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1953-03-13 第15回国会 衆議院 経済安定委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年三月十三日(金曜日)     午前十時四十三分開議  出席委員    委員長 遠藤 三郎君    理事 加藤 宗平君 理事 栗田 英男君    理事 中村 高一君       内田 常雄君    小川 平二君       越智  茂君    佐藤洋之助君       前田 正男君    横川 重次君       秋田 大助君    菅野和太郎君       吉川 兼光君  出席公述人         日本貿易会専務         理事      猪谷 善一君         経済団体連合会         副会長     植村甲午郎君         日本鉄鋼連盟会         長       渡辺 義介君         日本商工会議所         理事      原 安三郎君         日本紡績協会常         務理事     田川 信一君         日本中小企業団         体連盟中央委員 徳永 佐一君         日本労働組合総         同盟中央委員  重枝 琢巳君         全国購買農業協         同組合連合会副         会長      黒田新一郎君         東京大学助教授 金沢 良雄君         全日本中小工業         協議会中央常任         委員      国井 秀作君         日本生活協同組         合連合会専務理         事       中林 貞男君  委員外出席者         専  門  員 円地与四松君         専  門  員 菅田清治郎君     ————————————— 本日の公聴会意見を聞いた事件  私的独占禁止及び公正取引確保に関する法  律の一部を改正する法律案について     —————————————
  2. 遠藤三郎

    遠藤委員長 これより経済安定委員会公聴会を開会いたします。  本日の問題は、私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律の一部を改正する法案についてであります。  この際本日御出席公述人各位にごあいさつ申し上げます。御承知通り、目下本委員会において審査中の、私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律の一部を改正する法律案は、今国会における五大重要法案一つでありましていわゆる経済憲法とも言われるものであります。よつて委員会といたしましては、広く各界の利害関係者及び学識経験者各位の御意見を聴取いたしまして、本案審査を一層慎重に取扱わんとするものであります。各位の豊富なる御意見を承ることができますれば、本委員会の今後の審査に多大の参考となるものと期待いたす次第でございます。各位におかれましては、その立場々々より腹蔵なき御意見の御開陳をお願いいたします。本日は御多忙中のところ貴重なる時間をおさきになり、御出席をいただきまして、委員長といたしまして厚く御礼申し上げる次第であります。  なお議事の順序を申し上げますと、本日御意見を述べていただく方々のお名前は、お手元に配付してあります印刷物の通りでありまして、発言順位等につきましては、委員長に御一任を願いたいと存じます。公述人各位の御意見を述べられる時間は、大体十五分見当にお願いいたしまして、御一名ずつ順次御意見開陳及びその質疑を済まして行くことにいたしたいと思います。  なお念のために申し上げますが、衆議院規則の定めるところによりまして、発言の際は委員長の許可を得ることになつております。また発言内容は、意見を聞こうとする案件の範囲を越えてはならないことになつております。なお委員公述人質疑をすることができますが、公述人委員に対して質疑をすることはできないことになつておりますから、さよう御了承願います。  それではまず日本貿易会専務理事猪谷善一君より御意見をお聞きすることにいたします。猪谷君。
  3. 猪谷善一

    猪谷公述人 今回の独禁法改正の中で特に問題になりますカルテル結成につきまして、貿易業界を代表する一員として意見を述べさせていただきたいのであります。なお独禁法適用除外として認められております輸出取引法改正につきましても、この機会に若干触れることを許していただきたいのであります。  第一は、カルテル認定及び認可でありまして、改正案によりますると、カルテル結成の場合は、独禁法に抵触しないという公正取引委員会認定があつて初めて主務大臣がこれを認可することになつておるのであります。従つてカルテル結成原則として許可し、公益を害する場合にのみこれを禁止するというイギリスの、一九四八年でありましたかに制定されました独占及び取引制限行為法よりも一層厳格になつておるようであります、しかしながらこれは、回復途上にありまする日本経済現状より見まして、あるいはやむを得ないかと思うのでありまして、ただここに問題となりまするのは、公取認定主務大臣認可という複雑な過程を経ねばならないというところに問題があるのであります。これは必要以上に手続を煩雑にするものでありまして、敏速を尊びまする実生活機動性から見まして、カルテル認定認可はむしろ公取一本というのがよいのではないかと考えるのであります。この公取一本という考え方は、一応この法律を検討しましても当然ではないかと思うのでありまして、改正案の第六章第二十四条に示されておりまするカルテル結成条件は、これすべて公取認定条件でありまして、通産省の認可基準を示したものではないように受取れるのであります。換言すれば、独禁法の体系の中に主務大臣権限規定が織り込まれること自体が合理的ではないのであつて、このような観点から見ましても、カルテル認定認可公取一本という簡素化方法で行くべきではないかと私は考えるのであります。  第二はカルテル結成条件でありましてカルテルを無条件に罪悪視するという考え方は、もちろん妥当ではないのでありますが、しかしながら、もしも不況カルテル合理化カルテルが簡単にできるものという制度ができますると、あるいは合理化が阻止され、コスト低減に対する努力が冷却する危険も、ある種の産業についてはあるのではないか、かような想像をわれわれはするのであります。換言すれば、わが国産業がいつまでも低い能率のもとに安住しておることは、今まさに国際競争世界経済不況下に激烈化しようとしているときに、これはゆゆしい問題であると思うのであります。日本経済に関心を持ちまするアメリカの識者は、いずれも日本商品の国際割高を指摘しております。これはまことに日本経済を憂うるの言でありまして同憂の立場に立つ者として貿易振興立場から考えれば、カルテル結成を必要以上に容認した場合には、不況時における販売の内需転換があまりにも容易に行われることになりまして、これでは貿易立国をモットーとするわが国輸出産業強化育成は望めないと考えるのであります。  このような見地から、カルテル結成条件は、改正案程度を厳守し、さらに一歩つつ込みますならば、輸出契約を不当に圧迫するようなカルテル結成に対しては、断固取締りを厳重にやつていただきたいというような意見を持つのであります。  第三に、合理化カルテル範囲でありますが、改正案によりますると、合理化カルテルは技術の向上、品質の改善、原価の引下げ、能率増進等企業合理化を遂行する場合に、生産業者のみが許されております。しかしカルテル結成を認める産業部門生産事業のみに限るという考え方は妥当ではないのであつて、よろしく生産事業のみでなく、商業、金融等一切を含めた産業活動にそれを認むべきである。今日日本経済が単に生産のみならず、一般流運その他の経済全般にわたりまして、合理化が著しく渋滞していることはわが国致命的欠陥でありまして、ここはよろしく合理化範囲を拡充して法律による基盤を与うべきであろうと思うのであります。  第四は、カルテル結成対外的考慮でありまして、今回の改正案程度独禁法緩和であれば、対外的影響はさほど大きくないと思うのでありまするが、これ以上を緩和し、カルテル結成等をゆるめるということになりますると、現在の世界市場日本競争できる立場にある国々が決して少くないのでありまして、機会を見ては日本国際舞台へのカム・バツクをじやましようとしているということを言い得るのであります。  次に、この法の除外となつております輸出取引法改正問題でありまするが、幸い種々の点で民間の意見が取入れられております。すなわちアウトサイダー対策として通産大臣勧告命令基盤を確立した点、輸出組合出資制を認めたこと、いわゆる協定原則が拡大されまして、仕向け地に対する輸出取引における競争条件が不利であるような場合も包含されたこと、輸入における業者共同行為が認められたこと、こういうような点が認められたのでありますが、今のところでは法律上、輸出組合買取行為及び部会の法律的根拠が何ら与えられていないということが、今後の輸出組合活動を非常に局限すると考えるのでありまして、この独禁法輸出取引法改正というものは、ある程度一体の法律でありますので、よろしく共同してこれらの点を御研究願いたいと思うのであります。  以上簡単でありますが申し上げました。
  4. 遠藤三郎

    遠藤委員長 ただいまの猪谷君の御意見に対して質疑があれば、これを許します。
  5. 中村高一

    中村(高)委員 ちよつとお尋ねいたしたいのですが、最近貿易のために、やむを得ないといえばやむを得ないのでしようが、出血輸出とか、ダンピングをやりまして、たとえばインドなどへ肥料の輸出をするような場合に、国内価格をはるかに下まわるような価格で売り込んでおるのでありまするが、貿易会といたしましては、国内価格より非常に安く売るという業者協定というような問題に対しましてどういうふうにお考えになつておられますか。安く売らなければ、競争には勝てないし、国内では問題が起きておりまするし、これに対して御所見を承つておきたいと思います。
  6. 猪谷善一

    猪谷公述人 ただいまの問題は、いわゆる二重価格の問題でありまするが、過去のようにわれわれが植民地等経済的ゾ—ンを持つている場合には、ただいま仰せられましたようなこともある程度長期にわたつて行い得ると思うのでありまするが、現在のようにわれわれが世界に隣組を持たぬ、市場即第三国の法的統治下におきましては、ただいまのような場合にはダンピング課税の対象に当然なるのでありまして、いやしくも国内価格を割つて輸出した場合には、その国は当然ダンピング課税をかけますから、永続的に行わるべきものではないのでありまして、この点で政府といたしましても、業界としましても厳重に監視しなければならない、出血輸出は許すべからざるものであると考えております。
  7. 栗田英男

    栗田委員 ただいまカルテル認可権主務大臣が持つということは、非常に複雑になり、迅速を尊ぶ上においてもぐあいが悪い、これはあくまでも公取一本で行くことが独禁法精神にも沿うものであるというふうな御趣旨の公述があつたのでございますが、何かそのほかに主務大臣ではぐあいが悪いというような点で、お気づきの点がありましたら、御開陳が願いたいと思います。
  8. 猪谷善一

    猪谷公述人 御承知のように、主務大臣としては通商産業大臣考えられておりますが、何といいましても通商産業省は生産業者利益代表機関である、従つて国民経済全般立場並びに中小企業消費者立場もあわせ考慮して判定する役所としては適任ではない、むしろ独立の政府機関がありまする以上は、公取一本で行く方がいいという私見を持つておるのであります。
  9. 秋田大助

    秋田委員 公取一本のお説を拝聴したのでありますが、現状公正取引委員会組織実情で、本案改正される場合、よろしいとお考えになるかどうかこの点、ちよつと御意見を承りたいと思います。
  10. 猪谷善一

    猪谷公述人 ただいまの御質問に対しましては、私は公取一本で十分やれるのではないかと考えるのであります。
  11. 秋田大助

    秋田委員 公取一本でいいということはわかつておるのでありますが、現在のような陣容あるいは人数、その構成内容、それでなおかつ一本でよろしい、こうお考えになりますか。
  12. 猪谷善一

    猪谷公述人 問題はスクリーンの内容でありますが、公取等政府機関は微に入り細にわたつて窓口的なセンスでスクリーンするのが任ではないと思うのでありまして、審判等規定もあるのでありますから、それが国民経済上大きな不利を来したという場合に初めて活動すればいいではないか、いわゆる区役所の窓口的精神でやるべきものじやないと思つております。
  13. 秋田大助

    秋田委員 業界の方にはなお一部に、委員会の下に審議会というものを設けたらどうかというような意見があるように聞いております。この点どういうふうにお考えになりますか。
  14. 猪谷善一

    猪谷公述人 公正取引委員会委員の諸君の構成等を見ますると、ジユアリスト出身の方が非常に多いのでありまして今までの審判等の経過を見ましても、実生活的な判断あるいは判定ということがいささか軽視されているのではないか、こういう意味において、たとえばきよう御出席のような実際家の方々を相当網羅した、そして実生活法的解釈がくつつくような審議会組織が加われば、公取一本のただいまの主張もさらに強くなるのではないか、こう考えるのであります。  右お答えいたします。
  15. 遠藤三郎

    遠藤委員長 他に質疑はありませんか。——なければ猪谷さんありがとうございました。  次に経済団体連合会会長植村甲午郎君にお願いいたします。
  16. 植村甲午郎

    植村公述人 この独禁法改正につきましては、業界として非常に重大な関係の問題でありますので、今までいろいろな研究をやつたのであります。今回提出になりました案を見ますと、われわれの考えおりますところと合致している面もあります。いわゆるトラスト予防規定等改正になつておりまして、これはたいへんけつこうなことであるのでありますが、このカルテル等企業共同行為制限緩和という点になりますと、私どもの考えておりますところからいえば、はなはだ不十分であるという点を申し上げざるを得ない。要するに、このカルテル立法というものを考えますのに、どういう基準考えるかということを考えてみますと、結局は、世界経済実情、また国内経済実情、それぞれの発達の段階も考えながら、その時代に適応した規定にして参るのがいい、こういうことになると思うのでありますが、現にアメリカにおいても、このアンタイトラスト法律については批判が起きております。お読みになつた方もあると思いますが、コリヤーズという雑誌がございますが、あの昨年の五月号から六月号へかけまして、例のTVAをやり、また原子力関係において大活動をやりましたリリエンタールが論文を書いておりますが、これは今のアンタイトラスト法に対する一つ批判であると思う。  それは一九二〇年のアメリカというものと一九五三年のアメリカとは非常な違いがあるのだ。それで競争は必要だ。しかし競争内容は違つて来ているので、たとえば綿業をとつてみても、綿業内部で大きなものと小さいものがかみ合うというようなことよりは、むしろ人造繊維——いろいろな人造繊維が出ているが、綿にしろ毛織物にしろ、ほんとう競争相手はそういう人造繊維であつて、これによつてお互い切瑳琢磨ができて、現在衣料に関するアメリカ人の、あるいは世界的に供給は豊富になり、価格も低廉になつている。要するに、生活程度向上に貢献しているんだ。石炭をとれば、これはすぐ石油の問題と来るというように、いろいろな例をあげておりますが、要するに、そういうように競争内容も違つて来ている。またそういう大きな発明というものがどうやつてできたかという経緯を考えてみると、やはじ大企業がないといけないのだ。そうしないと、発明ほんとうに人類の役に立てるように持つて来ることはむずかしいのだ。非常にたくさんの研究をやつて、その中で幾つかが拾われて、しかもこれを実用化するには莫大な資金がいる。これには大企業でないとたえないのだ。大きな発明をとつてみると、みんなそうではないか。現に自分TVA仕事をやり、また原子力関係仕事をやつたんだが、原子力関係についてみても、ベル・コーポレーシヨンとGEの研究室がなかつたならば、おそらくあれはできなかつたであろう。要するに、ビツグネスというものをチェックするというのは間違いであつて、これは助長すべきである。それからビツグネス弊害というものが今まで言われているが、これは大分模様が違つて来ておる。労働組合発達があつて、一方ではそういう面からの考えが入つて来る。それから事業社会性というものが非常にとなえられて、いわゆるパブリツク・リレーシヨンという関係は、会社首脳部として十分考えなければならないところである。従つて大きな仕事社会性というものが出て来ておるのであつて、ただその産業、その企業のエゴイスムによつて動くというような形でなくなつて来ておる。いずれにしても、自分は物質的な面においての現在のアメリカの文明というものは、爛熟の程度に達したのではなくて、これが初めてスタ—トする初期なんだ。これはおそらく想像でありまするが、原子力産業に応用される場合を考えて言つているのだと思いますが、そういうようなビギニングであると自分考える。そうするとピツグネスというものをただチエツクして行くということでは、そういうことがむしろはばまれることになりはしないかということを述べておる。これは一つの大きな批判だと思います。  それからまた、一方御承知のように、ヨーロツパでは、シユーマン・プランというものがいくいく行われて来て、鉄と石炭につきましては、御承知のように西独フランス、ベネルツクス、イタリアというようなところが集まりまして、これがプールされて、輸出関係についてもそのプールされた力をもつて外へ当つておる、こういうような状況であります。  要するに、こういうような世界経済としての大きな相手がだんだんできておる、そのときに日本として、やはり日本製鉄業者としましては、そのシユーマン・プラン相手にして、ベルギーの鉄と闘わなければならぬ、あるいはドイツの鉄と闘わなければならぬ、こういうような状況にあるわけであります。  そういうことから考えてみますと、そこに日本というものがほんとうはどういう地位にあるか。申し上げるまでもなく、この独禁法なるものは、アメリカが発祥でありますから、占領政策の一環として日本に施行されたものであります。民主主義の堅持という点につきましては、われわれといえども、これは一歩も譲つてはいかぬと思いますが、しかしながら、こういう経済問題等につきまして、この破壊された、弱体化した日本が立ち上るというときに、ハンデイキャツプをつけられるということは、はなはだ迷惑な話でありまして、この点については勇敢に改善してもいいのじやないか。申し上げるまでもなく御承知通りでありますが、現に現在の独禁法世界一の完全なる独禁法でありましよう。その次がおそらくアメリカであり、その次が現在問題になつておる西独でありましよう。それからカナダ、イギリスというふうなものがあつて、ほかの国はフリーである。われわれが貿易競争しておりますフランスだとか、イタリアだとか、あるいはベルギーだとか、オランダとか、さらにポンド圏諸国等になりますれば、これは何もないわけであります。そことこれから経済上の競争をして行くという立場日本が置かれておる。そういうような点を十分に御考慮いただいて、そうして法案を審議していただきたい、これが根本になるわけであります。  そういうような見地でだんだんにこの法案を拝見いたしますと、具体的に申しますれば、カルテル等共同行為につきましては、特定の場合についての認可制というものがとられているわけであります。この点についてはイギリス程度にしても国際的に少しもひけ目はないのじやないだろうか。われわれといえども、決して、独占弊害が起きたときにほつておけというようなことを申し上げるわけじやないので、従つて、この共同行為につきましては、届出をさせて、そして弊害が起きたときにこれをすぐやめさせる措置をとり、あるいは聞かなければ罰則にかけるというのでいいのではないだろうか。ことにいろいろ場合を限つて書かれてありますが、この合理化カルテルといい、また不況カルテルといい、この判定がなかなかむずかしい問題であります。それからまた、今の認可認定という二重の形をとるのでありまするから、時期を失してしまつて効果のないようなものになるというふうな場合も出て参りますし、この判定がなかなかむずかしい問題であります。届出にしまして、どうも弊害が出て来たとなりますれば、その問題だけをつかまえるのでありまするから、これは相当つつ込んだ研究もできまするし、そうして弊害があつた場合には、それを押えるというところへも行き得るのじやないだろうか、こういうように考えます。従つて、この点については届出制にしまして、そうして弊害があつたときたはこれをつかまえる、こういう方法にしたらばどうであろうか。  それからもう一つは、国際カルテルの参加を絶対禁止しております。これにつきましては、第六条の条文を見ますると、「事業者は、不当な取引制限又は不公正な取引方法に該当する事項を内容とする国際的協定」に入つてはいかぬ、契約をしてはいかぬというので、いかにも不当な取引制限であり、不公正な取引方法だから、そんなものに入つてはいかぬ、しかしながらそうでないものならば協定をしてもいいというように見えるのでありますが、今度は、それが実際適用されましたときのことを想像しますると、結局この規定がなかなかむずかしいのでありまするが、その定義の中に「公共の利益に反して、」ということがございます。これが普通の常識で考えまする、社会一般あるいは国民経済全般の不利益になる場合、こういうような解釈になりまするとまた話が少し違いまするけれども、実際の公取としてとつておられる解釈、あるいは今までの銀行の金利協定その他に表わした判決と申しますか、その結果を見ますると、結局自由競争の原理に基く経済秩序ということになつて来て、要するにこの自由競争をはばむ、制限するということであれば、あるいはその結果がそのときとしては社会全般としては望ましい結果であつてもいけないというのが今までの解釈なので、おそらくこの解釈はかわつて参らぬと思いますが、そうしますと、今の国際協定というふうな問題につきましても、貿易上非常な競争をやつているものでありまして、中には、ちようどこういう規定がありますれば、これをたてにとつていい場合もあるし、それからまた中には、やはり販路を拡張するという面からいいましてあるいは販路を維持するという面からいつて貿易国際協定に入つた方がいい場合が考えられます。そこで、こういうふうなものにつきましては、やはりこれは認可制けつこうだと思いますが、認可を受けたものは入つてもよろしいというような道を一つあけていただきたい。  それからあとは、一つ気になりまするのは、今度は、会社合併につきまして、これが制限が出ているわけでありまするが、この合理化のためにする会社合併というものにつきましては、それが競争制限になるという場合であつても、これを認めるようにしていただきたい。これはもちろん認可でよろしいわけですが、絶対いけないということにならぬようにしていただきたい。と申しますのは、日本は非常に弱体化して、四等国と言われておるわけでありますが、市場が非常に狭隘なわけであります。そうしますると、中には、ある一つ機械というふうなものについて非常に進歩したものが出て来るということになりますると、その機械一つでもつて市場はほとんど全体供給できる、あるいは輸出もできるというような場合が出て来るわけであります。そういうふうな場合に、かりに三社が関係があつて、これが一部を合併して新しい機械でみなやつて行くというような場合には少しも弊害がないのじやないだろうか。要するに非常、に市場の挾隘なところで競争制限があることは何でもいかぬというように参りますると、ここに無理が出て来る、こういう関係でございます。  結局、具体的に申し上げましたのは、大体ただいまの三点を申し上げたいと思つたからでありますが、もとよりわれわれも共同行為なんかは野放しにしようという関係でございませんので、今の国民経済全般として見て悪い影響があつたときには、これはもちろん取締らなければならない、こうも考えておる次第であります。  それから今の中小企業の問題ですが、中小企業と大企業と申しますが、先ほど申しましたようなことから言いますと、日本には大企業というようなものはほとんどない形になりまするけれども、この関係につきましては、やはり基盤の浅い、弱体化した日本経済から申しますれば、経済の安定ということが結局仕事が維持され、あるいは発展するもとでありまして、中小企業のやるべき仕事も、それがなければ活動範囲がうんと狭まるわけでありますから、結局利害が対立するというように考えることはないのじやないだろうか。要するに国民経済全般として、発展し充実して行くということにならなければ、大も小もいずれもいけないということじやないだろうか、こういうように考えまするのと、もう一つは、この日本中小企業対策は非常にむずかしい問題でありますが、またぜひ必要な問題でありまして、これについてはそれぞれの観点からの別の強力な手が打たれなければ効力がない問題ではないかというように考えます。それから、何か協定をすると競争がなくなつて合理化が遅れるというふうに心配される向きもありますが、とにかく世界は狭くなつたのでありまして、国際競争がひどいのであります。またリリエンタールの言葉を引くまでもなく、その同種類のものがほかの方からできて来て、綿とスフ、そうかと思うとさらに合成繊維、こうなつて、そこに別の強大な競争相手が出て来るのでありますので、これをやつたからといつて安閑としておれる状況ではないと思う。従いまして、合理化意欲を低下させるとか、あるいは競争の意欲を低下させるというような心配も、私どもとしてはそうは考えられない、こういうふうに考えます。大体以上でございます。
  17. 遠藤三郎

