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1952-03-24 第13回国会 参議院 予算委員会昭和27年度予算と憲法に関する小委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年三月二十四日(月曜日)    午前十時四十一分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     楠見 義男君    委員            愛知 揆一君            鈴木 直人君            杉原 荒太君            山本 米治君            岡本 愛祐君            吉田 法晴君            吉川末次郎君            西田 隆男君            堀木 鎌三君            東   隆君            木村禧八郎君            岩間 正男君   国務大臣    法 務 総 裁 木村篤太郎君    国 務 大 臣 大橋 武夫君    国 務 大 臣 岡崎 勝男君   政府委員    警察予備隊本部    次長      江口見登留君    法制意見長官  佐藤 達夫君    法務法制意見    第一局長    高辻 正己君    法務法制意見    第二局長    林  修三君    海上保安庁長官 柳澤 米吉君   事務局側    常任委員会專門    員       野津高次郎君    常任委員会專門    員       長谷川喜作君   法制局側    法 制 局 長 奧野 健一君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○昭和二十七年度予算憲法に関する  件 ○小委員長の互選   —————————————
  2. 吉川末次郎

    ○仮委員長吉川末次郎君) これより小委員会を開会いたします。  本日は政府より岡崎国務相木村法務総裁大橋国務相その他の政府委員が出席する予定になつておりますが、予算の本委員会のほうに閣僚諸氏は主として只今列席いたしておりますので、これらの各大臣がこの小委員会に出席いたしますに先立ちまして、先ず吉田委員より御請求が私にありましたので、参議院法制局長意見を聞きますために参議院法制局長奧野君に対する昭和二十七年度予算憲法との関係についての疑義に関する質疑をして頂くことにいたしたいと存じます。
  3. 吉田法晴

    吉田法晴君 昨日も木村法務総裁、それから佐藤法制意見長官法律解釈の問題について質疑を続けたのでありますが、今までの総理、或いは木村法務総裁等説明で、否定せられておりました自衞戰争の放棄について、憲法制定当時は自衛戰争も放棄したのだ、この点が明らかになりました以外には、従来の説明が繰返されるだけで進展をいたしません。私は法制意見長官はこれは政府法制意見長官でございますけれども、法理解釈としては客観的な解釈をなさるべきだと思いますが、残念ながら政府の従来の答弁そのままで客観的な解釈がなかつたように思います。そこで奥野法制局長に出て頂いて、これらの点についてお尋ねをいたして参りたいと思うのでありますが、戰力の問題と行政協定の問題、両方お尋をいたしたいと思いますけれども、先ず戰力の問題からやります。憲法九條の解釈として、昨日潜在戰力の点についてはこれを否定せられて、陸海空軍と同じ完成された戰力、或いは近代戰に役立ち得る有効適切なる力ということで御答弁があつたのでありますが、第九條の解釈として、潜在戰力という観念と申しますか、潜在戰力をも否定したということは、これは学説の圧倒的多数だと思うのであります。憲法九條の解釈として、はつきり潜在戰力というものは現在も憲法で禁止せられておると解するのでありますか、この点について意見を承わりたいと思います。
  4. 奧野健一

    法制局長奧野健一君) 確かに御指摘のように九條第二項の陸海空軍その他の戰力というこの戰力に関する英文は、御承知のようにウオア・ポテンシヤルということになつておりましてウオア・ポテンシヤルという言葉は、恐らく潜在戰力意味するものであると考えます。まあ併し日本語になつて見ますると、その他の戰力というこの日本文としての戰力意味は如何なる意味であるかということは、確かに英文ウオア・ポテンシヤルという言葉十分参考にはいたすべきと思いますが、日本語のいわゆる戰力というものは何かという立場からも十分検討をしなければならないのではないかと思います。そこでいわゆる潜在戰力という意味如何であると思いますが、広い意味潜在戰力と申しますと、例えば人、人口の増加なんということも、すべて或いは潜在戰力ということに含まれることになりまして、そういうことをいたしますと、すべてのまあ物資或いはその他のものすべて潜在戰力になりますので、それほど広い意味であるとは常識から申しましても解釈せんのでありまして、やはりここにおける戰力とは、陸海空軍その他これに類似するような、戰争し得る力を意味しておるものというふうに考えます。
  5. 吉田法晴

    吉田法晴君 この憲法法源と申しますか、英文ウオア・ポテンシヤルという言葉も今出たのでありますが、この点に関しますウオア・ポテンシヤルという言葉を含む英文の飜訳が法源になり得るか。それから憲法解釈憲法学者解釈もこれが圧倒的多数でありますならば、憲法解釈の何と申しますか、法源一つとして取入れ得るかどうかということについてお尋ねしたいと思います。
  6. 奧野健一

    法制局長奧野健一君) やはり憲法解釈といたしましては、勿論英文参考上十分に参考に価すると思いますが、ここに現われたる日本文を基礎として解釈をきめて行かなければならないと思います。勿論学者議論ということも解釈の上には参考にすべきでありますが、まあとにかく現われたる日本文の正文を対象として解釈すべきものであると思います。
  7. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ちよつとそれに関連して。先ほど法制局長官から……
  8. 吉川末次郎

    ○仮委員長吉川末次郎君) 局長なんです。私が間違いました、法制局長……。
  9. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ウオア・ポテンンヤル、即ち戰力考える場合、余り広く考えると人的要素人口密度、そういうものも戰力になるので、そう広義解釈するのもどうか、こういうお話でしたが、それは戰時における戰力であつて平時における戰力は大体通念としてきまつておると思うのです。それは何回も我々引用したのですが、一九二五年十二月軍縮の問題が起つたとき、軍縮会議準備委員会戰力の、いわゆる軍備軍備としてありますけれども、まあ戰力と同じだと思います。その要素として、平時における軍備を構成すべき要素と、戰時における軍備を構成すべき要素と二つに分けております。で、只今の御説明は、その戰時における軍備を構成する要素としては軍事的要素陸海空軍の兵員及び材料、第二に、人的要素として人口密度及び分布並びに団結力及び性能、それから更にまあいろいろあります。それは戰時における軍事的な能力というもので、平時においては現役にある陸海空軍警察隊、憲兵、税関吏森林監守等軍隊組織を持つておる、そうして動員によらないで直ちに利用し得べき兵力、それからその所持する兵器、彈薬、諸材料及び畜類及び軍用に供し得べき船舶、それから本国及び植民地における防禦設備、海軍及び空軍根拠地その他戰争目的に建てたる地理的施設、更に兵器廠、火薬製造所、その他動員によらずして利用し得べき工業上の諸施設、つまり動員によらないで利用し得べきいろいろな要素、こういう意味でありますから、我々が今お尋ねしておるものは平時におけるいわゆる戰力軍備を聞いているのでございます。その点は区別して考える必要があるのではないかと思います。政府のほうもたびたび我々に答弁する場合、マツチ一本も戰力になる、それは戰時における観念であつて平時における軍備説明する場合にはそれは世界的通念として、そういう説明は当らないのじやないかと思うのです。この点は如何でしようか。
  10. 奧野健一

    法制局長奧野健一君) まあ潜在戰力という意味は如何なる意味かということにつきましては、私は十分の知識はありませんが、少くとも陸海空軍その他の戰力というここの戰味は、今お話にもありましたように、直ちに戰力に転用し得べき、いわゆる戰争をなし得る力を構成するものというような意味ではないかというふうに思つております。
  11. 吉田法晴

    吉田法晴君 先ほど学者の大多数の意見というものを憲法解釈材料としてどの程度見るかということをお尋ねしたのでありますが、極く少数の異説、或いは例外的な解釈は別でありますけれども、大多数の意見というものは、これは憲法解釈の大きな材料になる、或いは広義意味においては法源一つとして考えていいかと考えるのでありますが、その点と、それからこれは客観的に解釈せられるべきでありましようが、その客観的な解釈一つ材料として、諸外国においてどういう工合に見ておるか。それから国内においても世論と申しますか、朝日新聞の世論調査等もありますが、そういう世論というものもこれは憲法解釈の大きな一つ要素材料ではないかと思うのですが、これらの点についてのお考えを伺いたいと思います。
  12. 奧野健一

    法制局長奧野健一君) 結局問題になつてこれを解釈するという場合には、純粋に申しますと、やはり客観的にこれを見るということになろうかと思います。そして立法におけるまあいわば理由書のようなものがありますれば理由書、或いは議会における質疑……立法した者との間の質疑応答、それから学説といつたようなものを参考にして概念をきめて参ると思うのであります。ですから世論ということが、直ちにいわゆる法源という、公的な意味における法律解釈する本になる法源というふうになるかどうかということについては、直ちにはそういうふうになるものとも考えませんが、ただこの戰力というような概念が、若し時代等によつてつて参るというふうな前提をとりますれば、例えば原子爆弾とか、そういつたような非常に高性能の兵器のないようなときにおきましては、或いは日本刀とかピストルとか竹槍とかいうようなものも場合によつては入ると思われたものが、時代進展伴つて、いわゆる戰争をなし得る力ということが時代に応じて変つて来るというふうな前提をとりますれば、その時代々々のいろいろな知識なり世論というようなものをやはり参考にして、その概念をきめて行くというふうになるのではないかと思います。
  13. 吉田法晴

    吉田法晴君 奥野法制局長少しはつきりしないところがございますが、原子爆彈お話も出ましたけれども、憲法制定当時の政府説明、それからそれの憲法学者のいろいろの解釈、この中には潜在戰力というものがはつきりつておつたと考えられるのでありますが、その後吉田首相自衛戰に対しまする取消し以来、ここは政府説明が変つておると思う。それから潜在戰力問題につきましては、この国会で従来の説明が変つておると考えられるのですが、行政権によつて憲法解釈がどんなにでも変るということは、これは許されないのではないか、こういう工合考えますが、その点は如何ですか。
  14. 奧野健一

    法制局長奧野健一君) まあ法律解釈としては客観的にきめらるべきものでありまして、行政権によつて自由に法律解釈の内容が変つて来るということはあり得ないと思います。勿論行政府といたしましては、行政権執行の過程におきまして、みずから一応法律解釈してそれに基いて行政権を行使する、その行使する前提として解釈するということは政府の権限とは思いますが、行政府考えによつて法律解釈が二、三になるということはあり得ないと思います。
  15. 吉川末次郎

    ○仮委員長吉川末次郎君) 岡崎国務相が隣りの予算委員会のほうに列席いたしておりますが、もう二十分余り経てばこの小委員会に出席いたすことになつておりますから、ちよつと申上げておきます。
  16. 吉田法晴

    吉田法晴君 行政権による憲法の勝手な解釈は許されない。これは行政権によつて憲法が勝手に解釈されますならば、憲法というものは実質的に壊わされて行く、立憲主義というものは完全に壊わされて参ると思うのですが、その点はお認め頂いておるのですが、この問題は潜在戰力の問題に関連いたしまして、先ほど原子爆彈の話も出ましたが、この戰力、或いは潜在戰力要素として或いは武器竹槍等の話も出ましたけれども、竹槍等議論のあるところといたしましても、或いは軍需生産力、それから武器というものは戰力になり得るものだ、その限界等もあろうと思いますけれども、原子爆彈等については戰力要素になり得るということは、第九十帝国議会の際に金森国務相からも言われたところでありますが、この点については議論の余地がないかのように思うのですが、どういう工合にお思いですか。
  17. 奧野健一

    法制局長奧野健一君) みずから用いるつもりで原子爆彈を貯えておくというふうなことであれば勿論戰力であると思います。
  18. 吉田法晴

    吉田法晴君 用いるつもりというこの用途が今お言葉の中に出たのでありますが、戰力要素の中に先ほどお話の出ました人の集団軍隊的な組織、それから物、物的な要素としての兵器、それから今の用途、これはからみ合つて考えられなければならんのは当然でありますけれども、その一つ一つについて、一つ一つと申しますのは物的、人的要素についてでありますが、目的がなければ戰力にはならない、こういう定義、考え方といたしますならば、昨日もお話が出ておつたのでありますけれども、戰争の前夜にならなければ、或いは戰争に使わなければ戰力にならん、幾ら兵隊を殖やす、軍隊的な組織を強化して行つて、十万が二十万になる、二十万が三十万になつても、それは戰力でない、軍隊でないと、或いは兵器にいたしましても、現在のように警察予備隊がバズーカ砲を持つても或いは戰車を持つても、軍艦を持つても、それは戰力ではないということになる。戰争をぼつ始めなければ戰力にならないということは明らかだと思います。そこで人的要素、或いは物的の要素にいたしましても、客観的に戰力になるかならんかという限界があると思うのでありますが、その戰力であるものとないものとの限界、昨日佐藤法制意見長官も客観的なものだということを言われましたが、この客観的な基準について奥野局長の御意見を承わりたい。
  19. 奧野健一

    法制局長奧野健一君) たとえ武器なり、兵器というようなものを製造するにいたしましても、例えば他の国から注文を受けて、ただ造つておるとか、或いはそういつたことのために造つておるということだけでは、これを自国戰力に使用するということはあり得ないと思われますので、ただそういう武器が保管されておるとか、或いは製造されておるという場合でも、やはりその外国からの注文でただ製造しておるというようなものは戰力として使用できないわけでありますから、そういう意味でやはり自国戰力に使用し得るような状況において、そういうものを保持しておるという場合に初めて戰力の保持ということになるのではないかと思います。
  20. 吉田法晴

    吉田法晴君 おかしい御答弁を頂くと思うのですが、外国注文兵器造つておるのであれば戰力にはならないのじやないかと、これは軍需生産力をも潜在的戰力として禁止いたしました、或いは憲法が国権の発動の制限として意味があるのであるということでありますれば、憲法制定当時そういう軍需的生産力潜在戰力として禁止した憲法の意図を蹂躪するものと考えますが、その点は奧野局長……大変尊敬する奧野局長でありますが、憲法制定当時の解釈と違うのではないか。それならばどんなに内国で使うものといえども、軍需生産力を貯えても、武器作つて行つても、それが今のように使われるというあれがなければ、それは戰力にも或いは潜在的な戰力にもならんという結果になるのではないかと思います。その点は意見が違うということを申上げるにとどめまして、或いは御意見を承わればなお結構でありますが……。それからもう一つ、これは九十帝国議会における金森国務相言葉を引きますけれども、その第九十帝国議会における金森国務相答弁の中に、この戰争目的に用いることを本質とする或る力の本及びこれを作製するに必要なる設備というものは、戰力ということになろうと思つておるのであります。こうはつきりつておられる。設備といえどもこれは戰力ということになろうと思つておるという答弁であります。それからこれは原子爆彈を含むと思いますが、新たに学問上発達いたしましたところの特殊なる戰争手段のごときは、陸海空軍でなくとももとより戰力であり、それからこれは原子爆彈のみではないと思いますが、多数の人間に多くの生命、身体に関する変化を惹起するというような手段はこれに入ると思うのであります。こういう答弁をなされておりますが、これはその当時の客観的な解釈並びに政府解釈でございますが、これらと今の答弁との間には矛盾があると考えますが……。
  21. 奧野健一

    法制局長奧野健一君) 私はその他の戰力というのは、先ほども申しましたように、直ちに戰力に転用し得べき、即ち戰争をなし得るような力を構成し得るような物的、人的なものを言うのではないかというように思うのでありまして、まあ例えば飛行機注文を受けて、日本国内他国のために飛行機を造るとか或いは船を造るというのは、自国戰争のために直ちに転用し得る力となすものではないじやないかと思いますので、そういうものは戰力ではないというふうに申上げたのであります。
  22. 岩間正男

    岩間正男君 只今の、他国のために兵器を造るのはかまわない、こういうふうな御説明は非常に私はおかしいと思うのですね。戰力問題にあなたはこだわつておる。憲法前文に牴触しませんか。憲法前文には、「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、專制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う。われらは、全世界国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」、こういうような崇高な、これは單に自分たち戰争しないということだけじやなくて、我々の憲法を本にして、更にこの憲法精神世界にも押し及ぼして行く、こういうところに私は日本国憲法根本精神があると思う。それなのに人を殺戮する目的はつきりつておるところの兵器自国のものでなければかまわない、他国のものに対してはこれを造つてもかまわない、こういう解釈時代情勢の変化によつて許されるとしたならば、私は根本的にこのような憲法前文というものは蹂躙される、この点はどうですか。あなたの御説明というものは非常に私は疑義がある。こんな情勢便乗解釈では我々は納得できない。この点どういうふうにこの矛盾を御解釈になりますか。
  23. 奧野健一

    法制局長奧野健一君) お説のように前文理想から申しますと、いやしくもそういつたようなことに用いられるようなものを製造するというようなことは、憲法精神からは望ましくないということは、平和を非常に愛好する我が国の憲法としては望ましくないということは言えると考えます。
  24. 岩間正男

    岩間正男君 望ましくないということはお認めになつたようですが、そうしますと差支えないということと私は大変違うと思う。それからもう一つお聞きしたいのは、やはりこういうような一つ兵器製産とか、それから武器を持つておる、こういうことによつて戰争が誘発されるので、それで吉田総理自衛戰力というようなものもこれは認めない、こういうようなことを第九十議会答弁したのじやないかと思う。この精神は私はそこにあると思う。つまり戰争を誘発するのは人の面からもありますけれども、むしろ兵器そのもの、それから兵器製造とか、そういうような、いわゆる先ほどから問題になりました潜在戰力、そういうものによつてどんどんこれは戰争というものは誘発されて行く、そういう点から考えて、その根源をなくすということに根本的な狙いがあつたのであります。又日本国憲法の趣旨もそういうところに出なければならない、こういうふうに考えるのですが、只今お話のように、兵器を造ることは、これは差支ない、他国のであればかまわない、併しこれがどんどん拡大されて、そうして日本がそういうような優秀な兵器生産国ということになりますると、それを土台として財閥がこれに関連して、これを復活して、そうして再びこれは日本の過去の帝国主義の復活というものが当然これと関連して起る。それらの財的な根拠として、それらの根源として、兵器生産、いわゆる軍事経済が発生して、この軍事経済が非常に大きなそういう一つ戰争の要因である、こういうふうに考えられるのですが、そういう関連から考えまして、当然この我々の憲法というものの限界はつきり出て来ると思うのです。そういう点についてももう一点伺いたい。
  25. 奧野健一

    法制局長奧野健一君) 私の申しましたのは、九條二項に禁止されている戰力ということの客観的解釈を申しましたのでありまして、お説のように、世界平和を希求するという理想から申しますと、いやしくも何らかの戰争誘発の虞れのあるようなものを極力避けるということは勿論望ましいことと思います。併しそれから先の問題は、例えばそういうことによつて平和が達成されるのだというふうに考えるとか、或いは全然、その戰争を誘発する虞れのあるものを全部遠ざけるといつたような、そういつたような問題は更に政策の面に参りますので、ただ憲法九條の戰力といつた客観的な解釈より以上なものであろうかと思うのでありまして、それによつて平和が来るのだというふうに考えるのと、そういつたようなものも一切誘発する虞れがあるから、そういうことに全然近付かないといういろいろな見方があろうと思いますが、九條二項の戰力という、ここに禁止されている戰力の意義ということたけを申上げたのであります。
  26. 岩間正男

    岩間正男君 どうも九條の客観的な解釈というようなお話でありますが、前文というものは、これは各條項に私は滲透して解釈さるべき性質のものと思いますが、前文前文で棚上げにして、そうして第九條の解釈だけを客観的だと称して、そういうように一つのいわば抽象的、形式的な論議を施してよいものかどうか、この点非常に私は問題だと思うのですが、これはどうお考えになりますか。前文というものは、我々が憲法を読んで行くときに、どういうふうに我々の心がまえとして持つべきものか。これと関連させないで條項解釈だけこれはできるのか。いわば前文というものは全体的な精神を述べたものである、そうしてそれの個々のいわば細則というようなものが條文になつて行くと解釈されると思うのでありますが、ここの前文とそれから條項解釈についてとういうふうな関連を持つか、その点伺いたい。
  27. 奧野健一

    法制局長奧野健一君) 勿論前文はこの憲法全体を流れる理想を示しているものであります。
  28. 岩間正男

    岩間正男君 そうするとそういう今のような解釈はおかしいじやないですか。
  29. 吉田法晴

    吉田法晴君  奥野局長答弁、御意見の基本的な問題でありますが、九條の問題にしましても、七十三條の問題にいたしましても、憲法全体が問題になつておる。憲法が壊されかけておるのではないか。或いは二十七年度予算関連して牴触するのではないか。或いは一角から崩されておるのではないか。こういう大きな疑問の下にこの予算委員会からの小委員会ができておることは御承知通りであります。その委員会にに出て来て奥野局長答弁を願うのに、政治的な考慮或いは戰争誘発の虞れがあるかないか云々という問題で御答弁を頂きましたけれども、御答弁の底を流れる気持というものは、国会政府との間に紛争を起さなければよろしい、こういう立場で御発言願つたのでは、来て頂いて御発言を頂く意味がございません。これは国会の一機関として正確な客観的な御判断、或いは憲法制定当時の憲法精神というものをお述べ頂くことが絶対に必要なわけであります。その点について今までの御答弁については若干の疑問を持つのでありますが、これからの御答弁については一つ政治的な考慮を加えることなしに御答弁を頂きたいと思う。今の戰争誘発の虞れがあるかないかというような問題になりますと、御答弁精神から言いますと、例えば平和を守るために集団安全保障條約を結ぶのだ、或いは武器を持つのだ、或いは組織を持つとしてもそれは戰争誘発の虞れがなければ平和を守るために、平和のための措置であるならば、これを認めざるを得ないのではないか、こういうことに相成るのではないかと思います。それでは私がここで問題にしている憲法解釈の指標にはならないと思います。その点は一応全体的な精神として、論理の精神として申述べておきたいと思います。今の軍需生産力関連しては、昨日も予算委員会のこれは本委員会のほうで、高橋通産大臣は、講和発効後に備えて講和條約発効前に兵器生産を可能ならしめる法律的措置を講ずべきじやないか、こういう御発言があつたのであります。そのことを委員会木村法務総裁に尋ねましたところが、そういう措置がとられたときこそ憲法違反であるかどうかということを国会で御審議願えばよろしい、行政権行政権として、政府政府として憲法解釈をして行きたいという、こういうお話でありました。木村法務総裁の昨日の答弁を逆にしますというと、軍需生産を可能ならしめる法規的な措置を講ずるかどうかということは、これは憲法上の問題になるという御意見が裏に入つておつたと私は思います。外国のために軍需生産をやるということもこれは憲法の禁止するところでない、それならば警察予備隊が持つているバズーカ砲であるとか、或いは自動小銃、その他の武器日本で生産するということになつてもそれは憲法違反ではない、こういうことに先ほど奥野局長の御答弁考えるとなるかと思うのでありますが、そういう点に先ほどの御答弁の危險性があるのでありますが、軍需生産のために法律的措置を講ずるかどうかという問題に関連してどういう工合にお考えになりますか伺いたい。
  30. 奧野健一

    法制局長奧野健一君) 只今御指摘の予備隊の装備がいわゆる戰力であるか、單なる警察力であるかという具体的な問題になりますると、私もその内容をつまびらかにいたしておらないので判断をいたすことはできないのでありますが、要するに、やはり九條二項の「その他の戰力」ということに帰着するわけでありまして、これは先ほど来申しましたように、陸海空軍は勿論でありますが、その以外のものであつても、直ちに戰争をなし得る力を構成し得ることに転用をし得る物的その他の人的な要素というようなことになるのでありまして、従つて警察予備隊の装備とか、或いはその他の軍需生産、若し日本の国として軍需生産をやるという場合におけるそれが戰力となり得るかどうかを判断する標準とすべきと思います。
  31. 吉田法晴

    吉田法晴君 どうもはつきりしないのですが、今戰争に転用し得るかどうかという言葉がありましたが、前から委員会議論せられておりまするように、これからの日本の力、それを戰力というか、潜在的戰力というか別の問題といたしまして、使われる実際の姿はアメリカの駐留軍なり、或いは太平洋安全保障條約というものが将来できたとして、外国戰力と一緒になつて使われるということは、これは想像せられるところでありますが、そうすると、外国戰力と合せて日本の力が、或いはそれから又予備隊の現状でありましようと、これから強化されて参ります力でありましようと、それが一緒になつて働くことが考えられる。これは行政協定二十四條にもその可能性があるわけでありますが、そういうものを考えるときに、転用される実際の姿であります、そういうものと結び付く姿を考えますならば、それではそういう場合には日本の力といえども、これを戰力考えるということは言い得ると思うのでありますが、その点はどういうふうにお考えになりますか。
  32. 奧野健一

    法制局長奧野健一君) 二十四條の私は必要な共同措置のやり方をどういうふうにやるかということについては詳しく存じておりません。が併し直接防衛のために武力を行使するというふうなやり方で共同措置をとるということになりますと、やはり憲法九條の二項の問題になつて来るのではないかと思います。
  33. 吉田法晴

    吉田法晴君 その点は一部解明をされたわけでありますけれども、最後の行政協定についてのお尋ねでありますが、先ほど申しましたように、戰争に使われるときでなければ戰力でないというような説明をいたしますならば、どんなに軍隊的な組織を殖やして見ましても、それから武器を持つて参りましても、それが戰力でないということになるわけであります。言い換えますと、目的なしには人間組織も或いは物的な要素兵器戰力とならんということになることは明らかでありますが、その目的を除いて如何なる程度になつたならば戰力になるか、それが一つ。それからその点は、例えば今行政機構の改革に関連いたしまして海上警備隊、或いは陸上の保安隊が自衛のために使われるかどうか。この警察予備隊或いは海上保安庁の名前の変りますものがどういう目的を與えられるかによつてきまるものと考えられるのでありますか。この目的と、それから目的を離れた物と人との客観的な基準がどこにあるかという点についてどういう工合考えられますか。
  34. 奧野健一

    法制局長奧野健一君) 目的を離れましても、そのもの自体が直ちに自国戰力に、戰争し得る方になり得るものは戰力というふうに客観的に見るべきであろうと思います。ただ先ほどの例がちよつとありましたが、それは全然自国戰力となし得ない運命を持つているものであれば勿論除かれますが、自国がそれを戰力に用いようと思えば用い得る力を持つた、そういう戰争の力に転用し得べき要素であれば戰力、これはその目的にかかわらず、そういうふうに客観的に判断して、力を持つているものであれば戰力ということになるのではないかと思います。  そして後段の予備隊或いは海上保安隊というような問題につきましても、勿論現行の憲法九條におきましてもこれは警察力、国内治安の警察力を持つことを禁止しておるものではないと思いますが、それがいわゆる外部的な戰争に転用し得る力を備えるということであれば……、併しどの程度になればそういうふうなものと言えるかという見解は、これは極めて困難であろうと思いますが、要するに戰争をなし得る力となり得るというふうに客観的に判断されれば、やはり戰力ということになるのではないかと思います。
  35. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ちよつと関連して。大分今までの吉田委員の質問によつて政府解釈と、それから局長解釈との食い違いはわかつたのですが、ただ併し解明して頂きたいことが一つあるのです。それは吉田総理は、自衛のためであつて戰力を持つては違憲であるということをはつきり取消しまでして言われたのです。ところが戰力の規定になると、法務総裁は近代戰を遂行するに足る能力がなければ戰力でないと言うのですね。そういう場合の自衛のための戰力というものはあり得るかどうか。そういう解釈の下で近代戰を遂行するに足る能力を持たなければ戰力でないと言う場合、自衛のためにも戰力を持つちやけいけない、こう言つているんです。そうすると自衛のための戰力というのが、今の政府近代戰を遂行する能力を持たなければ戰力でないという場合には、自衛のための戰力ということはあり得ないということになるのですね。自衛のための戰力というものは、自衛のためでも戰力を持つちやいけないというときのその戰力というのと、それから戰力の規定は、近代戰を遂行するに足る能力がなければ戰力というものではないというときに、その自衛のための戰力なんというものは大体おかしいことになる。それでも持つては違憲になる、こう言つているんです。それからそこに非常な食い違いがあつて近代戰を……自衛のための戰力もいけないというならば、そのときの戰力の規定によれば、近代戰を行うに足るたけの自衛のための戰力、そんな自衛のための戰力というのは、近代戰を行うに足るだけの能力を持つた自衛のための戰力というような規定が出て来ると思うのですね。そこのところは説明が、どうも食い違つているように思うのですが、その点憲法との関係で、自衛のための戰力といつたときにはどういう程度のことを意味するのか。それも憲法違反だというときの、そのときの自衛のための戰力、それから今の局長お話ですと、政府解釈と違つて政府近代戰を遂行するに足る能力を持たなければ戰力と言えないと言いますけれども、局長の御解釈は、軍縮の準備委員会解釈のように、平時において動員措置によらずしてすぐに戰力に転用し得るようなそういう要素、こういうものが戰力である。それが近代戰を遂行するに足るとか足らんとかいうことよりも、動員措置によらずしてすぐに戰力に利用し得る要素、こういうものであるという御解釈ですが、その点政府と違つたものですが、この二つの点ですね。
  36. 奧野健一

