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1952-07-08 第13回国会 参議院 労働委員会 第28号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年七月八日(火曜日)    午前十一時十四分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     中村 正雄君    理事            安井  謙者            村尾 重雄君    委員            上原 正吉君            九鬼紋十郎君            一松 政二君            小林 政夫君            菊川 孝夫君            重盛 壽治君            堀木 鎌三君   国務大臣    労 働 大 臣    厚 生 大 臣 吉武 惠市君   政府委員    労働省労政局長 賀来才二郎君   事務局側    常任委員会專門    員       磯部  巖君    常任委員会專門    員       高戸義太郎君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○地方公営企業労働関係法案内閣提  出、衆議院送付)   —————————————
  2. 中村正雄

    委員長中村正雄君) これより会一議を開きます。地方公営企業労働関係法案を議題として質疑を続行いたします。堀木さん昨日の続きやられますか。
  3. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 地方公営企業法案ならばもう一点だけ……。
  4. 中村正雄

    委員長中村正雄君) その他の案件につきましても関連すればやつて頂いても結構です。では堀木君に発言を許します。
  5. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 地方公務員法の附則の二十項に関しましては一応今度地方公営企業法で解決されたわけでありますが、二十一項の「第五十七條に規定する單純労務に雇用される職員身分取扱」については、現在のところ「この法律に対する特例を定める法律が制定実施されるまでの間は、なお、従前の例による。」というふうになつて、この点についてはたびたびたびこの委員会でも御質問があつたわけでありますが、御質問ありましたうちで特にこの際明らかにしておきたいと思いますことは、この五十七條の「職員のうち、公立学校の教職員、単純な労務に雇用される者その他その職務責任特殊性に基いてこの法律に対する特例を必要とするものについては、別に法律で定める。」ということになつて、やはり五十七條自身において別個に職務責任特殊性に基いてできるということが考えられるわけですが、特にお聞きしたいことは、單純労務に雇用される職員というふうなものは、まあ労働大臣の従来のような御説明ですと、地方公務員身分を持つておる、だから地方公務員身分を持つておる点からの規制というものを十分考えなければならんということになつて参るのですが、と同時に、法制上の建前から言えば、労働大臣といえどもこれらについてはできるだけ完全な労働三法、他の一般的な労働者に対する労働三法というものを適用しても差支えない、このようにお考えになつておるのかどうか、その点をここで一つはつきりさして頂きたい。
  6. 吉武恵市

    国務大臣吉武惠市君) 御尤もな御質問でございまして、先般も一度触れたかと思いますが、この單純労務者労務者としての性質を強く持つておりまするので、お話のようにできるだけ基本権というものは尊重して行かなければならんという考えを持つておるのであります。ところがやはり一方公務員という身分を持つておりますると、先般申しましたように、その仕事内容がどうであろうとやはり公務員である以上は、机の上で仕事をしても或いは外で仕事をしてもやはり公務員としての性格がある、従つて地方公共団体全体の奉仕者たるところの立場におかれるというところでやはりその規制を受けるわけであります。でありまするから、今回この地方公労法において取上げました企業のものにつきましても同じ考え方から出発をいたしまして公務員たる身分規制についてはこれは残る、併し国鉄等におけるような現業的な立場におかれている面があるのだから、せめてそれと同じような取扱をしようということで取上げたものであります。従つて若し法の体系として同時に取上げることができるならばこの二十一項の單純労務につきましても同じ構想で取上げたいつもりで検討したわけであります。ところがやはり公営企業企業体であるという点をもとにして法案を作つておりますので、企業体でないものも同じ法律体系規制できるかどうかという点に多分の疑問の点も出て参りましたので、この際この二十一項の分だけはあと廻しにして一応企業体の分だけを取上げる、そうして近き将来においてこの單純労務につきましても、考え方としては同じような公務員たる本質はこれはどうも脱却できないからその規制は残るけれども労務者として現業に従事しておる者と同じ立場におかれているのでありますから、できるだけ基本的なものを考えなければならないという考え方で、別個に法制を立てようかということで今回はこれを抜いたわけであります。その点御了承頂きたいと思います。
  7. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 大体御答弁は予期しておるし、従来の御説明から言えば一つの貫いた線だと思うのです。併し私自身は不幸にして労働大臣の、片一方公務員身分を持つておる、或いは公共企業体職員として或いは地方公営企業職員としての身分を持つておる、そういうことから人間にして人間にあらざるものを作る、こういう憲法條章上本質的なものまで変化して行くことについては御同意しかねるのですが、併し一応政府がそういう御意向だという政府の御意向に立つて労働大臣に申上げたいことは、地方公営企業の場合には公共企業体ともやや異なつて原則としては労働組合法及び労調法関係というものによることを原則的に一応観念的な立場は持つておられる。そうすると、單純労務の場合についてはもつとその点が強かるべきはずのものであつて労働三法原則としてというより、労働三法そのままを適用されて実際の実体からは殆んど差支えない。現に仕事性質実体を見ましても、或る地方公共団体では直営でやつておる。そうすると、それは地方公務員である。或る都市ではもう民間請負にしてやらせておる仕事すらある。そういう場合から見れば、これは純然たる労働三法適用を受けておる。今のお話で、如何にも国家公務員なり地方公務員身分を持つておる、実体的なことはもう無視して、そういう点で判断されるような御説明に近いものがある。けれども、実際は必ずしもそうではない。あなたのほうだつて実体を眺めて法律適用を成るべく実情に近付け、そうして普通の労使関係即ち労働三法の形に持つて行こうという御意欲はあるはずである。こういうように私は考えるのです。だから今度これを地方公営企業人間と同じような労働関係というよりは、それがそのものの形で規制されるのではなくて、もつと労働者の権利を護るように規制される御方針であるべきはずだと思いますが、その点について間違いないでしようか。  それからもう一つ、これはほかの委員もお聞きしましたから、お聞きするのは蛇足だと思いますが、一体いつからその準備態勢ができておやりになる意向であるか、時期的な観点、本来言えば先ほど言いました二十項のそれと併せてお出しになる予定だつたが、業務実体複雑多岐であつてなかなかむずかしいところがあるから間に合わなかつたということが実情だと思います。そうすると、そういう点からいつの国会にお出しになる御意向でありましようか、これだけをお聞きしたい。
  8. 吉武恵市

