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1952-07-02 第13回国会 参議院 本会議 第60号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年七月二日(水曜日)    午前十時九分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第六十一号   昭和二十七年七月二日    午前十時開議  第一 破壊活動防止法案内閣提出衆議院送付)(前会の続)  第二 公安調査庁設置法案内閣提出衆議院送付)(前会の続)  第三 公安審査委員会設置法案内閣提出衆議院送付)(前会の続)  第四 法廷等秩序維持に関する法律案衆議院提出)(委員長報告)  第五 昭和二十三年六月三十日以前に給與事由の生じた恩給の特別措置に関する法律案衆議院提出)(委員長報告)  第六 農林漁業組合再建整備法の一部を改正する法律案衆議院提出)(委員長報告)  第七 日本国アメリカ合衆国との間の安全保障條約に基き駐留する合衆国軍隊に水面を使用させるための漁船の操業制限等に関する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第八 昭和二十六年産米穀超過供出等についての奨励金に対する所得税臨時特例に関する法律案衆議院提出)(委員長報告)  第九 製塩施設法案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第一〇 航空法案内閣提出衆議院送付)(委員長報貨)  第一一 日本国アメリカ合衆国との間の安全保障條約に基く行政協定の実施に伴う航空法特例に関する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第一二農地法案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第二三 農地法施行法案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第一四 輸出取引法案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第一五 航空機製造法案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第十六 特定中小企業の安定に関する臨時措置法案衆議院提出)(委員長報告)  第一七 電源開発促進法案衆議院提出)(委員長報告)  第一八 中華民国との平和条約締結について承認を求めるの件(衆議院送付)(委員長報告)  第一九 北太平洋公海漁業に関する国際条約及び北太平洋公海漁業に関する国際条約附属議定書締結について承認を求めるの件(衆議院送付)(委員長報告)  第二〇 インドとの平和条約締結について承認を求めるの件(衆議院送付)(委員長報告)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。      —————・—————
  3. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) これより本日の会議を開きます。  日程第一、破壊活動防止法案、  日程第二、公安調査庁設置法案、  日程第三、公安審査委員会設置法案、(いずれも内閣提出衆議院送付)  前会に引続き、以上三案を一括して議題といたします。  これより中山福藏君外一名提出修正案に対する質疑に入ります。順次発言を許します。中田吉雄君。    〔中田吉雄登壇拍手
  4. 中田吉雄

    中田吉雄君 私は日本社会党を代表し、緑風会修正案に対しまして質問せんとするものでございます。  我が党は、破防法に対しまする全国的な規模における反対に鑑みまして、(「誰が扇動しておるんだ」と呼ぶ者あり)是々非々の伝統を誇られますところの緑風会とされては、政府原案の撤回を求められるか、或いは広汎且つ徹底した修正案を用意されまして、世論にお応えになるであろうことをひそかに期待したものでございます。然るに、昨日提案されました緑風会修正案なるものは、その本質において自由党原案と何ら異なるところなく、我々の期待と去ること極めて遠く、(「その通り」と呼ぶものあり)かく国民大衆が良識の府といたしまして参議院に繋いだ微かな唯一つの希望すら今や失われんといたしまして、議会政治全体に対する不信と危機を招くに至りましたことは、緑風会のためにも誠に惜しみても余りあることと言わなくてはなりません。(「そうだ」と呼ぶ者あり、拍手)  私は先ず第一に、過般来の破防法審査難航に鑑みまして、二院制度議会政治において、参議院における第二の大会派といたしまして、緑風会とされましては如何なる議会運営をして第二院としての使命を果されようとするか。このことは破防法と極めて深い関連があると思いますので、その基本的な態度をお伺いいたしたいと思うものであります。(「それはおかしいな」と呼ぶ者あり)御存じのごとく、衆議院におきましては、自由党は二百八十数名の圧倒的な多数を占めまして、野党は手も足も出ないという状態でありまして、(「その通り」と呼ぶ者あり)法案審査の粗漏や専横は言語に絶するものがありまして、その議案審査状態は全く赤子の手をねじるような状態であります。このような状態におきましては、実に二院制度は、かかる一院制の行き過ぎを矯めるところに大きな役割があるわけであります。(拍手衆議院における自由党行き過ぎに対しまして、今ほど我が参議院が重大な歴史的使命を果さなくてはならない時はないと思うわけであります。(「その通り」「そうだ」と呼ぶ者あり、拍手)然るに参議院におきましては、自由党八十一名、緑風会五十七名、左派社会党三十二名、右派社会党三十名、民主クラブ十七名、改進党十六名等と、結局中山氏の属されますところの緑風会の五十七名というものが、各位がキャスティング・ヴオートを握られ、我が国運命を左右するところの重大なる立場にあるわけであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)而も参議院における緑風会の占められる高い比重にもかかわりませず、そのとられた態度からいたしまして、講和安保行政協定が如何に我が国に不利であつたか。そのことを私は西ドイツ連邦議会との比較において申述べ、緑風会皆様の基本的な態度伺つて、今後の議事運営に資したいと思うわけであります。(「そうだ」「よく聞きなさい」と呼ぶ者あり)西ドイツ連邦議会におきましては、この二月八日、二百四対百五十六を以てドイツ軍備案を可決いたしました。併しこれは、我が国における安保條約、行政協定の、ごとき無條件のものではありません。実に、占領軍の持つている一切の特権を即時ドイツに返還するとか或いはザールを返還する等の、五つの到底連合軍が受諾できないところの條件を受入れることによつてのみ再軍備をするという、基本的態度をとつております。次にドイツ参議院におきましては、この五月十日、我が国防衛分担金安全保障諸費に匹敵します西欧防衛に対しまする分担金二十八億ドルを断固否決したわけであります。更に西ドイツ議会は、五月六日その下院におきまして、西独と共産主義諸国との通商に対し、西欧側によつて課せられたる制限措置を撤廃するよう要求する決議案を満場一致採択いたしまして、直ちに東西貿易事務所を作り、代表をすでに北京に送ることを決定いたしました。アメリカに気兼ねばかりいたしまして、それすらできないところの腰の抜けた日本参議院などとは到底比較にならないものであります。更に又、西ドイツ参議院は、この六月十九日欧州軍條約の審議を開始いたします前に、先ず連邦政府に対し、欧州軍條約の合憲性に関しまして、最高裁判所の裁定を求めるように勧告いたしております。(「何をやつているんだ」「よく聞けよ」と呼ぶ者あり)即ちドイツ参議院は、欧州軍條約即ちドイツ軍備條約案最高裁判所におきまして憲法違反でないということがわかつてからこの條約を審議するということを、アデナウアーに申出で、一本釘をさしているわけであります。  我が日本社会党が再軍備反対いたしますのは、我が国安全保障のためにも断じて今再軍備すべきではありませんし、更に吉田内閣野党反対を提げまして外交交渉を有利にさせるために、野党の歴史的な任務を困難なる立場から果そうというためでもあるわけであります。我が日本社会党中共貿易即時再開を叫びますのも、日本経済自立に対しまして不可欠であるから、そういう意味からばかりでなく、バトル法に名をかり、或いは「まぐろ」その他に高関税をかけようとする米国の気ままな措置に対する牽制策でもあるわけであります。我が国と同じ立場にありますところの自由世界に属する西ドイツ連邦議会比較をしますならば、我が国参議院のとられた態度とは誠に雲泥の差があると言わなくてはならないわけであります。  かく観じ来たりますと、独立過程にありますところの我が国会、特に参議院において、緑風会がどんな国際條約を結ばれても賛成するというので、吉田内閣が強力な対米交渉をされなかつたということによつて、どれだけ不利な講和安保行政協定が結ばれたでありましようか。(「そうだ」と呼ぶ者あり)破防法についても又然りであります。緑風会皆様の善意にもかかわらず、自由党的な、余りにも自由党的な御態度は、客観的にはかくのごとき不幸な事態を招来しておるわけであります。(その通り」と呼ぶ者あり、拍手)  そこで私は、この十日間の破防法審議難航を通じまして明白になつたことは、参議院から、大臣、政務次官を送ることの是非是非検討しなくてはならない重大な段階に達したと思うわけであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)特に緑風会のごとき、政党ではなく一会派立場をとられる場合において、特に然りであろうと思うわけであります。緑風会といたしましては、村上運輸大臣以下を吉田内閣に送つておられる。内閣責任制立場からいたしましても、自由党の線から本質的な(「質問の内容がわからん」「話を全部聞け」と呼ぶ者あり)修正はできない。併し強い世論反対も顧慮しなくてはならない。実に今回提案されましたところの緑風会修正案なるものは、大臣を送つておられる立場から、自由党に十分お顔を立てなくてはならない。併しながら世論反対に鑑み、字句修正でこれに応えなくてはならない。このようなことがです、併しながら全野党の到底承認するところではないわけであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)即ちこの十日間の国会審議難航は、実に緑風会大臣を送つておることの苦悶の象徴と言わなくてはならないわけであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)そこで私は、このような事態に鑑みて、良心的な緑風会皆様とされては、どのようにこの点を御反省されておるか、御所見を承わりたいと思うわけであります。緑風会とされましては、僅かにドッグレースやモーターボートレースのごときものに反対し、国の運命に関する基本的な反動立法に対しては自由党と行動を共にせられるのであるか。(「その通り」「恥かしいだろう」と呼ぶ者あり)我々といたしまして、今後労働関係諸法規の審議その他等に鑑みましても、参議院第二の大会派としての緑風会皆様の基本的な態度をお伺いすることは、今後の議事をスムースに進める上に対しまして、最も必要な要件であろうと思うわけであります。(「どうだ、何かあつたら言つてみろ、緑風会」と呼ぶ者あり)  第二に、破防法に関します三案とも否決されたということは、議会史にも稀な悪法である心らであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)従つて参議院キャスティング・ヴオートを握られます緑風会皆様方といたしましては、より愼重を期せられる意味におきまして、この際いさぎよく緑風会修正案を撤回され、自由党原案反対し、その立法は後日に譲るという御態度はとれないものでありましようか。(「そうだ」「緑風会を解散してもいいよ」「ヒステリー女の泣きごと」と呼ぶ者あり)  日本国憲法第四十一條は、「国会は、国権の最高機関であつて国の唯一の立法機関である」ことを規定いたしています。併しこのことは、国会世論を全然無視いたしまして何を決定してもよいということを意味するものではございません。ギリシャ語に語源を持ちますデモクラシーのデモスは大衆であります。クラシーは政治であります。即ち大衆と共に政治をすることがデモクラシーであり、議会政治であるわけであります。この破壊活動防止法案ほど全国民から悪評をこうむつ法案は未だ曾つてありません。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)日本産業の基幹を担う総評に結集せる三百五十万の組織労働者は、数回に亘る巨大なる抗議ストを以て応え、更に穏健な学者知識人学生等、強力な反対をなし、全国津々浦々、破防法について語られざる所はなく、且つ至る所不評をこうむつています。而もその反対運動は日を追うて激しくなつています。民の声は神の声とも言われています。この反対をも押し切つて委員会では三案とも否決されているにもかかわらず、なお且つ法案を成立させようとするのでございましようか。私は、かかる態度は、善良なる国民大衆に対する挑戰であり、議会政治の否定であり、(「その通り」と呼ぶ者あり)自殺行為であると断ずるものであります。(拍手)而もかかる問題の決定権は、自由党ではなく、緑風会皆様にあるわけであります。(「そうだ、」「責任重大」「その通り」「質問か討論かどつちだ」と呼ぶ者あり)かかる法案は、近く行われますところの総選挙におきまして国民に問うて、国民意思従つて措置すべきであつて、その後立法するとしましてもなお遅きに過ぎることはないでありましよう。我が党は全国民の名におきまして、緑風会皆様としてはこの点を御考慮される意思はないか、お伺いいたしまして、改めて質問いたしたいと思うものであります。(拍手
  5. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 中山福藏君。    〔中山福藏登壇
  6. 中山福藏

    中山福藏君 只今中田さんの御質問でありますが、緑風会基本的態度は飽くまでも不偏不党であります。(「大笑いだ」と呼ぶ者あり)従つて破防法関係のない緑風会基本的態度についての質問に答える必要はない。  第二の点は、只今質問者の言われました通りに、成るほど委員会では三案とも否決になりました。併しながら皆さん全部の方々について御相談を申上げて、如何に処理すれば国家のために(「ならん」と呼ぶ者あり)最も(「高く売りつけるか」と呼ぶ者あり)公共の安全を確保するために妥当なる行為であるかということをお諮りしておるのであります。(拍手、「如何に国民を裏切るか」と呼ぶ者あり)従つて大衆の声に応ずるのだ、こういうことをおつしやいますけれども、(「いつ聞いた、八千万の国民にいつ聞いた」と呼ぶ者あり)先般新聞の世論調査によりましても、国民の七割は破防法を知らないと言つておる。(拍手)あとの三割のうち一割六分は破防法賛成をしておるのであります。諸君は一部の人の声を全国民の声であると言われるならば、只今中田君がギリシャ語を用いられたが、ポリテイシアンというものはどういう意味か、世渡り上手と解釈しておるのであります。(「世渡り上手は緑風会だ」と呼ぶ者あり)一部の声を聞いて、これが全国民の声などと言うのは、選挙民の投票を得るための世渡り上手の言葉であると断ぜざるを得ない。従つて我が緑風会は、断じてこれを撤回する必要はない。(「答弁にならんぞ」と呼ぶ者あり)
  7. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 中田吉雄君。    〔中田吉雄登壇
  8. 中田吉雄

    中田吉雄君 中山議員は、私の質問に対しまして要点をそらされましたが、更に申上げます。世論に鑑みまして、更に愼重なる配慮を以ちまして、国政の誤まりなきを期するために、後日にこの立法を讓る御意思はないかということをお尋ねしたわけであります。私がなぜこのような質問をいたすかと申しますと、丁度私が昭和六年京都大学にいます際に、現在の改進党の前身である浜口内閣は当時緊縮政策一大スローガンとして掲げられまして、官吏の減俸を実施する案を立てたのでありまするが、世論のごうごうたる非難がありまして、非常な窮地に立たれたわけであります。ところがその際、浜口雄幸氏の政治指南役であるところの仙石さんは、無理をしてはいけないから撤回するようにという忠告をされまして、浜口大臣は潔くこの忠告に応じられたわけであります。(「それが何だ」と呼ぶ者あり)而もこのことは、浜口内閣政治上の無定見として非難されるよりかも、むしろ世論に忠実であるというので非常な声価を高めたわけであります。私は現在の吉田内閣に一人の仙石さんのないことを誠に遺憾とするものであります。(拍手)恐らく私の深く尊敬します古島一雄さんがおられましたら、このようなことはなかつただろうと思うわけであります。先般鳩山一郎氏は、吉田内閣の命脈は旦夕に追つた、こういうふうに申しまして、重大な宣戰布告をされていますが、数のみに溺れまして、進むことばかり知つて退くことを知られない、そういうことに対する末期現象に着目されたというのでありましたならば、非常なる卓見であると言わなくてはなりません。私はこの際、是非緑風会のかたに、国会における参議院の第二党的な立場から、仙石氏の役割を果して、自由党をして誤まらしめないように是非いたしてもらいたいということを心からお願いするものであります。(拍手)  第三に、緑風会修正案第三條第一項第一号に、第八十一條、(外患誘致第八十二條、(外患援助)第八十七條、(外患誘致及び外患援助の未遂)第八十八條、(外患誘致及び外患援助予備、陰謀)を追加されましたことは、衆議院送付案よりかも更に重大な改正であると私は思うわけであります。(「そうだ」「改悪だ」と呼ぶ者あり)私は、破防法に対しまする緑風会修正案を見まして、先ず何よりも直感的に感じましたことは、これはてつきり特審局の指導になるところの修正案に違いないということを見たわけであります。(「そうだ」「真相をはつきりしろ」と呼ぶ者あり、拍手)果せるかな、その後の過程を通じまして、この法案が紛れもなく、穏健中正を誇られる緑風会と、善良なる国民が蛇蝎のように忌み嫌います特審局の合作であり、(「そうだ」と呼ぶ者あり)少くとも特審局の重大な影響があつたということは一点疑いないことであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)而も重大なことは、事前にこの案が自由党と打合されて、完全な了解の下に出されたということであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)私は、吉河特審局長以下特審局諸君緑風会の控室に足繁く立ち入つているのを目撃いたしまして(拍手、「一言もないでしよう」と呼ぶ者あり)これはどうせ、ろくなことはないと、非常に緑風会のために憂慮したわけであります。そこで、この法案が、本会議を通じまして、特審局官僚諸君との固き提携の下に、而も自由党との完全な了解の下にできたものであつて自由党の第二案であるということが明確になつた場合におきましては、(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)穏健なる学者勤労大衆の怒りは遂に爆発するでありましよう。  これを要しまするに、この修正案は、第二條に、「この法律は、国民基本的人権に重大な関係を有するものであるから、公共の安全の確保のために必要な最小限度においてのみ適用すべきであつていやしくもこれを拡張して解釈するようなことがあつてはならない。」或いは「特定行為を行わせる目的をもつて」という、こういうような扇動の規定をなすがごとき、何ら実体的な規定影響を及ぼさない形式的な字句で以て譲歩せるごとく装い、そのオブラートで以て包んで、刑法八十一條、八十二條、八十七條、八十八條等外患の項を持ち込み、その改悪をカムフラージユされておるのであつて、我々としては、衆議院送付原案よりも一段と改悪され、(拍手)、特審局的な色彩が強くなり、実際には法の適用範囲は著るしく拡大され、そうして拡張解釈濫用の虞れが無限に大になつたと言わなければならないわけであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)自由党原案では世論が許さないから、是々非々を主張される緑風会に代案を作らせ、世論反対をそらしつつ、実質的には自由党の案を通過させるという、特審局の戰略を見ますると、吉河特審局長以下の手腕はなかなか相当のものであると言わざるを得ないわけであります。(「ヒステリー」と呼ぶ者あり)  そこで私は、(「うまいぞ、五十七名をちよろまかしたんだから」と呼ぶ者あり)中山委員にお伺いしたい。緑風会修正案がまとまりますまでの会派内の事情緑風会破防法通過の強硬なる御主張をされた方々、及び特審局自由党との関係を、この議場を通じて全国民に厳粛に表明されんことをお願いいたします。(拍手、「七割は知らなかつたんだよ」「大きいじやないか」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)第四に……議長、静粛に願います。
  9. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 静粛にお願いします。
  10. 中田吉雄

    中田吉雄君(続)第四に、第三條第一項第一号に(「木村君の退場を命ず」と呼ぶ者あり)外患の項を特にお加えになつた理由を、詳細且つ具体的に御説明を願いたいと思います。(「必要なし」と呼ぶ者あり)我が国の過去におきまして、刑法八十一條、八十二條、八十七條、八十八條に関しまする事犯は一体何件あつたか、そうして、その主なるものにつきまして説明をお願いし、且つかかる規定を(「委員会だ、そんなことは……」と呼ぶ者あり)暴力主義的な破壊活動の中に入れざるを得ないとされるところの(「それじや委員会でやれ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多く議場騒然
  11. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 静粛にお願いします。(「委員会賛成だ」「只今の動議に賛成します」と呼ぶ者あり)
  12. 中田吉雄

    中田吉雄君(続)外患の項を特に暴力主義的破壊活動の中に入れざるを得ないとされるところの現段階における国際並びに国内事情の分析と将来をどう予測されていますか。この点に関する御所見をお伺いいたしたいのであります。特に平和憲法擁護のためにする再軍備反対運動は、緑風会修正案中新たに追加されたるところの刑法第八十一條、八十二條、八十七條、又は八十八條に絶対に抵触することはないかどうか。この点をお伺いいたしたいのであります。  我が日本社会党は、我が国の現在の段階における再軍備は傭兵再軍備である、即ちアメリカ軍の彈除けに過ぎないものであり、又軍事基地の提供は全面講和実現を阻害するばかりではなく、新たなる国際危機を招来するものであるとの立場をとりまして、自主中立外交理論に立脚してその運動を展開しているものであります。従つて我が党は、全面講和の最大の障害となる講和條約の第五條、第六條の削除、安保行政協定の廃棄を主張いたしまして、米英と共に、イデオロギーの相違にもかかわらず中ソ両国とは講和すべきであるとの立場をとつているわけであります。然るにです、ダレスは、全面講和は無講和に等しく、軍事的な真空は、直接侵略間接侵略を招くものであるとしまして、再軍備反対に応えているわけであります。特に緑風会の今回提案されましたことから考えますると、平和憲法擁護運動外患の罪に規定する行為をなすこととされているが、これがです、暴力主義破壊活動の一環として拡張解釈をされる虞れは絶対ないでありましようか。特に外患に関しまするところの刑法学者解釈が必ずしも一致いたしていませんので、拡張解釈公算が極めて大であると言わなくてはなりません。例えば「中野改正刑法研究」によりますと、外患誘致罪は、「外国に通謀して日本国、に対し武力を行使するに至らしめるによつて成立する。外国とは外国政府である。」と規定しています。従つて自主中立立場に立つ我が日本社会党平和憲法擁護運動をすることは、この規定から外れるようであります。併しながら、江家氏は、その刑法の各論におきまして、外患に関する罪は、「我が国に対する外国武力行使を誘致し、又はこれに協力する行為実態とする」と規定しているわけであります。この解釈から言いますると、特にダレス真空理論との関連におきまして考える場合に、再軍備反対我が国に対する武力行使を誘致するものとの拡張解釈が成り立つ虞れがあり、又再軍備反対は間接的にこれに協力する行為実態をなすと濫用の虞れがなしとしないわけであります。元来が破壊活動防止法案という名前すら問題であります。名称の上から、破壊活動は防止すべきであるということは、最も俗受けするところの呼称であります。そうでないものを取締るのがなぜ悪いか、外国と通謀し、外患を起すものを取締るのがなぜ悪いか、こういうような仕方で以て実は我が国の再軍備反対警察予備隊反対運動等平和擁護の基本的な立場に弾圧を加えるところの公算が極めて大なわけであります。この点で我々は政府原案よりかも一段と改悪されたものであることを深く憂慮を持つておるのであるが、緑風会各位の責任ある答弁を要求するものであります。(拍手、「しつかりやれ」「木村君何とか言わんか」と呼ぶ者あり)  第五に、(「委員会か」と呼ぶ者あり)破壊活動防止法案の扇動をどうしても削除できなかつた理由をお伺いしたい。我が党としては、国内治安は現行刑法の枠内で十分処理でき、且つ真の意味の治安対策は犯罪を発生せしめるところの社会的基盤に改善を加えることによつて全うし得るとの立場をとる。破防法のごときは有害無益の立法であるという立場をとるものであります。併し、百歩を譲りまして我が国現下の実情からして最小限の治安立法を必要とする立場のものであるといたしましても、扇動という漠然たる規定は削除すべきである、こういうふうに考えるわけであります。特に昨日は、一松先生が多年の蘊蓄を傾け、與党をして寂として声なからしめるような、扇動に対する終止符を打たれたわけであります。(「あの三分の一の議論をしてみろ」と呼ぶ者あり)社会情勢の如何によつて拡張解釈されることは、過去の治安立法で経験済みであります。これは緑風会の皆さんが愼重な用意をして扇動を定義付け、「特定行為を実行させる目的を以て」と規定されましても、このようなことは現内閣の下においては殆んど無価値であります。扇動は教唆の一種であり、教唆によつて十分賄い得るものであることは明らかであります。又この案が国会の法制局に持ち込まれた際、随分大胆な修正をされるものであるということは、愼重立法家が憂慮を以て我々に漏らしているところであります。従つてこの破防法から扇動の一切の字句を除くべきではないでしようか。それが全国民の幾百千万の破防法反対世論に応えるところの親切なる態度ではないでしようか。又扇動を削除しまして一旦実施してみる。それによつて治安が守れない際には、一年に国会は二回もあるのであるから、その場合に考慮いたすといたしましても、なお遅くはないじやないでしようか。(「遅い」と呼ぶ者あり)そのくらいな愼重さがあつて然るべきであります。それをしもなされないで、扇動の概念規定にとどまり、何ら実質的な規定修正がなされない点は、全く自由党案と同工異曲であり、自由党の代案であり、且つ自由党が(「同じことを言うな」と呼ぶ者あり)緑風会案に賛成するゆえんのものは全くここにあるわけであります。  第六に、修正案においては、団体活動の制限、解散の指定等、団体活動の定義の明確化をされませず、衆議院送付修正案に対する改正案の跡を見ないのは、一体如何なる理由でありましようか。近代の法概念におきましては、犯罪の責任は一切個人であり、英米においても個人責任の原則が貫かれているわけであります。我が国の法体系も又然りであります。然るに緑風会修正案においてはこの点が聊かも修正の跡が見られない。占領下の占領政策の便宜上の異常なる措置としてとられましたところの団体等規正令がそのまま継承されているのでありまして、これはです、マツカーサー元帥やリツジウエイ将軍の権限を一手に政府の手に持たしめようとするところの、民主主義的複数政党制から一党独裁の専制政治への道に通ずる虞れがあると言わなくてはなりません。(拍手)この條項が削除或いは修正がなされていないところにも、緑風会修正案政府原案と本質的に異ならない又理由があるわけであります。  第七に、公安調査庁の審理制度を廃止しなかつたのは如何なる理由であるか。破壊活動防止法案の対象となるところの事犯は団体の死命を制しまするところの極めて重大な任務を持つものであります。救済規定があると言つても殆んど言うに足りません。然るにこれを行政処分に任せるというのでは、濫用は必然であり、立法、司法、行政の三権分立の基本的原則を混乱せしめるものと言わなくてはなりません。この点について御所見をお伺いしたいと思います。  更に第八に、なぜ行政事件訴訟特例法第十條第二項の但書、内閣総理大臣の執行停止の異議申立を適用しないこととされなかつたか。この点については、過般我が党は、同志青森県会議員の米内山君がこの特例法の但書のために身を以て苦い体験をしているわけであります。真に弱い立場の者を擁護いたします点からも、この点は十分考慮されて然るべきであろうと思うのであります。    〔議長退席、副議長着席〕  更に第九に、公安調査官の職権濫用に対しましてはたつた三年以下の懲役又は禁錮の刑に処するといたして、刑法百九十三條の一般公務員の職権濫用罪と同法の百九十四條の特別公務員の職権濫用の中間をとつたとのことでありますが、公安調査官のごとき広汎な権限を持ち政治活動の一切を規制する者の職権の濫用が、政府の申されるように、或いは中山さんの申されますように、絶対ないといたしますならば、一般大衆を安心させる意味からも、なお更、重刑を以てこれに対すべきではないでしようか。こういう点につきましてお伺いいたしまして、改めて御質問いたしたいと思います。(拍手、「委員会で済んだ、そんなことはもうみんな」と呼ぶ者あり)
  13. 三木治朗

    ○副議長(三木治朗君) 中山福藏君。    〔中山福藏登壇拍手
  14. 中山福藏

    中山福藏君 中田さんのおつしやることは私ども非常に参考になるのですけれども、(「参考になるとは何だ」と呼ぶ者あり)先ほど言われました浜口さんに対する仙石さんの立場ですね、こういうふうに緑風会がやつてはどうかということでございますが、私どもはこの修正案をこしらえます前には、この修正案の一部に伊藤さんの意見すらも加えてある。だから、すべて他山の石としてですね、皆さん方の意見を十分織り込んであるつもりであります。(「引込めなければ駄目じやないか」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)なお、引込める引込めないは見解の相違で、(発言する者多し)私どもは国家のために最も妥当なる修正案であると確信いたしております。(発言する者し、拍手)  第二は、外患罪をなぜ本修正案に加えたかということでありますが、自分が生みまする子供の足が一本足りないときはその一本の義足をはめてやるのが親心であります。(「その通り」と呼ぶ者あり)だから、こういうような不十分な法律案に対しては、これを通すとするならば、十分完成して、国民が惑わないようにしておくということが最も必要であると思うのであります。(「特審局」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)又特審局のような……特審局々員などというような年の若い小僧さん方に断じて緑風会が相談することはありません。(笑声、拍手)自主的に私どもが修正を加えたものであります。(発言する者多し)従つて皆様方今日……(発言する者多し)この手近い例を説明いたしましてもおわかりになるでしようが、あなた方、東南アジアを御覧になるとすぐわかる。私がこういうことを言う理由がわかると思う。(「お前見ていたのか」「お前わかるのか」「生意気言うな」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)例えば昨年エジプトの警察と軍隊いろいろな暴動を起した。これはどういうわけかと言いますと、アゼルバイジヤンで特別の訓練を受けた特別工作隊員が、或る方面の指令を受けてエジプトに来て、軍隊と警察に入り込んで暴動を起しておるのであります。又イランの騒動がなぜ起きたか——去年の三月にコーカサスから特別工作隊がイランに入つて、イランのチユデ一党と連絡をとつて暴動を起しておる。(発言する者多し)皆様方こういう実例を十分に御存じでありましよう。これを知つてつてそういう質問をなさるというのは、いささか私は忸怩たるものがあるであろうと考えておる。(「何を言つておるのか」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し、拍手)  第三に、拡張解釈の問題でありまするが、これは本法律案解釈に当つては拡張してはいけないとありますけれども、ちよつとこの点は誤解をなさつておられると私は考えておる。(「ノーノー」と呼ぶ者あり、その他発言する苦多し)  又扇動を削除しなかつたのはどうかというお尋ねでございますが、これは今日皆様方が、吹田の事件、新宿の事件を御覧になれば、こういう御質問は出ないのじやないかと考えております。(発言する者多し、拍手)この法律から扇動を除けば骨抜きになる。この法律案は幽霊が歩行しておるようなことになつてしまう。だから当然緑風会としてはこれを残しておく必要があると認めたのであります。(拍手)  団体活動の態度に対しましては、これは政府の答弁の範囲でありますから申上げません。  又公安調査庁の問題についても、これは政府原案通りであります。  なお第九に、行政事件訴訟特例法について何らの修正がないのはどういうわけかということでありますが、これは原案で差支ないと、かように認めましたわけであります。(「最高裁でも庁対してるぞ」「その理由を挙げなくちや答えにならん」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)  公安調査庁のいわゆる刑法の第百九十三條について、私どもが一般の公務員の刑罰規定より一年高くしたのはどういうわけかと言われますが、これも一先ずこれくらいでよかろうということに緑風会は考えるわけであります。  以上御答弁申上げます。(拍手、「何を言つてるか」「そんな答弁では駄目だ」「はつきり答えろ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
  15. 三木治朗

