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1953-02-18 第15回国会 衆議院 外務委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年二月十八日(水曜日)     午前十時二十七分開議  出席委員    委員長 栗山長次郎君    理事 池田正之輔君 理事 谷川  昇君    理事 松本 瀧藏君 理事 戸叶 里子君       今村 忠助君    植原悦二郎君       木村 武雄君    中山 マサ君       安東 義良君    楠山義太郎君       高岡 大輔君    辻原 弘市君       福田 昌子君    帆足  計君  出席国務大臣         外 務 大 臣 岡崎 勝男君  出席政府委員         参  事  官         (法制局第一部         長)      高辻 正巳君         外務政務次官  中村 幸八君         外務事務官         (大臣官房審議         室勤務)    中村  茂君         外務事務官         (欧米局長)  土屋  隼君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君  委員外出席者         外務事務官         (国際協力局第         三課長)    田中 弘人君         専  門  員 佐藤 敏人君     ――――――――――――― 二月十八日  委員田中稔男君辞任につき、その補欠として辻  原弘市君が議長の指名で委員に選任された。 二月十四日  航空業務に関する日本国グレートブリテン  及び北部アイルランド連合王国との間の協定の  締結について承認を求めるの件(条約第三号) 同月十六日  奄美大島諸島日本復帰に関する請願(床次徳  二君外九名紹介)(第一九一四号) の審査を本委員会に付託された。 同月十七日  戦犯の全面釈放につき特使団派遣に関する陳情  書(第一三  二六号)  海外抑留者引揚促進並びに留守家族援護の強  化に関する陳情書  (第一三三二号)  海外抑留同胞救出に関する陳情書  (第一三三三号)  未帰還者引揚促進に関する陳情書  (第一三三四号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  航空業務に関する日本国グレートブリテン  及び北部アイルランド連合王国との間の協定の  締結について承認を求めるの件(条約第三号)  移民に関する件  国際情勢等に関する件     ―――――――――――――
  2. 栗山長次郎

    栗山委員長 ただいまから会議を開きます。  航空業務に関する日本国グレートブリテン及び北部アイルランド連合王国との間の協定締結について承認を求めるの件、これを議題といたします。まず政府側から提案理由の説明を求めます。中村外務政務次官。     —————————————
  3. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 ただいま議題となりました航空業務に関する日本国グレートブリテン及び北部アイルランド連合王国との間の協定締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  わが国は、日本国との平和条約第十三条(a)の規定により、連合国の要請があつた場合に、当該連合国との間に国際民間航空運送に関する協定締結するための交渉を開始することとなつております。連合王国は、この条項に基き、協定締結交渉を開始する意向を示して参りましたので、昨年七月から両国政府代表者間に交渉が行われた結果、航空業務に関する日本国グレートブリテン及び北部アイルランド連合王国との間の協定案が作成され、昨年十二月二十九日に外務大臣デニング特命全権大使とによつて署名されました。  この協定は、日英両国間の定期航空業務の開設を目的とし、条約付属附表において各締約国航空企業航空業務運営する路線を定め、その業務運営の権利を相互に許与するとともに、その運営開始の手続及び運営条件双務的基礎において定めております。ところで、連合王国は、日本国との平和条約第十三条(b)に基き、わが国との航空協定締結されるまで、平和条約の最初の効力発生後四年間、わが国において航空業務運営する一方的な特権を享有しております。従つて、この協定締結により、わが国は、連合王国との関係でこの平和条約に基く片務的状態を解消することができると同時に、わが国航空企業もまた、英国航空企業と平等の条件連合王国に乗り入れを行うことができるようになるわけであります。  よつて、この協定締結につき御承認を求める次第であります。右の事情を了承せられ、何とぞ慎重御審議の上、本件につき、すみやかに御承認あらんことを切に希望いたす次第であります。
  4. 栗山長次郎

    栗山委員長 本件に関する質疑は、審議の都合上次会に譲ることといたします。     —————————————
  5. 栗山長次郎

    栗山委員長 この際御報告を申し上げる事項が二つほどございます。一つは、東南ア諸国のうち、日本賠償を要求しておる国々の、賠償に関する日本の意図について種々の臆測が行われておるという情報外務省に到達し、それが本委員会にまわつて来ております。委員長室に備えておきますから、必要な方はごらんください。  第二は、外務省経済局長からの情報でありますが、イスラエルとアラブ諸国との間の紛争につき、込み入つた事情があり、日本もそれに関連をしておる、と申しますよりも、間接の影響をこうむることあるべしというような観点から、短かい情報が入つております。これも必要な方のごらんに供します。     —————————————
  6. 栗山長次郎

    栗山委員長 次に移民に関する件及び国際情勢等に関する件について審議を進めます。移民の問題につきましての質疑申込みがあります。今村忠助君。
  7. 今村忠助

    今村委員 実は大臣にも出てもらいたかつたのでありますが、所用があればいたし方がありません。さきにもちよつと私簡単な質問をしたのでありますが、要するに独立後の移民問題は、簡単に申して一切まき直すといいますか、出直さなければならない立場にあると思うのでありまして、これは昨年の暮れ、各党派の共同によつて移民促進決議案というものを議決いたしてあるのでありますが、政府の側の移民に対する諸般の立場といいますか、それぞれの点をひとつお尋ねしてみたい、こう思うのであります。  まず第一に、敗戦によつて一度出直さなければならない移民問題を、政府はどのように考えておるか、たとえばアメリカは、御承知通り移民法を改正して、多年門戸をとざしていたものを好意を持つて開いてくれましたし、ブラジルアマゾン移民、あるいは松原移民等、すでにブラジル政府好意が表わされておるのであります。そのほかにもパラグアイ移民が本年は行かれるように聞き及んでおるのでありまして、ここで独立後の実際面に、移民問題が大きく取上げられて来たわけであります。その他従前でありますと、満州、南洋等東ア地域に多数の移民が出ておつたのでありますが、これが敗戦の結果、みなやむなく引揚げさせられておるのであります。今回フィリピンを初めその他に賠償問題と申しますか、平和条約締結と、それに関連するアジア諸国とのいろいろの外交折衝が起きて来ると思うのでありますが、これらの地域に対しても、何らか合法な手段をもつて移民というものが送り出されねばならぬと思いますし、また出し得るものと信ずるのであります。ことに最近アジア社会党会議と申しますか、ビルマにおきます会議が契機となつたと申すか、インドに多数の農業指導員とでもいうような人を送り出す計画があるやに新聞等で拝見いたしておるのであります。かようにいたしますと、実に世界各地に向つて日本移民が再び出られる機会に恵まれて来たのでありまして、これに対しては、政府相当大きな問題として取上げ、適当なる対策が打立てられなければならぬと思うのであります。過般私の質問で、外務省移民局設置がまだはつきりしておらぬと言われましたが、その後われわれ内閣方面にいろいろ折衝いたしますと、ぜひ移民局をつくりたいという意向が順次明らかになつて来たような気もいたすのであります。これらを含めて、言いかえれば政府が、再出発するところの移民問題に、どういう考えを持つてどのようにこれを進めて行くか、これについてできるだけ詳しく御説明願いたいと思います。
  8. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 移民問題は、御説のように、敗戦後の日本としては、新しい角度からいろいろと検討しなければならない問題であろうと考えるのであります。ただいまお話がありましたように、アメリカにおきましても、移民法の制定によりまして門戸を開放し、日本人にも移民を許すというような事態に立至りました。またアマゾン移民、あるいは中部ブラジル移民、あるいはまたパラグアイ移民というように、すでに相当数移民の許可も、わが国といたしましてはとりつけておるような次第であります。今後この移民問題を政府といたしましては積極的に推進して参りたい、かように存ずるのであります。ことに敗戦によりまして、わが国四つの島に八千五百万人の人口がとじ込められてしまつたのであります。こういう状態からいたしまして、日本人気持が、いかにもこの四つの島にとじ込められたような萎縮した気持になつているようにも見受けられるのであります。かような消極的な萎縮的な気持では、今後の日本としてはいけない。どうしてももつと積極的に、いわば世界に雄飛するというような大きな気持で進んで参らなければならないと考えるのでありまして、この意味におきまして、単に移民によつて人口問題を解決するというよりも、こういう日本人のおおらかな気持を引立てて行くというような観点、あるいはまた今後南米その他の国々におきましては、産業開発をしなければならない。こういう諸国産業開発日本が貢献することによりまして、あわせて自分も活を求めるという意味合いからいたしまして、今後日本移民を奨励して参りたい。さような意味におきまして、今後諸外国におきましては日本移民をますます歓迎する、こういうように持ちかけて参る必要があろうと考えるのであります。従つて当面の方針といたしましては、日本からの移民移住地のよき住民となるという心構えで参らなければならないのでありまして、今までのように移住地を転々として歩くとか、あるいは二年、三年で帰つて来る、こういうようなことでなくて、移住地の土と化するようなかたい決心を持つて移民を送らなければならない。それには十分精選せられた、かつ教養を与えられた優秀な移民を安全に送り出す、こういうことが必要であろうと思うのであります。さしあたりといたしましては、呼び寄せ移民の増大をはかり、かつまた相手国が許可いたしました計画移民につきましては、これを確実に送り出す、こういうことが必要であろうと思うのであります。このためにはいろいろ施設すべき事柄もあるのでありまして、ただいまお話のような移民局設置、こういうような問題も真剣に取上げて参らなければならないと思うのでありますが、ただ移民局の問題につきましては、行政整理をしなければならないというような考え方もありますので、できるだけ簡素な組織のもとに、現在外務省の各局に分散されております仕事を統一して行く、こういうような考え方で目下事務的には移民局設置の作業を進めているような次第でありまして、でき得べくんばこの国会中にもぜひとも提案いたしたい、かように考えております。
  9. 今村忠助