    法制局長奧野健一君) 私もその戰力という概念につきましては、やはり昔のような竹槍とか或いは刀とかピストルぐらいを持つていたからということで、これを戰力と言うのはやはり無理だろうと思います。が併し相当に、いやしくもいわゆる戰争と言われるような戰争をなし得る力を戰力と言うのであろうと思うのでありますから、その内容については昔から……昔と比べて相当内容が変遷したものとして考えるべきだというふうに思いますけれども、然らば近代戰の遂行として原子爆彈等を持たなければ戰力じやないかというと、そうではないと思います。そうしますとアメリカ、ソ連以外の国は全然戰力を持つていないというふうなことになるのでありまして、そうではなくて、アメリカ、ソ連以外の国でもやはり戰力は持つておるのではないかというふうに思うのであります。そこでいやしくも九條の二項のいわゆる「戰力」というのがそういう意味戰争をなし得る力を言うのでありますから、自衛戰争というものを許されて自衛戰争のためなら戰力を持つてもいいと若し仮に仮定するならば、その戰力もやはり先ほど言つたような力を持つた戰力でなければならないではないか。その以下のものはやはり戰力ではないということになるのではないかと思います。
  37. 吉川末次郎

    ○仮委員長吉川末次郎君) ちよつと申上げますが、奧野参議院法制局長に対する質問は続行中でありますが、岡崎国務相が出席せられておるのでありますが、岡崎君はなお他に所用があつて非常に急がれておりまして、大体十二時ぐらいまでには引上げなければならんというお申出でありますので、法制局長は院の方でありますから、更に後ほど現在の質問を続行することにいたしまして、岡崎国務相に対する質疑をして頂くことに運びたいと思いますが、御異議ございませんか。(「異議なし」と呼ぶ者あり)
  38. 吉田法晴

    吉田法晴君 一点だけ、それで終りますが……。
  39. 吉川末次郎

    ○仮委員長吉川末次郎君) 若し御異議がなければそれで一つ御了解を願います。……それでは大体御了解を得たものとして、これより岡崎国務相に対する御質疑のおありのかたがたは御発言を願いたいと思います。
  40. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 私岡崎国務大臣にはしばしばお尋ねをしたのですが、どうもまだ判然いたしませんので、もう一度繰返して、くどいようですがお聞きしたいと思うのです。岡崎国務大臣はこの今回日本の国とアメリカとの間に結ばれた行政協定が、安保條約の第三條というふうなものがなかつた場合には、これは両国間の條約である。そうして国会の承認を得べきものだ、こういうふうにおつしやつたことは確かなんでありますが、依然それはそうお考えになりましようか。
  41. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) そう考えております。
  42. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 そういたしますと、要するに今回アメリカと結ばれた行政協定は條約であつて、そうして本来国会の承認を得べきものである。併し安保條約の第三條があるから国会への報告にとどめて承認を求めることをしないのだ、こうおつしやるのでありますが、この第三條の「アメリカ合衆国の軍隊日本国内及びその附近における配備を規律する條件は、両政府間の行政協定で決定する。」という文句でありますが、要するに安保條約によつてそうすると配備を規律する條件に関しては行政協定という別個の條約で決定するということが第三條によつてきまつておるのであつて、つまり行政協定という別個の條約で決定するということがきまつておるだけであつて、これによつて憲法の七十三條の第三号の、「條約を締結すること。但し、事前に、時宜によつては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。」にかかわらず、必要としないという事柄は、この第三條からは出て来ないと思いますが、如何でございましようか。
  43. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) そういう御議論も成り立つかと思いますが、併し同時に、條約というもの、と言うと何かおこがましいようですが、こういう種類の條約は非常にたくさんありまして、條約の中で政府間でこういう種類のものをきめてよろしいというようなことになつて、両政府間できめた国際的の慣例は非常にたくさんあるのであります。條約と申しますものは、私の考えでは、無論條約の本文を忠実に解釈すべきものではありまするけれども、同時に国際間の條約でありまするから、過去において取極められた各種の條約の先例というものは、やはりこれを解釈するのに十分参考にせらるべきものであると思つております。そしてこの第三條の通り言葉は無論ありませんが、これと同種類の言葉を以て、両政府間の取極によつてよろしいというような種類のものは幾多あるのでありまして、我々は法理的に考えましても、こういうふうな規定がありますれば、これによつて国会がこれを非常な多数で承認されたときには、包括的に行政協定を作つてよろしいということを同時に承認されたものである、こう考えておるのであります。この点につきましては、アメリカ側のほうの意見も無論参照にいたしまして、双方でやはりそういうふうな解釈でこの協定は作つたものでありますので、安保條約の承認を求める際の国会における質議に対しましても、第三條の規定によりまして日米両政府間に作る行政協定国会の承認を得る必要はないと考えておるということは、政府においてしばしば特別委員会等で申上げた通りであります。條文だけの意味から申しますと、今堀木君の言われたような解釈もあるかとも考えられないことはないのでありますが、政府としては初めからそういう意味にとつておりまするし、又国会でもそういうふうに説明をいたしております。国際慣例もそういうことを認めておる、こう考えておりますので、やはり初めの通り考え差支えない、こういうふうに進んで来ております。
  44. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 今岡崎国務相の言われたことを考えて見ますと、国会の承認を求めない理由は、一つは国際慣行のようであります。それから二つは條約の特別委員会においてこの行政協定国会の承認を経ないというふうな説明をして来ておる、こういうふうなお話でありますが、その点に関して実は政府からこの委員会にも、米国及びその他の国における行政協定の例というものを頂戴しておりますし、岡崎国務相からも又大体行政協定の国際慣行として、特にアメリカにおいては六つの場合が予想されるということのお説明もあつたのは、私は承知しておるのですが、行政協定なるものは日本の対外條約としては新憲法下においては初めてだと思う。この行政協定国会の事前又は事後の承諾を得る必要がありや否や、憲法七十三條の規定によるべきものなりや否や、この点は私は日本国内の法規に照らしては初めての例だと思う。無論国際関係におきましていろいろな実例はあるということは承知いたしておりますが、日本の国でこれをどう取扱うかということは最初の例であつて、それは日本憲法に照らして考うべきものじやなかろうかというのが第一点であります。国際慣行で以て憲法及び法律を変えるわけには行かない。殊に第二段の、今度は第三條によつて包括的承認が得られたのだ、特に両條約の特別委員会で以て、政府国会の何と申しますか、この点に関しては政府間できめてしまうのだ、政府間できめられることは、これは條約ですから、條約の締結権は政府にあるのですから、これは当然だと思うのでありますが、国会の承認を得ないような行政協定できめるのだという説明をした、こういうお話なんですが、と同時に政府は、日本国憲法に従つていたします。日本国憲法に反するようなことは一切いたしませんということを條約の特別委員会はつきりおつしやつておる。それからもう一つは、如何に政府のそういう説明があり、国会がその説明を聞いておつたという事実があつても、それが国会の承認を得ない條約でいいのだということは、国会といえども、政府といえども、憲法及び法律の明文がなくちやそういうことは私はできないものだと思う。便宜的に個人の話合いのように国会は動くのでなしに、憲法法律によつて動く。そういう明文がはつきりしていてここに国会政府の機能が発揮されるのでありますから、御説明があつたということを以て、私は行政協定が條約である以上、憲法七十三條の第三号の規定を排除するものだとは考えられないのですが、この点についてどうお考えになりますか。
  45. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 私が、政府としては特別委員会等で今堀木君の言われたような説明をいたしたということを申したのは、政府が何かそういうことは全然言わずに、知らん顔してこの條約を通しておいて、あとでこの三條があるから当然できるのだ、そういうふうに言つておるのじやない。正直に初めからこの三條という意味は、こういうふうの解釈行つておるのですということを国会説明しておる、こういうことだけを申しておるのであります。法理論は、国会説明があるなしとは関係なくして、今申したような国際慣行とか、その他憲法解釈等から、政府はこれで差支えない、こういう法理論に立つております。その法理論を隠していなかつたということだけを附帶して説明しておるわけであります。
  46. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 それで実は国会にこの條約……この行政協定国会の承認は得ないのだという説明があつたということは、法理論としては意味ないのだが、ただ政治道徳的と申しますか、そういうふうな気持から初めから言つておるのだと、そういう、隠してやつてつて、あとから伏線みたいに三條が出て来たのじやないと、これは私承知します。併し、と同時に先ほど言われたように、法理論からはそういう話合いがあつたことは意味がないということは岡崎国務相もお認めになつた。そうすると残つて参りますことは、この国際慣行だけになつて参るのです、率直に言うと政府の御議論は……。そうすると私はもう一つここで確めておかなければならんのは、成るほどお示しになつたような、行政協定は米国その他の国においては例があろう、併し日本の国においてはこれは初めての例であります。で、日本の国において初めての例であつて、それを解釈するのは、どうしても日本憲法によつて国内的にこれをどう取扱うかという問題は、私はやはり憲法によるよりしようがない。その点についてはどうお考えになるか。はつきりした御説明がございませんでしたが、この点たけをもう一遍……。
  47. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 私はやはりこの安保條約の第三條によりまして、包括的な行政協定取極の承認を得たものと考えております。従いまして安保條約第三條がなければ、国会の承認を必要とするのでありましようけれども、安保條約の三條によりまして、もう認められておりまするから、国会の承認は必要がないと、こう考えております。
  48. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 国際慣行が私は残つた唯一の例だと思つたら、又今のお話は今度国際慣行でなしに、安保條約第三條で包括的承認を得たものだとおつしやるのですが、安保條約の三條によつて包括的承認がどうしてあり得るか、こういうふうな問題になつて参ります。この文句をお読みになつても、その点は明文で少しも出て参りません。それから憲法によりましてもそういうことができる、政府としてそういうことができるような権能がどこにもない。そういうふうに考えて参りますと、これで以て、これは條約と條約の関係をきめておる、配備を規律する條件は両政府間の行政協定という條約で決定するということだけであつて、これで以て包括的條約の委任は生ずるかも知らんが、いわゆる憲法法律関係法律と政令の関係というものはちつとも出て参らないと私は思う、こういうふうに考えるのですが、何を以てこれで以てそういうふうな法律関係が生ずるとお考えになるか。その法律関係をお聞きしたいと思います。
  49. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) これは安保條約第三條では「両政府間の行政協定で決定する。」、こう書いてありますので、両政府間と特に記してあるところから見ましても、これは両政府間ですることを承認されておる、こう考えております。
  50. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 両政府間ということに特に意味をお持たせになりましたが、條約の締結権は政府にあることは確かなんです。ただ、だから條約というものはどうしたつて両国政府間できめる、これは憲法上の権能に従つておやりになつておるのだと思います。当然の私は規定だと思うのです。特別な意味がありようがない。ただ政府間できめた行政協定という條約がどう国内法では取扱われるのか。これが国内的な手続になりますと、憲法以外に決定するものは何もないと私は考えるのです。それから更に進んで、どうも国際慣行のことも御答弁になりませんが、国際慣行の問題についてもう一つ申上げたい。日本憲法では條約については区別してない。こういう種のものは国会の承認を得なくていいのだというものは、憲法にもどこにもない。そういうふうな関係から見ますると、どうしたつて二つの條約が私は日本憲法では考えられないのだ、こういうふうに考えるのです。でありますから、先ず今御答弁になりました両政府間の行政協定は、政府間だから、これは当然政府間できめるより……両国政府の、両国間の條約というものは、両国政府できめるよりしようがないので、だからそうすれば、特別に国会の事前又は事後の承認を必要としないというなには出て参りません。何らか国内法的にこういう行政協定というふうなものは国会の事前……憲法七十三條の第三号の規定を排除するのだというふうな明文がなければできるはずがない、こう考えるのでありますが、この点についてはどう考えるのでありますか。
  51. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) そのお説はそうでありまして、政府間で締結するのは当然でありますが、これはまあこの安保條約だけの例で、どの條約にもそうなつておるとは決して申しませんのであります。例えば、安保條約を御覧になると、前文では「日本国は、本日連合国との平和條約に署名した。」日本政府は署名したとは書いていない。「日本国」或いは「連合国」とこう書いてあるのです。又第一條を御覧になると「日本国は、許興し、アメリカ合衆国は、これを受諾する。」、こういうふうになつております。ずつとこういうふうに日本国若くはアメリカ合衆国というふうな字句を使つて来まして、第三條におきまして「両政府間の行政協定で決定する。」、こういうふうになつておりまして、多少、つまり平和條約というものは、署名するのは全権であるということになりましよう。「日本国は、本日連合国との平和條約に署名した。」と、こう前文にありますのは、今堀木君のおつしやつたような理窟から言いますと、国が署名するのではない、全権が署名するのだ、こういうことも言われると思いますが、條約の形では「日本国は」と、こういうふうになつております。條約というものは、無論政府が締結するものではありますけれども、こういうふうに第一條にも第二條にも国という字が出て来ておりまして、第三條に至つて初めて「両政府間の行政協定で決定する。」、こういうふうになつております。で、これだけが理由ではありませんけれども、つまり「両政府間の」という意味がここに出て来ておると、こういうふうに考えております。
  52. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 いいですか。私だけ時間をとつておるので非常に申わけないのですが、この「両政府間の行政協定」の「両政府間」ということに意味があるといたしますれば、アメリカ側には意味があるのです。だからその意味はですね、岡崎国務相が私どもの知識を啓蒙して頂いたこの行政協定は、「両政府間」とわざわざ書いたということは、私はアメリカには意味がある、だからお書きになつたのだ。併しそれを直ちに日本国内法で、アメリカは憲法及び慣行によりましてそういうことは国会の事前、事後の承認を必要としない、こういう慣行があるから私は意味が生じて来る。併し日本にはそういう国内法的なものが一つもないのですから、日本には意味が生じないで、やはり通常の形によつておやりになるということになつておるのです。それを強いて日本にまで意味を持たせようとなさるところに私は間違いが起ると、こう考えますが、如何ですか。
  53. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) まあこれは憲法が布かれましてから、條約らしい條約を結んだというのは、大体昨年の、而も昨年の半ば以後と考えられるのでありますが、その意味から言えば、新憲法の下に先例がないのはこれは止むを得ないことと考えておるのであります。併しながら国際慣行と言いますか、国際間にもこういう慣例がずつと行われておりまするし、又そういう法理は国際法学者の間にも認められておるところと考えております。そして第三條でこれはこういう意味でありますということをよく御説明しておるのでありますから、    〔仮委員長吉川末次郎君退席、楠見義男君委員長席に着く〕 私はこの第三條によりまして、両政府間で行政協定を取結ぶことは、日本政府としても差支えないことだとこう考えております。
  54. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 今度は国際慣行の原理、法理が入つてつたのでありますが、これはもう釈迦に説法で、岡崎さんのほうがよく御承知だと思うのです。條約が国内法的にどう扱われるかということは、国によつていろいろ差があることは御承知通りで、行政協定の問題だけでありません。正式に條約、これは條約だと私は思いますが、又岡崎さんもその行政協定自身は條約であるとおつしやるのですが、條約自身が国内法上どう取扱われるべきものかということは、その国の憲法によつて、おのおの国を異にして違つておる前例は、私がここで挙げると却つておかしうございますから挙げませんが、これは岡崎さんのほうがよく知つておる。ですからやはり今おつしやつたように、この行政協定というものについてそういう国内法的な成文化された慣習法を尊重するところの国は慣習法も尊重されなければならん。そういうふうな点で、そういうものがあるからおのおのの国内法によつてきまる。そして日本では確かに條約らしいものは去年から、去年の半ばから始まつて参つたわけでありますが、でありますから、日本ではただ素直に日本国憲法の命ずるところによつて解釈するのが正しいと解釈するよりほかに解釈の仕様がない。他の国際慣行なるものを持つておいでになつても、これはその條約自身が国内法的にどう取扱われなければならないかということは、国によつて違うことであるということも、これは国際慣行ではつきり認められておることでありますが、その点はお認めになりませんでしようか。
  55. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 国によつて国内的の取扱の違つておることは、これはもう当然であります。併し日本憲法でこういう規定があつた場合に、両政府間できめることができないのだというような、これは憲法解釈になりまするが、政府としては憲法学者意見も十分尋ねましたし、又法制意見長官等、政府憲法その他法律解釈をする正当の機関であるところにも無論問い質しました。日本憲法解釈上からも第三條のような規定があれば、これは両政府間でできるのであるという法理論に立ちまして政府は措置をいたしておるのであります。
  56. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 これはもう岡崎さん、学者だとかそれから法制意見長官意見を御必要としないと私は思うのです。要するに何らこの憲法七十三條の三号の例外的な規定というものは何もないのです。日本の国の憲法では、條約で以て国会の承認を経るを要するものと経るを要しないものということは考えられない。それは七十三條六号を御覧願つても、憲法及び法律の規定を実施するためには、政令を制定することとして、而も政令にはこうだ、こういうふうに法律の委任事項につきましてもこういうふうな憲法上の例外規定があるからできる。だからこの点については私は一点の疑いもないと思います。それから学者の御意見をお聞きになつたというのですが、実は当院におきましても予算委員会において学者三人来て、三人とも、行政協定はこれは條約であつて国会の事前又は事後の承諾を得ないことはこれは違憲だ、こういうことを言つておられる。まあ学者意見をどういうふうにお聞きになつたか知れませんが、とにかく当委員会においてもそういう、これはまじめな学者がそう言つておるということから見ましても、実際問題から言つても、今度はそういうふうな情勢にあるときに、政府としては特に憲法の條章に反しないような態度をおとりになることが一番いい。これは私としては、この前も申上げたように、そういうふうに今お聞きして参りましても、ずつと御説明がつきにくいというふうなものについては、これは当然何らか明文があつて初めてできることを、明文なしにお考えになるということは、私は法理論で大体理由のないことは明らかになつたと思いますが、実際問題としても、そういうふうにお考え直しになることがいいのじやないか、こういうふうに考えます。なおこの安保條約に関してもう一点だけ別なほうから岡崎国務相にお聞きしておきたいと思うことがあるのですが、実はたくさんあるのですが、お時間が非常に制限されておりますのと、私だけがしやべるのは申訳ないと思うのです。これは行政協定のうちに、第二十七條の二項でございますが、「その実施のため予算上及び立法上の措置を必要とするものについて、必要なその措置を立法機関に求めることを約束する。」、こういう規定があるので、岡崎国務相は、その條約に基いて国民の権利義務を制限するものについては別に法律案を出すのだ、そうしてその法律案が国会によつて承認されなかつたときには、その分だけは国内的には効力を発生しない、こう言われておるのでありますが、そのときに日本では、だから或る條項法律案になりまして、国会がこれを承認しないときはその條項は実際上無効になる、こういう場合があるのでありますが、その場合に、この規定でアメリカもその点は無効になる分があつてもいいのだ、こういうことを予想しておるのでありますか、いないのでありますか。
  57. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 前の点から先ず申上げますが、実は今の、現在の行政協定国会承認の要否ということは関係ありませんけれども、私は條約というものを広義解釈しまして、両国家間の合意をなしたものはこれは條約である、こう認め、考えますれば、実は国会の承認を経ずして作つておるような種類のものもあるのであります。これは内容的には非常に軽いものであり、或いは技術的なものでありましようとも、例えば郵便條約によりまして、両郵政長官で協定をいたすものなどはこの新憲法下でもあるのであります。これについては無論技術的のものであり、又内容もそう重くないものでありまするから、国会においても別に論議はされておらないのであります。又これらは旧憲法時代にも同様の取扱が行われており、又世界各国とも同様でありますが、併しその條約とは何ぞやという議論をお進めになりまして、憲法に條約というものはこれしかないんだという、ほかのものは何も国際間の取極については條約という字が全部かぶされるのだ、こうおつしやれば、やはりその條約の中には、非常に広義解釈した條約でありますが、そういう種類のものもあるということも言えるのじやないかと考えております。が、それは別問題としまして、今のお話でありますが、第二十七條の二項の規定は、今堀木君の言われましたことは非常に理窟つぽく言うと少し違うかも知れません。あとのほうはたしか私の考えと同じようなことをおつしやつておりました。要するに立法措置を求めて承認されない場合には、国内的にはそれに関連する事項が実施できないと私は申上げるのです。効力を失うのじやなくて、国内的の、これは條約でありまするから、條約がそのまま国内的に効力があるかなしかということは、これは又別の議論になりますけれども、一種の條約としての効力は私はあると考えております。ただその部分だけが実施できない、こういうことであります。これはアメリカ側でも、意味は違いますけれども、この会議の議事録にも書いてありますが、必要な立法措置を求める場合があるのでありまして、その場合にそういう立法措置が仮にできないと仮定しますればその点は実施ができない、こういうことにもなるのであります。例えば行政協定の議事録の十四頁の所には「前期の支出手続が実施に移される前に、合衆国議会の授権立法が必要とされる。」、こういうようなわけでございまして、この授権立法ができなければこの点は実施できないわけであります。そういうわけで両方共に国会行政府とは別でありますから、必ずしも行政府考えているようにできない場合もあるかも知れんということは相互に承知しておるわけです。
  58. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 それで結局岡崎国務相のお考え方では、條約としては国内的には効力を発生しない、実施できない状態になる。それは予想しておるんだ、併し條約としては両国家間を拘束するんだ、こういうまあお考えだと思うのです。そこで私ここで一つお聞きしておきたいと思いますことは、先ほどちよつとお触れになりましたが、條約自身は国会が承認する場合の時に可分なものか不可分なものか。つまり條約というものは一つの不可分なものであつて国会がそれを承認する場合に、修重して承認するときには別な條約になる、これはアメリカでも平和條約と安保條約のときにそういう議論があつたようでありますが、その点についてはあなたの御見解はどうかということを一つお聞きしておきます。それからその御質問の前に、條約について、すべての国家間の取極という條約を非常に広義岡崎国務相としては解釈しておられる。だから行政権の範囲でできるような規定、先ほど言われました郵便物の取扱に関する国際的な協定、條約、そういうものについて例を挙げらつれたのですが、少くともこの点はお認めになる、私どもの言つているのは、少くともこの点は明らかになつている。憲法が條約について制限しておりませんが、その中で国会の承認を得ないでいいようなものは当然行政権の範囲で締結し得る権限内のもの、そういうものについては私は岡崎さんのような理論は立つ。併し国民の権利義務に関係した條約自身については、先ほど引例しました七十三條の六号というのを御覧になつても、憲法上明文がなくちやできないことである、こういう見地に立つて私が條約問題について論議していることはこの際に明らかにしておきたい、こう考えるのであります。
  59. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 先ほど堀木委員の質問に対して岡崎大臣の御答弁の中に、先の安保條約審議の際の説明と法理論とは別だというような意味合いの何ですが、これは私ちよつと解しにくかつたんですが、今問題になつております行政協定が改めて国会の承認を要しないという法理的の根拠、実は前の国会においてのこの條約案というのは、こういう趣旨内容のものだという政府説明、あれが非常な基本になつているのだと思うんです。その際政府側でこういうふうに言つておられる。この行政協定というのはその都度これを国会の承認を受けることなく、あらかじめ事前に承認を受けるという趣旨においてこの條約案ができておりますと、こういうふうに言つておられるわけです。つまりこの條約のこの條項も、條約の合意の内容がこういうものだというところにある。そこが根拠をなして初めて改めて国会の承認を要さなかつたという法律論が発生するのを、ただ單に文言のみから申しますと、堀木委員もたびたび言われるように、文言からのみでは明瞭を欠く、或いは見方によれば……。併しそこのところを補つて、殊に文言のみによつて解釈するものじやないから、そこのところを補うのに、この條約締結の際の両者の合意の内容はこういうものだというところこそが法律的の根拠をなすものだと私はそういう意味からいたしますと、さつきのあの説明云々の言葉はそういう趣旨でお使いになつたんじやないと思うんですが、聞きようによつて誤解を生ずると思いましたので、その点確かめておきたい。
  60. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 只今の御質問でありますが、政府としてはこの法理論で、先ずこういうことができるかどうかということを研究しまして、安保條約にこういう條項があれば、これで行政協定は両国政府間でできるという憲法解釈、国際的な慣例なり、その他から言いまして、これはできるのだという解釈に立つたわけであります。その御説明をいたしたのであります。つまり法理論としては、もうこの説明あるなしにかかわらず成立するものと考えておりますが、ただ私の強調しましたのは、それを黙つて国会の承認を安保條約について得て、あとからもう三條があるからしようがないのだ、こういうことを言つているんじやない。その点も明らかに政府考えている法理論は国会説明いたしまして、それを国会で承認された、こういう意味に申上げているのであります。
  61. 楠見義男

    ○仮委員長(楠見義男君) ちよつと余り時間がかかるようだつたら(「簡單」と呼ぶ者あり)先ほど吉川さんからお話がありましたように、岡崎国務大臣は十二時に用があるというお話でしたが、大分時間が……。
  62. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 議事進行。今の、実は私は予算委員会にも二十四條の解釈については別な機会に聞きますと言つてありますし、今案は條約の一つ一つの、二十七條の二項についてもまだ解明ができていない。私と岡崎国務相行政協定に関する質疑応答を御覧になつつて、皆さんが果して納得したかどうか、わからんと思うのです。私自身納得しておらない。従つて岡崎国務相が何か国務上の御用があつてお帰りになるとしても、もう一度あとで来て頂かなければ、これはとても意味をなさないと思う。その点をはつきり委員長のほうからお約束の上で岡崎国務大臣がお帰りになるならばいい。
  63. 楠見義男

    ○仮委員長(楠見義男君) その点は私も実はそういうつもりで申上げたのですが、岡崎さんどうですか。ちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  64. 楠見義男

    ○仮委員長(楠見義男君) では速記を始めて下さい。
  65. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 私はそれでは角度を少し変えてお聞きしたい。先ほど岡崎国務大臣から広い意味の條約の定義と申しますか、両国家間の合意によるという御説明がありました。それでは行政協定とはどういうものであるか、その定義を一つ伺いたい。(「意味のないことだ」と呼ぶ者あり)はつきり正確な定義を聞かして頂きたい、行政協定の……。
  66. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 行政協定の定義ですか。行政協定の定義と申しますものは、この行政協定というのは、何と申しますか、アメリカでは普通エグゼキニーテイブ・アグリーメントと言われておりまして、アドミニストラテイヴ・アグリーメントと言つておることば少いと思います。要するに行政協定というのは、私は非常に正確な定義というものはあるかどうかはつきり申上げられませんが、両政府間で取極める協定、こういうふうに私は解釈しております。それ以上にはちよつと言いようがないような気がいたします。
  67. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 この点甚だそんな簡単なことでは困るので、行政協定というものは、これは最初の例だろうと思うのです。いろいろこれに類似のものがあるとおつしやいますが、それは飽くまで類似であつて行政協定なる名の下に條約の或る部面を取結ぶということは、これが前例になると思います。軍なる両政府間で取極める協定だというような漠たることでなくて、もつとはつきりした言い廻しがあるのじやないか。まあ批准の関係はどうなるか。批准は大体その当該條約におきまして、その批准をするときに効力が発生するとか何とかきめてあるのですが、大体普通の條約ならば調印をして、それから国に持つてつて、それから国会の承認を得て、そして批准をする、そうして効力を発する、こういう順序だろうと思うのです。行政協定というものは、初めてこういうことが出て来ますが、アメリカでやつている例を見ても、批准は要らない。政府の調印だけでいいのだということではないかと思うのです。それがここに現われている両政府間の行政協定で決定するということは、もう批准が要らないのではないか。批准は要らないのではないかという意味に解する。そういう点をもつと学問的にお話願いたい。
  68. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 実は私の知つている範囲では、行政協定とは何ぞやという定義は、国際法ではないと考えておるのであります。ただアメリカでは行政協定という字を使つておりまして、これは無論言葉意味するように、国会の承認を得ずして両政府の間できめる協定、こういう意味に使つております。よその国の例はむしろこの逆でありまして、批准がなければ、つまり国会の承認がなければ確定的にならない條約というものば何であるかということを書いてきめておるのは多いのであります。例えばフランスの例を申しますと、平和條約であるとか、通商條約とか、その他外国にあるフランス人の身体及び財産に関する條約とか、領土の割譲とか交換とか、こういうものは批准を要する條約である、それ以外のものは批准するを要しない條約であるというようにして、批准を要する條約の種類を法律によつてきめておる場合が多いようでありまして、これはフランスのみならずそのほかの、例えばチリーであるとか、イランであるとか、イタリー、スエーデン、チエツコスロバキアとかいろいろの国がそういうようなことをやつておるようであります。つまり批准を要する條約は何であるか。アメリカのほうのは一般に條約は国会の承認を得るという原則で、ただこれだけのものは大統領なり、両政府間でやつてよろしい、こういうふうに逆にしておるようであります。要するに内容から言いますと、各国の例は批准を要するものと、批准がなくてもいいものと、なくてもいいものについては一般的に国内法でこれだけはなくてもいいものだというように認めておるものと、アメリカのようにこういう種類のものはいい、こういう種類のものはいいという特別の法律なり、或いは慣行なりで認めておるものと二つありますが、つまり内容的にはやはり二つに分けておるようであります。私どもの申しますのは、先ほど堀木君からおつしやつた憲法の中には條約というものはこれしかないのだ、ほかに批准を要する條約とか、要しない條約とかはないのだというお話がありましたが、内容の重要さとか、内容の区別等は別にしますと、形式的に言いますと、これは両郵政長官の取極でも、両政府間の合意による協定である、こういうふうに考えるのでありますから、郵政長官の協定などはこれは常識的に見て、その元の條約が両郵政長官で取極めてよろしいと書いてありますと、日本国内でも新憲法下でも別に問題にならずに認められて協定を作つておるのであります、形式的に言いますと……。でありますから條約で認められておれば両政府間で作れる、こういうふうに考えるのでありますけれども、行政協定という定義を挙げろと、こう言われますと、私は正確な定義は挙げにくいのじやないか、今みたいな極めて常識的な意味になつてしまう、こう思います。
  69. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 私は今岡崎国務大臣がおつしやつたことと少し違うように考えておるのです。それは行政協定で決定する、こう言われた、こう書いた、約束した意味が、これは條約だけれども、批准を経ないでいいのだということを決定しているものだ、こういうふうに私は思つておつた。政府もそういうふうに説明しておられたと思つておつた。行政協定という新らしい形式は、国会のこういう委任を受けて、そうしてその分については更に批准を要しないで両政府間で決定していいのだというのが行政協定だ、こういうふうに思つてつたのでありますが、その点違うのですか。そういう批准には、全然関係がないのですか。
  70. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) これは私は行政協定という名前たけで見ますると、ちよつと誤解を生ずるようなことがありやしないかと考えるのであります。と言いますのは、例えば北大西洋條約に基く軍隊の地位に関する協定、例の問題になつておる協定があります。これは内容的に見ますると、今度日米両国間で作りました行政協定と趣旨においては殆んど一致しておるものと考えるのであります。併しながらこれは親になる條約が存在しておりませんので、アメリカでも批准を要するものといたしております。内容的には、若し内容だけで議論しますならば、行政協定と殆んど一致したものと考えられるのであります。そこで今岡本君のおつしやつたように、行政協定というと国会の承認を得ないでアメリカ側ではきめる、きめ得る協定、こういうふうに考える。つまり大統領限りと言いますか、画政府限りできめ得る協定、こういうふうに見ておる向きも今岡本君の言われたようにあるのであります。ただ日本のほうの立場から申しますと、行政協定と書いてあつたからと言つて、直ちに国会の承認は必要としないのだというところまでは言いかねるのでありまして、やはり内容的に見て必要なものは国会の承認を得べきものである、こう考えております。で、内容によりましては、例えば今申した両郵政長官の間の協定というようなものならば、もうこれは国会の承認を必要としない、こうも考えられるのであります。そこで今度の行政協定につきましては、安保條約の三條ですでに承認されたものでありますので、改めて国会の承認は必要としないので、つまりこの安保條約に基きまして今度は両政府間できめ得る、こういうことになると解釈しますので、ここに通例わかりやすい言葉行政協定で決定する、こういうふうに書いたわけであります。
  71. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 そうしますと、行政協定という言葉を使つて條約を結ぶということがありましても、それは内容によつて今後とも国会の承認を得なければならん、そういう行政協定というのは今後出て来るということをおつしやつたのですね。
  72. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 早く言えばそうであります。つまり私の考えでは、如何なる名前をつけた協定でありましても、如何なる名前のついた協定でありましても、その名前によつて国会の承認を要るとか要らないとかということにはならないのでありまして、親になる條約があつた場合には、国会の承認はあつたものとして両政府間で作り得る。そのときに行政協定と名前をつけましようとも、又はかの名前をつけましようとも、それは差支ないことであると、そう考えております。
  73. 岩間正男

