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1952-12-26 第15回国会 衆議院 海外同胞引揚及び遺家族援護に関する調査特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年十二月二十六日(金曜日)     午前十一時二十三分開議  出席委員    委員長 佐藤 洋之助君    理事 飯塚 定輔君 理事 森下 國雄君    理事 平川 篤雄君 理事 受田 新吉君    理事 帆足  計君    逢澤  寛君       川野 芳滿君    木暮武太夫君       玉置 信一君    中山 マサ君       森   清君    亘  四郎君       石坂  繁君    武部 英治君       松野 孝一君    堤 ツルヨ君       田中 稔男君  出席国務大臣         外 務 大 臣 岡崎 勝男君  出席政府委員         外務政務次官  中村 幸八君         外務事務次官         (大臣官房審議         室勤務)    中村  茂君         引揚援護庁長官 木村忠二郎君  委員外出席者         総理府事務官         (恩給局審査課         長)      城谷 千尋君         外務事務官         (アジア局第一         課長)     小島 太作君         外務事務官   内田 英一君     ————————————— 本日の会議に付した事件  中共地区残留胞引揚に関する件  遺家族援護に関する件     —————————————
  2. 佐藤洋之助

    佐藤委員長 これより会議を開きます。  本日は前会に引続き中共地区残留胞引揚げに関する件及び遺家族援護に関する件について議事を進めます。  まず、中共地区残留胞引揚げに関する件でありますが、この際一言申し上げます。外務大臣は本日時間の都合がございますので、外務大臣に対する御質疑はきわめて簡単にお願いをいたします。  なおその前に、前々回平川君より質疑の保留がございまするから、この際平川君の質疑を許します。
  3. 平川篤雄

    平川委員 もう繰返しませんが、外務大臣にこの前、政府当局が受けておられる材料について御見解を開陳していただくことをお願い申し上げておいたわけですが、御用意ができておれば、ひとつこの際伺わせていただきたいと思います。古鷹事件の問題です。
  4. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 調べまして、追つてさらに申し上げます。
  5. 平川篤雄

    平川委員 お忘れになつておるわけではないでしようが、私がきようお聞きしておきたいと思いましたことは、私の得ております古鷹事件に関する材料というものは、これはその当時の被害者の一人から出ておる資料でありますので、政府に出ておる安達少尉口述書以外になおあると考えられますので、それを御検討になつて、この前申し上げましたように、当時例のフェザーストン収容所において死にました者、傷つきました者、これが不当な捕虜虐待の事実であるならば、損害賠償の訴えをニユージランド政府に対してやりたいということを私は申したわけであります。従つて政府側としてつかんでおいでになる事実がありませば、詳しくお話を願いたい。そういう御研究をお願いし、さらにそれに対する御見解を示されるようにお願いしていたわけであります。至急ひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  6. 佐藤洋之助

    佐藤委員長 これより順次質疑を許します。飯塚定輔君。
  7. 飯塚定輔

    飯塚委員 外務大臣の時間があまりないようですから、きわめて簡単にお願いいたします。これは、特に昨日、一昨日あたりからの新聞等において、クリスマスのプレゼントとして中共からの引揚げに関する問題が取上げられておりますが、あれに対する外務当局としての御意見をお聞きしたい。
  8. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 あれに対して一般的にどういう点を申し上げていいのかわかりませんが、要するに、とにかくおそしといえども引揚げができるということになることは、非常にけつこうだと思つてあらゆる努力をいたすつもりでおります。本会議でも答弁いたしましたように、船とか、その他の引揚げに要する準備は一応整つております。また帰つて来た人の援護というようなことも、これもやつております。要するに順序は、従来ソ連地区あるいは中共地区から引揚げました場合は、あらかじめ交渉というよりも、いつ幾日に船をよこせ、そうすれば、これだけの人間引揚げられるということで、船を出しておつたのであります。今度はその前に日本側代表者交渉をして、それから話がまとまつたところで船を出すという順序に行くのじやないかと思われるのでありますが、これはまだはつきりしたことはわからないのであります。そこで政府としては、その代表者の問題につきましては、前にも申した通り、これは国費として国民の税金をもつて支弁するものでありますから、政府責任ある人間行つて、そうして船は幾日滞在するとか、食糧はどう持つて来るとか、ルートはどうするとか、船の安全はどう考えるかというようなことをきめるのが正当であつて政府関係のない者が行つてきめたところで、また政府の承認を得なければならぬということになるわけでありますから、本来から言えば、政府代表が行くべきである。またかりに政府以外の代表が行くにしても、従来引揚げに非常に努力しておる、また残つておる家族のめんどうを見ておる、そういう団体代表者が行くべきものであつて、今まで引揚げに何も関係をしていないような団体代表者が行くべきものでないと考えておる。ものの順序はそうなるのであります。しかしながら、とにかく先方にたくさんの人がおりまして、それを引揚げるというのが問題の焦点でありますから、順序はそうでありますけれども、もしそれを主張するのあまりに引揚げが遅れるということになりましても、これは家族としてもはなはだ本意でないと思いまするから、はつきり向うの意向がわかりまして、その間にわれわれとしても引揚げのためにはあらゆる点で譲歩をいたして、問題を解決ができるような方向に進みたい、こうは思つておりますが、ものの順序としてはそういうわけでありまするから、先般、二十三日でありまするが、その趣旨のことを発表いたしまして、ラジオでも中共向け放送いたしました。なお国会方面で、これには国会代表国民代表として最もふさわしいものだから、これを加えたらどうかという意見がありました。それもまことにごもつともな話でありますから、衆議院議長がこれは議長としてではありませんが、引揚げ促進本部の会長として、中共赤十字に昨日電報を打たれたはずであります。われわれの方でも、その趣旨で、もう一ぺん繰返して今までの放送を行い、さらにそのあとに、国会代表者が行くのも適当と思うから、この点も考慮してもらいたいという要請放送でいたすことにいたしております。もし先方のそれに対する意思表示がありまして結局代表としてはこれこれの人ということがきまりますれば、旅券はすみやかに発給して、行つてもらいたい。しかし、もしかりに、そのときに船を出してすぐ引揚げを実行できるということになれば、代表が先に行くんじやなくて、船の中へ乗つて行つて向うと話をする、これならなお手取り早く行くと思つておりますが、まだ、引揚げ手続として、そういう点がどうなるのかということ、あるいは船はどこへ持つて行くかとか、一回の引揚げ人数は何人であるか、それに対してはどういう種類の被服、食糧等が必要であるかというような、普通に行われるこまかい手続の方は一向はつきりしておりません。そこで、そういう引揚げ場所、日時、人数その他の手続きについても、早く先方意思表示を促しているような次第であります。
  9. 飯塚定輔

    飯塚委員 今の外務大臣お話伺つて、私は、安心したと申しますか、それを促進してもらいたいと思います。私は、事務的なこと、あるいは手続上の問題をお伺いしようとしたのではなくて、心構えをお伺いしたのでありまするから、今大臣お話のように、行きがかりとか感情とか、そういうことによつて引揚げの遅れることのないように、促進せられるようにお願いいたします。
  10. 佐藤洋之助

  11. 受田新吉

    受田委員 政府は、この中共放送に対しまして、できれば今度の引揚げ交渉には政府代表を加えたいという意味から、インド政府を通じて中共当局申入れをしたように伺つておるのでありまするが、これに対して、その結果がいかになつているか、またそれに対する見通しについてお伺いしたいのであります。
  12. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 きのうも本会議で申し上げましたが、インド政府に対しての依頼は、これが元来ものの起りが放送でありまして、ときたま放送というものは必ずしも正確でない場合があるのでありますから、この放送真相といいますか、もう少し詳細な点もまぜて真偽を確かめてもらいたい、中共側真意はつきり確かめてもらいたい、こういう意味依頼をしたのでありまして、その中には、日本代表はどういうものであるとかいうような交渉インド政府依頼したのではないのであります。日本政府代表も加えるべきであるということは、これは国内で発表いたし、かつ放送いたしておりますが、インド政府には、ただものの真偽といいますか、真偽言つては語弊があるかもしれませんが、真相をもう少し詳細に確かめてもらいたい、こういう依頼をいたしました。インド政府は引受けて、北京の方にも訓令を出してくれたのでありまするが、どういう意味でありますか、あるいは直接放送によつてやるつもりでおるのでありましようか、インド政府側に対しては回答をよこさないそうであります。これは前にも、インド政府が一、二回——これは日本の問題ではありませんが、朝鮮の捕虜問題等についていろいろ先方に話合いをしたときも、あまり回答をもらえなかつたような例があつたようであります。どういうものでありますか、中共側真意は判明しませんけれども、今のところ、結論的に言えば、まだ回答というか、その真相を十分に知るだけのすべがないようであります。
  13. 受田新吉

    受田委員 日本国中共政府を認めていないのでありまして、認めていない中共に対しての外交的な折衝というものがいかに困難であるかはよくわかるのでありまするが、その中共に、インド政府が仲立ちされて、われわれの要望する中共放送真偽のほどを伺いを立てた。しかしそれに対して回答はない。ない前に、すでに再び中共放送の方から、こちらの三団体に対する代表派遣要請があつたということは、結局中共当局としては、日本政府を問題にしないのだという結論に達し、民間立場からの代表者同士の会談にしたいという気持が流れておることがはつきりしておるように思われるが、これに対して政府はいかなる見解をお持ちでありますか。
  14. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 日本政府放送といいますか、発表は、その赤十字その他の代表を出すようにという放送あとでいたしたのであつて、それに対しては、いいとも悪いとも応答がありませんから、今のところ中共側真意がどうであるかというようなことを憶測する材料もないし、理由もありません。日本政府側を好まず、民間代表だけを好むのであるという証拠にもならぬのであります。要するに、向う意思がどうなるか、見ておる程度であります。
  15. 受田新吉

    受田委員 昨日、あちらから指定された三団体の間において、代表者を八名派遣するように決定を見たようであります。大野議長も、議長としての立場でなくて、抑留同胞救出運動責任者としての立場から、島津社長にも申入れをして、国会議員もそれに参加できるよう意思表示をされたようでありますが、この問題につきまして、八名の代表者が正式にあちらへ派遣される場合に、政府としては、その後努力しても政府代表を加えることができなかつた場合に、この八名の民間代表政府代表としての資格も付与して派遣をせられる用意がありますかどうかをお伺いしたいのであります。
  16. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 政府代表としては、八名の代表者は必要ないのでありまして、一人なり二人なりあれば十分と考えております。この八名とかいう人は、民間団体の方で相談した、そして民間団体の間で一応きめたということであつて、はたして八名を先方が受入れるかどうかもわからないし、また今おつしやつたように、国会代表者なんという話もあります。政府側としても、政府代表者という話もいたしてあつて、まだ否定も肯定もされておらないようなわけでありますから、まだその点ははつきりいたしません。が、少くとも政府代表者は、そんな八名も必要はない、こう考えております。
  17. 受田新吉

