなくちやならぬと思うのですが、一体こういうような数量報告の誤差というものは、どういうところから生れて来るのでしようか。これはあなたの方で報告なさつたものなんですが、その証拠書類をことごとく翻訳して、こちらに持つておりますけれども、あなたがお出しになつたものでありますから、こういう誤差はどういうところから生れて来たかということは、御承知でなければならぬはずだと思うのです。この点について、証人証言を伺いたいと思います。  なお、ちよつとついでですが、名古屋の帝銀に移動したものがあるとするならば、どこから何カラツト何年の何月持つて来たか、こういうようなことは証人としては御証言を願わなければならぬ問題ですから、これもつけ加えてお願いを申し上げます。
  311. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 どうもただいまの御質問に対しましては、私よくお答えすることがこの場でできませんので、後刻文書をもつて事務局の方にお答えいたしたいと思います。
  312. 中野四郎

    中野(四)委員 どうも驚き入つた清算人です。委員会に提出なさつた書類は、一体清算人として決裁をしておるのですか、あるいはしていないのですか。ただあなたは、こういうような書類が出て来ると盲判を押すだけであつて、清算人としてほんとうの職を尽していらつしやるかどうかということを私らは疑うのです。すべてのものを決裁していらつしやれば、御存じないはずはない。このダイヤの問題だけは、先ほども申し上げたように、相当日本中の耳目を聳動し、特にアメリカでもこのことについては相当の関心を払つておるはずでありますから、あなたがこれを御存じないというはずはないのです。だから委員会に御提出になる書類は、一体あなたが決裁をするのですか、しないのですか、これをまず伺いましよう。
  313. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 決裁は全部いたしておりますが、こまかい数字の点を一々見ることもできません場合もありますので、今のお話の点は、後日調べましてお答えするようにいたします。
  314. 中野四郎

    中野(四)委員 これは困つた証人です。それではもう一点伺いますが、接収をされたダイヤは、全部各百貨店等の買上品なんですか。証人からの報告によると、二十一年の二月十九日、大阪帝銀の西支店から三千七百六十三カラツトを接収されたと報告しておりますが、このダイヤは一体一般の買上品ですか、どうなんですか……。
  315. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 その辺のことも、よく調べてみませんとわかりませんのですが……。
  316. 中野四郎

    中野(四)委員 そうすると、あなたは、今まで決裁はしておるけれども、内容はわからぬ、こういう意味でございましようか。それとも、今日は忘れておるが、決裁したものは決裁したんだから、営団へ帰ればこの点は明らかになる、こういうふうにおつしやるのでしようか。いかがでありますか。
  317. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 今記憶に一時残つておりません。あちらに帰りますればわかる、それで後刻お答えをしたい、こう申し上げたわけであります。
  318. 中野四郎

    中野(四)委員 こういう重大な数字について、あなたがきようの証人としておいでになるについて、大体の参考資料を持つて来ぬということは、清算人として非常に私は怠慢だと思う。だからこそ、一番最初におつしやつたように、営団のものだと言う。まるであなたは営団のまわし者じやありませんか。政府から任命されたところの清算人が、公平無視な見地に立つてこれを処理するならともかくも、営団のものという先入感のもとに、しかもこれだけの証言をせられたとするならば、これに対する物的証拠を明らかにし、法的根拠を明らかにしてこそ、初めて営団のものだということが断定できるのです。にもかかわらず、営団のものだという重大な発言をするということは、軽卒もはなはだしいと思いますが、あなたはどうお考えになりますか。
  319. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 私は、先ほどから申し上げておるように、そういうことによつて、大蔵省にも連絡をしておるという次第であります。
  320. 中野四郎

    中野(四)委員 私は、このようなうかつな清算人が、重大なる交易営団の清算人として就任するということは、まつたく不可解だと思うのです。これは国会の権威にかけても、大蔵大臣にわれわれから進言して、すみやかに罷免した方が私は国家のためだと思うのです。特に私が先ほどの田万委員の質問の続きとして伺いたいのは、あなたは先ほど営団のものだとおつしやいましたが、いわゆる接収という言葉です。連合軍が日本に進駐して、そうして日本国内にあるところの金、銀、白金、ダイヤモンド等の貴石をば接収をいたしましたが、この接収という字句をどういうふうに解釈しておられますか。
  321. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 接収ということは、もう少し研究しないとわかりません。法律的にどういうふうに申し上げていいか……。
  322. 中野四郎

    中野(四)委員 あなたが接収という理由もよく理解せずして、これを営団のものと断定するところに根本的な誤りがあると私は言うのです。接収ということは、今後の調査過程を経なければ明確にはわからないが、今日の段階では、陸戦法規によりましては、これを没収と解釈してあります。ただ日本の場合においては、太平洋地域におけるところの日本の占領状態下における接収というものは、どういうふうに取扱われておるか、このことが明確でなければ、営団のものだとか、あるいは中物のものだということは言えないはずでありますが、一体その点についてのあなたの見解はどうであるかということを明らかにできませんか。
  323. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 もう少し研究をしてみないと、申し上げられません。
  324. 中野四郎

    中野(四)委員 何らの法的根拠もなく、しかも調査過程においてはどこに根拠もないものが、営団のものだというような言葉を発せられることは、われわれはまつたく不届き千万だと思う。しかしながらもう一つ私が立場を深く入れて、あなたは先ほど交易営団のものだとおつしやいましたが、ダイヤモンド買上げ当時における中央物資活用協会、いわゆる交易営団代行機関であつた中央物資活用協会交易営団との関係、あるいはあなたが今日この問題にタツチされまして、交易営団中央物資活用協会というものが、どういう立場に置かれておるかということを、明確にしていただきたい。
  325. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 交易営団中央物資活用協会というものは、直接何も関係はないと私は思います。活用協会は活用協会で、どういうことであつたか私は詳しいことは存じませんが、買上げの事務をやつたようであります。交易営団とはどういう関係がありますか、私は研究しておりません。
  326. 中野四郎

    中野(四)委員 恐れ入つたあなたの言葉です。だからあなたが交易営団のものだと断定するところに、なお間違いがある。ダイヤモンドを買い上げるときには、交易営団は各七箇所の出張所に対しまして、それぞれ買上げを行わせました。しかしながらそれ以外の全国の買上げは、中央物資活用協会の前身である戦時物資活用協会をして代行せしめた。従つて交易営団中央物資活用協会は、所有権という問題になれば、当然同一過程を踏むものであります。だから私はあなたに伺つておるのですが、あなたはこの軍需次官令によるダイヤモンド買上げ要綱というものを御存じありませんか。
  327. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 読んだ記憶はありますが、今ここに資料も持つて来ておりませんし、その内容はよく記憶しておりません。
  328. 中野四郎

