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1953-03-11 第15回国会 衆議院 経済安定委員会農林委員会通商産業委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年三月十一日(水曜日)     午前十一時三分開議  出席委員   経済安定委員会    委員長 遠藤 三郎君    理事 加藤 宗平君 理事 栗田 英男君    理事 中村 高一君       内田 常雄君    小川 平二君       越智  茂君    前田 正男君       横川 重次君    秋田 大助君       菅野和太郎君    八木 一男君       福田 赳夫君   農林委員会    理事 青木  正君 理事 野原 正勝君    理事 井上 良二君       秋山 利恭君    高見 三郎君       中馬 辰猪君    綱島 正興君       松野 頼三君    村松 久義君       高倉 定助君    中村 寅太君       川俣 清音君    中村 英男君  通商産業委員会    委員長 坪川 信三君    理事 小金 義照君 理事 高木吉之助君    理事 河野 金昇君       中峠 國夫君    福井 順一君       牧野 良三君    南  好雄君      生悦住貞太郎君    高橋 長治君       長谷川四郎君    山手 滿男君       山口シヅエ君    加藤 清二君       木下 重範君  出席政府委員         公正取引委員長 横田 正俊君         通商産業政務次         官       小平 久雄君         通商産業事務官         (企業局長)  中野 哲夫君  委員外出席者         経済安定委員会         専門員     圓地與四松君         経済安定委員会         専門員     菅田清治郎君         農林委員会専門         員       岩隈  博君         通商産業委員会         専門員     谷崎  明君     ————————————— 本日の会議に付した事件  私的独占禁止及び公正取引確保に関する法  律の一部を改正する法律案内閣提出第一一三  号)     —————————————
  2. 遠藤三郎

    遠藤委員長 これより経済安定委員会通商産業委員会連合審査会を開会いたします。  私が経済安定委員長でありますので、委員長の職務を行います。  本日は私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。これより質疑に入りますが、質疑は通告によつてこれを許したいと存じますからあらかじめ御通告願います。それでは質疑の通告がありますからこれを許します。生悦住貞太郎君。
  3. 生悦住貞太郎

    ○生悦住委員 昨日の本会議総括質問をいたしたのでありますが、総括質問の中で、細部にわたる質問を本委員会において再びやることを演説いたしました。少しこまかくなりますが、二、三さらに質問してみたいと思います。この法案の「第六条中第一項及び第二項を次のように改め、第三項を削る。」というのでありますが、これはこの改正案によりますと、国際カルテルへの参加は事実上絶対禁止取扱いを受けておりますが、わが国のように貿易の振興、産業発展等のためには、この国際カルテルに参加することが必要な場合も大いにあると思うのです。ここに私は少し疑問を持つのですが、かりに現在航路同盟といつて、三、四社くらいは国際カルテルに入つております。これをひつくり返して考えますと、こういうようなものは国際法無視じやないか、かように考えますので、横田委員長答弁を煩わしたいと思います。
  4. 横田正俊

    横田政府委員 この六条は、今お話通り国際カルテルヘ禁止規定したものでございます。大体最近の国連等情勢を見ましても、こういう取引制限的な国際的な契約に加入することを各国において厳重に取締つて参るという線が国際的に出ておりまして、この六条の規定はまさにその線に沿つた規定でございます。  ただ今お話のように、海上運送関係その他特殊なものにつきましては、あるいはこういう一種の国際契約をある条件のもとに認めるということがあり得るのでございます。御承知のように海上運送法の二十八条におきまして、運賃同盟はある一つ規制制約のもとにこれを適法といたしまして、これを独占禁止法適用除外ということをはつきり法律規定しております。もしもそれと同じような関係がございまして、どうしても国際契約取引制限的な面があるけれども、国際的な必要からこれを適用除外にするということが必要でございますれば、特別の立法をもつて処置すべきものと考えております。
  5. 生悦住貞太郎

    ○生悦住委員 どうしてもこれは適用除外のところへそういう一項目を加えて特別の取扱いをするようにしないと、今後に問題を残すのではないかと思いますが、適用外に一項を加えることが必要であると思われるが、横田委員長にお尋ねいたします。
  6. 横田正俊

    横田政府委員 具体的にどういうものを適用除外にしなければならないかということについて、今私自身といたしましてただいま申し上げました海上運送法以外にどういうものが考えられるか、ちよつとはつきりいたしませんが、もし独占禁止法の中に規定するという場合に、たとえば日本国民経済上必要であるとかいうような、きわめて一般的な形でもし適用除外をするというふうなことになりますと、これは今度の独占禁止法改正におきましても、実はそういう非常に一般的な条項をもちまして適用除外をするという方針はとつておりませんので、それと少し違つた面が出て参ります。  今回は、御承知のようにやはりカルテルは非常な弊害を伴うものであるという前提に立ちまして、特に法律をもちまして必要な場合にこれを適法にして行く、こういう線が今度の独占禁止法改正の中に一貫しておるわけでございまして、その線とも非常に矛盾いたして参りまするので、そういう一般条項的な適用除外はとうてい独占禁止法の中に規定し得ないと存じます。  先ほども申しましたように、特に何か特殊の事情がございまして、必要なものは特別の立法をもつてここに適用除外して行くというふうにやるべきじやないかと考えております。
  7. 生悦住貞太郎

    ○生悦住委員 次に移ります。第十条でありますが、第十条では「会社は、国内会社株式取得し、又は所有することにより、一定取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合には、当該株式取得し、又は所有してはならず、及び不公正な取引方法により国内会社株式取得し、又は所有してはならない。」こういうふうになつておりますが、この精神はどういうところから出ておるものでありますか。説明を願います。
  8. 横田正俊

    横田政府委員 御承知のように、現在の第十条は、比較的株式取得所有を強く制限しておりまして、ただいま仰せの二つの問題のほかに、株式所有することによりまして、会社間の競争を実質的に減殺する、その減殺した結果は、必ずしも一定取引分野競争実質的制限にならない場合でも、関係会社の間の競争を実質的に制限、減殺するという場合、及び競争会社間では一株も持つてはならないというきわめてきつい規制がございましたが、今般の改正によりましては、そこまで株式取得所有規制いたしますることは、いろいろ必要以上に厳格過ぎるという点からいたしまして、今申しました二点を取除きまして、結局株の取得または所有によりまして、それを放置しておきますれば、一定取引分野における競争を実質的に減殺することになるその手前におきまして、株式取得所有そのもの取締つて参ろうという線と、もう一つ一定取引分野競争を実質的に制限するということとはならなくても、株の持方がいかにもおもしろくない、この法律規定しておりまする不公正な取引方法によつて株取得するという場合は、やはりこれを禁止する必要がありはしないかというので、この二点に限定いたしまして、その他の現行法のきつい規制はこれを取除いたのでございます。
  9. 生悦住貞太郎

    ○生悦住委員 次に第十一条のことでありますが、昨日私は公取委員長に対して本会議質問いたしましたが、ここに百分の十以上の持株を持つてはならないことがあり、これを基準に置いておる、こういう答弁でありましたが、どういうわけで、それを百分の十以上を越えることが危険であるのか、越えてはならないのか、そういうことについて具体的に説明をしてもらいたいと思います。
  10. 横田正俊

    横田政府委員 この点は結局、結論的に申し上げますると、金融業というものは、非常に他の会社にいろいろその事業上に支配力を持つ、いろいろな面で金融業支配力を持つものでございまして、これは現在の日本の実情をお考え願いましても、まことにその通りであろうと存じます。従いまして、一般の普通の事業会社が他の会社株式を持ちまする場合よりも、金融業者が他の一般会社の株を持ちます場合を厳格に規制して行く必要があると存ずるのでございます。ただ現行法はそれを非常に制約いたしまして、百分の五というような線にいたしておりまするが、これはあまりにきつ過ぎまして、株式消化等にさしさわりの出る面もございまするので、今度はそれを百分の十に引上げましたが、しかしこの線は、昨日も本会議で申し上げましたように、この線がぎりぎりの線でございまして、これ以上、金融会社が株を持つということは、先ほど申しましたような観点から、好ましくないと、こういう建前でございます。ただ昨日も申し上げましたように、きわめて特殊な場合にこの原則を当てはめますことは、多少無理な面もございますので、それを但書で若干是正をいたすというのが今回の改正の趣旨でございます。
  11. 生悦住貞太郎

    ○生悦住委員 第十三条、第十四条、第十五条のことでありますが、この会社役員または従業員が、同じような種類の会社役員兼任してはならないとか、株式取得を、一定取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合とか、いろいろの規定をいたしておりますが、これも一応、どういう意味からそういうふうな制限をしなくちやならないのか、そういうことについて御説明を願いたいと思います。
  12. 横田正俊

    横田政府委員 先ほどから申し上げておりまする十条、十一条、十三条、十四条、これらは御承知のいわゆるトラスト規制規定でございまして、結局会社間の協定をもつて、いろいろ競争制限することは、カルテルいろいろ制限規定をもつて防止いたしますが、そういう協定なしに、たとえば株式を持ちましたり、あるいは役員を他の会社に派遣いたしますることによつて、そういう協定などはなくても、そういう株式の保有、役員兼任を通じまして、他の会社事業活動制約し、競争を実質的に制限するということが行われまするので、これがいわゆるトラスト規制を必要とする理由でございまするが、ただこれも現行法は、たとえば十三条の役員兼任につきましても、競争全面的競争でない場合、いやしくもその会社事業の間に競争がございますれば、役員は絶対に兼任をしてはならない。従業員を向うの役員に送り込んではならない、というようなふうになつておりまして、また個人株式取得につきましても、ちようど先ほど会社株式取得について申し上げましたとほぼ同一の、きわめて強い規制がございまして、これは十条の改正とまつたく歩調を同じにいたしまして、役員兼任も、先ほど申されましたように、一定取引分野における競争を実質的に制限することになるその手前において押える、あるいはこの二項に新たに明記いたしましたように、不公正な競争方法によつて役員無理やり競争会社に押し込んで来るというようなことだけを禁止する。十四条の個人株式取得につきましても、まつたく第十条の会社の場合と同じ線で規制をいたすこういうふうにいたしたわけでございます。  なお十五条につきましては、だんだん他の会社合併あるいは営業の譲り受け等の方法によりまして収吸して参りまして、そこに大逆な企業ができ、それが一定取引分野競争を実質的に制限して参るというようなことは、やはり取締る必要がございまするので、今回は十五条につきましては大した改正は加えておりませんが、この合併規制ということは、現行法の線を大体守つて参りたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  13. 生悦住貞太郎

    ○生悦住委員 その合併制限についてでありますが、会社合併制限については、改正法案は不当な較差が生ずることになる場合だけを制限条件の中から落しているだけであつて、不公正な取引方法による場合はもちろんのこと、当該合併によつて一定取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合も現行規定通り合併は認められないことになつておると思うのです。しかしながら当該合併実質的競争制限となる場合でも、産業合理化のためこれを認めることが、国民経済的に見て非常に望ましいことであるというふうに私どもは考えておりますが、これによつて、このような場合には主務大臣があなたと協議して認可するような道を開くようにする方がいいのではないかと私は思います。それからさらに会社合併でありますが、当事者同士が話し合つて、これはどうしても合併すべきであるというふうに考えておるのに、何も公取通産省側から文句を言われる必要はない。無理やり会社を乗取るとか、あるいは無理やりに重役を送つて片方の意思を曲げてやるとかいうような場合は、これは問題にならないことだと思いますが、かりにこういう例もあります。競争相手をなくして、消費者に迷惑をかけて、高いものをつくるというようなことになる場合はいけないというのでありますが、小さい幾つかの会社が統合して一つりつぱな経済単位になるようなものをつくり得るような方向に持つて行つて、よりよき良質、廉価なものを供給されるとしたら、そうした方向に持つて行くことの方が好ましいのではないかと私は考えておりますので、そうしたことに対する御意見を承りたいと思います。
  14. 横田正俊

    横田政府委員 合併につきましては、ただいま小さな企業が合わさつて一つ経済的なりつぱな単位となつて行くことの方がむしろ望ましい、そういうことを奨励すべきではないかというお話でございますが、これはまことにごもつともでございます。ことに終戦後できましたもろもろの弱体な企業は、相当整理統合せられまして、今仰せ通りの相当しつかりしたものになつて行くことは、われわれといたしましても非常に望ましいことと考えております。そういうようなものは、大体第十五条の制約にはかかつて参りませんので、現在公正取引委員会で幾多の合併事件を受理いたしまして調べておりますが、大体今回の第一号あるいは第二号の制限条項にひつかかつて来るものはないのでございます。その意味におきまして、この合併条件というものが、一般に多少誤解されておるように実は私たちは考えておるわけでございます。ただこの条件を踏み越えてもなお大きな企業がだんだんできて来る。それも場合によつては、先ほど仰せられましたように必要があるのではないか、ごとに両方合意でやつて行く場合には、それを認めるべきではないかというお話でございますが、問題がここまで参りますと、結局一定取引分野における競争を実質的に制限することになるような合併というものは、つまりそこに一つ独占体というものができることを意味するわけであります。つまり独占の中にも、これを認めていい独占があるじやないかというお話になるわけでございます。しかしここまで参りますと、結局問題は、なるほどある場合には、そういう非常に大きな企業があることが必要のような場合があると思います。しかしその場合には、それは私企業というような一つの形をとるにいたしましても、おそらく国家の非常な統制のもとに置かれ、公益的な立場において運用されるようなものにかわつて参らなければならないのではないかと考えます。そうなりますと、単に独占禁止法の中にあるいは公共の利益に反しないとか、適合するとか、あるいは国民経済上必要な独占はこれを許すとかいうような一般的な条項で処理すべきものではなくして、これは特殊の立法をもちまして、ある産業についてそこまでの必要がどうしても考えられるときには、特殊な産業といたしまして、今申しました国家的統制問題等もこの中に多分に入れて問題を解決すべきではないかというふうに考えております。  なお、合意でやるものは何も公取やなんかで文句を言う必要はないではないかということでありますが、これはカルテルの場合も同じでございまして、カルテルもすべて合意でああいうことをしますが、しかしそれがやはり競争制限し、その影響が関連産業なり、ひいては消費者に及ぶというその面が困るのでありまして、何も当事者合意だから公取が黙つていていいというわけには参らないわけでございます。
  15. 遠藤三郎

