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1952-07-25 第13回国会 参議院 本会議 第69号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年七月二十五日(金曜日)    午前十時五十四分開議     —————————————  議事日程 第七十号   昭和二十七年七月二十五日    午前十時開議  第一 市の警察維持特例に関する法律案衆議院提出)(委員長報告)  第二 地方公営企業法案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第三 地方制度調査会設置法案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第四 義務教育費国庫負担法案衆議院提出)(委員長報告)  第五 臨時石炭鉱害復旧法案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第六 通商産業省設置法案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第七 通商産業省設置法施行に伴う関係法令整理に関する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第八 工業技術庁設置法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第九 農林省設置法等の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第一〇 経済審議庁設置法案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第一一 経済安定本部設置法廃止及びこれに伴う関係法令整理等に関する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第一二 資源調査会設置法案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第一三 大蔵省設置法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第一四 大蔵省設置法の一部を改正する法律等施行に伴う関係法令整理に関する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第一五 保安庁法案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第一六 海上公安局法案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第一七 運輸省設置法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第一八 総理府設置法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第一九 国家行政組織法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第二〇 行政機関職員定員法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第二一 電波法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)     —————————————
  2. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 諸般の報告は朗 読を省略いたします。      ——————————
  3. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) これより本日の会議を開きます。  この際、日程に追加して、積雪濕潤地帯における義務教育学校屋内運動場整備促進に関する決議案梅原眞隆君外十八名発議)(委員会審査省略要求事件)を議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。本決議案につきましては、梅原眞隆君外十八名より委員会審査省略要求書提出されております。発議者要求通り委員会審査を省略し、直ちに本決議案審議に入るごとに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつてこれより発議者に対し趣旨説明発言を許します。梅原眞隆君。    〔梅原眞隆登壇拍手
  6. 梅原眞隆

    梅原眞隆君 只今議題となりました積雪濕潤地帶における義務教育学校屋内運動場整備促進に関する決議案について、発議者を代表いたしまして趣旨の弁明をいたしたいと思います。  最初に決議案を朗読いたします。    積雪濕潤地帶における義務教育学校屋内運動場整備促進に関する決議案   積雪濕潤地帶における義務教育学校は、冬期長期間にわたつて校庭使用が制限されるため、屋内運動場をもたない場合集団的組織的教育活動は殆ど不可能であり、狭あいな廊下或は教室においての保健体育等指導実施は、きわめて困難であるばかりでなく、他の授業に対しても甚だしい障害とならざるを得ない。かくして、体育の不徹底と児童生徒一般的運動不足は、著しい体位の低下、各種の病患の続出を招来するに至つており、更に施設の面から見る場合、これらの学校においては、校舎校具等耐用年数は、一般に比して極度に縮減することを免れない実状にある。   すなわち屋内運動場は、積雪濕潤地帶学校においては、正に必要不可欠の教育施設であるにもかかわらず、これらの地帶における市町村経済力は概ね微弱であるため、自己負担のみによる施設整備は容易に望みがたく、且つ、これに対する政府の従来の施策も甚だ不十分であつたため、その整備状況は、現在総必要坪数の五%にさえ達していない。   この際、政府は、積雪濕潤地帶義務教育学校屋内運動場が、教育上、保健衛生上等において有する重要な意義を深く考慮し、その整備のために、速やかに、強力適切な措置を講ずべきである。   右決議する。  次にこの決議案につきまして提案理由を御説明申上げます。  ここに積雪濕潤地帶と申しまするのは、詳しくは積雪寒冷濕潤地帶ということを意味するのであります。これは昭和二十六年に制定されました積雪寒冷単作地帶振興臨時措置法適用を受ける積雪寒冷地帯と、年間降雨量の多い濕潤地帶とを一括いたしておるものであります。即ち、これらの積雪地帶寒冷地帶及び濕潤地帶の各地域におきましては、積雪寒冷又は降雨のため、長期に亘つて戸外運動場使用は殆んど不可能の状態となつているわけであります。  さて、学校におきましては、御承知の通り屋内運動場は種々の重要な教育的機能を営むものであります。第一に、団体的、組織的教育実施に際して必要であり、又講堂に代用せられて教育的行事を行う等の際、極めて重要なる施設となつております。従つて屋内運動場講堂もない場合には、この機能を果すことのできないことは明白であります。第二に、保健体育の点から見ましても、屋内運動場の設備がない場合は、体育実施指導が殆んど不可能になり、又自由に遊び且つ運動することができないため、その結果、発育旺盛なるべき時代にある兒童生徒は、その体位は低下し、運動機能は萎縮し、種々なる病患が続出する傾向は顕著とならざるを得ないのであります。第三に、教育施設の面から見まして、屋内運動場のない場合は、一般に比して、教室廊下、壁、机、腰掛等に及ぼす破損は著しく、又これらの施設耐用年数は甚だしく減少し、そのため修理等に多額の経費を要する実情であります。第四に、屋内運動場は、以上のような学校教育についてのみならず、社会教育におきましても、その地域社会文化的公共的施設としても用いられるものでありまして、一般社会人に広く活用せられ、その地域における文化的センターとしての意義を果しておるのであります。以上のほかに、屋内運動場を持たない場合は教育上種種なる障害を招来いたすのでありまして、例えば積雪、雨天の際、休憩時には、兒童生徒は、教室、狭隘なる廊下にとどまらざるを得ないので、休憩時と授業時の区別さえ付かなくなり、或いは又、教室廊下等における体育実施が他の一般授業に対し甚だしい障害となることは申すに及ばないことであります。  従つて、かように教育上、保健体育上、又社会教育重要性を担つておりまする屋内運動場は、冬期長期間に亘つて校庭使用を制限されまする積雪寒冷濕潤地帶におきましては、本来他の一般教室と同時に設置されなければならないわけでありまして、まさに必要不可欠の教育施設をなしておりまするにかかわらず、現在これらの地帯における屋内運動場整備は殆んど進捗いたしておりません。その理由は、屋内運動場は六・三建築応急最低基準坪数に算入されていなかつたため、当初から六・三建築対象外とされて来たためと、これら積雪寒冷濕潤地帶は概して経済力に乏しく、到底自己負担に堪え得ない実情にあり、又これらに対しまする政府援助施策も不十分であつたためとによりまして、現在においては僅かにその一万五千七百八十二坪を整備したにとどまり、なお不足坪数は実に四十八万二千八百六十七坪であり、必要総坪数の五%にさえ達していない憂うべき現状であります。  願わくば政府は、この際、積雪寒冷濕潤地帶義務教育学校屋内運動場教育上、保健衛生上、社会教育上等において、最も重要なる意義を有する施設であることを深く考慮せられ、その整備のため急速に適切且つ万全の措置を講ぜられることを強く要望いたし、以て本決議案提出理由といたします。  何とぞ本決議案に対し全会一致の御賛成をお願いいたす次第であります。(拍手
  7. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 別に御発言もなければ、これより本決議案採決をいたします。本決議案賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  8. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 総員起立と認めます。よつて決議案全会一致を以て可決せられました。      ——————————
  9. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 日程第一、市の警察維持特例に関する法律案衆議院提出)  日程第二、地方公営企業法案、  日程第三、地方制度調査会設置法案、(いずれも内閣提出衆議院送付  以上三案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。先ず委員長報告を求めます。地方行政委員長西郷吉之助君。
  11. 西郷吉之助

    西郷吉之助君 只今議題となりました市の警察維持特例に関する法律案につきまして、地方行政委員会における審査経過並びに結果を御報告いたします。  本法案衆議院提出にかかわるものであります。その内容といたしましては、一、警察法規定に基き、住民投票の結果、自治体警察を維持しないことになつ町村に、その区域を以て、又はその区域警察を維持しない他の町村の全部若しくは一部の区域を以て、市が設置された場合においては、市は自治体警察を維持すべしとの原則に対する特例といたしまして、当該市は議会議決を経て警察を維持しないことができること。第二、その議決市設置の日から五十日以内に、この法律施行の際すでに市となつている場合は、この法律施行の目から五十日以内に行わなければならないこと。第三、以上の規定によりまして警察を維持しないこととなつた市は、その後、住民投票によりまして市警察維持原則に復することができること、以上が主要な点であります。  地方行政委員会におきましては、五月十二日衆議院議員河原伊三郎君より提案理由説明を聞き、関係者との間に質疑応答を重ねました後、本月二十四日討論に入りましたところ、社会党第四控室中田委員及び同第二控室吉川委員より、本法案は新憲法並びに現行警察法精神に反する時代逆行の立法であり、自治体警察全面的廃止への橋頭堡ともなるものであるとの理由によりまして反対する旨を述べられ、採決の結果、多数を以て本法案原案通り可決すべきものと決定いたした次第でございます。  以上御報告いたします。  次に只今議題となりました地方公営企業法案につきまして、地方行政委員会における審議経過並びに結果を御報告いたします。  今回内閣がこの法案提出した理由は、先に制定されました地方公務員法の附則において「公営企業に従事する職員身分取扱については、別に公営企業組織会計経理及び職員身分取扱に関して規定する法律が制定実施されるまでの間は、なお、従前の例による。」と規定して、この法案の制定を予定しているので、ここに成案を得て提出する運びに至つたのでありまして、その内容はおおむね次の通りであります。  第は総括的規定でありまして、この法律は一定の職員数を有する水道、軌道、自動車運送地方鉄道、電気及びガス事業適用するのを原則とし、地方自治法地方財政法及び地方公務員法との関係においては、この法律特例法となる旨を明らかにしております。  第二は公営企業組織に関する規定でありまして、地方公共団体の長の指揮監督の下に企業管理者を置いて業務を執行させることとして、その地位及び権限、担任する事務、就職及び在職の禁止等につきましては詳細な規定を設けると共に、企業経営基本計画等当該地方公共団体事務処理又は住民福祉等に重大なる影響がある事項につきましては、地方公共団体の長が指揮監督権を発動し得ることとしております。  第三点は公営企業の財務に関する規定でありまして、企業経理につきましては特別会計を設け、独立採算制を堅持し、能率的な運営を図るため、一般会計経理方法に対しまして、発生主義採用複式簿記の計理、文言形式採用等の特別を認めると共に、企業の出納は管理者権限といたし、決算は、損益計算書貸借対照表等を以てすることとしております。  第四点は公営企業に従事する職員身分取扱に関する規定でありまして、管理者及び企業職員のうち、管理又は監督地位にある者、機密の事務を取扱う者、即ち労働組合法にいう「労働組合を結成し、加入し得ない者」に相当する者の身分取扱については、原則として地方公務員法の定めるところによるが、右以外の一般企業職員身分取扱については、この法律に特別の定のあるものを除き、地方公営企業労働関係法の定めるところによるものとしています。  最後に、この法律施行期日は公布の日から六カ月を超えない範囲で政令で定めることとしていますが、これは企業資産の再評価等、この法律施行のためには相当な準備期間が必要であると考えたからであるとのことであります。  この政府案に対しては衆議院において一部の修正が加えられました。その要旨は、企業職員身分取扱については、できる限り私企業と同様に、これを団体交渉対象としてその権利を保護することを妥当と認め、地方公営企業労働関係法との調整を図り、(一)管理者の担任する事務範囲に「労働協約を結ぶこと」を加え、(二)職階制実施に関する人事委員会の助言の権限を削り、(三)地方公務員法適用除外條項を拡大し、(四)これらに関連する字句修正を行うものであります。  委員会においては、岡野国務大臣並びに政府委員より提案理由並びに法案内容説明を聞いた後、質疑に入り、又労働委員会との連合委員会を開いて審議を行い、更に衆議院門司議員より同院修正部分説明を聞いて質疑を続行しましたところ、若木、原、中田岡本、宮田の各委員より、本法適用範囲監査委員権限労働協約相手方償還期限の定めなき企業債職階制運営等について質問があつたのに対し、政府委員より、現在り公営企業はおおむね本法適用範囲に入ること、下水道にも適用し得ること、監査委員権限地方自治法改正によつて強化されること、公共団体の長も労働協約相手方となること、企業債は社債に類似するものであること、職階制企業経営に即応するように運用すること等の答弁がありました。  なお、この法律不可分関係にある地方公共企業労働関係法についても質疑応答が行われましたが、これらの詳細は速記録によつて御覧を願います。  以上を以て質疑は終了しましたので、討論に入りましたところ、若木委員より、衆議院修正案にはなお不満足の点があるけれども、暫定的に賛成する旨の発言がありました。他に発言もないので、直ちに採決に入りましたところ、全会一致を以て可決されました。よつて衆議院修正議決にかかる内閣提出地方公営企業法案は、全会一致を以て修正議決すべきものと決定した次第であります。  右御報告いたします。  更に、只今議題となりました地方制度調査会設置法案について、地方行政委員会における審議経過並びに結果を御報告いたします。  今回内閣がこの法案提出した理由は、過去六年余における地方制度運営の実績に徴し、且つ独立後の新事態に鑑み、この際、地方自治制度を全体的に考察し、その構造組織税財政制度等に再検討を加える必要があるので、広く各方面の意見を聞いて所要の改正案を作成するため、本調査会を設置しようとするのでありまして、調査会内閣総理大臣諮問機関として総理府に置き、委員五十人以内で組織し、委員の互選によつて会長及び副会長一人を定めます。委員は、国会議員関係行政機関職員地方公共団体の長及び議会議員職員学識経験者等の中から内閣総理大臣が任命するものでありまして、その任期は一カ年とし、再任を妨げないこととしております。なお特別の事項調査審議するため必要あるときは、臨時委員二十人以内を置くことができることとなつております。  委員会におきましては、政府委員より提案理由並びに法案内容説明を聞いた後、質疑に入りましたが、吉川、原、岡本の各委員より、地方制度検討は、地方行政調査会議において行なつたばかりであるのに、再び本会を設ける理由如何本会を設けて更に再検討することは、いわゆる逆コースの現われではないか。委員の構成並びに付議事項如何等質疑があつたのに対し、政府委員より、地方行政調査委員会議の勧告は殆んど実現されていないので、本会を設けてこれを解決したい。地方自治の本旨に徹するために全面的考察を行わんとするのであるから、逆コースとはならない。委員国会議員関係政府職員地方公共団体及び学識経験者の四グループより、ほぼ同数を選任する。諮問事項として予定するものは、都道府県の性格規模、道州制、政府出先機関市町村規模合理化地方公共団体構造組織行政委員会の問題、議会運営事務の再配分、国と地方公共団体との関係等であつて、相当期間存置する旨の答弁がありました。なお、岩木中田の両委員より、委員の選任、調査会運営方針等について希望意見を加えた質疑が行われましたが、これらの詳細は速記録によつて御覧を願います。  以上を以て質疑は終了したので、直ちに討論に入りましたところ、吉川委員より、中田岩木、原、館、岩男、吉川の六委員共同提出にかかる修正案説明がありました。その要旨は、本会における調査審議基本精神を明確ならしめるため、第一條として、この法律日本国憲法基本理念を十分具現するように、現行地方制度に全般的な検討を加えることを目的とする旨を規定し、これに伴う字句修正をしようとするものであります。次いで採決に入りましたところ、吉川委員ほか五名提出修正案全会一致を以て可決され、右修正部分を除く原案も又全会一致を以て可決されました。よつて内閣提出にかかる地方制度調査会設置法案全会一致を以て修正議決すべきものと決定した次第であります。  右御報告いたします。(拍手
  12. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 市の警察維持特例に関する法律案に対し討論の通告がございます。発言を許します。吉川末次郎君。    〔吉川末次郎登壇拍手
  13. 吉川末次郎

    吉川末次郎君 私は日本社会党第二控室を代表いたしまして、只今議題となりました市の警察維持特例に関する法律案に対しまして反対の意を表明するものでございます。  概括的に見まするのに、本法案は、警察機構全体の戦前への復帰を目標にいたしまして、自治体警察をば全般的に廃止して、一切の警察国警一本に統一化してしまおうというところの陰謀をば漸次これから拡大して行くところの一つの手段として、ここに提案されているということであります。  本案は、委員長報告にもありましたように、昨年政府提案警察法の改悪によりまして、全国を通じまして多くの町村自治体警察国警に吸収されてしまつておるのであります。これを最近の表について見まするのに、警察法改正当時の自治体警察の数は一千五百五十六あつたのであります。ところが今申上げましたところの町村警察廃止警察法改正によりまして、そのうちの実に一千七十九がすでに廃止されてしまつておるのであります。それらの自治体警察をば誤まつて返上するに至りましたところの町村をそのうちに包括して、新たに市になりました地方公共団体、それは、その警察は、当然、現行警察法によりまするというと、その都市みずからの自治体警察を持たなければならないことになつておりますにもかかわらず、これらの新らしい市に限つてのみ住民投票によつてこれを国家地方警察に委ねることができるというところの特例を許そうというのが、即ちこの法案の骨子といたしておるところであります。  曾つてこの壇上におきまして私も申上げたことがあるのでありまするが、現行法上、国家地方警察と言われておりまするのは、その起源からいたしまするというと、M・R・P、即ちナシヨナル・ルーラル・ポリスの訳語でありまして、これは本来全国村落警察或いは全国農村警察、又は全国田舎警察と翻訳されるべきであつたのでありまするが、官僚はわざとこれを国家地方警察と曲げて翻訳いたしまして、軍人や官僚の大好きでありまするところの、旧式のドイツかぶれ国家至上主義が意味いたしておりまするところの国家、それはステートという言葉に結び付けまして、一方、M・P即ちミユニシパル・ポリスを都市警察と当然これは訳されなければならないのでありまするが、これを自治体警察とわざと曲げて翻訳命名いたしまして、このようにして、警察法上、国警自治警とはそれぞれ対等の立場において互いに助け合つて行くということが警察法上の立場精神となつておるにもかかわらず、こうした誤まつたところの官僚的な訳語の名称を通じまして、何か国警というほうが、自治体警察自治警よりも一段上の位にあるものであるかのような錯覚に警察官や一般地方民をば今まで陥れて来たのであります。差当りこの法律適用を受けまするところの新らしい市は、富山県の魚津市、岡山県の笠岡市、鹿児島県の阿久根市、岩手県の大船渡市の四つでありまするが、およそ町村が合併いたしまして新らしい市を折角作り上げておきながら、みずからの都市警察組織をわざと行わない、市長とか或いは市会議員というような、市の付いた名ばかりを欲しまして、その市が当然法律上行わなければならないところの行政上の事務をわざと行うことを回避いたしまして、みずから自己自治権限を放棄して、その警察権を、国警、その実は先ほど申しましたような意味においてのルーラル・ポリス、田舎警察に委ねてしまおうというようなことは、誠に滑稽至極の私は沙汰であると言わなければならんと思うのであります。(「そうだ」「制度が無理なんだ」と呼ぶ者あり)その警察権の放棄ということで、この法律案によりまするというと、住民投票によつて行われるのであるから、それは民主主義的であると、衆議院からの提案者国警本部官僚諸君は我々に答えておるのであります。成るほど住民投票で、一応それは民主主義的な形式ということができると思います。併し誰かが申しましたように、日本民主主義はまだ十二才の幼年期にあるのであります。封建的な依存性の強い農山漁村で、選挙運動におけるがごとく互いに対立候補を立てまして、それぞれの政党が討論し合うというような過程を経ないで、町村吏員が一方的に、自治体警察は能率が悪いとか、それを返上してしまうほうが財政負担が軽くなるのであるということをば、計画的に頻りにデマを飛ばしまして、自治体警察返上住民投票を今日まで行なつて来たのでありますが、そういうようなやり方は、それは官僚反動主義者が欲しておりまするように、その自治体警察が随意に廃止されるようなこの住民投票の結果を見るに至るということは、私は極めて明白であると考えるのであります。このようなやり方が、幾ら形だけが民主主義形式であるからと言つて、これをほかのことにも適用いたして参りまするならば、私は現下の日本におきましては、新憲法廃止してしまうて、あの昔の神がかりの明治憲法を復活しようじやないかというような住民投票をば農山漁村等でやらせましたならば、恐らくはその復古的な運動も或いは成功するところの可能性が非常に多いのではないかということを考えるのであります。  ここに我々が注意しなければならないことは、あのヒトラーが独裁政治を確立いたしまするときには、ドイツワイマール憲法規定いたしておりまするところの選挙であるとか或いは議会政治というような、形式におきましては民主主義的な形をとりまして、そうして、かの授権法を議会において制定せしめ、ナチスの独裁政治を彼がドイツにおいて確立して、そうして再びドイツ国民をば、かの大戦の惨禍に陷れたということを、今日我々は政治家として、この日本のすべてが反動政治家のために逆コースの線を歩まされつつあるときに、深くこれに思いをいたして、この例に思いを及ぼさなければならないと考えるのであります。  自治体警察廃止論者は、常にこの警察行政の能率主義の立場から、これを国警一本にしてしまうというのがよいと主張いたすのであります。政治をただ單に能率本位の立場からのみ考えまするならば、ヒトラーやムツソリーニがやりましたような全体主義や独裁政治は、一番これは能率を発揮するところの政治のやり方であります。我々は能率を発揮するということをば考えて行かなければなりませんけれども、そうした能率本位の考え方と同時に、行政民主主義的な原則を併せ考えて行かなければならないと思います。一たび確立した民主主義的な現行警察制度において、自治体警察が若しその能率に欠くるところがありましたならば、平衡交付金その他の財政的援助を強化するとか、或いはその自治体警察相互間の警察機能をもつと大地域単位に統一協同せしめるの途を講ずることによりまして、これを直して行くという考え方に立つべきでありまして、直ちにこれを国警へ返さしてしまうところの方向へリードするということは、断じて私は民主主義的政治家の今日とるべき手段ではないと考えるのであります。(拍手)  先般来、地方行政委員会におきまして、與党と野党との間にあつて、常にこの勢力の相伯仲する間にキャスティング、ヴオートを握つて来られたのは、緑風会出身の二人の委員のかたでありました。これらの方々は、いつも、その政治力をば大いに御発揮になりまして、警察制度その他の地方行政官僚主義化、反動化のために、いろいろ御奮鬪になつて来たのであります。(拍手)そこで緑風会の方々にお伺いしたいのは、それが果して緑風会全体の御意思であるかどうかということであります。私は緑風会の方々全体が、このような封建的な残滓階級、封建的な残り澤階級でありまする古い官僚のイデオロギーによつて、すべて政治を判断するような方々ばかりで構成されているとは、実は思いたくないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)この一部自由党議員衆議院議員提案によりますると、ばかばかしい天下の悪案であります。この低劣極まるところの反動法案、それがこの封建的な残滓階級者の賛成によりまして、我が地方行政常任委員会におきましては不幸にも多数の議決となつたのでありまするが、どうぞ本会議におきましては、ここに正しい判断と御表決を賜わりまして、これを否決し、我が参議院の名誉を再び回復せられんことをば、日本民主化のために熱望し、深くお願い申上げまして降壇いたすものであります。(拍手
  14. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) これにて討論の通告者の発言は終了いたしました。討論は終局したものと認めます。  これより三案の採決をいたします。  先ず市の警察維持特例に関する法律案全部を問題に供します。本案に賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  15. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 過半数と認めます。よつて本案は可決せられました。      ——————————
  16. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 次に地方公営企業法案全部を問題に供します。本案に賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  17. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 過半数と認めます。よつて本案は可決せられました。      ——————————
  18. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 次に地方制度調査会設置法案全部を問題に供します。委員長報告修正議決報告でございます。委員長報告通り修正議決することに賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  19. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 過半数と認めます。よつて本案は委員会修正通り議決せられました。      ——————————
  20. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 日程第四、義務教育費国庫負担法案衆議院提出)を議題といたします。  先ず委員長報告を求めます。文部委員長梅原眞隆君。    〔梅原眞隆登壇拍手
  21. 梅原眞隆

    梅原眞隆君 只今議題となりました義務教育費国庫負担法案につきまして、文部委員会におきましての審議経過並びに結果を御報告申上げます。  義務教育は申すまでもなく憲法に定められた国民の重要なる義務であり同時に権利であります。而も憲法はその無償の原則をも明記いたしておりまする以上、国はこの義務教育につきまして当然その一定の規模内容とをすべての国民に対して均等に保障すべき責務を負つているものと申さねばなりません。而して、この責務を果しますためには、先ず国が義務教育について確実な財政的裏打ちをいたすことが何よりも必要であると考えられます。御承知の通り義務教育費につきましての国の保障の制度といたしましては、昭和十五年以来義務教育費国庫負担法が設けられ、義務教育に従事する職員の給與の半額を国が負担して参りましたが、昭和二十五年地方財政平衡交付金制度が創設せられますと共に、この法律廃止されましたため、現在は義務教育につきましては、財政上国の特別の保障は設けられておりません。勿論この地方財政平衡交付金の中には義務教育費も又他の各種の地方行政費と共に算入されてはおりまするが、平衡交付金の性質上紐付きにはなつておりませんため、平衡交付金の圧縮や地方財政の窮乏化等に伴いまして、義務教育費のような額の大きな而も比較的に抵抗の少いものは他の費用に圧迫され、真先に削減の対象となる危険を常に免れない状態に置かれている実情であります。従つて義務教育費のように、憲法上、国が最終的責任を負うことを要請されており、而も地方財政においではその半ばに達するほど極めて大きな地位を占めている経費につきましては、是非とも平衡交付金とは別に国家がこれを保障する制度を確立し、義務教育の妥当な規模内容とを国民のすべてに対して保障いたしますると共に、地方財政の安定を図ることが必要不可欠であると申さねばなりません。近来いわゆる義務教育費国庫負担制度の確立を要望する声が全国的に巻き起るに至りましたのも、以上のような関係から見て極めて当然な結果であると考えられます。  本法案は、このような一般の強い要望に応えて衆議院議員竹尾弌君外十四名から提案いたされましたものであります。今この法案内容の概略を申上げますると、法案は三カ條から成り、第一條におきましては、この法律の目的が、義務教育について、義務教育無償の原則に則り、国民のすべてに対してその妥当な規模内容とを保障するため、国が必要な経費を負担することにより、教育の機会均等とその水準の維持向上とを図るに存することを掲げております。次に、第二條におきましては、国が義務教育に従事する職員の給與費につきまして、実際に各都道府県が支出した額の二分の一を負担する趣旨を明らかにしております。ただ、その場合、この各都道府県ごとの国庫負担額の最高限度は政令で以て定めることができるという、一種の制限とも言うべきものが付されております。次に、第三條におきましては、国は毎年度義務教育の教材に要する経費の一部を負担する旨規定いたしておりまするが、その場合、兒童又は生徒の一人当りの教材費について、国の負担額その他その配分等に関し必要な事項はこれを政令に委ねており、更にこの法律施行期日自体も又やはり政令で定められることになつております。  さて、本委員会におきましては、義務教育費国庫負担制度の持つ重要性に鑑み、数回に亘る会議におきまして、本案につきまして愼重審議を行い、更に又地方財政との本質的関連性に基きまして、地方行政委員会とも連合委員会を開いて検討を加えた次第でありまするが、これらすべての委員会を通じまして最も問題となりました諸点は、まず第一條につきましては、この法案は果して内容的に見る場合、第一條に掲げる高い理想を実現したものと認め得るかどうか。国民はこの義務教育費国庫負担法という堂々たる名称或いは第一條の高い理想乃至目的と、この法案の貧弱な内容とを比較検討した場合、果して甚だしい失望を感じないであろうかということが問題となりました。(「その通りだよ」と呼ぶ者あり)第二條につきましては、このような半額国庫負担の場合、その残額に対する財政措置はどうするか。又国庫負担額の最高限度は政令で定め得るとした場合、その政令はどのようなきめ方をするのか。そのような最高限度を定めることは、各都道府県の従来の実績に対して引下げの作用を営むことにならないか。又一般的に見て、これは地方の自主性を害することにはならないか。更に又実支出額の半額を国庫負担としながら、更に負担額の最高限を政令を以て定め得るとすることは明白な矛盾ではないか(「その通り」と呼ぶ者あり)などという点が問題となりました。次に第三條につきましては、そのいわゆる教材費の推定額及びその推定の基礎が問題となり、更にそれからの教材費について国の負担しようとする予定額が質疑対象となりました。又本法案において施行期までが政令に一任されていることは、他の政令委任の事項と相待つて、本法案をして単なる室中楼閣にとどまらしめるものではないかという疑問が提出されました。  以上の諸点のうち、先ず第一條の理想乃至目的と法案内容との著しい懸隔につきましては、提案者を代表して若林義孝議員から、本案は、その原案において相当豊富な内容を持つていたのであるが、諸般の情勢よりして本案のような体裁にまで修正圧縮することを余儀なくされたものであつて、その点は極めて遺憾であるが、併しこの内容を以てしても、将来の完全な義務教育国庫負担制度への橋頭堡としての使命は十分果し得るものと信じ、又それを折るものであるとの答弁があり、第二條において、国庫負担額の最高限を政令によつて定め得るとする点につきましては、同じく若林議員及び政府当局から、政令を以て定めることは極めて例外的措置であり、たとえ政令によつてこれを定める場合にも、各都道府県の従来の実績を下廻ることのないよう極力善処すべき旨、又半額国庫負担の場合、残りの半額は、従来通りこれを平衡交付金によつて処理するものである旨の答弁がありました。第三條の教材費につきましては、差当り兒童又は生徒一人当り二百円、総計約三十億円の国庫負担を見込んでいる旨の答弁があり、最後に本法案施行期を政令に委ねたのは、本案が近き将来の地方税制改革と密接な関係を持つため、その改革の進行と相伴わしめるためにほかならないという説明がありました。  かくして質疑を終了いたし、討論に入りましたところ、緑風会の堀越委員から、本法案の第二條第二項の規定を削除し、第二條第一項に、「但し、特別の事情があるときは、各都道府県ごとの国庫負担額の最高限度を政令で定めることができる」という但書を附加して、国庫負担額の最高限について政令を定め得る場合を更に制限すると共に、附則第一項が本決施行期を政令に委任してあるのを改めて、「この法律は、昭和二十八年四月一日から施行する」とする修正案提出があり、又社会党第四控室荒木委員ほか五名から本法案の全部に亘つて修正する修正案提出がありました。この修正案は、法案の名称を、「教育費国庫負担法案」に変更すると共に、その適用範囲義務教育のみならず高等学校にも及ぼし、これら諸学校の教職員給與費、教材費及び校舎の建設事業費について、それぞれその総額の五分の四を下らない額を国庫負担とし、更に別に法律の定めるところによつて義務教育学校の兒童及び生徒の教科用図書の購入費並びにその学校給食に要する経費の全額を国庫負担とすると共に、これらの教職員給與費の総額、教材費の総額、建設事業費の総額等については、それぞれ法律を以てその算定の基準を定めようとするものであります。  これら二つの修正案並びに衆議院送付案につきましては、相馬委員、高田委員、岩間委員及び矢嶋委員から、それぞれ衆議院送付案並びに堀越委員提出修正案に反対し、荒木委員提出修正案賛成の旨の討論があり、木村委員及び堀越委員から、堀越委員提出修正案及びこの修正部分を除く送付案に賛成討論が行われ、かくて採決の結果、委員会は、堀越委員提出修正案に従い、本法案を多数を以て修正議決いたすべきものと決定しました。  委員会及び連合委員会におきましての質疑応答の詳細及び討論内容の委細につきましては、会議録にこれを譲りたいと思います。  最後に、大村委員から次のような附帯決議を行うことの動議の提出があり、同じく委員会は多数を以てこれを可決いたしました。附幣決議の内容は次の通りであります。  一、教職員給與費の国庫負担額の最高限度を政令で定める場合には、その限度の基準は、少くとも各都道府県の従来の実績を下廻らないように定めること。  一、速かに地方財政法第五條を改正して、地方の財政能力の如何にかかわらず、老朽危険校舎の改築費を常に起債の対象として確保できるようにすること。  一、戦災その他の災害を被つた校舎に対しては、地方財政法規定に基き、速かに国庫の負担区分を明確にし、且つその復旧を促進するよう特別の措置を講ずること。  概略ながら以上を以て御報告といたします。(拍手
  22. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 本案に対し、荒木正三郎君ほか一名より、成規の賛成者を得て修正案提出されております。この際、修正案趣旨説明を求めます。荒木正三郎君。    〔荒木正三郎君登壇拍手
  23. 荒木正三郎

