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1952-05-06 第13回国会 参議院 本会議 第35号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年五月六日(火曜日)    午前十一時十三分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第三十四号   昭和二十七年五月六日    午前十時開議  第一 日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定に伴う刑事特別法案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第二 ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く法務関係命令措置に関する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。      ——————————
  3. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) これより本日の会議を開きます。  この際、日程に追加して、会期延長の件を議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。  議長は、衆議院議長と協議の結果、国会の会期を六月六日まで三十日間延長することに協定いたしました。議長が協定いたしました通り決定することに賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  5. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 総員起立と認めます。よつて会期全会一致を以て六月六日まで三十日間延長することに決しました。      ——————————
  6. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 法務総裁からメーデー当日の騒擾事件に関して発言を求められております。この際、発言を許します。木村法務総裁。    〔国務大臣木村篤太郎登壇拍手
  7. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 去る五月一日のメーデーにおきまする騒擾事件の概略並びに被害状況、その後の取締状態並びに背後関係について御報告申上げたいと思います。  我が国独立回復後初めて迎えました去る五月一日メーデーに際しまして労働者諸君の集会、デモ等の諸行事全国各地において挙行されました。その数は五百二十カ所、参加人員百八万人を数えるに至つておりますが、良識ある労働者諸君の自覚の下に、おおむね無事平穏裡行事がとり行われたのでありまするが、不幸にして、東京都内を初め、京都その他数カ所の地におきましてメーデー行事に便乗した一部極左的破壊分子策動によりまして、前例を見ない極めて悪質な不祥事件発生を見たことは、誠に遺憾の極みであります。  先ず東京都内におきまする騒擾事件の概況について申上げます。今回の中央メーデーは、明治神宮外苑絵画館前を会場といたしまして、午前十時三十分頃からいわゆる統一メーデーとして催され、極めて盛大な行事が行われましたが、大会の中途におきまして、石川労組員約三十名を初めといたしまして、全学連職安細胞員ら約百名が突如相次いで演壇に殺到し、不法にもスピーカーを占拠し、参会者に対し、実力を以て人民広場へ行こうなどと激烈な口調で煽動いたしました。一方、その間、会場内外に溢れました参会者に対しまして、都学連傘下学生その他極左分子らは数班に分れて列中を縫い、「人民広場に行こう、人民広場を力で取り返せ」とアジリながら廻り、又「アカハタ」復刊第一号、「球根栽培法」、「平和と独立」、「平和と独立のために」等を資金カンパと称して販売いたしますと共に、激烈な内容ビラ数十種類を撒布したのであります。やがて大会終了ののち、午後零時四十分頃、五方面に分れてデモ行進に移りまして、東部、西部及び北部方面デモ隊予定解散地点に至りまして平穏裡に解散いたしましたが、日比谷公園解散地点といたしまする南部及び中部のデモ隊は、行進の途中、全学連自由労組在日朝鮮人らの一部極左分子の誘導によりまして、ジグザグ行進を行い、途中、石を投げたり、窓ガラスを破壊したり、或いは外人記者暴行を加える等のことがありましたが、午後二時二十分頃から日比谷公園に到着した大多数の穏健な労組員等予定通り逐次解散したのであります。  然るに、全学連及び左翼的青年団体員を先頭に、朝鮮人日雇労務者らの極左的破壊分子約二千五百名は、スクラムを組みまして日比谷公園正門を出て、都電交叉点において警官の阻止するのを突破して北上いたしました。途中第一相互ビル前に駐車中の外人自動車十数台に投石し、窓ガラス等を次々と破壊しつつ、無許可デモ行進を続け、折柄馬場先門警備中の約三十名の警官警戒線をも突破いたしまして遂に皇居前広場になだれ込んだのであります。その頃二重橋附近においては、すでに警察官約二百五十名が警備に就いておりましたが、乱入した暴徒は気勢を揚げまして、指揮者の号令の下に、警察官に対しまして一斉に投石したり、或いは持つておりますところの棍棒を振い、竹槍突込む等、寡勢の警察隊に対し執拗な攻撃を繰返しまして、警察隊側負傷者続出し、警官の一名は内濠に突き落されるという事態に立ち至つたのであります。そのため警察隊後退を余儀なくされ、二重橋前附近に移動をするうち、漸く警察隊も増強いたされまして、約二千五百名となつたのでありますが、他方、暴徒は更にその数を増しまして、約六千名となりまして、(「何だ暴徒とは」と呼ぶ者あり)その後、組織的な攻撃はますます熾烈となり、警察官のこれら暴徒鎮圧のために使用した催涙弾も効を奏しません。警察官負傷者続出いたしまして、生命身体の危険を避けるため止むを得ず拳銃使用するに及びまして、暴徒は漸く後退を始めたのでありますが、警察隊は一挙に暴徒祝田橋附近まで押返し出したのであります。併しながら、その際、暴徒警察官三名を捕えまして、梶棒にて殴打し、重傷を加えた上、これを祝田橋附近外濠に突き落し、這い上らんとする彼らに対しまして更に石塊を頭上に投下するなど、暴虐の限りを盡したのであります。而もその間、暴徒の一隊約五百名は、祝田橋附近通行又は停車中の外人自動車等に棒や石塊を投げつけ、その窓ガラスを破壊する等の暴行を続けたのであります。ここにおいて警察隊は止むなく発砲して、盛んに攻撃いたしまする暴徒祝田橋から日比谷公園北側電車通りに押し出したのでありますが、暴徒電車通り駐車中の外人自動車十数台を転覆いたしまして、これに火を放ち、炎上せしめまして、これが消火に出動した消防車等にまで投石を続けるなど、破壊的行動の限りを盡しまして、首都中心地帶一帯静謐を著しく擾乱したのであります。併しながら逐次増強された警察隊によりまして追い散らされまして、同日午後五時三十分頃に至りまして漸く解散するに至つた次第であります。以上が今回の騒擾事件の概要であります。  次に被害状況を申上げたいと思います。現在までに判明いたしました被害状況は次の通りであります。  警察官負傷者重傷者八十三名、これは全治三週間以上であります。軽傷者が六百七十八名、合計七百六十一名の多数に達しております。外国人負傷者合計十二名であります。暴徒側負傷者は推定でありますが約二百名であります。ほかに暴徒側死亡者一名を出しておるのでありますが、(「それが問題だ」と呼ぶ者あり)同人は検事の死体検視の際ズボンの右ポケツト内に小石十数個を入れているのを発見したので、(発言する者多し)騒擾事件現場において暴徒として重要な役割を演じた者と推測されるのであります。なお、本件における警察官の発砲は、前述の通り暴徒襲撃に対して自己又は他人の生命身体に対する急迫不正の侵害に対する防衛のためなされたものと認められるのであります。  次に物的被害でありますが、警視庁側側車附オートバイ焼却が一台、米軍側公用又は外人所有自動車焼却が十四台、米軍側公用又は外人所有自動車損壊が百一台、警察官所携拳銃三挺が奪取されたのであります。以上であります。  次に事件措置について申上げます。本事件暴徒関係者に対しましては、当日現場において、放火罪公務執行妨害罪等現行犯として八名を逮捕いたしました。検察庁におきましては、今次事件騒擾事件と認定いたしまして、昨五日までに騒擾罪罪名の下に逮捕した者は合計二百二十五名に達しておりまするが、目下引続き東京地方検察庁及び東京警視庁におきまして、国警本部特別審査局協力の下に事件関係者徹底的糾明に当つておりますので、逮捕者の数は今後相当増加する見込であります。なお、逮捕されました者のうち、日本共産党員又は北鮮系朝鮮人が多いのでありまして、相当多数の極左分子のおることが判明しておる次第であります。検察庁におきましては、目下全力を挙げまして、右の事件被疑者確定逮捕、証拠の収集に当つておりまして、特にその背後関係計画性有無等事件の全貌の究明に努めておる次第であります。真相判明次第断固として処断する所存であります。  次に本事件性格を申上げたいと思います。目下検察庁におきまして捜査中でありますので、確定的なことは差控えますが、今回のメーデーデモ参加者の大部分を占めます総評傘下の穏健な労働組合員は、終始平穏裸行事を行い、予定解散地点においてそれぞれ無事解散したのであります。本件は、一部極左的破壊分子が群衆の興奮を利用し、激越な煽動によつてなつた計画的組織的な暴挙でありまして彼らのいわゆる軍事委員会指導による計画的軍事活動として実践されたものと考えられる節があるのであります。実際、騒擾に加わつたと思われます暴徒は、それぞれあらかじめ用意しておりました日本共産党地区委員会旗、同細胞旗北鮮国旗のほか、竹槍梶棒釘附プラカード等を振りかざしまして、これを武器として使用しておるのでありますが、その数およそ六千名、内訳、旧全労連系労組員及び自由労組員約千名、全労連系左翼学生約二千余名、極左系朝鮮人二千数百名程度と推定いたしておるのであります。なお、今日までに騒擾罪容疑として検挙した者につきまして、年齢層を見ますると、三十才未満の青少年が全体の約三分の二を占めております。又、学生朝鮮人自由労務者日本共産党細胞員などの占める割合が比較的多いということは、この暴挙に参加した者が特定の年齢層と或る種の組織体に属する階層であることを推知せしめるものであります。  なお、今回のメーデーに際しまして、全国的に特異な事犯といたしまして、東京以外では、京都における府庁、市役所、五條警察及び派出所に対する襲撃破壊等事件を初め、仙台、姫路、大津、八日市、名古屋、横浜、綾部等各地において若干の暴力事犯発生を見ておるのであります。京都におきまする事件は、公務執行妨害罪等罪名で六十三名を検挙して目下捜査中でありますが、警察側重傷十三名、軽傷三百三十二名、計三百四十五名の負傷者を出しておるのであります。  次に、今次事件背後関係について申述べたいと思います。今回の不祥事件背後関係について見まするのに、本年二月二十一日の反植民地デーにおける蒲田事件、同二十三日の京都事件等と同様、その主体は一部極左的破壊分子であつて、彼らの企図する暴力革命の準備の実践の一環として行われたものと推測されるのであります。今次メーデーに際しましては、これら極左的破壊分子メーデーを利用する策動に関する情報が入手されたのみならず、メーデー会場及び行進中において、「人民広場へ参集せよ、実力人民広場を鬪い取ろう」などという内容ビラ多数が撒布されまして、大衆煽動するなどの行為活撥に行われておるのであります。又日本共産党幹部岩田英一君が主要な役割を演じており、又京都において、日本共産党有力党員である府会議員市会議員らが煽動行為をしていることもほぼ明らかになつておる次第であります。更に又、東京並び京都における破壊的暴力行為手段方法は、彼らのいわゆるゲリラ的軍事活動方針従つて計画的且つ組織的に行われたものであると推定されるのであります。今回の事犯は、その背後において明らかに一部破壊的な共産主義者らの組織を基盤として、その指導並びに煽動の下に行われたものであると推定されるのであります。  次に事前措置について申上げたいと思います。特別審査局国家地方警察本部及び東京警視庁におきましては、今回の不祥事件に関連する情報事前に若干入手したのでありまして、治安機関におきましては相互に連絡して対策を協議いたしました。殊に東京警視庁当局といたしましては、中央メーデー主催者幹部に対しまして数回に亘り厳重に申入れを行いまして、暴力的不法事犯発生防止につき協力を求める等、十分なる方途を講じたのでありまするが、一面において、主催者統制力デモ参加者自主的精神とに信頼し、徒らに警察力の介入するがごときことなきよう愼重な態度を持していたのと、他面におきまして、メーデー大会散会デモ隊が五方面に分れて行進したので、警備力を分散せざるを得なかつたために、遂に予想外事態発生を見るに至つたと認められるのであります。今次事件に多数の重軽傷者を出しました事情について申上げます。只今申上げましたように、警察メーデーに対する取締は、できる限り干渉と介入を避けることを本旨といたしまして、不法事犯発生の際はもとより適宜処置することといたしておつたのでありますが、今回の暴徒の携えていたプラカード指揮棒等は、それぞれ巧みにカモフラージユされておりまして、いつでも竹槍或いは釘付棍棒として、攻撃武器として使用できるようになつていたのであります。更に暴徒等は石やガラス瓶等を用意しておつたのみならず、現場には無数の石塊、石が現われたが、これらが投擲武器として使用されたことなどが警察官に多数の負傷者を出した原因と思われるのであります。又暴徒は、或いは投石、殴打し、或いは靴で蹴り、或いは濠内に突き落し、甚だしきは拳銃を奪う等、全く暴虐残忍を極めまして、警察官生命の危険にもさらされたので、止むを得ず催涙ガス拳銃使用したのでありまして、暴徒側にも死傷者を見ることとなつたものと考えるのであります。身命を賭して暴徒鎭庄に挺身し、重軽傷を負つた警察官に対しましては、でき得る限りの慰藉と報償とを以て報いたいと思つておる次第であります。  なお駐留米国軍人等自動車等に対し重大なる被害を與えたことは、国際信義上誠に遺憾至極でありまして、政府といたしましては、陳謝の意を表し、十分調査の上、賠償等の処置をとる次第であります。  新憲法下基本的人権擁護の名に隠れまして、口に平和、独立、自由を唱えながら、みずからは憲法を無視し、国法を否定して、暴力主義的破壊活動をあえてし、毫も恥ずることなき極左的破壊分子の存在と、その集団の実態について、この際、国民一般が改めてその認識を深められ、これが対策に日夜奔走する治安当局活動に対して、どうか積極的な御協力を與えられんことを切望する次第であります。(「やめ給え」と呼ぶ者あり)穏健な労働運動或いは大衆運動はもとよりこれを保護助長すべきでありまするが、これに便乗して陰に陽に治安を撹乱せんとする破壊分子に対しましては、治安機構充実強化と適切なる立法措置とによつて、この種事犯の防遏並びに処理に万遺憾なきを期する所存であります。  終りに臨みまして、我が国講和発効により独立を回復した直後に、而も首都において、かかる不祥事態発生を見、多数の人的及び物的の被害を生じ、あまつさえ地方静謐を害しましたことにつきましては、重ねて遺憾の意を表したいのであります。政府といたしましては、今後この種事態の再発を防止するため万全の措置を講じ、以て国民の期待に副いたいと存ずるものであります。以上を以ちまして私の報告を終ることにいたします。(拍手
  8. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 只今法務総裁発言に対し質疑の通告がございます。順次発言を許します。重盛壽治君。    〔重盛壽治登壇拍手
  9. 重盛壽治

