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1953-02-05 第15回国会 衆議院 海外同胞引揚及び遺家族援護に関する調査特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十八年二月五日(木曜日)     午前十時五十六分開議  出席委員    委員長 佐藤洋之助君    理事 飯塚 定輔君 理事 森下 國雄君    理事 受田 新吉君 理事 帆足  計君       池田  清君    川野 芳滿君       玉置 信一君    中山 マサ君       野澤 清人君    臼井 莊一君       武部 英治君    田原 春次君       堤 ツルヨ君    田中 稔男君       柳田 秀一君  出席政府委員         引揚援護庁長官 木村忠二郎君  委員外出席者         法務事務官         (民事局第二課         長)      阿川 清道君         法務事務官         (民事局第五課         長)      池川 良正君         法務事務官         (入国管理局入         国審査課長)  平野 重平君         外務事務官         (アジア局第五         課長)     鈴木  孝君         大蔵事務官         (主計官)   大村 筆雄君         大蔵事務官   松本  茂君         大蔵事務官   波多江俊孝君         大蔵事務官   青山 保光君         文部事務官         (初等中等教育         局中等教育課         長)      大田 周夫君         厚生事務官         (引揚援護庁長         官官房総務課長         )       木村 又雄君         厚生事務官         (引揚援護庁援         護局引揚課長) 山本淺太郎君         運輸事務官         (海運局監督課         長)      土屋 研一君         運輸事務官         (鉄道監督局国         有鉄道部業務課         長)      豊藏  亨君         労働事務官         (職業安定局雇         用安定課長)  富山 次郎君     ————————————— 二月三日  委員木暮武太夫君辞任につき、その補欠として  野澤清人君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  中共地区残留胞引揚に関する件     —————————————
  2. 佐藤洋之助

    佐藤委員長 会議を開きます。  これより中共地区残留胞引揚に関する件について議事を進めます。本日は特に引揚者受入れ態勢について関係当局より説明を聴取することにいたします。木村長官
  3. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 われわれが待望いたしておりました中共地域からの邦人引揚げにつきましては、昨年の十二月一日の北京放送によりまして、これが実現の可能性がありますることが明らかになりました。その後いろいろといきさつがございまして、御承知通りに、先月の二十六日に日本側代表団先方に参りまして、この引揚げ方法等につきましての具体的な打合せをいたすことになりました。現在その打合せを始めておるわけであります。従いまして、政府当局といたしましては、これに対しまして、その受入れ援護がきわめて重要でありますることにかんがみまして、いろいろと準備をいたしまして、昭和二十八年度予算並びに昭和二十七年度のこれに必要なるところの経費の支出ということにつきまして、一応の計画ができましたので、御説明することにいたしたいと思います。  前にも申し上げたのでございますが、従来の引揚げと今回の引揚げとにおきましては、相当国内情勢におきましても相違いたしておりまするし、また引揚者の現地におけるところの状況におきましても相違がございますので、われわれといたしましては、従来よりも手厚い受入れ態勢をとらなければならぬというふうに考えまして、財政当局とも折衝いたしました結果、次に申し上げるようなことにいたすこととなつたわけであります。お手元に「中共地域引揚者受入援護等の大要」という資料を配付いたしてございますので、これによりまして御説明いたしたいと思います。  まず、受入れの第一といたしましては、帰還輸送船内におけるところの援護でございます。帰還輸送船につきましては、前々から申し上げます通りに、現在舞鶴港に繋留してありまするところの高砂丸をこれに充てる予定であります。これで不足の場合におきましては、他の船をさらに用いるということにいたしたいと考えております。これにつきましては、今回参つております者の先方との打合せによりまして、どういう速度で向うから送出が行われるかということによりまして、これがきまるわけでありまして、これらにつきましても、代表団との打合せは十分についておりまするし、代表団におきましても、その方面の専門家工作員として行つておりまするので、その点につきましては遺憾のない連絡があることと考えております。帰還輸送船内援護といたしましては、船内における給養医療、それから引揚指導というような問題がおもなものでありまして、この給養につきましては、船内の寝具の準備、航海中の食事につきまして、できるだけの措置をいたしたいと考えております。主食は一日六百グラム、カロリーといたしまして約三千カロリー、この経費の単価は一日九十円十七銭で、現在政府で行つておりまする各種のほかの施設よりは、はるかに高い程度の給与ができるようにいたしてございます。  次に、医療につきましては、帰還輸送船には医師一名以上、看護婦若干名を乗船させまして、引揚者応急医療対策といたしておるのでありまするが、高砂丸につきましては、今考えておりますのは、医師二名、看護婦十名を乗船させるつもりでおります。なお、第一船につきましては、その状況を見まするために、さらに五名を増しまして、第一船は十五名を乗せるようにして、その経験によりまして今後のことは考えて参りたいと思つております。と申しますのは、従来の引揚げとは異なりまして、今回はことにソ連からの場合とは違いまして、婦女子等が相当多数おりますので、これにつきましては万全の措置を講じなければならぬというふうに考えておるわけであります。  次の引揚指導と申しますことは、ここには「引揚指導官若干名を乗船させ、内地上陸後の諸手続説明並びに復員手続の一部を行わせる。」と書いてございますが、これは、こちらに帰つて参りまして、できるだけ早くそれぞれの故郷に帰るようにいたさなければなりませんので、その仕事をすみやかに進めまするために、各種手続につきましての準備を船の中でいたしまするほか、各般の国内情勢等につきましての連絡をいたすというために、援護庁職員を五名、外務省職員を二名だけ乗船させる予定でございます。なお、第一船につきましては、やはり先ほど申し上げましたように、いろいろとめんどうを見なければならぬ事件がどの程度あるかということの見当もつきませんので、それよりも増員いたして、お世話をいたすようにいたしたいと思つております。  その次に書いてございます帰国査証の点でございますが、出入国管理令に基きます帰国査証を、引揚げて入国した場所でしなければならぬのでございますが、これを船内においてやる必要があるかどうかという点につきましては、現在出入国管理庁におきまして検討中であります。船内におきましては、大体この手続はしないようにした方がよいのではないか、帰りましてから簡単にできるのではないかというように考えております。これは目下まだ検討中でございます。  次に、舞鶴におきましては、現在施設の整備をはかつておりまして、この前申しました通りに、大体現在一日同時に二千五百名の収容ができることになつております。やり方によりましては、もう少し入りますが、一応そのくらい入ることになつております。同時に多数の人が帰りますならばどうするか、現在の状況をもちましては、あの場所で大体これの二倍くらい施設を拡張することができるようでございます。それにつきましての準備もいたしておりまして、先方からのこちらに対します送り出しの速度等についての連絡があり次第、これに対する必要なる準備をしたいと思つております。  援護局の中で行われます仕事は、まず検疫、それから帰国査証、それから税関検査身上相談、それから引揚証明書交付、それから元軍人であつた者につきましては復員業務帰国後における援護物資交付応急援護金支給帰還手当支給、こういうようなことをいたしまして、その間におきますところの給養もいたさなければなりません。また必要があります場合には、応急医療を行うというのが大体のことであります。  税関検査につきましては、国内持帰りが禁止されておりますもの、たとえば、阿片でありますとか、麻薬というようなもの、あるいは偽造通貨、あるいは公安風俗を害するような物品は、国内に入れることは禁止されておりますので、これらも検査されます。その他の物品につきましては、できる限り関税がかからないようにいたしたいというように考えまして、大体その方の当局とは了解を得ておるのであります。ただ非常に非常識な商品とみなされるようなものを多数持つておられるような場合におきましては、いたしかたがないのでありますが、大体その人の使用されるものにつきましては、できるだけ税がかかるというようなことのないようにいたしたいと考えております。  それから、援護局に滞在いたしまする期間でございますが、これにつきましても、できるだけ短かい期間で完了いたしたいと考えております。現在考えておりまするのは、三泊四日で全部済ましたいというように考えております。従来よりはその日数を縮めまして、できるだけすみやかにおちつく先におちついていただくようにいたしていただきたいと思つております。ただ、ここにおきましていろいろな手続をいたしておきませんと、帰りまして、いろいろまたあとから不自由なことができることがございますので、それらの点につきまして遺憾のないように措置をいたしまして、できるだけ短かい期間に済ませるようにいたしたいと思います。  引揚地滞在期間における給養につきましては、やはり一人一日当り主食六・百グラムという先ほど申しました給与をいたします。それから、ここにおります間におきまして、留守宅にあてて一世帯一通の電報を無料で取扱うようにいたしております。  身上相談につきましては、引揚援護庁文部省労働省法務省、これらの各省におきまして、その相談をいたすのでありまするが、文部省におきましては子弟教育の問題、労働省におきましては職業の問題、法務省におきましては戸籍関係の問題、これらの問題につきまして相談に応ずるようにいたしたいと思います。その他のことにつきましては、ここでは扱わないようにいたしたいと考えております。  それから引揚証明書交付、これは、帰りましたあと食糧の配給の問題でありますとか、あるいは援護物資交付などの手続等にも必要でございまして、おちつきましてから先の各種の問題に関しまして、この引揚証明書が必要でございますので、この交付をいたしたいと思います。  それから援護物資交付でございますが、ここにおきまして被服及び日用品支給することに従来からいたしておりますが、現在こちらで持つておりまする物資によりまして、できるだけ手厚い支給をいたすようにいたしたいと考えまして、現在手持ち物資の調査をいたしており、できるだけ早い機会にこの基準をきめたいと思つておりまするが、われわれの気持といたしましては、従来よりは手厚くしたいと考えております。  応急援護金、これは、上陸いたしましてから定着地へ帰りまするまでの各種経費でございます。これにつきまして、旅費あるいは雑費として支給いたすのでございまするが、上陸地区から定着地までの間の距離に応じまして、一人当りおとなで千円から三千円までの間、子供はその半額を支給することにいたします。「帰郷旅(雑)費」と書いてございますが、未復員者と特別未帰還者には旅費として、その他の邦人には雑費として支給する。これは金額は同じでございます。ただ、片方法律により、片方法律によらない行政上の措置によつてやるわけで、内容は同じでございます。  次に、帰還手当でございますが、これは従来いたしていなかつたものでございます。今回の帰りました方々が安心して国に帰ることができる、つまり帰りましてからただちに生活に困窮することがないようにするためには、一応応急的な生活その他のための資財といたしまして、若干の資金が必要であろうと考えられますので、これについて今回新たに帰還手当の制度を設けまして、引揚者に対して、おとなが一人当り一万円、子供が一人当り五千円を支給することにいたしたのでございます。この帰還手当は、この帰還手当と本人の所持金を合せたものがこの手当の倍額になるまでは支給するということにいたしております。大体そのくらいのつもりでおります。従いまして、持帰り金が一人当り二万円以上になつている者につきましては、これは支給されません。大体今のところはそういうようなことになつておるのであります。またこれは、純粋の引揚者交付するようにいたしたいと考えて、現在のところそういう話合いなつておるのであります。それから持帰り金は、米ドルあるいは英ポンドの現金、それらの金額でできております外国為替証書というものが持帰りができるのでございます。その他のものでは、こちらで現金になりません。これらの現金日本金に引きかえますのは、援護局内にその銀行が出ておりまして、できるようにいたすことになつております。それから、現在までのところでは、中共では持帰り金について何ら制限を加えていないように伺つております。  次に、衛生関係でございまするが、医療の問題は、病気によりまして、軽症の者は、援護局内に病室がございますので、そこに収容いたしまして、そこで医療看護を加えまするし、重症の者は、国立病院等に移しまして、そこで療養されるようにいたしたいと思つております。  次は、援護局から郷里に帰るまでの陸上輸送でございますが、この陸上輸送につきましては、東舞鶴駅から帰ります場所までの鉄道輸送無料乗車券交付いたします。これは引揚援護庁でもつてその乗車券費用を負担いたします。引揚者輸送無料で行つておるのは従来の通りであります。これは携行品引揚げ荷物を含めまして、さようにいたしております。なお、この間におきまする臨時列車の運転あるいは車両の貸切りと申しますか、こういうような措置を講じることにつきまして、大体国鉄当局とも話合いが、幹線におきましてはできることになつております。ただ時期が時期でございますので、どうかと思いまするけれども、国鉄といたしましては、できる限りの便宜をはかるというふうにいたしておりまして、大体われわれの見込みでは、それができるだろうと考えております。  それから、その途中の食糧でございますが、従来は途中で、適当な場所におきまする車中の弁当支給いたしておりまして、そのほかに、食糧不足を補う措置として、乾パン交付したのでありますが、現在乾パンは適当ではございませんし、むしろ弁当の質をよくする方がよいと考えまして、弁当は質のいいものにいたし、従来よりも主食の量を増加いたしまして、これを交付することにいたしたのであります。これは、ちようど食事の時間にあたる駅におきまして支給するようにいたしております。  それか、帰郷途中におきまする車内事故等につきましては、日赤車内の施療を担当いたします。また主要な駅におきましては、できる限り湯茶、みそ汁等の接待をいたしたり、あるいは休養所の設置をいたしたりして、これに対しまする措置を遺憾なくいたしたいと考えております。  最後に、帰郷いたしました定着地におきまする援護でございますが、今度の引揚げの特殊な性質にかんがみまして、引揚者の一時収容所を特に整備いたしたいと考えておるのであります。引揚者でありまして、全然縁故者がなくて、ただちにおちつくところのないような方、適当な住宅が得られるまで応急的に住居を必要とする人に対しまして、主要な都市に一時収容所を設置することにいたしまして、これにつきましては、本年度及び明年度予算でもつてこの施設を整備いたしたいと考えております。新設の必要がありますものは新設いたしますし、また従来の施設を転用する場合におきましては、これの補修費用というようなものを見まして、大体主要な都市全体にこれを設置いたしたいと考えております。  それから、先ほど申しましたように無縁故者が非常に多いと考えられますので、これらに対しましては、できるならば一般の公営住宅等に入つていただくことが最も望ましいのでございますけれども、いろいろな御事情によりまして、特に帰られた当座はこちらの状況になれませんために、公営住宅等に入りにくいような方々もあると思いますし、またそういうものが建てられないような場所におちつく方もありますので、これらの方々のために特別な引揚者住宅を設置するようにいたしたいと考えております。これにつきましては、おおむね来年度三千戸、本年度四百六十戸を設置するようにいたしたいと考えております。これらにつきましては、その必要な場所に設置するようにいたしたいと考えております。これをあらかじめつくつておきまして、そこに入らなければならぬというような強制がされないようにするために、実際に帰られました事情に応じまして建てるようにいたしたいと考えております。ただ、引揚者方々が多数入られるような場所におきましては、本年度内にできる限り建てるようにいたしたいと考えております。  次に、引揚者厨房用品等のない者、これが手に入らない人に対しまするあつせん、あるいはこの支給等につきましては、従来と同様な措置を講じます。  それから更生資金でございまするが、更生資金は、今回一応国民金融公庫に二億円のわくを設けて、その貸付を行うことにいたしております。これの貸付基準等につきましては、従来よりは有利にいたしたいと考えまして、目下金融公庫と折衝中でございます。大体従来よりはある程度有利になるというふうに考えております。  その他、職業あつせんでありますとか、あるいは引揚者子弟教育、あるいは引揚者戸籍に関する問題、これらに対しましては、先ほど申し上げました通りに、一応舞鶴援護局でもつてこれらについての一応の大ざつぱな御相談はいたしまするけれども、具体的な問題につきましては、やはり定着地に参りまして相談しなければなりません。これらにつきましては、それぞれ担当の労働省文部省法務省におきまして、それらについての準備をいたしておるようであります。これにつきましては、重ね重ね申しますような方針で、できるだけこれにつきまして遺憾のないようにするということで準備いたしておるようでございます。  なお、今回の引揚げにつきましては、国民全体が、この長らく外地で苦労されましたところの引揚者方々を、あたたかい手でもつて迎えて、そうしてこちらの土地に完全に定着できるようにしなければならぬものであると考えておるのであります。そのために、従来やつておりまするところの引揚げ援護愛の運動をさらに強力に展開いたしたいと考えまして、これにつきまして若干の経費を見込みまして、各地方に対しまして、これを展開するようにいたしたいと考えております。  大体以上をもちまして受入れの大綱を御説明申し上げたわけであります。これらの措置におきまして、まだこれでもつて十分であるとは決して申し上げられないのでありますが、従来の援護に比べまして、さらに内容を充実いたしまして、これらの方々をお迎えするのに遺憾のないようにいたしたいと存じておる次第でございます。
  4. 佐藤洋之助

    佐藤委員長 この際、本件に関する質疑を許します。玉置信一君。
  5. 玉置信一

    玉置委員 中共地区引揚者受入れ援護態勢につきまして御質問を申し上げたいと存じますが、ただいま木村援護庁長官よりこの点に関して御説明を拝承いたしますと、大体遺憾のないような準備が整つておるようには受取られるのであります。しかしながら、過去における引揚者受入態勢の実情を振り返つて考えてみますと、残念ながら、デスク・プランといいますか、ぺ一パー・プランといいますか、形式的な当局お話を承つた後において、いざ引揚者引揚げて参りますと、爾後におけるすべての施設が完全に参つていないのであります。そうしたことから、私は、ただいま御説明になりました点を中心として、援護庁長官にお伺いをせんとするものでありますが、その前に、基本的な問題として、政府の公式な御説明を願いたいと思います。ということは、すでに新聞で散見いたして、大体承知はいたしておりまするが、今般中共側の呼びかけによりまして、日本代表として島津団長以下七名の者が派遣されて、すでに中共に到着いたしております。この代表団旅券交付にあたりまして、いろいろのトラブルがあつたのでありますが、政府は何々の者に正式に代表として旅券交付されたのであるか、すなわち正式代表はだれだれであるかということを、ここにあらためて政府側より御答弁願いたいと思います。
  6. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 これは外務省の方からお答えする方が適当であろうと思いますけれども、その正式代表は、御承知通り日赤島津社長工藤外事部長日中友好協会の内山氏と加島氏、日本平和連絡会平野氏及び畑中氏、それから高良氏、これだけが正式代表ということを先方が認めておるようであります。従いまして、これらの方を正式代表として旅券交付されたものと思います。それから、あとのお二人の方、大阪商船の方と外務省の方、このお二人の方が工作員として行つておりまして、その他の方は随員として行つておると聞いております。
  7. 玉置信一

