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1953-03-04 第15回国会 衆議院 海外同胞引揚及び遺家族援護に関する調査特別委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年三月四日(水曜日)     午後二時四十一分開議  出席委員    委員長 佐藤洋之助君    理事 飯塚 定輔君 理事 平川 篤雄君    理事 受田 新吉君 理事 帆足  計君       池田  清君    玉置 信一君       野澤 清人君    石坂  繁君       臼井 莊一君    松野 孝一君       堤 ツルヨ君    柳田 秀一君  出席政府委員         法務事務官         (入国管理局         長)      鈴木  一君         外務政務次官  中村 幸八君         外務事務官         (大臣官房審議         室勤務)    中村  茂君         引揚援護庁長官 木村忠二郎君  委員外出席者         法務事務官         (入国管理局入         国審査課長)  平野 重平君         法務事務官         (入国管理局資         格審査課長)  鷹取 武夫君         外務事務官   淺田 太三君     ————————————— 本日の会議に付した事件  連合審査会開会要求に関する件  参考人招致に関する件  中共地区残留胞引揚に関する件     —————————————
  2. 佐藤洋之助

    佐藤委員長 これより会議を開きます。  本日は、前会に引続き中共地区残留胞引揚に関する件について議事を進めます。ただちに本件についての質疑を許します。飯塚定輔君。
  3. 飯塚定輔

    飯塚委員 ただいま委員長の仰せられましたのは、中地共残留胞引揚に関する件の質疑ということでありましたけれども、その前に、簡単でありますけれども、朝鮮における同胞の問題について、委員各位の御了解を得て、その点きわめて簡単でありますけれども、質疑をしたいと思いますが、この点お許しを得られましようか。
  4. 佐藤洋之助

    佐藤委員長 よろしうございます。
  5. 飯塚定輔

    飯塚委員 それでは簡単に、これは援護庁より、外務省当局にお伺いたした方がいいと思いますが、去る三月一日付の夕刊で、京城に残る日本女性とか、引揚げ切望の百名の同胞写真入りで、こういう記事が載つております。これは御承知のことと思います。大山、山根、城谷、松浦の四女性写真が出ておりまして、その記事には、現在京城に百名近くも同胞が残つておる、ことに対日感情大邦丸事件以来非常に悪くなつておりまして、終戦以来あらゆる点において、生活においても、感情の点から考えても、非常に苦しい生活を続けておる、また在留同胞としては、日本韓国とが昔のように自由に往来することができることを熱望しており、一日も早く祖国を訪れる日、あるいは帰ることのできる日を願つておるということも申されておりました。しかも、今度の中共からの同胞引揚船が、釜山へ立ち寄つて韓国同胞もそれに乗せてもらえるんだといううわさに耳を傾けて喜んでおる。祖国への郷愁につかれておる、ことに女性としては、日本の着物を着を夢さえ見ておるという記事が出ておりますけれども、これらの韓国におる同胞に対する当局のお考え、あるいはこれらに対する態度と申しますか、この点についてお伺いしたいと思います。
  6. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 ただいまのお尋は、韓国に在留する同胞引揚げ問題について政府はどうふうに考えるか、こういうお尋ねのようであります。実は、韓国に在留いたしておりました同胞は、ほとんど全部すでにもう帰つて参つているのでありまして、現在残つておりまする方々は、主として韓国方々婚姻等をなさつて引揚げの際には居残りたいという意思を表明した方々が、その後朝鮮動乱等のために、内地へ避難しようというような方々が大部分であるように聞いております。そこで、政府といたしましては、これらの今まで韓国に在留しておりました日本人婦女子方々帰国につきましては、あらゆる努力を続けて来ているのでありまして、現在外務省のとつておりまする方針といたしましては、現在日本国籍を有する者、また現在日本国籍失つておりましても、かつて日本国籍を持つていた者、さらにまた、現在日本国籍失つていても、かつて日本国籍を持つていた親に同伴せられて参る実子というように、日本人としての血統を持つている者につきましては、現在の国籍いかんにかかわらず、帰国または入国を許可する方針であるのであります。そこで、帰国または入国を許可いたします際に、以上のような関係にない韓国人がまぎれて日本に渡航して来るというおそれもなきにしもあらずという観点からいたしまして、その事実を確かめる方法をとつているのであります。それは、在京韓国代表部を通じまして提出せられる申請者名簿本籍地の市町村に照会いたしまして、確認した後に受入れているのであります。その本籍地照会等事務手続上、多少の時間は必要でありますが、いろいろ新聞等で伝えられておりますように、日本側在留婦女子の受入れを拒否しているというような事家はまつたくないのであります。  そこで、今日までどの程度の方々が申請し、または帰国せられたかという数字について申し上げてみますと、昭和二十八年三月一日現在、帰国申請回数三十五回であります。これは、韓国政府におきまして、申請者が相当まとまつたところで、まとめて申請して参りますので、三十五回の回数を数えております。それから、申請者の数ば一千六百四十三名で、そのうち、すでに帰国いたしました者は一千四百四十二名であります。目下本籍地等照会調査中の者が二百一名であります。  なお、帰国手続にきまして申し上げますると、韓国におりまする婦女子申請書韓国政府に提出いたしまして、在京韓国代表部を通じまして外務省に送付して参ります。そこで外務省ではこれを本籍地照会いたしまして、調査の結果、これは法務省入国管理局に移牒し、そうして入国管理局におきまして確認いたしました上で、韓国政府を通じて本人に通知されるのであります。韓国政府におきましては、帰国者が一定数に達しますと、便船によりまして日本に輸送して参る、こういう手続を踏んでおるのであります。  最近における帰国の状況を申し上げますと、この三月五日に神戸寄港の原州号という韓国船でありまするが、これは第二十六次船であります。今日まで二十五回帰国の船が日本に参つておりまするが、この原州丸は第二十六次船になつておりまして、この原州丸によりまして二十六名の婦女子帰国の予定となつております。  以上、在韓婦女子帰国の問題につきまして御説明申し上げました。
  7. 飯塚定輔

    飯塚委員 一日も早く在留同胞引揚げられることを熱望しておりまするが、それらに対しては、今度の中共からの引揚者のように、あるいは帰国手当とか、そういうものについてはどういうようになつておりますか。
  8. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 旅費とか帰国手当とかいうものは、これは自弁でございまして、政府が特別にとりはからいはいたしておりません
  9. 飯塚定輔

    飯塚委員 私の申し上げることは、あるいは無理かもしれませんが、今度の中共からの引揚げに対して当局のとれれておる非常な努力、これはわれわれも心から喜んでおりまするが、韓国からの帰還者に対しても、できるだけ中共から引揚げ同胞と同じような手厚い保護と申しますか、そういう点を御考慮願いたいということをつけ加えて、この問題に対する私の質疑を終ります。
  10. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 私が申し上げましたのは、韓国から帰つて参りまする方々は、日本国籍を持つている方々だけでないのでありまして、韓国籍を持つている方々が相当あるのであります。従つこ、全般的に申しまして、手当等は出さない、こう申し上げましたが、日本人でありますれば、中共からの引揚げの場合と同様に帰国手当を出しております。
  11. 飯塚定輔

    飯塚委員 その点了承いたしましたが、次に本日の議題になつておりまする中共からの引揚げ問題について、きわめて最近の折衝の結果はどうなつておりますか、この点をお伺いしたいと思います。これは、向うとの連絡のある三団体乗船問題等もあることでありますから、この点をお伺いしたい。
  12. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 昨日代表団の方から第二十二電が参りまして、共同コミユニケ発表したいから意見を求むる、こういうことでありました。そこで、関係官庁が集まりまして、いろいろ協議いたしました結果、本日の正午に、政府意見をとりまとめまして、これを代表団の方に打電することにいたしました。  それは四点あるのでありますが、第一点といたしまして、公電第二十号に関することでありまして、これは、何人が乗船するかを乗船前に明らかにすることは、船長輸送責任遂行上絶対必要なものである。乗船の際船側において各個人より申告を受けてこれをつくることは、乗船の迅速、円滑を期し得ないから、乗船者氏名年令及び性別を記載した名簿中国側において乗船前に一括調製し、船長に手交されたい。右乗船者名簿の調製が困難ならば、乗船各人をして乗船前にその氏名、年齢及び性別を記載した銘々表二部、一部は本人が所持し、一部は船長に渡す、この銘々表二部を各人に携帯せしめ、乗船せしめるよう手配されたい。第二点は、公電第二十二号及び二十三号に関してであります。コミュニケの第六項に関しては、帰還者世話等については必要な手配をしてあるから、三団体代表乗船することは特に必要がない。三、配船についての技術問題。二月二十七日往電第九号の配船についての技術問題に関する当方照会について至急に返電されたい。返電がなければ、三月二十日までに到着できるよう出港することに支障を生ずる。四、帰還者の範囲。帰還者日本国民及び日本国民と身分上近接な関係にある左記の者に限る。イ、打合せ事項に列挙した者。口、公電第十三号第一項、第二項、第四項及び第五項。但し第三項に十六才以上の子とあるのは二十才未満の未婚の子を意意すると解する。右以外の者は帰還者ではなく、入国を許可できない。こういうような趣旨の電報現地代表団に打つた次第であります。
  13. 飯塚定輔

    飯塚委員 ただいま政務次官お話の中の、公電第二十二号、第二十三号に関して三団体乗船は必要でないということは、紅十字会の方に送つたのでしようか、日本派遣団に対して打たれたのか、その点をお尋ねします。
  14. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 政府から連絡事務所を通じまして代表団の方に打電したのであります。
  15. 飯塚定輔

    飯塚委員 これに対しては、きのう打電したのであるから、おそらくまだ返電は来ていないと思いますけれども、最初向うからの電報の第七号の第一、第二、日本人世話をするためその代表を船舶に乗せて送ることができるとしてあるのは、この三団体を指したものと私了解しておりますが、この第七号は、必ず乗せなければならぬというのではなく、乗ることができ得るという電報のように理解しておりますが、このきのう第二十二号、第二十三号に関して打電された、三団体乗船は必要でないというこの問題との関連をお伺いしたい。
  16. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 第七号の電報におきましては、御指摘の通りに、三団体代表世話をするために乗ることができるという電報でございます。その次に、これは第何号でございましたか、次の電報でもつて、このことをさらに確認して、つまり乗ることができるということをさらに確認しております。次に、第二十一電及び第二十二電、第二十三電、この三つが昨日参つております。この二十一電及び二十二電によりますと、これは乗せる必要がある、乗せなければならないということを言つておるようでございます。文書を見ますと、そういうふうな書き方でございます。それから、第二十三電におきまして、さらにその理由を説明いたしまして、三団体代表乗船については、中国側最初は単にそれを希望したにすぎなかつたが、後になつて華日本人の多数が希望したので、中国紅十字会はこの三団体代表乗船が必要であり、かつ合理的であるとの結論に到達した云々ということを説明しておるのでございます。これは、当初の考え方といたしましては、日本政府といたしましては、この関係は、一応引揚げのつもりでわれわれの方では交渉いたしております。先方におきましては、これは引揚げでない、帰国である、居留民帰国であるというふうに言つておられるのであります。居留民帰国である限りにおきましては、船をまわせば船に乗れるわけです。船の中の世話というものは、普通の帰国関係につきましては一切船がやるのが従来からの建前ですが、これに必要なるいろいろの経費等の負担については全部政府がやるという建前をとりまして、そのために、船に対しましては、これに必要なる準備をするように言つてございます。従いまして、当方といたしましては、船の中の世話等をいたしますにつきましては、現在の船の船長に委託いたして、経費をこちらで負担いたしまして、その必要な処置は全部できるように、たとえば、医療等につきましては、これに必要なところの医師並びに看護婦というものを十分な数乗せておりますし、また食糧等につきましても、従来政府が直営いたしました場合よりは、はるかにいい内容のものにこれを変更いたしまして、先般予算の点はこれをきめまして、船の方で全部その準備をいたすようにしております。食糧等につきしてその世話をいたしますることも、全部船の方でいたすことにしております。それから、その他のいろいろな上陸等に際しましての手続等につきましての世話等もいたしまするために、これに必要なる船員がよけいに乗り組めるように、この点につきましても予算的の手配をいたしたわけであります。従いまして、これらの船に乗りまして、船の中でのお世話をするにつきましては、大体これでもつて必要にしてかつ十分であるというふうに認めますので、それ以外の者がこれに乗りまするということは、乗りますだけ、帰つて来まする人の数が減るわけでございます。従いまして、これらの点につきましては、われわれの方としては、その必要は認めないというふうな考えを柱つておるわけでございます。
  17. 飯塚定輔