    国務大臣吉武惠市君) 第一点の点は、掘木さんのおつしやるような考え方考えられるかと思います。併し私はまだそこまでの考えは今のところ持つておりませんで、單純労務といえども公務員であるという性格の点においては同じである、企業に従事する現業の者でありましても、單純労務に従事する者であつても、私は、差別をすべきでなくしてやはり同じだ、その点は机の上で従事されましても肉体的に外で仕事をされましても同じものであるという点を強く私どもは感じております。従つて單純労務でありましても現業に従事する者でありましても、基本権をできるだけ尊重したいということは、実体を無視できんじやないかというお説、その通りでありまして、私ども公務員であるというただ一辺だけにこだわつて基本権を尊重しないということは実情に合わないから、今回その実情に沿うて出て来たわけでありまして、その点は單純労務でございましても現業であつても同じではないか。ただ注の体系としては企業体であるから、企業体労働関係で規定した法規企業でないものに即準用ができるかどうかの点に多大の疑問を持つものでありますから、この際は一緒にしないで別に考えようということであります。従つてその別に考えるのは、單純労務大中基本権を認めるが、現業大中基本権が認められないという意味の趣旨から除いておるわけではございません。堀木さんとしてはそれは大巾に別個に考えたらという御意見であろうと思いますが、それも一つ考えでありましようけれども、私は、やはり公務員であるという点につきましては、そう仕事で区別すべきものではないだろうというところでまず出発しております。将来に亘つて実施してみて又変つて行くことがあるかも存じませんが、一応当面の考え方としては、私は同じような考え方で進んでおるわけであります。  それからそれならばお前がそういうような構想で今後立案をするならばいつ頃かというお尋ねでありますが、これは私はそういう考えを持つ以上は即急にやるべきであつて、まあゆつくり考えればいいじやないかなどというわけにはいかんと思つております。できればこの際一緒に出せばよかつたのでありますけれども、いろいろ検討しておりますうちに、たくさん法律をいじつておりますものですから、なかなかそこまで透徹して考えるわけにいかなかつたために別個にいたしましたので、近い議会において私は当然取上げるべきものである、かように存じております。
  9. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 労働大臣、何もつかまれないように御答弁なさる御心配をされる必要ないので、私は何もあなたの片言隻句をとらえようとは思つていない。ただあなたの御答弁から実際におやりになる熱意があるかどうかという問題を何とかはつきりさせたいと思つているので、卒直に申しますと、東京の地下鉄労働争議をしてもいい、併し大阪の地下鉄はこれは地方公務員だから争議をしちやいけないという形になつて来るわけです、今度の法制建前は。それから市内の電車にしても、都営だつたら、都営と申しますか、とにかく公共団体が経営しておる、地方公共団体が経営しておる場合においては争議行為をしてはいけない。併し民間の経営でもつて市内交通が扱われておる場合にはこれはしてもいい。これはあなたも使い分けをされるし、そこには地方公務員しるしばんてんを着ておると労働大臣から見ると人格が変つて来るように、人間にして人間にあらざるものをお作りになる、そういうお考えに立つておられることは私も十分承知しております。これは御説明にならなくても承知しております。私がその考えに立つていないことは賢明なる労働大臣よく御承知通りであります。併しただ私は、あなたがそういうお立場をお取りになつても、なお且つそういう国家公務員性質なり、地方公務員性質を持つている者についても、労働実体に即して成るべく労働三法適用をして行こうというのが少くとも労働大臣のお考え方なりお責務である。で、それは国家公務員だ、それは地方公務員だというのは人事院総裁なり、そして一応人事を扱つている行政官のほうにお任せになつて労働大臣としては労働者実体から見たものを十分お考えになつて労働三法適用努力されることこそ民主化方向である。そうして不十分でありながら、今度は国の事業についても公共企業体労働関係法適用を成るべく受けさせよう、それから地方公営企業についても新しく法律を作るわけで、それで地方公営企業については原則として労働組合法なり労調法適用を受けさせよう、こういうようなお考えだとすると、労働大臣のお考え方からいつてもそういう方向に行つていることは私は間違いないと思うのであります。一歩ずつ私どもと不幸にして根本的な立場が違つているにしても、そういう方向ずけだという御努力はたしかに認め得るのだと思いますが、そういう点からこの現業業務については特殊性があることもお認めになり、実際内容を見れば同一の都市で或る種の事業請負にして、その請負仕事は完全な労調法のこれは身分関係を保有しておりません。仕事は同じでありましても身分関係を保有しておりませんから、労働組合法労調法関係を受けんわけであります。だからそういう点から見ればそういう点に近いようにするというお考えがないかどうか。余りいろいろおつしやいますとなかなか上手にぼやかしになるから、その点をもう少し端的にお答えになつて、それからその時期も、それじやその次の国会なんとおつしやらないで、もう次の国会とおつしやつても私はいいと思いますが、併し成るべく近い機会に……、あなた他人行儀ですよ、一緒にここで国政を與つている者のお互いのやりとりじやなくて、それは他人行儀と申すものでありまして、あなたとしては次の国会にお出しになる準備もこういうふうにしてそうしてこういうつもりだということをお答願いたいのであります。こういうことであります。
  10. 吉武恵市

    国務大臣吉武惠市君) よくわかつております。堀木さんの質問されている要旨は私にもよくわかつておりますが、この單純労務についてはできるだけ労働三法考えるというその努力は勿論考えたればこそ、今回現業についてはこういたりふうにいたしましたが、ただ私は恐らく堀木さんとの意見のやはり違いがある。その点は私は公務員たる性格をやはり或る程度はつきりと考えている、堀木さんはその点はそのままであるから或る程度考えなければならんが、そう大して考えなくてもいいのじやないかというお立場に立つて考え方でありまして、その間にこれはやはり開きがあるように思うのであります。これはやはり考え方の違いで、まあずつと将来になりましてどういうふうになりますかはこれはわかりませんが、少くとも現在の段階においては、私は公務員というものの立場というものはやはりはつきり考えておかなければならない。強くその点を考えているわけであります。併しそれは公務員身分関係するか否やでございまして、御承知のように労働三法のうちの基準法等のごとく、労働條件については卒直基準法そのもの適用しているのでありますから、その点は私は公務員であるから労働條件については別のものでよろしいというふうな観点に立つているわけではございませんので御了承を頂きます。  それから時期でありますが、はつきり言わんとおつしやいますけれども、事なかなか簡單に、それじや次期国会言つて次期国会の日取もまだ予定されておりませんし、準備といたしましても今ここに法案準備がございませんので、国会がいつ開かれてもすぐ出せるというところまでまだ行つておりませんので、私といたしましてはちよつとのどまでは出ておりますけれども、それ以上言えとおつしやいましてもちよつとむずかしいので、私は誠心誠意早い機会に出すという点だけは決していい加減なことを申しておりませんので、御了承頂きたいと思います。
  11. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 もうあまり同じことをこれ以上言つていてもしようがありませんから申上げませんが、実はそれで私又お答えによつて法案に対する態度が幾分変つて来るものだから、特に念を入れておるのであります。私は実際申しますと、大分その点では労働大臣違つた立場をとつておりますが、今おつしやつたうちでもそういうふうでないと思う点もありますから、その点もくどく申上げても私きりがありませんから申上げません。ただもうのどまで出ているのでしようから、臨時国会が開かれれば、夏までには間に合わんというお考え心配もあつてされるのだと思いますが、もう一辺はつきり申上げます。次の通常国会にお出しになりますか、なりませんか。
  12. 吉武恵市

