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1953-02-11 第15回国会 衆議院 外務委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年二月十一日(水曜日)     午前十一時十七分開議  出席委員    委員長 栗山長次郎君    理事 谷川  昇君 理事 松本 瀧藏君    理事 戸叶 里子君 理事 田中 稔男君       今村 忠助君    植原悦二郎君       近藤 鶴代君    中山 マサ君       馬場 元治君    森下 國雄君       安東 義良君    高岡 大輔君       並木 芳雄君    加藤 勘十君       福田 昌子君    帆足  計君       黒田 寿男君  出席国務大臣         外 務 大 臣 岡崎 勝男君  出席政府委員         法制局長官   佐藤 達夫君         法制局次長   林  修三君         外務政務次官  中村 幸八君         外務事務官         (大臣官房審議         室勤務)    中村  茂君         外務事務官         (欧米局長)  土屋  隼君         外務事務官         (経済局長)  黄田多喜夫君         外務事務官         (国際協力局         長)      伊関佑二郎君         通商産業政務次         官       小平 久雄君         通商産業事務官         (通商局長)  牛場 信彦君  委員外出席者         専  門  員 佐藤 敏人君         専  門  員 村瀬 忠夫君     ――――――――――――― 二月九日  委員西尾末廣君辞任につき、その補欠として松  岡駒吉君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 二月七日  都井岬駐留軍施設設置反対に関する請願(伊  東岩男君紹介)(第一六二六号) の審査を本委員会に付託された。 同月六日  都井岬軍事施設設置反対陳情書外一件  (  第一〇二一号)  海外抑留同胞帰還促進陳情書  (第一〇  二二号)  海外抑留者の引揚促進並びに留守家族援護の強  化に関する陳情書  (第一〇二三号)  奄美大島復帰促進に関する陳情書  (第一〇二四号)  同  (第一〇二五号)  大島在住現職公務員身分保障並びに恩給支  給に関する陳情書  (第一〇二六号)  韓国の海洋主権宣言線国連軍海上封鎖措置  に関する陳情書(第一  〇二七号)  台湾残置私有財産処理に関する陳情書  (第一〇二八号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  国際情勢等に関する件     ―――――――――――――
  2. 栗山長次郎

    栗山委員長 ただいまから外務委員会を開きます。  前回の委員会において宿題になつております件について理事会で協議いたしましたことの御報告をいたします。  一つは移民問題に関する小委員会をつくるかどうかということでありますが、これにつきましては、この委員会でみんなが参加してこの問題を検討する方がよろしかろうということで、特に小委員会をつくることを見合せることにいたしました。  次の件は、ブラジルから失望して帰つて参りました移民の人たちから、参考意見を聴取するという件でありますが、これは帰つて来ました人の名簿がここにございますけれども、このうち最も適格者を人選いたしますために、所在の地方自治体とも打合せをいたしました上、適材を得てから実施するという理事会申合せでございます。  いま一つ外務省予算の問題でありますが、外務省予算に関して、委員会としてまとめた意見を立てるという方法を少し緩和いたしまして、各委員においてお気づきの点を、予算委員と交替をなさつて予算委員会もしくは外務省予算を審議する分科会において御意見をお述べいただく、さように理事会では意見の一致を見ましたので御報告を申しておきます。  それから安東義良委員の発言に基いて、東南ア地域ポンド決済の問題について、外務省通産省、大蔵省の三当局意見をまとめてほしいという要請を前回いたしておきました。これについては幸い黄田経済局長出席でありますから、当方の要請に対していかようになされつつあるかを伺いたく存じます。黄田経済局長
  3. 黄田多喜夫

    黄田政府委員 インドネシア側といろいろな問題が起つておりまして、今のところ貿易もうまく行かない。これをどういうふうに打開するかということに関しましては、現地のわが方の出先機関並びに東京におきまして、いろいろ研究いたしておるのでありますが、インドネシア側から一つのミツシヨンに来ていただきまして、もう少し掘り下げて話し合おうじやないかということを、今向う側に提案をいたしたのであります。向う使節団の方の都合は三月上旬以後がよろしいということでございましたので、そのラインで、三月上旬以後に、向うから使節団に来てもらいまして、関連のある事件を全部ここで討議して何らかの打開策を発見しようという方向で進んでおります。
  4. 栗山長次郎

    栗山委員長 お聞き及びの通りであります。委員会としてはかねての要請通り、三省間の議をまとめて具体的措置をとられんことを、重ねて要望しておきます。
  5. 安東義良

    安東委員 関連して。この前特に外務省通産省のお方に要望しておいたのは、インドネシア実情として、ポンド建ならば日本相当商品に対してライセンスを与える、こういう意向があるにかかわらず、現在ドル建であるがゆえにそれができない。従つてインドネシアとしてはドル不足の折から、ますます日本との関係輸入面において狭くしつつある。こういう状態でありますから、これを打開する方法として、全面的にドル建を廃止せよというのではないが、部分的にそれをかえる方法はないものかどうか。観念的にこれはドル地域であるというわけで、どこまでもそれで行こうという行き方は、実情に沿わない。しかも向うがある程度まで、その市場日本のために提供し得る余地があるにかかわらず、ドル建に固執しておるがために、結局その市場をみすみす失つてしまう。その結果現在ヨーロツパ各方面の商品日本品を駆逐しつつある。こういう行き方で、はたしてインドネシアに対する貿易の伸張を期することができるが。問題はこういうところにあるのでありましてその点の御研究をすみやかにやつていただきたいと思うのであります。
  6. 栗山長次郎

    栗山委員長 安東さんの御要望の次に、佐藤法制局長官林法制局次長出席しておりますので、帆足君から提起されております旅券法に関する件を取上げたいと思います。帆足委員
  7. 帆足計

    帆足委員 旅券法の問題につきまして外務省当局から多少の御意見を伺いましたが、その都度外交と申しますか、旅券法についてもその都度解釈が異なりまして、まことに善良な市民としては難渋を感じておる次第でございます。私が最初モスクワ経済会議に参りましたときの旅券拒否理由、またその中間の理由、そして最近の理由、ことごとくこじつけを言としておりまして、解釈がかわつてつておるような実情でございます。従いまして、憲法を擁護され、法律の公正な運用について、最大の責任と関心を持たれる現法制局長官並びに法務省の御意見を、二、三のきわめて常識的な、基本的なことだけについて伺いたいのであります。  第一は、旅券発給ということにつきましては、外務大臣政治的見解または価値判断によつて私心をもつて出したり出さなかつたりするようなことが、今日の法律で許されておるものでございましようか、まずその一点を法制局長官に伺いたいと思います。
  8. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 政治的判断というお言葉がございましたが、これを神経質に考えますと、国の政治をあずかつておる者として、国民全体の福祉というものを考えなければならぬ立場にありますから、そういう意味を含めずに——私心というようなお言葉もありましたので、そういう観点の御趣旨のお言葉と思いますが、そうでありますならば、いやしくもほしいままに、外務大臣一個の私心と申しますか、そういう観点から、あるいは発給し、あるいは発給しないということはできないことと考えております。
  9. 帆足計

    帆足委員 ただいまの政治的見解と申しましたのは、たとえば民主党と自由党政見相違、または自由党社会一党の政見相違といつた程度の、公序良俗の許す範囲における政治的見解相違、たとえばアメリカ一辺倒に傾くことがよいという考え方、あるいはアメリカに対して破壊的行動をたくらむわけではございませんけれどもアメリカとも善良な国交を望むが、アメリカ一辺倒だけではまずいから、ソ連、中国とも外交の調整をはからねばならぬ、たとえばイギリスの保守党イーデン外相考えている程度政見相違が、旅券発給に影響いたすのでございましようか。
  10. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 政治態度といたしましては、国のため、あるいは国民のためという角度から、何が方針として適当であるか、これは当然良心的にきめられることであろうと思います。そういう観点からの良心に基いての措置であるならば、これは何をか言わんやであります。それ以外に私心と申しますか、そういう面の加わつた措置は許されない、こういうふうに考えます。
  11. 帆足計

    帆足委員 ただいまの法制局長官の御答弁は、私は多少あいまいであると思います。と申しますのは、たとえば、わが日本社会党左派政権をとりましたときに、パリ商業会議所大会日本資本家代表出席されたならば、多少元気を出すおそれがあるから行かない方がいいというような、ただ政見による私心ではないけれども、自分の党の一定のイデオロギーによつて特定地域への旅行を禁止するようなことが、日本旅券法の概念において、許されているかどうかということをお尋ねしているのです。すなわちある定められた普通の合法的政党政見相違が、ある特定地域への旅行にその政見が影響するようなことを許され得るような条文が、今日の旅券法日本の新憲法の中にあるかどうかということをお尋ねしているわけです。
  12. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 私はそのことを潔癖に考えておりますから、あらゆる場合を総合して普遍妥当なお答えを出そうという立場から申し上げているわけであります。その意味で、一方からごらんになると、あいまいだという御批判が出て来るのはやむを得ないと思うのです。ただ私の申し上げようと思うのは、いずれの政党といえども、国のため、国民のためという角度から政策をおきめになつておると思います。しかしながらそれは実は違つているのです。自由党なり社会党なり、あるいは改進党の政策というものはみな違う。しかし違いますけれども、それはいずれも国のため、国民のためという角度からお立てになつておることであると思います。かりに言いますれば、そういう意味で、国のため、国民のためという見地の違いから、あるいはその政策の実施の面に違いが来ることは、これは当然のことだろうと思います。その点は私は潔癖に除外をして御説明申し上げたのであります。
  13. 帆足計

    帆足委員 ただいまの法制局長官の御答弁がいかに苦しかということは、私もよくわかりますけれども、しかし法のためこれはやはり忍んでいただかねばなりません。従いまして私が申し上げるのは、今日旅券法規定でこれを左右し得る条文は、懲役十年以上の刑の執行せられつつある者か、旅券を改憲その他をして刑の執行を受けた者、または国家公益に至大なる悪影響を及ぼすとおぼしめさる相当理由ある者、そうしてその者というのは人物のことでございますという証言を法制局長官からかつて参議院でいただいておるのでございます。今日の旅券発給を左右する条文はこの三つの条件だけだと思いますが、長官の言われるように、政治的見解によつて人物審査でなくて一般的理由をもつてパリには旅行させたくないが、ワシントンには行かせたいという自由採択をするような法文また権能が、公用旅券ではありません、私用旅券の面においてあるならば、その条文をお示し願いたい。
  14. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 よけいなことにこだわり過ぎたかもしれません。要するに社会通念として、どなたがごらんになつても合理的な理由があるという態度によつて、あるいは旅券が拒否され、あるいは許される。その政府措置に対して、どなたがごらんになつても、これは合理的な理由があるというものでなければならない、その一言に尽きると思います。
  15. 帆足計

    帆足委員 法制局長官お困りになつて、またそういう抽象論お答えになりますが、そういう条文旅券法のどこに書いてあるか。もし政治的見解によつて特定地域特定会議旅行さしたり、旅行さしたくないという権能外務大臣に与えられておるならば、特定会議または特定地域に対しては、その善悪を時の政府政治的見解によつて査定して、行かす行かせないということができる条文がなければならない。こういうような条文はたしか英国の旅券法にもないと思いますが、日本旅券法には入つてないのでございます。それは長官がよく御存じの通りであつて旅券法審議のときの外務委員会速記録を見ましても、明確にこのことは書かれておるのでございます。従いまして私がお尋ねしておるのは、社会通念憲法解釈一般論でなくして、具体的に外務大臣法律をもつて与えられた権能のうちに、そういうような条文がおありならば、その条文をお示し願いたい、こういうことであります。憲法一般的常識的に解釈するときには、今の長官の言われるようなことがあります。しかし切符を発給するという具体的事務について、そういうような権能を与え、または左右するような条文が、旅券法の中のどこにあるか、お尋ねしたいのでございます。
  16. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 そういう条文旅券法の中にはないと思います。と同時に、旅券法のみならず、すべて行政の基準となつております法律を見渡しましても、あるいは営業の許可、免許、行政処分の規制がいろいろな法律に出ておりますが、それらにつきましても、同様私は出ておらないと思います。従いまして、すべて行政当局者態度として、大義名分の立つ措置をあらゆる場合にとらなければならぬ。これはもう普遍的な原則であろうと思いますから、その意味で私は抽象的に出し上げておつたわけであります。
  17. 帆足計

    帆足委員 それで非常によくわかりました。すなわち旅券法には、そういうような具体的権能は明記されていない、そこで外務省当局は、私どもモスクワ経済会議に対する旅行に対しましても、その他の旅行に対しましても、特定地域に対しては旅券をくれませんでした。この旅券をくれなかつた理由は、法制局長官としてはどういうふうにお考えになりますか。これは順々に理由がかわつておるようでありますが、純法律解釈的に見て、いかなる根拠があるとお考えでございますか。
  18. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 これは以前参議院のどこの委員会でありましたかの際に私がお答え申し上げたときに、たしか帆足委員はいらつしやつたと思うのでありますが、そのときに私のお答えした通りであつて、この法律運用は、事実認定が基礎になつてすべて運用されるべきものである。その事実認定判断の資料は、遺憾ながら私どもは持つておらないのでありますから、その点については外務当局の言うところを聞いて、それに不合理な点があるならば、これは皆さんの方で御批判を願わなければならぬことじやないか、かねてからそういうふうにお答えしております。
  19. 帆足計

