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1953-02-25 第15回国会 衆議院 経済安定委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年二月二十五日(水曜日)     午前十時五十五分開議  出席委員    委員長 遠藤 三郎君    理事 加藤 宗平君 理事 前田 正男君    理事 栗田 英男君 理事 吉川 兼光君    理事 下川儀太郎君    内田 常雄君       綱島 正興君    横川 重次君       秋田 大助君    菅野和太郎君       中村 高一君    八木 一男君  委員外出席者         参  考  人         (東京新聞社論         説委員)    福良 俊之君         参  考  人         (朝日新聞社論         説委員)    藤田 武雄君         参  考  人         (日本経済新聞         社論説委員)  友光 正昭君         専  門  員 圓地與四松君         専  門  員 菅田清治郎君 二月十七日  委員志村茂治辞任につき、その補欠として渡  辺惣藏君が議長指名委員に選任された。 同月二十三日  委員渡邊惣蔵辞任につき、その補欠として安  平鹿一君が議長指名委員に選任された。 同月二十五日  委員三浦一雄辞任につき、その補欠として菅  野和太郎君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 二月十八日  四国中央地域総合開発特定地域に指定の請願  (岡田勢一君外一名紹介)(第二〇三八号) の審査を本委員会に付託された。 同月二十四日  独占禁止法改正に関する陳情書  (第一六〇〇号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  私的独占禁止及び公正取引確保に関する法  律の改正に関する件     ―――――――――――――
  2. 遠藤三郎

    遠藤委員長 これより経済安定委員会を開会いたします。  それでは私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律改正に関する件の調査を進めます。  この際お諮りいたします。ただいま本委員会調査行つております本件につきましては、最近に至り業界はもとより、一般にも非常にその関心が持たれ、法律改正等につきまして、いろいろとその意見が出ていることは委員諸君もすでに御承知通りであります。つきましては、本日ここに日本経済新聞社論説委員友光正昭君、東京新聞社論説委員福良俊之君、及び朝日新聞社論説委員藤田武雄君、以上三名の方々の御出席を願つておりますが、当委員会といたしましては、本件調査の慎重を期しますために、これら主君を参考人に選出し、その意見を聴取したいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 遠藤三郎

    遠藤委員長 御異議なしと認めます。それではさよう決しました。ただいまよりこれら参考人各位よりその参考意見の聴取をいたしたいと存じます。  この際参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。本日は御多忙中にもかかわらず御出席をいただき、厚く御礼申し上げます。本委員会におきましてはただいまも申し上げました通り私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律改正に関する件につきまして、国政に関する調査行つておるのでありますがその調査の慎重を期するため、それぞれのお立場から、忌憚なき御意見を拝聴いたし、本調査参考にしたいと存じておるのでありますが、参考人各位には、十分その御意見を御開陳くださいますようお願い申し上げる次第であります。  それでは参考人より参考意見を聴取するのでありますが、各参考人に対する質疑は、参考人全部の方々よりその意見を聴取いたしました後、一括してこれを許すことにいたしたいと存じますので、あらかじめ御了承を願いたいと存じます。  なお参考人各位に申し上げますが、発言する場合は必ず百委員長にその許可を得てから御発言をするようお願いしたいと存じます。なお参考人発言順位につきましては、委員長に御一任を願います。  それでまず東京新聞社論説委員福良俊之君よりお願いいたします。
  4. 福良俊之