    重盛壽治君 私は日本社会党第四控室を代表いたしまして、五月一日宮城前の広場に起りましたところの暴行事件に対しまして質問をいたします。  総評中心といたしますところのメーデーが民主的に而も又秩序整然と行われたのでありますが、これが終了後、宮城広場において起つた一部分子警察官との間に暴力行為が行われ、多数の負傷者並びに死者まで出しましたる無謀なる騒擾事件に対して、我が党は、如何なる理由があるにせよ、かくのごとき暴力行為は絶対に排撃するものでございます。(拍手)併しながら、今回のこの暴力行為が絶対に避けることができ得ない性質のものであつたかどうかと言いますると、これは、政府方針如何によつては、かかる不祥事を惹起させずに済んだのであるということを申上げたい。然るに、政府の無理解なる態度がかくのごとき惨事を惹起した原因なつたことは誠に遺憾であり、政府重大責任があるのでございます。(「そうだく」と呼ぶ者あり)且つ今回のメーデー実行に当りまして、東京地方実行委員会宮城広場を最も適当な場所といたしまして、これの使用許可を、あらゆる角度から、即ち総評本部東京地評、私自身も、再三再四、吉武厚生大臣を通じて、條理盡しそ政府使用許可をお願いしたのであります。御承知のごとく、メーデーのために宮城広場使用せられましたのは、終戦後五回許されまして、常に主催者であるところの東京地方労働組合責任において挙行され、一回も不祥事件を惹起したことはなく、その他あらゆる行事使用されていたのであります。昨年一回不許可になつたのみでございまして、労働組合といたしましては、当然メーデーには宮城前を使用する権利があるものと確信いたしておるのであります。(「その通りだ」と呼ぶ者あり、拍手)而も本年は講和條発効第一回のメーデーであるし、自由な而も盛大な労働祭として、メーデー実行に最も適当なる場所であるところの宮城前を選んだのでございます。然るに、政府は今回宮城前を貸さない理由といたしまして、芝生樹木損傷を唯一の理由としておりまして、他に何ら具体的な理由はないのであります。(「理由はない」と呼ぶ者あり)而も全面的に使用を禁止するのではなくて、国家的行事には使用すると言つてつたのであります。如何なる行事であろうとも、芝生樹木損傷は大同小異であつて、貸さない理由にはならないのであります。政府が裁判の判決に敗訴する理由もこの辺に存するであろうということを申上げねばならんのであります。申上げるまでもなく、我が国の将来は、あらゆる産業の振興によつてのみ経済自立を図ることこそが根本方針でなければなりません。講和を契機といたしまして、一年一回のメーデー労働祭とし、これを休日となし、国家的行事一つに織り込んで宮城広場を開放するくらいの政策を樹立して、全勤労階級協力を得ることこそが、現在我が国における重大政策であろうと思うのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)これを必要以上に拒んで来ましたところの政府考えは如何なる根拠によるものでありまするか。吉武厚生大臣初め関係大臣の御答弁を承わりたいのであります。(「三百代言」と呼ぶ者あり)  更に又、芝生損傷に藉口いたしまして宮城前を使用させなかつたために、却つて血に染めたる惨事を起したるところのあらゆる責任を、政府は如何に処理せられる考えでありまするか。只今木村法務総裁の言われたごとき程度であつては断じて解決は付かないことと考えるのであります。(「責任回避している」と呼ぶ者あり)なお保利官房長官は、五月二日附新聞発表によつて、今回の直接責任は都の公安委員会にあると言つておるが、およそ国のいずれの地において如何なる問題が惹起いたしましても、その責任は当然政府にあると考えるものであります。いわんや首都中心である宮城広場メーデーに貸す貸さぬというような論議のあつた場所であるとするならば、今回の不祥事件の全責任は当然政府自体が負うべきものであると考えるのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)この点、政府当局は何と考えておられるか。明快なる御答弁を承わりたいのであります。  又今回の事件反米思想の現われであるやに伝えられておるが、その根拠政府はどのように解釈しておるか、承わりたいのであります。吉田内閣は、国民に対しましては非常なる強力政策を遂行いたしまするが、事、外交政策に対しましては極めて弱い性格を持つておる。(「奴隷の腰抜けだ」と呼ぶ者あり)このような点から、今回の事件反米思想の現われではなく、(「腰抜けだ」と呼ぶ者あり)反政府思想の現われの一端であることを政府自身が銘記しなければならないでありましよう。(拍手国民誰もが暴力は想協力して排撃しなければなりません。暴力の最大なるものの戰争は絶対に避けなければならんことをここに特に附言しておく次第であります。(「その通り」と呼ぶ者あり)西ドイツでは、進駐軍が直接国民に接することによつて国民感情を刺戟してはならんと言つて審問外出等もできるだけ遠慮しておるということを聞いておりますけれども、我が国の現状は一体どうであるか。特に日本婦人等と同道しておる場合の姿などは相当批判されるべきものがあるのではないか。(「その通り」「街に湿れている」と呼ぶ者あり)十分考慮してもらうよう要請してあると思うが、この点はどうなつておるか、伺いたいのであります。恐らくや占領中は、或いは吉田内閣性格上、こういうことは、はつきり申入れがしておられなかつたと存じますけれども、講和発効後の五月一日の宮城附近通行散歩等に対しては、我が国の実情を十分知ることの困難なる米軍司令部に対して、どのような申入れをしておるか。関係大臣答弁を承わりたいのであります。  木村法務総裁は二日の閣議において、ソ連婦人が参加しておつたよう報告したと報道しておりますが、事実であるかどうか、お伺いいたしたい。同時に、今回の全面的な処理方法を先ほどの答弁以上に御考慮願わなければなりません。なお、日本共産党煽動によるものだということでありまするが、このことが事実であるとするならば、政府共産党に対して今後どのような態度で臨むつもりであるか。所見を承わつておきたい。  更に、拳銃威嚇発射しながら学生群を追い散らしたと言つておるが、威嚇発射によつて胸部貫通即死はあり得ないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)従つて警官隊行動に行き過ぎや誘発的な行為があつたと思うが、この点の説明が明確にせられていないが、いま一度お伺いしたいのであります。  もう一つ、先ほど報告せられました神宮外苑におきまするところのメーデー演壇を占拠して、そうして一部不穏分子宮城広場使用することを叫んだと言われておりますけれども、どこでお調べなつたか知れませんが、これは事実無根でありまして、(「その通り」「その責任をどうする」と呼ぶ者あり)たまたま私は、当日の、木村法務総裁のいわゆる暴徒と言われる(笑声)石川労組を初めとするところの全学連の一部が壇上に押しかけて参つたときに、たまたまメーデー実行委員の一人として議長をしておつたのでありまして、これらが壇上に上りまして、壇上の器物を破壊したり或いはマイクを奪わんとした事態が起つたことだけは明瞭でございますけれども、マイクを奪つて、そのマイクによつて宮城広場を使おうとして行動したということは全く備わりでございます。これは私自体が制止いたしました。統一メーデーをしようという決議文を持つて来たということでありまするから、これのみをとり上げまして、その他一切は議長の計らいによつてマイク使用もさせず、演壇を汚さすことなく、無事にメーデー終了し、その結果、あの粛然たるところのデモ行進が行われたのであります。(「そのあとが悪い」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)どこでさようなことをお調べになつたのか、はつきりお答えを願いたいのであります。  次に、天野文相は、都学連に対して、今回の事件に対してどのようなる解決をせられる方針であるか、承わつておきたい。(「木村煽動だよ」「嘘をついているのだ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)  最後に、当日直接関係者と思われざる者で死亡したり重軽傷を負つた者があるのでございまするが、こういう者に対しましては政府は如何なる解決方法をとられるつもりでありまするか、お伺いしておきたいのでございます。(「百万円贈ろう」と呼ぶ者あり)  申上げるまでもなく、平和的に民主日本を確立せんとするときに、今回のごとき暴力行為は、国の内外に大なる悪影響を及ぼすものでありまして、日本国民全体の汚辱であり、如何なる理由にせよ、暴力行為は絶対に禁止すべきものであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)半面、又、暴力行為を誘発するがごとき政策も断固として排撃せねばならないのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり、拍手)そこで政府は現われた現実のみによつて物事を処理することなく、常によつて来たる原因を究明しなければならんでありましよう。(「共産党煽動だ」「君は見ているのか」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)従つて、少しくらいの暴力行為やテロ事件に驚いて、必要以上に而も過大に恐怖して、手厳しい弾圧や悪法の制定によつてこれを防止せんとするなれば、事態を不必要に險悪化させて行くことは当然であると申上げねばならないのであります。(「その通り」「煽動じやないか」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)要するに政治の基本方針は、申上げるまでもなく、悪法や権力によつて国民を拘束することではなく、民族的なる結束と愛情に訴えて、全国民の(「愛情があるのか」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)協力を得ることこそが民主日本の再建の大道であるということを申上げまして、私の第一回質問を終りまして、再質問を留保いたしておきます。(拍手、「ぼやぼやするな」「責任を回避している」「何を言つているんだ」「責任を感じろ「政府のやり方が悪いのだ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)    〔国務大臣吉武惠市君登壇拍手〕    〔「労働大臣はやめろ」「やめるか」と呼ぶ者あり〕
  10. 吉武恵市

    国務大臣(吉武惠市君) 重盛さんの御質問にお答えいたします。  過日、皇居前広場をなぜ使用させなかつたかというお尋ねでございますが、御承知のごとく皇居前広場は皇居前の公園でございまして、清楚な場所としておくべきであります。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)一般国民の散策の地でございまして、ここを政治的や或いは宗教的の諸行事に使うべきものではないのであります。ただ終戦直後のどさくさに一時許したことがございますが、そのために(「嘘だ」と呼ぶ者あり)非常に公園を(「どさくさとは何だ」と呼ぶ者あり)荒されたのでございます。従いまして、この広場はそういう諸行事には貸さないことにいたしまして、真に国家的な行事にのみに限ることにいたしておるのでございます。(「やめろ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
  11. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 静粛に願います。
  12. 吉武恵市

    国務大臣(吉武惠市君) (続) 又あの際におきましても、若し皇居前をメーデーに許したといたしましたならば、恐らく三十万に余るあの労働大衆が(「メーデーを静かにしろ」と呼ぶ者あり)一部の極左分子の省き添えになつたことであろうと思うのでございます。このことは、先ほども法務総裁からも御説明になりましたごとく、今回の暴動はあらかじめ計画された問題であります。(「計画とは何だ」と呼ぶ者あり)そのことは、曾つて京都の円山公園で行われました総評の蹶起大会におきましても、一部の極左分子がこれに便乗いたしまして、暴動的な行動をとりましたことと併せ考えて明瞭であります。(「そんな事実はない」と呼ぶ者あり)私どもは、決して、この皇居前広場を貸さないことは、メーデーを抑圧する趣旨でないことは、しばしば申上げているところでございまして、現に今回も、明治神宮の外苑においてこれを行うためには、我々といたしましても、あそこの使用について十分斡旋をしていることは、重盛さんも御承知のところであると存じます。(拍手)    〔国務大臣木村篤太郎登壇拍手
  13. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。(「ポケツトから手を出せ」「破防法のちんどん屋」と呼ぶ者あり)  警察に行き過ぎの行為がなかつたかどうかという点でありますが、断じて行き過ぎの点はないと申上げます。(その通り」と呼ぶ者あり)当日殊に警察においては十分の注意をいたしまして、丸ノ内署に控えました数百の警察官に対しては拳銃を持たせなかつたのであります。これも(「後から射つて殺しているじやないか」と呼ぶ者あり)十分な用意の下に、事を大きくしないために、できるだけ愼重にという考えから、今申上げました通り、丸ノ内警察署に控えました数百の警察官には拳銃を持たせなかつたのであります。而して当日あの群衆が三万から分れまして襲撃して来たのであります。これに対して警察官はこれを鎭圧しなければならん、この立場におつて警察官のとつた処置というものは、私はむしろこれは行き過ぎどころじやない、もつとやつてよかつたのじやないかというくらいであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)或る外国人はこれを見ておつて、日本の警察官というのはよくあれほどおとなしくやつたと感心しておるのであります。実にその当時の警察官といたしましては、隠忍自軍してやつたということを申上げたい。決して行き過ぎな行為はなかつたということを断言いたします。  次に(「戻れ戻れ」と呼ぶ者あり)外国婦人の問題でございまするが、これが自動車中において煽動しておつたというような情報は入つておるのであります。只今捜査中であります。それはいずこの国籍に属するかということは言明することはいたしませんが、(「なぜだ」と呼ぶ者あり)只今検察庁においてはその点について取調中であります。  それから(「疑心暗鬼か」と呼ぶ者あり)マイクによつて皇居前広場へ行けというようなことを煽動した事実云々と——私はマイクと言つたのではないのでありまして、マイクを占拠したのである。マイクをこわしたのである。(「そんなことは言つていない」と呼ぶ者あり)そうして一部の者が皇居前広場を占拠しておるということを明白に言つておる事実があるのであります。(「二枚舌だ」「三百代言だ」と呼ぶ者あり)それから、この事件を、重盛君は、過大評価しておるのじやないかというようなことでありますが、断じて過大評価しておりません。計画的にやられたこのような事件について、私は国民がもう少し関心を持つてよかろうと考えております。決して我々は過大評価しておりません。計画的に行われたかような事犯に対して、我々は十分の警戒をしなければならんということを、私はこの際申上げたいのであります。(「責任感がないぞ」と呼ぶ者あり、拍手)    〔国務大臣天野貞祐君登壇拍手
  14. 天野貞祐

    国務大臣(天野貞祐君) 学生の一部の行動については誠に遺憾に存じております。(「いつやめるのか」と呼ぶ者あり)これをどうするかということにつきましては、学長諸君とよく相談をいたしまして、学長諸君学生の自治活動を適当に指導してくれることを期待しておる次第でございます。(「めい答弁だ」と呼ぶ者あり、拍手
  15. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 内閣総理大臣の答弁は他日に留保されました。
  16. 重盛壽治

    重盛壽治君 再質問をいたしたいと思います。
  17. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 重盛君の再質問を許可いたします。    〔重盛壽治登壇拍手〕    〔「頑張つて」「恥を知らないか」「煽動責任を感じろ」「煽動者は誰だ」「黙れ」と呼ぶ者あり〕
  18. 重盛壽治

    重盛壽治君 吉武厚生大臣にお伺いいたしまするが、終戦後のどさくさまぎれにあそこを使つたのであると言うておりまするが、これ又私自体が御承知のように常にメーデーには参加いたしておりますし、終戦後三回に亘つて宮城前において総指揮者を勤めさして頂いておるものでありまして、従つて、一昨年のいわゆる神戸事件のあつた年などは、政府は確かに貸すことを拒んだのでありまするけれども、司令部のほうに行きまして事情を話しましたところが、快く貸して、そうして労働組合責任においてそうした派生的問題は処理するということで貸してもらつたのでありまして、本年度のごとく、当然、講和條約が締結せられて、日本政府の意思によつて貸し得る段階になつたときにこれを拒み、而も私が先ほど申上げましたように、一年一回の五月のメーデーを労働者の労働祭として国際行事の中にまで取り込んでやることがいいのかということに対しては、何ら触れておりませんが、これに関連していま一応労働大臣としての御所信をお聞きしておきたいのであります。(「どさくさの理由を述べろ」と呼ぶ者あり)  更に木村法務総裁にお聞きいたしますけれども、先ほど私が質問申上げました中に、今回の事件発生前において、米軍司令部に対して、五月一日には、宮城広場労働組合のほうにメーデーで貸すとか貸さぬとかいう問題のあつた場所であるから、どうか、あなたのほうであそこで散歩なすつたり或いは外出なさることは、宮城前は差控えて欲しいというようなことを言われたかどうかということをお聞きしたのに対しまして、御返答はないのでありますが、私は当然このくらいのことは申入れしてあることと思いまするけれども、若しこのくらいのことすら申入れることができ得ないような外交方針を樹立しておるといたしますならば、(「やめろ」と呼ぶ者あり)有名無実の独立であり、(「その通り」と呼ぶ者あり)有名無実の講和であつて、日本の全国民が将来非常なる杞憂を持つであろうことを憂慮するものでありますので、如何なる処置をとられましたか。この点は特に明快に御答弁を願いたいと考える次第であります。(拍手、「その通り」「答弁の必要なし」「馬鹿なことを言うな」と呼ぶ者あり)    〔国務大臣吉武惠市君登壇拍手
  19. 吉武恵市