  16. 栗田英男

    栗田委員 公取委員長に一点お尋ねしたいのです。ここに「私的独占禁止法改正要綱及び解説資料」というものが二月三日付で配付されております。これの十ページの8の主務大臣との関係で、これはおそらく一番最初公取原案だと思いますが、これには「主務大臣意見をきき、これを尊重しなければならない」とあつて、これが二月三日の公取原案のように考えます。それからその後、これも公取から出された資料ですが、これは二月十六日に「私的独占禁止法要綱案に対する各省意見」というものがまとめてあります。これを見ますと、大蔵省は公取認可で、主務大臣と協議、通産省は、認可主務大臣で、公取同意経済審議庁はこれと同じ、農林省は、認可公取、運輸省も同じく公取、こういうのが大体二月十六日の各省意見として提出されております。最後に二月二十六日に配付された政府原案を見ますと、通産大臣認可公取委員会認定と、全然これに書いてない認定というように決定をされておりますが、この間における閣議決定あるいは次官会議模様等を、きわめて簡単に要点だけ御説明を願いたいと思います。そのかわつて行つた経過でございます。
  17. 横田正俊

    横田政府委員 ただいまこの認可をめぐる関係官庁の間の意見の相違につきまして御指摘がございましたが、公正取引委員会最初に立てました案は、御承知のように、主務大臣意見を尊重いたしまして公正取引委員会認可をいたすという線を出したわけでございますが、主として通産省におきまして、輸出取引法特定中小企業の安定に関する臨時措置法におきましては、カルテルや、あるいは組合の結成、あるいはその組合員の遵守すべきいろいろな事項の決定に対しまして、主務大臣認可をいたし、公正取委引員会同意をするという形をとつておりますような関係もございまして、この独占禁止法の中の今度のカルテルの認容につきましても、やはり主務大臣産業行政上の見地からしまして、認可権を持つべきである。もちろん公取同意前提としてでありますが、主務大臣認可権を持つべきであるという、通産省としましては、もつともな見解が示されたわけでございます。その点は次官会議におきましても意見の調整ができませんで、要するに政府認可ということで、要綱の形によりまして閣議に出されたわけでございます。しかし閣議におきましては、やはり通産大臣認可ということで、但し、具体的には法制局長官を中心といたしまして、関係次官においてよく検討して適当な案を立てるということで、そのときの閣議では本ぎまりになりませんで、また次官会議に返りまして、関係次官が集まりました結果、大体法制局意見によりまして、公取立場認定ということでもつて公取の線をはつきり出しました。ただ閣議決定もございますので、主務大臣認可という形式は残すということによりまして、結局実際問題といたしましては、主務大臣公正取引委員会との緊密な連絡のもとに、この認可の仕事をやつて行くということになつたわけでございます。
  18. 栗田英男

    栗田委員 通産大臣がおらないので、政務次官にお尋ねいたしますが、ただいま公取委員長お話によりますと、最終的の次官会議で、主務大臣認可公取委認定というふうなことに決定をした。もちろんこの法案もそうなつているのですが、そこで、通産大臣認可基準というものは一体どこにあるのですか。
  19. 小平久雄

    小平政府委員 認可基準につきましては、法案の第二十四条の三に明記してございます。
  20. 栗田英男

    栗田委員 どうもそういうことを通産大臣が言うとたいへんだと思つて質問したのですが、これは通産大臣認可基準じやなくて、公取委認定基準じやありませんか。
  21. 小平久雄

    小平政府委員 二十四条の三の第一号にも書いてありますが、「当該商品の価格がその平均生産費を下り、且つ、当該事業者相当部分事業の継続が困難となるに至るおそれがあること。」こういうことが基準であり、あるいは第二号におきましても「企業合理化によつては、前号に掲げる事態を克服することが困難であること。」こういう基準によつてやるわけであります。
  22. 栗田英男

    栗田委員 ただいまお読みになりましたが、二十四条の三の第四ですね、「主務大臣は、前二項の認可をしようとするときは、申請に係る共同行為が前二項に規定する要件に適合し、且つ、その共同行為が左の各号に該当している旨の公正取引委員会認定を得なければならない。」というのであつて一つもこれは通産大臣認可基準ではない。
  23. 小平久雄

    小平政府委員 御指摘でありますが、これは通産大臣認可の場合も、また公正取引委員会における認定につきましても、両者の基準になるものと考えております。
  24. 栗田英男

    栗田委員 今の政務次官お答えでは、この認定基準というものは、通産大臣認可公取委員会認定の、両方基準になるものであるというようなお答えでありますが、そうであるとしたならば、私は通産大臣認可などというものは必要ないと思いますが、その点いかがでしようか。
  25. 小平久雄

    小平政府委員 一応栗田委員のような見解もあるかと思いますが、何と申しましても、当該産業に対して直接の責任を持つておりますものは通産大臣であります。経済全体の客観的な情勢であるとか、あるいは産業構造、その他消費者の利害というような点に考えを及ぼしまして、その産業の安定、発展のために、はたしてそれが必要であるかどうかということは、直接産業主管大臣である通産大臣が持つべきものであるとわれわれは解釈しております。
  26. 栗田英男

    栗田委員 ただいまの問題ですが、今の政務次官の言うのには、要するに認可基準認定基準というのは、通産大臣公取委員会も同じだ、こう言うのでしよう。そこで、要するに、今の政務次官答弁からいうと、通産行政に通暁しておるのだから、通産大臣認可するのが当然だ、こういうことを言つておる。しかしながら、それに対して公取委員会認定を与えなかつたならば、通産大臣が必要だと思つても、認可を与えることができないのですよ。そうでしよう。その点に関してはどうですか。
  27. 小平久雄

    小平政府委員 同じ基準を用いて判定をいたしますが、通産大臣が、はたしてこの基準合つておるかどうかを見る場合と、公正取引委員会において見る場合とでは、その観点がおのずから違うと思うのであります。公取委員会におきましては、申すまでもなく独占の排除、あるいは公正な取引確保という観点から、もつぱらこれを見るでありましようし、また通産省としましては、はたしてその産業の安定あるいは発展のためにカルテルが必要であるかどうかということを、これはそこを基点として見ることになるわけであります。
  28. 栗田英男

    栗田委員 どうも私はあなたの考えがわからないのですが、それは通産大臣がどのような角度から見ても、結局公取委員会認定がなかつたならば——、通産大臣がこれは必要だというふうな認定を下しても、最終的には公取委員会認定がなかつたならば、通産大臣認可することはできないのです。これは今のあなたの答弁から行くとそうでしよう。従つてそういうことならば、今のように通産大臣認可基準も、公取委員認定基準同一であるならば、わざわざ今の独禁法の中にまつたく色のかわつた通産大臣がぽこつと飛び込まなくてもいいではないか、これに対してはどうですか。
  29. 小平久雄

    小平政府委員 色のかわつた通産大臣が飛び込まんでもいいということでありますが、一向かわつてもおらぬと思います。産業主管大臣である通産大臣は、その産業の興廃ということに責任を持つのでありますから、これが本案に規定するがごとき権限を持つということは、われわれは当然だと考えておるわけであります。
  30. 栗田英男

    栗田委員 政務次官はいくら言つてもわかりませんから、大臣が来たときにして、この質問はあとに譲ります。いずれにいたしましてもこの法案から行きまして、突然通産大臣主務大臣として認可するということの一項を入れたということは、私は非常におかしいと思います。どうしておかしいかというと、もう一つここに十一条かに株式の総数の一〇%以上を持つときは、公取委認可が必要であるということがある。そのときに公取委はどうするかというと大蔵省と協議するとあります。私はこれでいいと思います。わざわざ通産大臣をここに持つて来るというようなことをする必要はない。私はこれを見たときに、どういうふうに大蔵省と通産省とを考えたかというと、ここに大蔵官僚が来ておるかどうか知らぬが、非常に大蔵省は視野が広い。まことに賢明である。また通産省はどうかというと、非常に通産省の役人というものはえげつない考え方を持つておるということを、この法案を見て私は考えた。このことをひとつ御記憶を願います。そのえげつない例についてお聞きいたしたいのですが、幸いここに中野企業局長が来ておるが、(「個人的のことはよせ」と呼ぶ者あり)個人的でどうだというようなことがありましたが、法案に関連をいたしますので、個人的にお聞きしたいと思います。これは重大なことで、企業局次長がこの法案を通さなかつた場合には、公取委をつぶすというような恫喝をいたしましたり、あるいは経団連等にしばしば出入し、独禁法が通らなかつた場合には、選挙資金を出さないと言つたなんということが、世上しばしば伝えられておりますけれども、この点に対して企業局長はこういうことを聞いたことがあるかどうか。
  31. 中野哲夫

    ○中野政府委員 ただいまのようなことは全然耳にいたしたこともありませんし、かかることはないと確信いたします。
  32. 栗田英男

    栗田委員 なければ幸いであります。そこで私はもう一つお尋ねいたしますが、これは横田委員長にお尋ねいたします。独禁法の中に突然色のかわつた通産大臣が入つて来ましたけれども、私の考え方としては、独占禁止政策に関する限りは、独立官庁であるところの司法的意義のある公取委員会があくまでも認可その他そういうものは把握しなければならない、かように考えておりますが、公取委員長考えはどうですか。あたは別に遠慮なさることはない、どんどん言つてください。
  33. 横田正俊

    横田政府委員 今のお尋ねの点は、私たちの考え方は最初に出しましたわれわれの要綱はつきりいたしておると存じます。ものにはいろいろな見方もありますし、こういうふうに案がきまりまして、かつその中に実質的に公正取引委員会見解は十分に持ち込まれ、その線で行きますれば、独占禁止法観点からの規制というものが十分にできると考えておるわけであります。
  34. 栗田英男

    栗田委員 通産政務次官にお聞きします。カルテル問題の認可の一番重大点は、通産大臣認可権があるというのですが、もちろん公取委がしつかりしておれば問題はないのですが、時の政治力に左右される危険を私は非常に心配する。そこでもう一回通産省認可方法についてお尋ねをいたしたいのだが、認定基準認可基準とが同一であるということになると、私はあくまで単に公取委に対して通産省という窓口が一つふえたというふうに考えておるのですが、その点はどうですか。
  35. 小平久雄

    小平政府委員 窓口がふえたというよりは、先ほども申しましたが、両者それぞれの観点からやるのでありまして、片方でいいと思つても片方では悪いという場合もありましようし、決して窓口がふえたということはないと思います。
  36. 栗田英男

    栗田委員 片方でいいとか、片方で悪いとか、そういうことはほとんどないと思う。さつきも言つたように政務次官の頭は全然切りかえなければならない。そこで私はこういうことではないかと思うのです。今までは公取委一本でやつておつた。そこへ今度は認可権を持つておるところの通産大臣という窓口がふえた。従つて業者がカルテルをやろうとすると、まず第一に通産省の窓口に持つて行くわけですね。
  37. 中野哲夫

    ○中野政府委員 不況カルテルあるいは合理化カルテルについて主務大臣認可を受けます場合には、まず当該業界でカルテルを結成しようという案を具して、主務大臣認可申請に相なるわけでございます。その次に主務大臣がそれを認可すべきか、すべきでないか。認可すべきでない、こうきめれば問題はありませんが、認可すべき場合には、主務大臣から公正取引委員会認定を受けるわけでございます。おそらく実際の運用では書類を二通出しまして、公正取引委員会にも下調べをしていただく、こういうことで、この認定主務大臣公取委員会に対して求めるわけで、役所内部のことでございますから、逆に申しますと、業界から直接公取委認定を求める、そのために窓口が二つになるということには相ならないと思います。
  38. 栗田英男

    栗田委員 しかし、申請と認可とは通産大臣一本なんでしよう。
  39. 中野哲夫

    ○中野政府委員 認可申請は通産省一本でございます。認定通産省から公取委に求めるわけです。
  40. 栗田英男

    栗田委員 そうなると私はこういうことになると思う。単にこれは事務が複雑になるだけである。実際問題として、通産大臣がこれは認可するというふうに書いてあるけれども、公取委認定がなかつたならば認可できない。そうすると結局どうなるかというと、私は野党だから悪く考えるのかしらないが、通産大臣は業者から書類を受付けて、これは認可すべきものであると通産大臣が判定した場合において、公取委認定してもらうことになる。そこでどうなるかというと、通産大臣は時の政治力に左右されるということになりますと、業者から提出される資料を非常にのみやすいような資料にするよう指導して作成させ、それを公取委に持ち込むという危険が非常にあるのですが、この点はどうですか。
  41. 小平久雄

    小平政府委員 通産省といえども政府の役所でありますので、そういう不公正なことはいたさないつもりであります。あくまで公正にやつて行くつもりであります。
  42. 栗田英男

    栗田委員 もう一つお尋ねいたしたいのですが、ただいま横田委員長からお話がありましたが、閣議が最終的決定を見なかつた、おそらくそのときに閣議の最終的決定というのは公取委の欠席裁判でもありまするので、いずれ次官会議決定をしたのだろうと思いますが、そのときに玉置次官がこういうことを発言しておるということを私は聞いたのです。この独禁法というものは統制立法であるというようなことを発言をしておるということを聞いておるのであるが、こういう発言をいたしたかどうか。これは通産省の方に聞くと、ないと言うでしようから、横田さんにお尋ねいたします。
  43. 横田正俊

    横田政府委員 実は私はその席におりませんでしたので、はたしてそういうことがあつたかどうかよく存じておりません。
  44. 遠藤三郎

    遠藤委員長 栗田君にちよつと申し上げますが、きようは連合審査会ですから、なるべく通産委員の方に発言する時間を与えていただきたいと思います。
  45. 栗田英男

    栗田委員 もう一点だけ。この通産大臣認可権というものをこの中に入れるときに、法制局意見はどうだつたか、これは企業局長どうでした。
  46. 中野哲夫

    ○中野政府委員 案の作成の途中におきましては、それぞれ行政責任あるいは公取委員会の責任上、いろいろデイスカツシヨンしたのでございまするが、法制的面においては法制局において、関係各省公取はもちろん集まりまして、慎重審議いたしまして、これに政府側として意見が一致したわけでございます。
  47. 栗田英男

    栗田委員 私は最後に横田さんにお願いいたしたいことは、これから、私はおそらく通産省考え方と公取考え方というものは一致しないことが多いと思うのであります。これは一致するわけはないと思うのです。特に私は独禁法というものは、一つ経済刑法的なものですから、そこで私はこういうことが考えられる。通産省の圧力というものが非常に公取委にかかつて来る、都合によつては、私はあるいはもし公取委員会というものが非常に強力な野党的存在を示した場合にはつぶされるという危険もあるかもしれないと思うのです。しかしながら、このときに通産省の圧力に屈したということになれば、私は実際問題として公取委員会の存在というものは意義がない、そこで私はこの際公取委に対しましては一大勇気を持つて、ひとつ事務処理をやつてもらいたいということを熱望して私の質問を終ります。
  48. 遠藤三郎