    福良参考人 私福良であります。この委員会の議題になつております独立禁止法改正の問題につきまして、私の意見を申し上げます。  独占禁止法改正につきまして、今度問題になつております一番大きな点は、共同行為認容する点だと思います。この共同行為につきましては、今日まで独占禁止法がかたく禁止をしておるわけでありますが、その共同行為のうち、不況カルテル、さらに合理化カルテルにつきまして、共同行為認容しようというのが、改正案のねらいのように思うのであります。申し上げるまでもなく、この共同行為独占禁止法禁止いたしました理由は、国民経済立場から見て、その共同行為というものが与える影響が非常に大きいという建前から禁止しているものと承知いたします。今回改正をいたしまするのは、あくまで共同行為そのものは以前と同じように禁止するけれども但し、例外的に、不況カルテル並びに産業合理化のためのカルテルを許容しようというのだと思うのであります。私はこの建前には賛成であります。私はこの建前には賛成であります。独占禁止法の方針というものをまげることなしに、ただ例外的な規定としてこの二つの場合に共同行為を認めるということは、現在の経済情勢に適合する手段だと考えます。ただその場合に、私どもとして十分考慮していただきたいことがあります。と申しますのは、第二の場合の産業合理化カルテルの場合には、比較的問題は少いかと思うのでありますけれども、第一の場合でありますところの、不況カルテルの場合について申し上げますならば、一体ここにいう不況とはいかなることをさすのであるかという問題であります。今日日本経済動き方を見て参りますと、朝鮮事件以後のブーム状態が一過いたしました後におきましては、各産業ともにかなりの不況に陥つておることは事実であります。しかしながら、この不況を切り抜けるために生産数量の調節あるいは販売数量制限等方法によりまして価格維持安定をただちに認めることが、はたして国民経済的な立場から見て妥当であるかどうかという点であります。今日まで独禁法によりまして共同行為禁止されておるにもかかわりませず、すでに皆さん承知のように、綿紡績につきましては、通産省の勧告によりまして操業短縮が行われております。そのほかにも、化繊、ゴム、皮革の鉄鋼生産の各分野におきまして操短が実施されておるのは御承知通りだと思うのであります。ただこれらの操業短縮という共同行為が、その結果として単に価格の安定を目標としてなされておる点にいろいろの問題があるように思うのであります。もちろん価格低落によりまして、その業種につきまして事業全体が経営が困難になるというふうな事態が起きました場合に、当然それの関連産業等に重大な影響のあることはこれまた申し上げるまでもないのでありますが、しからばこういつた場合に、どの程度経済不況あるいは経営不振というものが起つたときに、この不況を切り抜けるためのカルテル認容するがという問題が大きな点だと思うのであります。業者の側から行きますならば、価格低落から来るところの経営の不振を、需給を調整することによりまして切り抜けようということは当然考えることだと思うのでありますが、その場合に、同時に考えなければならないのは、一体国民生活にどの程度影響を与えるかということであります。普通の場合に考えてみますのに、消費者一般国民の側から申しますと、消費国民というものは、今日までにおきましても大体未組織のものであります。組織的な企業者共同行為に対して、未組織消費大衆がはたしてどういうふうな声を出すことができるかという点を考えますと、少くともこの共同行為認容する場合には、まず不況というものについての厳格な判断がなされなければならないということ、それと同時に、消費大衆利益をいかにして確保するかというこの二点がはつきりとされなければ、共同行為認容はたされてはならぬものと考えるのであります。  さらにもう一つ、いわゆる不況という問題について考えなければならぬ点があると思います。これは申し上げるまでもなく、日本の現在の鉱工業品生産費というものが、国際的に見て二割から、はなはだしきは六割も割高になつておるという点であります。日本産業を振興し、さらに輸出貿易を拡大するという点から申し上げるならば、いかにしてこの生産費を合理的に切下げるかということが最も大きな経済施策中心眼目であると考えるのであります。しかるにこれらの点をもしも閑却に付しまして、ただ単に生産費価格が償うに足りないという一つ現象形態だけを見て、それによつて不況カルテル認容をするようなことがありました場合に、はたして輸出振興策との関連をいかにするか、さらに先ほど来申し上げておりますように、国民経済生活に与える影響等をいかにして調整するかという問題が起ると思うのであります。従いまして、今度の改正におきましては、不況カルテル認容につきましては、その条件等につきましてできるだけ厳格な条件を付することが適当と思います。  さらにこの不況カルテル認容につきまして、今度の改正案におきましては、認可権限主務大臣ということにして規定いたします。ここに申し上げる主務大臣というのは、おそらく今日の産業界情勢から申しますならば、通商産業大臣主務大臣たる部面が一番多いのだと思います。しかしながら通商産業省の今日までの建前と申しますか、これは主として産業保護育成ということが主体になつております。従いまして、その立場から申しますならば、不況カルテル認容にあたりましても、むしろ産業維持、助成、保護、等々の立場から、あるいは国民経済生活に与える影響簿が比較的閑却されるおそれなしとしないのであります。すでに皆さんも御承知のように、綿紡に対する操業短縮問題が起りましたときに、経済審議庁並び公正取引委員会から、その当時におきまして価格維持安定はよろしいとしても、一体その価格をいかなる点に求めるかという点が重大であるということを指摘しまして、通商産業省の考慮を求めた事実があることを記憶しております。こういうふうな点から考えますと、主務大臣として通商産業大臣不況カルテル認可に主として当られることは産業政策との関連から申しまして当然のことといたしましても、その場合には、公正取引委員会と十分の協議を行い、あるいは経済審議庁その他関係行政官庁との間に十分の協議行つて、しかる後に認可するのが適当と考えます。  産業合理化カルテルにつきましては、この不況カルテルの場合と違いまして、かなり問題は簡単なように思います。しかしこの場合におきましても、認可する場合には、当然今申し上げましたように、関係行政官庁と十分の協議が行われることが至当だと考えます。  今度の独禁法改正につきまして、私どもとして非常に関心を持ちますのは、独禁法と申しますと、占領下に生れた法律であつて、しかもこの独禁法存在というものがむしろ自由な経済活動を阻止する悪法律のように考えられておる事実であります。独禁法自体にかなり理想的なことを追うために、行き過ぎの点のあることは、今日まで幾たびか独禁法改正が行われました点に見て明らかでありますが、少くとも今日の段階におきましてはすでに中小企業につきましては中小企業安定法ができ、また輸出取引につきましては輸出取引法が制定されまして、それぞれ独禁法の除外的な規定として生かされておるのであります。従つて今後におきましても、独禁法のうち、日本経済実情に合わざる点については、さらに改正が行われるのでありましようけれども、少くとも独禁法公正取引確保し、国民経済生活を安定させようという建前だけばくずさないでほしいと思います。  大体私の意見はこれで終ります。
  5. 遠藤三郎

