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1953-02-13 第15回国会 衆議院 行政監察特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年二月十三日(金曜日)     午前十時四十七分開議  出席委員    委員長 内藤  隆君    理事 荒舩清十郎君 理事 中野 四郎君    理事 久保田鶴松君       中田 政美君    中村 梅吉君       丹羽喬四郎君    羽田武嗣郎君       明禮輝三郎君    山本 正一君       栗田 英男君    小畑虎之助君       高橋 長治君    山手 滿男君       田万 廣文君    横路 節雄君       武知 勇記君  委員外出席者         証     人         (松屋本店長) 金子亀太郎君         証     人         (鑑定人)  喜多村喜之助君         証     人         (元軍需省軍需         官)      私市 信夫君         証     人         (元軍需省機械         局長)     橋井  眞君     ————————————— 昭和二十七年十二月二十四日  委員高橋長治辞任につき、その補欠として栗  田英男君が議長指名委員に選任された。 昭和二十八年二月十日  委員大森玉木辞任につき、その補欠として高  橋長治君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  接収解除貴金属並びにダイヤモンド関係事件     —————————————
  2. 内藤隆

    内藤委員長 これより会議を開きます。  この際御報告を申し上げます。さきに委員長に一任となつておりました本事務局の機構、人員配置等につきましては、理事諸君と協議の上、ただいまお手元に配付いたしております通り決定いたしましたので、さよう御了承を願います。  次に、お諮りいたします。接収解除貴金属及びダイヤモンド関係事件につきましては、理事諸君の御了承を得まして、本日は、松屋本店長金子角太郎君、鑑定人喜多村喜之助君、元軍需官仙台通商産業局総務部長私市信夫君、元軍需省機械局長橋井眞君。二月十八日、元交易営団雑貨部長福田廉三君、交易営団清算人黒瀬勘一君、元中央物資活用協会理事中田玉市君、鑑定人巽忠春君。二月十九日、元皇后宮太夫廣幡忠隆君、宮内庁次長宇佐美毅君、鑑定人久米武夫君。二月二十一日、外務省欧米局長土屋隼君、大蔵省理財局長石田正君、大蔵省管財局長阪田泰二君。二月二十三日、引揚援護庁復員局庶務課長松浦溝君、引揚援護庁第二復員局残務処理部資料課長永石正孝君、元海軍技術研究所会計部材料課川崎宗一君。以上十七名の諸君に、それぞれ本委員会出頭を求める手続をいたしておいたのでありますが、以上の諸君を本委員会証人として決定いたすに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 内藤隆

    内藤委員長 御異議なきものと認めます。それでは証人として決定いたしました。  なお、証人出頭日特等に変更の必要を生じたときの処置につきましては、委員長に御一任願います。  これより接収解除貴金属及びダイヤモンド関係事件について調査を進めます。ただちに証人より証言を求めることにいたします。  ただいまお見えになつておられる方は金子角太郎さんですね。あらかじめ文書をもつて承知通り、本日正式に証人として証言を求めることに決定いたしましたから、さよう御了承くだい。  この際証人に申し上げますが、戦時中多数国民諸君より供出されましたダイヤモンド、金、白金等は、平和条約発効と同時に接収解除となりまして、現在日銀地下の倉庫に収納され、大蔵省によつて保管されておるのであります。このダイヤモンドの収納、保管の経過処理方法等につきましては、世上大いに疑惑を持ち、関心を抱いておる向きもありますので、これが真相を明らかにすることはきわめて意義のあることと考え、本委員会は本件の調査に着手した次第でありますので、証人におかれましては率直なる証言をお願いいたしておきます。  それではただいまより、接収解除貴金属及びダイヤモンド関係事件について、証言を求めることにいたしますが、証言を求むる前に証人に一言申し上げます。昭和二十二年法律第二百二十五号、議院における証人宣誓及び証言等に関する法律によりまして、証人証書を求める場合には、その前に宣誓をさせなければならぬことに相なつておるのであります。  宣誓または証言を拒むことのできるのは、証言が、証人または証人配偶者、四親等内の血族もしくは三親等内の姻族または証人とこれらの親族関係つた者、及び証人の後見人または証人の後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項に関するとき、またはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するとき、及び医師歯科医師、薬剤師、薬種商、産婆、弁護士、弁理士弁護人公証人、宗教または祷祀の職にある者またはこれらの職にあつた者が、その職務上知つた事実であつて黙秘すべきものについて尋問を受けたときに限られておりまして、それ以外には証書を拒むことはできないことになつておるのであります。しこうして、証人が正当の理由がなくて宣誓または証言を拒んだときは、一年以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられ、かつ宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処せられることになつておるのであります。一応このことを御承知になつていただきたいと思います。  では、法律の定めるところに従いまして、証人宣誓を求めます。御起立を願います。  宣誓書を朗読してください。     〔証人金子角太郎君朗読〕   宣 誓 書  良心に従つて、真実を述べ、何事もかくさず、また何事もつけ加えないことを誓います。
  4. 内藤隆

    内藤委員長 それでは宣誓書署名捺印してください。     〔証人宣誓書署名捺印
  5. 内藤隆

    内藤委員長 これより証言を求めることになりますが、証言証言を求められた範囲を越えないこと、また御発言の際には、その都度委員長の許可を得てなされるようお願いしておきます。なお、こちらから質問しておるときは、おかけになつていてよろしゆうございますが、お答えの際は御起立を願います。  金子角太郎君は、現在松屋本店長をしておいでになるようですが、このダイヤモンド買上げ当時は、松屋営業部長をしておられたということでありますが、あなたの経歴を簡単に述べてください。
  6. 金子亀太郎

    金子証人 ただいまの御質問に対しまして、私は株式会社松屋百貨店大正十四年一月十四日から入社いたしまして、ダイヤモンド買上げ当時の私の職責営業部次長になつております。
  7. 内藤隆

    内藤委員長 学歴等はどうですか。
  8. 金子亀太郎

    金子証人 学歴横浜商業卒業であります。
  9. 内藤隆

    内藤委員長 学校をお出になつてすぐ松屋へお入りになつたのでありますか。
  10. 金子亀太郎

    金子証人 そうでございます。松屋へは明治四十三年に一応入社いたしまして、途中一度退社いたしまして、再びただいま申し上げました大正十四年一月十四日入社いたしたのであります。
  11. 内藤隆

    内藤委員長 松屋本店長というのでございますが、銀座の店ですか。あれが本店ですか。
  12. 金子亀太郎

    金子証人 そうです。ただいま取締役で本店長をいたしております。
  13. 内藤隆

    内藤委員長 取締役銀座の本店長をやつておるのですか。
  14. 金子亀太郎

    金子証人 さようでございます。
  15. 内藤隆

    内藤委員長 昭和十九年の八月ごろはどういう職責にありましたか。
  16. 金子亀太郎

    金子証人 十九年の八月は、ただいま申し上げました通り営業部次長をやつておりました。
  17. 内藤隆

    内藤委員長 銀座松屋本店営業部次長をしておいでになる……。
  18. 金子亀太郎

    金子証人 さようでございます。
  19. 内藤隆

    内藤委員長 このダイヤモンド買上げについて、その本店次長という地位はどういう責任のある地位でありましたか。
  20. 金子亀太郎

    金子証人 商品仕入れ販売一切を主として管理しておりました。
  21. 内藤隆

    内藤委員長 そうするとこのダイヤモンドについては……。
  22. 金子亀太郎

    金子証人 ダイヤモンド買上げにつきましては、私が雑貨仕入部長をやつております当時、貴金属その他につきまして商品的に長く取扱つておりましたので、私が一番社においてこれに精通しておりましたので、よつてこの衝に当りました。
  23. 内藤隆

    内藤委員長 ちよつとお伺いしますが、証人言葉が聞えますか。     〔「聞えません」と呼ぶ者あり〕
  24. 内藤隆

    内藤委員長 聞えませんか。では、なるべく大きな声で、各委員諸君に聞えるように。
  25. 金子亀太郎

    金子証人 そうですか。まことに、ちよつとどうもかぜを引いておるので、申訳ございません。
  26. 内藤隆

    内藤委員長 当時、交易営団本部に、松尾の七階と八階を貸しておつたという事実がありますか。
  27. 金子亀太郎

    金子証人 そうでございます。七階と八階を交易営団に貸しました。
  28. 内藤隆

    内藤委員長 地下室はどうなつておりましたか。
  29. 金子亀太郎

    金子証人 地下室はたしか軍需省方面に貸してあつたと思います。陸軍方面の……。
  30. 内藤隆

  31. 金子亀太郎

    金子証人 そうでございます。詳細はちよつと忘れました。
  32. 内藤隆

    内藤委員長 もし、書類等を持つておいでになつて書類をごらんになつて記憶が呼び起されるならば、書類を見てもよろしようございます。
  33. 金子亀太郎

    金子証人 ダイヤモンドに関する書類しかございませんので、その他の管理につきましては……。
  34. 内藤隆

    内藤委員長 そうすると、この七階、八階並びに地下を貸しておいでになると、無条件で貸したわけではなく、何か条件がついておつたようですが、その条件記憶がありますか。
  35. 金子亀太郎

    金子証人 条件につきましては記憶ありません。
  36. 内藤隆

    内藤委員長 現在、松尾本店のどこか事務方面にでも、そういう書類等は残つておりませんか。
  37. 金子亀太郎

    金子証人 賃貸につきましての問題は、当社不動産部というものがございまして、その方で管理いたしておりますので、私詳細は申し上げられません
  38. 内藤隆

    内藤委員長 不動産部ですか。
  39. 金子亀太郎

    金子証人 さようでございます。
  40. 内藤隆

    内藤委員長 七階、八階並びに地下に、営団ダイヤモンド買上げの再鑑定室というようなものでもあつたのですか。
  41. 金子亀太郎

    金子証人 再鑑定室は八階にございました。
  42. 内藤隆

    内藤委員長 その八階の部屋は別になつていましたか。あるいはまた広い部屋ですか。何か仕切りでもして鑑定室があつたのですか。
  43. 金子亀太郎

    金子証人 記憶に残つておりますのは、営団鑑定室は、元の私どもの店の貴賓室をそれに当てまして、そこを使つてつたようでございます。貴賓室といいますのは、約十坪ばかりの場所でございまして、一室別個になつておりました。その中を営団鑑定室使つてございました。
  44. 内藤隆

    内藤委員長 再鑑定室貴賓室を提供した、こういうわけですね。
  45. 金子亀太郎

    金子証人 しかし、営団に貸しましたのはワン・フロアでございますから、そこでやつてつたことを承知しております。私どものやつてつたところではございません。
  46. 内藤隆

    内藤委員長 銀座松屋戦災を受けたようですね。
  47. 金子亀太郎

    金子証人 受けました。
  48. 内藤隆

    内藤委員長 戦災当時、営団に貸してありました事務室焼失状況等は御記憶ありますか。
  49. 金子亀太郎

    金子証人 四階以上全部焼失いたしました。
  50. 内藤隆

    内藤委員長 そうすると、その事務室にありました書類等も焼失してしまつたようですか。
  51. 金子亀太郎

    金子証人 その点私にはわかりません。
  52. 内藤隆

    内藤委員長 営団関係の人が見なければわからない……。
  53. 金子亀太郎

    金子証人 わかりません。
  54. 内藤隆

    内藤委員長 次に、松屋本店においてダイヤを買い上げた状況等について、二、三お尋ねしたいと思うが、まず、これは営団との間に契約したものと考えますが、その条件買上げ要綱等について、承知しておられる点を説明していただきたい。
  55. 金子亀太郎

    金子証人 交易営団から、私どもに、ダイヤモンド買上げの件について、窓口開設の交渉がたしか十八年の八月初旬にございました。御承知通りダイヤモンドそのもの鑑定上非常にむずかしいものでありまするし、同時に非常にこまかいものでございますので、買上げということについては、普通の商品と違いまして、まことにむずかしいものでございます。扱い方法について躊躇いたし、その引受につきましても、一応即座にはお答えしなかつたのであります。しかし、国家危急の折からどうしてもこれを扱つてもらいたい。信用ある百貨店において扱うことが最も適当である。よつて、八月十五日からこれを開設するごとに契約いたしました。契約の内容につきましては、ただいま書類がありませんのでわかりませんが、一定のダイヤモンドに対しての鑑定基準を定めまして、それによつて鑑定する。鑑定しました品物を、営団との間の所定書類処理して、営団の方に引渡す。それに対する具体的な方法をひとつ立案してくれ、こういうわけで、私ども鑑定人を定め、その鑑定によつて承認が得られないで、営団で再鑑定して差異のあつた場合には、非常に問題になる。よつて鑑定方法についての基準を定めてもらいたいということで、再三交渉し、研究をいたしまして、鑑定の基本をその当時定めました。そうして、八月十五日から同年の十二月十五日までの期間をもちまして、私ども窓口を開設いたしました。それは当社の六階にこの買受け部門を設置いたしました。当時、まだ初めてでございまして、二名の鑑定人社員も当時応召されておりまして、優秀なる社員もおりませんでしたけれども在店中の最も信頼できる社員七、八名をこれに任命いたしまして、その衝に当らせましたのでございます。
  56. 内藤隆

    内藤委員長 その七、八名の店員というのは、ダイヤ鑑定等経験があつたのですか。
  57. 金子亀太郎

    金子証人 鑑定等には経験はございませんでしたけれども、こういう宝石類貴金属類販売仕入れにおりましたいい社員をこれに当てました。  扱いの順序を申し上げますと、御承知通りダイヤモンドと申しましても、ダイヤモンドを裸で持つて来るお客さんはおりません。指輪、首飾りあるいはその他の装身具にはめたものを持つて参りますので、これを具体的に申しますと、一つずつそれをこわしまして、不要品お客へ返さなければならない、買い上げますダイヤモンドだけ裸にして、目方をかけて鑑定しなければならない、こういうように非常に煩わしいのです。よりまして、鑑定者かざり職人、すなわちそれを解体する本職の者を雇いました次第であります。それで、お客さんが持つて来ましたものを即時目の前で解体いたしまして、私ども鑑定人によりまして、あらかじめその品質等級お客に納得させた上で、その目方をはかります。そうしてはかりましたものを、私ども伝票によりまして、お返しするものないしはその数その他について一応の記録をとります。とりました伝票によつて、それを検査係にまわし、検査係によりまして、その金員その他の確実なことを認めました上で、あらためて営団から指定されました伝票に、これは四枚複写でございますが、それに記入いたしまして、その日の買上げダイヤモンドを一葉の伝票とともに袋に入れ、その日にまとめたものを、営団に、日締めにして総合して持つて参りましたようなわけで、営団窓口は六階でございまして、これにあらためて一括いたしまして、これを出した次第でございます。かようなことにしまして、その期間中を運んだわけであります。
  58. 内藤隆

    内藤委員長 あなたの今の証言に、品質等級を提供した人に納得させる云々という言葉がございましたが、それはどういう方法でやつてつたのですか。
  59. 金子亀太郎

    金子証人 それはその品物を受けました場合、装身具ダイヤモンドと申しますのは、無きず純白のいいものもありますし、中にはきずのあるものもありますし、いろいろいたしますものでございますから、これは最上の商品ではない、品質のいいものではない、——純白のいいものは最高たしか二千円と定めましたけれども、あらかじめAクラスBクラスにわけまして、いいものはいい、悪いものは悪い。それから同時に数入つておりまして、一箇入つておりますものもあれば、十箇入つておるものもあり、また五箇入つておるものもありまして、そういう数を一応申し上げるわけであります。この処理は、即座営団から指定されました書類に書き入れることはできませんものですから、あらかじめ、当時私ども使つておりましたところの複写伝票によりまして、それによつて一応営団の方へその明細を書いたのを渡しまして、それを仮の預かり証といたしまして、それで一応預かつておきまして、そうしてそれを解体いたしまして目方をはかつた、こういうわけであります。ところが、それを八月十五日に始めましたのですけれども、九月、十月とだんだんと戦争もはげしくなつて参りましたせいか、供出の点についても、一般国民がそれを納得したせいでしようか、非常に数が多くなつて参りまして、一日三十名くらいしかどうしてもできないのでございますが、それを五十名、六十名と皆さん参りまして、これに対して整理番号を渡しまして、三十名ないし四十名を限りまして、この整理をいたしました次第でございます。
  60. 内藤隆

    内藤委員長 大体それで店頭買上げ状況等がわかりましたが、持つて来た人が、たとえば一箇ないし十箇を一人で持つて参りますね。それを鑑定して、その対価支払い方法等はどうしたのですか。
  61. 金子亀太郎

    金子証人 支払い方法は、私ども鑑定によりまして、一応その金額支払います。それで、お客さんの方へは、そういうふうに私ども鑑定によりまして一応支払いをいたしますのですが、それを営団の方では、たしか一週間締めで私どもの方へ支払いをいたしました。
  62. 内藤隆

    内藤委員長 あなたの方では、そのダイヤをお持ちになつた人に、二日か三日間を置いて対価払つたのですが。すぐその場で払つたのですか。
  63. 金子亀太郎

    金子証人 最初はその場でお払い申し上げましたけれども、ただいま申しましたように、一個の鑑定に、はずしたり何かいたしまして非常に手間がとれます。それで、私どもから一応物品の預かり証を差上げまして、それは手前ども松屋として預かつたわけであります。これは最初においてはお預け願いまして、そうして三日ないし四日目にとりに来ていただきました。そのときに明細を申し上げまして、そうしてお払いして差上げたわけであります。
  64. 内藤隆

    内藤委員長 そして、松屋営団とは、一週間ほどの間を置いて支払いを受けたわけですね。
  65. 金子亀太郎

    金子証人 そうです。これは再鑑定の済んだ後でないと、営団では払つてよこさぬわけであります。
  66. 内藤隆

    内藤委員長 それから、その当時、営団職員ダイヤを持つて売りに来たような御記憶はありませんか。
  67. 金子亀太郎

    金子証人 それはございません。
  68. 内藤隆

    内藤委員長 全然ありませんか。
  69. 金子亀太郎

    金子証人 ございませんです。ただ、営団の未処理のものを、私ども窓口へ最終におきましてまわされましたものはございます。それは、営団が、ほかの、つまり窓口が閉鎖されたために処理ができなかつたのを、私どもの店に営団がございますので、私どもの店を通じて、所定の方式で再鑑定をして処理したのでございます。
  70. 内藤隆

    内藤委員長 われわれの聞き及んでいるところでは、そういうような事実もあつたように聞いております。
  71. 金子亀太郎

    金子証人 先ほど申し上げました通り、十二月の十五日までを目的といたしましたのですけれども、しかし、まだ相当買上げがございましたので、十二月、一月、二月と続いて延ばしていたしました。私ども窓口は、たまたま三月にも未整理のものがございまして、実際は三月の二十二日に全部打切りました次第でございます。
  72. 内藤隆

    内藤委員長 どうでしよう、戦いはその後ますます苛烈になりますが、軍当局はこのダイヤ買上げを非常に急いでおつたように聞いておりますが、何か軍の督励が非常にきびしかつたということがありますか。何か具体的な軍の督励の御記憶はありませんか。
  73. 金子亀太郎

    金子証人 私が管理しておりまして、ただいま申し上げました通り、十月あたりから非常に供出者が多くなつて参りましたので、整理番号を差上げてやつているような当時でございましたが、名前記憶はございませんでしたけれども海軍参謀本部付の方だそうでございますが、たしか中将の方でしたが、武官を連れて自動車で乗りつけまして、私を呼びつけまして、こんなふうじやしようがないじやないか、もつと人員をふやして仕事を促進するようにやれ、戦争は国にとつてはえらい危機の状態になつている。短刀を突きつけてやらなければならぬ時代に来たのだ、もつと勉強してやれ、こういうことを督励されましたのです。何さま夜業をしまして、夜十一時ごろまで毎晩おそくまで働かしておりました時代で、そうかといいまして、なかなか貴重なものでありますから、むやみと人間をふやすわけにも参りませんものですから、できる限り人を使わず、社内の者だけで処理しておりました。
  74. 内藤隆

    内藤委員長 その督励に来た軍人のお名前は……。
  75. 金子亀太郎

    金子証人 それは記憶がありません。出し抜けに参りまして、約十分ばかりしやべつて帰られましたものですから……。
  76. 内藤隆

    内藤委員長 営団から未処理のものをあなた方へ持つて来たという証言がありましたが、その数量等はわかつておりませんか。
  77. 金子亀太郎

    金子証人 これだというわけではございませんけれども最後の十口がそうではないかと思います。それは三月のわずかなものであります。
  78. 内藤隆

    内藤委員長 十九年の三月ですな。その数量、その持つて来た人の名前等はわかりませんか。
  79. 金子亀太郎

    金子証人 それはわかりませんが、それは目方金額もわかつております。
  80. 内藤隆

    内藤委員長 どれほどです。
  81. 金子亀太郎

    金子証人 目方は七カラツト八十九、価格にいたしまして七千七百二十八円五十銭。
  82. 内藤隆

    内藤委員長 それから、買上げ中に、あなたの店員警視庁で取調べを受けたような事実はありませんか。
  83. 金子亀太郎

    金子証人 買上げ中にはございません。
  84. 内藤隆

    内藤委員長 買上げ中にはな
  85. 金子亀太郎

    金子証人 はい。
  86. 内藤隆

    内藤委員長 その後はどうですか。
  87. 金子亀太郎

    金子証人 その後警視庁からのお調べはございません。
  88. 内藤隆

    内藤委員長 前後において警視庁から調べられたことはない……。
  89. 金子亀太郎

    金子証人 私の記憶においてはございません。
  90. 内藤隆

    内藤委員長 営団本部池山という職員のおつたことを知つておられますか。
  91. 金子亀太郎

    金子証人 池山記憶ありません。
  92. 内藤隆

    内藤委員長 記憶がない……。
  93. 金子亀太郎

    金子証人 はい。
  94. 内藤隆

    内藤委員長 これは営団職員としておつたんですが、この池山君が、第十三国会において、大蔵委員会で、松屋地下室金庫を保管していて、空襲の折等はこれにダイヤを預かつたという証言をしておるのですが、地下室池山という職員個人金庫があつたような事実はありますか。
  95. 金子亀太郎

    金子証人 私の記憶にはございません。
  96. 内藤隆

    内藤委員長 記憶にない……。
  97. 金子亀太郎

    金子証人 はい。
  98. 内藤隆

    内藤委員長 池山という人間記憶もなければ、もちろん地下にそういう池山個人金庫があつたというような記憶はないですな。
  99. 金子亀太郎

    金子証人 実は、私は総括的な管理をしておりまして、福田雑貨部長との折衝はいたしておりましたけれども事務的な方面社員は多く名前を存じておりません。
  100. 内藤隆

    内藤委員長 これは営団職員ですから、あなたは御存じないかもしれませんが、そういう証言があるわけです。  そこで最後お尋ねしますが、あなたの本店で買い上げ、これを営団に売却した総数量は何カラツトで、その対価として受領した金額及び手数料は幾らでありますか。詳細に述べてください。
  101. 金子亀太郎

    金子証人 取扱い数量は、ダイヤモンド目方にいたしまして九千百十五カラツト九二でございます。金額は一千六十四万七千四百三十一円八十一銭でございます。
  102. 内藤隆

    内藤委員長 手数料は……。
  103. 金子亀太郎

    金子証人 ダイヤモンド手数料合計はここへ出してございませんで……。
  104. 内藤隆

    内藤委員長 資料がなければ、お帰りになつて調べになつて、後ほど事務局の方へ提出してください。
  105. 金子亀太郎

    金子証人 数字のことでございますから、そうさせていただきたいと思います。
  106. 内藤隆

    内藤委員長 これにて委員長からの尋問は一応終了いたしました。委員諸君から発言の通告がありまするから、これを順次許します。まず中野四郎君。
  107. 中野四郎

    中野(四)委員 たいへん御苦労さまでございます。ただいま大体委員長からお尋ねをいたしましたが、特にこの際、私から数点にわたつてお尋ねをいたしたい疑義があるのであります。  第一番に伺つておきたいことは、先ほど委員長からの御質問の際にもありましたように、昭和十九年の十月、十一月というころは、日本にとつて最も深刻な影響を与えた戦争のさ中でありまして、特に十月の半ばごろ、海軍参謀付の人かなんかで、そうして武官連中が来て、特に買上げにあたつて督励をしたという例があるがごとく、非常に戦争が峻烈な間であつたのですが、当時の国民感情は、勝ち抜くためにもう全力をあげておつたのでありまして、女子にすれば、あるいは一家にいたしますれば、生命財産、その財産の尤たるところの貴金属とか高価な貴石等をば、国家のために捧げて、この戦争に勝ち抜きたいという気持が日本の満天下にみなぎつてつたと、私は思うのです。こういう当時に、買上げの衝に当られましたあなた方は、さぞ国のために報いるという感じから、松屋の営業等も、利益、利潤を離れてでも、この問題は遂行しようというお考えであつたに違いないと私は思うのであります。従つて、第一番に私は、金子さんの買上げに当つた当時の心境をここで伺いたいのであります。
  108. 金子亀太郎

    金子証人 実際に、ただいまお話のございました通り、御来店のお客様の中には、かつてどもでお願いいたしました商品もございますし、貴金属宝石類と申しますものは非常に愛着心のありますものと、また自己の財産として大切に持つておられますものを国のために持つて参りますので、本人としましては、これを預けることすらも不安に思つておられたようなことと、もう一つは、この商品を国家に出すことによつて国が勝つということに向つて、みな熱心にそれを出されたのでありますから、そういうことを考えますと、お預かりしました品物は、それについております白金にしても金にしても、たとい一分一厘でも違いのない計算をして差上げるのが、私どもの責任でもありますことだによりまして、軽卒なるところの鑑定はできないのであります。よつて日時を遅らせることはまことに申訳ない、即時即刻清算をして差上げますと看板には出しましたけれども、そういうわけにも参りませんので、お預かりいたしまして、数日の日限を御猶予願つて清算をして差上げたような次第でございます。
  109. 中野四郎

    中野(四)委員 当時の衝に当られました営業部長として、当然そういう御心境にあり、かつ営利を離れての御努力であつたと、私はお察しを申し上げるのです。  そこで具体的な問題に入りまするが、当時営団との条件については記憶がないというお話でございまするが、大体物を取扱うについては、どのくらいの数量をどのくらいの目標にして買い入れるという、目標というものがあつたと思うのです。それがどのくらい御記憶にあるか、まずこれから伺いたいと思うのです。
  110. 金子亀太郎

    金子証人 ただいまの御質問は、どのくらい買い上げられるかという目標でございますか。
  111. 中野四郎

    中野(四)委員 最初の目標でございます。
  112. 金子亀太郎

    金子証人 当時どのくらい買い上げられるかという目標は、私ども一軒が窓口でございませんことだによりまして、国家全体の目標につきましては私にはわかりません。ただその価格は、当時戦争前まで私どもダイヤモンド販売いたしておりました価格から見て、あまりに安いようなことがあつたのでは一般の方に申訳ないのだから、価格は十分高く買つてあげるのがほんとうだということで、たしかカラツト二千円でございましたかに買入れの基準をきめましたのですけれども、どのくらい買上げができるかという予想は、ここで申し上げられません。
  113. 中野四郎

    中野(四)委員 私のお尋ねしておりますのは、そういう意味ではないのでありまして、どうぞきわめて気やすい気持でお答えを願いたいと思うのですが、値段は、交易営団に対して軍需省が次官通牒によりまして、一カラツト千五百円。その後自然に上りまして二千円。ある場合個人商店においては二千二百円まで買つたという実例があるのでありまするが、私のお尋ね申し上げておりまするのは、一番最初営団とお話のときに、あなたのところで大体どのくらい買い入れられるか、あなたの方で一体どのくらい希望しておるのかというようなことについて、営団と御相談になつたかどうか。ただ漠然とダイヤ買入れということで、当事なしにおやりになつたのか、あるいは大体の目標額があつておやりになつたのかということを伺つておるのであります。
  114. 金子亀太郎

    金子証人 これは国家の仕事でありますから、どのくらいあるかわかりませんけれども、その数量の目標なく、いわゆるさつきのお話の通り、別段これに営利をともにしたわけじやないのです。まあ半命令ですから、窓口を開ぎまして、あるかないかは当時わかりません。相当あつたというふうに思われましたけれども、その総額に対しての予想は立てませんでした。
  115. 中野四郎

    中野(四)委員 こうお尋ね申し上げましたのは、今後お尋ねして行く筋道として、どうしても伺つておかなければならなかつたのであります。むろん買入れは、営団においては代理店である全国七箇所の支所、あるいは中央物資活用協会等の代行機関をして買わしめるとか、いろいろの手は打ちましたが、私が松屋の本店長でいらつしやるあなたにおいでを願つてお聞きするのは、他の買入れをしましたデパートにも、やはり関係が生じて来るのであります。と申しまするのは、先ほどあなたの方から、買入れの総数について九千百十五カラツト九十二というお話がありました。これはどうも私の方に納得の行かない点が多々あるのであります。この行政監察の調査局をしてあなたの方の総買入れ数をば調査しましたその最初の報告には、八千九百七十七カラツト七十という報告が来ておるのです。その後私の方から、営団あるいは中央物資活用協会という方面に対して資料の提出を求めておるのでありまするが、焼失したとか、あるいは各デパート、銀行等にさような書類がないとかいうふうに、言を左右にいたしまして、いわゆる終戦のどさくさまぎれで書類がわからぬということで、これを今日までまぎらわして来たのであります。ところが、事実において私ども調査局で調査をいたしましたところが、お宅様でもそうでありますが、どこのデパートでも、あるいは銀行におきましても、または中央物資活用協会の取扱いをいたしたものでも、この重要な書類はあるのであります。なくなつてはいないのであります。現にあなたが御証書になれる状態なんです。ところが私の方で、とうていこれは営団等の報告を待つてつてはだめだというので、この数字に信頼が置けないので、各方面調査を開始したのであります。その調査しております過程において、さらに営団の方から数字を改めて来たのです。間違つてつたからお許しを願いたと言つて……。根拠のない書類は焼いてしまつてないというにもかかわらず、何を根拠に間違つてつたか知りませんが、とにかくお宅の数字が九千百四十八カラツト十六という数字が出て来たのであります。そこで今あなたの方に委員長から伺いますと、九千百十五カラツト九十二というのですから、これもまた数字が違うわけでありますが、これは当時あなたの方の記録におそらく間違いがないか、これに対して信用を置いてよろしゆうございましようか、どうでしよう。
  116. 金子亀太郎

    金子証人 私の方で、幸いにも営団の清算書だけは、当該の私の直部下がこれを保管して持つておりました。それだからこれが総体の営団から受取りました書類なんです。その合計に間違いがないというふうに私は信用しております。ですから、この書類におきまして、ただいま申しました数字は、書き抜きまして申し上げましたような次第で、こまかいものは一切焼失いたしましたけれども、これだけは金庫に残つておりましたことによつて、はつきりこれによつてお答えを申し上げました。
  117. 中野四郎

    中野(四)委員 そこで新たに伺いますが、松屋窓口で買入れをいたしておりました当時のはかりなんです。計量器というものはどういうような計量器をお使いになつたでありましようか。
  118. 金子亀太郎

    金子証人 これはカラツトはかりであります。御承知のあまりこまかいところまでは出ないはかりでございます。普通一般売買に使つておりますカラツトばかりでありますから、百分の一までですか……。
  119. 中野四郎