    玉置委員 長官お話のように、旅券問題につきましては当然外務省所管でありますけれども、しかしながら受入態勢仕事中心にあるのは言うまでもなく援護庁でありまして、外務省との横の連絡があつたはずと思いまして、私は、受入態勢の上に遺憾なからしむるためにそういう連絡があるものと存じて、お伺いしたのでございます。ただいまのお話は、連絡があつて確認したものと思いますが、あらためてこれをお伺いいたします。
  8. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 これは、私の方でそういうふうに聞いておるのでございます。外務省とも連絡をしまして、そういうふうに聞いております。
  9. 玉置信一

    玉置委員 それでは、受入態勢の面について逐次お伺いいたします。まず最初にお伺いすることは、これまた前年来の実態を見てお伺いするのでありますが、ただいまの長官の御説明によりますと、舞鶴上陸後の収容所の点においても遺憾なきを期しておるということでありますが、ただいま御説明されましたように、舞鶴における一時的な収容所について、はたして完全と言い切るだけの準備ができておりますかどうか、まずこれをお伺いいたしたいのであります。
  10. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 舞鶴の現在の設備は、従来の建前からいたしますと、一応十分にできていると思います。ただ、これにつきましては、なお整備いたしたいと考えまして、目下、欠陥がありまする場所を探しまして、これを整備いたしております。なお、先ほど申しましたように、これでもつて不足するような場合等のことも考えまして、現在他に転用いたしておりまするものを、そういう場合にこちらに使い得るようにする措置を現在講じまして、大体これもできると考えております。
  11. 玉置信一

    玉置委員 先ほどの説明によりますと、舞鶴収容所施設が足りない場合は、倍に拡張施設することもできる状態になつているというお話でありましたが、そうした場合に、一体拡張するということは、かなりの日数を要すると思うのでありますが、しかし御説明によりますと、滞在期間は三泊四日ということになつておりますが、はたして到着後現施設の足りないものをいかにして急速に拡充できるのであるか、この点をお伺いしておきたいと思います。
  12. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 現在他の人が居住いたしまして、転用されておるものがあるのであります。それの立ちのき方が大体できる見込みでございまして、現在人が居住に使つておりますので、明きさえすればいつからでも使える状態になつております。現在、多少の人がそこでもつて居住して、生活しておるわけであります。
  13. 玉置信一

    玉置委員 それは、どうも従来の行き方と同じだと思うのです。いやしくも居住している人を、ほかへ出てもらおうとするのには、その人の行く先がなければならぬ。従来の社会情勢から見ますと、居住の問題は、ややもすると係争の問題になつて、はなはだしいのは一年も二年もかかるというような実例を私どもしばしば見受けるのでありますが、こうした、わずか三泊四日間の滞在期間中において、一体そういうことができるのであるかどうか、この点をお伺いしておきます。
  14. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 これは御承知通りに、引揚げ速度というものがどうなるかということは、代表が向うで交渉いたしたときにわかるわけであります。わかりますれば、そのきまりました後三週間までは、今のところ向うから引揚げがないという話になつております。従いまして、現在のところ、それだけの施設がいるかどうかということは、つまり代表団が向うで交渉しているうちにわかるのであります。わかりますれば、ただちに立ちのきをしてもらうようにいたしたいと考えております。これは、そういういざこざの起らない相手でございますので、もし立ちのきとなつたならば、ただちに整然と立ちのきすることができるような相手でございまして、御心配はいらないと思います。
  15. 玉置信一

    玉置委員 先ほどのお話によりますと、現在収容能力の施設は二千五百名というように伺つておりますが、そうしますと、第一船の引揚げの数を見込んでこの数字が出たものであるかどうか。さらにまた、代表団から何か今日まで連絡がありましたかどうか。この点をお伺いします。
  16. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 代表団からは、交渉をこれから始めるという連絡があつただけでありまして、その交渉等につきましては、何らまだ連絡は私のところにはございません。  それから、二千五百名というのは、現在の施設が二千五百名収容できる施設なのであります。別に第一船がどうこうというのではなく、第一船に予定しております高砂丸は、乗員が現在のところ千七百名で第一船一隻ならば十分間に合うわけであります。
  17. 玉置信一

    玉置委員 帰国査証の点についてお伺いしますが、御説明によりますと、査証交付できない対象者もあるように感知できるのですが、そういうようなことも予想されておりますかどうか。予想されるとすれば、どういうような人が交付されないことになるのでありますか。これをお伺いしておきます。
  18. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 こちらに帰りまする者は、本来の日本国民、つまり日本国の国籍を持つております者、これは当然引揚者でございますから、帰ることができます。これにつきましては拒否されることは絶対にございません。それから次は、日本国民に同伴する外国婦人、つまり日本人の妻でありますが、籍は日本国籍に入つていないという人、これは、われわれといたしましては、人道上の見地から、今回は入国せしめるべきだという大体の方針になつております。それから日本国民であるところの父または母と同伴している満二十歳未満の子供であつて、配偶者のない者につきましては、これは日本国籍のない者でも入ることができるようにいたしたい、かように考えております。それから、従来日本国籍を持つておりました者で、外国に籍を移した人、つまり他と婚姻いたしましたとか、あるいは他の養子になつたとかいうようなことでもつて日本国籍をなくした者、これにつきましては、それが単身で帰ります場合におきましては、これは国内に入ることは認めなければならぬということになつております。大体そういうようなものでありますことがはつきりいたしております者は、拒否されることは絶対にございません。従いまして、純粋の外国人でありまして、こちらに外国人として入国しよう、つまり入りましたけれども日本人にならないような人は、入ることができません。これは当然、引揚げでございますから、その措置でもつて、入ることはできないわけであります。
  19. 玉置信一

    玉置委員 次は、おちつき先を早く見つけて、早くおちつかせるというような御説明でございましたが、到着いたして三泊四日の間に、おちつき先の縁故者のない者ある者の調査が、これまた困難であろうと思うのでありますが、これは、船内等においてこうした調査をあらかじめしておくことが、この三泊四日の計画にマツチするように思うのですが、一体どういう方針でこれをおやりになるつもりでありますか。
  20. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 各種相談その他必要な事項につきましては、なるべくならば船内で調査をいたしておきたい。引揚げ指導等、当庁の職員はそういうようなごめんどうを見るわけでございます。カードにいろいろなことを記入してもらう。——これらはできるだけ簡単にいたしたいと思いまして、従来とはかえまして、たくさんの書類をつくらせるようなことはしないようにしておきまして、これらの手続等についてもできるだけ簡素化するということにしておりますけれども、援護に必要な程度のものにつきましては、やはり書いてもらわなければならぬので、それらのことを書いてもらう。また船内におきましても、いろいろこちらの情勢でありますとか、それらの人人の相談については、十分親切にいたしたい。従いまして、どれだけの処理事件があるかということは、私どもの方として見当がつきません。さしあたり第一船におきましては、相当多数の人を乗せたいと思つております。多数と申しましても、船には限度がございますので、七、八百名の方を乗せたいと考えております。
  21. 玉置信一

    玉置委員 帰還手当の問題でありますが、先ほどの説明によりまして、数字が明確になつております。しかし、これは一律にこうきめてあるので、縁故先のある者ない者の等によつて多少手かげんを必要とするのではないかと思うのでありますが、一律にいたしたというのは、どういう根拠方針でおやりになつたのでありますか。
  22. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 こういう仕事を迅速に、しかも公平にやろうと思いますれば、一律にやらざるを得ないのでございます。その人の事情等によりまして勘案して増減をするということは相当困難でありまして、やはり客観的な資料でもつてできること以外に、主観的な要素がたくさん入りますようなことは困難でございますし、それでは、どういうような縁故者がある場合にはやらないでいいかというような点があるわけであります。そういうようなことを一々調査いたすことは、非常に困難であります。それらのおちつき先に行つてみなければわからないのであります。帰還手当はできるだけ早くお渡ししたい。これは、おちつきました先ですぐ金がいるわけであります。そういうことにつきましていろいろなめんどうを起さないようにいたしたいと思います。その方が親切じやないかというように考えております。
  23. 玉置信一

    玉置委員 中共から引揚げ邦人の数を、大体どのくらいの数に予定をしておりますか。それに対する予算は、どういうことによつてわくをきめておられますか。
  24. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 一応先方から言つて来ておりますのは、約三万と言つております。三万居留しております者のうちで、希望する者を帰す、こういうふうに先方が言つておりますので、われわれとしましては、三万の人が全部帰りたいであろうと考えております。われわれの情報からいたしましても、大多数の人が帰りたがつているということを聞いておるのであります。従つて、われわれといたしましては、基礎数を、先方の居留しておると称しておるところの三万名というふうにいたしまして、そのうち四千名は本年度に帰るであろう、残りの二万六千名は来年度に帰るであろうということで積算いたしまして、先ほど申し上げましたような単価でもつてこれに対しまする予算を組んでおります。船の費用更生資金を除きまして、全部でもつて約七億六千五百万円くらい。これは更生資金と船の費用は別になつております。
  25. 玉置信一

    玉置委員 本年引揚げ四千人を予想されての御説明でありますが、これは予備金等より支出されるのではないかと思うのです。もしこの四千人を上まわつたときに、いかなる予算措置を講ずるか、この点についてお伺いいたします。
  26. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 四千人というのは、一応の目標でございまして、大体そんなものだろう。——つまり技術的な面から見ますると、三月の上旬以降に帰つて来られるのではないか、大体そう考えますと、その程度じやなかろうかと一応考えられます。もし幸いに、先方が非常に多量に帰して来るということになりますれば、これに対しましては、大蔵当局との間に、必要に応じてさらに追加するということに話合いがついております。従いまして、引揚げ速度が早いということがわかりますれば、ただちにこれに応ずるいろいろな措置を講じなければならないと思います。
  27. 玉置信一

    玉置委員 二十八年度二万六千人の引揚げ予想に対して、もしこれが早い時期に実現する場合の予算措置等も、万全を期するだけの用意がございますかどうか、この点をお伺いしたいと思います。
  28. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 二十八年度は、いくら早く帰りましても、三月中に予算が成立いたしますれば、四月からの受入れには何ら心配はございません。三月中に予算が成立いたしませんと、四月に非常に困ることになるのであります予算が成立いたしますれば、四月からいくら早く帰りましても困らない。今回の引揚げで、われわれとしまして一番仕事のしにくい点は、年度にまたがりましてこの問題が起つたことであります。通常の場合におきましては、年度がかわりましても、大してさしつかえないのでありますが、年度のまたがる時期に始まりまして進行するということになりますので、その点非常に仕事がしにくいのでございますけれども、しかし予算が三月中に成立いたしておりますれば、四月から仕事をやる上におきまして困るようなことはないと思うのであります。大体これは早期に終るつもりでもつて予算措置いたしておりますので、従つて、延びる場合には、それはいろいろあとにとつておかなければなりませんが、早い場合においては心配はなかろうかと考えております。
  29. 玉置信一

    玉置委員 まだ他の方が大勢質問なさることでありましようから、私はあと二問題ばかりお伺いして、あとは保留して、後刻に譲りますが、引揚者として一番の問題は、更生資金の問題と就職の問題、これが一番大きな問題であろうと思います。従来の更生資金借入れについては、中央所管官庁としては、一応簡単に貸出しができるように言われるのであるが、従来の経験からしますと、これは非常に事務的にひまどる。今回のごときは多数一度に帰つて来られることになりますので、相当事務的に煩瑣をきわめることであろうと思いますので、相当簡易に、しかも急速に資金の貸出しを行うという方向に行くべきであると思うが、この点に対してどういう心構えを持つておられるか。さらに、就職の問題につきましても、今日の国内事情あるいは産業全体の経営事情等から見まして、就職する点においてもなかなか困難のように見受けられるのであります。この万全の策をとる上に、いかなる心構えあるいは手を打つつもりでありますか。これを伺いたい。
  30. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 更生資金貸付につきましては、お説の通りに、これで非常に不便な措置が講ぜられるようなことになつては相ならぬのでありまして、お説の通りでございます。これにつきましては、金融公庫当局とも十分に打合せをいたしまして、そういうことのないようにいたしたいと考えております。それにつきましては、なお、その貸付基準等につきまして、従来よりもできるだけ緩和するようにいたしてもらいたいと思いまして、目下公庫と折衝中でございます。  それから就職の問題でございますが、これは労働省におきまして、職業安定局でもつて、この就職のあつせんにつきまして万全の対策を立てておるということでございますから、いずれまた労働省からも御説明があると思いますが、その方でもつて十分のことをやつておられると思います。なお就職は、何と申しましても、雇い入れます雇い主側におきまして、それに対する御理解を持つていただかなければならぬ、こういうふうに考えますので、われわれといたしましては、都道府県知事を督励いたしまして、これらの雇い主側におきまする強い理解と、これの受入れに対する御協力をお願いいたしたいと考えまして、その点に関しまする地方に対するお願いもいたしておるわけであります。また各方面におきまするこれに対する御協力を切に期待いたしております。
  31. 玉置信一

    玉置委員 完全に定着せしめる基本的な問題は、ただいま申し上げましたように、更生資金の問題、さらに就職の問題、また住宅の問題であります。この住宅の問題につきましては、これまた従来非常に問題になつているのでありますが、ことに私は、二十八年度住宅建設に対して理解できない点は、従来の引揚げ住宅予算を打切つてしまつて、一般公営住宅にまとめる方向に進んでおるように思われるわけであります。一般公営住宅引揚者が入ろうということは、これは家賃を支払う条件等から見まして、とうてい不可能であるということは、先ほどもちよつと長官も触れておられたようであります。とうてい不可能なことでありますが、援護庁としては、予算決定の前において大蔵省とこの点について話合いをしたのかどうか。もし話合いをしなかつたのならば、非常な手落ちになるのでありますが、したとして、これを譲つたとするならば、これはいかにも予算折衝の上に弱気であつたんじやないかと思いますが、その経過を承つてみたい。
  32. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 予算折衝の経過を話すということは、どうも役所同士の仁義といたしまして、あまりいたしたくないのでありますが、従来の引揚者住宅の問題でございます。これは御承知通りに、引揚者の応急住宅を建てて参つたのでありますが、これらの応急住宅の中で、多数の人を同じ建物の中に集団的に入れておるような住宅、つまり集団住宅の中で、住宅として適当ではないような状況になりましたものを、すみやかに疎開しなければならぬということでもつて、皆様方の非常な御協力によりまして、先般来この引揚げ住宅の疎開を行つて参つたのであります。この疎開住宅の必要がどの程度あるかということにつきまして、地方に対して照会をいたしまして、その調査をいたしましたものによつて、引揚げ住宅の疎開計画というものを立てまして、ここ数年来やつて参つたのであります。これが一応本年度、つまり二十七年度でもつて終るということになりますので、これを二十八年度以降に継続するということにつきましては、他の特別な強い理由がなければならぬというのが財務当局の主張でございます。これは私の主張ではありません。それで、私の方としましては、なおそのときの計画の残りが若干あるということが一つ、それから、これはこちらの責任ではありますが、その当時の計画漏れのものがある、その後の状況の変化として出て来たものがあるということでもつて、これに対する予算の要求はいたしました。これは中共引揚げ予算の折衝のときに先方と折衝したのでございますけれども、最後に、どうしても金の都合がつかぬから、これをこの予算に載せることは待つてくれということで、待つたというわけでございます。従いまして、今後の情勢の変化によつて、われわれとしましては、さらにこの問題についてはむし返すつもりであります。
  33. 玉置信一

    玉置委員 そうしますと、この引揚者住宅予算化につきましては、援護庁長官といたして、中共引揚げの数を前提として大蔵省に交渉いたしたわけでありますね。
  34. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 引揚者住宅につきまして、先ほど説明いたしました三千四百六十戸くらいの数につきましては、従来引揚者の数に対して立てました住宅数の立て方、予算をとりましたときの基礎比数率にいたしました数字よりは、はるかに高い比率でもつてこの数字をとつたわけであります。しかし、これにつきましては、実際に皆様方が入つてみませんと、足りるか足りないか、わかりません。お入りになりましたあとで、もしも足りないということがありましたならば、これにつきまして、大蔵当局といたしましてはやはり考えないわけではないということは、一応われわれとしましては約束をいたしております。従いまして、われわれとしましては、一応そういう将来のことは将来のこととして、さしあたりこういうことをやつてみる、つまり、こちらに縁故の者がなくて、おちつく先がない、あるいはおちつく先が不適当であるという人がどのくらいあるかということにつきましては、見当がつかないのであります。従いまして、これにつきましては、実際にやつてみました上で、足りない場合については、それに対して必要な措置を講じなければならないと考えております。先ほど申しましたように、もしも公営住宅に入り得るような人がございましたならば、これは公営住宅には優先的に入れてもらうということは、大蔵省当局もその方が筋じやないかということを言つておりますので、おそらく大蔵当局は、この関係の住宅を所管いたしておる方にも申し入れてくれると思います。われわれとしましても、できるだけ一般住宅に入りまする人はそつちに入つてもらう、どうしてもそれに入れないような人につきましてはこちらで措置しなければならぬ、こう考えております。
  35. 玉置信一