    国務大臣(吉武惠市君) 重ねての御質問でございますのでお答えいたします。成るほど終戦後三回あそこでメーデーが行われたことは事実であります。(「五回もやつている」と呼ぶ者あり)併し昨年からこれは使用許可しておりません。重盛さんは、我々労働組織者はあそこが秩序正しくメーデーを行うと言われますが、私どもは総評その他がメーデーを秩序正しくやろうと努力された点はこれを認めるのであります。併しながら、今年の京都における総評の蹶起大会の場合におきましても、又過日の明治神宮外苑におけるメーデーの際においても、努力はされましたが、遺憾ながら一部極左分子の暴動的な無秩序な行動に対しては、遺憾ながらこれを阻止し得なかつたということはお認めにならなければならんと思います。(拍手、「何を言うか」「責任者は責任をとれ」と呼ぶ者あり)    〔国務大臣木村篤太郎登壇
  20. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。只今メーデー当日に米国の人たちに対してそこを散歩することをやめたらどうかということを言つたかどうかということであります。さようなことは私は米軍に対しては申しません。(「言えないんだろ」と呼ぶ者あり)あの当日は何人も宮城広場を散歩するのは自由であります。従いまして、何人に対しましてもあの広場を散歩することはいけないということは申しません。(拍手、「宮城広場というものは世界の話題ですよ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
  21. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 郡祐一君。    〔郡祐一君登壇拍手〕    〔「何を聞くんだ」「質問だぞ、質問だぞ」「おかしなことを言うな」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し〕
  22. 郡祐一

    ○郡祐一君 私は自由党を代表しまして、只今法務総裁報告に対し、右暴動事件背後関係並びに取締当局のとりました措置につき、更にこれを明白にすることを求めますと共に——政府治安対策につき質問するものであります。  政府は、今回の暴動に関し、事前に十分なる情報を入手し且つ万全の対策を講じておられたものでありましようか。報告にもありましたし、又伝えられるところによれば、すでに事件の一滴間前に、日共東京都委員会メーデー指導部から、旗竿等に竹槍を仕込んだものを持参し、行動隊を結集し、犠牲を出しても人民広場へのなだれ込みを強行せよとの指令が発せられていたと聞くのでありまして、暴動の計画的なるは明瞭なのでありますが、取締当局において十分な警戒措置が実施計画においても事前に十分講ぜられておつたものでありましようか。この点を明らかにせられたいのであります。(「ぼんやりしておりました」と呼ぶ者あり)すでに近時相次ぐ集団暴行事件各地発生し、過般のいわゆる反植民地闘争デーにおきましても、警察官に対する暴行拳銃の奪取、派出所の破壊等、明らかに目標を警察に置いて組織的な行動をとつているのでありまして、これら一連の事態に対処して事前に周到なる方策を樹立し、(「誰の警察なんだ」と呼ぶ者あり)国民をして治安の確保にいささかも不安なからしむることは、今後我が国独立の実を挙げて参りまする上に特に肝要なのであります。(「然り」と呼ぶ者あり)  次に、政府メーデー示威行進と今回の暴動との関係を如何に見ておられますか。今回の暴動が計画的であると共に、極力これを煽動いたしました共産党員及びその指導下にある者があつたということは特に注目すべきことであります。即ち只今報告によれば、メーデー大会の進行中も、行進中にも、人民広場を力で取返せと執拗に煽動して混乱に導いておつた者があるとのことであります。メーデーのごとき大衆運動が合法的に運行されようとしておりまする場合に、暴力主義者が悪質な煽動をいたしますことは、大衆暴力事犯を惹起する極めて危険な発火点となるのでありまして、そのため測らざる事態に拡大いたす虞れがあるのであります。濠に墜落しておる人間に対し石を投げてその救助を妨害するがごとき残忍性は、従来これを知らざるところであります。今後の集団的犯罪の傾向として実に憂慮すべきものがあるのであります。全国でメーデーが行われていたのに、東京都京都市にのみ不祥事が発生したのでありまするが、日共なりその影響下にありますものが如何に躍起になりましても、国民は決して共産党指導によつて動くものではないのでありまするが故に、国民の不安を拂拭するために、徹底的に背後関係を究明し、一部の悪意に満ちた陰謀であることを明らかにせられ、以て今後の事態に備えられたいのであります。(拍手)  又報告によりますれば朝鮮人の暴動参加が相当数に上つておるのでありまするが、日韓会談の状況からも考え、今後如何なる方策を以て対処されんとするか伺いたいのであります。(「李承晩が答弁する」と呼ぶ者あり)更にこのたびの暴動が、駐留軍人への暴行、その自動車の焼毀等の乱暴に及びましたがため、諸外国に深刻な影響を與えておる点から見ましても、その実相を明瞭にする要があると考えるのでありまするが、特に報告にあるがごとく乱鬪中のデモ隊を激励応援していた外国人がありとしますれば、この種の煽動者の発生が将来も予想され、これにつき十分その対策を講じておかれることが必要だと信ずるのであります。これらの点につき法務総裁の所信を伺いたいのであります。(「治外法権があるぜ」と呼ぶ者あり)  次に厚生大臣、労働大臣にお尋ねいたします。暴動の原因一つとして皇居前広場使用禁止を挙げる者がありまするし、重盛君の質疑にもそれに触れたところがありまするが、私も、騒擾がすでに計画的であり、メーデー行事終了後に発生したものであることが明瞭であるといたしますならば、使用禁止が原因になつておるとは到底考えられないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)広場使用国家的行事に限定する管理規則の今後の励行につき所信を伺いますと共に、メーデー主催者側の態度に遺憾の点なかりしやを伺いたいのであります。又このたびの騒擾につき一般労働者は決して共産党と同調せぬことが明白なのであります。この認識に立脚して、正しい労働者の立場を尊重しますと共に、然らざる行為に対しては断固たる措置をとつて参らねばならんと思うのでありますが、今後如何なる方針をとるのか、お伺いいたしたいと思います。  次に文部大臣にお伺いいたします。このたびの騒擾事件学生が積極的な役割を演じておるのでありまするが、学生がかくのごとき行動に出ますことは、諸外国にも多くその例を見ない我が国の特異現象ともいうべきものであります。(「認識不足だ」と呼ぶ者あり)私はむしろ学生服は着ておつてもその全部が果して真の学生であるかを疑いたいくらいであります。(「極く一部ですよ」と呼ぶ者あり)併しながら、東京大学等、学内に頻発する事態から考えましても、学生の自治活動が学外の政治活動参加にまで発展することを認めるべきか、学外との極端なる政治的連繋は却つて学内自治を撹乱している現状ではないかと考えるのであります。学生組織は十分尊重すべきものでありますけれども、全学連の動向が多くの正しい学生に悪影響を及ぼすものといたしまするならば、学問の自由を冒読しないためにも自治活動に健全なる限界の存することが絶対に必要なのであります。如何なる所信を持つておられるか、文部大臣に伺うものであります。  メーデー当日に起りました騒擾事件から見ましても、すでに事態は明日の危険ではなく、現に実害を生じているのでありまするから、私は第二に、治安維持の法制的措置につき遺憾なき方途が講ぜられておるや否やを法務総裁にお尋ねいたします。独立後の日本が国内治安の確保をなし得ずして列国の信頼と尊敬とをかち得ることは不可能であります。国民の福祉と発展もこれなくしては到底期し得られないからであります。相次ぐ事件の様相は、日共から出ていると思われる指令中の戦術とそつくり符節を合せており、中央指導部から下部に流す指令と個々の事件との具体的な連繋を証拠付けますことは、慎重な検討の結果に待たねば相成らんのでありまするが、概括してみまして、対権力闘争の態様とか、武力手段の行使であるとか、計画的に警察力の手薄なところを狙うパルチザン闘争とか、一連の日共の指令に基く暴動の現われと見るべきであり、すでに彼らのいわゆる武力革命実施の準備段階ともいうべきものに入つた行動の仕方であると法務総裁はお考えになりませんか。組織的集団的暴力事犯昭和二十四年以降主要なものを数えましても五十数件に及んでおるのでありまして、その処分結果から見ましても、共産党員及びその同調者の占める割合の極めて高いことは誠に注目すべきものがあります。国家の独立国民の自主的な精神によつて維持されなければなりません。福沢諭吉翁は「独立の気力なき者は国を思うこと深切ならず」と言つておりますが、独立は愛国心によつて確保されるものであり、国民をして国を思うこと真に深刻であり切実であらしめることが民主主義の根本でなければなりません。(「それならば外国軍隊に帰つてもらえ」と呼ぶ者あり)勿論、国際情勢等の厳しい現実は、これを受入れる者の認識によつてかなり異なつた態様をとつて来るものであり、これに対しましては飽くまでも寛大であらねばなりませんが、断固排撃せねばならないのは現に当面している暴力主義的破壊活動であります。人間の憎悪心を煽り、暴力によつて国内の法と秩序とを破壊せんとする準備と行動とには、真に国を愛する国民のひとしく憤激禁じ得ざるところであります。法務総裁は法制的措置につき千分なる自信を持つておられるでありましようか。集団行進等につきましても、現に公安條例を欠く府県が半数に及んでおりまするが、全国区々の取締に堕するごとなく十分対処し得る方策がございましようか。「アカハタ」はすでに復刊され、このたびの暴動事件直後も号外を発行しておりまするが、これらの刊行物について如何に扱われんとするのでありますか。今般の騒擾事件のような大量検挙の場合、背後関係の追及等が逮捕時間の関係等からいたしまして現行法上十分できるものでありましようか。刑事特別法の制定の握延いたしましたことも、二のたびの騒擾にかなり強い心理的影響を及ぼしているものと考えるのであります。(「政治の費用は弾圧では直らない」と呼ぶ者あり)敬え上げれば更に多くの点に考究を要するものがあると思うのでありますが、法と秩序とを確保する決意と用意とを明らかにせられたいのであります。メーデー当日の騒擾に見ましても、計画的な暴行者は、メーデー行進終了に近付くや、意識的に行進の秩序を乱し、なだれ込みをいたしておるのでありますが、共産党の戰術は相手方の抵抗力の薄い所を狙うのを常といたしており、敵の弱点を攻撃し、敵の分散した力に対して味方の集中した力で打撃を與え、(「その通り」「よく知つてるじやないか」と呼ぶ者あり)攻撃の目的を達成するや直ちに転回して次の機会を待つておるものであります。十分な用意のある態勢のみが治安を維持する最善の方策であります。  かくのごとき見地から、第三に、治安維持の態勢乃至警察機構につき如何に考えておられるかを法務総裁にお尋ねいたします。このたびの騒擾について見ましても、首都警察につき新たなる構想が必要になつたと考えるのであります。即ち、首都治安の重要性に鑑みて、政府が最終の責任に当る態勢をはつきり樹立しなければならないのであります。財政的に見ましても、国家的色彩の極めて濃い首都警察を東京都の負担にのみ委ねることが果して適当であるか甚だ疑問であります。このたびの騒擾に際し、警察官事態を速かに收束して一般住民の危害を及ぼさしめないために誠に真剣に行動したのでありまして、感銘に堪えないのでありますが、警備態勢から状況に応じて直ちに捜査検挙に移りまするためには、更に計画なり配置なりにつき検討を要するところがあると思うのであります。今後不測の事態に対処して敏速強力に断固たる処置に出で得る態勢は首都において特に大切だと申さなければなりません。首都警察についての所信を伺います。又警察法に定めまする非常事態の布告が国家公安委員会の勧告によつて総理大臣から発令される現行規定は、緊迫した事態に対処するに十分であるか甚だ疑わしいのであります。更に進んで警察行政自体政府はつきり掌握し得る態勢が現下の状況から見て絶対に必要だとはお考えになりませんか。(「フアツシヨ」「警察国家」と呼ぶ者あり)現状においてはむしろ治安責任政府が負うことを各所において拒まれておる法的構成だと申さねばなりません。而も各種の暴力事犯は、計画的にか偶然にか、警備力の手薄な、或いは管轄区域の境などで起つております。このたびの暴動がそうでありますし、二月の反植民地闘争デーの大田区電業社附近における事件は大田署と蒲田署との中間であり、長野県南佐久の警察官に対する暴行事件は、長野県と群馬県との境に近い警察の連絡がとりにくい所で起つております。ひとり首都にとどまらず、全国を通じまして警察活動を総合的機動的ならしめ、地域的に真空状態を発生せしめない治安機構を樹立し、指揮系統を確立されたいのであります。暴力主義者をしてこのたびの騒擾を将来更に暴挙をいたす予行演習たらしめては絶対に相成らんのであります。(「事件を利用しても相成らんぞ」と呼ぶ者あり)  今日、警察の有する情報活動特別審査局の有する情報活動との間には十分なる連絡統一が保たれておるものでありましようか。若し十分な連絡を得ていないとしまするならば事態に処して却つて支障を来たすことが予想されるのでありまするが、機能として完全な連絡協調を得せしめることが必要だと考えられませんか。国民警察官の正当なる行為に対しては十分理解を持ち、国民の納得する治安機構については進んで協力するものでありますが故に、自信を以て治安を確保し、国内秩序を守り抜きまするがため、情報機能を調整し、指揮系統を統一掌握した総合的な警察機構の樹立につき所信を披瀝せられんことを政府に要望して、私の質問を終ります。(拍手)    〔国務大臣木村篤太郎登壇拍手
  23. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。  本件の事案についてあらかじめ情報が入つてつたかどうか——情報は入つてつたのであります。その情報に基いて相当の手配はいたしておりました。併しながら、成るたけ平穏無事を願つてつた趣旨の下に、先ほども申しました通りに、警察官にはこれらの事案に対してはでき得る限り平穏にやれという指示はしておつたのであります。ところが暴徒は三万から侵入して来たのであります。(「初めから暴徒ときめておるからだ」と呼ぶ者あり)少数の警察官では到底これを処置することができなかつたのでございます。漸くにして増援を得てこれを解散させたという事情になつておるのでありまして、情報は相当数入つてつたのであります。ただ遺憾ながら初めのうちに警察官の力が足りなかつた。誠にこの点については申訳がなかつたのであります。  次にこの取調のことでありますが、これは只今東京地方検察庁において徹底的に取調べておるのであります。従いまして、いずれこの事件の全貌は十分にわかることと考えます。わかり次第御報告を申上げたいと思います。  本件については組織的破壊活動じやないかという御質問でありまするが、先刻御報告申上げた通り、この事件は全く組織的に行われたものであるということを私は申上げたいのであります。これについての対処は相当政府においても考えなくちやならんと考えております。  警察機構の改革の問題が出ましたが、警察機構の改革につきましても十分に考慮いたしたいと考えております。  首都警察の問題が起つたのでありますが、勿論今の法的建前におきましては、直接の責任者は警視総監よりほかないのであります。全般的の治安の問題においては勿論政府責任を持つのでありまするが、本件のごとき首都に起りました直接の責任ということは、政府は持ち得ないのであります。これらの点についても将来十分考慮して警察機構の改革を取上げたいと、こう考えているわけであります。(拍手)    〔国務大臣吉武惠市君登壇拍手
  24. 吉武恵市