    岩間正男君 関連して。午後から詳しくお聞きしたいと思うので、時間を十分頂きたいと思うのですが、今の関連して……、局部的に言えばやつぱり国会にかけなくちやならん問題が出て来る、こういうことなんですが、併しそういうような局部的な問題をかけるとしたら、当然その親になる行政協定そのものが国会の承認を必要とするのではないか、こういう問題が一つ、それからこの問題は安保の第三條の配備の規律、こういうような点で限定されると思うのです。こういうものに逸脱した面が非常にあると思う。そういう場合には当然これは国会にかけなきやならない、そうでなくてもかけなくちやならない、議論先ほどから行われたのでありますが、仮にまあこの問題を、これはどうせあとでもつともつと明らかにされると思うのですが、仮にそういうような点を抜きにして考えても、逸脱した場合には当然国会にかけなくちやならないと思うのでありますが、そういう点はどうですか。
  74. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 無論この安保條約の三條に、アメリカの駐留軍の配備をきめる問題、こう書いてありますから、当然配備と規律する條件が行政協定の対象となるのであります。それ以外のものは行政協定の中でやるべきものではないのであります。
  75. 岩間正男

    岩間正男君 逸脱した面がある場合、そういう場合にはどうなるのですが。
  76. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 逸脱する面があるわけはないと私は考えてはおります。政府のやり得ることは安保條約の三條によつて認められた範囲内でありまするから、政府として逸脱するような協定をいたすわけはないのであります。又そういうことはすべきものでないのであります。
  77. 岩間正男

    岩間正男君 それは午後から詳しく具体的な事例はお聞きしようと思うのです。併しそういうようなことはいずれ決定されると思いますが、今仮に逸脱したそういうような問題が起つた場合にどうするか、こういうことをお聞きしているのです。これは当然かけるべきものと思いますが、そう解釈してよろしうございますか。
  78. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 私はそうは思いません。若し逸脱した面が仮にあるとすれば、これは全く仮定の問題でありますが、行政協定を改めるべきものだと考えております。
  79. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 仮定の問題と言われましたが、私は仮定の問題じやない具体的なことを指摘して御答弁願いたい。先ほど堀木委員の質問に対して国際慣例によりましたと言いましたけれども、国際慣例につきましても、一番近い国際慣例は北大西洋條約、これに基く先ほど軍隊の規定、それが一番近いと思うのです。それと比較して見た場合、北大西洋條約にある軍隊の駐留の規定と比較した場合、明らかにこの行政協定は私は逸脱していると思う。その点を一つ解明して頂きたい。具体的に申上げますれば、この行政協定の二十四條のごときは、これは合衆国軍隊日本国内及びその附近における配備を規律する條件を逸脱してくるのじやないかと思います。こういうことは配備の條件じやないと思う、そこでお伺いいたしたいのは、配備の條件とは何ぞや、その條件を具体的にお聞きしたいこと、一番これに近い国際慣例である北大西洋條約に基く軍隊の規定、他にこのような規定があるかないか。私は北大西洋條約に基くその軍隊規定は、これは日本行政協定と大体似ていると思う。併しその中には二十四條のようなあれはないと思う。これは衆議院でも恐らくそういうことは言われたと思うが、その條件を一つ、その條件とは何であるかということを伺いたい。
  80. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 先ず二十四條から申しますと、これは何も中身を規定しておるのじやなくして、極めて常識的なことを書いておるのであります。そこでこれで何が起るか、何も起らないのであります。ただ両政府間で協議をするということを書いてあるのであります。これはこのものはなくなつつて当り前の話でありまして、敵対行為が発生するとか、その脅威が急迫に生じたという場合に、日本政府はアメリカ政府との間に、ここにアメリカの軍隊を置いて、日本の安全を防衛しようとしている際に、アメリカ政府日本政府が緊急に話合いをしないということは考えられないことであります。ただこの行政協定の報告の際にも申上げた通り、これはなくてもいいような規定でありますけれども、交渉当時に国会においてもしばしば何か秘密の協定があるんじやないか、或いは秘密の了解事項があるんじやないかとか、議事録に何か書かれておるんじやないかというような質問が非常にしばしばありました。そこで行政協定においてはこういう問題は何も約束しておらないんだ、こういう意味からも両国政府が協議するんだということを明らかにして置いたほうが、国民に秘密の協定があるなんという疑惑を起させないで却つてよろしいであろう。と同時に日本政府とアメリカ政府は敵対行為等が起つたような場合には、日本の防衛のために共同してがつちりとその侵略行為等を食いとめるつもりなんだという意思を明らかにして置いたほうがよかろうというので、こういうものを書いたのでありますが、要するにこれはそういう場合には両国政府で直ちに協議をするんだ、こういうことだけでありまして、何も内容としてはきまつたものはないのであります。又北大西洋條約若しくは軍隊の地位に関する協定についてこういうものはないじやないかというお話でありますが、あの條約は御承知のように初めから加盟国間で或る一国に攻撃が行われた場合には全部の国に攻撃が行われたものと考えて、これに対抗する措置をとるという精神から出て来ておるのでありまして、直接に申せば軍事協定でありまして、従いまして当然のことでありまして、そういうことは軍隊の地位に関する協定の中に書いてなくても当り前のこと、つまり性格のまるで違う問題であります。ただ内容的に軍の配備を規律するという点において性格が今度の行政協定と似ている、こういうことだけであります。
  81. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 驚くべき御答弁を伺つたんですが、この二十四條はあつてもなくてもよろしいんだ、これが若しもないと何か秘密協定みたいなものがあるように誤解されるのでこれを設けた、そんな簡單なものなんですか。実は、むしろこれこそが第一に一番重要な問題になる、これによつて米軍は極東の平和と安全に寄與するために出動する問題が起つて来る、それから外部からの武力攻撃に対するため出動するという問題、第三に内乱、騒擾鎮圧のため出動するような場合が起きて来て、これに基いて又いろいろな話合いの決定ができて来なければならんと思うんです。これらの事項はその性質上日本の国家主権の発動と関係が出て来ると思う。ですから当然、場合によつてはその制限を受けなければならんような事態も発生するかもわからないと思うんです。従つてこの二十四條はこの行政協定條項中私は一番重要なんだと思つておるんです。いわゆる集団安全保障的な体制を考えればもう一番重要な條項だと思う。これこそが北大西洋條約のあの軍事規定と比べて違つたところだと思うんです。それにもかかわらず今のような、あつてもなくてもいいというような、そんな軽い條項であるという御説明では私は驚くべき御説明だと思うんです。これは国家主権を制約する可能性が出て来る重要な條項で、駐留軍が出動するという場合に、これに防御のため必要な共同の措置をとるということは非常に重要だと思います。何にもきめてないというが、共同措置をとるということは出動と関連して非常に重要なことになつて来ると思います。こんな重要なことをあつてもなくてもいいというような説明では私はおかしいと思います。而も北大西洋條約に基く條項は、今お話のようにこれは批准をすることになつております。その軍事的な規定だけでも各国では批准をしておる。ところがそれ以上に日本の主権を制約する條項について日本ではこれが批准をしなくてもいい、従つて一体このアメリカの軍隊が、日本国内及びその附近における配備を規律する條件というものは、大体国際的に通念としてそういうものはあるんじやないかと思う。それは北大西洋條約に基く軍事條項ではないか。それを越えた場合に條件を逸脱しておる、こういうふうに見られておる。そこでその條件というものをお示し願いたい。これこそが一番重要な問題だと思うのです。條件はどういうことが、どの範囲が條件になるか。これがあつてもなくてもいいと言いますけれども、これが何ら條件にならない、條件にならないならこれをお外しになるほうがいいと思います。そうしませんとこれは逸脱しておるということになる。ですから條件を一つ具体的にお示し願いたい。
  82. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 先ず第一にあつてもなくてもいいと言うんじやなくて、これは内容は重要であるかも知れんけれども、行政協定で取極める問題でない、これは両国政府で協議をする問題である、こういうことをここで明らかにしておるのであります。そこで今木村君のお話では、アメリカ軍が出動する三つの場合がある、そして極東における国際の平和と安全の維持に寄與する、それから内乱の場合、外部の武力攻撃、こうありますが、この二十四條はこの第一の場合は入つておらないのでありまして御覧の通り日本区域において敵対行為又は敵対行為の急迫した脅威が生じた場合」、国内とは限りませんけれども日本に対する脅威が起つた場合であつて、極東の平和のほうはこれは別問題になります。そうして軍隊の配備と言いますものは、これも国際的の定義はないのでありまして、いろいろの国の例が集まりまして国際慣行となるのであつて、若し北大西洋條約に基く軍隊の地位に関する協定が効力を発生いたしますれば、これが又新らしい国際慣例の一つとなつて考慮されるのであります。今までのいろいろのこの種の軍隊の駐屯に関する協定の中には、出動する場合のことも書いてあるのもありまするし、それが書いてないのもあります。例えばイギリスとアメリカの協定等は主として裁判管轄権とか税に関する問題とかの協定でありまして、出動する場合のことは書いてないのであります。書いてないのでありますが、これは一九四一年、つまり欧洲の第二次大戦の発生後に、そしてドイツの攻撃が非常に激しかつたときに作られたものでありますから、その出動するとかいうようなことはもう当然考えられたわかり切つた問題として恐らく書かれなかつたんだろうと思います。中にはただ裁判管轄権をどうするとか、税をどうするとか、そういう問題が協定されましてそれが今日まで来ておる、こういうようなわけであります。要するにこの二十四條は日米両国政府で協議するんだということだけを明らかにしておりましてそれはその協議の結果は重要かも知れませんけれども、協議は敵対行為の危険が急迫して生じた場合に協議をするのでありまして、そのときに若し木村君の言われるような重要な問題が起りますれば、そのときは政府国会その他の関係考えて当然適当の措置を講ずるでありましようけれども、只今こういう協議をいたしているわけではないのでありますから、内容は何もきまつておらない、こういうことであります。
  83. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 どうもその御説明では納得しないのですが、これまで政府がたびたび説明して来たところでは、要するにこの行政協定は安保條約三條の問題を実施に移す事務的な実施細目みたいなものである、こういうふうに言われて来たのですが、而もこの二十四條は、今のお話では内容は重要であるかも知れないけれども、今後は協議をするということをきめただけだ、こう言われているのですが、その内容が非常に重要であるからこそ、これは單なる事務的な取極とは違うのじやないかと思うのです。幾らそうおつしやつても、これは内容が重要なんですから、ここに入れれば非常な誤解を生ずるし、更に又事務的な細目以上のものであるということを今お認めになつたのですね、非常に重要であるということを……。それこそが全体を御覧になつても、それからこの平和條約安全保障條約それに基く行政協定、それは何のためにできたかと言えば、いわゆる集団的安全保障、アメリカの防衛体制の一環としての、防衛体制を作るための措置であつて、これこそが芯です。私はそう思う。法理的というよりも具体的に、政治的に、或いは外交的に、軍事的に見ればこれが芯だと思う。こういうものを單なる事務的な実施細目として掲げることはこれは非常な問題だと思うのです。時間がありませんから私は最後にお伺いいたしたいのですが、北大西洋條約に基く軍事條項と、それは各国とも批准している。それとこの行政協定との違いです。北大西洋條約における軍事條項とこの行政協定は大体その配備を規律する條件としては似ている。ところが国際慣例と言いましたから、これは北大西洋條約に基く軍事條項を引用しつつ質問しているのですが、それは大体日本の今の配備を規律する事務的実施細目としてよく似ていると思うのです。これこそが私は一書参考になる。ところがそれを逸脱している。だから條件というのは北大西洋條約に基く軍事條項、あれが大体條件です。あれはなせこういう逸脱的な規定がないかと言えば、あれは批准條項でもありますし、批准されるような條件になつていると同時に、あれは各国が皆本当の独立国家としてあれを提議したと思うのです。ところが日本は占領下においてまだ独立国家でないのです。一応これまでの経過から見て、アメリカの戦略体制の一環としてこれは結ばされている。その結果その相違が現われているのじやないか。独立国家としての條約と独立国家でない国の條約、こういう差異がここにこういうふうな形で具体的に出て来た、こう解釈するよりほかに私はないと思うのです。その点如何ですか。
  84. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) どうも私にはおつしやる意味がわかりません。これは要するに行政協定の中ではこの問題はきめないということを明らかにしているのであります。この行政協定の中で若しあなたがおつしやるように、これが非常な重要な内容を含んでいるもので、その内容を行政協定の中できめておるとすれば、これは別問題でありますけれども、これはこういう場合には両国政府間で協議をするのだということだけを定めておるのであつて、若し木村君が、敵対行為が起つた場合に、アメリカの政府日本政府が協議をしないのだということがここに書いてあれば、これは非常に不思議なことだと思うのでありますが、協議をするのだということを書いてあるのに、別に私は不思議なことは一向ないと思つております。無論占領下において作られたからこういうものができたのだと、私は到底そうは考えられないのでありまして、占領下であろうとなかろうと、国内に敵対行為が発生したというときに、アメリカの駐屯軍を置いている日本として、アメリカ政府と相談しないというそんな不思議なことは到底考えられないのであります。
  85. 岩間正男

    岩間正男君 配備の具体的なことは後にするが、配備の規律ですね、この内容でこれはどういうことになりますか。岡崎国務大臣にお尋ねしたいが、アメリカ軍以外という、そういう以外と連関を持つような問題については、全然ここから逸脱しておれば、私は逸脱と考えられる。それからもう一つは、軍人という意味は、軍隊という意味は、家族などを含むのは非常におかしいが、これは純粋な軍人でなければならない。第一の今のアメリカ軍以外とは、全然ほかの軍隊とは関係がないという意味は、安保條約第四條を見てもこれは「個別的若しくは集団的の安全保障措置が効力を生じたと日本国及びアメリカ合衆国の政府が認めた時は」何とかという、効力が無効になる條項があるのですが、その点これから言いますと、アメリカ以外の外国軍隊については、この條項で何らこれは規定ができない、こういうように思うのですが、こういう点は配備の規律の中の内容の問題としまして、今の二点はどういうふうに考えておるか、お尋ねいたします。
  86. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) これは三條にはつきり書いてあります。「アメリカ合衆国の軍隊日本国内」云々と、で、アメリカ合衆国の軍隊の問題であります。なお軍隊と言いますと、今度は軍隊の定義になりますが、軍隊と普通言いますときに、軍人だけであるということは私は考えられない。軍人あり、軍属あり、それから家族を入れる場合があり、入れない場合あり、日本の場合は、家族を入れておるのでありますが、その前に確めましたところによりますれば、イギリスにおけるアメリカの軍隊の所属員と言いますか、アメリカの軍法、アメリカの軍法に服するものという定義になつておりますが、それにはアメリカの法律で家族も軍法に服するものということになつて、家族も軍隊所属員として待遇されておるということであります。又北大西洋條約に基く協定が効力を発生いたしますと、やはり家族も軍の所属員として待遇されることになつておるということを私は了解しております。
  87. 岩間正男

    岩間正男君 そうすると、この五條はどういうふうに読めばいいのですか。「合衆国及び合衆国以外の国の船舶及び航空機で、合衆国によつて、合衆国のために又は合衆国の管理の下に公の目的で運航されるものは、」、こういうようなことになつてこれは当然航空機とか、船舶とかいうことになりますと、それに衆つておる軍人も当然含まれて来ると、そうしますと、日米間でなく、第三国の外国軍隊、これがアメリカと関連を持つのでありますけれども、併し明らかにこれは外国軍隊、こういうような問題まで関連しまして配備の規律を決定するということになりますと、これは明らかに安保條約の配備の規律の逸脱である、こういうふうに思うのであります。第二点の軍属、それから家族、殊に家族の問題でありますが、家族を軍隊に含めるというのは、今も御説明はあつたんでありますが、非常にこれは便宜的な解釈じやないかと、家族を含めた軍隊という例が今まで世界のそういう取極の中にあつたかないか私は明らかにしないのでありますが、こういう点は岡崎国務相はお調べになつたと思いますが、日本行政協定以前に家族を含めた、それをも軍隊というような定義をした、そういう取極というのはあるかないか、この二点についてお伺いしたい。
  88. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 初めの御質問ははつきりしないのでありますが、行政協定の第五條、これはアメリカの船舶、航空機又はアメリカによつてアメリカのために、又アメリカの管理の下に公の目的で運航される船舶、航空機、これに対しては入港料とか着陸料とかを課さないで日本に入る権利を認める。そのあとにこの協定による免除を與えらつれない貨物又は旅客がこの船舶若しくは航空機の中に乗つておる場合には、通告もしなければならんし、貨物又は旅客は日本の法令に従つて入国を許さなければならない。そうして今度はアメリカの軍隊の構成員という所には「アメリカ合衆国の陸軍、海軍又は空軍に属する人員で現に服役中のものをいう。」、こういうふうに書いてあります。従つてこの船舶等に仮によその軍人が乗つておりましても、これはこの協定の範囲外であります。  それから第二点は、家族の入つておる例としましては、例えばイギリスとアメリカの協定によりましても、家族という字は出ておりません。メンバース・オブ・ザ・アームド・フオーセスということになつております。そしてそのメンバースの中にはその家族も含まれていると了解しております。
  89. 吉田法晴

    吉田法晴君 岡崎国務相は従来からも行政協定広義の條約であるという点は認めておられるし、先ほども触れておられたと思うのです。なお行政協定にしても、講和條約において承認を付せられておる場合においては国会の承認は得ない、そうでない場合は国会の承認を受けなければならない場合もある、こういうお話でありますが、ところがこの点については杉原或いは岡本両委員からも御質問がありましたが、安保條約の批准の際に国会の承認は求めておる、こういうお話でありましたけれども、安保條約の際には配備を規律する條件として行政協定が作られる、こういうことを御説明なつただけで、事前の承認としての行政協定の内容を御説明になつていないのであります。行政協定の中身はその当時まだきまつておらんとして御説明にならなかつたんであります。行政協定の中身は包括承認されておるということは、これはどんなに言われても内容の承認はなかつたと思いますが、この点先ずお伺いいたしたいと思います。
  90. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 安保條約によりまして、アメリカの軍隊日本に駐屯するということが決定いたしますと、軍隊の配備を規律する條件というものは、中身は違いましても原則はできておるのであります。軍隊に伴う特権というものは国際法でも、どの国際法の本によつても書いてあるものであります。ただその内容がよく問題にされます。例えば裁判管轄権については属人方式と称せられるものもあるし、属地的な方式と称せられておるものもあり、協定としてはどちらをとるかということについてまだ話合いを進めておらない際には、内容については御説明のできない場合が多いと思います。併し属地的な方式をとるか属人的な方式をとるか、これは別といたしまして、裁判管轄権に対して軍隊に或る種の特権を認めるという原則は、当然国際的に認られておることであります。これが配備を規律する條件の原則になるのでありまして、その原則の実際の具体的な内容は、つまりこの行政協定によつてきまるものでありますが、その行政協定をきめる場合に、例えば裁判管轄権にすればこつちのほうをとるか、あつちのほうをとるか、これは政府の判断できめてよろしいということでこの承認を得たもの、こう考えております。
  91. 吉田法晴

    吉田法晴君 この軍の配備を規律する條件について、裁判管轄権等について属人主義によるか属地主義によるか、これらの点においても属人主義属人主義によるという点について御説明があつて承認を求められたかというのでありますが、勿論これはその当時きまつておらんというので御説明もなかつた。それからもう一つ、仮に属地主義或いは属人主義その他国際慣行で確定せられました範囲以上に出なければとにかくでありますが、問題は先ほど軍人の家族或いは軍隊についても問題になりましたが、更に行政協定に伴いまして軍の駐留に伴います何と言いますか、工事をやる商人その他についても問題になつてつておりますが、これらの点については、軍の配備を主としておる、こういうことも言い得ると思うのであります。それからこの行政協定にいたしましても、或いは広義の條約にいたしましても、郵政長官の取極等については、これは国会の承認というものは、これは御説明もありましたように、事務的な問題、或いは国民の権利義務に関連を合しないものとして国会の承認を求められない、求められないことについて国会としては異議を申立てぬわけであります。ところがはつきりしておりますことは、この行政協定の実施に伴いまして、国民の権利義務と関連するものとして法律或いは予算の形で承認を求められるものか、そうすれば行政協定の中に国民の権利義務に関する、或いは関税、国内の課税権等のような主権に関する問題もあるわけなんでありますが、そういう承認を求めなければならんということは、行政協定の中に国民の権利義務或いは主権を制限するような事項が入つているということは、これは明らかだと思います。そうすると形式的な、事務的な配備を規律する條件ではなくて、それ以上のものがあり、そうしてそれを国会の承認を求めようという意図については明らかでありますが、それであるならば、行政協定自身について国会の承認を求めるべきである、或いは求めたほうがいいと、こういうことは当然これは言えると思うのでありますが、岡崎国務相、その点についてはどういう工合にお考えになつておりますか。
  92. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 今私この請負師でございますかの問題を挙げられて、行政協定のつまり軍の配備を規律する條件を逸脱しているじやないかというお話のように受取りましたが、私そうは考えておりません。軍隊はただ兵隊なりがおるだけで済むものじやありませんので、必要の場合には非常に高度な技術を以て建設も行わなければならんのは当然であります。それに基きまして日本国内にこういうことのできるものがない場合には、アメリカ側からもそういうものを連れて来てまで建設する必要も起ります。これは軍の配備を規律するにどうしてもなければならんものであるわけであります。決して私は逸脱しておるとは思はないのであります。又先ほどお話はただその極く御参考に申したのでありますが、要するに憲法に「條約」と言つてただ一本書いてあるたけで、この中に国民の権利義務に関係しないものは講和條約があればよろしいとか、権利義務に関係あるものは承認を得なければいかんのだというふうに書いてないという御議論でしたから、ただ條約一本で、すべてのものが広義の條約と言つてこの中に包含されるということは、郵政長官の協定のようなものもやはり事実行われておるのだいうことを申しただけでありまして、別に、それでこの行政協定と直接は関連がないということも申したのであります。なおこういう重要なものをその第三條で規定してあつても、むしろ国庫の承認を求めるべきではないかという御議論でありますが、それは何と申しますか、いわゆる立法論と申しますか、ということになつて、どちらつが適当かという議論につきましては、これはいろいろ意見はあると思いますが、政府としては、今申したような、ずつと私が申しておるような考えで進んでおりますので、それが適当であるかどうかということについては私の意見は差控えたいと考えております。
  93. 吉田法晴

    吉田法晴君 そうすると郵便に関します取極についての云々というお話がありましたが、憲法七十三條の「條約」という言葉の中には限定はないわけで、そこで疑わしいと言いますか、限定がない以上、これはアメリカにしても、その他の各国の例を引かれましたが、日本の場合、限定がない以上、條約については事前、事後に国会の承認を経ることが原則である、これはお認めにならざるを得ないと思う。なお問題があります場合、或いは疑わしい場合に事前或いは事後に国会の承認を求めたほうが憲法を守つて行く内閣として当然であろうという工合にはお考えになりませんか。その点を一つ
  94. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) これは先ほど申しましたように、この安全保障條約の第三條がなければ行政協定国会の承認を得べきものであろうと考えておるのでありまして、ただここに明らかに第三條がありまして、この安保條約の審議、承認の際に、併せて行政協定を両政府間で決定するということも承認されておる、こういう解釈でありまするから、更に改めて国会の承認を求める必要はない、こういう政府解釈なのであります。
  95. 楠見義男

    ○仮委員長(楠見義男君) この程度で一時休憩しまして、午後は二時半から再開いたしたいと思います。  それからなお午後出席大臣或いは政府委員の御希望がございましたら委員長までお申出下さい。  それでは休憩いたします。    午後一時十四分休憩    —————・—————    午後二時五十七分開会
  96. 吉川末次郎

    ○仮委員長吉川末次郎君) 午前に引続きましてこれより小委員会を開会いたします。
  97. 山本米治

    ○山本米治君 議事進行について……この小委員会は昨日の午後発足したのでありましたが、その最初におきまして委員長選任の件につきまして御承知のようないきさつでありまして、今日今まで吉川仮委員長が公正に議事を通常して下さいましたのでありますが、委員の御意向によりまして緑風会さんということで私からもお願いしたところ、初めまあ非常にいろいろな都合でいやだと受けてくれなかつたのでありますが、再三交渉の結果、緑風会のほうで引受けて下さると、こういうふうなことになりましたので、一つその点をお手続を願いたいと思います。
  98. 吉川末次郎

    ○仮委員長吉川末次郎君) 速記をちよつと中止して下さい。    〔速記中止〕
  99. 吉川末次郎

    ○仮委員長吉川末次郎君) それでは速記始めて下さい。  各会派懇談の結果、昨日来懸案になつておりました本小委員会委員長といたしまして、仮小委員長でありまする選挙管理者の任務を持つておりまする私より小委員長に緑風会所属の楠見委員を私よりお願い申上げたいと思いますが如何でございますか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  100. 吉川末次郎

    ○仮委員長吉川末次郎君) 御異議はないものと認めまして、それではそのように決定いたしました。それではどうぞ楠見さん御着席を願いたいと思います。    〔仮委員長吉川末次郎君退席、楠見義男君委員長席に着く〕
  101. 楠見義男

    委員長(楠見義男君) それでは皆さんの御推挙によりまして、私不束でありますが、小委員長の役を務めさせて頂きます。   —————————————
  102. 楠見義男

    委員長(楠見義男君) 只今から午前に引続いて小委員会を続行いたします。
  103. 山本米治

    ○山本米治君 今から議事進行について大体のプランをちよつと速記をやめて御相談願つたならばどうかと思いますが、如何でしようか。
  104. 楠見義男

    委員長(楠見義男君) 皆さん如何でしよう。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  105. 楠見義男

    委員長(楠見義男君) 御異議ないようでありますから……。速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  106. 楠見義男

