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1952-12-03 第15回国会 衆議院 運輸委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年十二月三日(水曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 逢澤  寛君    理事 尾崎 末吉君 理事 關谷 勝利君    理事 佐伯 宗義君 理事 田原 春次君    理事 正木  清君       佐々木秀世君    玉置 信一君       徳安 實藏君    中野 武雄君       永田 良吉君    松岡 俊三君       山崎 岩男君    臼井 莊一君       河本 敏夫君    吉川 大介君       熊本 虎三君    楯 兼次郎君       松原喜之次君    武知 勇記君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 石井光次郎君  出席政府委員         大蔵事務官(主         計局次長)   石原 周夫君         通商産業事務官         (重工業局長) 葦澤 大義君         運輸事務官(大         臣官房長)   壺井 玄剛君         運輸事務官         (海運局長)  岡田 修一君         運輸事務官(鉄         道監督局長)  植田 純一君         運輸事務官(鉄         道監督局国有鉄         道部長)    細田 吉藏君         海上保安庁長官 柳澤 米吉君         運輸技官(船         舶局長)    甘利 昂一君  委員外出席者         日本国有鉄道総         裁       長崎惣之助君         専  門  員 岩村  勝君         専  門  員 堤  正威君     ――――――――――――― 十二月二日  東北北海道地方に対する気象官署の  増設の陳情書  (第五六七号)  瀬高町駅に急行旅客列車停車に関す  る陳情書外一件  (第五六八  号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件 運輸行政に関する件     ―――――――――――――
  2. 逢澤寛

    ○逢澤委員長 これより開会いたします。  昨日に引続き運輸行政に関し質疑を行います。昨日の委員会において大臣に対する質疑保留の方がありますので順次これを許します。關谷君。
  3. 關谷勝利

    關谷委員 昨日各委員からいろいろと質問せられましたので、大体私がお尋ねをしたいと考えておりましたこともその中に出て参つたのでありますが、二、三大臣お尋ねを申し上げてみたいと思います。  第一にお尋ねをいたしたいのは、先日大臣がごあいさつをせられました際に、運輸行政においていずれも重要であるが、その中でとりわけ外航船腹拡充鉄道の新線建設重点を置く、こういうことを言われましたが、この二点に重点を置かれることに対しては私たちも全然同一でありまして、決してそれが悪いというのではないのでありますが、私は運輸省重大政策といたしましてもう一点、三大政策としてその中へ含めてぜひこの際に解決をしていただかなければならぬと考えておる問題に、港湾整備拡充があるのであります。これはなぜかと申しますと、港湾整備は、管理下におきましてはいろいろな事情、これを詳しく申し上げますと非常に複雑になつて参りますが、要するに占領軍におきましては、日本港湾計画というものに対しまして一種の嫉妬心のようなものを持つてつたことは争えないのであります。そのため公共事業費港湾予算を計上いたします際に、国内的に安本あるいは運輸省大蔵省等におきまして相当程度予算を組んでおりましても、あちらへ持つて行きますと、司令部でこれを半減するというふうな事態が二、三回行われた。そのために終戦前におきまして——戦争末期におきましてはもとより停止になつておりましたけれども、それ以前港湾改修をやつておりました当時におきましては、大体公共事業費の一割程度のものが絶えずこれへ振り向けられておつたのであります。ところが終戦後におきまして、非常に港湾に無理解と申しますか、理解がないのではなくして、先方で一種の嫉妬心のような関係から、これを非常に大きく削減をした。一年削減いたしましたところが、これに当時の池田大蔵大臣が年々迎合をいたしまして、向うのお気に入るようにというので、また小さくこれを削減して持つてつた。こういうふうなことから港湾の経費というものが非常にみじめなことになつておりまして、現在の全国港湾荒廃の極に達しておりますことは、運輸大臣よく御承知のことであろうと存じます。管理下を離れて初めて予算を組みます際でありますので、この際に元のような状態比率をもどさなかつたならば、またこれがそのまま継続せられるというふうなことになるのでありまして、私たちといたしましては、あの講和条約の調印をせられました後はあまり干渉しないであろうというふうなことで、当時私たち運輸行政関係をいたしておりましたために、その際にというので、いろいろ努力はしてみたのでありますけれども効力発生以前はあくまでも向うの許可がいるというようなことで厳重に規制をせられまして、目的を産することができ得なかつたのであります。今回のこの予算編成の際におきまして、大臣は、これは運輸省の三大政策一つであるということで、強硬にこれを主張をいたしまして、港湾予算を獲得するのでなかつたならば、港湾予算は永久に浮ばれず、港湾復興等はとうてい望み得ざるような状態になるのであります。今が一番大事なときでありまして、今回は、大臣がいかにしてもこの港湾予算公共事業費の率を戦前あるいは戦争中の比率にまで引きもどす、こういうふうな決意を持つていただきまして、運輸省の三大政策一つに取上げてもらうということでなければ、全国港湾は助からぬと私は考えているのでありますが、これに対して大臣はどのようなお考えを持つているか、三大政策一つとして大きく掲げてこれをやろう、予算もこの際思い切つてつてみよう。たといどのようにしてもとつてみせる、こういうふうな気構えをせられるのかどうか、決意のほど、所信のほどを承りたいと存じます。
  4. 石井光次郎

    石井国務大臣 ただいまのお尋ねまことにごもつともであります。港湾整備拡充問題につきまして、ただいまお話のあつたようなこと等について、私も省に入つて詳細説明を聞いておりますし、何とかして港湾整備拡充をやらなければ、せつかく一方において外航船腹拡充をはかりましても、それのかんじんな港の設備等が不完全な状態にあり、あるいはまた荒廃状態にあり、あるいは接収の状態が違う形で続いておるところもあるというふうな状態でありますので、これは目立たないような仕事でありますけれども、最も大事な仕事一つであるということを深く私も了承しておりますので、何とかして御趣旨に沿うような動きをいたしたいと思つております。
  5. 關谷勝利

    關谷委員 私のお尋ねいたしましたことに対しましての御答弁としては不満足ですが、運輸省の三大政策一つとして取上げるかどうか、この点をもう一回お尋ね申し上げます。
  6. 石井光次郎

    石井国務大臣 特に三大政策と申しますか、そういうふうな意味で取上げてもけつこうでありますし、また運輸省といたしますと、この間申し上げた二つの陸運の問題と外航船の問題は、これはこの間内閣の基本政策の中に入つてつた点を申し上げたのでありますが、運輸省といたしましては、それだけでなく、また航空問題にもようやくスタートを切つたばかりではありますが、これも力を入れて行きたいというふうに思つておりますので、その点はそういうふうな問題も考えまして、御趣旨に沿うような心持ちで、何かやつてみたいと思つております。
  7. 關谷勝利

    關谷委員 航空問題等もある、もちろんそうでありますし、私たちもこれは大事なことであると考えておりますが、航空はこれから発足して行こうというのでありまして、今まで予算があつたものを削減せられて、みじめな状態に陥つておるというのとこれはまた意味が違うのでありまして、今回のこの予算編成で、これを元の通りにとりもどさなかつたならば、再びとりもどすことのできないような重大な時期にあるので、私はこの点に特別に力を入れてもらいたい。こういうふうな意味合いから、三大政策一つとして大きく取上げていただく。なお航空というものはこれから力を入れましようし、なおまた漸次発展して行くものでありますが、この機会に正常な状態港湾予算を引きもどさなければならない。そのためにはあらゆる努力をするのだ。そのために運輸省二つ大きな政策がある。その上に加えて三大政策として取扱うのだ、私はこういうふうな御答弁がほしかつたのであります。大臣にもう一回重ねてお伺いをいたします。
  8. 石井光次郎

    石井国務大臣 御趣旨は全然賛成でありますし、その通り動きをいたします。わざわざ三大政策と名前をつけるつけぬは別問題といたしましても、その心持ちで必ずやります。
  9. 關谷勝利

    關谷委員 次にお尋ねをいたしたいのは、第九次船と申しまするか、前に第八次船がありましたので九次ということになります。八次の残りの五万トンが八次の後期ということになりますと、第九次ということになるのでありますが、先般大臣も、これには重点を置いて、どうしても年間三十万トンの実現を期したい、こういうことを言われておりましたので、大体御意見のほどはわかつておるのでありまするが、これに対しての大体見通しでありますが、実現性につきましては、大臣がどのような見通しをしておられるか。今までもいろいろ事務当局等経済審議庁あるいは大蔵省と交渉いたしておりまするが、まだ十分これが徹底しておらない。運輸省の案としてはできておるが、まだ閣議等においては十分これを認めるというふうな程度にまでなつておらないというふうな状態でありまするが、大体これについてはでき得る見通しがついておるのかどうか、話合いがどの程度まで政治的にはできておるのか、こういうことをひとつお伺いをいたしたい。
  10. 石井光次郎

    石井国務大臣 来年度の造船計画として、省として外航船三十万トンを考えております。引続きここ数年間はそういう範囲においてやつて行きたい、少くもその程度はやつて行きたいということを省としては考え、私も考えております。この間からの基本政策の問題をきめる場合にも、この問題に触れて説明はいたし、大蔵大臣とも話し合つたのでありますが、まだはつきりしたことを——どもとしては、今後四年間くらいは毎年三十万トンくらいずつ外航船をつくるということの心持ちの上の了解でも得ておく方がいいのではないか恵つていろいろ話合つたのであります。いろいろなそのときの情勢もあり、そうはつきりしたことは、先々のことまでも話はできにくいというような——これはこの造船だけでなく、そのほかの問題でもいろいろ話が出たのでありますが、今のところは、来年は今年と同じ程度三十万トンをこしらえるという線について、特別な反対意見も出ておりませんし、これをぜひ実現する方向にこれから話をだんだん進めて行きたいと思います。
  11. 關谷勝利

    關谷委員 大体大臣お話を承つておりますと、見通しがつくというふうなお考えのようでありまするので、ぜひその線を実現するように御努力のほどをお願いを申し上げたいと存じます。  次にお尋ねを申し上げたいのは、この海運国際競争力を養わなければならぬということは、これも大臣すでによく御承知通りでありますので、多くを申し上げませんが、利子補給につきましてはすでに決定をいたしまして、補正予算にも組まれておりまするが、損失補償の点につきましては、昨日来海運局長あたり答弁におきましても、いまだ確たる見通しがついておらない。大蔵省事務当局といたしましては終始一貫反対をしておるというのが現在の実情である。私もさようであろうと考えます。以前に離島航路整備法関係の際におきまして、この損失補償実現いたしたいと、私たち相当努力はいたしてみたのでありまするが、その当時、事務的に非常に反対があつたというふうなことで、それも実現することができなかつたのでありますが、しかしながら離島航路整備法は、融資関係が開銀その他において十分認められまして、現在実施せられておりまするので、私たちもその必要を、外航船舶市中金融と同じ程度に比重を置くというふうなことは考えていないのでありまして、やむを得ぬというふうなことで一応引下つたのであります。しかしながらこの外航船舶融資に関しましては、市中融資を円滑にいたしまするためには、どうしてもこの損失補償がなければならぬということを私たちは強く希望をいたしておるのであります。この損失補償が行われておらないために、非常に無理なと申しまするか、まあ二割増の担保を入れるとか、あるいはオペレーター連帯保証をとれとか、そういうふうなことが行われており、そのためにあるいは十五箇年間もオーナーがオペレーター隷属機関のようなことになつておるというようなことも起つておるような状態でありまして、損失補償実現いたしますると、そういうふうなことがなくなつて来る、非常に海運界が民主化されるというふうなことになつて参りますると同時に、国際競争力というものが強まつて来るのでありますが、どういたしましてもこの損失補償だけは、現在におきましては事務折衝の段階を脱しまして、政治折衝に入らなければならぬ。大臣相互の間において、これはどうしてもやらなければならぬというふうなことになつておるのであります。大蔵大臣は、私先般お会いいたしました際に、前例がないというふうなことを言つておりましたけれども前例はないのではないのでありまして、確かにルース台風木船災害復旧の際の融資に対しまして、この損失補償をやつた例もあるのであります。この際大臣から政治的に強く押していただきまするならば、実現するのではなかろうか。大蔵大臣もやらないというふうには言つておらないのでありまして、政治的に大臣相互の間において、今一押しというふうなのが現状であろうと私は存じます。この一息をどうしても大臣に押し切つていただきたい、こういうふうに考えておるのであります。大臣のお考えはどうでありましようか。これをどうしてでも通す強い決意のもとに押し通していただけるかどうか、この点をお伺いいたしたいと思います。
  12. 石井光次郎

    石井国務大臣 損失補償の問題は、今おつしやつた通りに私も思うております。先ほど来数回にわたつて大蔵大臣折衝をして、いまなお続けておる状態であります。また各方面の方々からいろいろ今お話のあつたような、前例がこういうのがあるとか、いろいろなことについての横からの御援助も出ておるということを聞いておるのでありますが、なおこれを続けまして、何としてもこれを実現するような方向に持つて行きたいと考えております。
  13. 關谷勝利

    關谷委員 次にお尋ねいたしたいのは、鉄鋼価格が、日本造船界国際競争で負ける大きな原因になつておる。輸出船を建造することができない一つの大きな原因であるということは、先日来の説明でよくわかつておるのでありまするが、先般の本会議におきまするところの、通産大臣といたしましての小笠原国務大臣答弁せられました中に、鉄鋼専用船をつくつて、これによつて原鉱石を安く入れることにして、そうして鉄鋼価格を下げたい、こういうふうな答弁があつたのであります。私たち前に池田大蔵大臣お尋ねをいたした。私が直接ではないのでありますが、ほかの人が尋ねましたときには、あれは事務官の単なる意見であつて自分は知らぬというふうなことを返答いたしておるようなこともあるのでありますが、小笠原通産大臣はつきりと本会議で、この鉄鉱専用船というものによつて運んで運賃を下げたい、それによつてこの鉄鋼の値下げの一助としたい、こういうふうなことを言われておつたのであります。そういうふうに本会議答弁で出ます限りは、もう通産省におきましては相当な計画ができておるのではないか、私ども聞くところでは、第一次の計画といたしまして第一回は七十五隻つくろう、こういうふうなことであつたのですが、さらに五十隻になり、現在では四十隻程度でやるのだ、こういうふうなことに大体まとまつておるのではないかというふうなことをほのかに聞いておるのであります。この点に対しましては、運輸省におきましても、もしそういうことが実現をした場合にはどうなるかというふうなことは、すでにいろいろ研究もしておられるということでありますし、鉄鋼価格に及ぼす影響というものはトン当り一千円くらいなものであつて、わずかなものであるということもすでに研究済みになつておると言われておるのでありますが、この点に対しまして大臣通産省話合いをせられたことがあるのかないのか、また通産省の案はどのようになつておるのかということをよく御承知であるのかどうか、その点はつきりとお答えを願いたいと思います。
  14. 石井光次郎

    石井国務大臣 この鉄鉱専用船のことを通産省考えておるというような話を聞きまして、いつのことでありましたか、池田君が通産大臣のときに聞いてみました。ただいま御質問の中にありましたように、事務当局では今研究をしておるけれども自分はまだそれをそのままのみ込む気持はないというような意味のことを申しておりましたし、まだ省の案にもなつていないという程度のことでありました。運輸省の立場として、わざわざそういうものを今こしらえる時期であるかどうか。それには、そうやつてくれれば非常に早く持つて来れるとか、いろいろの意味においての利益等も言われておるようであるけれども、そういうことをするよりは、現在日本にあるものを使つた方が得だという問題等もあるので、その問題はそう簡単には行かない。またそういうことによつてどれだけの値が下り、どれだけの利益を得るかということと、そのほかの事業さえ控え目になつておる際に、これをわざわざつくるということは大きな問題で、なお研究を要する問題だというような話合いをしたままでありまして、小笠原君とはまだ話合いをいたしておりません。
  15. 關谷勝利

    關谷委員 大臣はまだ小笠原大臣とは話合いをしておられないというのでありますが、池田通産大臣当時におきましては、これは単なる事務官意見であるというくらいのことでありましたけれども小笠原通産大臣は先般の本会議の席上で、そういうような方法によつて鉄鋼価格を下げるようなことを実現いたしたいと言われた。これは速記録をごらんになりましてもはつきり表われておるはずであります。そういうふうな答弁をせられたのでありますから、あるいはそういう気持になつてこれの実現を期しておるのではないか、こういうふうに考えております。事務官の一意見であるというような程度のものを、大臣が本会議の席上で答弁をするはずはないのであります。またこの答弁石井運輸大臣が見のがすはずもないと私たち考えるのでありまして、もう何らかの手を打つておられる、こういうふうに考えておつたのでありまするが、いまだに何ら小笠原通産大臣との間に話合いをしておられないということでは、これは私はたいへんな結果になるのではないかと考えますので、早急にこの通産省案がいかなるものであるか、小笠原通産大臣大臣から要求せられて、その全貌説明を聞いていただきたい。なおまたこれに対しましては、さつそく有効適切なる方法によつて、そういうふうな案ではとうていだめなんだということを主張いたしまして、通産省のこういう案はとりやめといたしまして、それだけの厖大な船をつくる金があるならば、これは現在の海運業界へそれだけのものを投ずれば非常な効果が上つて参りますので、その方面へまわすように、閣議その他で全力を上げて御努力を願いたい。私は少しく石井大臣の手遅れがあるかのように感ずるのでありますが、この点につきましては十分注意をせられまして、そうして本日と申すのではありません。いずれその全貌、さらに交渉の結果というものを、この委員会におきましてはつきりと御説明を願いたいということを私はお願いを申し上げておきます。  なお次にお尋ねをいたしたいのは、現在の海運行政で一番悩みの種になつておりまするのが内航船の問題であります。先般海運局長説明をいたしました際に、内航船の過剰ということは外航船にも影響するというようなこともありました。これは私たちもよくわかります。海運界の少しくわかる者はすぐわかるのであります。これが二十万トンも余つておるというふうなことになつておるので、私どもはこの対策を何とかしなければならぬと考えておるのでありますが、どうも運輸省気乗りがしてないというのが私は現状であろうと思います。この内航船対策といたしまして、かつて外航船を買い上げましてスクラップ化をいたしました当時と同じ方法をとらなければならぬということは、海運当局におきましてもよく承知をいたしておるはずであります。ところがあの外航船舶の買上げをやりました当時に、たまたま朝鮮動乱が起つたために申込みが少かつた。なおまた申し込んでおつたものもこれを取消したというふうなこともある。その腹いせのためにあるいは気乗り薄になつておるのではないか、こういうふうな気持もするのでありますが、この点に関しましては、よく海運当局大臣が御相談をせられまして、どういうふうな気持でこれについて何らの策も施さずにおるのか、その理由につきましては御相談願つた上でまた御答弁伺いたいと存じます。  なおこのスクラップ化をいたしましても、これは大した金にはならないはずであります。大体現在十五万トン程度、約七、八十隻程度のものを買い上げるといたしましたところで、十億かそこらのものであろうと思います。二十万トン買い上げましたところで、これは十三、四億のものだと私たち考えるのであります。一ぱい千五百万トン程度として、その中にはもちろん船員退職金も含まれておるのでありますが、これを一千万円程度で引受けましても、これのスクラップ化をいたしましたその価格差と申しますか、そういうふうなものもあるのであります。なおまたこれは一面から申しますと、船舶公団の持分も処分できるということになりますし、第一の目的の内航船を救済するということがこれによつてできるのであります。実際に国家が支出をいたします分は、大体六、七億程度で十分であろうと思います。これで十分に内航船を救済することができますし、さらに外航船にも利便を与えるということにもなります。外航船腹拡充あるいは国際競争力を養成しなければならぬという場合に、外航船舶と申しますと副次的なものになりますが、副次的にいたしましても、外航船舶の強化に役立ちますし、さらに内航船対策といたしましてそれを救済することができるということになりましたならば、私はこの際これを急速に実施をいたしまして救済すべきである、こういうふうに考えておるのでありますが、これに対して大臣がどのようなお考えを持つておられるか、一言伺つておきたいと思います。
  16. 石井光次郎

    石井国務大臣 内航船の整理問題、これは非常に大きな問題だと思います。ただいまお話通りであります。この間からこの問題につきまして、業者の方からもいろいろな意見を承つております。また運輸省が少し気乗り薄じやないかというお話でありまするが、前にお話のありましたように、外航船の一部スクラツプ問題が、せつかく海運界の隆盛の基礎になるようにといつて運輸省が取上げたにもかかわらず、朝鮮事変のためにうまく行かなんだということ等で、少し心持の上で出足を鈍らせておるということも事実だと思います。しかしそういうことがあつたからその腹いせにやる、そんなことは全然ないのでありまして、必ずこの問題について取上げて、何とかしなければならぬと思つております。速急にこれを取上げたいと思つております。
  17. 關谷勝利

    關谷委員 海運界はその程度にいたしまして、航空関係で一言だけお尋ねをいたしまして私の質問を終りたいと思うのであります。現在国内航空日本航空によつて行われでおるわけでありますが、この日本航空の現在の経理の状態は決して芳ばしいものではないことは、大臣よく御承知通りであります。聞くところによりますと、最近日米航空会社というふうなものが計画をせられまして、強力な外国資本を導入をいたしまして、これで国内航空をやつて行こう、こういうふうなことが考えられておるやに私は通信か何がで見たのであります。もしそのようなことになりますると、日本航空というものは一たまりもなくつぶれるのではないか、こういうふうに私は考えられるのでありまするが、こういうふうなものが入りまして国内航空をやろうという場合には、大臣はどのような処置をとられようとするのか、これは許可をしてやらして、日本航空がつぶれてもさしつかえない、やらそう、許可を与えよう、こういうふうなお考えであるのかどうか、これがまず第一点であります。  なおまたこの国内航空は、将来何社でやろうとしておるのか、一社だけにやらして行こうとするのか、あるいは二社、三社、競争があればどれだけでも許可をしよう、こういうふうに国内的に国内資本でやる場合には幾らでも許可をするのかどうか、日米航空のような強力な外国資本が入つて来るのも許可する気であるのかどうか、なおまた国内航空は何社程度を適当と認めておるのかということを、この際はつきりと御答弁を願いたいと思います。  なお国際航空に対しましては、これもいろいろありましようが、これはまた後に譲りまして、差迫つておる問題といたしまして、国内航空関係の問題だけをお尋ねをいたします。
  18. 石井光次郎

    石井国務大臣 国内航空は今日本航空だけに許されておるのでありますが、今出願を受けておるのが数社あるのであります。第一番に、はたして日本の国内にたくさんの航空会社を自由に許していいかどうかという問題が考えられますが、大体におきまして、今日本航空がやつて来たのがわずかに一年、しかも自主的に自分が飛行機を持つて始めたのは十月末ごろのことでございます。それまではよそから飛行機を借り、操縦士も借物であるというような関係上、経営上思うにまかせぬものもあり、それで経営の上にも悪い影響もあつたということももちろん考えられるのであります。しかし日本航空そのものの経理状態その他において、もつと勉強すべきものがあつたかもわかりませんが、それはさておきまして、まだまだスタートを切りまして間もないことでありますので、それと同じ道を競争するものを許してやつて行けるかどうか、見方によりますと二つ許してどんどん競争して行く方がみな励みもついて、また頻度が多くなればお客も利用する率がふえるという見方も一応成り立つのでありまするが、そういうことにするにはまだ少し早いのではないかというような心持を私は持つております。将来は、いろいろな情勢を見た上で、二つ許すかあるいはもつと許していいか、少くも国内航空といいましても、幹線航空とローカル線との問題を考えますと、ローカル線はこの間航空審議会の答申でも、ローカル線を日本二つくらいにわけて考えたらどうかというような案が出ておるのですが、そういうようなことも一つ考えられる線だと私は思うのであります。まだ日米航会空社に許すとか、あるいはその他に許すとかいうようなことには考えは進んでおりません。これは今申しましたような線でなおいろいろ考えて、近く何とか心持をきめたい、そういうふうに思つております。
  19. 關谷勝利

