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1953-02-04 第15回国会 衆議院 外務委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年二月四日(水曜日)     午前十時二十九分開議  出席委員    委員長 栗山長次郎君    理事 谷川  昇君 理事 松本 瀧藏君    理事 戸叶 里子君 理事 田中 稔男君       今村 忠助君    植原悦二郎君       大橋 武夫君    中山 マサ君       松田竹千代君    安東 義良君       高岡 大輔君    並木 芳雄君       加藤 勘十君    福田 昌子君       帆足  計君  出席国務大臣         外 務 大 臣 岡崎 勝男君  出席政府委員         外務政務次官  中村 幸八君         外務事務官         (大臣官房長) 大江  晃君         外務事務官         (大臣官房会計         課長)     高野 藤吉君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君         通商産業事務官         (通商局長)  牛場 信彦君  委員外出席者         外務事務官         (アジア局第一         課長)     小島 太作君         外務事務官         (アジア局第三         課長)     卜部 敏男君         外務事務官         (経済局次長) 小田部謙一君         通商産業事務官         (通商局次長) 松尾泰一郎君         専  門  員 佐藤 敏人君         専  門  員 村瀬 忠夫君     ————————————— 一月三十日  委員中村高一君辞任につき、その補欠として戸  叶里子君が議長指名委員に選任された。 二月三日  委員松岡駒吉辞任につき、その補欠として西  尾末廣君が議長指名委員に選任された。 同月四日  理事加藤勘十君の補欠として戸叶里子君が理事  に当選した。     ————————————— 二月二日  大和村に駐留軍宿舎設置反対の請願(栗山長次  郎君紹介)(第一五一九号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  理事の互選  国際情勢等に関する件     —————————————
  2. 栗山長次郎

    栗山委員長 これから外務委員会を開きます。  お諮りいたしますが、理事加藤勘十君が都合により理事辞任を申し出られましたので、この際これを許可いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 栗山長次郎

    栗山委員長 御異議がなければさよう決定いたします。  なおただいまの加藤君の辞任によりまして、理事が一名欠員となりましたが、その補欠選任につきましては、先例によつて委員長より指名いたしたいと存じますが、御異議はございませんか。     〔「異議なしと」呼ぶ者あり〕
  4. 栗山長次郎

    栗山委員長 御異議なしと認めます。それでは戸叶里子君を理事指名いたします。     —————————————
  5. 栗山長次郎

    栗山委員長 委員会に先だつ理事会申合せをいたしましたが、今日は外務省関係予算、賠償問題、貿易問題等について、当局説明事項があればこれを聴取し、また委員諸君からの質問を進めることにいたしております。  いま一つ、来る六日、金曜日になりますが、午前十時から委員会を開いて、日米行政協定実施状況について当局報告を聴取し、同十一時本院を立ちまして立川の飛行基地を視察することにいたしておりますので御案内いたした次第でございますが、それは日米行政協定実施状況に関し、本委員会調査をいたす使命を持つておりますので、基地を視察すると同時に、その基地所在地に及ぼすプラス・マイナスの諸影響についても、御調査を願う目的で出張願います。お含みおきを願います。  外務省政府委員に申します。この委員会は十時から開催いたしております。委員諸君は、ほとんど全部十時十分にそろつております。外務省政府委員諸君出席がきわめておそいので、委員諸君からこの問題についていろいろと御意見があります。今後御注意を願いとうございます。  それでは理事会申合せにより、外務省側から外務省関係予算につき説明をすることがあれば、その説明委員会で聴取いたします。中村外務政務次官
  6. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 ただいま委員長のお言葉によりまして、二十八年度の外務省所管予算大要につきまして御説明いたしたいと思います。外務省所管昭和二十八年度予算として計上いたしておりまする金額は五十六億八千二百九十八万二千円でありまして、これを大別いたしますと、外務本省が十九億七千百八十三万三千円、在外公館の方が三十七億千百十四万九千円であります。ただいまその内容につきまして、順を追つて事項別に御説明いたしたいと存じます。  第一が、外務本省一般行政に必要な経費五億三千四百五十八万一千円でありますが、これは外務省設置法に定める本省内の各部局、それから附属機関所掌一般事務処理するための本省職員千二百六十八名の給与旅費事務費交際費等でありまして、前年度に比較いたしまして六千十八万円の増加なつておりますが、これは職員給与改訂及び人に伴う経費増額であります。  第二は、外務省行政連絡調整に必要な経費一億五千二百四十二万二千円であります。これは本省在外公館との事務連絡を迅速円滑に行うための電信料郵便料及び連絡旅費等でありまして、前年度に比較いたしまして七千七十八万一千円の増加は、在外公館館分並びに一分室の増加と、連絡事務増加によるためであります。  第三は、外交文書編集、公刊に必要な経費五百二十九万三千円であります。これは明治以来の日本外交に関する史実を編集いたしまして、これを公刊するための非常勤職員手当、印刷、製本費等であります。  第四は、外交電信に必要な経費四千七百八十三万五千円であります。これは在外公館に対する電信事務の的確な処理及び通信施設改良整備等に必要な経費でありまして、電信機械購入費通信施設維持費及び暗号書送達のための旅費等でありまして、前年度に比し一千五百三万六千円増加いたしておりますのは、在外公館新設に伴う電信機械購入増加によるものであります。  第五は、外交運営の充実に必要な経費三億円は、前年度予算三千万円のところ、外交再開第二年目にあたりまして、各国との外交交渉によつて幾多の懸案問題の解決をはかり、また各種条約協定締結する必要がありますが、これらの交渉わが国に有利に展開させますためには、通常の交渉手段だけでは万全を期し得られませんので、あらゆる機会をとらえて機宜を逸せず、巧妙な手を打つために必要な報償費でありまして、前年度に比し二億七千万円の増額であります。なおこの機会戦前の模様を申し上げますと、戦前におきましては、本省在外公館経費の約三〇%が外交機密費でありまして、二十八年度は約五%に当つております。  第六は、アジア諸国に関する外交政策及び賠償実施政策樹立に必要な経費八百十六万三千円であります。これはアジア諸国に関する外交政策企画立案その実施及び賠償実施政策樹立のための必要な事務費及び旅費であります。  第七は、欧米諸国等に関する外交政策樹立に必要な経費二千三百二十九万七千円であります。これは北米、中南米、西欧及び英連邦諸国に関する外交政策企画立案及びその実施総合調整を行うために必要な事務費旅費並びに今秋京都において開催される太平洋問題調査会太平洋会議補助金三百万円及び在パリ日本会館補助金百二十三万一千円であります。  第八は、海外渡航関係事務処理に必要な経費八百三十七万円、これは昭和二十六年法律第二百六十七号に基く旅券発給等海外渡航に関する事務を正確敏速に処理するための事務費旅費と、同法に基いて事務の一部を都道府県に委託するために必要な委託費四百六十万円であります。前年度に比し二千十四万七千円の減少なつておるのは、旅券作成を前年度におきましてなしたためであります。  第九は、国際経済情勢調査並びに資料收集に必要な経費千万五千円、これは世界経済の正確な把握を期するため、内外資料、文献を広く收集整理するために必要な資料購入費及び資料作成費であります。  第十は、通商貿易振興に必要な経費五千七十九万六千円、これは通商利益保護増進をはかるため、通商貿易に関する調査及び国連後進国開発計画に即応し、東南アジア諸国に対する将来の貿易振興を期待し、財団法人国際学友会事業として、東南アジア諸国技術留学生受入れ施設建設拡充のための補助金五千万円と、訪日通商施設団国内視察のための同行旅費であります。前年度に比し四千五百七十万円を増助したのは、前記補助金増加したためであります。  第十一は、条約締結及び条約集編集等に必要なる経費一千七百六十六万七千円、これは国際条約締結条約集編集条約典型作成条約及び国際法並びに内外法規調査研究のために必要な事務費等であります。  第十二は、戸籍法及び国籍法関係事務処理に必要な経費三百八十九万七千円、これは在外邦人身分関係事務及び二重国籍者日本国籍離脱に関する戸籍法上の事務処理に必要な事務費であります。  第十三は、国際連合への協力に必要な経費六千六百七十四万三千円、これは国際連合機関調査研究に必要な事務費及び後進国経済開発技術援助拡大計画醵出金二千八百八十八万四千円と国際連合国際児童緊急醵出費三千六百十万五千円であります。なお後進国経済開発技術援助拡大計画醵出金は前年度予算には計上されておりませんでしたが、二十六年度は海外払い関係諸費から支出したものであります。また国際連合国際児童緊急醵出費は前年度は通産省に計上されていたものであります。  第十四、国際労働機関アジア地域会議負担金支払いに必要な経費一千七百十四万一千円、これは新規事項でありまして、今秋東京においてILO側三百人、日本側二百人出席して開催される予定国際労働機関主催アジア地域会議に対するわが国負担金であります。  第十五、日米合同委員会日本側事務局事務及び国連軍協定実施に関する事務処理に必要な経費五百十八万八千円は、日米安全保障条約第三条に基く行政協定実施機関として設置された合同委員会日本側事務局としての事務及び国際連合軍との協定実施に関する事務処理するための事務費及び旅費等であります。前年度は予備費の使用によりました。  第十六、情報啓発事業実施に必要な経費二千九百六十一万六千円は、国際情勢に関する資料の入手、海外に対する本邦事情啓発及び国内啓発等のために必要な旅費情勢通信等購読料啓発用資料作成費及び購入費であります。前年度に比し七百九万三千円の増加は、通信購読料啓発資料作成増加したためであります。  第十七、国際文化事業実施に必要な経費一千六百八十六万四千円は、文化交流を通じて国際間の相互理解を深めるために必要な啓発宣伝用資料作成購入経費及び国際連合協力の意思を盛り上げるため国家的事業の一環として財団法人日本国際連合協会補助金七百万円と、日本文化海外紹介事業を主とする財団法人国際文化振興会補助金三百万円であります。前年度に比し、一千二百十八万九千円増加したのは、前記補助金増加と、文化紹介資料購入作成増加によるものであります。  第十八、未引揚げ邦人調査及び外地にある遺骨引取りに必要な経費二千七百三十八万六千円は、未帰還の状態にある邦人のうち約二十八万人と推定せられる一般邦人の氏名、生死等を明らかにし、引揚げ促進のための外交交渉及び留守家族援護策実施に必要な資料を整備するための資料保持者呼び寄せ旅費、または職員各地に派遣して調査するための旅費調書作成費非常勧務職員手当等及びこの事務の一部を都道府県に委託するための委託費一千十二万円、並びに太平洋戦争中に外地において戦没した同胞の遺骨引取り、墓地保存等協定に必要な事務費等であります。  第十九、旧外地関係事務処理に必要な経費五百一万二千円は、朝鮮、台湾、樺太、関東州など旧外地官庁所属職員給与、恩給その他残務整理に関する事務処理に必要な事務費非常勤職員手当旅費等であります。  第二十、旧外地官庁引揚げ職員等給与支給に必要な経費六千万円、これは外地からの昭和二十八年度中の旧外地引揚げ見込み職員三百二十四名及び未引揚げ職員七百三名の留守家族に対する俸給その他諸給与であります。  第二十一、移民振興に必要な経費三億一千六十八万三千円、これはブラジル開拓移民、前年度は十八家族五十四名送出のところ、二十八年度は二千人を送出するための渡航費貸付金二億九千百六十万円及びこれが事務移民団体に委託する委託費一千万円と、移民輸送監督のため係官を現地に派遣し、またブラジル上陸の際、事故のため帰国を余儀なくせられた移民本邦送還に必要な経費であります。  第二十二、神戸移住あつ旋所事務処理に必要な経費八百四万二千円、これは昭和二十七年十二月二十六日法律第三百三十一号、外務省設置法一部改正する法律により設置せられた神戸移住あつ旋所は、移民現地社会に対する適応を円滑容易にさせるため、本邦出発前に健康診断、教養、渡航あつせん等事務を行うため必要な非常勤職員手当講師謝金事務費薬品購入費等であります。  第二十三、国際会議参加及び国際分担金支払い等に必要な経費二億六千二百八十三万二千円は、海外で開催される各種国際会議わが国代表を派遣するための旅費及び事務費本邦で開催される国際会議事務費わが国が加盟している国際機関分担金であります。  第二十四、在外公館一般行政に必要な経費三十六億一千九百十一万九千円は、既設在外公館五十二館三百十七名、及び昭和二十八年度において新設予定在米大使館ニューヨーク分室、キューバ、ヴエネズエラ、カンボジア、イラン、オーストリアの五公使館、ヘルシンキ総領事館、ベレーン、ダッカ、ラゴス、モンバサの四領事館に必要な職員三十六名、及び既設在外公館の増強に伴う職員増加六十五名、計四百十八名の職員給与赴任帰朝転勤出張旅費事務費交際費等在外公館一般行政に必要な経費であります。昨年度予算額三十一億二千百六十二万七千円に比較いたしまして、四億九千七百四十九万二千円の増加となりますが、そのおもなるものは、職員給与等において三億九千三百十二万六千円、職員旅費帰朝旅費において六千八百十十七万円、庁費等において二億七千四百二十四万六千円、交際費において一億六千六百五十五万七千円の増加でありますが、他方赴任旅費は一億五千二十八万五千円、初年度設備費は二億五千三十九万四千円の減少なつております。  第二十五、対米宣伝に必要な経費三千六百万円、これは新規事項として日米親善に寄与するため、日本の政治、経済文化等実情を組織的にアメリカ合衆国各地紹介するための資料作成講演謝礼及び事務費等であります。  第二十六、在外公館営繕に必要な経費三千六円三万円、これはインド駐剳大使のニューデリーにおける公邸の新営費二千四百万円その他工事雑費出張旅費及び在フランス大使館事務所修理並びに六十二館一分室の事務所館長公邸各所修繕費であります。  第二十七、国際会議事務処理に必要な経費二千万円、これは新規事項で、在外公館所在地で開催される国際会議事務処理に必要な事務費でありまして、そのおもなる経費は、借料及び損料一千六十五万一千円、通信運搬費七百九十万四千円であります。  以上がただいま上程されておりまする外務省所管昭和二十八年度予算大要であります。  以上をもちまして御説明を終ります。
  7. 栗山長次郎

    栗山委員長 予算予算委員会において審議いたさるべきでありますが、当委員会におきましても、日本外務運営活動見地から意見を立てることができると思います。従いましてそういう見地からの御質問があれば、これを許します。
  8. 安東義良

    安東委員 新聞あるいは小笠原大臣の国会の答弁におきまして、貿易斡旋所各地につくるということでありますが、この費用は通産省予算の方に組まれてあるわけですか。
  9. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 御説の貿易斡旋所設置経費は、外務省所管には計上いたしておりません。おそらく通産省の方と考えております。
  10. 安東義良

    安東委員 その設置箇所について、通商局長から御説明を願いたい。
  11. 牛場信彦

    牛場政府委員 貿易斡旋所は、ただいまのところ、ニューヨークだけに設置いたすことにいたしております。当初はニューヨークのほかに、サンフランシスコとカナダのトロントと三つ考えたのでありますが、予算関係上さしあたり一箇所のみ設けたのであります。経費の方は、設備費は大体全額国庫補助運転費は半額国庫補助、それも九箇月予算が計上されております。あとの半額は業者負担ないしは地方団体その他からの寄付というようなことで運転しようという構想であります。運転の実体をだれにやらせるかということにつきましては、まだはつきりと確定した案はございません。これはあくまでも民間の総意を尊重して行く、そしてその活動につきましては、外務省在外公館と最も緊密に連絡をとつて、その監督を受けるということにいたしたいと思つております。
  12. 安東義良

    安東委員 こういう機関設置する場合には、やはり国家機関である外務省と最も緊密なる連絡を要することは言うまでもないことであり、またその監督のもとに置かれるという構想はきわめて適切であります。この点は今後の運営上重大なるポイントをなすと私考えますから、その点をはつきりしていただきたいと思う。しかしそれのみでなくて、今度ニューヨーク設置せられるということについては、私はいささか問題があると思います。ニューヨークのようなところは、現に日本の総領事もおり、この機構をある程度まで充実すれば、そのくらいの機能は当然に発揮でき得はしないかと思う。ことにまたニューヨークに派遣せられるような民間会社の人々は、米国との貿易についても相当理解もあり、また向うとの接触も十分にでき得る人が多いのじやなかろうかと思いますし、またアメリカ自体においても、日本との必要なる貿易については向うからも接近して来る。そういうところにわざわざ貿易斡旋所をつくるという構想は、私は考えねばならぬであろうと思う。なぜもつと困難な南方アジア方面、ああいう方面貿易斡旋所をつくらないのか。日本貿易上今最も問題の多い、しかも重要なる地点に、そういうものを設置するということを考えないで、アメリカ大陸にのみ今仰せられたように三つばかり計画をしておられるが、今度はニューヨークだけである。そういう考え方は、日本貿易政策上どこか一つ足らぬものがあるように私は思う。これについて通商局長の御見解を承りたい。
  13. 牛場信彦