    国務大臣吉武惠市君) 勿論通常国会には出すべきものであると私は考えております。
  13. 村尾重雄

    村尾重雄君 ちよつと堀木さんの昨日の質問に関連するのですが、十一條争議行為禁止と、それを受けた十二條の罰則規定といいますか、刑罰規定ですね、これについて一言お伺いしたいのですが、この二十三年七月二十二日ですか、あの政令二百一号で同盟罷業並びに怠業行為と共に、正常な業務運営を阻害する行為禁止されました。当時の政令というものは非常措置だと思つている。それからだんだんだんだん組合運動も、又日本復興もかなり正常化して来るに伴い、公共企業体の点は先ずここにおいて各地方における労組と、地方公共団体との間のいろいろな労働條件、並びに給與等関係で問題が起つたときのとられている、今日の事実上の一つ争議手段行為ですね、例えば賜暇休暇であるとか早退の励行であるとかそれから坐り込みであるとか、すぐ奇声を上げる行為であるとか、こういうふうなものが現実にとられているのであります。これは争議化したというのか、慣行のような、これはもう正常視されたようなきらいがあるのであります。その点でこの政令が出た当時は非常措置として、当然そうあるべきであつたか知れませんし、又励行されたかも知れませんが、その後やはり組合運動の実態と日本の経済の復興とに伴うて、或る程度の問題を処理するための争議行為が認められている現在、この地方公労法が出されて、この十一條なり十二條というものが且つ又明白に謳われるというところに少し無理があるのじやないですか。これはこの法が出されたことによつて、今現在とられているあらゆる争議行為同盟罷業に入らない完全か怠業に入らない現在とられている手段というものは、改めて又禁止を受けると思うが如位ですか、それは相当重大だと思いますが。
  14. 吉武恵市

    国務大臣吉武惠市君) ここにありまするように、ストライキとかサボタージユとかというような、正常な運営を阻害する行為を我々は限定をしているわけであります。でありますからそれ以上と申しますか、それ以下と申しますか、つまり合法の範囲でそうして意思表示をする方法とかいろいろあるわけであります。お話のようにきちつときまつた時間に帰るという、これはきまつた時間に帰るということが許されている。許されているのを嚴重に行うということによつて意思表示をする。それから賜暇を正規の許可を得て、許可を得ないでやるということはこれはいけませんが、許可を受けて賜暇をとるという方法もあります。これも許されている。併しそれも一つ意思表示になるわけであります。それからまあハンストというものを、国鉄あたりでもよくやられますが、これは別に国鉄運営それ自身に御迷惑をかけるわけじやなくて、労働者みずからの犠牲によつて自分たち意思を世論に訴えるという方法であるのであります。これは勿論許さるべきものであつて、その行為を私どもこれを禁止するつもりはございません。ですから何が正常な運行を阻害する行為であるかどうかということは、今までの慣行によつておよそきまつておることでありますから、これは私尊重すべきだと思つております。
  15. 村尾重雄

    村尾重雄君 いや、私の言おうとしているのは、二十三年七月に政令第二百一号が出された、その当時と非常に変つて来ているのですから、その政令とこれと変つた所はどこだと見ますと、僅かに文字が変つているのですね。「怠業その他の業務の正常な運営を阻害する一切の行為」と同じようなことが書いてある。その政令においても業務運営能率を阻害する争議手段をとつてはならんというように、却つて政令のほうがまだやりよいじやないかと思うのですね。二十三年から現在と比べて同じようなものを出すのは少し行き過ぎじやないかと、こう思うのですが、その点。
  16. 吉武恵市

    国務大臣吉武惠市君) 大体この政令二百一号と同じだと思います。文字としては多少違つておりまするが趣旨は同じであります。で事情が違うとおつしやることは、私も組合運動あり方というものがだんだん正常化して来ておることはこれは率直に認めます。併しそれはその二百一号に該当する違反行為が多かつたか少かつたかということであつて法規禁止する限界というものは私は同じだと思います。従つて法文に出ている文字はこれは同じでなければならん。許される限界と許されない限界というものは、それは昔であろうと今であろうと私は同じだと思います。ただ組合あり方が変つて来ているという現実は私も率直に認める。従つてそれに違反する行為は現在は少くなつて来ておるということは、これは私は率直に認めるのであります。併しそうであるからと言つて法文限界を変えるということは、これはできない、かように考えます。
  17. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 この十條の二項「承認を求めなければならない。」これは公共企業体労働関係法の十六條に同じでございますが、予算上資金上不可能の場合の承認を求められたこの解釈についてでありますが、日本の現在ありまする憲法でも條約を結んだときには承認を経なければならないと、こうあるのですが、その表現は大体これは政府承認してくれと言つて提案することになつておると思うのです。まあ條約でもこれは承認不承認かどちらでもいいからきめてくれという出し方はしたことはない。必ずこれは承認してくれと、最善努力国会なり議会に向つてなすのが建前だと思うのですが、この十六條のときには承認不承認か、あなたのほうでいいようにきめて下さいという出し方をしているのですが、一体今の法律で「承認を求めなければならない」、「承認を経なければならない」という字句の解釈運用に当りまして、どちらでもいいからその国会でいいようにきめてくれという出し方をするというふうに、これはもう運用されていないのだが、大体公共企業体労働関係法の十六條の二項のときだけは国会に対して、どちらでもいいから一つ国会でよろしくおきめを願いますと、こういう出し方をするのですが、これは今後地方公共団体議会に十條の二項によつて出すときにも、やはり今までのような、国会へ現在の政府がおとりになつておるような出し方をすることを認めるつもりであるかどうか、この点が地方公共団体に行きますと、まちまちになつておると思うのであります、解釈が。で大体その法律立法の精神からいつたら、どう考えても、同じような「承認を求めなければならない」というのは、もう憲法のこの條約の場合とか、たくさんあると思うのでありますが、どれでもこれを承認してくれと言つて最善努力をするのが、これは当然建前になつておると思うのでありますが、この点について労働大臣からもう一遍これを明確にしておいてもらわんと、公共企業体労働関係法十六條の二項の運用のような運用をやる所もあるし、そうでなしにどうしても承認させようという努力をする所もあるという点で、まちまちになつて来ると思うのでありますが、この点一体憲法の條約を締結した際に、政府のほうではあらゆる努力を盡してその承認を経るようにやるというのが、この立法建前であるかどうか、この点を一つお聞かせ願います。
  18. 吉武恵市