    關谷委員 大体私の質問は以上で打切りたいと思うのでありますが、日米航空会社というものは、これは何と申しまするか、非常に強い圧力を運輸大臣等のところへもあるいはかけて来るのではないかというふうなことがほのかにうわさせられておるのであります。あるいはそういうふうなものが入つて来ることについて、何と申しますか、策謀家の方から相当の動きがあるのではないかというようなことがうわさされておりますが、信念の石井運輸大臣はおそらくそういうふうなことに屈することはないと私は考えておりますので、安心して今の御答弁によつて満足をいたしております。  なおまた、これはお願いでありますが、新線建設が、現在着手いたしておりますのが十一線、そうしてこの間から決定をいたしましたのが、何でも十九線の中で取上げましたのが十二線か三線になつたというふうな話ですが、そういうことでやりますると、来年の継続をいたしまする費用は相当かさむ。私はおそらく百億程度のものがなければ、土木の工事施工上経済的な速度でやつて行くことはできないと思いますが、この予算獲得は非常に困難で、運輸大臣は非常に御苦労せられると思いまするが、ぜひこの百億程度のものは獲得をしていただきたい、こういうことをお願いを申し上げまして私の質問を打切ります。
  20. 逢澤寛

    ○逢澤委員長 河本君。
  21. 河本敏夫

    ○河本委員 私は主として海運問題について運輸大臣にお伺いしたいと思います。第一には海運の基本的な問題について、第二にはタンカーの問題について、第三にはヨーロッパ航路と太平洋航路の問題について、その次は南米航路及び中共配船の問題、こういう問題につきまして簡単に順次お伺いしたいと思います。  私は海運の基本的な政策につきまして、先般来の運輸省説明では十分ではない、どうも現在やろうとしておられる政策が中途半端に思われる、かように考えるのであります。海運は電気と鉄鋼と石炭、この三つと並んで四つのわが国の産業の基幹である、また大動脈である。その中でも特に海運は重要であるということは当然でありまして、この海運政策いかんによりましては、わが国の産業の再建ができるかどうか、こういうことがきまるのであります。かようにすらわれわれは考えておるのであります。この海運の重要性につきましては、運輸大臣も十分御承知と思いまするけれども、特に私が一点だけ強調したいことは、本年の初め政府で予算を編成いたしました当時の貿易の見込みでは、大体輸出が十六億ドル、輸入が二十二億ドル、こういうことに相なつてつたと思うのであります。ただいまはその後いろいろな関係で減りまして、輸出が十一億ドル、輸入が十六億ドル見当に達する見込みで、それぞれ三割見当減つておりますけれども、本年初めの見込みは大体そういうことになつてつたと記憶します。その場合に、輸出物資におきましては運賃の占める割合が六、七パーセント、輸入物資につきましては平均二十四、五パーセントに達しておつた。先ほど申し上げましたように貿易の量も減り、また最近は運賃も下つておりまするので、その比率は多少変化があるとは思います。しかしながら本年当初の予算編成当時のごとくでかりにあつたとするならば、大体わが国の輸出入物資のうち運賃の占める割合が六億ドル以上に達する。現在でもなお二億五千万ドルか三億ドル近いものがあろうと思います。しかるに現在は、この輸出入物資の大体三割見当しか日本船で運んでおらぬ。戦前はこれを七割見当まで運んでおつた。さらにまたその余力をかつて遠く海外まで出動いたしまして、第三国間の輸送に従事しておつた。私はどうしても現在三割程度しか運んでおらぬこの輸出入物資の輸送の比率を、少くとも五割見当まで持つて来なければならぬと思います。そのために運輸省では来年度から毎年三十万トンずつ、昭和三十一年まで合計百二十五万総トンの船舶の建造を計画しておられると思うのであります。私はこれではまだ不十分である。現在の日本の経済は、運輸大臣も御承知のように非常な入超が続いております。しかも本年の国際収支のバランスを見ますると、その入超をカバーするのは特需である。それが約三億三千万ドルある。そのほかに軍人と家族の消費が一億六千万ドルある。これが中心になつてわが国の経済の国際収支の均衡がとれておる。これはいつまでもあてにならないものでありまするから、こういうふうな状態ではわが国の経済の自立の基礎は、非常に脆弱であるといわなければならぬ。私が先ほど来強調しておりますように、船腹の増強をはかつて、戦前七割見当まで運んでおつたけれども、これを少くとも五割見当まで運べるように持つて来る。同時に進んでは第三国間の輸送までやる。戦前は御承知のように大体そういうふうな第三国間の輸送なんかによりまして、毎年一億ドル近い外貨を上げておつた。そうして貿易外収入の一番大きな源であつた日本の国際収支の均衡を保つて行く上の大きなささえ柱であつた。私はかような大きな構想をもつて今後の日本海運政策をきめなければならぬ、かように確信するものでありますけれども、それにつきましては御承知のように船舶は純然たる国際的な商品である。だからどうしてもその経済的な基礎を、外国船と同じようなレベルまで持つて行かなければならぬ。そうしなければとうてい競争ができぬ。ここに私は根本の考え方があろうと思うのであります。しかるに現在の政府の海運政策を見ると、まつたく中途半端であつて日本の船舶の国際的な競争力を、外国船と同じレベルまで持つて行こうとしておるのかどうか、こういう点について非常に私は疑問が持てる。まずそういう基本的も問題について運輸大臣の構想をひとつ伺つておきたいと思うのであります。
  22. 石井光次郎

    石井国務大臣 日本の船腹が戦時中の非常な打撃によりまして極端に減り、その後の業界の努力によりまして今日の程度まで回復したのでありますけれども、お説の通りまだ戦前に比べて物足りないものが多いのであります。本年に続き来年から四箇年くらい続いて外航船を年三十万トン建造することができましたならば、戦前までには至らないけれども、少くも半分以上あるいは、ただいま五〇%というお話がありましたけれども、七〇%場近くくらいまでなるのではないかと思つております。そういうことによりまして、ぜひ日本の貿易外収入の点において海運の働きをいたしてもらいたいということを念願して、その線に沿いまして政府もできるだけ今申しました来年からの造船を続けてやりたい。それには今お話がありましたように、なかなか外国との造船競争の上におきまして物足りないものがたくさんあるのであります。こういうことを満足させるためには、もつともつといろいろな施策をしなければならないのでありますが、日本のカから申しますといろいろな観点からしまして、順次それを満たして行くというような態度を政府は今とつております。しかしいつまでもぐずぐずしている間に日本海運の船の回復が遅れるという点は、あなたの御心配と同じように私も心配いたしております。何とかして早い機会に外国船との競争に耐え得るような状態に政府の力をいたしたいと考えております。
  23. 河本敏夫

    ○河本委員 運輸大臣の基本的な構想は大体わかりましたが、もう少し具体的に考えてみますと、わが国の海運が経済的に非常に弱体である。その根拠は第一に、先般来御説明がありましたように建造費が外国より二割見当高い。それから金利が外国では二分五厘ないし三分五厘であるけれども、わが国ではそれの三倍あるいは四倍にも達しておる。第三には、建造資金に問題がある。第四には一般的に所得税が高い。一般的な税制が非常に高額である。こういう上へ持つて来まして社内保留金に対する免税措置あるいは減税措置、こういうようなものが十分でないというような一般的な問題もありますけれども、さらに船舶にはただいまは固定資産税のような、外国では全然例のないような悪税がある。第五には現在の船員法がわが国にはそぐわない。わが国の実情にはぴつたりしておらぬ、こういう点に私は問題があると思うのであります。これらの問題を総合調整いたしまして、いずれにいたしましても現状では外国船に二倍になんなんとしているところの船舶の運航コストを、外国船並に引下げるようにしなければ、せつかく再建の緒につきかけたわが国の海運の前途も非常に危険である、こういうふうに考えまして、以下これらの問題につきまして、個別的に運輸大臣の方針、考え方をお聞きしたいと思うのであります。   第一の船舶の建造費が外国から比べて二割ほど高い、こういう問題がありますが、これに対しまして昨日船舶局長は、米国の鋼材と比べてトン当り約五十六ドルはかり高くなつておる、こういうことが大きな原因である、かような御説明があつたと記憶しますが、なおヨーロツパの他の国に比べますと、七十ドルあるいは八十ドルも高いような例もあるわけでありまして、平均いたしますと、トンについて二万円以上も高い。これが一番わが国の船価の高い大きな原因になつておるわけであります。それでありまするから、運輸省といたしましては本年追加予算に鋼材の補給金として十三億、来年度は五十億円等の要求をせられたということを聞いておりますけれども、これは当然のことであります。これはどうしても実現しなければ私は第一の難点は解決できぬ、かように考えるわけでありますが、運輸大臣のこの鉄鋼補給金に対する現在の交渉の状態及び今後の見通し、こういうものについてお考えをお伺いしたいと思うのであります。
  24. 石井光次郎

    石井国務大臣 建造費の点において、鋼材の占める部分が非常に大きいことは御承知通りでありますし、また日本の船舶用鋼材、特殊鋼材等におきまして、外国に比べましてこれがひどく高いということも了承しております。何とか世界的な造船競争に耐え得るように、ひいては海運の上にもいい結果を与えるようにというには、この問題を取上げて処理しなければならないということは、私もとから考えております。今度の補正予算にも実はこれをもつて折衝いたしたのでありますが、いろいろな意味でこれが補正予算では否決されました。但し今後ともなおこの問題について大蔵大臣と私との間でいろいろな情勢、実情等を研究して、なお研究を続けて行こうという話になつておりますので、私はこの問題はどんな方法かで鋼材の値段の下るような方法を御相談して行きたいと思つております。
  25. 河本敏夫

    ○河本委員 本日は通産省から重工業局長が見えておりますので、この点に関連してお伺いいたしたいと思います。先般私が通産大臣に本会議質問いたしました際に、通産大臣はなるほど鉄鋼価格は外国に比べてわが国は非常に高い。高いが、それに対する対策として、自分は米国から綿花借款のような方法でもつて鉄鉱石とか、そういうものを入れたい、あるいはまた新しい機械を入れて企業の合理化をはかりたい、さらにまた東南アジアとの連繋を密にして、そこから銑鉄あるいはまた鉄鉱石等を入れるようにしたい、こういうふうな御返事がありましたが、私はかような方法では、現在七、八十ドルも高い日本鉄鋼価格というものを外国並に切り下げるということは不可能だと思う。戦前日本があれだけの国力を持つてつて、しかも中国から非常に安い鉄鉱石と石炭を入れて、初めて日本の重工業の基礎というものができておつた。現在は国力がこれだけ疲弊しておるし、それから中国から安く入つてつた鉄鉱石や石炭というものが入らなくなつておる。だからここに私は重工業のみならず、化学工業——重化学工業の根本的なあり方というものについて検討すべき時期が来ておるのではないか、かように思うのであります。従つて私は先ほど通産大臣が返答せられたような方法だけをもつてしては、絶対に日本の鉄鉱価格を国際水準並に引下げるということは不可能である。とりあえず私たちは緊急を要するところの鉄鉱に対しては補給金を出して、こういう方法でこれを解決して行くようにしなければならぬ、かようにあくまで確信しておるものでありますが、重工業局長はこの点について、どういうお考えを持つておられるか、このことに関連してお伺いしておきたいと思うのであります。
  26. 葦澤大義

    葦澤政府委員 わが国の鉄鋼価格が国際水準に比して相当高いということは御説の通りでありまして、また通産大臣からも御説明のありました今御指摘になつたような施策についても、着々その成果を上げるべく努力をしておりますが、何と申しましても、国内における施設の改善合理化と相並びまして、現在日本における鉄鋼のコストの大部分、八割ないし八割五分のコストの比率を占めております原料費の切下げを行うことが非常に必要なわけであります。この面にも向つて努力をしているわけでありますが、こういうものが相伴いまして行われるということになりますならば、相当私は日本の鉄鉱石が下るというふうに考えております。ただ合理化の完成にいたしましても、一応明年度ということになつておりますし、また原料費の切下げに対する対策等の実施というものも、これは相当日数のかかることでありますから、ただちにこういうものの完成は見られないのでありますが、時期をもつて参るならば、相当国際水準に接近することができるというふうに考えております。ただ国際水準と申しますか、何が国際水準であるかということは、いつの場合においてもはつきりわからないのでありますが、日本鉄鋼が海外市場の需要に応じて輸出市場に出て参りまして、輸出市場で角逐する国際価格、それから国内において加工されまして、機械、造船その他として海外に鉄鋼製品として出て参ります原料の価格というように二本建になると私は想いますが、いずれにいたしましても、その両方の価格の切下げということについては、時日をもつてするならば相当接近することができるというふうに考えております。
  27. 河本敏夫

    ○河本委員 私がお聞きしたいのは、相当引下げ得るということでははつきりしないのであつて、あくまで船舶の特殊性から考えまして、主要な海運国であるイギリスとかあるいはオランダ、ドイツ、フランス、こういう国での船舶用の鉄鋼価格並に引下げ得るかどうか、こういう具体的な問題についてお聞きしたいと思うのであります。この点につきまして、はたして通産省及び通産大臣考えておるような合理化その他の方法によつて、具体的に数字をあげてどの程度まで、また何年ごろまでにこれこれの金額を下げ得るような構想で進んでおるか、こういうふうな突き進んだ御答弁お願いしたいと思います。
  28. 葦澤大義

    葦澤政府委員 現在の日本造船用圧延鋼材の価格は、御承知通り建値はありますが、実際の取引価格は相当下まわつております。これは鉄鋼メーカーが、造船用鋼材の重要である点に顧みまして、造船用の個々別々の会社の間に、それぞれ取引条件の改善をするとかいうようないろいろな条件お互いに示し合いまして、引下げております。現在三十六ドル見当ではないかと思いますが、これはアメリカに比べますと、アメリカは八十六、七ドルでありますから、約五十ドル見当違つております。またドイツは百十ドル前後だと思いますが、ドイツには最近も造船用鋼材としまして、日本から相当輸出を見ております。これは西独でありますが、ドイツにおいては、いろいろな措置を講じておるのかもしれませんが、日本造船用鋼材価格をもつて輸出がされておるような状況であります。英国は相当安く、またベルギーはアメリカよりも十ドルぐらい高いわけでありますが、そういつた値開きがありますが、私どもの見当といたしましては、これは将来完成してみなければわからないのでありますが、現在三箇年計画をもつて進行中であります合理化、当初六百三、四十億円見当であつたのでありますが、おそらく総額一千十億円ぐらいになろうと思いますが、これの完成を見ますと、大体現在の鋼材は、物によつて多少は違いますが、二割くらいの引下げが行われるだろうという一応の月算をしております。  それからこれと並びまして、先ほど申し上げましたように、コストの八五%も占めておる原料費の引下げ、これは何と申しましても海外におけるFOB鉄鋼原料、すなわち粘結炭なり鉄鉱石の価格を引下げるとともに、日本に参ります運賃、相当遠く海外から持つてつておりますので、この運賃の安定、現在は非常に運賃が安くなつておりまするが、こういつた運賃の安定を見まして、海外原料のFOBの引下げとともに、こういうものの実現を見ますならば、相当切下げられた、安定した鉄鋼価格というものができるというふうに考えております。
  29. 河本敏夫

    ○河本委員 いずれにいたしましても、三年先に現在通産省計画しておるところの合理化その他のあらゆる鉄鋼引下げのための政策が功を奏したならば、約二割すなわち一万円見当安くなる、こういうふうなお見込みであるということがはつきりいたしましたが、私はそういうふうな状態であるならば、よけいとりあえず造船の鋼材に対する鉄鋼補給金ということは必要になつて来る、かように考えますので、これは希望でありまするけれども運輸大臣にはぜひともその実情をよく御認識いただきまして、これが実現のために全力をあげていただきたい、かように存ずる次第であります。  それからついででありまするから、この際あわせて重工業局長にお聞きしておきまするが、ただいま鉄鉱石とか石炭等の運賃引下げのための何か方法考えておられるようにも受取れる御答弁があつたように考えますが、これは先ほど關谷委員から御質問がありました鉄鉱運輸船、こういうものを建造する計画をなお現在でも持つておられる意味であるかどうか、こういう点につきましてお伺いしたいと思います。
  30. 葦澤大義

    葦澤政府委員 鉄鋼原料は海外から非常に多量に運んでおりますので、これの運賃がどうなるかということは、鉄鋼価格の上に非常に影響を持ちますことは御承知通りでありますが、最近、過去において朝鮮動乱等の原因があつたのでありますが、この運賃が、現在インドあるいはアメリカ航路が八ドルないし九ドルのものが、十ドルぐらいもよけいに高くなつているというような経験からしますと、現在のような運賃がはたして相当期間にわたつて保持されるものであるかどうかということは、われわれといたしまして非常に心配なわけであります。何も運賃のコストを割つてまで運ぶということは、経済的に許されないと思いますから、安い運賃が安定して維持されるということを期待するわけであります。そういう意味において事務当局において考えましたものが、先ほどもお話がありました鉄鉱専用船考え方であります。ただ鉄鉱専用船につきましては、かりにできましても、この運営が非常にむずかしいのではないか。われわれは運営の方は実はしろうとなのでありまして、事務的に運輸省の方に相談をしまして、運輸省のいろいろな知恵なり見解をただいま打合せ中であります。われわれは新しく何もそれをつくる必要がない、運賃の安定を来せばいいという考え方でありますが、ただ専用船問題が新聞等にとかく出まして、いろいろな方面から御批判があるのでありますが、運営の方面につきましては、専用船と申しますと、鉄鋼メーカーがみずから船を持ちまして、ただちにみずからそれを運営するという考え方もあろうと思いますが、鉄鋼メーカーにしますと、現在の状況におきましてはみずから運営するということは、各社いずれもこれは計画しておりません。やはり運輸業者の方に、もち屋はもち屋で運んでいただくわけでありますが、そういつた考え方で今運輸省とも打合せ中であります。要するに趣旨とするところは運賃の安定した、暴騰しない運賃において鉄鋼原料が運べる態勢をつくることが、鉄鋼価格の引下げ、安定をもたらすとともに、それがひいて造船単価にも好影響をもたらすものだ、といういう考え方をいたして、ただいま事務的に打合せをしておるような状況であります。
  31. 河本敏夫

    ○河本委員 そうすると依然として鉄鉱運搬船の構想をお持ちのように了承いたしますが、私はこの基本的な構想そのものについては、必ずしも反対ではありません。しかしながら現状から見るならば、鉄鉱石運搬専用船というものは時期尚早であると思う。というわけは、現在まだ中共貿易に関する最後的な見通しも立つておりませんし、また東南アジアの開発も十分進んでおらぬ。しかるに、かような現状におきまして、新聞紙で見ますると、大体通産省は五十隻の専用船を今後二年間に三百五十億の予算でもつて建造する、こういうような案のように了承しておりますが、現状をもつてするならば、五十隻の船をつくる場合には決してさような金額ではできない。少くとも五百億見当かかる。しかも先ほど申しましたように、現状は東南アジアの開発は進んでおらぬ。従つて配船も順調に行かぬ、非常に船待ちが多くなるだろうということが予想せられる。また当然航海も片荷航海になつて来る。いろいろな関係で、ここに五百億以上の財政資金がとりあえずいるということ、さらにまた船待ちとか片荷航海その他いろいろな関係で、年々実際上は相当多額な国家補助をこれに対してやつて行かなければならない、実際はこういうことになつてしまうと思うのであります。でありまするから、基本的な構想そのものには反対するものではありませんけれども現状から考えるならば時期尚早である、私はかように關谷委員と同様な考えを持つものであります。従つてこのような対策をとるならば、それよりももつと一歩進んで、私が申し上げましたようにうとりあえず必要な鉄鋼の補給金というものを、そういうふうな莫大な国家資金の中から出してやる。その間一方では、先ほど重工業局長が御答弁なつたような基本的な企業合理化、あるいは原料獲得のための手段を講じて行く、こういう方法をとる方が賢明ではないか、かように考える。すなわち時期尚早であろうと思う。この点は運輸省当局とも十分な御相談があつて、わが国の将来に禍根を残さぬようにおとりはからいを願いたいと思うのであります。  それから第二に、海運の基本的な問題について、先ほど申し上げました第二点である金利の問題についてお伺いしたいと思います。今度運輸省の要求によりまして、利子補給に関する予算補正予算で認められたようでありますが、私はこの考え方自体にはもちろん反対ではない。双手を上げて賛成するものであるけれども、このやり方がどうも中途半端だ、徹底を欠いておる、こういう点で私は別の考えを持つておるものであります。大体現在の内閣は金利の引下げということを非常に重要視しておられる。この点は私は非常にけつこうだと思う。吉田総理大臣も第四次吉田内閣の成立劈頭、新聞記者会見におきまして、経済の再建のためには金利を引下げることが必要である、こういうことをまず言つておられる。先般もまた施政方針演説におきまして、当面のわが国の金融財政問題に論及せられまして、金利の引下げの重要性を強調しておられる。非常にけつこうなことであります。そこで第三次吉田内閣の末期からただいままで、約六箇月間の内閣の施策を見ておりますと、産業、経済、財政政策に関しまして、政府のやつた気のきいた政策というものは、先般金利を一厘引下げた、それだけに尽きるとすら考えられる点からも、いかに吉田内閣が金利の引下げを重要視しておられるかということに対しては、よく理解できるのであります。しからばこの問題についても、もつと徹底した対策をとらるべきでなかろうか患う。もともとわが国の金利というものは、これはわが国の経済が他の先進国よりも非常に遅れて発達した。こういうふうな関係から、戦前の例を見ましても、大体日本の金利というものは、外国の金利に比べて二、三割高いのが普通であつた。資金の需給の関係で、非常にわが国の金利が高くなつた場合でも、大体外国の金利の二倍前後におちついておつた。大体は二、三割見当高いというのが普通であつたわけであります。そういうふうに考えて参りますと、現在外国の金利は先ほども申し上げましたように、二分五厘ないし三分五厘になつておる。平均三%見当である。こういうふうな現状から考えますならば、どうしても日本の現在の金利を七分五厘というふうな目標ではなしに、三%見当まで引下げる、こういうふうな施策が必要である。というのは、なるほど戦前は二、三割高かつた。それで通つた。たとえば船舶金融について見ましても、戦前船舶金融を扱つておりました興銀の貸出し金利は、政府が一分五厘の利子補給をいたしまして、大体三分七厘見当になつてつた。それで外国より幾らか高いけれども、競争ができた。しかしながら現在の日本海運界の実力というものは、戦前の海運界の実力とは雲泥の相違になつておる。今度の戦争で、戦前持つてつたところの六百三十万トンの船舶、それから戦争中につくつた約三百万トンの船舶、そのうち八百万トン以上が沈められて、残つた船は百万トンそこそこあつたけれども、それは全部使いものにならぬようなボロ船ばかりである。だから戦後の海運界というものは、いわば無からスタートしておる。しかるに戦前は何十年かの蓄積によりまして、相当な実力をたくわえておつた。だからある程度外国の金利に比べて高くても、それはやつて行くことができた。しかしながら日本の現在の海運界の実力から言うならば、どうしても外国の金利より高いような状態では、これは国際的競争力を保つことはできない。どうしても外国並の金利に、特に船舶の特殊性から考えて、船舶だけは引下げて行くことが必要であろうということを痛感いたしておるのであります。  まず第一にこういうふうな観点からお聞きしたいのは、どういうふうな根拠があつて、今度の利子補給というものを一応七分五厘という目標に置かれたのか、その点について運輸大臣にお伺いして、それから論を進めて行きたいと思います。
  32. 石井光次郎