    遠藤委員長 ただいまの植村君の御意見に対して質疑があればこれを許します。
  18. 中村高一

    中村(高)委員 今の日本経済実情は、占領は解かれておりまするけれども、非常に自由を失つており、外国貿易などにつきましては非常にきゆうくつな現状にありまして、国内市場の小さいことにつきましてはただいま御指摘がありましたが、こういう状態のときにおいて、独禁法を大幅に緩和することが時期的に適当であるとお考えになりますかどうですか。この点をお伺いしたい。
  19. 植村甲午郎

    植村公述人 ただいまのお答えになるかならぬか存じませんが、私どもとしましては、この弱体化した日本経済というものが、しかも貿易依存度が非常に強いわけでありますが、その状況のもとに立ち上らなければならない。そうすると一番の相手はやはり諸外国になるわけでありまして、そのときに国際競争上ハンデイキヤツプはあるにしても、許されるだけはとりたいというのが実際の真意であります。ハンデイキヤツプをむやみにつけておいて競争させるというには、こちらはそんなに強くないわけです。それから国内に対する影響の問題でありますが、かりにこれを自由にした場合に混乱が起きるとかいうことはないと私は考えております。
  20. 中村高一

    中村(高)委員 もう一つ今の点で、貿易については、輸出取引法である点までは緩和されておるのであります。われわれのお聞きいたしたいのは、おそらくこれは国内における重要基幹産業の方面が一番この法律緩和によつて影響せられるものだと思うのでありまするが、これはいろいろ見方があります。外国貿易につきましては、われわれもお説のように考えるのですが、国内については必ずしも同じように考えません。  もう一つついでにお尋ねしておきたいのでありますが、外国会社あるいは外国の人が日本国内の株式取得あるいは営業譲渡を受けますることなどについて、今度は営業譲渡に関する制限なども削除せられるようでありまするが、そういうことに関しまして、自主的に競争制限したりなどする場合以外は、日本法律で行きますならば、自由に株式の取得も営業の譲渡も受けられるようになつておりまするが、経団連の方で何かそういう点についてお考えになつておりますか、どうですか。
  21. 植村甲午郎

    植村公述人 ただいまの点は今問題になつておりまする日米通商条約の関連だと思いますが、この内容は多少伺つておる点もございますけれども、こういう席で申し上げるのはいいか悪いか存じません。要するに外国人が取得できない事業で、たとえば地下資源だとか何とかそういうふうなものが一群ある。それからもう一ついわゆる蓄積円による株式の取得というものについて、経団連から政府の方へもアメリカ側へも意見を申し上げたのです。これは、今それを自由に離さないでもらいたい、とにかくしばらく、もうちよつと安定するまでは困る、これは公表して新聞等にも出ております通り、申し上げてさしつかえないと思います。ただ条約の内容をどこがどうなつたというようないろいろな関係は、ちよつと私から申し上げるのも適当でないし、場所もいかがかと思います。
  22. 加藤宗平

    ○加藤(宗)委員 貿易市場がだんだん狭隘になつて来ておることはお聞きいたしましたが、この原因についてはこういう一つの見方があるのであります。それは経済自身の問題ではなくて経済外的な問題であります。具体的に申しますと、ソ連とアメリカとの間の緊張、それに基く軍需産業の拡大、貿易の政治的な意図から自由であるべきはずであるのに、そういうところからだんだん各国の間に人為的に貿易市場が狭まつて来ておるのだという説でありますが、こういう説に対していかなる御所見であるか、承りたい。
  23. 植村甲午郎

    植村公述人 大きな問題でありまして、むずかしい問題だと思いますが、今の二大陣営の対立、それに伴ういろいろな現象、貿易関係につきましても、とにかくカーテンの向こうは切り離されたのでありますから、その影響はあろうと思いますが、先般の英連邦の首相会議の結果、まだしかと現われて融通をよくしようという方向にはみんな努力をしておると思いますし、われわれも、日本がはなはだ微力になつて力はないのでありますが、あるいは国際会議とか、それの極東会議とかなんとかの機会にいろいろな案を持ち出してみたりして、促進方には努力しておるわけでございます。  それから今度日本関係としましての今の軍需工業と申しますか、兵器生産等に対する私どもの今の考えとしましては、とにかく為替の決済じりの四割になりまするか、非常なものがいわゆる特需の収入になつている。これは非常に困つたことであるけれども、今すぐこれをどうということはできない。同時にこれは受けなければならぬ。そういう意味から、ドル貿易の形でありますので、これはできるだけ受けたいという形でそれが行われておるのでありますが、ただいまのところまだ不幸にしてそうえらいものになつて来ておりません。従いまして、そのために国内の物価がどうであるとか、あるいは輸出貿易にどういう影響を及ぼすかというようなところへは来ていないと思います。ただこれが非常に大量に一時にでも入つて来るというようなことがあつた場合にどういう影響を来すか。われわれの心配しおりますのは、全体的な物価高というふうなことにならぬようにやつて行きたいものである、そうしませんと今度は本体の輸血貿易の振興の方へまたはね返りが来るわけになります。そんな考えで進んでおります。
  24. 加藤宗平

    ○加藤(宗)委員 イギリス連邦初めアメリカ自身もそういう点には努力しておるようでありますが、今日までの経過を見ると、それが大体において不徹底に終つておる。経済人のそういう考え方が不徹底に終つておるということは、やはり経済外の、ただいま申し上げたようなソビエトとアメリカの緊張が、世界的な規模においていろいろな面でやはり大きく貿易市場を抑えておる、狭隘化させておるという必然的な動きがあるのですが、それに触れないで経済的な問題及び経済人の努力によつて、こういう緊張を打開して自由貿易の方にやつて行けるかどうか、またそういうような必然的な世界の動向に対しまして、日本カルテルをつくり、あるいはその緊張を緩和する意味において国際カルテルに参加する面があれば参加するというようなことによつて、はたして所期の目的を達成し得るかどうか。そういうようなことに対する自信というとおかしいのですが、これをお聞きいたしたいと思います。
  25. 植村甲午郎

    植村公述人 ただいまのカルテル問題との関連でございますが、この点につきましては先ほども申し上げましたように、フランスでも、ベルギーでも、オランダでも、オーストラリアでも、インドでも、どこでもそういうものはないわけです。こつちはあるわけですから、それはあるのが緩和されたからといつて、そう考えが悪いわけはないじやないか。とにかくアメリカ、カナダ、イギリスと、それから西独が今もんでいるようでありますが、それと——私の知つておりますのは五箇国くらいのものでありますが、その点については御心配はない、私どもは心配しておりません。
  26. 栗田英男

    栗田委員 先ほどの猪谷さんも、日本独禁法イギリスよりも厳格であるということと、また植村さんもイギリス程度にしても弊害がないのではないかというようなお話でありましたが、大体日本の状態とイギリス国内情勢というものは、私は大分違つておると思うのです。たとえば鉄鋼とかあるいは石炭とか、銀行というものが社会化されておるというふうなことを考えますると、私的独占の幅というものが日本に比較して非常にイギリスの方が少いということで、今の独占禁止というものを相当緩和しても、日本ほど弊害がないというふうに私は考えておりますが、この点と、それからもう一つは、イギリスは非常に社会保障が進んでおる。あるいは労働党治下においてもゆりかごから墓場までということで、どんどん政策も進められたし、また先般では、入れ歯とめがねとどちらを国で持つかということで労働党の内部が対立したというほど、非常に国民生活を考えておる。ところが日本は非常な厳格な私的独占禁止政策を持つておるのにもかかわらず、昨年からのいろいろカルテルの行状を見ますると、もちろんこれは通産省の勧告で行つたのでありますが、綿紡のカルテルあるいは過燐酸石灰の操短カルテルあるいは硫安のダンピング輸出、また自動車タイヤの価格協定、特に最近硫安協会で行いました春肥の使用を目前に控えた安定帯価格の最高価格を発表したということは、国民生活に非常な影響を及ぼすと私は考えておりまするが、この二点に関しましてどのような御見解を持つておりまするか、お聞きいたしたい、かように考えます。
  27. 植村甲午郎

    植村公述人 今のイギリスの社会情勢と申しますか、それと日本とが違うということはこれはお説の通りだと思います。ただそれでは、フランス、べルギー等、つまりわれわれの相手になるものはそれがないのですから、この点は、結局国内的に見てそういうものがあつたときにどの程度の影響があるかという問題になろうと思います。その影響につきましては、私どもとしては、この経済の底の浅い、弱体化されたときについては、むしろあらゆる手段をもつて安定をさせて、国外に対する競争力もこしらえて行くというのがほんとうじやないか、これはあるいは違う見解をとられる方もあろうと思いますけれども、こう考えるわけでございます。  それから今具体的問題が幾つか出ておるわけでありますが、これは私ども内容的に検討が足りませんので当らぬかと思いますが、結局今の非常に問題になつております肥料の問題というようなものも、現れるところはあんなふうに現れておりますが、今度業界の方に言わせますと、輸出許可をしてくれないから輸出はできない。物は上つて来てしまう。それから電力の供給は予定通りなかなか行かない。従つてコストが高くなる。今の電気分解法による硫安と水素法による硫安と比べて電気分解法の方がずつと安いのがほんとうなんですが、このごろの状況では、そつちが高いというような状況にある。しかし安い肥料を供給しなければならないとなると、それには規模の問題が関連して来る。こういう相当複雑な分量は、たくさんやれば単価は安くなる。そうすると、かりにある程度安く外国に売つても、国内でもやはり安いものが供給されるかもしれない。それが五十万トンかりに外国に売るのを売らないで、日本国内需要だけに生産を縮めると、今度は生産費が高くなる、そういういろいろな関係があると思つております。これについては、これは私どもの希望でありますけれども、こういう状況ではみんな困るのですから、肥料政策の確立といいますか、そういう点について、業界も安心して勉強ができるように、農家にも安い肥料が確実に行くように、何かそこに手が打たれることを希望するわけであります。
  28. 秋田大助

    秋田委員 ただいまカルテル容認の問題に関して届出主義を御希望になつたのでございますが、もしこの法案が審議の結果御希望の通りにならないといたしましたならば、次善の策としては、このカルテルを許す場合の機関に関しましてどういうものがいいとお考えになつておるか。それと、ここに提案されておる改正法律案によりますと、御承知通り主務大臣認可公取委員会認定、この二つの条件が合致しなければ許されない。そうするとこれが実際の運用上うまく行くとお考えになるかどうか、両方同じ権限を持つたものであると思うのですが、ここらに対するお考えはどうか。それからわれわれ、関西経済連合会から出されました独占禁止改正に関する意見という意見書を拝見してみますと、やはり届出主義を御希望になつておりますが、関西経済連合会では公正取引委員会届出するだけで足りる、こういうふうにして、主務大臣でなくて、公正取引委員会一本の権限にまかせることを御希望になつておるようであります。附帯の条件として、現在の公正取引委員会の陣容を強化すると同時に、公正取引審議会というようなものでも設けて、これを諮問機関として、その同意の上において取引委員会活動してもらいたいというような希望も添えられておるわけであります。これらに関しましてあなたはどういうふうにお考えになりますか、そこいらの御意見をあわせて、次善策としたならばどういうものを御希望であるか、お伺いしたい。
  29. 植村甲午郎

    植村公述人 次善策というのは、あまり考えておりません。ただ今の主務大臣認可であり、さらに公取の方の認定、これはいずれにしてもダブつたことで、かなりごたごたしておるような気がします。私どもの方の届出ということにいたしますれば、これは悪いというときに今度は公取が発動するわけでありますが、そのときには産業の方の主務大臣意見も聞きましようし、やつてつていいと思いますが、この認可認定というのはなかなかたいへんだろうと思います。それから今関西の方の意見のお話もありましたが、要するにわれわれとしては、はつきりと簡単に敏速に行くのでないといけないだろう、ことに悪いもののときはこれは発動して、それをチエツクされるというときには一ぺんチェックされて、さらに検討して行つてもいいと思うのですが、今の認可を受けるときなどは、不況カルテルの場合などは相当時期がかかるのじやないかというふうに危惧いたします。
  30. 秋田大助

    秋田委員 そうしますと、大体御希望は届出主義で行つて、あとでそれをあれするのはやはり公正取引委員会でよろしい、主務大臣が取消すのでございますか。
  31. 植村甲午郎

