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1952-03-10 第13回国会 参議院 予算委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年三月十日(月曜日)    午前十時二十三分開会   —————————————   委員の異動 三月七日委員平岡市三君及び宮本邦彦辞任につき、その補欠として、大島 定吉君及び長島銀藏君を議長において 指名した。 本日委員石坂豊一辞任につき、その 補欠として、石村幸作君を議長におい て指名した。  出席者は左の通り。    委員長     和田 博雄君    理事            中川 以良君            山本 米治君            小林 政夫君            杉山 昌作君            堀木 鎌三君            東   隆君            木村禧八郎君            岩間 正男君    委員            愛知 揆一君            石村 幸作君           池田宇右衞門君            泉山 三六君            大島 定吉君            楠瀬 常猪君            左藤 義詮君            白波瀬米吉君            杉原 荒太君            鈴木 直人君            中川 幸平君            長島 銀藏君            平林 太一君            岡本 愛祐君            小野  哲君            片柳 眞吉君            加藤 正人君            楠見 義男君            新谷寅三郎君            荒木正三郎君            内村 清次君            吉田 法晴君            波多野 鼎君            松浦 清一君            松永 義雄君            山田 節男君            吉川末次郎君            駒井 藤平君            鈴木 強平君            西田 隆男君            岩木 哲夫君   国務大臣    内閣総理大臣    外 務 大 臣 吉田  茂君    法 務 総 裁 木村篤太郎君    大 蔵 大 臣 池田 勇人君    通商産業大臣  高橋龍太郎君    運 輸 大 臣 村上 義一君    労 働 大 臣    厚 生 大 臣 吉武 惠市君    国 務 大 臣 大橋 武夫君    国 務 大 臣 岡崎 勝男君    国 務 大 臣 岡野 清豪君    国 務 大 臣 周東 英雄君    国 務 大 臣 山崎  猛君   政府委員    内閣官房長官  保利  茂君    警察予備隊本部    次長      江吉見登留君    法制意見長官  佐藤 達夫君    外務政務次官  石原幹市郎君    大蔵省主計局長 河野 一之君   事務局側    常任委員会専門    員       野津高次郎君    常任委員会専門    員       長谷川喜作君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○昭和二十七年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和二十七年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和二十七年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 委員会開会いたします。  先ず私から七日、八日に行いました理事会の御報告を簡單にいたしたいと思います。六日の委員会におきまする自衛のための戰力に関する質問についての吉田総理発言を非常に重要視いたしまして、理事より理事会開会の要求がありましたので、早速理事会を七日開きまして、これを如何に取扱うかを御相談いたしたわけでありますが、結局重要な御発言でありますので、速記録を十分調べた上に、その上でこれをどう取扱うかを処理したいということになつたのでありますが、七日の理事会の休憩中、保利官房長官から、総理が特に発言委員会が開かれた場合においては冒頭においてしたいという申出がありましたが、理事会速記録を十分見まして、その上でその発言を聞くことにしようということに大体落着きかけたわけでありますが、七日の夕刊に保利官房長官の談話が出ましたので、八日の理事会におきまして、その経過を保利官房長官から説明をして頂いて、結局結論としまして、本日の冒頭総理発言を求められておりまするので、それを許可し、その発言について本日の委員会においては質問を行い、そうしてその質問が済んだあと、本委員会をどういうように運営するかを理事会を開いて決定するということにいたしました次第でございます。従いまして本日は理事会の決定通り取運びますことに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 御異議ないと認めます。吉田内閣総理大臣より発言を求められておりますので、これを許可いたします。
  4. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 近く独立を迎えんとする時に当つて、私は日本国独立安全は日本国民自身の愛国心と熱意によつて守らなければならんという点から、守らなければならんという気持十分国民が持つてもらいたいという念願から、岡本君の質疑に対する私の答弁中、戰力という言葉を用いたために、自衛のためには再軍備をしても憲法上差支えなきかのごとき誤解を招いたようであります。この点についてかねて私が申しております通り、たとえ自衛のためでも戰力を持つことはいわゆる再軍備でありまして、この場合には憲法改正を要するということを私はここに改めて断言いたします。而して再軍備をしないということは、私が従来しばしば申上げた通りであります。この点誤解を招かんように更に訂正いたしておきます。
  5. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 只今吉田総理大臣の御発言につきまして、数点質問をいたしたいと存じます。お許しを願います。只今総理大臣の御発言趣旨は、六日この委員会におきまして私ども質問に対し、総理大臣憲法第九條は自衛のためには戰力を持つことは禁じていない旨の答弁をされたのでありますのを取消されまして、憲法第九條は自衛のためにも戰力を持つことを禁じておると訂正されたものと了解いたしますが、果してさようでありますか、先ずその点を念のためにお確かめいたします。
  6. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 御意見通りであります。
  7. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 然りとしますれば、戰力でない自衛力若しくは防衛力でありましても、漸次その人員を増加し、その装備を充実強化して参りますときには、戰力に近付いて参りますことは当然であります。又戰力となつて憲法に正面から違反するのでありますから、万一憲法第九條の改正を見ないで、政府が事実上の戰力を作り上げて行くのでありますれば、憲法を破壊し、国民を欺き、フアツシヨとなるのでありまして、国会及び国民の断じて許さないところでありますことを総理大臣は深くお心に銘記されたいのであります。総理大臣自衛のために戰力を持つ必要がありとお考えになりますれば、戰力が生ずるに先立つて憲法第九條の改正国民投票に関わるべきであります。それが総理大臣に課せられた重大な任務であると思います。従来吉田総理大臣は、再軍備考えていないと、しばしば言明され、只今も又さような言明をされたのでありますが、それは、当分の間はまだ自衛のためにも戰力を持たないとせられる御意思でありますか、どうか、この点を伺います。
  8. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答え申します。日本戰力を持つか、或いは軍備を持つか、持たないかということは、全く国民自由意思によるべきものであつて、これは私の申すことも国の力がこれを許し、日本経済力軍備を持つことを許し、又外界事情もこれを持たなければならん時に至れば、これを考えざるを得ないのでありますが、その場合には憲法従つて国民投票なり、憲法改正なりいたしますが、差当つてのところは未だその時期に至らない、つまり戰力にあらざるものを自衛のためにいたすことは、これはともかくとして、いろいろお話のような戰力を持つ、或いは軍備を持つというような場合には、国民投票によつて憲法改正という手段をとりますことを、ここに確言いたします。
  9. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 只今の御答弁によりまして、大体私が、総理大臣はこういうふうなつもりでこの間も言つておられたのではないかと思つてつたところ、その六日の御答弁の内容を仔細に検討し、又只今の取消しを、御弁明を考え併せますと、今のように御答弁になるのであろうと想像いたしておつた通りであります。恐らく総理大臣は今後適当な時期におきまして、適当な時期と申しますのは、連合諸国の感情の緩和を考え併せ、並びに我が国財政力の伸長の程度を見計らつて国民生活水準を引下げない範囲内において、元の軍国主義時代のごとき軍備を再びするという意味ではなくて、我が国も又自衛のための新たな戰力を持つことを総理大臣も必要とお考えになつておる、こういうふうに今お聞きしたのでありまして、この点は私どもは当然そうでなければならんと思つておるところであります。ここで総理大臣が若し右のごとくお考えになつておられるならば、速かにその御所信のほどを全国民に明らかに周知徹底されまして、自衛のため戰力を持つべきや否やを成るべく早く国会国民に問われることが必要であります。かくてこそ政府民主憲法を遵守し、政府に対する国民の信頼を繋ぐゆえんでありまして引いては優秀な国民が進んで防衛隊及び保安隊に挺身いたしまして国を自衛するに至るのでありまして、かくして現在のごとき魂の拔けたふぬけのような自衛力の面目を一新し得ると信ずるのであります。これらに対する総理大臣のお考えをいま一度お述べになつて頂きたい。
  10. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 大体御意見通りであります。私の申した通り日本経済力がこれを許し、又外界事情がこれを許すに至れば、国民自由意思によつて決定すると、成るべく早くということも承知いたします。その時期については、いずれ国会に御相談をいたすことにいたします。
  11. 楠見義男

    ○楠見義男君 総理の本日の発言によりまして、先日のこの説明が訂正せられ、即ち憲法第九條の自衛権及び戰力問題について一応政府の従来統一した、必ずしも完全に統一したとは思われませんが、一応統一した従来の見解の線に戻つた感がするのでありますが、総理の真意が果してそうであるかどうか、又政府の現在実行しつつあるところと、この見解とが完全に一致しておるかどうかということにつきましては、これを批判的に或いは種々推測しての意見が述べられておると思うのでありますが、そのことについて、ここでは詳細の論議を避けたいと思いますが、ただ一つ只今岡本君の述べられた点に関連して私は極く簡單に伺つて置きたいのであります。岡本君は自衛力を充実して行く上において、自衛の具体的な手段として戰力戰力ならざる力とがあり、現在は戰力ならざる力の状態でありますけれども、この現状が漸次充実して行くに従つてそれは戰力にまで発展して行く、そこでそれが戰力に発展するに当つては、その事前に憲法改正が必要であり、政府日米安全保障條約の期待するところに従つて自衛力漸増方式に即応せんとしているのでありますから、国民総意にかかつて、その承認の下に堂々と進んで行くものならば進むべきではないかということに帰着しておるのであります。それに対して、総理はこの段階が来ればそのようにするとの、只今の御答弁がございました、この点については現在の新憲法、即ち将来長きに亘つて世界にも誇るべきいわゆる平和憲法として制定せられたものが、そのように簡單に取扱われてよいものであるかどうかということにつきましては疑問を持つのでありますが、それはそれといたしまして、私のここで伺いたいのは、戰力戰力とならざる力との限界に関する点であります。今までの各大臣のそれぞれ委員会或いは本会議等で行われた御意見を伺いますと、これは実はまとまらないような感がするのでありますが、一つ武器の点で、或いは原子爆弾を持つまではそれは戰力とは言えないというような考え方、或いは又少くとも近代戰争をするのにふさわしい飛行機や、或いはタンク等を備えなければ戰力とは言えないというような、いわゆる單に兵器という点から見た考え方一つと、もう一つは、武器といえども、これを操作する人間との相関関係において初めて総合的に行つて戰力となるという見方従つてこの見方からいたしますれば、常識的であると共に、いわゆる兵力量、人数ということの重要性が加わつておる見方であります。そこで私の伺いたいのは次の四点であります。一つは、概論的に申して戰力戰力ならざる力との限界は、何によつて如何なる禅準によつて測定せられんとしておるのか、この点が一つ。二番目は、若し今の点において明らかな標準によつて測定できんといたしますれば、それは岡本君が先日申したように、例を挙げて申されたのでありますが、テニスの硬球と軟球との区別ではなくして、例えば富士登山のように、一合目とか、或いは六合目とかいうような段階的なものとなる。その意味では現在の状況は一合目か、或いは二合目かに相当するのではないかと思うのでありますが、この点についての御意見を伺いたい。第三点は、現在の警察予備隊の三万五千増員の問題は、兵力量、先ほど申上げた兵力量の観点から言つて戰力ならざる力の限界点としては、この程度限度であるのかどうか、或いは伝えられておりまするように、二十万とか、三十万とかいうような数字が二の限度になるのかどうか、この点が第三点であります。最後に、武器の問題について先ほど述べましたように、各大臣それぞれ御意見を持つておられるようでありますが、この武器の点で総理はどの程度を以て限界とお考えになつておるのか。以上四点についてお伺いいたしたいと思います。
  12. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 御質問は、何を以て戰力とするかという御質問でありますが、この專門的のお答え法務総裁がいたしますが、併し一応私から私の考えておる従来のいきさつを述べおきます。私はしばしば申す通り日本戰力を持つとか、或いは軍備をするというのには、今日の経済力がこれを許さないのであります。例えばイギリスのごときは、今はつきり数字は覚えておりませんが、十六億ポンド今年の予算に組んでおつたかと思います。アメリカのごときは何百億ドルというのを予算に組んでおるので、かくのごとき莫大な予算の支出或いは負担ということは、国民が今日の状態においては許さないのであります。故にしばしば申しますが、自国の独立、安全は無論国民の力によつてなすべきであり、又これをなすことが国民の誇りとなすべきことであり、又これをなすことによつて外国日本独立安全をみずから守るという気持を尊重するに至るのであり、又日本国民決心を尊重しないような場合においては、外国日本に対して支援を與えるはずもないのであります。安全保障條約が有効に行われるか、行われないかということは、これはしばしば大西洋安全保障條約でありますか、においても、アメリカヨーロツパ安全保障についても始終申しておるように、その国が、ヨーロツパみずからがみずから助けるという、自衛をするという決心がない限りは、アメリカも助けないということを言つております。同じように日本国がみずから自分で安全を守る決心がないという以上は、日米安全保障條約の実行もむずかしくなるのであります。故にこの日本独立安全を国民の手において守らしめるという決心は飽くまでも保持いたさなければならないのでありますが、今日においては如何にしても軍備のこの重圧に堪えない。又これをいたすには増税若しくは国民生活を圧迫することになりますから、そこで安全保障條約によつて一応の日本独立を図るという方法を考えて来たのであります。而してこのためには日本のみずから守る力を漸増する、漸増した結果戰力になるかならないか。戰力になる場合には、ここに明らかに申した通り国民総意に問うてこれを決定する、それまでは戰力に達せざるもので以て一応日本独立安全を守るということにいたしたいと、こう考えております。その戰力その他についての御質問については、法務総裁からしてお答えをいたします。
  13. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 憲法第五條第二項の「戰力」とは何であるか。極めて概括な文字で示されておるのでありますけれども、この点については一定の確たるものはまだないのであります。少くともこの戰力如何ということを解するについては、憲法第九條は如何にして設けられたか、如何なる理由で設けられたかということに思いをいたさなくちやならんかと思うのであります。即ち憲法の第九條を設けられた趣旨というのは、結局太平洋戰争のような愚を再び繰返すようなことに相成つてはならん、これに私は発足しておると考えておるのであります。そこで徒らに戰争をするような裝備兵力を持つということは全くしまい、これが根本の精神であると考えております。要は戰力というのは何であるかと言えば、結局国際社会通念によつてこれをきめるより仕方がないのでありますが、具体的の問題といたしましては、近代戰を有効且つ適切に遂行し得る裝備兵力を持つたものと、私はこう考えておるのであります。然らばその日本の現在の予備隊の問題はどうかと、こう申しますと、それは近代戰に有効適切にこれを使用し得るような兵数裝備も持つていないということは申上げることができるのであります。例えばソヴィエトにいたしましても、外敵と戰うべき有力なる兵力を持つておる。併しながら内地叛乱に備えるべき、又一個の裝備を持つ。戰車も持ち、大砲も飛行機も持つておるのであります。全然別個の、外国と戰うべき兵力内地叛乱に備えるべきものを別に持つておるのであります。而も子の下に警察力も持つておるのであります。この三段階を持つておるのであります。そこで日本の今の警察予備隊と申しますのは、警察予備隊令意味で、御承知通り内地治安確保のためにこれを設けられた警察のいわゆる予備隊であります。これが一たび外敵と戰い得るいわゆる近代戰に適応し得るような裝備編成を持つように至りますれば、これは立派な憲法第九條の戰力に該当する。これは憲法改正しなければ持てないことは当然の事理であります。そこで結局は戰力というものは繰返して申しますれば、近代戰を遂行し得るのに適切且つ有効なる裝備編成を持つたものである。ここに私は基準を置くものであると考えておるのであります。これを持つ段階に至りますれば、憲法改正するの要あり。それまでの程度に至らないものであれば、憲法改正しなくてもいいのじやないか。ごこに戰力基準が設けられているものと、私はこう考えております。
  14. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 楠見君、よろしうございますか。
  15. 楠見義男

    ○楠見義男君 法務総裁の御答弁趣旨は二点あるのでありますが、第一点の戰力の定義の問題については、実は日本の新憲法は、御承知のように将来に亘つての、先ほども申しましたが、平和憲法として我々国民といたしましては非常な決意の下にできた法典であります。普通の法律とは違いまして、国の基本法でありますから、その憲法に示された言葉がその都度その都度、或いはその時の自由な考え方によつて変更されるということについては、その危險のあるものについては、私どもは非常に疑念を持つのでありまして、少くともこれだけの大きな根本法でありますから、こういうことについては、はつきりとした解釈があつて然るべきではないかと、こういうふうに思うのであります。その点については議論になりますから、これ以上申上げません。第二の近代戰にふさわしい裝備を持つて戰力とするというこの点は、これも先ほ参ど申上げた通りでありますが、従来抽象的に政府言つておられるものであります。併し事柄がこの段階になりまして、戰力にあらざる戰力戰力になる場合には、これは憲法改正しなければならんという極めて重大な時になつたのでありますから、特に只今説明になりましたような、ソ連の国内における裝備、又国外に対する裝備、こういうものの御説明によりましても、殆んどその実体は変らない。というふうにも受取れるのであります。そういたしますと、今申しますように、非常に重要な段階で、戰力戰力にあらざるところの力との限界を明らかにすることが、延いて憲法改正を必要とする時期にも相関し得る問題であると思いますから、この点は従来のような抽象的な説明でなしに、もう少し具体的に御説明をされたほうが、国民も安心し、又我々も将来に対する心構えがはつきりするのではないかと思うのでありまして、この意味において、もう一度恐縮でありまするけれども、御説明を煩わしたいと思うのであります。
  16. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 只今申上げたのでありますが、ソ連のことが出ました。これも一応申上げておきたい。ソ連では外国と戰うべき有力な丘力を持つております。これは楠見君も御存じのことだろうと思います。百何十個師団という堂々たる裝備を持つております。それと一方において内地の、あの国情にもよりましようが、内地叛乱に備えるべき一種予備隊、これは外敵と戰うところの兵備ではありません。(「何だ」と呼ぶ者あり)併しこれは一種つまり防備隊日本で言えば予備隊に相当すべきものであります。(「何だ」「だまつて聞け」と呼ぶ者あり)それと……。
  17. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 静かに願います。
  18. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 警察部隊と数段階のものを持つておるのであります。そこで日本戰力というものは、外敵と戰い得るほどの能力を持つに至りますれば、これは当然戰力であります。併し外敵と戰い得るというのは、結局近代戰を遂行し得るに必要な且つ適切なる裝備編制を持たなければならん。つまり軍隊的の裝備編制を持たなければならん、これが肝腎であります。現在の段階におきましては、日本警察予備隊はそういうような編制裝備を持つていない。これは外敵と戰うという段階に至るようなものではない。ここに私は判断の基礎を置いております。これを一たび外敵と戰い得る編制裝備を持つに至りますれば、無論九條第二項の戰力としてあらかじめ憲法改正の必要があると考えるのであります。
  19. 楠見義男

    ○楠見義男君 その点に関連いたしまして、実は私は先ほど兵力量の問題についての御質問を申上げたのであります。そこで只今も重ねてお述べになりましたけれどもソ連説明でありますが、その場合の武器という点については、余り変らないのじやないかという印象を私は受けました。若し変るとすればそれは兵力量の問題ではないか。そういたしますれば、先ほど私が第三番目に伺いました点でありますが、現在の警察予備隊の十一万というのはそれに当るのかどうか。もう一度言換えますと、その戰力ならざる力の限界点は十一万であるのか、或いはもう少し多いのか、三十万にならなければ裝備と言えないのか、或いは二十万になればそう言えるのか、或いは明年度増員する三万五千を合せての十一万を以てそれを限界と見られるのか、これらについての御判断を伺いたい。これを重ねてお伺いいたします。
  20. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) この兵力量の問題でありまするが、いわゆるこの兵力というのは、編制裝備と総合したもので判断するのであります。編制如何に立派でありましても、その裝備が貧弱であれば、これは近代職を有効適切に遂行し得る能力とは言えないから、戰力とは申せません。如何に少くても十分なる裝備をここに備えれば、一個の戰力たり得るものであると私は考えます。要は兵員と、それに使うべき裝備と相待つた総合力であるのでありますから、たとえこれが警察隊が十一万のものを十五万になると仮定いたしましても、それに使用すべき裝備近代戰を有効適切に遂行し得る能力のないものであれば、これは戰力にならない、こう考えております。いわゆる兵力編制裝備を噛み合した一個の総合体でこれを判断すべきものであると私は考えております。
  21. 楠見義男

    ○楠見義男君 その点については私も法務総裁と同様の考えを持つのであります。そうでありまするからこそ、先はどの第四問の最初に、概括的に言つて総合的に見て戰力戰力ならざる力との限界をどういうふうに見ておられるのか、こういうように伺つたわけであります。従つて今お述べになつた点については、私も同様に思うのでありますが、その基礎の上に立つて戰力戰力ならざる力との限界を伺いたい。
  22. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 要は、問題になるのは今の警察予備隊の問題でありまするが、これが只今のところではどれだけになるかというのは、私の所管外のことでありまするから、的確なる数字はわかりません。併し裝備も、私の聞くところによりますると、バズーカ砲とか、機関銃とか持つているということは事実だそうでありますが、併したとえばそういうものを持つておりましても、これは私は近代戰を遂行し得る能力はないものと考えております。これは兵の専門に関することでありまするが、近代戰におきましては相当な重裝備を持たなければならん、軽裝備だけではいかんのであります。今の警察予備隊は重裝備というものは持つていないのであります。これはほんの警察力の補充に過ぎないものと、私はこう見ているのであります。その内容如何につきましては、私は所管外でありまするから、十分なことを申上げることはできないのであります。
  23. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 楠見君、もうよろしうございますか。
  24. 楠見義男