    牛場政府委員 これは第一にドル輸出振興という非常に大きな目的があつたわけでありまして、その結果、どうしてもドル地域に第一に目をつける。またそれでないと予算の面などから申しましても、なかなかとりにくいということがあつたわけであります。それからニューヨークがお説の通り商社の支店も多い、ないし出張所もできておるということでございますが、現在遺憾ながら日本商社は非常に力が弱いために、ニューヨークに出ておりますものも、主としてアメリカからの輸入の方ばかりに力を入れておりまして、日本品の売込みという非常に手数がかかつて、割にもうけの少いものには、手がまわりかねるような実情なのであります。そしてまたアメリカに対する輸出は、御承知の通り非常に小さなものが多いのであります。いわゆる雑貨類が大部分を占めております。生糸が戦前のようになかなか輸出が復活いたしませんために、日本国内市場からいたしますと、非常に力の弱い中小業者のつくるのが出ておる。そしてそれが日本商社の手に乗らないために、主として外国から来る、いわゆるバイヤーに買いたたかれておる。その結果、たとえ日本の陶磁器にいたしましても、絹のスカーフやその他のものにつきましても、アメリカにおきまして正当な販売の道になかなか乗らない。つまり百貨店であるとか、ないしはこのごろよく発達しておりますチェーン・ストア、ああいうものにうまく乗つからないために、一時出てもすぐそれがまたとまつてしまうというような状況で、この点に対する改善が非常に要望されておつたわけであります。一方におきまして、いわゆる輸出組合なども最近結成されまして、だんだん業者の方の力も出て来るわけなのでありますが、それを助ける意味におきまして、この際ニューヨーク斡旋所を設けたい。斡旋所といいましてもその大きな目的は、向うに日本の商品をきわめてアップ・ツー・デートに展示いたしまして、これによつてアメリカ側のいい筋の買手の興味を起させる、それに非常に大きな目的を持つておるわけであります。もちろん商社活動も一方において強化して行く、また外務省の方におきましても、力を入れていただくということはもちろん一番大事なことでありますけれども、さらにそれを助けて行くという意味におきまして、あそこにそういうようなものを設けたならば、非常に効果があるのではないかという考えから、この案を出しておるわけなのであります。
  14. 安東義良

    安東委員 ただいまの御説明で大体の全貌はわかりました。ことに輸出という面について努力したいという考え方はきわめて適切であろうと思います。そしてまたいわゆる中小貿易業者代表機関というものがなくて、それらの雑貨その他のものの輸出が、実際上はいろいろ困難な点があるのであるから、それを打開して行こうという意気込みはきわめてけつこうであります。その点について私は何ら異議があるわけではない。それは大いにやつてもらいたいのでありますが、ニューヨークを考えるならなぜ東南アジア方面も考えないか、なるほどドル地域ドルの獲得、これを考えることが第一番だという考え方もあるでしようが、南方方面にもドル地域はある。またひとりドル地域と限定する必要はない。問題はいかにして日本貿易を伸ばして行くかということにある。いつまでもいつまでもドル、ポンドこの観念にのみ膠着しておつたならば日本貿易は伸びはせぬと思う。今までのような対米依存の一点張りの時代には、それもよかつたでありましよう。しかし今の日本独立国である。その観念に立つて、日本貿易政策を根本的に再検討するくらいの意気込みを持つて、通商局長はこれに当てられたいと私は希望いたします。
  15. 松田竹千代

    松田(竹)委員 関連しての質問でありますが、貿易斡旋所各地にあることは私よく見て知つております。おそらく若いお役人の方々は、報告を見ては御存じであろうけれども、実際どういうふうなフアクシヨンであるかということは、御存じない方が多いだろうと思う。第一番にニューヨークあるいはフーストン、サンフランシスコなどの貿易斡旋所実情から見ると、やはり人を得たところは相当の仕事ができておる。ところがそうでないところはだめなのです。予算が局限されておりますから、むろん斡旋所で大してあつせんするほどのことはできない、まあ旅行者の足だまりくらいにしかなつておりません。報告などに、なるほど適切なものも幾多あつただろうと思いますけれども、どこでもそのうらみが非常に多い。ニユーヨクの貿易斡旋所東京都がやつておるから、大阪府は大阪府でまたやるというような計画をする。おのずからみな小さい、局限された予算でやつて行くようになつておるから、ほんとうにものが運べない。きわめて貧弱なるものである。たとえば雑貨の見本でもバイヤーのところへ行つた方が豊富である、そういうあんばいでありますから、貿易斡旋所を二、三箇所に併設したからといつて大したことは期待できやしない。今外国公館のいろいろな施設費、これにも相当潤沢に出したいが、金はなかなか出せないというようなやさきでありますから、ほんとうに役に立つ仕事をするだけの金を出すのでなければ、今までの経験に徴しても、そう安易に計画していい結果が得られるものではないと私は思うのであります。  またもう一つは、今申し上げたように、東京都や大阪府でも計画するように、これを通産省がその出先機関として使つても、昔からこんな割拠主義になつておつて、今安東君が言われましたように、終戦後初めて日本の出先官憲が行くのでありますから、これを有用に働かせるためには、やはりできるだけ足りるだけの金を与えて、そしていろいろの機関が割拠主義にならぬようにやらなけりやならぬということを私は痛感して来ておる。先ほど安東君も言われたが、必ずしも領事館に併設するというようなことも考えられませんけれども、その辺の緊密な連絡というか、了解というか、割拠主義にならぬようにするということに対してのお考えはいかがでございますか。
  16. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 お説ごもつともでございます。何分経費も非常に制限されておりまするし、職員等の数も少いのであります。従つて今の貿易斡旋所にいたしましても、貿易斡旋所だけで仕事をしようと思いますると、勢い大きなりつぱな仕事もできないわけであります。今後とも在外公館、大使館、公使館あるいは総領事館、領事館等と密接な連絡をとりまして、一体となりまして日本貿易の伸張に努力いたしたいと考えます。
  17. 中山マサ

    ○中山(マ)委員 ただいまアメリカの方にそういう斡旋所をおつくりになつた、それから安東委員からは、東南アジアのもつとむずかしいところを目的として行つたらどうかというお話がございましたが、私はここでもつとアラブ民族の動きをお考え願わなければならないのではなかろうかと思うのであります。あのイランにおきまして、英国を締め出してアメリカが入り込もうとしている動きがございますが、こういうことに対して、アラブ民族三億五千万でございますか、あの方面の人たちが非常に反英米の動きを起しておるところを考えてみますと、私はついこの間大阪日本紡績の社長にお目にかかりましたときに、英国に行つて帰つて来て、これから自分たち大阪の綿布業者のねらわなければならないところは西アフリカであるということを直接に聞いて参りましたのでありますが、外務省関係の方々は、このアラブ民族の動きをどういうふうに考えていらつしやるか。私は貿易の点の子算においても、この方面に少し目をやつていただきたいと思います。よく支那四億とかいわれますが、これも重要でございましようけれども、宗教の団結によりまして動いておるアラブ民族というものは、私は今後の世界の偉大なる勢力をなすものではなかろうかと思います。そこでいわゆる政治的の点からもここを外務省はねらつていただかなければなりませんけれども、実際見て帰つて、このアラブ民族に日本の商品を売り込むことは、今後の貿易の打開であるということを第一線に働いている人たちが考え、実際に見た調査の上で言つておるのでございますから、私は外務省がこの方面の動きを対象となさいませんということは、少し麻痺症に外務省がかかつていらつしやるのではなかろうかと思います。私はこの方面を大いに今後の新しいマーケットとしてやつていただきたい。エジプトあたりでも、宗教は実に恐しい力を持つておりまして、アラブ民族が団結して相当動き出し、今ソ連が非常に目をつけておるということを私どもはあつちこつちで聞かされますが、どうかしてこの人たちに対して日本も目をつけて、政治的にももつとしつかりここを開発してもらいたい。またマーケットとしても開拓していただくために、何とかこの方面にお動き願うことが、今後の日本貿易打開の最も重要なところではなかろうかと考えておりますが、政治的にどういう考えを持つていらつしやるか、また対外貿易地としてどう考えていらつしやるか、この際お聞かせ願いたいと思います。
  18. 栗山長次郎

    栗山委員長 ただいま委員各位から展開されております御意見のうち、外務大臣もしくは通産大臣から答弁を得た方がよろしいと思う点が幾つもあると思います。それで今政府委員の人に注文をしておきたい。たとえば貿易斡旋所の件とか、それに関連した御両所の御意見等に対して、午後両大臣の出席可能と思いますから、そのとき意見を述べてもらえるようにおとりはからいを願つておきます。
  19. 植原悦二郎

    ○植原委員 子算についてですけれども、ここで予算の審議をしても——、各省のきまつた予算の問題を取上げてみたところで、予算をどうするわけにも行かないですね。ただ、今のいろいろのお話を聞いてみて、委員考え方外務省当局考え方が、外務省予算の組み方に対しても、かなり意見の違うところがあるのじやないかという感じを持つたから、結論を先に申せば、今までの官庁というものは議会と始終別になつておつた。だから予算の編成に当るについて、どうか予算編成前に、一体外務省予算はどこに重点を置き、どうした方がいいかということを予算委員会などに、たとい会期中であつてもなくても発表をして、予算の項目を大蔵省に対してそれぞれ要求する前に、議会の者と懇談するようなことをお考えになつてはどうだろうということが、私の胸に浮んだことです。過ぎ去つて今どうこう言つたところで、これはしようのないことですが、私は将来そういうふうなお考えで——外務省予算をとることが一番下手だ。なぜならば外国の方ばかり見ておつて、内政の方は暗いものだから、外務省ぐらい予算をとるのが下手なところはない。外務省ほど政府に対して、国会に対していくじのないところは私はないと思つているのですけれども、これを改めるために、私は事務次官、政務次官にお考えを願つておきたい。予算編成をする前に大体外務省予算の案が立つたものがあるならば、それを外務委員会のようなところへ持ち出して、そうして一応御相談なさるなら、きようここでできた予算をかれこれ批評するよりは、もつといい結果になりはせぬか、これは委員長もひとつお考えになつていただきたい。私は今そういうことを感じたのです。私は今の中山マサさんの御意見も、またその他の方の御意見を聞いても非情にごもつともなことがあるし、今のニューヨーク貿易斡旋所をつくるというようなことも、これは戦前の古い外務省考え方に立つておるので、新しい世界の、かわつた時局に対しての考え方でないと思うのです。そうしてまた日本が非常に微力な国で、雑貨でも斡旋所を置いて売るというような古い考えにとらわれたことが、アメリカ中心において外務省貿易斡旋所を置くというようなことになつたと思うのです。これは御意見ごもつともだけれども、もとからいえばそこに非常な間違いがありはせぬかということですから、それをひとつお考えを願つておきたいと思います。  もう一つ、ユネスコの費用について、私はその編成中に注意したことですけれども、これは外国に使うというよりは、国内に使う費用です。ユネスコはいいことで、文化的に夢をキヤリイ・アップするにはよろしいと思うのです。これから日本の外交の中心は、国連に当ることばかりでなく、内地の国民を教育するということにかなりお力を用いなければならない。過去において国際連盟のときにも非常な努力をした。つぶれてしまつたからしかたがないが、これからの外交のことを考えるならば、日本国民に国連というものに対する知識をかなり持たせなければ、これから数年の間日本が直面する——反対するか賛成するかしらないけれども、いつまでも外国の軍隊にとどまつておつてもらうわけには行かない。大砲を持つて、フリーゲートを置いて再軍備しないといつても、それは議会の釈明にはなるけれども、政治にはならぬのです。国民に納得せしむるようにしなければならないのです。そういうことについてもどうかお考えを願いたい。国連の費用とユネスコの費用のアンバランスを今ここで直すわけに行かないのですけれども、そういうところをお考えになつて、予算編成前において、民間あるいは議会の人が、外務省予算編成について、どう考えているかということをお確かめになつて、それと協力してやれば、よけいとることもできるし、もつと効果的に予算の編成ができるのではなかろうかと思うから、ちよつと思いついたままに、御参考に申し上げておきます。
  20. 並木芳雄

    ○並木委員 私たちは今からでもそれはおそくないと思うのです。予算の審議が始まつたところですから、こういう機会に専門的なことを伺つておいて、これを予算委員の方へ通じれば、また修正するというところもありますし、できますから、委員長のとりはからいは私けつこうだと思います。それで、外務委員として、どうしても聞いておかなければならない二、三の点をお尋ねしておきたいと思います。  この予算は、今お聞きしましたら本省の建築費ということについては何も触れておらないのですが、本省建築はどうなつておりますか。
  21. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 ただいまお話のありました外務省の新館建設の経費はどうなつておるかということでありますが、実は現在御承知の通りに、外務本省は日産館を借用いたしております。今日独立国となりまして、日本外務省が借家をしておるということでは、まことに体面上もおもしろくない。さらにまた毎日、外国の大使、公使等の方々が出入りするのに、ほかの民間会社と同居しておるということでは、いろいろの支障もございますので、ぜひとも一日も早く新館を設立したいという念願で、かねてから予算折衝をして参りました。つきましては本二十八年度におきましてはいよいよその了解も遂げまして、新館建設に着手することになつております。とりあえず二十八年度は三千万円だけ計上いたしまして、地ならしあるいは設計等の仕事は二十八年度中にやりたい。その予算外務省予算でなくて、建設省の予算に計上してあります。
  22. 安東義良

    安東委員 ただいま外務本省の建設のお話を伺つたのですが、私は何も外務省が特にかわいいからというわけじやありませんけれども、何といつてもこの外務本省なるものは、各国の使臣がやつて来る正面玄関である。そこでこれが貧弱だということは、まことにみすぼらしい感じを与える。これはわれわれがほかの国へ行つたときでも持つ印象であります。国の力に相応するものをつくるといえばそれまででありますが、しかし座敷をきれいにすることも必要があると同様に、この外務本省を、監獄のできそこないみたようなそまつな建築はやらぬように、しかも日本の建築技術において相当水準の高いものをやらせるように、格段の御注意が私は必要だと思うのであります。一般の官庁のいわゆる事務をとるためだけのものでいいというわけのものではないということを、よくひとつお考え願いたいと思います。これは私の希望であります。
  23. 谷川昇

    ○谷川委員 だんだんと委員諸君のお話を伺いまして、外務省関係予算について非常に関心を持つておられることと承知いたしたのであります。私も、委員になりまして一番初めにやりました仕事は、外務省関係予算を調べることでありました。そのときに驚きましたことは、当初予算において四十三億足らず、補正予算でようやく四十九億、一般会計一兆に比較してみますと、千分の五に足りないというようなまことに情ない状態であります。いろいろ伺つてみますと、戦前におきましては千分の十以上の予算を計上いたしておる。世界各国の外務関係予算というものは、非常に大きな割合を持つておるということであります。今日こうして日本が独立を取返して、独立自主の外交を進めて行こうとしておるときに、いかに国内の財政が窮迫しておるといいながら、外務関係予算がかくのごとき少額であるということは、何としても私ども忍び得ざるものがあるのであります。そこで私いろいろ考えさせられたのでありますが、外交の振興を考えるにあたりましては、何としても予算関係の問題をはつきりさす必要があると思います。すべて政治は予算編成に始まり決算に終ると私は考えるのでありますが、せつかくこうして外務省関係予算が本委員会に取上げられましたからは、この機会をかりまして、当外務委員会といたしましても、真剣に外務省関係予算を検討する機会を持ちたいと思います。また私どもといたしましても、これに対していろいろ意見を述べ、あるいはこれに対して将来の希望をはつきりさせて行きたいと思います。つきましては、当委員会の中で小委員会なりあるいは理事会なりが、皆さんの御同意によつてこの下調べ、研究をいたして、われわれの考えをまとめて、外務委員会意見として予算委員会の方へ持ち込むような措置を講じたいと思うのです。そこでその目的のために適当な小委員会を設け、あるいは理事会をしてこの仕事をやらすように御決定を願いたいと思うのです。その動議を提出いたします。
  24. 栗山長次郎

    栗山委員長 ただいま谷川理事から、外務予算に関し、委員会意見を立てて、これを予算委員会に持ち込みますために、小委員会を設けることがいかがかということであれば、理事に小委員の任務を付託するという御動議がございましたが……。
  25. 松田竹千代

    松田(竹)委員 それは、この委員会とは別に、委員が寄つて懇談する機会をつくつたらどうですか。これは委員長との相談でありますが、その方がいいのじやありませんか。
  26. 栗山長次郎

    栗山委員長 問題は二つあると思います。この委員会外務予算に関して意見を立てて予算委員会に持ち込むことが一つ、それを持ち込むための方法についての件が第二、この二つあると思いますが、今の松田さんの御意見はそのあとの方に関する御意見のように承ります。
  27. 並木芳雄

    ○並木委員 いい提案のようではございますけれども、今度の予算は政府が与党の自由党と下打合せてやつてでき上つたものですから、それに対して外務委員会で与党も含めた一つの結論を出して要望をいたすということになると、ちよつと立場がうまく行かないのじやないかとも思うのです。それに日時もございませんから、本日この席でけつこうですから、外務省の方の答弁を得れば、私どもそれによつて独自の意見を党へ帰つて各予算委員に伝達してもいいと思うのです。小委員会をつくつて一つの結論を出すと、外務委員会の結論ということになりますから、与党が入つたところの外務委員会の立場というものは非常に微妙だと思うのです。いかがでしようか。
  28. 谷川昇

    ○谷川委員 御意見の点もあるのでありますが、たとえて言えば、外務省庁舎をつくるにしましても、いろいろな財政的な考慮から非常にチヤチなものをつくりますとか、いろいろな問題があるだろうと思うのです。こういう問題は超党派的に、少くともこの規模のものはつくるべきであるということを、当外務委員が主張するということは、あたりまえのことのように思う。私も多少予算編成に間接的に関係いたしてみましたが、どうしてもやはり主張の強いところが勝つようであります。ですから、やはり外務委員のこの方面に最も関心を持ち、通暁されている皆さん方の意見というものが、非常に強く反映することだろうと思いますから、そういうふうな点につきまして、話をまとめて持ち込むということが最も適切であり、有効である、こういうふうに私は考えるのであります。
  29. 並木芳雄

