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1953-02-11 第15回国会 衆議院 決算委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年二月十一日(水曜日)     午後一時三十三分開議  出席委員    委員長 田中 彰治君    理事 迫水 久常君 理事 永田 良吉君    理事 古井 喜實君 理事 吉田 賢一君       田口長治郎君    松野 頼三君       山田 彌一君    河野 金昇君       鈴木 正吾君    石野 久男君  出席政府委員         検     事         (大臣官房経理         部長)     天野 武一君         検     事         (刑事局長)  岡原 昌男君  委員外出席者         会計検査院長  佐藤  基君         専  門  員 大久保忠文君         専  門  員 岡林 清英君     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十五年度一般会計歳入歳出決算昭和二  十五年度特別会計歳入歳出決算及び昭和二十五  年度政府関係機関収入支出決算     —————————————
  2. 田中彰治

    田中委員長 これより決算委員会を開会いたします。  本日は佐藤会計検査院長出席いたされましたので、予定になつております法務省所管の審議に先だちまして、この際会計検費院機構その地検査制度根本方針会計検査上の運用等に関して忌憚なき御意見を述べられるようお願いいたしたいと思います。また委員各位におかれましても、特に検査院長出席願つた次第でありますから、質疑もなるべく総括的に発言されることを特に切望いたしておきます。
  3. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 会計検査院長にお尋ね申したいと思いますのは、私ども委員会会計検査院から二十五年度の決算報告を受取りまして、それに記載せられてありまする数字報告が、あらゆる観点からいたしまして非常に巨大なのに実は驚いておる次第であります。あなたの方から出ておるこの概要説明によりますると、昭和二十五年度の一般会計政府関係機関特別会計も含んでおるものと思いますが、予算不正執行あるいは不当支払い過誤等々批難されました件数が千百十三件に上つております。そして裁判所初めその他各省の、最終的には批難決定には至つておりませんけれども、それに近い問題として指摘されましたのは、資料によりますと厖大数字に上つております。その後漸減の傾向でもあるかと思いますと、今朝朝日新聞に発表されておりまする記事によりますと、二十六年度の決算検査におきまして、不当として批難されておる件が千百九十八件。そうしますと二十五年度よりも二十六年度の方が件数においてふえておるわけであります。こういうようなわけでありますので、これはやはり根本的に十分に国会として審査をいたしまして、そのよつて来るところはどこにあるか、またこれに対する検査院において取扱つて行かれた道がどういう状況であるか、対策についてはどうか、こういつたところをいろいろ検討しなければなるまいと考えております。  ついては会計検査院日本政府財政の全部の予算執行について検査をしておられますので、ひとつ検査院機構なり、あるいは検査を実行せられる方針なり、また具体的な方法なり、そういつたことについて大綱を御説明願いたいと思います。
  4. 佐藤基

    佐藤会計検査院説明員 検査院機構をまず申し上げますが、検査院機構は、憲法改正に伴いまして相当大幅な改正を受けたのであります。現在におきましては、いわゆる意思の決定機関と申しますか、検査官会議、それから検査実施機関として事務総局、こういう二つからできております。そうして働く場合には事務総局検査官会議の指揮、監督を受けまして、実地に検査に当る。その検査の結果、ことに不当事項等については、国会報告する関係もありますので、その結果を検査官会議にかけまして、そこで不当事項として国会報告する。すなわちけさ新聞にありました二十六年度の報告は、まだお手元に参つておらぬかもしれませんが、私はきのうもらつたのでありまして、すぐお手元に配られると思いますが、そういう検査官会議の議決を経て報告する、こういう大体の機構であります。  それから検査実施につきましては、検査院の使命といたしましては、国または政府関係機関会計経理の適正を期し、是正をはかるということを検査院法に書いてありまして、その院法の精神に基いて検査をしておるのであります。そこで検査をするにあたりましては、いわゆる検査報告に出る不当事項摘発ということもやつておりますけれども、それのみではなくて、いかにすれば国、政府関係機関会計がよくなるか、ことに現在におきましては、国民は非常に重い税金を負担しておるのでありますから、その税金の行方というものが法令なり予算なりに反するとか、あるいはまたその使用が効率的でない、効果的でないということは、国民に対してまことに相済まぬ次第であります。そこでそういうことがないようにと、過去の悪いことはもちろん摘発しますけれども、そのほかに将来に向つて、そういうふうな不当なことが起らぬようにという方針、それにつきましては、検査行つた場合に、いわゆる経理の指導をする、あるいはまた向うから経理運営上疑義等がある場合には、聞いて来ますので、それに親切に答えてやる、こういう方法によりまして一日も早く経理を完全ないいものにして、国民税金が国家的の目的に十分に使われるようにという方針でやつておるのであります。  しかしながらただいま御指摘になりましたように、私は実は昭和二十二年に現在の地位就任したのでありますが、二十二年以来、不当事項の数がだんだんふえまして、二十二年が三百余り、二十三年が六百余り、二十四年が七百五十、二十五年が今お手元にお配1りしてありますが、千百十三件、二十六年が千百九十八件、こういうふうにだんだんふえておるのであります。これはまことに遺憾にたえないのであります。そこでこの不当事項をどうすれば減すことができるかということにつきまして、最近と申しますか、去年あるいはおととしといつた方がいいかもしれませんが、どうしてこういう不当事項が起るかという原因調査に着手しました。まだその点はそれほど十分に行つておりませんが、原因を突きとめまして、それによつて政府首脳者に警告を発して、再びしないようにということを言つておるのであります。と申しますのは、従来におきましては、個々不当事項摘発については相当つておると思いますけれども、それは個々事項だけで済んでしまう場合が多い。しかもそれを扱う人間というのは、いわゆる会計事務職員でありまして、比較的に地位の低いものであります。そこで各省幹部粛正と申しますか、幹部の方からそういう経理について関心を持つて、よくしようという気持を起させるようにという意味におきまして、だんだん原因調査ということに力を入れておるのであります。しかしながらこれはなかなかむずかしいことでありまして、われわれの方の職員も一生懸命やつておりますけれども、そちらの方に力を注ぐ余地がまだ相当あると思つております。
  5. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 その批難件数がだんだんとふえておりますために、血税による国民の大事な金を預つておる政府のあるいは不正とか不当とか詐欺とか、犯罪的な行為のみならず、いろいろなあやまち等によりまして、二十五年度には総計百四十九億円というものが批難金額として集計されておるのであります。この金額件数と合せてまことに見のがすべからざる厖大金額であろうと思います。一般会計が本年九千六百億円というようなことをとなえられておりまするけれども、百億円以上の不当な金銭の動き、ないしは計算の仕方があるというようなことは、この面から見ましても、これは根本にメスを入れるということをしなければ、財政というものは国民のため、国家のために筋の通つた運用は、まつたくできておらぬということを物語つておると思うのであります。そこで金額の面からひとつ院長の御所見を述べていただきたいと思います。
  6. 佐藤基

    佐藤会計検査院説明員 金額の面からと申しますと、どういう御質問趣旨かちよつと了解しかねるのでありますが……。
  7. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 少し言葉が足りませんでしたが、これほど厖大な——これは全部が損害とは申しませんけれども、ともかく予算執行が非常に不当に行われたという数字の現われであります。究極するところ会計検査院数字を対象にしてお扱いになつておりますが、件数のみならず、その内容である金額に対しましては相当感想がなければなるまいと思いますので、その御感想、御所見を聞きたい。
  8. 佐藤基

    佐藤会計検査院説明員 お話通り、二十五年度の検査におきましては、約百五十億の批難金額があります。百五十億と申しますと非常に大きい金額であります。もちろんそのすべてがいわゆる告訴なつたかというと、これは必ずしもそうではありません。告訴がそのうちのどのくらいになりますか、いずれにいたしましても、今年でいえば一般会計九千六百億ですか、それに近い前年度の数字でありますが、その予算の中に百五十億の不当な批難事項が起るということは容易ならぬことであります。今御質問通りでありまして、私も同感なのであります。これをいかにして減すかということを一生懸命やつておるのでありますけれども、これは何も私の方だけでできることじやないのでありまして、政府の方でも十分協力していただきたいし、また決算委員会におきましては、十分政府を鞭撻していただきたいのであります。私の方といたしましては要するにこういうことがあつたならば、その関係者に対しまして責任を問うという方法政府の方である程度励行していただきたいという希望を持つております。懲戒等制度につきましては、公務員の身分についての権限というものは各省の長が持つておる。そこでわれわれの方におきましては、検査院法初めその他の法律によりまして、懲戒要求をしておるのでありますが、相当大きな事項でなければ懲戒要求は認めておらないのであります。それに達しない事項につきましては、適当な方法で注意を発する、あるいはまた検査報告に出るということでありますから、その関係者に対しては政府でも相当つておられるとは思いますけれども、さらにもう少し厳重に責任を追究してもらいたいと思つております。  それからもう一つは先ほど申しましたように、ある不当事項が生じたならば、どういうわけで生じたかその原因を探求しまして、そういうことがないように、全般に注意してもらう。各地方庁にも徹底するように注意してもらう。そうしますと、そういうことが減つて来る、うまく行けばなくなる、こういう方法によりまして、国民税金が適当に使われて行くように望んでおるのであります。
  9. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 院長昭和二十二年からただいまの地位に御就任になつており、年々批難事項件数が増加して行つて、百五十億円に近いところの批難金額ということになつておりますので、その原因調査に重点を置いていろいろと御配慮になつておりますことは、しごくもつともなことでありますが、しかし検査をなさることが唯一最高の職責であり、また日本財政審査において憲法上特別の地位が与えられた会計検査院でありますので、すでに五年もたつてこれから原因調査するというのでは、どうも国会としては少し合点が行きにくいのであります。現にわれわれは世上見ておりますと、国会が始まりましたら都道府県知事以下、全国から陳情団が殺到しております。旅館という旅館、一流の料亭などは、そういつた役人の宴会、集会のうずが巻いております。こういうところにこの不正、不当の起つて来る一つ原因があるのでないかとわれわれは見ておるのであります。これはちよつと夜町をお歩きになつたらすぐわかることでありますので、その原因について相当こういう事情というものはおつかみになつてしかるべきだと思うのでございますが、いかがなものでございましよう。
  10. 佐藤基

    佐藤会計検査院説明員 宴会関係はそういつてはちよつと責任逃れになるかもしれませんが、むしろ潰職関係の問題ではないかと思うのでございます。私の方といたしましては、会計官吏職務犯罪ということはやつておりますけれども、一般的な涜職の問題は私の方の所管ではありませんし、また今やつてもおりません。そういう問題にも関連があるのではないかと思います。なお先ほどもう少し説明すればよかつたのでございますが、この検査上の不当事項がふえて来るということは、実は私は非常にふしぎに思つておるのでございます。でありますが、内部その他で研究しますと、戦争直後は、これは何も公務員のみでなく、世の中全体だと思いますが、非常に綱紀が乱れたといいますか、よくないことがあつたのであります。それがだんだん世の中の秩序が整いまして、そういう不在事件というものはだんだん減つておる、これは私は言えるのではないかと思います。それで客観的にはむしろ不当事項は減つておるのじやないかと思う。それにもかかわらずこういうふうにふえて来るというのは、どういうわけかど申しますと、先ほど申しましたように、検査院機構が、憲法改正によりまして非常に厖大になつたのであります。従来の三百人余りのものが千二百人、約四倍に人がふえました。ところが検査というものは、御承知の通り相当エキスパートでなければやれないのです。短期間に相当検査をせざるを得ないような立場にありますので、検査能力というものが大事なのでありますが、急に人がふえたので、いわゆるしろうとがふえた。これらの者を一人前にすることが、私の就任当時においての一番大きな問題だつたのです。そこで講習とかゼミナールとかいろいろな方法を講じまして、検査院職員検査能力向上ということをはかつたのであります。その結果といたしまして、検査能力がふえたから不当事項の数がふえたということも見のがせないのであります。ことに過去五年の検査報告を御比較になるとおわかりになると思いますが、相当検査が行届いて来たというふうに思つております。だからなお一層この検査能力を高めることに、一ぺんに大きなところを望んでもなかなかできないので、だんだんにやつて、それでその原因に力を入れるということも、去年あるいはおととしあたりから相当力を入れておりますので、ことしあたり相当結果が出ると思つておりますが、遺憾ながら力及ばず、なかなか検査能力向上ということが一朝一夕にできない。これは非常に相済まぬ話でありますが、しかしながらどんどん進んでおりますから、決して悲観はしておりません上、そのうちに十分に御期待に沿えるようになると思つております。
  11. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 私どもは、あなたの方は検察庁でないのですから、法律的な不正を発見なさるということが主眼でないということもよく存じております。しかし百敷十億円のこの不当事項のうちには相当悪質のものがあることは申し上げるまでもありません。たとえばこの五二号の、特別調達庁が横浜において輸送を委託しましたその運送代金を、一つ会社に四億円も払つております。その輸送を受けた会社が船の一ぱいも持つておらぬ。そのような会社に一年に四億円も運賃を支払つてしかもあなたの方の検査院は一億二千万円以上は支払う必要がなかつたというような数字が出ております。こういう悪質なものもありますので、ここにやはり共通した、見のがすことのできない大きな原因もしくは重要ないろいろな原因がすでに指摘されておらねばならないのではないか、こういうふうに私どもは思いますので、これはやはり今後の検査執行の上におきましても、きわめて重大な前提になる資料だろうと思います。  そこで重ねてその点伺つておきたいのですが、なぜこんなに厖大金額の、役所による、政府による多数の不正、不当の事件が出て来るのかということについて院長相当統一した、原因の御判断はまだないのでしようか。その辺をひとつ率直にこの委員会へぶちまけてもらいたいと思うのです。われわれも今後の対策の問題につきましては、御協議的にいろいろとあなたの御意見も聞いてみたいと思つておりますが、その辺はいかがなものでございましようか。
  12. 佐藤基

    佐藤会計検査院説明員 ごもつともなお話でして、私の方といたしましても、そうい原因はいろいろあると思いますが、これは結局公務員素質の問題にもよるのであります。終戦直後に採用された若い人々のうちには、往々心得違いの者もございまして、そういうふうないわゆる法規を軽視するということと、それからまたこれは主として若い職員に多いのでありますが、いわゆる遊興費に窮して悪いことをする、これはふしぎな現象でありまして、官吏不正行為を見ますと二十台が大部分なんです。三十、四十の人でもたまにはありますけれども、これは非常に少い。ことに家計が苦しいから悪いことをしたというのはごく少い。大部分はいわゆる遊興費に窮していた若い人間に多いのでございます。これは結局綱紀粛正といいますか、そちらの方へうんと力を入れて参りたいというふうに考えております。
  13. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 あなたの方で資料として出しておられるこの決算検査報告によつたものは、これは大体いつ行くぞというふうに予告して調査に行かれたものとわれわれ判断しておりますが、そこで発見せられないで済んで、隠れておる数は相当なものに上つておるのではないかと推定しております。もしこれを予告せずして各方面抜打ち検査に行くという方法をとりましたら、これは何層倍になるのではないかと思つたりするのですが、そういうふうに予告せずに抜打ち調査をやるような場合には、件数並びに金額においてどのくらいの数字が出るでしようか、その辺について何かひとつ御所見を承りたいと思います。
  14. 佐藤基

