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1953-03-09 第15回国会 衆議院 経済安定委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年三月九日(月曜日)     午前十時四十五分開議  出席委員    委員長 遠藤 三郎君    理事 前田 正男君 理事 栗田 英男君    理事 下川儀太郎君       小川 平二君    越智  茂君       佐藤洋之助君    綱島 正興君       横川 重次君    秋田 大助君       菅野和太郎君    石井 繁丸君       中村 高一君  出席国務大臣         国 務 大 臣 水田三喜男君  出席政府委員         公正取引委員長 横田 正俊君  委員外出席者         専  門  員 円地与四松君         専  門  員 菅田清治郎君     ————————————— 本日の会議に付した事件  私的独占禁止及び公正取引確保に関する法  律の一部を改正する法律案内閣提出第一一三  号)     —————————————
  2. 遠藤三郎

    遠藤委員長 これより会議を開きます。  前会に引続き、私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。綱島正興君。
  3. 綱島正興

    綱島委員 経審長官通産関係その他の諸関係及び公取委の方へお尋ねいたします。一々問題を区別しては申し上げませんから、どうぞお答えを願います。最初に大体私の考えておるところを簡単に申し上げてそれから質問に入ります。  大体戦後の問題は治安問題と経済復興問題とでありますが、経済復興問題の中でも特に不況対策、それから産業合理化問題、労働問題、金融問題、特に金利の問題、貿易振興の問題、食糧問題、中小企業問題等わが国経済中最も大きなウエートを占めております。そのうちこれらの諸問題はみな密接不可分関連関係を持つておるのでありますから、勢いこのたびの不況及び産業合理化に関する独禁法改訂にあたりましてもこれらの問題について基本的な御意見を承らねばならないと存ずるわけであります。本件不況及び産業合理化を重点といたしました独禁止の一部を改訂する法案事業者団体法を一部改訂してこれに吸収した法案であるようであります。伺うところによりますと、貿易対策については、ほかにカルテル緩和をはかられるように伺つておるのであります。ところがこれらの改訂に対しまして、先般来ごく簡単な総括的な御意向は御説明を受けましたけれども、血の通つた説明がまだ十分に伺つておらぬと存じておりますので、特に御説明を伺いたいと思つて質問をいたす次第であります。  実は政府党ばかりでなく、野党においても天下においても非常に憂慮されております問題は、金融梗塞の問題、特に高金利が著しいという問題、それから税制が不十分でありまして、すべて中央都市資本が集結し、辺陬地はことごとく資本に枯渇するような状態であります等の事柄、労働問題につきましても先ほどの炭労や電気ストにおいては、まず悪く言えば手をむなしゆうして傍観しておつたような政府の御態度のように考えられます。遅ればせながら多少の御立法もあるようでございますが、これだけのことでは問題は解決しないと思うので、勢いその点にも触れたいと存じております。特に大切なことは食糧増産の問題でありますが、これらの問題がまず足踏みの状態にある。一見いたしますとこのカルテル緩和の問題とは縁遠いように考えられますけれども、非常な関連を持つておりますので、これもあとからその点に関してお尋ねをいたしたいと思います。もとより本件経済復興をはかるに資するものとして政府が立案されたものでありますが、改訂条文そのものについては別にお尋ねをいたさねばならぬようなことはあまりないようであります。先ほどから申し上げますように改訂案条文上に現われておる事柄よりも、改訂をするに至る経済上の事情、これが実は最も重要なる問題であり、国民が聞かんとするところでありますので、この点も明らかにお答えを得たいと思つておるわけであります。大体この改訂についてはいろいろな意見が出ておりますが、経団連から昨年末に出されましたる意見書に、やや本件改訂が似ておりますようなことから、もしも一部の業者経済復興に資するものというふうな非難があるとすれば、ゆゆしい大事でありますので、実は政府の御改訂になる基礎の御精神をあらかじめ伺つておかねばならないわけであります。そこで私は先般来当局の御説明によつて、大体の、ほんとうの漠然たる趣旨は明らかになつたようでありますけれども、戦後の西独でありますとかイギリスでありますとか、戦前戦後を通じての米国産業政策等と対比いたしますときは——本件に盛られておる条文が示す通り事柄だけであつて、その基本に根強い産業政策がないならば、ちようど戦場における負傷者に対するさしあたり応急手当の感があるので、何としても世界の水準をかけ抜けて行けるという見通しを立てての政府のお考えを承りたいのであります。  そこで第一問としてお尋ねいたしますことは、これは外国と対比してお尋ねをいたしたいのでありますが、米国企業自由の法則、この企業自由の法則の裏づけをなしておるトラスト禁止政策、こういうものと最も対照的立場であつた日本維新以来の富国強兵政策に随伴したところの特権産業政策、これも特許状による、補助金による、特殊な大産業を選んで特権を与える政策、こういう政策とこの独禁法改訂との関連をお伺いしたい。私ども考えでは維新以来とつて参りました日本産業政策は、実は自由企業というものはむしろ閉塞しておる、それは中小企業の間にはなるほどありますが、むしろ大企業を調べますと、ほとんど政府特許状式特権産業方式によつておる、なるほど富国強兵であるから間に合せだということでやむを得なかつたという動機も察せられないではございません。けれどもこのために日本産業自由の法則というものは非常に打捨てられて、自由主義というものが起つて来ても、経済界の中においてはむしろ封建時代特許状式産業がそのままに生存しておつたということが大体終戦までの状態であつたと思つておるのでありますが、それが占領中に企業自由の法則基礎としておる独占反対のアメリカの考え方に刺激せられて独禁法が起つたのであります。これが一体基本的に日本産業骨格ほんとう自由主義的な産業に切りかえようという意図でなされておつたのか、また再びこの特権産業式に帰るのじやないか、そういう考え方がある、言いかえますれば国民経済を高揚させるための一部の弊害を除くための改訂か、それとも基本的な日本産業骨格とも見られるような維新以来の特権産業を依然として維持しようという意図ではないか、こういうことをひとつつておきたいのであります。
  4. 水田三喜男

    水田国務大臣 御質問の中で一番最後の再び特権産業を擁護するという意図へ逆転するのではないかというようなお話がございましたが、明治政府以来今まで日本でとつて来た政策というものは、日本資本主義が非常に遅れて世界の仲間入りをするということになつて来ましたために、近代的な資本主義国家を急速につくり上げるというためにはあらゆる助成方策政府はとらなければならなかつた、そうしてだんだんに基礎産業の充実を行つて、その関連した産業規模を拡大して行くという政策を一貫して明治政府以来とつて来たことは事実であります。従つてそのために日本産業も近代化して、外国との競争ができるところまで伸びたかわりに、一面日本に、この小さい国でありながら相当たくさんの財閥ができるし、いろいろな弊害が出て来たことも御承知通りであります。従つてまたそういうものからいろいろ派生して戦争も起り、これが敗戦したときにおいて、占領軍政策として、そういう日本弊害を指摘して、独占禁止法というようなものができたことも、これはやむを得なかつたと思いますし、また必要な手段であつた考えております。やはり産業民主化というもののために、こういう産業憲法ともいうべきものができたことは必要でございまして、この趣旨をわれわれはくずそうとは考えておりません。民主化というものと、今度は個々の企業家が自主的にいろいろな共同行為をするということはまた別問題でありまして、先ほどお話になりましたように、世界的な縮小貿易傾向というようなものが出ておりますし、このあおり食つて日本貿易というものもなかなか楽観すべき状態ではない。従つてこれに対処するにはどうしたらいいかというのが、政府の今の経済政策中心をなしておりますが、このためには貿易商社を強化するとか、あるいは税制面において、在外活動のいろいろなものについての税制的な特権を与えるとか、経済外交をもつと活発に優先させるとか、いろいろな方法をとりますが、そのうちの一つとして、戦後にできた独禁法規制があまりに強くて、自主的な公正と思われる活動までも禁止したということが、やはり貿易縮小という面に相当響いておる。対外的にいろいろな条件を同一にして競争力を増すというようなことまで禁止されるということでは、日本経済活動が非常に弾力性を失うというようなことから考えまして、最小限の規制をここに加えて、対外競争力を増そうとか、あるいは国内における国民経済全体の安定をはかるために、ここに弾力性を与えようとか、そういう必要からこの独禁法緩和しようということでございまして、産業民主化とう基本線をくずそうとか、あるいはまた日本発生期資本主義擁護のためにとつたああいう政策へ、今からまた出直してもどろうというような意図は全然ございません。
  5. 綱島正興