    国務大臣吉武惠市君) これは先般も申しましたように、裁定というものは尊重さるべきものであるのは当然であります。併しながら相手が国家及び公共団体でありまする場合においては、その最高の意思決定国会であり地方議会であります。従つてその国会地方議会意見従つて政府なり地方理事者は処置すべきものである。従つて先ずこれを承認をするがいいか惡いかという点を、これは国会及び地方議会にかけるべきだと意見を付するということもあるでありましよう、意見を付しても私は差支はないと思いますが、併し法の建前といたしましては、これは自由に国会が独自の見解において承認するかしないかということをきめるべきである、かように存じまして我々はさような解釈をいたしております。
  19. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 いやそうじやなしに承認を求めるがいいか惡いかは、それは国会がきめるのでありますが、政府並びにその地方公共団体としては、承認をしてくれと言つて出すのが、これが「求めなければならない」という立法趣旨だと思うのです。それでどちらでもいいからきめて下さいという出し方ではなしに、承認して下さいと言つて出したけれども、いや承認できない、或いはよろしい、承認しますと、こういうふうにきめるのが議会の慣例である。ところがあなたの言うのは、どちらでもいいが、まあ一つよろしくきめて下さいというのですが、これは承認して下さいとこういうふうに出すのが当り前だと、こう思うのですが、その点を一つはつきりして下さい。
  20. 吉武恵市

    国務大臣吉武惠市君) その点は尊重するという点からみればそうも考えられますが、およそ予算上資金上は国会及び地方議会において規定されておる。そう自由になつていない。従つて一応の建前としてはできない。できる場合はいいのでありますけれども、つまり不可能の場合においてどうするかという問題であります。ですから、不可能の場合なら一応考え方としては実はこういう裁定が下つたけれども、できません、できませんから承認を求めますけれども、これは呑むわけには行きませんがという意見を付するのが或いは建前かも知れません。併しそういうことは、いやしくも裁定ができた場合に、政府がそういうことであらかじめ国会に出すということもどうだろうかということで、私どもはこの承認については不承認して下さいとも承認せいとも言わないで、自由に国会の御判断に待つて、そうして国会意思決定に基いて政府が処置するのがよいじやないかと、たとえ立法方法としてはいろいろあるでありましよう、あるでありましようが建前としては不可能なんですから、不可能だつたらこれはできませんぞ、できませんがどうしますかというのが或いは普通かも知れません。併しそういうふうなことで出すのがいいかどうか、やはり私はこれはあからさまにそのまま不可能ではありますがどうしましようかと言つて国会の裁定をといいますか、決定を待つというほうがいいんじやないかという感じを私は持つております。
  21. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 どうもそこが食い違うのですが、まあ憲法の七十三條に條約を締結した場合に例えば今度のような條約で北緯何度以下は出漁してはいかん、これはどうも困る、今承認してもらわないほうがいいんじやないかという承認出し方をするのが、そういう憲法の私は建前じやないかと思う。又政府は結んだ以上はこれは承認して下さい、例えば領土の問題にいたしましても、その他今後行政協定の場合にいたしましても、あんな所へ駐留軍の地域並びに区域を決定されては困る、併し向うの要求が強い、どうしてもこつちが呑まなければならないから国会も止むを得ないからこれは承認して下さいと言つて出すのが当り前で、こんなものを結んだけれども、これはアメリカが無理に押しけて来たから国会で蹴とばして下さいということが許されるかどうか、これも本当の趣旨は協定を結んだ場合のことです。協定の場合のことを言つておるのでありますから、当然協定を結んだ以上は承認して下さいといつて出すのが、そういう意向で以て政府並びに地方公共団体の長が国会なり議会へ出すというのがこれは建前、どう考えてもそうだと思うのでありますが、どの法律でも承認不承認かはきめて下さいといつて出すような、一体承認云々というような法律が、たくさんそういつた法律はあるだろうと思うのですが、憲法以下そういう場合に、どちらでも一つその判断はあなたのほうにお任せするからきめて下さいといつて出すような運用をするというような法律はほかに例がございますか。一体これだけだと思うのですが、吉武さんが今までそういう実際考えを持つて承認を求めなければならないということはこれは明らかに承認をして下さい、そのためにあらゆるちやんと手続を経、且つ努力を盡して、それでも不承認なつた場合にはこれは止むを得ない、こういうふうに解釈するのが正しいと思うのですが、ほかの法律の表現等とも比較して一応御説明願いたいと思います。労働大臣何でしたら事務当局でも結構です。
  22. 賀来才二郎

    政府委員賀来才二郎君) ほかの例ということになりますと大分詳しく研究せねばなりませんが、この十六條の解釈、即ち十條も同じようなことになりますが、政府といたしましては先にこの十六條の問題が起りましたときに、国会承認を求めるとは、承認するかしないかの議決を求めるという意味であるという解釈出しておるのであります。
  23. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 それがいけない。
  24. 重盛壽治