    国務大臣(吉武惠市君) 郡君の御質問にお答えい失します。  皇居前広場使用方針につきましては、先ほど重盛さんにお答えした通りでありまして、今後といえども嚴重にこれは守つて行くつもりであります。  なお、第二に、今回の暴動事件に対して一般の組織労働者が同調しなかつたという点につきましては、私も誠にこれを喜ぶものでございます。ただ今日のメーデーにおきまして、総評統一メーデーにかくのごとき暴力的な共産分子を入れたという点につきましては、今後大いに反省すべきものがあると思います。なお、メーデーは、総評におきましてはこれを秩序正しくやろうと努力された点は先ほどお答えした通りであります。併しながら、最後に当つて全学連その他の極左分子があれを占拠いたしました際に、総評みずからの手によつてこれを阻止できなかつたということは、今後のやはり総評において最も反省すべきところだと特に感ずるのであります。(「おかしなことを言うな」と呼ぶ者あり、拍手)    〔国務大臣天野貞祐君登壇拍手
  25. 天野貞祐

    国務大臣(天野貞祐君) 学生の政治活動の限界についてのお尋ねでございますが、学内におきましては、大学の自由を守りますために、教育の政治的中立性ということが最も肝要なことでございますから、そういう意味から学内においては学生の政治活動は許しません。ただ学外におきましては、選挙権の行使ということは当然のことでございますが、それ以外の積極的な政治活動は、学生がまだ準備期にあるという学生本来のあり方から言つて、好ましくないと考えております。(拍手
  26. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 相馬助治君。    〔相馬助治君登壇拍手
  27. 相馬助治

    ○相馬助治君 私は社会党第二控室を代表いたしまして、只今木村法務総裁報告に連関いたしまして若干の問題を質問いたしたいと存じます。  メーデーの当日皇居前広場において惹き起されました事件は、それが講和発効直後のことでもあり、国際的影響並びに国内的影響の重大性を思い見ますときに、又将来の健全な労働運動の発展という観点から眺めてみましても、誠に残念な出来事であると存ずるのであります。(「同感」と呼ぶ者あり)今日、日本において民主主義の危機が訪れつつあると言われておりますが、我々はかかる暴力に対しましては、その理由如何によらず、絶対にこれを許し得ないと存ずるものでありますと共に、この暴力行為を通じまして或る目的を達成せんとする者あるならば、かかる者に断乎たる鉄槌の下ることはこれ又極めて当然であろうと存ずるのであります。(拍手)併しながら、暴力行為なるものは、狂信的な一部の者によつて惹き起される個人的暴力は別といたしまして、それが集団的行動である限りにおきましては、忽然として起きるものでは絶対にありません。これが発生原因に対しまして、人々は共産主義運動の当然陥りやすい理論と実践の上にこれを求めがちでありまするけれども、それのみの追求を以てして事は片付きません。今日暴力主義者に対して、昔通りの形通りの彈圧措置を講じ、法人と監獄を用意することだけで、事は絶対に片付かぬと考えるのであります。パンを求める民衆に石のつぶてを與えるような政治を平気でやつてのけて而も暴力発生に対して警察力のみを以てこれを取締らんとするがごときことは、今日実に誤まれるものと断定せざるを得ないのであります。(拍手)  私はこの立場に立つてお尋ねをいたしたいことは、先ず本問題につきましては、飽くまでも事件の真相性格を明確にして、実相を誤まりなく評価する態度が、政府にも国会にも又一般民衆にも必要であることは言うまでもありません。(「そうだそうだ」と呼ぶ者あり)本事件については新聞紙上に報ぜられております。只今木村法務総裁報告せられております。併し私は、今日背後関係とか何とか申しますけれども、事の起りそのものは極めて單純幼稚なる性格のものであると、前後の事情から判断せざるを得ないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)私は、この問題が内外に及ぼす影響或いは今日の内政の各問題からいたしまして極めて重大なる事件であるということに対しましては、諸君と意見を一つにするものでありまするが、この問題が誇大に報道せられました結果、特に外国におきましてはその反響が極めて我が国に不利な情勢をもたらすとするならば、特に本問題の取扱については我々は十分なる警戒をしなければならない。然るに法務総裁報告は、誠にこの問題が今にも日本が引つくり返る問題であるかのごとき調子を以て報ぜられておることは、誠に私は残念であると言わざるを得ないのであります。先ほど重盛君の意見によりますれば、これは反政府的な、反米の思想の現われであると申されましたが、誠にその通りである。併しながら、私は一歩進んで考えるというと、これが反政府的な問題であり、反米思想の現われであるということを、誇大に得たりとばかりに取上げております政府考え方というものが、むしろ大きな問題であるとして批判の対象にならなければならないと思うのであります、(拍手)今日外国の対日関係の重要なる地位にある人々は、口を揃えて、この問題が一時的暴発事件である、我が国民一般に対する基本的な考え方は変つていないと申されておることは、誠に理の当然でありまするけれども、問題は、このことによつて一体講和発効に調印した諸外国或いは調印しなかつた諸外国に対して如何なる国際的影響を與えるか、このことにかかつて参ると思うのでありまして、この問題が大小となく今日繰返されるというふうな予想に立つことも一応の見方ではありまするが、だからといつて、好機おくべからずとして、この際、警察力増強の口実としたり、或いは又再軍備論の発展の土台石とするがごとき態度は、まさに日本民族千年の運命を誤まるものと断ぜざるを得ないのであります。(拍手)而も政府はこの事件に対しまして対外的に如何なる措置をとつているか。甚だ懸念に堪えないのであります。対内的には治安強化の必要を説くに急であるために、まさに事件を利用せんとする傾向が今日に我々の目に見られるのでありますけれども、この問題に対して、根本的にはいわゆる外国に対する信用回復の意味から如何なる措置をとられんとするものであるかを私は尋ねんとするものであります。外務大臣今日ここにおいでになりませんが、何びとでもよろしい。政府を代表して、この問題に対しては、たつた只今ここにおいて答弁を私は強く要求するものであります。  次に政府の総括的政治責任についてであります。何と申しましても暴力行為を行なつた者は悪い。その通りではあるけれども、直接にこの問題を引き起した原因は皇居前広場使用理由なく許可しなかつたということであります。先ほど重盛君の質問に対しまして労働大臣はその理由を述べたけれども、あの言葉をそのまま聞いたのでは、外苑は許すけれども皇居前広場は許さないという理由がいささかも私にはわからない、むしろ大勢の労働者が集まつて芝生を荒す、それがいけないならば、全国的にメーデーなどということは禁じてしまえというような暴論にまでこれは発展すべきものでありまして、こういう問題に対しまして、賢明にも裁判所は、この皇居前広場使用せよということを言つておるのであります。従いまして、今回のメーデー独立後最初のメーデーである。参加者が六年有余に亘るところの被占領時代から解放せられたいわゆる解放感によるところの意気の高揚は極めて当然であつて、そういうことに対して考えてみましても、むしろ注意事項あらばこれを種々伝え、これを要求いたしましても、皇居前広場使用せしむべきではなかつたかということを私は考えるのでありまするが、これに対しまして改めて政府の率直なる答弁を伺つておきたいと思うのであります。  要するに、先ほど来、私が述べておりまするように、破防法を初めとする法令の整備によつて、或いは保安庁の構想を急ぎつつある政府にとつては、誠に今回の事件はチヤンスを政府に與えたものであるというような見方がされるかと存じますけれども、私はそういう皮肉な見方は今日したくないと思つておるものであります。よりまして、この問題に端を発しまして、政府治安政策について如何なる立場を今後堅持せんとするものであるか。具体的に申しまするならば、この皇居前広場使用の問題につきましては、政府総評側との対決に対しまして、四月二十八日判決が下されているようであります。政府はこれに対して控訴したようでございまするが、現在の段階においては裁判所はあれを使つてよろしいということを断定しておるはずであります。従つて、法を執行する、法を守るところの法務総裁としては、この問題について、遅まきながらも一体どう考えておるか。即ちあれは当然使用せざるものであるか。或いは使用させたほうがよかつたか。かかるつまらないことを聞くようではありますけれども、是非とも問題は重大でありますので伺つておきたいと思います。  次に警察機構について何らかの新考慮が伝えられておりまするが、事実は如何でございますか。而もこの警察力の増強というものは、法律の整備、これと相伴いましで、応急策といたしましては特に一つの問題の解決にはなるのでありまするが、恒久的な対策には絶対にならない。民生の安定を抜きにして本問題を解決できないことは、法務総裁又よくこれを知るところであると思うのであります。従いまして、新聞に伝えるところによりますれば、自治警察を徹底的にやめてしまう……今日、警察法の沿革その他からいたしましても、日本の過去の歴史の教訓からいたしましても、自治警察が生れたということは実に重大なる意義と理由とを持つておるのであります。地方自治を真に振興せんとする立場を堅持するといたしましたならば、にわかに自治警察をやめるというがごときことは、これは問題であることは申すまでもありません。併しながら、能率的という立場を以ていたしますならば、新警察について何らかの構想のあることは了承するところでありまするが故に、この際これらの点につきまして、明確なる、輪郭的な点だけでも結構でございまするが故に、答弁をお願いしたい。  次に、進んで保安庁とか或いは保安省というようなものの構想もあるやに伝えられておりまするが、今度のこの暴行事件を契機として、ひよつとすると保安省或いは保安庁を作る根拠とする傾向を我々は心配するのでありまするが、それとこれとは別であろうと存じますが、保安省というものの構想が法務総裁の手許においてまとまつておるといたしまするならば、この際これを明確にされて、国会を通じて国民の前に明らかにされることがよろしいかと存ずるのであります。従つてこの点について質問するものであります。次に、破防法については一体如何に取扱うお考えでありますか。即ち今回の事件を契機として、断固政府は無修正通過を期するという勇ましいところを見せております。無修正通過をするか或いは修正するかは、かかつて国会の問題ではありまするけれども、この破防法については、むしろ今度の事件に対しましては騒擾罪によつて事件関係者は処罰するということを申しておりまするし、何か別な意味からいたしまするならば、破防法はすでに必要ないということをも意味するやに考えるのでありまするが、(拍手)この問題についてどう考えられるか。なお、話は大分進んで恐縮でありますが、仮に破防法が政府原案に近く通つたといたしました場合に、メーデーによつて当然、時の内閣打倒の激越なる演説がなされたといたしまして、そうして、そのメーデーとは全然関係なく今回のように或る暴徒暴力行為を起したといたします。併しながらこの暴力行為を起した者の心理的な状態をつぶさに調べてみまするというと、そのメーデーにおける激越なる政府彈劾の演説が圧倒的にその人の頭を支配しておるかも知れません。又おると判断することも可能であります。そういうような場合には、若し破防法が成立しておるとするならば、今回の事件等においては総評のいわゆるメーデー実行委員の請君は罰せられるのであるかどうか。この点についても一つお聞きしたいと思うのであります。  なお、法務総裁に一点私は御注意を申上げておきたいことは、先ほど重盛君がマイク使用した、こういうここで質問をいたしましたときに、そういうことは言わぬとおつしやつておる。ところが、あなたは、はつきりマイクによつて煽動したと、こう申しておるのであります。マイクによつて煽動したということはマイク使用して煽動したということなんであります。(「そうだ」「その通り」と呼ぶ者あり)従つて三百代言的なことはやめて、この問題についてお答えを願いたいと存じます、  次に、警察予備隊はこういうときに出かける組織ではないのですか。今度の事件については警察予備隊が出かけていない。これは命令系統が駄目であるからであるか、或いは配置の関係上そういうことがむずかしかつたから出さなかつたのか、又将来警察予備隊というものはどういうふうに使うつもりなのか、これを大橋国務大臣にお尋ねしたいと思います。  次に労働大臣にお尋ねいたします。、皇居前広場使用の今後の方針については先ほど来重ねて答弁をしたようでありまするが、あの答弁を以てしては私は満足いたしません。今後どうするつもりなのであるかということ、なぜ使用許可しなかつたかということ、もう一度一つとつくりとお聞かせ願いたいと存じます。  なお、労働三法の改訂案或いはゼネスト禁止法案を持ち出すということが新聞に伝えられておりまするが、本事件と何か関係がございますか。又関係あるなしにかかわらず、それを提案するといたしましたならば、その構想の大略についてで結構でありまするが故に、この際お聞かせ願いたいと存じます。  次に、総評事務局長の高野君の言明によれば、第三次ストを労働組合として計画せざるを得ないと、こういうことを申しております。今の政治情勢下において、この総評がなさんとする政治スト、いわゆる抗議スト、これに対しまして一体政府は如何なる見解を持ち、どのように措置せんとするものであるか。この際、伺つておきたいと存ずるのであります。  なお種々なる点について述べたいと存ずるのでありまするが、まさに日本の民主主義の危機が来たりつつあるというこの段階におきまして、この問題に関する暴力行為を行なつた者を憎みますると同時に、かかるものを起させたところの政治責任を私は政府に向つて強く彈劾し、同時に、先ほど述べましたところの質問に対しまして、明快なる答弁をあえて国民の名によつて要求するものでございます。(拍手)    〔国務大臣木村篤太郎登壇
  28. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。  只今の御質問によりますると、政府はこの事件について誇大に報告して国民を刺激したのじやないかということでございます。断じてさようなことはありません。私の報告は事実を率直に述べたのであります。決して国民を刺激するために報告したのではないということを申上げたいのであります。なお、今回の事件につきましては、只今地方検察庁におきまして鋭意取調中であります。恐らく数日ならずして、この事件の全貌は、はつきりするだろうと考えております。  次に、反米思想の問題云々がお話に出ましたが、反米思想は全国の国民が持つておるわけじやないと私は考えております。ただ今度の事件について、一部破壊分子反米思想の現われとしてあのような行動に出たことは推測するに難くないのでありますが、これも一部破壊分子行動でありまして、決して国民はこれにくみするわけではありません。断じて国民反米思想の現われということではないと私は考えております。(「そんなことを聞かぬ」と呼ぶ者あり)  次に、この事件を契機として政府は破壊活動防止法案の無修正通過を期しておるのじやないかということでありまするが、私といたしましては破壊活動防止法案はどうしても無修正で通過を希望するのであります。このたびの事件につきまして、検察庁では騒擾罪を以て検挙しておるじやないか、従つて破壊活動防止法案の必要はないということを申されましたが、決してそうじやないのであります。御承知の通り騒擾罪については個々の人たちがこの罪に問われるのでありまして、集団的の組織については何ら手を下し得ないのであります。かような組織的の破壊行動については、是非とも破壊活動防止法案の必要がますますあるということを申上げたいのでございます。  次に、メーデーにおいて、メーデー指導者が現内閣打倒の宣言をしたり或いは煽動をしたりするような場合に、たまたまこれに乗じて破壊活動をする分子が参加して破壊活動をやつた場合に、その指導者の責任を問いはしないかということでございますが、どうかこの破壊活動防止法案の全体を熟読玩味して頂きたい。さような場合には決してこれに関係はないのであります。十分に破壊活動防止法案の内容を御検討願えば、さような危惧は一掃されると私は確信するのであります。  次に、保安省設置についての構想があるかということでありまするが、只今のところでは保安省設置の考えは持つておりません。ただ警察機構の改革については、是非ともこの際かような破壊活動防止に対しての機構については考えなくちやならんという観点から、これについての案を今練りつつある次第でございます。    〔国務大臣吉武惠市君登壇拍手
  29. 吉武恵市