    飯塚委員 ただいまの長官お話でわかりましたが、われわれは、前の委員会においても、船に乗つて来る同胞の一人でも多いことを熱望しておりまするが、日本上陸してから郷里に帰る、それをすみやかに運んでいただきたいというので、この前は、できるだけいろいろな問題についてよくわかつておる当局—日本政府役人が乗れないということでありましたけれども、それをすみやかに郷里に帰ることのできるようにということを当局にも要望しておきましたが、そのように主局者も乗らないような状態で、上陸後どういうふうにやられるか、その点をもう一つお伺いしたいと思います。
  18. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 入国手続あるいは税関の手続また検疫といつたような、当然国内に入つて来まする場合にいたします諸手続を簡略にいたしまするために、できるだけ船の中でいろいろなことをいたしたいというふうに考えたのでございまするけれども、これは、普通の旅客と同じような関係におきましてこれをやるという建前をとりますれば、その点はさしつかえないのじやないかと思われるのであります。なお、汽車等のあつせん等をいたしまする、つまり特別列車を出しますので、これのあつせんをいたしますために、いろいろと書類をつくつてもらわなければなりませんが、これは、先ほど申しましたように、船内の職員の増員によりまして、その点をやつていただくようにお願いいたしております。もちろん、これをやつていただきませんと、列車に乗れないわけでございます。つまり、その手続をやられない方は列車に乗れないということになると思いますけれども、これにつきましては、そういうような列車にお乗りになる御希望が皆さんあるわけでありますので、皆さんが御協力していただけるだろうというふうに考えまして、そういうような援護に必要なる一切の手続につきましては、船内でもつても相当のものができるだろうと思つております。従いまして、それができた限りにおきましては、上陸地におきまして大していごこざはなかろうと思つております。ただ、われわれといたしまして、この際できなくなるだろうと思われますことは、中国に残つておられます方々情報と申しまするか、どういう方が生きておられて、どういう方がなくなつた、どういう方がどういうふうにしておられるといううよな、つまり、こちらの留守家族方々に安心していただきますためのいろいろな情報をとりまするために、皆様方の知つておられることを書いていただくという、ことは、従来からやつてつたのでございますけれども、これは今度は完全なものはできないというふうに考えております。これができませんことは、留守家族方々、まだお帰りになつていない方々に対しましては、まことにお気の毒なことと存ずるのでありますけれども、これをやりまするために舞鶴滞在が長くなるということは、われわれの本意ではございませんので、舞鶴でもつて滞在を長くしない限度におきまして、御協力願いますることは御協力をお願いいたしたい、かようなことによりまして、舞鶴滞留期間は延長しないで、この際全部を処理するようにいたしたい、かように考えております。従いまして、われわれとしましては、援護の点につきましては何ら遺憾の点はなかろうというように考えております。
  19. 飯塚定輔

    飯塚委員 その点よくわかりましたが、先ほど中村政務次官の御説明の中に、公電第二十号において、船長に姓名、年令性別等を申告するということでありましたが、そうしますと、上陸の際、あるいは内地に一歩入つて援護庁で取扱う仕事にその事務が移りましたときに、その船長に出した名簿といいますか、それに従つて調査と言うとちよつと変な感じがしますけれども、その名簿といいますが、そのカードによつて信頼するということになるのか、その点をお伺いしたいと思います。
  20. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 乗船者名簿でございますが、これは、船とか飛行機とかに乗りまする場合には、船会社あるいは飛行機会社が必ずそれをつくものでございます。それに対して、そのやり方としましては、本人に書いていただきまして、会社でやりまするとか、いろいろな向うにありまする代理店等でもつてそれをやるとか、いろいろなことがあると思いまするけれども、とにかく、船といたしましては、一応乗船者はだれであるということを確認するだけの名簿は持つておらなければ、船に人を乗せるわけには行かないのでございます。ただ、それと、上陸いたしましたときに、こちらでもつていろいろな援護をいたしまするに必要なる書類をつくるということとは別でございまして、あるいは入国手続等につきましては、また別でございまして、それらについては、それぞれ必要なる書類をつくつてもらわなければならぬ。それは船内でつくることになります。これらにつきましては、船内でそれをつくりまして、そしてこれによつて手続をするということになると思います。
  21. 飯塚定輔

    飯塚委員 それでは、私はもう質問をこれで打切りますけれども、三団体代表乗船する必要がないということと、それから乗船しなくとも政府としては万全の対策を講じて、すみやかに郷里に帰る方法を講ずる、そう考えてよろしゆうございますか。
  22. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 協定の通りに、参りました人を船に向うで乗せていたぎますれば、われわれの方といたしましては、その後におきまして、いろいろといざこざが起るようなことはなかろうと存じます。もちろんこれは、感情問題等でいろいろなことがあるということはあるかもしれませんけれども、仕事といたしまして、普通に平穏に事を運びましたならば、何らこういう問題が起ることはないというように確信いたしております。
  23. 飯塚定輔

    飯塚委員 またあとから質問することがあると思いますけれども、これで一応切り上げておきます。     —————————————
  24. 佐藤洋之助

    佐藤委員長 この際、報告並びにお諮りすることがございます。  さきに委員会において決定をいたしました厚生省設置法の一部を改正する法律等の一部を改正する法律案は、昨三日内閣委員会に提出いたしました。明五日に委員長委員会に出席いたしまして、提案の理由を説明いたすことになつております。これを御了承願います。  なお、かねて委員長に御一任を願いました舞鶴援護局現地視察の件でございますが、これは八日に出発いたしまして、八、九、十の三日間を充当いたしたいと思います。なお御視察方々は、一応理事諸君、こういうことで議長及び運営委員長に昨日連絡をとつておきました。まだ回答に接しませんが、この交渉をいたしましたことを御了承願いたいと思います。  なお、この際お諮りいたしますことは、未帰還者留守家族等援護法案は、昨日厚生委員会に付託されましたので、本委員会としては、この法案は特に密接な関係を有しますので、厚生委員会連合審査会開会を申し入れたいと思いますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  25. 佐藤洋之助

    佐藤委員長 御異議なしと認めます。未帰還者留守家族等援護法案について厚生委員会連合審査会開会を申し入れることとといたします。なほ、開会日時等につきましては、当該委員長が協議の上、公報をもつてお知らせすることにいたします。御了承をお願いいたします。     —————————————
  26. 佐藤洋之助

    佐藤委員長 質疑を許します。柳田君。
  27. 柳田秀一

    柳田委員 私は、前回の本委員会におきます質疑で保留しておきました分を続行いたしまして、特に外務省法務省の見解をただしたいと思うのであります。  十三号公電によりますと、留守家族の間で気づかわれておりました、特に国際結婚をいたしました妻や子供引揚げ問題に関する中国側意向が明らかになつたのであります。すなわち、これらはいずれも本人意思を尊重する、子供におきましては、十六歳未満の場合には両親の意思、十六歳以上の者は本人意思、こういうふうに中国側意向が明らかになつております。これは、われわれといたしましても、非常に心配しておりました留守家族にとつてて、まことに大きな朗報であつたかと思うのであります。ところが、その十三号公電は、二十四日北京発で、日本新聞発表されましたのは二十五日でございますが、たまたまその翌日の二十六日に、入国管理局平野入国審査課長舞鶴に出張されまして、そこで新聞記者にこういう発表をしておられる。これが二十六日の日本経済紙上に載つておるのであります。すなわち、「在華同胞中には日本人でありながら本人の知らぬ間に日本国籍失つていた者や、日本人装つた外国人のあつた例もあり、今回もこれらの人々には気の毒ながら舞鶴まできても次の帰国船で送還する方針である」こういうような発表がありまして、その後の公電によりましても、逆送還というような点が向うの神経を刺戟したようにも見受けられるのでありますが、この中で特に問題になりますのは、日本人でありながら本人の知らぬ間に日本国籍失つていた者という点でして、これはおそらく、向うでいわゆる国際結婚現地結婚した者が該当すると思いますが、これが、自分の意思ならともかく、本人の知らぬ間に日本国籍失つてつた、こういう者は、本人意思によつて中国側も認め、そして日本帰つて来て、なつかしの故山の姿を見ながら、舞鶴から引返さすということは、あまりにも残酷である。中国側が法三章の精神に基き、社会常識社会正義従つてこういうふうに解釈しているのに、日本側はあくまでも出入国管理令と申しますか、そういう法の字句にとらわれて、いわゆるお役人の生地と申しますか、そういう気質もありまして、こういうような発表をしておられますことは、この際留守家族はこういう問題に対しては非常な関心を持つているだけに、私は残念でならぬのであります。ことに、日本中国に進みましたときに、あまりにも法律の文句あるいは規則の末梢にまでとやかく言いますので、共匪、土匪という言葉にかわりまして、日本人のことを法匪と言つてつたことをわれわれは知つているのですが、まさにこの談話こそは、この法匪に当るものであると私は思つているのでありますが、これに対して、外務省並びに法務省の御見解を承りたいのであります。
  28. 佐藤洋之助

    佐藤委員長 ただいまの柳田さんの御質問に対しまして、前回御注意がありましたから、鈴木入国管理局長を呼んでいたのですが、他の委員会の都合上今退席いたしました。しかし、その当時の新聞談話の責任者である平野課長がおりますから、平野課長から答弁させます。
  29. 平野重平

    平野説明員 平野であります。私は二十七日に舞鶴へ参りまして、私たち入国審査課のやる施設、あるいはいかにして早く入国審査の手続がとれるかという施設を私は見に参つたつもりであります。ところが、その際、引揚援護庁現地の一色業務部長その他各課長—多分三人の課長が出ていたと思います。それから私の方は、私と、それから神戸、大阪の各港の出張所長を帯同しまして、同じ席で、しかもみなの前で私は新聞記者の方にお会いしたのであります。そうして私は、新聞に書かれてあるようなことを申し上げたつもりは全然ございません。そのとき新聞記者としておいでになつたのは—名刺は今役所の方にございますが、三人おりました。共同と産業経済新聞、それから読売の三人の新聞記者に対して、私は同じことをみなの前で申し上げたのであります。私たちは引揚げを最も早く、しかも効果あるようにやりたいということと、それから第二には、長く海外におつた方を心から麺お迎えしたいということが、われわれの一番念願するところでありますということを申し上げましたら、最後に、非該当者の方が入つて来た場合はどうするか、こういうような質問がございましたので、非該当者というものは大体入つて来ることもございませんし、万が一にもそういう人があつた場合は、それは遺憾ながら帰つていただかなければならないようなことになるかもしれない、そういうように申しました。私が神戸へ参りましたら、産業経済新聞に、小さく、四行ぐらい、私の言つたことと全然違つた、今のような新聞記事が載つておりました。東京へ帰つて見ましたら、それが十倍ぐらいの大きさに報道されているということは、私としてはまことに遺憾なことでございまして、そういう弁明の機会を与えていただいたことは、私としては非常にうれしいことであります。
  30. 柳田秀一

    柳田委員 ただいまの平野課長の御答弁で満足するのであります。ただ、それならば、もう一度念を押して確かめておきたいのでありますが、在華同胞中、日本人で、しかも本人の知らぬ間に日本国籍失つてつたような者があつたとして、そういう者が帰つて来たときには、入国管理局ではいかがされますか。
  31. 平野重平

    平野説明員 それは、自分が知らない間に国籍を失つたというようなことは、私たちにはちよつと想像のつかないことでございまして、あるいはその際具体的に伺いたいと思いますけれども、無国籍者になつたとしても、その人が元日本人である限りは、当然入られることになつておりますから、その御懸念は全然ないと思います。
  32. 柳田秀一