    帆足委員 法制局長官のおつしやることはそれでわかりました。すなわち旅券法の中には具体的にそういう規定がなくて、憲法一般解釈従つて政府が独断専行したものと私は解釈いたします。  それではお隣に外務次官がおられますからお尋ねしたいのですが、昨日欧米局長は、旅券特定地域に出さなかつたのは、あれは交戦国であり無条約国であるから出さなかつた、私どものときには命が保障できないということを伺いましたが、どうやらこの通り丈夫であります。それから会議性質が好ましくないとおつしやいましたが、実は旅券法にありますのは会議性質でなくて、その人物資格審査であるということは、佐藤法制局長官が証言された通りであつて、これも解決済みでございます。残る問題は、苦しまぎれに無条約国交戦国であるから、そういうところに旅行する者に保護を与えることはできないから、それで拒絶したということでございましたが、外務次官、そういうことと解釈してよろしいのでございましようか。
  20. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 昨日引揚特別委員会におきまして欧米局長から答弁いたしました通りで、交戦国あるいはわが国と国交のない国へもおもむく、あるいは社会通念から申しましても好ましからざる会議等に列席する場合におきましては、先ほど来法制局長官より御説明申し上げました通り法律解釈社会通念に基いて国民利益のため、また国家利益という観点から解釈いたしまして、外務省旅券を発行いたしておらないのであります。
  21. 帆足計

    帆足委員 無条約国交戦国に人をやることは、日本国民保護することができないからいけないというふうに承りましたが、今度はそうではなくして、政府政治的見解において好まぬ会議であるからいけない、そうすると無条約国でない国で行われます場合には、政府が比較的好まぬ会議であつて——これは好む好まぬの問題は政治的意味の問題でありまして、政権がかわるたびに動くのでありますから、まことにこれは不安定で、憲法違反でありますが、条約国であり交戦国でない場合には、好まぬ会議でも好ましからざる人物でなくて普通の人物であれば、旅券をお出しになるのでありますか。
  22. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 それはケースバイケースで、個々の問題について検討しなければならぬものだろうと思います。
  23. 帆足計

    帆足委員 今度はまた話が横に逃げまして、交戦国でない普通の国に対しても、好ましからざる会議に対してはケースバイケースで行かせないとおつしやいますと、そういう法文日本旅券法にあるでしようか。たとえば私が社会党内閣をつくつてパリ資本家大会経営者大会保守党の方が出席すると、ますます保守反動的になるから、出席させない方がよいという法律が一体日本旅券法にあるでしようか、その点をちよつとお伺いしたい。
  24. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 旅券法第十三条の五号によりまして、「著しく且つ直接に日本国利益又は公安を害する行為を行う虞があると認めるに足りる相当理由がある者」、これによりまして解決いたしたいと思います。
  25. 帆足計

    帆足委員 それは相当理由がある者という人物資格審査であつて、その解釈外務委員会において皆様御承知のように、銃砲、火薬取締違反の者、阿片密売業者または常習テロリストのような者をさしておる、こういう解釈であつて、はなはだしきに至つて合法的コミュニストですらさしつかえない、こう政府当局は答えられておるのであります。しかも者とはその文字の示すごとく、人物審査でございます。というのは佐藤法制局長官解釈として当然のことであります。今次官は好ましからざる会議とこう申されましたが、会議と者とはこれは大分違います、生物と無生物の相違があるのではないでしようか、次官お答えを願いたい。
  26. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 その場合におきましては、会議出席すべき人物と結びつけて解釈することになります。
  27. 帆足計

    帆足委員 私は東京大学で学びましたが、今のようなお答えをしたならば、これは絶対に卒業できないわけでありまして、外務次官はまことに奇妙な議論をなされます。これはおそらく三月六日に公判がありますが、政府の敗訴は今や必至であろうと思います。法制局長官の前で次官がそういうことを言われることは、法治国として恥ずべきことであつて、これはやはり二つの問題があると思います。一つは好ましくない人物を行かせたくない、この問題は、今の法律でやれる問題であります。第二は好ましくない会議に行かせまいとするならば、新しく法律をつくらなければなりません。しかしそれはとにかくとしまして、委員長から時間の制限もあることでありますから、本論に入りまして、先ほどは無条約国であるからいけない、今度は好ましくない会議であるからいけない、これも俗論でありまして、いやしくも法をたつとぶ外務省当局の言われるべきことでないと思います。従つて一体条約国、すなわち交戦国であるから、国民保護ができないからいけないというのでありますか、それともその会議または国が好ましくないからいけぬというのでありますか。しかりとするならば、わが社会党内閣をとつたときに、パリ経営者大会出席させないと私ども次官に申したところで、それは合法的でございますか、ちよつとそのことを伺いたいと思います。者と会議とを結びつけて、すなわち保守党に属していることと、パリ資本家会議という性質を結びつけて、社会主義内閣であつたならばパリ旅行してはならぬというような、そういうことはいかに社会党内閣といえども憲法を重んずる以上は私はできるものではないと思います。これに対して次官はちよつと弁駁の余地がなくなると思いますが、いかがでしよう。
  28. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 それはもう見解相違であります。
  29. 帆足計

    帆足委員 人間には人類として共通の論理というものがありまして、見解相違では済まない。すなわち論理は共通しておるのでございます。それを前提のもとに国会は成立しておりますから、見解相違ではなくして、もし社会党政治的見解から、国のために、パリ経営者大会保守党の人を行かしてはならぬというような無謀なことを言う人がおつたところで、それはそうしようと思えば、できることであるかどうかということをお尋ねしているわけです。今日の旅券法によつて、同じことが今度は社会党側になれば、そういうこともできる、保守党側になれば、保守党が好まない会議には社会党の人は行かせない。お互いにそういういたちごつこができるように、旅券法の仕組みができておるかどうかということをお尋ねしておるのです。もし次官がそのことをお答えできなければ、法制局長官にひとつお答えを願いたいと思います。しかし法制局長官の方は頭脳明晰でありますから、また何か発明されることと思います。私は法制局長官のような人柄の人に対して、こういうことを申し上げたくないのでありますが、どうか衷情をお察しいただきたい。法律は守らねばなりません。私は佐藤長官にこういうことを申し上げたくないのです。しかし政府法律を破つている以上は、しかたがありません。長官もおそらく私の言う意味はわかると思いますから……。
  30. 栗山長次郎

    栗山委員長 帆足さん、簡潔に願います。
  31. 帆足計

    帆足委員 どうかひとつお答えを願いたいと思います。御了承をお願いいたします。
  32. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 私の考えておりますところでは、先ほどよけいなことと申しましたことは、実は多少今のお尋ねにも関連して来るので、無意味ではなかつたと思うわけであります。そういう観点から、結論はおのおのそのの国ため、国民のためという見地が多少それは違いましよう、違いますが、そのおのおのの違いに応じて、一般の人が見て、なるほど無理はないというところであれば、その措置法律の許すところであり、またやむを得ないことであると思います。
  33. 帆足計

    帆足委員 ただいまの一般解釈は、公共の福祉のために、国民権利をある程度制限することができるということは、憲法の中にありますけれども、それを制限しますためには、今度は具体的に法律制限のわくをきめるというのが、単行法の役割でございます。従いまして、こういう重大なる人民の権利制限に対しては、旅券法に何らかの条文を書かねばなりません。旅券法に書いてある文句は、人物資格審査ということになつております。従いまして、ただいまの長官解釈は、旅券法規定から見て、そういう規定はないのでございます。そこでとうとう無条約国というところに逃げました。そこで時間の関係もありますから、最後に一言次官にお尋ねしますが、さつきの無条約国の問題は一体どこに行つたのでしようか。無条約国交戦国だから行かさないというのが、主たる理由でございましようか、もう一度お尋ねします。先ほどの会議の性格ということについては、法文はなくて、拡張解釈でございます。条文のあるのは、すなわち無条約国交戦国だから、国民の命を保護できないから行かさない。それが主たる理由のように伺いましたが、次官そう心得てよろしゆうございましようか。
  34. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 交戦国であり、無条約国である、従つて生命、身体、財産の保障もできないということと、それからさらに、そういう交戦国におもむくということが、日本にとつて著しく不利益を与えるという両方の立場から、旅券を与えないことにいたしております。
  35. 帆足計

    帆足委員 それは旅券法条文のどこにありますか。それからまた交戦国、無条約国というのは、世の中にたくさんございます。ほかの国に行かして、こちらの国に行かさないという条文は、旅券法の第何条にございますか。それを最後的にお尋ねして、これ以上お尋ねしたところで、問題の所在はすでに明確でございますから、法廷で争うことにいたしまして、お答えを願いたいと思います。
  36. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 同じ交戦国でありながら、ある国に行かして、ある国に行かさない、こういうことをやるかどうかというお尋ねでございますか。
  37. 帆足計

    帆足委員 そういう法律的根拠はどこにあるか、そういう権能はあなた方に与えられておりますか。
  38. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 それは先ほど申し上げたように、旅券法の第十三条の五号、それからもう一つ、第十九条の四号、この二つの条文から来ております。
  39. 栗山長次郎

    栗山委員長 帆足さん、御相談でございますが、同僚の福田昌子君が質問したいと言つておりますが……。
  40. 帆足計

    帆足委員 第十九条の、命の危ういところに旅券発給してはならないというのは、旅券発給後、戦争、内乱、疫病等が起つた場合は帰還命令を出し、旅券の返還を命じ得るという規定でございます。それから先ほどの、好ましからざる人物というのは、人物資格審査でありまして、政府の御答弁は全然法にかなつていない。従いまして、政府のなさることならばすべて正しく、国民のすることはすべて間違つておるという封建の陋習を、この際徹底的になくすることが必要でございます。従いまして政府としては、その問題は百歩譲つても、もう少し謙虚な態度を持つていただくことを、私は政府に要求し、近く政府を被告として私から処罰をします。三月六日に公判が開かれるごとになつておりますから、それまでは自粛自戒しておつていただきたい。少くともこの問題はボーダー・ラインの問題であり、国民権利を擁護せんとする人たちの衷情をおくみとりくださつて、そして最後の判断はどうでありましようとも、われわれを被告扱いすることだけは、やめていただきたいということを申し上げまして、委員長の注意もありますので、これをもつて終ります。
  41. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 第十九条の四号でありますが、これは旅券の返還を命ずる場合があるということで、それはお説の通りでありますが、そういうような旅券の返還を命ずる場合があるようなものについては、あらかじめ旅券を発行しない、こういう解釈であります。
  42. 栗山長次郎

    栗山委員長 聖路加病院につきましては、先般近藤鶴代委員からも御質問がありましたが、それに関し、福田委員から緊急の質問がありますので、これを許します。福田昌子君。
  43. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 聖路加病院と、これに類した駐留軍が使つております病院関係の返還に関する質問でございます。聖路加もその一つですが、たとえばそのほかに福岡市にあります簡易保険局の建物を利用いたしました軍の接収病院がございます。そうした接収病院は日本に返還されるというふうに聞き及んでおるのでございますが、こういつた接収病院の返還に関しては、どういう事情になつておりますか。
  44. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 初めに米軍が使つております施設の返還の方針をきめましたときに、病院については、現に朝鮮で戦争が行われておるので、特別の考慮をするということで、病院だけはそう早くは返せないであろうという点をきめております。ですから病院につきましては、一般施設とはやや異なりまして、戦争しております現状においては、必要性を十分認める、だからすぐ返せということは要求しない。これは原則でありますけれども、聖路加病院の場合につきましては、本館は返せとは申しませんが、本館の前にあります木造の旧館、この方はそれほど絶対に必要だというふうにも見えませんから、これは返すように交渉いたしまして、明後日に返つて来ることになつております。  それから福岡の簡易保険局の問題等につきましては、これは向うも必要だ、こちらもこうした建物は大蔵省としてはほしい、こう言つておりますので、ごく最近のうちに安全保障費の使い方について大体の見通しが立つて参りますので、かわりを建てるかどうかという日本政府としての方針を、近く最終的にきめたいと思います。ですから、戦争がありますので、向うも必要だ、しかし日本側もどうしても必要だという場合には、かわりのものを建てて行くことになると思います。
  45. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 そういたしますと、聖路加病院の木造の建物は近く返還まれるということですね。それと福岡の病院に対しましては、安全保障費の見通しいかんによつて、いつごろそういうことの御決定があるのでございましようか。
  46. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 いつまでと期限を切るわけにも参りませんが、まあ一箇月以内くらい、大体そういうふうに思つております。
  47. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 一箇月以内に大体新しく簡易保険局にかわるような設備の病院を建てるということに解釈してよろしゆうございますか。
  48. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 建てるか建てないかを検討するということであります。どちらかに結論が出るということであります。
  49. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 お話を伺いまして了解いたしました。要しますところ、こういうような病院が、きつとアメリカ側も必要でしようが、日本側も必要な建物であり、設備であるわけでございます。ことにまた病院関係というものは大衆の福祉に非常に影響いたしますから、こういう病院の接収解除をめぐつて、いろいろ民間側ともたもたするということは、私といたしましては、やはり必要以上にアメリカに対する反感をそそるということにもなりかねない次第でありますから、そういうつまらない反米思想をそそることがないように、当局は積極的に解決に早く乗り出していただくことを要望するものでございます。なぜこういうことを申し上げるかと申しますと、岡崎外務大臣が最近よく国会内の闘争においても、いたずらに反米的な意見を吐く者があるということで、国会内の議論さえ、自由党好みの親米一辺倒の奴隷外交に心酔されるというようなお考えを持つておられますが、そういう専制的な親米一辺倒の政策を岡崎外務大臣がとられるよりも、まずこういうような事態から解決して行くことこそ、ほんとうにアメリカに対する必要以上の反米感情をそそらないために必要だろうという意味において申し上げたのでございます。  次に、お尋ねいたしておきたいことは、最近問題のばくち法案としてハイアライ法案がまた国会に出ております。これはもちろん議員提出の法案になつております。その説明によりますと、スペインの国技であり、そのことによつてスペインとの親善外交に役立つのだということを申しておる人がありますが、国際協力局長は、一体これがスペインとの親善外交に役立つとお考えか、お尋ねしたいのでございます。
  50. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 私の方の仕事には何も関係ございません。
  51. 栗山長次郎