    石井国務大臣 今度の予算利子補給をいたしたのは、今お話通りでありまして、これは今までも金利の問題については今に始まつたことではないのでありますけれども日本のいろいろな情勢上、やむを得ず今日まで市中銀行から借りるものはそのままということでありましたが、これは何といたしましても造船の実を上げて行くのには、金利の引下げということが非常に大きな点になるのであります。見返り資金の程度まで市中銀行の利子に対して政府は補給するということに、ようやく相談がなつたのであります。これだけの問題から考えますると、御説のように、世界的競争のために三分なら三分というところまで下げて行けれはなるほどけつこうでありまするが、日本の国の中で、いろいろな基礎産業もたくさんあります。そういうものに対する金利の問題等考えますと、これだけに強く政府の補給をするということはなかなか困難であります。これはおそらくだれでもが世界競争に耐え得るところまで持つて行きたいのは、金利の面においても同じでありますが、順次これはやつて行くべきであります。今度とられました一つの道が、そういう道を将来に開くものだということに、私は了承しております。
  33. 河本敏夫

    ○河本委員 運輸大臣の御答弁では、従前の開発銀行の金利が七分五厘であるから、とりあえずそれを目標にしたというお話でありますが、そういうふうな観点から、利子補給の限度を七分五厘にきめたということは、まつたくおざなり式であつて、こういう点、現在の運輸省のやり方は、まさに海運政策に関しては中途半端であるという大きな論拠があるわけであります。二、三の例を見ましても、日本の戦後の造船計画は第一次、第二次というふうに呼んでおりますが、第一次から第四次までの造船計画は、船舶公団と共同でつくつたものであります。その後船舶公団が解体せられまして、大蔵省にその債権が引継がれております。その債権は百何十億に逃するそうでありますが、その金利の基準は一応五分五厘になつております。それから先般外国船を購入するものに対しまして、政府が持つておるところの外貨を特別に貸し付けたことがあります。この金利は三分になつております。昨日も予算委員会で北村氏が質問せられておつたようでありまするが、石炭に関しましては、百数十億に上つておるところの貸付金を、本年以降五分五厘に下げるというのであるならば、まだ話はわかるけれども、昭和二十二年まで遡及してこの金利を五分五厘に下げて、そうして二十数億という金を払いもとしておる。こういう例が幾らもあるわけであります。私は何もそういうばかげた問題になるような、従前にさかのぼつて下げるということは妥当ではないと思いますけれども、五分五厘とか三分とかいう例は多々あるわけでありますし、かりに三分に下げて、一応利子補給の基準を設けましても、決して財政的には大きな負担にはならぬと思う。かかる観点から、現在一応七分五厘というところに基準を設けられた利子補給の線を三分見当に、いろいろな例から勘案して、再考慮されるお考えがあるかどうか、こういう点につきまして重ねてお聞きしておきたいと思うのであります。
  34. 石井光次郎

    石井国務大臣 私もできる限りの努力をいたしたいと思いますし、また筋から申しましても、だれが考えても、なるべく少い利子にということは思えるのでありますが、なかなかいろいろな振合いがありまして、そう一挙にそこまで持つて行くことは困難な情勢があると思います。今度でもこれだけの補給と、それから資金の面があとでお尋ねがあるでありましようが、資金の財政融通面を広げるというようなこと等によりまして、まず今度の造船に対する態度は、政府は一応きまつておるのであります。ただいますぐというわけには参りませんが、将来の問題といたしましては、私はもつと下げるような線に努力いたしたいと思つております。
  35. 河本敏夫

    ○河本委員 私は幾らでも下げろというわけではないのでありまして、日本海運の実情から見て、少くとも国際水準並に一応の基準を置くべきである、かように確信いたしておりますので、今後ともこの線に沿つて、運輸御当局の御努力を要望いたしまして、次の問題に移りたいと思います。  次の問題は、すなわち船舶に必要な建造資金の問題でありますが、海運局長の御説明では、本年の三月現在、各船会社が市中銀行から借りておる借入金が三百九十四億に達しておる。そのうち本年度二十三億、来年度五十億見当のものを財政資金に肩がわりしたい、そういう交渉をやつておるということを述べられましたが、私はこれもまた中途半端なやり方であると思う。こういうふうな計算は、多分現在の船会社の市中銀行に対する延滞分から計算せられたのではないかと思いまするけれども日本海運界現状から考え、また諸外国が船舶の建造資金の調達にいろいろと手厚い国家保護政策をとつておるこの現状から考えまして、少くとも当初つくつた建造資金の七割見当にまで財政資金が達する、こういうふうな角度から市中融資の肩がわりを私は交渉しなければならぬと、かように考えておりますが、この点につきまして運輸大臣の御意見をお伺いしたいと思います。
  36. 石井光次郎

    石井国務大臣 今後の造船の資金に対しまして、この間から私ども考えておりますのは、残つておりまする本年度の五万トンの遊船計画に対して、財政資金七割を出すというようなこともきめておりますが、前のものを肩がわりするということも、今のような点からすれば同じようなことではないか、そこまで少くともやつてつたらどうだろうということも一応ごもつともであります。しかし財政資金の総量の問題がありまして、こちらの希望するようににはなかなか困難でありまして、それで海運局長から申し上げた程度折衝をしておるわけでありますが、御趣旨の線はできれば私どももそういうふうにすることも望ましいと恩つております。しかしなかなか現在のところでは交渉が困難のように思つておりますが、御趣旨をくんでやりたいと思います。
  37. 河本敏夫

    ○河本委員 それでは次に大蔵省にお伺いいたします。運輸大臣は財政資金が非常にきゆうくつだ、こういうふうな御答弁でありますが、それは私はまつたく違つておると思う。先ほども申し上げましたように昭和二十二年まで遡及して、返さぬでいい金を二十三億も返されるくらいであるから、大蔵当局には相当な余裕の財源があると私は確信しておる。大体私は現在の大蔵省の金の出し方というものは、緩急の順序と物の軽重を考えないのではないかと思う。海運の重要性とその歴史的な一部につきましては、先ほどちよつと申し上げましたが、日本の経済自立の上から、日本の商船隊の再建ということを考えなければならぬ。こういうふうな大きな構想で、私は大蔵当局が何よりも海運政策というものを重視して、そしてこれに協力して行くというふうな考え方でなければならぬと思うのであります。そのような考え方になるならば、私が先ほどから繰返し申し上げておりまする鉄鋼の補給金の問題にいたしましても、あるいは利子補給の問題にいたしましても、今度の市中融資の肩がわりの問題にいたしましても、あるいはまた先般關谷委員から御質問のあつた損失補償、この問題につきましても、特にこの損失補償は戦前にも例がある。あれだけの実力を備えておつて、なお損失補償ということが戦前の日本海運に必要であつた、こういうふうな観点もよく御考慮をされるならば、私は一挙にして解決できる問題であろうと思う。こういう点について大蔵当局の御意見をお伺いしたいと思うのであります。
  38. 石原周夫

    ○石原(周)政府委員 私大蔵省の政府委員でございますが、主計局から参つおりますので、銀行局の所管の事項に属しますることにつきましては、別の機会にそちらの方の政府委員をお呼ひくださつてお尋ね願いたいと思います。今度第八次後期と申しますか、第九次と申しますか、五万トン弱船の利子補給の、補正予算におきまして、負担外契約を提出しておりまするその方の造船の資金につきましては、ただいまお話のように七割の財政資金を、開発銀行からの金をまわすということに内定をいたしております。その点は御承知通りであります。市中融資の肩がわりにつきましては、冒頭に申し上げましたように、銀行局の方から申し上げることにいたしたいと思います。  それからあとのお尋ねの点でございまする損失補償の問題でございまするが、損失補償の問題につきましては、今回御承知のように従来五割弱の財政資金が出ておりますのを、その割合をふやしまして、大体七割にいたしております。従いまして、市中融資の割合は小さな割合に相なりまするので、これはその他の重要産業などに対しまする関係などから見まして、とりあえず現在の利子補給の線、この方がただいま御指摘のように相当大きな原価と申しまするか、国際競争力にも関係を及ぼすフアクターでございますから、その方の補給の問題を講ずることにいたしたのでありますが、損失補償の問題につきましては、今日のところそういうことは考えていないわけでございます。利子補給の限度につきまして、七分五厘で、なぜそうしたかというお話、これは運輸大臣からお話がありましたように、現在出ております財政資金、開発銀行の七分五厘という利率をとりまして、そのところまで補給をして行くわけであります。御説のように、それでもまだ相当国際的な金利と比べて開きがございます。その分につきまして、まだ国際競争力を著しく回復するに至つていないのであります。その点は全体の金利をどういうふうに今後持つて行くかという問題とも関連いたしまして、漸を追うて考えて参ることにいたしたいとこういうふうに考えております。
  39. 河本敏夫

    ○河本委員 ただいまの御答弁に対しましては、非常に不満でありますが、時間がありませんので、続いて次の問題に移りたいと考えます。  第二にお伺いしたいことは、十月の初めにタンカーを四隻建造することに決定して、これに対して二割の財政資金を出すことにし、さらにさかのぼつてすでに建造中の三隻にまでこれを適用することにせられたそうでありますが、この間の経緯についてお伺いしたいと思います。運輸大臣が御就任せられる直前のことで、もしこのことに聞き及んでおられないようでしたら、この問題は海運局長から御答弁お願いいたします。
  40. 岡田修一

    ○岡田(修)政府委員 タンカーの建造計画でございまするが、御承知通り本年度八隻つくる計画でございます。そのうち三隻は御指摘の通り最初に見返り資金をつけないでつくらせるということで、一隻は外資導入によつてくり、あと四隻つくる計画が残つていたのでございまするが、この四隻を全部市中金融機関からの金でつくるということは、今日の海運情勢等から考えまして、どうしても金融機関の話合いがつかない。従つてこれに対してある程度の財政資金をつけまするとともに、市中金融機関の肩を少しでも軽からしめるということが、その当時の情勢として避くことのできない条件だつたわけでございます。従いまして新しいものに対して二割の見返り資金をつけますと同時に、市中金融機関の肩を軽くするというふうな観点から、既往の三隻に対しましても二割の見返り資金をつける、こういうことでございます。他に何らの事情もないわけです。
  41. 河本敏夫

    ○河本委員 ただいまの御説明では、銀行側と申しまするか、そういう方面に希望があつた。それでそういうふうに変更したのだ、こういうふうな御説明でありますが、タンカーは御承知のように採算が非常によい、そういうふうな関係で、本年度の初め造船計画を立てる場合に、運輸省では財政資金が十分でない今日には、タンカーは全額市中銀行からの融資によるのを原則とする、こういうふうな案を運輸当局みずから御立案になつて、銀行方面もこれに対して了解を与えて、そうして建造希望者を公募された、こういうふうにわれわれは承知しおるのであります。従つて本年の初めに決定いたしました三隻に対しましては、銀行がもう約束通り全額の融資承諾を与えて、また現実に金も貸しておる。建造も半ば以上進んおります。また最近決定いたしました四隻は、当初一隻の予定をにわかにその隻数を増加したものでありますが、これに対しましても、私は銀行側は一応融資内諾を与えておるように了承しております。いずれにいたしましても、政府が一定の条件を出して、そうして建造の希望者を公募したものを、その後条件の変更、すなわち隻数を増加するとか、財政資金を放出するとか、こういうことがあるならば、あらためて公募をすべきではなかつたか、かように思うのでありますが、この点に対する御意見はどうでありますか。
  42. 岡田修一

    ○岡田(修)政府委員 最初一隻のものをさらにふやして四隻にした。この点は当初国内資金で四隻、それから外資導入によつて四隻つくる、こういう計画でございました。ところが外資の方がどうしても一隻以上できません。従つてあとの三隻を国内資金でつくらなければならない、こういう条件になつて来た。ところで私どもの船舶建造計画というものは、財政資金の方と同時に、市中金融機関から、大体本年度の計画をやるために、どれだけの金を借りるか、それに対する本年度の償還はどうなるか、こういうことを総合的に見て、そうしてあらかじめ金融機関と話をしておるわけでございます。ところが貨物船の市況が非常に悪くなりまして、返済の方も思わしくない、それから一方外資に予定しておりました三隻を国内資金に振りかえるという資金需要の方もふえて来た、こういうことから、できるだけ財政資金で肩を軽くする、こういう必要が出て参つたのです。従いまして新たにつくる四隻だけに二割の財政資金をつけたのでは、市中の肩が軽くならないという意味合いから、既往の三隻にさかのぼつたわけであります。新たに募集をしたらどうか、こういうことでございますが、すでにあらかじめ申し込みましたものについては相当話合いが進んでおる。特に新たな希望者を募る必要もない、既往申込のみの中で十分適格者を選考し得るという考えのもとに、閣議でもその旨を諮られて、既往の申込者の中からこれを選定するという方針をとつたような次第でございます。条件がかわつたからというようなこともありましようが、一応既往の申込者の中から適格者を見出し得るという確信を持つたものでございますから、新たな募集という手続をとらないで、そのまま進めたという次第でございます。
  43. 河本敏夫

    ○河本委員 そこに問題があるわけでありまして、常識上考えましても、これこれの条件で建造計画を立てるから、希望者はないか、こういうふうに公募をしておきながら、一応その公募を締め切つて、そのあとで財政資金を貸すとか、あるいは隻数をにわかにふやすとか、こういうふうな事態が発生した以上は、ここであらためて公募をされるべきであるのが当然ではなかつたか、かように海運界の輿論とともに私は確信するものであります。これまで海運政策につきましてはすべて非常に公平妥当にやつて来られまして、その点感心いたしておつたのでありますけれども、この点につきましては、われわれはどうしても常識上納得しかねる点があるのであります。もちろん当初に申し込んだ希望者の中から適格者を選ぶということは当然できるでしよう。しかしながらなお申し込んでおらぬところからも適格を選ぶということ、これもまた当然できることでありまして、そういう点を考えますならば、条件が変更し、隻数がふえた以上は、当然再公募すべきであつた、かように考えるものであります。なおこの点に関しまして、現在タンカー会社は三、四割の高率配当をやつておる。それから貨物船会社はほとんど全部赤字で、もちろん無配である。特にひどいのは、これまた先ほど御質問がありましたように、日本近海を航海するところのいわゆる内航船、これは言語に絶した苦況を続けておりまして、まさに崩壊寸前にある。こういう状態ならばまだいいのでありましようけれども、その中にはすでに崩壊しつつあるものすらあるというふうな状態であります。しかもこの理由は、所有船の性能が非常に悪い上に、約二十万トンも余つた船がだぶついておる。ボロ船が余つておる。ここに大きな原因があるだろうと私は思うのであります。従つてわが国の海運界の当面する問題は、まず第一に、外航貨物船に対して財政資金の融資比率を増加する。同時にまた内航の過剰船腹二十万トンをスクラツプ化するために、国家的な補助を与えて行くことである。この二つが解決に焦眉の急を要する緊急な問題ではなかろうかと思うのでありまして、すでに資金の調達も完全にでき、建造も順調に進んで、三、四割もの高率配当を続けておるタンカー会社に財政資金を出すのももちろんけつこうでありますけれども、もし財政資金の余裕があるならば、当然それはあとまわしにしていただいて、まず一番の苦況にあるところの内航船腹の過剰問題を解決し、それから全部といつてもいいくらいな赤字決算を続けておるところの、そうして非常な苦況にあえいでおるところの貨物船に対する融資比率を引上げる、これが重要でありまして、タンカーの方の財政資金は、そのあとで余裕があつたときに初めてまわすべきものであつた、かように私は確信いたしておるのであります。もつとも、運輸省の方でただいま建造中の貨物船に対しても、タンカーと同じように今度財政資金を増加してやる、こういうおつもりか、またその見込みがあるならば私は何も申し上げませんが、こういう点はどんなものでありますか。
  44. 岡田修一

    ○岡田(修)政府委員 お説ごもつともの点がございます。今建造中の貨物船に対して、追加の五万トンと同様に七割に引上げるかどうか、これは私どもといたしましては、もし財政資金の余裕があればそういうところまで持つて行きたい、かように考えまするが、私ども折衝するところでは、とうていそういう金はない、今後五万トンの建造を進めますための財政資金の確保すら非常に困難を感じているという状況でございますので、遺憾ながら既往の計画中のものにさかのぼるということは困難である、かように考えております。
  45. 河本敏夫

    ○河本委員 そのような御答弁であるならば、ますます問題になつて来るのでありまして、私は重ねてお聞きしたいのであるが、なぜ緊急を要する貨物船の財政資金の融資比率の引上げと内航船舶のスクラップ化のためにこれを出さないで、選挙中にタンカーに出すことに決定した、しかも一定の条件を付して公募したものを、その後条件を有利に変更し、それならば先ほど来申し上げておりますように再公募すべきであつたにもかかわらずこれもやらぬ、しかもかつてにその隻数を三隻増加する、こういうような点は、海運界一般といたしましてきわめて不明朗である、これまでの運輸省のやり方に似合わぬ、こういうような意見が非常に強いのでありまして、世間ではこれに対して莫大な政治資金がこの間に動いているそれが選挙に流用せられた、こういうふうな風評がきわめて強いのでありますけれども、この点についてどういうようなお考えを持つておられますか、お聞きしたいと思います。
  46. 岡田修一

    ○岡田(修)政府委員 先ほど御答弁申しました通りでございまして、私どもとしては、市中金融機関の負担を軽からしめる、そうでなければ市中金融機関からの融資ができない。このタンカー建造のために、私ども数回あるいは十回くらいになりましようか、金融機関と懇談をいたしまして、その間の金融機関の意向をくんでの措置でございまして、何ら他意がないのでございます。それから公募をしないでという先ほどのお話に対しまして、既往の申込者の中に適格者あり、かように認定いたしました理由といたしましては、最初から申し込みましたものは、全額自己資金でさえつくりたい、こういう建造意欲のあるものでございます。ところが財政資金がつくからというので申し込もうとしましたものは、むしろその財政資金を当てにして政府につくらせてもらう、こういう意図のものでございまして、その間に建造意欲というものに非常な差異がある。あとからむしろ投機的に申し込もうとするものよりは、既往の申込者の中から選ぶ方が適当である、かように考えた次第でございまして、その間私ども知る限りにおいては何ら他意がない、かように確信しておる次第であります。
  47. 河本敏夫

    ○河本委員 それならば、今度の五万トンの追加建造計画はどういうふうな方法でやられるおつもりでありますか。
  48. 岡田修一

    ○岡田(修)政府委員 次の五万トンにつきましては昨日も御答弁申し上げましたように、目下その所要財政資金についての確保について、大蔵省並びに開発銀行と交渉中でございます。まだ完全に目鼻がつくまでには至つておりません。従いましてまだどういうふうな公募方法をとるか、そういうところまで私ども考えが至つていないのでございます。今度は開発銀行の方に移りまするので、開発銀行の方に申し込んでいただく。従来のように見返り資金で大蔵省が貸し付けるという場合には、運輸省が船主の申込みを受ける。あるいは運輸省で選定する、こういう方法をとつておりましたが、今回は開発銀行の方への申込みということになりまして、開発銀行の方で船主の選定をする、こういうのが建前でございます。まだ開発銀行ともいかような方法で船主を選考するか、おそらく開発銀行は政府の機関でありまするが、銀行でございまするので、いわゆる銀行の事務としての観点から船主の選考をするのではないか、かように考えておる次第であります。
  49. 河本敏夫

    ○河本委員 私がお聞きいたしました質問の焦点にややはずれておるように、思うので、重ねて簡単にお伺いいたしますが、先ほどの御答弁では当初申し込んだタンカーの希望者は全額自己資金でもやる。しかるに条件を変更した後に建造希望者が相当あつたけれども、これは財政資金が出るから申し込んだ手合いであるから、そういう手合いよりも先の方が海運政策に協力するというか、建造意欲が旺盛のように思うから再公募をしないで、もとのものをそのままやつたのだ、こういうふうな御答弁であるが、私のお聞きしたいのは、それであるならば追加貨物船の建造の場合に、見返り資金の比率が五割から七割にふえた。その場合にあらためて申込みをする手合いは、それど同じ考えの手合いでありまするから申込みを受付けるべきではない、かような理論になりまして、きのうの御答弁とは多少矛盾を来して来るわけでありまするが、私はこの点につきましてはこれ以上触れません。ただあくまでこのタンカーに対して財政資金を出したということは、市中の金融機関の希望によつたのだ、こういうふうな御説明でありまするけれども、私はどうもこの点が納得行かぬのであります。市中金融機関は緊急を要しないタンカーに対するところのそういうふうな財政資金の新たな投資より、もつともつと緊急を要する貨物船の融資率の引上げ、あるいは内航船舶の整備、こういうふうな問題をこそよけい強く要望しておるのでありまして、その次にそれができた後に初めてなお余裕があるならば、タンカーに対して云々という希望を持つておるのが、金融の常識上現在の金融機関の大体の意向であろうと思うのであります。私はここに緩急の順序を誤つたと思う。しかも選挙中に行われ、しかも選挙中に条件が幾多変更せられた。それに対して再公募がなされておらぬ。かような点について世上いまわしい風評が立ち始めたということは、日本の今後の海運政策の上に大きな禍根を残すのではなかろうか、こういう点を心配いたしますので今後はかようなことのないように、あくまで公正な方法でおやりを願いたい、かようにお願いをいたします。それからなおこの問題に関連いたしまして、今後は開発銀行がやるから、開発銀行の方に申込みをさせる、こういうお話でありまするけれども、私はこれは反対であります。というわけは、この三十万トンの船舶の建造計画を立て、これに莫大な財政資金を投入し、そうして今後の日本海運を大きく発達させて行こうというならば、本年四月に発足いたしまして、海運行政につきましては何らわかつておらぬ開発銀行にこれをまかすという点に問題があろうと思うし、またどうしても開発銀行にそれをまかすということになるならば、金融関係を中心に物事を考えて行くようになります。海運政策全体を考えないで金融政策だけを考え、しかも彼らは本年の四月に発足したわけであるから、海運界全体のことがわからぬ、こういうふうな点で私はあくまで開発銀行にこの最後の仕上げであるところの船会社の選定をまかすことは反対でありまして、あくまで運輸省が中心となられて、そうして海運政策の最後の仕上げであるところの船主の決定というものをなさるべきである。今度はタンカーのような不明朗なことでなしに、公平な方法でやるべきである、かように確信するものであります。従つて開発銀行にやらしてはならぬ。運輸省が中心であくまで最後の海運政策の仕上げを見るべきである、かように確信いたしますが、この点についてはどういうふうなお考えでありますか。
  50. 岡田修一

    ○岡田(修)政府委員 開発銀行の方で、船主の選定をいたすにいたしましても、その前提として大体どういう船を幾らつくり、たとえばスピード十四ノット以上の船は何隻、それ以下の船は何隻、こういう海運政策の線に沿つた大きなわくは開銀の方へ要請する。ただ個々の船主の選定につきましては、個の船主の信用力、こういうものが第一になると考えまするので、そういう点については開銀の意向を尊重すべきではないか。従つて開銀がこの船主の選考をやるにいたしましても、その選考が海運政策の線に乗つている、こういうふうな方向にやつてもらうように今後具体的な話を進めたい、かように考えておる次第であります。
  51. 河本敏夫

