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1952-12-11 第15回国会 衆議院 外務委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年十二月十一日(木曜日)     午前十時四十二分開議  出席委員    委員長 栗山長次郎君    理事 池田正之輔君 理事 谷川  昇君    理事 松本 瀧藏君 理事 加藤 勘十君       今村 忠助君    植原悦二郎君       大橋 武夫君    木村 武雄君       近藤 鶴代君    中山 マサ君       西川 貞一君    松田竹千代君       森下 國雄君    安東 義良君       楠山義太郎君    並木 芳雄君       中村 高一君    福田 昌子君       帆足  計君    黒田 寿男君  出席国務大臣         国 務 大 臣 木村篤太郎君  出席政府委員         法制局長官   佐藤 達夫君         法制局次長   林  修三君         総理府事務官         (調達庁不動産         部長)     川田 三郎君         保安政務次官  岡田 五郎君         保安庁次長   増原 恵吉君         外務政務次官  中村 幸八君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君         外務事務官         (国際協力局         長)      伊関佑二郎君         運輸事務官         (航空局長)  荒木茂久二君  委員外出席者         専  門  員 佐藤 敏人君         専  門  員 村瀬 忠夫君     ————————————— 十二月十日  海外抑留胞引揚促進等に関する請願(森田重  次郎君外一名紹介)(第五四三号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  日本国アメリカ合衆国との間の民間航空運送  協定締結について承認を求めるの件(条約第  二号)  国際情勢等に関する件     —————————————
  2. 栗山長次郎

    栗山委員長 ただいまから外務委員会を開きます。  日本国アメリカ合衆国との間の民間航空運送協定締結について承認を求めるの件を議題といたします。本件に関する質疑を許します。
  3. 並木芳雄

    並木委員 この航空協定平和条約の第十三条に、「一又は二以上の連合国要請があつたときはすみやかに、当該連合国交渉開始するものとする。」こうあります。これに基いてやられたことと思いますが、アメリカのほかに目下要請があつた国々、それからそれとの話合いの進行状態などをお尋ねいたします。
  4. 下田武三

    下田政府委員 仰せ通り、この日米航空協定は、平和条約第十三条の規定によりまして、米国日本との間に話がありまして妥結を見たものであります。他の国との航空協定関係でありますが、目下折衝中の航空協定といたしましては、イギリスとの航空協定、それからオランダフランス、それからスカンジナヴイア三国すなわちスエーデンノールウエーデンマーク、それからまだ立入つた折衝にはなつておりませんが、カナダとも折衝を始める予定であります。また今回提出いたしました日米航空協定との比較をなし得るほどにほかのものは固まつておりませんので、比較の点はいずれ固まりましてから申し上げたいと思います。
  5. 並木芳雄

    並木委員 それについて私この際お尋ねしておきたいのですが、平和条約の第十二条では、「貿易海運その他の通商関係を安定した且つ友好的な基礎の上におくために、条約又は協定締結する」とございます。私は航空だけが貿易海運と切り離されて取扱われておるということに、ちよつと理由を発見するに苦しむのですが、一括した通商条約というものの中に航空が含まれないで、貿易海運と切り離されておるということの説明は、どういうふうになさるべきものであるか、専門的立場からひとつお願いいたします。
  6. 下田武三

    下田政府委員 国際民間航空につきましては、ちよつと普通の通商航海条約性質も問題の実質も違いますので、あたかも、平和条約の例で申しますと、第九条に漁業もやはり切り離して特別の協定を予想しておりますが、それと同じ意味で、多少問題の性質が違うので、第十二条とは別に第十三条というものをつくつたものだと存じます。
  7. 並木芳雄

    並木委員 将来の問題としては、航空とか漁業というものは、やはり一つの通商条約の中に含まれる傾向にあるものか、あるいは通商条約そのものが細分化されて、各専門別にわかれて行く傾向にあるのかどうか、国際間の状況をひとつ。
  8. 下田武三

    下田政府委員 今の仰せのあとの方の傾向、つまり昔は通商航海条約で総括的に規定しておりましたいろいろな事項が、細分化されて行く傾向にあるように、最近の事象で見受けられます。たとえて申しますと、航空のほかにも、租税についての最恵国待遇とか、あるいは一定租税の内国民待遇とか、これは通商航海条約規定があつただけでございますが、それが租税だけ切り離して特別の協定ができつつあるようで、大体昔は通商航海条約規定されておりました事項が、細分化されて、独立協定なつて来ているように思います。
  9. 栗山長次郎

    栗山委員長 並木君のお許しを得てお諮りいたします。それはかねて松田委員から御要求があり、委員会一致の要望をもつて政府要請いたしておきました、海外公館からの情報でございます、その第一集が届いておりますので、委員にだけ配付をすることにいたします。部外秘なつておりますので、そのおつもりでお取扱いを願います。
  10. 並木芳雄

  11. 下田武三

    下田政府委員 目下のところ相当進んでおりますのは、アメリカだけでございます。
  12. 並木芳雄

    並木委員 さきの条約局長の話ですと、細分化されて行くという傾向があるとのことでございますが、そうすると、支払協定なども細分化された一種と見ていいかどうか。日英支払協定が非常に問題になつておりますが、これはどうなつておるか伺いたい。
  13. 下田武三

    下田政府委員 支払協定は、これはまた全然カテゴリーの違つた問題だと存じます。ただ一定の条件を備えた場合に、為替許可とか取締り等の点について最恵国待遇を与えるという面におきましては、通商航海条約との関連を持つて参りますけれども、現在いわゆる支払協定と呼ばれておりますのは、各国とも政府担当機関におきまして、為替許可を与えるという権限を、法律なりその国の法制上の根拠によりまして、行政当局が持つておりますですから、別に何も外国協定を結ぶ——ほんとう意味条約を結んできめる必要はないものであります。ただ一定の行政府方針相手国が知らないことには、円滑に貿易が行われないというような見地から、大体の行政当局見込みを通知し合うと申しますか、そういうのがいわゆる支払協定実体でございます。また貿易協定もまさにそうであります。輸入許可を与えるとかなんとかいうことは、通商当局権限内の事項であります。個々許可を与える、与えないをきめて行けばいいのですけれども、貿易を円滑ならしめるためには、大体これこれのものはこれだけ許可しようというような方針を立てまして、それを相互に通知し合うというのが、貿易協定支払協定実体でございますので、プリンシフルの問題として、為替許可第三国の人間に対して与えられる為替許可と同じ取扱いをしろというような原則的な問題は、通商航海条約の問題になつて来ますけれども、個々許可を与えるか与えないか、それを集積して、どれくらいの限度で行うかという点をきめるのが、支払協定貿易協定ですから、全然性質が違う問題だと考えます。
  14. 並木芳雄