    ○副議長(三木治朗君) 中田吉雄君。    〔中田吉雄登壇
  16. 中田吉雄

    中田吉雄君 私も個人的には、特に地方行政委員会に所属いたしまして、私のかねて尊敬します西郷委員長、岡本愛祐氏等がおられまして、極めて心苦しいわけでありますが、私は日本運命を賭けたこの法案に対しまして忌憚のない質問をいたすことを御了承願いたいと思うわけであります。(「やれやれ」「了解」と呼ぶ者あり)  特に只今外患規定を挿入されて、それがダレス真空理論との関係において極めて多くの拡張解釈濫用の危險があるではないかという質問に対し、自由、全緑風会を代表しての統一的な解釈がなされない点は誠に遺憾であると言わなくてはなりません。(拍手)更に私は、この規定を詳細見ましてです、我々といたしましては問題になりますところは、公安調査庁の審理制度、更に総理の執行停止の問題、刑事裁判で無罪になつた者の救済措置、国家賠償、職権濫用等の規定が、ただ單に拡張解釈してはならない、濫用をしてはならないというような一片の訓示的規定では、これは絶対防げないわけであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)これは機構そのものによつて拡張解釈がなされないようにしなくてはならんわけであります。(「その通り」「それが緑風会修正だよ」と呼ぶ者あり)特に私は、吉田内閣におきましては、憲法第九條におきまして戰争を放棄し、その目的を達するために陸海空軍その他の戰力はこれを保持してはならないと固く規定してあるにもかかわらず、警察予備隊と称しまして、バズーカ砲や戰車やカービン銃、大砲等を装備し、これは明白に再軍備であつて憲法違反であるにもかかわらず、これは予備隊の漸増であると称し、国民を欺き、更にアメリカより多くの軍艦の貸與を受け、これは明らかに往年の帝国海軍の連合艦隊の母体をなす、卵をなすものであるにもかかわらず、これをしも連合船隊と称しまして、不当な予備隊、保安隊の拡張解釈を現にやつております。かかる憲法に違反し、警察予備隊の拡張解釈をなして、国民を欺瞞しておるところの現行犯であるところの吉田内閣に対して、如何に第二條にこのような規定を設け、その法律解釈適用が期待できましようか。全く木によつて魚を求むるものと言わなくてはなりません。(拍手)特にです、この法は元来拡張解釈濫用こそが目指するところであります。法の本質であります。これがなくては、かかる法というものは自由党にとつては全く無用の長物と言わなくてはなりません。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手破防法の名の下に、実は民主主義者、リベラリスト、進歩主義者、民族主義者及び平和主義者を弾圧し、我が国現下の半ば隷属的な状態の半永久化を図り、戰争への法案であることは、紛れもない事実であります。(「その通り」と呼ぶ者あり)而も、破防法は治安維持法の戰後版である。治安維持法が大正十四年公布され、昭和三年緊急勅令で以て死刑と無期懲役とを追加し、やがて制定されたるところの総動員法と相待つて我が国を戰争への破局に導いたことは明らかであります。破防法運命も又かかるところにあると言わなくてはなりません。(拍手)かかる先例に鑑みて、我々は特にこの点を言いたい。拡張解釈濫用の慮れがないと言いますが、去る国会法において、十三條において、自由党の各位は約束されたにもかかわらず、弊履のごとくこれを踏みにじられた。更にです、参議院規則二百三十八條には、懲罰動議は一切の動議に優先すると規定しております。それは表決数に関係するからです。一切の動議に優先してその表決の正当性を決して審議に入るというのは、実に参議院規則二百三十八條立法精神であるわけであります。そのようなものを弊履のごとく踏み破つておいて、どうして拡張解釈がなされないということが断ぜられるでありましようか。(「そうだそうだ」と呼ぶ者あり)  特に私は(「くだらんごとを言つてもわからん、もう少し勉強しろ」と呼ぶ者あり)自己の体験から言つて、(「佐藤尚武自身がやつているじやないか」と呼ぶ者あり)特に私は自分の体験を通じて、如何に法の拡張解釈濫用がなされるかということを自身の体験において強くそういう体験を持たれない緑風会の皆さんにお訴えをして、善処をお願いしたいと思います。(「泣言」「泣言とは何だ」と呼ぶ者あり)  昭和十三年私が京都大学にいまして、鳥取に帰つて、当時徴兵忌避事件がありまして、その事件に対しまして私が、徴兵忌避者を取締ることも法の命ずるところであるが、そのような問題はなぜ彼らがそうせざるを得なかつたかという背景に遡つて同時に解決さるべきであるという一文を地方新聞に発表いたしましたところ、六万の紙を没収し、そうして私を特高、憲兵隊が拉致し、(「自己宣伝はよせ」と呼ぶ者あり)そうして私が予言するような日本運命なつたわけであります。更にです、(「体験を聞け」「お前らはわからんから教えておるんだ」と呼ぶ者あり)現在の結審局はです、更に現在の特審局は、やがてです、できますであろうところの公安調査庁に発展的改組をいたすでありましよう。併しこれについても、私は昭和二十二年から二十五年まで鳥取県会議長をやつておつた際に、その際に、政治反対者をやつつけるというために特審局の官僚が鳥取県でどのような行動をいたしたでありましよう。私の強い態度に対して、遂に特審局も如何ともできがたかつたわけでありますが、一般の善良な大衆でありましたら、ああいう記事が新聞に出て、そうして生命財産に重大な影響を及ぼすことは明らかであります。絶対拡張解釈濫用の慮れがないと言われますが、法務総裁の直属の特審局がすでにそのような過まちを犯しておるわけであります。(「現にやつているよ」と呼ぶ者あり)そういう点を十分考えて頂きたいと思うわけであります。  最後に私は心をこめてお願いいたします。現在自由党のかたがです、特に年若い安井君や加藤君がです、(「有難う」と呼ぶ者あり)極めて反動的な行動をとつておられるのは、どんな自由賞の案でも緑風会賛成されるというような見通しの上に立つておられるからであります。若し緑風会の皆さんが是々非々立場をとられますならばです、そういうふうな「あぐら」をかかずに、立派な才能を持つておられるのでありますから、私はもつとよい議員立法ができ、国民の要望に応えることができると思うわけであります。何とぞ国会内外におけるところの非常な反対に対しては、今からでも遅くありませんから、(笑声)謙虚な立場に立つて、改めて町議、再審議の勇断を示されんことをお願いいたしまして、私の質問を終るわけであります。特に外患の問題については責任ある答弁を、暫時休憩して緑風会の各位の統一的な意見をお願いする次第であります。(拍手
  17. 三木治朗

    ○副議長(三木治朗君) 中山福藏君。    〔中山福藏登壇拍手
  18. 中山福藏

    中山福藏君 もうすでに答弁したように私は考えているのです。(「いやいやしていないよ」「外患はどうした」と呼ぶ者あり)ただ御心配になつておるところは、私どもと自由党と何か乳繰り育つおると、(「そうだそうだ」と呼ぶ者あり)そういうような皆さん方焼もちを焼いているように思う。(「阿呆らしい、禿頭の乳繰りに誰が焼もちを焼くか」と呼ぶ者あり)私はそういうことは我が緑風会においては絶対にないと、かように申上げるよりほかないのです。殊に修正案の第二條について、拡張解釈云々というお話がありましたが、これは要するに刑罰規定をなぜよう少し強くせなかつたかという一点に帰するわけであります。併しながら私どもは、(「外患はどうした」と呼ぶ者あり)お互いに相談しまして、まあこれくらいが適切だと、かように考えたのであります。若し皆さん方のおしやることが首肯に値いするものでありましたならば、我が緑風会は皆さん方の賢明なる御意見を採択するにやぶさかでなかつたということだけは申上げておきます。(「外患はどうした」と呼ぶ者あり)
  19. 三木治朗

    ○副議長(三木治朗君) 伊藤修君。    〔「外患の答弁がないじやないか」「答弁がない」「外患の答弁をせんか」と呼ぶ者あり〕    〔「中田吉雄君「議事進行について……、外患について責任ある答弁がありません」と述ぶ〕
  20. 三木治朗

