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1952-12-01 第15回国会 衆議院 外務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年十二月一日(月曜日)     午後一時十九分開議  出席委員    委員長 栗山長次郎君    理事 谷川  昇君 理事 加藤 勘十君       今村 忠助君    植原悦二郎君       大橋 武夫君    木村 武雄君       西川 貞一君    松田竹千代君       森下 國雄君    安東 義良君       楠山義太郎君    並木 芳雄君       中村 高一君    松岡 駒吉君       福田 昌子君    帆足  計君       黒田 寿男君  出席国務大臣         外 務 大 臣 岡崎 勝男君         国 務 大 臣 木村篤太郎君  出席政府委員         総理府事務官         (法制局長官) 佐藤 達夫君         総理府事務官         (法制局第一部         長)      高辻 正巳君         保安政務次官  岡田 五郎君         保安庁次長   増原 惠吉君         検     事         (刑事局長)  岡原 昌男君         外務政務次官  中村 幸八君         外務事務官         (条約局長)  下田 武三君         外務事務官         (アジア局長) 倭島 英二君         外務事務官         (国際協力局         長)      伊關佑二郎君  委員外出席者         専  門  員 佐藤 敏人君         専  門  員 村瀬 忠夫君     ————————————— 十二月一日  委員山花秀雄君辞任につき、その補欠として田  中稔男君が議長の指名で委員に選任された。 同日  理事今村忠助君の補欠として池田正之輔君が理  事に当選した。 同日  田中稔男君が理事補欠当選した。     ————————————— 本日の会議に付した事件  理事の互選  日本国アメリカ合衆国との間の船舶貸借協定  の締結について承認を求めるの件(条約第一  号)  国際情勢等に関する件     —————————————
  2. 栗山長次郎

    栗山委員長 ただいまから外務委員会を開会いたします。  日本国アメリカ合衆国との間の船舶貸借協定締結について承認を求めるの件、及び国際情勢等に関する件について質疑を行うごとといたします。  通告順によりましてこれから質疑を許します。並木芳雄君。
  3. 並木芳雄

    並木委員 私はあとから大臣質問する前提として、当局質問しておきたいと思います。今度申請したのは、パトロール・フリゲート十八隻と上陸支援艇五十隻でありますが、この基礎なつたものは何であるか、なぜ十八隻、五十隻を向うに希望したか、そういう基礎であります。
  4. 増原惠吉

    増原政府委員 最初米国側外務当局の方から話をいたしました際は、フリゲート十隻、支援艇——LSの方が五十隻を下らざるというふうなことで話をしたのでありますが、先方フリゲートが十八隻、支援艇が五十隻、計六十八隻までを貸してもよろしいという法律をつくつたわけであります。このつくりました基礎は、明確に数字を割つてつくるというほどのところから出たものではありません。向うとの話合いで、そうしたものが大体借りられるであろうという状況もとにして、また一面日本沿岸警衛状況からいいますならば、大体米国コースト・ガード式警備をするとしますならば、わが国海岸線からいたしまして、相当数のものを要するわけでありまして、六十隻では不足になるわけであります。先方の貸し得る状態等とも考え合せてできたものであります。約一万二千マイルの海岸線を五十八隻で割りますと、一つ船舶当り警備マイル数というものが出て来るわけでありますが、それを科学的に計算した上で出したというほどの、筋合いのものではないわけであります。
  5. 並木芳雄

    並木委員 そういう点が、このとりきめの基本となる問題としては、かなり重要になつて来るわけです。当局が、どうしても現在の警備に当るためには、これこれ最小限度必要であるという現状に照して、基礎が出て来て、そうしてそれに基いて向うへ申請した。それでなければ筋が通らないわけです。ですから、むしろこれは向うから、場合によつたら使い古したやつがあるから、払いさげてやろうかというようなところから出たのではないか。その向う船舶を借りようという日本政府決定をした動機は何ですか。ほんとうに必要なものならば、日本でそういうものをつくつて行つてもいいと思うのです。それを特にアメリカからこういう軍鑑——明らかに軍艦でありますが、軍鑑を借りるという決定をした動機なつたものは何ですか。
  6. 増原惠吉

    増原政府委員 現在のわが国財政状態から見まして、わが国船舶を建造するよりも、向うの方でそういうものを貸してくれるということであるならば、これを利用することが適当であろうという見地で始まつたものであります。現在米国コースト・ガードによつて沿岸警備しております標準で、日本海岸線を守るということにいたしますと、大よそ二百四十隻くらいのものになるという、一つ米国海岸警備の基準があるわけであります。それが六十隻を下らざるものということでこちらから借用を申し込んだ、そういう形になつております。
  7. 栗山長次郎

  8. 植原悦二郎

    植原委員 私は、保安庁長官一つだけお尋ねしたいのです。できることならば、外務大臣も御一緒ならよろしいと思うのですが、外務大臣御不在だから、私の述べますことを、ひとつよく外務大臣にお伝えをしておいていただきた。  委員会や本会議を通じて、保安隊軍備であるとか、軍備でないとかいう問題が盛んに論議されておる。保安隊が、もと警察予備隊が野砲を撃つから軍隊だ、いや、撃つたつて軍隊ではないのだ、またアメリカから借りるところのフリゲート、これはあたりまえのヴエツセルでないから、フリゲートという巡邏艦か、あるいは砲艦だ、それだからこれは軍隊であるとか、政府はこれは軍隊でないとかいう議論が盛んに闘かわせられておりますが、私はこれに対して、政府はつきりするようにお答えを願いたいと思いますにつきまして、私の見解を一通り申し述べたいと思います。  昔は西南戦争行つた百姓が鉄砲をかついで軍隊であつた。だけれどそれを今日は軍隊と言わない。今日の軍隊というものは、国際間に用うるものでなければ、一般に軍隊とは言わない。国内の安全、治安を維持するものであれば、これは警察権行使であつて内乱をも予想して軍を備えるところはない。日本においても、内乱のあるというようなことはまあ予想されない。そういうことを希望しませんけれども、よくどなたか恐れて、共産党が暴動化すれば、それが国内治安に非常な混乱状態を起す、そういうことのないことを希望するが、そういうこともあり得ることでしよう。しかしそれを鎮圧するために用うるものは私は軍でないと思う。警察力である。そこでその点をはつきりしさえすれば、憲法第九条の問題、フリゲートアメリカから借りて軍隊を持ち、そうして憲法第九条においては陸海空車を持つことのできないものを、アメリカから契約して持つということは憲法違反ではないか、こういうような議論があるが、私は今日の軍隊という言葉は、例を国連にとりますならば、国連各国軍隊を集めておるということは、これは国連、インターナシヨナルのポリスパワー警備隊だと申しておる。各国から国連に出すところの軍隊は、国際的に用うるものだから軍隊といわなければなりますまい。たといフリゲートがどういう装備を持つておろうとも、大砲を積んでおろうとも、どんな武装をしておろうとも、これは日本海岸線巡邏警備に当るもので、決してこれをもつて外国に対して備えるものではない。もとより密輸入とか密入国とかいうものがあれば、これは取締るでしようけれども、これは巡邏警備上のもので、ポリスパワーであつてミリタリーパワーではない。その点を政府はつきり認めておらないのではないか。警察権というものの行使と軍というものの行使を、はつきり区別して議員政府解釈されれば、その間の混乱がないと思う。フリゲートがたといどんな大砲を積んでおつても、どんな装催をしておつても、この目的国際紛議を解決するために用うる武力ではなくて、沿岸巡邏警備するところの、ポリスパワー行使するものであるという立場に立つたら、これは軍隊でない。なぜそう言うかといえば、憲法の第九条は「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、」これはだれも望むことです。「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。前項目的——国際上の紛争を解決するために用うる武力——「前項目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」この第九条を、ポリスパワーミリタリーパワー、すなわち軍隊の持つ目的と、国内の安寧、秩序を維持するために持つ目的と、この二つの目的を混同するものだから、政府答弁においても議員質問に率いても、非常に紛糾することを私は見ておつて、これをはつきりしておかなければならない。たといどういう装備を持つてつても、装備によつて軍隊軍隊でないかを今日は国際間にきめるものでない。その使用する目的によつて軍隊軍隊でな  いかということをきめる意味においてにあらざれば、憲法第九条に当てはめてこれをかれこれ申すことはできない。そう私は解釈しておる。そういう解釈をすれば国民誤解を招くこともない。またこの問題によつて議会において紛議を生ずることもない。この憲法第九条の定義は一体ポリスパワーか、ミリタリーパワーか。ミリタリーパワーなら軍隊である。どう海上に用いるか。大砲を積んでおつても、どんな装備フリゲートが持つてつても、巡遊、警備に当る海上ポリスパワーに用いる場合には海上軍隊でない、こう解釈すればすべての問題は氷解する。こういう立場政府がお認めになつて議会に臨んでいただく方が、一切の問題をシンプリフアイして、そうして国民誤解を解いてよろしかろうと思うが、政府はいかなる見解を持つているか。
  9. 木村篤太郎

    木村国務大臣 ただいま植原委員からいろいろお説を承りましたが、しごくごもつともの御意見でありまして、私も前からそのことを機会あるごとに述べておるのであります。要するに今御議論ポリスパワーと、ミリタリーパワーは判然と区別しております。しこうしていわゆる普通軍隊というのは軍事行動に使用する部隊であります。いわゆる戦争目的を持つた一つ部隊とわれわれは解釈しておるのであります。いわゆる軍事力であります。ところがただいまの保安隊は、保安庁法第四条によつて明白に規定されております通りわが国の平和と秩序を維持して、人命と財産を保護するために、特別の必要ある場合にその行動に出ずる、これははつきり規定されておるのであります。いやしくもその規定された範囲内において使用すべき部隊でありますれば、これは純然たる、いわゆる植原委員仰せのごときポリスパワーでありまして、ミリタリーパワーではないのであります。ここははつきりわれわれは区別いたしておるような次第であります。(並木委員憲法第九条第二項の解決は」と呼ぶ)憲法第九条第二項の解釈は、私は追つて申し上げます。今は植原委員に対してお答えしておるのであります。
  10. 植原悦二郎

    植原委員 これは私は国会議員としてもまじめに研究していただきたい。ポリスパワーと、ミリタリーパワーというのは、今日截然と区別してかかるべきもので、これが紛糾するところにいろいろな誤解が生ずる。今までの国会委員会における質疑応答混乱は、主としてそれによつてつているので、ここにこれを明瞭にしておきたいと思つて質問いたしたのでありますが、ポリスパワーミリタリーパワーを区別する、軍隊軍隊にあらざるかは、その目的によつてきまるのだという御答弁を得て、私はその通りであるべきだと思います。  次に私は外務大臣にお尋ねいたしたいのでありますが、ただこの場合に、保安庁長官がじきにお帰りになるようで、それに関連する質問があるならそれにお譲りして、あと外務大臣に御質問してもよろしいと思います。
  11. 栗山長次郎

    栗山委員長 ひとつそうおとりはからいください。安東義良君。
  12. 安東義良

    安東委員 木村大臣にお尋ねいたします。ただいま植原委員質問に対して憲法第九条は、ポリスパワーならば武器いかんを問わず、日本で保有してさしつかえないという御解釈のように伺つたのでありますが、この点について誤解はございませんか。
  13. 木村篤太郎

    木村国務大臣 いかなる力でも持つていいということは私は申さないのであります。いわゆる憲法第九条第二項におきまし、戦力は保持してはならぬということでありますから、この戦力に至らざる範囲において、われわれはポリスパワーを持つべきものである、こう解釈しております。
  14. 安東義良

    安東委員 前回の御答弁におきまして、大臣は当然国家自衛権を持つておるのであるから、自衛力は持つてもよろしい、しかし戦力は持つてはいけないのだ、これが憲法の精神だというふうに御説明なつたように記憶いたしております。しからば自衛力というものは一体どういうものか、これについて一応御返事願いたいと思います。
  15. 木村篤太郎

    木村国務大臣 自衛力は読んで字のごとく、みずから守り得る力であります。いわゆる間接侵略たると直接侵略たるとを問わず、これに対して国家を守つて行く。またこれを広くいえば、国家一種発達、発展すべき力ともいうべきものであろうと思います。あらゆる面においてみずからが、みずからの国を守つて行こうという、この力であろうと私は解釈しております。
  16. 安東義良

    安東委員 はたしてしからば、自衛力のうちには、武力も入つておることがあり得るということはお認めであろうと思いますが、いかがでありますか。
  17. 木村篤太郎

    木村国務大臣 武力定義によりますが、これはいわゆる戦力に至らざる力であります。必ずしも武力ばかりではありません。たとえば私はきようも予算委員会で申し述べましたように、国家通信機関であるとか、あるいはその他各方面において、いわゆるわれわれのみずからの力でもつて守るべき総合力と、こう考えておるのであります。
  18. 安東義良

    安東委員 ただいま私の聞き違いかとは思いますが、武力はこの場合戦力同一であるのかないのか、もう一ぺん明確に教えていただきたい。
  19. 木村篤太郎

    木村国務大臣 武力戦力とは同一でないと解釈しております。しかし、武力が高度に発達をいたしますれば戦力になることがあるのであります。
  20. 安東義良

    安東委員 それははなはだおかしな解釈であります。しからば憲法第九条における、武力をもつて威嚇しないとか武力行使しないということは、今大臣の言われるような意味合いにおいて使つておるものでありますか、どう政府は御解釈なさいますか。
  21. 木村篤太郎

    木村国務大臣 これは、平たく申しますれば一種軍事力であります。
  22. 安東義良

    安東委員 平たく言えば軍事力とおつしやいますが、一体自衛力武力が入つているのですか、入つていないのですか。
  23. 木村篤太郎

    木村国務大臣 武力が入つていないとは言われません。その武力定義いかんによりますが、入つていないとは言われません。
  24. 安東義良

    安東委員 しからば、日米安全保障条約におきまして、内外よりする侵略に対して、日本自衛力を漸増するということをアメリカに期待させた、この自衛力という問題について、私は先日、外務大臣の私見と申しますと語弊があるかもしれませんが、政府見解を離れて外務大臣自身のお考えを伺つたときに、外務大臣は、これは武力よりもやや広い観念ではなかろうかと思うということを言つておりましたが、私はこれは妥当な考え方であろうと思う。確かにその中には武力が入つておる。武力が入つていないような自衛力アメリカに期待させるということは無理であります。そんなことは考えられことであつて武力が入つておるというふうにお考えになることは正しいことであろうと思います。それが社会通念に合致することであります。しかし、同時にそれは戦力に至らないものであるという御解釈でありますならば、日米安全保障条約においては、戦力を持たないということをアメリカに理解されておつたのか、その点をお伺いいたしたいのであります。
  25. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 アメリカ側は、要するに日本憲法はよく内容を存じております。憲法に違反するようなことはむろんこの条約中につくる考えはありません。われわれの方もむろんそうであります。従いましてその点は明白に了解されております。
  26. 安東義良

    安東委員 それならば外務大臣にお尋ねいたしたいのでありますが……。
  27. 栗山長次郎

    栗山委員長 安東さんに申し上げますが、木村国法大臣の方にひとつまとめていただきたいのですが……。
  28. 安東義良

    安東委員 それでは木村国務大臣にお伺いしてもさしつかえありませんが、それならば、アメリカ軍の撤兵問題に関して、この日米安全保障条約には御承知の通り規定がございます。そのときには日本自衛力ということをうたつております。これにはおそらくアメリカとしては日本戦力ということを考えておるに違いないと思う。そうすると、同じ条約内において解釈を異にするような問題が起つて来ると私は思うのですが、その点についてどうお考えでありますか。
  29. 木村篤太郎

    木村国務大臣 ただいま岡崎外務大臣からお答えがあつた通りアメリカ側においても日本憲法については、十分理解を持つてつたことでありましようから、いわゆるこの戦力を保持させるというようなことは考えていないと私は了承いたします。
  30. 安東義良

    安東委員 戦力に至らないいわゆる武力というものを想定して、そうして戦力がないという場合に、現実の問題として、日本の国防が全きかどうか、アメリカがそういう場合にしからば撤退いたしましようというようなことを言い得るものであるかどうか、私は非常に疑問に思う。そういう解釈は、私はむしろ国家を誤まるようなことになりはせぬかということを憂えるのであります。しかし、この点は条約解釈問題でありますから、今しばらくこれを保留いたしますが、先日のお話で、戦力というのは人的、物的に組織化された総合的であるというふうに御説明なつたように記憶いたしております。ところが、この陸海空軍その他の戦力といつた場合のその他の戦力というのは、一体何をお考えになつているのでありますか。
  31. 木村篤太郎

    木村国務大臣 陸海空軍その他の戦力と一まとめに言つて、私は、いわゆる物的、人的に総合されてこれを軍事的に用いられるべき力と、こう解釈しておるのであります。
  32. 安東義良

