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1953-02-04 第15回国会 衆議院 厚生委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年二月四日(水曜日)     午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 平野 三郎君    理事 大石 武一君 理事 野澤 清人君    理事 山下 春江君 理事 堤 ツルヨ君    理事 長谷川 保君       新井 堯爾君    池田  清君       勝俣  稔君    加藤鐐五郎君       永山 忠則君    平澤 長吉君       吉江 勝保君    亘  四郎君       高橋 禎一君    町村 金五君       鈴木 義男君    柳田 秀一君       只野直三郎君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 山縣 勝見君  出席政府委員         厚生事務官         (大臣官房会計         課長)     太宰 博邦君  委員外出席者         専  門  員 川井 章知君         専  門  員 引地亮太郎君         専  門  員 山本 正世君     ――――――――――――― 昭和二十七年十二月二十三日  委員永山忠則辞任につき、その補欠として犬  養健君が議長指名委員に選任された。 同月二十四日  委員犬養健辞任につき、その補欠として永山  忠則君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 一月三十日  回力球競技法案亘四郎君外十四名提出衆法  第三二号) 二月二日  緑川の一部完全下水道化に関する請願栗山長  次郎君紹介)(第一四六九号)  未復員者給与法適用患者生活扶助料支給等  に関する請願中村幸八君紹介)(第一四七四  号)  同(田子一民紹介)(第一五〇三号)  同(島上善五郎紹介)(第一五〇四号)  同(山下春江紹介)(第一五二一号)  母子福祉法制定請願外一件(宮澤胤勇君紹  介)(第一四八四号)  同(山崎猛紹介)(第一五三一号)  国立療養所等給食費増額請願山下春江君  紹介)(第一五三二号)  生活保護法改正等に関する請願山下春江君  紹介)(第一五三三号)  健康保険療養給付期間延長に関する国庫補助の  請願山下春江紹介)(第一五三四号)  アフターケア施設設置に関する請願山下春  江君紹介)(第一五三五号)  国民健康保険再建整備に関する請願橋本登美  三郎紹介)(第一五三六号)  元満洲開拓犠牲者遺族等援護に関する請願(  松井政吉紹介)(第一五三七号)  国立若松病院存置請願菅家喜六紹介)(  第一五六五号)  静風荘療養所職員健康保険加入等に関する請  願(長谷川保紹介)(第一五六六号) の審査を本委員会に付託された。 同日  遺族補償に関する陳情書  (第九三七  号)  同  (第九三八号)  同外一件  (第九三九号)  同  (第九四〇号)  未復員療養者援護措置に関する陳情書外一件  (第九四一号)  満洲開拓者遺族並びに留守家族援護促進に関す  る陳情書  (第九四二号)  医療扶助安定並びに国庫補助増額に関する陳情  書  (第九四三号)  厚生年金保険法改正法案に関する陳情書  (第  九四四号)  社会保険並びに労働行政機構の改革に関する陳  情書(第九四五号)  乙種看護婦養成所存置に関する陳情書  (第九四六号)  母子福祉法制定に関する陳情書  (第九四七  号)  簡易水道に対する国庫補助増額に関する陳情書  (第九四八号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  小委員及び小委員長補欠選任  回力球競技法案亘四郎君外十四名提出衆法  第三二号)  昭和二十八年度厚生省関係予算説明聴取に関  する件     ―――――――――――――
  2. 平野三郎

    平野委員長 これより会議を開きます。  まず小委員及び小委員長補欠選任の件についてお諮りいたします。  戦争犠牲者補償に関する小委員国民健康保険に関する小委員長並びに同和事業対策に関する小委員長を勤めておられました永山忠則君が、去る昭和二十七年十二月二十三日委員辞任されたのに伴いまして、小委員並びに小委員長に欠員を生じましたので、その補欠選任を行いたいと存じますが、永山君が再び委員に選任されておりますので、辞任される以前についておられました小委員並びに小委員長の職に再び選任することに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 平野三郎

    平野委員長 御異議なしと認め、さよう決します。     —————————————
  4. 平野三郎

    平野委員長 次に、回力球競技法案議題として審査に入ることとし、まず提案者より趣旨説明をお聞きしたいと存じます。大石武一君。
  5. 大石武一

    大石(武)委員 ただいま上程になりました回力球競技法案提案理由について御説明申し上げます。  終戦以来のわが国国民生活の逼迫は国民努力によつて次第に緩和されて来てはおりますが、いまだ十分とは申されず、ことに保護を要する状態にある戦傷病者、未亡人、孤児、老廃疾者等相当数に達し、これらの者の福祉増進民間社会福祉事業振興にまつところきわめて大なるものがあるのであります。しかるにわが国における民間社会福祉事業現状を見ますと、民間篤志家または篤志団体によるこの種事業経営も、戦後の経済事情変動等により、財源の枯渇を来たし、とうていこれらの者の力だけでは十分なる成果を期待できないのであります。さきに第十回国会社会福祉事業法を制定いたし、共同募金制度を確立したのでありますが、これのみでは事業資金を十分に調達し得ない現状にあるのであります。また第十二回国会において成立を見た日本赤十字社法による日本赤十字社をして、今後赤十字事業に対し活発な活動をなさしめ、ことに災害時等における非常事態にあつて人命救助に十分な活躍を第一線においてなさしめるためには、相当な資金を要するのでありますが、これらの資金調達については、社員の醵出にかかる社費及び白い羽根等による寄付金募集のみをもつてしては十分にその働きを期待することができない実情にあります。  本法案は、以上の事情にかんがみまして、赤い羽根募金と並行して民間社会福祉事業資金を調達し、また日本赤十字社社員募集等と並行して赤十字事業資金を調達いたしますために、回力球競技を施行し、その売上金の一部を民間社会福祉事業経営者並び日本赤十字社に交付して、それぞれ事業振興を助長し、国民生活の安定をはかろうとするものであります。  回力球競技とは、一般にはハイアライ競技といわれ、スペインの国技でありまして、わが国には初めて紹介されるのでありますが、現在世界の各地で行われており、健全な国際的スポーツであります。この競技を初めてわが国紹介するとともに、これを通じまして民間社会福祉事業及び赤十字事業資金を調達することができますのはまことに意義あることだと存じます。  以下本法案内容につきまして、その要点概略説明申し上げますと、第一に、回力球競技を施行することができます者は、その施行によつて社会福祉増進目的とする事業資金を調達することを目的とし、厚生大臣の許可を得て設立された公益法人に限定し、これが営利の目的に利用されることがないようにいたしました。但し、この法人回力球競技の全部を実施することが困難な場合のあることを考慮いたしまして、厚生大臣の認可を得て、他の法人競技実施を委託し得る道を開き、実情に沿うようにいたしました。  第二に、競技場は一都道府県内一箇所に限定し、いたずらに各地で行われることを防ぎ、世上往々この種の競技に対してなされる非難がなくなるようにいたしました。  第三に、回力球競技を施行します場合には、自転車競技法小型自動車競走法競馬法等と同様に、勝者投票券を発売することができることとしました。そしてその売上金の百分の七十五に相当する金額勝者投票的中者に払いもどすこととし、売上金の百分の十に相当する金額共同募金会及び日本赤十字社に交付して民間社会福祉事業及び赤十字事業を援助することとし、売上金の百分の五に相当する金額国庫に納付して国の財源に資することといたしております。  第四に、回力球競技が公正かつ安全に実施され、競技場内の秩序が確保されることが必要でありますので、これに関する規定を設けました。なお回力球競技に対する監督官庁は、この法案目的趣旨にかんがみ、厚生大臣であることは申すまでもありません。  以上大体本法案内容についてその要点概略を御説明申し上げました。詳細の点につきましてはいずれ御質疑の際にお答えいたします。  何とぞ慎重御審議の上すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。
  6. 平野三郎