    遠藤委員長 次に朝日新聞社論説委員藤田武雄君にお願いいたします。
  6. 藤田武雄

    藤田参考人 今度の独占禁止法改正主眼点はいろいろあるのでありますが、一つの点は、改正する場合に制限標準というものを非常に緩和いたしております。その緩和いたす場合に、従来は形式的な標準禁止しておつたものを、実質的な標準で緩和しているということが第一点であります。たとえて申しますと、従来でありますと、事業者共同価格協定をしたり、あるいは価格維持契約をしたり、価格を引上げるような操作をすることは相ならぬ。あるいは生産数量協定する、販売協定する、そういうようなことも絶対に相ならぬ。その他各種の、そういつた例を一々具体的にあげまして、それに抵触するものは一切禁止しておつたのであります。ところが、改正案では改正案とはいつておりませんが、改正しようとしている政府考え方からいいますと、協定することによつて競争を実質的に制限するというような場合は、協定は相ならぬ、こういうことになつておる。そういたしますと、協定はやつても実質的に自由競争を抑制しなければ、今度の改正方向からいいますと、独禁法に抵触しない、こういうような形になつておるのであります。これは独禁法といたしましては非常な後退でありますが、このような制限が、実質上競争制限している事実がなければ独禁法制限を受けられないという形になりますと、言葉の上から申しますと、非常に合理的であるように考えられます。しかしそういうようなことに名をかりて協定が行われたような場合に、これを摘発するということは、非常に困難であることは明らかであります。そういう意味でこういうことによつて法存在精神を根本から没却するという意味であれば別として、いやしくも独禁法というものを正確に、しかも国民全体の福祉増進のために的確に運用しようといたしますれば、非常な困難を伴う、そこに今度の独禁法改正一つの大きな問題が提起されていると思うのであります。緩和するということは、非常に合理的な理由がついているのでありますが、それを取締る上において相当の措置を講じないと、法網をくぐる業者が出て来る可能性があると思う。  それから第二点は、いわゆる再販売価格維持契約を認めようという考え方であります。これはたとえば大きなメーカーが、たとえば歯みがき粉にしても、キャラメルにしても、そういうものの定価をつけまして、その定価以下で小売店で売らせないようにしてもよろしい、こういう契約を認めようという考え方があるのであります。もちろんそれには制限がありまして、公取委員会規定するところの日用品であるとか、しかも登録商標もしくは国内においてよく国民に認識されて、その名称もしくは商号を使用し、またはそれらの容器を使用するものであつて商品の品質が非常に標準化されているというような制限はつけようとはしておりますけれども、いずれにいたしましても、こういうような商品は、大生産者、そういつたものの製品にかかるものであります。そういうものが小売価格までメーカーをして制約せしめるというようなことは、これこそ消費者生活を脅威するものであるということが言い得ると思います。たとえば一個の歯みがき粉にいたしましても、その商品が非常に幅の広い利潤がある場合は、小売店はあるいは百円のものを八十円にして売つても決してさしつかえないと思います。それを百円でなければ売れない、値下げして売れば今後の商品の配給はしないというようなことにもし相なりますれば、しかもそれは国民の日用品についてでありまして、われわれ消費者階級一般大衆影響するところは少くないと思います。こういうような考え方は、もし法案に出るといたしますれば当然削除すべきものだと考えます。  それから第三は、いわゆる特定の場合におけるカルテル認容であります。これはいわゆる不況カルテル合理化カルテル貿易カルテル、この三つの場合が考えられております。要するに不況カルテルにせよ、合理化カルテルにせよ、貿易カルテルにせよ、カルテルというものは本来の意味から言いますと、一般的に申しまして資本の効率を非常に害し、あるいは企業合理化をかえつてはばむというような傾向があるのはもちろん言うまでもないのでありますが、一方において自由主義建前を堅持しながら、しかもその自由主義の最も悪い弊害を除去しようとする独占禁止法を緩和いたしまして、自由主義弊害が出て来るような道を開くということ自体に、根本的に問題があると思うのでありますが、不況カルテルにいたしましても、不景気になりまして、業者といたしましては耐えがたい苦痛があると思うのでありますが、国の建前自由主義、あるいは自由競争の原理の上に立つております以上、景気の次が不景気、不景気の次にまた景気がもどつて来るというような波があるのは、これは資本主義の必然の運命でありますから、そういうことを前提といたしまして、しかももうかるときにはもうけほうだい、少し調子が悪くなるとすぐこういうようなことによつて、自己の利益の防衛に立つというようなことは、自由主義という建前をとる以上、そこに矛盾があるのではないか、こういうふうに考えます。どういたしましても、そういうような方法をとらざるを得ないというようなことは、事業者立場としては利潤を追求する、もうけさえあればいいという建前からすれば、あるいは当然の要求かもしれませんが、国の政策といたしましては、むしろそういう方向よりも、もともと不景気が参りますのは、無秩序な生産競争をやつて生産過剰の結果来るのが多いのでありますから、そういうような無秩序な生産競争を未然に防止する、そういうような方法組織的に、計画的に考えるということをたな上げしておいて、ただこういう、物が競争ででき過ぎたから今度は生産制限をして、価格維持して利益をはかるということをすぐ考えることは、決して問題を根本的に解決するものではなかろう、こう考えるのであります。  それから特に不況カルテルの場合に問題があるのでありますが、いわゆる不況とは何ぞやという問題もありますし、政府で今考えている方向から申しますと、一つ商品の値段が、それを生産しておりますところの平均中ぐらいの、いわゆる中庸企業生産費調査して、それ以下に下つて、しかも業界が混乱に陥りそうな場合には、共同してあるいは生産制限し、あるいは販売数量制限するということをしてもいい、あるいはそういうことを認可することができる。こういうことを申しておるのであります。いわゆる中庸程度企業原価計算をどうしてするかということがすぐ問題になつて参るのでありますが、どういうような方法によつて商品原価計算をするか。もし原価計算を確実に、消費者に迷惑をかけないように、不利益を与えないように、しかも業者の実態をつかむというような場合は、どういたしましても国家が強力な権限をもつて帳簿の検査、あるいはその他の相当徹底した調査をいたしませんと、原価計算というものは出るものではないのです。