    安東委員 その他の戦力ということの解釈でありますが、私は、その他の戦力というのは、本来は戦争目的を持つていなくても、実質的にこれと同様な実力を持ち得るもの、それをさすのではなかろうかと思うのでありますが、いかがでありましようか。
  33. 木村篤太郎

    木村国務大臣 私は、いわゆる憲法第九条第二項にいつてあるのは、大きな一つ軍事力考えておるのであります。従つて陸海空軍その他の戦力といえば、繰返して申します通り、いわゆる編成装備、その他各般から見て、近代戦を遂行し得るような大きな軍事の力と解釈しておるのであります。
  34. 安東義良

    安東委員 先ほど武力の問題で、これは軍事力だというふうに御説明があつたように思いますが、しからば今の御説明とは少し矛盾して来るように私は解釈いたすのであります。ことにまた、戦力ということの解釈が、仰せのような意味合で、はたして客観的に妥当であるかどうかということを考えさせられるのであります。近代戦争を遂行すると言われますが、一体近代というのはいつからのことでありますか。近代というのは、最近世、この数年間の状況をさして言われるのでありますか、あるいはまた百年、二百年前、普通にいう近代をさしておられますか。まずその近代戦解釈から伺いたいと思います。
  35. 木村篤太郎

    木村国務大臣 これは常識で御判断を願えば、きわめて明瞭であろうと思います。いわゆるこの憲法制定当時から見まして、その当時を基盤にしてわれわれか考えているのでありますから、数百年、数十年前のことは考えておりません。きわめて近接した時期に有るものとわれわれは考えておるのであります。
  36. 安東義良

    安東委員 それならばやはり最近世のことでありましようが、そういたしましても、いつぞや木村大臣議会において、原爆やジェット機がなければ近代装備ではない、従つて近代戦争を遂行するに足る戦力ではないというような御説明があつたように記憶いたしておりますが、今でもまだそういう観念を持つておいでになるのでありますか。
  37. 木村篤太郎

    木村国務大臣 私は、ジエツト機原爆を持たなければ戦力ではないと申したのではありません。現代の国家において、原爆も持ち、またジエツト機も持つている国があるのだ、そういうような大きな装備を持つた国があるのである、それから比較してその当時の保安隊は、鎧袖一触まつたくものの役にも足たぬようなものだと私は言つたのであります。つまり比較の問題でありまして、ジエツト機原爆を持たなければ戦力ではないと吉つたことはないのであります。
  38. 安東義良

    安東委員 そういう大規模の軍隊に対して、非常に劣勢であつて問題にならないのであるから、つまりは、装備が非常に貧弱であつて、また人数もきわめてわずかなものであるから、こんなものを戦力というのは間違つておるという御解釈のようでありますが、それならば、やがて日本保安隊も重装備にかわつて行くだろうと思います。現にそういう傾向があるように私どもは漏れ承つております。重装備を持つた場合は、はたしてこれがさほど貧弱な人的組織でありましようか。
  39. 木村篤太郎

    木村国務大臣 多少の重装備を持つたからといつて、これをただちに戦力だというべきものではないと私は思う。いわゆる重装備の程度、それいかんによります。またこれに基いての人的編成、すべて総合したものをわれわれは考慮に入れなくてはならぬと思います。単にある種の重装備を持つたからといつて、これをもつてただちに私は戦力だとは言えないと思います。
  40. 安東義良

    安東委員 多少の重装備ならさしつかえない、たくさんの重装備を持てばそれが戦力になるという御解釈のようでありますが、近ごろ新聞あたりにも出ておりますように、北海道に対して、いわゆる名前は非常に複雑なる名前をつけてあつて、私ども記憶にとどまらぬほどややこしいのでありますが、実質的には砲兵、歩兵隊工兵隊等を置かれるようであります。しかもそれは総合的にまとまつた力として、軍隊的な作業をなし得ることは明らかであります。まさかこの重装備を持つたものが、ただ単純な、北海道における革命とか、内乱だけを目標としてつくられるものでないことは、私は明らかであろうと思う。これは常識が許さないことであると思う。何となれば、現実北海道においては、あるいはソ連方面よりする外敵侵略があるかもしれぬという危険にさらされておることは、これはまたほとんどの人が知つておることであります。従つてそういう国際環境において、そういう装備を持つたものを置くということは、これは、名前は何であろうとも、明らかに一つ軍隊であるというふうに解釈することは、あながちこれは牽強附会の説ではないだろうと私は思うのでありますが、これはいかがでしようか。
  41. 木村篤太郎

    木村国務大臣 私はしばしば申し上げました通り、ただいまの保安隊は、わが国の平和と秩序を保持するために設けられたものでありまして、その線に沿つてすべて勘案して、これを編成しておるのであります。
  42. 安東義良

    安東委員 かつて東亜戦争のときに、日本の軍部の一部の者は、竹やりででも戦えと言つたのであります。そうして近代装備を持つたアメリカ軍隊に、これをもつて勝ち得るとまで、国民の前に宣伝したことがあるのであります。はたしてしからば、竹やりでさえもが一つ武器になる、それが外国に対して訓練せられたる部隊編成もとにおいては、ある程度において有効な働きをなし得るということを証明しておるのであります。従つて武器の大小をもつて、あるいはその整備の軽い、重いをもつて戦力かいなかをわかとうとするような試みは、私は今後日本憲法を改正しない限り、絶えず紛争の種となるものと思いますが、いかがでありましようか。
  43. 木村篤太郎

    木村国務大臣 しばしば私が繰返して申し上げました通り、その装備の量、質、これらを総合して、いわゆる近代戦を遂行し得る能力を持つたものが戦力であります。今仰せ通り竹やりでも持つて敵を防いだらどうかという人のあつたことを私も記憶しております。しからばその当時は、竹やり武器であつたのか、一面からいえば武器であつたでしよう。しかしそういうものをいくら持つたところで、戦力にはならないのであります。
  44. 安東義良

    安東委員 私は、先ほど植原委員の言われましたように、戦力かいなかという問題は、むしろ目的によつて第一番に考うるべきものであろうと思うのです。それが妥当なのです。どこからどこまでという限界線を明瞭に引いて、重装備もある程度までよろしい、ちよつと線を越えればそれが戦力になるというような解釈では、私は世の中が納得せぬと思います。憲法が不備であるならば、憲法改正について政府は真剣に考えるのが当然である。それを強弁し、詭弁を——というと失礼かもしれませんが、少くともそう聞えるようなことをいつまでも繰返すということは、日本人の真の国防観念の発露を妨げることに相なるであろうと思います。今日よく吉田総理は、国民の愛国心が盛り上るのを待つて、その上で再軍備をするのだというようふうに説いておられるのでありますけれども、一体愛国心——今日愛国心を叫んで人には左の方の人もあります。あるいは共産党にもあります。彼らは言う、武器を持たぬこと、絶対に軍備をせぬことが国を愛することだ、こう言つておる。そうして青少年はこの言葉にとうとうとして引かれておる。これでいいのか。ただ愛国心が盛り上つて来るのを待つておるというようなことをいつまでも標擁して、しかも国防というものが何であるかということについては、明確なる政府見解も表わさない。しかも戦力についてごまかしの定義をいつまでも固執し、それでなおかつ国民に対して、再軍備をやるのかわけがわからぬ。少くとも再軍備日本にとつて将来は必要なら必要であるということを、よく国防の精神に立つて国民に理解させるということが、現在の真の愛国者の言うことだろうと私は思う。その道に出られないで、ただいたずらに愛国心の盛り上るのを待つておる。しかもごまかした態度で行くということは、私はまことに遺憾であります。この点について大臣の御見解を承りた。
  45. 木村篤太郎

    木村国務大臣 われわれといたしましては、今は国民の経済力を培養すべき時期だろうと考てておるのであります。各方面においてわれわれは生活の安定を期して、国民をしてゆたかな生活を行わしめ、その上に愛国心の盛り上るのを待つておるのであります。もちろん直接侵略に対してわれわれは防衛しなければなりません。この意味において、今仰せのごとく、われわれの力によつてわれわれの国を守るのだという愛国心の盛り上ることを、これはわれわれ当山期待をしておるのであります。その精神と、そうしてわれわれの国の力の発展と相期して、初めて日本の国の真の防衛の力がここに盛り上るものと考えておるのであります。何によりもわれわれはさしあたつて内地の治安の確保、平和の維持、これに全力を注いで行きたいと考えておるのであります。
  46. 松田竹千代

    ○松田(竹)委員 関連して。ただいま安東君と保安長官の応答の点でも、もうすこしはつきりできるものなら、はつきりさしてもらいたいと思うのは、国民常識から考えると、自衛力というも武力というも、そういうことは一つも区切つていません。現在の程度では、自衛力ということでも済んでいるかもしれぬが、しかしタンクを持ち、バズーカ砲を持ちしておる程度なら、これはやはり軍隊ではないかという考をもつている人々もある。今保安長官の御答弁を伺つておりますと、これが数なり量なり質なり高度の近代装備を持つたものならば、これは戦力になるというお話、その度というのは一体どこですか、その度というのは、たとえば数ならば今の自衛軍は何万くらいまでは自衛軍でよろしい、また近代装備からいうと、原子爆弾でも持つていなければ戦力と言わないのか、あるいはそんなものは持つていなくとも、軍艦なり飛行機なり、あるいは非常に高性能の武器を持つていれば、それはもう認めるのか、その度というものを数の上では何十万まではこれは自衛軍、これ以上は自衛力とは言えない。また武器からいうとどの程度までは自衛力で行くのだ、それ以上はいけないのだという点について、保安長官の御見解はつきり承りたい。
  47. 木村篤太郎

    木村国務大臣 その戦力に至るか至らぬか度合いを示せという御質問のようでありますが、それは数字ではつきり示すことは私はできぬと考えております。まつた国民のいわゆる常識に訴えて、これを見て行くべきものだと思います。すなわちわれわれの見解によりますと、いわゆる一種近代戦を遂行し得る一つ軍事力と申しますと、その標準は、その与えられたる日本の地位、あるいは現在の与えられたる国際情勢、その他外国軍隊の力、そういうものを一般的に総合判断して行くべきものだと考えております。たとえば平和条約会議に出席しましたロシヤの代表は、日本において一種の防衛力と申しましようか、一種の力を持たせてもいいではないか、いわゆるわれわれが考えますと保安隊のようなものでありましよう。これは向うの真意はわかりませんけれども、それにおいて、およそ日本においては陸軍としては十五万、あるいは海軍においては数としては三万五千、飛行機五百台とか、こういうことを言つております。詳しい数字はわかりませんけれども、ある種の、一つの力を日本に持たせればいいではないかというようなことを言つておる。その基盤から申しましても、われわれはバズーカ砲を持ち、あるいはタンクを持つたから、それをもつてただちに憲法第九条の戦力とは言えない、こう考えておるのであります。
  48. 松田竹千代

    ○松田(竹)委員 ロシヤ側の意見からしても、数の上で陸軍は十五万、海軍は三万というくらいの程度ならばよろしい。これから自衛力もだんだんと漸増し、これが二十万となり三十万となつたときは、いかがでしようか。
  49. 木村篤太郎

    木村国務大臣 それはそのときの情勢いかんによります。また外国軍事力にもよるのでありまして、今申し上げましたロシヤの代表の言われた、その程度は必ずしも当つておるとは私は申しません。ただそういうことを彼も言つておるではないか。現にロシヤにおいても、御承知の通り外国と戦うべき厖大なる軍隊を持つております。しかもこれ以上に、一番下の、いわゆる日本ポリスパワーと申すべき警察も持つております。その中間において、内地の反乱その他に備えて、相当数のいわゆる保安隊を持つております。この保安隊は飛行機も持ち、また戦車も持つておるのであります。いわゆる三段階になつておるのであります。そういうことを考えてみますと、私は日本保安隊がバズーカ砲を持ち、戦車を持つたからといつて、ただちにこれをもつて憲法第九条の戦力とは言えない、こう私は考えております。
  50. 松田竹千代

    ○松田(竹)委員 大体保安長官の気持はよくわかりました。これがさらにだんだんとふえて、相当、量において質において、ロシヤ側でも持たしてもいいではないかと言われる程度以上のものになれば、それはそのときの国内の情勢、国民の気持その他によつて、やはり戦力といわなければならぬようになるというふうにお考えになるのではないですか。
  51. 木村篤太郎

    木村国務大臣 つまり増したところの数量、その他各般の事情からこれを総合して判断すべきものだろうと考えております。
  52. 松田竹千代

    ○松田(竹)委員 そうしますと、憲法の条章に戦争放棄、武力認めぬということになつておるから軍隊とは言えないので、そういうものがなければ、はつきりと国民の納得の行きやすいように軍力、戦力軍隊ということで行きたいのだという政府の腹でございますか。
  53. 木村篤太郎

    木村国務大臣 これは御承知の通り憲法に明定されておるのであります。いわゆる国権の発動たる戦争武力による威嚇、武力行使は、国際紛争解決の手段として、永久にこれを放棄するという明文を設けておるのであります。いわゆるその当時の気持としては、この憲法の前文にもうたわれておりますように、われわれは世界の平和をこいねがうのだ、国際社会の信義と公正に信頼して、われわれの安全と生活をしようではないか、こういうふうに思つておるのであります。そのもとにこの憲法はできたのであります。われわれは前に軍部が行つたような侵略戦争というものは、永久にこれをやるまい、この精神をはつきり私はうたつたものと考えております。しかし憲法によつて日本はみずから守るべき力までも禁止したものではないと、私は断じて疑いないと思います。いわゆる自衛力というものは、どこまでも日本国家は持つておるのであります。ただただこの誤れる考えからして——その自衛力範囲をどこに求めるかと申しますと、要するに日本において戦力を持つてはいかぬのだ、戦力を持つとすれば、たとい戦争放棄の条文を明記しておつても、あるいはこれを利用されるようなおそれがなきにしもあらずと思いますから、戦力を持つてはならぬ。しかし自衛力はどこまでも独立国家としてこれは禁止されておるわけでもない、放棄しておるわけでもないのであります。その範囲内において、われわれは警察力を持つて一向にさしつかえない、こう考えております。
  54. 松田竹千代

    ○松田(竹)委員 ただいまのお答えは、私の質問お答えがないようでありますが、憲法の条章にはつきりしておることは、私も心得ております。私の申し上げたのは、政府考え方、保安長官の考え方として、憲法の条章に縛られておるのだ、これがなければ、日本自衛力なんかとややこしいことを言わないで、戦力と言いたいのだ、軍事力と言いたいのだ。それが言えない現在だから、そう言うておらないのだが、これがだんだんと漸増して行くならば、やはり軍隊認めざるを得ないような状態になれば、それは軍隊と言うべきだ。おつしやるように、憲法においては、永久に放棄すると書いてあるけれども、明治憲法も千古不磨の大典とわれわれは叫んで来た、それが一朝にしてついえてしまつた。人間のこしらえたものだ、いつ何どきかえられるかわからぬ、かえなければならぬかもわからぬ。そこでその条章があるために、今縛られておるが、これがなかりせば、堂々と軍隊と称してやるのだというお考えではないのかということを聞いておる。
  55. 木村篤太郎

    木村国務大臣 これは国民の総意が、今の憲法ではいかぬのではないか、日本は将来軍力を持たなければならぬのではないか、国民の総意がそういうことになりますれば、それはもちろん憲法改正の手段によつて戦力を持つに至ることは当然であろうと考えます。
  56. 栗山長次郎

    栗山委員長 関連質問も多いことと存じますけれども植原委員の譲歩によつて木村国務大臣に対する質問を固めて進行いたしておりますので、通告順によつて伺いますが、その方々で木村国務大臣に対する質問があられましたら、先にお進め願います。黒田寿男君、松岡駒吉君、加藤勘十君、中村高一君、いかがでしようか。
  57. 黒田寿男

    ○黒田委員 私は三十分くらいかかりますが大臣の御都合はいかがですか。
  58. 栗山長次郎

    栗山委員長 それでは黒田さんに御相談いたしますが、この次にお願いできませんか。
  59. 黒田寿男

    ○黒田委員 そういうことにいたします。
  60. 栗山長次郎

    栗山委員長 それでは松岡駒吉君。
  61. 松岡駒吉

    ○松岡(駒)委員 自衛力であるとか、戦力であるとか、あるいはまた武力であるとか、自衛力ではあつて武力でない、再軍備ではない、それは戦力ではない、こういうようなお話でありますが、一昨日同僚高岡議員から保安庁の当局質問をいたしました際に、密輸船、あるいは日本で漁船等の保護に当る場合、相手から不当な扱いを受けても、その場合においては手出しをしないで、あくまで外交的な手段に訴えるのだということでありましたが、保安庁長官はそういう場合におきまして、たとえば密輸を計画した者、あるいはそれは日本人ではなくて外国人で密航を企てる者、あるいは日本の漁船が漁勞をいたしております際に、これを不当に拿捕しようとする、あるいは拿捕しようとするばかりでなく、これに武力をもつて威嚇を試み、あるいは事実上実弾を発射するようなことのある場合、日本の今借りようといたします船には、まだ当局からはつきりしたことをお聞きしないし、私ども見ておりませんが、すでに三インチ砲が装備されておるということを聞いておりますが、そういう場合にこれを見殺しにいたしまして、そうしてただ現場を認めて引返す、そういう御方針でおられますか、明確にこの点をお答えを願いたいのであります。
  62. 木村篤太郎