    ○副議長(三木治朗君) 中山福藏君。
  21. 中山福藏

    中山福藏君 必要ないと認めます。先ほどすでに答弁済みの問題であります。(「そうだそうだ」と呼ぶ者あり、拍手
  22. 三木治朗

    ○副議長(三木治朗君) 伊藤修君。    〔伊藤修君登壇拍手
  23. 伊藤修

    ○伊藤修君 私は、これから緑風会から提案されました修正案に対しまして、(「無茶苦茶だ」「やかましい」「うるさいぞ、静かにしろ」と呼ぶ者あり)質疑をしたいと存ずる次第であります。  原案に対しましては、すでに私から、本会議並びに委員会におきまして、総論において十二点、各論において八十一点、補足して二十五点、合せて百年八点に亘りまして各欠点を指摘して参つた次第であります。只今中山さんの御発言にもありました、ごとく、又委員会におきまして討論の際、岡部さんから御発言がありましたごとく、原案の不備であることは十分與党各位においてもお認めのことである。むしろ御発言の御趣旨は、不備ということを通り越しまして、原案法律としてなつていない、こう断言しても憚らないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)若しこの原案を我々が容認するか否かと、こういう問いを発せられますれば、これは容認しがたい、撤回すべきものであると私は申上げて差支えないと存じます。(拍手)その趣旨の端的な現われは、委員会におきまして緑風会を含めての十対四として原案が否決せられました。この事実を以てしても明らかであると考える次第であります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)  およそ、この原案の成り立ちが、御承知の通り刑事法規と行政の実体規定と、これに伴うところの手続規定と、審理規定と、罰則と、雑則とこうしたものを一つの法律にまとめ上げたという、この異例な立法体制というものから来るところの混乱である。法律としては殆んど曾つて類例のないところの形であつて、その法律体制をなしていないことは、万人の認めるところであるのであります。私から言わしむれば、政府は速かにこれを書き直して、更に整理して提案すべきものであると私は確信して疑わないのです。刑事法規と行政法規とを区別して、これを提案なされば、かくまで紛糾するはずはなかつたと私は考えるのであります。法務総裁が就任早々にしてお慣れにならなかつたために、これを特審局の立案の鵜呑みをせられた結果、今日の苦境に立つていられることは、御同情に堪えないと思うのであります。(拍手)「同情します」「同情の必要なし」「それだけじやないよ、問題は」と呼ぶ者あり)この法律案に対するところの緑風会修正案について私は以下三十五点について御質問を申上げたいと思うのです。(「時間がないよ」と呼ぶ者あり)  先ほど木村さんか、どなたかから、細かいことは委員会でと仰せになりましたが、委員会でなすことを私の本旨といたします。若しお許しあるならば委員会において、事細かに、この法律案について、この修正案に対しまして審議を試みたいと考えておる次第です。(「動議出せ」「異議なし」「委員会異議なし」と呼ぶ者あり)併し今の過程においては止むを得ずこの壇上からかような詳細の点について御質疑申さなくてはならん次第でありますから、中山さんにおきましても、緑風会諸氏におかれましても、私の質問に対しまして一つ一つ懇切丁寧に御答弁を賜わりたいと存じます。(「そうだ」「その通り」と呼ぶ者あり、拍手、「ごまかしは許されん」と呼ぶ者あり)あらかじめ緑風会の秘書のお方に私の質疑要旨を差上げてありますから、十分御研究になつたことと存じますから、(拍手)それで先ほど(「答弁なし」と呼ぶ者あり)中田君に対する質問のお答えは、私、尊敬する中山さんとしては余りに親切がなさ過ぎると思うのです。(「できないのだよ」と呼ぶ者あり)少くとも法律家としてかような重要な法案に対する御答弁は、参議院の権威にかけても、(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)十分納得の行くような御答弁を私は願わしいと思うのであります。(「あれが緑風会の代表か」「誠に遺憾だ」「五分五分だよ」と呼ぶ者あり)  先ず私は修正案に対しての質問に入る前提の問題を、二、三御質問申上げておきたいと思うのです。これは政府にも併せて御質問を申しておきます。  第一は、昨日の総理の答弁であります。(「重大だぞ」「そうそう」「重大だぞ、あれは」と呼ぶ者あり)一松議員に対するところの御答弁を拝聴いたしますと、たとえ行き過ぎがあつても、破防法案の速かな制度を希望するのは国民の声である、こういうような御趣旨を述べられたのです。(「その通り」と呼ぶ者あり)行き過ぎがあつてもですよ、この法律を通さなくてはならないというお考え方です。これは誠に重大であると思うのです。(「その通り」「そうだ」と呼ぶ者あり)いま一つは、片岡君に対するところの御答弁に、これに反対する者は(笑声)暴力団体を教唆し、扇動するものであるとの御発言であります。(「その通り」「そこだ」「それこそは破防法だ」と呼ぶ者あり)もう一つの御答弁は、この法律が制定されれば、暴力団体の発生は完全に防止できる、こういう御発言です。(「笑止千万」と呼ぶ者あり)又内村議員に対する御答弁としては、破防法は決して言論や基本人権の侵害を目的としたものではない、治安維持法に対する悪評を破防法に転嫁するのは卑怯である。こういう趣旨の御答弁があつたようであります。いま一点は、破防法刑法その他法律を以て防ぎ得ない暴力に対する法案である。(「変だな」「その通り」「違いないと呼ぶ者あり)この五点に対しまして、恐らく緑風会方々は、こうした首相の御答弁に現われたところの考え方の上に立つて、この修正案がなされたと私は考えるのです。先ず基本的にこの点を私は伺つておきたいのです。一体、法律が基本人権を侵害しても差支えないという考え方はそこから来ると思うのです。憲法においては嚴として基本人権を保障されていることば皆様御承知の通りです。これを侵害して差支えないということは、それ自体、憲法を破壊して憚らないという暴言に私は等しいものと言わざるを得ないと思うのです。(そうそう、明言だ」と呼ぶ者あり、拍手、「フアシスト吉田の封建だ」と呼ぶ者あり)或いはそれは公共の福祉のためには基本人権においても制約されるのだと、こういう御趣旨かも存じません。問題は、憲法が国民に対して不断の努力を以てこの基本人権を擁護しなくてはならないと示しておるのです。又その大なる義務を持つておるのです。この重要な基本人権を国民が守る場合におきまして、政府がこれをは毀損する場合は、公共の福祉の理由がある場合に限るのです。問題はこの公共の福祉と基本人権との調和です。由来、国家がその国家を形成して行く場合において、おのずから国家全体の目的があるのです。今日のごとき日本国内事情の場合においては、国内治安を如何にして保つか、こういう大きな問題と、いわゆる公共の福祉と、他面、この目的を達成するために如何にして基本人権を侵害しないか、この二つの考え方の調和をどこで図るかということを考えなくちやならん。原案に対しまして政府が、説明するところの大きな理由の一つは、アメリカにおいても、或いはその他の国々においても、かような扇動罪は罰しておる、これ以上の法律を出しておる、こういうことを常に敷衍しておられるのです。御承知の通りアメリカにおきましては、ミニツツ委員会というものがあります。即ちアメリカの国内治安、アメリカの安全を期待するために各種の非常立法提出せざるを得ないこの情勢下においては、この目的を達成するために、幾多の刑事法規、行政法規を以てその目的を達成しなくちやならん。併し他面においては、アメリカが国是とするところの基本人権の保障ということを守らなくちやいかん。その目的のために基本人権が破壊されてはならない。このことを調査し、研究し、示唆し、以てアメリカ国民の基本人権を守ろうというために、ミニツツ委員会というものが一九五一年の一月二十三日に設立されておるのであります。大統領のそのときにおけるところの宣言を朗読いたしますと、こういうことを申されております。「私は、この委員会の仕事は非常に重要なものである。世界は自由と専制の闘争の中にある。米国は自由世界の指導者の一つであるが、これは我々が物質におい七強力であるのみでなく、我々が国民の自由を保持し拡張して来たからである。我々は、我が社会を自由尊重の信念及び実行の下に打ち立てて来た信仰の自由、言論の自由、結社及び政治的信條の自由、信念及び実行の下に、今日米国人は共産主義者の脅威に関心を持たされているが、同時にこの脅威に備えてとられるもろもろの方策が、憲法よつて保障されているもろもの自由権を侵害することなきやについて関心を持つている。」かく大統領は述べておるのです。こうした国の基本的な考え方を強力な委員会を構成して打ち立てて、然る後これらの治安の維持の目的のためにするところの政策及び基本人権との調和、こういうことを図りつつ法律制定がなされておるのです。然るに、日本におきましてはどうですか。何らかような手当をもなされずして、ただ国民の権利を制約する面においてのみ法律制定をなしている。この基本人権を保障する面においては一顧の考慮も與えられていないというのが昨日の吉田首相の答弁によつてはつきりしているのです。(「その通り」と呼ぶ者あり)かような考え方を以て、今後の法律制定、又この法律制定がなされるとするならば、それは、それ自体憲法を蹂躪するも甚だしいものと言わざるを得ないと思うのです。今日為政者は、旧憲法時代のごとく、自己の諸政策を実行するために、権力を常に把握せんことに努めておる傾向がある。誠に寒心に堪えないと思います。その一例としてこの破防法を見ることができると思うのです。私は、法務総裁が内閣の法律の最高顧問として意見を述ぶるところの重大な責任をお持ちになる、その法務総裁が付いておられるにかかわらず、日本の憲法を無視したかような大きな失言に対しまして、一法務総裁は如何にお考えになられるか。よろしく昨日の首相の御答弁に対しまして、取消若しくは(「それがあるまでは審議をやめよ」「そうだ」「異議なし」と呼ぶ者あり)釈明されて、国民の納得の行くような趣旨に御解明あらんことを(「すぐ出て来い」「吉田さん、すぐ来い」と呼ぶ者あり)切に私はお願いしてやまないのであります。又緑風会諸氏におかれましては、かような政府のお考え方を支持されまして、この法律案を如何にして通すか、それには政府の考え方をなるべく傷けないように、他面におきましては、国民に何とかして申しわけ的な修正をしてこれを言訳を立てようと、こういう考えの下に立つてこの修正案がなされていると考えるのです。(「その通り」と呼ぶ者あり)この考え方であるといたしますならば、私は緑風会諸氏が、国民的なこの輿論、殊に知識階級を代表するところの全国の大学の教授の意見というものには少くとも耳を傾けなくてはならんと思うのです。殊に国会におけるところの公聽会の意見に対しましては、十分これを取入れなくては私はならんと思うのです。それが国会としての義務であろうと確信して疑わないのです。若し公聴会の意見が漫然聞き流されるとするならば、新国会法の重要な一つの制度というものが国民の信頼を裏切るに至ると言わなくてはならんと思うのです。我々は公聽会の意見はただ聞き置くではないのです。聞いて以てこれを取入れるというところにこの制度の基幹があると言わなくてはならんと思うのです。(「そうだ」と呼ぶ者あり)どうかその意味におきまして、緑風会諸氏の考え方は基本的に一つ改めて頂きたいと思うのです。(「買収されちやいかんぞ」「取入れたよ」「議長に言えよ」と呼ぶ者あり)公聴会の意見を取入れておられないのです、遺憾ながら。(「いや入れてある」「どこに入れた」「取入れてないじやないか」「入れてあるよ」「冗談言うな」「社会党はどうだ」「どこに取入れてあるか説明しろというのが大部分の意見じやないか」「委員会でやれ」と呼ぶ者あり)  それでは私は、これより緑風会修正案の各條について質疑を申上げたいと思うのです。どうか責任者のかたはメモして頂きまして、その点を一つ御答弁をはつきりして頂きたいのです。(「異議なし」「忘れないように」「我々もメモして一つ聞こうじやないか」と呼ぶ者あり)  先ずいわゆる修正案第二條についてお伺いしたいのです。これは原案の第二條のいわゆる訓示的規定と相応ずるものであります。この法律が如何に疑義があり、国民の非難の的であるかということは、原案第二條が第一項を設けてこれを申しわけしている後に第二項が附加されて又申しわけされている。然るに今度、三たび緑風会の手によつて新たに第二條を設けまして、拡張解釈をしてはならないという修正をなされているのです。かくまで、一回ならず、二回、三回に亘つてこの條章を設けて、この法律濫用の危險というものを制約しなくてはならないということを法律自体が国民に対しまして約束しなくてはならないという、それ自体が本法の危險性を表明して余りあるものと言わなくてはならんと思うのです。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)然るに三たび緑風会の諸氏がこの拡張解釈についての規定を設けられたゆえんのものは、公聴会その他の意見において濫用の慮れがあるからという点を、これによつて賄おうと考えられたことは、それはわかるんです。併しこの二條の規定が果して濫用防止に役立つでしようかどうか。「この法律解釈適用」と題をなされまして、「この法律は、国民基本的人権に重大な関係を有するものであるから、公共の安全の確保のために必要な最小限度においてのみ適用すべきであつて、いやしくもこれを拡張して解釈するようなことがあつてはならない。」と、あつてはならないんです。あつた場合にはどうするんですか。(「どうだ、何のこつちや」と呼ぶ者あり)これに対しまして、この法律を運用する者から考えまして、どれだけの羈束力を持ちますか。法律はおよそその明文に従つて国民の権利義務に影響を及ぼすものでなくてはならんのです。そこに法的な効果をもたらすものである。單なる訓示的規定ならば、大臣の訓令で当然賄われるんです。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)法文にここに制定する以上は、その裏付けがなくては何らの価値を有しないことは、すでに指摘されておる通りです。又緑風会の諸氏も、原案の第二條がその趣旨において何らの効果を持たないから、このたびの修正案につきましては、原案第二條について独立的な職権濫用罰をお認めになつたんでしよう。然るにその裏付けは、修正案の第三條、原案の第二條にとどまり、緑風会諸氏がお出しになつ修正案第二條には何らその罰則は適用されていないのであります。かような矛盾した不合理な考え方が果した是認されるかどうか。ないよりはましだと言うならばいざ知らず、それでは国民を欺瞞するにひとしいと思うのです。立法府としての責任ある処置とは言いがたいと私は断言して憚からないんです。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)  又これを本質的にお考え願いたいんです。一体この解釈適用というこの第二條の修正の本質は何ですか。これは訓示的規定というのか、或いは法律規範であるのか。若しこの破防法を運用する者においてこれを不当に拡張解釈され光場合におきましては、法律違反になるのですかどうですか。即ち解釈の法定制度を設けたのかどうか。私はそれをお聞きしたいのですが、若し解釈に対するところの法律的にこれを規定したものであると、こういう本質を持つておるならば、若し拡張解釈されますれば、それ自体法律違反になるのですよ。(「その通り」と呼ぶ者あり)してみますれば、これは上告審だおけるところの、最高裁判所にこれを上告し得るということになるんです。上告理由となるのです。私のお伺いしたいことは、これが法律であるか訓示であるか、本質を明らかにして頂さたいんです。これは重要な点であると思うのであります。その点を明確にせず、裏付けもせず、漫然この第二條を創設されたことは、いわゆる世の非難をこれによつて免れようとする一つの遁辞的な修正に過ぎないと私は断言いたします。(拍手、「なぜ君は修正案を引つ込めたのか、卑怯じやないか」「なぜ反対したのだ」と呼ぶ者あり)私は修正案を引込めたのではないのです。原案委員会において否決されております。修正案委員会において否決されております。否決されたことは、それ自体国会意思であると考えております。従つて私は本会議に出しませんでした。(「わかつたか」[わからない」と呼ぶ者あり)それを緑風会のお方々は、否決されたものを本会議にお出しになつたから、私はお尋ねしておるんです。(拍手、「わかつたか」「どちらが卑法だ」「恥をさらすだけだ」と呼ぶ者あり)お互いに、この法律は重要な法律で、国民注視の的の法案であるのです。我々は参議院らしく愼重審議いたしたいと考えるのです。(「異議なし」「その通り」「安井君困つたぞ」「安井君の顔青いそ」と呼ぶ者あり)  次に修正案第四條についてお尋ねいたします。修正案第四條におきまして、その第一項第一号「イ」において外患誘致罪及び外患援助罪、同未遂罪、同予備、陰謀罪、これを取入れまして、即ち原案の内乱と同様な位置に置いて、これを破壊活動の基本的な刑事罰則といたしたのであります。一体原案がこの外患罪を取入れなかつた基本的な考え方を緑風会方々は御存じなのかどうか。一体、外患誘致罪又は援助罪、こうしたものが日本に曾つてあつたのかどうか。(「ちつとも答弁しない」と呼ぶ者あり)これを一体お調べになつてこういうものをお作りになつたのか。(「さつきから答弁できないのだ」「黙秘権」と呼ぶ者あり)およそ刑事法規を作る場合におきしましては、御承知の通り国家の非常な大典であるのですよ。(「ゆつくりやつて下さい」と呼ぶ者あり)大きな憲法附属の法規であるのですよ。この重要な法規を、漫然、御研究もなく、自己の観念によつて取入れてあるという不合理なことがなされてはならないと思います。    〔副議長退席、議長着席〕 私が政府の手を以て調べさせたところによりますれば、日本の過去の例においては、昭和十三年にこの予備罪が一件あつたのみです。これのみが今日までの日本におけるところの外患罪の実例であるのですよ。刑法施行以来数十年になるにかかわらず、(「三十年」と呼ぶ者あり)この予備罪一件、而も昭和十三年に一件あつたのみであるのを、何のためにこれをここに取入れなくちやならんかということを私は根本的に疑わざるを得ないのです。(「悪質だよ」と呼ぶ者あり)外患罪というものは、御承知の通り日本刑法にこれを取入れた趣旨はですよ、大陸法系を以ていたしましたからこういうことになつたんです。私が申上げるまでもなく、大陸地方は国々が相接しておる。でありますから、外患誘致援助ということは容易に想像されるんです。従つてこうした條章を刑法に設ける必要も国家としてはあり得るんです。日本は地域的に恵まれております。従つてこの自然地域のこの形態においては、外患罪は法典の上にありましても、実際は活用したことがないということは、この事実が証明しておるのです。かような点を考えますれば、政府は、本質的には或いは必要かもわからんが、事例がないからとしてこれを取入れなかつたということは、容易に推察し得るのです。然らば、これが、今後果してこの外患誘致罪及び助勢罪というものか必要かどうかということは、これは外患罪を研究下さいますればすぐわかることであります。敵の武力外国武力を誘致したのです。犯罪の成立は、例えばソヴイエトの軍隊が日本に上陸したというときに犯罪が成立するのです。わかりますか。(笑声、拍手)してみますれば、成立したときには、日本の国土はすでに占拠されておるのですね。(「自己陶酔しておるな」と呼ぶ者あり)自己陶酔ではありません。占拠されておる。占拠されておりますれば、もうそれによつて日本政府の機構が果して動くか動かぬかもわからない。むしろ占領軍の力があつて占領軍の統治下に置かれておる、すでに……。その場合にこの破壊活動防止法がどうして動くのですか。むしろ破壊活動防止法を適用しようという人が死刑になつてしまう、向うから……。(笑声、拍手)又第八十二條の外患助勢罪の場合に、これは八十二條の外患助勢罪は、御承知の通り日本国内に外国軍隊がおつて、それにくみして軍務に服し、利益を供與し、助勢する場合、まさに占領の実体があるのです。その場合に、その助勢をした者を破壊活動として掴まえる前に、向うから掴まえに来てしまう。それだから、観念的には中山さんのお考え方も、私は何も無理ではないと思うのです。併し実際に、必要論として実際論としては、曾つてさような事件もない、今後においてもさような場合を想像し得ないとするならば、あえて以てここに取入れて、なお以上この法律適用範囲を拡める必要は、毫末も認められないと私は断言して仰りません。(「吉田政府こそやつてるじやないか」と呼ぶ者あり、拍手)  次に私は第四條の第一項の第一号のハについてお尋ねいたしたいと思うのです。緑風会のかたは、本法のおいて一番問題点となるところのいわゆる扇動につきまして非常に御苦心をなさつたことは、この修正から見ましても窺い知ることができるのです。御苦心のほどは察せられます。併しその基本的な考え方が如何にして政府原案を傷けないように修正しようかという考え方の下に修正されておるのですから、従つてどうしてもその修正態度というものがはつきりしていないのです。(「必要な問題だね」と呼ぶ者あり)必要であるかないかということは、これは昨日一松議員からも櫻々お述べになりました。委員会におきましても、これに対するところの質疑応答は詳細になされております。私はここであえてその問題を繰返そうとは存じません。私は、本日皆様に訴えたい、皆様に反省を要求したいことは、皆様がよいと考えられて御修正なつた点に国民の一人として疑義がある、こういう点を指摘いたしまして、皆様のお考え方を反省に導きたいと、こう考えておるゆえんです。(拍手)およそ一人が最善なりと考えましても、他から見ますればこれは欠点があるだろうという場合においては、これを聞いて改めることは、私は聖人君子のなすべき点であろうと存ずる次第であります。その意味においてお尋ねしておるのです。(「君においても同様だよ」「議長をペテンにかけてね」「いやしいぞ」「ペテン屋だ」「年中やつているとわからないからな、自分のことは」と呼ぶ者あり)木村さん、まじめに聞いて下さい、お互いに……。もう時間もないことですから、まじめにやつて、一つ研究して頂いたほうがいいと思うのです。(「妨害するな」と呼ぶ者あり)緑風会方々のお考え方として、先ず第一に、この扇動罪の頭に「目的」ということを常に掲げていらつしやる。「実行させる目的」と、こういうように表現されておるのです。これは私は深くは申上げんでもよろしいと思うのですが、お考え方の一端に、「実行させる目的」、そういう表現を用いれば、何らか扇動罪というものに対して非常な制約をした、国民に安心感を與えた、少くとも扇動罪の幅を制約しのだ、こういうお考えの下になされたとするなら、それは大きな誤まりであるると私は申上げたいのです。そうではなく、單に原案の「ため」とある表現を、そうでなく「目的」という言葉で言い換えたのだ、「ため」では不明確だから、それで「目的」という言葉に切り換えたのだ、こういう軽い意味なら又是認もできるのです。そうでなく、これによつて少くとも国民の危惧するところの扇動罪の幅を制約したものである。という御主張ならば、それは誤まつておると申上げたいのです。御承知の通り中山さんも専門家ですから、十分おわかりのことと存じます。目的罪というものは、その目的が犯罪構成要件をなすのです。若しその目的がなかつたならば犯罪は成立しないのです。ここに扇動とある場合において、例えば「内乱を扇動したものは」と、こう言つた場合におき」ましては、それは内乱を目的として扇動したものだということと同じことです。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)「人を殺す目的を以て殺人を犯したるものは」、そんな書き方はないですよ。殺人という言葉は、それ自体において殺人の目的が含まれておるのです、でありますから、ここにあえて目的」という言葉を使つて、これが扇動を制約したものだという理由には私はならないと思うのです。(「その通り」と呼ぶ者あり)若しそういうお考えだつたならば、すべての刑法典の上に皆「目的」ということを掲げなくちやいけないことになるのです。(「本屋が喜ぶ」と呼ぶ者あり)さような馬鹿々々しいことはあり得ないのですよ。又目的罪といたしますれば、目的に対しまして、少くとも判例から申しましても、認識の程度は必要であるのです。婦女を営利誘拐した、営利の目的を以て誘拐し云々とあります。この場合においては、少くとも営利の目的を以てしなかつたならば、單に婦人を自己の支配内に置いても、営利誘拐罪は成立しないのです。そこに営利の目的があつてこそ初めて営利誘拐罪が成立する。こういう場合において、初めて目的罪というものは価値あるわけです。御修正の御趣旨はこれを目的罪に切り換えたとは考えられないのです、この表現から考えても……。若し目的罪としてこれを表現なさつたとするならば、それは大きな誤まりであります。解釈上そういうふうには出て参りません。この点は私は、どういう御趣旨でこの表現をお用いになつたか、この点をお伺いしておきたいと思うのです。  次に、第四條第一項第一号ハ及びその他の個所におきまして、いわゆる扇動という定義を用い、その他扇動という言葉についてその定義を援助されておるのであります。緑風会の今度発明されましたところの扇動の定義というものは、私は日本学界におけるところの新機軸であろうと思うのです。(拍手)昨日扇動に対しましては一松さんから詳細にお話がありましたから、改めて私は申上げません。昨日一松さんが引用されましたのは昭和四年の大審院判例です。その後、昭和玉年十一月四日に大審院の新判例が出ております。それで今日学界その他の通説として扇動の定義を述べる場合におきましては、この昭和五年の十一月四日の大審院判例を述べております。委員会におけるところの速記録を御覧になりますれば、政府の答弁も又この判例に基いてお述べになつておるのです。それで、この判例を分析いたしますと、先ず中正の判断を失わしめる、これが一つです。それから実行の決意を生じさせ、又既存の決意を助長させるような刺激を與えること、これが第二の要件。そうして相手方は不特定多数人たることを要しないのです。この点が昭和四年の判例と変つて参つた。昭和四年の判例は、相手方は不特定多数人ということを要件としておつた。新判例では、相手方は不特定多数の場合がこの犯罪の通常の状態でありますけれども、犯罪構成要件ではない、こういうことを打ち出しております。従つて昭和五年の扇動罪の主たる要件は、中正の判断を失わしめるというところにあるのです。これが扇動罪の大黒柱を成しておるのです。然るに緑風会のかたの修正案を分析いたしますと、特定行為を実行させる目的を必要とする、これが一つの要件になつております。それから文書若しくは図画又は言動によること、これが第二の要件になつております。第三の要件としては、実行の決意を生ぜしめ又すでに生じている決意を助長させるような刺激を與えること。これはまさに判例と同様な要件です。又第四に、相手方は特定又は不特定たることを要しない。これも昭和五年の判例と同じ構成をとつていらつしやる。従つて第三、第四は判例と同様な趣旨を要件に掲げられておる。併しここに第一と第二が新らしい要件をここに取入れられた。これは非常な私は進歩であるか退歩であるか、大胆な、なされ方だと思うのです。(「めくら蛇におじず」と呼ぶ者あり)特定行為を実行させる目的を必要とすると、先ほども申しましたいわゆる目的罪をここに私はとつて来なくちやならんと思うのです。これが要件であるかどうかということは重要な問題となつて来る。若し要件であるとするならば、いわゆる目的罪と同様な考え方にも類推される。そうではなく、扇動罪の一つの内容であるとするならば、特に法文において実行させる目的ということを書く必要がない。こういう二つのどつちへでも議論が立つて来る。要件であるという御説明ならば、法文のあの表現は間違つておるということになるわけです。私は一応要件としてこれを考えてみた。又中正の判断を失わしめという大審院の判例の重要な要件を切捨ててしまつた。そうすると、扇動罪と一体教唆との区別が全然つかないです、これでは。……扇動罪というものがこれだけある、教唆というものはその中に入つてしまうです。丁度日蝕の場合の皆既蝕をちよつと外れたくらいな三日月程度になる。そういうように御想像になればよくわかるです。(「想像できますか」と呼ぶ者あり)扇動罪というものの中へ教唆という独立罪が入つてしまう。少し出るところがある。これは本当の観念的に出る、理論上出るだけです。先ず普通の考え方としては、扇動罪の中に教唆が全部入つてしまうという表現でも過言ではない。それでは、本法において特に教唆を独立罪とした、そうして扇動罪を独立罪とした、何の意義があるかということになつて来る。然らば教唆は削除して扇動罪一本にしなくちやならんという法律構成をとらなくちやならん。ここに大きな矛盾がある。いま一つは、かような中正の判断を失わしめという要件を取つたために、少くともそういうことが要件とならなければ……、大審院の判例は皆様お考えになつてもそれが犯罪構成要件になる。若しそれがなければ扇動罪は成立しない。然るに緑風会修正案によりますれば、それを要件としないということになりますか、幅が広くなるのですよ。でありますから、修正によつて国民の期待をここに取入れた、公聴会の意見を取入れたということは、却つて逆に広くなつたということになつて意思に反することになる。(拍手)これは私の議論は決してここに政治的に申上げるわけでない。法律的に申上げまして皆様の再考を促したいと思う。恐らく緑風会方々のお考え方も、広くしようなんて考えていない。恐らく私は良識ある緑風会方々がさような考え方をお持ちになつて修正なさつたとは思われぬ。併しなされた結果は解釈上当然広くなつて来るということは、私一個の見解じやありません。世にこれを問うて御覧なさい。学者は必ず私と同様な見解を表明することは、私はここで断言して憚かりません。だから皆様の目的としないことがここに現われて来た。これはどうか一つ考え直して頂きたいと思うのです。私が仄聞するところによりますと、特審局の吉河君などが、緑風会修正原案より広くなつちやつたんだ、まあ喜んでおつたかどうかそれは存じませんが、少くともそういう表現は用いておつたですよ。(「特審局の御用党か」と呼ぶ者あり、拍手)この点を  一つ十分御研究になつて、ただ、なぶればいいというのではなくして、かようなことは重要な点でありますから、  お考え合せを願いたいと思うのです。いま一つは、緑風会が文書若しくは図画又は言動によることと、こうなさつたですが、これは非常に端的で明らかです。お考え方は私は結構だと存じまするが、果してこの場合において、文書若しくは図画と、ここまではわかるのです。言動という言葉が私はわからない。言はおのずからその字のごとく解釈して差支ないと思います。動はどこまで指すのですか。動は私たちの行為者のこの行為の範囲に限られておるのか、或いは我々の行為を他に移して、そうしてそこから反射的に出て来る動まで含むのかどうか。具体的に申上げますれば、例えばこれを映画に撮つて、映画によつてこれをなさしめる、幻燈によつてなさしめる、テレビによつてなさしめる、こうした場合に、これは動のうちに入りますかどうか、非常に不明確だと思うのです。(「そうだ」と呼ぶ者あわ)恐らくそういう点はお考え合せていらつしやらないのかも存じませんが、これは御研究になる必要があると思う。それで、それまでお考えになりますれば、そういう点にもやはり御研究の一端は進めて頂かなくてはならんと思うのです。この点は私はどうか提案者に十分納得の行くようにお聞きしておかぬというと、この修正案が若し通つた場合において国民は至大な関係を持つことになる。十分その点について御説明をお伺いしておきたいと思うのです。(「緑風会寂として戸なし」と呼ぶ者あり)  なお詳しく申上げたいと存じますが、お聞きになるかたも大変でしようと思いますから、成るべく簡單にいたしておきますけれども、次に第四條第一項第一号ホについてお尋ねいたしたいと思います。ここに修正案によりますと、「ホ、刑法第七十七條、第八十一條又は第八十二條に規定する行為を実行させる目的をもつて、無線通信又は有線放送により、その実行の正当性又は必要性を主張する通信をなすこと。」これを新たに緑風会のかたは設けられた。これも一応の考え方としては私は成り立つと思う。併し一体今日無線に関する法律は、御承知の通りその法律自体において重罰を科してこれを取締つておるのです。おのずから無線放送の内容というものはその法律の範囲内においてこそなされるのです。でありますから、ここに破壊活動防止法の一つの構成要件としてこれを取入れる必要があるかどうかということは非常に疑問であると思うのです。今日のNHK或いは民間放送というものが、この嚴として存するところの無線放送に関する法律を犯して、許されざる行為をなすとは考えられないのです。ここに取入れられますことは、一体どういう場合を想像してこの無線放送を取入れられたのかということを先ずお伺いしたいのです。  それで一体この無線放送と無線通信というものの私は意義もわからないのです。無線通信というのはどこまでを指すのか。勿論我々の常識を以ていたしますれば、放送と放送局というふうに考えます。併し、この無線、有線、この区別をどこに置くのか。それで、この原案の有線放送というのは、日本では確か北海道ほかないと思うのです。放送局から或る一カ所に受信しまして、そこから有線で以てスピーカーに各戸に分ち與える。これが即ちここに言う有線放送の一つの事例でしよう。その北海道の一つの村で行われておることを対象にしてこれをお書きになつたのですが。若しそうでないとするならば、その他の場合の各個におけるところの施設、小さい施設を目標としてお書きになつたのか、乃至は街頭において演説会をする場合において、マイクから線を繋いでスピーカーに出る、これをも含めてのお考え方であるかどうか。こういう点は、やはり明確にする必要があると思うのです。この点をお伺いしておきたいと思う。こういう場合におきまして一体この條章をお入れになつた主たる目的が、非合法な個人の無線放送というものを対象になつたかも存じませんと思います。若しそうであるといたしますれば、この非合法の無線放送というものは、果してキヤツチできるかどうか。一体余り法律を理想的にお作りになつて、有効にこれが運用できないようなものであつてはならないのです。又政府がこの條章を最初から取入れないという趣旨も併せて私はお伺いたしておきたいのです。然るに緑風会諸氏のお考え方によつてこれをここに取入れられたということにになりますれば、そこに大きな理由がなくてはならんと思うのです。いま一つは、この修正関連いたしまして、ここに関連的にお尋ねしておきたいことは、修正案の第三十八條第二項第三号の処罰の規定です。ここに「通信をなした者」と、こうある。この表現が「通信をなした者」、こういう表現で賄われておりますが、一体、通信をなしたということは、私なら私が通信をなしたというので私を対象にしておるのか、或いは通信をなしたアナウンサーを言うのか、その通信をした技術者を言うのか、通信をなさしむるに至つた原稿を作つた人を言うのか、これを検閲した人も含むのか。ただこの表現で行きますと、通信をなした者はすべてこれに包含されるということになるのです。まさか修正案の立案者がさような広汎な規定をなされたとは考えられないのです。併し、この條章を率直に文理解釈を以ていたしますれば、当然只今私が挙げました範囲まで及ぶ解釈がなされる虞れがあるのです。この点はやはり十分お考え合せ願わないと、今後無線通信に関與する人々は非常に危險な地位に立たざるを得ないのです。恐らく通信関係に従事される人が、さような重大な事項が緑風会の諸氏の手によつてここに企画されたとは考えていないのです。この点は私は将来のために十分御研究にならなくちやならんと思うのです。又この通信をなした者についての犯罪には、一体、通信をしたときに犯罪が成立するのか、通信が相手に到達したときに成立するのか、はつきりしないのです。これは皆様法律を作るときに簡単にお考えになると、それは困るのです。人がそれによつて処罰されて刑務所に行くのですから、皆様緑風会のお部屋で以て坐つてお煙草を喫んでいらつしやるような安易なお考えでお作り下さると大変な迷惑なんです。(「そうだ」「どうだ岡本案」と呼ぶ者あり)どうかその辺に対しまして、我々が放送したときに、そのときに犯罪が成立するというこの考え方ならば、若しその通信が相手方に到達しない場合にどうするのか。又放送はしたけれども、相手方に到達しなければ犯罪が成立しないとするならば、そのラジオを聞くということが構成要件のポイントをなすと、こういうことになるのです。この点はいずれでもよろしい。けれども、はつきり明確にすることは、およそ犯罪を規制する場合においては、これは厳格に規定されることは私がここにあえて申上げるまでもないことであるのですから、この点を十分お考え合せ願いたいと思うのであります。(「緑風会案杜撰極まりなし」「岡本愛祐君どうだ」「答弁を聞いてから言え」「検討済みだ」と呼ぶ者あり)修正案刑法の実体規定についての部分は以上で以て先ず打切つておきます。  次に修正案の手続規定のほうに移りますが、修正案法第十四條以下において、この受命職員の規定を設けておられます。先ほど中山さんが私の考え方も取入れたというのはここのことをお指しになるのでしよう。私の考え方をお取入れ下さつたことは誠に私としても喜ばしいのでありますが、お取入れになるお考え方をお伺いたしたいのですが、私の考え方とあなたがお取入れになつた考え方とは違う。この表現自体において私はそういうふうに看取される。これは野田さんがお笑いになつていらつしやるけれども、いいですか野田さん、お互いに法律を作る場合においてどういう考え方の下に法律を作るのか、これによつて法律は作り方が違うのです。又その解釈が違つて来るのです。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)だから、私の考え方を形の上で取入れられましても、その運用と効果の点において違つて来ることは、おのずからその考え方によつてつて来るのですよ。だからそれをお伺いするのです。形はお取入れ下さつて私は結構だと存じますが、この問題は先に本会議場で私が申上げたところです。公安調査庁という一つの機関の中に調査官と審理官を置いて、一つの手によつて事が裁かれるという、こういう古いあり方はよくない。この指摘しておる点を緑風会方々はお取入れ下さつて、ここに成文化さたれことについては敬意を表しますが、併しそのお考え方を、私の申上げる考え方を貫いていないというのですよ。ただ「審理官」を「受命職員」というものに書き替えたに過ぎないのです。それでは法律原案が持つところの審理官制度の意義がそのまま残つておるのです。いいですか。文字は変りますよ、文字は変りましたけれども、單なるそれは審理官ということが受命職員というように変つただけであつて、その内容はそのまま依然として継承されている点に私は不満があるのです。又皆様のお考え方は、折角お取入れ下さつたというならば、根抵から、精神からお取入れ願いたかつたと、こう申上げるのです。で、皆様がこれを採用なさつた趣旨は、この法律によつてこうむるところのあらゆる国民の権利の制約というものが正しくここから整理されて、いわゆる調査されて、その結果整理されるという方向に持つて行く、いわゆる保障の制度の一つとしてここに皆様がお考え下さつたのでしようが、根本的に審理官制度の精神をそのまま残されたのでは有名無実なのですよ。名を與えて実を少しも国民に與えていないということになる。その端的な現われ方は、この十五條、原案の十五條ですね、原案の十五條のいわゆる証拠を、不必要な証拠をこれを取調べなぐてもよろしいという、この規定を外しておらないのです。この構成を、審理官制度を廃止した以上は審理官ではないのです。受命職員です。調査官のうちの命を受けた、特に命を受けた職員がこの再調査に当るのです。調査です。その本質は調査でなくてはならない。それで、正しい調査をなされてその結果を委員会に送り出す。この調査をなすということが今度の緑風会案の中に取入れられたのです。してみますれば、調査官は飽くまで調査の本体を、本質を備えなければいかん。その調査官がみだりに、容疑者から出された、関係者から、利害関係人から出された証拠の取捨選択を與えるということは、その審理の過程に入るのです。いいですか、証拠を取捨選択するということは審理ですよ。そこに審理と調査の相違が出て来るのです。私の申上げることは、折角調査官制度一本になされたならば、従来原案の審理官制度の残存物、そういう精神を原案からことごとく抜き去らなければいけない、こう申上げるのです。そうしなければ趣旨が一貫いたしません。形だけはお取入れ下さつたけれども、実質は少しもお取入れ下さつていないことに私は反省を促したいと、こう申上げるのです。只今原案の十五條、修正案の十六條の規定は従来こういう説があるのです。それは、例えばその構成団体が多数の証拠を出されたならば実に困るのじやないか、こういう実際論から来ておると思うのです。それは肯けるのです。併しそれは、今度の修正皆様修正のような形にいたしますれば、それは私は利害関係人が自己の主張を裏付けするためにお出しになるのですから、おのずからその限界というものはそれによつて制約される。証拠物として、参考資料として出される。だから厖大なものを出されてもそれは到底事実上できないのではないか、委員会において御提出なさい、こういうことは任意にそれは取引できる、言い得ることもできるのです。又利害関係人においてもそういうことを十分納得し得ると思うのです。ただここで以て、この原案の十五條、修正案の十六條の拒否権を與えるということになりますれば、そこに一つの証拠を取捨選択判断されるという危險を伴う。公安調査庁において審理されるという不合理な結果をそこに具現することになる。こういう点を私は指摘しておるのであります。だからこの制度はやはり取り去らなければならんと思うのです。それから、或いは民事訴訟法の中の不必要な証拠は裁判官の認むるところによつてこれを取捨できる、こういう規定があるから、その精神をここに取入れたという考え方もあるかも存じません。併しこれは御承知の通り、民事訴訟法を取扱う者は最高学府を出て、修習をしまして、そうして実習をしまして、十年という予備判事の経過を経てそうして判事としての立場をとつておる、その裁判官がこれを運用するというのが今日の裁判所法の形です。かような常識豊かな過まちのない職員を以て行わしめるのでありまするから、この職員が必要がないという場合においては、それはその考え方の通りに従わしむることを以てしても、決して国民の権利を不当に制約するようなことはあり得ない。かように法律は考えて民事訴訟法の二百五十九條というものは設けられておる。これがために本法にこれを取入れて、地位の低い巡査若しくは巡査部長或いは警部補程度の人にかような重大な証拠の取捨選択権を與えるということは不合理極まるところのものである。だから、この点から考えましても、この修正案十六條、原案十五條というものは当然削除さるべきものと考えるのです。この審理官制度を廃せられたという基本的なお考え方を維持なさるならば、その首尾を一貫するためにもこれは当然削除さるべきものであることを指摘してやまないのです。  次に、この修正案の第二十二條についてお尋ねいたしますが、これはこの「点も私の考え方の一部を取入れられていらつしやるようです。併しこれについても私は首尾が一貫してないと思うのです。お考え方がどこにあるか、私はそれをお尋ねしておきたいと思う。一体この公安審査委員会の審理について修正なさつたその基本的なお考え方は、この委員会の機能は直接審理主義をおとりになつたか、間接審理主義をおとりになつたか、この点を先ずお尋ねしたいのです。若し直接審理主義をおとりになつたといたしますれば、すべての委員会の職権行為の発動というものは、その基本原則の上に立つてすべて打ち立てられなくちやならないのです。でありますから、書面審理ということは、即ち間接審理ということは、例外的な考え方にこれを運ばざるを得ない。法律の立て方もそうである。職務の遂行もそうでなくちやならんと思う。この点は、本法を生かすか殺すか、いわゆる委員会制度の活用の万全を期する上において重要な基礎をなすものでありますから、明確にしておいて頂きたいと思います。  次に、この委員会のもう一つの基本観念は、職権主義か処分権主義か、この点にあるのです。これも又私がくどくどと御説明申上げるまでもなく、中山さんにおいては十分御了承のことと存じます。職権主義であるとするならば、当事者の申立によつて委員会の機能の活動を促すということは例外的になつて処分権主義であるとするならば、当事者の行動が主となり、職権主義はこれを補うところの従たる立場に立つのです。従つて委員会におけるところの各機能のあり方というものは、この考え方によつて重大な影響を来たし、その活動の範囲、当事者の利害保護の範囲というものは著しく相違を来たして来ることは申すまでもないことであります。この点に対しまして十分御説明伺つておきたいと思うのでございます。  次に、この委員会におけるところの処分の本質である。委員会においてなされるところの職権に基くところの処分、修正案においてかく規定されております。この処分の本質が、私は行政処分と考えるのですけれども、一体、行政処分か、準司法処分か、この区別をお伺いしておきたいと思います。若し行政処分であるといたしますれば、この処分の当、不当に対しましては、行政事件訴訟特例法によつて行政裁判を求むることができるという結果を招来する。準司法処分であるとするならば、おのずから方途も又違つて来る。でありますから、この委員会においてなされるところの処分の本質というものを、この際、明らかにして頂く必要があるということは申すまでもないと思うのです。私はこの際この公安委員会制度のあり方につきましてその機能の完全なる運営を期待するため、衆議院において取調ができるという單なる言葉を以て表現して修正して参つた。その取調ができるということを、あの内容を緑風会諸氏の手によつて明確化されたという点は一つの進歩であります。併し、その折角の修正が基本的にどういうようなあり方であるか、又効果がどうあるかということを、やはり法律の上において明確にしてこそ、初めて完璧を期せられると、かように考えるのです。然るにその取調の内容を明示するにとどまり、その機能がなした結果、即ち決定に対するところの処置については何らの考慮を拂わなかつたことは、首尾一貫せざるものと言わざるを得ないのです。折角公安審査委員会制度に対しまして緑風会諸氏の温かいお考え方がそこに及んだとするならば、仏を作つて魂を入れて、首尾を一貫して、最後までこれを見守るという態度を持して頂きたかつたと思う。というのは、昨日一松委員からこの点について簡單に御指摘がありましたが、即ち委員会のすでになされたところの決定が、その決定をなす前提たるところの原案の第三條の破壊活動として規定されたるところの、刑法規定するところのあの犯罪行為、これが刑事裁判所において無罪となりますれば……この原案の第三條、修正案の第四條、この規定されておるところの事実があつて初めて破壊活動団体としりて設定されるのです。よつて以てこの団体は好ましからざる団体として、原案の第四條、第六條の処分を受けることになるのです。その決定がなされた後に、刑事裁判所においてその原案たる事実が無罪となつた場合におきましては、当然この処分行為は本質を失うのです。従つてこれはみずからその決定を取消すところの行為があつて然るべしであると思うのです。若しそうでなくて司法裁判所は無罪である、行政手続たる委員会の決定は有罪を基礎として破壊活動者として認定したということになりますれば、国家の意思は相矛盾した二個の意思をここに具現することになるのです。政府当局に言わしめますれば、各種行政規定の上において、そういうことは間々あり得ると、例えば古物営業取締の場合において、その取締規定の処置によつて違反行為として行政処分が行われた後に古物営業法の事件が無罪になつた場合においても、そのすでになされた行政処分には影響はないのだと、だからこの場合でも差支えないと、これは私は本末を顛倒した議論である。一つの業態、古物業者という一つの業態のそうした些々たる行政処分は、その主務官庁の行政事務遂行上、必要上、そうしたことも認容されることも、これは行政権の責任ある地位を我々が與えておる以上は、一応認容する場合もあり得ると思うのです。併し、この法律のごとく、八千五百万の一般の国民に適用するところのいわゆる一般法、憲法附属法規とも言うべきこの一般法の場合において、そうした行政権優越主義を認めることは、国家を破壊するところの大きな素因をなすものと言わざるを得ないのです。(拍手)この点に対しましては、我々はどうしてもさような不合理なことは帰一せしめることが当然である、又そのためにすでになされたところのかような実質を失つた行政処分に対しましては、これを取消し、そうしてみずから取消しま、て司法処分とその結果を帰一せしめると、こういうあり方をこの本法の上において当然賄うべきであるのです。又その賄つた結果、すでになされた行政処分によつてこうむつた損害というものは、国家はその国民に対しまして賠償してはならないのです。そこまでの手当をなくしてこそ首尾が一貫するわけです。昨日一松議員が言われたごとく、それをなさざるというのは切捨て御免と言うても過言ではないのです。御承知の通り憲法十七條に基くところの国家賠償法というものがあるのです。その賠償法の中には、故意若しくは重大なる過失を以て国家が国民の権利を毀損した場合においては、国家がみずからこれを賠償する責に任ずということになつております。然るに本法の場合においては重大なる過失とは言いがたいでしよう。当然な職務行為の結果、その過まちを犯した、或いは軽過失があつたかも存じません。いずれにいたしましても、故意にその委員会がなさざる限りは国家賠償法の適用のないことは火を見るより明らかであります。してみますれば、本法においてさような場合においては、審査委員会は、当然、第四條、第六條の規制の結果その当該団体にこうむらしめたところの損害は、これを時価に換算して賠償することを決定する、若しその決定の金額に対しまして不服のある場合においては、当事者はこれに対して異議の申立てができると、こういう処置を講じてこそ、首尾を一貫したものと言うことができるのです。私は折角委員会制度において手をお加えになつたならば、そこまで手をお入れになつて首尾を一貫さすべき筋合いのものであろうと、かように固く考える次第であります。  修正案の第四十五條の職権濫用罪について、これは先ほど中田さんも詳細にお述べになつておりましたから余り多く申しませんが、これは刑法百九十三條と百九十四條のいずれの罰則を適用するか、修正案はその中間をとつている。これは緑風会さんのお考え方といたしましては、勿論刑法百九十四條の逮捕監禁という基本人権に直接影響するがごとき濫用行為ではない。この場合は又百九十三條のごとく公務の踰越行為であるとかというような單なる場合でもない。その及ぼす影響はその中間ぐらいであろうというので、この刑罰を御規定なつたのです。刑罰の高い安いを以てこの規定の有効無効ということは、結論は出て来ないのです。だから、その量刑、法定刑をここにお定めになることは、むしろ中間的或いは百九十四條、このいずれかをとらざるを得ないと思うのです。問題はむしろそうでなくして、私はこの規定を置かれる以上は、原案の第二條、修正案の第三條になりますが、公安調査官が規制のためにする調査について、その職権を濫用し踰越した場合において、この刑罰規定が適用せられる。ここに新らしい職権濫用罪というものが創設されたわけであります。併し、この法律の持つたところの適用範囲と旧いうものはひとり公安調査官のみではないのです。公安調査官の持つ職域というものを五〇%といたしますれば、他の五〇%は司法警察官が持つているのであります。即ち本原案の第三條の事案があるかないかということは、これは司法警察官の職域であります。更に、これがありと認定された場合において、初めて原案の第四條以下で公安調査官に職域が発動して来るわけであります。従つてこの一つの事案に対しましては、その五〇%は司法警察官の持分であり他の五〇%が公安調査官の持分である。でありますから、原案の第二條の職権踰越行為に対するところの保障規定即ち制裁規定というものは、ひとしくこれらの司法警察官にも遵守させる、遵奉させる必要があるのです。これは法務総裁もまさにその通りでありますと委員会で答弁になつた。賛意を表せられておられるのであります。緑風会方々がそれをお忘れになつたか、或いは気付かれておつても故意に落されたか、いずれにいたしましても、これを首尾一貫させるためには政府も同意をしておられるのであります。して見ますれば、原案の第二條のところに「捜査する者も」と、こう入れなくてはいけない、表現は別といたしまして……。そういう措置を第二條に入れまして、そうしてこの罰則の中へ取入れて来なくてはいけないと思うのであります。さようにしてこそ初めて、原案の第二條、修正案の第三條というものは、裏付けあるところの保障規定として役立つのです。この修正案のごとくいたしますれば、原案の第二條の範囲にとどまりまして、大部分の捜査の範囲においては何らの効果をもたらさない。捜査に従事するところの司法警察官、或いは事務官、検事、これらの者はたやすく原案第二條の規定を犯すことができ得るということは想像にかたくないのです。むしろその弊害が多いかも存じません。だから、そうした場合におけるところの措置というものは当然なされなくてはならんと思うのであります。  又この罰則規定がこの調査官の職務行為に対しまして全的に適用ができない、この表現では……。例えば調査官が必要に私なら私を尾行しておつたという場合には、この罰則は適用できないのですね。若し私が選挙をしている。その場合に毎日不必要な尾行がついて廻つて御覧なさい。忽ち落選になつてしまう、そういう手も用いられるでしようね。その場合においてこの本法は動かないのです。皆さまお笑いつになつていらつしやいますけれども、これが政治鬪争が熾烈になりまして、反対党をとしても彈圧しようというような政府立場に追い込まれた場合におきましては、そういうことが当然行われることは想像にかたくないのですよ。だから、そういうことは、この本法の持つところのいろいろな不備欠陷というものが、今後におけるところの各種の合法的な行動の上に、合法的な争いの上にことごとくこれが及ぼして来るということに、本法に危惧を抱くのです。そういう点において私はこの保障として設けられました新らしい罰則規定というものり適用範囲が非常に狹められたこの表現では、いま少し私は考慮さるべき必要があると思うのです。いわゆる原案の第二條に対して、世の非難を阻止するために、かような保障規定を設けたと、これは結構です。併しその保障規定の及ぼす効果というものが非常に狭められているということを指摘してやまないのです。この点は更に私は緑風会諸氏に御考慮を促したいと思うのでございます。(「答弁を聞きましよう」と呼ぶ者あり)いま一点、この原案修正案の附則の第六項の修正におきまして刑訴二百六十二條第一項を準用されております。いわゆる準起訴手続及び審判請求権というものがここに準用されておるのですが、かような規定をここに準用される必要性というものについてお伺いしておきたいと思うのであります。  まだ私の時間があと三十分ありますから、再質問及び再々質問の時間にこれを確保しておきたいと思いますから、以上御質問申上げた点につきまして、どうか中山さんから法律的に詳細に一つ御見解を表示して頂きたいと思います。この質疑の応答に関しましては、我々は参議院のあり方として笑われたくないと思うのです。参議院は如何にも参議院らしく、法案に対しまして忠実に審議して、国民の負託に応えたと、こういうことをここで具現したいと思うのです。その意味において中山さんからの詳細なる御答弁をお願いしておきたいと思います。(拍手
  24. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 木村法務総裁。    〔「原稿できましたか」「休憩」「吉田の答弁の跡仕末だ、しつかりやれ」と呼ぶ者あり〕    〔国務大臣木村篤太郎君登壇拍手
  25. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) 昨日、首相の答弁に対して疑義があつたようでありまするから、私からその点を釈明いたしておきます。(「疑義とは何だ」と呼ぶ者あり)  伊藤君の御質疑の要点は、要するに憲法所定の基本的人権は倉重しなければならん。本法案においては基本的人権を阻害する憾みが多分にある。これをどうするのかということが要点であろうと私は考えておるのであります。勿論昨日首相はこの点に触れて申された通り、本法案はとにかく日本の治安を維持する上においそ必要欠くべからざるものであつるから、この法案に対する行き過ぎの点についての世間の批判があつて是非とも通過させたい、こういう意味の答弁であつたのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)ただ、「行き過ぎがあつても」というのは、これは行き過ぎがある非難があつても、こうしなければならないということであるのであります。(「君じや黙目だ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)。特にこの法案は、私はかくのごとき破壊的活動をするような者に対しては、基本的人権は認められないのであります。かような行為は保護するに値いしない行為であります。勿論、憲法の保障する基本的人権は保護しなければならない。併し一人の人権を保護せんがために多数の人権を無視してはいけないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)これは憲法所定の……(発言する者多し)
  26. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 静粛に願います。
  27. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) 続) いわゆる公共の福祉であります。公共の福祉は多数の人権を擁護せんとすることであります。而してその人たちに幸福をもたらすということが公共の福祉であります。世間では往々にして一人の人権を保護せんがために多数の人権を無視するの憾みがあるのであります。我々は、国家の治安を維持するということは、要するに多数の人権を保護するという立場をとつておるのであります。(「嘘つけ」と呼ぶ者あり)この場合において、(「法務総裁憲法蹂躪」と呼ぶ者あり)本法所定の暴力行為というようなものは、これは憲法において保護せらるべき行為でないのであります。従つて法案においては、かような暴力を用いるような行為を所定せんとするのであります。従つて憲法に言われる基本的人権を毫も侵害するものではないのであります。(拍手)この意味において、総理は、多少の行き過ぎの非難がありとしても、本法案是非通過させたい、こういうことであります。(「総理を出せ、答弁にはならない」「明快な答弁だ」「質問は五つあるのだよ」「総理出て来い」「べらぼうな話だ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
  28. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 中山福藏君。    〔中山福藏登壇
  29. 中山福藏

    中山福藏君 私どもの同僚でありまする伊藤さんの真摯なる態度に対しまして、謹んで私は敬意を表します。    〔「敬意を表されてもいい気はしないぞ」「歎つて聞け」と呼ぶ者あり)  そこで、緑風会破壊活動防止法案に対して基本的人権を擁護する上において遺憾はないかという、政府関連しての答弁を求めておられるのであります。この点について先ず以て一言しておきたいと思います。憲法第十一條には、国民は全部基本的人権の享有を妨げられない、こういうふうに書いてありまして、これは永久に私どもに與えられた権利である。これは御承知の通りに一七七六年七月四日にトーマス・ジエフアーソンが起草しましたアメリカの独立宣言の第一項に規定された條項から流れを酌んでおると私は見ておる。而してこの憲法第十二條にどういうことが書いてあるかというと、この基本的人権というものは、不断の努力によつて国民はこれを保持しなければならないと、こう書いてある。(「その通り」と呼ぶ者あり)そうして、その後段に何と書いてあるかというと、併しながらこれを濫用してはいけないと書いてある。(拍手、「鬼の首か」と呼ぶ者あり)社会公共の福祉のためにこれを利用する責任を負うと書いておるのであります。(「その通り」「鬼の首か」と呼ぶ者あり)その一点だけを強調して、この責任と濫用を度外視するということは、近頃の滔々たる弊風で、あります。而もなお皆さん方は、憲法をお読みなさると、憲法第十五條にはどういうことが書いてあるかというと、私どもは国家の全公務員の選定並びに罷免をする権利を與えられこおるのであります。帝国憲法時代の我々の立場と今日の我々の立場とば雲泥の差があるということを皆さん方は一つ頭に入れて頂きたい。(「とんでもないことだ」と呼ぶ者あり)なお且つ十六條、十七條には何と書いてあるかというと、平穏な手段によつて、官吏の罷免、選任並びに法律の制定、廃止をいうものができることになつておるのであります。でありますから、これらの全部の憲法の精神に鑑みまして、私ども緑風会員としては、適切妥当なる修正を施して、そうして現下の混乱せる社会情勢に対処しなければならん、かように考えておる次第であります。(「教育勅語みたいだね、君らは」と呼ぶ者あり)こういう建前でおるということを伊藤さんに先ずお考えを願いたいと思うのであります。(「奇説だね」と呼ぶ者あり)  それから第二点でございました。第二という修正案規定を置いたというのは、これは法律か何か、法律の本質的にはどういうものだというお尋ねでございましたが、これは私ども随分研究したのであります。これを研究しまして、特別の項目をここに設けますのはどうだろうというお話をお互いに相談し合いまして、これは第三條に、権限を逸脱してやつてはいけない、必要且つ最小限度に、人権蹂躪の虞れがあるから、調査をし、捜査をするというようなことをやらなければいけない。だからこれは、懇切丁寧に、明確を期する上におきまして、第二條と第三條とを牽連せしめまして、第四十五條に対する規定の前提行為としてここに挿入した次第であるということをお酌み取りを願いたいのであります。(「その本質はどうなつておるのだ」と呼ぶ者あり)これは勿論法律規定になつておりますから、法律の一部をなすものであります。  その次に、第四條の第一項の外患罪というものが未だ曾つて一回しか日本において実例がないというお示しでございます。これはその通りでございます。これは仰せの通りでございまして、別にそれに異議はないのでございます。併しながら、現在、先ほど仰せられたように、ヨーロツパ大陸の情勢を見まして、この外患罪に対する規定というものが、扇動を独立罪というようなことに認めておるフランスのあの規定なんかから比較しまして、日本がその例が少いと申しましても、これは時勢の変転と共に、政治家が当然、現在の社会の動き、世界の動きというものを頭の中に入れておかなければ、(「例えばアメリカ侵略する」と呼ぶ者あり)例えば立法立法政策が全然議会において行われないということになるのではないかと思うのであります。私どもは立法というものの必要であるということは十分認めます。而して立法政策なるものは又特異の存在であるということを常に考えておるのであります。(「何を言つておるのだ」と呼ぶ者あり)刑法というものは刑罰を規定してあるけれども、その情状酌量というものは刑事訴訟法の規定による刑事政策によるものなのであります。これと同じように、立法つて立法政策というものを忘れておつては、今日の法律規定はできないのであります。こういうことを一つ頭に入れて頂きたいと思うのであります。(拍手)  その次に、扇動の文字ということに関しての、これは一松議員からも昨日仰せになりまして、私どもは非常に参考になつた次第であります。併しながら、成るほど伊藤さんが仰せられたように、昭和五年の大審院の判例、その後幾分これは改訂せられておりますけれども、このうちに中正の判断を失うということが入つてないが、これはどうしたんだとお叱りをこうむつております。併しながら中正の判断というのは客観的に判事がこれをきめるのであります。でございますから、感情に訴えて常軌を逸したということは、勿論これは刑罰を宣告する上におきましては、これは当然判事の頭に起り得る事柄であると私は考えるのであります。こういうふうな観点から、私どもの扇動の定義の中に、これはもう普通当然のことであるからというので入れなかつたと、こういうことになつておる次第でありますから、どうぞ一つそういうように御留意願いたいと思うのであります。(「魂胆があるだろう」「わからない」「答弁じやなくて言いわけだよ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)なお、その次に、無線通信、有線放送ということについての御質問でありましたが、これは電波法並びに放送法というのが昭和二十五年の五月の二日に発布されております。なお有線放送業務の運用の規正に関する法律昭和二十六年の四月に発布になつておりまするから、これは十分一つこの法律について御研究を賜わりたいと思います。ただ一点附け加えたいことは、送信した人、受信した人いずれが、若し受信することができなかつたらどちらが犯罪になるのだというお示しでありましたが、私どもは、受信ができなかつたような場合においてはこれは刑罰の対象としたくないのであります。一種の未途行為でありますが、こういう未遂の場合には刑罰の対象にしたくない、かように考えておる次第であります。(「どこにそんなこと書いてある」「そうじやないのだよ」と呼ぶ者あり)  その次に、この受命職員という、これは勿論伊藤さんの御意見を私ども酌み入れたわけであります。併しこれは審理官という名義が書いてありましたので、あなたと一松さんの御意見、これはあなたの原案に書いてありました。そのときはこれは審理官じやありません、受命調査官というようなことにしたらどうだろうかと、あなたと私と一松さんと三人で話合つたことがありましたが、そういうようなことから、これは尤もな御意見だというので、こういう規定にしたわけでございまして、ほかに私ども何も他意はないのであります。なお、この受命職員ということを書いて、これに関連するところのいろいろな規定を置かなんだのはどういうわけかというお尋ねでございましたが、まあこれは原案通りにしておいていいだろう、こういうことに落ち着いた次第でございます。何とぞ一つそういう点をお酌み取り願いたいのであります。(「後世の日本人は笑いますよ」「もつと理論的になさい」「中山先生、理論的にやつて下さい」「国会の権威のために」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
  30. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 静粛に願います。
  31. 中山福藏