    ○河本委員 現在でも金融界の海運界に対するところの発言権は、金融事情の悪化のために非常に強い。私はこれ以上金融界の海運界に対する発言権を強くさせるということは、よほど考えなければならぬと思う。かような点からも、私は重ねて開発銀行にまかすとかいうことでなしに、運輸省があくまで中心となつて最後の仕上げであるところの船会社の決定をやつてもらいたいということを希望意見として申し上げます。  次に日本と北米西岸航路、日本と欧州航路、これについてお伺いしたいと思います。この航路はいわば鉄道でいいまするならば東海道線と山陽線のようなものでありまして、戦前におきましても日本の政府は建造補助とかあるいは航路補助などを出しまして、外国に負けない欧州船がこの両航路には就航しておつたのであります。現在は航空機の発達、こういうふうな事情も加わりまして、多少戦前とは様子は違つておりますけれども、私はあくまでこの二つの航路は、外国船に負けないように、世界の東海道線であり、世界の山陽線であるから、現高のように貧弱な船舶を就航させない、これに対しましては政府は両航路に対しては特別の、先般来御説明のあつた海運政策とは別に切離して、何らかの私は対策を立てられる必要があろうと思います。これさえできるならば、今度皇太子殿下が御渡欧せられるにつきまして、乗つて行きます船もないというような、海運日本としてはまことに世界に対してはずかしいような事態も起らぬと思うのでありますが、ぜひともこの両航路に対して特別の対策を立てなければならぬ、かように信ずるものでありますが、これに関する運輸大臣の御答弁お願いいたします。
  52. 石井光次郎

    石井国務大臣 ただいまのお尋ね、昔の夢を追うようでございますが、戦前のように北米、欧州、両航路に日本の客船のりつばなものが出て、そこらの国々と競争してりつぱな海運日本の姿に帰ることが望ましいのですが、御承知のように今の海運状態では、残念ながら皇太子殿下をお乗せするような船もろくすつぽないような状態であります。これからといたしまして、ようやく貨物船が少しずつ確保がつきかかる道程でありまして、この方をまず第一とわれわれは考えております。貨客船あるいは客船と申しますか、そういう問題につましても、今のあなたのお心持のような気持で順次新たな対策を立てて行きたいと思つているわけでありますが、まだそこまで至つていない情勢であります。
  53. 河本敏夫

    ○河本委員 次に南米航路につきましてお伺いいたします。南米航路は欧州航路であるとかあるいはまた太平洋航路であるとか、かような意味と違つた、また別の重要な意味を持つている航路であります。それは先般外務大臣が外務委員会で御答弁になつてつたようでありまするが、今度ブラジル政府は日本の移民をとりあえず九千家族入国させることに同意いたしました。その第一陣がすでに先般オランダ船で出発したように聞いております。従つてこの航路は移民航路といたしまして非常に重要な航路であります。ブラジル政府の現在の意向では、この移民の成績さえよければ幾らでも日本の移民を増加してよろしい、土地は無尽蔵にあるからこれを無償でやる、こういうふうな意向のようでありまするから、私はこの移民政策というふうな大きな観点からも、この南米航路は別途に考えまして、日本の移民がオランダ船でなければ行けないような、こういうふうな状態を一刻も早く脱却すべきではないか、かように考えますが、この南米航路に対しては、私は移民航路という関係で特別に——政府の今度の海運政策では財政資金を貨物船と違つて八割出されることになつておりますが、これ以上に何らかの特別な補助政策をやられなければならぬ、こういうふうに考えますが、この点につき御意見はいかがでございますか。
  54. 石井光次郎

    石井国務大臣 南米航路は戦前においても、移民だけでもなかつたのでありまするが、いろいろな目的でりつぱな船が就航しておつたのでありますが、現在全然ないのであります。来年度の予算で、五百人の人員が乗れる船を一ぱい改装して就航せしめるつもりで、予算にも組まれるわけであります。  この方面にこちらから参ります者は、荷物のほかに主として移民です。これは特別にブラジル政府の非常な好意がありますので、そういうところにこそ日本の移民を早く、多く、いい人たちを出してあげるということが必要だと思います。装船につきましてはまだようやく船を一つこしらえる問題だけが考えられているたけで、以前のやり方、これから先の貿易の進展、人の動き問題等も考慮いたしまして、なるべく移民が早くそうして安価な方法で行けるように、これは移民の援助という問題の上からも考えられると思いますが、私の方としてもいろいろな問題を考えて行きたいと思います。
  55. 河本敏夫

    ○河本委員 先ほどの御答弁でその原則はよくわかりましたが、来年度において五百人見当移民の乗れる船を一隻改装するために補助を出す準備をしている、かようにおつしやつたように聞きましたが、そうでございますか、海運局長からでもけつこうです。
  56. 岡田修一

    ○岡田(修)政府委員 ただいま大臣から答弁いたしましたように、一応そういう構想で大蔵省折衝中でございます。もしこれがいかない場合におきましても、その改装費につきましては財政資金で融資する、いずれかの方法で少くとも一隻は確保したい、かように考えて目下計画を進めております。
  57. 河本敏夫

    ○河本委員 この問題に対しましては欧州航路と太平洋航路、南米航路、この三つの線はそれぞれの意味におきまして、特別な対策を私は考えなければならぬということを強調いたしまして、最後に中共配船の今後の見通し、これにつきましてもし運輸大臣がお聞きでなければ、海運局長から御答弁お願いしたいと思います。
  58. 岡田修一

    ○岡田(修)政府委員 中共配船につきましては海運会社の方で非常にこれを熱望しておりまして、それぞれの手を通じていろいろ交渉し、その実現方に努力をいたしているようでございます。現在のところまだそれが実施するという運びにまでは至つてないのであります。政府といたしましてはこれについて何ら関与しない。船主が自己の責任においてやるならばやられるがよろしい、こういう態度で運輸省としてはそういう態度をとつております。船主自身の危険と負担においてこれが実現すべく努力中のように聞いております。
  59. 河本敏夫

    ○河本委員 中共配船につきまして、船会社自体の危険と責任において配船する、そういうようなやりつぱなしの考え方でなしに、中共貿易、従つて中共配船の重要性という観点から、政府自体がもつと進んで何らかこれに協力するという考え方が必要ではないかと私は思います。こういう点に対する政府の御検討をお願いいたしまして、私の質問を終了いたします。
  60. 逢澤寛

    ○逢澤委員長 一時半まで休憩いたします。     午後零時三十九分休憩      ————◇—————     午後零時三十九分休憩     午後一時五十一分開議
  61. 逢澤寛

    ○逢澤委員長 休憩前に引続いて会議を開きます。熊本虎三君。
  62. 熊本虎三

    ○熊本委員 まず第一にお尋ねをいたしたいことは、海上警備隊と保安庁との職務権限並びにこれが行使についての問題について、大臣からお答えを願いたいのであります。それは一昨日の政府の報告によりますと、やはり保安庁の方でもあるいは三インチ砲を装備する相当の汽船を用意して、そうして保安に当らなければならない。そのことのためにはたとえば密輸、密入国あるいは漁船の拿捕等に関する幾多の不法行為に対しての取締り上、必要であるということの説明がございました。警備隊においては、フリゲート艦等も十数隻をアメリカから借り入れて、そうして完全武装を装備して、それでこれを拡充しようとされておるのでありますが、それらの職務権限、その遂行について、どういう連鎖と関係においてこれをなされるか、その点について御答弁を願いたいと思います。
  63. 逢澤寛

    ○逢澤委員長 熊本さんに申し上げますが、この問題は海上保安庁長官を今呼んでおりますから、御出席になつてから御答弁を願うことにいたします。
  64. 熊本虎三

    ○熊本委員 それでは先ほどからいろいろお話のありました要するに李承晩ラインというものは、国際法に基きます朝鮮の海域の範囲、それにさらに加えて国連軍の軍事活動上に基くところの一つの範囲、こういうような現在三つのものが錯綜して、非常に現在海域上の問題は混乱しておる事実は御承知通りであります。もちろんこれは外務省関係においてこの問題に関する処置あるいは方針等が議せられることとは存じますが、しかしながら直接この保安警備に当られる保安庁としては、これらの問題から錯綜されつつある現状において、いかなる方針をもつてその任に当られておるかということ、それからそのことからどういうような現象が起つておるかということ、これらの問題についてお尋ねをしたい、かように考えますが、これもやはり保安庁長官が来なければ御答弁ができないかどうか。
  65. 石井光次郎

    石井国務大臣 御一緒にお願いいたしとうございます。
  66. 熊本虎三

    ○熊本委員 大臣は最近かわられたのであるからやむを得ないかと思いますが、しかしこれを統合処理される大臣の基本的方針くらいは承つておいて、具体的なものはその衝にある長官からというふうに考えておつたのでありますが、しかしこれはやむを得ませんから次に移ります。  次にお尋ねいたしたいことは、非常に今問題になつておりますところの造船計画についてでございますが、いろいろ各委員から御質疑がございました。しかしながら先ほど来の御答弁を聞いておりますると、どうしてもやらなければならないということだけはわかりまするが、しかしながらたとえば本年度計画の五万トン建造についても、具体的な内容がわかつておらない。そうしてこういう形においてこういうふうになるから必ずここでできるというような答弁を願つておりません。そうなつて参りますると、できるかできざるかは、われわれが求めるものと実現の問題とは別個になつて参ります。従つて予算の審議にあたりましても、はなはだわれわれは盲がつえを探すような形においてこれを審議しなければならない、まことに心もとない限りでございまして、残念しごくだと存じております。  そこで私承つておきたいことは、政府は相当数の財政資金というものは持つておるはずである。その財政資金の運用こそが、日本再建に非常な重大性を帯びるものでございまして、その運用こそ最も肝要であろうかと存じます。われわれが聞くところによりますると、四千数百億の財政資金というものが政府に保有されておるということを聞くのでありますが、はたしてわれわれの聞くごとくに、約五千億になんなんとする財政資金というものが保有されておるかどうか、こういうことについてまずお尋ねをいたしたいと存じます。
  67. 石井光次郎

    石井国務大臣 造船計画の問題ですが、特に本年度の五万トン造船についてはたして成算ありやというような意味にお聞きしたのでありますが、これはいろいろと当つおり、それから下調べをいたしております。今準備中でございますが、本年度の五万トンは遂行できると確信いたしております。来年からの問題についてはまだ何とも様子がわからないのでありますが、私どもは何とかして日本の商船隊建設のために、三十万トン造船を来年はやれるという線に、業者自身がその意欲を持つてつて行くように私ども努力いたしたいと思つております。  それから運用資金の問題は、これは私の所管でありませんからお答え申し上げられません。五千億円もあるかどうかといいますと、私どもとして希望するのは、財政資金が出してもらえるものならそれをなるべく運用して、そして船を問題にすれば、なるべく船をよけいつくりたいというふうに私は考えております。今度の造船も、七割だけ財政資金を出すというような問題もその現われの一つだと思つております。
  68. 熊本虎三

    ○熊本委員 どうしても安心が行かないわけでございますが、財政資金の問題については、これは大蔵省に聞くのが妥当だと思います。しかしながら少くとも予算編成にあたつては、国家財政の根本的な現状を知つて、初めてその担当する省におけるところの予算編成がなされなければならない。従つてその意味において、財政資金の問題について現状がどうあるかということくらいは、運輸大臣といえども承知おきになつて、しかしてもつて各省の求むるところの予算と、本省が求むるところの予算との軽重、緊要の度合いをはかつて、もつてその目的貫徹に努力さるべきであろうかと考えております。ところがその問題については、幾らあるかしれないけれどもという御答弁では、はなはだもつて熱度の点において欠けるものがあるのではないか。それであつたのでは、大蔵省運輸省の方へまわすべきものはない。他の方の金融があるからしてだめだと言われれば、はあさようでございますかといつて運輸大臣は引込む以外になくなつて来るのであります。だから私はこのことは当然大蔵大臣の方から聞くことが妥当だとは思いますけれども、具体的のそういう綿密なものを聞こうとしているのではなくて、たとえば今次の追加予算の編成にあたつても、いわんや切迫いたしておりまする二十八年度予算の編成にあたりましても、当該大臣というものは当然これらの総合的な日本の資金金融というものを把握して、その中からみずから信ずるものを強硬に主張するにあらずんば、断じてかような問題が実現は不可能であろうかと感じます。その意味において私は御説明を求めたのでありますが、はなはだもつて遺憾千万だと考えます。従つてそういう観点に立つて答弁でありますから、たとえば本年度の五万トン計画についても、何とか自信を持つておりますとおつしやいますけれども、まことに不安になつて来る。現在の財政資金が幾らあつて、開発銀行がこういう形においてこういう形の運用をしようとしておるのであるから、だからその中からこれだけのものは、かくして七〇%のものは必ず出さしめるのだというような御答弁を願わないとはなはだあいまいにして、われわれは先ほどから言いまするように心もとない次第でございます。その点についてもう一度御答弁を願つておきたいと思います。
  69. 石井光次郎

    石井国務大臣 今のお尋ねの財政資金の内容はどういうものか、国家にどれだけ融通し得るものがあるかというような総括計算書というようなものを私聞かなかつたのでありますが、いろいろな場合にその内容についての説明大蔵大臣から私承つておりました。数字的なものを私頭に持たないので、はつきりしませんから、あいまいなるお答えをしてまことに恐縮でありますが、大体財政資金からわれわれが求めておるものに、ただあるとかないとかいうだけでなしに、全体のにらみとしていろいろ話合いをつけて行つていることも当然であります。従いましてなお今の御注意は、私自身としても当然守らなければならないので、今後なお気をつけますが、五万トンの造船につきまして七割の財政融資をするということは、もう確保しております。それだから船をどこにどうするかという具体的の問題等について、これからいろいろ研究するのであります。これは出して行けると思います。
  70. 熊本虎三

    ○熊本委員 先ほど大臣から私の考えております大綱については、御同意を得ました。従つて将来もその点については積極的に御努力を願いまして、大蔵省がそういう資金金融の面については、独占してみずからカーテンを引いておいて、各省施設や予算についてつべこべということははなはだ越権だと思います。従つてそういうものはいち早くさらけ出して、そうしてこの上から各省は閣議をどういうふうにするかということをなすべきが、私はほんとうの政治のあり方だと考えております。従つて運輸大臣におきましてと当然その面から、直接の関係ではないといたしましても、私ども審議の上に必要でございますから、委員会の継続中でもよろしゆうございます。そうい面について数字的な資料をお出しを願いたいと存じます。なお七〇%の開発銀行融資は、これは決定をしておるということでございますならば、あとはわずかに実施の時間の問題だと心得ますが、そう心得てよろしいかどうか。
  71. 岡田修一

    ○岡田(修)政府委員 御質問が具体的にわたりますので、私からお答え申上げますが、残り五万トンを財政資金から七割出してつくるということは、政府の方針としてはそういう方針で進むことがきめられております。従つてあと三割に対する利子補給というものが中に含まれておつて、それに対する財政資金は、ただいま大臣お話いたしましたように、大体見込みがあるというふうに考えております。ところがこの船舶建造を進めますためには、それに関連して船会社が市中金融機関から借りておる金を、開発銀行に若干肩がわりする、こういうことが海運会社、市中金融機関、それから運輸省との間の話合いになつておる。この肩がわりを解決するということが、次の新造に進む前提になつておると言つていいかと思います。その肩がわりをどの程度にするか、その問題についてまだ解決点まで至つてないのです。従つてその新造に並行して解決しなければならない肩がわり問題が解決するときになつて、その新造の方を進めるようにいたしたい、かように考えておる次第であります。
  72. 熊本虎三

    ○熊本委員 そうするとかように解釈してよろしいか。要するに開発銀行から必要資金の七〇%は貸出しをするということには決定しておる。あとは海運界がこれに預金その他の肩がわりの手続が遅れている。このことさえ完了すれば、五万トン資金問題についての開発銀行方面は解決する、こういうことに解釈してよろしいかと思います。そうなつて参りますと、開発銀行融資に関する海運関係業者の手続その他が、肩がわりの事務その他の進捗が遅れているために、第八次いわゆる五万トン計画の具体的実施の期日が明確でない、こういうふうに解釈してよろいかどうか、もう一ぺんお伺いします。
  73. 岡田修一

    ○岡田(修)政府委員 開発銀行から残り五万トンに対する七割融資に相当する額を出すことが決定していると言うと、非常に語弊がございます。これは開発銀行の方できめることでございますから——。しかし私ども大蔵省、開発銀行との折衝途中でございまするが、今折衝しているぐあいでは、運輸省としてはその新造資金を確保し得る見込みあり、自信あり、こういうところです。まだ決定までは至つてない。その決定は先ほど言いました船会社が市中銀行からすでに多額の金を借りています。その借金を、午前中河本委員から御質問がありましたように、財政資金に肩がわりしようとしているわけです。その肩がわりすることが市中銀行の非常な要望でもあるわけです。それを同時に解決しなければいかぬ。その肩がわりいたしますのに、少くともかりに二十億の方をわれわれの方では肩がわりを実現したい、かように考えておりますその二十億と、本年度内に五万トン建造のために必要な財政資金として二十八億、少くともこの四十八億というものを確保しなければならぬ。二十八億程度ならば確保し得るのであるが、その肩がわりの二十億をさらにあわせ考えると非常に困難である。その二十億のものをどうして確保するかということを折衝しているわけです。その二十億が解決しないと、新造の二十八億も解決したことにはならないのです。
  74. 熊本虎三

    ○熊本委員 そこまで開かない方がよかつたようですが、どうも大臣からは非常に自信のあることを承つて、今度は直接担当者の方からはまだあいまいだと逆転をいたします。要するに二十億の肩がわりがなされなければ、七〇%の開発銀行融資はできない、こういうことになつて参りますると、私が最初に不安を持つたのと同じようなところへまた帰つて参ります。それであつたのではまことに私ども心もとないと考えまするが、政府といたしまして何とかその点について自信を持つてやる、そのことの事務折衝手続が今のところ完了しておらないというところでもあろうかと考えますが、そういうふうに解釈して、そうして少くとも年内には、この方面に関する限りは開発銀行並びに財政資金との肩代わり等々を処理して、来年早々からでもこれに着手することができる。開発銀行融資に関する限りはさようにわれわれは確信を得てこの問題を進めてよろしいかどうか。もう一ぺん念のためお尋ねしておきます。
  75. 石井光次郎

    石井国務大臣 年内には必ず片づけるというつもりでやつております。御希望に沿うようにしたいと思います。
  76. 熊本虎三

    ○熊本委員 その面につきましてはこれ以上こんにやく問答をいたしましてもし方がございません。政府を信じ、特に運輸大臣を信頼して、ぜひともこれを実現せしめるという確証を得たことといたしておきたいと存じます。  次にお尋ねいたしたいことは、残り三〇%の市中銀行の融資の問題でございます。これが開発銀行の利子七分五厘に対し、市中銀行一・一八五という、その差額を政府が補償をする、こういうことで、この面については予算が組まれているようであります。しかしそれだけの補償をしたならば、ああいう利益追求のために汲々としている市中銀行が、はたして造船のための融資をやるということに御確信があるかどうか。われわれが聞くところによりますと、それだけでははなはだ不安であるので、いわゆる政府の損失補償を求めている。そのことなしではとうてい金融はできない、こういうようなことを聞かされているのでありますが、はたしてその点についての処置いかん。市中銀行の金融見通しがあるかどうかということについてお尋ねをいたしておきます。
  77. 石井光次郎

    石井国務大臣 市中の資金なのでありますが、なるほど利子補給だけでたく、損失補償もしてもらいたいという声が各方面から盛んに上つております。私もこれをしたらいいだろうという心持なんです。心持だけでなしにそれを熱心に主張しておりますが、大蔵大臣との間にまだ完全な了解に至つておりません。しかしこれを今やらなければ、五万トン造船計画の実施がデツド・ロックに乗り上げるかというと、それほどまでではないと私は思つております。これは造船をする人たち折衝に待つ筋でありますが、私どももこれを応援いたしまして、これは私はでき得ると確信いたしております。
  78. 熊本虎三

    ○熊本委員 重ねて御質問申し上げます。現在の金融機関、特に市中銀行の専横は、日本全国に及んでいる一大不信の事実であります。先ほど河本委員からの御質問に答えて、当局者はあたりまえのごとくに答えられましたが、私関連質問でやろうかと思つてつたのでありますけれども、要するに自己資本でもやり得るというその条件のもとに、あるいは市中銀行の融資に基いてみずからの力でやり得るという建前で約定をしたるその造船所に対してすらも、政府の資金をもつて肩がわりせしめるというような非常処置をとらなければならない。ある意味においては背信行為である、こういうようなことまでやらなければならない今日の市中銀行のわがままというものを向うにまわして、はたして損失補償というものの確証を得ずして、市中銀行が現在の造船事業あるいは海運事業に対してそれだけ巨額の金を出すかどうかということは、まことに私どもは不安しごくである。私はこの前も申し上げましたが、とにかく金利調整委員を三年間やつておりまして、大体金融行政に関して私はしろうとでありますから多くものを言つたことがございませんが、しかしながらドツヂ・プランの実施、すなわち健全経済に立ちかわるというそのとたんにおける各市中銀行のとりたる暴挙は、まことに見のがすことができない。彼らはみずからの利潤さえ考えればよろしいのであります。国家の財政がどうなろうと、それから国家の産業がどうなろうと、そんななことには全然考慮をいたしておらない。従つてドツヂ・プランの実施に伴うところのいわゆる健全経済ということに政府の方針がきまりまするや、彼らの融資は一ぺんに門戸をとざしてしまつたのであります。全利の問題については、金融機関の経営がなるかならないか、このことが重要視され、それが産業に及ぼす影響とにらみ合せての金利であることは言うまでもございません。しかるにもかかわらず、いわゆる産業発展のために金融が最も緊迫して、それが一番重要問題であるというところに金利の値上りをもわれわれは認めて来たのであるが、一たびそういう政策の変遷にあうと、金利のさやで生活して利潤をあげておる銀行が一切の門戸をとざしてしまつて、単に勧業銀行のみに肩がわりせんとするような暴挙をしたのであります。こういうような傲慢無礼な態度をもつて、みずからの利殖にのみ汲々としておるところの市中銀行でありますから、これが国家経済や産業に関すること等は全然念頭になかろうかと考えます。でありますから私どもは、こういう営利会社に金融のための国庫補償をするということは、本質的には反対であることはこの前も申し述べましたが、しかしそれをしも忍んで、もつて政府の施策をこの際樹立してもらいたいというゆえんのものは、それはとりもなおさず今日の日本再建のために、いかに造船計画というものが重要であるかということにかんがみてこれを求めておるのであります。従つてその観点に立つて当局者は十分なる考慮と努力を払われなければ、単なる見込みがあるとかあるいは確信があるとかいうようなおざなりな答弁によつて、これの実現はなかなかもつて困難であろうかと考える。のみならず二十八年度の造船計画等々につきましては、なおさらその問題は困難であろうかと存じまするので、この点に関する限りぜひとも当局者は、将来というよりか明日からこの問題の実現のために努力をせられまして、国民の求むる日本再建のためへの強き熱望にこたえるような努力をしてほしいということを希望いたしまして、この問題については打ち切りたいと存じます。  次に、十四国会に提案されようといたしましたいわゆる造船計画の一環としての補助政策でありますが、これについては鉄鋼メーカー、すなわち八幡、富士、鋼管等に対しまして、材料価格の補給金としてこれを与える。そのことのために十数億円の予算を計上して造船計画の進捗をはかろうとされたようでありますが、それが今回はそうではなくて、材料メーカーにこれを補償するのでなくて、いわゆる海運業それ自体に肩がわりをするという形をとつておられまするが、それはどういう関係でそういうような変更をされたのであるか、さらに加えまして、その鉄鋼メーカーへの補償トン当り二万円ということであつたようでありまするが、それが今回は一万円に減額されておる。これらの問題は一体どういう関係においてそういうように組みかえられたかを、この際御質問申し上げておきたいと思います。
  79. 甘利昂一

