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1952-03-22 第13回国会 参議院 予算委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年三月二十二日(土曜日)    午前十時二十九分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     和田 博雄君    理事            中川 以良君            山本 米治君            小林 政夫君            杉山 昌作君            内村 清次君            堀木 鎌三君            東   隆君            木村禧八郎君            岩間 正男君    委員            愛知 揆一君            石坂 豊一君           池田宇右衞門君            泉山 三六君            大島 定吉君            楠瀬 常猪君            左藤 義詮君            杉原 荒太君            鈴木 直人君            中川 幸平君            宮本 邦彦君            平林 太一君            岡本 愛祐君            小野  哲君            片柳 眞吉君            楠見 義男君            新谷寅三郎君            荒木正三郎君            岡田 宗司君            吉田 法晴君            山下 義信君            松永 義雄君            山田 節男君            吉川末次郎君            岩木 哲夫君            深川タマヱ君            駒井 藤平君            西田 隆男君   国務大臣    法 務 総 裁 木村篤太郎君    大 蔵 大 臣 池田 勇人君    農 林 大 臣 廣川 弘禪君    運 輸 大 臣 村上 義一君    労 働 大 臣    厚 生 大 臣 吉武 惠市君    国 務 大 臣 大橋 武夫君    国 務 大 臣 岡崎 勝男君    国 務 大 臣 周東 英雄君    国 務 大 臣 山崎  猛君   政府委員    警察予備隊本部    次長      江口見登留君    法制意見長官  佐藤 達夫君    外務政務次官  石原幹市郎君    大蔵省主計局長 河野 一之君    引揚援護庁次長 田辺 繁雄君    食糧庁長官   東畑 四郎君    海上保安庁長官 柳沢 米吉君   事務局側    常任委員会專門    員       野津高次郎君    常任委員会專門    員       長谷川喜作君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○昭和二十七年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和二十七年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和二十七年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 委員会を開会いたします。  昨日に引続きまして一般質問を続行いたします。
  3. 岡田宗司

    岡田宗司君 廣川農林大臣に先ず七伺いいたします。私は先ず本年度における食糧見通しについてお伺いしたいのであります。私が申上げるまでもなく、昨年の米の作柄は余りよくございませんでした。そして供出数量も低く定められておりますし、超過供出等政府の期待するほど出るかどうか疑わしい状況にあります。而も又政府の立てましたところの輸入計画が、辛につきましても、愛につきましても、思わしく行かないような情勢であります。その思わしく行かないために、農林大臣根本氏をビルマに派遣されたと思うのでありますが、米につきましての輸入見通しも決して楽観できない。麦につきましては、すでに本年度植付の面積が昨年に比して七万町歩も減つておる。更に輸入の麦につきましても思わしい情勢にない、パキスタンにおきましては麦を輸出しないというようなことも起つておる、こうして見ますというと、本年度食糧需給状態につきましては、政府が昨年の秋にお考えになつてつたところ、そしてそれに基いて推算されましたところと非常に大きな違いができているように思う。そこでそういうことを考慮に入れて今日、本年度食糧需給についてどういうふうな方針を持つてお臨みになろうとするのか、先ずその点をお伺いしたいのであります。
  4. 廣川弘禪

    国務大臣廣川弘禪君) 本年度の米、麦の主食の問題についての御心配のお尋ねでありますが、私たちは決してそう悲観いたしていないのでありまして、世界的に米、麦等が非常に悪くなつているのじやないかという話でありますが、世界全般を見た場合に決してあなたの御指摘のようでなく、我々け輸入もでき得ると信じております。それから又国内については成るほどいろいろないきさつから、作柄その他のいきさつから非常に低い割当をいたしたのでありますが、現在どんどん供出が進行して参つておりまして、毎日三万石以上のものがどんどん出ておるのであります。大体補正割当等ももはや突破する段階になつておりまするので、それに匿名供出に魅力を持ちまして、この供出は私は予期以上に行くのじやないかと思つておるのであります。それから又前に東北地方におきましては、米の辞退されたものが相当あるのでおります。それと早場米を、これを足して参りますというと、そう心配はないのじやないかと私は考えております。
  5. 岡田宗司

    岡田宗司君 大変結構なようなお話でありますが、世界における麦、米の生産状況等から心配ないというお話でございましたが、これは日本現実に入つて来なければ日本にとつては何の足しにもならない。心配がないと言うのなら、心配がないだけの確証を政府がしてくれなければならん。本米穀年度に入りましてから、政府外国から輸入する米なり、麦なりの月別のやはり予想と言いますか、計画というものがある。昨年の十一月から本年の三月に至りますまでに、一体毎月大体これくらい入るであろうと予想されていたものと、現実に入つて来た米とどれくらいの開きがあるか、それを一つお聞かせ願いたいと思います。
  6. 廣川弘禪

    国務大臣廣川弘禪君) 細かい数字でありまするので、よく記憶しておりませんから、政府委員から答弁いたします。
  7. 東畑四郎

    政府委員東畑四郎君) 外米百万トン輸入計画の中で、二月末までに到着いたしましたものが二十四万四千トン、すでに買付済みのものを含めますと六十二万トンでありまして、なお目下買付進行中で、ございまして、百万トンの輸入計画はそう困難ではないというように思います。
  8. 岡田宗司

    岡田宗司君 百万トンの輸入計画がそう困難ではない、こう言われておるのでありますけれども、併し実際私がお聞きしました点についてのお答えは半分しかされてないのでありますが、一体今日まで政府はどの程度外米輸入する予定でおつたか、そしてそれに対して実際に輸入されたのはどれくらいであつたか。その差をお聞きしたいと思います。若し政府計画通り輸入されたと思うならば、そういうふうになつておりましたなら、恐らく根本氏をビルマにやる必要はなかつたビルマに前農林大臣を米の輸入について懇請に出したということは、事実その輸入計画が困難であるということを立証しておるものではないでしようか。その点についてもう少しはつきりその輸入計画と、現在行われておるものが果して輸入計画通りつておるかどうかという点についてのお答えを願いたいと思います。
  9. 廣川弘禪

    国務大臣廣川弘禪君) 根本君に行つてもらつたことは、各国とも各相当な人を派遣いたしておりまするので、今までの非常に日本に対する後援に対して感謝のしるしでありまして、それと又今後うまく輸入ができるようにも、これもやはり一つの目的ではありまするが、併し各国とも相当な人を出して礼を盡しておりますので、それに倣つたわけであります。細かい点は政府委員から……。
  10. 東畑四郎

    政府委員東畑四郎君) 二十七米穀年度輸入計画におきましては、古米等輸入もありまして、そうして岡田さんの言われましたような心配は我々当局として持つておりませんが、米の輸入というものは、二十七米穀年度のみならず、二十八米穀年度に関係いたしまして、我々といたしましては、外米輸入等に関しましてはよく努力をいたしておりまして、二十七米穀年度輸入計画につきましては、大体計画通り参つております。予算等で三百二十万トンということを申しておりますけれども、三百二十万トン以上のものが三月までに到着いたします。三月以後の問題につきましても、以上申上げましたように只今のところ順調になつております。今後の二十八米穀年度等の、先を考えまして、いろいろ実は手を打つたような次第であります。
  11. 岡田宗司

    岡田宗司君 どうも政府の答弁ですと、大変安心のできるようなお話ばかりでございます。これが事実ならいいのですけれども、我々はこの点に対しまして、決して政府の言うように楽観的な事情ばかりではないと思うのであります。それはそれといたしまして、私は次に農林大臣に麦の統制撤廃の問題についてお伺いしたいと思います。一昨日の閣議におきまして麦の統制撤廃について決定されたようにお伺いしておるのでありますが、その麦の統制撤廃をされ、その後に対する処置をどういうふうにされるかという点でお伺いいたします。
  12. 廣川弘禪

    国務大臣廣川弘禪君) 麦はもう統制を解除する段階に立至つておるように思いまするので、昨日閣議できめたのでありますが、その後の処置につきましては、これから案を国会に具して御審議を願うのでありますが、要するに骨子は農民の意向によつて米、麦を買上げるということが第一であります。それからなお適当の価格を以て最低価格をきめる、そうしてその最低価格で買入れるということと、それから又系統団体等の信用を以て農民に対して本当に安心して売れて而も市場が安定するようにし、而も又一般消費者にも迷惑をかけないで行きたい、こういう考えでやつたのであります。
  13. 岡田宗司

    岡田宗司君 統制撤廃されたその後の処置についてお伺いしたのでありますが、これから具体策をお立てになる、甚だ以て私どもにいたしますれば、遺憾なことだと考えるのであります。  先ず、それでは麦を政府で以て無制限に買上げるという方式をおとりになるといたしまして、問題は本年度の麦を大体どのくらいで買上げるかということが農民に対して非常に大きな影響を持つ問題だろうと思う。御承知のように、アメリカ等においても政府買上制度をやつておりますが、そういう場合には大体において一定の値が示されているのです。あなたがたのほうでは今日すぐ統制撤廃した、さてそれでは今年度の麦を幾らぐらいに政府で買つてくれるかということについては、まだ何ら明示されていない。これでは農民は困惑するばかり、一体本年度の麦の値はどのくらいでお買いになるつもりであるか、その点をはつきりさして頂きたいと思います。
  14. 廣川弘禪

    国務大臣廣川弘禪君) 農民の納得するような基準を私たちのほうで相当準備をいたしておりますので、親切な細かい点は一つ政府委員のほうから御説明を申上げます。
  15. 東畑四郎

    政府委員東畑四郎君) 価格決定方式につきましては、いずれ法案を提案したときに詳細の御審議を願いたいと思いますが、一応予算上は旧パリティ方式では、裸で千八百三十四円となつておりますが、昨年度のバツク・ペイがございまして、約六十キロにいたしまして三十八円程度であります。これは予算上の実は単価でございまして、それで政府が買うことにいたしております。法案を提案いたした場合に、価格改訂方式審議一つ詳細に御審議を願いたいと思います。
  16. 岡田宗司

    岡田宗司君 只今お話によると、新らしい価格決定方式をとられる。価格決定方式を新らしくすることにいたしまして、すでにその準備に着手されている。一体どういう価格決定方式をとられるか。その価格決定方式の概要を一つお示し願いたいと思います。
  17. 東畑四郎

    政府委員東畑四郎君) 二五五と申上げましたのは、旧パリテイ方式によつた指数であります。我々は米価審議会等の成るたけ戦後のパリテイをとるという御意見等をも斟酌いたしまして、職後の時期を捉えまして、ラスパイレス方式をとりたいと実は考えておる次第でございます。その他なお麦の対米比価の問題もあります。又例えば豊凶等の問題につきましても斟酌いたして決定をいたしたいと考えておりますが、新改訂方式は二十六年を基準と一応いたしたいと実は考えております。そういうものの新らしい計数そのものは、今後の事態によつて変りますので、ここにはつきりとまだ価格幾らと言うまでには、なお四月、五月の状況等によつて変動すると思います。
  18. 岡田宗司

    岡田宗司君 麦の統制撤廃する、併しながら新らしい麦の買上の時期が追つているのに、まだその買上の値段はきまらないどころか、その方針まで定まつておらない。誠にこれは政府の怠慢の至りである。一向親切なやり方とは思えないのであります。まあまだきまつておらないという一点張りでお逃げになるのならば、これも仕方がない。それでは麦の統制撤廃された後に米のほうの配給は一体どういうことにするか。今の基準の二合七勺、それから加配米の問題、これは麦の統制撤廃した後に相当大きく変る問題でありまして、国民食糧に対するいろいろな考え方に対して影響するところが大きいとも思いますが、一つそれを詳しくお示しを願いたいと思います。
  19. 廣川弘禪

    国務大臣廣川弘禪君) 米については現在配給しているような量で、現在はこれを継続して行きたいと思つております。又労務加配米もこれを継続するようにいたしたいと考えております。
  20. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 岡田委員、御要求の大臣安本側からも来ております。
  21. 岡田宗司

    岡田宗司君 米の配給の問題でありますが、只今簡単に今まで通りと、こういうこと、ところが米のたくさんできる県と、それから東京のような大消費地、それから同じ農村でありましても、米のたくさんとれない県、こういうところはみんなこの米の二合七月のうちにおける配給の率が違つている、これをそのままに続けるつもりであるか、それとも全国一様にして米の配給量というものを同じにきめておやりになるつもりであるか、その点をお伺いしたい。
  22. 廣川弘禪

    国務大臣廣川弘禪君) 漸次平均化するように努力いたしたい。
  23. 岡田宗司

    岡田宗司君 漸次平均化するように努力する。こういうことをおつしやるのでありますけれども、併しとにかく麦の統制撤廃されますというと、あとは米だけの統制の問題、ところが東京におきましては、十何日しか配給されない、今度は新潟においては二十何日ということになつたら一体どういうことになるか。私はこういうようなばかげたことを農林大臣がお考えになつてつたらとんでもないことになると思う。その具体的な策についてもうちつと詳しく親切にお答え願いたい。
  24. 東畑四郎

    政府委員東畑四郎君) 我々といたしましては、主食米麦であるということを考えております。麦の統制がとれます場合において、米は岡田さんが申されました通り、現在二十日の所と十五日の地域とございますけれども、十五日地域はやはり多年の統制中におきましても、麦の消費でカバーしておつたのですけれども、二十日地域は十日程度米以外の物を食つておる。安定麦統制撤廃されました場合、米だけが一応非常に不均衡のように見えますが、これを急激に均衡化を図りますこと自体が、又生産地自体における対農家との問題或いは消費地における実質的均衡等の問題がありまして、地域的に米食率の若干違いますことは止むを得ないではないか。そう急激な均衡化を図りますこと自体が、又却つて現実に合わないのではないかということで、只今農林大臣の申されましたような、漸次均衡を図りたいというふうな考え配給を継続いたしたいと、こういうことでございます。
  25. 岡田宗司

    岡田宗司君 その漸次というのは、一体二十八米穀年度からそういうふうにするというおつもりでの漸次なのか、或いはそうでないのか。もつと長い期間をかけてということで、今なかなかむずかしいから……、一般との平均的の配給がむずかしいから、ただそう言つてそのままにして置くのだというようなお考えなのか。ちよつとそこのところをもう少しはつきりお答え願いたい。
  26. 東畑四郎

    政府委員東畑四郎君) 生産地帶におきます米麦であるとか、小麦粉の需要というものがどの程度になるかということにつきまして、これを考えて行きたいと思いますので、二十八米穀年度から実行をするという考えは今のところ持つておりません。
  27. 岡田宗司

    岡田宗司君 次にお伺いしたいのは、今度は米のうちで外米の問題であります。外米がどのくらい混入されるかということは、消費者にとりまして非常に重大な問題であります。今日輸入されて配給されておるような外米だというと食えない、石が入つていたり、臭かつたりして食えないというので辞退する向きもあるし、又とつてもこれを食べるためには困難を来たす、こういうことで、外米混食率というものが、やはり消費地にとりましては重大な問題になつて来るのですが、この外米混食率をどういうようにするか。又外米混食率地方によつてお違えになるおつもりであるか。例えば東京におきましては、東北北陸を控えておりますから日本米が比較的入る。そこで外米混食率は比較的低くさしておく。ところが関西から九州方面になるというと、なかなか日本米がたくさん供出されない。そこで外米を余計にするという、こういうことになりますというと、これ又非常な不均衡が生じて来る。それに又加配米問題等が加わつて参りますというと、非常にむずかしい事態になつて来ると思うのですが、この外米混食率をどういうふうにするか、これを又米の比較的ある地帶と、米の比較的足りない地帶と、そこにおいてどういうふうにするおつもりか、それをお聞かせ願います。
  28. 東畑四郎

    政府委員東畑四郎君) 輸入外米の中でも比較的日本品種に近い外米もございます。タイビルマから参りますような長細いいわゆる外米もございまして、我々といたしましても成るたけ外米の中でも内地米に近い外米を成るたけそういう地帯配給いたしまして、外米はいわゆる長細い外米を非常に多く食うような地帶には、いわゆる内地米に準ずるような外米を多くいたしまして、漸次均衡を図りたいと思いますけれども、内地米生産地帶が片寄つておりますので、外米等につきましても、若干の不均衡が起りますことは、今日の状況から止むを得ないのではないかと考えておりまして、外米の中でも準内地米的な外米をそういう消費地帶に多く配給いたしまして均衡を図りたいと、実はこういうふうに考えております。
  29. 岡田宗司

    岡田宗司君 準内地米的な外米というものが相当数量入ればよろしいのでありますが、朝鮮はあの通り台湾又然り、一体どこからあなたがたの必要とする準内地米的外米をお入れになるつもりか、それを先ずお伺いしたい。それから只今お話ですと、とにかく余り米のたくさんとれないような地方においては、外米混入率も多いのも仕方がないと、こういうお話ですけれども、こうなつて参りますと、その地方における日本米に対する闇価格は暴騰することはもうこれは必至であります。そういう問題から来る国民生活水準に対してどういうふうにしようというお考えか、それをお伺いしたい。
  30. 東畑四郎

    政府委員東畑四郎君) 準内地米と申しますと、大体ブラジルエジプトカリフォルニア米というように実は考えておりまして、タイビルマ以外にはいわゆる準内地米というのが非常に多いのです。具体的な数字は申上げることを差控えたいと思います。それからいわゆる長細い外米等につきましては、価格等において段差を付けるということによつて解決を図りつつあるのでありまして、今後もそういう方針で参りたいと思いますが、国民自体内地米そのものに対してまだ非常に嗜好が強いものでありますから、内地米と準内地米を含めた消費地帯における均衡ということを、実は我々といたしましても成るべく早く均衡平均化を図つて行きたいと、こういうふうに実は考えておる次第であります。
  31. 岡田宗司

    岡田宗司君 内地米に近い外米で以て、内地米が余りたくさん出廻らない地方平均化すると、こういうお話でありますが、今話しておるような内地米に近いような地帶から輸入される数量というものは少い。これは数字を差控えるとおつしやるが、恐らく余りに少いので、それで数字を差控えておられるのであろうと思うのでありますが、そういたしますと、相当長細い質が悪いほうの、日本人の嗜好に合わない米を食わされる地方が出て来る。これは価格の差を付けただけではなかなか解決ができない問題も含まれておる。そういう点についてもう一度お伺いしたいのであります。それから、そういう場合における内地米に対する闇価格の暴騰が一体国民消費生活にどういう影響を與えるか、これが生活水準にどういう影響を與えるかということについての見通しをお聞きしたい。農林省ではこの頃農業観測ということをやつておられるのですが、そういう農業観測がどういう方面にまで及んでおるかどうかは知りませんが、若し一つそういう方面にまで及ぶのでしたら、あなたがた農業観測によつてどういう結果が出るものかお伺いしたい。
  32. 東畑四郎

    政府委員東畑四郎君) いわゆる準内地米輸入計画を申上げますと、タイビルマ買付量というものがすでにわかつて参りますので差控えたいと申したのであります。決して実は少い数量でございませんで、百万トンのうちの相当量、或いはいわゆるカリフォルニアブラジル台湾エジプト等の米を買つております。そう微細な数量では実はないのでございます。ただ内地米配給が少い地帯におきましては、現に九州地区東北地区とは、岡田さんの申されましたように明らかに内地百米の闇価格に差がございます。これにつきましては、米の生産地域東北北陸等に多いために甚だ遺憾な点でございますが、我々といたしましては、現実東北北陸方面から九州方面内地米移送等を実はいたしまして、漸次均衡化を図るのみならず、労務加配等につきましては、成るたけ内地米等を多くいたしまして安定を図つて行く。地域々々の若干の闇価格の差は今日の段階においては誠に実は止むを得ないと思います。主食全体といたしまして、内地米、準内地米を成るたけ均分を配つて参りますれば、漸次そういう点も緩和して参ると、実はこういうふうに考えておる次第であります。
  33. 岡田宗司