    綱島委員 たいへん安心をいたしました。そこで私は、日本と割合に国情が似ておる英国及び西ドイツの産業復興の問題をかんがみて、わが国経済復興カルテル緩和の問題について御考慮願つた方がいいじやないかと思いますので、特に御所信をただしておきたいと思います。  御承知通り英国は、第二次世界戦争の始まるまでは、これは国際的には一番凶悪なる産業態勢と見ていいと思うのです。国内においては英国人は紳士である、事一たび植民地に行けば鬼であるというような定評があるがごとくに、その経済組織もまたほとんど海外投資利潤をもつて国を立てておる。国民所得の過半数は海外投資利潤をもつて求めておつたのであります。従つてその間に行われた態勢は、ブラインド・ミルトン以来の自由主義の高揚をなして参りました。国民国内において自由主義に対して非常な熱意を持つておるにもかかわらず、海外投資に対してはほとんど別人格のごとき性格を備えて参つておるのでございますが、実は第二次戦争の結果、海外投資地域のインドに独立され、濠州も経済的に独立し、カナダのごときはもう米国よりもすぐれた地域確立するようになつて英国依存は脱却してしまい、中央アジアの石油その他に対する投資もほとんど烏有に帰し、エジプトもその通りになり、わずかに南阿のみがその意図の中に入つておるようでありますが、金価格の暴落から、実はこれも営利的には引合わないようになりまして、御承知通り、毎月一億ドルの輸入超過を継続いたしておつたのであります。二十億ドルの外貨を失うならば、英国経済は破綻すると言われておつたのが、すでに二十億ドルを踏み切つて、十九億ドル、十八億ドルというように相なりまして、しかもその間においてチヤーチル内閣組織しまして、労働党内閣においてし得ることのできなかつた産業経済——国外投資利潤獲得政策を一擲して、国内生産態勢を整えた。しかもそのことが、実は私どもがこの独禁法改訂について深くかんがみなくちやならぬ。どういうことをいたしたかというと、企業家の粛正を行つた企業を正常なものにした、ガラス張りの企業組織にした。英国は、御承知通り国外投資利潤追求国でありますから、企業組織内の暗黒面世界無比と言われておつたのが、それを非常に清明なものといたしまして、最も対立しておつた労働組合の全般的な信任を得た。御承知通り、昨年の九月一日には第八十四労働評議会大会におきまして、この八百三十万を擁する英国労働組合から、チヤーチル内閣賃金抑圧政策支持という決議を、チヤーチルは獲得いたしております。それはどういうところに基本があるかというと、産業人不法利得というものを全部追い出してしまつてほんとう労働者生産労働者のふところに入り、ほんとうに清明なる線で、生産より分配に至るまでの線が合理化されたところにあると思うのであります。このカルテルをなさるるならば、まずその前に基本線確立しなければならぬと私は思う。日本においてもさしあたりこれは——先ほど私は戦場における負傷手当に似ていると評したのでありますが、そういう気がいたします。もつと生産性確立、特には単なる機械による合理化ではなくして、人間の生産意欲の総結集による合理化労働者の協力を得るに値する産業態勢確立ということの中にその線を見出すことが必要ではないかと考えます。これに対して政府の御所信を伺つておきたい。特にかようなカルテル緩和の道をとられる以上は、産業合理化政府の御所信、つまり企業家に対するところの政府の御所信をこの際伺つておくことが、これこそ国民の義務なりと考えますので、この点特に十分なお答えをお願いいたします。
  6. 水田三喜男

    水田国務大臣 産業合理化が必要なことは申すまでもございません。この合理化を促進して日本コストを下げるというためにも、合理化カルテルを認める必要があるという考え方が、この改正行つた一つの理由にもなつておりますが、イギリスの例を今示されましたが、イギリスがはたしてそういう産業合理化を非常にうまくやつて、そのために国民生活確保され、またイギリス貿易が伸びたという事実があるかどうかはよく存じません。われわれがこの問題でイギリス行つたときの話では、案外そうではなくてむしろ国民に耐乏を要求するという形で、思い切つた輸入制限をやる。それから労働者資金は上げない、しばらくがまんしてもらう、これはイギリス労働階級が全部承知して、チヤーチル政策に同調したというような非常にりつぱな態度もとにして、今のイギリス国際収支の改善というものが行われたのだろうというふうに私ども考えておりますが、いずれにしてもそういう形でイギリス輸入制限をやり出したということから貿易縮小傾向が起つて来ておることは事実であります。そのあおり食つて日本の東南アジアの地域中心とするポンド地域貿易縮小というものが起つて来ておりますので、これはお互いに何とか解決しなければいかぬという線で今日英の交渉に入つておりますが、イギリスがそういう政策をとつていたために、チヤーチルが政権をとつてから三百億ドル以上の外貨をふやしておるということで、イギリスも今国際収支状態はかなり改善されて来ましたので、ここでやはりイギリス輸入制限というものを緩和すると同時に、日本から物を買う制限緩和をやろうというような方向に今来ておりますから、これがうまく行けば日本貿易は今予想しているよりも今年はもう少し伸びるのじやないか、伸ばすためにもここで日本海外競争力確保するいろいろな一連措置が必要でございますので、むろん国内産業基盤を整理する意味の合理化という政策は、税制面考慮とか、いろいろな面とあわせて強力にやるかわりに、貿易障害になつているいろいろなものだけは除去して血路を開く道だけはあけておきたいという趣旨で、この独禁法改正をやろうとしておるのでございまして、その根本になつている産業政策というものは本筋に沿つて積極的にやる考えであります。
  7. 綱島正興

    綱島委員 たいへんな安心をいたしましたが、第三問は金融の問題、特に金融につれての中小企業問題等関連させましてこの問題を伺いたいのであります。カルテルが一部緩和されて、これにあずかるものは、カルテルを形成し得る少数者にすぎないのであります。中小企業者とか農民などはこれにあずからぬ——中小企業者必ずしもあずかり得ぬとは言えませんけれども、多くの場合これにあずかり得る率は少いと思うのであります。そこでこのカルテルで一応の保護を立てるということになりますと、例の貿易カルテルでございますとか、これは別法でございますが、その他の本件で問題になります不況カルテル、それから合理化カルテル、これにあずかるものは大体において相当な基盤を有する産業と予想されるのでありますが、これについては一応組織もできますと金融処置もついて来るでしようし、今おつしやつたような税制問題等もいろいろ御考慮になりましようが、それと対比して起る問題は、中小企業問題でございます。そこでまず第三問としては中小企業に関する御所見、これと裏づけする中小企業——一方はカルテル緩和されてい、一方はさらでだに不利益な地位にある中小企業、この問題についてどういうふうにお考えでございましようか。カルテル緩和と同時にこの線をあわせて一応御説明を伺いたいと存ずるわけであります。
  8. 水田三喜男

    水田国務大臣 中小企業に対する対策としましては、まず中小企業産業活動をなす組織上の考慮考えておりまして、協同組合の強化というような政策をとると同時に、中小企業独自としての安定法というものをこの際かえて、中小企業自体が自主的に共同行為をできるというようなことについてのもう一歩の道をあける、それから金融面においても新たに中小企業金融公庫というものをつくつて長期資金中小企業にもつと潤沢に供給する道を開くというような中小企業自体に対する政策を一方とると同時に、また中小企業と申しましても日本においてはその実態から見た場合みんな大企業関連しているものであつて、切り離せない業態でございます。従つて中小企業自体に対する対策と同時に、やはり企業自体におけるそういう対策をとることが間接的に中小企業の安定をはかるというようなことから、今度の独禁法における合理化カルテルにしろ、不況カルテルにしても、これが関連がある以上ここを混乱に陥れる結果が日本中小企業をどう危殆に瀕せしめるかというような問題も出ますので、私どもは今度の対策中小企業の利益と離反するというふうには考えていませんし、中小企業自体に対する対策と同時に、大企業に対する対策をとるということがやはり中小企業を救うということになるだろうというので、一連関係においてこの策の万全を期そうという態度でございます。
  9. 綱島正興

    綱島委員 この際金利問題に対する御所見を少し伺つておきたいと存ずるのであります。御承知通り戦前金利は非常に安うございましたし、特に英国中心といたしましては、イングランド銀行が長い間堅持しておりました低金利政策のために大体世界金利は安かつたのでございますが、戦後再生産関係のない浪費を防ぐためというような考え方から多少金利を引上げるというような政策英国もやつたようでありますし、多少その傾向各国にあつたようであります。しかしながらわが国のそれは各国とは事違つておりまして、はなはだ遺憾に思いますことは、わが国金利がどうにもならぬほど高金利である、このために企業が圧迫をされて参るということであり、高金利利得というものは相違もなく不労利得でありまして、資本主義経済においては一番忌むべき事柄でありますし、不労利得が拡大すればするほど生産が縮小して参ることは、これは私たちの一致するところであります。そこで私ども遺憾に思つておりますことは、戦後デイス・インフレーシヨン政策をやります時分に、賃金物価に対する横すべり政策というものは妥当であつたと存じますが、それと同時にインフレーシヨンに随伴して起るところの高金利事情というものに対して低金利政策、特にインフレーシヨンに随伴して起るものは、れつきとしたる地方銀行もしくは主要産業が使いますところの金利の中に起らず、庶民の間に起る金利、これが非常に暴騰いたしますので、この金利引下げ政策をやらなければインフレーシヨン措置というものはその実を結ばないと存ずるわけであります。ところが一向にこのことがはかどつておりません。なるほど日本銀行が少しこのことには手を入れたようでありますが、これはほんのわずかである。依然として、あるいは府県令あるいは都令において許されている範囲は、月一割五分の利子さえも暴利にあらずということで、金融業者が営業することを現に許されているのが実情であります。これらの金を借りることに中小企業の大部分があえいでおる状態でありますから、これに対する画期的な御処置をひとつこの際お願いしなければ、おそらくは日本のこの不労利得が拡大いたしまして、わずかな金融資本を持つておれば寝て食える、金利が高いために相当な資本をもつてしても、企業するには働かねばならない、それでも必ずしも安定してないというところから、国民があげて高利貸しの門前に集まるように相なりましたならば、これは目に見えて。パチンコ屋がふえておるというようなことと表裏して、実に国民経済の上からゆゆしき問題であり、本件の御改訂趣旨国民経済復興に資するものなる事情等から考えまして、この点についていかような御所信がございますか、ひとつつておきたいと存じます。
  10. 水田三喜男

