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政府委員(松本烝治君)
只今の御
質問に対しまして、
公益事業委員会に関する
範囲におきまして私からお答え申上げます。
今回の東京
電力株式
会社の
株主総会が紛擾を来たしまして流会に終
つてしま
つたということは、私が非常に遺憾と存じておるところでありまするが、この際はどういうことからこういう妙な事態を生じたのであるかという
経過につきまして、我々の委員会が知
つておりますることを御
報告することがよいかと思います。
御
承知のように、
東京電力会社は、他の八
電力会社と共に昨年の五月一日に我々の委員会の
決定によりまして設立されたのであります。その最初の役員は我々の委員会がこれを
決定するということに
法律上な
つておりまして、これによ
つて任命をした次第であります。その任期は一年ということにしたのであります。他の
経済力集中排除法によ
つて解散されました
会社の代りにできまする
会社の役員につきましては、大体の任期は六カ月、最初の役員の任期は六カ月ときめるのが多いようでありました。当時六カ月にしていいのじやないかという説が相当あ
つたのであります。併しながら我々としては、いわゆる日発、
日本発送電株式
会社の規模の大きいこと、株主の多いこと、又いろいろの
事情が紛糾していることに鑑みまして、六カ月では、そのうちに
日本発送電の持つ新らしい九
会社の株式をその
日本発送電の株主に還元して渡すということはむずかしくはないか、我々の再編成が一月の初めから始まりまして四月中に終
つたのであります。で、その速度を以てすれば或いはできるかも知れんけれども、併しまあ通常のやり方では六カ月ではむずかしかろう、どうしても一年としておけば、大丈夫、日発の持
つておるところの各新らしい
会社の株式は、必ずや正当なる株主即ち自発の株主に還元されるだろうということを期待してお
つたのであります。それで先ず一年ということに任期をきめました。その一年の任期が盡きて今度の総会が役員の改選をすることに
なつたのであります。
然るに、如何なる
事情であるか存じませんが、日発の持
つておる各
会社の株式というものはその株主には還元されない。依然として清算
会社たる日発に残
つてお
つたのであります。それは如何なる
事情であるか、私どもにはちよつと了解に苦しむのであります。併しながら、この清算
会社たる日発に対しましては、我々
公益事業委員会は何ら監督権等を持
つておりません。従
つてその点どういうことでそういうおかしい結果を生じたかということについては、不幸にして御説明ができない状態にあるのであります。各配電
会社のほうも、即ち九つの配電
会社がやはり日発と同時に解散されたのでありまするが、これらの配電
会社の持
つてお
つた株式はどうであ
つたかというと、これは僅かに三、四カ月の間にその九配電
会社の株主に還元されておる。これは勿論規模から申せば日発よりは小そうございますが、併し三、四カ月の間に全部還元されておる。然るに日発の株式だけは遂に一年を
経過してなお還元されない。従
つて今度の東京
電力その他の各
電力会社の
株主総会におきましては、やはり日発が株主として議決権を行使し得るかのように一見すれば見えることに
なつたのであります。この
事情は私には甚だ不可解でありますが、御説明は
只今申したようにできないのであります。従
つて今度のこの総会が開けますことにつきましては、この清算
会社たるに過ぎない日発が、若しその表面上は帰属しておるように見えまする株主権を勝手に行使するようなことがありとしますならば、これは甚だ違法であろうと私は考えました。即ち権利の濫用……
昭和二十二年に改正されました民法第一條に書いてあります
通り、権利の濫用はこれは違法である、不法な行為であるということになりまして、若しその日発という清算
会社が、勝手にその表面上属しているように見える株主権を行使するということがありましたならば、これは確かに権利の濫用である。違法であろう。私は
法律家として固く信じております。この点はなお機会がありますれば細かいことを述べることができようと思います。
先ほど
質問者から
法律上の見解という
お話がありましたから、私の
法律上の見解としては、日発は表面上議決権を持
つているように見えるが、併しながら、その行使は勝手にはできないのであ
つて、たとえ