    中野(四)委員 これじやまるつきり証言にならないのです。それでは立場をかえてもう一つ伺いますが、あなたが清算人として清算事務に携わつておられるうち、買い上げましたものは、金、銀、白金、ダイヤモンドであります。特にダイヤモンドというものは、買上げ過程におきましては、ダイヤモンドを裸で持つて来る人はないといわれております。この点は先日の松屋の本店長の証言によつても明らかであります。すなわちダイヤモンドを売ろうとする者は、装飾用でありますから、指環、首飾りあるいは帯どめ、こういうようなものに付属したものを一緒に持つて参ります。その中にはかの宝石があるはずであります。すなわちダイヤにあらず、金にあらず、銀にあらず、白金にあらざる宝石が相当数あつたはずであります。これは交易営団が買い上げておるのでありますが、大蔵省が国会に報告したものを見ますと、この宝石が一点も載つておりません。一体交易営団は、買い上げたこの天下の宝石をば、どこへどういうふうに処分したとおぼしめすか、この点について伺いたい。
  329. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 その中に宝石があつた一部について、先日関東財務局から呼出しがありまして返還を受けました。ごくわずかの、二百数十個の宝石でありまして、私は立ち会つて受取りまして、私どもに持つて来まして、確実なところに保管をしております。
  330. 中野四郎

    中野(四)委員 あなたが受取つて来られましたその二百数十個の宝石と、あなたが御報告になりました宝石の数とが合致しますかどうか。
  331. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 それは今受取りましただけで、合致するかどうかについては私はまだチエツクをいたしておりません。
  332. 中野四郎

    中野(四)委員 あなたは、ここに私が持つておりますこの全部の証拠書類をば、ことごとく大蔵省にお渡しになつた覚えはあるのですかないのですか。こういうふうに英文にしてお渡しになつたものは御存じですかどうか。
  333. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 実は私戸だなの中に入れてあります。
  334. 中野四郎

    中野(四)委員 ありとするなれば、今全国から集まりました宝石の数と二百数十個とが合うか合わぬかということはすぐわかると思う。どうぞお調べくだすつてけつこうです。
  335. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 手元に持つておりまんで、私の事務所の戸だなに渡した報告書の控えを全部置いておりますので、後刻調査いたします。
  336. 中野四郎

    中野(四)委員 この宝石の数というものは、今おつしやつたような、そんな簡単なものじやございません。しかしながら、大蔵省があなたの方にどういう理由で宝石だけを返したか、このことは大蔵省が国会に全然報告をしておらない。金、銀、白金、ダイヤモンドその他の宝石等の接収されたものが解除されたのでありますから、その宝石というものは相当あつたはずであります。この一部だけをどうして営団に返したんだとおぼしめすか。
  337. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 どうもその点は私まだ確かめておりませんので、ほんのわずかのものを財務局から返して来たのですが、その辺の理由はさつぱりわからないのです。
  338. 内藤隆

    内藤委員長 それはおかしい。理由のないものをもらつて来るわけがない。
  339. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 こちらのものだということでありますから、こちらのものであつて、それがリストに載つておりますから、これを返還するからという公文書が来まして私が立ち会つたのであります。
  340. 内藤隆

    内藤委員長 リストにはあるわけですね。
  341. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 リストにはあります。
  342. 中野四郎

    中野(四)委員 どうしてあなたのものだということがはつきり言えましようか。大蔵省があなたのものだということを言うてよこしたのですか。あなたの方で請求してもらつたのですか。
  343. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 私の方では別に請求しておりませんが、私の方のリストに宝石類が幾らということが載つておりますから、現場へ鑑定人を連れて行きましてその立会いのもとにカラツトから数量から全部私の方のリストと照合しましてそれで私は受取つてつて来たのです。
  344. 中野四郎

    中野(四)委員 鑑定人はだれで、そうして一体鑑定人が一目でわかるような宝石の類であつたかどうかということをお伺いしたい。
  345. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 鑑定人は私今名前は記憶はいたしませんが、調べればすぐわかります。
  346. 中野四郎

    中野(四)委員 鑑定人はあとでよろしゆうございます。どこから来たものですか、たとえば東京で買い上げたものとか大阪で買い上げたものとか、東京ならばどこで買い上げたものとか、大阪ならばどこで買い上げたものとか、中央物資活用協会から送られたものならば、どういうふうな径路によつてつたものか、これを伺いたいと思う。それがなくてはならぬはずです。あなたのものだということをただちに鑑定人によつて断定することはでき得ないはずだと思うのです。
  347. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 これは私記憶がありませんですが、係の者と一緒にそこに立ち会つたのでありますが、どこで買い上げて、どういうものについておつたか。ほかに付属の貴金属もありましたようです。たとえば帯どめの台のようなものであります。鑑定人はその種類と数量と目方を鑑定しただけであります。
  348. 中野四郎