  49. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 一大勇気を持つて質問しますから……。(笑声) 栗田君がおつしやつている通り、また独占禁止法そのものが占領時代の遺物であるということは争われないところであります。またこれに対しまして功罰というものはどちらがどうだという批判もいろいろございましよう。またこれに対する二者択一的な判断を下すことも困難であろうと思うのであります。従いまして、政府国民経済の民主的で健全な発達を促進するために、私企業による市場独占のもたらす諸弊害を除去し、公正かつ自由な競争を促進しようとする独占禁止法の根本精神はあくまでも尊重する、こういうような提案理由があるのでございまして、その提案理由と法案そのものがはたしてマッチしているかいなやということについては大いなる疑いを持たなければならないと思うのであります。そこで私のお聞きしたいことは、政府案第二十四条の三及び四というものを削除すべし。カルテル等の事業者の共同行為については、次に私が述べるような認可基準に該当する場合においては、公取委員会主務大臣と協議して認可し得るようにしなければならない。まず第一に公共の利益に反せず、国民経済の維持もしくは発展に寄与しなければならない。二、前項の行為に対して必要な限度を越えていないこと。三、不当に差別的でないこと。四として、その共同行為に参加しまたはその共同行為から離脱することを不当に制限しないこと。以上が私のお尋ねする第一点で、第二点は公取委員会は、以上に該当する共同行為がその認可基準の要件を欠くに至つたと認めるときは、主務大臣と協議をして、その行為をしておる事業者及び利害関係人の意見を聞き、その行為の変更または認可を取消すことができるようにすること等であります。  そこでまず第一にお尋ねしたいことは、政府案第二十四条の三及び四の不況カルテル並びに合理化カルテルにおきましては、いずれも行為の当事者を生産業者に限定しておるのであります。しかしながらいわゆる生産業者以外の、たとえば倉庫業者、金融業者あるいはサービス業者等にもこのカルテルの必要を生ずることはないであろうか、これをお伺いします。
  50. 横田正俊

    横田政府委員 今回のカルテルの認容はきわめて限定的なものでございまして、今申されましたように、生産業に限つておるわけでございます。もちろんサービス、倉庫、金融関係につきましても、一応考えてみたのでございますが、しかしこれをなるたけ制約して参るという立場をとりました場合に、このカルテルの認容をあまりに広くいたしますことは、このカルテルによる弊害を押えて行く上におきましてどうかという立場からいたしまして、生産業に限りまして、他のサービス業、金融業等には認めないことにいたしたわけでございます。もちろんご承知のように、金融業等につきましては、若干の特別法がございまして、独占禁止法の線がはずれて来ておるわけでございます。また融資規制というような問題もたしかに考えられるわけでございますが、しかし事業者が話し合つて、こういう事業には融資をするとしかないとかいうようなことを恣意的に決定いたしますることは非常に問題が大きいわけでございまして、こういうカルテルを認めるというようなことは非常に問題が多いわけでございます。結局そこに多少のきゆうくつさはございましても、生産業をこの不況から救う、あるいは生産業について若干の合理化を認めるという程度で事は足るのではないかというふうに考えて、この法案を提案したわけでございます。  今、実はいろいろ御説明の、公共の利益に反しないで、国民経済上、何か必要な場合というような場合、それは……。
  51. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 それでいいです。不況カルテル認可には、当該商品の価値がその平均生産費を下まわることを前提としておるようであります。しかしながら、いわゆる平均生産費とはいかなるものをさすか、この指定する平均生産費とはどういうものをさすか、これに対して明確な御説明をしていただきたい。個々の企業につきましても、価格統制時代ならばともかくも、今日は常態において生産原価を的確に把握することは困難な常態にあると思います。それに対するあなたの自信があるかどうか、この根拠を明示してもらわなければならない。さらにこれらの平均生産費なるものはいかにして算出すべきものか。かりに百歩を譲つて、これらの平均生産費なるものを算定し得たといたしましても、製品市価がすでに原価の下まわりをしておる、企業が倒壊せし後においては、これを許可いたしたいと思つても、これを要するに、世間でよくいう六菖十菊のそしりを受けるようになるのではないか、いやしくも生きた政治を行う者が、真にわが国の経済の再建をになつて立つべき者がこのような処置をして、あなたのお考えで遺憾がないと考えているかいなか、この三点についてお伺いをいたします。
  52. 横田正俊

    横田政府委員 今度認めます不況カルテルの要件は、御説の通りかなりきついものでございます。このうちの「商品の価格がその平均生産費を下り、」と申しますのは、抽象的に申し上げますと、結局中庸企業群というようなものを想定いたしまして、その平均生産費というものを一応の目安にいたしまして、市価がそれより下つておる場合というふうに考えております。御説のように、統制時代と違いまして、それぞれの企業の現実の生産費を把握すること自体も非常に困難でありまして、また何がその産業の中庸企業であるかというようなことも非常にむずかしい問題ではあると存じますが、やはりそこは一種の経済的な通念と申しますか、そういうものがあろうと思いますので、こういう点は先ほどから申し上げておりますように、通産省等の意見を十分に取入れまして、認定をいたします際にも、これらの点につきましては十分な意見をとりかわしたいというように考えております。なお公正取引委員会といたしましても、法律規定に基きます若干の調査権も持つておりますので、単に業者の申出ばかりを信用して、それをそのままうのみにするというようなことでなしに、相当慎重にやつて参りたいと考えております。  なお平均生産費を下つた場合に、初めてこのカルテルが認められるというのでは少し手遅れではないかという御説もございまして、これは通産省方面から、特に今回のこの改正につきまして、平均生産費を下るだけでなく、下ることが必至であるという、その一歩手前のところでカルテルを認めてはどうかという意見の開陳がございましたが、しかしこの点はわれわれといたしましてはカルテルはよくよくの場合に認めて行きたい、少しぐあいが悪くなつたということで、ただちにこのカルテルを結成するということになりますと、そこにいろいろな弊害も考えられますので、多少きついようではありますが、「平均生産費を下り、」というようにいたした次第であります。
  53. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 非常にこの問題は大きな問題だと思うのでありまして、今委員長のおつしやつた通念というのは、おそらく通産省あたりの勘であろうと思うのであります。しかし現在の通産省に勘を把握するだけの力があるかということについては、私は大いなる疑問を持たなければなりません。現在の通産行政というものが、はたして勘を持つだけの通産行政行つておるか、これは私の方の委員会関係でありますから、他人のところでは体裁が悪いから、あとでゆつくり伺います。  不況カルテル認可には、「当該事業者相当部分事業の継続が困難となるに至るおそれがあること。」、この前提としておるところの事業者を特に指定して、当該商品を対象とせざる理由はいかん、単一企業にあらず、多角経営の場合は、当該商品に関していかなる欠損を重ねるとも、傍観するお考えであるかどうか、この二点を伺います。
  54. 横田正俊

    横田政府委員 これはやはりその当該事業基準といたしておりますから、その事業の継続が困難になるに至るおそれがあるという場合に限られることになると思います。
  55. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 単一の企業にあらず、多角経営の場合は、当該商品に関していかに欠損を重ねるとも、傍観するお考えであるかいなやということを御質問申し上げるのであります。
  56. 横田正俊

    横田政府委員 やはり先ほど申し上げますように、その当該事業だけを基準考えておりますので、あるいは仰せのような面があるかとも思いますが、この規定を設けました趣旨はそういうことでございます。
  57. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 合理化カルテルの場合において、たとえば原価引下げに関する原材料または製品の保管、あるいは運搬に関するカルテルとありますが、この点生産業者のみを対象とすることは実際不都合を生ずる場合があると思いますが、これに対してはどういうお考えでありますか。
  58. 横田正俊

    横田政府委員 合理化カルテルは、実は今回の改正で比較的われわれの説明が悪いせいか、多少看過されておる面があるのではないかと思われますが、現在は第四条にいろいろやかましい規定がございまして、それに触れますと、きわめて影響軽微なもの以外は一応法律違反というふうになつておりますのを、今回はこの四条を削りまして、いわゆるカルテル一定取引分野における競争を自主的に制限する、そういうことにならない限りはよろしいという線を今度ははつきり出したわけでございます。従いまして、普通に合理化と称せられておりますようなものは、今度の今申しました趣旨の改正によつて相当できることになるわけでございます。たとえば銀行間でもつて、よけいな費用を使つてむだな広告をするということをお互いに自粛し合うという点は、今申しましたような改正で十分に堂々と行えるわけで、あえてこれは独占禁止法違反の問題にならないのでございます。他の業種につきましてもいろいろな観点から、あるいは正確に合理化と言えないようなものでも、今申し述べました線に触れない限りは相当できるのでございます。しかしながら、なおそれ以上に、いわゆる合理化一般に言われますものの中には、かなりどぎついものも考えられておりまして、たとえばある種の企業の再編成というようなことを合理化という名目で、いろいろ要望し主張しておられる面もあるようでございます。しかし問題は、そこまで参りますと非常に重大でございましてちようど合併や何かについて、場合によつて取引制限を越えてもこれを認めていいのではないかということに関連しまして、私が先ほど申し上げましたように、場合によりましては、そういうような企業の再編成ということが日本産業上ほんとうに必要な場合もあるのではないかということになりますと、単にこれを二十四条の四というような一般規定で行くことは適当でないのでございまして、この点はもつと腰をすえた特別立法をもつて、そのいわゆる合理化を個々の産業の実態に沿いつつやるべきではないかと考えたわけでございます。従いまして、今回は先ほどの不況の場合とやや歩調をそろえまして、合理化カルテルは生産業者に限りまして、しかもその範囲をかなり限定いたしまして、いわゆる合理化の名のもとにいろいろなカルテルが結成されまして、かえつていろいろおもしろくない面が出るということに対して、万全を期したいと考えたわけでございます。
  59. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 わが国の経済発展のために最も必要なる企業協定は、必ずしも法案に明示せるような不況カルテル並びに合理化カルテルの両特定の場合のみには限らないと思うのでありまして、カルテルの必要を生じ、しかもこれら両者のいずれかに明確に分類しがたき場合もあると思うのであります。従つてかかる画一的な、融通性に乏しい例示規定はなるべく避けなければならない、かように思うのですが、その点について委員長としてのお考えはどうでありましようか。
  60. 横田正俊

    横田政府委員 その問題は、結局現在の独占禁止法のあり方の根本に実は触れると思うのでございます。先ほどちよつと申されましたように、カルテルは、公共の利益に反しないで、国民経済上必要なものは、これを認めて行くというような、きわめて一般的な条項をもちまして認めるということは、理論的には十分に成り立ち得るものと思います。しかしながら、これは実際の扱いの面におきまして、そういうきわめて一般的な条項をもつて、すべての独占禁止法の問題を処理して行くということは、現実の制度としてはいかがかと思われるのでございます。たとえばカルテルの問題につきましも、大体カルテルというものはいろいろな弊害を伴いがちであるというところに一応の線を引きまして、その中でなお必要なものは、特殊の事情に即しまして、これを法律をもつて、非常にはつきりした形でだんだん抜いて行くということが、この独占禁止法の線を守りながら、しかも経済発展に支障のないようにする、現実の制度としましては、それが一番いいのではないか。この線が、実は財界からの強い要望にかかわらず、今度の独占禁止法改正の中に盛り込まれなかつた点でございまして、これにつきましては、いろいろな御批判もあろうかと思いまするが、私どもは現在のその線はやはりくずしてはならないというふうに考えて、この改正案はそういう形でできているわけでございます。
  61. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 第二十四条の三及び四を破棄する場合、許容力ルテルについて、これを届出制とするか認可制とするかが問題となつております。しかしながらこの問題は実質的にいつてカルテル規定基準を緩和することが問題であろうと思うのでありまして、この基準が緩和せられない限りにおいて、認可制を届出制にすることは意味をなさないことだと思うのでありますが、この手数の煩雑性をこれらのために非常にもたらす結果になるのではないか、従つて公共の利益に反せず、国民経済の維持もしくは発展に必要がある場合に限つて、この改正法案による認定基準をこの場合に認可基準として、カルテル官庁たる公取委員会において業界の実情に即応せしめるように、主務大臣と協議をして認可し得るよう規定するのが最もよいのではないかというふうに考えるのですが、この点についてはどうでしよう。
  62. 横田正俊

    横田政府委員 先ほど申し上げましたように、そういう一般的な線を引きまして、公取が個々の事件について、認可等の手続を経てやつて行けば一番いいのではないかという点は、なるほど一つのお考えだと存じまするが、先ほど来申し上げますように、実際の制度としてこれを運用いたして参りまする場合に、今申されましたような非常に一般的な条項をわれわれにお与えくださいまして、その中で現実に仕事をして行くということになりますると、われわれが良心と十分なる知識を持つてやりましても、やはり人間のやることでございまして、そこにいろいろな不均衡も出て参りましようし、法律の制度としまして非常に困難なものになるというふうに考えますので、先ほど来申しましたように、あまりに一般的な条項をもつて処理して行くということについては、非常に疑問を持つているわけでございます。これは例がはなはだ違いまして恐縮でございますが、たとえば交通の秩序を保つために、御承知のように、自動車は何マイル以上で走つてはならぬ、あるいは四つかどを曲るには、こういうふうに曲らなければならぬというような規則がございます。しかしこれを今仰せになりましたように、交通の秩序に害のあるようなスピードで走り、あるいはそういう害のあるような曲り方をしてはならないというような一般条項をもつて、交通の秩序の維持をはかろうとしましても、これは現実の交通整理の制度としましては、成り立ち得ないというふうに私は考えるのでございます。問題はたいへん違いますけれども、日々生起いたしまするいろいろな経済問題につきまして、公共の利益である、あるいは国民経済上必要なものであるというような一般条項によつて処理して行くことは、非常にむずかしいことのように考えるのでございます。
  63. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 あとも大分つかえておりますから、私が最後にお聞きしたいことは、八十九条の罰則についてでありますが、改正案によりますと、現行法によるところの第三条の違反のほか、さらに第八条第一項第一号の違反の未遂をも罰することにしておるようであります。この未遂罪を罰することは少し苛酷に過ぎるのではないか、またこの未遂行為は的確に把握し得るかいなか。この第二号の未遂罪に関する部分というものを、どういうふうにお考えになつておられるかお伺いしたいのであります。従いまして私の考え方によれば、これらは当然削除すべきものではないかというふうに考えますが、御答弁をお願いいたします。
  64. 横田正俊