    ○楠見義男君 今最後にお述べになりましたような点を、実は私はこの席で伺いたかつた。それは、こういうふうに申上げますのは、明年度予算の防衛費との関連において私は先日も申上げたのでありますが、将来の見通しが付かない限りは明年度予算は氷山の一角である。従つて水の下がどういうことであるかということを我々はよく検討しなければ、氷山の一角は十分の審議ができない、こういう意味で私はお伺いしているのでありまして、従つて今お述べになつた具体的の問題については、政府においてもいろいろ御準備をせられていると思うのでありますから、別の機会でも結構でありますが、是非この問題は予算審議の上において必要でありますので、明らかにして頂きたいということを申上げて、私は本日はこの程度にいたします。
  25. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 先般の本委員会におきまして、憲法第九條が規定いたしておりまする「陸海空軍その他の戰力は、これを保持しない。」という條項に明らかに反するような首相の御発言がありまして、非常に重大なことであるというので、岡本君からも再質問をされ、又相次いで楠見君からも質問され、又最後に私もこのことについて質問いたしたのでありますが、その五名の御質問を通じて、先ほどお取消しになりましたような内容の御発言で終始されたのであります。今日改めてお取消しがありましたのでありますが、一度ぐらいでありまするならば、これは失言というようなことで許されるかも知れませんけれども、あの委員会に列席の諸君が十分御了解でありまするように、三名がこもごも立つて同一のことを再質問したにかかわらず、頑として最初の発言の立場をば固執せられたのが、今日このような取消の結果になりましたということにつきましては、私はいろんな意味において非常に遺憾なことだと思つております。そのことにつきましては、後ほど又更に申上げたいのでありますが、それに先立ちまして、只今の御釈明について若干お尋ねいたして見たいと思うのであります。先ず第一に首相に私は質問いたしておるのでありますから、首相みずから一つ答弁が願いたいと思うのでありますが、即ち安保條約はその前文におきまして「無責任な軍国主義がまだ世界から駆逐されていないので、前記の状態にある日本国には危險がある。」ということを書きまして、更に「アメリカ合衆国は、平和と安全のために、現在、若干の自国軍隊を日本国内及びその附近に維持する意思がある。」ということを申しまして、更に後段におきまして、日本が「自国の防衛のため漸増的に自ら責任を負うことを期待する。」こういうことを安保條約の前文に規定いたしておりますることは、これは言うまでもなく、吉田首相十分に御了解のことだろうと思うのであります。で、このような趣旨によりまして締結せられましたところの安保條約が規定いたしておりまするところの我々が駐留を認めておりまするところの米国の軍隊であります。言うまでもなく我々は講和條約には独立の契機をつかまなければならないという立場からこれには賛成をいたしましたが、安保條約には潰憾ながら青票を投じて反対したのであります。併し国会は多数によつてこれを通過せしめました。その安保條約規定の米国の駐留軍というものは、これは先ほど来のお話にありまするところの憲法上の戰力であるかどうかということを、先ず吉田首相みずから二つ御答弁が願いたいと思います。
  26. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) それはしばしば私が申す通り日本の安全独立を保護するためであつて、あえて戰力を費的といたしたのではないのであります。趣意は日本独立日本の安全を保護するためにアメリカが適当な処置をとる。これを以てからに外敵と交戰をするというのではなくて、一に日本独立を守る、その趣意で置かれたものであります。戰力と直ちに私は言い得るものではないと思います。
  27. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 そうすると甚だ奇怪な感じを私たちは受くるのであります。(笑声)日本に駐屯いたしまするところの米国駐留軍は戰力ではない、戰争をするために駐留いたしておるのではないという御答弁でありますが、もう一度お伺いいたしたいと思うのでありますが、はつきりもう一度御答弁願いたい。たびたび前言をお取消しになることがあるのでありますから、はつきりこの点は明確に速記録にとどめておきたいと思いますので、米国駐留軍は戰力でないのかということをもう一度御答弁を願いたい。
  28. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをします。私の言う戰力でないというのは、憲法にいわゆる陸軍、海軍、空軍その他の戰力、その戰力日本が持たないという戰力であります。アメリカ軍の隊が戰力であるかどうかはともかくとして、日本としてはこれを持たないということを規定しておるのであります。
  29. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 日本国民の建前からいたしまするならば、日本憲法を遵守するところの義務を持つているところの戰力は第九條によりまして保持することができないことは当然でありますが、安保條約に規定いたしておりまするところの米国駐留軍というものは、これは戰力であるかどうかということを私はお尋ねいたしておるのであります。もう一度御答弁をお願いしたいと思います。
  30. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 法務総裁からお答えいたします。
  31. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 いや総理から一つお願いしたいのですが、(「総理々々」と呼ぶ者あり)
  32. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) これはアメリカ裝備戰力に相当するか相当しないかということは、これは別個の問題であります。(「それを聞いているのだ」と呼ぶ者あり)これはただどれだけの戰力を持つて来るか、或いは戰力に相当しないものを持つて来るか、これは只今段階ではわからないのです。
  33. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 無責任な軍国主義がまだ世界から駆逐されていないので、そうしてその侵略の危険に曝されているところの日本を護るためにということが安保條約の前文に規定されているところの安保條約の基本的な精神でありまするが、そうすると只今吉田総理及び法務総裁はたびたび原子爆撃あるとか或いはタンクであるとか、軍艦であるとか、そうした近代戰争に耐え得るところの軍備を持つておるところのものは、これは戰力であるということを今までたびたび言つておられるのでありますが、そうするとそうした外敵からの無責任なる軍国主義的侵略と戰うためには当然に、今申したような近代的な裝備を持つたところの軍備がなければ安保條約の規定の趣旨というものは実現することができないということにならざるを得ないと思うのでありますが、只今法務総裁答弁は、法務総裁みずからたびたびこの委員会その他において御声明になりました前言と全く矛盾したことになつて来ると思うのでありますが、それについて責任ある御答弁一つ促したいと思います。
  34. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 繰返して申しまするが、この戰力にあらざるか、戰力であるかということは先ほど申した通りであります。そこでアメリカ駐留軍が如何なる裝備を持つて来るか、これはいわゆるその外敵の侵入の客観的情勢によるものと私は考えております。それで外国のいわゆる侵略に用いる裝備は、これがいわゆる今吉川君の申されました通り、原子兵器或いはその他の有力な近代兵器を用いる可能性あれば、これは無論アメリカ軍におきましてもさようなものを用いる決意と覚悟はあるものと十分推察されるのであります。要はつまり相手方の兵力如何、ここに帰着することであろうと思います。そこでアメリカ軍が如何なる裝備を持つかということについては、我々はそれを知るべき段階でないというのであります。
  35. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 どうも甚だ了解しにくいのでありますが、ともかく私たちは安保條約には反対したのでありますが、これを賛成する立場からいたしまするというと、安保條約の前文に規定しておりまするように、日本はそういうところの自衛のための軍備力というものを持たないから、代つてアメリカがそれを持つて来てそうして外敵を防いでやろう、即ち無責任な軍国主義と侵略を防いでやろうということのために、我々は米軍の駐留権というものを承認いたしたのであります。私たちは反対いたしましたが、ともかくまあ国会全体の意思としては認めたことになるのでありますから、今申しまするように、近代戰に耐え得るような、即ち近代的な戰争手段によるところの、その軍国主義的な無責任な侵略というものに耐えるということのためには、当然に機関銃も、ときには軍艦も或いはタンクも原子爆弾もこれは持つて来るのでなければ、それに対抗することができないことは明白なことでありまして、そういうものを持つて来ないところの米駐留軍でありまするならば、何も駐留権を我々は承認するところの私は理由は成り立たんと考えるのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)それは極めて明白なことであると思うのでありますが、法務総裁は前言しばしばお繰返しになりましたところの言葉と今の御発言は矛盾するばかりでなく、又常識的に判断いたしましても、子供でもあなたがおつしやつているようなことは理窟が通らないということは直ちに感じざるを得ないことだと思うのでありますが、これ又もう一度です、もう一度はつきり一つ今申しましたことについて、もう一度お答えを願いたい。
  36. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 法務総裁、問題をはつきりして……。
  37. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 今の私の点について、さように私は申上げます。つまり米駐留軍というのは、結局日本のこの何と申しましようか、何らの裝備ないこの日本を守ろうということであります。つまり日本においては戰力がないから、日本に代つて日本の国の外敵の侵入を守ろうというのであります。従つてです、外敵裝備如何によつてこれに対応すべき兵力、軍力を持つことは、これは当然であります。併しそれが外敵如何なる裝備を持つ、それに対して駐留軍が対応すべき兵力如何ということの具体的内容については、我々は何ら今の段階においては関知しないのであります。将来においては大いにこの問題については協議をすることでありましようが、今の段階において如何なる裝備如何なる兵力を持つかということはわからんのであります。少くとも外敵の侵入に対して、有力且つ適切にこれを駆逐し得るだけの兵力裝備を持つべきことは、これは当然のことであろうと思います。なだ内容如何ということについては、我々は今の段階においてわからんと、こう申しただけのことであります。
  38. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 それは私の質問に非常にこの用心深く、何か失礼ですが、多少伏線でもあつて怯えていらつしやるような気持から、今のような御答弁をおしになるのじやないかと思うのでありますが、何も私は日本政府が、日本国民がこの憲法第九條に規定しておりまするところの戰力を持つとか持たんとかいうようなことを今あなたに御質問しているわけではないのであります。アメリカ軍なんです。アメリカ軍なのですからそうその詭弁を弄さないで、常識的に誰もが考えられるような通念に従つてはつきり一つ躊躇することなく私は御答弁になつていいのじやないかと思うのでありますが、それで只今の御答弁を裏返しまするというと、我々が安保條約によつて駐留軍を国会が承認した、私たちは反対いたしたのでありますが、その駐留軍を承認しましたところの米国駐留軍は、それではあなたがたびたびお言いになつた定義に従うところの近代戰に耐え得ると、弓の裝備を持つたところの、即ちタンクであるとか機関銃であるとか、或いは軍艦であるとか、或いはときによれば原子爆弾であるとかいうようなものは持つて来ない、そういうものは持つて来ないところのアメリカの軍隊が日本に駐留するということになるのであるかということについての御答弁を促したいのであります。
  39. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 先ほど申しました通りでありますが、無論アメリカ軍としては、近代戰に適応すべき裝備を持つて来るものと確信しております。それは現在の外敵如何なるものを仮裝敵国にしておるか、これは私にはわかりませんが、少くとも日本のこの国土を外敵が侵入するのにおきましては、近代兵器を持つ、用いるということは、これは当然であります。従つて、いわゆる日本憲法第九條の戰力に相当すべき兵力は当然持つて来るものと私はこう考えております。それでなければ恐らく外敵の侵入には日本は耐えないことは当然であります。少くとも近代戰を有効且つ適切に遂行し得る編成裝備を持つた軍隊が駐留せらるべきものと私はこう考えております。
  40. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 初めは非常に躊躇されておられましたが、だんだん質問して参りますというと、大体において私が申しましたように、米国駐留軍はやはり近代戰争に耐え得るところの裝備を持つて来るということになるのでありまするから、これは即ちあなたがたびたびお言いになりましたところの戰力であるということにまあ私はならざるを得ないと思うのであります。  それで当然にそのような戰力、即ち近代戰に耐え得るところの、裝備を持つたところの戰力がなかつたならば日本独立と安全は守れない、こういうことは、当然に政府としてはお考えになつておることだろうと思うのでありますが、そこで私は、今度は法務総裁ではありません、総理みずから一つ答弁願いたいと思うのでありますが、今の法務総裁の御答弁によつて、今申しましたようなことがだんだんまあ明白になつて来たわけであります。それでです、これは、この安保條約の前文にやはり先に引用したところでありますが、自国の防衛のために「漸増的に自ら責任を負うことを期待する。」即ち日本が自国防衛のためにだんだんとみずから責任を負うようになつて来ることを期待するというところの、この前文を掲げておりますところの安保條約をあなたはサンフランシスコ会議において調印しておいでになつたのでありますが、そこでこの漸増をアメリカが期待している、そうしてそれに承認を與えたという、この安保條約の今の文言を承認いたしましたということはですよ、これは日本の側から申しまするというと、だんだんとその駐留いたしまするところのアメリカの軍隊というものが漸減して行くということ、アメリカ兵力或いは武力又は戰力というものが駐留するその戰力は、日本が漸増して行きますならば、それは向うが漸減して行くということがまあこれは当然に考えられて来る、今の文言の裏から生れて来る当然の結果であると私は考えられなければならんことは明白であると思うのであります。そうすると、その漸減して行きまするところの米軍の戰力というものはですよ、何らかの方法で、これは安保條約が規定いたしておりますところの、日本の平和及び安全というものをば守るということのためには、これを補充して行かなければならない。日本のほうから補充して行かなければ私は日本のこの独立と安全は守ることができないどいう結論にまあなつて来ると思うのでありまするが、そこで私は吉田総理にお尋ねいたしたいことは、右のような前提に基きまして、その漸減いたしますところの武力又は戰力というものは、どのようにして補充するところのお考えを持つていらつしやるのであるか。これは安保條約における今の文言を承認せられましたところの総理として、当然にそれに代るところの方法を御考慮になつて御承認になつたものと思いますので、それを一つ答弁が願いたいと思います。
  41. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをしますが、漸減と言い漸増ということはアメリカ政府としては、日本に米兵を駐留せしむることは希望しないが、併しながら現在の東洋の状態からいつてみて止むを得ず駐留せしめてそうして日本独立、安全を守る。従つてこれはやがて日本の国力の充実と共に漸減せしめたい。又日本も漸減せしめてみずから自分の国の独立は、安全は自国の力で以て守りたい、こういう考えからこの両国の間の意見が一致して、漸増となり漸減となつたのであります。然らば今後どうするか。どうして漸増するかというお尋ねでありますが、これは一に外界事情にもよります。仕合せにして外界事情日本の安全を脅かすような情勢がないという場合には漸減しても漸増する必要もなし、漸減も実行ができるわけであります。一にこれは外国日本に対する、日本の危險の度合によつて考えるべきものと、もう一つ日本の国力の増加によつて対応するという、二つの條件によつて決定せられることであつて、これは将来に属することであります。
  42. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 まだ甚だ腑に落ちないことが極めて多いのでありますが、結局吉田さんの御答弁から推断いたしますというと、憲法第九條によるところの戰力は保持しないということは、これを否認して、そうしてやはり日本戰力を保持しなければならない、保持するようにするということは結局時期の問題であるというように、まあこの間のお言葉に対しては否認的な釈明を今日せられたのでありまするけれども、これは一時的の言い逃れであつて、結局はいつの日においてか、やはり先般の委員会で御声明になりましたような戰力保持の挙に及ばれるということは、これは時期の問題に過ぎないというようにまあ解するほかないと思うのでありますが、それについての御答弁はあえて重ねて要求はいたしません。  最後にただ一言だけ申上げておきたいことは、総理大臣である吉田さんが、最初に申しましたような極めて何と申しますか、無責任と言うと語弊があるかも知れませんが、少くともまずいところの声明をおしになつて、今日それを釈明しなければならんというようなことになりましたことは非常に遺憾でありますが、それは私は基本的に吉田さん、及び吉田さんによつて代表されておるところの現内閣というものが、この憲法を誠実に履行して行かなければならん、そうして、そのためには本当に心からこの憲法の精神を生かして行こうというところの精神が、十分に確立されておらんことから来るところの一つの結果が、私は今度のことに暴露されたのではないかと、このように考えざるを得ないのであります。議論はすべて省略いたしますが、結局今日までの吉田内閣のなすところを見ますというと、憲法というものを少しも尊重しておらん、新憲法の基本的精神は民主主義である、即ち人民主権の考えでありますが、吉田さん初めその他の閣僚諸君が、この従来の旧憲法、明治憲法の基本的精神でありましたところの国家主権、或いはそれと結付く君主主権というものと対脈的な立場に立つておるところのこの人民主権というものの精神というものを、基本的に私は少しも理解しておらんと断言しても決して間違いではないと思うのであります。憲法を本当に守るというところの誠意を持つていらつしやらない。それでこの間の委員会で私は專ら論点をそこにおいてお尋ねいたしましたところのこの行政協定というものが、広義におけるところの立法形式においてこれは違憲である。即ち憲法七十三條によるところのこれは條約であるということについて吉田総理答弁を促しましたところが、條約にはこの国会の承認を要するところの條約と要しないところの條約があるというような奇妙な御答弁があつたのでありまするが、そういう條約に、一は国会の承認を要するものであり、一は国会の承認を要せざるところのものであるというような、国会の承認を要せざるところの條約というものは、これは七十三條の解釈上絶対にあり得ないものであります。従つてあの行政協定を国会の承認を求めるの挙に出られないということは、これは明らかに憲法違反であると思います。でありまするから、これは二院制度の運営の立場から、今日第一院である衆議院が、無理でも何でも通しているところの與党が多数であるのでありますから、参議院においてこの違憲性ということを明白にして、私はこれを飽くまでも七十三條の條約であるから国会の承認を求むるの挙に出るべきであるということの決議を、何らかの機会において参議院がして、そうしてこの政府の違憲性というものをば質し、そうしてこの新憲法を守らなければならないと思うのであります。そのことについて、そういうところの行政協定を国会の承認を求めないのは、これは憲法違反であるという決議案が参議院において成立したときにおいて、政府はどういう態度に出られる御所存であるかということを質問いたしまするというと、吉田さんはそのときになつて考えますと言われたのでありますが、これは今度のこの第九條違反の問題に関連して三名が申しましたことをば、そのときは満幅の自信を持つて答えておかれながら、後日になつてそれは間違つてつたのだというような態度に出ておられると同じように、参議院がこの違憲性を衝いてこれは違憲であるということの決議をいたしましたときに、又今日と同じように、前にはたびたびこれは違憲でない、憲法七十三條によりまして承認を得なければならないところの條約ではないという立場に終始しておられるのでありますが、これ又このような無責任な態度と同様に、そのときになつて、これは前にはそう言いましたけれども、これはやはり国会の承認を経るものでありますというような御声明を今度おしになつたところで、これはもう絶対に世間も国会も許さないだろうと思うのでありますが、どうぞそのときにはです、私は多分にその決議案が参議院において、参議院議員の諸君が憲法は守らなければならんものである、その行政協定の内容がどうであるということはこれは別個の問題で、その手続においてこれは国会の承認を得るべきものであるということは、このことは当然なのでありますから、そういう決議案が通りましたときには、どうぞ今日のような醜態をもう一度繰返すことなくして、潔く総辞職して国民に対するところの責を明らかにして頂きたいということを希望申上げまして、問いたいことはまだたくさんありますけれども今日はこれで終ります。
  43. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 私先ほどからのいろいろ委員政府間のお話合いを承つておりますと、非常に何と申しますか、政府のお考え方が事実を離れて架空的な議論をしておられるように思うのであります。今私どもはどういう立場に立つておるかということは、先ほど吉川委員から言われましたように、第一は安保條約が締結されているということであります。そうして安保條約に基いて直接、間接の侵略に対して私ども日本国は漸増的に責任を負う、自国の防衛のために責任を負うという新たな事実が発生しておるのであります。それから更にこの安保條約に基きまして行政協定の第二十四條におきまして、外敵の脅威が生じましたとき、その急迫の場合には日本が共同動作をとる、共同処置をとるという取極めが一つつているのであります。でこの事実、先ほど総理大臣外国との事情、その他にも考慮が入ると言われたのでありますが、この條約自身はあなた自身がサンフランシスコで御調印になつて来られた條約であり、そうして行政協定は極く最近に両国政府間において案文がまとまつたものであります。更にこれを予算的に見ますると、御承知通りに、昨年度は警察予備隊は当初予算においては百六十億であつたのであります。それをこの安保條約ができますと百五十億追加されまして三百十億になつたのであります。それが今度の二十七年度予算におきましては六百五十億、警察予備隊及び海上保安庁経費として警備のための費用というものが合せて六百五十億あるのであります。で更に防衛支出金といたしましてアメリカの駐留に対しまして六百五十億の経費を計上されておる。更に安全保障諸費として五百六十億の経費が新たに加わつて来ておるのであります。この立場を忘れまして私どもは論議ができないと思うのであります。そういう点から考えますと、私は実は吉田総理大臣の六日の本委員会におけるところの言明は率直に申して訂正さるべきものでない、この新らしい事実に対する何らかのお考えからこの問題が出て参つたと見るほうが自然であり、当然でなかろうか。私はそういう点におきまして、吉田総理にお聞きいたしたいことは、六日の予算委員会において、実は三人のほかにも内村及び吉田委員からもこれらの点に関連した御質問があり、で実はこの問題の経過を考えてみますると、吉田総理自身はです、吉田総理自身は憲法制定のときの総理大臣であります。そうして当時有名な野坂參三君とのやりとりにおいては、九條の問題につきまして自衛権そのものを否定するがごとき答弁をされております。又平和條約及び安保條約の締結に当つても、かの有名な吉田氏と芦田氏との議論のやりとりがこの問題に関してあつたことは周知の事実であります。而も従来とも私は法律解釈の末節にとらわれるわけではございませんが、この憲法九條に関する限りは、如何に法律解釈が下手であられるところの吉田総理にしても、この問題に関する限りは、従来議会でしばしば自ら御答弁に立つておられる、そういう方が、この六日の委員会におきまして、而もたびたびの質問に対して同じことをお答えになつて、そうして率然として今日お取消になることを理解するに苦しむのであります。單なる失言だとか、單なる事実の誤認であつたとか或いは全く不用意の間に質疑が行なわれてそうして思わざる答弁をした、そのときの行きがかりで何らか作為的に行なわれた質問に対して答弁が行なわれたという訂正は全然ないのであります。こういう過去の経緯を見まして、私ども普通の頭、恐らくここにおられるところの委員諸君は、どの党に属されどういう立場をおとりになりましようと、この問題が單なる訂正だとお考えになる方は殆んどいられない。こう考えるのでありますので、甚だ失礼でありますが、何故お取消しに一国の総理として責任をお負いになつて、そうしておつしやつたことを何故お取消しになつたか、その理由を私は承りたいのであります。
  44. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私の憲法九條に関する解釈は一貫いたしておるのであります。ただ六日の委員会における私の言い方が、あたかも憲法を否認するがごとき言い方をし誤解を生じたようでありますから、先ほど申した通り日本の安全独立日本の国力を以てみずから守るべきものであるということを強調せんと欲したためにたまたま誤解を生じましたから、今日責任を以て明らかに訂正いたしたのであります。(笑声)
  45. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 私は実際そのお言葉を聞いて驚き入るわけであります。吉田総理自身は何らか自分の見解誤解さるるがごとき言葉を使つたからというふうなことを言われるのでありますが、私どもはそう言われて簡單に取消さるべき性質のものでない、殊に総理大臣のお話でありますので、私どもは愼重に速記録を調べて参つておるのであります。そういうふうなこともあろうかと思いまして速記録を調べて、そうしてここに臨んでおるのであります。あなたの従来の九條の解釈は一貫しておる、それは丁度今日お取消しになつたのはやや一貫しております。併し六日にお話になりましたことは、單純な言葉の問題だとは考えられん。たくさん例を挙げることができますが一例を挙げまするならば、吉川委員質問に対しまして、第九條において日本自衛独立を保護する戰力といいますか、戰力という言葉を使つたからたまたま誤解を招くとおつしやるのでありますが、実は戰力と言いますか、方法、つまり自衛のための手段方法を禁じたものではないというのが私の見解であります、国として独立する以上は、その独立を保護し、安全を保護するためには国力を傾けて如何なることもできる、憲法九條はこれを禁止したものではない、これが私の見解でありますと、一貫した御説明がありましたならば我々は疑いを何ら持つていない。併し実は従来総理の御見解とは違つた見解がここに表示されましたために、我々自身がみずから耳を疑つたほとであります。それですから委員が相次いで質問したことは事実であります。單純な誤解とは私はどうしても理解できない。併しこれが私だけならば私は吉田総理が訂正される理由を聞きません。併しここにおる委員皆耳を疑つたほどでありますし、当時これは新聞紙上にも大きく取扱われて国民自身が皆この点に心をひそめておる問題でありまするから、総理が六日の御答弁をお変えになつた理由はここでです、ここで、六日の日にあの答弁をなされた、そうして今日お取消しになる理由は何らかの実際上の理由というものを、私は総理大臣として單純におれはこの前の考え方は変つたのだという考えだけでなしに、又言つたことが誤解されたのだからこうなんだということでなしに、この間の経緯というものを私は明らかにされる責任がある、総理大臣として責任があると思いますが、なお單純に私どもがあなたのお話を誤解したものだということを重ねて断言されるでありましようか。その点についてもう一度御答弁を要求いたします。
  46. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私の訂正は、いろいろ誤解を生じたから、ここではつきり訂正をして誤解を一掃したいという考えから出たのであつて、訂正その他について何ら作為もなければ行きがかりもないのであります。
  47. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 それではその点につきましては、私は今総理大臣のお話に納得ができないし、皆がそう考えたことを私が代表して申上げるという点から見ましても、私自身は未だにその事実、その疑問を拂拭いたし得ません。恐らく委員諸君もそうだろう、国民諸君も私はそうだろうと思います。併しその問題につきまして、一応同じ問答を繰返しておりましても無駄でございますので、それは別個の判断に譲ることにいたしまして、ここに総理大臣にお聞きいたしたいことは、ともかくも安保條約自身について御調印なすつた。そうして直接間接の侵略に対して漸増的に責任を負うというお取極めをなすつて帰られたわけであります。更に今度の行政協定の二十四條では敵対行為が生じた場合、その急迫した脅威が生じた場合には共同措置をとるということをお約束になろうとしておる。こういう意味においてこの責任をお果しになるためにどういうことをなさんとされるのでありますか。これは両條約から直接日本外国に対して負う責任であります。この点についての総理の明確なる御答弁を頂戴しだいと思います。
  48. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは先ほど答弁をいたしたと思いますが、内外の事情日本の国力の回復によつて日本が漸増ができるような、又漸増を必要とするような内外の事情が生じた場合に漸増の方法を考える、これだけであります。
  49. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 私はそういう実は御答弁は存じ上げておるのでありますが、二十七年度予算におきまして、防衛支出金六百五十億、警察及び海上保安隊の関係におきまして六百五十億、安全保障諸費において五百六十億、これはアメリカ等の外国と調印されました條約に基いての金額だと考えますが、果してそうでございましようか。
  50. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) その通りであります。
  51. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 その点はお確しかめになる必要もなく明らかなことだと思います。そういたしますと、私は伺いたいのでありますが、警察予備隊には新らしい任務が入つてつた。両條約によつて新らしい任務が入つてつたものだと考えなければならない。而も先ほども申上げましたように、二十六年度当初予算と比べて見ますならば、百六十億で出たものがだんだん安保條約と合せまして更に追加補正が行われて三百十億になり、六百五十億となつてつた、これが両條約に基く外国に対する責任でありますならば、この点から見まして警察予備隊には私は新らしい任務が生れて来たものと言わなければならんと思いますが、その点に御同感になりましようか。
  52. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 警察予備隊につきましては、安全保障條約の調印に伴いまして、別に新らしい任務が増したというふうには考えておりません。もとよりこの安全保障條約におきまして自衛力漸増ということを謳つてはありますが、警察予備隊自体といたしましては、従来のごとく国内治安を維持するということを唯一の使命といたしてございます。
  53. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 実は大橋国務相がお立ちになつたので、これは非常に幸いなんですが、大橋国務相は平和、安保両條約を結ぶときに、これは速記録を御覧になるとわかると思いますが、そのときに漸増的に責任を負うのじやないか、そうすると今後警察予備隊はどうなるか、現に百五十億の追加補正が二十六年度にあるじやないかと言われたときに、警察予備隊の増員は考えておりませんということを言われておるのであります。それはこの間ここに来られまして、六日でありましたか、委員会警察予備隊の強化をこれから図るのだと、こう言われておられるのであります。私は実は今日は特に総理の過般の声明に関してでありますから、調印された事務の末梢はいずれそういうことを取上げまして、いろいろと本年度予算を検討いたしますることは今日以後に譲りたいと思つておりますが、要するに首相が祖国の防衛を説き、祖国愛を説かれる以上、そしてあの條約を調印になつた以上、どこで日本は防衛するのだ、どこの機関にさせるのだ、どの程度にさせるのだというお考え総理大臣として当然あつたに相違ない、ただ言葉で以て判こを捺されたというふうには考えられませんので、総理大臣として、私は国を愛し、国を守るという力は今後日本人が養つて行かなければなりませんし、そうしなければならないのだという單純な御答弁でなしに、二十六年度及び二十七年度予算においてどれだけの経費を見積つて誰にやらせるのだ、どの機関にその使命を與えるのだというくらいのことは、総理大臣として当然お考えになり、御答弁になれそうな問題だと思いますので、総理大臣から御答弁願いたいのであります。
  54. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをします。警察予備隊は法律でその性格について明記されておる通り十月に解体し、その任務を終了するわけであります。防衛は警察予備隊が解体したあとにどうするかということは今折角研究いたしております。警察予備隊自身に新らしい任務を加えるということはいたすつもりじやありません。
  55. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 重ねてお尋ねいたしますが、あなたが調印され、そして大蔵大臣が先ほど耳打ちしましたように、二十七年度予算において急激に多額な経費を見積つてありますが、この任務はこれはあなたが條約で調印された任務を誰がどこで責任を負うのか、日本の国が負うのだと言えばそれきりでありますが、およそ日本国の組織としてどこにその任務を負わせるのだということはおきめになるのが総理大臣の御立場である、その問題について御答弁を願いたいと思うのであります。
  56. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 警察予備隊は十月に至つて解散いたします。一旦終了しますが、その後の組織については目下その組織について研究中であります。
  57. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 実は総理大臣に申上げますが、條約を調印するときからその御心組はあつて然るべきものであつて警察予備隊はさつき大橋君も言うように国内治安を目的とするだけでありましたら、その條約に基き、行政協定に基きまして担当する機関がないのであります。一方においては非常に急遣した国際情勢をお説きになり、そうして外国軍の駐留をお認めになると同時に、條約はそういう條約を結んで来たが、まあゆつくり考えるんだというお話では私どもは二十七年度の予算を審議しようがないじやございませんか。我々に二十七年度の予算をお見せになる以上は、先ずその点は明らかになつていなければならない。同時に今後漸増的にどういう御計画で、折角国民生活をお説きになるなら国民生活とどう調和するかということが必ずなければならないと私は思うのでありますが、未だにその点についてこの安全保障條約に基き、行政協定に基いてどこの機関が、誰が担当するのだということはおきめになつておりませんか。私は予算審議に当つて重大な問題だと思いますので、更に重ねて御質問申上げます。
  58. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは一応今日は大橋国務大臣が主管になつて防衛隊といいますか、治安隊といいますか、その組織を目下研究いたしておるのであります。如何に組織するか、一応予算はとつておいて、その予算の下にどう編成するか、編成する法案ができましたならば、議会の協賛を経るつもりでございます。
  59. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 私は実は二十七年度の予算を御提出になるときに、條約文を日本国会が批准いたしましたのは昨年の事柄であります。そうして今更に行政協定をおきめになつておる。而も私は決して細目規定だとは思いませんが、総理大臣のお話によると、これは細目規定だ、岡崎君が担当してやつておる、そういう問題につきまして予算を御提出になりながら事実が明らかになつておりませんことは、我々に予算審議の何といいますか、基礎について何ら説明がされない。国の基本的なものが何も説明されない、一体安本長官はそこで目をつぶつておられるが、安本長官の経済自立計画なんというものは、この問題を抜きにして考えられない。そういうふうなことをお考えになつても、ともかくこの二十七年度の予算をお出しになる以上は、どうしてもこの問題を明らかにされる御責任があると思いますが、今日は特に総理大臣の御責任、訂正に関連しての問題でありますから、実質論はあとでいたしますといたしまして、先ほどから委員とのやりとりの中で、私は木村法務総裁の御答弁について非常に不満足に思うのでありますので、どうしても確めておかなければならんという問題が発生いたしました。木村法務総裁戰力の定義としまして、近代戰を適切有効に遂行するに足る裝備編成を持つていなければ戰力にならないのだ、こういうふうなお話であつたのであります。御答弁が何から起つてつたかといいますると、実は岡本、楠見両氏が何だか戰力が、階段的に自衛力が積み重つて行つて戰力になるんじやないかという御質問、富士山の一合目か二合目というようなところから来たと思うのでありますが、併し私は先ほど木村法務総裁と各委員とのやりとりを聞いておりますと、まるで戰力というものはアメリカと、今総理大臣もそう言われたと思うのですが、アメリカとソヴイエトとイギリスくらいの軍隊を持たなければ戰力でないようなお話、それでは成るほど日本の国は一遍につぶれてしまいます。そういうふうなお考えであるのでありましようか、どうでありましようか。実は私は單純に兵力量裝備の関係だけでない、やはり本来の任務を、国土を防衛するかしないかという意思が具現しておるかどうかという問題が一番大切なんだ、その問題がなくてはならない。極く僅かな軍隊を持つておる国は世界中にある。一体日本の国は戰争に敗れまして国土を失い、富を失い、国民は惨憺たる中にあつたのであります。とにかく架空のお話、あなたがたの私は頭脳自身を疑うのだが、アメリカやソヴイエトの戰力を、軍備を持つなんということを考えられることは、これは物理的に不可能だけじやない、(笑声)そんな例をお引きにならないで、こういう形式論をなさつておられるときじやないと思うのでありますが、その点について木村法務総裁からもう一遍御答弁を願いたいと思います。
  60. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 申上げます。要はは憲法第九條の精神であります。先ほど申上げました通り、これは太平洋戰争のような愚を再び繰返すことをしないということであります。そこでこの戰力というものは先ほど申上げましたように、つまり客観情勢、殊に我が国の地理の問題、それからみんな総合したもので判断すべきものであろうと考えます。現在の段階においては私はこの周囲の事情からいろいろ総合してこれを考察しなければならん。結局日本だけの問題ではないのであります。それですから、日本が侵略戰争にこれを使い得るような裝備でありますると、これは無論戰力に該当するのであります。日本が侵略戰争に使い得る裝備と言えば、結局近代戰を有効適切に遂行するような編成を称するのだということになければならんのであります。日本を守るだけのものであればこれは決して侵略戰争に使い得るものではないのであります。私はそこは戰力ということは言えない。結局はつまりすべての世界情勢、日本の情勢を判断した上で、私の申上げまする近代戰を有効に遂行し得る能力を持つたものかどうか、そこに基準を置くものと私は思うのであります。
  61. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 どうも法務総裁は私の質問お答えにならない。あなたは一遍世界各国の軍備で以て少い軍備のほうもお調べになる必要がある。それは近代戰争を遂行するに足らない。而もソヴイエトや、そうしてアメリカというものを頭に入れつつ近代戰争を戰かわれるものでない。だからあれは軍隊でないのだというふうにあえてお言いになるか、だから裝備兵力量の問題は裝備編成のほかに国を守るか守らんか、国を守り、国土を防衛し、外敵から国土を守るのだという精神があるかないかということが一番根本の問題じやないでありましようか。その点だけお答え願いたい。
  62. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 單純に国を守るというだけのものであれば、結局戰力ではないと私は考えております。
  63. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 そこで問題は、單純に、精神があるかどうかという問題が現実に起きているのであります。それは現実にアメリカと條約をお結びになつて日本としては結んで、そして直接侵略に対しても責任を負うと書いてある。先ほど吉川委員の質疑に何だかおかしな答弁を最初されたのですが、アメリカの駐留軍というものは戰力とみなすかみなさないか、憲法は別としてみなすかみなさんかというお話のときに、あなたは初めは変だつたが、戰力とみなさざるを得なくなつた。この相互関係において、余りよそを向いてお話になりまするから、行政協定の二十四條をもう一ぺんお読み返しを願いたい。行政協定の二十四條には、まさかこの重要な規定をお忘れになつておるとは思いませんが、余り話が横道に参りますから、もう一遍私に読ませて頂きます。「日本区域において敵対行為又は敵対行為の急迫した脅威が生じた場合には、日本国政府及び合衆国政府は、日本区域の防衛のため必要な共同措置を執り」……でアメリカ戰力だとお認めになつておる。これと共同した措置をとる機関がなくてはいけません。法務総裁で戰えるものでない、大橋国務相で戰えるものでない、共同措置をおとりにならなければならん。而もこの行政協定の註釈によりますと、場合によれば又総理大臣もしばしばこの点は言明されておるのですが、アメリカは駐留軍を早く引揚げたいのだ、だから日本の国が漸増的に責任を負つて、先ほど吉川委員にも御答弁になりましたように、それに対して責任を負つて行くのだということは明らかなんです。そして本年度予算において多額の防衛負担金をお持もちになつている。先ほどのお話に、まるでアメリカのことはアメリカでやるので俺は知らんでもいいというようなことをおつしやるのですが、二十七年度予算において審に六百五十億の防衛負担金を盛つている。安全保障諸費におきまして五百六十億、まだそのうちの相当部分を費やそうとしている。そして共同措置をとろうとしている。そして日本独立しようとしている。日本独立しようとしている。そのときにアメリカアメリカだ、俺の所に来て何をするのかわからんということは言つておられるわけはないのであります。だから私をして言わしめれば、この安保條約をお結びになり、行政協定をお結びになつた以上は、そこに国を防衛する意思が生じて来ておる、これは明らかであります。そうしてアメリカ兵力と相応して、戰力と相応してそうして睨み合せて以て自国の防衛を守つて行こう、こういう状態にあることは確かである、而もそれを具現するために多額の予算がごこに盛つてある。こういう問題について考えられますことは、先ず第一に何といつても、それはただ裝備もない、編成もなくて国土を防衛するのだと言つてもこれは空論でありましよう。それでそういうふうな状態において行こうということで本年度以降の予算が盛られること、條約をきめた以上はそれは明らかだと私は思うのであります。だからそういう点におきまして、もうそういうふうな状態になつて参りましたときに、今言つたような架空の解釈をなさつてつて意味がないじやないかということをお考えになりませんでしようか。
  64. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) アメリカ駐留軍とのいわゆる共同措置でありますが、必ずしも日本は軍隊を以てアメリカ駐留軍と共同措置をとらなければならん義務を負わされたわけでないのであります。この共同措置についてはいろいろの方法があります。物資提供もありましようし、或いは土地の提供もありましようが、又ここに考えらるべきことは、この場合の日本内地における治安の問題であります。最も心配するのはいわゆる外敵の侵入などもありましようが、それと同時に日本内地におけるいわゆる擾乱ということを考えなければならん。それらの措置については日本が責任を以てこれを措置しなければならんのであります。要するにアメリカの駐留軍との共同措置というものは、必ずしもアメリカの駐留軍に対して日本の軍隊を作つてそれと共同動作をとるというのではないのであります。あらゆる部面において措置はいろいろとり得るのであります。今申上げまする通り、その当時におけるいわゆる内地の治安の状況を十分に考えなければならん、これに対していわゆる日本警察力を活用するということが考えられるのであります。
  65. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 まあそんな御答弁をなさると思いますが、これは法務総裁もつと事実に立脚されなければならん、日本警察予備隊というものは、現在の状態では警察力の補完的な役割が唯一の目的なんです。で警察自身が第一に国内治安につきましては責任を負わなければならない、これは警察法ではつきりきまつておる。それで国警、自治警が幾らあるか、十二万五千人あるのは御承知でしよう。戰前に幾らあつたか、九万五千人くらいでしよう。九万五千人が十二万五千人の国警、自治警の、つまり三万人多い警察官吏を持つてしてもまだ治安が悪いというのは、これは政治が悪いか、警察自身の質の問題であります。そのほかに七万五千の警察予備隊というものがある。で、国内治安々々と害われるが、国内治安は私ども見解によれば、要するに戰前の九万五千人を十二万五千人に殖やして、これで治まらないのなら、政治が悪いか警察の質が悪いかであります。そのほかに七万五千人がマツカーサーの書簡によつて警察予備隊令というものでできて来たことは御承知通りです。これに使命があるのなら警察力の補完だ、補完的役割だと……大橋国務相の言を引用すれば、これが軍隊の二義的の目的であつたのだから、まさにその使命を持つているのだ、こう言われるのだが、これがアメリカの軍隊によつて指導され、編成され、裝備を借りて、そうして隊伍を組んでやつておることは明らかなんです。で若しも国内治安について重大な問題、私はそれは警察自身が先ず考えなければならない、警察予備隊考えられる問題じやない。と同時に先ほど吉田総理はともかくも保安隊警察予備隊の任期満了を以て考えられるのだ、外国軍の駐留を許すような條約をお結びになつて将来をお約束になる以上は、日本の国としてこの條約上の義務にどれが当るのだということは大体想像できる、ほかにありようがないのです。でそういう点で少くとも木村法務総裁は、警察予備隊が従来の警察の補完的な役割、国内治安の維持に当るという主たる使命が国警、自治警にあつて、その補完的役目というものがあるのですが、今度の條約において警察予備隊がその責任を果す機関であるということだけはお認めになるだろうと思いますが、如何でありましよう。
  66. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 現在の情勢と戰前の情勢とはよほど相違をしておりますし、又御承知通り戰前においては日本は有力なる軍隊を持つてつたのであります。これが一たび内地において重大な事案が起りますると、警察と協力態勢を整える可能性も十分あつたのであります。ところが終戰後におきましては、御承知通り軍隊というものは全然ない、ただ警察一本であります。それで警察一本でこれが日本内地の治安を十分確保されるだけの能力がありや否やということであります。これが平時であれば恐らくこれだけの態勢を備えて行けば、治安は或いは守り得るかも知れませんが、併しながら一たび外国の干渉と教唆によつて一大騒擾事変が起つたような場合を規定いたしますれば、かような警察力では不十分である、かかるが故にそういうときのことを考え警察予備隊というものができたのであります。
  67. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 どうもこつちを言えばこつちだけおつしやつては駄目なんで、警察の補完的役割というものは今警察予備隊令を見れば誰でもわかる。併しそれは條約ができない前にできた警察予備隊であり、條約を結んだ以上は、それについてどこに役割をさせるのかということを一つ端的にお答え願いたい。顧みて他のほうを言われないで、ともかくも條約によつてどこがその使命を遂行するのだ、その使命は警察予備隊がするのだということだけは御肯定になると思いますが、その点だけお答え願いたい。
  68. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 警察予備隊は安保條約において何ら義務付けられていないということを申上げます。(「議事進行」と呼ぶ者あり)
  69. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 そういたしますと、條約によつて国を守るの義務はどこがいたすおつもりでありまするかどうか、それをお伺いいたしたい。
  70. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) もう一度。
  71. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 條約による義務はどこの機関が果すのか、つまり直接間接の侵略に対して日本が漸増的責任を負う機能はどこがするのか、今ないのであります。あなたのお説によると……。
  72. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。自衛力の漸増の問題だと考えております。自衛力の漸増については安保條約によつても義務は課されていないのであります。これは期待するということになつております。日本はさような義務付けはされていない。ただ期待されるのでありますから、その期待に副うべく日本は努力をすべきであると思うのであります。(「議事進行」ど呼ぶ者あり)
  73. 和田博雄