    受田委員 この八名が向うによつて認められ、一方政府代表の確認を得ることができない場合に、この八名の中から政府代表を選ぶとするならば、だれを政府代表とするか、あるいはこの八名が全部認められた場合に、旅券はこの八名に平等に交付せられる用意があるのであるか、これもお伺いしたいのであります。
  18. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 政府代表の問題は、もう少し事態はつきりしてからきめたいと考えます。八名の人につきましては、新聞で伝えられているので、私は正式にこれを代表ときめたという申入れにはまだ接しておりませんが、こういうことは一応考えなければならぬと私は思つております。それは、過去において、日本国会を通過した旅券法違反して海外のある特定のところへ行つたという事例があつて旅券法規定によれば、それは法の違反ではあるけれども処罰規定がない、従つて処罰はされておらないけれども法律違反をやつた人がある、こういたしますれば、政府としては、二度と再びその人には旅券は出さないつもりでおります。(「当然だ」と呼び、その他発言する者あり)
  19. 受田新吉

    受田委員 そうした場合に、たとえば中共へ直接旅行はできなくて、ヘルシンキを通じて行つたというような前例などからそういう立場に立つた人の旅券は交付しないということになると、具体的な名前もあげられて来ると思うのでありまして、これは容易ならぬことだと思いますが、たとえば、きのうの八名の代表者の中でそういう立場の人があつたならば、その人もその該当者になりますか。
  20. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは、先ほど飯塚君にお答えしましたように、原則的には、政府引揚げ促進を念願としておるのだから、これを阻害するようなことはできるだけしたくない。こう考えております。しかしながら他方において、おそらく先方でも、この人が来なければ引揚げはさせないというようなことはないであろう。現に名前を指定しているわけでもございませんし、団体を指定しておるようなわけですが、その団体には、単に一人や二人の団員がいるばかりでなく、多勢いるのでしようし、またある人は、団体としてでなく個人としての資格で参加しようとしている人もあるようでありますが、要するに、国内的の考えから言えば、旅券法違反をした人に対しては、政府としては、国家の利益から考えても、今後は旅券を出さない、こういうつもりで一応はおるのであります。
  21. 受田新吉

    受田委員 引揚げ促進が事実上できることをわれわれは待望しているのであつて、それに対してできるだけの道を講ずることが必要である。従つて、あまりいろいろな束縛をさしはさむとかえつて引揚げ促進に支障を起すおそれがあると思うのであります。  なお、三万人向うにおるという放送でありますが、われわれはかねて、あらゆる精華を総括して認められた六万に近い人々の帰還を心から願つておるのでありまして、これが三万人という数字に切りかえられて発表されているこの現実に対して、この三万人が全部帰るという見通しも私は非常に困難だと思うのです。しかし、この三万人の人たちがこちらへ全部帰れるところの受入れ態勢は十分にしておかなければならない。たとえば就職にいたしましても、あるいは住宅の問題にしましても、こちらへ帰つたが、職がなくてまた中共に帰つて行く、再出国して行くというような事態が起るということになれば、これはわれわれとしては遺憾この上もないことでありますから、そういう事態が起らないように、ちやんとした受入れ態勢を整えておかねばならない。われわれは、ここに三万人が全部こちらへ帰るという可能性を全面的に信ずることも困難ではないかと思うのでありますが、外務大臣としていろいろな情勢判断から、中京が放送発表した三万人という数字は、こちらへそつくり帰すという数字であるとお思いになるか、あるいは三万人いるが、帰りたい者は帰すというあの内容から言つて、そのうちの限られた人しか帰ることが期待できないというような想定をお持ちになるか、——それははつきりしないという御答弁でなくして、見通しとしてはどうだという御答弁をいただきたいのであります。
  22. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私は、三万人という数が出ている以上、これより少くなるだろうなどという見通しをこの際立つべきものでないと思います。かりに私が自分でそう思つてつても、そんな見通しは、自分の心をたしなめて、立つべきものでないと思います。私は、正直に、額面通りに三万人が帰れるという予想、またぜひ帰したいという期待を持つて、三万人を標準としてあらゆる準備をいたしております。
  23. 佐藤洋之助

    佐藤委員長 受田君に申し上げますが、この際外務大臣の御都合がありますし、まだ帆足君などから簡単な質問がありますので、これを許したいと思いますが、この程度にとどめていただきたいと思います。——帆足君。
  24. 帆足計

    帆足委員 私は、外務大臣お答えには深く同意をし、感謝いたします。一言だけちよつとお尋ねしたいのですが、今度の引揚げは、ロシヤの場合と違つて向うで大体生業についている人が相当多い。その人々が帰りまして、向うへ再移民、または嫁を連れて帰りたいとか、子供を連れて来て日本の学校へ入れたいとかいうような人があると思いますが、そういうものを政府はお許しになるかどうか。まだ考慮中でありましたら、次の機会に承り得ればけつこうであります。
  25. 佐藤洋之助

    佐藤委員長 ただいま御質問の問題は次の機会答弁を保留願いまして、きようは時間の都合上この辺で打切りたいと思います。
  26. 帆足計

    帆足委員 外務大臣にも慎重に研究していただかねばなりませんから、それは次の機会けつこうでありますが、今の旅券法の問題についての外務大臣の御発言は、ちよつと軽率だと思います。われわれも法規に基いてこの問題を考慮しているのでありますから、多少の見解の相違はありますけれども、道徳的な問題であるかのごとき発言はしばらく控えていただきたいと思います。
  27. 佐藤洋之助