    ○甘利政府委員 私からお答えいたします。先ほど来鋼材の補給金について御質問がありましたが、昨日も御訂正申し上げましたように、補年予算においてはそれは決定しなかつたのであります。それともう一つ、初めは鋼材メーカーに補給するのが、後に造船所に補給するようにかわつているが、どうしてかわつたかという御質問でありますが、初めは通産省が、当初一般の輸出用の機械に使うところの鋼材に対する補給金の支出方法として、特別会計で買い上げてこれを需要者に支給するというような案を考えておつたのでありますが、運輸省としては、初めからこれは造船所に支給するというような案を考えておつたのでありまして、その点誤解のないようにお願いしたいと思います。  それから当初トン当り二万円の助成金であつたのが、次に一万円になつたのはどういうわけかというような御質問でございましたが、これは決してかわつたわけではございませんが、先ほど来申しましたように大体造船用鋼材は、イギリスと日本を比較しますと、トン当り約二万円くらい違います。従つてこれらの価格に対する何らかの措置がとれれば、日本造船価格は少くともイギリスの造船価格に追随し得るということを申したのでありますが、ただどうしてもその二万円ができない場合には、少くともその二万円のうちの一万円、これは特に鉄鉱石あるいは運賃等が安くなつても当分安くならない、いわゆるわが国の製鋼技術、あるいは設備等の後進性に基くところの寸法に対する割増料である、あるいは品質に対する割増料でありますから、これらは当分安くなる見込みがない、しかもこれらの割増料は外国では実施しておらないという点から、少くとも一万円だけはやつてもらいたい、こういう趣旨であります。
  80. 熊本虎三

    ○熊本委員 大体鉄鋼メーカーへの助成と、それから運輸省としての造船への直接援助というような関係につきましては了承いたしました。そこで問題は、造船資材が他の国々と比較しておよそ二万円の高価な価格である、こういうことになりますところを、かりにこれを一万円程度にとどめる、こういうことになりますると、それは造船業界といたしましても、いろいろなことに対しまして種々なる方策を考え、能率増進の意味において、改善すべきところは幾多改善するであろうかと存じます。しかしながら問題は、最終価格の問題が国際場裡における競争の欠陥ということになつて参りまするならば、おのずからこれは大きなところに影響して、そうしてそのはね返りがどこへ来るかというと、造船に従事する労働者諸君にはね返りが来るのではないか、もしそうだとしまするならば、これも重大な大問題となろうかと思いまするが、これらの問題について運輸省といたしましては、そういう形の危険はない。たとえば一万円の補助でも、せざるよりした方が楽だと、こういう建前からものを判断いたしまして、直接これに献身的努力をする労働者等には悪影響はないというようなことが、見通しとして保証されるかどうか、もう一ぺん御説明を願いたいと存じます。
  81. 甘利昂一

    ○甘利政府委員 先ほど申しますように、われわれ決して一万円でよろしいと言つているわけではありませんで、あくまで二万円の助成をしてもらいたいというのでありますが、ただその二万円のうちには、先ほど重工業局長説明しましたように、いろいろな措置を講ずると自然に鉄鋼価格が下つて来るのじやないかというので、ある一部はおそらくその措置によつて下るだろうと思いますが、しかしあとの一万円に相当する規格料は、そういう措置で下らないから、もし鉄鋼価格が下つた場合においても、せめてこの一万円だけはどうしても補助してもらいたい。それが先ほど来の説明によつて、実際問題として運賃が下つてもそう鉄鋼価格に影響がないようでありますから、そうなればもちろん二万円程度の助成金が必要となつて参ります。もし二万円の補給金ができずに一万円に下つた場合に、造船業者にいろいろな影響がないかどうかというお話でありますが、おそらくこれは二万円の方がけつこうではありましようが、ただしかし現在外国から相当たくさんの輸出船の注文がありますが、これがいずれもごくわずかの値段の差でとれないような状況にあります。また内地船の建造が、年間三十万トンにしますと、どうしても現在の造船能力に十分マツチした注文量ではないのでありますから、ある程度のやはり輸出船もとらなければならないと思います。そういう観点から、この際幾分でも鉄鋼価格が安くなれば、あるいはそれに関連したいろいろな機械類なんかも幾分安くなり、いろいろあれやこれやをあわせてやれば、今話のある輸出船がとれる場合があり得ると思います。そういう点において、一万円でもないよりはましではないか、こういうふうに考えております。
  82. 熊本虎三

    ○熊本委員 これ以上このことにつきまして質問を重ねまいと存じますが、以上私の造船計画に基きまする数々の夜間は、私といたしましては非常に重要なる問題であると心得て、先ほど来御質疑をいたしました。答弁といたしましてはまだ満足はできませんけれども、しかしながら私どもの意思、すなわち委員会の意思を体して関係者の十分なる努力をこいねがう、こういうことでこれに関する質問は一応打切りたいと存じます。  次にひとつお尋ねいたしたいことは、造船会社の中に川南という会社があるようでありますが、これが最近外国船三万数千トンのものを建造したいという要望をしているそうでありますが、関係者といたしましては、もしそれらのものが受注関係が具体化すれば、これに許可を与えられる意思かどうか、その点について一応お尋ねをしておきたいと存じます。
  83. 甘利昂一

    ○甘利政府委員 川南遊船所が最近載貨重量三万一千トンに相当する輸出船を契約して来たことは事実でありまして、すでに運輸省に対しましても建造許可申請書を出しております。しかしこの造船所は、御承知のように戦後長い間放置されておりましたし、また一部操業はしておりましても、ごく小さな船しかつくつておりませんので、いろいろな点において、設備その他技術の点において不備な点もありますので、いろいろその間の事情を目下調査いたしておりますので、もしその調査の結果、十分可能性があればわれわれとしても別段これを許可しないということは言つておらないわけであります。目下調査中であります。
  84. 熊本虎三

    ○熊本委員 さらにお尋ねいたします。この会社がかつて見返り資金十数億の融資に基く、あるいは岡田商船、隆昌海運筆の船を各一隻ずつ受注いたしまして、その後の成行きが一体どうなつているかを御承知かどうか。御承知ならば現在どうなつているかの御説明を願つておきたいと存じます。
  85. 甘利昂一

    ○甘利政府委員 前大臣時代の問題でございますので、私からお答えいたします。お話通り造船二はい、それから改造船、たしか三ばいだと思つておりますが、見返り資金を一部供給いたしまして、新造及び改造することになつておりましたが、いろいろな関係でついにできなくなつたものですから、新進船二はいについては、新たに別個の燈船所がこれらの船主と契約いたしまして、それらの船がもうすでにでき上つております。それから改造船については、もうすでに造船所において工事にかかつておりましたので、よそへ持つて行くわけにも行きませんので、その改造船の船主の間に団体をつくりまして、その船主団によつて、当時の造船所の一部を借り受けまして、これを完成いたしまして、これらの船もすでに就航いたしております。
  86. 熊本虎三

    ○熊本委員 なお聞きたいことは、岡田商船の方からはすでにその前渡し金七億数千万円のものが行方不明になつている。要するにこれを他に流用して詐欺的行為をやつておるというので、破産申請をしておるということを承つております。はたしてしかりとすれば、いかような事情があろうとも、再びこれを造船許可をするなどというようなことは、とうてい考え得べくもないことである。先ほどの御答弁によりますと、目下その新造計画を検討中であるとお答えになりまして、場合によつて、条件が整えば、またもや懲りもなくこれに許可をしないこともないというような意味に解釈される答弁でありますが、はなはだもつて残念しごくと存じます。今鉄材その他、戦争によりますところの多くの犠牲のために、日本造船につきましても、あるいは海運につきましても、いろいろの点において他の諸外国との競争が成り立つておらない。特に船員諸君はアメリカの船員の俸給と比較して、まことに低位な率でもつて、昼夜命をかけて海運事業に従事をしているにもかかわりませず、これの採算が立たないというような窮状である。これらの信用を挽回して、瞬時も早く国際海運の中に一員として肩書を並べるためには、よりよき信用が必要である。しかるにかくのごとき罪状持ちの現在破産申請をされておるようなこの会社について、特に何か調査の必要があるなどというような、まことに甘ちよろい御答弁は、私ども当を得ないと考えまするが、それでもなおまだ当局といたしましては、条件が整えば許可するやも知れないというようなお考え方であるかどうかを、念のために承つておきたいと思います。
  87. 甘利昂一

    ○甘利政府委員 先ほど申しました調査の中には、これらの岡田商船から提出されました訴訟事件に関する件、あるいはその他いろいろの債権者もありますので、こういう方面もある程度調査いたしておりますので、それら全体を見まして、この船ができる可能性があるかどうかというふうな総合判断をいたしまして、それによつて許可するしないをきめたい、こういう意味でございます。
  88. 熊本虎三

    ○熊本委員 許可の権利は運輸省にございますから、私ども声を大きくしてどなつてみても始まりません。しかし私どもは、いわゆる日本海運業のよりよき発展のため、またこれはひいて貧弱なる資源を持てる日本の、この荒廃せる中から立ち上らんとする国民的希望に基いて、かくのごときことは非常に心配になるがために質問をいたしておるわけでありまするから、その点について万遺漏なきを期していただきたい、こういうことを条件といたしまして、質問を打切りたいと存じます。先ほど保留になつておりました私の二点の質問について、保安庁の長官が見えましたならば、御答弁を願いたいと思います。
  89. 逢澤寛

    ○逢澤委員長 保安庁長官が見えましたから、柳澤政府委員
  90. 柳澤米吉

    ○柳澤政府委員 御質問の第一点でございますが、海上保安庁と海上警備隊の差異でございますが、海上保安庁は常に海上の安全を確保するために、平常の業務といたしまして日本沿岸のパトロールを行いまして、海上の犯罪を防止し、同時に海上における船舶の交通の安全を確保するという役目を持つております。海上警備隊におきましては、主として非常の場合が起きましたとき、たとえば大きなる災害が起きたとき、あるいは大きなる密出入国の団体が入つて来るというような非常の場合がありましたときに、これらの方面仕事をやるというふうにわけられておるわけでございます。従いまして海上保安庁は苗に平常の業務を行つておりまして、そういう災害等が起きました場合におきましては、海上保安庁長官及び海上の各管区本部長というものが警備隊に対しまして、出て来てもらいたいという要請をすることができるという状態になつており、なお警備隊が災害等に自分で出動をいたしまして、自分の手が足りない場合におきましては海上保安庁の船舶に手伝つてくれということを言われました場合には、われわれの船艇もこれと協力して行うというような状態に相なつておるわけであります。  次に李承晩ラインの御質問でございますが、われわれといたしましては李承晩ラインというものにつきましては何らこれを考えの中に入れずに、警備その他をやつておる状態でございます。
  91. 熊本虎三

    ○熊本委員 それでは重ねてお尋ねいたします。ただいまの答弁で承りますと、海上警備隊は非常に出動をするものである、従つて日常一切の保安業務に関しては保安庁がやる、こういうふうな御答弁でございました。そこで非常の場合の警備隊の出動に対してでありますが、これについては保安庁の長官が、必要と認めてこれに要請するのか、あるいはその上の運輸大臣がやるのか、この点はいかなる手続をもつてなさるか、承つておきたいと思います。
  92. 柳澤米吉

    ○柳澤政府委員 警備隊の所属は、御承知通り内閣に属しておりまして、内閣保安庁長官がこの権限を持つておるわけであります。従いまして警備隊の出動に関しましては、内閣におきましてその責任を持つております。しかしながらわれわれが常に平常業務をやつておりまして、災害等の場合、われわれの方の手で足りないというときには、海上保安庁長官あるいは地方の管区本部長が要請した場合にも出動してもらえるというようなことに相なつておるわけでございます。
  93. 熊本虎三

    ○熊本委員 大体その手続、処置の問題については一応わかつたわけでございますが、今問題になつておるこうしたような海上警備隊というものの装備等々について議論になつておりますが、先ほどの御説明を聞きますと、かつて日本海軍が持つてつたような建前の装備であり、そうして海上警察等において足りざる場合に日本海軍が出動したというような建前の関連にある、かように解釈してよろしいかどう
  94. 柳澤米吉

    ○柳澤政府委員 警備隊におきましては、これは内閣の保安庁に所属しておりますので、その性格については別途なものでございまするが、海上保安庁におきましてはどこまでも平常の任務を行うものでございます。従いましてこれらの力に対して、足りない場合に警備隊に出動をお願いするということでございまするから、御質問のような海軍というような考え方は、警備隊の中でも持つておらないのであろう、かように考えております。
  95. 熊本虎三

    ○熊本委員 海軍という言葉が出たので、ちよつと保安庁の長官としてはお困りだろうと思いますが、軍隊のある場合は、海軍に関する限りは海軍の軍令部長のもとにものが行われておつたわけであります。今度は保安隊ができましたので、これは保安庁の長官がこれを持つことになつたということで、名称はかわつております。しかしながらその仕組み、その用意、その行動、それは大小の差はありますけれども、運用の関連においてはこれらに匹敵するものであるというような解釈をすることの方が私は妥当じやないかと思いますが、これ以上どうも長官に答弁を求めることは困難かと思いますから、その点はよろしゆうございます。  次に李承晩ラインについては、問題にしないという簡単な答弁でございました。しかしそれは、私の質問のときにおいでにならなかつたのでやむを得ませんが、日本は問題にしないかもしれない。しかしながら李承晩ラインというものは、韓国からいえば問題にしておるはずです。そこへもつて来て国際法上の海域というものは、おおむね領土から——私何海里か忘れましたが、これは国際法に基いて、その領域というものはさまつているはずだ。そこへさらに加えて、国連軍の軍事上必要なる範囲というものがあろうかと考えます。従つてこれらおのおのの立場から、おのおのの主張をもつて、現在の朝鮮近海というものは複雑多岐にわたつておるかと考えます。従つてただいま長官は、李承晩ラインなどは問題にしないとおつしやるけれども、しかし問題にしないからといつて、漁船が必要があつてここへ漁獲に出ましても、おそらく向うで目につく限りは、彼らは彼らの権益を主張して、さらに拿捕が行われるかもしれない。でありますから、これらの錯綜せる関連において、今保安竹が担当しておるところの海域の保安のために行つておるところの方針と、そしてその実情、その結果、これらについてはどういうふうになつているかをお尋ぬいたしたい次第でございます。
  96. 柳澤米吉

    ○柳澤政府委員 御説の通り朝鮮水域というものは、相当複雑化していることは事実でございます。現在におきまして、この朝鮮水域におきますわれわれの考え方といたしましては、日本の漁船というものは、いわし網その他の関係で相当に漁獲も減つておりまして、朝鮮付近における漁業というものが、非常な大きな問題になつて来ておるわけでございます。われわれといたしましてはこれらの漁船が、お話にありましたいわゆる公海における自由の原則というものを十分に獲得できるということを期待しております。われわれといたしましては、このために農林省、外務省と十分連絡いたし、これらの方面に不祥の事実が起らないような方途を講じているわけです。海上保安庁といたしましても、農林省の監視船とともに、この方面に巡視船を派遣いたしまして、これらの船舶が事故を起さないような処置と同時に、事故を起しましたときに、いかなる状態で事故を起したか、はたしていずれが不法であるかということをはつきり見きわめる意味におきまして、巡視、警戒に当つておるわけでございます。その意味におきましてこの方面には、東支那海方面に参ります巡視船が行き帰りにこれを見ると同時に、常に一隻はこの方面に出まして、常駐して見まわつておるという状態を続けておるわけであります。  なおお話に出ました連合軍における防衛の線というようなものにつきましても、現在われわれといたしましては日本の漁獲に支障のないように、連合軍側と外務省を通じ、水産庁とともどもに、日本に不利にならざるような措置をとりたいというので、現に交渉を続けておる状態でございます。
  97. 熊本虎三

    ○熊本委員 もう一点承ります。この海域保安の任は非常に重大でございますので、特に御留意を願つておきたい。当然外務省の関係等が深いのでありますから、これから先の問題は、外務省の根本的解決を求むることが妥当だろうと思います。この解決がつかざる限り、保安庁といたしましてはそれだけ苦労が多いかと存じますが、万遺漏なきを期していただくように御努力を願いたい、かように考えます。  そこで今日まで朝鮮海域において拿捕されたる漁船その他の被害はどのくらいあつて、それが返還されたるものがどういうような数字になつておるかという、現状の御報告を願つておきたいと思います。
  98. 柳澤米吉

    ○柳澤政府委員 今の朝鮮水域におけるところの韓国の拿捕の現状でございますが、終戦後から申し上げますと、終戦後から今年の九月末日までにおきまして、大体拿捕された船舶が百三十四隻、人間にいたしまして千三百六十七人という私どもの計算になつております。そのうち実際に未帰還のものは、船が三十七隻、人間が五十三人ということになつております。現在におきましは、この状況が非常に数字としては大きくなつておりますが、今年に入りましての状況は、大体拿捕船舶というものは、以前に比べまして非常に少くなつて来ております。ただ現在におきまして一番心配されておりますのは、漁場海域に近づぎますと、ある程度の勧告を受けて、お前はあちらへ行つた方がいいぞということで、漁業ができなくなるという件数が多くなつて来ております。従いまして拿捕という問題よりも、せつかく参りました漁船が、魚をとらずに帰つて来るというようなことが起ることを非常に憂えておるわけであります。現在の状況はこの辺が非常に大きな問題になるのではないかと考えております。
  99. 熊本虎三

    ○熊本委員 以上をもつて私の質問を終りますが、造船計画につきましても、それから海上保安の問題につきましても、非常な重要関連がありますから、どうかさらに御注意、御熱意をもつて、これに処していただくようにいたしまして、私の質問を終りたいと存じます。
  100. 逢澤寛

    ○逢澤委員長 田原春次君。
  101. 田原春次

    ○田原委員 私の質問は、昨日保留した分がありましたので、運輸大臣には二点、第一は移民関係の船舶問題、第二は付属審議会改廃の問題、それから官房関係の政府委員運輸省内の職員の給与の問題、この三点について質問をしてみたいと思います。  第一の移民関係の船舶の問題であります。他の同僚委員質問もあつたようでありまするが、御承知のようにあと十年たちますと日本の人口は一億に達し、食糧はだんだん不足する状況でありますので、どうしても日本の国策としては、平和裡に海外各国に移民を送らなければならぬのであります。その交渉等はそれぞれ他の省で、外務省等でやつておるようでありますが、これは結局輸送力の問題になつて来るのでありまして、戦争前の、たとえば南米ブラジル移民の一番盛んなときで、一年に輸送船が約八隻ぐらいありましたときでも、三万七千人ぐらいしか送つておらぬ。終戦後、最近の状況では、その七隻のブラジル、アルゼンチン行きの商船隊も容易なことではできないと思います。また西海岸の方は、メキシコから始まつてペルー、チリーに至る船は、これも月に一ぱい程度しか行かなかつたのであります。これは今全然ありません。かような状態で、運輸省運輸省でやる、外務省は外務省でやるということになりましては、総合的な日本国の運命の打開にならないのであります。急速に移民輸送船を準備して、必要なる資金、資材等のことも考えてやるべきだと思いますが、これに対して運輸大臣の見解はどうでありますか、お聞きしておきたいと思います。
  102. 石井光次郎

    石井国務大臣 移民の輸送問題は、先ほどもちよつとお答えいたしましたが、私ども移民の話が戦後起つてから、すぐにこの問題について友達などと話し合つた問題でございます。そもそもが船をほとんど持たなくなつ状態から立ち上りつつある日本でありまして、移民船の問題にいたしましても、昨年あたりわずかな改造費で、しかもだんだんその費用等も高くなり、なかなか船を言入れることも困難な状態であります。ようやくさつき申しましたように、二十八年度の建造計画にも織り込んではおるわけでありまするが、今までの南米移民の成績が非常によく、その国からも歓迎されておりますので、これから先向うから入国を許される数もだんだんふえることは当然だと思います。これに伴いまして一番のネックは移民船の問題だと思います。この問題につきましては、今のお話にありましたように、外務省は外務省、こちらはこちらというようなことでなしに、国全体の問題としてよく相談をして善処をして行くつもりであります。
  103. 田原春次

    ○田原委員 お話を承つておきまして、将来移民が大量に実現する場合にまごつかないように今から警告して、この問題を打切ります。  第二点は、本省及び地方各局に付属機関として各種の審議会がありますが、この審議会の権能いかんという問題、それから審議会が国会の運輸委員を拘束することなきやという問題について質問したいと思います。ただいま配付された運輸省機構の中だけを見ましても、第一は中央船員職業安定審議会、第二は造船技術審議会、第三は海運造船合理化審議会、第四が船員教育審議会、第五が水先審議会、第六が航空審議会、第七が鉄道建設審議会、このほかにたしか運輸審議会というのと、運賃審議会というのがあることを承知しております。これらの審議会の権能と申しますか、審議会の委員の選定方法についても明瞭ならざるものがあります。一例をあげますと、鉄道建設審議会であります。鉄道建設審議会の分だけは、ここに資料が来ておりますが、衆参両院の各派から大体十人出ておるようであります。これらの人々が別に無能というわけではないのでありますが、一応どの委員会にも顔出ししそうな顔ぶれでありまして、特に専門家とは患われない。それから鉄道関係各省の次官とか、富士製鉄の社長、大阪商工会議所の会頭、農林中金の理事長、日本開発銀行の総裁、関西電力の社長、こういうのが並んでおりますけれども、一体鉄道を建設する場合、こういういわば汽車に乗る場合も一等に乗るような連中が、どれだけ鉄道建設の必要さを痛感する立場にあるかということは、大いに疑問である。年に二回か三回結集するようでありますが、結局どこかで原案をつくつてそれを幾らか質問応答して、原案のまま流れ込んで行くのが実情であります。しかも同じく配付された資料の中の前の鉄道建設審議会の議事録を見ますと、新線を十七線建設すべきものであるということを答申しておる。本日新聞に出たのを見ますと、十三線という答申をしておるのであります。そうしてこれを結局運輸省はたてにとつて、もしくはこれを背景といたしまして、われわれ運輸委員のところに持つて来ると思うのでありますが、そうなると国民から信頼されて当選をし、そうして運輸委員になつておる者の審議権の制限になると私は思う。いわんや各政党から——むろん私の党からも出ておるのでありますが、これは人をいつでもやめさせていいのでありますが、こういう組織をつくることは、原案をつくる場合の一種の責任のがれであるとも考えられますし、ある意味において審議会でこうつくつたのだから、その範囲できめてくれということになりますと、これは運輸委員の審議権の制限になると思います。いわんやいろいろ陳情も来ます。私は原則といたしまして、特に僻遠の地の鉄道はいかなる財源をもつても、建設公債その他によりましても急速に建設すべきものであるという立場からこれは言うのでありまして、権能不明なる審議会のごときが制限をして持つて来るということは、審議権の制限になりますので、一例として鉄道建設審議会だけを時間の都合で申し上げますが、水先審議会などというのは、一体これから水先をきめるのかどうか。水先というものは大体ところによつてきまつておりまして、これをわざわざことごとしくつくる必要がはつきりしない。また運輸審議会にいたしましてもそうであります。もし民主主義を徹底するという立場から行きますと、衆参両院に運輸委員がありますから、運輸委員のわれわれが無能であるというなら、これは各党でとりかえることもできるのであります。われわれは一般国民の輿論を代表して、一般的な立場から法令と予算の審議に当る。それからごく専門の知識、技術につきましてわれわれに及ばないときは、この運輸委員会において公聴会を開くこともできるのであります。たとえば航空あるいは造船技術等につきまして、定めし最新の知識を必要とする場合は、それはそれで方法があるのであります。従つて行政当局としての運輸省にも研究所もあるし、試験所もあるし、専門家もおるのであります。また一般国民の代表としては議会があるのでありますから、この中間に権能明瞭ならざるもの、従来のしきたりであると思いますけれども、審議会をつくるということは、責任の点において私どもはつきり納得できない。そこでいずれ新線の問題は、予算の一塁つけ等をもつてこの委員会に出ることと思いますけれども、その場合に鉄道建設審議会が「かつてみずから十七線を是なりと答申をし、昨日はまたこれを十三線とした根拠等もわかりませんが、それ以上にわれわれは主張できないのかどうか。おそらく運輸当局にも、また各委員の手元にも陳情が来ておると思いますが、全国各地で非常な要望があります。今までこういう地方民が陳情するにもかかわらず実現しなかつたということは、ある意味においてこれは運輸省の怠慢である、もしくは予算獲得の上において無能であつたと思う。この四つの小さな島にかれこれ八千五百万からの人間がおるのでありますから、鉄道は、電化にいたしましても、複線化にいたしましても、ところによつては複々線化にいたしましても、あるいは新線の建設あるいは改良等をわれわれが言う以上に、積極的に考えてもらわなければならぬのでありまして、その場合、鉄道建設審議会だけを便宜上申し上げましたが、ほかの審議会も同様であります。それで結論的にはそれらの審議会は一切廃止いたしまして、そうして国会において審議すべきものと、行政官庁において責任を持つて立案すべきものと、わけて行く方が明瞭ではないかという考えを持つておるのでありますが、これに対して運輸大臣はどういう見解を持つておるか、それをお尋ねしておきたいと思います。
  104. 石井光次郎