    柳田委員 ただいま明らかになりましたことで、非常に満足いたします。  なお次に、外務政務次官並びに援護庁長官にお尋ねいたしたいのでありますが、引揚げの三団体代表者を入船せしめないことであります。この問題は、私をして言わしむるならば、やはり向う公電にもありますように、今後の引揚げの折衝は、たといそれが集団帰還にいたしましても、その後残られた方の単独帰還にいたしましても、中国の赤十字と日本の三団体とがお互いに衝に当るというふうに向うも言つているのですし、またそういうふうになると思うのでありますが、そういう観点からいたしましても、やはり三団体代表者がそれぞれの船に乗られることは、その間の事務が非常にスムースに行くし、またそのために今後あるいは単独に帰還される方も有利になるのではないか、私はかように解釈するのであります。今のお話では、一人でも多く船に乗せたい、その御意図はよくわかります。しかし、三団体の中から一名ずつ代表が出られましても、わずかに三人でありまして、一つの船に二千人帰つて来ましても、三人のことでありますから、そのために帰国者が自分の船室をふさがれるというようなことは、おそらくないと思うのでありますが、これに対して外務省並びに引揚援護庁はどういうふうにお考えになりますか。
  33. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 先ほど引揚援護庁長官より詳しく御説明がありましたように、引揚者の万般のお世話につきましては、鉄道の問題にしても、また税関の問題その他一切手配がしてありますので、あらためて三団体代表の方にお世話を願わなくても、この問題に関する限りは、いいのではないか、こういう趣旨でございます。
  34. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 同じでございますが、もう一度私から御説明しておきます。三人はわずかというふうなお説でございますけれども、もしも千七百人向うにおります場合には、千七百人のところに三人おりますと、千六百九十七人の人が乗りまして、三人の人は残される。私どもといたしましては、船の許します限りたくさん乗る方がいいという考えを持つております。なおもう一つ、どうしても乗せなければならぬかどうかという点ございますが、それは、乗つた方があるいはいいことがたまには起り得るかもしれないという程度じやなかろうかと思うのであります。つまり、向うとの交渉というようなことでございまするから、先方の方で約束通りすらすらと船にお乗せになることがないというような、先方がわれわれに対して不信の行為があつたような場合に、そういう問題が起るのでありますが、すでに話がついておりまして、あとは船の運航をどうするとか、船をどういうふうに着けるかということだけが問題でございます。船の者は別に上るわけじやありません。船をどう着けろということは向うで指示するわけでありまして、その通り船を着けて、乗つて来るだけでございますから、その際何らかの交渉があるということは、ちよつと考えられないのであります。それで、船をまわすかまわさないか、いつまわすかというような連絡につきましては、先方からも、向うの紅十字社の中にできております三団体事務所に連絡をすると申しておるのでありますから、向うさんのおつしやることそのままを信用いたしますると、何らの必要がないんじやないかと私は考えております。そういう場合におきましては、われわれとしましては、やはり一人でもよけい乗せる方が正しいだろうと考えております。
  35. 柳田秀一

    柳田委員 ただいまの援護庁長官の千六百九十七名説は、御自宅に万巻の蔵書を積んでおられる博学の木村引揚援護庁長官の言葉とは、いささか受取りがたい。これは、私たちだけではなしに、おそらく万人をしていささか首肯せしめかねるものがあると思います。もしもその三団体代表乗船せしめると、政府が、公式か非公式か忘れましたが、発表しておられるように、第二政府ができる、こういうようなりくつを述べておられますが、そうかたく解釈しなくても、向うの方もお世話すると代表団は言つて来ておりますので、そのお世話をする三人が乗つたところで、もしもそのために千七百名が三名はずれたら、その人たちを入れて、代表団の三名は、デッキの上でもどこでも、仮睡してでも、その三名は受入れられると思う。それくらいなことは常識でも想像できる。しかし、それをなおやらないということは、これはうがち過ぎているかもしれませんが、どうも政治的色彩がそこに入つておる。もしこれが日赤だけの代表者なら、おそらく政府は同意されたのではなかろうか。日中友好協会にしても、平和連絡会にしても、政府としてはそう御好意は持つておられぬのではなかろうかと私は思います。そういう団体がすべてイニシアチーヴをとることは、何か政府は面子上、あるいは感情上も、どうも好ましくない、そういうようなお考えが、今のようないろいろと理由を並べられるもとになつておるのではないか。これは私の邪推ですから、いくら議論をいたしましても、水かけ論になりますが、そうとしかとれないのであります。常識上は、その三名を入れたところで、決して木村長官の御学説のように千六百九十七名にはならぬと思いますから、これはもう一度十分御再考せられて、引揚げ業務が円滑に進み、また集団帰還以外にも、単独に帰られる方にもやはり有利なように御処置される方が、国民の公僕としての政府の態度じやなかろうかと思うのであります。
  36. 帆足計

    ○帆足委員 ちよつと関連して……。ただいまの柳田委員からの御質問、私はまことにごもつともなことと思うのであります。これは、引揚げ帰国かというような言葉の上の論争は実につまらぬことであります。中国で火の車と書くと汽車の意味で、汽車と書くと自動車の意味であります。そういうわけでありますから、言葉の上のことというものはつまらぬこと、三百代言のやることであります。いやしくも政府としてはそういうあげ足とりはおやめになつた方がよい。何千人の方々が長い間異境の空におりまして、朝二時間ずつ学習をやつて、非常に議論をして、大脳皮質の訓練をするというような習慣をつけておられますから、お帰りになつ方々は政治的に議論をする習慣はついておるのじやないかと私は思います。そういう方々が、いろいろな質問をされたり、世の中のことを聞かれたり、いろいろの手当その他のことを聞かれたりするのに、事務的な船長さんや船員さんたちでは、ちよつと答弁に困るというようなこともありましようから、やはり世話役が何名かお乗りになつた方が円滑に行くということは、これは国民すべての常識だと思います。ところが、政府当局としては、最初からあの三団体にまかせることはすかなかつたのを、万斛の恨みをのみ、涙をのんで、あの三団体代表団体にお認めになつたということは、保守政党としてさぞかし御無念であられたろうと御推察いたしますが、しかし、そういうことは国民の目から見ればどつちでもよいことでありまして、政党政派の相違などというのは、国民の大きな利害から見れば、小さな差でございます。従つて、こういう国民的な行事につきましては、虚心坦懐に—赤十字の方もお入りになつておることですし、すでに国民使節として政府もお認めになつたのでありますから、残務処理につきまして三団体から適当な人が乗船するというのならば、それは軽い気持で認めたらよさそうなものと私は思う。但し、その場合に人選等に不安がありますならば、あるいは引揚委員会委員長さんあるいは理事会あたりが非公式に御相談に乗るような形にしてでも、また三団体代表という意味は、必ずしも三団体に籍を置かないでも、そこから推薦した方であればけつこうでありましようから、人物等が公平な人であるならばお認めになつた方がいいのであつて、こういうことのためにまた電報代をお使いになつて、一日千秋の思いでお待ちをしておる留守家族の人たちに心配をさせる場などということは愚かしいことだと思います。そこで、結論といたしまして、ただいまの、三名の人員をどうするかというような学説は、もうつまらぬことでありますので、撤回していただきまして、ただ今後なお円滑にやりますために、代表という意味を広義に解釈しまして、適当な人によろしく出てくれという注文でおまとめになつたらどうかということを私は勧告いたしますが、もしそういうことをなさらずに、二千人、三千人の方が船にお乗りになつて、平素経済や社会の問題から縁の遠い船乗りの船長さんや事務長さんたちが、不適当な説明の仕方で——船内は群衆心理で大いに気勢の上る場所でありますから、メートルでも上りました場合に、一体どういう責任をおとりになるお考えであるか、私自身多少心配するのでございます。従いまして、これはやはり砕けてお出になりまして、なるべく良識ある代表を選んでくれというような注文をおつけになつて、または引揚委員会理事会等にそういうことのあつせんでもお願いなさつて、赤十字もおられることですから、あつさり、よろしく頼むということの方が、スマートで品がいいのではなかろうかと思います。いつも後手後手になつて、渋々ながら小づかいを出すようなやり方は、毎日の新聞を見ておりまして、まことに見苦しいことであると存じますから、御再考のほどをお願い申します。
  37. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 私の方は、事務そにその必要はなかろうと、今のところは考えております。いろいろお説もあつたようでございますけれども、政治的な考慮を全部排除いたしまして、事務的に考えますと、その必要はない。つまり、船にお客様を乗せて帰つて来るのでありますから、その関係において、お客さんが船に対していざこざを起すというようなことは、いかに大きな船でありましても、そういうことはあまり起らないと思う。この点につきましては、船にお客様を乗せて来るというだけのことでございますので、これにつきましていろいろのいざこざが起るということはない。たとえば、ある種の書類等について、この書類を書くことはいやだということはおつしやるかもしれませんが、そのときは別に強制するというような考えは全然ないのです。そのために、こちらに上りまして、若干遅れることがあるというぐらいのことでございまして、そういうことでございますので、大体皆様方が円滑にお乗りになつておいでになるものというふうに一応考えられます。その辺を信頼しておりますところでは、事務的には何らその必要がなかろうというふうに考えておるだけであります。もし、なおどうしてもその他の必要があるということならば、どういう必要があるのか、そういうような実際の必要ということを事務的に検討いたしてみたい、かように考えております。
  38. 帆足計

    ○帆足委員 ただいまのことは、結局こういういきさつがあつたということが先方にもよくわかつておりますので、帰る人たちは若い血気にはやる人々も相当おられると思いますので、船長さんの意見なんか聞かない、そして引揚げ代表世話役がいないからけしからぬじやないかというようなことを決議したりなんぞすれば、それだけむだではないか、そういうつまらない手数を省いて、最初からスマートにおやりになつたらいかがか。私が引揚者でしたら、船長さんの言うことなんか聞きません。こういういきさつがあつたら、世話人を出せと、ことさらにでも一応は言います。それがやはり人権伸張の習慣になり、練習にもなるわけですから、そういうような人権伸張の行き過ぎぐらいのところは大目に見て、そして適当におさばきになる必要があると思いますが、これは、政府が誠心誠意、そういう人はいらない、また害があると言うなら別として、やはり前からの行きがかりにごだわつているということは、衆目の見るところですから、それが大衆心理を刺激するのは当然だと思うのです。もしそういう騒ぎでもあつたならば、援護庁官はお腹をお切りになる覚悟ならけつこうですけれども、せつかく同じ委員会にいることですから、老婆心として御忠告申し上げておきます。
  39. 飯塚定輔

    飯塚委員 先ほど来二千名対三名の問題でお話がこじれているようですけれども、私、ちよつと席をはずしておつたのですが、三団体から一名ずつ三名ということで乗せるというのだつたのでしようか。もしそうだとすれば、今援護庁長官のおつしやつた千七百名に対して三名の世話役で事足りるかどうか、それをひとつお伺いしようと思います。
  40. 柳田秀一

    柳田委員 これは、私も当事者でありませんので、私がお答えするのはおかしいのでありますが、公電を見ますと、この三名は、向うへ行きましてから上陸もできるそうです。船員は上陸させない。要するに、この三団体代表上陸もさす、こういうふうに言つて来ているわけです。従つて、今度の帰還の問題は、すべて、両政府が正式な国と国との交渉をしていないから、この三団体代表向うは認め、そうして船員は船長以下上陸させない、こう言つているのですから、私どもは、やはり連絡事務、そういうものを円滑にやる上においては、この三団体の方が乗つておられた方がさらにベターであると思うのです。おそらく、今援護庁官のお説のように、いろいろ準備、そういうものはおやりになると思いますけれども、さらにその三名乗つておられても、その方がさらにベターであつて、何らのマイナスにならぬ、こういうことを言つているのであります。
  41. 飯塚定輔

    飯塚委員 それに関連して、新聞記事でありますけれども、三月二日だつたと思いますが、読売に小さく出ていた、畑中さんの電報ですか、あれには、三団体乗船の計画を放棄するなというような記事があつたと思いますが、それは何かこの引揚げに対しての関連があるかどうか、もしおかわりになつておるならば、その点をお聞きしたい。
  42. 柳田秀一