    中山福藏君(続) そこで原案の第十五條のこの規定に関しまして御意見がございました。併しながら、これは御承知の通り原案の二十一條の公安審査委員会というのと関連しておりまして、この公安審査委員会にこれ又あなたの御意見を取入れまして、四つの場合を想定して、職権主義で以て、必要がある場合においては、原案においては公安調査官でなければ取調べることのできなんだ事柄の大体を、必要に応じて、絶対的の規定ではありませんけれども、必要に応じて取調べてもいいと、証拠の物件というものを捜査して持つてつて留めて置いてもいいということに持つて来ておりますので、先ずこれくらいの点で解決ができるんじやないかと、こう考えておる次第であります。この二十二條に挿入された四つの規定は全部あなたの御意見でございます。どうか一つさように御了承願いたいと思います。(「君は取引やつているんだろう」と呼ぶ者あり)  この刑事訴訟法の二百六十二條の準起訴の手続ということについて、最後にお尋ねがあつた次第でございまするが、これはあの程度でいいじやないかと、かように考えました。どうかさよう一つのお含みおきを願います。
  32. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 午後二時まで休憩をいたします。    午後零時五十九分休憩      —————・—————    午後二時二十一分開議
  33. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 休憩前に引続き、これより会議を開きます。  質疑を継続いたします。伊藤修君。(拍手
  34. 伊藤修

    ○伊藤修君 本員は休憩中に総理大臣の出席を求めておりますので、如何なりましたか、御返答願いたいと思います。
  35. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 総理大臣に対しましては、その出席を求めまして、答弁をいたされるように取計らいたいと存じております。後刻出席されるように取計らいたいと思つております。御発言を願います。    〔伊藤修君登壇
  36. 伊藤修

    ○伊藤修君 午前中の私の質問に対しまして、発案者を代表して中山君が御答弁になつたのでありますが、中山君の御答弁は、私の質問事項三十三点に対しまして一点をもお答えになつていないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)私は参議院のあり方といたしまして、少くともかような重要法案に対し、我々はまじめに、その法案の重要性に鑑み、愼重にこれを審議いたしたいと考えておる次第であります。(「その通り」と呼ぶ者あり)然るに発案者の重大な責任をお持ちになりました代表者の中山氏の御答弁は、あのような御答弁で以て、国民は果して参議院に対しまして信頼の意思を表明するや否や。(拍手、「十分信頼する」と呼ぶ者あり)私は非常に遺憾なお答えであると存ずる次第であります。中山さんにおいて御答弁ができないならば、同様に岡部さんにこれをお願いいたしたいと考えるのであります。併し岡部さんは御承知の通りお体もよくないのですから、私はこれを御遠慮申しておる次第ですから、午前の質疑に対しまして、休憩の時間もありたのですから、重ねて私は質問に対して詳細にお答えを願いたいと存ずる次第です。  かような趣旨を申上げることは、諸君も御承知の通り、この一般法に対しまして国民がこれに覊束される場合において重大な影響がある。法務委員会の今日までとつて来た態度というものは、他の委員会と異なり、特殊な一つの行政機関の問題ではありません。憲法附属の大典をことごとく法務委員会においてこの重責を果して来た。法務委員会において決定することはすべて八千五百万の国民全体に及ぶところの法律案に限られております。故に私たちは政党政派を超越して今日までその審議態度を持して参つた。曾つて私が片山内閣当時におきましても、自派の提案するところのあの農業資産特別相続法或いは売淫法禁止法又は経済査察庁に関する法律、こういうような当時の内閣の重要な法律案をも、その内容は憲法に牴触し、疑義があるという場合においては、参議院の法務委員会の手によつてこれを審議未了に終らしめて、否決の運命を担わせておる。私は参議院の法務委員会の権威というものは、又参議院の権威というものは、そこにあるのではないかと思うのです。かような観点に立ちまして、従来参議院といたしましては、衆議院が持つて参る法律案に対しましては、常に愼重審議をいたしましたし、過日成案を得ましたあの会社更生法に対しましても、百二十カ條の修正を加えた。而してそれは衆議院においてそのままこれを承認されておるのです。この修正案に対しまして、昨年の十二月二十八日にGHQにこれの了承を得、以来その修正案に対しまして、各人の意見を十分これは検討する余地を與えるべく、半歳に亘つてつておつたわけです。一つの修正案を作りましても、なおこれに欠くるところありや否やという愼重態度を持して、あの成案を得て、衆議院に回付して、衆議院はこれを呑んだのです。およそ修正案を作る場合において、殊に法務に関する修正案を作る場合においては、かような慎重な態度を持して参つたの瀞今日までのあり方です。かるが故に、参議院の法務に対するところの権威というものは、私はこの権威というものを常に維持して参つたことと固く信じて疑わないのです。今日かような法案に対しまして、この修正案に対して法務委員会において何らの検討をもなされていないのでありますから、この場合、本会議においてでも、少くとも国民がその修正案の内容について、どういう点が問題になるのか、どういう形に修正案が形作られているか、その解釈、疑義というものに対して、どういう見解があるのかということを、つぶさに国民に知らしむる必要があると思うのです。かような意味からいたしまして、午前中の質疑に対して重ねて中山さんの詳細な御答弁を煩わしたいのであります。  あと一回しか再質問ができませんから、続けてもう少し……。今朝の質疑に際しまして、昨日の総理大臣の御答弁について、本法の基本的な考え方に重要な関連を有するのでお尋ねいたしたのですが、それに対しまして法務総裁が御答弁になりましたけれども、私の質問の趣旨を少しも把握しておいでにならない。従つて、私はこれに対しまして、重ねて法務総裁並びに総理大臣に御質問を申上げたいと思うのです。  先ず片岡議員に対するところの御答弁として、これに反対するものは暴力団体を教唆し若しくは扇動するものである。この法律が制定されれば、暴力団体の発生は完全に防止できる。——この問題につきまして私はお尋ねしたいのです。およそ法律を制定する場合においては、これに対するところの見解を国会議員として表明することは当然のあり方です。又この疑義を質し、それに対して十分の満足するところの答弁のない限りは、この法案に対して反対の意を表明することは当然のあり方であります。殊にこの法律案が持つところの疑義というものは、私の委員会におけるところの質疑によつても十分質されておる。その点を考えますれば、この法律案の持つ疑義というものは、今日ここで以て申上げるまでもなく十分了承される。国民の憂えるところのものは、原案第三條に表示されるところの刑事規定、即ち内乱とか騒擾とか、或いは殺人、強盗、汽車転覆、こういう凶惡なる犯罪について云々するのではないのです。この掲げられておるところのいわゆる破壊活動の基本的刑事規定、これは本法に明示しなくとも、刑事法規即ち刑法典において明らかにされておるのです。且つ又本法にこれを取入れましても加重罰はしていない。刑法規定そのままであるんです。ただ本法が目指すところのものは、これらの犯罪を犯すために、若しくは犯す意図を以て予備、陰謀、教唆、幇助、そうして扇動、こういうものを取締ろうとするところに狙いがあるわけです。政府提出するところの大きな眼目はここにあるんです。而してこれらの行為をなした者について規制をしよう、その団体を規制しよう、ここに本法の目的があるわけです。その場合において最も恐るべきことは、これらの予備、陰謀、幇助、教唆、扇動というものの中におきまして、教唆と扇動は独立罪になるとか、刑法の基本的観念をこの特別法において根本的に改正しようという、大きな刑法理念の大変革をここに求めようとするところの問題があり、それに附随いたしまして、その扇動行為というものがともすると拡大解釈をされる虞れがあるんだと、又教唆という場合においても然りである、助言幇助という場合においても然りである、軍に幇助と申しましても助言幇助というものがあり得るんです。こういう場合においてもやはり問題を生ずる。と申上げるのは、一つの言葉が、一つの言論が、若しくは文障が、その当事者の企図する意思は決して内乱とか騒擾とかいうことを企図していなくとも、これが内乱を企図しておるか否かということは本人の意思にかかわらず客観的にこれを決定するわけです。即ち或る学者がソヴイエト革命の必要性、正当性というものを述べたといたします。その学者の述べておることは学究のために述べておるのにもかかわらず、その学者がたまたま某政党の人人と近しいとか、或いはその人たちと秘密に会談しておるとか、又その他日常の行動においてそういうことが推定し得るというような、諸般の事実が客観的に総合されて決定付けられた場合においては、この客観事実とその学者が述べたことと相対照しまして、ここに因果の関係で求める。且つ又これを以てその人の企図するところの意思を決定する。内乱の意思があつたと決定する。内乱の意思ありや否や、騒擾の意思ありや否やということは、内心的の意思であるから、決してこれを容易に客観的に認定することができないことは当然のことです。従つてその意思ありや否やということは、客観事実を以て総合的にこれを認定する以外に方法はない。その場合において、先ほど申しましたような客観的事実が総合されて認定されることが、容易にこれがあり得るということです。而もその認定は誰がするか。先ず第一段に、地位の低い、常識のない警察官にも等しい調査官によつて認定される。昨夜一松議員が指摘されましたごとく、これらの人が一応認定権を持つておるのですから、その教授なら教授を直ちに捕えてこれを問題にする。それだけでその人の全生活は破壊され、全生命は失われるんです。政治家ならばそれだけで以て政治的生命は直ちに失われる。そういう濫用される虞れがあるから、この法案に対して国民全体が危惧の念を抱くのです。又言論においてもその通りです。かような構成になつておりますから、若しこの法律が制定されますれば、人々は少くとも革新的意見を述べる機会を失うのです。若しこれをあえて述べますれば、そういう疑いをこうむり、そうした嫌疑を受くることに至るのです。それを恐れるから、心ある人は致して語らないほうが一番いいのだということになることは必然であります。若しそうなりましたらば、過去の日本の姿に逆戻りするのじやないか。この法律が制定されると同時に我々は語らざる国民となることになつてしまうのであります。拍手これほど恐ろしい時代ばないのです。その瞬間から日本は再び過去の時代へ逆戻りする慮れがあると思うのです。さようにまでして、日本を民主主義国家として育て行こうということをここで阻止してしまう、終止符を打つ必要がどこにあるか。(「緑風会よく聞け」と呼ぶ者あり)どうか私は、この点に憂うる意味において問題にしておる。法務総裁は、万遍一律に凶惡犯罪を黙視することはできない。まさにその通りです。我々だつて暴力は飽くまで否定すべきです。これに対しましては峻嚴なる法律体制を整えることについては何ら異議を持つておりません。併し問題は、そうした凶惡犯罪をこの法律取締るのではなくして、むしろそうした民主主義国家を再建して行くに必要欠くべからざるところの新らしい考え方、少くとも革新的な考え方を持つ人々らの有益なる言論というものを、これによつて封殺してしまうという恐るべき結果を招来するから、我々は反対するのであります。(拍手)又、今申上げますごとく、凶惡犯罪者を対象にするという大きな目的があると仰せになりますが、昨日総理が仰せになりましたごとく、この法律ができれば暴力団体の発生は完全に阻止することができると、こう言うのです。何を指して言うのですか。特審局のその局にある責任者ですら、この法律が制定されても、決して、現在起りつつあるところの凶惡犯罪、集団暴力というものが絶滅できるときは考えていないと言つておるのです。総理大臣が何を根拠にしてかような断言的なお言葉を述べられるのか。かような今日起りつつあるところの凶惡犯罪というものは、御承知の通り刑法的に、これを法律的に申上げますれば確信犯というものに類するのです。如何なる刑罰も、如何なる制裁をも覚悟してその犯罪行為を行うのです。こうした確信犯に対しましては如何ような重罰刑でもその目的は達し得ないのです。刑事政策上さような犯罪者に対しましては法律は無力なんです。例えばこの法律において、破壊活動を行なつた者は死刑に処すと書いたところが、その死刑に処せられることを英雄と心得て、ますますさような暴力行為を行うことは、これら確信犯者の常道であるのです。従つて、この法律が制定されましたところが、現に起りつつあるところのこの種の暴力行為というものは決して絶滅しないということを私は断言して憚りません。又この法律が右翼暴力団に対しましては何らの規制を行なつておりません。又左翼暴力団に対しましてこれを適用しようという場合においては、その暴力団が地下に潜入した場合においては、この法律は無力です。それをお考え合せになりますれば、この法律制定によつて現に起りつつあるところの治安維持の問題がただ立ちどころに消滅するなんという甘い考え方をお持ちになつて、今日起りつつあるところの治安対策を立てられることは、余りにも近視眼的な無定見な政策であると言わなくてはならんと思うのです。(拍手)総理大臣はどういうところに根拠を持たれてさような断言をなさるか。私はこの点に対して総理大臣の御答弁をお願いしたいと思うのであります。(「総理はどうした」「緑風会しつかり用いておいてくれよ」と呼ぶ者あり)  又総理は、破防法は決して言論の抑圧や基本人権の侵害を目的としたものではない、治安維持法に対する惡評を破防法に転嫁するのは卑怯であると、こう仰せになりますが、併しこれも私は吉田さんといたしましては、法律家ではないのですから御無理もないと思うのです。又前夜の自由党の総会等のあり方から考えまして、相当お疲れであつたから、たまたまかようなお言葉が出たと存ずるのでありますが、併し総理としての責任ある御答弁といたしましては、いま少し慎重に御答弁あつて然るべきです。少くとも国民を代表して行政権の最高首班としての責任を持たれる以上は、この言葉たるや軽々に述べらるべきものではないのです。この法律が言論その他の基本人権を制約することは今更ここで贅言を用いるまでもないのです。先ほど来申上げましたところによつても十分窺い知り得ることと存じます。我々は曾つて治安維持法が制定せられた当時、皆さんも速記録を御覧になつたでしよう。決して濫用されない、拡張解釈されないと言いましても、その言うた責任者が第一線に立つて国民に接するわけではないのです。一たび法律として現われますれば、その法律の持つところのいわゆる効用力、法律の持つところの機動力というものを十分第一線の人は活用するのです。現に警察方面におきましては、早く破防法ができないか、引つ括つてやる、こういうことを高言しておるのです。それほど、この破防法は融通無碍に利用される虞れが十分あることは皆さん御承知の通りです。例えば予備、陰謀、幇助に対しまして、緑風会修正案では扇動はお除きになりました。併し刑法総論の教唆というのは、やはりこれらのものにかかつて来るのです。その教唆と、刑法総論の教唆と、及び修正案に基くところの独立罪の教唆というものを、法律的に御考究になりますれば、その複雑な法理観念を利用いたしまして如何ようにもこれを惡用できるのです。現に我々は曾つて治安維持法において苦い経験を経て来て、又ぞろさような融通無碍な法案を、感情によつて、面子によつてこれを鵜呑みにする。或いは些々たるところの修正によつてこれを通過せしむる。こういうお考え方は絶対にこの際考え直して頂きたいと思うのです。(拍手)私はあえて申上げることは、今日の場合といたしまして、感情でもない、面子でもない、国民の澎湃たるところのあの輿論を我々は受けて立つて、如何に参議院がこれに対しまして愼重に考慮しておるかということをお示し願いたいと思います。(拍手)これは一にかかつて緑風会諸氏の賢明なるお考え方に左右さるべき問題であると思うのでありますから、良識あるところの緑風会諸君は、十分この点を再度考慮されまして、御勘案を願いたいと存ずる次第であります。  又総理は内村議員の質問に対して、破防法刑法その他の法律を以て防ぎ得ない暴力に対する法律である——これは従来の各議員の質問によつても明らかであります。私があえて申上げるまでもなく、この法律は直接暴力行為に対しまして規制するわけじやないんです。よつて以てそれによつて行政的手続によつて規制しようというので、暴力行為自体は刑法各正條を以てやつておるわけです。刑法典に書いておる以外の暴力行為というものはここに取上げておりません。原案第三條はまさにそれを明示しておる。してみますれば、現行の法律でという総理の御答弁は、どこを指して言うか。この法律の第三條に掲げておるところの、列挙されておる暴力行為というものは、すべて現行刑法典に列挙されておるものを取上げておるじやないですか。この点から考えましても、総理のこの御発言というものはどこを根拠にして申されましたか、不可解に私は思うのであります。まさに刑法典その他の法律によつて定められたる暴力行為を規制の原因としてここに取入れたに過ぎない。暴力行為そのものを鎮圧しようというならば、現行刑法をそのまま活用すれば以て足るのです。この法律の目的は、むしろそうではなくして、それによつてそれらの団体を規制しようというところに目的がある。暴力行為というものに対するところの総理の御見解が、この法律でできるなんということは、法務総裁はどんな報告をしておるか知らんけれども、法務総裁の報告はそれは誤まつておる。この法律で暴力行為取締が直ぐできるとして、この法律がなければ暴力行為取締れないなんという御見解を総理に示唆されておるとすれば、法務総裁はその職責を果していない。曠職の責があると言わなければならん。(拍手、「みんな茶坊主ばかりだ」と呼ぶ者あり)一松議員に対するところの御答弁については先ほどちよつと触れておきました。たとえ行き過ぎがあつて破防法を速かに制定しなければならない。——これほど私は無茶な御答弁はないと思います。一国の総理ともあろうものが、行き過ぎがあつてもこの法律を作らなくちやならんというようなお考え方は、国民が果して納得するでしようかどうか。良識あるところの皆様が靜かにお考え合せ下さいますれば、十分私の申上げることはおわかり下さると思います。かようなことは私から申しますれば暴言です。それが單なる一属僚の言葉なら我々は聞き流します。吉河君あたりが言うなら聞き流しておきますが、併し総理としての御発言としては軽々にこれを聞き流すわけには参りません。少くとも、この御発言に対して釈明せられるか、これをお取消し下さるか、いずれかの方途をおとり下さることを私は切望してやまないのです。以上に対しまして先ず法務総裁の御答弁を伺い、中山さんの御答弁を伺いまして、更に質問を継続いたしたいと存じます。(拍手、「総理が出るべきだ」「答弁らしい答弁をしろよ」「詭弁は駄目だよ」「詭弁で月給をもらつているようなものだ」と呼ぶ者あり)    〔国務大臣木村篤太郎君登壇拍手
  37. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) 只今の御質問に対してお答えいたします。  伊藤議員は如何にもこの法案が言論を抑圧されるように仰せになりまするが、この法案のどこを見てもさようなことはないのであります。(笑声)政治の批判、政策の批判は御自由であります。如何なる批判といえどもこの法案において禁止はいたしておりません。ただ、内乱を起そうとか或いは騒擾を起そうとかいうような意思を以てやるような言論は、これは国家治安の責任上取締るのが当然であります。(「誰が判定するのか」「君が判定するのか」と呼ぶ者あり)尤も言論の自由は憲法において認めております。併し、御承知の通り公共の福祉という大前提において制限を受けることは、最高裁判所の判決によつても極めて明瞭であります。今日最も我々の関心を持つべきことは、国家の基本秩序を破壊するような内乱及び地方の靜謐を害するような騒擾、(「アメリカの兵隊さんのことか」と呼ぶ者あり)かようなことの実現を目的として世論を迷わすようなことがあつては、国家の治安上これは放置することができないのであります。今日この法案の目的とするところは、だんだん破壊的暴力行為を以て国家の治安を乱そうとするような(「だから戰争はやめろ」と呼ぶ者あり)組織を、先ずこれを規制して行こう、それに附随して刑罰の補整をして行こうというのがこの法案の狙いであります。これに対しては私は決して国民反対するものでないと確信しております。我々としては、日本の治安の維持の下において、維持の必要上、かような行為は絶対にこれは抑制しなければならんということは同感であろうと、私は固く信ずるのであります。そこで問題はいわゆるこの扇動ということにかかつているのであります。この扇動ということは、ややともすると、これは濫用される虞れがあるのじやないかという御懸念であります。(「簡單々々」と呼ぶ者あり)勿論、濫用ということについては十分我々は警戒はしているのであります。併しこの濫用ほど……(「すばらしいものはない」と呼が者あり、笑声)これを愼しむことは、我々はこの法案の各所において最も注意を拂つているのであります。(「どういうふうに注意を拂つているのか」と呼ぶ者あり)要するに、この濫用を防止するということについての皆さんの御懸念であろうと考えておるのでありまするが、これにつきましては私は多くは申しません。委員会におきましても詳細にその点を述べておるのであります。(「反対することが扇動することになるのか」「それを言え」と呼ぶ者あり)この扇動につきましては、昭和二十五年の刑法の仮改正案におきましても、これは認めておるのであります。まだ改正は確定はいたしておりませんが、各学者、実務家を集めまして、刑法改正案もできております。それについても、この重罪犯についての扇動ということは一の犯罪として認めておるのであります。さようにこの扇動ということについては重点を置いておるのでありまして、この法案におきましても、かような国家の秩序を破壊するような行為についての扇動は、当然これを規制して行くということは言わなくてはならんのであります。この点については十分に皆様の御考慮を私はお願いいたしたいと、こう考えておるのであります。(「秩序を破壊しておるのは軍国主義だ」と呼ぶ者あり)
  38. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 中山福藏君。    〔中山福藏登壇拍手
  39. 中山福藏

    中山福藏君 私に対する質問は第二回になかつたように実はお聞きしたのですけれども、ただ一言伊藤君に申上げておきたいことがあるのです。私が一点も答弁をしなかつたと……、野党としての常套語と常々私は笑いに紛らしているのですけれども、こういうことは十分一つまじめに考えて頂きたい。(「どつちがまじめだ」と呼ぶ者あり)私は伊藤さんは最もまじめなかたとして常々尊敬を拂つておる。どうか一つ、そういうことは、ただ徒らにこれを委員会に持ち込むための言辞としか私は受取れない。(発言する者多し)どうかよろしくお願いいたしたいと思います。(発言する者多し)
  40. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 靜粛にお願いします。
  41. 中山福藏

    中山福藏君(続) なお、午前中の足らないところを補充さして頂きます。これは書飯のときに伊藤さんの問いが私の所に使いを以て参りましたので、三十三点か幾点かございましたので、頭の惡い私が思い落した点もあると思います。(「三十四、五点か」と呼ぶ者あり)それで公聽会の意見を取入れなかつたというのはどういうわけかと言うてお尋ねになつておるのですが、本修正案中には公述人の意見は充分取り入れてあるのです。即ち「ため」よりもむしろ「目的をもつて」という言葉が第三條にありますが、これは牧野英一さんの意見を取り入れたものであります。この刑法学者の御意見を入れて規定したような次第であります。又、この第二條でございますが、本法の拡張解釈をしてはいけないということを入れたほうがいいだろうとおつしやつた滝川幸辰氏の意見を採用しました。これもやはり刑法学者として敬意を拂いまして、(「撤回したらいいだろう」と呼ぶ者あり)この修正案のうちに挿入した次第であります。(「滝川先生の論旨はそんなところにない」と呼ぶ者あり)なお……もう少しまじめにやつて下さい。私はあなた方のおつしやるときに弥次つたことは一回もないのです。ほかの人は弥次るかも知れん、私は弥次つたことはない。だから、よろしく一つ聞いて頂きたい。(「生意気なことを言うな」と呼ぶ者あり)事を聞く前に弥次るなんということは子供のすべきことだ。それで、島田武夫さんが、ここにある扇動という文字は、御存じのように刑法上にはその文字がない、その意がはつきりしないので、その限界を明確にしておいたほうがいいと、こういうことを弁護士連合会の権威者としての島田武夫氏が言われましたので、これは私も成るほどという気持になりまして挿入した次第でございます。なお「所持」を削除したというのも、これはたくさんの学者の人の意見を聞きました、文化人の方々の御意見も承わりまして、これは取つた次第であります。だから公述人の意見は少しも取入れてないという思召は私としては首肯することができませんので、この点御説明申上げておきます。  それから先ほど伊藤さんが北海道には共同聽取をするところの有線放送業務に関する設備が一ヵ所しかないとおつしやいましたけれども、これは四百九十一ヵ所あります。(「はあ、そうですが、一つ説明して下さい」「名前を挙げて下さい」と呼ぶ者あり)でございますから、こういう点につきましては、やはり送信が結果を生じない場合におきましては、これは処罰の対象とする必要はないと、かように考えておるのであります。どうかこういう点も御留意を願いたいと思います。  それからこういうお尋ねでございました。附則第六項の修正、刑訴第二百六十二條第一項について準起訴手続及び審判請求権についてどう考えるかと、こういうわけでございました。修正附則第六項の規定によつて、公安調査官の職権濫用罪の不起訴については、刑事訴訟法の第二百六十二條の、いわゆる準起訴手続がそのまま働くのであつて、その取扱については、右の刑事訴訟法並びにこれに基く刑事訴訟規則の第百七十條以下の手続規定の例に従うのが当然だと実は考えておる次第であります。  その次にこういうことをお尋ねになつております。職権濫用の罪について作意の場合があり得るかどうか。なお公安調査官が不必要なものにもかかわらず調査に名をかりて尾行する場合は本條が適用されるかどうかと、こういう事柄についてお尋ねがあつたように考えておりますが、以下の通りお答えをしたいと思います。職権濫用の罪は、公安調査官が故意に職務権限を逸脱し、人をして義務のないことを行わせたり、行うべき権利を妨害するとがあつて、作意犯が成立するか否かは、具体的事実について判断さるべきものと考えるのであります。第二番目に、又公安調査官が、必要がないにもかかわらず、調査に名をかつて尾行する場合、その相手方をして義務のないことを行わせたり、行うべき権利を妨害した場合には、職権濫用罪が成立するものと考えるのであります。第三には、司法警察官がこの法案規定する犯罪の捜査をする場合は、他の犯罪の捜査をする場合と同様に取扱うべきものであつて、その職権の濫用についてはすでに刑法第百九十三條以下第百九十六條の規定がございますので、特別な規定を設ける必要はないと、かように考えるのであります。  その次にこういうことをお尋ねになつております。公安審査委員会の審理について修正しているが、直接審理主義をとる建前か、又は書面審理主義の原則としてかかる調査ができるものとする趣旨か、その理由如何。右の調査の処分は、当事者の申立てによるのか、又は職権によつて行うものか。何故にこれを明瞭にしないのか。右の調査の処分の本質は行政処分であるかどうか。司法処分か。こういうお尋ねであります。行政処分であるとすれば、その処分について行政事件訴訟特例法による訴訟を提起することができるか。若しできるとすれば、すでに出された処分の回復はどうするかと、こういう御質問だつたと考えております。そこで、以下の通りお答えしたいと思うのであります。委員会の取調べは、審査のための必要な取調べである。審査は公安調査庁の提出した証拠等についていたすのでありまして、このために必要があるときには直接の取調べをするものである。かようにすることは、事務の迅速なる遂行と判断の的確性を期する上において適当な措置と考えるのであります。この審査のための必要な取調べは、政府の答弁の通りでありまして、委員会の職権によるものでございます。もとより当該団体はその発動を促すための事実上の申立てをすることができると、かように考えるのであります。委員会の調査上の処分はもとより行政上の行為であるが、相手方に対して全く強制力がない行為であります。次に、この行為は相手方に対して強制力がなく、従つて相手の権利関係というものを強制的には変更するということが生じないから、訴訟の対象とならないのが一般であるが、仮にその変更を生ず場合には訴訟の対象となり得ると、かように考えておる次第であります。  あと三点お尋ねが、ございましたから念のために申上げておきます。  扇動の定義を規定しているが、扇動の構成要件として次の点はどうか。不特定又は多数の者に対する場合限り扇動となるとしないのか、こういうふうなお尋ねでございますが、扇動は、特定の決意を生ぜしめ又は既に生じている決意を助長させるような勢いのある刺激であるから、感情に訴えて相手に右のような心理上の変化を生ぜしめるものである。従つて、通常の場合は、この内容から見て、不特定又は多数の者に対して行われることになると考えるのであります。  その次には、図画は、社会通念によりまして図画と認められるものであつて、フイルム、写真は図画に含まれるものと考えます。  言動と申しまするものは、広く言葉又は動作を意味しているものでありまして、放送、演劇等もこれに含まれると、かように考える次第であります。  その次に、修正案第十六條の「不必要な証拠」についてという、これに関連したお尋ねのようであります。原案第十五條は、意見、弁解の手続を進める上において必要な規定と考えます。これによつて取調べないのも自由勝手にいたすのでなく、この規定の内容については、政府説明した通り全く取調べる必要はない場合等に限定されておると、こう考えておる次第であります。  最後に、第四條第一項第一号という規定についてのお尋ねでございます。「無線通信又は有線放送に」よる場合であります。無線通信による通信とは、無線装置によつて通信を発することでございまして、いわゆる放送は個人の非合法の設備による放送の場合も含まれる。現下の事態に鑑みまして、かような施設による破壊活動の行われる危險があると考えましたので、修正した次第であります。以上誠に言葉が早くておわかりにくかつたかと思いますが、沸して伊藤さんのおつしやることをなおざりにして申上げるのではありませんので、どうか一つ十分そういう点は御了解をお願いしたいと考えておる次第であります。(拍手
  42. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 伊藤修君。    〔伊藤修君登壇拍手
  43. 伊藤修