    ○荒木正三郎君 只今議題となつております義務教育費国庫負担法案について、発議者を代表いたしまして修正案提出理由説明いたします。  先ず修正案内容でございますが、その詳細はお手許にお配りいたしております印刷物によつて御承知願うと共に、これを速記にとどめることにいたしまして、私からはその骨子について御説明申上げたいと存じますので、御了承を頂きたいと存じます。  先ず初めに申上げておきたいことは、参議院の文部委員会におきましては、教育財政確立の問題は、現下我が国の教育現状から見て極めて重要な問題であると考え、特に小委員会を設けて、その検討を続けて来たところであります。その久しきに亘る研究の結果、一応の小委員会案なるものができたのであります。而もこの小委員会案は各位によつて極めて望ましいものであるという結論を得たのであります。私が今ここに提案理由説明いたしておりまする本修正案は、その小委員会案を基礎としてできたものであるということを特に申上げておきたいと思うのであります。  次に、内容の主なる点を説明いたします。第一の点は、教育費の国庫負担対象を單に義務教育に限定せず、高等学校、幼稚園をも含めておる点でございます。勿論義務教育の問題は重要でございますが、幼稚園の教育、高等学校教育も又重要な問題でありまして、新学制全般を通じてその充実を図らなければならないという趣旨より出でたものであります。第二の点は、教育費の国庫負担額は八割を原則としたことであります。これは地方財政の現状より考えて、地方の負担をできるだけ軽減し、国庫において大幅に負担することが、教育財政負担の均衡上妥当な措置であると考えたからであります。教育費の大部分を地方が負担していることが、地方財政の窮乏と相待つて教育財政を不安定なものにしておるのであります。かような理由から大幅な国庫負担の必要を痛感いたしておるものであります。第三の点は、国庫負担対象となる教育費の範囲を單に教職員の給與費のみにとどめず、教材費、校舎の建築費に拡めている点であります。教材費がPTAの会費によつてその大部分が賄われている現状でありまして、父兄の負担の軽減を図りたいとの考えであります。又校舎の建築についても父兄の多額の寄附によつて六三校舎の建築が進められている現状でありまして、誠に歎かわしい次第であります。特に我々の留意しなければならないのは、老朽校舎で使用を禁止しなければならないような危険な校舎が今日すでに四十方坪にも達しておるという事実であります。これは戰争中、又戰後においても放置されて来たために起つて来たものでありまして、これらの改築は地方費を以ては到底なし得ないところであります。どうしても国庫の大幅な負担によるほかに解決の途がないものと信ずるのであります。第四点は、戰災及び災害校舎の復旧費を見たことであります。戰災校舎にして未だ復旧していないものは、なお相当数に上つているのでありまして、二部授業が今日なお解消しない最大の原因はここにあると言つても過言でないのでございます。又年々起る風水害、或いは震災等のため、校舎が相当数倒壊破損いたすのでありますが、これら災害校舎の復旧のため国庫負担制度を確立しておくことは極めて緊要なことと考えたのであります。第五点は、憲法に謳われている義務教育無償の原則を実現せんとしたことであります。義務教育の課程に属する兒童及び生徒の使用する教科用図書の購入並びにこれらの兒童生徒のための学校給食に要する費用について、それぞれその全額を国庫において負担することにしているのであります。教科用図書の購入費及び学校給食費が如何に父兄にとつて重い負担になつているかは今更説明するまでもないところでありまして、憲法義務教育無償の原則はやはり名のみとなつているのであります。最近長期欠席者が著しく増大している現状を考えるとき、義務教育無償の原則を具体化する必要を痛切に感ずるものでございます。  以上が本修正案の骨子となるものでございますが、私どもは本修正案教育の機会均等とその水準の維持向上を図ることができる最低のものと信ずるのであります。  私は特に最後に一言申上げたいのは、本年度予算において二千億に及ぶ再軍備費が組まれておるのであります。仮にその半分を教育費に廻すならば、予算的には十分賄い得て余りあるのでございます。軍備に力を注いで国を亡ぼした例は古今東西枚挙にいとまがないのでございますが、教育に力を入れて亡んだ国は未だ聞かないのでおります。(拍手)私は本修正案が、平和を愛し、文化国家の建設の熱意に燃える各位の心からなる御賛同を期待いたしまして、簡單でございますが修正案提案理由説明申上げた次第であります。(拍手
  24. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 討論の通告がございます。順次発言を許します。高田なほ子君。    〔高田なほ子君登壇拍手
  25. 高田なほ子

    ○高田なほ子君 私は社会党第四控室を代表いたしまして、只今上程になりました衆議院送付義務教育費国庫負担法案並びに緑風会堀越儀郎議員提出修正案に対しまして、反対いたし、荒木正三郎議員ほか一名提出修正案について賛成の意を表するものであります。  思えば、惨憺たる敗戦の焦土の中で、非常な窮乏と飢餓の中からしみじみ私たちが思いましたことは、子々孫々このような残酷なことを二度と繰返してはならないという固い決意でございました。(「そうだそうだ」と呼ぶ者あり)幸いに憲法の前文においては、全世界の人類に対して、ひとしく恐怖と欠乏から免れて、平和な文化国家を建設するという、新たなる誓いを私たちは投げかけたということをここに想起しなければならないと思うのであります。而もこの礎石として重大な要素である教育の確立については、明確に、憲法の第二十六條において、国民はすべてその能力に応じてひとしく教育を受ける権利を有し、義務教育国家において無償でなすことの規定がここに確立されました。このことは世界の全人類が人権宣言として打ち立てた一つの真理であるということを、私どもは明確にここに把握しなければならないと思うのであります。かくして、ここに具体的に要求されるものは、教育財政の確立であり、教育機構の改革であり、民主的な教育行政運営という、この三点がここにはつきりと主張されるわけでございます。占領下という非常に窮屈な、日本の自主性が失われた條件の中にありましても、事、教育に関する限りにおいては、アメリカの教育使節団が回を重ねて来朝いたしまして、日本教育行政に対して人類として傾聴すべき幾多の警告を與え、分けて日本教育財政の確立による教育水準の向上と、教育の機会均等を根幹とした教育の民主化を示唆したということは、今なお記憶に新らしいところであります。併しながら、六・三制の実施後、而もシヤウプ勧告に基いて、義務教育費の半額国庫負担廃止されまして、地方財政平衡交付金に組み入れられて、爾来三カ年、義務教育費は都道府県の一般財源の中で三五%から二十六年度には四〇%に、同じく二十七年度には四五%に膨脹し、而も半額国庫負担当時は配付税と合せて六六%程度でありましたが、最近は五〇%を割ろうとしているのでございます。かくして、地方団体の財政需要と財政收入との差額を合理的に而も客観的に補充せんとする平衡交付金の総額は、毎年頭打ちを続け、遂にこの「しわ」寄せは限界点に達しました。而も準備がなくして出発いたしました六・三制の出発、兒童の自然増、更に加えてたびたび起る風水害の災害、これらの「しわ」によつて、教職員の給與、定員も著しく低下を来たし、地方間の不均衡は極度にその幅を拡げ、あまつさえ血のにじむようなPTAの厖大な寄附もよそにいたしまして、六・三建築最低基準〇・七坪に達しまするのには今なお十五万坪の厖大な不足の数を示し、老廃校舎は二百八十万坪を超え、兒童の生命に危惧を持たなければならないような危険校舎は実に四十四万坪の多きを数えるに至つているのでございます。而も毎年度の台風の襲来によつて、このぼろ校舎は常に大きな破損を来たしまして、子供たちのただ一つの生長の道である教育環境は誠に転落の様相を来たしておるのであります。兒童の学力低下と青少年不良化の見えない素地がここに胚胎しつつあつたことは、心ある者の長きに亘る憂いであつたはずでございます。文部省は、輿論に応え、すでにこの破綻に対して義務教育法案の構想を練り、爾来二カ年の歳月を費し、今、独立初の国会に際して勇躍これが打開の途を講ぜんとせられたのでありまするけれども、不幸にして地財委並びに政府部内の一部の猛反撃に会いまして、遂に五月七日衆議院自由党竹尾議員外十三名の議員提出原案として提出するの止むなき状況に至つたのであります。こういう波瀾の中から生まれた案が、もとより欠陷を持たざるを得ないというのは当然のことではありましようが、一応教育の崩壊を食いとめ得る役割を果せるという期待を持つたのでありますが、又々再軍備予算に血道を上げる政府與党間の意見の不一致から、原々案の心臓部ともいうべき最低教育費の基準法文はことごとく削除され、第一條に調うところの目標とは似ても似つかない満身創痍の姿になつて出て来たのが、只今提出された原案そのものなのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)而も第二條第二項においては、大蔵、地財委の反撃の結果、国庫負担額の最高限度は政令で定めることができると謳いました。第一條の目的に謳う教育の機会均等とその水準の維持向上とはおよそ反対に、自動的に定員定額の惨状に押しやる結果を招来させることは明白の理窟であり、目的と相反する條項を挿入するこの精神分裂症的なやり方で迷惑をこうむる者こそ全国二千万の兒童であるということは、はつきり銘記しなければならないと思うのであります。これに対しまして衆議院の若林議員は原々案の提出者といたしまして、こういうみじめな原案の姿になつたことに対して、これはまるで卵から黄味と白味を取り去つてしまつた殻のようなものだと嘆息をされているのでありますけれども、私は、この嘆息こそが議員としての本音であり、又良心的なかたのこれは本当の願いであり、お心であろうと思うのでございます。而もこういうお粗末な法案施行期日を政令を以て定めるということに至つては、又何をか言わんやというところでございましよう。而も議員提出法案に対して、議員がその重大な内容を單に附帶決議として並べるがごときは、誠に不見識極まるものであつて、後世の大きな批判の材料となるでありましよう。(「自殺行為だ」と呼ぶ者あり)而もこれがこのような満身創痍なものであつても、なお且つ政府の一部にはこれを握り潰してしまおうというような言語道断の動きがあるということは、私どもは断じてこの横暴は許すことはできないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)昭和二十七年度においては、義務教育費無償の線に沿つて一年生の兒童に教科書を與えたのでございますけれども、これは前年度の義務教育費無償の線を外して、お祝いをするというふうに改めて、時と場合によつては、いつ何時でも取上げることが可能とされるように法文を改め、而も雀の涙のような学童給食費は全面的に文部予算から削つたではありませんか。而もこれは国民の反撃に会つて、農林省からお涙を頂戴して学童給食を継続しているという、国民の手前を糊塗する態度に至つては、誠に言語道断であります。吉田首相は本年度の施政方針の中で堂々と文教の完備を国民に公約をし、天野文相は今年度の文教政策の四大支柱の第一として六・三の完備を掲げておりますけれども、全くこういうようなことによつて根本から天野文政は転倒しているではありませんか。私は、安保條約の手前とは言いながら、非生産の最たる再軍備費総予算の四分の一のその犠牲を蔽わんがために、かかる良心なき法案を上程され、而して民意を愚弄するがごとき野蛮な勇気こそ、私は排撃すべきであろうと思うのであります。こういつた欺瞞に満ちた原案に対しては、二千万の兒童の拠りをこめて、断固として私は反対しなければなりません。更に緑風会の修正案は、歴代の文部委員長をお勤めになつているお手前もありましようから、御努力の程度はわかりますが、施行期日を明白にしただけのことであつて法案実施上の鍵ともなるべき第二條第二項、これは「特別の事情あるとき」と、ぼかしてはおりますものの、この特別の事情の内容は、如何ようにも解釈をされ、如何ような取扱も都合よくできる結果、何らこれはもとの精神と変らないのであつて、表現上の変化を付けただけにとどまるということでありますから、誠に御努力に対してはお察しをいたすのでありますが、良心的に私はこの修正は当を得たものではない、このように考えるのであります。  我が文部委員会は、かねてからこの成行きを重大に考えまして、教育費国庫負担法に関する小委員会を設けて、回を重ねて、教育費の国庫負担のあるべき姿を仔細に検討し、その大原則を打出し、荒木氏提案は、この大原則を骨子として、日本全国民が願つて止まないこの精神を一つの結晶として盛り上げたのがこの修正案であります。この提案趣旨によりまして十分御了解が付くと思いますが、自由党一部のかたの中には、このような理想案は国民の実情に適さないではないかというような逃げ口上を言われておりますが、口を開けば教育々々と叫びながら、一体その良心はどこにあるのか。真実の愛情があつたならば、この我が荒木委員修正案に賛同するということは、これは当然のことではないでしようか。即ち、国民の望むその真情、教育の崩壊をどのように把握しているかということが問題であつて、熱が下つてしまつた病人にアスピリンを飲ませるというような愚を繰返すことは、これは断じてやるべきことではない。日本の現状に必要であればこそ荒木委員修正案が必要になつて来るのであります。  私は、二十七年七月二十五日五時十七分、我が荒木委員修正案が否決され、全く骨と皮、満身創痍のこの案が通りました。私は、この時、この時間を絶対に忘れることはできません。ただ子供のよい成長のために、ひたすら朝も夕も祈り続ける日本の貧しい母親、みじめな日本の子供たちを思いますときに、私はどうかこの荒木修正案を、あなた方の議員としての良心を以て、單に選挙戦へのおみやげにしようというようなさもしい考え方をここではつきり割り切られまして、どうか日本の子供のために、あなた方の良心を傾けて、我が荒木委員修正案に対して御賛成が頂けますことを心から念願いたしまして、私の討論を終る次第であります。(拍手
  26. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 木村守江君。    〔木村守江君登壇拍手
  27. 木村守江

    ○木村守江君 私は自由党を代表いたしまして、只今上程されました義務教育費国庫負担法案に対し、堀越儀郎君修正案並びに同修正部分を除きました衆議院送付原案賛成いたし、荒木正三郎君外一名提出修正案に反対するものであります。  先ず本案に賛成する理由といたしまして、御承知の通り、戦いに敗れました日本の再建は、その根幹を教育に待たなければならないことは、今更申上げる必要のないところであります。(「陳情請願を忘れたか」と呼ぶ者あり)日本再建の教育は飽くまでも民主的教育でなければならないのであります。この民主的教育の達成は(「民主的教育とは何ぞや」と呼ぶ者あり)教育財政の確立を期さなければならないこと、これ又勿論のことでありまするけれども、昭和二十四年以来、義務教育費は平衡交付金の中において賄われ、土木、警察、消防、厚生、労働、産業、経済等、三十数項目の一切の地方行政費の中に含まれており、現在の平衡交付金制度は、これら地方行政費の全般を保障することになつておるのでありまするが、不幸にして、年々支出される平衡交付金額を以ていたしましては、これら全体の地方行政費を保障することが事実上不可能な状態となつておるのであります。従つて、最も重要であるべき教育費が犠牲となり、昭和二十四年度以来漸次教育費がしわ寄せとなり、その教員数においても、又給與の面におきましても、年々低下の一方を示しつつある状態に立ち至りましたことは、すでに教育に関心を持たれるところの議員各位の痛感されるところであると存ずるのであります。然るに、本法案提出によりまして、これが成立の曉には、教育の基本的要素であるところの教職員給並びに教材費の半額を国家がこれを別途支出し、義務教育について財政上の最終責任を明確にし、国がこれを負担するという、我が国教育史上における画期的な成果を見るものでありまして、これ即ち憲法に謳わわれているところの義務教育無償の原則実施する第一歩であると言わなければならないのであります。(拍手)かかる有意義なる法案を、講和発効により、独立をかち得ました最初の今国会におきまして上程するに至りましたことは、我が国義務教育の将来のために誠に御同慶に堪えざるところでありまして、(拍手)これらの法案提出者並びに成立に努力された各位に対しまして深甚なる敬意を惜しまざるものであります。(「祝辞じやないぞ」と呼ぶ者あり)特に緑風会の堀越儀郎君提出にかかる修正案は、原案においてやや明確を欠きました施行期日昭和二十八年四月一日とし、教職員給の最高限度を定める政令の誤謬と行き過ぎを是正せんがために、第二條第一項の但書としたことでありまして、誠に適正妥当なるものでありまして、衷心より賛意を表するものであります。  次、本法案の成立は、ひとり教育財政の確立の第一歩であるのみならず、地方財政の安定を期すると共に、父兄の負担、即ちPTAの負担を著しく軽減し得るということであります。教育費の地方自治体における負担の大なることは今更申上げるまでもないことでありまするが、国が財政的責任の最終を負担するということは、地方財政の安定を期する上におきましても重大なる意義を有することは明らかであります。又これと同時に、元来当然分けの費用によつて賄わるべき教材費の約半額程度を国庫が支出し、PTAの負担を軽減し、小中学校の設備の充実を図り、教育内容の向上を期することは、誠に時宜を得たる処置なりと言わなければならないのであります。  次に、本案の特殊性は、飽くまでも実現し得る最も堅実な教育法案であるということであります。(「ノーノー」と呼ぶ者あり)長い間の戦禍に見舞われまして、敗戦の苦盃を嘗めた我が国財政に印した、而も将来起るべき税制の改革とを勘案、立案した最も堅実なるものでありまして、決して、日本の現在と将来とを混迷に陷れんとする共産党の諸君を交えた荒木君等の提案にかかる、(「つまらんことを言うな」「何を言うか」と呼ぶ者あり)国家財政を無視した、架空的厖大な人気取りの扇動法案とは全くその趣きを異にするものであります。(拍手)口に世界の平和と民族の解放とを叫びながら、手に赤旗と火炎びんとを持つて祖国ソヴイエトに隷属せしめんとする共産党の諸君(「何だその言葉は、取消せ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)と共に、義務教育費国庫負担に名をかりて国家財政を顧みざる社会党左派諸君の暴挙に至りましては、いわゆる平和論の美名に隠れて、共産党と手を握つて日本の革命をも企図せんとするに何ら異なるところのない暴挙なりと言わざるを得ないのであります。(「取消せ」と呼ぶ者あり)かように考えて参りましたときに、本決案の成立は、少数の共産党指導下にある特殊な教職員を除いた全国六十万の教職員は勿論のこと、一千数百万の生徒児童並びにPTA等の熱望しておるところでありまして、私の賛意を表する因由のものも又ここに存するのであります。(拍手)ここに、次に一言、荒木正三郎君ほか一名の諸君提案による修正案に対しまして反対の理由を述べたいと存ずるのであります。今日上程されました法案は、憲法義務教育費は無償とするの精神に基くところの義務教育費国庫負担法でありまするのに、修正案はこれを逸脱した、根本的にその趣きを異にした全教育費国庫負担法であるのであります。私はかように考えたときに、この法案は本日修正案として提出すべきではなく、これは後日別個の法案として上程すべきものではないかと考えるのであります。(「何だそれは」「理由は」と呼ぶ者あり)教育の全部を国庫の負担に負わすがごときは、教育の姿が如何になるか、いわゆる教育の姿が中央集権的になり、画一的な教育施行せられますことは、全民主教育の最もとらざるところであると言わなければならないのであります。提案者等は憲法の示す義務教育がどんな程度であるかは(「どんな程度だ」と呼ぶ者あり)よく御存じだろうと存ずるのであります。提案者の各位は、実際教職員であつたという関係上、教育の基本がいわゆる義務教育費を以てその根幹となすということを御存じであろうと存ずるのであります。この義務教育費の現在の状態が、我々がこの義務教育費国庫負担法によつて一日も速かに立派な教育施行しなければならないというところから、この法案提出に至つたことは、よく御存じであろうと存ずるのであります。ところが、この修正案を見ますと、義務教育費と一緒にほかのすべての教育費を要求して、而してこの教育費をもいわゆる葬むり去らんとする状況に至ることを考えなければならないのであります。私は、この法案修正案を見ましたときに、丁度今回荒木君の提出せられました修正案は、即ち義務教育費国庫負担法の美名に隠れまして、いわゆるどさくさ紛れにちよつと隣の物をちよろまかしたところの、いわゆるどさくさ紛れの法案であると言わなければならないのであります。(拍手)かようなどさくさ的法案こそ教育的見地から最も唾棄すべき態度であると言わなければならんと思うのであります。いずれにいたしましても、かような修正案提出することは、汽車を顛覆しても、火炎びんを警察に放り込んでも平和工作であるとして恥じないところの共産党の行為と同一でありまして、若し社会党の左派の諸君に共産党と異なるというところがありましたならば、かような法案を撤回して、別個の法案として提出すべき良心がなければならないと思うのであります。(拍手)次に、たとえ諸君は野党でありましても、いやしくも修正案提出する場合には、特に委員会ならまだしも、本会議においてこれを提出せんとする場合は、国会議員として、国家経済並びにその他万般の事情を勘案して、その成立を確信して提出すべきではないかと考えるのであります。徒らに無責任な厖大な法案によつて、その予算も幾ばくになるかも計算できず、その財源も考えずに、人気取りや選挙の宣伝に提出するに至りましては、議員としての良識を疑わざるを得ないのであります。(拍手本会議における議案の審議は街頭演説や皆さんが教職員の前でやるハツタリ演説とは違うのであります。(拍手)以上、私はこの無責任極まるところの修正案に対し、義務教育重要性を考えるときに、(「名演説だよ」と呼ぶ者あり)国家全体の健全な発展を考えたとき、(「何が健全だ」と呼ぶ者あり)反対せざるを得ないのであります。賢明なる同僚議員諸君におきましては、御賢察の上、堀越君修正案並びにその他の原案賛成せられんことを要望いたしまして、国家再建のために資せらるるようお願いいたしまして、私は委員会修正案賛成し、荒木君ほか一名提出修正案に反対する次第であります。    〔小笠原二三男君発言の許可を求む〕
  28. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 小笠原君、何ですか。
  29. 小笠原二三男

    ○小笠原二三男君 只今の木村君の賛成討論の中に、この本会議場において議場の権威のためになすべからざる発言があつたやに伺うのであります。(「ノーノー」と呼ぶ者あり)議長においてこれが速記録について調査の上、善処せらるることを希望しますと共に、特に我が社会党は、荒木君の法案提出修正案提出につきまして、共産党と同時にこれを論じ去り、そうしてこの議員の本法案に対する修正案提出権にまで誹誇した言論がなされたのでございます。併しながら、この修正法案は、荒木君ほか一名とありまするものは、社会党第二控室の棚橋小虎君でございまして、何ら共産党において修正案提出しておらんのでございます。(「そうだそうだ」と呼ぶ者あり)かかる場合に、本村君の言動は、我が日本社会党第二並びに第四控室を誹謗すると共に、議員が持つ法案に対する修正案提出権までも(「そうだ」と呼ぶ者あり)これを誹謗し、(「それは怪しからん」と呼ぶ者あり)防止するやの言動があつたのでございまして、この点につきましては木村君においてその言論を取消されんことの動議を提出いたします。(「賛成々々」と呼ぶ者あり)
  30. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) お答えいたします。議長において速記録をよく調査いたします。(「動議はどうした」と呼ぶ者あり)今の動議には賛成者がないものと認めます。(「賛成するぞ」「国会規則をよく見ろ」「記名投票をやれ」と呼ぶ者あり)     —————————————
  31. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 只今小笠原君から、先ほどの木村君の説明に対して一部取消の動議を出されました。この動議を議題といたしまして、今小笠原君の要求された動議に賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  32. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 少数と認めます。(拍手)     —————————————
  33. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 相馬助治君。相馬助治君登壇して下さい。    〔相馬助治君登壇拍手
  34. 相馬助治

    ○相馬助治君 私は只今議題と相成つておりまする義務教育費国庫負担法に関しまして、委員長報告修正議決全文に対し反対、並びに荒木君外一名提案にかかる修正案に対しまして賛成の意を、社会党第二控室を代表して表明せんとするものであります。皆さん御承知のように、日本憲法の二十六條は、嚴粛に次のごとく謳つております。国民はその能力に応じ教育を受ける権利がある。更に進んで、その義務教育は無償でなければならない。従いまして、国民のこの重要なる権利であり且つ義務でありまするところの義務教育に対しましては、国家は当然教育の一定の規模内容とを保障するために財政の裏付けをするということは、極めて当然なことであろうと存ずるのであります。ところが皆様、現状はどうでありましようか。教育はその財政的な貧困の理由を以て次々に崩壊をしております。先に本国会におきまして或る議員の質問に対し、当時天野文部大臣は、御趣旨御尤もでありまするが、誠に残念に存じますという答弁をし、残念大臣と弥次られました。このときに或る新聞は次のごとくこれを書いてあるのであります。「これは議場における弥次ではない。今や教育に対し冷酷なる態度をとりつつある自由党の中において、党人でないが故に天野文部大臣は窮地に追い詰められておる。これに対する激励の民の声である。」こういうふうに当時新聞は報じたのでございます。事実、現在の法律によりますれば、文部大臣は義務教育について責任を持つておりまするが、財政的には何らの権限も保有されてない。従いまして地方財政はいよいよ貧困を極め、池田財政の当然の帰結といたしまして、財政上のしわ寄せというものが地方財政に押寄せ、地方財政のしわ寄せが教育の面に現われておることは、自由党の諸君をも含めて議員各位のすでに了承するところであろうと思うのであります。而も本年度の当初予算におきましては、全国民の特にお母様方の血の叫びに反抗して、給食費が削られたではないですか。一方においては牛乳を風呂に立ちこめてそれに悠々と浸つてビールを飲み酒を喰らつている連中があるかと思うと、一方では育ち盛りの子供に牛乳をも飲ませることを予算の面で拒否するという政策がとられる限りにおいて、文化国家建設などということは誠に由ないことであると断ぜざるを得ないのであります。(拍手)今日父兄はPTAの寄附に苦しんでおります。教科書はいよいよ高くなつております。中小企業の没落、農村の不況、こういう現実というものは、文部当局、或いは地方の教育委員会学校の校長以下職員の血のにじむような督励努力にもかかわらず、長欠兒童は激増しておるのであります。つまり政府当局の教育尊重のかけ声にもかかわりませず、そのなすところの教育侮辱政策の当然の帰結といたしまして、六・三制の基礎は、その長欠兒童の激増というものによつて象徴されているように、次々と崩壊を見つつあり、新教育制度はその経済的理由から揺らぎつつあるということを我々はここで確認すると共に、国家の将来を考えて暗然たらざるを得なのであります。この段階において我々は、率直に、党派を超越して、少くとも国民の代表として、選良として立法府に議席を有する限りにおいて先ず考えなければならないことは、敗戰日本をして真に立ち上らせるためには、我田引水洗のすべての議論を抜きにしても、次代を背負う子供たちに我々はより大なる希望を繋がなければならんという一つの問題であると思うのであります。文化国家ということは、諸君、積極国家であります。勿論、今日どなたがこの政権を担当するとも、すきつ腹に飯をかつ込んだようなうまい工合に参らんことは我々もよく了解いたします。併しながら、真に文化国家建設と言うならば、積極的にやりくりの金をもこの教育費のほうに流されなければならない。即ち、この際、我々は教育尊重ということを再確認しなければならない。ところが皆様、義務教育費の必要は認めながら、これは不生産的な支出であるというようなことをおつしやるかたがある。おつしやらないまでも、具体的にそういうことを行動の上においてなさんとする党派がある。あらゆる財政支出のうちでも最も生産的な支出というものは、実に次代を背負う国民を教養すべき義務教育費であると私は断ぜざるを得ないのであります。而も、今日教育規模において問題でありますることは、義務教育費を国家が正式に支弁しておりませんがために、地域によつて教育のアンバランスが甚だしいということであります。教育の画一性を排する声が高い、そうして地方自治体を尊重する、だから地方に教育は委ねるものであるというような議論は、一応議論として筋が立つておるようでありますが、財政の面においてはこれは誤まれるものであると言わざるを得ないのでありまして、今日我々が要望しなければならないことは、第一に義務教育費の確保であります。第二には地域的配分の均等化であります。これなしに断じて教育は、今日の教育の振興し得ないことを、私は諸君と共に銘記するものであります。この間の事情において、天野文部大臣は就任以来常に義務教育費は国費を以て賄うのを基本とするとおつしやつておりました。同感であります。而も又頑迷固陋なるこの党内における政治的カがありやなしやというような種々の議論は、仮にあるといたしましても、私は文部当局の善意の努力を認めないわけには参らないのであります。而も政府はこの間に処して、政府提案を以てこの法律を出す勇気を失つて、そういたしまして竹尾弌君外十五名の提案にかかる議員提出法案を出したのであります。当時新聞はその内容報告いたしました。そうして多くの人々は自由党を実は見直したのであります。ところが諸君、その後におきまして竹尾君初め十五名にかかるところの原案修正されたと言つておる。修正されたのではないのです。内容全部取除いて、わけのわからん規定をやつたのであります。あえて、わけのわからん規定をやつたということは、堀越君の修正案が出たということだけでも、すでに明らかであろうと思うのであります。従いまして、私どもがこの際、考えなければならないことは、文部省が常に言い続けておるところの、義務教育費を地方だけの負担とし、そうして平衡交付金に任せておくということは矛盾があるという、このこと、而も義務教育費の算定というものは、極めてこれは困難であると言えば困難な仕事でありますが、可能なる仕事なのであります。そういう意味合いからも、義務教育費の最終的責任を国が負うという建前を堅持し、そうして教員の給與の安定を図りますると共に、学校の維持施設、更にPTAの会費や寄附金の解消、これらに向つて文部当局が拂われた努力並びにその案件に対しまして、消極的な段階において実は我々は賛意を表していたのであります。ところが現実は全く当局の意見をも無視したものが出て来たことは、すでに御案内の通りであります。而も理窟はなかなかうまく立つものだと思いますることは、教育というものは憲法規定されておるけれども、中央集権的な官僚統制になつてはならない、その通りです。だから教育費というものも、義務教育費を国費で以て支弁することは、そういう虞れがあるから怪しからん、理窟としてはその通りであります。ところが皆様、日本教育の現実、特に財政的な立場から見た現実というものは、そんな生やさしいものでないことは、諸君すでに御案内の通りでございます。そこで皆様、現在ここで委員長によつて報告された自由党の原案というものを御承知でありましよう。この原案に対しまして緑風会の諸君修正の動議を出され、政府筋に向つて努力されたことに対しまして、私は十分なる敬意をお世辞抜きに呈するものであります。併しながら緑風会の皆様、あなたたちは不運なことに、玉を磨くならば努力の効があるけれども、この政府が、いや衆議院から廻された法律案というものは、不幸にして玉でなかつた。石ころであつた。あなたたちが善意の意思を以て磨いても光の出る品物でなかつたということであります。従いまして、先ほど自由党の木村君の討論に対しまして、内容を何とかしろと言つたが、この法案には実は内容がない。高田君の討論の中に現われたように、卵黄をとつた卵の殻だと言つたか、卵黄も卵白も、卵白と殻の所にある薄い膜をも洗い淡い取つたものがこの法律案であると言わざるを得ないのであります。従いまして、私は緑風会の諸君に対し心からなる敬意を表しますると共に、かかる法律案を、衆議院より廻つてつたのでありまするが、かかる法律案を土台にして討論審議しなければならなかつたこの段階を、実に祖国の将来のために私は悲しむものであります。(「簡單々々」と呼ぶ者あり)一言にして言うならば、簡單ということをおつしやるから私は簡單に言う。この法律案は羊頭狗肉の法律案である。この法律案義務教育費侮辱法案である。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)この法案は、上原君、自由党選挙対策法案である。(拍手)この法案は実に自由党の文部委員会の私生兒法案である。(「君らしくないぞ」と呼ぶ者あり)簡單に言えばこういうことに相成ると思うのであります。従いまして私はかかる法案に反対です。木村君の自画自賛論はありましたけれども、内容を隔たること残念ながら余りにも遠い。私は良識を以てこれに反対いたします。  次に、荒木君提案修正案ということになつておりますが、荒木君と棚橋君が発明した修正案ではない。前に我々は、即ち参議院文部委員会は、堀越儀郎君を小委員長といたしまして、義務教育費国庫負担法は如何なる線によつてやらなければならないかということを相談いたしました。そのときに試案として日教組案も出されました。又共産党の岩間君よりは、義務教育費というものは全額国費を以て支弁すべきであるという貴重なる意見も開陳されました。これは勿論耳をかすべき議論でありますが、我々は、自由党の諸君をも含めて、国家の置かれておる財政の現実、財政規模、そのようなものを勘案いたしますと共に、参議院の良識をかけて小委員会案なるもりを決定し、堀越儀郎君をしてこれを参議院文部委員会報告せしめ、(「そうだ」と呼ぶ者あり)我々はこれに対して全員賛成したことを忘れてはならないと思うのであります。(拍手)而もこの趣旨に基いて出されましたるところのこの修正案に対しましては、事の次第をつまびらかにいたしまするならば反対すべき何物もないのでございまするが、今日、我々は、この修正案が実に一部党派の人気取りな、そうして内容空虚なものであるということを、ここで木村君によつて指摘されたということは、内容を隔たること遠きものではありますが、かかる意見が少くとも公党におい、て而も又信義を重んじなければならない常任委員会の文部委員会の一員としてなされたことを、木村君のためにも、又日本の一番大きな政党でありまするところの自由党のためにも悲しむものでありますると共に、どうぞ皆様、あらゆる因縁情実を捨てられますると共に、特に是々非々を以てするところの緑風会のゼントルマン諸君諸君は断然この荒木君提案にかかる修正案賛成するであろうということを期待いたしまして、あえて私の討論を終る次第であります。(拍手
  35. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 矢嶋三義君。    〔矢嶋三義君登壇
  36. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 文化的、平和的国家建設の基盤が教育にあり、特に義務教育にあるということと、その義務教育は適正なる規模内容においてすべての国民に保障されなければならないという憲法の基本的な立場と、更に独立の庭に立つた我が国民的自覚の立場から、私は第一クラブを代表いたしまして、先ず委員長報告にかかる修正議決案全部に反対いたし、荒木君ほか一名提案にかかる修正案賛成討論を行わんとするものでございます。私は、討論を進めるに先立ちまして、先ず我が国の現在の教育が極めて危機にあるということを申上げたい。第一点といたしまして、校舎もなく、教師もなく、教材、教具もなく、何ら財政的裏付けなくして発足したところの我が国の教育改革が、財政面において窮迫を告げて今日まで参つたことは御承知の通りでありまするし、現段階において再軍備コースに入つた我が国の教育を考えるときに、まさしく私は財政的な面で危機にあるということを申上げたい。第二点といたしましては、民主主義教育の理念と、その理念の不足から来るところの学制並びに教育行政に対する無定見から来るところの教育の危機というものも、又重大だということを申上げたいのであります。これを要するに、教育に対するところの政治面におけるところの教育軽視、政党各派の選挙におけるところの教育に対する公約無視というものが、今日の教育危機を招来しておると断言いたすものであります。例えば、この建設的重要法案討論時間が僅か十五分間に制限されておるところの事実、更に義務教育費国庫負担法案審議過程において、吉田首相の一回の御出席も頂けなかつた点、更に、財政的に申上げるならば、本年度八千五百億の一般会計予算に対して、非文化的防衛予算が二一%も組まれておるのに対して、教育予算が僅か五%であり、更に具体的に申上げるならば、六・三制が発足して全国民的な要望がありましたところの六・三建築費が、過去六ヵ年間熾烈なる国民的要望があつたにもかかわらず、僅か二百六億八千万円しか確保されていないのに対しまして、三ヵ年前に発足した警察予備隊費には、僅か三年間にすでに千五十億の予算が我が国会において承認されておるこの事実を以ても、私は十分に御説明申上げることになると思うのであります。私は、我が国の防衛力の漸増は、飽くまでも教育に基礎を置いたものでなければならないということを特に申上げたい。もう一点申上げまするならば、或いは今日衆議院本会議において否決されんとしておるところの教育委員会法の一部改正法律案によつて市町村教育委員会を設けようとしておるのである。嚴粛に反省しなければならない。かくのごとく、挙げれば数限りないのでございまするが、我が国の教育は先ず危機にあるということを申上げます。次に申上げたい点は、然らば我が国の教育は如何なる現状にあるかということを、本法律案関係ある立場において申上げたいのであります。先ず教育費の算定というものは、教育規模内容と密接な関係にありまするので、これは教育所管省がこれに当るべきであるにもかかわらず、現行制度において文相は責任こそあれ財政的に何ら権限がないという点。第二点といたしましては、憲法に保障されているところの義務教育というものは、その財政負担が、とにかく形の上では、建前の上では地方だけの負担になつてつて、国の責任というものが明確化されていないということであります。第三点として申上げたい点は、国の法令に基くところの事務はますます激増いたしまして、地方公共団体は悩んでいるのでございますが、この裏付けをなすところの国庫支出金の増額は、平衡交付金の名において極めて少額を極めているということでございます。一般公共事業費は二十五年度当初一〇〇に対して二十七年度二一〇を数えているのに対しまして、平衡交付金は一〇〇に対して僅か一一九の増額しか見られていないのでございます。この平衡交付金を抑えているということは、地方公共団体行政の面において最大比重を占めるところの教育費に非常にしわ寄せになつて来ているのでございます。給與関係費のみをとつて申上げましても、一般財源の中の二十四年度において三五・八%、二十七年度においては実に四四%と飛躍いたしております。これは税收の七五%を占めているのでございます。然るにもかかわらず平衡交付金が増額されないということは、教育に非常にしわ寄せをなして来ておりまして、その結果、父兄の負担というものは年々増大されつつあるのでございます。この結果、教育に如何に支障を来たしているかという点につきまして二点具体的に申上げますならば、先ず教員の充足状況が低下しているということ、例えば二十四年度兵庫県においては一学級一・八人でございましたのが、二十六年度広島県の一学級一・四と低下いたしているのでございます。そして教員の充足状況は政府定員の三万人を下廻るという実情でございます。次に給與が低下して地方差が非常に大きくなつている。それを御説明申上げまするならば、二十六年度全国平均を一〇〇としたときに、現在東京の一二六に対しまして、埼玉は八八と出ているのでございます。かくのごとく、教員の定足数の充足という立場におきまして、更に、教員の給與が低下し、その地方差が大になつて教育の機会均等がそこなわれているということは否定できないと思います。これらを補うために、実にPTAは二十四年度百六億を支出いたしているのでございまして、一般勤労大衆の子弟は実に七十万人というものが長欠をいたしているという実情でございます。次に申上げたい点は、然らばこういう現状にあるところの我が国教育に対して如何なる対策を講ずべきかということでございます。それは、独立国家として新たに発足して、この際、根本的教育的な政策を打ち立てるべきときだと考えるのでありますが、先ず目標といたしましては、国の財政的責任を明確化すること、それから地方財政から義務教育費を解放されて地方財政の安定を図るということ、更に、地方行政費の項目中、国がその全部又は一部を負担するものが十四あるのでございますが、具体的に申上げまして、義務教育費を平衡交付金から分離するということでございます。これらについては、或いは地方財政委員会或いは自治庁から意見があるようでございますが、それに対する討論をなすならば、私は時間がなくなるので申上げませんが、何ら自治庁或いは地方財政委員会のこれに対する反対意見というものは取上げるに足らないと私は結論付けるものでございます。そうして、先ほど私が申上げましたところのPTA会費というものを解消する、これが目標でございます。その方法として如何なる方法をとるべきか。それは義務教育費を、法律で算定する国庫負担金の各地方公共団体に対する配分基準、その他その配分に関する必要なことを法律で定める、これが方法だと考えます。然らばその内容は如何にすべきかと申上げまするならば、この教育費の大部分を占めるところの教職員の給與費、更に維持費、施設費、特に老朽校舎或いは戰災、災害復旧等の施策、これらを内容とすべきものだと考えるのでございます。ただこれを実現するに当つて留意すべき点として申上げまするが、義務教育を育てるのは飽くまで地方自治体でなければならない。その立場から教育の中央集権化を警戒しなければならないことと、地方税制の改正によつて、地方財政の調整を図らなければならないと考えますが、これらは簡單にできるところの可能な問題だと考えるのであります。そこで、第四点といたしまして、私は只今議題となつておりまするところの両修正案内容に触れたいと存じまするが、委員長報告にかかわるところの修正議決案の内容が、給與費、教材費の一部になつているということ、それから法律で定めて初めて意義があるのにこれを政令に委ねていること、これは時の政権の私は関與というものが懸念されるわけでございまして、法律できめておけば問題ございませんが、これを政令できめるというところに、今後に問題を残したという点に非常に遺憾な点もございます。更に国の負担の最高限度を政令できめるがごとき、国民の手によつて如何ほどこれを盛んにしてもいいところの義務教育につきまして一つの制限規定を設けるということは、私は、やはり義務教育の振興という立場から納得のできないところでございます。この修正議決案につきましては、前委員から仔細に検討されたのでございまするが、ともかくも一番私は遺憾な点は、施設費、建築費、そういうものがなくなつたことと、法律できめないで政令で定めて、問題を他日に残した。ここに私はこの修正議決案の一番難点があると考えられます。  荒木修正案賛成いたします理由といたしましては、ともかく私が先ほど我が国の窮迫した義務教育を振興するに当りまして、とるべきところの対策として若干申上げましたが、その対策に即応しているということでございます。即ち教職員の給與費、維持費、建築費、問題となつておりますところの戰災並びに災害校舎の復旧という点と、更にこの適用範囲を、アメリカの第二次教育使節団が、義務教育は高等学校まで拡めたらいいだろう、更に就学前の幼兒教育の重大性から、高等学校から幼稚園までその適用範囲を拡めて、而もPTAの百億に余るところの寄附金、それらを解消することによつて全国一千三百万余人の父兄の期待に応えようとするところの荒木修正案賛成しようとする大きな根拠があるわけであります。その五点としまして最後に申上げたい点は、本法律案審議の過程におきまして、官庁のセクト主義が露呈されたということと、党利党略にこれが使われた点があるという点を私は申上げたいと思うのでございます。ともかくも平衡交付金の中から義務教育費を外すということについては、いろいろの意見がありましようが、十分討論するところの時間を持ちませんが、先ほどちよつと私が申上げましたように、義務教育無償という憲法精神から考えますときに、更に地方公共団体の総合的な財政運営という立場から言いますと、中央集権を避けるという点から言いましても、何ら私は問題にならないと思います。殊に立法府において、この審議の過程において、行政府の一部のかたがこれに対して反対の意思表示をし、その行動をとつたやに承わつているのでありますが、これは今後我々が立法府において案を審議するにおいて、行政府の特に政府委員のとるべき基本的態度という立場から、私はここに一言発言しておきたいと思う次第でございます。次に、この法律案が党利党略に使われた気配があるという点について私は申上げて、遺憾の意を表したいのであります。この法律案は、幾度か申されたことでございますが、天野文政の柱でございます。従つて天野文部大臣はその内藤課長をわざわざ外遊さして、その検討の下に打ち出されたものでありまして、この法律案は天野文政から始まつたものでなくして、そこにいらつしやいませんが、高瀬議員が文部大臣時代から、その名は標準義務教育法案でございましたけれども、その当時から全国民的な要望によつて取上げられて来た問題でございます。この法律は当然政府提案は当然政府提案にかかわらなければならなかつたのに、天野文部大臣は、與党自由党の議員提案にするならばうまく行くだろうというようなお考えで、これを與党自由党の議員立法にしたところが、與党自由党におきましては、天野文部大臣の構想を入れることなく、全くここに、からつぽのものにしてしまつた。更にその半面を考えますというと、教育委員会法等の一部改正法律案があるのでございますが、これも天野文部大臣の文政の一つの大きな柱でございます。これを閣議決定を経て国会に提案し、現在どういう状況にあるかということは皆さん御承知でございますが、自由党に義務教育費国庫負担法の提案を譲られた天野文部大臣、その天野文部大臣に対しまして、自由党は、教育委員会法等の改正に当つては、全く天野文部大臣の顔を踏み躙るところの行為に出たわけでございます。この政治的信義に欠けるところの自由党、更に衆参ばらばらであるところの自由党、更に天野文部大臣と自由党とを通じまして、或いはここに義務教育費国庫負担法を提案するかと思うというと、すべての市町村教育委員会を設ける。その場合の人事権と給與権の関係など仔細に検討せずに、かくのごとき文教政策を打ち出された、このばらばら文教政策、こういうものは我が国の教育の危機の様相を一層深めるものでございまして、(「その通りだ」と呼ぶ者あり)私は、かくのごとき政府、與党においては、我が国の今後百年の礎を築くところの文教政策を任せることはできない。私は、政権担当の資格を喪失しているものと断定するものでございます。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)最後に、この点についてもうちよつと申上げたいのでございますが、議員諸君はよく知つて頂きたい。と同時に私は、この席上から国民に重ねて呼びかけたいのでございます。ということは、義務教育費国庫負担法、これを議員立法にした。これに政府は反対した。教育委員会法の改正については、政府はすべての市町村に設置することは適当でないという結論を出して提案した。ところがこれには党が反対した。この二つは天野文政の柱である。この二つとも潰れるならば、天野文相は即座にその席を去らなければならないであう。(「その通り」と呼ぶ者あり)そこで、いずれも選挙を考えて、教育委員会法等の一部改正のほうが與党自由党の政治に至大の関係がある。これだけは天野文部大臣、我慢しなさい。すべての市町村教育委員会を設置するから、それだけは我慢しなさい。その代り、あなたの顔を少し立てて、義務教育費国庫負担法なる名前が生れればいいから、内容は、からつぽでも、ともかく義務教育費国庫負担法が通過したということになればいいからという、形だけを求めて、その点に天野文部大臣の顔を立てようとした。かくのごとき態度というものは、これは天下周知の事実と私は断言しても憚らないものでございます。これを以ても、義務教育国庫負担法、これと関連があるところの教育委員会法等の一部改正、この二法律案が如何に與党自由党の選挙対策の立場から打ち出されたかということを、私はこの席から全国民に叫ぶと同時に、かくのごとき文教政策を布くところの與党自由党に対しては嚴粛なる反省を促すと同時に、その反省を行わない上においては、国民の総意を以て政権から引摺り下ろさなければならないというようなことを宣言をいたしまして、討論を終る次第であります。(拍手
  37. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 岩間正男君。    〔岩間正男君登壇拍手
  38. 岩間正男