    中野(四)委員 そうすると、これは台ばかりでなく、両方にかかるやつですね。
  120. 金子亀太郎

    金子証人 あれで台ばかりになつております。片方にこまかい鉛を入れて……。
  121. 中野四郎

    中野(四)委員 そうしますと、こういうはかりというものはドイツ製のものでありましよう。むろん和製ものではないと思いますが、たといドイツ製にいたしましても、実際上の数というものはなかなか出て来ぬものなんです。たとえて通俗的にいえば、商売人同士でカラツトを取引いたします場合には、少し辛目にやるのが仁義だと思つております。すなわけ、一カラツトあとは百分の一というのですから、二単位までは出て参りますが、それから先のいわゆる端数というものは計量器に上つて来ないわけです。してみますと、お客から買入れになるときには、とにかくはかりの目に出た三カラツト二、三という数字まではお客も納得いたしますから、その料金を払います。ところが、それから先の切り捨てというものははかりに出て参りませんから、松屋さんといえども払えないわけなのです。そこで、私はお尋ねするのですが、かりに一個々々の場合は、はかりのいわゆる数量は出て参りませんけれども、その買い入れた総数、すなわちこれが何百個、何千個と集中されれば、結局そのはかりの目に出なかつたものが当然出て来なければならぬ。すなわち出目というものが相当あるはずでありまするが、こういうものに対しては、松屋さんはどういうお取扱いをなさつていらつしやつたでしようか。
  122. 金子亀太郎

    金子証人 それは私どもの方の計算範囲外のものであります。私どもは個人単位でありますから、個人単位で解決いたしまして、そうして個人単位の口数によりまして、営団窓口に参つて総合して出しておるのであります。私どもで集めたダイヤは——ダイヤだけ集めて渡したのではないのであります。
  123. 中野四郎

    中野(四)委員 そうしますと、お宅の方で買入れなさつたいわゆる出目というものは、営団において、結局全国から集まつて来た出目というものが出る結果になりますね。
  124. 金子亀太郎

    金子証人 それはプラス、マイナスは営団の管轄であります。
  125. 中野四郎

    中野(四)委員 松屋の方に一切御関係がない……。
  126. 金子亀太郎

    金子証人 ありません。ただ個人におきますときの計算違い、これはお互いに是正しております。
  127. 中野四郎

    中野(四)委員 さらに伺つておきたいのですが、こういう場合微妙な問題でありますが、ダイヤ問題を取扱います一番大事なことで、一番序の口なんですが、現在日本銀行の地下室に十六万一千カラツトに相当する接収解除ダイヤがあるわけです。これが全国から集まつて来たものが当時接収をされたというのでありますが、今後この問題が、一番この委員会でも調査をする過程において大事な問題になつて来るのです。ただ、伝えられるところによりますと、日本の軍隊で、一体臨軍費の方からダイヤというものをどのくらい買つたか、そうして一体どのくらい手に入れたかということがよくわからないのです。そこで、今度大体数字をつかむために、皆さん方においでを願つて聞いておるのでありまして、スキヤンダルではないのでありまして、ただ、今お話をいたしましたように、出目というものが相当数出て来るのです。たとえていえば、あなたの方でお扱いになる量とか質の問題です。質等をお調べになるには顕微鏡をお使いになつたか、あるいはどういうふうな操作をお使いになつたかを後ほど御証言願いますけれども、その質を調べて、さらに量において、営団に送る場合に、おそらく量目を少し甘くとか、あるいは辛くとかいうような操作がなければ、営団に行つて鑑定を受けて後に、松屋がえらい損をしなければならない場合があつたと思う。こういう場合の考慮は、松屋としてはどういうはからいをしておられたか。たとえば鑑定の仕方ですね。その質の鑑定の仕方、それから営団に対する取引ですね。これに対する甘い辛いというものは、商売人の中には、あなたは御専門家でいらつしやるから、御承知通り仁義として当然あることだということは常識なんですから、そういう観点からひとつお話を聞きたいと思うのです。
  128. 金子亀太郎

    金子証人 最初申し上げました通り、そういう点で、実際はこれを引受けますことを、最初躊躇いたしましたくらいなんであります。大体私どもにおきましての鑑定者も、相当なその道の経験者を置きましたことによりまして、ほとんど営団との間における、精算は、少しぐらいの誤差があつた場合には、それはやはり当社鑑定従つてなるべく精算をしてほしいということを、営団の方に申しておきました。最後までの間に金額的な差はございましたけれども目方における問題についてのはかり違いだとか、ないしまた目が多いとか少いとかいう問題はほとんどございませんでした。ですから、私ども鑑定して窓口から通して営団に渡したものに対しましては、ほとんどその目方については、当時、その差のあつたようなことを向うから言つて、これは違うというふうなことはあまりなかつたと思います。
  129. 中野四郎

    中野(四)委員 そうすると営団というものは、あなたのお説を推理して行きますと、すばらしい利益、結論において思いがけない不労所得を得る結果になるのですが……。たとえば全国の各デパートで、お買上げになつた品物を、個々にそれを袋に入れてお納めになる、そうしますと、営団側においては、各デパートが個々に買い入れたものをそのまま引受けるのでありまするから、その全国から集積されたものは恐ろしい出目が出なければならぬわけです。この出目に対しては営団は金銭を払つておらぬ、これは思いがけない不労所得になりやしませんか、どうでしようか。
  130. 金子亀太郎

    金子証人 しかし、今の御質問ですけれども営団の中の問題に対しては、私どもの方では出目があつたかないか、損しているか得しているか、それは私にはお答えできないのです。なぜというのに、私の方は個人単位だけの処理をしておりますによりまして、それは商売しておりまする以上、一つ一つはかつたことと総合ではかつたことにおいては、確かにそれは差は出るに違いないと思いまするけれども、ある場合にはその差がマイナスであつた場合もあるだろうし、プラスであつた場合もあるだろうと想像はいたしますが、しかし、結局営団がどうであつたかということは、私にはわかりません。
  131. 中野四郎

    中野(四)委員 営団の内容を伺うにあらずして、たとえばお取扱いになれば常識上から推理しても……。
  132. 金子亀太郎

    金子証人 それは差の出ることは出るだろう……。
  133. 中野四郎

    中野(四)委員 当然出差がなくちやならない、入り差があるわけはないのですから……。あなたの方で量目でもごまかして営団に送れば別ですけれども、おそらく信用のあるデパートの各買入れ機関が、さような目方をごまかして、いわゆる高くして送るわけはないのですから、正確なはかりに出る限りにおいては、正確な面において出される。これを営団に個々としてお売りになつた、そうして利益金の手数料をお受取りになつたとおつしやるのですから、そうしてみますれば、営団では、常識上から推理すれば、あなたにお聞きしても、あなたが推理しても、全国から集まつて参りまする買入れのダイヤモンドの出目というものは、入り差のあるわけはないですから、出差があるのですから、出差が相当多くなければならぬ。私は常識上推理してどうかとお伺いしておる。デパートで相当不当なやり万でもしておればともかく、私があなたに一番最初に伺つたように、国のために利益を度外視してお互いにおやりを願つたのでありますから、おそらくその当時のはかりとして、正確を期しておられたのだろうと私は信じて疑いません。あなたの御人格からいつても、おそらくそういうことは信じられるのですけれども、しかしながら結果といたしましては、これが営団に集積されれば、私は莫大なる出目とならなければならぬと思うのですが、この点についてあなたはどうお考えになるか、伺つておきたいと思うのです。
  134. 金子亀太郎

    金子証人 さあ、その出目が出るとも申されますし、その出目の出方が、おつしやる通りたくさん出たか出ないか、そういう点は私にはお答えできませんが、しかしそれは確かにマイナスの場合もあろうし、プラスの場合も事実ありましよう。総合的にはかります場合には、出ることはたしかだろうと思いますけれども……。
  135. 中野四郎

    中野(四)委員 まあいずれ営団の方にその点は伺うといたしまして、私は、今のあなたの御証言から推理をいたしますれば、当然営団には、金銭を国民に払わざるところの不労所得に価するところの出目が、大小にかかわらずあるものと推定するのですが、あなたの御答弁はそれ以上を求めるものではありませんから、大体の話を聞いておけばけつこうです。
  136. 金子亀太郎

    金子証人 私どもの店の範囲内におきましてお答え申します。
  137. 中野四郎

    中野(四)委員 さらに一つ伺いたいのでありまするが、あなたは営団本部の再鑑定室にお行きになつたことはございましようか。
  138. 金子亀太郎

    金子証人 一、二回見たことはございます。そのやつておりますところを……。
  139. 中野四郎

    中野(四)委員 このダイヤモンドが大体日本銀行の地下室に今日集積されまする過程を、だんだん私らの方で探つて行きますると、第一番は、何といつても、一般国民から買い上げた。あるいは外地から来た占領品もありましようし、掠奪品もあるかもしれません。あるいは海軍陸軍等で持つてつたものがあるかもしれませんが、こういうものがいろいろな形において接収されて、たといその正確は期せられぬまでも、日本銀行の地下室に今日あるわけですから、今後のこの処理をめぐつてでありますが、私が今日お伺いしたいのは、営団の再鑑定室というところにおいては、おそらく相当疑惑をもつて見なければならぬほどのいろいろな事件があるのです。例をあげますると、たとえばこの再鑑定筆でやつておりまする当時、非常に粗雑な扱い方をしておるのですね。あなたは御存じはないでしようが、先ほど委員長から御質問がありました池山さんという方に、先日大蔵委員会証人に出ていただいたのです。この行政監察委員会大蔵委員会とは、その本質を根本的にかえまして、大蔵委員会では、当時接収に際して大蔵省は全然関知していなかつたというのが、私らの調査の中心でありました。行政監察は、行政が正しく適正に行われているか行われていないかということを、総合的に監察するのが目的でありまするから、はなはだぎようぎようしいようでありまするが、先ほど御出席を願つても、やはり宣誓をしていただく。大蔵委員会における当時の池山証人発言によりますると、ダイヤの取扱いというものが、まあ俗な言葉ですけれども、石ころを扱うように、きわめて多くなつて来たから、粗雑に扱つた。たいへん貴重なものを扱うような取扱いをしていなかつたということを証言しているのです。必ずしも私はこの池山さんの言うことを全部信用いたしませんが、かりそめにも、あの再鑑定室で、当時全国からダイヤモンドが思いがけない国民の愛国心の結果、九倍も十倍もどんどん出て来る。この取扱いに対しては、私は必ずしも当を得た、慎重を期してやつてつたとも考えられない節があるのであります。そこで、あなたは、営団本部の再鑑定室にお行きになつたことがあるかどうかと伺い、さらにもう一つ伺いたいのは、再鑑定室鑑定をしておりまするときに、空襲がありますな。空襲なんかの場合には、一体今のダイヤなんかや貴金属というものは、どういうふうに扱つたのでありましようか。
  140. 金子亀太郎

    金子証人 空襲当時の何は何ですね。どういうぐあいにそれを集めて、それを保管し、あるいは責任をもつて何したか、ちよつと考えられません。戦争のはげしくなつた当時は、七階、八階の営団のぐるりは、土嚢といいますか、土俵といいますか、砂袋をすつかり積み上げまして、鑑定室の前のところですか、やつておりましたが、避難するときは、私ども地下室よりほか避難所はないのでありまして、社員そのほかが一括避難するのは地下室だけでございまして、その中に一緒に逃げたのかどうなのか、また持つて出たのか、その点をちよつと記憶はないのであります。
  141. 中野四郎

    中野(四)委員 あなたが直接再鑑定窒の責任者ではございませんから、御無理はないと思いますが、お宅の場合はどうなすつたでしようか。たとえば、買い入れて、松屋の信用において二、三日預かつておきますと、短期間のことでありましても、お宅にも相当の数量が来ておつたと思いますが、空襲等の場所はどういう処置をとられたでしようか。
  142. 金子亀太郎

    金子証人 あれはたしか手金庫、トランク三個か四個かを、責任者がみなそれぞれ、責任分担しておりました。いよいよとい場合はそれに全部入れまして、それを持つて地下に行きました。
  143. 中野四郎

    中野(四)委員 池山君の言う証言が全部ではありませんが、先ほど委員長があなたのところの地下室を聞いたのでありますが、地下室は、大体陸軍の軍需品とか雑貨とか、軍需省の雑貨とか、公益営団の雑貨とかいうものがあつたと思いますが……。
  144. 金子亀太郎

    金子証人 地下室は広いから二つにわかれておりました。
  145. 中野四郎

    中野(四)委員 全部貸しておつたわけではないのですね。
  146. 金子亀太郎

    金子証人 一部分です。
  147. 中野四郎

    中野(四)委員 そうすると地下室営団の……。
  148. 金子亀太郎

    金子証人 金庫はたしかなかつたと思います。これは確言できませんけれども……
  149. 中野四郎

    中野(四)委員 営団金庫地下室にないとすると、営団の再鑑定室では、全国から集まつて来る物品はお宅で全部あそこへ集積するのですが、どういうようなことをしたのでしようね。あなたに聞いても無理かもしれませんが、まあ想像でございますかね。
  150. 金子亀太郎

    金子証人 やはりそのひその日に鑑定した総額のものは、毎日いずれかにお運びになつたのではありませんか。ですから、その処理はその一日の仕事の分だけのものじやないのでしようか。ですから、鑑定室へ持つて来る鑑定者も、あの部屋は先ほど申しました通り十坪内外のところでありますから、鑑定人の人数も何人おりましたか、多分六人か七人でやつてつたのではないかと思います。ですから、やはり鑑定にも限度がありますから、その限度の範囲内だけはそこでやつてつたのではないかと思います。
  151. 中野四郎

    中野(四)委員 そこでもう一点伺つておきたいのですが、お宅の鑑定人の方が二名おいでになるようでありますが、この方はお宅の店にずつとお見えになつて、今日もおられるのですか。あるいはどこかで別に店でも開いていらつしやるのでしようか。
  152. 金子亀太郎

    金子証人 現在その二名はいずれに参りましたか、ただいまのところわかりません。当時のその用員は店の社員ではございませんでした。当時貴金属の取引先から推薦してもらいまして、その道に明るい者を二名臨時に雇つたわけであります。
  153. 中野四郎

    中野(四)委員 マレー大佐事件というものがありましたが、金額にして約六千万円ばかりのものをアメリカに持つてつたというのですが、その後横浜の第一号法廷で裁判があつたとき、買入れをしておりました方々の鑑定人に大分各方面から横浜に来てもらつておりましたが、このときに鑑定にお行きになつたことがありましようか。
  154. 金子亀太郎

    金子証人 当時たしか鑑定人を差向けたと思います。
  155. 中野四郎

    中野(四)委員 当時の状況がおわかりでございましたら、御記憶だけでけつこうですから伺いたいのです。これは、こちらから正式に向うの軍法会議の結果を問合せておりますけれども、なお詳細を伺たいのでありまして、もし御存じでしたら御記憶の分だけひとつ……。
  156. 金子亀太郎

    金子証人 二十三年の暮れでございましたか、ある事件があるによつて、お前のところでダイヤモンドを扱つた方法その他について、詳細を英文で報告せよという通知がございましたので、英文にして出しました。その当時、御承知通り大きい粒というものはあまりございませんものですから、鑑定人にはよく質的記憶があるらしいのでございます。また目方等も頭にあるらしいのです。当時裁判所へ鑑定人が行きまして、それを鑑定いたしまして、確かに買い入れた品物であるということをたしか証言したという話を聞きました。
  157. 中野四郎

    中野(四)委員 枝葉にわたつて悪いのですけれども、その後日本銀行にこの品物が返つたという説と返らぬという説がありまして、ある鑑定人はその品物は日本銀行にある。たとえて言えば、当時横浜の第一号法廷へ行つて、マレー大佐事件ダイヤモンドとして、ダイヤモンドの買入れの覚えがあるか。         ————— 当時は最高八カラツトばかりのものが一番大きかつたと言われておりまするが、まあいろいろ総合いたしますると、中に四カラツト七二というのがきめ手になつて、重労働十年、その後五年に負かつて、二年実役をして、今保釈で出ているという話ですが、その問題はとにかくとして、初め持つてつた量目がどのくらいであつたかよくわからないのです。それで、あれは全・部出さなかつたのだそうです。鑑定するのに、お前大きいのを扱つたか、小さいのを扱つたかと聞いて、大きいのを扱つたのは大きい部屋に連れて行つて、この中に覚えがあるか。         ————— つまり今度の大蔵省接収解除貴金属の国会に向けての報告を見ますと、金、銀、白金、ダイヤモンドは書いてありますか、貴石というのがあるのです。たとえば螢石というのですか、何というのですか、私は知りませんが、猫晴石とかサフアイヤとかいうものがあるのです。私は貧乏人ですから持つたことはないのですが、とにかく相当の種類がある。こういうものが当時非常に買われているのです。たとえて言えば、こういうのは装身具量とかいろいろなものにつられて買われたものならんと思うのですが、これらは、政府が何も電波探知機をつくつたり飛行機をつくるのに必要じやないのだけれども、買い入れているのです。しかもそれが接収されておるのですが、解除されておらないのです。大蔵省から国会に向けて提案して参りました接収貴金属等の数量等の報告に関する法律案の内容を見ますと、貴石というものが一つもないのです。どこへ行つてしまつたかわからない。当時デパートなどでも、買い場所になつたから相当の数量があつたわけです。あなたのさつきの証言で見ても、首飾りとか指輪とかいろいろなものがあるが、その中の大事なものがない。しかもマレー大佐事件というものをハリク大佐が発見をし、マレー大佐の事件が起りますにあたつて、横浜の第一号法廷においては、貴石というものが相当鑑定の中に出ております。でありますから、私らはふしぎでしようがないのです。国民が戦争に勝ち抜きたいという一心で、愛国の至情より献納同様に供出したものが、当時の行政の不円滑から、あるいは軍の怠慢から、こういうように国民にひどい目にあわしたあげくに、さらにこういう大きな損害を与え、その結末が明らかにならぬということは、われわれは何としても納得がならない。国会でダイヤモンド事件を取上げるというのは、探偵小説のように見えますけれども、私はそうは思わない。これほど重要なことはない。どこの国だつて、敗戦国なら、道義の確立と申しますか、道義の武装と申しますか、はつきりした徳義の上に立つて、こういうものの処理が行われなければならないと思います。そういう観点から私はごまかしをなおざりにしておくことはいけないと思いますから、お聞きするのですが、大体専門家として一目ごらんになれば、どのくらいのカラツト数か、これはお聞き及びにならなかつたのでしようか。鑑定人の方から御報告はなかつたのでしようか。
  158. 金子亀太郎

    金子証人 とにかくあの結末のときは戦争中でありまして、自分らの店を守ることすらもえらい問題で、右往左往しておる時代ですから、買い上げられました総数……。
  159. 中野四郎

    中野(四)委員 そうじやありません。横浜のマレー大佐の鑑定人にお会いになりまして、鑑定するときに出した——この中からと言われたその総数が、何カラツトくらいかわからない、見当がつかない。だからおよそどのくらいあつたかということを、鑑定人からお茶飲み話か何かでお聞きになつておるかどうか伺つておるのです。
  160. 金子亀太郎

    金子証人 当時出しまた鑑定人は、私面接してやつたわけでもないし、事実の話、帰つて来た報告も聞きません。今の御質問の点は、自分らとしても最も聞きたいような点でもあるししますが、本人は多分存命中だろうと思います。よつてよく尋ねてみまして、資料になるような材料がありました場合には申し上げましよう。
  161. 中野四郎

    中野(四)委員 それではもう少し、御迷惑でございましようが、伺います。先ほどのお話ですと、たとえば店で鑑定して買い上げたダイヤを、売手ごとに袋に入れて再鑑定室に持つて行き、再鑑定室において再びこれを鑑定した結果、品質が袋の上書より悪い場合がありますね。鑑定のさらに鑑定ですか。お宅の方では何等級鑑定しても、事実再鑑定室における再鑑定が、それ以下の等級であるという結論を得ることがありますね。それから、カラツトが表書より低い場合があれば、もちろんあなたの方に返して来ますが、その場合、百貨店はその売主に対してどういう処置をとつていらつしやつたでしようか。
  162. 金子亀太郎

    金子証人 とにかく売主の利益を本位として、先ほど申しました通り十分注意してやるのです。それと同時に、金は私の方から先払いしてしまうのです。そのあとにおいて等級についての問題が起きました場合も、それはほとんどただ一級上か下かという程度でしようが、そういう場合には、いわゆる見解の相違といいますか、見方の相違といいますか。かけ合つて、大体こつちの鑑定通りにしてもらつたようなことは往々あるようであります。ただ計一算違いにおける場合でございますが、こういう場合におきましては、金の過不足というものについての訂正はお互いにいたしました。
  163. 中野四郎

    中野(四)委員 それはいくら国のためにでも、やはりあなたのところは株式会社ですから、そうむちやくちやに損したならば、株式会社は成り立ちませんから……。
  164. 金子亀太郎

    金子証人 損は絶対にいたしません。
  165. 中野四郎

    中野(四)委員 そこで伺いたい。鑑定違いで、いわゆる品質とかあるいはカラツトが少かつた場合、お客に先払いしてしまう。それであなた方で損をしないという結論になると、そうしばしば損してはかなわぬから、買い入れるとき少し甘く見ておくというような結論になるのではないでしようか。
  166. 金子亀太郎

    金子証人 そういうことはございまん。
  167. 中野四郎

    中野(四)委員 どうして損しないことになるのですか。
  168. 金子亀太郎

    金子証人 営団の方へ行つて営団の方で、自分らの方の鑑定したことと向うの鑑定との差というものについて、かりに質問が出た場合には、それによりまして、向うの鑑定者とこつちの鑑定者と話合いさせます。鑑定の差というものは、これは傷があつたとかなかつたとかというふうな問題です。つまりそれは等級の差で、機械でやることですから、目方にはほとんど間違いがないのです。ただ品質の点でございますね。そういう場合には、私どもの方でも、向うの方から質問のあつた場合には、こつちの理由を十分申し述べまして、そんなに問題は起きなかつたわけであります。ただ一、二——大粒のものならいいのでございますけれどもダイヤモンドといいますのは、一カラツト二分の一のもあれば、二十分の一のもあるし、こまかいのをちりばめてありますのは、極端に言えば百分の一くらいの小さいのもあります。つまり指輪にこまかくなつたのが入つたのは、一々それを勘定しまして、これは何箇入つていますとか、二十箇入いていますということをお客の方にちやんと言いまして、預かり証を出して受取ります。その中で、ホワイト・サフアイアと申しまして、ダイヤとそつくり違いのないのがあるのです。それを窓口の私ども社員でまだあまり鑑識の目のきかないのがおりまして、そういうので往々損をしたのはございます。これは営団に対しては水かけ論でございますが、そういうことの損はございました。
  169. 中野四郎

    中野(四)委員 もう一点だけ。売る方は大体しろうとですから、あなたの方で、等級はこのくらいだつた、あるいは目方はこのくらいだつたとおつしやれば、それでオーケーと言うよりしかたがない。それをはかるとか、反駁する証拠もないし、むしろその当時は売るのが目的じやなくて、国家のためにというのが目的でしたから、あなたの方にそういう御意思があれば別ですが、自然に百貨店の方も買入れに対して手心を加えぬかと思つてつたのです。してみると、当時においては、再鑑定室とあなたのところの鑑定人は、密接なる連絡をとつてつたと見てよろしうございますか。
  170. 金子亀太郎

    金子証人 それは全然違います。また筋は違つてつております。
  171. 中野四郎

    中野(四)委員 そうしますと、今の買入れ……。
  172. 金子亀太郎

    金子証人 しかし同一業者のことですから、顔見知りにはなつてつたでしよう。
  173. 中野四郎

    中野(四)委員 私のお尋ねはそうではない。あなたの先ほどおつしやつた、今の再鑑定人とうちの鑑定人とが話合つて、そういう誤りをなからしめているとおつしやるから、してみれば、あなたのところの七階か八階かにあつた鑑定室の再鑑定人とお宅の鑑定人は、平素密接なる関連のもとに、買入れをやつてつたかどうかということです。
  174. 金子亀太郎

    金子証人 それはありません。
  175. 中野四郎

    中野(四)委員 そうしますと、先ほどのお話とちよつと違いますね。
  176. 金子亀太郎

    金子証人 それは違います。というのは、差の出たような場合には、こちらの鑑定人の申出によつて向うでもう一ぺん再鑑定をしていただくというのでございます。
  177. 中野四郎

    中野(四)委員 ほかの方の御質問がありますから、私はこれで終りますが、大蔵省ダイヤモンドが、中央物資活用協会ないしは交易営団とかいうふうなところに、法律上の建前からもし返される場合があつても、あるいはこれが国家の臨時収入として国家の所得になりましても、いずれの機会にか、このダイヤモンドは一般の市中に出る可能性があるわけです。つまり日本銀行の地下室から、近い将来に日の目を見るわけです。そこで、伝え聞くところによりますれば、業者の連中が近ごろ盛んに心配をして、何と申しますか、いろいろ組合のようなもの、親睦会のようなものをつくつて、この受入れ態勢に今いろいろな形をとつているということですが、お聞き及びになつておりましようか。あるいはあつたとすれば、あなたは御関係になつておりましようか。この点だけ伺つておけばけつこうです。
  178. 金子亀太郎

    金子証人 何かそういう話があるようですけれども、私どもそういうことを現在の立場としてあまり詳しく聞いたことはございません。それからまた、私もそれにはもちろん関係はございません。
  179. 中野四郎

    中野(四)委員 これで私は終ります。
  180. 内藤隆

    内藤委員長 それでは、次に田万廣文君に発言を許します。田万君。
  181. 田万廣文

    ○田万委員 お尋ねいたします。  大体中野さんから詳しいお話があつたので、質問の中で抜けたところを二、三点私がお尋ねしたいのは、先ほどの御証言の中に、品質については、持つて来たお客さんによく納得していただいておるというお話がありましたが、その納得ということについての方法ですが、それは量目をはかるとき、あるいは品質を検査するときは、一々持つて来たお客さんの目の前でやられたわけですか。
  182. 金子亀太郎

    金子証人 最初お持ちくださいましたときに、ありのままを見まして、これはきずがありますとか、ありませんとかいうことを申し上げて納得していただく。
  183. 田万廣文

    ○田万委員 持つて来ておるお客さんは、自分の所有物について、品物がどういう品質のものであるかよく知つておりますか。品質の何等であるかということについて了解を持つていて持つて来るお客さんが多いですか。
  184. 金子亀太郎

    金子証人 いや、お客さんは、御自分の持つておりますものに対して、品質のどうという——大体少しきずがあるとかないとかということの問題、また悪いダイヤであるとかいいダイヤであるとかというふうなことについて、お客さん自体はよくはわからない。ただこつちへ持つて参りました場合に、私の方でそれを申し上げます。
  185. 田万廣文

    ○田万委員 これは疑えば切りがない問題ですから、怒らないで聞いていただきたい。もし鑑定をするお宅さんの店の者が心よからぬ者であるとすれば、いかような取扱いもできぬことはないことになるわけです。品質の点についてきずがあるとかないとかということは一目瞭然です。しかしその実体の品質については、お客さんは、大体ぜいたく品で金にまかせて買うておる人が多いので、高ければいいものだろうという観念しか持つていない人が多い。その実体の品質はどの等級であるかということについて知らない人が多い。そういう点について、大きな間違いを起したとは思わないけれども、起せば起し得る可能性もあるのではないかということをお尋ねしておるわけです。
  186. 金子亀太郎

    金子証人 それは疑えばむろん……。御自分の持つておるものが非常にいいものだと思つてつた。ところが見てもらつたらそうでもない。二級のものだ。しかし持つて来ましたときに、そのものをそこへ置いておいて申し上げるのです。また、私どもを信頼してお預けして参りますお客さんのことですから、自分の方でも誠意を持つて見て差上げております。
  187. 田万廣文

    ○田万委員 お宅の力で一応鑑定をなさつて、それからまたもう一度営団の再鑑定のところへ持つて行く。その再鑑定のためにあなたの方で持つて参るのは、どなたが持つて参るのですか。
  188. 金子亀太郎

    金子証人 それは私どもの方の社員が持つて参ります。大体私どもの方の買入れと申しましても、営団窓口を私どもの方で引受けてやつておる仕事ですから、この仕事は松屋の営業ではないのであります。それでありますけれども、自分のところでもつて扱うのですから、自分のところで一応の鑑定をし、一応の処理をし、そうしてこれを営団の方へお渡しすることになります。松屋と申しましても、窓口営団窓口を私の方で代行してやつておるのですから、伝票その他すべての書類は、営団の指定の伝票によりましてこれを処理しておりますので、そういう疑義を生じた場合でも……。
  189. 田万廣文

    ○田万委員 先ほど中野君の質問に対して、あなたの方の初めの鑑定と再鑑定との間に不一致のものがあつたということをおつしやつたが、これは間違いありませんか。
  190. 金子亀太郎

    金子証人 それは数の中でありますから、たまにはありました。
  191. 田万廣文

    ○田万委員 どういう鑑定の不一致が多かつたのですか。
  192. 金子亀太郎

    金子証人 それはやつぱり等級ですね。鑑定の仕方が、私の方で最上のものと見たものが、向うではそうでもなかつたという場合もあり得ると思います。しかしそれは数はありません。
  193. 田万廣文

    ○田万委員 あなたの方で一等といいますか、私はあまり品格のことは知りませんが、かりに一等と鑑定したものが、再鑑定に行つたところが三等品であつた、そういう場合が多かつたというのですか。
  194. 金子亀太郎

    金子証人 いや、そういう場合はありません。鑑定人は常識を持つて、両方ともそれに対する権威ある者がやつておりますから、一等品が三等品などということはないのです。
  195. 田万廣文

    ○田万委員 今ちよつとお話の中に、不一致の点が多かつたということをおつしやつたのですが……。
  196. 金子亀太郎

    金子証人 多くはないが、そういうことがあつたというのです。
  197. 田万廣文

    ○田万委員 その点は鑑定のことで不一致の点があつた、これは間違いありませんか。
  198. 金子亀太郎

    金子証人 品質の点です。そういうふうな場合があつたこともあります。
  199. 田万廣文

    ○田万委員 その際には、どちらの鑑定をもつて最終の鑑定とするのですか。
  200. 金子亀太郎

    金子証人 それは営団の方の鑑定が最終です。         ————— どういうお話ですか、そういう場合には、どつちの鑑定をもつて正確なものとしたかというお話ですか。
  201. 田万廣文

    ○田万委員 そうです。
  202. 金子亀太郎

    金子証人 それは向うの場合もあつたろうし、こつちの場合もあつたろうと思います。
  203. 田万廣文

    ○田万委員 再鑑定というのは、念を入れるためにやるということはわかるけれども、あなた方の鑑定が正しくて、再鑑定のものが間違つておるという場合もあり得る。その際には、あなたの方としては、自分の方の鑑定が間違つてつたとして、再鑑定をそのままうのみにするということは、その当時当然なされていたわけですか。
  204. 金子亀太郎

    金子証人 そういうこまかいところまで鑑定のことはやつておりませんから、よくわかりませんけれども鑑定について場合の起きたことも、それは二、三はあつたようですが、これだけの数の中で一、二回くらいしかそういうことはなかつたわけです。こまかいものにおいてある。それは大きなものにはないのです。たとえば先ほど申しました三十分の一とか五十分の一とか、そういうこまかいものに、これは悪いぞ、これは違うぞというふうな場合もあつたろうと思うのです。一、二回そういうことがあつたということを聞いただけで、問題を起すようなことはありません。
  205. 田万廣文

    ○田万委員 一、二回あつたと言うが、一々あなたは報告を承つてつたわけですか。再鑑定鑑定とが一致しなかつたという場合、それはあなたの記憶においては一、二回であつたかもしれませんが、実際においてはそれよりはるかに多いケースがあつたのではなかろうか。
  206. 金子亀太郎

    金子証人 いや、それは清算されておりますから、ないと信じております。
  207. 田万廣文

    ○田万委員 それはわかるが、一、二回という……。
  208. 金子亀太郎

    金子証人 一、二回というのはこれでわかりません。
  209. 田万廣文

    ○田万委員 何でわかりますか。
  210. 金子亀太郎

    金子証人 当時の記憶で、下の者からそういう話もありました。非常にこまかい話になりますけれども……。
  211. 田万廣文

    ○田万委員 最後に一つお尋ねいたします。先ほど松屋がやつてつたというのは、営団窓口だということを言われましたね。手数料等の利益なんかは会社の利益としておつたわけですか、なかつたわけですか。
  212. 金子亀太郎