    水田国務大臣 日本金利が高いというのは、やはり根本的には日本資本過小というところから来る問題でございまして、金利を下げるということが非常に現在むずかしい仕事になつておるのであります。できるだけ金利を下げる政策政府も勧告し、日銀もああいうふうにとつておるのですが、国民から見ましたら、金利の問題は——基礎産業中心とする事業家あたりは一厘でも金利が下ればそれだけコストを下げることができるし、関連産業コストも下つて来るというので、どう、しても一厘でも下げることを望んでおりますが、一般の中小企業そのほかの者は利息は幾ら高くてもいいのだ、金を貸してくれさえすればいいので、一割でも二割でも、金を貸してくれないことが困るのだから、金さえあれば利子は問題でないというので、貸してくれ、貸してくれということを望むのが実情だと考えております。結局資本が過小であつて、そのための現象である。ですから私どもは、資本をふやさない限りは今おつしやつたような、ほんとうの画期的な金利引下げ方策という徹底した政策がとれないのだということがはつきりしておりますので、やはり政府のやる仕事としては、ここで急速に日本資本蓄積というものをやつて資本をふやすことをやるのがやはり根本的なやり方だということを考えまして、この資本蓄積を阻害しているいろいろなものをここ取除こう。まず何といつても、資本蓄積の一番大きい障害と見られますのは、今税金が高いということでございますので、まずこの税金面からの資本蓄積を阻害するいろいろな原因を駆逐しようというので、一連減税政策を今度はとつて資本蓄積を阻害すると見られる限りの税制は全部とつてしまおうという態度で、今度の国会にもそういう法案を相当出して御審議願つておるというような状態であります。根本的には、資本をもつと蓄積させて、供給源をふやすということと、依然としてやはりそれだけでも足らない部面は、外資で補うという政策もとるというのがやはり金利政策根本態度だろう、そうして徐徐に資本蓄積とまつて金利を減らして行ける態勢に持つて来ると同時に、大銀行というような金融機関には、もう一歩合理化を要求するものがたくさんございますので、そういう点からも金利引下げ措置をやる。両々まつて金利体制をもう一歩進めて行こうと考えておるのでございますが、先ほど話しましたように、口では低金利ということを言つても、実際にやつてみようとすればむずかしい実情で、利息は高くてもいいから貸してくれという要望が強いということは、やはり資本が少いための現象であつて、その手当をすることが、この問題としては根本的な方策ではないかと考えております。
  11. 綱島正興

    綱島委員 ただいま御所見をお伺いいたしましたが、私、用意をして参りませんからその点はなんですが、たしか千五百九十何年かであつたと思いますが、イギリスのヤルートという学者がおりまして、当時英国が非常にオランダに立ち遅れておりましたために、オランダに対する商務官として、どういう事情英国がオランダよりは立ち遅れるかの経済事情を調べろということを命ぜられて、これが英国からオランダに参つた、その報告書がございます。用意しておりませんが、大体の要点は、オランダよりも英国金利が高いということと、東インド貿易をやらない、この二つが、英国がオランダに遅れる理由だと申して報告しておるようであります。そこで英国が御承知の一五九八年にイングランド銀行を興して、そうして低金利国民に保障することができるようにし、一六〇〇年に例の東印度会社をこしらえて、それから今日の基礎を築いたようでありますが、そのときの事情等から考えてみますると、私は資本蓄積の少い場合がむしろ低金利政策を強行せなければならぬ場合じやなかろうかと考えられる。ということは、高金利もとにおいては、すべてが不労利得基本とする金利利得に蓄積が移つてしまいますために、高金利による蓄積の形が見えても実質は有効生産力の蓄積でございませんので、これは私は真実の資本蓄積にならないと存ずるのであります。この点が実は非常な問題である。もしも破産会社がありますならば、破産になる前日が一番資本のほしい日でございます。破産会社に日本国家が全部なりますれば国民経済の破綻でございますので、一体これを破産会社にならないように、しかも一部の利益を保護するのでなく、全国民経済を引上げつつ、物価の国際水準さや寄せを遂行して行くというところに経済政策基本がなければならないと存じますので、まずそれには不労利得経済組織の上から、労働組織の上から、金融組織の上から追い出さなければならない。私、今日用意して参りませんでしたからうろ覚えでございますが、たしか戦前金融機関が、金融機関を経営するために要した費用は預金総額の一分三厘であつたと覚えております。ただいまたしかそれが二分七厘か八厘に拡大しておるように存じております。これなどもはなはだけしからぬことである。しかしこれは一定の形をなしておる銀行でございます。庶民の多くの者が使つておるのはそれよりひどい金貸し業者であります。これらの点に対する御処置、特にたとえば質屋というようなものに対して月一割の利子をとつてもかまわぬ——これは絶対に倒れない商売です、質草を持つて行くのですから絶対倒れません。そうして最後の国民の膏血でございます。それに一割の利子を保障しておるというような政策は、私はとりかえればとりかえられると思う。金利問題については、総論ではなく、もう少し網の目をこまかく、その日暮しの者の身になつて政府金利問題だけは熱意を入れていただきたい。カルテルをなさる以上は、カルテルから落ちこぼるるであろう部面に対してこまかい網の目を持つて、それこそその一人々々の救われざる者を救い出すという政策こそは、自由主義政策基本線でなければならぬ。私はそれなければ自由主義経済理論というものは近代思想にマツチしないと考えますし、それあるがゆえに、自由主義経済組織なるものは近代思想におけるいかなるものにも立ち越えておると私は考えておるのでありますが、その点に対する御熱意を特に希望いたしたいと思います。御所見を一応承つておきます。
  12. 水田三喜男

    水田国務大臣 御意見の点、十分了承いたしました。
  13. 石井繁丸

    ○石井(繁)委員 関連して。ただいま綱島委員が申されたのは、要するに中小企業等に対する金融問題について非常に高金利が行われておるという御意見であつたのであります。水田長官はそれに対して資本が乏しいから金利は下らない、こういうことを大体銀行金融その他を中心として述べられた。綱島委員中小企業金融に対する高金利中心として述べられたと思うのです。非常にその点が食い違つておるのでありますが、御承知通り資本が乏しいとかあるいは日本におけるところの資金が乏しいから高金利になるというようなことは一つ考え方でありますが、しかしながら保全協会であるとかあるいは何々殖産とかいうふうな方面に非常な多額の資金が集まつておるということは言えるわけであります。そういうことになりますと、資金が乏しいとか資本が乏しいとかいうような一般論だけでなく、ただいま綱島委員が言われた通り、こまかいところに対する網の目が張られておらなければならないということは当然考えて、どうしたらば資本が正常なるルートに乗るかということについて、やはり審議庁やなんかも相当な努力をしなければならないと思うのであります。御承知通り戦後の金融問題については、臨時金利調整法に基いて大蔵省では日歩五十銭までは利息をとつていいというようになつております。そこへもつて来て貸金業等の取締に関する法律によりまして、金融の届出をして認可を得たものでないと、一切金を貸すと処分ができるということになります。ところが農村等においては、いろいろな形におきまして、昔は近在の関係であるとか、あるいは業者等においても適当の金を持つておる人が懇意な人等に、利息をあまり問題にしないで用立ててやるというふうな形になつておりまするが、ところが二件でも三件でも金を貸せば、貸金業等取締に関する法律違反となる。金利がいかに安くても、継続してやると取締り違反にひつかかつて起訴されるという状態である。そこで健全な非常にめんどう見のいい金融は一切枯渇しているという実情である。ところが貸金の届出をした人に対しては、日歩五十銭、一年においては二十割余になりますから、月にして一割五分以上になる利息が公然と認められている。そこで農村等の実態を見ると、最近においては自分の田を二反なり三反なり売つて、自分の持金を合せて五十万くらいの金をこしらえて金貸業になろうというのが相当ある。そういう無謀な利息の金は不健全な投資に使われるのはあたりまえだ、そういう傾向が非常に多くなつており、かつまた法律の建前上非常にめんどう見のいい近所を助け合うような金は動いておらぬという形になつている。これはいろいろと論議され、裁判所等におきましても、大蔵省からそういう認可は得ているけれども、どうも日歩五十銭は高過ぎるからというので、三十五銭くらいでという判決をしているようであります。大蔵省で日歩五十銭までは認めたということは、これは昭和二十二年の法律でどんどん金の価値が下つているインフレ時代のことでありますから、一応これは考えられたろうが、とにかく堅実なる国民の貯蓄を集めなければならないというときにおきまして、貸金業等の取締に関する法律並びに臨時金利調整法等による高金利の認可という点は、根本的に考え直さなければならない、こう考えられるわけであります。そこで利息制限法の建前がすつかりくずれている。それからまた当座の金等につきましては、今までの利息制限法の最高一割二分というものもあるいは不適当かもしれないという考え方から、一般の国民に堅実な貯蓄をさせるという考え方を非常にうたわれた。月に一割という形になれば、不健全であろうとそういう金利業者に金を出すようになる。そういうのは不健全であつて、郵便貯金、長期信用銀行あるいは割引債券というものに金を集めることが一番堅実であるということに国民考え方を持つて行かなければ、堅実なる大衆の蓄積はできないであろうと思う。今のままでは郵便貯金等も少くなり、長期開発のための資金部の金もなくなつて来るわけであります。銀行その他に対する考えもありましようが、そういう不健全な金融が現実に行われている。そのために大衆の金が堅実なる貯蓄から逃げて行く。こういう傾向に対してどうお考えになつているか、承りたいと思う。
  14. 水田三喜男