    佐藤会計検査院説明員 今のお話抜打ち検査の件でありますが、この委員会におきましてもそういう御意見があるということを伺つたのでありますが、私も実はしごく同感なのであります。昔の検査院制度によりますと、抜打ち検査というものは認められないで、必ず予告して検査するということになつてつたのであります。そこで私が就任してからも、要するに検査にかかつてからでありますが、予告をして検査をしておつたのであります。予告をして検査をするのはいいけれども、どうして抜打ち検査をしないかということに私は疑問を持ちまして、昭和二十五年と思いますが、それからは抜打ち検査もやれということにしたのであります。そうして検査院の方からも、検査を受ける方の各省等については爾後抜打ち検査をするということを、まあ正々堂々とやつた方がいいと思いまして、知らしてあります。それによりまして抜打ち検査をそれ以来やつておるのでありますけれども、実際の数は最近調べますと、私の希望するほどまだやつておらぬのであります。少し抜打ち検査が足りないような気がするのであります。そこでどうして足らぬかという話を聞きますと、これは少し検査に行く者のかつてかもしれませんが、抜打ち検査をすると向うが全然無準備である、そこでいろいろな検査に必要な資料等を提出させるとかあるいはまた実際やつた人に、どうしてやつたかということを聞かなければならぬ場合に、抜打ちに行くとその人が出張しておらなかつたとか、そういう検査上の不便が相当あるのです。ですからどうしても抜打ち検査ということになるとちよつとめんどうだという感じを持つのじやないかと思いますが、しかしながら抜打ち検査でもたとえば、ことに不正事件があるという投書がる、またわれわれの方で書面検査によりまして、どうもあやしい、何か不正があるのじやないかというような場合であるとか、一体現金が幾らあるか、現在高を押えるとか、あるいは物品がどうなつているか、その現状を押える、そういうものについては抜打ち検査がいいことは明瞭でありまして、そういうものについてはこれからさらに抜打ち検査をふやして行きたいと思つております。しかしながら抜打ち検査でも、たとえばあらかじめ通告しておいても、修正するといいますか、一応書類を偽造といつて言葉は少し悪いのですが、適当に直すということをしても直し切れない。たとえば能率がどういうふうに進んでいるとか、どういう効果が上つているかというようなことは、二週間、三週間前に通告しても何ともできないので、そういうものについてはむしろ通告して行つて検査のしやすいような状態にしてもらつて検査した方がいい、こういうふうに思つておるのであります。従つて抜打ち検査に適する場合があり、抜打ち検査でない方がいいじやないかという場合、それからどつちでもいいという場合があります。いずれにいたしましても、最近調べたところによりましては、抜打ち検査の数が少し少い、だからふやしてくれというので、最近におきましては抜打検査相当よけいやつておるはずであります。
  15. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 私のお尋ねしましたのは、予告して行つた場合にこれだけ多数の数額が出ましたので、抜打ち検査をやつた場合には相当大きく出るのではないか。そとで隠れた数はどのくらいあるというお見込みか、この点をお伺いしたのです。
  16. 佐藤基

    佐藤会計検査院説明員 その点はちよつとわかりかねるのですが、相当あると思いますけれども予告検査つて大体年に検査箇所の四分の一くらいしかやつておりませんので、予告検査のできない部分があるし、また抜打検査をすればどのくらい件数がふえるかと言われると、ちよつとこれは見当がつきません。
  17. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 それならこれは蛇の道はへびですが、大体の勘でもよろしゆうございます。われわれ参考にしたいのですが、隠れた批難件数、隠れた批難金額がどのくらいだろうというような想像はできるでしよう。その辺をひとつ参考までにあなたの御感想を聞かしてもらいたい。
  18. 佐藤基

    佐藤会計検査院説明員 それは結局いろいろな方法があると思いますが、一応の判断の材料となるものは、一体検査をそれではどのくらいやつておるかという問題、それは検査箇所は一万ちよつと越しておりますけれども、その約四分の一検査していますから、四分の三は検査をしておらない。だから簡単に、四分の一検査してこれだけ出るのだから、全体ではあと四分の三残つておりますから、もう三倍ふえるのではないかということは言えます。これは抜打ち関係ありません。  それから次の問題は、抜打ち検査をもう少し増したらどうかという問題でありますが、これは幾らという算定の根拠はちよつとつかめないのであります。
  19. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 そうすると今伺つたのは、この検査は四分の一の数量を調べてある。それで二十五年千百十二件、金額百五十億円出ているが、まだ四分の三が残つておるから、四分の二を検査するならば、この三倍は出るだろうということになる。そうすると全額にいたしまして総計六百億円、件数にいたしまして総計四千件、こういう結果になりますが、驚くべき数字になります。容易ならぬ事態がやはり裏にあるのじやないかということをわれわれば考えるのであります。そこで転じまして予告して行きますと、やはり四分の三が隠れ、それだけのまだ隠れた件数がひそんでおるというようなことからいろいろ想像いたしまして、つい人情で、もつと歓待をしながら検査してもらおうというような魔の手が伸びるおそれはないだろうか。世上伝えられるごとくに、温泉へ行つて設備をして検査してもらうというよなことがあつては、これはたいへんだろうと思います。そういうよりうな弊害もないではないかとわれわれは聞いておりますので、そういう方面につきましての所見をひとつ承つておきたいと想います。
  20. 佐藤基

    佐藤会計検査院説明員 ただいま吉田君の御質問の点、私も同感で非常にその点は注意しております。そこで検査院検査というのでありますから、片方は検査を受ける。一方は検査をする強い地位にあり、一方は弱い地位にある。だからいろいろの魔の手が伸びるということは、人情として考えられます。ことに終戦直後の、職員素質も必ずしもよくなかつたし、また訓練もできなかつた時代におきましては、御心配のような事件が若干出たのであります。そこで私といたしましてはそういうものをやめてもらいまして、綱紀粛正ということに気をつけまして、ことに当時事務総長はそういうことを非常に懸念いたしまして、よほど迷つたのでありますが、受検官庁に対して接特等はしないようにしてくれということを頼んだのであります。これは二年か三準にわたつてやつたと思いますが、それ以来よほどよくなつておるとは思つておるのであります。しかしながらたまには不心得のものがおりまして十分注意も与え、また程度のひどいものにつきましては、やめさしたのもおるのであります。お話の点は非常に私は気にしておりまして、十分注意をし、しかも相当よくなつて来ておると思います。  なお先ほど申しました四分の一検査してこれだけだから、全体を検査すればさらに三倍あるということも、それはあるかもしれない、最大限そのくらいになるだろうというので、実際やつてみなければちよつとわかりませんが、その点は誤解なきようにお願いいたします。
  21. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 予告検査と抜きち検査の問題ですが、これはやはり将来の検査執行上非常に重大な問題を含んでおると思います。効果の面から見ましても、またそういうような隠れたものがたくさんに残つてしまうというような面から見ましても、どこから見ましても非常に重大だと思うのだから、常時予告なしにするということが、むしろ原則になつて、例外として予告して行く、こういうふうなことをして、受ける方は何かさしつかえるのでしようか。それとも協力しないというのでしようか。何かそこにどうしても原則をかえることによつて、大きな支障を来すという事由があるのでございましようか。
  22. 佐藤基

    佐藤会計検査院説明員 これは会計検査院検査の使命と申しますか、目的と申しますか、そういう点から考えるのがいいのじやないかと思います。そういう点から考えますと、先ほど申します通り、不正の疑いが濃厚であるとか、それは書面検査によるとか、あるいは密告等によりまして、そういう場合には抜打ち検査は適するのでありますけれども会計経理を適正にして行くという、要するに向うに助言をしてやる、それから向うの能率なんかを調べるような場合には、やはり予告して行つてある程度準備をさして行つた方が検査能率を上げる、検査が早くできますから、与えられた人間で、与えられた日数でやる場合には、予告なしの検査よりも予告して行つた方が会計経理をよくするという、そういう指導部面においては能率的だと考えております。しかしながらそれは一つの場合でありまして、他の場合におきましては、お話通り抜打ち検査をやるべきであるし、また今まで私も不注意だつたのでありますが、私の意図ほどやつておらぬということが最近わかりました。これはもう少しふやすつもわでおります。そうかといつて、全部抜打ち検査を原則としてやるということは、なお慎重に研究したいと思つております。
  23. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 私はもし批難件数が漸滅の傾向をたどり、もしく低金額においてだんだんと減つて行くというような、良好な結果が逐年生れておるならば、この議論はしないのです。日本も再建途上で、財政はきわめて困難なときであります。目下地方民といたしましては、われわれが地方に帰りましても、税金の問題で終日悩み暮しております。ずいぶんとあちらこちらで悲劇が起つております。そこで、この大切な非常なときでありますので、漫然と従来の方法をとつて行くということであつては、真に財政の監督とか検査というものが実効を上げて行くことは至難だろうと思います。そこでこれに対処するためには、やはり抜本的な一つの目安をもちまして——披打ちといつたところが、何もそんなに机の上をばらばらに広げさせて調べるわけでもなかろうし、決算検査でありますから、そんなに特別に掃除したり、整理する必要はなかろうと思いますので、やはりこのところは、方針根本相当考慮なさるべき段階ではないだろうか、こういうふうにも思いますが、御所見はいかがでございましようか。
  24. 佐藤基

    佐藤会計検査院説明員 批難事項の数が、ふえておると申しますが、これは実は私の方の検査のやり方にもよるのでありまして、たとえば終戦処理の関係であるとか、あるいは地方の建設省所管等につきましては、従来相当厳重にやりまして、今年度の検査報告が間もなくお手元に参ると思いますが、大分減つておるのであります。にもかかわらずふえておるということは、今まで補助金関係検査が、人員の都合その他で実は手がまわりかねておつたのであります。それが今度大分そちらに重点を置きましてやつたものだから、新たなる批難事項の数がふえたので、その結果がこのようになつたということになるのでありますが、検査をしておる分野につきましては、だんだん経理が改善されまして、批難事項が激つておるということは申せると思います。それでは検査院は全部検査していないじやないかと言われるけれども、結局与えられた人間でやるのでありますから、どうしても重点事項からだんだんやつて行くということになりまして、去年は主として農林関係の補助工事について、相当広く検査をやりました。その関係批難事項が大分ふえたので、こういう結果になつたと思います。泥から検査に待つている者の総合した意見は、だんだんよくなつている。またそうなければならぬと思いますが、大体そういうふうに考えておるのであります。
  25. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 漸次敢善されているようなことになりますと、これは根本的にまた所見の問題になつて来ます炉、提供されたこの資料批難事項がとにもかくにもふえている。でありますから率直に考えましてなかなか容易ならざる事態に進みつつある、こういうよな予算執行がきわめて批難すべき案件が多くなつて来たということは最も憂慮すべきことになつて来たと思うのであります。そうするとやや改善されておるという御意見がかりにあるとしても、この大事なときでございますので、方針として根本的に一々予告しないで行くということを、もつと積極的にとるかあるいは原則的にするか、そういうことについての御所見をお聞きしたい。
  26. 佐藤基

    佐藤会計検査院説明員 お話通り、この予告のない検査が、私の感じと同じでありますが、不十分である。これはもう少し強化することは議論ございません、ただそれを原則にするかどうかという点については慎重考慮を要するので、今ただちに予告検査を原則にすると申し上げるだけの実は決心がついておらぬのであります。
  27. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 しからば検査院検査を全うするために、今日までのあらゆる資料に基きましてどういうふうな対策をとることが国家のために最善の道であるか。この対策についてひとつ御所見を伺いたいと思います。
  28. 佐藤基

    佐藤会計検査院説明員 対策と申しましても、結局今まで検査の結果、十分の効果があがつていない。効果があがつていないというのは——検査が与えられた人間でやつて、若干の重点的なところと、そうでないところ、粗密がありますから、この重点的なところが、改善されたら次にそれより重点の軽いところへ移つて行くというような方法経理の改善をはかる、こういうような方法を考えておるのであります。なお方法につきましては、お話通り、私も抜打ち検査が足らぬと思つております。これはもう十分やります。
  29. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 もし人が足りなければ人をふやすとか、熟練者が少なければ熟練者をふやすとか、そういう機構上、人員等におきまして改善すべき面があれば改善すべきでいいじやないか。あるいはその他、たとえば政府の取り引きしました民間会社とかいろいろな機関とか、そういつたものに直接手を差延べて調査検査をするという方法も、今日は非常に不十分ではないかとわれわれは見ておりますが、そういつた面についてもつと面接に入つて行くような立法措置でもとることなど、相当問題があるのじやないか、こう思うのであります。でありますから、現行の機構、人員、法律等々のみならず、新たに相当対策を考えるべきではないかと思いますので、何かあなたの方でお考えがあれは伺いたい。
  30. 佐藤基