    中野(四)委員 そこが私ちよつとわからない。大事な問題ですが、大蔵省は国会に報告をしない。ないしよで一体交易営団と取引ができるものかどうか、これが第一番です。なぜかならば、先ほど申し上げたかどうか知りませんが、昨年の六月に大蔵委員会に向つて、接収貴金属等の数量等報告に関する法律案を出して来たのです。それは接収当時において大蔵省は全然関与していなかつたから、これがどこから来たものか、どういう径路を経て接収されたものかが一切わからない、従つて、講和条約の発効に従つて、これをば日本政府に返還をして来たから、政府としては返還その他の処置を講じたいから、すなわち元の持主あるいはそういうような人を探すために、九月三十日までに証拠書類をつけてこれを報告してくれと言われたから、あなたの方ではこういう証拠の書類をつけて、あすこのものはおれのものだ、これもおれのものだと言つて要求されたはずであります。しかるにいまだその結論の出ない今日、宝石だけをあなたの方に特別に二百数十個なりを渡すということは、どういう意味でありましようか。しかもあなたの方でどういう鑑定人をお連れになつたか知りませんが、これは名古屋から買い入れたものならば、名古屋の鑑定人がおつて、しかも鑑定人は一人や二人ではありません。その鑑定人が見ただけでもわからぬと、先日ここで喜多村証人は言うておるのです。にもかかわらず、あなたの方で行つて、これはおれの方のものだから、これはお前の方のものだからといつてもらつて来ることは、常識からいつても、ちよつと日本国民として納得できぬじやありませんか。この接収解除数量の中には、金、白金、ダイヤモンド、あるいは銀というものの数量は書いてあります。しかしながら、宝石というものの数量は一切うたつてありません。私らの調査の結果におきましては、宝石というものが、日本国中から相当たくさん集積されておるはずであります。しかも、それは戦争に何ら使つておらないところの品物です。この品物が接収解除をされたかされぬかということが問題であつたのです。にもかかわらず、これが解除をされた。そして国会の知らないうちに、国民の知らないうちに、あなたの方の一営団と大蔵省の一部役人との間に取引が成立するというようなことになれば、重大ではありませんか。憲法上の大問題でもあり、国会を無視したと言われても一言もないと思うのです。しかしながら、あなたの方の鑑定人がどういう方で、しかも、この数量はどれだけで、どこから入つたもので、それがお宅の物だということを、どうして断定することができたかという証言ができなければ、これに対するところの書類を、この委員会に提出していただきたいと思うが、どうですか。
  349. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 その点については、私はわかりません。よく調べましてお答えをするようにいたします。
  350. 中野四郎

    中野(四)委員 数量におきましても、金額においても、相当なものですよ、これは。そうじやありますまいか。そう安いものじやないと思うのです。それをあなたの方でお受取りになつて、それがわからぬというのは、清算人として少しおかしいじやありませんか。だれがこれを担当したのでしようか。あなたが直接関係したのではなくて、だれか係りの方が大蔵省との取引をなすつたのですか、この点も一点伺つておきたい。
  351. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 私は、現物鑑定をしたのを見ましたが、帳簿価格はごくわずかなものでありまして、時価五、六万のものじやなかろうかというような話を聞いた記憶はありますが、現物はあまり……。何か、猫晴石というのが一つと、あとはサフアイヤみたいのが十数個でありましたか、それから翡翠みたいなものが少しと、あと金の帯締めかなんかの台みたいなものが少しばかりありましたようです。大体数量は確認をして、それを一応私の方で保管をしております。
  352. 中野四郎

    中野(四)委員 これは重大な問題なんです。近来、ややもすれば官僚が国会を軽視して、国会の要求資料も出さず、しかも国会を無視して、こういうような取引をするということは、金額の多少ではありません。これはひとり交易営団だけではないと思う。各方面に、こういうようなことが、国民の知らざるうちに、裏でやみ取引がされておると私は思う。こういうようなことは、すみやかに委員長において、委員会の名において、大蔵省に資料をただちに提出せしめて、次の証人を喚問する資料とする必要があると思う。  さらにこの際伺いたいのですが、交易営団では、大体十六万カラツト近く買い上げたと言われておりますが、私らの調べた過程においては、この装飾用のダイヤは大体使われていなかつた。してみると、相当これが現存していなければならぬはずである。買い上げたダイヤというものが、日本銀行の地下室にありますところのダイヤモンドは、あなたの方もうすうすお聞きになつていらつしやるでしようが、どうも私らが初め考えておつたようダイヤではないようです。その間いろいろなトラブルがあります。いろいろなスキヤンダルがありますが、とにもかくにも、あなたのところで買い上げた当時のダイヤモンドが、今日日本銀行に現存しておるとおぼしめすかどうか、この点を一点伺いたいと思います。
  353. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 その点は、私は何とも申し上げかねると思います。現存しておるかどうか、いろいろうわさは聞いておりますが、どうも現物を鑑定人に鑑定さしてみてその現物が、はたして間違いなく同一性が確かめ得るかどうか、そういうことも私わからないのですが、どうも非常にむずかしい問題じやないかということを考えております。
  354. 中野四郎

    中野(四)委員 もしも現物が現存してないとしたら、どういうふうになつたと推理したらよろしいか、あなたの率直な考え方を伺いたい。あるはずなんです。とにかくあなたの清算をしていらつしやる営団が、十六万カラツト近くのダイヤを買い上げており、しかも戦争にこれを使つていないという物的証拠があるのですから、そうしてみれば、当然営団になくてはならないはずですが、一体そのものがどこに行つたか。日本銀行の地下室にあるものが、もし交易営団の接収の全部としたならば、いわゆる装飾用のダイヤでなくてはならぬはずであります。これがもし調査の結果現存していないとしたならば、どういう過程において、どういう方面に流れ、どういう結果になつておるかということは、常識でお考えになつてもわかると思う。いわんや交易営団の清算を担当していらつしやる担当者として、当然この点は一応考えてみなくてはならぬ点でありますが、どういうふうにお考えになりますか。
  355. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 その点については、私申し上げるだけの考えは持つておりませんし、いろいろ想像して申し上げたり、うわさを聞いたことを申し上げても意味ないと思いますので、私は、どうもその点については、確たることを申し上げる勇気がございません。
  356. 中野四郎

    中野(四)委員 ここで私は、清算人に、一応清算事務上において御注意を申し上げたい点がある。すなわち、百貨店等で、一般の国民に、戦争に勝ち抜くためにというので、ダイヤの売渡しを強要いたしました。まさに強要です。この文書を見ると、白金等においては、場合によると、一時は手持ちをさしておることを許さんぞということを示唆してもよろしいという、脅迫的な軍需次官命令が出ておる。従つて、百貨店においてダイヤを買い上げるときた、大体当時のダイヤモンドをはかるところの計量器というものは、一カラツトの百分の一まで、すなわちコンマ二つまでの数字は出る。それ以下の数字は、なるほどこまかしではありませんから、買入れは正しいと言えましようが、はかりの目に出て来ない分が相当ある。個人々々の人からダイヤモンドを買い入れる場合においては、これは支障はありませんけれども、これがたくさん集積されまして、何千、何万、何十万と集まつて参りますと、はかりの目に出なかつた出目というものが、相当なくてはならぬはずであります。現に百貨店の主任等が、当時一人一人の名前によつて受けたものを、一々営団の再鑑定室に送つた言つておる。     〔委員長退席、荒舩委員長代理着席〕 してみると、営団の再鑑定室の鑑定人の一人である喜多村証人に、先日ここへ来て証言を求めました。ところが、その際、各百貨店から出て参るダイヤモンドに対しては、大体百貨店が書いた通りの数字をば無条件で通しておつたと言う。そうすると、営団の方には、全国から集まつた装飾用ダイヤの出目というものがなくてはならぬはずである。この出目というものには金銭を払つておりません。営団も払わなければ、買上げの百貨店においても、中物においても払つておりません。そうすると、だれの所得になるか。そうして政府にはどういう報告をしておるか。清算をする過程においては、当然こういうような数千カラツトに及ぶ出目をどう扱つたかということを、清算人は一応知らなければならぬと思う。この点は、報告がどういうふうになつており、あるいは事務的処理をどういうふうにしておるかということを伺いたいと思う。
  357. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 出目についてのお話がありましたが、まだどういうことになつておりますか、そこまで検討しておりません。これは御意見の通り、出目が一体どこに帰属して行つたか、はたして営団に出目があつたのか、それとも百貨店にあつたのか、それらについて十分に取調べたいと思います。
  358. 中野四郎