    ○伊藤修君 先ず法務総裁に私は再質問をいたしたいと存じます。法務総裁は、委員会以来、何かの一つ覚えという諺がありますが、常に暴力行為、暴力行為ということを掲げられまして、その点で説明を糊塗されておるのです。我々は何も先ほども申上げましたごとく刑法規定するところの各暴力行為を否定するものではない。それは問題でないのです。それに名をかつて、名をかつて各種の扇動教唆というような附随的なものをとつて、それによつて規制しようというところに大きな疑義を生ずる。大拡大解釈をされると、国民の基本人権はそれによつて著しく制約される。それを我々は指摘しておるのです。ですから、その点に触れずしてただ暴力行為が云々という、こういう答弁では満足できないのです。又法務総裁は、昭和十五年度におけるところの刑法仮案によつてこの扇動というものが議せられておると——御承知の通り昭和十五年は大東亜戰争の始まる直前です。国内情勢、国民思想、国の基本的な考え方というものは、今日とは雲泥の相違です。その当時の刑法仮案に仮に扇動というものが取上げられておりましたからと言つて、今日の時代においてこれを直ちに刑法に取入れるという考え方は毫末も肯定できないのです。(「そうだ」と呼ぶ者あり)殊に刑法改正は、御承知の通り第一国会でしたか、第二国会かにおいて、我々の手によつてなされておる。その際におきましての法制審議会の考え方としても、GHQの考え方としても、毫末も扇動に対しましては、これの意見もなければ、そういう考え方も現われて参つていないのです。全く問題になつていなかつたことは御承知の通りです。然るに、今日すでに死んでその影すらわからないような昭和十五年の刑法仮案に取上げたからと言つて、これを正当付けるところの何らの根拠もあり得ないと思う。さようなことを取上げまして、いわゆる扇動というものが合法的だというようなお考え方は、法務総裁のお考え方の余りにも時代のズレがあるということに私は心から淋しさを感ぜずにおられないのです。(拍手、「ぼけていて使いものにならない」「だから追放だ」と呼ぶ者あり)御承知の通り、この扇動罪をここに取上げんとするところのゆえんのものは、広く一網打盡にすべての行為を皆規制しようという意図から出ておるのです。(「その通り」と呼ぶ者あり)我々は、内乱を企図し、或いは騒擾を企図し、汽車を転覆すると、こうしたところの教唆なり、実行行為なり、こういうものは嚴に取締るべきです。そうじやなくして、正しい見解を表示された場合においても、それは先ほど私が説明申上げましたごとく、他の客観的事実によつて、あたかも内乱を企図しておるがごとく又騒擾を企図しておるがごとく、さように認定されることが容易であると思う。而もその認定権は地位の低い人々らがこれを把握しておる。それによつて我々の基本人権は容易に侵され得る危險な状態に置かれるということを私は指摘するのですが、(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)それをも顧みられないという法務総裁のお考え方は、在野法曹から上られた法務総裁としては誠に遺憾に堪えないのです。若し法務総裁が在野法曹として、一たび国民の権利保護の立場に立つて弁論をなさる場合において、私が只今申上げることは即ちあなたがお述べになることと私は存ずるのです。(「その通り」と呼ぶ者あり)如何にその地位が総裁なりといえども、朝にあつて曲げられた考え方を以て一国の大切な立法をなさるということは、誤まれるも甚だしいと言われなくてはならんと思うのです。かような点は法務総裁においても再度御考慮をなさるべき筋合いのものであろうと、ここに強く警告を申上げておく次第であります。  又、中山さんの今朝ほどの御答弁に対しまして、私が何も御答弁がなかつたと言つた点について御指摘がありましたが、成るほど今朝ほどの御答弁は、権利の濫用の一端と、及び扇動に対するところの一端は述べられました。その他はそういう考えであるというだけであつて、御答弁の内容になつていなかつたから申上げたわけです。その二点は成るほど御答弁がありました。併し権利の濫用等は是認されないと仰せになりましたが、これは当然のことです。正しい行為でありまして、それが濫用の程度に至りますれば違法行為である。併し国民が持つところの基本人権を保持することに対して、最善の努力をすることは憲法の第十二條に明らかである。併しそれは権利の濫用に亘つてはならない、こう申しておる。これまさにその通りであります。ただその場合において、我々は言論の自由は持つておる。併しこの自由は最大無限何をなしてもいいということではない。おのずから制限を受けます。国家の秩序を破壊してはならない。併し破壊せざる程度のもの、即ち学問の研究のため、或いは革新的意見を述べ、自己の考え方を述べて他の批判を求め、国民が自由に批判し得る程度の言論であれば、即ち相手方の権利を制約するに足りない。権利の濫用ということは相手の権利を尊重するところの範疇においてこそ限界点がある。他人の権利を尊重いたし、その範囲において自己の権利を主張する。そこに民主主義の限本的考え方があるわけです。従つて、我々の言論それ自体によつて他人の権利を侵さない程度の限界点においてなら、何らこれは権利の濫用でないことは、当然です。(拍手)私の申上げることは、我々がこれから社会全体、民族のため、国民のためにあらゆる見解を述べるという場合におきまして、それが是なりと信じて述べておることによつて、国家機関というものがそれによつて破壊されないというならば、その破壊されない限界までは我々の言論の自由というものは許さるべきはずである。それ以上にあるものでありますれば、それが即ち濫用である。私は濫用しても構わぬという議論を申上げておるのではない。おのずから限界点がある。併しこの法案が意図するところのものは、その自由な、当然、私の持つ、国民の持つ、許されたところの言論の自由の限界内をも制約しようというところにこの法律の欠点があると申上げておるのです。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)そういうような意味において、私は、この法律が、国民の持つところの基本人権を、著しく、或いは極言かも知れませんが、国民の持つところの言論、集会、結社の自由をことごとく奪や去ると極言しても憚らないところの法案であると申上げても差支えないのであります。  又この扇動に対しまして、先ほど一言御説明がありましたようですが、私の申上げることは、緑風会のお考え方が扇動の範囲を狭めたお考えになつておることが、この修正案自体ではそのお考え方が決して現われていない。むしろこの修正案の結果改惡になつたと、こう言うのですよ。いいですか。扇動の範囲が拡大されるということは今朝ほど分析的に申上げたのです、繰返して申上げる時間のいとまがありませんが、それを申上げるのです。先ほど午前中の御答弁では、中正の判断を失わしめるということは判事の頭の中にある問題だから、この点はこれを謳わなかつたのですと、これは法律家として私は非常に遺憾な言葉です。およそ昭和五年の大審院の判例が指摘する中正の判断を失わしめるということは、今朝ほども申上げましたごとく、扇動罪の犯罪構成要件の基幹である、大黒柱であります。この條件が若しなかつたならば扇動罪が成立しないことは、判例を解釈する場合に当然の帰結です。又政府特審局長の見解、佐藤法制意見長官の見解も、まさにその通りのことを述べていらつしやる。今日何人をして言わしめても、中正の判断を失うということは扇動罪の要件であることは、毫末も疑わないところの犯罪構成要件であることは当然のことである。それを緑風会修正案は除いておる。従つて解釈上広くなることは言うを待たないのです。さような條件をこれは外してしまえば無限に拡がるのです。でありますから、緑風会修正案というものは、扇動罪についても拡大されたということを申上げておきます。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)  先ほど公聽会の意見を取入れたと仰せになりました。成るほどその意見の片言をお取入れになつたことはまさに認めます。併し公述人が言うところの全趣旨を把握してお取入れになつちやおらない。ただ形式的に、その片言隻句の一つ一つを取入れたのでは、我々立法者としの責任を果したということは言えないのです。(拍手)ただ何々の人がこの点を言うた、それを取入れた。島田君が定義を作つたらいいだろうと言うと、その定義を作つたから取入れた、取入れたことはまさにその通りです。それは肯定します。取入れた結果が惡くなつては何にもならない。公述人の言う趣旨を取入れることによつて、この法律が持つところの瑕瑾、疵、欠点というものを補正して立派な法律にすべきである。どうしても公布しなければならないならば、そうすべきであるという意見であるのです。(「認識がないのだ」と呼ぶ者あり)その基本的な考え方をお取入れにならず、形式的に、彼がこう言つたからその点は取入れた、取入れたものは却つて惡くした、何の面目があるでしよう。(「国民の声を取入れない」と呼ぶ者あり)参議院として(「その通り」と呼ぶ者あり)全責任を以て、この法律が可決される場合において、緑風会方々のお考え方が以て参議院意思を表明することになり、後日国民から起るところの非難というものは挙げて緑風会諸氏において負うべき筋に相成ることを、今から警告申上げておきます。(拍手、「その通り」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)  どうか、私は最後にお願いしておきます。私は、この法律案に対して、決して感情的に申上げておるのではない。どうか参議院の権威をこの法律の上において現わして頂きたい。而も皆様のお言葉から言えば、それは一部限られた人々の言葉である、大多数の国民はそうじやないのだ、むしろ本法制定のほうを好むのだというようなお言葉があるかも知れません。併し少くとも、我々の手許に届く、言論機関が代表して始終くどく述べておるところの各意見を総合いたしますれば、澎湃として起るところの今日の本法に対するところの非難というものは、挙げて我々はこれに耳をかさなくてはいけません。そうしてこれを国民の声に応えるべく、再度緑風会諸君の御考慮を促して止まない次第であります。(「名論」と呼ぶ者あり、拍手)    〔国務大臣木村篤太郎君登壇拍手
  44. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) お答えいたします。  私は自分の地位の如何によつてその信念を変えるものじやありません。はつきり申上げます。私は現下の情勢に鑑みまして、本法は是非とも必要であるという確信を持つておるのであります。扇動の使い方につきましては、私が十五年の仮刑法案について申上げて、これについての御意見がありましたが、この仮刑法案においてのみではありません。最近の法律におきまする扇動の用例は、公職選挙法、国家公務員法、地方公務員法、税法、食糧緊急措置令、いずれも(「特別法に限つてのみの観念だ」と呼ぶ者あり)その用例を使つておるのであります。如何にこの扇動としうことは刑法一般について必要であるかということは、十分に御了解が願えることかと考えております。又外国におきましても、英、仏、独、米、ソ連等におきましても、(「ソ連の真似をするか」と呼ぶ者あり)広汎にこの扇動罪を処罰する規定は設けておるのであります。ただただ問題は、この法案のつまり濫用如何の点にあるのでありますが、濫用せざるよう十分の処置をしておるということは、我々はしばしば繰返したところでありまして、ここに申上げることはいたしません。(拍手
  45. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 中山福藏君。    〔中山福藏登壇拍手
  46. 中山福藏

    中山福藏君 中正の判断をなぜ入れなかつたかということについて、再度御質問なつたわけであります。私は、七歳になればいろはを教える、三十歳の人間にいろはを教える必要はない、かように考えておる。今日の日本法律家の間におきましては、もうすでにこの扇動という文学を使いまする場合は、感情を刺激して正常なる判断を失わしめる、中正な判断を失わしめるということは、理の当然に判決の上に現われて来るものだと、かように考えております。なお、もう一点附加えておきます。皆様方は非常にこの破壊活動防止法案というものを撤回せよという思召でありますが、言論には言論、思想には思想を以てこれに向わなければならんとおつしやいますが、あなた方は国民の代表として、その言論とその思想を以て何故今日の暴動を抑え付けなさらぬかとうことを一言申上げておきます。(拍手、「そうだ」「何を言うか」呼ぶ者あり、議場騒然)    〔相馬助治君発言の許可を求む〕
  47. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 相馬助治君、何ですか。相馬助治君、何ですか。相馬助治君、何を言われようとしておられますか。何ですか。
  48. 相馬助治

    ○相馬助治君 発言をしたいのです。二つの発言を自席からしたいのです。(「必要なし」と呼ぶ者あり)
  49. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 何の発言ですか。
  50. 相馬助治

    ○相馬助治君 議事進行について。一点は議事進行、一点は傍聽雰の問題。(「必要なし」と呼ぶ者あり)
  51. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 議事進行は何を言われますか。
  52. 相馬助治

    ○相馬助治君 中山君の発言は甚だ穏当を欠くと存じます。(「そうだ」と呼ぶ者あり、拍手)本人において取消される場合は別といたしまして、議長において適当に処理されることを要求します。(「異議なし」と呼ぶ者あり)  第二の問題、私は傍聽券の問題について、この際、議長質問をいたしたいと存じます。国民注視の破防法案がここに審議されておる。新聞やラジオで国民は全部この事実を知つておる。従つて、常識的に考えれば、この傍聽席が溢れるくらいな傍聽人の来ることはこれは当然であります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)然るにもかかわらず、事実は御覧の通りである。この際、議長にお尋ねすることは、傍聽券を制限したる事実ありや否や。ありとするならば、その理由、並びに制限した事実の内容、なお、その際、特に明確なる数字を以て説明されることと同時に、通常においては一般傍聽券を何枚発行し、本日においては一般傍聽券を何枚発行しておるか。明確にその報告を要求いたします。(拍手
  53. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 傍聽券の問題についてお答えいたします。傍聽の制限は議長の職権になつております。(「職権を聞いているのではない」と呼ぶ者あり)傍聽席の数以上の傍聽券は本日も発行されております。その実数は、議員用の傍聽券として三百四十七、そのほかに四十枚出ております。(「内容」と呼ぶ者あり)そうして先著順による傍聽券は三十枚出ております。(「四十枚の内容を言え」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)合計四百十七枚、而して傍聽席の收容力は三百六十二席、即ち四百十七枚出ておるのでありまするから、收容力を超過して発行しておる次第であります。(「了解々々」「了解しない」と呼ぶ者あり)
  54. 相馬助治

    ○相馬助治君 私が質問において申上げましたように、通常の場合一般傍聽劵を何枚出しておるか、又本日一般傍聽券を何枚出したか、その質問に対して、本日出してある一般傍聽券が三十枚であることは了解いたしましたが、私の調査によりますれば、通常の一般傍聽券は、その数字に倍加すること遥かに大なるものがある。ここに数字を指摘してもよろしいが、(「百九十枚だ」と呼ぶ者あり)それはしばらく伏せる。従つて、この処置というものは、いわゆる定員から割出して云々ということは当を得たものでございません。通常は一般傍聽券を何枚出して、本日は三十枚である。(「如何なる理由」と呼ぶ者あり)その理由如何ということを聞いておる。(「そうだ」「聞かなければ答えられぬのか、自分でやつたのじやないのか」「普通何枚出しておるのだ」と呼ぶ者あり)
  55. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) お答えいたします。通常の場合何枚出しておるかは、只今調べまして後刻報告いたします。(笑声、「何という無責任な議長だ」「了解々々」「議事進行」と呼ぶ者あり)中山福藏者、何か御答弁がございますか。
  56. 中山福藏

    中山福藏君 ございません。(「取消さないか」と呼ぶ者あり)取消しません。
  57. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 中山君の御答弁はない模様でございます。(「議長はどうだ、議長は」「御罰か」と呼ぶ者あり)湘南に願います。
  58. 中山福藏

    中山福藏君 なんでございましたら、私が先ほど申上げましたことに補充してもう一言言わしてもらいたいと思います。
  59. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 中山福藏君。    〔「登壇々々」「そうだ」「一身上の問題だよ」「懲罰々々」「ノーノー」「何が懲罰だ」と呼ぶ者あり〕    〔中山福藏登壇
  60. 中山福藏

    中山福藏君 皆様方は、国民の代表であると常におつしやつておるのであります。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)従つて、あのような暴動が起つた場合には、あなた方の思想とあなた方の言論を以て是非とも抑えて頂きたい。これができない場合には、破壊活動防止法というものが必要になつて来る。従つて、現在この社会の情勢においては、この破壊活動防止法を断じて撤回する理由はないと、かように申上げておきます。(「その通り、その通り」と呼ぶ者あり、拍手
  61. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 一松定吉君。    〔一松定吉君登壇
  62. 一松定吉

    ○一松定吉君 私は、修正案提出者でありまする中山君若しくは岡部君に対して、少しばかりお尋ね申上げたいのであります。  私の質問の趣旨は、本法に対して反対である、或いは破防法は必要がないのである、或いは破防法を撤回するかどうだというようなことを質問するのではない。今日の情勢から見て破防法が必要であるということはわかるけれども、本件のような行き過ぎ破防法は有害であつて益がない、(拍手)こう言うのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)そういう意味において御質問を申上げたいと思うのであります。(「それがわからないのだ」と呼ぶ者あり)  先ず第一に、扇動という文字について昨日もお尋ねいたしたのでありますが、私はますますわからないようになつた。修正案の中に扇動という文字の定義がある。それはどういうことかと言うと、この第四條の二項に「この法律で「せん動」とは、特定行為を実行させる目的をもつて、文書若しくは図画又は言動により、人に対し、その行為を実行する決意を生ぜしめ又は既に生じている決意を助長させるような勢のある刺激を與えること」が扇動だと、こう言うておる。そうすると、今まで我々の信ずるところによると、扇動ということと教唆ということの差異は、特定の人に対して或る犯意を注入することは教唆であり、不特定多数の人に対してそういう犯意を注入してこれを実行せしむるようにいたすのがこれが扇動であると承知しておつた。ところがこの解釈によると、不特定多数の人ということは逸脱してしまつて、「人に対してその行為を実行する決意を生ぜしめ」とある。人というのは、不特定という意味特定という意味か、二つとも含むという意味か。若しこれが二つとも含むという意味であるならば、教唆と扇動との区別はどこであるか。これは明らかに私どもは、「人に対し」ということであれば、特定の人もあれば不特定の人もある。特定の人に対して犯意を注入し、不特定の人に対して犯意を注入するということが、全部扇動ということになると、教唆と扇動と区別がわからないようになつてしまう。この点は、趣く親しい中山村に対して、その君に対して君をいじめるのはなんであるけれども、この点は社会に明らかにしておかないと、この点は疑問があるからして、この点を明らかにしてもらいたい。若しこれが不特定の人であるならば、やはり大審院の判決のように不特定多数の人と、こういうふうに書かにやあいかんよ。「人に対し」ということでは、今、私の指摘したようなことになるから、これはいけない。この点について法務総裁に私はお尋ねいたしまするが、あなたと私は又特別の関係で懇意だから、実は恐縮しておるけれども、(「頑張れ」と呼ぶ者あり、笑声)併しこういうようなことに対しては、一つ懇意なことは別にして、まあ一つあなたの考えでお答え願いたいのは、あなたのいわゆる扇動ということに対する定義は、委員会で大審院の判決をお読みになつただけであつて、あとは政府委員の吉河君や関君若しくは法制意見長官が答弁したことで、みんなこの大審院の判決をそのまま鵜呑みにしてこれを発表しただけで、こういうことは世人が非常に心配をしておるのですから、委員会の速記は世人全部には行き渡らない、官報ならば比較的多く全国に行き渡るのだからして、この点の意思表示を官報に明らかにして国民に知らせるということが必要であるから、あなたは、やはりこの議場において、法務総裁たる木村の意見はかくのことしということを明らかになさつて、成るほどそうかと、こういうように世人をして納得せしむることが(「そうだ」と呼ぶ者あり)あなたが本法に対する熱意を示すゆえんであると思いますから、その点について、伊藤議員並びに私からだんだんお尋ねしたことに対して、一つ本日は詳細に我々の納得の行くようにお示しを願いたい。これが一つ。(「うまい」と呼ぶ者あり)  その次には、私はこの修正案の中に「実行させる目的をもつて」云々、「実行させる目的をもつて人をせん動して」と、こうたくさんある。これは伊藤君がお尋ねしたように、中山君、岡部君などが、扇動という範囲を明確にして世人の疑いを解くように入れたのだということは僕も諒とする。併しながら、目的としていとうのは目的罪で、これは伊藤君の言われた通りなんです。併し入れたがいいか、入れないがいいかということになると、素人は「目的として」というのは入れたほうがわかり易い。それはあえて私は咎めない。そこで一つお尋ねしたいことは、扇動を目的としてやるのだから、扇動を目的としてやらずに扇動という行為をやつたのはどうなるのか。そのときはどうなるか。扇動を目的としてやつたときは扇動罪が成立するのだから、俺は扇動目的じやない、ただこういうことを皆さんに話をし、皆さんに聞いてもらうのだということで、扇動目的じやないというようなときは、この扇動罪が成立するのかしないのか。成立するならばそれでよろしいが、成立しないならば、そういうような扇動というようなことはこの破防法の目的外になつて、これは犯罪を構成しないということになるのか。その点を一つ明らかにして頂かないと、この点は十分国民は納得することができないと思うのであります。  その次に、私が一番どうもおかしいと思うのは、あなた方がこれだけ力を入れて、内乱、外患、その他、放火、殺人等について、これを教唆扇動したときの刑がある、科刑の標準が……。これに対してこの三十八條を見ると、即ち内乱と外患についてこれを教唆扇動したときの者は「七年以下の懲役又は禁こ」とある。ところが刑法で見ると、内乱の罪はですよ、内乱の罪は、これは首魁、それから謀議参與、それから群衆指揮、諸般の職務従事者、こういうふうにちやんと内乱はその受持を分けてある。そうして、分けてあつて、首魁は死刑、謀議参與、群衆指揮は無期又は三年以上十五年以下、それから諸般の職務に従事したものは一年以上十年以下の禁錮と、こう、その種類種類によつて刑が分れている。それから又外患の罪については、外患誘致のときには死刑、それから外患についての軍務に服し、軍事上の利益を與えたときには、死刑又は無期或いは二年以上十五年以下、こういうように、ちやんとその内容の種類々々によつて刑が違うのだな。然るに、あなた方の修正は、こういうような区別によつて刑を分けずして、一概に、即ち内乱若しくは外患についての教唆扇動は七年以下と、こう分けてあるが、それは首魁を教唆しても七年以下か、或いは謀議参與、群衆指揮も七年以下か、諸般の職務従事も七年以下か、外患について外患誘致の死刑に当るものも七年以下か、軍務に服し、軍事上の利益を與えるものも七年以下か。こういうようにして、刑法では、その受持受持の職務の範囲に対して科刑がきまるのに、あなたのいわゆる教唆扇動は一律一概に七年以下とある。又は五年以下とある。それはどういう所に根拠を置いてそういうように一律に科刑をきめたのかね。その点を一つ明らかにして頂かないとわからない。こういうようなことを一つ十分に研究してお答えをしてもらいたい。  それから、次のいわゆる刑法第七十八條予備、陰謀、これは刑法では一年以上十年以下、それから内乱の幇助は七年以下の禁錮、八十八條では一年以上十年以下の懲役、禁錮、こうなつておる。それをあなたの修正案では五年以下の禁錮又は懲役となつており、一向種類分けにしていない。種類分けにしていないと、内乱の予備、陰謀、幇助、又外患でも全部五年以下でやるということになると、一体、裁判官は科刑のときにどうすればいいんです。そういうようなことについて一つ明快にお答えを願いたい。或いは、それはちよつと気が付かなかつたというなら、それでもいいよ。一つ正直に答えて頂きたい。(笑声、「うまい」「大したもんだ」と呼ぶ者あり、拍手)  それから次には、ここにいろいろあなた方のほうで、文書の印刷或いは所持、或いは頒布というようなことがあり、御丁寧に無線通信又は有線放送ということを入れたことは、これは私はいいと思う。それならば、郵便の封書、葉書はどうなるんだね。封書や葉書にこういう暴力主義的破壊活動を目的としたことを書いて印刷して、これを郵便に出したときは、これはもう処罰せんのかね。処罰するならばこれは一つ入れたらどうか。せんならば、しないわけを一つ明らかにして欲しい。或いはこの列挙しているうちに、この葉書、手紙を含むというならば、どこに含んでいるのか。ここはいわゆる印刷頒布及び掲示ということなんだからして、葉書や封書に入れて郵便に出すことは含んでいないな。有線若しくは無線のところまで御念が入つているのであるが、極く世人の手慣れている葉書や封書についてこれを入れなかつたのを、これを一つ明らかにして頂きたい。これも忘れたならば忘れたでよい。これを一つ明らかにして頂きたい。(「うまいぞ」と呼ぶ者あり、笑声)  その次には、強制力を用いるか用いぬかという点について、私はこれは一つ十分に君にお尋ねしてみたいのだが、これによりますと、第二十一條、公安審査委員会関係人若しくは参考人に任意に出頭を求め、或いは報告書を要求する、或いは物件の任意提出を求める、或いはこの物件をおれのほうに留めおくぞということを言う。或いは承諾を得て事務所に入り、そして帳簿その他の物件の検査をする、或いは資料の提出を求める、こういうようなときに、私は嫌だ、こうしていわゆる黙秘権を行使し、不提出を主張し、私は応じないといつて任意出願しないというときにはどうする。はあ、そうか、私は強制力を用いることはできぬから、どうも仕方がないから帰ろう、ではさようなら、といつてつて、その旨を報告して、調査も何もできないということにするのか。或いは警察官に頼んで、警察官によつて、裁判官の家宅捜索令状とか何とかいうことによつてどうかするのか。その辺が明らかでないですね。ただこれは余りにおれのやり方は強制力は用いぬのだと、極く任意にさせるのだよと木村総裁が常にお答えになる。強制力は用いぬのだから心配ないということを……露骨に書いたが、これはそのまま実行できぬことが多い。共産党なんか殊にそれだ。おれは出さんよ、おれは留めおくことはできぬよ、ということになつたら、これはどうするのだ。そういうことについてお答え願いたい。  それから、その次は、この職権濫用に対する裏付けがないですね。(「余り勇気ずけるな」と呼ぶ者あり)昨夜あなたのこの修正に対する裏付けは、いわゆるこれを処罰するという規定があると言つていた。特に二年以下……、四十五條に三年以下の懲役又は禁錮ということを入れて刑法の百九十三條より重く罰したことは、これは我々とあなた方が話合つたので、ここまで入れてくれたことは非常に嬉しく感ずるが、併しながら、これを若し彼らが本当に職権を濫用して、いわゆる義務なきことを行わしめるのみならず、それを傷害し、暴行を加えるというようなことがなきにしもあらず、そういうようなときには、刑法の百九十四條以下には、いわゆる裁判官、検察官、警察官というものは、職務を行うについて暴行を加え、傷害をしたときにはこれこれといつて、非常に罪が多い。こういう人はそういうことをやらないけれども、やつたような場合には、やはり普通の公務員の百九十三條だけでは少しくあなたの修正する三年以下では軽くはないか。こういう点をどう思う。こういう点を一つ遠慮なく答えて頂きたい。と同時に、先刻伊藤君が言われたように、こうして相手方に損害を及ぼしたというときには、国家賠償法第一條規定によつて、いわゆる国家が賠償責任を負うことは、国家賠償法の規定によつて明らかであるが、それにはいわゆる「故意又は過失によつて違法に」という、ちやんと條件が付いている。ところがこの調査官は、私は職務執行を正々堂々と法律の命ずるところによつて正しく行なつたのでございます、私には何にも過失もなければ、職務怠慢もなければ、違法もありませんというようなことになつて来ると、これは非常に困つてしまつて、私が昨日も、又今日伊藤君も言われたように、いわゆる人に迷惑をかけた者を切捨御免ということになつてはいかんが、これはどうかということを心配されているが、この点がこれだけの制裁では少し足りないように思うが、こういう点についても一つ、もうこれでよろしいというのかどうか、こういう点をお答えして頂きたい。  それから、いま一つ最後に私は法務総裁にお尋ねしておくのでありますが、この破防法はいわゆる不正に人権を蹂躪したり言論を圧迫したりするようなものではない、そういう規定はどこにもないのだとおつしやるが、その通り、この破防法には、あなたの言う通りそんなことはないにもかかわらず、そういうことをしてはいけない、こういうふうにするのだ、ああいうふうにするのだといつて、この第二條によほど愼重なる注意書が規定してある。この注意書を規定してある上に、今度中山君のは御親切に別に第二條というものを加えて、決して人権を蹂躪してはいけないということを加えているから、これは非常に注意周到なことは喜ぶが、併し、そういうことを書いたために、これに従事する者が、こういう規則があるから、規則に従つておれは正々堂々と法に背かないような行動をとろうということであれば、これは制裁法規とか刑罰ということは要らんものである。そういう規定があつても、いわゆるそのときの感情とか、そのときの状況とかによつて、いわゆる暴力行為を用いたり、或いは権利を侵害してみたりするようなことがある。そういうことがあるのがこれが気にかかるというのです。木村総裁はそういうことはしないのだからとおつしやるけれども、今申上げるように、いわゆるここの扇動なんかという文字が不明確であつて来ると疑点がある。疑いがある。従つておれはいいと思つてやつたことが濫用になる。これはやるほうの、働きかけるほうの濫用だ。それから、国民のほうから見れば、こういうことをすれば、これは破防法にかかりはせんだろうか、こういうことをすれば、おれは引つ括られはせんだろうか、こういうことはできんじやないだろうか、こういうような新聞の記事はこれは破防法に触れるのじやなかろうか、こういうような意見の発表はいけないのじやなかろうかと言うて、自分から、この法案の趣旨のわからないために、自分から自分の意思発表を制限するということがある。それがいわゆる自由を拘束するということになるのであつて、この法律に、拘束してもいいとか、惡いとかいう規定のあるとかないとかいうのでなくて、こういうわからないことがあるといろいろ危惧の念を生じて、そうして言論の自由が自照に思う通りにならないということが言論圧迫ということになるのであつて、それが憲法の二十一條の表現の自由だとか、言論の自由だとかということが破壊せられ、憲法の二十三條の字間の自由はそういうどころから制限を受けるから、そういうような疑いのないように明らかにするためには、むしろ扇動というものを坂つて除けるか、然らざれば扇動というものを明らかにして、そうしてこれを国民の疑いを持たないようにしなければならぬことは、この法律を熱心に、これを通過せしめ、施行せしめようという木村法務総裁の御熱心に対しては、そこまでの熱意を持たないと国民は安心しない。その熱意を以て初めて、扇動ということは恐ろしいとおつしやるが、恐ろしいその扇動を国民に納得せしめて、こういうことであるから、お前方はこういう條件が備わらぬ限りには扇動ということによつて破防法の処分は受けないのだよということを、国民全部が了解すれば、そんなに恐れない。併し今のようなことであれば国民は恐れる。いわゆる行き過ぎだ。総理大臣行き過ぎであつても、今の情勢から見ると、この破防法というものを通して、今日の暴力行為を制限しなければならんとおつしやるが、行き過ぎであつて国民が困つておるのに、しなくても国民の困らないようないい方法があれば、それを行うことが政治家の正しい行動であると、私はかように信じておるのであります。(拍手)で、こういう点につきまして、中山君には、今申上げた点、法務総裁には、このいわゆる疑問があつて非常に国民が恐れておるということと、いま一つ最後にお尋ねしておくことは、この中山君の修正案に対しては、政府はこのままにこれを御承認なさるのですかどうですかということを、あなたと総理大臣伺つて、又あと時間が五分間ありますから、五分間は弁論の時間に讓らして頂きます。有難うございます。(拍手、「法務総裁、入れ替つてもらつたらいいよ」と呼ぶ者あり)    〔国務大臣木村篤太郎君登壇拍手
  63. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) お答えいたします。(「あのくらいはつきり答えて御覧」と呼ぶ者あり)先ず御質問の要点は扇動の意義であります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)これは殆んど大審院の判例によつてきまつておることは、一松議員の認められるところであろうと思います。大体、学者もその説をとつておるのであります。繰返してその点を申上げます。大審院の判例によりますと、中正の判断を失わしめるということが書いてありますが、これは別に私は可もなぐ不可もないという考えを持つております。要は、多数不特定の人に対して犯罪の実行をすることを決意を生ぜしめ、或いはすでにやろうという決意を持つていたやつを、それを助長せしめるような程度の刺激を與えることが、いわゆる扇動であるのであります。これに反して、教唆は、特定人に対して、すでに犯罰の決意は持つていないやつ、それを新たに決意を生ぜしむるような程度のものであります。要は、命令するとか、或いは説得するとかいうことであつて、犯罪の決意を生ぜしめ、従いまして教唆より扇動のほうが非常に範囲は広い。こういうことであります。この点において扇動と教唆は差異があると考えておるのであります。  次に、一松議員は盛んに、この法案に恐れをなして、学者が自分の意見を自由に発表することを躊躇するのじやないかというような御議論のようでありますが、(「事実だよ」こと呼ぶ者あり)私はさように考えておりません。(「事実だ」と呼ぶ者あり)繰返して私は申上げたように、政策の発表或いは批判或いは政治についての考え方、かようなことについての意見の発表は何らこの法案において制約を受けておるわけではありません。ただただ国家の基本秩序を乱すようなこと、内乱とか或いは騒擾とか、そういうようなものを起さしめるような意思を以て或る種の言論をする、これなんであります。普通に自分の考え方を発表するようなことは、何らこの法案の対象になるのじやないのであります。そこに一つの大きな目的を持つて、今申上げましたように、国家の基本秩序を破壊するような意図を以てさような言論をやるということにおいて、初めてこの法案の制約を受けるのでありまして、決して学者の言論を抑圧したり又は制約するというようなことはないのであります。学者はどんどん時の政府の政策を批判し、これを攻撃することは自由であります。決してさようなことについてこの法案の対象となるべきものでない。学者はどんどん自分の意見を御発表になつて然るべきであろうと考えております。(拍手、「無能力」と呼ぶ者あり)
  64. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 中山福藏君。    〔中山福藏登壇拍手
  65. 中山福藏

    中山福藏君 葉書を投函するというようなことは扇動になるのであります。従つて修正案におきましては、特定行為を実行せしむる目的を以て図画、文書若しくは言動によつて扇動する場合を規定しておるのでありまして、これはもうお読み下されば明瞭になつておると思うのでございますから、どうかその辺よろしく。  それから教唆と扇動の区別につきましては、只今法務総裁からお述べになりましたから、贅言を費す必要はないように考えるのであります。第三には、刑の量定に関する問題でありますが、私どもは、各種の修正案によりますれば、第四條の前段から後段までのすべてを比較較量いたしまして、先ずこの程度ならば差支えないだろう、こういうふうな意味合いにおいて、かように規定した次第であります。どうかさよう御了承を賜わりたいのであります。  それから、この任意の出頭、任意の提出、物件の検査というようなあれは、第二十二條の規定でありましたか、公安審査委員会の職権調査の事項についての御質問がございましたが、これは強要する規定がない。従つて人権を尊重した意味においてですね、お互いに話合つて、これはこういうように規定して、公安調査庁において一通り事前的に調査をするのでありますから、重ねてこういう強制力を持たせる必要はない。かように考えまして、こういうふうな処置をとつた次第であります。ほかには(「元気がないぞ」と呼ぶ者あり)問題はない。余り元気を出すと又あなたから叱られます。これくらいで辛抱いたしておきます。(「いやいやどうぞ」と呼ぶ者あり、拍手、笑声)    〔一松定吉君発言の許可を求む〕
  66. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 一松君、何でか。
  67. 一松定吉