公正取引委員会がこれを許したとしても、その行使というものには限界がある。その限界を超えたところの行使は不当な行使だ。これは違法であると私は信じているのであります。で、そういうようなことで、五月の初め頃から、ややもすれば日発が議決権を行使して、そうして役員の変更を図るというようなことの噂もなか
つたではないようでありましたので、我々としては、若しそういうことがあ
つては非常な違法なことが生ずるので困
つたことであると考えましたから、五月の十六日に、特に書面を以て、この
公益事業委員会の
希望といたしまして、横田公正取引
委員長に申入れをしたのであります。
その申入れは、第一点は何であるかと申しますと、新らしい今度の選任につきまして、どうか人員が
増加しないようにしてもらいたい。これは参議院及び衆議院の両院の委員会におきまして、しばしば問題がありまして、どうしても
電力会社は合理化をしなければいかん。役員の数が多過ぎると見られても決して足りないものではないから、殖やさぬようにという話がありまして、これに対して我々の委員会としても同感である。これは
経過上止むを得ず多少役員の数が多か
つたかも知れんけれども、これは感ずることはしても殖やしたくないという考えを持
つているということを御答弁しております。そういう趣意に適応するため、どうか一つ今度役員の改選の議案が出ましたときに、役員の数は減らすほうがよろしい。殖やすことは成るべくしないようにしてもらいたい。そういうように、日発が若し何か議決権でも行使されるならば、役員の数を増すようなことはないようにしてもらいたいということを申入れました。
第二点は、各
会社の現状を見ますると、この
会社は非常に御
承知のような面倒な再編成によ
つてできた
会社であります。最初のうちは相当混雑しておりましたが、幸いにしてその後役員に人を得たと大体思われるのでありまして、その結果、和衷協同して働いております。そうして例えばロスの軽減或いは電源の開発というようなことには非常な努力をしまして、例えば電源の開発については確か火力と水力と両方で二十六年の一年間に四十何万キロかの発
電力の増大を見たというようなことであります。それからロスの軽減についても非常に大きなロスの軽減ができた。社内が緊縮されて、先ずこの分ならばこれでだんだんよくな
つて行くだろうという曙光を見ているのでありますが、この際によほど特別な
事情があるのでなければ、役員をみだりに変更させることは、更に
会社内の状態を紛更することになるのであ
つて、そういうことにはならんようにしてもらいたいということが第二点であります。
この点を率直に書面を以て申入れをしたのであります。この
事情につきましては、当時の私の聞知しましたところによれば、横田
委員長も大体了解されたように聞いております。然るにほかの
電力会社についてもいろいろなことがあるように伝聞はしましたが、それは別として、この東京
電力の
株主総会の前日に至
つて、にわかに日発の清算
会社の清算人から
公正取引委員会に申入れがあ
つたそうであります。これによ
つて新井、青木、後藤という三氏を新たに役員にしたい、加えたいという申入れがあ
つたそうであります。これに対しまして東京
電力の当局者は、どうか、役員を増すようなことは困るから、この際、役員を追加することはやめてもらいたいということを
公正取引委員会に申したということに聞いております。然るに同日夕刻に至りまして、
公正取引委員会から、私どもの委員会に対しまして、東京
電力の
株主総会における日発の議決権行使はこれを承認した。但し役員の選任についてのみは、日発の申出は十七名になる。併しながらそれは十五名以内に限
つて議決権を行使しろということで、そういう條件を附けて承認したということの通告がありました。それは
株主総会の前日の夕刻であります。私は委員会全体には諮る暇はありませんでしたが、私自身の考えとしては、この三名の追加というのは、恐らくは現任者をやめて三名を入れるというのではなくて、つまり一名だけ殖え得るのであるから、その一名だけを今の三名のうちの誰かを入れるという意味であろうかと実は解釈しておりました。然るに当日の朝に至りまして、私の考えていることは間違いである。日発としては今の三名を入れるのだ。全部入れる。併しながら十五名を超えるわけに行かんから、現任者中の安蔵
社長と堀越常務
取締役をやめるのだということを日発側で言われたそうであります。まあ私の想像とは全く違うのであります。私の考えでは、そもそも清算
会社の権利能力は、
法律がちやんと書いております。どう書いておるかというと、「
会社は解散の後といえども清算の目的の
範囲内においてはなお存続するものとみなす」と商法に書いてあ