    金子証人 それは会社の利益を頂戴いたしました。
  213. 田万廣文

    ○田万委員 そうするとどういうことになりますか。
  214. 金子亀太郎

    金子証人 つまり代行した手数料……。
  215. 田万廣文

    ○田万委員 それはどういう基準においていただいたのですか。
  216. 金子亀太郎

    金子証人 それはダイヤモンド買上げ金額に対して、たしか三分いただいておりましたが、これは先ほど委員長に申し上げました通り、途中で歩がかわりましたから、それはあとで調べましてお届けいたしましよう。
  217. 内藤隆

    内藤委員長 事務局へ数字は報告いたさせます。
  218. 田万廣文

    ○田万委員 戦争中には、ダイヤに限らず、あらゆるものが強制供出というようなことに相なつて、任意的に出したという人もあるかもしれぬが、隣組なんかの関係で非常にやかましく言われて、出さなければ非国民であるという認識のもとに出した人も相当あるのです。その虚に乗じていろいろな不正が全国のちまたに起つてつたということは、これはあとでよくわかる。終戦当時のどさくさに出したものは、これはダイヤに限りませんが、出したわ、終戦になつたわ、とりに行つたらなかつたという事例が全国にたくさんあるわけです。そういうような国民的な気持からいつて、とにかく国のために出したやつがどこへどう流れたかさつぱりわからないところに、今日大きな疑問があるわけです。その意味でこの委員会としては調べておるわけですが、空襲なんかあつた時分は、物より命ですから、物はおつぽり出して命からがら逃げてしまつた。逃げてしまつたあとで紛失したというような事実は、お宅さんの方ではあまり聞いておりませんか。
  219. 金子亀太郎

    金子証人 私どもにはございませんです、この取扱いにつきましては。
  220. 内藤隆

    内藤委員長 それでは横路節雄君。
  221. 横路節雄

    ○横路委員 証人お尋ねいたしますが、窓口受付の鑑定人につきましては、先ほどのお話では、お宅の方のお店の鑑定人が応召その他でいなかつたので、貴金属の取引先の方から頼んで雇い入れたというお話でございますが、間違いありませんか。
  222. 金子亀太郎

    金子証人 そうでございます。
  223. 横路節雄

    ○横路委員 そうすると、そのときのお宅の方のお店とその鑑定人との身分関係、雇用関係はどうでしよう。たとえば臨時社員とかなんとか、いろいろ名前はつけたでしよう。それはどうなつていますか。
  224. 金子亀太郎

    金子証人 それは臨時社員にはいたしませんで、鑑定だけの仕事でもつてお願いいたしました。用人でございました。
  225. 横路節雄

    ○横路委員 先ほどのお話の中で、お宅の方で窓口受付をした場合の目方については、再鑑定の場合とあまり差異がなかつたというお話で、ございました。先ほどからお二人の委員からもおがございましたが、品位については一体差異があつたのかなかつたのか、その点明らかにしてしただきたい
  226. 金子亀太郎

    金子証人 先ほども申し上げました通り、一、二回そういうことを当該事務を担当さした者から耳にしたことがありましたけれども、しかし全体からいつたらほとんどなかつたわけであります。一、二回そういうことがあつたことを聞いただけでございます。
  227. 横路節雄

    ○横路委員 そうすると、あなたの方の鑑定人と、営団の方でやつた鑑定鑑定人とは同じ鑑定をした、鑑定の仕方にまつたく差異がなかつたと、あなたはお考えになつておるわけですか。
  228. 金子亀太郎

    金子証人 ほとんどありませんでした。
  229. 横路節雄

    ○横路委員 先ほど一、二の点について差異があつたというが、その差異の状態ですが、その差異のあり方に二通りあると思うのです。たとえばあなたの方で品位を上に見たのだけれども、再鑑定した場合に品位が下であつた、だから前に支払つた金については違う、こういうやり方もありましようし、あるいは物によつては、あなたの方で低品位のものであると鑑定したけれども、再鑑定の結果は高品位である、こういう場合だつてあろうと思う。あなたの方で一、二差異があつたというが、一体どういう差異であつたか、それをお話していただきたい。
  230. 金子亀太郎

    金子証人 先ほども申しましたようにあまり記憶がない。どういう状態であつたか具体的なことはわかりませんけれども、こまかいものの中に、こちらから品位の等級について計算して出したものが、向うが見た目で、これはもつと低いのであるという質問のあつた場合もたしかあつたということを、先ほど申し上げましたわけです。これも大きな数の問題から起きたわけではないので、一、二そういう鑑定の差異があつた。必ずしも私どもの方で鑑定した通りに、全部そつくりそのまま向うで再鑑定した、最後まで。パスしたということは——ほとんどそれは通つておりましたけれども、こういう鑑定の上のことですから、一、二回そういう等級についての質疑があつたということを申し上げたわけです。
  231. 横路節雄

    ○横路委員 あなたの方で雇い入れた二名の鑑定人なんですが、この人には今私があなたにお尋ねするような気持はなかつたでしようか。それは、目方と品位について鑑定をして伝票を切つて、一旦お客さんに金を支払つた、ところが、あとで調べた結果間違いがあつたので、あなたの方に渡した金について間違いがあつたから、もう一ぺん出て来てもらいたい、金は余分に渡したが、この分だけは少し品位が違つたのたから返してもらいたい、——そういうことが繰返されれば、どうも店の窓口の信用にかかわる、従つてそういうことのないようにしたいというために、品位については再鑑定人との立場もいろいろあつたでありましようから、目方についててははかりでやつたでしようが、鑑定については比較的甘く見て、お店にあまりめんどうをかけたくない、そういう配慮は二名の鑑定人にあつたのでないだろうかと私は思うのですが、あなたのお考えはどうでしようか。
  232. 金子亀太郎

    金子証人 お話は、その差異についての質問が多いようですが、実は私の方は客本位でして、お客さんにはなるたけ高く評価するように、そうして目方もよく、はかり不足のないように、渡し金の不足のないようにお支払いしたいのが本位で、どつちかと言えば、営団からは品位その他について少し甘い、そういうふうな点を言われた場合があつた。私が一、二回その品位について鑑定上話合いがあつて、これを申し上げましたことが、たまたまどうもあまり深い御質問になつておりますが、そういうわけなんです。
  233. 横路節雄

    ○横路委員 私が証人お尋ねしておるのは、当然あなたのあとにまた再鑑定に当つた方においでをいただいて、私たちはお聞きをするわけで、そういう立場であなたにもお伺いしておるわけです。私は再鑑定という必要はあまりなかつたのでないだろうか、こういうふうに思うのですが、あなたのお考えはどうですか。
  234. 金子亀太郎

    金子証人 そう申されれば、ほとんど再検査といつたような程度で、窓口の厳重なる鑑定というものが一番基本でございます。
  235. 横路節雄

    ○横路委員 その次にお尋ねいたしたい点は、前の二人の委員からもお話がございましたが、一番最初は、装身具その他の場合には、ダイヤをとりはずして、目方をはかり、品位を鑑定してすぐお金を払つた、ところがだんだんたくさん来るようになつてから、三日、四日あとにとりに来るようになつたというのですが、そういう場合の保管はどういうところにしておられたのでしようか。
  236. 金子亀太郎

    金子証人 それはまだ未整理中のものは私どもの方で保管いたしました。大体その日に繰上る程度をお預かりするつもりでおるのですけれども、どうしてもやはり残りますので、手前どもで扱つております品物の程度と申しましても、もうほとんどお預かりしたものと、検査中のものと、それから営団に納むべく整理したものと、こういう三段階のものだけでありますによつて、まず手金庫、それからその他トランク二つ、この中にはとんど収容できるものが一日の仕事でございました。こまかいものでございますから……。
  237. 横路節雄

    ○横路委員 一つだけお聞きして終りたいと思います。先ほどのお話で、品位に差があつた場合に、あなたの方の鑑定人が再鑑定人と話合いをして了解をしていただいた、こういうように、先ほど前の委員質問にお答えになられていますが、それで間違いございませんでしようか。
  238. 金子亀太郎

    金子証人 それは途中たしか一回だと思いましたが、鑑定の仕方ということについての打合せといいますか、営団の人と立会いの上で一応申合せしたこともございます。
  239. 横路節雄

    ○横路委員 私はその申合せを聞いているのではないのです。あなたが取扱つたうちで、一、二件あなた方の方の鑑定の品位と再鑑定の場合の品位と合わなかつた。その点については、前の委員の方の御質問に、あなたの方の鑑定人と再鑑定人との間で話合いをして了解していただいた、こういうように先ほど御答弁がありましたので、それで間違いがないかどうかということを、私はお聞きしているのです。
  240. 金子亀太郎

    金子証人 先ほどそう申し上げたのですけれども、実際は、打合せをして解決したその実態を、私がそこでもつて見ておつたわけでもなければ、それを命じたわけでもなく、そういう結果について当該係から、こういう問題の起きた場合に、向うと話し合つて解決したこともあつたということを私が聞いたものですから、事実それでいいかとおつしやられましても、私は実態はその当時見ておりませんので、そうであることをお答えできないのです。まことにどうも避けますようですけれども、よくまだ記憶が出ないのでありまして……。
  241. 横路節雄

    ○横路委員 今の証人のお話で、品位の鑑定について食い違いがあつた。この点は先ほど証人からもお話があつた。それについては、こちらの方に買上げをしたお客さんを呼んで、金の支払い勘定について再計算をするまでもなく、再鑑定の方と話合いをして了解がついて、そういうことをしなくてもよかつた。ただその場合にあなたが立ち会つたのでなしに、鑑定人から報告を受けた。それは再鑑定人との間で話合いをして、そういう点があつたが、了解をしてもらつたという報告をあなたは受けた。今の答弁がこういうように私たち受取つてよろしゆうございますか。
  242. 金子亀太郎

    金子証人 しかし鑑定人自体はうちの用人でありますによつて、私の直接使つております部下の社員が、むろんそういう場合には立ち会いまして、話合いをして解決したことだろうと思います。鑑定人同士の任意でやるというのでなく、責任は鑑定人にはない。鑑定する上においての意見はありますけれども、解決については鑑定人の責任ではないのです。それは私どもの方の担当しております係の責任であります。
  243. 横路節雄

    ○横路委員 私はあなたの窓口ばかり聞いているのではないので、あなたの方は幸い八階に再鑑定の室があつたから、話合いその他簡単にできたでしようが、実際に各地から送られるものについてはそういうことはできなかつた。その点については、再鑑定をしたところの鑑定人からいろいろまたお聞きしたいと思います。  そうすると、今のお話ではどういうことになるのですか。あなたの方で買い上げて、再鑑定をして、再鑑定人がその品位については違うと言つて来た。そうすると、あなたの方の担当の社員といいますか、だれかと営団の者とがそういう鑑定人を抜きにして話合いをして、了解をしたというわけですか。
  244. 金子亀太郎

    金子証人 そうじやない。そういう問題の起きた場合の処理といたしましても、事務の責任者がおりますから、それを通しての話になります。  順序を簡単にもう一ぺん申し上げますが、鑑定の方は、つまり私どもの方で一応鑑定しましたものを、営団の指定の組織による伝票に一切記入整理しまして、一日の扱い口数をまとめまして、その日の扱い了承したものだけを営団の方に持参いたします。たとえば本日、通し番号何番から何番まで何日というのを営団に持つて行きまして、営団においてそれを受付けてもらう。営団はそれを営団鑑定室の方にまわす。でありますが、営団の方でも非常に忙しいので、すぐそれをその翌日鑑定されるわけでもなく、どうしても四、五日くらい経過した後でなければ鑑定が済まないわけです。その済んだ後におきまして、いつ幾日の何番の鑑定の品位が少し違つてつたというふうな問題が起きたことがある。そういうことが一、二回あつたと先ほど申し上げたのです。そういう場合には、立ちもどつてそれに対する処置をする上において、爾後鑑定をする上においては、こういう点についてこういうぐあいにやつて行きたいのだという営団からの指示がありますと、私どもの方の鑑定の方にそれを伝達しなければならない。そういう場合に、鑑定上のことでありますによつて、話を聞かしたことがあつた、こういうことを申し上げたわけであります。
  245. 横路節雄

    ○横路委員 そうすると、あなたの方で取扱つた件数については、結局一件も品位、目方等について、再鑑定をした場合と何ら差異がなかつたのですか。
  246. 金子亀太郎

    金子証人 総括的に申し上げまして、ほんとうにございませんでした。それはまつ正の話でございます。
  247. 内藤隆

    内藤委員長 次に明禮さんに発言を許します。
  248. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 時間がありませんから簡単にお尋ねするのですが、こういうダイヤ買上げをなさるときに、営団側がやるのを松屋の方でかわつておやりになつた。そういう場合には、ダイヤは、たとえば一級品、二級品といいますか三十級ぐらいにわけられるような非常に複雑なものらしいのですが、そういうようなものであるかどうかということ、それからかりにそうだとすれば、あなたの方で買上げをされるのに、標準がなければお困りだと思う。だから一等品は何ぼ、二等品は何ぼ、そういつたような標準を示されてやられたのかどうか、そういうことを伺つてみたい。
  249. 金子亀太郎

    金子証人 おつしやる通りダイヤは世界的市場におきましても、いろいろのカタログに載つております通り、品位の等級というものはかなりあります。けれども、当時買上げのときに、そういう複雑なものだによつて、どういうふうにやつたらいいかということで、こういうものの扱いはむずかしいから、うつかり引受けられないというので、その引受けるまでにつきましては、初め営団の方へ非常にむずかしいということで交渉しました。そこで先ほどの委員長さんのお話の、鑑定人の久米さんと私話合いをしまして、そうして、たしかごく簡易に、大体三階級かの標準程度にいたしました。三段階くらいの見当でやろう。それで少くもたいていのものは上質のものとして買つて行こうじやないか、またそれでよろしいというふうなわけでございましたから、等級の幅を非常に広く持たせまして、そんなにむずかしく仕訳はいたしませんでした。
  250. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 三段階にして、それでそのときの値段はどういうふうにしたのですか。
  251. 金子亀太郎

    金子証人 たしか一番最高がカラツト二千円だと思いましたが……。あとちよつと記憶がないのですが……。
  252. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 今の再鑑定があつた関係でありましようし、また店の方のお取扱いからも、そういうようなことになつたのではないかと思いますが、初めのうちは、実は相当安くあなたの方で買い上げられたという事実がありはしませんか。どうもああいう時代でありましたから、戦争に負けてはならぬという非常な犠牲的な精神で出すのでありますから、できるだけ買い上げるというのが本体であると思うのでありますけれども、再鑑定があつたり、いろいろするので——おしまいは割に高くなつたそうでありますが、初めのうちは非常に安く買われた。一度持つて行けば、それはもう、そんなに安いのなら持つて帰るというわけに行かぬので、そこがつけ目と言つてはいかぬのでありますが、持つてつた者の弱さといいますか、非常に安くても、しかたがないから離さざるを得なかつた。自分らが買つたときの値段よりは、はるかに安かつたということを聞いております。一体それはいかがでありますか。
  253. 金子亀太郎

    金子証人 私どもでは、初めも終りもかわりはございません。
  254. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 軍需省の方では、少くとも十級の基準を定めておつて、全国的の標準をやつてつたのだということを聞いておりますが、そういうことは、あなたの方では御承知はなかつたのですか。
  255. 金子亀太郎

    金子証人 存じません。
  256. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 それじや初めのときも、あとの方も、ほとんどかわりはなかつた……。
  257. 金子亀太郎

    金子証人 はあ。
  258. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 そこで、出目のことで係ほど中野君が大分聞かれたようでありますが、〇・二ぐらい以下はとられたという話に聞いておつたのですが、本阪の方では〇・四、五くらいまで、大分下まで採算されたということを聞いておりますが、あなたの方は大阪とは偉うわけですか。
  259. 金子亀太郎

    金子証人 大阪とは違うわけです。というよりも、大阪のことは知りまけん。私の方では、先ほど申しましたように、カラツトから申しますと、つまりコンマ以下二によりまして一切を扱いました。
  260. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 そういう注意もなかつたわけですね。
  261. 金子亀太郎

    金子証人 はあ。
  262. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 あなたの方の二人の鑑定人というのは、これはくろうとですか、しろうとがおつたわけですか。
  263. 金子亀太郎

    金子証人 これはくろうとです。その道の者ですから……。ダイヤモンド鑑定というのは、比較的はつきりわかりやすいもんです。
  264. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 現在ダイヤが十六万何ぼあるというのですが、現在価格としては一体どのくらいしておるかということは、あなたは御承知はないですか。
  265. 金子亀太郎

    金子証人 市中の価格でありますか。
  266. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 そうです。
  267. 金子亀太郎

    金子証人 市価でございますか。
  268. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 市価です。今一カラツトがどのくらいするか。
  269. 金子亀太郎

    金子証人 最上の品質のものは三十万円前後ということを聞いておりますが、現在自分では取扱つておりません。当該係が店でやつておりますが、そういうことを聞いております。
  270. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 三十万前後……。
  271. 金子亀太郎

    金子証人 はあ。それは最高のものでございます。
  272. 中野四郎

    中野(四)委員 関連して——きわめて重大な証言が今行われたので、さらにもう一回伺つておきます。  ダイヤ買上げについては、今明禮委員から申し上げたように、十階級にわけて、軍需省買上げに対する交易営団の取扱いについてのきめをしております。しかも一級々々のクラスについて、それぞれの取扱いについて例を付しておるのです。御存じないと言えばやむを得ませんが、松屋において買入れの当時、三階級にわけてお買入れになつたということになりますと——間違つておれば別ですよ。三階級にわけてお買上、げになつたとすると、十クラスの中の三クラスとなれば、非常に高額の差額ができて来る。いやしくも専門家でいらつしやるあなた方が鑑定をなさつて、そうしてダイヤモンド品質について恐ろしい品位の差額があるということを、そのままお認めになつておやりになるということは、いかに営利を度外視して、愛国的におやりになつたとしても、商売が成り立たぬのはわかり切つたことじやありませんか。その点納得が行きません。しかも十階級にわけられたものに対して、三階級で適正な処置がとれたかどうか。
  273. 金子亀太郎

    金子証人 申訳ありません。三階級と明言いたしましたことを取消させていただきます。大体最高を二千円といたしまして、そうして十階級と申しますけれども、十の段階にはなかなか実際鑑定者としましても——当時鑑定者に示されました段階につきましてのこまかいことは、自分が鑑定したわけじやありませんですから、わかりませんが、たぶん階級は簡易にその間扱われておることだろうと思うのですけれども……。
  274. 中野四郎

    中野(四)委員 どうもせつかく金子さんにお忙しいところをおいでつて——だから一番最初総論的に念のために伺つたんです。委員長からも質問したんです。当時のダイヤモンド買入れの当面の責任者はあなたでいらしやり、一番精通しておるということを第一番に証言なさいましたから、私は、精通をし、しかも責任のある方が、買入れの階級すら知らないというようなことはあり得ないと思う。あなたは便法上三階級とおつしやつたが、今申し上げたように、十階級にわけて軍需省交易営団に買入れの方法を示しておるのであります。それだけの開きがある。松屋さんは、お買いになるとき、お客に対して親切に国民本位でやつたとおつしやるけれども、これじやお客に対してまことに不親切で、そうして松屋さんは営利を目的にしないという名目のもとに、非常に大きな営利を得られたと言つても、私は決して過言ではないと思う、そういうお言葉からいえば。
  275. 金子亀太郎

    金子証人 私の失言でございます。
  276. 中野四郎

    中野(四)委員 もしあなたが精通していらつしやらないとすると、どなたをお呼びしてお聞きしたら、当時何クラスにわけて、どういう処置で買い入れたということの御証言が願えるでありましようか。
  277. 金子亀太郎

    金子証人 よくもう一回当時の当該係員を調べまして、お答えする機会を与えていただきたいと思います。私といたしましても、これは非常に重大な問題でありますので、軽率にお答えできませんしいたしますから、いま一回調べて、私よりお答えいたしたいと思います。
  278. 中野四郎

    中野(四)委員 そこで委員長にお願いしておきたいのです。これは一松屋さんだけの問題ではないのです。これは全国の買入れ状況に影響する問題ですから、今の金子さんの御答弁のごとく、松屋の当時担当しておられた人をば、お帰りになつて御報告があるように聞きましたから、委員長の手元までその報告を求められて、さらに次の機会にその証人をここへ喚問されるようにお願いをいたしておきます。
  279. 内藤隆

    内藤委員長 いずれ理事会等に諮りまして、さように善処したいと思います。  ただいま証人がおつしやつたように、実際にやつた責任者をすみやかにお調べになつて委員長まで書面をもつてお知らせ願います。
  280. 金子亀太郎

    金子証人 私責任をもちまして、ただいま御質問等級その他の取扱い調べまして、書類をもつてお答えいたします。
  281. 内藤隆

    内藤委員長 他に御発言もなければ、金子証人に対する尋問はこれにて終了いたしました。証人には長時間御苦労さまでございました。  午前中の会議はこの程度にとどめ、午後二時より再開し、喜多村証人より証言を求めることにいたします。  暫時休憩いたします。     午後零時五十二分休憩      ————◇—————     午後二時二十三分開議
  282. 内藤隆

    内藤委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  これより接収解除貴金属及びダイヤモンド関係事件について調査を進めます。  ただちに証人より証言を求むることにいたします。  ただいまお見えになつておられる方は喜多村喜之助さんですね。
  283. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 そうです。
  284. 内藤隆

    内藤委員長 あらかじめ文書をもつて承知通り、本日正式に証人として証言を求むることに決定いたしましたから、さよう御了承を願います。  この際証人に申し上げますが、戦時中多数国民諸君より供出されましたダイヤモンド、金、白金等は、平和条約発効と同時に接収解除となりまして、現在日本銀行地下の倉庫に収納され、大蔵省によつて保管されておるのであります。このダイヤモンドの収納保管の経過、処理方法等につきましては、世上大いに疑惑を持ち、多大の関心を抱いている向きもありますので、これが真相を明らかにすることはきわめて有意義なことと考え、本委員会は本件の調査に落手した次第でありますので、証人におかれましては率直なる証言をお願いしておきます。  それでは、ただいまより接収解除貴金属及びダイヤモンド関係事件について証言を求むることにいたしますが、証言を求むる前に証人に一言申し上げます。昭和二十二年法律第二百二十五号、議院における証人宣誓及び証言等に関する法律によりまして、証人証言を求める場合には、その前に宣誓をさせなければならぬことと相なつております。  宣誓または証言を拒むことのできるのは、証言が、証人または証人配偶者、四親等内の血族もしくは三親等内の姻族または証人とこれらの親族関係のあつた者、及び証人の後見人または証人の後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項に関するとき、またはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するとき、及び医師歯科医師、薬剤師、薬種商、産婆、弁護士、弁理士弁護人公証人、宗教または祷祀の職にある者またはこれらの職にあつた者が、その職務上知つた事実であつて黙秘すべきものについて尋問を受けたときに限られておりまして、それ以外には証言を拒むことはできないことになつております。しかして、証言が正当の理由がなくて宣誓または証言を拒んだときは、一年以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられ、かつ宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処せられることとなつておるのであります。一応このことを御承知になつていただきたいと思います。  では、法律の定めるところによりまして、証人宣誓を求めます。御起立を願います。  宣誓書を朗読してください。     〔証人喜多村喜之助君朗読〕   宣 誓 書  良心に従つて、真実を述べ、何事もかくさず、また何事もつけ加えないことを誓います。
  285. 内藤隆

    内藤委員長 それでは宣誓書署名捺印してください。     〔証人宣誓書署名捺印
  286. 内藤隆

    内藤委員長 これより証言を求めることになりますが、証言証言を求められた範囲を越えないこと、また御発言の際には、その都度委員長の許可を得てなさるようお願いしておきます。なお、こちらから質問している間はそのままでようございますが、お答えの際は起立してお答えを願います。  喜多村君は当時の営団鑑定人であつたようでありますが、その鑑定に従事するまであなたの経歴を簡単に述べてください。
  287. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 金属、宝石を約三十年間やつてつたということだけです。
  288. 内藤隆

    内藤委員長 それだけですか。
  289. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 そうです。
  290. 内藤隆

    内藤委員長 学歴等は……。
  291. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 別に申し上げることもないと思います。
  292. 内藤隆

    内藤委員長 三十年間金属あるいはダイヤ等の鑑定に従事しておつた……。
  293. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 そうです。
  294. 内藤隆

    内藤委員長 それは何か個人でそういう店でも開いてやつておられたのか、それとも会社でも……。
  295. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 現在の店に小さいとき入つたのです。
  296. 内藤隆

    内藤委員長 現在の店は……。
  297. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 現在の店とおつしやると……。
  298. 内藤隆

    内藤委員長 その小さいときに入つてつた店です。
  299. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 つまり現在の店に小さいとき入りまして——その履歴を申し上げますと、ちよつと長くなりますが、以前は、一番最初はそこの店の者であつたのです。そうして長い間おりまして、結局今日の店主になつたわけです。
  300. 内藤隆

    内藤委員長 今お店はどこにあるのですか。
  301. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 銀座七丁目四番地です。
  302. 内藤隆

    内藤委員長 やはり喜多村商店というのですか。
  303. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 合資会社マルカと申します。
  304. 内藤隆

    内藤委員長 わかりました。松屋鑑定に当つたときのダイヤ鑑定方法、すなわち質の良否等はどういうようにして鑑定されましたか。
  305. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 質、の良否などというものは一見してすぐわかりますが、鑑定方法でございますか。
  306. 内藤隆

    内藤委員長 それは長年の経験によつてすぐわかるというのですか。それとも何か科学的な……。
  307. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 いや別に——この目だけですな。
  308. 内藤隆

    内藤委員長 長年の経験によつてわかる。そういうふうな鑑定をやられたわけですな。
  309. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 ええ、そうです。
  310. 内藤隆

    内藤委員長 量目とかカラツトはどうしてわかりますか。
  311. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 カラツトは、あるデパートならデパートにその日のもの——かりに二月十三日なら二月十三日のものが袋へ入つて参ります。そのときによつて、そつくりその袋を渡されるときもありますが、また営団の女の子がそばにおりまして、その日の袋を全部一つのお盆ならお盆みたいなものの上に載せて来る。それを私が片端から伝票と照し合せて、数と目方に間違いがないかどうか、かつ買上げ価格が正当であるかないか、そこを見るのです。
  312. 内藤隆

    内藤委員長 あなたの一日に鑑定された能力と申しますか、そういうものはどれほどですか。
  313. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 それは鑑定能力でなくして、つまりその日によつて、大きいものが集まつたときには目方がふえますし、小さな石がたくさん来ているときには目方が少いわけですな。
  314. 内藤隆

    内藤委員長 目方をはかつた機械は……。
  315. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 機械というと、つまりカラツトばはかりですな。
  316. 内藤隆

    内藤委員長 大きいもの、あるいは小さいものによつて、一日の能率といいますか、それが違うわけですね。
  317. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 ええ、そうです。
  318. 内藤隆

    内藤委員長 百貨店買上げダイヤは、それぞれ売主ごとに袋に入れられて、伝票には売主の氏名、品質カラツトが記入してあつたようですが、どうですか。
  319. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 そうです。
  320. 内藤隆

    内藤委員長 その場合、各百貨店としては、再鑑定室で再鑑定の結果、品位、量日等の過不足のため返されることをおそれて、なるべく実質より内輪目に記載したようであるが、さような傾向がありますか。
  321. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 その日のトータルがかりに二〇カラツト五三なら五三というトータルが参ります。それで最後に私の方で、再鑑定して、買い上げた価格が適切であるか適切でないかを見る。数も大体合せます。むろん目方最後にかけます。そのときに五三というものが、五五ぐらいありますればよろしいのですが、それが五〇のときには、鑑定人として目方の少いのははなはだ困るのです。で、買い上げる方に対しても、目方は幾らか余分を見ておかないと、どうも私の方で困るからということを申したことがあります。余分といつてもほんの気持だけですな。何しろ御承知通りカラツトというのは、日本の目方では五厘五毛ですから、その五厘五毛の百分の一くらいか、あるいは一以内くらいをかけるときに、ちよいとかげんすればよいのです。ですから、一カラツト、これが少し目方が軽いなと思うときには、九九くらいで買い上げてもらうのです。
  322. 内藤隆

    内藤委員長 多数のものが集まつて参りますから、その袋に記載してある数量、合計額は、実際とは違つたものが出て来るわけですな。
  323. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 いや数量においてはほとんど同じですな。ただ百個石といいますか、百個で一カラツトのほんの少さな石があります。それを買い上げたときには、八十五個あつたとしても、買い上げた分が八十三なら八十三買い上げる場合がある。要するにダイヤというものは、数が問題じやない、目方が問題ですから、数よりか目方さえ正直に買い上げればいいわけであります。数では全然価格は出ないものであるから……。
  324. 内藤隆

    内藤委員長 カラツトによつて出るわけですな。
  325. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 ええ、そうです。
  326. 内藤隆

    内藤委員長 それはやはり多数集まるんだから、合計の額は違つて来ませんか。
  327. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 ですから、それは今言つたように、百分の一くらいの石が一、二個多い場合があります。ただ私が思うには、かりに三カラツトのすばらしい石だ、こういう石は日本にあまりない石だというものと、まるでダイヤだか何だかわからない石のかけらのような小さなものでも、同一の数に見ている。それが私はちよつと不合理じやないかという自分だけの気持があつただけです。金額においてもえらい違いがある。ですから、買い上げる場合に、また私どもが再鑑定をする場合にも、そういうダイヤのくずのくずみたいなものと、三カラツトなり一カラツトなりのいいものとは、全然見る目が違います。こまかいものが来たときには、数が何個、目方が幾ら々々ありますけれども、あけたその感じで、これは幾らくらいの目方ということがすぐピンと来るものですから、そんなものは。ピンセツトでこつちにやつてしまう。こまかいものが来ますと、なるほどこれはこれくらいで買わなければならぬ、あるいは買上げが安い、こういう買上げをしてはいけないから、デパートに対してもう少しよい値で買わなければいかぬ、——そういうこともありました。
  328. 内藤隆

    内藤委員長 各袋ごとに鑑定が終つた際、そのダイヤは元の袋に入れずこれを一緒にしてかためて別の袋に入れたような事実はありませんか。
  329. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 たしかそうだと心得ております。
  330. 内藤隆

    内藤委員長 そういう事実があるのですか。
  331. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 一々元の袋へは入れませんです。つまり鑑定が済んでしまつたのですから……。
  332. 内藤隆

    内藤委員長 そうすると元の袋ではないのですから、どれが売主のものであつたかということはわからなくなつてしまうのですね。一緒になつてしまうのですね。
  333. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 そうです。たくさんの売主の袋の中から出すという場合にはすぐ出ます。
  334. 内藤隆

    内藤委員長 どうしてですか。
  335. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 それはすぐわかります。
  336. 内藤隆

    内藤委員長 やはり多年の経験でわかるのですか。
  337. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 そうです。
  338. 内藤隆

    内藤委員長 そうすると、高級品も工業用に準ずるような下級品も、もう一緒になつてしまつておるのですね。
  339. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 そうです。
  340. 内藤隆

    内藤委員長 けれども多年の経験によつてそれがわかるのですね。
  341. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 そうです。もし出せとおつしやれば出ます。それだけの自信はあります。
  342. 内藤隆

    内藤委員長 そうすると、別の袋に一緒にごつちやにして入れたダイヤを、毎日合計してはかりではかつておりましたか。
  343. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 かりに二月十三日の袋を調べた場合には、すつかりそれが済むまでというものは途中でよすということはなくて、空襲がない限りは全部やりました。
  344. 内藤隆

    内藤委員長 その結果、袋の表面に書いてある総数量よりも多いと、いうことはなかつたのですか。
  345. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 その多いというは、先ほども申し上げたように、こくこまかい石です。価値のほとんどないようなものが多いのです。多いというのは結局そういうものがよけいに来たのです。
  346. 内藤隆

    内藤委員長 そのために、袋の表面に書いてある数量よりも多いということがあつたわけですね。
  347. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 そうです。
  348. 内藤隆