    今村委員 大体の意見をお聞きしたわけでありますが、そこでこの再出発をする移民問題を、今後どう取扱つて行くかという点についてもう少しつつ込んでお尋ねしてみたいと思います。  今呼び寄せ移民から徐々にということでありましたが、現にブラジル移民は単なる呼び寄せ移民というようなものでなくして、アマゾン移民にいたしましても、一口にいわれる松原移民にいたしましても、相当数のものが計画的に新しい地域に入れられようということになつているように聞き及んでいるのであります。これらに対しては、もう少しやはり根本的にこちらがいろいろの諸準備をいたさなければならぬと思う。そこで私はこの日本の再出発をする移民問題を根本的に取上げて、いろいろ検討し準備して参るといたすとしたならば、少くとも移民審議会のごときものを内閣設置いたしまして、再出発にあたつて移民問題をどうするかということについて、もう少し根本的に政府としても研究検討する必要があると思うのであります。     〔委員長退席谷川委員長代理着席〕 ただ漫然と、話のできた方から順次送り出すという程度の簡単なものの考え方では、必ず私は前途につまずく日があると信ずるのでありまして、何といつても私は再出発のこの移民問題をどうするかという根本問題を、まずきめてかかる必要があるのではないか、こう思うのです。現に私たちいろいろこの移民問題で接触いたしましても、何といつても長い戦争の期間を通して、これらに関する経験者もなく、知識を持つた人もはなはだ少いと私は見受けているのです。われわれ多少海外問題あるいは移民問題に携わつて来た者から見ますと、まことにこの点はさびしく感ずるのでありまして、どうしてもまず、再出発するところの移民問題をどうするかというその根本をきめるために、内閣移民審議会のごときものを設置して、学識経験者あるいはそれぞれの官庁においてその業務に携わつている者等想寄つて、ひとつ何かその基礎になるものをつくる必要があるのだと思うのでありますが、これに対して政府の所信を承つてみたいと思うのであります。
  10. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 移民問題のいろいろ複雑にしてむずかしい問題を解決するために、たとえば内閣審議会等を設けてやつたらどうか、こういうお説のようであります。ごもつともなようにも考えるのでありまして、この移民問題はいろいろ各方面にわたる複雑な問題でありますので、広く官民の知識経験を集めまして、十分な検討を加えて行く必要があると考えるのであります。しかしながら、本年度の見すかしといたしましては、さしあたり二千人程度の呼び寄せ移民ブラジルアルゼンチン方面に出かけて行く。さらに計画移民といたしましてはブラジルあるいはアマゾンに二千人程度計画移民を送出する。そのためには二十八年度予算にも三億円の渡航費貸付金等を計上しているような次第であります。さしあたりこの程度移民を考えているのでありまして、この移民がはたしてどういうような成績を上げるかという見すかしも、まだつけがたい段階にあるのであります。従つて内閣審議会を設けることももちろん考えてはいますが、そうしたいろいろ今後の見すかし等も勘案いたしまして、十分実現いたす上に慎重を期して参りたい、かように考えます。
  11. 今村忠助

    今村委員 私心配している点は、いろいろ実際問題がこう順次進んで来るのだから、それ以前に、移民問題をどうするかという根本をいろいろ研究もし、決定をする必要があるのではないかという点を申すのでありますが、当局は今後の成行きを見て移民審議会等を考えてみようというようなことで、多少そこにあと先のずれがあるような気がいたすのであります。これは当面順次開けて来るのでありますから、ぜひともひとつそれに先んじて移民審議会設置して、その根本問題をきめてもらいたいと思う。実は今のいろいろのお話の点から関連して、以下いろいろの点からお聞きして行きますと、なおその重要性必要性が明らかとなつて参ると思うのであります。  まず移民保護法というもの、これは明治二十九年につくられ、その後三回にわたつて改正されているのでありますが、当時の実に古い時代の、今日とはものの考え方の違つている明治二十九年という時代につくられたものが、そのまま残つているわけです。再出発にあたつてこの移民保護法等によつていろいろ取扱いをいたすということは、まつたく考えられないことでありまして、どうしてもまずこの法律から直してかからなければならないと思うのでありますが、改正の用意があるかどうか。また用意があるとすればそれはいつごろまでに提出されようとするか。まずその点を伺います。
  12. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 ただいまお話移民保護法明治二十九年に制定せられまして、法規上はいまなお効力を持つている法律であります。ただ新憲法に照しまして考慮を要する規定も含まれているように考えられる、またその適用にあたつては現在の時代にもそぐわない点も多々あるように考えられます。そこで政府としては、この時代に適応するところの新移民法を制定すべく、目下研究中でありますが、移民送出の具体的な実情等ともにらみ合せまして、十分実際に即した法律至急に制定したい、かように考えます。
  13. 今村忠助

    今村委員 至急という意味は、今国会ということであろうと思いますが、その点をあらためて……。
  14. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 できるだけ早くと考えておりますが、今国会にはあるいは間に合いかねるのではないかということを心配いたしております。
  15. 今村忠助

    今村委員 先ほど来私は質問の都度申しているのでありますが、何といつても再出発する移民が実際にもう始まつているのでありますから、これら法律等が先に用意されるべきであつたと思うくらいであります。従つて国会に出し得るやいなやわからぬというような意味にとれる御答弁ではものたりないのでありまして、これは今国会にはぜひ出すだけの処置を行政府としてはしてもらいたいと思う。現実に移民問題が起きているのに、あとから法律をつくつてということは考えられないことである。すでに昨年アマゾンヘの移民は五十何名か送り出しているくらいでありますから、当然これを送り出す問題が起きると同時に、移民法検討し、これを改正するだけの熱意があつてしかるべきだと思う。これはぜひ政務次官も督励して、今国会に出し得るようにしてもらいたい。私は決して不可能なことではないと思うものであります。  次に昨年の暮れ参りましたアマゾン移民が、船賃相当かかるというので、大蔵省から適当な方法をもつてこれらに船賃が貸し付けられたというように、われわれは聞き及んでおるのであります。大蔵省がどういう形式をもつて渡航移民のために旅費を都合したか、この点われわれは何かちよつと会計法というか、支出の面において不完全なものがあるような感じがするのであります。これはどうしても今後多数出て参ります移民根本問題を解決する一つとして、遠くブラジル等に行くとすれば船賃がかかるのでありますから、移民金融公庫のごときものをつくつて支出の面においても正当であり、また借り受ける側においても、簡単にいえば長期にわたつて苦痛のないような、返し得るような制度もあつて移民問題というものがほんとうに軌道に乗るような形にしなければならぬと思う。そのとき限りといいますか、その場限りの金の出し方で貸してやるというようなものであつては、私は相ならぬと思うのでありまして、努力すれば今国会にこれらの法律も出し得る。あるいは予算関係裏づけ等が必要であるとすれば、臨時国会等補正予算にまたねばならぬものがあるかもしれませんが、いずれにいたしましても、ブラジル移民を先ほどのお話では計画的に二千名、他の呼び寄せ等も二千名くらい考えておるというからには、これが実施にあたつて移民に対する旅費貸付という問題が当然起きて来るのでありますから、この裏づけとなる何か資金関係を考えて行かなければならぬと思う。これにはどうしても私は移民金融公庫とでも名つけるような制度を設ける必要があると思う。どうしても政府用意ができぬというのならば、われわれ議員の間で用意いたしたいと思うのでありますが、この点をひとつお聞きいたしておきたい。
  16. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 お説のように移民金庫がございますれば、昨年末送出いたしましたアマゾン移民のために、政府が貸し付けるというようなことをしなくても、もつと事務的に処理できるのであります。従つて移民金庫もたいへんけつこうなことと考えるのであります。しかしながらさしあたり予想せられる移民といたしましては、先ほど申し上げるような程度のものでありまして、戦前に行われましたように、大々的な移民はまだ考えられておらないわけであります。従つて今ただちに移民金庫をつくる必要があるかどうかという点については、多少検討の余地もあるのではないか、かように考えております。また渡航費回収をいたしますには、移民取扱い現地機関との連絡を緊密にするという必要もございますし、さらに回収には非常に長期を要するし、また相当の困難も予想せられるわけであります。こういうような事情もありますので、資金の円滑なる回転のめどというようなものもつけなければならない。こういうようないろいろな問題もございますので、こういう問題を十分見きわめました上で、必要あれば移民金庫をつくりたい、かように考えておる次第であります。
  17. 今村忠助

    今村委員 この問題も御回答では不十分であります。もう移民は、先ほど申す通り計画的に二千名、呼び寄せ二千名ぐらいは本年出るであろうといわれておるのでありますから、これが出て行くための金というものは当然必要で、各自負担というようことはなかなか不可能だと私は思う。そうだとすれば、どうしてもこれらに、現に昨年アマゾンへ行く移民のために、大蔵省がどういう支出をしたか、先ほど申すように、われわれから見れば、まことに完全と思われぬような支出をしたが、またそれを繰返さなければならない。それを繰返すことをおそれて、われわれ多年かような方面に携わつた者としては、どうしてもここではつきりした貸付方法をきめなければならない。そうしなければ人を送り出すという段階に入らぬと思いますが、これを漫然と、今言う不完全な支出ということで続けて行きますれば、これは取返しのつかぬことになつてしまうのではないかと思います。どうしても私は先ほど申す移民保護法のごときも、今国会に出す努力をしてほしいのでありますが、移民金融公庫についても同様、これも政府でできぬとなれば、議員提出として裏づけをしなければ、とうてい移民というものは軌道に乗つて来ないと考えるのであります。これはぜひ政府当局としては一段と努力して、実現を期してもらいたいと思うのであります。  次に、先ほど言われた計画移民二千名、呼び寄せ移民二千名というようなことが考えられるとするなら、これを送り出すについていろいろ取扱う方法というか、機関ということが考えられなければならない。たとえば従来でありますと、海外移住協会でありますとかその他の会社がこれを取扱つたのでありますが、これを今後どうして行くか。新時代にふさわしいような取扱い方法あるいは機関等を考えなければならないと思うのであります。たとえば公共団体財団法人のごときもので行くのか、あるいは従来のごとく会社で行くのか、あるいは半官半民の会社みたいなものをつくつて行くのか、何かここで考えて取扱わなければならぬと思うのでありますが、政府はどういうようなことでこれを扱うのか、考えている点をお聞きしたいのであります。
  18. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 移民取扱い、たとえば募集選考というような仕事は、戦前におきましてはお話のように、二、三の民間機関にこの仕事を許可いたしまして取扱わせたのでありますが、戦後におきましては、御承知通り、まだその移民の数もあまり多くなく、ことに先ほど申し上げましたように、移民の質を厳選する、かつまたあまり多くない移民の割当を全国に公平に割当てる、こういうような必要もありまして、さしあたりは民間機関を新設するよりも、政府が従来の行政組織を利用いたしまして、できる限り政府機関においてこれを行いたい、かように考えておるのであります。西欧諸国、特にイタリア方面でも、やはり同じように、政府におきまして募集選考等をいたしているような次第であります。なおかつ国際労働機関雇傭移民条約におきましても、募集選考の公正と移民保護及び適格者の選定、こういうような見地から、政府または半官的公共機関が当ることになつておるのでありまして、そういうような西欧諸国の例、あるいは国際労働機関雇傭移民条約というようなものから見ましても、やはり政府が行うのが適当であるか、かように考えておりますので、さしあたりの問題といたしましては、政府におきまして従来の行政組織、たとえば府県等を通じまして、募集選考等をさせたい、かように考えております。
  19. 今村忠助