    水田国務大臣 御指摘のような事実が顕著でありまして、農村の最近の実情を見ますと、農協の金がどんどん減つて来る。農協の預金をおろして農民がそういう何々保全会とかいう方へまわし、その方への預金がふえて行くという不健全な蓄積傾向が最近非常に助成されていることは事実でございます。従つてこれを健全な蓄積に向けるためには、根本的に、過小資本であつても、少いながらもその資本のうちでやはり最も金を必要とする方面への資金供給の比率というものをもつと上げるようにしなければいけないということから、国民金融公庫とかあるいは中小企業に対する金融公庫というものをつくつて、財政投資にしてもそういう面にもつと比重を多くまわしてやつて、その点を緩和しようという政策をとると同時に、なぜ中小企業になかなか金がまわらないかというと、純粋なコマーシヤル・ベースでは銀行が貸せない。また事実貸せないくらい弱体な企業が多いのですから、これに貸せるような態勢をとらせるためには、やはり協同組合をつくらせるとか、いろいろなことの指導をやつて、共同責任において金を借りられるようにする道をつけるということもやらなければならぬと思います。  それからもう一つ金融機関自身にもやり方に非常に欠点があると思つております。たとえば二百万円貸してやつた、手形の期日がまわつて来たら十日間でもいいから二百万を一旦返して見せておいてくれ、十日たつたらすぐまた二百万貸してやろうというので、その十日を切り抜けるために高金利の機関を利用する必要が現実にいろいろな業者にできて来る。これは実にばからしいことで、企業の実態を見て、もう一回切りかえてやれば必ず回収ができるという目に見えているものに対して、見せ金をここに置けということを要求したら、これはどうしても高金利の金貸業者に依存しなければならぬということに、銀行自身が追いやつているという問題もございましようし、そういう金融機関の金の貸し方についてまで今相当検討して、われわれの方で指導もしますし、いろいろ貸す方の態勢というか、借りる方の態勢の強化と、それから資金の流す比率をもつと大幅にかえて行くというような、いろいろな方策を総合して、今御指摘のような傾向の解消に努力したいと考えております。
  15. 綱島正興

    綱島委員 大体政府の御所信の輪郭はわかりましたが、さらにお尋ねしたいと存じますことは、ただいまの合理化及び不況カルテルとあわせて貿易カルテルが、これは西ドイツもそうであつたようでありますが、日本でも予想されているようでございますので、この貿易に至大なる関係を持つ食糧問題についての御所見を伺つておきたいと思います。大体見通しとして、ただいま輸入している二千三百万石ぐらいの食糧不足の輸入額だけが国民経済で足らぬようでございます。戦前は大体ラシャと毛糸を二億円ほど買つておりまして、これが五、六年足らずのうちにどうしても戦争でもするよりはかなかろうという結論に達したように思つておりますが、ただいま足らないのは食糧を買うだけが足らないようであります。なぜかと申しますと、先月四日経審から御発表になりました二十八年度の輸出入の見通しを拝見いたしてみますと、四億六千四百万ドルないし四億二千五百万ドルが貿易の面の輸入超過に相なるのでありまして、それを補うものの中に朝鮮特需というものが三億五千万ドル、それから駐留軍のドル支払いが一億五千万ドル、個人消費が二億八千万ドルと見通しをしていらつしやるようでありますが、この駐留軍のドル支払いは一朝駐留軍がいなくなればもちろんなくなりますし、個人消費の二億八千万ドルもなくなります。残る問題は朝鮮特需に持つて行つている三億五千万ドル、これを正常な形で輸出して、ものをつくりかえて別なものを輸出するということになれば、おそらく七〇%くらいの価格は得られるだろう。これはいろいろな老練な実業家等に問い合せてみましたが、大体そういう意見であります。七〇%となりますと、大体これが二億四千五百万ドルに相なります。そうするとこの輸入超過から二億四千五百万ドルを引きますと、大体二億二、三千万ドルというものが処理しなければならぬ輸入超過の数字でございますが、これが大体食糧輸入の数字とがつちり合うのであります。そこで戦前はラシヤと毛糸を買う金がなくて国民経済が破綻するじやなかろうかと考えられたのでありますが、ただいまは食糧を買う金がなくて国民経済が倒れるのじやなかろうか、こういうところに相なつているようであります。そこで私は御所信を伺いたいのは、特に経審長官であられますために実はこれに対する基本的なお考えを伺つておきたいと思いますことは、これはおそらくその道の方でない方は驚かれるであろうと思うのでありますが、ただいまではもう外米の黄変米なんていうものでさえもトン二百三十ドルを越えて、四十ドル、場合によると五十ドルというものさえ呼び声をされているように相なつておりますし、今年の見通しとしては、おそらく二百十ドルではおぼつかないだろうと思いますけれども、かりに平均二百十ドルするといたしましても、これが相当の額に相なります。一石当りに大体これが一万一千三百円に相なります。日本の供出米は七千五百円で供出いたしておりますが、これに超過供出報奨金やその他いろいろなものを一切司織り込んでこれが八千三百円になります。その差額が大体石当り三千円ございます。日本の総供出額が今年の見通しでは二千八百二、三十万石の供出となつておりますが、かりに二千八百万石の供出といたしまして、これに国際価格より安く買取つている三千円だけを割り立てますと、大体八百四十億円払わなければ、供出をそれだけ国際価格から踏み下げて買つているように相なつている。御承知通り日本の農村は世界で一番不利益な生産状態でございます。それでさえこういう国内の需要のために低物価をしいている実情でございますが、これらの線より私は高く買う方が適当だとはあえて申し上げませんけれども、少くとも国際価格より不当に買下げている八百億ないし九百億というものは、食糧増産のために国家は何らかの形で補償して行くようなことをしなければ、ただいま申し上げたように、ちようど国民経済が食糧を二千三百万石ぐらいの不足を輸入いたしますことがただいまの貿易の欠損じりに相なるのでありますから、北鮮事変の解決あるいは駐留軍の撤退等が起りました場合等のことを予測して、あらかじめ食糧自給の対策を講ずるために画期的な処置をしなければ、日本経済が危ういことは、このカルテルによつて一部の国際価格とのさや寄せをしなければならぬような事情があつたり、あるいは国内倒産のおそれがあつたりすることと、この農民の食糧増産に対する方策というものをあわせて考えなければ、実は日本経済の復興ということは重点的に考えてみてあぶない問題ではないか、非常なるウエートで国民経済の上にのしかかつている問題である、こう考えますので、こういう点に対しても、これはカルテル関連して経審長官であられますから特にお考えを伺つておきたいと存じます。
  16. 水田三喜男

    水田国務大臣 食糧自給度を高めてなるたけ輸入を減らす必要は当然でございますが、自給度を高めるために土地改良その他にどれだけの金をつぎ込めるかと申しますと、今の国家財政の面から見てなかなか思い切つた金がつぎ込めない、現在やつている程度の投資では、結局日本の増加人口に対応する程度の増産しか望めない、従つて土地改良費、増産費に金を出しても、何年たつても人口がふえる以上は輸入量がかわらないということになりますので、この点は私どもも非常に心配して、お説のように何らか輸入を少しでも実際に減らして行くという方向に行かなければいかぬ、そのためには今後食糧自給一計画に基いて、できるだけの措置をとると同時に、足らない資本食糧増産のためにも一部外資を導入する、これは非常に引合わない仕事じやなくて、外国から借りて国内の開発をやつても、買うよりはいい計算に出るような場所がまだたくさんございますので、われわれの資本で足らぬものは外資によつても食糧自給度を高めよう、こういう考えであります。
  17. 綱島正興

    綱島委員 もう時間も参りましたから、最後に一点だけお伺いをいたしておきたい。それは税制の問題でございます。先ほど不況産業及び貿易関係ある産業税制考慮するいうお話でありましたが、それはまことにけつこうでございますが、もう一つ税制根本について伺つておきたいことは、日本税制がシヤウプ勧告によつて現地課税の考え方経済規模に対する課税の考え方——この経済規模に対する課税の考え方は必ずしも私は妥当じやないとも存じておりますが、ただ現地課税制度、たとえば本社を東京に置けば事業場を日本中に持つてつても、本社の経理を全部終つてから初めて所得というものが出て来る。こういう考え方は私は不当じやないかと思うのであります。これは一種の税制上のカルテルみたようなもので、非常に不当であつて、同じ鉱山でありましても、千葉県なら千葉県のどこかに一人がそこで鉱山をやつておりますと、そこで出た所得というものは全部所得税の対象に相なる。ところがそれが本社を東京に持つておれば、本社の費用を差引いた残りが所得に相なつている。本社の必要経費というものを差引いた残りが課税対象となるために、このままで行きますと東京に巨大なるビルデイングがふえて、営業場所には非常に細々とした産業しか興らないというようなことが起れば、これはゆゆしき問題であつて、いわゆる現地課税制度というもの、現地段階における課税制度を設ける、そういたしますと税率は減つて来て、全部やつて行けるように相なる。そういう点、本社経費というものをなるべく減すような組織というものは私は税制の上に必要じやなかろうかと考えますので、この点に対する御所見を伺いたい。
  18. 水田三喜男

    水田国務大臣 この問題は税制改革の当時からいろいろ問題のあつたむずかしい問題でございますので、研究いたします。
  19. 綱島正興

    綱島委員 私の質問はこれで終ります。
  20. 遠藤三郎

    遠藤委員長 午前の会議はこの程度にとどめ、午後一時より再開することにし、暫時休憩いたします。     午前十一時五十七分休憩      ————◇—————     午後二時六分開議
  21. 遠藤三郎

    遠藤委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  質疑を継続いたします。中村高一君。
  22. 中村高一