    玉置委員 私の質問は、後刻に保留いたしまして、一応これでもつて打切つておきます。
  36. 佐藤洋之助

    佐藤委員長 玉置君に申し上げますが、ただいま御質問の更生資金あるいは職業あつせん、引揚者子弟教育の問題、応急医療の問題、これは、ただいま帆足君からもお申出がありましたので、それぞれ関係の省の責任者に連絡をとりますから、重点的にお聞きを願いたいと思います。どうぞ御了承願います。帆足君。
  37. 帆足計

    ○帆足委員 関係各省の責任者の方がお見えになりませんし、長官の御意見を伺つただけでは多少不十分な状況でございますし、もう正午でございまするから、関係官庁の方々をお呼びして、午後一時からでもやつていただいた方が能率的でなかろうかと存じますが、次の発言者の御都合もおありでしようから、次の発言者の御意見もお伺いの上、ひとつおとりはからい願いたいと思います。
  38. 佐藤洋之助

    佐藤委員長 ただいまの帆足君の御所見に対して御意見はございませんか。
  39. 柳田秀一

    ○柳田委員 異議はありませんが、この機会に木村援護庁長官だけにごく簡単にお尋ねしたいと思いますが……。
  40. 佐藤洋之助

    佐藤委員長 それではこの際お許しいたします。柳田君。
  41. 柳田秀一

    ○柳田委員 ただいまお述べになつたような動議が出ておりますので、ごく簡単に、引揚地舞鶴におきます援護施設に関する点のみについてお尋ねしたいと思います。  第一は、引揚げて参ります人たちに一審初めに接触されるのは、何と申しても援護庁職員であります。従つて、この職員の言動というものが、終戦後七年間外地にあつた方々に対しては非常に鋭く響くのであります。そこで、援護庁長官として、現地に勤務せられる者に対しては、一応やはり指示も行つておると思いますが、私思いますのに、今度の引揚者を、単に長らくの間中共で抑留されておつて気の毒であるという観点で迎えるのは、私は当つておらないと思う。そうでなしに、われわれが今後の日本の将来ということを考えるならば、七年間の間中共におられた人々は、日本と中国との親善の上に大きなくさびを打込んで帰つて来られ方々であつて、将来またそうう方々が中国にも行つて、さらにそのくさびを大きくするというような使命を持つておられる方であるというような敬意を持つて迎えるべきであると思うのでありますが、これに対して長官の御意見を伺いたいと思います。
  42. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 われわれがあらゆる厚生関係の仕事をいたします上におきまして、人が気の毒である、かわいそうだというような気持でもつて仕事をいたすのではないのであります。生活保護法の相手方であります方々に対しても、その人の人格に対する尊敬はいたしておるつもりであります。この点につきまして、あわれみの目をもつて見るようなことは決してないつもりでありまして、これについては、もしそういうようなことがあつてはなりませんから、十分に注意いたしたいと思います。
  43. 柳田秀一

    ○柳田委員 次に、もう一点伺いますが、従来ナホトカ方面から引揚げて参りましたときに、たいへん問題になりましたのは、いわゆるランゲツジ・セクシヨンというアメリカ軍の地方機関が、一室を設けまして、まるで罪人を調べるがごとく監禁してソ連の状況をつぶさに調べて、大いに問題になつたのでありますが、まさか日本政府においてそういうようなことをやられるとは、今度の引揚げでは思いもいたしませんが、アメリカ軍当局の方から、それに類するような取調べをしたり、あるいは日本政府を通じて出せというような要請でもありますかどうか、お伺いしたいと思います。
  44. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 引揚援護庁におきましては、一切そういうことはさせないつもりでありまして、引揚者援護に関する仕事に関係しない人々のそちらにおいでになりますことは、できるだけお断りしたいと思います。特に、ただいま御指摘がございましたことにつきましては、絶対にさようなことはございません。
  45. 柳田秀一

    ○柳田委員 次に、援護局受入れ態勢の庁舎の問題で、先ほど玉置君の御質問に対して、はなはだ抽象的なお答えがありましたが、新聞の報道によりましても、引揚げが再開される、あるいは急速度に進展するのではないかというような見通しがあります。従いまして、現在の庁舎の収容能力が一棟約一千五百人と承知しておりますが、これは高砂丸一隻の収容人員にしか当らないのでありまして、昨年暮の本委員会において、この点質問しておいたのであります。この問題の庁舎は、私、先般現地に行つて見て来ておりますので、よく存じておりますが、長官の方からこの点についてはつきり申されませんので、私の方で申し上げますが、これは舞鶴におります保安隊が入つておる庁舎でありまして、今長官から言われたのは、なるほど保安隊が権利はとつておるらしいが、現在そこには入つておりません。援護庁の庁舎がありまして、山手に今度収容する庁舎を一棟予定し、海手に一棟ありますが、私が見たところでは、保安隊が入つていないようであります。ただリザーヴだけはされておるようでありますが、何と申しましても、今度帰つて来ますのは、女、子供も相当におります。大体あの建物が、元の海軍の海兵団の臨時的な建物でありまして、大人、しかも男子を中心にして建てた建物でありますので、女の方、ことに子供には非常に不適当だと思うのでありまして、もうすでに多少の内部改造などはしておく必要があるのではなかろうかと思いますが、いまだにこれに対する手配が進んでいないようであります。これに対して、いかがでありますか。
  46. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 先般舞鶴援護局当局者をこちらに呼びまして、これらのことにつきまして打合せを済ませまして、現在内部の改造にはとりかかつておるはずでございます。それから、今申しました施設につきまして、これは、御指摘の通り、もともと援護局施設でありましたものが、現在保安隊に委譲されたものでございます。この施設につきましては、こちらといたしましては、これを委譲してもらうように向らに折衝中でございます。できるだけすみやかに処置をいたしたいと思つております。
  47. 柳田秀一

    ○柳田委員 なお出迎えの方々が全国から舞鶴に相当集まられると思うのでありますが、これに対して、援護局の方では森寮を予定しておるようであります。森寮の収容人員は二千名でありまして、一千名の出迎えの方の収容予定しておるようでありますが、この出迎えの方に対しては、これは引揚者ではありませんので、政府の方に責任あるということは言えないが、相願わくば、従来のように出迎えの方に毛布を単にあてがうというだけじやなしに、もう少しあの施設を、りつぱと言うと語弊がありますが、もう少し宿舎らしい施設にしてもらえないものかどうか。今度引揚げを受けられる立場の方は、必ずしもそう経済的に余裕のある方ばかりとは私は考えない。むしろその逆が考えられるのでありますから。そう高等な旅館に宿泊されるだけの能力もなかろうと思うのであります。従つて、あの出迎えに来られる方の宿舎なんかに対しては、もう少し設備を改善するなりするような御意思はありますかどうか。
  48. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 大体、今御指摘のありました通りに、留守家族の方々などで出迎えに出られる方につきましては、森寮を使うつもりでおります。これに対しましては、われわれといたしましては、できるだけ引揚者の方の援護につきまして準備をいたしたい。これがまだ、私どもとしまして、思う通りに十分に行つていないわけでございます。従つて、どちらが先かということになりますと、われわれの方としましては、今のところ森寮にまで手がまわらないということであります。
  49. 柳田秀一

    ○柳田委員 援護局の方で手がまわらなければ、厚生省の他の方ででもまわすとかいうような処置をとつていただきたいと思うのであります。  さらに、援護局の人員でありますが、漸次縮小されまして、現在定員は百九十名と称しておりまして、なお海軍の援護法の関係の業務をやらせるために臨時に百五十人ほど入れておるようでありまするが、これでは、一度に三千人あるいは四千人と帰つて参りました場合に、とうてい足らぬと思いまするが、いかがなされるつもりでありますか。
  50. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 御承知通り、今おりまする者は百八十名でございます。それから、御承知通りに、遺族年金等の仕事を今までさせておりましたが、これは全部やめまして、全部元の復員局の方へ移しました。従いまして、現在のところ、この人員に対しまして、臨時の人を入れまして、そうしてどの程度やるかということでありますが、これにつきましては、大体総数に対しまする予算をとつてございますので、従いまして、早く済むようなことならば早く済むようにこれを処置する、こういうことであります。ただ、これにつきましては、なかなか臨時の職員につきましていい人が得られないという心配がございます。これにつきましては、先般いろいろと現地の当局打合せをいたしまして、遺憾のないように処置することになつております。これにつきましては、なお地元の協力も仰がなければならないのじやないかと思つております。
  51. 柳田秀一

    ○柳田委員 なお、従来からの実績を見ますと、帰つて参りました人員の約三パーセントぐらいが病人になつておるように思います。従いまして、このたび、かりに一箇月にまず五千名帰つて来るとするならば、百名の病人がある。ところが、今度の場合には、家族連れで帰つて来るのが多いのでありますから、百名の入院患者があるならば、当然それに付添う者がおる。いわゆる乙種患者として、子供なり、あるいは主人なり奥さんなり、一人の患者に二、三名の付属がつくというようなことになつて参ります。従いまして、それらの第一収容病院でありますところの国立病院では、そのために特にベツト数をふやす必要があるのではなかろうかと思うのであります。現在舞鶴の国立病院は、予算定員で入院五百名ほどでありまするが、私の調べたところによりますと、現在でもすでに六百三十名以上入院しておるのであります。これに対しては何らかの増床措置をとる必要がありまするが、すでにそちらの方に御連絡をとられて、第一収容病院の方には増床の設備なり、あるいはそれに要するところの医師看護婦、雑仕婦等を増員する手配なり御処置をおとりになつておられますかどうか。
  52. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 増床の措置はとつてございます。なお、ただいま御指摘になりました付添い等は、従来の乙種患者のような取扱いをいたしませんで、われわれといたしては、それらの付添いの方々は、退院されるまでは援護局の方に滞在していただくようにいたしたいと思います。それから、費用等は、一応当庁で負担しまする限度というものはございまするが、できるだけのことはいたしたいと考えております。
  53. 柳田秀一

    ○柳田委員 増床に伴う医師看護婦、雑仕婦等の増員についての考えはどうでございますか。
  54. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 増床について必要な医師看護婦等につきましては、これは医務局の方でこれに対する準備をいたすことになつております。
  55. 柳田秀一

    ○柳田委員 最後に、もう一問だけお尋ねしておきます。これは直接援護局に関係はないのでありますが、私もこの引揚げ援護のお世話をさせてもらつた経験があるのでありまして、特に今回の引揚げが、日本政府というものを相手にするというよりは、日本の国民を相手にして引揚げをやるという立場を中国がとつております。昨年暮れの委員会でも私が外務大臣にお尋ねしたように、外務大臣自身、日本政府自身、吉田政府自身が、現在の中共政府を好ましくないと思つておるのですから、向うが今の政府を好ましいと思わないのも当然で、そういうものを相手にすると想像をし期待しておるのが間違いでありますが、今度も日本の民間団体を対象にして来ております。従つて、この第一収容地におきまするところの、いわゆる受入れ態勢あるいはそれに対する歓迎等におきましても、相願わくば、なるたけお役所仕事というのではなしに、民間団体をして非常にあたたかい国民の熱意を傾きさすべきである、かように思うのであります。そこで、舞鶴におきましては、新聞等の報道によりますと、すでに婦人会、PTA等におきましては大分動いておるようであります。それぞれ連絡をとりまして、あるいは学童慰問を行うとか、演芸をやるとか、あるいは婦人会の方で花を持つて行くとか、いろいろな相談をやつておりまするが、私の経験からいたしますると、何分にもそれらの団体は現在ですら非常に財源に困つておりまして、そういうような経済的立場から、団体活動は十分できておりません。従つて、こういうものに対する補助ということははなはだ問題になると思うのでありますが、そういう民間団体を十分に活用して受入れをするというような意味におきまして、そういう団体に対して、政府は何らかの形において補助をするというお考えはありませんか。そういうようなことをして、民間団体を通じてやらせる方が、さらに効果的であると思うのでありますが、これに対して援護庁長官の御意見を伺いたい。
  56. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 中共政府日本政府を相手にいたしませんでも、日本としては日本政府が相手になるよりいたしかたがないのであります。ことに、受入れにつきまして、日本政府がいたしませんで他のものがするということは、おかしな話であります。われわれとしては、日本政府として、政府の責任においてこの受入れ態勢を整備いたしたいと考えております。従いまして、これらの仕事を他に委譲いたしまして、責任を免れるというようなことはいたしたくないと思います。ただ、御指摘になりましたように、これに対しまする御慰問——御慰問と言うと少しおかしいのでありますが、いろいろのお世話等につきましては、各方面の御協力をお願いいたしたいと思つておりますが、大筋の問題はやはり政府当局がいたさなければなりませんし、なお、お帰りになりました方々は、やはりできるだけ早くおちちつく場所におちつきたいというお元気持であろうと思いますので、援護局に滞在中の仕事はできるだけ早く終りまして、一日も早く故郷にお帰りになられるようにいたしたいと存じておりまして、そういう仕事の支障にならない範囲におきまして、いろいろお世話願いますことは、非常にけつこうなことであると思います。大筋におきましては、私どもとしては、民間に金を出して委嘱するという考えは持つておりません。
  57. 柳田秀一

    ○柳田委員 ただいまのお答えに必ずしも満足いたしませんが、時間の関係もありますので、ただ当局の考えをただすという意味で、この程度に質問をとどきておきます。
  58. 野澤清人

    野澤委員 午後他の委員会もありますので、五分間だけでけつこうでありますから、発言を許していただきたい。
  59. 佐藤洋之助

    佐藤委員長 それでは野澤君の発言を許します。
  60. 野澤清人

    野澤委員 先ほど長官より説明されました援護事務につきまして、かつて私も引揚者の一人で、経験から出発しまして、事務上の問題についてちよつとお尋ねしたいと思います。  五つばかりございますが、第一は、引揚げ指導の場合、指導員が説明をされる際に、口頭説明を主体とするか、文書説明を主体とするのか、この点が一つ。  それから身の上相談について、職業の面ですが、これは労働省の関係だそうですけれども、これに対しては一律一体の相談事項を持つて来られるのか、その人人に応じた相談事項を持つて来るのか、これをお尋ねしたいと思います。お答えができなかつたならば、あとでけつこうでございます。  それから、援護物資交付について、できるだけ手厚い支給をいたしたいと言つうが、その内容はどんなものであるか、承れたらお答え願いたいと思います。  それから第四は、帰還手当について、一人一万円、子供が五千円とありますけれども、註釈を見ますと、持帰り金二万円以上を所持する者には支給しない、こうあります。その根拠はどういう理由で支給されないのか。  それから第五番目は、更生資金のわくだけが与えられておりますが、その単価、いわゆる借りられるものは、一個人に対してどのくらいを考えておられるのか。  以上五点についてお答えを願います。
  61. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 引揚指導員が指導いたしますことについては、一般的に文書でできます程度のものは文書でもつていたしますし、口頭でしなければならぬものは口頭でするということで、その場合に応じた措置を講じたいと考ふております。  次の、個々の人に応じた相談と申しますか、それぞれの人の職業をどうするかということまでは、援護局におられる短期間中にはできないのではないかと思います。従いまして、これらにつきましては、どういうふうにしたらよいかという一般的な問題についてお話することになるのではなかろうかと思つております。つまり、何と申しましても、援護局に滞在する期間は非常に限定されております。しかも、その間においでになも方は、一船で千五百名あるいは二千名という方がおいでになるのでありますから、これらの方の御相談について、ほんとうに打割つた相談職業についてまでできるとは考えられません。またいろいろ事情も違うでありましようし、おちつく場所も違いますし、御希望もございましようから、ここで最終的な解決ができるような御相談はできないのではないかと思つております。  それから物資の問題につきましては、従来の物資よりもよくするということでもつて、現在手持ちの物資につきまして、どうしたらよいかということについて検討しております。きまりましたら、また御連絡したいと思つております。  それから、一人二万円以上持つております人には帰還手当支給しないということは、これはできるだけ支給いたしたいのでありますが、金額が限られましたので、一応帰りまして当座のいろいろな経費に困るだろうというところから出すことにいたしました関係からして、まず持つていない人の方に差上げるようにいたしたい、持つておられる人は遠慮していただくことにしたいというだけの趣旨でありまして、これは新しく出るものでございますので、そういうことにしたというだけでございます。金の都合でもつてそういうことになつたのであります。  それから更生資金の限度でありますが、従来は三万円でありましたのを、五万円にいたしたいと思つて、現在折衝中であります。
  62. 野澤清人