    栗山委員長 中村政務次官お答えになりますか。
  52. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 ただいま伊関局長から答弁したところで尽きると思いますが、スペインの国技であるとすれば、そういうものを日本においてやるということも、一つの親善方法にならぬとも限らないという程度お答えいたします。
  53. 栗山長次郎

    栗山委員長 戸叶里子君に御相談いたします。岡崎大臣は間もなく見えると思いますが、ただいま小平通商産業政務次官、牛場通商局長外務省黄田経済局長等が御出席でありますけれども貿易に関する質問をお始めになりますか。
  54. 戸叶里子

    戸叶委員 今の福田さんの御質問に関連して一つお伺いいたします。先ほどのお答えで、病院のかわりを建てるように大体おきめになつたようでございますけれども、そういたしますと、その病院を建てる場所の問題になつて参りますが、そうした場合に先方に選択権があるのか、それとも日本と話合いの上でおきめになるのかということが一つと、それから今この質問を申し上げますのは、私の友人で大和村に住んでいる方がいるのですが、その方の話によりますと、学校のすぐ近くに、朝鮮に行つている方が帰つて来て、一応保養するようなものを建てる計画があるというようなことで、問題が起きているのだそうでございます。そういうようなことを地元の人の反対をも押し切つてするものかどうかということをちよつと伺いたい。
  55. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 病院につきましては、かわりのものを建てると申したのでなくて、建てるかどうかを安全保障費の全体のわくから照して考える。と申しますのは、病院というのは非常に金もかかりますし、それからこういうものを建てましても、朝鮮事変が済めばもうその需要はない。そういう場合に、はたしてそれだけの病院が将来いるかどうかというふうなことも考えなければなりません。その点で病院の方はずつと永久に用途があるというのと違いますので、朝鮮事変が済めば返す、その際に病院が余るのじやないかということもありますので、その辺も考慮しながら考える。もし建てる場合の場所をどうするか。これは日本の予算で建てるわけでありますから、日本側できめますが、ただ使うのは向うでありますから、やはり向うの使いやすいような場所ということはもちろん考えます。それはある程度現在の兵舎に近ければいいとか、東京にほしいとか、あるいは大阪にほしいとかいうような意味向うの条件でありまして、東京の中でどこへ建てるかということになりますれば、これは日本政府がきめる問題であります。  次に大和村の問題は現在起つておりますが、まだ最終的にはきまつておりません。隣の村山村というところに元少年航空兵の学校か何かありましたところにかなりの土地がございます。どちらが被害が少いかという点について研究いたしておりますが、いずれかの一つには近くきめなければならぬと思つております。
  56. 戸叶里子

    戸叶委員 通産省の方がおいでになつておりますので御質問申し上げたいと思います。  先ごろの施政方針演説の中にもありましたように、今後の貿易打開のために東南アジア諸国に向つて貿易対策を立てて行きたい。その中で小笠原長官のおつしやつたことは、貿易振興の前提として経済外交を積極的に進め、これと並行して輸出商品の国際競争力の培養、貿易商社の強化を行いたいということを強調せられていたと思います。そこで私は二点伺いたいと思いますが、この経済外交ということについて、どういう具体的な施策を持つておられるかということでございます。それは私がそのアジアの現地を見て参りまして、外務省から出ておりますところの出先機関に、何ら経済外交を推し進めるような具体的な政策がお持合せでないように私は了承して参りましたので、具体的にどういう対策をもつて経済外交をなさろうとしておるか、お伺いしたいと思います。
  57. 小平久雄

    ○小平政府委員 東南アジアの貿易の振興につきましては、ただいまお話がありました通り、大臣からすでに述べられたような方向に大体行つております。特にただいまの経済外交の問題でありますが、これにつきましては、東南アジア方面の経済事情を詳しく調査しまして、どういう面で進出することが適当であるかというようなことを調査するというような見地から、経済使節団等の派遣をはかるとか、あるいは技術の面におきまして、先方の技術者をこちらに呼ぶとか、あるいはこちらに来て技術の習得をしたいというような希望者にはその便宜をはかるとか、こういつた面で今後努力をいたして参りたいと考えておる次第でございます。
  58. 戸叶里子

    戸叶委員 経済使節団を送るということでございますが、すでに経済使節団が送られて帰つて来た例もございます。そういうことを通して、何らかもう一歩前進した政策が立てられていいと思いますが、私は何らそこに前進した政策が立てられていないと思うのです。こういうことに対して、一体積極的に今後どういうふうにして行かれようとするのか、もう一度伺いたいと思います。
  59. 小平久雄

    ○小平政府委員 まだ積極的に行われておらぬじやないかという御指摘でございます。従来やや国民の期待にそぐわない点もあつたかと思うのでありますが、当局としましては、いよいよこれから積極的にやろうというふうに考えております。特に本年度の予算などにおきましても、重機械の相談室等に関しまする予算も提案をいたしてあります。これらがきまりますならば、東南アジア方面にも、そういつた常置の相談室を置きまして、貿易の振興に寄写して参りたいと考えておるわけであります。
  60. 戸叶里子

    戸叶委員 なるべく早く積極的にそういうことをなさいませんと、この国際的な貿易の競争がはげしいときに、ますます日本が取残される形になると思います。私はそれらの地区をまわつて考えましたことは、その外務省出先機関にやはり何といいましても、経済的な通商関係のエキスパートを置かなければならないと思います。さきごろたしかこの委員会で、通産関係のエキスパートを置くというような御提案がありましたけれども、そこで置かれた場合にまた一つ問題が起つて来ますのは、たしかカラチかどこかに通商関係のエキスパートの方が行つていらつしやると思いましたが、その場合に待遇の問題が非常に問題になつて来ると思うのです。今までの例から申しますと、大体外務省出の外交官が普通の待遇を受けるにいたしましても、通産省からその中へまじつてつた場合には、外務省から行つた外交官との待遇とは、ずつと劣つた待遇になつていると思うのです。そういうような関係考えましたときに、よほど外務省との調節をおとりにならなければなりませんし、またそういうふうな態度がとられますと、通商関係のエキスパートとしていい人が、東南アジアの各地に出て行かないというような弊害を生み出すと思いますが、こういう点に対しましては、どういうふうな調節を外務省でおとりになろうとしているかをお伺いいたしたい。
  61. 小平久雄

    ○小平政府委員 お話の点は当局におきましても十分考慮をいたしておるところであります。御承知のように、以前は現在の通産省から外国に出ております者につきましては、いわゆる商務官と呼んでやつてつたのであります。現在はその商務官の制度は廃止されておりますが、外務省通産省との間におきまして人事の交流をやつております。経済事情に明るい者を外務省の役人として現在では外国に出しておりますので、待遇上等において元来外務省の方と相違があるというようなことはないはずになつております。
  62. 戸叶里子

    戸叶委員 今の政務次官のお話では、待遇関係には差がないということでございましたが、外務省の方からも、はたしてその差がないとかどうかということを、ちよつと伺いたいのです。
  63. 黄田多喜夫

    黄田政府委員 差はちつともございません。
  64. 戸叶里子

    戸叶委員 私が了承して来たのとただいまの御答弁とは、確かに食い違いがあるように思いますけれども、これから通産省関係の方をお出しになる場合もございますから、その点よく御考慮いただきたいと思います。  それからもう一点伺いたいことは、先ほど申し上げましたように、商社の強化ということでございますけれども、この点においても、こちらで考えておりますのと現地の考え方とに、非常に食い違いがあるのじやないかと思います。それはカルカツタの例を申し上げますならば、カルカツタに行つております日本の商社、実績のある商社を指定しまして、その商社とカルカツタの現地の商社との間の契約を、石炭を買う場合に結んだのにもかかわらず、日本の方から直接にある業者を指定して、そして現地の商社とまた個人的に契約を結ばせたというようなことがあつたために、カルカツタの政府の石炭局長なども非常に困つたという話を聞いて来たのですけれども、こういうような統制のとれないやり方をこれからも進めて行くといたしますと、商社の強化どころか、かえつて反対の現象を生み出すと思いますが、そういうことを御存じであるかどうか、またこれに対する今後の方策はどうお考えになつておるか、お伺いしたい。
  65. 牛場信彦

    牛場政府委員 インドの石炭買付につきましては、昨年は手ぎわよく行かなかつたのは事実でございます。今年はその例にかんがみまして、十分慎重を期したいということで、ただいま研究いたしております。最近に結論が出ると思いますが、何分独禁法などの関係もございまして、製鉄会社の方でも、二、三の輸入業者だけを限つて、品物を取扱わせるというわけにも行かない状況もあつたわけでありますが、これは今般独禁法の改正ということが問題になつておりますし、現在の輸出取引法を少しかえまして、輸入に関してもある程度の協調ができるようにしたいということも考えておるわけであります。今年は十分に改善を見るようにいたしたいと思つております。
  66. 戸叶里子

    戸叶委員 石炭の問題は確かに失敗だつたということをお認めになりましたが、こういうような問題が起りますと、現地側を無視したこういうようなことに対しましては、何か一部の業者が政党関係を動かして、思惑的の取引も行われておるのではないかという、非常な暗影を投げかけることもございますので、こういう点はよほど注意していただきたいと思いますけれども、これと関連いたしまして、貿易政策それ自体に大きな転換が私は行われなければならないと思うのであります。それは東南アジア諸国は各国とも計画経済を断行しております。従つて貿易政策というものは、この計画経済と結びついて統制されておると思うのであります。日本がこういう現状を無視して、自由貿易政策に乗つて各商社がお互いに競争し、乱雑になだれ込み戦術を行つてつても、結局その結果は、日本人お互い同士の競争による投売り競争ということになつて、かえつて貿易の振興どころか、不信を買い、失敗に終つておる例が非常に多いと思うのであります。ここで考えなければなりませんことは、今の政府自由党政府でありますから、そういうことはなかなかむずかしいとおつしやるかもしれませんけれども、せめて貿易に関する限り、日本貿易を振興させるという見地に立つて東南アジアの貿易は統制貿易に切りかえた方がよいということを、現地からの要望もあると思いますが、そういうことに対してのお考えがないかどうか、通産省並びに、岡崎大臣が見えておられますから、両方にお伺いしたいと思います。
  67. 小平久雄

    ○小平政府委員 ただいま戸叶委員から御指摘のようなことも従来あつたことと思いますが、一面から申しますと、先ほど通商局長からもお答え申し上げました通り、独禁法等の関係もございまして、輸出にしても、これを一本に計画的に持つて行くということは、法の建前上でき得ない面が非常に多かつたのであります。ただ今回の独禁法の改正にあたりましては、特に輸出の振興上必要な場合、そういう場合におきましては、これをある程度の共同行為も認めて行くという方向に改正をされようといたしておりますので、従来のような弊害はその点から申しますならば、除去されるのじやないかと考えております。
  68. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 貿易等につきましては、たとえば貿易協定とか支払協定とかあつて、大きなわくはできておるわけであります。その中ではわれわれとしては、できるだけ商社の自由なる競争を健全に発達さして、できるだけ貿易の伸長をはかりたいと考えております。いわゆる計画経済に行く意向は去りません。
  69. 戸叶里子

    戸叶委員 そういうふうないわゆる現地の意思などを無視して、今まで通り貿易を行おうとなさるといたしますと、日本東南アジアにおける貿易の振興ということは、私はとても考えられないと思うのです。それは各地へ行つて見ましても、結局日本の商社がたくさん行つていて、お互いに争つて値を落してしまつて、その間にほかの国からどんどん侵入するというような形になつておりますので、その点をよほどお考えになつての統制をなさらたければならないと思いますけれども、依然として今まで通り貿易政策をおとりになるかどうかを、もう一ぺん伺いたい。
  70. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 業者同士がお互いに競争して損をするなどということは、これは自由貿易においても考え得べきことでないのでありまして、こういう弊害はむろん修正いたします。しかしいわゆる計画経済で、何でも型にはめてやろうとする必要はないと考えております。
  71. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 関連して通産省の方にお伺いするのですが、今戸叶里子さんから、日本商社の輸出の面についての無用というか有害というか、競争の点が述べられたのですが、日本商社の今度は買付の問題です。買付で競争をして必要以上に高くたたく。たとえばタイにおいて米の買付を日本の商社が競争して高くつり上げて買つておる、こういう現実があるのですが、こういう点についても一体どういうように考えておられるか、それをお伺いしたい。
  72. 牛場信彦

    牛場政府委員 タイからの米の買付につきましては、非常に競争がはげしくて弊害もございましたので、農林省と協議をいたしまして、昨年の暮れに八社指定をいたしました。これでそういう無用の競争は避けられると思います。  それから先ほど申します通り、輸入につきましてもある程度の共同動作のとれるような輸入組合あるいは輸入協定的なものが可能なように、独禁法の改正をはかつて行きたいということを考えております。
  73. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 雑貨類の輸出については、政府は検査機関か何かありますか。
  74. 牛場信彦