    中野(四)委員 それは詳細にあなたの方でお調べになつて、書類をもつてこの委員会に出していただきたいと思う。  さらにそれに引続いて伺いたい。先ほどおつしやいましたこのコツピーは、あなたの方でお出しになつたことは間違いありませんか。大蔵省にお出しになりました、このダイヤモンドは、あるいは白金は、どこそこで接収されたもので、私の方のものであるということを出しておられますが、これはあなたは目を通しておられますか。
  359. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 私の書類箱の中に入つているはずであります。
  360. 中野四郎

    中野(四)委員 大蔵省のあなたの方に対する要求は、物的証拠がなくちやならない。営団から十万カラツト余というようなダイヤモンドを要求するにあたりましては、少くとも接収当時における物的証拠がなくちやならぬ。司令部があなたのところに行つて強奪して持つて来るわけじやないのです。あなたの報告の内容を見ますと、昭和二、十年の十月十八日午前九時半に、司令部の命令だと言つて兵隊が二十人ばかり来られた。そうして三井信託の地下室から一回、さらに重ねて二回というふうに接収をしてあります。その後の少数の接収に際しては、それぞれの係官が証明書あるいは領収書というものを置いてありますが、なぜこの十万カラツトになんなんとするところの多数にわたるダイヤモンドあるいは貴金属等に対しては、領収書がなかつたのでありますか、あるいは、これは私の方のものだとあなたの方が証明するためにお書きになりましたこの文書の内容は、いかなる見解に基いてお出しになつたのか、これを伺いたいと思います。
  361. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 今の物的証拠、進駐軍の受領書は、今のお話の通り、ないということを聞いておりますし、ないということを御報告申し上げております。これがいかなる事情でそういうことになつたのか、それは当時の関係者がもしあれば、それに御調査願うよりほかにしかたがないと思いますが、私の方ではその方の事情はよくわかりません。
  362. 中野四郎

    中野(四)委員 そこが問題なんです。あなたが営団のものなりということを断定して御証言をなさいますから、こういう結論が出て来るのです。すなわち営団のものであるか、ないかということは明らかでないじやありませんか。しかもとられたか、とられないか、わからないじやありませんか。当時の連合軍のあり方から言えば、マツカーサー元帥の命令によりまして、必ず品目と、そうして容器その他のあり方をすつかり書き表わして、その対照の結果において領収書を出して来いという命令が出ております。その命令に基いて交易営団に行つたはずでありますが、この領収書がないということが私らは納得ができない。あとの小さい部分だけは領収書がありますが、この一番大きな、たとえば日本銀行の地下室にあるところのダイヤモンドが、かりにあなたのところのものだといたしまして、その場合に、十万カラツトになんなんとするこの品物が、はたしてあなたのところのものであつたかどうかということを立証する何ものもないじやありませんか。ところが、これをいかにも物的証拠の、ごとく書き添えて出しておるところに、私はわからぬ点がある。すなわち証人が、営団のものだ、営団のものにしなければならぬというような先入感のもとになされんとすれば、こういう結果が生れます。公平無私なるところの、政府の任命によります清算人としてのお立場からいえば、こういうことはあり得ないと私は思うのです。当時これをお書きになりましてしかもこれに対してあなたは決裁をなさつたでしよう。決裁をしたとすれば、その当時はいかなる考え方で決裁したか、お教え願いたい。
  363. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 その点につきましては私は記憶がないのです。そこまでつつ込んでいろいろ係の者に質問した記憶がないのです。
  364. 中野四郎

    中野(四)委員 あなたは証人としてほんとうにお互いに協力する気持があるとは、私はちよつと考えられません。決してあなたを頭からとやかく言うのではありませんが、どうも都合の悪いところは、知らないという言葉をもつてのがれる傾向がある。しかしながら、私の方はこれに対して次々と反証を持つておりますから、後日この問題についてはどこでも論駁するつもりであります。  最後に一点伺つておきたいのは、現在日本銀行の地下室にありますダイヤ所有権の帰属、あるいはこれが低廉なる価格によつて払い下げをされるというようなことが大分問題になつているのです。つまり日本銀行のダイヤが一ぺんに払い下げられますと、今全国の貴金属商の持つているダイヤの値が下つてしまう。すなわち、こういうことがあつてはならないから、各ダイヤ商がお互いに話し合つて、特に当時再鑑定室で鑑定人となつた人間が中心となつて組合をつくつて、もし営団の手に入つても、中物の手に入ても、これを持つているわけがないから、これを払い下げる、あるいは国が国庫の収入として払い下げる場合の対策として、今猛運動をやつているということを聞いております。おそらく清算人等は、こういうことについていろいろとうわさを聞いておられると思いますが、その真相はどうか。証人は当然こういうようなことを知らぬというわけはありませんから、あなたが宣誓をされた精神に基いて、あなたの知つておられる範囲、あなたの感想についてどうか述べていただきたいと思います。
  365. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 ただいまお話のありました点は、そういつたような事例が私の精算中にも多少ありました。どういうことをやつているか、私のところにはそういう情報は今のところ入つておりませんが、それは大いに警戒を要する点であるし、申し上げましたように、かりに私の方に所有権が返還になつてこれの所有が確定したにいたしましても、それらの点についてどういう方法でこれを清算に移して行くかということは、非常な研究を要する問題であろうと私は考えておりますが、具体的にどうするかということは、それがきまらない以上、そこまでは研究しておりません。今のところ私としては、今お話のような情報は聞いておりません。けれども、これはお話のようにいろいろ警戒を要する、どういうふうにやるかということは非常に重要な問題だと考えて、いつも気をつけてはおります。まだそういう情報は申し上げるようなものは入つておりません。
  366. 中野四郎