    ○岩間正男君 私は日本共産党を代表して、只今議題となつておりまする義務教育費国庫負担法の衆議院送付原案並びに堀越儀郎君提出修正案には反対、荒木正三郎君ほか一名提出修正案には賛成するものでございます。先ず原案について述べれば、これは全く国民大衆を欺瞞し、教育に対する政府、與党の無能と無誠意を暴露した法案であります。この法案第一條によれば、本法の目的として、「義務教育無償の原則に則り、国民のすべてに対しその妥当な規模内容とを保障するため、国が必要な経費を負担すること等により、教育の機会均等とその水準の維持向上とを図る」云々と謳つており、憲法に保障する義務教育の無償と教育の機会均等の確立を強調しているのであります。それなら、このような目的がこの法案内容としてどう果されているかというに、それは全く殆んど皆無に等しい。即ち従来の実績の線を一歩も出ていない。教員給與費の二分の一と教材費の三分の一程度がその内容であり、目下懸案となつている教育上の財政上の諸問題はすべて棚上げにされているのであります。ところで、肝腎のその教員給與費にしてからが、過般のベース・アツプで削減された三百七十五円はそのままに持ち越され、その上、実支出の二分の一という限定が設けられておるのでありまして、これは昨今の物価高で給與べースが絶えず上向線を辿つているという現状では、これが桎梏となつて、ベース・アツプを今後困難ならしめるという結果を来たすことは明らかであります。そのため地財委案では約五%に及ぶ教員の馘首が伝えられているほどであります。このように、現状よりも、もつと不利を来しかねないのが本法案の実質的な中身であり、これでどうして義務教育無償、教育の機会均等が図られるか。誠に羊頭をかかげて狗肉を何とやらというたとえも決してこれほどではないと思うのであります。翻つて思うに、教育財政確立に対する国民大衆の熱望は、終戰後ここ数ヵ年、日々激烈を極めているのであります。それは、例えば昨年日教組によつて国会に提出された教育費全額国庫負担の請願署名者が両院を通じまして約一千五百万人であつたという事実でも明らかなように、それはまさに全国民的、全民族的運動として目下展開されているのであります。言うまでもなくそのような運動が起つたのは、六・三制の不完全実施、殊にも校舎さえまだ十分に建ち揃つていないという現状と、その結果、大衆負担が物すごく今日転嫁されているということと、更には、最近大衆生活が、重税と高物価政策によりまして生活が極端に窮乏に瀕している。もうこれ以上このような生活態勢の中では莫大な教育費を自分のふところから負担し切れなくなつたところの国民大衆が、これを憲法の保障する義務教育費無償の原則に則つて国庫の支出に期待する声となつて現われているのでありますが、併しながら、これらは表面に現われた現象でありますが、これらの運動を通じまして、そこに胚胎しているところの民族教育確立への深い念願を見逃がすわけには行かないのであります。言うまでもなく、戰前戰時中の教育は、日本帝国主義の厖大な軍事費の支出により、絶えず財政的に圧迫され続けて来たことは、現状と何ら異なるところばないのであります。六十人、七十八の生徒を一つの教室に大量的に詰め込み、これに画一的な天降より的精神主義を押し付けた。これでは、どうしても、一人々々の個性を伸ばし、その人間性を培うという、いわゆる民主的な教育は夢にも考えることができなかつたのであります、否々、このような物量にもまがうべき大量生産的な物量教育こそが、日本の支配階級にとつては却つて都合がよかつたというのがその真相であります。なぜならば、個人の知性や判断力、批判力、こういうものに対しましては、これを育てることなく、却つて意識的に眠らせ、天皇制絶対主義への献身を説いて、身を肉彈や特攻隊の軽きに比することが、侵略政策遂行にとつては絶対必要条件であつたからであります。このような愚民政策、暗黒政策に基く肉彈製造の目的こそ、彼らの狙うところであつたからであります。従つて教育の中に未だに胚胎するこれら戰争の原因を完全に除去するためには、国庫の大幅な教育負担が絶対に必要である。それによつて施設並びに教育の量質を拡充改善するほかに途はないのであります。又、現在教育の中に横たわつている階級性、つまり貧しいか故に如何に優れた才能を持つていても進学の自由を満たすことができない、経済上の障害を除去することなしには、教育の機会均等ということを口先でどんなに叫んでも、これは單なる掛声に過ぎないのであります。戰前、小学校の様子を考えますというと、中等学校や女学校に進めたところの子供たちは全国民の僅か二〇%程度だつたのであります。その他の八〇%の国民は如何に優れた才能を持つていても、小学校だけで諦らめなければならなかつた。これらの失意に閉ざされたところの幾多の人材について、我々は過去にその様相を見、聞いて来たところであります。又この結果、学歴や系閥で独占された少数官僚の支配下に下積みにされて眠らされ、そつぽを向いていたところの不遇な才能についても、我々は知つているのであります。このような真にその才能に所を得せしめることをさせなかつた倒立現象こそが、また日本亡国の大きな原因でもあつたということ、従つて、これらの教育の不平等と階級性を打破し、貧しい者も富める者も、等しなみに教育するところの組織を打ち立てることこそが、目下の急務であり、これは民族の深い念願になつておるのであります。憲法二十六條は義務教育無償の原則を謳つておるのでありますが、そのことはまさにこの現われであると同時に、これは單なる見栄や見せかけではなく、世界に向つて戰争放棄を誓い、飽くまで平和維持を宣言した憲法第九條の精神とも繋がつており、又表裏一体をなすところのものであります。従つて、あらゆる戰争準備をやめ、即刻その費用を教育文化費に廻せというスローガンは、目下日本国民の殆んど全部が揚げているところの衷心からの声なのであります。然るに吉田内閣は、この民族的要望を踏みにじつて義務教育の無償や教育の機会均等はおろか、教育をして再び戰争前の体制に引戻さんために現在努力しているのであります。このことは、本法案による実質的な財政的裏付けを見れば一層明白であります。先ほど述べた教員給與費は年間を通じて約九百億であり、その半額四百五十億程度を支出するにほかならないのであります。これと全く刺身の「つま」にも足らないところの教材費約三十億を計上して事態を糊塗し、国民大衆を欺瞞せんとしておるのであります。この三十億の教材費というのは、ほかならない図書、掛図、実験実習費、楽器等、兒童生徒の教授上必要な用具費であり、これは必要額の約三分の一にも足らないのであります。然るに現実に大衆的な教育費の負担支出を見まするというと、教科書、給食代、学用品、修学旅行費、或いはPTAの会費、最近では子供銀行の醵出金等々、それに新入学時の用具、靴、鞄、衣類、雨具等を入れるときは、小学生で最低月々千円から千五百円程度の支出であります。これは年間を通じて見ればまさに厖大な負担となつておるのであります。この万を超える教育費の大衆負担に対して、今度新たに計上された教材費は兒童、学生一人平均年間約二百円というのでありますから、これはまさに必要額に対しまして五十分の一、百分の一に過ぎないのであります。こうした経済難のために、教育界では年々不就学者や中途退学者、長期欠席者の数が激増いたしまして、その結果は、家出、浮浪者、青少年の不良化、犯罪者を増加せしめておることは最近の統計によつてもすでに明らかな通りであります。又、最近の農村の不況によりまして、家出者が非常に激増しておる。こういうような姿についてはしばしばニュースも伝えておるところでありますが、これは一体何を物語つておるかということを我々は見究めなければならないと思うのであります。このような教育実情を察知するときに、教育財政の確立は目下焦眉の急であることは、しばしばほかの諸君からも今まで述べられたところであります。然るに、このたびの法案では何らこれらの問題が解決しないのみか、却つて教育費削減の調節弁をさえ丁寧にも本法案にちやんと用意しているのであります。本法第二條第二項がそれでありまして、これによれば国庫負担分の最高限度は各府県ごとに政令によつてこれを定めることができるというのであります。この條項は、衆議院自由党提出原案が、大蔵、地財委との折衝の結果、このような妥協を余儀なくされたのでありますが、これは文部省や提案者の希望的な委員会における説明にもかかわらず、明らかに制限條項であります。元来この法案は、吉田内閣の売国的な政策、即ち両條約並びに行政協定による再軍備費の重圧から教育を守るための保護立法的性格のものであつた筈であります。従つて、そのためには教育費の最低限度をこそきめるべきであるにかかわらず、これを最高限度で押えておるところに、はつきりそのような狙いが隠されておることを私は指摘したいと思うのでございます。即ち日本の再軍備費は現在でも国家財政の約二一%、即ち二千億を占めるのでありますが、これが三〇%、四〇%と上昇することは、今や時間の問題であろうと思うのであります。現に本年度十一万に増強された警察予備隊が、マーフイー大使の要請により、今年度中には十八万、来年度三十万と伝えられ、やがてこれらは重戰車、飛行機が持たされ、又海上保安庁では現にアメリカの武器貸與法によりまして、十六隻のフリゲート艦、五十隻の上陸用舟艇が持たされることが決定されておるのであります。そうして、北大西洋條約によつても明らかなように、このようなことは、これらの武器貸與並びに軍事援助の引換え條件としましては、その国の国民所得の一〇%を軍事費として支出することが当然に要請されておるのであります。としますというと、昭和二十七年度の国民所得五兆三百億の一〇%、即ち約五千億程度が日本の今後の軍事支出として要請されることになるのであります。本法案提案者や支持者が、口を開けば、本法案は不満足だが、一つの橋頭堡であり、その達成は他日を期したいと述べておるのでありますが、これはアメリカと、その手先吉田内閣によつて両條約と再軍備の道を歩かされておる日本の現実を考えますときに、これは全く望みなき繰り言に過ぎないのであります。(「同感」と呼ぶ者あり)第二條第二項の最高限度の制限條項こそは、まさにこうした日に備えた調節弁であるということを、私は重ねて繰返したいのであります。いよいよ高まる軍事的支出の圧迫に伴つて、その「しわ」は一層に力の弱い教育財政面に寄せられることは必至であり、そのとき、この制限條項教育費への重大な脅威となつて作用することは火を見るよりも明らかであります。以上述べたように、この義務教育費国庫負担法こそは、国庫負担とはおよそ似ても似つかぬ制限法案であり、このような欺瞞的法案を異常並びにその同調者諸君が、土用のため間延びしたこの延長国会を利用して強引に通過を図る心理が、私には絶対了解できないのであります。緑風会の修正案を見るに、第二條第二項は、言葉の上で如何に潤色されようが、すでに前に述べたように特別の必要があつてこのような修正衆議院でなされている以上は、その濫用を食い止めることは全く不可能でありましよう。又施行期日を四月一日としたことも、来年四月から実施する法案を、すでに三ヵ年半前に選ばれたこの暴力的な絶対多数党によつて今から準備しておく必要がどこにあろうか。国民のやみがたき要望をそのままに具現し、民族的な課題を忠実に果そうとする努力を忘れた、かかるあいまいな法案を、目前の国会解散を前にして強引に通そうとするならば、そのこと自身が選挙目当ての対策と非難されても返す言葉がないだろうと思うのであります。  最後に、荒木君その他の修正提案に私の賛成するゆえんのものは、言うまでもなく、これは曾つて設けられた参議院文部小委員会が約一ヵ月に亘つて努力した結果のものであり、私も小委員として超党派的立場からこれに参画したものであります。ここでは教員給與のほかに、学校維持運営費、学校建築費、先ほど決議案として本院を通過しましたところの寒冷積雪濕潤地帯の屋内体操場建築費、災害復旧費、なお、そのほかに教科書、給食費、通学費等におきまして、いわゆる義務教育の無償の原則を最低限において果し、その対象も、中小学校はもとより、幼稚園、高校に及んでおるのであります。その国庫負担額も全額に近い線を決定しておる。無論これとても憲法に保障する教育の線にはほど遠いものでありますけれども、戰争を絶対に拒否し、飽くまで平和達成のための憲法精神に徹するならば、これぐらいの財政支出は決して至難ではないのであります。我々日本共産党は、日本の民族教育を守り、飽くまで教育を国民のものたらしめるために、志を同じくする人々と提携しまして、力を合せ、教育財政確立のために今後も鬪い抜くことをお誓いしまして、私の討論を終る次第であります。(「国民が迷惑だよ」と呼ぶ者あり)
  39. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) これにて討論の通告者の発言は全部終了いたしました。討論は終局したものと認めます。これより採決をいたします。  先ず荒木正三郎君外一名提出修正案全部を問題に供します。表決は記名投票を以て行います。荒木正三郎君外一名提出修正案賛成諸君は白色票を、反対の諸君は青色票を、御登壇の上御投票を願います。氏名点呼を行います。議場の閉鎖を命じます。    〔議場閉鎖〕    〔参事氏名を点呼〕    〔投票執行〕
  40. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 投票漏れはございませんか……投票漏れはないと認めます。これより開票いたします。投票を参事に計算させます。議場の開鎖を命じます。    〔議場開鎖〕    〔参事投票を計算〕
  41. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 投票の結果を報告いたします。  投票総数百五十票、  白色票五十票、  青色票百票、(拍手)  よつて荒木正三郎君外一名提出修正案は否決せられました。      ——————————    〔参照〕  賛成者(白色票)氏名   五十名    成瀬 幡治君  重盛 壽治君    山花 秀雄君  門田 定藏君    三橋八次郎君  若木 勝藏君    中田 吉雄君  小酒井義男君    梅津 錦一君  三好 始君    荒木正三郎君  内村 清次君    羽生 三七君  松浦 定義君    松原 一彦君  高田なほ子君    森崎  隆君  吉田 法晴君   深川榮左エ門君  岩男 仁藏君    菊川 孝夫君  岡田 宗司君    河崎 ナツ君 小笠原二三男君    木下 源吾君  金子 洋文君    野溝  勝君  須藤 五郎君   岩間 正男君  江田 三郎君   上條 愛一君   千田 正君   東  隆君   加藤シヅエ君   山田 節男君  矢嶋 三義君   村尾 重雄君  永井純一郎君   吉川末次郎君  島   清君   相馬 助治君  山下 義信君   赤松 常子君  小松 正雄君   伊藤  修君  三木 治朗君   棚橋 小虎君  原  虎一君   下條 恭兵君  片岡 文重君     ————————————— 反対者(青色票)氏名    百名   藤森 眞治君  藤野 繁雄君   波多野林一君  徳川 宗敬君   常岡 一郎君  田村 文吉君   伊達源一郎君  竹下 豐次君   高橋 道男君  高瀬荘太郎君   高田  寛君  高木 正夫君   杉山 昌作君  新谷寅三郎君   島村 軍次君  楠見 義男君   加藤 正人君  片柳 眞吉君   加賀  操君  岡本 愛祐君   梅原 眞隆君  伊藤 保平君   石黒 忠篤君  飯島連次郎君   赤木 正雄君  山川 良一君   村上 義一君  森 八三一君   上原 正吉君  岡田 信次君   青山 正一君  玉柳  實君   中川 幸平君  九鬼紋十郎君   郡  祐一君  廣瀬與兵衞君   岡崎 真一君  松平 勇雄君   楠瀬 常猪君  加藤 武徳君   城  義臣君  植竹 春彦君   山本 米治君  古池 信三君   小杉 繁安君  山縣 勝見君   木村 守江君  山田 佐一君   大谷 瑩潤君  深水 六郎君   仁田 竹一君  草葉 隆圓君    左藤 義詮君  大島 定吉君    黒田 英雄君  小林 英三君    中川 以良君  寺尾  豊君    溝口 三郎君  三浦 辰雄君    前田  穰君  堀越 儀郎君    小野 義夫君  小串 清一君    重宗 雄三君 大野木秀次郎君    宮田 重文君  西川甚五郎君    平井 太郎君  杉原 荒太君    松本  昇君  秋山俊一郎君    鈴木 直人君  石村 幸作君    長谷山行毅君  石原幹市郎君    鈴木 恭一君  安井  謙君    平林 太一君  長島 銀藏君    平沼彌太郎君  竹中 七郎君    菊田 七平君  溝淵 春次君   池田宇右衞門君 前之園喜一郎君    駒井 藤平君  油井賢太郎君    北村 一男君  中山 壽彦君    白波瀬米吉君  岩沢 忠恭君    西田 隆男君  大屋 晋三君    黒川 武雄君  横尾  龍君    境野 清雄君  大隈 信幸君    谷口弥三郎君  小滝  彬君      ——————————
  42. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 次に委員会修正案及び委員会修正部分を除く原案全部を問題に供します。委員会修正案及び委員会修正部分を除く原案賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  43. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 過半数と認めます。よつて本案は委員会修正通り議決せられました。(拍手)  これにて午後二時半まで休憩いたします。    午後一時三十一分休憩      ——————————    午後二時五十七分開議
  44. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 休憩前に引続き、これより会議を開きます。日程第五、臨時石炭鉱害復旧法案内閣提出衆議院送付)を議題といたします。先ず委員長報告を求めます。通商産業委員長竹中七郎君。    〔竹中七郎君登壇拍手
  45. 竹中七郎