    平野委員長 これにて回力球競技法案に関する提案者提案理由説明は終りました。     —————————————
  7. 平野三郎

    平野委員長 次に、昭和二十八年度厚生省関係予算に関して、政府より説明を徴することにいたします。山縣厚生大臣
  8. 山縣勝見

    山縣国務大臣 ただいま議題となりました昭和二十八年度厚生省所管予定経費要求額概要について御説明をいたしたいと思います。  昭和二十八年度厚生省所管一般会計予算要求額は、総額六百九十五億八千四百七十九万五千円でありまして、これを昭和二十七年度予算額の七百二十一億七千九百六十七万六千円に比較いたしますると、二十五億九千四百八十八万一千円の減少と相なつております。但しこの減少につきましては、御承知通り遺家族援護法その他の関係減少をいたしておるのでありまするが、厚生省予算全体といたしましては、すでに御了承の通り相当増額を見ておるわけであります。  ただいま申し上げました厚生省予算の中の特に重要なる問題について、その概要の御説明を申し上げたいと存じます。  まず第一は、国民医療整備改善施策に伴う経費でございまするが、施策内容といたしましては、まずもつて第一に社会保険充実、第二に医療機関整備、第三に疾病予防対策強化等であります。まず社会保険財政強化確立をはかりまするために、健康保険その他の社会保険につきまして、前年度に引続きまして保険者事務費全額国庫負担といたすことといたしたのでありますが、そのほかに、特に今回は国会要望もございまして、国民健康保険につきましては、その健全な運営を助成する目的をもちまして、療養給付費に対しまして、その一割五分に相当いたします金額を各保険者に対して、療養給付額でありまするとか、あるいはまた財政力でありまするとか、あるいは保険料徴収成績等を考慮いたしまして、算定交付いたすことといたしたのであります。これに対して必要な経費二十九億六千四十三万余円を予算要求額として計上いたしたのであります。なおそのほかに前年度に引続きまして、赤字の保険者に対しまする補助施策といたしまして、再建整備資金貸付を引続いていたすことにいたしたのであります。従つてこれに対して必要な額といたしまして、四億六千八百九十万余円を計上いたしたのであります。なおこのほかに本年度は新たなる施策といたしまして、日雇労働者に対しまして、その大部分に対する健康保険の道を開いたのであります。これらの日雇労働者の大部分の人人は、社会保険保護を受けておりませんために、一般労働者に比較いたしまして、はなはだしく脆弱な生活基盤に立つておるのであります。従つてこの際何らかの形において、これらの人々に対して健康保険制度をもちまして、これによつて生活の安定をはかりますことは、民生安定の上から見ましてもきわめて緊要と考えまして、明年度より新たに日雇労働者に対する健康保険制度を創設いたした次第であります。そのために必要な予算といたしまして、まずこれらの健康保険事業運営のために必要な事務費並びに保健施設費、なおまた福祉施設費全額国庫で負担いたすことにいたしまして、これに必要な経費二億八千六百九十三万余円を計上いたしたのであります。  次に、医療機関整備につきましては、従来とも政府努力いたして参つたのでございますが、明年度におきましても引続き施策充実をはかりますために、国立におきまして一千床、公立において四千床、法人立において二千床、なおそのほかに社会保険立といたしまして三千床、台計二か床の増床を計画いたしまして、これに必要な予算を計上いたしたのであります。なおそのほかに国立病院から三千五百床を結核療養所に転換いたすことにいたしまして、これらの増床に必要な整備費といたしまして、十億八千八百七十八万余円を計上いたしたのであります。なおそのほかに、これは従来とも要望されまして実現を見なかつたのでありますが、結核対策重要性にかんがみまして、ことに結核患者がある程度回復して、そして実社会に出ますまでの間の療養、あるいは授産等に必要な施策であつて、しかも従来できなかつたものでありますが、いわゆるアフターケア、後保護施設を設けることにいたしました。これは新しい施策でございますが、これに必要な経費といたしまして二千百八十万円。さらに癩につきましても、国立癩療養所に対しまして一千床の増床を行いますとともに、これに必要な経費一億九千九百八十万円を計上いたしたのであります。なお精神病につきましては、これまた従来この面におきます施策政府努力をいたしつつ、なお欠けておる点がございますので、来年度におきましては国立二百床、公立一千床、計一千二百床の増床を行うことといたしまして、これに必要な経費一億八千八十四万余円を計上いたしたのであります。なおその他公立一般病院建設費補助いたしますために六千万円を計上いたしたのであります。なお国民健康保険直営診療所整備費補助いたしますために必要な経費といたしまして、四億円を計上いたしました。その他今回これまた新たなる施策でございますが、従来公立外一般病院診療所等におきましては、一般金融機関からの借入れの道がとざされておりましたので、従つて国民医療整備という点から見まして非常に遺憾の点がございましたが、今回公立以外の一般病院診療所建物設備等整備改善いたしますために、長期にしてかつ低利の資金の融通をいたすことにいたしたのであります。もちろん十分ではございませんが、従来この道がなかなか開けませんでしたのに対して、今回は一応国民金融公庫を通じまして五億円のわくを設定いたしまして、これらの一般病院診療所に対する融資の道を講じたのであります。もちろんこれは厚生省所管経費ではありません。従つて厚生省予算の面には現われておりませんけれども、重要な新たなる施策の一つでございますので、つけ加えて申し上げておきたいと思うのであります。  なお次に、国民医療整備改善のための経費として申し上げたいことは、疾病予防に関する経費でございますが、結核、癩その他の伝染病予防につきましては、年々政府のとつて参りました施策等々と相まつて直接その効果を収めて参つたのであります。ことに結核のごときは、御承知通り死亡率が半減いたすというような顕著な成果を見るに至つたことは、まことに御同慶にたえないのでありますけれども、なお赤痢のごときは、過去数年逆に増加の道をたどつておるのであります。従つてこれらの疾病予防の面におきましては、政府としても万全の策をとりたいと考えまして、これらの面に対する予算の計上をいたしたのであります。すなわち結核予防につきましては、前に述べました増床分を含めまして、所要経費百二十七億七千九百六十九万余円を計上いたしたのであります。なおまた癩の予防につきましては、最近いろいろその声も高いのであります。従つて前に述べました増床分を含めまして、所要経費十六億七千五百六十三万余円を計上いたしたのであります。なおその他の伝染病予防につきましても、それぞれ所要経費を計上いたした次第であります。  次に、わが国死因順位から見まして、その第二位を占めておりますがん対策、ことにがんの研究を推進いたすために、財団法人癌研究会附属研究所戦災建物再建を促進することといたしまして、その補助に必要な経費として五百万円を計上いたしたのであります。かように疾病予防の面におきましては政府努力いたして参り、伝染病予防の点についてもいろいろと施策を講じたいと思いますが、その施策を講ずるにつきましても、何といつても一番大事な面は第一線実施機関でありますが、その第一線実施機関といたしまして、保健所整備拡充、増設に対しても一段の努力払つたのであります。なおいろいろと予算関係で十分には参りませんでしたが、一応C級保健所を二十箇所、C級からA級への格上げ十箇所、これらの整備拡充に必要な経費といたしまして、十五億七千十六万余円を計上いたしたのであります。なお今回は、かように国民保健の上からいろいろな施策を講じましたが、環境衛生の点にも格段の注意を払いまして、ことに伝染病予防見地から、たとえば上水道であるとか、あるいは下水道であるとか、あるいは清掃事業であるとか、来年度予算におきましては、そういう面に格段の努力をいたしまして、上下水道関係に関する経費、ことに簡易水道は昨年度以来施策が講じられたのでありますが、環境衛生の点から見ましても、伝染病予防見地から見ましても、非常な効果を上げ、重要な施策でありますので、来年度予算におきましては、特にこの面におきます予算増額いたしたのであります。なおことに清掃事業に関しましては、従来予算の面におきましても、政府施策が出ておりません。しかも清掃事業は非常に重要な面でありますので、今回は清掃施設整備といたしまして予算を計上いたしたのであります。これら上下水道あるいは清掃事業等を合せまして、十一億二百九十万余円を計上いたしておるのであります。以上は国民医療整備改善をはかりますための経費概要であります。  第二は、これは第四次吉田内閣成立と同時に、新政策を策定いたしました際にも取上げました重要な施策でありますが、母子福祉対策に関しまして、来年度予算におきましても特に重点的に考えた次第であります。これにつきましては、過般の昭和二十七年度予算補正におきましても、これに関してのいわゆる福祉資金に対する予算を計上いたしておりましたが、幸いに国会を通過いたし、なおまた国会においても議員立法でもつてこれらに関する法律案を御策定になつたのであります。これらの御方針に沿い、また政府の新政策の線に沿いまして、今回の予算編成にあたりましても、特にこの点につきましては、重点的に予算編成努力を払いましたような次第であります。従つて母子寮あるいは保育所整備に関しましては、保育所百三十五箇所、母子寮七十七箇所の新設をいたしますとともに、既存の施設拡充に対して必要な経費を計上いたしたのであります。これらの経費の合計は四億六千十九万円であります。なおこれまた先ほど申し上げました母子福祉資金貸付等に関する法律に基きまして、都道府県母子家庭に対して生業資金貸付を行います場合、その二分の一の額の貸付を行いました都道府県に対して、国から貸付をいたしますに必要な経費七億四千七百六十三万余円を計・上いたしたのであります。なおこれら母子家庭身上相談に応じまして、その自立に必要な指導を行うために都道府県の設置いたしまする母子相談員でありますが、これらに対する経費に対して補助をいたすことに相なつております。その経費といたしまして四千九百九十一万余円を計上いたしたのであります。  第三に、今回の予算編成にあたりまして重点的に考えました問題は、従来もさようでございましたが、戦傷病者戦没者遺家族及び未帰還者留守家族援護強化の問題であります。これらに関しまして、今回軍人恩給復活いたしますので、この軍人恩給復活と兼ね合いまして、従来のいわゆる戦傷病者戦没者遺族等援護法対象者の大部分が、軍人恩給復活とともに恩給法によつて措置されることに相なりますので、従つてこれらの関係を考慮いたして適当な調整を加えたのであります。特に申し上げたいことは、従来この法律対象となるべくしていろいろな関係でなつておりませんいわゆるC船員にまで範囲を拡大いたしました。なお軍人恩給との均衡を考慮いたしまして、援護法によります障害年金、あるいは遺族年金の額の調整をはかつて、その額の引上げをいたしたのであります。従つてそれに対して二十八億四千二百三十七万余円を計上いたしたのであります。昭和二十七年度予算におきましては、御承知のように百四十四億余円でございましたが、これはただいま申し上げました通り、大部分軍人恩給の面において措置されておりますので、実質的には範囲を拡大いたし、また年金等増額いたしたことに相なつております。  なお次に申し上げたいと考えますことは、未復員者あるいは未帰還者留守家族援護の問題でありますが、従来は未復員者給与法あるいは特別未帰還者給与法によつて留守家族方々に対して国家援護をいたして参りました。しかしながら終戦後すでに七、八年を経た現在におきましては、たとえば特別未帰還者給与法等につきましても、従来一般邦人が含まれておりませんでしたが、終戦直後と違つて現在におきましては、留守家族援護ということは、当時とは違つた見地から考えなくてはいかぬという段階に相なつておりますので、従来要望の声も高かつたいわゆる一般邦人に対して、これらの方々に対する留守家族援護の道を新たに開きまして、従つてそれらの見地から、未復員者給与法あるいは特別未帰還者給与法を廃止いたしまして、新たに未帰還者留守家族等援護法を制定いたし、従つてこれによつて従来より援護対象となるべき人々範囲を拡大いたし、なおまたこれらの方方に対する援護の道、すなわち額等増額いたしまして、これらの面における国家援護の万全を期することにいたしたのであります。従つてこれらに要しまする経費二十億九千七百六十二万余円を計上いたしておるのであります。  なおこの機会に、最近重要な問題として一般注意を集めております問題ですから申し添えたいと考えますが、中共地区からの同胞引揚げの問題であります。引揚げに関しましては外務省の所管でありますけれども、引揚げに伴ういわゆる援護につきましては厚生省所管でありますので、厚生省におきましては、それら同胞引揚げ援護に対しましては、万全の措置をとりつつあるのであります。今回中共地区から三万人の残留同胞引揚げが行われる可能性が起つて参つたことは御承知通りでありますが、政府といたしましてはこれが受入れ態勢に現在万全を期しておりまして、一応現在におきましては、いわゆる本会計年度中に四千人、それから明会計年度中において中共地区よりの残りの二万六千人と、その他の地域から一千人、二方七千人の引揚げを考慮いたしまして、それに対する援護を考え、またその援護に対する予算措置を考えておるのであります。これらに対しましては、いずれ詳細に関係の長官あるいは課長から御説明申し上げますが、今回の引揚げにつきましては、前回の引揚げと異なりまして、いわゆる強制引揚げでなくして、中共地区から引揚げられるのでありますから、これらのいわゆる国内における受入れ態勢につきましては、できるだけあたたかく、万全の措置を講じたい。従つていわゆる日本までの輸送、それから定着地までのいろいろな陸上の輸送、それらに対して万全を期しますことは当然であり、またそれらに対して帰還手当を出す等の措置を講じておりますが、ことに定着地に参りました以後における援護に対しましては、できるだけ万全を期したい。従つてとりあえず一時的の収容所都道府県に設けますとか、あるいはまた引揚者の住宅建設等に万全を期したい、こういうように考えておるのであります。とりあえず収容所あるいは住宅等を中心にする援護費として、一応、六億六千十三万余円を計上いたしておるのであります。もちろんこれらの経費につきましては、今後の引揚げの状況に応じて万全を期したいと考えております。  第四は、生活保護及び児童保護に関する問題でありますが、生活保護に関しましては、地方公共団体が生活困窮者の保護のために支弁いたしまする経費に対する補助及び地方公共団体の経営する保護施設整備費に対し補助いたしますために必要な経費、これら合計いたしまして二百四十四億一千八百六十三万余円を計上いたしたのであります。扶助の種類は従来と同様生活扶助、あるいは住宅扶助、あるいは医療扶助等七種類でございますが、それぞれ扶助の基準を若干引上げることといたしたのであります。なお児童保護に関しまする経費といたしましては、児童措置費、すなわち児童福祉施設に収容し、あるいは里親に委託しております孤児、浮浪児等の生活を保障するに必要な経費について、従来は地方財政平衡交付金によつて支弁されておりましたが、明年度からは御承知通り児童福祉法に基いて、補助金として復活することに相なりましたので、これに対して必要な経費として新たに四十三億五千八百三十三万余円を計上いたしたのであります。前に母子寮あるいは保育所等を初め各種の児童福祉施設整備費等に対して申し上げましたが、これらに対して必要な経費六億七千万円を計上いたしておるのであります。これらを合せまして、児童福祉関係予算といたしまして合計五十三億七千八百三十六万円を計上いたしております。  次に、この際申し上げたいと考えますことは、これも予算の額といたしましては大きな額でございませんけれども、問題の性質上従来予算面に現われなかつたものでございますが、地方改善事業、これに対しましても政府は特に考慮を払いまして、今回はこれらの面に対して予算の計上をいたしまして、同和対策といたしまして、政府はもちろん終戦後はこれを一般行政に吸収して、個々にその改善をはかつて参りましたが、今後は特にこの問題に対しましては予算を計上いたしまして、新たに関係機関の連絡協議のために必要な経費、部落実態を把握いたしますために必要な調査費、並びに部落の生活改善のための総合福祉施設としましての隣保館を設立する経費といたしまして、合せて一千二百四十七万円を計上いたしたのであります。  次に、これも予算額といたしましては大した額ではございませんけれども、しかし内容といたして特に申し上げておきたいと思いますことは、人口政策に関する問題であります。人口政策国家といたしましてもきわめて重要な政策でありまするし、従来口にされて、しかもその研究調査あるいはいろいろな施策が緒についておりません。従つて今回これらの問題に対して調査研究をいたし、あるいはいろいろ審議をいたしますために、広く各界の学識経験者を集めまして、人口問題の基本的方策を樹立いたしますための人口問題審議会をこの際設置いたしたい。従つてこれに必要な経費といたしまして、八十一万余円を新たに計上いたしたのであります。予算額は僅少でございまするが、そういうふうな方面に今後政府施策を向けて行きたいという意味において、御報告を申し上げておきたいと思うのであります。なおあわせて、これとともに従来人口問題研究所がございましたが、これに対しましても、前年度に引続きまして、人口問題に関する基礎的な調査研究を行わしめますために必要な経費といたしまして、一千六百九十一万余円を計上いたしたのでございます。  以上大体昭和二十八年度厚生省所管一般会計予算のうち重要な施策の若干について申し上げたのでありますが、このほか保健衛生あるいは社会福祉の各費目に関しましては、前年度に引続き、あるいは前年度以上に所要経費を計上いたしておるのであります。  次に、厚生省所管の特別会計の大要について申し上げたいと思います。第一は厚生保険特別会計であります。この点につきましては、従来通りに保険の運用をいたしまするという以上、来年度におきましては、たとえば健康保険につきましては適用範囲の拡張、あるいは標準報酬の改訂、療養支給期間の延長の措置を講ずることといたしたいと考えまするが、そのほか先ほど申し上げました通り、日雇い労働者に対する健康保険の道を新たに創設いたしました。従つてこれらに関しまする経費といたしまして、健康保険勘定におきましては歳入歳出とも三百五十三億五千三百四万六千円。そのほか新たに設けまする日雇健康保険勘定におきましては、歳入歳出とも十九億二百四十二万四千円。年金勘定におきましては、歳入が二百八十八億六千九百三十万五千円、歳出が五十八億四千九百七十九万円。業務勘定におきましては、歳入歳出とも三十八億一千四百八十万七千円と相なつております。  次に、船員保険特別会計でございまするが、歳入は三十四億四千九百三十万五千円、歳出は二十八億三千五百六十二万九千円となつております。  次に、国立病院特別会計でございまするが、来年度におきましては、国立病院七十三箇所を経営する予定でありまして、これに必要な経費は歳入歳出とも五十八億五千八百七十七万円と相なつております。  以上昭和二十八年度厚生省所管一般会計及び特別会計の予算について概略説明を申し上げたのでありまするが、そのほかに、これはまた予算額といたしましてはきわめて僅少でございますけれども、政府の厚生行政を推進いたしますについての一つの方向として一、二御報告を申し上げておきたいと考えますのは、たとえば従来国立公園に関しましては、この重要性あるいは観光行政の点から見ましても、あるいは外貨収入の点から見ましても、非常に声を大にして言われておりますが、予算がとれておりません。たしか昭和二十七年度におきましては千八百九十万円だと承知いたしておりますが、これに対しては国会におきましてもずいぶんいろいろ御要望もありましたので、この点につきましては特に閣議におきましても予算増額を要求いたしました。ただ一般財政のいろいろな困難な点から十分ではございませんでしたが、来年度におきましては五千万円を計上いたしております。  それからまた地方的の問題と相なりまして、一般的の問題でございませんけれども、地方病の予防についての設備が地方的に非常に重要な問題になつておりまして、要望もあつたのであります。昭和二十七年度はたしか八百五十万円程度であつたと承知いたしておりまするが、来年度予算には二千五百五十万円を計上いたしておるのであります。  なお医薬分業につきましては皆さん御承知通りでありまするが、これに対する調査費を百万円計上いたしております。それから薬業の合理化に関する経費であります。研究の補助金を六百万円計上いたしております。  それから、これまた従来この委員会においても各委員から御要望がございました点でございまするが、消費生活協同組合に対して補助金あるいは融資の道をという声がずいぶんございましたので、これに対しましては従来予算がついておりませんでしたが、来年度におきましては、当初から十分な予算はとり得なかつたのでありまするが、これまた一応二千五百万円を新たなる策といたしまして、貸付金の形式で計上いたしております。  それからまた委員会においてもいろいろ御要望のありました問題で、しかも従来の予算にはなかつたのでありますが、浮浪者の保護厚生施設に対しまして、五千万円を計上いたしております。  それから母子寮あるいは保育所等に対しましては先ほど申し上げましたが、いわゆる一般保育所のほかに、季節保育所と申しまするか、そういう面においての施策予算委員会においても従来要望されておりました。しかも従来そういう予算の道がなかつたのであります。今回季節保育所についての補助金といたしまして三千万円を計上いたしております。  かようにいたしまして、その他詳細な点は会計課長から後刻御説明申し上げますが、今回の昭和二十八年度予算編成にあたりまして、私が閣議等に臨みました基本的の考え方について申し上げたいと思います。それはたとえば従来国民医療の点、あるいは公衆衛生の点、あるいは社会福祉の点、あるいはその他の点において重要な問題であり、しかも国家財政の点からそれが実現いたし得ませんでしたものが相当ありまするので、それらに対して、できればこの際従来その道のなかつたものに対しては道をつけ、そうして何とか厚生行政というものをこの際筋を通して、卑近な言葉でありますが、活を入れたい。ことに国民健康保険に関しましては、当委員会においてもいろいろ御鞭撻があつた問題であります。閣議等におきましては、この給付に対する国庫負担の問題は、大蔵省としても相当の難色がございまして、最後まで残つた重大な問題に相なりましたが、幸いにして多年の要望であつた給付に対する国庫負担の道が開かれたことは、ひとえに各位の御支援、御鞭撻の結果であります。この際御報告を申し上げますとともに、厚く敬意を表する次第でございます。
  9. 平野三郎