    ○中村(高)委員 経済審議庁の長官がおいでになつておりますからお尋ねをいたしたいのでありますが、経済審議庁の運営といいますか、経済審議庁の機構の上におきまして、われわれははなはだその力の弱まつて来ておりますことを遺憾に思うのでありますが、日本経済の中枢を握り、また日本経済運行の中軸であらねばならない経済審議庁というものが、たとえば昔の企画院あるいはその後できました当時の経済審議庁というようなものの当初から顧みましても、今日では政府もあまり重要視しておらないし、むしろ各省とも自分の省で計画をいたしますることによつて、かえつて審議庁の方面の仕事よりは自分らのいわゆるなわ張り的の形になりつつあると思うのでありまするが、こういう形で経済の中枢をどこへ置いておくかということがわからぬという形ではよろしくないと思うのでありまして、特に独立日本の行き方を計画し、あるいは日本産業機構の中心をなす電力その他の基幹産業を運営をするという重大な役目を持ち、企画を立てなければならない現在の任務を持つておりながら、各省とも非常に経済審議庁との連絡も最近では不十分のように考えるのでありまするが、新たに審議庁の長官に御就任になりまして、従来自由党の政調の会長としてお考えになつておりました当時から、お入りになつていろいろ感ずるところがあると存ずるのでありますが、御所見をこの際承りたいと思うのであります。
  23. 水田三喜男

    水田国務大臣 昨年の機構改革のときも、私どもとしてはただいまの御説のような見解を持つておりまして、国政の総合調整とか長期計画確立というような機能を十分に発揮させるためには、従来持つてつたような行政権を全部とつてしまうということは相当大きい支障を来すという意見で、いろいろ論議した結果、一応現行のような形におちついたというのが実際でございますが、実際の運営をやつてみまして、予算編成とかいう問題にぶつかつてみますと、今御指摘になりましたような傾向が非常に出て参りまして、各省がばらばらにいろいろな施策をやる、このほんとうの調整機関はどこにあるかといつても、今の機構では審議庁の意見を閣議へ反映して、そこで調整するという以外の方法はありませんが、それでは少し力が弱い。それでやはり公共事業費の査定そのほかについては、総合的見地からこれを調整する従来のような安本があつた方がいいという意見が、最近各省からも出て来ているという現状になつておりますので、せつかく機構を改革したばかりでございますから、もう少しやつてみて、現実にこれがいけないのだという事態になつたら、この経済審議庁の強化という点については考えなければならぬだろうと思つております。ことに御承知のように食糧増産費というものはこのくらい出さなければやれないということを農林省は主張するし、その他の省でも、交通網の整理というようなことで、道はこれだけつくらなければならぬという主張をやつて、ことしはちよつと予算を盛つてくれれば、本式な仕事は来年からでいいというようなやり方が各省にふえて参りました。もしこれを無統制でやつて行くと、来年、再来年というようなところへ行つて政府ほんとうの意味の予算編成というものに相当支障を来す傾向が、すでに現在見られております。そこで長期計画というような一つのものさしをもつてこの予算の編成にもぴしつと押えて行く機能を持つた官庁の必要というものは、今度の予算編成でも、私どもが政調会をやつておりましたときでも、はつきりと出て来ているように存じますので、これについてはこれから考えたいと考えております。
  24. 中村高一

    ○中村(高)委員 独禁法にも関連をいたしまして、日本経済の再建について長官の御意見をお聞きいたしたいのでありますが、先ほど綱島委員からの御質問に対しまして、日本経済根本的な問題については独禁法の線はそのまま守つて行く、例外的に共同行為というようなものを許すと言われた。そのような趣旨につきましては、われわれもその意味がわかるのでありますが、独禁法の制定をされました趣旨などから見ますと、日本資本の集中を排除し、いわゆる財閥の解体というようなものと関連をいたしまして、大きな独禁法の目標は、公共の利益を守るという点にあつたと思うのであります。ところがだんだん独禁法に盛られております趣旨がゆるめられ、それが具体的になつて参りまして、すでに中小工業者に対しまする安定のための臨時措置法とか、あるいは輸出取引法というような、すでに法律的に除外を受けるものが出て来たのでありますが、われわれは中小工業者あるいは一般の消費者を対象としてできておりますこの独禁法が、だんだんと緩和をするという名によつて、しまいには骨が抜かれてしまうときがありそうな気がするのであります。長官は原則は守らなければならぬということでありましたが、長官の意図の有無にかかわらず、私は順次自由取引という名前によりまして、また特殊な財閥が出て来たり、形をかえた資本の集中されたものが出て来ることは明らかだと思うのであります。一般の論説などを見ましても、この順次緩和されることによつて、やがては独禁法自体が骨抜きにされてしまうときがあるであろうということを指摘しておるのであります。先ほど配られましたこの日本紡績協会の意見などを見ましても、いきなりこういうような意味のことが書かれてあるのであります。独禁法に盛られておる公共の利益とは、消費者のみの利益と解される傾向が今までは強いけれども、経営者、資本家側の利益もまた公共の利益なり、などというような意味のことを書いてあります。他の経済団体から出ております独禁法に対します意見にもやはり同じようなことが盛られておるのでありまして、今まで公共の利益というようなものに対しましては、われわれも一般の広い意味においての消費者大衆、勤労者あるいは中小企業者というような広い面が目標にされておることは明らかだと思うのでありますが、だんだん資本家陣営が攻勢になつて参りまして、独禁法に盛られております原則であるところの公共の利益というものまでもゆがめた解釈をいたして、無理に、これは消費者その他の大衆を目標にするばかりが公共の利益ではないというようなことを言うておるのであります。もとよりわれわれも資本家、経営者が公共の利益から除外されるものだというようなことを申し上げておるのではないのであります。むろんそういうものの含まれることは事実でありますが、独禁法自体の目標というものは、少くともこれがつくられた当時の目標は、独禁法に書かれてありますように、消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的とするとはつきり書かれておるのでありますが、独禁法の持つておりまする公共の利益というものを、資本家の団体が解釈するようなふうに解釈すべきものか、ここはきわめて重要なところでありまするから、長官から御意見を承つておく必要があると思うのであります。
  25. 水田三喜男

    水田国務大臣 独禁法の精神を曲げようということを考えていないということは、午前中に答弁した通りでございますが、問題は産業民主化によつて公共の利益を守るという精神はいいにしても、この守り方については、規制が少し事業家に対してきつ過ぎる。これは各国の立法例を見ても、日本独禁法は非常に苛酷であるということは、もう外国においても知つておることであり、また現にこの国会に出そうというこの程度の修正案については、どこの国からもほとんど文句が来ないという実情から見ても、事業者に対する規制が強過ぎた、こういうところにあるのでありまして、従つて民間の事業者団体が、今までの法律が消費者の利益だけ考えたものであつて、われわれもまた公共の利益の中の重大な要素として入るんだということを特に言つたということは、資本家だけの利益をもつと強く擁護しろという意味じやなくて、後来の事業者に対する規制のひど過ぎたことに対する一つの反撥的な字句として現われて来たんじやないかと考えて、おりますが、この精神については前申し上げました通りで、かわりございません。
  26. 中村高一

    ○中村(高)委員 今度の改正の目標が、いかにも政府のこの説明によりまするならば、今日の不況に対処しなければならないとか、あるいは外国貿易等の対策といたしましては、今日のようなきゆうくつな独禁法制限を受けることは、日本産業のためによろしくないという、そういう趣旨はわかるのでありまするが、日本産業というものは、今日では国内取引におもなる重点が置かれておるのでありますが、戦前のことなどを思い合せ、あるいは今後の日本の行き方を考えまするならば、貿易に依存しなければ大体この日本産業というものは行き詰まりを来す、国内の消費だけではとうてい永続性を持ち、また日本の発展ということは考えられないという、こういう前提をわれわれは考えておるのでありまするが、一体今日日本貿易の自由なときでありまするならば、私はこういうような共同行為というようなものを認めましても、さした影響はないと思うのであります。言いかえまするならば、貿易という大きな波の中にある日本国内の小さな波でありまするからして、自由貿易ができまして、日本産業が海外との取引の自由にできるときでありまするならば、国内において私はいろいろの共同行為などが行われましても、大して影響がないであろうことは想像できるのであります。しかし今日のように貿易のきゆうくつな、主として国内取引のときに、この独禁法をゆるめるということは、国内における強者、弱者というものがどうしてもできてしまう形になるのであつて、われわれはむしろこういう貿易の自由のないときには、国内のいわゆる弱体企業であるとか、消費者というようなものを擁護するために独禁法を維持すべきものであつて、自由に貿易ができて海外との大きな取引のできるようなときを待つて緩和すべきものである。そういうことのないときに独禁法制限緩和するということは、国内のこの小さな島の中で弱肉強食を演ずる危険があると思うのでありますが、貿易との関連性を長官はいかにお考えになりますか。
  27. 水田三喜男

    水田国務大臣 一応お説のようなことが言えるかとも思いますが、私どもはそうじやなくて、今貿易が自由にやれない、相手国に輸出入の制限があつたり、純国営的な貿易行つておる国があるというような、非常に制限されたときであるからこそ、貿易伸張のためには、対外競争力培養の意味においてこういう道を開いてやることが必要じやないか。たとえば業者が無用な競争をして出血輸出をするというような態勢でも出て来れば、外国日本から物を買うことを手控えるというこも刺激するし、また若干割高でも輸入しなければならぬ。この輸入を日本側から制限することによつて日本の輸出市場を狭めて行くというようなことは、外国の輸出入制限事情から見ても現にあることでありますので、こうなれば輸出入についてのやはり共同行為というものを認める必要がある。それでなければ、対外競争に勝つて貿易の打開ができないというふうに、むしろ今貿易不況傾向が現われているときにこそ、やはりこういう措置が必要じやないかと、反対に私ども考えております。と同時に、この貿易不況ということを中心にして国内産業も相当大きい影響を受ける。国民経済全体の安定というものを守るためにも、こういう緩和策をとることが、ひいては消費者あるいは中小企業者の利益になるんだというふうに考えて、今の時代においてむしろ必要じやないかと考えておる次第でございます。
  28. 中村高一