    柳田委員 私は一向に存じません
  43. 帆足計

    ○帆足委員 私どもも存じておりませんけれども、これが二つおそらく張り合うであろうということは想像されます。と申しますのは、向うとしては、やはりこれは国民代表が自分の手でやつたというふうな形にしよいという気持を、畑中君や友好協会は多少お持ちだと思う。政府としては、こういうことは政府がやるべきであると思うのに、心ならずも民間団体がしたということで、前からの旅券法のいきさつもあつたりして、多少張り合つている気分はある。この張合いの気分が帰国家族の感情問題などに広がるようなことのないように、複雑になりかけていることを簡単に整理整頓して、さらつと水のようにするということが賢いんじやないか。多少これに両方ずつとこだわりがあることは確実でございます。
  44. 受田新吉

    ○受田委員 この帰国にあたつて、船舶内における警察権の行使は船長がすることは、これは規定の上で明らかにされているのですが、この船長に対して政府としての公務執行の一部を委任する形になるのかどうか、行政上の措置として船長に与えられる政府の公務執行委任事項の範囲、これをお伺いしたいと思います。
  45. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 公務の執行ということになるのではないのでありまして、引揚援護庁と船との間に輸送の契約を結びまして、その契約によりまして船長がいろいろな業務をおやりになるのであります。
  46. 受田新吉

    ○受田委員 そうすると、国家の事務船長との間の契約でとりきめた場合に、その契約不履行という場合の、直接国家としてなすべき公務執行の渋滞せる責任はだれが負うのか、最後の責任者は国家になるのかどうか、これをお伺いしたいのであります。
  47. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 ここで行われる公務というものがどういうものであるのか、私よくわからないのでありますが、船の中でいたしますのは、入国についての手続を、普通の船の中でやりますと同じようなことでやる。つまり、書面をまわして書いてもらう、それをまとめて、それぞれの係官に渡すというようなことであります。それから、列車の輸送計画に要する書類につきましても同様でありまして、大体そういうような書類を作成することについてのお手伝いをしてもらうというだけでございまして、これは別に、公務と言うて、やかましく契約不履行があつたとかなかつたとか言うような筋のものでなかろうと思います。ただ、お客様を何人か乗せて、それに食費が幾らかかつて、それに対して幾ら払うというような契約でありまして、確かにそれだけの食事を食べさせなければ、国としては経費を払わないというような、輸送の契約であります。船を向うにまわしまして、それに乗せまして、食事を給与する。こちらとしては、それに対して代金を払う。こういうことになつております。従いまして、その中身といたしまして、公務々々と言うほどの大きな公務は、この中には含まれておりません。従いまして、契約不履行の場合に責任がどうのこうのということはございません。  また、船の中で騒ぎが起るだろうというお話でございますけれども、これは起るか起らないか、私はわかりません。しかしながら、普通の常識から考えますならば、騒動が起るとは考えられません政府代表とか、ある特殊のことをする人が乗つておりますれば、その人に対するいろいろな攻撃とか文句があつて、かえつて騒動が起るかもしれませんが、ただ船で人を輸送しているという場合に、騒動が起るということは、ちよつと普通の場合には考えられない。よほど異常の場合は別じやないかと私どもは思つておるわけであります。
  48. 受田新吉

    ○受田委員 かつてソ連地区からの引揚者が、その船中において船長をつるし上げにした事件長官はよく御記憶になつておられると思います。かかる事件はこのたびは起り得ないという今の御答弁でありますが、こうした、ささいなようであつて実は重大な問題、すなわち、帰つて来られる方々の生命、財産を保障するというところに、われわれ待ちわびる国民の大きな責任があるわけでありますから、少くとも政府が契約によつて船長に約束さしたところの事柄の不履行、今の査証の問題とか、あるいは食事に対する国費を使う問題とかいうような問題と、もう一つ上へ飛び出た、生命、財産の保護という問題については、これは政府職員が乗つておらぬのだから責任がないのだというような、そういう逃げを打つわけに行かないので、われわれはやはり、そこに政府自身が、政府職員は派遣しなくても、船長に対して、この帰られる人々の生命財産を全部保障するという大きな国の事務の依頼をすべきであると思うのであるが、こういうことについては何ら触れておらないのでございますか。また、今の御答弁は、船中においてはきわめて平穏に帰るということが、もはや約束されたことであるような御答弁ですが、船中における事件の防止に対する強い政府側の要望というものはないのでございますか。これをお伺いしたいと思います。
  49. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 乗つておりまする人々の生命、財産の保護ということは、これは、船で輸送する以上は、当然その責任があるわけでございます。しかし、その場合も、中でいろいろな騒ぎが起つて、その騒ぎについての政府の責任いかんということは、もし騒ぎが起りました場合には、これを完全になだめる、あるいは騒ぎを起さずに済ませるという確信のあるやり方があるかどうかということでございます。この前に、ソ連から帰りました船の中で、いろいろ事件が起つたようでございますけれども、あの場合は、今度の場合とは大分様子が違うのでございます。情勢もすつかり違つておりますし、しかもあの場合には、日本政府が俘虜を受取りに行くという形で行つております。従つて、この中には日本政府の職員が乗りまして、業務をやつておるのであります。そういう業務をやつておりますがゆえに、あの騒ぎが起り得る可能性があつたのじやないかというふうに考えるのでございまして、そうでなく、普通の平穏な状態で旅行する場合におきまして、特に、向う側におきましては、帰国というふうに言つておられる場合におきまして、そういうふうな騒ぎが起ることは、まず常識では考えられない。しかし、常識で考えられないことがあるわけでございますから、起らないとは言えませんが、それを絶対に起させずに済ませる別の手があるかどうかということでございます。これにつきましては、私は起らないもの、なるべく起す素因をなくするのがよかろうというふうに考えまして、一番平穏な方法をとるのがいいのではなかろうかと、ただいまのところでは考えております。
  50. 受田新吉

    ○受田委員 この問題については、ソ連は、捕虜の送還にあたつて日本政府に対して配船を要請して来たのである。そうして政府職員の乗船を認めて来たのであります。ところが、今度中共では、これを認めなかつた。この点、同じ共産主義の国家の間においても、ソ連は日本政府の立場を認めて捕虜送還をやつた中共はそれを認めないで、民間団体との間における友好的な立場からの送還をやる、こういうことになつておる。この点、明らかに日本政府中共側からボイコットされて、きわめて重大な結果が起つたわけでありますが、われわれとしては、今度の送還にあたつて政府としてはできるだけ向うの言い分を尊重してやるという道を今まで歩んで来たのであるから、できるだけ向うの言うことを聞いてやる、そしてそれに協力してやるという形をとるのが妥当であると思います。従つて、今度こちらへ帰られる船に政府職員を乗せることができないとなつたならば、これに対して、民間団体代表とか何とかいうことよりも、民間団体の中で、今帆足さんもちよつと触れられたようですが、国会の方でも、党派を越えて、委嘱されるよな人物があるならば、懸念される人は除いて、あらゆる角度から、国の総意を十分代表されるような方の乗船を民主的な立場で推薦するというような形、たとえば、民間三団体というふうに限定しないで、そういう線からの人選をして、国会の意思向うへ伝えて、その承認を求めるというようなやり方、これが最善を尽す道ではないかと思うのです。この点、私自身としては、日本国の政府向うは認めておらぬが、日本国民の総意で出されておる国会の立場は、向うは十分認めてくれるのではないかと思います。従つて、国会の意思として、この委員会などの推薦者の乗船を交渉してみる、こういうふうなことは、尽すべき一つの道ではないかと思いますが、この点、政府としては、そこまで心を向けて、最後の手段まで意を尽して努力してみる、こういうことを十分お考えなさるべきではないかと思いますが、御意向を伺いたいと思います。
  51. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 代表として政府の職員は断られた、そのかわり国会議員を代表団に加えたらどうか、こういうお尋ねのようであります。われわれも、この問題は慎重に検討したのでありますが、中共側で日本政府を認めないと言う以上は、憲法の規定によつて成立しておりまする国会も認めないのではないか、こういうような観点からいたしまして、国会議員の問題は向うに持ち出さないことにいたしました。と申しますのは、中共側に対しまして、かつてこの問題が起りました当初、大野衆議院議長名をもつて依頼をいたしましよが、これに対して何らの返事がなかつた。こういう点からも明瞭ではないかと考えまして、国会議員の問題は持ち出さないことにいたしたのであります。
  52. 受田新吉

    ○受田委員 今の国会議員の派遣という立場もそうなんですが、それとは別に、この引揚特別委員会意思によつて、党派を越えてこの推薦を決定されたような場合には、民間三団体代表に非常にこだわりを持つておられる政府としても、そういう立場で選ばれた民間者であるならば、これは認めらたるべきものではないか、それへの努力政府としてはさるべきではないか、その政府としての努力をされることがわれわれの願いである。あちらに残つておる人々の送還の実現に大きな力となることならば、進んでその最後の努力をなすべきではないかということを私申し上げたのですが、いかがですか。
  53. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 私ども、よくそこのところがわからないのでございますが、先方で申しておりまものは、三団体代表というのであります。三団体代表というのは、普通に解しますれば、その三団体の人に限つていると解するのが普通の考え方ではないかと考えます。そういたしますれば、それ以外の者は乗ることができないとはつきり向うで言つております。こういうふうにはつきりしておりますので、そのはつきりしておるところを、もう一ぺん押すかどうかということでありますが、もう一ぺん押すかどうかということにつきましては、今のところ私どもは、そういう人が乗る必要は、事務的にはないと一応考えておりますので、そういう措置をとつております。さらに、全然別個の見地から、別個の人を乗せるということを考えるならば、それは、そういう人々を実際にどうして選ぶかということがきまらないうちに、われわれとして具体的なそういう問願について御答弁するわけには行かないのあります。わたしとしましては、事務的にはそういうことでないかと思います。
  54. 受田新吉

    ○受田委員 具体的に申し上げます。三団体というのは、この三団体に公平に割当るという意味でなくて、政府としていつも信頼しておられる日赤の方の団体の人だけを特に選ばれるというような場合に、政府はこれに対してどういう措置をされるかというようなことなのであります。
  55. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 ただいま、事務的には、その必要はなかろうと考えております。
  56. 受田新吉

    ○受田委員 その事務的な立場からの必要がないということは、最初から政府が申しておられるのでありますが、最後までその努力をすべきではないか。すなわち、一人、二人、三人というごくわずかな人が乗ることによつて、送還が遅れる、それだけの人数ほど乗れないのだというのは、こじつけでありまして、笑うべきことでありますが、そのためにさらに大きな帰還促進ができるということになれば、これは二人や三人の乗船がさらに大きな孫を生むわけでありますから、われわれは双手をあげて賛成しなければならぬ。従つて向うが三団体代表ということになれば、三団体代表として日赤の代表が、国会の総意によつて、この委員会の総意によつて推薦されるというような場合に、政府としては、これに対して全腹の協力をして、向うへ折衡してみるというよう努力を払わないかということであります。この点も政務次官の御答弁をいただきたいのであります
  57. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 引揚援護庁長官の言われますように、現在のところ三団体に限られておりますので、これ以上つけ加える必要はないじやないか、かように考えております。
  58. 受田新吉

    ○受田委員 今の三団体の中から出すわけです。私の申し上げるのは、限られているその中から出すというのであります。
  59. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 その三団体のうちで、特に日赤だけということも、またいろいろの面で不公平な問題が起りますので、その点もどうかと考えます。
  60. 受田新吉

    ○受田委員 三団体の間における総意とか、あるいは国会の委員会における総意とかが、そういうところで結論におもむきましたならば、いかがお取扱いされるかということです。
  61. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 くどいようでございまするが、現在におきましては、そこまで考えておりません。十分であると承知いたしております。
  62. 受田新吉