    内藤委員長 袋の総数量より多くなつた開きというものはどうでしたか。大分多くなりましたか。大したことはなかつたのですか。
  349. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 それははつきり覚えがございません。
  350. 内藤隆

    内藤委員長 それは個々の袋によるでしようからね。
  351. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 そうです。
  352. 内藤隆

    内藤委員長 委員長質問はこの程度でありますが……。中野四郎君。
  353. 中野四郎

    中野(四)委員 少し私の方の疑義の点についてお伺いをしたいのですが、今お話を聞いておりますると、むろん再鑑定人として御就任になるような方だから、練達の士であつて、一目見れば石のよしあしのわかるぐらいなことは当然なことだろうと思うのです。またあなたぐらいの人ですから、そのくらいの自信も十分持つていらつしやると思いますが、第一番に私らが心配いたしますことは、当時昭和十九年の十月、十一月というような時期は、日本の国をあげて戦争に勝ち抜かなければならぬという燃え上つた時なんです。従つて愛国心の旺盛な時であつて、あなた方のように毎日なぶつていらつしやるダイヤ貴金属から見れば、石ころ同様にも感じられるかもしれませんが、家庭で一人々々が持つておる一個、二個の半カラツト、一カラツトというものは、いわゆる生命に次ぐところの愛着を感じておるものであるはずです。従つて、これらのものを、戦争に勝ち抜きたいという一心で、半強制的といつてもいいくらいなんですけれども、とにかく国家のために売つたわけです。従つて、こういうものをお扱いになるといたしましては、軍需省から命ぜられ、あるいは営団から委嘱を受けて、鑑定人として、しかも一番重要な再鑑定人として御就任になる限りにおいては、ただ自分の目というものだけですべてのものを律するということは、私は非常に危険だと思うのです。それくらいの自信はあつてよろしい。たとえば相撲場の例をあげれば、相撲の検査役というものが四本柱におりますが、目で見て、経験から割出して、からだがくずれているから、いや手をついたからというふうな判定で今日検査をしております。しかしながら、これを文明の科学の器械をもつて高速度写真にとると、長年の経験から見た、からだがくずれておつた、落ちたというその立証すら、科学的説明によつてはくつがえされる例がたくさんあるのです。自信のほどは私は大いにお見上げ申し上げるけれども、少くとも当時お互いに愛国の心に拍車をかけて出したダイヤなんですから、ただ端的にそういうふうにお扱いになつたということは、私はあまり自信が強過ぎはせぬかと思いますが、これはあなたの経験と技術のいたすところで、しろうとの私が論ずるところでないと思いますから、項を追つて二、三の疑点についてお聞きをしたいのです。  まず第一に伺いたいのは、今の委員長質問の中に、どうも喜多村さんの——私の受けた感じかもしれませんが、国会というところは、国民の福祉を増進して、よりよい生活を求めるために、お互い国民代表が出ているところであつて、裁判所や検事局とは違うのでありますから、なごやかなうちにひとつ話を進めて行きたいと思うのです。私の方では敬意を表しておいでを願つているのでありますから、決してかたくならないで……。率直に申し上げて、現在のマルカというりつぱな店をおつくりになりましたことは、あなたの努力でありましたでしよう。しかしながら、委員長がこういう点についてあなたの証言を求めると言いましたら、もう少し親切にお答になつていいと私は思うのです。お答えが全然なかつたように思いますから、重ねるようですけれども、まず伺つて参りますが、軍需省あるいは交易営団からあなたが御委嘱を受けられた時日がいつで、そうして交易営団鑑定人あるいはその再鑑定人として、手当はどれくらいもらつておられたか。また手当はなかつたのかどうか。こまかいことで申訳ありませんが、逐次お聞きしたいと思うのです。
  354. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 どの点を御返事申し上げれはいいのですか。
  355. 中野四郎

    中野(四)委員 交易営団のいわゆる鑑定人としておいでになつたのか、いわゆる再鑑定人としてだれから委嘱を受けられたのか、どれくらいの手当をもらつておられたか、こういうことを伺つているのであります。
  356. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 交易営団の方であります。手当は月千円だと記憶しております。
  357. 中野四郎

    中野(四)委員 当時久米鑑定人が主任で、他にどなたと、どなたと、何名おいでになりましたか。あるいは補佐等の方がおいでになつたならば、その方もひとつ御説明を願いたい。
  358. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 補佐はないと思いますけれども、久米、古川、巽、浜田、松井、もう一人おりましたが、その名前はつい存じません。
  359. 中野四郎

    中野(四)委員 当時の鑑定能力というのを今委員長があなたに伺つたのですが、一日の鑑定能力というのは、本体一人でどのくらいできるものなんでしよう。
  360. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 それは、先ほどあなた様から相撲のこれこれこれというお話もありましたけれども、片一方は動いているもので、生きものです。ダイヤは別に動いてもどうもしないので、とにかく目以外には見るべきものがないのです。一々大きな何十倍とか、五十倍とかの拡大鏡で見ておつたのでは、——そんな器械もありませんし、目と、点るいは一つの欠見をもつて見ますれば、——これはおそらく日本だけでなく、どこの国のものもみなそれでやつていると思うのです。だから相撲のあれと比較されたのでは、私としてはまことにどうも意外だと思います。
  361. 中野四郎

    中野(四)委員 私のお尋ねの焦点をそらさないで答えていただきたい。一日にどのぐらいの鑑定能力があるかと聞いているのです。その鑑定方法については、項を追つて伺うつもりでいるのです。
  362. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 それはその時分、二日分ぐらいがせいぜい関の山ではないですか。
  363. 中野四郎

    中野(四)委員 二日分というと、どのくらいのカラツトが来たのですか。各省から参りますね。たとえば松屋さんなら松屋さんだけで買つている分だけでなく、営団の再鑑定所には全国から、あるいは中物とか、いろいろな方面から来るのですから、二日分といつても、どれほどあるのか、私の方ではわかりませんから……。
  364. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 別に私の方では不親切に申し上げるのではない。今あなたの方で、目方にしてどのぐらいかという御質問がありましても、ちよつとそれは何カラツトというふうにお答えは出ませんね。別に私はいいかげんとか不親切、そんなことはちつともありません。
  365. 中野四郎

    中野(四)委員 そうしますと、わからなければしかたがないことでありまするが、大体再鑑定所で——むろん装飾用ですが、装飾用のダイヤを買い入れて再鑑定なさつた初めからしまいまで、あなたは鑑定人でいらしたでしよう。
  366. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 東京ではですね。
  367. 中野四郎

    中野(四)委員 従つて、大体東京の再鑑定所で扱つた分はどのくらいの数量になりましようか、おわかりになりましようか。
  368. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 ちよつと数量はわかりません。
  369. 中野四郎

    中野(四)委員 そこでもう一つ伺いたいのですが、先ほど松屋の本店長さんが来られて、いろいろお話を聞いたのですが、今も委員長との質疑の中にありましたように、一般から買いまして、そして再鑑定所へ持つて参ります。そうすると、目方の減りなんかがあつてはいけないから、少し辛く買うといいますか、そういうような処置をとつておられたにしましても、松屋の方からは——ひとり松屋ばかりではありませんけれども、デパートで買つたものは、一つひとつについて再鑑定所に持つて参るのでございましようか。一ぺんにごちやごちやになつて来るのでしようか。あるいは個人々々のものが別別になつて来るのでしようか。
  370. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 それはハトロン紙の袋で、伝票と一緒に石が包んであるのでございます。それを広げると同時に、その数と目方を照し合せて、これが間違いがあるかないかをすつと見て、いいと通すんです。少しいいものになりますと、これはピンセツトを当てがいます。くだらないものは、ピンセツトを当てがつてもしようがないですし、また一々そんなことをやつてつたのでは、あれだけ数があるのに、いつになつてみんなでき上るかわかりませんから——くだらないものと言うと何ですが、ある程度悪いものは一目で、これはこれでいいというぐあいにどんどん処理して行きました。
  371. 中野四郎

    中野(四)委員 ダイヤを買う目的は、電波兵器とか、あるいは航空機とか、結局工業用のダイヤにするのが目的なんで、何も一般国民から買つて、東条大将の首飾りをつくろうというのではないのです。要は、ことごとく工業用のダイヤにしようというのだから、あなたからいえばくだらんものか上等のものか知りませんけれども、結論としては、国家のために必要なものなんです。その目的のために集中されたものである。主目的はそうでしよう。何もいいダイヤを買つて貴金属屋をもうけさせようとして買い上げたのじやない。そこで、当時鑑定されていらつしやつた場所です。この間池山という方がここへ来られて、いろいろ証言をされているのですが、どうも私ども納得ができないところがある。営団池山という方がいらつしやつたことは御存じでしようか。
  372. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 知りません。
  373. 中野四郎

    中野(四)委員 どうも池山さんの話では、営団の、あなた方が鑑定なさつたものを、一つ一つ取扱つて、引出しに入れる役目だつた。しかもあなた方が鑑定したものを、初めのうちは日本銀行の地下室金庫に預け入れる、あるいは三井信託の地下金庫に入れる役割をしておつたというのですから、最も重要な役割をし、しかも日本銀行の通行証まで持つて鑑定室に終始おつた人ですが、御存じないでしようか。
  374. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 それは名前は存じませんが、一人何ですか始終リユツクをしよつて運搬している人はありました。
  375. 中野四郎

    中野(四)委員 そんなんじやない。私の申し上げるのは、背の低い人ですが、そんなリユツクをしよつて歩く人じやない。鑑定室鑑定なすつた品物を取扱う人なんです。そして営団の方の嘱託です。あなた方の鑑定をなさつたものを、日本銀行の金庫の中にしまい得るところの権力を持つた人なんです。日本銀行の地下室は、簡単にだれでも貸すというわけには行きませんから、相当な法規があつて、その条例によつて貸しておるのでしよう、だれでも日本銀行の地下室に入つちやたまりませんから。この日本銀行の地下室のかぎを持つている人は、重要なポストにいないまでも、重要なる役割を演じている人と見ても間違いでないと思うのですが、あなたが御存じなければいいのです。ただそれだけを伺つておけば……。
  376. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 今申し上げたように、ただその人が始終運搬していたことは知つております。名前は知りません。
  377. 中野四郎

    中野(四)委員 池山君の証言を全部信じはしませんが、特にあなたに伺いたいと思うのは、最初は大してダイヤは出ないと政府の方では見ておつた。ところが、やつてみると、戦争は熾烈になり、政府は内心びくびくしているにもかかわらず、国民の必勝の気持というものは旺盛になつて来る。そこで、ダイヤは思いがけなく九倍も十倍も出て来た。最初営団の方でも、再鑑定の方でも、あるいは各デパート等におきましても、この鑑定をするにあたつては、きわめて少人数で、小規模のもこにダイヤ買上げをやつていた。ところが、案外持つて来る者は、ダイヤを裸で持つて来ずに、やはり指輪は指輪で、時計も、首飾りも、また帯どめも、そのまま持つて来るということで、これをはずす方で、ダイヤダイヤ、金は金、宝石は宝石とはずすというわけで、非常に煩瑣なので、てんてこ舞いをしたようですが、だんだん買上げが盛んになつて来た十月あるいは十一月ころになりますると、ダイヤの取扱いが非常に粗雑になつた感があるのですが、これは鑑定人であつたあなたが、そんなことを、それはそうでしたとは言えないでしようけれども、お互いに当時の状況を顧みて、ダイヤ買上げ、あるいは鑑定、あるいは営団等がこれを取扱うについて、どういう取扱いをしておつたかということの感想を、率直に述べていただきたいと思うのでございます。
  378. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 それは確かにそういうことはありましたな。ですから、ダイヤをつめからはずす場合にも、いい石をはずす——また、いい悪いが出まして何ですが、これだけのいい石をはずすのに、もう少しおちついてやらぬと、はずすときにつめあとのきずがつくがというようなことを、みなと言い合つたことがあります。
  379. 中野四郎

    中野(四)委員 ほかの方の質問がありますから、きわめて簡単にいたしますが、あの昭和二十二年の夏ごろ、日本銀行の地下室にあつたダイヤモンドが、マレーという大佐に持ち去られたことがありました。たしか向うでそのことが知れて、内地に送還されて来て、横浜で取調べを受けたとき、鑑定の練達の士に全部おいでつて、向うで聞いたようでありますが、その節あなたはおいでになりましたでしようか。
  380. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 参りました。
  381. 中野四郎

    中野(四)委員 おいでになりましたときに、鑑定をなさつた中で、あなたの取扱いになつた——いわゆるダイヤといつたつて大きいやつはすぐわかりますから、取扱つたとおぼしきものがあつたでしようか。
  382. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 あのときには、ただ石を二、三ちよつと見ただけで、じきに終つてしまいましたです。何のために横浜へ行つたやらわかりませんでしたな。
  383. 中野四郎

    中野(四)委員 大体どういう場所で、どういうふうにして、どのくらいあつた所で——ただ一個二個見せて、これに覚えがあるかと言われたのではなく、ほかの人の証言で、また私の方に調査したものがあるのですが、調査書類によりますれば、相当数のたくさんの石があつて、それに対して、この中に覚えがあるのがあるかといつて指摘されたはずだと思いますが……。
  384. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 そうです。ここよりもう少し狭い部屋でした。法廷でした。そこで見せられましたです。
  385. 中野四郎

    中野(四)委員 たくさんの石をですか。
  386. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 そうです。
  387. 中野四郎

    中野(四)委員 どのくらいのカラツト数でしようか。あなたは練達の士だから、一目でどのくらいの数ということがわかると思いますが、どうでしよう。値段にしてどのくらい、カラツト数にしてどのくらいあつたでしようか。しかもいい石ですか。
  388. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 せいぜい六、七十カラツトくらいのものじやないですかな、ちよつと見た感じが。
  389. 中野四郎

    中野(四)委員 ちよつと数字が違うようですが。
  390. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 とにかくあのときは……。
  391. 中野四郎

    中野(四)委員 当時の金額になすつたら——あなた方一目見れば、およそこれはどのくらいだなということは、すぐ目測でわかると思う。金額にしてどのくらいのものがあると思われたでしようか。
  392. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 ただ横浜に行つたとき、前もつての話は大分やかましかつたですけれども、行つてみまして、あまりそう、何といいますか、向うはずらつと並べて、私たちの自由にはさせないような空気なんでございますね。あまり自由に見たり何かすると、あるいはまたなくなりはしないかという、いるようなのです。あそこで、今あなたが目方がどのくらいとおつしやられたので、六、七十カラツトくらいというのが出ますけれども、そういう覚えはありませんですね。
  393. 中野四郎

    中野(四)委員 これも覚えがなければしかたがないことですが、あのときの鑑定者として業者が大分行つておるのです。名前もわかつておりますし、行つた人にも直接会つておるのですが、大体どの人でも、商売ですから、およそ目測どのくらい、値段で言えばこのくらいというようなことは、大体わかつておると思うのですが、あなただけは、まあわからなかつたといえばこれもやむを得ぬことですが、まあよろしゆうございます。  そこでもう一つ方向をかえて伺いたいのです。ばらばらに聞いて申訳ないが、しろうとで専門語がわかりませんから……。率直に聞くのですが、目方をはかるときのはかりは、お使いになつたのは大体百分の一でしようね。
  394. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 そうでございます。
  395. 中野四郎

    中野(四)委員 そうしますと、鑑定する方でいえば、幾らか辛目に目方を見ておかぬと、いわゆる入り目になつたときに困るから、ちよつと辛目に見る。そうするとコンマ以下二つの数字が出れば、百分の一のはかりとしますと、そのあとの数字は出て来ませんから、すべて切捨てにしますな。そうすると、数がたくさんになりますれば、どうしたつて出目が出ますね。その出目というものは、営団ではどう扱つたのでしよう。松屋では——ひとり松屋だけじやなく、デパートなんかからダイヤを持つて来る場合に、大体一人一人のものを受取つたでしよう。一人一人の場合は、甘い辛いにかかわらず、目方がちやんとわかつておりますから、だれが見ても納得できる。ところがこれが何百、何千、何万という個数になつて来ますと、善悪にかかわらず、目方の出目というものが相当数出て来るわけです。これに対して、営団ではその数字をどういうふうに扱つてつたと、鑑定人としてお思いになるでしようか。
  396. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 さあ、私の方では、かりにきようのトータルが三十五と伝票に出ておりますな。そこでカラツトをかけます。そこで三十八あつた場合に、その三十五で通してしまいます。
  397. 中野四郎

    中野(四)委員 ちよつと待つてください。向うから三十五のトータルが来ますね。ところがはかつてみて、出目があつて三十八あつたとかりに仮定しますね。その場合にあなたは三十五で通してしまうと、こういうことですか。
  398. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 そうです。
  399. 中野四郎

    中野(四)委員 三というものはどこへ行きましようか。
  400. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 むろんそのまま三十五、で処理してしまうのです。これをこまかに言いますと、それでは、そこについておるあかとかごみをどうするのかということになつて来ます。あかも、重なれば大きなものです。
  401. 中野四郎

    中野(四)委員 ごもつともですね。それはあかだつて目方の一つでしようから無理はないと思いますが、あなたの方で鑑定なさるのに、大体幾クラスぐらいにわけて鑑定基準をきめるのでしよう。たとえば、ここがさつきあなたのおつしやつた、目で見ればわかる。         ————— その通りなんです。しかしながら、それはあなたがわかるだけであつて、ほかの人間にはわかりません。従つてそういうものの基準のために、軍需省においては、ダイヤモンド買上げに対して、三カラツトを単位にして十クラスにわけて、買上げ基準を明らかにしております。国民はこの十クラスのどのクラスに属するかということによつて、自分の財産が左右されるわけです。あなたの目で幾つに見るか——気に入らぬやつは辛目で——それは知りませんけれども、そういう場合はあなたの目を信じて、あなたが生きている間はけつこうですが、死んでしまえば、結局あなたの目だけを信じておられる。どういう基準であなたが再鑑定をなさつたのか。たとえて言えば、松屋鑑定する場合は、この鑑定人はきわめて甘く、何といいますか、お客には辛く買付をします。そうして再鑑定者に送ります。ところが松屋の本店長証言によりますと、松屋では三クラスにわけておつたと言うのです。そこで三クラスにわけておつたというのは変じやないかと言うと、もう一ぺん考えて御返事すると言われておるのですが、あなたの方は鑑定の再鑑定をされるのですから、もつと精密でなければならないが、どういうふうな区分でおやりになつたか。古いことですが、この点をひとつ……。
  402. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 買上げ価格が適正か適正てないかということは——問題はそこですね。伝票とその石を照し合せて調べます。私どもの方は、石を見るとすぐ買上げ値段を見るのでございます。この値段ならば適正であるとか、これは少し安過ぎるとか……。ですから、たまたまとても安く買つたのがあります。そういうのは買入店の、かりにデパートならデパートの主任をすぐ呼びつけまして、こう安く買つては困る。現に松屋で渡したか、あるいはどのデパートを通じて渡しましたか、相当の金額をまた別に差上げた人もあります。ですから、もちろんクラスは三段階くらいじやありません。ただクラスといいますが、私の方は値段が適正であるかないかということがすぐ見てわかるのです。結局はクラスの問題になりますな。始終それは見ながら、気持はしよつちゆうそうあつて見ておるのですから、自分としては間違いないつもりでやつておるのです。
  403. 中野四郎

    中野(四)委員 それは喜多村さんや、専門家の久米さんとか、巽さんとか、いろいろな人たちが見れば間違いないのですよ。けれども世の中の仕事はそうは参らないのです。規格というものがあつて、その規格のどこに属するかということを一つの基準にしないと、ものさしにしないと、わからないのです。あなたの気持はわかるのです。あなたがどうこうと言うのじやないのです。あなたの手腕も大いに認めておるのですけれども、しかしながらそれだけでは成り立たないのが世の中です。だからこそ軍需省から十クラスの規格を示して、このクラスに属するものは幾らという値段が指示してあるはずなんです。従つて、あなたの方は再鑑定をなさるのについて、どういう方法で再鑑定をなさつたか、ここが聞きたいのです。ただあなたの頭だけですか。
  404. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 つまりクラスということは、買上げ価格の適正ということと同じことになるのですが、かりにそこに伝票と石が自分の前に広がつたとしますと、少し大きい石はすぐピンセツトをあてがいます。これは少し高いとか、安いとか、すぐ勘が出るわけです。自分だけではいけない場合がたくさんありますから、そのときはすぐ前の久米さんなり巽さんなりのところに石をほり出して、君、これは幾らだと言えば、すぐそれは幾ら幾ら。二、三人聞いて、これは少し安いねとか、これは少し買い上げたね、ということになるのでございます。
  405. 中野四郎

    中野(四)委員 よくわかりました。結局買上げのときはずいぶんずざんなんですよ。それをここで私がどうこうと言うのではないが、結局営団ダイヤを取扱うことについては、正確を期す何ものも持つていなかつたということだけは言えると思う。ただ、あなたが今おつしやつたことから言えば、あなたなり専門家が、五、七人いらつしやるから、お互いに見れば大体間違いないことはわかるのですが、しかしながら、科学的に裏づける何かの基礎は持つていなかつたということは言えるでしよう。たとえば、もつとほかに鑑定方法はないのですか。顕微鏡で見るとか、そんなことはないのですか。
  406. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 別にダイヤを顕微鏡で見たということは今までありません。
  407. 中野四郎

    中野(四)委員 大体目測で行くのですか。
  408. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 目で見まして大体間違いないつもりです。
  409. 中野四郎

    中野(四)委員 そうなると、たとえば鑑定をせんとする人が、故意に、あるいは悪意をもつて三人、五人の人間と結託して適当なる処置を講じようとすれば、できぬことはありませんな。お互い五、六人の専門家同士でやるのですから、しろうとにはわからない。目は生きておるのですから、たとえばそういうことをやろうとすれば、できぬことはないということを聞いておるのです。
  410. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 それは営団の場合ですと……。
  411. 中野四郎

    中野(四)委員 営団の場合じやない。何の場合に限らず。事は簡単です。
  412. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 私にはそれはどうも御返事できませんですね。
  413. 中野四郎

    中野(四)委員 いや、きわめて簡単なんです。それは常識から推理すればそうなるのです。結局何も規格を持つていないで、あなたが目で見て、これはAクラスだ、どうだい巽君、どうだい君、これは間違いないだろうというのでやれば、これはあなたの場合じやないが、もし故意になさんとすれば、できぬこともないのではないかと聞いておるのです。これは何も考えることはない。はつきりした問題なんです。きわめて率直だと思う。
  414. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 いや、私にはできません。
  415. 中野四郎

    中野(四)委員 あなた自身はそういうことがないからできぬが、もしやろうとすれば……。
  416. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 そういう気持を起したこともありませんし、私はできません。
  417. 中野四郎

    中野(四)委員 それはもちろんあなたのことを言うのではない。たとえばそういう裏づけになる規格を、軍需省から指令を受けておりながら、何らそれに根拠を置かずに、勘によつておきめになるとすれは——あの場合にはそんなことはありません。お互いに戦争に勝ちたいのですから、あなたの場合はないでしよう。しかしながら、あなたの今の話から推理して行けば、やろうとすればやれぬこともないことになる。私がおそれるのは、たとえば日本銀行の地下に十六万一千カラツトダイヤがあります。これはあなた自身も御関心を持つておいでになる。だから今まで宝石組合の者が集まらなかつたが、今度はどういうものか、ダイヤの全貴金属商が集まつて組合をつくつて、親睦の団体であろうか、横の連絡をしようという目的かもしれませんが、とにかく新たにこういう組合をおつくりになつたこともわかつておる。ただ私の問わんとするところは、日本銀行の地下室にある十六万一千カラツトの、ダイヤを、昔からの人間の五人か六人に鑑定させますと、場合によれば、業者に払い下げるときに、うまくそちらに有利にする。目測でやれば、これはそつち、これはあつちとやれるのじやありませんか。そういうことができぬことはないと私は心配するだけです。杞憂かもしれませんが、あなたが今申したように、規格なしに目測でおやりになれば、そういう危険な状態が起りはしないか。特に営団が再鑑定する場合に、あなたの場合はそういうことはないかもしれませんが、そういう場合が起りやすい可能性がある。それを心配いたしまして伺つたのです。そこでこれ以上そのことをお尋ねしては、ほかの委員さんの質問にさしさわるから、ほかのことをお尋ね申し上げます。  当時空襲なんかのあつた場合には、どういうふうにそのタイヤを——あなたたちが机の上で鑑定しておりますね。土嚢なんかは積んであつたかもしれませんが、空襲などのいざという場合、これをどう御処置なさつたのですか。
  418. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 かりにきよう松屋なら松屋の二月十三日に買い入れたものを私が調べておりますね。それが三割くらいで済んでおつて、そこに警戒警報が出ますと、また元通り一旦済んだものは一つ袋に全部納めまして、これは私の調べかけだからというので、またあした行つて私がそれを調べます。
  419. 中野四郎

    中野(四)委員 そうなりますと、そこここで買つたものがごちやごちやになつてしまうのですね。
  420. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 いえ、そんなことはありません。
  421. 中野四郎

    中野(四)委員 松屋は一つの箱に入れておりますね。たとえば松屋から営団には、ダイヤだけを持つて来るわけではないので、ダイヤとか金、白金なんかついた指輪、首飾りがありますね。これをとりこわして、ダイヤはあなたのところに鑑定に持つて参りますね。金、白金は目方をつけて、四枚の伝票のうち一枚の伝票ダイヤにつけて、何カラツト、幾らに買つたということで、あなたのところに持つて来て、そうしてこれは妥当かどうかということをあなたのところで御調査さなるのですが、空襲なんかの場合に、今三分の一ほどお調べになつていらつしやる。先ほど委員長質問に対して、一ぺんにお盆の上に一緒に載せるとおつしやつたが、そうしますと、あなたのところでごちやごちやになつてしまうわけですね。
  422. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 そうじやないのです。つまりお盆みたいなものがありまして、最初のうちは、そのときによりますけれども、忙しいときなどは、営団の女の子がその紙包みをお盆の上にあけて、ダイヤをそつと順々に積み重ねておく。空襲があつた場合には、積み重ねたのを順々に積み直して、また元の袋に入れる。だから一緒にはなりません。一応目を通したダイヤは、これは一緒になつております。
  423. 中野四郎

    中野(四)委員 さらに一つ伺つておきたいが、今日本銀行に接収解除になましたダイヤがあります。あれをごらんになつたことございましようか。
  424. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 ありません。
  425. 中野四郎

    中野(四)委員 これに二説あるのですけれども、これから調査をしますためにおいでを願つておるのです。マレー大佐が持ち出したダイヤを、今度返還を受けて、残余の分だけが日本銀行に入つておるという説と、そうでなく、マレー大佐の証拠品として横浜の第一号法廷で出された品物が、そのまま持つて行かれたという説があるのです。私の知つておる範囲においては、横浜の第一号法廷に証人となり、鑑定人として出た業者の方——名前はここに控えますが、業者の方は、そのダイヤは相当大きなものですが、ダイヤを見てこれだということが明らかになつて、そうしてそれを日本銀行の地下室に入つておるのを見た、こう言うのです。これはそうかもしれないが、あなた方がお扱いになりましたダイヤが今日本銀行にかりにあるとすれば、これはあのときのやつだということが大体わかりましようか。大きいものはあまりたくさんはないのですから……。
  426. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 変形、つまり形のかわつたものは、あるいは見た場合に、ああこれだなということがわかりますけれども、小さいものにおいてはわかりません。
  427. 中野四郎

    中野(四)委員 そこでどうでしようね。およそ装飾用だけ東京の再鑑定所でお扱いになつた数は思い当りませんか。
  428. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 それはわかりません。
  429. 中野四郎

    中野(四)委員 あなたは桐生の鑑定所には行きませんか。
  430. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 行きません。
  431. 中野四郎

    中野(四)委員 それからもう一点だけ。近ごろ宝石界の方々が、組合をつくつて、いろいろと横の連絡をとつておられるようです。かつて鑑定人として仕事に携わつた方が中心になつておるようでありますが、あなたはこれに御関係でございましようか、どうでしようか。あなたが組合の役員でないことは、役員名簿に載つておりませんからわかりますが……。
  432. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 中心になつておりません。
  433. 中野四郎

    中野(四)委員 今表面に出ておる鑑定者には、残つておる方々は出ておりませんけれども、従前の再鑑定に携わつた人々が中心になつて、今組合をつくろうと努力しておられることを聞いておられましようか。
  434. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 ええ、聞いております。聞いておりますし、私も出資者の一人で申し込んでおりますけれども……。
  435. 中野四郎

    中野(四)委員 もちろん親睦とかあるいは横の連絡とおつしやるでしようが、何が動機になつて、どういう意味でこれができたのでしようか。
  436. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 私そのことは深く知りません。ただ一応話がありましたものですから、とにかく組合のことでもありますし、それに出資しないというのは何だか物を惜しんでおるようですから、私の方の申込書をごらんになるとわかりますけれども、その人に対して、出資の口数まで、つまり口数一人に対して幾らというふうになつておりますが、口数も全部あなたに一任しますからよろしくお願いします。         ————— 私の方はそれだけでございます。
  437. 中野四郎

    中野(四)委員 これで終りますけれども証人に私がいろいろお伺いしたものを総合いたしますと、結局、鑑定をするにあたつては、鑑定人として十クラスの一つの規格があるにかかわらず、当時の再鑑定はいわゆる経験を生かして目測をもつてこれを処理した……。
  438. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 いや、そうじやありません。
  439. 中野四郎

    中野(四)委員 ちよつと待つてください。私はそう聞いたのです。あなた方の経験を生かして、そうして大体目で処理をして、あなたがわからなくて疑義を生ずると、さらに向いの人、あるいはそこにおる五、六人の鑑定の方と一緒に処理をしたというように聞いたのですが、そうじやありませんか。
  440. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 そうじやありません。つまり私が申し上げたように、適正価格であるやということは、あのときの一番最高が一カラツト五千円くらいと思つております。そうすると、つまり伝票を見た場合に、かりに包みを開けたときに、一カラツト、ニカラツトの石がここにございます。そうすると、一カラツトの場合が四千円とか、あるいは三千五百円で出て——一カラツトをかりに三千五百円だとしますと、二カラツトあるから七千円ですね。そのときにクラスでないことは金額に現われておりますから、かりにAクラスなら五千円になります。そうすると、私の方で石にピンセツトをあてがつてみると、三千五百円で高いか、安いかすぐ見当がつく。疑義をはさんだときには、久米氏初め二、三人で相談してきめる。そのときに買上げ価格というのは向うへ知らしてありません。これを幾らで買う、そうすると、久米氏なり巽氏が、かりにこれは四千円の価値がある、あるいは三千五百円だということで、そこで値段が出て参ります。ですから、別にこれが十段階あるといつても、一応私の方では段階をつけておるつもりですし、見たときに最高が五千円というのですから……。
  441. 中野四郎

    中野(四)委員 大体わかりましたが、もう一点私が聞いておかなければならぬことは、今のカラツトの問題で、一カラツト大体二千円くらいでお買いになる。そうすると二カラツトになると四千円ということですが、二カラツトの石ですと、四千円でお買いになつたのですか。
  442. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 二カラツトあるのですから、一カラツト二千円、大体倍ですから……。
  443. 中野四郎

    中野(四)委員 私の聞くのは、あなたは専門家だから、貴金属商で一カラツトずつ商売するならば二千円でもうけつこうです。今三十一万円、三十三万円でもけつこうです。二カラツトにもなると、この石の値段は三倍にも上る。二倍半にも上る。そうでしよう。大きな金剛石は高くなる。八カラツトあれば、そんなものはめずらしいから恐ろしく高くなる。そうすると、あなたの方で事務的に一カラツト二千円、ニカラツト四千円でお買いになつたのか、あるいは二カラツトあるのは、これに比例してもさらに高くお買いになつたかということをお聞きしたいのです。
  444. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 そうじやないです。ですから二カラツトの石を見たときに、私の方では自然的にいきなりカラツトで標準をきめる。今日売買するにも、かりに一カラツトから三カラツトの石がここに並んだとします。そうすると、これはカラツト幾らですかとこう来る。それじやこれが三十万円でこれが二十万円。それはむろん一カラツトで二十万円の価値のあるものでしたら、これは二カラツトありますれば、必ず一カラツト二十万円の価値のあるべき品物です。最初に私が二カラツトで七千円というのは、その二カラツトの石が三千五百円替するものやら、あるいは四千円の価値やら、五千円の価格やら、はたして二千円のものやら、——つまりそこで一カラツト何千円で買い上げるということを見るのですから……。
  445. 中野四郎