    木村国務大臣 きのう安東委員に、私はその点についてお答えしたはずであります。必ずしも見殺しにはいたしません。さような不法不当な行為は、私はそれを一つの海賊行為と見てよかろうと思います。そういうものに対しては、これは正当防衛権があるのでありますから、時と場合によつては、それはこちらから相当な手段を講ずるのが当然であろう、私はこう考えております。
  63. 松岡駒吉

    ○松岡(駒)委員 そうなつて参りますと、その種の事柄が発火点となりまして、国と国との間において望ましくない戦いが行われなければならないという事態が起り得るのでありますが、そういうことは起り得ないと長官はお考えになりますか。
  64. 木村篤太郎

    木村国務大臣 必ずしも起り得ないことはないでしよう。あるいはそれを契機として国際紛争になることがあるかもわかりません。この国際紛争が起つた場合において、われわれはあらゆる外交的手段によつてこれを解決して行きたい、こう考えておるのであります。
  65. 松岡駒吉

    ○松岡(駒)委員 大体この委員会は数回続いているが、私はこの委員会における質問応答を聞いておりまして、さつきも松田君から御質問がありました通りに、憲法があるから余儀なく自衛権ということに限定して、これが武力ではない、あるいは戦力ではない、こういうようなぐあいに、言いかえれば、禪寺の門に「葷酒山門に入るを許さず」という憲法が掲げてあるために、般若湯などといつて、実はどんどんお寺に酒を持ち込んでおる。(笑声)当局がこの厳粛な日本の防衛上の問題を扱うに際して、私が一口申し上げましても皆さんが失笑なさるような、それとまつたく同様な態度をもつてこの問題を扱われるがごときは、国民精神の上に、はなはだ悪い影響を与えるのではないか。道義の高揚などということも、しきりに現内閣によつて叫ばれておりますが、最も大切な憲法を禪寺の門に掲げてある「葷酒山門に入るを許さず」と同様な扱いをされるがごときは、はなはだよろしくないと思うのでありますが、これに対してどうお考えになりますか。
  66. 木村篤太郎

    木村国務大臣 われわれは厳粛なる憲法もとにいろいろな考えを申しておるのであります。この憲法解釈問題として、私は先ほどから答弁をいたしておるのであります。これがもしも憲法が現在の時勢に適しないということであれば、それはよろしくこの憲法の改正は、皆様の力によつてされるべきものと考えておるのであります。政府といたしましては、この憲法の存在する限り、憲法解釈問題としてこれを論ずるよりほかに道はなかろう、こう思うのであります。
  67. 松岡駒吉

    ○松岡(駒)委員 先ほど松田君の御質問に対してお答えになり、今もまた長官がお言いになりました通り国民憲法を改正するということを明らかに希望するに至るならば憲法を改正したい、こういうことをお言いになる。先ほどの松田君の質問は、もう速記録にある通りでありまして、憲法があるから余儀なく戦力でない、あるいは再軍備でないということを言うておるにすぎないので、憲法がなかつたならば軍備ということを考えるであろうということを長官は肯定された上に立つて国民憲法の改正を希望するに至るならばということをお言いになつたのである。このことは同時に、今日は国民憲法の改正を欲しないということを長官はお認めなつたことを意味するのである。従いまして、私の見解によれば、この長官の答弁の中に、すでに憲法違反であるということが明らかになつたと、私はさように考えるのでありますが、長官はどうお考えになりますか。
  68. 木村篤太郎

    木村国務大臣 私は憲法に反したような答弁はいたしておりません。国民が一般にこの憲法を改正すべきであるということになれば、これは憲法を改正して戦力を持てばよかろう、こう私は思うのであります。私どもはこの憲法の存在する以上、この憲法の条章に基いてわれわれもすべての施策をやる、またその上に立脚して今日戦力問題を論じておるのであります。決して憲法改正を認めるとかいうようなことは私は考えていないのであります。
  69. 松岡駒吉

    ○松岡(駒)委員 もう一つ政府からお出しになつておられる日本国アメリカ合衆国との間の船舶貸借協定説明書、これはさつきの植原さんのようなお考えも、私どもは賛成するかしないかは別として、できるでありましようし、先ほど来また意に満たない答弁ではあるが、当局の御答弁なんかを聞いておりまして、私のまず第一に——実は早くから尋ねたいと思つてつたのであるけれども、貸借協定をしようとするフリゲートという船が、これは明らかにいくさ船、艦船であつてフリゲート艦という称呼は国際的にも認められておる言葉である。日本においても、言うまでもなく、これはだれもが普通の商船などは思わない。かつてどもの少年時代から、日本の海軍の船が足りなくて、戦争中は商船にバラツク軍艦のごとき、六インチ砲なんか積んで、仮装巡洋艦などといつて、商船がちよつと武器を持つてもただちにこれを仮装の艦、いくさ船と称したのである。これは国際的な常識であり、日本人のすべてがかように考えておるのであります。そこで私はその議論に必ずしも賛成ではありませんが、植原さんの主張されるようなことも一応考えられることなのです。そこで一体長官の答弁されるようなことからしますと、これが巡洋艦であろうと駆逐艦であろうと、それは戦力でないということも長官の答弁によれば言い得るのである。従つてこの場合に、だれもが見てフリゲート艦と呼んでおるものを、こういう慣用語があるにもかかわらず、特に船舶貸与などと言うのは、ちようどこれは一方では酒だと言うし、一方では般若湯だと言うようなもので、船舶というような言葉を使つて、そうしてこれを議会に提案されるということは、一体どういう意味でございましよう。なぜいくさ船を船舶政府は言うのであるか。そういう点にも何だかうしろ暗いところがあるがためにこうしたのではないか。別にこれを艦船としたからというて国際的な疑惑を招く、船舶としたからというて、ああ、たいへんけつこうなことだ、これは平和的な呼称でたいへんけつこうだなんという——それこそそんな浅薄なものの考え方というものはあろうはずがないのだ。なぜ政府船舶なんという言葉を用いるのであろうか。この点を最後に聞いておきたい。
  70. 木村篤太郎

    木村国務大臣 これは必ずしも浅薄な考え方ではないのであります。この船はいわゆるパトロールに使つてつた船なのです。もちろん軍艦といえば軍艦と言えたかもしれませんが、要するにアメリカにおいてもコースト・ガードに使用される船なのであります。しこうしてかりにこれがいわゆる軍艦といたしましても、これは日本で軍艦として使うつもりではない、船舶として使うつもりであります。私はこういう実例を持つております。かつて私は大阪商船の台南丸という船に乗りました。台湾通いの船です。これはグラスゴーでつくられたりつぱなイギリスの軍艦であります。その軍艦が日本に来て、改造して、いわゆる人を運ぶ商船として使つてつた。それから瀬戸内海で何しておつた八重山丸ですが、私は記憶があるのですが、これは軍艦がりつばに商船として使われている実例であります。  これは日本に来て、いわゆるポリスパワーに役立てるために使うのでありますから、従つてこれを船舶としてわれわれが借り受けるのはごうもさしつかえない、こう考えております。
  71. 栗山長次郎

    栗山委員長 中村高一君。
  72. 中村高一

    中村(高)委員 今の松岡君の質問と同じようなことでありますが、今、長官は見方によつては軍艦と見てもよいのだが、船舶とも見られると言われるのでありますが、長官の見る軍艦と船舶との間には、何か具体的な区別でもおありになるのかどうか、その点をまずお答えを願いたいのであります。
  73. 木村篤太郎

    木村国務大臣 軍艦と船舶では全然相違をいたしております。区別があるのであります。軍艦は、要するに軍人が乗り組んで、そして将校がこれを指揮するものであります。しかしてその上に軍艦旗というはつきりした標章を掲げまして、いわゆる国際法に基いての軍艦としての権利を持つておる。商船においてはさような軍艦としての権利は持ちませんし、軍艦旗を掲げません。また軍人がこれに乗つて操縦するものでもありません。このようにはつきり区別があるのであります。
  74. 中村高一

    中村(高)委員 今度日本で貸与を受けますところのこのフリーゲート艦なりあるいは上陸用の舟艇というものがアメリカではこれを軍艦として——駆逐艦もしくは水雷艇というような同種のものとして使つてつたものを日本が借りるのでありますけれども、それでもこれを船舶と言い得るのかどうか。むろん長官の言われるように、改装してしまつて、たとえば三笠艦でも頭をみなもいで、大砲をみなとりはずしてしまえばこれはもう軍艦でも何でもないかもしれませんが、現にアメリカが艦艇として使用して、ことに日本に対する上陸のためにできたといわれる上陸用舟艇までも、それをそつくりそのまま借りて来て、これが船舶だと解釈をなさるかどうか、この点をお聞きいたします。
  75. 木村篤太郎

    木村国務大臣 日本において借りた以上は、軍事行動のために使用するのではないのであります。要するに警察の警備の用、すなわち沿岸警備、海難救助にこれを使用するためにあるのであります。使用目的から申しましても、全然軍艦とは違うのであります。
  76. 中村高一

    中村(高)委員 目的はよろしいのです。目的を聞いておるのではなくして、これはアメリカでは軍艦として使用しておつた古を借りるのかどうかの、現実の事実をお聞きいたしておるのであります。
  77. 木村篤太郎

    木村国務大臣 アメリカでは、今仰せ通りもと一種のいわゆる軍事用の目的に使用されておつたことがあるのであります。それと同時にまたコースト・ガード、いわゆる海岸の警備のために使つてつたのでありまして、しかもこの船は御承知の通り、十年前につくられた船でありまして、今の時代には、私からいえばものの役に立たぬ。いわゆる戦争目的には役に立たぬ船であります。しかもこれは日本において借り入れまして、今申し上げました通り、海洋警備、海難救助のために使用するのでありますから、全然前の使用目的とは異にしておるということを特に申し上げたいのであります。
  78. 中村高一

    中村(高)委員 装備は変更しないでそのまま日本で使うという事実、これはどうでありますか。
  79. 木村篤太郎

    木村国務大臣 御承知の通り、この船は無償でアメリカから貸与を受けるのでありまして、返すときには原状のままで返さなければなりません。従つて装備はそのままで置いておくのであります。
  80. 中村高一

    中村(高)委員 今後保安庁では、この程度で沿岸警備に十分だとは考えておらないと思うのでありますが、今後もさらに増強をして、あるいはアメリカから借りて来るのか、日本でつくるのかわかりませんが、一体そういうような計画があるかどうか、お聞きいたしたいのであります。
  81. 木村篤太郎

    木村国務大臣 この際申し上げておます。われわれといたしましては、一刻も早くほんとうに日本の海岸の警備、海難救助に専用される船をつくりたいのであります。しかし今の日本の財政上、さようなことは許しません。やむを得ずアメリカの好意によりまして、この船を借り受けるのであります。従いまして、アメリカのいろいろな考え方もありましようが、六十八隻、これは最高であります。契約期間は五箇年、これはさらに五箇年間は契約はできるわけでありますが、かような次第でありまして、これ以上にわれわれはアメリカから借りるというような考えは毛頭ありません。しかしながら御承知の通り日本海岸線アメリカに次いでたくさんの長い線を持つておるのであります。これに対して海岸の警備、海難救助に当るのはなかなか容易なことではありません。ただいま警備隊で持つておる船では私は不足であると考えております。国家財政の許す範囲において、ほんとうにこれらの任に当るべき船を一日も早くつくりたいと考えておる次第であります。
  82. 中村高一

    中村(高)委員 そうすると、政府は今後も予算の許す限りにおいては、もつと艦艇を増強して行く意思のあるということは、長官の言葉といたしましてとつてさしつかえない言葉だと思うのでありますが、今度の船舶貸与を受けることについて、五箇年という期限を切つたのには、何か根拠があつて五箇年としたのでありますか。
  83. 木村篤太郎

    木村国務大臣 これは事務当局の方からお答えいたしましよう。
  84. 岡原昌男

    ○岡原政府委員 上陸支援艇及びフリゲートの壽命等をも考え合せまして、一応の期限を五箇年とし、さらにそのときの状況考え合せて、五年の延期ができるということにいたしたわけであります。
  85. 中村高一

    中村(高)委員 この船はいずれも、もう戦闘などには使えないようなボロ船らしいのでありまして、警備に十分だという速力も持つていないということも聞いておるのでありますが、借りるならば、なぜもつと速力の早い有力な船を借りないで、こんなボロ船をありがたがつて借りて来なければならないのか。
  86. 木村篤太郎

    木村国務大臣 これは相手方のあることであります。われわれといたしましては、相当の速力を備え、また整備した船を借りたいのはやまやまであります。それはこちら側の意見だけではいけないのであります。どうかこういう船は一日も早くアメリへ返して、新しいりつばな船をおつくりくださるように、私はこの機会において議員諸君にお願いいたします。
  87. 中村高一

    中村(高)委員 この程度で……。
  88. 栗山長次郎

    栗山委員長 黒田、加藤両委員か譲歩せられましたので、次の通告順今村忠助君でありますが、今村委員木村長官に対する質問がありましたらば御発言を願います。今村忠助君。
  89. 今村忠助

    今村委員 先ほど来各委員質問に答える政府当局答弁を聞くと、どうもはつきりしないのであります。つまり数量の度合いに対して、国民の声の程度であるというような御答弁のようでありますが、私はそういう問題でなくて、日米安全保障条約というものは、それ自体が日本に再軍備する形というものを認めておらぬ。と言うと簡単な言い方でありますが、この日米安全保障条約の間には、日本憲法を改正して軍備を持つというようなことは、不可能であるというふうに考えるのであります。そして今国会承認を受けて日本国際連合に参加しようとしておるのでありますが、国際連合に参加できる機会があれば、これはもう当然国際間の義務として、日本はある程度の武力も持ち、そして国際間の義務を果して行かなければならぬ。私はここに至つて初めて憲法の改正の問題が起きて来るのだ。あるいは個人的かもしれませんが、こういうように考えておるのであります。ところが政府といいますか、長官の答えるところは、つまり国民の声が高まつて来るならば、日米安全保障条約中といえども憲法を改正して軍備を持つ気があるのかどうか、これをまずはつきりしてもらいたい。
  90. 木村篤太郎

    木村国務大臣 国民が真にこの憲国を改正しなければならぬということに相なりますれば、それは国民の意思に従うべきことは、私は当然であろうと思う。外国いかんにかかわらず、そうなくてはならぬと考えております。
  91. 今村忠助

    今村委員 そうなると、国民の声の度合いをどうしてはかるか、こう言いいのであります。それはちようで数量の度合いをどう引くかということと、ほぼ似たことになると思います。私が今申す日米安全保障条約の間、言いかえれば、国際連合にまだ参加しない間でも、国民の声が高まつて来るならば、憲法を改正して軍備をするのか、そこをもうちよつとはつきり聞きたいと思います。
  92. 木村篤太郎

    木村国務大臣 今申し上げました通り、この問題は、一つ国民の意思にかかわるべき問題であろうと思います。その時期の問題ではないと考えております。
  93. 今村忠助

    今村委員 そういたしますと、国会承認を受けて今国際連合加盟のことを希望しておるわけでありますが、もしも国際連合加盟が認められて来た。しかるに国民の声は再軍備反対の声が強い、国際連合加盟後においては、当然集団安全保障条約等にも参加しなければならぬ義務もできて来る。そういうような場合でも、国民の声が弱い。再軍備反対の声が強いという場合には、憲法の改正をせずしてその国際連合の義務を果す気があるかどうか、これを聞きたい。
  94. 木村篤太郎

    木村国務大臣 国際連合に入つた以上は、国際連合の義務を果すのは当然であります。しかしながらその義務といえども日本憲法に許された範囲内において、日本が義務を履行すればよろしいわけであります。憲法を侵してまでのその義務をわれわれは履行すべき考えは毛頭ないのであります。従つてその義務を果すべく、憲法を改正しなければならぬということが国民の総意であるとすれば、これはその国民の総意に従うべきであろうと思いますし、まだ早しといえば、これまた国民の総意によつてそれに従うべきは当然であろう、こう考えております。
  95. 今村忠助