    今村委員 一応さしあたつては、政府機関をもつてするということでありますが、たとえば昨年送り出されたアマゾン移民は、必ずしも一切が政府であつたかどうかと思うのであります。つまりアマゾン産業研究所等が一部その点取扱つたというようにも見れるのであります。また新聞では何かブラジル、ことに松原移民は、会社をつくつてそれにまかすというようなことも出ております。この点はよほどはつきりしておきませんと、今後またパナマ移民だ、その他の移民だ、といつて、各国の各地で順次計画が立てられますと、これに付随した団体なり会社なりが、それを取扱うというようなことが起きないとも限りません。私はかつてブラジルに参つて、いわゆる海外興業と一口にいうブラ拓とが恐ろしい対立をしておつて移民地の中に入つて行けば、まるで敵国同士が対立しているような感じを受け、現にけんかの仲裁をしてくれと頼まれて、仲裁までして来た実例があります。フイリピンへ行けば、太田興業と古川拓殖が対立しておつて、われわれが旅行すれば、両方から車を持つて迎えに来る。どつちの車に乗つたらいいのかわからないことがある。講演などしておると、違つた地域から迎えに来る。簡単にいえば、二つの対立が一旅行者まで実に当惑するような現実が展開しておつたのであります。これらを考えますと、政府はよほどこの点を考えて、今後どうやつて行くのかということを、はつきりとしておいていただかなければならない。新聞等を見ると、今言つた通り松原移民会社で引受けるのだとか、まかすのだということが出た事態を見ても、うつかりしていると、往年にあつたようなことを繰返さないとも限らない。一応は政府機関をもつてするということは、さしあたつてわずかな数であればでき得ることでありますが、一面行政整理をして、人を減らして行くというようなことで、取扱いもまた不十分になつて来るおそれもあるのであります。これは先ほど来申す通りに、どうしても移民問題を再出発するにあたつて根本問題として政府は御研究願いたい。いつまでも今のような形で間に合せ的で行き得るものではないと思いますから、根本的にこの取扱いをどうして行くかということを考えていただきたい。巷間伝えられるところでは、海外協会というようなものを動員してやつてはどうか、従来あつたようなものを再強化、改善してやつてはどうかというような意見もありますし、組合組織でやつた例もあるから、これもまた組合で行くべしというような議論も、すでに民間では盛んに論じられております。従つて政府の側もこれらの点をよく研究して、最も合法的にして至当な方法をとるよう努力してもらいたいと思います。  同時にまた今後各国との国交が回復いたして参りますと、順次海外移民も帰つて来る。その帰るのには、やめて引揚げて帰る者もあれば、旅行というような形で帰る者もあるのでありますが、これらを捨てておけば、いろいろの問題もその間に起きるし、これについても私はやはり海外事業センターというようなものを、決議案の中でも説明しておいたのでありますが、何かひとつ統一的にこれらの問題を扱う、簡単にいえば、海外事業センターというようなものを設けてはどうか。私文部省におります際、文部省では近代美術館というものをつくつて、近代美術のいろいろの展覧等を通して奨励、保護ということをいたしたのでありますが、私は非常によかつたと思う。これと同じように、海外移民——各国の非常に条件の違うところに出て行く、あるいは帰つて来たというこれらの人を通して、また国民に海外へ進出して行くいろいろの心構え等普及宣伝するというようなことを兼ねて、何かやはりこれらの海外問題を一つの形に統制できるようにして行くために、いわゆる海外事業センターというようなものを、相当国費をかけても用意する必要があると思うのであります。こういうような点について政府は何らか考えを持つておるか、その点をひとつお聞きしておきたいと思います。
  20. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 今後一層この移民の奨励をいたして参りますために、移民指導の普及、その他お話のような仕事をいろいろと進めて参りますために、お説のような移民センターという施設を設けることは、非常にけつこうなことでありまして、できる限り政府といたしましては、お説のようにいたしたい、かように考えております。
  21. 今村忠助

    今村委員 今後政府としては努力されるということでありましたが、この点どういうものかひとつお聞きしてみたいと思います。戦前でありますと、民間のこれらの海外諸問題を扱つたり、移民問題を扱うような団体等に、外務省は補助をしておつたのでありますが、新しい憲法、新しい法律のもとでは、そういうことは不可能なのがどうなのか、可能だとしたならば、外務省は今後そういう団体を育成する考えがあるのかどうか、この点をお聞きしてみたいと思います。
  22. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 政府がこういう種類のものに対して補助金を出すことが、憲法に別段さしさわりがあることはないと思います。ただ大蔵省との折衝におきまして、本年度は財政の都合上できなかつた、こういうことであります。
  23. 今村忠助

    今村委員 私はさきにも移民取扱いに関してその方式、機関等について、考慮されたいということを申したのでありますが、今新しい憲法のもとに従前通り民間諸団体の補助育成等は可能であるということでありまして、たまたま大蔵省の本年度予算で認められなかつたという点でありますから、申し上げておきますが、外務省としては今言う移民問題に関連して、民間の協力団体とでもいうようなものをぜひ補助育成してもらいたいと思う。ただそのやり方を戦前におけるように、たくさんな団体にわずかな金を配つて、十分な補助もできず、従つてまた各種の団体が思うような活動ができなかつたという例があるのでありまして、新しく再出発するにあたつては、この点も統一的に適当なものに数を限つて、それには十分の育成をするという心構えを持つていただきたいと思う。そうでないと、戦前の場合におけるごとく、まつたく意味のない程度の補助しかできなくて、そして成績が上らない。簡単にいえば、まことに補助育成等が不十分で、また不適当であつた、こう見られるものでありますから、この点については今からその担当行政庁としての外務省においては、十分お考え願いたいと思う。     〔谷川委員長代理退席、委員長着席〕  次に、巷間伝えられるところによりますと、ブラジルにありました日本の資産中、戦争のためにブラジル政府に押えられたものがあります。そのうち正金銀行の預金七億か八億というものを、国際銀行というようなものをつくつて、その資金ブラジル政府から寄付を受けようというように新聞は伝えております。実はこれは単に金融機関に寄付してもらうというよりは、私は決議案の中で説明したのでありますが、イタリアの場合のごとく、在住イタリア国民のためのいろいろな意味に、ブラジル政府からイタリア系の移民団体といいますか、公共団体が寄付を受けた例があつたのであります。わが日本の場合も同様にしてもらいたいと思うのでありまして、戦争によつて没収されたところの資産であつて、これは簡単に言つて、もとの正金銀行のものであつたとは言い得えない状態に現に置かれているわけであります。国際銀行というものが、移民のためにいろいろの努力をするという点は考えられますけれども、もう少し広い意味で、たとえば厚生の面あるいはまた営農といいますか、農場を経営する面の資金、ことに日本からまた渡航費等を貸し付けるといいますか、それをして、その回収等ということに関連いたしますと、単なる銀行事務というだけで、簡単にいえば、移民活動というものは十分だとは思われないのでありまして、もう少し広い意味機関に寄付をもらう方がいいのではないかと思う。私はかりに日伯移民協会というようなものをつくつてブラジル政府で押えたというか、没収したところの資金を寄付してもらつてはどうかということを、自分の考えで決議案の中でも説明の一つとしたのでありますが、これに対して外務省として何か考えているかどうか、そうしてまた今言うように、単なる国際金融の機関に寄付を受けるだけで外務省はいいと考えておるのかどうか、この点をお聞きしておきたいと思います。
  24. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 ブラジルにありますところの没収された財産が解除された場合、これをできる限り日伯協会等の移民関係仕事ができるように利用させてもらいたい、こういうお尋ねのようで、政府といたしましても、ぜひともそういうふうに仕向けたい、かように考えております。ただ解除されました財産をひもつきでということになりますと、清算人はどういう考え方を持つておりますか、またいつ解除になりますか、そういうところもまだ今日のところわかりませんので、外務省としてはできる限りお説のように努力いたしたいと思います。
  25. 今村忠助