    中野(四)委員 お尋ねしているのは、きようあなたにおいでを願いましたのは、買上げ当時の状況と、鑑定の状況と、処理の状況について参考に伺うだけでありまして、従つて買上げの当時、デパートに二カラツト半あるダイヤをかりに持つて来ますね。そうすると、最上級だが、一カラツト二千円ということになつておるから、あなたのは二カラツト半あるからこれは五千円だとかいつてつたものなんですか、あるいは石がそういう大きなものになつて来れば、それに比例して高く買つたのか、当時鑑定をなさるには、どういうふうにして処理なさつていたかということを聞いているのです。大きな石があつたでしよう。三カラツトも、四カラツトもあるのですから、こういうものは珍石として高くお買いになつたのか、あるいは一カラツと二千円の割でお買いになつたのか、きわめて簡単なことなんです。
  446. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 私はきわめて簡単に御説明したつもりですけれども、必ず大きいから高いというとちよつと困るのです。ですから大きい、小さいにかかわらず、これは一カラツト幾らの替をするものだということが、すぐそこで出て来るわけですから、それがはたして標準価格でこの石を買い上げたものであるか、どうかということを見るのが主なんですから……。
  447. 中野四郎

    中野(四)委員 だからおわかりになつているだろうと思う。石の良質とか、悪質とかいうのは質でわかりますが、私の言うのは、カラツトで買入れの場合に、一カラツト二千円するものが二カラツト半ならもつとずつと高くなる。普通の二千円の割で行けば五千円で買うのですが、一箇で二カラツト半ある場合にはもつと相当高いわけですが、それを二千円の割合で買つたのか、あるいはその比率を上げて買つたのですか。
  448. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 ええ、そうです。
  449. 中野四郎

    中野(四)委員 そういう事実は、今後営団調査の過程においてあなた証明できますか。これだけははつきりしておいていただかぬと、あなたの方で、間違いなくそういうふうに買つたということが保証できますか。
  450. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 もう一ぺんおつしやつてください。
  451. 中野四郎

    中野(四)委員 これはほんとうに大事なことですから……。ここに一カラツトございますね。一カラツト最高は大体二千円といたします。デパートの窓口へ三カラツトある石が来たとする。これは最高級品ですが、一カラツト二千円ですから、あなたのところは六千円ですというので払つて鑑定所へ持つてつたのか、あるいはデパートは一カラツト二千円ですけれども、三カラツトあるから、従つて珍品だから、普通は六千円だけれども、一万円で買いましたと言つて鑑定所へ持つてつて処理したのか、それがわからないのです。再鑑定所でお扱いになるでしよう。デパートから参りますね。そうすると三カラツトある、これはいい石だ、おれたちもほしいなと思うときに、札を見ればこれが六千円で買つてつたのか、あるいは一万円で買つてつたのか聞いているのです。六千円で買つてあれば、あなたたちでも触手が動くでしよう。
  452. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 それは一カラツト二千円のものが、ここに一カラツトと三カラツトの石がありますね。そうすると質は同質だとすると、一カラツトの方は二千円で買い上げてありますから、三カラツトのものはもつと高く買わなければならぬ。これは高く買い上げてあります。
  453. 中野四郎

    中野(四)委員 それは間違いなく買い上げてありますか。私の方は書類が来ておりますが……。
  454. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 それはあります。先ほどもあなたに申し上げたのですか、わかりませんけれども、あるデパートで非常に安く買い上げたがために、これでは供出なすつた方にまことにお気の毒だというので、相当の金額をあとからお払いしたようなこともあります。
  455. 中野四郎

    中野(四)委員 今の証言だけ伺つておきますれば、私はけつこうです。ただ、私が総括的に感じたところを言いますと、どうも再鑑定で、これは鑑定人としては非常に熱心にやつていただいたに違いないと思いますが、営団全体としては、どうもダイヤをしまいには非常にたやすく取扱つた感が深いのです。そういうことを一応聞いておきませんと、数のつじつまが合つて来ないのです。全国からどれだけ装身具用のダイヤを買つたのか、それから全国から工業用のダイヤをどれだけ買つたのか、あるいは軍が外地から持つて来たのか、あるいは略奪物資があつたのか、戦争中に日本で戦争のためにどれだけダイヤを使つたのか、その使つた残りが現在日本銀行に集積されているものだけで妥当なものであるのかどうか、こういう行政上の適正であるか不適正であるかということを調査して、お互いによりよい生活を求めるような結果を得たいというのが、この国会で取上げたダイヤ事件なんです。従つて、たいへんお忙しいところを悪いのですけれども、愚にもつかぬような点が多々ありましようけれども、あなた方からダイヤモンドをどういうふうに取扱つたか、当時の状況を聞いて参りませんと、総合的に出て来ない。なぜかならば、営団の方もかんじんなところは書類が焼けてしまつてないと言うのですが、ところがあるのです。先ほども松屋さんが持つて来た。場合によれば二重帳簿、三重帳簿もあるかもしれません。これは商人のなさることですから、われわれもわかりませんが、ともかく物的証拠になる材料は持つているのです。こういうものを全国に私どもの方から命じて国会に納めてある。そこで営団に、当時どれだけ買つてつたかということを調べてもらつたが、数字が何べんも食い違つている。最初は少数に報告し、今日日本銀行でダイヤ処理されんとする場合においては、非常に多数に報告をするというような、はなはだわれわれの納得の行かないような営団、中物、こういうものの数字が出て来ました。それを明らかにするためにあなたに迷惑をかけたのです。  他の方から質問があろうと思いますので、私はこの程度にいたします。
  456. 内藤隆

    内藤委員長 それでは明禮輝三郎君。
  457. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 時間がたちますから簡単にお尋ねをいたします。証人は、先ほど三十年間鑑定の仕事をしておつたとかどうかというお話でありましたが、その鑑定人をなさつておりました当時のあなたのお立場は、どこかへお勤めでしたか、自分の店でございましたか。
  458. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 自分の店です。
  459. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 何という底でございましたか。
  460. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 マルカと申します。
  461. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 そのマルカというのは個人ですか、会社ですか。
  462. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 合資会社です。
  463. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 合資会社の役員ですか。
  464. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 代表者であります。
  465. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 店員をなさつていらつしやつたわけではないのですね、その当時。
  466. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 はあ。
  467. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 今中野委員から大分御質問があつたのでありますが、要するにダイヤ買上げをなさるのには、鑑定人としても再鑑定の立場にあつたあなたですから、十分におわかりだろうと思うのでありますが、ダイヤというものは、三十級くらいにわけられるほど大分種類が多いらしいのであります。何かそういう標準を三階級にわけておつたというような話もあつたのでありますが、あなたの御承知のところはどういうことを標準で——たとえば一級品は何ぼ、二級品は何ぼ、三級品は何ぼというふうに三つにわけたのか。それとも十級にわけて、一級は何ぼ、十級は何ぼというふうな標準で買上げが行われたのか。価格についても再鑑定のときに触れておられるのでありますから、その点の基準をひとつお話を願いたい。
  468. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 基準とおつしやつても……。私どもは、あのときはたしか最高が一カラツト五千円、そうしまして、最高の石でないときは四千円とか四千五百円というふうに、別に何級何級でなく、価格でつけておりました。
  469. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 あなたのお考えはちよつと漠としておつてわからぬのですが、最高は五千円と言われる……。
  470. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 五千円くらいと思つております。
  471. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 五千円くらいと言つてもそれはちよつと困るのです。国民は非常な犠牲を払つて供出といいますか出しておるのですから、くらいということで判断されたならば、非常に国民としては遺憾だと思うのです。つまり個々の問題についてはいろいろできるかもしれませんけれども軍需省の方へ納めたのは十級にわかれておるようでございますな。そして一級は三千八百円となつておるのです。二級が三千四百二十円というふうに出ておるようですが、そうじやないのですか。たとえばあなたは今一級というか、一番いいのは五千円と言われるが、何カラツトつても五千円ということか。そのカラツトの量目との関係はどうですか。ちよつと理解ができませんが……。
  472. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 それは私としても、ほんとうにはつきりお答えもしたいのですけれども、これは自分のことになりますが、何しろ古いことでもありますし、あのときの気持は、そうおちついた気持でゆつくり見ておられませんときでしたから、何かしら自分としても、書いたものとか、メモをとつたものがありますればよいのですが、メモも何もとらずに、ただその日その日の何でやつてつたんですから……。
  473. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 私は非常に遺憾だと思う。その当時は昭和十九年の八月ですね。そうするとその時分に、先ほど月給は千円もらつておるとおつしやつた。どうですか。
  474. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 そうです。
  475. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 そうするとその当時の一千円という一箇月の俸給というものは、私は国民の犠牲が非常に大きいと思う。そういう大きな費用を払つて鑑定する人が、ダイヤモンド鑑定をなさるのに、そういうふうに漠とした、つかみどころのないことでおやりになつてつたんだということでは、私は今回国民が納得ができないのじやないかと思うのでありますが、いかがですか。
  476. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 国民が納得できないなんということでは、ちよつと私ども意外ですね。私の方としても全財産を供出はしませんけれども宝石類をあの時分に昭和通商を通じて陸軍行政本部にすつかり納めたくらいですから、国民の納得できないようなことは私はしてないつもりです。
  477. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 しかし納得のできないということは、先ほども中野委員も盛んに言われておつたんでありますが、あなたはこういうものはがらくたみたいにというようなお話を……。
  478. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 がらくたということは言い過ぎかもしれませんが……。
  479. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 あなたはそんなようなことで、こんなものはちよつと見ただけでわかるというようなことで、鑑定をやつたと言われておるのでありますが、どう見ておつても、慎重な態度であなたが国民が供出したものをほんとうに適当な価格でこれを買い取らせてやろう、そうしてこれを処分させるようにしようという御協力はなかつたように思える。
  480. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 それは違います。
  481. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 違いますと言つても……
  482. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 先ほどのそれは私の失言かしれませんけれども、ものになれておりますと処理方法も早いわけですから……。
  483. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 けれども……。
  484. 内藤隆

    内藤委員長 明禮君、ちよつと申しますが、あなたのおつしやることは、国民が戦いに勝つために、命がけで命よりも大切なものを出しておるにもかかわらず、その鑑定人がこれをがらくただとかなんとか言うことは、はなはた不穏当ではないか、こういうことでしよう。
  485. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 そういう意味です。
  486. 内藤隆

    内藤委員長 委員長もさように考えておつた。申し上げようと思つてつたが、そう大きな声を出してもと思つて、その点は取消したらどうですか。
  487. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 失言ですから取消します。
  488. 内藤隆

    内藤委員長 そこはその程度でどうです。
  489. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 取消すのもいいが、取消しただけではいかぬので、われわれが考えてみるのに、どう考えても、国民が供出したものについて、慎重な態度で鑑定やすべての買上げが行われていないと私は思うのでありますが、いくら取消したところで、その事実はどうですか。
  490. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 慎重な態度がやつておりました。私の方で、あのときの光景をごらんに入れたいくらいですね。
  491. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 それだつたら、もしダイヤの標準価格というものがある程度できていないで、ただ目の先で見て量目とか質を判定したというだけでは、いけないのではないか。何らよる標準がなかつたということは間違いないわけですな。
  492. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 そんなことはないと思います。
  493. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 ないと言つたつて、なかつたようなあなたの説明じやないですか。それじやどういうふうにあつたのですか、あつたというなら。
  494. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 ですから、自分一人で価格をきめずに、買上げ価格が適正であるかないかというときには、とにかく少くとも三人ぐらいの人に聞いて、それで意見が一致したときに、それじやこれは少し安いとか、あるいは高く買い過ぎたということでやつてつたのですから、決して個人的に処理したわけではないのです。
  495. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 あなたはそう言われますが、個人的にやられたものではないかもしれぬけれども基準なくしてやられることは非常に弊害が多かつた。でありますから、初めのうちには、みんな供出した人が、非常に安く買われた、みなそう言つております。おいおい後になつて、順々に価格は割に妥当に買うようになつたということを、その当時も言われておつたのでありますが、そういう事実はなかつたのですか。
  496. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 それはわかりませんですね。
  497. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 ではこういうことを伺いましよう。松屋に再鑑定室があつたのでありますが、それを昭和二十年の三月十五日に桐生に移した事実がありますか。
  498. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 あります。
  499. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 そうして、その桐生では金善ビルというのに移されたのですか。
  500. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 桐生のことは全然私は知らないのです。
  501. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 あなたは桐生の方では再鑑定をなさつたのではなかつたですか。
  502. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 行きませんです。
  503. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 そこでもう一つ、大阪の方では、大分詳しく階級もわけて、東京では〇・二ぐらいにまでしかとつていなかつたそうですが、四、五、大の程度まで行つたという話でありますが、そういうやり方は東京ではやらなかつたのですね。
  504. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 そうです。東京では〇・二五なら二五までですな。かりに目方を言いますと、つまり一カラツトを百の単位にするのです。今のあなたのおつしやつたのは、一カラツト千単位ですか、百単位ですか。私の方は百単位にしております。大阪の方はどういう単位になつておるのですか。
  505. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 〇・二、三、四、ぐらいか五か、ずつと先までとつたわけですな。
  506. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 それは千単位ですね。東京では、ほかの人もおそらくとらないと思いますけれども、私はそういうことはやらなかつた。百単位です。
  507. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 一体そういうことは、東京で一ぺんきめてからかかつたのではないのですか、どういうところまでとろうとかいうことは。松屋の金子さんの言うには、三級にわけたというのですが、そういうことはだれがきめたのですか。
  508. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 大体久米氏が宰領をやつておりましたがな。
  509. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 久米という人がやつた……。
  510. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 やつたのじやないです。久米という人に営団からの話が来る。久米から私の方に話があつたのですから、万事久米という人が責任を持つたというわけではないでしようが、いろいろ事を処理したわけです。
  511. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 それじやあなたは関係しない……。
  512. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 どういうことですか。
  513. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 初め買上げをするときに、あなたは何か方針をきめてからやるわけですからね。そのときの方針のきめ方です。
  514. 内藤隆

    内藤委員長 喜多村証人は、久米という鑑定人がいわば主席の鑑定人であつて、あなた方はその次の席にくらいするから、大体久米君の方針に従つてつた、こういうのです。
  515. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 まあ、そうです。
  516. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 あなたは、まあそうですと言うが、久米に言わせると、あなたと言いやせぬか。
  517. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 そんなことはありません。
  518. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 今まではそういうのが多かつた。それからダイヤ買上げして、再鑑定すると一緒にするということでしたね。
  519. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 そうです。
  520. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 一緒にしますと、その一緒にすることをもつて品質というものはわからなくなりますね。よりわければ、わからないこともないかもしれませんが、わかりにくくなりますね。目方本位で一応見られることになる。
  521. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 とにかく先ほどのように、三カラツトの石も百分の一の石も一緒にしたわけですから……。
  522. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 そこで、このダイヤ買上げは、工業用に使用するのですね。バイト、ドレツサー、あるいは高度計用の種類に従つてダイヤの利用方法が違つて来るのですね。ことに軍需省は、用途によつて種類、大きさを営団に対して指定して、工作機製作工場に配給したのでしよう。そうするとまた、配給するのには、さらにもう一ぺん鑑定をし直さなければならぬことになるですね。
  523. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 なるほど。
  524. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 なるほどと言つたつて、あなたはやつてつたのでしよう。
  525. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 知らないのです。つまり再々鑑定ですね。
  526. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 そういうことをやるようにわざわざ一緒にしたのですか。どうも世の中の疑惑は、袋に入つて、それにちやんと書もいろいろ書き金額も書いてあるのを、一々それを一緒にしてしまつたということは、たとえば一番上級の品物だけは袋に入れておいて、小さな小物だけは一緒にしたというならちよつと聞えるのですが、上級のものも下のものもみな一緒にしてしまつたというのは、ちよつと世の中の疑惑を増すのです。そう思いませんか、あなたは鑑定人として……。
  527. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 それは感想を述べろとおつしやれば、お話しますけれども、それはただ自分だけの考えですね。
  528. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 自分だけの考えでどう考えられますか。
  529. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 自分だけの考えは、みなこれを工業用にまわすのはまことに惜しい。とにかくこれだけの二カラなり三カラ以上のいい——私の方で質で言えば、最上級というようなものを工業用にまわしたらとても惜しい、これは後日何らか国に役立つときがあろうから、そういうふうにしなければだめだな、まあ、そういうようなことは思いました。
  530. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 そういうことをお尋ねしているのではございません。私がお伺いしたのは、いい品も悪い品も、袋に値段からカラツトからみな書いてあるやつを、そういうふうに一緒くたにするというやり方はいけないじやないか、そういうのはまずい、何か意味があるのじやないかということをお尋ねしておるのです。
  531. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 あの際にそれを一々わけると、よけい煩雑になつてかえつて聞違いもできやすいと思います。なかなかあのときには……。
  532. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 どういうわけでしよう、間違いができるというのは。
  533. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 間違いということは、先ほど言うように三カラツトの石もですね、つまり一カラツトの百分の幾つの石も数においては同じなんですから、かえつてあの際に、これはいい石だからといつてわけたりすると……。
  534. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 数において同じ……。
  535. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 取扱い上同じです。金額において大差はありますけれども、数においては同じですから、かえつてあの際にそういうふうに、これは上級だ、これは中級だとわけると……。
  536. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 どうも証人は少し話をそらして話をなさる。数において同じで、いい石も悪い石も一緒にしてしもうたんでは、あとでいろいろな疑惑が増すから、そういうことをしてはいけないことではなかつたかということをお尋ねしておる。そいつを数の観念で大きいのも小さいのも数では同じだ……。
  537. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 同じですから、なまじそこでそういうふうに処理をすると、私どもから言わせますれば間違いやすいのじやないか。
  538. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 数ですべて勘定するのですか。
  539. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 いいえ、そうではないのですがね。私の方もちよつとどうも……。
  540. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 ちよつとわかりません、あなたの説明は。
  541. 内藤隆

    内藤委員長 それでは証人委員長から聞きます。いわば玉石混淆にしちもうのだ、袋の中に入れて。
  542. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 そうです。おつしやる通りです。
  543. 内藤隆

    内藤委員長 そこで明禮委員のおつしやるのは、そういう大切なものも、あなたの言う石ころのようなものも一緒にするということ、それがどうもわからぬじやないかということが一点。もう一点、大阪ではこれは綿密に区分しております。東京ではなぜそういう処置をとつたのか、この点がわからぬということに結論がつくだろうと思う。どうですか、そういう意味じやないですか。(「その通り」)
  544. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 さつきから何べんも言つておる。
  545. 内藤隆

    内藤委員長 この点をひとつ明瞭に……。
  546. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 それは何か考えがあるのか。
  547. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 いや、別に考えなんかありません。そのときにそういうように処理していいものだと思うので、処理しただけなんです。
  548. 内藤隆

    内藤委員長 そうすると、さような高級品も、それからまた工業用程度の品物も一緒にしていいんだ、こういうような気持で一緒にした、そういうことですね。
  549. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 ええ、そうです。
  550. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 それはだれがさしずした。
  551. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 それは命令でも何でもないです。
  552. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 鑑定人の考え方でやつたのですか。
  553. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 鑑定人の考え方でやつたのでもなく、袋なら袋で二月十三日なら二月十三日の袋が来て、そのトータルがそこに出ていますから、それだけのものは確かにあると認めて、また元通りしまつたんですから……。
  554. 内藤隆

    内藤委員長 認めて……。元通りじやないじやないですか。初めは別々になつていたんでしよう。再鑑定を終つてから一緒にしたんでしよう。
  555. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 ええ、そうです。
  556. 内藤隆

    内藤委員長 そうすると違うでしよう。
  557. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 それは言い方が悪いんでしよう。
  558. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 言い方も悪いし、やり方も悪い。(笑声)
  559. 内藤隆

    内藤委員長 これは常識で考えてもそうです。そういう高級なものと、単なる工業用程度のものとを一緒にして、それをただ数量が合つているから、これでいいじやないかというやり方はいかぬじやないか。そこに疑惑を持たれる。
  560. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 それは今日になつて遺憾であつたか知りませんけれども、その当時はそれで処理するほかに、まあ……。
  561. 内藤隆

    内藤委員長 だからそういう粗雑な、しかも誠意のこもらない処理の仕方をやられたということになりますな。
  562. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 誠意のこもらないということは、私は受取れません。誠意は十分あつたつもりです。
  563. 内藤隆

    内藤委員長 誠意が十分あつたら、大阪のようにやらなければ誠意があつたということにはならない。
  564. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 その仕方でなければならぬということであればそうしたでしよう。別に命令も何もない。
  565. 内藤隆

    内藤委員長 それでは鑑定人が自由にやつたんでしよう。命令があればやるけれども、命令がないからこつちがやつた、こういうことですね。
  566. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 命令がないから、それでいいと思つてつたわけです。
  567. 内藤隆

    内藤委員長 だから、そこで誠意のあるなしの問題だ。誠意というものは自分で売るものでなく、第三者が判断する。自分が誠意の押売りをしたつて、第三者が誠意を認めなければどうします。
  568. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 認めなければしようがありません。
  569. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 それから鑑定人の中にはしろうとが入つてつてダイヤとガラスを間違えたような者がおつたということを聞いておるが、そういう事事はありませんか。
  570. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 しろうとが入つたのでなしに、たまたまジルコンという、ダイヤによく似た石があるのです。それをダイヤに間違えて買い上げた場合があります。
  571. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 ありますか。
  572. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 ええ。それは数で行けばほんの一箇か二箇の程度でしような。
  573. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 とにかくあつたのは間違いないね。
  574. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 ええ、そんなこともありました。
  575. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 とにかくしろうとがおつたということですね。買い上げるときにも鑑定人がついて、再鑑定のときにそれを発見したのですか。
  576. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 そうです。
  577. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 一応鑑定人が専門的な人なら、そういうことはないはずですか……。
  578. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 それは今度はデパートの責任になりますから……。
  579. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 あんたを追究しているのではない。そういう事実があるかと言うのです。
  580. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 そういう場合は、デパートで一応損金か何かになつた場合があると思いますね。
  581. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 銀座の方ではその当時百万円くらい——これは最近でありますか、ダイヤをたくさん持つておるようでしたが、どこから入つたのですか。
  582. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 別にどこから入つておるといつて……。それは結局貴石倶楽部とかなんとか、そういうものの売買がありますから、そういうところから入る。あるいはしろうとの売るもの……。
  583. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 貴石倶楽部というのは貴い石ですか。
  584. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 ええ、そうです。
  585. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 貴石倶楽部から入つて来る……。
  586. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 いいえ、そういうわけじやない。そういうふうな特殊な売買の方法がありますから……。
  587. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 故物屋ですか。
  588. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 ええ。
  589. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 そこから入つて来る。
  590. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 入つて来るとは言いませんが、結局しろうとが売つたものがそういうところへまわるのでしような。
  591. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 これはちよつと聞いたんですが、証人の店には百万円くらいのダイヤが飾つてつたことはありませんか。
  592. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 飾つてつたことは……。
  593. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 そんなに考えなくても自分のところだからわかるでしよう。さつきのことと違つて……。
  594. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 百万円までになつたことはありませんですな。
  595. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 大体どのくらい。
  596. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 まあ七、八十万円くらいのところですね。
  597. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 それを飾つたことがある。
  598. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 ええ、あります。
  599. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 いつごろですか。
  600. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 昨年時分ですかね。
  601. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 それはどこからあなたの方はお買いになつたのですか。そういうものはどこから入つて来ましたか。
  602. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 それは業者の方から入る場合もあります。
  603. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 業者とはどこですか。それをお尋ねします。
  604. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 ……。
  605. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 その売つた人名前を言うてください。         ————— 帳簿につけてございますか。
  606. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 それは店にもどりまして、よく調べて御返事いたします。
  607. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 書面でもいいですが、大体のことはわかるはずですから、今大体のことをおつしやつてください。どこから買つたか。
  608. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 今ダイヤは、みんなしろうとから預かつたり、また仲間から借りたりなんかするのが多いですからな。
  609. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 それでもいいが、要するにあなたが去年飾つてつたのはどこから入つて来た石か。
  610. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 それはよく帳簿を調べてみます。
  611. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 帳簿を調べなくたつて、あなたの方で買つたところ、売つたところを……。
  612. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 それは買いませんですからね。
  613. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 どうしたんですか。
  614. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 借りたんです。
  615. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 どこで——貸した人をおつしやつてください。
  616. 内藤隆

    内藤委員長 借りたなら、記憶があるでしよう。
  617. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 七十万円も八十万円もするダイヤを貸した人、それはどういう人か。         ————— どうですか、答えができませんか。借りたんならなおさら覚えておるでしよう。
  618. 内藤隆

    内藤委員長 ちよつと証人に聞きますが、あなたの店は借りたものを並べてあることがあるのですか。
  619. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 あります。名目は委託品。
  620. 内藤隆

    内藤委員長 それは借りたものじやないじやないか。委託品ならば、なお委託されたものぐらい記憶はあるでしよう。そういう高価なものは……。
  621. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 帳面をちよつと見たい。しろうとも貸してくれる場合がありますから……。
  622. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 だから貸した人の名前を言うてください。ここの証人は、知つていること、わかつておることを言わないのも、ぐあいが悪いことになつておりますからね。ここで言つてもらわぬと、あなたは隠すことになります。
  623. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 それは間違いがあるといけませんから、書面ではつきり……。
  624. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 詳しいことはあとで書面でもいいですから、名前を言つてください。だれから借りた、それだけを——三万円や二万円のものでも覚えておるはずだが、七十万、八十万のものをどこの店から借りたか、どこの古物商が持つて来たか。         ————— 大体あなたのきようの証言は、初めから少しふまじめな態度だと私は思つてつたのです。鑑定人で、しかも国民の非常な犠牲を供出させた場合に、それだけの月給をおもらいになつておやりになる以上は、あなた方はもつと真剣になつて、ほんとうに国民のためにも考えておやりにならなければ、非常に遺憾な次第だと私は思うのです。国民が納得できぬというのは、そういうことを言うのです。どういうものでしようか。やり方がすべて大阪と違つておるだけじやなしに、みなあなた方がそういうことを相談して、そんなようなふうにいいかげんにお取扱いになつたのじやないかという気がいたします。あなたのきようの証言では、非常にふまじめな態度できよう証言台にお立ちになつておると思える。だから自分の店に飾つてつた八十万円ほどのダイヤの借り先、だれから借りたか。それだけはきよう言わないではいかぬ。
  625. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 それは所はわからなくてもよいのでございますか。
  626. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 所はわからなくてもよろしい。
  627. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 菰田。
  628. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 菰は、わらの菰ですか。
  629. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 そうです。
  630. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 菰田何という人ですか。
  631. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 名前はわからないのです。
  632. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 それは所はどこですか。
  633. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 所は、大井線で通つていると聞いていました。大井線に住んでいる。
  634. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 大井線というと、それはあなたが借りて来たのですか、店の人が借りに行つたのですか。
  635. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 それは本人が持つてつたのです。
  636. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 それではあなたは一札預かり証か何か入れましたか。
  637. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 いいえ、何にも入れません。
  638. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 えらい信用があるんですね。
  639. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 それはもう私の方で、かりに——余談になりますけれども、何百万円借りても、何にもありません。
  640. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 それは品物を売つてくれと頼まれたのですか。
  641. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 そうです。ちよつとこの品物はいいからというので持つて来た。  それじや預かつておこうじやないか。それで預かつただけです。
  642. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 それはどのくらい飾つておいたのですか。
  643. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人  三月ぐらい。
  644. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 それは結局売れたのですか、売れぬのですか。
  645. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 その品物は売れずに返しました。
  646. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 どういうわけで返したのですか。
  647. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 売れませんから……。
  648. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 だれか当局の人が行つて、これはどういう品物だと調べられたので、あたなはよそへ持つてつたんじやないですか。
  649. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 いいえ、そうじやありません。
  650. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 そう聞いているが、そうじやないのですか。この品物はどこから持つて来たかというので、よその方へ持つてつたのじやないですか。
  651. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 いいえ、そんなことはありません。
  652. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 菰田という人ですな。
  653. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 そうです。
  654. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 大井の方の人。
  655. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 そうです。大井線で通つている。
  656. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 その人はどういう人ですか。そういう貴金属の商売をやつている人ですか、それともしろうとですか。
  657. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 商売というほどのものではありませんけれども……。
  658. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 どういう人ですか。
  659. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 あつちこつちのものを借りまして、幾らかそこで生活を立てているんじやないですかな。
  660. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 あつちこつちのものを借りるというと、わからぬのですが……。
  661. 内藤隆

    内藤委員長 ちよつと証人に申しますが、さいぜん宣誓を願いましたね。あのときの文句をあなたは御記憶でしような。ここは国会ですよ。もう少し考えて御返事になつたらどうです。いかにあなたの店が古くからある、信用のある店といえども、預け人が、八十万円からのものをあなたの店の受取り一本とらずに預ける、そういうことが一体常識で判断できますか。しかもその人間の住所も知らない。菰田という人の名前も知らない。あなたはここを国会と心得てまじめに言つているのですか。ちやらんぽらんの返答をしてはいかぬ。
  662. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 それは領収書などは出しません。今までの商習慣として、私の方で八十万円でなく、ときによれば何百万円借りるときもありますけれども、別にそういうときにも何ら判一つ押すわけでありません。ただ、よろしい、受取つただけで今までずつとやつて来ております。
  663. 内藤隆

    内藤委員長 いずれ他の委員諸君からもその点お聞きになるかもしれませんが、もしそれが臓品であつた場合にはどうする。あなたは今菰田という人を知らないとおつしやる。身元も知らなければ、職業も知らない者から……。
  664. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 証人は古物商の許可か何かとつておりますか。
  665. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 とつております。
  666. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 古物商として……。
  667. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 ええ。
  668. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 だけれども、売ろうとしたのだから、その品物を持つて来た人の住所もわからぬようなものでも、そのダイヤは帳面には書いてあるでしような。古物商の許可をとつている以上は、菰田という人のダイヤを預かつた以上は、その取扱いの全部が書いてあるでしような。
  669. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 小さなメモの控えみたいなものにずつと書いてあります。
  670. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 古物商の許可をとつている人は、帳簿があるはずですよ。
  671. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 私の方は、買つたときに、買受けの方の帳簿につけております。
  672. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 ですから帳簿につけてあるでしよう。
  673. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 預かりのときには、帳簿につけませんです。
  674. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 預かりのときにつけなければ、いつつけるのだ。預かりのときにまずつけてから、処分して決済したときにつけるのじやないですか。
  675. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 買い上げたものだけは帳簿につけてあります。
  676. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 買い上げたものもそうだが、預かつたものも一応書いておかなければいけないわけですな。委託の場合でも、どんな場合でも、帳簿につけないでやることはみんな違反で処罰せられる。(「脱税じやないか」と呼ぶ者あり)脱税の問題にも触れて来る。こういうことは証人は御承知ないですか。大体ダイヤは輸入禁止の品物だから、ちよつとあるべきはずでないのに、どこの品物が一体流れておるか、これがわれわれの聞きたいところであります。どこの品物を一体こういうふうに業者が流しておるか。これは本日まだほかの証人についても十分にお聞きしたいところがあるのでありますが、ただに個人のものだけではない。皇室の問題についてもずいぶん大きないろいろな問題がある。こういうことについて、証人はまつたく責任のない、そうしてほとんど鑑定人としては、最も私どもは遺憾にたえない鑑定人であつたということを申し上げて、私の質問を終ります。
  677. 内藤隆