    平野委員長 これにて昭和二十八年度厚生省関係予算に関する厚生大臣説明を終ります。  この際大臣の御説明に対して御発言があれば許可いたします。
  10. 勝俣稔

    ○勝俣委員 ちよつと大臣に伺います。寄生虫病というものが非常に大きな問題になつておるのでございますが、今回の予算にはこれが予防対策費としては計上されておらないのでございましようか、伺いたいのでございます。寄生虫問題は、国民の体位を非常に落すものでありまして、なんぼ栄養をくれても、寄生虫にくれるような栄養はどうかと私は思う。この問題に関しては、大正五年ごろから政府においては保健調査会をつくりまして、大正十年ごろに全国百三十四箇村の寄生虫病の調査をいたしまして、これの駆除をしておつた次第であります。なお寄生虫予防法の制定もあり、それで国庫補助もあつた次第でありますけれども、戦後にはそれが平衡交付金の方にまわされるような状態で、地方においてはそういう方にほとんど使用されない。従いまして現在の状態では、寄生虫の予防に関する仕事が行われおらないという状態であるので、非常に遺憾に思うておる次第であります。ことに終戦当時の状況では、農村の方に疎開をした関係、あるいは家庭菜園の関係、あるいは寄生虫の駆除の薬の欠乏というような問題で、ますます寄生虫の蔓延を来したような次第でありますが、この問題について、政府では今後どういうような政策をおとりになるお見込みであるか、お伺いいたしたい。
  11. 山縣勝見

    山縣国務大臣 一般の寄生虫の予防については、建前としては地方に一任いたしておりまして、地方としては住血吸虫の予防を取上げておるのであります。これらに対する一般対策費として、たしか八百余万円を計上しておるのであります。ただその媒介をしておる貝の絶滅をはかるために、従前から棲息地帯の溝渠をコンクリート化するための予算をとつて来ております。昨年は一万間、今年はたしか三万間にして、これに対する予算を計上いたしております。
  12. 勝俣稔