    岡田宗司君 どうも我々といたしましては、納得しかねるのでありますが、とにかく政府の今おやりになつておる食糧政策から見ますというと、本年の端境期におきましては、相当困難を来たすというふうに考えられます。又内地米に対する需要が非常に殖えるというようなことから闇価格が騰貴いたしまして、その結果それが生計費の上に大きな影響を及ぼすということは、これはもう明らかなことだと思うのでございます。これが全体の経済に対する影響考えますときに、一体今度の麦の統制撤廃は、單に麦が国内において相当生産量ができたし、又外国から入るということだけで総合配給をやめていいかどうかということについて、はつきりした判定が立たないのじやないか。それだのになぜ早急におやめになつたかということにもう一ぺん戻つてお聞きしなければならん。  それからもう一つは、米の統制撤廃自由党内閣方針であつたようでありますが、こういう状態になつて来るとますます統制撤廃してはならない條件のほうがたくさん生まれているように思いますが、やはり米の統制撤廃する、そして米の統制を続けるのは二十七年の十月三十一日までで、それ以降においてどうするかということについてまだはつきりした考えをお持ちにならんように思いますが、そういう場合にも二十七年の十一月一日以降において米の統制撤廃する方針でお進みになるのかどうか、これをお伺いしたい。
  34. 廣川弘禪

    国務大臣廣川弘禪君) 麦の統制を廃してよろしいか悪いか判定が立たないとおつしやるようでありますが、私たちはいろいろな点から見ましてもう外してよろしい時期であると信じているのでありますが、そこは見解の相違であると思いますが、米につきましては、私たちはこれはもつと愼重にやつて行きたいと思つておりまするので、まだはつきりしたことは申上げられませんが、これを本当に食生活を混乱しないように愼重に行きたいと思つております。
  35. 岡田宗司

    岡田宗司君 それでは最後に、
  36. 和田博雄

    委員長和田博雄君) あと二十分ですから……。
  37. 岡田宗司

    岡田宗司君 はい。廣川さんにお伺いしたいのは、愼重におやりになるのは結構であります、併しその慎重に御考究をするということは、二十八米穀年度からお外しになるという意味で愼重に御考慮になるのか、それとも外すことはできないがまあとにかく研究してみようと、こういう意味なのか。その二十八米穀年度についてどうするかということは、恐らく今からお考えになつておかなければ間に合わないことだと思いますが、その点について二十八米穀年度のしよつぱなからどうするかということをお答え願いたい。
  38. 廣川弘禪

    国務大臣廣川弘禪君) その点を愼重に検討いたしているのでありまして、間違いのないようにいたしたいと思います。
  39. 岡田宗司

    岡田宗司君 どうもこんにやく問答でどうにもしようがありませんから、あとこれは片柳さんに一つ十分にやつて頂きまして、私は次に大蔵大臣にお伺いしたいのであります。  昨年の後半期から御承知のように繊維産業を初めといたしまして、その後各産業にまでスランプが及んでおります。このスランプの原因を政府はどういうところにあるとお考えになつているか、これを先ずお伺いしたいのであります。
  40. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) スランプの原因は各業態によつて違いまするが、全般的に申しますると、やはり一昨年の暮から昨年の春にかけましての世界的の軍拡を見通しての物資の買あさりというのが中だるみしたということにあると思います。これは世界的の問題でございまするが。国内的におきましては、やはりその当時買過ぎ或いは思惑をし、又設備その他を急速に増強しようとしたその尻が今出ている、こう見ているのであります。
  41. 岡田宗司

    岡田宗司君 只今お話でありますとごのスランプの原因としてまあ国際的なものと国内的なものとをお挙げになつた。で国際的に見ますならば、アメリカの軍拡のスロー・ダウン、欧州における軍拡のスロー・ダウン等からいたしまして予想と違つた結果が出て来ているのでありますが、これが本年度におきましてどういうような状態になつて来たか。或いはこのスランプが更に続くか、或いはここを底にして景気が立直るかということは、日本の経済にとつて重大な問題でありますが、政府はこの国際的に見たスランプが本年の春から秋にかけてどういうふうに動くというふうに予想されているか。この景気観測というものを立てなければ日本の経済政策或いは財政政策というものも立てられない。この見通しをお伺いしたい。
  42. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 只今はスランプのときでございまするから、これからだんだんよくなつて来るので、その速度その他につきましては各国の事情において変つて参りまするが、大体これから上向いて来るのではないかと思います。
  43. 岡田宗司

    岡田宗司君 大体上向くというお話であります。これは大変結構なのでありますけれども、どうも現在の状態から見ますと私どもにはそう見られないのであります。そうして又昨年の後半期に起りましたスランプが国内影響しておりまして、若し経済界がこのままで参りますならば日本の経済に大きな影響を與える。更に又財政に対しましてもその影響というものは大きなものがあろうかと思うのであります。例えば政府が二十七年度予算をお組みになる場合におきましては、やはりそれに相当したいろいろな数字をお挙げになつてその数字を基礎にしてお組みになつている。ところが先ず貿易が減退する、或いは国内における鉱工業の生産指数が、或いは各事業における、或いは個人営業におけるところの所得が減る、こういうことになつて参りますれば、これは二十七年度の財政というものは大きく影響を受けざるを得ない。特にその点は法人税、或いは申告所得税の上に大きく現われて来る。こういうことになりますと、昨年度から見まして本年は相当大きな量の税收入が予定されているのでありますが、これにも響いて来るということになろうかと思います。そういう点について果して蔵相の言うように楽観的な見通しが立つかどうか。今朝の新聞の伝えるところによりますと、鉱工業生産の指数の問題、或いは貿易の数量問題等について、安本において考え直さなければならんということが出ておつたのであります。そういうふうな点につきまして大蔵大臣見通しをもう一度お伺いしたいと思います。
  44. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 世界的の経済情勢は先ほど申上げた通りでございますが、その世界情勢がそうあることを予想しつつ、又国内見通しにつきましては、これは別で、ございまして、国内的には生産が減退をしないように、而も又国際的に輸出の減退時期におきましては、輸出すべきものを国内消費いたしましてこの機会に日本の経済力を強めて行く。日本の経済の潜勢力を養つて行く。こういうことも考えなければならん重要な問題であるのでございます。従いましてお話のように、昭和二十七年度におきまする日本の経済が萎微沈滞して税収入その他に支障を来たすというふうなことは私は考えておりません。先般の補正予算のときに千五百数十億円の自然増収を見込んでここで非常に水増しだとか何とか非難されましたが、決算の見込はこの自然増収を十分オーバーいたしまして今年度におきましても或る程度の自然増収を見込んでいるのであります。私は予算編成の場合におきまして常に予算というものを或る程度の確実性を持たしてやつておりますので、経済界に或る程度の変動が起りましてもその分は極力悪い面を直すようにしますと同時に、片方の租税収入におきましても欠陷の起らないようなことをやつて参りたいと考えているのであります。
  45. 岡田宗司

    岡田宗司君 只今の蔵相のお話ですと国際的なスランプから来る、例えば輸出の減退等を補うために国内における市場を拡張してそのほうに輸出し得なかつたものを吸収させるという政策をとるように承わつたのでありますが、その場合に国内における市場を拡大する、即ち国内における購買力を増大せしめるということが先決問題であろうと思うのでありますが、その国内における購買力を増大させて、そうしてこれを以て輸出し得なかつたものを吸収する、そういうふうにする場合における国内における購買力の増大に対して政府はいかなる方針、手段を以てさようにされようとするのか、その点をお伺いしたいと思います。
  46. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) そういう題は従来からここで議論されましたごとく、例えば電力開発につきましても、造船にいたしましても設備の近代化、合理化を増進いたしまして、又生産制限の緩和と申しますか、私は実は余り生産制限ということに賛成はしておらないので、昨日も答えましたように、できるだけ輸出というのに相当の労力を使い、相当の資材を使つて輸出をしたい。日本の経済における脆弱性というものはストツクが少ないこと、こす。で設備の遊休、非近代化、それからストックか少いこういうことにありますので、この辺をこの際十分培つて行きたい。徒らに国内消費をすすめるといつても、一般消費面に向うよりも建設的な方面に向うような消費、再生産に向うような消費考えて行きたい、こういうふうに思つているのであります。
  47. 岡田宗司

    岡田宗司君 次にやはり国際的のスランプの問題から起る問題でありますが、イギリスは御承知のように今日余り経済状態がよくない。そのためにポンドの切下げの問題もしばしば起つているのであります。或いはフランスにおきましてもそういう問題が起つている。若しフランスにおいて先にポンドよりフランが切下げられればポンドがそれに追随する、こういうことになろうかと思いますが、そういうような場合が起るといたしますると、これは日本の経済にとつて非常に大きな影響があるものと思われるのであります。政府はフラン或いはポンドが行先どういうふうになるかということについてどうお考えになつているか。又そういう問題が起りました場合に円についてどういうふうな御措置をとろうとするか。その点お伺いしたいと思います。
  48. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) これは一昨年の秋フラン、ポンドの引下げがありましたときに、私は日本の円については影響はないと、こうお答えしたのであります。それと同じであります。そのときはフランやポンドが下つたのでありますが、今のところ私はポンドは下げないだろうとこう思つております。ポンドを下げるくらいならばバトラーがあんな政策はとりません。従いましてポンドは下げないと思います。而うしてフランの状態は一ドル三百五十フランが四百五十乃至四百六、七十という闇値になつておりますが、最近アメリカの経済援助の話もありますし、これは私はポンドは下げないという見通しを持つておりますが、フランのほうにおきましてはそれだけの見通しはまだ私は持つておりませんが、併しフランもなかなか下げないであろう、下げたつてフランだけならば日本に対する影響は殆んどございません。
  49. 岡田宗司

    岡田宗司君 次にお伺いしたいのは大蔵大臣は非常に楽観的な見通しを持つているというように承わつたのでありますが、このスランプにおいて、昨日は愛知さんの御質問に対して金融上の面における政府の措置についての御説明があつたのでありますが、生産、貿易につきましてどういうようにして行くかということについての詳しいお話がなかつたのであります。それから更に国内における消費力の増大、これを小さくしておいては結局国の景気というものは私は維持できないと思います。国内における消費力増大、或いは生活水準の引上げという問題についてどういう御措置をとろうとしているか。それらをお伺いしたいと思います。
  50. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私が答えるといつも楽観だとおつしやいますが、ポンドが下り、フランが下つて日本は下げないのだということは楽観ではないのであります。よほどこれはしつかりして行かなければならない、努力を要するということなんであります。そこでポンドが下つたら円に影響するように思われますが、丁度二年前にもそんなことが言われたのでございまするが、ポンドを下げても円を下げなかつた。これでやはり日本の経済はどんどん伸びて行つております。だから私は楽観じやないのです。事実がこれを証明し、又そういう場合において円をぐらぐらさすべきものでない、こう思うのでございまして楽観ではありません。これはよほどの力が要るのであります。  而して生活水準の維持というお話でございまするが、これは前からたびたび議論がありました通り、我々いろいろな対外債務を負い、又日本の独立を確保する上におきまして国内経費も相当要りますしやはりこれからは経済力を発展させて、而も又日本生活水準を維持向上させることを図りながら対外債務の返済をするというのでございます。私は政治の根本は常に国民生活の確保向上ということに重点をおいて行きたいと考えるのであります。具体的な問題につきましてはやはりその時々適切な措置をとるよりほかにございません。
  51. 和田博雄

    委員長和田博雄君) あと五分しかありませんから。
  52. 岡田宗司

    岡田宗司君 それでは最後に一つお伺いいたします。本年度における国民生活の水準は昨年度よりも下らないという見通しでありますか。又こういうスランプがありまする状態においてこれを下げないという御方針をおとりになつているかどうか、それをお伺いしたい。
  53. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 昭和二十六年度国民生活水準昭和二十五年度と大体似ていると思います。これは都市のほうでございます。昭和二十七年度におきましては私は上つて来ることを期待しております。下るようなことはないと考えます。
  54. 岡田宗司

    岡田宗司君 上つて来ることを期待されておるようでありますけれども、実際におきまして現在起つておりますスランプの状態からいたしますと、就職者の数に問題があるのであります。特に農村方面におきましてはやはり生活水準漸次下りつつある傾向にあるのであります。そういたしますと大蔵大臣の言われる生活水準全体として上りつつあるということは言えないのじやないか。こういうふうに考えられるのでありますが、このスランプが国民生活水準影響を與えないかどうかという点をもう一度念を押してお伺いしておきたいと思います。
  55. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 生活水準というのは三カ月や半年ぐらいでは私は議論すべきもんじやない。やはり長い眼で見てずつと一昨年よりどうか、昨年よりどう、こういうことで行くべきものと思います。スランプの問題につきましても、まだこのスランプが本当に下のほうまでも浸透してはいないので、ございましてまちまちでございます。でその下のほうまでスランプが浸透するまでに解決策を講じなければならん、こういう考えであります。
  56. 岡田宗司

    岡田宗司君 それからもう一つ大蔵大臣にお伺いしたいのは防衛分担金のことでございまするが、過日私が本会議でお伺いした場合には、これは何か日米合同の機関のようなものを作つてそこで支出するというふうに伺つたのであります。いよいよ講和條約の効力も発生する日が近ずいて参つたのでありますが、いかなる機関でそれを使用することになるのか、それの具体的な機構等が大体おわかりになつておると思うのでございますが、それをお聞かせ願いたいと思います。
  57. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 講和條約が成立いたしまして、而して日本の防衛支出金と向うの支出金とを一緒にいたしまして、そうしていよいよ一緒にしたものを出すという場合になりますまでは、今までの終戦処理費のような使い方のようにして行きたいと思います。而して向うの支出を出すには向うの法律を要しますので、アメリカのほうでその立案の手続をとつております。我々のほうといたしましても、このアメリカと日本の金を一緒にして出します場合におきまして、四半期ごとに両者合意の上で支出負担行為をすることにいたしておりますので、日本におきましても会計法関係の手続の改正をいたしたいと思います。で実質的に申しますと、これからこの防衛支出金を出す場合におきましては、向うの会計官とこちらの会計官が合意の上、支出行為をいたすようにしたい、而して支出されたものにつきましては、毎月日本に報告をもらい今後の支出についての参考に資したい、こういう建前で今やつているのであります。
  58. 岡田宗司

    岡田宗司君 その機構並びに機能と財政法並びにいろいろ会計法規との関係についてもう少し詳しく御構想を承わりたい。
  59. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 只今向うで立案をいたしておりますし、こちらのほうでもそれとマッチしながら財政法、会計法の変更すべき点、変更するとすればいかなる変更をすればよいかを検討いたしておるのであります。
  60. 岡田宗司

    岡田宗司君 それは一体いつ頃始まることなんですか。
  61. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 只今検討しております。財政法の改正を要するか、会計法の改正を要するか、或いは規則だけの改正でいいかということも検討いたしておるのであります。
  62. 岡田宗司

    岡田宗司君 そういたしますと、それまでは防衛分担金の支出は終戦処理費と同じ方式で支出されて行くとこう理解してよろしうございますか。
  63. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 平和條約が整いたしましていよいよ支出金を使うという場合におきましては、それまでに向うと話ができればそれによるのでありますが、いよいよ防衛支出金を出すときにきまらなければ、今までの慣例によつて当然やつて行くものとこう考えております。
  64. 山田節男

    ○山田節男君 岡田君の質問に関連して……。
  65. 和田博雄

    委員長和田博雄君) できるだけ簡単に。
  66. 山田節男

    ○山田節男君 今の岡田君の防衛分担金の支出についてですが、この間新聞では日本から出す金を向うが一応受取つて、そうして向うで一応支出官(コムプトローラー)が支出を決定する。で今予備作業班の首班ウイリアムズ代将がコンプトローラーとしてやるのじやないと、あの人の気持からすると、やはり防衛分担金は双方一応プールしておいてコンプトローラーとして向うの人が支出することになる。主たる支出官はアメリカで日本はただそれに対して補助的に支出に参與するに過ぎないということになるのかどうか。これは大蔵大臣或いは岡崎国務大臣にちよつとお伺いしたい。
  67. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 行政協定の場合におきましては大体のことを両者できめたのであります。先ほど申上げましたようなことでございます。その後向うのほうで又意見が出たとは私は聞いておりません、直接事務当局から聞いておりません。併し考え方としては日本が防衛支出金として出しますのは、法的には向うの勘定に入ることになると思います。向うの勘定に入りますが出すごとになります。併しそれでは日本国民の出した金を使うのだから向う任せにはできにくいというので行政協定で話をして今のようなことにいたしたのであります。向うの人がたとえ切手を切る場合におきましてもその切り方、時期、金額につきましては、両者合意の上とこういうことに行政協定のところでは話がついているのであります。その後の具体的の問題につきましてはまだ私は聞いておりません。
  68. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 先ほど岡田君の質問に対して大蔵大臣が答えられたことで一つお伺いしたいことがあるのです。それはポンドの見通しの問題ですがこれは非常に重大だと思うのです。今後の日本の貿易政策については今非常に悩みがある。この間木内外為委員長もポンドを切下げることはないであろう、こういうことを言つておりました。大蔵大臣も前途はそう下ることはないであろう、今度のイギリスの財政政策によつてポンド価が維持できるだろうという御説明でありましたが、実は昨年の九月二十七日のマンチェスター・ガーデアンに載つているコーリン・クラークの論文ですがこれを見ますと、来年あたりイギリスには非常なインフレが来るであろう、大インフレが来るであろうということを指摘しているのであります。それはイギリス経済に対して警告を発しているのです。イギリス経済は三つの幻想の上に立つている。日本も幻想の上に立つているのでありますが、イギリスにおいては三つの幻想の上に立つている。その一つは生産がもつと拡大するであろうという幻想を持つている。第二は安い食糧がもつと将来入るであろうという幻想を持つている。それから租税の負担能力がまだまだあるだろう、こういう幻想を持つているが、それは幻想で間違いだ、それでクラークの指摘するところによれば結局一九五三年来年あたりは非常なインフレが来るであろうということを指摘しているのです。そうしますと、今度のバトラーの政策によつて一応ああいう緊縮政策をとりましたが、ポンドの将来については相当国際的ないろいろな軍拡競争その他を考えますと、そんなに簡単に大蔵大臣が言われるように私は楽観できないじやないかと思うのですが、その大きな見通しとしてはもつと更に弱くなるのじやないかという見通しの上に立つて、県は為替政策なりポンド政策を立てなければ、私は、間違いだ、それが根本的に大蔵大臣と違う。この見通しを楽観的に甘く見ると非常に間違う。むしろ私は弱いと見る。イギリスの今の経済にはそういう幻想を抱かせるような政策を基本としてやつているように見られているのでありますが、その点については大蔵大臣は今後下らないのじやないか、或いは切下げもないであろう、こういうふうに言われているのでありますが、私はそうではないと思う。むしろこれは弱いイギリス経済の根本的な一つの欠陷から見て、そういうような立場から為替政策を考えなければ間違つて来るとこう思うのですが、この点についての御見解を伺いたい。
  69. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) そういう問題は、バトラー蔵相がイギリス議会において演説した面後におきまして、前蔵相のゲイツケルがあなたと同じようなことを言つております。即ち物価と賃金の悪循環を来たすか、さもなければイギリスの経済は縮小に帰つて行く、こういうことを言つておる。これは議論のあるところで、ございまして、イギリスの国会の議論をここで私はしたくないと思いますが、私は日本の大蔵大臣として見通しを聞かれれば下らないだろう、まあ人のことをとやかく言うことはどうかと思いますが、強いて聞かれるから言うのでありますが、下らないであろう……。
  70. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 日本の将来に重大な影響があるから聞いているのです。
  71. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 而うしてポンドが下つた場合に日本のとるべき策を聞くなら別でございますが、今下げるか下げんかということについて議論はしない、下らない場合のことを見通して我々は言つているのであります。而して下つた場合にあなたが御心配になるようなことは私は余り起らないだろうし、起つたつてそれに対処するだけの日本の経済力はできているし、又できるようにしなければならん、こういつておるのであります。で一九五〇年にイギリスのポンドが下つて、そうしていろいろなあなたの議論されましたその後の日本の経済はどうですか。イギリスはポンドを下げたから普通の状態じやございません。イギリスのほうがポンドを下げれば輸出がふえて輸入が減る、こういうのが普通の議論である。ポンドを下げてどうですか、又今のような状態になつている。ポンドを下げる、下げんの問題よりもバトラーの政策がイギリス国民の協力を得てうまく行くか行かんか、これを見守つておる。若し万が一にも下がるような場合におきましては日本としては適当な策を十分持つておらなければならん。併し日本としてポンドがたとえ万が一下つても大した影響は起るまいし、又起りそうならその対策を考える。一九五〇年のあのときと今は大体同じでございます。
  72. 片柳眞吉