    野澤委員 よくわかりましたが、第一問に対して、文書と言葉上の説明を適切にするというお話ですが、言葉上の説明が往々にして帰還者の神経を刺激することが非常に多いと思うのです。でき得るならば文書による解説をなるべくやつていただく方がよいと思うのです。必要以上のことをおしやべりになる方と、帰還者を押えるような言動をなされる方とありますので、帰還者としては非常に奇異な感じがいたします。もう一つは、しよつちゆうスピーカーでどなられたり、廊下に来て説明されたりしますと、せつかく日本に帰つて来たにもかかわらず、気持の上におちつきが出ない。こういう点は十分御検討の上に、でき得るならば文書で御説明が願いたい。  それから身の上相談でありますが、この点に関しましては、できるだけ手続上の問題をはつきりと指示してやつていただきたい。県に帰つたならば世話課に行けとか、あるいは市長のところに行けとか、手続上の件をはつきりと指示してやることが必要なのであつて、今就職は困難だとか、あるいは経済情勢が悪いとか、余分な説明は必要はないと思いますから、この点も労働省の方と長官の方で十分お話合いが願いたいと思います。それから、第三の援護物資の問題でありますが、手厚い支給をするという御精神には非常に賛成でありますけれども、大勢の者が一度に帰るために、その事務上の手続が非常に疎漏に終るという事実があります。たとえば、私のようにからだの大きい者は、せつかくもらつた被服が合わないのです。それを交換しようと思つても、交換することができない。ちんばな靴をもらつたり、合わない被服をもらつても、どうにもならない。従つて、親切な行き方としては、援護物資の交換場所というようなものを全然別個につくつておかれた方がよろしいと思います。念のために申し上げます。  それから、帰還手当についてでありますけれども、予算の関係で区別をするのだという考えですが、ソ連あたりからの帰還者は金をほとんど持つておりません。中共地区の引揚げに関しては、先ほどの御説明のように、制限なしに持参させるということでありますが、勤勉な日本人が、国に帰つてのゆたかな生活を夢見て帰つて来るのですから、持つておるから支給しないのだ、持つてないから支給するのだということになりますと、あそこに来てからそういううわさを聞いただけで、すでに隠そうとか、分散しようという気持が起きて来ると思うのです。今回の引揚げについては、せつかく精神的にもあたたかい気持で迎えようというのですから、先ほど言われるように客観的な支給をするということであるならば、どんな苦労をしても、どの人にもやはり同じように支給していただきたい。たくさん持ち過ぎて困るというのであれば、その持参された金は郵便貯金にして持ち帰らせるようにあつせんするとかして、そうして各人に必ずきめただけのものを支払うようにしてほしいと希望いたしておきます。  それから、更生資金につきましては、わくを一日も早くきめられて、これの手続上の問題をよく解説を与えてやつてほしいと思います。  以上私の希望を申し述べまして、質問を打切ります。
  63. 佐藤洋之助

    佐藤委員長 飯塚定輔君。
  64. 飯塚定輔

    ○飯塚委員 先ほども発言がございましたように、これらの問題に関しましては、予算その他それぞれの関係当局者のおいでになつたときの方がかえつてよろしいと思いますから、午前中の質疑はこの程度にして、午後から、本会議とにらみ合せまして、できるだけ早く再開していただきたいと思います。私は質疑を留保しておきます。
  65. 佐藤洋之助

    佐藤委員長 午前中はこの程度にとどめまして、午後一時半より再開いたします。  暫時休憩いたします。     午後零時二十一分休憩      ————◇—————     午後二時二十六分開議
  66. 佐藤洋之助

    佐藤委員長 これより会議を開きます。  休憩前に引続き、中共地区残留胞引揚に関する件について議事を進めます。  ただいま御出席の政府関係当局の方は次の通りであります。法務省民事局第二課長阿川君、同じく第五課長池川君、入国管理局入国審査課長平野君、外務省アジア局第五課長鈴木君、大蔵省主計局主計官大村君、同大蔵省主税局税関業務課松本君、同波多江君、大蔵省銀行局特殊金融課青山君、文部省初等中等教育局中等教育課長大田君、引揚援護庁木村長官、総務課長木村君、引揚課長山本君、運輸省海運局監督課長土屋君、同鉄道監督局業務課長豊藏君、労働省職業安定局雇用安定課長富山君、以上であります。  なお、外務省アジア局第五課長は三時半に次の委員会の都合がございますので、できるならばこの質問を先にそれぞれお願いをいたしたいと存じます。  これより質疑を許します。中山マサ君。
  67. 中山マサ

    ○中山(マ)委員 私は、中共引揚げの問題に関しまして、外務省のお方に、少し話が古いのでございますけれども、旅券の問題についてお尋ねをしてみたいと思います。本筋ならば外務大臣の御出席を仰いで直接に承りたいと思いますが、お越しがございませんので、外務省関係の方にお尋ねいたします。  この派遣団の出かけまするちようど十二月のころであつたかと思いますが、この委員会におきましても、外務委員会におきましても、旅券は脱法行為によつて外国に行つた人には出させないのだというお話を承つておつたのであります。ところが、最後の段階に及びまして、うやむやとこの旅券が出されたのでございます。占領下にある時分ならば、あるいは占領軍の指令によつてどうなつてもしかたがないという考えを持たざるを得ませんでしたが、独立国となりまして、政府が一旦言明したこのことが、それに十分なる裏づけがなくて変更されるということは、私はどうも受取りにくいのでございます。いつそ出すならば初めからすつと出してもらいたかつたと私は思います。たとい脱法行為であろうとも、三万の国民の生活安定に関することであるならば、これは別箇として取扱うと最後におつしやつたことを初めにおつしやつていただきましたならば、私ども国民はみんな疑問を持たなかつたでございましよう。しかし外務大臣として一旦ああいうことを発表した以上は、もはや六人の人も出発するような気構えになつていられたように私は新聞紙上では拝見しておりましたので、もしこのお一人のお方が向うに行かないならば三万の人は帰さないという中共からの言明があつて、こういうことを裏づけとして旅券をお出しいただきましたのならば、国民もぜひがないということによつて、政府の威信も傷つけられないで済んだであろうと思いますが、そこに何らそういうふうなものなしに、うやむやと出されたということは、私は与党でありながらも納得が行かないのでございます。この間になぜそういうふうな結果になつたか、私は外務省の御説明をまず仰ぎたいと思います。
  68. 鈴木孝

    ○鈴木説明員 その点につきましては、外務大臣は、旅券を出されることを定められた場合の御説明に、留守家族の気持を十分に考え、それから引揚げ打合せ態勢の万全を期するために、今回に限り特例として出すのだ、こういうふうにおつしやいました。それは、私自体ではございませんので、大臣がそういうふうに御言明になさつたわけでございます。
  69. 中山マサ

    ○中山(マ)委員 私は、どうもその御説明では納得が行かないのでございます。そいいうお気持ならば、なぜに早く出していただかなかつたか。そうすれば、何の疑念も与えないで済んだことでございましようが、何か裏にあるのではないかというような感じが起りますので、もしそれだけしか御存じないならば、委員長、この次の十日の午後からは、外務大臣をここにお呼び願いまして、御本人から御説明を願つて、そうして、そうであつたかという釈然としたる気持を持ちたいと思います。私は、三万の方々をお迎えするのに、だれが行こうが、それはかまわないのでございまするけれども、いろいろとあの間を見ておりますと、どうも何だかもやもやした気持で、第一に留守家族の協議会の会長の有田先生がまつ先に行つていただくべきであると思つておつたのに、これがはねられたということは、どうもこの問題について私は釈然としないものがございますので、この辺の事柄を明らかにするという観点に立ちましても、ぜひひとつじきじきに御説明を願いたいと思うのでございます。  それならば、この問題は十日に延ばしまして、第二には、長官にお願いいたしますが、国立病院に入院させるように段取りがしてある、こういうお話でございますが、病院におられますところの期間はどれだけが限度になつておりますでございましよか。
  70. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 病気になりまして病院に入院いたしましたならば、病気がなおるまで病院におるわけであります。ただ、経費の負担は、これは別問題でございまして、従来は、未復員者、特別未還者につきましては、援護庁経費の負担をいたしておるのでございます。その他の者につきましては、従来は経費の負担をいたしておらないのですが、今回は、一応現在のところ十日間は援護庁で負担するということにいたしております。その後につきましては、一般の例によるということ以外には方法はなかろうと思います。
  71. 中山マサ

    ○中山(マ)委員 一般の例と申しますと、私がお迎えに行つたときには、ずいぶんひどい病気で帰つて来た人のあつたことを覚えております。その際、これは復員軍人ですが、置いてもらう期間についていろいろ陳情を受けたことがございます。十日間と限られて、もしそのあとの支払いをするといたしましたならば、二万円までのもらつたお金でしなければならないということになるわけでございますね。
  72. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 一応そういうことになります。
  73. 中山マサ

    ○中山(マ)委員 そして、もし非常な病気で、またその中から生活をしなければならないということで、その金が尽きて、病気がなおらないということになつたら、それはどういう方法でお助けたいだけるのでしようか。
  74. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 わが国には、御承知通りに、生活保護法というものがございます。いかなる場合におきましても、最後の手段としては生活保護法というものがございます。
  75. 中山マサ

    ○中山(マ)委員 それでは、第三といたしまして、更生資金貸付に二億という金がとつてございますが、一人の人に出せる最高の金額は、やはり普通の国民金融公庫と同じように二万円まででございますか。
  76. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 これは、一人につきましては、現在のところは三万円でございます。今度につきましては、われわれとしては五万円に上げていただきたいと思つております。
  77. 中山マサ

    ○中山(マ)委員 そうすると、普通の国民金融公庫とは大分額が違うのでございますね。これに限つて三万円ということになつておるのでございますか。
  78. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 これは更生資金でございます。従来から更生資金は三万円となつております。
  79. 中山マサ

    ○中山(マ)委員 わかりました。  文部省のお方にお尋ねをしたいと思いますが、教育の問題について、あちらに長く住みついておつた子供たちが帰つて参りまして、もし国語を知らない子供たちであつたならば、こういう人たちに対する対策はどういうふうになさおつもりでございましようか。
  80. 大田周夫

    ○大田説明員 お答え申し上げます。私どもは、多分中国でも日本語を勉強して帰つてくださると考えておりますが、日本語を勉強していない児童、生徒がありました場合には、各府県で特設学級を設けて、特別に国語の教育をしなければいけない、かように考えております。
  81. 中山マサ

    ○中山(マ)委員 日本国内に成人講座というのがあるようでございますが、長く海外におつて今の日本の民主主義というものに対する十分の理解のない人たちに対しても、やはり特殊な成人講座をお設けになるお考えはないでございましようか。国民の中に吸収してしまうという立場から、そういうものを設けていただけますでしようか。
  82. 大田周夫

    ○大田説明員 社会教育といたしまして、成人講座あるいは成年学級、そういうものを設けておりますので、必要がございましたならば、——特に今回の引揚げ方々に対しては、おそらくそういう施設が設けられるのではないかと思います。私は、学校教育の方を担当しておりますので、社会教育につきましては詳しくは存じません。
  83. 中山マサ

    ○中山(マ)委員 労働省の方にお尋ねいたします。就職については、先ほど長官のお言葉では、各都道府県にこれを委嘱するというお話でございましたが、私どもが見ておりますところでは、安定所であろうが、職業紹介所であろうが、門前市をなしておるようなただいまの世相でございますが、そういうふうな大まかな計画で、三万という人が帰つて来るときに、これに対処できるものでございましようか。あまりこれは気楽なものの考え方ではないでしようか。帰つて来た人たちに、帰つて来るのではなかつた中共におつた方が生活の安定ができておつたのだというようなことを私は思わせたくないという立場から、これに対してもつと懇切な御説明が願わしいと思うのでございます。
  84. 富山次郎

    ○富山説明員 三万人帰るという話は一応聞いておりますが、この中には、むろん家構成上いろいろありましようが、三万人が三万人全部一斉に職につかなければならないものではないと考えております。従来の引揚げの際には、安定所の方でお世話申しましたのは二三%くらいでございます。それを今度はもう少し大きく考えて、かりに五〇%と考えても、一万五千人でございます。これはまつたく推測にすぎませんけれども、引揚げられておちつき先におちつかれてから職業の問題がいよいよ問題になるわけでございましようが、今職業安定所は、出張所を含めて、全国には約五百二十ほどございますので、かりに五百としても、一所当り平均三十人でございます。お話通り、目下安定所にはたくさんの人が参つておりますけれども、安定所の年間就職させ得た数は、二十六年度で大体百三十万人であります。むろん求職者の方は四百万を越えておりますけれども、少くとも年間百三十万人をあつせんし得る力がございまして、私どもの方では、この際全力をあげて最も手厚い取扱いをいたしたいと考えております。私どもの方からとりあえず出した通達をちよつと御披露いたしますると、引揚げ予定の港である舞鶴には、係官が駐在いたしまして、職業相談をする施設を設けてございます。その際は、引揚げ直後でございますので、それぞれおちつき先に帰ることになりますが、安定所の機能、使命、またどういうところに安定所があるのか、それから現在の労働事情というふうなことについてお話をいたしておきたい。それから、おちつき先に帰られますには、県の世話課の方を経由いたしますので、世話課の方で、いろいろ職業上必要な資料と申しますか、職歴であるとか、経験であるとか、年齢などはもちろんでありますが、そういうものの調べをしていただいて、県労働部の職業安定課を通じて県下の安定所の方に名簿をまわすことになります。むろん引揚者の中には、縁故者であるとか、友人であるとか、その他知己のお世話によつて職にありつく人もできると思いますけれども、しかし何の縁故もない方々は、安定所の方においでを願えば、十分な御相談を申し上げる。その際にも、われわれの方では、所長みずから会つて十分な相談をし、求人開拓等も力を入れてやる。そういうふうな措置をするように、実は通達を発しておりまして、できるだけ十分な力を注いで行きたいと考ております。
  85. 中山マサ

    ○中山(マ)委員 これは、新聞紙上で見ておることでございまして、真実かどうか、私も知りませんが、帰つて来る人々をめぐりまして、左傾のある団体等が非常な活動を始めておる、帰つて来た人たちを中心にして何かの動きをするのではなかろうか、思想攻勢に出るのではなかろうかというような報道がございますが、これに対処するに、長官はどういうふうな御計画を持つていらつしやいますか。もしあなたの係でございませんならば、思想関係の方から、こういう動きに対して、治安上と申しましようか、どういうことを考えていらつしやるか、承つておきたいと思います。
  86. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 ただいまの問題につきましては、あるいはほかの方では別の考えがあるかもしれませんが、引揚援護庁として考えておりますことは、今度の問題につきましては、すべて虚心坦懐に、あたたかい手で迎え受ける、これによつて皆様方の生活の御安定を願うというのが趣旨でございます。従いまして、援護庁の関係いたしております限りにおきましては、それらの諸問題については、まつたく考慮しないつもりでおります。あるいは他の方面からは別の考え方があるかもしれませんが、少くとも援護庁が手を触れております範囲におきましては、そういうことは全然いたさないつもりであります。
  87. 玉置信一

    玉置委員 ただいま中山委員の御質問に対して政府委員から御答弁がありましたについて、関連して重ねてお伺いしたいと思います。就職の問題でありますが、援護庁長官のただいまの御答弁は、私の午前中の質問のときに続いて伺いましたどなたでありましたかの質問にお答えになつたのと同じであります。そこで、就職する立場の者とは別に、雇う側の立場を考えますと、今年の大学卒業生の中でも、左翼的な運動をした学生の採用は拒否するというようなことが現われて参りました。従つて、左傾思想を持つておる者の就職はきわめて困難であることは御承知通りでありますが、こうした思想関係に基因して就職ができない者に就職をさせて、完全に生活を安定せしめる対策について、労働省の方ではどういうお考えを持つておられますか、お伺いしたいと思います。
  88. 富山次郎

    ○富山説明員 職業紹介については、いろいろな要素がございますが、職業安定機関として建前といたしますところは、あくまでも求人者の要求している作業、仕事に合う能力を持つている人を適材適所としてあつせんすることでございます。従いまして、その者がどういう思想を持つているか、あるいはどういう考えを持つているか、それだけによつて取扱いに差別はしないのが建前でございます。しかし、雇用主側といたしますれば、そういう明らかに自分らにとつておもしろくない者についこの雇用は差控えるでありましようけれども、従来の例から見ましても、短期間にわれわれ国民全体の中に同化いたしまして、そのようなおそれのなくなつた例もたくさんございますので、安定所といたしましては、そういう面で雇用主に対する理解を求めながら、なおかつ、その者が最も適材であるという資料を整えて、いろいろあつせんに努力したいと考えております。
  89. 玉置信一

    玉置委員 理論上は、なるほど一応納得できますが、現実の問題としては、私は今日の引揚者には相当心配になる点があると思うのです。そこで、最低生活は申すまでもなく憲法に保障されておりますが、しかし、思想関係において雇用者側がこれを拒否することによつて、相当期間職につけない者があるとするならば、その人の生活問題が、これまた社会的にかなり問題になつて来るのではないかと思います。そういう場合には、生活保護法等によつて生活を保護するという道もないではありませんが、これは仮定の問題でお聞きするということはどうかと思いますけれども、しかし私は、おそらくそういうことが想像されると思うのでありまして、そういう場合のことを重ねてもう一度お答えを願つておきたいと思います。
  90. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 いろいろな場合を想定いたしますれば、いろいろな事情が出て来るだろうと思います。おそらく労働省といたしましても、われわれの方におきましても、思想の問題等をもとにして、思想がどうであるからということによりまして、いろいろな取扱い上の差別を設けないというのが、われわれの立場でございます。従いまして、ただいまのお話のような場合におきましても、できる限り国民全体の御理解を願いまして、これらにつきまして善処する以外には方法はないのであります。特に御指摘のような問題につきましては、特殊な国家に入つておりまして、長年おられた関係上、そういう見方をされるような方もあるわけであります。そういう特殊な状況下に長年おられたという事情を考慮されまして、国民の方々皆さんがあたたかくお迎え願うことにしていただくようにお願いしてやる以外にはない。これらの御理解を願う以外には方法はなかろうと思います。もちろん、わが国におきましては、先ほど御指摘がありましたように、最後の生活の維持は生活保護法がいたすのであります。この場合におきましても、働けるにもかかわらず働かないのでしたらいけませんけれども、働き得るにもかかわらず働けない場合は、やはり生活保護法が最低の線としてございます。従いまして、あくまで最後の線が維持されないということではないわけでございますが、それにいたしましても、とにかく働けないという状態はよくない状態でございますので、われわれといたしましては、労働省と協力をいたしまして、できるだけの努力をいたしたいと思つております。
  91. 中山マサ

