○永田(良)
委員 私は気象の件につきまして、
ちよつと簡単な
質問を申し上げたいと思います。長い間追放でいなかに立てこも
つていたので、近、ごろの事情に通じませんから、あるいは
質問の要領等、間違つたことを申し上げるかもしれません。なおまた私はややともしますと興奮するくせがありますので、たまには脱線的な失礼なことも申し上げるかもしれませんが、そういう際におきましては、
委員諸君や当局の方でも遠慮なしにおつしや
つていただけば、脱線したことはただちに取消しをいたす覚悟を持
つていますから、この点を前も
つて申し上げておきます。われわれが若いころは、地方の測候所の気象の予報なんか、失礼ですが間々当らぬことが多いので、われわれの地方では魚でも食う場合に、測候所測候所ととなえて食うた時代があるのです。これはすなわち測候所があまり当らぬから、魚が当らぬように、そんな皮肉を言
つたのでしようが、最近は皆様方の御精励によ
つて、気象の予報によ
つてわれわれが幸福を受けている点は、まことに甚大であるのであります。この点は
国民として、当局の御熱心に対して深く感謝の意を表する次第であります。私は
中央の気象台のことはよく知りませんが、それらのことについても最近承りますと、アメリカであるとか欧州各国の
方面には、気象上の設備もずいぶん完備しておるようであります。わが国でもずいぶんや
つておられるとは思うが、まだ当局としていろいろ要求せられておることも多々あろうと思います。先ほど来
委員会の席上でも
お話があ
つたように、大蔵省との
予算関係で意のごとく設備ができないということは、これは各省とも同じことであると思います。特にこの気象観測
方面において、長年間における皆様方の
施設要求のうち、最近それが他の官庁の項目に比べて並行して
行つているか、またその平均からい
つて十分目的を達しないでいるか、よくや
つておられるか、こういうこともよけいな
心配であるかもしれませんが、お尋ねしておきたいと思うのであります。またこれは簡単な
質問ですけれ
ども、かりに新しく測候所を一箇所つくるという場合には、
場所にもよるかしれませんが、大体一箇所の設置費は何ぼぐらいがかるものか、これもこの際教えていただければ
けつこうだと思うのであります。
それから、これは地方的のことを申し上げて済みませんが、私は大隅のものですから、あの地方のことには若干体験を持
つておりますが、気象と、地方民衆が幸福を受けるか受けぬかの点について、例証を一つ申し上げ、私の希望を申し上げておきたいと思うのであります。これは昭和十三年のできごとで、測候所の当局、
中央気象台長さんその他の方々は御
承知であろうと思うけれ
ども、昭和十三年に大隅半島を突然襲つた風水害があつた。あの際大隅半島で六百有余の人命を失
つてしまつた。私は当時郷里におりましたが、一日暴雨の飛来によ
つて一地方民六百名の生命を失つた。あのとき水死した者の死骸の悲惨な
状態は、いまだに私の脳裡に深く刻まれております。ひとり六百の人命を失
つたのみならず、当時田は埋められ、がけはくずれ、家も流され、昔の間数でいうと長さ約二十何間もありそうな、十何丈という大きなすぎの木までも一里四方押し流されたことがあるのであります。これらの悲惨な水害は人間のみならず、馬、豚、鶏にまで及んで、たくさんの人畜の被害を見たのであります。当時それらの復興については、県や
政府の方にもたいへん同情していただいて、意外に早く復興したのでありますが、私はその際の県や
政府の
やり方に一つ物足らぬ点がある。それは何かと申しますと、これはただ暴風雨の一つの例ですけれ
ども、日本に襲来する暴風雨がわが大隅半島を通過することは、過去の記録において日本一、あるいは過言であるかもしれませんが世界一であるということは、
中央気象台の方も御
承知であろうと思う。しかるに香川県と同じくらいの面積の大隅に測候所の一つもないということは、
政府当局としてこれは当を得たる処置であるかどうか、この点を私は
中央気象台長さんにお尋ねしたいと思うのであります。薩摩半島には鹿児島、枕崎、串木野の三箇所の測候所と観測所があるのであります。これらは多く漁民並びに県民一般の意味からして設置されておることと思いますけれ
ども、ひとり気象台は海上ばかりではありません。陸にもかかる乱暴な、非常な被害をこうむるのであります。今私が申し上げました昭和十三年のときには六百名の人命が失われた。他のことではありません。そのかわり一般の
施設は
政府や県の力で復興していただきましたけれ
ども、この風水害の
原因は風の害か雨の害か。結果においては、風はさほど強くなか
つたのであります。私は経験者であるから申し上げますが、そのときの被害の
原因は、か
つてなき降雨が見舞つたからであります。その現象を申し上げますと、夕方から夜中の四時ごろまでしの突くような猛雨が襲来したのであります。そのころ風が衰えて来たものでありますから、われわれ大隅半島の者は、ああ、もう風がなくな
つてしまつたな、低気圧は去
つてしまつたなと言
つてぐずぐず寝こんでおりりましたら、夜明けにな
つて突然大洪水で、寝ながら一家五名も六名も、家とともに流されて三人も死んだのがあるのであります。皆さんこれは何を意味しますか。すなわち大隅半島に測候所がなくて、雨量が何百ミリに達するという、過去になかつた雨水が降つた。測候所があつたならば、ただちに警報を鳴らしてわれわれ大隅半島の住民にお知らせがあつたことと思う。これなきが
ために、六百名の人命を失い、また田畑を荒され、家の復興にもわれわれ大隅半島の者は非常なる苦心をしたのであります。すなわちこれら
政府の設置せられる測候所が、適当なる位置に設けられてあつたならば、この惨害を未然に防ぎ得たであろうと私は考えます。私はそういう気象の専門家でないから知りませんけれ
ども、さように考えるのであります。現在私
どもの地方にある雨量計などは、まつたく町村役場にある昔のものであろうと思うのであります。今これらに進歩した
方法、早く周知せしむる
方法として測候所があれば、何よりも早くその地方に知らせ得たと思うのであります。大隅は現在交通、通信の面において欠けておるのであります。薩摩半島のみ三つもあ
つて大隅にないから、大隅の人に直接知らせる
方法がなく、昨年のルース台風でもそうだ。ルース台風の被害報告は、薩摩半島だけが
中央の
新聞に報ぜられ、
中央に反映したが、私の方の大隅は、電信、電話みな線が切れて、船も無電の設備がない
ために、何ら
中央にこの被害の
状況を知らせることができなか
つたのであります。その
ためにあの暴風雨の際に、
中央から野田
建設大臣が総理
大臣の代理として見舞に来られたけれ
ども、薩摩半島ばかり被害が強かつたというのであの地方だけをおまわりにな
つて、大隅には一歩も足を入れられなかつたという事績もあるのであります。こういう点から、今後
政府の
施設としてわが大隅半島に測候所を御設置になり、またぞろかかる被害が到来する場合に、われわれ地方民を救うべきことを考えて、
政府当局に来年の
予算にでもそういうお考えがあるかどうか。もしないならば大蔵当局にも迫
つて、当時の写真も私は持
つておりますから、どうしてもかかる恵まれない地方には、こういう設備を設置されて救済されんことを要望してやまない次第であります。
このついでに、失礼でありまするが、
中央気象台長さんは
中央気象台に今まで何年くらい御勤続なさ
つていらつしやるか。また私が申し上げた昭和十三年に大被害があつた折に、大隅に御旅行あそばしてあそこを見られた経験がありますかどうか、これもついでにお尋ねいたしておきます。まず以上お尋ねいたします。