    今村委員 私はその点はあと外務大臣に聞きます。
  96. 栗山長次郎

    栗山委員長 福田昌子君。
  97. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 一つだけお尋ねしたいのでございますが、武力とか軍事九とか、いろいろ保安庁長官の御答弁を承つておりましたが、よく理解でき云いものでございますから、ごく常識的なことでお尋ねいたしたいと思い参す。保安庁長官と申しますれば、国内治安また外来者の侵入の影響ということを考えまして、そういつた意味の保安関係のお仕事をしておられると思うのであります。そうなりますと、外国の事情ということをよく知らなければいけないわけであります。保安庁長官の御見解からいたしますと、今日世界各国を見まして、一体保安庁長官がお考えになつておられるような軍備を持つておる国というものは、どういう国があるかということを、はつきり御指摘願いたいのでございます。
  98. 木村篤太郎

    木村国務大臣 世界のいわゆる大国といわれる国は、すべて私はわれわれのいう戦力軍備を持つておるものと考えております。
  99. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 その国の名前をここで御指摘いただきたいのでございます。
  100. 木村篤太郎

    木村国務大臣 まず代表的なものはアメリカでありましよう。あるいはソビエツトでありましよう、中共でありましよう。イギリスでありましよう。
  101. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 そのあとの国は今日軍備力を持つてないと考えてよろしゆうございますか。
  102. 木村篤太郎

    木村国務大臣 必ずしも軍備力を持つていないとは申すことはできません。
  103. 栗山長次郎

    栗山委員長 政府委員に申し添えます。軍備を持つておる国の表を後刻出してください。  松田竹千代君、木村国務大臣に対する御質問がございますか。
  104. 松田竹千代

    ○松田(竹)委員 私は質問はいろいろありますけれども、別に先を争つてやるものではありません。一番あとでよろしゆうございます。但し議事進行の点から申し上げますと、ひんぴんとしてこの会を開いてもらわないと、皆さんお済みにならぬと思います。
  105. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 先ほどちよつと落したのですが、私、軍艦と、ここに問題になつております船舶との区別がはつきりよくわからないのであります。先ほど長官の御説明によりますと、軍艦と船舶とは、はつきりした明確な規格があるということをおつしやつたのでありますが、またいろいろな御質問に対する御説明を承つておりますと、フリゲート艦を日本で借りて使います場合は、中の装備はここにあまり変更しないというような御答弁を受けたのでございます……。(「使用の目的が違うのだ」と呼ぶ者あり)軍艦というものは、使用の目的だけで違うと解釈してよろしゆうございますか。装備はいかにしていても、使用目的さえ違えば、軍艦あるいは船舶とかつてにこちらで名前をつけてよろしうございますか、そういうふうに解釈してよろしゆうございますか。
  106. 木村篤太郎

    木村国務大臣 先刻申し上げましたように、軍艦と申しますと、軍旗を掲げまして、国際法上いわゆる軍艦としての権利を持つわけであります。船舶はさような権利を持ちません。しかも乗組員が全然違う。軍事力に用いられますから、軍の者がこれを指揮し、しこうして乗組員もみな軍人として取扱われることになるのであります。
  107. 福田昌子

    ○福田(昌)委員 御説明はよくわかるのでございますが、アメリカから借りますところのフリゲート艦のことでございますが、装備も返すときはそのままにして返さなければいけないというような御説明でございましたので、おそらくお借りになりましても、この装備を、軍事的あるいは武力的な装備かどうか存じませんが、それを全部こわして、普通の船舶の内容と同じように日本で改造する御意思はないであろうと認めるのでございますが、そういたしますと、装備はほとんどアメリカから借りたままのフリゲート艦の装備であるということになりまするならば、これは日本でかつて名前船舶とつけるということは、これは世界共通どこでも通用する常織なのでございましようか、そのことを承りたいと思います。
  108. 木村篤太郎

    木村国務大臣 それは私は世界に共通する常織だと考えております。全然使用目的を異にし、しかも今言うように軍艦としての権利はこれを持たないのであります。一種のいわゆる公船としてこれを取扱うべきものであろうと考えております。
  109. 並木芳雄

    並木委員 私は沿岸警備を強化することは大いによろしい、また必要だという見地からの質問でありますが、先ほど長官の答弁を聞いておりますと、戦力武力とは違いがあ出る。私はかつてやはり長官にお聞きしたと思うのです。そのときは武力戦力は同じようなものだ、こういう答弁をされたと記憶しているのです。そうすると戦力武力が違うのであると、ここに疑問が起つて参りますのは、結局このパトロール・フリゲート武力の中に含まれて来るのではないか、長官の言われる憲法第九条の戦力ではないが、武力の中に含まれて来るのではないか。武力の中に含まれて来るならば、この第九条第一項で武力行使国際紛争を解決する手段としてでなければよろしい。つまり自衛力の発動であるならばよろしいということになつて来ると、一衣帯水朝鮮の動乱などに、これが日本を守るための自衛権の発動であるとして、上陸などに使われるのではないか、また上陸支援艇などという名前がついているから、なおこういう疑問も出て来るわけです。この間から吉田総理、岡崎外務大臣の本会議における答弁などを聞いておりましても、また施政方針などを聞いておりましても、かつては朝鮮の動乱というものが日本に及ぼす影響は、間接的のものであるといふうに、これはニュアンスかもしれませんが、われわれは問いおりましたけれども、今度はそれがかなり強くなつて来ておる。そうして直接影響を及ぼす。しかもそれは累卵の危うきであるというような表現を使われておるようなところを見ますと、どうも最近の保安隊といい、海上警備隊の強化といい、いよいよ朝鮮の動乱が急迫した場合には、これが自衛権発動の名のもとに出動をさせられるのではないかという疑いが濃くなつて来ておるのです。ですからその疑いを一掃していただきたいと思います。
  110. 木村篤太郎

    木村国務大臣 さような疑念は全然ありません。御承知の通り保安庁法にごらんくださいましてもきわめて明白でありますように、警備隊日本沿岸警備、そうして海難救助のために行動することになつておるのであります。このアメリカから借ります船にいたしましても、この目的範囲内において使用するのであります。しかしながら今申しましたように、警備する以上は、海賊行為があつた場合には、これが日本の漁船なんかを救護するのはます。
  111. 並木芳雄

    並木委員 長官は保安隊及び海上警備隊は、憲法第九条の第二項にいう戦力ではないけれども、第一項にある武力であるとはおつしやいますか。
  112. 木村篤太郎

    木村国務大臣 さようには考えておりません。武力ではありません。
  113. 栗山長次郎

    栗山委員長 ただいま出席しております政府側の者を申します。岡崎外務大臣中村外務政務次官、下田条約局長、倭島アジア局長、保安庁側は木村長官のほか、岡田保安庁政務次官、増原保安庁次長、高辻法制局第一部長であります。
  114. 並木芳雄

    並木委員 先ほど植原さんが質問されているときに、私はちよつと横からお尋ねしようと思つたのですが、長官は憲法第九条の第二項にいう「戦力は、これを保持しない。」という第二項は、第一項の前段を受けられるのですか。それとも——植原さんが引用された中には、「国際紛争を解決する手段としては、」という前項の後段の方を引用して長官に質問されたのです。そのとき長官としては、御説しごくごもつともととかなんとかいう、そういうような表現で言われましたので、それでは長官は第一項の後段の品品的のために戦力は保持しない、つまり自衛権発動のためには戦力を保持してもいいのだというふうに承認されたのかどうか、疑問がありましたので、これを今確かめておきたいと存じます。
  115. 木村篤太郎

    木村国務大臣 御承知の通り自衛権のためには戦力を持つてもさしつかえないではないかという議論があります。あなたの方の党の芦田君もまさにその通りであります。これは有力な議論と私は考えております。しかしながらわれわれの考え方としては、たとい自衛権行使のためにでも、戦力に至らざる程度において持つべきものであろう、いかなる場合においても戦力というものは、日本憲法はこれを持つことを否定しておるのであろう、こういう解釈が通論ではないか、こう考えておるのであります。
  116. 並木芳雄

    並木委員 それでは、くどいようですけれども戦力武力との相違をはつきりしておいていただきませんと、先ほどのような疑問が出て来ますので、武力戦力をもう一度はつきり区別をしていただきたい。
  117. 木村篤太郎

    木村国務大臣 武力戦力とは使い方は別問題でありましても、戦力に至らざる武力があります。戦力はむろん一種武力だろうと考えております。いわゆるこの戦力というのは非常な強い力であります。戦力に至らざる武力は、むろんあろうと考えております。必ずしも同じものではないと考えておりますが、しかし戦力は私は一種武力であろうと考えております。
  118. 並木芳雄

    並木委員 それではもう一点だけ伺つておきますが、そういうような意味の疑問がありまして、しかも無料で貸してくれる。今後もまた必要によつては増加して、その表は今度は一々国会承認を求めないで、付属の表に追加して行けば、何隻でもアメリカの方で同意すればふえて行くことができる。こういうような懸念から、何か表面に出ないところの条件があるのではないか、この船舶貸与については、何か条件があるのではないか、あるいは文書によるものか、あるいは了解によるものか、そういう条件があるのではないかということの疑問が非常に起るのであります。その貸借に関してそういう条件があるかどうか。ありとすれば、どういうものであるか。
  119. 木村篤太郎

    木村国務大臣 その点については、私ははつきり申し上げます。条件も何もありません。
  120. 栗山長次郎

    栗山委員長 質問植原委員にもどしたく存じます。植原悦二郎君。
  121. 植原悦二郎

    植原委員 特に外務大臣にお尋ねいたします。それは外務大臣の外交演説を伺いまして、ごもつともなことだと思うけれども、ただ現在の事実を陳述するだけで、独立日本の外交としては、もう少し建設的の方針を述べていただきたかつたのであります。私はその意味でお尋ねするのです。ただこういう現在の事実や過去のことを述べるだけでなくて、これから後に政府はどうするかということの、方途や手段やあらゆるものを、私ははつきりさしていただくことが必要だと思うから、この質問をあえてするのです。決してあげ足をとる意味でも、非難攻撃をする意味でもありません。政府国際連合加盟を重要な政策の一つとしておられる。これはまことにごもつともなことで、現在の国際関係を見るときに、決して平安なる状態ではない。といつていづこの場所においても、戦乱が起るようなことを希望するわけではありませんけれども、万一の場合のことも、国際上には考慮しておかなければならない。そう考えますときに、今日は、外務大臣仰せられる通り、もう単独に攻むるとか守るとかいうことはない。集団的に防衛しなければならぬし、攻撃しなければならない。これはまことにその通りで、私も異存はありません。そこで、中立ということも言いたければかつて言つてもいいけれども、今日の国際情勢のもとにおいて、中立国というようなものは、ほんとうに自己防衛のためにも国際的の共同生活のためにも存在し得ざることである。これもよろしい、そこでわが国はできるだけ早く国際連合に加盟したい。これは政府の御意見で、国民もこれを希望しておる。軍備に反対の社会党の方々でも、国連に早く加盟することを御希望なさるのだから、これを希望する。ところが、最近において外務大臣は、安全保障理事会において十一箇国のうちソ連一国のヴイトーのためにこれに入れなかつたと言われた。今度はそうだけれども、できるだけ入るように努めなければなりません。これに入るとすると、ただいま今村君も言つた通り、これに対するオブリゲーシヨンを考慮せずして入るわけにいかない。オブリゲーシヨンを考慮する場合には、集団防衛ということは国内的においては軍備でありましようが、国連の持つ立場からいえば、インターナシヨナル・ポリスパワーのつもりでありましよう。いずれにしても、これは一国々々で考える場合には軍隊だ。その軍隊を大なり小なりその国の力によつて出すことを考慮し、それに対して準備をしないでおいて国連加盟を求むることは、これは間違つたことではないかと私は思う。また今日の国際情勢が集団的防衛であり、集団的攻撃であり、各国とも独立国がある軍備を持つて、そうしていつでもインターナシヨナル・ポリスパワーに入れる必要があれば入れるという国際信義、協力ということを重んずる建前になつておる。そういうことを考えますときに、総理の言うような、今も再三再四問題になる愛国心が盛り上つて、そうして憲法を改正するようにならなければしないというのは、これは一国の責任ある政治家の言としては私は聞き取れないし、許すことのできないものと思う。ことに今日のような日本の国、支那事変以来約十数年間国際から遮断されておつたこの国に、もし国際情勢の現状を洞察して、そうして国連加盟を希望するというならば、国民もやがては憲法をできるだけ早く改正して、いつでも国連のオブリグーシヨンに対して、これを実現できるだけの用意を整えなければならない。これでなければ政治家ではない。国民が燃え七つて来るまですつぽかす。また愛国心にしても、軍備に反対をする人も決して愛国心のないことはない。これは見解が違うけれども、やはり愛国心に燃えておる。だから、一に愛国心によつて日本憲法を改正したり、軍備を持たなんだり、このくらい政治家として無責任の言はないと私は思う。こんな無責任の言で民主国家や独立国家を左右されたらたまつたものではない。そこでそれでは国際連合に入つて軍備はいらないのだ、オブリゲーシヨンはいらないのだ、だから、軍備は持たないということであるならそれでよろしいが、そういうことは、今日国際情勢を知る立場からいつて申されないことだと思います。私は責める意味ではないが、もう少し独立国家を指導する政治家として責任あり、国民を導いて行くのだという——ことに聞くところによれば、情報部をつくるというが、政府が情報機関をつくるくらい危険なことはない。これは民間に全部ゆだねて、その民間の情報が活発に国民の間に伝えられることを考えることこそ、民主国家というものであると思う。アメリカのトルーマンにせよ、英国のチヤーチルにせよ、フランスのシユーマンにせよ、ドイツはまだ独立国でないけれども国際情勢の変化のあるたびに、いつでもこれを堂々と国民の間に述べて、そして国民を指導することに努めておる。これが民主国家の責任ある政治家のとるべき道で、私は愛国心の燃え上るまで、国民が要求するまでなんて、そんな無責任なことはないと思いますけれども、これらに対しても私は御考慮を願いたい。お答えがあればけつこうですが、日本を指導する立場から御考慮願いたい。お答えがあれば、まずひとつ伺いたいのです。
  122. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 お説まことにごもつとものように聞きました。そこで今おつしやつたことには、法律論と政治論と二つの点があると思います。これは非常に極端な議論みたいになつて、りくつだけのように見えるかもしれませんが、実は国連に加入しておる国でも、これはいわゆるオリジナル・メンバーになつた国にも、あとから加入した国にもありますが、自分の国は軍備はないのだ、従つて国連軍事力に関する要請には、こたえられないのだということを、あらかじめはつきり断つて国連に加盟を認められておる国もあるのでありまして必ずしも国連加盟は、法律的に軍事力を条件とするものではないということになると私は考えております。また今度日本が加盟を申請しましたときに、今おつしやつたように、安保理事会の十箇国は日本の加盟を承認したわけでありますが、この十箇国は、現に日本軍隊がないということは承知の上で、日本の加盟に賛成したようなわけであります。従つて法律的にいえば、軍隊があるなしは、国連加入の条件にはならないと言い得るのでありますが、但しこれは政治的にいつて日本のような人口を持ち、またその教養を受けたすぐれた国民がたくさんおる日本のような立場の国が、ほかのもつと小さな国で軍隊のない国と同日に論じられまい、こういう点はあると思います。しかし、ただいまのところは、事実安保理事会の十箇国は、日本軍備がないということを知つての上で、日本国連加盟を認めようとしたわけであります。  それから、今おつしやつた点、総理もいろいろ言つておられる際に、自分の所信を国民に率直に伝えて、国民の賛同を得るに努める、これは当然考えておられるでしよう。一面において、政府の方で国民考え方をある一方的な方へむやみに持つて行くということについての過去の弊害も考えておりまして、なるべく輿論指導というようなかつこうになることを避けたい、こう思つておられることは私も承知しております。そこで今の情報機関の問題でありますが、これはまだはつきりした構想は出ておりませんが、今の考え方は、できるだけ多くの国外のニユースを集めまして、それを国民に知らせるように——ニユースを編集せずして、これらの生のニユースを国の費用で集めて国内に出すように努力すると同時に、国内のいろいろなニユースをできるだけ外に出そう、要するに生地のニユースをもつと多く供給しようというのが、このねらいだと思います。そうして国民の良識ある判断の資料にしよう、こういう点がねらいだと思います。その点は具体的になつてみれば、もつとはつきりおわかりになると思いますが、一方においては輿論を正しい方向に持つて行くように努める、これは当然でありますけれども、同時に政府考えておることに、何でも国民を従わせて行こうという点の弊害もありますので、実際の問題としては、この兼ね合いがむずかしいので、総理などもいろいろ表現を苦心しておるのだ、こう私は考えております。
  123. 植原悦二郎