    佐藤委員長 外務大臣に対する質疑はこの程度にとどめまして、次に引揚げ援護問題について質疑を継続いたします。堤君。
  28. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 援護庁長官にお尋ねいたしますが、先ほどからもいろいろ問答がございました通り、とにかく三万人が帰つて来るという原則に立つて引揚援護庁はその準備を整えてもらわなければならないのでございますが、昨日政務次官にお出ましを願つてわれわれが質疑したところによりますれば、一向お答えができなかつたのでございます。新聞にも一部伝えられておりましたが、きのうの新聞発表を見ますと相当な準備ができているようなことが書かれておりますが、その新聞の点について、まずあなたの御所見を伺つて質問を進めて行きたいと思います。
  29. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 新聞に出ておりましたことにつきましては、私は全然責任を負えません。と申しますのは、政府の方の発表ではございません。新聞の取材であつて、私の方といたしましては、正式にまだその内容について発表いたしておりません。御承知通りに、政府といたしましてこれを発表する場合には、財政当局その他とも十分打合せをして、確定した上でなければ発表できないのであります。厚生省といたしましては、相当の覚悟をもつて準備いたしまして、財務当局折衝を今始めております。私どもといたしましては、これができませんと引揚げが受入れできないという考えを持つております。私どもといたしましては、今持つております考えをもつて進んで参りたいと思つております。
  30. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 それでは、きのうの新聞の件については了承いたしますが、今長官がおつしやいました厚生省大蔵当局に対して交渉なさつておる大体の骨組みを御発表願いたい。
  31. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 御承知通りに、中共放送によりますれば、三万人向う日本国民がいるということに相なつております。従いまして、三万人は帰つて来るものと考えなければならぬことは、先ほど外務大臣お答えになつた通りであります。従つてわれわれといたしましては、三万人を一応基礎といたしまして仕事を進めなければならぬというふうに考えます。そういうふうに仕事準備しておるのであります。  それから次に、援護内容でございますが、これにつきましては、従来帰つて参りました場合と今度の場合とは、先ほどもどなたかが御指摘になりましたが、事情違つておるのであります。同じ抑留と申しましても、中共の場合は留用でございまして、ソ連等抑留されておりました場合とは状況がかわつておるものが大部分であると思います。従つて、帰つて参ります場合におきまする条件もかわつておりまするし、また先方におきまして、集結をいたしまして、そうして乗船するまでの間の問題等も、従来とは異なつ状況にあるということは考えなければならぬ。また向うにおきまして普通の生活を営んでおる人が大部分であると考えられますので、これらにつきましても、向うにおきまする財産等の問題もございましようし、従来と違いましたいろいろな問題がございますので、これらの点を考慮いたしまして今後の受入れ態勢はとらなければならぬというような考えをもちまして、大体考えておりまするのは、向うの港からこちらに引揚げて参ります港まで、それからこちらの港に着きまして、ある一定の引揚げたときのいろいろな事務をいたします、手続をいたします、その援護の問題、それからそこから郷里に帰りますまで、定着する場所に帰りますまでの援護の問題、帰りましてからあと援護の問題、これだけのものを準備しなければならぬのであります。  そこで、先方におきまする援護というものはいろいろ問題があろうかと存じます。つまり向うの土地におきまするところの援護につきましては、いろいろの問題があろうと思いますけれども用意といたしましては、やはりこれが集結乗船までの準備ができないというために帰れないということがあつてはなりませんので、これに対しましても万全の措置は講じておかなければならぬ。これにつきまして、どの程度経費がいりまして、その経費がどういうように負担されるかという点については、おそらく今後の折衝にまつところではないかと思いますけれども、われわれの事務といたしましては、これに対する措置を一応考えておかなければならぬ。これに対する方針ははつきりさせたいというふうに考えまして、これにつきましての準備をいたしております。どの程度経費がかかりますかということは、従来個別引揚げ大分帰つて参りましたので、それらの事情がわかつております。従いまして、それらを基礎にいたしまして、最低限度どの程度かかるかということにつきまして考慮いたしまして、この準備をいたしたいと考えております。  次は、海上輸送の問題でございますが、海上輸送につきましては、御承知通り現在高砂丸が舞鶴港に繋留されておりまして、これは何どきでも迎えに出かけることができるようになつております。従いまして、いつ引揚げが始まりましても、第一船を出しますることはそう大して困難はないというふうな自信を持つております。ただ問題は、従来と違いまして高砂丸によりまして引揚げをいたしますると、大体一回に二千五百人ないし三千人というものが乗船できます。この二千五百人ないし三千人というものが一時に集結いたしまして乗船ができるという事情になるかならぬかということは、先方の御都合がございますので、なかなかこちらでもつて、二千五百人一ぺんに集めてくれ、それでなければ船を出さぬというわけには行きません。従いまして、一回の集結がきわめて少く、たとえば二百人とか三百人という場合に、高砂丸を出すのは輸送上きわめて不経済であります。従つてこれに対する準備をしなければならぬということが考えられます。これに対しましても、現在の政府といたしましては、配船を指示いたしまして、これを配船させるということができる法律ができておりまして、必要がございますれば、それに対する措置もできる。これにつきましては、現在運輸省の方とその点につきまして連絡をいたしておりましてこの準備も十分いたしたい、かように考えております。  それから、海上輸送の場合におきまして、船の中での問題でございますが、従来の引揚げでございますと、一つの部隊組織といいますか、隊の組織ができておりまして、その組織でもつてつて参りますので、これのいろいろの世話をいたしますことは非常に簡単でございます。ただ今回になりますと、皆ばらばらの者が集まつて船に乗るのでございますから、これにつきましての措置は、従来と同じようには参りません。従つて相当これには手がかかるというように考えなければなりませんので、これにつきましては、そのつもりで準備をいたしております。  それから、船内の所要物資につきましては、従来準備をいたしておりますので、これにつきましては、従来の準備でもつてできるというふうに考えております。  それから、引揚げて参りまして検疫をいたします。またこちらに帰りましていろいろな入国の手続その他をいたさなければなりませんが、これにつきましては、現在舞鶴の援護局に各種の準備ができております。大体一回に二千人ないし三千人はこれに収容することができるようになつております。もちろん一ぺんに一万人も同時に船で帰つて来るというような事態が、万々ないと思いますけれども、万一ありますような約束がもしできましたならば、その場合には、これに必要なる対策を立てなければなりませんので、これにつきましては、従来から持つておりま設備、非常に多数のいろいろの設備を持つておりましたが、現在ほかに使わせておりますので、それに対する措置は講じなければならぬというふうに考えております。しかし、現在のところ三万人でございますので、向うにおきまするところの現在の人の配置の状況から見まして、一ぺんに一万人、二万人とどつと帰つて来るということはなかろうというふうに考えます。従いまして、現在のところでは、舞鶴援護局の設備でもつて、これを補修いたしますれば、十分受入れられるのではないかというふうに考えております。しかし、これは今後の交渉次第によりましては、適当の措置を講じなければならぬというようなことがあると思つております。局内における援護は従来通りでありますが、もちろんこれにつきましては、経費等が、従来とは物価等もかわつておりますから、これに対する必要な措置は講じなければならぬというように考えております。  それから、帰還いたしました際に、一番われわれとして考えておりますことは、ぜひこの際、従来ございませんでした帰還手当を出すようにいたしたらどうだろうか、——帰還手当を出しませんと、こちらに着きまして、しばらくの間困ると思いますので、これを出すようにいたしたい。これはまだ財政当局は了承いたしておりませんので、何とも申せませんが、われわれはそういたしたいと考えております。  それから、帰りまして定着地まで行きます陸上輸送、これにつきましては、主要な駅におきまするところの各種の援護の問題は、従来同様十分なる措置をいたしたいと考えております。  それから最後には、定着援護でございます。これにつきましては、いろいろ問題がございまして、第一に職業問題、これは労働省の方におきまして、職業問題については十分準備されますように、先般来労働省と連絡をとりまして、この程度引揚げならば労働省といたしましては特別の措置を講ずるということを言つております。  それから、帰りました者の定着いたします場合に、こちらに留守宅のございます人あるいは縁故者のございます人は、一応そこにおちつくということができるのでございますが、全然無縁故の人あるいは縁故のきわめて薄い人、あるいは縁故者のところにおきましておちつくことができないような特殊の事情のあります人、こういう人に対しましては、その方々がどこに定着するかというようないろいろの問題もございますので、一応一時的にそういう方々を定着させるための収容施設が必要でございますので、これにつきましては、従来持つておりますところの収容所あるいはその他の場所につきまして、一時収容施設を整備いたしたい、かように考えております。  それから、実際に定着いたしました場合の引揚者の住宅につきましては、これは新たに新設をいたさなければなりません。これは、全然無緑故者の引揚者に対しましては従来も新設いたしておりますので、これも従来と同じように無緑故者の引揚者の住宅を新設いたしたい。これにつきましては、その経費を要求いたすつもりでおります。  それから、応急家財、燃料費、それから更生資金というものにつきましても、従来と同じように、これについては援護いたしたいと考えております。  それからなお、こちらに参りまして、そういう方々を受入れる国民全体の態勢というものも必要でございますので、これにつきましては、従来と同じような愛護運動の経費をこのためにとるつもりで、大体そういうようなものにつきまして、一応計画をいたしまして、準備をいたしております。  なお、現在通常の引揚げに対しまして、従来の基礎によりまして、約一万人分の受入れの経費を持つておるのでございます。このうちで、個別引揚げでもつてつて参りました者の援護に対しまして、従来相当使つておりますので、現在では一万人分はございません。大体八千人分くらいの経費に相なつております。これが足りなくなりました場合には、ただちに予備金その他の財政措置を講ずるというのが、従来予算をとりますときからの約束であります。これは問題がないと思います。先ほど申し上げましたように、従来と違つたような措置をとるにつきましては、急速に態度を決定いたしたい、かように考えております。
  32. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 大体大要を承りましたけれども、たとえば、向うから集結して乗船する、そして出帆してこちらに帰つて来るまでの費用なども、これは人数もありまするし、距離もありまするし、いろいろ問題があるかと思いますが、それをも含んでおりますから、大体の見当といつてもむずかしいかもしれませんけれども援護庁長官の方では、この三万人の受入れに対し、大まかに言つてどれくらい金がいるという腹でやつていらつしやるか、そこがはつきりしないのですが……。
  33. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 これは、やり方によりましていろいろかわつて来ると思うのであります。それからもう一つは、どういうふうな船を使うかということでも大分違つて参ります。と申しますのは、向う集結の仕方によるのでありまして、金の目算というものができないのであります。従つて、方針をはつきりいたしておきますれば、あとの財政措置は、どうしてもしなければならぬということになりますので、方針の方を早くきめたいというふうに考えておりまして、できますれば、これはそう日がかからぬうちに決定するようにしたいと私は考えております。
  34. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 それでは、なるべく早く計画をお立てになつて、たとえば今の外務大臣の御答弁を承りましても、三万人は帰つて来るという建前をとるということをはつきりおつしやつておるのでありますから、援護庁におかれましても、三万人を建前として、はつきりした御計画をお立てになり、大要をこの国会に、なるべく近い機会発表していただきたい。  それから、微妙な問題でございますが、ただいま高砂丸が一隻待機しておる。高砂丸は一隻で二千五百人から三千人を収容できるのでありますから、これは一隻で事足りますけれども先ほどお話のように、二百人や三百人の引揚げには、この大きな船を持つて行けないという場合に、本会議でもだれかが発言をされましたが、この間船舶貸借協定で問題になりましたフリゲート艦をまわしてそして引揚げに使うというようなことは、よもやあるまいと思いますが、ちよつと聞いておきたいと思います。
  35. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 われわれの方では、それを使うということは全然考えておりません。他の方で考えているかどうか存じませんが、引揚援護庁の方では、向うで帰すということであるから、そういう必要はなかろうと思います。これはほかの方の御都合はどうかと思いますが……。  それから、先ほど申し上げました三万人帰るということは、私どもも大体三万人帰るつもりで準備しなければならぬ、こういうふうに考えております。
  36. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 それから、舞鶴の施設でございますが、最近われわれも、この施設がどういうふうになつておるか、一時とだえておりましたから、見せてもらつておりません。従つて非常に案じますが、予備隊が使つておりまして、一部取残されているといつた感じを受けるのでありますが、この舞鶴の施設には、目下援護庁の方から手をまわして、受入れる態勢をほんとうに始めていらつしやるかどうか。そのつもりだけかどうか、承りたいと思います。
  37. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 舞鶴の現在の施設は、御承知通り一応二千五百人から三千人は一時に収容できる設備を現に確実に保有いたしております。それ以上一時に帰つて来るということになつた場合には、現在おります保安隊にのいてもらわなければならぬというふうに考えておりますが、先ほど申しましたように、従来の状況から見ましても、そういうふうなことは万々ないと思います。一回に二千五百人ずつやりますと、一箇月たちますと、大体一万人以上の者が循環するわけであります。一箇月一万人、三箇月には三万人で、全部帰れるという計画であります。  それから、設備につきましては、現在職員がそこにおりまして、今だれも帰つて来ないのでありますから、その設備の監視には十分努めております。この間私も見て参りましたのですが、掃除等も非常によく行き届いております。ただ引揚げが始まりますと、従来と違つたようなことになりますので、いろいろそれを整備しなければならぬ部分がございますので、現在向うの方と連絡いたして、その点については遺憾のないように措置をさせております。なお、今後大きな引揚げのある場合については、予算的措置もしなければなりませんので、早急に準備したいと思つております。
  38. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 質問あと先になりましたが、集結して乗船されるまでの抑留者の費用の問題ですが、これはむしろ外務省の方でお話合いになるのじやないかと思いますが、実際にあちらで相当な給料をもらつて、食うには困つておらないという抑留者からの手紙によりましても、出帆する港へ行くだけの金をためる余裕は、元気で働いている人でも実際にないということをはつきり言つて来ております。従つて、これは非常に大事な問題でありまして、日本政府の方において、集結して乗船までの費用云々について、まさかそんなことはおつしやらないと思いますけれども向うが半分持てとか、こちらで出ししぶるというような態度をとれば、引揚げ促進をはばむと思いますので、援護庁の方におかれましては、外務省と連絡をとつて、万遺憾なきを期せられたいということを私は要望いたしておきます。
  39. 佐藤洋之助