    植村公述人 今の届出主義の場合にはこれは筋として公正取引委員会になります。
  32. 遠藤三郎

    遠藤委員長 他に御質疑はございませんか。——それではありがとうございました。  次に日本鉄鋼連盟会長渡辺義介君にお願いいたします。渡辺君。
  33. 渡辺義介

    ○渡辺公述人 独禁法自体の立て方の見解につきましては、大体私もただいま述べられました植村公述人と同様の見解を持つておるのであります。ただ重複しない範囲で私どもの考えを申し述べまして御了解を得たいと存じまするが、鉄鋼業の立場から、当面しておる協力行為が独禁法に衝突して参る、そういう径路をたどつて来た段階を事実に即して申し上げまして御判断を煩わしたいと思うのでありますが、御承知通り鉄鋼業と申す業態は、その製品の性質が国際的商品の性格を持つておりますものでありますと同時に、鉄鋼業自体が一国の基幹産業としての重責を担わされておるというような立場にある次第であります。従いまして鉄鋼業の当面しておりまする国内市場に対する問題にいたしましても、国際市場に対する問題にいたしましても国際価格基準にいたしました相手国の商品に常に影響される立場にあるということなのでありまして、一国の基幹産業立場から申しまして、国際価格に追随して行けるような要素を固めなければ、基幹産業としての役目を果し得ない、従つて関連産業に対する協力も十分に届かないというような立場にある次第であります。御承知のように戦前はそういう立場から政府の保護も加えられましたし、また業界の努力も加わりまして、原料の獲得その他に全力を尽して相当な業績を上げて参つたのでありますが、戦後異常な解体処分にあいまして、工場の賠償取上げということはとりやめられましたけれども、形骸は残つてつても、各企業内容は非常に貧弱なものになつてしまつた、これからまた立て直さなければならないというような状態にぶつかつて参つたわけです。しかるに朝鮮動乱を契機といたしまして、鋼業は予期以上に立上りが早かつたということはございますけれども、何しろその基盤が少しも固まつておらないところにこうむつた影響でありますから、非常にうれしくはありましたけれども、まだまだ経済の波動に対して闊歩して行けるような仕事は定まつておらないというような状態でありました。そこで各企業ともに自力でもつて行い得る限りにおきましては、設備の近代化をはかる、その他いろいろな面において努力をいたしましたし、また労働攻勢等に対するいろいろな政府筋の措置も講ぜられました結果、次第々々に安定して参る傾向には来たのでありますけれども、世界的の軍拡の歩調がだんだん緩漫化されて参るということと、それからまたそれに応じた世界の増産態勢も整つて参りまして、国際価格もだんだん鎮静になつて参る一方、内地のコストは割高な外国原料の輸入がもとになつておりますために、コストは割合に高くなつたままで下らないというような状態で、国際価格の鎮静に伴いまして、国際市場においても、またそれを反映して国内市場におきましても、非常な難局に当面したわけであります。また御承知のように国内市場として特有なのは——全体の産業に影響があつたと思いまするけれども、金融の逼迫というようなことから、各こまかい業態それぞれが大小全体として非常な影響をこうむつたわけでありまして、また私ども鉄の立場から見ますると、需要者と供給者の間に戦前等は一つの中間需要の確保の大きな役目を務め、また以下の中小形態の企業に対する培養力も持つておつたというような、問屋の役目を持つておつた中間層がございまして、これが全体的に市場を調整して参る大きな力を持つておつたのでございますが、この問屋層においてもまた同様に終戦後の解体作業によりまして、ほとんど裸にされて参つたというような次第で、資本の蓄積は生産者、問屋ともに持つておらぬというようなことでございますために、小さな生産者と大きな生産者、また需要者の間に立ちまして材料の供給もやり、また先の需要の見通しもつけて、中間需要も確保して行くというような能力はもうすつかりなくなつております。従いまして、それはまた元の生産者の基盤にも影響いたしまして、非常に経済力の基盤の浅い企業体になつて参つた次第であります。そこへちよつと金融上の圧迫を受けますと、それをしのいで参る力がありませんものですから、生産業者はまず換金相場をいたしまして、とにかく当面しておる金融難を免れるために、投売りでも何でもして当面をしのごうとする、投売りをされると、そのメーカーに中間材料を提供しておる供給元であります生産業者も困るのでありますけれども、まあまあ一時しのぎでやられて行かれる間は、こちらの方の中間製品も売れることになるわけですから、材料を供給する、材料を供給しますと、それを生産して正常な価格で、コスト、プラス適正利潤というような相場で売れるものを、自分で売つて早く金にかえなければならぬものですから、それを手形にしてもらうために安くしても何でも売つてしまうということが積み重なりまして、非常な乱相場になりまして、それではとても原価に合わないというような相場が再三現出して参るというような状態になつたわけであります。それで材料を供給しております親企業と申しますか、供給先の大企業の側から申しますれば、何とかしてそれを引ずりながらでも市場の安定をはかりたいというような意味から、中間材料の供給は継続しますけれども、なるべく相場をこわさせないようにしたいということは念願いたすのでありますが、一方金融面から来る圧迫は、メーカーの方の手ではいかんともしがたいことになりますために、結局は大企業の方から供給した中間材料の代金の回収はできなくなりまして、つまり受ける方では仕入れた材料の値段はたな上げをしておく、そうして当面いくら安くても売れるだけのものは売つて、それで当面をしのぐ、従つて売掛金が非常なものになつておるというような非常に思わしくない状況にだんだん追い込まれて参つておる次第でございます。従いまして、またそういう企業内容になつておりまするために、これが海外市場に対する処置といたしましても、やはり同様な手でやつて参るわけでありまして、海外市場においては国際価格がそれほどでもないのに、その下をどんどん投売りして参る、投売りして参りますると、値段は下るのでありますから、買手の方は飛びつきそうなものでありますが、これは逆でありまして、下れば下るほど買手がなくなるのであります。いくら下るかわからぬからまあまあ買わずに待つ、それも値段だけ下ればよいのですが、非常に粗悪な物を安くして参るというのですから、品質に対する信用もなくなつて、国際市場がだんだん閉鎖されるような状態になつて参りました。また一方鉄鋼業全体を通じまして、先ほど申し上げましたような国際水準価格にあくまでも追随して行けるような原価に持つて行かなければ、日本の製鉄業としては立つて行けないわけでありますから、原価を切下げることにおのおの全体として非常な努力をやつて参りました。そこで海外原料の購入等についても、でき得べくんば買いあさりをしないで、共同購入のような形で、いい、安いものを手に入れることをくふうをしなければならない、また国内、海外双方にわたつて原価に大きな影響を持つて参りますようなくず鉄というものも、戦後一時の間は戦災その他のために供給が豊富でありますために、割にくず鉄の使用量を多く使いましてコストを引下げて行くということも聞いたのでありますが、戦後のくず鉄の供給量も次第々々に先細りになつて参りますし、また戦前はアメリカ等から大量のくず鉄が輸入されましたけれども、そのくず鉄の輸入はほとんど見込みがなくなりましてアメリカの需要も非常に旺盛になつて参りますため、スクラツプの供給源がだんだん細くなつて来た。そこで細くなつて参つたスクラツプは、全体が今のような使用量を目的として買いあさりましたならば、だんだん値段をつり上げて行くのは当然なことでありますから、それを防ぐためにはくず鉄の使用量を減らして、そして配合する銑鉄の使用量を増すことによつてこれを置きかえて、くず鉄を安く長く食いつなぐというような手で当然参るべきことと思われますが、なかなか各企業の手元その他の事情——先ほど申し上げましたような金融難から来る逼迫というようなことから、もう人のことは考えておられぬというようなことで、買いあさるものがあればあるだけ買いあさつて手に入れる、高く買いあされば高い製品ができるはずでありますから、それを中間材料の支払い代金をたな上げしておいて、投売りして当面の金融をしのいで参るというようなことが行われている次第でございます。そこでこれではいよいよいかぬというようなことが業界全般の自覚となりまして、それで鉄鋼連盟の機動的な活動ができるような運営方針にすべきだというようなことが出て参りました、次第次第に業界の協力でもつて難局を切り抜けなければならないのではないかというような輿論が非常に高騰して参つた次第でございます。そこでいざそれじやスクラツプの購入を手控えて、銑鉄の配合量を増すことを話合おうじやないかということを始めてみたのでありますが、これはすぐ独禁法にぶつかつてそれはまかりならぬ、公取委員会の方へも関係の者が出て、こうこうこういう次第でこういうわけでございますから、これはやりたいと思うということで実情をつぶさに陳情したわけなんでありまして、その実情公取委の方でも十分御酌量くださつておるのですけれども、現行法がある以上はどうも表向きそういうことはできない、こういうことになつて参る次第でございます。それから投売りによつて必要以上に市場が乱されまして、それが鋼業者全体の迷惑にもなり、ひいては消費者にとつても不安を増長さしておる、不当な利益確保する目的でなしに、正常な価格消費者も安心して需要が得られるような限度の相場に持つて行くという話合いもできないということになつております。国際市場に対する関係においてはもとよりであります。従いまして海外原料を共同購入するということも現行法ではできないことになつております。ところが今回公取委員会の方から独禁法改正の必要ありという声が出まして、われわれから申せば十分とは申し上げられませんけれども、とにかく独禁法改正案が国会に上程されて御審議を願つておるということは非常に喜びにたえないところでありますが、その程度におきましては望蜀の感があるかもしれませんが、もう少し業界のために便利な改正をしていただきたいということを念願する次第でございます。  一、二例を申し上げますと、くず鉄の購入とか、海外原料の共同購入という点は、行程を異にしておりますけれども、輸出取引法改正であるとか、あるいは輸出組合法というようなものの制定によりまして当然その点はいれられ得るというように伺つておりますので、この点は業界としてはありがたく存ずる次第でございまして、ぜひそうしていただきたいと存じますが、改正独禁法の範疇において認められております貿易カルテル及び不況カルテルという改正の限度が、現行法のような程度業界は満足して協力行為が実現できるかと申しますと、まだなかなかどうも私どもの希望するような緩和にはなつておらぬと思うのであります。実例を申しますと、たとえば先ほど申し上げましたような内容を持つておる不況を、いかにして協力行為で防止するかということを考えましたときに、全体の量においての制限緩和は、今度の改正法の限度におきましては認められておるようでありますが、たとえば棒鋼、バーと申しておりますが、この棒鋼のメーカーの範囲は非常に広い範囲のことでございますから、それを基盤にいたしまして、そうして不況救済のカルテルをやる、需給のミートをはかるために数量を減産する、全体の量を減産する。つまり十人おれば十人がおのおの八割にする、六割にするとかいう程度の減産を申合せて、需給を調整させる限度のことは認められているのでありますけれども、それよりも一層数量を制限しなければ需給がミートしないというようなことになると、一つのローリング・ミルをやる経済限度は相当あるわけでありますから、そういう五割以下にも四割以下にも制限して生産するということになれば、非常に割高のものをおのおのが製造して出さなければならぬということもありまして、これは供給者の立場からも需要考の立場からも非常にぐあいの悪い制約になるわけであります。そこでバーの中にもいろいろなサイズのものがあるわけでございます。そのおのおののサイズの譲り合い、つまり生産分野を合理的に協定する。九ミリのものは九ミリのもので経済トン数になるまでにAならAという工場が引受ける。十二ミリのものは十二ミリのものでBが引受けるというように、品種によつて分担をきめまして、しかもコスト引下げの目的にも沿うような経済生産をやりながら、需給をミートさせるという段階になりますと、その品種が片寄る結果が競争制限になるという立場から、これはどうも法文の上には明瞭でないようでありますが、運用の面ではどうも衝突するという御見解じやないかと思われる懸念があるのでございます。この点はどうもそういうようなことの方が、私は消費者の方にも御迷惑でもなければ、また協定を認められる趣旨にも決して背馳しない内容であるとも思われまするので、そういうところは一段とひとつ御考究を煩わしたいと存ずる次第であります。  また先ほど植村公述人からもお話がございましたような持株の制限、役員兼任の限度、合併による合理化を進めるというようなことにつきましても、現在お認め願える限度の方法では私はどうも十分に行かないというように考えられます。たとえば先ほど申し上げましたように、平常の生産状況におきましてもやはり中間材料を購入しまして、それに加工して商品化して参るというメーカーが相当あるわけなのであります。そのメーカーの立場が先ほど申し上げましたような金融難その他の方面から非常に制約を受けます結果、中間材料の代金の支払いができなくて、しかも職工かかえて仕事を休むわけに行きませんから、非常な悪条件のもとに買い入れた材料代金はたな上げして生産して投売りするというようなことが繰返されて参る。それに対してそれじや銀行の方面もどうもお前さんの方の単独の面じや貸せない、だれかそれを保証してくれるとか何とか口添えしてくれるものがなければ貸せないという制約も受けて参る。また一方から申せば、売掛け代金が非常に過当にたまつておりますから、それは返済させる方法も供給者としても考えなければならないという立場があるために、たとえば売掛け代金を株にかえてしまつて、たな上げにしておくより出資者の立場に立つてめんどうを見ようというようなことも当然考えられることになる。そうすると同一品種に対する持株の制限であつて競争力の制限になるというような御見解のようでありまするが、私ども実情について考えますればそういうふうにほうつておかれれば、だんだん企業が弱体化いたしまして、競争力を持つどころか、競争力を喪失する立場になるものを、従来の中間材料を供給しておるという因縁から、いろいろな手をもつてそれをサポートして行くということをはかるわけでございますから、私はむしろこれは競争力を増強してやるお手伝いにこそなれ、制限することにはならないというふうに、手前みそかもしれませんが、考えられます。そういうことが積りますと、さらにその程度が進んだ結果、企業再編成というようなところまで事態が進展しなくちやならないようなことになるんじやないかと思いますが、そういう同種の株を持つという制約からいたしまして、合併の中途の段階で、そういう出資者の立場企業を高揚して行くことができないという制約も、実情に即しないような制約であるように考えられるのでありましてこれらの点も十分御考察していただきたいと思います。私はほかの産業のことは存じませんから、これは鉄鋼業の立場から申し上げておる次第でございます。  それから認定を前提とする認可制度になつておる、これはどうも私どもは非常な悪改善じやないかと思うのでありまして、こんな二重な制約を設けて、経済活動の機微な変化に応じ得るということは、ほとんど不可能と申していいんじやないかと思いますから、この二重認可制度のようなものはもつと簡素化された制度にぜひ改善していただきたい、かように存ずる次第であります。  そのほかこまかいことがあるかもしれませんが、大体前公述者からいろいろな点に触れて申し上げてあるようでございますから、重複を避けまして、私はこの程度にしておきます。
  34. 遠藤三郎

    遠藤委員長 ただいまの渡辺君の御意見に対して質疑があればこれを許します。——別に質疑もなければ、次に日本商工会議所理事原安三郎君にお願いいたします。原安三郎君。
  35. 原安三郎

    ○原公述人 独占禁止法の問題は、元来この法の制定は、日本経済の民主化並びに財閥の解体という二つの目的をもつて制定されたものであります。これに連関せる財閥解体の法律も出たことがありました。また過度経済力集中排除法のごとき、民主化の目的のための法律も出たわけであります。これは今全部廃止されております。これを要するに、二つの目的のうち、財閥解体は完全に目的を達したと思う。その次の経済民主化の問題ですが、実は日本は戦争一辺倒で、昭和二十年までいかなる産業も、軍需品の生産をしなければ、いわゆる産業政治というか、労働者もまつたく得られなかつたというような時代ですから、純平和産業であるものも軍需産業にかわつたわけです。これが全部終戦後は転換しなければならぬ。この転換が一種の非常な努力を要したわけです。その点でもうすでに相当経済は弱体になつて来て、それへ少しばかり残つております幾らか大きな企業体というものを細分するために、過度経済力集中排除法というのが出た。すなわちその意味からいつて、財閥解体の方は目的を達しましたが、民主化の方も目的を達したんじやないか、こういうふうに考えまして、数年前からこの法律改正がなければ、日本の国の立上り、経済の立上りはむずかしい、こういうふうに考えておりました。一、二度修正がありましたが、今度はまつたく大幅の修正なのであります。私は廃止を考えておるくらいでありますから、この修正では、今申し上げましたような、日本経済状態に対処して不十分だと、抽象的には思つております。しかしとりあえず本法のことから申しますと、一番大きな問題でありましたが、これはすでに起つておるものを——予防でなく、禁止あるいは分配、細分した企業生産力の較差、あの問題をとりはずしました。目的の中からもとりはずし、同時にまた完全に第三章八条を削りました。それは一応の考え方をかえてけつこうだと思われますが、実はその他の問題をまず一般論で申し上げますと、転換する。すなわち軍需産業から平和産業の元へもどろうというものもあるし、また軍需産業から立ち上つてこれを平時産業にもどすというものもありましたが、このときにそれを生かして行くというのには、同じ業種の人たちが生かさなければいけないわけです。それが例の競争関係事業に対しては、その道のエキスパートがこれを生かすことができなかつた。この数年間は日本は非常に損をしております。そういうことで、すでに同種営業に対する他の同種のエキスパートがこれを生かすことができなかつたということがありまして、すでにもう損をし尽したわけなんです。企業再建整備法とかあるいは会社等臨時措置法というようなものが救済的にありましたが、これは一方やはり独禁法制限を受けておりますので、その意味においてはまつたくお葬式を出す方の企業再建整備法であつて、今言つた事業を生かすという方では、この法律のためにわくをつけられて、日本が伸びることができなかつたというのが実情であります。  もう一つは、この法律をできるだけ緩和して、約八十年前の、割合に短期に日本が国際的に産業を復興したあの形にもどしたいという考えを持つております。独禁法は前の時代にはもちろんありません。もつともときどき暴利取締令とかいう法律も出ました。いろいろなもので独占的または競争行為——不当なる競争排除に伴う取引制限行為などについても圧迫短期法、あるいは制限短期法が出ましたが、その点からいつてまつたくなくするということも、トラストの制限、一応悪性のカルテル共同行為の問題も規制する必要があると思いますから、修正はけつこうでありますが、なるべく法三章にいたしませんと、この予防行為を制限するということが、日本人は割合に遵法精神が強いものですから、予防行為の範囲をおもんぱかつて事業を遠慮することがあるわけなんです。だから予防行為禁止法というものをなるべく減して、事が起つた場合には強い意味で押えて行けるようなことにしたい。そう考えますと、第一条の目的と第二条の定義と第二章第三条の禁止の本則と、あれがあればあとのものはいらぬということになりますが、そうも参りませんから、現在の修正案でさような形になつて行くようにすることが、日本経済並びに日本の国の今後のためには必要でないか、あるいはこれが早い方がいいのではないか、こんなふうに一般論として考えております。  つきましては法律を基礎にお話申し上げなければなりませんから、私は大きな問題としてここに取上ぐべきことは、今度原則的に共同行為独占行為になり、また不当取引行為になる場合には、これを禁止されておりますが、二十四条の二、三、四でカルテルの問題でありますが、これも逐条のときに私の意見を申し上げることにして、気のつきましたことを申し上げたいと思います。それは第一条の目的はあまり変化はありませんでしたが、この中に「一般消費者利益確保する」、これは前からあるのですが、一体この法律消費者利益確保するためだけなんです。私はこれは生産者の利益確保する、そういう書き方がまずければ、公益と書いてほしい、私はこう思うのです。これは現行法にありますが、修正にはないのです。もつともカルテルのごときは、生産者の方に重きを置いておりますから、事実はそういう形にはなつておるわけですが、一般消費者利益確保するということを、公益を確保するということにする方がいい。生産者というものも、日本経済全体の保持の上において、大切な問題ではなかろうか、こんなふうに考えております。第一条は目的でございますから、非常に広い意味になつております。  第二条の定義の方は、この中に、共同行為に対して非常に詳しく列挙的に入れられたことは、非常にけつこうだと思います。ことに独立して事業者団体法という既成法律がありましたものを、第三章第八条の較差があるものの分轄行為を規定した条文を削られて、事業者団体法を廃止したかわりに、そこに事業者団体に対する規定を入れられましたから、これはこの問題では新しいことに相なるのであります。その他の一般問題としては、この定義は、それぞれ詳しく入れられた方が、法の運用上けつこうでございますから、これに対して申し上げることはございません。  次は第八条の問題ですが、これは先ほど申し上げました元の較差関係の問題です。元は「不当な事業能力の較差」となつておりました第三章が、今度は「事業者団体」とかえられました。ただこの事業者団体の中で、やつてはならぬという行為の列挙のうちに、第二号に「構成事業者事業者団体の構成員である事業者をいう。以下同じ。)」とあります。そこでもう一度括弧をとつて申し上げますと、「構成事業者の機能又は活動を不当に制限すること。」こういうのが事業者団体の中の左の行為をなしてはいかぬという中にあるのですが、これは事業者団体構成員というものは、その団体の機能を発揮し、またそれ自身の活動をスムーズにやることのためにつくつた団体なんですから、この目的が達せられなければ、この団体は解体するよりしかたかない。この規定は意味のない規定じやないか、こういうふうに私は考えます。これは削除した方が——法三章で、法は簡明であるを要するという意味からいえば、不必要な規定でないか、こう考えたわけであります。  その次に起つて参ります問題は、十五条と十六条とであります。十五条は合併に関する問題、十六条は営業譲渡に関する問題なんですが、これはそのまま存置されておるように拝見しております。さつきも合併条件で、較差についていろいろ条件をつけられておりましたが、この問題は今度はずされましたので、その点だけは合併条件が減つたと言えるわけです。実は実際に合併をやる場合に、合併というものは、業種が似ておりますから、その合併をやることによつて合理化ができる、経済力を発揮する。しかもそれが一般の公益を害しない、消費者に不利益を与えないということがはつきりしておる場合にでも、この合併を今まででありましたら、一々公正取引委員会に相談しなければなりません。これが長くかかる。合併の必要は、そのときの経済状態から急速を要することがあるわけです。これが数箇月もかかりました場合には、その合併の必要程度が減るがごとき場合もあるし、その合併後に行うべき計画の実行が時期はずれになる場合がある。もつとも最近には、これについてある一定の時間をきめて進むという形をとつておられますが、その点は手続の問題ですが、第一これが予防規定の中の、著しく産業合理化を妨げる原因になつておると私は思う。もしかりに合併する結果、独占になり、または不当な取引もしくは他の取引に制限を加えるという場合には、これは第三条で押えられる。そういうふうな状態にならないものまで実は遠慮するとか、あるいは合併を申請すると骨が折れるから、それではこの際別の方で行こうとか、正常な合併まで阻止されておる傾向がございます。この点について、むしろこれは合理化のために必要である合併は、認可制によつてというお話が、さつき植村甲午郎さんからありました。私はこれは独禁法の存在が、もうすでに弱体化した日本にもう一ぺんむちうつておるような感じがするという点から、これなどは削つてほしい。また第十六条は営業譲渡なのですが、これを合併をしないで、営業譲渡によつて較差をつけることを計画するがごとき場合を、広く網を張つた規定であつたか、それをそのまま今度も存続しておる。これらもやはり合併と同じような意味で、私は合理化の場合にはという条件でなしに、あつさりと十五条の合併と十六条の営業譲渡を削つていたたくようにしてほしいと考えております。その他変更されたものについての批評は、これはもう時間がありませんから申し上げません。  その次に問題になりますことは、二十四条の二、三、四の問題であります。二の問題は、非常に詳しい法律になつておりますが、定価販売の場合におけることを規定しております。今著しい問題は、どういう種類のカルテルを認めるかという問題が先に取上げられて、その後において論議の結果、この二十四条は、不況に対するための共同行為、並びに合理化の場合必要なる共同行為というものが、ここに認められて決定されたものだと思います。国際関係貿易関係のことについては、ある一部の人たちでは、貿易に関するカルテル共同行為は認めていないというような解釈をせられてもおりますが、これがやはり不当取引行為にならなければ、またはこれが一般公益を害する独占行為にならなければ、国際カルテルもさしつかえないと私はこの規定を読んでおります。この点かりにそういう解釈に疑義があれば、国際カルテルをも当然考えねばなりません。いわゆる貿易カルテルを加えねばなりませんが、これはさつき猪谷公述べからお話がありましたように、輸出入取引法もできかけておりますから、その方で貿易業者の希望が達せられると考えます。この際は二十四条の三、四の場合を申し上げたいと思います。この不景気に対する場合も、これもやはり急ぐ問題であると思います。急ぐ問題であるとすれば、その判定認可が早きを要します。ただ、この問題は届出という御意見もありましたが、いよいよこの法律そのもので共同行為禁止しておるのでありますから、多少規定は手おもにしておいた方がいいと思います。しかしその手続実行の場合には、早くその場合々々に応じた措置がとられねばなりませんので、主務大臣認可を決定する場合に、公正取引委員会認定を要するというこの間の進行を、早めてもらう、あるいは期限でもつけたらどうか、この点について多少世間の意見についての批評が入つて申訳ありませんが、公正取引委員会のみでやつてもらうという、いわゆる公正取引委員会判定の中心にし、それ以外には持たぬということでありますが、私は審議会説は今考えておりません。この改正法律案内容を見まして、私は事実上早くやることができることを希望するわけであります。むしろ私はこの認定認可と二つのもので、結局公取認定がなければ主務大臣認可しないという制度はけつこうだと思います。というのは必ずしもこの主務大臣業者の利害関係人ではありませんが、調査は行き届いております。また業者そのものも絶えず主務省に連絡をとつて成行きをよく知らしめておると思うのであります。これが完全なる急迫を要するものだ、まつたくこの点は必要であるということを考えた場合に、そういう方面における何らの機関を持つておりません公正取引委員会に対して、はつきり早い連絡をつけて判定の材料を与えてもらうという必要があるのではなかろうかと思うのです。ただここに一応の考え方としては、主務大臣だけに決定してもらうという方法もありますが、これは私やはり公正取引委員会という、この法律の、しかもなるべく予防的の規定を排したいというわけですから、法的の観点から相当これを見通さなければならない。まあ俗に言えば、法の番人という意味から、公正取引委員会の存在は必要だと思う。しかも実際の実績はどうか。さつき合併問題でお話申し上げましたように、りつばな調査機関を持たせるということになりますと、国費をたくさんまたわれわれか負担しなければならないということになります。しかもまた常に現状において、完全にその点に行き届いた判定ができるかできないかということもございますので、これは主務官庁でいいと思います。しかし主務官庁の行き過ぎだと思われる点及び法律の観点からどうかということを公正取引委員会判定して、その認定をもつて認可主務大臣が出すという今の制度でけつこうです。ただしかしこれは法文に、こういうものが一定の期間にできるときに早くやれるような規定一つ入れていただけたらいいと思います。もし早くやつたことのために欠点があれば、あとでまた認定した側でありましようとも、取消し、修正を公取が命ずることができることに相なつておりまするから、その点で不景気カルテルに関する限りはさような方法をとつていただくことを希望いたします。ただここで問題になると思いますのは、一応決定して実行に入つておるものも、その後に至つてそれに対する不服が出て、また修正を要する点が出た場合には、命令をして一箇月期間がたてばオートマテイツクにこの行動が消えてしまうということがありますが、これは公正取引委員会だけの判断では無理なことが起つて来ようと思う。この認定をする場合には、もう一度認可を与え得る主務大臣の方とも相談していただくという余地を存して置く必要があるのではないかと考えます。これで見ますと、取消し並びに修正に対しては公正取引委員会はオールマイテイになつているというふうに考えます。この点を心配しているわけであります。  しかしてこの不景気対象カルテル内容について考えますに、このカルテルのできる内容はここに三つあげられておりまして、その行為の制限があります。第二項に生産数量、販売数量または設備の制限にかかる共同行為の場合はこれができるとなつておりますが、問題になることが一つあります。それは対価の問題であります。対価の問題は非常にむずかしい問題であります。ここでは流通行為をやつております取引業者は何らその間に入つておりません。生産業者だけであります。ところが業種によりますと、製品が消費者の手にそのまま渡つて行く場合には消費者が思惑する。中間商人の手に一応相当のストックを持たしめなければ仕事にならぬ場合があります。これはさつき渡辺さんの言つておられた鉄の場合と同じようになる。金融が逼迫した場合に、その人の信用では金融ができなかつた場合にこの品物を売るのです。いわゆる国内における同業者ダンピングです。これが原価以下に売られて、それがこれを原料として仕事をしている人たちにコストの不安定な感じを与え、あとの仕入れに対しても底の知れない値下りというものの感じを抱かしめて、経済治安を害する、あるいは安定がないということになるおそれがあると思います。その意味から、ある場合には生産業者が、取引業者を加えることはできませんがその商品を買い取る共同行為が必要となる。そういうようなことも考えなければこのカルテルは首尾一貫しないのであります。これを規定の上にどう入れるかは問題であります。ただここに技術的理由によつて当該事業にかかる商品の生産数量を制限することが云々と言つてありますが、これは例外ケースで、この規定の必要なのは石油ぐらいです。自然から掘り出したものはとめるわけには行かない。大量生産になるが、価格の上で押えて行こうとしても、事実はそういうぐあいにコストは安くならない。この規定はあまり考え過ぎている規定で、しかも実効が上らないと思います。二十四条の三の価格に関する問題も、生産数量及び販売数量または設備制限にかかる共同行為という問題もそのまま織り込みますが、法文の配列は別としてそういうふうな考え方を入れていただきたいと思います。  次に合理化カルテルの問題であります。この合理化カルテルの問題は、これが適用されるものが非常に少いのではないかと思います。これはどうしても購入なども合理化カルテルでやらせてもらわないといけないのではないかと思う。ここに購入という言葉があります。「又は副産物、くず若しくは廃物の利用若しくは購入」とありますが、この購入が非常に限定されておりますが、この合理化のための購入ということもこのカルテル行為の中に入れてもらうことがこの場合必要ではないかと私は考えます。  それからもう一つつけ加えておきたいことは、さつき委員長はこれは経済憲法だと言われましたが、憲法の中の禁止憲法と思います。憲法といいますと非常に重要な問題でありますが、経済行為を主としたものでありますから、商法違反のごときも経済的の行為で違反した場合はここに罰則があります。八十九条の罰則は三年以下の懲役または五十万円以下の罰金という規定がありまして、それが二つ並んでおるわけでありますが、その次の第二項に「前項の未遂は、これを罰する。」とありますが、この未遂罪を罰するというのは削つてほしい。これは少し強過ぎるのではないかと思います。アメリカがいるときに何でもかんでも罰してしまえということでやつたのだと思いますが、これを削ることによつて未遂が助かるからとかどうとかいうことはないと思います。もう少し日本人を道徳的に尊重していただくようにした方がよいのではないかと思います。  それから少しあとにもどりますが、二十五条の点であります。これは私前から言つておる問題なんですが、「私的独占若しくは不当な取引制限をし、又は不公正な競争方法を用いた事業者は、被害者に対し、損害賠償の責は任ずる。」とあります。これは無過失ということなので、算定の非常にむずかしいところです。商標権を侵害して、それによつてかりに石けんの売上げがふえた。一方侵害された方は減つたということならばわかるが、そうでない、無過失損害の場合が多いのであります。無過失損害というのは損害の量定がむずかしい。私は前からこの条項はおかしい、日本に珍しい条項だと思つておりましたが、これがそのまま残されている。一例をあげますと、これはちよつとこの場合に当てはまらないのですが、私の同業者の一人が、最近ではありません、数年前ですが火薬庫が爆発した。これは自然発火でありまして、その原因が不明である。一応爆発したという事実はあるが、これはどう考えても無過失なんです。ところが無過失損害というものの規定法律家が引用して来ました。損害の量定はできないが、とにかく損害があるということなんです。それは相当大きな、もし支払えばこの会社がつぶれてしまうというようなものだつたので、大分争うということがありましたが、これは参考までに申し上げます。  大体各条項並びに一般的な問題としてはこれだけを申し上げまして、私の公述を終ります。
  36. 遠藤三郎