    ○一松定吉君 もう五分ありますから、やらして頂きます。
  68. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 先ほど五分間余つておりましたが、それはすでに討論のほうにお移しになつたと心得ましたが、若しそういうことでありましたならば、再質問はできないことになります。堀眞琴君。(「答弁がある」「政府の答弁がある」「修正案に対する政府意思だ」と呼ぶ者あり)堀眞琴君、ちよつとお待ちを願います。木村法務総裁。    〔国務大臣木村篤太郎君登壇
  69. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) 先刻一松議員から緑風会修正案に対する政府の考え方はどうかという御質問であります。これに対してお答えいたします。政府といたしましては緑風会修正案は我々の考えておる骨子と変つておりません。従いまして修正案については我々は必ずしもこれに対しては反対はいたしません。(「狎れ合だ」「八百長」「そんな馬鹿なことはない」と呼ぶ者あり、拍手
  70. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 堀眞琴君。    〔堀眞琴君登壇拍手〕    〔「そんなに出て行くと定足数がなくなるぞ」と呼ぶ者あり〕
  71. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 私は先ず最初に公聽会等の意見を果してどの程度に取入れているかということについて重ねて御質問申上げたいのであります。  これは先ほどの伊藤君の質問に対しまして、例えば「目的をもつて」云々ということに明確に言葉を現わしたとか、或いは扇動という言葉についてもその定義をはつきり示したとか、或いは公安調査庁の職員の職権濫用に対して、これを警告する意味規定と、その罰則をきめたというようなことを御答弁になり、伊藤君からは、これに対しまして、單に一言半句の取入れに過ぎないのであつて、公聽会における公述人のその精神、趣意を全体的に取入れたものではないというお話があつたのでありまするが、私どもも全く伊藤君とその感を同じくするものであります。一体、公聽会というものは、我々の法案審議のために一般乃至は学識経験者の意見を徴しまして、これを以て我々の法案審議に対し参考にいたそうというために設けられておるのでありまして、公聽会で述べられた公述人の意見が單に述べつ放し、我々も又それを聞きつ放しというのであつては、何ら公聽会を設けているところの意味がないと思うのであります。従つて、公聽会において述べられた意を我々は法案審議の際に十分に参考とするというためには、片言隻句を取入れることではなくて、その公聽会において述べられた意見の主なるものを我々の法案審議の参考にするということが一番大事なことではないかと思うのであります。  ところで、公聽会乃至は一般の輿論の反対の意見を見まするというと、その主要なる点は大体次の五点ではないかと思うのであります。一つは、刑法規定があるのにもかかわらず、なおこのような特別刑事法の必要があるであろうか。結局このような特別刑事法を制定する結果は治安取締法規のみが多くなつて、人権は遂には窒息してしまうのではないかというのが一つの反対意見であります。第二の反対意見は、破壊活動規定が極めて不明確であり、あいまいであり、結局においては拡張解釈の危險があるのではないかということであります。第三の問題は、公安調査庁の職員のこれが濫用に対するところの危險を心配しての反対論であります。第四には、行政処分によるところの団体規制の行き過ぎに関するところの反対意見であります。第五番目には、救済手段が極めて形式的であり、実質的にはその効果を持ち得ないのではないかということに対する反対意見だと申すことができると思うのであります。  ところが、これらの反対意見が何らこの修正案の上には取入れられておられんということを申しても私は差支えないと思う。例えば取締法規のみが多くして、結局においては人権がこのために窒息を余儀なくされるという点であります。刑法では御承知のように内乱罪を初めとするところの暴力的な犯罪に対しまして十分その規定が設けられております。その上になぜ刑事特別法を必要とするかということにつきましては、私どもも一般の反対論とその感を同じくするのでありまして、刑法規定刑法規定としてその犯罪を十分取締つており、社会の秩序をそれによつてつております。ところが今度の破壊活動防止法案並びに修正案によりましても、この刑法規定を更に拡大して、しばしば同僚議員によつて述べられておるように、扇動或いは教唆等を独立罪としてこれを処罰するということをきめております。もともと処罰というものは、これは限定されなければならないものであるということは言うまでもありません。疑わしきはこれを罰しないというのが刑事法上の大原則であるということは御承知の通りであろうと思う。(「さつぱり応援がないじやないか」と呼ぶ者あり)本法案は成るほど団体を処罰するのだ、団体の暴力活動を規制するのであると、こういつてこの法案の目的を説明しております。併しながら、実際においてこの暴力的な活動を行う者は個人であります。行為の責任者は個人であります。勿論、団体の決定によつてその行動を行うことはあるかも知れません。併しながら、若しもそのような決定を団体が行うとするならば、輿論がこれを批判するでありましよう。決して輿論を無視してそのような暴力的な決定をなすことはできないと思うのであります。この修正案においてはこの点について何ら触れておりません。私はなぜ触れなかつたかということについて、提案者にその理由をお尋ねいたしたいのであります。  次に、破壊活動規定が極めて不明確であり、あいまいであり、拡張解釈の危險があるという点に関しましてお尋ねいたしたいのであります。成るほど修正案の第三條につきましては、破壊活動規定の内容につきまして、例えば「実現を容易ならしめるため、」という言葉を「実行させる目的をもつて、」という工合に規定さしたり、或いは又扇動の定義を、「特定行為を実行させる目的をもつて、文書若しくは図画又は言動により、人に対し、その行為を実行する決意を生ぜしめ又は既に生じている決意を助長させるような勢のある刺激を與えること」であるという工合に規定したりして、一応その言葉上の明確さを出しているように見えます。或いは又破壊活動の一つの要件としての文書や図画の所持を削除したことも、或る程度その明確さを増しているようには見えます。併しながら、例えば扇動の問題、これは伊藤さんからも一松さんからもお話がありましたので、私は重ねてここに問題にいたしませんが、ただ、その場合、その「勢のある刺激を與える」ということについての認定の仕方、一体、客観的に果してできるであろうかどうか。ここからここまでは勢のあるところの刺激を與えたものとして扇動に該当するのだ、併し、ここから、ここまでは、そうではないという、その限界を如何にして認定することができるか。公安審査委員会におけるところの決定が果してそれを客観的に納得せしむるものとしてこれを受取ることができるであろうかということが疑問になるのであります。  なお拡張解釈につきましては、新たに第二條を追加いたししまて、「この法律は、国民基本的人権に重大な関係を有するものであるから、公共の安全の確保のために必要な最小限度においてのみ適用すべきであつて、いやしくもこれを拡張して解釈するようなことがあつてはならない。」このように一條追加いたしております。併しながら、如何なる法律でも、私が昨日申しましたように常に拡張される危險を持つており、従つてそのために人権が非常に制約を受けるということも、これ又事実なんであります。幾ら法文の上に、必要な最小限度においてのみ適用すべきだ、いやしくもこれを拡張解釈するようなことがあつてはならないということを規定したからと言つて、果して実質的にこれを最小限度に適用し乃至はこれを拡張して解釈することがないかということについての保障は、何しないと申さなければなりません。尤も、最後に四十五條を追加いたしまして、公安調査官の職権濫用についてはこれを罰する旨の規定はありますが、これ又果して十分にこの修正案の提案者の意図を達成することができるかということになりますると、私としては否と言わざるを得ない。この点について又提案者から御説明を願いたいと思うのであります。  なお、この点に関連しまして、これ又一松委員並びに伊藤委員から詳しく述べられておりますので、私はこれについてこれ以上この問題を取上げることはいたしません。ただ、例えば警察官や或いは検察官などの職権濫用につきまして、刑法の百九十四條においてこれを処罰する旨の規定をいたしておりまするが、実際には不当の逮捕が行われたり、或いはそればかりではなく、最近におきましては、警察等におきまして拷問等の事実も行われているということを私どもは知つているのであります。若しそうとするならば、如何に裁判官や検察官や或いは警察官の職権濫用罪を刑法上に規定しましても、それによつて十分にこれを取締ることができないということを意味していると思う。若し刑法に或る犯罪に対する処罰規定を設けるならば、それによつてその犯罪が絶滅すると考えるならば、私は大きな間違いだと思う。強盗罪、殺人罪につきましては刑法上に重い処罰規定が設けられております。併しながら、それによつて殺人罪も強盗罪も決してなくならぬのであります。問題は社会に生ずるところの犯罪を取締ることではなくて、その犯罪の原因となるべきところのものをなくするというところに、本当の大きな意味があると申さなければならんのであります。従つて。職権濫用の問題につきましても、我々としては必ずしもこれを納得することができないし、従つて又四十五條の一ヵ條の追加乃至は第二條のこの法律解釈適用に対するところの規定を追加いたしましても、それによつて果して拡張解釈の危險を避けることができるかということが提案者によつて十分説明されなければ、我々としてはこれを納得することができない。  次に、行政処分によるところの団体規制は極めて不当であるということであります。この問題につきましては、世論並びに公聽会の公述人は殆ど一様にその不当を述べておつたのでありますが、何らこの問題については考慮されておりません。提案者はこれに対してどのような見解を持つておられるか。並びにこの公安審査委員会の決定、第二十一條の問題であります。これも只今一松議員から詳細に質問になりましたので、私はこれを更に重ねて(「簡單」と呼ぶ者あり)質問することを避けます。ただ、強いて言うならば、三項を加えて、例えば参考人の出頭を求める、或いはその意見を徴するよか、或いはその報告を求めるとか、或いは物件を留置するというような公安審査委員会の処分権を認めたことにつきましては、或る程度我々もその(「時間」と呼ぶ者あり)発議者の意向を酌むことができるのであります。併しながら、裁判所がもともと行うべきところの決定を依然として公安審査委員会に残しているということは、これは提案者の果して如何なる根拠に基いてこういうことを考えられたのか。その点も私どもは重ねてお尋ねいたしたいのであります。なお、このほかに救済手段その他についても疑問となる点がありまするが、改めて提案者の御答弁を拜聽いたした上に、私は両質問のときにそれを申上げたいと思うのであります。(「野党いないじやないか」と呼ぶ者あり)
  72. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 中山福藏君。    〔中山福藏登壇拍手
  73. 中山福藏

    中山福藏君 堀さんの御質問は、なぜ刑法のほかに刑事特別法に該当するこういう法律案を出すか、こういう御質問だつたと覚えております。それは御承知の通り、これはたびたび政府がらも御答弁があつたと覚えておりますが、結局、団体に対する規制というものはなかつた。刑法におきましては個人を対象としている。こういうことになつておりますから、これは速記録を御覧下されば誠に明瞭になると考えるのであります。  第二点は、破壊活動意味というものが極めて不明確だ、こういうことの御質問をなされたのでありまするが、これは修正案の第四條を最初から終いまでお読み下さいまするというと、刑法第七十七條、第七十八條、七十九條或いは八十一條、八十二條、八十七條、八十八條、こういう規定があるし、又その第二段に至りましては、刑法第百六條、百九十九條、二百三十六條或いは明治十七年の太政官布告の三十三号、いわゆる爆発物使用に関する規定、或いけ護送する、いわゆる法令によつて拘禁されたものを護送するとか、或いは又この法律によつて調査する人間を、凶器又は毒物劇物を以て職務強要とか、公務執行妨害罪のいわゆる刑法第九十五條の規定、こういうようなものを皆明らかにここに明示いたしてございますから、この刑法の基本的な類型の罪を処罰する、こういうことになつておるのですから、どうぞそういうようにお含みおきを願いたいと思うのであります。扇動に関するところの規定は、これはもうたびたび政府からも私からも申上げた通りでございますし、多分中田さんにお答えしたと考えておりますから、私は堀さんの御質問に対して、これを援用しておきたいと思うのであります。  公安調査庁の請求によりまして公安審査委員会が決定をした、これに対して訴訟を提起する。こういう場合でありまするが、これは憲法の第七十六條の第二項に、すべて行政機関というものは最終裁判をすることができない、最終の裁判というものは必ず司法官憲にこれを持ち出して行かなければならんということになつておりますから、勿論、行政権と司法権の対立というものは、ここではつきりしておるのでありまして、決して行政権というものが司法権を抑圧するということにはならないように考えておる次第でございます。  これ以上は先ず大体委員会における速記録を御覧下さいまするとすべて明らかになる事柄でありますから、どうかこれを御覧頂きたいと思います。(拍手
  74. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 堀眞琴君。    〔堀眞琴君登壇
  75. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 只今中山さんの御答弁を拜聽いたしました。私の質問の趣意と必ずしも一致しておらぬことを私は大変残念に思うのであります。中山さんの御意見によりまするというと、刑法は個人の行為責任を問うておる。この法律は団体の刑事責任を問うのである。こういうような御説明であります。私も決してこの法律によつて個人の犯罪責任を追及しているものだとは思いません。団体の規制をなすことを主たる目的とするということについては、私も法文を読んでその点は知つておるのであります。併しながら、その団体そのものが第一に私は問題だと思います。法文によりまするというと、二人以上の団体はすべてこれによつて規制されることになるのであります。その団体が政治的な目的を持つていようと、或いはそうではない一般の社会的な目的を持つている団体であろうと、すべてこれによつて規制されるという結果を招くのであります。従つてあらゆる団体がこの法律の規制の対象になる。そうなるというと、その規制されるところの、いわゆるこの法律にいうところの解散であるとか或いは活動の停止である、或いは機関紙の停刊であるというようなことは、自然とそこに生じて参りまして、従つてそのことによつて集会、結社の自由が拘束されることは勿論でありまするし、而もその行われるところの暴力的な活動そのものについて見まするというと、団体が決定して行う場合もありましようが、その場合においては、団体は勿論その責任を問われても私は止むを得ないと思う。併しそういうような決定を行うところの団体というものは、恐らく今日の我々の社会においては考え得られないだろう。例えば内乱を起そうじやないかというようなことを決定する団体を私どもは考えることができるでありましようか。騒擾をやろうじやないか、東京を焼き打ちしようじやないかということを責任ある団体が若し決定するとするならば、その決定に対して恐らく輿論はこれを黙つて見てはおらんと思う。先ほど中山君は、「今日いろいろな暴動事件が起つておる。破防法反対している諸君は、若し国民の代表であるならば、これらの暴動をやめさせるようになぜやらんか」、というような意味の強い発言がありました。私はあの言葉は少し中山君の言葉としては行き過ぎの言葉であると思いますが、併しながら、例えばそういうような団体がありましたとしましても、私は輿論はこれを反撥するだろう。私はそういう意味におきまして、団体の行動に対しましては輿論が十分にこれを反撥するであろうし、或いは批判するであろうからして、何もこのような惡い法律を作つてこれを規制する必要はないのではないかということをお尋ねしているのであります。  それから、公安審査委員会の決定についてでありますが、それに関連しまして、行政権と裁判権との関連の問題について御答弁になつたのであります。私も行政権と裁判権の画然と分たるべきことは存じております。ところで中山さんの御答弁によりまするというと、行政処分によつて団体規制を行なつても、それによつて裁判権は何ら侵害するものではないというお考えのようであります。併しながら、私どもから見まするというと、こういうような集会、結社の自由を拘束するような、つまり憲法上の基本的人権に関するようなものを單なる行政処分によつて規制することが、果して認められるかという点に、私の一番の問題があるわけであります。ところが中山さんは、それをやつても決して司法権の侵害にはならない。勿論私どもは、三権分立と申しましても、チエツク・アンド・バランス・システムの問題であります。内閣は現に法律の立案権を持つております、又裁判権に対しましても、行政権が場合によつてはこれに対する或る程度のチエツクをなすことができるかも知れません。或いは裁判所は違憲審査権によりまして立法権に関與するかも知れません。チエツク・アンド・バランス・システムであることは私もかねがね承知いたしているのであります。併しながら、行政権力によつて、私が言うところのチエツク・アンド・バランス・システムとは違つて、その場合とは異なつた場合において、行政権によつて、行政処分により司法権を侵害することが、果して民主主義の原則に反しないだろうかということを私は問題にしているのであります。  この二点について重ねて御答弁をお願いしたいと思います。
  76. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 中山福藏君。    〔中山福藏登壇拍手
  77. 中山福藏

    中山福藏君 第一の点及び第二の点の問題をお尋ねになつたのでありますが、第二の点はこれはもう御答弁申上げる必要はないかと実は考えているのです。先ほどお答えいたしておいたつもりであります。  第一の点につきましては、時間の余裕がありますれば、詳しく私の所見を申述べてみたいと考えておるのでありますけれども、時間の余裕がございませんから申上げませんが、これは実際現在の社会情勢というものについての認識の違いから出発した議論が往々にしてこの議場内において行われると思うのでありますが、要するに、その議論の違いからして、やはり多数決に持つて行くというのが、いわゆる立憲政治と申しますか、民主政治のあり方だと私は考えておるのですが、只今堀さんのおつしやつたことは、堀さん独得な御意見でございまして、他山の石を謹んで私は拜聽いたした次第でありますが、私の意見は先ほど述べた通りでございますから、どうかさよう御承知願いたいと思います。
  78. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 須藤五郎君。    〔「法務総裁いないぞ」「法務総裁がいないからちよつと待つて頂きたいですね」「総理はどうした」「やれやれ」「法務総裁の代りに総理が出てやれ」と呼ぶ者あり〕    〔須藤五郎君登壇拍手
  79. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 法務総裁は注射をしてすぐ戻るそうだ。
  80. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 演壇からの発言は議長の許可を得て頂きます。御発言を願います。
  81. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 ぼつぼつといたします。  私は日本共産党を代表して、破防法修正に対する緑風会の提案者たる中山福藏君、岡部常君並びに賛成者三十二名の議員諸君に対しまして、質疑に当つて一言申述べんとするものであります。  破防法は、法務委員会において長期に亘つて愼重審議の結果、政府原案緑風会修正案、伊藤修君の修正案の三案はいずれも否決され、成案を見なかつたのであります。この事実は、破防法に対する全国民反対気運を反映したものにほかなりません。即ち労働者階級のストライキを初め、広汎な、学者、文化人、各大学の教授、学生、婦人の猛烈な反対鬪争が、このことを明らかに物語つておるのであります。緑風会提案の本修正案は、この否決され、廃案となるべき破防法を何とか通過させようとするもので、全く国民を欺瞞する行為であると言わざるを得ないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)このような企みは、吉田政府並びに自由党の政策に対する幇間的行為であり、国民の最も遺憾とするところであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり、拍手)私は、我が国民の自由の権利と全生活を制限する重大な法律が、このような形で何らの反省もなく本会議に上程されたこと、これこそ法律一條を盾にして国民の民主的諸権利のすべてを奪う暴力行為であり、民主主義に対する破壊行為であると思います。このようなペテン的修正によつて破防法通過を図らんとする提案者並びに賛成者の責任は全く重大であります。よつて以下諸点に対し提案者中山福藏君の明快な答弁を求めんとするものであります。  緑風会中山修正案を要約すれば次の四点に盡きると思います。従つて私は主としてこの四点を中心に質疑せんとするものであります。第一点、第二條「必要な最小限」云々の訓示規定の理由如何。第二点、官憲の職権濫用の罰條を、実際に適用された例の殆んどない、刑法よりも、更に適用の可能性のない本法職権濫用処罰規定を設けても、全く実効は挙らないではないか。かかる欺瞞的見せかけを行なつた理由如何。第三点、第三條、本法の中心規定たるいわゆる破壊活動の定義を、政府原案より更に拡大し、外患誘致を加えた理由如何、第四点、世論を最も刺激した扇動を削除するのではなく、扇動の内容を法律的に規定した理由如何。先ず第一は、第二條に「必要な最小限度」云々の訓示規定を加えたことであります。第一、二條の訓示規定には、「基本的人権に重大な関係を有するものであるから、公共の安全の確保のために必要な最小限度においてのみ適用」云々と修正しましたが、これは一体何の役に立つのであるか。「必要な最小限度」とは如何なる限度であるか。このような字句は曾つてヒツトラーも使用しました。歴史上の事実に最も明瞭なように、あらゆる反動支配の下においては、公共の安全のためにと称してどれほど基本的人権が奪われたことか。この言葉は支配者がその暴力的支配を合理化するために常に使つた言葉であります。使い古された陳腐な言葉であります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)公共の安全云々の言葉は、自由の権利を否定する言葉であります。この言葉こそは非道な支配を意味し、階級鬪争における暴虐の全歴史的表現であります。真に公共の安全を確保する途は、彈圧法を作つて人類史発展の芽を摘み取ることではなく、国民生活の計画的な向上のために絶えず配慮し、基本的人権の保障のために公正な政治を行い、自由の権利を徹底的に保護し保障するという、このような政治活動の中にのみ公共の安全が見出される。然るに緑風会のこの修正案は、真理と人間の常識に対して逆立ちしております。明らかな矛盾ではありませんか。そうでないという論拠がありましたら伺つてみたいと思います。  緑風会修正の第二点たる官憲の職権濫用に対しまして、「義務のないことを行わせ、又は行うべき権利を妨害したときは、三年以下の懲役又は禁こ」云々という修正に対しまして質問いたします。刑法規定されておる職権濫用罪との関連、及びこれが如何なる程度に実行されたかについての資料、更に以下述べる具体的事件は如何に処理されたか。これらの疑点に関し、我が党は、以上述べる論拠に基いて、緑風会のお考えになつたこの規定は全くの欺瞞であることを指摘するものであります。職権濫用におきましては世界に名高い日本警察の現状、及びその主人たる極反動政府の下で、如何にして官憲の職権濫用を防止することができるであろうりか。何も期待はできません。政府側で、官吏の職権濫用に対しまして刑法百九十三條以下の職権濫用罪がある。無事の国民に與えた損失に対しては国家賠償法があると言う。更に人権擁護には人身保護法があると言う。併しながらこれらの法律ほど実際に行使されなかつた法律は他に例がないのであります。緑風会提案者中山君は、如何なる資料に基いて本法にこの訓示規定と職権濫用に対する罰條を規定したのが。明瞭な基礎資料を挙げて説明してもらいたい。例えば刑法百九十四條は、官憲が不法に職権を濫用して人を逮捕監禁したときは、十年以下の懲役、禁錮に処するという規定がある。又百九十五條は、同じく刑事被告人その他の者に対する暴行凌虐は七年以下の懲役、禁錮、又被拘禁者に対するかかる行為も同様となつている。然るにこの法律によつて処断された官憲の暴行は一体どれほどあつたか。該当すべき事件が全然なかつたとは絶対に言うことができません。旧治安維持法の下では、政府のいかがわしい資料によつて見ましても、七万人以上の人々が不法に逮捕され、殆んど例外なく拷問を受けております。小説家小林多喜二、日本共産党の指導者岩田義道らは、警察の残虐な拷問の結果殺されたのであります。かく申します私も昭和五年に治安維持法に触れまして検挙された、そのとき私は火あぶりに会わされております。大きな火鉢に炭を一儀ほどおこして、その前に坐らして、大の男が私の背中に乗つて、炭火の上に頭を突き出さして、そういう拷問を数回受けました。私はそのために数回気絶をしておるのであります。こういう例はどれだけでもあるのであります。又、單に自由主義者であるという理由で多くの学者は研究の自由を奪われ、学者の生命たる書籍は押収され、学者としての研究活動を絶たれました。これらの事実は枚挙にいとまがありません。宗教も彈圧された。大本教、人の道、天理教等、單に時の支配者の利益に反するとの認定の下に彈圧されたことは、今日では全く明らかとなつております。支配権力の不法な支配の下に国民の自由の権利一切を隷属させる、これこそがこの法の本質であります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)昨日総理は申しました。この破防法反対意見を述べる者が、これこそ扇動者の一人だと言つております。こういう乱暴な言葉を吐く総理を戴く今日の政治が、どういう考えの下にやられているかということを、昨日の総理の言葉を問いただけで私は身震いをするような思いをしたのであります。これがすべてを語つております。この観念から、この破防法などという反動法案、彈圧法案が企まれたということがはつきりするではありませんか。  皆さん、去る五月二日破防法公聽会におきまして、元来余り急進的でないところの作家石川達三氏は次のように述べております。「日本国民も全く可愛そうな国民であります、この長い間に、家を焼かれ、食糧を失い、或いは親や兄弟を失い、高い税金を拂つて、戰後に新しい世の中が出て来るかと思つていたのに、まるで昔と同じような、或いはそれ以上の官僚国家ができて、そうして警察も非常に強くなつて来た。一体これで国民が安心して日本の国の中で生活できるかどうか」、こう述べておるのであります。この嘆息を交えた怒りの言葉を吟味して頂きたいと思います。そこには、日本の今日の追い詰められた、後へ退けない緊迫感が反映しているではありませんか。東大事件、早大事件、愛大事件を見て下さい。一体、学問の自由と学園の自由の権利はどこにあるというのでしよう。メーデー、五月三十日のあの血塗られた大彈圧の計画的殺人を見て下さい。国民の声はこう叫んでおります。「俺たちに死ねと言うのか。俺たちに死ねと言う権利を誰が持つているというのか。議会は一体何をやろうというのだ。」單独講和以来、国会に対する請願陳情の権利すら奪つて、ピストルと鉄兜で固めているではありませんか。皆さん、あの国会の周囲を見て下さい。ここに国民は嘆息の代りに行動を以て立ち上つている真の原因があるのであります。(「わかつたか」「共産党の宣伝だ」と呼ぶ者あり)中山君は、一体、かく国民の基本的諸権利を奪つて、何の保障もなき状態を、何と理解してこの修正案を作つたのか。明確に答弁して頂きたい。  第三に、修正案の中心と見られる第三條第一項第一号の内容であります。このいわゆる破壊活動の定義の修正政府原案に比べて更に拡大しております。これは如何なる理由によるものであるか。政府原案では、教唆、扇動を独立罪として引き出すために、刑法より内乱罪及びその予備、陰謀、幇助等を頭に持つて来ておりますが、この修正では、これに加えて更に外患罪を持つて来て、これの誘致、援助、その未遂及び予備、陰謀を加え、そのあとに真の狙いであるところの底なし拡大の権利制限の諸條項を並べておるのであります。このような條項は如何なる狙いを持つものであるかはすでに明らかであります。誰もが知つているように、外患誘致の犯罪者は明らかに吉田政府そのものであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)なぜなら、昨年九月のサンフランシスコ單独講和の二條約及び日米行政協定は、ソヴイエト、中国両政府がはつきり指摘したように、これら二国に対する新たな戰争宣言であります。又、世界の平和愛好人民の日本に対する要求を完全に蹂躪しているものは現政府そのものであります。この要求は国際法上の明らかな根拠を持つものであります。即ち、ポツダム宣言の真の狙いは、日本の軍国主義、侵略主義の絶滅であります。日本の非軍事化と民主化という二大原則こそ、その中心であります。これらの平和原則に反する日本反動政府政治は明らかに不條理であり、戰争挑発の行為であります。これこそ外患誘致及び外患援助予備、陰謀ではありませんか。    〔拍手)特に明瞭なように、朝鮮における侵略戰争に対し最大の援助を與えているのは日本政府でります。いわゆる特需なるものは朝鮮戰争のための下請そのものではありませんか。「朝鮮における戰乱の真の責任者はアメリカである。」この言葉は東西を問わず今や世界の輿論となつております。六月十九日発ロイター通信はこう伝えております。「アメリカは民主主義の名の下に戰争をしているが、実は巨大な市場を持つアジアに足がかりを欲しているのだ。国連とはアメリカの別名に過ぎない。世界は曾つてない破局に瀕している。」こう述べているのであります。このように、真実を述べているもののみが人々の共感を呼び、支持が與えられるのであります。政府行為に対してはどうすることもできず、国民に対してはあらゆる制限と彈圧を加えている、このような事実に対して如何なる見解を持つものであるか。過去の幾多の侵略戰争は、一体、国民外患誘致と見るのか、それとも政府外患誘致及び予備、陰謀がなかつたと断言し得るのかどうか、明瞭な答弁を求める。第四点、世論を最も刺激した扇動の字句を削除するのではなく、これが字句解釈を法條に規定しているが、これは全く不埓な内容であります。「せん動とは、特定行為を実行させる目的をもつて、文書若しくは図画又は言動により、人に対し、その行為を実行する決意を生ぜしめ又は既に生じている決意を助長させるような勢のある刺激を與えることをいう。」という驚くべきものであります。一体、他人の目的をどうして判断するのか、「既に生じている決意を助長させるような」とは如何なる行為を期待しているのか。私は一つの例を挙げて質問いたしたいと思います。曾つて旧治安維持法時代に数多くの新劇団が解散を命ぜられたことがあります。ところが今日たくさんある新劇の団体の連中がこの破防法ができることによつて非常な不安を持つておる。それは、彼たちのやる新劇の内容によつて再びかの治安維持法下におけるような取扱をされはしないか、生活を脅かされはしないかという心配であります。たびたび国会のほうにも請願に来て緑風会諸君もお会いになつたはずだ。若しもあの人たち、そういう人たちがここに一つの革命を扱つた或いは劇を舞台の上でやる。たくさんのお客さんが集まつて来て見る。労働者もあれば、学生諸君も来る。ところがその革命を扱つた演劇から非常な共感を得る。そうして、その共感を得たのち、劇場から帰る途中に何かこの破防法に引つかかるような行動があつた場合に、それはその劇団の扇動によつてなされたことと、あなたたちは解釈しようとするのかどうか。その点をはつきりしてもらいたい。それでなければ新劇の連中は安閑としておることはできないのであります。諸君はどういうように解釈しようとするのか、若し解釈しようとするならばどこに根拠があつてどういう解釈をしようとするのか、その点はつきりしておいてもらいたいと思います。つまり、こういうことをやろうとするのは人間の頭脳の中に形成される思考方式を取締ろうとするものだ。これは法律ではないと思うのであります。法律そのものを破壊する法律破壊法だと言わなければなりません。(「ノーノー」と呼ぶ者あり)人類の常識と真理に対する野蛮な攻撃法であります。ここに破防法そのものの本質があるのであります。東大事件で明らかになつたように、進歩的な教授に対しては尾行、密行、張込みが行われた。愛大事件では学費に苦しむ学生をスパイに買収しておりまして、このような例はスパイ活動に故になかなか表面に現われ得ないものであります。今や全国民政府のスパイ政策の下に常に監視されているということは常識となつております。(「そうだ」と呼ぶ者あり)この修正を支持する諸君は、一体、政府官憲によるスパイ政治を容認するものであるかどうか。答弁をして頂きたい。破防法は部分的な修正などでどうにもなるものではありません。こういうことは学者がはつきり知つております。又、学者の一致した見解は、この本質を指摘しておればこそ、学者はこの破防法の撤回を主張しておるものと思います。(拍手
  82. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 中山福藏君。    〔中山福藏登壇拍手
  83. 中山福藏

    中山福藏君 須藤君は第二條の「必要な最小限度]という文字をとらえて御質問のようでございますが、この文字は最初「必要且つ相当な限度」という文字が使つてあつたのであります。そこで、私は委員会におきまして、必要ということと相当という文字は観念的に対立するのだ、必要というのは必要の最高限度まで調べることができる、相当という字は必要であつても相当以上の調べはできないという、観念上の対立があるというので、これは「必要な最小限度」という文字にしたのであります。私どもは、仰せの通り基本的人権を尊重する意味におきまして断じてあなた方の後に落ちるものではないと考えておる。(「その通り」と呼ぶ者あり)今日一番不思議な日本における現象は、国家の庇護を受け、国家の中に住みながら、議論だけは超国家的の言動をなしておるという輩の多数あることであります。(「言動とは何だ」と呼ぶ者あり)曾つてロシアのトルストイがそういう議論をやつておるのです。自分はロシアに住みながら議論だけは超国家的の議論をしておつたのであります。それによく似ている、須藤君のおつしやることは。(「何を言つておるか」と呼ぶ者あり)でありますから、(「頭を冷やして来い」と呼ぶ者あり)これはこういう最小限度ということにおいて人権を尊重して、そうして、できるだけ多数の方々基本的人権を侵害しないようにという気持で、これはこういうふうな規定にした次第であります。(「多数とは何か」「国家とは何か」と呼ぶ者あり)憲法を見なさい。  第二点はです、職権濫用というものを実例を挙げて一つ説明をしてみろとおつしやいますが、今日は時間がありませんから、最高裁判所の統計を見においでになつたらよくわかる。そこで、この職権濫用というものは、私は実際これは官憲の非常に怪しからん行為だということはよく知つている。私が先ほど申しましたように、曾つて治安維持法とか、或いは国家総動員法とか、統制に関する規定によつて我々はどのくらい苦労したか。又戰争が敗けた一つの大きな原因はこの統制の結果だと、常に私は叫んでいる人間であります。ですから、あなたのおつしやる通りです。これは職権濫用がある。だから、国会は今や国民を代表して全公務員の選定並びに罷免をすることができるようになつている。これを若しあなた方がやらないならば、あなた方自身国会議員としての資格はないということになる。(「何を言うか」と呼ぶ者あり)  第三番目に、外患という文字について、これはですね、特に挿入して怪しからんというお言葉でありまするが、今日外国と通謀して受入態勢を作るというような疑いがある行動が頻々として起つているということは、国民の一員でありまする須藤君がよく御承知の通りと思う。私は伊藤君に対して、東南アジアのエジプト並びにイランの実例を挙げて伊藤君にお答え申上げましたが、あの実例を想起して頂いて、どうかそう私をいじめないように一つお願いしたい。(「奥さんからお聞きになつたのですか」と呼ぶ者あり)  第四番目には、扇動の内容を規定したから怪しからんとおつしやいますが、扇動という文字を法律に使う以上は、その内容、実質というものを国民一般に知らしめなければ、国民はどこに基準を求めていいかわからんのです。今までの法律は多くそういうのがなかつた。だから、あいまい模糊の中に検束を受けたということは、皆さん御承知の通りであります。そういう憂いなからしめるためにこの措置とつたということを答弁申上げまして降壇いたします。(拍手
  84. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 再質問いたします。時間がありますから。
  85. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 再質問を許します。須藤五郎君。    〔須藤五郎君登壇拍手
  86. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 中山君は年がいもなく興奮しちやいけないと思う。こういう問題は冷靜に答弁すべきです。(「それだけ若いんだよ」と呼ぶ者あり、笑声、拍手)若いと聞いては恐れ入るが、若ければ若者の心を以て答弁してもらいたい。若いと言つても、まるで、もう前世紀の人間のような感覚でこういう法案を考えてもらつちや困る。自分で若いと言つたところで感覚は前世紀の人間で、遺物に過ぎない。そういう感覚を以て今日こういう新鮮な時代の法律を作るというのがそもそも間違いなんだな。私が質問したいのは、前に私は自分の例を挙げた、そうどう拷問を受けたことすら裁判所で幾ら訴えたところが裁判所自体で取上げない。今日の裁判所は昔の裁判所とどれだけの違いがあるか。今日こういう馬鹿げた欺瞞的な條項を設けてこの法案をごまかそうというところに、あなたたちの手前みそがあるということを申上げるのです。  それから、なおもう一つ聞きたいが、私が言つた新劇に対する解釈、あらゆる芸術に対する解釈を、ここではつきり申述べてもらいたい。(「寺尾君貸してやれ、それで頭を冷せ」「答弁の要なし」「興奮させるな」と呼ぶ者あり)
  87. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 中山福藏君。    〔中山福藏登壇拍手
  88. 中山福藏