    ○中山(マ)委員 それでは、私の質問をこれで打切ります。
  92. 佐藤洋之助

    佐藤委員長 この際申し上げます。外務省アジア局第五課長から、三時半よりやむなき所用のために退席いたしたいとの申出がございますので、旅券問題等は外務大臣の出席のときに譲りまして、本日は特に受入れ態勢中心としての御質疑以外は保留いたしたいと思いますので、さよう御了承をお願いいたします。次に臼井莊一君。
  93. 臼井莊一

    ○臼井委員 引揚げ援護につきましては、長官お話で、大体整つているように伺うのでありますが、ただ、先ほどどなたからもお話がありましたが、上つて一番最初の印象が大事であると思う。ところが、過去において、せつかく持つて来た品物が、物件等を検査される間においてなくなつたというようなことを聞いているのです。これは何か衣服であつたそうでありますが、非常にがつかりした、こういう事例を聞いたのであります。現在は、以前と違つて衣料品等がそう不自由でありませんから、そういう心配がないかとも思うのですが、それがどういうふうな経路でなくなつたのか知りませんが、何か検査されている間においてなくなつてしまつた。ひとつそういうことのないようにお願いしたいと思います。  もう一つは、所持品について、たとえば貴金属等を持つて来た場合、それも量が多いというような場合、そういう場合に対しての処理をどういうふうになさるのかということを、ちよつとお伺いしたいと思います。
  94. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 後段の方は、大蔵省の方が見えておりますから、その方からお願いすることにいたします。  たしかに、御説の通り、第一印象が悪いということは、はなはだよろしくないのであります。特にわれわれとしまして非常に気にいたしておりますことは、舞鶴援護局にいたしましても、引揚げ仕事に多年習熟いたしておりまするので、そのなれによりまして、仕事が機械的に流れて、あたたかみがなくなるという点を非常に危惧いたしております。なれておりますから、仕事の運びは順調に行くと考えておりますけれども、あたたかい気持をこめて仕事をしなければならぬというふうに考えておる次第でございます。この点につきましては、現在の状況からいたしまして、われわれとしましては最も心しなければならぬことと考えております。御指摘の点はまことにごもつともでございまして、できるだけそういうふうな趣旨に運びまするように努力いたしたいと思つております。近く次長を現地に派遣いたしまして、その点につきましては十分に徹底するようにいたしたいと思います。なお、私もできるだけ早い機会に参りまして、その点につきましての職員の心構えにつきまして、十分に徹底するようにいたしたい、かように考えております。
  95. 松本茂

    ○松本説明員 貴金属の点について御返答申し上げます。身辺装飾品と考えられる貴金属でございまして、しかもそれが携帯品であると考えられる範囲  のものでありますれば、携帯品の申告書を税関に呈出していただきますれば、免税で通過いたすことになつております。分量が非常に多くて、携帯品と認められないような程度のものにつきましては、課税ということになつて参ります。それから、身辺装飾品以外の貴金属の点につきましては、大蔵大臣に許可の申請をしていただきまして、それに対して大蔵大臣が許可を与えるということになつております。
  96. 臼井莊一

    ○臼井委員 就職の点について、私の伺いたいことを、ただいま玉置委員からもお話があつたのでありますが、これは一番問題になると思うのです。やはり永年中共地区あるいはソ連等におられたという関係上、思想的な面で雇用主の方で躊躇される、そういう不安が相当あるのでございます。ただいま伺うと、国民の理解によつてということですが、ただそればかりにたよつておるということはどうかと思う。そこで、確実であると認められる者に対しては、何らかの機関で信用保証と申しましようか、ある程度の身元引受というか、そういうことでもできないものか。縁故があつて、家庭やなんかのしつかりした人があればいいのですが、そうでない人に対しては、これは政府でするということはできないでしようけどれも、何かの機関でそういうようなことでもできれば、雇用主の方でも安心して、就職の率もある程度よくなるのじやなるのじやないか、こう思うのでございますが、何かそんなお考えはないのでございましようか。その点労働省方面の方にお伺いしたいと思います。
  97. 富山次郎

    ○富山説明員 今のお話、非常にけつこうなようにも思いますけれども、そういう身元の保証というか、思想の保証をするところがはたしてどこにありますか、私どもちよつと考えつかないのでございますが、安定機関といたしましては、身元保証であるとか、あるいはその他のいろいろな保障いうことは実はしておらないのであります。これはあくまでも仕事の要求する職種、それに対する最も適材という意味の紹介でございまして、そういうふうな調査であるとかいうことは雇用主側の方でやるというふうな建前にいたしております。今回の場合におきましては、そういうような危惧があろうとも思われますが、できるだけ安定所の方で、その本人とじつくりお話合いをして、そうして個人々々についての理解といいますか、そういうものを雇用主側の方によく話をするというふうなことしか、実は特段な名案というのはないのじやないか、こんなふうに考えております。
  98. 臼井莊一

    ○臼井委員 私が思想上に関して言つたから、思想のみにとらわれたというふうに考えられるのですが、引揚げて来て、思想上だけでなく、ほかでも損をする。普通の場合であれば、たとえば保証金を入れるとか、保証人を立てるとか、そういう方法もあるのでありましようが、そういう方法もなくて、気の毒である。そういう人も救い得ることができるならば、個人の身元保証にかわつてそういう保証をできるような機関をつくるということも、ひとつ将来お考えのうちに置いていただきたい、かように考えます。  それから、もう一つ、住宅の問題ですが、住宅の問題についても、先ほどお伺いしますと、公営住宅等については、条件さえかなつておれば優先的にお扱い願えるわけなのでありましようが、なお、多少の親戚等の援助があれば、そこにもう一歩進んで、住宅金融公庫あたりで、住宅の建築に対して優先的にこれを取扱う、こういう方法もお考えであるかどうか、それをちよつとお伺いいたしたいのです。
  99. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 住宅金融公庫の方の点については、従来までいろいろ話合いをいたしこことはございません。ただ、先ほど申し上げました通りに、援護庁といたしましては、どうしても、いろいろな方法を講じましても、住宅の手に入らない、しかもおるところがないという人々に対しましては、引揚者住宅を建築して、これに入られるようにいたしたいと思つております。従いまして、最後の方法は持つておりまして、これもその数は三千戸ばかり持つておるわけでございます。今回の引揚げの総数から見まして、従来の事例から考えますれば、何とかなるのじやないかと思います。もちろんこれは、実際にいろいろ調べました結果、やはりどうしても足りないということになりますれば、これに対する追つての処置は講じなければならぬと考えております。
  100. 臼井莊一

    ○臼井委員 なお、就職と同じような意味で耕地の開拓、そういう場合にも、農業につきたいという人に対しては、できるだけ便宜な処理をするように、おとりはからいをお願いしたい。長官の方からよろしくその点をお願いしたいということを希望に申し述べておきます。  もう一つ、今度の派遣してある使節団ございますか、交渉団でございますか、これとの連絡でありますが、これは中共の方の赤十字からこちらの赤十字を通して来たようでありますが、連絡は、やはりすべて政府と派遣団との直接の連絡でやつておりますか、それとも一々赤十字の方を通じておるのでございますか、その点をちよつとお伺いしたいのです。
  101. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 私どもとしましては、直接連絡がありますれば、直接返事をいたしてもよかろうかと思いますが、ただ現在のところでは、先方から、こちらの赤十字に置いてあります。るところの三団体の集まりました事務所に連絡がありまして、そこからこちらに連絡が参つております。いずれにしましても、通信上の連絡でございますので、どちらからでありましても、返事をすることにはさしつかえございません。
  102. 臼井莊一

    ○臼井委員 最後にもう一つ。これも希望のようなことになりますが、先ほど伺うと、地方の世話課等の方にも適当な注意書き等は出ているようですが、どうも地方へ行きますと、ことに末端の方では、少し事がめんどうになると、とりはからいができないで、わからぬ、こういうような点が多々あるのでございまして、責任をほかの方へまわしてしまうというようなきらいがあるので、この点、現在の引揚援護庁の職務の範囲がどの程度であるか、地方の方へ引渡してしまえばあとは地方のままということになるのか、あるいは、何らかの問題について、その後においてもさらに援護庁の方でごめんどうを見るお考えであるのか、その連絡等のことについて万全を期せられるようにひとつお願いしたいとともに、その範囲のけじめでございますが、その点をちよつと最後にお伺いして、参考にしたいと思います。
  103. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 官制と申しますか、法律上の立場から申しますと、引揚援護庁は、受入れましてから定着させるまでのことがその本来の仕事でございます。定着後の援護といたしましては、従来やつておりまするのは、住宅と、資金の融通ということだけでございます。規則の上から言いますとそうでございますが、援護庁としては、援護庁が存続する限りにおきましては、できるだけ各省と連絡をとりまして、最後までごめんどうを見るように努力いたしたいと思います。
  104. 臼井莊一

    ○臼井委員 以上で私の質問を終ります。
  105. 佐藤洋之助

    佐藤委員長 堤ツルヨ君
  106. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 私は、わが党からの質問として、外務当局に、旅券交付並びに十二月一日以後の派遣団を派遣されるに至るまでの経過の問題に関して、多分に聞きたいところがございますけれども、外務省の方はきようはお見えになつておらぬのでございますから、わが党の方の質問を保留いたしまして、ぜひこれを次回まで残していただきたいということを委員長に申し上げたいと思います。  そこで私は、援護庁長官にお尋ねしたいのでございますが、二十八年度予算を見ましても、また本日の長官の御報告を聞きましても、予想される三万人のうち四千人が今年度内に帰るであろうという想定のもとは予算を立てて、いろいろと計画をしておられるようでございますが、やがて雪解けも参りますし、本年度四千人と踏んで、来年度二万六千人と踏まれたその基礎がどこにあるか、非常にこれは了解に苦しむのです。なぜならば、三万人帰れるという想定を持つております私たちは、できるだけ早く数多くの人たちを迎えたいのであります。しかるに、政府の方が本年度予算の中に四千人と区切つてしまつて、四千人まず受入れ態勢を整えておるということが海を越えて向うに聞えるといたしますならば、これが与える影響も考えなければならぬ。なぜこういうことを四千人と限られたのか、ひとつこの辺をはつきりしていただきたい。
  107. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 予算というものは、一応予定を立てましてやるものであります。従いまして、それは、今年度中に三万人帰るというので、三万人の予算を組んでもよいかもしれませんけれども、三万人分いらなかつた場合には、もしその三万人を予定した金をほかにもつと有効に使える場合には、その方がいいのじやないか。あるいはそのために一人当りの単価が非常に少くなりまして、結局財源がないために受入れが手薄くなるというようなことになりましても、はなはだ申訳ないのであります。従いまして、予算というものは、やはり一応見通しを立ててやるのが至当じやなかろうかと思います。なぜ四千人にしたか、これは、一応現在の段階で考えますれば、四千人は帰るだろう、あるいはそれ以上になることは相当困難ではなかろうかという情勢でございまするので、一応そういうことにしたのでありますが、その情勢が、われわれの予想したよりも非常によくなつて、たくさん帰るというような情勢になつて参りましたならば、それに対しまする準備はいつでもできるように、財政当局とは連絡をとつております。
  108. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 大体了承いたしますが、これを一万五千人くらい予想されたところで、決して金はただになつてしまうわけでもなし、もう少し、せめて半数くらいを本年度予算の中に見込んで、日本政府は半分くらいは帰る予定をしておるということを海外に表明する一つの具体的な方法として、お現わしになつてもよかつたのではないか、この辺に非常に消極的な面が現われているというような感がいたしますから、その辺をひとつお含み願つて、今後考えてもらいたい。  それから、次にお尋ねいたしたいのは、たとえば島津団長、それから高良とみ女史などが、新聞記者の方々に、帰つて来る人々はどういう順番で帰つて来るだろうかというような予想を聞かれておりましたときに、高良さんは、特に女であるとか、病人であるとか、子供であるとか、とにかく向うにおつて困るような弱い人々を先に連れて帰るというような話をしておいでになりましたが、これは私たちも当然だと考えます。そう考えて参りますときに、このたびの引揚者の中には、少くとも女性が多くいらつしやる、それから、これに連れられた子供が多いということは、当然私たちが考えなければならないことだと思うのでございます。しかも、国家の犠牲になられましたこうした引揚げていらつしやる方々に、こういう言葉を申し上げるのはいかがかと思いますけれども、生活のために、生きんがために、やむなくあちらのいわゆる満妾となり満妻となられた方が、このたび機会を得て、そして自分の産んだ子供を連れて帰りたいというようなことになつて、今度お帰りになられましたならば、舞鶴の港に着かれましたとたんに、非常に深刻な社会問題が生れるのではないか、私はかように考えるわけでございます。かつての引揚げは、私たちも迎えに参りましたが、達者なひとり身の男の方々が圧倒的に多うございましたけれども、今度は、半数以上こうした問題を生む人たちがお入りになつていらつしやるという点で、相当考えなければならないと思うのでございますが、この点について政府はどういうふうにお考えになつておるか。私などが、ことに女性の立場から考えますときに、大きくなつ子供を連れ、そして不仕合せにも、こちらの祖国であるところの日本には前の御主人がいらつしやるというような悲劇の持主もおいでになるでありましようし、こうなつて参りますと、法的解決だとか具体的ないろいろなあつせんだとかいう問題も起つて参りますので、私は、この点は政府の方で非常にお考え願わなければならないのではないか、かように存ずるわけでございますが、こうした問題を御想像になつて、何か具体的な手をお打ちになつているかどうか、また考えていらつしやるか、この点政府の心構えを伺つておきたいと思います。
  109. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 どういう順番で帰つて来るかという問題につきましては、いろいろな予想は立つだろうと思います。こちらからの希望といたしましては、そういう特に困つておられる方に先に帰つてもらうのがいいというのは当然だろうと思います。しかし、送り出す方の都合から申しますと、必ずしもそうなるかどうか、これはわからない。従つて、どういうような帰り方をするかということにつきまして、現在予測いたしますことは、これは予測する方が無理だし、そのことを代表者にお聞きになることもちよつと無理じやないか、それに対してお答えになるのもどうかと思います。この問題につきましては、とにかく皆さんがお帰りになることが望ましい。皆様ができるだけ早い機会にお帰りになれるという方法で帰つていただくようにいたしたいと思います。  今回の引揚げは、従来とは違いまして、婦人、子供方々が非常に多い、またそれらの状態の中にはいろいろと問題を含むものがあるということは、われわれも今度の引揚げが始まるにつきまして十分に考慮いたしております。従いまして、今回引揚げをいたします人の問題にいたしましても、これらの方々が帰られるようにということにつきまして考慮を払つておるのでございます。孤児の方や未亡人の方々等の引揚げにつきまして、こういう者がたくさん入つておるというような予想から、引揚船の中におきましても、引揚船の中に入つてお世話をする人の数等につきまして、従来よりは割合を多くいたしまして、十分船の中でも手厚いごめんどうを見ることができるようにいたし、ことに第一船につきましては、その点について特別の考慮を払う。これは先ほど申し上げたのでありますが、そういうような措置をいたしたのであります。  なお、舞鶴施設についても、これらに応ずるように子供さんたちの世話をすることができるように、一応そのつもりでおるのでございます。また、引揚げられました後におきましても、孤児、未亡人あるいは未亡人についておられる子供さん方、こういうような方方につきましては、当省においても、児童局においてこれに対する福祉措置を十分講ずるということにいたしております。先般国会の御配慮によつてできました法律によりましても、これらの点についての格段の援護措置明年度からできるように相なつております。それらの点を十分活用いたしまして、お帰りになりました方々に、従来よりもできるだけ手厚い措置ができるようにするつもりであります。
  110. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 私のただいまの質問に対しまして、援護庁長官の答弁は要領を得ませんが、こいねがわくは、法務省の方からも、窓口を舞鶴の上陸地に派遣されるのでございますから、本人の身になつて御指導をいただけるような方、また解決に御尽力していただけるような係の方を派遣されて、非常に困られる方々を守つていただきたい。特に、私などがこの前、引揚げられておられました女の方と、いろいろと舞鶴病院などでお会いして話を伺つてみますと、国元へも帰るに帰れない、それから性病を持つておいでになる、それから子供がおる、いろいろの問題がからんでおりまして、とつとと帰りなさいということはどうしても言えないというような悲劇が相当あつたのでございます。ましてや、今回はなお数が多く予想されるのでございますから、でき得るならば、こうした人たちの特定の保護施設舞鶴にお設けになるのが当然ではないかと私は思う。そうして法的措置なり具体的な措置ができるのを待つて社会人として送り出すというあたたかい志が必ず援護庁にあつて、別に法務御当局と御相談になりまして、この点をよろしくお願いしたいと思います。  それから、次にお尋ねいたしたいのは、先ほど中山委員の質問に対しまして、二万円がなくなつてしまつて困られた方のあと生活の問題はどうするかという問題に対しまして、木村援護庁長官は、日本にはまことにありがたいことには生活保護法というものがあつて、これの恩典に浴するのであるから心配はいらないという、実に御名答があつたのであります。しかし、私どもは国会で二百四十四億の今年の生活保護法の予算案と取組み、いろいろな地方の事情も知つておりますが、その結果によりますれば、生活保護法の恩典に浴したいけれども、どうしても国の予算がなくて浴せないという、いわゆるボーダー・ラインの方々が、二倍半ないし三倍はあると見られておるのでございます。こうした生活困窮者、ほんとうに生活保護法すれすれの方々がたくさんおいでになつて、救えないで困つている。生活保護を一口でも減らしたい厚生省が、多くの引揚者受入れて、おいそれと生活保護法の適用を受けさせるようなわけがあるかどうか、はなはだ疑問でございます。私は、木村援護庁長官がこうしたお答えをずばりとなさるためには、少くとも生活保護法の予算の中に、引揚げて来た人々を対象としての別わくが設けられてあるのならいざ知らず、それもないのに、国内の現状さえも救えないということを援護庁長官は厚生省の近くにいて十分御存じのはずなのに、そうしたことをお考えになるのは、私は非常に無責任だと思うのですが、どうです。あなたは、そういうことをお答えになる以上は、引揚げて来た人々のために、生活保護の別わくを、更生資金を二億こしらえてあるのと同じように、おとりにならなければ、中山委員に対してこういう御答弁はなされないはずです。これは、私はこの際はつきりしておきたい。あなたは自信がございますか。生活問題が一番大切ですよ。あの人たちに職を与え、生活を与えなかつたならば、母国何ものぞということになつてしまつて、吉田さんの一番きらいな共産党の温床になつてしまう。その大切な問題を、ここに金を持つていないで、生活保護法がございますと、手放しで言つて、ここへ厚生大臣を呼んで来ても、あなたは自信がありますか。私は、木村援護庁長官は非常に無責任だと思います。自信を持つておいでになりますか。それをひとつお答え願いたい。
  111. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 堤先生のお言葉とも思えない言葉でございます。生活保護法は、御承知通りに、現在の基準をもちまして、その基準以下の生活をしている人には、その基準までの生活をさせるようにいたしておるのでございます。もしその基準以下の生活をしている人を、基準までの生活をさせないという事実がございましたならば、これは社会局において生活保護法の適用を誤つたのです。金が足りないからというので、その基準以下の人をほつておくということは、現在の生活保護法でできないのです。もちろん、現在その基準すれすれの人はたくさんございます。しかし、基準すれすれの人は基準以下の人ではないのであります。その最後の基準がいいか悪いかということは別問題です。もし基準が悪ければ、その基準を上げることに努力しなければならない。その基準を上げて、この基準が最低生活であるということであるならば、そこまでは生活保護は必ずしなければならない。現在、日本におきまして、すべての人に対してその基準の最後の線が守られているという状態でありますから、悪いとおつしやれば、これは、その基準をそのままにしておくことが悪いわけで、ぜひともその基準を上げなければならぬ。御承知通り明年度基準が若干上るようになつておるように聞いております。従いまして、これでもつて別わくをつくるつくらぬということは、これは、生活保護法の建前として、別わくをつくつてやるべきものではないのでありまして、足りなければ、あとから必要な額は出して行くというのが生活保護法の建前であります。しかも、この生活保護法の適用を受けるについて、自分はいやだから受けない、——これは、いやで受けずに済むならけつこうであります。あの生活保護法の基準では、低くていやだから、生活保護法を受けないと言う人は、まずなかろうと私は思つております。従いまして、われわれといたしましては、生活保護法の基準がもう少しでも上ることを望んでおりますけれども、少くとも日本国民全体として最低生活の問題について引いているところの生活保護法の線までは必ず確保できるということは、確信を持つております。
  112. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 最低限度の国民生活の保障という憲法第二十五条の精神は、少くとも生活保護法によつて守られなければならないことになつておりますけれども、具体的には守られておらないのが実態であるということを申し上げておるので、もう少しあなたは御研究になつていただきたい。少くとも、良心的な援護庁長官であるならば、生活保護法の二百四十四億をたとい一億でもふやしてもらつて、引揚者受入れ態勢を整えられるべきが理の当然であるということを申し上げておるのであります。  次にお伺いいたしたいのは、運輸省の方も見えているようでございますが、今まで引揚げて参りました人たちをふるさとへ送るについての列車編成の問題は、私たち舞鶴の駅に参りまして、非常にこれは陳情を受けたのでございますが、列車編成についての費用であるとか、人員の割増しであるとかいうものは、今まではやつておらないのであります。従つて、舞鶴から京都の駅までの間ですが、東海道線その他あらゆる線にわかれて行きます人たちを、一列車十三両つないで、これを送つて行く専務車掌と申しますか、車掌さんと申しますか、こういう人が、一人で中でじたばたやつているような実態も見たのでございますが、このたびの予算の中には、そうした列車編成についてのわくがつくられておらないのか、今までの前例にかんがみて今度はつくられてあるのか、これは援護庁長官と運輸省当局との両方からひとつ承つておきたいと思います。
  113. 豊藏亨