    ○竹中七郎君 只今議題となりました臨時石炭鉱害復旧法案委員会における審議経過並びに結果について御報告いたします。先ず本法制定の由来を申上げますと、石炭鉱業による鉱害の復旧対策といたしましては、戰時中の強行採炭に基因する特別鉱害約七十九億は、すでに特別鉱害復旧措置法によりまして着々と復旧されつつあるのでありますが、その他のいわゆる一般鉱害につきましては、その復旧を促進すべく、一昨年第九国会におきまして鉱業法案可決の際、附帯決議として、国庫の負担において鉱害地の原状回復を断行すべく審議会を設けて必要なる立法措置を講ずるよう、政府に対して強い要望をしたのであります。爾来政府とせられましては資源庁に石炭鉱害地復旧対策審議会を設置し、国内鉱害事情の調査は勿論、海外事情の調査をも行い、その間、利害関係者等の意見を聽取、その調整を図り、鋭意立法化に努力、漸く今国会に提案なつたような次第でございます。次にこの法律案内容に関する主要な点を申上げます。  第一は鉱害復旧事業団に関するものであります。この法律におきましては、賠償義務者、被害者及び関係地方公共団体を基盤とする機能法人たる鉱害復旧事業団の設立を要請し、鉱害に対する計画的復旧事業の基幹たらしめ、復旧基本計画の作成、賠償義務者からの納付金の徴收及び復旧費の支拂並びに復旧工事の施行等の業務を行うことになつております。この事業団は、鉱害地が主として山口県及び九州地区に限られておる関係上、宇部及び福岡の両地区に一カ所ずつ設置される予定になつております。第二点は、復旧費に関する賠償義務者の納付金負担並びに国及び地方公共団体の補助金負担に関するものであります。鉱害の復旧につきましては、賠償責任を負う鉱業権者又は租鉱権者が第一の費用の負担者でございますが、現行鉱業法によりますと、賠償義務者は金銭による公正適切な賠償金を被害者に支拂うべきことを規定し、原状の回復を強制しておるものではなく、この方法のみを以てしては累積した約二百三十億円に上る鉱害の完全な復旧は期待し得ないのであります。従いまして現行鉱業法の責任の限度において納付金を徴收、これを復旧費に充当し、なお不足する場合、国及び地方公共団体一般公共事業の例にならつて補助金を支出し、鉱害の復旧を促進しようとするものでございます。而して農地については基準賃貸価格の二千倍乃至五千倍までを鉱業権者の賠償責任限度とし、それ以上の分については国及び地方公共団体負担とし、他の公共施設については、国及び地方公共団体がそれぞれ一定の率を以て補助金を支出、この分については政令の定めるところにより全部又は一部を返還させることとなつておるのであります。第三点は農地及び農業用施設の復旧後の措置に関するものであります。鉱害賠償規定が金銭賠償原則によるべきか原状回復原則によるべきかは、農地の復旧問題にからみまして最も複雑且つ深刻な対立のあるところであります。本法におきましては、復旧工事完了後、農林大臣が検査を行いまして、効用回復が不十分なものについては、事業団が補償金を支拂い、なお三年以内ならば再検査を求めることができることにいたしまして、被害者の利益の保護に万全を期すると共に、他面、賠償義務者は、復旧工事完了後は、その鉱害については賠償責任は消滅することになつておるのであります。第四点は非公共事業、いわゆる家屋、墓地の復旧の裁定に関するものであります。非公共事業の復旧は、農地と共に鉱害対策としては看過し得ないものでありますが、個人所有である関係上、国の補助を支出することができず、加害者及び被害者の話合いに任してありますが、通商産業局長の復旧工事施行に関する裁定制度を設け、事件の合理的且つ円滑なる解決に資するようにしてあるのであります。以上がこの法律案の骨子となつております。而して本法は現在累積しておりまする約二百三十億円に上る鉱害を正常な状態に引戻すことを目的とするものでありまして、施行期間十年の臨時立法となつております。右の政府原案に対しまして、衆議院で相当の修正が加えられました。その第一点は公共施設の定義の中に公共建物を含めること。第二点、事業団の事業として灌漑排水施設の維持管理を加え、その経費は事業団が負担すること。第三点は、復旧不適地とする農地を定めようとするときは、あらかじめ所在市町村長の意見を聞くこと。又その不適地について農林大臣が支拂うべき金額を定めようとするときも同様の措置をとること。第四点は、農地復旧工事完了後の措置といたしまして、農地が洪水等不測の天災により他の一般農地に比し特別の被害を受けたときは、農林大臣の承認の範囲内において国が特別の助成を行うことができることとしたのであります。第五点は、非公共事業の復旧について、毎事業年度ごとにその計画を加害者から通産局長に提出せしめ、必要な場合、通産局長が適切な裁定を行うことができるようにしたことであります。以上が衆議院修正の要点でございます。これは要するに、本法律案は、被害者及び鉱業権者、地方公共団体等の利害が強く対立し、これを調整する最後の鍵を国庫支出の拡大に求めるところに修正の眼目があるわけでございます。本委員会におきましての審議に際しましては、特に慎重を期しまして、現地に議員を派遣し、その実情を調査し、又公聽会を開きまして関係者及び学識経験者等から意見を聽取し、政府当局に対しましても通産、農林、大蔵の各省関係者との間に熱心な質疑応答が行われました。なお農林委員会から委員発言があり、特に農地及び農業用施設の復旧とその維持管理について善処方が要望されました。次に、質疑応答のうち特に主要な点を申上げますと、先ず第一に法第七十五條による農地にかかる鉱害の消滅は、新七十八條において鉱害が残つておることとなつて、法理論上矛盾していないか、又七十五條は行き過ぎではないか、比較して両者の関係を明らかにされたいとの質問に対しまして、政府側から、法七十三條、七十四條により、復旧工事完了後の残存鉱害については金銭に換算して清算がなされており、賠償責任はなくなつており、加害者と被害者との法律関係は絶たれたわけで、鉱害が消滅したものとみなしても合理的である。従つて七十八條に該当するような天災の場合には、鉱害が残つておることによる国の補償ではなく、国の特別の助成措置であり、七十五條と矛盾するものではない旨の答弁がありました。第二におきまして、農地にかかる鉱業権者の納付金の限度を賃貸価格の二千倍乃至五千倍とするとあるのは、実例に照らし、又完全な復旧をするには三千倍乃至六千倍に改めたほうが適当と思うが、政府の所見如何との質問に対しまして、政府より、農地の收益率その他の條件を加味して府県ことに異なつた倍率を採用するもので、山口県、長崎県については三千倍以下の倍数、福岡県、佐賀県、熊本県については三千倍乃至四千倍に定まる予定で、この場合、国及び地方公共団体の補助金は復旧費の六五%程度に上るもので、若干の物価の変動を考慮して二千倍乃至五千倍と規定したもので、適当なものである旨の答弁がありました。三といたしまして、法七十七條、灌漑排水施設の維持管理は事業団が持つように修正されたが、事業団の存続期間は十年で、その解散後の責任の明確化と賠償の性格から鉱業権者にしたほうがいいと思うが、政府の所見如何との質問に対し、政府側より、鉱業権者は法定の納付金の中にその費用を含めて納付してあるので、法律の建前から鉱業権者に維持管理をさせるのは好ましくなく、事業団が持つことが最も適当で、事業団解散後はそれに代るべき組織体を作る等、政府が責任を持つて恒久策を検討する旨の答弁がありました。第四といたしまして、法第七十九條、復旧不適地の打切補償額の決定に際しては、当該市町村長の意見は勿論、所有者の意見を聞くようにしたほうがいいと思うが、政府の所見如何との質問に対しまして、政府側より、市町村長の意見を聞くことは事実上所有者の意見を聞くと同様で、法律修正がなされなくても、運用の面で十分所有者の意見を取入れるようにしたい旨の答弁がありました。その他熱心な質疑応答が行われましたが、詳細は省略して速記録に譲りたいと思います。かくて討論に入りましたところ、小林委員より社会党左派を代表し、鉱害復旧は金銭賠償主義でなく、原状回復主義をとるべきで、本法によつては被害農民は満足されず、完全な復旧は期待し得ず、本案には反対である旨の発言がありました。次いで小松委員より社会党右派を代表して、本法には幾多の問題点はあるが、本法の成立により鉱害復旧を促進することは現下の急務であり、不備の点は今後適宜に改正することにして賛成である旨の発言がありました。次いで石川委員より改進党を代表して、鉱害復旧は原状回復を原則とすべきで、本法では完全な鉱害復旧はできず、被害農民にとつて不利であり、再提出し、抜本的な対策を講ずべきであり、本法には反対である旨の発言がありました。次に境野委員より民主クラブを代表して、本法施行期日七月一日を公布の日に改める修正案提出し、特に本法運用については各省間の連絡を十分とると同時に、予算的措置については万全を期すべきである。なお、農林委員会からの強い要望もあり、左記附帶決議を付して賛成である旨の発言がありました。附帶決議の要旨を申上げます。一、予算について。本法施行のために要する予算は、一括して通産省予算として新規項目を起し、実施の際に復旧事業の各主管庁に移管すること。二、第七十五條の賠償打切りについて。本問題は極めて重要問題であるので、本法実施後被害農民にとつて不利であると認められる場合は速かに本法改正すること。三、第七十七條施設の維持管理について。かんがい排水施設の維持管理は暫定的な事業団では将来不安定であるので、法律廃止後の継承責任者を明確にする立法措置を講ずると共に、この法律実施後支障ある場合は速かに本法改正すること。四、復旧工事後の打切補償及び復旧不適地の選定及び復旧不適地の打切補償については愼重を期し、被害者の意見を徴すること。以上四点でございます。かくて討論を終り採決に入りましたところ、境野委員提出修正案通り多数を以て修正議決すべきものと決定いたしました。続いて前述の附帯決議について採決いたしましたところ、多数を以て可決されました。以上御報告申上げます。(拍手
  46. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 本案に対し討論の通告がございます。順次発言を許します。吉田法晴君。    〔吉田法晴君登壇拍手
  47. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 私は日本社会党第四控室を代表いたしまして、只今議題となりました臨時石炭鉱害復旧法案に対する反対討論をなすものであります。反対の第一の理由は、本法が立案の趣旨精神に反しておるという点であります。委員長報告にもございましたけれども、この臨時石炭鉱害復旧法案は、第九臨時国会における鉱業法審議の際に、当院における強い要望、この石炭鉱害の復旧の制度を確立しなければ鉱業法を審議しないという強い態度によりまして、この法案の基礎が閣議においてきめられたのであります。第九臨時国会におけるこの法案の基礎付けの場合には、これは国家が中心となり、国庫が負担をして鉱害を復旧するということであつたのであります。鉱業法上の金銭賠償か原状回復かということは大きな争いであり、鉱業法立案の過程にも問題になつたところでありますが、我々はこの課題を特別の立法を以て解決すべきであるとし、その基礎を閣議決定或いは復旧対策審議会令に見出して鉱業法の通過を條件附に認めて参つたのであります。然るに本法案においては、国家の責任はこれは本質的には解除せられたことく、国庫の負担国家の責任が明らかになつておらんのであります。法律的に国家が責任を持つという点は本法案にはどこにもはつきりいたしておらんのであります。国家が責任を以て原状回復をするというのでなければ、今日において十分な石炭鉱害の復旧は困難なる実情にありますことは、これは諸氏の十分な御了承を頂けることだと思うのであります。かくて、本法案は立案の趣旨を十分活かさずして、国家が責任を持ち、国庫の負担においてなすという点が第一に明らかになつておらん点が私どもの反対の理由の第一であります。反対の第二の理由は、本法案は鉱害復旧のための法律であります。このことは鉱害のための法律と申していいかと思うのでありますが、鉱害のために特別立法をし、新らしい法律を作つたという建前、看板でありますけれども、この法律によつて何ら新らしい法律原理の発展はないのであります。新らしい法律制度を作りますときに、そこに発展と前進がなければならんのでありますが、本法案にはこの点は何らございません。いわば鉱害を復旧するという看板はかかつておりますけれども、その中身は極めて不十分であります。羊頭を掲げて狗肉を売るといろ言葉がございますが、まさにこの法案の実体がこの言葉に該当すると考えられるのであります。炭鉱鉱害の問題は明治の二十年頃から起つてつております。明治二十三年に三池炭鉱が三井に拂下げられて井水が枯渇し、それに補償金を支拂つたというのが我が国の鉱害問題についての最初の記録であります。三十年には、同所において溜池の補修、これはいわば今日で言います原状或いは原状の効用の回復であるかと思うのでありますが、溜池の補修が明治三十年に行われております。この炭鉱鉱害の一般化は明治の末期から大正にかけてでございます。この炭鉱鉱害の一般化に伴いまして、昭和四年から五年にかけて九大農学部の沢村教授を中心に農政学の教室が農林省農政局の委託を受けて調査をいたしております。この調査の結果は「福岡県に於ける炭鉱業に因る被害の実情調査」という記録となつて出たのでありますが、それによりますと、炭鉱業被害が県下各所に発生し始めたのは、蒸気機関応用による大規模の地下採掘が行われかけてから以後、明治三十年前後以後であると記されております。そうして同じ福岡県における水田の陥落被害の実情は、大正六年に総反別千八百六十二町歩、不毛田が八十七町歩、然るにこれが十四五年たちますというと、昭和四年には四千九百一町歩、不毛田が九百四十二町歩に達したと調査されております。補償の状況につきましては、炭鉱経営者は或る程度まで補償又は復旧を実行しておるのですが、併しながら鉱業法上何らの賠償規定がないことが、この問題の解決を困難にし、民事訴訟によらなければならない事実は、費用と日時とを要して、その救済の方法を講ずることを極めて困難にしておるということが報告されておるのであります。なお詳細は省略いたしますけれども、今日、法律上の賠償責任に関する根本主義も漸く動こうとしておるので、形式法律論を振りかざし、被害者の要求を一蹴し得るような炭鉱経営者は殆んど影を潜めたようであるけれども、而もなお、補償の実行上、その根底においてこの法制上の欠陥が多大に禍いしていることは否むことを得ないと書いてございます。このことは、これは現在のような原状回復か或いは金銭賠償かという問題ではなくして、金銭賠償の根拠になる法規すらなかつた。そこで無過失賠償責任論が当時生じておつたということであります。かくて昭和十四年、鉱業法の改正が行われ、鉱害の賠償が金銭によつてなされることになつたのであります。  その後、最近の実情を概括いたしまするならば、原状或いは効用の回復が漸次行われて参り、或いは公共事業、河川、道路、鉄道その他公共事業は実際に原状或いは原状の効用が回復され、或いは家屋のごときも、それが人の住んでおりまするものというだけに、回復せられる率がだんだん殖えて参つたというのが実情であると考えるのであります。最も問題になりましたのは農地であります。こういう実情の中においてこの新しい法律が問題になつたのでありますが、そこで当然新鉱業法制定の過程において問題になつた点が、或いは特別鉱害復旧法において現われて参りました原状の効用を回復するという制度が、この法律の少くとも立案の基礎になつたことは当然であると考えられるのであります。なお、この法律案を作りますために、中島炭政局長及び農林省の谷垣管理部長は、鉱業権者の代表と共に欧米の実情を調査せられたのでありますが、この調査の結果は、海外石炭鉱害調査団報告として出されておりますけれども、その結論三の中には、賠償は明文の有無にかかわらず各国とも原状回復を第一義としているようである。我が国の金銭賠償の原則はこれに劣ると言いたいと、はつきり書いてあるのであります。この問題について歴史的な発展、或いは外国の例、将来の展望を申上げたのでありますけれども、こうした経過の中においてこの法案は前進するところがないという点が、この法案について私どもが不満と反対の意を表しなければならん第二の理由であります。  第三の理由は、この法律が被害のための法律であるにかかわらず、被害を救済する、従つて人間的に申しますならば、これは加害者のための法律ではなくして、むしろ被害者のための法律でなければならん。それは個々の被害者のための法律ではありませんけれども、公共的な立場から、原状を回復するという公共性を持つておりますけれども、被害を復旧する、こういう点において被害のための法律でなければなりませんけれども、その実際はむしろ逆になつておるという点が反対をしなければならん第三の理由であります。(「馬鹿なことを言うな」と呼ぶ者あり)公共事業或いは家屋の点については先ほど申上げたところでありますが、農地につきまして、農地が一番問題になるのでありますが、鉱業権者の負担を残しました鉱害の補償を含めて、二千倍乃至五千倍とせられておることについては、先ほど委員長からの報告の中に含まれておりました、土地の価格と離耕料とを加えて、おおむねかかる数字が出て参つたのでありますが、鉱業権者の責任に限度を付したということと、そして国の補助が復旧工事自身の半額に考えられておりますけれども、この半額自身予算において確定しておるわけではございません。仮に半額補助をせられるということが実現することは間違いないことだと思いますけれども、併せて復旧を行う、或いは補償をいたしましたといたしましても、なおそこに鉱害が残るのであります。現実に鉱害が残るのであります。これについては質疑の過程において政府、炭政局長においても認められたところであります。これは効用の回復、その方法が、或いは実際に計算をいたして見ますというと六千倍になる場合においても、これを三千五百倍程度にする結果であります。そこで復旧工事自身も完全に参りませんと共に、或いは復旧を不完全にいたしました耕地を熟田化するために、或いは現地の、土地によりますと七年も要するという委員報告もございますが、三年の範囲において打切りをいたしましたために、この打切りの金額の当、不当という問題も起つて参りましよう。農林省令、通産省令によつて問題が残る。或いは残る鉱害の一部であります灌漑排水施設について、これが十年の期間中においては事業団に、その後においての責任がはつきりいたしておりませんが、こうした不完全に復旧せられた耕地と、その残る鉱害について、法上の規定制度とがございません。これひとえに、この法律が、或いは鉱業権者の責任を価格と離耕料において限度とし、国家の補助において十分の責任を持たない結果でありますが、そこで七十七條の二項に、原案においては灌漑排水施設の維持管理責任が鉱業権者とせられた條文があつたのでありますが、衆議院においてこれが削除せられ、或いは七十八條の衆議院修正案について、天災時における特別助成として残つたのでありますけれども、この残つた鉱害について誰が責任を負うかという質問に対しては、国が責任を持つと答弁せられましたけれども、その国家の責任さえも明らかになつておりません。或いは灌漑排水施設の十年後の維持管理の責任のごとき、明確になつておりません。或いは国家の責任或いは鉱業権者の責任についても、何ら最少限の責任をさえも、衆議院修正案を以て、或いは参議院における修正の努力を否定せられました結果、何にも残つておらんという結果が生じ、国も責任を負わない。鉱業権者も責任の限界の外においては責任を負わない。而も復旧は不十分であるから、多くの鉱害耕地を不毛に残し、国も鉱業権者も責任が解除せられ、打切補償ののちにおいては被害者は言うて行くところがない。或いは泣きつくところがないという法文になつております点は、この法案について私どもは賛成いたしがたい理由であります。  最後に、この法案は、民主主義官僚主義に負け、再軍備のために、国民の幸福、民生の安定を犠牲にせられるが故に反対をせざるを得ないのであります。或いは総工費二百三十億と言われましたが、その二百三十億が百五十億になり、百億になり、大半が不毛のままに放置せられるのでありますが、立案の当初からかくのごとく後退いたしました理由は、自衛力漸増、再軍備企図のためであります。我が党は国民の幸福と生活を犠牲にする再軍備には反対でありますが、この自衛力漸増、再軍備のために鉱害復旧を犠牲にするがごとき本法案については反対をいたすものであります。(拍手
  48. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 松浦定義君。    〔松浦定義君登壇拍手
  49. 松浦定義

    ○松浦定義君 私は改進党を代表いたしまして、只今議題となりました臨時石炭鉱害復旧法案に反対の意を表明せんとするものであります。本法律案は、百三十万農民の土地に対する愛着、農業経営の安全確保という理想の下に、今日まで放置されていた惨状解決のために、国土の有効な利用及び保全並びに民生の安定と銘打つて作られたものでありまして、併せて石炭鉱業、亜炭鉱業の健全な発展を図るというのであります。果して本法は、現在の政府の発表しておりまするように、被害総額二百三十一億の惨澹たる鉱害を計画的に復旧でき得るでありましようか。今日まで拝見いたしました政府の立法上の態度、これを裏付ける財政措置等から見まして、残念ながら復旧は困難と存ずるのであります。そもそも鉱害は鉱業権者の責任において自力自費を以て原状回復すべきでありまして、このことは今更ここに事新らしく論ずるまでもないのであります。従つて原状回復は、被害者の意思の命ずるところ、或いはその意思に従つて計画され、希望するごとく実施され、同意する最後の決定が下されなければならないのであります。然るに鉱業権者の権利擁護に汲々といたしまして、この復旧に対する責任を不明確にし、復旧に関しましては協力の限界を設け、復旧のため適宜とられた諸施設の最後に維持管理する者が何者かわからないというに至りましては、初めから政府も賠償義務者も誠意を以て農業土木の工事に当るとは思われないのであります。責任のあるところにこそ完全な計画と事業の実施が行われると存ずるのでありまして、本法にはそれを認めることは不可能であるのであります。明治以来今日まで放置されておりました惨澹たる国土の喪失並びに被害を、金銭賠償という一時的便宜的手段によつて取扱つて来た欠陥を、更に本法は、事業実施に当つて官僚の責任忌避と繩張り争いや、効用回復か原状回復の論議研究等に日時を浪費し続けると思われるのであります。敗戰以来四つの島に閉じ込められました八千四百万国民が、食糧自給のためには先ず農地である、生活安定のためには農地である、子孫永住のためには農地であると叫び続けて来た切実な要求に対しまして、当然新たに勇敢に取上げられなければならない原状回復の必然性を無視いたしまして、鉱業権者の濫掘擁護とその奨励、責任の忌避、言い逃がれの口実等のために本法が作られたとしか思われないのであります。仏作つて魂入れずとは本法案のごときことを指して言うのでありましよう。先ずその第一点といたしましては、鉱業権者、即ち賠償義務者の納付金を基礎といたしまして、一定の而も少額の枠を定めて農業土木工事を進める点であります。納付金の算定については、五十一條において收穫高等の比率によつて農地を定め、改正前の土地台帳法による賃貸価格をとり、何とかして鉱業権者の負担を軽くするようにしてきめたのが、その基準賃貸価格の二千倍を下らず五千倍を超えないという範囲内において都道府県別に政令で定める倍数を乗じて得たる金額でありますが、本院においても農林委員会から強い要望といたしまして、これでは事業途行上支障を生ずるであろうとして、三千乃至六千に引上げ説が持ち込まれたのであります。これは当然の意見であるにかかわらず、與党や同調の諸君はこれを無視し去つたのであります。千仭の功を一簀にかくとはこのことであると思うのでございます。その第二点は、七十七條の灌漑排水施設の引渡しに関してであります。一定の納付金さえ完納すれば鉱業権者に責任を免れしめようとするところに本法の欠陥があり、又責任を免れるために、あらゆる考慮が拂われておると存ぜられるのでありますが、鉱害の被害地は鉱害の被害地として地球の現存する限りあるのでありまして、その復旧が効果を挙げない限り、政府も鉱業権者を含めての国民の政府である以上、その責任は法的には上手に免れても現実的には免かれるものではありません。附帶決議に寝言のようなことが言つてありますが、こんなあいまいな表現をせず、これは当然加害者である賠償義務者にその義務は引継がれるべきであります。限られた能力、頗る短命な事業団のためにも、復旧工事により新設される灌漑排水施設の維持管理は賠償義務者の義務といたしまして、政府がこれを永久に監督するとき、この工事、この施設は完全な能率を挙げ得ると存ずるのであります。更に第三点は第七十八條でありますが、復旧の不適地の処理でありまして、本條項は、衆議院においても、復旧不適地について支拂う金額を定めようとするときは、あらかじめ所在地の市町村長の意見を聞かなければならないと追加修正をされておるのでありますが、今日あのむずかしい所得税法を申告納税せしめられております農民が、自己の所有地の復旧の適、不適くらいは知らないわけはないのみならず、その金額の妥当性がどのぐらいかは知つておるはずであります。又農民関係団体におきましても、共通の利害については一致した行動をとり得るのでありまして、何も市町村長の意見を聞く必要はないのであります。間接に聞くとの答弁もあつたようでありますが。間接に聞くくらいなら、民主政治の今日、直接不適地所有者の意見を聞くべきでありまして、政治の温かさ、行政の潤いとはかかる点にかかつておるのであります。曾つて犬養翁が青年将校のピストルに倒れたときの言葉に、「話せばわかる」と言つたことく、日本の農民は話せばわかるのであります。ここにも本法の盲点があるのであります。第四点は、第九十一條の国及び都道府県の補助についてでありますが、国土の保全並びに有効な利用、民生の安定は、当然政府の責任であり、補助は当り前でありましよう。特定の府県に限られた二百三十億の被害は、延いては地方公共団体の税財源を直接間接に減少せしめているのみならず、この復旧には心血を注ぐ協力が要求されていると存ずるのであります。然るに、加害者には一定の率を定めておきながら、被害者の立場にある地方公共団体に暗に無制限協力をせしめようとするところに政府のずるさがあると存ずるのであります。政府が、鉱業権者の採掘の申請、施業案の認可等の実権を握つておる点から見ましても、この不手際から生ずる結果としての本復旧工事には、地方公共団体負担は当然一割以内とすべきであります。地方財政一般的窮乏、鉱害府県の特殊事情から考えましても、政府と加害者たる賠償義務者による全額負担は当然であつて、その責任は免れ得るものではないのであります。第五点といたしましては、第七十五條の鉱害賠償責任との関係でありますが、政府も鉱業権者も、農民や土地所有者がみずから好んで被害を招いたような錯覚を持つている点であります。原状回復が困難な場合には、効用回復のため工事或いは施設が進められるのは止むを得ないといたしましても、その場合、豪雨、早魃その他不測の天災地変によつて当該農地が原状に回復していないために、一般の農地に比し特別の損害をこうむつたときは、当該農地にかかる鉱害は当然消滅しないものと見なさなければなりません。これは三才の子供でもわかる真理であるにもかかわらず、政府や賠償義務者の代表らしき人々の側に反対の声があるのであります。五尺土盛りすべきところを三尺にいたしましたために、豪雨によつて二尺浸水した、それは鉱害が残つておることを明らかに示しているのであります。その責任と解決は賠償義務者と政府であります。それすら明らかにされていないのが本法案であります。以上要点を申上げましたごとく、本法従つて事業団を設立いたしまして、農業土木工事をいたしましても、被害者の農民を満足せしめ、国土の有効な利用、民生の安定は期せられないのでありまして、被害者の不平不満の生ずるところからは石炭亜炭鉱業は生れないと存ずるのであります。一時逃れの農業土木工事、言い逃れの灌漑排水施設は、禍いを後日に残し、問題を更に紛糾せしめると存じまするので、我が国におきましても、英国、ドイツのごとく、賠償義務者である鉱業権者の自力自費による完全原状回復と、これに伴う政府の当然の措置を要求いたすものであります。事業実施に要する責任官庁の予算関係が未だ明確化されておらず、今日まで一致した答弁が求められない政府の不誠意極まる態度や、何とかして責任を逃れようとする賠償義務者の明治以来の経過に対しましても、強く反省を促さなければならんと存ずるのであります。要は、骨抜きの法案によつてこうむる失敗は、最後には一番弱い被害者としての農民に背負わされることを考えました場合、民生の安定のためにも、厖大なる国費を濫費して、賠償義務者を最後には失望せしめるであろう本法案には、我が改進党といたしましては強く反対の意を表明する次第であります。これを以て討論を終ります。
  50. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) これにて討論の通告者の発言は全部終りました。討論は終局したものと認めます。これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。委員長報告修正議決報告でございます。委員長報告通り修正議決することに賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  51. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 過半数と認めます。よつて本案は委員会修正通り議決せられました。      ——————————
  52. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 日程第六、通商産業省設置法案日程第七、通商産業省設置法施行に伴う関係法令整理に関する法律案日程第八、工業技術庁設置法の一部を改正する法律案日程第九、農林省設置法等の一部を改正する法律案日程第十、経済審議庁設置法案日程第十一、経済安定本部設置法廃止及びこれに伴う関係法令整理等に関する法律案日程第十二、資源調査会設置法案日程第十三、大蔵省設置法の一部を改正する法律案日程第十四、大蔵省設置法の一部を改正する法律等施行に伴う関係法令整理に関する法律案日程第十五、保安庁法案日程第十六、海上公安局法案日程第十七、運輸省設置法の一部を改正する法律案日程第十八、総理府設置法の一部を改正する法律案日程第十九、国家行政組織法の一部を改正する法律案日程第二十、行政機関職員定員法の一部を改正する法律案、(いずれも内閣提出衆議院送付)以上十五案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  53. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。先ず委員長報告を求めます。内閣委員長河井彌八君。    〔河井彌八君登壇拍手
  54. 河井彌八