    ○受田委員 私が一つ心配しておりますのは、船舶の中において、何か尽すべき手を尽さずして、帰られる人々に非常に不愉快な思い、不満足な思いをさせてはならない。従つて内地上陸して以後は政府が全責任を持つが、船中のことは、中共側から言うて来たこともあるので、なるべく関せず焉だというので、これに触れないでおこうという政府の気持が多分にあるように私は見受けられます。この点、われわれの国へ帰る人々であるのであるから、船舶の中におきましての引揚者援護ということも、これは十分細心の注意を払わなければならぬことであつて、そこで、できれば何人かの人を乗せて、すみやかにこの帰られる方々に対して日本国内の待つ空気をお伝えするとか、あるいは小さいところまで心を配つて世話してあげるということが、私は大事なことでないかと思います。繰返して申し上げますが、そういう船中における細心の注意をする最後のまだ残された努力政府側にあるのではないかという心配をしているのです。全然これには手をつけないで、上陸までは一切船長の責任で契約履行を要求するのだというところでお打切りになるという、強力なる腹をお示しになつておられるのか、最後まで何か道があればもう一歩努力しようという政府の親心があるのか、このいずれかを、両政府当局の最高責任者から御答弁いただきたいと思います。
  63. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 政府といたしましては、決して上陸後だけ責任を持つて、船中はどうでもいいという考えは持つておりません。先ほど来引揚援護庁長官が詳しく御説明申し上げましたように、万般の手配がすでにできておりますので、これに御信頼を願いたいと存じます。
  64. 帆足計

    ○帆足委員 関連して……。受田委員からの御質問を伺つてつて、私はまことにごもつともだと思うのですが、政府側はこの三団体がそもそもお気に召さないのかどうか、ちよつとそれを率直にお伺いしたいのですが、次官いかがでしようか。
  65. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 別段お気に召さぬとかいうような問題ではないのであります。先ほど来御説明申し上げるように、船長を通じまして万般の手配ができておりますので、あらためて三団体の方にお世話を願わなくてもよろしいじやないか、こういうわけであります。
  66. 帆足計

    ○帆足委員 これは、先ほどから長々と受田委員から御質問になつた根本の趣意なのであります。三団体がお気に召さぬということがなくても、少くとも積極的にお気に入つていないのではなかろうかと思いますが、お気に入つておりませんでしようか。ちよつとそれを伺いたい。むしろ率直におつしやつていただきたい。そうすれば、また別途の方法を講じますから、ひとつ御心中のほどを漏らしていただきたいと思います。
  67. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 われわれとしては、別に三団体をお気に召さぬとはちつとも思つておりません。お気に召したとかお気に召さぬとかという問題ではございません日本赤十字社の方は、御承知のような団体でありますから、これはお気に召すとかお気に召さぬとかということではないと思います。あとの団体も民間団体でありますから、民間団体に対して、すきだとか、きらいだとかということは、われわれ事務当局の者は一向に考えておりません。現にこの代表団がお出かけになるときは、非常に円満にお出かけになつたのであります。われわれといたしましては、その関係は一向に悪くないと考えております。従来からの関係は、われわれとしてはそう悪くないと思つております。だから、お気に召すとかお気に召さぬということはないので、御了承を願います。
  68. 帆足計

    ○帆足委員 まことに明快な御答弁を伺いまして、満足であります。またそうあるべきものであると思います。個人なり一政府、一政党の主義によつてこれを決定すべきでなくて、各団体はそれぞれの性格を持つておりますが、引揚げに当面役に立つならば、それをもつてよしと考えなければならぬということは、私はまつたく御同感であります。そうだといたしますならば、せつかく三団体代表者が、民間団体であるにもかかわらず、受入れのために非常に努力しておるので、政府としてはむしろ感謝すべき性質のものだと思うのです。その三団体代表会議の上で、船中の世話をするために三名か数名くらいの人を乗せた方が円滑に行く、それが必要にしてかつ合理的であるというふうに三団体意見をまとめ、中国側も、それは自分の方としては紅十字との連絡上都合がよかろう、そこまで言われるものを、なぜいやだいやだと言われるか。これは、先ほど皆様がお聞きの通り、輿論が、それが何ゆえであるかを判断するでありましよう。  そこで、一体船長さんにまかせると言いますけれども、これは、船長さんのお人柄にもよりましようし、また能力等にもよりましよう。従いまして、具体的に船長さんでこれが円滑に行くかどうかということは、抽象論では申しかねますけれども、しかし、前後の事情からいたしまして、こういうようないきさつがあつたということは、引揚げ同胞の方の全部が知つておることですし、ただいま飯塚委員からお尋ねがありました畑中君からの電報のことにつきまして、友好協会の人に尋ねましたところが、東北、すなわち満州からの帰国日本人たちが、三団体代表者が乗船して世話してくださることを熱望しておるということでして、留守家族団体が陳情書を出しておるのを見ましても、従事引揚げのときにいろいろなごたごたがあつた、それは右の方からの、いわゆる日の丸部隊からのもあつたし、極左的な一時の感情にかられての議論もあつた、また船員や船長さんたちの説明なり、取扱いの不十分もあつた、それから、わずかばかりの、たとえば寝具にのみがいたとか、食べ物が部分的にちよつとまずかつたことがあつたというようなことで、一体こういうような待遇をわれわれに与えるかというようなこともあつたということで、こうしたひよつとした欠点があつた場合にも、やはりたくさんの群衆心理として不満が爆発したりするというようなことは、わずかの予算で行われる仕事でございますから、私はあり得ると思うのです。そういうときに、三名にしろ、五名にしろ、数名の世話役が乗つていて、赤十字の方もおり、—ただいま申し上げましたように、三団体代表という意味は、何も援護庁長官の解釈されるように、狭義に解釈されなくても、たとえば、日中友好協会の中には、自由党の方もおられるし、社会党右派、左派の方も、改進党の方もおられます。従いまして、皆さんがお考えになつて世話役として最も適当であろう、良識もあろうというような人を出してくれというような、紳士的な条件のもとに円満に人がきまるならば、私は、そういう場合に、そういう人たちが、これはこういうふうになつております。あるいは、ああいうふうになつておりますと、いろいろ説明して、そうして円滑に、なごやかに帰れるようにすることができるのではないかと思うのです。とにかく、一晩にしろ、一昼夜にしろ、船の中の生活はたいくつなものですから、浪花節も出ましようし、あるいは議論も出ましよう。日本の国情はどうなつているかというようなことについて知らされておりません。陳情書などを見ますると、やはり船長さんが警察の手先みたいになつて身上調べをしやしないだろうか、その他多少の偏見や誤解もあるようでございます。また今度の引揚げの使節団の方は、たしか十日に日本にもどるということになりますと、向うとの連絡も切れるわけでありまするから、若干名の人が世話役として出て、天津、北京くらいまでは出迎えに行けるということなら、非常に私はけつこうなことで、紅十字側でも、新しく起こつたいろいろな事例でもつて、これはどう解釈したらいいか、あるいはまたどういうふうにお世話した方がいいかというようなことで、日本の国民代表に相談せねばならぬようなことも、あるいは起り得ることもあるのではなかろうか、かれこれ考えて、船長さんと、それから船長さんのところに船員を少し増加させると言うのですが、そうして大体やれると言いますけれども、船員を増加させるくらいでしたら、数名くらいの世話役を乗せたところで、何もこういうことで議論して時間を費す必要もなかろうと思うのです。従いまして、結論といたしまして、ただ人選が当を得られるということだけにつきましては、われわれ国民代表として、当委員会も、人選が当を得るように、公正、合理、そうしてすべての人が了解するような円満な良識のある人を選んでくれるということは、委員長なり理事会からでも公式に申し出られることですから、そういうことで御納得なさることがよいのであつて、どうも内閣も末期になつて、非常識なことを次々とやるような傾向に一般的にあるのですが、これは一般的に外務省の責任ですけれど、外務省というところは、外国の状況を見るところですから、どちらかといえばスマートで、やわらかで、弾力性がなければならぬところが、まるで新選組か新徴組のようにかたい。これはどういうような考えなのか、心理学者の方にお尋ねしなければならないというほど、かたい感じがするのであります。これはいけないことでありまして、海の国、平和の国、貿易の国として行かねばならぬ日本といたしましては、小さな面子などにこだわるよりも、イギリス流に、おおらかな気持で、万事円滑にやつて行く、そうしてその中に論理の筋金がちやんと通つているというふうにしていただきたいと思う。おそらくこの問題はもめると思う。もめて、大衆的な心理に点火しました場合には、船長さんとしても引受けにくいような情勢を誘致するおそれすらございます。そういうような政治的感覚から見ましても、大きな論議にならないうちに、ひとつスマートに解決していただくことを強くお願い申し上げまして、御答弁を重ねていただきましても詮ないことでありますから、むしろ実行によつてわれわれの切なる要望をスマートにお受入れくださつて、また三団体の方にも、無理なことがありましたならば、少し譲歩してもらつてもいいと思います。それは政府側の意のあるところを遠慮なくおつしやつていただいて、四分六くらいのところで折れ合つていただくことをお願いいたしまして、この問題についての私の質問は打切りまして、他の同僚諸君の順序に従いまして、あと一問ございますので、それは後ほどお伺いいたします。
  69. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 私の方で申しましたことは、若干誤解があるようでございます。われわれの方といたしましては、乗船拒否ということを言つているのではないのです。今のところ乗船していろいろする必要がなかろうと申しているだけで、乗船してはならないということではございません。ただ、向うから申していることは、最初は、乗ることができるという話でありました。これでありますれば、私どもといたしましても、情勢でどうにでもなるのでありますけれども、必ず乗せねばならないということになると、三団体の方で推薦された方が、先ほどのお話のように、国会等で論議いたしまして、いい人がきまればいいが、きまらなければ、船が出ないということになります。そういうことがございますので、これは要件となるべきものではないから、事務当局としましては、その必要はなかろうということを申し上げているだけでございます。向うが乗せても、いいと言うのを、乗せてはいけないということを言つているのではありません。その点は、事務的に一応乗る必要はなかろうと申しておるのであります。政治的にいろいろな関係はあろうと思いますが、われわれ事務当局といたしましては、一応乗る必要はなかろうと申し上げているわけであります。
  70. 佐藤洋之助

    佐藤委員長 石坂君。
  71. 石坂繁

    ○石坂委員 私の伺いたいと思つておりましたことは、先ほど飯塚君の質問がありましたので、私は今日は質問をとりやめます。
  72. 佐藤洋之助

    佐藤委員長 受田君。
  73. 受田新吉

    ○受田委員 私は、帰還同胞に対して外務省として海上の安全等にいかなる手を打つておられるのか、特に中国側としては中共側に対する海上封鎖等の措置さえも考慮している現状において、海上の安全を確保して完全に同胞帰つていただくような安全措置に対する外務省の態度、特に中共から引揚げ同胞の問題は中国政府としては非常な関心を持つていると思うのであるが、中国政府中共方面からの同胞引揚げに対してどういう感じをもつてこれに当つているかという点についての情報でもあれば、それもあわせて外務省当局の御答弁をいただきたいと思います。
  74. 佐藤洋之助

    佐藤委員長 この際受田さんに申し上げたいことがあります。過日受田さんの御質問の中に、帰還手当が六割では不十分ではないかという御質問がありましたが、あれに対して、実は政府から、三万人に対する手当をこの際予算増額の処置をとつたという回答が委員長にありましたから、その旨を受田委員に申し上げておきます。
  75. 受田新吉

    ○受田委員 たいへん御苦労でした。
  76. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 中共引揚船の海上安全の問題につきましては、政府といたしましても同様に心痛いたしているところであります。特に中華民国政府が、先般海上閉鎖と申しますか、中共の港に入る船は国籍のいかんを問わず阻止する、こういうような措置をとつたようであります。この点を大いに憂慮いたしまして、去る二十六日に中華民国政府に対しまして、特に引揚船の安全については配慮ありたい、こういう申入れをいたしました。また同時に、アメリカ大使館を通じまして、国連軍の方にも同様な申入れをしたのであります。これに対しまして、中華民国政府からは快諾をする、—当方の申入れ通りに処置する、こういう回答もあるのでありまして、そういう意味からいたしまして、中華民国政府のこの引揚げ問題に対する考え方はおのずから明瞭ではないかと考えております。
  77. 受田新吉