    ○重盛壽治君 今菊川さんが十六條について質問されたのに対しまして、労働大臣の言うのは金があるかないかわからないのに義務付はできない、こういう表現だつたと思いますが、これは公営企業法の二十九條か何かに予算の借入金もできるし、その予算の措置内で管理者が措置して行くことも認められておると思うのです。従つて若しこのあなたの説明するような形で行くと、常に労働大臣は労使双方互角の立場においてこの法案を作つておるのだというけれども、実際には資本家の擁護のような形において作られている、いずこにおいても。そういう点はあとでどれだということを指摘いたしますが、そういう長い間一貫した観念があるということと、それから飽くまで公企労法を持つて来て当てはめるというところにこの法案の非常な無理があつちこつちに現れている。今申上げまするように本当に仲裁裁定が一つ下つた、それをこの協定を呑もうじやないかということになれば、地方の大阪の交通局、東京の交通局でも水道局でも、その管理者が管理者の責任でよし呑もうじやないか、そうして一つ大いに能率を挙げてもらおうじやないかという機構になつている。そうでなければこの問題はきまりがつかないし、そのことを與えないというならば、これは私がいつも言うように十一條以下を活かして罷業権を與えなければならない。罷業権を與えないとするならば、もう少し十六條を明確にして必要な予算を議会に付議してその議決を求めなければならないということに勿論しなければならないでしよう。しなければならないでしようけれども、その予算の措置は管理者がやつてもよろしいという建前に立つて行かなければ協定承認の意義がないのです。ただ協定承認しつぱなしということになるから、これは一つ私は間違いじやなかろうかと思つていたのですけれども、ただ公企労法からばかり引張つて来るからそういうことになるが、地方の六大都市を中心とする交通、水道あたりに当てはめるなら私は今言うようなことで十分運営がついておる。従来そういう法律がなくても立派にできておるから、それを講和が済んで新らしく法律を作つて従来より拘束して行くという考え方は、これは知つておらん振りをなさるけれども、恐らく労働大臣は知らないことはないと思う、労政局長だつて知らないことはないと思う。大阪において、東京において、六大都市において話がついて、それからその協定が下つてその協定が呑めませんというようなことは未だ曾つて有つたということはない。又そういう無謀な協定も下しまません、今の労働委員会は相当進んでおりますから。それで下されたものは市長とか都知事とかが呑まんでも管理者が呑む。管理者の権限で呑んでこれだけは一つ出してやつて下さいということを議会に提出してその承認を求めなければならない、これは当然書き換えてもらわなければならん法律であります。それで一つごまかし答弁でなくて、賀来さんでも吉武労働大臣でも。
  25. 吉武恵市

    国務大臣吉武惠市君) でありますから、可能な場合はそれでいいのです。可能な場合はその理事者の権限において結んで履行すべきであります。併し不可能な場合にどうするかというと、不可能な場合はやはり国会なり或いは地方議会の最高の意思決定機関によつて決定される、私は当然そうあるものだと考えております。
  26. 重盛壽治

    ○重盛壽治君 そういうことになるとそれは理窟のための理窟ですよ。少くとも労働大臣がそういう答弁をしてはいかんと思うのだ。労働組合とそうして管理者とが直接けんかをして、ストライキによつて、力によつて、これはストライキじやないから力によつて無理やりに呑まれた予算であるならば、不可能な処置というそういう言葉も通用する場合もあり得るかも知れないけれども、力関係労働者の力が強かつたから出す、ところがそうではなくて、調停にかけて調停がこの程度ならば予算が出せるだろう、この程度ならば労働組合も承諾できるだろうということを見越しをつけて、もつと卒直に言うならば調停に立つた人は一つこの程度は出せるのか、この程度なら何とかしましよう、この程度で呑めるのか、この程度なら何とか呑みましよう、ここで調停ができる、それくらいの考え方のない調停者は一人もいない。そういう関係に立つとこれは無理もない法律だということになる。これは私は当然直すべきじやないかと考えております。
  27. 吉武恵市

    国務大臣吉武惠市君) 前に申上げました通り協約というものは直ちに双方を拘束する効力を生ずるものでありますから、やはり不可能な場合は国会若しくは県会といいますか、その意思決定を待たなければ私はいけないと思います。
  28. 重盛壽治

    ○重盛壽治君 それでは地方公企労法の不可能の場合の実例を一つ聽かしてもらいたい。
  29. 吉武恵市

    国務大臣吉武惠市君) 不可能な場合は、具体的な場合予算にないものを要求され、それが裁定に下つたときは不可能であります。
  30. 重盛壽治

    ○重盛壽治君 それはどこにあつたか。
  31. 吉武恵市

    国務大臣吉武惠市君) いやそれがあつたかなかつたかはこれからの問題です。過去の例は……
  32. 重盛壽治

    ○重盛壽治君 それに該当する例があつたかということであります。そういう架空論を振廻して法律の中へ飽くまで当てはめて行こうということは、失礼な言分だけれどもこの法律の持つて行き方が公共企業体を焼き直したに過ぎない、而もこの公共企業体が何でもいいように占領下におけるマツカーサーの、あのフーバー政策から現れて来ている。こういうことをやつたらよかろうというので英文を押付けられてそれを飜訳をして、更にそれを焼き直しをして地方公共企業体に当てはめようというところに無理があるのだから、そういう点にこだわらずに、もつとそういう点は間違つておつたら間違つておつたと、地方の事情と公共企業体の事情とが違つておつた、それは本当は知つているはずなんだ。賀来さんも大臣も知り抜いていることをあなたがたはこだわるけれども、若しこだわらなければならん理由があるとすればもうその理由はなくなつているので、そういう点はもう少し卒直に直して頂きたい。
  33. 吉武恵市

    国務大臣吉武惠市君) この点は卒直に申上げますが、私は国及び相手が公共団体である限りはこのほうが正しいと卒直考えております。それから地方議会であろうと国会であろうとその点においては同様であろうと、差を付くべきものではないと私は考えております。
  34. 重盛壽治

    ○重盛壽治君 そこだけが非常に議論の余地を残しているので、むしろこういう法律を作つてやることがあなたがたは親切のように考えるかも知れないけれども地方公共企業体に対しては非常に不親切であり、労使双方の間に紛議をかもす種を労働省みずから作つてやることになる。これはあなたと議論しても仕方がないから別に何とかそれを直して頂くようにやつて行きたいと思うが、これはお考え直しを願いたいと思う。
  35. 中村正雄