もしそれが業者の報告とか、あるいは業者から提出する資料をそのままうのみにするというのであれば、これは業者の言いなりほうだいになり、要するに独占禁止法は、それによつて根本的に背骨を抜かれるという結果になることは、現在の業者道徳水準からいつて当然だと思います。そういう場合に、政府はいかなる用意があるのか、そういう点がわれわれにはわからないのであります。そういう十分な用意なくして、かりにこれを実行いたしますなれば、その結果が独禁法の法の精神とは、はなはだしくかけ離れた状態になる、こう考えます。  それから合理化カルテルの場合でありますがカルテルの必要がなくなつた場合にはやめさす、廃止さす、あるいは取消しをする、こういう建前政府はとつておるのでありますが、合理化が必要でなくなるということは、どういう時期をもつて判定するか、合理化企業の存する限り永久に進めて行かなければならないのであります。それを何を標準にして合理化をもうやらなくてもよろしい、あるいはこれをやらなければいかぬということを政府は決定しようとするか、もしその標準がなければ――合理化カルテルなどということは、企業が存続する限り続け得るものであつて、いわゆる例外規定としてこれをこういう状態独禁法に設けるということは、いかがと思います。そういう意味であるいはごく特殊な場合は、こういうことも必要があるかも存じませんが、一般的にいつて合理化カルテルそのものは何を意味しておるのか、私にはわかりません。企業の存続する限り合理化は当然で、それをカルテルを行わしめる、ではそれをいつ廃止さすという基準が全然わからないのであります。  それから合理化カルテル貿易カルテル不況カルテルともに同じでありますが、それは認可いたしますときには、業者からその必要なことを立証するということを考えておるようでございますが、その立証ということはどういうことを意味するのか、それも具体的な用意がなくてはならぬと思う、またその立証したものを調査認定いたします場合に、消費者利益を考慮いたしますならば、相当徹底した調査をいたさなければならぬと思います。ただ出て来た書類に、収支決算は赤字になつておるから判を押すというのでは、これは認可じやありません。これは独禁法を廃止するのも同然であります。そういうことは現在政府の考慮しておる改正法考え方の中には、どこを探しても見当らないのであります。どういう考え方認可基準を定めるのか、前に申し上げました通り中庸企業生産費原価を通して計算するのか、何を意味するのかということがわからないのであります。もちろん現在独禁法の四十条とか四十六条には、公正取引委員会はいかなる調査でも、帳簿調査資料調査に、踏み込んで来て調査をすることができるようになつておりますが、実際それをやるだけの決意がほんとうにあるのかどうか、その問題もはつきりしておかないと、特殊の場合にカルテルとか、あるいは不況とか、合理化とか、貿易とかいうことに名をかりて、独禁法そのもの精神が根底からくつがえされるという心配があると思います。その点については十分なる法案用意が必要だと思います。  それからカルテル認可権の問題でありますが、結局通産省公取委員会妥協というようないきさつもありまして、二重に監督権を持つておるような、要するに公取委員会の認定を得て主務大臣が許可する、こういうようなあいのこのような妥協法案ができそうであります。そもそも独占禁止法の中に中務大臣――具体的に申しますと通産大臣が運営の責任者に入つて来るということか法文上うたうことが、独禁法精神からいつて、これが筋が通らないことは当然であります。通産大臣通算行政立場からやればいいので、独禁法の中に通産大臣が顔を出すということは法の体系を乱るものであり、許すべからざるものだ、こう思います。しかもさきに申し上げましたように、公取委員会はいろいろの調査をいたします場合に、現在の四十条、四十六条で相当強い権限を持つております。やろうと思えば徹底的にやり得る。ところが認可権限を持つておるところの通産大臣はいかなる権限によつてこれをやり得るか、それは独禁法改正の中には見当らないようであります。認可権限を持ちながら調査権限がない、こういうようなまことに不可解なる法律改正が行われようとしておるのであります。結局筋を通さないで、両方の対立したものをまとめたという、まことに不合理きわまるとんでもない結果になつてしまう、こう思います。従つて私は認可権公取委員会にまかす、通産大臣あるいは主務大臣独禁法の上に頭を出すべきでない、こう考えます。  それから今度の独禁法改正というものは、主として業者利益を防衛するということから出発しておるのであますが、かりにそういうような改正をある条件のもとにおいて許すといたしましても、消費者大衆利益と調和する意味において、その認可いたします場合、あるいは認定いたします場合、あるいは申請があつたけれども認可を拒否するというような場合には、その一切の内容というものを公取委員会は天下に公表すべきだと思います。すべての権限はおれにまかせろというのでなしに、それが国民生活にことに重大なる関係のあるものでありますから、一切の問題を公表するということが必要であろうと思います。現在通産省行つております綿紡の操短のごとき、何ら権限がなく、かつてな行政でやつておりますが、しかもその上に一切の理由を発表しない。もちろん簡単な理由は発表しますが、消費者大衆の納得の行くような理由を発表していない。防績会社の経営については一切発表していないのであります。こういうようなことがもし今後特殊なカルテル認容いたします場合に行われますならば、ますます法の運用は誤つて来る、こう思います。  それからこれは直接に独禁法とは関係がないのでありますが、この委員会皆さんに特に御研究願つていただきたいことがありますので、一言申し上げます。公正なる競争とか、あるいは公正なる取引を業者に行わせるためには、一番大切なことは商品の規格とか、あるいは商品の品質、そういつたものについて、国権によつてこれを鑑定、審査する。あるいは業者の自主的な団体によつて検査してもいいのでありますが、たとえば洋服にいたしましても、一割のスフが入つていると思つてつて来ると、三割入つておる。あるいは染物を買つて来て洗濯すると一度にはげてしまう。要するに品質というものについてもう少し公正な取引を期するためには、国家は責任を持つべきではないか。いわゆる品質表示の制度というものをこの際あわせて考えることが経済安定のために、国民生活の安定のために、どうしても必要ではないかと考えるのであります。独禁法改正等に直接関係ありませんが、間接にはやはり公正なる取引を行わしめる上において、品質表示の制度を御研究願いたいと考えるのであります。
  7. 遠藤三郎