    委員長和田博雄君) ちよつと注意申上げますが、総理発言に対する質問ですから、余り蛇足を加えないように。
  74. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 今そこで総理発言と違つていましたので、つまり総理は安保條約なり、そうして行政協定によつて今後日本は責任を負うのだということを先ほど言われたのですが、ところが法務総裁は期待するという、條約を結んで来ただけだから、その何というか期待である。私どもは期待だつて條約を結んで、そうして先ほど総理は本年度の予算をそれに即応して出したのだとおつしやつた法務総裁は期待だから何にも責任を負うものがなくていいのだ、こういうようにおつしやつた。その二つの御答弁は明らかに食い違つております。
  75. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私の申したのは法律的に申しておるので、期待する、併し国際條約上の慣行といたしまして期待をしているとすれば、これは国際信義に基いてこれを途行ずる、努力することは当然であります。(笑声)総理の言うのは、国際信義に基いて努力する、こういうことであります。
  76. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 だから私は長くなつて困るのですが、それだからそれならば当然だからそれをどこがやるのだ、あなたちがやると言つたつて、やる国家的機能はないのであります。(「議事進行」と呼ぶ者あり)
  77. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) それはその義務付けを、義務ではありませんが、期待に副うべく国際信義に基いて努力する、これを政府がやるのは当然であります。
  78. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 政府のどこがやるのでありますか。
  79. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) それは政府が全責任を負いまして、政府の内部においてそれは協議し、決定するものであると私は思つております。
  80. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 私は実は今議事進行というお話が私の発言中にありましたが、総理大臣が訂正されたことに関連して事実を究明しなければわからないので、事実を明らかにして参つたのでありますが、どうも総理大臣の御説明と各閣僚、殊に木村法務総裁の御答弁とは、どうも何と申しますか、はつきりしていないように思うのであります。そういう事実からだんだん総勢臣のお話を承わつて、それは訂正されるのではなくて、恐らく訂正されない実際の本心をお言いになつたのだろうというふうに私は考えるのでありますが、そうしてその点から国民一つの覚悟を促されるためにおつしやつたのだろうということが考えられるのでありますが、御取消しになつたようなことを前提にして、事実を曲げて各閣僚は言わなくてはならなくなつて来る。そこに非常に私は不分明なものを私の質疑応答を通じて皆さんお感じになつただろうと思うのでありますが、もう一度最後に総理大臣として安保條約をお結びになつて、そうして行政協定をお結びになり、この予算をお作りになるというふうな立場に責任を負われている総理として、今の閣僚、殊に木村法務総裁の御答弁と何ら矛盾をお感じになりませんでしようか。その点について一言御答弁を願いたいと思います。
  81. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは只今法務総裁が言われた通り條約の執行は政府全体として責任を負いますが、併し将来この防衛問題については、現在考究いたしておるところは、或る一省でも作つて、これは行政機構の問題とも関連して研究中でありますが、一省を作つてそうして防衛に関する事務を統一して参りたいと思います。併しこれは行政機構に関係いたしますから、具体案としてここに申すだけのところまで進んではおりませんが、併し差当り大橋国務大臣が中心になつてこの問題一切を考究いたしております。いずれ議会に御提案をいたして協賛を得る運びになると思います。
  82. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 一時二十分から質疑を続行することにいたしまして、暫時休憩いたします。    午後零時十八分休憩    —————・—————    午後一時二十六分開会
  83. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 午前に引続き委員会開会いたします。  午前に続き質疑を続行することにいたします。
  84. 荒木正三郎