    中山福藏君 どうぞ一つよろしく。この須藤君のおつしやることは、これはあなたの立場から議論をしておられる。(「その通り」「君は自分の立場じやないか」と呼ぶ者あり)国民全体が普遍的な常識というものを以て批判するときには私のような議論になる。(「全体主義者」「うぬぼれないで」と呼ぶ者あり)一つ例を挙げて申しますと、太平洋を航海している人は、太陽というものは水平線から出て水平線に沈んで行くと、こう見る。長野県の山国に住んでいる者は、大陽は山から出て山に沈むと、こう考える。あなたは山にただ住んで、そこだけの議論をしておられるから、そういう御議論が出ると答えたいと思う。  第二の問題は、これは新劇の問題でありまするが、その都度故意に扇動した場合においては犯罪が成立するということは止むを得ないと思う。(「誰が判定するのだ」と呼ぶ者あり)併しながら、故意がなくて、ただ一般の演劇である場合は、断じてそういうことはないと、かように私は考える次第であります。
  89. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 須藤五郎君、再度の再質問を許します。須藤五郎君。    〔須藤五郎君登壇拍手
  90. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私は芸術家として申上げたい。すべての芸術は扇動であります。芸術の面から扇動の面を除けば芸術は死物であります。それを芸術は扇動でなやという断定をしている人はおかしいのだ。それは、皆さんが床の間にえたいのわからん墨絵かなんかをかけて、それが芸術だと思つている。それくらいの頭でしかあなたたちは解釈できない、芸術に対して。ところが、本当の生きた芸術というものはそんなものではない。芸術家がみずからの創作を通じて、みずからのその考えていることを見る人に伝える。これが芸術家の本心であります。皆さん、それが扇動に入らないと言うか。新劇はすべてそういう面から言えば扇動であります。だから、僕はここに事新らしく質問しているわけであります。皆さん、どうですか。芸術が扇動でないということをあなたが証明できるのなら、ここでして下さい。(「答えろ」「精神鑑定を要するようなことを言わないで芸術に対して正しい解釈を示せ」と呼ぶ者あり)
  91. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 中山福藏君。    〔中山福藏登壇拍手
  92. 中山福藏

    中山福藏君 芸術が扇動であるかどうかということにつきましては、その都度その場合を勘案して処理しなければならんと、かように考えている次第であります。(「馬鹿な答弁だ」「低級極まる答弁だ」「委員会へ持つて行かなければ駄目だ、こんな修正案は」と呼ぶ者あり)
  93. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 吉田法晴君。    〔吉田法晴君登壇拍手
  94. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 提案者に御質問を申上げるのでありますが、質問に入ります前に一言尋ねておきたいと思うのでありますが、それは、この破壊活動防止法が、民主主義、特にその基本的原則であります言論、集会、出版、結社の自由に対して大きな制限をなす法律濫用の危險性があるのではなくして、(「元気がないぞ」と呼ぶ者あり)必然性があるのだとして、世論が国家に対して大きな意思表示をいたしました。特にいわゆる学者或いは文化人の中から曾つてない陳情なり或いは法務委員会に対する異例の懇談会等もございました。(「誰が扇動したのか、やらしたのは誰だ」と呼ぶ者あり)その出席者或いは表意者の中に、單に或いは文筆に従事するとか或いは学問に従事するというだけでなくして、專門に刑法を学び、或いは憲法、行政法をおやりになつたかたも多勢おられたことは、御承知の通りであります。この世論をどこまで取入れられて修正をなされたかという点でございます。この点について、公聽会の、或いは牧野先生の扇動に関する意見を取入れたと、或いは滝川先生の意見を取入れたというお話でありましたけれども、滝川幸辰先生の公述の中心は、何と言つても、この公安審査委員会の決定をそのまま効力を発生しないで、一審的なものにするという点にあつたことは、中山さんも御承知のところであると思います。そういう基本的な滝川幸辰先生の御意見というものは、これは修正案には取入れらなかつたと思うのであります。それぞれの意見をここで詳しく申述べる時間はございませんし、中山或いは岡部両氏も御存じであると思います。このことは或いはお手許にも参つておりますけれども、破壊活動防止法案に関する意見書にこれは含まれております。その中で、或いは刑罰法規と行政法規とを別にせよ、或いは破壊活動を行なつたという認定は裁判所の判決によるべきである、或いはその他たくさんの本質的な意見がございますが、いずれもこの破壊活動防止法の本質について心配をせられ、否決と撤回とを要望せられるけれども、併しどうしてもそれが行かないというならば、せめてこれだけは是非願いたいということで、或いは三條の口の中から、或いは教唆を削除することも、或いは扇動を削除することも、或いは二号リ、ヌを削除することも、その他御承知のような意見が出て参つております。この意見は、私が申上げるまでもなく、これは国会に出されたものでありますけれども、その国会の中でも、参議院、特に参議院の中において実際的にこの法案運命の鍵を握られる緑風会に対して主として出されたものであるということは、これは何人も疑うことのできないところであります。これらの意見に対して、或いは公聽会の公述について、ここで繰返しませんけれども、どこまで取入れられ、そうしてどれがこの修正案なつたかという点については、一つ重ねて御答弁を詳細に頂きたいと思うのであります。それは、国民国会に寄せる期待、参議院に寄せます期待に応える具体的な答えであると考考えますので、特に繰返して恐縮でありますけれども御答弁を願いたいと思うのであります。  なお、中山、岡部両氏の提案責任で、三十二名の署名を取られておりますけれども、この皆さんの中にも種々御意見があること、或いは中山さん自身に原案についての強い修正の意見があつたことは承知をいたしております。それらが先ほどの法務総裁の答弁では政府原案と違わないと言われるところに至つた経過について、或いは問題に残りました諸点については、これは明らかに願わなければならないところだと考えるのであります。  実質的な質問に入りますが、提案の修正案の第一点は第二條であります。質疑を通じまして問題になりました基本的人権公共の福祉、ここでは公共の安全という言葉が使つてありますが、この問題点が、第二條で、その弊害、法の運用についての注意規定と申しますか、訓示規定を出されたということは、少くとも問題の所在を知つておられるということだけは証明しておると考えます。ところが、この基本的人権公共の福祉という問題につきましては、これを論議を重ねますならば、與えられた時間では到底できませんけれども、併し問題が本質的であり、民主主義的な原則を展開するかどうか、或いは憲法を実質的にここで踏みにじるかどうか、憲法の改正でなくして、憲法の変革を行うかどうか、或いは警察についての基本原則を展開するかどうかという重大な問題でございますので、重ねてお尋ねをいたしたいと考えるのでございます。公共の安全とは、第一、何であるか、これを一つお尋ねをいたしたいのであります。(「法学一年生」と呼ぶ者あり)そこで、公共の福祉という言葉は、憲法に使われております公共の福祉、或いは公共の安全でこれが摺り代えられようといたしておりますけれども、それが絶対的なものであり、公共の福祉のためには基本的人権も容易に制限することができるのだということになりますならば、これは曾つてのナチス法理或はフアシズムの法理と同様に、全体主義的なこれは議論となります。この憲法の一つの表現と申しますか、解釈の上の有力な材料として、私ども英文で書かれた憲法を見ますと、パブリツク・ウエルフエアと書かれておりますが、パブリツク・ウエルフエアというこの言葉を日本語で現わします場合に、公共の福祉という言葉で現わすことが果して妥当なりや否やということは問題だと思います。ハプリツクというのは、私が言うまでもございませんけれども、ラテン語のボピユルスから出ております。ポピユルスとビープルとこれは同じ意味であることは私が今更申上げるまでもない。公共という概念を、国民或いは民衆を離れて、民衆なり国民の上に公共性、公益性と考えますならば、これはナチス法理に相成つて参ります。(「フアシストだ、フアシストの理論だ」と呼ぶ者あり)主権者である国民の総意或いはその利益の総合を、これを国と考える。或いはその福祉がこれら主権者の国民の福祉そのものと考えるところに民主主義があるのであつて(「そうだ」と呼ぶ者あり)その人民を、国民を離れて、別に公共性があり或いは公共の福祉があると考えられますならば、これはフアツシヨ法理の第一歩に相成るかと考えるのであります。これは、公共の福祉は、その意義においては、これは国民の福祉、幸福、国民みんなの幸福の限度内において、或いは個々の国民の権利が制限せられることがあると考えられるのが、公共の福祉の憲法上の概念だと思うのでありますが、ここに使われております公共の安全は公共の福祉ではございません。主権者である国民の幸稲でなくして、これは安全……言葉は公共という言葉が使われておりますけれども、公共の安全という言葉が使われるときに、それは秩序という概念に変つております。先ほど中山さんは、国家の庇護ということを言われましたけれども、その国家は、決して国民の全部であります国家ではないように私は承わつたのであります。或いは提案理由の説明の中でも、或いは非国民態度であるとか、或いは不逞の集団であるとかいう、こういう言葉が使われました。或いは国家の基本秩序或いは国家機構、こういう言葉が使われておりますから、この公共の安全は、或いは国家の治安或いは国家機構の現実性と申しますか、現在性と申しますか、こういうものが考えられておると思いますけれども、今まで使われて来た言葉を以て言いますならば、これは秩序だと思うのであります。警察秩序だと考えるのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)基本的人権が、秩序維持のために、警察目的のために制限せられるということは、これは憲法の民主主義の予想しなかつたところであります。(「全くの反対だ」と呼ぶ者あり)、基本的人権という言葉が国民主権の概念から出て来たことは、これは私が申上げるまでもないと思います。或いは自然権、自然法の思想に繋がつておることも、これも御否定にならんと思います。提案理由の説明の中に独立宣言ということが言われておりましたところから見ましても、基本的人権、この考え方が国民主権説に或いはよつて参りました自然権、自然法の理論と繁がつておることは、これは御否定にならないと思います。  第三に、前の憲法、旧憲法の特質、それと新憲法の相違というものは、私が申上げるまでもございませんけれども、例えばこの国民の権利の問題に関連いたしましては、旧憲法では、臣民の権利義務として、初めから法律の範囲内で、或いは法律規定するところによると、こういう前提が付いておつて、そして、その法律の範囲内或いは法律の命ずるところによりということで次々に奪われてしまつて、戰争中権利が殆んどなくなつてしまつたということは、これは中山さんもみずから御体験になつたところであります。その旧憲法の臣民の権利義務が新憲法の基本的人権に変りました考えのこの違いは、これは一応頭の中では御諒知になつておることだと思うのでありますが、提案理由の中に説明せられました憲法第十一條だけでなしに、特に新憲法が九十七條において「人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試練に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。」九十八條に、「この憲法は、国の最高法規であつて、その條規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。」と謳つておる点、又前文においてこの国民主権説と代議政体をはつきり謳つておる、九十八條と同じような、この原則に反する憲法、法令、詔勅を排除すると謳つておることは、御承知の通りであります。若しこの破防法が、或いは修正をせられましたけれども、基本的人権を警察目的のために制限することができるというような法律として作られますならば、それは憲法の精神の国民主権或いは代議政治の基本原則に反する法律であつて、それは憲法の排除するところであり、或いは効力を有しないと宣言せられるものではないかと私どもは考えるのでありますが、この点について提案者の説明を願いたいのであります。  なお、憲法についてアメリカの独立宣言も引かれましたが、或いは同じ精神がフランス憲法に或いは人権宣言に現われていることは、私の申上げる必要のないところであり、これらの近代憲法が人民に対する国家権力の自己制限の成文的成果であるということも御承知のところであります。そこで、明治維新において先輩が苦心と犠牲を拂つて来、大正時代に普選或いは護憲運動を通じて努力して来、そうして、その後、旧憲法の民主主義の不徹底の故に奪われて参りました基本的人権国民主権の僅かな芽が、戰争中にすつかり奪われてしまつて、戰禍と敗戰の大きな犠牲の上にこの新憲法の原則が打ち立てられた。それは憲法を以ても、法律を以ても、如何なるものを以ても奪うことのできない永久の権利として謳つた。それを、臨時的な、これは中山さんもお認めになりましたが、臨時的なかかる法律でもつて、治安維持という名目で、内乱の幻想と亡霊、このことを大内先生は公述でも強調せられましたけれども、それによつて憲法の基本原則を変革し得ないということは、これは提案者もお認めになるところだと思うのであります。平和主義の放棄が憲法のこれは改正でなくして変革であると同じように、民主主義の放棄もこれは憲法の修正改正ではなくして憲法の変革であります。根本的な破壊であります。これによつて、警察制度につきましても、折角民主主義的な、或いは地方分権的な警察を作つたのに、公共の安全という理由で特審局が公安調査庁に拡大し、そうして、治安警察、特高警察というものが復活をいたしますならば、警察法等の改正と共に、警察の制度が基本的に転回をする、旧憲法時代の警察制度に還つてしまうということは、これは提案者といえども御否定にならぬと思うのであります。憲法の基本原則と警察制度との関連については、私が申上げるまでもございませんが、こういう治安維持という警察目的のために、或いは臨時的な立法によつて憲法の原則が変え得るか、壊わしてしまうことができるか、変革することができるか、警察制度の基本的な転回ができるかどうか伺いたいのであります。  なお、憲法違反法律は、これは濫用の危險性があるのではなくして必然性があるということを田畑忍博士は強調いたしました。特に皆さんに意見を伝えるために二度も出て来て意見を述べに参りました。なお、ハンストまでも学長がみずからやつたことも御承知の通りでありますが、この憲法違反の條文について如何に考えられたか。時間がございませんから詳しく議論ができませんけれども、これは法案の第三條、修正にまると第四條、或いは憲法の條章から言いますならば、十七條の公務員の不法行為の損害賠償請求権、或いは十九條の思想、良心の自由、二十一條の集会、結社、言論、出版、表現の自由、それから二十一條の検閲制度、或いは二十三條の学問の自由、二十八條の団結権、これらの点について如何になるかということを御答弁を願いたいのであります。  なお、この細かい点についてはあとで再質問をいたしますけれども、或いは刑罰法規が漠然として捉えがたいという場合には、これは罪刑法定主義に反し、違憲であるということは、ひとりアメリカの問題だけではないと思います。これは一九二六年のコナリー事件を引いて材料にいたしますけれども、オクラホマにおいて、州及び州の請負事業の請負人は、労働者に対して、現地の同種の労働に従事する労務者が通常携われている賃金を與えられねばならぬ、これに反すると五百ドル以下の罰金に処せられる、こういう規定があり、それについて争いになつたのでありますが、同種の労務に従事する労務者が通常拂われている賃金を與えられねばならんと、こういう普通のインテレクチユアルな人が精密に意見が一致せず、このような漠然たる刑罰規定を設けることは、違憲であるという判決であります。刑罰法規は何を処罰するかが国民に対して明白でなければならん。国民に法規の解釈を一方的に強要して、国民解釈と行政庁の解釈が違つた場合に逮捕され或いは起訴されるというような危險を負担させることはできないというのがその趣旨でありますが、これは一つの例でありますけれども、憲法違反問題の判断の材料として提供し、或いは集会の禁止については、それではこの法律を共産党に対する法律と謳つたらどうかというときに、それは、憲法に謳う集会、集団行動の自由を制限するものだから、それはできないという意味の、これは暗黙の答弁があつた。そのまあ裏を行つて、こういう法律によつて団体の規制解散をやる、その結果心配されるような憲法違反の結果が生ずるということは、これは中山さんもお認めになると思うのでありますが、こういう結社の制限禁止と憲法との関係は、この法律によつてどうなるのか。或いは検閲制度につきましては、これもアメリカの例を引きますけれども、一九三一年のレア・ケースによれば、停刊を許す法律は違憲立法であるという判決がありまするが、或いは原案の第四條、第六條、これで言いますというと、修正案によると第五條と第七條になると思いますけれども、機関紙を停刊する、そうしてその次に出て来る新聞に対してどうするかということは、機関紙の同一性として争われました。その場合に、検閲制度が復活するということを事実を以て質疑をして参りました。特にあとで出て参りますけれども、この修正案によつて無線通信又は有線放送についてこの法律を適用しようということでありますが、それはどうしてそれがこの法律に違反するかどうかということを判定せられるのでありますか。その内容を見ると言いますか、それば聞く以外にないでしよう。検閲制度の復活はこれは必然でありますが、そういう検閲制度を禁止しました憲法の條章とこの法律とを如何に考えられるか。これは一、二の例を挙げたのでありますけれども、具体的に御答弁を願いたいと思うのであります。  なお、他に質問がございますけれども、一応この公共の安全と基本的人権、憲法の問題についての御答弁を願つて、そのあとにいたしたいと思います。(拍手
  95. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 中山福藏君。    〔中山福藏登壇拍手
  96. 中山福藏

    中山福藏君 公共の安全という問題についての御質問でございました。大体これは先ほど申しましたアメリカの人権宣告のいわゆるあの天賦人権という項目のところに、生命、自由、幸福を追求する権利というものが書かれてありますが、恐らくこれはジヨン・ロツクの提唱いたしました人民主権説に基いた考え方で、今日、日本の憲法にこれが採択されておるように私は考えておるのであります。従つて、この基本的人権は、アメリカの人権宣言には、政府がこれを確認してその幸福と利益を擁護しなければならんと、こう書いてあります。ですから、今日政府が憲法の上において人民の利益と幸福を安全に保護するように建前がなつておるということは、吉田さん御承知の通りであります。従つて、この自由、生命、幸福を追求する権利が侵害されないようにするということが公共の安全性だと私は考えておるのであります。御承知の通りに、ヨーロツパの中世紀におけるところの自由大憲章だとか、人身保護律というような考え方、或いはマーチン・ルーテルだとか、フランスのカルヴインの思想を酌んで、あなたのおつしやる通り自然法の考え方がやはりこの日本の憲法に影響しておるということは、私はあなたの言われる通りに認めるのであります。従つて只今申上げたような立場において、そういう意味合いに公共の安全というものを考えたらどうか。従つて、憲法第十二條におきまして濫用というものを禁止しておる、公共の福祉のために利用する責任を負うということが書かれておりまする以上は、その基本的人権濫用し、或いはその公共の福祉に利用する責任を果さないというようなことがなきにしもあらずと私は考えるのであります。従つて、これはアメリカの人権宣言の趣旨に基きましても、この英米法から酌み取つた日本憲法の精神に基きましても、やはり只今私が申上げましたように、生命、自由或いは幸福を追求する権利を立派に擁護しておる、これが公共の安全と、こういうことになるのではないかと、実は私はあなたほどの学者ではありませんからわかりませんが、そういうふうに考えております。  それから第二点で、この憲法の、例えば十九條、思想自由に関する権利はこれを擁護するとか、或いは二十三條の学問の自由はこれを擁護するとか、或いは二十一條の言論、集会、結社、出版、表現の自由というものはこれを保障するとか、いろいろな規定がございますが、これは私はこの破壊活動防止法案が設けられても、只今申しましたような第一の問いに対する答えといたしまして、いわゆる濫用だとか、その責任を果さないというような連中がうようよする場合におきましては、これを擁護するということはやはり憲法の精神に基いて少しも基本的人権を害するものではないと、私はかように考えておるのであります。大体この二点に帰したように私は考えるのでつございますが、吉田さん如何でございますか。また足らぬところはこの次にいたします。(拍手
  97. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 吉田法晴君。    〔吉田法晴君登壇拍手
  98. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 今の御答弁で、公共の安全と公共の福祉が摺り替えられたようであります。その点を尋ねておつたのでありますけれども、治安目的を以て憲法の公共の福祉と摺り替えられるということになりますというと、この修正案のこれは重大な性格を決定いたします。さようであるかどうか、更に御答弁を願いたい。  それから、落ちました点は、輿論、特に学者、專門家の意見をどこまで取入れられたか。これは答弁が落ちておりますので、あとでお願いをいたします。(「何遍も言つたじやないか、聞かなかつたのか」と呼ぶ者あり)  それから第二は、修正の重要な点であります外患の点であります。外患の点につきましては、(「それも聞いたよ」と呼ぶ者あり)ほかにも御質問がございましたけれども、なお落ちております点を具体的に指示して答弁を願いたいと思うのであります。それは頭が惡いかたにはおわかりにならないかもわかりませんが、(笑声)外患の罪をこういうこの條文に入れて、どういう場合が予想せられるか、そうして問題を法律的に考えてどうなるかということを考慮しながら、これは立案せられたのであるかどうか。端的に申しますけれども、或いは專門員、或いは法制局においても、これはただ提案者において挿入せよということで入れたけれども、その実益がわからないというのであります。手許にありました小野氏の刑法各論を読んでみますというと、こういうことが書いてあります。「日本国の一部が外国の軍隊によつて占領された場合に、その占領下において行われた行為については、本條の適用につき道義的責任の観点から困難な問題を生ずるであろうことが想像される」と書いてございます。言い換えますというと、これは、講和前、或いは現在もそうでありますけれども、性質は違つておりますが、外国の軍隊が日本に駐留をする、占領をされておる。そういう場合に、この外患罪の正面解釈から行きますならば、これに協力をするという場合には、外患罪の適用が問題になる。併しながら、これは適用について実際に道義的責任の観点から困難な問題が生ずるであろうというだけのことと、先ほど議論の中に、これは弥次の形で出ておりましたけれども、占領中の、講和前の占領中、或いは現在、未だ曾つてない外国軍隊の国内の駐留という問題が起つておりますからして、法文の正面から行きますならば、今、駐留軍或いは占領軍に便宜を供與いたしました政府なり何なりの行動は、これは本條の問題であるということは、これは法律的には明らかだと思うのであります。ただ、それに至りますところの、ここに言う小野さんのいわゆる道義的責任という問題が起つて参りましよう。曾つて外患罪が実際に罪に問われたような例は、これは時間がございませんので正式に書類を取寄せて私ども見ることはできませんけれども、昭和十二年に米国大使館の日本人の飜訳官が、米国大使館の上司の命によつて日本の国力を表現するような統計文書を渡した。而もこれは未遂であつた。これが外患罪に問われたということであります。当時は勿論旧刑法で、「外国二通謀シテ、帝国二対シ戰端ヲ開カシメ又ハ敵国二與シテ帝国二抗敵シタル者」という表現がなされておつたのでありますが、この米国大使館の日本人翻訳官が、恐らくこれは公刊せられた資料その他であろうかと思いますが、統計文書を渡したことが、或いは外国に通謀して戰端を開かしめる行為であつたかどうか、或いは敵国に與して帝国に抗敵したものであるかどうか、これは甚だ今日問題であることは、これは事態を聞かれる皆さんとして当然起される疑問でありますが、若しこの外患罪が、たつた一つ適用せられた場合のように、或いはこの資料を外国に提供するというようなことが、当時の軍機漏洩だとか、或いは今の刑事特別法の問題ではなくして、それが日本精神の欠除であるとか、或いは忠誠義務の欠除であるとか、こういう当時のこの空気、或いは観念で外患罪に問われるといたしますならば、これは外患罪が破壊活動防止法を通じて適用せられる場合には極めて危險であることは、これは何人も否定することはできないと思います。先ほど中山議員は、受入態勢ができておる場合という話でございましたけれども、或いはこれはコミンフオルムの批判後、国内において武力的な行動があるならば、或いは解放軍が来るかも知れんという点を指摘されたのかも知れませんが、もつとその辺を一つ具体的に御説明願いたいと思うのでありますが、来るかも知らん、来ないかも知らん、これは未必の故意にかかつてこれを適用するかどうかということになると思いますけれども、私どもが素直にこの刑法八十一條、二條を読みます場合に、日本の国内において適用せられるのは、今の吉田政府の行動が、政権が変りました場合にこの外患罪の罪によつて問われることを考える以外にはないとしか考えられない。(拍手)なお、これは内乱と違つて予備陰謀の教唆、或いはその他まで処罰をするということに修正案がなつておりますが、そういうこの條文の適用が、実際にどういうことになつた場合に適用せられるのか、どういうことになるのか、具体的にお示しを頂きたいと思うのであります。(「明確に一つ説明して下さい」と呼ぶ者あり)先ほど、これは犬審院の判例ではありませんが、地方裁判所の裁判の例によつて、事件を、実例を引き、或いは日本の再建の状態からして、如何なる場合に適用があるのか。これは伊藤委員から指摘せられましたように、実際には実益はないと多くの法律関係者が考えておるのに、実益があると考えられるのでありますから、具体的に御説明を頂く以外にないと考えます。(「そうだ」と呼ぶ者あり)  それから、先ほど質問をいたしましたけれども答弁がございませんでしたけれども、有線放送或いは無線通信という、これは無線放送というものは入つておりません。しまいに通信という言葉が入つておりますので、有線放送、無線通信というのが具体的にどういうのを指されるのかも明らかでありませんけれども、併しこの條文の適用が如何なる場合に起るのか。或いはどういう証拠によつてこれは調査もし、或いは証拠によつて争うというのでありますか。証拠によつて適用せらるるのか。或いは聞いたと言つても、その聞いたのは耳には記録に残つておりません。或いは原稿によるのか。或いは録音によるのか。そうすると放送或いは通信の内容が、これは見或いは聞くということになりますが、それは検閲ではありませんかという点については、これは答弁があつておりません。  それから調査と審理の関係については、質問がすでにあつておりますから、重複を避けまして、修正は、「審理官」を「受命職員」と改めて、「審理」を「弁明の聽取」として、公安審査委員会の審査に重点を置くかのようでありますけれども、聽取をやめず、或いは十六條を削除せずして、どうして公安審査委員会に中心が移るか。全くただ「審理官」を「受命職員」に直し、「審理を「弁明の聽取」と言葉を直しただけで、実体はなんにも変つておらん。これは結果においてごまかしでしかないと考えられますけれども。如何であるか、答弁を願いたい。  それから、原案においては、内乱の場合につきましては、これは、その予備、陰謀或いは教唆、扇動等についても禁錮であります。今度は修正されて、内乱、外患一緒になつておりますが、全部の罰則について懲役刑が加えられております。これらの犯罪の性格が、或いは政治犯である、或いは確信犯であるということは間違いございませんが、それに懲役刑を入れた理由を承わりたいと思います。  更に、権利の濫用について、或いは法の濫用について二條を附加えられたけれども、その附加えられたものも、警察の目的を公共の福祉に摺り換えた以外に、或いは普通公務員の職権濫用罪に一年を長期に変えただけ。ところが、この公務員の職権濫用罪というのは、刑罰規定にはございますけれども、実際にどの程度に適用せられたかということは、それは万人の知るところであります。先ほど一松議員が指摘せられましたように、実際にこの職権濫用罪が運用されることは極めて稀であり、又、稀であるということはこれは何人も否定できないと思うのであります。ラスキが言うごとく、権力の濫用が間髪を入れず確実に処罰されるという法的な措置が講ぜられた場合に、初めてこれは権力の濫用が防止せられる措置が講ぜられたと思うのであります。原案八條修正案の十九條或いは二十一條の場合に権利の濫用があつたとみなす旨の規定を作るとか、或いはイギリスのコンモン・ローにおいて、警察官が群衆に怪我を與えた場合には、警察官が必要以上の力を行使したのでないと警察官自身が証明しない限り処罰されるといつたような法制が確立せられない限り、権力の濫用は防止は困難であります。或いは国家賠償法についても、今までの解釈説明以上に出ませんけれども、或いはこれもせめて短期内に処理し、或いは仮執行をするといつたような具体的な措置が講ぜられますならば、これは権力濫用について防止の努力がなされたということを私ども認めざるを得ませんけれども、職権濫用罪の規定だけでは、これは気休めであり、ごまかしであると言わざるを得ないのでありますが、その点について御答弁を願いたいと思うのであります。なお、更に詳細な点についてお尋ねをいたしたいのでありますが、以上、外患その他の点について重ねて御答弁をお願いをいたします。詳細な御答弁、納得行く答弁がない限り、修正案が改善でなくして改惡であるということは、これは止むを得ない結論ではないかと考えるのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)一つの詳細の御答弁をお願いいたします。
  99. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 中山福藏君。    〔中山福藏登壇拍手
  100. 中山福藏

    中山福藏君 第一点の輿論を酌み入れたかどうかという点でございますが、これは伊藤さんにすでにお答え申しておるのであります。公述人の意見だとか、刑法学者の意見に従いまして、これをできるだけ大幅に取入れた、(「どこに」と呼ぶ者あり)こういうことを申上げておいたのです。(「それがどこに出ておる」と呼ぶ者あり)この修正案については重要な点は四点しかない。そのうちに殆んど重要な部分を占めておるということは、お読み下さればわかります。  それから有線放送、無線通信という問題でありますが、これは先ほど伊藤さんにこの点もお答え申しておいたのであります。従いまして、如何なる場合において、その送信或いは受信が破壊活動防止法案に抵触するかという問題でありまするが、これは各個々の場合についてこれを検討しなければ、只今原則的にこうだということを私が申上げることは如何かと実は考えるのであります。すべて犯罪というものは、その態様というものは万様でありまして、従つて、その故意、過失の点につきましても、十分調査官としてはこれを検討して、然る後に処分すべき立場に立たなければならんと、かように考えておりまするから、これはその都度これをきめるよりほかないであろうと考えるのであります。第三点でございまするが、権利の濫用についての縷々詳しいところの意見をお述べ下すつた次第であります。この点につきましては、私どもは、この修正案が万一この議会を通過するということになりますれば、これは当局と嚴談いたしまして、できるだけ吉田さんの仰せを酌み入れて、(「吉田茂さんだろう」と呼ぶ者あり)訓示的な書類をこれに付けて配付するように頼んでみたいと、こう考えておるのであります。これはいい意見を承わつたということを感謝いたします。(「吉田法晴だ」「ところが彼は吉田茂を言つておる、まぎらわしいですよ」「つまらんことを言うな」「どの吉田ですか」と呼ぶ者あり)
  101. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 静粛に願います。
  102. 中山福藏