    牛場政府委員 雑貨輸出で今一番力を入れておりますのは、対米輸出でありまして、これは貿易斡旋所をニユーヨークに設けるという予算を計上して御審議を願つておるわけです。そのほか組合組織によつてやはり輸出の振興をはかりたいということで、これは全国を三つにわけまして雑貨輸出組合をつくりまして、そのまた連合会みたいなものができまして、今後はよほどいろいろな悪い面はそれで防げると思つております。
  75. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 具体的な例をあげますと、ジヤカルタで日本の神戸のある商社から買いつけた陶磁器の類ですが、これが見本とまつた性質の違う、粗雑ということの範囲を通り越して、使用にたえない品物が七割から売られておる。それがためにせつかく日本商品に非常に親身な考え方を持つてつて日本商品を売りたい人もそういう現実を見せつけられて、かえつて日本に対する反感を高める、こういう具体的な事実がある。今おつしやるような市場においてのあつせんであるとか、そういう点でなく、輸出についてそういうまつたく話にならぬような不良品は事前に、外に出す前に検査なり何なりの方法によつて、そういうことのないようにする機関があるかどうか、こういう点です。
  76. 牛場信彦

    牛場政府委員 それは輸出品取締法という法律がございまして、最低の標準をきめたり、あるいは等級をつけたりすることはできるようになつております。そういう等級なり標準なりを政府がきめましたものにつきましては、一定の検査機関が検査しなければ輸出できないということになつておりまして、これを今回さらに改正いたしまして、政府並びに政府の指定する機関の検査を強化するという意味の改正案を、ただいま国会に提出をいたしてございます。
  77. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 今まではなかつたのですか。
  78. 牛場信彦

    牛場政府委員 従来もございましたが、さらにそれを強化するということであります。
  79. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 あるいはインドネシアの総領事館から外務省報告が来ておるかと思いますけれども、そういう、現実に非常に日本貿易を阻害するばかりでなく、日本の品位を非常に傷つけるような不徳な行為をした者に対する罰則は何かないのですか。
  80. 牛場信彦

    牛場政府委員 これは為替管理法におきまして罰則がございます。しかし現在までのところ、まだそれが具体的に適用された例はありませんが、大体におきまして品質の非常に違つたものを出したという場合には、クレームの対象になるわけでありまして、商社自体といたしましても非常に損害をこうむるということになるわけであります。
  81. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 その品物は名古屋の製品で、今言うたように神戸の商社の手を経て輸出されたもので、香港経由でインドネシアに行つたものですが、外務省に対してそういう報告は来ておりますかどうですか。
  82. 黄田多喜夫

    黄田政府委員 まだ来ていないようであります。私はまだ気がついておりません。
  83. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 それはあるいは時間的にまだ来ておらぬかもしれませんが、おそらく来ると思います。これはもうすでに向うの商社で金を先に払つて買いつけた品物ですから、向うからいえば非常に損害を受けたことになつて、その商人の信用も傷つけるし、まつた日本に対する信頼を失うということになるのですから、そういうことについては報告を得たならば適当な方法を講じて、将来そういうことのないようにされるばかりでなく、過去においてもそういうことをしたものに対しては、やはり日本の品位を保つ上からいつても、相当の制裁がなされてしかるべきではないかと思います。
  84. 栗山長次郎

    栗山委員長 委員長から申し添えますが、ただいま加藤勘十君の発言にありました、ジヤカルタにおける不正な商品の受渡しにつきましては、報告がなければ外務及び通産両当局において特に報告を求められるよう要請をいたします。  戸叶里子君、まだありますか。
  85. 戸叶里子

    戸叶委員 岡崎外務大臣に対して、貿易の問題でなくてもよろしゆうございますか。
  86. 栗山長次郎

    栗山委員長 それでなかつた一つございますから……。先般並木芳雄君から質問が外務大臣に対してありまして、その答弁が留保されております。案件はヤルタ協定廃棄の米国内における手続、ヤルタ協定以外にいわゆる秘密協定なるものとしてどういうものがあるか、この二点に対して外務大臣からの答弁を求めます。
  87. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 もう少しお待ちを願いたいのでありまして、正確なる調査をいたしておりますから……。
  88. 戸叶里子

    戸叶委員 私は岡崎外務大臣に、アイゼンハウアーの教書の中にある点で伺いたいと思います。それはあの中に言われましたように、アメリカが取結んだ外交上の条約の秘密条項は破棄する。これは当然ヤルタ協定の中の秘密条項の破棄を意味すると思うのですが、ここで私が思い出しますことは、講和条約の審議にあたつて、ヤルタ協定はルーズヴエルトとチヤーチルとスターリンの間に結ばれた軍事的謀略の上に立つた秘密協定であると言つたのに対して、これは秘密協定でないということで打消した政府態度でございます。私はそのときにそれ以上追究しなかつたのでありますが、今でも政府はこれが秘密協定ではないとその当時と同じように信じておられるかどうか。あるいはまたその当時のアメリカの民主党外交に対する追従からそう言われたのかどうか、その点を承りたいと思います。
  89. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 今のはだれが言つたのか私は知りませんが、私はそういうことを言つた記憶はありません。私は始終聞かれましたときは、ヤルタ協定は秘密協定であつて、少くともポツダム宣言受諾当時にはわれわれの知らなかつたものである。従つてポツダム宣言の受諾のときにヤルタ協定までを頭に入れて受諾したものではない、こういう説明をいたしております。
  90. 戸叶里子

    戸叶委員 私もはつきり岡崎さんであつたかどなたであつたかわかりませんので、速記録を見なければわかりませんが、私が申し上げたときに、ただちに秘密協定ではないという言葉を取消すようにとまで言われたように記憶しております。これはあとから調べて見ればわかることでございますので、この問題はこのままにして、それではヤルタ協定は秘密協定であつたとお認めになつていられたという仮定のもとに進んで行きたいと思います。  今度のヤルタ協定の廃棄に対しまして、外務省当局の発表及び外務大臣外務委員会の発表を見ましたときに、何かそこに少しも重大な意義を認識していられないように思うのです。そこで率直にお尋ねいたしたいのは、一体これに対して政府が賛成なのか不賛成なのかということであります。どうも見たところによりますと、政府は強い意思表示をしないで、うれしいようなうれしからざるような態度に出ていられるように思いますが、この点についての御意見を承りたいと思います。
  91. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは速記録ごらん願えばわかると思います。これはそのずつと前の講和条約締結当時の話でありますが、ヤルタ協定は日本政府には何の関係もない、私は始終こう言つてつたのであります。要するにわれわれの受諾したのはポツダム宣言であつて、ポツダム宣言の条章を忠実に守ることは、日本政府として当然やるべきことであるが、ヤルタ協定については何ら日本側は知らないし、関係がない、こう言つておるのであります。その性質は元来、英米ソの三国で相談してつくつたものでありまして、われわれとしては直接何ら関係がない。当時においても、そんなものは知らない、こういう立場をとつてつたのでありまして、今でも同様であります。しかしながら実質的にはまだヤルタ協定を廃棄するとアメリカは言つておりませんけれども、かりにヤルタ協定を廃棄するということが行われます場合には、間接的には大きな影響があるものであることは、この前安東君の質問に対して答えた通りであります。しかし、直接にはわれわれは平和条約によつて規定されておるのであつて、ヤルタ協定によつて何ら領土等について規定されておるものでないということは明らかであります。
  92. 戸叶里子

    戸叶委員 今のお答えによりますと、まあ非常に消極的ではあるけれども日本は元からポツダム宣言を受諾したのであつて、ヤルタ協定とは関係がないと言つておられたということですが、それではサンフランシスコの講和会議において、日本が条約に調印をする場合に、あの領土権の放棄の条項に対して、どれだけ強く日本側として主張されたかということを伺いたいと思います。
  93. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 ポツダム宣言には、日本の領地は本州、四国、九州、北海道及びわれらの連合国のきめるその他の小島に限られるという条項があるのでありまして、このポツダム宣言を受諾した限りにおいては、法律的には本州、四国、九州、北海道が日本の領土であることは明らかである。その他の小島については連合国のきめるところを受諾する、これがポツダム宣言の趣旨であります。従つて法律上は、こちらはいさぎよく連合国のきめるところを受諾すべきでありますけれども、他方大西洋憲章及び連合国宣言というものがありまして、領土の拡大を求めないということを連合国は宣言いたしておるのであります。従つてこの領土の拡大を求めないという趣旨で、今まで日本国民が平穏無事に居住して、歴史的その他において関係の深い土地は、当然日本の領土として残るべきであるという主張は、いろいろの方面からいたしておつたのであります。吉田全権がサンフランシスコで千島等に言及したことは御承知の通りでありまして、われわれとしては可能な範囲の努力はいたしたつもりであります。
  94. 戸叶里子

    戸叶委員 吉田首相が千島等に対して可能な範囲で言及したというのは、どんなふうにおつしやつたのですか、伺わせていただきたいと思います。
  95. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 それは正確には、当時の演説の記録を今ここに持つておりませんからあとにいたしますが、元来この領土の問題は、何も講和条約の発効直前に始まつた問題ではないのであります。終戦直後から始まつておる問題であります。社会党内閣のときも、芦田内閣のときも、吉田内閣のときも、常に政府は努力しておつたのでありまして、この点においては、内閣はかわりましても、ずつと同じような努力をして来たと私は了解しております。その努力はいろいろあり、中にはいまだ機密に属するものもたくさんありますけれども日本立場相当はつきりと、あらゆる日本の周囲の島嶼について説明をいたし、主張をいたして来たのであります。
  96. 戸叶里子

    戸叶委員 吉田首相が講和会議のときに、千島、樺太は、歴史的にも地理的にも古来から日本の領土であり、平和的に獲得したものであるから、放棄はきわめて遺憾であるというようなことを述べられたやに伺つたのですが、私がここで非常に不満に思いますのは、平和的に獲得したものであるからというその言葉でございます。大体歴史的に見ましても、千島、南樺太等は当然日本の領土であるのでありまして、平和的に獲得したというような言葉は非常に当てはまつておらないと思うのですが、もしこういうふうな言葉を使われたとするならば、平和的に獲得したという言葉がどういう意味であるかを伺いたいと思うのであります。なぜそれを伺うかといいますと、千島、樺太は日本の領土である、そして軍事的な謀略によつて、これが一時ソ連に渡された、けれども日本の領土である。そういう考え方に立つて外交交渉の場合には、日本も強く出られますけれども、そうでなくて、あの言葉の中に含まれておるような平和的に獲得したものであるというような態度で臨まれたのでは、なかなかこの領土問題は片づかないのではないか。私ども、あくまで千島、樺太は日本の領土であるという観点に立つている場合と、外務省の場合とでは、少し違うのではないかと思いますが、この点に対する御見解を伺いたいと思います。
  97. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 吉田総理の演説の記録を持つておりませんから、これについてはあとから調べて申し上げますが、平和的に獲得したというのは、要するに千島、樺太の交換の条約は、これはむろん平和的なものでありますけれども、樺太の南端は、これは日露戦争によつて日本に割譲されたものである。われわれとしてはそういう戦争によつての条約ではあるけれども、そういう戦争によつての条約で割譲されたり、取得されたりした領土はすべて不法のものであるとか、暴力によるものであるという議論であれば、世界中の領土をすつかり改めなければならぬことになるのであります。これは両方の合意によつてできたものであれば、平和的の獲得と言えると考えて主張したものと記憶しております。
  98. 戸叶里子

    戸叶委員 もう一点だけ簡単に伺いますが、日本が独立国になつて当然なすべきことは、サンフランシスコ条約の改訂だと思いますが、その中には今言いましたような、ヤルタ協定のような非常に不合理なものもありますので、当然改訂されなければならないと思いますが、そういう御意思があるかどうかを伺つておきたいと思います。
  99. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 戸叶さんの方の政党はそういう主張をなされるように聞いておりますが、私どもは条約というものは、これも千古不磨の大典というわけでもないわけでありますから、必要に応じては改訂しなければならぬ場合もあり得ようと思います。しかしながら日本が平和条約を調印いたしましたときからまだ幾らもたつておらないのでありまして、こういう条約などというものを尊重するという精神は、これは国際信義とか、国際の関係を安定にするためには、特に必要なものでありまして、条約を結んでも、あとからいくらでも改訂すればいいのだというような態度をとるべきでないと考えております。こういうものについてほ特に慎重なる考慮を要するものと考えております。
  100. 栗山長次郎

    栗山委員長 午後は一時から岡崎外務大臣関係政府委員出席を求め、質疑を継続することとして、これで休憩をいたします。     午後零時三十三分休憩      ————◇—————     午後一時三十五分開議
  101. 栗山長次郎