    ○勝俣委員 寄生虫問題というものは、昔は都市の結核、農村の寄生虫病、こういうふうに叫ばれておつたものであります。今後ぜひ政府としては、農村の寄生虫問題に対しては御努力を願いたい。またそういうお考えが政府におありであるかということをお伺いしたい。
  13. 山縣勝見

    山縣国務大臣 ただいま申し上げましたが、今年は三万間、二千五百万余円を計上いたしております。もちろんその溝渠を三万間にいたしたところで——この前はよく陳情がありましたが、よく事情を聞いてみますと、それだけではなかなか足らないようであります。そのほかに、たとえば屎尿の処理とか、あるいは下水道とかいうものを完備いたしまして、両々相まつてこれらの撲滅を期したいと思つております。ただ現在は、御説の通り予算が足らないのは私も認めます。今後努力いたしたいと思います。
  14. 勝俣稔

    ○勝俣委員 下水の完備とかなんとかいう問題は根本的な問題でございます。現在、蟯虫、蛔虫、十二指腸虫というような寄生虫に悩んでおる人が非常に多うございます。これが対策を行つた町村においては、国民健康保険の費用なども非常に少くなつて来た。またある研究所では、これの実際について調査をいたしましたが、非常に国民的に経済になつて来た。労働問題などに対しましても、今まで休んでおつた者が働きに出て来るというようなことにおいて、積極的に非常な効果を来しておる例がたくさんある次第であります。私は、今のごくわずかのお話でなくして、実際に農村の寄生虫の駆除をせられて栄養をとるなら、無理に蛔虫などにくれる必要はない、ほんとうに栄養そのものが吸収されるような行き方をおとりくださらんことをひとえにお願いする次第であります。なおこういう問題につきましては、政府のみならず、そういつた民間団体をつくらせて、それを助成して働かせるという方法もありはしないか、とくとひとつ政府においてもお考えを願いたいということを申し上げまして、質問を打切ります。
  15. 山縣勝見

    山縣国務大臣 ただいまお話の点はよく拝承いたします。ことに調査対象が相当多いように私も聞いております。たしか町村にして百箇所以上であり、また県では福島、山梨、広島、佐賀、いろいろ聞いております。これは単なるローカルの問題でなくして、相当大きな問題である。十分ただいまの御説を拝承いたしまして、今後とも施策を講じたいと考えております。
  16. 永山忠則

    永山委員 ただいまのにちよつと関連しまして、寄生虫、ことに蛔虫に関しまして、かつて内務省時代には農村では改良便所の補助がありまして、相当実績を上げておつたわけであります。こういう点に関しましても、ひとつ当局でお考えをいただきたいということをつけ加えて申し上げます。  説明の中にございます医療金融の関係でありますが、「今回国民金融公庫等を通じて」と、「等」という言葉がありますが、その他の機関は何を指しておるのでありますか。
  17. 山縣勝見

    山縣国務大臣 医療金融の問題につきましては、大体経過は御存じだと思いますが、当初は一般会計から五億円——五億円では私は承知しなかつたのでありますが、五億円を一般会計から財政支出をして、そしてたとえば今通産省において、自転車工業に対して融資をいたしておりますが、ああいうふうな式でやつてみたい、こう考えております。それが御承知通り、今回の予算編成にあたりましてはいろいろな困難な事情がございまして、一般会計からの財政支出が困難になりました。結局五億円を一応国民金融公庫に対してのいわゆるわくの中から融資をいたそうということになつております。そうなりますると、実は本来の医療金融の目的を達しますためには、いろいろ遺憾の点もございますので、具体的な面につきましては、実は省内において今研究をいたしております。一応現在のところでは、国民金融金庫のあのわくの中から融資をいたすということに相なつておりますから、できればそれは、実際上いろいろ支障のある点もございますので、今研究をいたして、何とかして本来の目的に少しでも近いような金融をいたしたい、こう考えております。
  18. 永山忠則

    永山委員 最初の御構想のような、医療金融公庫に対する考え方は、大臣の方は予算措置においてやむを得なかつたというが、やむを得ぬからこれはもうしかたがないというお考えですか。本年は予算措置はやむを得ないが、本年限りのものだというお考えをお持ちになつておるかどうか伺いたい。
  19. 山縣勝見

    山縣国務大臣 医療金融は重要な施策でありますので、本年度はいろいろ他の行政面の予算措置とかみ合せて、一応国民金融公庫のわくの中で五億円の金融をいたすということになつておりますが、実は最近これに関しては、中小企業の金融の中に含めてやつてはどうかという考え方も、一、二出ておるようであります。むしろ私の考えとしては、これはどうであろうか、というのは、一応中小企業金融としてやりますると、国民金融公庫のわくの中で金融をいたしますよりも、当面はあるいは目的に近い金融ができるかもしれません。しかしそれは、いわゆる小成に安んずるものであつて、将来われわれが考えておりますような医療金融の本来の形を持ちますためには、かえつて支障になるのではないか、当面のやすきを求めて、将来の、本来の金融に支障があつてもいけないのではないか、こういうようなことも考えまして、私のねらいはやはり本来の医療金融を持ちたい、こういうことを考えております。
  20. 永山忠則

    永山委員 別に医療金融公庫の形において将来の問題は解決したいという根本的なお考えがあるならば、それを中心にひとつ処置をお考え願いたいと思うのであります。現在大蔵及び通産関係で、中小企業金融公庫の中に、医療事業を行う法人、すなわち社会福祉法人、民法上の医療法人等を合わしたものを貸付対象とするような形において進んだらどうかという意見もございますし、また国民金融公庫法を改正して医療金融関係対象とするのには、国民金融公庫法の第一条から改正しなければならぬので、国民金融公庫を通じてやることは、改正を出すのに非常に困難ではないかというようないろいろの説がございますので、ひとつ早急に御方針をおきめいただいて、われわれはぜひ医療金融を公庫としてやりたいという将来の構想のもとに対処できるような方途において御研究を願いたいと思います。  さらに生活協同組合を今度の中小企業金融公庫の貸付対象となすの件に関して、当局のお考えをお聞きしたいのであります。ということは、生活協同組合を中小企業金融公庫の貸付対象に認むべきであるかどうかという点であります。
  21. 山縣勝見

    山縣国務大臣 ただいまの御質問の要旨がちよつとわかりかねるのですが、今回、御承知のように生活協同組合に対して二千五百万円の予算を計上いたしました。これは当初補助金といいますか、これにはいろいろいきさつもございますが、一応貸付金の形式で出しますが、今の御質問は、いわゆるこの厚生予算範囲外の中小企業の一つとして、中小企業金融公庫から協同組合に対して貸付ができるかどうかという御質問ですか。
  22. 永山忠則

    永山委員 今度計画されている中小企業金融公庫の貸付対象は、大体察知するところによりますと、中小企業者が中心になつておりまして、一千万円以下の会社とか、あるいは常時使用する従業員数が三百人以下の会社もしくは個人、中小企業協同組合あるいは農業協同組合、農業協同組合連合会等にも貸し付けるようになつておりますので、せつかく大臣が生活協同組合への貸付金を予算的におとりになりましたが、その予算以外に、金融公庫からも生活協同組合へ融資できるような道を開いてやることによつて、生活協同組合を合理的に発展させ助成させることができると考えられるのであります。従つて中小企業金融公庫を今日設けられんとするものの中へ、生活協同組合も貸付対象に入れるというようなぐあいに、お骨折りを願うよう期待いたしておるわけでありますが、それに対するお考えはどうでありましようか。
  23. 山縣勝見

    山縣国務大臣 その点については通産大臣とも一ぺん話合いをいたして、そして御希望の意に沿うように一応私から話してみますが、まだただいまのところはその打合せをいたしておりません。ただ御趣旨の点もございますから、通産大臣と一応協議いたしまして、できればさように希望いたしたいと思つております。
  24. 永山忠則

    永山委員 ただいまの、生活協同組合を貸付対象にするというような点に対しても、非常に難色があるように聞いておりますし、国民金融公庫の貸付関係に関して、医療事業を行う法人に貸し付けることにも難色があるように聞いておりますので、十分にひとつ御連絡を願いまして、成果を上げるようにお願いしたいということで、私の質問を打ち切りたいと思います。
  25. 鈴木義男

    ○鈴木(義)委員 私はいろいろ御質問いたしたいと思いますが、今ここでごく大きな問題だけについて一応大臣に御質問申し上げておきたいと思います。それは、厚生大臣はどういう抱負をもつてこの予算案に対せられたかということであります。本来は、われわれ予算の組みかえを要求したいと考えておりますし、予算委員会で質問すべき問題かもしれないのでありますが、しかし敗戦後のわが国におきまして最も大切なことは、厚生行政であります。社会保障の問題であり、社会政策の問題であろうと思います。防衛の問題のごときは、安全保障条約でアメリカに一応責任を負担させているのでありまするから、その間にこの社会保障を確立しなければ、いつのときに社会保障ができるかと考えるのであります。イギリスのごとき、労働党内閣は多年労働政策をとつておつたからと言えばそれまででありますが、十分に防衛もやりながら、なお三十六、七パーセントというような、全予算の大部分を占める社会保障費というものをさいておるのに、わが国予算はほとんど六%、あるいは多く見ても七%しか厚生全体の予算にさかれておらない。厚生大臣としてこの任をお引受けになります以上は、大海に目薬程度のわずかの増額をもつて満足されるということでなく、保安隊で飛行機を注文する、そういうことには百億、二百億をただちに惜しまずに出す、そうして健康保険療養費にわずかに一割五分だけ増額して満足をして——おられないかもしれませんが——おるというごときは、われわれのとうてい賛成しがたいものであります。村々町々をたずねますと、健康保険くらい国民が大旱に雲霓を求めるようにその施設の完備を求めておるものはないのであります。そのためには五割、六割のものでも、決して多きに過ぎるということはないのであります。こういう点について厚生大臣はどれだけ閣議において御努力なつたか、またどういう抱負をもつて対処されるか。上下水道のごとき問題も至るところ陳情を受けるそうでありますが、この予算に盛られたのはほんのおしるしにすぎない。こんなことで実際にわが国環境衛生がよくなるということは、良心ある者の何人も言うことができないことであろうと思います。いろいろ個別的に言えば切りがありませんが、全体としてどういう抱負をもつて、どういうふうに閣議においてお闘いになつたかを、ひとつこの際お聞かせ願いたいのであります。
  26. 山縣勝見