    遠藤委員長 最後に日本経済新聞社論説委員友光正昭君にお願いいたします。
  8. 友光正昭

    友光参考人 独占禁止法は、申すまでもなく敗戦直後財閥解体、あるいは過度経済力集中排除法または事業者団体法というようなものと関連いたしまして、経済民主化ということをねらいとして制定されたものであります。経済民主化と申しますと非常にわかりにくいのでありますが、これを内容的に見ますと、一面からいえばいわゆる私的独占禁止であります。これをまた他面から申しますと、自由競争の促進ということになつておると思うのであります。そしてこの独占禁止法の内容といたしましても、直接に独占的企業の排除、たとえば現行の独占禁止法の第八条以下の資本の集中を阻止するいろいろな規定、それからもう一つ共同行為制限であります。そういうような内容をもつてこの独占禁止法というものが経済民主化の最も強力な推進力となつて今日まで来たわけでありますが、考えてみますと、資本主義経済と申しますものは、その発達するに従つて資本集中、共同行為、こういうことは必然的あるいは自然的に発生して来る現象であります。最近綿紡その他に操短など、いわゆる独占禁止法の例外行為が行われておる。またそのほかに、端的にいえば脱法行為かもしれませんけれども、いろいろな共同行為が各産業の間に行われております。これはどういうわけかと申しますと、それにはむろんいろいろ直接の原因はあるだろうと思います。その中には業者利潤追求ということもむろん入つておるだろうと思います。あるいは経済情勢の変化というようなことも当然含まれるだろうと思います。しかし根本的には、やはり資本主義の発達の段階をこの独占禁止法によつて、いわば時計の針を逆もどりさせるような、素朴な自由競争ということにあまりにとらわれて、非常に広範囲に共同行為制限する、あるいは資本の集中というふうなことを禁止するといつた無理、これが表面化したものであるというふうに考えます。もちろん資本古義が発達しまして、資本の集中とか、共同行為とかが広範囲に行われるようになりますと、そこに社会的にばかりでなく、経済的にもいろいろの弊害が出て参ります。従つてこの私的独占弊害を防止するということはむろん当然のことでありますが、それだからといつて、時計の針を逆転させるようなことを企てるということは、少くとも資本主義経済というものを是認、あるいは是認でなくとも資本主義経済組織のもとにある限りにおいては、無理なことである。この独占禁止法が占領政策として実施されましたのも、よくいえば日本資本主義を若返らせるというふうにもいえるのでありますが、悪くいえば日本経済を弱体化させるというふうにいわれているのも根本はそこにあるのじやないかというふうに考えるのであります。それが最も端的に現われておりますのは、対外的な競争力の低下ということでありますが、これは必ずしも対外的な問題ばかりでなく 国内的にも、いわば成長をとめるといつた作用がここに現われているというふうに考えるのであります。従つて独占禁止法改正にいたしましても、資本主義が発達しまして、いわゆる独占資本主義になるに伴つていろいろの弊害が起る、その弊害を防止するということは当然必要でありますが、それかといつて、時計の針を逆もどりさせるということはおそらく不可能でありましよう。と申しますのは、現在でも独占禁止法がありながら、それにいろいろの法律上の例外規定が設けられている。また実際上にも綿紡操短が官庁の勧奨というふうなことによつて実施されている。さらにそのほかに、端的に言えば脱法的な、あるいは違法的な共同行為が行われているということによつてもわかる通り、これは不可能なことである。同時にまた好ましくないことでもある、そういうふうに考えるのであります。従つてこの独禁法改正にいたしましても、私的独占あるいは独占資本主義弊害を防止する、あるいは弊害を取除くということに独占禁止法の目的を端的に規定いたしまして、かりにもこの資本主義の発達を逆もどりさせるというふうなことはなるべく避けなければならないと私は考えるのであります。すなわちこれをもつと簡単に申しますと、考え方といたしましては、たとえばカルテルを、不況防止とか合理化とかいう特定の、あるいは例外的な目的のために認めるというのではなくて、カルテルあるいは共同行為、こういうものを一般的に認めて、それによつて生ずる弊害禁止するということが、独占禁止法改正の眼目であるべきであると私は考えるのであります。私的独占弊害とただいま申しましたが、これはもつと端的に申しますと、公共の利益とか、あるいは消費者利益とかいうものは、これは実際問題としてこぶる判定の困難なものであります。最も問題になる価格の問題にいたしましても、価格低落を阻止するということは消費者利益に反する、確かにこれは目先一時的に見れば、消費者にとつては安ければ安いほどいいというふうにいえるのですが、あるいは長い目で見たときに、安ければ安いほど国民経済にとつてはたしていいかどうかということは問題であります。極端にいえば、今度の改正の要綱にありますように、生産費を下まわるとか、あるいは平均生産費を著しく下まわるという場合には、不況カルテルを認めるというようなことが掲げられておりますが、いかに生産費を下まわつても、あるいは平均生産費を著しく下まわつた価格にしても、消費者にとつては安ければ安いほどいいということがいえるのでありまして、そうなると著しく下まわつた場合に、何ゆえに不況カルテルを認めて、これを防止させるかということになつて、これは非常にあいまいであります。そういうふうに公共の利益というものは認定が非常に困難であり、場合によつては見解の相違の問題でもあるのでありまして、それを厳重に公共の利益、あるいは消費者利益ということで押えようとしますと、これは現在の独禁法と同じように、あらゆる私的独占可能性までもこれを禁止するというふうにしたければ不可能であろうと思います。現在の独占禁止法でもまだ不十分かもしれません。もつと厳重な取締り、あるいは禁止規定を設けなければ、この公共の利益を完全に擁護するということは困難じやないかと考えられるのでありますが、そうすることは、一面において資本主護の発達というものを逆もどりさせる。それがいけないから結局今度独占禁止法改正が行われることになつたのだと思います。そういうふうに実際問題としてこの判定というものは非常にむずかしい問題であります。従つてもしこれを一般的に、たとえばカルテル認可制にしまして、認可するかしないかといつてそれを認定するということになりますと、それはおそらく公取では不可能でありましようし、また通産省がやつてもこれは非常に困難じやないか。簡単に申しますと不況カルテルを結成する場合に、結成の認可を申請して来た。それをああでもない、こうでもないとやつておる間にもう情勢がかわつてしまつたということも当然考えられることであります。このカルテル――カルテルばかりじやないのですが、カルテル認可というようなことを一般的に行つて、例外の場合にだけこれを認めるということになりますと、それは実際問題としておそらくそういうカルテル認可する――不況カルテル、あるいは合理化カルテルにしても同様でありますが、それを認めるといつた趣旨が殺される。そうでなければ認可の方針がもつとルーズになり、結局一般的にカルテルを認めるということと、実際においてかわりがなくなるというふうな、どちらかになる可能性が非常に多いのではないかと考えるのであります。従つてこの独禁法改正の眼目としましては、最初に申しました趣旨から申しまして、また実際の問題として、ただいま申しましたように、あくまで独禁法の趣旨を私的独占弊害を防止するというところに眼目を置いて改正する、私はあまりよく知りませんが、たとえばアメリカの独占禁止法というものよりも、むしろ英国の取引制限法、そういつたものの方に近い、あるいはそういつた考え方によつてこの独禁法改正を行うべきであるというふうに考えるのであります。そうしてそれに関連しまして、カルテル認可、一部に届出と認可とありますが、もし認可制度が入るといたしますと、その場合どこでカルテル認容を決定するかという問題、これは官庁の権限争いということになるのでありますが、考え方としてはやはり通産省というものはあくまで行政官庁、それから公正取引委員会というものは行政委員会でなくて、いわば準司法的な機能を持つた委員会である、そういうふうな建前から申しまして、もしここでかりにカルテルというものを相当広い範囲で認可制にするという場合には、これは通産省がむしろ公正取引委員会の同意というふうなことなしに、明らかな責任体制のもとにこれを認許可する。そうしてまた認可の範囲を非常に狭く決定する、むしろ行政というよりも準司法的な意味が強く含まれるというふうに独禁法が改そされるというような場合には、これは公正取引委員会がその認可権を持つというふうにするのが妥当ではないかと考えるものであります。  以上眼目だけを申し上げて終ります。
  9. 遠藤三郎

    遠藤委員長 これにて参考人全部からの意見の開陳は終りました。この際質疑を許します。内田常雄君。
  10. 内田常雄

    ○内田(常)委員 ただいまお三方の御説明を承つてつたのでありますが、お三方は参考人であつて関係御当局ではないので、私は議員として問い詰めるわけではございませんけれども、お三方の意見が三人ともみな違う、私が聞いておりました範囲では、東京新聞の福良さんの御意見が一番中庸を得た、まん中辺を歩いておられるようでありますし、最後にお話くださつた日経の友光さんの御意見は、むしろ資本主義組織のもとにおいてはある程度資本の集中や共同行為というものは、これを阻止してしまうと、結局経済の発展を阻害して、全体のためにならない、ことにこの法律は占領政策の一環として日本経済の弱体化を企図したと思われる面もあるから、この際むしろ思い切つていろいろな掣肘を与すべきだ、こういうように伺いました。しかしそれに反して朝日新聞の藤田さんの御意見は、大体今度の改正はむしろ反動的であり、業者保護に堕し過ぎて、一般消費者保護を忘れておるから、むしろこのような改正はやらぬ方がいい、こういうようなお話にも聞えるのですが、われわれは皆さんのおつしやることがみなほんとのようにも思われるのです。それにまた、要は結局行政措置にかかつて来る。通産省なり公正取引委員会なりの打合せ、ことにカルテル認可の場合において、通産省あるいは農林省等がどのように公正取引委員会意見を事前に取入れるかというような行政上の判断の問題にもなつて来ているのです。従つてにわかにここでお三人の意見に私は結論をつけがたいように思います。それよりも、私はかねがね不審に思いますことは、皆さんどうお思いになりますか、公正取引委員会というものは一体裁判所であるのか、役所てあるのか。日本の行政組織の上においてあのような行政官庁があり、また中間的な委員会があるという組織の形をこの独占禁止法の場合についてはいつまでも押し進めて行くべきかどうか。これはたとえば銀行あるいは金融等につきましては大蔵省が基幹行政庁として今まで何のふしぎもなくやつて来ている。しかし一たび考え直してみると、金融行政には預金者等の面もあるわけで、大蔵省は金融業者立場からものを考えてはいかぬということであるならば、別に預金者公正委員会というようなものでもあつて、預金者の利益を守らなければならぬというように思いますけれども、今の行政組織あるいは委員会組織についてはどういうふうにお考えになりますか、どなたからでもけつこうですが、御意見を承りたいと思います。
  11. 福良俊之