    ○並木委員 この点で議論したくはないのですけれども、たとえば遺家族援護のことなどは、超党派的に小委員会をつくつて原生委員会でやつております。これは各党とも問題はないのでありますけれども、今度の予算では、与党と野党は、はつきり賛成、反対の立場をきめてかかつているのでありますから、ここで今そういう案を立ててやるよりも、われわれは野党としての立場から大いに政府の予算を指摘して行こうと思うのです。ここへ来てそういうお話があつてもちよつとまずいのじやないかと思います。それだけ御熱意があるならば、与党の方なんですから、今まで子算ができ上るまでに大いにやつていただいたらよかつた。これは先ほどの植原さんの話と共通するので、はつきり与党と野党の立場がここでわかるのではないかと思います。ですから私としては、ここで小委員会をつくつてやるということは、不適当ではないかというふうに感ずるのです。
  30. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 私ども外務省の子算を見ます場合においては、必ずしもこれは多額ではない、僅少だという感じにおきましては、谷川委員の説にあえて反対するものではございませんが、それを起党派的にやつた場合の効果というものを考える場合に、効果は薄かろうと思います。子算を増額するということ自体においては、賛成するにやぶさかではないのでありますが、私どもが根本的に考えますことは、外務省予算を増すことも必要でありましよう、建物を建てることも必要でありましようが、それよりももつと必要なことは、外務省の陣容の内容及び、何と申しますか、ものの考え方であろうと思います。欧米崇拝主義の英米一辺倒政策をとつている外務省が、りつぱな堂々たる外務省というものを新築してお入りになつたところが、日本の外交的な権威を高めるには、大した効果はなかろうと思うのでありまして、予算や建物よりも何よりも、外務省の陣容の内容であろうと考えておるのであります。そういう意味において……。
  31. 帆足計

    ○帆足委員 私も福田委員と同じ考えでありまして、各省と折衝してみますと、外務省の役人が一番学識教養が低いと思うのです。英語のできる人間はどうも少し頭が悪いということは定評がございます。もちろん例外もございますけれども、一般の通説ということも大いに参考になるところではないかと思います。と申しますのは、国内の事情を全然知らない。それから、外国の事情を知つている方々が、どういうものか案外保守反動的で、普通の論理学または自由主義の伝統、自由、平等、博愛というような思想については、まつたく無学文盲である。旅券法の問題などは、それの典型的なものだと思うのでありますが、実に驚くに足りると思つておるのであります。これが農林省あたりでありましたならば、各省予算を当てにしておるのですから、つい世界の事情にうとくなつて、いなかつぽくなるということもありましようけれども、外務省の役人だけはスマートであつていただきたい。従いまして、役所のこともけつこうですけれども、今日もし予算を組むならば、外務省の役人の民主的教育並びに教養の向上に関する経費、大脳皮質の改造に関する経費というような点について、御考慮をいただきたいと思います。
  32. 並木芳雄

    ○並木委員 議事進行について。あとは理事会で取上げていただいてきめることにして、とりあえず質問があるのですけれども……。
  33. 加藤勘十

    加藤(勘)委員 今谷川さんから御意見が出て、さらにそれに対して並木、福田、帆足の皆さんから御意見が出ましたが、これは結局理事会で整理をして——今渡された予算の内容を見ますと、ずい分物足らぬことがたくさんある。また内容について相当検討しなければならぬところもある。従つて予算委員会に対して、外務委員会として意見を出すか出さぬかということは、理事会で決定していただきたいと思います。ここでそれぞれの意見を述べておつても、議事進行が遅れるばかりでありますから、議事進行の必要上、そういうことは理事会できめていただきたいと思います。
  34. 栗山長次郎

    栗山委員長 お諮りをいたします。谷川理事の御提案に対し、ただいまお聞きのような加藤委員からの加えての御意見がありました。動議並びに加藤委員の御意見を加えて、あわせ採択するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  35. 栗山長次郎

    栗山委員長 さように決定いたしました。  質問を継続いたします。
  36. 並木芳雄

    ○並木委員 先ほど本庁舎の工事にとりかかるという答弁を得て満足いたします。そこででき上つた場合の総額、でき上る時期は大体いつごろと見込んでおりますか。
  37. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 私どもが当初大蔵省と折衝をいたしました数字につきまして申し上げますと、大体十八億、三箇年計画くらいで、二十八年度としては、その三分の一、六億円要求しておつたわけであります。いろいろ財政上の都合等もありまして、とりあえず二十八年度は、まず調査、あるいは設計、あるいは地ならし程度にとどめて参りたい、こういうことになります。
  38. 栗山長次郎

    栗山委員長 委員各位の了承を得て、委員長として、一つ外務省側に聞いておきたいことがございます。それは移民問題は本委員会の審議事項として、正式に取上げられておる事項であります。先ほどの予算説明中には、その関係費として三億一千万何がしかを計上しておるということで、その活動は主としてブラジル向けであつて、約二千人、これは一人当りに計算してみると、一人当りのかかりが十五万五千円に該当するのでありますが、わが国移民方針について、もつとこの委員会でも練つた上、これを予算化されることにせられた方がよかつたように思います。(「ヒヤヒヤ」)ブラジルの移民が、ブラジルは適地でないとして引揚げて来る者もあります。一、二の移民あつせん関係者に動かされて、事務費を一千万円とり、一人当り十五万円以上の移民計画するということは、もうちよつと四囲の情勢をよく考えて、しかる後にやられた方がよかつたのではないかという意見を持つものであります。ここでは本委員会移民問題をこの委員会に正式の審議事項として取上げております以上、なぜこの委員会にそういうことについての説明なり、お諮りがなかつたかいうことを詰問的にお尋ねをいたします。
  39. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 移民問題を含めまして、予算全体の件につきまして、十分この外委員会連絡をとるのが本筋でありますが、今回そういう方面におきまして手落ちのありましたことは、申訳なく考えております。今後十分気をつけまして、外務委員会連絡をとり、一体となりまして、日本の外交の強力な推進をいたして参りたいと考えております。なお移民の問題でおりますが、今回の予算に計上されましたのは、今委員長からお話のように、移民の二千人分の渡航費貸付三億円でありますが、実は外務省といたしましても、この移民の現下の重要性にかんがみまして、もつともつと移民関係仕事を強力に進めて参りたい、かような考えで、当初移民課というよなものも設置したいと考えておつたのでありますが、今回一応その問題を取下げました。しかしながら決して外務省として、この根本問題を放置するわけではないのでありまして、でき得べくんば、なるべく早い機会に、移民課というような小さい考えでなく、もつと大きな規模のもとに、移民の送出、あるいは今後の現地における実情調査、あるいはまた現地移民会社というようなものをつくるとか、あるいは移民専用の船舶等ついての問題、いろいろ重要問題がございます。こういう問題につきましては、今後皆様方の御協力を得まして強力に進めて参りたい、かように考えております。
  40. 中山マサ

    ○中山(マ)委員 私、今ここに出ましたからお願いするのでございますが、そういうように移民々々と叫んでいるときに、逆に移民が帰つて来る。実に妙な感じを与えられますが、それで実際に帰つて来た人から偽らざる状況を聞くために、そういう人を一度外務委員会にお呼びくださいまして、現地の状況を私どもに聞かせていただくわけには行きませんでしようか。
  41. 栗山長次郎

    栗山委員長 ただいま中山マサ君から、帰還した移民の人を本委員会にお招きして、参考人としての陳述を聞きたいということでございますが、さようにとりはからうことに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  42. 栗山長次郎

    栗山委員長 それではさようとりはからうことにいたします。
  43. 今村忠助

    ○今村委員 私は昨年暮れ、本会議移民促進に関する決議案を上程し、その説明に当つたものでありますが、実はこの外務委員会でさきにぜひ移民に関する小委員会を設けてほしいということを申し出まして、適当な時期にこれは設けていただけるよう私は了承しておるのであります。今いろいろお話を聞きますと、いよいよ独立後の日本として、新しく移民問題に取組まなければならぬ時期が来たと思うのでありまして、ぜひひとつ小委員会を設けてほしい。ことにアイゼンハウアー元帥は、その教書の中で、移民法を改正する用意があることも明らかにしたようでありますし、ブラジルはアマゾン並びに松原移民に対する大統領の許可といいますか、国策的なものも表わしております。まだ日本としては、その他にいろいろの問題を折衝しなければならぬものも残しておると思つております。たとえば私は決議案の中で移民局をつくるべしということを提唱したのでありますが、当時官房長官は、移民局をつくりたいということまで明らかにしたのであります。承るところによりますと、外務省計画した移民課ができなかつたところへ持つて行つて、突然移民局をつくられては、むしろ体面上困るというような意向が強いのだというごとく漏れ聞いております。かようなことでは、せつかく敗戦後の災いを転じて幸いとなすべさ時期において、むしろ思うように行かないでおるというような結果になつておるように思うのであります。これはわれわれまことに遺憾と思うのでありまして、今各委員からの提案もあることでありますから、予算の面並びに実際問題、あるいは国際的に各国との折衝というような問題まで含めて、ぜひこの際移民に関する小委員会を設けていただきたい。そうして真剣にとつ組んで、この外務委員会もひとつこの問題を検討して行きたい。こういうように思うのであります。そこでぜひ移民に関する小委員会設置について、動議を提案いたします。
  44. 栗山長次郎

    栗山委員長 今村委員の御発言中には、本委員会に対する御提案と御質疑の二つが含まれておるように存じます。御提案の趣旨については、本委員会理事会において協議いたすことに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  45. 栗山長次郎

    栗山委員長 さようにとりはからいます。  御質疑の件については、政府委員から答弁があれば答弁をしていただきます。
  46. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 ただいま今村委員の御質問の中に、外務省は当初移民課を提案してそれができなくなつた、それで移民局という問題については、取上げることは外務省の体面にかかわるのではないか、こういうような考えを外務省が抱いておるというようなお話でありました。決して私どもはそんな小さい考えにこだわつておるわけではないのであります。先ほど申し上げたように、外務省としては全力をあげてこの移民問題の解決に当りたい、かように考えておりまして、お話の移民局というような問題につきましても、ぜひとも一日も早くこれが実現するように努力いたしております。目下いろいろ事務的に準備を進めておりますので、さよう御了承願います。
  47. 高岡大輔

    ○高岡委員 ちよつと予算のことについてお伺いしたいのでありますが、この予算を拝見しておりますと、一体日本が地球上のどこにあるかという焦点がまずぼけて来るのであります。一体向米一辺倒でないといい、東南アジアには重点を置くというようなことを盛んにおつしやるのですけれども、この予算を見ておりますと、対米宣伝費というものが三千六百万円というものが上つておるという御説明であります。ところがアジアに対する宣伝費というものが全然見込まれてない。しかも今度はもう一つの点を聞いておりますと、外交交渉の方は今年は三億でもつて去年の十倍くらいになつたが、全体予算の五%で、戦前はそういう費用が全体の三〇%だつたというようなことをおつしやる。また貿易斡旋所はまことにけつこうだけれども、先ほど同僚安東君から御質疑のあつたように、ニューヨークにたつた一箇所あるだけであります。かつての貿易斡旋所は全世界にたしか十八箇所あつたと思います。しかもこれは東南アジアからカイロあたりまで相当広く置かれておつたのであります。そういつたような一連の説明をずつと聞いておりますうちに、何となく外務省仕事というものは、今の職員の方がただ月給をもらつて食つてさえおればいいというような感じを受ける。何も仕事の面はやつていらつしやらない、そうして口ではさつき自由党の長老である植原さんがおつしやつたようなことにも相なるのでありまして、フリゲートがどうとかこうとか、昨年の年末の議会にいろいろお話があつたのでありますけれども、平和というものはそう簡単に安くあがなわれない。平和というものは一番高くつくのです。ただ戦争がそれに対して一番安いけれども、戦争は人間の血を使うところに非常に大きな差が出て来るのであります。このとうとい人間の血をわれわれが尊重するにおいて、われわれはどれほど金がかかつてもよいから、平和を守ろうというところに、私は平和の熱願があるのだと思うのであります。その平和を維持しようというための外務省の費用が、どうしてこんなにないのかということを考えるときに、先ほどから全体的にいろいろお話がありましたから私は申し上げませんけれども、もう一度アジアに対して、外務省の関心を持たれておる費用がどうしてこんなに少かつたのか、その点についてひとつ御説明を願いたいと思います。そのうちにもう一つ具体的に申し上げますと、ここに「アジア諸国に関する外交政策企画立案及びその実施総合調整を行い並びに賠償実施政策樹立に必要な経費」と、こう書いて八百万円ほど出ておりますが、これで一体どんな仕事をなさるのですか、こういうようなことについてもひとつ御説明を願いたいと思います。
  48. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 この外務省予算を通じてどこに重点があるかわからない、こういう御意見が最初にございました。日本外交政策の重点は、総理あるいは外務大臣から再々説明がありましたように、自由主義国家と提携し、国連協力いたしまして、平和外交を推進する。しかも向米一辺倒では決してないのでございます。アジア諸国とは善隣友好の関係を今後極力進めて参る、こういうことでありまして、御心配のような向米一辺倒では決してないので、さよう御了承を願いたいと思うのであります。しからば予算の上にどれだけアジア関係で顔を出しているかと申しますと、ただいまお話がありましたように、八百数十万円のアジア諸国に関する外交政策及び賠償実地政策の樹立に必要な経費、この一項が現われております。しかしそのほかにも各項目ともにアジアに関する問題は諸々に含まれております。かつまた外交運営の充実に必要な経費として、本年度特に三億円の要求をいたしまして、これが通つたのでありますが、この三億円の外交運営の充実に必要な経費の中から、今後相当アジア関係の外交の運営の充実に差向けたい、かように考えておるのであります。
  49. 高岡大輔

    ○高岡委員 私は決して総理の演説ないしは外務大臣の演説をとやかく申し上げるのではないのです。おつしやつたことは、今政務次官のおつしやつた通り、アジア外交には力を入れるとか、向米一辺倒ではないとかいうその言葉は、私はその通りだと思うのであります。しかしただそれはいわゆる言葉だけであつて、何にもないということも事実であります。そういう意味で私は予算を聞いておるのでありまして、今の政務次官のお話を聞いておりますと、外交運営の充実に三億と言われましたが——これは後ほどあらためて聞きますが、この三億の金でアジアの方も力を入れるというようなことをおつしやるけれども、白洲氏があつちへ行つたり、こつちへ行つたりというようなことで外交はうまいところへ行くというような、そういう安易な考え方を持つていらつしやるのですか。この白洲氏の問題については、後刻材料をうんと持つて来て御質問しますが、そんなようなことで、日本の外交はやればやるほどマイナスなんですから、ひとつその点を十分お考えを願いたいと思います。白洲氏のことはきようは申し上げませんけれども、今のお話を聞いておりますと、口の方はなるほどりつぱです。政務次官の人格等も私は尊敬いたしておりますので、うそは決して申していらつしやらないとは思いますけれども、実際仕事の面になると、ちつともやつていらつしやらない。ただ思うだけでやらないということでは困るというのです。しかもここに国際学友会でありますか、この国際学友会の事業を補助することが、将来の貿易振興に役立つのだというような、こういう考え方自体が、これは非常に低級といいましようか、帆足さんの言葉をかりて申しますと、たいへんな言葉になつてしまうのですが。こういう考え方で一体皆さんは今後の日本の外交ができるとお考えになるのか。いわゆる貿易でありますが、先ほど貿易斡旋所のことについては、民間側の力をかりるというような考え方を持つているという意味のことをおつしやつたのでありますけれども、まだまだそういう面をはつきりしませんと、外務省ほんとう仕事というものはできない。外務省仕事というのは、今はそうではなくなつたでしようが、ただダンスをしたり、ポーカーをやつたり、ブリッジをやつたりする仕事ではないのです。平和を保つて行こうという真剣な仕事なのでありますから、その意味では、もつと外務省は気合いのかかつた考え方をなさいませんと、ただ口先だけの平和ではだめなんで、どうしてもこれらの予算の中に、いろいろ討議してみますれば、ここは予算委員会ではありませんから、詳しいことは申し上げませんけれども、もう少し外務省は毅然たる態度といいましようか、平和に対する悲願をかけた大事業なんだという信念に徹底されませんと、ただ単に皆さんの月給を払えば、それで外務省予算は終りだといつたような考え方なつていないのです。とにかく全体の金額が五十六億何がしというものであつて、これが今年駆逐艦か何か船をつくるとか、あるいは飛行機をつくるという金の何分の一つであるかということをお考えになつたら、一体どつちに比重が多いか。いわゆる再軍備でもないし、治安の問題だとおつしやるけれども、それは国内治安もけつこうであります。何でもいいが、そういうものと外務省の平和を守つて行こうという大きな仕事との金額において、あまりにも少いということは、一体どこから割出したのか。こうなつて来ますと、吉田総理大臣の頭も疑わざるを得ませんし、外務大臣の考え方も疑わざるを得ないのであつて、いずれ外務大臣とかその他の方々のところで私お伺いしたいと思いますけれども、これらの根本について、ひとつ政務次官その他の外務省における有力なる高官の皆様に、特に強く要望しておく次第であります。
  50. 並木芳雄

    ○並木委員 国際労働機関アジア地域会議負担金支払いに必要な経費、前年度はゼロで、今度は千七百万円ばかり計上されておりますが、これの具体的のプランを示していただきたいと思います。
  51. 戸叶里子