    国務大臣(吉武惠市君) 相馬さんの御質問にお答えをいたします。  皇居前広場使用についての重ねての御質問でございましたが、先ほど申しましたように、皇居前広場は皇居前の公園でございます。これは国民ひとしく散策の地でございまして、いろいろな諸行事を行う場所ではないのであります。いろいろ公園を例に挙げられましたが、公園にはそれぞれの特質がございます。いろいろな行事を行わせる公園もあるのであります。併しながら皇居前広場はそんな行事を行わせる広場ではございません(「消防の出初式をやるじやないか」と呼ぶ者あり)従いまして、今後といたしましても、政府といたしましては、そういう政治的な、宗教的な、或いはいろいろな団体の行事には使用させないつもりであります。  なお、次に、労働三法の改正或いは又ゼネスト禁止などを考えておるかということでございますが、労働三法の改正につきましては目下検討中で、近く提案をいたしたいと思つております。併しながらこれは今回の事件に直接関連を持ちまして提案をするのではございません。併しながら、ここに注意すべき点は、今回の事件にも現われておりまするごとく、日本の労働運動に対しましては、常に共産主義的極左分子がこれに便乗いたしまして、これを利用しようとしておることであります。この点は十分研究すべきことであろうと存じております。(拍手)    〔国務大臣大橋武夫君登壇拍手
  30. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 五月一日の騒擾事件につきましては極めて遺憾に存ずる次第でございます。当日、警察予備隊といたしましても、必要あらば出動すべきでありまするから、事件の進行については十分注意をいたしておつたのでございまするが、警察予備隊の出動を待たずして、一般警察力によつて收拾し得ると判断をいたしましたので、出動を命ずるに至らなかつたのでございます。今後の方針といたしましても、政府といたしましては、治安上必要な場合にはもとより警察予備隊を出動せしむることを辞するものではございませんが、その性質から考えまして一般警察力によつて收拾できると認められる事態に対しましては、濫りに出動せしむるがごときはでき得る限りこれを避けたいと考えております。(拍手
  31. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 兼岩傳一君。    〔兼岩傳一君登壇拍手
  32. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 私は日本共産党を代表して、先ず第一に吉武労働大臣に対しデモ行進の自由について質したい。  五月一日メーデー当日の人民広場における武装警官の人民射殺暴行事件の根抵に横たわるものは、平和、安保両條約によつて日本の独立をアメリカに売渡した吉田政府に対する国民の憎しみにあるが、事件の直接の動機をなしたものは人民広場使用禁止に対する労働者の憤激である。若し政府が民主主義の一片でも持つていたら、最初からメーデー人民広場を使わせたはずである。従つてかかる事件は起きなかつたはずである。メーデーは日本を支える全労働者が万国の労働者と共に祝う世界最大の祭典である。この広場を外国軍隊の閲兵式や━━━━━━━━━には勝手に使うが、国の主権者である日本人民の祝典には使わせぬやり方には、さすがの東京地裁さえ理窟が付けられず、使用許可すべしという判決を下したにもかかわらず、政府は三百代言的な詭弁を弄してこれを許可しなかつたメーデー実行委員会がこれを吉田政府の労働者階級に対する挑戦であると見たのは極めて当然のことである。(「その通り」と呼ぶ者あり)憲法二十八條は、労働者の団結権、団体交渉権と共に、団体行動の権利を保障している。街路は天下の公道であり、広場国民に開放された地域である。どこを通れ、どこに入つならぬなどと言う権利が何によつて政府に與えられているか。大臣は恐らく公安條例と答えるかも知れない。併し、憲法に違反し民主主義を破壊する一片の都條例のごときに何の権威もないことは、憲法九十八條「この憲法は、国の最高法規であつて、その條規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。」によつて明らかである。以上についての吉武労働大臣の明確な答弁を求める。  第二に、私は木村法務総裁に対し、流血の直接の責任について質したい。政府は今回のデモを、一部急進分子、五千か八千の少数の行動であると宣伝している。併し当日メーデー歌を唄つてここに集まつて来た労働者、婦人、子供その他の市民の数は十万を下るものではない。(「その通り」と呼ぶ者あり)これは万人のひとしく認めているところであり、政府も昨今に及んで、気がひけたか、三万人までせり上げて来たようであるが、これは要するに、政府が今回の事件を以て一部の急進分子が殊更に反米思想を煽るための陰謀であると宣伝せんがためである。併し現実は正反対である。若しこの平和なデモ隊広場に入れメーデー歌を唄わせておけばそれまでであり、三十分か一時間も経てば、メーデー万歳で平穏裡に終つたのだ。ところが鉄兜で身を固めた警官は、婦人、子供を含むデモ隊に向つて、ピストル、梶棒催涙ガス彈を以て襲いかかり、流血の惨事がそこから起きた。毎日新聞上でUP通信東京支局長ポーツ氏が「メーデーデモがあのように暴動化したのは警察が皇居前広場を封鎖したことが原因だと思う。これはこのデモを目撃した米人記者の一致した意見である」と書いている。これを確認して、二日の衆議院の法務委員会で、事件の直接指揮者たる田中警視総監が得々として、「デモ人民広場に入れて包囲し、殺戮し、逮捕する計画であつた」と証言している。(笑声)警察のこの非人道、非民主的な態度に対し、労働者のみならず、一般市民が如何に激昂したかは、負傷した警察官の入院に対し、病院附近の市民が挙げてこれを許さず、東京病院以下すべての病院が暴行警官の診察を拒絶したという事実、又これによつて警官全体が動揺したという事実は、法務総裁もすでに承知のことと思う。以上によつて、今回の流血事件の一切の責任が彈圧を計画した政府にあることは、もはや隠すことのできないところである。殊にひどいのは、人民を殺しても平気であるという政府態度である。ピストルの発射は威嚇ではない。例えば殺された東京都民生局の高橋君の場合、警棒で撲られてへとへとになつているところを背後から射たれて即死しているのではないか。高橋君を見舞つた一代議士に対し、高橋君のお母さんが、「飛道具を使うとは卑怯だ」と語つておられるが、これこそ今回の事件に対する国民の偽わらざる感情である。(拍手)ところが政府は高橋君の死に対しても一言の哀悼の意も表せず、損害賠償も考慮せず、殺人警官を取調べないどころか、むしろ賞揚している。これでどこに民主政治があるというのか。(「そうだ」と呼ぶ者あり)私は木村法務総裁に尋ねる。先ず政府は今回の事件で人民を何人殺したか。我々の情報によると、殺された者は高橋君のほかに八人あり、そのうちの七人は警察側がどこかに持つてつて闇から闇に葬むろうとしているということであるがどうか。  次に、政府は今回警官を何名動員したか。警視庁予備隊を何者動員したか。次にピストル、催涙ガス弾は何発使用したか。以上のほか、我々の調査によると、重傷者を逮捕し、治療もしないで、カンフルで生かしておいて二十四時間ぶつ続けて訊問した結果、今朝も死者一名出ているが、政府は如何なる規定によつてかかる人権蹂躙をやつているか。日本の警官は由来民衆に対して何をして来たか。国民を保護すべきはずの警官政府国民彈圧の機関として使つているのではないか。日頃政治に無関心だつた市民たちも、今回の事件を目撃するに及んで、「今日は目が開かれた、警察の正体をはつきり知つた」と語つている。メーデーを流血の大事に至らしめた原因は挙げて政府責任にあると思うが、木村法務総裁はこれに対し一言でも弁解の余地があると考えるかどうか。(「詳細の理由を挙げて言つてみろ」と呼ぶ者あり)  最後に、私は吉田総理に対し、事件の真の原因を明らかにして、その責任を質したい。毎日新聞の特派員はニユーデリーから「インドはサンフランシスコ條約が日本に対し不利であるとしてこれを拒否したのであつた。そして條約発効の三日目にこの事件が起きたのだから、インド一般はこの事件が單に共産主義者策動によつて生じたとは見ておらず、むしろ米当局が日本人の意向を無視してかかつたところに爆発の原因があつたと見ている」として、インドの新聞論調を伝えて来ているが、これによれば、先ずタイムス、オブ・インデイアは、「もつとも極端な右翼主義者もこの事件を全く共産主義者の仕業だとすることはできまい。日米行政協定の諸條項や、国府と交渉させるために米国が吉田首相に加えた圧力は日本の国民を反撥させた」と書いており、ヒンドスタン・スタンダードは、「日米親善なるものが、軍隊、軍事基地、治外法権といつた形で現わされれば、それは戰略的にも経済的にも一方が他方を支配することの見えすいた僞装である。従つて日本に対米反抗が起るのは当然である」と書いている。又朝日新聞のニユーヨーク通信によれば、お膝元のアメリカにおいてさえ、カンパス紙の主筆サツカレー氏の論文として、「本当のことをいえば、米国の政策に反対しているものは共産主義者だけではない。工業家、水産業者、労働者又は農民ですら、米国の指図で日本政府がとつた政策に対しひそかに重大な疑問を投げている。それには根本的理由がある。日本は生きるために交易せねばならない。米国は日本に中共との貿易を禁止し、日本は輸出するところも食糧を得るところも殆んどないといつてよい。」と伝えて来ている。ヨーロツパではどうか。日本で事件の起きたと同じ日に、西ドイツにおいてもベルリンのメーデーデモ隊警官隊とが衝突している。それはアメリカ帝国主義の軍隊の占領に対するドイツ労働者を先頭とするドイツ民族の解放闘争である。(拍手)日本において今回発生した事件は、まさに昨年の秋、吉田政府の手を通じて日本に押付けられたサンフランシスコの平和、安保両條約に対する国民の不満が爆発したもので、この不満は七年間の占領政策の実施によつて日本の民衆の間に積み重ねられて来たものである。吉田政府は、国民生命財産の問題を、外国人にとつては有利に、日本人にとつては不利益な方法で処理し、而も国民の目を閉ざして真相を知らせず、国民の口を封じて要求を聞かず、独断的且つ暴力的な方法で押し切つて来たが、今や行政協定によつて両條約を具体化する段階に来て、日本人の今後の不満と反抗を暴力的に彈圧するために国会に破防法を提出しているのである。それのみではない。当日デモに参加した目撃者の談によれば、最初に発砲したのはアメリカのMPであり、それにつれて日本の警官が発砲し、十万大衆の憤激となり、自動車の転覆、焼失に及んだというそうして、たまたまそこを通りかかつた一般市民は、あのめらめらと燃える外国自動車に拍手を送つたという。然るに政府は、MPの暴行に抗議をするどころか、事件の直後の閣議で先ず自動車に対する賠償を決定している。今回の事件はすでにアジアの植民地の歴史において幾度となく繰返されて来た事件であり、自国の民衆に対しては傲慢に、外国の力に対しては柔順に振舞う売国政府の下において必然的に発生する事件である。  五十万労働者によつてなされた当日の神宮外苑におけるメーデーの決議を見よ。全日本の労働者は今や断固として独立と平和を求め、行政協定の破棄、破防法の撤回、人民広場の獲得を要求している。従つて、吉田政府が両條約と行政協定を破棄し、破防法の撤回をしない限り、今度のような事件はいよいよその規模を拡大し、その強さを増すだけである。これに対する吉田首相の真に責任ある答弁を求める次第である。(拍手)    〔国務大臣吉武惠市君登壇拍手
  33. 吉武恵市

    国務大臣(吉武惠市君) お答えをいたします。  皇居前広場使用させないのは憲法二十八條に保障する団体行動の自由を制限するというお話でございますが、我々は決して団体行動の自由を制限しているのではございません。皇居前広場使用すべからざる理由は前に申しましたからこれを省きます。  我々はメーデーを抑圧した事実はございません。先ほど重盛さんにもお答え申上げましたごとく、あの広場使用させない代りに、神宮外苑使用につきましては我々も斡旋をして、これを許すことにしているのであります。この一事を御覧になりましても、我々が決してメーデーをさせないつもりであるなどという考えを持つていないことは明瞭であると存じます。(「ノーノー」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)  なお、今回の暴動が計画的でありましたことは、先ほど法務総裁のお話の通りであります。若し皇居前広場を今回使つたとしたならば、恐らく共産主義的な破壊分子があれを使用して、三十万の組織労働者をこの巻き添えにしたでございましよう。(発言する者多し)併し、日本の労働者は決してかくのごとき共産分子の巻き添えにならなかつたことは、今回総評その他が計画通り散会いたしまして暴動に参加しなかつた事実を御覧になりましても明らかであります(拍手)    〔国務大臣木村篤太郎登壇拍手
  34. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。  今回の事件メーデー行事終了後に行われたのであります。これをはつきりさしておきたい。メーデーは先刻申上げた通り無事に終了したのであります。その後になつていわゆる一部の尖鋭破壊活動分子が行なつたものであります。これが計画的に行われたということは私が先刻申上げた通りであります。而して兼岩君は高橋某なる者の死亡したことについて話されましたが、当時の状況を見た者は、これはまさしく正当防衛であるということは、はつきり認識できるであろうと思うのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)如何に彼らの残虐な行為があつたか。(「どつちが残虐か」と呼ぶ者あり)皆これを見た者は痛憤しているのであります。この点については、私は全然この警官に対して同情を表するものであります。(発言する者多し)而して兼岩君は七名が殺されたとかいうことを言われておりますが、我々の所にはさような報告は入つておりません。かような次第でありまして、本件はどこまでもメーデーとの関係はない。メーデー行事との関係はない。一部破壊分子活動であるということをはつきり申上げておきます。  予備隊、警官を何人動員したかというようなお尋ねでありますが、さような詳細な点は私の所に報告がまだ参つておりません。(「無用々々」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し、拍手
  35. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 内閣総理大臣の答弁は他日に留保されました。    〔兼岩傳一君発言許可を求む〕
  36. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 兼岩君、何ですか。
  37. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 再質問をお許し願いたいと思います。(「時間だ」と呼ぶ者あり)
  38. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 僅か時間が残つておりますから、再質問を許します。    〔兼岩傳一君登壇拍手
  39. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 吉武労働大臣は私の質問に対して何ら答弁をいたしていない。私は、今回の政府デモ行進の自由に対する行動憲法違反である、而してこれが直接の動機になつたのである、これに対して憲法二十八條と九十八條を引用したのであるから、吉武君も法律を勉強したならば法律を以て答えられるところの義務がある。  第二に、(「もうよい」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)木村法務総裁は極めてごまかしな答弁をいたしているのであります。いやしくも、わざわざ国会に出向いて説明する以上、私が質問した三点、人民を何人殺したのか、警官を何名動員したのか、(「その通り」と呼ぶ者あり)ピストル、催涙弾は何発持ち出して何発使用したかについて、明確な答弁をする責任がある。これを要求する。(「その通り」「答えろ」「答えられんだろう」「まさにこれは謀略だ」「憲法によつて答え給え」と呼ぶ者あり)    〔国務大臣吉武惠市君登壇
  40. 吉武恵市

    国務大臣(吉武惠市君) 先ほどお答えした通りであります。(「そんな答弁はない」「その通り」「何たる答弁か」「共産党には答えませんか」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し、拍手)    〔国務大臣木村篤太郎登壇
  41. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 先刻申上げた通り、詳細なることはまだ私の手許には参つておりません。報告は……。(「誠意がないぞ」「無用々々」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)    〔兼岩傳一君発言許可を求む〕
  42. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 兼岩君、何ですか。
  43. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 この席から発言をお許し願いたい。
  44. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) あと僅かでございますから……。よろしうございます。
  45. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 吉武君の答弁は国会を愚弄するものである。(「その通り」と呼ぶ者あり)速記録によつて、若しも君が僕の質問に対する憲法第二十八條並びに九十八條に対する答弁をしていなかつたときに、君は如何なる責任をとるか。それから木村法務総裁に対して質したい。君は、まだそういうことを調査ができていないとすれば、いつまでに調査ができ、この本会議において、いつ答弁をするかを明確にし給え。(「何を言うのか」「無用々々」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)この二人に対して、今の二点を明白にすることを議長に求めます。(「国会を愚弄するな」と呼ぶ者あり)    〔国務大臣吉武惠市君登壇
  46. 吉武恵市