    横田政府委員 結局問題は、現行法独占禁止あるいはカルテル違反に対して、そういう未遂罪を設けることが妥当であるかどうかということに帰着するかと思います。第二号を加えましたのは、要するに事業者団体が、私的独占あるいは不当な取引制限を、団体が関係いたしましてそういう状態をつくり上げるというようなものを押えることでございまして、結局これは第一号の私的独占カルテルと同質のものとみなしたので、ここにあげまして、従つてこれがやはり未遂罪にかかつて来るというような形になつたわけでございます。問題はこの独占あるいはカルテル禁止というものを、どれほど強く規制して参るかといことにかかるかと思うのでございますが、この点は、現行法はこれをかなりきつく取締つて参るというような面からいたしまして、未遂をもこれを罰するということにいたしておるわけでございます。この点はなるほど制度としては非常にきつ過ぎるというようなお考え方もあり得るかと思います。
  65. 生悦住貞太郎

    ○生悦住委員 ちよつと関連して……。この未遂を含めることは、私もこれは法の精神からいつてこういうものに未遂を含めるという気持がよくない。そういうふうに罪を犯していない者に対しても、適用を無理にここに新しく入れるということは、今回緩和するという立場に立つている法案に、これ自体がまるつきり逆行しているというふうに私は考えておりますので、この点特に留意をしていただきたい。  それからこれは少しおもしろい話ですが、この罰金がほとんど二十万円程度の罰金になつております。非常にお安い罰金でございまして、事業者がそろばんをはじいてこれをやろうとする場合に、二十万や三十万の罰金なら幾らでもできる、その罪を犯すことによつて、あべこべに二千万円もうかるとかあるいは五千万円もうかるとか、そういうふうな場合には、二十万や三十万の罰金は非常に唯々諾々として出せるのじやないか、こういうことも考えますので、これに対する御意見も参考に伺いましよう。
  66. 横田正俊

    横田政府委員 罰金の点はまさに仰せ通りでございまして、非常に低過ぎると私も考えます。しかし今回の改正の際に、ただいまの未遂の問題はございますが、罰金を特に上げるということまで考えなかつたわけでございます。もしこれがはなはだ低過ぎて不都合だということで、ございましたら、またいかようにも御修正を願いたいと思います。
  67. 長谷川四郎

    ○長谷川(四)委員 いま一点聞いて終りたいと思います。政府の案によりますと、不況カルテル及び合理化カルテル認可権主務大臣が持つておるのだが、それには公取委員会認定条件としておる。当該行為が認可の要件に欠けた場合は、主務大臣がその行為の変更を命じまたはその認可の取消しを命ずることができる。この場合公取委員会もまた主務大臣に対して、これらの変更もしくは取消しを請求することができる。しかもこの請求後一箇月すれば、主務大臣の処置いかんにかかわらず不当行為として処置することができる。すなわち法的には当事者は何らの交渉を受けることができないで、公取委員会主務大臣に請求したというだけで、一方的に禁止することができるようになつている。これは同じように少し苛酷じやないか。この場合、公正取引委員会主務大臣と協議し、当事者及び利害関係人の意見を聞いて変更もしくは取消し命令を出す、こういうふうにお改めになるお気持はございませんか、伺います。
  68. 横田正俊

    横田政府委員 もちろん実際の運びといたしましては、おそらく公正取引委員会が、主務大臣が取消さない場合に、こちらから自発的に取消しまたは変更の請求をするといういことはよくよくのことでございますので、その前提といたしましてはもちろんいろいろ調査もいたしますし、カルテルの結成後も、いろいろな影響というものを十分調べます際に、もちろんその事業者なり関連事業者なり等の取調べをするわけでございます。実際の運びは仰せ通りになると思いますが、ただ法文の中に、必ず意見を聞かなければならぬというようなことをはつきり入れますことが適当であるかどうかという点については、なお検討したいと考えます。
  69. 遠藤三郎

    遠藤委員長 午前の会議はこの程度にとどめまして、午後一時半より再開することといたします。  これにて暫時休憩をいたします。     午後零時二十六分休憩      ————◇—————     午後二時二十五分開議
  70. 遠藤三郎

    遠藤委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。質疑の通告がありますからこれを許します。山手滿男君。
  71. 山手滿男

    ○山手委員 私は少し公取委員長に御質問をしたいと思います。資料としていただいてあります「海外における独禁政策の動き」というのにも書いてあるわけでありますが、私はこの独占禁止法改正問題は、考え方として、単に日本国内経済問題としてだけこれを取扱つて改正をして行くということは、いかがであろうか、こういうふうに考えるのであります。この資料に、「占領時代の遺児と言われ」云々ということが書いてありますが、独占禁止法は、単に日本国内経済のあり方を規制するというよりか、これはやはり全世界的な問題としてこれを取上げてみて、日本はどういうふうな保護措置をすべきかというところから出発しなければならないのではなかろうか、こういう考えを私は持つております。そこで私は公取委員長にお伺いをしたいのであります。十箇国ぐらいがこの独禁法を問題にしておるようでありますが、何と申しましても、今日英国、アメリカ、西ドイツ、それから日本、この四箇国がしつかりした独禁法を持つておるわけであります。その各国の法の規制の仕方について公取はどういうふうにお考えか、まず御説明を願いたいと思います。
  72. 横田正俊

    横田政府委員 独占禁止法制と申しますか、いわゆる反トラスト政策は、御承知のように千八百年代にアメリカに生れ出たものでありますが、もちろんその前に、そういう考え方はイギリスの法制の中にすでにその萌芽のようなものがあつたわけであります。しつかりした制度といたしましては、アメリカに発生いたしまして、その後だんだんこの法制が国際的に認められて来ておるように私どもは考えております。最もアメリカの法制に近いものが御承知のように日本独占禁止法で、これはむしろアメリカよりも最初法律はさらにきつい面もあるほどのものでございましたが、アメリカの法制に非常に近いものが日本の法制でございます。なお今度の改正を加えられました日本の法制にやや近いものは、まだこれは案でございますが、西ドイツにおいて採用することがほぼ予定せられております法制であります。なおカナダ及びイギリスにおきましても、独占つまり取引制限規制いたしますのに、相当の法制ができております。もちろんこれは国々によりまして多少その間に規制の程度なり、あるいは仕方なりについて差異がございますが、大体同じ方向の法制でございます。ドイツの最近の動きとか、あるいはイギリス等の動きは、言うまでもなくアメリカが国連を通じて非常に推進しております一連の動きに歩調を合せておるものでございまして、御承知のように、この法制は何もアメリカ自体のための法制でなく、やはり国際的に押し及ぼしてしかるべきものであるという観点からいたしまして、国連において強い発言をいたし、なお国連においてもこれに基きまして、いろいろな委員会等におきましてこれを取上げ、相当の調査をいたし、その調査の結果に基いて、各国に向つてやはり同様な歩調をとるべきことを勧告いたすというような段階に、だんだん進んで来ておるように思われるのでございます。なおアメリカは御承知のように、最近締結いたします各国との間の通商条約を通じまして、やはり国際的におもしろくない取引制限的な事柄、あるいは国際カルテルというようなものに対処いたします規定を通商条約の中に盛り込むようにしておりまして、最近締結を予定いたされております日本との間の通商条約にもそれに関連する規定が入つておるように考えております。こういう一連の動きを見ますと、私的独占禁止法の今回の改正にあたりましても、これは日本の法制といたしまして、日本経済の上に必要なものであるかどうかということが基本にはなるわけでありますが、この経済的な理由及び民主主義の一つのつながりであります社会的ないろいろな面のほかに、やはりこの国際的な動きというものは全然無視することを得ないのでございます。やはり日本が自由国家群の一つといたしまして、各国との間に友好的な関係を持ち、各国の日本に対する信用を回復して、りつぱな独立国として処して参ります上におきましては、やはりそれ相応の制度を持つことが日本のためにも好ましいというような点も考慮いたしまして、今回の改正を試みたわけでございます。詳しいことは、その方を担当しておる者が今日参つておりますから、必要がございましたら、その者からお答えいたさせます。
  73. 山手滿男

    ○山手委員 従来の日本の独禁法は、ドイツあるいは英国に比べれば、非常に苛酷な峻厳なものであるし、アメリカに比べても私は相当きついものであつたと思うのです。特にアメリカの法制との比較でありますが、アメリカの独禁法は、その基本理念をよく検討してみますと、過大な経済力が一私人に帰属することによつて、健全な民主的な経済的な取引が阻害をされる、過度な経済力が個人に集中することを禁じようとするのがそのほんとうのねらいであると思います。ところが日本においては、いわゆる財閥的なものは解体をされて、そういうものはあり得ないのであつて、二十か三十くらいの会社国民経済的な立場に立つて、相互の利益を擁護するために、ある程度経済行為を共同規制して行くというようなことは、私はアメリカの法制の基本理念とは少し違つておるというふうな気がするのであります。この点においてアメリカの法の考え方よりかはるかに峻厳なものである、こういう気がいたしますが、公取委員長はどういうようにお考えでありますか。
  74. 横田正俊

    横田政府委員 確かにただいま申されましたように、財閥解体、集中排除等の措置によりまして、従来におきましては、相当大きな企業が分割せられまして、アメリカにおきまするほどの大きなものは現在はございません。従いまして、その点では弱小企業が並び立つているという感が確かにあるわけでございます。この点は今回の改正におきましても、むしろ基本の線を維持しながら、そういう弱小企業がやはりある程度伸びて行けるようなふうにいたすために、現行法のあまりきつい規制を取除くという面に、大分今度の改正は役立つておるように思います。ただやはりこれは程度問題でございまして、アメリカの大きな企業のようなものは日本にはもちろんあり得ないわけでございますが、これは相対的な問題でございまして、現在はそうでございますが、しかしすでに御承知通り日本の一旦分割されましたものがだんだん併合して大きくなつて参りつつあるのが現在の情勢でございます。この情勢そのものは、けさほど申し上げましたように、私もある意味においてはむしろ歓迎すべき面も多々あると思うのでありますが、これがだんだん進みました場合には、やはり日本日本なりに、小さな形ではありますが、相対的意味におきましては、かなり大きなものがだんだんにできて参るのではないかと考えられます。やはりそういう観点に立ちますと、独占禁止法をあまりにゆるめてしまいまして、そういう大きな企業による独占なりあるいはトラストというふうなものによる弊害ということを是正することにあまり大きな改正を加えてしまうことは、大きな立場から考えますと、問題ではないかというふうに考えますので、今回の程度の改正が一番適当ではないかというふうに考えたわけでございます。
  75. 山手滿男

    ○山手委員 その点は非常に問題であろうと思うのです。アメリカの立法のねらつておるところと、占領治下の日本においてこの独禁法をつくつたときねらわれたものとのポイントが違つておる。アメリカではやはり一財閥とか大きなグループに個人的に経済力が集中をして行くことを打破ろうというのが独禁法のねらいであります。日本のように一、二の個人的なものが経済的な権力を集中しておるというようなことがないときにおいて、ただ単に共同行為制限して、むしろ競争力を必要以上にマイナスにして行くというふうなことをねらつた独禁法とは、私はねらいのポイントが違うと思う。そういう意味において、日本の法制はアメリカの法制よりかはるかに峻厳なものである、こういうことを総括的に考えておるのであります。ことにけさからも話がありましたように、自由競争をある意味において必要に応じて制限することが、全部社会悪であるというふうな考え方は、国民経済立場からいうと、これは否定しなければいかぬと思う。現にイギリスの法制は、不必要な競争をし、あくまでも自由な競争をさすことばかりが国民経済にプラスになるものじやないということで、これを否定してかかつておる。イギリスの法制はどういう法制かというと、ある一つの影響が社会悪であるとはつきりした場合のみこれを例外的に取締るようになつておる。これに比べると、日本の法制ははるかに峻厳なものであろうと思う。基本的には日本が占領されておつて、占領軍からこういう独占禁止法を押しつけられておる。あなたの方で出されたと思うのでありますが、この資料にも「占領時代の遺児」であるということが載つておるのでありますが、そういうところから来ておる。これは痛くもない腹を探つてみると、終戦直後、日本経済力を弱めて、再び日本が国際社会に大手を振つてよう歩けないようにしようというものの考え方でできた。この独禁法の立場はそういうものであると私どもは考えざるを得ない。たとえてみますと、通産政務次官もおいでになりますが、最近アメリカの特需なんかがたくさん出ております。これはほとんどが共同して妥当な線を出すことができないようにあなたの方でお取締りになりますから、経済力の弱い会社は競つて出血受注もせざるを得ないということで、お互いが苦しんでおる。これは国民経済の大きな観点からするならば明らかにマイナスであつて、私はそういうのを野放しにすることの方が社会悪であると思う。この点について、この独禁法の改正の根本的なものの考え方に、私は少し公取委委員長見解を異にするものでありますが、もう一度英国なりアメリカの法制と比較して、どういうふうにお考えか、御説明願いたいと思います。
  76. 横田正俊

    横田政府委員 今度の改正の結果をアメリカの法律に比べてみますると、今度の改正の結果は確かにアメリカの法制よりはよほど緩和されたものになると思うのでございます。  なおイギリスの場合との比較でございますが、なるほどイギリスは日本の法制とは大分行き方をかえておりますが、しかしながらこれは仰せられるように悪いものだけを取締つて行くという考え方ももちろんあり得るわけでありまして、その間に幾らも段階を考え得ると存じます。要するにその国々に適した形においてその反トラストというものがもちろんとらるべきであろうと考えます。ただ私どもは今回は先ほどお話のように、単にこの反トラスト法を日本に押しつけられたものである——最初はあるいはアメリカも日本を弱化するというような趣旨も含めまして、集中排除であるとかあるいは財閥の解体というようなことを考えたのかもしれませんが、しかし日本経済力をほんとうに弱めることのみを考えてこの法制をわれわれに押しつけたものとはわれわれは考えておらないのでございます。要するに民主主義につながる一つの制度として、あるいは労働法関係、あるいは農村の改革というようなものと並びまして、この独占禁止法日本のために非常に役立つものとして考えて残して行つたものと考えておるのでございまして、私どもはそのうちの行き過ぎた、あるいは日本に適していない部分を除去しさえすれば、この制度は日本のために十分に役立つものであるというふうに考えまして、これをそういう観点から検討して出しました結論が今回の改正ということになるわけでございます。これはなるほど考え方によりましてはまだきつ過ぎるという見解もございまするし、また財界等ではこの改正案にはさだめし不満でございましようし、またそういう声も最近聞くのでございます。われわれはこの改正にあたりましては、もちろん財界のそういう気持も大いに了解はいたしまするが、しかしその他国民のいろいろな声が今度の改正案にはあるわけでございまして、それらを公平な、公正な立場に立ちまして判断いたした結果、やはりカルテルというものは大体においていろいろな弊害を伴いがちなものであるという前提をとり、その上に立ちまして、その必要なものはこれを適用除外という形で持つて参ることが法律制度といたしまして最も守りやすい、またそれが日本のために最も適当なものというふうに考えて案を立てたのでございまして、結局問題は見解の相違ということになろうかと思います。一応私たちの考え方を述べておきます。
  77. 山手滿男