    佐藤委員長 田中君。
  40. 田中稔男

    ○田中(稔)委員 日本国民は、いかなる政党に所属しようと、またどういう思想を抱こうと、これは自由であるということは、現行日本国憲法が保障しておるところであります。ところが、今度中国から引揚げて来る人々の中には、信念として共産主義思想を持つている人も相当あるだろうと私は推測するのです。と申しますのは、御承知通りに、現在中華人民共和国政権は共産政権ではないと思いますけれども、少くとも共産党を中核とした連合政権であるということは間違いない。しかも、北京政府ができましてから三年有余の行政の実績は、われわれがいろいろな出版物で読んだり、あるいはここにいる同僚帆足君や高良参議院議員の方々からいろいろお聞きしましても、相当よく行つておるようです。ことに現在中国の東北と申しております、かつての満洲における経済復興というものは、非常にすばらしいものだということであります。そういう実績を目のあたり見て、北京政府、すなわち共産党を中核とする北京の連合政権が非常にいいものだということで、共産主義に傾いている人も少くないじやないかと私は思います。もしそういうことで帰つて来た場合に、私ちよつと心配になるのは、先年ソ連から大量に引揚げが行われました当時、舞鶴なんかにおきまして、当時のCICだと思うのでありますが、占領軍の関係者か何か出張して参りまして、しさいにわたつてシベリアあるいはソ連の一般のいろいろな事情について尋問をし、ある場合には肉体的、精神的な拷問にわたるようなことまであつたということを聞いております。この事例は非常に多いのでありまして、私の知つている人の中にもそういう人があるのでありますが、今は占領状態は終了しておりますけれども、鹿地君の事件のごとき、日本が独立いたしました後におきましても、長きにわたつて不法監禁が行われたという事実もあります。また三橋何とかという人につきましては、初めはソ連のスパイで、後にアメリカ側がこれを逆にアメリカのスパイとして利用したというふうな新聞報道も出ております。あるいはこれは初めからアメリカのスパイであつたかもわからない。しかもそれが引揚げ当時にさかのぼるようなことも言われておりますから、私は、舞鶴あたりで、そういう米軍の関係者、——あるいは日本側関係者もあつたかもわかりませんが、そういう審問というか、尋問というか、いろいろな働きかけがあつて、それがあるいは米軍によつて対ソ諜報機関の人として利用されるというようなこともあつたのじやなかろうかと推測する。今度中国から引揚げて来られる人について、まさか今度は米軍においてそういう行動があるとは思いませんけれども、現在日本にありますところの、公安調査官というものが舞鶴に出張いたしまして、かつてソ連からの引揚者について行われたようなことがありますならば、せつかく引揚げ人々が、日本国憲法によつて保障された当然の権利と自由を奪われるばかりでなく、非常に不愉快な思いをすると思うのであります。この点は非常に私は重要だと思いますので、引揚げはまだ開始されておりませんけれども、今からやはりこのことは関係当局の人たちに御所見を承つておきたいと思う。これは引揚援護庁だけに関係したことではありませんけれども引揚援護庁がとかく第一の当事者でありまして、関係官庁その他とも御連結いただいてお考え願わなければならぬことでありますので、まず長官の御意見を伺いたい。
  41. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 引揚援護庁といたしましては、そういうことは全然考えておりません。御承知通りに、引揚援護庁といたしましては、向うから帰りました方々がこちらに定着されるのを援護するのが職務でございまして、それに必要なる範囲以外のことは一切いたしません。
  42. 帆足計

    帆足委員 援護庁長官外務政務次官にお尋ねしたいのです。第一に、中国の実情を私幸いに見て参りましたが、先ほどの三万人と申しますのは、中国の発表にはこう書いてあるのです。現在中国に在留している日本人はどのくらいいるか、それに対する答えが、合計三万人前後、こう書いてあつて、その後に、中国における日本人の生活、公私企業の中で働いている日本の従業員は、わが国の労働法令の保護と労働保険の待遇を受けて、生活は次第によくなりつつある、こう書いてある。現在月に二百万以上の送金が日中友好協会に来ておるのでありまして、すでに三千万円ほどのものが送られて留守家族の方々に対してお手伝いをしているような状況と聞いております。従いまして、先般の会議でも申しましたが、ソ連の引揚げの場合と違いまして、あのときは一挙に何万人という人が捕虜として帰つて参りましたけれども、今度の場合は、生業として向う仕事に従事しておりますから、そのうち家庭の事情で一挙に第一班として帰るという人がおそらく何千人になりましようか、その第二班に属する者は、こちらの就職の状況受入れ態勢状況とにらみ合せてお帰りになるというようなことで、あるいは三万人全体でなく、実際の希望がどれくらいになるかということは、そういう点も関係がありますので、今度委員になられた方方は、公正、合理的な見地からよく実情を調べて、そして留守家族の方々の状況を十分伝えて、向うに働いている人々事情もよくのみ込んで、無理の行かないように快くお世話をしなければならぬという点で、ロシヤから帰る場合と違つた点があろうと思う。その点で、今般援護庁のお役目は、前より一層懇切丁寧に十分な準備をしていただかなければならぬと思いますが、その点を援護庁としてはただいまとりあえずどういうふうに見通されておられるかまたは実情がまだわからないから今後の調査にまつというのであれば、それでけつこうですが、ただ三万人一挙に帰つて来るということについては、私はもう少し調べる必要がありはせぬかと存じております。  第二には、ただいま田中君から申しましたように、帰りました方々の就職のあつせん、これが非常な大問題でございます。それとの連関で帰国の手順もきまるというようなことが、日本から北京に代表が参りまして折衝しますときに、やはり議題になるのじやなかろうかと思います。向うは非常に計画的な国でありますから、日本側受入れ態勢のことを、——向うに在留邦人の日本人会というものがございますが、その会からいろいろ連絡されると思うのです。日本側としてどういう準備があるか、そういうことについて、こちらも、終戦以来残つて苦労されて来た同胞に対して、十分それにこたえ得るような資料を持つて行くことが必要だと思う。国会では最終決定は出ていないが、堤さんの御質問のような点については、援護庁長官として、こういうような準備をしておりますということを答え得る材料を持つて行かないと、向うはなかなか組織的にものを考えるような訓練を受けておりますので、そういう準備が必要じやなかろうかと思いますが、それについての御見解を伺いたいと思います。  第三に、これまで旅券法規定を破つて中国に旅行した人がおるという外務省当局のお話でしたが、実はそれは、外務委員の方々が旅券法をおつくりになつたときの速記録を読めばわかります通り日本旅券法というものは新憲法のもとにできておりまして、政府の趣味によつてどこそこに行つてはならぬというような規定はないのでございます。もしそういうことが許されれば、社会党が政権を持つたときには、資本家の諸君はどうもパリの国際会議には気勢が上るから行つては行かぬとか、そういうような政府の趣味によつてかえるというようなことになるのでありまして、たとえば中山マサさんはパリには行かぬ方がよかろうと、逆に高良さんが政府の側に立つたときに言われたならば、私はそのときには中山さんを守ります。たとい私が社会党に属しておろうとも、そのときは、高良さん、あなたの言うことは間違つていると言つて、やはり新憲法に従つて、私は社会党の左派であるけれども、中山さんの基本的人権を守る。私は、国会議員として、そういう人権を守るような合理、公正な人間であります。従いまして旅券法規定は、今どちらが正しいかということは、法理的に見ましてもボーダー・ラインでございまして、法を犯したというような性質のものでなくして、現に法制意見長官は、参議院外交委員会において、そのことをすでに証言しておるのでございます。そしてこの問題は今裁判になりまして、来年の三月に公判が開かれる。裁判所も非常に苦慮いたしまして、これは道理から言えば民間側の意見の方が正しいけれども、しかし政府との関係もあつて、慎重な裁断を必要とするという状況になつておる問題でありますから、軽々しく個人を傷つけるような発言は懐しんでいただくのが中庸の道でなかろうかと私は存じております。高良さんが今人選に上つておりますことは、きようの新聞で御承知通りですが、高良さんは李徳全女史と非常に親しいのでございます。私ども男でございますから、李徳全さんのような色の黒い——あの人は元憑玉祥将軍の細君であつた人で、非常な女丈夫で、格別の秀才でございます。衛生大臣と人道問題、たとえば託児所の問題とか浮浪児の問題とか、こういう問題を引受けている方でございます。その女丈夫は、とても私どもの歯には立たない。それから赤十字の方がジユネーヴでお会いしたときも、エレヴエーターの中でもほとんどあいさつもなさらぬ。感情が悪化していたからでしよう。ところが高良さんとは、——高良さんもなかなか巴御前のような方でありますので、大いに肝胆相照して、いつもホテルに行つてみると、李徳全さんと一緒に御飯を食べていた。こういう人をわざわざ傷つけるこはよくないい。高良さんは良心的なクリスチャンで、コミユニストでもなく、わが社会党員でもない。ああいうラジカル・デモクラツトというのは、アメリカあたりに行くとうようよしている。そういう人に対する理解力がなくて、ああいう人に赤のレツテルをつけて、今裁判所ですらその判断は怪しい状態であり、法制意見長官政府側が大体無理であるというような意味のことをすでに参議院の外務委員会で立証したようなこともあつたようなボーダー・ラインの問題、この問題に対して、私は外務大臣や次官の御解釈が必ずしも悪意に満ちたものとも思いません。しかし、公平に、少くとも法学部を卒業した者であるならば、この問題がボーダー・ラインの問題であるということは周知の事実であります。こういう悪意なきコスモポリタンの旅行に対して、わざわざ事を構えて高良さんだけ行かせない。それが一体李徳全女史にどういう感じを与えるかということは、火を見るよりも明らかでございます。まことに心なきことをきようは外務大臣は言われたものであるかな、やはり官僚というものは学識教養が低いからこういうことになるのであろう。こう思うわけでありますが、外務省に籍を置かれておる以上、もう少し闊達なる精神を持つていただきたい。従いまして、この点は闊達をもつて主義とせられる自由党の方々も、実は私は腹では共鳴なさると思うのです。国会議員というものは公正、合理でなくてはなりません。それが人権に関するという、憲法、法律に違反するようなことについては、他党の方といえども弁護してあげるというだけの私は度量が必要であると思います。従いましてそういう趣旨をもちまして、外務次官はただいま私の申し上げたことを聞いてくださつたことと思いますので、この問題についてどうお考えになるか、もし先ほどの御答弁を補うことができませんでしたならば、この問題は慎重な考慮をします、研究中だというふうな御答弁でもいただかなければ、先ほど外務大臣のおつしやるような、花も実もないような御答弁では、さつそくこの問題はデツド・ロツクにぶつかると私は思う。李徳全さんと高良女史との関係がどういう状況かということは、私はよく見て知つておるのです。わざわざそういうことをなさるというのは何ですから、次官としては大臣の補佐の責任があるわけでありますから、どうか私の意のあるところをおくみとりくださいますようにお願いいたします。
  43. 中村幸八