    遠藤委員長 ただいまの原君の御意見に対して質疑があればこれを許します。
  37. 内田常雄

    ○内田(常)委員 ただいまの原さんの御意見に関連して、逆もどりしてはなはだ恐縮でありますが、原さんのすぐ前にお述べになつた渡辺さんの御意見について補足していただきたいところがあるのであります。今原さんの御意見によりますと、カルテル認可とその場合の公取認定というものは、事を慎重ならしめるために両方あつてよろしい。ただその場合認定についていつまでもひつぱられるのは事態に合わないから、その場合公取認定について一種の短期の期間を設定することが必要であるというお話でありましたが、その前の渡辺さんのお話ですと、認可認定と二つ並んでおるのは業者としてたいへん迷惑だし、事態に沿わない。これはむしろ一本にした方がよろしいという意味のお話があつたようであります。その一本にするということは主務大臣認可一本にするのか、あるいは公取認定認可と直して、このことはすべて公取認可なり認定一本にした方がよいのか、あるいはまた認可でも認定でもなしに、法律カルテルが認められる場合の限定的な態様が列挙してあるのだから、それに沿う場合届出をすればよろしい、その結果が悪いときにはいつでも取消権があるのだからという意味でおつしやつたか、そこのところを明らかにしていただけばけつこうであります。
  38. 渡辺義介

    ○渡辺公述人 先ほど私は認可認定の重複した制度は姿が悪い。むしろ改悪だと申し上げましたが、その内容を申し添えませんでしたために御質問がありましたが、私の前に植村公述人がやはり独禁法の建前自体はイギリス風なものにしてもらつて、初めからカルテルは悪だという見方でなしに、カルテルの運用の結果が不当な独占に堕するような結果が出たならば当然是正さるべきであるという考え方が、改正法律の根底をなすべきであるという御趣旨の公述を述べられましたが、その点は私も同様な見解であるということを申し添えて先に進みましたものですから、認定認可の取扱い方を一緒にして申し上げてしまいましたが、私の考えはやはり届出主義にしていただきたいということを前提としておるわけであります。しかも届出制度にいたしましても認可制度にいたしましても、何のためにわれわれはこのカルテルをやるかという目的の趣旨をはつきり書かなければ、カルテル内容が不明になるのでありますから、そういう内容を持つた届出主義にしておきまして、その運営の結果が悪ければそこで再考すればいい、そういう意味で申し上げたのであります。
  39. 内田常雄

    ○内田(常)委員 たいへんくどいようであなたのお考えにないことをお聞きするのでありますが、もしわれわれ国会議員がカルテル結成ということにつきまして、今の御意見のようにこれは限定的な条件を満足する限り自由にする。その場合に届出でいいという気持がなくて、やはりこれは国民経済、ことに消費者経済に重要な影響があることでありますから、認可認定かいずれか一方を残した方が適当であるというような考えをわれわれが持ちました場合に、あなたのお考えをしいて言えば、公取認定一本に残すか、あるいは主務大臣認可一本に残すか、どちらをお選びになるのでありますか、これは少し言い過ぎかもしれませんが、もしお答え願えましたら伺いたいと思います。
  40. 渡辺義介

    ○渡辺公述人 ただいまのお尋ねにお答えいたしますが、私はやはりカルテル内容生産者及び消費者を通じて国民経済的に見た立場からさしつかえがあるかないかということの認定は、主務官庁が一番把握しやすい地位にあられると思うのでありまして、生産業を主管する主務官庁でありましても一概に生産者の立場のみを考慮して需要家の方の立場を無視するというような行政的の認定は当然なさるべきものでないというふうに考えますので、まずカルテル結成する必要があるかないかということを前提にして主務官庁の地位を考えますと、やはり業界実情を一番よく把握いたしておるのは主務官庁であると思いますから、主務官庁が認可制度になれば認可をされる、こういう立場でいいと思います。
  41. 中村高一

    中村(高)委員 原さんにひとつ最近起つておる問題でお尋ねしたいのですが、株式の買占めといいますか、会社の乗取りというか、これが最近大分はやつておるようでありまして、白木屋とか渋沢倉庫、大日本印刷などで株主あるいは従業員の諸君などもそれぞれ対策を講じておるようでありますが、白木屋の問題は遂に独禁法に抵触するものとして裁判所に訴えられて仮処分をして新たに買つた人に対する株主権の行使の制限をいたしたようなことが新聞にも出ておりましたが、おそらく事業界といたしましても非常にこの点については注目されておると思うのであります。これは商工会議所なりあるいは経団連などでもその点についていろいろ対策をお考えになつておられると思いますから、ひとつその点をお尋ねいたしておきたいと思います。
  42. 原安三郎

    ○原公述人 ただいまお尋ねの問題は昔もあつたわけなんです。最近ばかりではない。これがもしその会社の経営が悪くて株価が非常に悪い、しかも業種が非常にまずい業種で将来性がない。業種はいいが経営陣が悪いし設備が悪い。この欠点を除去しまたは陣容をかえればよくなる。株の安いのはそこに原因があると思うのですが、そういう場合に、そういうことについての確信を持つた人が株を買つて入る場合には、これは私はさしつかえないと思います。しかしながら株を買い占めて、そしてそれをただ投機の目的とする。株の制限を越してまで買い占めることはよくないと思いますが、これはまた非常におもしろいので、うんと吸い上げて、過半数の株を買つて、今度売ろうと思うと下つてしまう。でありますから、なかなかいつも成功するものじやないのです。白木屋の場合などは、私ここで批評いたしませんが、とにかく買い占めた人にも一部りくつはあるようです。これを買い占めと言わないで、むしろ経営者交代を希望し、そしてその会社内容をよくするという立場から買われる場合に、私は日本経済進展のためにいいというふうに思うのです。古い頭の人が長く一つところで蟠居して、そしてその生産設備を有効に動かせない場合は……。しかしさつき申し上げたように、内容考えないでただ買い占めて、何かあつたら売り払つてしまうという場合には、よりいい会社合併するという手段を講ずれば別でありますが、そうでない限り、売るときには下りますので、そういうことはそうたびたび行われることではないというふうに考えますから、恐るべきことじやないと私は思います。
  43. 栗田英男

    栗田委員 先ほどの認定認可の問題でありますが、先ほど原さんは認定をいつやるかということで、できればそこを迅速にする、あるいは期限をつけた方がいいじやないかというような御趣旨でございましたが、認定の場合は公取委の問題ですが、こういうことは私は認可の場合にも言えると思うのです。要するに主務大臣業者からそういう願いが出たときに、これをすみやかに受付けて、そして調査をして公取委の方にまわすのかどうかということも、また私は問題になると思うし、また公取委が認定を与えて、それを主務大臣の方にまわしたときに、主務大臣がすみやかにそれに認可の判こを押して、業者認可を与えるかどうかということも私は問題になると思うのです。従つて私は特に迅速に事を運ぶというような面から考えますると、むしろここで公取委と通産二本にしたということは、先ほど一番最初に公述人が申されたように、非常に複雑であり、迅速を尊ぶという点においては、少し私は矛盾をしておるのではないか、このような考え方を持つております。  それからもう一つは、ここに盛られておるところの不景気カルテル認定基準というものは、これはあくまでも公取委の認定基準でありまして、主務大臣認可基準ではないのでございます。従つて主務大臣認可基準というのは、全然この法案に盛られていないのでありまして、主務大臣認可基準と、公取委の認定基準というものがひとしいものであるならば、私はそこにまたこの主務大臣をくつつけることは必要でない、こういうように考えるのです。  それからもう一つ独占禁止政策の背骨と申しますか、この支柱というものは、何と申しましてもカルテル認可というものが私は問題の根本である、こういうように考えておる。それでありますから、そこに主務大臣が入つて来るということは、どうもこの精神に反する。かように考えておりますし、またいろいろ主務大臣業界の事情に通暁しておるとは言いますけれども、この独禁法の四十条を見ますと、これは強硬に調査ができるという権限を持つております。従いまして認定をするために必要な資料を求めたいと思えば、行政官庁にどんどんこの資料を提出せよと言えば、行政官庁が協力しさえすれば幾らでも認定を早めることができる、かように考えておりますので、この点に関しまして御意見を承りたい。
  44. 原安三郎

    ○原公述人 お答えいたします。今の問題は、私は認定ということだけでなく、認定認可と両方急いでやつてほしいというのです。それから今申し上げましたように主務官庁、これは通産省との間だけでなく、農林省もありましようし、いろいろありましよう。この主務官庁に帰属している業者に、こういう問題がおそらく私は実際そうたくさん起つて来ないと思います。そこで統計制度にも、私は賛成できないところがあります。というのは、このカルテル問題が、東京都のしようゆ屋さんやみそ屋さんがそうどんどん起るわけはないので、統計だけやられては困る。綿糸業者生産制限を昨年の四月にやりましたが、これは日本全体を通じての問題でありまして、この問題は、相当大きなものでなければ取上げるべき性質のものではないと、私自身は今考えております。それをあまりイージー・ゴーイングのやり方ではいけないという考え方がありますから、二本ということにしたい。しかしその二本ということは、許可の方も急いでやつてもらうということは、認定と同じことです。  それから、あなたの今お話の、大きな権限を持つている調査機関がなくても調べられるだろうという問題ですが、私は最近の実情はよく知りませんが、これは陣容をふやせばよろしいのですが、事実その産業に直接従事しておりませんと、なかなか勘のみで行かぬ場合があるわけです。すぐわかることもでも、なかなかはつきりしない場合があるのです。そこで両方の会議、協議というような形と同じような意味において、実際日常の仕事に携わつている者が参加してもらう方が、ことに不況カルテルなどは、早くきまるのじやないか、こういうふうに考えます。合理化の方は、なおさらこれは実務と非常につながりがありますから、その意味から、公取委はひとつ法的の観点からこれを判断して行く、材料は主務官庁がこれを出す。その出すというのは、責任を持つて認可するのですから、これはいいかげんなものでないものを出してもらう。そして両者が急いでやつてもらうので、これは認定だけを急ぐだけではありませんので、その点は御承知願います。
  45. 栗田英男

    栗田委員 今のことに関連してでございますが、大体この法案を見まして、たまたま主務官庁が出て来るのは、例の十一条で大蔵大臣が出て来るのであります。これは大蔵大臣に協議をするということになつておりますが、そこで私の考え方といたしましては、このカルテルの問題も、公取委が認可をして、主務大臣意見を尊重するなり協議をするということで、十分連絡がとれるのではないかというような考え方と、どうもここに主務大臣というものの認可を入れると、法体系というものをくずすようなことになる、このようにも私考えるのでありますが、この意見を尊重する、あるいは協議をするということで、主務官庁との連絡は十分である、こういうふうに思うのでありますが、むしろその方が能率的であり、しかも何もこれがためにあえて公取委の機構を大きくしなくとも、今の四十条の規定を十分利用して、主務官庁からどんどん資料を提供してもらうというような、能率的な活動をしたならばさしつかえない、このようにも考えておるのでありますが、それはどうですか。
  46. 原安三郎

    ○原公述人 この問題は、やはり実際上の問題でありますが、私今までの公取委の進み方では、相当強化して、農林並びに通産その他関係各界のエキスパートが入らないと、急ぐということができないじやないか、こう思います。これは実際問題でございますから、観念論になりますが……。
  47. 秋田大助

    秋田委員 ただいま原さんのお言葉の中に、二十四条の二、三、四について問題があるとおつしやいましたが……。
  48. 原安三郎

    ○原公述人 三、四です。
  49. 秋田大助

    秋田委員 それは二、三、四と無意識におつしやつたかと思いますが、二については何らの御意見がなかつたのですが、この二は、改正案に載つているのをこのまま存置してよろしいというようなお考えでございますか。
  50. 原安三郎

    ○原公述人 二十四条の二は、あれでけつこうです。
  51. 秋田大助

    秋田委員 それから二十四条の三の不況カルテル並びに合理化カルテルの中に、購入を含めてもらいたいという御意見でございますが、これについて過日同僚の内田委員から、買取機関のことをたしか公取委員長であつたかにお尋ねのあつた場合に、買取機関は事業者団体と関連せしめてよろしいというような御意見があつたように記憶する。多少私は問題じやないかと思いますが、かりにそれがよろしいといたしますれば、それで救われると思われるかどうか。それで原さんが満足されるかどうか、そういうことならそこへ入れなくてもいいとおつしやるかどうかについては、私もやや疑念を持つている点は、第八条の事業者団体は「一定の取引分野における競争を実質的に制限」してはいけないという規定がありますから、そういう場合の実情はおそらく生産者が、自分の商品で中間商人に行つておる、問屋に行つておるものを相当買い上げなければならぬ場合のことをおつしやつていると思います。それは一定の取引分野における競争制限するような実情に多くなるものだろうと思います。そこまで行かなければ、効果のないものかと思いますが、そこまで行かなくても、相当買い上げれば、ある程度実効を収める、実効を収める以上は一定の取引分野における競争を実質的に制限していると見られるかもしれないが、非常にむずかしい文句でございますが、そこらあたりはどうでございましようか。
  52. 原安三郎

    ○原公述人 競争行為は原則的に認めないわけなんです。それが不当な取引行為になろうとも、またはそれが多少独占的な傾向になろうとも、特別に認めようというのですから、それが絶対にいけないというのは、この不況カルテルの場合にならないのだろうと思います。それからまた、合理化カルテルの場合にもならないと思います。これはちよつと実例を申し上げておきたいと思いますが、そういう場合は起つておりませんけれども、たとえば、リベツテイグで造船をやつておりますが、これはどうしてもガス・ウエツジングやエレクトリツク・ウエツジングにしなければ安くならない。ところがリベツトをこしらえている会社があつて、その会社から言えば、そんなものをやられては困るのだ、ところが各造船所では同じ形の船で入札するのですから、エレクトリツク・ウエツジングのものがほしい。それには設備をかえなければならぬ。それで、合理化カルテルでみな相談し合つて、そうしたいとこれをきめますね。そうするとリベツトの関係の人が失業することになる。しかしながら船を安くつくるから、日本国民全体の利益にはなるのだ。償却が早くなつて、全体に運賃も安くなる。こまかくは存じませんが、そういうことになると、それもやらなければならぬ。こういうことが起る。その場合にやはり一部には、そういう犠牲者が出るわけです。だから、ある場合に制限を加えて、多少不当ということになるかもしれないが、それを許すのが今度のカルテルの目的でございます。
  53. 遠藤三郎