    ○山手委員 これは単に見解の相違だけで済ますわけには参らないのであります。その基本的なものの考え方を政府の方においても統一をして、この改正なり、今後の適用について運用をして行つていただかなければならぬ。これは重大な問題である。この独禁法の改正日本産業家にとつては最大の現下の政治問題でもありますから、統一した見解のもとに通産省各省公取は歩調を合せて運用をしていただかなければならないと思う。なぜかと申しますと、日本とアメリカの関係だけをとつて見ましても、日本ははるかに経済的には後進国であります。公取委員長がさつきからるる述べておられる立場というものは、日本国内の、いわゆるコップの中だけの波のことを考えておられる。コップの中の波だけを一応平均させようというように考えておられるが、今日の日本経済界というものは、戦前とは違つてはつきり世界経済につながつている。アメリカの鉄鋼業と日本の鉄鋼業を比べてみると、日本の鉄鋼業は日本国内から見ると、八幡とか富士などを総括しても、わずか三・五%ぐらいのウエートしかない。しかしアメリカの鉄鋼業というものは、全世界の半分近くを持つているということであつて、そのけたの違うものが、向うからいえばすでに先進国になつているものが、後進国に向つて、自由競争で来い、お前方は自分たちが何ら自己保存するような態勢を整えちやいかぬというような考え方で押し詰められて来た場合、公取委員長が、そのけた違いの産業構造の向う側にだけ立つて国内のコップの中の波だけのことを考えられると、そのコップの中の水というものはだんだん下にへこんでしまう。私は世界的な視野に立つて公取委員長がこの問題をお考えにならなければならぬと思う。鉄鋼業でもそうであるが石油もそうです。今日日本の七大石油会社、精製業者あたりを見ましても、すでに過半数は向うのカルテル資本にやられてしまつている。もうこれは強姦されているのです。日本で外国資本の入つておらない石油会社・精製会社はわずか三社です。あなたの方でおつくりになつ資料を見ましても、五大石油会社が二つの英国の石油会社と国際的なカルテルをつくつて全世界の石油業を完全に支配していたということをアメリカの政府は摘発しておるけれども、これはもうそのままおざなりになつてしまつて、大統領はこれをふせてしまつておることは御承知通りです。アメリカの方あるいは英国では、世界的なこの独占形態カルテルを事実上認めているのです。そうして世界的に世界経済石油市場を蹂躙するような態度で来ておる。日本の石油産業も過半数はすでに資本参加をされて、原油なしに向うから握られてしまつておる。そこにわずか二つか三つの日本の民族資本による石油会社が残つていて、あなたが言われるように自由競争だけでやつて行けと言われたら必ずやられてしまう。日本国内の七社なら七社の石油会社日本国内に適した自己防衛措置で協定を結んで立つことは、これは社会悪ではないと思う。この点について公取委員長はどうお考えになるか。もう少しはつきりしたアメリカの法体系それから英国の法体系、日本の独禁法のものの考え方と並んで、世界的視野に立つて答弁を願いたい。
  78. 横田正俊

    横田政府委員 ただいま公正取引委員会が何かコップの中だけを考え独占禁止法を見ているようなお話でございます。これはなるほど国内問題は非常に重要なことではございますが、コップの外の問題につきましては、すでに御承知のように先般の国会等におきましても、ある程度におきまして、日本の業者が団結をいたして、外国に対抗できるというようになつて来ておりますし、ことに今回の独占禁止法改正と歩調をあわせまして、並行的に輸出取引法にも相当の改正が加えられまして、外部に対しまする問題については、かなりの是正がされておると考えております。なお国際的な大きなカルテルをどういうふうにするかという問題は、これは実は一国だけの法制ではどうにもできないことでございまして、その点は現在の独占禁止法でもある程度の手当はしてあるつもりでございますが、結局これは国際的な一つの大きな組織なり、先ほど申しましたような、アメリカ自体が考えておりますような線がもう少し具体化して参りますれば、あるいはそういう国際的な問題に適当な解決が与えられるという日もあるいはあるかと思いますが、この点は、やはり一国の法制というものは、原則といたしましてその国の内部のことに限定せられるということから来る一つ制約でございまして、将来に残された一つの国際的な問題のように考えております。
  79. 山手滿男

    ○山手委員 横田委員長のお説は、一国ではどうにもならないような国際的なカルテルは、国際的にこれを処理して行かなければならぬということでありますが、現在の世界の動きというものは、西欧民主主義の諸国の中においても、やはりブロック経済を押し立てて、自分たちで経済的な覇権を握ろうとか、あるいは安定をうまく得ようというのが、不幸にして今日の実情であります。フランスはもう完全に独禁法なんというものはけ飛ばしたようなものの考え方をしておるのでありますが、ルール方面の鉄、石炭というふうなものをコンバインして、これで一つ経済圏を確立しよう、そういうことによつて、鉄鋼なら鉄鋼について、世界的に独占経済市場を確立しようというふうな動きが出ておる。これは御承知通りでありますが、これはやはり独占禁止法の精神から行くと、とんでもない結論であるが、しかしあの諸国にとつてはたいへんな利益になつておることと思うのです。経済的に後進国であるところの日本、特に戦争の惨禍をこれだけきびしく受けた日本が、アメリカの友達づき合いをすることはいいが、先頭を切つて身を犠牲にすることの必要は、いささかもないのじやないか。私は根本的にこういう考えを持つている。国際的に日本経済水準を高めて、日本産業の再建をして行くためには、ある程度大胆な思い切つた措置はやるべきである。そのために一般消費者や中小企業者なんかがある程度の犠牲をこうむることがあるならば、政府は思い切つて税法の改正をやるなり、あるいは金融をつけるなりして、この点については勇敢な施策を講じて、そうして日本経済の安定を維持して行くということに努力をすべきである。それを、これもやつちやいけない、あれもやつちやいけないといつて何もやらないでおつて独占禁止法というようなものが存在しておるというところに、現在の日本経済の苦悶があるように私は思う。フランスや何かがああいう提唱をして、西欧諸国が一つの大きな経済圏を確立して、自分たちの立場を擁護しようとかかつておる。あなた方の考え方から行くと、とんでもないことで、根本的な見解の相違になつて来るのですが、公取委員長はどうお考えになるか。
  80. 横田正俊

    横田政府委員 だんだん根本問題に触れて参つておるように思いますが、要するに現在の資本主義と申しますか、自由私企業制度というものには、幾多の欠陥があるのでございまして、この自由私企業制度の欠点を是正するためには、明らかに二つの方法があるわけでございます。一つは、われわれの担当しております反トラストの線を出すことによりまして、あくまでも企業の創意とくふうに満ちた活溌な競争を維持するという線によつて、資本主義の自己矛盾をある程度解決して行くという方法と、もう一つは国の権力によりまして、自由競争というところから離れまして、一つ統制なり計画経済の方へ問題を持つて行くというのと、全然違つた二つの線によつてそれがささえられて行つておるというのが、現在の自由私企業態勢の姿ではな、いかと思うわけでございます。現在われわれが行つておりますのは前者の問題でありまして、先ほど仰せのごとく、あるいは国際的に一つのシユーマン・プランのような大きな政策を、国家間の協定によつてきめまして、そのもとにおいて強力な政策を遂行して行く。これは明らかに国家の権力に基きますところの、資本主義のある意味の是正ということになるわけでありまして、私もいろいろな特殊な産業について、それが必要がある場合には、はつきりと統制の線を出して、計画経済なり、あるいは進んでは国営、公営というような線まで行つていいものもあると思うのでありまして、その場合には何も独占禁止法を振りかざして、そこでいろいろなことを申す必要はないのでありますが、そこまで行かないでおいて、単に私企業の自由な話合いをもちましていろいろなことをすることに、いろいろ弊害が伴うのでありまして、この点はもしその必要があれば、明らかにそういうはつきりした法制をつくり、国が権力と責任を持つて、その企業の運営に対して、ある程度の干渉をやつて行くという線に行くべきであろうと思うのでございます。御承知のようにシューマン・プラン等は、なるほど見方によりますと、自由な競争を非常に制限しておるように見えますが、内容を詳細にごらんになりますと、あれは国家間の協定をしまして、一つのわくをきめて、その他のいろいろな国に対抗しておるのでございますが、そのわくの中では非常に自由な競争を促進し、それを保持するようないろいろなやかましい条件がたくさんついておるので、つまりそのわくの中で働く私企業につきましては、かなり自由競争の線がはつきり出ておるようなわけであります。要するに問題は、どの程度までこの独占禁止法の線で持つて行くか、どの程度まではさらに統制とか計画経済に持つて行くかという問題でございまして、われわれは何もいたずらに独占禁止法を振りかざしまして、国家の最高の目的によつてきまりますいろいろな統制問題——それ程度があろうとは思いますが、それにまでいういろいろちばしを入れる必要はないというふうに考えております。
  81. 山手滿男

    ○山手委員 私はそこを言つておるのではないのでありまして、午前中にも同僚議員の栗田君から、通産省がこれに頭を突然つつ込んだのはおかしいじやないかという議論があつたのですが、あの議論はやはり独占禁止法改正する方向についての基本的なものに触れての議論であると思つておるのです。たとえて言えば、現行法にいわゆる公共の利益という一つ前提がついておりますが、これの解釈にあたりましても、どういう立場をとつているか、おそらく通産省立場公取委員会立場とは相反する立場に立つことであろうと思いますが、私は根本的には日本経済界に臨むのにウエートをどういうように置いてこれを判定して行くのか、公共の利益というようなものも、どのように判定をして行くか、それによつて今後改正されたあとにおいても法の運営によつて非常に大きな影響力を経済界に与えるものであろうと思うのであります。さつきも言いましたように、特需の受注にいたしましても、あるいはいろいろ外国資本が日本に進出して来ておる、そういうものと民族資本との闘いにおきましても、これは基本的なものの考え方によつて、あなた方が、上からにらんでおられる方がどうであるかによつて、非常な影響力を受けると思うのです。その点、これは単に抽象論でなしに、現実に大きなわかれ道ができて来ますから、ここで少し議論をしておかなければいかんと思いますが、私はある程度の話合いをもう少しさすことを認める方が国民経済にプラスになる面が相当に多い。公共の利益にも反するように表面的には見えるけれども、実際には公共の利益に合致するようなことが相当にあると思う。あなた方はそこでつかまえられるのは単にそういう話合いをしたとかどうとかいうことだけをつかまえて、公共の利益に反すると判定をしたという烙印を押されがちでありますが、国民経済に実質的にはプラスになつておるかマイナスになつておるか、それをつかまえて判断を下さなければならないじやないか、ただ四、五の会社が集まつて謀議をこらしたとかなんとか、それを一生懸命つかまえて、それだけでこれを審判にかけるとかなんとかお騒ぎになる場合が相当にある。そういう手続だけをつかまえてというか、実際にはこの判定を下す場合には国民経済にプラスになるかならぬか、それによつて公共の利益に反しているかどうかを判定をして行かなければいかぬ。しかし、その判定の仕方については、どつちの立場をとるかによつて大きくわかれて来る、こういうふうに考えておる。委員長の御見解を御説明願いたいと思います。
  82. 横田正俊

    横田政府委員 今回の改正におきましては、単に業者が話合つたものが、ただちに違反として取上げるというようなことになりませんように、御承知のように第四条を削除したり、いろいろそういう緩和はある程度できておるわけであります。いわゆる競争を自主的に制限するようなものにつきまして、そのうちの若干のものを今度は適法カルテルとして認める、こういう立場をとつているわけであります。少しりくつめきますが、そもそも独占禁止法そのものが、実は公共の利益の上に立つた制度でございます。つまり本来ならば自由であるべき契約の締結に対していろいろ国家がこれに干渉する、カルテルというようなものについて干渉する、あるいは本来自由であるべき財産権の取得あるいは享有に対しまして、いろいろ株式を持つてはならぬというような制限を加える。あるいは本来自由であるべき職業の選択を妨げて重役を兼任してはならないというようなことは、全体としてみまして、いわゆる憲法の公共の福祉あるいは独占禁止法の公共の利益に反する、こういう気持からこの法制自体ができておるわけであります。但し、この法制をいよいよ具体化いたしますときに、今お話のような事柄に具体的にそれが妥当であつたかどうかということを公共の利益とかあるいは国民経済上の必要とかいうようないわば非常に一般的な条項を持つて来て、これを一々処理して行くということは、言うのはやさしいのでございますが、具体的の法制としてはほとんど運用をしかねる面があるのであります。これは例は悪うございますが、けさほど交通整理の問題で申しましたように、交通の秩序を乱さなければ、どんなスピードで走つても、どんな曲り方をしてもいいじやないか、人をひいたらそのときにそれを取上げて罰すればいい、こういう議論は交通の秩序維持のためにはとうていとれない。これと同じことがこの経済界にもあると思うのであります。公共の利益とかあるいは国民経済上の必要とかいう事柄にあまりに重きを置きまして、そういう観念をとり入れられることは、法制を非常に不明確にいたす点があるのでございます。たとえば労働基準法というものがございまして、労働者の利益を守るために一定基準が設けてございますが、これに対しては財界等では御承知のように、あれはきつ過ぎて日本の実情に会わないというようなことを申しております。もしその考えを何らかの形でこの中に入れるというために、たとえば公共の利益に反しなければよろしい、あるいは国民経済上必要な場合は八時間労働を守らなくてもよろしいというような一般条項をこの中に入れたとすれば、労働基準法の精神は死んでしまうことになるのではないかと思うのであります。これは少しりくつでございますが、生きた一つの具体的な法制として取上げます場合には、そこにあらかじめはつきりした線を引きまして、その線の外のものは一応いけないということにし、但しその中でも例外的によろしいものははつきりした線を下してこれを除外して行くということが、具体的な法制としては正しい。但しその線がきつ過ぎるかどうかということは、これは十分に検討さるべきことであろうと思います。もちろん交通の場合についても、何マイル以上を禁止するのが日本の交通事情に一番適するかどうか、あるいは適用除外——消防自動車であるとか救急車であるとかあるいは総理大臣の自動車だとかいうようなものについて適用除外を認めるということは十分に考えられることでありますが、問題はそこにはつきりした線を一応引きまして、そしてそれに適用除外をまたできるだけはつきりした形できめて行くことがきわめて適当な制度ではないかというふうに考えております。
  83. 山手滿男