    中村(幸)政府委員 ただいま旅券の問題につきましていろいろお話がございましたが、外務省といたしましては、先ほど大臣が御説明申し上げましたように、旅券法違反の疑いある者に対しましては、再度旅券を発行するということは好ましくないと考えるのであります。しかしながら、また他面、その問題にこだわりまして、とやかくいたしまする結果が、引揚げが遅れるというような事態に立ち至りますことを私どもは最もおそれるのでございます。そういうことのないように善処いたしたいと考えます。
  44. 佐藤洋之助

    佐藤委員長 この際、帆足君の問題にも関連いたしますから、ちよつと御披露申し上げることがございます。昨十二月二十五日に、日本衆議院議長大野伴睦の名によりまして、中国紅十字会会長季徳全女史に電報を送りました。その電文を御披露申し上げます。   中国よりの日本引揚げ国民各層をあげての重大関心事であるのにかんがみ、各派からの要望により、国会議員各派の代表六名を日赤以下御指定団体代表に同行せしめたく、貴会会長の特別の御配意を得たい。至急御返事を御願いする。  右電文を打ちましたから、御了承願います。(拍手)
  45. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 先ほど質問になりました点でございますが、三万人を一時に帰す、あるいは三万人をすぐみな全部帰すということでないことは、私も読んで承知いたしました。これは、内容がどういうふうなのか、よくわかりませんが、北京放送では、三万人の居留民がおる、そのうちで帰還を希望する者はいつでも帰すという趣旨であることは、よく存じております。ただ、向うにおられる方は全部こちらに帰りたいと思つておられるだろうと思いますので、三万人の準備はしなければならぬということを申し上げたのであります。  なお、これは御承知と思いますが、向うから帰つて来ます人々、つまり日本国と他の国との間を往復いたします者とか、こちらに帰ります者を一切引揚援護庁でお世話をするというのではないのでありまして、帰りたいけれども現在帰れないという状態にあります者を、この際集団的に一挙に帰したいというのがわれわれのつもりでございます。従つて、のんべんだらりと、二年、三年、あるいは五年、十年もかかつて、帰りたいという者をお世話をするのではありません。先ほど仰せになりましたように、財産の始末とか、あるいは身辺の整理だとかございましようけれども、現在帰りたいと考えております者が全部帰れるかということは、期間のある問題だと思います。ただ五年も十年も先になりまして、あのときは帰りたくなかつたけれども、今になつて帰りたくなつたという者までお世話をすることは、この際私どもとしてはできない。私どもとしては、平常と申しますか、今アメリカとか南方におられる方々が帰つて来られますようなものにつきましては、われわれの申します引揚げとは見ておらないのでございます。もうすでに帰れない状態で非常に困つておられます人をこの際できるだけ早く帰したいというのが現在の趣旨でございます。ただお話通り、一挙に三万人がどさつと帰つて来ることは考えておりませんが、その期間がどのくらいが妥当であるかということは十分考慮しなければならぬと思います。
  46. 帆足計

    帆足委員 他の同僚議員の御質問もありますので一言だけ申し上げますが、ただいまの三万人の問題も、見通しは私どももそういうふうに考えますから、実情に即してやる必要があると存じておりますが、援護庁の方としましては、何としましても広義に海外同胞の引揚げを助けるのが仕事だろうと思います。私は、その中の相当の部分が、やはり日本に帰つても、もう一度向うに行きたいとか、それから嫁をとりに帰りたいとか、奥さんを連れてもう一ぺん向うで就職したいというのがあると思います。これは、移民問題の促進決議案を国会は満場一致で通過させましたが、実はこの問題との関連がありまして、ロシヤの場合は、あるいは捕虜としてただ帰るだけでありますから、あそこで移民という問題はないのでありますが、中国におられる方は、移民とこの問題とのちようど中間に当るわけでございます。つまり移民的性格を持つておられる方と捕虜的性格を持つておられる方、こういうものがありますことをよくお含みくださつて、またさらに詳細にお話合いのできるようにお考え願いたい。その点どうお考えでございますか。
  47. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 ただいまのような事情の方もおありになるかと思いますが、現在引揚援護庁でいたさなければならぬことになつておりまする引揚げ問題は、ただいまのようなお話の方は一応含まないのが建前でございます。そういう方々につきましては、御自分都合で出入できるかということは、それぞれの所管のところでお考えになることと思いますが、帰りたくても帰れないという、こういう終戦後の特殊な事情にありますものをわれわれの方で扱つておりますので、その点は御了承願いたいと思います。
  48. 受田新吉

    受田委員 同胞引揚費が国家予算の中にずつと盛られて来たわけでありますが、現在この同胞引揚げについて私数字用意して来ませんので、政府として御答弁いただきたいのですが、この同胞引揚費はとかく他の方面に流用するという傾向が多分にあつたのでありますが、現在のところ三万人の一時的な受入れ態勢をまかなつてなおかつどのくらいあと余るか、そういう数字の点で御答弁いただきたいと思います。
  49. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 御承知通り、同胞引揚費は、当初は全部その年にみな帰つて来るという建前でもつて、最初から三百万なら三百万というものを帰すというつもりで計画を立てたものでございますので、年度末になりますると、これが残るのでございます。残るために、その費用を他の方に使うようなことに予算の組みかえをやるというようなことをいたしたことが前にあるのでございます。ただ昭和二十五年にソ連からの引揚げがとまりましてから、その後引揚げがぼとんどなくて、個別的にぼつぼつ帰つて来られるというような状況でございましたので、本年度におきましては、一応一万人に対する引揚げ準備をする、そうしてもし急速にたくさん帰つて来るような事態になりますれば、予備金等をもちましてこれを補うという話合いでもつて、予算としましては一万人分しか組んでないわけでございます。従いまして、これが三万人帰るということになつてつて残りができるかということになりますと、全然残りができるようなことはないのでありまして、どうしてもこれに対する予算的措置はただちに講じなければならぬということになるのであります。
  50. 受田新吉

    受田委員 これは予算的措置としては非常に不親切なやり方であつて、いつでも受入れ態勢ができるような予算をとつておかなければならぬ問題です。そして、その年に使わなければ、また翌年にそれを計上して行くようにするのが、同胞愛に燃えた政府責任でなければならないのです。それを、今引揚げ見込みがないからというので、たつた一万人ほど用意しておいて、そして今度急に、月末にでも代表者行つて話合いがすぐついて、すぐでも帰すということになつた場合、予算の審議ができない間に予備金の方からでも差繰るというような行き方は、これはほんとうに急場しのぎの措置であつて原則としては非常に道を誤つておるのです。やはり、いつ帰つてもいいように、わが国家予算はちやんと用意してあるんだ、こういうことにならぬと、中共が三万人を帰すと言うときにも、日本国会でさえも予算的措置をしていないじやないか、たつた一万人しか計算していないじやないかということになつたならば、これだけでも帰つて来る人に非常に悪い印象を与えるのです。おれらが帰るときの費用までも国家の予算は計上しておらぬのだ、たつた一万人しか計上しておらぬのだということは、これは私は重大問題だと思うのです。この点は、いつ帰つてくれるかと待望している留守家族に対して、一万人のわくだけは認めて、あとは帰つてくることがあつたら、そのときにまた話合いをして予算をとるというようなやり方は、本筋を誤つたやり方であると政府に申し上げておきます。この点、今聞いて非常にびつくりしたのです。私たちも不用だつたのですが、今までとにかくこれを他に流用する傾向があつたから、この予算だけは一応とつておいてくれと要求しておいたのですけれども
  51. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 お説はまことにごもつともなことでございます。ただ、その場合にさしつかえが起らないように、これは話合いをいたしております。予算につきましては、すでに申し上げたのでありまして、政府といたしましては、一応この点につきましては国会の御了承を得ておるものというふうに考えております。国会におきましても、この点につきまして、今回も予算を審議される場合にも問題があつたのでございますが、そういう説明で通つたということになつております。ただ、それが正当でないということは、おつしやる通りであります。
  52. 受田新吉

    受田委員 これは、正当でないということを政府が認められたのであります。これは正当ではありません。これは、留守家族に対して政府としては非常に不熱心であるということを断定します。  次は、舞鶴における援護局の機構がどのように縮小されているか、現在この援護局にはどれだけの政府職員を置いて待機させておるか、そして今の受入れ態勢でここへ何人ぐらい収容するところの能力があるか、こういう問題も、もうさしあたり引揚げができるものという前提のもとにわれわれは考えておきたいのでありますが、この舞鶴援護局の機構について、現状を御答弁いただきたいのであります。
  53. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 これにつきましては、先ほども申し上げましたように、現在二千五百人ないし三千人一時に入れるだけの建物その他の施設を十分にいたしております。建物設備と申しますと、職員も含めて一切のものを準備をしております。援護局の職員は百八十人おります。それだけの準備をしております。帰つて参りましても、まずまず支障はないのではないかと思いますが、あるいは一ぺんに一万人がどさつと来るかもしれません。これは、そういうような話合いがつきそうだということになりますれば、そういう準備をしなければなりませんが、向うで一万人を集結する間にその準備ができるというふうに考えております。
  54. 受田新吉

    受田委員 ソ連地区から帰られた帰還者の就職状況は非常にいいように伺つておりましたが、最終で帰られた帰還者まで含めて、まだ未就職の方がどれほどあるか、その就職状況とか、更生手当を支給されておる状況というようなものがおわかりでしようか。そこに数字がなければ、概略でけつこうですが、そういうものをお伺いしておくことは、今度中共から帰られる場合の就職状況にも関連するので、御答弁をいただきたいと思うのであります。
  55. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 帰られましてから後、現在どうなつておるかということは、私の方としては最後の最後まで追及はいたしておりません。帰りました当座困るか困らぬかということは、いろいろ手配をいたしておりますけれども、その人がその後就職して、また失職してどうなつたというようなことまで追及していないのであります。帰つた年におきましては、すぐ就職される方もありますし、あるいは一応農村に入られる方もありますし、全体といたしまして、そう困つたことはなかつたというふうに聞いておりますが、これらにつきましては、最後の就職の問題は私の方ではないのでありまして、労働省がやりますものですから、その方がどうなつておるかということは、そちらの方に聞いてみたいと思います。
  56. 堤ツルヨ