    石井国務大臣 官房長からその内容を先に申し上げさせます。
  105. 壺井玄剛

    ○壺井政府委員 ただいま御質問になりました各種の委員会、審議会でございますが、これはいずれもそれぞれの面において必要なわけでつくられたものでございまして、いずれも法律もしくは政令に基礎を置いておるのでございまして、たとえば御指摘になりました建設審議会は鉄道敷設法によつて設けられたものであり、運輸審議会は運輸省設置法において設けられたものであり、水先審議会は水先法に基く政令によつて設けられたものである。元来運輸省の所管分野は非常に多種多様でございまして、これの運営につきましてはよほど慎重を期さなければならぬ。もちろん政府が責任を持つてやるべき筋合いではございますが、一層念には念を入れまして、その運用に遺憾なきを期したいという意味合いにおきまして、各方面の経験者、識者、あるいは関係者を集めまして、行政運用の円滑なる実施をはかりたいという趣旨から、法律によるものは、国会においてそういうものを設定すべしという結論になつたのであり、その他のものは政府各方面関係機関の要望によつて設けられたものでございまして、一見いたしますと、非常に分野が広いように思われるようでございますが、実際の運用はたいへんうまく行つていると私どもは観察しておる次第でございます。
  106. 田原春次

    ○田原委員 私はこの審議会そのものをどうこう言つておるのではないのでありまして、もちろんこれは法律または政令でできたことは当然と思うのであります。その法律もしくは政令を出したのは、結局運輸省関係で出ておりますから、これを可決し、そうしてその結果実現したのでありまして、それらを出す態度に対しての私の質問でありますから、今のお答えはお答えになつていないと思います。なお円満に行つておると申しますけれども、たとえば新線建設の場合、ここに出ております二十名からの者は全部東京市内居住者であります。そうして役所でいえば次官級であり、もしくは議員級であり、実業家では社長級であつて、先ほど申しましたようにこういう人々が北海道の僻陬の地、あるいは九州、四国の僻陬の地における新線必要の度合いというものはわからない。また一々見に行くだけの時間も余裕もありませんので、従つてこれは原案の法律案をあなた方の方でつくつて出せば、ほかの省にも審議会がありますから通るでありましよう。委員は出席いたしますが、結局は材料を出して、こうなりますからといえば、多少の議論をいたしましても、そうでしようということになるのでありまして、私はこれは要するに無用の長物であると思います。費用もかかることであります。それよりも国会に直接、ぶつかつて来る態度こそ望ましいものではないか、すなわち、それらの関係の法律なり政令は廃止して、一切の審議会を廃止して責任を明瞭にされたらどうかという意味質問したのでありまして、そういう意思があるかどうか、これらの点をお尋ねしたわけであります。
  107. 石井光次郎

    石井国務大臣 一省の中にもたくさんなこういうような審議会があり、私のところもそうであるから、おそらくはかの方にもたくさんあるだろうと思います。これは今のお言葉もありましたが、全部このままで行くか、あるいはみななくすべきか、あるいはこの中のどれかはもういらないじやないかというような問題等も、なお御趣旨を含みながら研究をいたします。
  108. 田原春次

    ○田原委員 一つ意見を申し上げたのでありますが、ただちに現われて来ることは、おそらく新線に関するいろいろな審議がこの委員会に来ると思います。私はあらかじめ申し上げましたように、十七線を十三線にしたとかいうようなことにかかわらず、われわれはわれわれ独自の判断をもちまして、人口、輸送物資等の関係から、これらの審議会の答申いかんにかかわらず考えて行くべぎものだと思つております。これはつけ加えて一応申し上げておきます。
  109. 細田吉藏

    ○細田政府委員 国有鉄道部長の細田でございます。新線建設の問題につきましてお答えをいたしておきたいと思うのでございます。新線建設委員の顔ぶれでございますが、これは先ほど官房長から抽象的にお話もございましたが、鉄道敷設法で相当こまかく実はきまつておりまして、衆議院議員の中から衆議院の指名した者六人、参議院議員の中から参議院の指名した者四人、それから各省——といいましても運輸、大蔵、農林、通産、建設、安本の次官、それから運輸審議会の会長、国鉄総裁、なお先ほど実業家のお話がございましたが、これも運輸業、鉱工業、商業、農林、水産、金融、これに関してすぐれた識見と経験を有する者六人というふうに限定されておりまして、ただいまおつしやいますように東京に非常に固まり過ぎておるではないかという御意見があつたのでありますが、関西の方からお二人だけは参加していただいておるような状況であります。新線建設は建設審議会で事務当局が案を出して、それできまるのじやないかというようなお話も承りましたが、実情は非常にもめておりまして、事務当局の案がきまつたということはあまりございません。非常に御熱心な御審議がありまして、いろいろかわつて来ておるわけでございます。  それで国会との関係でございますが、これは運輸大臣の諮問機関でございますので、先ほど壷井政府委員からも申しましたが、国会の議決につきましては、これは当然昨日の審議会でも十三線をやる方が適当であろうという答申をいただいたわけでございまして、今回の補正予算を五億として提出しておりますが、その五億でどういたすかということにつきましては、当然国会で御審議をいただきまして御決定をいただきたい、かように考えておる次第でございます。
  110. 永田良吉

    ○永田(良)委員 関連して……ただいま田原君から鉄道の路線の審議会の問題について御発言がありましたが、私もそのことについて大いに共鳴する一人であります。それは鹿児島県において薩摩半島の枕崎線と私の大隅には古江、隼人線があるのであります。これらの問題についてこの間たいへんな錯誤を来したのであります。私は明らかに言いますが、ここにおる運輸委員の鹿児島県の出身の尾崎君が本審議会の内容をどうして聞いたのか知らぬが、鹿児島県の二線は鉄道の審議会において決定したというようなことを私に話をしました。それから私は、そういうことは知らぬ、あなたは自分の選挙区に電報を打つたらどうか、ばか言え、まだ審議会の審議も経ないのにそれを打つような、おれはそんなあほうじやない、そう言つて私は反駁した。ところがたまたま大隅、鹿児島方面からその方面の陳情も来ておつた。たいへん喜んで飛んで帰つたのであります。しかも一面においてはたいへんなことが到来した。たいへんなこととはここにおる尾崎君がそれを誤り伝えて、鹿児島県の新聞社にそれを報道した。選挙区は大喜び、ところが一面、私なんかはそんなまだ決定もしないのを発表するのはあほうである、そんなことはならぬと言つたんですけれども、喜んでは泣き、今鹿児島は大騒動をしておるのであります。こういう委員のうちにも失礼な話だけれども、不謹慎な人がおつて、かつてなことをして、われわれ遠隔の大隅に住んでおる者に非常な迷惑を与えておる。さき田原さんの話があつた通り鉄道の路線なんか決定されるには、やはり日本の南端から北までのすみずみの地方の人の生活状態、あるいはその上に十分の注意を払つて行かなければならぬと思う。しかもわずか五億で幾らなさるかしらぬが、こういう問題について軽々にそういう審議会の内容をお漏しになるということがあつては、たいへん不謹慎だと思う。議会で審議をして決定されてから発表するならよいかもしれないけれども、田原さんが言われたように、審議会で路線を決定になるなどということは、それは意見として申し出られるかもしれないが、あまりに行き過ぎたやり方じやないか。御丁寧かもしれないが、そんな御丁寧はかえつて国民が迷惑する。私どもはこういう点について鉄道当局も路線の決定のごときは、慎重なる態度をもつて当られんことを希望する。ことにわれわれの地方のごときは、鉄道なんかもう何十年昔に通つてから一寸も一インチも延びない。われわれの地方の鉄道を第一着に取上げられるべきものである。しかるに東京なんかにおる人がかつてに図面の上から見てそんなことをなされてどういたします。私はたいへん不親切だと思う。この間松岡さんが言われた通り、政治は安易に走つてはならぬ、特に遠隔の地方の者を見捨てるようなことをなさらぬで、ほんとうに公正な見地から路線を決定されんことを望む次第であります。
  111. 田原春次

    ○田原委員 これははしばしば討論するつもりはないのですけれども、やはり私の言うのとお答えとが違つているのは、結局……。
  112. 逢澤寛

    ○逢澤委員長 ちよつと田原君にお願いしておきます。陸のお話はあとでやることになつておりますから……。
  113. 田原春次

    ○田原委員 いや私は運輸全体のことを言つている。一例として鉄道審議会のことを言つている。私はそれは廃止すべきものだと思うが、ただちに法律の関係で廃止できぬなら、委員の任命にあたつてのくふうをすべきものである。今回の改選で新しく六人国会に割当てられ、それが出たことは承知しております。推薦もした一人であります。民間人の推薦は東京だけでなくて、今永田さんからもお話があつたように、学識経験者は必ずしも東京だけということは言えないのですから、北海道、四国、九州、東北、北陸、中国等、大人なら六人をそれぞれの地方から任命するということでやらるべきであつて、そういう任命方法についても考えがあるのですが、時間の関係で一応これはこれで打切つておきます。  次は、あなた方の運輸省内の職員の待遇の問題、これは私たちが言うよりも皆さんが先頭に立つてつてもらわなければならぬわけですが、どうも歯がゆくて見ておれませんから、私の方からも質問の形でいろいろ考えていただきたい。御承知のように国鉄の裁定の問題等につきましては、近くあります継続委員会に譲りまして、私はそれ以外の職員の問題、今ここで思い出すだけでも全海事職員組合、地方の海運局の職員それから全陸運職員組合、各地の陸運事務所であります。それから全港湾建設部の従業員組合の連合会並びに全航空職員労働組合と、今思い出すだけでも四つの組合があり、おのおの二千名から四千名の組合員をもつて働いておるわけでありますが、これらの人々は御承知のように国鉄のように団交権——国鉄は争議権はないが、団交権だけはある。しかるにかような現場を異にするというだけのことでありますが、これらの人々にはそういう交渉権はないわけであります。しかし世間一般の経済はそういうことにおかまいなしに、団交権はあろうがなかろうが、物価はどんどん上つて来るわけであります。そこでお互いに考えておかなければならぬことは、これらの下級官公吏諸君が安んじて仕事をするように、また間違いを起さないようにするには、最低生活のできるような給与をしてやらなければならぬ、これは皆さんの中にも同感の人があろうと思いますけれども、結果はどうもはかばかしくやられておらぬことはまことに残念であります。これらの職員諸君は年末手当を二箇月要求しておるのでありますが、それをしろうとが考えますと多いようにいわれておりますけれども、御承知のように公企業仲裁委で出しました八月から実施しろという国鉄裁定も一万三千四百円であります。これに対して人事院裁定は一万三千五百十五円というものになりまして、百十五円多いように見えますけれども、これは以上申し上げました四つの団体に所属する職員の特殊勤務手当の三%というのが国鉄の方に計算が出されていないために、数字が違つておるだけのことでありまして、実質的には同じものだと思うのであります。  そこでお尋ねしたいことは、第一は運輸省が要求しておる今度の補正予算の中で、この待遇の問題についてどのくらい要求されておるか、それが上級官吏を除いた、管理職を除いたものの一人当りがどのくらいの割合になつておるか、まずこれを承りたい。
  114. 壺井玄剛

    ○壺井政府委員 組合の方から要望として出ておりますのは年末手当に関してでございまして、職員給与につきましては人事院の勧告一万三千五百十五円について大体了承しているように私どもは拝聴しておるのでございます。
  115. 逢澤寛

    ○逢澤委員長 田原君にちよつと相談しますが、ほかの海の方に関して政府委員に対する質問がありましたら、その方から先にやつていただきたい。もしありませんければ帰つていただくことにいたします。ありますかありませんか。
  116. 田原春次

    ○田原委員 あります。
  117. 逢澤寛

    ○逢澤委員長 それではその方から先にお願いいたします。
  118. 田原春次

    ○田原委員 この給与問題の中の海運関係港湾建設関係のことを先に質問いたしましよう。御承知のように港湾作業船といいますか、各港湾仕事をやつております船は、古くは明治から大正時代につくつたものであり、また戦争中には軍の要請で特殊の任務についておりまして、非常に老朽船が多い。しかるにそれで一定の予算並びに年度の範囲内で仕事をしなければならぬので、たいへん苦心しておりまして、方々で穴が明いたりいたします、そうするとこれを修理する予算がないということで、セメントか何かで固定したりして、まつたく老朽で作業の上に非常に不安がある、この実例は全国港湾建設関係で昭和二十三年から二十六年までに、作業中に即死した者が十五名であります。また負傷者六百十二名という数字が出て、実はわれわれは驚いております。港湾協会等が港湾そのものを拡充、強化、整備されることは非常にけつこうでありますけれども、各地の港湾整備をする船に対して、こういう投げやりのことであつては、とうてい安んじてできないのじやないか。また待遇の面を考えますと、港湾建設部従業員が全国で四千名といわれておりますが、このうちで国家公務員になつているのは二千名でありまして、あとの二千名、すなわち半数は、公共事業費の中から臨時人夫、臨時職員の形で採用しておる。これも二箇月か三箇月ならば臨時人夫と言えますけれども、中には五年も十年も働いておつても、やはりそういう物件費で扱われておるというような状態でありまして、しかも使用している船は老朽船である。事故もひんぴんと起るというようなことでは、いかに港湾整備拡充、拡張をやろうといつても、これはとまらないのであります。それに対して港湾関係の当局は熱意が足らぬのじやないかとさえ、私は心配するのであります。また地方の海運局なんかへ行つて見ましてもわかりますけれども、旅費なんというのは一年一人当りの額はまことに少額でありまして、急速に船員労務官を出してもらわなければならぬにわれわれが要求いたしましても、なかなか急に来れないということで、結局それは費用の配り方がでこぼこがあり過ぎるのじやないかという感じがするのでありますが、これに対してどういう立場に現在あるのか、それから今後どうすべきものであるかということについて、ひとつ方針を聞いておきたいと思います。
  119. 逢澤寛

    ○逢澤委員長 港湾局長が出ていないそうですから、あとからひとつ……。
  120. 田原春次

    ○田原委員 それではそのお答えはこの次の委員会まで待つてつてもよろしゆうございます。それでは海運関係はこれで終ります。  次に先ほどの官房長のお答えですが、どうも私は納得できないのであります。それはなるほど平均一万三千五百十五円の要求をしておりますが、歳末手当を二箇月分要求していることに対して、予算を計上しているかどうかということを尋ねているのであります。
  121. 壺井玄剛

    ○壺井政府委員 年米手当につきまして、予算において、〇・五箇月計上されているのでございます。従いまして要求通り支出いたしますためには、補正予算において相当の増額をしなければならぬわけでありますが、政府部内においてただいままで決定されましたのは、各省を通じまして均一に年末手当において〇・五箇月、その他ベースを二割上げるというところで、一斉に決定されておりますので、運輸省だけ特にお願いするということには参らぬわけでございます。
  122. 田原春次

    ○田原委員 〇・五というのはやはり共通のことで、われわれも承知しおるのでありますが、そのほかにもう一つ〇・五の勤勉手当があるはずなんでありますが、これはどうなつておりますか。
  123. 壺井玄剛

    ○壺井政府委員 もう少し詳しく申しますと、二割ベース・アップされました内訳は、本俸、扶養家族手当、勤務地手当、石炭手当、寒冷地手当でございまして、〇・五箇月分附加されましたのは、特別手当と勤勉手当でございます。
  124. 田原春次

    ○田原委員 今日の物価関係等を見ますと、この〇・五と〇・五を合しただけでは不足であるとわれわれは断じておるのであります。従つて要望通りの二箇月を捻出するとすれば、正確かどうかわかりませんが、残り一箇月を概算いたしまして、四億くらいじやないかと思います。これを省内の操作でやりくりして出す方法はないか。たとえば一般経費の節約、物件費その他を節約して、四億二千万円程度は出るのじやないかという観測をしているものもあるのであつて、そういうものを省内限りにおいて、残り一箇月分として加えるくふうはできないかということもただしてみたいと思います。
  125. 壺井玄剛

    ○壺井政府委員 実はこの二割べース・アップ、それから年末手当等に対する給与原資を、それぞれの旅費と物件費の節約等によつてまかないまして精一ぱいでございまして、ただいまのところ、省内の予算をやりくりして出すという手はまつたくございません。
  126. 田原春次

    ○田原委員 私はそれでは不満でありますが、きようは質問でありますから、一応態度の明瞭になつた点だけで、この点を打切ります。次は陸運関係の問題でございますが、やはり待遇の問題であります。
  127. 逢澤寛

    ○逢澤委員長 ちよつと田原君に注意しますが、陸運関係は通告の方がありますから、その順序によつておやりを願いたいと思います。
  128. 田原春次

    ○田原委員 それではそのときに譲りまして、きようの質問はこれで打切ります。
  129. 逢澤寛

    ○逢澤委員長 玉置信一君。
  130. 玉置信一

    ○玉置委員 第四次吉田内閣成立直後におきまして、重要政策を声明され、その線の一環として、先日の当委員会におきまして石井大臣よりごあいさつがありました中に、所管の仕事として三大政策を強調されておるのでありまして、私ども過去長年強調いたしましたことがようやく実現の緒についたと考えまして、非常に意を強うしてお聞きしたのでありますが、本日はそのうちの鉄道建設政策について、特に石井新大臣の基本的な考え方をこの機会に明確にしておいていただきたい、かように存じまして、鉄道新線に関する問題並びに輸送力強化の問題、その他二、三についてお伺いをしたいと思うのであります。鉄道港湾は、資源の開発、産業発展の基礎的な大きな国家的の仕事でございますることは言うまでもありませんし、またこれらは国民経済の動脈とでも申すべき、きわめて喫緊、重要なことであることも、私から申し上げるまでもないことであります。そこで鉄道建設の問題でありまするが、先ほど来審議会の件についてお話がございましたが、実はこの審議会をつくるに至つた経過は、たしか第十三国会の初頭であつたと思いますが、当時いまだ占領下にありまして、私ども運輸委員会全員の希望として、当時の山崎運輸大臣、かわつて村上運輸大臣に対しましても、新線の早急建設のことを要求し、これが予算措置についても、しばしば要望いたしたのであります。一方におきまして、国鉄におきましては、本日もおいでになつておりまする長崎総裁ほか副総裁その他の方々より、コーポレーシヨンの建前上、もうけがなければ新線を敷設するということはいけない、こういうようなことを申されたのでありますが、一番困つたのは、占領下であるがために、関係方面の非常な制約を受けておりまして、かりに国鉄側が、よろしい、やりましようと言いましても、一方の制約を受けるがためにやれなかつた。しかしながら当時の実情は、きわめて近い時期に講和が発効して、わが国は独立をとりもどし、自由な立場において国の政治、行政を行い得る見通しのもとに、今からわれわれとしては新線の建設ができる形態を整えなければいかぬというところで、当時の委員会におきましては各派一致、しかも共産党までがこれに賛成いたして、新線建設の審議会をつくりまして取扱うことになつて、実は議員立法でこれができ上つておるのであります。先ほどいろいろ御意見がありましたが、当時のいきさつをいまだ御理解になつておりません関係上、あるいはそこに多少の食い違いがあろうと思いますが、かような経過のもとに、私どもはどうしてもわが国の限られた四つの島において、しかも産業を振興し、貿易を振い興さなければ、わが国の自立経済は達成できないという観点から、特にこの新設を要望いたしたのであります。しかるに今般というよりも先般でありますが、たしか六月の審議会であつたと思いますが、鉄道の新線建設の議が取上げられまして、当時二十七年度の予算において二十億、これによつて十一線を建設することに相なつたわけでありますが、当時二十億ではまだ少し足りなかつたと思います。あとで予算措置を講じられたと思いますが、一億か二億か足りなかつたはずであります。そのときにさらに新線建設十六線、それにつきまして復元すべきものが、札沼線ほか三線、計十九線というものを補正予算において建設することが妥当であるという審議会の答申を得て、一昨日の運輸審議会小委員会並びに昨日の審議会の総会において、新聞によるとこうした十三線が取上げられております。これは新設が十三線、復元が幾線でありましたか、ちよつと今記憶が薄れておりますが、かようにして私ども多年の要望を実現しつつあることは、前段申し上げましたようにまことに欣快にたえないところでありますが、ここで大臣に特にお伺いしておきたいことは、この新線建設並びに復元のこれらの事業をやる上において、予算は補正においてわずかに五億円、明年度からこの十三線をやるだけにしても、先ほど關谷委員お話のありましたように、おそらく百億を必要とするでありましようが、そうなつて参りますとこの予算措置が、考え方によつてはきわめて悲観説になるのでありますが、実は心配がある。国鉄は先ほど申しましたように、従来独立採算制の立場から行きますと、新線というものはとうていやる余裕がない。今期国会始まつて以来説明されました国鉄並びに運輸省の局長あるいはその他の方々の説明におきましても、今日の経営状態からいうとほとんど赤字であつて、しかも腐朽、老朽の貨車あるいは客車、あるいは線路その他の改修あるいは改良、取替等の仕事をするだけでも、今からやることは容易なておつた。そうしますと、どうしてもこれは政府が思い切つた予算措置を講じてやらなければ、これらの国民的な要望は、おそらく達成されないのじやないか。そこで私どもは十三国会におきまして、村上運輸大臣に対して要望し、池田大蔵大臣に当委員会に来てもらいまして、予算の裏づけに対しての希望を申し上げたことがありますが、当時は池田大蔵大臣はこれに対して色よい返事はなかつたのでありますが、しかし今日すでに御承知の独立国家としてわが国の経済再建をはかろうとすれば、やはりこの鉄道港湾重点的に力を入れなければならぬ。石井新運輸大臣は最初のごあいさつにおいても、また今日の關谷委員質問に対しても、きわめて力強い御発言がありましたので、私は大きな期待と信頼を持つのであります。この際石井運輸大臣は、政府の一般会計からこの新線建設の費用を出す意思がないかどうか。もしそれが不可能であるとするならば、私ども前国会以来主張して参りましたいわゆる日本国有鉄道法第四十二条の二項において、鉄道債券を発行できるということになつておりますので、この国有鉄道法に基いて債券を発行して、新線の予算の裏づけをなさる御意思がないかどうか。私はここまで来ますと、どうしても政府の出資に基きまして、たとえば資金運用部資金の金をもつて引充てる、あるいは債券を発行する場合は、この運用部資金の金によつて引受けさせ、あるいは日本銀行等によつて債券を引受けさせまして、確固たる新線建設予算の措置を講ずべきでないかと、かように考えるであります。まずこの一点を先にお伺いして次の質問に移りたいと思います。
  131. 石井光次郎