    栗山委員長 休憩前に引続き会議を開き、質疑を続行いたします。福田昌子君。
  102. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 二、三点簡単に質問させていただきます。大臣にお尋ねしたいのでありますが、はなはだおかしな質問かと存じますが、最近また議員提案でハイアライ法案というものが国会に出ております。その賛成の議員の御意見を聞きますと、ことに自由党の議員の御意見を聞きますと、これはスペインのスポーツであつて、これを取入れることによつて日本と、スペインとの親善関係に大いに役立つのだ、こういう御意見でございますが、大臣はハイアライが日本とスペインの親善関係に役立つとお考えになつておりますかどうか伺いたい。
  103. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 ハイアライがスペインのほとんど国技みたいにいわれておることは事実であります。従つて、スペインの競技を日本に輸入するということは、どつちかといえば、いい方に役に立つのではないかと思いますが、それによつて国交改善とかなんとかいうことでもないと思います。
  104. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 ハイアライ法なるものは、大臣は御承知だと思いますが、これは非常な利権法案であり、ばくち法案です。そういうものでも取入れることは、非常にプラスになる、こういうようなお考えでございましようか。
  105. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私は国内の方の問題を言つておるのじやなくして、かけをするかしないかは、国がきめるのであつて、競技というものはかけをしなくともできるものであります。私はただスペインで非常に珍重されておるそういう競技が日本で行われるならば、多少はこの点ではいい面もあるであろうということを言つておるだけであります。
  106. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 アイゼンハウアーの一般教書に対しまする大臣の日本政府としての御見解をお伺いいたします。
  107. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 一般教書は非常に多方面にわたつておりましてアメリカの国内のいろいろの施策も入つておりまして、これに対して日本政府意見を言えと言われましても、はなはだ困るのでありますが、対外関係におきましては、原則としてはやはり平和の維持を強く決意しておるようでありますし、またその中には自由主義国家間の提携として、たとえばアメリカの関税について考慮を加えるとか、アメリカが輸出する国に対しては輸入を大いに考えるとか、通商の規模拡大の方面にもいろいろの施策をうたつております。また先ほどからお話がありましたような秘密協定の廃棄というような問題もあり、あるいは台湾の中立政策の放棄等、いろいろな点で日本に影響のあり得る問題を多数含んでおりますが、原則的には私は自由主義国家間の提携を強化して、世界平和の維持にさらに強く努力するという点は、非常にけつこうであろうと考えております。その他いろいろの具体的問題になりますと、あの政策は方針を明らかにしたものであつて、この方針に基いてのインプルメンテーシヨンといいますか、具体的な方策がはつきりしない限りは、そう明確に、これはどう、あれはどうということは言えないと考えております。
  108. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 もう二つだけお伺いしたいと思います。そういたしますと、大臣の御意見というのは、大体アイクの一般教書の中で、たとい日本関係の深い部分を取上げてみても、これは自由主義国家間の団結を強め、そうして平和への貢献に一歩前進したものであると考えてよろしい、こういう御意見と承つてよろしゆうございますね。
  109. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 それだけが全部ではありませんけれども、それもむろんその中の大きな部分であります。
  110. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 そういたしますと、私ども外務省当局からいただいた書類を見ました範囲においても、国連傘下の多くの国々は、御承知のように、このアイクの一般教書というものは、平和への前進ではなくして、むしろ朝鮮戦線を中心にしたところのアジアの戦線の拡大になるおそれがあるということで、ヨーロツパ陣営においても非常に心配をいたしております。世界各国中で、このアイクの一般教書に対して好意を寄せているのは、日本の岡崎外務大臣と李承晩政権と蒋介石政権だけだと私は認めるものでございます。そういたしますと、御承知のように李承晩とか蒋介石の政権というものは、世界の識者が見ました場合においては、こういつた国々は腐敗堕落の独裁政権だという判定を下しておりますが、それと岡崎外務大臣見解はまつたく一致しておるということに相なるのでございまして、この観点からいたしましても、岡崎外交なるものが、いかなる外交であるかということは、おのずから推測できる道理であります。私はあえてその結論を繰返し申し上げたいとは思いませんが、岡崎外務大臣のもう少し国際場裡に立つてのものの考え方のため反省を求める次第であります。  もう一点お伺いしたいのですが、台湾の中立解除に対して、事前に日本に通達があつたということでしたが、この通達に対して日本政府では何か御意見をお述べになつたのでございましようか。
  111. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 世界中の国はおのおの自分の意見を述べる権利もあるのでありまして、ほかの国が左であるから、われわれも左の意見を述べなければならぬというりくつはない。自分の独自の考えを述べればいいのであります。またアイゼンハウアー大統領の政策については、ヨーロッパ等でいろいろ危惧の念を表されたようでありますが、その後ダレス国務長官等が行つて、いろいろ実際の話をいたした結果は、考え方がかなりかわつて、これを理解して来ておるように思います。われわれは極東の問題については、近いだけに相当の研究もいたしておりまして、早くいえば、理解が早かつたと言い得るのではないかと思います。福田さんの属しておる政党は、そういう方面では非常に反対のようでありますが、この教書自体をへんぱなく読めば、そう何も変なことになる必要もないと思います。また李承晩大統領とか国民政府とかいうことについて非難のようなお話がありましたが、外国の政府に対し、あるいはその首脳者に対して、こういう正式な委員会でとかく批評を加えるのは慎みたいと思います。
  112. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 私の質問申し上げたのは、台湾の中立解除の通告があつたことに対しまして、日本政府としてこれに対して、見解を明らかにいたしたかどうかということをお伺いいたしたのですが、それに対するお答えがなかつたので、もう一回お尋ねいたしたいと思います。
  113. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは元来アメリカ政府が独自にきめる政策でありまして、それが日本の安全等に影響を及ぼすような場合には、これは協議をいたす必要があると思います。これは私の知る範囲では、日本のみならずイギリスとかその他の国々にも事前に通報をやりまして、イギリスの外務大臣も、事前に通報を受けたけれども協議をするいとまはなかつたと言つておられるようであります。日本の場合も同様であります。
  114. 栗山長次郎

    栗山委員長 帆足計君。
  115. 帆足計

    帆足委員 通産、大蔵省関係の方がお見えでありませんから、ほこ先をかえて、中共貿易のことと大陸封鎖のことを二点お伺いしたいのでありますが、時間の都合もあるので、これを先にお尋ねしまして、通産、大蔵省関係のことは、五分間だけ後ほど時間をいただくことを御了承願いたいと思います。  御承知のように、昨年の十月、アメリカの相互安全保障本部長官ハリマン氏がバトル法の運営について報告書を出しまして日本もそうでございますけれども、西ヨーロツパ諸国は高度の工業国であるから、機械的、全面的、画一的に鉄のカーテンのかなたとの貿易をとめることは、必要なる物資の入手について支障を来す。また適当な平和物資の輸出市場を失うことによつて、長期にわたる自立安全体制を弱体化するものであるから、アメリカ政府政策としては、国連協力の線に沿い、自由諸国家の防衛力を強める観点に立ち、大局から見るならば選択的輸出制限が妥当であると思う。こういう趣旨を述べられまして、一九五一年には西ヨーロツパ諸国は輸出入二十二億ドルに及ぶ鉄のカーテンのかなたとの貿易をしておるという趣旨を述べております。私はこの意見ならば、それがアメリカ資本主義の利益のためであろうとも、一応の論理と筋道が通つているものと思いつつこれを読みました。日本におきましても、今日の政治的見解相違はとにかくといたしまして政府といたしましては国連協力の線に沿うて諸施策をいたしておることは十分承知いたしております。その線に沿うて過日ワシントン会議が開かれ、日本政府のココム加入が認められ、そして外務省並びに通産省当局の非常な御努力によつて、国連協力のわく内で多少の平和物資の輸出を中国にも認めるということで、許可品目の発表がありましたことは了承いたしております。従いまして、これについてお尋ねをいたしたいのですが、第一には欧米に許されておる程度貿易品目はぜひ日本にも許すようにしていただきたい。第二には、現在政府当局が御許可になり、アメリカ政府もこれを了承しております数十種の平和的物資の貿易につきましては、この貿易を明朗に行い得るということについて多少の不安やデマが飛んでおるようでございますから、その不安やデマなしに貿易がなし得るという零囲気を明確にしていただきたい。たとえば銀行の信用などにおきましても、その商社が弱体であるというような場合もよくございますけれども、中国の貿易に対しましては、政府の御許可になつた物資に対してすら消極的であるというようなことで、難渋しておるという声も各方面から聞くので、どうかそういう誤解を一掃するように御指導願いたい。先般岡崎外務大臣は、国連協力のわく内で、やはり日本の経済の現況から見て、多少の平和物資は認めるように努力するという答弁を本会議でいたしまして、私どももこの一点については十分了承しておるものでございますが、多少の障害があるようでございますから、重ねてそういう誤解を払拭するようにしていただきたい。この問題について御答弁を伺いたいと存じます。
  116. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 この輸出許可品目の範囲内においては、われわれも貿易量の拡大、輸出振興等を考えておるのでありますから、制限はもちろんやりませんし、円滑に行われるようにいたすつもりでおります。ただ今お話のような、関係しておる貿易商社が信用があまりないというときには、われわれの方ではなくて銀行の方で躊躇するという場合もありましよう。また日本としては受諾可能な支払い手段というものがありまして、これが通例においてはドルかポンドということになつておりますので、このドルやポンドが相手方にない場合には、勢い貿易はバーター方式によらざるを得ない。バーター方式による場合には支払い手段で貿易が行われるよりもやつかいであります。相手方の欲する物資とこちらから輸出したい物資とが、そのときに一々合わなければ輸出入ができないということになりますから、きゆうくつになります。しかし相手方にもし支払いのドルやポンドがない場合つには、バーター方式によらざるを得ないのでありますから、これもやむを得ないことだと思いますが、そういう障害が多少あるのは、これは何も中共貿易に限つた場合だけではなくて、どこの貿易でも、相手方に金がなければむずかしい。輸出商社の信用が非常に少いものであるならば銀行が躊躇する。これはどうもやむを得ないと思いますが、それ以外に、特に中共貿易なるがゆえに支障があるとは、私は考えておりません。
  117. 帆足計

    帆足委員 ただいまの為替その他の技術的問題につきましては、せつかく通産省の方が見えましたから、専門の御当局であります大蔵省並びに通産省にこまかなことも後ほど申し上げますが、私どもといたしましては、ただいまの外務大臣の御答弁を非常に満足に考えるものでございまして、政府党といたしましては政府党の立場があるのでございますから、多少の制約があることも、われわれも一応のりくつとしてそれを認めております。ただすでに認めました物資につきましては、貿易振興をはかることは異存がないというお答えは筋が通つておると存じまして、ぜひそのようにはからつていただきたいと思います。どうか通産省並びに大蔵省当局におきましても、そのような明朗な精神におきまして、政府がほんとうにそれをこのわく内では平和物資としてさしつかえがないと認め、アメリカが認めたものについては、政治的な撹乱やデマなどに臆病な業界が、煩わされずに法制通りにやつてさしつかえないということに了解さしていただきたいのであります。重ねて通産省から御答弁をいただきたいと思います。
  118. 小平久雄

    ○小平政府委員 その点につきましては、通産省といたしましても帆足委員のお話の通りでありまして、すでに認められております品目につきましては、何らこれを制限いたすような考えは持つておりません。
  119. 帆足計

    帆足委員 為替その他の技術的な問題につきましては、ほかの委員の方の時間もございますので、私直接次官、局長にお伺いいたしまして、現状を御報告申し上げたいと思います。ぜひともただいまの外務大臣の御趣旨を大蔵省の方にも御連絡くださいまして資力の貧弱その他の技術の問題は別問題でありますけれども政治的撹乱がありませんように、ひとつおとりはからいを願いまして、中共貿易の問題は終ることにいたします。  第二には、大陸封鎖の問題につきまして、外務大臣にお尋ねいたしたいのでございます。実は私ども議員と申しますよりは、一国民といたしまして日本の立地的条件、それから今日の超音爆撃機の機能、原爆の水準、この国の食糧事情等を考えまして、とにかくアメリカが強かろうと弱かろうと、戦争の中に介入いたしましたならば、非常な悲惨な状況になることを心配しておる次第でございまして日本の新聞の各社説においても、このことを警告しておるような状況でございます。このような気持から、過日アメリカが鴨緑江を越えまして満州を爆撃したような場合には、それが報復的に日本に波及することを日本国民は心配しておるが、外務大臣のお考えはどうかとお尋ねいたしましたところが、とつさの場合でありましたせいもありましようが、外務大臣には、中共機が満州から朝鮮に入つて来るのはよくて国連機が国境を越えて満州を爆撃するからといつて、大戦争になるというりくつは解しがたいとお答えになりました。別に私は満州から朝鮮に向うの飛行機が来るのがいいとも申しませんでしたが、とにかく満州爆撃から戦火が拡大する、そういうりくつは解しがたいとお答えになつて、あとで新聞記者会見で追究されまして、あれは左派社会党のことさらに戦争危機の印象を国民に植えつけようとする平和攻勢に対して、一矢を報いたにすぎないというようなお言葉があつたように新聞が伝えております。もちろん新聞の紙面は限られておりますので、必ずしも正確を期しがたいのでありまして、それを取上げてとやかく申すのではございませんけれども、今日政府は、現在のアメリカの極東政策に対しまして、西欧諸国が声をあげて叫び、イギリス政府が警告し、インドのネール首相が憂慮するところのその問題は、何ら根拠なき杞憂と考えておられるのであるかどうか。政府は万が一アメリカ軍が満州または中国本土の爆撃を行う場合に、日本本土に報復爆撃の心配がないとお考えになつておられるのであるかどうか。かつてマツカーサー元帥が鴨緑江を越えようとしましたのを、英国政府の厳重な警告によつて、米国政府によつて罷免せられたことが、世界平和のためによかつたとお考えにならないかどうか、この問題につきまして率直な御意見を伺いまして、われわれの心構えに資したいと思う次第でございます。まずこの一点をお伺いしたいと思います。
  120. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私は過去におけるマツカーサー元帥の方針とか、あるいはそれに対するアメリカ政府のやつたこと等に対して批評を加えることは好みませんから、この点はお答えを差控えま。満州爆撃等はいろいろ議論はされておるようでありますが、アメリカ側が、あるいは国連側が決定した問題とも考えられませんし、朝鮮における努力は国連軍としての努力でありまして、アメリカ側はその非常なる部分は占めておりますが、国連軍として共同の参謀部もあるように聞いております。従つていずれの国もよく了解し協議し、納得の上で行動がとられるものと考えますので、こういう決定がまだ何もない現在、それに対していろいろ批評をして——ことにこういう正式な委員会でもつて外務大臣が言うことは、これは私は差控えた方がいいと考えます。しかしいずれにしても、そういう問題は日本との関係も密接なわけでありますから、外務省なり、あるいは政府なりがこれをいいかげんにしておるというわけではないのでありまして、十分研究もし考慮もし、また意見の交換もいたすわけであります。
  121. 帆足計