    ○荒木正三君 吉田総理は、先ほどの発言の中において再軍備問題に関しまして次のように発言をしておられるのであります。即ち外国事情が許し、我が国経済力がそれに伴うときには再軍備をする考えである、その際には憲法改正する、こういう発言をしておられるのでありまするが、これは我々にとつて極めて重大な問題と言わなければなりません。政府は従来しばしば国会においても、又国民に対しても、再軍備する意思はない、従つて憲法改正する意思はないということをしばしば名言して来られたのであります。然るに予算審議をする本委員会において、外界事情経済力が許せば再軍備をするんだ、こういう見解を表明せられたことは、従来の政府の態度を一変したものと言わざるを得ないと思うのです。こういう意味において重ねてその真意を伺いたい、かように思うものであります。申すまでもなく憲法の前文には「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」、このことは、我らの安全と生存の保持は諸国民の公正と信義に信頼してということが明記されておるのであります。首相の再軍備論は、この平和憲法趣旨を蹂躪するものと私は考えるのであります。そういう意味において、政府の態度がかように急激に変化したということを甚だ遺憾に思うと共に、それに対する十分の説明を私は求めたいのであります。
  85. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私は今でも再軍備するとは申しておりません。又経済力が許せば再軍備をするとも申しておりません。若し必要止むを得ざる場合には、つまり外国の、国外の客観情勢と言いますか、日本に対して危險が迫るとか、或いは仮に追つて経済力が許さなければ再軍備は事実できないのであつて、再軍備を今いたすとは申しておらないのであります。止むを得ずして再軍備する場合には国民総意を問う、今日私は再軍備をしたいとか、するとかということは申しておらないのであります。再軍備しないということは、今なおその方針で進んでおります。
  86. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 これは明確にしておく必要があると思うんです。私は先ほどの総理発言の中において、外国事情が許し、或いは日本経済力がこれに伴つて来る場合は再軍備をする、こういうふうに発言せられたことを記憶しておるのであります。そういたしますと、今日只今は再軍備をしないけれども、これらの條件が伴つて来る場合には再軍備をするのである、こういうふうに言われたのであります。これは時の問題でありまして今日する、しないという問題でなしに、今後こういう方向に進むのであるということでありまして、実質的にはこれは再軍備論ととらざるを得ないのであります。この点総理は飽くまでも平和憲法を固持して将来においても再軍備はしないんだと、憲法に調われておる日本の安全は各国の信義に信頼すると、こういう立場を堅持しておられるかどうか、そういう点を明らかにして頂きたいのであります。
  87. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私は先ほども申す通り日本独立安全は日本の力、武力を以て守らなければならないのであるという観点からいつて見て、仮に日本が再軍備をしない線を堅持いたしておつても、再軍備をしなければならん事情に差追つた場合には考える、私は今日直ちにやれとか、或いはやりだいとかいうことは断じて申しておらないのであります。故に今後といえども、再軍備を、でき得べくんば再軍備もせず、又日本としては、国力も仮に、許したところが再軍備をするということは私は断言いたさないのであります。
  88. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 そうすると、日本の防衛については、日本の自力を以てするんだと、こういうお話でございましたが、先ほど私が読上げました憲法の條文によりますると、我らの安全と生存の保持は諸国民の公正と信義に信頼する、こういう考え方を放棄したということになると思うのであります。いわゆる日本の安全を軍備或いは力によつて保持するということは、この憲法の條文の信義に信頼して日本の安全を図つて行く、こういう考え方とは全く矛盾する、こういうふうに考えるのでありまするが、その点を明らかにして頂きたいと思います。
  89. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私の申したことを甚だしく曲解せられるようでありますが、再軍備はいたさないのであります。又仮に経済力が許しても再軍備はいたしたくないのであります。飽くまでも国際の信義に信頼いたします。信頼いたしますが、万一信頼ができなかつた場合にはどうするかということは又考えなければならないのであります。故に私としては憲法は飽くまでも遵守いたします。併しながら遵守することができなかつた場合はどうするか、再軍備はするかしないかとおつしやれば、飽くまでもしないかとおつしやれば、するかも知れない、日本独立と安全のためにしなければならない場合が生ずるかも知れませんが、私としては飽くまでも憲法を守つて参るつもりであります。
  90. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 非常に私は首相の答弁はあいまいであると思うのです。やはり再軍備をするかも知れない、こういうふうに言われておるのでありまするが、少くとも日本国民はこの憲法趣旨従つて軍備を否定し、そうして文化国家として再建を図つて行く、これが国民の今向つておるところであると思う。この時に当つて、或いは再軍備をするかも知れない、こういうふうなことは私は国民の向う所を混乱せしめるものであると深く憂えるものであります。そういう点において或いはするかも知れないというふうなあいまいな答弁では私は承服することができない。飽くまでも憲法を守つて、そうして憲法の指示に従い再軍備はしないのだ、こういう立場をおとり得ないのであるかどうか、私はこのことをはつきり言つて頂いて質問を打切りたいと思います。
  91. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 只今はいたしません。将来はわかりません。
  92. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 六日の予算委員会における総理の失言に対して、総理は今日取消されたわけでありますが、私はこの予算審議に入る前に、この予算憲法違反の予算である。憲法九條、七十三條に違反しておるからこの予算は審議すべきではない。少くともこの本審査に入る前にこの予算憲法違反であるかどうかを明らかにしてから本審査に入るべきであるということを主張したのでありますが、先ず総理に対する質疑を行う過程において、それがおのずから明らかになつて来るであろうというので、私はその予算の運営の議事に従つてつたのでありますが、果して総理は六日の予算委員会において憲法違反が明らかであるところの言明をなされ、そうして卒然として本日取消された。私は果して総理が本当に真底からあの発言は間違つていたという見地に立つて取消されたのかどうかを疑うものであります。なぜならば、あの総理発言されていたときに、岡崎国務大臣、大橋国務大臣もおられたはずであります。木村法務総裁は席を外しておられたようでありますが、そんなに重大な問題ならなぜあのときに、三回も亘つて委員が念を押した問題であります。岡崎国務大臣も大橋国務大臣も傍におられてなぜこれの訂正を総理に進言しなかつたか。あのときには総理が三回も亘つてはつきりと憲法違反の発言をなされておるのです。自衛のためならば戰力を持つてよろしいということをはつきり言われておるのです。それが予算委員会において重大な問題となり、各派で重大視いたしましたために、卒然としてお取消しになつておる。この経緯に鑑みて本当に心からあれは間違つていた、こういう見解に立たれて取消されたのかどうかを私は疑うのであります。あのときなぜ岡崎国務大臣、大橋国務大臣は、吉田総理大臣が三回も亘つて言われたことについて注意を與えなかつたか。この意味で私は先ず総理大臣に本当にあれは間違つてつたということを自覚されて取消されたのかどうか、先ず質問いたしたいのであります。
  93. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私の訂正の真意をお疑いになるのはあなたの御勝手であります。併しながら私の真意は訂正した通りであります。
  94. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 問題が私は重要でありますから、而も私は理由を述べて総理の取消しの発言が本当に心から出たものであるかどうかが疑わしいという理由を述べてお尋ねしているのであります。若しこんな重大な問題について総理がああいう間違つた発言をされて、あとで卒然として取消すことができるならば、国会における総理の権威というものは何ら信頼するに足りなくなると思うのです。前言を簡單に取消されるのであつたならば、而も全く反対のことを言われておる。総理が、自衛のために戰力を持つということは憲法違反でないということをはつきりと総理大臣はここで言われたのです。その憲法違反のことを総理がここで言われたのであります。それが一夜にして卒然としてその答弁が変つて来るというのでは、私はこれでは今後我々予算を審議するに当りましても、総理発言の権威というものを疑わざるを得ないのです。その意味で私は質問いたしたのでありますが、然らば総理はあのような憲法違反の発言をされて、そうして今回卒然として取消されましたが、この内外に與えた影響、これをどういうふうにお考えになつておるか。私はこれは非常に重大であると思う。最近ECAFEに出席して帰つて来られた或る人の話を聞けば、東南アジア諸国では日本の再軍備について最近危惧を抱き始めている。これから日本の自立経済のために東南アジア開発が非常に重大である。そこでECLAFEに出席して見ると、東南アジア諸国は最近日本の再軍備について非常な危惧を抱き始めておる、こういうような状態では東南アジア開発は非常に困難になるであろうということを言つておられます。この再軍備意味したところの総理の六日の御発言、又卒然として今度は、取消されましたが、この内外に與えた影響について総理はどうお考えになるか、それに対して責任を感じられないかどうか、この点をお伺いいたしたいのであります。
  95. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 若し誤つた発言をなして訂正いたさなければ責任を感じますが、誰も言い間違いすることもあれば、思い間違いをすることもあれば、聞き損ないをすることもあります。故に発言にして間違つたことがあれば即座に訂正するなり、翌日訂正するなり、いずれにしても訂正した以上は、訂正した私の言葉はよその国は、外国は必ず信用いたすと考えます。
  96. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 総理はこの問題の重要性については我々と見解を異にしているのです。総理はこの問題を割合に軽卒に扱つておると思うのです。もうすでに速記録において調べた通りであります。もう明々白々たるものであります。それで普通の常識を備えておる者であつたならば、三回にも亘つて確言されておる、そうしてそれに対してはつきりと答えたものを卒然としてこれを取消されるということは、これは常識を備えておる者としては判断に苦しむところであります。重大な責任を感ずべきである。若しそうでなければ、冗談に堀木氏がこの間言いましたが、私は精神鑑定を要すると思います。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)普通の常人として、常識ある者として三回にも亘つて確言されたことを、これを卒然として取消してこれでよろしいとなつたならば、これはそういうような常識を逸した考えを持たれるかたが一国の政治をやつてつたなら、これは国民が迷惑であります。(「その通り」と呼ぶ者あり)それで私は一応総理が取消されたことは了承するといたしまして、先ほど木村法務総裁は、堀木氏の質問に対しまして、折角総理が取消されたそのことを又繰返して主張されたような印象を與える答弁をされたのであります。これでは何にもならない。総理が取消したのに、その取消したことを又裏からこれは取消したのではないというごとき説明をされております。憲法第九條の説明をされるときにこう言われた、憲法第九條の解釈の問題、これはなぜ九條を設けたか、その精神が必要である、精神が大切である、この精神は、これは前に日本が侵略戰争をしてそうしてこういう悲惨な目に会つたから、再びそういうことを繰返さないように、侵略をしない、そういう意味で設けた、従つて侵略をしなければ力を貯わえてもこれは戰力ではない、憲法違反ではない、こういう御説明であつたのです。これは裏から言えば、総理がこの間御発言になつたことと実質的には同じであります。私はこの食い違いをどういうふうに御説明なさるか、もう一度御答弁願いたい。
  97. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。私は六日のこの委員会には不幸にして法務委員会に出ておつて出席できなかつたのであります。あとで総理発言について一応の説明を聞いたのであります。ところが総理は、絶対に現段階においては再軍備をしないと、再軍備をしないということは、要するに戰力を持たぬということであります。再軍備即ち戰力なんです。再軍備しないという以上は戰力を持たぬということは当然であります。ただ自衛のための戰力を持つということは、これは私は戰力という文字の使い方がそこに齟齬を来たしておるので、総理気持では戰力に至らざる、いわゆる戰力に至らざる、或いは武力と申しましようか、一つの力は自衛力として持つても差支えないのだという意見のように考えております。大前提において再軍備をしないと言えば、憲法第九條の戰力を持たぬということに結局帰着すると私は考えております。(「都合のいい解釈だね」と呼ぶ者あり)私は、いわゆる戰力の問題でありまするが、今木村君の仰せになつたように、私はこの太平洋戰争のようなことを再びするようなことを禁止するための規定と考えております。併しこれがたとえ自衛のためであつて戰力を持つというようなことであれば、或いはそれは戰力が悪用されるようなことになる。その危險を防ぐために憲法第九條第二項においては「陸海空軍その他の戰力」を持たぬという規定が設けられておるのでありまして、戰力に至らざる程度の、いわゆる日本の現段階においては警察予備隊のごとき国内治安確保のために設けるものであれば、これは憲法第九條の戰力に至らざるものであるから、これは憲法違反にはならん、こう申上げたのでありまして、たとえそれは自衛のためであろうとも、職力に相当するようなものを持つことにいたしますれば、これは憲法改正を要するということは当然のことであります。要は、日本の現段階において警察予備隊のごときは戰力に相当しない、従つて憲法改正するの必要はない、こう申上げたのであります。
  98. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 戰力の問題が一番重要な問題になつているわけですが、一体これまで我々の質問政府答弁との食い違い、或いは政府答弁のあいまいさは、規定が非常にあいまいであるところにあると思うのです。そこで私は自衛というのはどういうことを意味するのか。戰力とは何であるか。この二つをはつきりこの際政府からお伺いしておきたいのです。この規定があいまいでありますから、いやこれは戰力ではない、或いは自衛のためだから軍隊じやないという混乱が起るのでありますが、一体戰力というものを政府はどういうふうに規定しておられるか。それから自衛力ということをどういうふうに考えておるか。もう一つ自衛に関連してお伺いしたいのは、国内治安と自衛とはどういうふうに違うのか。この三点についてその意義を明確にして頂きたい。そうなればおのずからこの論点が明らかになつて来ると思うのです。
  99. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 憲法第九條第一項には、国権の発動たる戰争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争解決の手段としては永久に放棄する、こう規定してあります。要するに一つは国際法に言ういわゆる戰争であります。交戰国として持つ戰争、これは勿論やらない。又たとえその程度に至らざるものであつても、国際紛争の手段として武力は用いない。又武力による威嚇はしない。これは憲法第九條に規定されておるところであります。そこでこの規定の半面から申しまして日本は積極的にはいささかの武力も用いない、これは明瞭であります。又国際法上のいわゆる戰争はこれはしない、これは明白であります。ただただ突如として外国から侵略を受けた場合に、みずからを守るべき力を放棄したわけではありません。私はそう解釈いたします。これは個人でも正当防衛権を持つがごとく、国家も又防衛権を持つのが当然であると思います。積極的に他国に対しては武力による威嚇もしないが、又国際紛争解決の手段として武力は行使しないが、一たび日本が侵略の対象となつた場合には、これは国民は総力を挙げてこれを防がなくてはならん。この力まで放棄したものではないのであります。これは当然である。而してこの他国の侵略に対するいわゆる自衛力、この自衛力はどこに観点を置くか。この自衛力が一たび戰力となつたような場合には、これは或いは又太平洋戰争の愚を再びするような危險に陥るかも知れんので、その戰力は放棄する、これであります。結局要はごの戰力の点如何であります。残念ながら憲法九條の戰力の規定は極めてあいまいであります。これは同感であります。一定のきまつた定義はございません。併しながらこの戰力というものは、これはその定義が一定不変のものではないと考えております。時と場合により、考えられる時代によつて違います。又その国の置かれた地位によつても変ります。国際情勢によつても変ります。一定不変のものでないということは明白であります。そこでこの戰力如何の定義をする場合には、やはり日本が置かれた地位、国際情勢、あらゆる客観情勢、社会情勢を考慮の上においてこれはきめるべきものであろうと私は考えております。そこで問題は、今日本が置かれた地位において、果してどれだけの武力を持てばこれは戰力に行くかということであります。軍艦を持つても、これは或いは戰力という人があるかも知れませんが、私はそうは考えておりません。乘組員がなければこれを動かすことができないので、これは戰力でないのであります。飛行機があつてもこれを操縦すべき人がなければ戰力でないのであります。人と物を総合したものが戰力であります。いわゆる総合判断をしなければならないと私は考えております。そこで問題は結局押詰まるところ、日本の今持つておるところの警察予備隊は、この裝備から申して戰力に該当するかどうかという点は、結局そこに行くのだろうと思います。これを弱小国として、弱小国より以上の力を持つているじやないかという人もあるかも知れませんが、今弱小国といえども、私の知る範囲ではことごとく日本警察予備隊以上のものを持つていると考えております。日本の今の現段階における警察予備隊は極めてこの裝備は軽裝備であります。私の知るところではバズーカ砲とか機関銃に過ぎないのでありまして、決して重裝備を持つたものではありません。従つてこれはただただ内地治安のために使わるべきものと考えております。で、この内地の治安の問題でありますが、これは警察があれば内地の治安は確保されるからいいじやないかという御議論も出て来ましよう。併しながら先刻どなたかの御質問に対して私が答弁いたしたように、昔は警察のほかに軍隊というものがあつたのです。一たび日本内地の治安が最も危急に瀕した場合には軍隊の出動というものがあつたのであります。現段階においてはそういうものは御承知通りありません。而してこの警察力というものも、これは一たび大きな擾乱でも起つた場合には、どうしてもこれ以上のものは持たなければならんということは私は当然であると思う。そこで警察予備隊の問題は、内地治安を確保するために、警察の補助として、これを以てその裝備も又それに相当すべきものであるのでありますから、憲法第九條の戰力には毫も該当しないと、こう解釈しております。
  100. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 法務総裁は、警察予備隊は国内治安の保持のためであるということと、又いわゆる間接侵略、今まで言われております間接侵略に対してこれを又防ぐ任務を持つている、こういうようにまあ説明せられていると思うのです。間接侵略という言葉を使いませんでしたが、その点私は国内治安といわゆる間接侵略、それに対する自衛というものの区別を伺つたのです。これまで政府が、警察予備隊戰力でないというその理由として、一つ裝備が近代的な裝備を持つていないから戰力でない、又その目的が外国侵略じやない、国内治安のためだ、或いは又間接侵略を防ぐための自衛のためだから戰力でない、こういうふうに、答弁して来たのであります。併しながら間接侵略に対する自衛と国内治安というものは私は違うと思うのです。先ほど法務総裁は、国際紛争のために戰力を持つこともいけない、こう言われたのでありますが、国内治安のときには国際紛争は起りません。併しながら間接侵略に対する自衛の場合には、これは必ず外国というものがあるわけです。外国が間接に日本を侵略する場合には武器を貸すとか、或いはその他の力によつて国内的に外国が問題を起す場合は、そのときに警察予備隊が出動したら、これは国際紛争じやありませんか。そうしますとやはり警察予備隊が、これが又戰力であるかどうかは、私はもう一つお伺いしたいのでありますけれども戰力として若しこれがここに参加すれば国内治安の問題と違うと思うのです。国際紛争にこれは捲込まれる。そうすれば明らかにこれは戰力になります。憲法に違反すると思うのです。ですから国内治安、それから自衛という問題です、間接侵略に対する自衛と私は違うと思うのです。これはどういうふうにお考えになりますか。
  101. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 警察予備隊は、繰返して申しまする通り内地治安のためであります。而して一たび侵略が開始されましたときにおいては、これは私は日本国民の一小部分を除いたほかは、大多数はこれに対して防衛をするだろうと私はこう考えておる。当然のことであります。そのためにはたとえ警察予備隊の本来の本質は何であろうとも、必ずや私はそれに立つて向うであろうと思う。これは一般国民と同様であります。これは放置しておくわけじやないと私は断じて考えます。警察予備隊であろうが何であろうが、侵略された場合には、日本国民として立つのは私は当然であると思う。ただ警察予備隊の本来の目的は、さような侵略の目的のために作られた予備隊ではなかつた、侵略のために作られたのではない。内地治安確保のために、その目的のために創設されたものであると、こう考えております。
  102. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは私は非常におかしいと思う。ダレスさんが参りまして、間接侵略或いは直接侵略という言葉を使いまして、そうして直接侵略に対しては日本は今防衛する力がない、駐留軍が今後それに当ると思う。間接侵略に対して警察予備隊がこの任務を、警察予備隊は今度安保隊となるのでありますが、そういう形で任務を負つて行くということになると、純然たる国内治安のために今の警察力と、これに又プラスされたものが警察予備隊なんでありますから、そうしたらああいうバズーカ砲とか、何とかいうものを持つていることは、国内治安のために必要でありますか。あれはいわゆる間接侵略に対する自衛という意味で使つているのじやないのでありますか。その点私は普通の警察力と同じような意味に解釈されているようにとれるのであります。
  103. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 今木村君の仰せになりました間接侵略云々のなんでありますが、これは外国から直接の侵略を受けた場合は別でありますが、これはやはり外国からひそかに武器を提供して、日本の或る危險分子のものにそれを提供して、内地の治安を擾乱するということであれば、これは当然内地治安の問題であります。いわゆる間接侵略云々がそういう定義であれば、これは勿論内地治安の問題になるのであります。外国の直接侵略でない。外国からひそかに一部の危險分子に武器を提供して、そうして内地の治安を撹乱するということになれば、これは警察予備隊がこれを鎮圧に向うのは当然と私は考えます。
  104. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その場合には、普通の内地の治安と違つて国際紛争に巻き込まれるのじやないですか。
  105. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) これは、私は国際紛争じやないと思つております。国際紛争の定義は、いろいろ解釈はありましようが、突然外国から侵略をし、或いは日本の危險分子に武器を提供して内地において擾乱を惹起させるというようなことは、これは国際紛争じやない、これは一つの侵略であります。国際紛争とは私は違うと思う。
  106. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その点については、外国というものがあるのですから、侵略という場合には外国から侵略して来るのである。それは直接であろうが、間接であろうが、外国というものが対象にある。その対象に向つて発砲すれば国際紛争は起るのは明らかであります。私は、これは議論になりますから……。次に更にお伺いいたしたいのですが、木村法務総裁戰力の中に、いわゆる潜在戰力というものを含めてお考えになりますかどうか。
  107. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 潜在戰力というのはどういう意味かわかりませんが、私はこの前も申上げました通り一つの総合した力がこの戰力考えておるのであります。いわゆる物それ自体が、戰力ではない。人それ自体が戰力ではない。これが総合されて一つ戰争を遂行するのに有効適切な力となつたときに初めて私はこれを戰力と解しております。
  108. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 木村法務総裁のお考えは、一般の通念に反します。六日の予算委員会におきまして、吉田法晴君が兵器の生産、これは戰力になるのではないかという質問をされたのに対して、木村法務総裁は、「兵器それ自体を作ることは決して憲法第九條に私は禁止せられているものではないと考えます。」、こう言われておるのです。これを敷衍されたようなことをしばしば言われておる。で、吉田総理大臣も「法務総裁意見、即ち私の意見でございます。」と確認しております。ところが御承知のように、今の警察予備隊は、又将来編成せられるであろう防衛隊は、陸海空軍そのものではないかも知れませんが、一般の通念による「その他の戰力」に、これは該当するものであることは明らかだと思う。例えば佐々木博士はこう言つております。「それは陸海空軍の如く戰争を為すの力を供給するの任務を有するものではないが、戰争をなす力を供給する可能性を有するもの」を「その他の戰力」と言う。ここいうふうに言つております。「人たると物たるとはこれを問はない。例えば、何等かの体制を有する人の集団をつくり、必要に応じ軍事行動を為さしめるよう計画的に訓練しておく等は、憲法第九條第二項にいう戰力である。」。このようにはつきり佐々木博士は述べております。更に又、東京大学の憲法研究会の諸教授の共同研究によりますれば、「戰力の範囲として軍用機、海軍艦艇、兵器、弾薬等の製造工業が含まれることは明らかであるが、ここに言う戰力というのは、このように顯在的なものだけでなく、ひとたび戰争が起つた場合に直ちに戰争に用いることのできるような潜在的な戰力をも含むものだと解せられる。」、こういうように述べております。従つて一方に軍隊的訓練を行なつておる集団がある、これに対してバズーカ砲であるとか、追撃砲であるとか、近代的兵器が「あつて、それを貸し與えて、そうしてそれによつて訓練をしておる。更にその軍隊的訓練をやつておる集団は、安全保障條約によつて、そうして侵略に対する自衛を行う。そうしてこれが漸増されるということになつています。更にその訓練の任に当る幹部には旧職業軍人が配置され、これでどうして今の警察予備隊がいわゆる潜在戰力でないと言えるでありましようか。更に又、堀木委員質問に対しまして、警察官は幾らこれを殖やしても戰力ではない、こう言つておられますが、やはりこの東京大学の憲法研究会の諸教授の共同研究によれは、「警察力等は、それだけでは戰力にはならず、それを保有しても憲法上さしつかえないが、一定の程度を超えれば、戰力に該当するものとして憲法上保有を禁ぜられることになる。」、こういうようにはつきりと憲法学者の研究の結論はなつているのであります。而も兵器生産ということは、これは潜在戰力である。潜在戰力をも含めて戰力を規定しなければ意味を成さないと思います。これまで法務総裁の、戰力でない、戰力でないと答弁されたのは、憲法にいうところの陸海空軍を指しておるのであつて、その他の戰力の規定をあいまいにされている。今の警察予備隊は明らかに軍隊的訓練をやつている、旧職業軍人が訓練をしておる、部隊的訓練をやつておるものに近代的兵器を貸し與えてそうしてその軍隊的訓練をやつている人が、これからだんだん漸増して行く、これで以てどうして戰力と言えないか。少くとも潜在戰力ではないですか、この点について法務総裁はどういうふうにお考えか、御答弁承わりたい。
  109. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) しばしば私の申上げた通り、この警察予備隊というものは、裝備編成から申しまして決して戰い得る戰力ではないと、こう考えます。これが或いは漸増して戰力になるのではないかというお尋ねでありまするが、これは将来のことはわかりません。併しこれを警察力をたとえ多少増加いたしましても、裝備編成の点から申して決して憲法九條の戰力に該当しない。つまり戰力というのは現実に戰争を遂行し得る能力があるかどうかということに私は帰着すると考えておるのであります。若しそれ、戰いに使い得るようなものがすべて戰力ということになると仮定いたしますると、石油を精製する工場を持つているのも一つ戰力と言えるでありましよう。そういうことになれば、殆んど何もかもが戰力になる。要するに戰力というのはすべてを総合した力であると思います。人と物その他を組合せた総合力であると、私は解釈しております。
  110. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは戰争が起つた場合、いわゆる近代戰争は総合戰力というものを以て戰うのでありますから、法務総裁がよく言う、マツチ一つでもこれは戰力になり得るのだ。併し常識として、戰争が起らない場合に常時部隊的訓練を行い、それに近代兵器を持たせ、戰争が起つた場合にすぐこれに出動し得る立場にあるものを、これはもう国際的に戰力と規定されておるのであります。それを否定されるから私はおかしいのでありまして、それはもう常識論でありますけれども、無理にこれを否定するから今法務総裁が言われた通りに、相当、今度これを逆に言えば原子爆弾を持つても、これは戰争のために使わなければ戰力でない、こういう極論もそういう議論から出て来る。私は最近今度はフリゲート艦というあれが、潜水艦と言われておりますが、あれは兵器と思いますが、戰力を形成する一つの私は潜在戰力になり得ると思うのですが、これはどういうふうにお考えですか。
  111. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 今の潜水艦のことは私はよくわかりませんが、原子兵器のことに例えて申しましよう。原子爆弾一つつてもこれは戰力とは言えない。この原子爆弾を持つて爆撃し得る一つ飛行機なら飛行機が……原子爆弾一つつたところで、これは決して戰力じやありません。これを運んで爆撃し得るものと相待つて戰力と言える、私はこう考えております。原子力が一つ或いは日本に将来保有されるようになるかも知れません。その場合に決してそれだけで以て私は戰力ということは言えない、こう考えております。
  112. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は、じや簡單一つお伺いいたします。潜在戰力というものは戰力の中に入るのですか、含めて考えておられるか、おらないか。
  113. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) しばしば申上げましたように、ただ一つのことのみを以てこれは戰力になるというわけ合いのものではありません。種々のものが組合わさつて、その総合したものが、一つ戰力になる、こう私は考えております。
  114. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この警察予備隊或いは今後増強せられるであろう保安隊、これはまあ戰力と関係があることなんでありますが、政府はこういう意味において戰力とは何であるかということについて研究されたはずだと思う力国際的にも大体戰力というものは規定されているのじやないですか。これは我が党の黒田寿男氏が衆議院で質問したと思うのであります。前の軍縮会議のときにも軍備とは何ぞや、戰力とは何ぞやということは具体的に規定されている。そういうものに基けば明らかに国際的通念としても、今の警察予備隊戰力であることは明らかじやありませんか。それまでも否定されているから国民は割切れない気持ちがある。もう我々はこれ以上追及してもこれは戰力でない、若しか戰力であると言つた憲法第九條に違反してしまうのですから、そうでないと頑張つていると思う。それで今まで戰力でないというその理由として、近代的な裝備を持つていない、これは又国内治安、自衛のためにあるとか、侵略のためでないという、この二つだけ挙げて来た。うつかり六日の委員会において総理大臣自衛のための戰力は、これは憲法に違反しないと、こう言つたものですから、従来の説明と食違いができてこの問題を起したのである。私は、これまでの各委員質問に対する法務総裁の一番重要な戰力に対する規定はこんなあいまいであつていいかどうか。これは戰争する直前まで潜在戰力はずつと蓄えて行つても、それでも戰力ではない、それでも憲法に違反しない、こういう論理になるのですよ。これで法務総裁は一体いいのですか。国際的常識としても私は許されないと思う。もつと戰力については明確な、具体的な規定を政府はされて、我々に説明されるべきである、こう私は考えるが、この点法務総裁はどういうふうにお考えになりますか。
  115. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 繰返すようでありまするが、戰力については一定の定義がありません。又これは万世不変と考えるべきものじやないと総理が言われた通りであります。その時と場合によつて、その戰力のあり方が違つて来るだろうと考えております。そこで具体的の問題等は別といたしまして、概念的には私は戰争を有効且つ適切に遂行し得る能力を持つ編成裝備、この力を一つ戰力と、私はこう考えております。
  116. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この問題は、私はもう少し明確にしておきたいと思うのです。前の軍縮会議のときにおいて軍備戰力というものをはつきり規定しております。平時における軍備を構成すべき要素として、第一に現役にある陸海空軍、警察隊、憲兵、関税吏、森林監視等、軍隊組織を有し、動員指令によらずして直ちに召集し得る兵力、第二に、その所持する兵器、弾薬、諸材料及び畜類並びに軍用に供すべき船舶、第三、本国及び植民地における防衛設備、海軍及び空軍根拠地、その他戰争の目的に建てたる地理的施設。第四、兵器廠、火薬製造所、その他動員措置によらずして利用し得べき工業用諸施設、となつているのであります。これが軍縮会議において定義されたところの平時における軍備を構成すべき要素であります。戰力を構成すべき要素である。このように具体的に規定されているのであります。これでもなお、法務総裁警察予備隊戰力でない、或いは軍備でないと言われるのか。又更に戰争直前までもこういう潜在戰力を蓄えて行つて、これが憲法に違反しないという考え方であるかどうか、この点が一点。  それから更に最後に総理大臣にお伺いいたしたいのです。が、六日の予算委員会において失言されたことに対し、本日主として岡本氏の発言に対する失言取消しがありましたが、あの六日の予算委員会における御答弁の中には、その他にも憲法違反と目せられる点があるのでありますが、その他についてはお取消しになる必要がないとお考えかどうか。この点について、最後に私は総理にこの点はお伺いしたい。前の問題については法務総裁にお伺いしたい。
  117. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 今お挙げになつた軍縮会議の四つの問題であります。木村君の仰せになりました、軍備を構成するものと考えられますいわゆる四つの構成されたものでありますが、これを一つ一つ取離して、それだけでこれを戰力かというと、これは私はそうでない。四つのものが組合わさつて初めてそこに……。
  118. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 警察予備隊は総合されているじやないですか。
  119. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 総合されていない。
  120. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私の先ほどの訂正を以て一応すべての点をカバーしていると考えます。これ以上に訂正する必要はないと思います。
  121. 岩間正男