    内藤委員長 次に田万廣文君。ちよつと田万君に申し上げますが、もうあと二人おいでになりますから、簡単に願います。
  678. 田万廣文

    ○田万委員 承知しまし大分時間がかかりましたから、ポイントだけ二、三お尋ねいたします。  先ほど中野さんから御質問があつた際に、持つて来られたダイヤ品質については、経験によつて鑑定なさつたということをおつしやいました。これはまあ間違いないわけですな。これは目による鑑定、勘による鑑定であつて、科学的に鑑定する方法は、その当時は何もなかつたわけですな。出された人は、あなたがたとえば三級と言つても、ほんとうに三級であつたかどうかということについての認識は全然ないわけですね。持つて来られた方は、自分が持つて来た品物が、品質がどのクラスのものであるかということについての認識は、ほとんど持つておられぬ方ばかりであつたということは、常識的にわかつておるのですが、そういう人の前で——これはお怒りになつてはいかぬですよ。         ————— 謝つて鑑定をなさつた場合には、持つて来られた方に大きな損害がかかるということは、一応理論的にうなずける。いかがですか。
  679. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 ええ、そうですな。
  680. 田万廣文

    ○田万委員 先ほど中野君から聞かれた際に、私疑問に思うのは、量目と品質と、これを両方兼ねて価格を決定なさつたというふうな御証言があつたと思うのですが、量目だけでやられたのでもないというお話でしたね。価格の点で……。
  681. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 価格の点は……。
  682. 田万廣文

    ○田万委員 一カラツト二千円とすれば、二カラツトならば四千円というふうな計算に必ずしもならない……。
  683. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 それは段階をつけたというふうに申し上げたのですが……。
  684. 田万廣文

    ○田万委員 どういうふうに段階をおつけになつたか、その基準をもう一つぺんしろうとにわかりやすくお聞かせ願いたい。
  685. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 そうしますと、一カラツト千円のものが、今度はその通りのもので二カラツトつたとしますと、それは千円替かというと、千五百なたり二千円につける。同じ品質のもので、一カラツトの石が千円で、二カラツトの石の場合には千五百円なり二千円のカラツト替になります。
  686. 田万廣文

    ○田万委員 一カラツトであれば千円、二カラツトであれば、普通しろのと考えでは二千円という勘定になるのだが、実際あなたたちが取引なさる際には、二カラツトは二千円という値段ではなくして、それの量目以上に価格が支払われておる事実がある、というふうなお話が先ほどあつたように思うのですが、これは私の聞き違いでしようか。
  687. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 つまりここに一カラツト、二カラツト、三カラツトというものがありますね。この一、二、三はみな石の質は同じものだとします。そうすると一カラツトのものは千円の替ですから、金額にして千円でございますね。ここに二カラツトのものがあります。ところが三カラツトのものは千五百円の替とかりに仮定いたしますと……。
  688. 田万廣文

    ○田万委員 なぜです。
  689. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 これは同質で大きくなりますから値が高くなるのです。ですから価格にして三千円になるのです。今度は三カラツトの石が、一カラツト二千円替としますと、これは価格に直して六千円になります。いかがですか、おわかりになりませんか。そういうふうに段階はちやんとつけてございます。それから、どうも私のほうの価格と——私の方では一カラツト替——その言い方がまずいので、あるいはその点がふに落ちないのではないかと思うのですが、もう一度くどく申し上げますと、一カラツト、二カラツト、三カラツトとございますね。この質はみな同じものです。一カラツトのもの、これは千円の替とかりに仮定いたしますと、金額にして千円でございます。二カラツトのものは千五百円の替でございますから、そうするとこれは金額にしまして三千円となります。三カラツトのものは、今度は二千円の替でございますから六千円になります。
  690. 田万廣文

    ○田万委員 あなたは専門家ですし、われわれダイヤを持つたことがありませんので、鑑定でぼうつとして、鑑定証言ではや鑑定がわからなくなつたくらいの鑑定になつて非常に困るのですが、最後に一つお尋ねしたいのです。ただいま明禮君から聞かれましたが、お宅にも相当なダイヤがあられるそうですが、現在あなたのところにどれくらいのダイヤがございましようか。自分の御商売で、帳簿もちやんとしておいでになると思いますから、わかると思いますので、ちよつとお知らせ願います。
  691. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 全体の金額を言いますれば、五、六百万円と申しあげましようか……。
  692. 田万廣文

    ○田万委員 カラツトで換算すると大体どのくらいになるのですか。
  693. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 そういう点をお伺いなされても、ちよつと出ませんですが……。
  694. 田万廣文

    ○田万委員 さつきから明禮君が聞かれたのにもわからなかつた。私が聞いても、書面で御回答するということになるかもしれませんが、少くともあなた自身のことですから……。五、六百万円という価格は言われたが、カラツトで言つたらどうですか。
  695. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 自分のことについて一言言わしてもらいます。今私は自分の子供がほとんどやつておりますから、そう自分はタツチしていないのでございます。大づかみには見ておりますけれども、そんなに自分として見ないのでございます。
  696. 田万廣文

    ○田万委員 しかし見ないかしらぬけれども、実権者として、あなたが後見役でおられる。そういうダイヤは、終戦からこの方ぽつぽつお集めになつたわけなんでしよう。戦争中には一般の人はみな供出された。あなたにも供出されたのではないのですか。
  697. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 供出いたしました。
  698. 田万廣文

    ○田万委員 一つもなくなられたのでしよう。
  699. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 そうです。
  700. 田万廣文

    ○田万委員 終戦後今日まで、話通りとしても、五、六百万円からの金でしよう——。千五、六百万円……。
  701. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 いえ、千はつきません。
  702. 田万廣文

    ○田万委員 つかないのですか。
  703. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 大分山がかかつております。
  704. 田万廣文

    ○田万委員 山はかかつておりません。
  705. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 一千万円かかつてしまつた……。
  706. 田万廣文

    ○田万委員 五、六百万円は御謙遜の価額かもしれませんが、少くとも五、六百万円としてでも、それだけのものが戦争後において集まつた。それはどういう系統からお集めになられたのか。私どもの知り得た範囲では、こういうものは現在輸入禁止になつて、先ほど明禮委員も言われましたが、入つて来るルートは大体想像にかたくないのでありますけれども、お宅が集めるルートはどのルートに該当しておるかということを、一応お尋ねしなければならない筋合いになつておる。ないはずのものが出て来ておるのですから……。
  707. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 それはなるほど、終戦後ダイヤなどはあろうはずのものではなかつたのですけれども、しかしずいぶんしろうとでも持つておりましたな。
  708. 田万廣文

    ○田万委員 だから、あなたが古物帳に書かれたかどうか知りませんけれども、どこから大体おもにお買いになつたか。帳簿を見られたらわかるのですか。終戦からずつと帳簿をおつけになつておりますか。
  709. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 つけたりつけなかつたものもありますが……。
  710. 田万廣文

    ○田万委員 もう少しまじめに答えてもらわないと……。つけない場合はどういう場合につけなかつたのですか。つけた場合はどういう場合につけるのですか。少なくとも古物営業取締規則においては、私も弁護士の端くれにおるが、やはりちやんと記載しなければならない規則になつておる。それをあなたの独断で、つけたりつけなかつたり、——どういう場合におつけにならなかつたか。つける、つけないの区別はどこに区分を置いたか、ちよつとお尋ねしたい。
  711. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 自分の家がそうだからといつて他人様に言つても……。営業のならわしはそういうふうなならわしですからな。
  712. 田万廣文

    ○田万委員 ふまじめな答弁では困る。
  713. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 ふまじめではございません。
  714. 田万廣文

    ○田万委員 つけたりつけなかつたりすることが商習慣であるというようなことを聞いたのは、ぼくは初めてです。しかしあなたの場合に、つけられなかつた、あるいはつけたということがあつたからして、つけられた場合とつけられない場合と、どういうところに区別を置いてそういうことをなさつたかということを聞いておるわけです。
  715. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 実際において帳簿にすつかりつけますと、あるものの調べによつちや、そつくり財産出してもおつつかない場合があるでしような。
  716. 田万廣文

    ○田万委員 脱税……。
  717. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 脱税じやございませんです。
  718. 田万廣文

    ○田万委員 どういうことです。税金を免れるために、書くべきものを書かなかつたというのかあるいはその他に意図があつてつけなかつたのか、はつきり言つてもらいたい。先ほど内藤委員長からお話があり、あなたも宣誓した。うそは言わない、ほんとうのことを言うと……。言いにくければ言わぬでもよろしい。しかし、言つた限りは責任を持つて証言してもらわなければ困る。つけない場合があり、つける場合がある。どういう場合につけないのか。あなた自信の行為で、他人の行為ではない。自分自身の行為をここで証言しなければならない。どういう場合におつけにならなかつたか。
  719. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 しろうとが売る場合なんか、やつぱり何とかこれをないしよにしてもらいたいということもありまして、それはつけない場合もあります。
  720. 田万廣文

    ○田万委員 もう少しわかりやすく言つてください。
  721. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 何と申し上げたらいいですかな。
  722. 田万廣文

    ○田万委員 つけにくいというのはやつぱりそれだけの理由があるのでしよう。何とも輸入禁止になつておるものがあなたのところへ流れ込んで来る。密輸入で入つて来たものが、あるいは臟物で入つて来たものが、その根本を探つたならば、戦時中に出されたものがあなたのところまで逆に還流して来ているかもわからない。そういう鑑定をしたものが、あなたのふところへまた返つて来ておる事実はありませんか。そういうものがつけにくいと言つておるのじやないのですか。
  723. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 いや、そういうことはないです。
  724. 田万廣文

    ○田万委員 なぜしからばつけない場合をはつきり言われないのですか。
  725. 内藤隆

    内藤委員長 どうです証人、正々堂々のものなら何もそうお考えになつて、ここで証言できないはずはないですがな。何かそこに暗いことがあるから、ここでお答えを躊躇しておるんでしよう。そうじやないのですか。
  726. 田万廣文

    ○田万委員 簡単な供述で済むじやないですか、つけなかつた場合はこういう理由でつけなかつたと。つけなかつた場合にいろいろ理由があるんですか、重ねてお尋ねしますけれども。つけなかつたという場合を個々に区別したならば、あらゆる場合があるわけですか。そう頭をかしげてお考えなさらなくても、はつきりお答えできるじやないですか。答えられないならば答えられないでもいいです。お答えになれませんか、その理由を。
  727. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 答えてそれが……。
  728. 田万廣文

    ○田万委員 答えてそれが……。
  729. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 ダイヤ金額は張りますけれども、利益なんてものはほんのわずかです。
  730. 田万廣文

    ○田万委員 そういう利益ということは私は……。
  731. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 利益がほんのわずかですから、帳面に載せたんじやどうにもこうにもしようがないんです。
  732. 田万廣文

    ○田万委員 そんなにたくさんあるのですか。
  733. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 数じやありません。かりに五十万円で売つたらどれだけもうかるかというと、利益というものはほんのわずかしかないのでございます。
  734. 田万廣文

    ○田万委員 利益があるとか、ないとかいうことで帳面に書かなかつた、書いたということでは、たれも納得行きませんよ。だから端的に、書かなかつたのはどういう理由なのか……。
  735. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 書かなかつたのは、金額が張つても、つまり利益というものはほんのわずかばかりしかないものでございますから、税金を払つたのじや赤字になるから、そこで帳面につけない。
  736. 田万廣文

    ○田万委員 利益がなければなおつけたらよいじやないか。何を言つておるのか。利益がなければ、なお正直に書くべきではないか。あなたの言うことはとんちんかんばかりだ。利益がないのであればなお正直に書けばいいということです。あなたの方の帳面は、利益のないときには書かない、利益のあるときにはうんと書くというのですか。やはり常識的な証言をしてもらわなければ……。ばかばかりではないから……。
  737. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 いいえ、決して私は、それは……。
  738. 田万廣文

    ○田万委員 あなたの説明は、利益のないもんだから書かないと言う。今あなたはおつしやつたでしよう。今あなたのおつしやつたことに責任を持つでしよう。少くとも偽証の制裁があるのですよ。あなたがちやらんぼらん言われて、われわれが判断の基礎を誤るようなことがあつては困る。何か底意があつて、つけない場合をはつきりと言えないということになるのですか。
  739. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 つまり金額ばかり張つて利益がないために、帳面に載せるのは、何といいますか、税務当局の方でも不審に思うでしようから、それでまあ利益があまりわずかですから、つけないわけです。
  740. 田万廣文

    ○田万委員 脱税の意味でつけなかつたということに結論はなるのですか。
  741. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 さあ……。
  742. 田万廣文

    ○田万委員 さあなんて、あなたは商売人でしよう。私はもういいかげんで、皆さんほかの委員も聞きたいことがあると思うので、下ろうと思つているけれども下れない。あなたも早く帰りたいと思うだろうけれども、これでは帰れない。はつきりと答弁してもらわぬと困る。つけなかつた場合は、利益が少くて数が多くなるからつけなかつた、そういうふうに承つてけつこうですか。
  743. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 利益が少いためにつけなかつた
  744. 田万廣文

    ○田万委員 だけれどもね、利益が少なければ、なおつければいいじやないかということをやはり言いたくなりますよ。
  745. 内藤隆

    内藤委員長 田万君、どうでしよう。
  746. 田万廣文

    ○田万委員 それから最後に私聞きますが、新橋から銀座に至る東京の貴金属商で、現在どのくらいダイヤを持つていられるか。これはどうですか、業者の間で……。
  747. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 それはちよつと御返事できませんですね。
  748. 田万廣文

    ○田万委員 わからないですか。
  749. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 ええ。
  750. 田万廣文

    ○田万委員 それならあなたのところは、五、六百万円のものが現在ある。これは間違いないですね。それ以上あつた場合にはいかなる責任をお感じになりますか。
  751. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 ありませんです。
  752. 田万廣文

    ○田万委員 あつた場合にはいかなる責任も——本日ここで証言したことについて、重大な責任を感ずるということに結論をとつていいですね。大体よく調査はしておる。けつこうです。
  753. 内藤隆

    内藤委員長 横路節雄君。
  754. 横路節雄

    ○横路委員 証人に私はお尋ねをしたいのですが、このマルカ合資会社の、あなたは代表者であるそうですが、その代表者になられたのはいつでございますか。
  755. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 昭和十二年です。
  756. 横路節雄

    ○横路委員 そうしますと、交易営団ダイヤ買上げの件に関してあなたが再鑑定人に選ばれたときは、引続きそのマルカ合資会社の代表者であつたわけですね。
  757. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 ええ、そうです。
  758. 横路節雄

    ○横路委員 あなたは先ほどの各委員質問に対する答弁で、桐生に疎開した場合にあなたは行つていないそうですが、そうすると、あなたは交易営団ではいつまでこの鑑定人としておつたわけでございますか。
  759. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 あの鑑定室を桐生へ移すまでですね。
  760. 横路節雄

    ○横路委員 大体桐生には、あなたと一緒に鑑定をされておつた方も多く行つたようですが、あなたはどういう事情で行かなかつたのか。またそのときまで、あなたの身分は一体交易営団の嘱託なのか、軍需省の嘱託なのか、また行かなかつたのは何か理由があつたのか、その点をひとつ……。
  761. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 ちようどその時分に、自分は胃潰瘍でからだが思わしくなかつたのですから、営団へ行つておる時分にも、毎日自分は胃潰瘍の薬を持つて行くしことに桐生あたりへ行つたのでは、食物の関係でまた胃潰瘍の再発のおそれもありますから、そんなこんなで行かなかつたのです。
  762. 横路節雄

    ○横路委員 あなたは交易営団の嘱託であつたのですか、軍需省の嘱託であつたのですか、どちらですか。
  763. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 最初私は交易営団の方から話がありまして——別に嘱託という辞令はもらつたことはありませんが、そこに暗に嘱託みたいなつもりで通つてつたのです。そうちに、今度また軍需省の方から嘱託を命ずるという辞令が出たんです。
  764. 横路節雄

    ○横路委員 あなたは交易営団の嘱託あるいは軍需省の嘱託として鑑定人のお仕事をしながら、なおあなたはマルカ合資会社の代表者であることについては、かわりはなかつたのですね。
  765. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 そういうことです。
  766. 横路節雄

    ○横路委員 そうすると、一方銀座七丁目で営業をやつている、一方あなた自身は、その代表をしながら、同時に松屋の再鑑定人室に勤めておつたわけですな。
  767. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 いいえ、そうじやありません。銀座の店は、私の方の営業は二・一禁令でとめられてしまいましたから、ある統制会社に貸してしまいました。
  768. 横路節雄

    ○横路委員 そうすると、ただマルカ合資会社の代表者であるという身分だけ残つていたのですか。
  769. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 ええ、そうです。
  770. 横路節雄

    ○横路委員 あなたが、なおマルカ合資会社の代表者として、今の常業を戦後に始めるようにありましたのはいつからですか。
  771. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 昭和二十四年十二月でございます。
  772. 横路節雄

    ○横路委員 そうするとマルカ合資会社は、昭和二十四年十二月に実際には営業するようになつたわけですが、その期間はあなたは何をしていたわけですか。
  773. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 まあ、遊んでおりました。遊んでおると言うと何ですが、何も用がないのですから……。
  774. 横路節雄

    ○横路委員 先ほどの各委員の方の質問で、あなたは再鑑定をする場合、量目を計量器ではかつたというようなことについては、あなたは御答弁していませんが、実際にはこれを計量器ではかるということはなかつたわけですか。
  775. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 はかりました。
  776. 横路節雄

    ○横路委員 一々……。
  777. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 ええ。
  778. 横路節雄

    ○横路委員 一つく一つ……。
  779. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 いいえ、そうじやありません。
  780. 横路節雄

    ○横路委員 全部まとめてですな。
  781. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 ええ、そうです。かりにここに一カラツトとか二カラツト品物がありましたときに、もちろんこれをデパートで買い上げるのは、要するに商売人が買い上げるのですから、間違いあることはないと思つておりますので、そこに伝票と一緒に二カラツトなら二カラツトの石が来たとします。そのときに伝票を見て三カラツトなら、これは二カラツト間違いなくあるなと見て、大体間違いないということがほとんどわかつていますから、そういうときにはかけませんけれども、自分として、これが伝票には二カラツト半としてあつても、どうも石が二カラツトちよつとしかないという感じのときには、一々はかりにかけます。
  782. 横路節雄

    ○横路委員 あなたは、先ほどのお話で、初めは一つずつ袋で来た。ところが中間になつて忙しくなつたら、給仕というか女の子がお盆を持つて来て、みんなそれへ移して、それをあなたがピンセツトでいろいろ見たように、初めはあなたはそういう答弁をしておつた
  783. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 ええ、そうです。
  784. 横路節雄

    ○横路委員 ところが、他の委員質問に対するあなたの答弁はそうではない。お盆の上に袋を積んだのだと言われている。一体どちらなのです。
  785. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 それは違います。私はそうは申し上げなかつたつもりです。最初のうちは、自分の覚えでは、一々袋から包みを出して見ていたのですが、それでは煩雑でなかなかたくさんのものの処理ができない、これはひとつ営団の方に手伝つてもらおう、こういうことになりまして、それから後は、袋の中にかりに五十包みあれば、一々包みを広げてお盆の上に伝票と一緒にダイヤを載せたものを女の子が持つて参る、それを私は伝票を見ながら、何と何とがあるというように別の盆にあけてその上に伝票を置く。そしてまた次の伝票を見る。大体間違いありませんで、ピンセツトでちよつとダイヤを見て、これならばいいというので、また別の盆にあけてその上に伝票を置く。
  786. 横路節雄

    ○横路委員 その際、先ほども話がありましたが、空襲警報のような場合、あなたは警戒警報でもすぐに作業の中止をなさつたというのですが、そうするとお盆の上に伝票を一緒に終つたものは、他のお盆か袋か知らぬが、そこへ一括して入れたわけですね。
  787. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 かりに五十のうち三つなら三つの伝票が済んでいたとしますと、その三つのダイヤはまとまつておるわけです。そこで警戒警報が鳴りますと、それは三枚の伝票と一緒にこぼれないようにダイヤをすつかり包み、あと四十七の包みは元通り包んで袋に納めて、それをそつくり営団の方へもどす。じやまたあした来たときに調べますよと言つて、自分でちよつとしるしをつけておく。
  788. 横路節雄

    ○横路委員 先ほどあなたは、百貨店の方で取扱つたのを、あなたの方で再鑑定した場合に、もつとよく買い上げなければならない。ほんとうは高品位のものなんだけれども、あまりにも低品位に見積り過ぎておる、もつと高く買い上げなければならないと注意をしたと言われましたね。
  789. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 そうです。
  790. 横路節雄

    ○横路委員 ところが、先ほどの松屋の代表者の方の話によると、それとは逆なんですよ。どういうふうに逆であるかというと、本来はこれはもつと高く再鑑定の方でしてもらわなければならないのだけれども、低いというのです。一方は窓口の方が高く見積つておると言い、あなたの方では低いと言う。
  791. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 それもありました。
  792. 横路節雄

    ○横路委員 どちらの方が多かつたのですか。
  793. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 先ほどのは金額を増した話をしたわけです。今度は逆に五千円しか価値のない、タイヤを八千円なら八千円で買い上げた場合、三千円高く買い上げたなという感が自分では来ます。そうすると、前の者がそのダイヤを見まして、これは五千円くらいしかない、そうすると今度またこつちの者に見せる、これは四千五百円しかない、するとこれは三千円よけいに買い上げたことになる。そういう場合には、今度それを買い上げたデパートならデパートの方へ通知をしまして、デパートがそれで三千円かの損をするのであります。
  794. 横路節雄

    ○横路委員 あなたは松屋の方の窓口でやられておつた鑑定人と、何べんもお会いしたことがありますか。
  795. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 窓口と会つたことは、私はあまりそういうことはないと言つていいくらいです。
  796. 横路節雄

    ○横路委員 先ほどのあなたの答弁の中では、再鑑定を終つたものを全部一括して入れたわけですね。言葉で言えば、高品位のものも低品位のものも一緒にして入れたのですね。
  797. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 そうです。
  798. 横路節雄

    ○横路委員 大阪の方では、そういうことがかえつて不正が起きる。だから五級くらいにわけたらしいですね。ところが、あなたのさつきの答弁を聞いてますと、大阪のように五級にわけたりすることがかえつて思わしくない結果を生ずる、こういうように言つていますね。つまり大阪のように五級にわけてやることが、かえつて思わしくない結果ができる、あるいは好ましからざる結果ができるから一括して入れた、こう言つている。しかし、大阪の方ではそうではない。一括しては思わしくないから、五つにわけてそうしてあなたの方に送つて来ているのですが、あなたはどうしてこう一、二、三、四、五級というようにわけることが、不正とは言いませんが、思わしくない結果ができると判断をなさつたか、聞かしていただきたい。
  799. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 それは大人なり何人なりの席で、おのおのが一つ一つそういう区わけをすると、非常に煩雑になる。それよりは、とにかくダイヤというものは、一緒に集めても別にきずがつくものでもなし、かけるものでも何でもないのですから、そういつたこまかい処理処理で後日に譲つて、とにかく毎日のようにデパートからたくさんまわつて来て処理ができない。そこで一日でも早くあげた方がいいという気持で私はおつたのです。
  800. 横路節雄

    ○横路委員 あなたはさつきそういう意味で話をされたのではないですね。煩雑だから一括してやつたのではなしに、あなたが一つにまとめたのは、思わしくないことが起きるから——思わしくないというのは、言いかえたならば、何かそこに間違いが生ずるということだが、今の話では煩雑だからということで、間違いというのと煩雑というのとは違いますよ。
  801. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 そういうちよつとした言葉の違い、それはあるいは私の表現法が下手かもしれませんけれども、ひとつそういう言葉の表現法の何は御容赦願います。
  802. 横路節雄

    ○横路委員 そうすると、今あなたのおつしやる間違いというのは、煩雑ということと同じだ、こういうわけですか。
  803. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 私は別に煩雑とか不正、そういう意味でさつき言つたわけではないのです。
  804. 横路節雄

    ○横路委員 大阪の方ではそう言つているのですね。つまり一括すると間違いができる、思わしくないことができるからといつてちやんとわけてある。それをあなたはただ、手続上、極端に言えばめんどうくさいから一つにした。
  805. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 めんどうくさいというとなんですが、とにかく処理処理でまた後日にゆつくりしたらいいだろう。毎日背負い切れないだけ方々から来るのですから、少し早く整理しようじやないかというので、自分の気持かしれませんけれども……。
  806. 横路節雄

    ○横路委員 先ほど前の委員の方から、現在手持ちのダイヤは総額五、六百万円とお話になつた。それから今まで取扱つて来た、帳面につけるのとつけていないのとがあるが、二十四年十二月から今まで取引した総額は、ダイヤモンドについてどれくらいになりますか。
  807. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 ずさんと言えばずさんですけれども、まあ私どもも数字のことや何かは、みんなそつくり——そうするといかにも責任のがれのことのようですけれども、全部子供にそつくりその方面はまかせつ切りですから、それを今ここで幾らというと、それがまた、何だ、この間こう言つたじやないかと言われても困りますから、そういう方は、ひとつゆつくり書面なり何なりでお答えしていいのですが。……
  808. 横路節雄

    ○横路委員 あなたは先ほどの前の方の質問に答えて、つけたのとつけないのとあると言われましたね。
  809. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 ええ。
  810. 横路節雄

    ○横路委員 つけたのとつけないのの割合はどんなものですか。つけたのとつけないのと大体半分々々くらいですか。どんなものでしようね。これはやはり総体の、というのは、あなた御自分で営業なさつているのですから、大体の感じとしては半分々々なのか、どうなのかということは、今でもきつとお答えできるのではないですか。
  811. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 そうですね。それじやつけない方が多いとしましよう。
  812. 横路節雄

    ○横路委員 どうもあなたにお聞きしますが、今のつけない方が多いとしましようということは、つけない方が多いというわけですね。
  813. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 そうです。
  814. 横路節雄

    ○横路委員 委員長、私は、実はこの問題についてこれからいろいろ解明して行くのに、やはり一つの大事な点であろうとも思いますし、できますならばひとつ委員長の方で、証人に、昭和二十年十二月から今までの取引したもの、それからなお、今の証人言葉で大体つけなかつた方のものが多いそうそうですから、これなどもできれば記憶を呼び起すか、それから先ほどから言われております現在所持のもの、これは当然菰田というのですか等についても、もつと明確に、ひとつ委員長においては、書面その他において出されるようにとりはからつていただきたい。以上で終ります。
  815. 内藤隆

    内藤委員長 承知いたしました。証人に申しますが、ただいまの横路委員からの御要求もありますから、正確なものを——つけないものの記憶を呼び起して、つけたものは帳簿に照らしてこれを写して、そうしてすみやかに委員長あてに御提出願います。わかりましたね。
  816. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 わかりました。
  817. 内藤隆

    内藤委員長 それでは荒舩清十郎君。
  818. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員 ただいま前委員から申されたところで重大な点がありますので、一点お聞きしたいと思いますが、さつき言われるように、大阪の方では、品質を別にして、五段階あるいは六段階にわけて別な袋で処理をした。東京は、今の証人のお話によると、全部いいものも悪いものも一緒くたにして、一つの袋に入れて処理した、こういうお話ですが、それでよろしいんですな。         ————— そこでしからば、そのいいものも悪いものも一緒にして一つの袋に入れる。こういう方針、あるいはあなたに命令をされた、あるいはあなたにそういうことを指示されたというのは、どういう人がそういう指示をなさつたのですか。
  819. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 別にそれは指示されたと、そうはつきりはいたしませんけれども、そのときの何からいつて、まあそういうふうにしようじやないかというくらいの話で、じやそれがいいというようなぐあいにしたと私は思つております。
  820. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員 先ほどからお聞きいたしますと、長い期間ダイヤの取扱いについては御造詣が深い、エキスパートであるというお話でございますが、そのあなたが、先ほどお聞きいたしますと、一等級から三十等くらいまで種類があるというものを、だれに命令されたか、だれの指示によつてかわからないが、一緒くたに一つの袋に入れてしまつて処理したというのは、納得行かないのですが、ほんとうのことを教えてくれませんか。
  821. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 それはほんとうです。
  822. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員 それはほんとうでしようが、だれの指示によつて——当時の営団の課長あるいはその上の部長といいましようか、あるいは軍需省の指示によりますか、いかなる人の命令指示によつて、これを一つの袋に入れて処理したのですか。
  823. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 別にそれはだれもそういうふうに指示も何もありませんです。そこのところは、先ほども申し上げたように、言い方が悪いと誤解されますから……。
  824. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員 いや、私は弁護士ではありませんから、あげ足をとりませんから……。
  825. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 まあ、何といいましようか、今のところはそれが一番いいだろうというお互いの気持ちで、どんどん処理したわけですな。別にこうしなきやいかぬというようなことはなかつたのてす。最初のうちは、営団は——しまいまでおりましたけれども営団の人が机のすみにすわつてつたのですが、その人からも別に指示がありませんし、これははつきりわかりませんけれどもちよつと今考えますと、じや、こういうふうに整理したら、この一袋へ入れておいていいでしようねと言つたら、営団の方の人も、そうお願いしましようというくらいで、袋へ入れていたと思いますね。
  826. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員 そのそばにいたという営団の方は何という方で、その人がいつころからいつまでその指示を与えたでしようか。
  827. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 その人は指示でも何でもなしに、ただ机にすわつてつて、みんなのやることを黙つて見ておつたたけですから……。
  828. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員 しかし、それはあなたがこの営団の嘱託ですか、あるいは軍需省ですか、はつきりわかりませんが、何という人に呼び出されて嘱託を受けたのですか。あなたにここで働けという指示を与えた人は何という方ですか。それはもちろん営団の人でしよう、あるいは軍需省ですか。
  829. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 一番最初は、交易営団から私の方へ手紙か何かが参つて、それで一番最初に日本橋倶楽部で会合したのでございます。一番最初は、そのときに営団名前で——5ろ覚えで申しますけれども営団から手紙か何か参つて、日本橋倶楽部に参りますと、皆さん顔を知つている者がおつたのです。何の用だ、実はこれこれだ、そうか、みんなにやつてもらうんだけれども、大体久米さんが主になつているから、久米さんから営団の方へ話があつて、ぼくの方へ営団から通知があつたというふうにうろ覚えに覚えていますな。
  830. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員 その久米さんという方は……。
  831. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 久米武夫氏です。
  832. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員 その方は営団の嘱託ですか、営団職員ですか。
  833. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 久米武夫という方は、ほんとうの宝石界のオーソリテイです。
  834. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員 そのオーソリテイが、月給千円出すから、君、あしたから来て……。
  835. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 それじや私も行きませんから……。ただその月給というのは、最初のうちは別に自分で幾らというような気持じやなかつたのでございます。実際に今日私も大分不調でまことに困つておりますけれども、その当時の気持は、自分の気持は、われ出でずんばダイヤ整理できないという気持で、ほんとうに胃潰瘍の痛いのを無理に押して、営団へ毎日々々通つたものです。ですから月給なんていうものは、後日営団がくれたので、何だ、やはり営団でおあしくれたのかというわけで、そんなものを全然当てにしていないのです。とにかく自分は胃潰瘍で、退院してまだ間もないのに、あそこへ通つたということも相当見てもらわないと私は困ると思うのです。
  836. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員 いいものも悪いものも、たとえば悪い例をあげれば、ガラスもダイヤも一緒の袋に入れて処理したということ。大阪では五等級、六等級にわけて、別々に袋へ納めて処理をした、こういうことですが、東京松屋の八階ですか、その交易営団でやつたのは、だれの指示もなくて、それこそガラスのかけらまで一緒に入れるように、いいものも悪いものも、何等級にもちつとも存ないで、ごちやごちやにして処理したと言う。だれかが指示を与えなくては、そういう方針は立たないと思うのですが、これははつきり教えてもらわないと困る。これは重大な関係があるのです。
  837. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 それはその通りなんです。今もガラスのかけらとおつしやいますけれども、ガラスのかけらというのはガラスではございませんで、ジルコンというダイヤによく似たものがあるのです。それをまたまた間違つて買い上げて、それが入つた来たわけなんです。
  838. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員 さつき申し上げるように、あなたはダイヤについてのエキスパートですが、買い上げたダイヤが何に使われるかということも聞かずに、一緒くたにしちやつた、こういうことですか。
  839. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 大体工業の方にまわすということは聞いておりましたか……
  840. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員 工業用に使うとすれば、ダイヤでもむろんいいか悪いかわかりませんが、工業用に適するものだけでよろしいので、せつかく松屋の方で選別して来たものを、あなたの方で一緒くたに一つの袋に入れて処理してしまうということは——だれかに方針を与えられずして、それを一緒くたにするということはないはずなんですが、それはどうです。
  841. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 それは松屋で選別したわけじやないのです。買い上げたのです。各デパートで買い上げるときには、個々に買い上げるのですから、つまりそれを一々私の方で目を通して、目を通したものは一緒にしたわけです。
  842. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員 一緒にしたというのは、いかなる人の命令とか指示あるいは方針によつてしたのですか。
  843. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 指示も命令もありません。ただ漫然とそういうようにやつたのです。
  844. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員 そうすると、あなたがそこに鑑定人としてお入りになる前から、もう先輩がたくさんおつたわけですか。
  845. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 いや、もう私は最初の方ですから。
  846. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員 そうすれば、そこでだれの方針、いかなる人の指示によつてこれを一緒くたにしたかということが、あなたが最初の人であればおわかりだろうと思うのです。
  847. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 ですから、一番最初も申し上げましたように、まあこういうようにして処理したらよいだろうというぐあいで、何らそこに考えもなく、ただ少しでも早く整理してしまおうというような気持でしただけなんですから……。
  848. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員 わかりました。  次に、先ほどあなたは昭和二十四年の十二月に御商売を復活して始めた、こういうことで、その点はお間違いないと思います。それから現在に至る三年半か、あるいは四年になりますか、三年何箇月かしれませんが、とにかく百万円もするようなダイヤを、菰田何がしという名前も知らない人から委託を受けたというようなこと——ダイヤの取引というものは、委託を受ける場合みなそうですか。
  849. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 それは名前のはつきりしたのもあります。
  850. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員 預かり証も出さないで……。
  851. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 預かり証は出さないのです。何百万円のものを預かりましても、預かり証を出したことはちつともありません。
  852. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員 それはあなたのお店だけでなく、どこもそうですか。
  853. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 よそは存じませんけれども、私のところはそうです。
  854. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員 そういうことはどうも常識の上で考えられないと思うのです。そこで大井の方から来るとかなんとかいいますか、名前もはつきり覚えない、あるいは住所もわからないと言う。ことに預かり証を一本も出さないで、百万円もするような品物を預かるということは、私どもの常識では判断に苦しむのですが、実際のことをひとつお話願いたいと思うのです。一体住所姓名のわからない人から百方円もするダイヤを預かるという、これはだれしも何ですね、預かり証を一本も出さない、名前もわからない、住所もわからないというのでは、どうもたれしも不審に思うと思うのですね。そういうことがあり得るのですか。ここは検事局ではないのだから、あまりかた苦しい考えでなくお話をなさつた方がよいじやありませんか。もしここで発表するのがさしつかえあるようでしたら、委員長あてに書類でけつこうですが、数日中に必ず出してもらえますか。
  855. 喜多村喜之助