    ○受田委員 ただいま委員長から、帰還手当を三万人全員に出すという政府側の回答をお伝えいただいたのでありますが、これは私、連日この問題で取組んで来た関係上、心から喜び、かつ政府の労を多とするものであります。この点、帰還者全員をわれわれが長くお待ちしておつたという誠意がこの際示されたことを、日本の国のために喜ぶのであります。ただ、ここに一つ残された問題で、この前からしばしば私がお尋ねしておる点、特に今度帰られる人々の持帰り金の限度でありまするが、政府は大体ドルで三十ドルくらいまでを考えておられるようでありまするが、それ以上を物品にかえて持つて帰られる人は別でありまするが、お金で持つて帰られる場合のポンドあるいは元、こういうようなもので、今度の場合に特に国際的に考慮される道はたいものであるか、—われわれとしては、できるだけ国内に外貨が入つて来ることは歓迎すべきであるのでありまするが、終戦後蓄積されたわれらの同胞の財産をお金で持つて帰ろうとする人に対しての道として、とるべき最大の道はないのか、この点は政府が十分努力されておるとは思いまするが、現在における最良の道を御答弁いただきたいと思います。
  78. 佐藤洋之助

    佐藤委員長 ちよつと受田さんに申し上げます。先ほど私が申し上げたことは少し説明が足りなかつたかもしれませんが、つまり持帰り金に対する帰還手当の原則はかわらないのです。たとえば、一万円から五千円というその限度、二万円持帰りの人には差上げないのだ、しかし六〇%では今の情勢では予算措置が足りないのじやないか、そこでその帰還手当の原則はかわらないのであつて、ただ人員は三万人に対しての予算措置だけはしておいた、こういうことでして、みんな平均におしなべて一万円をやるというのではないのです。この点は、今の受田さんのお話だと、全部やるというように承りましたから、その点は誤解がないように、ひとつ御了解願いたいと思います。
  79. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 引揚者が持ち帰つて来る金の額が三十ドルに制限せられておる、これは中共側の国内法によつて制限せられておるのでありまして、この点につきましては、当方としてはいかんともすることはできないのでありますが、金を物にかえて持つて来るということでありますれば、物については制限がございませんので、そういう方法をとるのもよかろうと考えます。
  80. 受田新吉

    ○受田委員 そうすると、政府が考えた持帰り金二万円以上の場合はという場合は、どういう場合でありますか。
  81. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 一応三十ドルというのが従来の例でございまするが、あるいはそれ以上持ち帰ることを許すかどうかということは、私の方ではわかりません。ですから、もし二万円以上持ち帰りになつた場合はと、こういうことであります。ですから、われわれとしましては、大体大部分の者に金の用意がいるというので、その用意はいたしたのであります。これにつきまして、先方でどういう制限をしておるのかということにつきましては、われわれはわかりません。特に、先方にドルがどの程度ありますかというような、ドルの問題もありましようし、これにつきまして、こちらの方といたしましては、どうすることもできないのであります。
  82. 受田新吉

    ○受田委員 もう一つ、今度の引揚げ問題とあわせまして考えられる重大問題は、留守家族援護法でありますが、外務省が所管しておりまするところの外地の公務員、あるいはまだ帰らざる未復員公務員というようなものは、留守家族援護法の中へ入つていないのではないかと思うのでありまするが、この取扱いはどうなつておりますか。
  83. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 未帰還者留守家族援護法につきましては、今度全部これに入れることにいたしまして、従来の未帰還政府職員の給与法は、これによつて給与の規則は廃止することになります。また未復員者給与法も廃止することになります。すべて留守家族に対する手当という形式によつてやるということにいたしまして、全部留守家族の給与法でやる。ただ、従来の実績の保障はいたします。従いまして、従来それよりも高い給与をもらつてつた者がございましたならば、それはその差額だけはまた別に補給するということになります。
  84. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、未復員公務員は全部厚生省の所管に入ることになりますか。
  85. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 私の方としましては、未復員者あるいは未帰還者のことをいたすのではないのでありまして、われわれといたしましては、これらの人の留守家族援護をするということで、留守家族援護の方は厚生省の所管となりますが、その他の身分の問題につきましては、引揚援護庁の所管ではありません
  86. 受田新吉

    ○受田委員 その未復員公務員の身分はどこに残されておりますか。
  87. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 これらは、すべてその元のとそろにそのまま残つております。ただ、御承知の通り、これらの者に対しましては、現在の給与にいたしましても、名目的の昔の給与のままの、ベース・アップをしないままでとめてあります。従いまして、これにつきましては、やはり従来通りの条件、つまりこちらに留守家族があります者は従来からベースが上つております。留守家族のない者につきましてはベースが上つておりません従つて、ベースが上つた者についての留守家族援護という趣旨でやつたものでございますので、それは全部留守家族援護法で統一するということにいたしたわけでございます。
  88. 受田新吉

    ○受田委員 政府職員の未帰還者は、いつも私が申し上げるように、三七ベースで、それからベース・アップされていない。この職員の給与に関しては、留守家族がその金をもらつておるのでありますから、やはり取扱いは援護庁長官の管轄に入りますか。
  89. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 留守家族に出しますものは、今度の留守家族援護法で全部行くようになるわけでございます。
  90. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、留守家族でもらつておる未復員公務員の給与ですが、私がいつも言う通り、国家公務員で約千名の未帰還者があるも、そのほか外務省所管の分及が地方公務員を合せると相当数に上るわけでありますが、この人たちの給与から四年も前の三七ベースで押えられて、その後一向昇給していない。従つて、こういう人たちの御家族は、夫がこちらにそのまま勤めておれば、あるいは早う帰つてくれておつたならば、さぞかし優遇されておつたのに、今もなお四年も五年も前の俸給で—1局長、長官になられたくらいの年輩の人たちも相当おるのですが、そういう人たちが、わずかに五千か六千円もらつてつて、その家族の者が塗炭の苦しみをなめておるということは、非常な不合理を持つておるのでありまして、この点は、今回の留守家族援護法によつて実績を生かすということでありますが、その非常にでこぼこのある実績を、ぼこを直してでこの方に切りかえるための努力をこの機会に政府としては十分おとりにならないかどうか。この点、きわめて大切な問題と思いますので、厚生省に移管された機会に、そのベース・アップを—人数はごくわずかですから、このごくわずかの職員に対するベース・アップ、期末手当、勤勉手当、こういうものを合せてこの際適正な給与をされるように是正される用意はないか。
  91. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 この法案につきましては、今後御審議を願うのでありますから、われわれといたしましては、未帰還者留守家族というものは、未復員者の留守家族でございましても、それから政府職員の留守家族でございましても、その他一般邦人の留守家族でございましても、こちらに帰れない、つまり本人意思によらずして帰れないという状態にある場合におきましては、終戦後八年の今日、みな同じような心境、同じような状態だろうと考えます。従いまして、未帰還者留守家族援護といたしましては、同じ扱いをするのが正しいと考えまして、一応そういうことにしたのでございますけれども、それにつきまして、ただ従来よりも悪くなるということは問題でございますので、従来通りのものにするということにいたしたわけでございます。これにつきましては、一応そういうことになつておりますので、皆さんの御審議をお願いしたいと思つております。
  92. 佐藤洋之助

    佐藤委員長 受田君に申し上げます。留守家族援護法は、昨日厚生委員会に付託されまして、本委員会連合審査会を開くことに先ほど了解を得ておきましたから、そのときに十分御発言を願うことにいたしまして、今日は中共地区からの引揚げ問題に局限を願いたいと存じます。
  93. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、それに基いて、今度中共から帰られる公務員が元のところへ帰られる場合の給与は、その空白の時代を埋めるように是正された給与で採用をされることに確定をしておりますか。
  94. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 この問題につきましては、この前も申しました通りに、われわれの所管でございませんので、関係省にはそれぞれ申入れはいたしておりますけれども、どういうふうになつておりますか、まだ確認はいたしてございません
  95. 臼井莊一

    ○臼井委員 これは、あるいは援護庁の方のお仕事ではないかもしれませんが、引揚者のこの事態につきましては十分準備が整つておるように伺つておりますが、舞鶴市に家族とか知人とかで、もしやと思つて出迎え、探し等に行く人があると思うのですが、これは、過去の実績によつて、およそどれくらいというあれはあると思いますが、期間が相当にあいていただけに、どつと一ぺんに押しかけるのに対しまして、案内とか、宿泊とか、そういう準備は整つておるのですか。私はその辺の事情を知りませんから、お伺いいたします。  それから、もう一つ、故郷に帰る汽車に、それらの家族は乗せるけれども、知人と称するような人はそれには乗車させないのか、させるのか、その辺のことをお伺いいたします。
  96. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 御承知の通りに、同時に相当多数の人が港へ入つて来ますが、できるだけ早くこれをお帰ししなければいかぬと思います。従いまして、その間にいろいろの輻湊したことがございますと、遅れますので、われわれとしては、なるべくならばお迎えは地元でやつてもらいたいと考えております。これは、御家族の御心情から申しますと、舞鶴まで迎えたいというのは当然だろうと思いますので、できるだけそういうことにいたしたいのでありますが、その方が主か、あるいはお帰りになるのを早くする方が主かということになりますと、やはりわれわれといたしましては早くお帰りになる方が先ではないかと思つております。もし手が余つてできますれば、留守家族の方のお世話もしなければならぬと思いますが、御承知の通り引揚援護庁はぐんぐん縮小して参りまして、現在非常に縮小した状態になつております。最盛期の状態と比べると、問題にならない状態になつております。しかも、それによつて今度は相当多数の人をお迎えしなければならぬ状態になつておりますので、できるだけ効率的にやりたいと考えまして帰つて来られる方のお世話を十分いたすことに力を尽したいと思います。ただ、おいでになる人をとめるわけには参りませんが、おいでになりました場合には、おとまりになるだけの設備はいたしております。あまり設備はいいところではございませんが、おとまりになるだけの準備はいたしてございます。料金はとりません。食事は別でございますけれども、宿屋にとまらぬで済むだけのことはいたしたいと思います。お帰りにになる汽車等関係につきましても、むやみやたらにお乗りになると、鉄道の方も輸送上困ると思います。ただ、お帰りになりますにあたつて、あらかじめ手続ができていられる方々については、できるだけの便宜をはかりたいと思いますけれども、やはり何と申しましても、帰られた方の座席を十分確保しなければならぬので、その方に主力をあげるということに御了解願いたいと思います。
  97. 帆足計

    ○帆足委員 二、三点だけお尋ねいたします。第一は、先ほどお話のありました帰還者の逆還送の問題ですが、帰還者の範囲は、日本国民及び日本国民と身分上近接な関係のある左記の者に限るという御回答を政府当局としてはなさつたということですが、それの意味は一体どういう意味かということと、それから、中国側から、逆送還のような不幸なことの起らないように善処するという電報が入つておりますが、その意味はどういうふうに御解釈になつているか、その点を御解釈願います。
  98. 平野重平

    平野説明員 帰還者は、日本国民及び日本国民と身分上近接な関係のある左記の者に限るとありますが、イの打合せ事項に列挙した者というのは、こちらから代表団に持つてつていただいた引揚げの範囲の中にありますところの、「一、日本国民、二、日本国民に同伴する外国籍の妻、三、日本国民たる父又は母に同伴する満二十才未満の子で配偶者のないもの、四、もと日本国籍を有したもの(朝鮮人、台湾人を除く。)とその同伴する満二十才未満の子で配偶者のないもの」であります。それから口は、来電第十三号第一項、第二項、第四項及び第五項でして、こういうものは大体イの方にも含んでおりまして、ただ第三項に「十六才以上の子」とあるのは、あるいは四十才の子を同伴することがあるかもしれぬという意味をもちまして、二十才以下の未婚の子と私の方は解釈する、こういうふうに申し上げたつもりでございまして、大体イと口は重複しておりますけれども、これは両方が関連しておりまして、どちらででも十分まかない得るという非常に幅の広いものだと私は思つております。
  99. 帆足計

    ○帆足委員 中国側は、逆送還のような不幸なことが起らぬように善処したいと言うのですが、これは何のためにこういうことを言つて来られたのでしようか。どういうように御解釈ですか。
  100. 平野重平

    平野説明員 逆送還という言葉がちよつとまずいと思いますが、これは私たちが入国管理事務を現在までやつておりました関係で、われわれは多分に経験を持つておるのでございますが、もうだれが見ても日本人だ、しかも港におきまして審査したときも日本人であるということがわかつてつて、それが、あるときになると、全然外国人であつたという事態も起きたことがございます。そういう場合に、—まあ、ありますまいけれども、万が一そういうことが起きた場合は、ちよつと今の現状では日本に置くこともできないから、一応出発点へおもどりを願いたいという希望だけでございます。まあ大体起らないことだろうと私は思つておりますし、また中共側も十分注意をすると言つておりますから、その点、ただ万一ということだけでございます。
  101. 帆足計