    山縣国務大臣 ただいま昭和二十八年度予算編成に対しての厚生大臣の基本的の考え方についてお尋ねがありました。私は先ほど申し上げました通り、厚生予算と申しましても、全体の国家財政の一環としての厚生予算であります。国民健康保険の一割五分の給付に対する国庫負担が不十分であるという御説でございました。あるいはそうであるかもしれません。しかしながら予算編成は、理想だけではできないのでありまして、やはり現実の面に沿つて予算編成であります。過日来本会議において、いろいろ野党の皆さん方の御説を拝承いたしておりますると、いわゆるインフレ予算としての御非難がむしろ重点的であつたと思います。もちろんインフレ予算と申しましても、防衛費を減らして、社会保障費を増すということでありまするから、その面においては一応りくつは立つかもしれませんけれども、これは見解の相違になりまするから、あえて触れませんが、来年度予算編成にあたつて、少くとも厚生大臣として予算編成に臨みました態度は、最初昭和二十八年度予算編成に対して私が基本的の態度として申し上げました通り、少くとも従来厚生行政としてなすべくしてなし得なかつた点、そういうふうな面をむしろ私はこの際重点的に取上げて、国家財政の許す最高の限度において厚生予算従つて厚生行政というものに筋を通したい、これに対して私は最善の努力をいたしたつもりであります。これはごらんくださいましていろいろ御批判は御自由でございまするが、国民健康保険の給付に対する一割五分の国庫負担というこの一つの点につきましても、従来なかなか実現の困難な問題でございました。その他水道の問題も出ましたが、上水道におきましても、昨年度に比較いたしましても、額は全体的に少いというお話でありましたらやむを得ないのでありますが、画期的にふえておるのであります。私が今回の厚生予算編成にあたつてとりました基本的な態度は、額をふやすということ、これも一つの問題であります。しかしながら従来筋の通らなかつた面に対して筋を通し、そうして従来道の開かれなかつた厚生行政の面に道を開こうということに私は最善の努力を払いました。  閣議においてどういう態度で臨んだかというお話でございましたが、今回の閣議における予算編成の状況は大体御承知だと思いまするが、この厚生予算に関する問題は、終始閣議において最も重大な問題として取上げられました。たとえば清掃事業に関する予算措置のごときは、従来歴代の内閣において、歴代の予算閣議において取上げなかつた問題でありまするけれども、上下水道の問題、清掃事業の問題は最後まで私は詳細に説明いたしまして、閣議の問題といたしたのであります。閣議の内容をいろいろ申しますることははばかりまするけれども、さようにいたして、閣議におきましては厚生予算に関する限りこれは最重点的に、最強力に私は発言をいたして、たとえば国民健康保険の給付に対する国庫負担のごときは、閣議の一番最後の重大問題として残して、しかもこの一割五分は少いというお話でございますが、これは私もやむを得ぬと思いまするけれども、昭和二十八年度予算編成は御了承の通り、歴年の予算編成違つて、来年度予算編成は特異の予算編成であります。その予算編成内容につきましては、あるいは防衛費の問題、あるいは軍人恩給の問題、いろいろ御説がございましようと思います。これは見解の相違であり、あるいはまたとつております立場の相違でありますから私は触れませんが、少くとも来年度予算編成が相当特異な立場の上に立つた困難な予算編成であるということは、これは万人の認めるところであります。その中にあつて、はなはだ卑近な言葉でございまするけれども、従来筋を通し得なかつた面に対しましては、少くとも私は筋を通したつもりであります。また国民健康保険の給付に対する国庫負担のことだけでも、私自身としては一応努力をいたしたつもりでありまして、なおまた私も、厚生予算国家財政全体に占めます立場等につきましてもいささか研究をいたして参りましたが、まず現実という点から見まするならば、一応厚生大臣といたしましては万全を尽しましたつもりであります。いろいろ御不満もあり、御批判もあると思いますが、厚生大臣としては、予算に対してとりました態度は最善を尽したつもりでございます。
  27. 平野三郎

    平野委員長 ただいま鈴木君の御質問の中で、上下水道に関する予算が非常に僅少であるということがございましたが、これは実質的には地方起債によつてまかなわれるものであつて一般会計の数字だけをもつて論ずるわけに行かぬわけでありますが、先ほどの大臣の御説明の中には、起債のわくについてのお話がなかつたのでございまするけれども、その点はどういうふうになつておりますか。詳細をもし大臣が御承知なければ、会計課長からでも現段階を御説明いただきたいと思います。
  28. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 起債の関係はまだきまつておりません。
  29. 平野三郎

    平野委員長 御計画はどの程度です。
  30. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 私もちよつと承知いたしておりません。
  31. 鈴木義男

    ○鈴木(義)委員 それ以上議論をいたしますると、結局見解の相違ということになるようでありまするから質問をいたしたくありませんが、ただわれわれは教育と厚生行政——社会保障とは文化国の政治の二大核心であると考えている。ところがどうやら保守党の政治家諸君は、慈善事業に毛のはえたくらいにお考えになつておられまして、今までの予算のわくというものを土台にして、それに幾らかふやして行つたら大手柄だというような考え方が見えるように思うのであります。これは今後保守派と進歩派とを問わず、厚生行政が教育行政とともに国家の根本的な二大政策であるということを考えて、今までの予算のわくというものにとらわれずに、ひとつ大きな抱負を持つて脱出して行つていただきたい。そのために必要ならば、国家予算のわく内において——そのわくも一つの問題でありますが、根本的に組みかえるということを要求するくらいの抱負を持つて対せられたいということが私どもの希望であるということを申し上げて、あとはこまかい問題になりますから、次の機会に御質問いたします。
  32. 柳田秀一

    ○柳田委員 私も、大臣が本委員会に御出席になることははなはだ少いので、この機会に非常に大きな問題だけお尋ねしたいのであります。と申しますのは、厚生大臣として、同時に国務大臣としての山縣さんにお伺いしたい。この予算案にも出ておりまするが、戦傷病者戦没者遺族等援護法及びこれが軍人恩給復活に関連した問題が出ておりまするが、この軍人恩給に関しましては、恩給法特例審議会から内閣に答申があつたのに基いたのでありまするが、こういうような内閣の諮問機関であり、同時に答申を出しておりまするものに、御存じの社会保障制度審議会というものもあるわけです。ことにこの方は早くできまして、すでに勧告を出し、督促までいたしております。この社会保障制度審議会からの勧告に対しては、その中の項目に対しては、一部実施されて来ておることは事案でありますが、われわれの考えているところによりますと、政府全体としては、社会保障制度審議会からの勧告に対して一応承りおく程度である、そうしてその中の特にある部門については、われわれ議員の方でつつついたりあるいは世間の輿論というような圧力に屈して、逐次小出しにどうにか申訳的に出して来ておるというように見受けられるのであります。その根本理念におきましては、同僚鈴木委員がおつしやつたようなところに出ていると思う。ところがあとからできた恩給法特例審議会の答申案に対しては、その答申案を出してもらえば初めからのむつもりでかかつている、そうしてできたものを出したら採用する、根本的にそういうような態度がとられているように見受けられるのであります。これは決してひが目ではなしに、事実そういう態度をとつておられる。従つてこの予算案を見ましても、戦傷病者戦没者遺族等援護法の中からさいてそれを軍人恩給の方にまわしておられる。これは主客が転倒している。われわれは決して軍人恩給そのものを全般的に否定するわけではない。老齢軍人の生活に困つておられる方、あるいはその他戦傷病者戦没者遺族等みな大きな意味の軍人恩給でありますが、しかし根本的の考え方としては、そういうものは社会保障制度の一環として、社会保障制度としての予算を組むべきである。このことは社会保障制度審議会からも、軍人恩給として組むよりもむしろ社会保障制度の一環としての予算を組むべきであるという勧告が出ているのであります。そこで国務大臣としての山縣さんにお尋ねしたいのでありますが、こういう問題は軍人恩給として一つのカテゴリーとして認めるものか、それとも社会保障制度として認めるものか、そのどちらを主に考えておられるかお伺いしたいのであります。私どもの見解を言うならば、これは当然社会保障制度として考えるべきであつて、社会保障制度の中にどうしても盛りにくいものがあるならば、あるいは内閣委員会に入りますが、そのものだけはやむを得ず別途に考えてもよろしい。しかし根本としては、あくまでも社会保障としての考え方で予算を組むべきであつて、むしろこちらの方の予算をふやすべきであると思いますが、これを見ますと、戦傷病者戦没者遺族等の予算が減らされて、内閣委員会の方に付託されている軍人恩給にまわされているということは、主客が転倒している。この点に関して国務大臣としての山縣さんはどういうふうにお考えになつておられるか、お伺いしたいのであります。
  33. 山縣勝見

    山縣国務大臣 お答え申し上げます。今回の軍人恩給に関して、社会保障としてこれを支給すべきか、軍人恩給として支給すべきかということに対して、厚生委員会において国務大臣としての立場でお答えをいたすことが適当であるかどうか、私もただいまいささか判断に苦しみますが、せつかくの御質問でありますので、お答えいたしたいと思います。  今回の軍人恩給は、軍人恩給復活という観念から軍人恩給復活している。それがいいか悪いかということは、これまた見解の相違になりますが、停止されているという言葉はもう少し研究いたしたいのでありますが、これは終戦後司令部との関係もいろいろあつて法律的の表現はちよつとこの際お許しを願いたいのでありますが、旧軍人の方々に対して新たに社会保障をするということにあらずして、軍人恩給復活するということでありますから、その意味において、軍人恩給審議会というものが内閣にあつて、その答申にまつて内閣が軍人恩給復活をいたしたのであります。その結果、従来軍人恩給等について遺家族援護法援護されていたものは、軍人恩給の方に移りますから、軍人恩給として援護されるその残りのものに対しては、軍人恩給等との兼ね合いで年金等の引上げをいたす、こういうふうな建前を政府はとりました。私も、今回政府がとりました方針に閣議等においては従つて参りました。従つて私は、今政府が考えております方針に、国務大臣といたしましては従つております。
  34. 柳田秀一