    委員長中村正雄君) 菊川君なり重盛君なりからいろいろ質問されておりますが、労働大臣答弁も二本の答弁で結論を得ないようですけれども一つそれに関連して委員長から確認しておきたいことがあるのですが、第十條に関連して法律論としてお聞きしたい。  それは先ほど菊川君も申しましたように、現在の憲法六十一條、或いは七十三條、或いは又地方自治法の百五十六條及び各省の設置法に、すべて「国会承認」という字句があります。それと公労法十六條の「国会承認」、或いは地方公労法十條の地方議会承認」、この意味が同じか違うのか、法律論として一遍御答弁を願いたい。
  36. 吉武恵市

    国務大臣吉武惠市君) ほかの承認はどういう意味か、私それぞれ所管のほうからでないと明確に断定的には申上げかねますが、ここにありまする承認という意味は、先ほど労政局長からも申しましたごとく、承認するかしないかの議決を求めるという意味であることは、もう前々からきまつておる解釈でございます。
  37. 中村正雄

    委員長中村正雄君) そういたしますと、別に憲法の六十七條とか或いは国会法の三十九條には「国会の議決」という言葉を使つております。現在の日本憲法なり法律は、国会承認という言葉と国会の議決という言葉と二つ使い分けをしておりまして、国会承認というのは、提案理由にいつも最後に政府が言いますように、「速かに可決あらんことをお願いいたします」という意味の場合、言換えれば速かに承認あらんことをお願いしますという場合に国会承認という字句を現在の法律は使つているわけなんです。国会が自由にイエスかノーかをおきめなさいという場合には国会の議決という字句を使つておるのが、今の日本の法体系の使い方だろうと思うのです。勿論労働大臣として、憲法なり、地方自治法なり、或いはその他各省設置法の解釈についての御答弁は無理かと思いますが、一応私たち考えますのに、憲法言つておるのも、地方自治法に言つておるものも、公労法に言つておるものも、やはり国会承認という字句は同じことだと思いますし、今公労法の十六條なり或いは地公法の十條にいう承認が、国会或いは地方議会におきましてイエスかノーか自由におきめなさいというふうに解釈されるものか。この承認であれば、恐らく法体系の字句としては国会の議決或いは地方議会の議決という言葉を使うだろうと思うのです。従つて、この点に非常に労働大臣の苦しい答弁もあり、政府のあいまいな態度もあると思いますので、一応明日の委員会政府法律関係におきまする主務大臣である法務総裁に出てもらいまして、一応この国会承認国会の議決との意味の御答弁を願いたい。又一応国会といたしましても、法制局長を明日呼びましてその点の見解を明らかにしたいと思いますので、明日の労働委員会には、法務総裁並びに法務総裁に代るべき政府における法律関係の一応責任者を御出席願い、その上で菊川君の質問なり、重盛君の質問なり、或いは堀木君からも御質問があるかと思いますが、皆さん如何でしようか。
  38. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 中村委員長の取計らいに賛成でありますが、それは特に今賀来さんの読まれました政府の方針等から考えまして、これは今後地方公共団体に行つたときに、幾つかの公共企業体でそれぞれ解釈された場合には非常に困る。而もこの十條と同じような、そのつもりで立法したというようなことになつたら、これは大問題だと思いますので、是非さようにお取計らい願いたい。むずかしい法律のことは私わからんけれども、我々もどう考えても今の御説明では納得が行かない、承認という字句は。
  39. 中村正雄

    委員長中村正雄君) それでは明日関係者に出てもらいます。それと同時に、今十條が問題になつておりますので、重盛君からの話もありましたが、御承知通り、十條は理事者組合との団体交渉による協定をきめておるわけなのでございますね。従つて理事者組合との団体交渉によつてできました協定を実行することについては、理事者は義務があるわけです。そうなれば、当然第二項によつて協定を実現するために、現在の予算で不可能であれば予算を出さなくてはいかんということは、当然協定の義務に含まれておると思うのです。公労法の場合におきますると、政府国鉄、或いは政府と專売公社というふうに別別な法人があつて、三十五條も十六條も政府を拘束するものではないと、従つて国鉄公社は拘束するけれども政府は拘束するものではないという関係から、ああいう十六條の二項の條文もその点では理解できるわけです。地方公労法の場合にはそうではないわけで、予算を出す人も団体交渉の相手方も同じ理事者であるわけなんです。これは仲裁委員会の仲裁による仲裁案が十條で問題になつているわけではないので、理事者労働組合の団体交渉によつて理事者承知したというのできめた協定を実現するためには、現在の予算では困る、そうなれば、その予算を現在の予算でできなければ予算化する義務は、団体交渉の協定を承諾したといううちに合まれておらなければ、実際の労働運動はスムースに行かない。従つて、十六條の場合は、或る程度政府国鉄政府と專売というふうに別法人であるから、或いは政府を拘束しないということは意味が立つけれども地方公労法の十條のほうでは労働大臣のおつしやることは全然意味をなさないわけであります。従つて、公労法にはああいうことはあつても或いは辻褄は合わんけれども労働大臣答弁も一応理窟は立つけれども、この十條に関する限りは絶対理窟が立たない。両方の団体交渉によつてまつた協定を実現するのは当然で、理事者の義務になつているわけだから、これを二項を設ける意味は全然わからないので、公労法と離れて十條をお設けになつたお考をどちらからでもよいから御答弁願いたいと思います。
  40. 吉武恵市

    国務大臣吉武惠市君) その点は、同じ国家でありましても事業主体であるという立場である国家と、事業主体を離れた国家全体の行政、予算その他を執行し議会との関係立場にあるというものと二つある。これがたまたま事業主体が国である場合は同じものであるというだけでありまして、国鉄の場合と同じであります。でありまするから、同じ国家が二つの立場に置かれておるという意味において、私は公労法におきましても、本法におきましてもその点においては同様であると、かように考えております。
  41. 中村正雄

    委員長中村正雄君) 公労法の場合は、労働大臣言つていることも一応筋が通る。この十條のことは筋が通らない。言換えれば、いつも労働大臣が言われております、地方公共団体の従事員であつて地方公務員であるには変りはない。そうであれば、地方公務員の団体とそれの理事者である、仮に市長としますか、市長とが団体交渉によつて、それではこういう賃金をきめようと、その賃金を実現するためにはどうしても予算をこしらえなくちやいけない、市長が、自分の部下であり又別法人格のいわゆる労働組合を結成している地方公務員と約束をして、これだけの賃金は認めようと言つたら、市長が、自分の権限内である地方議会に対してその地方公務員に対して約束した賃金を上げるための予算を出すのは、これは当然その協定を承諾した義務の中に含まれているので、国とは違うと思う、別人格ではないのだから。同じ市長が地方公務員に対する約束を履行するというために地方議会に対して手続をとるということは、この協定を承諾したという義務の中に当然含まれているのだから、十條に関する限りはこの点は意味をなさないと思うが、その点に対して御答弁を願いたいというのです。
  42. 吉武恵市