    帆足委員 外務大臣におきましては、先般の御答弁を修正されまして、ただいまのように慎重な御答弁がありましたことは、日本のために非常によいことであると思いますけれども、しかし事態がそこまで来たときにはもう手遅れでありますので、来ないときに西ヨーロツパ諸国並びに遠く離れたイギリスですらが非常な叫びをあげてダレスに警告し、アメリカに警告しておるのでございます。イギリスはアメリカの親類筋と言われるほどの国でありますのに、なおかつこの重大な問題に対して強い意見を述べておりますが、もつと切実な関係にあります日本外務大臣といたしましては、せめて英国保守党イーデン外相並びにインドのネール首相あたりと意見を交換いたしまして、政府としてこれに対して適当な、穏健にして着実な意思表示をすることがきわめて肝要であると思いますが、外務大臣日本国民にかわりまして、それをすらなさらないので、とかく追従外交と言われるのじやなかろうかと思いますが、いかがお考えでありましようか。
  122. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 国にはその国によつていろいろの考え方もりましようし、われわれはわれわれでいろいろの考え方を持つております。一々イギリスに相談したり、インドに相談したりする必要のある問題もあり、ない問題もあると考えますが、今申した通り政府としては最も近接した地域におるのでありますから、勢い慎重なる研究はいたすし、また遠くにいるのとは違いまして、いろいろの情報ももつとよく入つて来る立場にあるのでありますから、ほかの国以上に十分なる情報を持ち、十分なる研究をいたしておるものと御了解願いたいと思います。
  123. 帆足計

    帆足委員 率直に申しまして、英国が、また西ヨーロツパ諸国が心配しております国境を越えての戦局の拡大、満州爆撃、中国本土爆撃等の事態は、ただちに日本国土に対して致命的な問題が起るということをわれわれ心配しておるのでありますが、この問題についての外務大臣の所見はいかがでございますか。
  124. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これはすぐ致命的な影響をこうむるとか、あるいはこうむらないとか議論をしても、実は抽象論でありまして、実際にどういうことになるかはわからないし、まだそういう爆撃をやるときまつたことは全然ないのであります。まあ早く申せば、かりにそういう地域日本がおつたとしても、日本の防禦が完全ならばそんな心配はないというりくつにもなりましようし、そうでなければ逆の事態が起るわけでありますが、私はそういう問題はまだ具体的に、外務委員会等で取上げて議論をなさつても、政府としてはこれに対して明確なお答えをする立場にないのでありまして、遺憾ながらただちにその問題について、はつきりした御返事はできないのでありますが、こういうような問題については、もちろん日本にとつて影響がないというわけには行がないのでありまして、日米間の安全保障条約もあり、行政協定もありますので、こういう条約との関係においても、両国政府間で協議をいたす建前になつております。
  125. 帆足計

    帆足委員 この問題に対しましては、繰返して申しますが、西ヨーロツパ並びに英国政府、しかも保守党政府におきましてすら、非常に憂慮いたして、言うべきことを非常に強く言うておるのでございます。それがまたアメリカ政策に建設的に響いて、よい効果があるとわれわれは見ております。アメリカに対して、朝鮮において行いつつあるところの国連活動と、中国内戦の問題と混同してはならぬという、イギリスのイーデン外相の警告に対して、私どもはまつたく同感であつて、よいことを言つてくれたと思つておるのでありますが、これに対しまする外務大臣の御見解は、どのようでございますか、外務大臣はいらないことを言つておるとお考えでございましようか。
  126. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは他国の外務大臣の言つていることを一々いいか悪いか、賛成か不賛成かというふうな質問をされることは、はなはだわれわれにとつてエンバラツシングでありまして、いいときに、それはけつこうでありますと言えば、今度悪いときには、けつこうでありますと言わなければ、これは悪いのだろうというようなことに結局なつてしまうのであります。これは一つのイギリス側としての見方でありましようが、そういうふうな直接法的な御質問はどうも答えにくいのであります。しかし一般的に見て、イギリスその他の国々が、いろいろ憂慮いたしておる。またそのかわり、先ほど申した通り、ダレス国務長官が行つて、いろいろ話をした結果、議会の質問や答弁等も、大分かわつて来ておるようであつてアメリカ側の意図も漸次イギリス側で了解して、野党の質問も大分趣旨が変化しておるようでありますから、話し合えばいずれもよくわかることじやないかと考えております。
  127. 帆足計

    帆足委員 外務大臣のただいまのお答えは、外務大臣としてまた日本政府として、どうも自主性と申しますか、積極的御意見と気魄に乏しいような感じがするのでございまして、他国の外務大臣政策に対して常に是非の論をさしはさむ必要もありませんけれども日本の国土と運命に対して至大な関係のある問題につきましては、それに対して批評を加え、またははつきりした政府意見を時折発表するということが、インドでも、イギリスでも、フランスでも行われておることでありまして、ひとり岡崎外務大臣だけが常に控え目であつて、はつきりしたことを申されないというところに、追随外交と言われるゆえんがあるのではなかろうかと思います。たとえば昨今アメリカ政府筋で主張されまする、アジア人をしてアジア人と戦わしめよという言葉は、人口に膾炙した言葉になつておりますが、私ども日本人にとりまして、まことに不愉快なスローガンであると思うのであります。これはアジア民族にとつて、まことに無礼にして不遇なる見解であると思うのでありますが、このアジア人をしてアジア人と戦わしめよという言葉並びに政策に対して、岡崎外務大臣はそれを不快な言葉であるとお考えにならないでありましようか、どのようにお考えでございましようか、お伺いしたいと思います。
  128. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これも、ものは考えようでありまして、実は戦前の状況でありましたならば、アジアの問題にヨーロツパなりアメリカなりが関与するということが、非常な反対を招いた時代もあるのでありまして、アジアのことはアジアで始末する、こういう主張を、中国もやつておりましたし、インドもやつておりましたし、日本もやつてつたのであります。どういう言葉意味か正確にはわかりませんが、今度はアジアのことはアジアでやれということになると、はなはだ不快なこだというのも、もつと正確な意味をはつきりしなければ、はつきりしたこは私は言えないと思います。先ほどお話のように、日本政府意見なわは、天下に公表することもあれば、あるいは直接相手国に対して率直な意見を交換して、正しい方向に導くという方法もあるのでありまして各国でやつているから日本もやらなければならぬ、そういうふうに一概には片づけられない。またわれわれの知らない部分では、よその国も直接に相手国と相談して、いろいろきめておる場合にありましようし、これは国の地位と、そのときの状況をいろいろ考えてやる問題でありますから、一概にそう簡単に片づけるべき問題じやないと考えております。
  129. 栗山長次郎

    栗山委員長 帆足さん、同僚議員の田中さんが待つていらつしやいますから、これでひとつやめてくださいませんか。
  130. 帆足計

    帆足委員 それではあと一点だけ。ただいま私が申し上げましたのは、アジア人をしてアジアの問題を始末せしめよというならばけつこうでありますけれども、そう申したのではなくして、アジア人をしてアジア人と戦わしめよ。この言葉意味するところのものは、常識のある方ならばすべての人が知つておる。すなわちアジア人とアジア人と戦争させろ、白色人種の血の一滴をもつてアジア人と戦わしておることはもつたいないということまで言つている不快な言葉であります。私は岡崎外務大臣が手がたく着実な道を選ぼうとしておることに対しては、常に敬意を表しておるのでありますが、しかし自主的な意見を持つて、祖国のためにこのきびしい時代にどのようにして国を救うかということになりますと、ただアメリカの言うことに唯々諾々としておりますのは、丁度会社の部長さんや課長さんが、社長の前だけ唯々諾々としておつて、社員の前ではばかに強いというお人柄の人もありますが、こういうような行き方は社全体のために、また社長さんのためにも、あまり好ましくない行き方でありまして、言うべきことは相当強く言わねばなりません。今英国のイーデン外相すらが、声をあげて再三再四警告しておるような問題に対しまして、外務大臣からひとつも積極的御意見がない。そうして天下に公表すべき問題と、直接話すべき問題があると申しますが、直接どういうお話合いがあつたかといえば、そのお話合いもない。これでは外交はなきにひとしいと言わなければならないと思います。毎朝新聞を見まして、諸外国の論調を見、国の内外の情勢を見ますと、言うべきことは非常に多いのでありまして、その中から最も切実な国民の願いをイギリスなり、アメリカなりに、日本外務省を通じて公表していただくことが、日本の安全のために最も必要であると思います。  そこで最後に一言伺いますが、今日は非常にむずかしい時代であります。また日本アメリカの強い影響下にありますから、諸事困難でありますけれども、ソ連、中国に対しましても、また多少の国交調整を考えるだけの叡知があつてよいのではないか。ソ連、中国は交戦国であり、敵国であるから、もう話し合う必要はないというような表現は、かつて蒋介石を相手とせずといつたような、軍部万能時代の外交に通ずるものでありまして、話にくい相手ともなおかつ話をつけるというところに、外交の妙があり、技術があり、誠意があるのでありますから、日本を平和ならしむるために、すべての日本国民が、戦争の火中のくりを拾うな、第二の朝鮮になるな、アメリカが強かろうが弱かろうが、戦争の中に入つては、この四つの島が焦土と化すということは、戦略論から見まして、これは自明の理であります。すべての国民が心配しておりますこの問題に対して再々イギリス、インドが、アメリカよ、もう少し慎重なれ、話合いで解決するように、一段の努力を払う余地があるのではないか。また社会党右派の方も、改進党の方も、再軍備平和論、無軍備平和論の差はあろうとも、とにかく平和のために、一段と強い外交でこれを切り抜けねばならぬと叫んでおるときでありますから、外務大臣としては積極的意見を持つて、われわれを啓蒙し、そして世界に主張せられて、日本のための自主的意見を述べられる必要があると思いますのに、ただいまの外務大臣お答えでは、積極的意見一つも出ておらない。満州爆撃というようなことが起つたならば、確かに日本も重大なる影響をこうむる。従いまして、イギリスの言うておることや、インドの叫んでいることには大きな真理があるから、アメリカよ、もつと慎重なれということを、なぜ外務大臣は叫ばないのか、われわれは怪しむものでありますが、それについての御答弁を承りたいと思います。
  131. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 帆足君のお話を聞いていると、アメリカは今まさに満州を爆撃しようとしておつて、イギリスやほかの国がその手を押えてとめておるというような状況を描いておられるようでありますが、私はそうじやないと思つております。事態はそうではないのであつてアメリカ政府も平和をこいねがうことは他のいずれの国にも劣らないし、またそれを実現する方法についても、満州爆撃をやるとは一度も言つたことはないのであります。そういう前提が私は違つておるのじやないかと思います。私の見るところでは、アメリカ側の意向も現地におるだけに一層よくわかつておるようなつもりでおりますが、その結果は、まだここで声を大にして言う必要のない段階であると考えておりますから言わないだけの話であります。
  132. 帆足計

    帆足委員 ただいまの御答弁はまことに明るい御答弁であります。まず外務省当局アメリカが満州爆撃に移るような、時局が拡大するような心配は今のところないというふうに承りましたが、同時に今日の新聞で論議が集中されておるのは、中国大陸封鎖の問題であつてこれに英国が反対しておることは御承知の通りであります。中国封鎖の問題につきましても、われわれとしては至大の関心を持たざるを得ませんが、そういうおそれはないというお考えでしようか。さらにまた満州を爆撃するような場合には、日本の国土をそういうことに使つてもらいたくないというような言葉で、はつきりお考えになつておるのでありましようか、これをもつて最後のお尋ねにいたします。
  133. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 たびたび申すように、満州を爆撃するとかしないとかいうことは、今の段階においては仮定の問題でありますから、私はお答えすることを差控えておるのであります。中国封鎖の問題も同様でありまして、まだ封鎖をするともしないとも言つておりませんし、またするにしても、やはり関係国との相談も必要でありましようし、かりに将来封鎖が実行されるという場合でも、封鎖の態様といいますか、段階といいますか、いろいろの種類のやり方があるのであつて、封鎖をすればこういう結果になるのだという一つの方式だけしかないものではないのであります。従つてまだそういういろいろの仮定を置いたその先のお答えをするには、われわれ責任のある者としては早過ぎるのでありまして、この点もお答えはできかねるのであります。
  134. 栗山長次郎