    豊藏説明員 今回の引揚げにつきましては、先ほどお話がありましたように、婦女子並びに病人の方がかなり多いだろうと予想される点が、輸送上におきましての一つのかわつた点でございます。次に考えられますことは、従来のソ連からの引揚げと違いまして、できるだけ荷物を持つて来るというようなことで、荷物が多いだろう、従つて、純粋の旅客列車だけではいけないので、あるいは臨時の貨物列車を入れるとか、あるいは特別に貨車を編入して、一般の定期列車で貨物輸送をやるということが、今度の輸送上の観点からかわつている点と予想されます。それからその次には、ちようど今度の引揚げ輸送が、たまたま国内的に多客期にぶつかる。こういう三つの、従来とかわりました点がございますが、私の方といたしましては、まだ方面別の人員も全然見当がついておりません。しかしながら、昨年の閣議決定の線もございますので、できるだけ計画輸送するということで、大体東海道並びに山陽、九州、それから舞鶴・東舞鶴・京都、この間につきましては、臨時列車を編成するために、今ダイヤを組んでおります。従つて、三月の十五日に主として山陽線につきまして大幅な時刻改正が行われますけれども、三月十五日までに船がこちらへ上つて来る場合につきましても、ダイヤを組むことができるように、二月十五日に、こまかいダイヤの編成について打合せをすることいたしております。なお、三月十五日以降については、その後具体的にダイヤの編成にかかるつもりでございます。それからなお、ただいまお話になりました点につきましては、今申し上げましたように、婦女子並びに病人の方がかなり多いと思われますので、輸送上の問題といたしましても、これまでのように定員ぎりぎりの輸送ということは非常に困難であろうと思います。その点は、輸送上の手配につきまして、客車の増結あるいは客車の編成両数、そういう問題について、かなり弾力性を持たす必要があるのではないかと思つております。  それから、ただいまお話の車掌の問題でありますが、私も具体的に事例をよく承知しておりませんが、そういう場合には、臨時的な手配といたしまして、車掌を二人乗務させるということもできるのでありまして、こういう問題につきましては、現地において、そのときどきの輸送状況を勘案して手配をしてもらつたらいいのではないかと考えております。
  114. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 いずれ私たちも舞鶴の方へ参りますから、舞鶴の駅長などにも事情を聞いてみたいと思いますが、今までの駅長なり国鉄の従業員の報告では、何ら中央から御処置を願えないで、無理してやつて来たというのが実態であつたと思いますので、ひとつ、ここでお話になりました通り下部に御配慮方を願いたいと思います。  次に、労働省に対してでございます。これは中山先生もよく御存じでございますが、今までは労働省が職安の窓口をあそこにお出しになつて、就職の相談に応じ、補導あつせんに応じられておつたのでございますが、当時あそこに参つておられた新聞記者の方々は、あそこをどう言つておられたかと申しますと、不就職宣言窓口と、こう言つておられた。それはどういうことかと申しますと、あなた方が御派遣になつ職員方々相談に応じられます。一人の復員者が、一体どの辺に行つたら職がありそうですか、こういう御相談をなさる。私は次男ですから、いなかへ帰つてもたんぼがあるわけじやなし、ひとつ大都市に出て働きたいと思いますがと出られますと、今もう六大都市などは職業安定所の窓口などは行列になつておるのだから、六大都市はあきません、 それじやたんぼに帰つてもだめだといつたわけで、とにかく、帰つて来た人たちは、不就職を宣言される窓口であると烙印を押しておつたくらい名誉ある窓口である。形ばかりの窓口を置いて、今二三%やつたとおつしやるけれども、少し奇跡的な数字じやないかと思つて私は拝聴しておつたのですが、私は、ああいう冷淡な窓口でなしに、今申しましたように、最低生活の安定ということと、この人たちに職を持つてもらうということは、非常に大切なことでございまして、もしもわが党が天下をとつておりましたならば、おそらくこれは良心的に、強制雇用制度を単独立法によつてやるだろうと思うのですが、(笑声)吉田内閣のもとにおいては、そこまで期せません。(発言する者あり)そこで、なんとかして、この人たちを強制的にどこかの就職口が受入れてくれるようなところまで、——これは社会の通念としてもそうあるべきでありますし、また労働省自体としても御努力なさるべきであろうと私は思うのでございますが、就職の窓口は、——自由党の方々はお騒ぎになつておりますけれども、これは非常に問題であります。従つて、労働省方々は、職をお求めになるならば国のどこどこにどういう仕事がある、これでもよろしければ、これなら何人まで要求に応じますという、具体的なものをひつさげて舞鶴にいらつしやらなければ、前のような不就職宣言窓口ではどうにもならないと思うのですが、こういうことをどういうふうにお考えになつておりますか。
  115. 富山次郎

    ○富山説明員 今のお話、その通りでありまして、非常に遺憾で、今後は十分気をつけてお話合いをしたいと思います。なお、やり方といたしては、引揚げられた方がおちつき先におちつかない間に、舞鶴で具体的な職業相談をするということは、必ずしも適当ではないと思います。従いまして、ではあくまで、一旦おちつき先へ帰られてから安定所を利用する場合についての予備的な知識と申しますか、そういうものをお話する。むろんその月々の求人数等はありますけれども、しかし非常にこれはまた尨大なものでありますので、一々そこで申し上げることもどうかと思いますので、従いまして、引揚地の舞鶴では、今申した通りあとあとでの職業相談をする際の予備的な知識、こういうことを中心としてお話をするのであります、その話し方が、今お話のようなことでありますと、これはまことに遺憾でありますので、十分気をつけてやるつもりであります。
  116. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 私が労働省に望むものは、それは窓口で直接お世話なさらなくても、まだ期間があるのですから、仕事をこしらえていただきたいということなんです。むずかしいことかもしれませんけれども、忌みきらいなさらなければ息をしている程度には仕事があるんだということを示さなければ、仕方がない。それは、各都道府県にわけて仕事をお示しになつてもよろしいし、どういう形でもけつこうでございます。私はそういう点を要望しているのですから、ひとつ今から努力していただきたい。
  117. 富山次郎

    ○富山説明員 お答えいたします。職業安定所は、仕事を自分でつくるところではないのでありまして、あくまでも、雇用主の側の求人の受付をいたしまして、それに対するあつせんでございます。われわれの方では、職業の求人口の傾向というものは随時各県並びにその方面に対して情報として流しておりますので、今どういうような産業がどの程度に求人をしているという最近の傾向、そういうものは十分お話ができると思います。
  118. 佐藤洋之助

    佐藤委員長 この際、武部英治君より関連質問の申出がありますから、これを許します、武部英治君。
  119. 武部英治

    ○武部委員 就職の点について、関連して質問申し上げたいと思います。今度の引揚げの中には、あるいは鉄道の経験のある人、あるいは電信、電話、郵政というふうな、いろいろ経験のある人があると思いますが、以前国有鉄道におりましたとか、あるいは当時の逓信省におりましたというふうな人たちについては、元のところへ復帰するということは当然であると思いますけれども、同時に、満鉄とか、あるいは中国の鉄道にいた、あるいは同じく向うの電々社にいたというような方もあるわけであります。これらの方々もくるめまして、こうした国の機関に従事していた人及びそれと同じ業務をやつていた人に対しましては、この際無条件で、鉄道経験者ならば国有鉄道へ入れる、電信、電話の経験者ならば電々公社へ入れる、あるいは郵政省へ入れる、専売公社へ入れる、また満洲国の官吏をやつていた人には、それぞれの専門に応じまして、あるいは農林省なり、あるいは警察部なり、それぞれへ入れるということは、最も至当だと思うのでありまして、政府はおきましては、就職につきましての受入れに国民全体の協力を仰ぐと言つておられますが、まず政府の諸機関が率先して入れるべきではないかと思うのであります。このためには、でき得べくんば、引揚港である舞鶴に、人事院なり、あるいは先ほど申しました鉄道、専売、電々等の公社の人事係の人が来られまして、履歴を調べられまして、そこで即決採用するというような方法をとつていただきたいと思うのでありますが、いかがですか。
  120. 富山次郎