    ○堤(ツ)委員 ちよつと一言だけ。先ほどちよつと落しましたが、かつて引揚げのときに、赤い旗を振つて駅で騒がれた。それで当時の司令部が、復員の定義について、家へ帰つてしまうまでは復員を完了したものとみなさないということに定義をかえたのであります。現在独立になりましたから、その指令なり通達なりは消えておると思いますが、赤い旗を振る振らないということを別に問題にするのじやございませんけれども、そういう点も相当考えておかなければならないのではないかと思いますが、復員の定義を援護庁はどう考えていらつしやいますか。
  57. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 復員は一つの手続でございますので、その点は、私どもとしましては、やはり普通の考え方で行く方がいいのじやないか、あのとき非常な特殊措置をとりましたものを、そのまま引継ぐかどうかという点は、現在の状況では、普通の平常の状況のままにしておく方がよかろうと考えております。なお、赤い旗を振るか振らないか、こういうようなことにつきましては、現在はそういう心配はなかろうと私どもの方では考えておりますし、これにつきまして、独立いたしました今日、あまりいろいろなことを言うのはどうかと思いますので、われわれとしましては、平常の状態でやろうというふうに考えております。
  58. 佐藤洋之助

    佐藤委員長 玉置信一君。
  59. 玉置信一

    ○玉置委員 援護庁長官にお伺いしますが、先刻堤委員の御質問に対する答弁の中でも長官から発言がありましたし、また去る二十三日の本委員会において、中山委員の御質問に対して厚生大臣からの答弁もあつたのでありますが、帰還手当支給の意思表示でございます。大体具体的にどういう程度の額を支給するお考えでありますか、まずこれをお伺いします。
  60. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 これは、相当程度のものを出したいと思つておりますが、まだ政府部内で話がつきませんうちに、金額を幾らということを申し上げるのはどうかと思いますので、今日この点は申し上げたくないと思います。
  61. 玉置信一

    ○玉置委員 折衝の過程であるように今伺つたのですが、今日大蔵当局とどういう程度折衝になつておるのですか、その見通しを伺いたい。
  62. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 従来全然なかつたものでございますので、これにつきましては財政当局は相当難色を示すだろうと思いますが、出すとすれば、相当程度のものを出さなければ、出したということにならない。ただ名目的なものを出しても、これは出したということにならない。出すという以上は相当程度のものを出したいと考えております。
  63. 玉置信一

    ○玉置委員 考えるだけでなく、出そうという決意があるなら、これだけの目標に対してというような、何か標準がなくちや交渉にはならぬと思います。大蔵省と交渉するには、やはりある程度の基本数というものを持つて行かなければ、ただ漠然と、出したいからわくをこれくらいくれませんかでは、通らないと思う。これは、私が申し上げるまでもなく、長官とくに御承知のはずでありますから、この見通しをさらにもう一回お伺いいたします。
  64. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 これは、仰せの通り、ただ帰還手当を出したらどうだろうと言つて交渉しておるのではありません。むろん金額を出して交渉しておるのでありますが、その金額がきまらぬうちに公にいたしますことは、今後の予算折衝において支障がございますので、そういう事務的のことは、この際申し上げるのは避けたいと思います。しかし、これにつきましては、皆様方の御援助も、御発言もございますので、その発言を力といたしまして、大いに努力をいたします。
  65. 玉置信一

    ○玉置委員 折衝の過程であつて、かけひき上、今交渉経過を発表することはさしつかえがあるとすれば、私は無理にお聞きいたしませんが、しかし相当な決意を持つて折衝をして成果を上げるように、特に要望いたしておきます。  次は、更生資金の問題でありますが、先ほどちよつと触れられたように私承つたのですが、更生資金の貸付をするということになりますと、新規財政支出を要するのではないかと思いますが、これに対してはどういうお考えを持つておられますか。予備金等によつて支出をしようとするお考えでありますか、それとも二十八年度予算をもつてこの措置を講じようとするのであるか、なおこれに対しての額はどれくらいの見通しであるか、これを承つておきたいと思います。
  66. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 更生資金につきましても、この引揚げに要しまする予算といたしまして、一括して計算いたしております。これにつきましては、あるいは一部は二十八年度になり、一部は本年度になるということになるかもしれません。結局引揚げを開始いたしまして、こちらに人が入つて来て、定着して、さて何をするという目標ができたときに、その金があるようにしなければならぬ。非常に急速の場合におきましてはどうするかという御懸念があることと思いますが、これにつきましては、御承知通り現在相当多額の更生資金が出ておりまして、これの償還金が相当額返つております。これを優先的にそつちの方にまわすようにいたしたい。もしそれができないような場合には、何とか処置いたしたい。しかし、私どもといたしましては、当然それは循環すべきものと考えておりますので、新規のものといたしまして要求いたしておるのであります。
  67. 玉置信一

    ○玉置委員 次は、住宅の建設に関しての御所見をお伺いしたいのですが、全額国庫負担とするような御意思がないかどうか、この点をちよつとお伺いいたしたい。
  68. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 これは、要求の仕方は従来通りだと思つております。やはり従来の引揚げ住宅と同じような総額の八割補助でもつてつて行きたいと思つております。     —————————————
  69. 佐藤洋之助

    佐藤委員長 この際、遺家族援護に関して質疑の通告がありますので、これを許します。平川君。
  70. 平川篤雄

    平川委員 さきほど外務大臣の御出席中に、大臣は非常に急いでおられたので、あまり追究することはしなかつたのでありますが、御研究をなさつておらないように私は見まして、非常に残念に思うのであります。幸い外務政務次官がおいでになりますので、フェザーストン収容所事件につきましては、似よりのいろいろの問題があろうかと思うのであります。一方におきましては、ヒューマニズムの名前において苛酷な戦争犯罪に問われておるたくさんな日本人があるのであります。かような、外国で起りました俘虜の大量虐殺、殺傷事件というものに対して、わが国民として泣き寝入りをしなければならぬということは、これは国民感情の上で、どうしても忍ぶことはできない問題であります。私どももまたヒューマニズムの名においてこれを処断しなければならないと思う。独立した現在でございますから、早急にさような措置もとりたいと思うのでありますが、そこにはやはり国家的な問題もありましようから、実は私は本会議等における緊急質問をよしまして、引揚げ委員会において問うておるのであります。これは私、むしろ外務省に対しての非常なおもんばかりがあつて、この委員会へ問題を提起したのです。それに対して、外務省当局が、国民的な感情というものを忘れて、いいかげんにしておくようでありますならば、私どもは別な方法をとらなければならぬと思う。私もいろいろな点を考慮いたすだけの分別はとりたいと思うのでありますから、そこは腹を割つて、いろいろ御調査になり、外務大臣の御所見を開陳せらるべきであろうと思いますから、これは政務次官も一層外務大臣を御鞭撻いただきまして、早く御見解をお漏らしいただくように願いたいと思います。  さて、その問題につきまして、この前いろいろ御研究を援護庁の方にお願いしておいたのでありますが、前から問題になつております、例の瀬戸内海で船が沈没いたしましてたくさんな引揚者がなくなつ事件がございまして、これが援護法を適用できないで困つておつたのが、救われたかに聞いておるのでありますが、一体このフェザーストン事件で死にました者、あるいはけがをしました者は、戦死か、変死か、あるいは公務傷害か、非公務傷害かという問題がひつかかつておる。これは、恩給法の建前から言うと、いけないかもしれませんが、援護法の建前から言えば、私はさしつかえないのではないかと思うのです。しかもこれは戦時中に起つた事件でありますし、ただいまの例のように、日本に帰りまして、家に帰り着かないうちに転覆死亡した者にもその適用の範囲が拡げられるとすれば、これは援護法の範囲だけで簡単にできる問題ではないかと思うのでありますが、そういう点について援護庁長官はどういうふうに御判定に相なるおつもりか、今の瀬戸内海の事件と関連をして御見解をお示し願いたいと思います。
  71. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 ただいま御指摘になりました事件につきましては、前前から研究をいたしております。われわれといたしましては、何とか援護ができまするようにいたしたいというつもりをもつて、いろいろ検討いたしておるのであります。御趣旨通り、きわめて気の毒な例でございまして、これを遺家族援護法で援護できるようにいたしたいというのがわれわれの希望であります。現在の法律をもつてできまするか、あるいは改正が必要でありまするか、これらにつきましては、ただいま検討いたしております。改正せずにできますれば、なるべく改正せずにいたしたい。第十東予丸の問題は、法律を議員提出で御改正になつた。あの場合は特殊の例外といたしまして、ああいうようなものが入るような改正をされたのでございます。それでできるようになつたのであります。今回の場合でも、これは改正すればできるだろうと思いますし、あるいは改正しなくてもできるのではないか、——われわれの方ではそういう解釈ができるように努力いたしておるわけであります。
  72. 平川篤雄

    平川委員 改正をするにいたしましても、今の瀬戸内海の事件の場合でも、これが今のように非公務による死亡であると、認定せられたら、やつぱりいけない。その根本の考え方をなるべくかえる必要がある。もしそういうりくつなしに、あれが議員立法として特殊な例外として入つたとすれば、少しこれは理不尽なところがあるように思う。これはわれわれの方から言うのはおかしいのでありますが、そこに私はりくつがあると思います。そのりくつを適用するとすれば、私はあらためてやかましい問題にならないと思いますが、長官はその点はどういうふうにお考えになつておりますか。
  73. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 法律をもつてはつきりと、公務でないものを公務で死亡したものとみなすという規定を議院の方でなさつたわけであります。従いまして、この場合はそういう意味でできるということになるのであります。われわれとしましては、むしろ改正せずに、現在の規定のままでもつてそういう解釈ができるのじやないかということで、検討いたしておりますので、この問題については早急に解決いたしたいと思います。もしできないといたしますれば、法律を改正するということになるのであります。
  74. 平川篤雄

    平川委員 こういう特殊な例につきましては、特に審査会が設けられておると思いますが、そういうものの中で御決定になる方法があるとすれば、その手続、ないしはまたその開催せられる時期等について御提案の御意思があるか、そういうようなことについて承りたい。
  75. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 解釈上できるということになれば、御承知援護審査会で議決いたせばよいことになるわけであります。ですから、解釈上できるかどうかということが先決問題でありまして、それができるということになれば、当然今の援護審査会にかけてやるということになりますので、そういう意味で、われわれとしましては、何とか適用するようにしたいという考えをもちまして、目下検討いたしております。
  76. 佐藤洋之助

