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1952-06-16 第13回国会 参議院 労働委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年六月十六日(月曜日)    午前十時五十九分開会   —————————————   委員の異動 本日委員高橋龍太郎君辞任につき、そ の補欠として小林政夫君を議長におい て指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     中村 正雄君    理事            安井  謙君            波多野林一君            村尾 重雄君    委員            上原 正吉君            木村 守江君            九鬼紋十郎君            一松 政二君            小林 政夫君            早川 愼一君            菊川 孝夫君            重盛 壽治君            堀木 鎌三君            堀  眞琴君   国務大臣    労 働 大 臣    厚 生 大 臣 吉武 惠市君   政府委員    労働政務次官  溝口 三郎君    労働省労政局長 賀来才二郎君    労働省労働基準    局長      亀井  光君   事務局側    常任委員会専門    員       磯部  巖君    常任委員会専門    員       高戸義太郎君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○労働行政実情に関する調査の件  (技能者養成審議会へ対する諮問に  関する件) ○労働基準法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○労働関係法規改廃問題に関する調査  の件(労働組合に対する全国選挙管  理委員会の通達に関する件)(国際  労働条約批准促進に関する決議案の  件)   —————————————
  2. 中村正雄

    委員長中村正雄君) 只今より会議を開きます。  本日は日程に従いまして労働基準法の一部を改正する法律案議題といたします。  本法律案内容審議に入る前に、労働大臣にお尋ねしたい点が一つあります。それは労働省所管で、技能者養成審議会という委員会があるわけでありますが、昨年の十一月の二十日、これに対しまして労働大臣から労働省発基第九六号を以ちまして「独立国家としてわが国が国際経済に参加するにあたり、生産企業における技能訓練計画を積極的に発展せしめ、技能向上労働能率の増進を図り、以て労働生産性水準を高めなければならないが、これに対処するため技能行政運営について再検討を加える必要があると認められる。如何なる措置を講ずべきか。貴会の意見を問う。」という諮問が発せられております。これに対しまして技能者養成審議会におきましては、直ちに委員会を開きまして、去る五月三十一日、技能行政運営に関する答申というものを審議会会長桐原君から労働大臣答申いたしております。内容は省略いたしますが、この答申に基きまして、労働省としてはどういうふうに今後処置を講ぜられるか。勿論これに関しましては相当予算面の必要もあると思いますが、これに関連しての労働大臣見解を承わりたいと思います。
  3. 吉武恵市

    国務大臣吉武惠市君) 只今委員長からお言葉がございましたように、我が国の独立後における経済自立の上において、労働者各位技能向上に待つべき点が多いと存じまして、お話のごとく審議会諮問をいたしましたところ、去る五月三十一日でございましたか、答申がございまして、いずれも長い間御検討になりました結果でございまして、御尤もだとは思いますが、そのままを直ちに実施するということはむずかしい点もあつたようでございます。併しながら、その趣旨はいずれも結構でございまするので、私どもとしては一時に全部が実施できませんでも、徐々にでもそれを取上げまして実施に移したい、かように存じております。大体の狙いはおわかりでございましようが、終戦後の技能に関しましての労働省立場というものはどちらかというと監督的、いわゆる徒弟を監督するという立場だけ取上げて来たわけでありますが、もう今日になりますれば、もう一歩積極的に、技能向上政府みずからもこれに乗り出して行く必要がある、こういうことが要点であつたようであります。私どもも、もうその時期であろうと思いまして、予算的処置の必要なものもあるとは思いますが、これは今直ちにというわけには行きませんけれども、私としては努力をいたして行くつもりでおります。
  4. 中村正雄

    委員長中村正雄君) 重ねてお尋ねしますが、この答申は大体十三項目に分れておると思うのですが、これについては直ちに実施できるものも相当あると思うわけなんです。抽象的に、できるものからやつて行くということでなくて、具体的に、こういうものについては直ちにやるとか何とかいう具体的な方針が基準局を中心にしておありであれば、見解を表明願いたいと思います。
  5. 亀井光

    政府委員亀井光君) その問題につきまして、先般審議会を開きまして、全体的な問題といたしましては、最終的に単独法を作りたいというのが答申趣旨でございまするが、その段階におきましても、なおできるものから速急にやるべきであるということで、目下審議会でその順序を、どの問題から先ず取上げて行くかという問題を今検討つておる次第でございます。我々としましては、その検討と相並行しまして、行政の面にそれを移して行きたいというふうに考えております。
  6. 中村正雄

    委員長中村正雄君) そうしますと、これは答申が、前の大臣のとき諮問されたわけでありますけれども労働省としても、この答申に従つて実行できるものから直ちに実行したい、調査なり研究をやつておられると、こういうふうに考えていいわけですね。
  7. 亀井光

    政府委員亀井光君) その通りでございます。
  8. 中村正雄

    委員長中村正雄君) それじや一応質問はその程度にしまして、堀君のは午後に廻します。   —————————————
  9. 中村正雄

    委員長中村正雄君) 直ちに、議題になつておりまする労働基準法の一部を改正する法律案議題にいたします。これはこの前日程を組むときにお話しましたように、大体第一読会といたしまして、全般的の質疑のあらましをやりたいと、こういうわけでありますので、基準法を一条ことにやる必要はなくして、全体的な質疑を行いたいと思いますので、この前提案理由説明並びに細目の説明があつたわけでありますが、この前の説明に補足すべき説明の点があれば、基準局長から御説明願つて質疑に入りたいと思いますが、基準局長如何ですか。
  10. 亀井光

    政府委員亀井光君) 大体各条ごとに御説明を申上げた次第でございます。御質問がございますれば、お答えをいたしたいと思います。
  11. 中村正雄

    委員長中村正雄君) では本法案の質疑に入りたいと思います。自由党のほろから御質疑ありませんか。安井さんありませんか。
  12. 安井謙

    安井謙君 別にありません。
  13. 中村正雄

    委員長中村正雄君) 緑風会のほうはどうです。
  14. 早川愼一

    早川愼一君 基準法についてはよろしいです。
  15. 中村正雄

    委員長中村正雄君) 社会党の第四控室はまだ見えていないので、第二控室村尾君ありませんか。
  16. 村尾重雄

    村尾重雄君 五十四条の新たに加えられた「但し、仮設建設物又は設備命令で定める危險又は衛生上有害でないものについては、この限りでない。」という仮設建物の一応具体的な内容についてちよつと伺いたい。
  17. 亀井光

    政府委員亀井光君) この仮設物範囲につきましては、目下労働基準審議会安全衛生部会におきまして、検討を加えられておりまするが、今の段階におきましては、この仮設物範囲をどういうふうに限定するかという問題につきましては、やはりその使用する期間で制限するのがいいのじやなかろうか、例えば三カ月で撤去する、或いは六カ月で撤去するというふうな期間で制限するのがいいのじやないかというふうに今検討が進められております。それから業務の種類につきましては、危険有害な業務につきましては、基準法施行規則で列挙いたしておりますので、その範囲から必要なものをピックアップしまして、そういう危険有害でないものだけを指定したいという検討をいたしておるところでございます。
  18. 村尾重雄

    村尾重雄君 例えば一カ月なら一カ月の事業に使用する場合がありますね。それから一カ月なら一カ月仮設建物取締法等によつて一応撤去するという建前になつておりまする各地方における届出の、例えば興行物であるとか、かなり見ておりますと、非常に危険な、而も大勢の人が従事しているように思う、ああいう臨時的な建物について、それから又工場設備について一カ月という短期間ものはやはり届出を要しないということになるのですか。
  19. 亀井光

    政府委員亀井光君) その期間で一応制限いたしますると共に、本条はその建物を使用しまする業務、その内容によりまして制限をいたしまして、そういう危険のないものだけを指定して行くというつもりでございます。たとえ短期間に撤収廃止されます建物でございましても、原動機の馬力数二以上を使いまするような業務とか、それからいろいろ安全衛生規則に列挙してございます業務を除きました危険有害でないものだけに限定しよう、例えば仮の倉庫、これはまあ永久建設物建物を建てるために仮に建てまする倉庫でございます。こういうものも三カ月乃至六カ月で撤去されるものにつきましては、一応ここに言う仮設建設物でございますが、その倉庫の中に爆発物その他のものを貯蔵する場合におきましては、これは当然届出が要るというふうな規定の仕方をいたすつもりでございます。
  20. 村尾重雄

    村尾重雄君 次に女子の深夜業並びに時間延長の問題の項に関してですね、特に女子でなければならないという業務について、一応どの範囲内に今まで問題が取上げられておるかをちよつと……。
  21. 亀井光

    政府委員亀井光君) 六十二条の深夜業でございまするが、この深夜業におきましては、女子でなければならない業務につきましては、これを例外的に認めて行こうというのが今回の改正でございまするが、これも目下基準審議会におきまして、その範囲検討しているのであります。現段階におきましては、いわゆるエアガール、それから女子寄宿舎の女の監視と申しまするか、寮母と申しまするか、こういうふうなものが今検討対象になつておるところでございます。
  22. 村尾重雄

    村尾重雄君 そのほかに多い女子の深夜業について、例えば請願とか、陳情とかいうことについて相当範囲をこの点まで拡めてもらいたいという点はないのですか。それを伺いたいと思います。
  23. 亀井光

    政府委員亀井光君) 現行法におきましては、電話の交換手、それから看護婦、それから旅館、料理店のサービス・ガール、こういうのは一応例外的に認められておりますが、そのほかにつきまして、民間その他から陳情がございまするのは、今申上げました女子寄宿舎寮母、それからエアガールというふうなものがその陳情の主なものであります。
  24. 村尾重雄

    村尾重雄君 次に、一番問題になつております坑内年少者技能養成名目とする問題について、これ又大まかにお尋ねしたいのですが、技能養成範囲ですね、例えば一般坑内労働とはつきり区別されたものであるかどうかというふうな点、例えば先山であるとか、坑内労働を、技能養成目的として、一般坑内労務者と同じ仕事技能養成という名目で、それは養成をするとか、或いは全然離れた、例えば坑内の気流だとか、電気設備だとか、建設であるとか、それから断層の研究であるとか、こうした特殊な技能養成本当目的とのたものであるか、それとも一般坑内労働のその養成工を作る目的であるかどうかという点で、これは一体どういうことになるのか。
  25. 亀井光

    政府委員亀井光君) これは坑内夫自体技能養成して行こうという趣旨でございます。その中には今お話電気関係もございましよう、或いはポンプの関係もございましよう、いろいろございます。この範囲につきましても、技能養成審議会で今検討をいたす予定にしております。
  26. 村尾重雄

    村尾重雄君 そうすると、現在坑内就労している労務者仕事をやはり斟酌するもんだという解釈を持つていいわけですね、技能養成工という名によつて、現在坑内労務に従事している労働者仕事を習得するという目的で入る以上は、そうとつていいのですね。
  27. 吉武恵市

    国務大臣吉武惠市君) これはこの前にも御説明申しましたように、抗内労働でございまするから、できるだけ年少者を使いたくないのは申上げるまでもないことでありますが、今の現状によりますと、十八歳になつて初めて坑内の今申しました特殊技能は勿論のこと、一般の掘り方にしましても習うということで、実情に非常にそぐわない点がある、そこで十六歳から十八歳の間、今お話なつたように、一般技能についてもやるかというお尋ねでありますが、技能養成の点については一般坑内夫仕事も教えるし、又特殊技能も教えますが、ただ心配するのは一般坑内夫仕事を教えると称して、そうして同じ仕事をさせるのかという恐らくお尋ねじやないかと思うのですが、私どもはそういうつもりはございません。往々にして養成工だという名前を附けてそうして実際一般坑夫と、入つて同じような仕事をするということでは、それは名目技能養成に借りて年少者仕事をさせるということでありまして、これは私どもの最も注意をして監督しなければならないことであります。ただその点を恐れるからと言つて現状のように十八歳になるまでは内に一切に入れない、十八歳までは外で仕事を手伝うだけだ、勿論外でいろいろな、教室で話を聞くとか、何とかいうのはありますけれども、実際を見ないで、ただ書物の上がけで見ていたのでは本当の役に立たない、そこで真に技能養成のためならば、十六歳から十八歳の者についても厳重な条件を附けて入れようというのが趣旨であります。
  28. 村尾重雄

    村尾重雄君 私の申上げているのと少し違つているのです。私は現在の比内労務仕事年少者によつて侵害される憂えがあるのじやないかということは聞いていないのです。これはその危険があることは議論の余地はありません。技能養成というのは、やはり特殊な一般労務違つた点で僕はこの技能養成というものが許されるべきかどうかということの条件として、そういう目的でなければならんと思う。例えば一般坑内で石炭を掘出すために働いている労務夫と離れた、例えば今後の技術面における仕事、例えば鉱山における技師長乃至技師の連中の仕事のその養成であるのかどうか。ところが今のお話を伺つていますと、やはり技能養成ということで一般労務者仕事を習得するのだということのようにとれるのですが、その点改めてお伺いしたい。
  29. 吉武恵市

    国務大臣吉武惠市君) これは私どもどの仕事だけというふうに限定はしておりませんけれどもお話のように技能養成するということだけでは、ただ中で持ち運びをするようなぐらいの単純な労務技能養成ということは、そうたくさんの時間を要するわけじやない。勢い御質問の御趣旨のような特殊的な技能ということに技能養成の主点が向けられると思うのです。併しそれは電気設備に対するだけの技能であるのか、一番先山のところだけの技能だと限定することもできないことではございませんけれども、やつぱり教える以上は一般的なものも入ると思いまするので、そこで私は限定しないのですが、一般労務の単純なものは特に教えるために入れなければならんということは私はないと思います。ですから限定はしませんけれども、おのずから、技能養成でありまするから、勢い特殊的な技能を要するところへ連れて行つて教えるということになると思います。
  30. 村尾重雄