    ○河井彌八君 議題に供せられました日程第六より日程第二十までの各案につきまして、順次内閣委員会の経過並びに結果を報告いたします。先ず以て通商産業省設置法案及び通商産業省設置法施行に伴ち関係法令の整理に関する法律案並びに工業技術庁設置法の一部を改正する法律案について説明をいたします。この三案の提案の理由及び内容について先ず説明をいたします。提案の理由は、すべて機構の簡素化を図ろうというのであります。内容につきましては、通商産業省設置法につきましては、内部部局の統合整理を目的とするものでありまして、従来の一官房及び九局は今回新らしく設けられる部局を除外いたしますると一官房四局に減少するのであります。特に物資別の原局五局は重工業、軽工業の二局に統合せられております。第二点は、外局たる庁の整理でありまして、審判的機能を有する特許庁を除きまして、他の三庁、即ち資源庁、中小企業庁及び工業技術庁のうちで、前二者を本省内部部局、後者を本省附属機関といたしております。第三点は、公益事業委員会の廃止に伴いまして、同委員会の所掌事務をすべて本省内部部局たる公益事業局に所掌せしめることになつております。第四点に、以上のほかにも、行政機構改革の基本構想によりまして、局中の部を廃止し、或いは経済安定本部の廃止によりまして事務を移管した点等につきまして、旧條文のうちで特許庁関係を除き殆んど全條文について改正を加えておりまするために、旧法を廃止いたしまして新法を制定する措置をとつておるのであります。次に、通商産業省設置法施行に伴いまして、鉱山保安法、公共事業令等、関係法令の整理を行う必要がありまするので、その法律案が提出されております。その整理を行う法令でありますが、法律では鉱山保安法、中小企業等協同組合法及び輸出信用保險法、ポツダム政令では公共事業令及び電気事業再編成令の以上の五法令であります。なお、整理の内容でありますが、これは部局の改革に基く名称の変更を主といたしたもの、中小企業庁設置法の廃止によつて同法上の権限を中小企業等協同組合法の内容といたしておるもの、及び公益事業委員会の所属事務の引継ぎによるものの三つの事柄に区分できるものであります。最後に、工業技術庁設置法の一部を改正する法律案につきましては、工業技術庁はこのたび通商産業省の附属機関として工業技術院に改組しようとするものであります。併し改正の内容は、單に名称を工業技術院に、従つて長官を院長に改める等、附属機関となつたことに伴つて必要となつた改正にとどまるものであります。これが只今申述べました法案三つの提出の理由及び内容であります。内閣委員会におきましては、委員会を三回、通商産業委員会と連合会を二回開会いたしまして、三案につきまして審議を重ねたのであります。その際、論議の中心となつた主な点を申上げますれば、第一点は、中小企業庁を現状通り通商産業省の外局として存置すべしという点であります。これに関しましては、通商産業委員会からも強い要望が出されまして、内閣委員の多数からも同様強き主張が述べられたのであります。即ち、中小企業は日本経済の現状において極めて重要な地位を占めておるのであつて、そのことは、産業構造の上から見ても、中小企業の有する生産量、工場数、労働者数等が全産業のうち極めて高い割合を占めておりまする点、或いは貿易の振興や重要産業の再建の上に大いなる貢献をなしておる点等から見ましても明らかである。又そうであればこそ政府が中小企業庁を設置して、中小企業の育成発展に努力をして来たゆえんであると考える。殊に中小企業庁が設置されて種々指導育成がなされておる現状においてすら、なお、制度の面、税制の面、金融の面、その他、産業合理化、技術向上等の面において中小企業は惠まれざる状態に置かれておるのみならず、日本経済の弱点が常に中小企業にいわゆるしわ寄せされる傾向にあるのが現状である。従つて現在の段階においては中小企業庁を内局にするのは適当でないという意見が強く述べられたのであります。第二点は、原案の鉱山保安監を廃止して、これに代えて鉱山保安局を設置すべしという点であります。即ち近時の鉱山における災害頻発の現状に鑑みて、鉱山保安行政に関しては政府は特に万全の措置をなすべきであるから、従来通り鉱山保安局を設けることが適切であるという意見が強く多数の委員から述べられたのであります。第三点は、繊維局を存置すべしという点であります。即ち現在の通商繊維局が廃止されて、その所掌事務が軽工業局に包含せられることになつておるのでありまするが、繊維工業が軽工業のうちの大いなる割合を占めておる現状や、又将来の自立経済における繊維工業の占めるべき大いなる重要なる地位から考えまして、特に軽工業局から独立させて一局を設けることが適切であるという意見が多数委員から述べられたのであります。第四点は、工業技術庁を現状通り通商産業省の外局として存置すべしとする点であります。即ち科学技術の進歩は工業の発達と極めて密接な関係にあり、殊に我が国における工業技術の現状は一層これが進歩向上を必要とする段階にあるから、これを附属機関とする原案は適当でない、現状通り外局として存置させるほうが適切であるという意見でありました。で、これらの意見に基きまして討論を重ねたのでありますが、通商産業省設置法案及び通商産業省設置法施行に伴う関係法令の整理に関する法律案及び工業技術庁設置法の一部を改正する法律案についてそれぞれ修正案が発議されたのであります。修正案はすでにお手許に差上げてありまするから、朗読を省略いたしますが、その要点を摘んで申上げますれば、一、官房に現状通り調査統計部を存置し、原案の調査統計監を廃止すること。二、鉱山保安局を存置し、原案の鉱山保安監を廃止すること。三、企業局に現状通り次長一人を置くこと。四、軽工業局に化学肥料部を存置し、原案の次長を削除すること。五、繊維局を存置すること。六、工業企業庁を現状の通り存置すること。七、この法律施行期日を原案では本年七月一日と規定してあるのを八月一日に改めることであります。次に、通商産業省設置法施行に伴う関係法令の整理に関する法律案に対する修正案修正点は次の二つであります。即ち鉱山保安局を存置し、原案の鉱山保安監を廃止すること。もう一つは、中小企業庁を現状通り存置すること。又、工業技術庁設置法の一部を改正する法律案に対する修正点は次の一点であります。この法律施行期日を七月一日と定めてあるのを八月一日に定めることであります。先ずこれに対しまして波多野委員から、修正案及び修正案を除いた残余の法案全部に賛成である。但し工業技術庁についてはこれを現状通りに修正したかつたのであるが、この点は将来できるだけ早く原状に復することを強く希望するという意味を持たして賛成するという意見を述べられたのであります。鈴木委員からは、政府原案は全部賛成であるが、修正案には反対である。即ち、中小企業庁が現状通り存置されることに修正されたが、併しこれが内局になることによつていささかの支障も起らないし、むしろ大臣の直轄下に置かれるために力強くその使命が達成されることを確信しておる。その他の修正案については賛成であるが、只今の政府の方針に反した重大な修正が含まれておるから、この修正案には反対であるという意見が述べられました。更に竹下委員からは、修正案及び修正案を除く残余の案全部について賛成意見が述べられました。そして特に鉱山保安局の運営について政府に強い要望が出たのであります。即ち竹下委員から、過去の経験に基いて、貴重な人命尊重の重大使命を十分に考えて、できるだけの力を以てこの部局の運営に当つて欲しいということを強く要望せられたのであります。最後に成瀬委員から、修正案及び修正案を除く残余の案全部に賛成である。即ち中小企業庁を現状通り存置したことは、今日の中小企業の現状から見て適切である。併しなお一層広汎な中小企業対策を望みたい。又鉱山保安局が存置せられたことは、これ又適切な修正であるが、併し最も大切なことは、その運営にあると思う。人命尊重のために万全の注意を拂つて欲しいということ。なお修正外の点では、工業技術庁が附属機関と改組される点は遺憾であるが、次の機会には、科学技術の向上発展のでき得る機構のできるように期待して、これに賛成するという意見が述べられました。  かくて討論を終局いたしまして、先ず通商産業省設置法案修正案について採決いたしまたところ、多数を以て修正可決すべきものと決定いたしました。次に修正案を除いた原案について採決いたしましたところ、全会一致を以て可決すべきものと決定いたしました。故に本案は修正可決すべきものと決定せられたのであります。  次に、通商産業省設置法施行に伴う関係法令の整理に関する法律案修正案について採決いたしましたところ、多数を以て修正可決すべきものと議決いたしました。更に最後に、工業技術庁設置法の一部を改正する法律案につきまして、修正案を含む原案について採決いたしましたどころ、これ又全会一致を以て修正可決すべきものと議決いたしました。     —————————————  農林省設置法等の一部を改正する法律案について報告を申上げます。  この農林省設置法等の一部改正案は、衆議院から修正せられて本院に送付せられたのでありまして、それを原案としそ審議いたしたのであります。先ず本案の内容について概略申上げますると、その第一点は、食糧庁及び林野庁を内局に移管して、それぞれ食糧局、林野局とすること。第二点は、大臣官房、農政局及び農業改良局の事務を再分配し、農政局を農林経済局とすること。第三点は、内局の部及び新たに内局となる食糧庁及び林野庁の部を廃止すること。第四点は、農林経済局及び農地局に次長各一人を、食糧局に次長二人、林野局に次長三人を置くこと。その他農林経済局に農業協同組合監及び統計調査監おのおの一人地局に計画監及び建設監おのおの一人を、農業改良局に技監一人を、畜産局に競馬監一人を、食糧局に農産物検査監一人をそれぞれ置くことにしていること。第五点は、米価審議会を経済安定本部から移管すること。第六点は、営林局の移動及び管轄区域の一部を変更すること等であります。  次に、本案第二條によるところの改正案によりまして、水産庁設置法の一部を改正する点は、水産駐在所七ヵ所を廃止すること及び漁業調整事務所五ヵ所を設置せんとする、この二つであります。内閣委員会におきましては、本案審査のため、委員会を開催すること六回、そのほか数回に亘つて内閣委員の懇談会を開きまして、審議を盡したのでありまするが、その間、問題となつた主な点を二、三申上げて見たいと思います。第一には、原案において食糧庁及び林野庁を内局としたるにかかわらず、水産庁のみを現行のまま外局として存置することの当否如何という点でありました。政府はこれに関しまして、食糧、林野、この二つの仕事は、他の産業と極めて密接な関係があるから、これを内局に移して、農林大臣の直接指揮監督の下に、簡素強力に農林行政の一体としての運営を強化し、能率を増進することとしたい。これに反して水産というものは独立性があり、現に衆参両院の常任委員会においても、農林委員会とは別個に存在している。殊に参議院においては、議員発議の水産省設置法案が提出されている実情等をも勘案して、特殊の例外として外局に残しておいたという説明でありました。第二に、統計調査部廃止の問題でありますが、近代的のサンプリング調査に基いていたすところの統計の事務は、農林行政を推進して行く上に極めて重要なものであるが故に、徒らに形式的画一的な機構改革をなすがために、この部を廃止するということは失当であるという意見が多数の委員諸君から述べられたのであります。第三に、農林行政は、計画、実施、管理のごとく、その行政事務の区分を部門別として能率を挙ぐべきであるという意見が強く出ておりました。第四は、営林局の場所の移転及び管轄区域の変更に関する点でありまして、政府原案によれば、従来の営林局の管轄区域を一部改正いたして、水系別に改めることにし、前橋営林局は、これを福島県福島市に移転して、阿武隈水系を中心とする、即ち宮城県、福島県を管轄区域とする福島営林局とし、木曾の福島営林局は、これを長野市に移して、信濃川水系を管轄する長野営林局といたして、長野県、新潟県をその管轄区域とせんとするものであるという説明瀘あります。かようにいたしまして、本案に対して種々質疑をいたしまして、質疑を終了し、討論の段階に入りましたところが、先ず多数委員の意見に基く修正案が提出せられたのであります。その修正案は結局委員会の採決を経まして、お手許に差上げてありまするから、これによつて御了承を願いまするが、その内容につきまして簡單に申述べますれば、第一は、農林経済局に農業協同組合部と統計調査部を存置すること。従つて次長を削除し、農業協同組合監と統計調査監を廃止すること。第二は、農地局に現行通り管理、計画、建設の三部を存置し、従つて次長を削除、計画監及び建設監を廃止すること。第三は、農業改良局に現行通り研究部及び普及部を存置し、技監を廃止すること。第四は、畜産局に現行通り競馬部を存置し、競馬監を廃止すること。第五は、営林局の移動と管轄区域の変更は、この際暫らく留保して、現行のままとすること。第六は、中国四国農業試験場を分離すること。第七は、食糧庁及び林野庁は現行通り外局として存置すること。このほか附則第一項の施行期日修正しておるのであります。この多数の意見に基く修正案に対して、中川委員は自由党を代表して、修正案の多くの部分についてはこれに同調するにやぶさかではないけれども、食糧庁及び林野庁を庁として存置する点については同意しがたいという意味を以て修正案に反対せられたのであります。楠見委員は、自由党を除く各派共同の多数意見による修正案に対して緑風会を代表して賛成の意を表し、なお、営林局の移転及び管轄区域の変更に関する政府原案については必ずしも反対するものではないけれども、この際は留保して現行のままとし、近き将来において適正なる改正措置を実現するようにという希望を述べられたのであります。三好委員は、修正案を含めての原案に賛成の旨を述べ、なお、統計調査部については、むしろこれは統計調査局に昇格すべきであると考えて、その修正案を用意しておつたけれども、多数意見に同調する建前から、あえて單独の修正案は提出しないということを述べられたのであります。江田委員社会党の第四控室を代表して、三好委員と同様、修正案を含めての原案に賛成であり、なお、三好委員の統計調査部を統計調査局に昇格せしめんとする構想に対しても同感であるという旨を述べられました。波多野委員社会党第二控室を代表して、修正案を含めての原案に賛成であり、三好委員、江田委員と同様、統計調査部を局に昇格せしめんとする考え方に同意見であつて、この問題は今後内閣委員会としても十分考慮を拂うべきものであるという意見を述べられたのであります。そこで採決に入りまして修正案を採決いたしましたところが、多数を以て可決すべきものと議決し、修正の部分を除く原案について採決いたしましたところ、全会一致を以て可決すべきものと議決いたしたのであります。従いまして本案は修正可決すべきものと議決いたしたのであります。     ————————————— 次に、経済審議庁設置法案経済安定本部設置法の廃止及びこれに伴う関係法令整理等に関する法律案及び資源調査会設置法案について報告をいたします。  先ず、経済審議庁設置法案におけるその内容を簡單に説明いたします。この法案は、経済安定本部を廃止するに当つて、これに代るべき総合的経済政策の企画立案及びこれに基く総合調整を行うための行政機関として、総理府の外局として経済審議庁を設置せんとするものであります。即ち経済審議庁の任務は、経済に関する基本的な政策の総合調整を初め、他の行政機関の所掌に属しない総合的経済政策の企画立案、国土総合開発及び電源開発の促進、国際経済協力の推進、物価及び国民生活に関する基本的政策の企画立案、長期経済計画の策定、総合国力の分析、測定、内外の経済動向及び国民所得等に関する調査分析等であります。そして経済審議庁の特別な性格に鑑みまして、その職員といたしましては、特別な職といたして審議官及び調査官を置くこととなつております。而して審議官は識見のある官民の人材を選抜して、重要な経済政策及び計画の企画立案に当らせ、調査官は専門的事項に精通した人材を以て調査に専念せしめんとするものであります。次に、この審議庁には附属機関として経済審議会を設置し、内閣総理大臣の諮問に応じて経済に関する最も重要な政策計画等について調査審議せしめることとし、その組織、所掌事務及び委員についての詳細な規定は政令に譲ることとなつておるのであります。なお、この法案は、機構改革に伴う各省設置法の改正法案と共に今年七月一日から施行することになつております。次に経済安定本部の廃止及びこれに伴う関係法令整理等に関する法律案について申述べますが、この法案は、経済安定本部を廃止すると共に、従来経済安定関係の事項を規定している諸法令に所要の改正を加えんとするものでありまして、本法案施行と共に、経済安定本部の予算の執行及び予備費の支出、決算並びに国有財産に関する事項の残務整理は、経済審議庁において所掌することになつておるのであります。内閣委員会におきましては、右の二法案の審査につきましては、経済安定委員会との連合委員会を四回、内閣委員会を二回開催いたしましたほか、数次の懇談会を開きまして審議に当つたのであります。委員会において特に問題となつた点は、経済審議庁の性格の点であります。経済に関する基本的総合的企画立案の権限を持たすべきではないかどうかという点が中心であつたのであります。討論の段階に入りまして栗栖委員その他七名のかたから両法案に対する共同修正の発議がありました。その内容はすでにお手許に差上げてありまするものと同一でありますから、これが朗読も又説明も省略させて頂きます。ただ、その内容の主なる点を申述べますれば、経済審議庁の権限の中に外国為替予算並びに外資に関する基本的な政策及び計画について、関係行政機関事務の総合調整を行うことを明確にしたる点、及び経済審議庁の任務を規定しておる第三條の條文の中で、意味のあいまいである字句を改めてこれを明確にいたした点、その他経済審議庁の内部部局として新たに調整部を設けた点、経済審議庁が内閣総理大臣権限の行使について補佐することとして列挙されておる国土総合開発法ほか二つの法律の中に、新たに特殊土じよう地帶災害防除及び振興臨時措置法を加えた点等であります。この修正案に対しまして、波多野委員社会党第二控室を代表いたしまして、我が党としては予算編成権をも掌握するような強力な総合企画庁とする方針であつたのであるけれども、この修正案を提出することは本法案審議の経過に鑑みて徒らに混乱を招くことを慮つて、遺憾の意を表しつつ賛成するものであると述べられたのであります。松原委員は、改進党を代表して、修正を含めた原案に賛成である。但し改進党としては、我が国の現状に鑑みて長期経済政策の企画立案を必要とするとの党意見から、別に修正案を準備しておつたのであるけれども、本案の審議状態に鑑みまして、所期の目的とは違うけれどもこれに賛成するという意見を述べられたのであります。自由党の中川君は自由党を代表して、この両法案修正案を含めて原案に賛成であることを述べ、次いで江田委員は、止むを得ず賛成する。併し日本の経済は今後楽観を許さない。従つて長期を見通しての経済政策の企画立案が必要である。我が党としては総合企画庁を必要とするという意見であると述べられたのであります。楠見委員は、波多野委員と同意見であつて修正を含めた原案に賛成するとの意見を開陳せられました。最後に採決に入りまして、修正案を含めた両原案について採決を行いました結果、全会一致を以て修正可決すべきものと議決いたしたのであります。更に、これに関係のありまする資源調査会設置法案について説明をいたします。  経済安定本部が今度の機構改革によりまして廃止されまするに当つて、この資源調査会を設置いたしまして、これを総理府の附属機関に移して、ここに、この法律によつて法的根拠を與えんとするものであります。この法案によりますれば、資源調査会国家行政組織法第八條第一項に基く総理府の附属機関とし、その所掌事務は、資源の総合的利用のための方策に関し調査審議すること、関係行政機関が樹立する資源の利用計画の総合調整に関し調査審議すること、及び資源調査の計画に関し調査審議すること、この三つを主たる任務といたして、内閣総理大臣の諮問に答申するほか、関係行政機関の長は、その所掌事務を遂行するに当つて必要があると認めるときは、右の事項に関し資源調査会の審議を求めることができることといなし、又資源調査会は必要に応じて関係行政機関の長に対して、資料の提出、意見の開陳、説明その他必要な協力を求めることができるとなつておるのであります。  その組織につきましては、資源調査会は、会長、副会長及び委員二十名以内を以て組織し、会長は経済審議庁長官を以てこれに充て、副会長は一人とし、学識経験のある者、又は関係行政機関職員のうちから内閣総理大臣が任命し、常勤とする、但し関係行政機関職員のうちから任命された場合、又は止むを得ない場合は非常動とすることができるとしてあるのであります。次に、委員は学識経験のある者又は関係行政機関職員のうちから内閣総理大臣が任命するのでありますが、この委員は非常勤とし、関係行政機関職員のうちで教職にある者及び試験研究に従事する者以外の者で委員に任命される者の数は委員総数の二分の一以下でなければならないとなつておるのであります。次に、資源調査会事務局を置いて、事務局長は委員のうちから内閣総理大臣が任命することとなつております。更に、資源の利用に関し資源調査会及び関係者行政機関相互の間の連絡を図るため、連絡会議を置くことといたし、その他、本法律に定めるものを除くのほか、資源調査会に関し必要な事項は政令で定めることとしてあるのであります。なお、施行期日は本年七月一日となつてつたのであります。内閣委員会におきましては、経済安定委員会との連合委員会において、又二回の内閣委員会において審査をいたしたのでありますが、その審議に当りまして、委員から、資源調査会の従来の業績を十分に認めると共に、この種機関に対する予算措置が余りに貧弱である点、即ち年額千五百万円程度、その点について政府の注意を促す意見が述べられたのであります。なお、本案につきましては施行期日修正を加えましただけでありまして、この修正を含めました原案について採決いたしましたところ、全会一致を以て修正可決すべきものと議決したのであります。その施行期日修正点は、「七月一日」とあるのを「八月一日」と改めたのみであります。     ————————————— 次に、大蔵省設置法の一部を改正する法律案及び大蔵省設置法の一部を改正する法律等施行に伴う関係法令の整理に関する法律案について説明をいたします。先ず大蔵省設置法の一部を改正する法律案の内容を申上げます。第一は、外局を廃止して内局への改編乃至統合でありまして、外局であるところの証券取引委員会、公認会計士管理委員会及び国税庁、並びに総理府の外局であるところの外国為替管理委員会及び経済安定本部の外局であるところの外資委員会を廃止して、その権限の全部又は一部、これをそれぞれ証券取引委員会及び公認会計士管理委員会は本省の理財局へ、国税庁は本省の内局として新設する徴税局へ、外国為替管理委員会及び外資委員会は同じく内局として新設する為替局へ統合せんとするものであります。第二は、本省の内部部局の改編でありますが、従来の官房、五局に、新たに徴税局及び為替局の二局を加え、一方、官房の調査部、主税局の税関部及び銀行局の検査部を廃止して、主税局及び銀行局には次長おのおの一人を、徴税局には次長二人を置くこととし、又従来の財務官の制度はこれを廃止して財務参事官を置くこととしてあるのであります。第三は、附属機関の再編に関するものでありまするが、現在大蔵省の外局たる造幣庁及び印刷庁を本省の附属機関に改め、又証券取引委員会、公認会計士管理委員会、外国為替管理委員会及び外資委員会の廃止に伴つて、これらの所掌事務に関する諮問機関として、証券取引審議会、公認会計士審査会、外国為替審議会及び外資審議会を設けると共に、経済安定本部の附属機関たる企業会計基準審議会を企業会計審議会として大蔵省に移し、更に国税庁の統合に伴つて中央における国税庁協議団はこれを廃止することとなつておるのであります。第四に、地方支分部局に関しては、国税庁の地方支分部局たる国税局を本省の支分部局に改め、納税者の便宜を図る点を考慮して、税務署の支署を置き得ることとしておるのであります。右のほか、経済安定本部の廃止に伴い、大蔵省の任務、権限及び所掌事務に所要の改正を加え、規定整備を図つておるのであります。次に、大蔵省設置法の一部を改正する法律案等の施行に伴う関係法令の整理に関する法律案について申しますが、この法案は、前申上げました大蔵省設置法の一部を改正する法律案による大蔵省の機構改革に伴いまして、関係法令に所要の整理を加えようとするものであります。その関係法令は総数三十四件に及んでおりまするが、ここにはその報告を省略させて頂きます。内閣委員会におきましては、これら法律案の審議のために大蔵委員会との連合委員会を一回、内閣委員会を八回開会いたしまして審議を盡したのであります。質疑を終つて討論の段階に入りましたところ、多数の意見によるところの共同修正案が発議されました。その修正案はこれ又お手許に配付してあるものと同一でありますから、それによつて御了承を願うことといたしまして朗読及び理由説明は省略いたします。その要点を申上げますれば、一、主税局に現行通り税関部を存置することとし、従つて原案の次長を削除したること、二、銀行局に現行通り検査部を存置することとし、従つて原案の次長を削除したること、三、国税庁を現行のまま存置したること、即ち外局として存置したること、四、経済審議庁設置法の修正に伴い、外国為替予算案の準備に関する大蔵省の所掌権限の字句に一部修正を加えたること等であります。なお附則の施行期日修正いたしまして八月一日といたしました点は、他の法案に対しますると同一であります。本案に対しまして討論に入りましたところ、鈴木委員は自由党を代表して、修正案の一部即ち国税庁を復活する点には反対であるから、修正案に反対せざるを得ないということを述べました。楠見委員は緑風会を代表して修正案を含める原案に賛成の旨を述べ、なお附言いたしまして、造幣局及び印刷局は将来これを公共企業体とすることについて、政府は十分なる検討をいたすべしという希望意見を述べられたのであります。かようにいたしまして、討論を終つて採決に入りましたところ、修正案については多数を以てこれを可決すべきものと議決し、修正案を除くところの原案について採決をいたしましたところ、全会一致を以て可決すべきものと議決したのであります。即ちこの案につきましては修正可決すべきものと決定いたした次第であります。     ————————————— 次に、最も愼重な討議を盡しました保安庁法案及び海上公安局法案について説明をいたします。保安庁法案、この法案衆議院において一部修正されましたので、それが原案となつておるのであります。この法律案は、現行の警察予備隊と、海上保安庁の海上警備隊及びこれと密接な関係にあるもので水路、燈台等、運輸省に属せざる部分を除いたものとを統合いたして、治安に関する一体的な運営を図るために、総理府の外局として新たに保安庁を設置せんとするものであります。これは今回提出せられました行政機構改革の問題のうちで最も重要な意義を持つておるものでありまするから、いささか詳細に報告いたそうと思うのであります。保安庁は、我が国の平和と秩序を維持し、人命及び財産を保護するため、特別の必要がある場合において行動する部隊を管理し、運営し、及びこれに関する事務を行い、併せて海上における警備救難の事務を行うことを任務とするものであります。そのうち海上における警備救難の事務を行うのは保安庁に置かれる海上公安局でありまして、これは従来の海上保安庁の警備救難部を中心として設置されるもので、常時海上においてその任務を行うこととなつておるのであります。保安庁が管理し運営するところの部隊は、主として陸上において行動するものは保安隊、これは従来の警察予備隊であり、海上において行動するものは警備隊、これは従来の海上警備隊であります。本法案一般行政機構の改革と同時に本年七月一日から施行することとし、但し警察予備隊については、現在の隊員の大多数の任用期間が本年の十月十四日までに満了いたしますので、それまでの間は警察予備隊を存続せしめることとして、所要の調整規定を設けておるのであります。ここに、この法案によりまして、保安庁の機構、部隊の編成等について概略申述べます。保安庁の長は保安庁長官として、国務大臣を以てこれに充て、長官は内閣総理大臣指揮監督を受け、庁務を統轄し、所部の職員を任免し、その服務を統督するのでありまするが、部隊その他の機関に対する長官の指揮監督は、その補佐機関たる第一幕僚長又は第二幕僚長を通じて行うこととなつておるのであります。保安庁に次長一人を置き、内部部局として、長官官房のほか、保安局、人事局、経理局及び装備局の四局並びに第一幕僚監部及び第二幕僚監部を置き、長官官房及び各局は、保安隊及び警備縁に関する方針の策定及びその一般的監督について長官を補佐することを主たる任務とし、長官、次長、官房長、局長及び課長は、文官制を堅持する建前から、三等保安士以上の保安官又は三等警備士以上の警備官の経歴のない者のうちから任用することとなつており、政府原案では更に旧正規陸海軍将校の経歴のある者もこれと同様の取扱をすることとなつてつたのでありまするが、これは衆議院修正によつて削除されて参つておるのであります。第一幕僚監部は保安隊につきまして、又第二幕僚監部は警備隊につきまして、その隊務に関する長官の幕僚機関とし、各幕僚監部の長を幕僚長とするのであります。幕僚長は、保安隊又は警備隊の隊務について、最高の専門的助言者として長官を補佐するものとし、幕僚監部には部及び課を置き、又幕僚長のほか所要の保安官又は警備官その他事務官等を置き、又幕僚副長を置くことができることといたしておるのであります。第一幕僚長及び第二幕僚長の指揮監督下に置かれる保安隊及び警備隊に関する組織及び編成等は政令を以て定めることとし、又幕僚長の監督を受ける訓練施設その他の所要機関についても、その組織、所掌事務等は政令で定めることになつておるのであります。保安庁職員の定員は、海上公安局に勤務する職員を除いて十一万九千九百四十七人とし、そのうち十一万を保安官、七千五百九十人を警備官とし、残りの二千三百五十七人が事務官、技官その他の職員であります。なお附属機関として、保安研修所、保安大学校及び技術研究所を置き、これらの機関には、保安官又は警備官のほか、事務官、技官、教官、その他所要の職員を置くことになつており、保安庁に置かれる海上公安局については、海上公安局法により、その組織、所掌事務及び権限等を定めておるのであります。海上公安局の職員を除く保安庁の職員は、現在の警察予備隊及び海上警備隊の職員と同じく、これを国家公務員法上の特別職とし、服務についてはおおむね国家公務員法の規定に準じて規定するが、勤務の特殊性を勘案して総理府令で定めることとなつておるのであります。保安隊及び警備隊の部隊編成について一言いたしますると、保安隊は一方面隊、四管区隊及び直轄部隊を以て編成し、それぞれ方面総監部、管区総監部を置き、その長を方面総監、管区総監とする。又警備隊は三地方隊及び三以内の連合船隊を以て編成し、地方隊に地方総監部を置き、地方隊の長は地方総監とする。又連合船隊の長は連合船隊司令とすることとなつておるのであります。出動に関しましては、内閣総理大臣は、非常事態に際して治安の維持のため特に必要があると認める場合には、保安隊又は整備除の全部又は一部の出動を命ずることができることとし、内閣総理大臣は、出動を命じた場合には、出動を命じた日から二十日以内に国会に付議して、その承認を求めなければならないこと、但し国会が閉会中か又は衆議院が解散されている場合には、その後最初に召集される国会においてその承認を求めなければならないこと、又、長官は、警備隊の出動があつた場合において、特別の必要があると認めるときは、海上公安局の全部又は一部を警備隊の統制下に入れることができることとしているのであります。更に又、長官は、事態が緊迫し、命令出動が予測される場合において、これに対処するために必要ありと認めるときは、内閣総理大臣の承認を得て、保安隊又は警備隊に対し出動待機命令を発することができることにしてあるのであります。更に又、都道府県知事は、治安維持上重大な事態について止むを得ない必要ありと認める場合には、当該都道府県公安委員と協議の上、内閣総理大臣に対し、保安隊又は警備隊の部隊の出動を要請することができる。この場合において事態止むを得ないと認めるときは、内閣総理大臣は、保安隊又は警備隊の部隊の出動を命ずることができることとしているのであります。次に、海上における人命若しくは財産の保護、又は治安の維持のため、緊急の必要がある場合には、長官は、内閣総理大臣の承認を得て、警備隊の部隊に海上において必要な行動をとることを命ずることができることとし、都道府県知事その他政令で定める者は、天災地変その他の災害に際して、人命又は財産の保護のため必要があると認める場合には、保安隊又は警備隊の部隊の派遣を長官又はその指定する者に要請することができ、長官又はその指定する者は、この要請を受けた場合、事態止むを得ないと認めるときは、保安隊又は警備隊の部隊を派遣することができること、但し庁舎、営舎等、又はそれらの近傍の火災等の場合には、要請がなくとも部隊を派遣することができることとなつておるのであります。保安隊及び警備隊は、その任務の遂行に必要な武器を保有することができる。但し武器の使用については、正当防衛又は緊急避難に該当する場合を除いては、当該部隊の指揮官の命令によらなければならないこととなつているのであります。次に海上公安局法案について申述べます。海上公安局は、先に申述べました保安庁法案の第二十七條に、「保安庁に、海上公安局を置く。」と規定してあり、その第二項には「海上公安局の組織、所掌事務及び権限等については、海上公安局法の定めるところによる。」とありまして、即ち本法案によつて、その組織、所掌事務権限等が定められているものであります。即ち、海上公安局は、海上における法令の違反の防止、海難、天災事変などの際の人命及び財産の保護、海上における犯罪捜査、犯人の逮捕等の事務を掌る機関でありまして、海上公安局の長は、保安庁長官の任命にかかり、その指揮監督を受けるのでありますが、海上における法令の違反の防止の事務については、外務、大蔵、運輸等、それぞれ主管大臣の指揮監督を受けることとなつておるのであります。又海上公安局の職員の任免につきましては、專ら海上公安局の長が行うことになつております。海上公安局には職員の訓練機関として、海上公安大学校、海上公安学校、海上公安訓練所を置き、又海上公安局長の諮問に応じ、海上公安に関する主要事項の調査審議に当らせるために、海上公安審議会を置くことになつております。地方機関といたしまして地方海上公安局、地方海上公安部、港長事務所、その他の事務所を置くことといたしております。海上公安局の事務を遂行いたしまするための職員といたしまして、海上公安官及び海上公安官補が置かれるのでありますが、海上公安官は、船舶への立入検査、船内にある犯罪容疑者に対する質問、犯罪捜査のため止むを得ない場合においては、船舶に停船を命じ、又は船舶の回航等を命ずる権限を有することとし、又海上公安官及び海上公安官補は、司法警察職員といたしますほか、職員に必要な武器を所持し得ることといたしておるのであります。なお、海上公安局の船舶は、職務遂行のため最小限度必要な武器を装備することができることとし、犯罪容疑船に対する停船信号等、止むを得ない場合に使用できることといたしているのであります。最後に、海上公安局の職員を單位とする国家公務員共済組合を総理府に設けることといたしております。なお、この法律案は保安庁法と同様に、施行期日を七月一日としておるのであります。内閣委員会におきましては、両法案につきまして、六月二日以降地方行政委員会との連合委員会を二回、人事委員会との連合委員会を一回、及び前後十回の内閣委員会を開き、その間に参考人の証言を求め、本法案の審査に万全を期したのであります。その審議の過程において問題となりました主なる点を申上げますれば、第一に、本法案第四條に掲げるところの保安庁の任務についてでありまして、従来の警察予備隊は、警察予備隊令によつて、その設置の目的は、「わが国の平和と秩序を維持し、公共の福祉を保障するのに必要な限度内で、国家地方警察及び自治体警察警察力を補うため警察予備隊を設け、」とあるのでありますが、本法案第四條、(保安庁の任務)に掲げるところの保安庁のその任務を見ますると、「わが国の平和と秩序を維持し、人命及び財産を保護するため、特別の必要がある場合において行動する部隊を管理し、運営し、及びこれに関する事務を行い、あわせて海上における警備救難の事務を行うことを任務とする。」とありまして、従来の警察予備隊とは、その目的、任務について若干相違するものがあるのでありまして、これに対しては、その点に対する質疑について、政府は、従来は目的において国家地方警察並びに地方自治体警察警察力の不足を補う目的であるというふうに書いてあつたが、今回の保安庁法においては、如何なる場合において如何なる手続を以て行動するかということを具体的に定めることといたしたのである。又保安隊、予備隊の目的は、飽くまでも現在の警察予備隊或いは海上警備隊の目的を継承いたしているのでありまして、国内治安の責に任ずることがその目的となつている。従つて外国の侵略に対する防衛ということをば直接の目的としてはおらないということを答弁しているのであります。第二に、保安隊、警備隊の法的性格、殊に憲法第九條との関係におきまして極めて周到愼重な質疑応答が繰返されたのであります。政府は、飽くまでも国内治安維持のための治安機構であつて、軍備ではないという見解を堅持しておつたのでありまして、外国からの侵略攻撃を受けた場合の保安隊、警備隊の行動について質疑を重ねた際においても、政府は、我が国が直接間接の侵略を受けて、警察の任務の遂行上必要がある場合には、国民と共に全力を挙げて行動することは当然であると存じます。従つてこの際において、臨機に一種の自衛行動をとることがありましても、それは結局国内治安の維持のための行動であるのであるということを強く言い張つてつたのであります。従つて政府の戰力の解釈は、国内において治安維持確保の目的でできたものは戰力とは考えられない。専ら外敵を撃退する或いは外国軍隊と交戰することを目的として編成される場合には、これが軍であり、これが戰力であるという説明に一貫しておつたのであります。第三に、保安庁の長官、次長、官房長、局長及び課長等、幹部職員には旧正規陸軍海軍将校を任用しないという政府の原案は、衆議院修正において削除されているのでありますが、この点について政府の考え方を質しましたのに対し、政府は、何分にも軍隊に類似をいたしている実力部隊であるから、政治政策を支配するというような弊害に陷りやすい。これを民主主義を守るために予防しようという趣旨の規定であつたが、旧時代の一つの経歴というものを理由として、殊更に差別待遇をなすがごとき感を與えることは、今日の政治段階から見て適切でない。実行によつて効果を挙げれば、必ずしも法的に制限する必要はなかろう。こういう趣旨を以て削除したものである。こういう御説明でありました。これを削除したことによつて公然と旧正規陸海軍将校を保安庁の幹部として任用することはしないということを明らかにいたしております。第四に、六月中旬以来大きく新聞紙上に報道されておりまするアメリカからの千五百トン級のフリゲート艦十八隻、二百五十トン級の上陸用船艇五十隻の貸與を受けるという件について、貸與を受ける行政上の手続、交渉手続並びに今後生ずべき国庫負担の点等について、岡崎外務大臣、村上運輸大臣、大橋国務大臣等に対して質疑応答を重ねたのでありますが、政府は目下事務当局を通じて艦艇の貸與についてアメリカ極東海軍との間に下交渉中であつて、而してその下交渉は閣議の決定に基いての下交渉であるというのでありまして、正式の艦艇貸借協定等を締結する段階にはまだ達していないという説明でありました。この事柄と、それから憲法九條の解釈に関連する問題とは、質疑者と政府側との間には甚だしい見解の相違があることが認められたのであります。第五に、保安庁に置かれる海上公安局について、陸上の国家地方警察にも比すべき海上保安庁の事務、即ち海上における法令の違反の防止、海難の際の人命、財産の救助、港則法の施行、海上における犯罪捜査並びに海上における公共の秩序維持等を運輸省から切り離して、保安庁の附属機関たる海上公安局に所掌せしめるという点について質疑応答が重ねられたのであります。政府は、海上の特殊性を強調して、海上では陸上よりも一層緊密な連絡をとることが必要であるが、我が国は海岸線が長いにかかわらず、現有船舶の数は極めて乏しいので、専ら船の関係から相互に利用し合う必要があるので、海上公安局を設置することといたした。国家地方警察は、国家公安委員会の下に民主的に運営するので、これを保安庁に統一することは一方を犠牲にすることになるので除外したと申しておるのであります。大体これらの点について質疑応答を重ねまして、昨日討論に入つたのであります。鈴木委員外七名の委員から、保安庁法案及び海上公安局法案に対する共同修正案が提出せられました。その修正案は議決を経ましてお手許に差上げておりまするから、朗読及び説明を省略いたします。保安庁法案に対する修正案は、要するに、附則中第十七項を除き、本法施行期日七月一日を八月一日に改めること、及び海上公安局の所掌すべき事務は、海上公安局法案修正に基き、別に法律で定める日から施行することとなつておるのであります。次に海上公安局法案に対する修正案修正要旨は、この法律は別に法律で定める日から施行するという点であります。かくて討論に入りまして、中川委員は自由党を代表して、修正案を含めたる原案に賛成の意見を述べ、波多野委員は、保安庁、海上公安局は実際軍隊であり、軍備であつて、憲法に違反するものであるから、反対である。成瀬委員からも同様の趣旨で反対であるということを述べ、三好委員は改進党を代表して、本法案は、第一、憲法に違反するものであつて、法秩序を破壊するものである。第二に、保安庁の使用する装備、艦艇は、一にアメリカから貸與を受けるものであるから自主的ではない。第三に、本法案の各條は極めて彈力性に富み、緊要な部分を政令以下に委任しておる点は、陰に国防省を作りつつありとの疑惑を抱かせるものであつて、甚だ遺憾であるという、三つの点を挙げて反対の意思表示をせられたのであります。なお、その上、本法案は、艦艇その他武器の借受等、未決定の問題を含んでいるから、この法案は当然これを継続審査に付すべきであるという動議を提出したのであります。この動議に対しまして松原委員から賛成の発言がありましたから、これを採決に問いましたところ、三好委員の継続審査に付すべしという動議は委員会において否決せられたのであります。そこで採決に入りまして、両法案につきまして先ず修正案を採決いたしましたところ、多数を以て可決すべきものと議決し、次に修正案を除いた他の部分の原案について採決いたしましたところ、いずれも多数を以て可決すべきものと議決せられたのであります。即ちこの両案は修正可決すべきものと議決せられた次第であります。     ————————————— 次に、運輸省設置法の一部を改正する法律案について説明いたします。これも衆議院修正がありまするので、これが原案であります。提案の理由につきましては、これも又行政機構の改革の方針によつて提出したというのでありまして、その内容については大体二点あると思います。第一点は、運輸省の外局であるところの航空庁を内局とし、名称を航空局に改め、大臣官房観光部、海運局海運調整部、鉄道監督局国有鉄道部及び民営鉄道部並びに自動車局業務部及び整備部の六部を廃止すると共に、公共船員職業安定所を海運局に統合することといたしております。次に、大臣官房に観光監を置いて観光に関する事務を掌理させ、又鉄道監督局、自動車局及び航空局にそれぞれ次長一人を置いて局長を補佐させることにいたしておるのであります。改正の第二点は、海上保安機構の改革に伴う所要の整理でありまして、即ち、運輸省の外局である海上保安庁を廃止すると共に、海上保安庁海事検査部の所掌事務を運輸省の各局に分属させ、海上保安審議会及び水先審議会を運輸省に移し、水路部及び燈台部は運輸省の附属機関に改め、海難審判理事所は海難審判庁の附属機関とし、警備救難部の所掌事務のうち、海上交通の保安に関するものを海運局に移す等の改正をいたしておるのであります。最後に、この改正に伴いまして必要な関係法律の整理をも併せ行なつておるのであります。内閣委員会におきましては委員会を開くこと五回、審議を盡したのでありまして、その主な点を申上げます。第一には、運輸省の外局たる海上保安庁の廃止に伴う問題でありまして、海上保安庁が廃止されると共に、保安庁の附属機関として海上公安局が設置され、ここで海難救助の仕事が行われるのでありまするが、他面、海上保安庁の警備救難部の所掌事務のうちで、海難救助の基本計画に関する仕事は運輸省の海運局に移されることになつておりますので、結局海上交通の保安に関する仕事は二つの部門に分けられることとなるわけであります。併しながらこの点につきましては、海上交通の保安に関する仕事は、本来運輸省の所掌事務であるから、海上公安局は保安庁の附属機関とするよりも運輸省の管轄の下に置いて、そこで一元的に海上保安の仕事をなすことが最も適切であるという意見が述べられたのであります。第二点は、行政の簡素能率化を図るという政府の方針に基いて、局中における部を一律に廃止することは、事務の円滑なる運営を図るゆえんでないとし、官房の観光部、海運局の海運調整部、鉄道監督局の国有鉄道部、民営鉄道部、自動車局の業務部及び整備部を現状通り存置すべしという意見、及び航空局に管理部と技術部を設置すべしという意見が多数委員から述べられたのであります。討論の段階におきまして、鈴木委員から、この法律案の一部を修正する修正案が発議せられたのであります。この修正案は前と同様に朗読及び説明を省略いたします。併しその要点は次の点であります。第一には、観光部を現状通り存置して、原案の観光監を廃止すること。第二に、海運局に海運調整部を現状通り存置すること。第三に、鉄道監督局に国有鉄道部、民営鉄道部を現状通り存置し、原案の次長を廃止すること。第四に、自動車局に業務部及び整備部を現状通り存置すること。第五に、地方支分部局の港湾建設部を港湾建設局と改称すること。第六に、航空局に管理部及び技術部を設け、原案の次長を廃止すること。第七に、昭和二十七年八月一日から別に法律で定める日までの間は、海上保安庁は現状通り運輸省の外局として存置することであります。  かくて討論の後に採決をいたしましたところ、この修正案を含めて原案は多数を以て修正可決すべきものと議決いたしたのであります。     ————————————— 次に、総理府設置法の一部を改正する法律案及び国家行政組織法の一部を改正する法律案について説明をいたします。先ず、総理府設置法の一部を改正する法律案でありまするが、総理府設置法の一部を改正する法律案の内容は、現在総理府には十の行政委員会と五つの庁が、外局として設置されてありまして、総理府の所掌する行政事務の範囲は非常に広く且つ多岐に亘つておりますが、総理府内閣の首長としての総理大臣を長とする機関たるにふさわしいものとするために、各外局の行政事務は、できるだけこれを各省に分属せしめると共に、新たに国家公務員に関する事務、経済施策の総合調整に関する事務等を加えることとし、且つこれらの事務を遂行する機構についても、現在の複雑厖大な機構を極力整理簡素化し、事務処理の能率化を図る必要がありまするので、この法律案を提出いたしたのであります。その内容として挙げられておりますのは、第一に内部部局につきましては、大臣官房賞勲部及び統計局の人口部、経済部及び製表部を廃し、新たに特別な職として賞勲監及び統計局次長二人を置くことといたしております。第二に、現存の外局につきましては、公益事業委員会、外国為替管理委員会及び電波監理委員会はこれを廃止して、それらの事務をそれぞれ通商産業省、大蔵省及び郵政省に分属せしめ、首都建設委員会は建設省の外局に移管し、統計委員会はこれを廃止して、その事務行政管理庁に統合し、全国選挙管理委員会、地方財政委員会及び地方自治庁を統合して自治庁とすることといたしております。第三に、人事院及び経済安定本部の廃止に伴い、新たに外局として国家人事委員会及び経済審議庁を、又附属機関として新たに電源開発調整審議会及び資源調査会を設置すると共に、保安機構の整備を図るため新たに保安庁を設け、これに伴つて警察予備隊を総理府の機関から保安庁の所属に移すことといたしておるのであります。次に、国家行政組織法の一部を改正する法律案についての内容を説明いたします。これも衆議院において一部修正が加えられておるのであります。その内容は、第一に、従来行政機関たる府としては、総理府及び法務府が認められて置かれてあつたのでありまするが、今般の行政機構改革によりまして、法務府はこれを各省並に法務省と改め、その長を法務大臣といたすこととなつております。これに伴いまして、国家行政組織法規定に所要の改正を加えておるのであります。第二に、従来国家行政組織の一部をなすものとして規定されておつた公団は、すでに全部廃止されましたので、これに関する規定を削除することといたしております。第三に、府、省、委員会及び庁等の廃止統合並びに部等の廃止に伴いまして、別表を整理しておるのであります。内閣委員会は経済安定委員会連合委員会を三回、又内閣委員会独自に四回開会いたしまして、総理府設置法の一部を改正する法律案の審議に当つたのでありますが、その際、論議の中心となつた点の一つは、行政委員会制度の廃止に関する事柄であります。これら廃止される委員会のうちで、例えば全国選挙管理委員会、地方財政委員会、電波監理委員会等について、その廃止の非なるゆえんを多くの委員から強く主張されましたことは、すでにこれまで各設置法改正案委員長報告で御説明申しておいた通りであります。又原案では現行の賞勲部を廃止して賞勲監を置くことといたしておりますが、新たな見地に立つて、この国の恩賞制度を確立することから考えまするに、この恩賞事務を掌る機構を原案のごとく軽々しい取扱をするというとの是非につきましては深く考慮すべしという意見が多数の委員から強く述べられたのであります。次に、国家行政組織法の一部を改正する法律案にきましては、委員会を四回開きまして、その審査に当つたのであります。その議論の中心となつたのは、総理府及び各省の官房又は局に置く部は別表に掲げるものに限り当分のうちこれを置き得ることとして、以て部の濫設を防止せんとする点であります。次に、各省又は各外局及びその謀の設置をば現在各大臣又は外局の長に任しているのでありまするが、これらの課の設置について適正を期するために、これを政令で定めるということにすべしという意見が強く述べられたのであります。この二案につきまして、討論の段階におきまして、先ず竹下委員から、総理府設置法の一部を改正する法律案に対する修正案及び国家行政組織法の一部を改正する法律案に対する修正案が発議されたのであります。この修正案の朗読及び説明は、同様の理由を以て省略さして頂きます。併しその内容を簡單に申上げますれば、一、賞勲部を現在通り存置し、原案の賞勲監を削ること。二、統計局に調査部及び製表部の二部を存置し、原案の次長二人を削つたこと。三、原案で新設される国家人事委員会を削つたこと。これは現に人事委員会に付託されておりまするところの国家公務員法の一部を改正する法律案によつて決定されるべきものでありまするから、内閣委員会において、これをここに議決することはできないと認めまして、国家人事委員会を削つたのであります。第四には、原案の施行期日を改めたことであります。後の修正案の要点は次の通りであります、現行法では課の設置及び所掌事務の範囲は各大臣又は外局の長がこれをきめるということになつているのを政令で定めることとしたこと。第二は、総理府又は各省の官房又は局には当分の間別表に掲げる部を置くことができることとしたこと。第三には、原案の施行期日を改めたことというのであります。上條、成瀬、三好、波多野各委員から、この修正案を含む二つの原案は、すでに全国選挙管理委員会、電波監理委員会等の行政委員会の廃止に反対し、又保安庁の新設に反対し来たつた立場から反対せざるを得ないという発言がありました。中川委員からは、大蔵省、農林省、通商業産省の外局の庁の復活に反対し来たつた立場から、国家行政組織法の一部を改正する法律案に対する修正案については不満であるが、併しもはやこれらに関する各設置法の改正法律案が可決せられた以上は、この修正案を含む二つの原案に賛成する旨の発言がありました。かくいたしまして、総理府設置法の一部を改正する法律案に対する修正案について採決をいたしたところ、多数を以て可決すべきものと議決しました。次に修正案を除いた原案について採決しましたところ、これ又多数を以て可決すべきものと議決したのであります。即ちこれは修正議決すべきものと決定した次第であります。次に、国家行政組織法の一部を改正する法律案に対する修正案について採決をいたしましたところ、多数を以て可決すべきものと議決いたしました。更に修正案を除いた原案について採決いたしましたところ、これ又多数を以て可決すべきものと議決したのであります。従つてこの案も修正議決と決定した次第であります。     ————————————— 最後に、行政機関職員定員法の一部を改正する法律案について報告をいたします。政府は今回行政機構改革の方針下に各府省の設置法等の改正法律案を国会に提出いたしたのでありまするが、行政機関職員定員法の一部を改正する法律案は、この機構改革に伴つて、各府省庁等の定員に所要の改正を行うことを主たる内容といたすものであります。改正の第一点は、現行定員に対する実質的な増減でありまするが、先ず今回の機構改革で廃止される官庁のうちで、経済調査庁につきましては七百四十七人を、経済安定本部につきましては百二十六人をそれぞれ減員いたし、残余は関係各省庁に移し替えることといたし、又調達庁につきましては、事務の縮減に伴つて千九百九十一人を減員することにいたしております。次に、今回の機構改革に伴いまして、長官、次長、局長、部長の職で不要となるものがありまするので、これに相当する定員として各府省を通じて合計六十人を減員いたしております。更に、これは直接機構改革とは関係ありませんが、本年七月一日から石油の配給統制が廃止されまするので、各省を通じてその関係職員六百四十二人を減員することとなつております。又実質的な増員といたしましては、保安庁の営繕に当る職員として、北海道開発庁に七十五人、建設省に六百二十五人を、海上安全の充実のために新設保安庁に四百人を、又船舶の動靜調査のため運輸省に六人をそれぞれ増員することといたしております。このほか、現在すでに国会に提案され、国会で審議中の各種法律案によつて現行定員法に追加されることになつておる定員増合計六百八十九人も今回の定員法改正案に織り込まれておるのであります。改正の第二点は、現行定員に対する形式的な増減でありますが、一般職から特別職に振替えられるために定員法から削減されるものとして海上保安庁の航路啓開門係職員等千八百三十九人、新たに内閣法による機関となるために定員法の適用範囲外となるものとして法制局の六十一人があります。又日本電信電話公社及び国際電信電話株式会社の新設に伴い、現存電気通信省の職員十五万四百十八人は、監督要員として郵政省に移される者十人を除いて、全部定員法の定員から削減されております。一方、形式的な増といたしましては、従来内閲機関であつた人事院が今回の機構改革によつて総理府の外局たる国家人事委員会となるに伴いまして、その職員九百二十人が定員法の定員に加えられることになつております。以上の実質的及び形式的な増減を通算いたしますると、増員二千七百三十七人に対し減員十五万五千八百九十六人でありまして、差引現行定員に対し十五万三千百五十九人の減員となつておるのであります。改正の第三点は、各府省庁の間の定員の移動であります。今回の機構改革によつて経済安定本部が廃止されるほか、相当数の委員会及び庁が廃止され、その事務が本省又は他の官庁に移行されるのでありますが、これら廃止される行政機関の定員は、これをその事務を受け継ぐ行政機関に移し替えることとされております。改正の第四点といたしましては、今回の機構改革により、法務府が法務省となり、経済安定本部が廃止されるに伴つて、現行定員法の條文中、法務府、経済安定本部、法務府令、経済安定本部令等の字句がありまするのを削除することといたしております。又現行定員法によれば、引揚援護庁の職員の定員は、引揚援護事務の状況により政令でこれを増員し得ることとなつておるのでありますが、今回同庁が厚生省の内局となるのを機会に、この規定を削ることといたしております。改正の第五点は、前国会における定員法の改正の際、通商産業省について認められた暫定定員に関するものでありますが、現行法によりますと、同省の本省の定員は、本年九月末までは八千二百五十六人、十月一日から十二月末までは八千百四十三人と定められておりますが、同本省の基本定員が変更されるのに伴い、この数をそれぞれ一万四千三十一人及び一万三千九百十八人と改めることにいたしております。最後に、今回の改正による人員の整理を円滑に実施するために、一定期間を限り、新定員を超える員数の職員を定員外に置くことができる措置をとることといたしております。即ち調達庁の職員及び行政管理庁に引継がれる経済調査庁関係職員の整理のために、これら両庁については明年三月末まで、その他の行政機関については本年十二月末まで、それぞれ定員を超える員数の職員を定員外に置き得ることといたしておるのであります。なお通商産業省の本省につきましては、先に申述べました通り、本年十月一日を境として、その定員に段階を設けております関係上、今回の改正によつて新たに実質的に減員となる二百十五人という数を特に明記して定員外の定めをすることといたしております。以上がこの法律案提案理由及び内容の概略であります。内閣委員会は経済委員会連合委員会を四回、又内閣委員会独自の会を二回開きまして、この法律案の審議をいたしたのであります。今回の改正は人員整理を主としたものでなくて、機構改革に伴う定員の増減でありまするので、特に論議せられた重要な問題はなかつたのであります。最後に討論の段階におきまして、楠見委員から原案の一部を修正する修正案が発議されました。その修正案及びその理由につきましては、前と同様の理由を以ちまして、ここに説明を省略させて頂きます。併しその要旨は次の点であります。第一に、各省又は各外局の庁の設置法の一部を改正する各法律案に対する修正が行われました結果、これに伴つて調達庁の定員は原案より九百八十六名増加し、行政管理庁の定員は原案より四百五十六名増加し、経済審議庁の定員は原案より二十三名増加し、国家人事委員会の定員九百十六名が削除せられたのであります。第二には、南方連絡事務局が総理府の附属機関として先に新たに設置せられましたに伴いまして、総理府水府の定員が二十七名増加いたしたこと。第三には、定員の合計が原案に比して五百九十四名増加したこと。これであります。上條、三好成瀬各委員から、修正案には特に反対ではないが、修正案を除いた原案には反対である旨の発言がなされました。かくて修正案を含む原案について採決をいたしましたところ、多数を以て修正議決すべきものと決せられたのであります。以上を以ちまして日程各案の報告はここに終了いたしたのであります。     ————————————— 結論といたしまして、去る二十一日の本会議に報告いたしました点と対照をいたしまして、整理の結果を申述べたいと思います。最も重要なる事項といたしましては、法務府を省とし、法制意見三局を法制局として内閣に移した点、電気通信省を廃止して公共企業体といたした点、経済安定本部を廃止して総理府外局の経済審議庁を設置した点、保安庁を設置して総理府外局といたした点は、政府の提案の最も重要なるものの実現を見たことと考えられるのであります。ただ、人事院の廃止に伴う国家人事委員会は、人事院の廃止が内閣委員会権限に属せざるを以て、これが実現を見なかつたものであります。次に、行政委員会は二十三を廃止して十四とする政府の元の考えは、その全部が認められたのであります。但し新設の法務省に公安審査委員会が設置せられ、国家人事委員会は一応原案から削除せられたのであります。庁につきましては、原案通り廃止を認めたものは七つ、修正案によつて復活いたしたものが四つ、期限付き又は法律で定める日まで残存するものが二つ、合計六であります。又新設が三つあります。即ち保安庁、経済審議庁、公安調査庁、これであります。局につきましては、増加が一つ、原案は九十二を整理して七十四とするという説明でありましたから七十五局となつたわけであります。部につきましては、原案では三十四部を廃止したいというのに対しまして、委員会は二十六復活をいたしました。故に廃止は八つであります。監は全部これを認めなかつたのであります。かような結末と相成つております。最後に私は、連日四十四回に亘つて審議をいたし、夜分まで延長したのが十六回になつております。委員諸君の熱心な御意見によりましてこの修正案ができましたことを実に欣快とするのであります。その間におきまして委員諸君から行政整理について傾聽すべき有力なる御意見が発表せられたのであります。国家のこの行政組織は将来もなお常に改善をしなければならんということは、これは最も必要なことと考えまするから、それらの参考に資するために只今委員会において述べられた有力な御意見と考えられますものを少々挙げまして、後の御参考に供したいと思います。第一は、現行の法律政令等の整理を断行することであります。最近の立法は複雑繁多を極めておりまして、あらゆる小さなことまで法律を以て規定せんとする傾向が著るしくなつております。又議員立法等におきましては、予算措置の決定もなくて、国費の巨額な支出を顧みないところのものもあります。かくのごときことは、過去のこれまでの現行法律政令の整理を断行すると共に、これらの点についても十分考えなければならないと思います。即ちこれは、極端にこの議員立法が進みまするならば、三権分立の趣意に反するものではないか、又立法府が政府行政権を侵害するということにもならないかと考えられますと同時に、立法の権威を失墜する慮れがあると信ずるものであります。第二は、国家予算の編成方法を改善して欲しいものであります。これが又行政整理において大変に役に立つと思います。これまでの予算のごとくに、誰が見てもわからないような旧式な予算の書き方は、誠に困つたものであります。これらはどうしても改善して欲しいと考えます。第三には、地方財源の鞏固を図つて地方自治制の確立を期することであります。又中央と地方の事務の再分配を検討いたしまして、地方自治体の機構の中の煩雑なものを整理することが絶対に必要であるという点であります。第四には、中央行政府組織を簡素にし、権限を強力にし、責任を明らかにするために、課の整理統合を行なつて、有力なる課長を重用して事務を執行することであります。これに従いまして、局の次長であるとか或いは部であるとかいうような不明瞭なこの組織を整理することができると同時に、局の数までこれを減少することができると信ずるのであります。併しこれを実行するがためには、どうしても、国家公務員の処遇を改善することが必要であります。第五には、信賞必罰の主義を嚴明にいたすことであります。第六には、フーバー・コンミツシヨンのごとき組織を作つて、二年若しくは三年を期して適切なる行政機構改革案を作成することが必要であると認めております。行政整理の過去の実績を考えてするときに、單独強力内閣であつても、よき案を得ることは至難であります。特に連立内閣においては殆んど不可能であるかと認められます。故に、政府と離れて、これを検討する有力な機関を設置することが必要と思います。アメリカにおいてのフーバ一・コンミツシヨンはよき例であると信じます。かような事柄が、委員会において、委員長として伺いました有力な意見でありまするから、これを紹介いたしまして、結論として将来の行政機構改革の一つの参考に資したいと思います。最後に、委員諸君、関係職員諸君の御盡瘁に対しまして深甚なる敬意を表します。これを以て報告を終ります。
  55. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 保安庁法案に対し、少数意見者から報告することを求められております。三好始君。    〔三好始君登壇拍手
  56. 三好始