    佐藤会計検査院説明員 人員の点でありますが、これは先ほど申し上げます通り昭和二十二年に定員が約四倍になりまして、それらのものを一人前と申しますか、検査能力向上することに今まで一生懸命やつていたのであります。ところが検査報告でごらんの通り相当検査能力も充実して来たので、もう少し検査ができるように人をふやすことがいいのじやないかという考えを持つたのでございます。それで二十八年度予算につきましては、政府の方に増員の要求を若干したのであります。しかしながら政府ではこの人員をふやすことに対して非常に敏感でありまして、できるだけ節約をはかつて、むしろ人を減したいというようなお考えもありますので、その話がまだつかえないのであります。しかしながらせつかく検査院の希望もあるのだからというので、検査旅費を若干ふやしてもらいまして、そして実地検査をもう少しよくできるようにというふうな方法を講じてもらつたのであります。  次に検査の権限の問題でありますが、お話通り政府を調べる場合に、政府の取引の相手方については原則として検査権限がないのであります。こで、その検査権限を与えることがいいかどうかという問題であります。これはもちろん立法府において十分御研究願つてしかるべきだと思うのでありますが、私どもの考えといたしましては、実際上の問題、今公団はありませんけれども、実は公団に不正事件がありまして、その原因が銀行との関係においていろいろあるのです。そういう場合に、現在の検査院法によりますと、銀行に対する直接の検査権限はありません。だから、検査院が銀行に検査行つても、断わられる心配もあるというので、遠慮しておつたのでありますが、そうかといつて銀行を検査しないで公団の金の動きを検査することはむずかしいので、公団の人と一緒に銀行に行つてそして銀行の承諾を得て検査する、その結果不正事件相当発見しておるのであります。そういうふうに法律上の検査権限がないということと、検査をするかしないかということは必ずしも一致しないので、現在におきましては、そういうふうな相手方の同意を得て、ことに検査を受ける役所の人なり、あるいは政府機関の人と一緒にその取引の相手方のところに行つて調べまして、大体目的を達しておると思うのであります。どうしても法律上向うが応じない、君には検査権限がないとい言つて検査をさせないというような事態が起るようになれば、それはあるいはそういうふうな政府の取引の相手方についてこちらで強制的に検査をする権限を法律上認めた方がいいということも言えるかと思います。しかしながらまた一方からいいますと、検査院が権限があるからといつてむやみに行きますと——むやみにという言葉は少しおかしいかもしれませんが、行くというと、いわゆる自由権の侵害と申しますか、税務署が調べに行つていろいろとかくの非難があるのでありますから、あまり権限を広めることがいいかどうか、少くとも現在においては権限がないから検査ができないとは実は考えておらぬのでありまして、現在の権限の範囲の検査の運用において大体目的は達すると思つております。従つて法律上の権限をただちにふやしてほしいというところまでは私の方は考えておりません。
  31. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 あと二問でで終ります。  委員長は御承知と思うのですが、私ども昨日も昭和飛行機へ現地調査に参りました。やはり検査院としては、昭和飛行機が特調から受け取つた金について各般の証拠物件を持つておりますけれども、そういうものも直接調査ができておりません。そのために調査が十分にできておらぬことも一つ原因になつて検査院と特調と意見が対立したままで、やむを得ずわれわれが参りまして、そしていろいろな資料会社要求したわけなのであります。でありますから、これは今まで審査しました例にずいぶん出て来るのであります。保安庁のからくりの問題にしましてもずいぶん出て参ります。でありますので、そこはやはり昔の旧憲法時代の検査院のようなからの中に納まつておるのじやなしに、今日は国政の運用を全うするためには大胆に率直に当然調べるべき必要のある箇所へは出て行くということ人権限拡大ということを目ざして符かなければ、ほんとうの効果は期待されないのじやないかと思うのであります。でありますから、ここは税務署員が納税者の家へ行つていろいろ調べることもとかくの非難があるということの御批評もあるようですけれども、そういう非難とかなんとかにかかわらず、あなたの声におきましては当然手を伸べなければいけないのだけれども、行くことのできないという面がずいぶんあると私ども見ております。だからここは相当飛躍して権限拡大というところへ持つて行かなければとてもいかぬのじやないだろうか、いかに善悪に良心的に御努力になりましても、この法律の権限の範囲内では、もう一歩というところでみんな締め出しを食つておる。つまらぬ末端のわずかな金の不正をつかまえるということでは、これは呑舟の魚はみな逃げてしまう。だからこれをわれわれは憂えておるのであります。ですからそれについて進んで立法的な措置を要求するというくらいな、その辺までのお考えがなければならぬと思いのですが、いかがでございますか。
  32. 佐藤基

    佐藤会計検査院説明員 たいへん適切な御意見伺つたのでありますが、実は私もその点を多少心配しておりまして、先月でしたか、局長以上に全部集まつてもらいまして、検査院機構、運用について忌憚なき意見を言つてくれといつて意見の交換をしたわけであります。そのときもやはり検査院の権限という問題が起つたのです。ところがそのときの結論は、権限をふやすことも一つ方法だけれども、——今の昭和飛行機の例は初めてなのですが、大体現在において権限がないから検査ができない、それで困つておるということは、官憲としてはあまり言わなかつたのでございます、大体相手方の承諾を得まして検査を受ける、たとえば特調なら特調の人と向うに行つて見せてもらうので、大体目的を達しておる。それならば何も法律を改正してまで権限をふやす必要もないのだ、そういうふうな結論に達したのであります。けれども今のお話を伺いまして、なお十分研究いたしましよう。
  33. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 ぜひひとつ御研究になつて、悪くおなりなさいとは申しませんけれども、あまり人がよ過ぎて、相手方の承諾を得た範囲でおやりになるということではみな逃げてしまいますから、その辺のことを十分に研究になつても新しい機構なり権限拡大についての具体的の方針を急速にお立てになられんことを希望しておきます。  最後に一点お尋ねしておきたいのですが、批難事項を見ますと、不正事項については損害の賠償などは相当されております。しかし法律上不正として刑事事件になつておらぬもので、そんなものは払う必要ないじやないか。たとえばさつき申しましたような横浜の何がし会社に対して、割増運賃を一億円以上払う必要がないじやないかということに会計検査院は認定されておる。一つ会社で一億何千万円というものが国家の損害になつておる。ところがそれが数年間ほつたらかしてあるというような事例が相当ここに出て来ております。そうしますと、何十億円という、当然国家は払わぬでよいものを払つておる、あるいはとりもどし得べきものをとりもどしておらぬ、時期がたつてしまいますと、必ずしも支払い能力があるものとも限りませんから、そこで検査院としては当然政府が支出する必要なかりしものを不当に支出したというような、そういう認定を下したものについて、それは国家の損害ですから、その損害を補填さす、もしくはとりもどすというようなことについて、検査院として何か積極的に意思表示か通達をする必要があるのじやないかと思うのですが、そういう問題についてひとつ具体的な御意見を伺いたい。
  34. 佐藤基

    佐藤会計検査院説明員 その点につきましては、予算執行職員等の責任に関する法律というのがございまして、たとえば支出官——金の支払いの命令を出す者でありますが、支出官が故意または重大な過失で支出行為をする、そして国に著しい損害を与えた場合におきましては、これに対して弁償を命ずるという制度があるのであります。ただその法律ができたのが比較的最近であるのと、もう一つの問題は、当該支出についてだれが責任者かという、これは官吏制度一般の問題でありますが、責任の所在がなかなか追求がむずかしい場合もありまして、あるいは御期待に沿うように十分行つておらぬかと思いますけれども、その法律の運用によりまして、弁償責任を命じ得ることになつておるのであります。検査院といたしましても、そういうような国に大きな損害を与えた事件につきましては、一々今申し上げました予算執行職員等の責任に関する法律に照してどうかということを調べておるのであります。なおその問題につきましては、去年平和条約が効力を発生した際に、官吏責任について恩赦ということがありましてわれわれの方で責任追及の調査をしておつたけれども、恩赦になつたのでよしたということがありまして、あるいはそういうこととも関係があるかと思いますが、制度上は、今申しました通り予算執行職員等の責任に関する法律がありまして、そういうふうな不正な、不当な支出をしまして、政府に損害を与えた場合におきましては、弁償を命ずることになつております。法律の運用は私の方でやつております。
  35. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 私の尋ねましたのは、支出官の法律的の責任を問うとか、その支出官に弁償さすとか、そういう問題が重点じやないのであります。たとえばさきに申しましたドラムカン——横浜の特調から日新運輸倉庫へ払いました金の四億円のうち一億二、三千万円は払う必要がなく、不当支払いである。そういうような場合に不当支払いということであれば、民事上の契約上の点はどういうことに帰着するかは別といたしまして、私の言いたいのは、不当に国家の金を受取つた方からとりもどすことを早くしなければならぬ、いつまでもその会社があるのじやないので、なくなつてしまえば清算人だけしか残りません。そういうものはずいぶんあるだろうと思う。それを言つておるのです。だから支出官の責任を問うというようなことは、これは法律があることは存じておりますが、そういうような末端のことに力を入れるのではなしに、不当にころがつて行つたものをとりもどすことについて、当該予算執行の最高の責任者に院として要求するとか通達するというような積極的な措置をとられてしかるべきだと思うのですが、いかがですか。
  36. 佐藤基

    佐藤会計検査院説明員 それはお話通りごもつともな点で、私どもの方としてはやつております。ただやる場合、司法上の契約上できるかどうかということに非常に疑問がありまして、たとえば貸担保の責任であるとか、あるいは契約を解除し得る原因があるとか、いろいろ法律上の是正措置を講じ得ることがはつきりしておるものについては文句を言つております。そうでないものにつきましても文句を言うと、たとえば政府が買つた場合に売り主に法律上は責任はないけれども、やはり売り主としては、政府はいいお得意だから将来も取引を続けてもらいたいというので事実上弁償している例もあります。そういうものについては、お話通り、私の方としては関係者に、善後措置を講ずるように、法律上とれるものならとれ、とれなければ訴訟をやれと言つて現在やつておりますけれども、法律上とれなくても、事実上あまりひどいじやないかというので是正措置をとるとか、金を返させるというようなことはしばしばあります。
  37. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 その点について、不当にもしくは当然受けるべきものでない国家の金を受取つたというようなものについては、税法上の問題も残つて来ると思うのであります。そういう面につきましても課税を免れておるものはずいぶんあると思います。これを一々きようあなたに申し上げても何ですから、別の機会にまた係官にお尋ねしますけれども、この批難事項の不当、不正、間違い等について税法の鏡に照して見るときに、国税庁の方でとらなくてはならぬものがずいぶんあると思います。ところがそれがとられておらないらしい。やはり検査院検査はそこまで完璧を期するといいますか、画龍点睛を欠くと言つては少し言い過ぎだが、ともかく首尾一貫してそこまでしり結びしておかなければならぬ。国家の損害についてただ支出官の責任を問うというようなことをするだけではほんとうでないと思います。だからせつかくいろいろ御努力になつておるなら、国の金をたくさん横取りしておる方面を課税の対象として、しかるべき措置をするということに積極的に努力をしてもらわなければなるまいと思います。
  38. 佐藤基

    佐藤会計検査院説明員 ただいまの点ごもつともな点で、これは何も不当にとつた場合のみならず、正当にとつた場合でもなおかつ課税を免れておる場合が相当あるように思うのであります。そこで私の方といたしましては、政府と取引のあるものについてはこういう取引があつたということを関係検査課で見つけますと、その資料を租税の検査課にみな送ることにしております。租税検査課はその資料によつて、当該税務署についてあの男はこういう収入があるんだが、課税の対象としたかどうか、あの法人はこれだけの収入があるんだが、課税の対象にしたかどうかということを一々やつております。そのために国税庁としても非常に喜んでおりまして、ぜひ緊密に連絡をとりたいと国税庁長官も言つてつたのでありますが、そういう方法で院内の資料をただちに租税の課にまわしまして、税務署はそれに対して適正な課税をしたかどうか一々検査しまして、それによつて課税漏れを是正した例が相当あります。
  39. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 これで終ります。
  40. 田中彰治

    田中委員長 石野君に発言を許します。
  41. 石野久男

    ○石野委員 佐藤さんに二、三お尋ねいたします。ただいま吉田委員からいろいろ質問がありまして詳細にわたつて従来の会計検査院のやつておつたことについてのお話があつたのであります。そこでこの機会にお尋ねしておきたいのは、会計検査の趣旨、目的等からいたしまして、今日皆さんがやつておられることの中でいろいろな不備、欠陥等があるだろうと思いますし、またそのために皆さんの所期の目的が達せられない場合が非常に多いように見受けられます。院長としてもあなたが過去数年にわたつてこの仕事をなさつておられて、今日会計検査の役割として予算執行上なさなければならぬことで物足りない点が多々あるだろうと思います。そこで今会計検査院としてどのようなところまで自分たちの仕事を高めて行こうとしておるかという自分たちの仕事の目標というか、何か院長のそういうものをお聞かせ願いたいのであります。もとよりこれには法の示すところがあつてそれによつて仕事をするんだといえばそれで尽きるわけでありますけれども、そうではなくて、検査の運営の面からする院長の着眼点、目標点というものをどういうところまで置いておられるか、それに持つて行くために現在どういう不備があるかということをかいつまんでお聞かせ願いたい。
  42. 佐藤基

    佐藤会計検査院説明員 御質問の趣旨なかなかむずかしいので、どう答えていいかちよつと迷うのでありますが、検査院検査するにつきまして、まず民主国の検査院だ、国民のために検査するのだという点を特に職員に話し、また職員としても単に相手方をいじめるだけでなく、相手方が心服するような検査をしろ、それには検査能力を高めなければならぬし、りつぱな人格者として尊敬を受けるようにならなければいかぬ、そういうような点に重点を置いてやつております。検査能力の方はよほど進んで来ましたが、検査する人の人格という点においてはまだときどき妙な話も聞くので、人格をもつと高めて、相手方が喜んで一緒に国のために経理をよくしようという気持を起させるようなものにしたいと思つております。なお検査に行くについて、検査院職員はとにかく検査をする立場だし、相手方は受ける立場だから、ごむりごもつともでおだてられるというような関係になることもありますが、その場合においてはそれは検査をしに行く個人に対する尊敬ではなくて、検査院という国の機関に対する尊敬だから、それを間違えないように、検査に行くときはやはり自分が検査されるので、少し検査をすれば、今度検査に来た人は検査能力が非常にすぐれている、あるいはこれはだめだ、こんなだめなやつならいいかげんにあしらつてしまえということになりますから、検査に行くときは自分が検査すると同時に自分も検査される、だからしよつちゆう自分の検査能力あるいは人格を高めることに努力しなければいかぬということを申しております。これは内部関係でありますが、外部関係につきましては、先ほど吉田委員からお話のような点は、私のしよつちゆう気にしておる点でございまして、ああいう点につきましてはさらに研究して、国民のための検査院としての使命を果すように努力したいと思つております。
  43. 石野久男

    ○石野委員 ただいま内部的な問題について、委員の諸君に対していろいろな院長としての考え方のお話がありましたが、これについては私どもとしてまだいろいろありますけれども、ともかくとして外部的なこと、特に国会で私たちが今非常に重要だと思つておりますことは、これは最初からこの委員会でも問題になつておつたことでございますが、会計検査というものが時期的に非常に遅れて行くということであります。やはり私たちとしては、会計検査は、予算執行がどのようになつているかということを、ただあとから事後報告するだけでは意味がないというふうに考えております。これは当然次年度の会計予算執行にあたつで何かの役立ちをするものでなくてはいけない、こういうふうに考えておるわけであります。従つてかような意味合いからいたしますと、どうしても会計検査の本来の目的が、もつと活発に機動的に予算執行の上に現われて来なければならないように思うわけでございます。そういうような点について、実は院長のお考えなり、また御抱負なりを開かしていただきたいと思います。
  44. 佐藤基