    石井国務大臣 お答えします。本年度から戦後初めての鉄道新設という問題に入りました。そういうことができるようになり出したということは、まことに喜ばしいことでありますが、資金の面におきましては、日本の今の財政経済の全般の動きと同じように、なかなか困難でございます。本年十一線が二十億円をもつて着工されたのでありますが、これが来年度になりますると、約五十億円くらい、経済的の支出をして行けばそういうことになるだろうと思います。今度補正予算案で十九線を予定されておりまする次の計画線の中から、どれだけかでも顔を出したいという希望で、いろいろ折衝をしておつたのでありまいず、初めこれは補正では一線も認められないという状態でございました。それは今手につけております十一線の、今年から来年にかかる鉄道の相当な支出が予定されるのであります。それにまた何線か加わりますと、国鉄の経済ではまかない切れないという問題が当然起つて来たわけであります。私どもといたしましては、せつかく審議会の議を経ておりまするし、その意見を尊重する意味においても、何線かの数を実際に移して着工したい。そうしなければあとの方にだんだんとつかえて来ると思いまして、いろいろと折衝した結果、本年度は余日もないことであるからということで、金額は五億円、大体の線は十九線が予定されておるうちから、十線程度ということで閣議を通したのでございました。ところが今度審議会の方では、十三線どうしてもいろいろな振合いにおいて必要であるということで、答申が出るようになつております。私まだ受取つておりませんが、そういたしますと、またこれに対して来年度に五十億くらい金がいる、合せて百億の金がいる。国有鉄道の方では非常に切り詰まつた予算でやつておりますので、こういうものに対する金を持たないのであります。またこれを借りることができましても、利子を払つて行くことだけでも相当大きな負担になるのでありますから、今度の新線につきましては、補正で出します新線については、政府の出資か、そうでなかつたらば、財政資金の利子を政府が持つてくれということの、どちらかにしなければならぬ。政府出資ということはいろいろな問題があります。それでは利子を政府で持つという案を出したのでありますが、これまではなかなかうんという返事まで出ておりません。しかし五億円を出す場合に、一応借入金の形で、もう予算もすぐ組まなければならぬ、これはこの五億円を借りるから、今後借りるものも当然利子を払うという意味でなく、とりあえず五億円出してもらう、あとの来年度の予算について、どういうふうにしてもらうかということは、なお大蔵大臣との折衝にまつということで折衝を始めたわけであります。今いろいろの情勢上、国鉄再建案もいろいろありますが、これをすぐ取上げるということまでは私はまだ考えておりません。なお研究の余地もございます。鉄道建設審議会の答申において新線としてしかるべしといわれた線も、かりに今度の十三線を取上げましても、残りまだ六線ある。それから次いで今調査線がたくさんあります。これらのものを一つ一つ説明を聞きますと、将来は産業発展の線においてやつた方がいいというものが、もちろん取上げられてあるわけであります。けれども建設中並びにその後しばらくの経営の上において、国鉄に相当大きな負担がある、こういう面も研究して行かなければならぬと思います。
  132. 玉置信一

    ○玉置委員 ただいまの大臣の御答弁で、大体資金の裏づけについては了承できますが、そこで私は大臣並びに国鉄総裁に重ねてお伺いしておきたいことは、国鉄の経営状態から見ると、従来お聞きになつている困難なる事情は、よく了承できるのでありますが、しかし私はこの国鉄経営そのものに、もつと経営の合理化をなし、あわせてそれに伴うところの配置転換等を行うことによつて、相当の経費の生み出しができるのではないか。最近また運賃の値上げの問題等もありますが、私個人の意見といたしましては、ある程度の値上げはやむを得ないのじやないか。そうして国民の要望にこたえる企業の経営のあり方にいたしてもらいたい、実はかように考えておるわけであります。国鉄は言うまでもなく公社経営でありますが、しかしその実態は、あくまでもこれは国民のものにと言つてもさしつかえないと思います。換言すれば、国民が株主であります。そこで先ほども二人の人から御意見がありましたが、国鉄のコーポレーシヨンの建前から言えば、今までの主張は私どもも一応了承ができますが、しかしやはり産業、資源の開発、国民経済のゆとりを少しでもつくるという点から行きますと、さしあたり採算の立たないところであつても、将来の経済効果ということをねらえば、当然最初赤字になるということはわかつてつてもやらなければならぬ。またそれなるがゆえに、今日石井大臣は御就任早々、積極的に新線問題を取上げて御研究になり、御努力なさつておることであろうと思うのでありますが、国鉄自体においては、独立採算制と高度の公益性を併立して考えるということは、これは容易なことでなくして、こうなりますとなかなか国鉄といたしましては、非常に容易なことでないでしようが、しかしあくまでも高度の公益性を持つ国鉄経常の本質から考えまして、私はやはり国鉄としても新線建設に相当の熱意を示してしかるべきであろう。同時にまた政府といたしましては、ただいま大臣のお答えになりましたように、政府出資の形であるか、少くとも利子補給方法を講じまして、明二十八年度において、昨日の審議会において決定漏れになりましたものに対する予算措置を講じて、着手することにすべき必要があろうと思うのでありますが、まずこの点をお伺いしたいと思います。
  133. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 玉置先生には前からたびたび申し上げておるのでおわかりだと思いますが、仰せの通り独立採算というような見地から申しますと、国鉄としては遺憾ながら多額の建設資金を調達し、またその利息を負担して行くことは、よほどこれはむずかしい問題で、むしろそれよりは、現在の国鉄自体の荒廃をどうして防いで行くべきかという方に、まず重点を置かなければならぬ立場にありますので、非常に苦しい状況であります。しかしながら一方仰せの通り、熱烈なる地方の方々の要望、また将来の日本の発展という見地から申しますと、多少の赤字がありましても、それを打開して行くということも、私はこれは国鉄の公共性から考えまして、やつて行かなくてはならぬと考えます。ただそれがわずかの額で済んでおる間はいいのですが、おそらくこの新線建設ということは、そう早急に終りを告げるものではなく、だんだんとふえて参る。そうしますと、今日でさえも大体もうかつておるのは、営業線二万キロのうち三〇%内外でございまして、七〇%程度のところは全部赤字でございます。その赤字線がどんどんふえて行くというような結果になりはせぬか。これについてはぜひひとつ皆さんのお知恵を拝借し、少くとも利息の補給程度のことはしていただかなければならぬじやないか。これについても今私考えておりますが、三年や五年先に赤字が消えるというようなものは、これはまだいささかいいと私は思うのであります。ところが十年たつても二十年たつても、今の見通しからいうと、なかなか赤字の解消はできぬというような場合については、またこれは特段の御処理を講じていただかないと、われわれとしても公共性から見て、あるいは日本の発展から見まして、必要であるということはわかつておるのですが、どうも損をする線をつくるという点になつて参りますと、ややともすると熱意がなくなるということでございますから、そういうことのないように、ひとつ何かやればやつただけためになるというような、はつきりしためどを立てられぬものかと思つていろいろ考えております。大体そんなところであります。
  134. 玉置信一

    ○玉置委員 国鉄の総裁は、今の利子補給その他の問題で、この程度なら相当な新線も建設できるのだから、予算措置の方にこういう方法がないものかというような、具体的な予算措置に対して何か新運輸大臣と御相談でもされたことがありますかどうか、お伺いしておきたいと思います。
  135. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 先ほど大臣もちよつとその問題に触れられたようでございますが、着任早々この新線建設の問題はすぐ起るのですからお話申し上げて、ぜひひとつ利子補給程度——出資なら一番いいのです。と申しますことは、できた国鉄の線路というものは国鉄のものじやない。実は政府の財産なんです。政府の財産なんだから、むしろ政府が出資をしてやられることが至当ではないかと考えます。それを貧乏世帯を振りまわしているのに、われわれのところに利息まで払わしてやらせるということは、少し酷じやないかと思う。今までのところに二十億とか五億、年六分五厘にしましても大した金ではございません。しかし百億になつて参りますと、年に六億五千万、十年たつと六十五億という新しい利息負担がかかつて、ちよつと背負い切れなくなるのではないかと思います。その点については大臣ともよく御相談し、大臣——閣議の内容を申し上げてはいかぬのだそうでございますが、非常に御主張になり、何か考えようかというところまではこぎつけておられるのではないかと思います。
  136. 玉置信一

    ○玉置委員 今長崎国鉄総裁からもお話がございましたが、私どもの常に考えておることは、鉄道は国の財産であります。しこうして金のもうかるところでなくてはやれないという建前をとられると、僻陬の地におる国民といたしましては、まことに迷惑千万な話でございまして、ひとしく文化の恩恵に浴せしめなければほんとうの政治でないということは、これは私が申し上げるまでもなく大臣とくと御承知通りでありますから、くどくどしくは申しませんが、株主であります国民が、せめて鉄道がついて、その鉄道を利用することによつて株の配当を受けた形にもなるし、また黒字にならぬからといいましても、これを建設することによつて国の財産が多くなり、しかもそれによつて資源の開発、発業の発展が促されることによつて、国家の経済が伸張されることになる。従つて政府としては、やはりあくまでも政府の出資——少くとも先ほどお話のありました利子補給を、この場合ぜひやつていただきたい。政治力の強い新運輸大臣に私は期待を持つものでありますが、これに対して大臣の重ねての御答弁をお伺いいたします。
  137. 石井光次郎

    石井国務大臣 今の国有鉄道自分の独立採算というような建前を堅持いたしますと、なかなか少額な金ではありませんし、相当大きな金が寝るし、そうして建設中はもちろん、その後もそうもうからないということでは、なかなかその建設意欲を起し得ないのも無理のないところでありますが、そもそも仰せのごとく鉄道というものが何のために敷かれるかという大きな観点からいたしますると、遠い将来の問題、日本の経済力の発展、またそれだけでなく地方への文化の浸透というような問題等から考えましても、これはぜひやらなくちやならぬものが多く出て来ると思います。その場合に、国有鉄道自分の方としてはそろばんが手一ぱいで、それまでは手が出せないというものを、今度は国の方ではそれをやれといつて、それから先はお前の方の経営合理化でしつかりやれ、運賃も上げろ——その方も努力させますが、それではやり切れないものが出て来ると思います。その線から考えますと、どうしても少くとも国家がこれから先要請してやるものであるならば、建設の利子補給というような点が都合よく行くところまで、少くもある時期まではやつてやるということを当然考えなければならぬだろう、そういうふうに思つてその線において努力いたしたいと思つております。
  138. 玉置信一

    ○玉置委員 あと三点ほどお伺いしてきようは打切りたいと思います。繰返して申し上げますが、審議会において答申されて、御提案になりますと、私どもは行政と政治の限界をはつきり認識いたしておりますので、審議会の答申の内容は尊重したい、私どももかように考えております。みずから審議権を持つておる立場において審議することは審議いたしましても、それぞれの分野において、国家、経済並びに地区的、いろいろな情勢の公正なる判断をもつて審議を進めたいと思いますが、少くとも答申されたものの二十七年度補正をもつてかかるべきものは、ぜひ実行に移していただきたいことと、次は残れるものはぜひ二十八年度予算にこれを計上させて実施に移すように、特にこの点は、要望というよりも懇請を申し上げて、次に移りたいと思います。  次に輸送力増強の問題でございますが、これもきようは時間がありませんので、小さな問題は次の委員会に譲りまして、最近一番問題になつております炭労スト等によりまして、石炭の保有量がだんだんなくなつて、貨車、客車ともに運行の削減をはかりつつある事情でありますが、特に客車は著しく運行の制限をしたようであります。人の問題はさておきまして、貨物輸送の点において、さなきだに貨車輸送が停頓をいたして参つております際に、今日のストによつて私は相当な滞貨ができるのじやないか、これを心配しておるのであります。一体今日ストその他の原因によつて全国的にどういう滞貨の事情にあるか。また昨年の秋の青函連絡を通じまして北海道から内地に運びますところの荷物が十七万トン滞貨いたしました。これが善後措置といたしまして、私ども運輸委員会においてというよりも、自由党の政務調査会、総務会等にもこれをはからいまして、道民の輿望にこたえるべく、実は北海道航路運賃差額補給臨時措置法というものをつくることにして、大体の成案を得てやろうと思うときに、実は解散に遭遇いたして実現できなかつた。かような過去における実情を考えますと、今日はそれに一層拍車をかけたのではないか。そうなりますと、今秋の雑貨、木材その他の出まわり期になりまして、相当混乱を来すのではないか。そこでこの輸送措置をどういうように運輸省ではお考えになりますか。次は青函連絡でございますが、貨物船は今日夜間通しておるのだろうと思いますが、旅客船はいまだに夜間運航を停止しております。これは私第十一国会の当時に山崎運輸大臣に緊急質問をして、これが善後措置を要望したことがありますが、その後数回にわたつて委員会においても、この措置を国鉄並びに運輸省当局に要望いたしましたが、いまだに夜間の運航が停止されておる状態でございますが、これは人の問題でありますから、がまんすればできないことではないのでありますが、貨車運航の状況は一体どうなつておるか。これは今の滞貨に関連した一つの重要な問題でありますので、この点をあわせてお伺いしておきたいと思います。
  139. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 お手元に差上げてあると思うのでございますが、国鉄の参考書があります。そのうちのナンバー八と書いてあるのがございます。それに炭労ストに伴う列車削減についてというところでるる説明してございますから、それはそれをごらん願うとして、玉置先生の御心配になるのは、主として北海道の問題だろうと思います。そのことを簡単に申し上げます。実は問題になるのは、しかもそのうちで最も先生の御心配になるのは、貨物の青函航路の回数を減す、それはたいへんなことになるということだろうと存じます。それにつきましては、現地からわざわざ局長が参りまして、そうして現地の石炭事情等をるる述べて、一応われわれの方の計画としては、従来の十六運航ですか、それを十四運航に減すというわけで進んだのでございますが、できるだけ石炭をかき集めまして、そうして運航回数を減さないようにしよう。また内地の方からの逆送炭百トン程度ふやしまして、極力あそこの青函の航路は応援して行こう。ことに年末期にあたりまして、お話のように雑貨、木材の出て来るものがある。それらが金にならぬということは、北海道全体の経済の上に非常な影響を及ぼすであろうということを考えまして、極力やるようにいたしております。ただ御承知のように石炭が減つておりますから、貨車はございます。ただ、たく石炭がないので困るのですが、実は輸送の方は、滞貨とおつしやいますけれども、石炭は全然とまつて何も運んでおらぬのですから、その点では輸送力が少し余つておるわけです。これは全国的にそうであります。御承知のように石炭というのは、輸送しておる貨物の大宗でございますから、そういう意味で、私のところでは二重に苦しい目にあわされておるわけでございます。一方においては、石炭がないから列車を減さなければならぬ。減すと、それによつて減収をする。石炭それ自体を運ばないから、これもまた減収になるというようなことでありまして、われわれの今の計画でございますと、輸送力と申しますか、輸送平均数が全国で一割ちよつと出る。一日に万万四千トン程度の減送ということになります。この中の主たるものは石炭であろうと思います。
  140. 玉置信一

    ○玉置委員 そうなりますと、一体国鉄の収入の面にどれだけの影響がありますか。これはいわゆる独立採算制をもつて立つ国鉄運営の現況から見まして、次の鉄道予算その他に影響があることでありますので、御参考までに承つておきたいと思います。
  141. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 実はこの計画も大体今月の初めごろには、炭労のストは片づくだろうという予想で立てておるのです。これは今でも継続しておりますから、これからどういうようになるかということについては、予想を今しきりに急いで立てさせておりますが、なかなか治まりそうもありませんで、しかも今度は年末になりますと、山はだんだん休んで来る。正月はむろん休むでありましようし、そうするとどういうことに相なるだろうかということで、実は台湾炭等の輸入につきましても、今話をいたしております。そうして何とかこれをあまり不自由にならないように持つて行きたいということで、なお収入の面につきましても、これは相当大きなあれがあるのじやないかと私は思いますが、きようも経理局長に早急に見込みを立てるようにということを申しておりました。ただしかし日がはつきりせぬものですから、なかなかわからない。それから今のところではどうなるのだということを一応お目にかけましたが、いずれこれがわかりましたら御報告いたします。
  142. 玉置信一

    ○玉置委員 今のお話で一層私ども心配にたえないのでありますが、しかし問題は当委員会で審議するよりも、いずれ労働あるいはその他と合同審査があるやに聞いておりますので、本日は私の質問は一応これで打切つておきます。
  143. 逢澤寛

    ○逢澤委員長 正木清君。
  144. 正木清

    ○正木委員 私は大臣が当委員会のあいさつの冒頭の中で、基本事項として鉄道の新線の建設、老朽鉄道施設の更新並びに既設線の電化の促進、運輸省としては重大案件のこの三つを並べられて、非常に力強いごあいさつをされたのでございます。従つて力強いごあいさつをされた限りにおきましては、私は鉄道新線の建設に対しては、財政資金の見通しが当然お立ちになつた上でのごあいさつだと思いまするし、老朽鉄道の施設の更新並びに既設線の電化等についても、私は当然財政資金その他を十分政府として御計画なつた上での御発言だと思いますが、これに対して同僚議員からも質問はございましたが、私としてはあらためて大臣から承つておきたいと思います。
  145. 石井光次郎

    石井国務大臣 新線の問題、電化の問題、老朽施設の改善の問題等につきましては、これは国鉄そのものの力では、また国鉄そのものの計算だけでは、なかなかやり切れないものばかりでございます。そうすると財政資金の面に当然及んで来なければならない。この問題は、どの線にどれだけの金を入れるというようなことは、まだはつきりしておりませんですが、こういう問題もこの間の新政府の新政策の中へ取入れるときに、どうしてもこれは政府の財政資金から出してもらわなければならぬ問題だという点だけの了解は得ております。
  146. 正木清

    ○正木委員 私は総裁にお伺いしたいのですが、今の国鉄公社の経理内容というものを掘り下げて調べてみますと、私はこの公社の基本的な性格というものが、非常にぼやかされておるような気がしてなりません。ということは、まず第一に大まかに申し上げまして、国鉄の収入の大宗をなすものは運輸収入でございます。支出の面におきましては、大別いたしまして営業費と工事費にわけることができるのではないか、そしてこの営業費の中をさらに大別して、人件費と物件費とに区別することができるのではないか、工事費の中ではしばしば問題になる、要望のある新線建設工事とそれから老朽その他の改良工事とその他いろいろの取替、復元工事、まあ大別してこういうようにわけて来ることができるのじやないか、こうわけて参りまして、国鉄の基本的な性格は何だというと、一口にいうと公共のものであり、言葉をかえれば国のものであるという一面、公共企業体なるがゆえに、従つて独立採算ということが強く公社を圧迫しておる、私はこういうように見ます。それでありますから私は大臣と総裁に次々に御質問して参るのでございますが、まず第一にこの工事経費の中で、国鉄公社に移譲されない、さらに昭和十一年以前の戦前、戦前でなく昭和二十四年度でもけつこうでございますが、私の承知している範囲においては建設、改良、取替に対する工事費の総額のうち、財政資金から五百億出ているというように私は承知しておるのです。しかるに公社に切りかえられてしまつていろいろ書類を見ますと、今年度工事経費全体の七四%というものが、運輸収入から繰入れられていると私は承知いたすのです。これは数字のことですから監督局長でもけつこうですけれども、二十四年度まで国がみずからの責任において鉄道をやつてつたときには、建設、改良、取替の工事経費は財政資金でまかなつておきながら、二十五年度になつてこれが公社に切りかえられたとたんに、運輸収入からこの工事全体の経費が七四%も繰入れられておるという事実を、あなたは認めるかどうかということなんです。
  147. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 正木さんにお答え申し上げますが、私は昨年総裁になつたばかりでありますから、その前の、終戦後の状況はよく承知しておりませんが、古いことを申し上げてはなはだ恐縮でございますけれども、かつての独立会計のときには、収支の差、運輸収入から営業費を差引きまして、利息を払い、その差が出て参ります。その差益金はやはり工事費の財源になつております。そのほかに公債の財源によつたものもあります。でありますから昔の貸借対照表を見ますと、資本金の中に固有資本、それから借入れ資本と二つあります。その固有資本というのは収支の差の積立てであります。借入れ資本の方が公債でございます。そういう状況になつておりましたので、必ずしも今日のように収支の差を使つていなかつたのではありません。今日の工事費に繰入れておりますものは、あれは減価償却費でございます。ですから当然収入予算で、損益計算で負担しなくちやならないものであります。それを工事をやる便宜上工事費の方へ持つて行きまして、そうして借金その他と一緒に取替あるいは減耗したものの補充というようなことをやつておるのでありますが、正木先生は専門家ですからもう少し詳しく申し上げますと、軌条交換をやる、三十キロ軌条をそのまま三十キロに交換する場合は、これはもちろん普通の修繕費でやつております。しかしこれを五十キロの重軌条でやつておる場合があります。そうすると重い二十キロの部分だけは改良になりますから、本来ならこれは借金でやるのがほんとうだろうと思います。しかし今日ではやはり減価償却費の中でやつております。そのほかそういう借金でやつておりますのは、今年の予算で申しますと新線建設、電化、それだけであります。その他のものはみな取替、補充ということで古いものをとりかえて行く、いわゆる減価償却をやつて行く。これはまた一方から申しますと減価償却の中にもまたそれ自体をとりかえるという場合もありますが、同時にすべての設備というのは陳腐化して参りますから、これもやはりとりかえる場合に考えておると思いますので、先ほど申し上げたような例がはたして三十キロを五十キロにするのは一部分は改良なんだというので、それは借金でなくちやならぬという理由も私はないと思います。これは陳腐になつて来るとやはりりつぱな設備にするということは当然起つて参るのでありまして、そこらは人によつていろいろ議論があるのであります。しかし何と申しましても借金の仕方が足りないのじやないかというお説のあることはいなまれません。ただ一方において減価償却の方も、これは普通の商売とは違いまして、やはり物をとりかえて行くのだ、輸送力というものを維持して行くということ自体が、国鉄に負わされた使命だろうと私は思う。そうしますと現在の施設というものは、帳簿価格考えておりますが、これを新品にとりかえるにはどのくらい金がかかるのだというふうに直して考えるのがほんとうじやないかと思います。そうしますとそれがやはり年間五百二十億になります、これは現在取替補充として出しております金は、正木先生御承知通り三百億であります。ここにまだ二百何十億という償却不足があるわけであります。これだけでも私は少くとも運賃値上げによつた方がよいと思いますけれども、これは物価政策その他から参ります制約もございましようし、その点さらにお話の国鉄のいわゆる公共性というところから考えなくちやならぬでしようから、いずれにしてもこの二百億程度さらに電化——建設は全然別です。電化あるいはディーゼル気動車によつての地方ローカル・サービスをよくするという町などいろいろ考えますと、まあ欲を言つているのかも存じませんが、償却不足の二百億と電化、ディーゼル・カー等に使う二百億程度、それはぜひ借金をさせてもらえぬものかということで、今いろいろ大蔵省折衝いたしております。大体の状況を御説明申し上げた次第であります。
  148. 正木清