    並木委員 今度の日英支払協定はどうなつておりますか。
  15. 下田武三

    下田政府委員 これは私実は深く関係しておりませんで、経済局の方でやつておりますが、とりあえず現行の協定を延長するというラインで折衝しておるように聞いております。
  16. 並木芳雄

    並木委員 航空の方は割にスムースに行つたのですけれども、通商条約の方がまだ手間取つておるという原因はどこにあるのですか、日米通商条約締結見通し、また問題になつている点はどういう点ですか。
  17. 下田武三

    下田政府委員 いろいろ原因がございますが、第二次大戦を経過いたしまして、通商航海条約性質が非常に違つて来ております。日本といたしましては、一番最初アメリカ締結するこの条約は、慎重に研究、考慮した上でとりきめたいと思います。またこの条約ができますと、これが先例になりますので、その意味からも、最初条約は慎重にやらなければならぬという見地から、拙速よりも慎重という態度で向つております。これは日本だけでなく、たとえて申しますと、インドのごときは、アメリカと五年にわたつて通商航海条約交渉をしております。インド独立早々のことであり、第二次大戦アメリカとの通商条約が非常に重きをなしまして慎重に構えており、これなどは五年かかつてまだまとまらないような状態でありますが、日本もやはり最初条約でございますので、慎重に構えております。しかしながら割合に近い将来に妥結し得るのではないかと存じております。
  18. 並木芳雄

    並木委員 大体いつごろになる見込みですか。
  19. 下田武三

    下田政府委員 本年内は無理だと思いますが、来年の割合早い時期に妥結し得るのではないかと思います。
  20. 並木芳雄

    並木委員 この航空研究をするために、アメリカ英国と結んだ条約の書類をいただいたのですが、それをまだしさいに検討しておる時間がございません。ただちよつと見たところでは、アメリカ英国との間では、両国間の直接の航空路というような、直接という文字が使つてある。ところが日本の場合にはそれが使つてないというふうで、読み出しから想像して、内容にかなりの違いがあるのではないかと存じます。そこで私ども検討する前に、条約局長からアメリカ英国との間で結ばれている航空協定と、それから今度日本アメリカとの間で結ばれる協定との間のおもなる相違点を、この際説明しておいてもらいたいと思います。
  21. 下田武三

    下田政府委員 ちよつと一口に申し上げかねますので、おわかりになりやすいように比較表のごときものを今準備しておりますので、いずれ文書で後刻御提出したいと思つております。
  22. 栗山長次郎

    栗山委員長 並木君それでよろしゆうございますか。
  23. 並木芳雄

    並木委員 わかりました。  今度の航空協定に基いて、日本外国航空網というものを拡充して行くことになると思いますが、それに対して政府考えておる日本航空拡充強化計画案を示していただきたいと思います。
  24. 下田武三

    下田政府委員 ただいま航空局長がすぐ参りますので、航空局長からお答え願つた方が適当と存じますから、後刻にお願いしたいと思います。
  25. 並木芳雄

    並木委員 そうすると、飛行機製造計画とか修理計画などについても、答弁できる人がおりましたら尋ねたいのです。
  26. 栗山長次郎

    栗山委員長 どなたか飛行機製造能力を説明できる人がいますか。——では並木君、それは後刻に譲つてください。
  27. 並木芳雄

    並木委員 それでは外務省にお尋ねしておきますが、航空路が拡充して行きますと、船舶によるもののほかに利用者もずいぶんふえて来ると思います。その点について移民の問題が今あげられるのでありますが、移民の方はどうなつているか。それからアメリカを中心とした留学生の問題がありますし、また外国から日本に来る留学生の問題があります。そういうものに対して政府はどのように措置をし、力を入れているか。できれば二十八年度の予算などの見通しなどとともに、この際海運航空利用する移民、それから海外渡航者留学生、こういうようなものについての見解を示しておいていただきたいと思います。
  28. 下田武三

    下田政府委員 航空協定との関連においてその問題をここで論ずることは、あるいはまだその段階ではないと思います。オランダのごときは航空機移民カナダ、オーストラリア、南阿等に出しておりますが、日本では何分航空賃の方がはるかに高いので、日本船ブラジルあたりに輸送した方が、経費もはるかに安いというような関係もございまして、特に移民留学生等の輸送のために、航空機利用するという趨勢には、まだただちに行きかねるのではないかと存じます。
  29. 並木芳雄

    並木委員 それではただいまの私の質問の点を、一般論的な立場から大きく解説をしておいていただきたいと思います。
  30. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 それでは移民の問題につきまして私からお答えいたします。現在行われております移民は、主として呼び寄せ移民でありまして、これはアルゼンチンブラジル等が主であります。特にアルゼンチンにおきましては、終戦後いち早く昭和二十二年におきまして、在留日本人による親近者の呼び寄せ移民許可になりました。今日まで約三千名ほどの渡航者を見ております。なおブラジルにおきましても、呼び寄せ移民は今日まで約一千名の移民をいたしておるのでありまして、今後この呼び寄せ移民はますます盛大に行われることと考えます。将来におきましては、ブラジルを主といたしまして、アルゼンチンまたメキシコ方面に毎年二、三千人の移民が送出せられる見込みであります。  それから計画移民——この計画移民につきましては、アマゾンの移民でありますが、これは約五千家族許可をとりつけております。さしあたつて来年度におきましては、このうちの三百七十家族ほど渡航せしめる予定でありまして、そのうちの第一回分といたしましては、本年の十二月二十九日大阪商船サントス丸で十八家族、五十四名の送出を見る予定なつております。さらにパラグアイの農業移民、これも約百二十家族許可を得ております。さらにブラジル農業移民計画でありますが、これにつきましても、松原安太郎氏のあつせんにかかる中部ブラジル農業移民につきましては、四千家族許可を得ておりまして、そのうちで来年度におきましては約二百家族を送出する予定に相なつております。かようにいたしまして、今後計画移民もますます盛大に行われることと考えます。けれども、この移民につきましては、わが国の最も困難な人口問題をこれによつて解決するということは望まれないのでありますが、まず人口問題の解決の一助ともいたしたい。さらに移民先相手国産業経済開発に貢献する、そうして同時にわが方の活を求める、こういう目的をもつて、主として従来のような植民的な移民でなくて、ほんとう移住先社会制度あるいはその他の国土に同化するような移民を厳選し、かつまたその土地に同化するような言語、宗教、風俗、あるいは地理その他について十分教養を与えまして、りつぱな移民を送出したい、かように考えております。  なお留学生の問題につきましては、条約局長から御答弁いたします。
  31. 栗山長次郎

    栗山委員長 荒木航空局長が出席しておりますので、並木君の質問中留保されているものにつき、質問願います。
  32. 並木芳雄

    並木委員 今せつかく移民の問題で答弁がありましたが……。
  33. 栗山長次郎

    栗山委員長 ちよつとお諮りいたしますが、国際情勢一般については、委員に機会均等にいたしたいと思います。従つてその問題に入る前に議題を切りかえたいと思います。
  34. 並木芳雄