    村尾重雄君 これは少し重大だと思います。私も今までの考え方と食い違うと思うのです。私は技能養成というのはやはり坑内においても特殊なものの養成だと、こうとつております。というのは、非常に坑内技能養成というものは、一般労務と区別できないとおつしやるが、坑内は非常に技術的な面の必要なところなので、その特殊な技術者養成学校教育が、実地問題の教育として坑内で、例えば国で申しますと、これは急な問題、非常に重要なのです。それとか、例えば電気設備だとか、爆発関係とか、こういうような点で限られたそうした特殊なものの養成だと、こうとつているのです。ところが今のお話を伺つていますと、一部に非常に杞憂されている各労組の、現在の十八歳以上の労務者を、これは技能養成の名においてやはり年少労働者をば坑内に入れるというやはり今後の杞憂ですね、自分たち仕事を侵されるという杞憂は確かに見られると思う。その点で例えば十八歳以下のものを坑内に常時、就労の傾向になることは、やはり体力問題から言つても、それから鉱山全体の今後の労働問題から言つても、これは非常に重要であつて、我々としては殆んど考え直さなければならない、こう思うのです。この点で技能者養成ということについて、何か審議会では一つの議を経るということに広く何かの機関を設けるとか、何か基準審議会でこれは一つ条件でもあつたのですか、その点一つ伺いたい。
  31. 亀井光

    政府委員亀井光君) 技能養成につきまして、その内容を如何に定めるかということは基準法技能養成審議会に諮りまして、その議を経てきめるという基準法上の要請がございます。当然技能養成審議会の議を経てそういうものはさまつて参るわけでございます。
  32. 村尾重雄

    村尾重雄君 その審議会の議を経てということですが、例えば一つの枠をその審議会命令を出すのか、それともそのたびたびに届出制ではないのでしよう、そのために常時これはやはり審査する機関を持つていなければならないことになるのですが、常時そういうものを審査する、まあ監督官がありますが、技能養成に関しての機関というものは考えられているのですか。
  33. 亀井光

    政府委員亀井光君) 技能養成審議会におきましては、坑内においてどういう職種を選ぶかということが先ず第一点、それから坑内において技能養成するにつきましてはどういう条件を附けるか、例えば坑湿、坑温度合、何度以上はいけないとか、或いは珪肺の虞れのある場所についてはこれを制限するとか、或いはその労働の時間、こういういろいろの条件をすべて技能養成審議会において決定願うわけでありまして、そういう条件において可能なものを認可制度で今度は認可をして参るわけであります。この認可制度行政官庁の処分でありますから、認可申請がありました場合は、その坑内状況その他が技能養成審議会できめた条件に合致するかどうか、或いは養成既定計画そのものが本審議会できめた計画に合致するかどうかというふうなものを見まして、認可するかしないかをきめて参るわけでありまして、従つて技能養成審議会で先ず縛り、更に認可制度縛つて最も危険のないものだけを認可して行くという段階でございます。
  34. 村尾重雄

    村尾重雄君 衆議院でよく引かれた例ですが、外国の例、例えばILOはこうだというお話がありますが、事実十八才未満の年少者坑内技能養成を名にしてか、又坑内労働を認めて入れておるということはどうかというお話ですが、ただ伺えば英国以外は禁止していると伺つておるのですが。
  35. 吉武恵市

    国務大臣吉武惠市君) 外国の例でございますが、国際労働条約では、私どもが今きめようとしているやり方をとつておるわけであります。なお今年の総会にもそれについての事項が審議されることになつていると私は聞いておりますが、それによりますと、十六才から十八才までの間は一定の条件の下に技術養成することはよろしいということになつております。それで実際の各国の例から言いますと、イギリスは十五才以上から入れております。この十五才以上から入れておりますのは別に技能養成とは限定しておりません。限定しておりませんが、併しまあそれはいろいろの実際に入つて作業等については監督は厳重にされていると私は思うのですが、イギリスは十五才以上を入れておる。それから十六才以上入れておりまするのが、濠洲、それからチエツコスロヴアキアは十五才からであります。それからカナダは十七才から入れております。それからフランスは十八才からでありますが、併したしか技能養成でありましたか、特殊技能については十六才から入れておつたと思います。それからインドも十七才以上でございます。最も例外の場合は十五才からでも例外許可をするという条項を入れておるのでございます。それからイタリアは十六から入れております。ニュージーランドも十六から入れております。大体各国の例はそういうふうで、従つて各国の大体の水準というものをきめている国際労働条約でも技能養成は十六からはよろしい。併しそのときにはこうこうこういうふうな条件でなければいけない、こういうことを言つております。私どもが今回提案いたしましたのは、大体国際労働条約基準をとつておるようなわけであります。で、先ほどからの御質問の中で、一点私気が付いた点をお答えいたしますが、私は技能養成であるから、技能養成はどの技能だけだという限定をすべきでないという意味から、坑内一般作業についても技能養成対象になるとは言いましたが、ただ技能養成名目の下に十六才以上のものが入つて、そうして一般労働者と同じような仕事をやらせるということは、これはもう厳重に私は取締らなければならん。若しそういうことならば、これは折角私どもがこうやつて労働基準を設けたやつが、そういう名目で崩れるということは私は非常に遺憾に存じますので、この法律を通過させて頂きましても、先ほど局長が申しました、どういう技能からやらして行くかということ、或いはそのときの条件はどういう条件でやつて行くかということにつきましては、十分関心を持つて私は行きたい。若しそれを誤まるところがあつて脱法的なことをすれば、これは直ちに取消すということでございませんければ、私はこれは許すことはできない、かように存じております。
  36. 村尾重雄

    村尾重雄君 その点について国際水準伝々の問題はこれは非常に重要だと思つております。そこでもとよりそれを考慮のうちに入れられた成案だと思うのですが、ちよつと今仰せになつた諸外国の例というのと、私の知る範囲と少し食い違つていると思います。これはゆつくりいろいろと調査し、又お聞きしたいのですが、ただ問題は年少者技能養成理由として坑内就労をさせるということのお考えがあつたときに、例えば坑外におけるそれらの年少者に対する、まあ広く言えば社会保障的な、或いは工場年少者に対する保護的な設備の問題ですね、単に業種によつて、それから坑内衛生状態等によつて審議会で相当考えるということでなくして、それらの坑内年少者就労又は技能養成によつて坑内へ下らすというときに、それらに対しての保護設備について、やはり一つ条件をお考えになつておるかどうかという点について伺いたい。
  37. 亀井光

    政府委員亀井光君) この問題につきましては、我々も非常に慎重に検討を加えたのでございまして、日本で例えば労働医学心理学研究機関であります労働医学必理学研究所に依頼いたしまして、年少者坑内におけるいろいろな条件調査をして頂きましたその結果を見ましても、過去技能養成をやりました労働者と、その教育を受けなかつた労働者との生産の上における力或いは災害の上におけるその被害の度合等を見ましても、いずれも技能養成を経たものは生産一般労働者より高く、災害も又非常に少いという事柄がデータとして出ておるのです。これらのことは一般坑外労働者と違いまして、その炭層の状況或いは空気の状況或いはガスの状況等につきまする認識を十分に技能養成過程において教え込むわけてす。その結果、それらの同じ点から来る災害技能養成を経たものについては減つておりまするし、又生産の面も同様な理由から殖えておるのであります。更にこの問題を掘り下げまして、然らばどういう条件でこれらの年少労働者坑内において働き得るかということの衛生学的或いは心理学的調査も出ておるわけでございまして、例えば少し詳しくなりまするが、申上げますと、遊離珪酸粉塵を多量に含みまする作業場にはこれを就けさせない、それから坑内の温度、湿度が摂氏三十五度以上の場所でない、それから主作業のエネルギーの代謝率が七以上に亙るような大きな筋力を必要とする作業はいけない、或いは作業上の脈博数が一分間に十七才百五十、十六才が百四十以上に亙るような作業ではない。或いは坑内作業上の発汗量が十七才六リットル、十六才は五リツトル以上を超えない、いろいろそういう心理学的或いは衛生学的な条件を附加えれば、何ら十八才未満の年少者の身体に、発育或いはその他の点において障害がないという結論が出ておるわけであります。これに基きましてもう一度技能者養成審議会におきまして、深くこの問題を検討しまして、この条件を作つて行きたいというふうに考えております。
  38. 村尾重雄

    村尾重雄君 一応基準審議会でこの問題が相当審議されたときに、大体三者の結論として三者の意見が一致して答申されたという結論が出ておるわけであります。この三者というのは例えば小椿君にこの間偶然に福岡に行くときに飛行機で一緒になつていろいろ話を伺つたのですが、そのときの話を伺うと、自分は炭鉱労組の事務局長として出ておるが、実はあの問題には個人として賛成した形になつておる。炭鉱労組並びに日鉱の組織も挙げてこの問題については反対しておる。だから結論の答申案が三者共に一致したというのは、審議会委員として一致した、つまり小椿個人の意見であつて、広く炭鉱並びに日鉱としてはこれに対しては真向から反対しておると、こういう意見があつたのであります。そこで日鉱から、今日の山で最大の労組とされておるところからのこの反対意見に対しての考え方はどうお考えになりますか、相当考慮されておるのかどうか。
  39. 吉武恵市

    国務大臣吉武惠市君) 炭鉱関係ではこの坑内技能者養成について反対されて、しばしば陳情を受けております。この三者構成で小椿君が賛成いたしましたのは、或いは個人の資格で述べられたかどうか知りませんが、小椿君も自分自身一個の判断で御賛成なさつてはいなかつたのでありまして、炭労のどの程度の機関であつたか存じませんが、恐らく御相談になつて賛成をされたと私は存じております。それから先般の公聽会でも私ちよつと覗いて見たとき、原さんでしたか、原さんも十六歳から十八歳までの技能者養成それ自身は反対しないが、併し入れる条件については相当考えなければならんぞというふうな御趣旨であつたと思うのであります。というのは、要するに国際労働条約で大体きめている水準なものですから、それ自体に反対ということでなしに、そういう名目のためにその十六歳からの若いのが一般労働に入つて、実際の作業をするということになるのは非常に危いことだからという御心配の点だと私は思います。でありますから、本当技能養成のためだけでありまするならば、私はそう組合も強くこれを反対されるということはないのじやないか、問題はつまりそのその名目のために脱法の行われることを非常に警戒されて、そういう危険のあるものは削除さしたほうがよくないかという御趣旨じやないかと私は考えます。
  40. 村尾重雄

    村尾重雄君 同じことを言つておるのですが、労働省においても統計においても非常に議を練られたように、例えば中及び小炭鉱においてやはり少年の就労の危険があることはお考えになつておると思います。ただそこで問題になるのは、例えば子供親たちとか、炭鉱においてその炭鉱自体を対象とするよりか、職場のない附近において、やはり小学校を出た年少者就労ということは或いは一応親としては賛成することで、そこに非常に私は危険がある。それから現在の例えば炭鉱労務者にもそこに大きな一つの将来に対する杞憂というものをやはり一般的な立場においては持たなければならんし、又持つのが当然だと思います。その点で技能者養成を外れた就労というものに対しては相当強い決意を以てやはり防いで頂かなければ、この基準法の精神というものはやはり乱れる思うのですが、その点は如何お考えになつておりますか。
  41. 亀井光

    政府委員亀井光君) これは先ほど申上げましたように、認可制をとつておる関係におきまして、十分そういう個々の具体的な鉱山につきましての技能養成を認めるかどうかということは、この認可によりまして十分チエツクできるのではないか、従いまして先ほど申上げましたように、技能者養成審議会できめました条件に合致するかどうかということについて、認可の際には十分検討しまして、その危険性のないものだけを認可して行くという処置をとつて参りたいと思います。
  42. 中村正雄

    委員長中村正雄君) 村尾君に申上げますが、一応あとでも質問の機会があるので、一応次の人に譲つて頂けませんか。
  43. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 私も今の村尾君の御質問に関連する問題についてお聞きしたのですが、労働基準法改正に関する答申案の内容を見ますと、「会社の恣意的に行う先山養成を認めるものでないこと、法文化にあたり法第六十四条の女子年少者坑内労働禁止の原則を変更するような表現をとらぬこと、作業職種ごとに作業時間の限定をすること、珪肺の起りやすい作業場の就業禁止をすること、高温又は多湿の作業場における作業を制限すること、発破等の場合の防護措置を規則において明定すること、違反に対する監督を充分に行うことなどが重ねて要望され、使用者側委員も公益側委員もこれを了承し可決された。」、こう書いてあるわけですね。そうすると、それを今度は法文を見てみますと、要するに単純な技能者養成の場合に、使用者側は行政官庁届出をすればいいと、七十一条でこういうふうなことになつて行政官庁認可の場合は、「命令で定める危険又は衛生上有害な業務に使用しようとする場合」、こういうふうになつておるわけです。それであなたのほうの御説明は、要するに技能者養成審議会の議を経てやるのだ、いろいろ職種の選定だとか、時間の制限だとか、期限だとか、いろいろ口では言われるのですが、その点については実はそれがどういうふうに議論したかということが、この法律を我々が審議するのについて一番重要な条件なんですね。それにつきましては、ただ口先の御答弁ではこれは我々わからない。これは大臣なんというものはその場その場で法案を通そうと思つてどもにいいようなことをおつしやるのが通例であります。それから今度の実例を見たつて、緊急調整で肝賢なところは抜いておいて、これは大体公益側委員だとおつしやるような答弁をなさつておられる。そういうふうな情勢で、甚だ失礼だが、そういう点をはつきりここで技能者養成審議会に何もかも任すというよりも、本当を言えば、こういうものができるときに、技能者養成審議会でそういう内容がきまつた上で、裏付でお出しになるのが私は本当だと、こう思うのですが、そういうものはないのでしようか、あるとすれば具体的に御提示願いたい、こういうふうに私は思うのですが、その点について御説明を願いたい。
  44. 吉武恵市

    国務大臣吉武惠市君) 条件をできるだけ法文に明示することは、これは結構だと思うのでありますが、併し先ほど局長も申しましたように、個々の山について見る場合が相当ありまするので、そういう点は私やはり基準審議会が三者構成でありまするから、そういう具体的な細かい問題はそのほうに譲つて頂くほうが却つてよくはないだろうか、法文に掲げられば掲げられんことはございませんけれども、それは勢い抽象的なものでございますので、具体的な細部の条件等は審議会にかけまして運用をしたいということであります。
  45. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 私はどうもその点で、やはり本来これをお出しになるときに、技能者養成審議会では、これは実際的に裏付はこういうものだという標準があつてお出しになるはずなんで、そういうものはあるのでしようか、ないのでしようか、それは政府委員で結構であります。
  46. 亀井光