    佐藤会計検査院説明員 この委員会の多数の方を煩わして御審議を願いますのは、結局これにより国の会計をよくするのでありますけれども、この検査の結果が予算に反映したら、なおいいのじやないかという気もします。それにはやはりお話通り国家の経理というものを早く皆さんの御批判に供したいということは、常に考えておるのでありますが、これは制度上なかなかむずかしい問題がありまして、現在の制度におきましては、決算が、たとえば二十八年度の決算ならば、二十九年の十一月にでき上るのでございます。その決算に対しまして、私の方の検査院検査の結果の意見を内閣を通じて報告をするということになつておりますので、どうしても遅れがちになるのです。二十七年度の決算が二十九年の初めに国会報告される。その審議が、場合によると二十九年にもなり、三十年にもなる、たとえば今御審議を煩わしておる二十五年度の決算でありますが、二十五年度の決算ができるのは二十六年の十一月で、二十七年の初めに私の方から報告書を出しまして、それから御審議願うわけでありますが、それが二十八年になつてもまだ終つておらぬ。非常に遅れるのです。これをどうすれば早くできるかということは、いろいろな点があると思いますけれども政府決算をもう少し早くつくるということも一つ方法であるし、またわれわれの検査報告が、政府決算がまわつてから一月あるいは一月半かかつておりますから、この期間をさらに短縮する可能性があるかどうか。それから次に、私の方の検査報告を内閣に提出してから、これが国会に出るまでに一月あるいは一月半かかつておる。それから国会の審議もそれに応じてだんだん延びておる。いろいろな点に改善すべき点があるように思われるのでございます。これはしばしば今までも、会計検査が二年も三年も前の、もう時効にかかつたようなことをやつてもしようがないじやないか、何とかして早くやれというお話もあるので、研究しておりますけれども、現在の制度では、若干改善の余地はありますけれども政府のやつた経理行為をすぐ批判するというまでには、まだ相当むずかしいような気がしております。場合によつて、特殊な事件につきまして、検査報告はそういうふうな制度できまつておりますけれども国会の御要求でもあれば、いわゆる国政調査権とでも申しますか、そういうようなものに関係があれば、特にその方をやれということのできる場合もあるかと思います。
  45. 石野久男

    ○石野委員 制度上、今日の場合では最大の努力をいたしましても、今日現にやつている以上、あまりそれとはかけ離れた相違が出て来ないというお話でございます。これは制度上の問題でありますれば、もちろん制度上のことについて、またこまかく皆さんの御経験を承らなくちやならないと思いますが、今度はひとつ違つた点でお聞きしたいのであります。会計検査の結果として出て来ておりますいろいろな批難事件については、先ほど吉田委員からるるお話があつたわけでございます。私どもこれらの一連の批難事件をずつと見ますと、やはり吉田委員も言つておつたように、こまかいことは非常にてきぱきと事件としては出て来ておるのでございますけれども、大きい問題については、それが氷山の一角を現わしたかと思うと、どこかへ消えてしまうという傾向が非常にあるように思うのであります。従つてそういう問題については、事の大きいものと小さいものとの差、それから同じ機構の中においても、上と下とに対する問題点、こういうことが検査院職員の皆さんにとつていろいろ難儀な問題になつているのではなかろうか、これを是正するのにはどういうふうにしたらいいかということが第一であります。このことは、先ほどいわゆる権限問題とか何’かいろいろ出おりましたのですが、それと関連いたしまして、法律的に、あるいはまた何か皆さんの仕事をする上での指示事項とか、あるいは行政官庁との諸関係、そういうような問題の中で、何か解決の道があるかどうか。言いかえれば、下級官吏の問題は非常にたやすく手がつくけれども、上級官吏はつきにくいという理由がどこにあるかというような問題、それからまた、大きい会社の問題についてはなかなか手がつきにくいけれども、小さい会社はたやすく網にかかつてしまうというような問題を、会計検査院の立場から見て、どういう点に難点があるのだろうかということをお聞かせ願いたいと思います。
  46. 佐藤基

    佐藤会計検査院説明員 大分むずかしい問題のようでありますが、小さいものは、いじめるわけではないけれども機構が簡単だし、責任関係も比較的はつきりするから、つかみやすいということは確かにあると思います。大きい問題になつて来ると、機構関係が複雑であり、しかして責任がどこにあるかという責任の所在、これは官庁全般の問題ですが、責任の所在がだんだんわからなくなつて来る。そういう点において相当骨が折れると思います。しかしながら会計検査院としては、お話にはなかつたけれども、行政官庁の方から頼みというか、圧迫というか、そういう関係事件をやみからやみに葬つてしまう、そういう御心配はないのであります。もしそういうことがありましたならば、御注意願いたいのですが、結局大きい問題になつて来ると、検査は非常に骨が折れる。責任の所産が非常にわかりにくい。そういう問題が私どもとして一番困るのであります。とかく今までも、御指摘がありましたように、第一線の関係に対しては強く当るけれども、その監督の地位に当る者に対して、もう少し強く当りたいと思つておるのでありますが、その点多少欠ける点がありますので、今度その原因調査ということにさらに重点を置いて、そうして上の方の人がそれをもつとよく気をつけるという警告を発することを、さらに今より一層やりたいと思つております。
  47. 石野久男

    ○石野委員 ただいま大きい官庁等については——これは官庁だけじやなしに、会社等でもそうでありますけれども責任の所在がなかなかつかみにくいという問題があつたのであります。これは現状から行きますと、確かに責任の所在がつかみにくいのであるけれども、つかまなければならない問題だと思うのであります。ところが、つかまなければならない問題が、つかみにくいということで終つているというところに問題があると思うのです。どういうふうにしたらその問題について取組んで行けるのか、これを院長から、あなたの方の立場においてのお考えをひとつ聞かせていただきたいと思います。
  48. 佐藤基

    佐藤会計検査院説明員 私の方としても厳重にやつておりますけれども、なお各省にも、どういうふうな事務組織で行くか、その組織系統を明らかにするようにお願いしておるわけであります。
  49. 石野久男

    ○石野委員 これはこういうことではございませんでしようか。もちろん組織系統等の不明なためにつかみにくいということもありますけれども一つには、あなた方の方で手がまわりにくいという点もあるのじやないかと思うのです。たとえば手が非常に少いとか、あるいは一人ではとても一日に二、三件はまわれない。これを三人くらいで分担して行けば案外つかめるものも、つかめなくなつているという点などはないのでしようか。
  50. 佐藤基

    佐藤会計検査院説明員 そういうこともないとも申せないのであります。そこで検査に行きます場合には、あらかじめ人間と日程とをきめて行つておるのでありますが、検査の必要に応じて、日程を延ばしてもいいから、しつかりつかんで来いと言つておるのでありますが、やはり私の指導が悪いと申しますか、能力がもう少し増して来ればもつとできると思つております。だから能力の向上ということは、一生懸命にやるつもりでおります。
  51. 石野久男

    ○石野委員 これは私どもにとりまして、会計検査のいろいろな審議をするにあたりましても、決算書の審議をするにあたつても、非常に重要な問題だと思つておるのです。ただいま院長から申されましたように、手がないということもありますが、そういうことで片づくのでしたら、問題はありませんけれども、実際は私どもとしては責任の所在が系統的になかなかわからないというようなことを、そのままに伏せておいたのでは、これはいつまでたつても大きな問題がつかめないのでありますから、それと取組んで行かなければならない。取組んで行くには、どうしても取組むような処置をしなければいけないのだと思います。従つてそういう立場からすると、会計検査院の人的な充実もありましよう。それは数的にも質的にもあると思うのであります。私は決して会計検査院職員の皆さんが質的に落ちておるからということを考えておるのではありません。数的に非常に足りないとか、あるいはまた予算的に、もう一日がんばつて来ればやれるものを、どうもやはり出張旅費の問題であるとか、手当の問題なんかで早く切り上げて来るというようなことのために、仕事ができなくなつておりはせぬかということを実は心配するわけです。そういう問題に対する皆さんの意見が出て来ないで、ただそれは系統的にわからなかつたからとかなんとかいうことだと、これはいつまでたつて会計検査院本来の目的が達せられないというようなことになつて来るのではなかろうかと思うので、実は私はそういう点を、洗いざらいあなた方の考えを聞かしていただきたい。私たち自身も実際その報告自体を調べることがこの委員会の目的だと思つていません。この考えを中心にして、これから後こういうような報告がこういう部厚なものにならないようにして行きたいというのが私たちの委員会の目的だと思いますので、そのためになさなければならぬことが、あなた方の内部の機構の問題とか、それを充実する問題にかかつて来るとすれば、いくら私たちがここで審議をしてもむだなことであります。それが一切ないかどうかということをお聞きしたいのです。洗いざらいひとつ御所見を承りたいと思います。
  52. 佐藤基

    佐藤会計検査院説明員 ただいま旅費、人間で制約されていないかというお話でございますが、そういうきらいも若干はあるのです。そこでそういうことになつては困るから、出張して検査して、不十分でももう少しやればはつきりつかめるというような場合には、遠慮なしに出張を延ばしてやれ、こう言つておるわけなんであります。それで若干延期してやつておる例もあります。  それからもう一つは、実地検査でありますが、その実地検査で全部つかめるかというと、やはり大きな問題になつて来ると、現地でつかむことができないという場合もあります。ことに責任問題に塗乗ると、いろいろな会計の処理の規則その他もありまして、帰つてからもやつております。それで大体この検査報告ができると、すぐこの中でいわゆる責任の問題になるようなことは、今一生懸命にやつておるのであります。もちろん前からやつておりますけれども、さらにこちらの方へ重点を置いてやつておる。これはやはり限られた職員で、昔から見れば約四倍の職員になりますけれども、昔と違つてこのごろ検査をやりますと、いろいろな事件がありますので、ほんとうを言えば、もう少し人があつたほうがやりやすい。先ほど申しました通り職員要求したのでありますが、国家財政の苦しいときであり、一般行政官庁も人を減らそうというときである。そういうことを聞きましたので、さらに能力をふやすということと、それから若干出張旅費を増してもらつて円滑にやらせるということで、私ども責任を果したい、こういうような状態に今なつております。
  53. 石野久男

    ○石野委員 責任の所在の問題を糾明するにあたつて、もう少しそれぞれの行政官庁が明白にしてくれれば、皆さんの仕事が楽になると先ほどおつしやられたわけでありますが、その点は相当に大きな問題のフアクターになるのでございますが、どうですか、もう一ぺん、どういうふうに皆さんの仕事をさせにくくしておるかということをお聞かせ願いたい。
  54. 佐藤基

    佐藤会計検査院説明員 ある一つ事項をきめるについても、責任者が要するに、悪く言えば盲判ですか、判がたくさんあるのです。だれがほんとうにやつたかわからないということもありますし、それからだれがどういうことをやつたか、事実関係も、先ほどお話通り検査というものは相当時期がたつて検査に行きますからして、事実関係が明瞭でない場合がある。それから責任者と思われるような人がもうかわつているとか、あるいはもう官界をすでに去つておるという場合もありまして、わかつてもそういうことで責任の追究ができぬということもあり得るわけでございます。
  55. 石野久男

    ○石野委員 私はこれで質問をおきますが、これはあとでもよろしいのですけれども、ひとつ委員長にお聞きしておきたいのです。それはただいま私がお尋ねしましたものに対するお答えとして、私はまだ十分納得しないものが多い。ことに自分たちの勉強範囲だと思います。けれども会計検査院自体が今どういう目標を持つて動いているかということ、その目標については部内のこともありますし、外に対する問題もありまして、そういう問題について、今日あなた方当面の実務者としていろいろ障害にぶつかつていることが多かろうと思います。そういう問題を洗いざらいひとつ聞かせていただきたいと思つておるのでございます。そのことは他日でもよろしうございますが、これの資料でも提出していただければなおけつこうかと思います。  なお問題になります被害件数がたくさん出ておるわけでありますが、そういう被害件数が出ている問題についての処置の仕方についても、これは司法関係の問題と、それから会計検査院でやる仕事とでは、おのずから区別があるということを十分承知しておるのですが、しかしながら皆さんは検察関係が行うようなところまでやつてはいけないのでございますが、相当程度そういうところまで入り込まなければ仕事は実際にできないことがあろうかと思います。そういう点についての問題が先ほど権限問題として出ておるわけでございますけれども、そういう問題についてわれわれは皆さん方の今までやつて来たことの中でどうもなまぬるいように思う点が多い。そこでそういう観点をもう少し大きく浮び出して行くのに何が障害になるかということもあとでまた資料等で聞かしていただきたい。  以上で私の質問は終ります。
  56. 永田良吉

    ○永田(良)委員 私も一、二お尋ねしたいと思います。会計検査院長さんはいろいろ欧米各国のことにお詳しいと考えておるのであります。私は終戦後追放になつて今度ようやく復活したのですが、われわれは国内の事情、世界の情勢にまつたく盲であり、この意味からこの機会にあなたに真剣にお尋ねしたいと思います。一体敗戦国に一千何百件ものこういう不正な忌まわしいことが起るというのは、私ども生れて初めて聞くことです。われわれが前に代議士なんかしておつたときはこんなことは少かつた。私の鹿児島あたりでは、田尻さんなどが会計検査員をしておるときにはずいぶん官紀は振粛されて、こういうことなんかわれわれ決算委員会にいたときにはなかつた。国が敗れて、そしてようやく今独立になつて日本が再建して、みんな立ち上つておるという際に、失礼な話だけれども国民の模範とならなければならぬ官公署において、こういう不正なことが行われて、国家全体に向つて、また今ごろの若い者に対しても申訳ないことであります。私は久しぶりに議会に出まして、まことに驚き入つて唖然としております。しからば敗戦国はひとりわが日本ばかりでもない、ほかにも例があるのですが、他の敗戦国の例、なおまた特に英米とか世界の相当な国も、今日本との友好も結ばれて、各国には大使館もできて、公使も行つておられる、領事等も行つておられます。今までは戦争の結果各国との交通もなかつたけれども、もはや今ごろはいろいろな各国の情勢も探知し得る道は開けておる。こういう点から見て最近外国の官庁において日本のごとくかかる多数の不当不正なことが起つておりますか。そのくらいのことをあなたはりつぱなお方であるから、知らぬということは申されぬだろうと思う。あなたが知つておられる範囲においてここで私に教えていただきたい。私どもは何もわからぬけれども、このままにほつたらかしておけません。どうしてもわれわれは、あなたが言つておられるように、これは制度の改革が必要だ、あなたはさきに三百名から千何百名に増員したとおつしやつたが、そういうふうに人をたくさん増しておりながら、件数は年々増加して行くことは、極端なる誹諦を申し上げますと、会計検査院の機能は麻痺状態といつてもいいのではないか、これは失言かもしれぬけれども、そういうことで、いくら人を増してもこんなふうでは会計検査院の機能は昔のような働きがないといつてもいいのです。しからばこれを制度を改革するか、さきの幾多の質問者がおつしやつたように、権限を強化するとか、要するに制度機構の改革をせんければ、こういう不正は年々続出してやまぬだろうと思うのであります。むろんこの会計検査院の不始末については、われわれは政党としてもひとつの調査を始めて、そうして政府に迫つて機構の改革を進めて行かなければならぬのではないかと思う。また政府もただ突然現われた問題ばかりにとらわれず、こういう根本的な機構の改革についても慎重に、どの内閣でも研究されんければならぬことと思うのであります。こういう点について私はごく簡単なことを特にお尋ねしますが、会計検査院は今ここに一つつて、地方には出張所とか分院とかいうのはないのでございましようか。私は鹿児島県の者だが、それがないからああいう遠方まで旅費をとつておいでになる、そういう点も機構の一部の改革なりがやりようによつてはできることじやないかと思う。なおまた今あなたは民主化したために丁寧に各官庁に接しられると言われた、これはまことに民主化のありがたさと私は感服しますが、但し国民のためとおつしやれば、国民に百五十億も損害を与えておいて、そうしてあなたに丁寧にされた、そのされたのはあなた方です。その官吏官吏検査されておられる。しかるにさきの御質問があつた通り、税務署の人なんか——私どもも地方で見受けておるが、滞納なんかがあつて、わずか百円か千円かの小さい金に、税務署さんがくつをはいたままたんすをあけて、あすの米もないのに取上げた例がある。これが民主化でしようか。これは極端なる昔の官僚政治の遺風であると思う。しかるに会計検査院の方は、そういうふうに同じ日本官吏の人が同じ官庁をお調べになるようなときには民主的にやる。一部の官吏は人民に対してそういうことをされておる。これは民主化のはき違い、片手落ちということだと思う。こういう点から考えて相当お考えおきを願わなければならぬのじやないかと思うのです。こういう点から考えまして、まず一応その諸外国の例を私に聞かせてくださつてから私は質問を続行したいと思います。
  57. 佐藤基

