○横田
政府委員 ただいま
独禁法違反の疑いのあるような
事柄を
政府が
業者に申し出まして、
業者がこれに従
つた場合に、それは
独禁法違反であるかどうかという点の御質疑でございますが、この点は、御
承知のさきの綿紡、化繊等の操短問題にからみまして、私
ども委員会におきましても非常に研究をいたした点でございます。一口に
政府の勧告と申しましても、これにはいろいろな段階があると
考えられます。たとえば綿紡の場合のように、非常に詳細に操短の数量までも
政府できめまして、これを
業者に押しつける。しかもその裏にはもしこれに応じなければ、原綿の割当に手かげんをするという強い一種の制裁のついた勧告をする。この勧告をすること自体は、確かに
独占禁止法の精神にかんがみまして、多少おもしろくない点があるわけでございまして、もし
政府がそれだけの強い
処置をする必要があれば、それは
法律上のはつきりした
一つの統制の権限をも
つてやるべきであ
つて、一種の行政的な勧告というようなことでやるべきものではないと私
ども考えます。しかしながら、そういう勧告に基いて
業者がやむなくやりました行為それ自体を、いわゆる
独占禁止法の
共同行為、
業者が話し合
つて操短をする、そういう
共同行為と認められることは、
法律解釈上といたしましてやや困難があるように思われます。この点は
業者が
政府に働きかけて、
政府を通じてそういうことをや
つたというはつきりした証拠が出れば、その点で論議される問題が
一つ残るかと思いますが、しかし
政府のそういう強い勧告に基いて事実上操短が行われておるということ自体は、
独占禁止法偉反だとただちに律することはできないと思います。しかし繰返して申しますように、それは
独占禁止法の
基本精神から申しましてあまりおもしろくないことではないか。そこで私
どもといたしましては、この綿紡の場合につきましては、なるほど最初の操短の当時は、一時キヤンセル問題などが出まして、業界が非常な
不況に陥
つたというような実際的な理由もありましたので、そういう
事情をしんしやくいたしまして、あまり強い申出もしなか
つたのでございますが、しかし後になりまして、だんだん価格がかなり上
つて参
つてもなお操短が続くというような事態に対しては、
独占禁止法の精神にかんがみておもしろくないということを、通産省の方に強く申出をいたした次第であります。
もう
一つ、いわゆる勧告には、化繊の場合のように、非常に大きなわくを定めまして、そのわくの範囲内で操短をしたらどうかというような
政府の勧告の仕方もあるようであります。これは見方によりますと、お前たちの方で適当に
共同行為をやれというふうな勧告のようにも見られますが、しかし見方によ
つては、ただそのわくの中でおのおのが別々に自粛してやれというふうにも
考えられます。この場合もし事
業者側で
政府の勧告をきつかけにいろいろ話し合いまして、操短のやり方なり分量なりをそのわくの中できめて行うということになりますれば、これはいかに
政府の行政
措置に基くものでありましても、このこと自体はやはり
一つの
独占禁止法違反を構成する、こういうふうに
考えまして、昨年の操短につきましても、化繊の場合につきましては審判を開始いたしまして、近く審決をいたす段階に達しておる次第でございます。従いましてこの行政
措置につきましては、われわれの気持といたしましては、はつきりした権限に基いて
政府がそういう
措置をする、しかもそういう場合には
独占禁止法の線ははつきり適用除外になるというような法制が望ましいのでありまして、今回提案いたしました
独占禁止法のいわゆる
不況カルテルというようなものは、やはり今申しましたような、そういうやや変則的な方法によらないで、事
業者が、ちようど病気に
なつな場合にやむを得ず薬を飲むという、この最後の
手当ができるというようなその線において
カルテルの結成を認める、こういうようなことにいたしたのでございまして、なお問題はいろいろ残るかとは思いまするが、この程度の
改正を行いますことによ
つて、いろいろ法制上不ぞろいな問題がやや解決されるのではないかと
考えております。