    ○柳田委員 軍人恩給に関しましては、本委員会所管ではありませんし、いずれまたこれは内閣委員会におきまして、あるいは本委員会との合同委員会でも持たれるかと存じますから、またその節に譲ります。従つて私は、今度は山縣厚生大臣としてお尋ねいたしまするが、先ほどの鈴木委員からのお話にもありましたが、ただいまの御答弁をみましても、山縣厚生大臣が真に厚生行政にほんとうに熱意を入れて、自分のからだをその中へ没入されおるかどうか、その気魄をわれわれはただいまの御答弁から感じとることができぬのであります。なるほど非常に御熱意のあることは、われわれよく了承しております。従来の厚生大臣がとかく伴食であり、またとかくふなれでありましたが、山縣大臣が専門外のこのふなれな厚生行政に当られまして以来、非常に真摯な御努力と熱意を傾けられていることはよくわかるのでありますが、もう一つ私をして言わしむるならば、気魄が足りない。ただ自分の所管の事項において熱意を傾けて勉強しておられる点はわかりますが、もう一つ、今の日本の大事なこの社会保障制度、これを確立するという気魄をわれわれは認められない。大臣の御答弁を承りますと、よく出ますのが万全を期したいということと、国家財政の許す範囲におきましてということが絶えず前置詞としていつも出るのであります。この国家財政の許す範囲ということは、これは考え方の相違でありまして、厚生省が考える国家財政の許す範囲と、大蔵省の考える国家財政の許す範囲と違います。国家財政の許す範囲予算においてもその気魄があれば閣議を動かすものである、かように考える。国家財政の範囲ということは一つの逃げ口上であつて、そこに厚生大臣の気魄がもう少し強ければ、国家財政の範囲がさらに許されて、この厚生行政の上に大きく現われて来ると思います。そういう意味におきまして、万全を期したいと言われますが、これまたはなはだ抽象的な言葉でありますので、どうか今後とも大臣は、もう少し気魄を持つてつていただきたい。ことに社会保障問題は、イギリスにおきましては先ほども御説明のように、全予算の四〇%にもなつている。あるいは入れ歯の問題、あるいはめがねの問題ですら大臣を棒に振るだけの熱意をもつてつておられることは御承知通りであります。国民健康保険につきましても、二割を一割五分に閣議では減らしておる。まあこれは、言わば一つのかけひきのようなものである。そういうことになれば、初めから三割要求しておけば、二割にはなるかもしれないというようなかけひきをしておるようにわれわれには思われるのであります。そういう点で実際に、実情から言えばこの二割というものは社会保障制度審議会からの答申にもあるのでありますが、実際は先ほど鈴木委員もおつしやつたように、二割では少い。しかしながら現在の段階においては、われわれはやむを得ないとしております。そういう点から考えましても、二割と言つたから大蔵省の方では一割くらい、そのまん中をとつて一割五分にしようというような妥協の問題ではない。大臣が今後厚生行政をやられる上において、今までのお考え方、御熱意、御勉強はよくわかりますが、さらに気魄を持つてどうしてもこの問題を貫徹しようとするのならば、それこそめがね、入れ歯で大臣をやめたイギリスの議員くらいの気魄を持つて衝に当つてもらいたいということだけを、こういう機会はめつたにございませんので、この機会に一言希望を付して質問を終わます、
  35. 山縣勝見

    山縣国務大臣 ただいま厚生大臣としての私の気魄について御注意、御忠言がございましたので、拝聴いたしました。ただ申し上げておきますが、大蔵省的の国家財政と厚生省的の国家財政——大蔵省的の国家財政ということから、国民健康保険に対する国庫負担に対しましては、これは閣議の模様を他の大臣からお聞きになつたらおわかりになりますが、普通の気魄をもつていたしましては、今回の国民健康保険に対する国庫負担は一分たりともできなかつたのであります。これははつきりと申し上げます。私はただいまのお説はまじめに傾聴いたしました。でありますから、私がただいま申し上げておりますことは、決してお言葉を返すつもりで申し上げているわけではありませんが、厚生行政に関しましては、私は気魄を持つて誠心誠意やつております。国家財政の現況下において、国民健康保険に対する一割五分の国庫負担をなすということは容易なことではないのであります。
  36. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 私は、厚生大臣が厚生行政に対して熱意をお持ちになつておるということは認めるのであります。従いまして厚生常任委員会には事情の許す限り努めて御出席になるということを期待いたしております。本日は私の方の時間の都合もございまして、あまり詳細な質問ができません。従つて多くは別の機会に譲るといたしまして、本日は簡単にお尋ねをいたしておきたいと思うのであります。  私どもは、この厚生行政につきましては、ほんとうに何と申しますか、今日本の非常にむずかしい問題と考えておりますところの、国民を共産主義から守る政治はこの厚生行政である、こういう確信に立つておるのであります。国民に希望を持たせなければならぬ、国民に光明を与えなければならぬ、その政治をするのはまさに厚生行政なのであります。決して慈善事業などでないということを考えております。先ほど社会党の鈴木委員の御発言中に、保守党はこれを慈善事業と考えている、こういうお言葉がございましたが、保守党というのは、どういう党をおさしになるのか、私にははなはだ不可解なのであります。ああいう場合には、吉田内閣なら吉田内閣、自由党なら自由党とかいうふうに、はつきりと名前をあげていただかないと世の誤解を招く危険性を持つていると思います。なおまた社会党は、独善ということは非常に排斥して来られたにもかかわらず、ああいつたあいまいな言葉を使つて、ただ自分だけがこの厚生行政に対しては、一つのりつぱな信念を持つておるというような表現の仕方をされることは、どうも従来独善を攻撃して来られた方のお言葉としては、はなはだ受取れない点があると思うのであります。  さてことで大臣にお尋ねいたしたいのは、今国会において厚生省所管法律案を出す御予定のものは、先ほど配付いただきましたこの厚生委員会提出予定法律案件名、これに記載してあるものであるかどうか、これを一応確かめたいのであります。そうしてこれをお出しになるということであれば、この中に戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する法律案、夫帰還者留守家族等援護法案、この法案があげられてあるのであります。これは先ほど他の委員からも御質問のあつた点でございますが、この問題はきわめて重大な問題でありまして、軍人恩給復活という問題に関連をいたすのであります。私どもは長い問戦傷病者戦没者遺族あるいは未帰還者留守家族方々とともに歩んで来た、実はこういう気持でいるのであります。ところが今回その大部分軍人恩給復活ということでもつて、この法案、あるいはまた予算の問題が内閣委員会においてのみ審議されるというようなことになると、私の知り得た知識をもつていたしますれば、戦傷病者あるいは戦没者遺族の方々、未帰還者留守家族方々には、何だかさびしいような感じがする、こういうふうなお気持のように受取つておるのでありまして、ぜひとも厚生常任委員会においても強く協力してもらわなければならぬ。こういう空気がきわめて強いのであります。私もそのお気持をくむとともに、この問題については厚生常任委員会が最もよく実情を知つておる。こういうふうに今まで歩んで来た道を顧みて考えるわけなのであります。従いましてこの法律案はできるだけ早い機会に御提出を願いたい。そういたしませんと、軍人恩給復活に関する法律案、あるいはそれに関する予算というものが、先に一人歩きをいたしましては、はなはだ実情に沿わないものができ上る危険があると考えるのであります。私どもといたしましては職業軍人偏向の古い法律の精神を改めて、応召戦死者の遺族、未復員者の家族、傷病者、老齢軍人等に対する均衡のとれた保障を徹底させたい、こう考えておるのでございます。先ほど大臣のお話にありましたが、これは軍人恩給復活だというような簡単な考え方をもつて解決されるほど、やさしい問題ではないのだ。こう考えるのでありまして、私は質問とは申しましたが、強い要望をもここに申し上げるわけなのであります。厚生省の予定されておるところの法律案はできるだけ早く提出をされたい。わけても先ほど申し上げました戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部を改正する法律案、未帰還者留守家族等援護法案については、一層すみやかに提出されるように御準備願いたいことを申し上げる次第でございまして、これに関しての大臣のお考えをお聞きいたしたいのであります。
  37. 平野三郎

    平野委員長 ちよつと高橋君に申し上げますが、今お配りしましたのは、これは厚生省として正式に態度をきめて出されたものではございません。実はちよつと早手まわし過ぎるかもしれないと思いましたが、当委員会から政府の方と非公式に事前に折衝して、御審議の御参考のために推測をして出したものでありますから、政府としてはこれについては何ら責任のないものでございますので、御了承を願いたいのであります。  それからもう一つ申し上げますが、今のお話の問題は、先ほど柳田君からもお話がありましたが、これはいずれ恩給法として出れば、議院運営委員会では当然内閣委員会に付託することになると思いますが、委員長としては委員会の御希望があれば連合審査をいたしまして、その際十分審議をいたしたい。それこそ吉田自由党内閣全体の責任の問題でありますから、その連合審査会でひとつ総理大臣、また所管大臣である官房長官等に対しても、その際十分御論議を願いたいと思います。
  38. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 それでは端的にお尋ねをいたします。厚生関係法案は、本国会においてはどんなものを提出される予定であるかということを大臣にお伺いいたしたいと思います。
  39. 山縣勝見

    山縣国務大臣 ただいま私は委員会の方から一部受取りまして拝見をいたしました。ただいま配付を受けたばかりでありますから、詳細にまた緻密に拝見をいたしておりませんけれども、大体この程度のものは予定をいたしているのであります。なおその他に今後法案整備等のできますもので提案いたすものもあると思います。ただいまお話の中の戦傷病者戦没者遺家族あるいは未帰還者留守家族援護法につきましては、ただいまお話の点は拝承いたしました。ただいまお話の中に軍人恩給であるから云々というお話がありましたが、遺族等の援護あるいは未帰還者留守家族援護等は軍人恩給に関する問題ではない。ただ軍人恩給に関連をいたした問題である。それら軍人恩給のことと関連調整をいたして、厚生省としては考えて参りたいと思つております。なおできるだけ早く出すようにという御説でありましたが、その点は拝承いたしました。
  40. 平野三郎