    国務大臣吉武惠市君) それは先ほど申したのと同じでありまして、事業主体という立場におきましては会社の社長と同じ立場であります。併しながら、国家国会立場とは別個のものであります。それがたまたま事業主体の会社の社長である立場が国であつたというところに今お話があるのでありまするが、法律的な立場としては二つの立場がある。それがたまたま一つの主体が行うというだけでありまするから、従つて法の立場におきましては、公労法のように公社がやる場合でありましても、或いはみずからがやりましても、やはり国会立場においてはあらかじめ承認を求め、そうしてその国会の最高の意思従つて処置すべきものだと、かように考えます。
  43. 中村正雄

    委員長中村正雄君) それではもう一つ突き進んでお尋ねしますと、事業主体の長としての立場地方団体の長としての立場が違うと、この二つの立場をお使いわけになるわけですが、これは丁度労働大臣が、これは企業体の従事員である、併し地方公務員であるというその立場の使い分けを自分に有利なようにお使いわけをなさつているわけで、そういう使い分けも一応理窟が通るとして、併し事業主体でない場合があるわけなんです。仮にこの地方公労法を見ましても、事業ばかりでなくして事業以外のものもあり得る。又公労法を見ましても事業とは言えない、国鉄とか專売以外に事業でない純然たる公務員も一般の公労法の適用を受けると、こういうふうになつているわけですね。その場合に、事業主体の長とは仮に郵政大臣なり電通大臣は言えないわけなんです。これは純然たる行政大臣であり、而もその団体は事業団体ではなくて純然たる一般公務員、その場合の使い分けはどういうふうになるのですか。
  44. 吉武恵市

    国務大臣吉武惠市君) 私が事業主体と言つた言葉が嚴格でなかつたからそういうお言葉が出るかも知れませんが、正確に言うならば使用主という立場で申上げたらいいかと思います。要するに雇用主的な立場においては会社であつても公社であつても同じ立場であるが、同時にその国及び地方公共団体というものは、いわゆる国会及び地方議会との立場において別の一つの資格を持つている。この二つのものがたまたま一つになつているというだけのことであつて法律上から申しますれば、私は截然たる区別があると、かように存じます。
  45. 中村正雄

    委員長中村正雄君) そうなると、ますます区別がわからなくなると思うのです。使用主たる立場になれば、使用主の立場も市長ならば、議会に行けば地方議会に対する市長も地方公務員の使用主たる立場議会に臨むわけなんで、市長の権限が十あるとすれば、十の権限はそれぞれ別人格を以て対すべきものではなくして、いわゆる十の権限というものが総合されたものが地方団体の長でありまして、市長の例をとりますれば、地方議会に対するいわゆる理事者としての立場も市長なら、地方公務員を雇つておる立場も市長なんです。これらを全部ひつくるめたものが市長でありまして、雇用者の立場の市長と地方議会に対する立場の市長と或いは事務をとる場合の市長の立場とそれぞれ別人格であることはあり得ないわけなんです。これは詭弁と言つちや失礼かも知れませんが余りにも詭弁過ぎると思うのです。事業主体としての長ということになれば、或いはこれは事業主体が一つの法人格を持つた場合は別主体であると言えるかも知れませんが、権限の違うごとにそれぞれ主体性が違うということになれば、十人の市長を置かなければならんという結果になるので余りに詭弁だと思うのです。その点はどうですか。
  46. 吉武恵市

    国務大臣吉武惠市君) その点は私は決して詭弁を申しておるわけではございませんで、例えば或る事業を行う主体が公共団体であるという場合に、その公共団体がその事業を行う場合には、その公共団体許可を得る、或いは国の許可を得るという場合には、同じ者が出願して同じ者が許可するということがあるわけなんです。これはつまり事業主という点で申上げると、今言つたような事業でない場合がありまするから、使用主、雇用する者と雇用される者という立場と、それからそれを超越した国家或いは公共団体立場というものがあるわけなんです。これは決して矛盾ではない。そういうようなものは法律の例によつてたくさんございます。それで協定という点から言えば、これは対等の立場において事業をやろうと、これは民間であろうと、雇用する者と雇用される者との間に起る問題であり、それを離れた超越したところに国家というものはその別の意思決定というものがある。その意思決定に基いて行う政治、行政というものがあるわけなんです。決してたまたま人格が同じものであつたからといつてそれが同じでなければならないとは私は考えないのであります。
  47. 中村正雄

    委員長中村正雄君) だから私の言つておるのは、事業主体のような場合に、別な法人格を持つておる場合はこれは別だと、使用主という立場をとれば労働大臣の言われておる理論が一貫しない。言い換えれば、議会に対する地方理事者地方公務員に対する地方理事者とが別人格だということは言えない、と言いますことは、権限ごとに別人格を持つておるとすれば、仮に議会に対しまする理事者というものが、議会に対する権限だけであつてほかの権限を全然その面においては入れないならば別であるけれども、恐らく議会におきましては、市長の議会に対する権限というものの中には、雇用主としての立場の権限に対しては議会は相当批判もし、追及もし、論議されるだろうと思う。議会に対する市長というものは、これはいわゆる市民の代表の議会に対しては、市長の権限は全部議会に対しましてやはり表明され、論議され、責任をとらされるわけであります。従つて議会に対する市長というものの権限は、雇用主としての市長の権限も、事業主としての市長の権限も、或いは事務監督上の市長の権限も、すべて議会に対する権限の中に包括されておるわけです。議会というものは、單なる予算をきめるとか、條例をきめるとかいうものだけが議会の権限ではなくして、市長の全般に対しまして議会は監督し、論議する立場に立つておるわけですから、地方公務員の監督者としての、雇用主としての市長は当然議会に対する市長の人格の中に含まれておると思うのです。これを使い分けなさるのは諸弁と考える以外に考え方がないじやありませんか、この点はどうですか。
  48. 吉武恵市