    遠藤委員長 次に日本紡績協会常務理事田川信一君にお願いいたします。
  54. 田川信一

    ○田川公述人 簡単に申し上げます。独禁法改正に対しまする一般的な意見を申し述べます。  まず第一に、この改正法律案は、提出理由として、わが国経済確立と実態に即応するために改正するというふうになつておりまするけれども、私どもの考え方から申しますと、この改正案はどうも経済の特質と実態とに即応する改正案ではないように思われます。むしろ今西独でも問題になつております西独改正案をそのまま取入れて、日本経済上の実態、基盤の浅いというようなことを無視して、日本的の独禁法の制定からほど遠いものがあるというふうに私ども考えております。  第二に、今回の改正案の中心は、カルテル行為の取扱いでありますけれども、改正案では不況カルテル合理化カルテルまた貿易カルテルの三種に区分されて、それを限定しておるわけであります。また一部輸出取引法の方にわけておられますので、二つの法律にわけて取扱われておりますが、この意味から申しまして、この法律案はきわめて狭い範囲に極限されているという点に問題があります。同時にこの法律案を御審議になりますのには、輸出取引法独占禁止法の両方の案を同時に検討していただかなければならぬというふうに考えられます。  元来この改正は、敗戦によつて瓦壊した日本経済が内外の原因によつて混乱し、動揺する現状にかんがみまして、これに即応する対策として提案されたものと考えられますが、そういう意味が徹底しておりますればはなはだけつこうなんでありますけれども、私どもの考え方から申しますと、その施策というものは臨機応変的な施策が絶対必要だということと、その施策のおもなものは現在の日本経済界の実情から見ますれば、業界共同行為というものがなければどうしてもやつて行けないじやないかというふうに考えられます。     〔委員長退席、加藤委員長代理着席〕 そういう点から申しますと、この改正案はもつと大幅に緩和していただくかまたは弾力性のある法律規定していただく必要があるというふうに私ども一般的に考えられます。  私どもの関係しております綿紡績業の本来の使命であります輸出振興の立場から具体的に意見を申し述べますと、輸出産業としての綿紡績業が綿製品の輸出振興をはかるためには、当面問題になつておりますことだけでも、第一に、国際協調の精神を尊重して、いやしくも国内業者の無制限競争から綿製品相場が不当に低落し、タンピングの誤解を生ずることによつて、結局はわが綿製品輸入抑制の口実を与えるようなことを避けること。第二には、綿製品価格競争力あるもの、しかも安定した水準に維持するということも必要である。第三に、原料綿花の輸入について各国の業者が採算上輸入を希望してないようなものも、現在の世界の趨勢から申しますと、各国の貿易協定の円滑な運営を可能ならしめるためには、必要な場合には業者共同行為によつて、これを輸入する措置が講ぜられて、すでにそういう例もあるのでございます。この三つのことは、現在においてもやはり必要なことである。そういうような観点から今度の独占禁止法の改正案を見ますれば、第四条、第五条、第八条を削除され、第六条を改正され、共同行為適用除外として新たに第二十四条に二項ないし三項を設けられまして、いわゆる不況カルテル及び合理化カルテルとが可能になつた点は、現行の独占禁止法に比べまして相当緩和されたものであり、まことにけつこうなことだと思いますが、紡績の立場から申しますと、輸出振興という基本的な目的を達しますためには、さらにいろいろ問題があるのであります。  まず第一に、第二十四条の三項でございますが、「当該商品の価格がその平均生産費を下り、」というふうになつております。端的に申しますと、商品価格がその生産費を下つたという場合は、当該事業及びその関連部門にはすでに重大な事態が発生したとも考えられます。共同行為適用除外の効果は、そうなりますと事実上おそきに過ぎる場合があると思います。特に輸出産業としての綿紡績業においては、現実に綿製品価格が下落を続けることは輸出取引上大きしな支障を来すことになりますのみならず、安売りということによつて国際的の信用を失墜することにもなるおそれがあります。従つて私どもの希望といたしましては、少くともこの条文をお残しになる以上は、平均生産費を下るおそれがあるという文句を入れていただきたいと思うのであります。  それからこれは先ほど来いろいろお話が出ておりました、適用除外となるためには公正取引委員会認定を経て主務大臣認可を要することになつている点でありますが、この二重の認定及び認可ということは著しく時間を空費する結果になるおそれがある。これは私ども多年官庁といろいろ関係を持ちます過去の経験から申しましても、非常に時間がかかるのじやないかというふうに考えられます。同時に業者共同行為は、経済事情の変動に即応して緊急を要する場合が多いのでありますから、先ほど渡辺さんからもお話がありましたように、私も届出主義がいいのじやないかというふうに考えます。  最後にもう一つ改正案の六条に国際的協定の問題がありますが、それと同時に、国内事業者同士が貿易について共同行為を行うことにつきましては、これは輸出取引法改正譲つておられる。しかし輸出取引法改正案はとかく直接輸出業者のみの強化に重点を置いておられるきらいがあると思います。輸出貿易の大宗であります綿製品の場合のごときは、現実に国際競争の結果に対応して輸出の振興を行うのは、輸出商社よりもむしろ生産業者である。紡績業者合理化競争力の強化にまたなければ、その実効を上げることは困難であります。また輸入の場合におきましては、綿花の輸入は今日すべて紡績業者の委託買付であります。綿花輸入商の金融の大部分は紡績業者が保証もしております。価格変動による大きなリスクも紡績が全部これを負担しております。綿花輸入の実質上の主体は、結局輸入業者たる商社よりも需要者たる紡績業者になつているわけであります。従いまして少くとも綿業関係から見ますと、輸出品の生産業者、輸入品の主たる需要者を軽視した輸出取引法改正は何ら貿易の振興の目的を達することはできない、極端に言えば、そういうふうに申せるわけでありますが、独禁法改正の眼目である共同行為適用除外の三つの場合、すなわちいわゆる不況カルテル合理化カルテル貿易カルテルのうち、独禁法改正輸出取引法改正の間に取残された一つの盲点ができておると思うわけであります。国民経済上あるいはまた国際上絶対必要な共同行為、そのうちに現在の独禁法でも認められておるものもありますが、そういうものが今度の改正の例示主義のために漏れてしまつておるというふうに私ども感ぜられるのであります。あるいは私の知識が足りないためにそういうふうに思うのかもしれませんが、私はどうも何かそこに一つの盲点があるのではないかというふうに感ぜられる。従つて私どもの希望といたしましては、今申し上げましたような、生産業者及び需要者——輸入の場合は需要者になるのでございますが、これのみの共同行為が可能になるというような点を聞いていただきたいというのが私どもの希望であります。  簡単でございますが、私の公述を終ります。
  55. 加藤宗平

    ○加藤委員長代理 ただいまの田川君に対する質問があればこれを許します。
  56. 秋田大助

    秋田委員 二十四条の三のカルテルの許容される場合の条件の問題でございますが、「平均生産費を下り、」と限定しているのは少しきつ過ぎる。従つてそのあとの「おそれがある」場合という文句をそれにまでかけるようにした方がいいという御趣旨のお話でありましたが、おそれがある場合となると、これはまた非常に範囲が広く解釈されるおそれがありはしないか。生産費がもう下つちやたのでは非常に困るということもわかる。しかし「おそれ」ということをそれまでかけると非常に広くなりますから、そういうふうな状態に落ち込むことはこの推移であれば当然だれが見てもわかる、必至である場合というような文句を入れて、生産費が下り、その他事業の大部分が仕事を継続することができなくなるという規定に両方かけさせるというようなことではどうでしようか。どう思われますか。
  57. 田川信一

    ○田川公述人 要するに運用の問題でございますし、先ほど来いろいろ御議論のありましたように、たとえばこの認可認定の手続に相当かかるというような御議論も出て参るのであります。従つてこの経済自体は動き出しましたら非常に早く動き出すものでありますから、その実態がもう平均価格を下るというような場合は、それからいろいろな手続をしておるというようなことでありましたら、せつかくこの法律にそういうことを認めながら実効のある結果は考えられぬと思います。従つて私は、その必至であろうがおそれであろうが、それはどちらでもよろしゆうございます。よろしゆうございますが、その運用の面において実態に合うような運用をしていただきたいという希望を持つております。
  58. 加藤宗平

    ○加藤委員長代理 他に御質疑はありませんか。——なければ午前の会議はこの程度にとどめます。  午後二時より再開することとし、暫時休憩いたします。     午後一時十分休憩      ————◇—————     午後二時四十一分開議
  59. 遠藤三郎

    遠藤委員長 休憩前に引続き公聴会を開きます。  午前中にも一言申し上げました通り公述人各位には御多用中にもかかわらず、貴重なる時間をおさきいただき、御出席をいただきましたことを厚く御礼申し上げます。  この際議事の順序につきまして一言申し上げますが、公述人各位の御意見を述べられる時間は、大体十分程度にお願いいたしまして、御一名ずつ順次御意見開陳及びその質疑を済まして行くことにいたしたいと存じます。  なお念のために申し上げますが、衆議院規則の定めるところによりまして、発言の際は、委員長の許可を得ることになつております。また発言内容は、意見を聞こうとする本案範囲を越えてはならぬことになつております。なお委員公述人質疑をすることができますが、公述人委員に対して質疑をすることはできないことになつておりますから、さよう御了承を願います。  それではまず日本中小企業団体連盟中央委員徳永佐一君より御意見をお伺いすることにいたします。徳永君。
  60. 徳永佐一

    ○徳永公述人 日本中小企業団体連盟におきましては、全国業者大会、都道府県代表者会議あるいは役員会などの正式の機関に諮りまして、独禁法改正法案に対しましては、すでに絶対反対の態度を決定いたしておるのであります。反対の決議につきましては、すでに当委員会にも提出いたしておるのでありますが、本日あらためてここに絶対反対の意を表しますと同時に、それに関する二、三について意見を述べてみたいと思います。  いまさら申し上げるまでもないところでありますが、独禁法日本経済を民主化するという、いわゆる経済民主化の基本法でありますと同時に、憲法というべきものであります。同時にまた、これは中小企業者にとりましては、中小企業振興対策とも見らるべきものであります。今回これを改正されようという意向のようでありますが、独禁法改正することは、即経済民主化を破壊することを意味すると思います。同時に、さなきだに苦境にあえいでおりますところの脆弱なる中小企業をさらに窮地に追い込むことになります。また見のがすことのできない問題は、これが消費者の負担の過重という結果を必然的に招来するということであります。かような見地からいたしまして、この改正法案の与える経済的社会的な影響、いわゆる害悪というものがいかに大きなものであるかということを考えますときに、われわれはこの改正法案は、いわゆる改悪法案の最たるものであると考えております。  その第一は、トラストあるいはカルテルを容認するという点であります。法案の二十四条の三あるいは四におきまして、パニツク対策としての不況カルテルというものを認めることになつております。いま一つは、企業合理化の対策としての合理化カルテルを認めようといたしているのがそれであります。幾多の実例が示しておりますように、大企業、基礎産業は好況時におきましては、莫大なる収益を上げまして、莫大なる配当と含み資産とを確保しているのであります。これらの点から行きますと、いわゆるもうけられるときはいかなる犠牲をも顧みずもうけて、しかもこれをかつてに処分して、苦しくなつたら他の迷惑などはさらにおかまいなく、カルテルあるいはトラストといういわゆる企業結合によつて打開しようというものと考える以外にないのであります。なぜ好況時に資本の蓄積をはかりまして、不況ないし合理化に備えるようとしないのか、われわれはまことにわからない、けしからぬ話と考えのであります。大企業ほんとうのねらいは、いわゆる今回のごとく、法一部改正というようなものでなくして、独禁法全廃によるいわゆる野放しカルテルの実現であるということは、午前中来承つている話にもよく現われていると思うのであります。今回の法改正によりまして、いわゆるトラストやコンツエルンのごとき巨大なる企業結合の道を開くということは、まことにもつて重大なものでありまして、われわれ中小企業者といたしましては、軽々にこれを見のがすことができないのであります。いわば今回のこの不況カルテルあるいは合理化カルテルというふうなものを認めるということは、彼らすなわち大企業あるいは基礎産業に対する迎合であると考えますと同時に、独禁法全廃への足固めである、同時に橋頭堡であるというふうにわれわれは考えているのであります。  さらにいま一つは、輸出対策としての貿易カルテルであります。これはわれわれの感じといたしましては、きわめて限られた範囲においてあるいはこれを容認しなければならない場合があるかとも考えるのでありますが、しかしながらこれとてもすでに国際貿易機構憲章の可決されております今日、わが国の国際的立場あるいはそれによつて与えますところの国際的な影響、すなわち得るところのプラスよりも失うところのマイナスのより大きなものがあるというようなことを考えられなければならないと思うのであります。  第三は、公共の利益についてであります。法案では公共の利益あるいは公正なる取引というようなことがきわめて重要なポイントとなつております。すなわちこの公正なる取引あるいは公共の利益というものの概念あるいは解釈いかんによつてきわめて容易にカルテルが認められる、あるいは非常に困難になるということになつて来るのであります。われわれが従来公取から受けますところの感じとしては、アメリカ式に公共の利益とは即消費者利益を言つているような感を受けるのでありますが、有業人口九八%を占めますところの中小企業に大きなウエートをかけなければならないということを忘れていただきたくないのであります。大企業といい、中小企業といい、消費者といいますが、これらの比重を軽々に扱おうとするところから幾多の間違いが起つて来ておるように考えるのであります。  第三は、再販売価格維持契約の問題であります。これは現在でも至るところに見られるものでありまして、従来暗黙のうちにやつていたものを今度著しく公共の利益を害しない範囲において合法的にやらそうというわけのものと思うのであります。定価販売価格を維持するということは何ら異議のないところでありまして、むしろ望ましいことであります。しかしながら値引きをしたということだけで、ただちに懲罰的に取引を停止するというようなことがかりにありといたしましたならば、これは行き過ぎの感を免れないと思うのであります。  第四は、承認権の所在の問題であります。これは午前中も問題になつていたようでありますが、公取が適法かどうか、妥当の範囲のものであるかどうかを認定いたしまして、これを前提条件として主務大臣認可するという方法をとつているようでありますが、私どもがおそれるのは、主管大臣か公取かという問題ではないのでありまして、現在至るところに行われておるところの数々の違反行為のほとんどを見のがしておるところの公取が、はたして今後妥当にして公正なる裁定と監督をなし得るやいなや、この点少からぬ疑問を持つておるものであります。公取は元来行政的な機能と司法的な機能を持つておるのでありますが、今後は司法的機能の遺憾なき発揮に努むべきものと思うのであります。  大体私の意見は以上でありますが、われわれとても今回の法改正による、あるいはカルテル容認による、あるいはその他の点につきましてプラスの面のあることは認めるのであります。これは率直に認めるのでありますが、しかし問題はプラス、マイナスいたしました場合に、プラスに比較してマイナスの面がいかに大きなものであり、いかにその及ぼすところのものが大きいかを十分にお考え願えたいと思うのであります。ことに大企業、基礎産業方々は、法改正はすでに輿論である、あるいは改正機運はすでに十分熟しているというようなことを言うのでありますが、機運といい、輿論といいますが、それらは大企業、基礎産業のかもし出したものでありまして、中小企業ないし消費者大衆の関知するところではないのであります。これは中小企業がいわば大企業に比較して力関係において劣つているということを証明するだけと思うのであります。すなわち言葉をかえて言いますれば、中小企業は大企業に比較して金力とか政治力、組織力、宣伝力というような点において劣つているということにすぎないのであります。現在改正法案の審議が着々進められているにもかかわらず、中小企業の声は大企業に比較してあるいは小さいかもわかりませんが、これは中小企業の零細性と脆弱性、あるいはレベルが大企業に比較して低いというような点から来るのでありまして、やがてこの改正が強行され、中小企業者に影響するようになつて参りますと、全国の中小商工業者は断じて黙つていないと考えるのであります。  以上申し上げましたようなことから反対いたすのでありますが、現在の法律改正するということは、中小企業のテープ・レーバーと大企業への隷属化を意味する、さらには先ほど申し上げましたように、一般消費者を搾取するというような意味におきまして、最悪法案であるというふうに考えるものであります。どうかわが国の中産階級をなしますところの中小企業の命運と、一般消費者の抑圧ということをお考えつて、その点に対する御考慮を十分お願いしたいと思うのであります。
  61. 遠藤三郎

    遠藤委員長 ただいま本会議におきまして重要議案の採決が行われますので、その採決が終了するまで暫時休憩いたします。     午後二時五十八分休憩      ————◇—————     午後三時五十七分開議
  62. 遠藤三郎

    遠藤委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  先ほどの徳永佐一君の御意見に対する御質疑があればこれを許します。——別にないようでありますから、次に日本労働組合総同盟中央執行委員重枝琢已君にお願いいたします。
  63. 重枝琢巳

