○岡崎国務大臣 賠償につきましては新聞にもしばしば出ておりまして、その中にはいろいろの報道もありますが、正確なものもかなり入つておりまして、御承知の部分がたくさんあると思います。要するに、フイリピンとの間、その他インドネシアとかビルマ、仏印等いろいろありますが、政府としては、できるだけ早く賠償問題を解決するように誠意をもつてこれに臨み、かつ、もしどこかの国と話合いがつけば、他の国との話合いがまだ成立しなくても、ついた方から実行して行くつもりで話をいたしております。いろいろ国情の相違もあり、また国内の政治的な
関係もありいたしまして、進んでいるところと進んでいないところがあるのはもちろんでありますが、幸いにしてフイリピンとの間にはいろいろ了解が進んで来ておりまして、御承知のように沈船の
調査はすでにマニラ湾を終りまして、ただいまセブ島に向つております。この沈船の
調査は、フイリピン側もいろいろ配慮をしてくれましたので、非常に円満に進んでおります。そこで、フイリピン側としましては、沈船の
調査のみならず、
調査が済んだら引揚げの方も
実施してもらいた
いという強い希望があります。これはなぜかと申しますと、フィリピン
方面では台風が毎年五月以後からやつて来まして、そのために、かりに引揚げをやるとしましても、台風の期間、つまり夏の間はほとんど実行が困難な事情にありますので、もし早く引揚げをやらなければ、ことし非常に押し詰まつてからでなければ
実施ができない。つまり相当の期間延びてしまうという点があるわけであります。そこでわれわれとしては賠償の
関係におきましては、沈船引揚げはその一部でありまして、将来これを賠償の中に繰上げることにして話合いがつきますならば、沈船引揚げも
実施してもいいという考えで話合いをいたしております、この話合いがどうなりますかは別でありますが、ただ平和
条約の
関係からいいますと、平和
条約の批准が終つて、その後に賠償の問題は正式には取上げられるわけであります。そこで平和
条約の批准の前に沈船引揚げを賠償の一部として行うということになれば、やはり
協定を結ぶのみならず、その
協定は少くとも
日本の政府としては、国会の承認がなければできないという建前をとつておりますので、もし今後にそういう
協定ができるとすれば——あるいは平和
条約の批准の方が先に進んでしまえば別でありますが、そうでない場合に
協定がかりにできたとしましても、国会の承認を得た上で、これは
実施すべきものである、こう考えております。しかしこれは
協定ができるかどうかまだ今話合い中でありますから、はつきりしたことは申し上げられません。政府としてはむろんそういう
協定の前に平和
条約の批准が行われて、その後に沈船引揚げということが賠償の一部としてできれば、これが一番穏当な手段であろうと思つておりますが、しかし国会の承認があれば、あえてそういう
法律上の
関係にこだわらずに、実際上両国間の親善を増すという
意味からいつてやつてもさしつかえない、一に国会の意向による、こう考えております。しかし外交演説でも申しました通り、
日本の役務によつてフイリピンの
経済回復を行い得る範囲というものは、まだかなり広いものでありまして、その他にもいろいろ問題ががあると思います。その
方面のことは今月中にもフイリピン側から相当数の
代表が参りますので、それと話合いをして具体的な研究を進める。これは沈船引揚げというような簡単な一つの
事項でありませんから、かなり時日もかかると思いますが、話合いができますれば、これまた国会に提出する
予定であります。その他の国々についてもいろいろ話合いをいたしております。いたしておりますが、まだ具体的にここで御
報告し得るような段階には
なつておりません。役務
関係、ことに
経済開発等につきましていろいろ要求というか、希望もあるような点がありますので、今後その
方面の専門である人々を随時出しまして、実際どういう点でどういう
協力ができるかという面を実際的に研究を進め、それで解決の方に向つて行こう、こういう考えでやつております。以上が大体の御
報告であります。