    並木委員 それでは航空局長にお尋ねしておきたいと思いますが、今度航空協定が結ばれますと、これをきつかけにして、日本海外航空網が張りめぐらされて行くわけでありまして非常にけつこうでありますが、これについて政府としては日本航空育成方法をどういうふうに考えておられるか、強化拡充具体的計画案を示していただきたいのであります。
  35. 荒木茂久二

    荒木政府委員 民間航空再開に伴いまして、御存じのように七年間の空白があるところを埋めて、非常に激烈な競争が行われておる世界航空界に進出するわけでございますので、そこに非常に困難な問題が山積しておるわけでございます。しかし、われわれといたしましては、これを押しのけて行きたいと考えておるわけで、運輸省としましては、先般航空審議会わが国民間航空再開方針いかんという諮問を出して、その答申を得たのであります。その答申を考慮に入れてやつて行きたいと考えております。  まず第一番に、進出しますについては、現在日本飛行機製造できておりませんので、まず飛行機を買わなければならないわけでございます。その資金獲得についていろいろ問題があるわけでございますが、その獲得のためには、開発銀行利用外貨貸しの確保、でき得れば一時的措置として政府出資というようなものも仰ぎたいということでございますが、これは予算関係上いろいろ困難があるかと思います。まず乗り出します資金の手当につきまして、十分の措置を講じたいということを考えておるわけでございます。さしあたり一番問題になりますのは、新航路を開拓する資金獲得の問題でありまして、それにつきましては、今申し上げましたような方策で行きたいと考えておるわけでございます。
  36. 並木芳雄

    並木委員 航空機製造の問題ですけれども、日本としても、やはり日本航空機をつくつて、自分の飛行機を飛ばすように持つて行くべきだと思うのです。これについて政府はどういうふうにお考えなつておりますか、日本航空事業を興して優秀な航空機をつくつて、これを使用させる、こういう計画がおありになるのではないかと思いますが、いかがですか。またそれに対する修理修繕というようなものに対しても、万全の措置を講じて行かなければならないと思いますが、それに対する政府のお考えを聞いておきたいと思います。
  37. 荒木茂久二

    荒木政府委員 日本でつくつた飛行機で、日本人がこれを飛ばして行くことが一番望ましいことでございますが、現在の段階国内航空もそうでございますが、特に国際航空に出て行きますのには、日本でつくつた飛行機を使うことは、遺憾ながら困難な状態でございます。御参考までに申し上げますと、大体世界国際航空に従事しておりますものが、大小合せて全部で四千機ぐらいあるわけでございますが、この七五%までは米国製でございます。一五%が英国製というような数字に相なつております。現在、日本に来ております航空会社が十一ございますが、それもほとんどアメリカ製飛行機使つておる状態でございます。この生産事業は通産省の所管になつておりますので、詳細なことは私から申し上げかねると思いますが、われわれの理想としては、日本飛行機で行くということが一番望ましいと思いますが、近き将来にそれの実現を期待することは困難ではなかろうかと考えております。  なお、修理に関しましては、外国へ行く飛行機はもちろんのことでありますが、国内において、これから逐次盛んになつて来ると思います国内定期航空並びに現在、新聞社あるいは宣伝事業使つております飛行機等も、日本修理をしなければなりません。外国航路へ出る飛行機なら、外国でオーバーホールすることもできますが、小さい飛行機並びに国内航空に使いますような飛行機は、全部日本でオーバーホールをいたして十分な安全性を確保してやらなければなりませんので、この航空機修理事業が急速に興ることを期待しておるわけでございます。現在、羽田におきましては、日本航空等が出資した修理会社がございます。それが現在動いておるものでは唯一のものでございまして、これも完全に日本人だけの手で行くというわけに参りませんので、一部外国人を入れて目下つておるわけでございます。この外国人の数は現在のところ十一名でありますが、逐次減少いたしまして、この修理事業日本側だけで完全に行けるときが近い将来において来るものと思つております。なお元の三菱重工の新三菱重工などにおいても修理の工場をつくつております。これも米軍関係の注文を受けるということでありますが、そういつたようなものが一日も早くりつぱなものになつて行くことを期待しておる次第であります。
  38. 帆足計

    帆足委員 ちよつと関連して。私航空機のことを十分心得ておりませんので、予備知識として伺いたい。今軍用機または旅客機それぞれの製造は禁止されておるのですが、旅客機の方は能力がないだけの話ですか。
  39. 荒木茂久二

    荒木政府委員 講和条約効力を発生するまでは、グライダーのようなものまで含んで、あらゆる飛行機製造、所有、修理、飛ばすということは禁止されておりましたけれども、講和条約効力発生以後は完全に自由であります。ただ事実上の能力日本にないというだけであります。
  40. 帆足計

    帆足委員 軍用機の方もつくろうと思えば許されておるわけですか、それからそれは無制限ですか。
  41. 荒木茂久二

    荒木政府委員 現在は何らの制限を加えられておりません。
  42. 中村高一

    中村(高)委員 平和条約第十三条の規定によりまして、この民間航空協定のできるのは「連合国要請があつたとき」というふうになつておりつまして、日本からの要請によつて平和条約ではできないことになつておりますが、今度の日米のこの民間航空協定も、連合国でありますところのアメリカ要請に基いてこれが開かれたものであるかどうか、その点を明確に御答弁願いたい。
  43. 下田武三

    下田政府委員 仰せ通りアメリカ側からの要請に基いて交渉開始したものであります。
  44. 中村高一

    中村(高)委員 そうしますと、今後連合国の他の国からも同様な要請があると思います。これも順次連合国の他の国から要請があれば、日本はそれに対して受けて立つだけのように思われますが、さように解釈はできますか。
  45. 下田武三

    下田政府委員 平和条約第十三条(a)の規定は、連合国要請した場合には日本がいやだといつて交渉開始を拒否できないということをきめただけでありまして、わが方から締結したい国に対して要請することを何ら禁じておりません。従いましてわが方が希望する場合には、こちらから締結要請して一向かまわないわけでございます。
  46. 中村高一

    中村(高)委員 しかし、平和条約規定から見ると、「連合国要請があつたとき」とありまして、今局長の言われるように、こちらから任意に連合国の他の国にこういう協定をしたいという申出は、できないようになつておりますが、そうではありませんか。
  47. 下田武三

    下田政府委員 決してそういうことではございません。これも相手国の意向にかかるわけでありますが、わが方が要請して、こちらのイニシアチーヴで航空協定締結交渉することは、平和条約関係のない問題として自由になし得る問題だと考えます。
  48. 中村高一

    中村(高)委員 そうしますと、アメリカとの間にはここに協定ができるとして、他の連合国との間にどことどことこれから協定をやろうというような計画政府にありますか。
  49. 下田武三