    ○片柳眞吉君 私は今年の米と麦の価格につきまして先ず質問いたしたいと思います。来年度予算を見て参りますると、食糧増産対策費で相当予算が計上されておりまするが、ただかんじんの米価、麦価につきましは実は十分な考慮か拂われておらないというような感じがいたすのであります。昨年の米価は御承知のように七千三十円でありまするが、今年の予算米価は七千二百十四円でありまして百数十円しか実は上つておらないのであります。而も昨年の七千三十円の米価はそれに或いは供出完遂の奨励金の千円でありまするとか、或いは問題の超過供出の奨励金の二千円というものを見て参りますると、実は七千三十円に或る程度加わつたものになりまするが、それと比較しますると非常に今年の米は実は割安であるという感じがいたすのであります。この問題は米価審議会で小委員会を設けまとて、非常な専門的な検討をいたしたのでありまして、結論といたしましては、所得パリティ方式或いは供出限界農家の生産方式という両面から妥当な米価を算定すべしということに結論がなつたのでありまするが、少くとも基準年次は戦後の適当な年をとるべきであるという結果、大体昨今の情勢からしますると昭和二十五年が最も妥当なる基準年次であるというふうに結論をつけているのであります。そういう点から昨年の米価審議会におきましても、昨年産米も少くとも石当り七千五百円を下らない米価にしてほしいというのが最終の結論であつたのであります。にもかかわらず今年の米価が七千二百円僅かでありまして非常な何か割安だという感じがいたすのであります。政府におきましては二十五年の米価を基準にいたしまして、二十六年の農業。パリテイと二十七年の農業。パリティとの上昇率をかけましてこの七千二百十四円の米価を算定しておりまするが、米価審議会で決定しました二十五年度の米価を基準といたしまして同様の計算をいたしますると、石当り七千八百四十三円という数字が出て来るのであります。即ち二十五年の実質米価は六千三百二円でありまするが、この六千三百二円を基準といたしまして、二十五年の農業パリテイはバツク・ぺイを加えました実際のパリテイは二〇五・二七でありますが、これに対して今年のパリテイ政府の計算する、ごとく二五五で見て参りますと、今言つた七千八百四十三円という数字が出て参るのであります。昨年の米価でも七千五百円を最低とするということで米価審議会では結論を出したのでありまするが、政府と同じ方式で仮に二十五年をとりますると今申上げましたような七千八百円を上廻る米価が出て来るのであります。私はこの辺に一つの大きな問題があるのではないかと存ずるのであります。或いはインベントリー・フアイナンスをやめて参りたい、或いは消費者価格は昨年の引上げ以上には上げることが困難であるというような、こういう見地から私はかような計算を便宜的にしたような実は感じもいたすのであります。食糧増産対策費で約百億の予算が増額されましたことは非常に結構でありまするけれども、仮に米価のほうで五百円の米価が割安に決定されておりますれば、政府計画のように二千八百万石を買うといたしますれば米価収入のほうで百四十億の所得減が出て参ります。同様に麦の関係でもそういうような結果が出て参りますので、片つ方で食糧増産対策費をふやしたことにつきましては非常に政府も呼号されておりまするが、もう一つの農家の収入の基準をなす米麦価については、どうも先、言つたような観点から割安にこれが便宜的にきめられておるというような感じがいたすのであります。そこで米価審議会で決定した方式をとりませんで、二十六年産米を基準として、かような七千二百十四円を決定いたしました理論的な根拠につきまして先ず一つ政府の所見を伺いたいと思います。
  73. 廣川弘禪

    国務大臣廣川弘禪君) 政府予算上、二十七年産米価の算定について二十六年をパリテイ計算の基準といたしましたのは、二十六年が価格体系上も二十五年より安定いたしておることと、農家と都市労働者の生活水準均衡、及び農家経済の収支から見ても二十五年より二十六年が良好な状態にあつたからさようにいたしているのであります。又米価の決定は、国民経済の他の分野にも非常に影響を及ぼしまするので、米価は全国民経済的見地から決定すべきものであると思つているのであります。基準年を二十六年にとることは二十五年をとるよりも適当であるのでありまして、なお米価審議会の検討いたした際には、資料の関係から二十六年の基準年としての妥当性にはまだ触れていなかつたのでありまして、米価審議会がそういうふうにきめたからけしからんじやないかというようなことは当らないと思うのであります。なおこの米価をきめます上においては、これから又審議会にかけて参りまするので、あくまで予算構成上こういうふうな比較的平均された年次をとつたようなわけであります。
  74. 片柳眞吉

    ○片柳眞吉君 二十五年に対して二十六年のほうが農家経済の所得もふえているという事情、私も了解いたしまするけれども、ただ農家経済の好転したのは、必ずしも米、麦の收入で全体の所得が殖えたと私は見ておらないのであります。農家経済の実態を調査いたしましても、二十五年よりも二十六年の所得の殖えましたのは、一つには二十五年産米の、二十五年の米のバツクペーが相当あるということ、これは二十五年の米による所得であります。そういう点でありまするし、その他農家経済の好転をいたしましたのは、むしろ米麦以外の或いは養蚕の収入でありまするとか、或いは木炭の収入でありまするとか、そういう主要食糧以外の收入が収入増の実は非常に原因をなしておるようであります。そういう点から見て参りますれば、米麦それ自身の所得から見て参りますれば、私は二十五年のほうがむしろ恰好な年ではないだろうか、これはもう議論をするまでもなく、二十五年産米は政府がいろいろ御努力をされまして、一五%の特別加算を加えた年でありまするし、二十六年はこれを一〇%削つて、僅か五%の加算しかしておらないのでありまするから、米の面から見て行けば、私は二十五年のほうがこれはよろしいということは、單純に私は指摘できると思うのでありまして而も専門家の意見を聞いて参りましても、今農林大臣の言われましたように、二十五年より二十六年のほうが農家経済の所得も殖えておる、或いは都市との均衡もとれておるということは言えますけれども、そうだからと言つて、米の価格をきめる場合に、二十五年がよろしいか二十六年がよろしいかは、これは実は相当の議論があるようでありまして、この辺は單に全体的な農家経済のことで私はできないと思うのであります。その辺につきまして重ねて政府の御意見を一つ承わりたいと思います。
  75. 廣川弘禪

    国務大臣廣川弘禪君) 二十五年と二十六年、どつちをとるかということについては、御説の通り論はあるのでありますが、併しこの平均化された年をとることが一番よろしいように我々としては考えておるのであります。成るほど米価については一五%と五%の差はあるのでありますが、全般から見てこういうことが妥当であると考えるのであります。
  76. 片柳眞吉

    ○片柳眞吉君 その問題は、まあ近く開催さるべき米価審議会で更に議論を盡して見たいと思うのであります。  その次にお聞きをいたしたい点は、安本長官はお見えになつておらんようでありますが、二十七年の米価を想定する場合に、農業パリティは二五五で見ておりまするが、これが果して二五五で改まるかどうか、この点につきまして御質問して見たいと思うのであります。と申しまするのは、昨年の暮の農業パリティは二五八・四七でありまするし、今年に入りまして、一月のパリテイが二五八・五九であります。相当つておるのであります。勿論肥料等につきましては、今後若干下るような見通しもできると思いまするし、或いは又昨今の大きな問題である紡績の関係で、或いは綿製品等はかなり下るというような非常な予想の困難な実は見通しだと思うのでありまするが、ただ肥料のほうは電力料金の引上げ等の問題も絡んでおりまするし、又現に石灰窒素のごときは東北地方では非常に入手に困難を感じておるような情勢でございまするが、かような情勢から、今後なお数カ月が残されておりまするが、今後の見通しで二五五に収まる見通しがありまするかどうか。その点お聞かせを願いたいと思います。
  77. 廣川弘禪

    国務大臣廣川弘禪君) これは安本長官の領分のようでありますが、私たちといたしましては、あなたが今御指摘のような綿製品の値下り、或いは又肥料も現在のところ頭打ちをいたしておりまするので、この範囲で十分私は行けるじやないかと思つております。
  78. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 安本長官は今呼んでおりますから、来ましたら正確な答えを一つ……
  79. 片柳眞吉

    ○片柳眞吉君 その点はあとで又安本長官からお聞きをいたしたいと思いますが、そこで、先ほど来の問題になつておりまする麦の統制撤廃の場合には、或る程度従来と変つた麦の生産者価格を考慮して行きたい、こういうことでありまするが、併し、従来の経験から見て参りますると、予算で米価なり麦価がきまつてしまいますると、殆んど米価審議会その他でいろいろやりましても、殆んどこれはもう動かし得ないというようなことであります。そこで、そういうような麦の統制撤廃に関連して、麦の生産者価格を従来と変えるということが果して来年度できるかどうかという点が質問の第一点であります。  それから、もう一つ麦の価格でお聞きをしておきたいと思いますのは、来年度予算麦価から見て参りましても、従来のように今年の米価を想定して、米価に対する価格比率を以て麦の価格をきめるという従来の方式はこれをやめまして、麦は麦として独自に二十六年産の麦価を基準にして、それにパリティを見て麦の価格をきめて参る、こういう関係でありまするが、ところが、問題は二十六年産の麦の価格につきまして、実は一つの問題があろうかと思うのであります。即ち二十五年に対して二十六年は麦の対米比価相当引下げておるのであります。即ち大麦は従来対米比価七〇%であつたものを五七%、それから小麦は八一・三%であつたものを六四%、裸麦は同じく八一・三%でありましたものを六九%に下げておるのであります。かように対米比価を下げた昨年の麦価をペースとして今後の麦の価格を見るとい三とについても、私は一つの議論があると思うのでありまして、現にこれは先ほど岡田さんからも御指摘があつた点でありまするが、今年の麦の作付面積が現在までの報告によりましても、約七万町歩というような非常な減反を示しておるのであります。これは政府食糧増産の政策と全く反対の結果を見ておるのでありまするが、これは勿論ほかの理由もあると思いまするけれども、一つには麦は相当肥料その他で生産費が要るにかかわらず、比較的麦が安いという点が私は一つの大きな原因ではないかと思いまするが、今後麦の価格は依然として二十六年のものを基礎としてやるお考えでありまするか。又麦の作付の減少したのはどういうふうにこれは政府は御覧になつておりまするか。お聞かせを頂きたいと思います。
  80. 廣川弘禪

    国務大臣廣川弘禪君) 麦の作付面積が減つたことについてのお尋ねでありまするが、これは今まで事前割当で無理に強いたので作付の無理な地帶の減つたのが大半であると思うのであります。特に菜種等の非常に有利なことが條件となつておるようでありますが、或る程度菜種も限界点に達して参つて来ておりますので、この減反歩は私はそうないのじやないかと思うのであります。それから又価格の点についてでありますが、今後政府最低価格をきめまして、それ以上に市場が安定した場合には却つて作付面積が私は殖えて行くのじやないかと思うのであります。又価格構成につきましては、これは政府委員から答弁いたします。
  81. 東畑四郎

    政府委員東畑四郎君) 麦価決定につきまする基準年度及び単価の御質問だと考えますが、二十五年と二十六度と比べまして、将来の米麦というような、国民経済に非常な重要な関係がありまするけれども、年度として見た場合に、二十六年度のほうが二十五年よりは比較的に安定した年でないかということは言えると思うのでありますが、只今の御質問は基準單価が安いのじやないか、こういう御質問の趣旨だと思います。成るほど対米比価は八一・三が六四ということになつております。比率そのものは低くなつておるのでありますが、我々といたしましては、生産者価格における対米比価考えました際に、二十六年度実効米価対実効小麦粉価格というものをとりますか、或いは多少需要の変化等の趨勢を長く見るかということ等につきまして、この二十五、二十六のこういうような変化を織込みますれば、片柳さんの指摘せられました点等も解決する途があるのじやないか、こういうように実は考えておる次第であります。
  82. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 片柳君、安本長官が来ましたから……。
  83. 片柳眞吉

    ○片柳眞吉君 それでは安本長官に先ほどの二五五のパリティが今後果してこれで改まるかどうかにつきましてもう一遍お答えを願いたい。それから実は予算がきまつてしまつたあとで、いつも米価審議会でいろいろ議論をしておりまするが、私はやはり予算で米価をきめる前に審議会を開きませんと、実効がないと思うのでありますが、而も今言つた基準年次を二十五年にとるか、二十六年にとるかは、そこに米価にしても石当り六百円以上の実は大きな開が出て来る大きな問題でありまして、而も学者の間にもこの点につきましては、相当の議論がこれはある問題だと思うのですが、そこで成るべく早い機会に米価審議会を私は開催をして頂きたいと思いまするが、そういう点について政府はどういうような御準備をされておりますか。
  84. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 先ほどおりませんで、御質問のとり方が間違つておればもう一遍お聞きを願いたい。パリテイの問題について最近パリティが予算編成当時見込んだより上つておるが、今後更にどうなるかというお尋ねであつたかと思いますが、これにつきましては、成るほど今二五五以上少し出ております。最近における情勢は肥料の問題も先高見込でいろいろ変つて来たのでありますが、横這いになつておりまするし、一般的な物価もやや横這いの傾向にあります。今年の出来秋の状況が更にこれからこれが今日上るだろうというようなことを予想するのも早いのじやないか、かように考えます。第二の点でありますが、米価審議会についてはお話の点は誠に御尤であります。政府といたしましても、できるだけ予算以前にやるということが望ましいのでありますが、やはりその年の米価の決定に関しましては、いろいろと物価事情、今年の出来秋なら出来秋のできる前に実際のパリテイの実態を握りたいというようなことで今まで延び勝ちでありますし、政府としてはお話の方向にできるだけ持つて行きたいと、かように考える次第であります。
  85. 片柳眞吉

    ○片柳眞吉君 それでは米価審議会を成るべく早く開催することを希望いたしまするが、問題を次に移しまして、御質問をいたしたいと思いまするのは、来年度予算をみて参りますると、先ほど申上げましたような食糧増産対策費としては相当の実は御努力があるようどありますが、ただ政府考え方を見て参りますると、或いは土地改良、或いは災害復旧というような土地そのものの生産力を維持するなり、或いは増進をするという点には必要な努力を拂つておりまして、これは大いに賛成をいたすわけでありまするが、ただ農業経営なり、農家経済の点から見て参りますると、農業経営費の一番中心をなすところの生産資材については殆んどこれは拱手傍観の形である一ということが、私は言えるのではないかと思うのであります。先ほど来の米価の問題も結局は肥料なり、或いは家畜飼料の統制を外してその急激な値上りというものが昨年来の米価問題を困難にいたしておるわけであります。土地の生産力の維持増進についての政府の努力は私は多といたしまするけれども、もう一つ農業経営の中心をなしまするところの肥料、飼料というようなものについては殆んどこれは自由経済の流れにそれを全く任しておるというようなことを遺憾と思うのであります。そこで、例えば肥料につきまして見て参りますると、昭和二十五年の平均指数が一二二・五でありまするが、これに対して今年の一月の肥料の値上り率は指数は一九五・五でありまして、相当の値上りをいたしておるのであります。これは二十五年からずつと殆んど肥料は上る一方でありまして、下ることが全然これはないのであります。而も先ほど言いましたような電力料金の引上げ等は更にこの肥料価格の値上げに私は拍車をかけると思うのでありますし、又昨今の現実情勢から見て参りましても、先ほども申上げましたような硫安なりは相当順調に入つておるようでありますが、単作地帶の元肥に使うべき石灰窒素が非常に実は入手困難で騒いでおるような状況であります。こういう点から見ますと、農家の現金支出の一番大きなものを占めておる肥料なり飼料なりについて、殆んど政府は政策上何ら手を打つておらないということを私は遺憾に存ずるのであります。飼料の点の数字を申上げましても、二十五年の平均が一〇八・五でありますが、それに対して二十七年一月の肥料の指数は二二五・六でありまして、倍以上の実は値上りをいたしておるのであります。どうも肝腎の肥料、飼料については政策上殆んど手が打たれておらないということを遺憾に思うのでありますが、その意味で農林省といたしましては、肥料の需給調整というような案も一応お考えなつたようでありますが、現在立ち消えになつておりますし、それから飼料については何か衆議院方面で或る種の考え方を持つておると聞いておりますが、こういう点について政府がどういうお考えを持つておりますか。政府の所信を一つお聞かせ願いたいと思います。
  86. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 御意見誠に御尤もであります。農家経営に必要な肥料その他の必需物資の価格についての御心配は御尤もでありますが、これに対してただ拱手傍観をしておるというわけではないのであつて、御承知のように戦後殆んど有機質肥料として満州大豆搾り粕というふうなものの供給を仰げなくなつ状況の下においては、先ず第一に硫安のごとき人造肥料の増産を図ることが急務であります。この点については政府は主力を増産計画に向けたのであります。御承知のように非常に硫安等の生産が落ちておつたのが最近においては百九十万トン乃至二百万トン以上に上るように生産の殖えたことは一つの私は政策の結果だと思います。ただ御指摘のように去年の末項から今年の一月にかけて硫安の一価格相当に上つておりまして、指数から申してお話のような形になつておることも了承いたしております。これは一面におきましては、結果論でありますが、昨年における電力の異状危機からいたしまして、生産者団体等におきまして、又工業者等の方面におきましては先高ということを見越して、或いは数量の先行不安というものを見通してかなり買い進んだ形であるようであります。その点が価格にも相当影響しておるんじやないかと思います。  ところが幸いにして今年の一月以降渇水期になるべきときに豊水でありましたので、非常に硫安その他の製造についての力を回復いたしまして、このままで行けば肥料年度の今年の七月の終りまでに予定計画を十分に達成して十五万トンの増産計画も遂行せられるだろう、こういう見通しも立ちました。そこで肥料の価格が横這いの形になつ状況にあるわけで、この点に関連して、むしろ御指摘のように肥料の需給調整法でも作れという御意思のようでありますが、これについては、政府でもいろいろ輩おりますが、併しむしろ四囲の情勢から考えまして、先ず増産をさせることに主力を置いて、それでもどうにも行かんというときに考えるということで、今ちよつと足踏みをしております。むしろ総数量を殖やすということに今は主力を置いて対処しておる次第であります。幸いにして過燐酸石灰のごときは電力事情もありましたが、これは予定計画をずつと上廻つておるわけであります。石灰窒素につきましては、これは御指摘のように六十万トン程度でまだ少し足りませんので、こういう点につきましては電力等の割当について十分政府のほうでも意を用いて、肥料の増産については特別の配慮をいたしたい。かように考えております。
  87. 廣川弘禪

    国務大臣廣川弘禪君) 飼料について御指摘の点御尤もでありますが、私たちは自給飼料増産に力を入れて行きたいと思つておるのでありまして、又現在ただ單に見送つておるわけではないのであります。マニトバの小麦のふすまを売渡しましたり、いろいろ策を講じておるのでありますが、まだ本当に安定するまでに参りませんが、我々といたしましても十分検討をいたしておる次第であります。
  88. 片柳眞吉

    ○片柳眞吉君 飼料につきまして、自給飼料を増産をする方向は私も賛成でありますが、ただ先ほどちよつと触れました点でありますが、衆議院の一部において何か飼料の需給調整法案を議員提出として出すというような話を聞いておるのであります。これはやはり政府において夏場の安い時期に飼料を買い込んで置いて、冬場の値上り期にこれを出すというような構想で、この構想は必ずしも私は悪いとは思わないのでありまするが、併し我々薪炭会計のあの赤字というような問題と関連して見て参りますと、かような腐敗しやすいものを政府が管理をして売るということは果してどうだろうかという実は多大の危惧を持つのであります。むしろこれは需要者団体なり或いは配給業者の団体にむしろ金融等をつけて、これを自主的に調整させるということのほうが私は差当りは実際的ではないかと思います。かような検査規格もはつきりしておらん腐れやすいものを政府の会計で持つということは薪炭会計以上の私は二の舞を踏むのではないかと思いますが、この辺につきまして大体のことは農林大臣御承知と思うのでありますが、どのような御意見を持つておられますか。
  89. 廣川弘禪