    政府委員亀井光君) この法案を出しますまでに、先ほど御説明申上げましたように、労働医学心理学研究所に調査を依頼いたしまして、一応可能であるという見通しが付きましたので、御提案をいたした次第でございまして、これに並行いたしまして、基準審議会の専門部会を作りまして、その専門部会において労働医学心理学研究所で調査の結果出ておりますものを、もう一度掘下げて検討いたしまして、実際にそれがマッチするかどうかという問題を検討したいという段取りで今おるわけであります。
  47. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 労働心理学研究所の結論というものはですね、今の御説明では、今言つたようなこの基準審議会でこういう条件について考えるというふうなことが中心になつておるように、今あなたの御説明では考えられないので、比較的包括的に絶対できるんだ、こういうような考え方なんですね、そうすると、私ども疑うのは、たまたまそういう労働心理学研究所で出たから、案外まあそう大したことなしに条件考えておると、答弁内容から見ると、そういうふうに受取れるのですが、それでともかくもこういう問題は審議の経過からいたしましても、労働者の意向から見ましても、大体こういうものなんだ、これを離れないのだという具体的な、率直に言えば政令できめるなり、或いは行政官庁届出を受けたときに、大体こういうふうでいいのだという基準的なものをお示しになるのが本当じやないでしようか、我々の審議に対して……。
  48. 亀井光

    政府委員亀井光君) ちよつとその点申上げますが、この条文の六頁でございますが、七十一条で従来の認可制度届出制度に改めますと共に、但書で「命令で定める危険又は衛生上有害な業務に使用しようとずる場合においては、行政官庁認可を受けなければならない。」ということで、この危険又は衛生上有害な業務につきましては、当然坑内労働も否定されるわけであります。これは引続き現行通り認可制度になる、従いまして個々の具体的な山において技能養成をすることが適当であるかどうかということには、この際において我々としてしぼつて行きたい、この前提となりまするいろいろな条件につきましては、先ほど申上げましたように基準審議会の線を、技能養成審議会の専門部分によりまして、もう少し検討して頂きた。
  49. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 七十条の「別段の定をすることができる。」というやつを、そう無精されないでお出しなさい、それからもう一つこれは労働大臣にお聞きするのですが、率直に言うと、監督するには労働基準監督局ですか、労働基準監督局というのは、今までの労働大臣ならともかくとして、吉武さんよく御承知のことと思うのですが、今の労働基準監督局がどれだけ実際あの定員で、予算でやつて行かれるか、国務大臣になられてから余り現場においでにならんと思います。労働次官時分より縮小されておる、実際の実情から、あなたが労働次官時分には初めてだから、なかなかむずかしかつた思うのですが、こういうふうな、私が心配してそういうものを出して下さいということも、今の労働基準監督局の行政能力というものは、率直に言つて予算的に言つても、人数から言つても、素質から言つても、実際のところ十分な行政ができておると思わない。一例を挙げたつて中小企業だとか、年少者とか、婦人のほうの労働関係に対してのあれなんか非常に少いのですね。今の実際の機構内容を見てもよほど中央ではつきりした基準がきまつていないと、実際行政運用に当つては野放しになり勝だと、こういうことを考えておるのです。常に法律で大ざつぱにきめたつて実際の行政運用に当つては野放しになる、それが非常に心配だ、こういうことを考えたので別段の定めをする表現をお出し願いたい。それから労働大臣としては、労働基準局に対してどういうふうなお考えで、殊に今度の労働基準法の改正ではサービス機関など、わざわざ法律でお打ちになるのですか、お打ちになるなら行政上の裏付けがなければならん、法律のサービス機関なんという文句だけ書いたつて実際の、ここに何とか労働基準監督局長がおられるのですが、本省の人は何と言うか知らないが、実際のところ実情を御覧になつて法律で何とでも書けるが、中味は同じだというなら、私はサービス機関になりつこない、こう考えるのです。その点どうですか、御意見を承わりたい。
  50. 吉武恵市

    国務大臣吉武惠市君) 御質問の点は私御尤もだと思います。従いましてこの認可するにしても、大体どういう条件でなければ認可しないということは、先ほど申しましたように、ただ我我役所だけで考えるだけでなしに、審議会で相当論議して頂いて、そうしてその基準に基いてやつて行く、従つてそれは極く末端にまで徹底させる必要かあると思います。さてその場合に現在の監督機構で以て十分取締ができるだろうかという御懸念でありますが、これはまあどの程度やるかということで、数が多ければ多いほうが手が廻つていいのでありますけれども、私も戦前に実は監督もやつて、実際地方でやつた経験もございますが戦前に比較しますと、今日の基準監督機構というものは格段な進歩をしております。ただ工場や事業場が多いから、それを一人当りにすると、一律に何ぼにして何年かかるということをよく言われますけれども、私が実際やりました経験から見ましても、工場一つ一つ時間、日にちをきめて見廻わるというような形式的な監督ということでなしに、大体わかります。どの辺の工場は違反が多いとか、どこにはどういうことがあるということは投書も参りますし、又中からも苦情が出て参りますから、そういう点を狙つて行きますれば、大体監督はして行けるのじやないかと、かように存じております。それと戦前と違つてもつとその点が行き届くのはやはり労働組合というものができて、労働組合がそういう点についての非常な役割をしてくれる、従つて戦前に比べますと、私はそう御心配頂かんでやれるのではないかという感じを持つております。
  51. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 私は労働大臣労働組合の効用をそういう点にお認めになることは非常に御尤もと思うのですが、と同時に、小さな中小炭鉱やその他では労働組合がどの程度の実力を持つておるか、又そういうものが本当に正式な労働組合を作つておるかという点から見ると非常に疑問だ、それから吉武さんが労働監督をおやりになつた時分はもつと呑気なときで、本当にこの労働者の幸福、福祉を増進しようという点から見ると、もう日本の社会はまるで変つておるのだと私は思うのだけれども、特にそういう点を考えますので、是非まあ審議の途中にいたしましても、実際どの程度までこの裏付けになる基準なるものができておるかということはお示しにならなければならない。それから委員長に特に申上げたいのですが、この点に関して国際労働条約との関係の資料及び各国の実例、今吉武さんの御説明もありましたが、はつきりした資料を一つ御提出願いた  い。御要求願えませんでしようか。
  52. 中村正雄

    委員長中村正雄君) 只今堀木君から要求されました資料につきましては、次回まで労働省で作成の上配付願  いたいと思います。
  53. 村尾重雄

    村尾重雄君 もう一つ、先ほどの私の質問で結論を付けておきたいと思うのですが、一つ工場でいい工員を養成するために昔の徒弟養成、それが養成工としての制度として少し大きな工場には残つておるようです。その性格と、それから真の技術者を作るための坑内労働とか、今の養成工、いい工員を作るための坑内年少者就労等のどちらを……はつきりどちらかということをお伺いしたいのですが、両方の意味をこめた坑内就労を認めるかということなんですが、どつちかはつきりしてもらわなければならないと思う。
  54. 亀井光

    政府委員亀井光君) 現在の技能者養成規定によります技能養成対象は中堅の幹部たる技能者を養成して行くというのが狙いでございます。最高の技能までは、実はこの技能者養成規定では期待をいたしていないのであります。中堅となりまする技能者の養成というものを対象としております。従いまして教習の年限にいたしましても、三年程度でございまして、三年間程度で大体中級幹部としての技能者を養成するという狙いでございます。炭鉱におきましても、恐らくそういう程度の中心としましての技能者養成になつております。
  55. 村尾重雄

    村尾重雄君 そうすると、坑内労働者の場合労働者養成だということですね。
  56. 亀井光

    政府委員亀井光君) そのように思つております。
  57. 中村正雄

    委員長中村正雄君) それでは一応堀木君も午後に廻つて頂いて、午前中の会議はこの程度で休憩いたしまして、午後一時から再開いたします。    午前十一時五十二分休憩    —————・—————     午後一時三十八分開会
  58. 中村正雄

    委員長中村正雄君) では只今より再開いたします。
  59. 村尾重雄

    村尾重雄君 これを機会に労働大臣の重ねてのお考え方を承わりたいと思うことが一点あるのであります。それはこの問題を外れますが、前回の労働委員会で、私は破防法反対、それから労働関係法の改悪反対運動の労働組合に対して、全国選挙管理委員会が政治資金規正法に基いての届出をすべきであるという解釈を持ち、その通達を五月四日だと思つておりますが、通達いたしたことに関してであります。大阪府においては大阪府選挙管理委員会が直ちに労働組合に通知をするというように、届出するように通告をいたしました。又福岡におきましても、その態度を以てすでに通告を出したので、労働組合側との間に紛糾を来たしておる模様であります勿論全国においてもあるのではないかと思いますが、選管の労組の運動に対する届出の態度に対して、労働大臣も行過ぎの感を持つという御答弁等があつたように思うのであります。その後労働大臣はこの問題についてそれぞれ関係当局と御折衝があつたと思いまするが、現在どうお考えになつておりますか、それをこの際お伺いしたい。
  60. 吉武恵市

    国務大臣吉武惠市君) この前にたしかお尋ねがありまして、私の自分としての意見を申上げましたが、御承知のように、労働組合労働組合主義を本旨とはするけれども、それにいろいろな政治問題について関心を持たれることも無理からんことであろう。従つてその程度のものであるならば、それが直ちに政治活動として規制を受けなければならんというのは行過ぎではなかろうかという見解を持つておるのであります。併し法律的に言いますと、労働組合が片一方に組合運動をやると同時に、片一方に政治活動をやれば、その政治活動をやる部分については、いわゆるこの選挙管理委員会と言いますか、政治資金規正法と言いますか、その方面の規制を受けることも止むを得んのじやないかと私は思います。従つて選挙管理委員会からいろいろな意見が出ているのは、その政治活動の部分について取立てていると思うのであります。ですから、その点は。法律的に言いまするというと、私もそれは法律の誤まりであると……法律の解釈の誤まりであるとまでは言いがたい点がある。従つて私はそうまだ選挙管理委員会に抗議を申込むという程度には至つていないわけであります。ただ問題は私はこの労働組合の今後のあり方でありますが、かねがね申上げまするように、労働組合はやはり労働組合運動が主体でありまするから、どこまでもそこに本旨を置いて、そうしてまあいろいろな政治にも意見を持つということはあることですから、その程度ならいいのですが、これが一々の法律或いは一々の政策に深入りをして参りますると、私が如何に行過ぎであると申しましても、なかなか弁護もしにくくなる感じがいたしますが、実は兼合いの問題だと私は思います。その後まだはつきり聞いておりませんが、若し労働組合のほうといたしましても、余り政治に深入りなさらないというならば、強いて政治活動の規制を受けないで済むのじやないか、こう考えております。
  61. 村尾重雄

    村尾重雄君 私はこの問題で議論をいたそうとは思つておりません。併しこれが現実には非常に重要な問題に今日なつておる。特に地方においてこの問題は非常に紛糾を来たしておる。そこで議論の余地はない、労働組合関係団体においても、例えばいろいろ文化団体とか、一つの団体が政治行動まで行う場合においては、やはり届出をしなければならんということになれば非常な問題が拡大して来るのであります。特に労働組合にとつては、現実その問題に当面、逢着しておる、ですからこれは何とか解決をこの際我々委員会として明白にしておかなければならん、こう思うのであります。そこでこの解釈は労働大臣の解釈であつてはならんので、これは結局法務関係の解釈だと思うのでありますが、一つ委員長、この問題を何とかお計らい願つて、当委員会でこの法の解釈の最後的な責任者の御出席を願つて御意見を伺うか、又他の委員会でこの問題を解決してもらうか、この問題は早急に解決してもらはなければならん問題だと思います。委員長のお計らいを要請します。
  62. 中村正雄

    委員長中村正雄君) これは労働大臣にお尋ねします。今盛んに問題になつておるわけです。労働組合の政治活動という根本的な問題もありますが、これは現在労働関係法規といたしましても、破防法等にいたしましても、いわゆる各それぞれのこれを目的とする政治団体でない、以外の団体が相当国民運動化するような運動をやつておるわけです。そのうちひとり労働組合だけとつて全選挙管理委員会届出を主張するということは今日問題になつていると思うのであります。例えば労働組合がこの問題の改悪の反対闘争をやつておると同じように、日経連が一つの経営者の団体はこれの促進運動をやつておる、労働組合に対しては届出を要するということを通達して経営者の団体に対してはしておらない、或いは又料理屋の組合が地方税の軽減については相当な経費を使つて何年となくやつている、今までこれに対してやつてない、経営者のこういう団体に対しては言わないで、労働組合にだけ言つているのはおかしいと思う。これは労働大臣ということでなく、政府としてこういうものに対して是非とも全管の言つているように届出が必要であれば、労働組合だけでなくして、やはり政治活動をやつているところの経営者の団体にも、その他の団体にも公平にやられるのならば、労働組合も、やはり法規の建前上止むを得ないということが言えるかも知れませんが、労働組合にだけ反対闘争については届出をする、経営者の団体のやることには要らないということは納得できないと思う。これに対して政府はどういう措置をお講じになるか、これは労働組合としては相当問題になつておると思いますが、今直ちに御答弁はむずかしいと思いますが、一応政府でも十分御検討を願つて、選管に対してどういう態度をとられるか、次回の委員会にでも御報告を願いたいと思います。
  63. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 只今お話ですと、政府の態度をきめて選管委員会に申出をしてもらいたいという要請だけのように思います。私は例えば労働組合の破防法の反対運動、労働法規の改悪反対に対して、労働組合がすでに二回半のストライキをやつている、あとの半分もここ数日中に行われるという情勢になつておる、労働組合は飽くまでも反対闘争を全国的に盛り上げよう、こう考えておるわけです。政治ストかどうかということが根本問題になつておる。そこで政治ストという問題について、その定義なり、或いは限界なり、範囲なり、そういう問題をやはり労働委員会としては一応審議する必要があるのじやないかと思うのです。労働大臣だけじやこの問題は解決できないと思いますから、次の機会に法務総裁にも出て頂いて、そうしてこの問題について審議する機会を私は持ちたいと思う、そのことを提案しておきます。
  64. 木村守江