    戸叶委員 私はこの予算に関連して二点ほど伺いたいのですが、一点は外務大臣が先ごろの外交方針の中にも、東南アジア地域の学生を日本に受入れる態勢を整えてあるということをおつしやいまして、その面からの予算を見ましたときに、ここに現われている予算額では、大体五千万円程度東南アジアの学生の受入れに使うように、先ほどの御説明にあつたと思いますけれども、これは大体どの程度の人を受入れようとしての予算であるか、また申し込まれた人員に対して、どのくらいの割合になつているか、ということをちよつと伺いたいと思います。
  52. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 この東南アジアの学生受入れの件につきましては、主として技術留学生日本に迎えまして、技術教育をする。本年におきましては約三十名ほど参つておりますが、二十八年度におきましては、二百名程度の受入れをする予定なつております。その額といたしましては五千万円程度を予算に計上しております。
  53. 安東義良

    安東委員 関連して……。その国別はどういうような予定ですか。
  54. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 人数の割当はまだはつきりいたしておりませんが、インドネシアのほかにフイリピン、ビルマ等から参る予定なつております。
  55. 戸叶里子

    戸叶委員 もう一点伺いたいのは、ここに在外公館営繕に必要な経費として、インドのニユーデリーにおける公邸の新営及び在外公館事務所並びに云々と書いてございますが、これはインドの大使館を見ましたときに貧弱なものでしたから、このことは許されるといたしましても、まだまだほかのアジア諸国在外公館事務所にいたしましても、館員の方々の住宅にいたしましても、非常にそまつなものだと思うのです。ことにアジア諸地域の気候も悪いし、また生活なども非常に困難が多いところでございますから、欧米に行かれる人たちよりも、よほどの考慮が払われなければならないと思いますけれども、まだカラチやそのほか住宅もなくして、家を借りようとすると、高い権利金を払わなければならないので、ホテル住まいをしているために、なかなか経済のやりくりが困難であるというような、いろいろな働きにくい情勢にあることを見て参りました。その大使館なり領事館の方々のやり方はいろいろばらばらであつて、現地からの非難の声のあることも認められますけれども、その点はまたいつかの機会に申し上げることにいたしまして、そういう方々が安心して働けるような状態に置いてあげることが、まず先決問題と思いますが、今回の予算では、ニューデリーの新営公邸のための予算だけを計上されたのであつて、ほかのアジアの国々の大使館なり公使館の住宅あるいに公邸に対して、新設するとかあるいはそういうことを考慮しての予算が組まれてあるかどうか、ということを一応伺いたいと思います。
  56. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 お説たいへんごもつともに存ずるのでありまして、目下東南アジア地域におきましても非常な住宅難に加えまして、気候、風土等も他の地域に比べましてよろしくない、こういう条件にありますので、でさるだけのことはいたしたいと考えているのでありますが、財政上の都合等もありまして、一応本年におきましてはニューデリーの公邸の新営費として二千四百万円を計上しました。引続き事情の許す限り、他の地域におきましてもできるだけのことはいたしたい、かように考えております。
  57. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 これは委員長に対する質問でありますが、昨年の暮れに外務委員長と若干の同僚議員の方が、東南アジア諸国をずつとおまわりになつたのであります。私はそのことは非常にけつこうなことだと思います。ことにまた、それが単に個人の資格で、個人の費用であまわりになつたのならこういうところで取上げるまでもないことでありますが、ただ私がちよつと聞き及びましたところによると、何か大蔵省方面からも幾らか補助が出たというようなお話もあつたようだし、それから新聞を読みますと、委員長がマニラでフイリピンとの賠償問題なんかについて発言されておるようであります。この場合に、何か使節団というようなことになつておりまして——新聞記事でありますけれども、いくらか公的な使命を帯びておいでになつておつたようにも承りました。私は、これは公的にしても私的にしても、おいでになることには反対しませんが、ただその経緯はやはり明らかにしておきませんと、今後において困ると思いますからお伺いいたしますが、どういう資格でおいでになつたのか。個人の資格でおいでになつたのか、それとも半ば公的な使命を帯びておいでになつたのか。このことはパスポートが——公用でおいでになつたか、私用でおいでになつたか、さらに費用等にも関連しますが、そういうものにつきましても、われわれは同僚議員でありますから、この席でひとつ御説明を承つておきたいと思います。と申しますことは、こういうことをおやりになることについて、おまわりになることは私は外務委員の職責を尽す上においてけつこうでありますから、ことに個人としておいでになつたのなら、あえて御質問する必要もないのですが、一応お伺いいたします。
  58. 栗山長次郎

    栗山委員長 お答えいたします。半会半私の性格であります。マニラにおける扱い方は、向うの新聞並びに向うの政治家の発意による扱い方でありまして、私どもの発意による扱い方ではございません。
  59. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 それでは大蔵省かどこかから補助があつたのですか。
  60. 栗山長次郎

    栗山委員長 半公半私と申し上げましたのは補助金がありましたから半公半私と申し上げるのであります。
  61. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 そうするとどこから出たのですか。
  62. 栗山長次郎

    栗山委員長 国庫であります。
  63. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 政府ですか。
  64. 栗山長次郎

    栗山委員長 国の費用であります。
  65. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 そうすると国会の費用じやないのですか。
  66. 栗山長次郎

    栗山委員長 国会の費用ではございません。しかし国の費用であります。
  67. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 それだけお伺いしておけば今後の参考になります。
  68. 大江晃

    ○大江政府委員 先ほどの並木委員のILOの会議に必要な経費の御質問でございますが、一千七百十四万一千円という金額は、会議に対しまして日本側負担する金額でございます。御承知のように本年の九月わが国アジア地域会議をいたしまして、約二百名のアジア関係の人々が集まるのでありますが、この会議の費用といたしまして、ILOと日本側が折半をすることになつておりまして、わが国負担金  一千七百十四万一千円というものは半額負担でございます。  その内容といたしましては、各地から来朝いたしますILOの代表及び会議事務職員旅費、滞在費、現地で雇い入れまする事務局の職員の手当、あるいは会議事務局の設置の費用、自動車の借料、通信、運搬費、印刷製本費、こういうものを含んでおるのでおります。その他別に開催国といたしまして、日本側のいろいろな懇談その他接待を行う費用といたしまして四百九万二千円を別途計上してございますが、これは国際協力局の費用の中に入つております。
  69. 栗山長次郎

    栗山委員長 休憩をいたします前に、帆足君に希望をいたしたく存じます。帆足計君の御発言中、本委員会の品格にかかわるようなお言葉が幾つかあつたように存じます。今後かようなお言葉をお使いになられませんように希望いたします。  午後は先ほど申し上げました通り、貿易、賠償の問題について、関係大臣の出席をも求め、審議を進めたく存じます。午後一時から再開をいたします。  これにて暫時休憩をいたします。     午後零時六分休憩      ————◇—————     午後一時三十七分開議
  70. 栗山長次郎

    栗山委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  理事会申合せにより、まず外務大臣から賠償問題に関する報告を聴取いたします。岡崎外務大臣。
  71. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 賠償につきましては新聞にもしばしば出ておりまして、その中にはいろいろの報道もありますが、正確なものもかなり入つておりまして、御承知の部分がたくさんあると思います。要するに、フイリピンとの間、その他インドネシアとかビルマ、仏印等いろいろありますが、政府としては、できるだけ早く賠償問題を解決するように誠意をもつてこれに臨み、かつ、もしどこかの国と話合いがつけば、他の国との話合いがまだ成立しなくても、ついた方から実行して行くつもりで話をいたしております。いろいろ国情の相違もあり、また国内の政治的な関係もありいたしまして、進んでいるところと進んでいないところがあるのはもちろんでありますが、幸いにしてフイリピンとの間にはいろいろ了解が進んで来ておりまして、御承知のように沈船の調査はすでにマニラ湾を終りまして、ただいまセブ島に向つております。この沈船の調査は、フイリピン側もいろいろ配慮をしてくれましたので、非常に円満に進んでおります。そこで、フイリピン側としましては、沈船の調査のみならず、調査が済んだら引揚げの方も実施してもらいた  いという強い希望があります。これはなぜかと申しますと、フィリピン方面では台風が毎年五月以後からやつて来まして、そのために、かりに引揚げをやるとしましても、台風の期間、つまり夏の間はほとんど実行が困難な事情にありますので、もし早く引揚げをやらなければ、ことし非常に押し詰まつてからでなければ実施ができない。つまり相当の期間延びてしまうという点があるわけであります。そこでわれわれとしては賠償の関係におきましては、沈船引揚げはその一部でありまして、将来これを賠償の中に繰上げることにして話合いがつきますならば、沈船引揚げも実施してもいいという考えで話合いをいたしております、この話合いがどうなりますかは別でありますが、ただ平和条約関係からいいますと、平和条約の批准が終つて、その後に賠償の問題は正式には取上げられるわけであります。そこで平和条約の批准の前に沈船引揚げを賠償の一部として行うということになれば、やはり協定を結ぶのみならず、その協定は少くとも日本の政府としては、国会の承認がなければできないという建前をとつておりますので、もし今後にそういう協定ができるとすれば——あるいは平和条約の批准の方が先に進んでしまえば別でありますが、そうでない場合に協定がかりにできたとしましても、国会の承認を得た上で、これは実施すべきものである、こう考えております。しかしこれは協定ができるかどうかまだ今話合い中でありますから、はつきりしたことは申し上げられません。政府としてはむろんそういう協定の前に平和条約の批准が行われて、その後に沈船引揚げということが賠償の一部としてできれば、これが一番穏当な手段であろうと思つておりますが、しかし国会の承認があれば、あえてそういう法律上の関係にこだわらずに、実際上両国間の親善を増すという意味からいつてやつてもさしつかえない、一に国会の意向による、こう考えております。しかし外交演説でも申しました通り、日本の役務によつてフイリピンの経済回復を行い得る範囲というものは、まだかなり広いものでありまして、その他にもいろいろ問題ががあると思います。その方面のことは今月中にもフイリピン側から相当数の代表が参りますので、それと話合いをして具体的な研究を進める。これは沈船引揚げというような簡単な一つの事項でありませんから、かなり時日もかかると思いますが、話合いができますれば、これまた国会に提出する予定であります。その他の国々についてもいろいろ話合いをいたしております。いたしておりますが、まだ具体的にここで御報告し得るような段階にはなつておりません。役務関係、ことに経済開発等につきましていろいろ要求というか、希望もあるような点がありますので、今後その方面の専門である人々を随時出しまして、実際どういう点でどういう協力ができるかという面を実際的に研究を進め、それで解決の方に向つて行こう、こういう考えでやつております。以上が大体の御報告であります。
  72. 栗山長次郎

    栗山委員長 賠償問題は交渉の過程でありますので、外務当局としても十分答えることはできないかもしれませんが、さしつかえない範囲において審議を進めたく存じます。従つて御質問があればこれを許します。
  73. 並木芳雄

    ○並木委員 ただいまフイリピンへ調査に行こうとしているもの、それに対する費用はフイリピン側の負担でございますか。
  74. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 ただいま調査に行こうとしておるのは、沈船の調査であれば政府の費用でやつております。これはつまり引揚げでなくて単に調査でありまして、これは将来スクラップ等が買い得る場合もありまして、すでに平和回復諸費の中にこの種の予算がありますので、また金額も非常に少うございますので、政府の費用でいたしております。
  75. 並木芳雄

    ○並木委員 先般新聞の報ずるところによりますと、フイリピンと日本の間で何らかの協定ができたというふうに了解しておりますが、その協定というのはどういうことに関係したものなのですか。
  76. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 新聞の報道というのは、ちよつと私にはわかりませんが、協定としてでき上つたものは沈船調査に関する協定でありまして、たとへば調査船が行くについては向うでもつて沈船の場所を明示するとか、あるいはその調査船に対する飲料水だとかその他の物を供給するとか、あるいは調査船に乗り込む人々に対して生命、財産を保障するとか、あるいは先方の政府が連絡員をその調査船に派遣して、連絡に遺漏のないようにするとか、こういう調査に関するごく義務的なとりきめを結びました。それじやないかと思います。
  77. 並木芳雄

    ○並木委員 その調査の方は日本側から申し出たのですか、フィリピン側からの申出なのですか。
  78. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 フイリピンの希望がありましたので、日本側から申し出ましてそういう調査を行うことにいたしました。
  79. 並木芳雄

    ○並木委員 それをこちらの費用で出すということは、要するにこれは将来役務賠償の一部になる可能性があという見通しのもとにやつておられるかどうか。
  80. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 われわれはそのつもりでおります。
  81. 並木芳雄

    ○並木委員 フイリピンから今月末に賠償に関する使節のようなものが来るということでございますが、日本側の受入れの方はどうですか。こちらでもその賠償に応ずるような、何か母体あるいはグループをつくる考えはございませんか。
  82. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは例の十何人委員会とかいうところで、フイリピンでいろいろ研究しておるようでございます。どういう種類の調査団が来るかは、まだきまつておりません。というのは、たとえば今度の役務賠償に関係する技術的な専門家だけが来るのか、それとももう少し大きな賠償問題全般についての交渉をするような人までまじつて来るのか、その点はつきりしませんので、こちらでもまだはつきりと受入れ態勢をつくつておりませんけれども、たとえば技術者だけが来る場合にはこういうものをこちらで充てる、そうでなくして賠償全体の問題を相談するような人が来る場合にはこういう人を充てたいという腹案は持つておりますが、まだきまつてはおりません。
  83. 栗山長次郎

    栗山委員長 ほかにございませんか。——ございませんければ、その次の問題は貿易の問題であります。貿易の問題についてまず外務当局からの説明を求めます。一般の概況でけつこうです。岡崎外務大臣。
  84. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは私からも通産大臣からもしばしば申しておる通り、日本増加する人口を養つて行くためには、貿易以外には方法はないという考えから、通産省外務省は非常に緊密に連絡をいたしまして、貿易規模の拡大という見地から、いろいろの問題に取組んでおります。たとえば通商航海条約という面でやつておる場合もありますし、あるいはガット加入というような面からやつておるのもあります。あるいは通商条約にまでは行きませんでも、貿易協定、支払協定というようなことでやつておるのもあります。また日英間のように、協定はできたが、今度はそのポンドをどういうふうなところから取得するか、またポンドによる貿易をどの程度に拡大できるかというような点で、協定のインプルメンテーシヨンとしてやつている部分もあります。それから、まだ貿易協定等にも至らないけれども、貿易の実際を見て、実際上の貿易の拡大をはかると同時に、でき得ればとりきめまでも及びたいというので、たとえばアラブ諸国等に通商使節を出すとか、あるいはキューバのような、日本から売るものが非常に少くて、日本が買うものが非常に多いのでたいへんな片貿易なつておるところ、こういうのも何とか是正する意味で、通商使節を出すというような計画も今実施をしようとしております。  それから、これは全然別問題でありますが、たとえば中共との間の貿易にしましても、列国と足並をそろえる意味において、日本側で種々研究した結果、先般九十何品目の輸出統制を緩和するというような措置も講じております。  それから賠償問題にも関連しまして、これが解決すればさらに通商規模が拡大できるというような向きもありますので、この方面にはまたこの方面で別に話もいたす計画で進めております。こういうふうにしていろいろの施策をやつておりますが、その大きな方針は、やはり今までのドル圏から輸入を非常に多くしておりましたのを、これをスターリング・エリアの方に輸入を振り向ける、輸出の方をできるだけドル地域の方に向けるということで、それによつて貿易規模も拡大できるという考えでやつております。最近においてポンドの自主性が非常に改善されて、安定もいたしましたし、ドルとの比率も非常によくなつて来ておりますから、この際ならば輸出入のこの傾向を転換する。今まででありますと、ポンドの方の地域は一割なり二割なり割高である、従つて輸入をするのはドル圏から輸入するのが利益であり、輸出をするのはポンド圏に輸出するのが利益であるという関係で、ドルがどんどん不足し、ポンドがどんどんたまるというような傾向になりがちであつたのでありますが、今度はそのポンドの安定とドルに対する比率が非常に実際上よくなりましたので、ポンドの方面から輸入しても損はなく、同時に、ドル圏の方へ輸出しても、日本金に換算した場合には決して損はないというふうにだんだんなつて来ておりますから、貿易の転換といいますか、こういう方面も決してできないことじやない、こう考えております。それで、要するに日本の国内における雇用の増大とか、あるいは工業の振興とかいうことは、要するに輸出しなければならぬ。輸出しなければならぬ場合に、ポンド圏に輸出することをなるべくやらないというようなことでありますと、これはとうてい貿易規模の増大はできませんので、今のような考えから、できるだけ輸入もポンド圏から持つて来る、そうして輸出をこれによつて拡大する、こういう方法で、そういう根本的な考えから今申したようないろいろの方面の話合いをやる。あるいは通商使節を出すとか、まあ、各種類のことを総合的に考えて計画実施しておるような次第であります。
  85. 栗山長次郎

    栗山委員長 午前中の質問で、大臣からの答弁を待つておる問題も貿易関係いたしておりますので、簡単にいま一ぺん要旨を述べてください。安東義良君。
  86. 安東義良