    下田政府委員 先ほど並木委員の御質問にお答えいたしましたように、イギリスカナダオランダフランススエーデンデンマークノールウエー等の国は、先方からすでに交渉開始要請がございまして、現に交渉を行つております。
  50. 中村高一

    中村(高)委員 そうしますと、今後は無協定の国が出て来ると思います。無協定の国は日本飛行場利用したり、あるいは航空路線を使うことができなくなると思うのですが、協定のない国は一切そういうことはできないことになりますか。
  51. 下田武三

    下田政府委員 仰せのように、たとえて申しますと、日本イギリスとの間に航空協定を結びまして路線をきめます。そうしますと、途中でタイのバンコツクでありますとか、インドのニユーデリー、ボンベイあるいはパキスタンカラチ等にやはり着陸を必要とし、そういう土地路線の中に揚げるわけであります。法律的に申しますと、インドなりパキスタンなりは、それは日英間の協定でかつてにきめたのだから、わしは知らぬと言おうと思えば言えるわけでありますが、事実上そういう第三国同士間できめました航空協定で定めた着陸地点のある国が、着陸を認めるというような措置を好意的にとつておる場合が多いようでございます。これを権利としてわが方は要求し得るわけではありませんが、実際問題として支障なくやることができるようになつておるようでございます。
  52. 中村高一

    中村(高)委員 現在日本の領土内において、外国との民間航空飛行場として指定されておるのは、どことどこですか。
  53. 荒木茂久二

    荒木政府委員 現在は二つでございまして、羽田——正確にいいますと東京国際航空でございますが、羽田と、一時的なものとして、将来そういうことでなくなることになると思いますが、岩国と二つでございます。
  54. 中村高一

    中村(高)委員 将来各国との間に航空協定ができますと、今の飛行場では足りなくなる場合も出て来ると思うのでありますが、そういう場合は、なお日本土地に、民間航空飛行場が増設される場合がありますか。
  55. 荒木茂久二

    荒木政府委員 飛行場を新たに建設するということ、特に国際航空に適するような大きい飛行場を建設するということは、容易なことでありませんので、現在あります東京は国際空港としてでありますが、さらにそれ以上に多くの飛行場が開港場的なものになるということはむずかしいと思います。なお福岡、大阪とかいうようなところは、日本側から見ましても、将来台湾に行くとか沖縄に行くとか朝鮮に行くとかいうことを考えますと、これをいわゆる国際空港にすることが望ましいからそういう事態が起ると思いますが、日本でどの飛行場を開港場にするかということは、航空協定その他話合いによりまして日本側がきめるわけでございますから、実情を見まして飛行場の可能なところで協定を結ぶということになろうと思いますので、新たに厖大な土地を取上げて飛行場をつくつて国際空港にするということは、目下のところ考えておりません。
  56. 中村高一

    中村(高)委員 民間航空飛行機製造についてであります。製造することは現在においても自由だというのでありますが、結局これは許可事業というようなものにでもなるのか、それともかつて製造を許されるのでありますか、こういう点についておわかりでしたらば伺いたい。
  57. 荒木茂久二

    荒木政府委員 その問題は、航空機製造事業法というものが先国会に制定されたと思いますが、これは通産省の所管でございまして、詳細なことは、私から間違つて答弁してもあれでございますから……。
  58. 中村高一

    中村(高)委員 よろしゆうございます。
  59. 黒田寿男

    ○黒田委員 私は先ほど帆足君が御質問になりました事項関連しての質問だけを、ちよつとしてみたいと思います。  先ほど政府の御答弁では、軍用機製造することは禁止されていない、こういうように申されましたが、私どもは憲法第九条の規定があります以上、現在わが国において軍用機製造することは許されないと考えております。むろん製造したからといつてそれをただ倉庫にしまつておくのではなくて、製造する場合には製造目的がなければなりません。またその飛行機を使用する主体がなければなりません。軍用機を使用するのは軍隊であります。国家の機関でありまして、軍用機をこしらえても倉庫にしまつておけばいいのだ、ただこしらえるだけで、戦争とは関係ないのだから軍用機をこしらえてもいいというような、そういうことは私は常識上言えないと思います。憲法第九条がある以上、軍用機日本製造するということも禁止されている、こう私ども見なければならぬと思います。この点につきまして、これは私は荒木局長に答弁を求めますよりか、できれば私は法制局長官木村国務大臣とに対して、単に軍用飛行機のことだけでなくて、武器の製造の点について実は質問したいと思つておりました。昨日はその用意をしておりましたけれども、遂に私の質問の順番の来る前に、大臣並びに長官が御退席になつて、その機会を失しておりましたので、私はこの質問はむしろ大臣及び法制局長官から御答弁を求めてもよろしいと思います。だから保留しておいてもよろしい。むしろ私はその方がよろしいと思います。ついでに関連して他の武器の製造のことにつきましてもお尋ねしてみたいと思いますから。それでは委員長、私は問題の提出だけしておきます。きようは大臣おいでになりますか、お見込みはいかがでしよう。お見えになりましたら、そのときに質問いたします。
  60. 栗山長次郎

    栗山委員長 まだ大臣の出席については見通しがついておりません。いずれ大臣から今の御質問に対して答弁させることにいたしますが、とりあえず林法制局次長
  61. 林修三

    ○林政府委員 今の黒田委員の御質問に対して、私からお答えいたしましてあるいは御満足行くかどうかわかりませんが、もしあれでございましたら、後ほど大臣なり法制局長官からまた重ねてお答えいたしますけれども、一応私どもの考え方を申し上げておきたいと存じます。  憲法第九条第二項では「陸海空軍その他の戦力」を保持してはいけない、こういうことになつておりまして、その他の戦力というものの解釈になるわけでございますが、その他の戦力と申しまして……。
  62. 黒田寿男

    ○黒田委員 ちよつと御発言中ですが、私は戦力問題はあなたとしたくありません。もうけつこうです。私は国務大臣、法制局長官とやります。問題はそこまで触れて行くのですから。     —————————————
  63. 栗山長次郎

    栗山委員長 質疑応答を打切ります。ただいままで航空協定について御審議を願つておりましたが、これから国際情勢等に関する件について質問を行うことにします。帆足計君。
  64. 帆足計