    佐藤会計検査院説明員 諸外国の例は実はまだ研究しておりませんが、日本制度というのは、大体ドイツのまねをしておるのです。アメリカにしてもイギリスにしても制度が非常に違うのであります。従つて、というとなまいきかもしれませんが、制度日本の模範となるかどうかということは、ちよと疑問があります。実は先般進駐軍の方——占領中でありますから、進駐軍の方からアメリカの制度を研究する必要がありはしないかというので、私の方の者を二人ばかり出したわけです。その報告によりますと、制度が非常に違うのです。仕事の能率的処理という点においては、アメリカは相当進んでおると思います。しかしながら制度がまるきり違うので、どつちがよいかしいうことは、なかなか批判がむずかしいのであります。  なお不正事件の点でありますけれども、これは御承知の通り、この前の大統領選挙においても不正事件官吏にたくさんあるので、それを摘発した人が非常に有力な候補者になるということで、なかなか向うでも多いと思うのでございます。だから何も日本だけが多いとは思づておりません。日本も、ことに終戦直後は非常に多かつたのでありますが、最近検査行つた者の話では、よほど改善されておる。ただそれにもかかわらず数字のふえておるのはどうかということになりますと、今まで重点事項として扱わなかつた補助金、農林関係がおもなものでありますが、農林関係の補助金についての検査品に非常に重点を置いたために、特に件数がふえておるわけでありまして、全体としてはよくなつておると私は思います。これは院内のだれでも言うことで、そういう状況であります。ただふえたというのは、先ほど申しましたように、方におきましてはこちらの検査能力も高まつておるということは無視できないと思つております。
  58. 永田良吉

    ○永田(良)委員 院長さんの御答弁は失礼ですけれども、ほんとうの統計的な数字をおつしやらないで、架空的な広汎な範囲でおつしやいましたが、われわれはまだ三月までは決算を続けて行くのです。たいへん御迷惑ですが、会計検査院の他の課員一の方にできることならば調査して、われわれの方にこれを教えていただくようにお願いする次第であります。  それから行政管理庁という機構があるようでございますが、これと皆さんの会計検査院とはどういう連鎖があるのか、私は長く国会におらなかつたので、この点について会計検査院の方から御説明をお願いしたいと思います。
  59. 佐藤基

    佐藤会計検査院説明員 検査につきましては、いわゆる事業体と申しますか、事業体の内部で検査する。銀行で申しますと、銀行内部で検査部局を置いて、銀行自体で調べるということと、外部的に大蔵省の銀行検査官が行つて調べることがあります。いわゆる内部検査と外部検査であります。そこでその例で行きますと、御承知の通り会計検査院憲法上独立した機関で内閣に属しないるだから内閣が自分で内部検査をやるためにいろいろな方法を講じておる。その一つは、今仰せられた行政管理庁が政府の内部検査機構です。検査院政府から独立した検査機構である。こうあらましを申し上げればおわかりかと思いまする
  60. 鈴木正吾

    ○鈴木(正)委員 けさの朝日新聞に——先ほども問題になつたようでありますが、決算書類はまず新聞社に発表する、漏らすというのが今までの慣例になつておるのですか。こういう問題はまず決算委員会報告せられるべきものだと思うが、従来はどういうふうな関係になつておるのですか。
  61. 佐藤基

    佐藤会計検査院説明員 実はその点私も朝、朝日新聞を見て驚いたのであります。どうして国会に行かないのに出たか、私は実は決算検査報告は、きのう印刷ができまして、きのうもらつたのであります。国会の各位にもすでに配付になつておるかと思いましたが、どうもまだ配付になつておらないようであります。それは別問題といたしまして、あれが出たというのは、検査院から出たのか。要するにあの原稿というものは検査院でつくりまして、去年の十二月三十一日に内閣に送つております。内閣へ送つてそうしてそれを印刷局で印刷しまして、校正は私の方でやつてつて、きのうできたというので、きのう私はもらつたのです。だから今の御質問のようなことがあるいは言われはしないかと、実は朝見てびつくりしたのであります。今までは検査院には新聞記者はいないのです。ふしぎな役所で新聞記者はいないのです。だものだから新聞記者炉検査院で聞いてやつたということはちよつと私には受取れないのですが、まだ調べておりますが、どうしてああ早く出たのか、実はふしぎに思つておるのです。今までは検査院が出しても、特に積極的に発表すると、いうこともしませんし、従つて向うから要求することもなかつたのであります。やはり検査院というものがだんだんに、ある意味においてはありがたいのですが、世の中に認められて来た。去年なんかむしろこちらの方から検査報告ができまして後に、何というか、つまり検査報告はかた苦しくなくて、私どもの方としては読みやすくというので、簡単なものをつくりまして、出版業者、新聞社に配つてもらつた。それが若干雑誌なり新聞に出たというのが、去年までの実情で、ことし出たのは実はびつくりしたのです。どうして出たのか、まだ調査中でよくわかりません。
  62. 鈴木正吾

    ○鈴木(正)委員 見れば別に秘密文書というわけでもないと思いますが、こういうことが会計検査院長さんが知らない間に、われわれ委員の手にも渡らないうちに、新聞社のスクープ——新聞社はこういうことは大きなスクープだろうと思いますが、そういうことができるところに何か穴があるのじやないか。会計検査院の締りのないところがあるのじやないかというふうにも考えられる。それはそれでいいのですが、すでに二十六年度の決算報告というこういう書類が出ておるのです。これはいつごろわれわれの手に渡りましようか。
  63. 佐藤基

    佐藤会計検査院説明員 先ほど申しました通り、法律的になりますが国会としては、内閣が国会に出すことになつております。私の方は内閣へ原稿を送つて、内閣から出すことになつております。おそらくきのう私のところに来たのだから、きようあたり実は皆様のお手元行つておるのかと思つたのですが、実はよく調べておりませんけれども、今まではここの委員部か何かへ、政府の方だろうと思いますが、届けて、それから皆さんのお手元まで行つたと思つております。お話通り皆さんのお手元行つてないのに新聞に出たのは非常に遺憾に思います。これは国会の皆さんが審議される。それが皆さんの手元に行かないうちに新聞に出るのはもつてのほかだと思つて、実は朝びつくりしたのであります。どういう関係か調べてみますけれども、はたして検査院から出たのか、検査院のみでなく、内閣にも印刷局にも関係があることですかち、どこから出たか存じませんが、検査院としては、新聞に先に出たというのは非常におかしいので——前にも、実は別な事件でありますけれども、要するに院内の機密、外部的に発表しないものが出るということがあつたので、院内規律ということをやかましく言つたことが去年だつたか、あるのです。こういうことは検査院に新聞社は来ておらないから、職員は非常にそういう訓練を経ておらないのです。それは将来よく気をつけます。但しこれが検査院から出たかどうかということは私にはわかりません。いずれにいたしましても、国会、ことに決算委員の各位のところに書類が行かないのに新聞に出たということは遺憾に思います。
  64. 鈴木正吾

    ○鈴木(正)委員 決算報告審議が二十八年になつて二十五年度の決算審議をする、これは困る。もつと早くわかりたいということは、決算委員会全員の希望であります。今の問答を聞いておりますと、特別の問題について決算委員会要求があれば、すぐに調査してあるあなたの方の資料は、決算委員会報告してもらえるのでしようか。たとえば昭和二十七年度の決算中に、すでに支出済みになつたものの中にあやしいと思われる節があつて、これはどうなつておるのだと会計検査院に聞けば、それがまだ政府報告済みでない資料でもこちらへそれを聞かせてもらうことができるのですか。
  65. 佐藤基

    佐藤会計検査院説明員 それは特に御要求になり、ことにまた私の方ですでに検査が済んでおればすぐ出せると思います。しかしながら検査はやはり限られた定員で、一定の計画のもとに行きますから、その計画をあまり乱すようになると相当時間がかかると思います。
  66. 鈴木正吾

    ○鈴木(正)委員 かりに決算委員会要求で、この件についての決算を特別にやつてくれと言つて会計検査院に申込めば、限られたる人員で予定の計画を多少変更しても、その決算を早く出してくれるというようなことはできるのでしようか。
  67. 佐藤基

    佐藤会計検査院説明員 成規の決算を経まして検査院の意思決定機関である検査官会議に付しまして出すことはできます。
  68. 鈴木正吾

    ○鈴木(正)委員 この二十六毎度の決算報告書が決算委員会に渡らない先に新聞に出た経緯については、どういう経過でこうなつたか、委員長から適当の取調べを願いたい。それからこれがすでにできておるのなら、一刻もすみやかにわれわれの手に渡るように御奔走願いたい。
  69. 田中彰治

    田中委員長 迫水君。
  70. 迫水久常

    ○迫水委員 ごく簡単な事務的なことを二、三お伺いします。検査を実行される時期、たとえば昭和二十五年度ならば、昭和二十五年度の決算が、二十六年の十一月にまとまつて、それから二十五年度の決算検査をなさるのですか。それとも逆に質問すれば、現在日々検査の仕事をやつておられるのでしようが、それは何年度のものをやつておられるのか、昭和二十七年度のまた政府決算がつかないものをどんどん事項別にやつておられるのか、その点はどういうことになつておりましようか。時期の問題です。
  71. 佐藤基

    佐藤会計検査院説明員 それは先ほど申しました通り、十一月に前年度の決算報告が来て、それで政府決算が固まる。固まつてからこちらもはつきりした意見が言えるのだけれども、その意見を出すためには前から検査をしています。たとえば二十七年度の決算検査報告が二十八年の十一月に来ますが、二十八年の、たとえばごとしの五、六月の例をとりますと、二十六年度の検査にもちろん重点を置きますけれども、必要によつて二十七年度の検査もやつております。いわゆる現年度検査ということをやつております。
  72. 迫水久常

    ○迫水委員 そうすると政府決算が固まらない前、つまり現在進行中ですが、二十七年度のものについて支出済みになつておるものについての意見というものは、一応検査院にはあるわけなんですね。そういうふうに了解してよろしゆうございますか。
  73. 佐藤基

  74. 迫水久常

    ○迫水委員 その次は、検査を実行されるについて、いわゆる重点的にやるということがありますが、つまり現在の現有勢力をもつてしては、検査の対象である一万件ばかりのうちの四分の一くらいしか一年にできない。それは算術的に割つて、われわれ大蔵省で銀行検査をしたときに、大体全国の銀行を年度別にずつとわけて、一年に一回まわるか、二年に一回まわるかというような検査をしたことがありますが、そういうふうな対象別にずつとやつておられるのですか、それとも、どうもこういう問題について一番会計経理の紊乱が多いようだからというので、そういうところを重点的にやつておられるのですか。そういうところの方針はどうですか。
  75. 佐藤基

    佐藤会計検査院説明員 限られた人員でやるのでありますから重点的にやつております。従つて、平均的にやれば四分の一だから四年に一回ということになりますけれども、そうでなくして、ごく小さいところであるとか、過去一、二年の検査でいつも成績がいいというようなところは延ばしまして、大きいめんどうな役所であるとか、あるいは最近不正事件の多いというような役所は、毎年、場合によつては年に二回もやります。そういうふうに重点的にやつております。
  76. 迫水久常

    ○迫水委員 会計検査院長はしばしば会計経理を適正にするという言葉をお使いになつたのですが、具体的な意味はどういうことですか。つまり会計検査の目的は法規に従うのか、会計法規をたてにとつて厳正にやるのか、われわれ役人当時に会計検査を何べんか受けましたけれども、どうもくだらないといつては語弊があるけれども、こまかいところをやられて推問事項やなんかたくさん出るのですけれども、どうしてこれをこんなにがんばつて長い時間かけてやられるのかとふしぎに思うことが非常にあつたのです。今でもやはりその法規の末節にこだわつた検査をやるために、せつかくの現有勢力でもう少し重点的に呑舟の魚を押えられるのを、小さいところを押えて——われわれ課長なんかしておりますときに、しようがない、それは一ぺん申訳ありませんと言つて、あやまつておけば済むだろうというようなことを、ずいぶん時間をかけて昔はやつておられたが、今はどういうことになつておりますか。会計経理の適正という院長のおつしやる言葉の具体的意味を御説明願いたい。
  77. 佐藤基

    佐藤会計検査院説明員 迫水君からお話通り、私もそういうことをしばしばわきから聞かされまして、いろいろ検査の状況を調べてみますと、そういうふうな御非難と申しますか、御批判が当る場合があるようです。しかしそれはもちろん悪いとは言わないのです。これはやはりやるべきだ、法規に照らして適正にするということは当然なことなんだけれども、それだけに終る心配がありはしないかということを非常に気にしておるのであります。だから、それも必要だけれども、たとえば最近公共企業体等もありますが、これらについては、どうすれば公共企業体の予算が効果的に使えるか、これは行政官庁でも同じでありますが、そちらの方へ及ばずながら相当重点を置いているつもりであります。それでこの経費の使用の効果ということについては、これは検査法規には必ずしもそうは出ておりません、要するに不正事項でもない、不当事項でもない、極端に言えば不当かもしれませんけれども、こういうことについては、相手方に注意をしまして、相手方もなるほどそうだ、作業能率をこういうふうにすれば増進できるということをこちらから言つたために、向うは非常に喜んだということを、ぼくは当事者から間接的に聞いたことがあります。また直接聞いたこともあります。昔のことはよく知りませんけれども、枝葉末節といわれる法規の点はもちろんないがしろにはし凄いけれども、それだけでは決して満足しないで、もう少し進んだことをやりたい。適正を期するということは、これは法規的の問題と、しからざる問題があります。法律については、法規に合うことが適正でありますが、法規以外におきましても、経費の使用効率を上げる意味におきまして、こうい今ふうにしたらよく上りはせぬか、要するに相談相手になる、おこがましく言えば指導する、こういうような方法を講じておるのであります。
  78. 迫水久常