    ○中村(高)委員 私の説明がちよつと足りなかつたので、答弁がそういうふうになつたのだと思います。貿易については、すでに貿易取引法によつて緩和されておるのでありますから、私は貿易の点については、ある点まで共同行為をすることはやむを得ないと思つておるのであります。私のお聞きしたいのは、国内における共同行為緩和の点でありまして、貿易の点については、今長官のおつしやつたので、その通りでありましよう。しかし貿易の非常に制限をされている国内の取引を今主としてやつておるのでありますから、こういう場合には、よほど消費者あるいは弱体の中小企業者政府のウエートを重くしてやらなければ、不況を乗り切れないと私は思う。それを今日の独占禁止法緩和の目標というものは、中小企業者ではなくして、むしろ重要産業であることは明らかであります。重要産業に対する安定法を出そうという政府の計画さえあるくらいでありまするから、今日日本国内において独禁法緩和によつて一番大きな影響を与えられるものは、重要産業だけであります。その他の産業についてはもうすでに安定法である点まで緩和されておりますし、雑然たる中小企業者は、共同行為をやれなんていつてみたところが、事実行えるものではないのであります。何千、何万という同種の業者が、ひとつホテルをやつてみようじやないかなどといつてみたところが、とうていこれは行えるものではないことは私が申し上げるまでもないことでありまして、独禁法緩和によつて利益を受けまするものは、特殊な基幹産業で、重要産業であり、言いかえまするならば鉄鋼業であるとか、紡績業であるとか、ゴムであるとか、あるいは化学繊維であるとか、肥料であるとか、まつた日本産業の実権を握る数箇の産業であり、しかもそれに携わるものはごく限られた少数の経営体であります。従つて私は自由貿易のできる時代であればよろしいが、重箱の隅をお互いにかけまわつておるような今日の状態で野放しにされるならば、弱肉強食になる、こういうことが私が長官に意見を求めておる点でありまして、貿易の点を除いた国内産業に対しての緩和がどういう影響を来すかを私はお尋ねをいたしたいのであります。
  29. 水田三喜男

    水田国務大臣 中小企業については、御承知のように中小企業安定法というものがあつて共同行為を許されるようになつておる。今大企業に対してはそういうものがないので、今度の改正はもつぱら大企業に対する緩和策ということになると思うのですが、しかしこれがカルテルの結成を自由に許すというならともかく、非常に厳格な要件があつて、相当恐慌の危険が見られて来たというようなときに初めて許されるものであるのですが、そういう事態が来るというときには、これは大企業自身の混乱とか倒産というようなことによつて最も影響を受けるのは、やはり関連産業としての中小企業であり、間接的には消費者も相当な影響を受けるのですから、そういう事態が来た場合に、国民生活の安定を守ろうという防禦策の品をあけておくというだけでございまして、この場合の措置というものは、将来日本経済が順調だという場合にはよいのですが、まだ国際情勢から見ていろいろなものを予想される今日でございますので、こういう緩和の道をあけておくということは、決して一般産業に悪い影響を与えるのではなくて、その時期々々に対処し得る弾力性というものを持たせることになりますので、これは先ほどお話になつたような公益というものに利害が完全に一致することで、決して悪い影響はないだろうと考えております。
  30. 中村高一

    ○中村(高)委員 大臣の答弁では不況がこれから来るというような場合に対処するために、公共の利益に合致したような意味でやるから間違いないというようなお言葉でありまするが、将来ではないのであります。もうすでに現在大基幹産業独禁法緩和されたと同じことを現実にやつておるのであります。これから将来不況の場合に対処するというのではなくして、もう現在やつておるのでありまして、法律緩和されないのに、すでに経営者側は自分たちだけで緩和してやつておるのであります。私が申し上げるまでもなく、綿紡の操短にいたしましても、あるいは化学繊維あるいはゴムの操短にいたしましても、あるいは鉄鋼の価格協定あるいは今問題を起しておりまする肥料の価格協定などを見ても、将来でも何でもないので、もう昨年あたりからこの法律がまだ現存しているのに、どんどんそういう緩和が実際に起つてつて、たとえば肥料の問題を例にとりましても、われわれは先般硫安協会で発表したあの価格に対して、独占禁止法違反だからといつて公正取引委員会に要請をいたしまして、その発動を求めておるのでありまするから、これは大臣のあとで取引委員長からも御答弁を願いたいのでありまするが、これからそういう時代が来る場合の対処ではなくして、もう今日同様のことをやつておるのでありまするが、一体これは政府はどういう法律上の根拠で独禁法緩和されたと同じ行動を許しておるのでありますか。まず法制的な根拠を承りたいと思うのであります。
  31. 水田三喜男

    水田国務大臣 今御指摘になりましたいろいろな個々のケース等については、現実問題としては政府はこれに関与しておりません。ただ外貨が非常に減つて来た場合に、その節約とかあるいは不利な条件でそういつてもいかぬということで、滞貨問題やその他に比べて操短の勧告というような処置はとつたようでございますが、別にこれは法的根拠があつてつたというのではなくして、現実の産業界の動きに対処するために、政府がそういう勧告をしたという例はあるようでありますが、そのほかの個々のいろいろな事実上のそういう共同行為らしいものというようなことについて、一々政府が関与した例はございません。
  32. 中村高一

    ○中村(高)委員 そうするとこれはなかなか許しがたいことだと思うのでありますが、法律に違背をしたことをそのまま政府は知つておりながら、しかも日本産業に大きな影響を与えるものを黙認をしていようというのか、それとも独禁法に違反だけれども政府から勧告をするということによつて合理化することができるかどうか。政府自体が独禁法違反をして、それで従来ともさしつかえありませんなんということは、少くとも大臣の口からは言えないはずでありまして、独禁法に違反だけれども、見て見ぬふりをしておるのですか。それとも違反は覚悟の上で、勧告と称する行政命令によつて法律を踏みにじつてよろしいとおつしやるのか、その辺はまことに重大でありまするから、大臣の口からはつきりしていただきたいと思います。
  33. 水田三喜男

    水田国務大臣 政府独禁法違反を勧告したということはないと思います。また現実にいろいろ御指摘のようなことが行われておつたとして、その行為が違反であるかないかということは、これは事実問題でございまして、公取委がそれを監督する立場になつており、公取の所管になつておりますので、その事実問題の点については、ひとつ公取から御答弁することにしたいと思います。
  34. 中村高一

    ○中村(高)委員 それは違反があれば公取委員会でやるというのはわかるのですが、政府がその共同行為に対してよろしい、あるいはそうせよという指示をしたり、勧告をすることが、吉田内閣において行われたかどうか、これをお尋ねしないと議論にならないと思います。
  35. 水田三喜男

    水田国務大臣 先ほどお話しましたように、共同行為をやつて、こういう形で操短しろとかなんとかいうことをやつたら、あるいは違反の勧告であるかもしれませんが、そうじやなくて、業者に対して、滞貨をふやさないためにそれぞれがそうやつたらよかろうというような勧告であつて、操短をやつたのは、各業者がそれぞれ自分の考えに基いてやつたということで、違反行為の勧告というわけではないと考えております。
  36. 中村高一

    ○中村(高)委員 違反行為の勧告になるのですよ。それはたとえば、産業が危殆に頻するということであるならば、やむを得ないから操業短縮をやるという趣旨であろうとは思いまするが、しかし操短をやれということは、少くとも独禁法で今日では禁止をされておりまする共同行為でありまするから、政府はそんな勧告はできないのです。おそらくやつていないのだろうと思うのですが、やつたかやらないかを聞きたいのです。そんなことはやるはずはないと思うのですが……。
  37. 水田三喜男

    水田国務大臣 政府はやらないだろうというお話ですが、これはやつたようでございます。共同行為は勧告したわけじやないのですが、個々の操業短縮というものについて考えたらよかろうという勧告は、確かにやつてあるそうでございます。
  38. 中村高一

    ○中村(高)委員 それが違反なんです。紡績が何社あるか知りませんが、全部やつたかどうか、あるいは何大メーカーという大きいメーカーだけがやつたか知りませんけれども、おそらく政府が勧告するとすれば、全部にやらなければ意味がないのでありまするから、全部にやつたのだろうと思うのです。そうすると、明らかに独禁法の違反行為だと思うが、そんな勧告は違法な命令だと思いまするが、今度は委員長お尋ねをいたします。
  39. 横田正俊