    ○木村守江君 只今村尾さんや委員長、堀さんからいろいろ御意見が出ましたが、私は労働運動の限界というようなことは非常にむずかしい問題で、又労働者が、労働組合が現在やつておるいわゆる政治スト的な行動と、日経連のやつておるもの、それらからそのほかの団体等がやつている政治的行為と見なすようなものは、これは常識的に大体においてこれはもう世間が判定しておるのじやないかと思うのです。ただ労働組合の今やつているような、誰が見ても政治的な行動と見なされておるものと、日経連のやつておるようなものと一緒にしたり、その他の文化団体がやつておるような行動とを一緒にする、そうしてそれに対して断を下せということは、これは非常にむずかしい問題だと思う。それは勿論むずかしいから再考して、適当な場合に政府の答弁を願うというようならいいでしようがね。この問題について確固たる判断を下すことは、要求するほうも無理だし、又実際問題としてできない問題じやないかと思いますのでね、その点私の意見を申上げます。
  65. 村尾重雄

    村尾重雄君 私の申上げておるのは、現在の現実の問題として、全選管がとつておる政治資金規正法に、今の労働組合が破防法反対なり、労組法改悪反対の運動を届出を要するかどうかという法の限界を早くきめてもらいたいということなんです。それが明確になつたらいい、今の政治ストとか、経済ストとか、そういうことを言つておるのじやない、現実に全選管の態度を明白に確定して、強行される御意見があるかどうか。
  66. 中村正雄

    委員長中村正雄君) 今の村尾さんの提案なさつたのと、堀君のとは内容が違つておるわけです。村尾君のは今言つたように全国選挙管理委員会届出を要するということを労働組合だけに言つておる。これは果して現在の法規の建前上届出を要するものかどうかということをはつきりと政府の態度をきめて、そうして選挙管理委員会が出しておる通達がいいものか悪いものかはつきりきめてもらいたい。その事例として、今言つたように政治ストとは関係ない破防法反対という国民運動がこの規制の対象になるかどうかということになるとすれば、日経連がやつておる反対的な闘争も関係しようし、或いは遊興飲食税撤廃の運動の料理屋たちの団体も、これも明らかに政治運動であるのに間違いない。地方税改正の政治運動をやつておる、又文化団体がやつておる破防法反対も同じだし、一労働組合だけに届出を要するといつて、経営者の団体なり、そういう政府の施策を支持するような団体に対する政治行動については、届出を言わないのはおかしいじやないかということを言つておるので、これは政治ストの解釈如何でなくて、この点については政府としてもはつきり態度をきめて、選挙管理委員会のやり方が行き過ぎであれば、これは是正をして行くのが当然だ。これは一応政府に次回の委員会までに態度をきめて頂きたい。別に堀君のはそれに関連しておるが、今度やつておるところの労闘のいわゆるストというものが、政治ストかどうかということが問題になつておるので、政府は一応労働省でああいう命令を出しておりますから、それに絡んで果してやつておるものが政治ストか、経済ストか、或いは労働法の保護を受けるものかどうかということについては、一応労働委員会としては態度をきめなくちやいかんから、関係閣僚の出席を願いたい、こういうわけであつて関連はいたしておりますが、趣旨は全然別の提案になつておるわけです。従つて村尾君のことについては、さつき委員長が発言いたしましたように、次回までに政府は態度をきめて何らかの答弁を願いたい。堀君のことにつきましては、次回に一応法務総裁が必要であれば来てもらつて、一応質問するということで取計らいたいと思います。村尾君それでいいですね。   —————————————
  67. 中村正雄

    委員長中村正雄君) では議題に入ります。労働基準法の一部を改正する法律案質疑を続行いたします。堀君に最初発言を許します。
  68. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 午前中すでに村尾君や堀木君によつて質問されておるのでありますが、第一に、十八歳未満の者を坑内作業就労せしめる、技能者養成という名目で行わしめるという点で、一つ重ねてお尋ねいたしたいのであります。もともとこの少年労働坑内作業禁止となつておるところの規定の根拠というものは、要するに先ほどお話のありました、例えば坑内労働は少年にとつて非常に肉体上に苦痛を与える、或いは又珪肺その他の危険もあるというようなことから来ておると思うのです。ところがこういうような根拠に基いて少年の坑内作業禁止を法律で以て定めているのに、単に能率を向上させるとか、或いは災害の現象がこれによつて防げるのだ、或いは生産も高まるのだというだけのことを考え就労制限を撤廃するということは、結局少年労働の禁止規定というものを非常に緩和する結果になる。このことは延いて賃金の問題或いは失業の問題にも関係して来るのじやないか。それから又女子の場合も同様だと思うのです。女子就労制限をおいている根拠もやはり同じような理由から出ておると思うのですが、これを就労制限を緩和するということによりまして、やはりそれに名を借りまして、曾つてのような収奪、労力の収奪ということが行われないということはないのではないか。而も少年や女子に対するこのような就労制限というものが、結局において低賃金を日本に招来し、更に又失業問題というようなことにも発展して行く可能性があると思う。殊に繊維業の場合などの女子労働者の過重な労働や、或いは低賃金というものは、すでに問題になつて、而も操短その他の理由によつて首切が出ておるという事態に当面いたしまして、この女子労働乃至は少年労働に対する制限緩和ということは、結局労働条件の悪化をもたらす原因である、こう思うのですが、その点に関する労働大臣の御説明を承わりたい。
  69. 吉武恵市

    国務大臣吉武惠市君) 私ども今回提案いたしましたのは、先般も申上げましたごとく、全く技能養成のためであります。若しこれが技能養成名目のために、中で実際の労働をやらせる。年少者を使つて労働に使うのだ。ただ労働に使うのだといつたのじや許してくれんから技能養成という名目で入れる、こういうことになれば即ち脱法的になりまして、お話のような賃金の切下げであるとか、或いは労働酷使という状態になるでありましよう。併し我我はそういうことは毛頭考えておりません。そういうことであれば、我々はこれを提案するつもりはない。我々はどこまでも原則として実際坑内で働く労働者としては十八歳以上であるべきである。ただ十六歳から十八歳までの間は厳格に規定されておりまして、技能のために入つて見ることもできない、習うこともできない。それは如何にも不自然であり、現在国際的にも認められていることじやないか。国際的にも認められていることが日本だけ認められないということは少し実情に副わんのじやないかということで、技能養成として入れることを提案したわけであります。従つてそれが濫に流れないための条件或いは許可、監督等につきましては、勿論これは注意しなければならんと私は思つておりますが、趣旨がそういう点でございまするので、只今堀さんのおつしやつたような事態には私はならないと、かように存じております。
  70. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 国際的にも認められたところであるから濫用も防ぐ、又法規を以て十分これを取締る、その法律の作成者の意図は私にもわからんわけじやない。併しながらどんな法律でも、その作成者の意図に反してその法律が濫用されるということは、これまでしばしば行われているところであります。そこへ持つて来まして、国際的な云々というお話でありますが、例えばイギリスは十五歳以上については坑内作業を認めているとか、オーストラリアは十六歳、フランスは十八歳、いろいろな例を挙げられたが、ところでイギリスとか、オーストラリアとか、或いはフランスとか、カナダとかというような国々の例えば石炭業について見まするならば、その労働環境又労働条件も日本とは違つて非常にいいのです。設備も整つている。従つてそういうようなところで技能者を養成するということなら、年少労働者坑内作業を認めるということも、これは一応肯くことができると思う。併しながら日本のように労働条件或いは労働環境も非常に悪いところで、年少労働者をよしんば技能者養成という名目で認められたにしても、そのことによつてつて劣悪な労働条件が出て来る。それから肉体上或いは災害上の危険も相当我々としては予想される。従つてこれに対して我々としてはどうも納得ができないので、インドの場合も挙げられておりますが、インドというのは御承知のように世界でもインドは低賃金という言葉で表現されまして、低賃金の最も代表的な例になつているわけです。そのインドが十四歳以上について坑内作業を認めているのだから、日本もそれでいいのだということには私はならないと思う。国際的な条約でもそういう方向に向つているから、日本でもこれを認めて差支えないのだという前の前提として、労働条件なり、労働環境なりについて十分な措置がとられでなければ、これは認めることができないのじやないか、こう思うのですが、この点に関して労働大臣はどのようにお考えになつておりますか。
  71. 吉武恵市

    国務大臣吉武惠市君) とかく法律は作られてもその当初の趣旨のように行かないのだ、だから反対だ、こういう御説明でありますが、私どももその点は十分気を付けなければならん点ではありますが、若しそれほどお疑いになるならば、あらゆる法律というものは意義がなくなつて来るのでありまして、現在あります我々の最低年齢の問題にしても深夜業勤務の問題だつて一応法律があり、而もそれが守られて完全に行かない場合もあるでありましよう、その点をお疑いになつて、それだからこれは反対だということをおつしやいますと、私は承服できないのであります。それから各国労働事情の問題でございますが、それはいい国には恐らく作業状況もいいでありましよう。私は外国坑内まで入つて見ませんから、ここで比較して申上げることはできませんけれども、併し我々が今回これを許可する場合には、そういう点は十分気を付けまして、坑内の非常に条件の悪いものも技能養成だから許すのだとは考えておりません。その点は十分勘案いたしまして、これなら差支えない、危険もない、安全だ、健康についても心配がないという点において許すつもりでございますから、その点を一つ御了承頂きたいと思います。
  72. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 私はその法律の作成者の意図いうものは、しばしば実際の面においてそれが歪められて来るということを申上げたのでありす。法律を全然なくなしてしまえということを私は言つておるのじやないのです。社会生活をやつておる以上は、社会秩序を維持するために法律が必要であることは申上げるまでもないことであります。ただその法律によりましては、特にそれが取締的な規定を設けた法律の場合においては、往々にしてその立法者の意図に反してその法律が運用されるということがこれまでの法規の実情なんであります。私はそれらのことを考えまして、この技能養成という名前で濫用を防ぐとか、それに対する十分の措置を講ずるというようなお話では十分な納得ができない、こういう意味なんです。私はやはり国際的な関係から申しましても、これを認めるとするならば、それを前提として例えば労働環境なり、労働条件なり、或いは作業状況などについての十分な措置が先ず以て講じられなければ到底技能養成という名前を以てしても、年少労働者坑内作業を認めることは行き過ぎではないかという工合に考えるのですが、その点についてもう一度お伺いいたしたいと思います。
  73. 吉武恵市

    国務大臣吉武惠市君) 私どもはこの規定を御通過を願つたならば、如何なる条件の山であつても許可願を出しさえすれば許可をするという趣旨ではございません。先ほど来申上げましたように、条件のかなつておるものについて考慮するということでありますから、条件がかなつて、そういう状況ができ上つてから法律を作つたらと、こういう仰せでありまするが、全国の山の条件が全部揃うまでといつたらなかなかこれは容易なことじやない。我々は全国の山に一律にこういう制度を認める腹も毛頭ないのであります。大体我々が見、或いは又審議会等で考えて、この程度どこそこの山のあたりの条件ならばよかろうというところからやるつもりでございまして、私はこの法案についての実施につきましては皆様も御心配でありますが、私ども労働行政に携わるものといたしましても、責任のあることですから、十分私は厳重な条件の下でなければ許すつもりはございません。
  74. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 十分な条件の山にだけ認めるというお話ですが、実際にこの規定ができますと、その条件の揃わん山のほうで技能養成という名前でこれを濫用しようとする傾向が多くなりはせんかということが心配されるのです。労働大臣の言われるように、これを認める上に十分な条件を備えた山ということになりますというと、そうたくさんは私はないのじやないかと思うのです。そうなりますると、この規定を設けても大した意義はなくなるのじやないか。大抵の山は条件の揃わん山であります。従つてそういう山では実際には技能者養成という名目でも、こういうふうな年少坑内作業ができない。そうなりますと、実質的な効果というものが非常に少くなりはせんかということも心配されるわけであります。そういう意味で私は非常に親切なつもりでお尋ねしておるわけですが、どうですか、実情は、その辺労働大臣基準局長でもいいですが、お聞かせ願いたいと思います。
  75. 亀井光

    政府委員亀井光君) 今技能養成審議会検討いたしておりまするその条件に合致するものがどの程度日本の鉱山或いは炭鉱にありまするか、まだ詳細な調査はいたしておりませんが、たとえその条件に合致しない炭鉱或いは鉱山でございましても、技能養成をやりたいという熱意がございますれば、それに合致するように環境その他変えて参りましようし、労働条件もそれによつて向上さして行くという努力は使用者において当然起つて来るのじやないか、こういう気はいたしております。
  76. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 それから女子のほうの労働なんですが、一週六時間のやつを二週十二時間にする、趣旨としては増減はないわけですから、規定の上では大した変化をもたらさんように思われるのです。併しながら実際問題として、二週間に十二時間の時間外労働を認められるということになると、特定の時期にそれが非常に集積されて過重労働がそこから出て来はしないかということが心配されるのです。それとそれから、こういう女子の就業禁止が緩和されることによつて、少年労働と一緒にやはり日本の労働条件をそれだけ引下げる結果になりはせんか、こういうことが心配されるのです。その点に関しまして、例えば繊維女工の場合がしばしば問題になつておりまするが、非常に低賃金で過重労働を強いられておるわけですが、ああいう例を見ましても、そういう心配が実は非常に大きな労働問題となつて浮び上つて来るのじやないかという工合に考えられるのです。その点につきまして、政府当局はどのようにお考えになつておりますか、お聞かせ願いたいと思ひます。
  77. 亀井光