    国務大臣廣川弘禪君) 私のほうの党のほうであなたの御指摘のような検討をいたしておるようでありますが、まだ何分にも相当異論があるようであります。まだ政府とも本当の連絡がついておりません。私たちも愼重に考えたいと思つております。
  90. 片柳眞吉

    ○片柳眞吉君 それでは最後に簡単に御質問をいたしたいと思いまするが、来年度予算を見て参りますると、この前の国会で我々がいろいろ実は條件を附けまして通過をいたしました繭糸価格安定法の関係でありますが、この法律は生糸の価格安定ということを主としておる。その原料である農家の繭の関係には間接的にしか考慮をしておらんという点について実は幾多の條件を附けたのでありまするが、殆んど実は予算上考慮が拂われておらない。現に政府から提案されました農林漁業資金融通の改正案を見ましても、穀物倉庫には年四分で融資をするけれども、乾繭倉庫は除外をしておるというようなむしろ変な関係に出ておるのでありまして、これが殆んど実は予算上、根本大臣から実は公文の回答も頂いておるわけでありまするが、それに即応して何ら対策が出ておらない点を遺憾とするのでございますが、その点をどうお考えになつておりますか。  それからもう一つは、昨今の紡績関係の値下りから見て参りまして、今年の繭の最低最高価格は何か衆議院での政府の御答弁では、大体昨年のものと変らないというような方針が示されておりまするが、それが果して間違いがないかどうかを最後に御質問いたします。
  91. 廣川弘禪

    国務大臣廣川弘禪君) 蚕糸価安定のことでありますが、糸価が安定すれば自然繭が安定するということで我々はさようにいたしておるのであります。  それから農林金融の特別会計から出す場合についての法律についてのお話でありますが、これは本院において繭も入れるようになつておるようでありまするので、我々はこれは尊重いたしたいと思つております。
  92. 小林政夫

    ○小林政夫君 質問は簡單なんですが、農林漁業資金融資特別会計の貸付計画について農林大臣と大蔵大臣にお伺いしたいのでありますが、先般漁業権償却に対する補償金の課税の問題と関連をして十二国会における大蔵委員会において当時の根本農林大臣、大蔵大臣御両氏の出席を願つて、一来年度即ち二十七年度の農林漁業資金融通特別会計の中へは十億程度の漁業に対する紐付資金を確保してもらいたいという、大蔵委員会としては全会一致を以て要望をいたしました。そのとき両大臣とも御趣旨に一副うて善処をする、勿論融資金額は十億ということは言われなかつたのでありますが、その程度のものを考える。そうして更に根本農林大臣は、この十億というものは漁業に対する紐付になるが、通常の状態におけるこの特別会計内における資金繰りとして水産業のほうへ廻るべき予定の資金繰りをこの紐付の十億足らずの資金が組まれたからといつて出さない別枠でというか、増加分としてそういうことを考慮するというお約束をしかといたしておるのでありまするが、本年度提出予算の中で、この特別会計の貸付計画を見ますと、そういうような配慮をされた点が見当らないのであります。この点についてどういうふうになつておりますか。
  93. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 漁業証券の問題で、お話のように大蔵委員会におきましてそういう方向で進むと申上げたことは御承知の通りであります。従いまして、昨年度当初補正予算を加えた百二十億を実は二百億にしたのであります。漁業資金のほうへ別枠として十億円程度のものを廻す考えで検討いたしております。只今予算の参考書にはその他として十億載つておると思いまするが、そういういきさつもございますので、今お話のような趣旨で善処したいと思つております。
  94. 小林政夫

    ○小林政夫君 その他としても載つておらないのですがね。それでははつきり申しますと、大蔵委員会で、先般農林漁業資金融通特別会計法の一部を改正する法律案のときに、農林省の金融課長が説明員として来て、そのとき私質問したときには、別途実施計画表というものを出された。これによると七億五千万円というものがこの資金貸付計画に載つておらないもので漁業共同利用施設に対する貸付として七億五千万円というものが載つておる、これがそれに該当するのだということでありました。ところが全体のこの特別会計の資金総額を二百億であるにかかわらず、こうやつてしめて行くと二百七億になる。出された資料の説明ではそのうち七億は金融機関の自己資金による繋ぎ融資だということを言われている。そういうことが果して運用上できるものであるかどうか。そういうことになると、七億五千万円というものは計上されるとしても、恐らくこれは私がその前からそういう意向を漏らしておつたので、前に出された資料とは又変えて、こういう実施計画としてされたのであつて、果して農林大臣も承知の上で、必ずこの通りやるというお肚であるかどうかということも確めたいと思います。そうして又その金融機関の自己資金による繋ぎ融資だということは、農林中金の自己資金による繋ぎ融資ということになるのであつて、これは本来我々大蔵委員会で要望した趣旨とは違つている。その点……。
  95. 廣川弘禪

    国務大臣廣川弘禪君) 大蔵委員会の全会一致の要望もあるようでありまするので、大蔵省と相談いたしまして、善処いたしたいと思います。
  96. 小林政夫

    ○小林政夫君 これは必ずやつて頂くという約束を固くやつて頂きたい。
  97. 和田博雄

    委員長和田博雄君) それでは午前はこれで質問を終りまして、暫時休憩いたしまして、午後は一時半から始めます。    午後零時十五分休憩    —————・—————    午後二時四分開会
  98. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 午前に引続きまして委員会を再開いたします。  午前に続いて一般質問を続行いたします。山下義信君。
  99. 山下義信

    ○山下義信君 私は厚生諸問題を中心に伺いたいと思うのでありますが、先ず遺家族援護の問題につきまして厚生大臣にお尋ねいたしたいと思います。  今回の遺家族援護対策は極めて不十分、不満足でありますことは自他共に認めておるところでありますが、その金額におきましても、又その方法におきましても、誠に遺憾の点が多々あるのでありますが、従来政府は、遺家族対策は財政上の都合で今年度まあこういうふうにいたし方なくいたしたのであつて、いわば暫定的の措置であるということを言つておるのであります。一又或るときには、今後は十分一つ増額等にも努力したいということを言われておりまするが、今後政府は如何なる方針を遺家族援護対策についてとられようとするのでありまするか、政府の一定せる方針につきまして明確なる御答弁を得たいと存ずるのであります。
  100. 吉武恵市

    国務大臣(吉武惠市君) 遺家族の援護につきましては、お話のごとく私どももこれを以て十分だとは考えていないのでありますが、今日の財政上止むを得なかつたと思うのであります。而ういたしまして、御承知のように、この軍人軍属につきましては、もともとは恩給によつて遺族扶助料が出るべきはずのところが、恩給が停止されて来ておつたのであります。そこで独立いたしますれば、何と言つてもこの問題はいの一番に取上げなければならないというところから、先般二百三十一億と八百八十三億の公債ということの予算決定いたしまして、これに基く遺族擁護法案を目下衆議院のほうに提案をしておるようなわけであります。而ういたしまして、この遺族の問題につきましては、根本的にはつまり恩給に触れる問題でありまして、これは遺家族ばかりでなしに、軍人恩給とも併せて考えなければならない問題でございます。そこで本格的と申しまするか、根本的な問題は、審議会を作りまして、今後この軍人恩給、そうして特にこの遺族に対する扶助料の問題はどうしたらよいかということは、十分この審議会において御審議を願いたいと思つておるわけであります。併しそれができまするまで待つということになれば、すでに七年間もこれを放つて置いて、なおこれを待たせるというわけには参りませんので、ここで遺族援護法というものを出しまして、遺族の援護を図ろうと、こういう次第であります。そこで暫定的であるかどうかというお話でございますが、私どもはこの援護法で以て恩給はやらないのだと、そうしてこれだけで行くんだという考えでは勿論ございません。併しこの遺族に対する恩給がどうなるかということは、将来の問題になるわけでございまするから、将来その問題が確立するまではこの援護法で行きたい、そういう意味において、今年限りの法律とは考えていないわけであります。
  101. 山下義信

    ○山下義信君 要するところ、今年限りでないと言われましたが、本格的な対策が確立するまでは暫定的な処置であるということには間違いないのでありますか、その点をもう一度お答え願いたいと思います。
  102. 吉武恵市

    国務大臣(吉武惠市君) さようでございます。
  103. 山下義信

    ○山下義信君 詳細なことは、只今援護法案が国会で審議中でございますから、私は細かい点は省略いたしますが、大筋について伺いたいと思いますることは、暫定的な措置であるにいたしましても、今回の対策中には我々の納得いたしがたい点があるのであります。何が故に戰歿者の弔慰金を支給いたしまする法案のほうでは、遺族一時金と言つておりまするその弔慰金を昭和十六年の十二月八日以後の戰歿者だけに限つたのであるか。即ち一連の今次の戰歿であつた昭和十二年の七月七日以降の日華事変以後の戦歿者をなぜ含まなかつたのであるかという点を伺いたいと思うのであります。
  104. 吉武恵市

    国務大臣(吉武惠市君) 公債のほうの一時金を太平洋戰争以後になぜ限つたかと、こういうお尋ねでありますが、実は太平洋戰争以前には一時金は、出ていたのでございますが、太平洋戰争の初期には出たようでありまするが、中途から出なくなつた。そこでこの一時金は太平洋戰争後に限ろうということで、かような処置をとつたわけであります。
  105. 山下義信

    ○山下義信君 一々議論をしておりますると時間が盡きますから、議論はいたしませんが、極めて不合理なる処置であるということは明確であります。なぜかなれば、太平洋戰争以後の戦沒者でも、只今厚生大臣の言われた通りに、すでに措置をした人もあるのであります。且つ又、日華事変以後一時賜金等の措置がありましても、それらの賜金は公債でありまして、その公債はポツ勅によりまして全部無効になつておるのでありますから、措置をしないのも同様であります。でありますから、私どもは戰死者の対象を昭和十六年の太平洋戰争以後に限つたということは納得いたしがたいことを申上げておきます。なお今回の遺族一時金の支給者、即ち公債の支給者に十八歳以上の遺児を除外したのはどういうわけでありますか。両親を失つたいわゆる戰災弧兒、それが十八歳以上のものにはなぜ支給いたさないようにいたしたのであるか、この点を伺いたいと思います。
  106. 吉武恵市

    国務大臣(吉武惠市君) 実はこのたびの遺族の援護につきましては、範囲を広くいたせばいいのでありまするけれども、財政上のこともございまするし、従いまして遺族の範囲は大体旧恩給法の扶助料の支給を受ける遺族の範囲にいたしたわけであります。従いまして昔の軍人恩給で遺族扶助料をもらいまする対象は、御承知のごとく、未亡人と未成年の子とそうして父母、祖母と孫というふうになつておりまするので、現在旧軍人の遺族扶助料さえ支給のできない現状において、この遺族の援護はやはり少くとも恩給法の遺族扶助料の支給を受ける遺族の範囲にすべきではなかろうかかような考えから年齢を限つた次第であります。
  107. 山下義信

    ○山下義信君 政府の説明は私ども納得ができないのでありまして、恩給法に基いてやるのならば恩給法に基いてやればよろしい。成るべく金を要さんほうでは恩給法に基く、金額の多いほうは恩給法は避ける、かようなことは誠に私は誠意のないやり方であろうと思う。只今申上げました十八歳以上の両親を失つた弧兒、その弧兒に弔慰金を與えずに誰が戰死者の父を弔いますか。そういうような残酷なやり方をしてはいかんのでありまして、こういう点は私ども国会といたして十分審議をいたしたいと思う。且つ又兄弟姉妹等は恩給法にはないと言われましたが、恩給法の中においては、受給者の資格の中に兄弟姉妹等もあるのであります。そういう点につきましては私ども国会といたしまして十分に審議をいたし、国会は国会の意思を以てこの対策を検討いたしたいと存じますが、政府は若しこの今回の遺族援護対策について、援護法等につきまして、国会が、而も両院が一致して国会の意思を表示いたし、或る程度の修正を要望いたしましたときには、政府はこれを受入れる用意があるかどうかということを私伺つておきたいと思います。
  108. 吉武恵市

    国務大臣(吉武惠市君) 勿論この法律は議会に提案をしておりまするので、衆参両院で十分御審議を願いたいと思うのでありますが、政府といたしましては、予算ももうきまつておることでございますので、施行の不能な問題はどうも受入れるわけに参りませんけれども、その点は一つ十分御検討を願いたいと思います。
  109. 山下義信

    ○山下義信君 軍人遺家族中殊に問題になりますのは、生活困難を極めておりまする遺家族に対する対策でありますが、これは予算を見まするというと、政府は生活保護法との併給はいたさないということの建前になつておりまするが、今回の暫定措置によります支給額のごときは誠に焼石に水でありまして、かかる被保護世帶の遺族に対しましてはその十分を盡し得ないと考えるのでありますが、現に生活保護法を受けておりまするそういう非常な気の毒な困窮家庭の遺族に対しましては、政府はどういう対策をおとりになるお考えでありますか。
  110. 吉武恵市

    国務大臣(吉武惠市君) 御尤もな御質問で、ございまして、現在遺家族の中には生活保護法の適用を受けられたるかたも相当ございます。而も今度の遺家族援護は御承知のように十分とは言えないので、ございまして、その点は非常に私どももお気の毒だと思うのでありますが、併し御承知のように生活保護法の建前というものは、やはり最低生活の保障をするという建前で出ておりまして、従つて他に収入がありますれば、その収入が何であろうとそれぞれ差引く建前で出ておるわけであります。従いまして表向きの議論になりますと、生活保護法という建前があります以上は、他の収入を差引くということになるのでありますが、併し今御質問の御趣旨のように、私どもも、現在生活保護法の支給を受けている人が、他に遺族の援護で支給を受けた場合、それをまるく差引かれるということでは、何のために援護をするかということにもなりますので、その点私は運用の上において十分考えまして、差引くにいたしましてもその点を考慮して運用をいたしたいと思つておるわけであります。
  111. 山下義信

    ○山下義信君 生活保護法の適用に手心を加えて善処をするお心持ちはよくわかりますが、私伺つておきたいと思いますのは、生活保護法は言うまでもなく国と地方とが費用の分担区分をいたしておるのでありまして、その生活保護法の適用におきましては、末端におきましては市町村、地方公共団体がやつておるので、政府が如何に手心を加えろと言いましても、政府の思うようにはならないのでありますが、これに関しましてどういう措置をおとりになりまするか、その点を明確に御答弁頂きたいと思います。
  112. 吉武恵市

    国務大臣(吉武惠市君) 私は今申上げましたように施行の上におきましてやはり考慮をせざるを得ないと思うのでありますが、その考慮をする場合に地方でまちまちになつているということになりましては、これは不公正になりますので、その点は自治体とも十分御相談を申上げまして、納得の上で一つ考慮の方法を講じたい、かように存じております。
  113. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 山下委員の御要求の大臣は、文部一建設を除いて全部見えております。
  114. 山下義信

    ○山下義信君 傷痍軍人に対しまする対策として今回の傷害年金の方法をおとりになつたのでありますが、これに対しましても私ども非常に不満を持つておるのでありまするが、今回の傷害年金の支給は、従来傷痍軍人が受けております現在の恩給法で認められているところの、現在受けておる増加恩給、並びにそれらの家族に対する家族加給が支給されておるこれと、今回の傷害年金とは併給されるものであると了解いたしておりまするが、政府のお考えは如何でありましよう。
  115. 吉武恵市

    国務大臣(吉武惠市君) 御承知のように傷痍軍人につきましては、現在軍人恩給の停止のうち特典、一部増加恩給だけは解除されまして特別の支給基準が設けられて過去やつて来たわけであります。併しその額は決して十分とは考えられませんので、このたびのこの遺族援護と同様の傷痍軍人の援護を併せ考えまして、元の六十八号よりも相当増額をして予算措置を講じ、又法律措置を講じて提案しておるわけであります。御承知のように特別項症におきましては年金として六万六千円の支給をすることにいたしまして、元の六八に比べますれば相当増額になつておるわけであります。そこで増加恩給と今度の傷痍者に対する援護と両方を併給するかどうかという点でございますが、これは元の軍人恩給による傷痍者に対する六八の支給が非常に低いので、このたび傷痍者に対する援護として相当の増額の処置をとつて立法措置をいたしましたから、従つて併給というわけには行かないと思うのであります。併しながら現在軍人恩給がこの傷痍者に対してだけは一部除外をして施行を折角されておるのでありますから、これをやめるということは私どもも本意とするところでございませんので法律として残します。法律として残しますが、事実は六八による軍人恩給よりも今度の援護法のほうが相当多額でございまするから、高いほうを支給するつもりでございます。従つて法律としては併存いたしますが、支給としては高いほうが支給されるというふうに御了承願います。
  116. 山下義信

    ○山下義信君 今回の遺族年金の支給対象でありまする妻につきまして伺いますが、この立場につきまして地方におきましては非常な混乱が生じておつて、例えば夫がなくなつたのでありまするから、残つた妻を実家に返して離籍いたしておりまするような人につきましては、再び戸籍に戻らなければ受給者になれないといつたようなことでありまするとか、さまざまな事態が発生しているようでございますから、ここで政府の言明を得たいと思うのでありますが、妻は戸籍から離籍いたしておりましても今回の受給者の対象になりまするか、且つ又再婚した妻は一切これを受給資格はないものといたしますか、一旦再婚いたしましても、離婚いたしまして現に独身であればこれを受給対象と認めますか、それらの点につきまして政府の言明を得たいと思うのであります。私どもはこの戰死者の妻が終戰後の生活困難な状況下におきまして、誠に気の毒な立場にありましたために心ならずして離籍せられたものが、心ならずして再婚をいたした人たち相当あろうかと思うのであります。そういう人たちの気の毒な立場を考えますると、現に他人の妻になつておりまするものでもドイツあたりは一部認めているのでありますが、それは別といたしまして、途中一旦何かの事情で再婚のような形をとらざるを得なかつたものといたしましても、現に独身である以上は、立派な戰死者の妻といたしまして処遇すべきでないかと考えますが、政府はそういう点に温い心遣いをする考えがありますかどうか、この受給資格の妻の立場につきまして政府の見解を承わりたいと思います。
  117. 吉武恵市

    国務大臣(吉武惠市君) 未亡人の問題でございますが、今御指摘になりました離籍になりましたものにつきましては、これはく、度の擁護といたしましてはやはり配偶者として受給の資格を與えるべきだと考えております。併し再婚につきましては再婚して又後に仮に別れましてもこれは旧軍人恩給でも受給資格がございませんので、これは今回取上げられなかつたわけでございます。ただ旧軍人恩給と違います点は、結婚をしたのは正式に結婚して入籍をしないと配偶者としての資格がないのでありまするが、これは他の法令等におきましても、いわゆる事実婚、実際の結婚をし、そうして実際に結婚生活をしてたまたま籍に入らなかつたというがために若し受給の資格がないということは気の毒でございまするから、この事実婚につきましてはこれを認めることにいたしたのでございます。
  118. 山下義信

    ○山下義信君 今回の対象の中で、沖繩の出身の戰死者或いは樺太の出身の戰死者など現在日本領土外の形になつております地域の戰死者はどう処遇をいたしますか。且つ又朝鮮人であつた戰死者、それらはどういう取扱にいたしますか。この点を承わりたいと思います。
  119. 吉武恵市

    国務大臣(吉武惠市君) 沖繩のかたがたの遺族に対しましては、これはやはり内地におられまする日本人と同じに……お気の毒だとは存じますが、御承知のように沖繩はまだ日本の法律が適用できませんので、今回のこの援護法も遺憾ながら適用がないわけであります。併し沖縄人でありましても現在内地に住んでおられて日本の法律の適用を受けられる遺族につきましては、勿論この法律は適用をされるのであります。朝鮮人につきましては、これも同様日本人としての法律の適用はございませんから、遺憾ながら、適用ができないのであります。
  120. 山下義信

    ○山下義信君 沖繩の戰死者につきましては、ちよつと納得し難いのでありますが、沖繩人は現に日本の国籍がありまして、日本の主権というものは嚴として存在している。ただ主権の行使ができないだけでありまして、十分私どもはこれは法律的に見ましても対象の資格があるのである。ただそれに対しましていろいろ行政措置と言いますか、そういう点の考え方はいろいろあろうと思いますが、立派な対象の範囲内に入るべきものであると考えますが、その点は如何で、ございましようか。且つ又、厚生大臣その点が御不明でございますれば、岡崎国務相の御見解を承わりたいと思います。
  121. 吉武恵市