    ○横田政府委員 ただいま独禁法違反の疑いのあるような事柄政府業者に申し出まして、業者がこれに従つた場合に、それは独禁法違反であるかどうかという点の御質疑でございますが、この点は、御承知のさきの綿紡、化繊等の操短問題にからみまして、私ども委員会におきましても非常に研究をいたした点でございます。一口に政府の勧告と申しましても、これにはいろいろな段階があると考えられます。たとえば綿紡の場合のように、非常に詳細に操短の数量までも政府できめまして、これを業者に押しつける。しかもその裏にはもしこれに応じなければ、原綿の割当に手かげんをするという強い一種の制裁のついた勧告をする。この勧告をすること自体は、確かに独占禁止法の精神にかんがみまして、多少おもしろくない点があるわけでございまして、もし政府がそれだけの強い処置をする必要があれば、それは法律上のはつきりした一つの統制の権限をもつてやるべきであつて、一種の行政的な勧告というようなことでやるべきものではないと私ども考えます。しかしながら、そういう勧告に基いて業者がやむなくやりました行為それ自体を、いわゆる独占禁止法共同行為業者が話し合つて操短をする、そういう共同行為と認められることは、法律解釈上といたしましてやや困難があるように思われます。この点は業者政府に働きかけて、政府を通じてそういうことをやつたというはつきりした証拠が出れば、その点で論議される問題が一つ残るかと思いますが、しかし政府のそういう強い勧告に基いて事実上操短が行われておるということ自体は、独占禁止法偉反だとただちに律することはできないと思います。しかし繰返して申しますように、それは独占禁止法基本精神から申しましてあまりおもしろくないことではないか。そこで私どもといたしましては、この綿紡の場合につきましては、なるほど最初の操短の当時は、一時キヤンセル問題などが出まして、業界が非常な不況に陥つたというような実際的な理由もありましたので、そういう事情をしんしやくいたしまして、あまり強い申出もしなかつたのでございますが、しかし後になりまして、だんだん価格がかなり上つてつてもなお操短が続くというような事態に対しては、独占禁止法の精神にかんがみておもしろくないということを、通産省の方に強く申出をいたした次第であります。  もう一つ、いわゆる勧告には、化繊の場合のように、非常に大きなわくを定めまして、そのわくの範囲内で操短をしたらどうかというような政府の勧告の仕方もあるようであります。これは見方によりますと、お前たちの方で適当に共同行為をやれというふうな勧告のようにも見られますが、しかし見方によつては、ただそのわくの中でおのおのが別々に自粛してやれというふうにも考えられます。この場合もし事業者側で政府の勧告をきつかけにいろいろ話し合いまして、操短のやり方なり分量なりをそのわくの中できめて行うということになりますれば、これはいかに政府の行政措置に基くものでありましても、このこと自体はやはり一つ独占禁止法違反を構成する、こういうふうに考えまして、昨年の操短につきましても、化繊の場合につきましては審判を開始いたしまして、近く審決をいたす段階に達しておる次第でございます。従いましてこの行政措置につきましては、われわれの気持といたしましては、はつきりした権限に基いて政府がそういう措置をする、しかもそういう場合には独占禁止法の線ははつきり適用除外になるというような法制が望ましいのでありまして、今回提案いたしました独占禁止法のいわゆる不況カルテルというようなものは、やはり今申しましたような、そういうやや変則的な方法によらないで、事業者が、ちようど病気になつな場合にやむを得ず薬を飲むという、この最後の手当ができるというようなその線においてカルテルの結成を認める、こういうようなことにいたしたのでございまして、なお問題はいろいろ残るかとは思いまするが、この程度の改正を行いますことによつて、いろいろ法制上不ぞろいな問題がやや解決されるのではないかと考えております。
  40. 中村高一

    ○中村(高)委員 ただいまの公正取引委員長の御答弁によりましても、委員長としては違反だとも言うわけに行かぬし、政府の手前なかなか苦しそうでありまして、違反のような違反でないようなあいまいな答弁でとうてい承服することはできないのであります。いろいろ立場もあると思いまするが、しかし法律のあるうちは公正取引委員会は厳重にしなくちや私は意味がないと思う。法律改正されてからなら何をか言わんでありますけれども、現在法律があるのに、これを政府が勧告だなんという、あいまいな人をたぶらかすような言葉で、独禁法違反をやらせるようなことは、事情は別として、よくないことだとわれわれは思うのであります。紡績の操短などによりまして、なるほど紡績業者は操短をすれば、それで自分のあぶなくなつたのも救われるし、第一糸の値段も上つて来るから、それでけつこうでしようけれども、一般の糸を買つている機屋さんなどは一体どうなるか、高い糸を買わされなければならない。そのために非常な痛手を受ける。そういうようなことに対してはちつとも考えないで、紡績業者だけの立場を考え緩和を勧告するなんということは、そういうことがはなはだ不都合であつて、そういうことをするから吉田内閣の性格というものが、資本家の番犬だというようなことを言われるのでありまして、全国の機屋さんなどは糸が上ればそれで困る。それから女工さんなども仕事を短縮するために家へ帰つておる。昨年長野県からだけで関西方面に、中学校を出た子供が三千人とか女工さんに出るそうであります。これが操短のために、来なくてもいい、しばらく待つていると言われて、別に就職することもできないし、知事なども非常に困つた話をしておりました。そういう十軒か、十五軒の紡績業者を救うことがはたして公共の利益なりや、あるいは全国の織物業者、全国の女工さん、こういうものにぶら下つておる大衆の生活というようなものを考えることが公共の利益なりや、そこいらに公正取引委員会とか独禁法の意味があるのだと思いますが、簡単に公正取引委員会が妥協されてははなはだ公共の利益に反すると思うのでありまして、遺憾の意を表しておきます。  先般肥料の問題について独禁法違反ではないかということで、公正取引委員会に要請をいたしたのでありまするが、その後新聞などによりますると、公正取引委員会の意見を発表されたのか、あるいは新聞社の方の質問に対して答えておるのかわかりませんが、あれは値段を発表した、だけであつて、まだ肥料を売つたとか、実行行為に入つていなければ、これは違反ではないのであろうというようなことを新聞で拝見いたしたのでありまするが、一体硫安協会がああいうふうに建値を発表をいたして、そうして価格決定をして天下に公表をした以上は、これはどうも私は明らかに独禁法に違反するように思われるのであります。肥料の最も大きなお得意さんは農村における購連でありますが、こういうことになりますと、今まで高い値段で買つてつたものは一体どうなるのか、ここにもいろいろな問題が出て来るのでありまするが、一体こういう値段を決定をして発表をしたということは、また違反ではないのかどうか、また公取委員会としてそういうことに対する意見を公表をしたかどうか、これは農村などでは非常に問題になつておりまするので、公正取引委員会は、いや新聞の諸君が来たから発表した言われるかもしれませんが、ああいう意見を公表するとすれば、非常に大きな問題に発展して来るのでありまするが、公表したのかどうか、それから実行取引まではさしつかえないという御意見なのかどうか、この機会に委員長の御答弁を願いたいと思います。
  41. 横田正俊

    ○横田政府委員 この硫安の問題につきましては、先般衆議院の農林委員会で一応お答えをいたしたのでございますが、本年の二月の二十四日に、御承知のように硫安協会のある委員会で、新聞にもございますような建値を発表いたした事実があるようでございます。その直後から私どもの役所におきまして、この問題はゆゆしい問題であるという考えで調査を開始いたしまして、現在審査部において事件といたして正式に審査をいたし、一両日中にその報告をまちまして、委員会で何らかの正式の決定をいたし、それに基いて何らかの行動に出るということにいたしたいと考えておるわけでございます。先ほど何か、委員会の方でその間に発表をしたようなお話でございますが、決してこの問題についての委員会の意見を発表したことはございません。それは、硫安協会側でただ話合つてそういう線を一応出しておるだけであるというような弁解をしておるようでございますから、おそらく硫安協会側の意見が新聞にそういうふうに出たんではないかと思います。この問題は、二月二十四日の建値の決定発表なるものがいわゆる十数社の硫安メーカーの価格について決定をいたし、その価格以下では取引をしないというような趣旨を含んだ発表であるといたしますれば、これは明らかに硫安協会という事業者団体にとりましては団体法五条の違反を構成いたしますし、もしそれに関連いたしまして各メーカーがその価格を維持するということを申し合せている事実がはつきりいたしますれば、現在の独占禁止法の第四条の規定に違反いたしますし、ひいては第三条の問題にもなり得るわけであります。この点はなお審査部におきまして、その間の二十四日前後の問題を詳細に調べておりますから、その結果によりまして、近日中に何らか態度をはつきりいたしたいと考えております。
  42. 中村高一

    ○中村(高)委員 今度の改正法案の中に再販売価格の決定が許されるという規定がありますが、その点について二、三お尋ねをいたしたいと思います。実は再販売されているものを取扱つております消費組合あるいは労働組合の販売を扱う方面などでは非常に今度の改正案を問題にしているようでありますが、大体歯みがきだとかあるいは化粧品であるとか、こういうものを消費組合では市価よりは一割とか二割とか安く売つているのでありますが、もしこれが再販売価格をきめられまして、それより安く売つてはならぬということになりますと、全国にある消費組合などは非常な脅威を受けると思うのであります。経営者側の諸君に聞いてみますと、今日では消費組合などで扱つているものでも一流メーカーがつくつている有名品でないとなかなか買わないそうでありまして、品物のないときにはどんな商品でも買つて来て市価より幾らか安く売ればいいということであつたのですが、今日では消費組合などに買いに来るお客様も、みな一流メーカーの有名商標のついたものをほしがるのが実情であります。しかもこれは、市価よりは一、二割安く売るところに消費組合の特質があつたのでありまして、これが市価と同じだということになりますならば、消費組合というものの存在意義はないのであります。消費組合が扱つているのは金額の高いものは比較的扱つておりません。ごく日用品である石けんであるとか歯みがきであるとか、あるいは化粧品であるとかいうような、いわゆる再販売の価格をきめられそうな商品なのであります。商標がついて有名品であつて競争のあるものであるというような、説明通りの品物を大体消費組合で扱つているのであります。そうすると、もし販売価格をきめられて、一割なり二割安く売つているということがわかると協定違反だからお前のところは卸さぬというようなことになりますと、実際全国の消費組合や労働組合などでは扱えないという問題が起きて参りまして影響するところは大だと思いますが、そういうことを委員会の方ではいかに考慮されておりますか、お尋ねしておきたい。
  43. 横田正俊