    国務大臣吉武惠市君) 私は詭弁と思つておりません。それはたまたま人格が同じであるから出て来るものと私は考えます。
  49. 重盛壽治

    ○重盛壽治君 曾つて吉武さんは東京都におられたことがあるから、事情を十分知つておると思つたから、知つておるという前提に立つてお聞きしたのですけれども、今の御答弁を聞いておると、地方公共企業体実体はつきり申上げるとおつかみになつておらん。そこへ公企労法の焼き直しのようなものをただ当てはめるということは、非常に先ほど言うように労使の間を円滑ならしめるということではなくて、その法律のために紛議をかもすということになれば、何遍も申上げるように、市長や都の知事が団体交渉の中において、今中村委員長の言われたような応じられないようなものは絶対に妥結しないのです。もう一歩進めて若し自分の権限だけで不可能だというような場合には、地方議会の議長とか、副議長とか、党派の幹事長というような者と話合つて、可能なところまで線を下して来て初めて妥結するのが今までの実例であります。あなたのように不可能なことをきめられるということは、罷業権でも許していや応なしに呑み込ませるということならば不可能な問題が起きて来るかも知れんけれども、少くとも話合いの上で、或いは労働委員会にかけたと仮定しても、そういう中から予算上資金上不可能な締結ということは絶対にあり得ないのですから、あり得ないことをあると仮定して法文の中に謳い込んでおくということは、国の実情或いは地方の自治体の実情ということをおつかみにならんということになつて、あとになつて失礼ですけれども随分むちやな法律を作つたものだという笑いを受けると思うのです。そういう意味合いから、ただ單にあなたを責めるというだけではなくて、ここで十分に実情に即した法律を作つて行くように労働委員会としてはすべきじやないかという考え方に立つて、何も労働大臣をいじめるとか、いやがらせを言うというような意味で申上げるのではないので、もう少し虚心坦懐につつ放さんで研究してもらいたい。今日だけで終る問題ではないのだから、私どもはあなたがつつ張つておられる限りは幾らでも実例を持つて来て、実際こういう姿だから、これはあなたがたが、はつきり言うならば、知事にでも、市長にでも、何にでも十分お問合せになつても、知事も市長も恐らくこれでよろしいという返事はなさらんと思う。そういう点で、もう一遍私はお考え直しを願いたいと思う。もう一歩突き進んで言えば、労政局長などは少くともしよつちう地方へ出られるのだから事情は知り過ぎておるので、この点に対する労働大臣への進言というか、これを作るのに対する意見の交換が余計なことだけれども不十分じやないかと思うので、そういう点をもう一遍練り直して、法律にでき上らんうちに一つ考え直しを願いたいと思う。
  50. 吉武恵市

    国務大臣吉武惠市君) この点は今重盛さんのお言葉に私は若干の表現に誤りがあると思いますが、大体そうだということであれば、私は大体そうだと思います。併しながら絶対にそういうことがないというふうなことは、私は言い過ぎじやないかと思う。大体はそれは協定を結ぶ場合には、議会のほうとも話合いをつけてやられるのが例でしよう。併しそれが絶対であるとは私は思つておりません。それから言葉尻をとらえるようでありますが、私どももこの承認を求める場合に、これは国において過去行なつ国鉄、專売でもそうでありますが、大体常識的に国会及び地方議会というものは処理するものであると私は確信しております。従つて今のように大体協定を呑む場合、或いは呑まなくて最低で押しけられた場合であつても、国会、或いは地方であれば地方議会お話合いがある。お話合いがあれば、若しお話合いがついて呑んだ協定でございますれば、もう出せば即座に恐らく地方議会承認するでありましよう。それを地方議会が一応非公式にいいと言つたのに、正式にかかつたら不承認にしたというようなことは私は先ず想像つかない。でありまするから、大体あなたがそういうふうに地方はやつているというお言葉であるなら、大体お出しになりましても地方議会承認されるというふうにお考えになつていいじやないかと、私はさように存じます。
  51. 重盛壽治

    ○重盛壽治君 労働大臣がそういう答弁をして来るのならば、私のほうはこんな法律はでたらめなんですよ。こんな法律はつきり申上げますと、実際にない、大体じやない、全然ないのです。だから私はさつき申上げたように、予算上資金上本可能な協定をした例があるか、今までないというのは、今までないくらいのものはこれからなお更ありつこないじやないか。講和が締結されてそれで労働者が自主的に自分から望んで自分の関係している事業、これは何も都市交通だけでなくて、あらゆる労働階級が自分の関係している事業を通じて日本の再建という方向に向つて行こうというときに、あなたのような疑惑の目を以て見て、法律で押付けて行くという考え方をして行くということは非常な不利になる、非常な紛争の種をまくということは明白なんです。あなたがはつきり言うと、詭弁を弄せられても、飽くまで自分のこしらえられたものであるし、原案であるし、或いは閣議のほうで決定したものだから、つぶしにくいといういろいろな環境はよくわかりますけれども、これを地方議会のほうへ押付けて、それから地方公労法の中にすつかり活かしておこうという考え方であるならば、この法律は誠にむちやくちやです。これはあと幾日、これから三十日の間にこの考え方を納得するだけでも済まんかも知れませんけれども、あらゆる條項へこの問題が織込まれているので、一カ月でも一カ月半でも納得の行くまで議論やります、私は。
  52. 賀来才二郎

    政府委員賀来才二郎君) 先ほど重盛委員から、過去において地方の都電、市電等の例もあつたとり思いますが、予算上不可能なものの協定はなかつたと思う。いずれも予算上可能な範囲において協約は締結されたように思う、その例があればという御質問がありましたが、今日ここで何年の何日の協定がどうであつたかということは申上げる資料を持つておりませんが、明日でも調べまして、実は私どもの記憶では確かに協定ができた、できたときには議長その他と打合せをしまして現行予算では拂えないが更に追加予算をして拂うような話合の上でやつた例はあるかと思いますので、その点につきましては今日調べまして明日お答えを申上げたいと思つております。
  53. 重盛壽治

    ○重盛壽治君 そういう例が、私の聞き覚えというのは一つある。あるけれどもそれはできなかつたことは、労働組合が了承してできなかつたことにしている例であつて、それは例として例にならんのだが、まあお調べになることは結構です。
  54. 中村正雄

    委員長中村正雄君) ちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  55. 中村正雄

    委員長中村正雄君) 速記を始めて下さい。本日はこれにて散会いたします。    午後零時二十九分散会