    ○岩間正男君 総理は、この前の六日の委員会発言を取消されたのでありますが、この取消し問題につきましてはこれは果して妥当であるかどうかということは、又新たなる一つの責任問題になると思います。私は仮に総理がこれを取消されるにしましても、この取消しは單なる口先だけの取消しではない。国会が今日いろいろ問題を議しておりますけれども、併し現実では御承知のようにいろいろと国民の目に余るような事態が進められているのであります。そのことが最も直接的に国民の心配の種を増しているのでありますから、今日の取消しが、現在進められておりますところの警察予備隊の強化、或いは自衛力の漸増、こういうようないろいろな計画に対しまして、はつきり裏付のある、そういうような体制を一応打ちやめる、そういうものを中止をするという、こういうような具体的の裏付のある取消しでありますか、どうですか。この点私は非常に重要であろうと思いますので、先ずお伺いをしたい。
  122. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私の訂正はすべてをカバーとていると考えることは先ほど申した通りであります。
  123. 岩間正男

    ○岩間正男君 私はすべてをカバーしているかということをお聞きしているのではなくて、具体的な裏付として政府が今とられているようないろいろな体制は、どのように取消しと関連して裏付あるものにされるか、具体的にどのような処置をされるか、その行動まで含めての取消しであるかどうかということをお伺いしているものであります。
  124. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは訂正そのものを御覧になれば趣意はおわかりになるであろうと想像します。
  125. 岩間正男

    ○岩間正男君 先ほどからいろいろ論議されましたように、現在進められているところの自衛力の漸増なるもの、先ほど吉川委員並びに堀木委員からの質問にもこれは要点が盡されていると思う。安保條約との関連において現在取極めつつあるところの行政協定、これとの関連におきまして、更にそういうようなこれは当然危險を持つている、再軍備に至らざるを得ない必然性を持つている。こういう点が非常に指摘されているのでありますから、若しもそういう点について総理が取消すということでありまするならば、当然その具体的ないろいろな措置については今後どうするか。この点が明らかにならなければ、單なるこれは言葉の上の取消しということに終るのであります。我々は日本国会をして、そのような冗漫な言論の場にしたくない。現実はどんどんどんどん進められておる。もう個々の論議にかかわらず、具体的な事実はどんどん進められておる。この具体的な事実こそが、国民が今日心配しておるところの大きな不安の種なのでありますから、これについてこの訂正と関連して、どのように具体的措置をとられるかということをお聞きしておるのでありますが、これはお答えが、この点についてはないようじあります。そこで私は二、三の点を挙げて、それでは具体的にもつとお聞きしたいと思うのでありますが、大体政府が、今までいろいろな態勢についこれは検討されておると言われております。そうして又、今度の予算におきましては、三万五千の増強、併しそれでももう間に合わないというので、いろいろなこれは事態について問題が現在暗々裡に進められております。国民の目の外で進められておる。こういりような事態の中におきまして、例えば最近の閣議において大橋国務大臣は一体どのような発言をされたか。例えばここに我々はお聞きしたいのでありますけれども予備隊令を改正する、特に予備隊の目的について、現在国内治安のためとあるのを国内という言葉を除去する、だから單にこれは国内治安というのが、治安ということになる。第二に、義勇軍又は義友軍に参加することを禁止する諸法令を除く、第三に大きな意味で、自衛のために必要なる場甘は予備隊の海外派遣も何ら憲法に抵触せず行い得る、又かかる事態もあり得ることを予想せねばならんというようなことが、これは諮られたと聞いておるのであります。そうして、それが閣議で一応了承されたというふうに、我々は風の便りで聞いておるのでございますけれども、こういう事態は、これはどういうふうに一体解釈すればいいのであるか。こういう事実があつたかないか、この点について伺いたい。
  126. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) お答えを申上げます。閣議の内容につきまして、かような席上で御披露をいたすということは如何かと存じまするが、只今御指摘になりましたような二とを私が閣議において発言いたしたる事実はございません。
  127. 岩間正男

    ○岩間正男君 まあ、そうお答えになるだろうと考えておるのでありますが、(笑声)併しこういうような発言と関連した発言はいろいろな点で、これは具体的に進められておることと思うのであります。この点は深く追及しても、その点依然としてそうお答えになると思うのであります。じや、もつと具体的な事実を挙げますけれども、一昨日六日のこの本委員会におきまして、岡崎国務相はこういうことを答えられておるのであります。内村委員質問に対する答弁でございますけれども、今のところの予備隊では国内を守るに足りない、できるだけまだまだ増強する、こういうようなことが、これは答えられておる。又このだび締結されましたところの行政協定の二十四條に関連した議事録を見ましても、もつともつと日本のこの態勢は強化しなければならない、そのために費用がそつちに廻されるのだからして、駐留軍の費用はこれを軽減して欲しいというような希望が出されております。この二つの点を総合して考えますときに、この度の行政協定の会談の中におきまして、日本警察予備隊をもつと可及的速かに強化しなければならない、こういうような要請があつたやに考えられるのでありますけれども、こういう点はあつたのでありますか、どうですか。それからその裏書きするような言葉が先ほど私が申述べたようなところにはつきり現われておるのであります。これはどういう意味に我々は解釈すればいいのでありますか、岡崎国務相の御意見を伺いたいと思います。
  128. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 我々は日本自衛の問題につきまして、アメリカ等から要請を受けたことはありませんけれども政府としては自発的に且つ独自の見解から国内の治安維持に適当する力を持つべきである、こう考えております。そしてその結論としては、只今の七万五千人ではまだ不足であるから、これを漸増して行きたい、こう考えております。
  129. 岩間正男

    ○岩間正男君 自衛のために要請を受けたことはないというお話でございますが、これは大体警察予備隊の発生、今から二年前に遡つて考えて見ますと、これはどういう経過で作られたのですか、日本で自主的に作つたものですか、大体これはマツカーサー覚書によつてこういうものが作られたと思う。大体生立ちから考えて。どうでございますか、この点如何でございますか、岡崎国務相。
  130. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) これはマツカーサー元帥の書簡によつて作られたものでありますが、政府としてもその必要を認めておりましたので、政府の必要をマツカーサー元帥も認め、そしてその書簡になつたものと了解しております。
  131. 岩間正男

    ○岩間正男君 警察予備隊の性格は、先ほど木村君よりもいろいろ出たのでございますが、例えば武器の問題、これは本予算委員会におきまして、この前井口次官の出席を求めまして聞いて見ますと、いろいろなバズーカ砲とか、その他いろいろなロケツト砲、こういうものはどういうふうにして一体日本に貸されたかといいますと、殆んどこれは日本から貸してくれというような意思表示をした覚えはない、いつの間にかキヤンプに運ばれておつて、そのままになつた、これはそういうことを聞きますと、どうですか、只今日本自衛のなんですね、警察予備隊それをですね、作るために向うから要請された事実はない、こういうことを言われるのでありますが、先ほどの堀木委員質問ですでに明らかだと思いますが、今度の安保條約との関連において、これは誰が負担するかと言つたらこれは、警察予備隊以外にはない。これが強化されなければならん。だからこの吉田首相は、衆議院においてアドバルーンを上げられたのかどうか知りませんが、警察予備隊は十一月以降においては防衛隊保安隊、いろいろな名前がありますが、そういうのに切替えなければならない。そういう体制ができておるのだ。これはいわば要請に対する一つの答えではないのですか。これは国民をこれ以上愚弄することを差控えて頂きたいと思うのであります。今日これは国内、院内ではどう論議しておるか知りませんが、賢明な国民は皆知つている。一つの、このような国際情勢の要請のうちに、殊に安保條約並びに行政協定の締結によりましてもつと具体的にこういう事実が出て来ておる。こういうふうに考えられて、これに答えるところの態度としまして、はつきりこれはいろいろな場合に自衛力漸増であるとか、何とかいう形でいろいろなアドバルーンを上げられたり、蔭のほうではいろいろな計画が持たれておると思うのですが、これは岡崎国務相、如何ですか、全然要請された事実はないという先ほどのお話でありましたけれども、こちらから、警察予備隊をそうするとこれはもつと殖やす、或いは予備隊でなくて、言葉が非常に面倒でありますけれども防衛隊でも何でもいいが、そういうものを殖やす、まだまだ私は殖やさなければならん、現在の状態においては足らない。どういう必要と、それから国内治安においてどういうような理由から、これだけのことをされるのでありますか。殊に予算の面におきましては、昨年の当初予算の百六十億が百五十億の補正によりまして三百十億になつた。それが今年度は五百四十億にはね上つおる。更にいろいろ関連して安全保障費というようなものから警察予備隊に向けられる金を考えると、現在でも非常に大きな負担になつておると思う。而も更に、そういう態勢の中におきましてできるだけ早くこれはそういうようなもつと漸増をしなければならん、こういう要請がこれは日本判断でどのような一体基礎に基いて、そのような必要があるのかどうかという、この点を明らかにされなければ、我々は予算審議は甚だ差支えるのであります。そこでお伺いをしたのであります。要請以外に、日本判断としてそれをしなければならないという根拠について、これは明らかにして頂きたいと思うのであります。
  132. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 私は、警察予備隊の担当者でありませんから、その方面のことは又所管大臣から申上げると思いますが、日米間のいろいろな話合いにおきまして、日本警察予備隊等を増強することについての要請は全然ない、こういうことを申上げておるのであります。で、警察予備隊の増強については、政府のほうでその必要ありと認めて考えておるのであります。
  133. 岩間正男

    ○岩間正男君 私はその必要についてお聞きしておる。どういう必要か。
  134. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 警察予備隊といたしましては、その使命から考えまして、国際情勢に基きまして国内の治安の確保を図りますることが、今日において一層切実なる要求があるものと考えるわけでございまして、この国内治安を確保するための要請から見まして、現状においてはなお欠くるところありと存じまして、これを政府といたしましては増強しなければならないと、こう考えておる次第であります。
  135. 岩間正男

    ○岩間正男君 国際情勢の変化によつて、国内治安上そういう必要があると、こういうことでありまするけれども、これはなかなか具体的にはわからんのですね。或いは朝鮮戰争なんかを指すのですか。これはもう少しそういうような世界の情勢を分析しておられるでしようか。大橋国務相からもう少し日本国民を納得させるような話をして頂かないと……、これは言葉のあやのようにしか聞きとれないのです。それからもう一つ、岡崎国務相に伺いますが、まだまだ増強しなければならないのは何ですか。まだまだ、これは日本語で言うと現状よりも何倍かということを言われることになる。国語の辞典をお引きになるとわかるが、これはどういうことですか。お二人にお答えを願います。
  136. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 岩間君にちよつと申上げますが、今日は大体総理発言に対しての質問ですから、あなたの質問のまだあとに質問者がおられますので……。
  137. 岩間正男

    ○岩間正男君 今のことだけ答えて頂いてそれから総理に切り替えます。関連があるものですから……。
  138. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) 大体国内の治安維持ということについては、各国でもやつておるんであつて日本だけやつておるわけではありません。そこで日本の場合を考えますと、約八千四百万の国民がおりまして、そうして近辺においてはいろいろの事件起つておる。こういう状況から考えますと七万五千人では足らない、こういう結論になつたわけであります。そこでまだまだというのは、大体二倍、三倍になるのか、それとも一割増か、二割増か、それはわかりません。国力にも関係しますし、経済の問題、財政の問題、又国内の実情、こういうことによつてきまるのでありますが、少くとも七万五千では足りない。でありますから、まだこれから増強するのだ、こういう意味であります。
  139. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 御承知のような世界情勢でありますので、国内の治安というものはひとり国内だけの事情からのみ将来についての判断をいたすことは困難でございます。広く国際的ないろいろな動向というものの基礎に立つて、将来の国内治安を判断するということが必要であると考えておるわけでございます。かようなる意味合いにおきまして将来の国内治安ということを考えるに当りまして、現実の国際情勢というものを基礎にして判断をいたしておるわけでございます。
  140. 岩間正男

    ○岩間正男君 どうも頼りないお二人の御答弁だと思うのであります。我々はもう少し科学的にはつきり答えて頂きたい。まるで言葉のやり取りのようなことは我々は余り欲していないのであります。現実がどう進行するか、それによつてどういう大きな影響を受けるかということを私は憂えて、こういうことを質問しておるのでありますが、非常にこの点御答弁では我々は満足できないのでありますが、そこでこういうような形で現在これは非常に増強ということが、自分からやつておるのだ、併しその実態は先ほどの武器貸與ではありませんが、実際自分からやつておるような恰好でやわなさいという形でやらされておるのかも知れません。これはこういう形でいろいろ要請されておる。それで吉田総理に大体ちよつとお聞きしたいのでありますが、何らか国内防衛隊の機構、これは警察予備隊を含めておるのでありますが、こういうものの増強についてその方法とか時期とか、或いはこれに関連した憲法改正の問題とか、日本の国内体制とかというようなものについて、何かアメリカ側に意思表示をなさつた事実がございますか、ございませんか。その点を伺つておきたいと思います。
  141. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 何ら意思表示をしたことはありません。(「関係のない質問はよせ」と呼ぶ者あり)
  142. 岩間正男

    ○岩間正男君 関係がないのではない、非常に関係があるのでありまして、かような意思表示がこの前の十二月二十四日の秘密書簡のようなことになると大変なことになるのでありますから、我々はこれをお聞きしておるのであります。元来秘密に事態が進められまして、あとからいよいよ舞台ができ上つたときに幕を引く、除幕式が終つた、そのときに出て来るのが大変な姿だというのでは、これは民族の運命に非常に深く関係をするのでありますから、私はお聞きしておるのです。ですから、関連のないことはやめろと言つておるが、これほど深い関連のあることはないということで、私は言つておるのであります。そこでないということでありますが、そうしますると、それはそれとしておきまして、飽くまでそれでは総理といたしましては、今日の声明の線で以て日本のこういう防衛力の漸増というような形は、どうしたつて「おたまじやくし」は蛙ではないというような恰好から、必ずこれは蛙になる、それから軟式庭球が硬式庭球になる、富士山の八合目が十合目まで必ず行くのだ、こういうような危險性は、これは恐らくここにおられるところの諸君が全部認めておられるところであります。こういう関連におきまして、絶対に如何ような要請があつたとしましてもやらない、こういう言明と受取つてよろしうございますか。
  143. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 御意見通り
  144. 岩間正男

    ○岩間正男君 それでは私は、その点を確かめておきたいと思うのであります。あとでこれはいろいろ関連があつて、安保條約との関連で一体そのような答弁をしていいのかどうかなどということが、これはどうもアメリカ辺りから叱られるようなことになると、これは大変だと思うのであります。併し民族を愛する吉田総理は、飽くまで日本の立場を守つて自主的にやつて行く、こういうような折角の御発言でありますから、我々はそれを一応ここで信頼したいと思いますが、間違いございませんね。もう一度改めまして重要な問題でございますから、又昨日のような取消しがありますと困りますので、お伺いしたいと思うのであります。(笑声)
  145. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 間違いはありません。
  146. 岩間正男

    ○岩間正男君 それではその点を確認しまして、次に進みたいと思うのでありますが、私は今度の問題は先ほど申しましたように、釈明をしたら済むというような一体問題であるかどうか、政治的責任の問題でございますから、この問題は單独に切離して、一国の首相が三度も念を押されて当委員会において発言をした、そうしてそれが相当確認されたような形で進められた、そのことが一日後にはこれを取消さなければならない、こういうような問題は非常にこれは重要な問題だと私は思う。ここで取消せば何とか済むのだ、こういうような政治慣例というものが、この頃日本の政治体制の中で行われておるようでありますけれども、私はこれは非常に看過できない重大な問題だと思う、日本の政治の責任そのものをどういうふうに考えるかというところで、非常に重要だと思う。こういうような問題につきまして、例えば朝日新聞はこの問題につきましてこういうような社説を、これは三月八日付で発表しておるのでありますが、「首相の前日の答弁は根底から覆えされることになるが、いやしくも一国の首相が、こと憲法の根基に関する重大問題について、国会委員会で極めて念入らに行つた答弁を、その翌日には掌を返すように覆えすようでは、首相その人の信念を疑わせることになる。かかる重大問題について、首相が軽々に失言したものとは容易に受取りがたい。むしろ首相の真意が不用意のうちに吐露されたのではないかと疑われても致し方あるまい。」こういうような社説におきまして、なお国会の応答、こういうものの当然責任問題についても触れておるのでございますが、これは我々が後ほどやはりこの委員会をどう続行して行くかという問題を決定する上において非常に重要であると思いますので、この点について吉田総理はどういうような責任を感じていらつしやるか。私は当然切離しても、これはやはりこれ自体としての責任というものは、大きく存在するだと、こういうふうに考えるのでありますが、総理の御意見を伺つておきたい。
  147. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) この問題はすでに答弁いたしました。若し誤解が生じ、若しくは言い間違えたといいますか、或いは誤解を與えるような場合においては、政府の態度を訂正し、明らかにすることが政府としての責任と考えるのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)
  148. 岩間正男

    ○岩間正男君 過つて改むるにはばかるなかれというような古諺がありますが、併しやはりこの問題というのは、只今の御答弁だけで済む問題では私はないと思います。  先ほどこれは木村君のほうから精神鑑定というような言葉も出て来たのでありますが、一体政府自体のこれはこういうやり方については、この真相が本当にこれは国民に私は批判されるべきものとなると思います。又世界的にもこういうものは批判されると思います。大体新憲法上の問題が繰返えされ、或いは否定されることが今日の応答の中でも何回もございました。昨日の保利官房長官、一昨日も又保利官房長官のごときは、我々四人の念を押し言た発表の問題につきまして、あとでくるりと三十分後ぐらいにこれは掌を返すようにやつた。それが今日の責任政治のあり方、こういう問題についてはこれは只今もお話がありましたけれども、これは非常に重要な問題じやないかと思うのであります。  もう一つつて置きたいのでありますが、これは木村法務総裁に伺いたい。第一に先ほど吉川委員質問に対しまして、アメリカの駐留軍は戰力であるということはこれは認められたわけでありますね。そうして戰力というものは、自衛の場合でも認められない、これは今日の総理の釈明ではつきりしている。だから日本には戰力がない、木村法務総裁が大きく言われている戰力というものはどういうときに認められるのでございますか。戰力というものはそうなるとこれはどうなんですか、侵略の場合だけですか。
  149. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 日本憲法に規定されておるのは、日本の自体のことを申すのであります。日本自体が曾つて太平洋戰争のような愚をなしたくないから戰力を持ちたくない。日本憲法では戰力を持たない、いわゆる放棄しておるのであります。アメリカ駐留軍はアメリカの問題でありまして、ただただ日本戰争を放棄し武力を持たないから、そのために外国の不法な侵略を受けた場合には、アメリカがとれを担当してやることになるのであつて日本自体は戰力を持たないということであります。
  150. 岩間正男

    ○岩間正男君 どうも木村法務総裁らしくないと思うのです。ひとの国に全部任せてしまつて、すつかり預けてしまつて、そこで防衛してもらつて日本の国を守る、今の御答弁ではそういうことになるわけですね。どうも木村法務総裁に似合わない御答弁だと思うのでありますが、先ほどの戰力問題を推し進めて行きますと、これは、戰力というものは、そういうような一つのこれは国際的紛争とか、それから外国と事をかまえる、こういうようなときでなければ、戰力というものは必要がないんだ。こういうお話なんでありますけれども、そうしますというと今のごとを單純に考えますと、アメリカの駐留軍というものは戰力を持つて日本にいるのでありますけれども、これはどうもおかしいことになる。何のためにいるかということがおかしいということになるというふうに思うのであります。これは場合によつてはそれではそういうような戰争、これは侵略はそういうような立場……、こういうような議論になりますが、これは議論になりますからやめます。  その次にもう一つの問題は原子爆弾のことで、原子爆弾一つつてつても、これは戰力にならない、使わなければならない。使うということはよくよくぎりぎりの間際です。その瞬間までは、これは戰力でないというわけでありますか。そうすればあらゆる裝備は整えてもかまわない、使わなければ総合戰力……、これは総合職力は、武器が人力と総合して使われるこの瞬間までは……、それではあらゆるものは戰力でない、こういうことになると思うのでありますが、これは認められるのでありますか。
  151. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。例えば原子兵器を持つてこれを使用することについては、相当の準備は要するのであります。原子爆弾だからすぐそれで以て原子爆弾を使用するということはできないはずであります。いわゆるこれを運ぶところの飛行機も要れば、これを操縦する飛行士も準備しなければならん。これらのものを総合して一つ戰力となるので、原子爆弾がそこにあるから、それのみを以て私は戰力とは言えんということであります。
  152. 岩間正男