    今村委員 その点は私ちよつと研究が不足だと思うのでありまして、解除にはならない。没収されてブラジル政府というか、国のものになつてしまつた、それを今度寄付してもらうわけなのです。その前例としてイタリアの場合には、先ほど申すようなブラジルにおるイタリア系市民のために寄付してもらつた、日本の場合もそうしたらどうかというのでありまして、解除というなら元の正金銀行の、たとえば清算人との関係ということも出て来るのでありますが、もう解除の形には絶対ならない。ことに資金関係においては没収されてしまつておる。ブラジル政府のものとなつておる。ただブラジル政府はイタリアと同じような形であるなら、日本の場合にも寄付してもいいということを、ヴアルガス大統領が松原氏に個人的に話しておるということをわれわれは聞いおるのでありまして、とうてい解除を待つて清算人という形で話は進まぬと思うのであります。この点もひとつ現地にあります外交機関等を通して、すみやかにいろいろ御検討を願つて、せつかく立ち上つて来る移民問題、それに先ほど来いろいろ申すように、予算の点においても機関の点においても不十分なのでありますから、ひとつこれを取上げて、外務省は真剣に取組んで、在住ブラジル同胞のために、またこれからブラジルへ参る新しい移民のためにもいいように考えてもらわなければならぬ。こう考えて参りますと、政府独立後の再出発する移民問題に対して、いろいろの点において不十分だ。ことに当面の問題でもう二、三お聞きしなければ私たち安心できない問題があります。それは計画移民二千名を送るといつておりますが、ブラジルへいつ送つてもいいのではありません。私たちはブラジルの土地を実際たずねて、どうやつて農場が経営されるかを研究して来ておるのでありますが、とんでもない時期に移民を入れられたつて、半年ぐらい遊んでしまわなければならぬ。どうしても木を切つて山焼きをする、続いて植付のできるという時期、いわゆる適切なる時期に移民を送り込まなければ、簡単にいえば、ブラジルでむだな時を経費をかけて暮さなければならぬのであります。そうなりますと、移民輸送という問題はなかなか簡単な問題ではないと思う。一体この二千名の人を送るといつても、いろいろな点に相当努力せねばなりませんが、第一船はどこの船で送るか。現在見ておりますと、オランダの船が日本を通つてブラジルへ行つておるようであります。また今までの多くの人はオランダの船で行つているようです。できるなら海運界の復興ということをはかつて日本の船で行くべきだと私は考えるのでありますが、船会社等の意向を聞いてみると、現在ある船では各国の移民法に触れてしまつて移民を輸送することはできぬといつておる。それではそれを改装するといえば、莫大な経費がかかつて、船会社はみずからの手でできぬ、政府の補助がなければとうてい不可能だといつておる。この移民送出に対して、外務省はどう考えておるのか。外国船に依存するつもりか、それとも今言う通り、いつ何名を船に入れることができるのかということを考えなければならぬと思うのですが、こまかいことはさておいて、大体日本船で行くつもりか、外国船で行くつもりか、また日本船で行くとするなら日本船の改装等に政府は補助金を出すよう努力をするのかどうか、これらの点をはつきりしていただきたいと思うのであります。
  26. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 お説のように、ただ漫然と移民を送るというわけには参らないのであります。やはり雨期の関係その他を考慮いたしまして、おそくとも八月までには送り出さなければならないわけであります。そういう目標のもとに、目下配船の関係あるいはその他の補修一切の仕事を着々と進めておりまして、目下欧米第二課長がブラジルへ参つていろいろ折衝をいたしております。また船の問題でありますが、昨年末新造いたしました大阪商船のさんとす丸を利用したい。ただこれだけではもちろん十分ではありませんので、今後できる限りほかの船を改装いたしまして、できるだけ日本の船で運びたい。しかし日本の船で足りない部分は、やむを得ずオランダの船あるいはほかの国の船を利用したい、こういうように考えております。
  27. 今村忠助

    今村委員 一応のお考えを承つたわけでありますが、これも先ほどのいろいろの諸問題とともに、よほど政府当局においては専任担当者を置いて御努力なさらぬと、世間でよくいうどろなわ式では、どんどん移民が送られておるが、仕事の実際面でその方の用意ができておらぬというようなことになろうかと思いますので、ひとつ御努力願いたいと思います。  次に、これらのわずかずつ出て行く移民だけでは、とうていこの敗戦後の四つの限られた島に八千五百万を持つた日本としては不十分だと思うので、どうしても私は国際連合に訴えまして、人口問題を世界的に処理するというように世界の正義感に訴える必要があると思う。ことに最近沢田氏が国連の専任大使として行かれるということでありますので、これらの大使とも外務省はこの問題にも触れて折衝してもらいたいと思うのであります。とにかくわが日本敗戦の結果、いわゆる侵略の手先だという形で、アジアの天地から、戦時中おそらく四百万を越えるような移民があつたものが、戦後送り返されて来ておる。これらの者は相当な技術者もあり、必ずしも海外移民として不適当な者ばかりであつたとは思わない。これらの人は所を得ずして、その技術を生かすこともできず、そうして国内においては恵まれない生活をしておると私は思うのであります。そう考えますと、国連に訴え、世界各国の正義感に訴えて——世界にはまだ未開発地がずいぶんございます。たとえばボルネオとかニューギニアというような地域、その他にも実に広大な未開発地があるのでありますから、その未開発地を国連が先に立つて開発する、それにこの人口問題を処理するという問題をも加味して、何かここに計画が立てられたらいいかと思うのであります。われわれ国会から送られてアメリカへ参りました際に、要路の人にいろいろ話しますと、結論は、はやり国際連合に日本は訴えたらいいだろうということを、当時の個人的な意見でありましたが、各地で承つて帰つた。たまたま沢田大使が国連へ行くというように新聞等では見受けておるのでありますから、ひとつ将来の人口問題というか、移民問題の解決あるいは世界の未開発地を開発するとか、そういうものと関連した一つ委員会であるとか研究機関というようなものを、国連につくつてもらいたいと思うのでありまして、これらについて一体外務省は何らか考えているかどうか。またことに沢田大使が行くとすれば、沢田大使にそれらのことを交渉させる用意があるのかどうか、この点をお聞きしてみたいと思います。
  28. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 お説の通り世界は広く、日本四つの島にとじ込められておる、こういうような関係もありまして、日本の窮状を世界に訴え、あるいは国際連合に日本の急迫した事態を訴えまして、移民等の要請をするということも、十分考えなければならない問題でありまして、あるいは沢田大使がいずれ国際連合の大使として赴任する場合におきましては、もちろんそういう問題についても要請する予定にいたしております。ただ移民問題は相手がある仕事でありまして、日本だけの希望ではどうにもならないことでありますので、相手国とも十分話合いをつけて参らなければならないわけであります。そういう関係からいたしまして、国際連合に要請する一方、また特定のブラジルあるいはその他の国とは移民協定等を締結いたしまして、円滑に移民を送出いたしたい、かように考えております。
  29. 今村忠助

    今村委員 最後に今までの質問を総括して、もう一度確かめておきたいと思います。政府はいろわれの点から努力いたしたいという御返事、御回答があつたのでありますが、ことごとく不十分である。簡単に申して、政務次官の個人的意見を承つたように私は感ずるのでありまして、もう少し外務省の中で、これらのものが秩序立つて、具体的に研究もし、調査もし、準備もされておらなければならぬと思いますが、その片鱗すらうかがうことができなかつたことは、われわれ多少でも海外に関心を持つておる者といたしましては、まことに慚愧にたえないものがある。このまま捨てておけぬような気がするのであります。しかし私は、これは単に政府を叱責し、あるいは鞭撻したというだけではおけないのでありまして、国会においても外務委員の各位に御相談申し上げて、何とか再出発する移民問題について、しつかりと準備したいと思うのであります。これは私たちは政府に伺つてただ非難を加えるだけではならぬので、相寄つてこの移民問題をほんとうに力強いものにいたして参らなければならぬと考えるのであります。そこで、もういろいろお聞きするよりも、むしろ率直に、当局側の真意を聞いて協力して行く態勢をとりたいと私は考えておるから、もう一度お伺いするのでありますが、官房長官等に会つて寄り寄り話を進めておりますと、移民局をつくつてもいいらしく答えられております。そこで私は移民局をつくるなら、やはり外局として、この局長は、実は率直に申して現在外務省におる人ではちよつと無理ではないかと思うのであります。これは過日も私申したのですけれども、大体外交官になろうという人が移民問題を取扱うことをきらうのは当然なことでありますので、この移民というか、事務というか、こういう違つた面の努力というものは、やはりむしろ他から適当な人を得なければなかなかうまく行かぬと思う。簡単にいえば、二年か三年で局長をやめて、次の大使あるいは公使として出て行くということを考える人では、私たち多年の経験からも不可能だと思うのであります。移民問題にとつ組んで、海外に一生をささげるといいますか、まつたく生命を打込んで行くような生活をして行く人でなければならぬのでありますから、どうしても私は短時日に栄転するというと語弊がありますが、他にかわつて行くというような制度の中に入つている人が衝に当るのでは、不十分だと思うのであります。この点をよく考えて、移民局は外局にしてもらいたい。そうして移民官とでもいうような人は、特別に適当な人を任用するということを外務省でもお考え願いたい。そうして再々申すところの再出発するこの移民問題を軌道に乗せてもらいたい。われわれもそれについてはあらゆる努力も協力もしたいと思つておるし、予算関係については進んで大蔵当局を鞭撻するといいますが、圧力を加えて、この実現を認めさせるように努力いたしたいと思うのであります。そこで一体外務省の考えておる移民局というものは外局にするのかどうか、またその内容はどの程度のものを考えておるのか。これもこの際多少金がかかつても、他のものと違うのでありますから、行政整理で人を減らしておりますので……というようなことは私は理由にならぬと思う。吉田総理ははつきり言つておる。必要とあらば必ずしも人を減らすのではない、その面については十分人をふやしもするし、新たにつくりもするということを言つておるのであります。この問題は、単なる行政整理の一環でできるだけ簡素にというような問題ではないので、私はできるだけ力強く再出発してもらいたいと思うのであります。一体外務当局移民局を外局とする決意があるかどうか、その内容をどの程度にするか、先ほど次官は移民保護法も、移民金融公庫も努めて早い機会に用意したい、こう言われたのでありますが、やはり今国会に出す用意をしてもらいたい。われわれ議員の方でも、これらのことについては、場合によつては進んでわれわれの提出にもしたいというような心境でおるのであります。この点はこの際御答弁いただかなくてもけつこうでありますが、われわれ協力態勢をとつて行くつもりでありますから、当局側においてもぜひひとつさように努力をいたしてもらいたいと思います。  最後に、当面のこれらの問題について、政府の決意をお聞きしたい。これらの問題を処理するために、どうしても移民局というものが中心となると考えますからお聞きするのでありますが、なおそれが援護といいますか、それを助ける意味において、内閣移民審議会をつくつて、権威ある人々が集まつて、このできて来る移民局のいろいろの計画がうまく進むように協力させるべきであると私は考える。この二つの点が今後移民問題を再出発させる上において最も重要なものと信ずるから、最後にもう一度当局の御意見を聞くのであります。
  30. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 移民局設置の問題につきましては、内閣官房長官を中心といたしまて、寄り寄り真剣に、慎重に話を進めておりますことはお話通りであります。ただこれを外局にするかどうかという問題でありますが、行政簡素化を一応内閣として取上げております今日、はたして外局になるがどうか危ぶまれるわけでありまして、一応外務事務当局といたしまして考えておりますのは、内局といたしまして第一課、第二課、第三課、そのほかに神戸移民あつせん所の三課一所を考えております。なお外務省の現在の役人だけでは不十分である、民間のエキスパートを採用する考えがあるかどうか、こういうお尋ねでありますが、この点につきましては、私必ずしも外務省の役人で不十分であるとは考えておりませんが、民間に適当な人があれば、特別な移民官というものに採用すべく、よく大臣とも相談いたしまして、実現できるようにいたしたいと思います。なお移民審議会あるいはまた移民法の制定をできる限り早く、今国会に問に合うようにせよ、こういう御要望のようであります。私どももできるだけ今国会に間に合うようにやるつもりでありますが、はたして間に合うかどうか、この点ははつきりお約束いたしかねますが、可及的すみやかに実現いたすように努力いたしたいと思います。
  31. 今村忠助