    平野委員長 堤ツルヨ君。
  41. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 ただいまわが党の鈴木委員並びに柳田委員、高橋委員などから御発言がありました。大臣に二十八年度厚生省所管一般会計並びに特別会計の予算説明を伺つたわけでございますが、もちろん吉田自由党内閣の政策が再軍備にそのウエートを置き、社会保障というもの、ことに審議会の答申いたしました社会保障制度を拡大しようという意向のない吉田内閣のもとにおきましては、私たちが要求いたしますところの予算——先進国並の二〇%以上のものを厚生予算に少くとも向けたいという要求は、通されないわけであります。従つてこれはいかほど主張いたしましても、天下をわが党がとらなければ実現できないことでありまして、非常に遺憾でございますけれども、これは望めないことであります。  そこで私はそういう前提のもとに立つて、二十八年度予算案の説明を伺いまして、吉田自由党内閣の歴代厚生大臣の手においては実現されなかつた問題を、とにもかくにも連日連夜御奮闘になつて国会委員会の要求を満たし、ことに医療給付の問題などにつきましては、国民健康保険の医療給付では一割五分までの予算をおとりになつた大臣の功績は、今の政治機構の中においては功労を多として私は一応感謝をいたしたいと存ずるのであります。ことに先ほど、筋が通らなかつた問題に対して筋を通したとおつしやいましたが、まじめに委員諸公も御検討願いたいのは、どうしてもできなかつた過去七年間の母子対策、それから児童福祉施設などが、一応この厚生予算の中に組めたということは、われわれ委員会としても吉田内閣のもとに天下をとれない状況においては、喜ばなければならない現実ではないかと思うのでありまして、この辺であきらめて妥協するよりしかたがないけれども、厚生大臣山縣さん自身は特別の御奮闘をなさつたということを認めたいと思うのであります。しかしこれは自由党というよりは、むしろ野党なり与論の要求がなかなかさびしゆうございましたから、これが予算をとつて差上げた結果になつたのではないかという節もあるということも、大いに認めていただきたいと思うのであります。  そこで私は厚生大臣にお伺いいたしたいのでございますが、さてこの国民健康保険の医療給付一割五分と整備費の四億八千万円を御負担になつて、一応整備の途上に乗るわけでございますが、そのあとの運営なり、それから赤字の克服なり、それから国民健康保険が、御存じの通り、一万千町村あるにもかかわらず、まだ五千百くらいしかしいておらない。従つて三千四百五十万の国民がまだ国民健康保険制度の恩典に浴さないという状態でありますが、これを義務制に持つてつて、そして来年度からはもつと国庫の医療給付負担をして、ほんとうに国民全体の国民医療整備をやるおつもりがあるかどうか、ことしきりで来年はまたさらに元通りにお捨てになるつもりか、その辺の御計画を承つておかないと、国民健康保険の見通しは立たないと思います。  それから次にもう一つお伺いいたしたいのは、母子福祉対策でございますが、わが党は少くとも五十億を要求いたしましたが、はなはだ残念なことには、ここに七億四千七百六十三万円となつておりますが、これは来年度どういう計画をお持ちになつてここで妥協なされたか。  それと同和対策費でありますが、少くとも厚生省では一億御要求になつたと聞いておるのでありますが、今日の御報告では一千二百四十七万円、これはなぜこんなに少くなつたか、しかも部落問題がこれで解決するとお思いになつておるのか、大臣の今後の御計画を伺いたいと思います。  それからもう一つお伺いしたいのは、私がいつも厚生省の医務局にまことににくいことを申し上げるのでありますが、国立病院の地方移譲にからむ問題でございます。七十三の国立病院経営するために五十八億の予算を特別会計に組んでおいでになりますが、地方移譲についての大臣の御見解はいまだかつて承つたことがないのでございます。この際はつきりさせていただきたいと思います。
  42. 山縣勝見

    山縣国務大臣 ただいま堤先生から、国民健康保険の問題に関連いたしまして、昭和二十八年度予算編成にあたりまして、私が微力をいたしました点に対しておほめの言葉がありましたが、私はこれが与党の皆さんからではなく、野党の堤先生からいただきましたことに対して感謝いたします。先ほど来社会保障制度に対していろいろお話が出たのでありますが、これは党としての立場が違いますし、私は与党の大臣でありますが、いろいろ御批判なりお話を拝承いたしておりまして、私は身を切られるよりつらいのであります。決して慈善事業として現在社会保障関係を考えておるのではなく、現在の困難な国家財政のもとにおきまして、慈善事業だけをしたらいいということならばきわめてやさしいのでありますが、そうではなくて、社会保障に対して筋を通したいということで努力いたしましたので、幸い堤先生がその点を御認識願つたことに対して、満腔の敬意を表したいと思います。  国保の問題に対しては、来年度といいますか、おそらく今から申しますと再来年度ということでありましようが、昭和二十九年度においてまたもう一度元にもどるのではないかということであります。さようにいたしたいと思つて給付に対する国庫負担という点を私は努力をいたしたわけでございますが、大蔵省は最後まで、金は多少出してもいい、但し給付費に対する国庫負担という形は絶対困るということでございまして、それに対してはいろいろ話もあるのでありますけれども、実はそれで最後までもみまして、そしてこちらの申します通り、給付費に対する国庫負担といたしまして、私が筋を通したというのはその点でございますが、今後皆さんとともにこの国民医療の中核をなします社会保険の重要な面に対して、ぜひともこの筋を通した面を、今後とも整備拡充いたしたいと考えております。  それから母子福祉対策に対して、額が少いというお話でありますが、これもまた国家財政という言葉を用いますとお叱りを受けるかもしれませんけれども、昨年の補正予算において五億円の母子福祉資金を一応予算的にとりまして、今回は皆さんの手によつてできました法律に基いて、母子福祉資金予算をとりました。堤先生は少いとおつしやるし、また野党の皆さんにとりましては少いかもしれませんけれども、現在全国の母子関係の団体の代表者がお見えになつてのお話では、この困難な国家財政のもとにおいてはよくやつてくれたというおほめの言葉を、ほとんど十人が十人いただいておるのであります。これに対しましては、賢明な堤先生は御了承されることと思います。  同和事業でありますが、これにつきましてもお説の通りであります。できるだけもつと予算をとりたいと思つて奮闘努力いたしましたが、前年度において道のついておりません、予算零の問題が約十指以上に上るのであります。それを今回の予算閣議において、私は全部筋を通したのであります。そういたしますと、やはりこの同和事業にも筋を通したい。母子対策にも通したい。あるいは協同組合にも通したい。こうなると、全部国家予算を厚生予算に持つて行くわけにも参りませんので、一応全部筋を通したのであります。昨年度零の予算をそのまま零に置きますならば、そのお言葉をちようだいいたしますけれども、全部筋を通します関係上、やむを得ず本年度は同和事業に対しては、この程度の予算に終りましたが、これは御了承願います。ことに隣保館については、大蔵省は最後まで反対をいたしましたが、これは閣議においても特に主張いたしてとつたのでありますから、この点も御了承願いたいと思います。  なお国立病院の移譲の問題につきましては、これは一応方針としては、政府の方針はきまつておりますけれども、これはそう無理をいたして——要は医療体系の整備ということでございますから、どこまでも無理にいたすということは、私としては考えておりません。但し政府の方針は一応きまつておりますので、その方針に基いて、今後無理のない程度でいたして、もしどうしてもいけないというときには、新たなる状況に対して新たなる見地で検討いたしたい、かように考えておリます、
  43. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 もう一つ大臣に伺います。これは改進党の方、それから社会党の左派の方から御発言がございましたが、恩給復活の問題でございます。あの恩給復活の四百五十億の予算内容を私たちが検討してみますと、少くとも九〇%以上は戦傷病者戦没者遺族等の援護に充てられるところの金でございます。しかし政府が恩給復活という名目で予算をお組みになりますと、国民に与えるところの感じは、非常に内容と異なつたものを投げかけるということを、大臣御認識になつておるかどうかしりませんが、私は吉田内閣自体にとつても、これは非常に不利ではないかと思うのであります。また意図するところがあつて、わざとああいう名目をお使いになつているのかもしれませんけれども、少くとも先ほど高橋委員から御発言がありましたように、私たちが前につくりました戦傷病者戦没者遺族等援護法というものが二十七年度限りの暫定的なものであつて、二十八年度恩給法特例審議会の答申をまつて善処するというところの、政府の前言通り、公約を実現したものとして二十八年度予算に組まれるのなら、かつての恩給復活というところの言葉でもつて打出される性格のものではなく、これはだれが見ましても遺族等の援護に充てられる金、または国家が保障を行うところの生活保障のようなものであるというようなことが考えられるのでございまして、私は少くともこれは恩給法の一部改正にあらずして、援護法の改正または戦傷病者戦没者遺族等に関する年金法案として特別の立法による処置がなされて、そしてかつての恩給権を持たれる既得権のある方々に対し、戦争犠牲の方々に対して、生活の保障をする建前でこれをやるのだというふうにお打出しになつた方が、国会での審議の過程におきましても、ほんとうに意を尽しますし、また国民感情ともマツチいたしますし、四百五十億の金と残り五十億と合せて五百億が、ほんとうに、内容も形の上においても、真に国民受入れられるものとして、私は生きると思うのでありますが、厚生大臣は今後閣議においてこういう点を勘案されまして、でき得るならば特別立法として、この援護法の改正として、この委員会法律が上程されるように努力されるのが、私はほんとうではないかと思うのでありますが、今後こういう努力を試みられるところの御意思がありやなしや。そうなさつた方が吉田自由党内閣のためにも確かに得であるということを申し上げておきたい。得といつてはおかしいですけれども、これは確かに身のためであると思うのです。それをあえて恩給復活という言葉をお使いになるならば、保安庁並びに保安隊の中で、特に指導的な立場に復活された旧軍人に対して、何か報いなければならぬものが吉田内閣にあるから、こうしたものが予算の中に恩給復活としてうたわれるのだという感じを国民に与えていることはいなめない。これは厚生大臣が今後努力されるべきものだと思いますので、私の意見をまぜて厚生大臣の御意思を伺うわけであります。どうでございましようか。
  44. 山縣勝見

    山縣国務大臣 いろいろ厚生大臣のお立場を御心配くだすつての御発言でございますが、今回の問題は、やはり政府が一応閣議等においても決定いたしました軍人恩給復活という線で処理をいたすということに私は同意いた、しておりますし、またそれがよかろうと思います。従つて閣議においてただいまのお話のような発言をいたします意思は、ただいま持つておりません。ただ私は、そう申しますることの裏の裏として、遺族の方々援護でありますとか、あるいは留守家族方々に対します援護を等閑視するということには絶対に相ならぬのであります。これは重ねて私は申し上げておきます。これに対しまして、私は最善の努力をいたして参つておりますし、今後もいたしたい。ただ、ただいまお話の通り、今回の軍人恩給復活に伴つて、大部分戦没者等の、従来援護法対象になつておつた部面が多いであろうから、むしろ社会保障的にやつた方がよかろうというお話でございますけれども、国民の声というものは、いろいろ皆さんのお耳に入つております声もあり、またその他の声もあるので、むしろその他の声が多いのじやないかと思うのであります。今回軍人恩給復活しますのは、先ほどお話のような慈善的なものではなく、当然の権利として、軍人恩給の範疇のもとに置いてもらいたいという声が多いのであります。それはいずれにいたしましても、ただいまお尋ねの点は、軍人恩給復活をこの際やめて、そしていわゆる援護として軍人恩給全体を考えたらどうかということでありますが、政府といたしまして一応閣議で決定いたしましたことに同意をいたしましたので、ただいまの私の考え方におきましては、お説のような線において閣議で発言をいたして参りますことは考えておりません。
  45. 長谷川保