    国務大臣(吉武惠市君) 先ほど申しましたように、事情としては誠にお気の毒ではございますけれども、現在沖繩につきましては基本的な主権がございましても、一般的のいわゆる法律というものの適用は、ございませんので、遺憾ながら適用はできないというわけでございます。
  122. 山下義信

    ○山下義信君 今回の予算に計上せられました、差引きいたしまして二百三十一億でございますか、他の費用を合せましての二百五十七億の現金の使用、その中のいろいろ福祉関係の諸費用を除きまして、現金の支給をいたしますそれらの対象の積算の基本数字はどういう数字になつておりますか。戰沒者の数、妻の数、子供の数、そういうものにつきまして政府の計算基礎になりました対象者の数を承わりたいと思います。
  123. 田辺繁雄

    政府委員(田辺繁雄君) お答え申上げます。今回の援護法の対象になりまする戰死者遺族の数を計算する基礎となりました戰死者の数は太平洋戰争におきまして百八十五万今ございます。太平洋戰争以前のものを集計いたしますと二百十四万八千人になるのでございます。
  124. 山下義信

    ○山下義信君 私は、政府のこの調査の数字はどういうふうに得られた数字であるか、その点を承わりたいと思います。
  125. 田辺繁雄

    政府委員(田辺繁雄君) お答えいたします。これは昨年の夏頃から各府県で持つておりまする過去の戰死者、戰傷病者の記録がございますので、これを整備いたしますと同時に、各府県で持つておりませんものにつきましては、市町村或いは遺族等から申出のありましたものを集計いたしまして、逐次整備をして今日に至つた数字を集計したものでございます。
  126. 山下義信

    ○山下義信君 昨年の補正予算で遺族の実態調査に一億円を計上いたしました。その調査はまだ完了いたしませんか、或いはその中の一部についてはすでに本省に報告がありましたのでありますか、まだ全然ございませんか。その点如何ですか。
  127. 田辺繁雄

    政府委員(田辺繁雄君) お答えいたします。昨年の一億円によりまする調査は大体において集計ができております、一部まだ集計の完成しないものもございますが、これは今日急いでおりまして、いずれ近い機会に皆様にお目にかけることができると存じております。
  128. 山下義信

    ○山下義信君 私は、その集計の……昨年一億の予算を計上して今回調査するといつたその調査の一部が政府に到達しているということでありますが、その結果を見ると、従来の調査によるところの対象の数と、大体においてどんなですか。
  129. 田辺繁雄

    政府委員(田辺繁雄君) お答えいたします。昨年の夏、戰死者の遺族につきまして調査をいたしました際の基礎になりました戰死者の数は百九十万くらいでございます。その後各県におきまして戰死者の数の整備をいたしました結果、それが増加いたしまして、今日約二百十四万八千人に相成つております。
  130. 山下義信

    ○山下義信君 増加しておるということは、従来の調査から洩れておつたのかどうか、その辺がまだ十分ではありませんが、私はこれは又別の機会に検討さして頂きますが、政府が今回戰死者その他の妻、子、家族等の計算の基礎にいたしておりまする数字はこれは全く杜撰極まるものであると私は思うのです。でありまして実際の数字は、政府が今回の予算に計上いたしておりましたそれらの数字とは遥かに相違するものがあると思う。今政府委員は従来の調査以上に増加しておると言いましたが、これはどういう戰死者がその中に新たに加わつておるかわかりませんが、実際に非常に数字が私は不正確であると思うのであります。見ようによりましては意外にこの遺家族等の数が少いのではないかということも考えられるのでありまするが、これは他日まあ検討さして頂くつもりでおります。従いまして、政府の今回の遺家族対策の援護費の計上の対象人員の基礎数字は極めて杜撰な、極めて不正確なものであるということだけをこの際ここで私は申上げて置くにとどめようと思います。  次に厚生大臣についでに私伺いますが、先般来問題になつておりまする特殊飲食街、いわゆる赤線区域の問題でありますが、この特殊飲食街の対策即ち特殊婦人等の対策、これは一体政府は何省が、どこが主管されましてこの特殊婦人の問題、特飲街の問題、そういうような問題を処置なされておるのでありますかどうか、取りあえず厚生大臣に伺いますが、それらの政府の対策があるのかどうか、厚生次官は衆議院の行政監察委員会に出まして、赤線区域の存在は止むを得ないからこれは公認する方針であると言つておるようでありますが、果して政府はいわゆる特殊飲食街というものを公認するという政策を持つておるのであるかどうかという点を承わりたいと思う。
  131. 吉武恵市

    国務大臣(吉武惠市君) いわゆる赤線区域の問題でございまするが、これは衛生上の問題といたしましては、私のほうの厚生省の所管に属するものであります。而してこれを置いておくか、やめるかという問題でございますが、御承知のようにこれを散在いたしますると衛生上から申しましても、風紀上から申しましてもいろいろの弊害を生ずると思うのであります。従いましてその点を考慮すると、或いはむしろそういうふうな特殊な地域に限つておるほうが却つてよくはないかという点もございまして、目下のところは公認ということはいたしておりませんが、黙認の状態にある次第であります。
  132. 山下義信

    ○山下義信君 政府方針といたしまして今後もこれを認めると、今後ほうぼうに特飲街ができましても、大体におきましてはこれを認めるという方針でありますかどうか、今後のお考えを聞きたいと思います。
  133. 吉武恵市

    国務大臣(吉武惠市君) 先ほど申しましたようにこれを散在させますと却つて弊害の点も多うございまするので、その点がはつきりと弊害の見込が立ちませんというと、これを禁止するということに行かないのじやないかというふうで、目下のところは黙認の状態におるわけであります。
  134. 山下義信

    ○山下義信君 政府はこういう重大なる、あらゆる面から見ましても、風紀の上から見ても、人身売買の上から見ましても、衛生上の見地からいたしましても、文教の見地からいたしましても重大なるこれらの問題に対しまして、十分政治的に考えるという意思のないことを暴露いたし、誠に遺憾に堪えません。ただ單に現状をいい加減に、うやむやに済ましておくという態度は私どもは納得しがたいのでありまして、速かにこれらの問題に対しまして、殊に独立の日本と相成りまする今日といたしましては、独自の見解に立つた十分なる私は施策を要望してやまないものであります。  次に伺いたいと思いますのは国立病院の地方委譲の問題でございますが、この国立病院の地方委譲はどういう手続でやるというお考えでありますか、これは單に国有財産の処分という形でやろうというのでありますか、或いは何らかの立法方法によつてやろうとする考えでありますか、政府の国立病院地方委譲の実現の方法を伺いたいと思うのであります。
  135. 吉武恵市

    国務大臣(吉武惠市君) 国立病院につきましては御承知のように現在九十九ございまして、これを全部国が管理するということよりも若干国が管理する、そうしてそのうち六十余りを地方の公共団体に管理させるほうがよくはないかということで目下進めておりますが、併しこれは法律で以て強制をして移管をするという考えは、ございません。ただ国有財産を移管する場合には、話合いで、ございましても国有財産の処分になりまするから、その国有財産処分の面につきましては立法措置が要るかと思いますが、これを移管することについて国で強制するという措置は取らないつもりでおります。
  136. 山下義信

    ○山下義信君 私ども、單なる国有財産の処分という立法措置という政府の今の答弁に対しては不満足であります。申すまでもなく我が国医療会計の上から重大な問題であります。而も国立病院という特殊の目的性格というものを無視いたしまして、そうして地方委譲しようとする。大きな国民の保健上の問題でありまして、これを単なる財産の一部処分と同じ形で片付けることにつきましては私ども不賛成でありますので、その点は申上げておきます。なお国立病院の委讓に関しまする政府予算を見ますると、その歳入におきましては前年度より非常に増加いたしている。これはただ単に一点單価とか入院料の値上によるものではなくして、一カ年分の計算がしてある。而一も歳入は一カ年を見積つて、歳出は九カ月分、地方委譲が途中からされるという建前で編成されているように考えますが、その点は如何でありますか。
  137. 吉武恵市

    国務大臣(吉武惠市君) 大体委譲の方法は強制でなくして話合いの上で行くつもりでございまして、まあ一年の間に話をつけようということで九カ月分の予算を組んでおります次第であります。併しながらこれは先ほど申しましたように、九カ月で全部強制をしてやるということでは、ございませんで、一応の目途にしているわけであります。而ういたしまして、委譲する方法といたしましては、一応時価の三割ぐらいで委譲するつもりでございまするが、その債権につきましてはそのまま委譲をいたしましたところに譲り渡すというふうな考えでございます。
  138. 山下義信

    ○山下義信君 次は一般の母子の福祉について伺いたいのでありますが、今回の遺族対策で或る程度……いわゆる従来やかましく言われておりました未亡人福祉の一部はこれを満たし得るかとも考えるのでありますが、なお戰争未亡人以外の一般の未亡人が福祉の積極的施策を待望いたしておりますることは言うまでもないことでありますが、それらにつきまして関係者並びに国会に母子福祉の特別の立法を必要とするのではないかと非常に熱心に要望いたしているわけでありますが、政府は何か有子未亡人のために特別の母子福祉に対して対策を考えられる用意がありますかどうか。殊に、望んでおりまするのは、各地方で以て……言うまでもなく政府が従来の御努力によつて閣議決定のこの線に沿つて或る程度の努力はされておりますが、殊にそのうちにおきまして生業資金の貸與等は、我々といたしましてもこれを多といたしておりますが、併し非常にそれらは微温的で且つ区々でありますので、ここに中央に政府の御盡力によりまして母子金庫というがごときものが設立されますならば、全国幾百万の有子未亡人は非常に喜ぶことであると考えられるのでありますが、それらに対しまする何か積極的なお考えがありますかどうかという点を承わつておきたいと思います。
  139. 吉武恵市

    国務大臣(吉武惠市君) 未亡人につきましては、お話のごとく私どもも気の毒でございまするので、できるだけこれに対する対策は講じたいと思つておりまするが、財政の事情も、ございまして十分に行かないことを甚だ遺憾に存じているわけでありますが、これに対する特別立法という声もございますけれども、今直ちに立法をするというわけには行きませんが、将来におきましては十分この母子保護につきましては考慮をいたして行きたいと考えております。
  140. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 先ほど山下さんの質問のうちに、国立病院の地方委譲について、一応歳出としては九カ月予算を組んでありますが、この地方委譲については、強制的でないと言われておりますけれども、若しですね。若し地方委譲できなかつた場合、各地方で輿論は殆んど反対しておりますし、府県財政困難のために、公的医療機関の使命は到底果し得ない。むしろ国立として積極的に育成されたいというので、各地方では非常に反対しております。若しそれが委譲できなかつた場合は、補正予算を組まれるかどうか。この点が一つと、それから赤字が出た場合、今の公的医療機関である以上は赤字が出るのは当然でありますが、赤字が出た場合に二十七年度予算は独立採算である以上、いや独立採算以上になつていると思うのです。そこで赤字が出た場合、一般会計から繰入れをやるかどうか。この二点についてお伺いをして置きたいと思います。
  141. 吉武恵市

    国務大臣(吉武惠市君) 先ほど申しました、ごとく、大体九カ月の予算でございますが、お話のごとく、この委譲の問題については、地方にいろいろ意見がございます。私ども見ておりますところによりますと、現在反対をしておる主な病院は、中にいる職員の間に反対の気運が出まして、これがいろいろな方面に働きかけているという点も相当あるように思います。勿論そればかりでなしに、地方の事情によつて困るということも勿論あると思います。そこで地方病院あたりから来られまするかたがたとだんだん協議しおります。実は地方の府県でも新らしい病院を作りたい、その資金の斡旋をしてくれないかという要望も他に相当あるわけです。そこで若し新らしい金をかけて病院を作られるようならば、現在ある国立病院を時価の三割で土地建物を差上げる。而も医療器具におきましては、時価の半額で差上げる。このほうならば地方財政から言つても新らしく作るよりはよくはないか。もう少し愼重にお考えなつたらどうか。今速急におきめになる必要はないので、一年間あるのだからその間に一つゆつくり御相談をいたしましようと言つて話しているわけであります。そうしますと、成るほどそういう事情を知らなかつたのだが、それではもう一遍帰つて一つ相談をしてみようというような面もぼつぼつ出てきているようなわけでございます。私は決して今回の処置は無理な処置だとは思つておりませんので、だんだん話合いをつけて行けば大体九カ月分の予算で行けるのじやないか、かように思います。併しこれは将来の問題で、ございまして、若し事実できないということになれば、お話のごとく補正予算という問題が起つて来るかも知れないと思います。
  142. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 第二の問題、赤字の場合です。
  143. 吉武恵市

    国務大臣(吉武惠市君) 赤字の問題は、実は先般の医療の単価の引上げによりまして、私どもは大体独立採算でいけると思つております。この問題も、事実行けないことになりますれば、勿論繰入れ問題が起つて来ると思う。かように存じますが、目下の見込みでは、独立採算で、現在の予算で行けるだろう。かように考えております。
  144. 山下義信

    ○山下義信君 大蔵大臣に伺いますが、今回の遺族援護費の交付公債が八百六十億発行されるわけでありますが、これは融通性を持たすようになつておりませんので、種々問題になつているわけでありますが、これらの公債の市価が安くたたかれますることのないようにお考え下さると思うのでありますが、それらの換金方法、この公債の値下りを防ぎまする方法、或いはブローカーに乗ぜられないようにいたしますために、大蔵大臣はどういう考慮をお拂い下さいますかということを承わりたいと思います。
  145. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お答え申上げますが、交付公債につきましては、研究の結果融通を認めないということにいたしました。併し困窮者の、一時に相当の金が欲しいというかたに対しましては、一年据置九カ年というのは、特例を設けて五年年賦という特例も考えられると思つております。
  146. 山下義信

    ○山下義信君 この公債は納税に代えることができますか、できませんか。
  147. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 納税に代えることは考えておりません。
  148. 山下義信

    ○山下義信君 明年以後の遺家族援護に要しまする経費は、大蔵大臣はどのくらいに上るというお考えでありますか。或いは私どもは、軍人恩給等が復活いたしますれば、恐らく八百億以上に上るのではないかということを考えておりますが、明年度以降の遺家族援護費の見通し並びにこれに対する大蔵大臣としてのお考えはどう考えておられますか。
  149. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 昭和二十七年度では、御承知の通り三百二十一億六千万円でございますが、昭和二十八度になりますとこれがそのままの状態で三百二、三十億になることを予想いたしております。而して別に軍人恩給の復活の問題でございますが、これは復活のしようによつてよほど変ります。今のままの状態で参りますと六、七百億ぐらい要ることになるのでありますが、別途審議会を設けまして、如何なる方法で軍人恩給を復活するかということを研究いたした結果でないとわかりません。併し軍人遺家族の三百二、三十億に加うるに今度の軍人恩給が入つて来るわけでございます。
  150. 山下義信

    ○山下義信君 ついでに大蔵大臣に伺いますが、昨日でありましたか愛知議員の質問にお答えになりまして大変英国の蔵相のとりました政策我が意を得たりと言つて池田さん大太鼓小太鼓合せ兼ね合いの大変お得意の一席を拝聴いたしたのでありますが、その中に私どもの印象といたしましては、今度の英国の大蔵大臣がとりましたいろいろな、何と申しまするか、非常時財政政策の中に新らしい税種を考えられ、即ち新税が考えられております点を非常に御共鳴になつておられたようでありますが、政府におきましては明年度何か新らしい税目の改正を思つておりますか。或いは増税等も考え計画をひそかにやつておられるのではないか。その点を伺いたいと思うのであります。
  151. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) イギリスのバトラー蔵相の今回とられた処置は、食糧輸入補給金の大幅削減でございます。一億六千万ポンドの削減をいたしました関係上物価が上りまして、一般大衆の生活に影響するというので、所得税の基礎控除の引上げをやり、又法人の収益税の引下げをやつたのであります。片一方財政の都合から申しまして、超過所得税の徴收をいたし辻棲を合せておるのであります。私は他の機会で申上げました通り、増税は絶対に暫くの間やらないという考えで進んでおりますので、増税を考えるようならば軍人恩給その他の歳出につきましても、余りシヴイアなことはいたさないのでありますが、私は増税は絶対にやらないというので、できるだけ歳出を切詰めて行く方法でやりたいと思います。
  152. 山下義信

    ○山下義信君 大橋国務相に伺いますが、警察予備隊の演習費はどのくらいあなたのほうの費用で盛つておるのでありますか。又警察予備隊が出動いたしましたときには特別手当をするのでありますかどうか。殊に行政協定によりまする出動の場合は、手当てはどういうふうにするのでありますか。又警察予備隊員の公務の死亡というような場合は、遺族扶助等につきましてはどういうことが考えられておるかという点を伺いたいと思います。
  153. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 現在におきましては、警察予備隊が所有をいたしておるという形になつておりまする演習地は一カ所もございません。それで演習を行います場合に、実際上は米軍の接収地を使用いたしまするか、或いは又地方公共団体等の管理をいたしておりまする土地につきましては、管理者の了解を得て使用をする、演習をする。こういう方法をとつておるわけでございます。併しながら予備隊の訓練の上から申しまして演習地を持つということは必要なことと考えられまするので、二十七年度におきましては必要な演習地を確保をいたしたいと、こう考えまして、その費用の一部は予算に計上いたしてある次第でございます。  それから出動の際の手当についての御質問でございまするが、現在の制度といたしましては、格別出動いたしました際におきましても特別手当を付けるというような制度はございません。併しこのことにつきましてはなお研究をいたす必要があると心得ております。  それから公務のために死亡をいたしました場合の隊員の取扱及び遺族の援護という御質問でございまするが、隊員に対しましては次のような措置をとつております。即ち労働基準法等の施行に伴う政府職員に係る給與の応急措置に関する法律、昭和二十二年法律第百六十七号でございまするが、この法律に基きまして、第一に遺族保障として、隊員の遺族に対し平均給與額の千日分に相当する給與額を支給いたします。第二にその葬祭を行うものに対しましては、その葬祭の費用といたしましては平均給與額の六十日分を支給いたすことと相成つております。第三に警察予備隊令施行令に規定いたしまする特別退職手当六万円、又は一年間の勤務者につきましては三万円と相成つておりまするが、その金額に対しまして、勤務日数の割合に応じて計算した額を給する。但し六万円を受領すべかりしものに対しましては最低三万円、三万円受けるべかりしものに対しましては最低一万五千円を下ることができない、こういうことになつております。それから第四には、官吏俸給令によりまする死亡資金、即ち俸給の四カ月分の死亡資金、こういうものを給することに相成つておるわけでございます。
  154. 山下義信

    ○山下義信君 警察予備隊員の募集方法は決定いたしましたか。新聞の伝うるところによりますと、市町村長に盡力させるというようなことが伝えられておりまするが、果して事実でございましようか。この種の募集方法は他日徴兵制度に似たような形になり、それに移行するような嫌いがあると考えられますが、警察予備隊員募集方法につきましての政府の対策を承わりたいと思います。
  155. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 昭和二十七年度中におきまして三万五千人の増員並びに欠員の補充といたしましてそのほかに約二万程度の募集を必要とすることに相成つておりますが、この募集は従前通り、志願募集によることに決定をいたしておるのでございます。但し多数の応募者もあることでありまするので、一昨年の募集に際しましては、特に国家地方警察において募集事務を全部引受けてもらうということにいたしたのでございまするが、今回は都道府県、市町村において募集事務の一部を引受けて頂く方法が適当であると考えておるのでございます。この都道府県、市町村に募集事務の一部を委託するということは、決してその都道府県なり、或いは市町村に対しまして採用すべき人員を割当てる、そうして公的機関のいろいろな措置によつて応募者を駆り出すというような意味は毫も含んでおるものではありません。飽くまでも志願募集によつて必要な人員を充足いたすつもりでございますが、何分にも多数の募集をいたすことでございますので、応募者も多数あります。これらの者に対しまして、必要なる身体検査或いは学力試験、人物考査、こうしたことをいたしまするので警察予備隊の固有の陣容を以ていたしましては、これらの必要なる事務を完全に処理する能力がないわけでございまするから、その必要な費用を国庫が負担いたしまして、そうした事務の一部であつて地方団体において引受けて頂くことが適当であると認められる仕事を、都道府県なり、市町村なりに委託をする、こういうわけでございます。もとよりこの事務の委託につきましては法律の根拠を必要といたしまするので、現在法律案を準備いたしておる次第でございます。併し如何なる意味においても、割当をする、或いは市町村長において応募者を或る程度引受けさせるというような意味を持つものではないのでございまして、徴兵制度にまがうということは絶対にないと、こう確信いたしております。
  156. 山下義信