    政府委員亀井光君) これは改正案にございまするように、極く制限されました場合、即ち決算、棚卸し等の場合にのみ認めることになりまして、現行法で申上げますると、一日二時間の制限がございます。一週間について六時間という制限でございます。従いまして一週間の間で一日二時間ずつ時間を延長しましても三日しかできないという結果になるわけであります。ところが決算棚卸しというような年に一回又は二回という繁忙期におきましては、三日間毎日二時間程度の居残りでは十分その処置ができないといううらみが過去にあつたわけでありまして、それかといつて常時そういうことをする職員をおきますことは、経営の面から見ましても合理的でないし、又臨時にそういう場合に職員を採用いたしましても、不馴れのために能率が上らないというので、今回の改正によりますると、二週間について十二時間でございますから、二週間の間六日間連続して二時間ずつの延長が認められるという趣旨でございます。そうなりますると、大体決算事務を六日程度で、各会社の決算事務の状況を実は調査して、六日から八日程度で大体平均的に事務の処理ができておるようでございます。そういうところも睨み合せまして、この程度であれば女子の健康その他福祉にも影響がないだろう、而も決算の事務についても十分目的を達成し得るのではないかというので審議会の公使労三者とも賛成いたした次第でございます。又第二点の御質問の、これによつて労働条件の低下、特に繊維の女子労働者等の問題に関連するのじやないかというふうなお話でございますが、これは今申上げますように、決算事務その他棚卸し等に関係します事務の女子、繊維工業に従事いたしまする女子には適用がございません。それが直ちに労働条件の引下げになるかどうかという問題につきましては、我々としまして、そういう結果を来たしませんように十分監督をいたしたい、かように考えております。
  78. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 私はその繊維工業の女工さんにこれが適用されるということを申上げたのじやないのです。繊維工業の女工さんの低賃金や過重労働が今問題になつておる、今あなたのおつしやつたような商業部門において、一日二時間、二週十二時間に制限を緩和するのだ、そのことは大して影響はないというお話でありますが、私は商業部門にしろ、とにかく女子就労制限の緩和を行う、或いは深夜業についての緩和が行われるということは、女子労働者の就業を、使用者側から見て女子労働者を使いよくするという結果になると思うのです。そうしますと、そのために一般男子労働者が相当の影響を受けるであろう。従つて又そのために労働条件も悪化しやしないかということを心配するわけです。現に失業者は今年になつてから殖えておるわけです。昨年に比べますと四十万、五十万と最近は殖えて来ておるわけです。そういうことの上にも大きな影響を与えるだろう。勿論問題は、時間外労働の場合は商業部門が中心でありましよう。或いは深夜業の場合には特殊の職種が対象になつておるでありましようけれども、併し特殊な職種や或いは商業部門だけの問題ではなくして、これが一般産業界に大きな影響を与えはしないかということを心配しておるわけです。そのことによつて労働条件の悪化が起つて来るだろう。失業者の問題も更に深刻になりはせんかということを私は問題にしておるので、この点について労働大臣はどのようにお考えになりますか。
  79. 吉武恵市

    国務大臣吉武惠市君) 堀さんの御心配になつておる点は考えなければならん点だとは思います。併しながら局長が話しましたように、今回提案いたしましたのは極く限られた特殊のものでありまして、これについては恐らく私は世間常識上お考えになりましてもそう無理はないのじやないか、盆暮のように一時忙しいときも日頃と同じような時間制限でやるというところに無理がある。その無理はそれではどういうことによつて現われて来るかというと、仕方がないから違反でもやつて押し切ろうかといつて違反が出て来るのであります。でありまするから、その点はやはり原則というものは私はどこまでも崩すわけに行かない、けれどもそういう実際の日本の社会の実情に副いがたい点は、原則を崩さない範囲においてアダプトして行くということが私は法律を守るゆえんでもあるし、又いいんではないか、かように思うわけであります。女子が使いやすくなるから男子に影響するという点は、これは全然ないとは言えんでありましよう。それは女子について非常な制限をしますというと、面倒くさい、もう、女子を使うのは面倒くさいから男子にしようという傾向はございます。併しそれを余りいたしますというと、今度女子の職業戦線というものを奪つて来るということになります。男子だけが働けば食えるという事情ならば結構でありますけれども、やはり女子も戦線に立たなければならない今日の実情でありますから、私はどこまでも本質というものを崩さないで、そうしてそうでない個々の問題はできるだけ実情に合わして行くということが労働法の上においても必要じやないか、ただ画一的に形式的に保護するという線だけ維持すればいいというふうにはこれは無理じやないか、かように存じまして、今回提案いたしましたこの基準法の改正は、もつと意見はたくさんあります。私が今ここで申したような感覚でものを見ればまだたくさんあるのでありますけれども、併し原則はどこまでも維持したいというところから、今回提案したのはよくよくの場合で、先ほど来示しましたように盆暮の帳面を整理したり、棚卸しするということは誰でも世間通例である、そのときには女子は時間に制限があるから使えない、今まで一年間使つていたのが役に立たない、そうして面倒くさいということになれば男子を使おうかということになりまするから、その点が余り潔癖に細かくお考えになりまするというと、却つて工合が悪いのじやないかと存じます。
  80. 中村正雄

    委員長中村正雄君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  81. 中村正雄

    委員長中村正雄君) 速記を始めて。
  82. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 駐留軍の宿舎或いはホテル、クラブ等に直接雇用の形で雇われておりますところの労務者労働条件について御質問いたしたいと思います先ず第一に御伺いいたしたいことは、講和ができまして、日本の労働法規は向うの軍隊に雇用される者であろうとひとしくこれは施行される、日本の労働慣習も尊重されるということが本来の建前であつたと思いますが、その点に関しまして労働省当局の御意見を承わりたいと思います。
  83. 吉武恵市

    国務大臣吉武惠市君) これは一度本委員会でも申上げましたのでありまするが、駐留軍に雇われまする労務も、原則としては使用主であれば使用主が責任を持つべきものであります。従つて直接使用関係に立つを本筋といたすのでありますが、併し実際の実情は駐留軍に雇われておる者が直接雇用の形式になりますと、言葉の通じないという点もありますし、或いは習慣の違うという点でいろいろ問題が起るだろうし、組合のほうも間接雇用がいいということであれば、労働法の上からいろいろと多少の遺憾な点もありまするけれども現実に重きを置いて間接雇用にしようということで、原則として駐留軍直接に雇つております労務については間接雇用、その間接雇用の面においてはいわゆる特調が責任を持つ、こういうことであります。今お尋ねになつたのはその間接雇用に入らない、例えばホテルや宿舎に使われる人であるとか、或いは駐留軍の家庭に使われる家事使用人であるとか、そういうものは間接雇用の関係に立たないで直接雇用になつておると思います。その場合の労働条件でありますが、これは労働条件及び労働法の関係においては日本の国内法の適用がある。間接雇用についても同じであります。そこで今お尋ねの具体的な問題をお聞きしないとわかりませんけれども、直接雇用になつた場合も、私は現在日本の労働三法、国内法はそのまま適用があるはずでありまするし、若しそれに違反した事項があれば労働省の責任において善処をいたします。従つて具体的にどの点がどう間違つておるかをお聞きしてお答えいたしたいと思います。
  84. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 例えば第一ホテルの場合であります。ここには特調関係労務者と、それからダイレクト・ハイアーの労務者と二通りが同じ職場に働いておるわけであります。特調関係労務者のほうは一般労働慣習に従いまして、例えば家族手当であるとか、或いは退職手当とかいうようなものも出ておるのでありまするが、ダイレクト・ハイアーのほうの労務者にはそれが出ておらんのであります。早晩夏期手当の問題も上つて来るわけでありますが、特調関係のほうは一般公務員並みに半カ月分の夏期手当がもらえる。ところが直傭のほうはそうは行かないというような問題も起つて参りますし、それから又昨年の六月からダイレクト・ハイアーの中に切替られた人の中には、それ以前までは、例えば一万三千六百円の給料を取つてつたのが、ダイレクト・ハイアーに切替えられたためにこれが一万円になつた。尤もその後直接交渉によりまして三千六百円は保障することになつたそうであります。ところがそれは本俸に三千六百円が組入れられるのでなく、向うが単なる恩恵的に支給すると、こういう形になつて現われておるのであります。こういう労働事情というものは、そこに働いておる労務者にとつては非常に大きな影響を与えるので、今労働大臣の御説明によりまするというと労働三法はそこでも適用されるのだというお話でありまするが、そうなりまするというと、この直傭の労務者と、特調関係労務者との間の差をどうするかという問題が出て来ると思うのです。それからもう一つ、私の手許に参つております報告によりますと、横浜の四百クラブという、これは下士官の集会のためのクラブだそうであります。従業員が五十八名おるそうでありまするが、この二十日の日にこのクラブを閉鎖するということになりまして、解雇の予告がそのために来たんだそうであります。解雇の予告が来ますと、組合においてはこれを団体交渉を開始した。団体交渉の相手方となつたのは、このクラブの運営委員とでも申しますか、代表によつて組織されている委員だそうでありますが、そこの顧問をやつているメジャーが主として団体交渉の責任をとつたそうであります。ところがその団体交渉の責任をとつたメジャーの話によりますというと、何ら法的拘束がないから、お前たちの要求を入れるわけにはいかん。又アメリカの慣習にも何らそういうものはないというので突つばねる。労働組合側のほうにおきましては、地労委のほうにこれが斡旋を申請した。ところが軍のほうにおきましては、その斡旋をも拒否すると、こういう態度をとつておるのだそうであります。そうしますと、労働組合側としてはどこへこの話を持つてつていいのか、交渉の相手方が殆んど全くわからんと、こういうような状態です。直傭にならん以前の場合には特調なり、或いは労働省なりにそれぞれ交渉をいたしておつたようでありますけれども、ところが今日においてはその交渉の相手方が明確でないということと、それから交渉をよしんばいたしましても、その交渉が必ずしも向う側によつて容れられない、或いは地労委が何らかの斡旋案を出してもそれを向う側では蹴飛ばすというようなことが行われる、こういう実情にあるのであります。なお横浜四百クラブという所では、労働組合側が地労委のほうに斡旋方を申請したというために、二十日に閉鎖する予定のところをこの土曜日に閉鎖してしまつたというような事情もありまして、日本の労働三法は勿論でありますが、日本の労働慣習についても殆んど全くこれに目を覆うているという現状だと、こういうようなことを私報告を受けているのであります。これにつきまして只今労働大臣の御説明によりまするというと、労働法規の三法は飽くまでも適用されるという建前に立つておられるものでありまするから、これに対する保障を至急講じて頂きたいと、こういうふうに考えます。
  85. 吉武恵市

    国務大臣吉武惠市君) お話の点は、私は無理からん点だと思いますが、若干を補足して申上げておく必要があると思いますのは、そのように賃金を幾らにするか、それから家族手当を幾ら出すかというような問題につきましては、これは使用者側と、それから雇われる者との間の話合いできまる問題であります。でありますから、労働三法はそこまでは入つていない。若し今のような直接雇用と間接雇用とに分かれましたために待遇の違いが出て来て、問題が起るであろうということは、これは無理からんことであります。できれば私は一緒のほうがいいと思います。いいと思いますが、併し直接雇用になつた者について、間接雇用と同じ条件でなければいかんぞというようなことは言えません。御承知のように民間の工場全部、これは労働大臣が責任を持つておるのでありますが、民間工場といえども賃金にはいろいろの差があります。家族手当にはいろいろな種類があります。ある所もない所もありますから、その問題を一々私どもがそれはけしからんぞと言つてどうも言うわけには行かない。併し組合側から見れば、確かに異議を申立てられるのも無理からんと考えますから、その直接交渉で話が付かないということになれば、斡旋とか調停とかいう問題も出て来るでしよう。私どもは直接にはそれに対して干渉するわけには行きませんが、お話合いがあれば、斡旋の労をとるべきであると存じております。
  86. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 それに関連してもう一言附加えさせて頂きたいと思います。実はその交渉の相手方が極めて不明確なのであります。何しろ向うは軍人さんであります。占領軍であるという建前は上に立つて今でも臨んでおるのであつて、従つて労使双方が対等の立場において交渉することができるかといいますと、相手方がきまりましてもなかなかそれができない。現に横浜では地労委で以て斡旋案を出しているが、それを蹴飛ばしておる、こういう状況なのであります。ましてや誰が相手方かわからんという場合が相当あるわけであります。それからもう一つ問題なのは、現在同じ例えば第一ホテルの中で直傭とそうでないのとが同じような仕事をやつておる。そういう場合、これはどうしても労働関係の上から言つても、非常に不当なものではないかと、望ましいものではないと考えるのであります。この二点に関して労働大臣はどのように考えますか。
  87. 吉武恵市