    ○山手委員 独禁法の番人である公取委委員長としては、そういうふうに御答弁になるのはやむを得ないことであろうと思うのでありますが、現在の日本経済全般の問題から見ますると、独禁法の改正は非常に重要であつて、私はある意味では日本の死命を制する問題になつて来つつあるのではないかと考えておりますので、もう少し御再考を願いたいし、また席をあらためて議論もしてみたいと思います。  話はまた逆もどりしますが、アメリカの法制は、いわゆる財閥的なものを保護しないというのが、私は独禁法の一つの大きな観点であるように思う。ところが日本の従来からの法制は、あくまで自由競争という建前で、公共の利益、福祉を守ろうというのがねらいであつて、非常に大きな実質的な相違点を持つております。ところが最近になりますと、日本国内では公取の方は一、二の私人に相当大きな経済的な権力が集中することは、日本国内においてもこれは見のがしておられるように思う。そうしてこの日本経済の肥料なら肥料、あるいは鉄鋼なら鉄鋼五社とか、石油の十社とか二十社という、いわゆる財閥的なものでない経済の実際の必要性から来た協定などについて、非常にやかましくおつしやつてつて、財閥解体後のこの実情に目をおおつて財閥の復興をむしろ私は黙過されておるような気がいたします。この点私はアメリカのねらつておるところは、むしろ日本ではゆるやかになつてつて、アメリカが日本に、何というか、占領当時押しつけようとしたものだけを一生懸命にお守りになつておるのではないかという気がいたしますが、どうです、その点は……。
  84. 横田正俊

    横田政府委員 アメリカの法制が財閥を主として問題としてできておるものであるというような点は、そのまま私はこれを了承するわけには参りません。しかし財閥というものに対して、アメリカが非常に注意を払つておりまして、これは日本なんかの財閥とはたいへん違つた、非常な大きなものに対しましては、かなり勇敢にこれの解体にとりかかつたりいたすということは御承知通りでございます。しかしそれだけがアメリカの独占禁止法のねらつておることではなくて、やはりその他の面につきましても、実に活溌に諸般の——御承知のように、あそこは司法省と、ちようど私どもの役所と同じような連邦取引委員会と二本建になつておりますが、そのいずれもが、財閥以外のいろいろな取引制限カルテルというふうなものに対しましても相当活発に闘つておるのが現状でございます。なお日本ではそういう財閥に対して、公取は甘過ぎやしないかという御非難でございます。これは私どもも、実にその点はきわめて神経質と思われるくらいに考えて仕事をしておるつもりでございます。御承知のように、趣旨は昔の財閥とは大分違つたものではございまするが、いわゆる財閥として解体せられましたものが、だんだん合わさつて行くというのが現実の姿でございまして、これに対しましては、私どもとしましては、非常に慎重にその個々の事件を取扱つてもおりまするし、またその動きにつきましては、絶えず公取にございまする調査部におきまして、その動きを厳重に常々から見守つておるわけでございます。ただ今まで現われました程度のものは、まだまだ戦前のいろいろな財閥と申しますか、そういうものに比べますれば、ものの数でないようなものでございまして、もしこの傾向がだんだん押し及んで参りまして、非常に弊害が出て来るというようなことになりますれば、もちろん独占禁止法のその線は、そういう面において、なおそういうものの取締りに十分な規定がございますので、その規定を通用いたしまして、そういう弊害の生じないように、十分に注意をして行きたいと思つております。
  85. 山手滿男

    ○山手委員 私も、アメリカが財閥だけを目のかたきにして動いていると言うたわけじやありませんが、そういうところに大きなねらいがあるということを申し上げておるのであります。委員長は今、日本の旧財閥的な動きに対しては目を光らしておるというふうなお話でありますが、私はなるほど財閥の解体、過度集中排除法の適用以来財閥というものは一応崩壊しておりますが、その人と人とのつながり、特に金融機関を中心にして、随所に活溌に動いていることは、皆さん方御承知通りであります。目を光らしておるというお話でありましたが、事実は非常に動いておつて公取はそういう方面にはまことに寛大であるという証拠を一つあげますと、私は非常によく知つておりますが、ここに企業局長もおりますから申し上げますが、たとえて言えば、旧三菱財閥が関連の産業の株の買い占めをやつておる。あるいは四日市の七十万坪に及ぶ旧海軍基地に対しては、これは独占的な財閥の基地をつくろうといたしております。御承知通りです。これは通産省企業局長もその出願を受付けておられますし、公取の方にもお話があつたと思いますが、旧三菱関係の三菱銀行の息のかかつたあの金融機関を中心にして、金融をつけている関連の十数社の関連事業をあそこへ全部集中的に打込んで、あれを国家から払下げを受けるというふうな動きを堂々と政府のどまん中にやつて来ておる。それなどについては公取は一ぺんの警告も発せられないし、何らの手を打たれておらない。まだ例を言えといえば、私は三つでも四つでもあげますが、こういうものについてこれは明らかに旧三菱財閥の金融機関を中心にして、一連の財閥会社をそこに集中的に打出そうとしておつて、明らかにこれは財閥の復興を意図しておるものである。そういうものについて、政府に堂々と申請をして来ておつて、やつておるのでありまするが、委員長はどういうふうにお考えでありますか。
  86. 横田正俊

    横田政府委員 一口に財閥あるいは企業の結合と申しましても、これにはいろいろな形があるわけでございまして、今お示しのような三菱系の会社にそういう動きのあることは、これはもう天下周知の事実でございまするが、それがはたして独占禁止法のいわゆる一定取引分野競争制限というような、そこまで行つておるというふうに見えるかどうかという点には幾多の疑問があると考えます。もちろん私どもといたしましては、いかなる形をとろうといたしましても、これが独占禁止法の線に触れて参りますれば、それが財閥であろうとなかろうと、そういう点は容赦なく取締つて参るつもりでおります。ただこの際にちよつと申し上げておきたいのは、これは一つの法制としてのあり方の問題といたしまして、これはあるいは考えようによりましては、独占禁止法の欠陥といつていいかとも思いまするが、独占禁止法はあくまでも一定取引分野における競争制限する、つまりある一つの業種において非常に大きな力を持つて、その結果有効な競争が行われなくなるという点に非常に基点を置いてすべてができておりまして、ここにいろいろな違つた業種のものが組み合つて参りまして、そこに非常な経済力を集中して、大きなものができ上るというような面につきましては、比較的取り締りの規定が欠けておるわけでございます。これは御承知の持株会社規定なんかはまさにそういう面に非常に役に立つ取締規定でございまするが、そういう趣旨のものが非常に欠けておるという点は、たしかにこの独占禁止法一つの盲点というふうにも言えるかと思います。しかし今回の改正におきまして、これはぜひお認めいただきたいのは、いろいろ企業がその優秀な力を濫用いたしまして、他の企業を圧迫するというような問題は、これは不公正な取引方法として禁じて参りたいというような線を今度は盛り込みましたのも、実はそういうような面に対しましても、できる限りの手当をいたしたい、こういう趣旨でございます。
  87. 山手滿男

    ○山手委員 今委員長が自分でお認めになつたように、実際にはなかなかこの独占禁止法のこういう条項はつきり明文でうたつておりましても、把握しにくい問題でありまして、こういう法律があると、この網にかかつたものがばかを見るというふうな結論が出やすい、この十一条の金融業を営む会社は、百分の十をこえて云々という、株式の保有の問題につきましても、こんな法律規定をくぐるのはわけはないのです。何も銀行なら銀行が自分の名前で株を持つ必要はないのですから、どんなにでもこの条文はくぐつて行ける。それを公取の皆さんがさつきの公益違反という議論と同じようにつかまえられようとすれば、そこにまたいろいろ業界にとつては苦しいような行動もされなければならないこともあると思います。大筋としては、公取が財閥なら財閥というものについて、にらみをきかされることが一番大切だろうと思います。今言いました千代田銀行が中心になつて関係会社を全部あつせんをして、そこに集中して大きな基地をつくるというようなことについては、公取はいかにも無関心でおられるがごとき印象を与えておりますから、一言申し上げた次第であります。  私はちよつと別に用事がありますから、この程度で次会にします。
  88. 遠藤三郎

    遠藤委員長 木下重範君。
  89. 木下重範

    ○木下(重)委員 私は二十四条の二の規定につきましてお尋ねしたいのであります。この法規を解釈いたしますと、再販売価格の維持制度が許されることになるものと判断いたしますが、そのようなことになるといたしまして、その結果を考えますと、非常に消費者に不利益な、消費者をいためつけるようになるのではないかということを考えておりますが、その所信を伺いまして、以下これに関連する質問をいたしたいと思います。
  90. 横田正俊

    横田政府委員 この制度を今度規定いたしました趣旨を簡単に申し上げたいと存じます。この制度は大体小売業者の正当な利潤を保障して、やろうということが主眼であります。なるほどそれに関連いたしまして、メーカーが自分の商品について持つ一つ立場を保護するという面も出て参りますが、主としてねらいは小さな小売業者の保護ということになるのでございます。これはすでにお聞き及びかと存ますじが、アメリカで非常に論議されて、結局において現在なお維持せられておる一つの制度でありましてこれは小売業が非常に乱暴な売り方をいたしまして、ことに有名品をおとりに使い、これを非常に安く売ることによりまして、他の商品も非常に安いものであるかのごとき錯覚を一般消費者に与えるという、いわゆるおとり販売というようなことが非常に行われることになるわけでございます。ことに大きなデパート等においてそういうことが行われますと、その定価によつて普通に売つております小売業者に非常な影響を及ぼすものでございます。こうなりますと、その他の小売業者もできる限り安く、あるいはもう利潤を無視しましてもこれを売りに出す。こうなると、一つの値下げ競争というようなことになりまして、非常な混乱に陥るわけでございます。これはなるほど消費者立場からいいますと、一つの同じ種類の歯みがきなりあるいは化粧石けんなりその他の日用品について、ある店で定価以下に買えるということはある意味においての利益ではございますが、そうなりますと、結局定価で売つている店は何か非常に暴利をむさぼつておるような感を抱かせまして、これが先ほど申しましたように、だんだん値下げ競争ということに陥り、その結果、小売商も営利事業としてやつております以上は、そこに適正な利潤がなければならぬ、それをも割つて無理をして売るという結果になります。一方メーカーの側から申しますと、そういうことになりますと、その商品はいかにも内容が粗悪なものであるというような印象を与えます。メーカーとしましては、その商品が有名品であればあるほど、その商品について自信を持ち、それにふさわしい定価をつけてこれを市場に出しておるわけでございますから、そういうあらぬ疑いのもとに、その商品の品質なり何なりについて、一般消費者に疑惑を持たれるということは、非常に迷惑ではないか、こういうような観点からいたしまして、メーカーが自信を持つてつけました定価については、小売業者もこれを守つて、お互いに無理な競争をしないということが、この再販売価格維持の契約を認めるおもな理由でございます。なおそうなれば、やたらに高い定価をつけてそれに縛られることは、消費者の利益を害するのではないかということにもなりましようが、しかしここにはいろいろの要件がありまして、たとえばその契約内容が消費者の利益を害してはならぬ、あるいは同種の商品がほかにたくさんありまして、その間に有効な競争が行われておるというような前提のもとに、初めてこの再販売価格維持契約を認めて参ろうというわけでございます。従つて消費者の側からいいますれば、なるほど一つの商品についてできるだけ安く買うということも一つの利益ではございますが、他に有効な競争がございますれば、当然もつと安い商品を買うことができるわけでございますから、この点は消費者の利益に多少の関係はございましても、やはり小売業の適正な取引確保いたしますためには、大乗的な見地に立ちますと、ここに掲げてございますような特殊のものにつきましては、再販売価格を維持させることがむしろ妥当ではないかというふうに考えるわけでございます。ただ今まで数回、この制度につきましてはいろいろ不都合ではないかというお尋ねをいただいております。その中に消費組合やあるいは労働組合の共済会その他におきまして、今まで定価よりも安く売つておつたものが、今度この制度を開くがために、そういう道がとざされて、非常に不都合を生ずるのではないかという、まことにごもつともなお尋ねをたびたび受けておるわけでございますが、この点につきましては、私どもとしてはアメリカの制度のように、こういう特殊の商品については、メーカーなり卸売業者との間に特定の契約をしないでも、当然に定価に縛られるという行き過ぎた制度は今度採用いたしませんで、メーカーとの間に再販売価格を維持するということを特に契約したものだけについてこれを認めて参りたいというわけでございます。従つて消費組合等につきましては、メーカーとの間にまた別途の契約を結べばもちろんそれが許されることになるわけでございますから、問題はメーカーがそういう契約をするがしないかということにかかるわけでございます。メーカーとの間に適当な契約を別途に結びますことによつて、そういう労働者やあるいは消費者の団体に別な価格で卸すということが認められるというふうに考えて——その点についてはあるいははつきりした規定でも置けばよかつたのかもしれませんが、そういうふうこ考えまして、一応この制度は小売業の正当な取引をむしろ促進するという趣旨でもつてこの法案の中に入れた次第でございます。
  91. 木下重範

    ○木下(重)委員 ただいま詳しい説明を聞きましたが、これはどうでしよう、よく判断しますと、むしろ逆に生産者を非常に保護することで、必ずしも小売業者を保護することにならないじやないかと思います。と申しますのは、生産者の方でお互いに協定してこの値段でしかひとつ売るまいじやないかということなれば、小売業者は、自分の方では高いと思つてもそれを押しつけられる。しからば消費者はその小売業者から品物を買うということになりますからして、結局値段は高いと思つても、それを買わなければならぬという実情に置かれるのではないか、こう考えるのであります。特に本件のこの規定について問題になりますのは、日用品が主でありますから、一般大衆が毎日消費しますところの日常欠くべからざる品物について、かようなことをされるということは、非常に——私むしろ、政府の方で立案される際に、この点まで考えていただろうか、恐ろしい矛盾した規定を設けたものだと考えておるのですが、ただいまお説のように、第一に問題になります点は、生活協同組合や、あるいは会社、工場の小売店、小売業、あるいは購買会と称するものがありますが、これあたりの実情を見まする場合、御承知のごとく、厚生福利施設としまして従業員には、生産者及びメーカーから安く買つて、これをわけてやつておるといようなことで、非常に労働者の便宜をはかつておるのであります。ところが、さつきのお説のように、これからメーカーと直接協議をして契約してやれば、その方は支障ないじやないかといいますけれども、生産業者の方では、何もこういう会社、工場に売らなくても、日常どうしても使わなければならぬ品物であるからして、自分の方ではこういう価格でしか売られないという一つ協定をしておるのだから、その価格以外には売られませんとつつぱられたら、いかに会社の方で自由契約しようとしても、できないことになります。この点までもお考えになつておるかどうか。りくつはなるほどそうであろうと考えますけれども、実際において、これは、現在そういう機関を利用しておりますところの従業員が大きな迷惑をする。現にこの問題につきましては、もうすでに炭鉱その他の会社、工場から、そのような改悪的な法案はひとつ廃止してもらいたいというような陳情が来ておるように聞いておるのでありますが、この点について、どういうお考えを持つておるか。御所信をお伺いしたいと思います。
  92. 横田正俊