    中野(四)委員 黒瀬証人にはたくさん聞きたいことがあるのです。営団関係で清算人として、まだ数字をあげて、大阪、名古屋、あるいは全国の中物の買い入れたその後の処理、陸海軍から入つたもの、こういうもの等について伺わなければならぬのですが、あなたは今ここで数字がわからない、覚えていらつしやらないというお話でありますが、これはこのままでは済まぬ問題でありますから、もう一ぺんおいでを願わなければならぬ。その際に、あなたの方のだれでもけつこうです、これに精通した者、そしてまた一切の書類をお持ち願つて、こちらの質問に対してお答えを願えるような方法をとつておいていただきたい。私が今数字をあげて一つ一つ聞こうと思いましても、あなたはここでわからぬとおつしやるから、わからぬのでは、私が大きな声を出すだけで何にもなりませんから、この点については、後日どうしてももう一ぺん証人にはおいでを願わなければならぬ。私の方でもこれを理事会にかけて要請するつもりでありますから、どうかその場合は、先ほど申し上げたように、最もこれに精通をした担当者と、一切の書類等を御持参の上、おいでを願いたいと思います。私はこれ以上伺つてもしかたがない。わからぬとおつしやればやむを得ない。私の質問は一応これで打切つておきます。
  367. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長代理 証人に申し上げますが、ただいま中野君の発言の通り、次会には数字のわかる人を連れて来ていただきたい。なお書類のすべてを持つておいでを願いたい。以上申し上げます。
  368. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 今のお話の通りそういうことにいたします。
  369. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員長代理 明禮輝三郎君。
  370. 明禮輝三郎

    明禮委員 ちよつと証人に伺いますが、このダイヤモンド買い上げについては、昭和十九年七月二十一日付の軍需省買上げ実施要綱というものが出ているのでありますが、この要綱をごらんになつたことはないのでありますか。
  371. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 要綱は私読んだ記憶はあります。これは大蔵省なりあるいはこちらなりに御報告をするときに、添付書類がついておつたようであります。
  372. 明禮輝三郎

    明禮委員 あなたの方から出ておるくらいだから、御承知なんでしようね。
  373. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 読んだ記憶はございます。
  374. 明禮輝三郎

    明禮委員 これによりますと、このダイヤモンドは、航空機あるいは電波兵器等の生産上不可欠なる資材に使う工具として、供出させたものでありますね。そういう点が根本であつて、これについては、これに表示してあるのは、今の買い上げ物件のダイヤモンドに限つている。それから買い上げの対象が死蔵ダイヤモンド、こうなつておるようでありますが、期間が三箇月、買い上げ価格が一カラツト千五百円、こういうふうに標準が出ている。そして区域も明示されて、買い上げの方法、買い上げ物件の検査、こういつたようなことから宣伝、啓発についても、各地方長官に通牒をいたして婦人団体、隣組等に供出勧奨をして、そうして買い上げ手続の機関として、特に交易営団中央物資活用協会を使つております。これを考えますと、この実施要綱の七にあります買い上げ機関、これは交易営団本部及び支部、二が代行機関、こうなつておる、こういう点からいつてどうでありますか。これは買い上げたものは一体だれのものになるのかということは、先ほどあなたの御意見があつたようでありますが、もう一度伺いたいと思います。こういう契約の趣旨から行きまして……。
  375. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 私はその清算の結果がどういうことになるかということは、これは別としましても、一応この要綱によつて交易営団が買い上げの委託を受けておるのでありますから、従つて最後のことは、それはいろいろ法律問題もありましようし、いろいろなことがあろうと思いますが、一応交易営団所有に移つておるというように、私は考えておるような次第であります。
  376. 明禮輝三郎

    明禮委員 一応移つておるというように見えますけれども代行機関として買い受けを委託されてやつたのじやありませんか。そこのところであります。これは先ほど言いましたように、軍需省の必要によつて買い求めたダイヤモンドを、かつて処分することはできないはずでありますね。
  377. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 これをかつて処分することはもちろんできませんし、買い上げ機関として政府から交易営団が指定されておる。それでこれは、こういう趣旨に従つて買い上げたものを、政府の命令に従つてこれを処分をしておる実績が残つておる、それはお話の通りであります。
  378. 明禮輝三郎

    明禮委員 そういたしますと、もう一つ考えて行きますと、この要綱によると、交易営団とかあるいは代行機関軍需省の委託事務をやつてつた、委託事務を遂行したということになるのじやございませんか。
  379. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 買上げ機関として委託事務——一応中間的には、そういう解釈もできるかとも思いますが、これがそのまま続行しておれば、結局政府の方の関係で解決がつく問題だと思いますが、途中でこういう結果になりましたので、これは委託事務ということが——しかし目的は、これははつきりしております。はつきりこれに出ておりますことは、ただ買上げをする機関はこれで、これは結局政府の命令に従つて買い上げたものを処置しなければならぬのであつたのが当然であろうと思います。一応買上げ自分の資金で買い上げたのでありますから、所有権は一応供出者から交易営団に移つてるんじやないかと考えております。
  380. 明禮輝三郎

    明禮委員 交易営団に無理に移つたという説明が、非常に証人としてはほしいようでありますが、かつて処分することができない点は間違いございませんね。
  381. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 当時でございますか。——それは、かつて処分することは当然できなかつたもので、政府ダイヤモンド工具に使う数量をきめまして、そうしてその引渡先を政府がきめまして、その先にこれは渡すということになつてつたようであります。
  382. 明禮輝三郎