    ○帆足委員 時間も移りますので、簡単にあと一、二点だけ伺いたい。  先ほどの、政府側が乗船世話役はいらないと言つている問題ですが、共同コミュニケとして請訓して来ておりますのは、中共側は、港の世話のほかに、地方の紅十字会との連絡ということをあげておりますが、この方の点でさしさわりがありはしないかと存じます。その点はどうでしようか。それから、日本政府側から向うへ、帰還者世話などについて必要な手配をしておるから、特に世話役は乗る必要はあるまいという訓電をお出しになつておりますが、帰還者世話など—「など」とわざわざお書きになつたのは、何か特別の仕事でもありましようか。その二点をお尋ねしたいのです。
  102. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 世話という言葉がはつきりいたしませんから、世話などというように書いております。大体こちらの方としての世話のことだと考えております。向うとの連絡等につきましては、別にそういういろいろな交渉は今後行われないであろうということが一応考えられますので、われわれの方としては、その必要はなかろう、もし交渉の必要な場合におきましては、これはまた別途考えなければならぬと思います。
  103. 帆足計

    ○帆足委員 最近、帰国につきまして、たくさんの手紙が中国の在留日本人から参つておりますが、たとえば、一つの例といたしますと、向うでお医者様を開業いたしまして、御主人はみなから非常にすかれておつて病人もおるし、なかなか当面すぐには帰りにくい、そこで、とりあえず妻と子供だけ帰すというような事例がありまして、私どものところにも留守家族の者から身の上相談に参つておるようなこともあるのでございます。  そこで、第一にお尋ねいたしたいことは、最後の引揚げ期日、すなわち、集団帰国をする期間は伺いましたが、個人的に帰りますことは無期限に許されておるのでありましようか、まずそれをお伺いいたします。
  104. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 個別引揚げにつきましては、従来もあつたのでありまして、別段今後といえども期限がついていないと思います。
  105. 帆足計

    ○帆足委員 それから、ただいまの、妻と家族だけがこちらに帰りまして、お父さんが帰つたらいいかどうか観察の気持もあつて、家族だけお帰りになつて帰つてみましたところが、家も焼かれておるし、親戚縁者も散つておる、それで、どうもならぬので、お父さんはいい技術を持つておる人で、向うでよい生活をしておるので、また向うのお父さんのところへ帰りたいという場合に、それは御許可になりましようか。ただいまのところ家族の呼寄せは許可するということでございますから、そういうものは家族の呼寄せの中に入るといえば入るものでありましようし、また次官のお好みの人道にきわめて適することであるという点においては、花嫁であろうと、そういう場合であろうと、人道に関することは同じであろうと思いますが、どのように親心をもつてお考えでありましようか。
  106. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 この問題につきましては、前回にも帆足委員からお尋ねがあつたと思います。外務省といたしましては、一応この問題は再渡航になるという考えを持つております。従つて、できないということであります。ただ、前回からも、お話のように、花嫁であろうと花嫁でなくとも、やはりそれは一種の家族呼寄せではないかという御意見も出ておりました。私といたしましては、そういう事態が現実に起つた場合に考慮したらどうかというような気もいたします。これは個人的の考え方でありまして、外務省といたしましては、再渡航になりますから、不可能であるというようにお答えいたします。
  107. 帆足計

    ○帆足委員 外務省が新選組、新徴組のような鎖国的な観念を持つておられることは、きようの外務委員会において、外務大臣が失言いたされまして、与党からも野党からも総攻撃にあつたことで明らかでありますが、それは速記録であとでお目通しを願いたいと思います。  そこで、ただいまの問題は、実は三万人もお帰りになるということで、第一船は四、五千人であるにいたしましても、今後中間の方がお帰りになるときに去就に迷う問題は、まさにこの一点にかかつておるのでございまして、たびたび申し上げますように、この点が、ロシヤにおける軍人が帰ります場合と、半ば移民が帰りますときの相違でございます。そこで、まず外務政務次官にお尋ねいたしたいのですが、先般海外移民促進に関する決議案と申しますものが、満場一致衆議院において可決いたされました。それは十二月二十日の官報号外に掲載されております。この海外移民促進に関する決議案の趣旨から見ますと、御承知のように貿易は戦前の二〇%にも減り、人口は戦時中に比べて二千万もふえて、一年に子供の生れる数が二百万を越えておるこの日本で、どうにもならぬのではないか、そこで移民を奨励しようということですが、ブラジルの移民にいたしましても、またアメリカその他の移民にいたしましても、もうほとんど指を屈するほどの数でありますことは、次官はだれよりも御承知のことです。移民と申しますと、結局朝鮮朝鮮は今不幸な戦争をやつておるが、やがて平和になりましたときの朝鮮、それから台湾、満州、中国をおいて、大きな移民は望まれないということは当然でありますが、海外移民促進に関する決議案には、中国を除くとは決して書いてありません外務政務次官は、海外移民の促進は中国だけはいつも除いてお考えになつておられるのでありましようか、その点をお伺いしたいと思います。
  108. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 過般衆議院におきまして海外移民促進の決議案が可決せられましたことは、私も十分承知いたしております。今後とも、できるだけ御趣旨に沿つて努力いたしたいと考えておる次第であります。しかして、この決議案の中に、中国を除くということは書いてございません。ございませんが、また反対に中国を含めてというような積極的な意味も必ずしもあろうとは考えておらないのであります。何も中国に参らなくとも、現在の段階におきましては、アルゼンチンあるいはブラジル方面のすでに許可をとつた計画移民を送り出すのにも、なかなか一年や二年では送り出せないような現状であります。さらにまた、今後東南アジア方面もどしどし移民が行われるかと考えるのであります。少くとも現在の段階におきましては、中国に対して移民を送るという考えは持つておりません
  109. 帆足計

    ○帆足委員 ただいまの外務政務次官のお答えでは、中国を除くとはもちろん書いてない、—入れるとはわざわざ書いてないけれども、除くとも書いてないという仰せであります。すなわち、移民政策というものは全地球に及ばねばならぬというふうに解釈するとしますと、中国に適当な職を得られまして残る方々を、次官は移民とお考えでございましようか、それとも俊寛—捨子とお考えでしようか、ちよつとその点をお伺いしたいと思います。
  110. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 移民という言葉がはなはだ不適当じやないかという議論がございます。近く外務省設置法の一部を改正する法律案が国会に提案になると思いますが、この外務省設置法の一部改正の法律案のねらいは、外務省の中に新しく海外移住局を設ける、こういう趣旨からできておるのであります。海外移住局という名前かわざわざ採用いたしましたのは、従来の移民という言葉では、いろいろ不適当な環境等もありまして、そういうふうに訂正いたしたのであります。従いまして、ただいまお話の、中国に残つておる方々が移民であるか移民でないかということにつきましては、そういう見地から、ちよつとお答えができかねるのであります。
  111. 帆足計

    ○帆足委員 ただいまの御答弁は一向要を得ないのですが、その海外移住局という名前にしたのは、移民という名前では不適当で移住局、こういうお言葉でございますか。それならば、移民促進決議案と言つたそのときの移民という言葉はどういう意味でございましようか。
  112. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 移民という言葉が非常にあいまいでありますので、そういう言葉についてはなかなか定義が、場合々々によつてしかねる、こういう意味で申し上げたのであります。中共は、御承知の通り今日共産陣営の一国に属しておりまして、かつ再々私が申し上げるように、中ソ同盟条約によりまして、日本を仮想敵国といたしておるような関係もありまして、中国に対して今まで言われておりました普通移民というものを出す考えはないのであります。さらに、先ほどお話の、中共に今後残る者に対しては、これを移民と考えるかどうかというお尋ねもありましたが、この点は、移民という言葉が適当ではないんじやないかといいように考えております。
  113. 帆足計

    ○帆足委員 中国に定職を得られて、長い間おられて、そしてまた今日残つており、将来残る人は、移民でないとすれば、俊寛でございますか、捨子でございますか。それを伺いたい。日本経済に寄与するものではないのでございますか。国策反抗主義者、または俊寛とでも言うべきものでございましようか。はつきりしたお答えを願いたい。政府の御当局が誠心誠意お答えなさるならば、もう少し簡明にお答えできるはずですが、ひとつ明確にしていただきたいと思います。
  114. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 戦時中に敵国に残る人の場合でも、これはあり得るわけでありまするが、移民とは申しません。ありますので、本件の場合のごとき、これは移民と称するのは不適当じやないかと考えております。
  115. 帆足計

    ○帆足委員 終戦直後は、日本はどの国とも条約を結んでおらず、いわゆる交戦状況と言われておりました。現在でも、交戦状況国または無条約国と称せられている国が本数国あることは、次官の御承知の通りです。従いまして、自由党内閣の力及ばず、今日このようなことになつておりましても、国家は永遠の生命を持つておるものでございます。内閣はいずれかわります。かわりました内閣は、国交をまた回復するのでございまするから、移民という言葉がおきらいならば、潜在的移民と申してもけつこうですが、同胞がそこで働き、呼吸し、それによつて国内の負担を軽くしておりますことは事実でございます。また、それによつて潜在的に将来の戦争を避け、平和を得、そうして経済交流のために役立つ潜在的要員として、祖国に寄与しておる忠良なる、臣民でなくて国民であることも、これまた明瞭なことでございます。従いまして、移民促進決議案の趣旨の中には、これらの潜在的な海外移住で努力されておる方々に対しても、政府としてはできるだけあたたかい手川をもつて保護する任務があることは言うまでもないと私は思う従いまして。それらの人たちが気の毒だから、御家族や花嫁さんたちを向うへ呼寄せることを許すというのが人道上の親心である、こう次官は申されました。しからば、そちらへ参りました花嫁さんが、こちらで父親が危篤だから、胃癌で六箇月後にはあぶないから、ちよつと天津から帰つて来るというときに、帰国を許さぬということは、人道にかなうものと思いますか、かなわぬと思いますか。あなたが親御になつた気持で、はつきりお答えを願いたい。今日政党の与党野党というものは同じ日本国民で多少意見の相違はありますが、それが、なんで日本国民をわけ隔てするのでございましようか。政党政派の相違のごときは、国民の利害から見れば小さな差でありまして、いざお墓参りとか、または結婚式とか、親の死目とかいうときは、父は自由党であります、子は社会党であろうとも、親子一緒になつて共同の悲しみと共通の感情を持つというのが、すなわち日本国民でございます。しかるに、わずかばかりの政治上の意見の相違をたてにいたしまして、アメリカ一辺倒になり過ぎ、極端に走りまして、人生は中庸の道が大事であるにかかわらず、極端な右翼的偏向に最近陥つておりまして、そのために海外同胞を親の死目に会わせないというようなことが、人道にかなうものであるかどうか。人道上の問題だけでけつこうですから、どうかはつきりお答え願いたい。今日の外務当局としては、それが人道にかなつておるとお思いになるなら、思うとおつしやれば、われわれはそれを国民に訴えて、そういうやり方は改めていただくでありましよう。どうか明確な御答弁をお願いしたいと思います。
  116. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 親の死目に会いたいから一時帰国したい、また墓参に帰国したい、いろいろ事情はありましよう。その事情につきましては、私どもといたしまして、まことに御同情にたえない次第でありまして、私、個人的な考えから申しますれば何とかしてあげたいという気持はございますが、一方家族呼寄せの問題とは、そこに非常に事情が違つておりまして、家族呼寄せの場合は、被扶養者の生活擁護のためで、一方もし家族を呼び寄せられないで、引続き日本に家族がとどまるということになりますと、その被扶養者の生活が非常に困難である、生きて行かれないというような人道上の問題になるのであります。従いまして、家族呼寄せにつきましては、便宜例外的にこれを認めようというのでありまして、この例外をさらに拡大いたしまして、墓参のために一時帰国するというようなところまでは、外務省といたしましては拡張するわけには参りません
  117. 帆足計