    帆足委員 外務次官が御出席でありますので、中国から引揚げの経過につきましてお尋ねいたしたいと思います。先般お尋ねいたしましてからさらに時日が経過いたしましたし、これは超党派的な切なる要望でございますので、第一には私どもの希望といたしまして、この問題は超党派的な国民的な要望として、政府当局が先方と折衝するだけでなくて、民間の留守家族団体または中国関係の先方に信用の厚い中日友好協会その他公正合理な民間代表の人にも、北京に折衝に行つてもらうことを各方面も希望しておりますし、また新聞等も率直にこういうことを話し合うことが、アジア全体の平和のための一里塚にもなろうということが圧倒的輿論でございますので、そのようにお考えでございましようか。  第二に、昨日の新聞でございましたか、香港の総領事の方が、イギリスのジヤーデイ・マジソソそれからもう一つの船会社と契約しまして、天津向けの商船を折衝中であるという記事が出ておりましたが、新聞に出ているくらいでございますから、御発表してさしつかえない範囲の御準備の状況。  それから第三に、これは外務大臣の失言ではあろうと思いますが、パトロール・フリゲートのようなああいう駆逐艦類似のものをやると申されましたが、私は、そういうようなことが誤つて中国側に伝えられると非常に感情を悪化いたしますので、ぜひともそういうことのないようにしていただきたい。実は昨日天津から参りましたイギリスの商船の方にも聞いたのですけれども、今日駆逐艦が護衛しなくても大体において安全な交通ができるということでございました。こういうことは敗戦国として向うに在留している者を迎えに行くわけでありますし、いろいろ問題はありましようけれども、日本は謙虚な立場でやるべきであつて、まるで戦勝国が凱旋兵でも受取りに行くような印象を与えるような、しかも今日のアジアの情勢が、アメリカと中国とが不幸な事態にあるようなことを考えますときに、ぜひそういう不謹慎な発言は、政府当局として国民の要望に沿うために、慎んでいただきたいと存じます。  さらにもう一つは民間人または政府の適当な方々、それも御一緒に向うに参るような機会があるとするならば、当然パスポートを出すべきであろうと存じますが、それについていかがお考えですか。実はパスポートの問題につきましては、昨年すでに法制意見長官が参議院の外務委員会において証言している重大なことがあるのでございます。私どもの解釈をもつてしますれば、実は旅券法につきましての政府特に外務省当局の今日の解釈は、間違つているのでございまして、ことさらに法を曲げているのでございます。この問題につきましては、いずれ日を改めまして委員長から時間をいただいて、詳細にわたつて外務省当局と私は懇談をし、話合いをもして、公正合理遵法の精神のもとでこの問題を解決せねばならぬと確信いたしておりますが、とりあえずは引揚げの問題の差迫つた問題でありますので、今の四点について外務次官から御答弁を願いたいと思つております。
  65. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 中共抑留者の引揚げの問題につきましては、政府といたしましても極力あらゆる努力をいたしております。すでに先般も発表いたしましたように、目下のところインドを通じまして中共当局と折衝をいたしております。こちらの方の回答があり次第、さつそく具体的な手を打つて参りたい、かように考えておりまして、その際におきましては、あるいは民間団体等を差向けるということにもなる場合もあり得るかと思いますが、その場合には、われわれといたしましても進んで民間団体の協力を求めたいと考えております。  次に香港総領事におきまして、商船をすでに契約したという新聞記事が出ておつたのでありますが、私どもも実は新聞記事を拝見しただけでありまして、詳細につきましては、いずれ後刻アジア局長が見えますのでアジア局長から答弁させたいと思います。  それから第三番目の、パトロールを引揚者のために使うということを、外務大臣が答弁せられたのは不謹慎ではないか、こういう御発言であつたように思いますが、私の承知いたしておりますところでは、岡崎外務大臣は、今度の引揚者の場合にパトロールを使用するということを申したのではないのでありまして、船舶貸借協定の目的の中に、沿岸警備ということをはつきりうたつていない、それはどういうことかという御質問に対して、実は協定ではそういう目的を限定しない方が、わが方にとつても有利ではないか、たとえば、かつてパトロールを引揚者のために使つたこともあるのだ、こういう説明の一例としてあげたことと考えます。今回の場合におきましても、現実の問題におきましては、おそらく、パトロールでなくて、その他の汽船を使うことになるのではないかと考えております。  それから最後のパスポートの問題でありますが、これは、中共へ参ります方にはパスポートは必ず手配して差上げたい、かように考えております。
  66. 帆足計

    帆足委員 ただいま、引揚げ問題の円滑な進捗のためには、必要とあれば公正合理な観点から、民間代表の派遣をも考慮するという御答弁がありましたことを、私は多とするものでございます。また、その場合にはパスポートも出すという率直な御答弁に対しましては、深く満足するものでございます。また、パトロール船が例に出ましたのは、ほんの一つの過去の例であつたにすぎないというような御答弁がありましたことにつきましても、両国のためにたいへんにけつこうなこととして了承いたしました。  私は実は中国に数箇月前に参りまして、そうして五十日滞在いたしまして、つぶさに中国の事情も視察したのでございます。私どものように平均的教養を持つております者が各地を見て参つたのでありますから、実は政府当局に対しましても善意をもつて申し上げたきことも多々あるのでございますが、引揚げ促進の円滑化を期するための特別委員会も設置される由を承つておりますので、その席において申し上げたいと存じます。しかしながら、一言申し上げておきましてこの問題の円滑な解決に資したいと存じますことは、中国は非常に長い間半植民地状況にありまして、今日やつと独立しました。その過程において、日本の軍閥との間に十箇年を越す長い戦争のあつた国でございますので、日本の軍国主義の復活とか、またはあまりにも超国家主義的、反動的な政治の行き方に対しましては、神経過敏といつていいくらい過敏でありますことも、やはり了承せねばならぬことであろうと存じます。北京におきまして日本再軍備の勢いが強くなつたという放送がされましたときに、北京の女学生たちは北海公園に集まりまして、みなハンカチを目に当てて恐怖のために泣いたということを聞きまして、その写真も私は見まして胸を打たれる思いがしました。日本はとにかくアジアにおいて大きな過誤と失策を犯しました。その後でありますから、イデオロギーのいかんを問わず、世界の平和と国交回復のためには多少謙虚である必要がある。しかるに吉田総理は、公然と、敵国またはそれに類似のお言葉をちよちよいお使いになる。まあ失言でありましようけれども、そういう点において、政府当局としては、やはり国の平和のために多少謙虚な態度が必要であろうと存じます。今般こういうことでいろいろな事情が重なりまして——政府の御努力もありましたでしようが、私どもが参りましたことも一つの貢献にはなつたと私ども考えております。同時に、向うから帰る人の数もふえまして、何やかや積りまして一つの糸口を見出したわけでありますから、この糸口に対しましては慎重に取扱つていただきたい。一党一派の立場や過去のいきさつなどにとらわれずに、公正合理に、そうして長い間の伝統のある隣邦でありますから、お互いに平和で行こうという気持で解決していただきたいと思いますが、ただいまの次官の御回答に対しましては、私は深く感謝するものでございます。  ただ今後の重要なる問題は、在留同胞につきましての数字上の開きがあまりに大き過ぎる。三十六万という数学が実は誤つて国民に強く印象されております。実際政府当局が最近御発表になりました数字は、七万前後が当面の問題というところまで、問題が具体化いたしたのでありますが、政府当局は六万と言い、また民間の引揚団体はそれを十万と言い、中国当局は三万前後と申しておるようなことであるが、その日本側の数字の科学的基礎を私は検討さしていただきたい。一経済学者、統計学者としてもう少し検討さしていただきたい。あの混乱の中に起つた問題についての跡始末の数字でありますから、私は、いろいろと中に問題があろうかと存じております。そうして、よく科学的に検討したあと、なお中国の出します数字との間に食い違いがあれば、誠心誠意その食い違いの本質をきわめまして、解決に資することが重要なことであります。しかるにかかわらず、従来は、ややもすれば二つ世界の対立の抗争に、それが部分的に悪用されたようなけはいもあるのでございます。そういう印象を多くの人が与えれておるわけでありますが、引揚げ問題が今日のように具体的な問題になりました以上は、数字に対しましても、できれば学術会議の部会あたりで検討していただく、それができませんければ、近くできます国会の引揚委員会等で、公正合理な見地からやはりよく検討しまして、こういう点はあいまいな点である、こういう点は確実な点であると、確実な点と向うの発表と照し合せまして、なおあいまいな点については、両方の側において、どういうような行き違いができておるかということを、公正合理に検討するという態度がなければ、最初から学問的基礎のない統計をぶつつけて、ことさらに事を刺激するというような態度で参りますれば、思いがけない不幸な結果をまたもたらすのではなかろうかと存じます。しかるがゆえに、委員長を通じまして、再三数字並びに統計資料のつくり方についての資料を、私どもは要求しておるのでありますけれども、いまだにその資料をいただいておりませんので、ひとつ一日も早くこの資料をいただきたいと存じます。これについて次官から御答弁をいただきたいと存じます。
  67. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 ただいま帆足委員からたいへんけつこうな御意見を承りました。今後われわれは十分その御趣旨に沿つて、仕事を進めて参りたいと存じます。  なお抑留者の引揚げの問題でありますが、これを十分科学的に検討してやれという御意見でありまして、外務省といたしましてもその方針で進んでおります。現に、先般発表いたしました五万九千二十八人というのは、本年五月一日現在で氏名が判明いたしておる数字でありまして、さらにその中で、従来通信のあつた者で帰還しない者は二万二千八百九十六名と相なつております。そういうように手紙等の往復が現実にあつた者で、これは相当確実な数字ではないかと考えております。なお、その後さらにいろいろ手紙の往復等もあつた者もあるのでありますが、目下集計中でありまして、発表の段階に至つていないのが遺憾でありますが、いずれ時期が参りますれば御発表もいたしたいと思つております。
  68. 帆足計