    ○喜多村証人 はあ。
  856. 荒舩清十郎

    ○荒舩委員 では必ず出してもらうことにお願いしたいと思います。時間がありませんから……。
  857. 中野四郎

    中野(四)委員 委員長に要求があります。先ほどから喜多村さんの証言を聞いておりますと、どの委員もみんな納得が行かないのです。まじめ、ふまじめということよりも、今日あなたがここへおいでになつたということに、当時再鑑定として関係をした人々とか、あるいは業者の連中は非常な関心を払つておるのです。私は不測の発言をするのではありませんけれども、おそらくあなたが今日お帰りになつて、今晩から、東京中のダイヤが相当数地下にもぐるだろうと私は思つているのです。それはひとり想像ばかりではないのです。私らが先ほどからまじめな意味で、営団の嘱一託であつた池山君のことを聞いても、あるいはダイヤの流れを知るために、処理あるいは手持ダイヤというようなことについて、いろいろと各委員から伺つておりまするが、はつきりいたしません。従つて、私がこの際委員長に要求をしたいのは、本日の証人証言は、われわれをして納得させません。従つて宣誓に基いて、書類を提出し得るものは書類を提出せしめ、後日これが偽証の場合においては、適当なる処置をとられんことを希望して、私はこの証人証言をば、この程度で打切つてはどうかと思うのであります。
  858. 内藤隆

    内藤委員長 中野委員にお答えいたします。いずれ速記録を調べまして、理事会等にそれを発表して、協議の十善処したいと思います。さよう御了承願います。  他に御発言がなければ、喜多村証人に対する尋問はこれにて終了いたしました。証人には長時間御苦労さまでした。  引続き私市信夫君より証言を求めることにいたします。  ただいまお見えになつております方は私市信夫君ですね。
  859. 私市信夫

    私市証人 そうです。
  860. 内藤隆

    内藤委員長 あらかじめ文書をもつて承知通り、本日正式に証人として証言を求むることに決定いたしましたから、さよう御了承願います。  この際証人に申し上げますが、戦時中多数国民諸君より供出されましたダイヤモンド、金、白金等は、平和条約の発効と同時に接収解除となりまして、現在日本銀行地下の倉庫に収納去れ、大蔵省によつて保管されておるのであります。このダイヤモンドの収納保管の経過、処理方法等につきましては、世上大いに疑惑を持ち、多大の関心を抱いておるのでありまするが、これが真相を明らかにすることはきわめて意義のあることと考え、本委員会は本件の調査に着手した次第でございますので、証人におかれましては率直なる証言をお願いしておきます。  証言を求むる前に証人に一言申し上げます。昭和二十二年法律第二百二十五号、議院における証人宣誓及び評言等に関する法律によりまして、に証言を求める場合には、その前に宣誓をさせなければならぬことと相なつております。  宣誓または証言を拒むことのできるのは、証言が、証人または証人配偶者、四親等内の血族もしくは三親等内の姻族または証人とこれらの親族関係のあつた者、及び証人の後見人または証人の後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項に関するとき、またはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するとき、及び医師歯科医師、薬剤師、薬種商、産婆、弁護士、弁理士弁護人公証人、宗教または祷祀の職にある者またはこれらの職にあつた者が、その職務上知つた事実であつて黙秘すべきものについて尋問を受けたときに限られておりまして、それ以外には証言を拒むことはできないことになつております。しかして、証人が正当の理由がなくて宣誓または証言を拒んだときは、一年以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられ、かつ宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処せられることとなつておるのであります。一応このことを御承知になつていただきたいと思います。  では、法律の定めるところによりまして、証人宣誓を求めます。御起立を願います。  宣誓書の御朗読を願います。     〔証人私市信夫君朗読〕   宣 誓 書  良心に従つて、真実を述べ、何事もかくさず、また何事もつけ加えないことを誓います。
  861. 内藤隆

    内藤委員長 それでは宣誓書署名捺印してください。     〔証人宣誓書署名捺印
  862. 内藤隆

    内藤委員長 これより証言を求めることになりますが、証言証言を求められた範囲を越えないこと、また御発言の際には、その都度委員長の許可を得て答えるようお願いいたします。なお、こちらから証言を求めるときは、おかけになつていてよろしゆうございますが、お答えの際は御起立を願います。  私市信夫君の経歴を簡単に述べてください。
  863. 私市信夫

    私市証人 大正三年三月七日大阪府北河内郡交野町大字私市九百八十八番地に出生いたしました。中学校を出まして、大阪高等学校、それから東京帝国大学工学部を出まして商工省に入りました。繊維局、それから兵隊に参りまして、昭和十七年召集解除とともに商工省の機械局に勤務いたしました。軍需省の発足とともに、軍需省機械局精密機械課に勤務を命ぜられまして、本件に関係したのであります。
  864. 内藤隆

    内藤委員長 それは何年ごろです。
  865. 私市信夫

    私市証人 機械局は昭和十七年の六月から昭和二十年の三月十日までであります。それから大阪総監府の参事官に任命されました。その後終戦後、昭和二十一年に大阪商工局の総務課長、それから商工課長を命ぜられまして、その後商工省の総務局賠償実施部保全課長、特許庁奨励課長を経まして、機械局、電気通信機械局有線課長、現在仙台通産局の総務部長を命ぜられております。
  866. 内藤隆

    内藤委員長 ただいまの経歴でほぼわかりましたが、そうすると、あなたが軍需省の精密機械課に軍需官として在職されたのは、昭和十七年の六月からですね。
  867. 私市信夫

    私市証人 精密機械課は軍需省ができるとともにできたのでございまして、十八年の十一月一日からでございます。それまでは商工省機械局の産業機械課であります。
  868. 内藤隆

    内藤委員長 あなたのそれらの在職中に、ダイヤ買上げが行われておつたのでございますね。
  869. 私市信夫

    私市証人 はあ。
  870. 内藤隆

    内藤委員長 当時の軍需省の大臣はだれでした。
  871. 私市信夫

    私市証人 当時の軍需大臣は東條内閣総理大臣の兼任でございます。それから国務大臣岸信介氏が軍需次官をしておりまして、その後竹内可吉氏が軍需次官になられました。
  872. 内藤隆

    内藤委員長 局長はだれでした。
  873. 私市信夫

    私市証人 局長は美濃部洋治氏でございます。
  874. 内藤隆

    内藤委員長 当時装飾用ダイヤを買い上げなければならなくなつたという理由についてお述べを願います。
  875. 私市信夫

    私市証人 それでは、その事情について簡単に御説明いたします。私が兵隊から召集解除になりまして、昭和十七年の六月に機械局に配属を命ぜられました。精密機械関係を担当するようになりましたのは、昭和十七年の十一月からでございます。もうそのころになりますと、陸軍海軍、それぞれ物動計画としてはABという名称を使つておりましたが、陸軍海軍ともにボルネオ地区及びジヤワ地区から、どんどん工業用ダイヤモンドを持つてつておりましたけれども、C部門、いわゆる商工省関係の部門に対しては、いかに交渉してもわけてくれないという事情があつたのでございます。その当時から、もう買い上げなければならないという必要が出て来て、何回か案が出たのでございますが、何分にもまだ、当時の情勢としましては、装飾用ダイヤモンドは価格が高過ぎて、当時の情勢としては、まだ工業用には経済的に使えない、そういう実情があつたのであります。その後昭和十九年になりまして、その間約二年間経過しておりますが、その間何回か案は企てられましたが、まだ情勢は熟しませんでした。昭和十九年になりまして、サイパンが陥落するとともに、南方方面からのダイヤの輸送もだんだんととだえて来る。しかも、われわれの灰関するところによれば、艦政本部及び兵器行政本部には、相当大量のダイヤモンドを持つてつたのでございますが、われわれがいかに交渉をしましても、軍需省の航空兵器総局部面に対しては、ダイヤモンドをわけてくれなかつたのであります。従いまして物動上、C部門としてはダイヤモンド工具を一番大量に使いますにもかかわらず、工業用ダイヤモンドは払底を来しておる。結局それを補充するためには、国内の装飾用のダイヤモンドを集めて、それでツールをつくつて飛行機を生産するよりしかたがない、そういう結論に到達したわけでございます。しかも、サイパンが落ちまして、国民感情も大分何して参りましたし、装飾用ダイヤモンドの価格という問題も、今となつては相当高いものを使つてもやむを得ないという結論に到達しまして、いよいよ買上げということが決定したのでございます。
  876. 内藤隆

    内藤委員長 あなたの御証言を聞いておると、軍需大臣は東條英機の兼務であつた。東條というものは当時の独裁者のようなものだ。その力をもつてして商工省なんか動かすことはできなかつたのですか
  877. 私市信夫

    私市証人 ええ、できませんでした。
  878. 内藤隆

    内藤委員長 考えられぬ。何か商工省が軍需省の要求を聞かなかつた、他に理由があるのじやないですか。
  879. 私市信夫

    私市証人 いや、商工省がじやありません。軍需省の要求を陸軍の兵器行政本部、海軍の艦政本部が聞かなかつたのでございます。結局敗戦の大きな原因はそこにあつたわけでございます。陸軍及び海軍の対立というのが……。
  880. 内藤隆

    内藤委員長 当時の軍需省の主管大臣である東條英機は、これに対して、どういう態度をとりましたか。
  881. 私市信夫

    私市証人 そういうことはほとんど大臣には聞えていないと思います。当時われわれの課長は、初代は大友博海軍技術大佐、その次は若林幸二海軍技術大佐でありますが、われわれに述懐していわく、これはアメリカとの戦争よりも、艦本及び兵本に対する物動上の戦争の方がえらいという述懐を、絶えず繰返しておつた実情でございます。
  882. 内藤隆

    内藤委員長 そういうことが、あなたとしては敗戦の大きな原因の一つだと考えられますか。
  883. 私市信夫

    私市証人 われわれは、そういうことも一つの原因だと思つております。
  884. 内藤隆

    内藤委員長 そこで、やむを得ず民間の装飾用ダイヤをいよいよ買い上げることになつたが、その買上げ要綱等をつくつたようですが、これはだれが中心になつて——その企画要綱等をつくつた者名前関係者、御承知の範囲でよろしゆうございます。
  885. 私市信夫

    私市証人 私が軍需省軍需官として企画、立案の主務に当りました。それから協力者として平賀技官——六月ごろ広島の原爆でなくなつております。
  886. 内藤隆

    内藤委員長 そのあなたが中心となつておつくりになつた要綱なるものの要点を二、三述べてください。
  887. 私市信夫

    私市証人 それはあまりはつきりと覚えていないのでございますが……。
  888. 内藤隆

    内藤委員長 資料をごらんになつてようございます。それじやその要綱はよろしゆうございます。こちらの方でわかつておりますから……。
  889. 私市信夫

    私市証人 よろしゆうございますか。
  890. 内藤隆

    内藤委員長 その民間のダイヤ買上げが決定するや、御奨励のおぼしめしと申しましようか、皇室から皇后、皇太后の冠を初め、多数のダイヤ貴金属のお下渡しがあつたことを御承知ですか。
  891. 私市信夫

    私市証人 ええ、承知しております。
  892. 内藤隆

    内藤委員長 承知しておられる。そのお下渡品は、一応当時の秘書課長室で特定人に見せまして、現政務次官室ですね。そこで久米という嘱託の鑑定人ですか、これによつて解体されたようですが、その当時の状況を詳細にひとつ述べてください。
  893. 私市信夫

    私市証人 秘書課長室ではございません。ただちに軍需次官室——現在の政務次官室に持ち込まれたわけでございます。当日閣議がございまして、閣議の席上へ一旦王冠三個を持つて参りまして……。
  894. 内藤隆

    内藤委員長 ちよつと待つてください。それは何年何月の……。
  895. 私市信夫

    私市証人 日は私覚えておりません。九月か十月ごろじやなかつたかと思いますが……。
  896. 内藤隆

    内藤委員長 十九年の……。
  897. 私市信夫

    私市証人 はあ、何分にも十年前のことでございますから、正確な日は覚えておりません。当時の新聞に載つておりますから、図書館あたりで新聞をお調べになれば、正確な日付は出て来ると思います。     〔中野(四)委員「こちらに新聞の切抜きがある」と呼ぶ〕
  898. 内藤隆

    内藤委員長 続けてください。
  899. 私市信夫

    私市証人 閣員にも全部見せまして、それからまた竹内軍需次官室に持つて参りまして、そこで翌日から解体を始めたわけです。第一日は軍需次官室で解体をやりまして、それでは事務にさしつかえますので、第二日から営団の本部に解体作業室を移しまして、軍需省の方から監視のために係官を交代交代で派遣しております。
  900. 内藤隆

    内藤委員長 その軍需省の方からの係官立会いの上で解体したと、こういうわけですね。
  901. 私市信夫

    私市証人 はい、そうでございます。
  902. 内藤隆

    内藤委員長 その解体した者は、久米という人ですか。
  903. 私市信夫

    私市証人 私名前ははつきり覚えておりません。
  904. 内藤隆

    内藤委員長 そのときにあなたも立ち会つてつたのですね。
  905. 私市信夫

    私市証人 私は解体には立ち会いませんでした。平賀技官が……。私は軍需省軍需官としまして、単なる工具のみならず、ベアリング、精密機械一般を広く担任しておりまして、各技官がそれぞれ品目別の事項を担当しておりました。従つて、その実施の主務者は平賀技官であつたわけでございます。
  906. 内藤隆

    内藤委員長 あなたはその宝冠をごらんになりましたか。
  907. 私市信夫

    私市証人 はあ、現実に見ました。場
  908. 内藤隆

    内藤委員長 現物を見た。そのお下渡しになりました二個の宝冠から……。
  909. 私市信夫

    私市証人 三個でございます。
  910. 内藤隆

    内藤委員長 三個でありますか。三個というと、一個は……。
  911. 私市信夫

    私市証人 一個は内地製の御木本製の製品でございまして、二個はロンドンのグロス何とかいう宝石商の製品でございます。
  912. 内藤隆

    内藤委員長 そうすると、三個のうち一個は皇后様のもの……。
  913. 私市信夫

    私市証人 いや、三個とも皇后様のもの……。
  914. 内藤隆

    内藤委員長 皇太后のものはなかつた……。
  915. 私市信夫

    私市証人 その辺はわかりません。皇太后のものか、皇后様のものか……。いずれにしても女性のおつけになるもので……。
  916. 内藤隆

    内藤委員長 三個であつた
  917. 私市信夫

    私市証人 はい。
  918. 内藤隆

    内藤委員長 三個の宝冠からダイヤをはずしたときに、五個の大粒のものは宮内次官に預託したということでありますが、そのような記憶がありますか。
  919. 私市信夫

    私市証人 ええ。実は私もまだ昨年本省にいるときに、そういう事実を衆議院の専門員の方が聞きに来られまして、もうすつかり記憶を消失しておりまして、そんなことはないはずだがと言つてつたのでございますが、坂部技官の持つておりました要綱を見ますと、はつきり五個を預託すると書いてありますので、それで記憶をさらに呼び起こしたのでありますが、確かに預託するという要綱で、営団に対して機械局長通牒で命令しております。五個預託しました理由は、その五個のダイヤモンドにつきまして、マシーン・ツールに加工しますと、三個、四個にカツトして加工することになります。そうすると価値が非常に下る。従つて、まことにもつたいない。それはいよいよの最後でいいではないか。最後まで宮内次官のところに預託しておいて、いよいよ最後になればそれをカツトして使えばいいじやないかという見解で、命令を営団に対していたしたわけであります。
  920. 内藤隆

    内藤委員長 そうすると、その預託したものに対して、何か宮内次官から受取りみたいなものはもらわなかつたのですか。
  921. 私市信夫

    私市証人 そういう実施の事務は平賀次官がやつておりましたので、私は介入しておりません。
  922. 内藤隆

    内藤委員長 そうすると、その冠の台の黄金あるいは白金等を、どういうふうに処置したかも御存じないわけですな。
  923. 私市信夫

    私市証人 以後存じておりません。
  924. 内藤隆

    内藤委員長 昭和十九年九月二十九日の朝日新聞は、十九年二十八日午後一時、竹内軍需次官は宮内省に出頭して、白根次官を通じ拝受した旨を報道されておるが、このときこのダイヤを白根次官から拝受した。そのとき証人はその事務には当つていなかつたのですね。
  925. 私市信夫

    私市証人 私は全然関与いたしません。軍需次官室へお持帰りになつてから、初めて軍需次官官室で拝見したわけであります。
  926. 内藤隆

    内藤委員長 九月の二十八日ですね。
  927. 私市信夫

    私市証人 九月の二十八日です。
  928. 内藤隆

    内藤委員長 そうすると、あなたはそれに全然関係しなかつた、こういうわけですな。
  929. 私市信夫

    私市証人 はあ。
  930. 内藤隆

    内藤委員長 そうするとほかのこともおわかりにならぬわけですね。あなたの知つている範囲は、政務次官室で宝冠を事実見たという程度なんですね。その程度しか知らないわけですな。
  931. 私市信夫

    私市証人 そうです。
  932. 内藤隆

    内藤委員長 他に御質問はありませんか。
  933. 中野四郎

    中野(四)委員 時間がたいへん遅くなつておりますし、遠方からおいでを願いましたので、きわめて簡単にお伺いをしたいと思います。  第一番に伺いたいことは、よく新聞等でごらんになりましたように、戦時中電波兵器あるいは航空機製造にダイヤが必要だというので、軍需省費の中から支出をして買つたといいますが、一番最初つておきたいのは、大体世耕弘一君の調査要求によりますと、十三億の予算を組んでダイヤを買入れした。さらにその後、東條さんが閣議においてみずから発議をして、五億万円の追加をして十八億万円でダイヤを買つた。そうしてみると、当時千五百円から二千円で買つたダイヤ数量がどうしても合わぬ、こういうことで世上いろいろとダイヤ事件というものを耳に入れておられると思うのです。今日幸いにあなたは当時の企画をなすつたという方でありますから、第一番に伺いたいのは、当時予算は一体何ほどこのダイヤ買上げに組んだかということです。それからその予算によつてどのくらい集めようとしたのか。目標がなくてはならぬのです。従つてまたどのくらい集まると思つたか。この三点についてまず伺いたいと思います。
  934. 私市信夫

    私市証人 証言いたします。当時軍需省といたしましては、予算措置は全然講じておりません。おそらく世耕代議士のは、鑑政本部及び兵器行政本部が、陸軍買上げで買つたことに関する問題だと思います。軍需省といたしましては、予算措置は全然講じておりませんで、当時交易営団に二、三十億の商業資金がございましたので、その商業資金を活用しようというところに目をつけまして、商業資金を活用して買わせたのでございます。
  935. 中野四郎

    中野(四)委員 そうしますと、数字が違いませんですか。交易営団に商業資金が二十億あるいは三十億あつたというのですね。
  936. 私市信夫

    私市証人 それはいろいろ軍需物資を買うために、そのくらいの資金のプールがあるわけです。それを、こちらはあとから思いついて、活用しようということになつたわけです。当時の目標といたしまして、大体最低十万カラツト集めたい、まあ十五、六万も集まればいいのだがということで始めたわけでございます。
  937. 中野四郎

    中野(四)委員 そうして大体あなたの関係しておられた当時、装飾用のダイヤというものはどのくらい集まつたのか、あるいは工業用ダイヤはどのくらい集まつたのか。
  938. 私市信夫

    私市証人 私は昭和二十年の三月十日をもつて大阪へ転任を命ぜられまして、本件からは離れたのでございますが、私の記憶では、私が離任するころに十万内外は集まつたのじやないかというふうに記憶しております。
  939. 中野四郎

    中野(四)委員 ここに大分食い違いが生じて来るのです。たとえばあなたの方で十五万くらい集めたい、また集まるのではないかというお見通しに対して、当時国民はこれに非常に関心を払いまして——もつとも政府の非常にきびしい買出しもあつたのですが、その結果約九倍になんなんとするような、愛国心の旺盛とでも申しましようか、好成績をもつて集められた。してみると、最初の目標からいえば非常に多大の数でなければならぬと思うのですが、現在私どもの手元に入つておりまする数字だけでも、こんな十万くらいのものじやない。ですから、あなたが昭和二十年の三月まで御関係になつたとあれば、少くとも昭和十九年の八月から始まつて十一月——たとい長く引続いたにいたしましても、昭和二十年の一月には完了しておるわけです。また例外があります。デパート等で買つておりますのに未処理品がわずかにあつたと思いますが、大体交易営団があなたの方の命を受けてやつたのですから、もう少し指示がなければならぬと思うのですが、御記憶違いじやないのでしようか。
  940. 私市信夫

    私市証人 それにつきましては、三箇月間というものは交易営団に代行を命じました。これは七大都市だけでございます。当初の計画としては、あとほかをやつてもそう大して効果はなかろう、重点的に七大都市だけをやろうというわけで、交易営団に代行店を命じたのであります。その後全国的にやろうということで、中央物資活用協会が、七大都市以外の全国をやるということになつたわけであります。さらに海外も、満州、朝鮮は遅れまして、その年の暮れから全部これに加わつてつたわけでございます。従つて三月ごろには、交易営団のおもだつたものは数字としては集まつておりますが、そのほかのものは、その正確にはまだ中央に集計されるまでに至つてなかつたと思います。
  941. 中野四郎

    中野(四)委員 このダイヤモンドは非常に急を要したのでしよう。
  942. 私市信夫

    私市証人 はあ。
  943. 中野四郎

    中野(四)委員 急を要するがゆえに、もつたいないけれども装飾用でもこれを活用しようというのですから。それが三月になつてもまだ集計をしないというのでは、戦争に負けるのはあたりまえですね。官僚の……。
  944. 私市信夫

    私市証人 いや、そうではございません。戦争に勝つまでの資材でありますから、とりあえず二、三万あれば最初の一年くらいは行けるのでございます。それはもう年内に十分集まつてつたわけでございます。
  945. 中野四郎

    中野(四)委員 それで、実際上工具として使つたものは、どのくらいあるのでありましようか。
  946. 私市信夫

    私市証人 それにつきましては、私の在任中は、陛下の御下賜になりましたダイヤモンドを工具に調整して、おもだつた使用工場に配給するという命令を出した程度に記憶しております。
  947. 中野四郎

    中野(四)委員 当時、買い上げた装飾用のダイヤは、工具製品のために軍需省が各工具製作会社に配給して、製作された工具は買上げダイヤモンド処理要領の六によりまして、組合検査の上に交易営団をして引取らしめることになつていたのですが、そういうふうな方法でやつてつたのですか。
  948. 私市信夫

    私市証人 そうでございます。それはやはり機械局長通牒で、要綱として一般的に命令を出したわけであります。
  949. 中野四郎

    中野(四)委員 その場合の検査規定は別に定めることになつていたが、このような規定をつくつたことがあるのですか。
  950. 私市信夫

    私市証人 まだそれまでつくらずに、私転任したように記憶しております。
  951. 中野四郎

    中野(四)委員 聞くところによると、工具の製作会社から検査がなくて納入した由でありますが、この規定をつくることは、証人の在任期間中の重要な職務でなければならないと私は思うのですが、もし検査規定もなくて、また検査もなくて納入するような場合には、装飾用のこの高価なダイヤが、工業用の安いダイヤにすりかえられるというようなおそれが多分にあるはずですが、そういうことの懸念はなかつたのですか。
  952. 私市信夫

    私市証人 当時の国民感情としては、そういうことはまずまずあるまいとわれわれは考えておりましたが、その検査規定をつくつたかどうかにつきましては、私存じていないのでございます。検査規定なしに納入さしたかどうかにつきましては存じないのでございます。
  953. 中野四郎

    中野(四)委員 こういうような方面の監督をあなたがなしていらして、今になつて、監督の面について遺憾の点が万なかつたと思うかどうですか。
  954. 私市信夫

    私市証人 と申しますのは、まだ、現実に工具として加工用のダイヤモンドの配給をするまでに、私の在任中至つていなかつたのであります。実際にやりましたのは、御下賜品のダイヤモンドだけでございます。
  955. 中野四郎

    中野(四)委員 そうしますと、装飾用のダイヤは工業用に使つていなかつた、使わなかつた、買い上げた装飾用のダイヤは、軍需兵器として事実上においてはまだ使つていなかつた、こういうふうに伺つてよろしゆうございますか。
  956. 私市信夫

    私市証人 いや、私の離任後終戦時までに、ある程度工業用に加工したと聞いております。
  957. 中野四郎

    中野(四)委員 どのくらいでありましようか。
  958. 私市信夫

    私市証人 その数字は私知らないのであります。
  959. 中野四郎

    中野(四)委員 そうすると、大体幾らくらい買つたのですか。いくら予算的措置をしていなくても、最後にはその決算をしなければならないのですが、軍需省は全国民からダイヤモンドを幾らくらい買つたか、その予算等バどうなつておるかということを伺えば、大体買い上げた数量が出て来ると思います。
  960. 私市信夫

    私市証人 それにつきましては、大体十四万カラツトから十五万カラツトの間で、価格としましては、平均一カラツト千五百円くらいだつたと思います。従いまして、おそらく一億五千万円から二億円内外の価格だつたよう記憶しております。
  961. 中野四郎

    中野(四)委員 先を急ぎます。そこで、あなたの方で交易営団の商業資金をば活用することにしたことはけつこうですが、交易営団や中央物資活用協会に対して、政府資金の融資のあつせんをしてやつたことはありませんか。
  962. 私市信夫

    私市証人 その点につきましては、軍需省に別のセクシヨンがございまして、軍需省の総動員局の第三部でございますか、第三部に監理課、つまり交易営団を一般的に監督する課がございました。そういう問題はそこでやつてつたわけでございまして、われわれは、そこで調達した資金を、ただ事実上利用するという側に立つてつたわけであります。
  963. 中野四郎

    中野(四)委員 そうしますと、融資のあつせんとかそういうものはそこでやつたとして、補助金あるいは経費の関係なんかについては、あなたの方から示唆がなくてはならぬのですが、それはどういう関係になつていたのでしようか。
  964. 私市信夫

    私市証人 経費は、予算措置としては軍需省から一文も出しておりません。
  965. 中野四郎

    中野(四)委員 ちよつとここが問題になるのですが、交易営団営団法でできたものです。これは出資三億円のうち二億五千万円は政府出資、あとの五千万円が民間出資となつております。従つてこの営団の性質上、単なるダイヤモンドだけではございませんが、一般雑貨とかあるいは重要物資とかいうようなものは、ここをしてあがなわしめておつたであろうと思います。
  966. 私市信夫

    私市証人 そうです。
  967. 中野四郎

    中野(四)委員 従つて、これに対して商業資金を一応活用しようとするならば、当然監督官、監理官として、この融資のあつせんとか、あるいは経費の面とか、補助の面とかは、めんどうを見てやらなければ、交易公団はちよつと動きがとれないじやないでしようか。たとえば、交易営団は、今後証人として喚問しますから、何と言いますか知りませんが、現在までに私どもの方で集めました情報によりますれば、彼らは自分の金でまかなつたのだという感覚を持つているようです。だから、当然われわれの品物なんだ。現在日本銀行の地下室にあるダイヤモンドはわれわれのものなんだ。そこで、大蔵省もややその方向に動きつつあつて、今月中に何か法的処置を提案して来ようとしているわけです。そこで私らは、この交易公団とか、中央物資活用協会とかいうものの内容について、今後調査を進めて参りますが、当時監督の立場にあつた軍需官として、これらの運営についてあなたの方で全然タツチせずに、交易営団をして、このダイヤモンドを買つておいてくれ、お前のところの商業資金を利用してくれというような単なる問題としてやられたでしようか。
  968. 私市信夫

    私市証人 そういう問題じやないと思います。われわれの法律的解釈としましては、信託的に交易営団をして買わしめたというような気持だつたと思います。従つて当時の要綱、軍需次官通牒によりまして一般的な命令を出しまして、買い上げたダイヤモンドの処分につきましては、交易営団は何ら自由を持たなかつたわけであります。
  969. 中野四郎

    中野(四)委員 あとでまたかわつた方が聞いてから聞くことにしまして、そこで、今の皇室の供出ダイヤの問題についてちよつと伺つておきたいのです。今あなたは王冠三個とおつしやいましたが、間違いありませんか。
  970. 私市信夫