    国務大臣(吉武惠市君) 二十八條につきましては、先ほど私は触れて申上げたつもりであります、速記録を御覧になれば明瞭であります。我々は憲法に保障された二十八條の団体行動を抑圧するつもりはない。従つて、明治神宮外苑におけるメーデーの開催につきましても、我々みずから斡旋をしてさしているのであります。(「行動の自由に対する見解の相違だよ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し、拍手)    〔国務大臣木村篤太郎登壇
  47. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 只今手許に入つているのは高橋某が死んだということだけであります。そのほかの者について死んだという報告はまだ入つておりません。而して、警官の数、予備隊の数、それらについてはまだ詳細なる報告は手許に入つていない。(「いつ発表する」と呼ぶ者あり)そういう報告があり次第発表いたします。(「どこで発表するのか」と呼ぶ者あり)
  48. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 先ほど兼岩傳一君の質疑の中に━━━━━━━━という(「懲罰」と呼ぶ者あり)御発言がありましたが、右は議院の品位を傷けたものと認めますから、国会法第百十六條によつて発言の取消を命じます。(「異議なし」「やれやれ」「しつかりやれ」と呼ぶあり)  これにて質疑の通告者の発言は全部終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。      ——————————
  49. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 日程第一、日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定に伴う刑事特別法案日程第二、ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く法務関係命令措置に関する法律案、(いずれも内閣提出衆議院送付)以上両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  50. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。法務委員長小野義夫君。    〔小野義夫君登壇拍手
  51. 小野義夫

    ○小野義夫君 只今上程の日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定に伴う刑事特別法案の委員会における審議の経過及び結果を御報告いたします。  本法案は、日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基き締結せられましたる行政協定の趣旨に則り、刑事上の実体法及び手続法について若干の特別規定を設けたものであります。右行政協定第十七條は、合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族が日本国内で犯す罪についての刑事裁判権は合衆国側に属すること、いわゆる属人主義の原則をとる旨を定めてあります。又同協定第二十三條は、日本国政府がその領域における合衆国の設備、備品、財産、記録及び公務上の情報の十分な安全及び保護を確保するため、立法その他必要な措置をとるべきことを定めているのであります。行政協定のこれらの條項を遂行するためには、既存の刑事関係の諸法令ではなお不十分な点が認められますので、それを補うために本法案は立案せられたものであります。次に本法案の内容について簡單に御説明いたします。本法案は三章二十カ條より成り、第一章は総則で、一カ條でありまして、本法において使用する用語の定義を定めております。第二章は罪を定めておる実体規定でありまして、八カ條より成つております。合衆国軍隊の施設、区域軍用物及び軍機を保護するための処罰規定及び合衆国軍事裁判所がその裁判権を円滑に行使できるようにするための処罰規定を設けているのであります。第三章は刑事手続即ち手続規定でありまして、十一カ條より成つております。合衆国軍隊の使用する施設又は区域内における日本側司法官憲の刑事上の職務執行、日本側又は合衆国側が逮捕した相手国の裁判権に服する者についての相互の引渡しその他に関する手続を定めておるのであります。委員会におきましては、前後八回に亘り委員会を開きまして、その間、報道関係の有識者を参考人として招き本法案に対する意見を聽取する等、愼重なる審議を重ねたのであります。又各委員よりは熱心且つ適切なる質疑が行われたのでありますが、質疑の焦点は、主として実体規定、特に合衆国軍隊の機密を侵す罪に向けられ、この罪の構成要件が明確を欠き、その運用上において適用範囲が拡大される虞れがあるという点が指摘されたのでありますが、政府委員よりはこれに対しまして、この規定の立案に際しては必要の最小限度に留意した旨の答弁がなされたのであります。なお、このほか質疑の詳細につきましては速記録によつて御了承願うことといたし、説明は省略さして頂きます。  討論に入りまして、伊藤委員より、原案には反対であり、修正意見として、第二條の合衆国軍隊が使用する施設又は区域を官報を以て公示されたものに限るものと改め、第五條、軍用物を損壊する等の罪について、その対象を「軍用に供する兵器、弾薬その他軍事上重要な物」と改め、第六條の合衆国軍隊の機密を侵す罪について、その構成要件を縮小するように改め、第七條中、合衆国軍隊の機密を侵す罪の煽動の罪を削除し、又第十九條の合衆国側の要請による協力についてなす処分につき裁判所の許可を得るものと改めること、以上五カ條に亘る修正案が提出されました。又長谷山委員より、自由党を代表して、原案に賛成し、右修正案に反対する旨の意見が述べられ、修正案の各條項についてそれぞれ反対の理由が開陳せられました。次に羽仁委員より、第一クラブを代表し、修正案に賛成し、原案に反対する旨の意見とその理由が述べられたのであります。最後に吉田委員より、社会党第四控室を代表して、修正案に賛成し、原案に反対する旨の意見並びにその理由が述べられました。以上各委員の意見の内容は、詳細は速記録によつて御了承を願いたいと存じます。  採決に入りまして、先ず伊藤委員提出の修正案を議題に供し、採決いたしましたところ、可否同数となり、国会法第五十條によつて委員長が右修正案を否決すべきものと決定いたしました。次に政府原案について採決いたしましたところ、これも可否同数となり、委員長においで本法案を可決すべきものと決定いたしました。  以上御報告申上げます。  次に、只今上程になりました。ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く法務関係命令措置に関する法律案につきまして、委員会における審議の経過及び結果を御報告いたします。  本法律案は、先に当国会において制定せられましたところのポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件の廃止に関する法律の第二項の規定に従い、法務関係のポツダム諸命令中廃止又は存続に関する措置をとる必要があると認められるもの十二件につきまして、それぞれ廃止又は存続をさせることを定めたものであります。即ち、右十二件のうちで、独立後において、なお、その存続の必要があると認めらるるところの昭和二十年勅令第七百三十号外三件はこれを存続せしめ、連合国占領軍の存在を前提とし又は現在事実上適用の余地がないものと認められるところの昭和二十一年勅令第二百七十三号外七件を廃止すると共に、罰則の適用等に関する経過措置を定めたものであります。  委員会におきましては愼重に審議を進め、各委員より熱心な質疑が行われましたが、特に、将来存続すべき命令のうち、婦女に売淫をさせた者等の処罰に関する勅令(昭和二十二年勅令第九号)について、この勅令にまつて婦女の人身売買を根絶させることができるか、売春を取締るべき更に強力なる法案を提出する意図があるかという質疑が行われたのでありますが、政府委員はこれに対して、この勅令が婦女の人身売買を根絶する上においてなお不十分なることを認め、これに代るべき法案を立案準備中なる旨の答弁がなされました。討論に入りまして、伊藤委員より、本法案中、勅令第九号、婦女に売淫をさせた者等の処罰に関する勅令は、婦女の人身売買の防止及びその基本的人権の保護については極めて不十分であるから、政府に対し右勅令の根本的な改正法案を速かに国会に提出すべきことを要求する旨の附帯決議案を宮城委員と共に提案し、本法案に賛成する旨の意見が述べられました。  討論終結の上、本法案について採決いたしましたところ、全会一致を以てこれを原案通り可決すべきものと決定いたしました。次に、伊藤、宮城両委員が提出された附帯決議案について採決いたしましたところ、これも全会一致を以て可決した次第であります。  以上御報告申上げます。(拍手
  52. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定に伴う刑事特別法案に対し、伊藤修君外五十六名及び長谷山行毅君外三十名から、又ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く法務関係命令措置に関する法律案に対し、長谷山行毅君外三十名から、それぞれ修正案が提出されております。この際、順次修正案の趣旨説明を求めます。伊藤修君。    〔伊藤修君登壇拍手
  53. 伊藤修

    ○伊藤修君 只今上程になりました刑事特別法案に対する修正案につきまして、提案者を代表いたしましてその趣旨並びに理由を申上げたいと存じます。  原案は御承知の通りいわゆる旧軍機保護法にふさわしいところの法律でありまして、この法律の施行によりますれば、曾つての軍機保護法によりまして我々がこうむつたところのあらゆる基本人権の制約というものが、より以上に加えられるということを憂うる次第であります。又原案によりますれば、今日、新聞雑誌その他の言論機関の活動が何らの制約なく自由にこれが許されておるこの現状におきましてこの原案が通過いたしますれば、少くともアメリカ合衆国軍隊に関する限りはその報道の自由というものは全く制約されるのであります。この別表に掲げられました事項に亘ることは、すべてこれをあらかじめ検閲を受けざれば報道の自由なしと申上げても差支えないのです。この点におきましてこの法案が重大な問題を投げかけておる次第です。なお法案の第三点の主とする理由は、この法案が先ほど委員長の御報告の中にもありましたごとく、いわゆる行政協定に基きまして必要最小限度において規制をしたと、こういう御説明でありますが、併しこの法律自体は、むしろこの政府の立案の基本的観念を遥かに逸脱しておる。むしろこの法律自体によつて安全保障條約に基くところのいわゆる行政協定が企図するところの、即ち二十三條、十七條、この二カ條によつて企図するところのもの以上にこの法律は制約しておるのです。    〔議長退席、副議長着席〕 従つて政府の立案の基本的観念は、原案においてはむしろ拡大されておると言わなくてはならんのです。かような次第でありまして、原案の構成自体は、旧軍機保護法の列挙主義を排しまして、いわゆる抽象的に制約する表現を用いておるのです。規定しておるのであります、却つてこれが拡大解釈される虞れがあるのです。あらゆる面にこれが広く解釈されまして規制せられるところの危險を温存する次第であります。これは、列挙主義とこれらのいわゆる抽象主義の書き方との利害得失はありますとはいえども、少くともこの原案によりましては、却つて弊害を多くもたらすものであることは断言して憚からない。かような根本趣旨に基きまして、我々はこの原案に対しまして次の修正を加えたいと存ずる次第であります。  第二條におきまして、いわゆる施設又は区域を侵すの罪、これを規定しておるのです。これは原案によりますれば、その立入禁止を表現し、その表現されておる所の立入禁止区域に侵入いたしますればこれを処罰する。又これらの施設及び区域の中におる者が退去を命ぜられた場合において、これに応ぜざる場合は退去不応罪を以て処罰する、こういう規定であります。成るほど現実にその場にその行為者がおります場合においては、この原案通りであえて差支えないのです。併し、全国に設けられたところの区域及び施設というものは、それ自体日本の国法は適用されない地域です。いわゆる租借地と同様の結果をもたらすところの地域です。かような日本の主権の行われない地域を、單にその現場におけるところの立札のみを以てこれを賄おうという考え方は、余りに国民に対して親切さを欠くものと言わなくてはならんのです。かような主権の制約されるような区域は、少くとも国家の意思表示として官報を以てこれを公示すべきは当然のこと、当り前のことです。政府はそういう処置はとると言つておる。併し、これは法律自体においてその区域を全国民に明示すべきことをここに規定する必要は当然考えられることです。かような意味合いにおきまして、第二條をこの趣旨を表現する意味において修正を加えたのです。先ほど委員長が報告された通りであります。  第五條、これは軍用物損壊に関する罪です。これは行政協定の二十三條のいわゆる拡大解釈をとつてこの規定を設けたのです。二十三條にはかような規定を設ける趣旨は表現されておりません。ただその精神を汲んで、日本政府においてこれを立案するに至つたに過ぎないのです。この趣旨は、刑法の二百六十一條の器物損壊罪、これを以てしては、これらの外国軍隊のこの種の物件に対するところの保護の全きを得ない、かような趣旨から、特別に本法においてこれを規定しようと、こういう目的のために原案の第五條としてこれを規定された次第です。併し第五條は何々と表現して、その次に「糧食、被服その他の物」、こういう文字が使用されておる。糧食若しくは被服に至りましては、日常生活、いわゆる軍隊の日常生活の上において容易にこれは毀損されるところの事実が繰返される虞れがあるのです。例えば婦人がその軍人の被服を引張つた場合において、これがたまたま破れれば直ちに本法により処罰される。或いはこの間のメーデーのような場合におきまして、この軍人が騒擾の中に巻き込まれ、その被服が損傷されますれば、直ちに本法により処罰されます。又軍用自動車が燒却されますれば、この第五條によつて処罰されることは当然のことです。たまたま本法が成立していなかつたので、この間のメーデーに際しましてはこの法律の適用がなかつたと言うに過ぎないのです。かような次第でありまして、軍用の重要なものに対しまして、この保護を加えるということは、これは首肯できます。併し糧食、被服に至りましては、余りに細か過ぎまして、日本国民のこれに対するところの社会生活を規制すること甚だしいと言わなくてはならんのです。かような危險な條項までここに加えまして、あえて外国軍隊の保護をそれによつて達成するということは、却つてアメリカ軍隊に対するところの御迷惑であると考えなくてはならないのです。かような微細なものは国内法のいわゆる器物損壊罪によつて十分賄われるのです。而もその場合におきましては、国内法では親告罪である。アメリカ軍隊の親告があつて初めて処罰の対象になる。然るに本法においてはかような微々たるものに対しましても独立罪として、この親告罪を廃止している点において、我々はどうしてもこれに対して是認することができない。従つてこの点に対しまして、第五條中「糧食、被服その他の物」というものを削除いたしまして、代えるに「その他軍事上重要な物」と、こういう表現に修正しようと考えている次第であります。  本法において一番問題となるのは第六條です。  先ず第六條の第一点といたしまして、いわゆる「別表に掲げる事項」、これはいわゆる機密事項としてここに掲げられたるものでありまして、本法案の重要な点であつて、機密というものの定義をこれによつて明らかにしている次第であります。この別表に掲げられている事項をそのまま、平時戰時あらゆる場合を問わずして、これが機密として保護されるということになりますれば、これほど国民生活の上において危險甚だしいものはないと思われるのであります。元来、安全保障條約なるものは、日本の内乱若しくは外国からの直接間接の侵略に対しまして、この安全保障條約が発動し、その安全保障條約の運用のために行政協定というものが結ばれている。その行政協定内容としてこの法律が賄われるのです。してみますれば、今回の、安全保障條約に期待するところの目的を逸脱した、平時にまでこの軍の機密を保持するという考え方は、余りに広過ぎると言わなくてはならぬ。又安全保障條約が目的としているところのこの事項に対しまして、却つて反するものと言うてもあえて差支えないのです。要は安全保障條約に企図する範囲内においてこの法律において賄えば差支えない。従つて我々は、この別表に掲げる事項について一つの制約を加える。即ち「別表に掲げる事項でその漏えいが合衆国軍隊の防衛作戦上支障を生ぜしめる虞のあるもの」と、こういうふうに制約いたしますれば、これによつてこそ初めて我々は安心してこの機密保護に対しまして却つて協力し得る態勢が整えられると思うのです。  次に第二点といたしましては、「物件で」というのを「物件であつて」、これは語呂の修正であります。  次に「又は不当な方法で、」を「且つ、不当な方法で、」こういうふうに修正いたしたい。これは前段におきまして、いわゆる「合衆国軍隊の安全を害すべき用途に供する目的をもつて、」と、これで一つの犯罪が成立する。そうして原案では「又は」と、こう謳いまして、いわゆる探知、收集と、こういう独立犯罪を設けているわけです。前段の合衆国の軍隊の安全を害すべき目的のためにやつた場合においては、これは犯意が認められます。後段の「又は」以下では、さような害すべき用途に供する目的がなくても、單に探知する、收集するという事実そのものを直ちに犯罪として処罰する、この規定であります。これは余りにも過激な、余りにも峻烈な法規と言わなくてはならないのです。かような法規によりまして、何ら合衆国軍隊に対しまして安全を害すべき意図がなくても、たまたま私が世界各国にあるところの飛行機の型を收集したいと、こういう意味において、あらゆる手段を用いまして、全世界にあるところの飛行機の写真を集めるといたしますれば、これが即ち直ちにこの收集罪に引つかかる場合があるのです。又探知の場合におきましてもそうです。直ちにさような意味において独立罪として処罰されることになるのです。この危險さというものは我々が思うだに戰慄せざるを得ないと思うのです。  又第四点として第六條の二項におきまして、「通常不当な方法」でと、こういう規定があります。この通常不当な方法でという表現は、政府の説明によりますれば、いわゆる不当の方法の上に「通常」という言葉を冠して制約したと、こう言うのです。併し、この立法の表現形式から申しますれば、却つて複雑になるのです。「不当な方法」と言い切つておきますれば、それで目的は達するものと考えなくちやならぬ。その上に「通常」と、こう申しますると、例えば公務員が公務上知り得たことを、これは通常では知ることができない。従つてそういう事項を、自分の家内に、家族に漏洩しますれば、この第六條第二項によつて漏洩罪として処罰されるわけです。かようなことは……本法が第一條から全條文を通じましていわゆる過失罪を罰していないのです。故意なき行為は罰していないのです。この趣旨から申しますれば、この第六條の一項の後段及び二項の場合におきましては、故意がなくとも、この点において、そういう事実さえあれば直ちに処罰されるという不合理な結果を招来するのであります。故にこの点に対するところの修行を行わんとするものであります。  次に、第七條の二項中に「教唆し、又はせん動した者」と、こういうのを、「教唆した者」というふうに修正いたしたいと思うのです。これはたまたま破壊活動防止法案において、この煽動という言葉は問題になつておりますから、皆様においても注意される点と思われますが、併し最近、政府はあらゆる法律に煽動という用語を濫用し過ぎておる。本法の場合殊にそうです。本法の場合において煽動するという場合が果してどうあるでしようか。煽動ということは、御承知の通り、不特定又は特定多数人に対しましてその中正の判断を失して実行に至らしむることを言うのです。してみますれば、本法の場合におきまして、探知、收集という、秘密に行うというこの犯罪に対しまして、多数の人の前で以てその人の決意を実行に至らしむるというような煽動行為が行われ得るかどうか。事実上あり得ないのです。仮にこれがあるといたしましても、仮にあるといたしましても、その場合は蓼々たるものです。殊にこの煽動という言葉自体は非常に拡大拡張して解釈される慮れがあるのです。こういう点は立法をする場合においては嚴に愼しまなくてはならぬと思うのです。この意味において、この点を修正いたしたいと思うのです。  次に第十九條中の「参考人」とあるのを、「裁判官の許可を得て、参考人」と、こういうふうに改めたいと思う。この趣旨は、第十八條におきまして、アメリカ軍隊から要請がありますれば、裁判官の許可を得て家宅捜索ができる、臨検ができるという規定になつておるのです。然るに、第十九條の場合に限つては、裁判官の許可を得ずして、検察官、司法警察員は直ちに日本国民を尋問することもできる、検証することもできる、物を領置する、いわゆる押收することもできると、こういう規定でございます。十八條においてすら許可を要件としているのです。然るに十九條の場合において何が故に許可を外すか。これは政府の説明によりますれば、このアメリカ合衆国の要請は判断を許さない。判断を許さないのだから、従つて裁判所の許可を得ることは必要ないと、こういうのです。併し、若しそういう見解の下にこの十九條が規定されているとするならば、それこそ由々しい問題だと思う。少くとも、日本の行政権、司法権の活動は、この範囲においては主権が制約されていると言わなくちやならぬのです。アメリカの命令は、即、日本国民にそのまま適用されるということになる。日本の主権はこの範囲において重大な制約をこうむつておると言わなくちやならぬのです。かような不合理な結果があり得ようか。殊にこの十九條に定めることは、その行為自体が即ち司法権の行使で、準司法権の行使です。検察官の尋問権、捜査権及び検証権、そういう準司法権として、日本の国内法においては刑事訴訟法においてこの手続を非常に愼重に規定しているのです。而も政府はこれは裁判所の許可を要することにしているのです。にもかかわらず、この場合に限つてのみ裁判所の許可なくして独自に單独になし得るということは、これこそ法律自体憲法の精神をみずから壊して行くというあり方です。あえて憲法違反と言うても私は差支えないと思うのです。かようなあり方は、我々は立法の際において十分常に注意しなくてはならんのです。知らず知らずのうちに、憲法に定むるところのあらゆる保障というものが、こうしたら一つ一つの法律によつて片隅から崩されて行くというあり方は、国会議員として常に私は深い関心を持たなくてはならんと思うのであります。次に、この法律は安全保障條発効に至るまでに成立する予定でありまして、原案には発効と同時にこの法律の効力を生ずるという旨が規定されているのでありますが、不幸にいたしまして成立せずして本日に至りましたから、この原案のいわゆる公布に関する事項を修正いたしまして、原案の安全保障條発効の日から効力を生ずるというのを「公布の日」からその効力を生ずると、こういうふうに修正いたしたいと存ずる次第であります。  以上の点の修正案をお手許に差上げてありますから、十分この修正点に対しまして皆様の御同意をお願いいたしたいと思います。殊に、この法律が一たびできますれば、我々は曾つての、スパイ活動に対するところの、あの規制されたところの軍機保護法のような悪法的な法律の下に再び私たちは生活しなくちやならん。この危險さというものを我々は考えてみなくてはならん。殊に先ほど申しましたごとく、言論に対するところの大きな制約であるという点も重視しなくてはならんのです。かような法律は一党一派の政策的な法律じやないのです。国民全体に対するところの一般法規であるのです。でありますから、我々は政党政派を超越いたしまして、参議院として、いわゆる政党の縦の繋がりの線は第二義的に考え、参議院は参議院としてのあり方において、この行き過ぎた法律に対しまして国民のために規正することが最も我々に課せられた任務の遂行ではないかと思うのです。この意味において、何とぞこの修正案に対しまして御賛成をお願いいたしたいと存ずる次第であります。  以上であります。(拍手
  54. 三木治朗