    帆足委員 ただいまの御答弁で、五万九千の数字の中にはつきり通信のあつたのが二万幾らで、さらにその後も通信が追加されておるということを伺いましたが、その差額の方の数字はどういう根拠でお調べになつたか、そういうことをこちらから資料を要求いたしておりますからどうぞ懇切な資料をいただきたいと存じます。実は先般も申し上げましたが、ことしの三月、四月ごろから一月に二百五十万円見当中国から送金が来るようになりまして、私どもも一月に七百通ずつのかの地からの手紙に目を通しているのでございます。それらを通じまして、次第に先方の生活の様子などもわかり始めておりますが、先般新聞に私の言が誤つて伝えられまして、中国に在住している邦人はみな帰りたくないというふうに伝えられておりますことはまこに遺憾なことでありまして、私は朝日新聞の投書欄におきまして、そのことを訂正もし釈明もしておいたのでございます。実情におきましては、あのままずつと残つていたい人もおりますし、帰心矢のごとく妻や父子のとたろへ帰りたいという人もおりますし、行つたり帰つたりしたいという人が多かつたことは当然であります。国内で過剰人口に悩んでおり、中国で骨を埋めるつもりで十年も二十年もおられた人は、特に技術のある者は、あちらで生業を見出されて、ある程度満足な生活をしておられる人も多いのでございますが、それらの方も子供が大きくなつたから教育のため子供だけ返したい、嫁をもらいに返したい、墓参りに帰つて二、三箇月滞在したらまたあちらへもどりたい、こういう人が実は非常に多かつたのであります。そこで私は中国銀行総裁南漢宸氏に、急いで帰りたい人は、留用という制度があるように聞いておるけれども、私は詳しいことは知らないので、ひとつその問題を解決してもらいたいといふことを、当時私は日本に帰りまして初めて詳しい事情が多少わかりましたので、九月に手紙を出しまして、こういう未解決の問題があるから、あなたとの話合いはしごく簡単であつたけれども、多少複雑な問題もあるようだから、御意見を知らしてもらいたい、そうすればまた関係筋の専門家の皆様の方にお伝えするからと言いましたところが、返事が参りまして、その問題については専門の部局と相談して、追つて返答するからという返事まで、航空便で参つたような次第でございます。そこでお願いいたしたいことは、そのときに南漢宸氏に、私は日本人はふるさとに対する観念が非常に強く、お墓参りに帰りたいとか、嫁もらいに帰りたいとか、帰つてまたそちらに行きたいという人が多いことは当然であるけれども、その場合にあなたの方では一ぺん墓参りに二、三箇月帰つた人を迎えるかと聞きましたところが、それは帰るときに最初からそう言つてくれれば無条件でお迎えします。私の方ではさしさわりはありません。ただ日本政府が今日中国との間に十分な交渉がないために、一ぺん帰つたならば再び中国に返さないのではないかということを自分らも心配するし、自本の方も心配しておる、こういうことでございました。この問題はただいまの常識で申し上げますれば、一ぺん帰つた人がとても帰れないという状況になつておりますから、次官からそれはもう返さない、こう言われればそれまでの問題でございます。しかしながら中国との関係は長い間の関係で、満鉄の従業員の諸君などは、あれはやはり自分たちがつくつた鉄道でありますから、自分の親戚のうちくらいに考えて業務に励んでおる。その人たちは日本の墓参りに帰りましても、また向うに帰りたいという人は一万も二万もおるでございましよう。従いまして、ただいますぐ否決の返答でありましたならば、返答をいただきたくないのでありまして、ひとつ慎重な御考慮を願いまして、次の機会にまたお伺いしたいと存じます。
  69. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 この問題につきましては、やかましく申し上げれば、あるいは御満足が行かないかとも思いますが、同じ同胞のことでありまして、血あり、涙あるはからいが必要ではないか、かように私個人では考えております。どうぞそういう意味において御了承願います。
  70. 中村高一

    中村(高)委員 今の次官の答弁に関連して……。先ほど中共地区へのパスポートを出すかどうかという帆足君の質問に、パスポートを出すようにしますというような御答弁でありました。この点をひとつもう少し明確にしていただきたいのでありますが、パスポトをほんとうに外務省はお出しになるのでございましようか、どうでございましようか。
  71. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 引揚者のお世話をするためにあちらへ参ります方には、特に例外といたしましてパスポートを差上げたい、かように存じます。
  72. 中村高一