    ○迫水委員 大体われわれ役人のときの経験から言つて会計検査を受けた大臣が非常に困つて会計検査を何とかかんべんしてもらえないだろうかというようなことはほとんどないと思うのです。大臣が困るような会計検査をするということが、実は会計検査としては大事なんじやないか。困るのはせいぜい会計課長ぐらいのところで、次官も困らないのが大体会計検査の実情であると思うのでありますが、大臣の困るような会計検査をするということについての、何か具体的の院長のお考えがありますか。
  79. 佐藤基

    佐藤会計検査院説明員 それは先ほどあまり詳しくは言いませんでしたが、申しました。不当事項が起つたならどうして起つたか。これは上の方の職員、最高は大臣でありますが、そういう方々が、会計経理に関心を持たない、どうして関心を持たせるかというのが、私の方の一つの使命だと思つておるのであります。そこで関心を持たせるようにする、あるいは原因調査をもつと徹底して、君の方はこういうふうにやつておるから末端でこういうことが行われるのだから、こういうことに特に注意してくれ、そういうふうな方向にだんだん向つておるつもりでおりますけれども、あなた方がお考えのほど徹底はしておりませんけれども、気持はそういう気持でおります。
  80. 迫水久常

    ○迫水委員 そこで今院長のおつしやつた原因ですけれども、どうも私会計検査報告不当事項を見てみますと、これは役人が自発的に、まつたく自由なる意思をもつてこういうことをしたというものではないような気がするのです。すなわち取引の相手方から何か頼まれるとか、あるいは進駐の当時においては、進駐軍の軍人さんが圧迫を加えるとか、あるいはわれわれ代議士の立場で言つてはぐあいが悪いかもしれませふけれども、何か代議士さんから頼まれたとか、あるいは政界の黒幕のブローカーがその間にいるとか、何か圧迫、まあ外部の力によつてこういうようなものが出て来るのじやないか。役人がほんとうに自分でこれが正しい、これが合理的であると考えてやるより、むしろある結果を先に予定をして、それを合理づけるために役人がいろいろ考えたというようなケースが、非常に多いような感じが、これを読むとするのです。ことに会計検査院報告はうまく書いてあるのかしれませんけれども、いかにも役人がだらしがないように書いてあるのですね。そこで原因としばしばおつしやつていますが、その院長のおつしやる原因は、そういうことをおつしやるのですか。もしそういうことをおつしやるより、ほかの意味でおつしやつておるならば、それを説明を願いたいと思います。同時に院長検査をなすつた感じとして、どうして役人にこういうふうに不当事項が多いのか、それには今私がいいましたようなことがあるように、院長も感じておられるのかどうか、感じておられるとすれば、それをなくするためには一体どうすればいいか、そういうようなことの若干の御感想をざつくばらんに聞かしていただけば——委員会の空気は、何かそういう原因を除去しなければ、いつまでも百年河清を待つごとしですから、協力する意味においてざつくばらんにお話願つたらいいと思います。あげ足を決してとるわけではありませんから……。
  81. 佐藤基

    佐藤会計検査院説明員 今お話の外部的の関係ということもあつたかもしれませんが、これも非常に申しにくいことでありますが、請負契約か何かのときに、形式的には一応の要件を満たす、競争の要件を満たしておる。しかし実質的には、はたして適正な競争が行われたかどうかという疑問、これは極端に言うと、もちろん刑法上の談合したという証拠はありませんけれども、そういう疑いが非常にあることもあります。それからまたこれは非常に気の毒なんですが、われわれが批判するのがいいか悪いかわからぬのですが、予算の組み方がいかにも無理になつておる。そこでやむを得ずやつたのではないかということもあります。あるいはまたこれは土木関係に多いのでありますが、法規なんということは全然考えないで、どうすればこの予算の範囲内で仕事がよくできるかということで架空経理をする。これはいわゆる善悪の悪でやつたのではなくて、やはり仕事を愛するためにやつたのですけれども制度を知らないものだから、人夫賃として金を落してほかに使う、その方が場合によると工事の効果が上る、そういうふうな原因のときもあります。これなんかほんとうにわれわれの方から見ればけしからぬことなんだけれども、道徳的に言えば本人をそうとがめる必要もないのですが、そういうことはずいぶんありました。このごろはよほど直りましたけれども、そういうふうないろいろな原因があるのです。それからまあわれわれ役人として経験があるのですけれども会計というものはつまらぬものだ。会計課長といつたつて、局長の前提になつておるので、皆たいてい下つぱにまかしておいて知らぬ顔をしておる、そこで会計経理に対する監督が十分でない。私の方に、前に下岡検査官というのがおられましたが、これは銀行家出身で、そういう人から言うと、たとえば印鑑の保管なんということは全然——そう言つては私がルーズになるのかもしれませんが、役人とかなり違うのですね。それだもんだから、そういう責任会計の課長なりそういうふうな上の地位にある者はやるべきところをやらずに、下つぱにまかしきりだ、それで不正事件が起る、こういうこともあると思うのです。いろんなことがあるのです。だからやつぱり上の方の人がもう少し会計ということに関心を強く持つてもらつて、国の金だ、国民の金だという観念を強くするということが、一番大きなことだと実は思つております。
  82. 田中彰治

    田中委員長 ほかに質問はありませんか。——それでは委員長から会計検査院長に申し上げておきますが、きようの朝日新聞に漏れた問題です。これは委員会が知らないのに、そういう重要事項、しかもこれから調べなければならぬ事項が漏れたということは、今後にも重大な影響をいたしますから、どういう原因から漏れたか、ひとつお取調べ願いたい。私はこれを朝日新聞が取上げたことは決して悪いとは思つておりません。このごろ決算委員会委員諸君も非常に御熱心に勉強していただくし、私もできないながら一生懸命にやつておるつもりでありますから、そういう点が多少認められて、新聞紙が取上げるようになつたということはいいことですけれども、しかし少くともわれわれが知らないうちに、われわれのところへそういう書類が来ないうちに漏れたということは、今後のいろいろな問題を扱う上に参考に調べておきたいと思いますから、お取調べ願いたいと思います。  それからもう一つは、これは書類でけつこうですから、そこに書いておいていただいて御報告を願いたいと思います。たとえば会計検査院の方が警告して役所へ行かれる、警告しないで行くと、相手方がおらないとか、いやきようはだめだとか、いろんな不便がある、こういうように会計検査院長が言われておるのですが、これは私ももつともだと思いますが、しかし民間の、つまり税金なんかに対しては非常に強硬で、先ほども永田委員から言われたように、税務署の人たちが百円か百五十円のことで金庫に封印してしまつたり、金庫を持つて行つてしまつたり、そこにすわり込んだり、あるいは家宅捜索して、非常に迷惑し、それがために店がつぶれたということがたくさんある。民間の会社つて、役所だつて、その大きい、小さいは関係はありますけれども、民間だつてその係員がおらぬと断られましようし、またいろいろなことを言つてのがれられると思うのです。そこで役所だけがそういうことをして、民間が納めた血税を使う役所がそういう警告を前もつてしたり、あるいはいろいろなことをしてやつて、これが至当だ、民間の税金をとるためには、どんなことをしてもいいという、こういう相違点に対して、会計検査院院長としてまつたくそれでいいのか、あるいはいやこれはもう少し会計検査院としても、相当国民の血税を使つておるのだから、民間が血税を納めるためにはこういう目にあうのだから、これに対して何か相当考えて方法をとらなければならないというようなお考えがあるのかないのか、この点をひとつ書類で私に出していただきたいと思います。  いま一つ、投書があるかないか。こういうところはこういうぐあいに調べてくれとか、こういう不正があるのじやないか、こういうことをしておるのじやないかというような投書があるかないか、私のところにすらも投書がすでに二百通ぐらい来ております。こういう点についてひとつ御報告願いたいと思います。それから役所に行かれていろいろお取調べになるときに、何かの弾圧的——たとえば法務省の会計を調べようと思うときには、こういうことをやれば法務省がこういうぐあいに出るのじやないかとか、裁判所がこういうぐあいに出るのじやないかとか、あるいはまたあそこの農林省の中を調べるときには、農林省にはこういう力のある人がいて、こういうぐあいに圧迫するのじやないか、こういうぐあいに感ぜられるようなことがあるかないか、こういう点について、ひとつお知らせを願います。  それから法律的にひとつ、会計検査院として今ここでおつしやられないこともあるでしようが、もう少しお考えくださつて会計検査というものはこんなことではいけないのだ。法律的にこういうぐあいに改正してくれればこういうぐあいにできるのだというような、法律的に改正する事項があるかないか。  それから職員の増員でありますが、先ほど、政府予算がないといつてこれを許さなかつた、聞いてくれない、こうおつしやいますが、もしそういうことがあるならば、決算委員会に申し出てくだされば、われわれは職を賭しても闘つてその予算をとつてあげたいと思います。なぜかと申しますと、一年に同百億というようなものがむだに使われたり、不正があつたりするのに、わずかの職員をふやすことを恐れて、それを惜しんで、国民の血税をむだに使つて国民に迷惑をかけてだんだん税金を高くして行くというようなことでは私はよくないと思う。だからそういう点については、職員の増員が必要であるならば、ぜひとも申し出ていただきたい。  それから、たとえば先ほど申しておられましたが、懲戒処分に対して、もし会計検査院にこういう権限を与えてくれればもつとやりいいのだ、あるいは大臣とか次官とか政務次官のところまで責任をもつて行けるのだ、あるいは懲戒処分をする人間に対しても、こういうぐあいにできるのだというような、何かそこにお考えがあるならば、それをこちらにひとつ書類で、ないとかあるとかということを申し出ていただきたい。  それから余分に支払つたやつに対して、これをとるということに対しては、先ほど院長報告を聞いてみますと、はつきりしたきめ手がないようでありますが、もしそういうようなものが余分に——たとえば昭和飛行機に八千万円余分に払つたものがある。あるいは横浜の船会社に一億何千万円余分に払つたというようなものがある。会計検査院の方で、こういう不当なものはもつとこういうふうに法律を改正してくれれば、こういうふうにとれる。たとえば税務署が税金をとる場合に、これがほかの人に担保に入つておれば、これに配当加入を強制し、税務署が優先権をもつてこれを差押えまたは競売に付してしまう。会計検査院で不当と認めた金は——これは国民の血税であつて、税務署は国民から税金をとるには、優先権をもつてほかの民間などからもとれるのだから、会計検査院が不当に使われた金をとりもどすには、そういう特別な方法があつていいはずだ。そういうような点についてどんなお考えを持つておられるか。  もう一つ院長として、国民の血税がこういうぐあいにむだに使われ、あるいはいろいろ効果のないように使われておる、あるいは不正等が起きておる場合に、ただいまのような制度でいいと思つておられるか。何か大改革をしなければならぬと思つておられるか。院長みずから外国にでも行つて、ひとつ見て来たい、そうして一大改革をしたいと思つておられるか、というようなことに対する院長のお考えをひとつ決算委員会報告していただきたい。私の考えるには、英国でも、アメリカでも、その他の国々、ドイツとおつしやいますが、このごろなかなか東ドイツにおいても、西ドイツにおいても、決算委員会というものは、予算委員会以上に重大視しまして、各役所を調べて、所管の大臣、政務次官がちやんと来ておる。そうして使われた予算をなるべく、二十七年度の予算であれば、八年度に入つたらすぐにそれを調べる。八年度の予算を組む前に、こういうむだな金が役所にあるからこれを減らせ、相殺しろ、警告しろということになつております。そういうようにほかの国で決算委員会を重大視しておるのに、日本だけが重大視しないで、ただこれよりできない。こうだということで、一体会計検査院というものはそれでいいのかどうかというようなことについて院長の忌憚のない——秘密にせよとおつしやれば、委員だけで秘密会を開いて委員だけの間で必ず秘密を守りますから、何も恐れず、何も遠慮しないで、ひとつ院長の己憚のない意見を出していただくことをお願いします。  それから委員諸君にひとつお諮りをいたしたいのですが、国税庁ができてから、特にこの二、三年非常に酒をつくる許可を多くしております。これははつきりした証拠が上つてはおりますが、大きなものは上つておりませんので、取調べたいと思いますのは、一千石以上の酒をつくる許可をしてもらう場合に、国税庁に政治献金として二千万円の金ないし千五百万円の金を出せば許可をするというので、相当酒屋が許可をされて、その金を納めたという実例が、投書で私の家へ来ておる。これについて国税庁から、国税庁が始まつてからどれだけ酒をつくる許可をしたかという件数、及び酒屋の住所氏名、そういうものを参考委員会としてとつてみたいと思いますが、お諮りをいたします。いかがでしようか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  83. 田中彰治

    田中委員長 御異議ないものと認めまして、それを国税庁から取上げて、多少時日がかかつても調べて、そういう事実があれば、容赦なく相当な手続を皆さんと相談してとりたいと思つております。非常に投書が来ておりますから、投書もあとでごらんに入れてもよろしゆうございます。ひとつそういうぐあいにしたいと思います。
  84. 迫水久常

    ○迫水委員 こういうことが決算委員会でできるかどうかしりませんけれども、鈴木委員から会計検査院長にお尋ねしたときの院長のお答え、並びに私がお尋ねしたときの院長のお答えで、会計検査院は、すでに支出済みのものについては、政府決算の結了をしない前に一応の意見は出せるということがわかつたわけです。すなわち会計検査院検査の実行は、現年度のものについても進行しておるということがわかつたわけなのですが、院長もしきりに、各省の大臣、次官が会計ということについてもつと関心を持つてもらわなければならぬと言われているが、たとえば昭和二十五年度の決算報告に載つておるさつきの昭和飛行機の問題、あるいは味入りドラムカンの問題も、そのときに問題になつたら、必ず大臣はびつくりして会計を適正にしなければならぬと思うに疑いない。二年も三年もたつてからだから、知らぬ、おれのときでなかつたということになるのですが、きつと今でもこういうものが進行しているに違いない。そこで会計検査院から現年度の進行中の一、二の例をもらつて来て、それを議題に供すれば、これは何も事を好むわけではないですが、会計検査院長もおつしやつておられる、大臣に会計ということに関心を持たせなければいかぬということを援護し、そして今おつしやつた決算委員会の使命をはたすために、そういうことをやられたらどうでしよう。ちよつと皆さんに諮つていただきたいと思います。
  85. 田中彰治