    ○副議長(三木治朗君) 長谷山行毅君。    〔長谷山行毅君登壇拍手
  55. 長谷山行毅

    ○長谷山行毅君 只今上程されました両法律案に対する一部修正案につき、発議者を代表いたしまして趣旨弁明をいたします。  先ず日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定に伴う刑事特別法案に対する一部修正案についで申上げます。その修正の案文は、本法案の附則中の「日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障條約の効力発生の日」を「公布の日」に改めるというのであります。本法律案は、附則におきまして、「この法律は、日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障條約の効力発生の日から施行する」と規定しておりまするが、日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障條約は、本法成立前にすでに去る四月二十八日発効いたしたのであります。このままでは施行の日が公布の日に先立つという不都合なことになりますので、これを是正するために、附則中のこの施行期日を公布の日に改める必要があるのであります。これがこの修正案提出の理由であります。  次にポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く法務関係命令措置に関する法律案の一部修正案について申上げます。  その案文は、第一條中に「日本国との平和條約の最初の効力発生の日以後も、」とあるのを削りまして、又附則第一項中の「日本国との平和條約の最初の効力発生の日」を「公布の日」に改めるというのであります。その理由は、この法律案は第一條におきまして、同條に掲げる命令及び命令の規定について、「日本国との平和條約の最初の効力発生の日以後も、法律としての効力を有するものとする」と規定し、又附則第一項におきまして「この法律は、日本国との平和條約の最初の効力発生の日から施行する。」と規定しております。併しながら、日本国との平和條約は、本法律案が法律として公布される前すでに去る四月二十八日に発効しておりますので、本法の施行期日は、少くともこれを公布の日と同じくするために、附則第一項の規定中のこの「日本国との平和條約の最初の効力発生の日から」とある部分を「公布の日から」と改める必要があるのであります。又第一條中に掲げられるところの諸命令及び命令の規定も、平和條約の発効と同時に施行せられることになりましたところの「ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件の廃止に関する法律」のうちの、「他の法律で廃止又は存続の措置がとられない限り平和條約の効力発生の日から百八十日間を限り法律としての効力を有する」との趣旨の規定によつて、平和條約発効の四月二十八日から百八十日間は当然法律としての効力を持つことになつたのであります。従いまして、本法案第一條中の「日本国との平和條約の最初の効力発生の日以後も」とある部分は、もはやこれを存置する理由がなくなつたのであります。従いまして、立法技術上簡明を期するためにこれを削除する必要があるのであります。これが本修正案提出の理由であります。  以上簡單ながら両法律案に対する修正案の趣旨弁明といたします。(拍手
  56. 三木治朗