    委員長(楠見義男君) 速記を始めて下さい。それではどうぞ続けて下さい。
  107. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 法制意見局長官にお尋ねしますが、先ほど岡崎国務大臣に質問した点なんですが、行政協定というものは、これは初めて日本において行われる広義における條約の一つの形式である。そこでその定義はどうなんだということを御質問したのですが、岡崎国務大臣は両政府間で取極める協定だというような漠とした御答弁なのであります。それじや定義にならない、もつと精密な定義をしてくれということを要求したのですが、それもやはりできない。で、法制意見局のほうではどういうふうにこの行政協定なるものをお考えになつているか、それをお尋ねいたします。定義をお尋ねいたします
  108. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 正面から定義ということになりますと、先ほど岡崎国務大臣がお答えしておつたようなことになると思いますけれども、私承知いたしております範囲の事実を先ず申上げたいと存じます。これは申上げるまでもございませんが、第一に、條約と憲法に謳つてありますけれども、すべての條約の表題が條約となつておらない、これは岡本委員承知通りでありまして、場合によつては交換公文というようなこともございますし、約定という名前が付いている場合もございますし、或いは協定という名前が付いている場合もございます。従いまして憲法との関係におきましては、そういう個々の具体的の取極の表題がどうなつておろうと、実質が条約であれば憲法の條約として扱わねばなるまいということが先ず第一であります。これは先ほど岡崎国務大臣も触れたところであろうと思います。ところで然らば行政協定という名前そのものはどうかということになりますというと、今申上げた前提から言いますと、結局交換公文という表題が付いた、或るものには約定という表題が付いたというのと同じことだろうと一応思います。ただ特に行政という言葉があり、英文のほうではアドミニストレイテイヴという言葉がありますところから、これは特にそれについて特段の、国会なり何なりの御承認を要しないものであろうというような趣旨はそのところから浮んで来るというふつうに考えております。併し行政協定という名前からそういうことが出て参りますけれども、仮にほかの名前で書いておりましても先ほども例に出ましたが、例えは万国郵便條約ういうものの第五條に、やはり細目の取極めを当局に御一任になつておる條文がございまして、それには「施行に必要な細目手続を施行細則で定める。」というような、施行細則というような名前も謳つておるものもございます。それから小包協定なとでは両当局者間の約定に従うというようなことも謳つております。私どもは理論的にはこの安保條約の三條と、今申しましたような小包協定なり或いは万国郵便條約の條文とは皆法律的には同じ性質であるというふうに思いますが、殊にこの安保條約には、今、先ほど触れましたように行政協定、特にそれについての国会の御審議を煩わさないで結べるという言葉がそこからプラスして出て来るというように考えます。
  109. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 私は先ほど岡崎国務大臣に質問したのもその点でありまして、行政協定というものの定義として私が考えておつたものは、これは政府が違うというふうに先ほど言われたのでありますが、ともかく親の條約があつて、その親條約が子の條約に委任をして両政府間できめること、決定することを委任したものである。即ち国会の承認を経ないでよろしい、つまり批准を要しない、そういう形式のものを行政協定というのではないだろうかと、こういうように私は思つてつたので、その点を質問したのであります。ところが先ほどはそうでなくて、行政協定というものでも国会の承認を得べきものがあるのだというようなお答えであつて、私の思つておつたところが間違いであるということが……、政府考えておるのとは違つておつたということになるのであります。今のお答えによるとそういう意味もあるのだというあいまいのところもあるのであります。その点もう一度伺つておきます。
  110. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 岡崎国務大臣の言いましたのは、仮に名前が行政協定とついておつても、その実体によつて判断せねばならないということは確かなことで、間違いのないというのは、私が先ほど申しましたように、仮に交換公文と書いてあつても、実体が承認を得べきものであれば、そうなるということと同じことであります。その後に只今私が申しましたのは、併し行政協定という名前がおのずから持つておるニユアンスというものは、両政府の間の取極めで確定的に成立する国際間の合意というものを、その名前からニユアンスを導き出し得るのであろう。これは私は理論の問題でなくしてニユアンスの問題であろうと思います。
  111. 西田隆男

    ○西田隆男君 今の佐藤さんの答弁関連してですが、岡崎さんの言われておるのは、安保條約の第三條によつて白紙委任状を政府はもらつたのだ。條約の締結権は安保條約第三條で確乎ときまると、内閣にあるんだと特に第三條に「両政府間の行政協定で決定する。」ということを表現したゆえんのものは、事前に白紙委任状をもらつたのだ、だから政府としては国会の承認を求めなくてもよろしいと、こういう意味に私は解釈したのですが、そうじやないのですか。
  112. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 今回の行政協定と安保條約の関係については、岡崎国務大臣のお答えした通りだと思います。ただ委任という言葉は、私は正確には……これは常識的に使われた言葉であつて、正確ではないと思いますが、正確に言うならば一任といいますか、更に理詰めで申しますならば総括的な御承認というのが一番はつきりした言葉であろうと思います。
  113. 西田隆男

    ○西田隆男君 今の御答弁では岡崎さんの御答弁と同じ答弁なんですが、仮に私が申上げるように白紙委任状をもらつたと仮定しましても、国会がその條約の或いは協定の内容を見て、これは少し我々は審議しなければならんというような意見を持つて内閣に国会の承認を求めよというような要求をした場合は、すなおに政府国会にその協定なり條約なりを仮に委任をされておつたとしても、言葉が悪いかも知れませんが、国会にすなおに出すという解釈のほうが正しいんじやないかと思うんですが、その点どうなんですか。出す必要がない、承認を求める必要がないというのと、絶対に承認を求めなというのと、大変な違いがあると思いますが、この点はどうお考えですか。
  114. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 理窟だけで私の考えるところを一応申しますが、結局最初の安保條約の御承認の際の一つは問題であろうと思います。それから爾後の問題といたしましては、いろいろな政治的の批判の問題等としてそれが現われて来る。その場合に法律的にどうなつて来るかというと、この協定の修正の問題として現われて来ると、いうのが理論であろうと存じます。
  115. 西田隆男

    ○西田隆男君 もういいです。何遍やつても同じだから、水掛論だけですから。
  116. 吉田法晴

    吉田法晴君 自衛力の漸増計画が予算委員会に出され、その自衛力の漸増計画の中身によつては、憲法第九條との関連において、問題になるのではないか、こういうことで、今自衛力の漸増計画を出して頂いておるわけでありますが、法制意見長官に伺うのでありますが、戦力になるかならんかの境目の問題につきまして、この自衛という問題、これは大橋国務相その他も国会答弁をしておられますが、対外的にこれは日本に対しまする外からの侵略と申しますか、そういう言葉を使わなかつたと思いますけれども、攻撃に対して、みずから守る、これが自衛だと思うのですが、その自衛の働きをします場合には戦力になるのではないか。これは力の働き工合でありますが、この目的と申しますか、或いは対外的に働く機能の点から言つて、対外的に働く場合には、戦力になるのではないか、こういう点については法制意見長官としてどういうふうにお考えですか。
  117. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 私は憲法第九條第二項に言つております戰力というものは、昨日も触れましたように、客観的にその力というものを計りまして、その力の限度が戦力に達しておるかどうかということは、純粋に客観的に判断せらるべきであつて、その力の用途は、自衛のためであるか或いは侵略のためであるか、そういう用途の問題は全然切離して考えなければならんものと思います。
  118. 吉田法晴

    吉田法晴君 そうすると力それ自身の客観的な標準ということでありましたが、客観的な標準できめるべきであつて、その働きが対外的に働くか或いは純粋に国内的に働くかということは、戦力の性質を決定しないと、こういう御意見なんですか。
  119. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 昨日触れましたように、憲法第九條の第一項というものが主眼でありまして、御承知のように、不戦條約におきましても、各国の同じく戦争放棄をしております国国の立法例等におきましても、第九條の第一項だけで皆済ましておるのであります。併しながら我が旧においては特に昨日も触れましたように、第二段の備えとして、力を持つ、いわゆる戰力に値いするものを持つということは、やはり第一項の目的を達成する上において支障になりはしないか、いつなんどき悪用されるかも知れないというところの備えから、第二項の戦力というものの保持を禁止しておるのでありますから、第二項の規格に合するところの戦力というものは、如何なる目的のためにもこれを持つことができないということが、憲法の趣旨であろうと思います。
  120. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 この自衛という文字ですが、これは正しくは外からの侵略に対してみずから日本の国なら日本の国を守るというのが自衛であろうと思います。この内乱を鎮圧する、防遏するというのは自衛じやないだろうと思う、正しい言葉を用いれば……。それで国際連合憲章の中に書いてある自衛というのは、国内の治安の維持と言わないで、外囲からの侵略に対して自分の国を守る、こういう意味だと思うのですが、その点はどうでしよう。
  121. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 常識的に大ざつぱに申上げますれば、自衛というのは国を単位として考えれは、外からの侵略に対応する行為だと思います。もとより国際法上のいろんないわゆる交戰団体とか何とかに値いするものが国の中に出て参りますれば、又別途のいろいろの問題が出ましようけれども、大体の趣旨においては今岡本委員おつしやる通りだと思います。
  122. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 そこで政府がこのたび予算について自衛力の漸増のためにまあ警察予備隊を殖やす。それをまあ保安隊にする。三万五千人殖やす。それから海上警備隊を作る、というような方策をおとになりつつあるのでありますが、それは外に対するものではない。国内の治安のためだとおつしやる。そこに少し矛盾がありはしないかと思うのですが、つまり国内の治安のためであるか、やはり国外の侵略に対して、字義通り自衛ですから、日本の国を守るということがむしろ主体でありはしないか、こういうふうに考えるのであります。その点はどうでしよう。
  123. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 自衛ということの必要となる事態というものと、国内の治安を維持しなければならんという必要の生ずる事態というものとは、恐らく私は表裏一体であろうと思います。従いましてその間に截然たる区別というものは、現実の問題としては非常に困難であろうと思います。
  124. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 今度大橋国務大臣にお尋ねするのですが、今の問題に関連して海上警備隊を今度創設をするというふうに新聞に出ております。又そういうことを予算委員会でも岡崎国務大臣がお述べになつたと思います。そこでその海上警備隊と現在の海上保安庁の保安隊と、その関係はどういうふうに調整され、どういうふうに現在の段階においてお考えになつておるか。それを承わりたいと思います。
  125. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) ちよつと御質問の要点を聞きはぐれて恐縮でありますが、海上保安庁に新設されまする海上警備隊と海上保安庁との関係をお聞きになりましたのでございますか。それとも保安隊との関係でございますか。
  126. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 もう一度申上げますが、今の海上土保安庁でなくて、そのほかに、保安庁ですか、警察予備隊を保安隊として、又は防衛隊としてその保安庁に持つて来る。それと同時に海上保安庁のほかに、六千人を増して、海上警備隊として、それを海上保安庁でない新設の保安庁の中に持つて来るというふうなことにも初め考えられておつたようであり、又それが新聞に出ておつたようであり、又御答弁の中にもそれが現われて来たようでありますが、その現在の段階においてもそうお考えになつておるとすれば、その新設の保安庁の中に入れる海上警備隊と、それから現在の、つまりまだ依然として残る海上保安庁にある海上保安隊と申しますか、それとの関係はどうであるか、こういうことをお尋ねしております。
  127. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) 海上保安庁におきましては、来年度予算の中に六千人の増員を計画いたしておりますが、この増員は特殊な警備事務に当らせることを目的といたしておりまするので、これを海上警備隊といたしまして、一応海上保安庁の下部機構として発足いたさせる考えでおります。この海上保安庁におきまして、従いまして従来の警備救難事務に従事いたしまする船舶と新らしく発足いたしまする海上警備隊に属する船舶並びに要員が併立いたしまて、おのおの分担して職務を執行することに相成るわけでございます。新設の保安庁の機構におきましては、海上におきましては、現在の海上保安庁の事務の中から警備救難関係の事務と、新らしく新設せられまするところの海上警備隊の事務とを所管いたすようにいたしたい、こういうふうに考えております。前回たしか岡本委委員が他の委員会において御質問になつて頂きました際には、当時の構想といたしまして、新設の保安庁には、海上保安隊の機構の中で新らしく発足いたしまする海上警備隊の分だけを移管いたしたい、こういうふうにお答えを申上げたのでございますが、その後の政府の研究といたしましては、船舶の能率的な運営という見地からいたしまして、いずれも相当の船舶を利用しなければならん立場から、特に海上警備隊のほかに警備救難事務も併せて新機構に置いたらどうであろう、こういうふうに研究の結果最近において考え方を変えて参つております。従いまして新らしき保安庁と申しますか、仮称いたしておりまする新機構におきましては、現在の海上保安庁の事務のうち警備救難の事務とそれから新らしい海上警備隊、双方を併せて所管いたすことにする考えでございますが、組織といたしましてはこれを一箇の船舶を主体にいたしました一箇の機関にいたしまするか、或いは同じ保安庁所属の機関でありまする警備救難事務だけを一つの統一ある組織的な一体といたし、又海上警備隊だけは当初発足の際に構成されますときに従来の警備救難事務とは切離しました別の機構として発足をさせて行く、こういうふうにいたしますか、或いは双方を合一して一つのものとして新らしい機構で管理するようにいたしますか、この点はなお研究をいたしておるところでございます。
  128. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 大体わかりました。前にお考えなつたことが訂正されて来たというふうに了解いたします。そこでそれでは従来の海上保安庁の保安隊がやつておりました警備救難関係事務のうちの警備事務と、今度の六千人の増員によつてできる警備隊といいますか、それと警備事務とどういうふうに違うのですか。同じように思うのですが……。
  129. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) この二つの仕事というものは、本来の性格といたしましては同じ警備事務であると存ずるのでございます。併しながらその使用いたしまする船舶、装備等の関係からいたしまして、多少海上警備隊と従来の警備事務とは、同じ警備の目的なのでございまするが、使用の船舶、装備等において違いがあるわけでございまして、従いまして考え方といたしましては、同じ警備上の必要と申しましても、特に特別の必要のある場合においてのみ海上警備隊を出動せしむることにいたしたい。そうして海上警備隊を出動いたしまする際には、特別に、丁度警察予備隊が普通の警察の補助的な役割を持つておりまするが、特別の必要のある場合に出動することになつており、又その出動に際しましては内閣総理大臣の命令によつて行動する、こういうふうなことになつておりまするが、この海上警備隊につきましてもやはり同様な行動のいたし方を考える必要がありはしないか。このことは使用船舶の性質、装備の性質等から見まして運営上便宜であり、又適切である、こういう実際上の必要からそういたしたいと考えております。
  130. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 その海上警備隊の出動を要するときと考えられる例を一つ挙げて頂きたいと思います。
  131. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) 密入国でありまするとか、或いは海上における漁業に対する妨害的な行動というものに対しまして取締りをし、或いは漁船を保護する、こういうのが警備なのでございまするが、特に相手方が多数集合しておりまする場合、或いは又特に武器を装備しておりまする場合、そういう場合におきましては一般警備救難に使用する船舶ではこれに対するに十分なる能力がございませんので、従いまして特にそういう場合におきましては、新らしい海上警備隊所属の船舶の行動に待つようにいたしたい、こう考えているのであります。
  132. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 それは密入国の取締りとか海上における漁業に対する妨害的の行動の取締りというようなことは、従来から海上保安庁の警備救難事務のうちの警備に課せられた任務であろうと思うのです。そういたしますと、それは大げさなとき、密入国を大集団でやつて来るというようなときに出動する予防的な強力な力が海上警備隊だとこういうことになつて参りますと、随分それは戦力に近付いて来はしないかと思うのですが、その点はどうでしようか。
  133. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) これは海上警備の必要上設けたいと存じておりまして、装備、船舶の種類等につきましても、海上警備上に必要な範囲のものに限定をいたすつもりでございまするから、戰力となることはないと確信をいたしております。
  134. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 まあ密入国を例にとつて見ますと、相手かたが大集団で密入国して来るのか、或いは攻めて来たのか、侵略するために攻めて来たのか、ちよつとわかりにくいような例がありはしないかと思うのです。それに対処するための警備であるとすれば、自衛のためではありますが、その自衛ということが先ほど一番初めに念を押しておきましたように、海外から侵入するのを防ぐ目的ということになつて来はしないか。何となれは、海上において内乱ということはないのでありますから、外国から大勢が密入国して来るということは、考えようによつて日本に侵入して来る、侵略して来るというふうにもとれるのでありまして、それに対処するための海上警備隊であるとすれば、それは日本への侵略を防ぐためだということになりはしないか。自衛ということがそのほうの自衛であつて、治安の維持ということのほうじやないのじやなかろうかというふうに考えられるのですが、その点をどうお考えになりますか。
  135. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) これはいろいろ考え得ると存じまするが、内乱等に際しましては、今日の世界情勢から考えまして、国内だけで単独に計画される内乱というものも理論上はあり得ないとは言えないのでございまするが、併し諸国の例を見ますというと、相当大規模な内乱というような状況になりますると、必ず海外からこれに対して応援をするというようなこともあるわけだと存じます。もとよりかような場合におきましては、これを防止いたしまする主たる行動力となりまするものは、これは駐留軍、即ちアメリカの海軍部隊なり、航空部隊であるとこう存ずるのでございまするが、その際において海上警備隊といたしましても、なお必要な警備上の仕事はあろうかと思つております。併しながらかような海外からの大規模なる侵入というものを直接目標としてこの警備隊を作るわけではございませんので、現在までの経験に徴しまして、やはり海上保安庁でやつておりまする海上警備の任務を完全に果しまするためには、船舶の種類又装備等につきましても、特別のものを備えることが警備上どうしても必要である、こう考えまして、直接にはそれを目的としてこの新らしい海上警備隊を組織いたすわけでございます。
  136. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 その最後にお話になつたのならば、私どもわかるのですが、それは即ち予算説明書に書いてあるように、この海上保安庁の経費を計上して、そうして海上保安庁の警備、救難関係の経費であるとか、六千何人を増員するのは、この機能を充実するためだというふうに書いてあるのでありまして、先ほどおつしやつたような大規模の侵略をされる場合に防ぐというようなことは別にここには現われていないのでありますが、私どもが考えておりますのは、今くらいの海上保安庁ならば、まあ私は戰力だと思つておりません。併しそういうような大集団の密入国を防ぐようなものを作るということになると、私は随分これは戦力に近付いて来ておるというふうに感せざるを得ないのでありまして、その点この委員会で、いろいろ各派のかたがたから御質問になつておる、戦力の限界がどこまでかということについて非常に疑問を持つて来るのです。そういう戦力になるようなことにはしないのだというふうに今大橋法務総裁がお答えになりましたが、その限界ですね、どこまでがその戦力にならないというふうにお思いになつておるのか、もう少し明確にその点がお答え願えれば結構なんです。
  137. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) 具体的に只今海上警備隊の装備といたしまして考えられておりまするのは、船舶といたしましては、米国から近く貸與されることになつておりまする船舶約六十隻でございます。これは約二千トン級のものを十隻、それから二百五十トン級のものを五十隻、こういうふうに期待をいたしておりまするが、これらは極めて小口径の火砲を持つておる程度でございます。それからこのほかに航空機といたしまして、本年度予算に小型の航空機十機をもらいたい、こういう予算の御審議をお願いいたしておるのでございまするが、これは全くの偵察用でございまして、武器の装備をいたしておりませんものでございまして、これらの程度のものは、いずれも戦力には当らないものと確信をいたしておる次第でございます。
  138. 楠見義男

    委員長(楠見義男君) ちよつと申上げますが、予算委員会のほうに自衛力漸増についての政府の方針が、案が提案されたようでありましてこの小委員会のかたがたの御参集を待つておられるそうでございますから、暫時小委員会は休憩いたしまして向うが済み次第再開することにいたします。    午後三時四十八分休憩    —————・—————    午後四時四十六分開会
  139. 楠見義男

    委員長(楠見義男君) それでは休憩前に引続き再開いたします。
  140. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 休憩前に質問をしておつたのですが、途中で休憩になりましたから、続けたいと思います。  先ほど海上保安庁関係について大橋国務大臣にお尋ねをしておきました。そこで大橋国務大臣のお話では、海上警備隊というものを作つて、そうして密入国なんかが大規模にあつたとき、又海上における漁業なんかに大々的の妨害行為なんかがあつたときに処するために、今まで以上の自衛力といいますか、防衛力といいますか、それを作るために、六千人増員分をそれに廻わす、そうして艦船を六十隻、二千トンのもを十隻、飛行機も、偵察用ではありますけれども、十機備えたいというお話がありました。そういたしますと、先ほど申しましたように、だんだん戦力に一歩々々といいますか、数歩ずつ近付いて行つておるということは、これはどうしても御承認なさらなければいけないと思うのですが、それは戰力にならない範囲内においてやるのだという御答弁でありました。そうすると、戰力にならない範囲内というのはどんな範囲内であるか。つまりこれからが戰力だという線がなければ、戦力にならない範囲内ということは言えないと思うのですが、その線をお尋ねしたい。
  141. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) 誠に御尤もな御質問でございまするが、私どもの考えといたしましては、海上警備隊の装備というものを拡充をいたして参る。特に小口径の砲というようなものも必要に応じて装備をいたして行く。これは確かに戦力にあらざるものから戦力の方向に向つて進んでおるのじやないか、こういう御質問でございます。この点は誠に同感に存ずるわけでございます。そこで御質問といたしまして、それではこの傾向が漸次進んで参つた場合には、やがて戰力になるであろう、その戦力になる境を示せと、こういう御質問でございますが、この戰力になる境というものは憲法上の一つ法律問題でございまするが、私どもの考えといたしましては、絶えず戰力に近付けるような方向に向つてこの海上警備隊を無制限に拡充をいたして参るということは、これは考えておらないのでございます。私どもの考えといたしましては、現状は不十分でありまするから、海上警備隊の任務として必要な範囲にまで装備を拡充いたして参る。この方向は自然、どちらかと言えば、戰力に近付く方向であることは間違いないことでございますが、併しそれにはおのずから限度が存在いたすわけでございまして、その限度は、一つには警備隊の任務から来るところの必要の限度というものが、この拡充の一つ限界になつて参ります。又如何に拡充ということが海上警備隊の任務から申しまして必要であるといたしましても、なおもう一つ限界があるわけでございまして、それは憲法第九條第二項による限界でございます。従いましてたとえ海上警備隊として必要であると申しましても、それが非常に高度の武装をするということになりますると、これは戰力の段階に入る危険がある。従つて憲法違反の虞れがありまするから、たとえ任務遂行上必要なりということが仮にあつたといたしましてもその場合にその程度まで装備を拡充するということは、これは政府としてはとらざるところであるわけでございまして、ただ政府といたしましては海上警備の必要ということを基準にして警備隊の装備を決定する、そうして現実にこの程度の装備をしなければならないという場合に、果してそれが戰力であるかどうかということを判断し、戰力であるという場合においては、それがたとえ警備上必要なりとしても、実施すべからざるものであるとこういうふうに考えるわけでございます。併しこれは理論上の見解を申上げたのでございまして、実際上の問題といたしましては、只今のところでは海上警備の必要からいつて、そうした高度の装備まで必要とすることは先ず現実の問題としてはないものと考えておりまするし、又仮に抽象的には必要であると申しましても、国の財政その他の点から申しましてその程度に至らしめるということは実行上において不可能であるとこう考えるのでございまして、只今の見解といたしましては海上警備隊の装備というものが戰力の方向に向つて進んでおることはこれは否定することはできませんが、併し戰力の段階に達するということは実際問題としてはないと、こういうふうに考えておる次第でございます。
  142. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 憲法第九條第二項の戦力の問題を探究しておると、又そこに帰つてしまつたので、まるで迷路に入つたようなことになりますが、それではこの戰力というものは、これからが戰力だという線は引けないというお答えだろうと思います。そこで木村法務総裁がいつも言われるように時代と共に違つて来るというようなお答えが出て参るのでありますが、現実の今度の海上警備隊六十隻の一番大きな二千トンの艦船といいますか、艦船に備えられる武器の程度はどういうふうにお考えになつておりますか。それを一つお伺いしたい。
  143. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) これは二千トン級並びに二百五十トン級いずれも同程度の火器を積むと思いますが、火器の口径につきましては只今明確に記憶いたしておりませんが、いずれ後ほど海上保安長官が見えますのでそのほうから確かめますが、私のおぼろ気な記憶といたしましては、たしか三インチくらいのものじやないかと考えております。
  144. 楠見義男

    委員長(楠見義男君) ちよつと申上げますが、法務総裁時間的に大分制約があるそうでありますから、できれば法務総裁に御質問願いたいと思いますが……。
  145. 西田隆男

    ○西田隆男君 関連してお伺いいたしますが、海上警備隊は日本の漁船が拿捕されておるという実情の下において拿捕されることを防禦する、或いは積極的に拿捕されることを拒否するためにやはり行動されるとお考えになりますか。
  146. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) 現在におきまして船舶が拿捕されておるというのは、これは恐らくマツカーサー・ライン外において漁業をいたしておるという理由で拿捕されておるものが大部分かと存じます。現状におきましては占領軍の規律によりましてマツカーサー・ラインというものがあり、そうしてそれ以外における漁業は日本国民としては自由に行えないという状態になつておるのでございまして、これは被占領国といたしまして降伏條約によつて受忍する義務があると存ずるのでございまするが、併しながら講和條約の発効によりまして恐らくこの種の制限は解除せられるものと、こう考えるべきものと思います。従いまして国際的な制限にかからない限り、自由に海上において漁業をなす権利が日本国民にもあるわけでございます。この権利を保護するということは海上警備隊としては当然の任務であろうかと存じておるわけでございます。
  147. 西田隆男

    ○西田隆男君 今の大橋さんの御答弁についてお尋ねいたしますが、講和後は、今後はそういうことはないという前提に立つておるわけでありますが、併しソ連、中共その他とは漁業條約と申しますか、そういうものは締結されないはずなんでありますが、そういう場合に若し日本の漁船がそういう方面から拿捕されるということが起きた場合、起きる場合海上警備隊は日本の漁船を守るのですか、守らないのですか。
  148. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) 日本国民の漁業の権利というものを保護するという立場から海上警備隊としては必要な措置をとるべきだと心得えます。
  149. 西田隆男

    ○西田隆男君 必要な措置をとるということであれば、成る場合においては拿捕せんとするものに対して海上警備隊の実力を発揮して、その拿捕を防止する、そうして日本の漁船を保護するということもあり得ると考えられますが、そういう際若しそういうことをした場合においては、これは国際紛争の部に入る戰力ではなくても、国際紛争を解決するために海上警備隊の持つておる、あなたがたは戦力でないとおつしやるのですが、戦力か武力かわかりませんが、とにかく三インチの口径の砲を射撃するということも考えられるが、そうなつた場合には憲法第九條に違反することになりはしないかと考えられるのですが、その点の大橋国務大臣のお考えはどうですか。
  150. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) この海上におきまするいろいろな各国の主張等が錯綜をいたしておりまして、外交上処理を必要とするような場合におきまして、その外交問題を海上警備隊の実力によつて解決するということは、これは私どもとしては考えておらないところでございます。これにつきまして外交上のさような問題というものが解決し、そうして明らかに日本国民がその海域において漁業の自由が與えられておるということが国際的にはつきりいたしておりまする場合に、この権利を守るということは、これは海上警備隊の当然の職務だと考えております。
  151. 西田隆男

    ○西田隆男君 憲法第九條の国際紛争を解決する手段としての武力はこれは保持してはならないとこう書いてありますが、私が申しておりますのは、今あなたがおつしやるような国際紛争を解決する手段として海上警備隊が活動するという問題ではなくして、国際紛争に介入する第一声としての海上警備隊がいわゆる三インチの口径の砲を射撃するということは私はあり得ると考えるのだが、あなたはあり得ないと思つておられますか。
  152. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) 警備隊の行動が原因となつて、それが一つの外交上の紛争になるということは、これは理論上は恐らくあり得るだろうと思います。併しながらさような虞れのある場合におきましては、海上警備隊といたしましては行動を自制するということが当然の心がけとして考えられなければならんと存じます。
  153. 西田隆男

    ○西田隆男君 今のお話は私は反対だと思うのです。理論上はあり得ないが、実際問題としてはこれはそういうことが起り得ると私は思う。そういう場合はやはり憲法第九條の規定に違反する行為がなされておると私は考えるのですが、もう一遍一つ……。私はあなたと反対の解釈を持つておりますが……。
  154. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) 憲法上の見解につきましては、法制鷲見長官、法務総裁からお聞取りを願いたいと思います。
  155. 西田隆男

    ○西田隆男君 いやいや、あなたにこれに関連して……。    〔「関連して」「関連質問」と呼ぶ者あり〕
  156. 楠見義男

    委員長(楠見義男君) ちよつと今これに関連して……。それじや岩間君。
  157. 岩間正男

    岩間正男君 今の問題ですが、現実に東支那海あたりでどうなんですか。これは漁船を警備して、そうして海上保安庁が出動しておるというようなことを聞いておるのですが、それで今言つたような国際紛争的なものに発展する可能性がある。これはマ・ラインの問題でありますが、これについてそういう点はどうなんですか。
  158. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) このマツカーサー・ラインの問題は、講和條約の発効ということによつて、今日とは根本的に状況が変つて来るものと心得ております。で海上警備隊の発足というものは、無論講和発効後に相成ると考えておりまするので、講和発効前の事態を基礎として、海上警備隊の行動を考えることは不適当ではないかと思います。
  159. 岩間正男