    ○富山説明員 職業あつせんを受持つ私どもとしては、非常にけつこうなことであると思います。なお、帰りまして御相談をいたしたいと思います。
  121. 武部英治

    ○武部委員 御相談されるそうでありますが、実は私も昭和二十一年に台湾から引揚げて来た者でありまして、経験から申しまして、当時私、鉄道部におりまして、相当数の台湾鉄道の職員を国有鉄道へ採用してもらつたのであります。当時は、御承知のように、復員職員がたくさんおりまして、国有鉄道の職員が六十万というふうに非常に膨脹しておりまして、定員、経費の関係で非常に困難であつたにもかかわらず、当局は相当多数の者を入れたわけであります。最初に引揚げました朝鮮鉄道の人のごときは、ほとんど全部採用されました。台湾の方は、少し遅れまして、数が減りました。お気の毒なのは満鉄方面の方で、この方はほとんど採用されなかつたのであります。今度の場合は、当時と比較しまして数が非常に少いのであります。かりに鉄道なり、電々公社なりが受入れるとしましても、全体の数の膨脹にはなりませんので、特にこの点、私は政府の方として考慮していただきたいと思います。  それから、輸送につきまして、関連質問をちよつとしたいのですが、ただいま輸送につきまして万全を期するというお話がありました。これも、私の経験からいたしまして、大竹港に上陸いたしましたとき、特別列車の編成はございましたが、座席が足りなかつたのであります。そうして、当時の気風と申しますか、屈強な復員の軍人が一番先に乗車しまして、全部座席を占領いたしまして、私、台湾総督府関係の婦人、子供を指揮しておりましたが、それらの者はみな廊下に立つておるというようなありさまで米原あたりまで来た苦い経験を持つておるのであります。当時は、車両の関係もありまして、相当困難であつたろうと思いますが、今日は方々団体輸送もやつておるのでありますから、引揚げのためには優先的に車両を十分に与えていただきたい。ことに今度の場合は、出迎えにはるばる郷里から来ている人もあると思います。親子の情、夫婦の情ということを考えまして、出迎えに来た人も一緒に乗れるだけの座席は確保していただきたいと思うのであります。また荷物は多いだろうから別に貨車で送るというお話でありますが、これも、でき得べくんば小荷物車を増結されまして、一緒に運んでいただきたい。ほんとうに虎の子のようにして持つて来た荷物であります。皆さん方の目から見れば大した荷物じやないかもしれませんが、引揚げ民にとりましては命と頼む荷物でありますので、でき得べくんば一緒にこれを郷里まで持たしてやつていただきたい。ことに、私の経験からいいまして、当時荷物が大分紛失いたしました。鉄道当局にいろいろ交渉いたしましたが、なかなからちがあきません。万一そうした不幸な場合、すなわち荷物が紛失したというような場合には、鉄道当局としましても、すみやかに賠償するという特例をひとつ開いていただきたい。  以上で終ります。
  122. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 先ほど同僚の野澤委員から御発言がございました帰還手当の問題でございますが、いずれ、政府の方がこの船に乗り込まれて迎いに行かれましたならば、復員された方々が陸に上られるまでに、この帰還手当についての説明があるのだろうと思います。そして、先ほどのお話のようになつて参りますと、私がもし引揚者の一人ならば、靴下なりシヤツの下なりに、二万円なら二万円の金を隠しておいて、できるだけ手当をもらうようにすると思うのです。これはあさましいかもしれませんが、そういうことを考えましたときに、私は、政府帰還手当と銘打つて、一人当り一万円、子供に五千円というものを支給するというつもりになられたのでありますならば、もう少し志を伸ばされて、持つておろうと持つておるまいと、長年国家の犠牲になられて、外地でまことに御苦労さまでございましたという意味をも含めて、皆様に差上げるという建前をなぜとつてもらえないかということを、非常に残念に思うのでございますが、今からでもこれは決して遅くはないのでございまして、政府の方におかれましては、この帰還手当について、もう一度検討されまして、持つておろうがおるまいが、帰還手当を、おとなは一万円、子供は五千円、——額がそれだけ当らなければ、減らしてでもよろしいから、皆さんに渡されるというところの建前をひとつとつていただきたい。他の委員はどういうふうにお思いになつておるか知りませんが、私はそう強く要望しておきたいと思います。  それから、次は生業資金の問題でございますが、国民金融公庫の窓口というものは、女世帯や弱い老人世帯にとつてどんなものであつたかということは、私たちずいぶん経験いたしました。結局、屈強な、縁故を持つた男の世帯が中心に、国民金融公庫の窓口を独占してしまつた。従つて、書類の書けない、保証人のない女世帯や老人世帯は、子供をかかえて、この生業資金の恩典に浴せなかつたというのが、国民金融公庫の窓口の一番大きな欠点であつたのです。従つて、こういう欠陥を私たち見ましたからこそ、今度、自由党の吉田さんでさえも、この国民金融公庫に五億円の母子世帯への別口の窓口を明けて、母子世帯への貸出しをなさつておるのです。従つて、今度引揚げておいでになられます女子であるとか、書類になれない老人であるとか、また子供中心とした世帯などにおきましては、やはりこれまた二億のわくの中に食い込めるかどうかということは非常に疑問でございまして、実際に救つていただきたい人たちに生業資金がまわるかどうかと、私は憂慮するものでございまして、でき得るならば、援護庁長官は、この二億の窓口の中にも、やはり母子、老人、子供の世帯などに対するところの別口の窓口をおとりになつて、保護していただきたいと思うのでありますが、そういう処置を特にお考えになつておるかどうか、これをひとつ承つておきたいと思います。
  123. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 わくの中にまたわくをつくるということでございますが、わくの中にわくをつくつてうまく行くかどうかということにつきましては、相当問題があると思います。これが十億も五十億もあるというような大きなものでございましたならば別でございますが、わずか二億でございます。しかしながら、今度帰られます方々の中で、自分で仕事をされようとする方方の数、実際に向うにおられます人の実情等から考えてみまして、従来の引揚げから見ますと、今度のこのわくは割合に大きなわくでございます。もちろん、これでもつてあるいは不十分なりということはあるかもしれませんけれども、一応現在といたしましては、従来から比べますと、わくは割合に小さいのでございますけれども、ゆつくりしておる。帰る数が、昔何十万帰つたあの時代とは違いまして、全部帰つたとしても三万であります。そういうことでございますので、一応まずこれでもつて何とかできるのではないか。それから婦女子未亡人等でございまして、特殊な状況にあります方々でありますと、新しく皆様方の御心配でできました今度の母子福祉資金の方がむしろ有利なのではなかろうかというふうに考えます。それらとの条件の違いもございます。従いまして、そういう特殊の社会事業的な見地でもつてやられるものにつきましては、やはり母子福祉資金の方でやる方がいいじやないかということも考えられます。そういういろいろなことを勘案いたしまして、適当にやつて行かなければならぬじやないかと思うのでありますが、先ほど御指摘がありました、屈強な若い者が全部とつてしまうというお話でございましたけれども、国民金融公庫の取扱いは、それほど強い者におどされて出しておるのじやないのじやないかと私は思います。実は、私の知つております未亡人などの話を聞きましても、そちらでもお借りになつておるようでございます。別に屈強でもないし、つてもなしにやつておられる方もおるようであります。これらにつきましては、もともとが、どちらかと申しますれば、引揚者のためにできた更生資金ありますので、やはり事業の方に非常に熱意の強い方々がおとりになつたことも確かだとは思いますけれども、今後の措置におきまして、帰られました方方の中でそういう差別的な扱いを金融公庫がなさるとは、私は思つておりませんし、ほんとうに必要な部面におやりになるだろうと思います。またそのように私の方はお願いしようと思つております。  帰還手当につきましては、先ほど申しましたように、ちよつとこれは社会党の方の御意見としては——少くてもいいから一律というよりは、困つている人にたくさん上げる方が社会党の方に合うのじやないかと思うのであります。同じ額を金持にも三千円、貧乏人にも三千円というよりは、やはり金持の方にはなしにして、貧乏人の方にたくさん上げる方がいいのではないか。もちろん、お話通りに、皆さんに差上げるのが一番いいと思います。ただ、金が足りなくて、少いわくでやるとしますれば、やはり金のある方には御遠慮願うという方が、社会政策的の面から見てもいいじやないか。特に今回帰還手当を出すということにつきまして、私たちの方で考えましたのは、帰つた当時すぐ食べられなくなつたら困るじやないかということで、この点を非常に強硬に主張いたしまして、この帰還手当を出すようにしていただいたのでありまして、そういたしますと、帰るときに二万円なり五万円なりお持ちの方は、帰つてすぐお困りになるということにはならないのじやないか。そういう点をもちまして、私どもの方としては、現在の財政の出しにくいところから、今までにないものを出していただいたのでありまして、やはり有効に、お困りの方に出して行くようにいたしたいと思つております。
  124. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 私は、重ねてしつこいようでございますが、よくわかります。やらなくてもいい、金を持つている人に渡す必要はないじやないか、——よくわかりますけれども、たとえば戦傷病者戦没者遺族等援護法などを見ましても、また今度の恩給復活を考えておる政府の処置などを見ましても、やはり戦争によつて犠牲になられた方々には一応のお燈明料なり包み金を差上げるという志ですから、同じ戦争犠牲者であつて、終戦後七年目に帰つて来られる人々に対して、やはりお燈明料に匹敵するものを差上げる気になつていいのではないか。ましてや、帰つて来る三万人のうち、何人が持つておるであろう、何人が持つておらないであろうという想定もできないわけでありますから、政府はやはり三万人分を御用意なすつておるだろうと私は思いますので、そういうふうにかえていただいた方がいいのじやないかと思うのです。  もう一つ最後に申し上げておきたいのは、男女同権の世の中に、女性のことばかり私が弁護いたしますと、何だかおかしいようでございますけれども、しかし、まだ日本の女性は一人前ではございません。従つて私は、同じ金融公庫の窓口であり、また同じ上陸地の舞鶴港におけるところの政府の処置にいたしましても、やはり弱い者であり、力のない、女性や子供を特に守つていただきたいというのが、しばらくお許しを願つて申し上げたいと思つた言葉でございまして、特に力説したわけでございますから、援護庁長官におかれましては、国民金融公庫の窓口においても女世帯、老人世帯、子供たちを守つてもらうという建前で、御交渉を願いたいということを申し上げまして、憎いことをたくさん申し上げましたが、ひとつよろしく。
  125. 佐藤洋之助

    佐藤委員長 田中稔君。
  126. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 私どもがここにいただいたものに、「中共地域引揚者受入援護等の大要」とありまして、中共地域と書いてあるのですが、援護庁としましては、こういう名称は一つのきまつたものとして使われているのですか。私がお尋ねいたしたいのは、これはすなおに、中国引揚者とかいうふうにした方が穏当じやないかということです。何か中共地域というふうに政治的色彩が出たようなあれでは、大体引揚げて来る人も幾らか迷惑じやないか。中共地域と言うと、何か共産党の影響でもみな受けているように考えられるので、本人も迷惑するのじやないかと考えます。私は、そういうのじやなく、やはり中国という地名があるのですから、こういうふうにお使いになつた方がよくはないかと思いますが、その点をひとつ……。
  127. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 中国というのは、どちらを中国と認めるか私よく存じませんけれども、中国と申しますと現在二つにわかれております。従いまして、その中で中共の地域になつている方の中国ということになりますので、やはり一応そう書かないとはつきりいたしません。私の方としましては、そうしないと間違いが起ります。
  128. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 これは議論になりますけれども、中国は一つしかないと思います。台湾なんか中国のうちではない。蒋介石政権は中国じやございませんが、これは議論になりますから、それくらいにします。  次に、政府としまして、三万人なら三万人が一人残らず帰つて来ることを希望されていると思う。またそうでなければいかぬ。ところが、中国側では希望する人を帰すと言つておるようでありますが、その希望する者をというのは結局日本国内事情がいろいろわかつて来て、どうも帰つても仕事がない、非常に生活も困るであろうというようなことで、そういうことを心配して帰国を見合せるという人も若干あるという事情だろうと思う。今この「大要」を読みますと、私も武部さんと同じく終戦後引揚げて来た一人でありまして、私どもが引揚げましたのは昭和二十一年でありますが、その当時上陸地で受けた待遇に比べますれば、今度は非常によい。長官も、従来の引揚げの場合に比べて非常によいとおつしやるのですが、なるほどその通りです。しかしながら、これをしさいに検討しますと、これには非常にまだはつきりしない部分がある。援護庁長官は、万事がうまく行くように御説明なつておりますけれども、職業のあつせんの問題にしましても、先ほどから同僚議員の諸君が指摘しておりますように、なかなかこれは簡単に行かない。職業安定局関係の方の御説明もありまして、何か数をずつと述べられて、一つの安定所当りつた三十名に当ると言われたのですけれども、本人の希望する職業ということになりますと、なかなか簡単に行かない。しかも相当の高度の技術を持つておる引揚者が多いと私は思いますから、なかなかむずかしいと思いますが、私が特にここでひとつお尋ねしたいと思うのは、医療の問題であります。ここに「応急医療」ということが書いてあります。しかし、私たちの懸念いたしますのは、応急医療の問題ではない。むしろ慢性的な病気の場合であります。この間ある新聞の記事を読んだのでありますが、ある若い婦人で、現在中国におつて、長く結核に冒されておる。ところが、この人の内地のうちは非常に貧しくて、一家族がわずか六畳一問を借りて生活をしておるというような状態であります。その事情はよく向うにわかつておる。ところが、その若い婦人は、現に中国にあつては、ちやんとした療養所に入つて、そうして手厚い看護を受けて、特に中国の若い自分の友人などから慰問され、激励されて、幸福な療養生活を送つている。それで、自分が今帰つた場合に、現在よりもよい療養生活を続けることができるかどうか、非常に疑問だ、おそらく不可能である、それで、帰心矢のごときものはあるけれども、おそらく私は中国の土になつて再び故国の土を踏むことがなくして終るでありましようというような、ややセンチメンタルな手紙をその妹さんか何かによこしたという記事があつたのでありますが、こういうことは、私はその若い婦人ばかりでなく、ほかにもずいぶんあり得ることだと思います。その新聞記事を見ますと、その人は別に共産党員でも何でもなさそうなんです。そういう慢性の疾患を現在病んでおり、療養生活をしておるような若い婦人、そういう人までも、その人が帰国を希望するならば、同じ日本国民の一人として漏れなく帰つてもらうというような万全の受入れ態勢ということを考えました場合には、これではまだまだ不十分である。その婦人がかりに帰つて来ますと、まずどこか国立の結核療養所に入らなければならぬのでありますが、現在国立の結核療養所のベツドの数と、それからそこに入所することを希望する患者の数とのアンバランスということは、これは私が申し上げるまでもないので、入所を待つている人がたくさんおる。そういう場合に、中国から引揚げたそういう人は無条件で入れるのだ、優先的に入れるのだということにでもなればよろしいのでありますけれども、私は、今の状態ではそこまではなかなかできぬことだろう。やろうとしてもおそらくできぬと思う。そうすると、ほんとうに三万人一人残らず帰つてもらうのだという政府の御趣旨であるならば、これでもまだ非常に不十分である。特にその点について、引揚援護庁長官は一体どういうお考えを持つておられるか、ひとつ御所信を聞きたい。
  129. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 私は、中国の事情はあまり詳しくございませんので、中国が天国であるかどうかということはわかりません。日本の現在の社会情勢全般と比べて、中国の方が日本よりも医療施設その他が全面的に完備しておるとも私は考えておりません。これらにつきまして、現在の日本の力でどの程度のことをすべきかということを考えなければならないと思います。私は現在この対策が万全であつて、日本が天国であるから帰つて来ていただきたいというような形になつておると思つておりません。それは、むろんそういうふうにいたして帰してあげたいのがわれわれの気持でございますけれども、ただ現在の国情といたしまして、この程度のことしかできないという状況でございます。しかし、これらの方方がお帰りになりまして療養ができないかどうか、——天国のような療養はあるいはできないかもしれませんけれども、現在日本の人たちが受けておる療養の程度のものは受けることができるはずでございます。その点につきまして、中国の現在の平均の段階よりも日本の方が悪いというふうに私は考えておりません。
  130. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 「大要」のうちに、引揚者子弟教育という項がありますが、引揚者子弟の中には、小学校から大学までの各段階に該当する年齢の層があると思いますが、「就学、進学等については所要の措置を講ずる。」と書いてあります。これは一体具体的にどういうふうにやろうとなさつているか、文部省の方で案ができておるなら、ひとつお教えを願いたい。
  131. 大田周夫

    ○大田説明員 御説明申し上げます。国語のできる児童、生徒は、その年齢に該当しております学年に編入いたします。高等学校の生徒につきましては、中国の学校制度がどういうようになつておるか、はつきりわかりませんが、おそらく旧制の中等学校程度の教育しか受けていないのではないかと想像されます。そういうわけでありますので、帰りました生徒の学力を、一応生徒とよく相談いたしまして、向うでどういう内容教育を受けたかをよく調査して、将来その子供が高等学校で困らない程度の適当な学年に編入してあげたい。それから、先ほど中山委員からも御質問がございましたように、国語の話せない生徒、学童に対しましては、特設学級を設けまして、編入する前に特別教育を施して、それから学力の状況に応じた適当な学年に編入させたい、こういうふうに考えております。それから、向うの大学、専門学校はどの程度かわかりませんけれども、従来の引揚げの場合には、当時は専門学校、大学でございましたが、編入試験を毎年四月と九月と二回行いまして、希望者を全部入学させるような措置を講じております。ですから、今回も大学につきましてはそういう措置を講じまして、希望者全部をそれぞれ希望した学部、学科に編入するような措置を講じたい、かように考えております。
  132. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 まだいろいろ個々の項目について聞きたいことがありますが、過当な政府委員が十日にお見えになるときまで、質問は留保いたします。続いてお尋ねしたいのは、ここに書いてあるいろいろな項目は、今度の代表団が向うに持つて行つたものだと思うのでありますが、なるべく早くこれを三万人の人に知らせたいと思う。帰りたいという気持は三万人のほとんど全部の気持だろうと思うのですが、しかし中には、日本国内事情も十分知つており、自分のいろいろな思想的、政治的立場ということを考えたり、向うでのいろいろな生活環境から、もう帰りたくないという人も若干はあると思う。大部分は帰りたいと思つておると思いますが、その中にも、受入れ援護の条件が非常に好ましいものならばもちろん帰るが、帰つてみてもそんなことになるのでは、もうしばらく見合せようという人もあると思います。ソ連からの引揚げの場合は、そういうことは有無を言わせず、とにかく帰すというのが当然のことですが、今度は、大体において自由な市民生活をしておつた人だし、職を持ち、一定の収入のある人たちですから、何も強制送還されるという立場ではない。だから、これを見て、これだけのことをしてくれるならば帰ろうという人もあるでしようが、しかし、どうもこれでは自分らの今後の生活の設計をする上において非常に不安だというので、しばらく帰るのを見合せる、あるいはもうこのまま中国にいようという人も私はあろうと思います。だから、この大要を向うになるべく早く持つて行つて引揚げ希望者に周知させていただきたいと思いますが、その点についてはどうですか。
  133. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 今度引揚げ代表団が集りまして、向うに参りますまでの間におきまして、われわれと引揚げ代表団との間に非常に緊密なる連絡をとりまして、われわれの方としていろいろな問題についての情報を出しております。実は、代表団が出かけられるときにおきましても、非常によく資料を出して、ほかは知りませんが、われわれの方は感謝されております。われわれの気持も十分に向うでくんでいただきまして、特にわれわれとして希望いたしましたことは、こちらの事情、並びに帰ろうという希望があれば必ず帰れるのだという点と、こちらがどういうふうに処遇をするかという点につきましては、十分に周知させるような方途を講ずるように先方に交渉していただきたいということをよく話しまして、代表団の人々もそれは同感でありまして、ぜひそうしたいと言つておられます。従いまして、この点につきましては、代表団とわれわれとの間に非常に密接な連絡があり、遺憾なく措置がとられるであろうと、われわれは期待いたしております
  134. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 それでは、この受入援護の条件なんかは向うに一応周知徹底して、それならば帰ろうということで、舞鶴の港まで来る。それからさらに自分の郷里に帰る。しかし、就職がうまく行かない、病気になつてもなかなか思うように療養もさせてもらえないということになつて、むしろもう一ぺん中国に行きたいというような希望者が出た場合に、再度航というようなことについて、旅券交付その本人の希望を満足させるような御処置が願えるかどうか。私は、そういう人たちはどんどん出したらよいと思います。私の私見から言うと、帰りたくない人は帰さぬでもよい、むしろそういう人が中国に一人でも多くおる方が、日本と中国との今後百年の友好関係を促進する一つの結びの綱になると思います。昔阿倍仲麻呂なんという人は、帰ろうと思つたところが船が難破して、そのまま中国に残つたのですが、ああいう人が千年も前におつたということは、やはり悪くないのですから、現代における阿倍仲麻呂が千人も万人もおつて私は少しも悪くないと思います。帰つてもおもしろくないという場合の再渡航というような措置をお考えになるか。あるいは答弁は外務省関係かもしれませんが……。
  135. 佐藤洋之助

