○
政府委員(
平田敬一郎君)
租税及び
印紙収入の
予算につきまして
概略補足しまして御
説明申上げたいと存じます。
お手許に書類をお配りいたしておりますが、
昭和二十七
年度税制改正の要綱という少し大きな活字で書きました横書の書類、それから
昭和二十七
年度租税及印紙收入
予算の
説明、少し小さい活字で
歳入見積算定の
基礎を詳細に書きましたものと、この二つにつきまして概要を御
説明申上げたいと思います。
先ずこの
改正の要点でございますが、今回の
改正につきましては、大体
方針といたしまして、減税問題につきましては大体次に申上げるようなふうに
考えております。即ち
所得税と、
相続税につきましては、できる限り
負担の
軽減を図る、と申しましても
所得税につきましては、前回臨時特例で
臨時国会を通過しましたのを平
年度化するという意味でございますが、
所得税と
相続税につきましてはできる限り減税をする。それから
法人税につきましては、前回御
審議を煩わしました三十五から四十二に上げる、あの増税の
方針を、新たに増税するわけではございませんが、そのまま踏襲する。それから間接税につきましては、今までは減税いたしておりましたが、二十七
年度としましては特別な減税は行わない。
砂糖につきまして配給がやめになりますので、その機会に税としましては若干の増税を図りたい。但しこれも現在食管で例の自由販売の
砂糖につきまして相当余剰利益を得ておりますから、それと比べますと大差ない増收でありまして、大体そのような基本的な
考え方に立
つております。
それから
税制の
改正につきましては、この際
昭和二十五
年度に国税、地方税を通じまして
改正しましたのを、又根本的に
考え直したらどうかという意見もございまして、いろいろ検討いたして見たのでございますが、やはりもう少し時期を待ちまして、愼重に考究した上で根本的な点は
改正したほうがいいのじやないかということに結局において相成りまして、国税、地方税を通じ、
税制の根本に触れますような
改正はもう少し、問題がいろいろございますので将来の検討に委ねまして、この際何としましても実行して見まして、日本の実情に即しない点、並びに資本の蓄積に必要な事項等につきまして、
税制の根本にそれほど大きく動かない範囲内におきましてできる限りの
措置をとる、こういう趣旨で
改正案を大体まとめ上げた次第でございます。その
内容は大分御
承知のことでございますので、簡單にいたしますが、
所得税につきましては、特別に
税率控除につきましては申すことはいたしません。ただ平
年度化ということの意味につきまして若干補足して申上げますと、
基礎控除は、例えば現行法でございますと三万円ですが、それを五万円に
引上げます。
臨時特例法で
昭和二十六年分は三万八千円に
引上つておりますが、それが今度は五万円になる。これは申告
所得税の場合でございますと、従いまして、今申告して頂いております
昭和二十六年分の
所得税の
計算の
基礎になる
基礎控除は三万八千円でございますので、今回の
改正によりまして、二十七年分はそれが五万円に上る、実質上今回の
改正で更に
引上げるようになる。扶養
控除率の
改正も同様の
関係になります。ただ
給與所得につきましては、毎月納める税額はすでに五万円に八月から実行いたしておりますし、
税率もここに示しております
税率でや
つておりますので、毎月の月税には
影響はございません。ただ年末
調整の税額は、昨年の年末
調整の税額の
計算に当りましては、
基礎控除は三万八千円に
計算いたしたわけでございますので、二十六年一年を通じました勤労
所得税の
負担と、二十七年一年を通じました勤労
所得税の
負担と、やはり申告
所得税の場合と同じように
軽減があるというようにお
考え願えればよろしかろうと思います。そういう点だけ申上げまして、あと細かい額等のことは申上げる必要はないかと思いますので省略いたします。
それから
控除につきましていろいろ書いてございますが、不具者とか、老年者、こういう
控除につきましては、従来一万五千円の
所得控除を四千円の税額
控除に改めることは、前回の御
説明で申上げた
通りであります。今回新たに旧軍人、軍属の
遺家族でありまするそれぞれこれこれの該当者の場合におきましては、四千円の税額
控除を五割増しまして六千円
控除する
予定でございます。ただこの
関係は
遺家族援護法の
関係がございますので、
所得税法の
改正にはまだ織込んでおりません。向うの法律の附則でこの
改正を行う
予定でございます。それから生命保険料も二千円から四千円に
引上げる、これは今回の新たなる
措置でございます。
それからこの二頁に載
つております青色申告税についてはいろいろ優遇しておることは御
