○梅津錦一君
只今議題となりました
日本赤十字社法案につきまして、厚生
委員会における
審議の
経過並びに結果を御
報告申上げます。
本案は、
衆議院提出の
法案でありまして、その
趣旨とするところは、日本赤十字社の行う事業の公共性と国際性とに鑑み、日本赤十字社の特性を生かし、その自主性を重んじ、事業の円滑適正なる運営を期せしめまして、一つには、日本赤十字社が国内の現状に即してその本来の使命を発揮し、
国民生活の安定に一段の力を盡すようにいたしますと共に、又一つには、日本赤十字社が国際赤十字社の一員としての地歩を強め、複雑な国際情勢下にあ
つて、赤十字国際機関並びに各国赤十字社とよく力を協せ、世界の平和と人類の福祉に貢献せしめまするために、日本赤十字社を特殊法人に改組し、これを強化しようとするものであります。
次にこの
法案の
内容につきましてその概要を御
説明申上げます。第一に、日本赤十字社の運営管理の基本を明らかにしてあるのであります。即ち日本赤十字社は、赤十字に関する諸條約等の精神に則
つて、赤十字の理想とする人道的任務の達成に当ることを
目的とする
我が国唯一の機関であることを明らかにすると共に、ますますその事業の公共性を発揮して、国民の負託に応えることができるようにするため、社員の地位を明確にし、役員に関する
規定を民主化し、総会に代るべき代議員会の
規定等を設けてあるのであります。第二に、日本赤十字社の国際的性格に鑑み、国際赤十字の一員としてその本来の使命を果すよう、国際協力の原則を
規定してあるのであります。第三に、日本赤十字社に対する国の立場を明らかにしてあるのであります。日本赤十字社の活動は、赤十字條約の
規定に基き、篤志赤十字機関として国の赤十字に関する條約業務に奉仕し、平時においては、健康の増進、疾病の予防及び苦痛の
軽減等のための国家的
施設を補足するものであります。即ちこの故を以ちまして、国は、日本赤十字社によ
つて実施されるこれらの役割に対するその代償として、必要な特権と便宜を與え、又物心両面に亘る援助をなすことといたしてあるのであります。なお又、日本赤十字社の国際的性格に鑑み、中立性を保持せしめる必要上、その自主性を重んじ、不当な関與はこれを避けしめることといたしてあるのであります。第四に、日本赤十字社が、現在なお千三百万人に及ぶ社員を擁する全国的組織の社団たる性格に鑑み、その基盤をなす社員について一章を設け、その
資格、加入、脱退並びに権利義務等を明確にしてあるのであります。第五に、日本赤十字社の業務を明らかにすると共に、業務遂行上必要とする看護婦等救護要員の確保について、必要な看護婦養成等に関する事項を
規定してあるのであります。第六に、監督
規定を設けて、日本赤十字社の業務につき、その適正な監督を
実施することといたしてあるのであります。
第七に、日本赤十字社の行う事業に対し、国又は公共団体の助成の途を講じてあるのであります。日本赤十字社は、その性格上社員の醵金によ
つて維持、経営せられるのが理想でありますが、非常救護のための救護班の派遣とか、病院、診療所及び療養所の創設、拡張、改良とか、或いは又、救護員の養成のため等に多額の費用を要しますので、社員の醵金のみを以てこれを賄うことは、到底困難であり、且つこれらの事業は、いずれも国家的
施設の補足をなすものでありますので、これらの費用に対して、国又は公共団体は
補助金を
支出し、或いは有利な條件で貸付金を
支出し、又は財産を譲渡、貸付できることとして助成することに相成
つておるのであります。最後に日本赤十字社は、その本来の業務に必要な資金について、寄附金を募集し得る旨の
規定を設けてあるのであります。即ち日本赤十字社が、その業務を行うに必要な
経費につきまして、社員の醵金で不足する分については、従来いわゆる「白い羽根募金」を毎年一回定期に
実施して参
つているのであります。これについては、社会福祉事業に要する
経費を除いた日本赤十字社本来の業務に必要な募金を行う場合には、厚生大臣に届出ることとし、更に特別の
事情に基き必要な
経費に当てるため、臨時に
実施する寄附金募集については、厚生大臣の許可を受けることといたしてあるのであります。
以上が、この
法案の
提案理由並びにその
内容の
要点でありますが、衆議院におきましては、次の二点について修正議決の上本院へ送付されたのであります。即ち修正の第一点は、日本赤十字社が、その本来の業務を行うに必要な資金を得るために
実施する定期及び臨時の寄附金募集に関する
規定を、本則から附則のほうへ移し、且つ定期に寄附金を募集する場合には、当分の間、あらかじめ厚生大臣に届出るべきものといたしてあるのであります。第二点は、第一点の修正に関連して、字句條文筆の整理をいたしてあるのであります。
厚生
委員会におきましては、
提案者より
提案理由、
法案の
内容及び衆議院における修正点等について詳細に
説明を聴取いたしまして後、
本案審議のため、特に小
委員会を設けまして、これに付託いたして
審議せしめ、更に本
委員会におきましても愼重
審議を盡したのであります。即ち
委員会には、
提案者側はもとより、厚生省社会局長、人事院法制局長、大橋国務相並びに日本赤十字社幹部等の出席を求めまして、
法案を基礎に、各般に亘る
質疑が行われたのでありますが、そのうち、主なるものにつきまして
要点を申上げますと、先ず「日赤の事業財源確保のための社費と寄附金募集との