    横田政府委員 ただいまの私の説明は、非常に不足しておりまして、多少誤解をされておる面があるように思いますので、もう少し補足して申し上げますと、この規定で、独占禁止法の適用を除外しておりますのは、メーカーと卸売業、あるいは小売業との間の契約だけでございまして、いわゆる縦の関係適用除外になつております。われわれが最も警戒しなければならぬのは、メーカー間の横の協定であるとか、あるいは卸売業間の横の協定であるとか、あるいは小売業間の横の協定というふうに、メーカーの間で、この種の製品の値段はこのくらいにしようではないかというような協定をいたしましたり、あるいは卸売業の間で協定をいたしますような、いわゆる横の協定というものは、これは明らかに独占禁止法に抵触して参るわけでございまして、この条文にも、縦の関係はつきり書いてございますと同時に、やはり有効な競争が行われるということは、そういうことをも意味するわけでございまして、今のお話の中で、たとえば生活協同組合などにも、定価以外では卸すまいというようなことをメーカー間で話し合つたりいたしますれば、これはただちに独占禁止法の対象になるわけでございまして、繰返して申しますが、これはメーカーとそれに連なりまする縦の間の契約において、定価を守つてくれと言われました場合に、それを約束をしました小売業がそれに従う、こういう点だけが、この条文の対象になつておるわけでございます。
  93. 木下重範

    ○木下(重)委員 なるほど説明は一応ごもつとものように見えますが、この規定を見ますと、一般価格に対する独占禁止法適用除外については、具体的に種々の制限規定が定められて、その必要性を立証して、初めて認可されることになつそおりますが、この再販売価格維持の実施については、一定条件を具備するものは、単に届け出ることによつて簡単に許されておる。そういたしますと、今申されました、お互い値段を協定して安く売るまいということを話し合えば、独占禁止法に違反すると言いますけれども、かような簡単なことで許されるというような状態になつておれば、往々にして事実上そういうことをやるのであります。まるきり独占禁止法に触れるようなことを、この法令で定めたような結果になつておるんじやないかと思うのであります。この法の意図しておりますような、いわゆる小売業者と中間の卸売業者の縦の間を考えて、小売業者の利益保護のために、かような規定を設けたというのでありますが、実際においては、かような規定が、こんな簡単なことでつくられて実施されるということになりますれば、先ほどから申しますように、事実上において、独禁法違反を犯してもやられる危険性がある。こういう点について、どういうお考えを持つておられるか、承りたい。
  94. 横田正俊

    横田政府委員 その点は、この監督を厳重にいたします場合には、この条文の中にもいろいろな認めまする場合の条件が相当に入つておりますが、その条件に当てはまるかどうかということを、一々認可というようなことでやるのが、あるいは一番手がたい方法かもしれませんが、御承知のように、ここにございますような日用品というものは、きわめてたくさんございまして、それについて一々認可を受けさせるということは、非常な煩瑣なことになりますので、結局届出をしてもらいまして、その届出に基きまして、公正取引委員会でその後いろいろな情勢を調べまして、もしもその要件が欠けており、メーカー間で話し合つて競争が実質的には制限されておるというようなことや、その他のおもしろくない状態がはつきりわかりましたら、これは適用除外でなくなるわけでございますから、そういう販売価格の協定をさしとめをするというような、適当な措置がとられるわけでございます。
  95. 木下重範

    ○木下(重)委員 その点に関連してでありますが結局指示価格についても、全然これを検討される明確な規定も何もない。もちろん品種も種々雑多でありましようけれども、かようなものがないこと自体が、先ほどから私が申し上げておるような危険を冒されるおそれがある。従つてかような法の不備と申しますか、むしろ犯罪人をつくるような法案をどこまでも——小売業者をむしろ保護するということが政府考え方かもしれませんけれども、必ずしも保護されるかどうか、わからぬような法案を、私は改正法案として出されることはいかがかと思うのであります。二十四条は削除されたらどうかという意見を持つておりますが、いかがですか。
  96. 横田正俊

    横田政府委員 それは実は、主として化粧品関係のメーカーその他から、かなり強く要望がございました問題でございまして、もちろん単にその要望に沿つたというだけではなく、公正取引委員会においても、外国の立法例その他を検討いたしまして、これを今回提案するに至つたわけでございましてこの規定のいろいろ不備な点は、あるいはあろうかと存じますが、そういう点を明らかにするような趣旨の修正をしていただくことには、もちろん異議は、ございません。この条項自体を撤回するということは、ただいまのところ考えておりません。
  97. 木下重範

    ○木下(重)委員 政府の所信は大体わかりましたが、たしか本月の三日の朝日新聞の社説と思いますが、それをごらんになりましたかどうか、参考のために読んでみようと思いますが、こういう批判をしております。一般消費者においても、この法案は非常に改悪の法案だから一日も早く廃止すべきだということをいつている。その理由としまして、「いわゆる一流ないし有名メーカーの製造にかかる日用品については、メーカーが小売業者に対して一定の価格以下で販売することを禁止させる契約を結ぶことを認めていることである。これは、国民の日常生活に直接関連する日用品である。しかも、その商品が、国内に広く認められ、品質は標準化されているような大生産業者の製品である場合、生産者と小売業者の間に垂直的な価格維持のための契約をなすことをとくに認めねばならぬ必要はあるまい。」その次に「今日、一流の日用品の中にも、小売業者に驚くほどの大幅な販売利益を与え、それをもつて販売競争に利用している大メーカーも少くなく、そうした商品について、デパートなどを除いて中小の小売店では、いずれも相当の値引をしている実情であるといえよう。化粧品その他日常品がみんなタバコや切手などと少しも変らないような取引を強要されることは、消費者立場からすると、公正な取引とはどうみても考えられまい。このような改正条項は廃止すべきである。」というような意見が社説に出ております。これはごらんになつたと思うのでありますが、先ほどから私が指摘しております点もここに帰着するのであります。小売業者を保護されると言いますけれども、先ほどから申しますように、あるいは独占禁止法違反になるかもしれませんけれども、価格査定についても何ら取締規定はなく、自由にまかしておる。さようなことをやられやすい状況に置かれておりまして、小売業者はきめられた価格を押しつけられておるかつこうで、しかも一定の定められた価格以下で品物を売られない。そうすると統制時代とまるで同じで、まるきり統制価格を押しつけられたようなことになります。消費者は自然きめられた価格の品物を買わなければならぬという矛盾が生じて来るのであります。諸外国の例を云々と言われますけれども、これは少くとも日本の国情には符合しないのではないかと考えるのであります。従つて私はこうした点について、どうしても廃止の決意がないとしますならば、十分に検討して修正を加えていただきたい。さらに先ほど申しました生活協同組合は、解釈上において、この点について政府の意のあるところを明らかにするために、いわゆる除外規定をここに設けるとか、この点を明確にする処置をとられなければ、将来これはむしろ生産業者の思うつぼにはまるのではないかという杞憂を持つております。この点に対しましての所信をお伺いしたいと思います。
  98. 横田正俊

    横田政府委員 まことにおつしやる通りに、いろいろな問題がこの問題は含まれておると思いまして、われわれの方におきましても、この際十分検討いたしまして、この制度の欠点をできるだけ除去するような形にいたしたいと考えております。
  99. 福田赳夫

    ○福田(赳)委員 関連して当局に伺いたいのでありますが、ただいま木下委員から質問のありました点、この質問に含まれておる意見ははなはだもつともだと思うのです。この二十四条の二の条項は、私ども見ましてどうも百害あつて一利なし、かように存ずるのです。なお伺つておきたいのでありますが、かような立法をしなければならぬという、社会的弊害というか実情は一体どこにあるのか。おとり販売ということを申されましたが、おとり販売の弊害というようなものが日本にはたしてあつて、皆さんの頭にこびりついておるのかどうか、これをひとつつておきたい。
  100. 横田正俊

    横田政府委員 この点につきましてはここで、一々どこでどういうことということは申し上げませんが、ことに大メーカーの割合にマージンの少い商品につきまして、私が冒頭に申し上げましたような非常におもしろくない売り方が行われておる。これは実際の現実の事実だそうでございまして、結局そういうふうなところからいたしまして、業界からもこの際こういう制度をしいてほしいということの申出があつたのでございます。
  101. 福田赳夫

    ○福田(赳)委員 どうもこの二十四条の二というのは、私は独占禁止法法律の精神自体を逸脱しているんじやないか、かような感じさえするのであります。独占禁止法は申すまでもなく不公正な取引方法禁止し、過度の集中を防止しようというのでありまして、この二十四条の二のねらいは、非常に法律全体の趣旨が違う。そこまで公正取引委員会が出て行つて、そうして自由な活動に干渉しなければならぬか、私はこれに対してはなはだ不可解の念を抱くものであります。ただいまアメリカの話がありましたが、一体おとり取引禁止に関する条項というものは、アメリカのアンチ・トラスト法にあるのかどうか。
  102. 横田正俊

    横田政府委員 アンチ・トラスト法は、アメリカはいろいろな法律でもつて構成されておりまして、ただいまの関係の問題は、向うの公正取引委員会法とでも申します法律の中に、不公正な競争方法と、それから欺瞞的方法による取引等を取締規定が、ございまして、この規定自体は非常に簡単なものでございますが、それを受けまして、またいろいろな法律が出ておりまして、いろいろ議論の結果、最後に比較的最近に出ましたものが、マック・ガイアン法という名前の法律でございまして、この中に一定販売価格を維持する契約適法なものとするという趣旨の規定がございまして、しかもこれは日本の今回の規定よりももつと徹底した、契約自体にサインしないものまでも定款に縛られるというような、きわめて徹底した制度になつておるのでございます。もちろんこの制度の考え方につきましては、アメリカにおいてもいろいろな議論はあるようでございます。
  103. 遠藤三郎

    遠藤委員長 福田君、通告順にやることになつておりますから、どうぞ……。  この際申し上げます、本日農林委員会より、ただいま審議中の私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律の一部を改正する法律案に関し、連合審査会を開きたい旨の申入れがありましたので、これより農林委員の質疑を許します。川俣清君
  104. 川俣清音

    ○川俣委員 私はまず第一に三点をあげて質問いたしたいと思います。横田委員長農林委員会において、硫安協会の価格協定について、独禁法違反のおそれがあるのではないか、あるいは明らかに違反をしておるのではないかという質問に対しまして、先週一ぱいにおいて調査を完了して報告されるという御答弁があつたのでありますが、その調査の結果いかなる処置をされたか、これが一点です。  二点は、この法の改正によりましてかかる硫安協会の価格協定が制裁が緩和せられるような結果になるのであるかどうか、あるいは制裁を緩和するような結果が来るとすれば、いかなる理由でその制裁を緩和しようとするのであるか。  三点は、硫安協会がかかる価格協定を独禁法に触れるものでないというふうに宣伝しておるようでありますが、いかなる点が触れないと称しておりますか、その点が明らかになつておりますならば、それに対する見解をあわせて御答弁願いたいと思います。
  105. 横田正俊

    横田政府委員 先般の硫安協会の問題につきましては、その後当委員会の審査部において鋭意審査を続けまして、実は本日午前または午後に正式に委員会を開きまして、われわれの態度を決定しようということでありましたが、この委員会にぜひ午前も午後も出席しろという委員長お話でございましたので、実は延びまして、あるいは今日帰りましてからか、あるいは明日早々にでも国会の方の御審議ともにらみ合せましてこの問題の処理を早くいたしたいと思つて、実は私の方も非常に気がせいでおるわけであります。それから改正法になりますと、事業者団体法が廃止になりますが、事業者団体法の中の主要な規定が今度の改正法の第八条としてそこに盛り込まれることになりまして、大体硫安協会のやりました行為がもし現行法の団体法に触れるといたしますれば、やはり新しい独禁法の第八条の規定に抵触するおそれがある。かように考えます。この点はこの法律改正によつて別に法規そのものは緩和になつておらぬというふうに考えております。  それから硫安協会で触れないといつておるそうですが、この点につきましては審査の結果を聞きませんとどういう趣旨でそういうことを言つておりますか、正確なことはわかりませんが、しかしおそらくただ単にああいう価格を一応出しただけであつて、何も拘束的の意味もなければ、また実際に、まだ実行と申しますか、そういう結果になつておらぬから、何も独禁法に違反するものではない、事業者団体法に違反するものでないのだという趣旨の弁解なのではないかと思いますが、これはやや想像でございまして、さつそく委員会において審査の結果を詳細聞きますれば、その間の消息がもう少しはつきりいたすだろうと思います。いましばらくお待ち願いますれば、もう少しはつきりしたことを申し上げられると思います。
  106. 川俣清音

    ○川俣委員 この点だけ、つまり日本の硫安製造会社がおのおのコストの相違があること、並びにその相違がはなはだしいということはお認めになつておると思うのであります。それが一本価格でなければならないということは、明らかに協定ができておるのであるという判断が下さるべきだろう、こう思います。前の戦争中においてプール計算までしておりましたことは、非常にコストに差異があるところからして、高いコストの分を救済する、そのためにプール計算までして一本価格にしたのであります。その現状と今日とはあまりへだたりがないものであるというふうに私どもは見ております。特にこれは御承知だと思いますが、工場の設置場所が非常に異なるのでありまして、立地条件の悪いところに、ただ販売がしやすいというところから、東北肥料などは東北に持つて行つたり、あるいは日本水素が東北にやはり出て参つたりしておりますが、この問題は販売に至るところの輸送賃までもメーカーが持つというところから、コストが高くなつても輸送賃によつて幾分でも緩和されるというようなところをねらつての工場立地条件考えたのだと思うのであります。そういう過程でできた工場の品物を、地方に集めて、一本価格であるということ自体が非常に無理だと思うのであります。すなわちコストの高いところは輸送費を緩和して経営が成り立つ、こういう計算でできておつたものを、特に輸出においては一本価格で輸出させておるというところに非常に無理が出ておる。この無理のあることは業界自体が認めておるところであります。こういう点から見まして、今硫安協会が考えておるように、強制したのではない。こう言われておるでありましようが、これは実態に合わないということくらいは公取では十分御認識だと思います。この点の認識ついてもわれわれの認識と公取の認識とは異なつておりますか、伺いたいと思います。
  107. 横田正俊