承知の
通りでありますが、今回特に
農業や小営業者の場合に家族専従者の
給與の
控除を認めようと、但し親族の間でございますので、
関係がはつきりしない場合が多いので、年額五万円を限度として給料を払つた場合におきましては、それを
経費として落す、これが
農業者の場合、或いは小営業者の場合には青色申告者に対する相当重要な特例に相成るかと存じます。それから変動
所得につきまして、いろいろ問題がございますので、できる限り
負担の
軽減を図るのと、簡單化の意味におきまして、若干の
改正を加えることにいたしております。退職
所得につきましては、前回臨時特例で出しましたのをそのまま踏襲いたします。それから
譲渡所得と一時
所得と
山林所得につきましては、十万円の特別
控除を行う。それで十万円の特別
控除を行いますと、少額の投資家の場合は、殆んどもう
譲渡所得の問題は、株式の場合等も問題がなくなるかと存じます。
山林所得の場合も、中小の
山林所得者の場合は相当
負担が緩和になるものと見ております。
譲渡所得を全部株式等についてやめたらどうかという問題がございましたが、そういう問題はやはりなお
政府といたしましては研究するということにな
つておりまして、解決いたしておりません。それからなお自家用住宅を売
つて新らしく買換える場合と、甲の農地を売りまして乙の農地と取換える、こういう場合におきまする
譲渡所得の
課税、これはやめよう。そこに書いてありませんが、相続した場合に
譲渡所得を
計算して
課税しておりますが、これも現実にあとに相続人が処分したときに
課税することにいたしまして、相続した場合の
譲渡所得税の
課税はやめよう、こういう
考え方であります。その他、平均
課税は例の五年間に亘
つてやらなければならない非常に複雑なものでありますので、五十万円
程度以下の変動
所得は、一年限り、五分しまして税額を
計算して出て来た
負担率を乗じましてそのほかの残余の分に対しまして出して来た税額、つまり一年限りの平均
課税で済ますことにしたい。但し漁獲
所得とか文士原稿料といつたようなものだけ、そういう
所得が主たる
所得者であります場合、そうした場合は他の
所得と不公平になりますので、そういう人の場合は、半額以上漁獲
所得とか原稿料の
所得は、これは五ヵ年間や
つてもらうことにな
つておりますが、そうでない場合は成るべく一年限りで五分五乘して簡單に
計算いたすということにいたしたいと
考えておる次第でございます。勿論これらの
所得は選択制でございまして、やはり五ヵ年五分制でやつたほうがいいというなら選択してもよろしいのでありまして、そういうふうにいたそうというのであります。次は源泉
課税につきまして若干拡張しよう。拡張します新らしい事項としましては、お医者さんの
社会保険によりまする診療收入、それから弁護士、公認
会計士などが法人から受ける報酬に対しましては一〇%で源泉徴収をしよう。それから今外国人が払いまする特許権に対しましては、日本に営業所があります場合
課税しておりまして、営業所のない場合は
課税していないのでございますが、これはやはり日本で
所得が発生しました場合は
課税したほうが妥当であるという見地から二〇%の
税率で源泉
課税をすることにな
つております。但しこの点、ここに書いてございませんが、日本に望ましい技術の導入に必要なものと申しますか、そういうものにつきましては
租税特別
措置法があ
つて、現在も配当金や或いは社債の利子等につきまして二割を一割に
軽減いたしておりますが、特許権の場合におきましても同様な
措置を講ずる見込でございます。これは追
つて租税特別
措置法の提案と同時にいたしたい。それからなお、勿論日本で
課税しました場合は二重
課税の防止協定を、條約を結びまして、日本で納めた税額をアメリカで納める税額から相互に
控除するという條約を近く結ぶべく今進めておるのであります。そのことも附加えておきたいと存じます。少し他の問題に入りましたが、原稿料の
税率は今二〇%ですが、これを一五%に下げよう、これは主として小文上等のかたがたで
所得の少い場合に二〇%ではどうも返すかたがたが多いのでありますから、これらの
措置を講じております。そういう点、技術的にはいろいろ細かいことがございます。なお
所得税につきましては、その他細目につきましては大分
改正がございますが、この点は藩閥の
関係もございまするので、省略さして頂きたいと思います。
それから
法人税はこれは前回
改正しましたものが大部分でございまして、今回の
改正はほんの僅かな
改正でございます。配当につきましては源泉
課税を行うことにいたしましたので、
法人税から
控除するわけでございますが、
控除しきれない場合、つまり赤字が出た場合は返す