    安東委員 ただいま岡崎外務大臣から根本の方針についてお話を承つたのでありますが、ことにポンド圏に対する今までのやり口を是正して、新たなる情勢に応じてこちらの方面にも輸入も増大し、輸出も増大しようということを考えておられることは非常にけつこうで、私は大いにそれをやつてもらいたいと思います。しかしながら、今度の予算の御報告が先ほどありまして、伺つた結果から見るというと、たとえば、貿易の振興の対策の一つとして、海外貿易斡旋所をつくるというお話である。しかしそれは外務省予算には出てなくて、通産省予算に出ておる。これは当然に外交機関もしくは領事機関監督のもとに置くべき筋合いのものであるし、またきわめて緊密な連絡をとらなければ意味をなさないものでありますが、その点については通産省の方においても御考慮になつているようで、これはけつこうである。外務省としても当然にそれについてははつきりした行き方をしてもらいたい。これは私の一つの要望でありますが、しからばその貿易斡旋所設置する所はどこかという問題になりますと、これは今度はニューヨークである。そのほかトロント外一箇所、三箇所予定しておつたけれどもまず一箇所置くということになつたというお話で、その志向せられておる点がやはりアメリカであり、ドル中心である。そうしてその御説明を承れば、ドル獲得のためにこの際そういうことをやる必要があると思うからと言われた。ただその内容として、中小企業等のいわゆる雑貨輸出等が、なかなか適当な連絡者が向うにいないから、たたき売りされるというようなことも起るし、いい販路が見つからないから、そこで貿易斡旋所を置いてこういうことをあつせんしてやるというような御趣旨、そのこと自体は私は悪いとは言わないが、今のような根本方針があるならば、少い国費をもつて貿易斡旋所をつくるというならば、なぜ東南アジア方面、いろいろ困難のある所、新たに打開をしなければならぬ大きな問題がある所に置かないのか。ことに日本雑貨等を考えてみますと、南方アジア方面の需要は、努力いかんによつては相当拡大させることができるように私は見受けたのであります。今までの貿易方針がよろしきを得ないがゆえに、せつかくのチャンスはありつつも、十分伸び切れないというような面が多々あるように私は見受けた。これは非常に遺憾なことでございまして、おそらく外務大臣といえども御同感のことであろうと思いますが、そういたしますれば、貿易斡旋所のごときものをせつかくつくるならば、これをまず第一発に東南アジア方面設置するというような心構えを示していただきたい。これについてどうお考えになりますか。
  87. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 お話はまことにごもつともであります。ただ、このニューヨークにつくるということは、実はアメリカもむろん相手でありますが、南米、中南米諸国にかなりのねらいを置いておるのでありまして、予算関係各地につくれませんものですから、ニューヨークを中心として、中南米、これが将来われわれの貿易を開拓する一番大きな未開拓地といいますか、こういう意味で、実はニューヨークにはぜひ置きたいということで置くことにしたのでありますが、お話のように、東南アジアの重要性ということがますます大きくなつて来る。そこで今いろいろ考えておりますが、貿易斡旋所もさることながら、貿易についての一番の困難は、やはりオープン・アカウントで決済が最後にドルになる。インドネシアとのこの前の交渉のときにも、半分はポンドにしてくれという向うの希望もありましたが、なかなかそれが困難であつたのです。というのは、ポンドの実勢がそのときはまだよろしくなかつたものでありますから……。ところが最近ずつとポンドの実勢が、保守党内閣になつてからだんだんよくなつて来て、またこの傾向はおそらくずつとしばらく間違いなく続くように思われるのであります。そうしますと、こちらがポンドをよけい持つていても、そんなに心配はないということになります。またポンドの使用価値が非常にふえるという事実も起つて参りますので、将来はポンド決済ということもよほど考慮しなければならぬ。東南アジアについても、ある程度そういう問題を考慮することも必要であろうと考えております。しかしいずれにしても、そういうほかの方面貿易振興の方法もいろいろありますが、貿易斡旋所もなかなか有効なように見えますので、ニューヨークには一応きまりましたから置きますけれども、その次にはぜひ東南アジアに置きたい、こういうつもりでおります、
  88. 安東義良

    安東委員 貿易振興方策として、貿易斡旋所がはたしてどれだけの価値があるかという問題は、私も多少疑点を持つております。これは人よろしきを得なければ何もならない。あるいはまた出先外交官憲と十分の連絡をとつてやらなければ、これまたあまり期待ができません。私は過去の貿易斡旋所になるものをヨーロッパでも見ましたし、あるいはほかの地域でも見て、民間の声を聞いたこともありますし、また私自身もそういう人に会つても来て、案外活動していないという印象を私は持つておる。ただつくつただけで役に立たないということは、これはかねて外務大臣御承知の通りであろうと思います。そこで今後この運用については十分考えていただきたいのでありますが、それはさておいて、ただいま外務大臣の指摘せられた通り、東南アジアに対して貿易伸張の根本問題は、やはり今の勘定がポンド建で行くか、ドル建で行くかという問題に大きく左右せられておると思うのであります。インドネシアのごときは、私はもしポンド建で行くならば、雑貨その他相当のものに対してインドネシア政府自身がライセンスを与えてもいいと言つているそうであります。それをできないということは、結局日本の政府が依然としてドル建に固執しておるからである。この原因が、なるほどポンド建にすれば、当時はポンドが弱勢であつたからだめであつたのだ、それでやらなかつたのだというりくつも一つはあるかもしれませんけれども、私は貿易関係においては、必ずしもただ一時的のフラクチユエーシヨンだけで決すべき問題ではなくて、やはり国策の根本義から出発して、経済関係をリードして行く必要がある。その場合、たとい大蔵省の勘定が多少右になろうが左になろうが、やはり先を見通してやつて行かなければならぬと私は思うのであります。その見地から考えてみますと、従来とも現地からは、ポンドで勘定することができるようなふうに、ひとつ考えてもらえぬかという意見の具申もあつたように承つております。それを大蔵当局が結局握りつぶしている。また民間でも、同地方にいろいろと貿易を振興しようとして、今の問題を持ち出して大蔵省あたりに陳情にも来たものが多々あるそうでありますが、これも一様にみなけられている。もつともらしいりくつはいろいろある。あるけれども、やはりそこに根本的な対策が欠如しているために、せつかくのチャンスを逃がしている。現にインドネシアにおいてそういう行き方をしているがために、現在ヨーロツパ方面からいろいろと商品が入つて来て、日本品を駆逐しつつあるのであります。一旦商品が駆逐せられて、また再び市場を回復するというようなことは、なかなか容易なことじやありません。しかしそれには時期がある。時期がありますので、ただいまの外務大臣のお言葉のように、将来ひとつ考えますというのではなくて、即刻時期を失しないようにその問題の解決に乗り出していただきたい、こう思いますが、これに対する外務大臣の御所見を承りたいと思います。
  89. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 御意見はその通りであります。今までやつておりましたのは、ただ大蔵省がむずかしいというのではありませんで、要するにポンドの実勢が公定相場に伴わなかつたものでありますから、たとえばポンド圏の物価というものは、二割くらい——二割とは必ずしも言えませんが、大体二割程度ドル圏よりも高かつたわけであります。そこで同じたとえば羊毛なりあるいは綿花なりを輸入するにしても、輸入する場合にドル圏から輸入すれば百円のものなら、ポンド圏から輸入すれば百二十円ということに国内でなつてしまう。そうすると、これは政府が輸入するのではなくして商社が輸入するのでありますから、商社としては百二十円のものを輸入したのでは、百円のものと競争できないものでありますから、どうしてもポンド圏から輸入しなかつたわけであります。従つて一億もポンドがたまつてしまつたというようなことになつて、これはにつちもさつちも動かないということになつたものですから、困つておつたわけであります。ところが幸いにして、最近ポンドとドルとの実勢が大体相場に近づいて参りましたから、今はそんな差がないので、ポンド圏から少し奮発して輸入すればできるということになりますので、安東君のおつしやるようなことが可能になつて来たわけであります。そこで今おつしやつたように、これは早くやつた方がむろんいいのであります。ただいま日英の間にいろいろ話合いもいたしておりますが、その場合にもこれは単にインドネシアというのではなくて、方々の国からポンドで入れていいという話合いもいたしております。またそればかりでなく、今度は特定の国の決済方法として話合いをいたす必要が出て来ますので、そういう方面もイギリスとの話合いと並行して早くやるつもりであります。
  90. 安東義良

    安東委員 そこでこれに関連する問題でありますが、私は日本のいわゆる貿易政策は、今後よほど現地実情に適応して行く柔軟性を持たせなければいかぬということを、痛切に感じた一人であります。幸いに外交機関あるいは領事機関が方々に設置せられるようになつて、この人々はもとより今一生懸命働いておる。この点については感謝するのでありますが、どうも見受けるところ、経済方面のエキスパートが少いように思う。これは至急充実せられる必要があると思います。たとえば今のポンドの弱勢であつたという制約はあるにしましても、輸入の面から考えても、インドネシアの例を一つとつてみれば、あるいはゴムの値段が多少高かつた、あるいはコプラの値段が多少高かつた。そこで引合わぬから買わないというような点もありましようが、話を開いてみれば、インドネシアにおいては、ゴムの生産地はスマトラである。そこでスマトラからジヤカルタにゴムを集結して、それを日本に売り渡しておる。ところがそのスマトラからジヤカルタに持つて来るのはオランダの船である。日本船がもし直接スマトラに寄港することができるようになれば、もつと安い値段で供給ができる。それは明らかなことである。こういうことは、現地におる者が十分頭を働かして、現地当局と向うの当局と十分に話し合えば、そこにもし向うに貿易を振興しようという意図があるならば、道は開けて来ると思う。コプラの問題をとつてもそうだと思う。コプラは政府が集積して売つているそうでありますが、その間には大きなマージンがあるようであります。これをコマーシャル・ベース、世界的な値段に引直してみて引合う方法をとらせるということは、これは私は不可能じやないと思います。せつかく去年の七月以来インドネシアとの貿易協定ができても、輸入の面において日本側が十分にやらないというその反面もありましよう。現在インドネシア政府は、日本の輸入をできるだけ制限しようとしておる。いわゆるアンバランスを日本貿易商にかぶせております。そこでこれらの点を考えるならば、よほどやはり努力しなければいかぬ。ただ通商協定を結んだり、貿易協定を結んだり、あるいはその他のインプレメントをつくつてやつたからといつて、それだけでは私は伸びぬと思いますので、特にこの点については御注意を願いたいと思うのであります。  それからこれは話は別でありますが、占領下におきまして、日本貿易とりきめ等は、これは総司令部が日本にかわつてやつた。その後日本の政府がときどき当事者となつ協定も結んだ。しかもそれは講和条約発効後まで効力を持つておるものも少くなかつたろうと思います。現在もありはしないか。現在はどうですか。ありはしませんか。——それはそれとして、とにかくその後効力を持つている。その後また、つまり講和条約発効後においても、いろいろ貿易とりきめができておるようであります。これが一切国会に報告せられない。あるいは報告どころじやない、やはり国際とりきめであるのに、国会の同意を得ようとせられないということは、どういう理由によるのか、その点を承りたいのであります。
  91. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 ただいまの前段の方の御意見につきましては、私どもも十分考慮いたします。また幸いに安東君など視察して来られたのでありますから、ゆつくりひとつ御意見を伺つて、実際的な方法を講じたいと思つております。  貿易とりきめ等を、これは国会に報告しろとおつしやればいつでも報告はいたします。ただ法律上は、あれは通産大臣なり、大蔵大臣なりの外貨の処分の権限内の仕事でできることでありまして、従いまして法律上は国会の承認を要しないものと了解しております。しかしこれは別に隠していることでも何でもありませんので、報告はいつでもいたします。
  92. 安東義良

    安東委員 その根拠なるものは、外貨の処分の権限内にまかせてあることであるからして、それでやらぬといわれるのですか。
  93. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これはそればかりじやありませんけれども、主として、あれはとりきめといいますのは、ここまでは輸入なり輸出なりをするということであつて、それだけのものを必ず輸出するとか輸入するとかいう約束でないのであります。それでその支払いの方法は、たとえばドルで決済するとかポンドで決済するとか、いろいろな方法があります。そこでそれは外資関係法律によつて、大蔵大臣の権限とされている範囲内で決済方法はきめることができるのでありまして、あとはただ計画でありまして、これは政府が義務を負つているものでもなければ、政府が相手方に対して権利を持つているものでもないものでありますから、それで特に国会の承認を必要としないというのが従来の意見であります。
  94. 安東義良

    安東委員 まだ私貿易とりきめの内容全部にわたつて調査しておりませんので、はたして今の外務大臣の御答弁によつて満足できるかどうかはわかりませんけれども、一応その御説明を了承しておきます。
  95. 栗山長次郎

    栗山委員長 関連して中山マサ君。簡潔にひとつお願いします。
  96. 中山マサ

    ○中山(マ)委員 先ほど外務大臣の御報告の中に、アラブ諸国に対しても経済使節を送る、こういうお話がございましたので、私が午前中に質問いたしましたことに対する一つの回答だと私は考えておりますが、このアラブ民族の興隆というものが非常にこのごろ目につくようになつて参りました。それでイランの方面においての英米の対立、この飛火がずつとエジプトからああいう方面へ向つて非常に強力に動いて参つております。ここに三億五千万人のアラブ民族の結集というものが、片方に宗教の強い団結によつて行われておりますが、英米の空間にこちらが出るというのはいかがかと思う点もございますけれども、アメリカあるいは東南アジアに対する貿易の振興という建前から新しいマーケットとして、ここにぜひひとつ経済使節を送り、新しいマーケットをぜひひとつ興していただかなければならない。大阪の大きな商社のお方が——これは繊維会社の方でありますけれども、英国からずつとこの方面を調べて帰られまして、西アフリカはぜひとも日本が取上げなければならない、将来最も有望なところであるということを、調査した結果として私は最近お話をいただきましたので、政府は政治的に、また経済的に、ただ貿易側節を送るということだけでなしに、この方面に対する進出をどういうようにお考えになつていらつしやいますか。お聞かせ願いたい。
  97. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 アラブ諸国は、従来から日本にとつてはたいへんいいマーケットだつたのでありますが、戦争中、及び戦後にこれが行われなくなつてしまつたのであります。しかし、アラブ諸国の人々は、日本に対して決して悪感情を持つておりませんし、それから従来から非常に親しい気持を双方で持つておりますので、ぜひこの方面には使節を出す、それから今、アラブ諸国といいましても、平和条約関係で批准をしておる国というものは、エジプト、シリアだけであります。そのほかイランとかイラクとか、レバノンとかトランスヨルダンとかいろいろ国があります。そこへとにかく通商使節を派遣しまして実情調査し、できればとりきめも結びたいと考えております。この使節団には日本郵船会社の社長の淺尾新甫君を依頼し、またこれに通産省からも外務省からも大蔵省からもついて参りまして、そのほかに民間代表も同行してもらうことになりまして、たとえば江商の社長の駒村資正君なども行つてもらうことになつております。相当強力な、そうして実地のわかる人を出しまして、実際にやろうと思つております。それから西アフリカの方も、これはもちろん重要でありまして、われわれも前からいろいろこの方面の材料を取寄せて研究しております。今般はひとつ西アフリカにも領事館設置まで行いたいと思いまして、考えておるところであります。
  98. 栗山長次郎

    栗山委員長 並木芳雄君から、アメリカの大統領の教書中の二、三点について、緊急に質問をしたいという求めがあります。これを許します。並木芳雄君。
  99. 並木芳雄

    ○並木委員 お許しをいただきまして外務大臣にアイゼンハウアー大統領の一般教書の中で、日本関係のある重要なる二、三点についてお確かめをしておきたいと思います。それは私どもこれから審議いたしますのに、大きな前提となる問題ですから、どうしてもこの機会にお尋ねをしておかなければならないのであります。ただいまの賠償問題にしても、貿易の問題にしても、いずれも関係があるのであります。質問はすこぶる簡単にいたしますから、大臣も腹を割つて、私どもに外務大臣として、お互いに考えようというような気分でお答え願いたいのです。わからない点はずいぶんあるのですから……。そこで今度の一般教書の中に含まれております……。
  100. 栗山長次郎

    栗山委員長 ちよつと並木君に御相談いたします。まだ貿易に関する質問の申込みが二、三の委員からありますから、どうぞひとつ簡潔にお願いいたします。
  101. 並木芳雄

    ○並木委員 いわゆる祕密のとりきめを将来廃棄して行きたいという、その秘密のとりきめでございますが、これは私たちは、その一つにヤルタ協定というものを知らされております。このほかにはどんなものがあると了承されておりますか。
  102. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 秘密のとりきめですから私も知らないのですが、ヤルタ協定のように、初めは祕密でもだんだんわかつて来て、もう公然なことになつているようなものもありますから、そういう種類の軽いものはあるようでありまして、外務省でもいろいろ、これが祕密じやないか、これじやないかという勘定をしておるようですが、特に大きなものは、協定としてはないのじやないかと思います。しかし協定というのは、アグリーメントといいますと、物に書いた協定以外に、口で約束したことでも一般にアグリーメントに入るかもしれませんので、ちよつと今ここでお答えする材料を持つておりませんが、多分広い意味ではまだ幾つかあるのじやないかと思つております。
  103. 並木芳雄

    ○並木委員 たとえばこんなものというのはありませんか。たとえばドイツの処理に関しての申合せ事項、たとえば朝鮮の三十八度線設置についての申合せ事項、何かございませんか。
  104. 岡崎勝男

    ○岡崎外務大臣 何かきつとあるに違いないと思うのですが、ここで申し上げるほどまだ私ははつきりしておりませんから、いずれ調査しましてこの次にでも申し上げます。
  105. 並木芳雄

    ○並木委員 アメリカのやり方で、前の大統領がきめておつたことを、今度の大統領がこれを廃棄するということは、これは並々ならぬことであろうと思いますが、手続はどいうふうになつているのですか。
  106. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これもその内容によつてだろうと思います。たとえば国会の承認を得べき性質の協定であるものを、承認を得ずしてやつておる場合には、これはまた別でありましようし、エグゼキユテイヴ・アグリーメントと称するもので、国会の承認を得ないものもありましよう。あるいは今申したように口だけの約束というのもありましようから、これはいろいろ場合によつて違うと思います。ただこれはりくつでありますが、少くとも秘密でも、約束したものを破るというのなら、これは相当の考えのもとに行われるのであつて、そう軽々しくできるものではないとは考えております。
  107. 並木芳雄