    明禮委員 ですから、仲介業みたいなものですね。中間機関ですね。買い取つたものを集荷して渡すというのですね。あなたの先ほどの証言によりますと、一体どれくらいあるのかも知らぬということでありますね。それは一体自分のものならば、もつと早くあなたの方ではこれを調査して、はつきりしたものを——先ほど中野委員が質問されておつたように、ちぐはぐなことになつたりしないはずだ。ちぐはぐになつたりするようなことは、ほんとうは代行機関として委託をされたから、その仕事をやれるだけやつて来たというようなはめに陥つてるんじやありませんか。
  383. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 今お話の点は、私も清算人としてできるだけの努力をして、何とかしてこれをはつきりしたいということでおる次第でありますけれども終戦後のあの状態で、人がなくなつたりしまして、なかなか思うように行かぬ面がたくさんありまして、また現物につきましても、先ほど申し上げましたように、占領軍に接収された後、政府に一応返つておるというだけのことで、政府がどういう法律を根拠としてそれを管理しておそかというようなことは、私にはわかりませんが、とにかく政府は、先ほど申したようなことになつております。私の方としては、これを政府に出してどうするということは、今のところ調査はなかなかできないのですが、今の、接収されたものがはたして政府が管理しておるのかどうかということも、十分な調査ができておらぬのです。
  384. 明禮輝三郎

    明禮委員 それはできていないと思いますが、これが普通営団仕事として買い求められたものであつたならば、こんなようなルーズにもならなかつたのだろう、また品物も保管をしておつても、かぎは自分のところに置いて、そのかぎを持つてつてあけられる。当時三井でありましたかの倉庫に置いてある、方々に置いてある分でも、自分のものとすると、それだけの注意があつたわけなんでありましようが、今日これを見ますと、品物もどれだけあるのか見たこともないというような所有者は、普通あり得ないと思いますが、あなたのお考えはどうですか。
  385. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 私は接収中は、先ほど申しましたように、これはなかなか手がつかなかつたのですが、大蔵省に管理が移りまして、大蔵省に申入れをしようかどうかということで、大蔵省が何とか処理をするということでおりますし、管理は私の方に来ておりませんので、また大蔵省に対してその現物を見せてくれという申入れは別にしておりませんが、今後はやはりそこまで調査を進めて行かねばならぬかとも考えておりますけれども、まだはつきりそこは結論を得ておりません。
  386. 明禮輝三郎

    明禮委員 これはお伺いするのですが、営団のものだと言わなければならぬ何か理由がございますか。営団のものだといつた方が、何か都合のいいことがおありなのでございましようか。その点をひとつお聞きしておきたい。
  387. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 私清算人としましては、法律従つて清算している次第でありまして、何もこれを営団のものでなければならぬという、そういうことを係から言われたこともないし、私は単純に、これの経過から見て、一応営団所有に移つておるのだというふうに考えております。何らの他意は持つておりません。
  388. 明禮輝三郎

    明禮委員 先ほど伺いますれば、弁護士に鑑定といいますか、意見を聞いたということでありましたが、こういう買上げ要綱というような資料も全部提供して、弁護士の意見を求められたのですか。ただ話だけをなさつたのですか。そこのところはどの程度の御研究であつたか。
  389. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 弁護士にすつかり資料を提供しまして、従来の経過を全部係の部長から説明をさせたのであります。
  390. 明禮輝三郎

    明禮委員 私も実は弁護士ございまして、よく頼まれるのですが、これを鑑定してくれというようなときに、どういうふうに鑑定すればいいかということは、依頼に来た人の気持を見て、相当それに沿うようなことを言うようなこともないわけでもないと思うのでありますが、あなたがほんとうのこういつたような内情をみんなぶちまけてお話になつたものならば、おそらく弁護士としても、これは疑問だ、所有権があるということになるために、どういう利益があるかということを相当考えてくれるはずでありますが、どうも私が伺つてつたのでは、資料の提供が足りないとか、あるいはあなたのお考えも相当——あなたか、あるはい営業部長か、どなたか知りませんが、そういう人の考えも相当反映しての意見ではないでしようか。もう一ぺん伺います。
  391. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 今の嘱託弁護士、もう閉鎖機関発生以来の嘱託弁護士でありまして、この閉鎖機関の清算内容については、いろいろ話も聞いておりますし、何か問題が起りますれば、今のように資料を提供して、いろいろ相談して結論を求めるのでありまして、やつぱり返還請求をするということについては、所有権があるということをはつきり出すということが必要であるわけですが、その根拠はこれに出しておりませんけれども……。あれは返還請求に応じないと、閉鎖機関令に罰則がついております。そうしないと清算の進行を阻害するからということがありまして、その法律の規定も、はつきり返還請求の中に出してあります。この規定に基いて返還清求をするということですね。
  392. 明禮輝三郎

    明禮委員 今の弁護士に全部の資料を出したとおつしやるが、それじやどういう資料を提供になつたか、その点をひとつここではつきりしておいていただきましようか。どういう資料を出して、その鑑定の結果が、営団所有権があると見てよいという意見になつたのかどうか。
  393. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 私もその席に立ち会つておりましたし、いろいろ議論もしましたししますから、これはどういう資料ということは、今ちよつとはつきりしたことを申し上げられませんけれども、当時の関係者を集めますれば、はつきりわかると思います。
  394. 明禮輝三郎

    明禮委員 資料を提出したと言われたから、今お尋ねしたのですが、それでは資料は出されないのですか。今のお話ではその点がはつきりしないのです。
  395. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 資料はこういうものから何から……。それから係の部長が経過をすつかり説明をしまして、そうしてみんなで協議をしてもらつたのでありますが、その物的証拠についてはちよつと記憶がないのです。今の数字の説明にこの次出て来るときにはつきりしたことを申し上げます。
  396. 明禮輝三郎

    明禮委員 それじやもう一つつてみましよう。そのときに中島弁護士ほか数人であつたということをさつき言つておりましたが、その人たちははつきり所有権営団にあると言つたのですか。これは疑問だがということでいろいろと議論した結果、あるということを言つたのですか。はつきり初めからあると言つたのですか。
  397. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 私の記憶では、もう少し漠然とした要請書を書いておりまして、所有権があるということははつきり出ていなかつだような要請書でありましたが、所有権はつきり出さなければ返還の請求はできないじやないか、だからそれをはつきり出した方がいい、それの根拠はこういう根拠だ、これらの返還請求は閉鎖機関令第何条によつて返還の要請をする、もし要請に応じなければ行政訴訟ということもあるのだし、いろいろ法律問題にいすることもできる、こういう話だつたのです。
  398. 明禮輝三郎

    明禮委員 行政訴訟をする手もあるということはだれが言つたのですか。
  399. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 それは弁護士の意見もそういうことだつたのであります。
  400. 明禮輝三郎