    福良参考人 私からお答え申し上げることが適当であると思いますので、私の意見を申し上げます。確かに公正取引委員会というふうな存在は、日本の行政組織の上から見て占領下でなければできなかつた組織だと思います。そうして先ほど友光君も話しておられましたように、現在の公正取引委員会というものがむしろ準司法的な立場における機能を果しておるという点で、一面からいえば総理府の中の行政官庁であり、一面からいえば司法的な意味を果しておるということで非常に例のない存在であるということは、今内田さんから御指摘になつ通りであります。しかし、それならば金融問題について大蔵省が一元的に取扱つておるように、たとえば産業行政について全部通産省が取扱うというふうな立場だけでいいかどうかということになると私ども考え方としては、確かに変則ではあるけれども日本のように特殊な政治機構であり、しかも経済機構の中にあつて、やはり国民全体の立場から見て一つの判定を下す、これはもしも経済審議庁というふうなものが強力な経済施策の立案者であると同時に、それの実行監視に当つて絶えず日本全体の立場からものを見て行くということで十分の機能が果されるという場合ならばけつこうでありますけれども、今のような状態で、各省が割拠しておる、しかも国民的な立場で問題を処理する行政組織と申しますか、そういうものがない場合に、現在ある公正取引委員会というものは一つの役割をしているのではないか、ことに問題になりますのは、日本産業構造から見て参りまして、中小企業並びに中小企業者の占める地位は非常に大きい。しかもそういうものの立場に立つてものを見る場合がないということを考えて参りますと、将来の問題は別として、現在あるものは、変則な形ではありますけれども一つの役割を果しておると私は考えております。どうあるべきが正しいかという点については申し上げる材料も持つておりません。
  12. 遠藤三郎

    遠藤委員長 中村高一君
  13. 中村高一

    ○中村(高)委員 先ほど福良さんからもお話がありましたし、ほかの方も例に引かれたようでありまするが、綿紡その他の操短、これは通産省の指示か勧告みたいなもので、了解事項というようなことでやつているようなんですが、公正取引の法的な意味から言うと、通産省でそんなことがかつてにはできないようでありますが、このときに公正取引委員会はどんな態度をとつたのか、私はわからないのです。ずつと操短をやつていますが、公正取引委員会では、異議を言うとか、あるいは政府に何か言うとか、そういうことを何もしないで、公正取引委員会はそのときに眠つてつたのですか、その辺のところはどうなんですか。
  14. 福良俊之

    福良参考人 私からお答えいたします。私の記憶しておる限りでは、公正取引委員会からは凝議を申し立てております。綿紡の操短と関連いたしまして、化繊の操短が問題になりましたときに、公正取引委員会は、化繊の操短は独禁法違反の疑いがあるといつて、摘発しておるのであります。その場合に化繊業者は、通産省から操短の勧告があつたということで、決してこれは独禁法違反でないということを申し立てたようでありますけれども、それに対しては、通産当局は勧告をした覚えがないということで、結局私的な共同行為という疑いで、公正取引委員会が化繊の操短を取上げたのだと思います。綿紡の場合につきましては、公正取引委員会の方から、行政官庁として、操短を実施せしめるのに、はたして勧告というふうなものが必要な権限であるかどうかということに疑義を持つて、この点について通産省にさらに注意を喚起して、通産省は勧告の線よりももつと強く、行政的な措置として、綿紡の操短を命じたように私は承知しております。その問題のときには、経済審議庁からも異論があつて、ともかく公正取引委員会としては、通産省が責任をもつて行政的措置としてこれをするならば、それは暫定的にその措置を認めようというふうな立場で、今日に至つておるものと私は承知しております。
  15. 中村高一

    ○中村(高)委員 結局妥協したようなことですね。そうすると、公正取引委員会というものはあるにはあるが、司法的な力もあまり発揮していないのが実情だと言えるのでしようか。異議は言うけれども、言つた程度で、結局政府のやることだから、それでもいいんだろうというようなことで、ぎゆうぎゆう追い詰めるような公正取引委員会の実情ではないのですね。
  16. 藤田武雄

    藤田参考人 私の感じを簡単に申し上げますと、現在通産当局がとつております綿紡の操短勧告というものは、これは公正取引委員会は、福良さんの話したような措置をとつている。しかしああいうふうに何ら法律的の権限なくして、行政措置ができるものかどうかということを究明なさるのは、むしろ皆さん国会の責任だと思います。通産省なるものにかような責任があるかどうか、行政責任はどこにあるか、いかなる法律根拠に基いてやつているのか、法律的に根拠のない行政行為はないのだ、憲法に生産活動の自由がある、それを束縛するのは何によるかということは、むしろ皆さんに質問したい、こうかねて思つてつたところであります。
  17. 遠藤三郎

    遠藤委員長 中村君に申し上げます。次の機会に公正取引委員長を呼びまして、明らかにしたいと思います。
  18. 中村高一

    ○中村(高)委員 友光さんにお聞きいたしますが、内田さんが言われたように、たいへん観点が違つておるようで、むしろ資本主義は自由なんだから、そのままに置いておいて、弊害が出たのを例外的に何か方法をとればいいのであつて、原則的に独禁法などをやるということの方がおかしいというような意味でありました。そうすると、もし弊害が出て来るということになれば、どういう機関で、どんな方法弊害を除去するというやり方をおやりになるか。やはり公正取引委員会のようなものは認められるのですか。
  19. 友光正昭

    友光参考人 先ほど申し上げましたように、私の考えは、通産省に限らないのでありますが、各省というふうなものは、これはあくまで行政官庁であつて、そのほかの公正取引委員会その他は――大分委員会も廃止されましたが、これは先ほど申し上げましたように、準司法的な機能を持つものである。そうしてこれはどこで線を引くかということは、実際往なかなかむずかしい点があるだろうと思いますけれども考え方としては、公正取引委員会は行政委員会でなく、準司法的な機関である、そうあるべきではないかと私は考えます。
  20. 内田常雄