    中村(高)委員 そういうふうに外孫省ではもう決定をいたしておると見てさしつかえございませんですね。希望ではなくしてはつきりその点は……。
  73. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 さように御了承願つてもさしつかえないと思います。
  74. 中村高一

    中村(高)委員 まことにけつこうでごいますが、今度のこの引揚げについてだけという特殊な条件をつけてお出しになるのか、それともあるいはこれから貿易の問題などで用があつて行くという希望者もありますし、あるいは議員の連盟であるとかあるいは中井との間の民間の団体というようなものが、交歓のために行きたいとかいうような希望者もありますが、そういう者に対してはどういうことになるのですか、やはりパスポートをお出しになるのでしようか。
  75. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 原則としてはパスポートを出さいことになつております。しかしただいまの問題の引揚者の場合は、例外としてお出しいたしたい、またその他の問題につきましては個々の具体的の事実にぶつかつたときに考えたい、かように存じております。
  76. 中村高一

    中村(高)委員 中共地区の邦人の引揚げについては、これは国民のことごとくが、すみやかなる政府折衝と、その目的の達成されることを希望しておるのであります。外務省ではこの問題について直接乗り出されて、外交折衝をやつておられるようでありますが、その経過はどんな状況まで進んでおりますか、ひとつ承りたいと思います。
  77. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 インド大使館を通じまして懇請いたしておるのでありまして、さらにインド駐在の西山大使にも訓令を発しまして、インド政府と即刻話を進めるように、こういうことでありますが、まだその後正式にあちらから回答は参つておりません。できるだけ再々督促はいたしておりますが、まだ十分なる御満足の行くような回答に接しておらぬのは遺憾であります。
  78. 並木芳雄

    並木委員 今の政府の答弁は私は非常に重要だと思うのです。この点は確かめておこうと思つた点でございますが、従来岡崎外務大臣は、なぜ中共地区への旅券を発行しないかという理由の中に、生命財産を保障することができないからということを言つておつたのです。ところが今度出されるのだつたら、その言葉をくつがえすことになる。そこでこれは岡崎外務大臣の非常な食言にもなるし、また不信任案の材料が一つふえたことになるのでありますが、(笑声)いつから生命、財産の安全を保障することができるようになつたのか、どういう方法でそれが保障できるようになつたのか、その点をはつきりしておいていただかないと、今度引揚げで行く者は、向うで生命がどうなろうと、財産がどうなろうと、そんなことは知つたことではないという理由では、たいへんな食い違いが出て来ますから、質問をしておきたい。
  79. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 岡崎外務大臣が申された生命、財産の保障ができぬからということは、その後も別に訂正する必要は認めないと思うのですが、今回の場合は何方という気の毒な抑留者のお世話に参るためのものであります。まことに人道上から申しましても、またその他われわれ日本人としての気持からいたしましても、ぜひともお迎えに参らなければならぬ、こういうことから出発いたしておりますので、例外的に認めよう、こういうことであります。
  80. 並木芳雄

    並木委員 私は出すことは非常にけつこうだという立場なのです。これは誤解のないようにお願いしたい。これはけつこうですが、今度出す以上は、十分外務省としてその保障はできるという確信がなければならない。それは具体的にどういうものによつて得たかというのが私の質問の要点なのです。今の答弁ではその要点に触れておらない。どういう方法によつて生命、財産は大丈夫だというのか。
  81. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 あちらに参ります者の生命、財産の定全ということにつきましては、もちろんインド大使を通じましての折衝におきまして、そういう点も考慮に入れている次第であります。
  82. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 ほんの一点だけなんですけれども、今度インド大使館に仲介の労をお願いするということを新聞でお読みしたのですが、その前に中共引揚者にどういうような処置をおとりになつたかという、これまでの経過を具体的にお話し願いたいと思います。
  83. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 従来とも政府におきましては、あらゆる方法、あらゆる手段を通じまして努力いたしておつたのであります。たとえば国際連合を通じまして、あるいはまた国際赤十字を通じ、またその他の友好国を通じまして、再々折衝をいたしておつたのであります。
  84. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 そういう抽象的なことは、これまでもずいぶん承つたのでございますが、従来のそういう抽象的な——私どもから見ますと、政府といたしましては、きわめて消極的な、誠意のない措置であつたのでありますが、今度インド大使館にそういう仲介の労をお願いすることになりましたら、これに対して十分何らかの打開の道があるとお考えなつておられるのでありますか。
  85. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 もし北京放送の伝えることが真実といたしますれば、御質問のように満足の行く解決ができ得ると考えております。
  86. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 今までの中共側の、仲介国を通しての答弁はどういうことであつたのでありますか。
  87. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 当方の折衝にもかかわらず、今までは一回も中共側から回答もなかつたわけであります。
  88. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 もう一点だけ。先般私はビルマに参りましたところが、ビルマのある方から、と申しましても、これは新聞記者も入つておつた特殊な席上ですが、中ソ友好同盟が結ばれた際に、中共からは日本側に対して、中共のこの同盟に賛同してくれというような申入れがあつたそうでございます。それに対して日本政府は何らの回答もされなくて、非常に失礼な態度をとつたというようなことを言つておつたのですが、私どもはそんなことを聞いたこともありませんし、はたして私が聞いたような問題があつたのですか。そういうような類似の問題があつたかどうかということを、この際承りたいと思います。
  89. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 存じません。
  90. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 ただいま中村外務政務次官帆足君の質問にお答えになりました引揚げに関する民間団体の代表者には、この問題に限つて旅券を出す、こういうことを明言されました。きわめてけつこうなことだと思うのでありますが、ついては引揚げに関する民間団体といいますと、直接全国引揚者連盟もありますし、またこの問題で前々から心配をしておつた日本赤十字社もあるし、また中日友好協会という団体もありまして、ともにひとしくこの在留同胞の引揚げについては甲乙なくいずれも心配しておられる団体であります。そうすると、もし政府が甲の団体の代表者には許し、乙の団体の代表者には許さないということになると、とんでもないことになると思いますが、そういう点については、甲乙なく、いずれの団体についても、在留同胞引揚げに関して心配しておる限りは出す、こういう御方針であるかどうかを、はつきりしておいていただきたいと思います。
  91. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 まだ今日の段階におきましては、インド大使を通じまして折衝中でありまして、はたして政府機関が参りますか、あるいは赤十字が参りますか、あるいは民間団体が参りますか、その点は何らきまつておりません。もし民間団体が参るということになりますれば、ただいまの御発言は十分御意見として承つておきます。
  92. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 意見ではないのです。あなたはさつき民間団体のこの問題を憂えている人々に対しては旅券を出す、こういうことを言われたのだから——インドの大使を通じての交渉ということは、これから将来のことなので、出すと言われたそのことについて、この問題に関連して行くという人があつたら、甲乙なくすべて心配しておる民間団体の代表者に出されるかどうか。それは甲乙差別をつけることがないかどうか、こういうことを聞いておるのです。
  93. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 私が先ほど申し上げましたことは、もし民間団体が行くようになりましたら、旅券を心配する、こういうことを申し上げたのでありまして、民間団体をさしつかわすということについては、まだはつきり私は申し上げておりませんから、誤解のないようにお願いいたします。
  94. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 だから、もしでも何でもよろしい。民間団体が行くということになれば、そのときには甲の団体の代表には許すが、乙の団体の代表は許さぬということがあつては、とんでもないことになるから、その場合においては、甲乙なく平等にその代表の旅券の発行をなされると、こういうつもりなのですね。
  95. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 もしそういうことになりますれば、御意見の点は十分尊重いたしたいと思います。
  96. 栗山長次郎