    田中委員長 委員諸君にお諮りしますが、この間問題になつた炭鉱住宅問題もあります。私も炭鉱なので、私のところにも利害関係がありましようが、委員長はそういうことにこだわりませんから、炭住問題をここで取上げてみたいと思います。いかがでしようか。
  86. 佐藤基

    佐藤会計検査院説明員 あの問題は国会で問題になつて、さつそく調べさせています。もう大体終つているかと思いますが、とにかく大分前から手をつけております。
  87. 迫水久常

    ○迫水委員 会計検査院で、たとえば昭和二十五年度の味入りドラムカンとか、あるいは昭和飛行機の問題に匹敵するような、大臣も関心を持つべき問題であるというような問題がありますか。
  88. 佐藤基

    佐藤会計検査院説明員 まだ今のところないそうであります。
  89. 田中彰治

    田中委員長 ちよつと速記をやめて。     〔速記中止〕
  90. 田中彰治

    田中委員長 速記を始めて。
  91. 永田良吉

    ○永田(良)委員 関連して——私は先日の決算委員会で、鹿屋市の海軍航空隊と言いましたけれども、あとから聞いてみると工廠ということでありますが、海軍工廠の引込線のレールが、志布志・古江線の野里という駅から工廠まで約三キロぐらい敷かれておる。それが私が今回冬の休暇で鹿屋市に帰つた場合、停車場にレールが掘り上げられて運ばれておる。このレールはどうしたのであるかというので、私が自治警察や市長や市会議長に話して調査させたところ、つい一週間くらい前に市長が東京に参つて、その話によれば、事実かどうかは知らぬけれども、たしか三井鉱山といいましたか、北九州の炭鉱であるかもしれません、それに大体八百万円かで鉄くずとして払い下げた。それは私は当時の市長でしたから、工廠が爆撃を受けた際にレールが何本か折れたのは知つております。それは鉄くずだろうと思う。但し何百本か何千本かのレールは決して破損はしておらぬ。それが鉄くずとして全部売られたということは、私はどうも合点が行きません。だれが常識で判断しでも、三キロか二キロ半くらいのレールが、わずか八百万で売れるはずはない。あのレールの下に敷いてあるくり石さえも七、八百万の価値はあると思う。それに枕木も腐つてつてもまだある。こういうものは鉄くずではなくて古軌条として処分さるべきものではないかと思う。そういうものを今盛んに掘り上げているといううわさを聞いております。それであれば米軍が占領しておつたものを日本政府に返したのですから、今は大蔵省の財務局の所管だと思つております。しかしこれは私が市長をやめて追放になつた当時、鹿児島の財務局の鹿屋の出張所にも不正事件が二、三年前にあつた前例がある。それでどこでどういうことをしたか知らぬが、炭鉱に持つて行けば、今製造したレールと同じようなりつぱな働きのあるものが、中古品とはいえども、鉄くずとして処身されているから、こういう際に調査していただきたいと思うのであります。
  92. 田中彰治

    田中委員長 それは調べさせて報告をさせることにしております。
  93. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 今の各委員委員長からお諮りになりました迫水君の提案の件についてですが、今適切なケースがないとか見付からぬとかいう御説明でありましたが、これは各省一件を標準に、また政府機関一件を標準に、特別会計の大きなもの二、三について、比較的重要と思われる案件を検査院の方でお出し願い、なお委員の方からも、うわさでも投書でも何でもいいですから、相当根拠のありますものを持寄つて、これを適当に選択しまして、全部でなくても、さつき迫水委員の御提案になりました趣旨で審議する、こういうことにまとめていただきたい。
  94. 田中彰治

    田中委員長 これは私から申し上げて参考に供したいと思います。私が調べてみたいと思うのは商工中金です。これが非常に紊乱しております。それから住宅金融公庫です。これも紊乱して庶民階級が困つております。商工中金でいえば、大きなところにはどんどん金を貸すけれども、あの機構が大資本のやみ取引の機関になつてしまつつて、この機構がほんとうに動いておらぬということが一つ。それから住宅金融公庫は、ほとんど政治家とか権力者の方に属した者に住宅をやつて、それが金を納めてくれぬために回収が不能に陥つて、ほんとうに家賃を払つて入りたい庶民階級が入れないという投書が来ておりますから、これは委員の申し込みがあれば、会計検査院から調べてもらいたい。これは徹底的にここで取上げて調べていいと思います。
  95. 河野金昇

    ○河野(金)委員 それと同じことなんですが、国民金融公庫というのは、主として小さい者が貸せる対象になつておるのでありますが、静岡等ではすでに問題を起しております。問題を起しておらないところでも、わずか五十万、六十万の金を借りるのに、そこの人が、今度申込んだ所に行つて、幾らよこせということをやつている事実が私の耳に入つておるのさえ二つほどあるのであります。書類を出すときに一緒に行つてつたのでありますが、どうなつたと聞いたら、案はあとから国民金融公庫のが来て、幾らよこすかと言われたから、あとが恐しいからやめたという事案があるのであります。だから商工中金なんか調べられるときに、この庶民を対象としている国民金融公庫の不正に対してもひとつ調べていただきたい。このことをつけ加えてお願いしたい。
  96. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 今問題になりましたのに関連しておりますので、資料として開発銀行の貸出金のうち一口一億円以上のもの、それから国税庁の昭和二十五年以降の法人税の払いもどし金額、これも一億円以上のもの、その趣旨内容等を表にして提出することを当該官庁に難して要求するようにお願いしたいと思いますが、おはからいを願いたいと存じます。
  97. 迫水久常

    ○迫水委員 さつき吉田さんの言われたことを委員にはかりて決定されたらどうでしようか。
  98. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 私の申したのは、昭和二十七年度分を各省から一件ぐらい、それから政府機関のおもなもの、あるいは特別会計のおもなもの一件ぐらいを標準にして、会計検査院で重要と思われる案件を出していただいて、また各委員からもみずから聞き得たところ、投書等によつて——何でもよろしいですが、比較的信用し得るような案件についてお互いに持ち寄る。それを検討いたしまして、適当な数を審議に上していただく、こういう趣旨であります。この際おきめ願いましたら、いかがですか。
  99. 田中彰治

    田中委員長 ただいまの吉田委員の申出に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  100. 田中彰治

    田中委員長 それではさよう決定いたします。    ——————————
  101. 田中彰治

    田中委員長 本日法務大臣が出席されることになつておりましたが、法務大臣は総理大臣から呼ばれまして——これは秘書の方が来られて決してここへ出席するのがいやで言つておるのではない。必ずこの次に出席するからきようはぜひともあれしていただきたいというので、特にお使いがありました。そこで前会の法務省所管批難事項に対する質疑中保留せられておつた諸点について、この際刑事局長出席を願つておりますから、皆さんかも刑事局長に対して質疑をしていただきたいと思います。
  102. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 大体問題は二つになるわけであります。一つ批難事項にあげられました法務府の分、特に不正行為として七八ないし一〇三が上つております。これにつきましてほとんど検察庁の関係分になつておりますので、前金の政府委員の御説明では金を取扱つたのが多いので、そういう機会が多かつたということが指摘され、御説明になりておつたようであります。またその後出されました資料によりますと、その事由として従事中に横領した、こういうようなことがずつと書いてあります。私どもがここで明らかにしたいそういうのは、金を扱つておつたからこんなにたくさんに不正行為が出たのだというのでは国会としてはどうも納得しにくいのであります。そこでそういう片寄つておる事実はどういうわけか、なぜこういうような事件がこんなにたくさんに起るのであろうか、こういう点についてきようはいろいろと御用意くださつておると予期しておりますので、刑事局長から御説明願いたい。
  103. 岡原昌男

    ○岡原政府委員 ただいま御指摘のように、全国の検察庁におきましてたいへん不始末をしでかしまして申訳ないことと存じております。この批難事項に上りました諸点は、いずれもお話通り、検察庁の証拠金品を扱つておるものが多くでございまして、この原因が那辺にあるかにつきましては、実はその前年度、その前々年度から若干ずつかような事件が出ております。最高検察庁を通じいろいろ監査研究いたしておる次第でございます。この犯罪の原因はいろいろありまして、一概には言い得ないようでありますが、その大きな原因といたしましては、終戦直後に採用したいわゆるアプレの青年が、まだ心身ともに十分な程度に至十つていないところへ、つい重要な証拠品の取扱いというふうなことをまされたために、これをやつたというふうなものが相当多いようでございます。  次の原因といたしましては、終戦直後、昭和二十三年でございますが、検察庁の会計が裁判所から分離いたしまして、裁判所と検察庁が、従来ありました一つ会計を、二つにわけて取扱うことになつたわけでございます。そこで事務のなれました職員ちようど半分にわけられて、それぞれ足りないところを補いつつやつて行つたものですから、ついそのなれない面が不正というところに現れて来たのがかなりたくさんあるようでございます。  その第三の原因といたしましては、これは戦後の財政逼迫の折からやむを得ないことではございましたけれども、これまた検察庁と裁判所の分離に伴う物的施設、簡単に申しますと、倉庫とか金庫とか、そういつたような施設が完全に行つておらなかつた。たとえば相当な検察庁におきましても、まだその庁舎ができないために、バラツク住まいをしておる。証拠品等を保管する場所も、やむなく、かぎのかからない一室で預かる。あるいはかぎがかかつても、非常に粗末なものである。あるいは相当な現金、徴収金なんかを扱つておりましても、それを格納する適当な施設がないといつたよもな面がございまして、あれやこれや、その物的施設が不完全なことに起因することもあるようでございます。  その四は、会計法規が改廃せられましてそれで会計職員がそれになれないために、間違いを起した面もかなりあるようでございます。その他悪い面から考えますと、遊興費に窮したとか、いろいろなことはもちろんございますけれども、大体大きくわけまして、以上のような原因をわれわれは考えておるのでございます。  そこであわせまして、これに対する対策でございます。これらの事件の起りますその都度、実は起ります都度よりは、われわれといたしましては、かような事件が未然に防止し得るように、しよつちゆう経理部の方から会計の部内監査の職員が、現地に参つております。しかしこれは、何分にも人員に限りがございますので、特に会計報告のおそい庁、あるいは数字的にしよつちゆう誤りのある庁等を選んで、会計の部内監査を実施しております。ただ本庁から出て会計審査をいたしますので、その本庁は大体見得るのでありますが、十何支部等をついでに見るというので、区検等には目が届かぬ場合がございます。この区検のような人員の少いところで、やはり目が届かぬために犯罪が起りやすいという面も一、二あるのでございます。なおこの監査につきましては、最高検で監査の規定をつくりまして、最高検の検事ほか堪能の事務官をつけまして、一年間におそらく全国で十数箇庁ないし二十箇庁行つていると思います。その監査をいたしております。この際には、単に本庁のみならず、支部、区検等にも今実施しておもますので、かなりこの監査による事故防止の効果が上つておると考えております。  それから教養の面でございますが、これは会計法規の改廃等に伴いまして、随時教養はいたしておりますが、何分にも会計に従事している職員の数と、この教養を受ける数とが、一年間でバランスがとれるというわけに行きませんので、これは数年を費して十分に徹底させたいといもので、すでにその四年目に入つておるわけでございます。  なお随時会計課長の会同その他も催しまして、国会等で批難事項で問題にせられました点等は、つぶさにこれを伝えまして、爾後のいましめにしておるわけでございます。  それから倉庫、金庫等の不足の点につきしては、その後だんだん大蔵省の御理解も得て、毎年若干ずつその設備がふえて参りますので、この点からする犯罪は、かなり防止し得るのじやないだろうか、かように存じております。  最後に、行政的な処分並びに刑事処分でございますが、この点につきましても、別途お配りいたしました決算の説明書で明らかであります通り、かなり重い市政処分並びに刑事処分を加えております。これは検察庁が、他の官庁あるいは民間の犯罪を取締るべき地位にあるという点にかんがみまして、みずからをいましめるためにも、決して他に比較して軽かるべきはずはないというふうな見地かち、特に検事正その他を初めといたしまして、かなりの処分を加えておるのでございます。  以上のような次第でありまして、たいへんいろいろと御迷惑をおかけいたしておりますが、漸次さような方向に、私どもといたしましては努力して、国民税金が正しい方向に使われるように、また徴収金その他の収入につきましても、それが正当な手続によつて、正当に国庫に入るように念願しておる次第でございます。
  104. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 検察庁は犯罪捜査の警察とともに、犯罪と直接つながりを持つている官庁である。従つてこれを構成する人々は、そういう関係において、一歩誤りますと、やはり部外の人の犯罪に同調するといつたような危険、誘惑がある官庁であると思うのであります。そこで今の原因並びに結果の状況も、大体想像できるのですが、こういつたところには、やはり外の犯罪を何か適当にもみ消すとか、いろいろそういつた事件との関連、そういうものはなかつたのでしようか。あるいはあつたのでしようか。その辺はいかがなんですか。
  105. 岡原昌男

    ○岡原政府委員 ただいまお尋ねのような、いわゆる事件のもみ消し運動といつたようなものは、これは全然ないと申し上げましては、実はうそになりますが、われわれのところに報告に参つておるのを丹念に研究したところでは、ほとんどないといつてもいいくらいであろうかと存じます。実は統制経済のはなやかなりし時代以降、ともすれば、業者の方が利潤を追求するのあまり、いろんな手を用いて贈賄をやり、それにかかるという事例がたくさんございました。検察庁に関しましても、実はその間いろいろな風評が立つたことがございます。われわれといたしましては、検察庁ともあろうものが、さような運動に左右されてはいかぬということからいたしまして、特にその当時厳重なる、部内の粛正と申しては言葉が強過ぎますが、官紀の振粛についての通牒が出され、会同を持たれております。そのためばかりではございませんが、検察庁というところは、御承知でもございましようが、かなりそういう点については、潔癖すぎるほど潔癖に教育を受けておるところでございまして、さような申入れがありましても、これを即座にはねつけるということが、国民の間に明らかになつておる。少し言い過ぎかもしれませんが、さような自負心を持つておるような役所でございます。従いまして、最近としては、たとえば検察庁に行つて頼んでやるから、おれに何ぼ金を掛だせというような事案——これは詐欺でございますが、さような事案も相当つております。従来はさようなことを言つて、ともすれば、被害者の方は何とかして助かりたいというつもりから、さような甘言に乗ぜられるという事案もかなりございました。その都度被害者を十分調べまして、その事件は詐欺なり、あるいは恐喝なりとして起訴しておるのでございます。最近はさような事件も滅つて参りました。全般的に検察庁の潔癖さについての御理解を得つつあるのではないだろうか、かように存じております。
  106. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 もう一点だけお伺いしておきます。裁判所の審査をしましたときに、裁判所の批難事項は一件のみでありました。ところでこの批難事項に近似した程度の事件がずいぶんたくさんありまして、しかもそれは民間から寄付を受けて裁判所の建物をつくつて、中には裁判官が使用するという目的が、実はそうでないものが使つておつたというような事例すら、資料によつて明らかになつたのであります。それがずいぶんとたくさんありまして、驚いたわけでありますが、検察庁の方面におきましては、一向それがないのであります。そこで批難事項として最終決定があつたかなかつたかは別といたしまして、そういうようなことで問題になり、あるいは検査院から審問を受けたような事実はなかつたのでしようか。
  107. 天野武一