    栗山委員長 田中稔男君。
  135. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 外務大臣にお尋ねいたします。一月の十七日、日本赤十字社の講堂で行われました帰国推進国民大会のとき、たしか奥村外務次官にお目にかかつたときのことだと思いますが、今後中国から引揚げる者については、思想調査や情報収集はやらない、こういうふうに言明されたのであります、岡崎外務大臣も同様のお考えをお持ちになつているかどうか、お尋ねいたします。
  136. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私は思想調査というものは非常に原始的なもので、やつたつて意味がないものだと考えております。というのは、申すまでもなく調査されて発見されてはいやなような思想を持つている人は、ほんとうのことは言いますまいし、思想調査なんていうものは意味のないことだと考えております。しかしこれは私の管轄じやありませんが、政府としてはそういうことをするつもりはないと私は了解しております。それからもら一つ情報収集ですが、これはどういうことですか。たとえば中共から帰つて来た人に、中共の状況はどうかといつて聞くことが情報収集になるなら、そのぐらいのことは聞くことはありましようけれども、秘密の情報をとろうというような考えは、もちろん政府部内にはないと思つております。
  137. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 昨日の海外同胞引揚に関する調査特別委員会で明らかになつたことであります。またけさほどの各新聞の朝刊にも詳しく書いてあります。昨年十月中国から引揚げて参りました大阪の京昭という青年が申したことでありますけれども、麹町の宝亭ビルにあるアメリカの航空情報部隊において、中国特に満州の情報を収集する目的をもつて、これまでに中国から帰国した人々、多数の日本人でありますが、これを現に連日取調べをしておる。こういうことでありますが、こういう事実を岡崎外務大臣は御存じでありましようか、お尋ねいたします。なお右の京君が米軍の部隊に出頭を命じられる前に、神戸及び大阪のアメリカの領事から面会を求められて、北京政府や朝鮮戦乱に対する中国の民心の動向について詳細な質問を受けたということです。この事実も御存じでありましようか。実は昨日中村政務次官にこの点についてお尋ねいたしましたところが、全然知らないというお答えであつたのであります。これは政務次官の不明をみずから暴露したものであるか、さもなければその場限りの無責任な答弁だと考えます。明敏な外務大臣の責任ある御答弁をお願いいたしたいと思います。
  138. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私はアメリカの領事が何か聞いたかどうかそれは聞いておりません。しかし私の聞いておることは、こういうことはあるということであります。それはアメリカ側の人が、中共その他の状況を知りたい、そこでもしそういう話をしてくれる者があれば、旅費なり日当なり手間賃その他を出すから来て話をしてくれ、それは取調べとかそういうような種類のものではなくして、要するに日当、旅費を払つて、頼むから来てくれと言つたときに、それに応ずる人があればそういうことができるという程度のことは聞いております。
  139. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 私はただいまの外務大臣の御答弁に決して満足するものではありませんけれども、とにかく私の指摘しましたような事実が、明らかに存在しておるということはわかつたのであります。そこでさらにお尋ねいたしたいのでありますが、まず第一に、従来援護庁が取調べを受ける本人を米軍部隊に出頭させるためにあつせんの労をとつたり、あるいは日本の警察が伝達の任に当つたりしておるのでありますけれども、一体米軍の情報収集活動に対する政府機関の協力というものは、いかなる根拠に基いて行われているのでありましようか。日米行政協定のどの条項を読んでみましても、かかる協力の義務は規定されていないのであります。この際外務大臣の御教示をお願いしたいと思います。  さらにまた神戸や大阪のアメリカの領事がそういうことをしたということについて、一体どう考えておられますか、これをお尋ねしたいと思います。政府機関はともかくとして——政府機関はもちろん重要でありますが、本人自身は日本国民として一体いかなる根拠に基いて米軍部隊に出頭したり、その情報収集活動に協力する義務があるのでありましようか。京君という今の青年の話によりますと、出頭を拒否すること三回に及びました場合は、日本の警察が本人の行動を尾行する、その他種種の圧迫が加えられるということでありますが、日米行政協定に伴う刑事特別法の適用を受けるような被疑事実でもあれば別でございますが、ただ単に中国から引揚げて来た、そうして最近の中国の事情を若干知つているという理由だけで、なぜそういうところに出て、取調べを受けなければならないか、それが半強制的に行われているという事実は注目すべきであります。もしこういうことが何ら法的な根拠がなくして、米軍によつてつてに行われておる、しかも政府の機関がこれに協力するということになりましたならば、日本が独立国であるという政府の日ごろの主張を、みずから否定するものでありまして、重要な問題であります。そもそもどこの国のことでありましても、外国の軍隊に出頭を命じられて取調べを受けるというようなことは、取調べを受ける本人にとつてきわめて不愉快な印象を与えることは明らかでありますが、それだけでありません。今日の日本におきましては、そこにきわめて深刻な事情がある。かつてソ連からの復員者が引揚げ当時、舞鶴で米軍機関によつて厳重な取調べを受け、その後平和な市民生活に入りました後においても、たびたび出頭を命じられる、場合によつては拷問に類した取調べを受ける、さらにはなはだしきに至つては、対ソ諜報活動に協力を求められたという事例も少くないことは、すでに国民周知の事実であります。こういう際に、そうして米ソの深刻な対立がまさに一触即発の危険をはらんでいる今日の国際的情勢下にあつて、かつてに米軍の取調べを日本人が受けなければならないということは、国民としては戦慄すべき事柄である。こういうことになりますと、憲法第十九条に国民の基本的人権として保障されておりますところの思想及び良心の自由が著しく侵害を受けるのであります。こういう重大な結果を生ずる問題でありますが、一体いかなる根拠に基いて、日本国民が米軍機関の情報収集に協力しなければならないのか、これが第二にお尋ねしたい点であります。
  140. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 いろいろ長くお述べになりましたが、私が申したのは、初めと同じことで、日本政府も、日本国民も、こういうことをしなければならぬという義務は何もないのであつて国民の中で進んでそういう話をしてやろうということであれば、それは日本政府としてもとめることはできない、別にとめる権能もない。従つて強制されたとか、取調べを受けたとか、あるいは拒絶すれば尾行されるというのは、私はためにする悪宣伝であろうとかたく信じております。
  141. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 いかなる国の軍隊も諜報活動をやり、情報収集の活動をやります。それがまつたく自由な気持で行われるという場合、しかもまた何か金銭の代償を期待して、その求めに応じるということであれば、ちようどパンパンがやつておりますようなことで、好ましいことではありませんけれども、これは、私としてはあえてここで問題にしようと思いません。しかしながら、外務大臣は事実を歪曲してお述べになつておりますけれども、さつき申しました京君のような青年は、うそを言う男ではないのでありまして、取調べが決して自由なものではなく、半ば強制的なものであるということ、しかも政府の機関がそのあつせんの労をとつておるということ、ここに私は問題の重要性があると思うのであります。しかしながら外務大臣にどれだけ申しましても、私どもは違つたことをお述べになるに相違ないと思いますから、私はそのことは一応打切りまして、日本政府としても、日本国民としても、米軍の情報収集に協力する義務が正式にないということ、協力する何らの根拠がないということは、大体ただいまの御答弁によつて明らかにされたと思います。私は今後こういうことのないように、外務大臣が米軍当局に向つてひとつ厳重なお申入れをされることをお願いしたいと思いますが、そういうことをなさるお考えがあるかどうか。いやそういうことがあつても大したことではないのだと黙認されるのかどうか、これはきわめて重要な日本国民の基本的人権に関することでありますから、国民権利を外国に向つて主張しなければならない立場にある外務大臣の御所信を承りたいと思います。
  142. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これはむろん事実を取調べて、そういうことがあれば、アメリカにも申し入れ、どこにでも必要なところに申し入れます。私はそんな事実はないと確信しておりますが、関係機関によく注意をいたして調査をしてみます。
  143. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 今そういうことないと断言されましたが、それはきわめて重要なことであります。岡崎外務大臣は法務委員会において鹿地亘君の不法監禁の問題が取上げられましたときにも、最初米軍に限つてそういうことはあり得ない、こういうふうに主張された。まるで日本国政府外務大臣であるか、アメリカの国務省の日本局長であるか、わからぬような御答弁であつたのでありますが、そういう答弁をまたここで繰返されて、絶対そういうことはないとおつしやるのでありますけれども、これはいずれ事実が外務大臣の御答弁を否定することになりましよう。これは私はひとつ十分詳細に、しかも正確に下僚に命じて御調査の上、一日もすみやかに本委員会に御報告をいただきたいと思います。  なお外電の報ずるところによりますと、去る七日開催されましたところのNATOの情報会議におきまして、リツジウエイ北大西洋軍司令官は、NATO加盟十四箇国による対ソ統一心理戦略の採用を力説いたしたそうでありますが、各国の代表は、自国の主権を侵害するおそれのあるリツジウエイ司令官の要請を断固として拒否いたしたのであります。そういうことが報道されておるのであります。これを岡崎外相の丁重な対米媚態外交に比べますと、まさに天地の隔たりを感ずるのであります。岡崎外務大臣もせいぜい彼らのつめのあかでもせんじて飲んでいただいて、大いに民族的な気概を回復されるように切に要望するのであります。  なお最後に一つお尋ねいたしたい重要なる問題がございます。同僚帆足計君の質問に対する答弁にもありましたが、先ほどの外務委員会において岡崎外務大臣は、共産軍の飛行機が満州の基地から飛び立つて来る、だから米軍による満州爆撃があつてもあたりまえではないかという口吻を漏らされた。たといそういう事態になつても、大戦争にはならぬと、きわめて楽観的なことを言われたのでありますが、私ども国民とともに、ただに日本国民だけではありません、全世界の人類とともに、アメリカの極東政策が非常に積極化して、そうしてこういう満州爆撃という事態が起りはしないかと、日夜戦々きようようとして心配しておるのであります。これが今日の国民の心境であります。そういうことは心配せぬでもよいと外務大臣は繰返して言われますけれども、私は岡崎外務大臣のそのお言葉だけに晏如としておるわけには行かないのであります。米軍の航空情報機関において、中国から帰つて来ましたところの多数の日本人を呼んで、そうして満州の事情を詳しく調べて、市街の区画、町の曲り角から道路の状態、建築物の位置、材質、その基礎工事、こういうものを詳細に調べておる。京君のごときはハルビンに滞在したことがあるのでありますが、ハルビン一市についての取調べが一月三十一日から二月五日まで、五日間も続いたといわれる。一体そういうふうな詳細調査をされることは、その意図が那辺にあるか。私はこれはあるいは満州爆撃のための一つの準備行為じやないかと思うのでありますが、こういう重大な問題について、外務大臣の御答弁は終始あいまいであり、無責任でありますが、一体こういう点について外務大臣は、事態を非常に重要視してお考えになつておるかどうか、最後にこの点についての御答弁を承つて、私の質問を終りたいと思います。
  144. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 田中君とは考え方の根本が違うせいか、何か私の言うことを非常に曲解されているようにとられます。私は決して満州の爆撃ということが、日本にとつて何も心配がないのだと言つたこともないし、逆にそういう事態があれば、非常にこれは日本に影響があるのだから、慎重にいろいろの点を考慮しておるけれども、ただいまのところ、そういうことはまだ仮定の問題の段階である、こういうことを申しておるのであつて、決して満州の爆撃が起つても何も心配するなと言つたことは一度もないのであります。さよう御承知を願います。
  145. 栗山長次郎

    栗山委員長 高岡大輔君。
  146. 高岡大輔

    ○高岡委員 きようは外務大臣の御都合で、私はアジアの不安についてひとつお尋ねをしたいと思つたのでありますが、時間がないそうでありますので、ほんの一、二をお聞きします。  第一にお聞きしたいことは、けさの新聞にあります日本の島津さんを団長とした引揚交渉団の人たちが、モスクワへ行つたのではないかという報道の記事であります。これには外務当局としても、連絡がなくて不安に思つておる、というようなことをおつしやつておるのでありますが、この交渉団がおいでになるときは、外務大臣は非常に御心配になつたようなことが新聞に出ております。ことに高良さんの旅券問題については、最後の断を下される場合には、いろいろと人情的な御配慮もあつたように新聞が伝えているのでありますが、とにかく中共と日本とは国交が回復していないのでありますから、これは非常にむずかしいということは初めからわかつているのでありますし、ことに今北京飯店がどういうものに使われておるかということも、外務大臣はおそらく御存じだろうと思う。そこへ今の交渉団が泊つていられるようでありますが、そういうふうな場合に非常時をお考えになつて、非常連絡の方法というようなものはお考えにならなかつたのであるか。とにかく留守家族の方から見れば、こういう新聞記事が出た場合には、非常に心配なさるだろうと思うのでありまして、外務大臣からひとつその後の様子をお知らせを願いたい。
  147. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これはいつも旅券を出すときの議論になることでありますが、われわれとしては、だれが行つてもそれの保護をする方法はないのでありますから、それだけでも旅券を出すことは、非常に躊躇せざるを得ないのでありますけれども、今回の場合は、とにかく中共側から世界中に聞えるようなラジオを通じて、堂々と発表して来られたのでありますから、万が一にも生命財産といいますか、そういう方面の心配はないであろうと信じておりまして、またかりに多少そういう点で心配がありとしても、行く人たちは引揚げのためにそのようなことは意に介さず、また不便等があつてもそれを忍んで、ぜひ行つて話をして来たいということであります。われわれの方としては、今おつしやつたような非常時の通信手段といいましても、これはまつた方法がないのであります。もつとも北京には他の外国の代表者もおることでありますし、それらの方面から情報を伝えてもらい得ると考えておりますけれども、今のところ、新聞に出たようなことについての追報というようなものはないので、ちよつと心配はいたしておりますが、これも無電等がときによつては天候のかげんで遅れることもありますし、また何かの通信上の間違いがあるかもしれませんので、私はまだそう心配はいたしておりませんけれども、いずれにしても早く何か消息がわかることが最も必要でありますので、いろいろ方法——大した方法もありませんけれども、しかしながらできる限りの方法を講じたいと考えております。
  148. 高岡大輔