    ○三好始君 内閣委員会に付託されておりました重要議案でありました保安庁法案は、昨日の内閣委員会において多数を以て可決せられたのでありますが、問題は極めて重要でありますので、私はここに少数意見報告をいたしたいと思うのであります。報告に先立つて一言申上げておかなければならないのは、最近における国民の政治不信の傾向についてであります。国民は、積極的に或いは消極的に、今日の議会政治に不信の態度を強めつつあることは、否定できない事実であります。(「その通り」と呼ぶ者あり)そのよつて来たる理由がどこにあるかは、人によつて見るところを異にすると思いますが、私は、その最大なるものは、政治権力の地位にある者の真実無税の態度にあることを指摘しなければなりません。(拍手)占領されて以来の政治が独立を回復した今日に至つてもなお真実を追求する良心と勇気と自主性に欠けているところに理由があることを痛感いたすのであります。その最も代表的なものが平和主義的憲法の下において行われつつある国家の武装の問題であります。国家にとつて自衛手段が必要であるかどうかの問題と、現行憲法の下で自衛力の具体化を図ることの是非の問題は、別問題であります。心ある国民は、日本が敗戰によつて憲法を與えられ、今又平和憲法の下で事実上の軍備を與えられつつある現実に、深い悩みを感じつつあります。それは、自衛を問題とせざるを得ない国際情勢の重圧だけが問題なのではありません。独立したはずの日本の政治に真実の独立があるのかないのか。憲法秩序といえども力の前には破られざるを得ないものであるかどうかについて苦悩を感じているのであります。そこには国民に知らされない秘密があつて、物の順序と納得がないのであります。私は、内閣委員会において、約二ヵ月間に亘る保安庁法案審議を通じ、今日の日本の政治の縮図を体験したことを、率直に申上げねばなりません。(拍手)総論的な問題として、第二に申上げなければならないのは、政治における條理の尊重の問題であります。幼稚な頭脳の持主が犯すところの、手段をわきまえずに結果を急ぎ、中間過程を抜きにして先走りするというがごとき過まちを政治が犯してはならないということであります。保安庁が必要であり、保安隊、警備隊が必要であると認めている人々は、現行憲法の下においても、外国よりの直接及び関接の侵略に対し、国家としてこれに対抗し、国家機関たる保安隊、警備隊が出動するのは、自衛手段として当然であるとの考え方に立つていると認められます。一般国民がただ外敵のなすがままに任せているはずはなく、これに抵抗することが正当防衛として許されるがごとく、保安隊、警備隊の行動も当然だと思つているようであります。私は、政府を初めとして、国会内部においても、このような單純にして素朴な考え方が行われていることは、了解するのに苦しむのでありますペーグの陸戰條規によりますと、正規の軍隊でないものが交戰資格を與えられる場合として、義勇兵団と群民蜂起の規定があります。義勇兵団は、統率者があつて、隊員が一定の記章を付けて敵対行動するものであり、群民蜂起は、統率者を選んだり記章を付けたりするいとまがなくして、所在の民衆が外敵に抵抗する場合でありますが、これらは国際法上の交戰資格を認められております。問題の憲法第九條は、国家としての交戰権を放棄しているだけだから、以上のごとき国際法上認められた民衆の自発的抵抗手段は禁止されてはおらないと考えられます。ところが「国の交戰権は、これを認めない」のだから、国家機関が国家意見として外敵に対抗することは、憲法上は不可能である。現実の問題として果して適当なりや否やは別として、これが憲法の命ずるところであります。法はたとえ悪法なりといえども無視することは許されません。それは改正を待つてのみ適用を止めることができるのであります。これは文明国の常識であり、国家生活の秩序を維持するための民主政治の原則であります。今回の保安庁法案審議報告に際し、私は先ず以上の点を強調しておくことの必要を痛感いたすのであります。以下具体的に保安庁法案に対し反対の理由説明して参りたいと思います。政府説明によりますと、保安庁は国内治安維持のために設けられるものだというのでありますが、治安の維持とは、別の表現をすれば、法秩序の維持であります。ところが保安庁法は、憲法規定に違反し、憲法の秩序を破壊するものであつて、法秩序の維持に任ずべきものが先ず出発点において最大の法秩序破壊を犯しているのであります。この点は、私が本法案に反対する第一の理由であります。(拍手)反対の第二の理由として指摘しなければならないのは、保安庁機構運営の物的手段としての保安隊、警備隊の装備は、米軍の貸與に待つものであり、貸與兵器並びに艦艇の種類、数量等は、我が国の発意と自主的判断によつて決定されるというよりは、むしろこれらの決定のイニシアテイヴは米軍にあると思われる点であります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)即ち、国内治安の維持、国家自衛の手段が自主的に決定されていないということであつて独立国の名に値いするかどうかに大いに疑問を持たざるを得ないことであります。而も貸與條件は未定であり、貸與に関する国内法上の手続すら未だ明確になつておらないのであります。反対の第三の理由は、保安庁法案規定が極めて彈力性のある表現に終始し、而も重要な具体的内容を政令又は総理府令に委任しているため、部隊の組織、編成、装備、訓練機関等から始まつて、その実体と行動の内容を予測することが困難であつて、国会の監督を不十分にし、民主政治に反するという点であります。もつとはつきり言えば、このような彈力性のある規定によつて保安庁の国防省的性格をカムフラージユしていることであります。以下これらの諸点に関し、内閣委員会における審議を通じて明瞭になつたところを中心に、問題を明らかにしてみたいと思うのであります。先ず憲法違反性の問題でありますが、具体的に保安隊、警備隊が憲法違反の存在であるかどうかを決定するには、先決問題として、基準となるべき憲法の解釈自体を明らかにしておかなければなりません。本法律案審議に当つて内閣委員会において憲法論が長時間に亘つて論議されたのはこのためであります。保安隊、警備隊が憲法に牴触するや否やを判定する上に関係のある憲法の主たる條文は、第九條第二項であります。即ち第九條にいう戰力放棄の意義は如何なるものであるか。「交戰権は、これを認めない」とは如何なるものであるかが先ず明らかにされねばならないのであります。この点に関する従来の国会の論議は、極めて活溌を極めたかに見えて、実は單純で素朴な議論にとどまつていたことは、遺憾なことであつたと言わなければなりません。政府は、予算委員会において、戰力とは近代戰を有効適切に遂行し得る編成装備を持つたものであつて時代により、国際情勢によつて異なるところの相対的なものであると主張して参りました。これに対し、予算委員会においては、野党側より潜在戰力も憲法違反であるとの反対論が述べられたことは、余りにも有名であります。率直に言えば、これはいずれも憲法の正しい解釈論としては十分ではないのであります。殊に、政府憲法解釈は、国際法の原則憲法の平和主義的構造に全く目を蔽い、憲法規定を離れて、抽象的な戰力の定義を弄んでいる暴論であることは、識者の常識であります。(「その通り」と呼ぶ者あり)成るほど法を離れた抽象的な概念としては、戰力の意義は相対的であり、固定的ではありません。併しながら、実定法に規定された用語の意義は、このような不確定極まるものではないのであつて、或る程度限定された客観的な意義が考えられねばなりません。即ち憲法が戰力を保持しないという規定を設けた趣旨は、解釈上おのずから論理的な限界があるはずであります。それは何であるかと申しますと、攻撃目的にせよ、自衛目的にせよ、対外的な対抗の意図を持つた武力は、名目の如何に拘わらず、これを保持しないということであります。換言すれば、武力を保持する国家の意図が外敵に備えんとするものである限り、憲法第九條第二項の禁止する戰力であるということであります。第九條第一項が、国際紛争を解決する手段として、戰争に限らず、一切の戰力を用いないことを規定したのに対し、第二項は、それを確保するため、名目の如何にかかわらず、一切の対外的意図を持つた武力を保持しないことを明らかにしたものであります。そこには対外的な目的を以て保持し得る武力の程度問題のごときは全く考慮の余地が残されておりません。即ちこの場合、近代戰遂行能力に達しているかいないかのごときを問題にするのはナンセンスなのであります。これが憲法第九條の正しい文理解釈であると共に、憲法全体の平和主義的構造の正しい認識に立つた理論的帰結であります。このような対外的意図は、軍と名付けられた部隊を保持する場合には明瞭に現われておりますから、勿論許されないのでありますが、軍と名付けられていない実力部隊についても、それを設ける意図がどこにあるかが客観的に判断せらるべきものであります。若しそれが外敵対抗を予想して設けられるものである限り、保安隊と名付け警備隊と名付けてみたところで、憲法の容認しないところであることは、解釈論として明瞭であると言えるのであります。潜在戰カの問題のごときも、かかる考え方から申しますと極めて明快に解決できるのであります。政府及び一部の学者は、憲法が潜在戰力をも禁じているものとすれば、一般警察は勿請、人口も、産業一般も潜在戰力たり得るのだから、一切の産業活動も国民生活も不可能になる。従つて潜在戰力違憲論は正しくないと主張しておるのであります。これは潜在戰力としての可能性の問題と潜在戰力の意図の問題を混同するものであつて、外敵対抗の意図を以て保持する場合、潜在戰力が初めて違憲であるということを見落している幼稚な議論なのであります。一方、潜在戰力が無差別に違憲であるという素朴な議論も、憲法論としては正当であるとは言えないのであります。そこで、保安隊、警備隊が違憲であるかどうかを判定する上に先ず検討しなければならないのは、兵員、装備を中心とした相対的な戰力論争ではなくて、このような武力機構を設けんとする政府の意図が対外目的にあるかどうかの一点に始まらなければならないのであります。私は委員会審議で先ずこの点の究明に全力を傾けたのであります。先ず理論的な前提として、主として対外的な意図を以て設けられた部隊は近代戰遂行能力に達しなくても違憲であることを、大橋国務大臣は率直に認めるに至りました。これは六月六日及び六月七日の会議録に極めて明瞭に繰返して記録されております。これに対して木村法務総裁は六月二十六日の内閣委員会で、そういう考え方もあり得ると思うけれども、自分としては近代戰遂行能力が戰力であると解釈すると答えて、政府部内に憲法解釈上の混乱があることをはつきり示したのであります。この点に関する限り、私は大橋国務大臣の答弁が良心的であり、木村法務総裁の答弁には違憲の追及を免れるための法制意見局苦心の作為のあとがありありと見えるのであります。ところが政府は、大橋理論をとつても木村理論をとつても違憲であることを免れることは不可能であります。即ち政府としては違憲論争の上からは進退両難に陷つていることは、もはや動かし得ない事実なのであります。即ち、大橋国務大臣は主として外敵に対抗する意図を持つた部隊は違憲であることを認めたのでありますが、警察予備隊創設以来今回の保安庁法律案提出までの間に、これらの部隊が外敵に当然対抗するものであることは繰返して述べられたところでありまして、これらの証拠資料としての速記録は枚挙にいとまがないほどに数多く記録されておるのであります。政府の主観においてそうなのでありますが、更に客観的にも、現にライフル銃に始まつて重機関銃、バズーカ砲、迫撃砲等を多数持ち、更に戰車、航空機等を以てする装備を急がんとしている部隊の意図が、治安を乱すところの一部国民を目標にしているとは到底考えられないのであります。それは警察の手段を遙かに超えるものであります。従つて、大橋国務大臣が憲法の解釈論として、外敵対抗の意図を有する部隊を持つことは違憲であることを認めたことは、予備隊、保安隊の違憲性を自認したものと言わざるを得ないのであります。この辺の事情がわかつたためであるかどうか、大橋国務大臣は後に至つて憲法問題は法務総裁が主管大臣であると言い出しました。ところが木村理論は、これを追及してみますと、陸海空軍と名付けられたものを保持しても、客観的に近代戰遂行能力に達しない限り違憲ではないというところまで到達するのであります。これは六月二十六日の内閣委員会速記録に明瞭に記録されているところであります。これはまさに木村理論が到達せざるを得ない運命であつたのでありまして、逃げ廻つていた船が陸へ乗り上げてしまつたと評するほかはないのでありまして、近代戰遂行能力に達しないと政府が認定する限り、陸海空軍と名付けられた部隊を持つても差支えないという理論が、「陸海空軍その他の戰力は、これを保持しない。」という憲法の明文と両立し得るかどうかは、問わずして明らかであります。(「詭弁だ」と呼ぶ者あり)このように憲法理論の上で進退両難に陷つた政府を、なお且つ弁護しようという篤志家があれば、私はいつでもこれと対決する用意があります。若し本法案賛成者が、この程度の部隊を持たないと安心できないというような、極めて通俗的で何ら憲法問題の本質に触れない幼稚な立場にとどまるならば、甚だ遺憾な態度と言わざるを得ません。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)先ほど申しました通り、法はたとえ悪法なりといえども無視すべきではないのであつて、法改正の手続を待つて欠陷を是正するほかに文明国のとり得る途はないのであります。政府が若し自衛機構の必要を認めるならば、憲法改正を堂々と提議すべきであります。政府はそれを問題にしないだけでなく、憲法改正しないと言明しながら対外的自衛力の具体化を急ぎつつあることは、法秩序を破壊するものであり、憲法違反として糾彈されることを免れないのであります。(拍手、「その通り」と呼ぶ者あり)本法法律案憲法違反性の第二の問題は、「国の交戰権は、これを認めない。」という憲法の明文にもかかわらず、外敵と交戰する意図が明らかに予想されている点であります。政府は、保安隊、警備隊が外敵に対抗しても、それは国内治安維持のための警察行動であつて、自衛戰争ではないと主張しているのであります。即ち、この場合の保安隊、警備隊の行動は、国際法秩序維持のための軍事行動ではなくして、国内秩序維持のための警察行動である、従つて外摘に対しても国内法を適用するのだと弁解しているのであります。侵入外敵に対し日本国刑法の騒擾罪を適用しようというがごとき答弁を、私は正気の者が言う言葉として受取るわけには行かないのであります。国家として武力を以て外敵に対抗する場合、国際法上の交戰状態が発生するのは当然であつて、交戰に伴つて生ずる法律関係が、宣戰布告をすると否とにかかわらず、国際法関係であることは、否定できないのであります。これを強いて国内法関係として説明しようとした政府は、相手国が宣戰布告をして侵入して来た場合はどうするかという私の質問に対し、全く答弁することができなかつたのであります。国際法上、戰争は合意を要せずして成立するという原則があるからであります。このようにして、違憲論に答えた政府答弁は、我々を納得させる何ものも見出すことができなかつたのであります。次に私は本法案に反対する第二の理由として、保安隊、警備隊の装備の内容独立国家としての自主性のない状態できめられている点を指摘しなければなりません。現在までの使用武器は米軍の貸與に待つているのでありますが、これは米国と我が国、又は米軍と警察予備隊との間に、正式の協定乃至契約ができて貸與が実現しているのではございません。全く予備隊の顧問将校の個人的責任において事実上の使用をしておるのに過ぎず、貸與條件は何ら明確にされておらないのであります。将来の問題としても、有償なのか無償なのか、返済條件はどうなつておるのか、全く不明確であります。而も、如何なる武器をどれだけの数量貸與されるかは、米軍の発意と示唆に基いて決定されるという、自主性のない状態に置かれておると認められるのであります。米軍顧問将校の地位も、單に事実上の問題だというだけで、その法的地位は何ら明らかになつておりません。吉田内閣独立回復に当つても、自主性のある独立国家の政治への切換えを忘れ、精神的に依然として占領下の状態から脱却し得ないという風潮の原因を作つております。国民的誇りと勇気を見失つたかのごとき政治の継続が見受けられます。これは吉田内閣の最大の失政であると言わざるを得ません。本法律案の実体をなす具体的事実の中にもこれが明瞭に現われておることを私は遺憾に思うのであります。反対の第三の理由として、保安庁法案規定が余りにも彈力性に富み、解釈上の幅が広く、而も具体的な内容の多くは政令又は総理府令に委任してあるため、いよいよ捕捉しがたいものになつている点を挙げなければなりません。例えば法案第四條によりますと、保安庁の任務は、「わが国の平和と秩序を維持し、人命及び財産を保護するため、特別の必要がある場合において行動する部隊を管理」することが主たる内容になつておるのでありますが、「特別の必要がある場合」とは如何なる場合か、甚だしく不明確であります。それは第六十一條以下に書いてあると言うのでありますが、第六十一條には「内閣総理大臣は、非常事態に際して、治安の維持のため特に必要があると認める場合には、保安隊又は警備隊の全部又は一部の出動を命ずることができる。」と規定しております。ここに言う非常事態とは如何なる場合か、はつきりいたしません。暴動も含まれるし、外敵侵入、従つて事実上の戰争も含まれるというわけであります。又第六十八條には、「保安隊及び警備隊は、その任務の遂行に必要な武器を保有することができる。」と規定してあります。任務の遂行に必要な武器とはどの程度のものであるか、全く限界がありません。現にライフル銃から重機関銃、バズーカ砲、迫撃砲を保有し、航空機、戰車が次の装備として予定されておるのであります。而も保安隊、警備隊の組織編成は政令で定めるのであり、第一幕僚監部、第二幕僚監部の内部組織規定するのは総理府令であり、第一幕僚長、第二幕僚長の監督を受ける訓練施設その他所要の機関を定めるのは政令である等、重要なる問題を余りにも多く立法事項から外してるおのであります。このような内容の不明確な、限界のわからない法律は、民主主義国家法律として形式的にも不適当であります。警察予備隊、海上警備隊を統合して、このような彈力性のある法律を作ろうとする政府の真意は一体どこにあるかが問題であります。保安庁法案審議を通じて私が推測し得たのは、国内的には警察であると説明し、アメリカに対しては軍隊であると説明できるような状態を作るという、性格の二面性を実現しようとしておるものと認められるのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)即ち、アメリカはヴアンデンバーグ決議に基いて、自助と相互援助の原則に基かないところの他国の国内治安の維持のごときものには軍事援助をしないという方針が確立しておるところに、今回の保安庁法案提出された最大の事情があると考えられるのであります。そこで、今回名称を保安隊、警備隊と改め、條文から警察補充的表現を一切削除して、性格に彈力性を與え、アメリカからは軍隊として公けに武器貸與その他の軍事援助を期待し、国内的には警察であることを説明して、違憲の追及を免れる方法を案出しようとしたのが、保安庁法案提出の真意と認めることができます。かかる政府の意図は掌を指すがごとくに明瞭に指摘し得ると言えるのであります。以上私は保安庁法案の主要なる問題点を指摘したのでありますが、本問題の影響するところは極めて広汎であり、且つ重要であります。かかる法律案を認めることは、良識ある国会議員のとるべからざる態度であつて、このような法案が成立することになれば、今日の心ある国民は勿論、後世の国民に国会の権威と能力を疑わしめることになることを恐れるものであります。(拍手)ただそれだけではありません。政治的方便のためには、憲法の骨格さえも歪めることができるという例を政府みずからが示すことは、正義と秩序を基調とする法の権威と国民の良心を破壊するところの最大の罪悪を犯すものであります。今日我が国は、社会的にも政治的にも無秩序と分裂の傾向を示しつつあります。敗戰に打ちのめされた日本国家独立と繁栄を期待するには、現在各方面に見られる国論の分裂は速かに克服しなければなりません。それには、特に政治家が真に良心と誠実を持つて、国民に真実を語り、真実を訴えなければなりません。政治的方便のために言葉を繕い、一時を糊塗し、遂には憲法さえ僞わるがごとき野蛮政治が行われるならば、民族の前途は誠に憂慮すべきものがあります。占領軍から憲法を與えられて、これに従い、軍隊設置を示唆されて、今度は憲法を僞わつてこれに従うというがごとき自主性のない状態が、独立回復後においても続けられる限り、真実を追求せんとする国民の胸に深い憤りと苦悩を感ぜしめずにはおきません。純真なるべき学徒が暴力的な狂態を示すのも、その由来するところの多くが今日の政治の真実無視の態度にあることを、政治権力の地位にある者は深く銘記すべきであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり、拍手)私は少数意見報告を終るに当りまして、今日の政治の段階こそ、国会議員国家の光栄ある独立のため良識と勇気を持つて行動すべきときであることを強調いたすものであります。(拍手
  57. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 保安庁法案及び海上公安局法案に対し討論の通告がございます。順次発言を許します。成瀬幡治君。    〔成瀬幡治君登壇拍手
  58. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 私は日本社会党第四控室を代表いたしまして、只今議題となつております保安庁法案並びにその関係法案に対して反対をいたすものでございます。反対する第一の理由は、保安庁設置は憲法違反であるからであります。我が国の平和憲法は、第二次世界大戰の惨澹たる経験からいたしまして、平和を心から熱望し、平和を悲願として、すべての武力を放棄し、たとえそれが自衛の戰であれ戰争はやらない。なぜなら、今までの戰争は、たとえそれが侵略戰争であつたといたしましても、その多くが自衛戰争という名目で戰われたためであります。国民の戰争に対する深い反省と平和愛好の熱意によつて、世界にその例を見ないところのいわゆる平和憲法が制定されたのであります。なお、当時の占領軍司令官であつたマ元帥も、日本は東洋のスイスたれと指導され、この平和憲法成立に対しては満腔の敬意を表されたところでございます。    〔議長退席、副議長着席〕 又国会におきましても、ただこの武力放棄に反対されたのは共産党の野坂參三氏のみであつて独立国家に武力のないことはおかしいという意味のことを述べられておるのでありますが、他の議員全員は、この平和憲法を、文字通り永遠に戰争を否定して武力を放棄したところの平和憲法に心から賛成され、祝福されて、制定されておるのであります。ところが、この武力を放棄した平和憲法も、米ソ対立が深刻化すると共に、又、朝鮮動乱が起り、国連の警察行動がとられるようになつて冷たい戰争が熱い戰争に変貌を来たして来ますと、との解釈がだんだんと変化をいたして参りました。今国会の予算委員会におきまして、吉田総理は、自衛のためなら現憲法下において再軍備ができるような意味の答弁をして、その翌日、慌てて、自衛のためでも戰力を持つことは再軍備であつて、このためには憲法改正が必要であると訂正発言をされておるのでございます。たとえそれが不用意から出た発言であつたといたしましても、これを不用意であるとか、耄碌したというような一語で片付けることは、余りにも私は重大な発言であると考えます。これは、つい肚にあつたことが出てしまつたと見るべきものであつて、(「その通り」と呼ぶ者あり)現政府憲法解釈の一方向を暴露したものであると言うことができるのであります。政府は、本法案提案に際しまして、その理由として、警察予備隊と海上警備隊を一緒にして一体的運営を図ることが、機構が簡素化し能率的であるから、性格並びに任務等は何ら変化は加えておらないこの保安庁を設置すると言うのでありますが、警察予備隊令の任務の第三條第二項に「警察予備隊の活動は、警察の任務の範囲に限られるべきものであつて、いやしくも」云々とあるのでありますが、これが保安庁法では全く削除されて、第四條に「特別の必要がある場合において行動する部隊を管理し、運営し」云々とあるのであります。これではその任務が一変しておるのであります。性格、任務は変つていないと言明しておりましても、一朝有事の際を予想しての行動部隊であることには間違いございません。警察の補助機関でなくて、この行動部隊は完全に独立した機関となつたのであります。この独立した行動部隊は、長官の下に、第一幕僚長、第二幕僚長がおのおの管区総監隊並びに方面総隊を指揮し、部隊は機関銃からバズーカ砲、タンク、野砲、迫撃砲と装備を整え、このほかに曾つての機甲部隊のごとき特科連隊を持ち、又偵察用の飛行機を持つことを計画希望しておるのであります。又海上関係は、呉、横須賀、舞鶴に地方総監部が置かれ、三連合隊に編成されております。又、隊員は十四階級或いは十五階級にそれぞれ階級が区別されておるのでありますが、その装備、規模、訓練から判断しまして、これは、もはや保安庁という名称でなくて、むしろ国防省の名前のほうがふさわしいことになつておるのであります。新聞紙上に政府の再軍備計画を、お玉杓子は蛙でないとか、袖や袂で隠しても隠せなくなりましたというふうに諷刺しておるのでありますが、これは政府は、口を開けば、予備隊、警備隊は軍隊でない、再軍備はやらないと繰返しておるのでありますが、もはや国民大衆の目をごまかすことのできないことを示しておると見るべきであります。なお、このことは、本法案審議に際して、大橋国務大臣は、警察予備隊は外敵の侵入が仮にあつた場合には、国内治安のため、その侵入の外敵と戰う任務を持つておると答弁されておるのでありますが、これはその性格、任務を明らかにされたものであります。即ち、自衛戰争及び自衛戰争としての潜在戰力を否定放棄しておる憲法の下で、自衛のための交戰権を認められておるのであります。曾つて歌に、東洋平和のためなら何で生命が惜しかろうという歌があつたのでありますが、今や自衛のためなら何で生命が惜しかろうと、政府憲法を蹂躪して進軍ラツパを吹かんとしておるのであります。これでは憲法の前文にある「われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす惠沢を確保し、政府の行為によつて再び戰争の惨禍が起ることのないようにすることを決意し」云々と、又「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」云々、及び本文第二章戰争の放棄の項の第九條、「国権の発動たる戰争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戰力は、これを保持しない。国の交戰権は、これを認めない。」この解釈は、制定当時を思い、忠実に解釈するならば、政府の言うところの外敵侵入に対して戰う、いわゆる国際紛争をも武力を用いないし、又そのための武力及び潜在戰力の保持を禁止しておるのでありまして、予備隊が国内治安のための警察力の補助力であると同時に、他面、外敵と交戰することを覚悟し、見越して、装備を整え、訓練、規模を図ることは、明らかに解釈の範囲を越えた解釈であり、その本質、実質を変えるものであつて、解釈ではないのであります。(「憲法違反だよ」と呼ぶ者あり)法は政府の独善的解釈で決定されるものではありません。吉田内閣は現憲法下に生れた政府であります。その政府憲法を無視しておるのであります。政府はみずからその手で憲法を破つておると申しても差支えないのでございます。これは明らかに憲法違反であり、我が党が最高裁へ憲法違反の提訴をしておるのもこれがためであります。即ち反対の第一の理由は、保安庁設置は憲法違反であるから反対をするのであります。次に第二の反対の理由は、予備隊、警備隊はその独立性と自主性を欠いておる点であります。先ず例をとりますなら、予備隊、警備隊の員数であります。占領軍司令官の書簡によつて十一万五千名が望ましいと言われれば、六万名から、はい、そうですが式に十一万五千名に定員を増します。又十八万名が適当であるとの書簡を政府は頂いておられるのでありますが、今のところ政府は定員を増さないと言明されておるのでございますが、論より証拠、近い将来定員を増されることであると思います。が、これは別といたしまして、武器について実例をとれば、現在使用中の武器は米軍の部隊司令官の好意によつて使用を許可されておるということでありますが、(「廃品だよ」と呼ぶ者あり)予備隊が設置されるときの武器、装備についての政府の希望的観測とはおよそ距離のあることとなつているのであります。使用のみを許可されて、借りている装備で、政府は一朝有事の際、何ができると期待しているのでありますか。折角訓練をし、いざというときに武器の使用はちよつと待てでは、何のために経費と日時を費して来たのか、全く国費の浪費ということに相成るのであります。武器の使用を差し止められて、空手の予備隊、艦隊のない警備隊を想像するとき、滑稽だけでは済まされないのであります。政府の今までやつて来たことに対する責任は重大であると言わなければならないのであります。又、本審議中に明らかにされたことに、米国船舶の借受けの件がありますが、この件につき、岡崎外務、村上運輸、大橋国務の各大臣との問に答弁が食い違つておりましたので、政府の統一ある答弁を要求いたしましたところ、文書を以て「海上警備隊の使用船舶については、政府は、米国政府よりの借受を希望し、閣議において協議の上、海上保安庁をして米極東海軍と下交渉を為さしめた処、略ぼ借入れができる見透しがついたので、外務省から米国政府に申し入れをした。かかる関係もあり、今回の米大統領に権限を與へる法案の成立となつたものと思う。此の実施については固より日米政府の合意が必要であり、合意すべき事項内容についての先方の意向は未だ明かでないが、内容が重大な権利義務に関する事項を包含することとなれば「條約」として所定の手続を経べきものたるは勿論である。」こういう答弁書を送つて来たのでありますが、六月四日の官報では、海上保安庁公示第十一号として、まだ契約のできていないもの、いわば海のものとも山のものとも判断のできない、米国の軍艦名、即ちPFを四隻、LSSLを二隻借受けたものとして、告示発表をしているのであります。かくしては、米国当局の示唆又は意向によつて、定員とか装備は決定されるとしか推測されないのであつて、一体全体、保安庁はどこの国の保安庁であるか、(「アメリカだよ」と呼ぶ者あり)どこの国の立案計画によつて事が運ばれて行くのか、判断に苦しむものであります。予備隊、警備隊の編成に際しての最大條件である武器及び艦艇の数量とか、貸與條件が未解決であり、従つて我が国の義務並びに負担内容が不明であります。併し、この義務負担如何は、経済基盤の浅い国民生活に重大な関係を有することは当然であり、(「傍聽席が笑つているよ」と呼ぶ者あり)貸與の條件が国民の負担能力を欠くときは、貸與を政府は断わるというのでありますが、装備計画、方針がない、でたらめな予備隊、警備隊であつては、全く独立性と自主性のないことであり、反対の第二の理由であります。以上、基本的な問題につきまして、憲法違反であり、自主独立性のない点を指摘したのでありますが、これは、要するに、吉田政府が先に占領軍の圧力の下に、国民大衆の意思を無視して、独善的に講和條約、安保條約を締結して、米ソ対立の激しい荒海の中へ日本を押出したためであります。不沈航空母艦の役割を果すところの日本に対して、海と空は引受けた、地上部隊は日本で何とかでは、何も知らないところの国民大衆が甚だ迷惑するのであります。政府は、秘密裡にすべての取引を行なつている。秘密独善的外交は、国民に害こそあれ、何の利益も、もたらさないものであります。民主主義に反するものであります。講和、安保の両條約によつて日本は一切を挙げてアメリカの対ソ、中共戰に協力するというならば、過日協力方を要請して来ました防空演習も、陸海軍に等しいところの陸の予備隊、海の警備隊の装備拡充強化も、米軍の基地拡大も筋の通つたことであります。併しこの方針、内容は、未だ一度も明らかにされなくて、秘密裡に一方的に強行されているのであります。又、政府は先に資本家勢力を温存させるために、国民の各階層を挙げて反対したにもかかわらず、破防法制定を強行しまして、破壊暴力活動に関する意識革命の助長を防止するという理由で、憲法で保障されているところの基本的人権である言論、出版、結社の自由を抑圧し、あまつさえ取締範囲の不明な扇動行為、宣伝行為まで取締の対象としているのでありますが、半面、予備隊、警備隊に至つては、これは全く逆の方向に、軍隊ではない、再軍備ではないと言いわけをしつつ既成事実を作り上げまして、これによつて国民の再軍備への意識革命を進めているのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)これも全く吉田内閣の反動性を如実に示すものと言わざるを得ないのであります。(「與党ひどいぞ、本当に」と呼ぶ者あり)第二次大戰で最も多くの犠牲を強要されたのは農民と労働者の階級であります。予備隊、警備隊は、国家予算において、教育費は僅か五%に比較して、二一%の多くを占めているのでありますが、先に本会議で、我が党の荒木君の提案にかかわるところの義務教育費国庫負担修正案に対して、費用の点から莫大であるから云々というようなことを自由党のお方が言われて反対されたのでございますが、私たちは、民族の繁栄は武器ではできない、(「その通り」と呼ぶ者あり)文化にこそ期待が持てるものと考えております。国民の生活安定を経済的に破壊いたしまして、失業に喘ぐ労働者と潜在失業者を抱えて苦しんでいるところの農民の子弟をこの予備隊並びに警備隊に吸收いたしまして、結果的には、これら勤労階級の血と前途有為の青年諸君の命を再び要求することにならないと、誰も断言することができないのであります。(「そうだ」「だから学生が騒いでいるんだ」と呼ぶ者あり)かかる法案は、勤労階級に対して犠牲の要求こそあれ、益少しと断定し、(「益がない」と呼ぶ者あり)反対するものであります。なお、本国会は、私は、この平和憲法下において開かれているものであつて、飽くまでも法の秩序に従つて設けられているものだと思います。この法律案賛成の意を表されるということは、取りも直さず法秩序を私はみずからの手によつて破壊されるものであると考えざるを得ないのであります。私は、良識によるところの賢明なる諸君によつて法案が否決されることを心からお願い申上げまして、私の討論を終る次第であります。(拍手)    〔「採決々々」「記名投票」「定足数なし」「散会々々」「採決つて否決してしまえ」「反対」「採決しろ」「進行」「討論は棄権するから採決しろと言つてるじやないか」「そうだよ、採決」「議場閉鎖」「議長、思い切つてやりなさい」「こんな植民地軍隊を作る必要はない」と呼ぶ者あり〕    〔小笠原二三男君発言の許可を求む〕
  59. 三木治朗