    栗山委員長 委員長からちよつと申し上げます。今の外務政務次官の答弁は仮定でありますが、仮定にいたしましても、もし民間団体が代表を中国に送るということになります場合には、いかなる人たちに旅券を出すかということについて、この委員会としても発言を留保いたしておきたいと思います。御了承を願います。
  97. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 関連してもう一点。条約を結んでおらぬ無条約国に対して、旅券を発行される場合の査証はどういうことになりますか。その法律上の手続をひとつ聞かせておいてもらいたいと思います。
  98. 下田武三

    下田政府委員 中共側が査証を必要とするかどうかという点もまだわからないのでございます。もし中共に来る以上は、査証を持つて来いと言われましても、現在中共の査証を付与する権限日本にはございません。従いましてどこでもらうかという問題もやはり打合せを要するわけであります。査証を付与するかどうかということは、一に中共政府の意向にかかつておるわけであります。
  99. 加藤勘十

    ○加藤(勘)委員 査証はもちろん日本でするのではなくて、入国させる方の国ですることは間違いありませんが、そのときに今度は中共側でこの代表の査証は困る、この代表の査証はさしつかえない、こういうことになつたときに、日本政府はどこを相手にして外交折衝をされるつもりであるか。
  100. 下田武三

    下田政府委員 仰せのようなことはあり得ると思います。わが方からこういう人間を出したいと思いましても、相手国側がこの人間は困るといつて査証を与えない場合もあり得ると思います。そういう場合には、やはり現在仲介の労をとつてもらつておりますインド政府を介して交渉するよりほかにないと存じております。
  101. 帆足計

    帆足委員 ただいまの御答弁で満足ですが、次官は今般の特例は、人道的国民的見地からの特例だというお話でありました。実は御存じのように、日本貿易は戦前の二九%を切れるというような状況で、中小商工業者の倒産苦痛は、実に深刻な様相で、まことに昭和五年を裏返しにしたような深刻な状況でございます。従いまして……(「裏返しとはどういうことだ」と呼ぶ者あり)裏返しということは、あのときはデフレでありましたが、今はインフレであります。あのときは広大な植民地がありましたが、今は何もなくなつておりまして、とにかく振出しにもどつた状況でございます。従いまして貿易の問題はイギリスフランスも西ドイツも、イデオロギーを離れて、中国と貿易をしておるのでございます。従いまして捕虜問題で人道的見地からおやりになるならば、やはり日本の国民経済を救い、中小企業を救う人道的見地から、イギリスや西ドイツやフランスに許されている程度のことを、なぜ日本政府において認めないのか。岡崎外務大臣は、イギリス日本立場が違うと申しましたが、違うという意味は、イギリスよりも日本の方がもつと切実な利害関係で結ばれているという点で違うのであつて、その逆ではあり得ないのでございます。従いましてただいまの次官の言をもつてするならば、貿易関係の渡航は認めるが当然でございますので、ひとつ至急この点を御研究願いたいのでございます。
  102. 栗山長次郎

    栗山委員長 宿題を二つ解決させていただきます。黒田寿男君から木村長官に対する質問がありました。その質問軍用機製造と憲法との関係であります。黒田君簡潔に要旨を再述してください。
  103. 黒田寿男

    ○黒田委員 私はこの問題は簡潔というわけに行かないので……。
  104. 栗山長次郎

    栗山委員長 簡潔に行きませんければ、この次に願います。
  105. 黒田寿男

    ○黒田委員 それでもけつこうですが、ちよつと申し上げておきます。実は私は一度国務大臣である木村長官、それから法制局の長官に少しおひまをいただいて、根本的にお話を伺つてみたいと思います。
  106. 栗山長次郎

    栗山委員長 それでは次会にお願いします。
  107. 黒田寿男

    ○黒田委員 それできようの軍用機の問題は、たまたまそれに関連しておりますので、先ほども申し上げた。しかしそれだけ聞いておきましよう。
  108. 栗山長次郎

    栗山委員長 あとお一方中村高一さんがおりますから……。
  109. 黒田寿男

    ○黒田委員 ではこの次に何とか時間をとつていただきたいと思います。実は昨日やはりそう申しておきましたけれども、私の質問の順番にならない間に御両所とも御退席になりましたので……。
  110. 栗山長次郎

    栗山委員長 それではこの次にお願いいたします。中村高一君。
  111. 中村高一

    中村(高)委員 答弁する人がいませんよ。
  112. 栗山長次郎

    栗山委員長 調達庁の不動産部長がおります。
  113. 中村高一

    中村(高)委員 それでは時間がありませんから一つだけ伺います。武蔵野市にあります中島飛行機の工場の跡に米軍の宿舎が建設されることになつておりまして、これはこの前の委員会でも申し上げた通り、住民が一斉に立ち上つて反対をいたしておるのであります。政府はあくまでもこれを決行するという声明をたびたび出しておるのでありますが、具体的にこれは十二月の初旬に入札に付して、工事にかかるということになつておるのでありますけれども、その後どうなつておりますか、ひとつ部長の具体的な御答弁をお願いしたいと思います。
  114. 川田三郎

    ○川田政府委員 中島飛行機の地区につくります住宅は、御質問が調達庁に対してなされておりますが、現在調達庁で施工しておる工事ではございません。それでこの点につきましては所管でなく、またよく事情を存じておりませんので……。
  115. 中村高一

    中村(高)委員 わからないという答弁ですか。
  116. 川田三郎

    ○川田政府委員 ええ、わからないという答弁です。外務省の国際協力局の方では事情を御承知かと思います。
  117. 中村高一

    中村(高)委員 それではもういいですよ。わからないという答弁に対して質問してもしかたがないですから……。
  118. 栗山長次郎

    栗山委員長 それでは本日はこれで散会いたします。次会は公報をもつてお知らせいたします。     午後零時五分散会