    私市証人 間違いございません。
  971. 中野四郎

    中野(四)委員 これは重大な問題でもあるのですが、その個数は少いけれども、その事の性質上重大であるから、特に伺いたいのです。  それは、昭和二十七年八月二十六日に、宮内庁次長の宇佐美さんから、この行政監察委員長内藤さんのところへあてて返事が来ているのです。一体君の方のダイヤモンドはどうしたのか、王冠等はどう処理したかということについて、宮内省に記録がないとか、いろいろなことがありましたから、私の方から厳重に調査を委嘱しまして、その結果、「本月五日付衆行監閉調第五十二号にて御照会になりました御下渡品に関する件別紙の通り回答致します。」として、これにはこう言つている。第一点は、皇室並びに皇族からダイヤモンド白金等のお下渡しがあつた事実は認められる、その中に冠二個が含まれていた、としてある。それから、右は昭和十九年九月と推定されるが、その日時および場所についてのはつきりした書類はない、数量については皇后及び皇太后の分としてお下渡しになつたダイヤモンド白金等に関する公文書はない、但し係員の控えと思われるものがある、こうある。私は何べんか行きましたが、鉛筆のメモしたようなものはあるのです。これはまことにおかしいと思います。あれほど厳格にしなければならぬのにかかわらず、記録が一つも残つていないのです。お下渡しダイヤの件というだけで、百二十五カラツトと書いてあるだけです。あとは書類を失つたのか、焼けたのか、なくしたのか、表紙はありますが、中味がないという奇怪な事件があるのです。そこでこの数量は、ダイヤモンドが三千五百九十一個、そしてそのカラツトは百十一カラツト八十五……。
  972. 私市信夫

    私市証人 大体そのくらいが正しいと思います。
  973. 中野四郎

    中野(四)委員 それから白金が百十一匁三十八、金が百二十六匁です。そうしますと、あなたのおつしやるダイヤモンド王冠の三個というのと二個とでは、えらい食い違いがあるのです。私の調査したところによりますれば、皇后様の分が二個、それから皇太后様が二個お持ちになつていらしつて、皇后の位をお継ぎになつたときに、この二個をば皇后に皇太后から差上げるというようなことを——これは私はよくは知りませんが、又聞きしておりました。そしてその四個の王冠のうちの二個を出したのか、四個のほかにあなたのおつしやる三個があつたのかを欠いているのです。
  974. 私市信夫

    私市証人 私が大体承つておりましたのは、一個はやはり皇后様が必要だというので、一個だけは残されて、三個御下賜になつたというふうに、当時漏れ承つてつたのです。
  975. 中野四郎

    中野(四)委員 そこでどうも……。
  976. 私市信夫

    私市証人 私の記憶はそうであります。
  977. 中野四郎

    中野(四)委員 はあ、よろしゆうございます。そこで皇室では、今四個現存しておるというのです。ぼくは見せてくれと言つたけれども、それはちよつと困るというので見せないのですが、四個現存しておる。四個あつたものの中で二個も三個も出すわけはない、こう言うのですけれども、事実当時は出したのは出したのでありまして、あなたのおつしやるこの三個に間違いはないでしようか。
  978. 私市信夫

    私市証人 私の、と申しますのは、御木本製とロンドン製では、はつきりといわゆる国民感情が現われておるというので、おもしろく感じたのです。と申しますのは、ロンドン製の王冠二個につきましては、まがいものと言つちやおかしいですが、同じダイヤでも扁平ダイヤです。裏の方が扁平のやつは価格が安いのですが、ところどころにそういうインチキな品物がついておつたのです。御木本製のものは、さすがにそういう品物は一つもついてございません。ダイヤモンドの質が非常にいいものがついておりました。
  979. 中野四郎

    中野(四)委員 そこで王冠ですね、この王冠のくしにさされるところの白金でありますが、とりはずしが自由になつて、平素胸等にブローチがわりにつけられるような形のものが何個あつたでしようか。
  980. 私市信夫

    私市証人 私の記憶では、御木本製のがそういう形になつてつたように思います。
  981. 中野四郎

    中野(四)委員 一個だけですか。
  982. 私市信夫

    私市証人 はあ一個だけ。
  983. 中野四郎

    中野(四)委員 そうすると、ほかの大きいダイヤは何カラツトくらいが一番大きかつたですか。
  984. 私市信夫

    私市証人 その点になりますと、私は何カラツトか、もうすつかり記憶を喪失しておりますので、案外大きなものでも小さかつたという感じがしておりました。
  985. 中野四郎

    中野(四)委員 この三千五百九十一個もダイヤモンドがちりばめてあつたのでしようが、その中で、胸へ飾るのは相当大きいというし、何かそれだけは菊の御紋章が箱についておつて、とりはずしができるものとは違うのですか。あるいはあなたの方のは、王冠に全部ついたままのものをもらつて来たのでしようか、どうでしようか。
  986. 私市信夫

    私市証人 それははつきりしています。王冠についたままです。それで王冠の中にセツトがありまして、ブローチだとかあるいはネクタイ・ピンだとかというのが、ちやんとありまして、それで別にとりはずし用の道具がついておりまして、王冠からとりはずして、ブローチならブローチ、腕輪なら腕輪につけるようになつてつたのです。
  987. 中野四郎

    中野(四)委員 そこで、先ほどおつしやつたように、この五個の大きいダイヤ、これはもつたいないから、一時宮内次官に預けておこうじやないかということで、お預かりになつたことは事実でしようか。それに対する証明が何かおありでしようか。当時軍需省はとつたでしようか。
  988. 私市信夫

    私市証人 その実施面につきましては平賀技官が担当しておりましたので、私具体的に受取証をとつたかどうかということは存じておりません。
  989. 中野四郎

    中野(四)委員 そうしますと、平賀さんは現存しておられますか。
  990. 私市信夫

    私市証人 いえ、当時五月の末に広島の軍需監理局に、郷里でもございますので転任しまして、原爆でなくなつております。
  991. 中野四郎

    中野(四)委員 この五個のダイヤモンドは、宮内次官は受取つたような受取らないような、どうしたかわからないというので、いまだに行方不明なんです。先日宇佐美次長から皇后様に聞いてくれと言つたのですが、わからないという返事なんです。いずれ証人としてここで伺うことがありますけれども、どうもこの軍需省の問題で一番困るのは、軍需次官の竹内君が死んでしまつた、皇室の問題では平賀さんが死んでしまつたというので、ちよつと困るのです。あなたの知つた範囲で承りたいと思うのですが、その結果は今申されたような十八億もたくさんのダイヤを買つたにあらずして、大体二億ぐらいだということである。それからその買上げの現在のあなたの感じで、は十五、六万カラツトくらいだというあなたの証言、こういうものを総合して参りますと、一体、装飾用のダイヤを実際上に戦争に使つたというのはどのくらいか。私はその使つたカラツト数というものが大体において知りたいと思うのですが、どのくらい一体そこで使つたものでしようか。
  992. 私市信夫

    私市証人 いや、現実に使い始めたのは私が転任してからでございます。
  993. 中野四郎

    中野(四)委員 何かそういうものを知る方法がありましようか。あなたがお行きになつたの昭和二十年三月でしよう。終戦になつたは八月十五日、従つてわずか五箇月かそこらです。実際上においてあなたが担当官としておいでになつて使つたとすれば、どのくらい使うか。使わぬとすればどうか。ほかにも工業用もありましようし、関係もあるし、外地から持つて来たものもありますし、ひとり装飾用ダイヤばかりでないはずであります。従つて、私はそういうものを総合すれば、人情として——たとえばここに装節用として一カラツト当時二千円するものがある。ところがこつちには一カラツト三百円か四百円の工業用ダイヤが来ておる。結論は工業用ダイヤに使うのが目的でありますから、このいい方はあとに残して、ちようど宮内省に五個返したと同じような関係に立つて、まずこちらから使うというのが人情でありまして、この装飾用のダイヤを使われた過程はちよつと想像できないのでありますが、あなたが担当官としておられた経験から思惟してどうですか。
  994. 私市信夫

    私市証人 それはさつき申し上げましたように、陸海軍それぞれ鑑政本部、兵警察部、われわれのところで十何万カラツトという工業用ダイヤを持つてつたわけです。しかし軍需省に対しては一個も譲渡してくれなかつた従つて兵器行政本部及び艦政本部の関係の工場では、それをつくつてつたろうと思います。いわゆる当時はA、B、Cに物動がわかれておりましたから、従つてダイヤモンド・ツールなんかも物動的な取扱いを受けてやつてつたわけで、C部門、いわゆる航空兵器総局、軍需省関係はだんだん工業用ダイヤモンドが払底して参りましたが、装飾用のダイヤモンドでツールをつくらせませんので、航空機工場にはダイヤモンド工兵のメーカーはツールを売り渡すわけに行かなかつた、そういう実情であります。実情はそういうことであります。
  995. 中野四郎

    中野(四)委員 工業用ダイヤはあなたのところにどのくらい手に入つたのですか。全然入らないのですか。
  996. 私市信夫

    私市証人 結局入つておりません。海外、南方地区から持つて帰るものは、みんな軍の機関で持つて来ておりますから、ほとんど入つておりません。
  997. 中野四郎

    中野(四)委員 そうするとちよつと変ですね。あなたの方は、軍の方から工業用ダイヤを配給してくれないから、装飾用ダイヤ専門でまかなつてしまおうとした。また現実にまかなつてのでしようか。
  998. 私市信夫

    私市証人 いや、そうじやございません。結局こういう工業というものは、ちようど商売をやるのにも運転資金がいるように、資材でもある程度の運転用の保留分がなければ回転しないものです。たとえばダイヤモンドのツールにしても、特定の工作をするために特定の設計をしたダイヤモンド・ツールでなければ、間に合わないわけであります。従つてそれをつくるのに、一箇月も二箇月も期間がいりますから、絶えずその計画に基いて保留分がなければ、工業は成り立たなかつたわけです。従つて、そのいわゆる運転資金的な工業用ダイヤモンドがだんだん底をついて来たものですから、結局徹底的に抗戦するためには、二年なり三年なり航空機工業を維持するだけの、ダイヤモンドを持つていなければ、抗戦を継続できないわけです。そのために買い集めたわけです。
  999. 中野四郎

    中野(四)委員 私の聞き方が悪かつたと思いますが、してみると、配給はしたのですか。あなたの方で集めますね、営団から軍需省へ納めて、軍需省はそれぞれのところに命令しますね、どこそこにやれというその配給命令はどのくらいやつたのですか。
  1000. 私市信夫

    私市証人 それは私の転任後です。
  1001. 中野四郎

    中野(四)委員 そうしますと、これはせつかく国民から、生命財産というて生命に次ぐところの財産である高価なものをば買い上げても、実際上においては軍需資材として使つていない面が多いではありませんか。たとえば、翌年の三月までに航空機製作の要綱すらもできていない。そうして実際上には買い集めだけ急いで、これを実際に具体化して——たとい運転資金にしても余裕資材にしても、寸刻を争うというようなときに、あなた方の認識では、いつ戦争に勝つということを考えていらつしやつたか知りませんが、とにかく必要以上に、十五万カラツトとか二十万カラツトダイヤモンド友国民から集めておいて、実際にこれを軍需資材としてこなすまでの経過において、何か仕事上において、あなた方の怠慢とかあるいは遺憾の点があつたのではないか。
  1002. 私市信夫

    私市証人 そういう点はまつたく見当違いだと思います。と申しますのは、昭和二十年の八月十五日に終戦になりましたから、結果的に使わなかつたのはおかしいと感ぜられるのですが、当時の情勢としては、三年でも五年でも徹底的に抗戦するという計画で、われわれもまじめに考えておつたわけです。銅とか鉄のように国内で再生産のきくものであれば、一年分もとればよいが、しかし国内では全然再生産のきかない資材であります。従つて、三年でも五年でも抗戦するだけの資材を一度に確保しておきませんと、ほんとうの抗戦する自信が出て来ないわけであります。
  1003. 中野四郎

    中野(四)委員 もちろんだれでもそうですが、五年でも七年でも戦争の続く限りやらなければならないと思います。しかし当時の状況からすれば、日本に非常に悲報がたくさん入つて来た。キスカとかアツツの悲報も入り、日本国内においては、有識者の仲間では、この敗戦の状態について深く知つてつたグループが相当多かつた。敗戦の様相がおおうべからざる状態にあつた。あなた方の熱心な気持はわかるが、私がお問いただしをしておるのは、なるほど五年でも七年でもけつこうです。それほど急いだ——装飾用のダイヤモンドすら買い上げて、工業用の最も下級工具に使おうとするのに、なぜ集めたならばもつとどんどん使わなかつたか。しかも要綱すらできていない。まごまごしおつたのではないか。あなた自身からいえば一生県命にやつてつた、こうおつしやるかもしれませんが……。
  1004. 私市信夫

    私市証人 どの要綱が……。
  1005. 中野四郎

    中野(四)委員 何といつたか、工具製作の要綱がなければならない。
  1006. 私市信夫

    私市証人 その製作の要綱まではできおつたわけであります。
  1007. 中野四郎

    中野(四)委員 要領の六によつて、組合検査なりいろいろやつておられたようですけれども、要綱はできておつたのですか。
  1008. 私市信夫

    私市証人 検査規則は私記憶しておりませんが、要綱まではできておつたわけであります。要綱を出して現実に動くまでに至つてなかつたわけであります。
  1009. 中野四郎

    中野(四)委員 結局、あなたが主任担当官として集められたんだが、現在結果からいえば余つてしまつた。そうしたらこういうようなダイヤは、一体どこの処属になつて、どういう方法に使つたことが一番正しい——当時国民の愛国心をあなたたちみずからがあおりまくつた。あなたの方の軍需省の次官通牒の中にも、白金とかダイヤモンドを買う場合においては、なかなかきびしい言葉使つておられる。当時のことを思い出されてもよろしいと思うんだが、この中にはこういうようなことが書いてある。「回収不充分ナル……」あまり回収がないと思つたのでしよう。「回収不充分ナル場合二於テハ一定時期二於て保有禁止トナルノ措置ラ構ゼラル、コトアルベキ旨ヲ示唆スルモ差支ヘナキコト」、従つて少しはおどかせ、ある時期になると取上げられるぞ、持つていることさえ禁じられるぞという強い次官通牒を出した。こういうことにして国民の愛国心をあなたらがあおつて買い上げたその品物が、今日残骸を日本銀行の地下室にさらしておるとしたならば、あなた方の当時の心境からいつて、これをどういうふうに処理することが最も適当ないい道だろうかという心境を聞きたいと思う。
  1010. 私市信夫

    私市証人 保有禁止の問題はダイヤじやございません。白金でございます。私自身も、個人といたしましては、家内の持つておりましたささやかなダイヤの指環を供出させました。当時の価格で七百五十円でございました。それを郵便貯金にしているうちに封鎖になりまして、インフレとともに事実上ただで供出したのと同じ結果になつております。私一国民としての感情から申しますと、このダイヤモンドは、何とか国民に有効に使つていただきたいという切なる希望を持つております。現状におきましては、おそらく所有者に返すことは不可能だろうと思います。現に私のうちなんかも、供出したダイヤモンドの受取書なんかは紛失して持つておりませんし、追究するによすががございません。従つてこのダイヤモンドは、社会保障とか国民大衆の役に立つ資金に引当てて、極力有効に活用していただきたいのが、われわれとしてはまことに切望するところでございます。
  1011. 中野四郎

    中野(四)委員 最後に一点だけ伺つておきたいが、たとえていえば、資金的にあなたの方でめんどうを見なかつたといつても、営団法によつてできた交易営団の性質からいえば、これは当然営団みずからの所有物にするという意味よりも、むしろ国家的な所有物にする方が有効だと思う。ただやつかいな問題は、当時軍需省の担当官として——中央物資活用協会というものがありました。戦時物資活用協会が後に中央物資活用協会になつたのですが、そういうようなものに対しては、代行機関として交易営団がやつてつたのでありますが、あなたの方ではどういう感覚を持つておられたか。中央物資活用協会に対しては、軍需省の担当官としてどういう処置をおとりになりましたか。
  1012. 私市信夫

    私市証人 いずれも国家機関として国家の代行をやつておる、国家がいわゆる信託的に買わしているのだ、私は大学時代に英法をやつてつたのですが、そういう感覚でおりました。従つて、形式上は営団の所有でありましようし、中央物資活用協会の所有であつても、これは信託的には国有のものなんだという感覚でおります。
  1013. 中野四郎

    中野(四)委員 たいへん明快な御答弁で、私の質問はこれで終ります。
  1014. 内藤隆

    内藤委員長 次いで明禮輝三郎君にお願いします。もう一人証人がおられますので、どうぞ簡潔に……。
  1015. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 証人は精密機械課の軍需官として、ダイヤ買上げについてどういうような仕事を担当せられておりましたか。
  1016. 私市信夫

    私市証人 私の精密機械課における地位は、現在の課長補佐のような地位でございます。総括係でございまして、それぞれの器種ごとに、工具だとかダイヤモンド工具、精密測定器、ベアリングあるいはやすりというように、それぞれの専門の担当技官がありました。こういうような新しい制度をつくるときには、軍需官が、それぞれの専門の担当官を補助者にして、企画立案して要綱をつくつて制度化する、制度化したあとは、それぞれの部門の担当技官が責任を持つて実施に当る、軍需官の方はそれを内部的に監督する、そういう仕事のやり方であります。     〔委員長退席、中野(四)委員長代理着席〕
  1017. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 ダイヤの部門についてちよつとお尋ねしたいのですが、あなたの方で営団にまかせられたのでありましようか。営団にまかせられた場合、買上げについて値段の指定とか、何か一つの方針を授けられたようなことはなかつたのですか。
  1018. 私市信夫

    私市証人 それは委員会資料をごらんになればわかりますように、ダイヤモンド買上実施要綱というのではつきり制度的に客観的にきめまして、軍需次官通牒で命令を出しております。それはたしか昭和十九年の七月二十日過ぎの軍需次官通牒で、一般的に命令を出してございます。買上げ価格も代行店の手数料も、全部客観的にその要綱の中できめております。この買上げ価格につきましても、当時軍需省で物価の許可事務をやつておりましたので、例外許可を出しまして適法な価格をきめてございます。
  1019. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 たしかダイヤは一級から十級までになつておるようですな。そしてそれによつて十級にわけて買上げをさせておられたと一応見えるのでありますが、大阪の方ではそういつたような線に沿うてやつてつたようだが、東京方面で、松屋で買いましたようなものは、ほとんどそういつたような非常に階級の多いといいますか、種類の多いダイヤを二、三階級にわけて、そして二、三階級にわけたものを、鑑定人がそれで適当な値段を入れてやつてつたような事実があるのであります。この点については、あなた方はその係として御承知はなかつたのでありますか。
  1020. 私市信夫

    私市証人 その一般的命令がどの程度実施されておつたかということにつきましては、実施の担当官は平賀技官でございましたので、私全然存じておりません。
  1021. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 監督官が平賀さんですか。
  1022. 私市信夫

    私市証人 はあ。
  1023. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 あなたはやはり課長補佐というような仕事だから、そういうことについては折々は出張されたのではないのですか。出て行つて買上げの状況を見られたのではないですか。
  1024. 私市信夫

    私市証人 見ておりましても、われわれは事務屋でございますので、技術的なことは技官がやりませんと、何もわかりません。そのために役所に技官というものがおるのでございます。
  1025. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 その技官はもう死んだのですな。
  1026. 私市信夫

    私市証人 死んだのです。
  1027. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 聞くことはできませんな。(笑声)
  1028. 私市信夫

    私市証人 そうです。
  1029. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 どうも元の考査委員会調べる時分から、皆さんにお尋ねすると、たいていもう死んだ人や、いないような人ばかり出て来まして、まことに捕捉に苦しむのでありますが、そういうことが非常な災いをしておるのではないかと思うのであります。本日の鑑定人あたりも、しろうとの鑑定人が出て来たり、ガラスというか、ほかの似たような石と間違えてみたり、それから買上げのときには、紙にちやんとカラツトから値段から性質まで全部書いてあるのでありましよう。それを再鑑定をすると、全部一緒にしてしまつたというようなことを聞くのでありますが……。
  1030. 中野四郎

    中野(四)委員長代理 両君にお断りしますが、どうか質疑応答の場合は、委員長に一々発言を求めてやつてください。
  1031. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 再鑑定以後はどうですか。
  1032. 私市信夫

    私市証人 荷鑑定以後は、全部一緒にしてクラシフアイをしておつたはずであります。
  1033. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 それが間違いのもとじやないかと思うのでありますが、どうでございましようか。
  1034. 私市信夫

    私市証人 それは当然の処理上の手続だと思います。と申しますのは、工具にはダイスがあり、ドレツサーがあり、それからバイトがあり、それぞれの工具に向く——同じような装飾のダイヤモンドでも、それぞれあるわけです。従つて営団の本部に集まりましたら、これはドレツサー向きだ、これはダイス向きだ、これはバイト向きだというふうに色わけして日本銀行へ納めておかぬと、今度配給市場に出したときにまたやらなければならぬ。その二重手間を省くために、そういうようなやり方をやつてつたと思つております。
  1035. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 それは反対じやないですか。そういうドレツサーや、いろいろなものに使うのであるから、あとで、これはどれに使う、これは、どれに使うと、また区わけをしなければならぬことになると思う。初めから区わけしたものを袋に入れておくのが、今の煩雑を避けるのであつて、むしろ一緒にしてしまつたら、玉石混淆とまで言われて、さつぱりわからなくなつてしまう。そういうことが、今日ダイヤがなくなつたとか、足りないとか、いろいろな問題が起つているゆえんじやないでしようか。
  1036. 私市信夫

    私市証人 なくなつたという問題は、全然別個の問題だと思います。その一緒くたにしたというのは、クラシフアイするためには、一度一緒にしなければクラシフアイできないわけでありまして……。
  1037. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 鑑定人はそういう意味で一緒ににしたとは言つてないようですね。
  1038. 私市信夫

    私市証人 そうですが。
  1039. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 とにかく、そういうことが今日、大阪で取扱つたのと、関東方面で取扱つたのとたいへん違つてつたということですな。御承知ですか。
  1040. 私市信夫

    私市証人 ……。
  1041. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 買上げ数量について何か書面でもお持ちになりはしませんか。
  1042. 私市信夫

    私市証人 数量については私は書面を持つておりません。
  1043. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 事務局から書類を持つて来てもらいたいと、あなたに申し上げてあるというふうに聞いておりますが、そういうことはお聞きになりませんか。
  1044. 私市信夫

    私市証人 私はそういう指令は受取つておりません。「本委員会において調査の必要上、接収解除貴金属及びダイヤモンド関係事件について証書を得たいので、来る二月十三日午後二時本委員会に御出頭願います。」という公文書によつて出て来たわけであります。     〔中野(四)委尊長代理退席、委員長着席〕
  1045. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 通産省の坂部技師の手元にあるから、それを持つて来てもらいたいということまで電話で話してあるそうでありますが……。
  1046. 私市信夫

    私市証人 その数字の写しは私持つております。
  1047. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 それをちよつと説明していただきます。
  1048. 私市信夫

    私市証人 どの部分でございましよか。
  1049. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 買上げ数量です。
  1050. 私市信夫

    私市証人 昭和二十年八月三十一日現在の総計が十四万二千五百六十七・・七カラツト金額にいたしまして、一億六千四百五十五万七百六十八円八十五銭でございます。
  1051. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 十六万以上のカラツトが保管してあると聞いておりますが、それはその後ふえているわけですか。
  1052. 私市信夫

    私市証人 これは二十年八月三十一日現在の数字でございます。
  1053. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 今の十六万以上日本銀行の地下室にあるというふうに聞いておりますが、それはその後か、御承知ないですか。
  1054. 私市信夫

    私市証人 それはおそらく私の推定では、陸海軍の持つていたようなものも入つているのじやありませんか。十六万カラツトというのは、艦政本部とか、兵器行政本部あたりで持つてつた数字も入つているのじやございませんか。
  1055. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 その数字はおわかりになりませんか。
  1056. 私市信夫

    私市証人 私は全然関与しておりませんから、わかりません。
  1057. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 それから、先ほど皇室のお下渡品の中に王冠が三個あつたとおつしやいましたね。
  1058. 私市信夫

    私市証人 はい。
  1059. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 その三個の王冠の中には、とりはずしたダイヤがどのくらいあつたか御承知ありませんか。
  1060. 私市信夫

    私市証人 さつきの御質問の数字の通りのように記憶しております。たしか一一九・一二カラツト程度だと記憶しております。
  1061. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 それは個数にしますと……。
  1062. 私市信夫

    私市証人 三千五百内外のように記憶しております。
  1063. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 そのうちで大きなものが五個なくなつたということを聞いておるのですが、その事実を証人は御承知でしようか。
  1064. 私市信夫

    私市証人 私は、当時の国民感情として、終戦時までは、その五個のダイヤモンドは絶対になくなるはずがないと確信します。もしもなくなつておるならば、終戦時のどさくさにまぎれてなくなる可能性はありましても、終戦時までは絶対になくなつていないと思います。
  1065. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 まことにその通りであります。それはそのはずであります。それでは今なくなつたといいますか、今わからないらしいのでありますが、どうしたのでございましようか。
  1066. 私市信夫

    私市証人 それは私わかりません。当時大阪に赴任しておりまして、大阪の総監府の副参事官をやつておりましたので……。
  1067. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 それは、その当時やはり平賀さんが直接やつたということなんですか。
  1068. 私市信夫

    私市証人 いや、終戦時には平賀技官も原爆で死んでおります。
  1069. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 それでは最後に取扱つたのはだれですか。
  1070. 私市信夫

    私市証人 坂部技官であります。現在通産省の重工業局の産業機械課におります坂部技官であります。
  1071. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 その人は知つておるのですか。
  1072. 私市信夫

    私市証人 知つているかどうかは私存じません。
  1073. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 坂部技官が取扱つたというだけで、あとはわからぬのですか。
  1074. 私市信夫

    私市証人 六月以降は、坂部技官が本件の担当者だつたということであります。
  1075. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 六月以降……。それまでに処理されたんじやなかつたのですか。
  1076. 私市信夫

    私市証人 ですから、それまでに宮内省に預託されているはずであります。われわれの当時の国民感覚としては、軍需省の機械局長通牒で、交易営団に一般的に命令を出した以上、まさか交易営団が、その命令にそむいて、陛下の品物をそつとどこかへ持つて行くとか、それはもう常識上考えられないことだと思います。われわれ日本国民の国民感情として……。
  1077. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 私もそう思います。そう思いますけれども、ないということなら国民感情、感情言うておつても……。
  1078. 私市信夫

    私市証人 ですから、かりになくなつておるとすれば、終戦後のどさくさにまぎれてなくなつているのだと思います。
  1079. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 それではやつぱりなくなつたのじやないですか。
  1080. 内藤隆

    内藤委員長 結局証人はわからないということなんですね。
  1081. 私市信夫

    私市証人 そうであります。
  1082. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 だが、それまでに証人処理された事実からいえば、これは明確になるべきである。大体あなおはお知りになつておるのじやないかと思われるから、重ねてお尋ねするわけであります。  それから白金の台二個というのは、三個になりますか。
  1083. 私市信夫

    私市証人 王冠は私の記憶では三個でございます。
  1084. 明禮輝三郎

    ○明禮委員 三個になるのですな。冠の台はやはり三個になるのですか。         ————— それではこれで終ります。
  1085. 中野四郎

    中野(四)委員 関連して。簡単に伺いますが、あなたがやめられてから、その後の事務はだれが引継いだのでしようか。それから、ついでに聞いてしまいますが、あなたがそこに持つていらつしやる書類が根拠になつているようですが、それはやはり現在通産省にあるのですか。どういうふうになつていますか。経緯だけ……。
  1086. 私市信夫

    私市証人 お答えいたします。当時、三月になりまして、行政協議会で地方行政組織を強化しなければならぬという問題が出て参りまして、私は三月十日付で、大阪の行政事務局の副参事官に転任を命ぜられまして、その間事務官は一箇月くらい空席でございます。従いまして私は、私の持つてつた事務書類は全部平賀技官に渡しまして、後任の事務官がきまれば渡してもらいたいということで転任したわけであります。その後私の記憶では、四月になりまして、現在広島県の商工部長をやつております竹村事務官が後任者にきまりました。竹村事務官と平賀技官でやつてつたのであります。五月末になりまして、平賀技官が広島の軍需官に転任を命ぜられまして、その後現在産業機械課におります坂部技官が、平賀技官の事務を引継いだという関係でございます。  それから公文書は、どこの省のやり方もそうでございますが、年度末とともに、保存期間従つて整理をしまして、全部文書所管の——現在の通産省でございますと、大臣官房の総務課に保管転換をいたします。従つて各担当官は公文書は持つておりません。その公文書は、われわれの聞いているところでは、全部焼けちやつたということでございまして、坂部技官にありますやつは、結局写しとか、いわゆる私文書ですね、担当官が事務の参考のために持つてる私文書が、わずか残つているという状況でございます。
  1087. 中野四郎

    中野(四)委員 今証人の持つていらつしやる資料は、相当明細なものなんですが、これは公文書の中にあるのではなく、あなたの記憶だけの私文書ですか。
  1088. 私市信夫

    私市証人 これは坂部技官の私文書から写して来たものでございます。
  1089. 中野四郎

    中野(四)委員 そこで私は委員長にお願いしたいのです。かねて行政監察委員会から通産省の事務次官にあてて、証拠書類を出してくれということを再三再四言つておるのです。ところが、委員長承知のように、そういうようなものは一切ないというので、全然出さない。そうしてなお、当時の係官のつづり込みの文書とか、表記の件についての若干の断片的なものはあるが、公文書ではないから添付しない。二度も三度もこちらは通産省に要求してるのに、よこさない。ところが、今証人に聞いてみると、公文書でないにしても、断片的とは言えない。だから行政監察委員会の権威にかけても、通産省に命令して、すみやかに一件書類をこつちに出せということを通告していただきたいと思います。そうしないと、数字なんかの根拠が出て参りません。
  1090. 内藤隆

    内藤委員長 中野委員の御発言了承しておきます。事務局をして厳重にひとつやらせます。その上でなお理事会を開きまして、書類の提出がなければ、直接にひとつここで尋問してもいいだろうと考えます。
  1091. 中野四郎

    中野(四)委員 さらに、今証人のお持ちになつておられる書類を、こちらでお預かりにして一向さしつかえないと思いますが、どうでしようか。さしたる大問題でもないようですから、こちらで責任を持つて保管いたしますから、お貸し願つて——まだこれから、あなたが先ほどおつしやつたような過程までどうしても持つて行かなければならぬ。まだ多数の証人をば喚問しなければならぬ。もしお見せ願えると、こちらで責任を持つて保管しますから、事務局にお預け願えないでしようか。
  1092. 内藤隆

    内藤委員長 どうですか。
  1093. 私市信夫

    私市証人 このメモは、坂部技官じやなしに、総務課で森田という事務官が本件の調査を担当しておりますが、それがいろいろな資料の鉛筆書きとか、そういうものを拾い集めた資料なんでございます。
  1094. 内藤隆

    内藤委員長 総合したものなんですね。
  1095. 私市信夫

    私市証人 総合したものでございますが、これはどういたしましようか。森田事務官から私が借りて来たものでありますから……。
  1096. 内藤隆

    内藤委員長 ちよつと中野委員に申しますが、ただいまお聞きのごとく、いろいろな断片から集めたものだということです。そこで、そういうものがあることは間違いないのですから、いずれ担当官なりあるいは事務官等を呼んで、それを持参するようにしたらどうでしよう。
  1097. 中野四郎

    中野(四)委員 けつこうです。どちらでもいいのですが、便法上と思つたのです。
  1098. 私市信夫

    私市証人 書類の端に鉛筆でちよちよつと書いてあるやつだとか、そういうものを苦労して集めた資料のようであります。私直接関与しておりませんが……。
  1099. 田万廣文

    ○田万委員 だれがおつくりになつたのですか。
  1100. 私市信夫

    私市証人 これは総務課の森田事務官であります。
  1101. 内藤隆

    内藤委員長 他に御発言がなければ、私市証人に対する尋問はこれにて終了いたします。証人には長時間御苦労さまでございました。  次に橋井眞君より証言を求むることになつておりますが、本日は時間も相当にかかりましたので、次回に証言を求むることにいたしたいと思います。  本日はこれにて散会いたします。     午後六時三十三分散会