    今村委員 この際委員長に申し上げておきたいと思います。私は外務委員会におきまして、今国会の当初に、移民委員会を設けてひとつ研究してもらいたいということを申し出たのでありますが、これは委員長理事会に諮つて移民の問題はこの委員会検討することにしたいという御意向だということを承りました。それもけつこうであります。そこで今、外務当局移民に関する一応の所信をお聞きしますと、簡単に申して、進みつつある移民問題に対して不十分であるように考えるのであります。これはひとつ適当の時期に、外務委員だけで移民に関する懇談をひとつしてもらいたい。そして政府の今考えておる移民に関する点では、簡単にいつて不十分なものがあるのでございますから、これをわれわれは国民の代表として、何か本格的な軌道に乗るように努力いたしたい、これをぜひひとつ委員長に要望いたしておきます。ちようど外務大臣が見えて、私外務大臣の所信も承りたかつたのでありますが、与党のことでもありますし、今外務政務次官を通して移民に関する所信もいろいろ承り、その間考えている点も申し述べておきましたから、重ねてお伺いする煩雑さを避けまして、独立後の移民問題再出発にあたつて、ぜひひとつ外務大臣も全力をあげていただきたい、これを要望いたしまして、私の質問を終ります。
  32. 中山マサ

    ○中山(マ)委員 ちよつと関連して。この移民問題に関しまして、私がお願いして御採択いただいたと思いますが、アマゾン流域における移民が逆に帰つて来た問題がございます。あの人たちを呼んで一応話を聞くというあの問題は、その後どういうふうになつておりますか、お伺いをいたします。
  33. 栗山長次郎

    栗山委員長 お答えをいたします。その問題については目下人選中でありまして、適当な人が見当り次第、参考人として本委員会に出頭を願つて意見を聞きたく思つております。  今村君にお答えをいたします。ただいまあなたが御提案なさいましたこの委員会における移民問題に関する協議会とでもいうべきものを、理事諸君とも相談の上、実施をいたしたく存じます。  政府当局に申し入れます。移民審議会、またはその名称が対外的に考慮すベきものであるとするならば、人口問題審議会というような名称下において、実質上は移民問題を主として審議するような機関についての構想を練つてみて、この委員会にすみやかに報告せられんことを望みます。イエスであつても、ノーであつてもけつこうです。  いま一つ外務当局に督促いたしますことは、東南アの諸地域、ことにインドネンアに対するポンド決済問題について、外務、通産、大蔵三当局協議の上、すみやかに案を立てて当委員会に報告されんことを要望してありますが、その御返事がありません。これは次回の当委員会の席上で、経過でもけつこうであるから報告されんことを望みます。  第三に外務大臣に要望いたします。この委員会は水曜日と土曜日を定例といたしております。主管大臣でありますから、この委員会の開催の日には努めて御出席されますように要望いたします。もとより重要国務に携わる外務大臣でありますから、その時間を有効適切に使わなければならぬことは、本委員会も十分認めるところでありまして、大臣の時間がむだになるようなはからいはいたしません。  以上要望いたします。楠山義太郎君及び辻原弘市君から行政協定実施上の一項目につき緊急質問の要望があります。これを許します。桶川義太郎君。
  34. 楠山義太郎

    ○楠山委員 移民問題に関しまして私も関連質問をしたがつたのでありますが、時間がだんだん切迫しましたので、行政協定の実施に関連いたしまして、ことに和歌山県大島村の関係について、ちよつと質問したいのでございます。  これは昨年末、多分十二月の二十四日だつたと思いますが、私は簡単ではあつたが、大体どういう経過になつたかということを、お尋ねしておいたのであります。それから大島村では全村こぞつて反対の気勢をあげており、場合によると不祥事件を起す危険すらあるというようなところまで御説明申しておいたのであります。今日、その後の発展はどういうふうになつているか、詳しく御説明願いたいと思うのでありますが、仄聞するに、何でもこの二十日ごろ閣議にかけるというようなうわさすらあるのでございます。それほど決定が差迫つておるかどうか。と申しますのは、詳しく言わなくても当局では御存じでありましようが、この大島村というのは島にあつて、この島に米駐留軍の電探基地設置計画があるということでありまして、これに対しては、その実情を申しますと、土地の者は一人残らずといつても言い過ぎでないくらいの反対気勢を示しておるのであります。むろんどこの土地におきましてもその共通点がありまして、たとえば土地が買収されるとかいう経済問題もあり、あるいは風紀の問題はゆゆしい問題であるといつて取上げられることがあり、あるいは戦争のときにはすぐねらわれるという敵軍のターゲットになるおそれがある。こういうことはどこでもいわれることで、大島村でもむろんいわれております。しかしこれは基地に選ばれ、ねらわれているところは、全国至るところみな同様に感じておる共通点であります。従つて私は大島村の代表者諸君に対しても、それだけではあまりやかましく言うことはできない。実は私は大島村の村民に対して、むしろさとすような態度をとつておりまして、全国どこへ行つても同じような見地から、特に反対の声をあげることはあまり好ましくないことである。むしろそれだけならば、鳴りをしずめてもいいのではないかとすら言つておるのであります。しかしこの大島村に関しましては、よそと違つた事情があるのでありまして、この点を少し申し述べまして政府当局の御反省、ことに今後の御参考に供したいと思います。  と申しますのは、あれはよそのところと違いまして島でありますから、陸上との交通が不便であります。同じ爆撃ないしは艦砲射撃その他の敵軍の攻撃を受けるに際して、陸続きであれば何となく逃げやすいというような感じを抱きがちのものであります。ところがここは島でありまして、本土とかけ離れておるために、何か流しものにあつたような気持にある。そういうときの恐怖心というものは特に強いのであります。こういうことがいえるほかに、もう一つ事情を申しますと、この村は非常に平和な村でありまして、今どき実にうらやましいくらいの桃源郷であります。漁師村でありますけれども、大体夏は夜、つり船を出して漁に出かけられるのです。そういうときには村の若い者などは全部出払つてあとつた者は老人とか婦女子だけでありますが、暑いときであるから雨戸を締めないで、あけつぱなしにしておいてもさしつかえないくらい平和な村であります。でありますから、もし米駐留軍約二百人と予定されている者が来るようなことがあつたら、風紀上よそとは比較にならないような非常な危険を感ずる。従つてつりに行つている若い者は、おちおち安心して魚つりの商売はやれないことになるのであります。この点はよそのところと非常に違つているところであります。これも一つの特殊事情であります。それから小さい村でありまして、わずか人口三千くらいのところであります。ここにはよそで見られるような、飲食店その他そういう風紀上いかがわしいものはほとんどないのであります。従つてこの村では、よその土地にありがちな、道義の上、経済問題その他から、町もしくは村が大体反対しても、町会議員が反対しても、村民の一部に営利上の都合からこれを歓迎するというようなことはないのであります。従つて私は極言すれば、一人残らず、村民あげて反対しているような今日の状態であります。こういう特殊事情を十分おくみになつて、軍事上どれだけの理由があるか知りませんが、これだけのものであれば、よくよくの場合でないと、ここに電探基地設置というような措置をとられることのないように、——承りますれば、合同委員会というものは、日米一対一の立場で論議することができるようであります。こういう点は、軍事上の必要性と、国民感情、国内政治をよく勘案されて、他に候補地を求められるように努力されるのが当然ではないかと思うのであります。従つてその後どういう経過になつておりますか。昨年末から今日まですでに二箇月ばかりたつておりますので、この点お聞きいたしたいのでありますが、政府当局の御答弁を願います。外務大臣から御答弁願えればなおけつこうでありますが、場合によれば政府委員の御答弁でもけつこうであります。
  35. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 お話の点につきましては、和歌山県当局を通じまして、また直接関係者より現地の事情は十分承知いたしております。本件につきましては、レーダー施設を運営するため、百人あるいは二百人程度の小部隊を収容する兵舎を建設する必要があるのでありまして、現在問題となつております大島は漁村地帯であり、平和な村であることも承知いたしております。島民が米国兵の駐在に対して危惧の念を抱いておることも、十分外務省としては了解いたしておるところであります。合同委員会におきましても、できれば他の地区を選ぶように目下交渉中であります。従つて二十日の閣議にかかるというようなことは全然ございません。以上お答えいたします。
  36. 栗山長次郎

    栗山委員長 辻原弘市君、お加えになることがあれば発言を許します。
  37. 辻原弘市

    ○辻原委員 ただいまこの問題につきまして、現地の事情その他については、楠山委員から御質問がありましたので、その点については申し上げませんが、細部の問題につきまして、二、三お伺いをいたしておきたいと思うのであります。御答弁は担当者でけつこうであります。  ただいま政務次官の御答弁にもありましたが、合同委員会において、外務省の態度として、日本側からこの施設については変更方の御意思をもつて臨まれておるということをただいまも承りましたし、また以前にも承知いたしておるのでありますが、それについてアメリカ側としてどのような態度でこの基地設置に臨んでおるか、この点に関してまずお伺いをいたしたいと思います。
  38. 田中弘人

    田中説明員 レーダーにつきましては、御承知のようにその地点からレーダーを運営いたします際に、この場合は海面でございますが、遮蔽物がないというのが一つの技術的な要件になるわけであります。そういう点におきまして、適当な地点というものは非常に限定をされておりますが、現在空中写真その他あらゆる方法によりまして、ほかの地点で技術的に可能であるかどうかを研究中であります。
  39. 辻原弘市

    ○辻原委員 ただいまレーダーにおいて技術的な検討を進めておるという御答弁でありますが、この場合もし技術的な検討の結果、どうしても大島基地について変更ができないという申出がありました場合、外務省としてはどういうふうにこの基地の問題を取扱われようとするのか、その点についてお伺いいたしたいと思います。
  40. 田中弘人

    田中説明員 その点につきましては、現在技術的な結論が出ておりませんので、一気に結論として、やむを得なければ大島地区を使用するということは申し上げかねると思います。ただその際におきましては、もちろん兵舎の設置によりまして起り得るいろいろな事情をさらに再検討をいたしまして、重要な問題でございますから、慎重に関係庁とも審議の上、どういうふうな決定をするかあらためて協議をするということになつております。
  41. 栗山長次郎