考えであります。それから
法人税に三月半額
徴収猶予を認めましたが、これは四銭の
利子税を二銭に下げよう。従いまして
法人税は大した
改正ではございません。
相続税は次にこれは相当の
改正でございまして、
控除の
引上げと
税率の緩和によりまして
相続税の
負担を相当
軽減しよう。どうも少し二十五
年度の
改正による
相続税は、我が国の実際の実情から申しますと、重きに失したきらいが多分に認められますので、
相続税の
課税制度の根本はこの際変えないのでございますが、
控除の
引上げ、
税率の緩和によりまして
相続税の
負担を相当、中以下の場合を特に大幅に
軽減しようという
考え方であります。
基礎控除の三十万円、これは相続人一人ごと、四人おりますと百二十万円の
控除になります。農家の場合等におきましても分割が無理だという場合がございますが、三十万円にしておきますと、その他の
控除が若干加わりますので、大体普通の自作農の場合におきまして、農地と自分の家屋敷だけ持
つております場合は大体
相続税はかからんことになるだろう、そういう点を狙いまして、三十万円
程度に
基礎控除を
引上げるということにいたしております。その他保険金の
控除の
引上げをする。
山林所得税の場合は、延納期間を五年を十年に延長をする。それから
利子税を四銭から二銭に引下げる。それから申告も今四カ月でありますが、財産の評価はなかなかむずかしくて四カ月では無理だというので、六カ月に延ばすというような方法をとりまして、極力実際に即応しまして妥当な
負担になるように
考慮して妥当な
改正を加えようとするものであります。
それから最後は
砂糖でございますが、
砂糖につきましては、今百斤千円、一斤十円の消費税でございますが、これを七円ほど上げまして十七円にする。別途に関税を、従来原料糖は一割でありましたのを二割、精製糖は二割というのを三割五分に
引上げる、両者通じまして約百斤千円、一斤十円
程度の
引上げになるのでございます。関税を特に上げることといたしましたのは、主として北海道の甜菜糖等の
保護をできる限り関税によりまして
考慮しようという
考えでございます。この
措置によりまして今の
砂糖の国際相場は動かないものと
考えますと、四月
統制撤廃に相成りました場合に大体税込みで
消費者価格が八十円前後になるのじやないか、現在配給は確か六十七、八円、自由販売の
砂糖が百十円、それが配給がなくなりまして全部一律になるかと思いますが、八十円前後になります。それに対しまして消費税と関税を入れまして大体二十四円ぐらいの税
負担になります。三割
程度がかかるだけでございますから、一般に消費される
砂糖はこの
程度で、この際妥当ではないかと
考えまして、このような
措置をとるようにいたしたのであります。
なお細目はいろいろございますが、要点は以上にいたしまして、
歳入見積りにつきまして重要な点だけで敷衍して御
説明申上げておきます。その詳細は
租税及印紙收入
予算の
説明という書類に相当細かく算定の
基礎を出しておきましたので、これをいちいち
説明しておりますと大分長くなりますから、重要事項だけをかいつまんで申上げます。
先ず
所得税でありますが、
所得税につきましては、
給與所得は
説明書の五頁に書いてありますように、二十五年分の
課税実績、これは私どものほうでわか
つております一番新らしい資料でございますが、これを基にいたしまして、雇用と賃金の増かを見込んで算定いたしておりますが、最近の
状況からいたとますと、雇用で五・三%、賃金で四〇・六%、二年分の
増加でございまして大分大きな
数字にな
つておりますが、これは昨年、つまり
補正予算で見積りました二十六年に比べますと、大体総合しましたところで一二%
程度の
増加になります。つまり二十六年に比べますと三十七年は
給與が一二%
程度殖える、これは大体本年の三月頃まで若干賃金が上るものと仮定いたしまして、あとは横ばいとしまして算定いたしたのでございます。それを基にしましていろいろ
計算いたしておりますが、その根拠は書類によ
つて御覧願いたいと存じます。
それから申告
所得税の場合におきましては、これもやはり
生産、
物価等の
状況を基にしまして
計算いたしておるのでございますが、これも相当詳細に、二十五年を基にしておりますが、併せまして二十六年分との比較もここに
数字を計上いたしておりますので、やや重複になるかと思いますが、
農業は大体三十六年に比べまして、二十七年は五%の増。それから営業把握の増等も或る
程度見込みまして二五%の増、申告全体で一割六分の
増加を
課税所得の面で見込んでおります。それを基にしまして、現行法による税額と、
改正法による税額とそれぞれ詳細に
計算いたしておるのであります。その