    ○高岡委員 いろいろな方案をお考えになつていらつしやるというのだから、そのうちに全部包含されますけれども、最初にこの問題はたしかインドに御依頼になつたように聞いておるのでありますが、インドの方からその情報といいましようか、交渉団のその後の様子をお聞きになるという、そういう連絡はなさいませんか。なさいましたがまだ返事が来ないのでありますか。
  149. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 今まではとにかく断片的ではありますが、順調に消息がわかつて、たとえば相手の代表がいないからしばらく交渉が延びるとかいうようなことがわかつてつたわけであります。ごく最近にそういうこちらからの問合せに対しても、まだ返事が来ていないという状況で、これはきよう新聞にも出ておりましたようなわけでありまして、ごく最近の模様であります。一応状況を見まして、必要があればさらにその方面にも依頼しなければならぬかと考えております。
  150. 高岡大輔

    ○高岡委員 これは外務省としては、おわかりになつてもなかなかこうした責任のある場所ではおつしやらないでしようが、こつちから交渉団が行く、とたんに相手の李徳全が病気になつてしまう、それは人間のことですからそういうことはあり得ますけれどもちよつと考えるとどうもそのときからおかしい気がするというように神経をこまかくお使いになれば、三日からといいますと一週間以上もたつておりますから、何か手をお打ちにならなくもやならないと思います。これは留守家族の方々から言わせれば、たいへん御心配だろうと思う。ただその間において、李徳全の病気がなおるまで、モスクワまで飛行機で一飛び行つて見物して来ようということでは、ちよつと話が違つて来るのでありますが、モスクワへ行つたということについての情報は、何かお聞きになつたことがありますか。
  151. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは全然ありません。まさかそういうとはないだろうと私は考えておるのであります。
  152. 高岡大輔

    ○高岡委員 これは全然情報が入つていないとおつしやるのでありますけれども、こういうことが巷間伝えられております。それはこの交渉は必ず延びるだろうと予言者のようなことを言う人があります。それはどうしてかと聞きますと、この交渉が延びるということは、大体三月から四月、五月と、引揚げの方々が日本に帰るようにするのだ。この時間をちやんとはかつておるのだ。その意味はどういうことかといいますと、最初には実にやわらかい方といいますか、りつぱな方々にまず日本にお帰りを願つて、順次筋金の通つた人を日本参議院議員の選挙の最中に送り込んで、そうして日本にある暴力革命の人と合流さして、機をはかつて一騒動やるのではないかという考え方なのです。これはほんのデマというか臆測でありましようが、そういうようなことをわれわれは別に考えるわけでも、そう信ずるわけでもありませんけれども、その交渉が尋常一様ではないということだけは、初めからおわかりだろうと思う。なぜ最初に申し込まれましたインドを仲介として引揚げ交渉をなさらなかつたか。外務大臣としてはインドに頼んだけれども、ああいうインドと中共との間の、例の朝鮮の捕虜問題のことについての微妙な関係があつたので、インドとしては多少躊躇した。ところへ幸いにも今おつしやつたように世界にわかるような無線で放送して来た。それをキヤツチしているうちに、だんだんと話が進んで、今度の派遣になつたのだ、こうおつしやるのでしようけれども、私はその際におけるインドとの関係はどうなつたのか、その点をひとつお聞きしたいと思います。
  153. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 まず初めのことでありますが、私もデマといいますか、そういうような説、つまり参議院議員の選挙に大いにやるのだという説はたびたび聞かされました。そんなこともないと思いますけれども、しかしかりにあつても、言論をもつて行う範囲においては、言論をもつて対抗すればいいのであつて、さしつかえないと思います。もし暴力その他非合法の方法なんか講ずるような場合には、これは引揚者といわず、だれといわず、これに対しては十分な取締りの手段を持つておりますから、政府としては別段心配をいたしておりません。  なおインドの話でありますが、インドに依頼して、なるべく今お話のようなことにしたいと考えましたけれども、結局中共側ではインド政府の話を受付けてくれないようでありまして、インド政府としてはいかんともあつせんの労をとることができないというようなことで、結局それができなくなつてしまつたのであります。
  154. 高岡大輔

    ○高岡委員 それなら日本の交渉団が出かける前にインドとの話合いは済んだのですか。
  155. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 出かける前に、もうとても見込みがないということも言つて参りました。いろいろできるだけ頼んでみましたけれども、結局日は忘れましたけれども、とてもインドとしては仲介の労をとることができないと言つてつたのであります。
  156. 高岡大輔

    ○高岡委員 それではこの問題については、もうインドは全然手を引いたと了解していいのですか。
  157. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 この交渉は代表団が行くのでございますから、代表団の行くことについての話合いで、これはもう行つてしまつたのですし、インドに頼んだことは行くことについてのいろいろの打合せでありまして、事態はもうその先に進んでおりますから、インドは手を引いたというか、この問題には関係ないわけであります。
  158. 高岡大輔

    ○高岡委員 今私の申し上げましたのは、言葉が足りなかつたでありましようが、頼んだことを向うでできないと申し入れて来た、それはそれでいいのですが、それでいよいよこつちから外務大臣の御心配によつて行くことになつたのですが、その行くことについては、もうインドには何らの連絡なく、民間団体独自の立場で行かれたのか、という意味なのであります。
  159. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 その通りであります。つまり政府としては公用の旅券を出しておりますし、政府の国費をもつてつてもらつておるのですから、いわば政府のかわりに行つてもらつたようなものですが、インド政府とは関係は全然なく行つております。
  160. 高岡大輔

    ○高岡委員 そうしますと、向うに行つた方は、北京飯店にカン詰めになつたきり、どうにもならないということになるのでしようか。何とかこれは連絡の方法があるとお考えになりますか、そういうようなことについてひとつ……。
  161. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは事情をよく調べてみなければわかりませんが、向うからは通信がかなり来ておりますから、今後もむろん来ると確信しております。こちらからの連絡も行くであろうと信じております。
  162. 栗山長次郎

    栗山委員長 あと五分間で外務大臣の退席を認めたいと思います。予算委員会から再三再四の督促であります。
  163. 高岡大輔

    ○高岡委員 ではその話はその程度にしまして、もう一つ簡単にお聞きしたいと思います。去る二月二日の新聞に外務省顧問という白洲次郎さんが、大使の資格を持つて欧州へ出かけるという記事が出ておりました。この白洲さんは去年アメリカへ特派大使として行かれております。私はこの白洲さんという方は、一面識もないのでよく存じませんが、何か話によりますとアメリカの国務省では白洲さんを非常にきらつておる。日本人はつき合うといい男だが、白洲という男だけはどうも悪い、と口をきわめて悪口を言つているのを聞くのであります。それを裏書きするとでもいいましようか、最初白洲さんをアメリカ大使ということで吉田内閣といいましようか、岡崎外務大臣といいましようか、人選をなすつていらつしやつたのですが、とうとうアメリカは白洲大使を拒否して来た。といいますと、アメリカの国務省の極東部のある高官がおつしやつた言葉は一応裏づけされる。そういうアメリカできらつておる人をなぜアメリカへ特派なさつたのか。巷間伝えるところによると、特別国会が開かれると、何かどこかの常任委員会で白洲さんがつるし上げになるから逃げたのだろうといわれておる。白洲さんに対してはたいへんお気毒なデマかもしれませんが、白洲さんは国会が休会になりますと日本に帰る、国会が再開されるとまた出かけて行く。どうも国会が開かれることと、白洲さんの海外行きが常に関連しているように、新聞の発表等で時間的に考えるのでありますが、そもそも白洲さんのどういうところを見込んで特派大使になさつたのか、その理由を聞かしていただきたい。
  164. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 白洲大使は御承知かどうか知りませんが、イギリスで勉強いたしまして、言葉が非常に達者な人であります。また外国人の間に非常に親密なつきに合いの多い人であります。大使なり大使館なりからいろいろ情報を入手いたしますが、それとは別に民間の人たち、つまり非公式な、腹蔵ない日本に対する批評、たとえば東京へ来るお客さんは、はたして東京を見てほんとうにきれいな町だと思うかどうか、われわれちよつと疑いなきあたわずなのでありますが、来るお客さんはみな東京はきれいな町だと言うのであります。ところがそういうことでなく、打明けた日本に対する感じというものを知ることは、われわれとしては非常に必要であります。この意味では私は白洲さんがたいへん適任である。また御本人も打明けて日本の状況を話をし得るだけの材料を持つておりますし、また語学の力もありますし、また人間が非常にざつくばらんに話をする人でありますから、そういう点で非常に都合がいいと考えておるのであります。これは偶然の一致でありまして私が委員会等で言つたのは、それではあとかもしれませんけれども、前々から、まずアメリカに行つて、但しクリスマスになりますと、クリスマスからお正月の間はアメリカ人もあちこち旅行しておりませんから、その聞いてもしかたがないから一応帰つて来る。そしてまた次にヨーロツパに行つてもらう。これは前々からこちらでもそういつておることでありまして、議会などの考慮とは全然これは関係のないことで、むしろもしそういう疑いを持たれたならば、白洲君自身に対してたいへんお気の毒なことをしたと考えております。
  165. 高岡大輔

    ○高岡委員 それはまことに白洲さんに対してはお気の毒な話でありますが、世間では只見川の外資導入にアメリカに行かれたのだ、しかも高碕さんが目印合弁の製鉄会社をつくるために、国際銀行のガーナー氏と折衝されたことは事実でありますが、そのときも白洲さんが一緒に会いたいというときも、高碕君がそれはごめんこうむるといつて断られたというような話もあり、結論的に簡単に言えば、外資の導入はできなくて、失敗して来た。ところが帰つて来てもう一度行つて、あれは何とか成功して来なくちやいけないと思つておられたところが、岸信介さんが欧州に行くという話が出た。それで岸さんの所へ白洲さんが行つて、ぜひひとつ私も一緒に欧州に行きたいと思うのだが、お供をさしてくれ、それがどういうわけかというと、その裏は、小笠原通産大臣が大臣になられますと、御承知の永山官房長がやめさせられた、そこへ入つて来た人はかつての岸さんのかわいがつた男である。どうも通産省はこのごろずつと岸さんのいわゆる一連の同士が入つて来た。そこで岸さんの勢力が再び通産省に力を得て来るのだから、この岸さんと四畳半でゆつくり話をしなくてはならないというので、幸い旅行中ならゆつくりする機会があるであろうというので、あとを追つて行つたのだ。時間的にいえば、白洲さんが二月の二日で岸さんが二月の七日であります。これは岸さんをめぐる人がこういうことを言つております。もしもそういうことがかりに事実だとし、事実でなくともそういううわさのあります方を、今外務大臣のお話では、語学に達者で、いろいろ話題の豊富な人で、日本のこともよく知つている、こうおつしやるのでありますが、それは日本のことはそう知つていらつしやらないだろうと思います。それは吉田さんのグループをぐるぐるまわつてしかいないのだから、日本全体から見ればごくわずかの範囲である。そういう人が日本の説明をしたのでは、われわれ大衆は困るのであつて、ほんとうの日本を説明してくださる人はまだほかにあります。そういう方を外務省が出されるということになつて来ると、いわゆる国際的にとでもいいましようか、評判の悪い人を出すと、ますます日本の評判が悪くなるということを必配するのであります。白洲さんがお帰りになつたらどういう仕事を海外で果して、日本及び日本人のために貢献をしてくださつたか、ひとつお聞きしたいと思うのです。委員長にお願いするのでありますが、白洲さんがお帰りになつたら、ひとつこの委員会に御出席を願いまして、その旅行談とでもいいましようか、その派遣された任務についての報告を願いたいと思います。
  166. 栗山長次郎

    栗山委員長 外務省顧問であります以上、白洲氏の出席を要求することは筋違いでないと存じます。
  167. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 ちよつと一言だけ申し上げおきます。今いろいろ言われましたが、私は白洲氏の個人的なことについてそのようなことがあるとはまた考えられませんし、また通産省の中にそんな派閥があるとはとうてい信じられないのであります。これはやはりデマの部類に属するものと思つております。なお外国に評判が悪いとか、いいとか言われますが、これは白洲氏が外国で評判が悪いということにも限つておりません。またかりに多少何か言われても、日本の主張すべきことは堂々と説明して来る程度の人でないと、向うの言うことばかり聞いて来る人でもこれは困るのでありまして、いろいろの関係上白洲氏は適任だと思つてつてもらつたのであります。なおこれは予算委員会でも申したのでありますが、白洲氏に向うへ行つてもらうことを依頼いたしましたが、白洲氏は自分の方で電力の関係でイタリアとかスイスとか、あの山国の電力の事情も調べて来たい、従つて会社の関係の用もあるのだからといつて外務省からの旅費は断られて自費で行かれたのであります。この間に特に国費を使つたという事実もないことを申し上げておきます。
  168. 栗山長次郎

    栗山委員長 帆足さんから申出があります。それを外務当局に取次ぎます。北京との通信は民間通信の電話をもつてすれば、三、四時間で連絡がとれるということであります。参考までにお聞き取りを願います。  本日はこれにて散会をいたします。     午後二時五十八分散会