    明禮委員 それでは、あなたは返還請求をいたしまして、返還してくれたらどういう処置をするつもりでありましたか。
  401. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 その点につきましては、要請書の中にもちよつと書いてありますけれども、大体の筋合いから言いますと、私は清算の建前から言いますと、これを適当に時価で処分をしましてその処分したもので債務を全部払うとか、債権者に対しましては、大分債務超過になつておりますが、債権者及び株主といいますか、政府が二億五千万円ですから大部分でありますが、がりに清算の建前から言いますと、これを全部処分して、そうしてプラスの金出たものは、これは持分に応じて政府にお渡しする、その他出資者にお渡しするというのが普通の清算の原則であることは、これは申し上げるまでもないことであります。普通から言えばそういうことでありますが、その方法なり何なりについて、これは先ほどお話が出ましたようにむずかしい問題があると思います。それはよほど研究して、監督官庁とも相談してやりませんと、先ほどのように市価が暴落するとか、いろいろな不測のことが起るおそれが多分にありますので、どういう方法でどういうふうに始末するか、まだはつきりした研究はしておりませんが……。
  402. 明禮輝三郎

    明禮委員 破産事件その他の清算をやります場合に、その財産がよけいありますと、そのよけいあつたことによつて、その事務を処理した者の報酬が相当多いわけであります。この場合にも二億五千万円か三億くらいのものを払つて、あと二百五十億幾ら残るというような事態になりますと、いろいろな非常な価値、清算の利潤といいますか、そういうものを配当いたしましてもよろしいわけでありますが、しかしそれは一方において国民が自分の家の家宝といいますか、自分の宝としておるようなものを供出したものが、今日値上りになつたこの機会に、そういう過剰な金が清算によつて出たために、だれが一体利益を得るということになつておるのでありましようか。その点を証人にお伺いいたします。
  403. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 私の考えるところでは、かりに何百億出ますと、そのうちから清算所得税というものが、はつきりした数字を覚えませんが、たしか四五%くらいとられる。それでその残余を結局その出資者に返す。出資者は先ほど申したように、三億のうち二億五千万円というものが政府でありますから、大部分の金、その利益というものは政府——一方税金でおとりになつて、その残つたものもほとんど大部分政府にお払いをする、こういう結果になる。政府はそれをどういうふうにお使いになるか、これは政府自体の問題であります。結局清算の原則から行きますと、そういうふうになると思いますが、ただこれは大分意見になるかと思いますけれども、これについて一体そういうふうにやることが、今の供出の趣旨にかんがみて、はたしていいかどうかということについては、これは各意見がいろいろあるようでありまして、私もそういう意見もいろいろ聞いております。あるいはこれを何か社会政策的のことに使うべきじやなかろうかとか、意見になつてはなはだ恐縮ですが、そういうお話は私もいろいろ聞いております。実は私はその点については、清算人として一体そういうことを申し上げていいものかどうか、それは少し行き過ぎじやないかというふうに考えておりますので、その点については申し上げることを差控えたいと思います。
  404. 明禮輝三郎

    明禮委員 ただいま申しました通り、国民が涙を流して供出したところの非常な犠牲のダイヤであります。この、タイヤがあなたの言われるようになると、一部の人に利益の分配をしたり、一部の人どもがその功労の謝金をもらつたりするようなことで、はたしてよろしいと思いますか。
  405. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 交易営団法によりますと、大体出資を返し、それからその出資人に対しては四分の利益配当ですか、それをつけるという規定があるようであります。それについてもはたしてそういうことが、営団法というのは廃止になつておりますので、可能かどうか、これは問題があると思うのです。ですから、そういう点をいろいろ考えますと、私自身としては、今申し上げたようなことで、はたしていいかどうかということに非常に疑問を持つておるわけでありましてこれを何か公共的というか、公益的というか、あるいは社会政策的といいますか、何かそういうふうに使うのが正当なことじやないかということは、ひそかには考えております。別に私はそういうことを申し上げる立場におらないので、別に政府に対してそういうことも申し上げてはおりません。何か意見でもということならばよく研究の必要がありますが、そこまでは申し上げかねます。
  406. 明禮輝三郎

    明禮委員 私どもは今申したような尊い犠牲のものでありますから、これは国家の必要なところに振りかえて行くというやり方でなければならぬ。一営団や一中央物資協会が、私利私欲のためにこういうものを所有権化する。大体所有権というものは、本来からいうと、使用収益処分ができなければ所有権はないということになつておる。この場合はダイヤ処分権がないじやありませんか。その処分権のないものをとらえて、何か所有権があるように持つてつて、そうしてこれを配当化しようというあなた方のお考え方は、どうかひとつ改めていただきたい。この国会の空気がおわかりでありましよう。あなた個人としてやらなければならぬ営団のほかの仕事はほかの仕事として私どもこの国会の空気、あるいは国民の犠牲を、そういつたような値上りがしたからこれを配当処分にするというような考え方は、とんでもない話でありますので、あなたは営団の清算人としてこれからおやりになるかどうかは別として、今後十分にこの点についてはお考え方を改めていただきたいと私は念願するものであります。これをもつて私は終ります。
  407. 横路節雄

    ○横路委員 ちよつと証人お尋ねいたします。あなたが交易営団の清算人としておいでになつたのはいつでございますか。
  408. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 昭和二十七年四月に任命されております。
  409. 横路節雄

    ○横路委員 前の委員の方と重複するかもしれませんが、ちよつとお聞きいたしますが、その前は何をやつておられましたか。
  410. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 その以前はやはり二十六年三月から閉鎖機関整理委員会の副委員長であります。委員会が解散になりまして、今のような政府任命の個人清算人ということになつております。
  411. 横路節雄