    岩間正男君 そうすると何ですか、そのマツカーサー・ラインの解釈の問題ですけれども、これは講和発効後にはもうなくなる、こういう解釈なんですか。併しまだこれは中共やソ連に対しまして講和を結んでいない、こういうことで非常に一方的な解釈になると思う。でそういうことになると思うのですが、この問題は講和発効後にはまあ解消してしまう、従いまして今言つたように、もう漁船を海上警備隊が護衛して、そうして進む、こういうことは事実なされているのであります。現実においてもなされておるのです。講和発効前の現状におきまして、それから又これはどなたでしたか今はつきりいたしませんけれども、本会議だつたと思いますが、質問に対しまして、こういうときには、これはマ・ラインというものはなくなる。従つてそういうときには、日本では警備隊を持つて日本の漁船は出て行く、こういうことをはつきり答えられているのですね。そういう点からすると、政府のこの態度が非常に今の御答弁とは食い違つておると思うのですが、これはどういうことなんですか、この二点をお聞きしたい。
  160. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) マツカーサー・ラインについてどういう見解を持つておるかという第一点の御質問でございます。この点は私といたしましては、マツカーサー・ラインがどうなるかということにつきましては、所管大臣にお聞きを頂くことが適当ではないかと、こう考えます。  それからこのマツカーサー・ラインの問題に関連して、外国において或る公海の一部分につきまして、日本漁船の立入りを制限するという見解を持つており、そうしてそこに立入る日本漁船に対して拿捕をするというような場合に、これを日本側としてどう処理するかということは、これは一つの国際紛争だと思います。それでこれは国際紛争として外交上の手続によつて解決さるべきものと考えております。その外交上の見地に従いまして解決せられたる見解、或いは日本政府としての見解において、その場合に日本の漁船を実力を以ても漁業なさしむべきであると、こういうふうに政府としての見解が統一されました場合においては、恐らく海上警備隊に対してこれを保護するような任務が與えられることが予想される、こう考えます。(「委員長今のに関連して」と呼ぶ者あり)
  161. 岩間正男

    岩間正男君 そうしますとマツカーサー・ラインの解釈の問題が一つあるのであります。これは吉田総理が当委員会においてもですね、しばしばとにかくまだ未締結国等に対しては、條約の締約のために努力する……、こういうような問題が残つておるときに、このマツカーサー・ラインというものを一方的に解釈する。そうしてそれによつて、これは先の国際紛争の問題もいろいろ成る種の決定、その後というお話でありますけれども、日本政府としてはそういう態度はとり得ないのじやないか。飽くまでこれはやはり未締結国との條約を本当に回復するための努力をこれはすべきだと思います。ところが逆にそれに対しまして、そうでなくて、むしろ問題が起りつつある。そうして実際そういうような警備隊が漁船について行つて警備しておる。こういうことによつて、却つて国際紛争の種子を播いておる方向に行つておるのであります。こういう点が考えられるのであります。これは非常に吉田総理のそういうような点とこれは話が食い違つておる。こういう点については、もつと基本的に政府としてははつきりとした説明をする必要があると思う。マツカーサー・ラインの問題は專門でないからというお話もありましたけれども、併しこれはどうしても海上保安隊の管轄者としての大橋国務相は、見解を明確にしておくことが非常に重要じやないかと思うが、その点……。
  162. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) 私はマツカーサー・ラインというものは、これは連合国最高司令官の指令として日本政府並びに日本国民に課せられたる規律でございますから、これは一種の占領状態に伴う一つ法律関係でございまして、占領状態が解消いたしますれば、理論上当然にこれは消滅すべき法律関係であるとこういうふうに考えております。併しこれ以上の政府としての公式の見解につきましては、どうぞ所管大臣に確めて頂きたい。こう申上げた次第であります。
  163. 楠見義男

    委員長(楠見義男君) 申上げますが、海上保安庁長官の柳澤君が出席しておりますから……。
  164. 鈴木直人

    ○鈴木直人君 先ほど大橋国務相から新らしい海上警備隊の組織或いは活動について事が起きた場合には……、この組織は平素は出動しないのだ、いわゆる日常はそういうふうな事務をとらないのだ、まあこういうふうに聞きましたが、今は日本の漁船が自由に漁業をする場合にそれを護衛をして行くようなふうに言われたように思われますが、さつきの話と今の話と違うのですが、どちらが本当なんでしようか。
  165. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) 海上警備隊というものは、特別の必要のある場合に出動をするものである。このことは近く御審議を頂きまする法案の中にも明記いたすつもりでございまして、そういうふうに考えております。従いまして、先ほど来御質問になりました漁業関係の問題についての海上警備隊が出動するという場合には、そういう特別の必要ありといたしまして特に出動をいたした場合の問題と、こういうふうに考えて御答弁を申上げております。
  166. 吉田法晴

    吉田法晴君 マ・ラインに関連いたしましては、これは所管が違うからというお話でございましたが、先ほど休憩前に御説明を頂いたときには、警備隊の任務として密入国、それも集団的な場合、それから漁業の妨害に対して相手方が武器を持つておるものに対して攻撃を加える、これは密入国の集団的の場合でも武器関連するかと思うのでありますが、そうするとお尋ねしておりました今の場合に向うも武器を持つておる、それからこちらも三インチでありますか、とにかく武器を持つておるそうするとその武器はこれは使わない、三インチの大砲でありましてもこれは使わないという前提なのでありますか。それともこれは事態によつてはやはり使うということになるのか、その点を一つ伺いたい。
  167. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) 装備いたしましたる武器は、何らかの或る目的のために無論使用することを前提といたしておるのであります。例えば密入国者を乗せておると認められるような船舶がある、或いは密漁しておると認められるような船舶、そういうような船舶が海上において行きあいました場合に臨検のために停船を命ずる、その際に信号によつて停船しない場合には威嚇射撃をするということもあり得ると考えております。
  168. 吉田法晴

    吉田法晴君 そうしますと、威嚇射撃にとどまるならばこれは別でありますが、向うも武器を持つておる、こちらも武器を持つておる。それについて使用せられますならば、その場合にその規模はとにかくでありますけれども、いわゆる撃ち合いと申しますか、或いは局地的な戦闘と申しますか、そういう問題が起る可能性はこれは否定するわけにいかんと思います。その場合にもこれは何であるというように御説明になるのでしようか、勿論交戦権は否定をされておる。交戰権は否定されておりますけれども、局地的な戦闘行為が起るということはこれは否定することはできないと思うのでありますが、御意見を承わりたいと思います。
  169. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) これはもともとこちらは戰力を持つておりませんので、戰鬪行為というような表現が果して適当かどうかは非常に研究の余地があると思いますが、併しこちらが威嚇射撃をする、そうしてそれに対しまして相手方が仮に武器を持つておる場合に抵抗のために射撃をして来るという場合には、こちらも正当防衛といたしまして任務遂行のため必要ならば射撃をする場合も十分に考え得るわけでございまして、そういう意味合におきまして、こちら側の船舶と、国籍不明の海賊と推定されるような船舶とが事実上海上において小口径の火砲を以て撃ち合いをするという状態は、これは理論上考え得るわけでございまして、併しこれは海上警備隊といたしまして、正当防衛として必要に応じて出る行為でありまして、これは戰鬪行為ということの表現は余り適当ではない、こういうふうに思いまするし、無論それが戦争であつて、国際公法の戦争法規の適用を受けるようなそうした性質のものではないと存じます。
  170. 吉田法晴

    吉田法晴君 国際法上の戦争であるとかないとかいうことを言つておるわけではありませんけれども、例えば向うの武器の行使、こちらの武器の行使、これが一部小規模でありましても起るということはお認めになると思います。それを戰鬪と名付けるかどうかということはとにかくといたしまして撃ち合い、その状態はとにかくとして戦闘と名付ける以外にはないかと思いますが、そういう状態が、例えばこれは同様の意味大橋国務相も或いは法務総裁時代お話になつておるかと思うのでありますが、この自衛問題でございます。これは十二国会でありますが、自衛のために必要な行為に出るということは十分に考え得るところでございます。それから岡崎国務相も予備隊或いは予備隊という名前は出ませんでしたけれども、海上の場合にはそういう問題も起るだろうと思うのでありますが、外敵の防衛に任ずることはこれは憲法上どうかというお話が出て参つたのでありますが、自衛権の行使でありまして、予備隊といわず、消防隊といわず我々一介の国民といえども、我々自分の国が侵されるときは自衛権の行使として自分の国を守るのであります、云々という答弁がなされております。今は海上の場合でありますが、そういう海上の場合に一隻の海賊船ではなくて、この外敵の防衛に任せなければならんような事態が起りました場合に、海上警備隊がその武器を持ち、そうして出て参りましてそのときに今のような小規模の撃ち合いにいたしましてもそういうものが起り得るということについては、この自衛問題に関連してどういう工合にお考えになりますか、今までの答弁からいたしまして、論理的にはそういうことも起り得るじやないか、こういう点はどういうことでしようか。
  171. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) 理論上は先ほど来申上げたるごとく、多数の海賊船の一団がある、そうしてそれに対しまして警備上必要な措置を命じたけれども従わない。威嚇射撃をすれば、これに対して向うが実力を行使して来る。そういう場合に対しまして、こちらとしても当然火器も使用するということはあり得るわけでございます。これは急迫不正の侵害に対する当方の正当防衛の行為でございまして、それ自体は勿論国際紛争解決の手段というような性質の行動ではないのでございまして、国際紛争解決のために武力を用いるということは、これは武力の行使によりまして、相手国の意思を抑圧するという、実力によつて相手国の意思を抑圧して、当方の意思に従わしめる。これが恐らく国際紛争の解決手段としての武力の行使の意味だろうと思うんです。この場合の海上における双方の船舶同士の小口径の大砲を撃ち合いするということは、これはそうした国際紛争解決の方法としてなされたものではないのでございまして、それは偶然の機会によりまして、海上警備隊の船舶によつて海上において正当防衛権が行使せられたということなのでございます。無論この結果海賊船がある国籍を持つている、そうしてその国家がこの出来事を理由といたしまして日本に対して或る要求を持つて来る。これが一つの国際紛争になつて来る。つまり国際紛争にできる原因となつて来る、そういうことは十分にあり得るわけでありまして、その場合にその紛争を解決するために相手国に向つて武力を行使する、これは憲法上禁止された行為であります。併し先ほど申上げました海上における偶発的な撃ち合いということは、これは法規的に見ますならば一つの正当防衛の方法である、こういうふうに私といたしましては考えている次第でございます。併しながら、かような法律上の説明はさておきまして、実際問題として当方は戰力を持つておりません。武力を持つている相手国に対してこの種の実際上の出来事が海上において起るということは、延いてそれが国際紛争になり、又相手国の武力の行使ということを誘発するという、非常に危険な行動でございまするから、そういう場合におきまする海上警備隊の活動というものは、これらの点に対しまする間違いのないようにという意味において細心の注意を要するものである、こう考えます。
  172. 吉田法晴

    吉田法晴君 憲法九條に国際紛争を解決する手段としての武力の行使、或いは武力による威嚇がなされないということになつておりますから、国際紛争解決のための云々という問題が起る心配は実はないはずでございます。ところが今のお話のように局地的な或いは部分的な武力衝突なんといつても、武器を双方使い合つての武力衝突等においては、それが国際紛争になるということは、これは自動的であつても可能性を認められるわけであります。そうすると問題は戦力問題になるのでありますけれども、第二項の戦力というものは、これは近代戦争を遂行するに足る力でなければ戦力ではない、こういう説明をせられて参りましたけれども、先ほど質疑応答をしておりますような外国日本の国のものではない、国籍不明の場合もあるかも知れませんが、船舶なり或いは船舶に乗つておりますものとの間に武器の使用が行われる、これを戦闘行為ということはどうかと言われましたけれども、そういう場合に働くところの海上警備隊の力、これは船、それから船に乗つておるもの、或いは武器、これは木村法務総裁の……そこに一つの総合された力として、船の中ではこれは働いておるわけですが、これは陸海空軍では勿論ございません。海上警備隊という名前がついておりますけれども、それは憲法九條の二項で禁止をいたしました戦力の一部分或いは潜在戰力と申しますか、そういう形になつておると考えられるのでありますが、これは大橋国務相よりむしろ法制局意見長官がそこにおられますが、法制局意見長官なり或いは参議院法制局長にお答え願いたいと思います。
  173. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 九條の第一項におきまして武力の行使云々と書いてありますのは、午前中申上げたところにも引続くのでございますが、国権の発動としての戦争はやらない、併しその規模が戰争に至らずといえども、結局この武力の戦争たると否とを問わずと申しますか、国際紛争解決のための、言換えれば侵略のだめの武力の行使はいけないということをはつきり禁止しておる、これはもう申上げるまでもないところと存じます。今のお尋ねの問題は先に大橋国務大臣が御説明申しましたように、国際紛争の問題には元来はない事柄ではないかというふうに考えますので……。
  174. 吉田法晴

    吉田法晴君 そこを尋ねているのであります。
  175. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) ちよつともう一慶……。
  176. 吉田法晴

    吉田法晴君 国際紛争を解決する手段云々ということは第九條に禁せられておりますし、国際紛争解決のための手段、或いはそういう武力の行使というものがないことはこれは明らかであります。ところが先ほど大橋国務相に聞いておりますというと、向うにも武器を持ち、それから或いは船がある、それから人がおる。こちらにも船がある、武器が積んである、人が乗つておる、そうしてそこで撃ち合いが始まる、戰争行為というか、いわんかはとにかくとして、武器の使用が始まるわけであります。そういう事態になりました場合に、これは武器の行使であることには間違いはないわけでございますが、そういう武器或いは武力、これは戰力の一部であるということは間違いないのであります。それからもう一つ、例えばそれが一艘対一艘、或いは一対一という問題であるならば別でありますけれども、或いは二十隻、六十隻という話がございますが、そういう数が集まりました場合、それは大橋国務相説明によると、自衛のためにやるのだ、こういうお話でありますが、自衛のために武器を使うということになります場合に、その武器が、これは陸海空軍ではありませんけれども、「その他の戰力」といわれる戰力要素として働いておるのではないか、こういう点をお尋ねしておるのであります。
  177. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 問題は二つ要点があるわけで、第一点は私が先ほど答えましたように、今具体的にお話に出ておる事柄は、国際紛争の問題ではないと思いますということを申上げたわけでございます。第二の点は要するにこの戦力と武力との関係ということになりましよう。この戦力を第二項の問題としてたびたび申上げましたように、総合された力としてこの戰力の規格に達するものを持つてはならないということが、第二項の趣旨であるわけです。而してその戦力を侵略のために働かすということは、第一項の禁止するところである。これは極めて公式論でございますけれども、筋道はさようなものであります。
  178. 吉田法晴

    吉田法晴君 昨日の質疑応答で法制局意見長官も、侵略のための武器の使用云々ということのみでなくて、自衛のための戦争も放棄、或いは武器の行使も否定したということはお答えになつたと思うのです。そこで国際紛争云々ということはもう議論の外にのけていいと思うのです。先ほどお話しましたように、向うも武器を持つておる、こつちも武器を持つておる、停船を命じたけれどもとまらない、そこでこちらから威嚇射撃した、向うから応戦したというと語弊がありますけれども、武器を使用した、そうするとこの場合には、これは自衛だとおつしやいますが、その第二項、対外的な国外の力、武器、それに対するこちらの武器、それから船なら船が一応総合されておる。それが近代的戦争をなすに足るという規模でないことは、これは私も認めますけれども、侵略のためのものでなければそれは戦力でないと言われますならば別です。侵略のため云々ということは、もう昨日ものはられたのです。それはのけていいわけです。そうすると自衛のためにそういう武器を使う、その武器がこれは一艘でなくて、或いは数隻、或いは数十隻になることも、今のお話で言えば考え得られるわけでありましよう。そういう場合に働く武器を持つてつて、或いは人、武器、そういうものを総合した力、これは国全体でいいますならば、訓練された警備隊なり、或いは保安隊なりの軍隊的な組織を持ち、それから船、その船の上には武器を持つておる、でそれは総合された、そうして自衛のためという点はありますけれども、これも自衛のために使うという点は大橋国務相も認められたわけです。その使途についても、自衛のためならば総合的に使う、これだけ総合された力を持つておるならば、或いは近代戰遂行の能力云々はとにかくでありますけれども、戰力、これは陸海空軍でなくて「その他の戰力」と言われれば、その戰力の中には当然入るのじやないか、こういう御質問を申上げたわけであります。
  179. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) ちよつと念のため私の頭で今整理しましたところに従つて一応申上げます。今のお話によつて国際紛争云々ということは、もう問題から捨てた、第二段に自衛のためのという問題も捨ててしまつたということですね。
  180. 吉田法晴

    吉田法晴君 いいえ。
  181. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 自衛のためとか侵略のためとかという問題もお捨てになつているわけですか。
  182. 吉田法晴

    吉田法晴君 そうじやありません。自衛のためということは大橋国務相も認められた……。
  183. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) それじやもう一遍戻りますが、昨日申上げたところを今御引用になりましたから、もう一遍復習をさせて頂きますが、侵略戰争と同時に自衛戦争を放棄したようになつておるのではないかというお話が昨日ありまして、憲法第九條の第一項では侵略戰争だけを放棄しております、自衛権も放棄しておりません、自衛戦争も放棄いたしておりません。併しながら第二項において、およそ戦力というものを否認されておりますから、その結果としては自衛戦争もできないことになりますということを昨日お答え申上げたのです。その話と今の具体的の問題とはそのお答えによつて一応切離して頂いていいと思うのです。ですから国際紛争云々のことは一応切離します。それから今の自衛云々の問題も今私が申しましたところによつて外れてしまつていると思います。それから第三に、今吉田委員お話のお許しが出たのは、戰力の規模の問題は問わないとおつしやつた、そうですね……、ですから戦力の規模の問題も度外視いたします。そうすると残るのはその何らかの実力というものが残るわけです。その場合にその実力をどう使うかというお話になりますれば、その実力を使う場合は、例えば国内の暴動が起つた場合に、その暴動はその主宰者が誰であろうとそれに対してその実力を使うということは当然もう問題にならないと思います。それが海上において同様な事態が生じました場合においてもその関係は全然変らない、私の整理いたしました結果はさようなことに相成ります。
  184. 吉田法晴

    吉田法晴君 憲法解釈として自衛のための戰争、或いは自衛のための武力の行使というものも禁せられておる、これは昨日の御答弁も今の答弁も結構だと思います。ところが大橋国務相お話では、自衛のために武器を行使するということは先ほどお認めになつたのです。憲法解釈とそれから起つております今の議論と噛み合せてここで議論をしておるわけです。そうすると憲法上は否定をされておる。ところが自衛権の行使と申しますか、自衛のために武器を使うということはあり得るということをお認めになつたわけですね。
  185. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) これは先ほど触れましたように、この武力とか武器とかいう言葉を使いますと誤解を生じますから、実力と申上げて、その実力というのは憲法第九條二項に言う戦力に該当しない実力ということを念を押して話を進めるわけでございますが、その実力を今の治安維持のために使う、これはもう問題ないということになります。憲法上の冷静なる問題から言いますと、その実力を自衛のために使つてもそれは憲法は禁ずるところではない、形式論としては理論上はそう出て来る。
  186. 吉田法晴

    吉田法晴君 それからもう一つ自衛のために武器を使う云々の例として、佐藤意見局長官は国内治安維持のため云々と言われましたけれども、それは今の場合国内治安維持の範囲を出ておるかどうか、これを今問題にしておるわけです。そこでこれは外国なり、或いは国籍不明のもの、或いは密入国でありますか、どのときかわかりませんが、そういうこれは国内のものではございません。国際的な関係を持つておるそういう場合に武器を使うということはあり得るということは大橋国務相も認められた。そういう場合に使われる武器、それが近代戰を遂行し得るための力であるかどうかということは議論には出ておらんわけです、今のところでは……。そういう対外的に紛争を起します、これは国際紛争という言葉ではなくても実際に対外的に武器を使う、こういう可能性のあります武器を持ち得る、或いは総合された力を持つということは戦力という中に入るのではないか、こういう点をお尋ねしておきたい。
  187. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 私自身はつきりお尋ねの趣旨が呑込めたかどうか疑わしいと思いますが、この戦力ということは先日来申上げておりますように、総合言的な力である、そしてそれが日本国の保持する力である、そしてその限度は近代戦争云々ということであります。その戦力に達しないものというお話先ほどから進んでおるわけでありますが、その戰力に達しない実力というものは、いろいろな普通の警察も、自治体警察といえども或る種の実力は持つておるわけでありますから、それが国内治安維持の役に立つこともありましよう。或いは先日来御答弁申上げておりますように、若しも万一外からの侵略ということがあつた場合には、国民が石を持ち、或いは竹槍を持つというのと同様に一体となつて臨機に防壁になるというようなこともこれはあり得る。而してそれは憲法の禁止するところではない、こういうことでいいでありましようか。
  188. 吉田法晴

    吉田法晴君 それでは参議院法制局長に承わりたいのでありますが、先ほど質疑応答を繰返しておりますような事態が起りましても、その場合に持つておる、或いは使う武器、或いは武力というものも、これはこれが近代的な戦争を遂行するに足るような総合された大きな力でなければ戰力ではない、こういうまあ御説明であります。ところがこれは法制局、或いは法制意見長官、或いは法務総裁の大体一致した御答弁でありますが、陸、海、空軍と同じものだ、従つて陸、海、空軍或いは同様の近代戰遂行のための総合的な力でなければ戦力ではない、こういうまあ御答弁なのでありまするが、その他の戦力の中に潜在的な戰力という問題で論議をして参りましたけれども、論議されておるような事態が、対外的な事態が起り得る戦力、そういうものがその他の戦力としてこれは考えられておらないのかどうか、憲法制定当時の意味から考えまして、奥野法制局長の御意見を承わりたいと思います。
  189. 奧野健一

    法制局長奧野健一君) 先ほども申しましたように、憲法第九條二項の戰力と申しますのは、要するに戰争をなし得る実力、即ち戰争をなし得る実力を構成する人的或いは物的の要素というふうに申上げてありまして、現在の警察力或いは海上保安隊の持つものが若しこの戰力に該当しないものということを前提にいたしますならば、そういう実力を国内治安の上に行使するということは、戰力を持つていないのでありまして、戰力の保持を禁止するという第二項には牴触しないものであろうと思います。そうしてそういう戦力以下の実力でありましても、国際紛争の解決の手段であるとかいうような、その解決の手段としてその実力を振うことは、憲法第九條第一項の禁止するところであろうと思いますが、只今説明のような場合は、例えば警察官が国内におきまして、或る外国人の集団等と問題になつた場合に、警察官としての職務を執行したというようなことと大体似ておるのではないか。従いまして、それは重なる警察力の範囲内の実力の行使であろうかとこういうふうに考えております。
  190. 吉田法晴

    吉田法晴君 この議論はこれ以上もう発展しないと思うんですが、私は只今のような御答弁ですまして参りますならば、朝鮮事変にしてもあれは戰争じやない、あれは武器を使つておるけれども、近代戰を遂行し得るに足る戰力を持つておらんから、たとえ朝鮮で双方で相当の武器、或いは人間動員してやつても、あれは戰争でもなければ、或いはそこで使われておるものは戦力ではない、こういうことに相成ろうかと考えるのであります。たつた一隻の場合の説明をいたしましたけれども、これが相当の数集つてこちらからも使われる、或いは向うから使われるということを考えますならば、明らかにこれは憲法九條一項が言つておる国際紛争を解決する手段としての戦争であるかどうかという点は疑問でありますけれども、実質的には言い得る点もあろう。それからそこで使われる力がその他の戰力になることは明らかだと思うのです。その点はこれ以上議論をしても仕方がございませんから国民の判断にまかせたいと思います。  それからこの点は一つこれは全体として明らかに願わなければならんことだと思うのですが、大橋国務相に、いわゆる自衛力の漸増と言われる安保條約の前文に書いてあります問題、この自衛力の漸増とそれから警察予備隊、或いは海上保安庁関係の強化、或いは人員の増加こういうものが対応するのかどうか。予備隊が保安隊になり、海上保安庁から海上警備隊が生れて参ることはすでに明らかにせられていることでありますが、この自衛力漸増と、それから警察予備隊、海上保安庁関係の強化漸増が関連あるのですか。
  191. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) 実は安保條約の自衛力の漸増というのは、私もそういう文句があることは十分に承知いたしておりまするが、その自衛力に、果して海上警備隊なり警察予備隊が当るかどうかということについては確信は実はないのでございまするが、併しながらとにかく警察予備隊なり或いは海上警備隊というものが一つの実力組織でございまして、それで直接には自衛を目的として組織された実力ではないのであります。これは国内の治安なり或いは海上におきまする国民の権利の保護をすると、こういうための目的を以て組織されたものではありまするが、併し実力であることは間違いない。而してかような実力が国の自衛上必要である場合においてこれは目的が違うからと言つて全然使用されずにあるということは、これは考えられないところでございまして、恐らく本来の予備隊なり警備隊なりの設立の目的とした範囲内ではないかも知れませんが、併しそういう場合において、その実力が便宜自衛のために利用されるということは十分に考え得るわけでございます。そういう意味から考えますると自衛のために用いられ得る力であることはこれは否定することはできないものと思います。併しながら直接自衛を目的とした力でないということは、これはその性質から見て言い得ると思います。
  192. 吉田法晴