    ○副議長(三木治朗君) 小笠原君、何ですか。
  60. 小笠原二三男

    ○小笠原二三男君 只今議場における出席は定足数を欠くものと認めますので、議長において調査の上、その事実が明らかになりましたならば、暫時の間休憩せられんことの動議を提出いたします。(「異議なし」「賛成」と呼ぶ者あり)
  61. 三木治朗

    ○副議長(三木治朗君) 暫時休憩いたします。    午後六時三十一分休憩      ——————————    午後七時一分開議
  62. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 休憩前に引続きこれより会議を開きます。波多野鼎君。    〔波多野鼎勲登壇拍手
  63. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 只今議題となりました保安庁法案その他一件につきまして、社会党第二控室を代表して反対の意向を述べるものであります。初めに我が党が、行政機構全体の問題についてどういう方針をとつておつたかという点を極く簡單に申述べて御了解を得たいと思いますが、行政機構の改革という問題については、我が党も従来から熱心に調査研究をして参りました。そうしてこのたび政府の側から案が出ましたのに関連いたしまして、この案を嚴正に批判検討いたしました結果、我が党としましては、行政委員会廃止という政府の方針には絶対反対する。即ちその理由は、行政の民主化ということを実現するために、この行政委員会というものは、今後とも育成して行かなければならない。そうすることによつて、公務員、いわゆる官僚というものによつてのみ握られておる行政機構に対して、民間の清新な空気を注入する必要があるということを考えておるのであります。又第二に、行政の簡素化、この言葉には我々も賛成なのでありますが、如何にすれば行政の簡素化ができるかという点について、政府の方針とは反対であります。と申しますのは、今行政の簡素化という問題について一番問題になる点は、いわゆる各官庁の事務の縄張り争いであります。この事務の縄張り争いが、いわゆる共管の事項であるとか、或いは所管であるとかいつたような形で、妥協的に取扱われておる。そのために国民の側から申しますと、一つの官庁では事が足りないで、あちらこちらの官庁にお百度を踏まなければ事が足りないという恰好になつておる。こういう点を是正いたしまして、責任官庁を一つ定めてしまうという方針を我々はとつてつたのでありますが、政府の機構改革案は、この問題については何ら触れておりません。決して政府の案では行政の簡素化は実現されないと我々は断定せざるを得なかつたのであります。又行政の能率化、この点につきましても、言葉としては政府言つておりますが、如何にしたらこの能率化ができるかという点については、政府側には何ら成果が出ておりません。我々は信賞必罰を明らかにするということ、並びに高能率高賃金の原則を貫いて行くということ、これによつてこそ、初めて行政の能率化が実現できると考えておるものであります。要するに行政機構と申しますものは、人民の公僕としての公務員の組織であります。でありますから、人民に行政上の便益を與えること、これが行政機構を考える場合の主眼でなければならない。いわゆる人民への奉仕の組織、人民への奉仕の組織として完璧なものを作らなければならんと考えておりますが、今度の政府原案を見てみますと、それとは逆の人民支配の組織を確立せんとするものであると我々は見てとつたのであります。かような意味において、各省の機構につきまして、政府原案に反対の意を表して参つたのでありますが、今問題となつております保安庁法案その他一件につきましては、別の見地からも反対の意向を述べざるを得ないのであります。先ず最初に、この設置法案については修正案が出されておりました。この修正案委員会議決されましたが、この修正案要旨は、言うまでもなく海上の警備救難の仕事を、機構上は保安庁に移しながら、その機構を一時停止しておいて、現在の運輸省の外局たる海上保安庁をして現実に海難救助の仕事をさせようというのが修正案の骨子であります。これは非常に複雑怪奇な組織を作り上げたことでありまして、いわゆる行政機構の簡素化という見地からは、全く背反的な事柄であります。而もこういうような修正案が自由党の諸君から提案されたというに至つては、私どもはその趣旨が那辺にあるかということを疑わざるを得ないのであります。でありまするから、我々は修正案を含めて保安庁法案に反対をするものであります。我々といえども、海上における警備救難の仕事が、海国日本の建前から言つて重要であるということは重々承知いたしております。併しながらこの海難救助の仕事を、保安庁というような軍隊的な組織の中の一部として編入することに反対なんです。これは独立して、海難救助の事務機構を拡大する必要があるという建前をとつておるのであります。さて保安庁法案そのものについてでありますが、これは同僚諸君がしばしば指摘されておりますように、内閣委員会審議を通じてこういう点が明らかになつております。これは陸海軍を統轄する国防省的な性格を持つものであること、特に第一幕僚監部とか第二幕僚監部、即ち昔の陸軍省、海軍省に当るものを設けまして、いわゆる陸海併せ統帥するという機構としてこれができております。大橋国務大臣も我々の質疑に答えまして、この保安庁の機構というものは軍隊統率の形式を模したものである。真似たものであるとはつきり申しております。即ち組織の上において軍隊的な組織であることは明白なのであります。第二に、保安隊並びに海上警備隊なるものが持つ武器、これもしばしば指摘されましたが、大砲からバズーカ砲、更に飛行機に至るまで、或いは千五百トン級の艦艇から二百五十トン級の上陸用舟艇、種々さまざまの武器を携えてこれを使用することになるのでありますが、このような武装、装備と申しますものは、これはいわゆる第二等国か第三等国か、或いは第四等国か知りませんけれども、こういう弱小国の武力としては十分な武力であります。原子爆彈がないから兵力でもない、武力でもないという議論は、我々どもは到底承認することはできないのであります。我が国のような弱小国としては、これは十分過ぎるほどの武力である。こう考えざるを得ない。第三に、目的の点につきましても、この保安隊を動かす目的が、單に国内の治安維持のみに限らない。外敵の侵入があつた場合にこれと戰う意図を明白に持つているということも、審議の過程を通じて明らかになつた点、即ち組織の点、装備の点、目的の点、この三つの点から見ましてこれは憲法第九條が禁止しているところの武力であると断ぜざるを得ないのでありまして、かような憲法違反の疑いのある保安庁に対しては反対せざるを得ないことになるのであります。世界の人々は我が国がすでに警察予備隊を作りました当時から、日本の軍隊の芽生えができたということをはつきり申しております。リトル・アーミーというような言葉が、日本警察予備隊を指す言葉として世界通用語であります。尤も警察予備隊は、この予備隊設置令において明らかになつておつたように、警察力の不足の部分を補うだけ、警察力に対する補助機関であるという性格が明白にせられておりましたが、而もそれにもかかわらず、すでに諸外国においては、これは陸軍だ。小さな軍隊だというふうに言われておつた。今度の保安隊は、警察力の不備を補うという性格は全部削除されておりまして、警察力とは別個の独立の一つの組織力であります。でありますから今後はますます諸外国の者は、日本の陸軍或いは海軍が整備の過程に入つたというふうに論評するであろうことは明白であります。国内におきましてもすべて良識のある人々は、警察予備隊時代から、もうすでにこれは軍隊の子供であるというかうに見ておりました。軍隊でない。或いは兵力でないというような言説が横行いたしまして、又かかる言説が多数を占めておりますのは、我が国会だけであります。この意味において国会はまさに世界及び国民から遊離した一つの特殊地盤を形成しておつたと言わなければならん。併しよく考えて見ますと、国会のうちにおきましても、又自由党の諸君でも、恐らく保安隊、今度の保安隊は兵力でないと良心的に確信しておる人が、果して何人あるかということを私は疑うのであります。又保安庁法案憲法に絶対牴触しないと確信を以て言える人が、自由党の諸君の中に何人あるか。私は多くの諸君もそういう疑いがあるなということだけは感じておいでになると思う。こう考えて参りますと、言葉に出して言うか言葉に出して言わないかの違いこそあれ、保安庁法案憲法の條章と何らか矛盾することがありはしないかという、そういう危惧の念をすべての人が持つておると思う、そういう危惧の念を抱かれるような、このような法案は成立させないほうがよいと私は考えるのであります。憲法違反でないということをはつきり言つておりますのは、政府諸君であります。併し政府諸君にいたしましても、深夜靜かに考えておりますれば、恐らく良心の声を聞いて、はつとする場合があるだろうと思う。朝から晩まで本当に確信して、これは憲法の條章に絶対違反しないという人はなかろうと思う。(鉄面皮だ」と呼ぶ者あり)世の中に嘘発見器というものがある。これが発明されたそうであります。若しこの嘘発見器が、もつと正確なものになりましたならば閣僚のうち何人かは、恐らく良識の豊かな閣僚は、自己の本当の考えをこの嘘発見器によつて見破られることになるでありましよう。嘘発見器が今日未完成であることは、現政府にとつて誠に幸いのことと申上げなければならんのであります。(笑声)憲法違反の疑いのある予備隊或いは保安隊、海上警備隊でありますから、隊員の士気の揚らないということも又当然でありましよう。いわゆる日陰者、或いは私生兒的なこのひがみを持たざるを得ない。そういう目で見られる。従つて士気が揚らないのも当然のことであります。聞くところによりますると、今日の警察予備隊員が外出するときには、制服を着ないで外出できるようにしてもらいたいということを申出ておるという話であります。又家族の身の危險を感じまして、キヤンプ内に住宅を與えてくれ。キャンプの外に一軒の家を構えて、そこから通うことは困る。家族の者が心配だ。だからキヤンプ内に住宅をくれという要望も出ておると聞いております。このようなことでどうして士気が揚るはずがありましようか。小さくなつて町を歩いておるようなことで、いわゆる保安庁法に規定してある任務を本当に遂行できるとは、誰も考えることはできない。今日我が国の治安を乱すものとして、いわゆる少数の暴力主義者なる者があります。併しこれは一種の確信犯でありまして、本当に自己の確信を持つてつている人たちであります。命懸けであります。この命懸けの暴力主義者に向つて日蔭者的なそういう考えを持つている人が一体どんな力がありましようか。併し私はこう思う。暴力主義者と言われるものは国民全体の中には非常に数が少い。国民の生活が若し安定いたしまして、民主主義が行き渡つておりますならば、少数の暴力主義者が何をしようとしたつてできるはずはないのであります。政府は、ところがこの少数の暴力主義者に恐れをなして、一方においては破壊活動防止法を作り、他方においては保安隊を作ろうとしております。そうして、民主主義の発展にブレーキをかけようとしている。我々の見地から申しますと、少数の暴力主義者は恐るるに足りません。国警、自警に現在の警察予備隊、これがありさえすれば十分だと私は思つている。我々が恐れなければならんのは、少数の暴力主義者の存在ではない。それじやない。これを傍観し、知らず知らずにこの暴力主義者の第五列的な役割を果す者が多くなること、これが恐しいのであります。暴力主義者の行動に心の中で拍手を送る国民がだんだん殖えて来やしないか。これが恐ろしい。要するに乱を好む人、これが多くなることが恐ろしいのであります。然らば乱を好む人が多くなるのはどうしてであるかというと、言うまでもなく生活の不安であります。一方に生活が安定しないということは、他方においてはこの民主主義的な制度が抑圧されて行く。いわゆる民心の伸長ができないということ、この二つのことから乱を好む気持が生れて来る。然るに政府のほうでは破防法を制定して人心を欝屈させ、莫大な国費を割いて保安隊や海上警備隊を作つて行く。而も保安隊にも海上警備隊にも憲法違反の疑いがあつて隊員の士気は少しも揚らぬ。日蔭者であります。地方ではかくして生酒の不安に脅かされる人たちが、乱を好む性癖を持つて来る。現政府施策の全体を見てみますと、治安確保の目的とはまさに反対の方面にぐんぐん進んでおります。我々から言えばこの破防法関係の経費だとか、或いは保安隊や海上警備隊に注入する幾百億円の国費を、民生安定のために活用する、そうしますれば、期せずして治安確保の目的が達せられると確信いたしております。即ちかくして暴力主義に対する傍観者、第五列的存在を一掃することができるならば、私どもは少数の暴力主義者を完全に孤立させることができる、こう確信をいたしているものであります。保安隊や海上警備隊の兵器の貸與の問題があります。この保安隊や海上警備隊は、アメリカから武器を借りて使うそうであります。借りるならば借りる條件があるであろう。どういう條件で借りるか。この條件は條約として国会の議決を求めるのかといつたような問題がしばしば論議されました。政府のほうでは、貸與される武器は無償で、ただで借りる。そういう希望を持つておる。又そういう見通しも確かであるということをしばしば申しております。そうして借りる條件については、目下交渉中であつてこれは確定しておらん。確定すれば国会に報告はいたしますということになつておる。ところが我々の審議の過程において、最中に、アメリカの連邦議会は、日本に対する艦艇の貸與の法律案を通過させました。そうして御承知のフリゲート艦十八隻、十隻乃至十八隻、或いは上陸用舟艇五十隻、これを大体五年間貸す。そうして五年後には、実質上貸したときと同一の状態において返還を受けるということが、連邦議会において決定された。そうして大統領の署名さえも済んだのであります。そこで委員会においては、アメリカの議会において、又大統領の署名が済んだのだから、五年後には原状、実質上借りたときと同じ状態において返さなければならないということにきまつておる。そうすれば五年後に、日本政府が一定の債務を負担する。修繕するなり、沈沒したものは新らしく造るなり、何かそういう一定の国費を支出しなければならない債務を負担することになる。それならば、予算的措置を講ずる必要があるのじやないかということが問題として追及せられましたけれども、政府は最後まで、この貸與の條件については何らまだ確定はしません。アメリカの連邦議会の決定などは全然無視しておりまして、無視して、無償で借りられるでありましようということで、答弁を濁しておつたのであります。借りておるかと聞けば、まだ借りておらんと言う。ところが事実においては、すでに借りておるのであります。六月四日の官報の、海上保安庁の告示を見てみますと、もうはつきり借りておる。この告示の中に、警備船なるものを新たに海上保安庁で配置した。その警備船として、PFという記号の船四隻、LSSLという記号の船二隻、これを海上保安庁の中に編入することになつたのである。PFとは何であるかと聞きますれば、これは千五百トン級の艦艇であるという、LSSLとは何であるかと聞けば、これは二百五十トン級のいわゆる上陸用の舟艇であると言う。千五百トンの船が四隻、二百五十トンの船が二隻、すでに海上保安庁の機構の中に入つたのであります。これが六月四日の官報に示されておる。この問題に関しまして、政府側の答弁は非常にあいまいであります。政府側はこういうふうに答弁しております。日本で船を造る場合に、まだその船ができない先、まだ造船所にある間にも、その船ができたならば誰が乗組むかというような指令を出さなければならない。それにならつて、借りられたら誰が乗組むかという指令を出すために、この告示を出したんだと、こう言つております。これはおかしい。日本の造船所で、日本政府が造つておる船ならば、できない先だつて告示してもよろしいでしよう。所有権は初めから日本にある。これはアメリカの船であるということは明白なのであります。而もまだ借りていないと国会では言いながら、海上保安庁の告示には、日本の船として籍に入れた。どちらかが嘘であります。契約ができていないということが嘘であるか、これを入れたことが嘘であるか、どちらかが間違つている。又大橋国務大臣は、この告示は、船の所有権の問題とは関係ないと言う。その例としまして、例えばイギリスの造船所に日本の軍艦を注文する。できるまでは日本の所有権はない。できて渡されたあとで所有権が日本に移る。併しイギリスの造船所で製造中にも、その船に将来乗組むべき人をきめるために、イギリスの所有の船であるが、日本に登録することができるのだ。それと同じことだ。こういうふうに大橋国務大臣は言います。併しこれも又嘘なんであります。間違つております。イギリスの造船所に頼んだ日本の船ならば、それは確実に日本の船籍に入るべきものなのであります。そういう契約ができて頼んでいる。よそに行くはずはない。ところがアメリカの船を借りる借りんの問題について、政府は無償で借りられるなら借りる。ただでない場合には借りんこともあると言つている。借りないこともある。でありますから、横須賀にあるこの六隻の船は、或いは借りんことになるかも知れない。確実に将来日本の籍に入れることができるかどうか未定のものと我々は理解している。未定のものを、告示において確定的なものとして出している。ここに私どもは非常に割り切れない多くの問題を持つのであります。私はよその国の船を日本の国籍に入れると。大体どうも、貸してくれそうだからというので、国籍に入れてしまうというようなことが、国際信義上果してできることなのかどうか。私は、アメリカの船も日本の船と一緒だと、隣の家の財産も、自分の家の財産と一緒だという考え方の基本には、恐るべきものがあると思う。それはアメリカと日本とが一体であるという考え方であります。日本独立国でないという考え方なんです。私はここに、非常にケアレス・ミステークとしてこういう告示を出したというような答弁もありましたけれども、そのケアレス・ミステークが起きる根本に非常に重大なものがあると思う。人のものも自分のものと同じように考える。その考え方が被占領意識、占領されておるという意識をまだ脱却していない証拠であるし、又アメリカの属国的な考え方を持つている証拠であります。このような基礎の上に艦艇なり武器なりが貸與されまして、そうして保安隊並びに海上警備隊が活動することになるといたしますと、ますます保安隊や海上警備隊というものの士気は沈滞して参ります。まますおかしくなつて来る。普通の顔をして世の中に出られないような、そういうような意識を持たしてしまうことになるのであります。このようなことで、一体政府が保安庁を作りたいという目的の、治安の目的を図れるかというと、絶対図れないと私は思う。この意味において、私はこの保安庁法案並びにその修正案及び海上公安局法案につきまして、反対の意向を開陳するものであります。(拍手
  64. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 松原一彦君。    〔松原一彦君登壇拍手
  65. 松原一彦