    佐藤委員長 逢澤君。
  77. 逢澤寛

    ○逢澤委員 恩給局から見えておるそうですが、私は、戦残者遺族援護措置として、恩給局は現在どういうような仕事をやつておるか、こういうことについてお尋ねいたしたい。
  78. 城谷千尋

    城谷説明員 私現在恩給局に勤務しておりまして、恩給局でやつている仕事を今御質問でありますが、現在は、御承知通り一般公務員のもの、たとえば文官とか、あるいは警察官等とかいうふうなものの恩給の裁定事務をやつております。これが私の方の本来の事務であります。
  79. 逢澤寛

    ○逢澤委員 そうすると、その以外の戦残者あるいは遺族に対する措置は何もやつていないということになりますか。
  80. 城谷千尋

    城谷説明員 御承知通り、旧軍人、軍属に対します恩給は昭和二十一年二月一日以来廃止になつて、傷病軍人の増加恩給のみ現在給付しております。従いまして、遺家族には現在恩給は給付いたしておりません。
  81. 逢澤寛

    ○逢澤委員 ただいま恩給法特例審議会が設けられて、その審議会の答申に基いて、二十八年度予算には軍人恩給を何とか措置せねばならぬというのが、すでに常識になつております。従つて、その常識に基いて恩給局は何らかの活動を始める時期ではないか。二十八年度予算はすでにそれぞれの方面から要求をして、大蔵省はその要求に基いて何らかの措置をしておるのが今日の常識であります。その際に、もしそれ二十八年度においてこれを実行しようとすれば、予算的措置を講ぜねばならぬ時期になつておると思うのでありますが、これに対しては恩給局は何もやつておらぬということですか。私が尋ねんとしておる、その活動をしているかいないかというのは、そこなんでありますが、その点がわかつておりましたら、知らしていただきたい。
  82. 城谷千尋

    城谷説明員 ただいまもお話がありましたように、すでに恩給法特例審議会で建議をしております。そういうふうなわけでありまして、私の方としましては二十八年度から何とか措置をしなければならぬ、こういうような考えのもとに、事務的にいろいろ大蔵当局とも話合いをしております。そういう実情でございますから、御承知を願います。
  83. 逢澤寛

    ○逢澤委員 そうすると、やるにはやつておるとすれば、活動をしておるということになるのだが、活動をしておるとすれば、どういうふうな活動をしておるか、予算に対してはどういうような予算を要求しておるか、また特例審議会の答申に対してはどういうような研究を続けておるか、こういうようなことを、あなたの責任発表していい最大の範囲で知らしてもらいたい。
  84. 城谷千尋

    城谷説明員 第一点の予算の問題でございますが、これは先ほども申しました通り、一応われわれ事務屋としましては、審議会の答申をなるべく尊重する意味におきまして、そういうような方向から折衝をしております。  それから第二点の、審議会の答申をどういうふうに研究をしておるか、こういうふうな御質問でありますが、これにつきましては、われわれといたしましても、一般文官の恩給との関係も生じて来ますし、あるいはまた、従来恩給法で給付しておつた、その従来の恩給法との関係も生じて来ますので、そういう意味で、広く一般の恩給という問題からながめまして検討いたしております。
  85. 逢澤寛

    ○逢澤委員 研究しておるということはわかるのだが、具体的の内容について発表はできませんか。
  86. 城谷千尋

    城谷説明員 その点は、審議会の答申の趣旨をとつてこれを法律案にすること、及びこれをどうしたら事務がうまく行くかということについて検討しているわけであります。
  87. 逢澤寛

    ○逢澤委員 あなたが事務的としてはこういうふうなことをやつているというお話でありますが、事務的にいたしましても、この法律を実現しようとするのには、結局予算というものと直結せねばならぬことになるのですが、予算の要求に対しては、これは全体の予算を通じても相当莫大なものになる。二十八年度予算の一割にも達するというのが常識上の判断なのでありますが、その莫大な予算要求をやるにあたつては、今ここであなたが御説明になれる程度で私どもは得心することができるのでありますが、これははつきりしたことはわからないでもいいですが、どのくらいの予算をどういうような方法でやつているか、あるいは内閣官房長官なり、そういうふうな方面とも御協力を得て、どういうようにやつておるかという具体的なことを、いま少し詳細に知らしてもらいたいと思います。
  88. 城谷千尋

    城谷説明員 今の御質問でございますが、実はわれわれ事務家としましては、ちよつと大きな方針のことになるものでありますから、ここで説明を差控えさせていただきたいと思います。
  89. 逢澤寛

    ○逢澤委員 それでは、次の委員会には官房長官と恩給局長を一応呼んでもらうことにしまして、私の質問は終りたいと思います。
  90. 受田新吉

    受田委員 今の遺家族援護に関連して、留守家族援護法をどう考えておられるか、ちよつとお伺いしておきたいのであります。
  91. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 留守家族援護法につきましては、前年度の国会におきまして、出すように努力いたしたいと考えまして、検討いたしましたが、予算の折衝がきわめて不調に終りましたために、それの新しい立法をいたしまする効果がないということで、やめたわけであります。現在留守家族の実情にかんがみまして、留守家族援護法の準備はいたしております。これにつきましても、やはり同様に予算をふやさなければならない。つまり予算を実質的に増さないと、新しい援護法をつくる意味がないわけでありますので、この予算も現在増額いたしましたもので要求をいたしております。軍人恩給復活の答申が今出ておりますが、その答申と、それからそれに伴います私の方の遺家族援護法をどうするか、それから留守家族援護法をどうするかという、この三つの問題をあわせまして、実は同じような歩調でもつて考究いたしまして、現在要求中であります。
  92. 受田新吉

    受田委員 留守家族援護は戦死者遺族の援護とすぐ一緒に始めなければならぬことは、私が長官にこの三月にとくと御要求申し上げたところだつたのですが、未復員者の留守家族の場合——未復員者は月一千円の手当をもらえることになつております。それから扶養手当ももらえることになつておりますが、扶養手当は、その親が六十歳未満の場合には、何らお手当がありません。ところが戦死者の親ということになると、五千円の年金がいただける。それから弔慰金もいただけるということになるのですが、二男、三男がいまだ帰らざる場合には、本人の千円以外には何にもない。それも帰つたときということになると、さしあたり親の手元には入らぬ。こういうことで、大事な人がいつまでも応召されたままで帰つて来ない親は、びた一文もらわないで帰りを待つているという、実にみじめな情ない状況なんです。これを何とか是正してもらいたいということは、私が三月以来強力に申し入れたのですが、今日まだこれは解決されておりません。戦死者よりももつと残酷な状況になつておることを御承知願いたい。戦死者の場合は、戦死の公報が入れば、それが救われるのに、これら留守家族は、それさえないために、生きているとも死んだともわからないままに、苦しい暮しをさせられておる。これは不当だというので、何とか早く手を打つていただきたいと申し上げたのですが、予算も全然御用意されておりません。しかも、さつきも申しましたように、いつ帰つて来るかと待ちわびている人々に対して、帰るための引揚費も削られているということになると、この引揚問題は一応終止符を打つたのだ、国民感情から一応去つたのだという印象を多分に与えるのです。この点、政府は遺家族の問題とあわせて留守家族の問題に早く思い切つた手を打たなければならぬ。これは大変なことです。私の今申し上げた、二男、三男の親が一文ももらつていない現実、かわいいむすこが帰らないために一文ももらえないで路頭に迷つておる現実、——私は幾つも手紙をもらつておりますが、こういう悲惨な状況にあるのを、政府としてはどうお考えになつておるのですか。私はここに大きな欠陥を見出すのですが、それに手をつけようとされない政府に対して、一応お恨みを申し上げておきたい。
  93. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 政府が全然手をつけないと言われますが、結局政府といたしましては手をつけない結果になつてしまつたのでありますが、われわれといたしましては、一応手をつけておるのであります。いろいろ準備はいたしたのでありますが、遂に予算が通りませんために、予算なくして法律を出すわけに参りませんので、法律を出すことはあきらめたのであります。来年度は同様に要求することになつておりますから、やはり手はつけております。  なお、遺族の場合よりも留守家族の場合の方が非常に不利だというお話でありますけれども、現在の遺家族援護法と未復員者給与法、特別未帰還者給与法とを比べてみますと、未復員者給与法、特別未帰還者給与法の方が有利な場合もあるのであります。場合によつては片方が有利な場合もあります。遺家族の場合は非常に金額が少いのであります。そういう比較の問題があるのでありますが、遺家族援護法があの程度にとどまり、留守家族の方に対する増額あるいはこれに対するやり方をかえるという予算がとれなかつたのは、われわれといたしまして非常に遺憾に存じます。受田委員と同じように残念に思つておりまして、今後は大いに努力したいと考えております。
  94. 受田新吉

    受田委員 木村さんに非常に努力していただいているのですが、要求したが予算がとれなかつた、また今度も要求いたします、こういうことですけれども、また予算がとれなかつたということになるおそれが多分にあるのです。この額はわずかなんです。特に今申し上げたような二男、三男の親というものは、六十歳未満の親のうちごくわずかなんです。こういう人にお餅代でも上げようというので委員会全員こぞつて要求したことがあるが、それさえ通つていないのです。年越しの餅もいただくことができないで寒空に留守家族はふるえているのですよ。この予算というのは、ほんとうに一億にも足らぬわずかな予算で済むのですから、こういうむすこの帰らぬ年とつた親に臨時措置かなんかいだだけないのですか。老齢軍人にさえもそういう手を打たれたのですが、あなたの方でそういうような措置は何とか打たれなかつたのですか。
  95. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 事務当局といたしましては、いろいろ努力いたしたのでございますけれども、いろいろな御都合でこれが認められなかつたわけで、はなはだ微力で申訳ないと思いますが、国会におきましても、それでもつて予算並びに法律のことを御審議いただいたわけです。われわれといたしましては、今後ますます努力するという以外にないのであります。
  96. 中山マサ