    国務大臣吉武惠市君) この間接雇用にするのと直接雇用にするのとはどこで一体区別するのかという点については、これはいろいろ検討を要する点でありますが、一応軍が直接使用する者は原則として間接雇用にして、間接雇用については、特調が間に入つて、日本政府が責任を負うということにいたしておるのでありますが、そうかといつて、それじや駐留軍関係の、例えば今お話になりましたクラブというようなものは、私は恐らく駐留軍直接の責任ではなくて、駐留軍はクラブを作つてそうしてクラブへ出入りしておる。そこに使われておる者であると私は思います。ですから駐留軍の直接の責任でない。従つて雇用関係は日本政府が間へ入つて責任を負うという態度をとらなくて、向うさんが直接責任をとつて欲しいということになつて、直接雇用になつたと私は思う。それは家事使用人についても同様であります。私は本来から言えば、この占領行政というものがなくなつて来れば駐留軍が直接に使う者であろうと間接に家庭的に使う者であろうと、日本政府が間に立つて責任を負うという形式をとることは、私はこれは筋から見ればいい筋ではない。だから私は当初はすべて駐留軍が責任をとるような方法で行つて欲しいと言つたのですけれども、組合側のほうはそれは現実の問題として困る場合が多いということであるから、それは私は現実を主眼にすべきであるということで、間接雇用というものも認めることについてはいわゆる行政協定にも入つたわけなんですが、従つて軍が直接に雇用しない問題につきましては、これはどうも一律に間接雇用と同じようにやるというにとは私はむずかしいのじやないか、まあ向うがやつてくれりや結構でありますが、むずかしいのじやないか。従つてそこにいろんなバラエテイが出て来る。問題は、条件が悪ければ人が来ないから人を得るに困る。従つて条件をよくしなけりやならんというようなことによつて解決されて行くのじやないかと思います。併し争いがあつた場合に私どもは知らんということはありません。争いがあれば進んで私どもは中に入りまして収めることは、丁度英濠軍が呉において行われておりました問題につきましても我々は斡旋に乗出しておるわけでありますから……。それからその責任者が誰であるかということは、これはその場所々々によつてきまる問題で、責任者が誰かわからんはずはないので、それじや一体君は誰に雇われているか……、誰に雇われているかわからんはずはないわけでありますから、必ず雇用契約の相手方というものがある。そうすればその相手方が責任を負うべきである。ですから軍直接に使われる労務は、これは先ほど申しましたように特調というものが間に入りますから特調が相手方になる。明瞭でございます。そうでないものはその場所々々における雇用契約を誰としているかということを……、この雇用契約している相手方といわゆる団体交渉を持たれるのが当然じやないかと私はさように思うわけです。
  88. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 もう一点、実は第一ホテルの場合などは昨年六月から切替えられ、その前はPD関係労務者であつたわけです。切替えられたがために労働賃金も下げられたし、労働条件も非常に悪くなつた、こういう事態になつているのです。よく話を聞いて見ますと、たしか切替えられた部分は、例えば第一ホテルの事業の中でも比較的収益関係のあるものの部面というようなことのようですが、併しそれも必ずしも正確ではないわけです。その昨年の六月切替えられた場合の切替えの基準、そういうようなものについては労働省のほうでは御存じないのでしようか。ちよつと労働基準局長からでもお話を願えれば……。
  89. 亀井光

    政府委員亀井光君) 明確な基準は実は我々も十分承知はいたしておりませんが、大体の基準としましては、今ちよつとお話がございましたようにサービスでチップ等を得まして生活できるもの、従つて家事使用人も入ります。それからホテル、クラブのサービスをいたしまする職員、そういうふうなものが主体でございまして、直接軍が使いまするものは、先ほど大臣からお話のございましたように間接雇用で、大体そういうふうに考えております。
  90. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 それじや最後に要望しておきますが、労働大臣の先ほどの御説明もありまして、この方面も労働三法は適用され、問題の起つた場合には十分斡旋の労もとられるというお話でありますから、現に第一ホテルや横浜の四百クラブに問題が起つておるのです。是非ともこれは大臣のほうにおいて斡旋の労をおとり下さるよう私はお願いしまして、この問題を打切りたいと思うのです。
  91. 中村正雄

    委員長中村正雄君) 堀君に言いますが、あとまだ菊川君の御質問もありますので、本案に関するのはその程度で打切つてもらいたいのです。菊川君に発言を許します。
  92. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 私、この労働基準法の一部改正の法律案をお出しになるに当つての、先ず第一番の労働大臣労働基準法と今後労働大臣が如何に現行の労働基準法と取組んで行こうかという基本的な態度を先ずお伺いしたいと思うのであります。と申しますのは、一方におきましては資本家側或いは自由党の委員諸君の中からもこの間の一般質問の中でも言われましたように、盛んに、中小企業で現在の労働基準法をそのまま適用することに無理があるが、この点についてどう考えるかというような御質問もございました。又経営者側の中でも特に日経連等においても、この労働基準法はアメリカから無理やりに押付けられたものである、だからして独立した以上は日本の実情に合うように根本的に改正せねばいかんというような主張もあります。国内におけるこういうような主張もある。又一方国外におきましては、日本が独立したからして再び過去のいわゆる低賃金政策で以て、いわゆるソシアル・ダンピングと言いますか、これで東洋各地へ荒しに来るんじやないかというのが、すでにもうイギリスあたりではこの猜疑心が極めて濃厚なものがあるということを我々はこれは否定できないと思うのです。こういう二つの荒れがある中におきまして、今後吉武労働大臣が、果してこの労働基準法は、法律の第一条にもございますように、これはもう最低だ、だからして決して、この労働基準法があるからといつて、何も労働条件を切下げるというようなことはやつもやいかん、むしろこれを向上させるように行くのだというのがこの法の第一の目的だと思います。これは最低限をきめてあるのだから、できる限りにおいてこれはこれ以上向上して行くのがいいんだ、それに努力して行くというのがこの法律の第一の目的だと思いますが、こういう三つの間におきまして、労働大臣が今後少くともこれを最低線としてしまつて今後上げて行こうとする考えであるか。更に切替えようとする動きに対して或る程度の同調を示そうとするのであるか。海外等の猜疑心に対してもどう対処されるか。この点について基本的にどういう取組み方をして行くかということを一つはつきりとお答えして頂きたいと思います。
  93. 吉武恵市

    国務大臣吉武惠市君) 御尤もな御質問でありますが、日本の今日の労働基準法は、これは私立案をいたしましたのでよく了承しておりますが、率直に言つて日本の国情から見るならば、やや高い水準だと思います。というのはどういうわけかと申しますと、この立案の基礎はどこを以て立案したかというと、先ず従来の国際条約に規定された原則を一応拾つたのであります、立案の際に……。従いまして今まで各種の条約がございましたが、日本の国情に副わないからということで批准をしなかつた問題がたくさんございましたが、終戦後においてやはり労働条件というものは或る程度国際水準に持つて行かなきやならないという高い理想を以ちまして立案をいたしましたために、相当条約の原則というものを取入れ、だから率直に言うならば、私は高いという批判があるのは止むを得ないと思つております。従つて今日まで施行いたしましたこの基準法に対する批判としては二つの意見がございます。一つ水準が高過ぎるという意見と、もう一つは余りにも手続が煩瑣であるというこの二つが今日まで基準法について言われた私は批判ではなかろうかと思つておる。併し私はこの場合にこの国際的な水準が日本の今日の国情に比べてやや高くても、それは一つ国際的な水準であるから、若し万難を排してそれが維持できるならば私はその原則は維持したいというのが私の信念であります。で、その点は中小企業としましては多少気の毒な点があるかも知れません。あるかも知れませんが、この労働者保護における基本的な原則、例えば最低年齢であるとか、或いは深夜業の禁止であるとか、そういうふうな労働法上最も人道的、或いは健康的から見て守らなければならんという国際的な基本については、多少の無理があつても、私はこれを守り抜いて行くということが是非必要ではないかという感じを持つております。ただ併しもう一つの批判であるところの手続の煩瑣という点につきましては、これは私はできるだけこれを簡素化し、又国情に即して行くということが必要ではないか、又原則は変えないけれども、個々の適用について実情に副わぬ点は実情に副わしめるということぐらいは私は必要ではないか、ただ国際的にきめた、国際的な事情の上に作られたこの条約をそのまま鵜呑みにして、日本の基準法にして、これは一歩も変えられないんだというふうに窮屈にすることは却つて法を守らなくなることでありますから、私は国際的な基本の原則というものはどこまでも守つて行くと、併し手続や個々の適用について国情に副うような改正はこれは止むを得んし、又やることにおいて却つて法を維持するゆえんじやないか、こういう観点から今回の改正にも着手をいたしまして、この基準審議会のほうへも私のほうからは案を示さなかつたのであります。これは法制審議会と同じでありまして、労使双方から意見が出れば結局日本の国情に副うた妥当な結論が出るだろうということで案を示さなかつたのですができ上つたものを見ますると、全く私が言つたような労働者保護上の基本的な原則というものはいじつていない。その実際の適用において日本の国情に副わない点の幾分かの改正或いは手続の簡素化というものを狙つておる。でありますから私は今後のこの労働基準法についての考え方というものはそのつもりで行きたいと思つております。  それからイギリスやその他の国で日本に対して非常な危惧の念を持つておられるような点は私どもも拝聽いたしております。で、これは私率直に言いまして、日本の労働組合が、まだ政府がどういう案をどう持つて行くかということを言わないうちから、即ち昨年の暮頃からどうも政府は非常な改悪をするんだろうというふうな宣伝をし、或いは又国際的にも働きかけられたんじやないかというような節も見えるのでありますが、そういうのが手伝つて、我々がまだ案を考えない先から、いわゆる国際自由労連からもいろいろな抗議文が出る、紹介の手紙が来るという状況でございます。これは私は非常に国際的には面白くない点で、我々今回改正しましたこのくらいの改正案は国際的に私は説明をすれば、なにこんなことがというふうに恐らく了解を得ると私は確信をしておる。ただ国際的に余りこの改悪するという宣伝のほうが行き渡つただけで、誤解を招いているんじやないか、かように存じております。
  94. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 今の労働大臣お話を開いておると、一方において万難を排しても維持して行きたいという言葉の裏から、個々の適用を一つ日本の実情に合わすと、個々で以て適用について実情に合わすと、まあ手続の煩瑣を簡単にするということは結構たと思いますが、その言葉の裏には或る程度今後も更には変えて行こうというか、少しレベルを下げて行こうというような含みを持つているように受取れるのでありますが、そういう意図はないのであるかどうかということを更に重ねて御答弁願いたいことが一つと、もう一つ、この労働基準法が施行されました当時と、今日の日本のまあ生産指数を見ましても、労働生産性という統計を見ましても、これは相当開きができているということはこれは否めない事実と思われます。あのような低いときでさえもこれを守ろうとしてやつたにもかかわらず、こういう第一条の目的のごとく立派に掲げたにもかかわらず、ずつと情勢が変つて来たときに、一つ個々の適用というような口実の下にレベル・ダウンをするんじやないかということを最も労働者並びに外国労働組合等も含めて、これについて疑いの眼を持つておると思うのでありますが、そこで結論的にお尋ねしたいのは、まあその個々の適用という口実の下にレベル・ダウンをしようというようなお考えは毛頭持つておらないのかどうか、この点をはつきり一つお答え願いたい。
  95. 吉武恵市

    国務大臣吉武惠市君) この点は先ほど申しましたように、国際水準を取入れております。この基本的なレベルを下げる意思はございません。これは現在の段階でも多少無理な点があると私は正直に思いますけれども、併しこれはできるだけ維持して切抜けて行けば、今御指摘になりましたように日本の生産がだんだん回復しつつあるのでありますから、一時のあの苦しさでさえ耐えて来たから、今後これを耐えられるのはそう私はむずかしくはないだろうと、さように存じております。従つて、言葉を返すようでありますが、今度の基準法の改正を御覧になりますと、私が申しました点とそう抵触する点はないと思うのであります。一番問題になつておりますのは十八歳から十六歳までの技能者養成のための坑内労働、それから文子の一部の深夜業の問題という問題がこの基準法では恐らく一番問題になつていると思いますが、これとてもしばしば申しますように、国際労働条約で認らめれた範囲のことである。日本の今日置かれた事情が国際労働条約できめられたそれ以上のものを今直ちにやつぱし認めなけりやならんというのは私は少し無理じやないか、せめて国際水準の線まで近付けて行つて、そして日本国の力がぐんと進んで来たときには何もよその国の付合いをする必要はない。それ以上に進んでも私は結構だと思いますが、今のこのときに国際水準以上までも是非認めなきやならんと言われるのは少し無理じやないか、かように私は存じております。
  96. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 よくわかりました。吉武さんの方針はわかりましたが、そこで今後起つて来る問題として考えなきやならんと思うのですが、労働大臣が、そういう方針の下でこの労働基準法運営して行こうと、こうお考えになりましても、一方において政府の政策といたしましても、何といたしましても、これは政府の政策というよりも日本のどうしてもやらなければならんことだ思うのですが、まあ原料を輸入し製品を輸出する、原則的には……。いろいろ時と場合によつては経済政策は変つて参りますが、とにかく貿易経済というものはこれは抜きにすることはできないと思います。従つて貿易経済の上に立つに至つてはこれは国際競争というものは避けられないと思うのでありますが、国際競争に対処しようとした場合、当然コストの切下げということが何としたつてこれは行われなければならないもう重大な要請であると思うのでありますが、そうなつて参りますると、資本家としてはどこにそのコストの切下げの余地を求めようか、こうした場合にまあ設備の近代化ということをすぐ言われる。或いは産業の合理化というようなことを言われるのですが、やはり一番狙いやすいのは労働条件というような、これは手つ取り早くやりやすいというところから、この労働条件の引下げというところに相当鉾先を向けて来るのじやないか、ここにコスト切下げの余地を発見しようと努力して行くということもこれは否定できないと思いますが、一応資本主義の社会においては当然だと思います。原料において安い原料を手に入れるとか、或いは設備の近代化と申しましても、なかなかこれ簡単に行かない。そうなつて来ると、一番手の着けやすい労働条件というところへ向いて来るのであります。こういう趨勢に向いつつあるということも労働大臣も又当然お認めかと思うのであります。又一方におきましてそういうことに拍車をかけまして労働基準法の違反事件というものはこれは実際に起つて来ると思うのであります。今でも現にもう相当数の違反事件が起きておるだろうと思うのでありますが、さてこの違反事件を徹底的にこれを取締つて行くという方針を堅持して行くつもりであるか。これはもう幾ら法律のいいのをこしらえたつて、今度は違反事件に対するものを見て見ぬ振りをしておつたのでは、これは法律をこしらえただけだと思うのです。従つて違反事件を徹底的に取締つてそうしてせめて今改正されたものが仮に通過するといたしましたならば、これの限度をうんと守つて厳重に一つ違反事件と取組んで行こうとするつもりであるか。或いは見て見ぬ振りをした頬被り的な実質上のレベル・ダウンということをやつて行こうとす錢方針であるかどうか。これには基準監督局の人員の問題等とも相当からんで来ると思うのであります。この点について基本的な方針を一つはつきり、簡単でよろしうございますが、お示し願いたいと思うのであります。
  97. 吉武恵市