    ○横田政府委員 その点につきましては、実はこの制度はアメリカにおきましてかなり古くからございまして、もちろん賛否両論あるようでございますが、大体利益の方が多いというような観点からいたしまして、現在大体各州に行われているもののように承つております。なおアメリカの制度ではメーカーが指定いたしましたその品物につきましては、メーカーとの間にその価格を維持するという趣旨の特別な契約がありませんでも、その商品を扱う限りは当然にメーカーの指定した価格に縛られるという非常にきつい法制になつておりまして、その点は一時これは憲法違反ではないか、自分の契約に関係のないようなクローズによつて縛られるということは憲法違反ではないかというようなことで、アメリカの大審院で一時これを違法とするというようなことがございましたが、しかしこの点につきましてはその後さらに法律ができまして、そういうようなきつい制約も必ずしも憲法違反ではないというようなことに落着いているようでございます。われわれがこれをつくります際も、この再販売価格維持契約を徹底的に押し進めますと、今申しました、いわゆるノンサイナー・クローズ制と申しますか、そういうふうなところまで行くのでございますが、しかしわれわれはそこまて行くのは非常に行き過ぎであつて、この拘束を受けるのは、生産者もしくは卸売業者との間の契約によりまして、その指定された価格を維持するということを一番最終段階、小売のものが了解をし、契約をいたしました場合に初めてこれに拘束される、こういうやや緩和した形のものをこの二十四条の二で規定したわけでございます。従いまして、ただいまお話の消費組合あるいは共済会あるいは慈善団体というようなものが、時価よりも一、二割安くその品物を扱いたいということになりますれば、結局この再販売価格の契約に、普通の小売商のこれらの再販売価格とは違つた契約を各メーカーなり卸売業との間にとり結んで、もちろんその間にこれ以下で売つてはならないというような一種の別な再販売価格の規定というものがあつてもいいかと思いますが、そういうような形によつてやりますれば、現状にあまり大した変更がなく、しかも小売の最低の利潤確保とようとするこの再販売価格維持契約を行いましても、適法としても大した弊害がないのではないかというふうに考えるのでございます。しかし今仰せのごとく、そういうことにいたしますためには、結局メーカーなり、そのメーカーの意を受けましたところの卸売業は、そういう消費組合なり労働組合の共済会というようなものに対して、それだけの利害を持ち、それだけの別の取扱いをしてくれるということが前提になるわけでございます。一口に申しますれば、これは各メーカーの良識にまつというようなことになるのかと思います。しかし実際の運びとして、はたしてそういうふうに問題がうまく行くかどうかという点につきましては、私の方としましては、正直なところを申しますと、一抹の不安がないではないのでありますが、そういうような気持で、実はこの二十四条の二をアメリカの制度よりはゆるやかな線でもつて規定いたしたのでございます。
  44. 中村高一

    ○中村(高)委員 そうすると、メーカーの方の良識によつて消費組合とか慈善団体は市価よりは安くてもいいという協定ができればいいというお言葉のようでありますが、もしそういう例外は認められないということになれば、一流メーカーのつくつているものは扱えないという場合が出て来ると思うのですが、それはやむを得ないということでしようか。
  45. 横田正俊

    ○横田政府委員 あるいはそういう場合は考えられるかと思います。
  46. 中村高一

    ○中村(高)委員 どうもそういうようなことまでしてこういう規定を置かなければならないかは、はなはだ疑問だと思う。公共の利益を守る独禁法が、たとえば一例でありまするけれども、ライオン歯みがきならライオン歯みがきという一軒の店のものを、とにかく何万、何百万という人間がそれを買うのでありますが、その場合に、メーカーの方でうんと言わなければ、あとは全部降参をしなければならぬ、ただ一人のライオン歯磨の大将に大衆は全部降参をしなければならぬ。何とかポマードの一軒のメーカーにだめだと頭を振られたら、全部の消費者はそれで降参をしなければならぬという、そんなことは明らかに公共の利益を害するもので、ただ一人のメーカーを保護するために、大衆に迷惑を及ぼすというようなことは、日本基本法律にも反するように思われるのであります。私の例のとり方が極端かもしれませんが、あり得ることでありまして、それもやむを得ないと、かように解釈してよろしいのでしようか。
  47. 横田正俊

    ○横田政府委員 結局先ほどの御指摘のように、他に同種の商品がございまして、自由な競争が行われておるということを前提にいたしますると、あるいは仰せのように、その品については小売商と消費組合等との間に差別が現実問題としてつけられないというような問題が起るかと思うのでございますが、ただここで一つ問題は、そういう消費組合の申出に対して、これをメーカーの方で拒絶した場合に、一般の場合でございますと、いわゆる一種のボイコツトというようなことで、不公正な取引方法というようなことに当つて参るのでございますが、しかしこういう制度を設けました以上は、あるいはそういうようなことがただちに不公正な競争方法と言えなくなるのではないかというような感じがいたします。この点はこの条文の解釈といたしまして、もう少しよく検討してみたいと思つております。
  48. 中村高一

    ○中村(高)委員 この点については、どうしても今の御答弁ではまだ理解ができませんので、われわれの方でも適当な方法をとろうと思つておるのでありますが、取引委員会の方でもよく御研究を願いたいと思うのであります。  次に著作物を出版する事業者の場合も該当するという条文が入つておるのでありますが、著作物などについては、現在でも一定の定価で売られておりまして、著作物の割引というようなことはあまり聞かないのでありますけれども、この法律の中へ取上げられて、他の一般のものと区別して著作物を特に重視せられております理由が何かあるのかどうか。
  49. 横田正俊

    ○横田政府委員 これはまことに仰せの通りでございまして、結局現在行われておりますあの定価制度が独禁法上問題はないということをはつきりいたす趣旨にほかならないのであります。つまりこれもやはり先ほど申しました不公正な競争方法、他の事業者のいろいろな取引行為に条件をつけて、その条件を守らなければ取引をしないというような趣旨で取引をいたしますのを、一種の拘束条件つき取引といたしまして、これは不公正な取引方法の一つとしてあげてございます。従つて現行法のもとにおきましては、この品をこの値段でなければ売つてはならない、そうしなければお前にはもう売つてやらぬというようなことが問題になりますので、もしあの本の定価というものについて、その値段を厳格に守らなければならぬということになりますと、若干独禁法上の問題になり得るのでございます。しかしながら現在はわれわれといたしましては、あれは一種の出版社の希望的な価格であるというふうに見まして、これはあえて独禁法違反として論議しておらぬのであります。しかしこの点はやはり法律上そういう問題は独禁法上あえて問う必要はないのであるということをはつきり出すという趣旨で、今回の日用品の再販売価格につきまして規定を設けるならば、あわせてこれもはつきりさせたらよいではないかという趣旨で、いわば比較的軽い意味で適用除外規定を入れた次第でございます。
  50. 中村高一

    ○中村(高)委員 その問題はそれでいいのでありますが、アウトサイダーについての点をもう一つお尋ねしておきたいのであります。もし共同行為をするということになりますならば、アウトサイダーがこれと同じ何らかの歩調をとらなければ意味がない、少くとも合理化カルテルなどにおきましては意味がない場合が出て来るかもしれないのでありますが、取引の自由というような建前から行きますならば、いつでも共同行為から脱退の自由も与えられ、あるいは初めからそういうものに参加しないという自由も許されるのが取引の自由の建前だと思うのであります。むしろアウトサイダーは拘束をしないでおくという方が原則的に正しいのであつて、アウトサイダーの自由までも何か拘束することによつてその目的を達成しようとすることはどうも行き過ぎのように思うのでありまして、場合によればアウトサイダーが、価格協定などをいたした場合においてその協定を守らないものがあつて、自由な戦いをして安く売るというような場合も、消費者側から考えますならば歓迎すべき場合も出て来ると思うのでありますが、あまり協定の趣旨を強くして、アウトサイダーの取締りをいかにするかというようなことに対して、何か政府考えるとすれば、どうもこの点は行き過ぎのように思うのでありますが、取引委員会の方では今後のこの緩和されて行く共同行為に対してどういうふうにお考えになりますか、お尋ねをいたしたいと思います。
  51. 横田正俊

    ○横田政府委員 この点はあるいは主務大臣の方からお答えした方が適当かとも思いますが、実はこの改正案をつくります際に、今お話のございましたようなカルテルをある程度認める、それと並行してアウトサイダーを規制するということをやはり独占禁止法改正の中に盛り込むべきであるというような意見が主として通産省方面から出たのでございます。しかしながらこの場合に私どもといたしましては、カルテルをきわめて限定的に認めますると同時に、独占禁止法の規定の中に強制的なカルテルというようなものを盛り込むということは、そこまで問題が参りますとそれは一つの統制の問題になつて参るわけでございまして、独占禁止法の中に統制に関する規定を盛り込むことについては、これはちようど水と油というような関係にもなると思われますので、この改正案の中にそれを盛り込むことについては明らかに反対を申しまして、この点は関係各省もまことにその通りであるということで、今回の改正にはその問題が載つて参らなかつたのでございます。しかしながら先ほど初めの方でちよつと申されたように、もしもある非常な事態におきまして、徹底的に一つの統制をやつて行くという必要があるといたしますれば、やはりアウトサイダーの規制あるいは政府の命令によつて共同歩調で操短をやるというような必要も、確かにある場合にはあるであろうということは私も了承するのでございます。この点はすでに御承知のように特定中小企業の特別法によつて認められておりますし、今回改正を予想されております輸出取引法にもある意味の政府の強制命令が予定されております。そういう段階がやはり考えられている場合があると思うのでございます。しかし独占禁止法のこの線の中ではそれはまた別なこととして、もし必要あらば別な特別法をもつて処理すべきものである、こういうふうに考えた次第でございます。
  52. 遠藤三郎

    遠藤委員長 それでは本日はこの程度にとどめまして、明日は午前十時より開くことにいたします。  本日はこれをもつて散会いたします。     午後三時二十七分散会