    吉田法晴君 大変慎重な御発言でありますが、先ほど頂きました自衛力漸増計画についてという文章には、自衛力漸増計画として警察予備隊の増強が挙げられている。それから後ほど海上保安庁関係の増強、或いは強化方針について承わることになりますが、この文章で拝見いたしますと、自衛力漸増即警察予備隊或いは海上保安庁の強化、漸増であることは明らかだと思うのです、その点は……。
  193. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) この点は先ほど予算委員会におきまして提出いたしましたる資料についての説明の機会をお與え頂きました際、冒頭において申上げたところでございます、即ち私ども政府といたしましては、警察予備隊にいたしましても海上警備隊にいたしましても、自衛を目的として組織された実力組織であるとは考えておりません。併しながら自衛のためにも用いられ得る実力であるという意味において恐らく委員長の資料御要求の御趣旨は、この警察予備隊なり海上警備隊なりの今後の増強計画をお尋ね頂いたことと、こう心得まして、そういう趣旨で、この両者の増強の計画を便宜お答えを申上げた。こういうことを先ほど委員会においても冒頭の説明の機会に申上げたつもりでございます。
  194. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 大橋さん非常に慎重に言われますが、こういうことは確かなんです。私が総理大臣と大蔵大臣に、本年度の千八百億の予算は、これは安保條約に基いて自衛力を強化するための費用として盛つたのかということで、実はその点について両大臣からそうだという御説明があつた。それからもう一つ加えて申上げると、総理大臣は、これはそのための経費としては最小限度だ、だからもつと殖えるのだ、それで大蔵大臣があわてて、いやこれは最大限度だとこういうことを言われた、これもはつきりしておるのです。それでその次に総理大臣が立たれて、我がほうから見れば最大限度だが、要求するほうから言えば最小限度だろう、こう直されたことも確かなんです。だから総理大臣と大蔵大臣の御相談の上で答弁されたものですが、そうなりますると、今おつしやるように、どうも安保條約でアメリカと約束をしておる。そうしてその期待に対して約束をして来たのだ、だからそのもとに千八百億を警察予備隊の経費、海上警備像の増強のための経費というものは確かに自衛力と関係がある、こう言われておるのですから、大橋国務相が、直接には自衛を目的としたものではないが、実力であることは当然だし、国の自衛のために用いられ得る力だ、私は用いられ得る力だろうが、戦力についてはもう議論いたしません。もうあなた方のほうは近代的な戦争を有効適切に遂行するまでは戰力でないのだとおつしやるのだから、戦力そのものについてはいたしませんが、自衛のためのことだけは、私は総理大臣と大蔵大臣のお話と、少くとも今大橋国務相の話との間には矛盾があると考えなければなりませんが、どうでありますか。
  195. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) この総理大臣と大蔵大臣はどういうお考えを持つておられますか存じませんが、併し恐らくは両大臣とも詳細に、何と申しますか細かく答弁をされれば、恐らく私と同じことを考えておられたことと存じます。ただそれを簡單に自衛のためにも用いられ得る力であるから、そこで自衛力である。その漸増として警察予備隊、海上警備隊の増強新設を考えておるということを言われたろうと思います。私もそういう意味においてそれが自衛力の漸増の一環であるということを否定したわけではございません。
  196. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 要するに何と申しますか大蔵大臣なり、そうして総理大臣というのは、大橋さんほど変なほうに解釈しているのでないという意味なら、私は考えられます。併しともかくもすなおに本年度の自衛力についての経費、この防衛分担金、及び警察予備隊安全保障諸費の経費はこの條約を締結して、それに基いてこの経費を盛つたものだということを確かに言われていることは間違いないのです。ですからその点はすなおにお認めにならなくちやならないと思いますが、とにかく私ここで、私どもは結局政府近代戰を遂行するに足る有効適切な、大橋さんもこの前の両條約のときにやはり近代的な戰争を遂行するに足る軍事力というものまでは戦力だと考えないのだ、こうおつしやつておりますから、これは私どもも別に判断したい。殊に私はこういう解釈学説としてははじめて政府がお作りになつ学説であるから、それは私ども別個に判断したいと思いますが、ここで海上警備隊の装備についても問題になつたのですが、警察予備隊については今まで借りておつた。併し今度は一括して何らかの両国の間の約束にしなくちやならないとおつしやるのでありますが、今まで借りて持つておりますところの装備そのものですね。訓練の模様は聞いているのですが、装備そのものの内容、個々の数量はどのくらいあるのか。それをはつきりさせて頂くと、少くとも海上警備隊について艦船の内容と装備の程度をお話になりましたのですが、そうして数量もお話になつたのですが、警察予備隊の各種の武器と、その数量というものをはつきりさせて頂くと私は判断の一つになると思います。  それからもう一つお聞きしたいことは、警察予備隊令はポツダム宣言の受諾に伴つて発する命令で以てきめられておりますが、独立した以後は、これはポツ勅による政令ではないだろうから別にお作りになるだろうということが考えられます。そういう点についてどういうふうにお考えでおられるか。ですから第一は端的にどれだけの武器を借りているのか、内容的に一遍警察予備隊についておつしやつて頂きたい。それで私どもは実力が判断できる。それは事実の羅列であります。第二は警察予備隊令は独立後は別に変えられるのかどうかその点をお聞きしたい。
  197. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) 武器につきましての現在の警察予備隊の使用関係は、先ほど予算委員会において御説明申上げました通り、これは日本に駐在しておりまする占領軍たる米軍の所有並びに管理下にあるものでございます。そうしてこれを米軍におきましては、民事局を主体といたしておりまする警察予備隊に対する顧問団が司令部から一括して中央において借りる。そうして顧問団はこれを各警察予備隊の原隊に駐在をいたしておりまする顧問将校に管理をさせる、この顧問となつておりまする米軍将校がその責任において管理し必要の際に予備隊に貸付ける。そうして使用後はこれを回収して保管しておく、こういつた法律関係といいますか、事実上の使用関係になつております。従つてこの数量はアメリカの、日本において占領軍が保管をいたしておりまする武器の内容を説明することに相成りまするので、数量につきましては、明確な数量をここで申上げることは、先方の了解を得る必要があると存じまするが、併し大体現在の警察予備隊というものの組織編成から申しまして、或る程度の推測はなし得られるのではないかと思います。武器の種類といたしましては、先ほど説明申上げました通り、小銃といたしましては、カービン銃及びライフル銃でございます。当初は殆ど全部カービン銃でございまして、これが大体警察予備隊員の各隊員に殆んど一名に一挺ずつ渡つておりまして、無論幹部等につきましては、これを使用しないということもございまするから、それらの数量は、その員数に相当する数量は七万五千から差引かるべきだと思います。それが漸次ライフル銃に代えられつつあります。併しこれはカービン銃が全部ライフル銃に代わるのではなくて、やはり部隊の任務、或いは要員の任務によりまして、ライフル銃よりも、小型で軽いカービン銃を使用することが便宜であると、そういう任務につきましては、引続きカービン銃を使用させておる、こういう状況であります。それから今日これ以外の兵器といたしましては、機関銃並びにバズーカを使用いたしております。この機関銃及びバズーカを使用いたしまする部分につきましては、当然カービン銃なり、ライフル銃なりというものは、僅少の護衛要員以外には小銃は持たない、こういうことになるわけでございますから、その部分は小銃に代えてバズーカなり、或いは機関銃を持つておる、こういうことになるわけでありまして、従いまして、これらの点でおよその数量について御推察を頂きたいと存じます。
  198. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 今のに関連して……。今借りておるのであるから言いにくいとおつしやるならば言葉を換えていいのですが、つまり今度は一括して借りよう、独立したらそうあるべきものだと思うのですが、そういうふうのときにどの程度本年度内予想しておられるかという問題でございますが、で大体機関銃やバズーカ、迫撃砲は、皆ここに予備隊から頂載したのを武器の内容は持つておる。むしろ問題はどの程度を実力として持つておるかということが、私は客観的に戦力としてどう判断されるかという問題の一つだと思います。まだほかにありますが、一つであります。でありますから現在借りられておるのがどれだけあるかと今おつしやらなくつても大体想像はつきます。つきますが、私どもも或る程度の想像はしておりますが、若しも正確に自分たちが今度は一括して借りなくちやならないとおつしやると、一括借りるだけの御計画があるはずだと思うのですが、そういう問題が一つ。  それから先ほどお答えなかつたのですが、このポツ勅はお変えになつて、独立したときはポツ勅でなしにほかのものにお変えになるはずだ。独立国ですから独立国の意思として、ポツ勅としての形は残されないはずだと思うのですが、その点についてお答え願いたい。
  199. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) 私の申しましたのは、独立後の方法としては現地の顧問将校が管理、保管の責任を負うておる、こういう形をやめまして、米軍の顧問団といたしましては、中央機関が責任を負う、そして日本側の中央機関がそれから借りて、そのほうは日本側の責任において保管をするという方式の変更をいたしたいということでございます。これにつきましては、只今なお先ぽうと事務的に協議をいたしておるわけでございまして、なお具体的にきまつたものではございません。それから数量は大体は想像がつくがというお話でございましたが、これも私どもといたしましても数量は大体想像はつくわけでございますが、それ以上の詳細につきましては存じておらないわけでございます。なお先ぽうとよく相談をいたしまして、これがお示しできるような機会がありましたならば、先ぽうの了解を得てお示しするように努めたいと存じます。  それから第二点の御質問の、現在ポツ勅でできているこの警察予備隊令は、講和発効後は法律にするのではないかと、こういう御質問でございますが、これはさよういたすつもりでございます。
  200. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 併しただこういうことは大橋国務相もおつしやつているし、先ほどの御説明で大体今固有の練習場がないことが非常に困るのだと、そして大体として、千人ぐらい単位の訓練でも二十万坪くらいはいるのだ、今は大体の訓練中だ。併し更に今度は大きな部隊訓練をする。そのときにそういう大きな部隊の訓練というものが、ただ人間だけで部隊訓練するわけはないのですね、これはもう想像つく。ともかくも兵器の種類として、機関銃も持ち、バズーカ砲も持ち、迫撃砲も持つて、そうして部隊訓練をしてどの程度の実力かということは実際数量を言われなくてもやや想像はつくのであります。私どもは相当大きな数量に亘るところの各種の武器だということは十分想像つくのです。今どうしても非常にアメリカとの関係があつて言いにくいとおつしやるならば、まあ私としては強いてお尋ねしませんが、大体私の想像も御同感になるだろうということはわかります。で、その点を大体同感になつて頂くだろうということが一点。それで大体戦力の客観的判断になるのですから、私どもの非常に重要な参考になるのです。  それから警察予備隊令を改正をなされますときに、警察予備隊令を今度ポツ勅でなしに改正される。独立国として自分の意思が当然入つて参る。だからこれは改正なさるのだということがわかる。今まではマツカーサーの書簡によつてただ七万五千人持てと言われたから持つている。従つてポツ勅の形です。だが今度は日本国の意思として警察予備隊をお持ちになる。そういうふうな変化が明らかに見られるのですが、そのときでも、どういう意味においてもこの警察の目的、今ここに書いておられますところの「国家地方警察及び自治体警察の警察力を補うため」ということ以外には何らお附加えになりませんか。目的について安保條約を締結し、それに基いて行政協定をお結びになつて行政協定の内容の二十四條ではああいう規定があるというときに、この目的以外は、現在ありますところの国警及び自治警の警察力を補うという目的以外に全然お附けにならないかどうか、この点一点お聞きしたいと思います。
  201. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) 先ず第一に数量について、自分も或る程度の感じを持つておるがその感じに同感するかどうかという御質問でございますが、これのお答えは御推察に任せたいと思います。  それから第二点は現在の警察予備隊令を立法化する場合において、目的を変更するかしないかという点でございますが、近く警察予備隊令を立法化する法案を提出いたしたいと存じております。その法案におきましてはその目的等に関する現行のポ政令の規定を改正する考えはございません。
  202. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 そうするともう少し端的に違つたほうから聞きますが、自衛のために使い得る、少くとも安保條約に基く責任を果す意味におきまして、警察予備隊令はその安保條約によつて責任の分担を目的のうちに入れるということはない、こう了承していいと思うのですが、そういたしますと更にもう一つ疑問が起つて参るのですが、警察というものはどういうものであるかということになつて参ります。この点で私は警察の力というものは行政権の範囲で持ち得るものた、率直に言えば国家警察なり自治体警察が持つておるのは、こういう不特定多数の人に傷害を與え得るような武器を装備するということは、私は警察の目的外である。こういうふうに考えますが、警察の目的というものは遠くからどれが犯人だかどういうものだかわからなくても不特定多数の人が遠距離から殺され得るような武器を持ち得るのが警察力であるかどうか、この点は私は非常に現在の憲法との関連において疑問を持つのでありますが、その点についての御見解を承わりたいと思います。
  203. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) 警察につきましては私の所管でございませんが、併し折角の御質問でございますので便宜お答えを申上げます。警察において使用し得る武器はその種類において限界があるかどうかという御質問でございます。その種類の限界としては不特定多数の集団に対して使用し得るような、そういう性質の武器が警察の装備として許されるかどうかという点でございましたが、現益の警察におきましてもすでに全国の警察官はすべてピストルを一挺ずつ持つておりますが、これは不特定多数の目標に向つて十分に使用され得る場合もあるわけでありまするが、併しそのピストルを警察が持つておるということは、それは警察の任務を遂行する上から言つてピストルが必要であるという理由から持たされておるものと考えておるのであります。で、これは武器の種類ということによつて、警察上装備し得るかどうかということは私は言い得ないと思うのであります。例えば外国におきましては、機関銃のごときものを持つておる警察もあるようでございまするし、或いは又小口径の砲を持つておるというような警察もなきにしもあらずと考えます。要するに警察というものは、その持つておりまする武器は必ず必要な限度において使用せらるべきであり、又如何なる武器をその国の警察が持つかということも、警察の任務の範囲において現実に必要があるかないかということによつて決定さるべきものと考えます。
  204. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 今のお話がありましたので、ちよつともう一言私お聞きしたくなつたのですが、つまり今の警察官はピストルは確かに持つておる。以前は警察官一人一挺のピストルは持つておりませんでしたが、人数は殖えてこの頃はみんな持つているようです。併しこれは第一に考えられることは正当防衛のために持つておる。徒らに人命……私の説明が少し不十分だつたと思いますが、警察目的遂行のためだと称して人命を……発射していいとは考えられない。而もこれはもうピストルの距離というのは特定の人にはつきりときめ得る至近距離で命中卒がある。こういうふうなロケツト砲や迫撃砲を以て、そうして随分遠くから不特定多数の人に危害を與え得るという武器は、私は警察力の持つておる武装の程度を逸脱しているのではないかと思う。あなたのおつしやる、つまり外国にもそういう例があるとおつしやる、どこの外国か、恐らくソヴイエトの例を言われるのじやないかと私は思うのです。ソヴイエトにはそういう警察隊軍隊のほかにあるそうであります。併しそれは警察の名を……私は警察の名を冠していようがどういう名を冠していようが一向差支えないと思いますが、この戰力解釈に当つてはそういう観点に立つておりますから、そういう例を以てただ警察だと言われるのはおかしいと思いますが、ソヴイエトのこの警察が果して普通の警察力かどうかという問題は別であります。その解釈は別にあると思うのですが、ともかくも日本の警察においては、少くとも持つておる武器は、今私が申したように正当防衛の場合に使うことを第一の目的としておる。そうして特定の人に極く至近の距離から……、正当防衛がそうでありまするから、特定の人に対して防禦できるようにピストルだけに限局しておつて、こういうふうな非常な遠距離から不特定多数の人に射てば危害を生ずるような武器は、私は警察力の範囲を逸脱しておるものだと、こういうふうに考えざるを得ないと思いますが、もう一度その点を御質問申上げる。
  205. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) 至近の距離からとか、そういうことは、私は警察の持つ武器について理論上の限界があるとは考えておりません。無論警察が與えられたる武器を警察官として使用する場合においては、正当防衛或いは緊急避難の理由がある場合、又その防衛上或いは避難上必要な限度内において行使すべきものであると、これはもうその通りでございます。併しながらその使用する武器の種類については、その任務の性質上おのずから或る限界というものは考えられまするが、併し至近距離において発射し得るものとか、そういつた何と言いますか、そういう意味からするところの武器の種類の限界は、私は理論上ないと、こう考えておるのであります。現に多数の集団を以て襲いかかつた場合において、正当防衛或いは緊急避難の必要上止むを得ずこれらの集団全体に対して警察が武器を使用するということも、これは現実にはなかなかそういうことは少いと思いまするが、理論上は必ずしも考え得られないということではないのでございまして、私はこれは理論上の問題でなく、実際上或る程度の限界考えられるというものじやなかろうかと思つております。従いまして、さような実際上の見地からいたしまして、現在においては警察に対してはピストルを携帯せしめるを以て大体必要にして十分であると、こういう考えで警察官としてはピストルを持つておる。併しこれでは対処し得ざる事態が十分に予想せられまするので、それを補うところの任務を持つておりまするところの警察予備隊においてより威力のある武器を持つということは、これは当然あり得ることと考えられるのでございます。
  206. 吉田法晴

    吉田法晴君 関連して……先ほど大橋国務相は、自分は警察の担当ではない、警察の問題は所管外だというお話でありましたが、担当は何でございますか。
  207. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) 私は警察予備隊本部を担当いたしております。
  208. 吉田法晴

    吉田法晴君 警察と、それから警察の任務を果せない場合の補充的なと申しますか、それをやつておる警察予備隊の任務について承わつたのでありますが、警察でなくて、警察予備隊を担当する、こういう点に……、これは意識の下にあるものが顔を出したのだと思うのでありますが、先ほど堀木委員からポ勅に代ります法令の改正問題をお尋ねになりましたが、この法令の改正、それから保安庁の設置法と申しますか、行政機構の改正に関連いたしまして保安庁の設置が考えられておりまするが、これは昭和二十七年度予算先ほど御提示になりましたような漸増計画を承認する、そうしますとこれはポツ勅の期限が参りまして、講和発効と同時に有効に働き得るような法令の制定が行われる、それから保安庁の設置法と申しますか、こういうものもきめられると思うのでありますが、これも今十分に承わつておきませんというと、白紙委任ということで、或いは目的につきましても、或いは任務につきましても、どういう改革或いは構想が実現するかわかりませんので、もう少し詳しく一つお示しを頂きたいと思います。
  209. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) 問題を二つに分けてお答え申上げます。先ず最初に、保安庁の設置ということについての考え方を申上げます。保安庁の設置に対しましては、現在の警察予備隊及び海上保安庁において新たに設けられまする海上警備隊及び海上保安庁の従来からありましたところの所管事務のうちで警備、救難事務、これを一つの機構に統合いたしたい、こういう考えでございます。これはまだ機構の大綱についての打合せも済んでおりませんが、併し政府としては大体そういう新らしい機構を作りまして、それに自衛力として用いられ得るような、そうした機構を総合的に管理運営するようにいたしたい、こういう考えを持つております。これは行政機構改革の一環といたしまして急速に法案を提案いたしまして、国会において可決せられました曉は、七月一日から実施をいたしたいと考えております。これは機構の問題でございます。そこでもう一つの問題は、海上警備隊なり或いは警察予備隊なりの部隊の実体をどう改革するかという問題になるわけでございます。海上保安庁におきましては六千人の増員に際しまして海上警備隊という新らしい組織を保安庁所管の下に設けまして、ここで先ほど来申上げましたような、海上警備のため特別の必要の際に活動する船舶を主体とした部隊組織を作り上げて、これを海上警備隊と名付けることにいたしたいと思つております。この海上警備隊を創設いたしまするためには現行海上保安庁法を改正する必要がございまするが、この法案は本日たしか提案になつておると存じます。  それから警察予備隊につきましては本年度における増員計画があるわけでございます。この増員計画を実施いたしまするためには先ず以て法律が必要になるわけであります。御承知通り、現在警察予備隊はポツダム政令によつて設けられており、このポツダム政令全体につきましては講和発効後六カ月間は法律としての効力を持つということに相成つておるのでありまするから、先ず講和発効と同時に、現在のポツダム政令は当然法律と同等の効力を持つことになる、併しながらそれでは七万五千の現状でございますから十一万の増員計画が実施できませんので、これを差当り実施いたしまするために、現行ポツダム政令に対する差当りの改正法律案を提案いたしたいと思つております。これは増員に伴いまする人員の点だけに触れたいと思つております。なお内閣総理大臣は、国会でいろいろな機会におきまして今年の十月には現在の警察予備隊を新らしい組織に切替えたい、こういう意思を表明いたしておりまするが、これに伴う法律案が必要となるわけでございます。これに伴う法律案もやはり今国会において御審議を頂くことが時期的に見て必要である、こう考えましてこの国会に提案をいたすつもりで只今準備を進めております。これにつきましては、先ず警察予備隊というものの名称を改める、それから創設以来今日までの経験に徴しまして不十分と認められる規定を補充いたすこと、それからポツダム政令において極めて概括的に規定せられ、細部に至つては政令等に委任した條項が非常に多うございますが、これらの点を、法律として必要なるものは法律中に規定するというような事柄をも考えて参りたいと思つております。従いまして、この関係につきましては只今のところ職員に関する法律、それから給與に関する法律等は別個の法律といたしたいと思つております。実体の、保安隊そのものの任務、組織、編成等に関する規定は、これは只今考え方といたしましては、新らしくできまする保安庁の下部機構に相成りまするから、保安庁設置法の中にこの部隊組織の根幹となるべき規定を盛込むようにいたしたい。この保安庁のほうは七月一日から発足をいたしまするが、併し予備隊の切替は十月一日頃に相成ると思いまするので、従つて新らしくできまする、保安庁法と仮に名付けまするならば、その中には、警察予備隊の管理機構を新らしく保安庁という新機構に切替える、この部分は七月一日から発効して、七月一日から新機構を作りたい。実体をなしまするところの警察予備隊の新らしい組織への切替、仮に保安隊と名付けますならば、その保安隊に関する規定は、これはやはりその保安庁法の中に、その下部組織として規定はございまするが、併し現在の警察予備隊を新らしい保安隊に切替えるという実体的な部分につきましては、これは十月から発効するように、こういうふうに考えております。非常にくどくなりまして恐縮でありますが……。
  210. 吉田法晴

    吉田法晴君 ポツダム宣言に伴う政令の効力に関する云々というのは、これはまだ参議院は通つていなかつたと思うのですが、そこでその点は大橋国務相の思い違いじやないかと思います。それからこれは今の七月一日から実施せられます保安庁設置法、それから十月一日から切替えられます保安隊或いは海上警備隊に関しまする法律、これは当然二十七年度予算と並行をしてと申しますか、予算が通過するまでに本当は審議を求めらるべきであつたと思います。あとでこういう工合にするということになりましても、予算の面は先に進んでおつて、あとでとやかく言えないという実体になる点にこれは問題があると思います。その点は政府の態度について不満の意を表しますが、なお保安庁設置法の中味につきまして、すでに海上警備隊につきましては法律が今日提出されたということでありますが、その中に新聞の伝えるところでは、保安隊或いは警備隊双方とも総監の下に幕僚が置かれる、或いはその下に、これは総監の下でありますが管区隊長が置かれる、或いはその下に部隊が置かれる、こういう何と申しますか組織、これは軍隊的な組織だと私も思いまするけれども、考えられておりますその組織についてもう少し詳しく承わりたいと思います。
  211. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) 先ず現在の警察予備隊組織について御理解を願つておくことが必要であると存じます。現在の警察予備隊組織といたしましては、警察予備隊を管理いたしまする管理機構と警察予備隊の部隊機構とが別個に相成つておるのでございます。で、この管理機構は内閣総理大臣の下に警察予備隊本部というものが置かれてあります。ここに本部長官以下百名の職員がいるのでございます。
  212. 楠見義男

    委員長(楠見義男君) 大橋さんにちよつと申上げますが、現在の機構は大体皆さん御存じのはずだから将来のことをいつて下さい。
  213. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) それで警察予備隊本部の統轄の下に、警察予備隊の総隊総監部というものがあることは御承知通りであります。この警察予備隊の総隊総監は、現在は警察予備隊の隊員の一番古参の者が総監に就任をいたしておるのであります。今回新らしい機構におきましては、保安庁長官は国務大臣を以て充て、ここに必要な局を設けておるのでございますが、併しここは海上警備隊なり、警察予備隊なりの管理をする管理機構でございまして政策についての重要なる問題、或いは実施面における重要なる大方針をこの管理機構において決定をする。そうして予備隊なり海上警備隊なりの実際活動の面及び決定せられましたる大綱に従いまして、これを警備隊において実施いたしまする面は部隊組織たる総監部において行うことにいたしたい。この総監部におきましては、現在では先ほども申しましたる通り、隊員の中の一番上席の者が総監に就任をいたしておりまするが、新機構におきましては総監は隊員外の者を以て充てるようにいたしたいと考えております。そうして、その下にその部隊全体を統轄する少数の隊員外の職員を置いてこれを補佐せしめる。そうして又、その総監部の一機構といたしまして幕僚部というものを置く。この幕僚という名称が適当かどうか只今研究をいたしておりますが、幕僚部を置く。そうして幕僚長に隊員の最古参者を充てる。そうしてこれが総監に代り、或いは保安庁長官に代つて内閣総理大臣の命令に従つて部隊の行動についての政府の命令を伝達する機関になる、こういうふうに考えておるわけでございます。
  214. 吉田法晴

    吉田法晴君 総監に対しては、総監は改正後においては隊員外から任命したい、その下に少数の……これはそれがそのまま幕僚部を構成するのかどうか、ちよつとはつきりいたしませんでしたけれども、これに隊員以外の者を充てる、こういうお話でありますが、その隊員外というのは、追放解除等になりました旧軍人を充てられるのでありますか、それとも何と言うのですか、文官と言いますか、事務屋を充てられるのか、その点を一つお話願いたいと思います。
  215. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) 隊員外と申しましたのは、これは旧陸海軍将校、或いは警察予備隊の隊員たる経歴を持つていない人とする、こういうつもりでございます。表現が不十分であつた点を訂正いたします。
  216. 吉田法晴

    吉田法晴君 それから幕僚長まではお話になつたのでありますが、先ほどその下の或いは管区長或いは部隊、こういうものについて変化ないのかどうかその点を一つ……。
  217. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) 現在の警察予備隊の編成はそのまま今後も継承されまするので、方面総監以下の各機関は現状と変化はございません。
  218. 吉田法晴

    吉田法晴君 もう一つだけ。それでは組織の点については大体承わりましたが、これは警察でないということは先ほどお話でありましたが、警察でない、今は警察予備隊、それから十月一日以降は陸上における保安隊、海上においては警備隊というふうになるのでありますが、その身分関係と申しますか、これは衆議院その他で論議せられましたけれども、或いは任期満了いたしました際に、何らか継続して勤務させるような措置を講ずるのか、これは或いは何と申しますか、予後備という言葉が当るかどうかわかりませんけれども、そういう身分的に普通の、自由に警察予備隊に志願する、或いは任期が来て自由に退職する、こういう方式でなくて、何らかのそこに、何と申しますか、法的な措置を講ずることによつて引続いて隊員になる、或いは一たび隊員でなくなつた者について隊に戻すような措置を講ずるといつたような御構想があつたようでありますが、その後或いは多少変化もしているかと思うのであります。その点について承わりたい。
  219. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) 警察予備隊に予後備を設けるかという問題につきまして、これは後備と申しますか、いわゆる解除後の退職後の応召義務を認めるかどうかという問題につきまして、私どもも若干研究をいたした次第でございます。併しその結果といえども、現在おりまする隊員に退職に際して急に改めて応召義務を課するということは、全然考えたことは今までもございませんし、ただ今後新らしく採用する人々について応召義務を設けることが適当かどうかという問題を研究をいたしておつたのでございますが、併し只今までの研究の結果では、今後新らしく入隊する者に対しても退職後において応召義務を命ずる必要はなかろう、一応そういう考えになつてつております。併しながら、なお何か必要の際において、急速に人員を充足いたしまするために、本人が退職に際して応召の義務に甘んじて服したいという場合においては、応召義務を本人の意思によつて将来認めるかどうかという問題は、なお研究の余地がある問題だと思つておりますが、これについてはまだ何ら結論に達しておりません。
  220. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 先ほど来の吉田委員及び堀木委員の質問の、まあ焦点が警察予備隊及び海上保安庁が今後は保安隊ですか、或いは海上警備隊、こういうふうにまあなるが、それは主たる目的国内治安のものであつて、それで自衛ということはこれはまあ従たる目的だ、附随して出て来たものだ。こういう御答弁になつているのでありますが、御承知のように警察予備隊ができた経過は、朝鮮動乱が起きてからこれが設けられたと思うのですが、ダレスさんが来ていわゆる直接侵略、間接侵略という言葉を初めて言われた。大体はそれに対応するような形において、この安全保障條約及び行政協定というものも大体その線に沿うてできつつあると思うのです。そこで直接侵略については駐留軍が当るということはこれはまあ明らかであります。そこで、いわゆる間接侵略、これが自衛ということになつて来ると思うのですが、自衛との関係になると思うのですが、そこで今度新らしく体制を整える。それでまあ名称も変つて、海上警備隊或いは又保安隊ともなる。その段階においてはこれはいわゆる間接侵略、ダレスさんの言われる間接侵略に当るための目的をここで初めて持つて来るのではないか、そういうふうに考えるのがこれまでの経過上至当ではないかと我々は考えて、非常に常識的なんですけれども、そういう意味に率直に我々は考えられるわけなんです。それが大橋国務大臣のお話ですと、そうじやないと……、やはり国内治安というものが主たるもので、そうしていわゆる自衛は間接侵略に当るということは、これは依然として従たるものである、それならばなせ新らしくここで変るかということが我々に納得行かないのです。新らしく変るについては、その目的がやはり間接侵略というものに対応するのが主たる目的になつて来て、前と目的の比重関係がそこで変つて来るのではないか、私はまあそういうふうに見られるのでありまして、この点についての御説明を願いたいのです。
  221. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) これは木村委員の仰せられましたところと、私の申上げましたところとは、これは何と申しますか、見方の角度が違つておるとこう考えます。私はそういつた、ダレスさんがこう言われたとか、或いはそういう安全保障條約の締結によつてどうなつたというような、そういうような観点から申上げたのではなくて、現在の警察予備隊令の純粋な法律的な解釈から申上げたわけでございます。即ち我が国の平和と秩序を維持して行くということが目的である。これは即ち国内における治安が確保されて、国民の権利と自由が正しく保護されるという状態を常に国内において守るということが警察予備隊の本来の使命である。こう考えておるわけでございます。而して、かような国内の治安を乱すところの原因といたしましては、御指摘のような間接侵略というものもございましよう。又直接侵略に至つては、この治安を乱す最大なるものである。こう言えないこともなかろうと思うのであります。併し警察予備隊の実力その他から見まして、大規模なる直接侵略、或いは大体において相当な我が国に直接侵略をなし得る程度の力を持つた国が、直接侵略をいたして参りました場合においては、警察予備隊を以てしてこれを防ぐということは不可能でございまするから、その防御の主たる任務は駐留軍が負うところである。併しその場合におきましても、警察予備隊は、その任務並びに力の範囲内におきまして、それを防止するために役立つような適当な任務に従うことは十分に考え得ることでございます。
  222. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これまでいわゆる自衛というものと、国内治安というもとのその区別がはつきりしないので、一つは自衛のための警察予備隊或いは保安隊と言いますか、それから海上警備隊というものの目的について、又任務についてはつきりしないように思われるのですが、同じ治安維持でも純粋の国内の治安維持と、それから安保條約第一條にあります。「一又は二以上の外部の国による教唆又は干渉によつて引き起された日本国における大規模の内乱及び騒じよう」、こういうものから来る混乱に対する治安、こういうものとの区別、これは先ほど意見長官は、それははつきりしないと言われましたが、これははつきりするのではないでしようか。この安保條約第一條に基くところの国内治安の混乱は、これが間接侵略に当るのではないかと思うのです。それから純粋の国内治安というのは、そういう「一又は二以上の外部の国による教唆又は干渉」というもののない場合の治安です。こういうものと私ははつきり違うと思うのです。そこで純粋な意味での国内治安というものについては、これは警察がやり、それから保安隊或いは海上警備隊、そういうものの任務が第一條に基くところの原因による国内の混乱、そういうものに対する治安、こういうことを任務とするのではないですか。そこで普通の警察と保安隊との違いがそこに出て来るのではないか。こういう区別をすれば非常にはつきりして来るのですが、そう解釈してよいですか。
  223. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) 解釈してよいかと仰せられますから、恐らく法規をそう解釈してよいかという、そういう御質問かと思いますが、法規は私は法文を基礎にして解釈すべきだと思います。従いまして警察予備隊の任務というものは法文によりまするというと、「わが国の平和と秩序を維持」するのである、こういうことが明らかに任務として謳われておるわけでございます。これは即ち国内の治安を守るということなのでございます。そこで只今国内治安とか或いは外国関係の治安とか、そういう言葉を言われましたが、私は治安は一にして二ならず、(笑声)即ち国内の治安というものは飽くまで一つであると思います。それは国内における国民の権利と自由が常に正しく法によつて保護されておるという状態が治安だということだろうと思うのでございます。そこで御質問に関係いたして参りまする点は、さような国内の治安が如何なる原因によつて紊される場合があるかと、こういうことになるのでございます。それは仰せのごとく三つに分けて考え得ると思います。第一は純然たる治安紊乱の原因が国内に存在する場合。第二には、純然として国外に存在する場合。これは明らかに不正なる外国の侵略行為と思います。直接侵略だと思います。その間において中間的な準国外の原因というようなものがこの間接侵略であると思うのでございます。そこで警察予備隊とこれらのことに又帰つて参りますと、警察予備隊国内の治安をどこまでも守るということが任務でございまして、如何なる原因によつて治安が害された場合において国内治安を守るのであるかということについては、法文上何らの限定がいたしてありませんから、私はこれらの如何なる原因によつて国内治安が害された場合においても、それを回復するために警察予備隊の任務というものは当然働き得る余地があると、こう思うのであります。但し実際上の問題となりまするというつと……、以上は全く法律的な解釈でございます。実際上の問題になりまするというと、その装備、実力というような点からおのずから限界があるわけであります。又本来の任務というものの意味から言つてもおのずから限界があるのでございまするから、純然たる国外に原因のある治安の紊乱に対しましては 一応駐留軍によつてこれを保護してもらうということが適当である。その場合において警察予備隊は補助的な役割を果し得る場面があろうと思います。それから第二の間接侵略即ち国外に準ずべき原因というような場合におきまして、これが大規模になりまするというと、警察予備隊の実力から見まして到底これに対処し得ないという場合、そういう場合は当然政府は駐留軍に対して出動の要請をすることになるだろうと思うのであります。そのほかの場合におきましては、国内の警察なり或いは警察予備隊などが適宜に出動して処置し得るものは処置して行く、こういうふうに考えるべきじやなかろうか、こう考えます。
  224. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 法理上の解釈はわかります、その通りだと思います。併し実際問題としての御説明では、それは我々としては非常に重要問題であつたわけでありますが、大体大橋国務大臣のお話を聞いておりますと、はつきりはそう申されませんでしたけれども、いわゆる間接的に備えるものは大体これは保安隊、或いは海上警備隊の任務であるということがわかつたのです。もう一つ伺いたいことは、戰前においては軍隊というものが、これは外国戰争するばかりでなく、やはり国内治安に当る、こういう任務があつたのであります。そうしますというと、これは戦前の軍隊にして国内治安に当る任務ですな、そういうものに相当するものなんですか。
  225. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) 従来は御説の通り軍隊というものがありまして、国内で警察の処理し得ないような事態に対しましては軍隊が出動するというようなことがあるわけでございまして、今度は警察予備隊におきましては、その軍隊が主たる目的以外に国内において片手間にやつておつたところの警察に対する援助という役割、それを專ら目的として組織されたものがこの警察予備隊である、こういうふうに私は考えております。
  226. 岩間正男