年度の徴収工合等も大体従来の実績によりまして、それぞれ妥当を期したつもりでございます。
所得税がこの
昭和二十四年以後、
改正によりましてどういうことに
なつたかということにつきましては、別途に
所得税の納税
人員と
課税状況という表を、これは別の資料でございますが、ガリ版でお配りいたしておりますので、それを御覧願いたいと思います。これによりますと、
昭和二十四年が一番納税者……税金の高いときでございましたが、
所得税の納税者が、源泉と申告と、これは算術平均で若干重複がございますが、その点御了解願いたいと思います。算術的に合計いたしますと、千九百十一万九千人でございましたのが、今年は千百九十三万、約千二百万
程度になるものと見ております。表にもあります
通り、
農業所得者が一番
控除の
引上げによりまして納税
人員に減少を来たしておるわけでございます。
それから次は
法人税でございますが、
法人税は大体昨年の九月、つまり
昭和二十六年の九月以前一ヵ年に終つた
事業年度、昨年の九月と申しますと、一般に二十六年の上期と申しておりますが、それ以前一ヵ年の実績を基にいたしまして、それに対しまして、
生産、
物価、
所得率の変動等を見込んで、
所得の伸びを見て、それによ
つて計算いたしております。結果から申しますと、今申しましたものに対しまして八・四%の増を見込んでおりますが、昨年九月以前一カ年でございますので、そのうちの最初の部分はまだ利益率が低い時代の実績が中に入
つておりまして、従いまして昨年の九月決算だけをとりますと、殆んど
増加を見ていないということに相成るかと思いますが、そういうような方法で算定いたしたわけでございます。あとは前回の
税率の
引上げで三百八億増收になりますが、なお
課税標準の
計算特例等を講じましたので、百十七億減りまして、純増百九十一億の増收ということにな
つております次第でございます。なお最近の法人の収益と、社内留保の
状況等につきましても、これは別に資料を表でお配りいたしておきましたので、それを御覧願いたいと思うのであります。全体の会社の留保利益、償却とか、損金に算入します準備金を入れますと、二十六年の約三千五百九十二億が本年は三千七百七億
程度になるものと見ております。勿論これは
予算を基にしまして、
予算の
基礎になりました
数字を基にしまして、利益なり、或いは留保の
状況等を推定いたしたものでございます。
それからその他諸税につきましては詳細に
説明をすることを省略いたしますが、ただ酒の税だけが大分増收にな
つておりますので、この点だけちよつと申上げておきたいと思いますが、酒の原料につきまして、前年は米が六十万石でございましたのが、本年は七十四万石を
増加いたしました。それからビールに使います麦につきましても、前年三十五万石でございましたのが、本年は四十四万石
程度見込んでおります。その他甘藷等の原料を適当に見込みまして、それに基いて
生産見込石数を算定し、それで来
年度の蔵出見込を
計算いたしました次第でございます。大体二十六
年度の
補正予算では、酒類全体で四百三十一万三千石の蔵出を見ておりますが、来
年度は四百八十九万二千石を見込んでおる次第でございます。で、二十六年の
補正予算では四百三十一万三千石を見込んでおりまするが、昨年の暮から正月にかけて、大分成績がよくて、若干上廻るのではないかと見ておりますが、大体まあ約四百九十万石の来年は一応の酒類の蔵出を見込んでおるということでございます。その他の点につきましては一々
説明を省略しまして、資料によ
つて御覧願いたいと存じます。
なお直接税、間接税の比率は、もうこの表にうしろにくつ付けておきましたが、大体直接税が五八・二%間接税が四〇・二%、その他が一・六%くらいになるようでございます。戦時中に比べますとまだ直接税が相当
増加いたしております。殊に最近直接税の比率が殖えましたのは、
法人税の收入が相当激増した結果でございます。
それから税金の総額は、今年はどうも総体では一兆を超えることになりそうでございます。で、国税で税金と印紙收入を加えまして六千三百八十一億、それから専売益金が約千二百五億、地方税が若干、最終的にまだ固まりませんが、三千九百二十億円
程度になるだろうと思います。そうしますと国税、地方税を通じまして国民の総
負担が一兆五百六億円
程度になる。で国民一人当りにしますと一万二千四百円
程度の一人当りの税の
負担になりそうでございます。尤も国民一人に対する税の比率は、これもすでに御
承知の
通り、二十四年が最高で、二五・五%でございましたが、その後少し下りまして、二十六
年度が二〇%、二十七年も二〇%を少し超える
程度ではないかと
考える次第でございます。
大体以上で御
説明を終ります。一応そのくらいにいたしておきます。