    ○岩間正男君 先ほど使わなければとおつしやつたのです。これは特に私は明記して書いておる。使わなければ戰力でない、使う瞬間までは戰力でないという御解釈でありますか。
  153. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 使うべき準備があるのであります。その過程におきましていろいろ今申上げました通り必要なものが裝備されて来るが、使うには使うだけのふだんにそれだけの力を養つて行かなければならん、飛行士も養つて行かなければならん。飛行機もこれは保持しなければならん。ただそれがあつただけでは戰力にはならんと私は考えます。
  154. 岩間正男

    ○岩間正男君 先ほどの御説明とは大分食い違つて来たのであります。どうも非常に木村君のお話でありませんが、これは一つのやはり質問戰をやるときの前提条件が移動する。ずるずると絶えず変つて来る、このことははつきり確認されていいと思います。まあ時間もございませんし、ほかの諸君が待つておられますから私はここでやめますけれども、実にこれは奇妙な法律解釈だと、我々は非常にこれはおかしいと思います。こういうことでは、これは事態を、国会の議論を非常に混乱させて行くだけである。若しも我々のこの国会速記録を、これを外国のどこかで検討すれば、これはどこの国で一体起つたことであるか、これは論理というものがあるのかないのか。国会議員として国会の論争というものは頭が変になつているんじやないか、こういうことで、先ほどのお話ではありませんが、精神鑑定が必要であるというようなことに追い込まれる。こういうことのないように、木村法務総裁は脅つての法律の秀才でございましようから、(笑声)我々のそういうところをもつと明確にして頂きたいと思う。老ゆれば麒麟も驚馬だというようなことでは困るのでありますが、これはこの点ははつきり要望しまして私は終ります。
  155. 岩木哲夫

    ○岩木哲夫君 二、三お尋ねいたしたいことは、憲法の問題で三回に亘つて駄目を押された。而も憲法の根幹となるべき事項に対して総理大臣が訂正、或いは取消をされた。およそ総理大臣が重要な発言を重ねられてそれを取消すということは、その取消すことによつて一切が解消される、こういう性格のものでなくてはならんと思うのであります。即ち非常な人を侮辱したために陳謝の取消であるとか、そうして大変な錯覚、間違いで取消した、その取消によつての誠意と又その事実において取消が完成される。ところが今回の総理大臣が取消しされたということは、これはその現実が取消されない限り、ただ国会の席上で取消されただけでは、本当の取消にならない。先ほど来各委員質問いたしておる通り、現実において自衛の措置であるとはいえども、軍を保持いたしておるというこの現実というものは、私は取消ができないと思う。従つて総理大臣がここで取消の言明をされても、これは国会議員のうち大多数……、或いは政府與党のかたはどういう錯覚を持つておられるかわかりませんが、およそ良識のある議員であるならば、これは言葉だけの取消で、現実の取消には至つておらない。いわんや国民一般が受ける印象、或いは国際的には、この取消には本当の取消らしい取消の現実を発見することができない。私はこれが事実であろうと思うのであります。そこでこの総理大臣が取消されるということの前提は、いろいろ誤解してはいけないから、誤解があつてはいけないからということでありまするが、我々は誤解をしてはおらない。むしろ吉田総理大臣誤解をしておるのではないかと思いますることは、今私が申上げましたように、現実の戰力を保持しておりながら、この戰力が侵略識力か自衛戰力かは仮に別物にいたしましても、堂々たる戰力を持つておることに対して、黒を白と言われることの御苦痛は誠に察するに余りがあります。そこで取消されましても、現実は取消されないのでありまするし、あとで私がお尋ねいたしまする二月四日にダレスに御返答なされた書簡においても、これは事実かどうか知りませんが、伺いまするが、こうしたような事情から見ましても、当然近き将来憲法改正して再軍備であるか自衛のための戰力であるか、これは別物でありまするが、いずれにしても憲法改正の意図が近き将来か適当なときにあることは、総理大臣も示唆されておるのでありまするから、この際総理大臣がこれを取消すとかいつたようなお態度でなく、適当なるときに現在の自衛軍力か或いは再軍備か知らないが、とにかくこうした現実を肯定する憲法改正の意図にむしろ進まれる方針をこの際明らかにすることが、私は国内的においても、或いは将来憲法改正する場合には、青年の自衛意識を培養する上においても、国民憲法改正を協力する場合においても、極めて国家的に私はそのほうが有利であろうと思う。であるから、私は今総理大臣の先般の失言とか誤りだとかいうことを追及いたすのではない。この際堂々と自衛戰力を保持せんと考えておるから、適当なときに憲法改正を行おうと思うのだということを、特に警察予備隊、海上保安隊が改編せられんとする十月前後を期して思うのだということを、この際発表せられることこそが本当のお言葉ではないかと思うのですが、如何でありましようか。
  156. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 現実はこれを取消すことができないと言われますが、現実戰力は持つておらないのであります。然らば将来どうするか、将来は将来のことでありますが、私は只今憲法改正する考えはありません。
  157. 岩木哲夫

    ○岩木哲夫君 それでは、現在は戰力を持つておちれないとおつしやるのでありまするが、先ほど来木村法務総裁からもお話がありましたし、又現実の問題として、安保條約によつてアメリカの駐屯軍が日本に駐屯することになつた。これは日本防衛のために要請されたものであります。そうしてこのアメリカ駐屯軍は近代職に堪え得る裝備を持つておられるということは、木村法務総裁も肯定されておれば、私たち日本の民間人でもこれを肯定いたしております。ということは、先般B二九が朝鮮戰線に出動すべき偉大なる威力を持つ爆弾を搭載して誤つて事故を起した。この現実に見ましても、日本に駐屯するアメリカ軍がこうした近代戰に堪え得る裝備を持つておることは事実であります。そこでアメリカ軍の駐屯する戰力日本戰力でないと、これはアメリカ自体のものであるというようなお言葉に木村法務総裁は言われましたが、これは決してアメリカ自体の戰力ではありません。日本の防衛をするための戰力でありまするが故に、日本から今日分担金が六百五十億、或いは安全保障費五百六十億のうち何がしかは、或いは大部分がこれらに充当され、而もこれらの分担金はアメリカ会計に繰入れられる。こういうことは、即ちアメリカ日本に駐屯する戰力、或いは駐屯軍の片棒半分を構成しておる。この予算において、当然アメリカ戰力日本戰力に当てはまる予算を、而も厖大に注ぎ込んでおるということは、第二十四條の共同措置の場合と否とにかかわらず、当然日本が駐屯するアメリカ軍力に対しての分担を半分乃至はそれ以上負担しておる。この現実は、アメリカ戰力ではない、日本戰力であるということは、私は否定できないと思いますが、御所見如何
  158. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) これは先刻来申上げた通りでありまして、日本憲法では、日本自体がいわゆる戰力を持たんということであります。繰返して申します。日本の従来のような侵略戰争を再び繰返すことを避けるために、絶対に日本では憲法の下において戰力を持たせないということであります。然らば現実の問題として、外国の侵略の場合にはどうするか、結局戰力を持たないこの日本をどうして守るのかということになりまして、その結果、アメリカ軍が駐留してその任に当る。併しアメリカは決して積極的に戰いを挑むものと我々は考えておりません。ただただ不時の侵略に対して、いわゆる個人で言えば、正当防衛のためであります。日本が侵略されて焦土になるような結果に万一なつた場合の予防的なものと私は考えておるのであります。決してこれが侵略戰争に使われるとか、或いは国際紛争の手段に使われるとか考えておりません。一に不時の侵略に対して日本の防衛の任に当るというに過ぎないと我々は確信しておるのであります。従つて日本自体においては、何ら戰力を持たずに、乃至治安のためにのみこの警察予備隊というものを持つというに過ぎないものと私は考えております。
  159. 岩木哲夫

    ○岩木哲夫君 私がお尋ねしておる根幹を避けておられます。私がお尋ねいたそうといたしておるのは、日本が要請しておるアメリカ駐屯軍に対して、アメリカ軍が負担するお金以上のものを我が国が負担しておる。この財政的措置から見ましても、且つこれをアメリカ会計に繰入れるという現実の姿から見ましても、アメリカ軍の車力というものは即日本の軍力である。これは重ねて私が申上げます通り、二十四條の共同措置と否とにかかわらず、明らかにこれは日本戰力ではありませんか。この点を私はお尋ねいたしております。
  160. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お答え申上げます。アメリカの駐留軍が日本に駐留することに要しまする経費は、私の想像では六、七千億円に達すると考えるのであります。而して我々の負担いたしまするものは、アメリカの駐留軍が日本国内において支拂われる鉄道運賃或いは労務者の給與等でございます。その国内で支拂われるものの大体半分を負担することにいたしておるのであります。而してこれはアメリカ駐留軍の費用でございますから、六百五十億円の防衛負担金は、防衛支出金は、アメリカの勘定に入れまするが、行政協定の内容、或いは附属文書で示しておりますがごとく、この使用につきましては、アメリカ並びに日本が十分協議し、合意の上で使うことになつておるのであります。従いましてアメリカの駐留軍は日本の軍力と考うるべきではないと思います。
  161. 岩木哲夫

    ○岩木哲夫君 六、七千億アメリカ軍が使つておると言いますが、これは本来アメリカ軍のいわゆる建設の基本の費用であつて、その軍隊の軍裝した軍人が、軍裝裝備した軍隊が、日本に駐屯しても、アメリカ本土におりましても、これはアメリカ軍としては同じ費用なんであります。ただ日本を防衛するための費用、日本を防衛行動をするための費用は分担を半分しておるのであります。私は日本防衛行動の費用の分担を日本が半分以上負担しておるということは、いわゆる戰力、いわゆる戰争行為に亘る費用を負担しておるので、負担の内容が或いは宿舎であるとか、何であるとかということは、それは内訳の勘定に過ぎないのであつて日本における軍事行動の費用を半分負担しておるということは、アメリカ戰力というものは即日本戰力化する、これはもう誰がどう言われても否定のできないことだと私は思いますが、議論になるようですが、重ねてお伺いします。
  162. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 米国の駐留軍の費用の六、七千億円というのは、米国軍隊の俸給、給料、或いは被服費、裝備その他輸送関係も入つておるのでございます。従いましてアメリカ日本に駐留し、日本を防衛する費用といたしましては、六、七千億円を考えるのが適当であると考えております。而してこの問題が安全保障條約、或いはそれに基く行政協定に示しますがごとく、アリカの軍隊に日本に駐留してもらつて日本を守るということであつて日本憲法でいう日本の武力、或いは軍力ではないと考えております。
  163. 岩木哲夫

    ○岩木哲夫君 他国の軍隊がその領土に進駐をしてそしてその国を防衛する。この防衛は、その衛防を求めた日本がお願いした、そうして日本を守つてもらうというこの軍力保持が憲法上差支えないということは、どの点で言われますか、お伺いいたしたい。
  164. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) しばしば申上げまする通り憲法第九條は日本自体のことであります。日本自体が戰力を持たんということであります。ただ、今申上げまする通り日本戰力を持たんために、仮りにどこかから侵略を受けた場合に、日本はどうするのか、その場合に初めてこの駐留軍がそれの防衛の任に当るということで、日本自体においては、憲法九條のような戰力は持たんということであります。
  165. 岩木哲夫

    ○岩木哲夫君 それではこれらの日本自体が持たない場合にありましても、これらの駐留軍が、日本警察予備隊か、或いは海上保安隊か、或いは将来変る警備隊か、保安隊かわかりませんが、これらの防衛力のある組織団体と共同措置をとる。而も敵対行為……、敵対行為というものは海外から侵略をし、或いは日本に脅威を與えんとする敵対行為に対して共同措置をとるということは、私は今財政的措置の問題と又別個に、行動の上において、私はアメリカの駐在電力が、駐屯軍力が即日本の電力、共同措置をとる以上、半分は日本の共同軍力になる。而もアメリカの駐屯軍は日本及びその附近ということになつております。附近の駐屯上に関しまする費用でございまして、日本がこれは持つのか持たんのか、詳しくはまだわかりませんけれども日本及びその附近の駐屯戰力日本が共同防衛をする、共同措置をとるということは、これはまさしく半分以上は日本の軍力発動である、戰力行動であると私は思うのですが、如何ですか。
  166. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 先刻私が申上げました通り、共同措置というのは、必ずしも警察予備隊がそれに参加してやるという訳合いのものではありません。いろいろの共同措置がとり得るのであります。そうして警察予備隊というのは、目的の示すごとく内地治安のためであります。これが駐留軍が一たび侵略者と戰う場合にどうするかという問題が起つて来るのは当然でありましようが、併し目的はただ、そういう場合においても日本の治安というものは最も重大であります。殊に侵略がされた場合においての内地の治安というものは、これは重大な段階に来るであろうと思つております。そのときには主として内地の治安に当るべきものと私は確信しております。而して事たびそういうようなふうのことがありますれば、それこそ日本の人たちは、少数の分子を除くほか、総腰起してこれに当るべきものだろうと私は考えております。警察予備隊も恐らくその防衛の任に当るだろうと思いますが、ただ現実においてさような目的の下に、警察予備隊アメリカ軍と、駐留軍と共同動作をとるというようなことは、今の段階においては考えられていないのであります。要は警察予備隊本来の目的に即してこれを運営して、これを行動するということになるのであります。
  167. 岩木哲夫

    ○岩木哲夫君 警察予備隊等がアメリカ軍と共同措置をするような考えは持つていないというならば、行政協定の第二十四條による敵対行為、これらの脅威に際した場合に、共同措置をとるという、共同措置をする団体組織は何者であるかということをお伺いしたいのが一点と、それから警察予備隊等が仮に共同措置をとる場合、それは法務総裁のお言葉に矛盾があるのでありまするが、共同措置をとる場合においても、国内治安の衝に当ると言われている警察予備隊が、今日バズーカ砲を持つている。バズーカ砲というものは戰車に使う砲であります。おおむね戰車に使う砲であります。日本は今の八千四百万人に機関銃、鉄砲一つも持たすことができない規定になつているのに、日本人の国内治安にバズーカ砲を振廻したところで、どこを狙うのか、何を狙うのか、これはもう論ずる余地のないことである。又今日相模であろうと、丸子であろうと、府中であろうと、或いは追浜であろうと、飛行機その他の武器は電裝武器を製造いたしておる。そしてこれらの飛行機を操縦する操縦士は、現にアメリカに派遣訓練されておる。こういう事実、こうした意味合から、警察予備隊が将来保安隊になるか、何になるかわかりませんが、これは国内の民間航空以外に軍用に使われておる飛行機は一台もない。国民は鉄砲一つも持つことができない者に、バズーカ砲を振廻したり、飛行機、爆弾を製造したりする必要はないのであります。やはりこれはアメリカ軍と共同動作をとる。軍事行動をとるということであればこそ、こういうことが現実として生まれつつあるのであつて、更に十月にはこれらの裝備がだんだん重裝備になることは否定のできないことである。これは今回の安全保障費にこれらの意味が十分含まれていることは自明の理である。この観点から見て、今法務総裁の言われることは大変腑に落ちないことだと思いますが、如何ですか。
  168. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私の承知している限りにおきましては、警察予備隊はどこまでも内地治安の目的のために置かれたものと考えております。而して内地治安は、普通の場合の内地治安と違うのでありまして、事一たび外国の侵略を受けた場合には、内地の或る分子と相呼応してやるという危險が十分あると見なければならん。その場合に主として内地の治安に当るのは何かと言いますと、警察予備隊であります。ただ平時の状態と、そういう場合の状態とは、恐らく雲泥の差であろうと私は考えております。決して内地の従来のような治安の問題ではなくして、恐らく大擾乱というものが起る可能性があるのじやないかと思います。その場合にバズーカ砲も必要でありましよう。或いは機関銃も必要であるかもわかりません。そのための用意に常備すべきものと私はこう了承いたしております。
  169. 岩木哲夫

    ○岩木哲夫君 法務総裁のおつしやることそれ自体が戰力ではありませんか。これは国内の治安と言いましても、今私が重ねて申す必要もありませんが、そんなものを振り廻すような相手方は国内におらない。他国の人が侵入して来た場合にそういう場合があり得るのであつて外国の人が侵入して来た場合には、或いはこれらの対抗する武器を持つているかもわからないということは、いわゆる外敵に当る行為は、戰力であります。而も戰車を撃つバズーカ砲は、戰車を持つているというのは、堂々たるいわゆる軍備をなしている。これを撃滅するために、バズーカ砲を持つている、爆弾を製造している、飛行機を製造している、飛行機乗りを訓練いたしている。こういつたことは、いわゆる共同措置の場合におきましてアメリカの科学兵器とは雲泥の差がありましようとも、いわゆる木村法務総裁の言う総合戰力の国内の堂々たる私は資格を持ち、実力を持つ問題だと思うのであります。これを戰力と言わずして何とおつしやいますか。
  170. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 繰返して申すようでありますが、いわゆる戰力とは、近代戰を有効適切に遂行し得る編成裝備を持つたものであります。(笑声)今の警察予備隊はさようなものではないのであります。内地の治安、これは我々は軽々に考えてはいけないと考えております。或いは外国の侵略者そのものに対してのみ考えるべきものではない、これと相呼応して内地の治安を乱し、これを擾乱に持つて行かれるような形勢がなきにあらずと私は考えています。その場合における準備といたしましてバズーカ砲や難関銃を持つことは私当然の條理であろうと考えております。必ずしもそれを持つたからといつて第九條に選法の戰力に該当すべきものとは必ずしも言えないと思います。私は絶対に言えない、こう考えております。
  171. 岩木哲夫

    ○岩木哲夫君 どうも大変立派なおかたがそういう言い方をしますと国民も迷いますし、我々議員も甚だどうも迷惑至極で、やはり筋の通つたお話を願いたいと思うのであります。  それでは行政協定の十八條にある「当事者の軍隊」即アメリカから見れば日本の軍隊、相手方の「当事者軍隊」とは、行政協定におきまして何を指しているのでありますか。
  172. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) これは行政協定を作るときにいろいろ苦心をいたしまして、(笑声)つまり二つの異なつたものがありまするのを、一つの條文の中に入れるのでありまして、ほかの点では離すことができましたが、あそこで一つの條文に入れようとすれば、なかなかむずかしい。そこで候文を御覧になればわかりまするが、「各当事者は」と書いてあります。おのおのの当事者はと……、そうして「軍隊の構成員又は文民たる政府職員」……、そこでアメリカ側のほうでは軍隊の構成員もありまするし、文民たる政府の職員もあるわけであります。我がほうでは文民たる政府の職員しかない。これはいずれにおきましてもこういう條文を作るときにこういうふうな書き方をするのは当然でありますが、日本側に軍隊があるという意味では絶対にないのであります。
  173. 岩木哲夫

    ○岩木哲夫君 それは岡崎国務大臣のお言葉といたしましても甚だ受取れないのでありまして、どこに当事者のその文民と書いてありますか、当事者の軍隊であります。而もこの十八條の第一項はおのおのの当事者の軍隊、アメリカの軍隊、日本の軍隊が国内でいろいろの活動をした場合に個人の財産、人命に損傷を負つても、そごは責任を負わないということであります。いわゆる国内が戰場化した場合の規定、損害賠償などの、いわゆる損害の一つのことを認つているのでありまして、まさに当事者の軍隊という言葉が行政協定に現われていることは、将来吉田内閣憲法改正していわゆる再軍備自衛軍力かわからないが、軍隊を持つこと、いわゆる予想の肯定をしてここに書いたものでありまして、この場合における軍隊の意味は、今岡崎大臣が言われましても、これだけは取消しができません。ちやんと活字に載つておりますから……。この辺を明らかにしてもらいたい。
  174. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) これは活字に載つておる通りでありまして、各当事者は、おのおのの当事者は、そうしてその軍隊の構成員又はその文民たる政府職員でありますから、おのおの当事者のほうでその軍隊の構成員と文民たる政府職員と両方持つておるほうは両方にかかります。一つしか持つていないところは一つにしかかかりません。これは当然のことであります。
  175. 岩木哲夫

    ○岩木哲夫君 それでありましたならば、「アメリカ合衆国の駐屯軍は」とこう書かなければならん。「日本の公務員は」とこう書かなければなりません。それを日本の軍隊という字を表わしておる根拠を明らかにしてもらわないと、これは大変なことと私は思う。そういう言い抜けで一々ごまかされては……。国会をごまかしても国民はごまかされない。国際的にもごまかされません。明らかにしてもらいたい。
  176. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) これは何遍申上げても同じでありますが、こう書くのは常識であります。そうしてこの書き方の場合にも、しばしばその点は話をいたしまして、自分のほうは軍隊がない国であるというので、どういうふうにこれを調整するかという話を特にいたしまして、これで以つて如何なる点から見ても差支えないという結論に達しましたから、こういうふうに書いたのであります。日本側については、文民たる政府職員だけであります。又は、その又はのあとのほうが日本側である、こうお考えになつて決して間違いはありません。
  177. 岩木哲夫

    ○岩木哲夫君 これは失礼ながら意見の相違でありません。大変な政府の責任になると私は思います。それで議論になるようですが、議論の余地のないところである。はつきり当事者の軍隊……アメリカ軍というのは、その相手の軍隊即日本の軍隊ということを表わしておるのでありますから、これはもう議論の余地もなければ、見解の相違もない道理であります。併しあえてそれをそうでないというお苦しみを私は拝察いたしまして、それ以上は、この問題をそのまま放つてしまうという意味でありませんが、この場合この議論はもう避けましよう。避けますが、今これは日本の軍隊を肯定して、予定されてそうしてこの行政協定を結んだ。従つてこれらに関連する第二十四條の共同措置の問題が、やはり当然これらの字句に繋がるものと思つて、一速のここに根幹をなしておるものと思います。そこでちよつと話が又戻りますが、第二十四條の共同措置を発動する場合には、先ほど木村総裁は国内治安の警察予備隊だけが主として当ると言いますが、ひとしくアメリカ軍と共同動作をする以上は、日本警察予備隊、将来防衛隊或いは海上警備隊等が、いわゆる車力化する、いわゆる木村法務総裁の総合化する、武器そのものは戰力でないが、人間が使う場合に戰力を総合化するという意味と同じで、アメリカ軍と共同動作するとぎには、海上警備隊或いは防衛隊が電力化するということは、これは否定できないことであると思いますが如何ですか。
  178. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) この二十四條は、要するに敵対行為が発生したか、若しくは発生する危險が追つた場合のことでありまして、この場合には警察予備隊とか海上保安庁とか、そういう特殊のものだけが日本独立を停るために働くのではないのでありまして、一般的に国民全部が当然日本独立を守るために働くものであります。そこで全体として如何なる措置をとるか。これはアメリカの軍隊もここにおりまして、又それに加わるでありましよう。併しその事態によりましてどういう措置をとるか。予備隊はどうするか、或いは普通の港に働いておる人はどうするか。又一般の国民はどうするか。いろいろの面で国の独立を守るための仕事はそれぞれあるわけであります。その措置を協議するということでありまして、今からあらかじめごうやるのだ、ああやるのだというのが、その予想される事態がわかりませんし、書き物にするということは、到底できないこととわかりましたので、その適当な措置は、その事態に応じて考える。そうして両国政府間で相談する、こういう意味でありまして、單に警察予備隊とか海上保安庁とか、それだけを指しているわけではないのであります。
  179. 岩木哲夫