    岩間正男君 ちよつとお聞きしたいのですが、先ほどの編成の問題ですが、今度新たに直轄部隊の新設、管理補給部隊の増強、それから学校等の整備というようなことが出ているのですが、これに、大体この中で管理補給部隊の増強と学校の整備ということで二万という御説明でありますが、この管理それから補給、こういうことが大体どれくらいの数になるのですか。管理はどのくらいになつて、それから補給部隊、これがどのくらいか。それから学校の整備のほうにどれくらい。その人員ですね。
  227. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) 現在の状況といたしましてはこの方面総監部が四つございまして、この方面総監部の管下に各部隊、各方面総監部とも約一万五千の隊員を持つておりまするから、概括いたしますると、現在は方面総監部四つのために約六万、これも併し学校及び管理補給部隊のほうの人員が不足いたしておりますので、そのほうから臨時に数千名廻しておると思いますが、詳細な数字は覚えておりません。大体五万乃至五万数千というのが方面総監部の何になつております。それから管理補給部隊といたしましては現在約一万五千の定員を持つておりますが、併しこれも学校その他のほうへ多少の人員を廻しておりまするが、これは大した数ではないと思います。それを今回学校関係で約六千人ぐらいを増員し、管理補給部隊及び方面総監部及び直轄部隊に残りの約三万を廻しております。このうち方面総監部関係では約一万五千程度がそちらに廻るといたしますると直轄部隊及び管理補給部隊に対して残りの一万五千が廻る、こういうことに相成つております。
  228. 岩間正男

    岩間正男君 二万ですか。
  229. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) 最初学校のほうへ約六千ぐらい……。警察予備隊本部次長江口君が見えておりますから細かい点は……。
  230. 岩間正男

    岩間正男君 これは何ですか。今度の三万五千の増加に従つて当然それに附随した面の管理補給、これにそういう割合で殖えて行くだけで、そういう部隊が特に強化される、こういうようなことはないのですか。
  231. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) これはこの割合で殖えて行くと申しまするより、むしろ現状は学校関係の職員並びに管理補給部隊の職員が非常に少いものでございますから、それでそのほうへ相当数を割合以上に廻して行きたい、こういう考えをいたしております。
  232. 岩間正男

    岩間正男君 現在少いというのは、それは何ですか、定員か何かあるのですか。それとも特に今まで少いところにそれを強化する、増強すると書いてありますが、それはどうなんですか。
  233. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) これは今まで定員の配置上やむを得ず少かつた部分を増加する。そういう点で従来の割合がそのままふくれるということでなく、特に管理補給部隊及び学校施設関係の人員が従来の全体の割合よりも特に増加をいたします。
  234. 岩間正男

    岩間正男君 そこのところは江口次長から今までの数、それから今度殖やそうとする増強の数、これをちよつと明細に対照して話して下さい。今までの管理、それから補給……。
  235. 江口見登留

    政府委員(江口見登留君) 只今大臣からお答えしました通り四つの管区隊がございます。これは大臣から申されたように一万五千名程度がございます。それから管理補給部隊、これにもやはり一万五千程度がございます。
  236. 岩間正男

    岩間正男君 今まで何人ですか。
  237. 江口見登留

    政府委員(江口見登留君) 一万五千程度です。正確に申しますと一万三千ほどになつております。
  238. 岩間正男

    岩間正男君 一万五千が幾ら……。
  239. 江口見登留

    政府委員(江口見登留君) それが四つございます、それが今まで四つあるのでございます。一万五千が……。
  240. 岩間正男

    岩間正男君 今管理補給部隊が……
  241. 江口見登留

    政府委員(江口見登留君) いや、管区隊が四つあります。一万五千二百ほどであります。それが四つあります。それから管理補給隊が一万三千ばかりございます。その残りは総隊総監部とか或いは多少学校などに廻つておると思います。ところが学校がいろいろその校数を殖やすようなことになりまして、それでは足りなくなりまするので、その学校の職員は三万五千の中から六千程度を二十七年度においては殖やして行きたい、こう考えております。で、そのほかに一つ設けられまする方面総監部及びその部隊、それから直轄部隊それから管理補給部隊の人員も、装備品の増強等に基きまして、いろいろ操作する面がたくさん出て参りますので、そのほうの人員も強化したいと、こう考えております。
  242. 岩間正男

    岩間正男君 もう一遍お聞きしたいのですが、その管理補給部隊というのは今まであつたでしよう。そこに人員があつたのですね、それが今度どうなるか、そこのところが……、そこにたくさんの三万五千のうちの二万もそつちのほうへ行くのですね。だからそこのところをはつきり……。
  243. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) これは現状は、今先ほど私からも申上げ、只今江口次長からも申上げた通りであります。そこで今度三万五千をどういうふうに配置するか、これは教育関係は今まで二千人足らずでございましたが、それをこのうちから約六千人だけをそちらに廻すことになります。
  244. 岩間正男

    岩間正男君 六千人殖やすのですか。
  245. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) 六千人を殖やすのであります。
  246. 岩間正男

    岩間正男君 そうすると八千人になるのですか。
  247. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) 八千人までなりません。七千人ぐらいになります。
  248. 楠見義男

    委員長(楠見義男君) 私語をやると速記がとりにくいから……。
  249. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) 七千人ぐらいです。それで総監部の人員には大した異動はございません。それから方面隊を一つ増設いたしまするからこれは約一万五千、残りが管理補給部隊になることになります。
  250. 岩間正男

    岩間正男君 残りは幾らですか。
  251. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) 残りが約二万人……。
  252. 岩間正男

    岩間正男君 従来は管理補給部隊というのは何人ですか。
  253. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) 従来は一万三千ほどでございますが、これは全体の部隊の管理補給事務を遂行するには著しく人員が過少でございまするので、これを補完することによつて全体の能事を高めたいと考えております。
  254. 岩間正男

    岩間正男君 人員は全体としまして、繰り体で五〇%まあ殖えたわけですね。それに管理補給部隊は約一七〇一八〇%殖えておるわけですね、今まで。そうするとこれはどうしてこういうように殖えなくもやならんか、管理補給部隊が著しく少なかつたというのでありますけれども、今までの国内治安、こういうことのための性格を持つておるところの警察予備隊ですね、このように管理補給の面で非常に大きく構成替えをしなければならないこの原因が、どうも私はわからんのですが、今まで少くともまあ二年間このままでやつて来たのです。で、やつて来て非常に不便だとおつしやつたのでありますけれども、この補給部隊を今までの二倍半ぐらいにこれを殖やす、そうすると性格が何か非常に遠距離の一つのそういう行動動作、こういうようなのに耐え得ると、こういうことが必要になつて来るのでありますけれども、この辺の、これはやはり管理補給部隊というのが非常に増強されることによつて、その警察予備隊の性格というものは非常にそこにやはり変化というものが起るのであります。こういう点が考えられるのですが、その点については、どうなんですか。
  255. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) 管理補給部隊の任務というものは、方面隊の各部隊に対しまする物資の調達或いは役務の提供、こうしたことを目的といたしておるわけでございまして、従来は実力行動を担当いたしまする要員をできるだけ多くいたしたいと、こういう考えで、後方勤務者の人員を削つて、第一線の部隊の数を増しておつたわけであります。併し、これでは実際管理補給機能に非常に障害を来たすということが明らかになりましたので、これを改善いたすようにいたしたい、こういう趣旨でございます。
  256. 岩間正男

    岩間正男君 今までは総体で、七万五千に対して一万三千程度ですから、これは正確な計算はわかりませんが、大体管理補給部隊というのは、これは二〇%まではなかつたわけですね。ところが今度は総体で十一万、そのうち第一線部隊七万に対し、管理補給部隊三万三千ということになりますから、それが約五〇%近いものになる、そうすると部隊の構成というものは、こういう面から非常にこれは変つて来るのです。非常にまあ不便だつたというお話でありますが、そこに何か軍のいわゆる行動の中にそういう必要がなければ、これは私は納得できないと思うのですが、これはどういう必要からそういう点で管理補給部隊というものが大きく増強されなくちやならないか、ここが私は一つのやはり重要な面ではないかと思うのです。
  257. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) これは、私どもはそうは考えておりませんので、予備隊本来の任務を遂行ずる上から申しまして、従来は管理補給部隊が非常に少数であつたわけであります。これは七万五千という定員に相当な無理があります。日本の地形、地勢その他から見まして、これを全国的に配置いたしまするには、やはり方面隊を最小限度四つぐらいにすることが必要である。こういう見地から四つの方面隊を作ることにいたしました。そうなりますると、どうしてもその四つの方面隊に必要な管理補給除というものを準備することができなかつたのでありまするが、併しとにかく必要なものを先に作るという考で、これをあえてしたわけでございます。そこで増強するということになりますると、今まで非常に欠けておつた部分を自然補填をするということが先立つ、こう考えまして、最も欠けておつた管理補給部隊に相当の数を廻したい、又同じく欠けておつた学校関係の、教育関係の職員を増したい、こういうふうに考えておつたわけでございます。特に最近におきましては、予備隊も当初は殆んど何にも装備もなく、ただ服を着て人の頭数を揃えたという程でございましたが、幸いにいたしまして、漸次武器でありますとか、或いは車両でありまするとか、通信機械でありますとか、こういうものが充実をいたして参りましたので、この武器、車両、通信機械等の修理等の作業が非常に殖えて参りました。これらはいずれも管理補給部隊の任務でございますので、どうしても今までの数を以ちましては不足を感じまして、今回かような計画を立てつつあるわけでございます。もとよりこの計画はなお研究の余地があるものと考えております。
  258. 岩間正男

    岩間正男君 これはやはり戰力問題関連してなかなか問題じやないか、私はパーセンテージを挙げたのですけれども、管理補給部隊というものが多くなれば、アメリカの軍隊などでは第一線部隊よりも後方の管理補給部隊が多いと考えております。まあソ連あたりは少し少いようでありますが、併しそれは大体一対一ぐらいの割合になつておる。これが今まで二〇%であつたものが五〇%に殖された、そうしますと、やはりこれは作戦の範囲というものは非常に延びて来る、そういうようなものと関連があるので、この警察予備隊のやはり戦力を検討する上に非常に重要な問題じやないかと思うのであります。併しこれは一つの我々の疑問に思う点であるのですが、ここには議論になりますから僕はこれ以上やめまして、次に問題になるのは、幹部の養成ですね。これに全力を注ぐ、こういうわけで、大体先ほど二千人ぐらいの、これはまあ当然学校の整備、こういうもののために必要だと思うのです。これが七千人、二千人ぐらいのものが六千人殖されて七千人というのはちよつと数字が合わないのですが、仮に七千人としてもいいのですが、大分大幅に三〇〇%増というようなことになるわけでありますが、吉田総理はこの前の答弁におきまして、委員会答弁において幹部は士官学校などというようなもので今度はどんどんこれを養成しなければならん、こういうことを言われたのでありますが、大体幹部というものは、現在一方面隊に一体どれくらいいて、そうしてどういうような機能を果しておるのか、それが増強される理由としてはここにもらつた資料の中にも、大いに幹部の指揮能力及び技術の向上を図る、こういう面もあると思うのですが、これは一面におきまして先ず幹部を非常に作つておきまして、それによつて今後のやはり予備隊の全体の増強、それには先ず骨格をなすところの幹部を作らなければならない、こういう関連から見ますというと、この問題がやはり今後の、予備隊が保安隊になつてどれだけ拡充されるかという問題と関連があるように考えられる。単に今までの幹部の数を、一方面隊における密度を濃くする、今までの二倍、三倍に殖やす、これはどういうことになるのでありますか、それとも先にやはり備えて、そうして吉田総理が言われた答弁の裏付けとしての、やはり先を見越してのそういう態勢をとつておられるのでありますか。これはどうも、やはりこれも性格上大きな変化が来ると思う。なおこの士官学校というような言葉吉田総理は表現されたのでありますが、この学校については、これは今度の警察予備隊令の中でそういうような規定が設けられるのでありますか。それとも他の何かでこれは別にお出しになるのでありますか。この点も併せてお聞きしたい。
  259. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) 警察予備隊におきまして、現在幹部職員の数は七万五千人中約五千人ということに相成つております。十一万に増強いたしました場合の幹部の定数につきましては、大体一割、即ち一万一千程度に幹部を増したい、こう思つておるのでございます。これも、現在は何分にも幹部の適任者がないために、警察予備隊の任務性質等から見まして、必要と認められるだけの幹部が採用できなかつたためにこういうことになつておるのでございますが、今後は警察予備隊の本来の任務というものを遂行する上から申しまして、約一割の幹部が必要である。こういうふうに考えております。将来の増強ということを考えまするならば、これ以上の幹部を養成するということが必要であるとは考えられません。併し実際問題として、それだけの幹部を今から養成しておくということは、今年度や来年度においてはなかなかそう簡單に行かないことで、まだ将来の増強に備えるだけの幹部をあらかじめ養成するという余裕は現在においては実際問題としてないという状況でございます。  それから学校につきましては、警察予備隊令におきまして所要の機関を設け、この定員の範囲内において職員をそのほうに勤務させるということが認められておりまするので、それに基きまして行政上の措置によつて設けるわけでございます。無論これに必要なる予算については予算的措置がとられなければならないと存じます。
  260. 岩間正男

    岩間正男君 幹部の問題ももう少し数字を詳しく出して頂けばもつと明らかになる問題でありますが、その次にお聞きしたいのは、実は今晩の委員会には閣僚の出席が非常に少いので、関連してお聞きしたいと思います。実は池田蔵相の出席を求めたかつたのでありますが、出席がありませんので、而も結論を急いでおる、こういう観点から便宜大橋国務相にお伺いするのでありますが、頂いた資料の中の人員の問題ですが、今後の治安及び財政事情を考慮して決定したと思いますと、こういうことですから、これは今年中に増加するかしないかは今のところ未定である、するかも知れない。併しこれに対して池田蔵相の答弁では、国内費を優先しなければならない、それから現在の一千八百億というのはもう最高のこれは限度である、当然これは出せないだろう、こういうことを言われておる。併し財政事情ですから、これは水物である、こういうことでこれは問題は今のところはしないと言つておりながら、先に行つてはどういうふうにもこれは解釈はつくのであります。この例は例えば吉田総理は今までの、この前の十二国会あたりまでは今は日本の財政が許さないんだから警察予備隊は増強できない、再軍備はしない、こういうことを言つておられたのでありまするけれども、財政事情はそれほどこれは十分に余裕ができ女とは考えられないのに、今年度は警察予備隊に対しまして五百四十億というような厖大なものが入つておるわけであります。こういう点は非常に不明朗なんです。そういう点から考えて、どういうふうな財政事情になればこれは大体予備隊の増強ということを考えられるのでありますか、私たちの見るところでは今年度の財政状況というものは、まあ政府が言つておりますように、上半期は不況だろうが、後半は好況に転ずるんじやないか、こういうような政府の見通しも最近は大きくこれは変更されておる。貿易計画なんかにおきましても、これは非常に変更せざるを得ない状態が出て来ておる。こういう点から考えますときに、下半期に行きましてもそういうような余裕というものはこれはとても出て来ないんじやないか、そうするというと財政事情というものは現在の見通しではとてもそういうものにこれ以上堪え得ないという池田蔵相のこの言明が的中しておる、こういう見通しの上にやはり蔵相も立つておるんじやないかと思いますが、そうしますと今年度どうなるかという問題が、どういうふうなところに行つたならば大体これは可能と考えられるか、大橋国務相としての御見解があると思いますから、その財政状況についてどういう條件が出て来れば、これについて警察予備隊の増強が可能であるか、この点をお伺いいたしたいと思います。
  261. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) 今回の予備隊の増強につきましては五百四十億の経費を計上いたしておるのでございます。この五百四十億と計上いたしておりまする十一万の増強は、これは実施をする、併しそれ以上の増員については今後国内治安の上から言つて必要があるということがはつきりした場合、且つ又国の財政事情がこれを許すということがはつきりした場合、その場合において増強をいたすかどうかということを決定したい、こういう意味で書いたわけであります。そこで財政事情が許すという場合はどういうことかということは、結局国民の負担が、予算で予想された以上に予備隊の経費を負担するに耐え得るような状態になつた場合、こう考えるのでございまして、それは歳出において、歳出を増すだけの余裕が財政上あつた、そういう場合であろうと思います。その場合について只今大蔵大臣は、そういうことは今年度においてはなかろう、こういう意見であつたということを言われました。果してさようでありまするならばこれは止むを得ないところだと思います。
  262. 岩間正男

    岩間正男君 もう一度お聞きしたいのは、この財政事情の如何にかかわらず、治安というような面からこれは要求されればやつてしまうのであるか、増強するのであるか、この点非常に大きいと思う。国内治安の問題というものは如何ようにも判断される、或いは又いろいろな問題の取上げ方によつてこれは大きく過大に宣伝でも何でもできるのであります。実はこの問題と関連しまして、警察予備隊を増強する、これをやはり合理化するために、一方で国内の不安が非常に起つたんだというので、実はいろいろそれと関連した国内の治安の問題が出ています。或いは共産党が非常にこれに対して暴力を働いたというようなことが宣伝の具に供されておる面があるのではないか、むしろ目的は、敵は本能寺にありでありまして、増強を合理化するためにそういうような国内治安という名前を持つて来て、実質的にはこれは予備隊の増強というものを合理化する、こういうことになりますると、非常にこれは危険極まりないところの一つの政治的な世論挑発の行動と言わなければならない。こういう点から我々はこの際政府の態度としてはつきりして置いてもらいたいと思うのでありますが、一体そういう治安の状態にあるのかどうか。そういう見通しがあるのかどうか。財政事情の如何にかかわらず、そういうような名目で以て予備隊を合理化して、増強しなければならないというような国際情勢の存在しておることも、我々は耳にしておるのであります。そういうふうになりますとこの点は非常に重要だと思いますので、この点はどういうふうな見通しになつておられますか、明らかにして欲しいと思います。
  263. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) 第一の御質問は、最近国内の治安が乱れている。これは政府が計画的に宣伝して警察予備隊の増強を画策しておるのではないかという御質問でございますが、治安が乱れておるというのは、不法活動をいたします者が現実に存在しておるということでございます。これらの不法活動をなしている諸君が、現実に不法活動をなされるというのは、政府の、仮に持つておるとしまするならば、持つておるところの警察予備隊の増強計画を合理化し、或いは推進するために政府に御協力の意味を以てこういう活動をして頂いておるものとは私は考えておりません。  それから第二の点は、治安上の必要があり、或いは国際上の必要があれば財政の如何にかかわらず増強するかという点でございまするが、これは財政の事情を考慮して決定したいと、こうはつきり書いてあるのでありまして、これによつて御推断を願いたいと存じます。
  264. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 私は、実は木村君の質問に対して大橋国務大臣が言われたことに関連して質問したかつたのですが、さつき木村君の質問に対しまして、治安は一色だ、だから法理論としては治安だけで貫いて行ける。併し実際上は駐留軍に協力する場合がある、こうおつしやつた、これは確かです。その具体的な例で法規的に挙げられるのは行政協定の二十四條もある、こういうふうに私には考えられますが、併し実は先ほど私がお聞きしたときに、警察予備隊が保安隊になろうが、何になろうが、目的は変らないのだとおつしやつた。成るほど治安は一色です。戦力は一色だという法理論と私には同じように考えられます。ところが警察予備隊令では「我が国の平和と秩序を維持し、公共の福祉を保障するのに必要な限度内で」、こう書いてありますが、本来の目的は国家地方警察、自治体警察の警察力を補うために警察予備隊を設けることが目的だと思うのです。そうすると駐留軍に実際上……法理上の解釈としてはそういう必要はないが、実際上は駐留軍の補助的役割を果すとおつしやると、これは私はさつき私がしつこくお聞きしたが、どうしてもここへ、そういう目的はつきり書いてなければ、国家機関であるところの警察予備隊というものはそういう役目をすべきでない。そういうことは全然命令できない。だからどうしても、それは法律で入つて来なくちやいけないのです。あなたは、法会はこのままでも実際は駐留軍の補助的役割をさせようとおつしやつても、警察予備隊は動くべきではない。警察予備隊は、この予備隊令が変らない限り動くはずはない、そういう機能はない。だから事実上そういうことがあり得るならば私はもう目的が変らなくちやできない、こう考えますが、どうですか。
  265. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) これはもう堀木さんは、法律家としてよく御存じのことだと心得ますが、私の申上げましたのは、間接侵略或いは直接侵略等の場合において、国内の治安が妨害される場合はあり得ると、そうして如何なる場合においても国内の治安を確保するために普通警察の力の足らざるところを補う意味を以て警察予備隊は活動すべきものなのです。そこで直接侵略、間接侵略の場合においても国内の治安は乱れまするから、その国内の治安を回復するための活動というものは、ひとり警察予備隊ばかりではなく、国家警察或いは自治体警察それぞれに本来の任務として持つておるところのものなのであります。従いまして、そういう意味において事実上は相協力して駐留軍と共に同一の目的に行動する場合はこれはあるでありましよう。併しそれは法理的には本来の任務であるからこそ、そうした場合に行動をするわけなのでありまして、私は法理としてはそれで一向差支えないのであつて、ただ事実上駐留軍と協力して活動する場合もあり得ると、こう申上げただけでございます。その場合に駐留軍と協力して活動する、或いは駐留軍の補助的な役割という意味において補充するというのですから、つまり駐留軍の不完全なるところを補完をするという、そういう意味目的として活動しなくとも、警察予備隊本来の任務として、当然そういう場合には駐留軍も活動するであろうし、それから警察予備隊も本来の任務として活動すべきものである、その場合は双方お互いに相談をし合つて行動を協定しながらやつて行くということが実際上有効であると、こう考えられまするから、事実上においてその場合において協力関係というような、そうした意思の疏通をしながらそれぞれの機関がそれぞれの任務を遂行して行く、こういうことを協力と申上げたつもりでございます。
  266. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 柳澤長官が見えたようですから、ちよつとお聞きしたいのでありますが、最もこの実力の強い今度補充する艦船の二千トンの、それの速力、それから火器の口径、それから何門くらい据えるか、それをおわかりだつたらおつしやつて頂きたい。
  267. 柳澤米吉

    政府委員(柳澤米吉君) 大体現在米国から貸與されようとする船舶については現在交渉中でございますので、我我の要求している限度を申上げたいと思います。大体我々が考えておりますのは船舶の、現在海上保安庁で持つております船舶の型が一番大きいものが七百トン程度でございまして、それ以上のものはございません。従いまして、それ以上のものを欲しい。この理由は今までの経験から申しましても、貸與におきしまして救助船、大きな船を救助しなくちやならないというような場合にはどうしても千五百トン以上の船がないと作業が非常に不便である、従いまして、そういう船舶をどうしても欲しいというふうに考えておるわけであります。従いまして、これらを約十隻くらい借りられれば非常に結構であるがというふうに考えておるわけであります。これらを各所に配置いたしまして大きい船の難破或いはその他の場合にこれを使用するというふうに考えておるわけであります。なお、そのほかに船舶の数が不足しておりますので、二百トン乃至三百トン級の船が約五十隻、これが借りられれば非常に結構であるというふうな交渉を続けておるわけであります。これらの船舶の速力その他につきましては、我々といたしましては現在速力が海上保安庁法によりまして十五ノツトというふうに制限されておりますが、できればそれより速力の大きいものを欲しいと、特に大型船舶におきましては十七、八ノツトあれば非常にいいのではないかというふうに考えておるわけでございます。それから小型船舶におきましてはさほどの速力も必要でございませんので、現在の十五ノツト或いは十六ノツト程度のものがあれば非常にいいのではないか、以上のような要求を持つて向うと交渉いたしまして、大体そういうようなものが得られるのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  268. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 それは大体大橋国務大臣から聞いたのですが、その千五百ドンというのは、二千トンくらいだというお話ですが、その千五百トンでもいいですが、それにどういう砲と言いますか、火器を何門くらい積むかということをお伺いしたい。
  269. 柳澤米吉

    政府委員(柳澤米吉君) 我々といたしましては船舶に対しまして、大きい船舶につきましては今までも非常に不便であつたのでございますが、速力その他が大体同じくらいの船舶には、若しこれを臨検しなければならないというような場合に停船命令その他を下すのに非常に困難を感じておつたわけです。従いまして、これらの船舶にはでき得れば号砲というものは取付けたいというふうに考えておるわけであります。これも現在我々のほうの考えとしては、船舶に号砲を一門ずつ備えて頂ければ非常に結構だと、従つてそういうものが借りられることを希望して、向うと交渉しておるわけでございます。
  270. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 号砲というのはどういう意味ですか。ただ空鉄砲を射つのではなくて、やはり実彈を射つのだろうが、何インチというようなものを予定しておるのですか。
  271. 柳澤米吉