    ○並木委員 今度の日本に一番の関係のあるヤルタ協定の廃棄の手続は、どういうふうにしてなされなければならないかという点をお尋ねいたします。
  108. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは私はちよつとアメリカの国内のことをよく知りませんので、ここでお答えすることはできません。だれか知つている者があればですが……。これもひとつこの次に延ばしていただきたいと思います。
  109. 並木芳雄

    ○並木委員 ヤルタ協定が廃棄されれば、あの中に含まれている千島列島はもちろんのことでありますが、樺太の南部及びこれに隣接する一切の島嶼、これも当然含まれて来ると思うのです。従つてわれわれは今度の平和条約の基礎になつたヤルタ協定が廃棄になれば、平和条約の実質的変更ということになると思う。この場合千島列島のみならず、当然南樺太も含まれて来ると了解いたしますけれども、それでよろしゆうございますか。
  110. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これはまだアメリカがどの協定を廃棄するということは言つておりませんで、ヤルタ協定にしても、多分そうなるのじやないかという想像でありますからわかりませんが、もし仮定でヤルタ協定を云々ということになれば、ヤルタ協定に含まれている南樺太も入るのじやないかと思います。但し日本としては、とにかく平和条約に調印しまして批准も済ませております。それでこの地方における権利、権原は廃棄するということになつております。ただその定義が、たとえば千島というのはどこまでのものが千島であるか、定義は別問題であります。従つて実質上はお話のように、かりにそれが実現して、ほんとうに実質的にもそういうところが宙ぶらりんになる場合もありましようけれども、今のところは実際上はソ連側が占拠しておるわけでありますから、これは実際の問題としてはどうなりますか、要するにまたソ連側からすれば、ヤルタ協定を一方的に破棄してもだめだろうという議論もありましようから、もう少し様子をみなければわかりません。
  111. 並木芳雄

    ○並木委員 その大臣のあれでいいのです。仮定としてお答えになつてけつこう、また今の平和条約できまつているということを、われわれは男らしく履行するということもけつこうなんです。しかしもしそれが実現されますと、ヤルタ協定そのものが廃棄されますから、その当事者の間では効力を失うわけでございます。そうすると南樺太や千島は宙に浮いて来る、その場合に帰属はおそらく平和条約に調印している連合国の間できめられる、こういうふうに了解すべきものであるが、われわれの気持としては、当然元の日本に返してくれ、こう言いたいところですが、国際条約上の慣例もありましようし、その点はどういうふうに解釈したらよろしゆうございますか。
  112. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは総理大臣も参議院で答弁されたと思いますが、従来からこういう自然に日本に来た領土については、できるだけ日本側につくように努力をしておられる、千島その他の島々もそれに入るのだという趣旨の答弁をしおられます。われわれもそれを希望することは当然そうでありますけれども、まだ廃棄をしたという発表もしませんし、また廃棄したからといつてすぐそれが有効になるかどうか、片方ではそれは承知しないという議論が出て来ましようし、もう少し時期を待たないと国民にあまり強い根拠のない希望を抱かせるというようなことになつてもたいへんでありますから、もう少し慎重に取扱いたいと思います。
  113. 並木芳雄

    ○並木委員 その点よくわかるのです。ですからこちらも慎重に聞いておるわけです。野党攻勢でも何でもありません。  そこでこのヤルタ協定の中には、日本のみならず、中国の関係事項も多いのです。従つて本来ならばこういう一般教書が出ると、毛沢東政権というものも喜ぶのじやないか、これは漠然とわれわれは感ずるわけなんです。専門家の大臣はどういうふうにその点をお考えになりますか。ソ連と中共との関係であります。
  114. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 ただいまのわれわれの持つておる報道等で判断しますと、中共とソ連とは非常に密接な関係のようでありまして、おそらくソ連と中共は、ともにヤルタ協定——これはヤルタ協定を廃棄した場合ですが、そういう場合がありましたら、ともに相携えて反対を表明するのじやないかと思います。決してソ連だけが反対し、中共が喜ぶというような事態にはならないじやないかと想像されるわけであります。
  115. 並木芳雄

    ○並木委員 そうするとアイゼンハウアー大統領の一般教書から、外交政策としてソ連と中共とを切離そうというような意図はのぞかれないかどうかという点でございます。
  116. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これはダレス国務長官もそういう趣旨のことを言つております。しかし実はほんとうに考えておるなら、そういうことをはつきり言つたらかえつてうまく行かないじやないかというようなこともありますけれども、いろいろな方法で考えておるだろうと思いますが、この問題がどう響くかは、これはまた別個であろうと思います。要するに祕密的な協定ということで、どれを対象にしてということじやなくしてアイゼンハウアー元帥は言つておるのじやないかと思います。
  117. 並木芳雄

    ○並木委員 次に台湾の中立化の問題なんです。この強硬政策に対して、台湾の蒋介石、李承晩大統領なんかは喜んでいるというのですが、一方英仏側の方では、非常に波瀾を巻き起しているようですが、外務省としての情報は、英仏側の反響というものをどういうふうに受取つているか、お話願いたいと思います。
  118. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 お話のように、英仏側ではいろいろ心配しているように聞いております。しかし私は、あの演説をごらんになればおわかりになります通り、今まで台湾の中立化というので、台湾の方からも本土に行かない、本土から来るのは許さぬけれども、台湾からも本土に向つて行かないということになつておりましたために、中共側からいえば、台湾の対岸の方に防備をする必要がないという結果になる。要するに台湾海峡はアメリカが守つてくれるので、福建方面に防備をして、国民政府軍の反攻に備えるという必要がない結果になる。従つてその部分の兵隊は、朝鮮でもどこへでもまわせるという結果になる。そのためにアメリカの兵隊、あるいはほかの国の兵隊も、朝鮮でよけい戦死しなければならない。そんなばかばかしいことはないから、守つてやらないのだ。中共の沿岸をアメリカが一生懸命に守つてやるなどというのはおかしな話であるということであつて、それをまつすぐにとれば、そう非常に喜ぶこともないかもしれぬし、また非常に心配することもないのじやないか。こうも思いますけれども、英仏側ではお話のように大分心配しているように、輿論といいますか、新聞等で見受けるのであります。
  119. 並木芳雄

    ○並木委員 それではもう一点だけ。この問緒方官房長官は新聞記者団の会見だつたか、日本関係がないというような表現を用いておられたようなのです。しかし私どもはどうも今度の一般教書から受ける印象というものは、祕密諸協定の廃棄の問題にしても、台湾の中立化、第七艦隊の引揚げの問題にいたしましても、ずいぶん身近に関係が深いように感じられます。岡崎外務大臣はそれをどういうふうにお感じになつているか。はたしてアイゼンハウアー元帥が、もう最悪の場合は、第三次大戦に行つてもしかたがないという決意をもつて臨んでおるのかどうか、そういう点も私どもは聞きたいのです。  それともう一つ、思い当る節は、ソ連としては第三次大戦に応ずる、戦争に持つて行く意思がないと見ておるのではないか。それはトルーマン大統領がソ連には原子爆弾がないのではないかというような発表をしたことがございます。トルーマン大統領は、原子力の爆発つまり実験は二回やつたということは確かに知つているけれども、原子力ですか、原子爆弾ですか、そういうものはないのだという発表をしております。それをあるいはアイゼンハウアー大統領が受継いで、いくらやつて行つても——しかけてもしかけるという言葉は悪いかもしれませんが、最悪の場合にはならない、ソ連は立ち上らないのだという見通しのもとに、こういう強い外交方針を宣明されたと思われますかどうか。この点私ども非常に心配しておりますから、大臣の所見を伺いたい。
  120. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 アメリカ日本の間は、他のいずれの国よりもただいまのところ、密接な関係なつておりますから、アメリカの大統領の教書というようなものは、日本に対していろいろの意味で影響もあり、関係するところ深いと私は思つております。またそれ以外にたくさん経済関係でもあると思います。ただ官房長官はどう言われたか、私知りませんけれども、聞き方にもよりますが、日本といえども、これは小なりといえども独立国なのでありますから、そう他国の元首の教書によつてすべての国策がかわるというわけでもなく、従つてそういう意味で、日本日本考え方もあるのだと言えば、それは影響がないという方に強調されますし、また逆の方から言えば、非常に影響されるということで、これは表現の仕方だろうと思います。トルーマン大統領がそう言つたという新聞報道は私も見ましたが、どうもこれは何か言葉じりをつかまえた間違つた報道じやないかと思いますのは、トルーマン大統領の最後の教書には、スターリン氏に対して、レーニン時代のような原子力のない時代とは今違うのだ、従つてあの当時のことを考えて、同じ方策で行くのは間違いであると言つて、双方に原子力のあることを前提として、議論を進めておるように見えます。またアイゼンハウアー元帥の教書の中に原子力に言及しておりますから、ソ連にはない、アメリカにはあるという前提のもとに議論を進めておるとは思いません。しかし大戦争があるかどうかということについては、おそらく多くの人々は、今のところそういうことはない方に可能性が多いというように考えておると思います。
  121. 並木芳雄

    ○並木委員 そのないという根拠を……。
  122. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは私が考えておるというのではなしに、いろいろの人がそう言つておるのでありまして、その根拠はいろいろ違うだろうと思います。それを一々ここで申し上げるのは時間もありませんが、ただたとえばチヤーチルも言つておるし、あるいはトルーマンも、アイゼンハウアーも言つておる。あるいはフランスでもシユーマンも言つたことがあるというふうに、方々の人がそう言つておる。これは考え方はいろいろな根拠があるだろうと思いますが、これは申し上げれば、三十分や一時間はかかつてしまうと思います。私も結論としては、一応遠のいておるように見える、こういう結論を持つております。
  123. 安東義良

    安東委員 関連して……。あらためて質問申し上げるべき問題でありますが、きわめて重大な問題でありますから、外務大臣にお尋ねいたします。ヤルタ協定が廃棄せられるかどうかということは、まだ事実は見られない。これを仮想によつていろいろ臆測して言うことは、かえつて害があるという見地から、外務大臣として慎重な態度をとられるということは、当然なことであつて、これについて私はかれこれ申すのではありません。きようの新聞でありましたか、外務省がこれに対して公式声明をやつたとか言つておる。それを見ておりますと、歯舞や色丹の日本の領土権をことさらにやかましく言つている。そしていかにも千島等について、全般的に復帰せられるような希望はもちろん現われてない。ただアメリカあるいはその他の国との講和条約の規定をそつくりそのまま言つておるような調子であつて、外務省としては関せず焉というような態度をとりたいというような調子が見えておる。私はこれはただいまの外務大臣の慎重な態度とそぐわぬものがあると思う。また同時に総理大臣が答えたのですが、今度は私は傑作だつたと思いますが、千島あるいは南樺太等についての帰属については関心を持つておるという態度を示されておる。これは当然のことであると思う。なるほど講和条約においてわれわれは千島を放棄し、あるいは南樺太を放棄したということは、何もこちらが希望したからではありません。戦争に負けた強圧の結果として、われわれはポツダム宣言をのんだ。その結果が講和条約に現われて来たのであつて、ポツダム宣言にはヤルタの協定はメンシヨンしておりませんが、日本の領土処分については、これが非常な重大な根底をなしたことは言うまでもないのであります。その根底が近くくずれるかもしれないというのであるならば、日本の領土問題について、再考を少くともアメリカ当局に対して促すべき立場に日本は立つのではなかろうかと私は思う。またそういう権利もあると思う。それでありますからこの問題は慎重でなければなりませんが、同時に日本ももう少し根本にまで掘り下げて考えてよかろう、またその時期になりつつあるというふうに私は考えるのであります。しかも千島にしましても、日本の民族領土である。それをああいう処分をしたということ自体にあやまちがあるのであります。そのあやまちが正されようとしておるのであるから、それを日本外務当局が何にも関心がないような態度を示す、千島は歯舞と色丹だけだ、それが日本の領土だというようなことを、いまさらことさらに声明する必要はどこにもないのではないか、これについて外務大臣の御見解を承りたい。
  124. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 安東君とは党派は違います。外務省の人間は私の方の味方みたいなものでありますが、今回はどうも安東君の御議論の方が正しいように思います。私は外務省でそういう正式発表をしたとは思いませんが、新聞に出ておるのは私もきよう見ましたから、さつそく調べまして注意をいたします。おつしやる通りであつて、これは非常にデリケートですから、もうあれで千島や樺太は日本に返つて来たのだというふうに、国民に思い込ませることは慎まなければなりませんけれども、何もこの際条約で約束したのだから、日本はもうこれ以上のことはないのだというようなことを言う必要はないのでありまして、われわれとしては、たとえばあのカイロとかいろいろの宣言等に流れておる基調は、日本が無理に力をもつて奪い取つたようなところを返させるのだというのが基調であります。ところが樺太と千島については、そんなようなことは決してないし、そういうふうになるべきものではないのがほんとうの筋道だとは私は思つておりますが、これは条約にありますから、いまさらいろいろりくつはこねませんが、お話のように将来に希望を持つべきは当然であり、またそのために努力すべきも当然だと考えております。要は、この際にあまりに国民に大きな期待をかけないように注意して慎重にやる。またほかの国との関係もありますから、できるだけそれがうまく行くような態度で行くべきである、こういうことで慎重にいたしたい、こういうわけであります。
  125. 帆足計

    ○帆足委員 先ほどのことに連関してお尋ねしますが、アメリカ大統領の教書の中にあります台湾のいわゆる中立化という問題は、台湾にある国民党の亡命政権と中国本土との間に対立が激化するであろうというおそれをめぐりまして、西ヨーロツパ諸国も非常に必配し、本日あたりは英国の国会は、この問題で論議紛糾すると伝えられておるような状況で、また日本国内の新聞もこの問題を非常に憂慮し、全国民も憂慮しておることは、大臣も御承知の通りだと思うのです。そこで端的にお尋ねしますが、台湾政権が、中国本土すなわち中共政権との間に、こちらから本土回復というような反敵作戦に出ましたときに、英国の新聞あたりを見ましても、台湾の六十万の軍隊は非常に弱い軍隊である、これは逃げて来た軍隊ですから、だんだん年もとつておりますし、強くないことは周知の事実でありますが、そこで負けたときはアメリカが出て行くという結果になつて、その場合に、日本がこれを間接直接に助けねばならぬような義務を負うようなことになるかどうか、この点をまずお尋ねしたい。
  126. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 今の問題はいろいろの言葉を使われましたが、私は別に国民政府に対して亡命政権であるとか、あるいは国民政府の軍隊は弱いのだとか、そう簡単に前提を置いて議論すべきものではないと思います。しかしお話の点は、アメリカの艦隊が台湾海峡におつて、双方が出て行くことを防ぐという今までのやり方をやめた。その理由は要するに先ほど申しました通りのようでありますが、その結果がただちに本土に国民政府が乗り込んで行くということになるのかどうか、まだ何もきまつておりませんし、また今度それがうまく行かないときにアメリカが出て行くかどうか、あまり仮定が多くて、私は外国の問題についてそう仮定に仮定を積み上げて議論をすべきではないと思いますので、この点はお答えを差控えたいと考えます。
  127. 帆足計

    ○帆足委員 仮定という問題でなしに、目前にある予想し得る事実、すなわち台湾の国民政府と中国本土との衝突、こはに対してアメリカが援助するということになれば、日本の国土をちようど朝鮮戦争に対して間接に助けておるように、台湾国民党政府に対して、日本がそれを直接間接に助けねばならぬ義務があるかどうか。私は国連協力の場合と違いますから、まつたく一応別個の問題であると思いますけれども、自動的にそういうような義務のあるものであるかどうかということをお尋ねしたわけであります。
  128. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 自動的に別に義務があるという条約上の何も規定はありません。
  129. 帆足計

    ○帆足委員 この問題に対して、英国ですらがアメリカから事前の了解を得なかつたというので、イーデン保守党外務大臣は非常な不満を漏らしておりますが、この問題は、一歩誤ればすべての新聞が論じておるように、日本の国運に関する問題でありますから、当然本来日本が完全独立国であるならば、アメリカから事前に相談を受くべき性質のものであろうと思いますけれども、今日のような弱小国になつておりますので、相談がないこともやむを得ないでしようけれども、このアイゼンハウアーの教書の問題の中で、極東の事態に触れる問題についての解釈なり見通しなりについて、アメリカ国務省当局から、外務大臣として何らかの解釈上見通し等について話をお受けになつたかどうか、お尋ねしたいと思います。
  130. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 大統領の教書につきましては、協議は受けませんでしたけれども、事前に通告はありまして、ことに台湾におけるアメリカ艦隊の行動については、理由等を付して説明を前に受けております。しかし私はアメリカの軍隊がどこから引くとか引かぬとかいうことについて、それほどのこちらから話をしなければならぬという問題が必ずしも起るとは考えておりません。むしろ日米行政協定等からいつて、日本に対する危険なり、もしくはその危険のおそれがある場合には、両国政府で協議をするということになつております。そういう観点から日本の安全に対する保護はできるものと思つております。また大統領教書につきましても、日本と密接に関係のあるアメリカのことでありますから、そういう政治問題以外に、経済的の問題にしましても、聞くべきことがあればもちろん聞きますが、今いろいろ教書の内容等についても、こちらも調査をしておりますから、そのうち必要があれば聞くことにいたします。
  131. 帆足計