    ○松原一彦君 私は改進党を代表しまして、主として保安庁法案に対する反対を申したいと思うのでございますが、その前に、今回七十日以上を費しまして、非常な時間をかけたる、行政機構の整理審議せられたのでございますが、この二十七件に亘るところの大きな法案整理の結果が、誠に骨抜きになつたというふうに伝わつておりますが、これは私は誠に遺憾と思うのであります。それならば、誠に骨を抜いてしまつては相済まないのでありますが、もともとこの法案の中には骨はないのであります。(笑声、拍手)ない骨の抜かれるはずはないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)と申しますのは、この中で若し現内閣の性格的な基本政策から出ておる改革があるとしますならば、それは一つは経済安本を廃止して、経済審議庁というものを作つたことであり、今一つは保安庁という新らしい、ここに軍隊組織的なものを作つたこと。今一つは電電公社等の一つの公社、或いは株式会社を作つた程度のものであつて、その他は、名目上の一つの機構いじりに過ぎなかつたことは、すでに皆様御承知の通りであります。それは中二階である部というものを置くことはできないというために、部長を廃して、監という得体の知れないものが生れて参つておる。これは行政責任が全く不明なのであります。そういう一つの職名のものが現われて、部長の代行をさせることになつており、或いは外局を廃して内局としたものが多数あります。なぜに外局を廃して内局としたかということにつきましては、はつきりした理由はございませんが、これ又行政の簡素化であると言うのであります。冗費を省き、国民への奉仕を、サービスを豊かにするための行政の簡素化であるならば、何かそこに理由がなくてはならんのでありますが、これは実質的には長官が局長となるに過ぎないのであります。そのほかにはいろいろの経費も、看板を書き換える、すり換えるだけの手間しかかからないのであります。(「却つて金がかかるよ」と呼ぶ者あり)むしろそれは金はかかります。これは併し非常にこの政府は苦にしておいでになる。今夜の夕刊を見まするというと、これはどうしても、もう一遍取返さなければならんというので、衆議院の決議の、審議の結果は、更に両院協議会に持込んで、廃案をも辞せないと言われるほどに、大変力瘤をお入れになつておりますが、私はその理由を知ることができないのであります。なぜにかように名目に拘泥せらるるか。むしろ外局は外局として半ば独立の性格を與えて、命令もここから出される。人事の異動もここで行われて、行政上の機能が円滑に、而も迅速に行われる組織を持つことのほうが、遙かに私どもは有利だと信ずるのであります。従つて今回は、この外局は若干の取止めはありましたが、大体において残つたのであります。決してこれは改悪とは私どもは信じません。従つて骨が抜かれたとお考えになることは大きな間違いであつて、さような名目に御拘泥になるよりも、むしろもつとしつかりした厚生省と労働省とをば一つの社会省にするとか、有力な大臣を据えて、その機構の根本を変えるとか、何かもう少しはつきりした行政機構の改革があつて然るべきものと思つてつたのであります。冗費を節約し、冗員を淘汰し、そして窓口を豊かにすることによつて国民の便利を増す、中央がその範を示さない限り、地方の官庁においでになつたら、皆さん何とこれを御覧なさる。小さい府県が、今日一人の知事の下に、副知事があり、八人の部長があり、六十課から八十課、百課に近いところの課長を並べており、その課長代理なるものがあり、係長なるものがある。厖大なる役所が小さな県に皆並んでおるのであります。ここにどれほど大きな冗費が費されておるかということは思い半ばに過ぎるものがある。これは中央から先ず範を示さなければならないのであります。こういうような意味におきまして、私は先刻委員長が、あの老委員長が真劍にこの数十日間の審議の中からより出しまして、抽出して、今後行政機構改革に対するところの一つの基本的な機構を持たなければならないということを言われたことに心から賛成するものであります。私は以上を前提としまして、保安庁法案につきましての反対を申述べたいと思う。で、この法がその内容とするところの警察行政の埓を越えて、すでに現平和憲法に違反するところの内容を持つ軍隊組織的なものであるということにつきまして、これが違憲であることの理由は、同僚三好議員が精細にこのことは述べておられますから、この点は省略いたします。で、現下の情勢からみまして、治安の維持、生命、財産の安全を期するために警察力を充実するということにつきましては、何ら私ども異存はございません。これは今日政治の責に当る者の当然の責任でありまして、警察力を充実して、国民をして枕を高くして眠らしめるように図られることに対しては、感謝こそすれ、非難をするものではないのであります。従つて本当の警察であつて欲しいのであります。真に人民のための警察であつて欲しい。国民のための正しい警察こそ必要なのであつて、軍隊まがいの、何ともわからないような警察を我々は少しも要求いたしてはおらんのであります。今回設けられましたるところの保安隊、警備隊というものに対する性格は、これはすでに波多野氏も今言い盡されましたし、成瀬氏も申されましたから、私は繰返しませんが、私どもの常識として見るところによりますというと、警察というものは第一、力の行使を最も最小限度にとり、犯人は裁判所で裁く性質のものであると思う。第二には、極端な場合のほかは、人の生命を奪わぬこと、むしろ進んで生命の保護に当ることでなくてはならない。第三は、対立する警察があつても、絶対に武器を持つて戰うようなものではない。更に国外に進出する性格を持つものではない。第四には、犯罪を未前に防止するのが警察の主なる責任であつて、むしろ犯罪者があつても、改過遷善に努むるのが最上の警察であると、私どもはかように信じております。果して今日の警察が、このような内容を持つているのでありましようか。今回設けらるるところの保安隊、警備隊というものが、政府説明によりまするというと、飽くまで警察の予備隊である、警察力を補充する一つの予備的存在であると言われるのでありますが、これは明らかに軍隊的組織機構を持つたものであつて、殊に我々はめつたにその姿をも見ることのできない、どこかにあつて、国民には接触していない存在であります。軍隊と申しまするというと、これは周知の通り、敵と見れば有無を言わさず殺す性質のものであります。第二には、しばしば中立的な無辜の者までも殺傷し、或いは困窮させ、或いは爆撃等によつて大量悲惨な損害を與えるものであります。従つて勝つた場合においても、みずから又傷つくのがこの軍隊であります。第三には、戰時は勿論、平時といえども、すさまじく税金を食わなければ育たないのが軍隊であります。おびただしい税金を食つて、初めてこの軍隊は育つのであり、絶えず相手国を標準として拡大強化させられて際限がないのが、この軍隊の性格であります。(「なかなかいいことを言うな」と呼ぶ者あり)更に第四には、自衛が積極化すればおのずから侵略となります。敵地を奪い敵の戰力を絶滅させなければ、自衛は完成しないのであります。敵の後方に廻らなければ、敵を全滅することはできません。これは即ち自衛の積極化であります。かくのごとくにして日本は支那事変においても、あらゆる戰争において、常に進出いたしておりますが、これは常に口実は自衛の積極策であつたのであります。第五には、軍隊が強化すれば政治を従属者とする慮れがあります。軍人が政治を支配するときに恐るべきミリタリズムが生まれることは御承知の通りであります。今回現われましたところの保安隊、警備隊というものがどういう性格なものであるかは、なお今後に我々は仔細に観察しなければなりませんけれどもが、この法案の中に現われたところを見まするというと、実は諸君もまだ或いはお気付きにならんかと思われる点がありますので、私はこれを指摘いたしておきたいと思う。保安庁法案によりまするというと、保安隊の長官は国務大臣であり、これに次長があり、官房長その他の文官がおるのであります。従つて、保安庁は一応文官統制の形を以て警察予備隊当時から進んで参つており、原案にはさようになつております。保安庁法案第十六條には、長官、次長、官房長、課長等までは、旧正規陸海軍将校はこれを採用しないということが明記されておる。これを私はいわゆるシヴイリアン・コントロールと称するものの当然の用意であると信じておつたのでありますが、これは衆議院において抹殺せられておるのであります。その理由はわかりません。政府に聞きましたところが、別に憲法上の疑義からではない。衆議院のほうで抹殺したので政府も同意したということであります。それから衆議院における提案者を呼んで説明を求めようとしましたが、提案者は参りません。だんだん承わりまするというと、これは政府側の御腹案であつたかのような事実があるのであります。してみますると、このシヴイリアン・コントロール、いわゆる文官統制というものはないのであります。警察ならば御承知のように公安委員会があつて、これはいわゆる民間統制になつておる。いわゆる民主的統制になつておる。ところが同じ性格を持つ今回の保安隊、警備隊は、この民主的統制ではなくして、而もこの抹殺せられたる法案から見れば旧正規軍人将校が将官にもなり、次長にもなれるのであります。政府は勿論これはやらない方針だと言われます。方針だけではわかりません。方針はいつ変るかわかりません。法律に明記せざる限りこれは当てにならないのであります。或いはやがて近き将来に警備隊の長官である国務大臣が旧陸海軍の将官であるかたが、この雛壇に並ばないと誰が保証することができましよう。私どもは過去の軍部が政治を支配したときのあの危險、これをしみじみと今思い起すのであります。百万の軍隊ありといえども、文官統制の下であつたならばミリタリズムとは申しません。併しながら軍人が政治を支配する。ここに非常な危險があることは皆様御承知の通りであります。この点につきまして今度どういうふうになりますか。この法案の若干の文字を抹殺したことにおける内容につきまして、嚴重に御監視を願いたいと思う、私どもがこの法案を呑むことのできないゆえんの一つもここにあるのであります。更にこの武器、艦艇の貸借関係につきまして、私は若干の資料を得ましたので、ここで申上げておきたいと思つたのですが、波多野氏が盡されましたからこれも省略いたします。併しこれは最初私的に船を借りるのだという話があつた。運輸大臣が話しかけておるのだという話もあつた。閣議は知らんという話もあつたのでありますが、だんだん進むにつれまして、閣議を経たことであり、外務大臣が交渉の任に当つておることもわかり、若し有価なものを今後弁償でもしなければならない国家責任ができたときに、どういう責を取るか、財政法における根拠は、どこからこれが貸借関係として現われるか等を追求いたしましたところが、一時は私的な貸借であるという解釈までもび飛出しましたけれどもが、これは許されず、ついにアメリカの上下両院におけるところの、あの決議の通りに、今や先方においては日本からの交渉を正式に待つ段階になつておると思う。やがてこの国会にこれに対するところの條約か協定かが現われるでありましようから、このときに十二分に念を入れて、かようなアメリカの艦艇を、一体日本憲法の下において、皆様がたが御承認になつて借りられるかどうかということを、今のうちから十二分に御研究を願つておきたいと思うのであります。(拍手日本の今日の急務は何と申しても大砲よりもバターであります。思想に向つて大砲をぶつかけたところで、これはどうにもなるものではございません。国民が飢えて、どうして一体治安の維持があり得ましようか。(「その通り」と呼ぶ者あり)私どもは、あらゆる場合に一つの切札として、共産党の蜂起ということが常に言われます。これが一つの切札であります。かくして日本はあらゆる面が糊塗されて参つておる。現に支那事変の起つた当時、蒋介石に対し、共産党の名によつて滅共倒蒋というのが、あの当時の旗印であつた。国民ことごとく共産党を滅ぼし蒋介石を倒せというのが、御承知の通りに重慶への進軍の旗印であつたのでありますが、果して今日、どこに蒋介石の身辺に、共産主義的臭いがあるでございましよう。共産党があばれるからということが常に一切の議論を封じて、憲法がどうあろうとも止むを得ないという一つの切札になつている。これによつてあらゆるものが封じられて参つておる。私は暴力を否認する。暴力革命に対しては断じて否認する。あらゆる暴力を否認することにおいて人後に落ちませんが、この警備隊を否認することによつて、如何にも非愛国者のような非難をせられるかたがたのあることを遺憾とするものであります。(拍手、「その通り」と呼ぶ者あり)真の愛国者は、そのような軽率な、物の判断はいたさないのであります。あの愛国者のはずであつた滅共倒蒋の旗印の下に進軍したるところの支那事変の結果が、如何に日本の国を悲惨なものに陷れたかを、十二分にこの際御反省を願いたい。私は反対の理由を申述べました。(拍手
  66. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 堀眞琴君。    〔堀眞琴君登壇拍手
  67. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 私は労農党を代表いたしまして、只今議題となつておりまする保安庁法案並びに海上公安局法案に対しまして反対をいたすものであります。先ず第一の反対の理由は、保安庁を初めとする諸行政機構の改革によつて、再軍備のための組織を計画しているということであります。去る二十五年八月制定いたされましたところの警察予備隊令第一條によりますると、警察予備隊というのは、国家地方警察及び自治体警察警察力を補い、治安維持上特別の必要のある場合において行動するところの任務を持つものであるということを規定しているのであります。ところが今度の保安庁法案によりますると、保安庁の任務というものは、「わが国の平和と秩序を維持し、人命及び財産を保護するため、特別の必要がある場合において行動する部隊を管理し、」云々と書いてあるのでありまして、今度の保安庁法案においては、その設けられるところの保安隊にしましても、警備隊にしましても、警察予備隊とは、全く性格を異にしているのであります。即ち警察予備隊は、警察力の補助機関であり、その補助的な役割を果すのが任務であつたのであります。ところが今度の保安庁の任務として掲げられているところのものを見ますると、それはもはや警察の補助的な機関ではないのであります。補助的な役割を演ずるものではないのであります。全く独立の機関として「わが国の平和と秩序を維持し、」云々と規定いたしておるのでありまして、ここに先ず第一に、私は保安庁並びにその下に設けられるところの保安隊にしましても、警備隊にしましても、再軍備のための組織を狙つていると申さなければならんと思うのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)我々は警察予備隊が設置せられました当時、それが再軍備への第一歩であるとして、これに反対を表明したのであります。又我々ばかりではありません。当時のアジアの国々は勿論のこと、西ヨーロツパの国々においても、この警察予備隊に対しまして、日本は今や再軍備の第一歩を印したものとして反対乃至は批判の声が高かつたのであります。然るに今回この独立の軍備的な機関を設けまして、而もその装備なり或いは組織なり或いはその訓練等、全く軍隊と同一の性格を持つに至つているのであります。而もなおこの法案によりますると、更にそれが増強されるばかりではなくて、やがてその名称も保安隊と変るということになつているのであります。本年の四月十九日でありますか、リッジウエイ将軍は、警察予備隊は軍隊とならなければならない。そのことはすでに締結された二つの條約によつて日本として義務付けられているところのものであるという意味のことを述べております。このリッジウエイ将軍の言葉通りに、今や警察予備隊は変じて再軍備のための保安隊となり、警備隊となり、そのための機構、組織が着々実現せられつつあるものと申さなければなりません。更にこの問題が憲法違反の問題に触れるのであります。この問題につきまして、すでに同僚各議員諸君によつて述べられましたから、私はこれを詳しく述べることをいたしません。ただこのような憲法違反の事実をあえてしながら、国民に対しては欺瞞に満ちたところの言葉を以て、それは軍隊ではない。再軍備ではない。憲法の違反ではないという言葉を常に繰返して、そうして事実は再軍備を汲々として急いでいるというのが現状であります。なおこれも又同僚議員諸君によつて指摘されたことでありまするが、武器などもアメリカから貸與される。こういうような状態において日本の再軍備は事実として今や始まつているものだ。こう申さなければならんのであります。次に、第二に反対する理由といたしましては、本保安庁法案の中に規定されておりますところの諸規定が国防省の設置をもくろむものであり、参謀本部の復活をもくろむものだという点であります。陸海軍省を復活して国防省的性格を與えようとしているという点につきましては、これ又同僚諸議員の述べられたところでありまするから、私はそれをくだくだしくここに申すことを避けようと思います。併しながら保安庁長官の下に、幕僚機関として第一、第二幕僚監部が設けられるというような点、それから又保安官及び警備官の等級は十四級乃至十五級に分れておりまするが、これは曾つての軍の等級と名称こそ違え、全く同じ性格を持つものであるということ、(「職階制だよ」と呼ぶ者あり)次に、幕僚監部及び各部隊には、曾つての軍人の中堅層が今日すでに多数採用されているという事実も挙げなければなりません。又更に出動命令を受けた場合に、保安隊の有する権限というものを見ますると、警察等職務執行法の規定が準用されるということになつておりまするが、併しながら保安隊、警備隊が武器を保有し、或いは保安官、警備官が武器を所持するばかりでなく、その出動命令にありましては、職務上警護する人なり施設なり又は物件なりが、暴行なり或いは侵害を受けるとか又は受けようとするような明白な危險がある場合には、武器を使用しても差支えないということが規定してあります。又多衆集合して暴行なり又は脅迫をし、又はその明白な危險がある場合にも、武器を使用することができるということが規定してあります。(「当り前じやないか」と呼ぶ者あり)なお武器庫であるとか、彈薬庫であるとか、それらのものの防衛のための武器使用も、この保安庁法案は認めておるのであります。曾つての軍隊の行動と何ら異なるものを見出すことができないのであります。更に又憲兵にも相当すべきところの部内の秩序維持に専従する職員というものを置いておきましてこれらの職員に部内の秩序維持という名目で以て司法警察官としての職務を行わしめようとしております。これは全く憲兵の復活と同じことと申さなければなりません。  更に又この法案によりまするというと、保安隊或いは警備隊の、それぞれの保安官や警備官を募集するに当りまして、募集事務の一部を地方公共団体に委任する旨が規定されております。これは曾つての徴兵事務を、それぞれ地の方公共団体に委任じて行わしめたと全く同じものと申さなければならんのであります、更に又演習地一カ所およそ三千乃至四千町歩を占める広大な場所が、曾つての陸海軍の演習地に復活し、アメリカ軍と共同作戰を行なつて、共同作戰の下にこれが演習を続けているということも報道されているのであります。このような点から申しまするというと、全く国防省の復活であり、曾つての軍隊の復活であると申さなければなりません。  私は更に第三に、この保安庁法案並びに保安庁の下に設けられるところの保安隊や警備隊の任務、その活動に対しまして、何がその基調をなしておるかということについて一言する必要があると思います。それは言い換えるなれば、共産主義に対するところの恐怖が基調になつていると思うのであります。保安庁法案提案理由説明を見まするというと、こういう言葉が見えております。「今後いよいよ重要性を加えることが予想される治安の確保に万全を期するために」云々という言葉が見えておるのであります。だが、すでにその対策として警察力の増強が行われている。警察官は曾つては一尺そこそこの棍棒を一本持つておつたに過ぎないのでありまするが、今日においてはどの警察官もピストルを持ち、長い棍棒を持ち、更に最近では催涙彈その他の武器すら所持している状態であります。この上なお警察力を増強し、更に保安隊や警備隊を設けて確保しなければならないところの治安上の不安とは、一体何であろうか。政府はこれは、共産主義勢力の国内におけるところの暴力であり、或いは外国からの共産主義勢力の侵略であると説明しております。  併しながらふりかえつて、我々がこのような不安を醸し出すところの社会的な條件というものは何かということを考えてみますると、それは国民生活の安定を欠いているという一点に帰着すると思います。西ヨーロッパでも、大砲かバターかという問題は非常にやかましく議論されていることは今更申上げるまでもないのであります。日本でもやはり同じような問題が、この社会的不安の前に、今日問題とされているということも私たちは認めるのであります。併しそれかといつて、果して社会的不安の醸成を除去するような果して政治というものが行われているかということを考えますというと、私どもとしましては、否と答えざるを得ないのであります。而も外国の共産主義助勢力が日本に侵略する。これに対抗するために国内に軍隊的な保安隊、警備隊を設けるのだと言うに至りましては、全く噴飯ものと申さなければなりません。  成るほど外国の侵略、共産主義の勢力の侵略も考えられるかも知れません。併しその考えに対しまして、私は何のための侵略か、果して侵略することによつて何を得ようとしているのであるか。又共産主義勢力が日本に侵略して来た場合においては、第三次大戦の危險を我々は予想できると思うのでありまするが、そのような第三次大戰の危險を侵してまでも、果して外国が侵略するだろうか。こういうことを私ども靜かにふりかえつて考えますときに、結局は外国の侵略とか、或いは共産主義勢力からの侵略とかいうこと、恐怖心の上に基いているところのものであつて、それ以外の何ものでもないと申さなければなりません。更にこれを端的に言うならば、国民の恐怖心をあおつて、そうして実はそれに乗じて日本の再軍備を実現しようとするのがその狙いではないか。曾つて恐怖から自由とのいうことは、ルーズベルト大統領によつて述べられております。共産主義の侵略、共産主義の暴力、これは確かに恐るべきものに違いはない。併しその共産主義の暴力も、その侵略というものは、国民に対して恐怖心を植付けるだけである。その恐怖心からの自由なくしては、本当の国民の自由はあり得ないということを申しております。  又イギリスの労働党のベヴアン氏も、我々が恐れなければならないのは、共産主義そのものではない。共産主義に対するところの恐怖心であるということを申しておるのであります。恐怖心に基くところの共産主義対策というものが、結局何をもたらすでありましようか。アメリカの有識者はこれに対して答えております。共産主義の恐怖を国民の上にあおることによつて、結局は共産主義を追放するのではなくて、共産主義についての十分な知識を追放する結果になるだろう。そのことは自由を尊重するところのアメリカにおいて、極めて恐るべき結果を招くのであるという工合にアメリカの有識者は述べておるのであります。我々も共産主義の暴力或いは侵略という言葉は、單なる国民の恐怖心をあおる結果に終つておるということを見なければなりません。その恐怖心の上に対策を立てて保安隊を作り、警備つ隊を作り、そして日本を再軍備するほどおろかなことばないと思う。(「その通り」と呼ぶ者あり)若し良識ある議員ならば、我々としてはこれらの保安庁法案、その下に設けられるところの再軍備としての保安隊、警備隊に対して絶対反対しなければならんと思うのであります。  以上をもちまして、私の反対討論とするわけです。(拍手
  68. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 兼岩傳一君。    〔兼岩傳一君登壇拍手
  69. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 私は日本共産党を代表して、両法案に反対いたす者であります。  先ず全体としてこのたび政府行政機構の改革案を見ますると、その目指すところは、第一に破防法に相呼応して国民の民主的運動を弾圧するために法務府その他を強化すること、第二に、各省の民主的な運営をやめて、大臣の命令一下、秘密裡にそれを遂行するために、高級官僚の独裁権を強化すること、第三に、再軍備を具体化するために、保安庁、海上公安局のような陸海軍の作戰本部も設置すること、これであります。本日間もなく多数の行政機構の改革法案が通過いたしますと、これによつて政府と自由党の目指すところのサンフランシスコ両條約、行政協定に、予算と法律の裏付を與えるという、この長い第十三回国会の売つ国的な役割がほぼ終るのであつて我が国の前途を思えば、うたた心痛に堪えぬ次第であります。(笑声、「笑いごとではないぞ」と呼ぶ者あり)  中国の友人がこう言いました。日本は今明らかに破滅の道を辿つている。今日わからなければ明日わかるであろう。併しそれでは遅い。この意味から私は以下反対討論を展開しなければならないと考えます。  事ここに至りました経過を簡單に回顧いたしますと、先ず問題の根本は、第二次世界大戰によつて絶頂に達したアメリカ資本主義の生産が、大戰の終了によつて大打撃を受けたこと、他方アメリカは、中国を先頭とするアジア諸民族の解放運動の発展によつて、政治的にも大打撃を受けた。これが問題の出発点であります。トルーマン政府は、この事態を切抜けるために第三次世界大戰、その不安をあおり、これによつて資本主義各国の軍備を拡充し、一促進上そのためには資金の貸出しは勿論、経済的、政治的いわゆる援助という形で、アメリカの繁栄を維持しようとしているのであります。  マーシャル計画然り、後進国開発の援助政策又然り、アメリカのこの戰争と軍備拡張をあおり立てる犠牲に供せられたのが、不幸な朝鮮の民族であります。朝鮮で干渉戰争が始りますと、日本の單独講和という問題が上程されまして、サンフフンシスコ会議という猿芝居が計画され、これに飛び付いて、自分の政権の存続と発展をつかもうとしたものが吉田総理大臣であり、各閣僚諸君であつたことは、今や国民の周知の事実であります。こうして両條約が締結され、続いて屈辱的な行政協定が締結され、国民の気の付いた今日、日本は無期限にアメリカ軍並びに国連軍と称する英連邦軍の軍事基地となり、兵器工廠となり、練兵場となり、爆撃基地となり、兵隊の慰安場になつてつたのであります。即ち日本はこの数カ月間に、吉田政府と自由党の手によつて、国民の眼前でアメリカを先頭とする帝王、帝国主義者に売渡されたのであります。    〔「何を言つている」と呼ぶ者あり〕  このたびの行政機構改革は、この状態から更に一歩を進め、日本行政機構をアメリカのアジア侵略政策に基いて戰争に即応する態勢に整備することが、その根本的の狙いなのであります。保安庁、海上公安局の設置は、まさにその具体化の第一歩であります。曾つて日本に勤務し、その後招かれざる客としてヨーロツパに赴任し、到る所で労働者のストライキで歓迎されているところのリツジウエイ将軍が何と言つておるか。去る四月二十九日、彼は、警察予備隊は軍隊にならねばならない。なぜならば、それは締結されたサンフフンシスコ條約によつて日本政府の義務になつておると発表しております。波多野鼎氏に私はこのことを申上げたいのであります。又アメリカの上院議員のマグナツト氏は何と言つておるか。露骨にこう言つておる。アメリカが中共と全面戰争に入つたときには、日本人を戰闘部隊として使用し、日本を主要作戰基地として利用すべきであると強調しております。又ウエデマイヤー中将、この男は、曾つて支那駐屯アメリカ軍隊の総司令官をしておつた軍人でありますが、彼はもつと露骨に言つておる。最近の放送演説でこう言つておる。朝鮮の戰線からアメリカ人部隊を引揚げてその代りにアジア人部隊を使用すべきであるとはつきり主張しておるのであります。この希望に応えて現に日本においては保安隊十一万、警備隊一万は、アメリカ製の兵器によつて着々武装され、近代戰に堪え得る部隊が編成されております。  例えば海上保安隊はフリゲート艦十隻、上陸部隊の援護艇五十隻がアメリカの海軍から提供されようとしております。保安隊は遠からず二十五万に増強される。その中には飛行隊を含むと伝えられておりますが、論より証拠、保安隊はすでに飛行訓練を開始しておりますし、アメリカ製の戰闘機が貸し與えられる日も目前に迫つておるのであります。そうして旧軍人の佐官以下ではなくして将官が最高幹部として採用される日も遠くはないでありましよう。そして法案内容を見ると、保安隊が十四階級に区分されておつて、その中には憲兵の織組がある。その編成は、まさにアメリカの軽機械化兵団そのものであります。それのみではありません。現に警備一隊は、アメリカ駐留軍と共同作戰の演習を毎日やつておるのであります。一カ所三千町歩乃至四千町歩に及ぶ厖大な演習地が全国に設置され、日本の象徴である富士山さえも取上げられようとしているではありませんか。然るに吉田総理は、これを相変らず軍隊ではないと答弁しておる。大橋国務相は、これを近代戰に堪え得る部隊であると答弁しておる。両君の答弁を綴り合せて見るとどうなりますか。保安隊は、近代戰には耐え得る部隊であるが、軍隊ではない。こういうことになります。国民を愚奔することこれより甚だしい言葉があるでありましようか。(拍手全国の、保安庁、海上公安局の設置は、まさに陸軍省、海軍省の復活であります。アメリカのための傭兵の本部であります。中ソを侵略する作戰本部として必要な、アメリカ国防省の日本局にほかならないのであります。(「ノーノー」「脱線」と呼ぶ者あり)これの設置に賛成する政党が、果して日本人の政党であるでしようか。(「何を言うか」と呼ぶ者あり)私は或いは、少くともこの恥ずべき法案に対して今日わからなくても、明日はわかる。併し明日わかつたときには遅い。これに反対できないならば、せめて良識ある議員は、少くも棄権されることを私は要望してやまないのであります。我が党は、このアメリカのための陸海軍省の設置に断固反対するのみならず、これの廃止を決意しているもであります。日本国民の眼から隠れてひそかに軍事訓練をしておる警察予備隊は、明らかにアジア諸民族を殺戮するための軍隊であります。そうしてアメリカから貸與されたカービン銃が、誰に向けられようとするか。これはアジア民族解放と平和のために闘う日本国民の胸に向けられた人殺しの武器であることは、今日わからなければ明日わかる。併しそのときは遅いのであります。日本の植民地化と軍事基地化を永久化するための、武装暴力団とも言うべきアメリカ……アジア侵略のための軍隊であるというところに、日本国民の平和と繁栄にとつて最大の敵がこの傭兵軍隊であります。(「ノーノー」と呼ぶ者あり)諸君の多くは、或いは知つておらないかも知れない。群馬県選出の議員のかたは或いは知つておられるかも知れませんが、群馬県の相馬原の予備隊のキヤンプでは、ピストル、カービン銃、バズーカ砲の訓練はもとより、現在では戰車の訓練が終ろうとしている。この訓練には、隊員一人についてアメリカの兵隊が一人の割で附いておる。更に韓国軍の将校百五十名が参加してやる。このキヤンプは二カ月も前から、外出も、外部との通信も、厳重に取締られており、現に朝鮮行の噂で戰々兢々としております。隊員はひそかに逃亡の話をして、これをやれば銃殺されるのではないだろうかと、真剣に話合つておるというのが実情であると伝えられております。現在二カ年の服務年限を満了すれば、予備隊員、下士官以下六万九千名、この四割二分の二万八千名の多数が除隊を希望しているということは、国会議員諸君にはわからなくとも、日本の、二カ年の服務をやつたところの日本人のこの隊員諸君が、はつきりと私が以上述べたことを身を以てつ体験しておる。そうして彼らこそが、この四割二分、三万八千名までが除隊を希望しておる事実こそ、警察予備隊の本質が何ものであるかをはつきりと示しておるところの事実であります。(「その通り」と呼ぶ者あり)  このように日本国民から反対されておる再軍備を強行されようとする日本、アメリカの反動は、必ずや近い将来に徴兵制を布くべく進むことは明瞭であります。そしてその第一歩が本法案による保安庁の設置であります。我々は圧倒的な日本国民の、特に青年諸君の強い意思を代表して、青年男女、婦人、家庭の主婦、戰争の最大の犠牲者の強い意思を代表して、警察予備隊及び海上警備隊の即時解散を要求するものであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)そうして、演習地、宿舎、及び強制的に日本国民の手から奪い取つた農耕地、原野、開拓農場、漁場及び学校等を即時日本国民の手に返すことを要求するものであります。(拍手
  70. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) これにて討論の通告者の発言は全部終了いたしました。討論は終局したものと認めます。  これより採決をいたします。  先ず通商産業省設置法案通商産業省設置法施行に伴う関係法令整理に関する法律案、以上両案全部を問題に供します。委員長報告はいずれも修正議決報告でございます。委員長報告通り修正議決することに賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立〕    〔「多数」「少数」「記名投票」と呼ぶ者あり〕
  71. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 過半数と認めます。(拍手)よつて両案は委員会修正通り議決せられました。      ——————————
  72. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 次に、工業技術庁設置法の一部を改正する法律案全部を問題に供します。委員長報告修正議決報告でございます。委員長報告通り修正議決することに賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  73. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 過半数と認めます。よつて本案は委員会修正通り議決せられました。      ——————————
  74. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 次に農林省設置法等の一部を改正する法律案全部を問題に供します。委員長報告修正議決報告でございます。委員長報告通り修正議決することに賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  75. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 過半数と認めます。よつて本案は委員会修正通り議決せられました。      ——————————
  76. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 次に、経済審議庁設置法案経済安定本部設置法廃止及びこれに伴う関係法令整理等に関する法律案資源調査会設置法案、以上三案全部を問題に供します。委員長報告はいずれも修正議決報告でございます。委員長報告通り修正議決することに賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  77. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 過半数と認めます。よつて三案は委員会修正通り議決せられました。      ——————————
  78. 佐藤尚武

    ○慶長(佐藤尚武君) 次に、大蔵省設置法の一部を改正する法律案大蔵省設置法の一部を改正する法律等施行に伴う関係法令整理に関する法律案、以上両案全部を問題に供します。委員長報告はいずれも修正議決報告でございます。委員長報告通り修正議決することに賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  79. 佐藤尚武

    ○貫長(佐藤尚武君) 過半数と認めます。よつて両案は委員会修正通り議決せられました。      ——————————
  80. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 次に、保安庁法案海上公安局法案、以上両案全部を問題に供します。委員長報告はいずれも修正議決報告でございます。両案の表決は記名投票を以て行います。委員長報告通り修正議決するごとに賛成諸君は白色票を、反対の諸君は青色票を、御登壇の上御投票を願います。氏名呼点を行います。議場の閉鎖を命じます。    〔議場閉鎖〕    〔参事氏名を点呼〕    〔投票執行〕
  81. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 投票漏れはございませんか……。投票漏れないと認めます。これより開票いたします。投票を参事に計算させます。議場の開鎖を命じます。    〔議場開鎖〕    〔参事投票を計算〕
  82. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 投票の結果を報告いたします。  投票総数百三十八票、  白色票八十三票、  青色票五十五票、  よつて両案は委員会修正通り議決せられました。(拍手)      ——————————    〔参照〕  賛成者(白色票)氏名  八十三名    藤野 繁雄君  早川 愼一君    徳川 宗敬君  伊達源一郎君    館  哲二君  竹下 豐次君    高瀬荘太郎君  高田  寛君    新谷寅三郎君  島村 軍次君     楠見 義男君  河井 彌八君     加藤 正人君  片柳 眞吉君     加賀  操君  岡本 愛祐君     井上なつゑ君  伊藤 保平君     飯島連次郎君  赤木 正雄君     山川 良一君  村上 義一君     森 八三一君  上原 正吉君     岡田 信次君  青山 正一君     玉柳  實君  中川 幸平君     郡  祐一君  廣瀬與兵衞君     松平 勇雄君  加藤 武徳君     城  義臣君  山縣 勝見君     木村 守江君  山田 佐一君     大谷 瑩潤君  一松 政二君     深水 六郎君  草葉 隆圓君     左藤 義詮君  黒田 英雄君     寺尾  豊君  溝口 三郎君     三浦 辰雄君  前田  穰君     小野 義夫君  宮田 重文君     西川甚五郎君  杉原 荒太君     秋山俊一郎君  鈴木 直人君     長谷山行毅君  高橋進太郎君     石原幹市郎君  堀  末治君     鈴木 恭一君  愛知 揆一君     安井  謙君  平林 太一君     長島 銀藏君  平沼彌太郎君     竹中 七郎君  溝淵 春次君     團  伊能君  瀧井治三郎君    池田宇右衞門君 前之園喜一郎君     駒井 藤平君  油井賢太郎君     北村 一男君  中山瀬米吉君     白波瀬米吉君  岩沢 忠恭君     鈴木 強平君  木内 四郎君     大屋 晋三君  泉山 三六君     黒川 武雄君  横尾  龍君     境野 清雄君  大隈 信幸君     谷口弥三郎君     —————————————   反対者(青色票)氏名  五十五名     成瀬 幡治君  重盛 壽治君     山花 秀雄君  門田 定藏君     千葉  信君  三輪 貞治君     三橋八次郎君  若木 勝藏君     小酒井義男君  梅津 錦一君     三好  始君  深川タマヱ君     荒木正三郎君  内村 清次君     羽生 三七君  紅露 みつ君     松浦 定義君  松原 一彦君     高田なほ子君  森崎  隆君     吉田 法晴君 深川榮左エ門君     岩木 哲夫君  岩男 仁藏君     菊川 孝夫君  岡田 宗司君     河崎 ナツ君 小笠原二三男君     金子 洋文君  須藤 五郎君     岩間 正男君  兼岩 傳一君     江田 三郎君  堀  眞琴君     水橋 藤作君  鈴木 清一君     上條 愛一君  田中  一君     加藤シヅエ君  山田 節男君     齋  武雄君  矢嶋 三義君     村尾 重雄君  永井純一郎君     吉川末次郎君  佐々木良作君     松永 義雄君  相馬 助治君     赤松 常子君  小松 正雄君     伊藤  修君  三木 治朗君     棚橋 小虎君  波多野 鼎君     下條 恭兵君      ——————————
  83. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 次に、運輸省設置法の一部を改正する法律案総理府設置法の一部を改正する法律案国家行政組織法の一部を改正する法律案行政機関職員定員法の一部を改正する法律案、以上四案全部を問題に供します。委員長報告はいずれも修正議決報告でございます。委員長報告通り修正議決することに賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  84. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 過半数と認めます。よつて四案は委員会修正通り議決せられました。      ——————————
  85. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 日程第二十一、電波法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)を議題といたします。  先ず委員長報告を求めます。電気通信委員長鈴木恭一君。     —————————————    〔鈴木恭一君登壇拍手
  86. 鈴木恭一

    ○鈴木恭一君 只今議題となりました電波法の一部を改正する法律案について、電気通信委員会における審議経過並びに結果を御報告申上げます。  本件の提案理由は、日本国との平和條約第十三條の規定により、我が国が国際民間航空條約の規定並びに同條約の附属書として採択されました標準方式及び手続を実施することとなりましたことと、九四八年の海上における人命の安全のための国際條約に加入することとなりましたために、現行電波法に航空機の無線局に関する規定を新たに設け、又舶船の無線局について所要の改正を行う必要を生じたことによるものであります。  その内容は、新たに制定されました航空法及び海上における人命の安全のための條約に加入等のため一部改正の行われました船舶安全法の規定に対応したものであります。なお、本案は、原案に対して衆議院において三項目について修正の上、本院送付となつたものでありますが、修正要旨は、船舶安全法施行規則による近海区域第一区の区域内における船舶局の通信は、現行電波法上、国際通信として、第二級無線通信士が独立して行い得ないこととなつており、経過措置として電波法制定後三年間だけこれを認められておるのでありますが、既往二カ年の実情及び国際電気通信條約の規定に照らして、これを恒久措置とすることとした点その他であります。電気通信委員会におきましては、本法律案が五月十日予備審査のために付託されまして以来六回に亘つて委員会を開き、その間におきまして参考人の意見を聞くなど愼重審議をいたしたのでありますが、その詳細は速記録によつて御承知をお願いいたします。七月二十二日質疑を終え、翌二十三日討論に入りましたところ、別段発言もなく、直ちに採決に入り、全会一致を以て本案は衆議院送付案の通り可決すべきものと決定した次第であります。以上御報告申上げます。(拍手
  87. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案に賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  88. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 過半数と認めます。よつて本案は可決せられました。本日の議事日程はこれにて終了いたしました。次会の議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。本日はこれにて散会いたします。    午後八時三十五分散会      —————————— ○本日の会議に付した事件  一、積雪濕潤地帯における義務教育学校屋内運動場整備促進に関する決議案  一、日程第一 市の警察維持特例に関する法律案  一、日程第二 地方公営企業法案  一、日程第三 地方制度調査会設置法案  一、日程第四 義務教育費国庫負担法案  一、日程第五 臨時石炭鉱害復旧法案  一、日程第六 通商産業省設置法案  一、日程第七 通商産業省設置法施行に伴う関係法令整理に関する法律案  一、日程第八 工業技術庁設置法の一部を改正する法律案  一、日程第九 農林省設置法等の一部を改正する法律案  一、日程第十 経済審議庁設置法案  一、日程第十一 経済安定本部設置法廃止及びこれに伴う関係法令整理等に関する法律案  一、日程第十二 資源調査会設置法案  一、日程第十三 大蔵省設置法の一部を改正する法律案  一、日程第十四 大蔵省設置法の一部を改正する法律等施行に伴う関係法令整理に関する法律案  一、日程第十五 保安庁法案  一、日程第十六 海上公安局法案  一、日程第十七 運輸省設置法の一部を改正する法律案  一、日程第十八 総理府設置法の一部を改正する法律案  一、日程第十九 国家行政組織法の一部を改正する法律案  一、日程第二十 行政機関職員定員法の一部を改正する法律案  一、日程第二十一 電波法の一部を改正する法律案