つたと思います。これは民法の法人についても同じような
規定があります。その意味は、「解散した
会社はすでにもうなく
なつた。解散して無い。解散というのはなくなるということを意味するのである。併しながら清算をしなければならんから、清算の目的の
範囲内だけではなお存続するものとみなす」というのであります。然らば清算
会社は、清算の目的の
範囲を超えて或る行為をすることは、そういう権利能力は、
法律上認められておらないのである。よ
つて若し清算
会社が、例えば持
つておる株式について、その株式
会社が非常に紊乱しておる。このまま黙過できない。若しそれをそのままにしておいては株式の値段が下
つてしまうために、非常な、清算の場合に財産が減価する。自身の持
つておる株式が非常に下
つてしまう。それでは困るというような特殊の
事情のある場合においては、初めてこの株価を維持するという意味で何らかの措置をとることは、清算の目的の
範囲内の行為として認められ得ると思うのであります。然るに東京
電力株式
会社は、御
承知のように九
電力会社のうちの最も繁昌しておる
会社であります。ほかの
会社は、今期も相当の欠損をたくさん出しております。併し東京
電力株式
会社だけ、及びもう一、二社だけは、赤字にならず黒字を出しておる。而して株価を見ましても、東京
電力の株というものの時価は最も高いのであります。ほかの
電力会社と比べると、百円とか或いは百円以上も違うというような状態にあるのであります。私の聞知するところによりますれば、安蔵
社長の人格高潔で、それから経験に非常に富んでおる。技術者として、又非常な優秀な技倆を持
つておられるというようなことは、東京
電力の
会社内は勿論、
電力界において何人もこれを認めておるところで、この
社長という中心人物をやめてしま
つて、他を以て代えるとか、或いは代わられる人はもつといい人かも知れませんが、そういう危険なことをするということは、この際甚だ不妥当なことと私は思うのであります。併しながらそういうことで、すでに
決定されておる。又堀越常務
取締役は、御
承知のように金融
経済のほうの非常な経験を持
つた立派な人である。二の人についても何ら悪声を聞いたことはありませんのみならず、先生が東京
電力に入
つて働いておるために、非常にいいということをしばしば聞いておるのであります。そういう最も有力な又中枢である
社長をやめ、そうして他の人を以て代えようというようなことは、如何なる理由でそういう議決権の行使ができるのか。私としては、これは仮に議決権が形式上存しておるとしても、これは権利の濫用であることは一点の疑いもない。従
つてその議決権の行使は無効である。
法律に反する。民法第一條の
規定によ
つて無効であるということは殆んど疑いのないことだと思うのであります。そういう状態であるが、併しそういうようなことを
あとで申して争いましても、御
承知のように
裁判は二年も三年もかかる。そのうちには今度選任される重役の任期は盡きてしまうというようなことになる。まあ、実に困
つたことだと思
つておりました。
然るに聞くところによりますと、この総会におきましては、議場が非常にやかましくなりまして、
反対の株主が非常にたくさんお
つて、これらの株主の
動議によ
つて流会ということが出て、そうして遂に流会に
なつたということを、
報告を聞いております。私はこの結果は、勿論
あと成るべく速かに更に総会を開いて、そうして選任はしなければなりませんが、併しながら重役の選任は、どうしてもその時にしなければならんというものではない。ちやんと商法では、そういうことができません場合を予想して、従来の重役が、その選任を新たにされるまで、他の人が選任されるまでは、なお職務を有しておるということを書いております。実際においては何ら差支えがないと思う。
その他この際にいろいろとられました措置について、いろいろいいか悪いかというようないろんな議論があるようでありますが、私は事実をまだ十分聽取しておりません。ただ一株主の発議によ
つて流会に
なつたということ、而して非常に議場が喧騒して、やかましか
つたというようなことしか聞いておりませんので、なお細かい
事情がわかりました後に、これらの諸点、及びその後において、何らか株主が、日発側の株主だけが集ま
つて、夜にな
つて何らか決議をして選任をされたというようなことを聞きますが、かくのごとき選任は、勿論無効であることは問題はないと考えております。これらの点は、併し
事情をよく知りましてから、必要があ
つたらお答えをしたいと思います。(
拍手)
〔
政府委員横田正俊君
登壇〕