    ○帆足委員 この問題につきまして、西ヨーロツパはイギリスのみならず、フランスも非常に心配いたしまして、適当な平和のための合理的調整について、アメリカ当局ももう少し慎重であることが必要でないかということを主張していることが伝えられておりますが、日本政府として、また外務大臣として、ただいまの英国の憂慮するところは道理のあるところであるとお考えですか。私どもとしましては、英国の外務大臣が心配していることには道理があり、ちようど同じ立場に——もつと痛切な立場に置かれている日本としては、やはり慎重であつてほしいというのが、輿論であると思いますが、従つて外務大臣としてはアメリカに対して、この問題に対しては英国の輿論、西ヨーロッパの輿論には論理のあることと考えるから、慎重であつてもらいたいというのが、同時に日本国民の希望であり、一般の論調であるというふうに、注意なり考慮を喚起することが、私は必要であろうと思いますが、しかしそれはとにかくとしまして、外務大臣はただいまの英国の憂慮するところをもつともとお考えでしようか、またはそれは英国の立場であつて、あえて心配するに足らぬことであるというふうにお感じでありましようか。
  132. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 私は、英国その他が心配しておるという新聞報道もありますし、またそうでない新聞報道も見ております。遠くの新聞報道でありますから、電報で来たのだけでは理由等もはつきりいたしておりません。従つてそのほんとうの新聞が来てからよく見なければわからないと思いますが、国内でもまだ教書を非常にこまかに研究して輿論がこうなつている、ああなつているというほどにはなつていないと思います。もう少し事態の推移を見ないとわからないのじやないかと思います。
  133. 帆足計

    ○帆足委員 今次の問題につきましては、西ヨーロツパ諸国とアメリカとの間に、ある程度の了解事項があつたように新聞は伝えておりますし、また戦局の拡大、世界戦争への拡大は、全人類に被害を及ぼしますので、ある意味では超党派的な全国民、全人類の心配する課題でありますので、西ヨーロッパ諸国は国際連合を支持しつつ、なおアメリカに対して、戦局が鴨緑江を越えることを希望しないという厳重な条件をつけておるように、われわれは了解しておりますが、その真相はそういうふうに現在なつておるのでしようか、外務大臣はどのように情報をお認めになつておりますか。
  134. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 そういう点につきましては、いろいろの意見もありましようが、私の了解するところでは、いろいろの話合いがあるにしても、それは機密のことであつて、日本外務大臣がそれについて発表すべきものではないと考えております。
  135. 帆足計

    ○帆足委員 戦局が不幸にして鴨緑江を越えて満洲爆撃という事態になりますと、必然的に、安全保障という言葉の遊戯は別といたしまして、日本国土が非常な事態に追い込まれるのみでなく、全世界にこれが波及するおそれがあるいうことは周知の論理でございます。従いまして私は日本国民並びに日本政府としましては、英国並びに西ヨーロッパが憂慮しておることは、同時に日本国民が控え目ながらも、とにかく心の中では非常に心配しておることであるという程度のことは、アメリカに十分理解してもらう必要があると存じておりますが、外務大臣としては、そういうような事態は、非常に憂慮すべきことであるということを痛切にお考えにならないのでありましようか。もしお考えになるとするならば、もう独立国でありますから、英国ほどの発言でなくとも、インドのネールほど、また控え目の発言でありましても、やはり多少の日本国民の希望は、アメリカにこの際伝えておく必要があるのではないか。と申しますのは、大局から見まして、原爆と音響速度を越えた航空機の時代でありますから、先ほど外務大臣の言われたように、軽々しく世界戦争が起るとかいうことは私どもも思いませんし、一般の輿論もそう観察しておりません。しかしながら部分戦争の危険というものが一定の場所だけに犠牲を転嫁して、米ソ両国とも傷がつかないけれども、一定の部分——国境に近い部分だけが、すなわちあるわく内だけが、ちようど銭たむしでもわずらつたような、さんたんたる状況になるのが最近の戦争の特色である。それは正義がいずれの側にあろうとなかろうと、そういうことに関係なしに、一つの物理的エネルギーのはけ口として、そういう不幸な地帯に戦争が局限されるということが一般によくいわれておりますが、ちようど日本、朝鮮、台湾をつなぐ三角点は、立地的に見て非常に危険な場所であることは間違いないところであると思います。従いまして、私どもは自由諸国家に対して好意を持つていようと、なおかつ外交、軍事、戦略のあり方については、こういう点においては慎重であつてもらいたいということを、日本国民にその特殊の立地条件から相当強く啓蒙し、考慮を願うということが必要であろうと思いますが、英国の外務大臣すら心配して声を大にしておる問題に対し、日本外務大臣といたしまして、どのような所感を持たれるかということをお尋ねしたいと思います。
  136. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 英国の例を引いて、日本外務大臣はいかにも自主権がないように議論されるのは、はなはだ迷惑でありますが、これは総理もしばしば言つておられますように、満州に戦禍が及ぶというような場合には、行政協定からいつても日米間に十分の協議が行わるべきものである、そういうわけであります。ただ私どものわかりませんのは、これはまつたくよけいなことかもしれませんが、朝鮮の国境の向うからは、中共軍の飛行機が幾らでも朝鮮の方に入つて来てよろしい、国連軍の飛行機が朝鮮の国境を趣えて向うに行けば大戦争だ、これはどうも私はりくつがわからない。わからないのでありますが、そういう点については十分なる考慮を払われるものと期待しております。
  137. 栗山長次郎

    栗山委員長 帆足さんにちよつと御相談申したいのですが、中共貿易等に関しては、次の機会にお取上げを願いたい。きようは岡崎外相が間もなく退席しなければならぬような前約がありますので、調節をさせていただきます。このあと中山さん、戸叶さんが通告されておりますが、戸叶さんと中山さんにしていただきます。残られる政府委員は次のような方でありますから御用意を願いたいのでありますが、中村政務次官、大江大臣官房長、それから小島アジア局第一課長、ト部アジア局第三課長外務省の小田部経済局次長通産省の松尾通商局次長であります。大臣がおられる間に、御通告もありますので、それから中山さんが関連のようでございますから、戸叶さんと中山さんにいたします。戸叶さんどうですか。
  138. 戸叶里子

    戸叶委員 私は今の問題はまたあとの機会に聞くとして、先ほどの経済外交の問題について……。
  139. 栗山長次郎

    栗山委員長 それは次の機会にしてください。
  140. 中山マサ

    ○中山(マ)委員 今の問題の関連ですが……。
  141. 栗山長次郎

    栗山委員長 今、問題が展開しましたから御相談ですが、帆足さんの御意向を承ります。
  142. 帆足計

    ○帆足委員 議事進行について——突然発言を封ぜられては困りますが、御相談をして委員長の御要求通りにしたいと思います。それで私は一分だけ結論を申したいと思います。
  143. 栗山長次郎

    栗山委員長 それでは帆足君に発言を許します。
  144. 帆足計

    ○帆足委員 ただいま私が御質問申し上げましたことは、祖国の平和に関する問題でありますから、この意味では超党派的な問題であると思います。従いまして私は一野党としてではなしに、一日本国民として外務大臣に御質問申したわけでありますので、この問題は今後事態の推移とともに、非常に慎重な考慮を必要とする問題でありますから、平和という観点から、外務省当局においても諸般の情勢をよく御調査になりまして、詳細な資料などをいただきたいと存じます。その上において、またわれわれは意見を申し上げたいと思いますので、委員長の御要請もありましたので、次会に質問させていただきたいと思います。
  145. 中山マサ

    ○中山(マ)委員 私はアメリカの新大統領の御発言中、支那本土の沿岸を守る必要がないから、第七艦隊を引くというこの御発言に関して、いろいろと帆足委員のお話を聞いておりますと、あそこに逆上陸になつて御心配になるような御発言でございますが、私の思い出しますのは、三年前私が引揚げ問題で国連に行つて安保理事会の傍聴をしておりましたときに、朝鮮事変の起きた当初であつたかと思いますが、そのときに中共から伍大将という人が見えまして、アメリカが第七艦隊を支那海に入れたことは、アメリカの支那に対する侵略であると言つて、二時間にわたつて非常な演説をなすつたことを今思い出しておるのであります。ですから、英国やいろいろの方面で御心配のようでございますが、あの演説を思い出しますと、中共は、第七艦隊が引かれたということは、かえつて侵略をされないことになつて行くというふうに、そのときのいわゆる論旨から行けば考えていいのではないか。中共からまだ大した発言がないのに、私どもがそう取立てて心配する必要はないのではないかと私は考えておりますが、外務大臣はどういう御意見でございましようか。
  146. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 伍という人のお話は、私は知りませんでしたが、私もそう考えておりまして、今何もあわててこれではたいへんだ、たいへんだと言つて議論する段階には来たいない、こう考えております。
  147. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 外務大臣に質問いたします前に委員長に申し上げますが、アイゼンハウアー大統領の一般教書そのものの問題につきましては、日本国民として非常に重大な関心を持つのでありますから、外務大臣は外務大臣として、これはやはり吉田首相に一度出ていただきまして、本会議では十分つつ込んだお話も聞けないから、外務関係しておりますわれわれ委員として、つつ込んだいろいろなお話を聞きたい、こう思いますから、そういうふうにおとりはからいを願いたいと私は思います。
  148. 栗山長次郎

    栗山委員長 田中さんの御要求としてこれを伝えます。
  149. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 外務大臣に質問をいたします。この間北海道の上空をソ連の飛行機が侵犯したということについて、日米間に書簡が往復しておりますが、上空侵犯の何か具体的な事実があればここで承りたいと思います。そういうことは新聞にも載つておらぬようでありますが、外務委員としてお聞きしたい。
  150. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 その前に田中さんに申し上げますが、貧弱ではありますが、外務大臣ここにおりまして、外務委員会のことは十分やるつもりでおりまして、私で十分でないというのははなはだ残念であります。
  151. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 そういう意味ではないのです。誤解なさらぬように……。
  152. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 北海道の上空の飛行機の侵犯、これは具体的の証拠というものはありません。というのは、飛行機は飛んで帰つてしまいます。写真をとるにはあまり高度でありますから、ここにこういう証拠があるということは言えませんけれども、われわれの方の保安隊、また警察においても監視所はありますし、監視員もおります。こういう方面からちやんといつ幾日どこの上空ということで報告が参つております。それはしばしば報告が参つておる。またそのために現地の者を呼びまして、直接その報告によつて地図について調査もいたして確認をした結果であります。
  153. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 台湾の中立化をアメリカの方で放棄いたしました結果は、日本にとつてこれは非常に憂うべき事態を来すと思うのであります。大体岡崎外務大臣は、外交の中立策には反対だということを本会議で言われましたので、中立化を放棄することには御異議なかろうと思いますが、われわれとしては非常に困る。特に困りますのは、当面中国との貿易の問題でありますが、これはいずれあとから詳しくお尋ねする機会がありますけれども、とにかく台湾の中立化をアメリカが放棄した結果、やつと再開されそうな機運が見える中国との貿易に重大な支障を来すのじやないか。さらにまた現在代表団が向うに行つて交渉しております在華同胞の引揚げの問題につきましても、重大な支障を来すのじやないかと思いますが、外務大臣としてそういう点についてのお見込みはどうでしようか。
  154. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 いろいろ御質問でありますが、第一に私の中立問題については、もつと詳しくお話しないと十分徹底しないと思いますが、しかしそれは日本自体に関することでありまして、よその国のことについて中立化がよいか悪いかというようなことを議論しておるわけではありませんから、従つて台湾の中立化がなくなつたからけつこうだとも別に思つておりませんし、これはまつたく別問題であります。  そこで貿易がどうかということは、これは本土上陸とか、あるいは中共側から攻撃が来るとかなんとかいうようなことが将来ありますれば、これはどうかわかりませんけれども、まだそこまでの事態に行つておりませんから、通常の貿易は支障なくやつて行けるものと考えております。  引揚げの問題は、これは本会議でも私申し上げたのでありますが、かりに戦闘が行われておる最中でも、その戦闘区域における避難民等を救済するためには、停戦を行つたりして避難民を出すというような事例が、国際間にはしばしばあるのであります。従いましてかりに非常な困難な事態が起りましても、こういう人道的な引揚げ問題については、双方関係者の了解を得て、これを無事に行い得るものと私どもは確信しております。
  155. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 日本が中立外交をとらないということと、台湾海峡における中立化を放棄したということは、別問題だとおつしやいますが、私は本質的には相通じておると思います。台湾海峡の中立化を放棄するということは、要するに、台湾政権と北京政権との間の敵対関係を裸のままにするということでございます。つまり自由国家群に属すると見られる台湾政権が、共産圏に属する現在の新中国との間に容赦のない対立をする、そういうようにアメリカが決したのですから、私は二つの問題は一つだと思うのでありますが、こういうふうになつ日本の運命がだんだん狭まつて来る。北においては上空侵犯の問題に関してソ連に警告を発し、アメリカの武力を背景として強硬な対ソ外交をやろうとしておる。それから台湾海峡の中立化が放棄されて、その結果が日本に及ぶということについても、やはり国民が非常に神経質に心配しておることは明らかであります。輿論の機関であります新聞の論調や記事は、みんなそのことを示しております。ただ外務大臣だけが割にのんきにしておられますが、私どもは国民の代表といたしまして、日夜このことについては心配しておるのでありますが、私どもは社会党左派として、岡崎外交の方向とは逆に、やはり日本が米ソ両陣営の間に立つて、自主中立の立場をとつております。そして日本の運命を開拓しなければならない、こう考えておるのでありますが、それについては、われわれとしましては、やはり早くソ連及び中国と平和関係を回復する。そうして特に北京政府、中華人民共和国政府を中国の正統なる政権として、一日も早く承認するという方向に努力しなければならぬと思う。岡崎外務大臣はおそらく私の質問に対しては、ノーと答えられるとは思いますけれども、もう一度ここで念のために申し上げておきますが、外務大臣としては、ソ連や、北京政権の支配下にあります中国に対して、早く国交を再開するというような努力を今後おやりになるのかならないのか。このことについてひとつ責任ある御答弁をお聞きしたいと思います。
  156. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 一応お断りしておきますが、ただいま北海道上空の問題について、対ソ強硬外交をとつておるというお話でありますが、これは非常な認識の間違いであり、もしそういうふうにあなたがおつしやるのが伝わつて、国民が誤解をするといけませんから申しますが、それを逆に言えば、どこの国がどこの軍用機をもつて日本の上空を飛んでも默つているということになります。日本の上空は日本の領空権の及ぶところでありまして、これを外国の軍用機がかつてに侵すことは相ならぬと申すのは、あたりまえなことでありまして、何も対ソ強硬外交でもなければ、どこの国に対する強硬外交でもない、ごく普通のことを言つておるのでありますから、誤解のないようにお願いしたい。  それからソ連や中共と国交を回復するということになれば、すべては円満に解決するというようなお話でありますが、それならばアメリカとソ連は国交を開いて大使を交換しております。しかしそれでもうまく行かないのであります。ただ、いまさら国交断絶ということもわざとらしいので、前から開いておるからそのままにしておるような状況だと思いますが、要するに国交を回復するということが解決の全部じやないのであります。その国交を回復するにしても、将来の関係がうまく行くような地盤がなければ意味のないことであります。そこでわれわれは始終言つておるのでありまして、たとえば引揚げの問題にしても、あるいはその他いろいろの点において、国交を回復できるようなかつこうに相手方もなつてくれなければ、ただ国交回復といつてみたところで始まらない。しかしわれわれとしては、いつも申す通り、できれば全面的な講和が一番いいのであつて、できないからできる国とやつておるのでありますから、ほかの国に対してもそういう努力はもちろんいたします。
  157. 栗山長次郎

    栗山委員長 外務大臣に対する質問は次の機会にお譲りを願いまして、経済外交の専門家がそろつておられますから、貿易経済問題についての御質問があれば、それらの方に質問していただきたいと存じます。
  158. 安東義良

    安東委員 松尾次長にお伺いいたしたい。先ほど来東南アジア貿易問題に関連して、ポンド建とドル建の問題があつたわけでありますが、あなたはおそらくこういう事実をよく御存じだろうと思う。それは問題はインドネシアであります。今日インドネシアにおいて、インドネシアからいえば、日本との関係においては輸入超過のために、またここがドル建であるために、日本からの輸入を制限しようとしている。なかなかライセンスをよこさないというために、雑貨あるいは陶磁器等の輸出が非常に困難になつている。こういうことは当然御存じだと思います。ところでそれまでのいきさつを聞いてみますと、現在インドネシアの市場には、繊維類あるいは陶磁器も入つている。それが香港経由あるいはシンガポール経由で入つている。しかも日本との関係においては、それはポンド建で決済している。言いかえれば日本の全体の勘定からいえば、ポンドの貿易なんです。そうして香港の商人あるいはインドネシアの商人が、中間で操作して利益を收めている。そういう事実はおそらく通産省でもわかつておつたろうと思う。そうしてみるならば、その間に中間商人を動かして、そうして彼らに与える利益もこれは少からざるものがあつたろうと思いますが、それよりも今のインドネシアにある程度のポンド建を認めさえすれば、インドネシアと日本との間に直結ができる、そういう方法が当然あるわけである。あるにもかかわらず、先ほど外務大臣の説明では、ポンドの弱勢のために貿易関係が不利だからやらなかつたというのでありますけれども、現実の問題としてはポンド建さえすれば行くという事実がすでにある。それを默つて見ておつたということは、私は通産省なりあるいは大蔵省の怠慢といわなければならぬと思う。この点について御見解を承りたいと思う。
  159. 松尾泰一郎