    ○天野政府委員 寄付の点で会計検査院の審問を受けた事案はございません。
  108. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 建物は、検察庁においても相当全国的に民間からの寄付でお建てになるということがあるのでございますか。
  109. 天野武一

    ○天野政府委員 それはございます。たとえば昭和二十五年の例をとりますと、九件ほどございます。これは各地において後援会がつくられたり、町が寄付してくださいましたり、あるいは大きなところで、名古屋でいえば一つの特別区で寄付してくださつたり、そういうような例でございます。
  110. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 次は将来のことにもかかわりますが、実は後援会をつくられたり、純正な寄付であるということが一応建前になりますけれども、ともしますると警察、裁判所、検察庁、税務署、消防署、そういつたところの建物が寄付されるのであります。われわれ民間人の建物が寄付によつてつくられるというようなことは絶無であります。そこに心理的にどういう原因、事情があるかということを深く洞察せなければなるまいと思いますので、単に批難されないということだけでは済まされない問題が、ひそんでおるものと私は思います。でありますから検察庁のみならず法務省全体で、これは大臣に申し上げたいことでありますけれども、できるだけそこは厳正は厳正として、一本で貫いてほしいと思うのであります。よしんば善意、公正に寄付があるといたしましても、した人は大手を振つてその役所に出入りするということになれば、何かそこに暗いものがつきまとう危険がありますから、こういうことがないように、これは希望として申し上げておきたいと思います。  それで次に私がお尋ねしたいのは、この間問題になりました印紙変造団の件でありまして、これは刑事局長に伺いたいのです。この資料によりますと、印紙の出所が通産省その他の機関といいますと、これは官庁であろうと思います。そうして被害を受けたのは政府関係した者は司法書士その他の者、全国に今のところ二千数百万円、数額等まだよくわからぬ、こういうことでありますので、われわれ明らかにして行きたい点は、一つは長い間これに気がつかなかつたということでありますけれども、これは、前会問答しましたから、この際刑事局長に伺わないことにいたします。ただ通産省その他の官庁の保管中の物件が利用されたという点に疑問を持ちますのと、出所がことごとく政府関係になつておるのだが、しかし、起訴その他の処分は、司法書士だとかそういうものだけでありますのは、どういうわけであろうというのと、それから緒に問題を出しておきますが、司法書士に対しまして、何らかお考えになつておいた方が、今後のためにもいいのではないか、こういうふうに思います。  大体伺いたい点はその二点でありますが、まず一応この変造団事件の概貌を、可能な範囲で御説明願つて質問にお答え願いたいと思います。
  111. 岡原昌男

    ○岡原政府委員 一応ただいままでに判明いたしましたこの犯罪の概要をお話いたしまして、特にお尋ねの諸点に触れて行きたいと思います。  現在までのところ、この事件は全国的にまたがりまして、最も規模の大きいのは、東京地方検察庁で捜査をしておる事件関係でございます。この東京の駅件の概要をお話いたしますと、全貌が一応わかりますので、それから始めたいと思います。  この事件は、警視庁の刑事部の捜査第三課に、全太烈という者が薬品を使つて収入印紙の消印を除去しているという投書がございました。それに基いて同課及び所轄警察において捜査をいたしました。昨年の三月二十五日、全太烈外三名の朝鮮人を逮捕し、取調べの結果、使用済みの印紙の出所及び販売交付先等が判明いたしました。爾後これに関連して広範囲に捜査が進められて来たのでございます。  捜査の開始以来本年二月十日までの統計を申し上げますと、これは東京関係でございますが、不正印紙使用事件関係の被疑者として検挙された者総人員三百十三名、このほか全国的に六十八名、計四百七十八名の検挙人員と相なつております。  罪名別は印紙犯罪処罰法が大部分でございましてこれに贈収賄、窃盗、詐欺、贓物牙保、故買といつたようなものがくつついております。  職業別に見ますと、司法書士、印紙ブローカー、印紙売りさばき人、法務事務官、郵政事務官、弁理士、海事代理士、計理士、農林事務官、水産事務官、雇、通産事務官、会社登記係、登記所の小使、使用人その他ということに相なつております。  現在までに起訴されました者は、東京において百五十五名、その他の各地において六十八名、合計二百二十三名と相なつております。  なお現在までに判明したところによりますと、不正印紙の使用された期間は、昭和二十五年の二月ごろから昭和二十七年四月、ごろまでと考えられております。その出所でございますが、これら不正に使用せられました印紙の出所は、先ほどお話のございました通産省、東京通商産業局、特許庁、水産庁、農林省、大体そういつたことに相なつております。  さて、この数額はどれくらいあるかという問題でございますが、これがたいへん困難でございまして——というのは、検察庁として現在調べておりますのは、一つ事件として印紙の行方をずつと上から下まで考えておりますが、犯罪事件として起訴された金額を足して参りますとダブつて参りますので、これを印紙の行先から一つ一つ別に計算するということはほとんど困難でございます。ただそれらを推定し得る一つ資料といたしましては、警視庁の科学研究所において、昨年五月一日から九月三十日までの間に、各警察署の依頼に応じて、事件発生区域内の各登記所の保管にかかる登記申請書について、一定期間を定めて鑑定いたした結果、不正印紙と判明したものが八万六千余枚、額面の金額が一億三千余万円となつております。高額の印紙としては、額面十万円のものが百九十七枚、五万円のものが二百六十九枚といつたような調子で、なおこの鑑定は額面千円以上の印紙については、一応全部鑑定いたしました。額面五百円以下の印紙については、抜取り検査でやつております。  この犯行の概要でございますが、各官庁において使用済みのものとして消印を施し、保管中の印紙を、当該官庁の職員その他が盗み出す等の不正の方法によつて、他に流れ出しております。これを印紙ブローカー等が買受けまして、印紙ブローカーがみずから、または他人を使用して、特殊な薬品を用いて消印を除去する。その上これを司法書士、印紙売さばき人等に売却いたしまして、結局これらの印紙が登記所に納まるというふうな形に相なつております。従いまして、検挙人員の四百七十八名のうちには、さようなほかの官庁の者、あるいはブローカー等も入つておるわけでございます。登記所の関係の者はそのほんの一部分、さようなことに相なるわけであります。  この事件発生の原因につきましてはいろいろ考えられるのでございますが、使用済みの印紙の処理並びに保管方法が各庁統一を欠いておつた。これはこまかく言いますと、ちよつと技術的になりますので省略いたしますが、それぞれ書類にこの印紙を張つて、これに消印をしてその書類がまわつて本省に納まる。その径路が、いろいろ各省の取扱いが違つております。その間数量と金額を適当な段階において検査するなり、あるいはチエツクするなりというふうなことが欠けておる点が一つだろうと思います。それから保管者側において、使用済みの印紙の保管についての関心が薄かつた。たとえば印紙の張つてある書類を受取つて、これを単に自分の机のひきだしにぽつとほうり込んでおく、あるいはその辺の戸だなの中に入れておくというふうな粗雑な方法がとられておる例もございます。従つて、実際に事件になつてみまして、一体幾ら盗まれて、幾らがほんとうに書類に張つてつたのかということが今になつて実は捜査がつかぬといつた面が出て参つておるのでございます。たいへん残念なことでございます。なおその次には、取引高税の印紙が、例の取引高税廃止の際に業者の手元相当つてつたのでございます。これを印紙に切りかえ使用せしめる措置をとつたので、これが多量に使われ出した。これで取引高税の印紙といわゆる収入印紙とがごつちやに使われました。これがやはり犯罪を誘発さしたのではないだろうか、かようなことを考えております。最後に印紙の納付を受ける側、つまり書類で印紙を受取る側の方も、あとでわかつたことでありますが、若干疎漏の点があつたのではないだろうか。これはただ実際に私ども偽造、変造せられました印紙を見ますと、もうどんなに日にすかして、あるいは目を近づけて、虫めがねを使つても、偽造、変造たることがわからぬ印紙が相当たくさんございますので、一概に登記官吏その他を責めるわけにはいかぬのでございますけれども、中には若干疑わしいと思われるものもあつたようでございまして、それらの点につきましては、全然責任がなかつたというふうにも言えまい。従つて、仕事が相当忙しいのでしようが、特に高額の印紙等については、もう少しそういうふうな点に目を注いでおつたら、未然にある程度防げたのではないだろうか、かように考えられる次第でございます。  そこで今後の対策でございますが、まず第一には印紙の消印の方法を改善すること、これは口幅つたいようでありますが、登記所関係においては消印というのが実に巧妙で、決してあとで偽変造できないように消印が施されております。ほかの官庁もぜひそれにならつていただきたい。この消印の方法と、次には収入印紙についても千円とか一万円というような高額のものがあるのでありますからして、紙幣に準ずるような程度の非常に高度の技術を用いなければいかぬような印刷をやつていただきたい。その次には使用済みの印紙の取扱いにつきまして、関係機関との相互の連絡を密にいたしまして、ことにその数量と金額を正確に把握する方法を考慮し、その保管の方法を完全にするということでございます。これは先ほど原因として申し上げた点に対する対策になるわけでございます。さような点に関連いたしまして、特に登記所の関係におきましては、最近大蔵省の方から印紙の見本帳をとりまして、全国の登記所すみずみまで、本物の印紙はこれこれだというものを配つてございます。従いまして何か疑問がありますと、それと対照すればすぐわかるというようなことをいたすとともに、若干の予算の配付を受けましたので、印紙の簡易鑑別器を備えまして、疑わしい印紙が参りました際には、紫外線に当てるとある程度まではわかつて参ります。さような機械も要所々々の登記所に備えつけたような次第でございます。なおこれらの刑事事件といたしましては、目下地方検察庁において鋭意捜査を続行中でありまして、事件の全貌はただいま申し上げた通りでありますが、なお全部的にこれを処理するに至つておりません。あと二箇月か三箇月で全部の処理を終る予定になつておる次第でございます。  なおつけ加えて申し上げますが、先ほど不正印紙の数額が二千数百万円に上るというお話でございましたが、それは登記申請の際、だれが不正印紙を使用したのか、その犯人が確定できて、すでに起訴された分が二千数百万円になるというのでありまして、また私が先刻一億三千余万円と申し上げたのは、犯人がだれであるか判つたのもあり、判らぬのもあり、また不正印紙たることの認識があつたものもあり、その点判然せぬものもあり、ともかく鑑定により偽造または変造の印紙たることが客観的に確定し得たのが、それくらいに上るという意味でございます。御参考までに一言申し添える次第であります。
  112. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 なおこの司法書士は、法律によりまして、独立の機関として民間においては登記その他の関係において非常に重要な役割を持つておりますので、これが相当関与しておりますが、この方面に対して何か将来のために対策がおありでないかと思いますが、その点はいかがですか。
  113. 岡原昌男

    ○岡原政府委員 司法書士法が先般改正になりまして、司法書士に対する監督の面が実は非常に薄く——薄くというりよりもほとんどないようなことに相なりましたので、実はかような事件が起きました際の対策といたしまして、なまぬるいようなことに相なるかと思いますが、最初の司法書士の認可のときに押える。かようなものについて後日目起らぬように認可の際に押えるということが一つ、それから事件を起した者に対して懲戒の発動をするという点が一つ、この二点で押えたい、かように存じております。
  114. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 それから通産省、農林省、特許庁などの、こういう官庁において保管されておつたものが、全部使用済みの印紙として利用されておりますが、これは他面今だんだんと問題が大きくなりつつあります官紀弛緩、綱紀頽廃、こういう問題と結んで考えなければならぬと思います。これもあなたにお尋ねするのはいかがかと思いますが、ひとつついでにそういう面から、一種の刑事政策的な何かの考え方があろうと思いますので、何か刑事局なり、法務省側のそういつた方面に対する御意見がありましたら伺います。
  115. 岡原昌男

    ○岡原政府委員 およそ官吏の官紀粛正につきましては、法務省といたしましては特に深い関心をかねて持つておる次第でございます。先ほども統制経済に関連して申し上げましたが、その後事あるごとに、全国の検察官会同あるいは実務家会同等におきまして、これら官吏の犯罪事件についての特段の配慮方を要望しておる次第でございます。本件につきましても、かような大きな国損を生ずるに至りましたその原因が、御指摘のように、通産省、農林省その他の役人から出て参つたという点にかんがみましてこれらの当面の責任者に対しましては、十分なる厳罰をもつて臨むべく、起訴人員を申し上げますと、通産省の関係では十五名、農林省の関係で五名、郵政省の関係で七名といつたような検挙をいたしまして、その他計理士、弁理士、海事代理士というような、それらの補助をする人たち、あるいは印紙売りさばき人といつたようなもの、つまりそれらを取巻く人たちの犯罪につきましても、強い態度をもつて検挙に当つておる、さような次第でございます。
  116. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 今の起訴人員の点に関してですが、もうちよつと詳しくおつしやつていただきたいのです。通産省は何局ですか、またがつておりますか。
  117. 岡原昌男

    ○岡原政府委員 手元にはただいま持つて参りませんが、大体繊維局が多かつたように思います。
  118. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 農林省は水産庁の……。
  119. 岡原昌男

    ○岡原政府委員 こまかいことはいずれ調べました上で……。
  120. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 もし何でしたら、それは官紀問題として一連の他のケースとの関係もありますので、参考までに委員会資料としてお出し願いたいと思います。
  121. 岡原昌男

    ○岡原政府委員 承知いたしました。
  122. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 それからなおちよつと補足的に一点だけ尋ねておきます。これは私が聞き漏らしたかと思いますけれども、これは犯罪行為の時といたしましては、いつからいつまでの事件になつておりますか。
  123. 岡原昌男

    ○岡原政府委員 先ほどちよつと申し上げたと思いますが、昭和二十五年二月ごろから、昭和二十七年四月ごろまでと相なつております。
  124. 吉田賢一

    吉田(賢)委員 終ります。
  125. 田中彰治

    田中委員長 それでは本日法務大臣が欠席されましたので、法務大臣には次の委員会出席していただくことにいたしまして、以上で法務府所管の審理は本日は終りたいと思います。次会は大蔵省所管について明後十三日、金曜日、午後一時から審理いたします。  本日はこれで散会いたします。     午後四時三十八分散会