    中山福藏君(続) 吉田法晴さんの意見であります。いずれ又将来は吉田さんも偉いかたになられるでありましようが、私の言いますのは、吉田議員でありますから、さように御承知願います。  それから公安審査委員会の職権についての御意見でございましたが、これは質問と言うよりは、むしろ御意見だつたと私は考えております。この公安調査庁の職務行為と、公安審査委員会における、職務行為は、その間おのずから差別があるのでありまするが、御承知の通りに、私どもこの修正案におきましては、公安調査庁だけにこの取扱を任しておいては、独善的な行為をやられては困る。覆審的にもう一回、できるだけ証拠書類その他の物件について、或いは公務所或いは事務所その他の場所に乗り込んで、みずからこれを判定する資料を獲得しなければならん、こういうような意味合いにおいて特にこの規定を追加したのであります。どうか一つそういう点は御同情を賜わつて御同意を願いたい。(拍手)  それから罰則についてどういうわけで懲役刑を設けたかという最後の御質問でございます。これは元来政治犯その他の罪につきましては、従来は多く禁錮刑という刑を以てこれに当つておつたのでありますが、私どもは現在の世相に鑑みまして、これは單に禁錮刑だけではいけない、やはり懲役刑というものをこれに附加して、そうしてこの規定の万全を図らなければならん、かようになつた次第であります。(「外患誘致はどうした」と呼ぶ者あり、拍手)  どうも有難う。外患誘致についてもう一点申上げておきます。これは伊藤さんは、外患というものが実現した場合においては、すでに国家が占領せられておるのであるから、武力侵略、援助なんかないじやないかとおつしやいますけれども、この占領というものは部分的な占領と全部的な占領の二つの場合があり、又或いは外国としめし合わして飛行機を飛ばせることもできるのであります。いろいろな場合がそこに現われて来るのであります。外国にしめし合わしてその武力を行使せしむる、こういうようなことは常識においてあり得るということは判断できるのであります。どうかこの点、御留意を賜わりたいのであります。(拍手
  103. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 吉田法晴君。    〔吉田法晴君登壇拍手
  104. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 残念ながらいずれの答弁についても私の質問に十分お答えが願えなかつた。(「明快なる答弁だ」と呼ぶ者あり)このことは、こういう形においては、これは止むを得ないかと思いますけれども、併しながら質問をした要点は、これは文書でも差上げております。質問を聞かれてもわかると思うのであります。例えば有線無線の通信放送をどういう形で捉えるか、或いは録音によるのか、原稿によるのか、聞いたのではこれは証拠にならないか、どういう形で法を適用するのか、検閲との関係と異なつた観点から、或いは発送をした時か着いた時かという、こういう伊藤議員についての答弁を以て大体仰せられましても、それは答弁になりません。外患の問題と現在の駐留或いは占領の場合、それから判例を引いてまで、こういう場合には如何に判断せられのか、立法者としてのその所信を伺つたところが、それには答弁がない。私が申上げるまでもなく、法律が適用をせられます場合に、或いは裁判においても、国会における審議質問、答弁が、有罪無罪の判決を決定する大きな鍵になります。今のような御答弁で、或いは今までのような御答弁で、私どもは国民説明すべき術がございません。かかる意味において、答弁は、これは答弁の時間の制限はないと思いますから、十分な責任をお果しを願いたいと思うのであります。それなくして国会の責任はこれはございません。  なお、これは今まで答弁がございませんでしたが、従来、政府からなされて参りました朝憲と天皇制の問題、或いは平和主義の問題、平和主義と政治上の主義施策に関する所見、或いは法の濫用の危險性と、汽車、電車往来危險罪と国鉄の争議の問題、公務執行妨害、職務強要とこの法律との関係、特に大衆行動との関係、或いはこの法律と治安維持法との差は、述べれば限りがございませんけれども、或いは団体の範囲についても、治安維持法は結社を取締ろうとしたし、この法律による団体は、どんなグループでもどんな政党でも、新聞でも雑誌でも、宗教団体でも、一つの教会すらもこれは対象とすることができるのでありますが、これらの点について政府の答弁……今までの経緯以上に何ら提案者において考慮せられなかつたかどうか。或いは特審局或いは警察の非合法、特高活動の存在はよく御承知のところでありますが、この弊害を除却すべき点について提案者としては何もお考えにならなかつたかどうか。以上の問題についてこの法案関連する問題の提案者の明快な意思を承わりたい。  最後に、この修正案が若し通るということになりますならば、これは中山、岡部両氏だけでなしに、これは或いは三十二名の署名をしておられる方々だけでなしに、緑風会案が参議院を通つたということにこれは相成ります。事実上この修正案について全責任をお持ちになるかどうか。この修正案は、これは外患を加え、或いは有線、無線の放送を加え、或いは扇動について搾つたと言われるけれども、むしろ附加わつた所は、有線、無線の放送通信についても明らかであります。改善でなくして改惡だと申上げましたけれども、これらの点について全責任をお負いになるかどうか。最後にお伺いをいたします。(拍手
  105. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 中山福藏君。    〔中山藏福君登壇拍手
  106. 中山福藏

    中山福藏君 お答えいたします。有線放送、或いは無線通信というような問題につきましてのお尋ねでございましたけれども、これは先ほど私が答弁し落したのであります。これは御承知の通りに、放送法或いは電波法、或いは有線放送業務の規正に関する法律上の送信というものについての法律が三つ出ているのでありまして、これを御覧賜われば、逐一、その場合、目的、それから事項というものが限定されている次第であります。従つて、このレコード、或いは送信或いは受信、或いは公園、広場、道路というような所において有線無線の通信設備を通じて放送する。そういうような場合においては、レコードに残るとか、聞いた人がこれを知つているとか、通行人がこれを立ち聞きしたというような按配で、これらの資料に基きまして、犯罪のいわゆる基本関係の把握、いわゆる犯罪構成の要素ありや否やということを断定して行く次第であります。これが第一点であります。  それから米軍の駐留はどう思うか。——これは御承知の通りに平和條約、安保條約という、これは二つの国の意思の合致によつて駐留しているわけであります。私の申上げるのは、外国としめし合わせて武力を行使せしめると、こういう場合でありますから、全然その観念が違う。どうかそういうふうに御承知願いたい。(「国民は何も相談受けておらん」と呼ぶ者あり)  それから朝憲紊乱と天皇制というようなことを仰せられましたが、これは私は内乱のこれが要素となるかどうかというような御質問じやないかと思うのであります。実はこれだけ仰せられたから、お尋ねになる要点がわからん。併しながら内乱罪、刑法第七十七條は、政府の出された原案の言葉でありますから、これは政府にお尋ねを願いたい。これは私の関知するところではありません。  それから国鉄従業員と破防法との関係、いわゆる団体の規制に対しての関係でありますが、これも鉄道省とか(笑声)或いは法務府、その他政府との関係でありまするから、その如何なる場合が惹起せられるかは知りませんけれども、少くとも現在におきましては、破防法の狙いまするところが、即ち団体の暴力主義的破壊活動でありますから、私は民間人として、政府にこれを指図して、こういうことをせよというようなことは、これはできぬのでありますけれども、どうか政府におかれましても、或いは国会人として我々は行政監察の立場から、或いはその他の立場からこれを嚴重に監視して行けば、そういう馬鹿げたことはないだろうと、こう考えている次第であります。  これだけで私の答弁を終る次第であります。
  107. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) これにて中山福藏君外一名提出修正案に対する質疑は終局いたしました。      —————・—————
  108. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 松浦清一君外六十九名から三案を法務委員会に再付託することの動議が提出されました。よつて本動議を議題といたします。本動議の趣旨説明の発言を求められました。発言を許します。松浦清一君。    〔松浦清一君登壇拍手
  109. 松浦清一

    ○松浦清一君 只今議題となつておりまする破壊活動防止法案並びに公安調査庁設置法案公安審査委員会設置法案を法務委員会に再付託する動議について、その趣旨を弁明いたします。  破壊活動防止法案ほか二件は、各位がすでに御承知の通り国民生活の上に極めて重大なる影響を持つている法案でございます。本院におきましても、先月二十日以来この法案審議関連をいたしまして、数回に亘り議場が混乱に陷り、議事運営に関しまする談合もなかなかにまとまらずして、議長職権の発動により本会議の開会を余儀なくされるような事態が起りましたのも、この法案審議の結果が日本の民主主義の運命を決するほどの重大な内容を持つているからであります。(拍手日本社会党第二控室といたしましては、この法案審議国会が最善の努力を傾倒して、国民の疑惑を一掃すべきであることを念願といたしまして、当初よりこのことのために最善の努力を続けて参つたことは御承知の通りであります。單に反対せんがための反対を避けまして、冷静に、なお、この法案の内容を検討するの要あることを痛感して、この方針を堅持して行動いたして参りましたことも、各位御了承の通りであります。この法案に対しまする法務委員会における審議の結果、我が党は、この法案が憲法で保障をいたしておりまする国民の自由と基本人権を不当に侵害するものであることを警告いたし、先に法務委員会におけるこの採決に当りましては、原案に対して反対態度を表明して参つたのであります。この法案に対し、昨日緑風会中山福藏君から、中山、岡部両君の提案にかかる修正案なるものの御説明を承わり、本日又多数の議員各位より熱心にあらゆる角度からの質疑が行われましたが、これを以てしても本法案の持つ深刻な内容が決して明らかになつてはおりません。ただ明瞭になりましたことは、この修正案は、法務委員会の委員長の御報告にもございましたように、委員会に提案された修正案と全く同様でございまして、政府原案と共に委員会においては否決の運命に会つたものであるということであります。これらの経過に徴してみましても、この法案が如何に多くの問題を内包しているかということが極めて明瞭であります。従来のこの種の重要法案審議の建前から申しましても、議事規則の建前から申しましても、委員会でなお十分の審議を盡すべきであります。折角御苦心の修正案も、委員会においては討論の段階において提案をされまして、單に案を読み上げたにとどまり、詳細な説明を聞く機会がなかつたのであります。同委員会においてとつて参りました経過は、事前に修正案の内容を示して十分協議した上で提案をするという従来の慣行を無視した形式において出されたのであります。従つて、その法律関係における審議の方式を全く欠いておりますので、更に十分な審議を加える必要があると信ずるのであります。そもそも破壊活動防止法案は治安対策法として重大なる意義を有するものであるという論議は暫らく別といたしましても、その法律的な構成においては刑法と全く同様の刑罰規定をその内容といたしておるものであります。この規定の表現如何は刑法における処罰規定との関係を十分に盡す必要があるものであります。只今提案されておりまする修正案は果してかかる点について十分な考慮がなされているかどうかということは、今朝以来の審議過程として論議されましたように、扇動或いは特定行為をさせる目的というようなことが同法案にある規定と如何なる相違を来たすか等につき、十分なる検討がなお不足であります。委員会におきましては、諸種の情勢から修正案について検討を加えることはでき得なかつたのでございますが、ここに本法案を法務委員会に再付託して更に審議を重ね、国民の納得の行く方途を講ずる必要があると確信をいたします。(拍手)而して、すでに委員会の表決を得た議案についても、再びこれを委員会に付託して審査をさせることは、参議院規則には明文がございませんけれども、特にこれがいけないという規定のないこと、又衆議院規則第百十九條がこれを明記いたしておりますること等から、解釈上当然なし得るものでございます。  以上を以ちまして、非常に簡單でありますが、破壊活動防止法案ほか二件を法務委員会に再付託する動議の趣旨の弁明といたします。どうか日本の民主主義の健全なる成長を念願といたしまする知性の高い議員各位の満腔の御賛同あらんことをお願いいたしまして、説明に代える次第であります。(拍手
  110. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 討論の通告がございます。議長は、討論の発言時間を各派の間で協定いたしました通り十分以内に制限いたします。順次発言を許します。吉田法晴君。    〔吉田法晴君登壇拍手
  111. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 破壊活動防止法案ほか二件がどういう国民の批判を受けて参り、そうしてこの法案の撤回と否決のために大きな努力を拂つて来たかということは、私が繰り返す必要がございません。ただ、国会に対して、国権の最高機関である国会に、国民がその意思表示をなして参りました最後の狙いは参議院でありました。そして、その参議院の中においても、実際にこの法案運命を決せられる緑風会に対してその努力と意思が集中せられたことは、申上げるまでもありません。然るにこの破壊活動防止法案は、長い審議の結果ではございますけれども、緑風会中山、岡部両氏の修正案となつて現われて参りました。委員会においてはこの提案理由の説明もなされませんでした。或いは、昨日この壇上で説明がなされましたけれども、その提案理由の説明も趣旨弁明も私どもは速記課に参つてこれを漸く見るというような始末であります。質疑討論も、いずれの議員の質問に対しても十分に答えて参られませんでした。この質疑と答弁とが如何に重要な意味を持つかということは、今後の法の運営の場合に、それが有罪無罪を決定し、或いは団体の生命を奪うか奪わぬかに重大な影響がある事実に鑑みて、参議院として十分盡さなければなりませんが、御覧になつたように、十分の答弁もなければ、或いは中山、岡部両氏修正案については、修正意見者は責任を持たれなければなりませんけれども、答弁は先ほどその責任を逃れられました。然るに、私どもがこの不十分なる質疑、審議ののちにおいて若しこれが結果において通つたといたしますならば、この修正案について全緑風会も全参議院も責任を持たなければなりません。緑風会の中において、或いは修正に、骨抜きに、努力をせられて来たその努力については敬意を拂い、なお、その意見については十分な尊敬を拂うものでありますけれども、結果は今申上げましたようなことに相成るかと思うのであります。そこで、先ほど緑風会はこの修正案について全責任をお持ちになりますかと申しましたが、答弁はございませんでした。なお実質的な議論についてする間はございませんけれども、或いは修正外患の点については、外患を取入れても実益はないと言われ、或いは若し外患を入れた結果規制されるとするならば、処罰されるとするならば、それは自由党政府でないかという問題しか残らない。或いは朝憲紊乱の問題が刑法第十七條その他に関連して入つておりますけれども、憲法の平和主義、民主主義の放棄は、先ず政府がその歩を進めておりますが、この平和主義と民主主義とは新憲法の二つの大きな柱であります。然るに政府は朝憲の最初に天皇制を持つて参る。この破壊活動防止法原案には、こういう天皇制その他の朝憲の問題が入り、平和主義、戰争の放棄は、炭鉱国管その他と同じ政治上の主義という部類に入れたのであります。明らかに憲法の基本的な原則を先ず破壊しようとするものは自由党政府であり、破壊活動防止法に現実に適応しているのは、この破壊活動防止法を現実に犯しているものは政府であるというような事態の下において、果してこの修正案を全責任を持つて引受けるだけの御覚悟があるかどうか、(「動議に反対賛成か」と呼ぶ者あり)明らかであります。(「大きな責任だ」と呼ぶ者あり)  その他(「民主主義破壊法」と呼ぶ者あり)先ほどの有線無線放送につきましても答弁がございませんでした。これは、憲法とこの法律との関係憲法違反の内容を含んでおるこの法律の重要な点について、修正案の提案者説明がなかつたということを物語つております。これらは私どもがこの本会議において十分に責任を盡さなかつたというこれは姿であります。こういう審議で、こういう気持で私どもが国民に責任を負うことができるでありましようか。明らかに否であります。こういう状態において質疑を打切り、討論採決をして、国民反対と輿望に応えることができるかどうか。答えは全く否であります。衆議院は今日の姿において十分の機能を果し得ないことは、これは私共も残念ながら認めざるを得ない実情でありますから、私共こそが、参議院が、その抑制機関としての責任、国会国民に対する責任を果さなければならんと考えます。この意味において、恐らくは政府案と本質的に変らないと言われる破壊活動防止法の修正案が通るということについては、私共の責任として賛成するわけには参りません。国民に対する期待に応える意味において、緑風会が、その提案者の岡部、中山両氏の責任だけでなくして、緑風会全体の責任を負われない意味においても、委員会において問題の焦点をつまびらかにし、そうして参議院国民に対する責任を当然果すべきであると考えるのであります。これらは党派を超えて、私は社会党第四控室を代表して立ちましたけれども、党派を超えて緑風会の各議員においてもお考えを願わなければならんことであるし、参議院全体が考えなければならん重大な点であると考えるのであります。  委員会に差戻すべしという第二控室松浦君からの提案に対して賛成の討論をする次第であります。(拍手
  112. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 鈴木清一君。    〔鈴木清一君登壇拍手
  113. 鈴木清一

    ○鈴木清一君 私は労農党を代表いたしまして、第二控室提案の委員会差戻しにつきまして賛成の意を表するものであります。(「元気を出せ」と呼ぶ者あり)体が小さいから少し声も小さいかも知れないが、ゆつくり聞いて下さい。(「声は大きいはずだ」と呼ぶ者あり)大体この第二控室から出しました委員会差戻しの件は、むしろ緑風会から私は出すべきではないかと思つている。(「そうだそうだ」「その通り」と呼ぶ者あり)ところが残念ながら野党から出さなければならないということに立ち至りましたことを、むしろ参議院の議員といたしまして残念に思うわけであります。(「そうだ」「無駄口言うな」と呼ぶ者あり)すでに日本いろいろ審議が重ねられましたけれども、本会議に直ちに上程しての審議の結果は、(「極めて明瞭」と呼ぶ者あり)問うほうも答えるほうも、真にこの重大性を持つた破防法に対する根本的な精神の解明さえ何らできておらないではありませんか。(「できておるのじやないか」「明瞭にできておる」と呼ぶ者あり)勝手個々な解釈と、ただ力関係のみによつて解決するような安易な法案でないことは、すでに各議員が認めておられることと思うのであります。総理は、これを実施したならば、必ず実施後において国民が理解するであろうということを言つておる。法律を実施してから後に国民が理解するであろうというような法律を作らなければならないほど、少くとも参議院のあなた方は、総理に見られるような低下した知能のかたではありますまい。もつと自主的なあなた方には見識があるはずだと思う。それにもかかわらず、立法府で、立法府の議員として作り上げた法律が、実施されて初めて国民に理解されるであろうというようなことをのうのうと言う総理も、又支持する人たちのまあ実は気持も知れないと、私は言わざるを得ないのであります。少くとも、この法律がどこに影響し、どういう結果が生れるかということ、法の真髄を知つてこそ、初めてここに賛否も鬪わし、又本当に法律として生ませるべきであるにかかわらず、前提條件として、法律ができ上つて実施されたならば或いは一般の国民に理解されるであろうというようなことを言つている。然るにかかわらず、先ず野党諸君がたびたび申したことではありまするが、重ねて申しますれば、知識人を中心とするばかりでなく、国民の八〇%を代表いたします公述人諸氏が、各層に亘つた公述人諸氏がはつきりとこれには反対の意を表しているではありませんか。それに対しまする昨日の木村法務総裁のお答えは、公述人は国民一般の代表でなく、東京を中心とする人たちの代表であるというようなことを言つておられる。誠に不見識なお言葉だと思う。それでは、若しそうだとすれば、その公述人を呼んだ法務委員会は、法務総裁に何ら抗議することができ得ないのか。少くとも法務委員会において呼ばれた方々は、国民の各層各階の人たちの代表と見ればこそ、呼んでその人たちの意見を参考としたはずである。それにもかかわらず、法務総裁によつてそういうようなことを言われても、これに一言半句も言えないとしたならば、少くとも参議院の法務委員諸氏の私は信義にかかわる問題ではなかろうかと思うのであります。今日まで、重大な法案であればこそ、二十日に上るべきところを今日までまだお互いが論議しなければならなくなつている。そうして又今上程されておりまするように、これに対しまする修正につきましても、緑風会方々が出されたばかりの修正でなく、各会派から修正は出されておつたはずである。然るにかかわらず、これは委員会において直ぐ審議を十分している間がなかつた。直ちに本会議緑風会の案として上程されたのでありまするが、併しながら、原案に対しましてですよ。原案の重要性についてもまだお互いが議論が盡されておらないときに、これに対しまする修正案を出した。それが僅か限られた時間の中において本会議の席上で論議され、而もそれが論議されたあとに一つの決定があつて国民の前に法律として始められたときに、果してこのことが国民の本当に受け入れべき法律として現われるかどうかということをお考えになられたときに、私は少くとも委員会に差戻して再審議いたしまして、そうして後に、この問題は、本当に衆議院が、むしろ国会の多数暴力者に対しまする破壊力をむしろ防止しなければならない法案を出そうとさえ考えなければならないあの衆議院の多数暴圧によつて、何ら審議されることなく廻されたことを是正する参議院の役目といたしましては、少くとも私どもは、本会議でこの重要法案を本日書十分言い盡されていないのを、なお改めて委員会に差戻して審議してこそ、初めてこの法律の重要性も、総理の言われるごとく国民に或いは実施されたならば納得されて行くかも知れません。併しながら、その意味におきまして私どもは、少くとも委員会に差戻しまして再審議されることに賛成の意を表するわけであります。(拍手
  114. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 岩間正男君。    〔岩間正男君登壇拍手
  115. 岩間正男

    ○岩間正男君 日本共産党は只今出されました差戻しの動議に対しまして賛成するものであります。  無論我々は、国民のあらゆる各層が未だ曾つて歴史上なかつたような反対を表明しておるこういう立場からいたしまして、これの完全なる撤回を要求するものでありますが、仮にいま一歩を讓るといたしましても、この法案審議は、本日何時間か展開されました論議を通じて見ましても、甚だ不完全ど言わなければならないのであります。こういう点から考えまして、(「頭が惡いからわからんのだよ」と呼ぶ者あり)先ず国民大衆のこのようなあらゆる各層が未だ曾つてないところの反対を表明しておるところの法案に対しましては、飽くまで国会としましては、この意見を十分に、十二分に取入れまして、愼重審議を続けるということが絶対に必要であると、こういうふうに考えるのであります。  第二の理由は、この法案は何ら委員会において結論を得ることのできなかつた、いわば余り今まで例のないような形で本会議提出されたのであります。而も本会議でこの論議が、質問戰が展開されたのでありますが、この質問戰を通じまして我々の感じましたことは、全く提案者のこれに対する答弁並びに政府の答弁そのものが、主観的な判断で、或いは独断に満ちておる。そうして、これを理論的に正しく国民の前に解明するという努力がなされていないのであります。従いまして、このようなことは、本会議の性格から言いましても、やはり委員会におけるところの一問一答の方式によりまして問題を端的にこれを闡明するということが絶対に必要だという感じを私は痛感したのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)これが新らしい国会におけるところの委員会中心のいわゆる国会運営の本体というものは如何に妙味を持つておるものであるか、(「そうだ」と呼ぶ者あり)如何にこれは審議に当つて重要なものであるかということを、本日の本会議並びに行われておるところの委員会審議比較することによつて、ますますその性格が明瞭に出されて来たのでございます。そうしまして、あのような不完全な答弁を以て、このような重大な修正案が單にここでお祭り騒ぎのような形で通過を見るということは、当然これは我々の了承することはできないことであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)従いまして、当然これを委員会に差戻して十分に審議する、そうして、その時間がなければ、又問題なのでありますけれども、会期はすでに三十日延長しておる。時間は十二分に余り過ぎておる。(「その通り」と呼ぶ者あり)こういう中におきまして、何故に事を急いで、そうしてこれをまるで私生兒を生み出すような恰好でこの法案を作り出さなければならないか。與党並びにこれに関連するような諸君のこれは料簡が疑わしいのである。こういうことでは、これは大衆の負託に我々は応えることができない。  第三の理由は、言うまでもなく、この中山修正案なるものは、これは自由党の代案に過ぎないということは、先ほど明らかにされた性格であります。(「木村法務総裁が証明しているよ」と呼ぶ者あり)全くこれは自由党緑風会の野合案だと言つてもいい。(「そうだ」と呼ぶ者あり)緑風会自由党の出店的な役割において、巧みにこれは特審局並びにこれによつて代表される政府をこれは掩護射撃をしておる。(「その通り」と呼ぶ者あり)このような馬鹿げた案を我々はこのような陰謀的な形によつて押し進められることに対しましては、国民大衆と共に断固として反対せざるを得ないのでありまして、(「そうだ」と呼ぶ者あり)当然これに対して審議をもつと高めて十分にやるべきだという、我々は主張する大きな理由を発見するものであります。(「わかつたわかつた」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)  国民大衆云々のその辺に弥次がございましたが、私は第四の理由としまして、一体、緑風会諸君は、或いは自由党諸君は、国民大衆の意を聞いておるのか、……「聞いてない」と呼ぶ者あり)聞いていないのだ。(「聞いている」と呼ぶ者あり)私はこれはちやんとはつきりした明白なる根拠を以て申上げているのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)單に自由党緑風会諸君を趣いているのではない。私はこの十日間、国会に陳情に参りました約八千人の陳情者に面会したのであります。これは連日会つた。学生諸君、労働者、婦人団体、文化団体、あらゆる階層の陳情者に、我々は忙しい中を出て参りまして、(「何を言うか」と呼ぶ者あり、笑声)これを案内し、そうしてこの前で意見を十分に聞いた。又我々共産党は、けち臭い政党じやない。利己的な政党じやない。だから、共産党だけに会つちやまずいから、社会党の諸君にも、又改進党の諸君にも会いなさい。殊に自由党緑風会……、殊に緑風会諸君は、現在、修正案、これで以て民族の運命を握つておるような重要な仕事をやつておるのだから、この諸君には十分に会つてもらいたい。そこで我々はその代表者を紹介して、緑風会諸君自由党諸君に紹介の労を惜しまなかつたのでありますが、遂に自由党諸君緑風会諸君は、ただの一名もこの大衆の前には遂に現われなかつたのである。このような形で何で一体輿論を聞いたということになるか。この事実が明らかにこれは緑風会諸君の性格を暗示しているのであります。(「国民が恐いのか」と呼ぶ者あり)選挙に当つては、お願いします、よろしく頼みます、我々は国民の利益を代表します、(「一票くれ」と呼ぶ者あり)こういうことで頭を下げて、そのときは通つて来たが、さて選挙に当選しますというと、よくもまあお前たちは瞞されたなと、因幡の白兎のようなことをやりまして(笑声)そうして、あの分厚い壁の中に包まれた、国会の中の赤い絨毯のこの特権的な椅子の中に隠れて、そうして、ここにおいて国民運命、民族の生命を決するような重大なる問題を、あの実にいわゆる国会の伏魔殿といわれるところの控室の中において、これを闇取引の間に事を決しようとする、このような態度が果して許されるかどうかということは、(「そうだ、その通り」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)これは国民大衆は、今日この破防法審議を通じまして、はつきり目に余るほど見たところの事実であります。こういう形において、(「それは共産党だけだ」と呼ぶ者あり)運営されておる。そうして、而も独断と、而も(「而も何だ」と呼ぶ者あり)自分たちの全く一方的な考えによりまして、このような重大な問題が論議されるというところに、我々は今日国会危機を見る。果して一体、これらの諸君は誰の一体利益代表ですか。(笑声)口では国民代表とか何とか言つているが、彼らの、君たちの一体代表する利益、(「何だそれは」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)利益代表は何であるかということは、はつきりこの法案審議の中を通じまして、我々はその正体を見るのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり、拍手)  第五の理由は、大体提案者の中山君の問題でありますが、私は昨晩の中山君の提案理由を聞きまして、実は愕然としたのであります。何かこれは一度聞いた演説だなという感じを深くした。この道はいつか来た道だということを、私は、はつきり感じた。あの匂いの中には右翼、国粋主義的の匂いがふんぷんとしておるのであります。これは全体主義者だということを言つているが全体主義は夫子自身ではないかという感を私は持つたのでありますが、中山君曾つてこの演壇におきまして吉田総理にどういうことを言つたか。憲法を改正して再軍備をやるべきじやないかということを、むしろこれは吉田総理に迫つたところの人でなかつたか。ところで提案理由を聞いて見ますと、平和云々というオブラートに巧みにこれを包んでごまかしております。(「嘘つきじやないか」と呼ぶ者あり)併しながら我々はこういうような中に、はつきりこの破防法案、更に今日表明されたいろいろな意見の中から、少くともこれは、はつきり我々は、一つの階級的な感覚において、このようなものの正体を我々は見付けたと思うのであります。そうして、こういうようなことは恐らく緑風会全体の一体性格であるかどうか。或いは提案者だけの性格であるかどうか。緑風会の中において中山君の占める位置については我々は何ら知らない。併しながら、少くとも是々非々主義ということを標榜して参りました緑風会が、このような中山君の性格を、全体の会派の性格……尤も一人一党などと言つているのでありますから、そこのところは使い分けはうまいのでありますけれども、(「実に使い分けはうまい」と呼ぶ者あり)併し、果してこういう形で以て進めることが一体正しいかどうか。これは緑風会諸君の全体の良識の判断に私はこれを待ちたいところである。  とまれ、とにかくこれは歴史的な問題である。この法案委員会に差し戻されて、そうしてどのようにきまるか、こういうことは、はつきりこれは歴史的な責任を負わなければならないところの重大なる問題でありますので、これについては愼重なる諸君のこれに対する善処を要望しまして、私の賛成討論とする次第であります。(拍手
  116. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) これにて討論の通告者の発言は全部終了いたしました。討論は終局したものと認めます。  これより松浦清一君外六十九名提出の動議の採決をいたします。この表決は記名投票を以て行います。三案を法務委員会に再付託することに賛成諸君は白色票を、反対諸君は青色票を、御登壇の上御投票を願います。氏名点呼を行います。議場の閉鎖を命じます。    〔議場閉鎖〕    〔参事氏名を点呼〕    〔投票執行〕
  117. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 投票漏れはございませんか……投票漏れはないと認めます。これより開票いたします。投票を参事に計算させます。議場の開鎖を命じます。    〔議場開鎖〕    〔参事投票を計算〕
  118. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 投票の結果を報告いたします。  投票総数百九十一票、  白色票六十七票、  青色票百二十四票、  よつて三案を法務委員会に再付託するの動議は否決せられました。(拍手)      —————・—————    〔参照〕 賛成者(白色票)氏名  六十七名    成瀬 幡治君  重盛 壽治君    門田 定藏君  千葉  信君    小林 孝平君  三橋八次郎君    若木 勝藏君  中田 吉雄君    栗山 良夫君  梅津 錦一君    三好  始君  有馬 英二君    荒木正三郎君  内村 清次君    羽生 三七君  石川 清一君    松浦 定義君  高田なほ子君    森崎  隆君  吉田 法晴君   深川榮左エ門君  菊川 孝夫君    岡田 宗司君  河崎 ナツ君    堀木 鎌三君  岡村文四郎君   小笠原二三男君  木下 源吾君    金子 洋文君  野溝  勝君    須藤 五郎君  岩間 正男君    兼岩 傳一君  江田 三郎君    木村禧八郎君  堀  眞琴君    鈴木 清一君  岩崎正三郎君    大野 幸一君  上條 愛一君    千田  正君  東   隆君    田中  一君  山田 節男君    齋  武雄君  羽仁 五郎君    矢嶋 三義君  村尾 重雄君    永井純一郎君  吉川末次郎君    カニエ邦彦君  島   清君    佐々木良作君  小林 亦治君    松永 義雄君  相馬 助治君    中村 正雄君  山下 義信君    赤松 常子君  伊藤  修君    三木 治朗君  棚橋 小虎君    波多野 鼎君  原  虎一君    曾祢  益君  松浦 清一君    片岡 文重君     ————————————— 反対者(青色票)氏名 百二十四名    藤森 眞治君  藤野 繁雄君    早川 愼一君  野田 俊作君    中山 福藏君  徳川 宗敬君    常岡 一郎君  田村 文吉君    伊達源一郎君  館  哲二君    竹下 豐次君  高橋龍太郎君    高橋 道男君  高瀬荘太郎君    高田  寛君  高木 正夫君    新谷寅三郎君  西郷吉之助君    小宮山常吉君  楠見 義男君    河井 彌八君  加藤 正人君    柏木 庫治君  加賀  操君    小野  哲君  岡本 愛祐君    岡部  常君  梅原 眞隆君    井上なつゑ君  伊藤 保平君    石黒 忠篤君  飯島連次郎君    赤澤 與仁君  赤木 正雄君    結城 安次君  山川 良一君    村上 義一君  森 八三一君    島津 忠彦君  上原 正吉君    岡田 信次君  青山 正一君    中川 幸平君  九鬼紋十郎君    大矢半次郎君  郡  祐一君    廣瀬與兵衞君  楠瀬 常猪君    加藤 武徳君  城  義臣君    植竹 春彦君  山本 米治君    古池 信三君  山縣 勝見君    石川 榮一君  木村 守江君    西山 龜七君  大谷 瑩潤君    一松 政二君  深水 六郎君    仁田 竹一君  草葉 隆圓君    徳川 頼貞君  左藤 義詮君    大島 定吉君  黒田 英雄君    小林 英三君  中川 以良君    川村 松助君  寺尾  豊君    溝口 三郎君  三浦 辰雄君    堀越 儀郎君  小野 義夫君    野田 卯一君  重宗 雄三君   大野木秀次郎君  入交 太藏君    宮田 重文君  西川甚五郎君    宮本 邦彦君  平井 太郎君    杉原 荒太君  田方  進君    松本  昇君  秋山俊一郎君    鈴木 直人君  石村 幸作君    長谷山行毅君  高橋進太郎君    石原幹市郎君  堀  末治君    鈴木 恭一君  愛知 揆一君    安井 謙君  平林 太一君    長島 銀藏君  平沼彌太郎君    竹中 七郎君  菊田 七平君    溝淵 春次君  團  伊能君    瀧井治三郎君 池田宇右衞門君   前之園喜一郎君  駒井 藤平君    林屋亀次郎君  油井賢太郎君    北村 一男君  中山 壽彦君    白波瀬米古君  岩沢 忠恭君    鈴木 強平君  栗栖 赳夫君    大屋 晋三君  泉山 三六君    黒川 武雄君  横尾  龍君    石坂 豊一君  境野 清雄君    大隈 信幸君  木内キヤウ君    谷口弥三郎君  稻垣平太郎君      —————・—————
  119. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 先刻り傍聽券のことを申上げます。先着順の三十は、平素の実績程度に従つて制限したものであります。(「嘘だ」と呼ぶ者あり)その代りに、議員紹介を百枚追加してあります。平素は議員紹介二百四十七、先着順百三十であります。即ち傍聽券発行総数には変りはございません。(「了解」と呼ぶ者あり)  本日はこれにて延会いたします。次回は明日午前十時より開会いたします。議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時四十六分散会      —————・————— ○本日の会議に付した事件  一、日程第一 破壊活動防止法案(前回の続)  一、日程第二 公安調査庁設置法案(前会の続)  一、日程第三 公安審査委員会設置法案(前会の続)