    国務大臣吉武惠市君) お話のごとく、今後国際的な競争という問題が起つていろいろな問題が出て来ると思います。併しながら今日の日本のこの労働基準法に基くところの基準は、先ほど来申しましたように、国際的な水準を基にして作つておりまするから、この点については私は下げる意思はないのであります。それじや果して国際市場において勝てるかという問題でありますが、私はその点は、日本人というのは非常に勤勉な国民で、この点は私はどこの国にも劣らない、これは我々だけが言うばかりでなしに、諸国の人も認めておることでありまするから、この勤勉さにおいて私は必ず勝ち得るという自信を持つておる。併しそのためには、単に労働者諸君が勤勉に働くというだけではこれは勝てるものではございませんで、いわゆる生産設備、機械設備というものを新らしくしませんければいかんことでありますから、常にいわゆる設備の更新ということを言つているのでありますが、この設備の更新さえやりますれば、勤勉力においては私はどこの国にも負けない、従つて国際市場においてはそう心配したものじやないと思います。で、問題は恐らく賃金の問題でございますが、この労働基準法では、直接賃金を幾らにしなければならんというところまで行つておりません。ですからこれは経済的な条件によつて決定されて行きますが、併しこれとても戦前は労働組合というようなものの力が非常に弱かつたものですから、賃金に圧力が加わるということも往々ありがちでございましたが、今日の、終戦後においては労働組合は御承知のように、非常に力強い組織を持つておる。でありまするから、私はそう簡単に賃金に圧力が加わるとは考えない。現に今日でも一番イギリスあたりが心配しておりまする繊維産業については、イギリスは非常に日本が又ソシアル・ダンピング的なことをするのじやないかというふうな目で見ておるかも知れませんが、御承知でありましようが、今日の繊維における賃金というものは、従前に比べまして他の労働者に対する賃金の上昇率よりも遥かに上廻つた上昇率を来たしておる。この点は私は大いに国際的にも理解をさせる必要がある。これはまあ菊川さんあたりのお骨折りを頂きたい。そうでないと、ただ労働組合のほうで、日本の労働条件は非常に悪い、政府労働法を改悪するのだ、こういう宣伝をされますと、如何にも賃金を非常に切下げてやつておるような印象を与えるのでありますが、実はそうでない。基準法でさえ、イギリスあたりの基準法と決して違つていない。賃金は、勿論国民生活の水準は違つておりますから、向うの賃金の額と日本の賃金の額とは差があるかも知れません。併し日本の国民生活状態におかれたこの労働者の賃金というものは、特に低いわけじやございませんし、又戦前に比べては、よほどの上昇を示しておりまするので、ただ問題はだんだんと日本の産業力を強めて行つて、そうしてそれと伴つて国民一般の生活水準を上げて行くよりほかないと存じております。
  98. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 どうも吉武さんうまく答弁をそらされたように思うのですが、労働基準法違反事件を徹底的に取締つて行く方針で行くのか、それともこれは見て見ん振りで行くのか、これだけ一つはつきりして頂きたい。
  99. 吉武恵市

    国務大臣吉武惠市君) そのところは私忘れまして申訳ございませんが、勿論監督は厳重にいたします。ただ厳重にいたしますが、私はその際に大事なことは、基本的な問題に重点を置いてそうして単なる手続や何かの細かい点を挙げ足をとるきらいがあります。そうするというと手が足りなくなりますから、私はどこまでも、例えば女子の深夜業はこれは基本的なもの、そういうものは違反があればびしびし挙げる。最低年齢で小さい子供を使つていけないというのにこつそり使う、こういうことは基本的な問題でありますから、こういう問題に重点を置いて取締を厳重にやつて行くつもりであります。
  100. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 僕らも単なる手続や届出のなにを一々やれというのじやない。基本的な問題をうんと違反事件は取締つて行くということを要望するのでありまして、手続や、どうも知らなかつたということについてまで言うわけじやないのであります。それではつきり労働大臣の方針がわかりました。そこでそれについて今度関連してお尋ねしたいのですが、今後どう我々は考えましても、農村におきましての人口過剰と申しますか、それに拍車をかけて、農村恐慌というのはすでに現われつつありまして、人身売買等もすでに新聞の記事を賑わしておるような時代になつて参りました。こういう時代になつて参りますと、どうしても労働基準法の第八条十四号ですかな、旅館、料理店、飲食店、接客婦、或いは娯楽場、これに農村の子女をいろいろの方法で以て連れて来て、すでに現にあるわけでありますが、東京都内においても特飲街であるとか、喫茶店であるとか、或いはダンスホール、それからどさ廻りの劇団、サーカス、こういう所に相当の農村のこうした子弟が農村からいろいろうまい口実で似て連れて来られて使われておる。而もそこにおいては基準法違反が最もひどいのじやないかと思うのですが、ところが第六十二条の四項におきましては、これらについてはどちらかというと、先ほど言つた見て見ん振りじやなく、法律上からもこれは取締れんようになつております。六十二条の四項におきましては……。ところが一番ひどいのは八条の十四号に該当する業種においては、今日一番極端な、一番ひどい労働条件におかれておる人が多いのでありますが、これらを今度は積極的にこういう所だけはまだまだ、僕は基準法を守らしてもそこの企業が全然成り立たんということはないと思うのでありまして、ここらは実際に改正すべきであつて、勿論大産業の労働者労働条件の維持向上ということも大事でありますが、こうした本当に惠まれない連中の基準法違反を一つ摘発して、これを保護して行くということが私は一番大事じやないかと思うのですが、そういう方面にどうも改正の目が向けられておらない、こういうふうに考えるのでありますが、この点について基準局長一つ現在こういう方面の業種におきまして極端に基準法違反というものは、宿屋の女中さんであるとか、或いは特飲街の接客婦というような人はひどい労働条件にあるのじやないかと思うのですが、これらは一体手を出せんものかどうかということと、六十二条の四項において絶対手は出せんのか。さりながら皆さん宿屋へ、温泉旅館に行つて一流の温泉旅館にお泊りになつてこれをお聞きになればわかるが、ひどいものでありまして、これでは決していい大きな産業における女子は非常に保護されておりますが、一番条件に惠まれない人たちがこういう状態におかれておる、こういうところに改正の鉾先を向けようとされる意図はないかどうか、この点について一つお伺いしたいと思います。
  101. 亀井光

    政府委員亀井光君) お話の点につきましては、現行法の建前におきまして、専らサービスをいたしまする業種につきまして、客の便宜を考えまして、多少労働時間等につきまして例外措置が認められておるわけであります。お話の旅館、料理屋その他の接客につきましても、お話もそういうところから出ておるのじやないかと思うのでございますが、これは併しそれかといつて法律で野放しにその時間の制限を撤廃しておるわけじやございませんので、一般のお客が利用し得る限界におきまして、できるだけそのサービスが行われまするように、お客に迷惑をかけないようにという趣旨で認められておるわけでございます。併しながらその労働条件が妥当かというお話は、賃金その他の問題かと思いまするが……
  102. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 賃金は別といたしまして……。
  103. 亀井光

    政府委員亀井光君) 賃金等につきましてはお話通り、それから先ほど大臣も申上げましたように、これは当事者間の話合いでございまするが、労働時間につきましては、我々としまして十分いろいろ監督をいたしておるわけでございます。ただ審議会におきましてこの問題について意見はなかつたかどうかというお話でございますが、基準審議会におきましてこれらの時間についてもう少し緩和してくれという希望は出ておりました。併しこれにつきましては公益側なり、労働者側から反対がございまして、現状の程度で取りあえず労働条件というものを維持すべきじやないかという結論で、その問題は出なかつた、ただこれを短縮してくれという、或いはその例外を撤廃してくれという意見も一部にはございましたが、審議会におきましても、サービス業務でありまするたけに、それによつて客人にサービスが十分行われないということになれば、これは却つて社会的に困るのじやないかということで、現在の法規に手を触れないという答申になつているわけであります。
  104. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 いや、私は労働条件の問題を余り、これは対等の立場できめて行くのでありますから言わないのだが、労働時間が極端にひどいのです、実際問題として……。これは法律取締り得ると思うのですが特に女中さんあたりを実際に行つて取調べて御覧なさい。一流の旅館におきましては休む時間などは殆んどないのですよ。それはサービスだから……、それならば交代制にするとか、何らかの方法を、労働基準法をこの際に改正するならば、そういうところに向けても、これは又設けても、それだけの余裕は僕は持ち得ると思う。中小企業だとか言つて、この間一松さんなんか相当言われましたが、ここらは或る程度僕は料理屋等におきましては、交代制にして保護してやつても、その企業が成り立つて行かないということはないと思いますが、こういうところに全然向けられないということは、私たちとしては極めて不満である。そういう一番下のところを先ず第一番に挙げて行くようにするということが一番大事だと思うのでありますが、この点については今回の改正に挙げられていないのは不満ですから、速かに一つ実情調査をされまして、労働委員会等においても、暇があつた調査することにいたしたいと思いますが、この点を大体申上げておきます。  次に今度は第三国人といいますか、旧朝鮮人であるとか、アメリカ人とか、今後はこの人たちの企業が日本国内において多くなつて来ると思うのでありますが、これらの人たちに向つて外国人に向つて労働基準法本当に日本人に対すると同様の基準において、厳重に一つ対処して行く勇気があるかどうかということについてお伺いしたいと思います。
  105. 吉武恵市

    国務大臣吉武惠市君) 只今外国人が使用主である場合の労働法の適用でございますが、これは勿論適用もございますし、私ども監督の面においては欠くるところなきようにいたしたいと思つております。  それから先ほど来菊川さんのお話になりました料理店、飲食店等に使われておる雇用者に対する問題は、御尤もの点が多いと思います。この点は私ども今後とも努力いたすつもりでございます。それからただ、その中で一般料理店、飲食店の問題もさることながら、特に特飲街等におけるところの女子に対する保護の問題ということも、これも相当重要な問題でございまするので、目下婦人問題に対する審議会を開きまして、それで諮問中でございます。いろいろ御検討を願つておりまするので、答申がございましたならば善処をいたしたい、かように存じております。
  106. 中村正雄

    委員長中村正雄君) ちよつと菊川さん待つてもらいましよう。今のに関連して、基準局長、現在の法規はいろいろ政令その他でやつておると思いますが、料理屋とか、旅館等の、いわゆる労働時間に関する現在の状況、それからもう一つは、こういう地方の基準局でそれぞれ監督いたしておりますが、基準法違反の問題は方々にあるわけなんですが、こういう料理屋、旅館、特飲街等において基準法違反は、件数が今までどのくらいあつたかということを次回までに資料を出して頂けませんか。
  107. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 それはやつてないな、これは殆んど黙認、頼かむりの形です。それで方向を変えて、それではそこを言うのですが、これは真剣に取組まなければならんということをはつきり申上げて次の問題に移ります。次に、今度の改正法案の中に労働者の過半数を代表する者との書面契約という字句が新たに出て参つたのでありますが、一体これはどういう目的でこういう表現を今度されようとしておるのかというと、私は一つは、労働組合に又第二組合奨励の意味でやられたか、労働組合を企業の中に設けさせなくて、そうして実際には昔の大家族主義を大きな企業の中に植え付けようと、そういうものを認めて行こうという趣旨のものを考えられたように思うのであります。例えば曾つての国鉄内部における或いは鐘紡の中における大家族主義、そういうようなものを育てようとして、今度の労働者の過半数の代表との書面契約という文章を用いられたのではなかろうかと、かように思うのでありますが、この点なぜこういうふうな表現をされたかということを一点、次に代表者の確認方法を今後どうしてやつて行くのか。委任状を、みんなの過半数の委任状を付けさして届けさせるのであるか、それとも、これは過半数だというので、どうしてもこれが委任状を全部とるということになることが私はいいと思うのでありますが、そうでないと、ボスが代表者だと言うて、少しの連中だけが出て簡単に代表者になつてしまう。殊に実際に言つて、いつ代表者になつてもらつたか覚えがちつともないというような状態になるのでありますが、これが確認方法について、事務的にちよつと細かくなると思いますが、これは大事な問題だと思いますので、お答え願いたい。
  108. 亀井光

    政府委員亀井光君) 労働者の過半数を代表する者との協定のお話の問題は、現行法におきまして、第三十六条の時間外協定につきまして、労働組合がある場合におきましては労働協約、労働組合のない場合におきましては労働者を代表する過半数の同意という条件が付いておるわけであります。その公式をそのまま持つて来たわけでございまして、例えば第二十四条の賃金の支払の際におきましては、法令又は労働協約に別段の定がある場合のみ賃金の一部控除を認められておるに過ぎないのであります。従つて労働組合がないものにつきましては、賃金の一部控除はできなかつたのでございます。今回はそういうものもやはり購買組合の売却代金だとか、或いは共済組合の掛金などというふうなものについても、やはり控除の必要が認められて来ました。従いまして、組合のない場合でも労働者の過半数を代表する者との協定の途を開いておる。これは三十六条の前例に従いまして、そういう表現をいたした次第でございます。然らばその過半数以上の同意を如何にして証明するかという御質問でございますが、この届出の中におきまして、当然労働者の過半数を代表する者、過半数で協定したということを証明する書類を付けることになつておりますが、届出の中に。従いまして、その出ました書類を監督署において、それが正当と認めるかどうかということによりまして、その届出を受理するかどうかということがきまつて参るかと思います。一番正当なのは、過半数のものが署名捺印するのが一番正確だと思いまするが、事実上、そういうことが何らかの形で証明し得る書類が添付されれば、それでも我々としては、その書類を受取るという取扱になつております。
  109. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 事実上証明されるというのは一体どういうものか、今までこれは現行法の中にやつておられるとするなら、一体前例があるか、それとも現行法ではどういう書類でこれを確認しておられるのですか。これは非常にむずかしい問題だと思いますが、今の複雑にだんだんなりつつあるときにおいて、基準局長は今組合だといつておる。ところが第二組合ができた、それは組合中じやない。ところがこれは過半数というので会社の中でこういうことが起るかも知れないと思いますが、そういう場合に一体どうして一方の労、働組合のほうは承認しない、労働協約で以てやつておるから承認しない、そういうときに過半数の契約だというので、これは過半数の代表だというようなことで書類を確認することになつた場合に、過半数だといつた連中を基準局は認めてしまうということになると、一方はそうじやない、こういうことになつて複雑になると思うのでありますが、今度のほうのやつには貯金の問題なんかも出ておると思うのでありますが、これは私が先ほどからお尋ねしたように、基準局長も御答弁になつたように、皆の委任状、或いは署名捺印したものを確認するというなら何をか言わんやで結構だと思うのでありますが、その点はただ単にこれならよかろうという書類で以てやつて行くのだと言われるけれども、具体的にどうしてやつて行かれるのか、これを一つお聞きしたい。
  110. 亀井光