    ○山下義信君 米国駐留軍と警察予備隊とが協力をいたすような事態の場合におきまして、我が方の警察予備隊の隊員の中に違法行為を犯しましたような場合の処罰と申しますか、その処分は、どちらの処分を受け、どちらの法令によることになるのでありますか、承わつておきたいと思います。
  157. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 米国軍と警察予備隊とが共同行動をとるということにつきましては、まだ具体的には考えておるわけではございませんが、併し将来におきまして仮にそういう必要があつたにいたしましても、予備隊の隊員は日本の法令に基き、日本政府の規律に基いて行動するものでございまするから、如何なる場合におきましても、米国の軍規に服するようなことはあり得ないことでございます。
  158. 和田博雄

    委員長和田博雄君) もうあと余り時間がありませんから……。
  159. 山下義信

    ○山下義信君 木村法務総裁に伺いますが、一体この治安状態は全体的に見て急迫な状態にあり、或いは急迫の情勢が近いというふうに考えておりますが極めて平穏な状態にあると考えておりますか、総裁の御見解を承わりたいと思います。
  160. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 極めて平穏な状態とは申しかねるのであります。各所にいろいろな事件が頻発いたしております。殊に最近におきましては税務署の事務所なんかを各所において多数襲撃しておるというような実例がありまして、必ずしも平穏とは申上げかねるのであります。
  161. 山下義信

    ○山下義信君 いま一つ、行政協定に基きまして、日米協力をいたしまして或る種の行動に出なければならんような状態は当分予想できないと考えておりまするか、その点は如何でございましようか。
  162. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 只今の御質問は、恐らく外国からの不法な侵入というようなことを予想された御質問と考えます。その点については我々はさようなことは今考えておりません。
  163. 山下義信

    ○山下義信君 保安関係の機構は政府の対策はきまりましたか、どういう方針でおいでになりますか。
  164. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私は主として内地の治安の問題について考えておるのでありまするが、治安の問題については、しばしば、申上げました通り、国警、自警その他法務府特審局におきまして緊密な連絡をとつてこれに対処しておるのであります。
  165. 和田博雄

    委員長和田博雄君) もう時間がありませんから最後に一つ……。
  166. 山下義信

    ○山下義信君 これだけで終ります。あと岡崎国務相にもありましたが、これは省略いたします。時間が、ございませんから……。  最後に木村法務総裁に伺いたいと思うのでありますが、軍備と憲法改正との関係は当委員会その他におきましても十分論議せられたのでありますが、一体政府の見解といたしますると、憲法改正には如何なる手続を要するということに相成りまするか、その御見解を承わりたいのであります。というのは、軍備を持つということは、何か国会の意思できまりました後に憲法の改正という手続に出るのでありますか。軍備関係と憲法改正との関係に関するこの国会との関係はどういう手続、段階を踏む必要があると考えられておりますか。この機会に承わつておきたいと思うのであります。
  167. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 申すまでもなく、憲法の改正につきましては一憲法第九十六條の規定があるのでありますから、国会の意思に基いてやるべきだろうと思います。
  168. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 私がお尋ねしたいことは、実はこの委員会でたびたび他の委員から質問があつたのでありますが、併しどうも判明しないのであります。  先ず私は安本長官と大蔵大臣にお聞きいたしたいと思います。本年度予算は、我々にお示しになつ国民所得……その後では五兆三百六十億だと思いますが、この前予算の説明では五兆二百七十億というものを一つ基準にされてそうしてこれに対する財政規模が昨年度と大体同じである。こういうふうな御推定なんでありますが、一体国民所得が、安本の計算によりますと、昨年に対しましてたしか八%の増というふうに考量されておるのでありますが、従来普通の場合におけるところの国民所得は大体三%乃至四%というのが普通の考え方でありますが、本年度八%の国民所得の増をお見込になつた基礎はどういうふうなお考えでございましようか。
  169. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 一つは二十五年から六年にかけての国民所得の増を見積りましたが、その後の実績によつて二十六年度国民所得も当初の予定よりも上つておりました。これが一つの今度の推定の基礎であります。  それからもう一つは、二十七年度における生産の上昇率というものを非常に控え目に見まして、鉱工業生産指数というものを九%、それから農業生産は三%、それから物価指数は大体大きく見まして二%だ、それから賃金については全産業別の賃金について一割方増、それから雇用の増を大体一%くらいに見まして、従来の二十五年から二十六年への増加趨勢、それから今度二十七年度の生産指数、物価指数というもの、これを合せて只今の五兆三百億というものができておるのであります。
  170. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 大体そのお見通しのは安本から頂戴しているのですが、私はそれに疑問を持つものであります。と申しますのは、二十五年から二十六年にかけて国民所得が一二九・九という指数を示している。そういう点からいいますと、成るほど二十七年度国民所得推計は内輪に見積つてある、こういうことが言い得るのでありますが、そのときの二十五年と二十六年の物価は安本自身が私どもにお出しになりました、例えば東京卸売物価指数でいいますと、二十五年を一〇〇にいたしまして一四一になつている。米価は一〇〇に対して一二〇・七になつているのです。そういう物価の関係から急激に殖えたのであつて、名目的な国民所得が殖えたのであつて、実際の国民所得というものはそう殖えていない。これを物価の関係を考慮いたしますと、実質的な国民所得は依然として四%程度だということが言い得るのです。今年物価を横這い乃至今おつしやつた二%程度の増と見ましても、国民所得八%の増は多過ぎる。これは当然の考え方でないか。従つて国民所得は過大に評価されている、過大な見積りの基礎に立つて考えられているということが言えないかと思うのであります。
  171. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 御意見は御尤もでありますが、只今私どもが申しましたのは、故に、物価というふうな関係が急激に上つてつた、二十五、二十六の関係にあらずして、今度はむしろ生産についていろいろの見方がありましたが、非常に内輪に九%程度の増、農業関係におきましても三%の増くらいに内輪に見つつ、実質的に生産の増を見つつ……、それから物価につきましては今の二%くらいの卸売関係の増を見て、それから割出した国民総所得の関係の中から或いは今の徴税関係、税金関係の政府に引上げる部分、或いは産業的に殖える部分、増加される分というものを差引いた残りの、消費に当てらるべきものを見て、それの増を見ているのであります。従つて今の消費国民所得の増の関係につきましては、大体私はそう大きな水増しでなくて、内輪な見積りであるという工合に考えております。
  172. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 国民所得の見積が過大であるかないかという問題には、恐らく今お話なつたように苦しい御答弁をなさるだろう、こう思つておりました。そのほかに本年度予算で大体物価が横這いで、そうして二%くらいの増加だ、こういうふうにお考えになつているようでありますが、今朝ほどの片柳委員の御質問でもわかりますように、米価はすでに予算の基礎になる二五五を上廻つております。これはあなたもお認めになつて、この先の問題として残されている問題でありますが、そういう点から言いましても、物価の基礎に或る程度の狂いが来ている。而も電力料金の値上問題等が今後ある。過般この委員会で電気料金の問題が聞かれたのでありますが、まだ申請のないことであるからよくわからない、こういうふうなお話であつた。ところが安本の本年の生産計画をおやりになつた際に、それに対する電力の割当につきましては、大口消費者に対しましてはすでに割当てられておる。昨年より傾斜生産的な考え方を多く入れまして、大口消費者割当は昨年度よりよほど大きくされておる。その際にそれが又一つ一般需要者の電力料金の問題にも影響して来ておる。そういうことも考慮に入れつつ電力の消費使用に対する割当もなすつたはずであります。そうなると、大体あなたのほうとしては、どういう場合でも大体物極はこの程度より上らない政策を約束して行かれるような物価政策というものがなくてはならない。ところがその物価政策をお聞きすると、大抵需給の調節を図ると、こうおつしやるのですが、その需給の調節をどういうふうにしてお図りになるか、そうして物価政策をどういうふうにしてやつて行かれるかという問題が私は根本だと思うのでありますが、その問題について物価の見通しというものについて、無論最近はやや横這い、ものによりましては大幅な下落状況も来たしておるのでありますが、物価についてこの予算の基礎になる程度に今後の起つて参ります米価問題、電力料金、肥料その他の諸般の問題についてどうなされますか。この物価問題は、つまり常に国民生活の維持向上を主にするとおつしやるのですが、実はその点は朝鮮の動乱以来違つた形が出ておる。つまり生産規模が拡大し、輸出輸入は増大したにもかかわらず国民生活は維持向上していない。そういう、否幾分でも、二十五年度と二十六年度の分を御比較になつても幾分下り気味であるというふうな点から、何らかの的確な物価政策というものをお示しにならないと、私は国民生活の維持ということはむずかしいのじやないか、こう思うのでありますが、どういう御方針をお持ちでありましようか。
  173. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) お答えしますが、物価の問題についての一つの米価の問題についての午前中の片柳君の質問に対する答弁についてお答えいたしましたように、成るほど今二百五十ちよつと越えております。併し今後の状態はどうかというお尋ねでありますから、そう上ることも今のところ考えられない。横這いで行くだろうと申上げたのは、実は御承知の通り、この前の米価を決定し、予算決定する際に、むしろ当時二百五十ということは固くとつて考えておりましたが、実際のところ二百四十幾つでしたか、下つてつて、結局予算の編成のときにああいうことになつたのであります。今後におきましても、今日の状態から言いますと、パリティの関係は二百五十を越えておりますが、併し今後の推移というものについては、必ずしも今日からそれだけの値上りというものをすべてのものに考えて行くということを決定するにはまだ少し早過ぎるのじやないかと、こういう建前をとつております。それから今のお話の今後どうするか、横這いか、或いはそれ以下に下るということが一番必要であるということは、私は堀木さんの御意見と同様であります。その意見には賛成でありますが、これについてはいつも言うじやないかとおつしやいますが、やはり基本は必需物資の生産増加にあると思うのであります。なかんずく政府のずつと去年以来とつておりますところは、いろいろとすべての生産品についてすべてを増産し、すべての価格を下げるということは一番理想でありますが、これは今の現状としては困難な事情でありますが、その中で何を一審目当にするかと言えば、必需物資の中の食糧品或いは衣料品というものが中心になつて行くと思うのであります。従つて政府といたしましては、この両面につきましては、主食その他副食物等についての量の増加、而うしてこれに対する価格については、特に不足するというか、国内生産だけでは不足する小麦その他の食糧については輸入補給金を以てこれを補つて行く、こういう方法をとつておりまして、量的並びに価格の面を維持しておるということは御承知の通りであります。これは今後におきましても同様に続けて行かなければならん政策であろうと思います。同時に衣料原料である繊維製品につきましては、これは堀木さんも御存じの通り、今日は大変に余り入り過ぎて、生産が上つて輸出が停滞しておりますので、紡績界その他繊維業界が困つている状況にあるぐらいに分量においてはしつかり確保されておる。むしろこれは入れられたものは相当外に出なければ困る状態にあります。少くとも国民経済を遂行する上においての国民生活必需物資の繊維製品については確保があるということは私は大きな力であると思う。従つてこういう面からいたしまして例えば繊維製品について、この間もお答えしたように、今日は戦争終結後三倍近くの国民一人当り七ポンドも供給し得るという状態になつておることは、これは一つはつきりと御承知願いたい。従つて私のほうはそういう面からいたしましても、数量並びに価格を調整して行く。これが一つの行き方であり、同時にそれ以外の国民生活必需物資並びにそういうものを獲得するに必要な商品、これらについても同様に分量を多くしつつ、合理化することによつてコストを引下げつつ外国に出して必要なものを買つて来る。こういう形に出て行くのが一つの行き方でありまして、もう一つの点は、やはり金融面の操作、又更に第三といたしましては、稀少物資についての合理的需要を図るために消費規制をする。こういうことは徒らに妙な方面需要を喚起することによつて価格が上ることを抑えるために、例えば建築制限等について勧告いたしておる、効果が上つておる。こういうことを狙つておるのであります。
  174. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 おやりになつたことだけなら経済の全体でないので、そうして不幸にして効果が挙らなかつたということは言えるのですが、今も電力料金の値上問題はわざと御答弁をお避けになつた、悪意に解釈すればそうだと思う。次の問題と併せてその問題に触れて頂けばよいと思う。時間がございませんから、端的にお聞きしますから……。もう今までほかの委員お答えなつたことは大抵私も記憶いたしておるのであります。一昨日でございますか、日本経済新聞に「貿易政策に新段階」という見出しで、輸出の頭打ちの傾向というものが安本で作業されておるようであります。これは今朝ほども岡田委員からお尋ねになつたのですが、この問題は余り詳しく聞くと、又時間をとりますから、申上げませんが、ともかくも我々にお示しになつた国際収支の関係というものはよほど狂いが来る。それから生産面におきましても、今この予算国民所得の推計の基礎としてお出しになつたよりはよほど変つて参ります。極く一例を挙げましても、輸出の規模をよほど落した姿において今後対処して行かなければならないというふうな事情になつてつておるようであります。こういうふうに先ほどお話になりました物価問題にしても、最近の輸出輸入状況にしましても、それに伴う生産の状況にしましても、すべて予算にお考えなつたよりは規模は縮小して参らなければならない。それは結局において国民所得の推計において縮小したものが出て来なければならない、こういうふうに私は考えられる。これは最初の見積むそのものが大きい、そうして今後の経済の見通しから見ますると、更にそれがより多く見積つたことになる、こういうふうに私は結論に行かざるを得ないと思うのでありますが、その点についてどうお考えになりますか。
  175. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) お答えしますが、安本等において絶えずあらゆる情勢を判断し、総合的にものを見て調査いたしておることは事実でありますが、最近おきましても、いろいろな情勢の変化に伴つて生産が如何にあるかということについての検討がされていることは事実であります。併しまだ一二十七年度には、まあもうすぐですが少し間がありますので、今研究しているものは直ちにすくに変更ということにならんかと思いますが、併し若しいろいろな諸情勢が変更して初めの計画と違つて来るということになれば、これは当然に計画は変つて行く、又それから起つて来る生産指数も変つて行く、これは御指摘の通りであります。これは否定いたしません。併し今日まだすぐに全部の計画を変更しなければならんということに断定をいたすことはない、かように考える次第であります。
  176. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 実はまあ非常に今の経済情勢そのものですぐ一年を判断することは非常に軽卒であるという考え方もできるのでありますが、と同時に最近の輸出が伸び悩みにあるということにはただにここで引かれましたイギリスとかフランスだけでなしに、東南アジア関係すべて、例えば濠州もニュージーランドもインドネシアもタイもパキスタンもまあ見てみますると、皆輸入制限をしようというふうな情勢であつて、而もその割合が非常に大幅なものであります。これは必ずしも私はそう簡単に考えるわけに行かないと思うのであります。  そこで実は今度は逆に大蔵大臣にお聞きいたすのでありますが、今申上げましたように、国民所得の点から見ても基礎的な計算が相当過大である。而も今後更にそういう面から言いますと、国民の経済をいよいよ財政規模が圧迫する傾向と申しますか、つまり負担が多くなる経済的な傾向がある。でこういうときには大体大蔵大臣の従来のお説だと、国民生活の維持向上ということが第一であるというふうにお考えになりますると、つまり増税はしないということになりますと経費の削限をどこかに求めなければならない。こういうことになると思うのでありますが、そういう際には必ずや経費の削減という方法で以て大体現状よりは国民生活に対して圧迫をしない、こういうふうなお考えで、ございましようか。この点だけ大蔵大臣からお聞きいたしたいと思うのであります。
  177. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 結論はお話通りでございます。先般来安本長官への御質問のうちで国民所得の問題もありましたが、御承知の通り国民所得は、昭和二十五年に対しまして二十六年は物価高と生産の増とにより約三割ばかりふえているのであります。三割ばかりであります。昭和二十五年度は三兆三千億近くだつたと思います。昭和二十六年度は四兆六千四百億、こうなりますと三割ばかりふえている。これはまあ特需関係いろいろな点がありましてその三割とまでは行きませんが大体私は安本長官の言われた八%ぐらいふえるのじやないかと思います。それから輸出入関係につきましても、昨年の今頃の国会等におきまして堀木委員といろいろな話をいたしましたが、あなたの見通し、あの時の議論と私の議論とを今ふり返つてみるとどちらが近いか、私はあの頃の答弁に対して私の見通しが当つているのじやないか。そう私は心配は要らんと言いましたが、昨年度より相当よくなつております。  それからこの今年度に入りまして輸出は伸びたが輸入は伸びない。又輸出に対してはポンド地域等に或る程度の制約を加えなければならんということ、にのみ考えられまして日本国民所得がふえないという前提で予算のことをお聞きになつておりまするが、私は見通しといたしまして、八%程度国民所得はふえるだろう、それから輸出も今予算で見ておりまする程度のこの輸出が貿易として出るか特需として出るかは、これはやりくりはありますが、私は相当程度の外貨の獲得、二十四億ドル程度の輸出はあるということを期待いたしております。而して輸入につきましては極力増進を図るつもりでありますので、国民所得並びに輸出入に非常に影響を及ぼしているということは……、大した影響は及ぼさないというふうに思つております。
  178. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 二十五年度と二十六年度国民所得のふえました理由は、実は大蔵大臣から承わらなくても知つておるのでありますが、つまりそこでいつも手品は物価になつてつておるのであります。見通しも経済の問題ですから、生産物価その他の点を考えなければならんので、一つだけ考えては議論にならないと思うのですが、そこで大蔵大臣となぜ見込が違つているか、私に言わせればあわててお買いになつたから非常に生産コストを上げた、世界が上つたときにお買いになつたためではないかと思いますが、そういうことは時間をとることになりますからやめます。でともかくこういう基礎に立つて財政ができているのですが、先ほど大蔵大臣はともかくも経費の削減が第一であつて、それは国民生活の維持向上を何よりも主とする、こういうお話なつたのですが、そこで問題になつて参りますのは、つまり防衛支出金六百五十億円、これは條約上で切れない、切れるのは、警察予備隊の増加と、そうして安全保障諸費がどこまで行くかという問題になるのと、内政費の問題になつて来るのであります。そういう点から見ますると、本年度の財政の中で何といつても問題になるのは、やはり防衛関係の千八百億だと思うのです。この問題について総理大臣はどうもこれを最小限度とされたと言つた。それからどうもどの程度に最小限度ならば今後延ばして行くのかということは、漸増するのかということについては、大橋国務相は今回の予備隊の能力では十分でない、だから財政上の都合が許すならば更に増強するのだとこうおつしやる。それから木村総裁は、一体どこら辺が戦力とのつなぎになるだろうというと、近代戦争を有効に遂行する能力に至るまでは自衛力というものなんだ。これをどういうふうにして実現するかは無論御担当でないからおつしやいませんが、ともかくそういう解釈をされている。そうすると、実際我々としては支出するところがわからない。ただここでわかりますのは、大蔵大臣はともかくも、今度は総理大臣と違つて千八百億は最大限度だ、そうして防衛分担金も出支金も減らして行きたいという希望を持つている。安全保障諸費もまあ一時的な経費を相当含んでいることであるからこれを減らして行きたい、まあこういうふうにお考えになつておるようであります。で私はここで今こういう余計なことを言いますのも、申上げたいのは、こういうことこそ安本長官のお役目でなかろうか。世界中バターか大砲かと言われ、要するに軍事費とその他の国民生活との経費をどう按配して行くかという具体的な経済方策、国策というものをお立てになるのが一番大切なのじやないか。ところがどうも十三国会における経済安定本部総務長官の堂々たる御演説を見てもこの点について少しも触れるところがない。これが今の内閣として一番なさるべき事柄なんです。そうしてこの委員会ではそういう点について是非漸増計画とどう調和して行くのか。具体的な構想、例えばそれは無論将来のいろいろな事情の変化によつて違いますが、そういう問題について構想がなければ予算審議ができないのじやないか。と申上げても今以てないのであります。安本長官の御演説だけをとるのではなくて、少くとも安本長官としては、経済自立三カ年計画について責任を負つておられる。これにも少しもその防衛費関係との問題の調和については書いてない。そうすると国務中一番重大なることが拔けた予算を我々に審議させられるということに相成ると思うのでありますが、未だに、従来ずつと委員会中部分的な質問に対して部分的な御説明があつたのですが、この点は是非この委員会の間にお示しになるか、今日明確なる御答弁をなさるか、どつちかだと思うのでありますが、如何でございましようか。
  179. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 堀木君が防衛漸増計画がわからなければ予算審議はできないとおつしやいますが、私は審議ができないほどのことはないと思います。そういう漸増計画が三年、五年に亘つてできれば審議をするのに非常にベターである、非常によりいいということはありましようが、それがなくては審議が不可能だということは非常なる独断だと思う。而して今の日本の置かれた状態といたしまして、昭和二十八年度国民所得がどうなる、而してそのときの生活水準をどこまで持つて行くかということは外債その他の関係もあります、いろいろなアンノーン・フアクターがありますので、二十八年度の警察予備隊と防衛分担金はどのくらいだということは責任ある政府としては私は申しにくい。又そんなことは軽々しく言うべきではない。而して昭和二十七年度予算審議につきましては、二十七年度見通しにつきましては、今までの質疑応答ではつきり申上げているのであります。個々の問題につきましては、先にお話申上げましたように防衛支出金はできるだけ減らして行こう。警察予備隊は、安全保障諸費との関係、或いはいろいろな国民の経済状況から見て二十八年度には警察予備隊としては殖えるかも知れませんが、その度合はわからない。併しいずれにいたしましても国の歳入がふえたならば先ず第一に生活水準の維持向上というところに持つて行かなければならない、こういうことを私は申上げているのであります。昔の軍備拡張計画のようなものを、自主独立を迎える日本として、今の世界情勢から申しまして、これはなかなかはつきり申上げることはできないと思います。
  180. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 できにくいということはよくわかるのです。と同時に大蔵大臣もできておるほうがベターだということはおつしやる、これは本来大蔵大臣の仕事でなくして私は安本長官の仕事だと思う。全体の、現に国民所得推計自身もそうして国民経済の基礎も、資金的に、資材的に、国民の能力それから貿易の全体から見まして考えて行くのですから、これを安本長官がなさる。尤も安本はなくなるそうだからいいのだとおつしやればこれは別ですが、やはり企画庁というものができる以上これは是非おやりにならなければならない問題じやないか。殊に外に対して責任を負つているこういう点がはつきりしなければ、幾ら総理大臣が愛国心を説かれても、こういうふうにもやもやした形で各大臣言つておられるうちはなかなか愛国心は、ただたまに議会に出て来てぶあいそうな返事の間に愛国心を説かれてもこれは無理だ。こういうふうに私は考えざるを得ないのですが、そういうことを抜きにしましてほかの点については各委員がいろいろお聞きになつておりますので、私は防衛費の中で最も一つの項目とみなされる、そうして皆さんがお問いになりましたうちで、どうもこの点だけはまだ残つておるのじやないかという点を一つお尋ねしたいと思うので奉ります。  大橋国務大臣に古い証文を虚して悪いのですから、私は余り古い証文にとらわれる必要はありません。だから時世が変りましたならこういう場合に、こういう際ですから変つたとおつしやれば一向差支えないのです。これは平和條約と安全保障條約のあの條約を批准するかしないかというときであつたのであります。あのときにやはり漸増計画について警察予備隊の人間を増すのだろうということがしきりに言われたのです。現にここに速記録を持つて参りましたが、労農党の堀君が予備隊の人員を増すのであろうというのに対して、予備隊の増員ということは全然考えておりませんと言つておられる。そうすると、実は予備隊のこれはまだ一年も前の質問ではなくして十一月の九日であります。十一月の九日には人員増加をお考えになつておらなかつたが今度予算を組むときになると変つて参る。だから私どもやはりどこまで行くのかということの一つの例証にもなると思いますが、実は今度人員を増加される理由というものが必ずあると思います。その点について一応人間増員の根拠というものをお聞きしたいと思います。
  181. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 成るほど、昨年安全保障條約を御審議頂きまする際に、十一月の初め頃といたしましては、警察予備隊を増員いたすということにつきましてのはつきりした考えが、まだ政府といたしましてはまとまつておりませんでした。このことを率直にお答えを申上げたわけでございます。その後のいろいろな事情から昭和二十七年度中に十一万に増員をいたすことに相成つたわけでありまして、これを予算において御審議つているわけでありますが、七万五千の警察予備隊が一昨年創設せられまして、その後部隊の編成訓練等をいたしてみますると、この警察予備隊全体といたしまして非常に運営上の欠陷が発見されたわけであります。それと申しますのは、御承知のように、警察予備隊においては管区総監部というものを四つ設けておりますが、この管区総監部の下には三つの普通科連隊、それから一つの火器連隊、それから一つの施設大隊、それから一つの衛生大隊、こういつた編成になつておるので、ございまして、この人員が一管区除につきまして約一万二千ぐらいであります。従いましてその四つの総数を合算いたしますと、約六万になつておるのでございますが、これに対しまして管理補給の諸部隊といたしましては、約一万五千人に過ぎない。これは部隊の運営の上から申しますると非常に欠陷がございまして、これらの各管区豫を十分に活用いたしまするためには、やはり管理補給諸部隊及び学校等において増強をして行かなければ、一つ均衡のある部隊としての編成において欠くるところがあるということが明らかに相成つたわけでございまして、従いまして、これを補充増強いたす意味におきまして、今回十一万に増員をいたしたいと考えた次第でございます。
  182. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 堀木君、まだあと十五分あります。
  183. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 編成の上から見て、そういう編成がいいという一応の理由はつくのでありますが、私ども疑問に思うことは、どう考えても一方において国警と自治警自身が戰前上り多い。成るほど木村法務総裁のおつしやるように、軍隊のないときと軍隊のあるときの警察の力というものについてのいろいろ考慮はありましよう。この点も私は肯けます。併しです。ともかくも九万五千で世界に誇る治安を持つてつた。軍隊の出動というものは、国内にそんなに使つていたら軍隊自身が国民からあいそをつかされるという姿になつたら大変なんであります。たまにしか出ていない。そういうことも考えられますが、ともかくもこの十二万五千人の国警自治警の、私は質の向上が先ず第一だ、こういうふうに考える。それから第二は、警察予備隊自身を数をお殖やしになるのは順序が違うのじやないか。これは大蔵大臣にしては随分大まかに予算の要求を認めたものだと私は思うのでありますが、どうも警察予備隊の内容をいろいろここで、予備審査のときにお聞きしてみますと、人間を殖やすことが先だとは思えないのです。現地の七万五千人でも実際のところ収容施設もうまく行つていない。今山下さんの御質問に対して、演習設備も欲しいのだ、それから治療設備も欲しい、その他待遇上もいろいろ改善しなくちやならないということが先であつて、人間の数だけお殖やしになることは、私、無論教育施設の増強とか、そういう面もありますが、ともかくも数にとらわれるときでない、もつとじつくりとどういうふうにするか、先ず目的をおきめになることが大切だ。目的がきまつていない。目的は誰が見てもわかるように、條約を結んだ以上は新しく目的があると思うのですが、警察予備隊そのままで行くのだ、従来のままで行くのだというふうな点、そういう点からはつきりやり直されるのが本当でなかろうか。こういうふうに私は考えるのでありますが、その点についてどうお考えになりますか。
  184. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 国警、自治警の拡充のほうが予備隊の拡充よりも先ではないかという第一の御指摘の点でございまするが、国警、自治警におきましては、すでに堀木委員もお述べになりましたるごとく、人員におきましては相当戦前から見ると増加をいたしておるのでございまして、むしろ一般警察によつて処理できないところの非常事態に対して対処するものといたしましては、昔は軍隊というものがあつたわけでございまするが、併し、現在軍隊を持たない我が国といたしましては、警察力の補充といたしまして、必要な場合に行動するところの組織というものをやはり考えて行くことが適当でなかろうか、こういうふうに政府といたしては考えておる次第でございます。又警察予備隊につきまして、人員の増加よりも、施設、訓練、その他内容の充実を先にしたらどうかという点でございまするが、私どもは内容におきまして充実いたしますることの必要なることはもとより痛感をいたしております。来年度におきましては、この点に特に力を入れたいと存じておりまするが、而もこれと並行いたしまして、人員の増加することも必要であると考えておる次第であります。
  185. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 警察予備隊論を余りしておりますと、時間が長くなりますが、ともかくも私は大橋国務相に御忠告申したいと思うことは、武器は人から借りる。演習地の共同使用はいい、而もどこから借りるかわからない、どういうふうな約束で借りておるかわからない、ただむやみに既成事実ができて参りましても、その目的がはつきりしない状態というものは私はないと思います。そういう点について特に御注意を願いたいと思うのであります。  なお運輸大臣にお聞きいたしたいのでありますが、最近、海上警備隊なるものができる、海上警備隊なるものはアメリカの船を借りて、そうして練習するために六千人を急速に増員される、又組織、機構も変えられる、そうして法令もお変えになるというお話でありますが、どういうふうな情勢で、ございましようか。
  186. 村上義一