    栗山委員長 辻原君、いま一問でおまとめを願います。
  42. 辻原弘市

    ○辻原委員 これは重要な問題でありますので……。
  43. 栗山長次郎

    栗山委員長 基本的な事項について質疑応答をなさいまして、行政の具体化につきましては、後刻行政当局と御懇談願います。
  44. 辻原弘市

    ○辻原委員 ただいまの御答弁でありましたが、もし米側が応じないで、あくまでもこの問題について、大島基地に設定するといつたような場合、土地収用法等の発動については、これは考慮せられるのか、あるいはこうした基地の問題について、土地収用法を発動せられたことがあるのか。  さらにこの問題に関連して、先ほどの外務政務次官の御答弁の中に、米側との折衝にあたつて変更方を申し出るのに、その近辺について、二、三物色して、これにかわる基地を考慮せられておるようなお話がありましたが、そのことは事実であるかどうか。この問題につきましては先般衆議院の休会中におきまして、参議院の調査員が参りまして、若干この問題に触れられました。そうして具体的に大島基地の近くの太地という町がその候補に上つておるかのごとき、そういう口吻を漏らしたために、現地では大恐慌を来したのでありますが、これに変更される場合の具体的の変更予定地というものが、すでに日本側に予定されて、米側に申し出られておるのかどうか、その点が第二点。  次にいま一点は、この点につきましても重要な問題でありますからお伺いをいたしておきたいのでありますが、かかる基地設定にあたつてやはり流布せられておる問題は、基地がつくられると道路その他の施設が非常に改善されて、その点において現地に非常に利すのでありますが、このような基地の問題は現行の特殊事情からどうしても賛成しがたいが、そういう施設の面等から、やはり默つて見ておらなければならぬということがいろいろ言われて、あるいは村民あるいは村の理事当局に非常に混惑の事態を来しておるのでありますが、はたしてこういうような道路の改修の問題あるいは施設改善の問題と、基地設定の問題は具体的に関連をしておるのかどうか、第三点としてそういう点についてお伺いいたします。  なお、ただいまの御審弁によると、さらによく関係当局との折衝によつて善処したいというお話であります。関係当局に折衝するのもけつこうでありますが、現地についていま一度精細な調査をやられるようなお含みを持つておるかどうか。
  45. 田中弘人

    田中説明員 収用法の関係につきましては、これまで発動をいたした実例はございません。今後もでき得る限り収用法の発動というふうな方法は避けたいというのが方針でございます。  それから他の候補地の問題でございますが、先ほど名前の出ました地点につきましては、これはわれわれの研究という点からは何らの根拠のないことでございます。従いまして、その地点を考慮したことはこれまではございません。  それからレーダーの関係で非常に技術的でございますので、山の頂上であるとか、岬の先端であるとか、そういう幾つかの地点を研究中ではございますが、現在までは結論はまだ出ておりません。  それから最終決定の際は、もちろん現地に当然のこととして担当官が参りたいというふうに考えております。  道路その他につきましては、米軍施設の決定によりまして、特定の道路に対する車両数の増加とか、そのために道路の破損状態が特にひどくなるとかいうふうな事情がございますので、そのときの事情によりまして、米軍施設が設定をされれば、それに関連をした道路の修理、場合によりまして新設というふうなものを考えているわけでございます。
  46. 栗山長次郎

    栗山委員長 楠山義太郎君、簡潔に一問でおまとめください。
  47. 楠山義太郎

    ○楠山委員 えらく厳格な委員長のお言葉でありますが、政府当局の御答弁を聞いていますと、いかにもよそに替地を求めていると言いながら、実際は大してやつていない。何とかごまかして、要するに大島に無理押しつけにするのではなかろうかという疑いを抱かしめるものがあります。今辻原君が言つた代地などについても、ちつとも考慮していないというわけです。しからばほかにどういうところに替地をお求めになつているか、はつきりしたところを具体的にお示しを願いたいのであります。しからざる限り、私が今申し上げましたような疑いは氷解しないのであります。これは非常なしろうと論になるのでありますが、大島村のごく先に通夜島という島があつて、ほとんど人が住んでいない。そういうところを使われるというのならば、多少緩和されるという——たとえば日本の地図を見ても、四国の室戸岬というところもこれはみさきになつているが、島でなく陸続きであるのでありますから、敵軍の攻撃を受けたとき、大島村の村民よりもいくらか恐怖心が少いのではなかろうかと思われる。そういうようなこともわれわれしろうとでもちよつと感づかれるところであります。専門におやりになつている政府当局で、そこらについて少し調査その他に手を入れられているかどうか、はつきりと具体的な御説明がない限り、われわれはこのままでは引下りかねるのであります。御答弁を願います。
  48. 田中弘人

    田中説明員 四国のお話が出たわけでございますが、レーダーの設置にあたりましては、一定の間隔を置きまして、現在日本周辺にレーダー施設を設定をいたしておりますので、四国の地点によりまして、紀州の南方海面をカバーするということは、困難であるという説明を受けております。  それからどういう地点をほかに選ぶかという問題でございますが、非常に技術的な問題がございますので、日本側としましても、たとえば奥地の山頂などによつて代替し得ないか、あるいはその他の図面によりまして、一応海面に突出している地点等につきまして、米側の見解をただしておりますが、これは非常に技術的でございますので、主として米国側に大島以外の地点でどういう適地があるかということの研究を依頼いたしまして、作業を進めているわけでございます。この問題につきましてはすでに数回の会議もいたしておりますし、現在大島をすでに予定しまして、他の研究は怠つているという状況ではないわけでございます。
  49. 栗山長次郎

    栗山委員長 この問題に関する爾余の点については、両委員と行政当局と御懇談のほどを願います。  次の質問順位は高岡大輔君でありますが、もし中山マサ君の外相に対する御質問が簡潔であれば、高岡君の御了解を得て、中山マサ君にお許しをいたします。
  50. 中山マサ

    ○中山(マ)委員 この前の皇室の私事にするか、国事にするかという問題は、専門のお方からお答えをいただきたい。
  51. 栗山長次郎

    栗山委員長 皇太子の渡英の件を皇室の私事にするか、国事にするかということのお尋ねであります。
  52. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 お答え申し上げます。御質問の御趣旨は、皇太子殿下の御渡英が、憲法第七条の天皇の国事行為の代行として行われるのであるか、そうでないものであるかというふうに伺つておるわけでございます。法制当局といたしましては、それは国事行為の代行としてではなく、国事行為以外の天皇の儀礼的行為の代行であるというように考えておる次第でございます。
  53. 中山マサ

    ○中山(マ)委員 そこで、私この前にお尋ねしたこの問題に関連して、それならばなぜ国の出先機関である駐英大使をこのことでわざわざ呼びもどしたか、これは国家の出先機関であつて、皇室の私的な出先機関ではない、この点がどうもぴつたり来ないから、これが国事であれば、駐英大使がこの打合せのために帰つて来られても当然であろうと思いますが、……ということをついでに申し上げておきましたが、あなたとしてのこれの御回答を願います。外務大臣からは、これはパリにおけるいろいろな会合、英国内のいろいろな情勢の報告を主体として帰つて来られたのだという御説明がございましたが、私は何だかそういうふうな気がしないのであります。それは逆であつて、打合せが主体で、そういうことはついでながらの御報告であろうと私はこう受取るのでありますから、この点がはつきりしないのであります。
  54. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 ただいまのお話の中にございました、駐英大使が日本にお帰りになつていろいろお打合せがあつた、このことがどういうことでありますか、私から申し上げることも不可能でございますし、何とも申し上げられないのでありますが、だたお話の点に関連して申し上げるとするならば、戴冠式への御参列に、一体それではどういう方に代行させたらよいのかということの面から、お答えするよりほかいたし方がないと思うのでございます。これは先ほど申し上げましたように、天皇の公事たる事実行為でありますから、これを何人に代行させるかということは、実は別に法律上の制約があるわけのものではないわけでございます。しかしながら、戴冠式に御参列になるということは、事柄の性質からいいまして、これは皇室相互の儀礼の面もあると思われますので、そういう面からいいまして、皇太子がこれを行わせられるということは、その限りにおいてはもちろん適当なことであろうと思います。  大使の方のことにつきましては、私からちよつとお答えいたすことができませんので、あしからず御了承を願います。
  55. 中山マサ

    ○中山(マ)委員 それでは了承いたしました。
  56. 栗山長次郎

    栗山委員長 高岡大輔君、外務大臣の出席時間は限られております。外務大臣質疑に集中せられんことを望みます。
  57. 高岡大輔

    ○高岡委員 二月四日付のインド政府の通告として、駐日インド大使から外務省の方へ、日本とインドとのいわゆる目印製鉄会社をつくる話合いの打切りが申し込まれて来ております。これは高碕氏がアメリカまで行かれて、相当外務省としては力を入れてこの問題に当られたのでありますが、どういうわけか先方から話を打切ろう、これ以上の話合いはできないという一種の断りが来ているのでありますが、それについてのいきさつをひとつ伺いたい。
  58. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは私どもも残念なのでありますが、いろいろ理由はあるのでしよう。たとえば一億と初め考えておつたけれども、一億で足りなくなつたとか、あるいは世界銀行の融資に対する保証が、日本側の態度があいまいで保証の方がよくわからないとか、あるいはまた日本側に経営権を与える点が、インドとしては困るというようなこともあるといわれておりますし、さらにまた第三国側の競争の結果でもあるというふうにいわれておりまして、インド政府としてもはつきりした理由は正確には述べていないのでありますが、常識的に想像しますと、経営権を日本側に与えるというようなことは、インド政府としては困るということは想像されるのであります。しかしながら当方から言いますと、相当の金額を投資するのでありますから、その経営がうまく行かないで、投資が結局実を結ばないということになつては、これまた困るのでありまして、その辺はどうも話合いがつかなければ、せつかく努力したのであるけれども、やむを得ないとも考えております。
  59. 高岡大輔