    政府委員亀井光君) 基準監督署としましては、組合員の数がわかつておりまして、今のお話の第二組合の問題がございました場合には、第一組合、第二組合の組合員数がわかつておりますので、その員数で代表し得るものの権限の範囲というものも大体見当がつきます。それが正当な代表する権限のない場合には、勿論それは書類を受理しないのであります。それから組合のない場合につきましても、我々の指導方針としまして、できるだけそういう過半数の者の連署というものを一応指導方針といたしまして、それを確認をいたしておるようなわけであります。
  111. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 今度は労働協約又は過半数のなにによつて、殆んど使用者は金融機関的な仕事をやることになるわけでありますが、この十八条の二項によりまして、これと一般金融機関との摩擦というようなことはお考えになつておるか。これは大分問題が大きいと思うのでありますが、例えば今後この条項を非常にだんだんと……、今一番何といつても使用者のほうで大事なのは資金繰りだと思います。で、或る程度皆職場でどんどん貯金をさせるという方法をうんと強力に進めるということになりますると、零細な貯金がここへ集つて来る。ここで零細な簡易保険の年金の運用権で、大蔵省でやるか、郵政省でやるかで喧嘩しておるようですが、それはなぜかというと、貯金の運用権を持つたものが強いということになるから、五万、十万とまとまつた金を持つておる会社におきまして、これの運用権限を使用者が持つということは、これは非常に利益になるということになりますと、一般の金融業との調整ということは非常にむずかしくなつて来ると思うのでありますが、今後労働省はこの十八条の活用によりまして、大いに一つ職場貯金をやらせる。これは大体労働省と大蔵省との間にも一応話合いがついてやつておられるのか。それとも職場貯金ということになつてこれを見ますと、貯金の利子が一般の金融機関の利息よりも下のところへは行かないというのですが、上のことは言つておりませんから闇金融とか、或いは金融機関あたりから会社が融資を受けるというよりも、その労働者の貯金を預かつたときは相当金融機関よりも高い利子をつけて預かつてやれると思うのでありますが、これは僕らも国鉄の内部におりますときに共済組合というのがございまして、ここで貯金を預かつてもらうと、郵便局へ持つて行くより高いというので、大変これを利用したものでありますが、今後この条文によりますと、どの企業においてもそういう方式をとつて来ると思うのであります。それはまだ現在一般金融というものは、それでありますから、僅かの金でありましても多数のものから預かるということになりますと、大きな企業においては相当な金額になると思います。これを大いに奨励するという目的で以てこの条文を改正せられておるのか。そういう方針で行くとするならば大蔵省との間の調整も十分話合いが付いての上か。今後法律の運用方法はどういうふうにしてやつて行こうとするか。この点を一つはつきりお答え願いたいと思います。
  112. 亀井光

    政府委員亀井光君) この問題につきましては、これを奨励するという意味のものではございません。ただ手続の簡素化をすることを主題としてこれを取上げたのでございます。手続を簡素化した結果としまして、こういうものがより合理的に、より頻繁に行われるという結果は或いは出て来るかも知れませんが、それ自体を目的としたものではないのであります。それから大蔵省との話合いは、これは我々として事務的にはお話合いを付けてございます。その点も御心配はないと存じます。併し又これは業として行うのではございませんで、一般の金融業とそこに競合するようなこともないと存じております。
  113. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 いや、これは金融がこのように梗塞してないような時であつたならば、これは一つの福利施設として結構なんです。郵便局へ持つてつたり、録行へ持つて行くよりもうちの会社に預かつてもらおう。ところがこういう金融梗塞の状態においては、この状況を非常に使用者側、資本家側、企業者側では活用しまして、金融梗塞打開の一つの方法として用いるだろう、私はそう思うのでありますが、そのことも当然考慮に入れておられるかどうか、この点も一つ伺いたい。もう一つ、この十八条によりますと「使用者は、労働者の貯蓄金をその委託を受けて管理する場合において、労働者がその返還を請求したときは、遅滞なく、これを返還しなければならない。」、これは考えようによりましては、ずつと五年間で一億なり溜つている、そこで何か問題が発生しまして、直ちにそれを下せということをみんな連名で要求をした、そのときでも当然これは応じ得るのだ、こういうふうに解釈してよろしいですか。これは応じなければならん問題であり、いわゆるモラトリアム的な取付け騒ぎというような、言葉を換えて言いますと、そういう方法もとり得ると思うのでありますが、企業者のほうで皆これを廻しておる、相当な大きな金額だ、併し労働者のほうでは必要あつて年末の資金の要求をした、ところがなかなか思うようには妥結をしなかつた、止むを得ないからこの貯金を全部下して相互に融通し合おうじやないかというような方法も考えられると思うのでありますが、それでも必ず応じなければならん、こういうことになつておるのですが、そういうふうに解釈してよろしうございますか。
  114. 亀井光

    政府委員亀井光君) それは改正条文を御覧願いますとわかりますように、使用者が一方的にこの制度を利用することはできないのでございまして、労働組合がありますときには労働協約、労働組合がないときには労働者の過半数以上、従いまして労働者の意思に従つてこの制度を使用者が行うかどうかということがきまつて参ると思うのであります。その間の心配は要らないかと思います。それから返還につきましては、この法文の通りに返還の請求がありましたら、直ちにこれを返還しなければならないという義務があります。従いましてそういうことを前提として使用者はその資金の管理を行うべき義務を発生して行くと私ども考えております。
  115. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 そういうふうに了解してよろしうございますね。それでは私は一応あとに譲ります。
  116. 中村正雄

    委員長中村正雄君) 今の菊川君の質問、非常に前からも問題になつているわけなんですが、今度の改正でこれが認められたというわけじやないのですが、基準法のできたときと今と相当状態が変つているので、いわゆる労働協約等で管理のほうはきめるとおつしやいますが、実際上の現金のいわゆる管理その他についての監督はどこがやるのですか。
  117. 亀井光

    政府委員亀井光君) 基準局でございます。届出を受けました後の監督基準局でございます。
  118. 中村正雄

    委員長中村正雄君) 基準局と言いますけれども、仮に一つ工場において長年やつているうちには、相当の貯金ができると思うのです。その現金を持つているわけじやありませんですね。従つて返さなくちやいかん、返還の請求のあつたときに直ちに応じられるようなことにするためには、やはり会社が利子を支払う以上、それを企業に流用しているわけですれ、そうでしよういその場合に直ちに返還に応ずるような準備をするということは、これは労働協約等できめるということよりも、いつでも返還できるような措置を講ずるだけの監督がなければできないと思うのです。基準監督局でその監督が実際上できるかできないかということは一応常識でも考えられるわけですが、今まで問題があつたかどうかわかりませんが、こういうような不景気なときになつて来ると、労働者の貯金を相当企業は利用するのが当然でありますが、利用したことによつて企業が左前になつたときに返還ができなくなる、こういうことに対する救済の措置はどこにあるのですか。
  119. 亀井光

    政府委員亀井光君) 今の監督の問題でございますが、この監督は第一次的にはやはり組合があります場合には組合、或いは組合のない場合にありましては、労働者全体が一応やはりそういう建前において、第一次の監督といいますか、監視をして行かなければならん問題かと思うのであります。又監督署といたしましてはそういう問題について労働者側から申告等がございます。又監督の際にそういう問題を発見しました場合は、当然監督署といたしまして労働者に注意を促しまして当然その措置を講ずるということになろうかと存じます。
  120. 中村正雄

    委員長中村正雄君) いや、私が言つておるのはそういう形式的なものでなくて、帳簿の上にははつきりこういう預金があるわけです。それを事業者が使用しておるわけです。そういう帳簿の上の監督じやなくして、現実にこれを返還し得るような監督言い換えるならば金融機関等でありますれば、貸出の制限であるとか、使用の制限であるとか、いわゆる預金者に迷惑をかけないだけの担保的な監督の方法が法規に規定されてあるわけなんですね。これが労働者に対する預金については規定が全然ない。これを基準局でやるとおつしやつたけれども、一旦不況になれば、その企業が左前になつた場合に帳簿の上の監督は何もない。実際上一つの金融業じやありませんけれども労働者からの預金を保管する、管理するようになれば、一つの銀行と同じような責任を持たさなければならん。そういう監督の具体的な措置は何も講ぜられていないと思うのですね。今後企業が不況になつたり、いろいろ問題になるときには、必ず起きて来る問題だと思うのです。これに対しては今のところ何も法規がないと思いますが、これは一応早急に考えてもらわなければいかん問題だろうと思うのです。それは労働基準法をこしらえたときと今とは社会情勢が違つておりますから、この問題については考えてもらわなければならん。もう一つ、私はほかの法規は知りませんが、工場の閉鎖とか破産等の場合において、労働者の預金というものが何らかの優先権が与えられておるものかどうか。民法の先取特権その他そういうものがどうなつておるかわかつておればお答え願いたい。
  121. 亀井光

    政府委員亀井光君) 民法の先取特権につきましては、まだ検討を加えておりませんが、一応民法上の損害賠償としては、当然成り立つわけであります。これはもう一度検討いたしまして……。
  122. 中村正雄

    委員長中村正雄君) 破産の場合は損害賠償は全然ないわけです。収支償わないから破産になるわけですが、そのときに一般の債権と労働者の預金と同じ待遇じやかわいそうだと思うのですが、そういう点をもう一遍お願いしたい。
  123. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 それと関連してもう一つ考えなければならんのは、労働協約には、あらゆる債権に優先してこれは支払うのだということを協約では結んであるということになつたら、それは有効であるかどうか、これは民法的に有効であるかどうか、この点も一つ研究してもらいたい。それは労働協約を結ぶ場合には、当然これは承知するだろうと思う。資本家のほうも承知するだろうと思う。人の金を預かるのですから……。果して中村君の言うような事態になつた場合に、それは民法上有効であつて、何よりもこれを先に返してもらえるかどうか。こういうことが成り立つかどうか。成り立たんとすれば特別法で以て保護する。この際基準法を改正するときにこの中に詳細規定する必要があるのじやないか。今のようなときであればいいけれども国際的な経済の動きによつては、どういう事態が来んともなかなかわからないと思うのです。そういう点についても検討してお答え願いたいのです。
  124. 中村正雄

    委員長中村正雄君) これは次の基準法審議する第二読会まででいいのですから十分検討してもらいたいと思います。
  125. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 今の問題に関連して、こういう問題の前に賃金不払とかいろんな問題が起るのじやないですか。そういうヶ—スは今までないですか。
  126. 亀井光

    政府委員亀井光君) 具体的に聞いておりませんが、結局こういうものの破産その他の場合に先行いたしますものとしては、賃金不払事件というものが先に起つて来るのです。それがだんだん深みに入りまして工場閉鎖、破産というような段階になつて来るのじやないかという気はいたしておるのであります。  それから先ほどの問題は賃金の一部から預金をさせますので、それが賃金とみなして、民法上の先取特権が認められるかどうかという問題はあろうかと思いますが、もう一度検討いたしまして……。
  127. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 労働協約に別段の定ある場合以外は通貨以外で以て支払はできない、こういうふうに二十四条でなつておるのです。ところが労働者の過半数の代表というのは、このあとで以て一部控除の場合はそういうふうになつているのだが、労働協約の別段の定ある場合には、これは通貨以外のもので支払うことができるのです。ところが今度は逆にお尋ねするのですが、過半数の代表者との書面の協定によつては、これはもう通貨以外には払えないということになるのですが、これは一体なぜこういうふうになつておるのですか。これは同じように、今ほかの所は過半数の代表者で以て活かして来て、通貨以外の支払だけを労働協約で以てして行くのか。労働組合との労働協約ということになると、それは過半数だつたら、いわゆる三分の一程度の人は反対であるからそれは困るというのだつたら、これは労働協約締結の場合にも言い得ることだと思うのでありまして、労働協約は満場一致で代表者が締結したものを承認されると限つておりません。その中に反対者があつても、三分の二以上の賛成があつた場合には調印する、こういうふうな規定はどこの組合にもあるだらうと思うのですが、そから逆に考えて行くとおかしいのですが、これを削除された理由一つお伺いしたい。
  128. 亀井光

    政府委員亀井光君) 二十四条におきましては、法令又は労働協約において別段の定があります場合は、賃金の一部控除とそれから通貨以外のもの、即ち現物で賃金を支払う、この二つの例外が認められておるわけです。その中でいわゆる現物給与の問題は、組合あたりが弱い場合におきましては不必要な品物を労働者が使用者から押付けられる、そういう慮れが多分にある。従つてそれが又賃金の切下げになつて行く虞れもあるということから現物給与につきましては、労働協約でなければ認めないという現行法の精神を活かしておるわけです。併し一部控除の場合は、例えば自分が購買組合で買いました代金その他について、本人もよく存じておりますから、従つてこれには特別の弊害が認められないから労使の過半数の協定でもいいのじやないかという趣旨でこの改正が出ておるわけでございます。
  129. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 よくわかりました。では私はこれで……。
  130. 中村正雄

    委員長中村正雄君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  131. 中村正雄

    委員長中村正雄君) 速記を始めて下さい。あと質疑の残つておるものもありますけれども、この委員会の部屋の都合もありますから、そういうかたの御質問はあとに廻しまして、日程として協議いたしましたいわゆる第一読会としての労働基準法質疑は今日を以て終りたいと思いますので、御了解願いたいと思います。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕  本日はこれにて散会いたします。    午後三時三十四分散会