    国務大臣(村上義一君) お答えいたします。お説の通り、海上保安隊に警備隊なるものを設けることに志して今法律案を近く国会に提出したい考えでおるのであります。御承知の通り海上保安庁の業務は一方において航路安全業務があります。他面において警備救難の業務があるのであります。この警備救難の業務は、御承知の通り海難の救済又は密入国、密貿易、密漁等の取締、海上の保安を維持する要するに仕事であるのであります。只今海上保安庁で燈台の通船を初めいわゆる自動力を持たない船を含めまして約四百五十隻を持つておる。そのうち五十トン以上の船は大体三分の一でありまして、総トン数で十万トン程度であるのであります。而もこの百五十隻ぐらいの船ですべての水域、海岸線を見守つてパトロールいたしておるのであります。とにかく一万マイルに及ぶ海岸線及びその海面をパトロールするということにつきましては、非常に実は手簿であるのであります。特に先般のごとく、震災のために高潮が起つて、種々の海難がそこに発生するというような場合には、どうしても機動的に動く必要があります。それで今回の予算上御審議を願つておりまする約六千名を増員いたしまして、現在は総計で一万三千人余でありまするが、六千人ほどを増員いたしまして、機動的に必要なる場合に出動するということにいたしたいと考えておるのであります。丁度警視庁の予備隊のようなもの、又大阪警視庁の機動隊のような性質に動いて、そうしてこの海上保安庁の任務を果して行きたいと考えておる次第であります。
  187. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 ただ一言でいいのですが、機構は一体どういうふうに御改正になりますか。運輸省の中にあるのでございましようか。今後どういうふうな機構改正をお出しになるか。もう法令をお出しになるのでしようから、この機構はおきまりになつておるであろうと思います。
  188. 村上義一

    国務大臣(村上義一君) お答えいたします。まだ機構そのものは明確にきまつておりません。併し若し総理府に保安庁というようなものができますれば、或いはそちらのほうへ移すということが適当なんじやないか。要するにごの海上保安庁の大部分の仕事はいわゆるコースト・ガードの仕事であります。先刻も申しましたごとく、密貿易の取締と申しますと、むしろ大蔵省の系統の仕事であります。又密漁の取締という仕事はむしろ農林省の系統の仕事だと思います。密入国は外務省の系統というて差支えないと思います。ただいずれもパトロールをして機宜の処置をとるという必要上財政的に見て一カ所で処理することが最も有効である、適切であるという考え方から、コースト・ガード・システムが生まれ出たと思うのであります。従いまして只今も申します通り、若し保安に関する別個の機構が総理府等にできますような場合には問題にすべきだと思つて考慮しつつある次第であります。
  189. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 この機構は四月一日からおやりになるのですから、この機構と合して、今のようなお話ですと、警察予備隊のなにもはつきりさせなくちやならないはずだと思うのですが、どうも予算の通過までは何もかも我々が盲になつていなければならないということは、私としては非常に困つたものだと思います。  最後に、これは木村法務総裁に主として一言お聞きしたいと思うのですが、問題になります安全保障條約の第三條でございますね。で、「アメリカ合衆国の軍隊の日本国内及びその附近における配備を規律する條件は、両政府間の行政協定で決定する。」岡崎国務相も御関係になつておりますが、これで以て行政協定はこの條約で、條項で委任されたような形だ。まあはつきり委任とは岡崎国務相もおつしやらないのですが、どうもその点が国会にかけろ、かけないということの一つの形式論の大きな問題に私はなつておると思うのですが、これをお読みになつて、配備を規律する條件は両政府間の行政協定できめるということだけであつて、その行政協定が国内法でどういうふうな手続によるかということは別な問題であると同時に、委任とおつしやるのはおかしいのじやなかろうか。配備を規律する條件は行政協定できめる、行政協定できめるが、その行政協定が條約で、つまり日本国憲法による條約、アメリカでは慣例上行政協定というものがあつて国会の議決を経ない、こういうことを言われまして、而も実質的に行政協定は條約であるということは言つておられるし、他の国連軍とこの程度のものをきめるときには国会の承認をお求めになる、こう言つておられるのでありますが、この委任の原理というものはここに私は入つて来る理由がない。つまり安全保障條約で以て行政協定という條約できめる、実質的には行政協定という條約できめる。條約が條約に委任しておるに過ぎない、こう思うのでありますが、その点の法理解釈を木村法務総裁でも岡崎国務相でもよろしうございますから、おつしやつて頂きたいと思います。
  190. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 岡崎国務大臣ちよつと待つて下さい。村上運輸大臣
  191. 村上義一

    国務大臣(村上義一君) 只今言葉が足りなくて、或いは誤解を来しはしないかと虞れますので、一言附加えておきたいと思うのであります。海上保安庁法の改正法律案は一日も早く国会に提出して御審議を得たいと思つておるのであります。これが公布、実施に相成りますれば、勿論現在の海上保安庁においてこの仕事をやつて行きたいという考えを持つておる、一言附加えます。
  192. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 只今の問題でありますが、何と申しますか、わかりやすく委任というような意味であるということは言いましたが、はつきり委任と言うのは正確には当らないかと思うて、ただ委任と言えば言えるようなものである、こう申したのであります。お話のように行政協定は若し安全保障條約の第三條がなければ、憲法の七十三條によつて国会の承認を得べきものであろう、こう政府考えております。ただ安全保障條約が国会によつて承認されまして、而もこの国会における審議の際に行政協定は国会にかけるのかかけないのかという質問が繰返しされておつたのでありまするが、政府はこれに対して、安全保障條約が承認されれば、その第三條によつて政府間で行政協定を締結して、改めてこの行政協定の承認は求めないのであるということをしばしば質疑応答中になしたのであります。要するに政府としては、安全保障條約によつて行政協定についても総括的な承認があつた、こういう考えでありまして従つて改めて国会に承認を求める必要はないというふうに考えておるのであります。
  193. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 どうもその点が……、要するに、そうすると委任の法理がこれに当てはまつておるわけではない。ところが当時政府ではかけるつもりはないということをたびたび質問で言つた、だからかけないのだ。どうも私はこれでは政府の態度ではないのじやないか。政府としては正確にこの法理に立つて、初めての行政協定でありますから、アメリカの国会で必要でなくても、これは日本国としてどう処理するかという問題は法理的な解釈と政治的な解釈から十分お考えになるべきだ。ただ国会がうるさいから、まあそう言つちや悪いですが、かけないで済まされるならかけないで済まそうというふうな考え方が先に立つておるように思うのであります。私はどう考えても、この第三條は委任の法理がここから出て来るはずはない、要するに一つの條約で他の條約に委任したことは確かです。それできめる。併しそれだからそれが国会で必要がない、憲法七十三條による條約でない、こういうふうにお考えになることはおかしいと思うのであります。更にこの法理論は又別の機会に讓つてもいいと思うのでありますが、もう時間もないようですから簡単にしたいと思いますが、更に私は岡崎国務相に特に申上げたいと思うことは、あれだけの広汎な主権と、そうして国民の権利義務に関係あるものをむしろ進んで国会におかけになるべきじやなかろうか、而も実質的にこういう規定がなかつたならばかけるつもりだとおつしやる、條約を国会の論議を通して国民に知らしむる、で、あなたもよく言われるように、どういう條約を作つても、それが善意と了解の上に立たなければ実際の運用はできないとおつしやる、政治家としては当然私は進んでおかけになる態度をおとりになるのが本当に政治家としての態度である、民主主義の原則に副うものだとお考えになりませんでしようか、その点をお聞きいたしたいと思います。
  194. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 只今も申したように、政府としては国会でもしばしば御説明して、これはもう事前に総括的な承認を頂くのであります。こういう説明を加えまして安全保障條約の承認を求めたのでありまして政府としては初めから安全保障條約の第三條によつて行政協定は国会の承認を得ないで作りますということを申上げて、それで安全保障條約が承認されたのでありまするから、当然これは総括的の承認があつたものと考えるのであります。そういうわけでありまするから、国会に対してはこれを承認を求めるために提出はいたさないのであります。併しながら只今堀木君のおつしやつたように、これは国民に十分国会を通じても知つてもらう必要があると考えましたので、特に私から要求いたしまして政府としては本会議において特に発言の機会を得まして、衆参両院において報告及び説明をいたしまして、更に各種の委員会で十分その間の事情、條項等の意味を御説明いたしておるわけであります。
  195. 松永義雄

    ○松永義雄君 関連質問……。只今日米安全保障條約によつて総括的に行政協定を結んでもよろしい、それを国会にかけなくてもよろしいという意味で国会は承認しておる、こういうような今お話でありました。ところが少し話は違いますが、憲法を御覧になるとおわかりになる通りに、政令すらもその権限を内閣が持つのには特にこれは憲法にも書いてある、政令すらも書いてある、内閣は「政令を制定すること」という規定があるのであります。たとえ国会が安保條約によつてこれを仮に総括的に行政協定を結ぶことを承認いたしたとしても、憲法で政令すらも規定があるんですから、憲法で規定がないような場合には政治道徳というか、法理上の解釈としては当然国会に承認を求めなければならんはずであります。その点に対するお考えはどうですか、木村総裁でもいいです。
  196. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) これは先ほども申しました通り政府は安全保障條約の草案を協議いたしまして、そうして作り上げたのでありまするから、どういう意味でこれを作つたかということは当然国会で御説明するわけであります。各国の例によりましても、條約の中で、例えば行政協定においてこういうことをきめてよろしいという條項がありますれば、政府はその行政協定できめてよろしいということは政府限りでそういう協定を結んでよろしいという事前の総括的承認を国会において得たものと考えるのはこれは当然であります。又そういうふうに各国でも例を見ておる。アメリカにおきましても、例えば北大西洋條約に基く軍隊の地位をきめる協定は、内容は只今の行政協定と余り違つていないと思いまするけれども、これは親になるという安全保障條約のようなものがありませんから、アメリカの国会の批准を求めておる、この安全保障條約の場合はその第三條によりましてあらかじめ承認を得ておりまするから、そこで国会の承認を必要としないと考えておるのであります。先ほどもお話がありましたように、併し非常に大きな問題を含めておるじやないかということでありまするが、すでに軍隊を日本国内に駐屯せしむるという條約を御決定になりますれば、これは非常に大きなことを安全保障條約できめておるのであります。軍隊が日本国内に駐屯するということを認めますれば、軍隊に附属するその特権ということは、例えば裁判上とか或いは税法上とかいうものは必ずしも全部が全部同じではありませんけれども、その特権を供與するということは国際法でも認められておりまするし、又各国の慣例もこれをいたしておるのでありまして、軍隊を国内に駐屯するということになりますれば、おのずから行政協定の範囲というものはきまつて来るのでありまして、これは安全保障條約を承認された場合にすでにこういう問題は当然考えられることであります。そういう意味で我々は国会においても繰返し行政協定は国会の承認を得ないで作りますということを申上げておるのであります。さよう一つ御承知を願います。
  197. 左藤義詮