    ○高岡委員 今の外務大臣の御答弁でありますが、外務大臣としては、かつてはインドの総領事までなさつた方でありまして、インド人の気持はよくおわかりだろうと思う。今の首相のネールさんが一体どんな政治活動を今日までやつて来られたかということもおわかりだと思いますし、また国民会議派の今日まで叫んで来たといいますか、インド三億五千万の大衆に向つて公約して来た筋合いからいいましても、そういう点はよく外務大臣は御存じだろうと思う。この日印製鉄会社の話が、ここで一頓挫を来したということは、日本の外務当局がインド政府と直接話し合わないで、その方の話を先にしないで、ただちにアメリカヘ行つて、金の方から先に始めたというところに、インド人の国民感情を害したのだ、こう私は一応考えざるを得ないのです。と言いますことは、このごろいろいろの東南アジアに対する話が出ますけれども、それらの話を聞いておりますと、一口にいうと、どうも日本は何もかもアメリカの親船に乗つて——これは非常にほめた言葉で、悪い言葉でいえば、手先になつて何かやるという感じを、東南アジア諸国の人々に与えているのじやないかと思うのです。もちろん外務大臣はそういうお気持は全然ないと思います。またここに新聞にも出ておるのでありますが、先日わざわざそういつたようないろいろな東南アジアの問題について、倭島アジア局長が出かけて御苦労なすつたのでありますが、局長の威風堂々たるところが逆に災いしたのかどうか知りませんけれども、こういうことがいわれております。これは新聞記事ですからあるいは違うかもしれませんけれども、「日本国民はインドネシア独立意味をあまり理解していないように思われる。われわれは日本との協力を切望しているが、戦時中ここを占領していた日本軍及び官憲の態度と戦後来た日本人の態度は少しもかわつていない。このほど来た倭島アジア局長の態度はその典型的なもので、依然として植民地的態度をとり、われわれをいたく失望させた。」こういうことをインドネシアの国民党総裁が言つているのであります。
  60. 栗山長次郎

    栗山委員長 高岡さん、どの新聞ですか。
  61. 高岡大輔

    ○高岡委員 これは二月十五日の読売新聞の夕刊であります。こういうことが新聞記事に出ておるのでありますが、この態度は、何も今の目印合弁の製鉄会社には関連しないと言えば関連しないのでありますが、こういう気持がどこかに出ておるのじやないか。いわゆる俗にいう外務大臣の向米一辺倒外山父が非常にさわつておると私は思う。言葉をかえていいますと、これはインドと十分の話合いをして、その話合いの結果、話はきまつたが、さてそれじや金の方はどうするかという段になつたときに、初めてインド側と外務大臣とがここで手を握つて、共同で国際銀行から融資を仰ぐという工作をされる、高碕さんがアメリカまで行つて交渉されることが順序なのであつて、先にアメリカに行つて国際銀行と話をつけて——しかもその話も、世界銀行から言わせれば、インドの事情については話がはつきりしないものだから、高碕さんとしてもそこにはつきりした信念が得られなかつた、そういうあやふやなことで日印の交渉をされるから、問題が一応ここにさたやみになつたのだ、こういうことを言い得るのじやないか。そこで私のお聞きしたいことは、この問題が今日まで来ます間に、一体インド駐在の西山大使はどこまでインド政府と直接に話をされたのか、それとも外務省がこつちにおります駐日インド大使と話をされたのか、あるいは高碕さんとアメリカにおりますインドのデサイ氏と話をされたのか。一体どこに重点を置いて話をなさつたのか、その経過をお聞きしたいと思います。
  62. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 まずお断りしておかなければならないことは、高岡君は誤解しておられるかもしれませんが、国際銀行というのはアメリカの銀行ではないのでありまして、先般ガーナー氏が来朝されたときにも、関係者に何度も念を押してこれはアメリカの資本が多く入つており、アメリカに本店はあるけれども、アメリカの銀行じやないのだ、従つて対米融資のようなことを自分に話されても困る、自分は世界銀行の副総裁としてアメリカの利益は何ら考えておらないのだという話をされたことは、あるいは御承知かもしれませんが、ここでしばしば繰返したことでありまして、われわれが世界銀行を考えておるときには、アメリカの金を持つて来るという意味じやないのでありまして、世界銀行の金を持つて来るということなのであります。  それは別といたしまして、この問題の性格は、政府政府との間の話合いではなくして、高碕氏なりあるいは鉄鋼業者なりの、つまり民間側の投資及びこれに基く鉄なり鉄鉱石なりの輸入という問題でありまして、高機氏なりその他の人々がいろいろの経費を負担して先方とだんだん話を進めておる普通の商談であります。ただその商談が性質からいうと、たいへんけつこうであるから、政府としてもできるだけそれを側面的に援助するわけであつて、話合いがつけば援助をする、投資の面についても融資をしよう、こういうつもりでやつておるのでありまして、政府が先達になつて両国政府間に定める契約というような種類のものではありません。従いまして、側面的には西山大使もインド政府当局と話をしております。またこちらでも東京のインド大使と話をしており、高碕氏その他駐米大使館もインド側なり国際銀行側なりと話をいたしておりますが、すべてこれは側面的な援助の問題であります。従つてうまく行けば、これに対して極力援助するけれども、うまく話合いがつかなければ、これはいかんともいたし方がない、こういう性質のものであります。なおわれわれとしては、経営権の問題等もありましたでしようが、この点についても、もしプライヴエートの話合いがそれでいいということになれば、別に初めから経営権をこちらへとつてはだめだということを言うべき筋合いのものではないのでありますから、でき得るならば、何とかそれでまとめて行きたい。こちら側の投資をする方面は、融資は政府から外貨を求めるにしても、投資自体の円貨は自分の会社なりその他からくめんする責任を持つものでありますから、その金が行方不明になつては、それは困るのでありましよう。従つて経営権の問題も当然これは考えられることであります。なお世界銀行から融資を求めざるを得ないのは、額が一億という大きな金でありまして、これをかりに半分を日本が出すことができたにしても、残りの半分をインド側が負担するということさえ困難な模様でありますから、そこで日本側の経済侵略というような印象を与えないように、二千五百万、二千五百万、そうして五千万は世界銀行、こういうような話合いに行つたのだろうと思いますが、ただそれがうまく行かなかつたということであつて、これは商談でありますから、うまく行くときもあり、行かないときもある、これはやむを得ないだろうと思います。
  63. 高岡大輔

    ○高岡委員 今外務大臣は商談だとおつしやつたのでありますが、私はこれは単なる商談とは考えないのであります。これは敗戦日本が今後経済的に何とか打開して行かなくちやいけないという、国家的な今後の行き方の一つの大きなことだと思つています。そこでもう一度お聞きしたいのは、一体日本会社、あるいは八幡製鉄でありますとか、あるいは日本鋼管とか、そういつた数社の会社が——この話合いがうまく行つてないという話も一応は聞いているのでありますが、一体政府は今後こうした東南アジアに対して、日本がいろいろと経済的な協力をするということは、これは一つ賠償考え方から、まじめにしかも謙虚な態度で進まなくちやいけないと思うのであります。そういつた場合に、とかく根本をきめずに、最初から野放しにやりますと、民間会社は、どうせこれは慈善事業会社でありませんから、どうしても営利的な方向に走ります。そこでときには非常にみにくいとでもいいましようか、非常な乱脈な競争というものが始まつて来る。それがいわゆる全体の対日感情という大きなものに災いして来るというようなことが往々にしてあるのでありますが、外務大臣としては今後の東南アジアに対する経済問題に対しては、もつと国内のそういつたものを統一するとでもいいましようか、よく話し合う。あなたが中心になつて話をよくまとめる。まとめたところで先方の政府とよく基本的な問題を話し合うというようにしませんと——なかなか商売人がすることはけつこうなことだ、うまく行つたら外務省も手をたたきましようということではいけないのであつて、基本というものはどうしても外務省がみずから乗り出さなければいけない問題なのです。といいますことは、これは東南アジアの諸国が、ずつと前から独立国家であつて、そうして政府がしつかりして、民間も大いに経済的に発展しているという国ならいいのでありますけれども、現在の各諸国政府首脳部は、きのうがきのうまでは民間人といいましようか、大衆だつたのです。その大衆が今日独立したのであつて、これらはみな大衆の輿望をになつてつておる。これは外務大臣もよく御存じでしようけれども、インドにおいてネール氏は財界の協力を得ることは非常にやすい。つまりネールさんの言うことは財界の人は相当聞いてくれる。だからネールさんに話をよくされることが根本であつて、それをインドにおける財界人と日本の財界人との話合いで話が済むというようなことでは、ちよつとあなたの感覚は違うのじやないかと思うのです。一体東南アジアにおける諸国の今日の政府首脳部といいましようか、いわゆる最高の責任者の人たちは、きのうがきのうまでは大衆とともに生活をしておつた人たちでありまして、これらの人に話をすることは、アメリカやイギリスの政府当局と話をすることは、ちよつとその間において違うということを、外務大臣はよく御了承願いたいと思うのであります。私はそう思うのですけれども、しかし一方的にそうきめますのもあれでありますから、その感覚について、外務大臣ははたしてどうお考えになるか、御答弁願いたい。
  64. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 今の高岡君のお話の大体の趣旨は、私も同感であります。ただ少し思想の混乱があるように思われるのは、インドに対して、別に賠償という意味でこういうことをやつているのではないのであります。つまり民間側の——何も民間側に全部やらせるという意味ではありませんけれども、民間側のやることはビジネス・べーシスでやるのが当然でありまして、何も今おつしやるように慈善事業をやろうと考えているのではなくて、もうかるからやろうとしているのであります。ただそのもうかるような仕事が、相手の国にも大きな利益を与えるというところに、外務省は興味があるのであります。賠償の問題は外務省の専管であります。従つて民間の会社に出て行つてもらう必要もなければ、また民間の会社に競争をさせる意思もありません。これはもつぱら相手国の利益を考えて行う問題であつて日本側の利益は、それは終局的には来るかもしれませんが、計画においては考えずに進んで行く問題であります。その他のものは、たとえば今の鉄鋼の問題でも、これは民間側の利益のために、ビジネス・ベーシスで話をする問題でありますから、主としてこれは通産省の所管になるわけであります。ただそれが国際関係からいつても非常にいい案であれば、外務省はできるだけこれに力を入れて、促進方に努力したい。しかしたとえばインドとの間におきましても、何も民間に全部まかせるという意味ではなくて、政府側でやるべきこともたくさんあります。それは政府側で行いますけれども、私の感覚では、インドの人たちに対しては、政府が乗り出して行くという部面よりも、民間側で公平な見地から提携して事業を行うという方が、実は可能性が多いだろうと思いまして、政府側でもしやるとすれば、たとえば先方が要求する場合には、農業の技術者を送るとか、あるいは医者とか、看護婦等を送るとか、あるいは留学生のこちらにおける養成を手伝うとか、こういう趣旨のことはもちろん政府側としてやるべきことでもありますけれども、プラント輸出にしましても、その他の事業の提携にしましても、主として民間側の力によつた方が、かえつてスムーズに行くのじやないかと思つております。しかしおつしやるような事実もありますから、そういうことを行う場合には、もちろん日印間の感情をよくすることが目的でありますから、これにそむくようなことのないように、できるだけ注意をする、これは当然のことと考えております。
  65. 高岡大輔