    ○内田(常)委員 それに関連して……。今の中村君のお話ですが、これは内論話ですが、いささか今度の改正案を研究してみたのですが、今度の改正案によれば、公正取引委員会が摘発するものは、通産大臣がこれは行政措置だからおれが一方的に出すのだという問題がなくなつて、要するにカルテルはすべて主務大臣認可がいるが、その認可をするに先だつて公正取引委員会認可すべき内容を打合せて、公正取引委員会の認定を受けなければならぬ。認定を受けて、初めて認可する。ところが二つの官庁だから、どうせけんかして、認可権限主務大臣が持つているから、認可してしまつたとする。そうすると公正取引委員会は、それはその内容が適当でないから、内容をかえてくれ、あるいはこれは独占禁止法保護さるべきものではないから、取消してくれということを、主務大臣に請求することができる。主務大臣がその請求に応じないと、一定期間を経過すると、自動的に今の共同行為独占禁止法上適法な行為でないものになつてしまう。さらにまた今お話があつたように、われわれ国会議員あるいは一般の大衆は、軍務大臣から今認可されておる共同行為について不服または異議がある場合には、利害関係人は公正取引委員会に必要な救済措置を申し出る。そうすると、公正取引委員会が今度は自分の判断で調査をして、それが適当でないと思えば、主務大臣のところに取消しの請求ができる。こうなるはずだから、この中身がいいか悪いかは別として、今後はああいう問題は起きることはないと思います。
  21. 遠藤三郎

    遠藤委員長 綱島君。
  22. 綱島正興

    ○綱島委員 お三方に伺いたいのでありますが、これはきようの課題をちよつと離れるかもしれませんが、こういうことを伺いたいのであります。  大体資本金議は、生産の効率と、消費の公正ということを期さなければならぬことになつて来ておることは、これは問題ないと思います。これには異議がない。これは資本主義ばかりではない。共産主義においても、それはその通り考えておると思います。そこで問題になつて来るのは、公正取引規定というものでありますが、自由主義では、どうしてもこれは自由競争をやらなければならぬ。しかもその自由競争は、公正な自由競争でなければならぬ。こういうことに基本的な考えがあるようでありますが、そこで基本的に公正取引というものを規律することは、ほとんど不可能であるから、単に救済的にある部分を禁止して行くのだという考え方一つ考え方で、消費者利益を守るとか、あるいはいろいろなことで、ただ単に一部の救済規定として見るのか、それとも公正なる取引というものをほんとうに発達させて、その結果消費者の公正な立場も得られ、生産も実はそののことによつてむしろ活発になり、効率も非常に高くなる、こういう考え方でおられるか。新聞の論説を持つておられるようですから、皆さんの御意見をこの際ひとつ伺つておきたい。これは経済界における世界の大問題と思うのです。そこに私は、アメリカの経済考え方と、英米のかつて考え方、それから日本が踏襲しておつた考え方との分岐点があると思うのです。ここをどういう観点で見ておられるか、論説の皆さんにごくかいつまんで御意見を伺えればけつこうだと思うのですが、いかがでしようか。
  23. 藤田武雄

    藤田参考人 御指摘の点はまことにごもつともで、おそらく日本国民すべての悩みだと思います。結局根本は、日本の固有の生産力、いわゆる人間の人力を省いた他の天然の持つ生産力が得られない、人口が多過ぎる、これが根本問題だと思います。従つて、たとえばアメリカの経済、あるいはドイツの経済、フランスの経済と同じように論ずるわけには行かないと思うのです。日本特有の弱点がある、脆弱性がある。しかも過剰な人口を持つておるだからこういう場合において、御指摘のように自由主義の典型的な形の経済政策を採用した、その結果生じた競争を制約するために、独禁法をつくつたということ自体が、根本的に再検討する価値があると思うのです。本来からいえば、独禁法そのもの改正するというよりも、今とられております日本自由主義経済政策が、はたしてほんとうの国利民福をはかることができるかどうか、八千五百万の国民が、ほんとうに精出して働くような態勢ができるかどうかということを、本来から考えれば、独禁法改正などは、これはほんのその場のがれのことなのです。私はそういうように考えますので、いかなる政策をとりましても、日本の現在の経済力、現在の人口では、そうりつぱな生活水準まで上るとは考えられません。しかしなるべく合理的な方法で、無秩序な生産競争をしたり、あるいはむだをしたり、二重統制などをするようなことのないようにして行くような考え方を、われわれは持つて行くべきじやないか、こう考えます。従つて、今の自由主義政策に付しては、ある程度の修正をして行かなければならないということは、常に考えております。社会主義とか共産主義とかいうものでなくても、資本主義の体制のもとでも、無統制な資本主義でなく、反省をしながら、ある程度はやつて行けるのではないか、こういうふうに考えます。
  24. 綱島正興

    ○綱島委員 他のお二人とも大体そういうような御意見でありますか。
  25. 福良俊之

    福良参考人 お答えいたします。私も大体そういつたような考えでおります。それから先ほど、今度の独禁法がどういうことをねらつておるか、それに対する考えをというふうに私は承知したのですが、私先ほど申し上げましたように、少くとも独禁法はある理想的な形態をねらつておる。しかし現実との間に相当の開きがあつて、それが今日まで修正がしばしば行われた理由である。従つて独禁法のねらいといたしましては、先ほど来申し上げておりますように、ともかく自由主義経済というものを基本に置いて、しかも自由主義経済の持つ一面の悪を事前に予知して、この悪の弊害をできる限り避けようというのが、独禁法の今日までのねらいだ、かように承知しております。従つて経済情勢が変化する段階において、今日まででも独禁法改正が行われ、また将来においても行われるものというふうに解釈しております。
  26. 友光正昭

    友光参考人 私は日本の、特に今日の状態においての自由主義資本主義経済は、原則として妥当であると考えます。ただその場合、自由主義とか資本定義とかいうような言葉は、これは定義の問題であります。これは決して十九世紀的というような――またもし十九世紀的な資本主義とか自由主義とかいつたら、現在独占資本主義などということは、資本主義でなくなるはずのものであります。そういう十九世紀的といいますか、不動のものであるという考え方でなくて、発達か悪化か知りませんけれども、とにかく発展しつつあるものとして、私は自由主義ないし資本主義を適当と考え、独禁法改正に対してもそういう点から見ているわけであります。
  27. 遠藤三郎