    植原委員 私のすべての演説は、あえて外務大臣と論議するつもりはないのですけれども国連に加盟するときには、お説の通り軍備はなくてもよろしいでしよう。だけれども日本国民がそれほどの卑下した立場国際上立つのでありましようか。アジア諸国の間における日本の地位を考えます場合に、日本軍備なしに国際連合に加盟しても、その後国際連合の要請するところの、また将来要請せらるべき、期待のあるようなものを用意しないで行くというようなことは、これはできないことである。そういうことにひつかかる理由は、先刻来私が始終申す、今のフリゲート軍備軍備でないかという問題で、憲法の問題を引きずられて、政府がいじめられるところにあると思うのですが、今の保安庁長官の御答弁を伺つてつても、はつきりしたような、はつきりしないのです。ポリスパワーミリタリーパワーはつきり区別するのは、装備の問題ではなく目的の問題だ。軍艦でも、病人を乗せて運んでいるから病院船だ、軍艦ではない。使用の目的によつて軍隊軍隊でないかがきまるのだから、それを政府はつきりして、どんなにフリゲートをたくさん持つたつて保安隊をたくさん持つたつて、現在の日本としては、それは沿岸の警邏防衛である。そうして国内における安寧秩序のための警察力であると、これをはつきりする。また自衛力の問題だつてそうです。自衛力の問題だつて憲法第九条は積極的な意味を規定してあるのです。どんな人間だつて、自分で守ること、自衛権のない者はない。たとい独立国でなくても自衛権のないものはないのだから、そのときにできておるところの警察力でも思わざる侵略にあう場合には、これに対して自衛力を発揮するのは当然だ。その見解がどうも政府答弁を聞いておつてはつきりしないから、しどろもどろのようになつて質問質問の矢を継がせるような状態になると思う。自衛ということははつきり消極的なもの、憲法第九条に規定してあるのは積極的な、国際紛議を解決するために、武力あるいは戦力を用いることは相ならないという規定で、ある意味からいえば、侵略意味するともとれるほどのものである。その区別、憲法第九条ではつきり規定しておるのをのみ込んで、そうしてポリスパワーミリタリーパワーと区別すれば、私は問題は非常にシンプルで行くのではないかというふうに考えます。そういう点から考えれば、私は今、日本では憲法に禁ぜられた軍備を持つことはできないが、現在の保安隊の程度でも、これを国連のオブリゲーシヨンを満すためにするならばそれでよろしいと思う。何も日本に原子爆弾をつくらなければ、大きな軍艦をつくらなければ——そんなものはつくりたくてもできやしない。ですからはつきりそういう意味考えて、私は何としても日本が独立国として、東洋におけるアジア民族の一番の安定勢力たる日本であるということを自覚して、日本国民を指導して行こうとすれば、今日はできないけれども憲法を改正して、日本の国力に応じただけの軍備を持つべきである、こういう立場をとつて国民を指導することがよろしいと私は思う。こういうことです。それで、そうでないとおつしやれば、何もそれ以上の意見を言う必要はない。それが責任ある政治家であると思う。  次に私がお尋ねしたいことは、外務大臣の御答弁を聞いても、日本はアジア諸国と最も緊密なる関係、親善関係を持続するのみならず、これを強化して行かなければならない。この政策は、日本にとつて根本的な重要な政策であると思います。過去においては残念ながら日本が独立を保たなかつたから、独立国でなかつたから、これらに対してあらゆることをすることはできなかつたでしよう。しかし独立国となつた以上は、私はつとめて——どうもそこが今の政府と私ども考えと違うところであるのですが、アジアの諸国が日本にとつてきわめて重大なものであり、その親善関係を強化することが必要であるとするならば、私は役人ではいけないと思う。民主国家として役人の使節を使うなんというようなことは、決して民主国家に対して信頼を得るゆえんでないと思う。今の衆議院議員は外交のことに精通しないからとおつしやるかもしれぬが、精通しなければ精通するように国民を指導しなければならぬ。できるだけこれをアジア諸国に派遣して、そうしてひざを交えてその国民と相語るようにする手段でもおとられになつたかといえば、そういうことをしておられない。それだからして、ただ政府が声明することは、から念仏ではないかという感じしか持たない。これに対して外務大臣はこうおつしやるでしよう。そう思うたからして最近フイリピンと至急に賠償問題を解決する用意をして、使節まで派遣するつもりだという、これもなさつたことたいへんけつこうだ。遅ればせながらなさつたこと、どろぼうを見てなわをなうようなやり方だけれども、これはまあしてけつこうだと思いますが、そればかりではない。これらの点についても一体どういうことをお考えになつておるか。私は親善関係を保つとか、あるいは親善を強化するということは、口頭禅ではいけないと思います。実際に手をつけなければならない。そういうことを考えても、すぐ問題が起るのは中共などの問題ですが、これは講和条約締結する際に、ダレス・吉田内閣における話合いによつて、支那と今日貿易することもできないでしよう。貿易したつてたくさんの収得があるわけではない。国民が言うほど、これによつて日本の通商貿易が振興するわけでもありますまい。けれどもこれらの問題に対しても、私はずいぶん策があると思う、方法があると思う。蒋介石と争つて戦争しておるときでも、支那という国は物資を送つたりいろいろすることができるのだから、やはり支那は全部が共産主義のものではないから、支那の民間とも何とか連絡をとつて、両者が将来できれば支那の共産主義をひつくり返して自由国家にするくらいの、日本が東洋十億の民族の指導者として、そのくらいの覇気と計画を立ててもいいではないですか。それは台湾の問題に対しても考えなければならぬ。  さらにもう一つ私は考えなければならないことは、後にまたお尋ねしますけれども、朝鮮の問題も重大な問題だが、今仏領インドシナにおける問題、ヴェトナムにおける問題、ホー・チミンの侵略の問題、ラオス島における問題、私はある意味からいえば、ここの一角が共産軍のためにくずされるようなことがありましたならば、日本の通商貿易のために、日本の食糧問題のために、私はタイもビルマも、その波及するところは甚大だと思います。今日のフランスの防衛力をもつてこれを満足するわけにも行かない、これらに対して何かはつきりとした手を打つておになるか、打とうとなさるのか、これらに対してもまつたく手が明いておると思います。アジア十億の民族は、日本を指導者として望んでおります。日本はこれをどう導くかということが、日本の将来の運命の決するところだと思う。どうかそういう点について、はつきりと物を見て、そうしてアジアの民族に対する計画を立てていただきたい。なお日本の人口問題あるいは通商貿易の問題、日本の工業に対して、原料資材を集める点からいうならば、東南アジアはきわめて重大なるところである。外務大臣御承知でしようが、今年の春早々トルーマンは東南アジアの開発に対しては、アメリカは相当の資金を投じてもよろしいということを再三再四声明しておる。これがアメリカの政策だと思う。そのために外務大臣はフイリピンとの賠償問題を早く片づけるようにするために、今せつかく努力中だとおつしやるかもしれないけれども、そのほかに何の手を打たれたのでありましようか。緒方君が総理大臣のプライベートな使節か何か知らないけれども、出かけて、このときにもフイリピンには行かない、楽なインドやパキスタンに行つただけのことである。日本の相当な代議士、あるいは相当な民間人がフイリピンに行き、あるいはインドネシアに行く——もうすでに貿易があるのですから、そこに行く。こういうことを計画すれば、向うはあえて拒まないと私は思う。どうしても国と国との理解を深めるには、民間人と民間人とが、ほんとうに接触することがよろしいことであると思うが、これらに対して今日まで何らの手を打たれておらない。こういうことをどうお考えなさるか。私は人口問題のためにも、原料資材獲得の上からも、日本の食糧問題を解決する上においても、東南アジアの開発はきわめて重大であると思う。それを思うときに、私が非常な不安と心配にかられるのは今仏印やヴエトナムにおけるホー・チミンの活動その他のことであります。これらに対して外務大臣はどういうふうに見ていられるか、これらに対してどういう処置をなされようとするか、私はそういうことを伺いたいのであります。
  124. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 まず今おつしやつた中の、東南アジア等に対しまして役人よりは民間の人々あるいは国会の人々を出す、これが一番有効ではないかというお話は、私もまつたく同感であります。それから何もしないではないかとおつしやいますが、実はちよつと思い出しただけでも、かつて帝国銀行頭取の佐藤君を団長とした使節団を出しましたし、またその次には石坂泰三氏を団長とする使節団を出しております。それから最近には東京銀行の濱口君を団長とする使節団を出して、直接にいろいろ話をしてもらつておりますし、また国会関係でも、今緒方さんの話がありましたが、そのほかにもたとえば根本代議士にずつとまわつてもらつたこともありますし、先般衆参両院の国会議員で、ひとつ東南アジアをまわつてもらおうと思つて努力いたしましたが、折から選挙気構えであつたものでありますから、衆議院側の参加者は比較的少かつたのでありますけれども、稻垣平太郎氏を団長として相当数の人に、ずつとまわつもらつております。言いうふうにして、いろいろ直接の接触を保つように努力しておりますが、たとえば今おつしやつたような、日本は東南アジア千億の指導的地位に立つものであるというような言葉が出ますと、各地で非常な反対の声がいまだに起るのでありまして、かつてそういうことでインドネシアの新聞その他が、非常に反対の論説を書いたこともあるのであります。要するにわれわれはできるだけ、この賠償問題もさることながら、東南アジアとの間に密接なる経済的な関係を樹立したい、たとえば技術が必要なら日本からも出しましようし、資本が必要ならそれも出しましよう、こちらで物を売れば、向うからも物を買いたいと思つておりましようが、これをこちら側から声を大にして申し上げますと、まだまだ日本の経済侵略というふうにとられがちなのであります。現に濱口君の一行がインドネシア方面に参りましたときにも、そんなに大勢来ては困るとか、半分に減らしてくれとか、いろいろなことがありまして、よほどこれは相手の考え方もよく見て、妙な疑惑を起さないようにいたさなければならぬ。そこで非常に消極的なように見えますけれども、注意をいたして、だんだんに理解を進めて行わなければならない、こう思つておるようなわけであります。  それから仏印三国のことにつきましてもお話がありましたが、仏印三国関係でも、最近に日本との間にいよいよ正常関係を樹立しようという意向があるように仄聞いたしております。従いまして賠償の問題も当然出て参りますが、その他のいろいろの関係においても、そのうちに正常化した道がとれると思つておりまして、それを期待して、今待つておるようなわけであります。もちろん今おつしやつたような、なかなかむずかしい国内情勢があることは事実でありますが、ただいまの日本といたしましては、経済的に提携するということなら、これはできますけれども、それ以上のことは今もちろんできるわけもないのであります。心配はいたしておりますけれども武力で援助するとかなんとか、そんなことは今とうてい問題になりませんので、経済的に相互の関係をもつと密接にできるだけ早くしたいというので、話はいたしております。いずれそのうちに結果が出て来ることと考えております。
  125. 植原悦二郎

    植原委員 お役人様というものは、いろいろの疑惑があるしするから、きわめて慎重に事をしなければならないということで、慎重過ぎて、どうもしばしば事を誤る事のあるのをこの場合一言苦言を呈しておいた方がよかろうと思う。  それから今お話のように、濱口とか佐藤その他たくさんの人が行つた場合に、これは情報機関より何よりも一層必要なことだが、そういう特に新しい場所へ行つて観察した人には、政府で頼んで、それらの報告をとつて、それを議員に配付するような努力も、国民に理解を与えたり、両国の親善関係を強化する一つの手段だと思う。ただ行つて来たというだけのことでなくて、どこまでもこれらの国とはほんとうに国民国民が了解しなければならないのだから、政府として、ただ商売ばかりじやないぞというお考えなら、非常に荒れすさんでいる東南アジア諸国と日本との関係についてあまり金もかからないことだから、そこでひとつ御方なさつたらいかがかと、こう私は思います。  さらに今の外務大臣の御答弁によつて私の頭へ浮ぶことはこういうことであります。かりに仏領インドシナの問題を考えましても、どうもやはり太平洋においてNATOのような防衛組織のできることが、必要ではなかろうかと考えられます。またそういうふうに日本が先だつて考えて、そういう方針を全体にとつても、日本の過去における誤解を解く一つの理由になりましようが、その問題に対して外務大臣の頭を一番冒している問題は、私こういうことだと思うのです。日本が再軍備をする、そしてまた侵略をしはせぬかというようなことを、日本の新聞に軍備の問題が出るたびに、フイリピンにせよ、インドネシアにせよ、ニュージーランドにせよ、あるいは濠州にせよ、そういう考えを持つ。その日本の軍国主義の復活、侵略主義の復活をこれらの国は一番恐れると思います。そこで私が一言申したいのでありますが、日本人が必ずしも好戦国民ではありません。日本国民は必ずしも戦争をあえていどんで出る国民ではないが、日本をさようしからしめた理由は、申すまでもなく、明治三十一年の山縣公の勅令であることをお気づきにならなければいけない。これが陸海軍大臣は陸海軍大中將でなければならないと規定をつくつた。これは帝国憲法に反したものでありますけれども、これでずんずん押して来て、結局内閣をつくることも、こわすこともハンドフルの陸海軍の大中将が計画すればできるということで、これが遂に軍人が日本の政治を壟断するに至つた。この歴史的の経過を御承知だろうと思うのです。ほんとうにインドネシアやフイリツピンやニユージーランドや濠州において、この誤解が非常に横溢しておることを外務大臣御存じないこともなかろうが、これを解こうとして御計画になつたことがありましようか、私はないと思います。日本国民戦争ずきだから、あるいは侵略主義者だからということではありません。日本一つの誤つた法規、これによつて日本の国を導き、これによつて日本の政治を行い、そうして遂に長い間に軍人が日本の政治の中心勢力となつて、すべての政府を壟断ずる経緯、国家総動員法のできるときまでの経過をもし御存じならば、これより日本の国に災いしているものがないということをお気づきでしよう。これを私はニユージランドヘも、あるいは濠州へも、わざわざ人を派遣して、こういう事情でこういうふうに日本の状態が転換して来たのだ、決して好戦国民ではない。今日は憲法もでき、そういう法律の適用もなし、どんなことがあつて日本の軍国主義が復活したり、日本国民が好戦国民になるといつたつて、原子爆弾の洗礼を受けた国民が、そんなものになれるものではないという説明をとられる手段をお講じになつたことがございましようか、そういうことをお考えなつたことがおりましようか。私はことしの春アメリカに参りましたときに、めつたにないことだそうですけれどもアメリカのステート・デパートメントのリサーチ・セクシヨンの重要な五、六人とぼくと自由の討議をする機会を得まして、実にざつくばらんの話をしました。日本の国の農地制度の改革の問題の行き過ぎであること、あるいはたとい財閥の独占禁止法にしても、財閥を根本的に破壊しました行き過ぎのこと、そうして日本は軍人が勢力を得て、とうとう支那事変から太平洋戦争まで導いた径路の軍人の行き方を話したときに、これらの人はよく了解をしたのみならず、日本研究の二、三の人は、その根本は、山縣公の軍人をして陸海軍大臣にせしむるところのその誤つた勅令であるとまで、向うから指摘するほどでありました。こういうことをもう少し国民に——ただ商売をするとか、銀行をつくるとか、そういうことでなく、ほんとうに日本の国の歴史や今日までの経過を知つておる人を濠州でも、ニユージーランドでも、三月でも四月でも遊ばせて、各地に講演でもさせて、両国の関係を親密にするように考え日本は軍国主義者だ、日本国民は好戦国民だというよう誤解を私は解く方法を講ずることをすれば、今のように太平洋の防衛を考え日本に、安全保障条約によつてアメリカのある一部の軍隊を駐留せしめる。米国とフイリピンの間では別の安全保障条約をつくる。濠州とニユージーランドとアメリカの間で、またさらに別な安全保障条約をつくるというような、こういうばらばらの状態が起らないで済むのではないか。そういうことでこの太平洋の西の一角におつてアジア十億の民族をよつてつて将来の日本が指導したいというくらいに私は思う。あの大きなインドのネールでも、日本の将来に対して多大の期待を持つておると思います。その期待を裏切らないように、日本国民はみずから進んで太平洋の防衛、太平洋民族の間の過去の誤解を一掃する方法を講ぜられてはいかがかと思います。こういうことに対して御考慮があるなら、お伺いしたい。
  126. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 今のお考えはまことにその通りのように思います。幸い濠州に大使が行くようになりましたし、濠州、ニユージーランド方面は、今後は非常に意思の疏通が楽になると思いますので、大使にもさつそくよくその趣旨を濠州なりニユージーランド方面に徹底するようにさせますが、さらに現地の大使なりあるいはフイリピンその他の方面の現地の君たちと相談をいたしまして、たとえば講演とかその他の方法で適任者を得てやり得ればそれまで考えてみようと思います。また先ほど、前でありますが、使節団の報告等を出したらよかろう、まことにその通りでありますので、できるだけ御趣旨に沿うように国会にも提出するようにいたそうと思つております。
  127. 植原悦二郎