    横田政府委員 硫安メーカーのコストに非常な差異がございますことは、先般の農林委員会で各メーカーから報告して参りましたコストの値幅をたしか数字まで申し上げたと思いますが、あれでおわかりのように、かなりの差異がございます。それを一本にきめるということ、一応その一本の価格によつて取引をするという、そういうものを発表しておりますことからかなりそういう強い推定が下せるわけであります。それらの点はいずれ個々のメーカーにつきまして相当詳細に取調べておるようでございますから、それらの事情も勘案いたしまして最後の判断をいたしたいと考えます。
  108. 川俣清音

    ○川俣委員 そういたしますると、今審査中であるからして、近日中に——本日にも決定をいたしたいという御答弁でありますから、私はそれ以上ほんとうは追究することはやめたいと思うのでございますが、御承知通り春肥の取引がもうすでに始まつております。これは一々消費者に当つてごらんになればおわかりになる通り、まつたく価格が協定値段を一歩も出ない実際の取引でありますことは、これは幾つも例をあげて申し上げることができます。従つていかに弁解いたしましても、現実の取引においては協定値というものを厳守されておりますことを十分御認識になりまして、その結果を待つことにいたしたいと思います。従つて私の質問はこれ以上進めることをやめまして、あらためて次の機会に質問いたします。
  109. 福田赳夫

    ○福田(赳)委員 私は先ほど質問を続けますが、アメリカにおいても相当議論もあるところでありますし、またおそらくこれはアメリカ以外の国ではこういう取引制限規定というのはないのではないかと思うのですが、これはどこかやつておるところがありますか。
  110. 横田正俊

    横田政府委員 現行法制にそういうものがあるかどうか、まだよく調べておりませんが、先般資料としてお配りいたしました西独の、制定を予想されております競争制限防止法とか申すものの中には、明らかに書籍、それから有名品の日用品でありますとか、それにつきまして再販売価格の維持契約を認めるという趣旨の規定がございます。これももちろんその商品同士の間に有効な競争があるということの条件がついてはおりますけれども、その法案の中には明らかに同趣旨の規定がございます。
  111. 福田赳夫

    ○福田(赳)委員 それから先ほどお尋ねして御返事がなかつたのですが、この法律私的独占という一連の範疇に属するものであるかどうか、私の見るところではどうも少し形態が違うのではないか、別の角度の法制ではないかと思いますが、この点に対する御見解を承つておきたい。
  112. 横田正俊

    横田政府委員 それはこういうふうにお答えいたしたらよいかと思います。この独占禁止法には独占規制、それからカルテル規制、それと並べまして不公正競争方法取締規定がございまして、その中に、たとえばメーカーが品物を売りました場合に、買つたものに売るいろいろな条件等を押しつけることは、一応独占禁止法では不公正な競争方法ということで取締りの対象にいたしておるのでございます。その価格ばかりでなく売り先を指定いたしましたりして取引をすることは、結局自由であるべき事業者に対して、その事業活動をいろいろ不当に拘束するという面がございますので、本来ならば違法になるおそれのある行為でございますが、日用品の再販売に関しましては、先ほど申し上げましたような趣旨におきまして、特例といたしましてそういう方律のらち外に置こう、こういうような趣旨からいたしまして、独占禁止法一つ適用除外という形で、ちようど不況のカルテルをはずすのと同じような趣旨におきまして、適用除外の章の中にこれが出て来ております。それだけの意味でございます。
  113. 福田赳夫

    ○福田(赳)委員 私はむしろ現在のような濫売なんかがあるような情勢の方が望ましいのではないか、これはもちろん消費者の利益にもなりまするし、もし今回のごとき規制をいたしますると、あるいは小売業者の売れ行きが悪くなるとか、小売業者自体にもこれは重大なる影響のあるものではないかと思うのであります。ひとり利益するものは、一見生産者のようでありますが、小売業者においてさような売れ行きが悪いということになりますれば、それはまわりまわつてさらに生産者にも響いて来る、経済上一連の関係者全部に不利な状態が来るのではないかとさへ思うのであります。生産者から要請があつて、こういう法令を設けたというのでありますが、それではその際に消費者団体の意見を聞かれてこういう規定を設けたのかどうか、どういろ方法でいかなる意見を聞かれたか、この点についてひとつつておきたいと思います。
  114. 横田正俊

    横田政府委員 特に正式な手続をもちまして消費者意見を聴取する、たとえば公聴会を開いて聴取するというようなことはいたしませんでしたが、いろいろな観点から消費者の利益の点にも配意はいたしたのであります。すなわち、特に消費者の利益を害することになる場合にはこの限りでないというような規定を織り込むことによりまして、できるだけ消費者に迷惑の及ばないようには考えた次第であります。
  115. 福田赳夫

    ○福田(赳)委員 どうもこの規定の沿革を見まして、きわめて一方的なような感じがする。生産者の一方的意見を聞いて、消費者の団体、といつてもこれから意見を聞くことはなかなかむずかしい問題でありましようが、そういう手続もとつておらないという一方的な扱いのような感じがしてならないのであります。現在の経済状況において、相当競争的また濫売の傾向がある場合がある。けれどもこれは法律をもつてこれを規制しなくちやならないという大きな事情はないのではないかと存ずるのであります。先ほど木下委員の言葉に対しまして御回答がありましたが、私はぜひ二十四条の二は、かような意味におきまして、削除または重大なる修正を加えていただきたい、かようなことをお願いいたしまして、本法に関する関連質問は終ります。
  116. 遠藤三郎

    遠藤委員長 井上良二君。
  117. 井上良二

    ○井上委員 さきに川俣君が質問しておりました点について、さらに二、三伺つておきたいと思います。先般私は農林委員会におきまして、硫安協会が決定いたしました硫安のあの建値の問題は、独占禁止法並びに事業者団体法の規定に抵触するという点について、いろいろ質問いたしたのでありますが、その際公取委員長は目下実情を調査しておるから、多分来週中には結論は出る、こういうお話のところ、今の御答弁によると、まだ結論が出るところに至つておりません。このことはこの問題が起りましてからこつち、当面する春肥の需要が非常に切迫いたしております関係上、この問題のすみやかなる処置を必要とする事態が生じておりますのに、どういう理由でそんなに委員会を開くのが遅れておるのか。先般も申し上げました通り、硫安製造の主要メーカーが一堂に会して、そこで全購連との春肥の取引の値段はこれこれでなければ困るという一つ決定をいたし、これを公表し、相手方にこれを通告しておるというこのことは、明らかに事業者団体法及び独占禁止法に抵触する事態であります。これは何ら別にそんな長い日にちをかけて調査しなければならない事態ではない、ただちにおわかりになる事態であります。それが何ゆえに委員会をかくも開くことを待たなければならぬほどの調査事態があるか。そして今日まで公取の方でお取調べになりました資料によつて具体的に今も申し上げましたような事例が明らかになつておりますか、そういうことはまだ委員長としては報告を受けておりませんのか。そういう内容にわたつて委員会で報告されることになつておりますか。それとも委員長のもとに一応事態はかくのごときことであるから、委員会を開いて事態の解決を望む。こういうことに持つて行きますか。いかなることになつておりますか。その経過をここで一応御説明を願いたい。
  118. 横田正俊

    横田政府委員 先ほども申し上げましたように、取調べが一応できましたので、実は昨日委員会を開く予定でございましたが、国会の審議の関係上、みなおちついて議論をするひまが実はなかつたものですから、それがきように延びまして、きようまたこちらに一日来ておりますような関係で、できますれば、きようこれから帰りまして、報告に基いて検討、結論を出したい、こういうことで、御承知のように春肥の問題はきわめて切迫した問題でもございますので、非常に私自身も早く帰していただきまして、検討いたしたいと思います。
  119. 井上良二

    ○井上委員 今川俣さんからもお話がございましたように、現実に協会側は、あの発表いたしました建値以外では全購連を通して品物を出すということを積極的にいたしておりません。逆に消費者側に対して、積極的に荷を出すような傾向が出て来ております。このことは明らかに特定の価格を暗黙のうちに実行せしめて、特定の者にやらそうとする、自由競争の意思をまつたく無視したやり方であります。すでにその建値を発表して、その建値による取引を傘下の各メーカーに知らすのみならず、全般に公表したということだけでも問題になるにかかわらず、その後の商取引の事実において、一向現実に品物が動かない、特定の方面にしか品物が流れない、こういう事態が起つておりますが、この事態に対しては、あなた委員長としてこれはやはりひつかかると思いますか。抵触しないと思いますか。一応伺いたい。
  120. 横田正俊

    横田政府委員 前会にも申し上げましたように、この建値はそういう拘束的の意味はないということをかりに弁解いたしましても、実際のその後の動きといたしまして、もしもお話のような建値以外では取引しないというような動きが現実に出ておりますれば、それはやはり一つの共同をして対価を決定しておることになるわけでございまして、その点はおそらく私どもの方でも十分調べておることと存じます。結論はやがて出ると考えます。
  121. 井上良二

    ○井上委員 これに関連して、そこに通産政務次官もおいでですから一応伺うのですが、どうでございますか。そういう事態になつて、現実に春肥の供給がきわめて緊迫化しておるときに、まだ全購連と硫安協会との間における、あなた方がお世話くだすつた安定帯価格の取引が正常なルートに乗つていないということについて、お世話をされた当局として、このままでいいとお考えですか、一応、あなたに政府当局として責任のある答弁をひとつお願いします。
  122. 小平久雄

    小平政府委員 春肥の価格につきましては、さきに安定帯価格がきまつたわけでありますが、それに基いての実際の取引値段がきまらぬ。またその建値について硫安協会が発表したとかいう問題が起きております。それらの問題と関連しまして、私の聞き及んでいるところでは、硫安協会として建値を発表したということが、ただいま御指摘のように独禁法違反の疑いがある、こういうことが起きましたために、協会としましては、値段のとりきめという点からは一切手を引く、個々のメーカーと全購連との取引をしていただきたい、こういう建前で、現在のところおるように聞いておるのであります。その間当局に対しましても、全購連の田中さん等からもただいまお話のような次第の陳情と申しますか、お話がございました。もちろん通産省といたしましても、独禁法に触れない方法によつて、価格がすみやかに妥結ができまして、今もう季節に突入しておる春肥がどんどん流れて参るということが一番望ましいのであります。またそれを願つておるわけでありますが、ただちに通産当局としてその間に介在するというようなことが妥当かどうかということも、これは商取引のことでありますから十分検討いたさなければなりませんが、今御質問のように、これでよいと思つているかと言われますれば、決してよいとは思つておりませんで、なるべく早く決定されることを望んでおるわけであります。
  123. 井上良二

    ○井上委員 もう一点。私ども何も硫安協会を目のかたきにしてどうこう言うておるわけではありません。硫安協会が現実の法律に抵触をするがごとき行為をしないように、また政府からもあつせんをしてもらつて、お互いに納得して安定帯価格はきまつているのであります。その政府からあつせんをし、それぞれ当事者も了解をして価格をきめておきながら、その了解した価格を実行せずに、一方的にこれでなければ困ると言うたら、あれだけ御苦労願つて安定帯価格をきめてもらつた政府の努力というものは今日まつたく水泡に帰しているのです。今あなたからお話通り、個々のメーカーとかつて取引するなら、何も安定帯価格なんかきめる必要はありません。そこにお互いができるだけうまく行くようにというので、いろいろお話を願つたわけであつて、これは通産行政の上からも、事態はきわめて重要でありまして、何とか善処をはかつていただくようにお願いをするとともに、また公取委員会の方においても、かくのごとき決定をさしたものを、そのまま法に抵触せざるものなりとして、これを見のがすということではなしに、かくのごとき決定をすることは明らかに法に違反する、また抵触する疑いがあるから、かくのごとき決定は直ちに取消して、幸い両者の間に妥結ができておるところの安定帯価格のゆとりのある価格で取引するようにしたならば、ひつかかりやせぬじやないか。こういうぐあいに、犯罪人をつくるよりも、犯罪人をつくらないような指導援助というものを当然やるべきであろうと思うが、そういうことを言うて行つたことがありますか。そんなことは向うのかつてだということでほうつてありますか、その点どうです。私はそういう不法行為については、法の解釈にはいろいろの誤りもあつてつていることもあると思うが、そういう点はいろいろ誤解を生ずるからやめたがよかろう、従つて先般の決定は取消されたらどうか、その方が穏当じやないか、こういうぐあいに持つて行く方が、公取としては、法を生かして使う上からもやはり必要でないかと思うが、そういう点は委員長は別に権限はありませんか。委員会に諮らなければならぬわけですか、その点伺いたい。
  124. 横田正俊

    横田政府委員 公正取引委員会といたしましては、やはり委員会制度でございますので、委員会の議に付しまして、事案によりましては、仰せのような適当な処置が十分とれると考えております。現に硫安の問題ではございませんが、その他の問題につきましても、正式にそれを取上げてどうこうということでなしに、警告を発して、その結果うまく納まつたような問題もいろいろございます。
  125. 井上良二

    ○井上委員 この法案改正で、不況に対処するために必要ある場合及び合理化遂行上特に必要のある場合における事業者の共同行為一定条件のもとに容認している、こういうことが提案理由に書いてありますが、たとえば今問題になつております硫安の操業度をかりに非常に高いものにし、そして国内需要をまかなつて、輸出をする。ところが、国内価格よりも輸出価格ははるかに安いという問題がある。また逆に輸出は相ならぬということから、今度は操業度を短縮いたしまして、価格のつり上げをはかるという行為は、この法の改正の上に抵触しますか、しませんか。
  126. 横田正俊

    横田政府委員 結局今度の不況カルテルの中に相当やかましい条件がいろいろございますが、その条件に当てはまる状態が出ました場合には、もちろんその範囲内において操短ということは適法に行われるわけでございます。これははたしてそういう条件に当てはまるかどうかは、その場合々々によつて認可あるいは認定をいたします際に、十分に検討いたさなければならぬと考えております。
  127. 遠藤三郎

    遠藤委員長 これにて本連合審査会における質疑通告者全部の質疑は終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。     午後四時二十四分散会