    佐藤委員長 田中君、この問題は帆足君も同意見を持つておるので、十日にその点は合同的な御質疑として答弁いたさせたいと思つております。     ━━━━━━━━━━━━━ 次は受田新吉君。
  136. 受田新吉

    ○受田委員 援護庁長官は、先般中共地区へ交渉に行く代表者を羽田空地へお送りになつたのでありますが、いやしくもこの重大な人道問題解決のために代表が立たれる際に、大臣の、もしくは次官の見送りがなかつたということははなはだ遺憾に思います。ちよつとした外交関係の人が日本へ来た場合には、それをしばしば送迎する政府当局が、援護庁長官に全権を委任されたということの裏には、この中共地区引揚げの問題に対して、政府としては個人的な立場においても冷淡であつたような感じがするのでありますが、この点について、当時見送りをされた援護庁長官として、お気持をお述べいただきたいのであります。
  137. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 援護庁といたしましては、次官の下に隷属しておるわけでもございません。次官は、これは厚生省の次官であります。援護庁では私が一番上でございますので、大臣を代表しまして参りました。私といたしましては、この問題につきまして、非常に重大であるというふとに考えまして、実は代表団の方ともたびたびお目にかかつておりますし、また、お出かけになる前におきましては、特別な懇談会などもいたしたりいたしまして、この問題につきましては非常に援護庁は力を入れたつもりであるのでございます。特別にそのためにどうということにつなましては、われわれとしましては、どうこうしたということはないと思つております。
  138. 受田新吉

    ○受田委員 援護庁は非常に努力をされたが、外務省は冷淡であつたということに結論がなると思うのであります。私も、当時見送りした一人として、こうした羽田空港における見送りに際して、夜の十一時という時刻ではあつたが、あまりにも政府筋の責任者の影が寥々としておつたという点において、その熱意を疑つたのであります。  次は、この引揚者の方の中に、政府関係の未復員職員という方々が相当数おられると思います。国家公務員の諸君でさえも約千名の未帰還の方々がいらつしやるのであつて、この数字の中に、今回相当数そのお帰りを見ることができるだろうと思うのでありますが、この方々の帰還後の身分については、それぞれの行政庁の中に籍が現在置かれてあると思うのでありますが、この職務に復帰する形がとられるのであるかどうか。これは先ほどの武部さんの御質問にもある程度関連するのでありますが、御答弁いただきたいのであります。
  139. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 各省がどういう方針を持つておられるか、存じませんが、未帰還政府職員は、現在各省庁それぞれのところに籍を持つております。従いまして、帰つて来られますれば、一応そこに帰ることになるだろうと思います。その後どうなるかということにつきましては、各省の方針もございましようから、存じませんが、一応そういうことに現在のところは相なつております。
  140. 受田新吉

    ○受田委員 未帰還公務員の給与は、三七ベースで押えられております。三七ベースで押えて今日まで薄給に甘んじさせて、本人が在職するならば、当然その夫の収入によつて、家計を維持し得た家族の人たちに、今日まで苦労させて参つたのでありますが、この三七ベースで給与を押えたその理由を、そうして今後もこの三七ベースをそのまま続けて行つて、一方には帰つた方々があるが、一方帰らない方々は、今後留守家族援護法によつて、これらの政府職員給与を一括して、実績の下らぬようにという方針のもとに、三七ベースで押えたままでこれを継続なさろうとするのであるか、御意図を伺いたいのであります。
  141. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 留守家族援護法の内容のようでございますが、三七ベースに押えられた点は、私の方といたしましては、所管ではございませんので、よく存じません。それから、それと同じように、未復員者につきましては、現在は千円に押えられておりまして、未帰還政府職員の方はまだ給与が高いという状況でありますが、これらの点につきましては、相当不公平なる点が現在あるということは事実であります。なぜそうなつておるかということは、私にはよくわかりません。ただ結局、これらの両方の措置とも、大体におきまして留守家族の援護ということが主眼になつているものである。従いまして、留守家族一般の援護というものとの関連もあるわけでございます。結局そういうところが一つの理由になつておるのではなかろうかと思いますが、これは私の方の所管でないので、わからないのであります。そこで、今度留守家族援護法になりましたならば、これは純粋な留守家族援護になりまして、給与の形はとらないわけであります。大体そういうことになりますので、そういう区別なしに、全体を統一して、どの辺のところをとるかということは現在のところまだきまつておりません。
  142. 受田新吉

    ○受田委員 帰還手当について、先ほどしばしば議論されたのですが、政府が用意されております帰還手当の該当者数は、三万を全部含むものか、あるいは一万円というものの対象が何人、五千円対象が何人という具体的な数字が用意されておるのか、そのいずれであるか、お尋ねしたいのであります。
  143. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 大体、現在予算として組んでおりますのは、全体の四割程度は減じて予算を組んでおいてもさしつかえないのではないかというおよその目の子でもつて組んであります。実際にはどうなるかということは、やつてみないとわかりません。やつてみまして、足りない場合には、やはりこれは出すのであります。こういうことであります。
  144. 受田新吉

    ○受田委員 すでに個々の引揚げをなさつた方々がたくさんおられますし、最近も新聞紙上等によつて話題を投げている少数の個別引揚者があります。こういう方々に対して、帰還手当その他今回中共地区引揚げ受入れ態勢に用意されておるがごとき措置をいかなる程度に充当されようとするのか、全然充当されないのか、お尋ねしたいのであります。
  145. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 現在の方針といたしましては、今後のものと申しますか、今度の集団引揚げによるものに限定するつもりでおります。
  146. 受田新吉

    ○受田委員 今後個別に引揚げるというようなことは、もう交渉が成立した以上は、ないものとわれわれは確認しますが、すでに個々に引揚げて来た人たち、ごく最近帰つた人たちについても除外するということになると、非常に不公平になる。日本政府の配船その他の用意がされないので今まで帰されなかつたのだというような今までの言い分によるならば、過去に非常に苦労して向うの了解を得て帰つて来た人たちは、中共地区がこちらに送還する意図をもつて帰したのである。そういうことになれば、その人たちをこの適用から除外することははなはだ不公平であると思います。既往にさかのぼつてこれを適用するという困難はあろうけれども、しかし、この中共地区の引揚げが発表された後に、政府が荏苒として、代表を送るのにいざこざがあつたために引揚げが遅れている今日、最近帰つた人たち、あるいはそれに近いものを適用の中に入れるというような措置に、政治としては大事な問題ではないかと思うのでありますが、いかがですか。すべてのものをこれに適用するということにも困難はあろうかと思いますが、たとえば帰還手当とか、そのほか特にこの中にあります引揚げ証明書、こういうものは、個別引揚げの人たちにおいても十分考えるべきものではないかと思いますが、長官はいかがお考えですか。
  147. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 従来やつておりました各種措置は、帰られた人にはやつております。引揚げ証明書も、帰つて参りました人には出しております。ただ帰還手当につきましては、今度の集団引揚げから適用するという方針を現在とつておりますので、結局そういうことにならざるを得ません。今後集団的に帰る方々には、これは帰還手当支給するという約束のもとに帰るのでありますから、必ず支給しなければならぬと思います。従来の引揚げにつきましては、もしさかのぼらすことができますれば、どこまでさかのぼるかという問題がございます。結局われわれとしましては、一応現在の段階といたしましては、将来の問題にする以外にはないのじやないか、——これはむろん財政的な問題等もございまして、その辺のにらみ合いが必要であるというふうに考えております。
  148. 受田新吉

    ○受田委員 このプリントは、引揚援護庁としては最後案ですか。ここに掲げてあります帰還手当は、予定が掲げてあるのであつて、検討中であると書いてあるのですが、この実態をお伺いしたいのであります。
  149. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 そこに書いてございますのは、むろん大綱でございます。ここに書いてあることは間違いないことでございますけれども、これだけでもつてものが全部済むわけではありません。これのやり方等、こまかいことにつきましては、今検討いたしております。従いまして、大綱といたしましては、ここに出ておるものが最後案でありましようけれども、これでもつて、あとわれわれは何もしないのだということではありません。これを基礎にいたしまして、なおこまかい手続等は、今後検討いたしまして、きまるのであります。今盛んに検討いたしております。
  150. 受田新吉

    ○受田委員 ここに一ところ、検討中であいまいなところがあるのです。きまつたことはきまつたということなんですが、ここに「持帰金一人当り一〇、〇〇〇円以上所持する者についてはこれと合算して二〇、〇〇〇円に達するまでの差額を支給する(小人はこの半額)ことに一応予定しているが、なお検討中である。」ということであれば、長官が先ほど来こういうことにするとおつしやつたことは、検討中であつて、まだ決定したものでないのだということになると思うのであります。引揚者がもうじき帰ろうというのに、まだ検討中というのは、はなはだあいまいだし、ことに帰還手当のごときものが検討中だということであつては、志気にも影響すると思うのでありますが、こういう一番大事な給与とか引揚者に対する生活の基本的なものを検討中に置いておくのは、どうも不穏当であると思うのであります。政府はあまりにも意思が弱過ぎる。確たる信念を持つてわれわれに相談していただきたいのであります。
  151. 山本淺太郎

    ○山本説明員 御指摘のように、文章としては非常にまずいのでありますが、ここに書いてある意味は、たとえば、先ほど午前の長官説明にもありましたが、いろいろの種類の人が帰つて来ます。純粋に狭い意味の引揚者に該当いたします者、それからそれに準ずべき者、あるいは日本の国籍と今までは全然関係のない人、いろいろ多様な人が考えられますので、そういういろいろの種類の人に対応して、具体的にどのような人にどのような標準でやるかという点が、この印刷物をつくりましたときにおきましてはさまつておらなかつた点が第一点であります。それから第二点は、いわゆる持帰り金というものの範疇にどういうものを入れるべきか、いろいろ外国為替証書といつたようなものにつきましては、それを技術的に把握する方法につきまして、なお検討を要する点がありましたので、このプリントにはこのように書かれたわけでありまして、大綱につきましては、本日お手元に差上げましたこの時期におきましては、なお検討中という点はないものでございますので、文章の不行届きというふうに御了解願いたいと思います。
  152. 受田新吉

    ○受田委員 帰還手当は、約四割だけこれを見込んだという長官のお言葉でありました。われわれは、堤君が先ほど述べましたことく、金をだれが持つて帰るかわからない未確定な対象に対して政府が政治的な手を打つ場合には、一応全員金がないものと認めて措置し、これを待ちわびるということでなければならぬと思う。およそ四割くらいは帰還手当が出さるべきであろう、六割くらいは金を持つて帰るだろうというような想定は、政治として打つべき手ではないと思うのです。やはり原則として、帰還手当は一人幾ら、但しこういう場合にはこうするという規定を設けておいて、あとから差引きした剰余金が出るならば、それを剰余金として、ほかの方へまわせばいいのであつて、初めから四割という不確定な線を引くことは、はなはだ行政措置としては妥当でないと思う。特に今度のような、国をあげて待とうというときには、原則として、やはり全員が対象となるという線にしておくべきではなかつたかと思うのです。なお今、検討中でなくて、すでに確定的なものになつたという御説明があつたのですが、今後これを変更する意思はないか。——国の予算の上からは、今からでもおそくないから、全員が帰還手当の対象となるという原則にしておいて、内訳については、あとで余りが出たのは余りが出たものとして措置する、こういうことが必要ではないかと思いまするが、長官はいかがお考えでしようか。
  153. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 その辺は、予算の立て方の事務的な問題ですが、余すつもりで、最初から余すものを予算に組むということは予算技術としてはむしろ逆じやないかと思います。予算をつくる技術というものは、これは政治ではございません。一つの事務的な技術です。政治的に、予算をむやみやたらにふくらして行くことがいいかどうか。━━歳出がないのに歳出があるようにふくらして、実際において予算が余つて節約になる、こういうごまかしのことがいいのかどうか、私としては、むしろ逆じやないかと思います。先ほど申しましたように、結局現在の財源の関係からいたしまして、全部にやることはできない。多少事務的にはめんどうがございましても、やれる人にはたくさん差上げるかわりに、やれない人にはやらないことにして、少い予算でもつて多くの効果をあげよう、大体そういう考え方でできたものです。従いまして、一応見通しとしてどうなるかということはわかりませんけれども、われわれとしましては、やはりこれは一人当り金額の高が多くなりまして、生活が安定できるという形にしておく方が正しいのでありまして、一人当り金額を少くして、全部にやるようなことにして金を残す、——残すのはおかしいので、結局全部使うのでありますが、そういうことに相なるべきものではなかろうと思います。  それから、先ほどお話なつたのは、逆になつておりまして、四割はいらないであろうということで、四割を引いた六割を組んである。これは見通・しでございますからして、われわれとしては、実際に持帰り金のある人が大体四割見当あつて、残りの六割の人は持帰り金がないであろうという大体の見当をつけてやつているのでございまするが、こういうふうにきめておきますれば、もし実際に持帰り金を持つて帰る人が少い場合にはこれは出す約束をしているのですから、出さなければならないことになります。また出すことについて皆様方の御承認を得ていることになつているのですから、その後必要であれば、出さなければならぬということになります。どちらがいいかということは、私としては、やはり金額を減らして、みんなにまんべなく出す形をとるよりも、金額は相当のものにしておきまして、必要な者にだけ出すことがいいんじやなかろうかと思つているわけでございます。
  154. 受田新吉

    ○受田委員 持ち帰る際に、日本円を持ち帰る人はないだろうと思います。従つて、あちらの金を持つて帰るので、現地に兌換をする用意がされてあるようでありますが、あちらのわずかの金であつても、これをどこかへ隠すとかいうようなことまで疑つて、身体検査をやるということまで用意されてあるのか、あるいはそういうところは良心的にこれを調べるようにしておるのか、こういう点についても、政府の心構えによつてこの問題が取上げられなければならぬと思うのであります。それから、未帰還同胞の引揚費が、終戦後ずつと国家予算の中へ特に項を設けて取上げられてあつたのでありますが、それはすべての留者残が引揚げの対象になる数字で予算が計上されてありました。これが、ついこの一両年に急に変更されたのであります。今までは、ことし中に送還という目標のもとに、ことし全部帰らないとわかつておつても、一応予算には、全員引揚げる待機の態勢のもとに同胞引揚げ費が何十億かずつと計上されて来たのであります。これはごまかしであつて、帰らないとわかりながらも全員の分を上げた時代があつたのであります。こういうことは、ソ連地区の引揚げ進行状況から見て、来年一ぱい帰らないという見通しがついておりながら、待ちわびておる国民感情が予算の上に現われたと思うのであります。長官は、予算の技術の上においてごまかしをするのが忍びないということでありましたが、この問題は、三万人全員の帰還を待ちわびておるわけでありますし、全員が帰るか帰らないかはいささか疑義があるが、三万と規定した以上は、この人たちが一応裸で帰られるという想定をして用意しておく方がいい。これは技術の問題、ごまかしの問題でなくして、国民感情が予算の上に現われるということにおいて、総員一万円か、二万円かを計上したつて、わずか数億の予算なんで、その予算がたまたま使えなかつたら、他に流用もできることなんです。大蔵省から金をとるのに、多少名目をつけておいたらというので、非常に政治的な差繰りをやつたという結果になるのなら、それは予算の行政操作でなくして、政治操作です。わずかな人間が帰る、わずかな金を一応計上さして、あとで実際は多かつたというんで金をとる、この方がごまかしであつて、ごまかしは、このあとの方が性質が悪いと思います。性質としては、やはり国民感情に訴えた予算措置をしておく方が、このような場合には特に重要であると私は思うのでありますが、長官は、先ほどの、ごまかしの数字を計上するわけにはいかぬというお言葉を変更される御意思はないか。この問題は、特に国民感情が、全員に対してわれわれは心から受入れをするということになつていて、終戦後七年も八年もたつて、非常におちついたときに迎えるのであるから、国民感情も盛り込む予算措置ということを私は要望してやまないのであります。
  155. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 従来の引揚げ予算につきまして、政治的に、帰らないはずのものに対しても予算に組んだとおつしやいましたが、これは、日本政府としては、帰らせるつもりで組んでおつたのでございます。従いまして、それを今度の場合とは必ずしも同一に論ずべきものではなかろうと思います。ただ、この問題につきましては、最近予算折衝の際のいろいろないきさつもございまして、われわれといたしましては、この金額を半分にいたしましても全員の予算にするよりは、やはりこういうふうにしておいた方が、実情にも合いまするし、またそれが妥当じやないか、——帰つた人全員に差上げるという形で行くか、一部現金を持つて帰つた人には差上げない、といつても、これは全然差上げないわけではないので、この金額の倍以上持つて帰つた人に差上げないということでございますが、そういうのと、どちらがいいかという、そこの辺の技術上の問題もあるので、こういうことにしたのでございます。単なるごまかし、——今御指摘になつた従来の考え方とは違うのでありまして、われわれといたしましてはそういうふうなごまかしでなく、実際にこういうふうに一部の人に出さずに済まして、ほんとうに困つておる人に出すようにするという方針をとれば、やはりある程度の金額は差引いておくことになる。それを二割と見るか、四割と見るか、六割を見るか、こういうことは一つの予定でございます。どの予定をとるかということにつきましては、いろいろ御意見あるかと思います。一応われわれとしては、四割というところで予定を立てて見たわけであります。
  156. 佐藤洋之助

    佐藤委員長 他に御質疑がなければ、本日はこれにて散会いたします。次会は公報をもつてお知らせをいたします。     午後四時三十五分散会