    植原委員 さらにもう一つ考え願いたいのは、朝鮮問題であります。朝鮮問題の重要性は、これはみな認めております。朝鮮問題の重要性のために連合国はここに軍隊を出しており、日本を足だまりにしておる。日本もこれらの連合国によつて、かなり朝鮮問題の解決に依存しようという考えもある。また経済的にも、財政的にも、日本は戦後米国に負うところが多い。また将来においても米国とかなり密接な関係を持つて行かなければ、日本の復興を完成することはできない立場でありますが、朝鮮問題にからんで、いつでも日本政府米国一辺倒とかいうような非難攻撃をされますけれども、これは要するに政府が朝鮮問題の重要性の実質を、国民全体によく徹底せしめないことにあると私は思います。御承知の通り、ソ連や中共は日本に一番接近しておりますけれども、ソ連に日本人が行つてソ連を研究したくとも行くことができません。ソ連は御承知の通り、太平洋戦争の結果、一滴の血も流さずして、満州から百数十万の俘虜を連れて行つて、まだかなり多数の行方さえ不明の状態である。日本は飢餓に頻しているときでも、すぐ一衣帯水のソ連が日本に手を伸ばして、この悲惨なるところの誤つた国民を救済してやろうとしないのみならず、ヤルタ協定に基いて樺太も千島も奪つてしまつた。その千島も色丹も歯舞も、全然日本の領土であるものさえ今日奪つておるという状態であることを、国民に徹底しめたならば、今日の日本の状態において、それはごく少数の共産主義に誤つてつている人はいざしらず、しからざる国民が、日本の今日の立場を、米国一辺倒だなどという誤解を生じて、ことさらに日本人を誤らせるようなことはないと思います。これに対しても私は政府が朝鮮問題の真相と、これに対するところのほんとうの国連軍と日本との関係を明瞭にしないところに、問題はあると思うのであります。実は一昨々年の六月二十五日に、三十八度線を横切つて共産党が南鮮に侵入した事件が起つたのでありますが、そのときに有名な「アジアの内幕」や「ヨーロツパの内幕」や「マツカーサーの謎」を書いたジヨン・ガンサーが日本に来ておりました。六月二十七日の晩に私はジヨン・ガンサーと二、三人の人と話をしておりましたが、そのときは朝鮮事変が起る二日前でしたか、ジヨン・ガンサーに私は、朝鮮事変にアメリカが干渉するだろうかと言つたらば、ジヨン・ガンサーは、しないと思う、アメリカは第一次世界戦争でも、第二次世界戦争でも、何を得たか、何ももうかつておらない、損ばかりしているではないか、のみならず今日のアメリカの共産主義に対する防衛は、アリユーシャン群島から日本を入れて——台湾はどうでもよろしい、それにフイリピンの線を確保しておるのだ、その外にある朝鮮にアメリカが干渉するなどということは思いもよらないことだ、アメリカのような民主主義国家が他国に干渉するなどということをしたら、国論が沸騰してやれるものじやない、こういう意見でありました。しかし私は、それは全然違う、アメリカ国民戦争はきらいであり、アメリカが他国に干渉することもきらいであることは承知しておる、しかしアメリカは今日世界に向つて共産主義を防衛すると言つておる、もしアメリカがこの三十八度線に共産軍が侵入した、ここでアメリカが力を示してこれを食いとめなければ、アメリカのプレステイジに関する。アジア十億の民族のアメリカに対する信用は地に落ちるのだ、私は必ずアメリカはここ数日のうちに朝鮮に兵を出して、共産党を朝鮮で食いとめる政策をとるだろうと言つて、二十七日の晩に五時から十時まで意見を闘わして、意見が違つてわかれました。ガンサーは六月三十日にヨーロツパに立つて行くときに、夜中に私電話をかけて、おいどうだつたアメリカは遂に朝鮮問題に手を出したではないか、そうすることがアジアにおいて共産主義を食いとめて、アメリカはこれがために多大の犠牲を払わなければならないということは、僕は思う。しかしこれでもつてアジアにおける共産主義の侵略を防ぐことができるのだ、この政策が私は非常によろしいと思うとガンサーに言つたら、その議論は私は負けましたと言つて、ガンサーが私に答えたのでありますが、そういうようなわけで、アメリカ国民の方からいえば、何を好んで朝鮮に事を構えているものでありましようか。ただアジアの自由国家を救おうとすれば、ここにおいてこれを食いとめるよりほかに道がないと考えたことが、アメリカの朝鮮における政策、そのことはやがて日本に対して莫大なる利益を持つことで、今日からいえば日本は朝鮮を日本の第一の生命線とも考えなければならない場所でありますから、これを守ることがやがては、日本の国ではありませんけれども日本に対する共産党の侵略や、共産主義の浸透をここにおいて防衛することになるのであつて、決してこれはよそごとでないということを、国民に徹底的に政府が陣頭に立つて説明したならば、米国一辺倒の外交であるという非難を私は避けることができると思います。こういう手段を外務当局としては講じられなければならないが、講和条約が発効いたしたので、独立国となつたのは四月二十八日であります。その以後政府はこういう問題に対して国民に了解させるために道をおとりになりましたか。ただ米国一辺倒という非難を浴びて、そ  のときどきでこれに釈明するくらいでありましたか。積極的ににどういう道をとつて、私の言うような策を講ぜられたか、もし何でしたら御意見を承りたい。
  128. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 御説はごもつともでありまして、私どもそうやりたいと考えております。いろいろ問題にはなりましたけれども、外務省としましては、たとえば「朝鮮事変とわれらの立場」とか、その他ときどきの朝鮮事変の変化、国際情勢の変化に基きまして、小さな書籍ではありますけれども、各種の書籍を出しまして、これも経費に限りがありますけれども、あるものは二十五万部、あるものは五十万部、さらに多いものは八十万部くらいずつつくりまして、各方面に出しております。またでき得る限り各方面に講演等でこの真相を明らかにするために、客観的の真相のみを述べるわけでありますが、これも一部にはいろいろ非難はあります。講演等もずいぶんやつております。しかしまだまだお考えの程度のほどに徹底はいたしておりませんが、今後もこれは旅費もいることでありますし、いろいろ人もいることでありますが、できるだけ講演等にも努めたいと考えております。大体総計いたしますと、年に三十万以上の人には講演をしておるのです。しかしもつともつとやりたいと考えております。パンフレツトの種類も年にすればどのくらいになりますか、三、四百万部くらいには達するのではないかと思います。過去の例はそれでやつておりますが、これなども国民によく読まれるようなパンフレツトというものは、なかほかむずかしいものでありまして、思うほどには行きません。今後ともできるだけその趣旨でお考えのようなことに近くなるように努力いたします。
  129. 植原悦二郎

    植原委員 やつておるということでたいへんけつこうでありますが、そのやり方も、何箇所やつて国民に徹底しない理由をひとつ申上げて、これを参考にして将来お考えを願いたい。ただ地方において、外務省や外務省関係の役人を派遣して宣伝したつてだめなのです。四百六十六人の国会議員があります。これより日本国民に直接接触しているものはないのであります。これを利用して——今まで、そう申しては失礼ですが、官僚政治を逸脱することができない。民主国家となりまして、四百六十六人の国民とただちに接触しているところの代議士があります。この代議士を使つて、講演するものは、外務省の官僚でも何でもよろしい、この代議士を使つてやればいいけれども、これ無関係にぽつんぽつんそこらでやるから、まことに波も立ちはしない。効果はきわめて薄いのであるから、こういうところもよくお考えを願つて、将来あやまちなきように、またやつておるけれども、まだどうも思うように行きませんというお言葉のないように、どうぞよくおやりくだすつて日本国民がよく外務省の外交方針を了解いたしましたというよよにやつていただきたい。  そこでもう一つ同じようなことでありますが、アメリカにおいても、日本をアジアにおける安定勢力なりと認めております。またアジアのすべての国民間においても、日本にたよつて日本がどうか強くなつて安定勢力になつてくれればいいと思つておる者が少くないと思います。もちろん、それが昔の軍国主義の復活や侵略主義であつてはならないのでありますが、日本がほんとうにアジアの自由国家のものと手を握つて、今の共産勢力の侵略や浸透に対して、ともに防衛してくれるならばよろしいと考えておるものは至るところにあると思います。ところが、私が久しぶりで今度アメリカへ行つてびつくりしたことは、アメリカの大学で日本語を教えておらない大学はありません。またあの「羅生門」などは、あんなものをどうしてアメリカ人が盛んに見たり聞いたりするかといえば、あれによつて日本人のある一部のサイコロジーがわかる、こう言つておる。ある大学の教授のごときは、今私は近松のものをすべて訳しております。すでに「紙治」の翻訳はできて、ハーヴアードヘやつてこれを出版しようと思つております。西鶴は少しむずかしいけれども、近松ものは日本の人情の半面を紹介するには非常にいいものですねというのです。日本の研究に没頭している学者、市民が至るところにあるのであります。なぜかと申しますれば、将来太平洋の問題を考え、共産主義の防衛を考えるならば、日本を中心として考えなければならない。アジアのうちでフイリピンは、四十年治めて、世話してアメリカ式にやつてみたけれども、どうもこれが非常な有力なものともなり得ない。どうも十億のうちのわずか八千万人だけれども日本人は違つておる。これぞアジアにおいてほんとうの自由国家の防衛たる力になる安定勢力にしなければならないし、なつてもらわなければならない。経済も政治も日本の強くなることを希望する。なぜ日本国民がこうなつたろうか。日本国民というものを徹底的に理解できなければ、日本とほんとうに手を握ることはできないのだ。それがためには。日本の宗教も、文学も、芸術も、あらゆるものを研究して、そうして日本と腹の中まで融け合つた親善関係を結べるようになることが、将来の太平洋において、自由国家、民主国家の健全なる発達を期する所以であると、かく考えていることが、アメリカの今日の識者の間のドミナントの意見だと思います。日本アメリカ研究に対して、一辺倒だといわれても何でも、日本国家を一番よくする——方法がよければよろしい。ソ連にたよつてソ連が日本を助けてくれるなら、よろしいけれども、これは侵略されるだけのことで何も得がない。過去ロマノフ朝以来、ソ連がアジアにおいて、侵略以外に企てた道はないと歴史ははつきり説明しております。これらのことをよくお考えになつて、ただダンスやアベツクやベースボールをやることだけが民主主義ではないのだ、もつと民主主義には深いものがあるのだ、いうことをほんとうに徹底せしめて、日本国民によく了解せしむるようになつたらば、外務大臣が雄弁を振つて米国一辺倒に対する御弁明の演説をなさらぬでも、その方がききめがあると思いますが、いかがでしようか。
  130. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 御説その通りだと思います。今後ともひとつ御助言を得まして、できるだけそういうふうにいたしたいと思います。
  131. 植原悦二郎

    植原委員 もう一つで私終りますが、共産党の侵略行動、共産主義の世界の未開国、自由国家に浸透する状態をよく理解し、国民にこれを理解せしむるには、現在におけるイラン、イラクの状態、スーダンやエプトジにおけるところの状態、チベツトにおけるところの情勢、アフリカ全土におけるところのすべての政情、これらのもののみならず、バルカン半島におけるところのチトーの姿、こういうものをもつとよく日本国民に徹底せしめて、理解せしむるような外務大臣の演説を私は希望したのであります。これは離れておる所のようだけれども、今日の太平洋、アジア、極東の状態を深刻に考慮するには、これらも重要なるところのフアクターであると私は思います。施政演説にありませんでしたけれども、機会があつたらすべての議員だけにでも、イランやイラク、スーダンやエジプト、またアフリカの各地における状態、バルカン半島の問題等を説明し、理解せしむるように、ひとつ御配慮願うことが、日本の極東における地位をなおよりよく了解することであると思いますから、こういう点を御考慮願いたいと思います。
  132. 栗山長次郎

    栗山委員長 ただいまの植原委員外務大臣との質疑応答中に、必要と思われる国々に対して、国会関係を主とする使節団を派遣してはどうかという点がございました。お諮りいたしますが、この件を本委員会で取上げて、適当な時期に協議をいたすことに御異議はございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  133. 栗山長次郎

    栗山委員長 御異議なしと認めまして、そのようにとりはからいます。  並木芳雄君から緊急質問の申出があります。英濠兵引渡しについての緊急質問でありますが、その前に、政府委員が、先ほど申し上げましたほかに、法務省岡原刑事局長、外務省伊関国際協力局長が出席しております。並木芳雄君。
  134. 並木芳雄

    並木委員 国際連合との協定に非常な関係のあります英濠兵引渡しに関して、緊急質問をしてみたいと思います。  私どもは吉田書簡というものに対しても、非常な不満を感じておる際でございますので、今度の英濠兵引渡しのことなどは夢にも考えておらなかつたにもかかわらず、報道されるところによりますと、遂に政府は英濠兵引渡しに同意を与えたということでありますが、それが事実であるかどうか。そうしてそれについてはもちろん厳重なる条件がついておると思いますが、その条件はいかなるものであるかということをまずお伺いいたします。
  135. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 引渡したのは事実でありまして、昨日の午後四時何十分ですか引渡しました。これは前から御承知のような政府考え方としては、国際約束でも何でもありませんけけれども国際条約及び国際慣行に基きまして、特に国連協力という考え方から、現に朝鮮で戦闘に従事しておる人々、もしくはそれに関連する人々については、できるだけの便宜のとりはからいをいたす、こういうつもりでいわゆる吉田書簡なるものができておりまして、これをわれわれの方の取扱いの基準にいたしております。そこで今度の引渡しもいたしたわけでありまして、その引渡しの了解事項といいますか、これはまだその文書そのものは国際間の約束でありますから、日本側だけで発表することはいたしませんけれども、いずれこれはまた発表するようにとりはからいます。そのときに比べてごらんになればわかりますが、ただいまその一々の文章は読上げませんで、内容だけを申し上げますと、こういうことであります。この事件については、英濠国の軍法会議を東京で開き、そうしてその軍法会議には日本の関係者を立ち会わせる、さらにその裁判の結果は、日本政府に通報する、また、英濠側の軍当局は、将来日本側が必要とする場合には、本件の犯人を日本の関係当局に再出頭せしめるようにとりはからう、また軍法会議終了後に、犯人を本国に送還するような場合があつたらば、あらかじめ日本側と連絡をする、こういうようなことがその内容であります。なお今の内容は、日本側、または国連側いずれの方面からも、今の交渉しております協定との関連で考えられる場合があると思いますので、念のためこれらの事項は目下交渉中の国連軍との裁判管轄権問題に関する双方の立場には、何ら影響を及ぼさないものであるということに意見が一致しております。母上が大体引渡しの了解事項であります。
  136. 並木芳雄

    並木委員 この了解事項は文書にしてだれとだれが判を押すことになりますか。
  137. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは文書になつておりまして双方の係官の間でもつて、もうすでに文書をとりかわしております。
  138. 並木芳雄

    並木委員 英濠兵の取調べはすつかり終了したのですかどうか。
  139. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは私の方の仕事でありませんから、刑事局長の方からお答えいたします。
  140. 岡原昌男

    ○岡原政府委員 ただいまお尋ねの点でございますが、検察庁において取調べを一応完了したという報告を私の方に寄せております。
  141. 並木芳雄

    並木委員 完了した結果は、当局ではこれを起訴する予定でございますかどうか。その内容は……。
  142. 岡原昌男

    ○岡原政府委員 事件の処置あるいは身柄の措置等につきましては、ただいま外務大臣からお話のありました通りの外交交渉が進渉中でございますので、その旨一応検察庁の方に申し渡し、さらに外交交渉が成立いたしたという段階におきまして、一応事件はそのままといたしまして、処分留保のまま身柄が釈放された、かようなことに御了承が願いたいのでございます。
  143. 並木芳雄

    並木委員 私どもはこれはしろうと考えであるかもしれませんけれども、この前の英国水兵のときよりも、たちがよくないと思うのです。ましてやこの前は軍艦の乗組員でございましたのに、今度はそういうこともございません。従つてこの前の英国水兵のときに起訴して裁判までやつたのですから、今度は当然これを起訴して、裁判にまで持つて行くべきものであると思いますけれども、その点についてお尋ねをいたします。
  144. 岡原昌男

    ○岡原政府委員 神戸の英水事件の経緯につきましては、先般簡単ではございますが、当委員会において御説明いたしました通りでございます。要するにわが方に裁判権ありということについては、われわれ確信しておるのでございますが、身柄の問題につきましては、先般申し上げました通り、若干の行き違いがあつたままに起訴されたと、かような状況でございました。つまり了解が現地においてなしとげられた。吉田書簡の線で申し上げますと、第四項の協議がととのつた、かようなことにわれわれども考えるについて、若干の行き違いがあつたことについて御説明申し上げました。しかしながら今度の事件につきましては、裁判権の問題については前回とまつたく同様でございまして、われわれは、わが方において裁判権ありとすることについて、少しも疑念を持つておりません。ただその身柄の処置につきましては、御承知の通り、前回の神戸の英水兵事件におきまして、横田喜三郎教授が判定せられました結果、かような場合に裁判権問題は別といたしまして、その身柄を引渡すことについて国際礼譲が慣習として成り立つておるというふうなこともございましたし、また今回の事件の一つの特異性といたしましては、御承知の通りこの英濠兵がキャンプの拘禁から脱走して来たという事前の犯罪と申しますか、そういう事情があるのでございます。そこであちらの方から脱走したこれらの者について、もしつかまつたらこちらの方に渡していただきたいという書面が事前に参つておるというような特殊な状況もございまして、それやこれやを考慮いたしました結果、一応この事件については先方に先に裁判はやつてもらう、但しその裁判の結果を待つて、さらにわが方において再び起訴することはあるべしというふうな見解もとに、さような処置をとつた次第でございます。
  145. 並木芳雄