    ○岩木哲夫君 私のお尋ねいたすことは、二十四條における共同動作のあり方ばかりでない。そのときにそれは消防隊も警察官も一緒にやることでありましようけれども、バズーカ砲を持つたり飛行訓練をしたり、重裝備をしたりするような、軍隊とひとしき集団が特にアメリカ軍と共同動作する場合には、その性格は先ほどどなたかおたまじやくしが蛙と言いましたが、おたまじやくしが蛙にかえる、一人前じやなくてもアメリカ軍と共同動作をすること、それは日本戰力になるのではないか、これが軍事行動化するのではないか、これはもう一般の人も或いは軍事行動化するのだと言うかも知れませんが、取り分けこれらが重大なる戰列に配せられ軍事行動化するもの、こう私は思うのでありますが、どうでありましようか。
  180. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) この点についてはいろいろ研究もいたしましたが、警察予備隊アメリカの軍隊と共同措置を講ずるといたしましても、普通の一般の国民も、程度の差こそありましようが、やはり共同動作をとる場合があると考えます。又今お話の消防隊も或る種の共同措置をとるかも知れません。そこで共同措置をとるということが、今まで軍隊でなかつたものを急に軍隊の性格にするというふうには我々は考えておりません……。(「その通り」と呼ぶ者あり)
  181. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 岩木君にちよつと御注意しますが、まだ後に質問のかたがおられますので……。
  182. 岩木哲夫

    ○岩木哲夫君 そうですか。ではこれだけ、一点にいたします。  それじやまだ二、三お聞きしたいことがあるのですが、最後に総理大臣にお尋ねいたしたいことは、私が昨日憲法……やがては憲法改正の時期が、今総理大臣が断じてしないと言われても、ある時期はこれはとにかくわかつていることなのであります。そこで私が憂えますることは、総理大臣は、今日安全保障條約を締結され、それを、その主義、精神を一貫して完遂する御責任をあなたはお感じであろうと思う。日米共同で日本のいわゆる国土を防衛、安全な方法を講じたいという私は総理大臣のお心には十分お察し申上げるものがあります。ところが今回の問題と言わず、すべて総理大臣は……、この日本の防衛ということに対して、最後は武器や金じやない、魂の問題、兵隊の精神行動の問題であります。国民が祖国を防衛する精神を振起せしめ、奮起せしめるというところの状態に持つて行けるか行けないか、これは憲法改正が成功すると否とにかかわらず、国民として私はひとしくこの信念で吉田総理大臣と協力せねばならんと思う。ところが吉田総理大臣が今日までとられて来た言動、特に今回のこうした殊更苦しいお取消しをなさるというような醜態をせずと、堂々とやがては守備軍を創設しなければならん、祖国防衛の精神と共に軍用組織も整備しなければならんということに立脚して、堂々とこの所信を明らかにすべきであろうと思うのでありますが、これにつきまして総理大臣国民に與えるお考えをこの際御披瀝願いたい。
  183. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私は日本憲法、現在の憲法を堂々と守りたいと考えるのであります。(笑声)
  184. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 吉田総理が本日、六日の予算委員会における発言を訂正されましたことは了承いたしました。実は六日の本委員会において吉田総理答弁されましたことを聞いておりまして、静かに考えておりまして、従来の政府の申され方と非常に違つた意見を、見解を披瀝されましたことは、如何なる理由によるのであろうかということを私は私なりに根拠付けようとして、一人で考えておつたのです。その考えの結果をちよつと参考のために申上げますと、こういうことではないか。日米安全保障條約を締結いたしまして又それに基いて日米行政協定を結ばれた。この日米行政協定を結んで行きます過程において、結局日本自衛のための戰力は持たなければならん、そういう必要に追い込まれて来たのだということを自覚されまして、その結果六日の予算委員会においては、自衛のための戰力というものは憲法違反ではないというお考えをお述べになつたのではないかと想像したのであります。ところが、本日自衛のための戰力でもこれを持つことは憲法に違反であるということをはつきりと申されました。そこで私としましては改めてお伺いしなければならない問題が起きたのでありまして、それは日米安全保障條約によりまして、日本が無責任なる帝国主義の侵略の危險にさらされておる限り、一つ戰力を以て日本の安全と独立を守らなければならん。そのために、併し日本がそれを持つ余裕がまだないから、アメリカが出て来てその戰力は供給する、補給する。併しアメリカがいつまでも日本の安全と独立を守るためにとどまるわけには行かん、アメリカの納税者もそれを希望しない、できるだけ早く引揚げたい。引揚げたいのだが、それには日本アメリカ戰力が引揚げた空隙を埋めるだけの自衛力を充実するということが前提となつてこれは引揚げられる。そこでアメリカ側としてはできるだけ早く日本自衛力を充実してくれることを期待する。先ほど問題になりました、期待するということになり、日本側もその期待に応えて努力しましようということになつた。そういうことからだんだん考えて行きますと、日米安全保障條約によつて日本国が負うた責任を果すためには、どうしても自衛力を漸増しなければならない。このことは政府も何度も言つておられる点である。ところでその自衛力というものは一体何であるか。それはアメリカが今、又今後日本に駐留軍の形において置こうとする、これが戰力であります。この戰力を穴埋めする力がなくちやならないといたしますと、自衛力という言葉を使いますけれども、これはやはり戰力……引揚げるアメリカ軍の代りをする力でなくちやならん。そう考えますが、総理如何にお考えになりますか。
  185. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私の訂正した趣意は、先ほどもここで声明をいたしました通りでありまして、安全保障條約の関連とか何とかいうようなことは全然なしに、のみならずしばしば申しますが、私は今日再軍備考えておりません。従つてお話のような考えからして訂正をいたしたわけではありません。
  186. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 再軍備というような言葉をお使いになると問題が紛糾するのでありまして、私は事実に基いてその事実を明かにして行きたいと思いますから、先ほど私が問いましたアメリカ軍が日本に駐留軍の形で持つている戰力、これは戰力であるということは政府側も肯定いたしております。その戰力が引揚げられ、その代りになる力、これを日本が提供しなければ、アメリカ側の期待に副うことはできない、こう考えるのでありますが、そのアメリカ軍の戰力の代りになる力、これを自衛力と呼ぼうが或いは又画軍備と呼ぼうが、それは別なのであります。そういう力を日本政府が作り上げて行くということが、條約を誠実に履行する上において必要なことになつたのではないかというのであります。
  187. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは條約にあります通り日本のいわゆる増強と言いますか、漸増と共にアメリカの軍隊を引揚げる、軽減したい。これは初めからきまつておるのであります。然らばどういうふうにして漸増しますか、漸減しますかどうかということは今後の問題になります。日本の国力がこれを許さないかも知れません。又漸増せずして済むかも知れません。差当りのところは今申しましたように、何ら戰力とか再軍備ということは考えておりません。
  188. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 岡崎国務大臣質問いたしますが、先頃発表されました行政協定の速記録と申しますか議事録と申しますか、これによりますと、日本の防衛分担金は次第に減じて行くというような話合いがラスク氏との間になされたということが載つております。この日本の防衛分担金、つまりアメリカの駐留軍の駐留に伴う費用の分担金、これが減つて行くということは、要するにアメリカの駐留軍の数が減るというのであり、その裏は日本によつて作られる力がその穴埋めをする二とであろうと思うのですが、この点は如何ですか。
  189. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) それは或る意味から申せばお話の通りでありまするが、我々のほうは、例えば現に御審議中の予算にも警察予備隊の増強のために相当額を組んでおります。従つて今後も多少でも警察予備隊の力を増そうとすれば、それだけ金が余計要るわけでありまして、財政上はそつちのほうに金が行けば、アメリカのほうの分担金はできる限り減らすようにいたしたいというのが我々の希望であります。  そこで先ほどからのお話でありますが、只今我々のほうで計画しておりますのは、まあこの漸増でありまするが、その意味は、要するに憲法の規定に背かないで、いわゆる兵力とか武力にあらざる範囲で防衛力を国家財政の許す範囲で又これを漸増して行きたいと、こういう考えでありまして、その意味からいつて余計こつちに金が要れば、そつちのほうの金を減らしてもらいたい、それだけのことであります。
  190. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 そのことをアメリカ政府が了承したということは、日本側が、漸増する警察予備隊というものがアメリカ側の兵力に代るだけの役割をするということが前提となつておるから、だからこそラスク氏も了承したのではないかと思うのですが、その点は如何ですか。
  191. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) これは議事録にもちよつと書いてありまするからお読みになつたと思いまするが、ラスク大使のほうは、その日本側の事情はわかるけれどもアメリカ側の費用も随分かかるんだからその点も考えてくれ、こういう意味でありまして、日本只今自衛力と言いますか、それを漸増しても、直ちにアメリカのここにおる軍隊が非常に経費が安くて済むほどに減らし得るかどうかということにつきましてはこれはわかりません。又我々のほうでは只今十一万とするという計画は持つておりますが、それ以上の計画は今のところはないのでありますので、先方ではどの程度、どういうふうになるかわかりません。これは偏に日本側の国内の事情等を考えまして、政府の将来きめることであります。従つて先方では直ちにそれで、例えば今七万五千が十一万になつたから、それじやアメリカの軍隊もそれだけ減らすんだと、そういうわけではないのであります。
  192. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 今岡崎さんが言われたごと、それがまさに私の言おうとするところであつたのです。即ちラスク氏がアメリカ側も経費がかかるから考えてくれと言つたと言われるのがまさにそれなんで、つまり日本側が、アメリカ側の駐留する軍隊の数を少くし得るような措置を日本側でも講じてくれということであろうと思うのですが、如何です。
  193. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) そういう話はあの協定の話合いの中では出て参りませんでした。ただ我々のほうから言いますと、大蔵大臣等も特に心配いたしまして、なかなか財政上の負担も大きいのだからして、将来ともに防衛分担金のほうは、まあ先方は金持でもありますし、成るべく減らすように努力をいたしたい、こういう考えでその点だけ話をしたのでありまして、我々のほうの計画はどうであるかというようなことは、まだ内部的にも何らきまつておりませんので、全然話しておりません。従いまして向側はそういうことは承知していないのであります。
  194. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 日本側の防衛分担金をだんだん減らして行きたいという希望を申されました。そうしてアメリカ側ではその点についてはまだ返答がないと言われますが、そのときの話合いの中において、日本側が防衛分担金を減らせば、駐留兵力は不変であるとすれば、アメリカの負担がそれだけ殖えるわけです。そういうことは了承したのですか、どうですか。
  195. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) これは一概にそういうわけに行きませんでして、要するに日本安全保障というものも相対的のものでありますから、一般の情勢が平和であるかどうかということにも関連いたしまするし、又近所のほうに危險な状態が特にあるかどうかということにも関連するのでありまして、それが危險の状態があれば、日本防衛力が殖えてもアメリカの軍隊を減らすわけに行かんという状態でありますし、又そうでなければ逆の場合もあるのでありまして、これはあらかじめ公式を定めてこうやるんだ、ああやるんだということでなくして、海外世界情勢等も考察しまして、その場合に適当な処置を講ずるよりほか仕方がない、こう考えております。
  196. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 木村法務総裁に聞きますが、先ほど駐留軍は日本におつて、侵略戰争をやるわけじやない、これは侵略を受けた場合の防衛のために戰うだけだ、だからこれを認めても憲法に違反しないということを言われたようですが、間違いないですか。
  197. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 御承知通り日本憲法には国際紛争解決の手段として武力を放棄する、又武力による威嚇はこれを放棄する、これは明白なんです。日本がさような行動に将来出ないという目的のために戰力を放棄しておることは明かであります。そこで駐留軍の目的は、一にかかつて日本が裸になつた場合に、突然の侵略がありましたような場合にどうするか、その安全を保障するために置かれるのでありまして、武力を持つて威嚇するとか、或いは国際紛争の解決手段にするとかいう目的のために使うべきものじやないと考えております。或いは又国際法上の戰争をするというような目的でないことも明白であります。決して日本に駐屯するごとそれ自体が憲法の規定に違反するものでないと、こう考えております。
  198. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 アメリカの駐留軍は防衛戰力であるということははつきりいたしました。  次に先ほど駐留軍が日本におる、日本の国土におるということは、日本のものじやない、日本戰力じやないということを言われましたけれども日本政府が分担金を出してその維持費の一部を負担し、而も共同措置をとる場合には、日本政府がこの相談にあずかる、即ち共同の指揮権を持つ、而もおるところは日本の国土である、こういう性格を持つておりますので、この防衛分担金というのは、現在の占領軍に対して我々が出しておる終戰処理費とは全く性格が違つております。終戰処理費は敗戰に伴う義務の履行としてこれは出しておりまして、否応なしのものなんです。併し防衛分担金は独立国家間の関係として、而も特に我が国から駐留を頼んで、そうして日本の国土におつて、而も指揮権についても日本が或る程度発言権を持つ、こういう性格のものであるとすると、その防衛戰力はその限りにおいては日本の防衛戰力であると思うが、如何ですか。
  199. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 繰返して申すようでありまするが、この憲法第九條の問題というものは、日本が果して戰力を持つかどうかであります。持つていいかどうかという問題であります。戰力を持たせないという建前であるのでありまして、これはアメリカの駐留軍の問題ではないと私は考えております。そうしてアメリカ駐留軍は或いは、勿論それ自体の指揮権は持ち、それにその一部は参加するかも知れませんが、戰力問題として法律的に考えますれば、決して日本戰力とは私は言えないと考えております。
  200. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 木村法務総裁お答えは、少し憲法の亡霊に取つつかれていると思う。これは憲法のことをそう頭に入れないで、そうして私が具体的に聞いていることに率直にお答え願いたい。憲法問題はあとの問題であります。先ほど私が問いましたように、駐留軍というものは一つ戰力である。而もこれは日本の国土において、日本政府も指揮権の一部を持つ、而も維持費の一部を持つとすれば、これは日本戰力じやないかというのです。
  201. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) これは日本を守るためのアメリカ戰力考えております。(笑声)
  202. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 成るほどアメリカから来ております、アメリカ人でありましよう。併しですよ、日本政府が経費も出す、国土の一部をこれに與え、そうして指揮権についても或る程度発言権を持つというなら、これはその限りにおいて日本戰力ではないかというのです。
  203. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 繰返すようでありまするが、私はこれは日本戰力ではない、こう考えております。これはどこまでも日本を守ることは当然でありまするが、それ自体はアメリカ戰力であつて日本戰力ではない、こう考えております。
  204. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 もう一点。もう総裁は甚だ答弁に苦しんでおられるようですからこの程度でとどめておきますが、もう一点聞きたいのは、先ほど午前のこの委員会で、憲法戰力を持ち兵力を持つことを、武力を持つことをやめたのは、太平洋戰争のような侵略戰争を起すような武力を持つてはならんということであるということを力説されました。それならば逆にそういう侵略的な、いわゆる近代的な侵略戰を行うに足らない、その程度に至らない武力を持つ、戰力とは又……武力と申します。武力を持つことは日本憲法の禁ぜられるところでありますか、どうですか。
  205. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 戰力を持たせないということであります。戰力に至らないものは持つていいという結論は出るのでありまするから、我々この新憲法を堅持する建前から申しますると、少くとも外国戰争するような力を持つ戰力というものは持たないという方針で行くべきであると、こう考えております。
  206. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 だんだんはつきりして参りましたが、即ち総裁の言われることは、太平洋戰争のような侵略的な近代戰争を行うに至らない兵力というものは持つても差支えないという御解釈でありますね。
  207. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 自衛のためでも、戰力に相当すべきものは私は持つてはよくない、こう考えております。然らばその戰力というものは何かと申しますると、これは繰返して申しますように、戰争を有効適切に遂行し得る裝備編成を持つ力であります。それじやその程度に至らざる兵力を持つていいかということでありまするが、これは私は結論といたしまして、そういうような考えに近付くような戰力というものはやはり持つことを控えるべきであるということを考えております。ただ日本治安確保のためにこの一種の力は持つてよろしい。併し戰力に近付くべきようなものは成るべく日本は差控えるべきものであろうと考えております。ただ純法律論といたしますれば、戰力に至らざる程度のものであれば何でもいいじやないかという議論は出るでありましよう。併しながら新憲の建前からして、少くとも日本はさような危險なものは持つべきじやない。ただただ治安の確保に必要なるべき或る種の力というものは持つべきである。又持つて差支えないと、こう思つております。
  208. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 だんだんわかつて来たと思うと又ごまかされるものだからわからなくなる。つまり近代的な戰争を遂行するだけの力、これをまあ戰力と言いますか、武力と言いますか、それは持つてはならん。併し近代的な侵略戰争をするに足りない力ならば、憲法は持つことをあえて妨げていない御解釈であるかどうかということを聞いておきます。
  209. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 純法律論から申しますれば差支えないということが言えましよう。純法律論から言えば戰力を持つことは禁止されております。
  210. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 戰力に至らざる武力という言葉がありますが、戰力に至らざる武力は持つて差支えないという解釈なんですね。
  211. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 御承知通り憲法の第九條第一項の武力、あれは積極的な動的な方面から見たものと私は解釈しております。武力と戰力と相違があるか、こういうことになりますれば、別段その間の私は区別はないと考えております。武力であつても或る種の段階に至りますれば無論これは戰力言つてよかろう。ただ憲法の建前からすれば、第九條第一項は動的に見たものと私は考えております。つまり武力による威嚇又は武力の行使はこれを禁止している。永久に放棄している。これは積極に見た面であります。従つて武力と戰力との区別というものは、言葉のあやでありまして、少くとも私の言うような編成裝備を持つた武力であれば、これは戰力になるべきものであると考えております。
  212. 小林政夫

    ○小林政夫君 ちよつと議事進行について……。今の発言に関係するわけですが……。
  213. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 もう一点。総裁が言葉を濁されるので困るのだが、武力は戰力が動いた姿、まあこれで結構です。動いた姿を武力と言う……まあいい。その戰力たるや、太平洋戰争のごとき侵略戰争を連行するに足らざる、それ以下の戰力であるならば、憲法第九條はあえてこれを拒否していないという御解釈ですかというのです。はつきりもう一遍御返答して頂きたい。純法律論でも何でもいいですから。(笑声)
  214. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 御承知通り戰力の解釈でありまするが、これは必ずしも一定しているわけじやありません。その時代と環境、これは非常に影響するのであります。それで太平洋戰争のようなあのときの兵力、これを基準にして私は考えるべきものじやない。現在の情勢なりすべてのものを総合して観察すべきものであると考えております。
  215. 小林政夫

    ○小林政夫君 今のに関連するのですか……。
  216. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 関連していますか。
  217. 小林政夫

    ○小林政夫君 ええ。
  218. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 波多野君、いいですか。
  219. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 もう一度発言すればいいのです。
  220. 和田博雄

    委員長和田博雄君) もう一度発言して……。それではあとから小林君許しますから。
  221. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 太平洋戰争と言いますか、今おつしやいましたような戰争、どんな戰争でもかまいません。要するに日本憲法を作つた精神は、侵略戰争を絶対しないという精神で作つたのだ。だから軍備の、或いは戰力の問題なんかもそういう近代的な侵略戰争を起さない、起すような戰力は持つてはならんということであつて、それ以外のものなら持つてもいいという解釈を総裁は今朝から言つているのです。その点を確かめておくのです。
  222. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 勿論戰力にあらざる実力は持つても私はよかろうと思つております。(笑声)これは憲法の規定に反するものでないと思います。
  223. 小林政夫

    ○小林政夫君 この戰力の問題について朝からずつと質疑応答を重ねているのでありますが、非常に話が抽象的であるために、いつまでたつても解決がはつきりしない。で朝も楠見委員からも、一体戰力とはどういうことなんだというような意味の、戰力はどういうことじやない……そのまあ質疑があつたわけでありますが、そこではつきりしたいのは、この現在の憲法に反しない程度において政府自衛力の漸増を考えておるわけでありますが、その自衛力、力というものはどの程度のことを考えておるのか。その現在の憲法に反しない範囲における力の最高限度、目標、自衛力の目標はどこに置いておるのかということを具体的に、木村委員が先ほど第一次大磯後の軍縮の問題とからんで、その軍備とは何ぞやという定義が行われたというふうの……、まあ読み上げられましたああいうふうな要領で、具体的に、科学的に、一体政府は現在の憲法下において自衛力の目標をどこに置いておるのかということをはつきり御説明願えば、いろいろそれによつて論議は進められると思います。その点を今直ちにできなければ、早い機会に具体的なことで、例えば大砲はどうするのだ、員数は、人員は何名くらい置くというふうなことの自衛力、現憲法下における、政府が現在の憲法下において許されておると考え自衛力の最高目標額、それを超えたら憲法改正しなければならんという、そのリミツトの点を具体的に明らかにしてもらいたい。
  224. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) これは兵員にして幾ら、裝備にして幾らということは、具体的には私はお答え申上げることはできんと思うのであります。それはいわゆるいろいろの観点からこれを総合して判断すべきものであろうと、こう考えております。併し少くとも今の段階においての警察予備隊というものはです、戰力でないということだけは申上げることはできます。(笑声)
  225. 小林政夫

    ○小林政夫君 その戰力というものは、歴史的に又環境的に変つて行くということでありますが、少くとも現在の環境において、現在の段階において一体政府はどの……、先ほど言つたように警察予備隊戰力であるかどうかということを私は言つておるのではない、どういう程度のものをこの憲法第九條において許された範囲の自衛力の最高限度である、そこまで政府がやるやちないということは別として、一体政府はどの程度、現在の環境において現在の国際情勢において、又兵器の発達程度においてどれだけの裝備を持ち、どれだけの員数を持つことが、この現憲法下における自衛力限度であるというふうにお考えになるかということを具体的にお述べ願いたい。
  226. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) お答え申上げます。警察予備隊につきましてはすでに予算書に記載されてあります通り只今七万五千名でございますが、これを十一万に明年度中に増員をいたしたいと、かように考えております。又裝備につきましても、この際米国の協力を得まして強化をいたしたい、こういうふうに考えておるのでございますが、これは先方の都合もありまするので、なお具体的に申上げる程度になつておりません。  それから海上保安庁におきましても、六千名の増員を計画いたし、又これに必要な船舶を米国政府より借受けるような話合いが進んでおるのでございます。これらはいずれも政府といたしましては、現在の日本国憲法の下におきまして、戰力にあらざるものであつて、国内治安の必要上かような増強を必要とすると、こういうふうに考えておるのであります。  それでは現在それ以上の警察予備隊なり海上保安庁なりの増強の計画はあるかということになりますると、具体的な計画といたしましては只今持合せておりません。併しながら来年度においてこれだけの増員を果しました後において、それで日本の国内治安上の要求から見まして十分であるかと申しますると、まだ十分であるとは申しかねる、こう思うのでございます。従いまして諸般の情勢、殊に国内の、国民の負担の状態から許し得るならば、その後においてもできるだけ増強を図りたいと、こう考えておるのでございまするが、この具体的な計画は立つておらないことは只今申上げた通りでございます。而してこれらの明年度以降におきまする警察予備隊並びに海上保安庁の増強ということは、いずれも現行日本国憲法の範囲内においてやつて参りたいと、こう政府考えておるのでございます。又国内治安上の要求からいたしまするこれらの増強は、飽くまで現行憲法の下において許されておる、即ち現在戰力と見られる段階にはなお達せざるものである、こう考えておるのでございます。
  227. 小林政夫