    ○中山(マ)委員 少し角度が違いますけれども、関連して。この間の委員会におきましては、私が朝鮮人の戦犯者の留守家族への手当のことをお尋ねいたしましたところが、この留守家族は朝鮮におるから手が届かない、それには渡らないのだ、こういうお話がございましたが、私、きのう二十九人の朝鮮人の戦犯を見舞に行つて、いろいろ話を聞いたのでございまするが、政府は戦犯者の留守家族にはみなやるところの予算はとつてあるのでございましようか。日本人あるいは朝鮮人と言わず、戦犯者と名のついた人、これを未帰還者とみなすという法律が十三国会で成立した。その線に沿いましてその家族に渡すお金はとつてあるのでございますか。
  97. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 これは、最初は未復員者給与法、特別未帰還者給与法の予算がとつてあるだけでありまして、その予算の範囲内でもつて現在のをまかなうというところでございますので、別に予算はとつておりません。ただ従来の予算で、その法律を直してやつたものでありまして、聞に合いますので、予算をとらないのであります。
  98. 中山マサ

    ○中山(マ)委員 それでは、もし日本人であれば、その家族には扶養手当が渡るわけでございますね。
  99. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 日本の本土の中に家族がおりまする者に給与を前渡しをするという法律になつておりますので、日本内地に家族がおりまするならば、これはいかなる人でありましても、給与の支給を受けるわけでございます。
  100. 中山マサ

    ○中山(マ)委員 そうすると、法律に内地という字句は入れてあるのでございますか。
  101. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 未復員者給与法、特別未帰還者給与法は、内地に家族があります者に給与を支払うように従来からなつております。
  102. 中山マサ

    ○中山(マ)委員 なつておるということじやなしに、私は、そういう字句が入つているのか、入つておらないかということを伺いたいのでございます。
  103. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 従来からそういう規定になつておらなければ、そういうことができないはずでありますから、従来からそういう規定になつておるに相違ないと存じます。
  104. 中山マサ

    ○中山(マ)委員 私、考えますに、その朝鮮の人の話を聞きますと、この前出獄するようになりましたときには、わずか千円のお金を持たせて出したそうでありますがこれはあまりにも残酷であると思います。向うの人の希望を聞いてみますと、日本人ならば出てから帰るべき家庭があるが、自分たちは、今朝鮮には帰れないのだから、ほんのわずかのお金で、その日から宿もなければ仕事もない、御飯にありつくこともできないような状態である、これではあまり残酷ではないか、だから、日本人の家族に渡す手当があるならば、自分たちにもそれを積み立てておいて、出獄したときに路頭に迷わないようにしてくれるだけの仁義は、日本人にはないのかと言つて、私はきのうは問い詰められたのであります。今の李承晩さんがたいへん反吉田気分で政治をやつていらつしやいますが、たとい小さい角度からであつても、日本のために働いた者をこういうふうな残酷な目にあわせるということは、ますます李承晩氏を反吉田——反吉田ならよろしゆうございますけれども、反日本というような立場に追い込んで行くように日本政府がしているのではないかと私はしみじみと感じたのでございますが、これに対して何か方法はないものでございましようか。いわゆる帰る家がないのです。日本人なら帰るべき家があるのです。そうしてその家族にも金が渡る。私は、あまりにも一方的であろうかと思いますが、これは何とかする方法がないかどうか。いわゆる寛容という意味と、国際信義という立場から、何とか処置ができないものか、私は伺いたいと思います。
  105. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 何とかいたす必要があろうとは私は考えております。なぜ千円で出て行くかと申しますと、これはあの法律がこの四月から施行になつておりますので、五月、六月に出ました人は、一月分のものをもらつて出たということになるのではないかと思います。これは、そういう法律になつております。法律にそうなつておるから、そういうことにならざるを得ないわけでございますけれども、これに対してあたたかい手でもつて援護をするということは、きわめて必要であろうと思います。ただこれは、国際儀礼上、国際慣行から出て来ますものであるならば、われわれの方でとやかくすべきではないのでありますが、このへたちが生活に困るということになりますれば、当然生活保護法等もかえなければならない。食糧の問題につきましても、やはりそれぞれの手でやらなければならない。つまり、こういう世話はみなで見なければならぬと思います。ただ、これに対して何らかの特別の援護措置を講ずるかどうかにつきましては、現政府がまだそれを決定いたしておりませんので、ただいまきまつておりますことをやる。——形としてはおかしな形になつておりますけれども、そういうことになつております。これがいい状態であるとは考えておりませんから、できるだけ努力いたしたいと思つております。
  106. 中山マサ

    ○中山(マ)委員 それでは、その点を援護庁長官に要望いたしまして、私もまた何らかの方法ができるように努力をいたしたいと思いますので、その際はぜひ応援していただくようにお願いして、私の質問を打切ります。
  107. 石坂繁

    ○石坂委員 実は、根本の理念の問題を含んでおりますので、厚生大臣にお伺いいたしたいと思いましたけれども、お見えになりませんので、援護庁長官に伺いたいと思います。先ほどから未帰還者の留守家族の問題につきましていろいろ質疑応答が重ねられ、私も一応了承いたしましたが、ただいま援護庁長官その他のお話で、留守家族の問題、遺家族の問題及び軍人恩給法の改正等について考慮をしつつあるというような趣旨の御答弁があつたので、この問題に関しまして、次の問題を伺いたいと思います。  第一は、一体この遺家族の問題についての政府の根本的の考え方は、遺族が困つておるから救済するというような趣旨なのか、あるいは、国家の犠牲者に対して、国家は当然の義務としてこれを補償しなければならぬという考えなのか、どちらの考えをもつてこの問題を処理しておられるかという、この根本の理念であります。
  108. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 遺家族援護の根本理念につきましては、戦傷病者戦没者遺族等援護法を制定します際に、その法律にも書いてございますし、また提案の趣旨においても申し上げてありますように、国家補償の精神に基いてこれをやるということをはつきり書いております。またはつきりそういう説明もいたしております。従いまして、遺家族が困つているからどうこうということは表向きには出ていない。ただ、できるだけ困られる人の方を優先的にしようというような趣旨援護法という形になつているということになるわけであります。従いまして、根本精神は補償の精神に立ちまして、そうして方法としましては、特に困つている人に優先的に、——つまり金額が一定に限定されたものでありますので、困つた人の方に優先的に行くようにするというような立て方をとりたいというのが援護法の精神になつております。
  109. 石坂繁

    ○石坂委員 そういたしますれば、この際援護法の改正が当然必要になつて参ると思いますが、援護法は暫定的のものであるということは、おいおい説明になつておるのでありますから、ただいまのような政府考えだといたしますれば、昭和二十一年勅令第六十八号の制限または停止を解除いたしまして当然軍人恩給法の復活の線に進むべきではないかと思います。これに対しましては、政府の諮問機関である社会保障制度審議会の意見書というものと、恩給法特例審議会の決議というものが、ただいま相当意見違つているようであります。政府は、援護法の改正あるいは軍人恩給法の改正に際しましては、どちらの意見をとられるおつもりであるか、これを伺いたい。
  110. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 これは、私がお答えするのには少し大き過ぎる問題であります。引揚援護庁といたしましては、遺家族援護法の方はやつておりますけれども、恩給法のことに関しては所管いたしておりません。従いまして、恩給法をどうするか、恩給法をやるのかやらないのかというような点については、私がお答えするわけに行かないのであります。もし恩給法が恩給法特例審議会の答申通り、あるいは答申通りでなくても、恩給制度というものによつて国家補償の道を講ずるような方法に出まするならば、遺家族援護法の中にありました部分で恩給法に移行しますものは、当然遺家族援護法から除かれるということになろうかと思います。残りました部分につきまして、遺家族援護をしなければならぬものをやつて行く。つまり遺家族援護法の方は、そういうような恩給法が制定されるといたしますれば、それに応じて改正しなければならぬ。もし制定されないといたしまするならば、われわれの希望といたしましては、今の金額ではきわめて貧弱な状況でございますので、その金額はかえなければならぬ。それからその範囲等につきましても検討しなければならぬというふうには考えております。
  111. 石坂繁

    ○石坂委員 ただいまの問題は、お話通り、これは政府の根本的の考え方に触れますので、いずれ他の機会に厚生大臣その他の方に伺いたいと存じますから、これ以上この問題については進めません。  ただ一点、これは援護庁長官にも関係があると思いますが、戦争犯罪によつて刑死いたしましたその遺族に対する処遇でありますが、これは御承知通りに、現在施行の援護法では全然除外されている。しかしながら、実際はまことに気の毒であります。Aクラスの人たちの問題はしばらくおくといたしましても、B、C級の人たちで死刑になつ人たちは、たまたま軍の命令あるいは戦争中の自分の任務のためにある地位に着いておりました結果刑に問われたという人が大多数であろうと思うのでありまして、まことにその遺族の心情及び境遇は気の毒であります。先ほど平川委員から御質問のフェザーストン事件に対しましてこれをできるだけ適用するように考えたいという長官のお言葉であつたのでありまするが、それにもやや似ているのじやないかと思うのでありますが、戦犯刑死者の遺族の処遇に対しまして現在何らかの考慮を払つておられるのか、あるいは将来何とか考えたいということであろうか、それをひとつ承りたい。
  112. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 先般厚生大臣が御答弁になりましたのも、遺家族援護法をこの間の古鷹事件に適用するということについては、戦犯の問題などのときに一緒に申し上げましたので、そういうような趣旨で申し上げたのであります。戦犯によりまして死刑に処せられました方、あるいは戦犯で抑留されておりまする間になくなつた方、また絞首刑によつてなくなつた方、こういう方々の遺族に対しまする処遇というものにつきましては、十分考慮しなければならぬものであるとわれわれは考えております。ただ現在の法律でもつてこれをやれるかどうかという点につきましては、まだいろいろ問題がございまして、われわれとしましては、何らかの適当な時期におきまして、適当な方法でもつてこれをやるようにすべきものではなかろうかと考えております。これにつきましては、恩給等につきましても同様な問題があるだろうと思うのでありますが、恩給法特例審議会の答申もありますので、これにつきましては恩給局の方においても御研究中であると思います。われわれといたしまても、それらに歩調を合せまして、十分研究して参りたいと思うのであります。
  113. 石坂繁

    ○石坂委員 こまかい問題でいろいろ法律的なり事務的なりに伺いたいことがございますけれども、これは他の機会に譲りまして、私の質問は一応これで打切ります。
  114. 佐藤洋之助

    佐藤委員長 これにて通告者の質疑は終りましたので、本日はこの程度にいたしたいと思います。  これにて散会いたします。なお、次会は公報をもつてお知らせいたします。     午後一時二十二分散会