    ○重枝公述人 私、総同盟の重枝琢已であります。私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律の一部を改正する法律案について、私はこの法律を改訂し制限緩和することについて基本的に反対の立場に立つて意見を申し述べたいと思います。  まず総括的に申し上げますならば、この法律は第一条に規定してあります通りに、公正かつ自由な競争を促進し、事業者の創意を発揮させ、事業活動を盛んにし、雇用及び国民実所得の水準を高め、もつて一般消費者利益確保するとともに、国民経済の民主的な、そして健全な発達を促進することを目的としておるわけでございます。でありますから、占領政策の行き過ぎを是正するというような考え方から、最近一連の逆行的な立法が行われておりますが、これと同様にここに規定してありますいろいろの制限を大幅に緩和するということになりますならば、この法律がまつたく骨抜きになつてしまいまして、産業の民主化という役割を果し得なくなつてしまうというふうに考えるわけであります。十分御承知通りに、資本主義は平等にして自由な競争によつて調和と繁栄を予定したものでありますけれども、アダム・スミスが申しました「見えざる神の手の摂理」は遂に働かずして自由競争の行き着くところは遂に弱肉強食、あるいは独占ということが必然的に参りまして、そうして少数者の支配が確立され、生産力は非常に増大いたしましたけれども、その生産力によつて国民全体の生活の向上ということが達成されるのでなく、実にふしぎにも多数の国民が豊富の中に飢えるというような珍現象を呈して参つたのが、資本主義の本質であろうと思います。これは歴史の示すところでありますが、こういうような資本主義の矛盾を根本的に解決するためには、社会主義社会への前進以外にはないというふうに私考えるのでありますけれども、この根本的な療法というものをとらずに、単に対症療法というものをとろうとするならば、この法律のような私的独占禁止公正取引確保、こういうような方法をもつてする以外にないわけでありまして、政府もこの法律の運用を通じて相当成果を上げて来られたものであります。そこで日本経済の発展と国民生活の向上ほんとうにこいねがいますならば、日本経済の全分野にわたつて総合的な経済政策というものを確立することがまず先決の問題でありまして、それを行わずに、ただこの法律規定しておりますいろいろな制限緩和するというだけでは、それでは本末を転倒した考え方であろうかと思うのであります。そうしてもしそういうことをいたしますならば、財閥の復活、独占資本の横行というような結果となりまして、資本主義の弊害というものを再び助長して、農民や中小企業者、労働者の生活を破壊して、遂には民主主義そのものまでも非常な危険に陥れるような結果になることは、火を見るよりも明らかであろうと思います。そういう意味におきまして賛成できないことを申し上げておきたいわけであります。そういう総括的な意見に基きまして、若干の点について具体的に意見を申し述べたいと思います。  第一点は、貿易カルテルの件でございますが、改正法律案の第六条の一以降の改正、これによつて貿易についての協定禁止を解いております。同時に三項を削除することによつて、そういう協定に関する届出の義務を全然免除をいたすことになつておりますが、もしこのような制限を撤廃するということになりますならば、過去の経験から見まして、ただちにあるいはダンピングあるいは出血輸出、こういうようなことが行われまして、諸外国からたちまち反発を受け、しかもそういうようなことから来るところのいろいろな犠牲は、全部国内消費者にしわ寄せをされて来る、こういうことはすでに明らかであろうと思うのであります。現に硫安の出血輸出の問題については大問題が起きておるような状態でございます。貿易の問題については、対抗上、われわれが日本としてとるべき方法をいろいろ考えなければならないのでありましようけれども、そういうような緩和ということだけで行いますならば、必然的に従来の経験からして消費者にすべての犠牲が転嫁されて来る、こういう結果になるわけでありまして、承服できないところでございます。  第二は株式の所有の制限緩和でございます。十一条の改正によりまして、従来五%に制限されておりましたものが一〇%に引上げられております。御承知のように近代の資本主義社会におきましては、一つ会社の一〇%の株式を所有することによつて非常に大きな発言力を持ち得るということは明らかなところであります。まして同一系統の会社が共同の行動をとるというようなことが行われますならば、一つ会社の支配は可能となつて、そして財閥支配の道をあけることになるわけでありまして、このような改正に対しては反対をいたします。  第三番目に再販売価格の指定の問題でございますが、これは第二十四条の二として新設をされるようになつておりますけれども、こういうことをもしいたしますならば、消費者に対しまして非常な迷惑がかかつて参るわけであります。さらに一般に販売をいたします者は、通常経済的には生産者よりも弱者の場合が多いわけでありまして結局そういうことを通じて生産者に隷属をしいられるという結果になるわけであります。それが今度は消費者にしわ寄せをされて来るという形になるわけであります。さらに本来販売者は自己の責任においていろいろな販売価格で販売をやつておるわけでありますが、特にこういう再販売価格の指定という形でいろいろなことが行われますならば、生活協同組合において廉価販売をいたすということさえも不可能になつて来まして、これは消費生活に非常な悪影響を及ぼすことになりますので、この件についても反対をするわけであります。  次に不況カルテルの件が二十四条の三に規定をされておりますが、本来需要と供給並びにその価格というものは相関関係にあるものでありまして、需給の均衡が破れるという場合にもこれはいろいろ異なつた原因があるわけであります。そこで通常供給が需要を上わまるというような場合に価格の低落がありますけれども、それは当然消費者の方がその利益を享受すべき問題であります。そのことを忘れましてその価格の低落の享受を消費者にさせないというような規定をすることは非常な誤りであろうと思うのであります。通常、政府その他が適当な政策を実施いたしますならば、現在の経済社会におきましては事業者が良識を持つてつておるならば、そういう異常な需給の変動というものによる不況に対する次善の対策というものが当然なされておるはずでありましてここに規定されておるようなことがそう簡単に起ることではない。万一そういうような事態が起る場合につきましても、それは損害を消費者にそのまま転嫁するということでなくて、その他の政策をもつて解決をつけるべき問題であろうと思うのであります。  次に合理化カルテルにつきまして、第二十四条の四に規定をされております。合理化のためのカルテルを認めておりますが、近代的な大産業におきましては、ここに規定されておるような問題については、このようなカルテルをつくらなくても、政府の政策その他の方法で十分にその目的を果し得るものであるわけでありまして、もしこのような規定を置いておきますならば、これは逆に実質的に悪用をされるような危険が非常に多く存在をいたしておりますので、こういう規定を設けることについては反対をいたすわけであります。  それから次にこの法律の運用についてでありますが、この法律は、本来の趣旨から申しまして、中小企業者や労働者や農民、そういうような資本主義社会の中において経済的に弱者である者の利益確保するために運用さるべきであろうと思うのでありますけれども、それにもかかわらず、実際は大企業擁護の運営がなされて来たような観がございます。すなわち紡績や、あるいは、ゴム、鉄鋼、肥料というような、大企業の占める産業におけるいろいろな問題についてはきわめてあいまいな態度で対処されて、その反面、中小企業につきましては、非常に冷厳な態度で取上げられて来ておる。これはちようど、かつてやみ行為が非常に盛んであつた時代に、大きなやみ行為は取締られずして、小さなやみ行為が厳罰に処せられて来た。とういうものと軌を一にするであろうと思うわけでありまして、そういう点は十分考えなければならない。しかもそういうような中小企業を対象とするいろいろな問題から起つたこの法律に対する緩和の素朴な声をそのまま利用して、今度は大企業の行動に対する制限緩和しようとするのが、どうも今度の意図のように考えられるわけであります。こういうようなことになつたのは、せんじ詰めますれば公正取引委員会構成あるいは運営に不備があつたためではないかと思うわけであります。その委員の選出あるいは運営について、民主的な方法を確立することをまずなさなければならないと思うのであります。と同時に、それだけではなくて、たとえば公正取引審議会というようなものを設置いたしまして、資本家代表、中小企業者代表、労働組合、農民組合の代表、さらに一般消費者あるいは学識経験者の代表、そういうものからなる委員によつて審議会構成をいたしまして、その意見を聞いて公正取引委員会が民主的な運営に努める。こういうような方法をとられるならば、従来の弊害がなくなりまして、りつばな運営がなされるのではないか。こういうふうに考えて、新たに公正取引審議会とでもいうようなものをお考えをお願いしたいと思うわけであります。  以上いろいろ申し述べましたが、要するにこの法律緩和いたしまして、カルテルあるいはトラストヘの道を開くということは、大企業に、利潤の利己的な追求と独占を繰返さして、中小企業者、農民、労働者、そういうものにのみ犠牲をしいることになることは明らかであります。そういうことになりますと、日本経済の課題であります貿易の振興、経済自立あるいは生活の安定、こういうことの達成が不可能となつて参ります。私たちは、国内的にも国際的にも、また政治的、経済的観点からいたしましても、こういう逆行的緩和法律案には反対でございます。どうか国会議員の皆様に、この問題の本質についてもう一度御検討を願いまして、立法の趣旨に従つて賢明な措置をとられることを切にお願いする次第であります。
  64. 遠藤三郎

    遠藤委員長 ただいまの重枝君の御意見に対して質疑があればこれを許します。——別に質疑もないようでありますから、次に全国購買農業協組合連合会会長黒田新一郎君にお願いいたします。
  65. 黒田新一郎

    ○黒田公述人 私がお呼び出しをいただいたのは、全国農民の代表といいますか、農民団体の立場からこの問題に対して意見を述べる意味でお招きを受けたのであります。従つて全購連という立場を含めて、全農村の立場から意見を述べてみたいと思うのであります。  実はこの問題につきましては、過般二月二十七日に全農民大会を東京に開催いたしまして、その際この改正案には絶対反対という決議をいたしました。その決議は、国会の皆様方のお手元に出して、お願いをしておるわけであります。反対の理由については、前公述人からるる御説明がありましたのと大同小異であります。ただ私ども農村の立場として特に強調いたしたい点が二、三あるのであります。  御承知のように、今日本経済自立の問題が非常に大きく取上げられておりますが、その経済自立の中心をなしますものは、何といつても食糧の自給態勢の確立であろうと思うのであります。農村ではこの国の至上命令に対しまして、鋭意努力をいたしておるのでありますが、今当面いたしております農村の実情は、いろいろな悪条件に災いされまして、なかなか所期の目的が達成できません。そのいろいろな悪条件の中で、何が一番農村の経済を圧迫し、生産を阻害しておるかと申しますと、いわゆるシエーレの問題、鋏状価格差の問題がいつも最も大きく農村経済を圧迫していることは御承知通りであります。このことは、戦前戦後を通じて、いつも農村の一番大きな圧力となつておる問題でありますが、戦後におきましては、御承知独禁法その他一連の経済民主化の法律が不完金ながらも存在をいたしまして、このシエーレをはばむ役割をある程度果しておつたのであります。しかし私ども農村側の者から考えてみますと、この法律がありながらも、実際の法律の効果を現わすような運用がいつもされておらない点を非常に歯がゆく思つておるのであります。農村はこうした弱い者の結集であり、しかもその業態が他の事業と違いまして非常に長期を要する。一年に一回の収穫であり、また農産物の生産状態がどうなろうとも、経営形態をそう早急にかえることができない。そうした点では、他の一般企業のごときものは非常に転換も早いし、生産制限も自由にできるし、実に比較にならない強味を持つておるのであります。せめても農村が、こうした企業と均衡を保ち、農村の生活を維持して生産力を高めるための努力をして、農業協同組合等が設立をされまして、販売事業についてはできるだけ農村の生産物を一手にまとめて、この独占化する相手方に対抗しよう、また肥料その他われわれの購入する資材についても、共同購入の方法によつてできるだけかれらの独占の圧力を避けて行こうということで、協同組合の運動に非常な情熱を傾けて運動をしでおるわけであります。しかるに現実の状態は、独禁法そのものがあるにかかわらず、すでにそれが実質的には破られているがごとき運営がなされまして、協同組合の事業等も非常な困難な立場に遭遇しておることは御承知通りであります。肥料等は、私ここで説明を申し上げる必要はないと思いますが、事実上現に公取委からも注意をされておるような状態は皆さん方も御承知通りであります。また農村におきます最も重要な生産物であり、その相手方が強力な独占形態を持ち得る形態を持つております。繭の取引におきましても、実質的にはかなり製糸商のカルテル化がすでに現われておるのであります。かような事実から考えますると、むしろ独禁法緩和どころの話ではない。これはほんとうに強化してもらわなければならぬことがわれわれ全農村の要望であります。にもかかわらず、今回この改正案が問題になつておりますということは、いかにも農村の実情と隔たること遠いと、私どもは驚きの日をもつてこの法案の処置をながめておるわけでございます。さような意味でありまして、全面的にこの緩和することには反対でありますために、逐条的にどうしたところがいいとか悪いとかいう批判をいたす段階ではないと思います。しかし反対する理由といたしまして、内容について二、三の点を少し議論してみたいと思うのでありますが、この問題のうちで何としても重点をなしまするのは、カルテル結成を容認する条項であります。その中でことに不況カルテルの問題につきましては、私どもはこの条項は決して正しくは運用できないであろう、いろいろの制限なり条件をつけておりますけれども、それは単にこうした緩和策を講ずる言いのがれとしてつけてあるだけであつて、おそらくこの改正が通つた後においては、これが独禁法そのものの精神を貫く意味での運用はとうてい不可能であろうと私ども思います。この平均生産費を下まわる場合にカルテルが許容されるという点でありますが、これを現在の硫安の例にとつてみますると、硫安の平均生産費は、硫安協会が今提出をしております数字を見ましても、御承知のように九百三十四円という数字が出ておるのであります。今回の安定帯価格は上限を八百九十五円にいたしておりますけれども、その上限ですらすでに、平均生産費を割つております。けれども、その上限を現在認めないということで、これだけ大きな問題が硫安の問題で今起つておるのであります。私どもはその下限を希望しておるのでありますが、おそらくさような価格が出ようものなら、ただちにこれはカルテル化する合理的な要素を持つことに相なるのでありまして、この一事をもつて見ましても、主要生産費、平均生産費というものの所存をつきとめることの不可能である点、それからそうしたものはどういうふうな理由でもついて、彼らが必要以上に自己の利潤を確保する手段に使われる、おそらく現在の行政機能においては、的確にそれの判断を下す力というものは困難ではなかろうかというふうに私どもは思うのであります。  それから先ほどもちよつと繭の問題について申し上げましたので、関連いたしますから申し上げたいと思うのでありますが、今度の改正で、施行法の方の扱いになつておりますが、蚕糸業法の一部を改正して、相手方の製糸家、つまり繭の買取り者に共同行為を認めるということをうたつております。これは非常に大きな問題でありまして、日本の蚕糸業界で、ことにこの養蚕農家が、製糸の養蚕小作人という言葉をいつも使われておるのでありますが、そうした意味で、明治以来日本の製糸資本を築き上げるためにいかに養蚕農民が犠牲になつて来たかということは、実に血のにじむような歴史であります。それに対抗するために、養蚕業協同組合というようなものができまして、一応団体協約というふうな結束力をもつて、その地位を守ろうと努力はいたしております。そうした点は独禁法除外規定で弱いものの共同行為は認められておりますので、現にそうした力をもつて製糸資本の独占にできるだけ対抗して行く努力を払つておるのでありますが、これが今回法律改正が実現いたしまして、製糸自身が共同行為ができるということになりますと、繭なんというものはだれでも使うものではありません。製糸に持つて行く以外に一粒の繭といえども消化する方法はありません。その製糸が完全にカルテル化されるということになりますと、それによつて受ける養蚕農民の打撃というものは、他の部類に比較することのできない憂うべき状態に相なると思うのであります。最も悪質な法の改正であると思うのであります。ここいらの点については十分御検討をいただいて、全農民のこの問題に対する重大な関心を思つて、ぜひとも御配慮を願いたい、かようにお願いするわけであります。いろいろこまかな点は長くなりますので省略いたしまして、一応私の意見を終ることにいたします。
  66. 遠藤三郎

    遠藤委員長 ただいまの黒田君の御意見に対して、質疑があればこれを許します。
  67. 中村高一

    中村(高)委員 独禁法に基いて肥料の硫安に対して、本日の新聞を見ると、公取委員長から硫安協会に警告を発しておるようでありまするので、先日協会で決定をされた価格ではいけないというくぎをさされておるのでありまするが、春肥を前にして全購連あるいは一般の農家が商人から買うものなどもありましようが、値段のきまらないままに急いで買わねばならぬというような事情にあると思いまするが、全購連なんかでは、どういうふうにして肥料の購入を実際に扱われますか。
  68. 黒田新一郎

    ○黒田公述人 御心配いただいておるように、私どもも非常に春肥の価格決定の問題は心配に相なつておるのであります。すでに需要期を目前に控えまして、気候もこうして暖かくなり、農村方面にも非常に手当を急いでおります。しかるに現在まだ価格決定がなされないということで、荷動きは非常に渋滞をしております。ただ幸いのことに、全購連が昨年来肥料の共同計算方式の購買をしておりまして、これはメーカー側と暫定価格で一応荷物は動かす契約をしております。その数量はどのくらいかということは、ちよつとここで申し上げかねますが、さようなものがありまして、ある程度は動いておるのであります。しかしそのほかのいわゆる当用買いというようなものがだんだん累積をされて来ておりますので、これからわずかの間に一挙に、価格の決定するのを待つて、それが荷動きをしなければならないということになりますので、輸送関係その他を考慮いたしますと、非常に心配になつて参りました。これ以上価格の決定が遷延しておれば、悪くすると、部分的には施肥期に間に合わないような事態が発生するかもしれないという心配が現実に起りつつあるわけであります。私の方としましても、個々のメーカーと価格折衝に入つておりますが、何といたしましても硫安協会で発表されました建値が、最近の協会側の言い分では、各メーカーを拘束するものでないという言い方はしておりますけれども、ああした建値が発表されましたまでの経緯等を考えますと、それを拘束しないとは言うておりましても、実質的にはなかなかこれを打破ることが困難な実情で、連日メーカー側と折衝しておりますが、いまだに妥結の見通しがつかずして、憂慮しております。政府当局等に対しましても、もう一段のあつせんの依頼を申し上げておるような状態であります。
  69. 栗田英男

    栗田委員 ただいまの繭の買付の問題ですが、これは協同組合等は今の売買契約は反対のようでありますが、たとえば他の養蚕組合等においては、いろいろ金融の関係上からも賛成というような別な考え等はございませんか。その点についてひとつ御説明を願いたいと思います。
  70. 黒田新一郎

    ○黒田公述人 過般の農民大会等は、全部の農業団体が主催で開いておるわけでありますが、それらの際には、表面この決議に対して養蚕業組合等からも何らの意思表示はなかつたのであります。しかし仄聞するところによりますと、養蚕業団体の一部等では改正案を支持するという意見があるというふうに聞き及んではおります。理由その他につきましては、私どもはあまり詳しく知る範囲でありませんので、それだけ申し上げておきます。
  71. 栗田英男

    栗田委員 それからもう一つ、この問題で心配することは、運賃と倉庫料、こういうものを製糸会社の方で非常に高く一方的に決定して、しかもそれを天引きしてしまつて、不当に繭価を下げるというような危険もあると思うのですが、その点はどうですか。そういうような公算があるかどうか伺いたい。
  72. 黒田新一郎

    ○黒田公述人 繭の取引に対する条件は、その県等の実情によつてよほど違うと思います。これは全養連が全体の協約の権限を持つておるというわけではありません。県養連が大体中心になつて団体協約の相手方になつておるのが多いのであります。従つて県の実情でいろいろ違うケースが出て参ろうと思います。非常に集約された産地であつて、製糸業者あたりと隣接しておるようなところは運賃の関係等はごくささいなものでありまして、大した問題にはなつておりません。それで私の申し上げるのは、農村側としては、共同行為が当然必要であります。個々の農民がばらばらに一人々々で取引したのでは、とうてい有利には取引できませんので、これはますます強化することは独禁法でも認めております。ただ相手方の製糸をこの改正要綱では、養蚕業組合の申入れのあつた場合というふうになつておりますが、おそらく団体協約をする以上、相手も一本になつてもらいたいというふうな形に、実質的には諸般の情勢で行くのじやないかと思うのです。そうした場合に、その県内における取引については、ただ一つの製糸協会なら製糸協会というものに限定されてしまう。これはその養蚕業組合の性格がよしいかに農民の利益を守るような毅然たる農民的なものであつても、相手方を一つにまとめるということは、これは一つの有利の条件にはならないわけであります。製糸にとつては有利ないい条件でありましよう。そうしたことが過去長い間の歴史の上で実際に行われて、どのくらい苦杯をなめておるかは、関係者が身をもつて体験をしておるところであります。それでお尋ねのこまかな点については、これはいろいろの実情がありますので、一々事例を申し上げる資料を持つておりませんが、総括的な意味で私申し上げたのであります。
  73. 栗田英男

    栗田委員 今の運賃というのは、大体庭先渡しというのが原則ですか。
  74. 黒田新一郎

    ○黒田公述人 庭先渡しということばかりが原則ではありません。これは製糸家に持つてつて渡すという協約をしておるところもあります。村まで出張をして、そこの集荷場所で集荷をして引取るという慣行で扱つておるところもあります。そこらの点はそれぞれ事情が違うのであります。
  75. 遠藤三郎