    ○帆足委員 私は、ただいまの理由はいよいよもつてふに落ちないのでありまして、家族呼寄せの問題は、飯を食わすことができないから、向うへつかわすというならば、これは人道上の問題でなくて、胃袋上の問題になるのでありまして、国内ではやつかいものであるから、中国へ行つて飯を食えというのであつて、お困りになるならば政府が補助金でもおやりになればよい。行かしたくないならば、日本で楽な生活ができるよう、社会保障でも実行なさればよい。私が申し上げているのは、単に胃袋の問題でなしに、人の命は尊いものであつて、親の死目に会えないようなことが今日許されていいのかということをお尋ねしているのであつて、それが人道上の問題でないかどうかということです。人道上の問題であるけれども、今日の政府がどうもものがわからぬも、少し新選組、新徴組に趣味持ち過ぎて、どうもそういうことが許されない、次官としては非常に心中忸怩たるものがあるというお話であるならば、一応これを打切つて可でありますが、ただいまの御答弁では、御答弁になつていないと思う。私がこれを人道上の問題だと言うのは、単に胃袋のことを言つているのではなくて、親子の情を申しているのであつて、政治的理由で行き来したりするのをとめる方法は、今の旅券法であるのであります。従つて、正常な家事の用で帰ります者については一時帰国を認めてもいいじやないか、しかも中国側ですらそれを認めると言つているものを、日本政府だけが認めないということは、これは世界の物笑いではあるまいか。従いまして、一言だけ御答弁を伺つて、私はこれ以上申し上げません。同僚議員の皆さんと相談いたしまして、また政府政府としての立場、与党は与党としての立場もございましようから、その趣旨も十分くみ込んで、公正、合理に解決すべきものであろうと存じますから、私がこれ以上申しますと、いかにも野党として言うているような誤解を受ける向きもあることを遠慮いたさねばなりませんので、これ以上申し上げませんが、どうか御考慮のほどを願いまして、はつきりした御答弁をお願い申したいと思います。
  118. 野澤清人

    ○野澤委員 与党だから申し上げるわけではありませんが、実は私この会合に出まして、帆足君と次官との禅問答といいますか、こんにやく問答といいますか、とにかくこの問題は再三再四聞いて、いまだ結論が出ないのです。これはどうして出ないのかという原因を追究してみるのですが、やはりこんにやく問答で、今も帆足さんが人道問題まで引出してぐんぐん追究しおりますけれども、政府としてはもう少しはつきりした見解をお持ちになつたらどうかと思う。要は、移民というものの解釈の仕方と、向うに移住している日本人であるという解釈の仕方に対して、堂々と遠慮なしに、日本政府としてははつきりした定義をくだしていいのではないか。要するに、国と国とが協定した上で移住を認めて、それで日本が移民としてこれを取扱う場合には、初めてこれは移民として成立する。その間に、戦争が起きて、取残された人が、その土地に長く住んでいたいという場合には、いわゆる移住民なんで、移民として考えるべき筋合いのものじやないと思う。ただ、その熟語は、移民という言葉がいいか、移住民という言葉がいいか、これは別問題でありましよう。適当な熟語を発見されて、政府は堂々と声明されたらよろしい。移住民というのは、本人が希望して、その一家族なり夫婦で残るのですから、移民として考える場合とは全然違つた感覚でこれを考えてさしつかえないのじやないか。  それから、人道問題や何かの問題がありますが、結局帆足さんの言われるのは、一時帰国が許されるかどうかということですから、そういう問題については、移住民は自分の旅費で帰るのがあたりまえです。それを今度の引揚船に乗せるか乗せないかというような問題については、この前の会合においてもそうですし、きようもそうですが、こんなこんにやく問答をいつまでも続けることは、良識ある代議士の問答としてはおかしいと思う。従つて、決定した見解を発表されて、はつきりされることを望みます。
  119. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 私は、ただいまの野澤委員のお話を伺つて外務政務次官が答弁にお詰まりになつて、そのかわりに答弁していらつしやるような感じを受けましたが、別に野党の立場から申すのじやありませんけれども、外務次官も、それから外務大臣もそうだろうと思うのですが、一時帰国、墓参り、教育と称して往復する人々の上に乗る日本共産党が恐ろしいのでしよう。コミンフオルムを恐れるのでしよう。それならば、吉田内閣としてそれをはつきりしたらどうですか。それをしないで、何箇月もこんな問答をしておつてどうするのです。私はそれを言うのです。なぜそれを言えないのですか。アメリカ一辺倒の吉田自由党内閣という烙印はもう押されているのですから、その吉田内閣の施政方針としては、コミンフォルムがこわいのだ、日本共産党がこわいのだということを、政務次官ははつきりおつしやつたらどうです。人道上の問題では、あなたは負けです。向うへ行くのは人道上の問題で、向うからこつちへ来るのは人道上の問題でないという、そんなばかなことはない。ですから、はつきりおつしやつたらいい。それからまた、帆足さんもですよ。共産党に利用されるのが政府は恐ろしいのだろう、そうしたらお互いに知恵をしぼろうじやないかということを言えばいい。それを言もずに、押問答ばかりやつているから、この前も私は委員会を閉会してもらつたのです。ですから、外務政務次官もはつきりおつしやいよ。あなたの党、あなたの内閣の施策なんですから、それをはつきりなされば、われわれもまたそれとしてつつ込んで行く言葉がある。  それから、もう一つ政府にお尋ねしたいのは、私は三つの委員会をかけ持ちしていましたから、出たり入つたりして、皆さんの答弁を聞き落していて、あるいは重複するかもしれませんけれども、引揚げて来る人々を迎えに行くときに、日本政府の官吏が乗つておらないと事務ができないということを、たしか一度おつしやつた。それから今度は、向うから、あのいろいろな電報によつて日本政府の官公吏は乗つてくれるな—ずいぶん失礼なことを言われて、黙つていなければならぬ。情ないことだと私は思いますが、乗つてくれるな、しかも乗せるのならば三団体代表に限るということを向うから言つて来た。そうすると、今度はどうおつしやるかというと、別に日本政府の官公吏を乗せなくたつて引揚げにはさしつかえないのだということを木村引揚援護庁長官は言つておられる。これは、高良さんの旅券と一緒です。上手に向うになぶられて、そうしてあつちを言つたりこつちを言つたり、実に定見がない。ゆうべ白と言つたものを、あくる朝は黒と言つている。向うに先手を打たれては、すぐひつくり返る。定見がないのだ。これを一体どうするのですか。  この二つに対して、外務政務次官、はつきりした御答弁を願いたい。
  120. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 帆足委員は、胃袋の問題だと言つて簡単に片づけますが、胃袋の問題即生命の問題であります。これがほんとうの人道問題です。これをほつておくということが人道問題です。こういう関係で家族呼寄せは特に例外として認めよう、しかし墓参とか何とかは、御同情は申し上げます、御心情はお察しいたしますが、中共は、はつきり申し上げますが、中ソ同盟条約によつて日本を仮想敵国としておる共産陣営の一国であります。こういう中共日本との間に自由往復を認めることは、絶対にできないのであります。でありますから、一ぺん帰国して様子を見てまた行こうとか、そういうような再渡航は今日絶対に認めない、こういうことを申し上げているわけであります。  それから、さきに外務省は、政府の職員を乗せろ、後になつてそれをまた訂正した、これは定見がないじやないか、こういう御意見のようでありますが、定見がないということと、さつき帆足委員のおつしやつた外務省はかたくな過ぎて一向融通性がないじやないか、こういう御意見と、相反するわけでありますが、私どもは、中共引揚げの問題につきましては、一人でも多く一刻も早く引揚げていただきたい、こういう念願からいたしましこ、最初主張したことをいつまでも固執するものではありません引揚げに万全の処置をとるためには、当初の方針に反わることもあえていたしておるのであります。どうぞ御了承を願います。
  121. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 硬軟よろしきを得ていろいろと手を考えるのだという御答弁は、そういう場合もありますから、それは筋を通された答弁として、一応了承いたします。私たち、たとえば自分の子供が人質にとられておりまして、お前さか立ちしろ、三階から飛びおりろ、そうしたら子供を返してやろうという交渉があつたら、泣いても、さか立ちしても、三階から飛びおりても返してもらう気持になるだろうと思います。私どもとしては、いかなる難題をぶつつけられても、返してもらうことのみに努力すべきが当然でありますから、政府の心持はわかりますけれども、私が当初に申し上げたように、引揚げの問題は三万でストップするのではありません。少くとも、死亡者も含め、行方不明をも含めて、三十数万の名簿がはつきりしないことには、引揚げを完了したとは言えないのであります。そういう段階にあつて、この三万の引揚げは、これははつきりと、日赤をちようど刺身のつまに加えて、そうして平和連絡会と日中友好協会とを向うから指定されておる形になつております。船に乗せるについても、政府の職員が乗るのならばいけない、三団体が乗るのならばいいという態度に出て来られまして、相手にしてもらえないところの日本の現状というものは、国民が見ておつても非常に情ないのです。この現状分析と、今後の対策など、外務省はどう考えておられるか、伺いたいと思う。
  122. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 中共が今日ソ連圏の一国として民主自由諸国と対立しておる現状におきまして、特に、先ほど申し上げたように日本を仮想敵国としておる今日、朝鮮動乱もあり、今日の段階においては、残念ながら中共に対して手を差延べるわけに行かないのであります。国交を回復しないためにいろいろ不利不便もありましようが、それよりも、もつと大きな観点に立つて、われわれは今日中共と手を組むことができないのであります。
  123. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 もちろん思想上の対立が国と国との間においてありましても、少くとも四十八箇国の国々と講和を結んだ独立国の日本政府としては、私はもつともつと独立国としていろいろな手があると思うのです。私は、吉田内閣がアメリカ一辺倒で、コミユニズムの陣営に対して背中を向けて話をしない態度というものは、引揚げの問題にとつては非常に不利であるということを、もう三年も前から申し上げておる。思想上対の立は別として、独立国日本政府として、思想上の問題を取除いて虚心坦懐にこの引揚げ問題に体当りできないものか。何とか開拓していただきたい。そうでなければ、国民は今日の日本政府の事態を見るにたえない。ほんとうに屈辱的なものを感じるということを申し上げまして、—これは次官に申し上げても何なんでございますが、内閣の命が持つものならば吉田総理大臣に一ぺん出ていただいて、そうして総理の、方針もこの委員会としては伺い、外務次官にも一度伺つて、ひとつ何とか、どうぞどうぞ、軌道に乗せていただきたいということを切望いたします。私の質問の趣旨はよくおわかりになつておると思います。従つて、私は社会党でございますけれども、あなたが御言明になりましたところの、この中ソ友好同盟を持つ現在のコミンフォルムの行き方に対しては、決して共鳴しておるものでございませんし、かといつて、今日の自由党内閣のやり方に対しましても、満腔の敬意を表しておるものでございませんでして、そこにもう一つの道があるということを、政府感情を抜きにしておきとりになるならば、引揚げの問題はまた新たな道が開けるということを、私は御忠告までに申し上げておきたいと思います。     —————————————
  124. 佐藤洋之助

    佐藤委員長 この際お諮りいたします。去月二十六日に島津団長以下北京に参りまして、かの地の李徳全女史以下と交渉せられた、その交渉がやや完了したように考えられます。近く帰られますので、帰りましたらば、即刻この委員会にお臨みを願いまして、事情並びにいろいろのことについて御報告を承りたいと存じますが、参考人としておいでを願うことに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  125. 佐藤洋之助

    佐藤委員長 それでは、さよう決します。実は、委員長は本日日赤を訪問いたしまして、葛西副社長と面談をいたしまして、このことをあらかじめ申し上げましたところが、まず帰国は十日もしくは十一日であるだろう、こういうのでございますので、帰りました翌日、本委員会においでを願うように、口頭をもつて申し上げておきましたが、本委員会において、ただいま御異議がないようでありますから、さようとりはからいまして、帰国翌日に午前十時からお出ましを願いまして、いろいろ事情を聴取いたしたいと存じます。御了承を願いたいと思います。  本日はこれにて質疑を終了いたしました。次会は公報をもつてお知らせいたします。  これにて散会いたします。     午後五時三分散会