    遠藤委員長 秋田大助君。
  28. 秋田大助

    ○秋田委員 ただいまの参考人方々の御意見大体賛成なのですが、先ほど中村君から綿紡の話が出ましたので、関連して、ちよつと事実問題で参考人方々の御意見を伺つてみたいと思います。やはり独禁法だけでは始末のつかない、それ以前の問題があると思う。要するに一般経済政策なり、金融政策なりで独禁法の趣旨を貫くためには、考えなければならない問題がたくさんある。しかも重要な、根本的な問題があると思います。綿紡のあの行政措置は公約だから、私的独占禁止法とは違うのだということで、こういう現状になつておるのではないかと思うのです。化繊の場合の取扱いはこれはおかしいと思う。これは事実問題として、綿紡績会社などは非常にもうけて、そして設備を拡張された。そうしておいて不況なつたから、これを不況カルテルとしなければならない。不況カルテルの今度の措置そのものは大体いいと思うが、ああいうことに至らさない前の、政治上のいろいろな政策というものが重要じやないかと思います。もう起きてしまつたから、不況カルテルはやむを得ない。こういうふうなことになつておると思います。この点は大いに考えなければいけないと思うのですが、それに対する御意見を伺いたい。それは戦時中のようないたずらな統制経済になつてはいかぬと思いますが、そうした総合的な、計画的な財政金融経済政策が、どうしてもこの際とられて行かなければならないのだと思うのであります。そういう方面に対する参考人方々の御意見を今大体伺つているわけですが、綿紡の場合でもそういう感が深いと思います。それに対するお考えをお聞きしたい。  それから今度の不況カルテルを認めることになるのですが、ここで設備の新設、拡張を制限するということは、これだけでいいのか。アウト・サイダーにもこういう面から考えるとやつて行かなくちやならない。しかしアウト・サイダーだけでは、実際は先ほど申したようなことであると足らないので、カルテルより前にいろいろ政策的に大きな手を打つて、そういうものを未然に防ぐような措置をとつていただきたいと思うのですが、やむを得なければ、次善策ではあるが、不況カルテルの場合、アウト・サイダーにも事と次第によつては設備の新設、拡張を制限するような措置をとつたらどうかということを考えたわけです。そういう点に対する皆さん方の御意見を伺つておきたいと思います
  29. 福良俊之

    福良参考人 お答えいたします。先ほどの藤田君からの説明で大部分今のお答えになつておると思うのでありますが、綿紡の場合をとりますと、最高限度四百万錘の制限がとられてからわずか一年半の間に七百万錘以上に達する、そういう状参況をほうつておいて、そうして不況が来たから操短を認めるというふうな行き方は、決して好ましい産業政策とは思いません。従つて考え方といたしましては、将来の日本産業構造をどういうふうに持つて行くという一つの基本的な姿が描かれて、それに従つて産業別におのおのの計画というものが立てられていたならば、まことにけつこうだと思う。同じようなことがもうすでに砂糖の点に起つておると思うのです。現在までに設備がつくられましたものが戦前の製糖能力をはるかに越えたものである。しかも今日において価格協定をしておるということを考えますと、やはり日本経済をどういうふうな形に持つて行くかという大まかな見当だけは政府において立てられて、それに従つて経済施策というものが総合的になされることが最も好ましいと私は考えます。  後段の御質問については同じようなお答えで済むのではないかと思います。
  30. 友光正昭

    友光参考人 綿紡のお話でありますが、むちやに拡張しておいてあとになつて生産過剰になつたということでは、資本の効率の上からいつても確かに好ましくないことは明らかであります。それに対して政府がやつたことが妥当であつたかどうかということは非常に問題でありますが、ただその場合一つ考えなければならないのは、今日においては綿紡にしてもその設備が過剰であるということは明らかでありますが、それならばあの綿紡ブームの時代に具体的に何百何十万錘で設備を押えたらいいかということを決定することは、民間にもむろんできないでしようし、官庁がいくら統計を集めてもおそらく容易にできることではないと思うのです。従つて、計画経済という言葉がよく使われますけれども、またこの計画経済という言葉がいろいろな意味に使われているので、そういう言葉を今使うことはあるいは妥当でないかもしれませんけれども、ある種の計画経済というものは非常にむずかしく、また場合によつては危険でもある。現在の状態であつたら、かりに四百万錘であつても足りるかもしれないけれども、この状態がいつまで続くか、このままでおしまいになるのか、あるいは幾らかよくなるのか、よくなる場合には一体五百万錘まではいいのか、六百万錘まではいいのかということになると、それそぞれ意見はあるかもしれませんが、はつきりとここまで以上は多過ぎる、ここまで以下は足りないということはだれにも言えないのではないかと考える。但しその場合にも、それかといつてつておけばいいかということになると、いかに自由主義資本主義においてもそう盲めつぽうでやつたのではたいへんなのでありまして、そういう場合にこそカルテルなり何なりで他に資料を集めたり、世界の紡績事情を調査するということでもいいのでありますから、何か業者が自主的に直接あるいは間接的に一つ方向を示す。政府もむろんそういう努力は必要でありましようが、業者自身としても、競争相手が何をやつているかも知らずに盲めつぽうをやるということは当然改めなければならないということではないかと考えます。  それからアウト・サイダーの問題でありますが、これは業種によつていろいろ事情が違うと思いますから、一概にアウト・サイダーにまで強制することは、いいとか悪いとかは言えないのではないかと考えるのであります。
  31. 秋田大助

    ○秋田委員 友光君にお尋ねしますが、私は一般論と同時に、綿紡の場合の設備拡張に関する具体的な今までの実例についてお尋ねした。綿紡の場合、旧来の紡績があり、新紡があり、そこに新々紡がある、もう大体とめるべきなのになお拡張されたという感じがありはしないかという具体的な点についてあなたの御意見はどうですか。
  32. 友光正昭

    友光参考人 それはあの猛烈な拡張競争が行われたとき、民間の一部にはそれを危惧するものがあつたと思います。しかし政府は何をやつていたかというと、あれに対しては無為無策で見のがしていた。これは大いに政府の無能として結果的にばかりでなく青められても余儀ないことだろうと思います。
  33. 遠藤三郎

    遠藤委員長 他に御質疑はありませんか。――別に御質疑もないようでありますので本日はこの程度にとどめ、次会は公報をもつてお知らせすることといたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後零時二十八分散会