    遠藤委員長 他に質疑は、ございませんか。——それでは次に東京大学助教授金沢良雄君にお願いいたします。
  76. 金沢良雄

    ○金沢公述人 独占禁止法の改正問題につきましては、すでに世上各方面で論ぜられておりまして、およそその議論も出尽したという感がするのであります。従つて特に私がここで申し上げるほどのこともないかと思いますが、一応の私見を簡単に申し述べて御参考に供したいと思います。  まず独占禁止改正にあたりまして考えられる第一の問題は、緩和の方式をどのようにするかということだと思います。この点につきましては、大体二つの根本的な立場があるようでございます。第一の立場は、一般的には禁止しながら特定の場合にこれを解除する、こういうやり方で、これは現在の独占禁止法あるいは西独競争制限防止法のやり方、第二の立場は、一般的には禁止しないでおいて、特に弊害のあるものを規制するというやり方、英国の独占及び制限的慣行(調査及び規制)法のやり方であります。このたびの改正案はやはり第一の立場、つまり現行法の立場に踏みとどまつたのでありまして、第二の立場までは進まなかつた。これには西ドイツの競争制限防止法案が大いに参考にされたものと思われるのでありますが、私は改正案がこの第一の立場にとどまり、第二の立場、つまり英国式なやり方にまでは行かなかつたということにつきまして、その意味においては本案に賛成したいと思います。というのは、わが国では競争経済の悪さとか、あるいは弊害というものではなくて、そのよさをもつと国民が消費者のみならず、業者も知らなければならないと思うのでありまして、おそらくそれを十分に知つているであろうと思われる英国のやり方をただ形式だけとるというようなことは、なお早計であると思われるからであります。  次に緩和程度はどうか、これを見ますると、今回の改正では相当な緩和であるといえると思います。もちろん人により、あるいは立場によりましては、物足らない、もつと緩和しろという考えもあるだろうと思いますが、個々の産業の個別的立場を離れまして、客観的、全般的に見まするならば、改正案は現行法に比べまして相当な緩和であるといえると思います。まず典型的なカルテル行為としての特定の共同行為や、統制団体の禁止条項が削除されるとか、会社の株式保有、役員兼任などの制限も、競争を実質的に制限する場合に重点を置くというようなことだけでも、一般には現行法に比べて相当の緩和だろうという感じを与えているのではないかとも思われますが、さらに注目されるのは、言うまでもなく一定の条件のもとに不況カルテル合理化カルテル適用除外としていること、及び再販売価格維持の契約をも適用除外としていることであります。独占禁止法は、すでに講和発効後、輸出取引法と特定中小企業安定法とによりまして大穴をあけられているのでありますが、そこへもつて来て、今回はさらに独占禁止法そのものの改正ということになるわけで、そうなると現在でさえも独占禁止法をくぐるような行為は相当に行われていると思うのでありますが、さらに独占禁止法は実質的に骨抜きになつて行くのではないか、そういつた早がてんをする連中が出て来るのを十分この際注意する必要があると思うのであります。私は今回の改正案に盛られた緩和のやり方それ自体につきましては、現在の日本実情などを勘案いたしまして、特に反対するものではありませんが、今回の緩和によつて、今述べましたような空気か支配的となることをおそれるものであります。そしてこの空気に乗つてといいますか、あるいはそれに押されてといいますか、独占禁止法がルーズに運営されるようになるということを最もおそれるものであります。  そこで問題はむしろ改正案の運営のいかんにあるということになるわけであります。そしてこの点につきましては、独占禁止法の精神を公平な立場から守つて行くのは、やはり公正取引委員会でありますから、公正取引委員会に期待するところが大きいのであります。改正案では不況カルテル合理化カルテル認可権は、主務大臣が持つことになつておりますが、これは公取に統一した方がよいのではないかというふうにも思えるのであります。もつとも公取不況カルテルなどが認められる諸条件につきまして、認定を行うことになつております。この認定で、主務大臣の行う認可をチエツクし得るわけでありますが、それくらいならば初めから公取認可権を持つようにする方がすつきりするように思われるのであります。西ドイツにおきましても、もちろん多少事情は違いますけれども、カルテル・ベヘルデが恐慌カルテルなどの許可権を持つていることになつているわけであります。公取は準司法的機能に重点を置くべしという見解も一応もつともな点があるのでありますが、司法的機能を果す場合の前提としての調査機能、調査能力というようなものが行政的機能、たとえば認可というようなものを行う場合にも、いわば自然的に大いにこれを発揮すればよいのでありまして、その方がむしろ国民の、あるいは業界の不安感を去る、そういう点でいいのではないかというふうに考えるわけであります。  なお公取認可なり認定なりをするといたしまして、その場合には十分にその根拠が明らかにされなければならないのでありまして、たとえば不況カルテルの場合に価格が平均生産費を下り、かつその事業者の相当部分の事業がはたして継続困難に至るおそれがあるかどうかというようなことを判断しなければならないのですが、それはただ漠然としたそういう感じがするというようなことではなくて、合理的にそれを追究しなければならない。それには現在公取に与えられている調査のための調査権限などが、経理調査の面にまでも活用されなければならないと思うのであります。また不況カルテルにせよ、再販売価格維持契約にせよ、消費者関係業者利益が著しく害せられないということが条件にされているわけでありますが、その具体的な判定もまた非常に困難ではありますけれども、相当やはりわれわれとしては公取に期待し、そしてそこに公正な判断が行われるということを期待しなければならないと思います。  最後に一言しておきたいことは、独占禁止法の理想あるいは構想というものを実現するためには、ただ独占禁止法のみにこれを期待することができないということであります。独占経済的ないし政治的な弊害は、もはや二つの大戦を通じて十分に知り得たところでもあります。従つて第二次大戦後は、恐慌が起つてからカルテルなどでこれは対処するというやり方、いわば恐慌の治療的措置ということにより、恐慌の起らない諸条件なり地盤をつくり上げるやり方、いわば恐慌の予防的措置とでもいうようなやり方がとられるようになつて来ているように思われます。この構想は例の国際貿易機関憲章、ITOチヤーターに現われているわけであります。これによりますと、国際的な通商及び投資の自由をできるだけ確保しつつ購買力を増強し、経済の拡大的均衡をはかろうというのでありまして、その一環としてITOチヤーターの中で制限的商慣行、つまりカルテルなどをできるだけ排除する措置が考えられているわけであります。もつともITOチヤーターは御承知通りいまだ活動しておりませんが、その構想はいろいろな形で現われております。一九五一年の相互安全保障法、ミユーチユラル・セキユリテイ・アクトにおいてさえもエンカレツジメント・フリー・エンタープライズという項目をあげまして、援助の受領国の独占企業を弱めるような方法でこの法律が運営されなければならないということを言つております。ところで、この独占を弱めるためには、半面それが可能となるような地盤なり条件なりを一方で総合的につくつて行くことが必要でありまして、ITOチャーターに盛られた構想は、それが総合的、有機的に機動しなければならないわけであります。従つてそういう点について、国内的のみならず国際的にも努力が払われなければならないと思うのであります。このような措置を度外視いたしまして、ただ独占禁止法だけにその構想の実現を期待しても、それは無理である。そうでないと、今後もますます独占禁止緩和に口実を与えることになるであろうということを注意しておきたいと思います。また、もし業界独占禁止法の緩和に頼りまして、カルテルの甘きをのみ求め、真の意味で現在必要とせられている合理化の苦きを避けるならば、大局的にはカルテルの甘きがあだとなるのでありまして、独占禁止法の緩和にたよる以前に他になすべきことがあるということも十分注意しておかなければならないと思うのであります。
  77. 遠藤三郎

    遠藤委員長 ただいまの金沢君の御意見に対して質疑があればこれを許します。
  78. 内田常雄

    ○内田(常)委員 簡単に一点だけ金沢さんに承りたいのであります。たいへん独占禁止制度のことについて御研究を積んでおられるようでありますからお伺いをしたいのでありますが、今回の改正におけるカルテル認可の問題を公取一本をして行わしめる方が適正でもあるし、手取り早いという御意見、一応ごもつとものように思いますが、これは金沢先生を学者としてお尋ねを申し上げるので、少しそれるかもしれませんが、今の独占禁止法の二十八条に、公正取引委員会というものは内閣から独立してその職権を行うことになつておる。従つて内閣から離れておるわけでありまして、私はこれが現状において公益保護の見地において公正取引委員会の機能を十分に発揮せしめるためには最もいいかもしれないと思いますが、ただ日本の憲法上、行政機構上、そうすればやはり憲法そのものに会計検査院と同じように公取規定を置くとか、あるいはそうでなければ内閣の所轄に属さしめるというような問題が起つて来るのじやないかと思いますが、その辺について御研究がありましたら承りたいと思います。
  79. 金沢良雄

    ○金沢公述人 ただいまの内田さんの御質問はごもつともな点でありまして、私も先ほどそういう点にまでも言及したいと思つておつたのでありますが、時間がございませんので失礼いたしましたが、その点はまさに御指摘の通り、問題だと思います。公取が独立の行政委員会であるという立場従つてそこには内閣との関係というものが一応切れる、政策的な行政官庁としての機能がそこでは十分働かないのじやないか、こういうことかと思うわけであります。従つてこれは公取自身の根本的な改組問題にもなるかもしれませんけれども、少くとも公取に行政機関的なフアンクシヨンが与えられるとすれば、今申しましたような国民の期待はやはり公取にかけられるのではないかと思うのでありまして、できるだけ公取にそういう機能をやつていただきたい、こういう希望として聞いていただければけつこうかと思うのであります。なお公取が政策から一応切り離されたような形で独立して行政権限までもやつて行くかどうかということになりますと、いささか問題はありますが、ある程度そういつた行政的権限も、特にカルテル禁止、あるいは自由経済の維持といつたような政策論的なものから——ある程度抽象化された一つの資本主義経済のノルムを守るという意味においては、政策的なものから若干それても、あるいはそれから離れても、独立してそういうような機能を行政的にも行つてつてもいいのではないかというようなことを漠然と考えているわけであります。
  80. 前田正男

    ○前田(正)委員 今の金沢さんの御意見で行きますと、第一次的な改正という、いわゆる現在の独禁法が、単に一部のカルテル緩和を認めて行く、こういうふうな行き方であつて、第二次的な、英国で行われておりますような、これを届出制にしまして、公取を審判的な機関にするという考え方の方と、今の御意見の、資本主義経済発達の上から行くと、多少行政機関と離れてもいいから、こういう委員会を設けて、その欠点を補つて行こう。どつちかというと、行政機関の方が届出等の受付をしておいて、そうしてこれを公取は審判的な立場から自由に公共の福祉を守るという考えでやつて行くイギリスのやり方の方が、今のお考え方から行くと合つているように思いますけれども、どうでございましよう。行政機関を離れてやるという委員会として存在する以上は、もつと経済審判的な機関の方がしつくりしているのではないかと考えますが、いかがでしようか。
  81. 金沢良雄

    ○金沢公述人 ただいまの御意見もまことにもつともだと思うのであります。ただ実情考えてみますと、これはいろいろのお考えもあるか思いますが、いわゆる司法的機能というものはいわば事後的な機能でありまして、それまで違反であるかどうかわからない、そういつた不安な状態が続くというか、そういうことが業界の人たちにははつきりしない、いつまでも不安な気持でおる。いずれ審判するときには、先ほど申しましたように、調査機能を十分に発揮するわけでありますが、違反になるかどうかわからないような状態のカルテル行為が行われるとすれば、それについて現在の改正案に示されておりますような諸条件を十分に考える場合には、その調査機能を十分に発揮して、いわば事前的にその司法的機能を果してしまう、そういう意味での行政的機能というものを考えられないか、こういう考えなんでございます。それによつて業界の不安感を去るということが今日ではむしろ望ましいのではないか、こういう考えなんでございます。
  82. 前田正男

    ○前田(正)委員 もう一つ、それに関連したことでありますけれども、実は今度の法律で行きますと、公取も、それから行政官庁であります主務官庁も、両方ともこれを認可することになりますので——認可のときの基準にいろいろ問題があるわけでありますが、しかし両方の認可をとつてあるからということで、業界としてはかえつて安心をして、行き過ぎた行為があるのではないか。ところが両方とも認可しているから、よほどひどい事態が起らない限りは、認可を取消すというような措置をようしないというようなことが起つて、かえつて経済的に公共の福祉を害するような事態が起る可能性が多いのではないか。今のお話のように、自由経済の発展、公共の福祉に反しない範囲において、業界の人が常に不安を持つて、良心的な反省をしながら経済行為をして行つてもらうという方が、かえつて行き方としてはいいのではないか。認可をもらつたから安心だということでやつて行きますと、先ほど御指摘の通り、この法案にはすでに抜け穴がありますし、適用除外がありますし、そういつたことで有名無実なかつこうになつて行くのではないかと私は考えます。そういう点について、学問的な立場からいろいろ御研究になつておられるようでありますので、イギリスあるいは西ドイツの場合等について、どちらの方が公正な経済が行われているかというふうな実情についてもしお知りの点がありましたら、お教えを願いたい。
  83. 金沢良雄

    ○金沢公述人 実情につきましてはまだ十分研究しておりませんが、イギリスのやり方は、いわば全面的に禁止しないというやり方で事後にそれを規制するわけでございますが、その場合には一定の処分命令を主務官庁が出すことになつております。これはやはり一応私の考えでは行政処分的な行為でありまして、これについては刑事責任は問わないで、民事問題として解決をして行くというやり方なのでありまして、現在のわが国独占禁止法のように、違反になるかどうか、刑事問題に問われるかどうかというような不安な状態を野放しにしておる、こういうやり方では決してないのであります。それから西ドイツのやり方におきましては、これは明らかにカルテル・ベヘルデが事前に許可をいたしております。
  84. 栗田英男

    栗田委員 ちよつとお尋ねいたします。例の主務大臣認可の問題なんですが、どうもこの認可をするのには、当然この法律の中に認可基準というものがなければならぬと思うのです。この点私はまだ疑問が解けてないのですが、不況カルテルのときはこういうときというふうに、いろいろ条項がうたつてありますが、これはあくまでも公取委の認定基準であつて主務大臣認可基準じやない、かように考えておるのです。従つて認可基準のない法律の中に主務大臣認可をするということを別に入れるということは、法体系の上から行きましても、独禁政策全般から行きましても、——あなたはすつきりしたというような表現を使つたのですが、非常に奇異な感を持つのですが、この点は学問的にいかがですか。
  85. 金沢良雄

    ○金沢公述人 先ほど私がすつきりしたと申しましたのは、現在の改正案がすつきりしておらないということを申し上げたのであります。私の考えといたしましては、公正取引委員会認可権を持つべぎであるということ、その点においてすつきりするのである、こういうふうなことを申し上げたのでありますから、誤解のないように願います。それから今の問題でございますが、今の不況カルテル基準は、おつしやる通り、これは実質的には認定の某準だと私も考えております。しかしその認定をしたから今度は——現在の改正法について申し上げているわけですが、認可するかどうかということは主務大臣の問題でありまして、認定とは一応切り離されて来る、つまり認可をするのには認定を得なければならないけれども、認定があつて認可しないかもしれない。こういうことも考えられるわけでありますから、別にその間に認可というものがあれでやつておかしいという意見にもならないかと思うのであります。
  86. 栗田英男

    栗田委員 ただいまの、認定はあるけれども、必ずしも通産大臣認可しなくてもいいのだということは、理論的には考えられるのです。しかし実際的には、この運用をして行く上において、そういうことはないと思うのです。そこが非常におかしいのです。
  87. 金沢良雄

    ○金沢公述人 その点がおかしいからこそ、私も公取一本の案を主張しておるわけなんであります。
  88. 栗田英男

    栗田委員 わかりました。
  89. 遠藤三郎

    遠藤委員長 次に全日本中小工業協議会中央常任委員国井秀作君にお願いいたします。
  90. 国井秀作

    ○国井公述人 ただいまの御紹介にあずかりました全日本中小工業協議会中央常任委員をしております国井でございます。  全中協としましては、今回の独禁法改正に対しまして数次の研究会を開き、さらに役員会等の議を経まして、一応お手元に出しました要望書が決定いたした次第でありまして、これから申し上げる前提といたしまして、独禁法緩和に対しましては、ただ一つ再販売価格の維持契約に対する改正案には賛成を表しますが、他の改正案条項に対しては、全面的に反対をするという結論に達した次第でございます。  諸先生から、学問的な立場からの御説明、あるいはいろいろの立場からのお話がございましたので、私は観点をかえまして、現在の独禁法ほんとう経済の民主化と、産業経済のいわゆる憲法の役を果す上において、むしろ物足りない状態であるということ、それから独禁法が実施されてこの五年の間に、一体大企業はどういう形であつたか、また中小企業はどういう形であつたかという、結果論からひとつお話を申し上げてみたいと思うのであります。  独禁法の運用上の諸問題として、まず申し上げてみたいと思います。独禁法が本来の精神からある程度逸脱いたしまして、中小企業をかなりいじめつけておる法律であつたというように言えると思うのであります。その実例は、独禁法に触れたところの、いわゆる審決を受けた件数百二十数件に対しまして、私は一応分析してみたのでありますが、その結果といたしまして、独禁法の違反になつて審決を受けた種類は、第二条の不公正競争の問題、あるいは第三条の不当取引の問題、第四条第一項の一号、二号、四号、二項等にわたりますが、これらのいわゆる対価の引上げあるいは生産数量、販売数量の制限の問題、新生産方式の制限等によるもの、あるいは第五条に関係あるもの、第六条に関係のある国際協定、国際契約の問題、第十条の二項の株式社債の取得の問題、あるいは十一条の問題等、十九条の不公正競争禁止に至るまで、百二十数件に及んでおりますが、最も大きな問題に触れておりますのは第四条と第五条と第六条の問題でありまして、全体の約七〇%になつておるのであります。特に第五条の私的統制団体の禁止の問題、これは独禁法では非常に簡単に法文が一条文出しておるだけでありますが、これはすべて事業者団体法にひつかかる問題であります。従つて事業者団体法のいわゆる禁止行為に対する違反によつてひつかかつておるものが四十一件あるのでございます。第四条に対しましては二十八件、第六条の違反によつて審決を受けたものが十七件、これらを合せますと、百二十数件の大部分がこの三つの部分に集約されておるのであります。そしてこの触れておりますものの中で、大企業中小企業の比率を考えてみますときに、大企業でかかつておりますのは、第四条の対価の引上げに若干ございますことと、それから事業者団体法に関係のあるものも数件ございますし、ただ第六条の国際協定、国際契約の問題の十七件中の大部分が大企業であるだけでありまして、第四条と第五条はほとんど中小企業であります。これをもつと簡単に申しますならば、クリーニングの組合がひつかかりましたり、ブラシの組合がひつかかりましたり、あるいは衛生材料の組合がひつかかりましたり、極端なものになりますと、たびのこはぜの組合関係がひつかかつておるという実情でございまして、百二十数件のうちのほとんど七〇%以上は全部中小企業者がひつかかつておるといつても私は過言でないと思います。一体独禁法の運用の上において、なぜ大企業がひつかからないか。こういう問題は、私が申し上げるまでもなく、大企業はその数がきわめて少いのでありまして、その数の少いことによつて、現行法のもとにおきましてもすでにカルテルは行われておるのであります。実例を申し上げますならば、現に先ほどもお話のありました肥料の問題、石炭の問題あるいは鉄鋼の問題、すべて日本の基幹産業の大部分は現行法下においてすでにカルテルが行われておるといつても私は過言でないと思うのであります。かような次第でありまして、中小企業者の立場から申しますならば、現行法をもつと厳格に実施していただいて、大企業に対しても厳然たる公正取引委員会の審判を行われんことを私どもは希望してやまない次第であります。  さらにこの運用の問題については今いろいろといわゆる学問的な立場からお話がありまして、今度主務大臣不況カルテルあるいは合理化カルテルに対して認可権を持つという問題につきまして、公取でこれを一本にすることの方がすつきりするということについてはいろいろ法律等の解釈に疑点があるようにお伺いをいたしましたので、これはごもつともなことだとは考えますけれども、私はもともとここに一つの矛盾があると思うのであります。それはどういうことであるかといいますと、公正取引委員会はあくまで経済の公正な、あるいは自由な競争等を規制するために、何ら政治的にもあるいは行政的にも支配を受けない独自の立場において審判をせられる立場にあるのでありますが、一方通産行政は企業の育成発達のためにやられることでありまして、いわゆる公正取引委員会が公正な立場において審判するのと少し違つて来ると思うのであります。法律的な観点は私よくわかりませんけれども、通産行政の中では——これは極端な論かもしれませんけれども、企業発達のためにはある程度の出血、ある程度の犠牲も顧みないで、将来のためには通産行政はその企業のために出血をさせるということまでもやるわけでありまして、公正取引委員会との立場の違うことから、この問題を一つの盲点として、将来独禁法が骨抜きになる、これが一番の中心になろうと私は心配をしておるのであります。従つて法的な根拠は私もよくわからないのでありますが、この認可権については、もしもこの改正案が通るといたしましても、改正案の中でこうした二頭政治のような制度だけはぜひ一本に改めていただかなければならぬと思うのであります。  もう一つこの改正案では、不況カルテル合理化カルテルの問題については、大企業は全面的と賛成しておられることと思うのであります。しかしこれはぜひひとつ考えをいただきたいと思いますることは、独禁法に対しましてあまり今まで中小企業者は無関心でおりました。しかし無関心でおるくらい独禁法というものが一面においては戦後のいわゆる中小企業者に対して私は保護になつておつたと思うのであります。ところが今回たまたま独禁法緩和にあたりまして、大きく中小企業者が動いておる現状、あるいは消費者階級の方々が非常に動いておる現状、これをよく御観察を願いたいと思うのであります。ことに私どもが非常に遺憾に思いますることは、今回の独禁法改正は圧力が決して中小企業者の立場から出ておるわけでもなし、あるいは消費者大衆の立場からこの改正の要望が出ておるのではなくいたしまして、一部の大企業からこの圧力が加わつて来てこの改正案が出ておるということは、これは天下周知の事実であると思うのであります。こういう点が決してこの法律、この産業憲法を改正する根本でないと私は思うのであります。こういうところに一つの大きな矛盾があると私は考えるのであります。従つて今日ほうはいとして起つておるところの独禁法反対の声というものは中小企業者が全面的にこれに反対しており、消費者大衆もこれに全面的に反対しておるのであります。ただひとり大企業の一部、しかも基幹産業の一部の大企業がこの独禁法改正を非常に喜んでおる。はなはだしきに至つては、独禁法をやめてしまつてもよいではないかという大胆な声さえ起つておるような次第でありまして、この国民の大多数の人たちが改正しないようにしてもらいたいという声を無視しないように私はお願いいたしておきしたいのであります。  今回の改正点についてなおさらに私どもの反対の理由を申し上げてみたいと思うのであります。今度の改正案では事業能力の較差の問題がこれが削除せられております。しかし私どもはやはりこの法文は一応残しておいていただきたい。こういうことが私どもの考えでございます。  次に不公正競争の意義というものに対しまして、現行法ではきわめて中小企業立場と大企業立場にはつきりしたところがないのでありますけれども、今度の改正案中小企業と大企業の対比においてそれぞれその禁止事項あるいは制限事項等がきめられておる点は私は一歩前進をせられた問題であると考えるのであります。ただその字句の表現にきわめて抽象的な書き方をしておりますることが私どもとしてはどうしても容認できないところでありまして、ぜひこういう問題についてははつきりひとつ明文化していただきたいということが私どもの要望でございます。  次に現行法の第五条が今度は抹殺せられておる、削除せられるわけであります。これは先ほど申し上げました通り、百二十数件の審決の、中の四十一件という多くの違反行為にひつかかつておる問題であつて、先ほど申しました通り、それにひつかかつておる大部分は中小企業者であつて、大企業は大してひつかかつておらないのであります。この第五条のいわゆる統制団体の問題、もう一つこれを裏返して言うならば、一手買取り機関、一手販売機関の設立を許さないというこの禁止事項を今度は削除いたしまして、自由に大企業が一手買取り機関、一手販売機関等をもつて企業独占性を強めるということになるのでありますから、この第五条はぜひとも私どもは存置しておいていただかなければならぬと思うのであります。ことに事業者団体法が廃止せられることになりまして、今度の改正独禁法の中に事業者団体法の法文が入れられるわけでありますが、これもきわめて抽象的な字句でありまして、事業者団体法できめられておるところのいわゆる許容活動禁止行為に対する条項の明文が今度の改正案には載つておらぬのであります。ぜひこの事業者団体法のいわゆる許容活動禁止行為に対するすべての条項について、明らかに今回の独禁法の中にもそれらの事項を取入れておいていただかなければ、大企業がまた独占的な力を出すということに私どもはなると思うのであります。  それから次が、先ほど申し上げました今度の改正案の第二十四条の二項の再販売価格の維持契約の問題でございますが、これは特に有名品に限るという一つの指定があるのでありますから、これがあたかも全面的に再販売価格の問題を決定するということであるならば、国民生活の上の非常な悪影響を及ぼす、あるいはまた消費者階級にそのしわ寄せが転嫁されて行くということもいわれるのでありますけれども、私どもの考えといたしましては、このいわゆる有名商品、つまり日本が誇るべき一つの商品等に対しまして、いたずらに最後の小売店のところで濫売あるいはこれに対して景品付の販売をするというようなことによつて——そういう濫売のおそれが今日全国にみなぎつておるようなわけでございますが、そして最後の売つておるところの中小商業者というものが今日生活に非常にあえいでおるという原因が、すべてこの商品のいわゆる不公正な競争によつて利潤を上げることのできないことにあり、一面においては重税のために生活が非常に苦しくなつておるということに起因するのでありますから、私はやはり中小商業者立場を擁護する意味におきまして、これらのものを調整し、一定のマージンのとれるように、有名品に対してはこうした再販売価格の維持契約というものを認めていただきたいと考えるのでございます。ただこれらの問題はいわゆる生活協同組合とか購買会とか、あるいはその他非常にマージンをとらぬでも、ある他の力によつて保持できるような団体が安く売つておるというような問題がこれと関連すると思うのでありまして、むしろ私どもは第二十四条二項のこの再販売価格の維持契約に対しましては、維持契約をした商品に対しましては、こうしたアウトサイダーにまでその契約的な効力が及ぶような法律にしていただくことがいいのではないか。そのために生活協同組合が、自分らの本質的な、いわゆる安く会員にわけるということが侵されるということであるならば、その利益を会員に配当したらその問題が解消できるのではないか、こう思うのであります。この問題はぜひ私どもが今度の改正案でただ一つ、一番実施していただきたいと思う問題であります。  今御注意がございましたので、不況カルテル合理化カルテルの問題についていろいろとちよつと申し上げたいと思うのでありますが、簡単に一応申し上げてみますならば、不況カルテルの問題、こういう問題も一体不況というものの決定がきわめて抽象的であり、しかも大企業不況という線を出すために、いわゆる平均生産額を割るとかあるいは生産原価を割るとかいうような問題を、他からこれを十分に追究して、あの複雑な大企業内容に立ち入つてまでこれを査定するということは、きわめて困難でないかと思います。従つて不況カルテルというのは、申し上げるまでもなく大体需給のバランスがくずれたときに起きることであつて、必ずしも不況というのは経済的な、全体的ないわゆる不況でなくして、そうした一つの需給のバランスのくずれたときの状態をもつて不況ということにするならば、いつでも大企業はいわゆる操業短縮によつて自分価格を維持するというようなことが行われると思うのであります。たとえて申しますならば、この要望書の末尾にも表がつけてありますが、昨年行われたところのいわゆる綿紡の操短の問題等にいたしましても、結局綿紡の原糸をつくる大企業はこれは操短によつて価格の維持はできますけれども、いわゆるその下請をする、加工をするところの関連産業の第二次産業あるいはさらに小さい加工業であるところの第三次産業には、すべてこのしわ寄せが来ておるのでありまして、この表にも書いてあります通り、昨年一年間はこれらの関連第二次、第三次産業というものは、すべて出血生産をいたしておるのであります。ただひとり大企業は操業短縮によつて現在の価格維持をして、しかも今日は国際的ないわゆる米綿の下落によりまして非常に原糸が安くなつておる。その原糸の安くなつておるときの大企業の状態は、操短でなくして野放しの全面的な操業を開始しておつてもさらに安くなつておるというような状態で、大企業は常に少数の人でありますから、自分らの考え方でこの操作が自由自在にできるというところに大きな危険があると思うのであります。
  91. 遠藤三郎