    並木委員 外務大臣にお尋ねしますが、日本側で起訴をし、裁判に持つて行く場合には、もちろん再出頭を命ずることになりますけれども、その場合に再出頭を拒まれるというようなことはあり得ない、そういうふうに考えてよろしゆうございますか。
  146. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ただいま申しました通り、この了解事項は、日本の関係当局に、日本側が必要とする場合には再出頭せしめるように、とりはからうことになつております。
  147. 並木芳雄

    並木委員 そうすると、外務大臣としてはやはり日本側にあくまでも裁判権がある。それで先方もそれを了承したものと思つておられますかどうか、今度の国連協定に非常に影響のある問題でございますから、その点をお尋ねいたしておきたいと思います。
  148. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは先ほど念のために申した通り、目下交渉中の国連軍の裁判管轄権の問題に関する双方の立場には、何ら影響を及ぼさないものである、こういうことになつておるのであります。
  149. 並木芳雄

    並木委員 そういたしますと、英濠側では日本に裁判管轄権がありということを認めておらないのですか、いまだにまだ認めるところまで来ておらないのでございますか。
  150. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは国連協定の問題でありまして、国連協定においてはまだ話がついておりません。
  151. 並木芳雄

    並木委員 その点もう少しつつ込んで私は知りたいのですが、英国の方としては、アメリカとの差別待遇はおもしろくない。これさえ撤廃できれば、日本に裁判権のあることを認めてもいいのだという報道もあるわけなので、その点は交渉に当つた外務大臣としては、よくおわかりだと思いますが、いかがですか。アメリカと同じところに行くならば、英国といえども日本に裁判管轄権ありということを認める、そういうふうにお感じになりますかどうか。
  152. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは、別に先方から、アメリカと同等ならば日本に裁判管轄権を認めると言つてはおりません。アメリカと同等にしてもらいたいと言つておるのでありまして、率直に申せば、その同等というのは今のアメカのことを考えておるものと考えますけれども、しかし話合いによつては、たとえば行政協定がかわれば、その問題も自然にかわつて来るということもあり得るのであります。たとえばNATOの協定が発効したときのことを考えますと、これは双方ともに同じ待遇でさしつかえないことになると思いますけれども、いまだ、裁判権は日本にやつてもいいのだ、アメリカと同等でありさえすればいいのだ、そうは言つておらないのでありまして、先方言つておるのは、アメリカと同等、こういうことを言つておるのであります。
  153. 栗山長次郎

    栗山委員長 関連して中村高一君。
  154. 中村高一

    中村(高)委員 英濠兵の引渡し問題について、ただいま外務大臣国際慣行とか、国際協力という趣旨で扱われたそうでありますが、そうだとしますと、前に神戸の裁判所で行いましたことは、外務大臣考えから言われますと、国際慣行とか、あるいは国際協力の趣旨には反するように思われますが、そうすると、あのやり方は、外務大臣としてはよくなかつたというお考えでありましようか。
  155. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 われわれは、司法当局に対してもちろん干渉する意向もないし、司法当局のとりました措置につきまして、公の席上でこれを批評することは差控えるのが当然であります。しかしながら今も刑事局長が言われましたように、多少その間の取扱いの上において誤解がありましてああいうことになつたのであります。われわれとしては、でき得る限り吉田書簡の線に沿つて、こういう問題を処理して行きたいという原則論はもちろんかわつておりません。
  156. 中村高一

    中村(高)委員 そうすると、前の神戸のときには誤解か何かがあつたというふうな意味で、せつかく日本に裁判権ありというこの日本人の熱烈な要求であり、希望であるにもかかわらず、かえつて神戸でやつたことの方が、誤解か何かのような意味のことを外務大臣は言われておりますけれども、これは法律上の扱いを聞いているのではないのですが、外務大臣としては、今度のような扱いをするのが正しいというふうにお考えになつておりましようか。
  157. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは正しいとか正しくないとかいう標準ではないのでありまして、要するに実際上の措置の問題であります。戦争前といえども、別に協定がない場合でも、日本に裁判管轄権ありとし、また外国外国に裁判管轄権ありとしておりました。そのときに、日本においても実際上は外国の軍人の犯罪に対しては先方に引渡しており、日本の軍人の犯罪に対しては、先方から引渡しを受けておつたのでありまして、先ほど刑事局長の言われましたような、これが要するに国際慣行及び国際礼譲となつてつたわけであります。身柄の引渡しというものと、裁判管轄権というものとはこれは別と考えております。
  158. 中村高一

    中村(高)委員 われわれの考えております身柄の引渡しというのは、一応日本に裁判権があり、そうして日本で裁判をやつて、その上に国際慣例を重んじて、適当な裁判によつて身柄を引渡すというようなことでありますならばわかるのです。ところが、裁判にもならないうちに身柄を引渡してしまうという今度の行為がわれわれにはわからないのでありますが、先ほど刑事局長の言葉では、処分を保留のままで引渡したのだから、もう一度日本で裁判をやるかもしれぬというようなことを言われましたが、事実上そんなことが行われるとはわれわれ考えませんけれども刑事局長は、もう一度これを日本の裁判に付する場合があるということを、ほんとうにお考えになつておりましようか。
  159. 岡原昌男

    ○岡原政府委員 刑法第五条によりますと、かような場合には法律的に可能になつておりますし、またさらに実際問題といたしまして、向う軍事裁判の刑がはなはだしく軽きに失する、あるいは無罪だ——こんなことはないと思いますけれども、さような場合におきましては、こちら側で裁判するについて、論理的にも技術的にも支障はないと私は考えております。
  160. 中村高一

    中村(高)委員 私はただいまの局長の答弁は、まつたく納得することができないのであります。向うの裁判が、無罪にはならぬと思うが、相当な裁判になるだろう、そのときに、強盗でありますけれども、たとえばたつた一年の判決しかなかつたというときには、日本の裁判で行けば最低が五年、これは四年ばかり軽過ぎるからといつてもう一度日本の裁判に連れて来てやるなんということが事実上あり得ますか。そんなことはりくつの上であなたは言われておるのであるけれども、そんなことを言わずに、はつきりそれは向うの裁判に引渡したのだということを言うて、そしてあなたの方がどういう裁判をするか——、立ち会うという条件を今大臣が言われたのでありますが、立ち合うことは立ち会うけれども、両方の国で二つ同じ裁判をやるなんということは事実上あり得るでしようか。
  161. 岡原昌男

    ○岡原政府委員 せつかくの御意見でありますが、私どもはさようには考えておりません。
  162. 中村高一

    中村(高)委員 それでは局長は、軽ければもう一度日本で裁判をやつてみせるということでありますから、さように了承してもよろしいのですが、向う軍事裁判に日本が立ち会うというのは、これは何ですか、一体傍聴ですか、それとも法律的に何か立ち会つて、こに発言でもできるという意味の立会いでありますか。いかにも何か条件のようなことが書いてありますけれども考えようによつては傍聴なんというものに立ち会つても、何の意味もありはしませんし、これだけの外交上の何か立ち会うというような条件をつけられたとするならば、立ち会うとはどんな意味でありますか、これは外務大臣お答え願いたい。
  163. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 立ち会うというのは、やはりいろいろの場合があると思います。その場その場で、ここでもつてこれだけが立ち会うのだということは言えないと思いますが、その専門的のことは刑事局長からお答えいたします。
  164. 岡原昌男

    ○岡原政府委員 普通軍法会議でございますと、御承知の通り非公開になつております。その中においてどういう審理が行われ、そうしてどういう証人が出て来てどういうことを言つたかというようなことについて、外部にわからずに結論が出るというようねことになつております。しかしながら、それではわれわれ日本人といたしましては、この身柄の行方、裁判の成行きについて一切目をつむつて、結果だけはこうなつたというふうに知らされるということに相なりますので、それではたいへん心もとない。その審理が公正妥当に行われるというその過程も全部見ておきたい、これが立合の趣旨だろうと考えております。
  165. 中村高一

    中村(高)委員 結果については向うから報告があるということになつておりますから、結果はわかるのでありますが、そこで傍聴しておるのか、立ち会つておるのか、何か発言でもする余地がありますか。
  166. 岡原昌男

    ○岡原政府委員 その問題は、英国あるいは濠州の軍事裁判における訴訟規則がどのようになつておるか、私ただいま存じませんので、正確なところは申し上げかねます。従つてこれは想像でございますが、おそらくただ単にこれに立ち会つてその成行きを見守るというようなことではなかろうと思います。と申しますのは、あらゆる訴訟手続においてさようでございますが、かような際には、たとえば傍聴人が特別弁護人として出頭する、あるいは傍聴人がすぐその場からいわゆる在延証人として出頭して事を述べるというふうな場合以外は、立会人としての独自の権限は持つておりません。これが普通の訴訟の形態でございますが、おそらくさようなことに相なろうかと存じます。
  167. 中村高一

    中村(高)委員 いくら日本の役人が立ち会うかしりませんけれども、裁判そのものの本質からいつて、裁判官以外の者が口を入れられる裁判なんというものは、日本にもないし、外国にもないのでありますから、むろん日本の法務省の役人が出て行つてみたところが、問題にはならぬと思うのであります。結果において、こういうふうに処分保留のままに——われわれは事実上裁判権を放棄したものと見ておるのでありますが、これは外務大臣にお尋ねしたいのですが、国連軍協定を前にして、裁判権の問題だけがまだ今残つておるということは、先日の本会議の議場でも外務大臣は言われておるのであります。この日本の国策にも重要な微妙な関係のありますときに、事実上この犯人を引渡したということは、日本の裁判権をもう主張しない、言いかえますならば、日本政府の屈服だとわれわれは見るのでありますけれども、さようには外務大臣考えないのでありますか。
  168. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 先ほど申した中に、日本側が必要とする場合には、本件犯人を日本の関係当局に再出頭せしめるようにとりはからうという文句がありますが、これにつきましては、先方は、今言われたようなこととちようど同じように、国連軍協定未解決の現在、こういう文句を使うことは、日本の裁判権を認めたことになるおそれがあるというので、非常にこの点がむずかしかつたのであります。その結果、目下交渉中の国連軍の刑事裁判権問題に関する双方の立場には、何ら影響を及ぼさない、こういうことに意見を一致させて、この了解事項というものができておるのであります。従いまして、こちら側にもそういう心配があり得ましようが、先方にもそういう心配があるのでありまして、これは刑事裁判権に関する問題が意見が合わない現在においては、やむを得ないことでございます。われわれの方も決して裁判権を先方に事実上渡したと考えておりませんし、また先方も同じように、この事件をもつて日本側に裁判権を別に渡したわけではないのだということにいたしておるわけであります。
  169. 中村高一

    中村(高)委員 どうもその点がおかしいのですが、事実上裁判権を渡したのではないといいながら——今度のこの強盗事件そのものを向う軍事裁判で審理するのだろうと思うのですが、それは審理をするのではないのですか。
  170. 岡原昌男

    ○岡原政府委員 先ほどもちよつと触れました通り、本件並びに若干のほかの犯罪がございまして——たしか一方は詐欺でございましたか、一方は窃盗ございますか、何かほかの犯罪がございまして、さらに脱走という事実がもう一つ加わるということでありますが、それと強盗事件、かような事件と合せて審理があることになるのではないかと存じます。
  171. 中村高一

    中村(高)委員 向う軍事裁判で、すでにその強盗事件について裁判が一応終了してしまつたものを、もう一度日本へ持つて来て同じ事件を二度裁判ができますか、どうですか。
  172. 岡原昌男

    ○岡原政府委員 刑法第五条に、さような場合はできると書いてあるのでございます。
  173. 中村高一

    中村(高)委員 どうも局長を追い詰めてみたところが、それ以上局長が答えられぬほどに問題は重要でありますが、今後先方で裁判が行われますならば、その結果は日本政府に明らかになると思います。その場合において、不当に軽い裁判が行われたり、あるいは裁判の判決と同時に、外国に身柄を帰国をさせるというような場合があり得ると思うのでありますが、そのときにも外務大臣は、日本でこの二人の英濠兵の引渡しの請求ができると思いますがどうですか。
  174. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 今申した通り、必要の場合は本件関係者を再出頭せしめるということになつておりますし、また軍法会議終了後は、犯人を本国に送還しようとする場合には、あらかじめ日本側と連絡するということになつております。従つてその際に連絡があれば、法務当局等と協議をいたしまして、いかなる必要ありやなしや、それを検討して、必要の場合にはこの了解事項に基いて適当な措置をとるわけでございます。
  175. 中村高一

    中村(高)委員 われわれは、言葉の上におきまして、ここでわれわれと外務大臣との問答によつて満足するのではありませんから、日本の名誉のために、日本の裁判権を失わないということを行動の上に、事実の上に現わしてもらいたいという希望を申し上げまして、私の質問を終ります。
  176. 栗山長次郎

    栗山委員長 関連して黒田寿男君。
  177. 黒田寿男

    ○黒田委員 私も裁判管轄権の問題につきまして、簡単に岡原刑事局長にお尋ねしておきたいと思います。  中村君はもうこれ以上刑事局長を追及してもむだだとおしやいまつしたが、私はもう少し刑事局長にお尋ねしてみたいと思います。私が承りましたところでは、英濠兵を引渡したのは、検察庁では取調べは完了した。そしてその犯人を外国に引渡したのは、私が岡原局長から聞きましたところでは、普通われわれ日本人が、検察庁におきまして事件に関する取調べを受けて、いわゆる処分の留保で一応身柄を釈放してもらう場合は、もう一応済んだことになる、もう一度出頭しなければならぬ義務はなくなる、そういう意味において、日本の側においては、この問題についてもう触れる必要がないようになつたから、引渡したのだというのではないようです。そうでなくて、取調べだけは済んだが、最終の処分決定はしないという状態のままで引渡した、こういうように私は承りました。そしてその引渡した理由は、横田証言の中にありますように、管轄権は日本にあるのであるけれども、慣習及び礼譲という見地から身柄を引渡した、こういうようにおつしやつたように思うのでありますが、念のために、これは簡単でけつこうですから、そうであつたかどうかということを一応御答弁願いまして、それから私の質問を継続させていただきます。
  178. 岡原昌男

    ○岡原政府委員 大体その通りでございます。
  179. 黒田寿男

    ○黒田委員 それではひとつお伺いします。そうしますと、慣行及び礼譲に基いて身柄を引渡したということは、これは向う側に裁判管轄権があるということを認めて、日本としてはもう一度同一犯人について裁判は行わない、こういう意味ではないのでありましようか。そうではなくて、向うに身柄を引渡す、それが礼譲であり、慣行であるというのである、そのことは向うが裁判をすることになるということだと私は思うのですが、そのあとでもう一ぺん、日本が裁判するというのでは、これは礼譲でも慣行でもない、だから礼譲、慣行に基いて犯人を引渡すということは、事実上の裁裁判管轄権はあるのだけれども、実際には行使しないということになつてしまうのではありませんか。私は、その点において横田証言というものの意味がよくわからない。礼譲及び慣行に基いて引渡すということは、相手に裁判させるということであるかどうか、これをお聞きします。それから、相手に裁判管轄権があるということを認めて身柄を引渡したというのであるならば、しかる後にさらに日本がもう一度裁判をしないというのが、礼譲及び慣行であつて、もう一ぺん裁判するというのなら、何も相手方を尊重するということにはならぬ、こういうふうに思うのですが、こういう意味であるかどうか、この点をお伺いしたい。
  180. 岡原昌男

    ○岡原政府委員 先ほど慣行並びに礼譲に基きと申し上げましたのは、かような場合の裁判権の有無の問題を申したのではございません。身柄の処置についてのことを申したわけでございます。従いまして、さような場合に裁判権はこちらにある、但しその身柄を処置するについて、一応向う側に先に裁判をしてもらうために、身柄を渡すということが慣行並びに礼譲である、かように申し上げた次第でございます。
  181. 黒田寿男

    ○黒田委員 そうしますと、私が先ほど疑問といたしましたように、先方にも裁判管轄権がある、しかしてわが方にもまた管轄権はあるのだ、こういう御解釈ですか。
  182. 岡原昌男