    ○高岡委員 私がインドに対して賠償云々と言つたとかで、お前は思想的に混乱しておるとおつしやるのでありますが、私は話の途中から全体のことを言つたものだから、そういうふうにお考えになつたのでしよう。これはそれとしまして、インドのこの問題について、私が言おうとすることは、たとえて言いますならば、ベンガル州において最も力のあります財界人G・K・ビルラー氏であるとか、タタ製鉄所の首脳部、こういつたような人たちは国民会議派とは今までいろいろと、いわゆるパトロンとでもいいましようか、政治的に相当金を出した人でありまして、ネール氏とか、あるいは今日大統領になつておりますプラサド氏から話をすれば、話がよく通ずる人たちなのです。ではどつちを先に話をしたらいいかといえば、これはネールさんの方から話をして行く、ないしはプラサド大統領から話をして行くということが、私はインドに関する限りは、どうも本筋のような気がするのであります。それは大体外務大臣も総領事時代からインドを御存じなのですからおわかりだろうと思います。  その次にお聞きしたいことは、今大臣の御答弁の中に、インドで日本の農業技術者とでもいいましようか、そういつたようなものがいるようなお話が出たのでありますが、私も最近インドから、日本から五千人ほど農民がほしいというようなことを言つておるということを聞いたのであります。なぜそんな大勢の日本人がほしいのかといいますと、インド人というものは、農業技術について講師を一人連れて行つて講義をしたところでなかなかうまく行かない。だから日本人をインドの広い所にぽつぽつと住まわせて、一年中いわゆる元日からとでも申しましようか、田に耕して、種をまいて、肥しをくれて、草取りをする、これを一年中やらしておけば、そのわきに住んでいるインドの農民がそれを見て覚える。いわゆる技術者の講習を聞いては、なかなかうまく行かないから、実際農業をやるところを見てひとつ日本の農業を学ぼうという考え方だと私は考えるのでございます。こう申しますと、さつきも移民の問題で二千人、三千人という移民がたいへんな仕事のようなお話であつたのでありますし、また事実大きな問題でもりましようが、インドから今度五千人といいますと、これは相当大きな問題であります。もちろん一ぺんに五千人が行けるわけではないでしようが。去年の十月の末ごろだと思うのでありますが、インドからフオード財団の金でアメリカを一応見て来た帰りに日本へ寄つた。インドの農業食糧省次官というのが団長で、そうして昔スバス・チヤンドラ・ボースさんの輩下とでも申しましようか、同志の一人であるロイ君が副団長で、一行三十人ぐらいの人が来ました。私のちようど郷里の新潟県に視察に来たものでありますから、私が案内といいましようか、県庁の人たちと一緒に案内をして、私は昔学校で習つたインド語を少し使つたものですから、非常に親しみを持つて話をしたのであります。この人だちはアメリカをずつと視察して来たけれども、われわれは何ら得るところがなかつた。ということはアメリカにおける農業の改良ということは、いかに楽をして農業をしようかというぜいたくなのだ。ぜいたくから来た農業改良だ。しかし日本の農業の改革というものは、生きて行くために、こんな小さい所でこれだけの大勢の人間が、一体どうやつたら食つて行けるかという真剣な気持で、土地改良からいろいろなものをやつておるから、われわれは日本の農業視察に来て得るところがあつた。われわれインドにおいてもぜいたくに土地改良をしようと言うのではなく、ほんとうに食えないので困るから、何とかして食糧増産をしなくてはいけないのだという真剣な気持でわれわれは来たのだけれども、さつきも申し上げましたように、アメリカではまつたくぜいたくを見て来たようなものであつて日本へ来て初めてわれわれは思うようなことを、われわれが学ぼうとすることを学び得たと言つて喜んで帰つた。そしていろいろの話をされたのでありますけれども、さて案内をしました人たちは、インドのことがちつともおわかりにならない。だから農具を見せてくれといつて、ずつと農事試験場で農具を並べるけれども、向うはまたその農具を初めて見たので、この農具が一体どう使われるのかも知らないし、説明する方はインドにはたしてどういう農具が適当であるか、インドの農業というものは一体どういうものであるかということを知らないものだから、両方とも探り合いというか、はつきりした話合いができないというようなことで、ある意味においてはどうも不得要領で、インドの諸君は帰られただろうと思うのであります。こうした実際の問題になつて来ますと、ただ農民をこちらから送りさえすればいいとか、ないしはどうこうというようなことをしたところで、これはなかなか容易なことではありません。と同時に今ネール氏が一番考えておりますことは、製鉄事業といつたことよりも、インドにおけるいわゆる灌漑工事の問題といいましようか、農業なのであります。農業問題を一番ネール氏は強く取上げているのでありまして、この問題を外務省としては十分検討しなければいけないと思うのです。外務省としてはインドにいられます西山大使をして、これらの問題について十分御研究つてしかるべきだと考えるのであります。また外務省は農業のことについては、これこそまつたくしろうとばかりでいらつしやいましようから、そういつたような場合には、外務省としては一体どういう手をお打ちになるか、どうなさるのか、これは非常に心配でありますので、お聞きしたいと思うのであります。それは農林省に全部まかせるとおつしやるのか、どういうふうになさるのか、われわれは一人で何人役もできるのだが、外務省としてはどうも一人で何人役もできないだろうと思います。どういう人とどういうところで話をして、どうやるというような具体的なことは、今御返事が願われないと思うのでありますけれども、大体の外務大臣の構想を承りたいと思うのであります。いかにしてインドの農業に日本が協力するかという問題について、外務大臣の御構想を承りたいと思います。
  66. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 まず五千人の農業指導者というお話でありましたが、私どもは正式に何ら聞いておりません。私の想像するところでは、ちよつとこれは大げさな報道ではないかと思います。というのは、今のインドの国民感情からいつて、五千人といえば、相当各地に人がばらまかれることになりますが、そういうことを喜ぶとは考えられないのであります。もつと少数の者ならば、役に立つのではないか。そこでわれわれも協力してインドの農業の発達に役に立つことは非常にけつこうなことでありますから、やるつもりでありますが、いま急に援助してくれといわれても、すぐ用意ができなくては困りますから、農林省等と話をして、いろいろ研究をいたしております。こういうことがだんだんわかつて来たのは、たとえば日本の技術なり、やり方なりをインドへ持つて行けば、インドの米が二倍とれるとか三倍とれるとかいう話を漠然と聞いておりましたが、実はインドの米の種類は、日本の農業技術を持つて行くことができないらしいということがだんだんわかつて来たようであります。もし日本の技術を移入するならば、まず少くとも日本の米種とインドの米種とを混合したくらいの米種でなければむずかしいのではないか。日本の米が向うで育つたかどうか、これは別問題でありますが、そのようなことも農事試験場等で研究しているはずであります。われわれとしても今農林省と話をしておりますが、インドの大使館にできれば農林省の相当の専門家を一人館員として常駐させて、その方面のことを研究させたいと思つております。また農林省としては予算アメリカ、ヨーロッパ等に相当数日本の農民を派遣して、これは今年度もやつたのでありますが、来年度も派遣していろいろ研究をさせることになつているのでありますが、そのうちの相当部分をインドなりその他東南アジア方面にさけないか、農林大臣に話をしております。そういうことで実際に実地にやれる農民が、これは指導ではなく研究に行くわけでありますが、実際に半年なり一年なりやつてみて結果が出て来れば、それによつていろいろ貴重な材料が得られると考えております。ただいいかげんに日本の技術のうまい人を派遣して、向うで立往生になるということでは相ならぬと考えておりまして、そういう方面も今農林大臣と話し合つておりますが、多分これは実現できるのではないかと思つております。それから西山大使は、彼は元銀行家でありますが、この方面にはことに興味の深い人でありまして、いろいろ現地の各方面を視察したり、その他インド政府の有力者と話をして、よくそういう方面の報道をよこしております。われわれとしてはできるだけインド側の要求さえあればこれに協力したいと考えておりますが、それにはやはり的確な材料がなくてやるわけにも行きませんので、今その方面を農林省等と相談して、実地に計画をつくりつつあります。
  67. 栗山長次郎

    栗山委員長 あと三分間で委員会を閉じたいと思います。おまとめを願います。
  68. 高岡大輔

    ○高岡委員 今外務大臣から、農林省から技術者をインドにやるというようなことをおつしやつたので、たいへんけつこうだと思います。ぜひそういうふうにして日本人がいろいろインドの農業というものを知つて、それから事を始めなければならないのでありますし、もう一つ考えなくてはいけないことは、インドの玄米を日本に持つて来まして、そうして日本の農事試験場でインドに適する日本の品種を改良する、そういうものから始めなくてはいけないので、なかなか容易な問題ではありません。だからこれは相当長期に考えた施策の上にひとつ御配慮を願いたいと思う。  それから今私が五千人と言いましたことは、これも私は実は驚いたのでありますが、外務省からその点をはつきりしてもらいたいことは、数日前のNHKの放送でそういうことを言つているのでありますから、NHKの方にお聞きを願つて、その五千人の農業技術者をほしいというその出所をひとつはつきりしていただき、そうして——これはどなたがおつしやつたかもしれないのであります。というのは、私もその数字には少し疑問を持ちますことは、かつて高良とみ女史がインドに行かれまして、向うから何か二千人ほど技術者がほしいと言つたら、すぐよろしいというようなことで引受けて来られた。そうして日本に来て高良とみ氏が新聞広告をした。そうしたら非常にあちこちから応募者があつて、そのアプリケーシヨンを整理するのに手をあげてしまつたという妙なことがあつたのであります。そういうようなことがたびたびありますと、これは将来非常に悪い影響がありますから、こういう点はひとつ十分お調べを願いたいと思います。  それでは時間も参りましたから、これで私の質問は終ります。
  69. 栗山長次郎

    栗山委員長 別に答弁を要求しているわけではありませんね。——では、これで委員会を閉じます。     午後零時三十五分散会