    政府委員(柳澤米吉君) 大体号砲と申しますと、今までの慣例から申しまして、船舶を停船させるために、先ずその前方に一発射ちまして、その次に後方にもう一発射ちまして、それからそれでも停らない場合には舷側に落すと、こういう三発を以ちまして大体停船命令というふうにしております。従いまして、火力はそう要りませんが、実彈もやはり持つと思います。それから口径でございますが、大体こちらの要求通り小さいもので、そういうものがあるかどうかわかりませんが、我々のほうとしては大体小さなものでそういう役目が勤まるものがあればいいというふうな要求をしておるわけであります。
  272. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 大橋国務大臣にお尋ねしておくのですが、木村法務総裁お見えになりませんけれども、これまでの御答弁では、海軍、空軍、陸軍というような総合したものでなければ戰力でないようなお話もあつたのですが、この艦船だけでも武器をだんだん増強して行くとこれは戰力になる、又警察予備隊又防衛隊、これなんかに大きな有効な大砲とか何とかを持たして来れば、やはりそれだけでも戦力になる、そういうふうに我々には考えられるのですが、その点はどういうふうにお考えになつておりますか。
  273. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) 政府といたしましては、戰力に達するような、そうした大それた装備を持つという計画は全然ございません。併しながら、理論上の問題といたしまして強いて研究をいたしまするならば、これらの船舶とか或いは予備隊等において近代戰争を遂行するような十分な装備をいたしまして、そういうことにまで発展いたして参るならば、これは全体を総合して一つ戰力という判断ができると思いますが、併し政府といたしましては、予備隊なり又海上警備隊なりの任務から考えまして、そうした装備をするという考えは持つておりません。又装備をいたしまする際においても、戦力になる程度のものは憲法に違反することに相成りまするから、憲法の範囲内においてのみ拡充をしたいと、こういう考えをいたしております。
  274. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 その艦船だけでもやりようによつては戦力になるのではないかと、こういう質問なんですが、そういうふうにお考えになつておりましようなということです。
  275. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) その点は私も素人でございまするから、憲法上の法律解釈の問題でございまするから、專門家からお聞きを願いたいと思います。
  276. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 それでは法制意見長官から……。
  277. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 別段專門家でもございませんけれども、実は昨日その点についてはお答えいたしたのでございまするが、岡本先生いらつしやいませんでしたから重ねて申上げます。私どもはこの憲法九條の趣旨から見て、この第二項に言つておる戰力というのは、国が戰争のために使い得る力を総合的に考えたものであると、これはどうしてもそう言わないと九條の趣旨は通らないと思います。従いまして、一つ一つの個々のものを持つことについての問題はここでは取上げておらないと、仮に文理上の問題として、ここに戰鬪機、軍艦その他の戦力というような例示になつておれば、これは或いは問題になるかも知れませんけれども、今岡本先生おつしやいましたように、陸海空軍その他の戦力というような総合されたものを例示として掲げておりますから、文理上からも問題はないと、かように考えております。
  278. 岡本愛祐

    ○岡本愛祐君 ちよつと違うのですが、私の言うのは海軍とまで言わなくても艦船隊と言いますか、警備隊が、それを増強して行けば、その警備隊だけで戦力になり得ることは当然だ、海軍と言わなくてもなり得ることは当然じやないかと、こういうのです。
  279. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) まさにその通りで、名称の如何を問わず、例えば国防軍と言いますか、或いは義勇隊と申しますか、そういうものでありましても、その実質の力が近代戰の遂行に役立つ力ということになれば、憲法の禁止しておるところであります。
  280. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 簡單に大橋国務大臣にお伺いしたいのですが、先ほど堀木さんの質問に対しまして、警察予備隊乃至は保安隊は、例えばいわゆる間接侵略があつた場合それは独自に動く、まあ駐留軍は駐留軍として独自に動く、その間にはいわゆる補充関係というものがない、こういうお話があつたのです。そこでお伺いいたしたいのは、この漸増計画とそれから駐留軍のいわゆる漸減計画、漸減計画と言いますか……これまで一般的な普通に言われたところでは、そこにシーソー関係があるように言われておるのです。警察予備隊がだんだん殖えて行く、成いは海上警備隊というものが増強されて行くと駐留軍が漸減して行く、そういうふうにまあ一般には理解されておると思うのです。そうするとその漸増と漸減との間にそういうシーソー関係があると見ていいのかどうか、こつちが増強されて行けば向うが減つて行く、その点はどうなんですか。
  281. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) 私といたしましては、駐留軍の駐留兵力というもの、これについては、将来に亘つて漸減計画なるものをこれは米国自体において考えておられるかおられないかそれはわかりませんが、少くとも行政協定なりその他の機会において、そういう計画を日本側の政府機関が米国の漸減計画というものの話を受けたということは聞いておりません。従いまして漸減計画というものを基礎にしての御質問に対しましてはお答え申上げかねます。
  282. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうですが、そうしますと今まで一般に伝えられている、これはまあ正確に伝えられているか或いは不正確に伝えられているか知りませんが、結局日本が自立できるまでの、自衛できるまでの間、この駐留軍が駐屯しているというふうに一般に解されていると思う。そこでいわゆる漸増計画というのは、将来日本みずからの手で自衛でき得るまでに漸次自衛力を強化して行くんだ、それにつれて駐留軍がだんだん減つて行くんだ、こういうふうに一般的に見ている。そうするとその間には全然関係はない、で、政府もそういうものとは関係なく、そういう向うの駐留軍が漸減するとかしないとかいうことには関係なく、この漸増計画を立てているのだ、こういうふうに解釈していいわけですね。
  283. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) 政府といたしましては自主的に漸増計画を立てておりますけれども、併しその漸増計画が実現されるに従いまして、それが米国の駐留兵力のその都度その都度の必要量を決定する一つ参考資料には恐らくなり得るのじやないかとは思いますか、併し未だそういうものを基礎にしての漸減計画というものについては私は寡聞にして聞いておりません。
  284. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 今のに関連して……、大橋さんは法律的な解釈にだけ立ちこもられますが、総理大臣は自分の国は自分で守るのだと、併しながらその場合にも最近の国際政治の情勢では集団安全保障が一つの体系だ、と同時に、日本は経済力が非常に弱いからアメリカ軍に駐留してもらうのだ。併し自分の国は自分で守るような態勢は、どうしてもそれをしなくちやならないのだ。そうして駐留軍は減つて行くことを希望しているのだ。こういうところから言うと、少くとも国策としては私はそういうふうな方向ははつきりしていると思うのですが、国務大臣として俺はそういうことは知らんということは言えないと思いますが、どうでしようか。
  285. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) 無論総理がそういう言明をせられ、又政府全体としてそういうふうな理解をいたしているということは私も承知いたしております。併しながら、これは日本の自衛力の漸増計画ということについては、今年度においては一応或る程度の計画を持つているわけであります。併しその後の問題につきましては、資料において申上げましたるごとく、今後の治安並びに財政事情を考慮して時々決定して行くことに相成つている。この決定に当りましては駐留軍の漸減計画というものが基礎になつて、予備隊の増強の所要量というものが決定されるのではない。即ち漸減計画というものは私は承知いたしておりません。併し漸増については具体的な計画はございませんが、自分の国は自分で守るという意味において、自衛に用いられ得るところのこの予備隊その他の諸機関の増強については、政府といたしましては希望は持つている。併し具体的な計画はまだ決定はしておらない。今後この希望が具体的に実現されるに応じまして、駐留軍のそのときそのときの駐兵量というものが、これをやはり決定する一つの判断にこれからの日本側の実現した計画がなるということは、これは当然のことであろうと存じております。
  286. 吉田法晴

    吉田法晴君 全然別の話でありますが、武器の点につきまして先ほど……。
  287. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) 予備隊の武器ですか。
  288. 吉田法晴

    吉田法晴君 補給部で修理をしておるというようなお話でありますが、ところが、これは昨日の予算委員会で高橋通産大臣は武器の製造禁止が撤廃されたから、国内で作つていいことになるかも知れない、或いは講和発効前に武器の生産について法律的な措置を講ずべきであろうというようなお話があつたのですが、そうすると今補給部でやつておられます修理及び補修に加えまして、自分で生産をするということは全然考えられんのですか。通産大臣のお言葉関連してお伺いします。
  289. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) 現在におきましては、国内において武器を生産するということは予備隊としては考えておりません。
  290. 吉田法晴

    吉田法晴君 警察予備隊の増強の希望を持つておるという新らしい御発言がございましたが、この自衛の具体的な姿についてですが、自衛について、自衛のために用いられ得るということは先ほどお認めになつたのですが、この自衛のために使われるということが主目的になるかならんかということは、これは保安隊ができます際、或いは警備隊ができます際問題になるかと存じます。新聞におきましても、閣内でも議論があつたように承知するのですが、それが一つと……。それから自衛の実際の姿につきまして、大橋……これは法務総裁自身であつたと思いますが、十二国会で自衛のために、国が自衛権に基きまして必要な行動に出るということは、これは何ら憲法において制限をいたしておらないのでございまして、それがために国内におきまして、国に許されておりまするあらゆる実力を使いまして、事実上自衛のために必要な行動に出るということは十分考え得るところでございます。こう答弁をしておられます。これは、そういうもつと具体的な姿で大橋国務大臣自身がなすつたかどうかは今手許に速記録がないのでありますが、岡崎国務大臣はこの国会で、予備隊の、外部的の防衛に任ずることは憲法との関係上問題ではないかというお話でありますが、これは自衛権の行使でありまして、軍隊と言わず、消防隊或いは一介の国民と言わず、誰でも、自分の国が侵されんとするときは当然自衛権を行使してこの国を護るのであります。こういう答弁をしておられます。そこで海上警備隊の問題につきましては、先ほど具体的に話をいたしたのでありますが、警察予備隊が保安隊になりまして後、こういう具体的な姿が出て参ります場合のことについて、ここに岡崎国務相が言われましたような具体的な姿を大橋国務大臣も認められますかどうか、この点を一つ……。
  291. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) 警察予備隊なり或いは海上警備隊というものはこれは本来は国内治安の維持ということを使命として出発し、又そのためにその装備等もできておるものでございますが、併しながら、外敵の侵入というようなことが仮にあつた場合において、その実力によつて正当防衛として必要な行動をとるということは、当然に私はあり得ると考えます。
  292. 吉田法晴

    吉田法晴君 先ほど来、警察の目的国内治安維持にある、或いは国民の権利義務の擁護……但し、自衛のために用いられ得る、その自衛のために用いられるのが警察ではなく、警察予備隊といいますか、或いは保安隊、警備隊となるものの、むしろ本質ではないかという点に疑問があるわけでありますが、この自衛の実際の姿の場合に、或いは消防隊と言わず、或いは一介の国民と言わず、誰でも、自分の国が侵されんとするときは当然自衛権を行使する云々という言葉から考えまして、これは大橋国務大臣として、そういう場合には何も武器を持つておりません消防隊或いは一介の国民に対しても、戰争中の一億玉砕主義のように、竹槍を以てしても国民に当らしめられるのか、或いはその場合にこそ、武器を持つている警察予備隊が当ろうというのであるか、その点一つ承わりたい。
  293. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) 警察予備隊といたしましては、これは本来一つの実力組織でございます。この実力は国内治安が破壊されようとする場合において、それを守るために行動するべき任務を持つているわけであります。従いまして、そういう一切の場合において。当然警察予備隊は行動すべきものと考えているのでありまして、自衛が必要となるような場合、即ち国外からの侵略行為があるというような場合も、又そのときの一場合であると考えます。
  294. 吉田法晴

    吉田法晴君 そうすると一応国内治安維持に当るというお話でありますが、それを除きますならば、自衛の具体的な姿、先ほど申上げましたが、その自衛の姿が実際に動く場合に、警察予備隊、或いは警察予備隊が保安隊になり、海上保安庁の一部と申しますか……保安隊と言うべきかどうかわかりませんが、とにかく警備隊になりましたものが、そういう場合にその持つております力を発揮して使われると、この点はお認めになつたわけでございますね。
  295. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) 外国からの侵略がありましたというような場合において、警察予備隊なり海上警備隊なりが必要な行動に出でることを命じられるということはあり得ると考えております。併しただ私の根本的な考えについて申上げておきたい点はです、国内治安と自衛というものを一応これを区別して観念されておられるのではないかというような趣旨の御質問を拜聴いたしたのでございますが、私は国外からの侵略があるということは、即ちその限りにおいて国内における法的秩序が乱されることであり、即ちこれは国内治安が乱されることである。であるから国内治安を護るために必要な実力行動をするということが警察予備隊なり海上警備隊の任務でございますから、そのときに仮に警察予備隊、海上警備隊が行動するとすれば、それは本来の使命に則つて行動することである。即ち自衛というのは、国内治安を確保するための一つの場合に過ぎない、全然別個のものではない、そういうふうに根本的に考えているわけでございます。
  296. 吉田法晴

    吉田法晴君 大橋国務大臣の説明によると、外からの力が加わる場合に国内の治安維持も乱れる。この国内への影響というものは、これは私も否定しているわけではないのです。それで国外からの力と国内からの力が相関連するということが考えられる。問題はその国内での治安維持の面、これは従来言つて来られたところであります。問題は、自衛のためにも使われるということを言われましたから、それは国内への影響もあるだろうが、国外に対しても、言い換えると自衛の姿でありますけれども、その自衛の姿として国外へも働く、この点はお認めになつたと考えます……その具体的の場合は、そういう場合には対外的にも動く、その点をお認めになつたのですか。国内問題は聞かずに、それは認めながら質問するのです。
  297. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) 国内におきまして法秩序の破壊を現実に行う場合、それを除去いたしまして、法秩序を回復するための実力活動をするものがこの警察予備隊の任務でありますから、直接に法的秩序を回復するための措置は、その法秩序の破壊者が純然たる国内の原因から来たものであろうと、又国外から来たものであろうと、それは問うところでない。但しその場合におきましても、飽くまでも警察予備隊の任務なり、海上警備隊の任務というものは、国内の法秩序或いは海上におきまする日本船舶の安全ということを保護するものなのでありまして、それ以上に国外に亘つて出動をするということは、これは考えられませんが、併し国内においては外国からの侵入であろうと何であろうと、本来の任務として行動すべきものと考えております。
  298. 吉田法晴

    吉田法晴君 少し今の御答弁は最後が実ははつきりしませんでしたが、国外と国内関連がある場合に、国内の分は勿論問題はないわけです。それは国内の治安維持に当るのである。ところが自衛のために用いられ得る、こういうことでありますから、その場合に国外にも向けるというほうはお認めになりますか。こういうわけです。
  299. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) これは、私は御質問の趣旨を全く取違えておつたかと思います。私は本来警察予備隊令の規定にありまする通り、我が国の平和と秩序を維持するために、我が国の警察力の補完として行動するものでございまして、我が国の警察権というものは本来外国領土には及ばないのであります。従つて、我が国警察の所轄区域でないところの国外に対して、警察予備隊が警察の不足を補つて活動するという余地は、警察予備隊令に照らしてもともとあり得ないということを前提にいたしまして、お答えをいたしておつたわけでございます。従いまして、予備隊がたとい自衛のためでありましようとも、海外に出動して行動をするというようなことは全然予想だもいたしておらないわけでございまして、そういう趣旨の御質問でございましたら、明らかに否定的のお答えをいたすわけでございます。
  300. 吉田法晴

    吉田法晴君 国外に出動するかどうかということを聞いておるのではないのであります。国外に出動するかどうかという質問に答えては、今までしばしば否定的な答えをされておる。その点の念を押しているのではございません。例えば国内で、或いは海岸線といつたようなこともあるかも知れませんが、そういう場合に、これは場所は勿論国内でありますが、先ほど海上保安隊なり、或いは海上警備隊の場合には、密入国でありまするとか、或いは漁船の云々というお話もありましたけれども、例えば国内に外の力が及ぶ、或いはそれが国内にも関連がある、こういう場合には内にも出るでありましようが、外にも向う、外というのはこれは出動するという意味ではなくて、例えば自衛の具体的な姿として、大橋国務相が言われましたような、警察予備隊といわず、或いは消防隊といわず云々と言われましたような場合に対しては、これは性質としては、場所はとにかくとして、性質としては対内関係のみにとどまらんと思いますが、そういう場合に自衛のために警察予備隊なり或いは保安隊というものは動くか、こういう点をお尋ねしておるわけであります。
  301. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) そうすると、先ず御質問の趣意を取違えるといけませんので確かめさせて頂きますが、仮に国外から不法な侵略があつた場合、その侵略を撃退するために警察予備隊なり海上警備隊が活動するかどうか、こういう御質問でございますか。
  302. 吉田法晴

    吉田法晴君 ええ。
  303. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) その点はその通り活動する場合があると、こう考えます。
  304. 岩間正男

    岩間正男君 戰力問題でないのでありますが、やはり行政協定関連しまして、佐藤意見長官の意見を承わつておきたいと思います。  それは今度の行政協定によりますと、公共事業労務者、それから労務者、こういう人が随時優先的に徴用される。これはまあ調達というようなところでそういう形になると思うのですね、そういうふうになりますと、ここで問題が出て来るのですが、公務員の場合と労務者の場合は違うと思いますけれども、この調達の條件、それからそういうものによつて調達に応じない……これは昨日も木村君から出た問題と似ているのでありますが、農地の場合、これに対して接収に応じない、こういうような問題と同じように、この調達に応じないというような場合が出て来た場合、これは強制する権利があるのかどうか。これは公務員の場合と、それから一般の労務者の場合は違うと思いますが、これについて見解を承わりたい。
  305. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) ちよつと突然のお尋ねでございますけれども、この土地、施設等の問題と、今の労務の問題とは、この協定においてはつきり区別しておると私は了解しております。従いましてこの労務関係におきましては、普通の契約による雇用、その雇用は向うの軍の直接雇用によるか、或いは日本政府の仲介による間接雇用によるか、これは二通りの方法が考えられますけれども、いずれにせよ、強制的にこれを徴用の形で雇用するというようなことは、私は全然考えておらんというふうに了解しております。
  306. 岩間正男

    岩間正男君 併し、日本政府としては調達に応ずる義務があるんでしよう。調達にそれだけの、これは需要を充たすことができないという場合には、どういうようにその義務を果すのですか、どういうふうに……。
  307. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 応ずる義務は、私の見ております範囲では條文が見当りません。
  308. 岩間正男

    岩間正男君 応ずる義務がないというのですか。
  309. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 見当つたら教えて下さい。
  310. 岩間正男

    岩間正男君 併しそういう要求に対して実際はどうなんですか。(笑声)そういうものを義務がないという、これは事実どうなんですか。
  311. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 私の知識の範囲内では、現在占領下におきましても徴用の制度は確か私はないと思つております。いわんや行政協定関係でそういうことは出て来るはずはないように思います。條文がどうも見当りません。(笑声)
  312. 楠見義男

    委員長(楠見義男君) 別に御発言がなければ……。
  313. 岩間正男

    岩間正男君 それじや、その義務の問題をもう少し……今調べておりますが……。その場合PD工場やそういう軍管理工場に例えば雇われた、こういうことで国内法の適用を受ける、こういうことになつているわけですね。日本の賃金、手当、雇用及び労働條件、それから労務者の保護條件、労務者の権利、こういうようなことは飽くまでこれは国内法の適用を受けるということになつているのです。併しこれに対して別に相互に合意する場合、こういう場合はこれは外されるのじやないですか。そうすると別に相互に合意する場合というのは、どういう場合になるのですか。大抵今までのPD工場などの実際を見ますと、合意する形というので、実際はいろいろな点で労務者の権利が国内法の適用を受けなかつた、こういう面がたくさん出て来たと思うのです。そういうときにはどういうふうにやつているのですか。
  314. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 申上げるまでもないと存じますが、別に相互に合意されるという、その合意は、普通の国と国との合意であつて、労働される人と雇い主との関係の合意でないことは、これは申上げるまでもないことと思います。そこで国と国との合意としてどういう場合が考えられるかということは、私自身は現在のところ、それは考えられておらないのではないかと思います。或いは労働大臣あたりにお尋ねになれば多少の見当はつくかとも存じますけれども、恐らく今のところそういうことは予想されておらんと思います。
  315. 岩間正男

    岩間正男君 この点はもう少しあとに譲ります。その次にお聞きしたいのですが、一つの例でありますが、今度の場合富士銀行のギヤング事件が起りましたね。あの富士銀行のギヤング事件はフランス軍人であつたということですが、フランス軍人が日本にいるということは非常におかしいと思うのですが、それで今度は実際問題として刑事裁判権の問題ですが、あれはああいうときには一体どつちに属すべきものですか。そういう点の解釈をお聞きしたいと思います。
  316. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) これは岡崎国務大臣の領分であろうかと存じますけれども、フランスの軍人が駐留するということが将来あるとすれば、これは国連軍の関係になるのだろうと思います。従いまして、その関係における規律は別に国連関係の協定と申しますか、恐らく現に今それが準備されておるのだろうと思いますが、それのほうで処理せられることであつて、この協定の触れるところではないと考えます。
  317. 岩間正男

    岩間正男君 これは国務大臣にお伺いしますが、国連の今度の條約の中には刑事裁判権というものは含まれるのですか。
  318. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) まだ閣議でそういう話は聞いておりません。
  319. 岩間正男

    岩間正男君 そうすると、佐藤意見長官のお話はこれは含む場合にはということですね。この点やはり問題になるところだと思うのですが、刑事裁判権が国連のあの條約の中に含まれるのかどうかという問題です。これは非常に問題になつておるところですから、治外法権の問題として非常に問題になつておるところですから……。これは国連軍の場合にも適用するのかどうか。
  320. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) これは私に御質問ですか。
  321. 岩間正男

    岩間正男君 いや、これはまだ決定されていないのですね。その点は不明瞭なんですか。
  322. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) 理論上は先ほど佐藤意見長官から申されたことく存じます。併し国連との協定においてそうした問題が取上げられるか、取上げられないかということは、これはまだ私は承知いたしておりません。
  323. 岩間正男

    岩間正男君 今度の場合はあれはどうなんですか。あれは向うのCIDに渡したのですか。あれはどうなんです。フランスの軍人だということですね。あれはどういう法的根拠があるのです。
  324. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 具体的の身元を洗つたことはございませんけれども、恐らく私どもの承知しておる範囲では、占領軍と申しますか、進駐軍と申しますか連合国の要員として来ておつたのじやないかという、これは想像でございますが、恐らくそうじやないかと思います。
  325. 岩間正男

    岩間正男君 どうもそれはおかしいな。それは我々の聞いたところではやはり朝霞のキヤンプにこれはいた。要員とか、そういうので来たのですか。国連軍の軍人じやないのですか。
  326. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) これは私の受持じやございませんが、便宜お答え申上げますると、あれは実は佐藤長官もどういう原因で日本に渡つて来ておつたか、それについてはつきりしておらない。従つて十分なる説明ができないわけでございますが、仮に連合国の要員として来た場合には当然日本の裁判管轄権には服さないわけであります。それから連合国の要員でなく、偶然に日本に来ておつた場合におきましても現在の占領治下におきましては占領国民でございまするので、そういう意味から申しましても日本の裁判管轄権に服さない。いずれにいたしましても日本の裁判管轄権には服さないという法律関係になつておるのは甚だ遺憾に存ずる次第でございます。
  327. 岩間正男

    岩間正男君 それは国際法か何かでそういう根拠があるのですか。
  328. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 具体的の事実がはつきりいたしませんから何でございますが、今の制度といたしまして、連合国人に対する刑事事件等特別措置令というポツダム政令がございます。これで除外することができるのでございます。
  329. 岩間正男

    岩間正男君 もう一つだけ伺つておきますが、先ほど軍人、軍風の規律という問題の中で軍人を含んでおる、イギリスあたりの北大西洋同盟條約ですか、その中では家族もこの中に入れると、こういう話でありますが、家族も入れるけれども、家族を治外法権のああいう恩典に浴さしている例というものは具体的にありますか、そういう條約は……。
  330. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) これも岡崎国務大臣から得た知識でございますけれども、軍法に服する者と先ほども確か言つたと思いますが、軍法に服する者という範囲の中に家族も入つておるという意味で、裁判管轄権の例外の中に扱う。それを向うと確かめて、そういうふうにいたしたのであります。
  331. 岩間正男

    岩間正男君 具体的にあるのですか、それはどうなんですか、これは治外法権の問題……一応それはさつき、私は大体あの配備の規律の中に入る、そういう構成要素として私は聞いたのですが、実際問題として治外法権の場合、治外法権のあれは適用を受けるのですか、どうですか、家族まで含めたという例があるのですか。
  332. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 外国の例ですか。
  333. 岩間正男

    岩間正男君 そうです。
  334. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 外国の例であれば、治外法権という言葉は、私は余り好みませんから使いませんが、裁判管轄権の場合でもそういうのは例がある。それを先ほど申上げたのです。
  335. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 極く簡單に一つだけお尋ねしたいと思うのであります。この行政協定予算措置及び立法措置との関係についてでありますが、前の国会において安保條約の審議の際、当時の法務総裁大橋大臣から、政府の方針として行政協定中においての予算措置及び立法措置を要するものについては、その予算案、法律案が国会によつて可決されて、国会を通じて成立するということを條件として、そういつた内容の約束をするというのが政府の方針である、こういう御説明があつたのであります。而して一方、今度の行政協定を見まするというと、予算措置及び立法措置を要するものについては、立法府にその必要な措置を求めることを約束する、こう書いてあります。その趣旨はどうであるかというと、これは文面だけ見て、文理解釈の面を以てしては、必ずしも明瞭でない点があるように私は思うのであります。然るに、この点は條約の締結と国会の審議権との関係の上から見まして、極めて重要な点だと思うのであります。この小委員会で明らかにすべき事柄の一つだと思います。そこで私は、実は予算委員会におきましても、本委員会におきましても、この点を質問したのでありますけれども、政府側の答弁は、私の狙つておつたポイントを少し外れた嫌いがありましたけれども、時間の関係で私は他の機会を期して、更に突込んだ質問は差控えたのでありますが、私はここに明らかにして頂きたいと思います点は、この行政協定の、只今のこの條項、これは大橋大臣が御説明になりました政府の方針なるものを具体化した一つの趣旨を含んでおると、こういうふうに解釈するかどうか、言い換えまするというと、この條項が設けてあるから、その故を似てたとえこの予算案や法律案が成立しない場合でも、つまり不成立に終つても、協定違反にはならないという効果が発生するかどうか、その点一つ明瞭にして頂きたいと思います。
  336. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 私から一応お答えいたします。まさに前国会において、大橋国務大臣がその方向で十分努力をするということを申されました。岡崎国務大臣もその趣旨を体して、十分努力をされました結果、今御指摘の條文の二十七條の第二項になつたわけであります。そこで今のお尋ねの点につきましては、結局今の御趣旨に恐らく合致するじやないかと思いますが、私の考えておりますところは、この二十七條の第二項においては、「予算上及び立法上の措置を必要とするものについて、必要なその措置を立法機関に求めることを約束する。」とございますから、政府としては立法機関に求める約束をしておる。立法機関に措置を求めまして、求めれば、この條約の義務は、この條文の第二項の義務は完了した、仮に先のことを申上げて、万が一にも、これは予想できないことでありますけれども、不成立になつたといたしましても、そのこと自体は協定違反にはならない、ただ協定の実施が或いは不可能になることは、これは次の問題でありますけれども、協定違反にはならないと思います。
  337. 大橋武夫

    ○国務大臣(大橋武夫君) 前国会におきまして、行政協定関連いたしまして、私の申述べましたるところは、只今御指摘になつ通りでございます。その後政府の方針といたしまして、考え方が変つておる。変つたということはございません。従いまして、只今法制意見長官から述べられましたごとく、行政協定の御指摘の條文は、先に私が前国会において申上げましたるところと前後照応いたしまして、政府の一貫した態度を示しておると考えております。
  338. 楠見義男

    委員長(楠見義男君) 外に御発言がなければ政府側に対する質疑はこの程度で打切りたいと思いますが、御異議ございませんが。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  339. 楠見義男

    委員長(楠見義男君) 御異議ないようでありますから、質疑はこれで打切ります。そういたしますと、先ほど申上げましたように、この委員会の昨日来の経過について明朝本委員会に報告をすることになるわけでありまするが、その報告案文等についてお諮りいたしますが、これは恒例と申しますか、によりまして、小委員長が看取したこの委員会情勢並びに質疑応答の生なるものの大要を報告するということで、お任せ頂いていいかどうか、お諮りいたします。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  340. 吉田法晴

    吉田法晴君 恒例によつて委員長に一任できるかどうかという今お話でございますが、これは質疑も終りまして、そうして後の整理が一番問題だと思う。そこでこの委員会として採決をするわけでもありませんし、一つ意見をとりまとめるわけでもありませんから、こういう意見もあつた、ああいう意見もあつた、或いはこういう疑も残つておる、或いはこういう意見もあつた、こういうことになるかと思いますが、その整理の仕方が実は極めて問題ではないか、成るほど今日新らしく御答弁を得たところもございます。併し、大半については、これは本委員会等でも大体大綱は明らかになつておると思う。そこでその整理が相当問題でございますので、これは或いは速記を入れなくてもいいかと思いますが、時間も遅れておりますが、夕食を済ませて、若干の時間をとつてお打合せを頂くことのほうが私は妥当ではないか、こういう工合に思うのでありますが、お諮り願います。
  341. 楠見義男

    委員長(楠見義男君) 大体小委員長は幸か不幸か始めからしまいまで聞いておりましたから、大体九條と七十三條に関連のあつた質疑についてはそれを披露しようと思つております。
  342. 吉田法晴

    吉田法晴君 ちよつと速記をとめて下さい。
  343. 楠見義男

    委員長(楠見義男君) ちよつと速記をとめて。    〔速記中止〕
  344. 楠見義男

    委員長(楠見義男君) 速記を始めて下さい。  それでは明日小委員長が報告する案文につきましては、小委員長先ほども申上げたように、この小委員会の二日間の経過について、特に憲法九條並びに七十三條の規定に関連することを中心にして報告することにいたしまして、その案文は小委員長にお委せ頂きたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  345. 楠見義男

    委員長(楠見義男君) 御異議ないと認めますから、さようにいたします。  小委員会はこれで散会いたします。    午後八時三十三分散会