    遠藤委員長 国井君に申し上げます、時間が参りましたので結論をお急ぎ願います。
  92. 国井秀作

    ○国井公述人 それでは結論の点を申し上げます。合理化カルテルについて鉄鋼問題についてちよつと申し上げたいと思つたのでありますが、それは中止いたしまして、結論といたしましては、私はこの独禁法というものは決して大企業を苦しめている法律でなく、いわゆる大企業も栄え、中小企業も栄え、消費者大衆もこれによつて潤うという、日本産業経済のあり方に対する私は立法であると思うのであります。従つて企業も、この独禁法を全面的に廃止してもいいというような暴論を吐かないで、やはり大企業といえどもこう合いのところで考える必要がある。今日の独禁法は、私は大企業立場から行くならば、安い保険料だと思つておる。従つてこの改正は、一部の改正はやむを得ぬといたしましても、ぜひ独禁法をさらに強化するように、ひとつ賢明なる代議士諸公の御健闘をお祈りいたしまして、私の結論といたします。
  93. 遠藤三郎

    遠藤委員長 ただいまの国井君の御意見に対して質疑があればこれを許します。——それでは次に日本生活協同組合連合会専務理事中林貞男君にお願いいたします。
  94. 中林貞男

    ○中林公述人 私の方の団体といたしまして、今度の改正案に対する希望は陳情書の形で委員長のお手元に差上げてあり、またあるいは公取の方へ数回陳情に参つておるわけでありますが、きようこちらで諸先生の前でそれを敷衍いたしまして少しばかり述べさしていただきたいと思うのであります。  私たち生活協同組合の運動をやつておりますものは、消費者の生活を守り、特に勤労者の実質賃金を高めて行くという立場から私たちはこの運動をやつておるのでございまして、戦前は産業組合法に基いて、農業協同組合の方たちと一緒にやつておつたのでございますが、戦後は二十三年の第二国会において設けられました消費生活協同組合法に基いて現在はやつておるのでございます。従つて私たちはその法律に基いて現在勤労者がお互いの力でできるだけ自分たちの生活をゆたかにして行きたいという立場でこの運動をやつているのでございます。このような立場から、私たちは常に独禁法と申しますものは、日本経済の民主化、そのことは消費者の生活を守る、それから中小企業者の生活を守るというような点から戦前の大企業の横暴を抑制して行くという大きな立場から、この法律は制定されたというふうに考えているのでございます。ところが今度のこの改正案を見ますと、そこに私たちは消費者としまして大きな疑問を持たざるを得ないのでございます。  まず第一番に今度の改正のいろいろの点を拝見してみたのでございますが、それらのこまかな点については、いろいろな方たちから述べられておりますが、やはり特に不況カルテルとか合理化カルテルというようなことで、そのようなことが認められて行くということになりますと、それはやがてあらゆる部門にそれが拡大し、そしてそれは独占価格を設定して行くということになり、これは物価のつり上げというような形になりまして、そのことは必然的に消費者の生活を非常に苦しくして行くという結果を引起すのではないだろうかということを考えるのでございます。それからまたこのような緩和が行われますと、生活協同組合とか中小企業の経営が非常に侵される。特に戦前においてもそうであつたのでございますが、最近の実情を見ますと、大企業中小企業あるいは生活協同組合というものの経営内容に非常に大きな開きが出て参つております。このことは戦前よりも戦後により一層はげしいのではないだろうか、そのような現在の経済情勢のもとにおいて協同組合に対する育成策が十分とられているかどうかを見ますと、税金とかいろいろの点において戦前に認められていたことも現在は認められていないというふりになつていますし、また中小企業の方面で見ましても、中小企業育成政策というものが、まだ十分確立されていない。そのような現在の段階において大企業偏重の傾きをさらに一層強めて行くというような今度の改正案は、私たちとしてはどうしても納得することができない。従つて私たちは消費者立場に立ちまして、今度の改正案につきましては全面的に反対したい。また反対しなくちやならないというふうに考えているのでございます。従つてそれらの内容につきまして、いろいろの点について申し上げたいことはたくさんあるのでございますが、時間もだんだん経過して参つておりますし、また他の公署の方からもいろいろ言われましたので、それらの点は省略さしていただきまして、直接的に私たちに関係のありますところだけについて一点私は申し述べさしていただきたいと思います。  と申しますのは、二十四条の二において再販売価格の設定の契約を認めて行くという条文の点でございますが、このことが独禁法改正におきまして、消費者にとつて非常に大きな影響力を持つている、この点が消費者に大きな影響を持つているということが一般に何だか隠されているんじやないかという邪推すらも私たちはいたしているのでございますが、先般の朝日新聞の社説におきましても、このことが取上げられておつたのであります。特に生活協同組合は、消費者の生活を守る、勤労者が何とかして実質賃金を高めたるためにお互いのわずかな購買力を結集して、できるだけ有利な条件で一人々々がばらばらで買うよりも大勢が集まつて、いいところからいい品物を買うようにしたいという共同購入でございますが、これが私たちの運動の基本でございます。この私たちお互いの自主的な力でできるだけいいものを有利な条件で買いたいという活動がこの規定によつてはばまれて来るということは、どうしても私たちは承服することはできない。このようなことになりますと、現在やつておりますところの生活協同組合に対しては、まつたく圧殺的な結果を来すのではないだろうか。現在職域生活協同組合におきましてやつておりますところを見ますと、大体市価よりも一割か一割五分くらい安く売つておるのが実情でございます。そしてそのことは従つてそれだけ実質賃金を高める上において、非常に大きな結果を招来しておるわけでございます。もちろんこのことにつきまして、一般の中小商業者の方たちとの間にときどき問題が起きることがありますが、それにつきましては、現地でいろいろ話合つて、取扱う品物とかあるいはサービスの方法とか、いろいろなところで話合つてよき解決をしておる事例もたくさんあるのでございます。いずれにいたしましても生活協同組合が、法律に基いて勤労者が自分たちの自主的な力で何とか生活を高めて行くべくやつておる努力が、このことによつてはばまれるということは、私たちの立場からはどうしても承服ができない。そしてそのことは必然的に労働者の賃金問題に非常に大きな影響を来す。現在政府なりあるいは大企業におきましては、賃金はできるだけ抑制して行きたいとしている。しかし政府は実質賃金を高めるためには、あらゆることを考えて行くということを言つておりますし、労働省などもそういうことを始終言つておるのでありますが、このわれわれの実質賃金を高めて行くための努力がはばまれて、このようなことが条文に規定されますと、必然的に何とかしてまたさらに賃金を上げてもらおうということをやらなくちやならないという結果を招来するのではないだろうかと考えるのでございます。この賃金問題との関係という点から申しますと、この条文はあに生活協同組合ばかりでなくして、労働組合事業部あるいは厚生部でやつておりますところの行為、あるいはまた現在の日本におきましては、今までの経過的な一つの過程としてやむを得ず鉄鋼とか炭鉱地帯においては、各会社は全部直売所を持つております。それらはやはり労働者の実質賃金を何とかして高めるという意味合いにおいて現在やられておるのであります。そのような施設は、賃金問題と密接不可分の関係にあるのでございまして、日本は低質金であるといろいろのことが言われておりますが、そういう点からそれらをカバーする意味においても、私たちは現在の段階においてはそういう会社の購売会なりあるいは直売所というようなものを認めて行かなくちやならない。もしこれが法律によつてこの通りの条文が出て参りましたならば、炭鉱においてはほとんど全面的にこのことは大きな賃金問題に影響すると思いますし、また鉄鋼においてもそのような結果を招来すると思いますし、他の各産業においてやつておりますところ全部に影響を来すのではないだろうかということを非常に憂うるのでございます。そうしまして、現在生活協同組合で取扱つておりますところの品物は、九〇%が一流生産業者のメーカー物ばかりなんです。労働者もだんだんといいものを使おうという傾向になつて参りまして、戦争直後におきましては、メーカー物のパーセントは非常に少なかつたのでございますけれども、最近になりまして、特に私こちらに参りますについて、東京の近くその他二、三について生活協同組合の店舗で取扱つておるものがメーカー物かどうかということを調べてみましたら、九〇%がメーカー物になつているのでございます。そうしますと、九〇%メーカー物を扱つている生活協同組合がこのことによつて非常に大きな打撃を受けることになるということを私は申し上げたい。  それから次には、これは事業をやつている者の立場といたしまして、このようなことが規定されると、取引上非常に困るということが起きて参るのでございます。特に経済の変動、物価の変動の激しい今日におきましてたとえば昨年の秋に繊維品が非常に値が下つた。具体的に、今私が着ておりますカツターシヤツであります。労働者は非常にカツター・シヤツを着ますので、やはりカツター・シヤツが生活協同組合の取扱いの主要な部分になつております。それが昨年の秋に値段が非常に下つた。そうしましたら、二流、三流の会社の品物はどんどん値を下げて参つたのです。ところが一流の大きな紡績会社がつくつておりますところのカツター・シヤツはなかなか大きなメーカーが値を引きませんので、それを持つているところの生活協同組合はほかの二流、三流の紡績会社のカツター・シヤツはどんどん値を下げて来るけれども、一流会社が下げないということになりまして、そのストツクをどうするか困つて商社に何回も交渉したのですが、商社はそのうちに下るでしようから、私らも交渉しているが、もう下げて来るからもうしばらく待つてくれ、もうしばらく待つてくれということで、それでは何とか下つたら下つた値段でやりますからして、それまで何とかしてもらいたいということまでやつて来たことがありますが、それが法律によつて再販売価格の決定ができるということになりますと、そのときに、価格の変動の際に、緊急な、臨機応変な措置をすることがさらに一層できなくなつて来るということになりますと、事業をやつております者にとつては非常にこのことが大きな影響を与えて来るということになるのではないだろうかというふうに考えるのでございます。この再販売価格のことにつきましては、朝日新聞にも出ておりましたが、私たちが自分の近くの薬局で物を買いましても、実際問題としては一流の化粧品などでも顔がきくようになりますと、普通の商店でも一割とか五分みんな引いて現にやつているのです。ですからそのことをいまさら法律でどうのこうのという必要のないことではないだろうか、また商店においても私はこういうことが、むしろ非常に事業の実際の操作からいうと困るのではないだろうか、私の近くの化粧品店でけさこのことを聞いたのですが、実際問題として適当にやつておりますからということですから、あに法律でいまさらこういうことをしなくても私はよいものではないだろうかというふうに考えるのでございます。そうしましてこの二十四条の二の規定というものは、都市の勤労者に非常に大きな影響を持つのでございます。二、三日前の新聞の中にも、最近の国民の消費生活の状況が図解されて出ておりましたが、農村においては戦前に比して非常に回復して来ているけれども、回復率というものは、都市の勤労者の消費生活の内容というものが、その回復が非常に遅れているということか政府の発表した数字でも出ておりましたが、このことがやはり今度の改正案通り実施されますと、都市の働く勤労者の生活を高めて行くということが、私はさらにさらに困難になつて来る。特に最近一般の勤労者が日用品として使つているものがほとんど一流メーカー品であるということをお含みいただいて、ぜひ諸先生方の御考慮をお願いしたいというふうに思つておるのでございます。とにかく結論として私がお願いいたしたいことは、このようなことが法律規定されるようになりますと、賃金は押えられておる。そうしてわずかながらに、労働者が、あるいは一般の勤労者が自分たちの手で何とか実質賃金を高めて行きたいという最後に残された努力すらもやる道がふさがれて来るという結果になりますので、私はぜひこの二十四条の二につきましては、諸先生方の十分なる御配慮によりまして、われわれの生活がさらに一層高められるという線に沿つてこの改正案を御検討いただきたいということをお願いいたしまして、私の意見といたしたいと存じます。
  95. 遠藤三郎

    遠藤委員長 ただいまの中林君の御意見に対しまして質疑があれば、これを許します。栗田君。
  96. 栗田英男

    栗田委員 ただいまのあなたの御意見と先ほどの国井さんとは全然反対なわけですが、国井さんの方はむしろこの程度のものでは被契約者に対して効果がないから、公取認定を与えたものに対しては自動的に維持契約を結んだということにせよ。しかも協同組合は安く売らずに、中小企業と同じ販売価格で売つて、それで得た利益というものは、別な方法で組合員に配分してやればいいという御意見でしたが、はたしてそういうことができるかどうか、ひとつ実際運営の面から御説明をを願いたい。
  97. 中林貞男

    ○中林公述人 私たちも生活協同組合の理想としましてイギリスその他のやつておりますように、購買高によるところの割もどし制、利益は一年後の決算を終えてからそれを購買高によつて割もどすということは、非常にいいことだと思います。従つて私たちとしては極力そういう指導方針でやつているのです。ところが日本の生活協同組合はまだイギリス、スエーデンその他ヨーロッパに比べて非常に遅れておりまして、また労働者の意識程度、教育程度というものがそこまで行かない。そうしてこの問題につきましは一年後の百円よりも今日の一円の方が現在の日本の労働者にとつては大切なんだということを労働者から言われますので、そういう指導方針でやつているのでありますけれども、現実の問題としてはなかなか困難でありますが、私たちとしてはそういう線に沿つて指導して行く。そうして中小企業との間はできるだけ摩擦は避けて行くという方針で指導しておりますけれども、現在の職域協同組合のうちの九九%まではそういう努力はしてみるが、なかなかやれないというのが実情でございます。
  98. 遠藤三郎

  99. 秋田大助

    秋田委員 ただいま生活協同組合でお取扱いの部分が九〇%ということでございますが、それは取扱金額を基準にして言われたことだと思いますが、そうでございますか。
  100. 中林貞男

    ○中林公述人 生活協同組合の取扱高の総額ではございません。日用品の取扱品のパーセントでございます。総額で申しますと、米とか、主食その他いろいろなものをやつておりますので、日用雑貨の九〇%でございます。
  101. 秋田大助

    秋田委員 それはどの範囲のお調べでありましたか。近郊の二、三でと言われたと記憶しておりますが、はたしてそうであつたか、それが全般的に類推できるかどうか伺いたい。
  102. 中林貞男

    ○中林公述人 具体的には石川島造船、共同印刷、凸版印刷、野田醤油の生活部、ごく手近なところでこちらへ参りますについて実情を調べて見ましたら、日用雑貨についてはメーカー物が九〇%、しかしこれはここ一、二年の全国的な趨勢でございます。
  103. 秋田大助

    秋田委員 この日用雑貨品の中のメーカー物の金額と全体のお扱いの金額との比率はどのくらいになりましようか。
  104. 中林貞男

    ○中林公述人 全体の金額、これは協同組合によつて非常に主食などを扱つているところもありますし、あるいは雑貨類を非常に多く扱つているところもございますし、それで主食などを扱つていないところでは日用雑貨というものはほとんどの取扱い分量になつております。それで石川島造船、共同印刷、凸版印刷などの生活協同組合に聞きましたら、これがこの通りになるとやつている意味がなくなつて来るというようなことも申しておりましたし、一週間ほど前に委員長の所に陳情を持つて行くために全部集まりましたときに、二十幾つの職域の生活協同組合の者が集まりましたが、そこでもほとんど同様な意見を述べておりましたし、特に皆が問題にするのは、賃金問題との関係において、ストのはね返りが賃金問題に行くということで、このことが重要になつたのであります。
  105. 遠藤三郎

    遠藤委員長 最後に日本労働組合総評議会事務局長高野実君にお願いするわけでございますが、同君より急病のため欠席いたしたい旨の申出がありました。よつてこれにて公述人全部の方方の御意見開陳及び質疑は終りました。  この際委員長より一言ごあいさつを申し上げます。公述人各位には御多用中にもかかわらず、かくも長時間御出席をいただきまして、私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律の一部を改正する法律案について、有益なる御意見開陳せられ、本案審査の上に多大の参考となりましたことを心から御礼を申し上げる次第でございます。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時五十二分散会