    ○松尾説明員 今御指摘のインドネシアに対して、香港あるいはシンガポールから、かなりの物が出て参つているということでありますが、これは確かに事実であります。しかしだからといつて、香港なりシンガポールの中間商人が特にもうけたことを非難するにも当らないのではないか。香港にしてもシンガポールにしても中継港でありまして、昔からもそういうことはかなり行われたことであります。結局どつちが便宜か、どつちが取引がしよいかということで行われて来たのでありまして、何がしかそういう中継港を通して貿易が行われることを非難し、また否定することは、少し潔癖過ぎるのではないかとわれわれは思うわけであります。ただ昨年の秋あるいはその少し前ごろに例のポンド弱勢の問題が現われまして、それで少し中継地域を通過する貿易がふえたということであり、それがやや不健全ではなかつたろうか。インドネシアあるいはシヤムとの間も直接オープン・アカウントの貿易なつておりますが、中継港を通す貿易があまり多いということは、すべての貿易に影響を及ぼすのではないかということで、一時集計もし、若干の調整もやつてみたというわけでありまして、現在のところはその数字も正常の段階に復帰しているとわれわれは見ております。ポンドの劣勢から来るそういう異常な貿易は大体とまつておつて、正常な量において中継地域を通る貿易が行われているので、これはいいとか悪いとかいう問題ではなくて、当然の問題として是認すべきではなかろうかと思つております。それから今言われましたインドネシアとの貿易の根本的な問題なのでありますが、なぜポンドによる貿易を認めないかということであります。外務省の小田部次長もおられますが、実はインドネシアとの通商協定を昨年やりましたときにも、われわれも事務当局としていろいろ慎重に研究してみたわけであります。しかしあの当時としてポンドの累積も非常な勢いで進んで参つており、またポンドのデヴアリユエーシヨンの心配も考えられた。それと、本来インドネシアは非常な輸出超過国ではある。従つてその輸出超過国をかりにスターリング地域に加えても、スターリング地域全体と日本との貿易は決して改善はしない。逆に均衡貿易という立場に立つ限りは、本来のスターリング地域との貿易がすべて影響を受るのではないかという判断もいたしまして、前からずつととつておりましたオープン・アカウントの方式を採用して今日に至つておる。オープン・アカウントの方式を採用することになりますと、勢い例外的なそういう措置を認めることが非常にむずかしくなるということなのでありますが、最近若干ポンド決済というような要求が出て参つております。最近のポンドの一般の情勢はこういうことでもありますので、われわれ通産省としては、あまり大幅なそういう例外的な措置をえるわけにも行かぬかもしれません。これはオープン・アカウントの原則というか、建前もありますので、それをくずすということには行かないかもしれませんが、ある程度ケース・バイ・ケースの考え方をして、市場開拓といいますか、確保するということはやつて行きたい、こういうふうに考えております。
  160. 安東義良

    安東委員 実は問題はそこにあると思う。私は香港あるいはシンガポールの中継ぎ貿易そのものが悪いというのでも何でもない。ある程度の貿易としてはさしつかえない。できれば日本貿易伸張のためにこれを利用することはけつこうなことだ。しかしながら、問題は、そのためにインドネシアの市場を失うというようなばかげた政策はとるなということなんです。なるほどオープン・アカウントをやつたら困難でありましよう。しかしながらそのオープン・アカウントでどこまででもやろうとしているその態度自身について反省しなければならぬということを言つている。もしあなたが言われるように、ケース・バイ・ケースでやつて行こうというなら、何もやらぬと大して違わないと思う。それならば今までわれわれが外務大臣に対し、またさきには通商局長に対して、この問題について真剣に考えてくれと言つている必要はごうまつもない。私はそう思う。それでは何ら改善になりません。現実に日本雑貨あるいは陶磁器等が、もしその範囲でもポンド建が認められるならば、インドネシア政府はライセンスを与えるといつておる。そしてそれを与えないがために、結局日本の重要な市場が失われて行くということは、われわれとしてだまつておれない。しかも香港においては十二月一日からこの中継ぎ貿易を禁止しております。今度はシンガポールよりほかはな  いはずだ。この香港の措置がいつまで続くかそれは知りません。そういうふうで、いつまでもしやくし定規に、一ぺんきめたことはこうだというところに、官僚的な通商政策があると私は思う。それを反省してもらいたいと言つているのです。この点については真剣な御考慮を願いたいと思う。なお通産大臣にも出ていただきまして、もう一ぺん私は質問を繰返したいと思います。
  161. 栗山長次郎

    栗山委員長 松尾さん、考え直してくれますか。
  162. 松尾泰一郎

    ○松尾説明員 ただいまの問題は、実は事務当局としては事務的に許されたるわく内で仕事をしておりますので……。今の安東先生の御意見によれば、インドネシアは大体ポンド地域の中に入れてしまつた方がいいのではないかという御意見とも思うのですが……。
  163. 安東義良

    安東委員 そういうわけではない。そういう意味で言つているのではない。雑貨もしくは陶磁器等においてはそういうものをやつたらどうだ。全面的におやりなさいと言つているわけではありません。
  164. 松尾泰一郎

    ○松尾説明員 従いまして、かなり大幅に認めたらどうかという問題かと思うのです。向う側が要求しているということでありますが、これは外務省もおられますが、まだただいまのところ、正式にそういう申出は一回もあつたことはございません。ただわれわれ輸出許可をやつている立場上、向うの商社から、ひとつそういう許可ができないものだろうかという相談をときどき受けるわけであります。そういう観点から、通産省としては、ある程度そういうことも認めて行つたらどうであろうかということでありまして、そういう根本的な問題になりますと、われわれ通産省だけでも参りません。大蔵省、外務省その他全部関係がありますので、ひとつわれわれとしては十分研究させていただきます。
  165. 安東義良

    安東委員 実は通産省につつかかつたような形になつて、はなはだ不本意でありますが、これは通産省のお立場もいろいろあるでしよう。しかしながら私が言つているのは、現に現地において、通産省から派遣しておられる人のいろいろな苦心の結果、各方面の情報を集め、そしてまたその意見に基いていろいろ彼らが行動した結果として、実はこういうことがありましたというざつくばらんな話なのです。国を憂うるから言つているのだろうと思う。そうして今の、ある程度までポンド建を認める。たとえば全貿易の半分というのも一つの方法であろうし、原料品がドル地域から来るものは別として、そうでない、原料品をポンド地域もしくは国内でやつているものについては、インドネシアとの貿易ではポンド建をやつていいのじやないかという意見も考えたりして、いろいろと苦心しておられる。そういう意見を具申するけれども、東京では一向それが認めてもらえないと嘆いておられる。実際打開しようと思つて苦心すれば、そうだろうと思う。私はよくわかる。その障害は何かと聞くと、これはやはり大蔵省がむずかしいようであるという話である。ところが今のあなたのお話を伺うと、むずかしいのはひとり大蔵省ばかりでない。重要なる責任を持つておられるあなた方の心構えがまだできていない。もしそれ外務省経済局自体がそのような考えであるならば、これは経済局自体の人々が大いに反省してもらわぬと困る。その点について小田部君の御意見を承りたい。
  166. 小田部謙一

    ○小田部説明員 松尾君の御説明になりました通り、かつて去年インドネシアとの貿易を結びましたときは、ポンドの累積とかいうようなことがございまして、それでああいう協定なつたのでございますが、最近の状況を見まわしますと、ポンドの累積ということも一時的の現象であつて、そうでないという話でありまして、現在のところ、日本と英国との間にポンドの問題に関しまして話合いが行われております。このポンドで受取るとか受取らないとかいうことは、インドネシアと日本だけの問題ではなくて、これはある程度英国の方の了解を受けなければならぬ、そういうようなこともありますので、その問題もいろいろな見地から検討しております。それでこの点に関しましては、今安東委員がおつしやいましたけれども、大蔵省の方も最近は非常に貿易拡張、ことに東南アジア貿易拡張ということにも努力して来ました。通産省はもとよりのことでございますが、大蔵省も考えがかわつて来ておりますので、いずれは日英間の話の進行するにつれまして、その面のことはもつと改善されて行く、こういうことになると思います。
  167. 安東義良

    安東委員 ただいまの御説明でちよつと私はふに落ちぬので、説明していただきたいのですが、インドネシアとの貿易をやるのに、イギリスの同意を得なければ、ポンド建を認められないという理由はどこにあるのか、もう少し技術的な問題があるのか、お伺いしたいと思います。
  168. 小田部謙一

    ○小田部説明員 英国の為替管理法で、もしポンドでなくて、ほかの貨幣でありますれば、英国と何も相談をするとかなんとかいうことはございませんが、ポンドでやるということに関しては、日本みたいな双務勘定国というのに属します国が、同じように双務勘定国に属します国から、スターリングをとるとかいうようなことになつたら、英本国としましては、英帝国全体としてスターリングは一体どこにどのように流れるかということに関しては非常な関心を持つているので、単にインドネシアが偶然に持つているスターリングを日本側に払う、それだけではなくて、やはり英本国としては、日本なりどこなりにスターリングがどういうふうに流れるかということについて非常な興味を持ちます。もちろん日本が振替勘定国というのに入りまして、まつたくスターリング地域の中に入りますれば、スターリングを受取ることも払うことも自由でございますが、現在みたいに、日本が双務勘定国でありますと、日本はもともと英国と支払協定の話をするときに、ドルを捨てたかわりに、スターリングをそうためたくないという交渉をしておりました関係もありまして、スターリングを受取るということに関しては、やはり英国側の了解を受けなければならぬ、こういうことであります。スターリングでなく、その他の貨幣でやるなら、英本国に何も相談する必要はありません。
  169. 安東義良

    安東委員 どうもやはりお話を承るというと、私は過去の因縁にとらわれ過ぎておるという感じを持つ。このスターリングを受取る、やりたくないという考えで、無理してイギリスといろいろ協定をやつておるからして、それでイギリス側はといえば、そのスターリングの行方を突きとめたいという気持からいろいろ文句もあるだろう。そこで今後イギリスと協定をやる場合にも、インドネシアのことを考慮に入れて話をするというふうにでもしておかぬと、イギリスの感情も悪くなる、やりにくくなるというような御考慮じやないかと今の御説明で私は了解するのですが、そういう考え方じやまだこれは困ると思うのです。それはなるほどイギリスのスターリング地域における経済勢力というものは強い。しかしインドネシアは今独立国になろうとしておる。そうして今おつしやるように、インドネシア自身は両建の政策をとつてやつておる。そうしてもしイギリスと問題が起るならば、それはインドネシアとイギリスとの問題にすればいいのじやないか。しかもインドネシアそれ自体は、もしポンド建ならば、日本雑貨類等についてはライセンスをおろそうと言つている、それならばおろしていいと言つている。それは向うのことだ。こちらがただいたずらにイギリスとの過去のいきさつにとらわれて、相かわらずイギリスの考慮ばかりのみ考えているというような行き方では、私は南方方面貿易振興なんということは、これは困難だと思います。決して無視しようというのではありません。その点は努力してもらいたいのでありますけれども、しかしながら英国との過去の協定で、しかも直接どうこうしておるのじやないのに、新しく地歩を回復しようというときに、これにとらわれるというようなことは、観念的にも私はよほどどうかと思うのです。もうすでに日本独立国なつたのでありますから、もはやアメリカの総司令部の支配を受けておるのじやありません。貿易政策についてはやはり自主的精神を持つてもらいたい。外務省の諸君もその点についてはこの際大いに考えていただきたいと思います。私は、大蔵省の役人がわからなくて、金勘定ばかりで行つとるから、みすみす大事な市場も失いつつあるかと思つて心配しておつたのでありますが、今日はからずも重大なる責任を持つておられる御両氏から伺つて、通産省においても、外務省においても、いまだその認識において不足したものがある。一領事の報告なんというものは、取るに足らぬというような間違つた考えではいけない。やはりその間に真剣な考慮をもつて打開の道を考えるという熱意を持つていただきたいということを重ねてここに要望しておきます。
  170. 栗山長次郎

    栗山委員長 委員長から外務省に対して申し添えます。それはただいまのポンドによる支払い、この件について関係者は外務省以外に、通産省、大蔵省があることがはつきりいたしておりますので、われわれは外務当局を直接の相手方といたします。外務当局において、他の関係二省の当局とよく御協議の上、御協議の結果につき当委員会報告されんことを望みます。
  171. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 話は違いますが、アジア第三課長が見えておりますからお伺いします。一月の十三日のことだと思いますが、インドネシアの留学生デツキー君その他がタイ国の留学生とけんかをしたそうであります。これは学生同士のよくありがちなけんかだつたそうですが、その後に至つて、十六日、タイ国で国連軍の軍籍のある人が三、四名仕返しにやつて来て、このインドネシアの留学生デツキー君その他に傷害を加えたというような事件が起つたそうであります。この問題は、その後両国の外交官の間で何か折衝をして、外務省関係されて、大体解決されたと聞いておりますけれども、今後留学生が東南アジア各地から日本に参るだろうと思いますが、こういう問題が留学生を送つておる本国に伝えられて、非常に大きな問題になるというふうなことになつて、留学生がこちらに参りますのに支障を来すということは、日本として非常に遺憾と思います。実はこのことがパナ通信によりましてインドネシアにもタイ国にも伝えられまして、インドネシアの方では文部大臣から心配の電報が来たというぐらい、向うで非常に大きな問題になつた。しかもここにタイ国の人で国連軍の軍籍のある人が関係をしておるということが、非常に問題を複雑にしておるわけでありますが、こういうことについての経過がわかつておりましたら、関係課長からお話を伺いたいと思います。
  172. 卜部敏男

    ○卜部説明員 この事件がありました十三日のけんかのことは、これは何か自分の顔を見るとき少し軽蔑したような顔をしていたというふうなことから、けんかが始まつたようであります。きわめてありがちの、家庭内でも兄弟がけんかするような程度のものであつたようでございます。ところがそのときに——これは実はアジア三課はタイの方を受持つておりませんで、インドネシアの方の関係を見ておりますので、インドネシア総領事館のラトウメテンという領事が私のところに来ての報告ですが、そのときに、どうもタイの方が少し歩が悪かつたらしいのです。そこで負けたわけなんでしようが、そのときの、何というのですか、けんかの仲裁というのがうまく行つてなかつたようであります。と申しますのは、そういうふうなことでけんかをしてもらつては困るということを、あすこの管理をしておる人が申しましたのに対して、インドネシアの方は、たしかただちに陳謝をしたらしい。ところがその陳謝というのは、その日本人の管理者に対して、たいへんお騒がせて申訳なかつたというふうなことの陳謝をいたしまして、相手方に対して——なぐつたかどうかその辺のところ詳しいことは知りませんけれども、なぐつた方の相手方に対して、さつき済まなかつたというふうなあいさつがなかつたわけであります。そこでタイの方が根を持つて、同じ年ごろであるところのタイの兵隊を——兵隊かどうかはつきりわかりません、一応私の聞いておるのは兵隊でありますがをひつぱつて来て、それで結局インドネシアの方に仕返しをしたということであります。それで私も非常にその点につきましては心配いたしましたのではありますが、この問題は結局双方があやまりまして、それからこちらのタイの大使館及びインドネシアの総領事館はともにこのことを心配いたしまして、たしか事件が終つたすぐあとにインドネシア側から——五反田の方で近いわかでありますが、総領事館とタイの大使館とはすぐ隣合つておりますので、そこへかけつけて行つて話をして、両国の間では単なる学生のけんかというぐらいの、しかもきわめて簡単なことのけんかということで、了解がついておるようであります。それからなおこの最後の解決は、タイ国側も、それからインドネシア側も、ともにお互いに陳謝をするとともに、今後うまくやつて行こうじやないかということで、現在のところ両国の学生はたいへん仲よくやつているというふうに、私は報告を受けておる次第でございます。この問題は伝えられ方いかんによりましては、非常に大きな反響を呼ぶわけでありまして、たいへん心配したのでありますが、無事に解決がつきましたので、ただちにジヤカルタ及びバンコツクに電報を打ちまして、それぞれ、ジヤカルタでは総領事、タイでは大使館の方から先方の方に話をいたしまして、無事に解決をしているということを伝えてございます。従いまして現在のところ、私の知つております限りは、雨降つて地固まると申しますか、かえつて前よりはうまく行つているというふうに聞いております。
  173. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 私はそのデツキー君らからも話を聞いたのでありますが、当人たちは必ずしもまだ釈然としない。しかしこのことをもうこれ以上追究はいたしませんが、今後留学生がたくさん来るのでありますし、また来てもらわなければなりません。外務省の方でも来年の予算には計上してあるようでありますが、私聞きましたところによりますと、インドネシアとしては一九五二年の分としまして六十人ほど出すことになつておつて、現に十名来ておる。その十名がインドネシアのそれぞれの大学で相当の課程を経て来ておる人であり、日本語さえ一応満足に話せるようになれば、東京大学その他日本の一流大学に入学して、十分その学科の点ではついて行けるということで、留学を希望しておるようですが、なかなかそれがうまく行かぬそうであります。なおことしは二百五十名くらい新たによこしたい。これはインドネシア政府の方針で内定しておるそうですが、そういうことでもありますから、ひとつ留学生が異郷に来て愉快に、非常に能率的に勉強のできますように、外務省において特に御配慮を願いたいという希望を申し上げておきます。
  174. 栗山長次郎

    栗山委員長 それでは次会は明後二月六日の午前十時から開くことにいたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後三時四十四分散会