    ○岡原政府委員 その通りでございます。
  183. 黒田寿男

    ○黒田委員 今われわれ日本人が、外国軍人の犯罪について裁判管轄権の所在を問題にしておるのは、両方の国に裁判権があるというような結論になる問題として取扱つておるのではない。専属裁判権は一つである。それを日本が持つか外国が持つかということが、私は問題になつておると思う。それを岡原刑事局長のように、外国にも裁判権があるが、日本にも裁判権があると言つたのでは、これは日本に裁判権があるということを今私どもが問題としておる意味にはならぬのです。二重に裁判管轄権があるという結論に、日本の法務当局は達しておいでになるのでありましようか。これは私ども今まで裁判の管轄権を争つてつたものと全然意味が違うので、はなはだおかしな議論だと思います。
  184. 岡原昌男

    ○岡原政府委員 私ども国際公法を研究したところによりますと、さような場合には重複するというのが、国際公法の確立した原則と承知いたしております。
  185. 黒田寿男

    ○黒田委員 そうしますと、結局裁判権は外国にあるのだが日本にもあるのだ、こういうことになるわけですね。それで非常にはつきりいたしましたが、私どもは、そういうような解釈をして、相手に先に裁判をしてもらえば、先ほど中村委員も問題にされておりましたように、日本がもう一ぺん裁判するということは、私は常識では考えられないから、要するに日本は裁判管轄権を放棄した、こう解釈しなければならぬ結論に到達すると思う。  なお一点最後に承つておきたいと思いますことは、そのように二重の裁判管轄権があることについて、ただいま岡原刑事局長は、それは国際慣行であるというようにも言われました。それから先ほど承つておりますところによると、刑法第五条によるのだというようにも申された。その刑法第五条の問題は、私も問題にしてみようと思つたのですが、これは岡原刑事局長が先にお触れになりましたが、一体どちらによるのであるか。国際慣行によつて二重裁判権を認めるというのであるか、それとも日本としましては、刑法第五条によつて二重裁判管轄権があるとするのかどつちか、この点はつきりしてもらいたい。
  186. 岡原昌男

    ○岡原政府委員 刑法第五条と、ただいま申し上げました国際法の原則とは関係がないのでございまして、ただ裁判権がなければ裁判ができないわけでございます。その裁判権が行使され得るといたしまして、その場合に、いかなる場合に裁判権を行使できるかということについて、刑法第三条、第四条、第五条に規定があるわけであります。その一つの場合として、第五条は外国裁判についてさらにもう一度処分ができる、かようなことを規定したにすぎないのであります。
  187. 黒田寿男

    ○黒田委員 最後に一点だけお尋ねします。この第五条は、日本人が外国において犯罪を犯して、それが外国の法令に抵触するために判決を受けた。しかもなおその事件についてわが国の刑法、たとえば刑法第三条の日本国民の国外犯というような規定によつて外国で犯罪行為を行い、外国の法令によつて判決を受けたけれども、なおその犯罪について国内でもこれを犯罪として裁判する権限があるから、そこで二重に裁判をするのである。私どもはそういうように考えておるので、外国軍人が日本において刑事事件を起した場合、そうしてそれが軍事裁判を受けて、それをまた一ぺん日本が裁判をするというような問題ではないと私は思う。私は第五条をそういうように解釈しておりますが、その点について承りたい。
  188. 岡原昌男

    ○岡原政府委員 第三条におきましては、御承知の通り日本国民ニ之ヲ適用ス」という文字を使いまして、日本国民がやられた場合ということを明確にいたしております。第四条は、これはよけいな話ですが日本の公務員が次のような犯罪を外国でやつた場合に、さらにというふうな規定を置きまして、第五条はそのだれということを規定してございません。そこで第五条についてはだれでもよろしい、かような解釈になつておるわけでございます。
  189. 黒田寿男

    ○黒田委員 私はこの問題につきましては、きようはこの程度しておきますがとにかく政府当局としては、二重に裁判権があるのだということをおつしやつた。専属管轄を争う問題としては、そのことは私は意外とするものでありますけれども日本政府はそういうように考えておいでになるということがわかつた。それで最後に、その点だけを岡崎外務大臣にお伺いしたいのですが、岡崎外務大臣もまた岡原局長のようにお考えになつておるかということを、簡単に御答弁願いたい。
  190. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私も今の刑事局長の意見のように考えております。たとえばNATO協定その他いろいろなものがありますが、これらもいつも両方に裁判権があつて、どつちが優先するかというようなことを取上げておるのでありまして、やはりそれはどちらにも裁判権があるということになるのだと考えております。
  191. 黒田寿男

    ○黒田委員 それでは私きようはこの問題についてはこのくらいにして、なおもう少し研究して質問したいと思います。
  192. 並木芳雄

    並木委員 議事進行について……。ぼくの方はこうなのです。ある政党が岡崎不信任案を決定した。これが日ならずして上程されて来た場合に、わが党はどういう態度をとるかということで、攻撃的の質問という意味ではなくて、できるだけ検討して、イエスかノーかの態度をきめなければなりませんのでお聞きするのです。質問は非常に短かいのですから、二、三になりますけれども、お許しを願います。
  193. 栗山長次郎

    栗山委員長 それでは、帆足さんが待つておりますから簡単に……。
  194. 並木芳雄

    並木委員 ただいまの質問の中に、外国にも裁判権があり、日本側にもあつて、二つの裁判権を行使することがあり得るという場合、両方が併科されるのですか。今の岡崎外務大臣のお話ですと、大西洋条約の例を引いて、どつちか重い方が科せられるというお話ですが、大西洋条約は確かにそうです。今度はやはりそういうふうに了解ができておりますかどうか。
  195. 岡原昌男

    ○岡原政府委員 もつぱら刑法上の問題だと思いますので私からお答えいたしますが、さような場合を刑法第五条で調和をとつておる、さように御了承願います。
  196. 並木芳雄

    並木委員 その辺がずいぶん疑問の出て来るところだと思うのです。そこで今度の条件の中に、必要ならば再出頭させるというようななまぬるいことでなく向うの方の裁判が済み次第、それでいついつまでに裁判をやるというふうにはつきりして、済み次第すぐこちらへ返せということが、どうしてうたえなかつたのかどうか、これは外交交渉ですから、岡崎外務大臣だろうと思います。
  197. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私の方は御承知のように吉田書簡というものがありまして、それを取扱いの基準といたしております。吉田書簡によりますと、必要とする場合にはということになつておりますので、われわれの方はこれで十分であると考えております。
  198. 並木芳雄

    並木委員 そこでやつぱり帰するところ、吉田書簡というものが、相当の重要性を持つて来るわけでございます。私どもは英国側の言うことにも一理あることを認めるのです。吉田書簡がやつばり軟弱ではなかつたか、こう思うのです。私どもは神戸の英国水兵事件のように今度もやつていただけばよかつたと思う。あくまでがんばればよかつたと思うのですけれども、それをやはりはばんだのは吉田書簡であると思います。そこで岡崎外務大臣は、この吉田書簡を至急改める御意思がおありにならないかどうか。ことに今度の場合でも、日本側は第四項の「特別の重要な事由がある場合には、」ということでやつたとのことですけれども先方では三の当然「引き渡す」、この条項に基いてやつておると了解されておるというふうに聞いておりますが、それも事実ですかどうですか、あわせてお尋ねいたします。
  199. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 今の三項、四項のお話ですが、三項によりますれば、もう問題なく身柄は引渡してしまうことにいたしております。これは軽い犯罪の問題であります。今度の場合は、先方でも決してそうは考えておりませんので、いろいろその間に話合いもありましたし、また四十八時間ということも書いてありますけれども、事実上犯人が初めはなかなか口を開かなかつた、またそれに関連した取調べを先方にい  つてこちらがやらなければならなかつたというようないろいろな事情がありまして、四十八時間からはかなり延びたのは御承知の通りでありますが、これに対しても別にむずかしいこともないわけでありまして、線は吉田書簡の筋によつてつておりますけれども、それぞれの場合によつてケースケース違う事情もありますから、そこで吉田書簡の場合でもこうするとは書いてありませんが、努力するというふうにいたしておるのであります。これは先ほども申しましたように、第一には国連協力という趣旨からいいまして、朝鮮で戦闘をしている軍隊の関係者、所属員でありますし、また日本でもあるいは外国でも、戦争前に同様な慣行が行われておつたのでありますから、これは軟弱とか強硬とかいう問題ではなくして、従来の国際慣行にのつとつた普通の常識的の措置であるとわれわれは考えている。またこれにつきましても御承知のように、先方は吉田書簡の第一項、第二項は承服しかねる点があるものでありますから、こちら側の一方的の取扱いの基準、こういうふうになつておる次第であります。
  200. 並木芳雄

    並木委員 国際連合との協定には、これは無関係だというコメントを、私は最初に日本側に有利なように解釈したのでございます。それならばまだいいなという感じをちよつと受けたのです。ところがあとから岡崎外務大臣説明を聞いていると、これはむしろ向うからつけられたものである。ですから今度はこういう取扱いをするが、これは日本側に裁判権があるということを認めたものではないのだ、だから国連協定に影響を及ぼさないのだというふうに、強みはむしろ先方に有利のように私は感じるようになつた。事実そうだとすれば、このコメントがついておることは、ちつとも日本に対しては喜ぶべきことではありません。のみならず、かえつて先方に喜ばれている、こう思うのです。その点はいかがでしようか。私は目下進行している国連協定とは無関係であるということは、日本側に有利にあらずして先方に有利である。ですから今後の国連協定の見通しはさらにこれよりも悲観的である、こういうふうに感ずる、大臣の所見を伺いたいと思います。
  201. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 前から御説明しておりますように、国連協定の方は意見は合いません。合いませんが、その間に腹蔵なくお互いに自分の考えを述べ、そうして相手の考えも聞いているのでありまして、いわば意見はいまだに根本的には合わないけれども、友好裡に話を進めている。これは先方もこちらもそうであります。そこでこういう事件を、かりに何かの既成事実について、日本側からもこういう問題があるのだから、お前は半分裁判権を承認したと同じことではないかというふうには使わないつもりでおります。先方もこの事件によつて先方の言い分がある程度日本認められたのだというような道具には使わない。決してそういうふうにトリツクに使わないということで、双方でこの問題は、この了解事項ということは国連協定に関する立場に何ら影響を及ぼすものでない、両方でそれを確認し合うわけであります。決して片方に不利だとか、片方に有利だという事情はないわけであります。
  202. 並木芳雄

    並木委員 それでは今後の国連協定において、岡崎外務大臣はあくまでがんばつて行きますかどうか、日本に裁判権を確保するかどうか。
  203. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはがんばれとか、裁判権を確保しろといわれると困るのでありますが、私はそういう意味国連協定で話をしているのではないのであります。というのは、私の考えでは、国連の協定においてはその前でもそうでありますが、国連に協力するという日本立場はつきりさせたいし、実際的にその効果を上げたいと念願している。そこで実際に国連協力の実をあげるためには、国民全部の心からなる協力といいますか、賛成を得る必要があるわけであります。その点から考えると、ただいまの新聞に出ております論説やら、あるいはその他の国民の声、議会における議論等を見ましても、裁判管轄権の問題を国連側の希望するようにすることが、日本国民全部の心からなる国連協力をもたらすことにならないとおそれているわけであります。それだから国連協力を有効にするためには、先方の言う通りにするべきでない。また国際法の最近の慣行については議論がありますけれども、従来の国際法もそうであるし、また今後新しい慣行とならんとしているNATOの協定等もその趣旨であるからして、そこで今NATOがもうじき発効するというこの際に、このNATO協定の趣旨にまるで反対のようなことを、この数箇月の間に暫定的につくるというのは、おもしろくないではないかという趣旨でありまして、結論からいえば、裁判管轄権をがんばるということになるかもしれませんけれども、趣旨は私はがんばるとか、がんばらぬとかいうのではなくて、NATOの性質とか従来の国際法の観念とか、また実際上の日本国民の全幅的な国連に対する支持、こういうことを考えますと、裁判管轄権を先方の要求通りにすることがかえつてそういういい結果をもたらさない、こういう趣旨でできるだけ先方の理解を得て、そうして満足な協定に達するように努力しておるわけであります。
  204. 並木芳雄

    並木委員 それから先になりますと主観論になつて来ますから、今のは承るだけにしておきます。もう一点だけ。私どもが率直に感ずるのは英国や濠州側で、いわゆる国連軍の兵が快からず思う一つの原因は、アメリカの方においては手厚く扱われておる、こういうことなのです。ついこの間渋谷で、寝ている婦人のふとんをまくつて、腹をけ飛ばしたなどという悪質な事件が起つたそうでございますが、それなども報道によりますと、すぐアメリカ軍側へ引渡しているようでございます。こういうような実際の取扱いはどうなつているのでしよう。やつぱり国連軍の兵であるか、駐留軍の兵であるかということを、検察あるいは警察当局はそこで区別をして先方に確かめた上で、これは駐留軍の兵だからということで渡しているのか、その点どうなのでしようか。どうもわれわれちつともはつきりいたしませんので、そんなことも案外に英濠側の感情を悪化している一つの原因ではないかと思いますが、この際お尋ねをしておきます。
  205. 岡原昌男

    ○岡原政府委員 ただいまの問題は、例の行政協定に伴う刑事特別法の運用の問題でございますが、私どもといたしましては、さような場合には、十分兵籍、兵種等を調査の上処置するようにという通知があつたのでございまして、お尋ねの事件でございますが、あれは米兵であることがはつきりいたしましたので、行政協定の刑事特別法に基き、そのように処置したわけでございます。
  206. 栗山長次郎

    栗山委員長 帆足計君。
  207. 帆足計

    ○帆足委員 ただいま外務大臣の御答弁で、国連協力の手段として、慎重な考慮を払つておるというお言葉がありましたが、私はそれよりもやはり強盗、殺人等に対して、国民の権利自由を守るという観点を第一として、これは考えられなければならぬ問題ではないかと思うのであります。従いまして、両国の関係から儀礼的に裁判権を認めるとしましても、基本的には日本側に裁判権があるというこの基本的態度だけは、明らかにしておくことが事理当然のことではないかと思うのです。従いまして、二つの裁判の間に、犯罪の認定や刑の裁量について、著しい意見の相違がありました場合は、明らかに日本の裁判をもつて最終裁判とすることができるようにお考えでしようか、まずこれを伺いたいのです。
  208. 岡原昌男

    ○岡原政府委員 ちよつと御質問の趣旨がわからないのでございますが、おそらく違つた判決があつたときに、どちらを優先的に考えるかという御質問ではないかと存じます。それぞれの司法権はそれぞれの国法に基いて設定してあるわけでございまして、従いまして、それに基いて適式に判決裁判がありました以上は、それぞれ通式に有効に成立する、かようなことに相なろうかと思います。
  209. 帆足計

    ○帆足委員 それに関連しましてたとえば服役地の問題ですが、日本を去るときには両方で折衝するということでありますが、それは服役地について日本政府側においてまた日本の裁判の側において意見がありましたときは、日本にとどめて置いて日本で服役させるということは、こちらがこれを適当と思えばできるとお考えですか。
  210. 岡原昌男

    ○岡原政府委員 さようなことになろうかと思います。
  211. 帆足計

    ○帆足委員 きようは御意見だけ承つておきまして、次会に私ども質問をいたします。     —————————————
  212. 栗山長次郎

    栗山委員長 なおこの際お諮りいたします。理事今村忠助君が都合によりまして理事の辞任を申し出られましたので、これを許可いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  213. 栗山長次郎

    栗山委員長 御異議がなければさように決定いたします。  なお去る十一月二十九日理事田中稔男君が委員を辞任せられまして、本日再び当外務委員に選任されましたが、ただいまの今村君の理事辞任とあわせまして、理事が二名欠員となつておりますので、この際その補欠選任を行いたいと存じます。これは慣例に従いまして、委員長において指名いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  214. 栗山長次郎

    栗山委員長 御異議がなければさように決定いたしまして、池田正之輔君田中稔男君をそれぞれ理事に指名いたします。     —————————————
  215. 栗山長次郎

    栗山委員長 さらに先刻松田委員からの御発言がありまして、委員会の開会度数をもつとふやすようにということであります。委員長理事諸君と協議いたしまして、そのようにはからいたいと存じますが今考えられますことは、今週中は水曜日、土曜日、来週は月曜日、水曜日というような運びになると存じます。追つて公報によつて次々に発表いたします。  また先般黒田寿男君から、ただいま議題になつております船舶の視察の要望がございました。委員長において関係当局に交渉いたしましたところ、駐留軍当局もそのわれわれの視察を了といたしましたので、関係政府当局のあつせんもあり、これを視察することになりました。水曜日委員会を終えまして十二時ごろから出発の予定でございます。参加の御希望の御申込みを事務の方へ願いたく存じます。  以上をもちまして本日は散会をいたします。     午後四時四十八分散会