    左藤義詮君 関連しまして……。只今堀木委員の、又午前の岡田委員の質問に対してもすでに世界経済のスランプは峠を越しておる、下半期は非常に好転するというお見通しのようでありますが、そういう点、現在にも三月危機と申しますか、大阪などでも日本の貿易を代表するような大きな商社が生きるか死ぬかの紙一重の今非常に苦しみをしておりますが……。
  198. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 左藤君のは関連質問ですか。
  199. 左藤義詮

    左藤義詮君 堀木委員のその前の質問に関連して……。
  200. 和田博雄

    委員長和田博雄君) その前は困ります。そのときにやつてもらいたい。そうしませんと前後してしまつて幾らでも繰返されることになりますので、関連質問はそのときにやつて頂くように願いたいと思います。
  201. 左藤義詮

    左藤義詮君 堀木委員の質問があとすぐ続いたものですから……。
  202. 和田博雄

    委員長和田博雄君) それなら杉原君の質問を始めて、その中でどうせ大蔵大臣に対する質問がありますからそのときにやつたらどうですか。
  203. 左藤義詮

    左藤義詮君 杉原君の質問に関係ないと思います。
  204. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 杉原君の質問の経過を見てやつて頂きたい。ちよつと委員長は今の岡崎国務大臣の行政協定に関する御答弁でお聞きしたいのでありますが、安全保障條約を国会にかけて承認を求めたときに、いろいろの質問があつたときに、行政協定は改めて国会の承認は求めないということを答弁して来られたので、本来安全保障條約のようなものがなければ国会の承認を得べきものと自分は思うがと、今言われたような理由でこれは改めて国会の承認を求めることをしないんだというお話ですが、その安全保障條約が国会へかかつたときには、行政協定はあらゆる委員が質問されたにもかかわらず、内容がまだできていないのでわからないということで政府はたしか答弁されたと思います。その点は一体どういうことでございましようか。行政協定の全貌が明らかになつて来たときには、非常に大切な問題であるから各委員会なり本会議で説明をし、答弁をしておるというお話でありますが、それであればあれだけに政治的に又法律的にはいろいろな理窟はどうあろうと、むしろ国会の承認を得るようにされたほうがいいんじやないかという気が委員長もいたすのでありますが、その点はどういうふうに説明されるのですか。
  205. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 今の点でありますが、当時はまだ、事実行政協定の主眼とするところは何であるかということは、これはもう仮に政府の者でなくても、国際法学者でも当然要点は言えると思うのでありまするが、国会等でその内容をお話するということになりますと、問題点ということなら別でありますが、これをどうするのだ、どうするのだということになりますと話合いをいたしてこれをきめる前には困難であります。そこでまだきまつておらないということを申上げておつたのであります。併しながら日本におきましてもアメリカにおきましても双方とも初めからこの国際慣例その他を考えまして、こういう條約を作り、こういう第三條のような條項があれば、これは国会の承認を求めずしてできる協定であるという解釈で、初めからそういう法理論でこの條約を作つております。アメリカ側でもそういう説明をいたしております。日本側でもそういう説明をいたしておりますので、この際は政府としてはやはり行政協定は国会の承認を得る必要はないのであるという意見をとつておるのであります。その代りに説明をできるだけ早く、又できるだけ長く細かくいたそう、こういうつもりで今まで措置をとつて来たような次第であります。
  206. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 大蔵大臣に先にお尋ねいたします。安全保障諸費なるものの内容について大蔵大臣が御説明になりましたところを伺いますと、その中には平和條約の発効後、米軍が大都市の中心部から周辺地区に駐留場所を移転いたします場合、これに伴う営舎住宅等の建設に必要な経費、右の移動に伴う有線無線通信諸施設、その他営舎関係諸施設乃至附属工場と各種荷役設備等の建設に必要な経費、こういうものを含むという御説明を伺つたのでありまするが、そうでありますると、この部分は行政協定との関係において二十五條の第二項の(A)号に該当するようにちよつと見えるのでございますが、そうしていわゆる防衛支出金と区別する理由はないようにちよつと解されるのでございますが、どういう事情でございましようか。
  207. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 行政協定から直接に出て来る経費ではないのでございます。行政協定からあれいたしますのは、今まで駐留軍が使つておりました不動産等の分が二十五條の規定でございます。安全保障諸費の分はこれ以外に日本政府がこれだけ出すことになつておるのでございます。
  208. 岩木哲夫

    ○岩木哲夫君 只今大蔵大臣お話がありましたが、今朝の毎日新聞によれば、三大新聞社長がリツジウエイ将軍と会見されたその会見の内容に、リツジウエイ将軍の意見として占領軍が駐留軍となつて、そうしてこれが移動する場合の建設諸費、こうしたものはびた一文も日本政府の御厄介にはならないということを言われておるのでありますが、大蔵大臣の前からの説明とその辺はどういうことになりますか、明らかにしてもらいたい。
  209. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私が今まで説明した通りと私は考えております。
  210. 岩木哲夫

    ○岩木哲夫君 今までの大蔵大臣の説明通りと、リツジウェイ将軍の談話とは違うものではないのですか。今までの大蔵大臣のは防衛分担金のことと安全保障諸費との問題について明らかに区別されて説明されております。又国会においても防衛分担金の使途内容と、安全保障諸費の使途内容とは違うのであります。その安全保障諸費の内訳に占領軍が駐留軍となつて移動する、その場合の施設、或いはいろいろの費用、これに三百億ですか何ぼか充当されているというこまごました説明であります。ところがリツジウエイ将軍はそういつたものは日本政府にびた一文も厄介にはならんつもりだ、こういうことを明らかにしておるのと食違うわけであります。この点を明らかにしてもらいたい。
  211. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) はつきり申上げますが、今まで説明した通りと私は考えております。
  212. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 岡崎国務大臣にお尋ねしたいと思いますが、行政協定と国内立法措置との関係でございますが、行政協定の二十七條の第二項は、行政協定の中で予算措置を要するもの及び国内立法措置を要するものについては、予算乃至法律の成立を條件とするものであるというふうに、この條項を解釈していいものか、それをお伺いしたい。
  213. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 行政協定の中には予算の措置を必要とするものも当然あるわけでありまして、只今提出予算にそれが盛られているわけです。又国内立法を適当とするものもありますので、これらについては何と申しますか、当然といえば当然のこでありますけれども、政府としてはこの前の安全保障條約の御審議の際にも、必要なる立法措置又は予算措置は国会に提出してその承認を求めるということを申しておりますので、この措置を明らかにするためにここに第二十七條の二項に明記したわけであります。
  214. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 先ほども質問があつたのでありますが、行政協定と憲法七十三條との関係については、もう前の臨時国会において安保條約審議の際十分論議もあり、政府としてはその際一貫して、これは行政協定についての事前の承認を得るものである、従つてこの安保條約について承認があれば、改めて国会の承認を求める意思は全然ありませんという趣旨のことを言われた。その態度を以て終始一貫して来ておつたのであります。ところが今度の国会になりましてから、多少その理由についての説明が、その経過につきまして多少多岐に亘つたため、却つてすつきりしないようなところがあつたような感じがするのでありますが、政府が真にその正当な理由として確信しておられるところのもの、それを実はお聞きしたいと思つてつたのでありますけれども、先ほどの岡崎大臣の御答弁を政府側の確定意見と了解いたしまして、この点これ以上触れません。先ほど堀木委員も御質問になりましてまだ答弁がはつきりとなかつたように思うのでありますが、今の第一の点とは別個の問題として、それにしても行政協定の二十四條に非常事態の場合における協議の規定を設けているのは安保條約によるいわゆる授権の範囲を逸脱したものだといつたような議論もあるのでありますが、この点についての所見をお伺いしたい。
  215. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) お答えいたします。念のためにもう一遍申上げますと、よろしいというお話でありますが、繰返して申しますと、行政協定を国会の承認を求めないということにつきましての根本的の理由は、安全保障條約の第三條において事前に総括的な承認を得ているから、こういうことでありまして、それ以外に、例えば内容はすでに各国の慣習にあるものであるとか、或いは行政府間でできる範囲のものであるか、いろいろのことは附随的な理由でありまして、根本的の理由は第三條によつて総括的に承認を求めたから、こういうことであります。  それから第二十四條の問題でありますが、これは実はこの参議院で私が御報告いたしましたときにちよつと触れたのでありますが、繰返して申しますと、実はこれはこれだけのことなら、あつてもなくても同じことだという議論も成り立つかと思うようなわけであります。というのは、非常事態のときには両国政府で協議をする、そうして国内にアメリカの軍隊が安全保障のためにおりますれば、これと緊密に連絡しましてその非常事態に対処するのは当然のことであります。従つてこれは当然過ぎるくらいのことを書いているのだということにもなるのかも知れませんけれども、すでにこの行政協定の交渉をいたしているときに、国会でもいろいろ質問がありましたように、秘密の了解事項で何か作るのじやないか、或いは秘密の協定があるのじやないかというような質問もありましたので、そういうことは一切ないのだということをはつきりするためにも行政協定では両国政府間で緊急の場合には至急に協議をするのだということを明らかにしておいたほうがいいと考えたのであります。併しながらただ協議をするということだけでありまして、内容は全然まだきまつておりませんからして、これは行政協定の範囲を逸脱するものとは我々は考えておらないのであります。
  216. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 関連して……。実は岡崎国務大臣はこの前の国会のときにそういう説明をして承認を得た、そうしてその上に立つて批准がなされているのだ、こうおつしやる。ところが国会は常に憲法及び法律によつて行動しなければならん、政府も常に憲法及び法律によつて行動しなくちやならない。そういう明文によつておるのであつてそういう国会で政府がどういう説明をしたか、そういうことであつて通過したらそれを承認して常に委任が政府にあるのだ、というふうなことであつたならば、憲法は常に多数によつてどうにでもなる。多数を取つてつたらどうにでもなる、そういう解釈になるのでありますが、それでもいいのですか。
  217. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 政府は憲法におきましても條約中でそういう承認があらかじめあれば、政府間で協定を作れるという法理を持つておりますし、又これは各国の従来のしきたりでもあるのでありまして、ただ政府がそういう意味の説明を繰返して来たということは政府は決して隠れて黙つて、この問題はどうなるのかわからんような状態にしておいて、安保條約が承認されたからこれでもいいのだと言つて行政協定を取極めたというのではなくして、あらかじめ堂々とはつきりと国会の承認を求めないでやるのでありますということを申上げて、何も隠してないのだ、こういうことで御説明したのであります。だから国会のあらかじめ承認を得ないでやりますということを言つたのでいいというのではなくして、これは憲法の解釈から言いましても、又国際間の慣行から言いましても、当然できることであるという法理に立ちまして、説明をいたしておるのであります。
  218. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 次に極く簡單に二、三の外交問題についてお尋ねしたいと思います。いよいよ講和の発効を前に控えまして、今後の日本の財政経済は、外交政策の舵のとり方如何によつて大きな影響を受けることは、申すまでもありません。併し更にその点について詳しくお尋ねをすることはほかの機会に譲りまして、ここでは極く二、三の問題についてお尋ねをいたします。第一は、ソ連との関係でございます。ソ連との講和條約というようなことが事実急速に望めない、むずかしいといたしましても、少くとも戦争状態の終結の実現を見るべきである、そこにまで持つて行くといいますがそういう事態を目途として外交政策をするということは当然考えなくちやならんと思うのであります。現在の問題といたしまして、ソ連の駄目代表部の講和発効後における閉鎖などの問題もあるわけでありますから、特に先ほど申しましたように、特に戦争状態の終結の実現を得るために、積極的にその機会をつかむという考えの下に構想を練られておるかどうか。その点をお尋ねしたいと思います。
  219. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 我々といたしましては、ソ連にいたしましても、又はかのどの国にいたしましても、戦争状態を速かに終結して、平常関係に入りたいという希望は常に持つておるのであります。ただ、戦争状態が終結するということになりますれば、一片の戦争状態終結という宣言なり、声明なりだけでできるものとは私どもは考えておりません。ソ連との間には戦争状態終結といいますか、或いは平常状態に回復と申しますか、それをする前に実質的に戦争状態の終結のような事態がなければ困ると考えております。例えば三十数万に上る抑留者のせめてその消息、例えば死亡したものなら死亡したものでもよろしい、或いは抑留されておるなら抑留されておるでもよろしい、けれども、その消息がわからなければ困る。これは戦争法規から言つても当然されるべきことであろうと思います。又漁夫、漁船の拉致されておるものもたくさんあります。こういうものに対する返還を求めておりますけれども、仮りに返還される前でも、どういう状況になつておるか、何人捕えられておるか、その生死はどうであるかというような説明は、必要であろうと考えております。又、歯舞、色丹等の島はダレス特使等は、これは日本の領土である、又当然北海道の根室の一部をなすものであつて日本の領土であつて、少くとも千島等とは違うということを申しておりますが、我々は過去の地理的或いは経済的の関係及び地質上の関係から見ましても、又行政的に一年も千島に入つたことはないこれらの島でありまするから、これを如何にして未だに占領を継続しておるかということもはつきりしなければならん問題と考えております。これは一、二の例を挙げたんでありまするが、こういうような問題が解決されないで、戦争状態の終結ということは事実名前だけのことになりはせんかという虞れもあるのでありますが、いずれにしましても政府としてはこういう問題の解決にできるだけ力を注ぐと同時に、又これを解決するに附随しまして戦争状態の終結ということもできるだけ早くやりたい、こう考えておるわけであります。
  220. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 次に、国連加盟の問題について伺いまするが、日本はよその国と違つてこの加盟問題については極めて特異な地位にあることは申すまでもありません。憲法の関係は別にいたしましても、條約の関係から見ましても平和條約の安全條項によつて国造の原則を遵守するという義務を受諾しております。殊に国連の行動に援助を與えるという義務を受諾しておる。従つてこれらの義務の点から見まするならば、日本はすでに国連に加盟する以前の現在において、すでに加盟国に準ずる地位にあるものであります。そこで日本といたしましては、たとえ国連の加盟が正式に認められない場合においても、国連のいわゆる行動が決定せられる際、つまり総会等において決議がなされる際において日本の意見が反映せられるというための特殊の適当な便法が認められることを要望するということは、十分理由のあるところだと思うのであります。その辺について政府はどういうふうなお考えでありまするか、お尋ねします。
  221. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) これは御尤もな御意見と思います。日本が国連に対してできるだけの協力をするということになりますれば、国連が或る種の措置をとつて日本がそれに協力する場合に、できるかできないか、又どういうふうにやれば十分なる協力の効果が上るのかということについては、日本としては日本の特殊事情もあるのでありまして、ただ日本の事情を全然考えずに国連のほうで措置をとつた場合に、協力するのが困難になるような事態が生ずる場合もあり得ると思います。従つて日本としても誠意を以て国連に協力するつもりでおりまするので、国連側も日本の立場も考えて協力のできるように考慮せられることは当然と思いまするけれども、只今まだこういうような話合いをする事態になつておりません。将来適当の機会がありますれば、できるだけそういう趣旨で話す機会も持ちたい、こう考えております。
  222. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 次に、中共貿易に対する今後の日本側の管理方針についてでありまするが、申上げるまでもなくアメリカではいわゆるバトル法だとか、或いは相互安全保障法によつてソ連地区に対する貿易との関係について制限になり得る根拠になる條項があるわけでありまするが、この私のお尋ねしたい点は、日本が講和発効後におきましても予備隊が或いはアメリカから武器を貸してもらう、或いは海上警備隊といいますか、船を貸してもらうとか、一種の援助、更に又少しく広く解釈いたしまするならば、安保條約によつてアメリカ軍が日本の安全保障のためにおるというような一種の援助とか援護とか、そういう援助とアメリカのそういつた国内法との関係、これが日本の中共貿易に対する管理方針をきめる際にすぐに響いて来るかどうか、その関係をお尋ねしたいと思います。
  223. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 只今御質問のうちで国連に対する協力は、日本国としてははつきりしておりますから、国連の措置については、これは当然協力をいたすものであります。従つて只今中国本土に対しましては、国連は朝鮮事変に関連しまして或る種の緊急措置を講じております。これに対しては日本としても当然協力をいたすつもりでおります。その他の問題につきましては只今御指摘のアメリカの法律等との関連は、要するにそのアメリカ側から受ける利益を受けないでよろしいということになれば、その法律に対する順応といいますか、ということは必要がなくなるわけでありますが、これはつまり法律問題としては日本に課せられた義務は全然ないのであります。若し日本がアメリカからこういう利益を得るとすれば、こういう措置をとるべきであるとか或いはこういう措置をとつてはいかんとか、要するにその利益を日本が享有しなければ別に関係のないことと考えております。それをどういうふうに取扱うかということは将来の問題でありまするけれども、政府としては、日米間には今お話のような趣旨の密接な関係もありまするし、将来も日米経済協力という線を強く出して行こう、又これを中心として将来の経済の計画も立てて行こう。こう考えておりますから、アメリカ側とはでき得る限り円満なる協力をいたして行きたい、こういうつもりでいろいろ研究をいたしております。
  224. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 最後に賠償問題についての政府方針についてお尋ねしたいと思います。インドネシア、フイリツピンその他の国との賠償問題の交渉に当りまして、賠償問題それだけを切離してそれだけとして交渉するという行き方よりも、むしろそれらの国との経済協力という問題を加えて合せ考慮してやつて行くほうが、却つて賠償問題それ自体の円満の解決のためにも或いは適当じやないかというふうにも考えられます。イタリーとギリシャなどとの賠償協定を見ましても、かなりそういう精神が織込まれておるように思うのでありますが、政府はその辺のことについてどういうふうなお考え方でございますか。
  225. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) その点は全く同感であります。政府としては例えば先般インドネシアとの話合いもいたしましたし、或いはフィリピンとの話合いもいたしましたけれども、そうして先方の初めに提起しました七十数億ドルとか、八十億ドルとかいうような大きな額については、到底日本の現状からいつて能力の及ばぬところである、こう言つておりますが、我々としてはただその賠償を値切るということが能であるとは考えていないのでありまして、要するに相手国の戦争の被害をできるだけ軽減するために協力するという意味で賠償を考えております。その背後には、両国の間の国民の感情もよくし、又将来の関係も密接にし、殊に経済的にお互いに助け合つて繁栄を図りたい、こういう気持でやつておるのでありまするから、当然経済協力ということも考慮されて然るべき問題であります。現にインドネシアとの交渉の際にも、経済協力というのは、賠償とは全然別問題であるけれども、日本としてはインドネシアが希望するならば、こういう協力の方法も考え得るのだと、例えばプラント輸出というものもありましようし、或いは技術者を派遣するということもありましようし、その他農業の指導ということが必要ならばやりましよう、いろいろの問題を提起しております。フィリピンに対しても同様に考えております。ただこの際気を付けなければなりませんことは、日本側で経済協力というようなことを余り強く押出しますと、戦争前若しくは戦争中に行なつたような形で、何と言いますか、言葉は悪いのでありますが、経済的な侵略をする、相手国が好まないのにどんどん人を出して何かするというような印象を與えることはよろしくないと思いまして、そういう原則的なことは申しておりますが、実際の経済協力については、先方から要求があり、こういうことをしてもらいたいのだということがありましたときに出て行つて協力をすると、こちらから押しかけて売込みは成るべくしたくない。これが普通であつたらば、こちらから積極的に行つてもいいのでありましようけれども、戦争というものが入つておりまして、まだ依然としてその一種の疑惑と申しますか、そういうものが相手国の国民の中に多少とも残つておるような現状でありますので、この点は愼重にいたしておりまするけれども、経済協力を互いに密接にやつて行くという気持については全く御同感であります。又先方から日本に学生等をよこしまして特殊の技術等を習得したいという場合には、喜んでこれに応じてお世話もいたしたいどいうこともすでに相手国に話しております。これも実現するのではないかとすら考えておるような次第であります。
  226. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 杉原君はもう終りですか。……左藤君に申上げますが、大蔵大臣今呼びにやつたのでありますけれども、帰つたそうであります。よく注意をしておきます。関連質問でありますから、明日必ずあなたの発言についてはお許ししますから、若しも今日緊急でありませんでしたら明日にお延ばしを願いたいと存じます。  すぐあとで理事会を開きたいと思いますから、理事のかたは集まつて頂くことにいたしまして、本日はこれで散会いたします。明日は午前中だけということに理事会で決定いたしましたから、どうかさよう御承知願います。    午後四時四十四分散会