    ○横路委員 先ほど各委員からいろいろお話があつたのでございますが、私があなたにお尋ねしたいと思いますのは、交易営団の損益勘定について、ひとつ詳しく御説明していただきたいと思います。あなたは、先ほど各委員の質問に答えて、損をしておるから、ひとつダイヤについてはいずれ自分のものになるだろうから、これは売つて、損失について埋めたいというようなことを言つておりますが、なお具体的に損益関係についてはつきりお話いただきたい。
  412. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 お答えいたします。これは二十七年十一月末現在の残高であります。債券が十二億八百八十九万六千円、第二封鎖預金が千百五十一万円、未払込資本金八千六百四万五千円、以上は受取勘定であります。流動資産では、商品十億三千五百九十六万八千円、公債一億八千八百九十五万五千円、株式百十五万五千円、そういうところであります。次は固定資産が、土地建物二十二万円、什器備品二百十九万三千円、機械設備三百四十七万円、被接収物資、ダイヤモンド、白金、金、銀、装飾品、これは未清算であります。  次は掠奪物資及び連合国財産、掠奪物資は内務省令の第二十五号、第四十七号、掠奪品の調査及び報告に関する件第四条の規定に基いて各都府県により没収せられた非鉄金属、ゴム類、キナ皮等、買入れ代金の返還請求中でありますが、目下未決定であります。  それから対外資産、外地所在会社に対する国内本支店の債権、未着商品、外地滞留の商品等でありまして、現在清算の対象外になつておりまして、これは清算より除外されております。  そのほかに閉鎖後未収金として二十八億三百万円というのでありまして、十一月末の残高が三千百七十一万二千円でありますから、清算は九八%済んでおります。     〔荒舩委員長代理退席、委員長着席〕 一方債務の弁済状況は、優先払債務のうちの未払込税金二千九百三十万六千円、従業員債務が七百九十万円、優先払いの債務が十六億九百十八万三千円、こういうことになつておりまして、これは全部支払済みであります。  それから優先払いの債務のうちで、需品調達資金としての、先ほど申しました銀行借入金が十四億八千九百九十万九千円であります。  そのほか指定業務中の商社に対する債務が一億百五十九万三千円、それから保管料等の支払済みが千七百六十八万一千円、それで一般債務につきましては最高五〇%が支払済みであります。  それで資産の換価見込総額、これはダイヤは入つておりませんが、九千四百五十九万七千円、現金として四億七百八十万九千円、そのほかに清算経費二千二百五十万円、差引債務弁済充当額が四億七千九百九十万六千円ということになるわけであります。  そこで債務の総額が十五億五千九百三十六万二千円でありまして、差引債務の弁済不足が十億七千九百四十五万六千円、それから払込済出資金の弁済不能額が二億九千二百三十一万二千円、結局十三億七千百七十六万八千円というものが支払えない額になる。
  413. 横路節雄

    ○横路委員 あなたの方からお出しになつた清算損益計算書、昭和二十二年二月二十日から昭和二十七年十二月三十一日までのものについて、清算損益計算書というものを出されておりますが、これの内容は、閉鎖日からの累計を計算して利益が二十二億五千八百四十六互三千二百十九円、同じく閉鎖日から閉鎖後におけるところの損失が十四億二千百二十三万五千六百七十三円、差引利益が八億三千七百二十三万七千五百四十五円、閉鎖前については利益は四億三千九百八十万七百七十五円、損失については八億四千二百十八万四千六百十六円、ここで閉鎖前の損失は四億二百三十八万三千八百四十円となつておるのでありますが、これはどういうことになるのですか。
  414. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 それは閉鎖前の関係と思いますので、その閉鎖されてからの清算に移る前の関係だと思います。その数字を受けて清算をずつと続行しておるわけであります。
  415. 横路節雄

    ○横路委員 今私が申し上げましたのは、あなたの方で出されたので御存じかと思いますが、二十七年十二月三十一日までの中には、今問題になつておりますところのダイヤモンドについては、この中に入つていないというわけですか。
  416. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 その数字にはダイヤモンドは除外しておりまして、入つておりません。今私が申し上げましたのも全然入つておりません。
  417. 横路節雄

    ○横路委員 重ねて私証人お尋ねしておきますが、今ここに出されました清算損益計算書の中には、お話ダイヤモンドについては全然入つてない、その点は間違いございませんですか。
  418. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 その点は間違いございません。
  419. 横路節雄

    ○横路委員 あなたは清算人として、この大阪関係の書類と桐生関係の書類等については、いろいろ委員会から要求されているのですが、書類は出したのですかひとつお尋ねします。
  420. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 ちよつと大阪関係と桐生関係の書類は今記憶しておりませんが、多分こちらで御要求なら出しているものと心得ますが、出てないのですか。
  421. 横路節雄

    ○横路委員 出ていないというのですかね。それで私証人お尋ねいたしますが、実はこの前も、この鑑定の問題について、非常にこの点が問題になつたわけです。大阪関係の書類というのは、大阪はなかなか手ぎわよく処理されて、そして集めたダイヤモンドについては一級から五級まで分けて、それを交易営団に、向うの大阪の支所からこちらへ送つているわけです。その点について、今その書類が全然出てないわけです。それからもう一つ、今度の件で非常に重要なことは、昭和二十年三月十五日から七月三十日までの間、桐生で再鑑定をした場合に取扱つた件数その他については、書類が出されてない。この点は、ことにこの桐生関係の書類が出されてないということになると、非常に交易営団としても、この取扱いについて何か思わしくないことがあるから出さないのではないか、こういうことになるわけなんですが、あなたは清算人として、これは第十三国会当時から要求されておるわけでありますが、一体この非常に重要な二つの書類がいまだに出されてないというのはどういうわけなんですか、ちよつとそれをお聞かせ願いたいと思います。
  422. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 どうも私は今初めてお聞きする次第ですが、大阪、桐生の関係は出てないというお話ですが、さつそぐ取調べまして、ひとつ出すように進めたいと思います。
  423. 横路節雄

    ○横路委員 そうすると、今の証人お話で、大阪関係の書類と桐生関係の書類はさつそく出すわけですね。
  424. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 ええ。
  425. 横路節雄

    ○横路委員 それでは私は、委員長に、ぜひこの際、証人に大阪関係の書類と桐生関係の書類とを、ただいまお話のございましたようにさつそく出すそうですから、それを出していただきまして、それをもとにして、次会に重ねて御質問申し上げるごとにいたします。
  426. 内藤隆

    内藤委員長 ただいま横路委員からの要求もありましたから、ひとつすみやかにこれを御提出になるように、委員長から特に要求しておきます。
  427. 黒瀬勘一

    黒瀬証人 その点で、ちよつとこれはよく調べてみなければわかりませんのですが、あるいは火災によつて焼けたとかなんとかいう事実があるのかもしれませんし、詳細に取調べまして……。
  428. 横路節雄

    ○横路委員 これで一応終ります。
  429. 内藤隆

    内藤委員長 他に御発言がなければ、黒瀬証人に対する尋問はこれにて一応終了いたします。  なお、再出頭の件は、理事諸君と協議の上決定したいと存じます。証人には長時間御苦労でありました。  次会は明十九日午前十時より開会いたします。本日はこれにて散会いたします。     午後五時一分散会