    長谷川(保)委員 時間がありませんから簡単に伺いたいと思うのですが、全国の社会福祉事業大会におきまして、すでに数回にわたりまして社会福祉事業金庫の設置を要望して決議をいたしております。今日全国社会福祉事業が、一方におきましては最低基準の問題とか、一方におきましては補助費等の不十分から、相当困難な経営をいたしております。ことに施設におきましては、施設をつくります資金がなくて困つております。共同募金のごときは、これに対してもちろんきわめて不十分なものでありましよう。先般もララの日本駐在の中心人物でありましたアーメスト・バツト氏が日本の社会事業を見たわけでありますが、あまりにひどいのにびつくりしておりました。私は、厚生省社会福祉事業金庫について今後どういう考えを持つていられるか、大臣のお考えを承りたいと思います。  第二点といたしましては、全国の主として療養所における未復員患者の手当の問題、これはすでにその多くの者が十年余にわたりまして、戦地から病人として帰つて参られまして、いまだ入院しておる。そのうちの極貧者に対しましては生活扶助が行われておるようでありますけれども、そうでない方々に対しましては、何ら生活に要する手当が出ておりません。そのために全国の療養所から当厚生常任委員会に対しましても、また委員長あてにも血書までして、何とかしてくれと言うておるのであります。これはすでに十年余にわたりまして病気、ことに主として結核患者として入院しておりまして家庭からその生活に必要な小づかいをもらうということは不可能であります。この人たちがどんなに悲しい思いで生活をしておるか、このことは十分おわかりのことと思います。今回この未復員者給与法及び特別未復帰還者給与法を合せまして、未帰還者留守家族援護法をつくられるということでありますけれども、この未復員患者に対しまする生活費の給与、これに対して大臣はどういうようなお考えを持つていられるか承りたいのであります。  第三点といたしましては、今日ありまする国立病院及び国立療養所の現状であります。これは当委員会におきましてもしばしば問題とされておりますが、実にさんたんたるものであります。私は先般日本の結核のいわばオーソリテイ的な病院でありますところの清瀬病院を拝見いたしました。あれだけの権威を持ち医療技術を持つておられる病院が、本館といい、研究室といい、手術室といい、あるいは病室といい、実にさんたんたるものであります。大臣はごらんになつたことがあるかどうか。こらんになつたことがなければ、一度ごらんになる必要がある。ずいぶんひどいものであります。ある国立療養所におきましては、廊下の板が抜けまして、そうして盲腸炎の患者が運搬車からほうり出されたというようなことさえあるのであります。この点についての整備費が、先ほど拝見いたしますと、どうもあまりないように思われる。こういうものをぜひひとつお考えになつていただかなければなりませんが、その点についてどういうような予算を、お持ちであるか、またお考えであるか、今後の方針を承りたいのであります。  第四点といたしましては、国立病院国立療養所といわず、今日わが国医療機関のうちで非常な弱点は、看護婦の数の少いことであります。これはこの前看護婦課長に来ていただきまして実情を承りましたが、看護婦課長はどうも実情を十分把握しておらないようであります。至急看護婦法の改正その他の処置をいたしまして、看護婦の早急な増員をはからなければ、各国立療養所及び全般の医療機関は困ると思いますが、この点について大臣のお考えをひとつ承りたいのであります。
  46. 山縣勝見

    山縣国務大臣 ただいま御質問ございました四点についてお答えを申し上げたいと思います。第一点の社会福祉事業関係に関して、金融の道を講じて金庫を設けることはどうか。実は単に社会福祉事業だけでございませんで、これは各事業の面におきましても、あるいは非生産的な事業の面におきましても、すべての隘路がこの金融にありまして、たとえば先ほど御説明いたして、また御質問ございました医療給付につきましても、同じような問題がございます。従つてこの社会福祉事業においても、いろいろ運営上、金融上、お困りのことも承知いたしておるのであります。ただ金庫を設けるということは、実は私も他の面において相当携わつたことがございますけれども、なかなか一つの金庫を設けることは問題もございまして、今回も医療金融金庫を設けるということが当初の考えでございましたが、それもできない。できないのはけしからぬということになればまた別の問題でございますが、この特別の金庫を設けるということはいろいろ問題もあるのでありますが、おそらくこれは金庫を設けるということじやなくして、社会福祉事業に対して何か金融の道を講じることはどうであろうかということが重点であろうと思いますが、これにつきましては、今ただちに御返答はちよつと困難な事情があるということは申し上げることができると思いますけれども、なお今後も研究いたして参りたいと思います。  なお入院中の未復員者の生活費につきましても、お話の通り、いろいろお困りの方もございましようと思います。現在白衣の軍人の方々に対しましても、何とかしてああいうふうな街頭に出ていただくというようなことのないようにいたしたいと思つて、心を痛めておるのであります。ただ入院中は未復員者給与法によつて一応の措置をいたしておつて、その程度でごしんぼう願つておるので、従つて生活費等に対して別個にお金を出すというふうな措置が現在おそらくできておらないと思うのでございますが、この点は今後よく実情も見て考えて参りたいと思います。現在におきましては、なかなか予算上困難な点がございまして、皆さんに不満足を与えておるのじやないかと思うのであります。  それから国立病院施設の改善につきましては、実はただいまお話の点は、現実においては、私は先般京都に参りまして、宇多野の結核療養所を見ましたが、宇多野はいろいろまだ不備の点もございまするが、一応病床等も整備し、病棟も整備いたし、手術いたしておるところも私は見て参りましたが、ただいまお話のような点は、宇多野においてはそう見なかつた。(「宇多野は特等ですよ。」と呼ぶ者あり)それでただいまお話の東京のことでございましたが、これも一ぺんそのうち見たいと思います。ただ、しかしお話の通り、今国立病院はいろいろ不備の点もございましようと思います。それについては実は先ほど堤先生から御質問がございましたから申し上げたいと思いますが、国立病院を府県に移譲いたして行きたいというのも、やはり医療体系を整備し、府県もできるだけ力を添えてやつて行きたい。最近はとにかく国立病院の移譲は各地方ともできるだけやめてくれ、やめてくれという声ばかりでありまして、そうしますと、国立病院は不完全なものが残るということに相なり、そういうことも関連いたしますから、やはり適当な移譲はお認め願つておいてくれ、おいてくれという声だけはあまり出ませんようにいたして、両々相まつて国立病院整備をはかりたいと考えておるのであります。  第四の看護婦の点は、御説の通りでありまして、私も実は心配いたしております。今後とも御趣旨に沿うようにできるだけ考えて参りたいと思つております。
  47. 長谷川保

    長谷川(保)委員 今の社会福祉事業の金融の問題でありますが、これは銀行も国民金融公庫も中小企業の関係も全然融資をしないのであります。つまり社会福祉事業というのは、金を返さなかつたときに差押えをすることができない。そういうことをいたしますればたいへんなことになりますから、そういう意味で金融機関は絶対にこれに金融をしないといつてよろしいのであります。こういう実情でありますから、非常に困つております。万やむを得なければ高利を借りるということになり、大事な保護費その他がその利子にとられておるのであります。こういう現状を大臣は十分認識していただき、これにつきまして、すでに全国社会福祉事業大会において、数回にわたつて社会福祉事業金庫をつくつてくれという決議がなされておるのでありますから、十分な御配慮をいただきたいのであります。  それから今の未復員患者の問題でありますが、これはひとつ十分現地をごらんになつていただいて、実情を聞いていただきたい。平野委員長にもこの前の十二月に、何とかしてくれという血書が来ておるくらいでありまして、決して今言うようなものではありませんし、全体といたしまして、そうたくさんな額ではないと私は思う。そういうような戦地からまだ家へ帰つておらない者には、給与法では医療関係だけは出ておりますけれども、入院患者の生活費は出ておらないのであります。(「全国で五千人だ」と呼ぶ者あり)でありますから、その片手落ちになつております気の毒な未復員患者に対しまして、わずかなことであると思いますから、特別なお考えをいただいて、できますならば、今回の新しい法律のどこかにそういうことを入れるようなふうに考えていただきたいのであります。  それから国立病院現状は、清瀬病院は近くでありますから、ぜひともこれはごらんいただきたい。日本の結核の権威の病院であります。私はその実情をよく知つておりますけれども、どうかぜひとも一度見ていただきたい。そうして日本の結核の医療対策の推進のためにも、かかる病院は完全な設備のものにしていただきたい。  その他、先ほど同僚議員からたびたび話が出ました予算の問題でありますが、この予算を拝見いたしまして、二十五億九千四百八十八万円の減少であるけれども、一方において百四十四億円の軍人恩給によりますところの援護関係の移管がございますから、差引百二十億円ばかりふえるわけでありますが、しかし一方国民健康保険等の給付のあれがございますし、新しいそういうものが出ておりますから、私は、物価の値上りを見ますと、実は厚生行政関係予算というものは退却していると思う。それでざつと今の百四十四億の問題と二十五億円の減少と差引きまして、百二十億円ばかりふえるということになりますが、物価の二割何分という値上りを見ますと、昨年の予算編成のときから見まして、結局こちらの方で一割七分くらいしかふえておらないということになりますから、実際におきましては、目の子勘定でありますが、減少ということになる。先ほど同僚議員からたびたび強い御意見がありましたが、厚生大臣におかれましても、どうか第十五国会の初めに私がお願いいたしましたように、十分なる御努力と御尽力をいただきたいということをお願いいたしまして、きようの私の質疑を打切ります。
  48. 平野三郎

    平野委員長 これにて大臣に対する質疑は終了いたしました。  明日は午前十時より開会することとして、本日はこれにて散会いたします。     午後零時四十分散会