関係は、今後如何なる方針によるか。又日赤募金と共同募金との
関係は、今後如何ように取扱われるか」との質問に対しまして、日赤副社長より、「日赤は社団法人たる性格にかんがみ、社員の年醵金を基本財源とすべきであるが、今直ちに、これらのみを以て賄うことは困難であり、又不足額は、当分の間、寄附金募集に頼らねばならぬ。本法制定後三カ年ぐらいの経験を積めば、確固たる見通しがつくと思う。又共同募金との
関係については、日赤の経営する社会福祉事業
関係の資金に当てる分は、共同募金より配分を受けることになり、日赤本来の業務資金に当てるための募金については、共同募金
関係者と十分話合いの上
実施することにいたしたい」旨の答弁がありました。次に日赤病院のあり方については、「今後特殊法人の病院として如何なる経営方針をとるか」との質問に対しまして、「日赤病院は、一支部に一院を最低限
設置する方針であり、その経営については、一応経常的歳出は経常的歳入で賄わなければならぬが、不足分は他の財源を以てこれに当て、公的医療機関たる性格にふさわしい経営をする方針である」との答弁がありました。次に「救護員が日赤の行う救護業務に従事して負傷したり、疾病にかかつたり、又は死亡した場合においては、災害救助法の
規定により扶助金を支給することにな
つているが、その金額が余りに僅少である。これに対しては、如何なる
措置を講ずるや」との質問に対しましては、日赤幹部より、「他の
法律の
規定による扶助金額に比し、足りない分は日赤において負担する」との答弁があり、社会局長よりは、「災害救助法による扶助金額を増額するよう考慮する」旨の答弁があ
つたのでありますが、これについては多数の
委員より、国において必らず補償するよう強調されたのであります。
次に協力義務に基き救護事務に従事する者の取扱、身分
関係につきましては、人事院法制局長より答弁があり、警察予備隊内に
設置せんとする衛生
施設と日赤病院との
関係については、大橋国務相から答弁があ
つたのであります。右のほか、日赤に対して国が委託する業務の
内容と補償との
関係及び業務
実施上必要な
施設、
設備等の費用に対する国庫負担の問題、国の日赤に対する監督及び助成の問題、国又は
地方公共団体の日赤に対する助成と憲法第八十九條との
関係等々、極めて重要な問題につきまして、熱心に
質疑応答が交されたのでありますが、その詳細は速記録によりまして御承知願いたいと存じます。なお小
委員会におきましては、愼重
審議の結果、
本案に対する
修正案並びに附帶
決議案を
決定いたし、山下小
委員長より、本
委員会に
報告がなされたのであります。
即ち
修正案の
要点は、第一に、原案によれば、日本赤十字社はその本来の業務を行うのに必要な資金を得るため、毎年一回定期的に寄附金を募集することができることにな
つておりまして、この寄附金を募集せんとするときは、当分の間、あらかじめ厚生大臣に届出なければならないことにな
つているのでありますが、これを寄附金の募集それ自体を、当分の間、行うことができることに改めることであります。第二は、
地方税法の一部
改正に伴いまして、
本案附則第二十五項の條文及び字句の整理をすること。以上の二点であります。
かくて
質疑を終り
討論に移りましたところ、中山
委員より、小
委員長報告の
修正案に賛意を表した上、小
委員会決定の
附帯決議案を朗読し、これに賛同方を要望されたのであります。
附帯決議案の案文は、次の
通りであります。
日本赤十字社法制定の
趣旨にかんがみ、同法の施行とともに左の基本方針に基いて社業の改善と拡充に努めるものとする。
一、機構並びに人事の刷新。
(一)社員
制度を確立すること。(二)社費による財源を確保すること。(三)本部、支部の機構を改善すること。(四)医療機関の運営機構を強化すること。的支部長は民主的選出方法によること。
(六)人事の刷新を図ること。
二、募金
(一)現在の募金は社費の徴收による財源の不足分についてのみ当分の間認めること。(二)二カ年後においてもなお相当額の
一般募金を必要とする場合は、厚生大臣の許可を受けて行うこと。(三)日赤以外の
一般募金については、
政府の監督を強化すること。
三、会計監査。
日赤の会計については、本部、支部を通じ、
政府の会計監督を強化すること。
四、役員の選任。
日赤の使命にかんがみ、すべての役員を通じ、人格、識見共に優れたる人物を当てるよう留意すること。
五、医療経営。
医療機関の経営は本社の直営とし、公的医療機としての性格を明確にし、且つ非常災害時においては、救護機関としての使命を発揮するよう、その運営方針を改善すること。
六、委託業務。
国は救護等に関する業務の委託を積極的に行い、これに関する助成の実を挙げること。
七、救護業務従事者の扶助。
救護業務従事者の扶助については、国家公務員災害補償、労働
基準法に基く災害補償と
均衡を失しないよう
措置すること。
以上の
通りであります。
かくして
討論を終結いたしまして、先ず
修正案について
採決いたしましたところ、
全会一致を以て可決いたしました。次いで修正個所を除く残余の
部分について
採決をいたしましたところ、これ又
全会一致を以て原案
通り可決すべきものと
決定いたした次第であります。なお附帶
決議案につきましても、全員
異議なくこれを
承認することに
決定いたしたのであります。
以上をも
つて御
報告を終ります。(
拍手)