    ○小林政夫君 政府が今やつておることが憲法に違反しないとお考えになつておることは明らかなんで、政府考えられておるということはわかるのです。憲法に違反するかしないかということは我々が判断いたしますから。一体九條に違反しない……何回も言う通り、現在の予備隊がどうであるとかこうであるとかということを聞いておるのでなくて、九條に違反しない範囲における自衛力の最高限度というものは、現在の武器の発達、現在世界が持つておる武器状態等から考えて、一体飛行機等においてもどういう飛行機を何台持つぐらいのことはいいのだとか、或いは裝備、大砲はどうだとか、バズーカ砲まではいいのだけれども、こういうような大砲はいけないというような、具体的な兵員及び裝備の点について、はつきりした憲法解釈、こういう問題とも関連してその点を明らかにしてもらえば、いろいろ論議がもうちよつと明らかになつて来る。
  228. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 政府といたしましては、只今警察予備隊の増強乃至は海上保安庁の増強ということにつきまして、現状では不十分であるということは考えておりますが、その増強の限度がどういうものであるということにつきましてはなお研究をいたしておるところでございまして、まだここまでの増強をするという計画として具体的に申上げることはできかねるような状況でございます。
  229. 小林政夫

    ○小林政夫君 政府の目標というが、政府はここまで行くのだということでなくても、それは財政状態等もあつてやりたいけれどもやれないという点もあるでありましようし、一応憲法解釈として、一体現状においてどの程度裝備を持ち、どの程度の兵員を持つことが許されておる範囲であるかということをはつきりしておいて頂けば、我々国民が見ておつても、ああそろそろ限界に近づいた、憲法改正もやらなければならんということが明らかになるし、まあ政府考えはどうであつても、その考えが果して我々が判断して九條の許された範囲であるかどうかということも具体的な尺度で論議ができる。抽象的に近代戰争を有効適切に遂行する云々ということでは物差しにならん。今直ちに御説明できなければ、成るべく早い機会にそういう具体的なものを御提示、説明願えれば結構です。
  230. 和田博雄

    委員長和田博雄君) それは政府のほうで適当な時期に具体的に御提示できますか。
  231. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) お答えを申上げます。この憲法戰力の具体的な限界ということについての只今の御質問でございますが、この点は今朝来法務総裁からたびたび申上げましたごとく、近代戰争を遂行するに(笑声)必要且つ適切なる手段というものが、(「その通り」「何遍も」「それでいいのだ」と呼ぶ者あり)具体的に如何なる限界を持つべきであるか、こういう非常にむずかしい問題でございまするので、この点につきましてのお答えはなかなか困難ではなかろうかと存じます。即ち戰力という観念が一つの具体的な見解によつて決定されるところの具体的なものではなく、それは絶対量を示すものではなくして、それは他のいろいろな要素との関連において考えられる一つの相対的な観念である、こう政府としては考えておる次第でございまするから、この点を申上げます。(「その通り」と呼ぶ者あり)
  232. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 吉田君何か質問がありますれば簡單一つ……。
  233. 吉田法晴

    吉田法晴君 それでは時間もございませんし、又別に御質問を申上げる機会もあるかと思いまするので、簡單に二、三点お尋ねいたしたいと思います。その前に一点だけ総理にお伺いをいたしたいのでありますが、それは憲法の解釈につきまして、憲法の制定の場合に、国会でも明らかにせられました、それから憲法の解釈につきましていろいろ学者の意見等もございますが、これらは現行憲法のこれは解釈として実定憲法の中身をなすものだと考えるのでありますが、その後朝鮮事変の勃発或いは講和條約の締結等によつて憲法の解禁がだんだん変つて参りつつあり、朝来から釈明なり、或いはこの釈明に対する質問を通じましても、憲法の解釈について政府にも憲法解釈権があつて、勝手に憲法というものは解釈ができるのではないかと、こういうことを考えておられるかのような印象を受けるのであります。この点はどういう工合に考えておられますのか。これは国会政府との関係、行政については勿論憲法上の規定もございますが、そうじやなくて、憲法の解釈問題につきましては、私は政府が勝手に解釈して、その通りにやり得るものではないと考えておるのでありますが、如何ように憲法の解釈権について総理として考えておられますのか、先ず伺いたいと思います。
  234. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 法務総裁からお答えをいたします。
  235. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 憲法の解釈につきましては、いろいろの方面から論議されるでありましようが、政府政府として、これは一つの解釈を持ち、又国会国会としてこれは一つの解釈を持つ場合があるかと、こう考えております。それだから政府で独断的にそれを解釈するというような嫌いのないように、政府は慎重にこの憲法については独自に解釈すべきものと、こう考えております。
  236. 吉田法晴

    吉田法晴君 それでは国会憲法に関する解釈と、それから政府の解釈とが食い違つた場合に、どういう態度をとられるか、どちらの優位を認められるかを一つ伺いたいと思います。
  237. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) そういう食い違いの生じた場合における最後の結論は、結局は最高裁判所で判断せらるるものと私はこう考えております。
  238. 吉田法晴

    吉田法晴君 その点につきまして、国会が国権の最高機関という点についての認識が不十分であるように考えるのでありますが、その点は論議になりますから省略いたします。  次に、今日総理から釈明と申しますか、取消がなされましたが、その中には大体二つあつたと思うのであります。後段のほうの自衛のためでも戰力を持つことは再軍備であるし、再軍備をするような、従つて憲法改正をするような疑問を與えたから、この点は取消すという話でありますが、併し先日も再軍備をしても憲法上差支えないという言葉を明言せられなかつたと私は速記録を読んでそう感ずるのであります。ところが前段の日本独立と安全は日本人自身によつて守らねばならん、こういう自衛を強調せられました点は、この点は朝来の質問に答えても十分に説明がなされなかつたように思うのでありますが、そこであの取消なり、釈明なりを以て先日の内村氏に対する答弁、それから岡本氏に対する答弁吏でも取消されたのであるかどうか、その点をお尋ねしたいのであります。申上げるまでもなく、内村氏に対しましては、この自衛のためにあらゆる手段を以てして独立を守る、これは当然のことであると言明されております。岡本氏に対しましては、日本の安全独立を防衛するための自衛力を養うのであつて、これが私は直ちて再軍備とは考えない、こういう自衛、或いは安全独立を防衛するために自衛力を養わなければならん、この点については、これはお取消しにならなかつたと了解するのでありますが、その点如何でありますか。
  239. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 繰返えして申しますが、日本の安全独立国民の手によつて守るべきであるという観点からいろいろな誤解を生じましたから、先ほど訂正いたした通りの文句で以て私の所見を訂正いたしたわけであります。
  240. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 吉田君に申上げますが、総理は十五分までしか……ほかに約束があるそうでありますから、そのおつもりで要点だけ簡單総理の御質問はして頂きたいと思います。
  241. 吉田法晴

    吉田法晴君 はい。それでは自衛力或いは自衛力等に関する答弁は取消したわけではない、こういう今の御答弁であつたと思うのでありますが、そうすると先ほど来自衛力と、それから戰力との限界が問題になつておるようでありますが、兵器につきまして、先般兵器を作ること、或いは兵器それ自身は戰力ではないという答弁が木村総裁からなされました。それを重ねて総理は認められたのでありますが、この兵器と、それからこれを使うことを訓練された部隊、これを先ほど来は戰力でないという言葉で言われて参つたのでありますが、それを兵力という言葉で呼ぶことについては総理として如何ように考えられますか。兵力と呼ばれるかどうか。自衛力は認められた、その自衛力の次に、兵器と、それからこれを使う訓練された部隊がありますが、それを合せて兵力と呼ぶことについてはどういう工合にお考えになりますか。
  242. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは先ほど来法務総裁からして答弁せられた通りであります。戰力に及ぶものは政府考えない。
  243. 吉田法晴

    吉田法晴君 それではちよつと中に法務総裁に対する質問を挟むのでありますが……。
  244. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 法務総裁はあとまでちよつと残つてもらいますから、総理への質問がなければこれで総理への質問は、ただ一言私からも一言だけ確かめて終りたいと思うのですが、如何ですか。総理への質問があればおやりを願つて結構です。
  245. 吉田法晴

    吉田法晴君 それでは委員長に御質問を願つて……。
  246. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 私一言この小林君の質問にありました現在の憲法下、国際情勢下において自衛力限度はどういうものであるかということは、今日朝からの質疑で一番中心になつた問題だと思うのでして、警察予備隊防衛隊にするその方法の一つの組織として切換えると大橋君のほうでは考えておられるという答弁でありましたが、そういう具体的なものがいつ頃一体明らかになるのか、それらの見通しだけを一つ総理から承わつておきたいと思います。
  247. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 今行政機構等の問題を研究いたしております。それと同時に防衛力の組織について研究いたしております。これは近目成案を得ると思いますが、いつ何日かということはちよつと申上にくいのでありますけれども、近日ということで御了解を頂きたいと思います。
  248. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 最後に堀木君いいですか……。
  249. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ちよつとですが……
  250. 和田博雄

    委員長和田博雄君) それじや簡單一つ。もうあと四分しかありませんが……
  251. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 結論的に最後に総理一つお伺いしておきたいのです。本日の総理自衛戰力の問題をめぐつて、これまで長い間質疑を交して参つたのですが、その結果最後に結論として我々が得た印象では、折角総理が一応取消されたのでありますけれども、その後木村法務総裁等の意見を聞いて見ますと、逆に裏から別のことまで折角総理が取消した言葉を又取消されておるという印象を受けておるのです。これは私は非常に重要だと思う。そこでどうしてこういうことが起るかと言えば、政府がこの戰力の問題或いは武力の問題、国内治安の問題或いは直接侵略とか或いは又間接侵略とか、自衛とかそういうことに対しての見解がまちまちであつて、ちよつとも統一されていない。そこで今後これから又だんだん予算の審議を続ける過程においてもこういう問題が起つて来ると思うのですが、この点については十分見解を統一して御答弁願いたい。私は今日の結論として折角総理は一応取消されたが、結論として法務総裁外国が侵略しなければ、その力というものは戰力でないから、これは憲法に反しない。原子爆弾を持つてつてもこれを使わなければ戰力でない。こういうような御答弁になつて来まして、結局又元に戻つて来る。折角今日取消されましたけれども、元に返つてしまつたと私はそう思うのですが、政府の統一した意見として最後にやはり総理大臣からこの点御答弁願いたい。これまで長い間質疑した過程において、結局木村法務総裁の御説明を聞きますと、別な言葉で六日の予算委員会総理自衛のために戰力を持つて憲法違反でないと言われたことを別な言葉言つておる結果に終つておると思う。最後に私はもう一度総理大臣答弁を願いたいと思います。
  252. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 政府説明が矛盾したと言われますが、私は矛盾したとは考えません。お考え如何にお取りになろうが御自由であります。私は矛盾しておらないと思います。即ち私の訂正いたしましたところの意見法務総裁意見とは、私は矛盾は一向いたしておらんと、こう考えます。
  253. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 本日の総理発言に対しまする質問はこれで打切ります。ただ又あとに関係閣僚が残つておりますから、多少聞き漏した点で一、二の質問通告者がありますので、特にそれを許します。
  254. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 私一つだけ法務総裁に確かめておきたいことがあります。実は今日私ども聞いておりますと、総理はお取消しになりましたが、法務総裁が新らしく憲法上の疑義の問題を御提供になつた考えざるを得ない。そうなつて参りますと、折角総理が取消されましたことが、それは十分でなくして、やはり依然として残しておるのだということになつて参りますと、重大な問題だと思いますので、一点だけお聞きいたします。法務総裁は條文を暗記しておられるようですから御必要はないと思いますが、九條に「陸海空軍その他の戰力は、これを保持しない。」、戰力というものを……何か太平洋戰争のようなことを常に例を引かれて二度と戰争がないようにするのだということが沿革的だと、こうおつしやる。ところがこの戰力というものは大体学説的にきまつておる。法務総裁の御議論のほうが、どこにそういう説があるのか私はわからないと思う。この規定ができました沿革からお考えになつて説明になるのですが、私は沿革から見れば日本が再び戰争するような能力をすべて持たないことだと、だから太平洋戰争だとかそういう話でなく、佐々木惣一先生ですら、先ほど木村委員から申上げましたように、そういうものを製造する施設及び兵器を作るような施設というものまで含むのだということをはつきり言つておる。戰争をなす可能性のあるものを言つておられるのだということを言わざるを得ないと私は思うのであります。戰力を非常に広義に御解釈になつて、それが太平洋戰争をやるとか、或いは例を挙げるとなると、よその大きな厖大な兵力を言われ、この戰力という字はそういう軍隊を意味しておるものでないということは明らかで、軍隊だけを意味しておるものでないことはこれは通説になつておる。甚だ失礼な話でありますが、この憲法の英訳を更にここで引用して御覧に入れますと、決してそういうふうな御解釈はつかないのであります。つまりランド、シー、アンド、エア・フオーセス、アズウエルアズアザーウオーポテンシヤル、これを木村委員は潜在戰力、こういうものは、むしろこの戰力というものは正式に日本語に訳せば潜在戰力のほうが確かなんです。それをただ日本では戰力と、こう言つておるのです。こういうふうなものまで含んでおるということは私は学者の通説寿と思うのでありますが、それにもかかわらず、政府は依然として木村さんから御説明になつたような御見解でいられるのかどうか。そういう御見解でないと説明がつかないから逆にこう私は解釈して来られたような気がする。憲法を素直に読めば私のような解釈のほうが穏当である。併し私のような解釈をとると総理が折角取消されたが、憲法違反の事実がきちんと残るので、逆にごうやられておると、こう考えるのですが、依然として純法理論から見まして、これは木村法務総裁はときどき法理論と政治論をごつちやにされて御説明になるようでありますから、法律学者である木村法務総裁自身は純法理論からどうお考えになるか承わりたいのであります。
  255. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 結局戰力の定義の問題の御質問でありますが、繰返すごとくこの憲法はどこまでも我々は堅持すべきであると考えております。そこで総理自衛のためでも戰力を持たないということは、これは当然の帰結であります。総理の言われたのは、自衛のためにも再軍備しないと、これは戰力を持たないというのでも結局帰着するところは同一である。再軍備しないということは戰力を持たんということでありまするから、再軍備しないと言つた以上は仮に自衛のために戰力云々という言葉を使われても、これは精神においては戰力を持たん、即ち再軍備しないということに帰着するのであります。それで戰力の問題でありまするが、これは戰力というものは何が戰力であるかということはなかなか端的に、又具体的にこれを申すことは困難であろうと思います。その時代と、そうしてその置かれた環境、地理的背景、その他万般のものを総合して、どれだけのものを戰力と言うかということに結局解釈がなつて来るのでありまするが、そこで現段階においては私は少くとも外国に対して重大なる脅威を與えるような裝備編成を持つたような軍隊は日本憲法の建前としては持つべきでない、こう考えておるのであります。そこでどれだけの裝備を持つた兵力戰力になるかという具体的の問題ということは、これは私は今すぐさまこれを申上げることはできない。これはすべてのものを総合し、又外国との関係がそこに出て来るのでありましてこれは一に国際関係も非常に響いて来るであろうと思うのであります。国際関係において極めて平穏無事な状態になりますれば、これは又戰力に至らざる兵力を持つ必要もないわけであります。一にかかつて国際情勢その他万般のことから考慮しなければならん問題であろうと、こう考えております。そこで飛行場を持つた場合は戰力にはならんか、或いは造船所の大きなのを持つた場合には戰力にはならんかどうか、これはそのときのやはり具体的の背景如何によつて考えるべきもので、ただ大きな造船所、飛行場を持つたから、それ自体で以て職力と申すことはできないと、ごう私は考えておるので、これは先刻申上げましたように、すべてのものから総合判断すべきものであろうと、こう考えております。
  256. 和田博雄

    委員長和田博雄君) ちよつと申上げますが、吉田君の実は質問が続いておりますから……。
  257. 吉田法晴

    吉田法晴君 実はその点に関連するのですが、これは今の堀木委員の御質問は、陸海空軍をのけたその他の戰力は、ポテンシヤルについて法務総裁意見を求められた、ところが法務総裁は前から陸海空軍を含めて戰力と、こういう解釈をしておられる、そこに食い違いがあるのでありますが、その点はこれは憲法学者の解説だけではなくて、金森国務相の第九十帝国議会における答弁がございます、その点と食い違つておりますので、私は先ほど来、今の政府なり、或いは関係大臣はかような解釈をしておられるということを申上げたのであります。それは堀木委員にあとで明らかにして頂くことにしまして、このいわゆるその他の戰力は、ポテンンシヤルの論議になるのでありますが、このその他の戰力の中に、佐々木惣一先生の解釈を以てしても、或いは当時の政府を代表した金森国務相の答弁を以てしても、これは人間の力と申しますか、金森国務相の言葉で言いますと、一切の人的な力と物的な力と両方からめております。これは一つは表現の差異はありますけれども、各学者なり或いはその当時の政府は違つた意見はないと了解をいたします。その中のいわゆる解釈問題について議論をしておりますときりがございませんので、一つ法律辞典を引いて法務総裁に伺いたいのでありますが、昭和二十年商工文部農林運輸省令第一号(昭和二十年勅令第五百四十二号ニ基ク兵器、航空機等ノ生産制限ニ関スル件)、これは武裝解除に関しまする指令第三号から出て来たことは言うまでもございませんが、これは省令と申しますか、勅令と申しますか、その中身の第一條に、「左二掲グル物資ハ之ヲ生産シ又ハ加工スルコトヲ得ズ」と書いて、一兵器と書いてございます。その第一條第一号の兵器の下に(猟銃、捕鯨砲、捕鯨用標識銃、救命索発射銃及空気銃ヲ除ク)とありまして、これだけのものを除いたものが兵器としてはつきり書いてございます。そうするとこの兵器の内容がこの標準によつておのずから明らかなのでありますが、警察予備隊が現存持つておりまするカービン銃、或いは機関銃、バズーカ砲、追撃砲、これは兵器と言われないかどうか。具体的に一つ法令の文句を挙げて法務総裁にお尋ねいたしたいと思います。
  258. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 警察予備隊の持つておるバズーカ砲、機関銃、これは兵器であるかどうか、これは無論兵器と言えましよう。兵器の定義の如何にもよりますが、通常の観念においては私は兵器であると言えると思います。
  259. 吉田法晴

    吉田法晴君 通常の観念と言いますか、実定法上から考えまして、兵器であることは、これは強弁の余地がないと思う。そうしますと、先刻来木村法務総裁は、戰力の中に一切を含めて解釈をしておられるようでありますが、陸海空軍を除きまして、その他の戰力という中には、学者なり或いは第九十帝国議会における、憲法改正議会における政府答弁をしておるその中には、一切の人的及び物的力というものが入つておる。その物的力の中に入るものとして、この兵器は入るということは、これは明らかだと思うのでありますが、その点は如何考えますか。
  260. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私はそういうものを一々取上げて戰力とは言えないと思う。総合した力が戰力でありまして、例えばバズーカ砲はどう、或いは戰車はどうと、それだけのものを取上げて憲法第九條の戰力というものではないと私は考えます。
  261. 吉田法晴

    吉田法晴君 多少これは意見の相違になりますが、手許にありますのは、金森国務相の憲法改正委員会における答弁を引いて、その点を政府としては、認めなくなつた意見が違つたと言われるかどうか、お尋ねしたいと思います。「コノ戰力ト申シマスノハ、戰争又ハコレニ類似スル行為二於テ、之ヲ使用スルコトニ依ツテ目的ヲ達成シ得ル一切ノ人的及ビ物的カト云フコトニナラウト考ヘテ居りマス、従ツテオ尋ニナッテ居りマスル或戰争目的二用ヒルコトヲ本質トスル或カノ元、及ビ之ヲ作成スルニ必要ナル設備ト云フモノハ戰力ト云フコトニナラウト思ツテ居ルノデアリマス、」こういう言明がございますが、これを今の政府と申しますか、木村法務総裁は認められるか、それとも否定せられるか、承わりたいと思います。
  262. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 只今金森君の解釈を御引用になつたから、金森君の何を重ねて私は何いたしますから、金森君も「何処マデ行ケバ戰力ニナリ、何処マデ行ケバ平和カニナルカト云フ限界ハ中々決メ兼ネル点ガアリマス、大体ノ基本ノ原則ト致シマシテハ、一国ノ戰闘力ヲ構成スルコトヲ常ノ姿トシテ居ルカ、之ヲ戰剛力ト云フモノト思フノデアリマス、」こう言つております。そこでこの施設の問題で、最後になつておりまするが、かように考えておりまして、現実の施設が戰力であるかどうかということは総合的な判断によつてきめるほかに名案がないものと思つております。いわゆる総合的の力で以てこれを判断すべきだと、こういうことを金森君が言つておるように考えられるのであります。そこで私の考えといたしましても、結局は戰争を有効適切に途行し得る編成裝備を持つたものが戰力になるのである。これを憲法では戰力というべきものであると、こう解釈しておるのでございます。
  263. 吉田法晴

    吉田法晴君 これは双方金森国務相の言葉を引いて質疑を続けるのもどうかと思いますが、これはそのときの政府の一応有権的な解釈と考えますので、引くわけでありますが、同じ金森国務相の言葉の中に、警察権と陸海空軍の戰力との境界線は理論的には明白であるはずであるが、「唯実際ニ於キマシテ若シモ国内治安維持ノ為ノ警察カト云フコト三言葉ヲ籍リテ、陸海空軍ノ戰力其ノモノニ匹敵スルヤウナモノヲ考ヘマスルナラバ、ヤハリ此ノ憲法第九條ノ違反トナリマス、」この警察力と、それから木村法務総裁の言われる陸海空軍の戰力との限界点が問題になるわけでありますが、先ほど来申しますようにこの全部を引つくるめた戰力という言葉ではなくして、先ほど堀木さんも英訳を引かれましたけれども、陸海空軍、ランド、シー、アンド、エア・フオーセスですか、この陸海空軍のあれを除きましたその他の戰力について、金森国務相の言葉を先ほど引いたわけでありますが、この陸海空軍の力を除きましたその他の戰力の中に、兵器という先ほど申しましたものが入るかどうかという点をお尋ねをしておるわけであります。
  264. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 兵器そのものだけでは私は入らんと思います。いわゆる総合力であります。(笑声)
  265. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 ちよつと関連して……法務総裁さつきからいろいろ御意見が出ておりますが、太平洋戰争云々をのけまして、これを判断基準にされておりますが、こういうものはのけて、極く端的に先ほどの堀木君の御質問に関連して申上げますが、例えばスエーデン或いはスイスにおいて一つ防衛力を持つております。あれは一体何でありますか、戰力ですか、戰力でありませんですか、日本憲法に比べてどうなんです。
  266. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) おのおのその国その国によつて事情は異にしておるのであります。スイスのごときも、相当な兵力を持つておると私は考えております。つまり兵員の点においては、多数とは申しかねても、その裝備においては、実に精巧なるものを持つていると聞き及んでおるのであります。そうしてその土地の環境によりましていろいろ違うのであります。それが果して国内治安のためにのみ作られた防衛隊であるか、或いは外敵侵入に備える一つ戰力であるか、いわゆるその国その国の事情によつて解釈すべきであろうと私はこう考えております。
  267. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 それでは、あれはスイス及びスエーデンなどのいわゆる普通観念で軍隊と言つておりますが、あれはあなたの御解釈で言うと、スイスの事情を考慮に入れて御返答を願いたいのですが、戰力にはなりませんですか。
  268. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) これは、戰力になるかならんかということは、各国の事情がつまり解釈のもとでありますから、(笑声)併し少くとも私はスイスあたりの持つておるのは、一の軍隊であるということだけは、私は申すことはできるだろうと考えております。これはベルギーにおいても然りであります。併しこれは、国際環境が非常に違いまするから、一概にどうということを申すことはできませんけれども、今波多野さんの仰せのように、一つ兵力であるということは言えるだろうと、私はこう考えております。(「議事進行」と呼ぶ者あり)
  269. 和田博雄

    委員長和田博雄君) 法務総裁戰力に関する件についての質問はまだおありだろうと思います。この問題は今朝からいろいろ質疑応答が交されましたが、解決していない問題だろうと思いまするし、これについての質疑の機会はまだありますので、本日は主として総理発言に対する質疑ということに限定して今朝から御質問を願つたのでありますが、一応今日の委員会はこれで終りたいと思います。本日はこれで散会をいたします。    午後四時三十七分散会