    ○正木委員 私はなぜこの問題を提起したかというと、私には私なりの意見があるのです。ということはややもすると世間では、このたびの運賃値上げはあげて従業員の待遇を改善するための財源としてやるのだ、国鉄の従業員はボールをもつてたま投げをやつておるのではないかというような非難すら一部から出ておるわけです。ところが実際は国鉄の経理内容にメスを入れて見ますと、これは公社みずからが発表しておりますように、国鉄の人件費ほど私は他の企業と比べてもまさつておるものはないと思う。一体この数字自体を示して見ましても、国鉄の工事として物件費と人件費を割つてみますと、戦前は人件費が五五%で物件費が四五%であつたものが、戦後になつてしかも今日においては人件費が四〇%で物件費が六〇%、こういうように逆転をいたしておるのです。しかも人員は、一時六十三万人からあつたものが、本年度において四十四万人と減つております。これもすなわち企業の合理化の一切のしわ寄せが人員整理に来ておるのでありまするけれども、その人員整理の比率という点においても、国鉄は決して他から劣つてはおりません。私の目から見た場合においては、国鉄の現在の人員の度合いは、決してたま投げをやつておるという非難を受けるのではなくして、むしろ他の産業に比較しても、非常なる労働過重である、こういうように私はものを見るわけです。そこでこのことのよしあしの基礎は一体どこから出て来るか。公共企業体であつても、企業という性格を持つ限りにおける国鉄としての営業成績状態はどうか。これが当然議論になつて来ると思うのです。この営業成績を見てみますと、こういう数字が現われて来る。どういうふうになつて現われて来ておるかというと、旅客においては三四二%、貨物においては一九〇%という、他の企業の一切に見られないところの優秀なる成績を上げております。これは大臣は率直にお認めにならなければならないし、総裁も率直にお認めにならなければならないではないか。ところがこうして総裁以下国鉄四十六万の従業員が、日夜身をもつて、必死に国鉄再建のために、国民の文化向上と経済再建のために尽しておるときに、この国鉄の経理内容に入ると、私の目から見れば、当然交付金で解決をしなければならないものが、一般運輸収入の面でまかなわれておるし、借入金に対して当然利子補給をいたさなければならない点が、そのことが欠けておつて、一切が運輸収入、要するに一般営業費の中に食い込んで来ている、こういうように私は見るわけです。そこで私は漸次一つ一つについてお尋ねいたします。あらためて大臣に聞きたいのでありますが、この新線建設工事は、借入金でやるということに私はまつた反対です。あくまでも政府の出資金でやるべきである、こういうように考えるが、大臣の所見を伺います。
  149. 石井光次郎

    石井国務大臣 少くもこれから先の新線建設と申しますか、この間補正に組んだものの来年度から先の問題につきましては、借入金によりますれば、それは政府が市子の補給をする。少くも国鉄には重みをかけないという線でやつて行きたい、そういうように努力するつもりでおります。
  150. 正木清

    ○正木委員 私は新線建設はあくまでも政府出資金でやるべきであるという意見を持つし、大臣は借入金に対する利子補給は政府が持たなければならないという意見でございます。そこで私、大臣にお聞きしたいのでありまするが、この国鉄から出ました二十八年度の工事建設予算の内訳を見ますと、新線建設に対して百二十億、こう出ておりまするし、二十七年度の分もございまするが、この二十七年度の分に対しても、さかのぼつて利子補給をするようにあなたは努力をされる意思があるかどうか、承つておきたい。
  151. 石井光次郎

    石井国務大臣 お答えいたします。私は今度の補正で出ました線からの問題として折衝をいたしております。と申しますのは、この前の十一線でありますか、それについては借入金ということに話がついておるのでありますから、私はそれがどういうふうに国鉄の計算に影響するか知りませんが、その程度までは——国鉄がどこまで将来負担するかわかりませんが、困つて来ればその問題にも入らなければならないと思うのでありますが、今のところはこの間の二十七年度の普通予算で出ておりますものについては、利子補給の問題は考えていないのでございます。
  152. 正木清

    ○正木委員 総裁にお尋ねいたしますか、数字のことになりますので、どなたでもいいです。しばしば総裁の口から出まする緊急に取替を要する財産に対する予算でございますが、千八百億からの財源を必要とするわけですね。これに対して国鉄としては十箇年計画を立てておるようでございますが、今国鉄からの説明を聞き、また諸般の書類を見ますと、はたして技術的に見て、そういう長い期間が許されるのか。こういう非常に移りかわりのはげしいときに、十箇年計画であるとか、三十箇年計画であるとか、そういう長たらしい期間が実際に許されるのか。もしかりに鉄道事故が起きた場合、あなたは一ぺんのあやまりでけつこうなんです。大臣もしかり。しかし第一線に立つておる諸君は一体どういう責任を負わなければならないでしよう。また国民の輿論が国鉄にどういうような影響を与えるかということも考えなければならないではありませんか。そういたしますと私は国鉄総裁たるものは、やはり良心的な立場に立つて、この緊急に取替を要する財産に対する財源的処置等についても、思い切つた考え方と計画を立てなければならないのではないか。かりに千八百億を突破するこの取替工事に対して——十箇年計画としても百八十億を要するのですが、この百八十億を全部借入金でやれるという御自信があるのかないのか。これまたもしそのときの政府の財政処置として百八十億は貸すわけにまかりならぬ、これも運輸収入からどんな無理をしても捻出をしなければならないというようなことになつて来たならば、現在あなた方が立てたプランは一片の空文に終るのではないか。私は戦時中に非常に無理をかけた国鉄を急速に復元するために、かようかくかくな予算処置が必要であるとするならば、やはり五箇年計画なら五箇年計画を立てて、政府から借入金なら借入金の年度計画を立てる。そこで問題になつて大臣にもお伺いしたい点は、この国有鉄道法のうちでただ一つ大臣が処理し得る道は何かといえば、四十億以上の鉄道債券の発行でございます。私は何らかの形において国鉄それ自体が、こうしたものに対する自己資金を持たない限りやつて行かれぬのではないか、こういうふうに考えられまするが、総裁及び大臣の所見を承つておきます。
  153. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 千八百億の緊急取替の問題についておしかりを受けたのでありますが、正木先生これまた御承知と思いますが、この千八百億と申しますのは、戦時中、特に戦後におきまして十分な減価償却ができなかつた、その穴であります。それを計算してみるとそうなる。しからば現在非常にあぶないものがある、それが戦時中の穴に該当するのだ、だからこれはほつておくのだというわけではありません。ただ計算してみると、千八百億というものが出るから、それだけを穴埋めしなければ、どこかでだんだん鉄道が弱つて行くのだ、こういうことになりますので、十年計画を立てましたけれども、決してそういう緊急を要するあぶないものをほつたらかして行こうというのではありません。それは別に先ほど申し上げました現在ならば三百億、実際厳格に言えば五百二十億でございますが、三百億というものはとにかく減価償却をやつております。その金と足りない二百億と、そうして百八十億というものが入つて来ますと、これは急速によくなると私は思います。そういうことでありまして、ただ資金計画上の計画としては十箇年でありますが、実際緊急を要するあぶない施設については、これはもう一番先にやらなければならない問題でございますので、これだけは御懸念のないように、また誤解のないようにしておきたいと思います。
  154. 石井光次郎

    石井国務大臣 今の修繕その他のことをなるべく早急にやる問題としての鉄道債券の問題であります。これはほかの場合にもいろいろお話があつたようであります。これは運輸省だけの関係、国鉄だけの関係できめられないいろいろな問題がありますので、これは一つの大きな命題として私ども考えておるのであります。これはなお研究を続けます。
  155. 正木清

    ○正木委員 重ねて総裁と大臣にお伺いするのですが、政府は一方には非常に無理に国鉄に過重負担をさしているのであります。私の意見に従えば、これはドツジ方式の典型的な重圧が現在の国鉄に来ておるのだ、私はこうはつきり申し上げます。犠牲になつた者はれかというと、国鉄総裁以下四十六万の従業員でございます。そのことはなぜそうかというと、これは収入の根源である旅客運賃が、要するに他の物価指数と比較して見て百九倍、貨物においては百五十七倍でございます。ところが一体卸売物価指数はどういうことになつておるか、三百五十倍でございます。通信料金はどうなつておるか、三百三十倍でございます。主食はどうなつておるか、二百五十倍でございます。電力料金はどうなつておるかというと、百四十倍でございます。従つて一つの企業という建前の上に立てば、こんな安い料金はありません。ですから企業それ自体という理念の上に立てば、当然全体の指数に応じて運賃は三割五分くらい上げてもさしつかえないことになると思う。少くともここで鉄道運賃を三割上げれば、すべての問題は一挙に解決する。従つて日夜身を捨てて神経を使つて、他の一般公務員に見られない苦労をしている従業員の待遇などは一ぺんに解決がつく。しかしそのことは同時に国の財産である公器という精神の上に立てば、国の経済政策、国民生活と関連を持ちますから、そういうことはできない。そこで運賃の問題が非常に重要な問題になつて来るわけでございますが、そういたしますと、運賃を上げないという建前に政府並びに国会が立つ限りにおいては、国鉄それ自体が健全な姿の上に立つて常業がなし得るような政策が、国の政治として必要になつて来るのではないか。そうなつて参りますと、一方では国の産業を開発するために新線をどんどんやれというが、しかし政府は財政資金その他の関係で出資はできない。借入金以外に道はないのだ、せめて大臣の政治力によつて利子補給でもでき得るならばけつこうなことだ、こういうことになつている。先ほど総裁は減価償却で三百億からのものをこの工業費関係に繰込むのだと言いますが、これには非常に議論がございます。大体国鉄の再評価それ自体について疑問があります。一体国鉄と類似の産業である私鉄関係の再評価はどれくらいの率でやつているか、これが当然問題になつて来ると思うのです。それから一般産業の私企業の再評価はどれくらいか、この度合いも問題になつて来ると思います。それと国鉄の再評価に対する比率が当然問題になつて参ります。国鉄にほんとうにゆとりがあるならばけつこうですが、無理に無理をして、こういう形で三百億からの金を工業費に繰入れる、そのことに私は反対なんです。それがどういう形になつて来るかというと、すべてが四十数万の従業員の待遇というものにしわ寄せされて来るというのが現実ではないかというように考えられるのですが、この点に対する総裁の御所見をお伺いいたしたい。
  156. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 正木先生と私と多少意見の相違があるのはやむを得ませんが、国鉄は現在再評価をいたしておりません。元の帳簿価格そのままであります。ただ三百億は昭和二十四年当時に資産再評価の法律が出ましたときの会社のやり方をまねまして、それでかりに計算したものが三百億でございます。なお国鉄とそれから私鉄の再評価との関係等は、これは会社にはいろいろ都合もございしようし、配当の問題、あるいは税金の問題、株主に対する関係、いろいろあつて、私は再評価されておると思います。しかしながら先ほど申し上げましたように、国鉄としてはそういう関係を考慮することなく、国民の鉄道をりつぱなものに保持して行くという見地から、減価償却というものが考えられて行かなければならぬ。同時に陳腐化して参りまする鉄道施設というものを近代化する、モダンナイズするということは、今世界的に行われておることでありまして、たとえばディーゼル・カーをローカル線に運転いたしまして、そうしてサービスを向上して行くというような、いろいろなことをやる必要があります。そういう点で私はやつて行かなければならぬと思います。なお減価償却をし、設備をよくすること自体が、決して組合の、われわれの僚友諸君の不利益になるものではないと思います。住宅が改善されて行く、あるいは休憩所が改善されて行く、駅の執務箇所がきれいになるというように、やがてわれわれ僚友諸君の仕事をして行く上の職場を便利にして行く、あるいは快適にして行くということも、私は僚友諸君の待遇改善の一つ方法ではないかと考えております。ですから、それらが労務者を圧迫するとかいうものでは決してないと思います。ことに国鉄といたしましては、陳腐な施設をもつて不便なサービスを旅客公衆にしいて行くというようなかつこうではいけない。あくまでもこの三百億というようなものは、むしろふやして行かなくちやならぬこそすれ、これを食うというようなことをしたら、鉄道自体が滅びてしまう。私は今の三百億でもやがて滅びて行くのではないかということを心配しておるものであります。ですから、万やむを得なければ借金によつてでも、早くこの施設を更生して行きたい、かように考えております。
  157. 正木清

    ○正木委員 資産再評価ですが、この点は私の発言の仕方に不用意なところがあつたと思うのですが、国から公社に移つた場合の帳簿価格を基礎にして、一回は再評価をされたと思うのです。この点あらためてお伺いしておきたいと思います。
  158. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 一回もまだ再評価しておりません。ただしかし予算を組む場合に、簿価でもつて減価償却の金を出しますといかにも少いので、それは困るだろうというような大蔵省との話合いで、二十四年当時各会社にこの程度は再評価してもよろしいという目安がありますが、その目安によつて計算されておるのが現在の減価償却であります。
  159. 正木清

    ○正木委員 その会計経理は別として、やはり実質上は再評価の基礎の上に立つて一兆億という資産が出て来た。この一兆億を基礎にしてあの三百億というものがはじき出されて来ておる。健全なる償却ということは公共企業体であろうと、私企業であろうと、当然やらなければならないが、この三百億というものは少し無理がかかつておるのではないか。むしろ借入金でもつてすべきものもこの三百億の中に入つて来ておるのではないかという気がするのであります。  これはこの程度にして、もう一つ大臣と総裁にお伺いしたいのでありますが、国鉄運賃収入の中で定期券の割引率というものは、ばかにできない数字を示しておるのではないか。そこで問題になつて来ますことは、やはり公共企業体というものの性格と企業の独立採算制という性格の問題が、ここでも相衝突して参ります。これは当然衝突して来る。これは数字のことですから、必ずしも答弁は総裁でなくても、監督局長でもけつこうですが、一つの企業として見た場合に、この割引率というものが原価のうちの何パーセントくらいになつておるのか、まずこれを先に聞いておきたいと思います。
  160. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 話が少しこまかくなつて来たようですが、お答えいたします。輸送人員で申しますと、昭和十一年ごろは定期外と定期との比率は、定期外が四四、定期が五六でありました。それが昭和二十六年になりますと定期外が三九、定期が六一という輸送人員でございます。それから輸送人キロで申しますと、昭和十一年ごろは定期外が断然多くて七二、定期は二八しかない。ところが二十六年になりますと定期外が半分で五一、定期が四九で、相匹敵する輸送人キロになります。純収入で申しますと、昭和十一年ごろは定期外が九〇%、あとの一割が定期、それが二十六年には定期外が八二、定期が一八ということで、だんだん定期がふえております。さらにこれを一人一キロの運賃で比べてみますと、昭和十一年ごろには定期外を一〇〇としますと、定期が二八・四、それから昭和二十五年には定期外を一〇〇とすると定期が二三・六、二十六年の実績を見ますと、定期外を一〇〇として定期が二三・一と、一人一キロの運賃に比較して参りましても、昔よりは定期の割引率がだんだん高くなつておる、あるいは輸送距離は延びているということはよくわかるのであります、そういう状況でございます。
  161. 正木清

    ○正木委員 今総裁が御答弁くださいましたように、やはり公共企業体と企業独立採算というものの性格の点で、正面衝突して来るわけです。そこでこの定期券というものの性格から見ると、これはやはり国の大きな政治の一環として取扱われておるのであつて、軽々しく定期の割引率を引上げるということは、大きな社会問題になることだけは否定できないと思うのです。だからといつて、企業であるし、独立採算制だという建前に立てば、私の計算では、いくつの上から行けば、日鉄法の建前に基いて、少くとも政府が二百億からの補助金を出してしかるべきものだ、こういうふうになります。当然そうあつてしかるべきだというりくつは十分立つと思います。これに対して大臣は、このたび運賃値上げの法律案が出て参りませんから私には詳細のことはわかりませんが、一体この定期割引に対して日鉄法に基くところによつて交付金を出すような御意思があるかないか、この点を承つておきたいと思うのです。
  162. 石井光次郎

    石井国務大臣 定期の問題だけを取上げまして、政府は補給金を出すということは、今何らの問題にもなつておりません。
  163. 正木清

    ○正木委員 さらに重ねてお伺いしたいのでございますが、従業員に対する国鉄裁定の完全実施という建前については、国鉄公社側は明確にその点を打ち出しておるわけでございますが、政府はこれに対して財政上、予算上の措置としてそれをのむわけに行かない、こういうことになつておるわけでございます。このことについては当然国会において態度が表明されるわけでありますが、国鉄公社の運営を各般からながめて見ました場合に、国鉄公社法案が出たあとに公社方式にかわつて参りました日本電信電話公社法その他と比較いたしますと、まことにもつてこの目鉄法に数多くの欠陥があるし、その欠陥から来る運営上の障害が多々あると感ずるのでありますが、直接所管大臣である運輸大臣は、これらの点についてお考えになられたことがあるかどうかをお伺いいたします。  同時に長崎総裁は、公社の責任者として、この古い型の日鉄法に基いて今日まで直接運営されて来て、あなた自身これではいけない、日本電信電話公社法と比較してなおかつ日鉄法は古いものである。この電信電話公社法よりもさらに進歩的に日鉄法を改正しなければ、今後の国鉄運営の上において支障を来すのであるというふうにお考えなつたかどうか、これも御答弁を願いたい。
  164. 植田純一

    ○植田政府委員 日本国有鉄道法につきましては、ただいま御意見がありましたように、予算制度の点におきましてもいろいろと拘束がたくさんありまして、その後できました電電公社法の方が幾分進んでおるという点は確かに認められます。従いまして電電公社法を十分参考にいたしまして、できますならばさらにもう一歩進んだ改正をいたしたい、かように存じまして、現在案を検討中でございます。
  165. 正木清

    ○正木委員 ただいまの事務当局の御答弁、私満足するわけです。ということは、私もしろうとではありまするが、この国鉄公社、一口に言つてコーポレーシヨンの性格、運営等を、諸外国のいろいろの参考書類とつき合せて見ても、いかに日鉄法というものが、形式上の法律であつたかということがはつきりいたすわけです。たとえば国鉄公社で事業計画を立て、財政資金計画を立てる。この立てたものを、監理委員会というものがあつて、この監理委員会が運営について直接指導監督の責任を負うという、一つの中間機関になつておるわけです。その上に運輸大臣のあなたの役所があるわけです。そこで運輸大臣の意思によつて一切が解決づけられるかというと、そうではなく、予算上その他一切のものは大蔵大臣が握つてしまつており、あなたは全然権限がない。大蔵大臣予算その他のものを調整して、きちんと線を打出して、これを閣議に持ち出して国会に来る。これでは長崎総裁が総裁に就任されて今日までどうしてこの法律でやつて来られたか。精神上の問題ですが、そのことが私にはわからない。そこに行くと私はこの電信電話公社法が完璧なものとは思いませんが、これから見ると若干進歩的なものだと思う。そこで監督局長が言われたので、私も納得するわけではありますが、重ねてお伺いしたいのは、具体案ができたら一体次の国会あたりには出す御意思があるのかないのか。一刻を争う問題ではないが、出すべきものは早く出してはどうか、こういう意見を持つておりますが、御所見を承つておきたいのであります。
  166. 植田純一

    ○植田政府委員 次の国会には提出いたしたいと存じております。ただ電電公社法におきましても、きまりますまでにずいぶん幾多の経緯を経てできたようなわけでございますので、案の折衝につきましては、さらに相当いろいろの紆余曲折があろうかと存じますが、事務当局としましては次の国会に提出いたしたい、かような心づもりで検討いたしております。
  167. 松岡俊三

    ○松岡(俊)委員 今の質問に関連して……。今のような希望を持つておられるとすれば、その腹案を近いうちにこの委員会に内示する考えを持つておられるかどうか、これだけ伺つておきます。
  168. 植田純一

    ○植田政府委員 ただいま事務的に検討しておるところでございまして、もちろん案ができましたならば提出いたしたいと思つておりますが、現在のところまだその段取りに至つておりません。
  169. 松岡俊三

    ○松岡(俊)委員 この会期中に間に合わせる考えがあるかどうか。
  170. 植田純一

    ○植田政府委員 それは多少困難かと思いますが、できるだけ努力いたしたいと思つております。
  171. 正木清

    ○正木委員 最後に総裁にお伺いしておきたいのでございますが、それは北海道の国鉄職員の石炭手当の問題であります。こういうところに国鉄従業員の非常に気の毒な現実の姿があるのではないかと思います。日鉄法に基くと、民間賃金と国家公務員とを比較して見て、しかも国鉄従業員に対しては、その職域の特殊的な作業実態を顧慮の中に入れて賃金をきめなければならない、こういう法律規定がございます。ところが石炭手当等については、政府が一般公務員に手当として支給する六千百円を基準としてかりにあなたが支給するような場合になつたとき、厳寒地帯において日夜苦労をしておる国鉄従業員はどういう結果になるかというと、作業上から来る特殊的な地理的な条件の相違、これは私は他の公務員の諸君とは格段に考え方をかえてしかるべきものではないかと思う。ということは、国鉄従業員は日夜をわかたないで第一線に働くのが大多数の諸君でございます。従つてあの寒い北海道で、夜間主人がポイントを返して貨車の入れかえをやつて、夜の十一時、十二時に帰つて来るとき、うちに待つておる奥さんが、ストーブの火を落して自分だけが暖かいふとんの中で寝ておるかというと、そうじやないと思います。やはりある一定の時間はストーブをたいて暖をとつて、元気な笑顔をもつて主人を向えるのが当然なことだと思う。これは簡単な一つの例でございますが、これ一つ考えてみても、他の公務員とは違います。他の公務員の諸君は、朝八時なら八時に出勤して、タ方四時なら四時に家に帰つて来る。ところが国鉄の職員の場合にはそういうわけには行かない。そこで問題になりますことは——こまかくなりますので多くは申し上げませんけれども、総裁は、他の一般公務員の石炭手当支給額がこうだから、従つて自分としての与えられた権限では、国鉄総予算の給与総額がこれだから、他の一般公務員並以外に自分の職員には石炭手当を動かすことができないというような機械的な扱い方はすべきではない、それには人間的な、そうして総裁としての行政的な立場に立つてゆとりのあるあたたかい処置を講ずべきではないか、こういう意見を持つておるのですが、この点について総裁の御心境を承つておきます。
  172. 長崎惣之助

    ○長崎説明員 北海道におけるわれわれ同僚の勤務がどんな状態であるかということにつきましては、今年の正月現地に参りまして、内地等で見られない厳寒の地で奮闘しておる姿を親しく拝見して、非常に感激に打たれたのであります。従いましてひとり手当とかなんとかいうことでなしに、被服の面、住宅の面、いろいろな面で北海道には特殊な考え方で臨まなければならぬのではないかと思います。私実は三十年ぶりで北海道に行つたのですが、三十年前の北海道の姿と今日の姿とは非常にかわつております。かわつておりますが、住宅というような点になるとあまりかわつておらないのでありまして、実は驚いたのであります。苫小牧などに行つてみますと、ブロック建築をやつて、あそこの職工さんは比較的恵まれた生活をなさつておられる。しかもあの経営者に聞いてみますと、いわゆる石炭代があのブロック建築になつたために半分になつてしまつたというようなことを聞いておるのであります。そういうようなことでありますから、心持としましては私はできるだけ考えてあげなければならないと思つております。ただこの手当という問題になりますと、こちらを上げると向うが上げるということで、シーソー・ゲームのようなことになりますので、必ずしも世間よりうまくやるとかいうことではなしに、別の面で考えた方がいいのではないか。たとえば今申し上げましたような熱管理の問題——これは全部急にブロック建築にはならぬでしようが、そういう面、あるいは被服の面とか、いろいろ鉄道の特殊な事情から来る点を見まして、解決して行くことの方がよくはないかと思つております。わずかながらでありますが、軍手等につきましては、いささか特殊な考慮を払つたのであります。
  173. 逢澤寛

    ○逢澤委員長 本日はこの程度にし、次会は六日午前十時より開会いたすこととし、散会いたします。     午後五時十四分散会