    ○副議長(三木治朗君) 討論の通告がございます。順次発言を許します。吉田法晴君。    〔吉田法晴君登壇拍手
  57. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 私は日本社会党第四控室を代表し、只今議題となりました日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定に伴う刑事特別法原案に反対、伊藤議員等野党側提出修正案賛成の討論をなすものであります。  先ずこの刑事特別法案は、行政協定、なかんずくその第十七條、第二十三條の條項に基きまして制定せられるものであることは明らかであります。然るに行政協定の法的性格については明らかでございません。法務委員会において佐藤法制意見局長官は、「行政協定は條約であり、安保條約第三條により包括承認を受けているから、国会の承認、批准を受けている。従つて行政協定たる條約は憲法第九十八條によつて国内法たるの効力を有する。この法体系の上に刑事特別法を組立てるのだ」と説明をされました。ところが同じ委員会で木村法務総裁は、依然として「行政協定は国会の承認を要しない。政府間の取極だ」と答弁せられました。同じ法務府内でこのように意見の食い違いがあるのでありますから、政府部内の意見の不統一のあるのは当然であります。議員各位御記憶の通り行政協定は條約であり国会の承認を求むべきであるという議論が、強く、民主クラブを含めて、言い換えますれば広く国民各層から出たためでもありましたが、吉田内閣総理大臣初め多くの閣僚は、アメリカの例を示唆しつつ、安全保條約第三條によつて任された両政府間の行政的取極であるという主張を中心に、野党の非難に対しては、仮に條約であるにしても安保條約第三條で承認を得ておると強弁したのであります。私はここで行政協定そのものを論議しておるのではありません。刑事特別法の法的基礎の性格を論じておるのであります。刑事特別法という大きな建造物、国民の権利義務に極めて重大な関係のある法律案の基礎を問題にしておるのであります。基礎が固まつておらない、或いは基礎がないのに、丸ビルのような大きな建造物を建てようとしても、それでは建造物は引つくり返らざるを得ないのであります。砂上の樓閣とはこのことであります。(「心配は要らない」と呼ぶ者あり)  なお、ここで一言附言をいたしますれば、私ども国会議員が論議の基礎といたしましたこの行政協定及び交換公文には、重大なミス・プリント、脱落があつたということであります。配付を受けた行政協定の二十三條後段にいう「合衆国の設備、備品、財産、記録及び公務上の充分な安全及び保護を確保するため」云々ということからは、この刑事特別法の実体法の中心をなす軍機保護の規定、而な広汎にして不確定、曾つての軍機保護法のような役割を果す虞れのある規定は生れて来ない。と申しますと、「公務上の」の次に「情報の」という文字が入つてつた、原文はオフイシアル・インフオーメーシヨンであるというのであります。この政府答弁にも行政協定に対する政府考え方がよく現われております。アメリカ側と日本の政府できめた行政協定という取極文書に書いたもの、こういう一つの文書の中には、政府政府との間を規律する法律関係はありましよう。併し国民を規律する法律なり法体系は、国民憲法の原則によつて国会を通じて承認をして初めて生きて働き得るものとなるのであります。国会の承認を得なかつた行政協定はまだ政府の持つておる原本の紙の中に眠つております。この眠つた法体系、    〔副議長退席、議長着席〕  生きて動いていない法体系の上に刑事特別法という新たな法体系を作るということは不可能であります。安保條約に基いてと木村法務総裁は申しましたが、安保條約第三條からはかくのごとき刑事特別法は出て参りません。かくのごときアメリカ軍の軍機を保護するための法律、或いは日本国の法令による罪にかかる事件以外の刑事事件についての協力のための法律規定は、当然には出て参りません。更に行政協定の国内法的性格が判然しないからこそ刑事特別法制定の必要があるのでありましよう。法律制定の法的根拠のない法律、條約関係も明らかでない根拠に基いて、憲法上の諸原則、国民の権利義務が大幅に制約せられるような法律は、違憲と言わざるを得ません。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)これが原案反対の第一の理由であります。  原案反対の第二の理由は、独立前、占領下において無理をしてまでこの法律を成立せしめなければならないとせられた政府の意向、態度と関連いたしております。この法律原案の立案制定についての自主性のなさ、従つて又その内容への影響であります。この法律案は、元来、簡單に言いますと、外国の軍隊の安全を守るために日本人を罰し、外国の裁判に協力するための手続を規定した法律でありますが、衆参両院が審議した日数は数日であります。国民の権利義務に対する重大な影響、法案に含まるる問題の重要さに鑑みて、審議を急ぎ、講和條発効までに成立せしめなければならぬ理由政府に質しましたところ、講和倹約発効後は、「民事、刑事裁判権の行使に関する覚書」がなくなるので、合衆国軍隊の要員の逮捕に協力できないので、どうしても講和條発効までに審議を終り、成立を図られたいというのでありました。それならば、法案中緊急を要するのは、アメリカ軍の要員を逮捕するに協力する手続規定だけで、日本人をアメリカ軍の安全のため罰する実体規定は、占領七年近い間にスパイ行動が数件あつたに過ぎなかつた点から考えても、緊急を要するわけではなく、なお数日を費して、問題の第六條及び別表等、軍機保護規定その他実体規定の審議に愼重を期すべきであると申したのでありますが、対外関係だけを考慮して、政府與党は焦慮、強行審議を図つてつたのであります。講和條約、安全保障條約乃至行政協定が対等の立場で結ばれたか否かはここでは論議をいたしません。併し少くとも、安保條約及び行政協定における不平等の立場と、日本政府の卑屈な態度が、この法律原案に如実に現われている点、国民の一人として批判し反対せざるを得ないのであります。この立法に当つての卑屈な態度は、法律原案の上に現われては、実体法の一番大きな軍機保護規定の軍機とは何ぞやという概念は最後的にはアメリカ軍によつてきめられるようでありますし、手続規定の中心である第十八條、第十九條によれば、アメリカ軍の要員逮捕のためにというので、合衆国軍事裁判所又は合衆国軍隊から協力の要請がある場合には、日本の行政権——検察事務官若しくは警察職員をして、人の住居に侵入させ、これらの者により日本国民を訊問させ、その他、検証、物の領置をすることができる旨規定しているのであります。言い換えますと、行政権乃至準司法権の一部がアメリカ軍の下に使われ、これによつて日本国民が、刑事訴訟法に基かずして、言い換えますならば、司法権に基かずして邸宅に侵入され、訊問、検証され、物を領置せられる結果と相成ります。政府は第十九條を間接強制と呼び、「刑事訴訟法による令状その他がないのだから、これを断わることができる。正当の理由なくしてこれを拒絶するときは過料、即ち行政罰が課せられるだけだ」と言うのでありますが、原案そのままでありますと、実際は国民憲法第三十二條にかかわらず裁判所以外で取調べを受け、憲法第三十五條にかかわらず令状なくして住居に侵入せられることになるでありましよう。合衆国軍事裁判所又は合衆国軍隊による抑留又は拘禁が間違いであつた、罪がなかつたときまつた場合の刑事補償を、原案第二十條によりますと、日本の国が、日本の国民がするという規定がございます。これも全く自主性のない規定であると言わなければなりません。    原案反対の第三の理由は、この法律原案が罪刑法定主義を崩し、行政フアツシヨ、行政権による国民の権利制限の時代を招来する第一歩になる点であります。この法律原案の特徴として法文各條の表現が極めて抽象的であつて、如何ようにも解釈し得る余地のあることは、一読せられた諸君の直ちに看取し得られるところであります。先ほど修正案の趣旨を説明せられました伊藤議員の原案と修正案を対照しての説明でもおわかりになつたことと信じます。刑法にない煽動独立罪とするごときもその一つであります。法務府の解説書によれば「合衆国軍隊が真に機密として嚴守しているものが、たやすく一般的取材活動の対象となり得るとは考えられない……。常識的な行動をこの罪に問う心算はないのである。」とか或いは「何らかの公刊物にでも一旦掲載せられたものは、それが違法な手段によるものであつたとしても、もはや本條に言う機密にはならない。」……「又一般のうわさに上つていることも「公になつているもの」に当る場合が多いであろう。」と言い、「通常不当な方法によらなければ探知し又は收集することができないような機密(これを限定機密という)に制限している。これは言い換えれば、その機密は相当程度高いものと言うことができる。」等々立案者が搾ろうとしている意図は現われておりますが、これが原案には法文上明らかに現われておりませんので、裁判にも、実際、法を運用する警察官等行政機関にも、何の意味も持つておりません。そこで法務府はこれを訓令なり通牒なりで流すと言つておりますが、このことが即ち法上の保証ではなく、行政権の解釈に、言い換えれば、行政権の運用に任せられているということであります。原案法文自身は極めて抽象的であつて、如何ようにも解釈し得る。而もその法の解釈運用の大事な点が立法府ではなくて行政権に握られている。この場合、アメリカ軍の安全だけを考え法務府に握られているということに相成るのでありますが、かくては罪刑法定主義は崩れ、行政フアツシヨが実現することと相成ります。封建時代或いは専制政治の下においては、行政権みずから刑罰法規を作り、その法規に違反するか否かも行政権自身で判断いたしました。このために、無制限の逮捕、拘禁、処罰が行われ、政略的な裁判、処罰が行われました。これに対する批判と反省が三権分立主義となつたことは、私が申上げるまでもありません。罪刑法定主義は、かかる刑罰に関する封建主義、専制主義に対して、民主主義を確保する一大原則であります。かかる民主主義のイロハを国会において口にしなければならんというのは残念でありますが、明治憲法の不完全な民主主義が戰争中の軍閥官僚のフアツシヨ支配によつて完全に蹂躪せられた後、敗戰による深い反省の上に築かれた民主憲法の下において、公共の福祉の名の下に、この法律の場合、アメリカ駐留軍の安全のためと称して、憲法上の諸原則が容易に歪められ、踏みにじられようとする以上、このイロハを取上げ注意を喚起せざるを得ないのであります。罰刑法定主義は、国民の意思機関である国会を通じた法律によるにあらざれば国民は処罰されることがない、それは法律制定前に遡つて、制定以前の行為について処罰せられることがないという不遡及の原則を含むと共に、法律自身が具体的であつて、広い恣意的な解釈権を行政権に與えるものであつてはならないことも当然に含まれております。この刑事特別法原案の法文の規定が抽象的であつて、訓令、通牒等を必要とするということが、この刑罰法規における罪刑法定主義の崩壊を示しておることは明らかであります。過去の日本において軍機保護法が如何に言論報道の自由を制限して行つたか、スパイ行動を捕えるよりも善良な国民を捕え、国民を畏怖させたか、未だよく記憶に残つておるところであります。今や、強い民主主義的傾向の強化推進ではなくて、その逆に、憲法のあらゆる国民の権利義務に関する條章が踏みにじられて行き、あとには憲法の改正手続だけが残つておるといつたような現状において、換言しますならば、民主主義かフアシズムかという問題が、單に議論としてのみではなく、日本の政治の一番大きな問題となつておるとき、法理論上は、国民の権利義務か公共の福祉かということで争われておるのであります。  この法律案の審議を通じて、政府、自由党は、判然と、アメリカ軍の機密、アメリカ軍の安全という形で公共の福祉概念優先を主張せられました。我が党及び我々野党は、そういう法益の存在を全く否認するのではありませんが、国民の権利義務の擁護の立場から、その侵害を最小限度にとどめ、或いは民主主義の原則に従つて三権分立主義の下においてのみ許そうという態度をとるのであります。尊い犠牲と深い反省の上に確立した民主主義と民主憲法擁護のために、民主主義の一支柱、要素である罪刑法定主義を守るために、行政フアツシヨ、行政権による国民の権利義務の悪意的侵害に対して国民を守るために、我が党は断固この刑事特別法原案に反対し、せめて野党修正案程度には修正すべきであるということを強く主張し、原案反対、野党修正案賛成の討論を終る次第であります。(拍手)  なお私は、討論の冒頭に或いは最後に、修正案に賛成、原案に反対と申上げましたのは、修正案には賛成、これが可決せられなければ、原案に反対の意味でありますから、念のため申上げておきます。(「了解」と呼ぶ者あり)
  58. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 堀眞琴君。    〔堀眞琴君登壇拍手
  59. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 私は労農党を代表いたしまして、伊藤修君ほか五十数名の提案にかかりまするところの修正案に反対し、若しこの修正案が通過しなければ原案に反対をいたすものであります。(「賛成だろう」と呼ぶ者あり)反対をいたすものであります。先ず総括的に……(「修正案に賛成だろう」と呼ぶ者あり)修正案に賛成し、若しこれが通過しなければ原案に反対をいたすものであります。  先ず総括的に申上げるならば、第一に、この刑事特別法案は、平和條約、日米安全保障條約並びに行政協定に基いて、そのいわば実体的な規定として設けられたものでありまして、この三つの條約が、日本の主権、独立、平和を脅かすところの不安全保障條約であり、隷属協定であるということにつきましては、すでに我々がこれを指摘し、反駁して参つたところであります。この隷属的な協定の具体的な規定として現われたのが本刑事特別法案なのであります。  本法案によりまするというと、駐留軍は絶大な特権を認められ、軍の機密を保持するという名目下に、行為そのものは勿論でありますが、その未遂、陰謀、教唆、煽動等をも処罰の対象といたしておるのでありまして、日本国民のあらゆる基本的な権利を侵害される危險があるのであります。この意味では、曾つての軍機保護法、国防保安法とその揆を一にするものでありまして、この曾つての悪法によつて当時の日本国民が如何にその人権を侵害されたかは、ここに改めて説くまでもないのであります。アメリカは民主国であると言われております。確かに民主国に違いありません。併しながら、その軍隊は、やはり軍隊である以上は極めて強力なるものでありまして、而もそれが風俗、習慣、言語などを異にする国に駐留いたしまするのでありまするからして、そこにたとえ善意であつても摩擦が起り得ることは、当然だと予期しなければならんのであります。軍の機密は苛酷な取締法規によつてこれを保持されるものではありません。軍と日本国民との間に信頼と友好の情が存在することが前提とならなければなりません。然るに国民感情の上におきましては、必ずしもその間に信頼と友好の情が存在するとは申上げることができません。殊に国の独立と平和を念願する国民の僞わらない気持の上では、外国軍隊の駐留はむしろ日本にとつて大きな抑制であるということを感じておるのであります。若しそうだとするならば、取締法規は両者の間に徒らに不安と疑念を釀すところの要因となるでありましよう。その意味におきまして、我々は、この法案は日本人の基本的人権を侵害し、更に延いては日本をして外国の下に奉仕せしめるという結果を招くことになると考えられるのであります。その意味におきまして、我々は原則的には本法案に反対いたします。併とながら、民主主義の政治原則というのは、基本的には、基本的人権を尊重し、これを政治的に侵害せしめないための保障としての制度組織を作ることに重点があると思います。而もその民主主義原則から申しまするというと、或る政策、或る議案を決定するに当りましては、それが多数の人々によつて支持されることが何よりも前提とならなければなりません。その意味におきまして、我々は、次善、次の善なるものとして修正案に賛成せざるを得ない。併しながら修正案そのものとしては必ずしも十全なものではない。我々もつと根本的に日本の国の独立考え日本国民の基本的な権利を考えるならば、我々はこの修正案に対して更に大幅な、若しくは、もつと根本的に言うならば、修正案そのものをも反対しなければならないでありましよう。併し只今申上げました民主主義の原則によりまして、我々は修正案の通過に対しまして心からこれを念願するのであります。  更に具体的に申しまするというと、例えば第二條であります。この第二條は施設又は区域を侵す罪について規定しております。その施設又は区域からして、合衆国軍隊から要求を受けて撤退しない者、退去しない者、これを罰するということになつております。修正案はこれについて「官報をもつて公示されたもの」についてこれを適用しようといたしております。例えば農民等が自己の農地を米軍使用区域に繰入れられ、強制的に立退かされるという場合等が想像されるのでありますが、若し修正案ではなくて原案の通りにこれを罰するということになりましたならば、果してどういうことになるでありましよう。私はそれを考えますると、この第二條の規定は極めて危險なる内容を含むものだと考えなければならんと思うのであります。  それから第五條であります。軍用物を損壊する等の罪を規定したものでありまするが、この規定につきまして、過失によるところの損壊、それをこの第五條によつて罰する対象とされるところの危險が多分にあるのであります。故意であるか過失であるかということの立証責任は、而も使用者側の一方的な判断によつてきめられることになつているのであります。第五條の修正規定は、「糧食、被服その他の物」というのを、「その他軍事上重要な物」と改めております。このことによつてその損壊されるところの対象の内容が規定されるということになりますのは、せめてもの次善の修正であると申さなければならんと思うのであります。  それから第六條であります。合衆国軍隊の機密を侵す罪について規定したものであります。この規定は條文そのものが極めてあいまいであり、非常に広汎な内容を含むものだと申さなければなりません。例えば「合衆国軍隊の安全を害すべき用途に供する目的をもつて、又は不当な方法で、探知し、又は收集した者は、十年以下の懲役」という規定になつておるのであります。この解釈は、即ち合衆国軍隊の安全を害すべき用途に供する目的を以て探知したか、收集したかということの解釈は、一方的に解釈される危險を含むばかりではありません。而も規定によりまするというと、これを他人に漏らした者についても同様に罰するということになつておるのでありまして、この解釈は極めて拡張される危險を持つておるのであります。殊に別表によるところの防衛に関する事項以下であります。この事項を見ますというと、一切の事柄がその中に含まれております。防衛に関する事項、第二は編制又は装備に関する事項、第三には運輸又は通信に関する事項、一切のアメリカ軍隊の駐留に関する事項をこの中に含んでおるのであります。例えば新聞記者がその報道によつて、どこどこに軍隊が駐留しておる、どれだけの軍隊が駐留しているというようなことを報道いたしましても、勿論処罰の対象になるのであります。これは、曾つての軍機保護法、国防保安法のそのままの再現だと申さなければなりません。又駐留軍の労務者が労働條件等についてその使用者側と交渉するその際に、労働賃金はどうである、労働者の人数は何人であるというようなことが、その交渉の際に分けにされても、やはり同じように処罰の対象となつてしまうのであります。なお注意すべきことには、その未遂、陰謀、教唆、煽動等をも罰するということになつておるのであります。何が未途である、或いは何が教唆である、煽動であるというようなことについての解釈は、これ又一方的に判断されるどころの危險を持つものと申さなければならんのであります。修正案はこの第六條別表に掲げる事項について、先ほど伊藤君が説明されたような内容にこれを修正しようとするのでありまするが、我々は更にこれをもつと大幅に修正すべきであると存ずるのでありまするが、併し次善のものとして一応これに賛成するものであります。  それから第十五條であります。証人の出頭等の義務に関する規定でありまするが、この規定は刑事訴訟法におけるところの証人の出頭等の規定と照らして考えてみまするというと、不当に高い刑罰を規定しております。日本の法律は、特別法によつて高い刑罰に処することは法の精神から申しましてこれを禁じておるのであります。若し刑事訴訟法或いは刑法その他の法律において、一定の刑罰の規定を持つているならば、それに準じて特別法は規定されるということが一般の通則であると考えられるのであります。その意味におきまして、この十五條の証人の出頭等の義務に関する規定も極めて不当であると申さなければならんのであります。それから十八條並びに十九條、つまり日本国の法令による罪に係る事件以外の刑事事件についての協力、日本官憲がアメリカの軍隊に協力しなければならんということを規定した條項でありまするが、日本国の法令によるところの罪以外の刑事事件で日本の検察官又は司法警察員の協力を特にここで強調いたしております。これは日本の自主性を侵害し、全日本の国民の不安と拘束を招来する危險があると申さなければなりません。第十九條第一項中について「参考人」を「裁判官の許可を得て、参考人」と修正案は修正をいたしております。少くとも検察官又は司法警察員の協力を規定した原文に比較いたしまして、「裁判官の許可を得て参考人を」云々と修正することは、次善の修正案として我々はこれに一応賛成を表明するものであります。  附則につきましては改めて申上げるまでもないと思うのであります。  要するに、この刑事特別法案は、日本が三つの国際條約を結ぶその裏付けとして、裁判管轄権をアメリカ側に讓渡し、而もその内容の上におきましては、アメリカ軍隊の機密の擁護という美名に隠れまして、日本の独立主権を侵害し、更に国民の基本的な権利を大幅に制限しなうといたすものでありまして、我々としては原案には断固反対を表明せざるを得ないのであります。(拍手
  60. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 溝淵春次君。    〔溝淵春次君登壇拍手
  61. 溝淵春次

    ○溝淵春次君 只今伊藤修君等の御提出になりました日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定に伴う刑事特別法案の修正案に対し、私は自由党を代表いたしまして反対の意見を表明するものであります。従つて長谷山君等より提出されたる修正案並びに原案に賛成するものであります。  先ず修正案の第一点は、本法案第二條の施設又は区域の要件といたしまして、「官報をもつて公示されたもの」を加えるという御意見であります。官報に公示することによつて一般に周知せしめて、その認識の正確を期するという、その修正の御趣旨は了承されるのでありまするが、併し官報を以て町村名や地番等を公示したといたしましても、実際現地に当つてみて、官報に公示されたその地番が具体的にどれに当るかを知ることは、極めて困難であることは、私どもの経験に照らしても明らかなところであります。(「両方やつたらいい」と呼ぶ者あり)それよりは、むしろ現地において具体的に明確に、而も周到に、その施設、区域の範囲を示す方法をとることが適切であり、且つ有効であると信ずるのでございます。(拍手従つて我々はかような修正はあえて必要のないものと確信するのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)  次に、第五條の軍用物の意義に関する修正点でありますが、もともと原案に規定する「兵器、弾薬、糧食、被服」というのは、本條規定の軍用物を例示したに過ぎないのでありまして、「その他の物」というのも、これらの例示が示すような軍事上重要な物に限定せらるる趣旨であることは明白でありまして、委員会における質疑によつても、政府側の説明はそれを明らかにいたしておるのでありますから、この修正もあえて必要なきものと考えるのでございます。  第三点といたしまして、第六條の修正点であります。その第一点は、合衆国軍隊の機密の要件として、「別表に掲げる事項」のほかに、「その漏えいが合衆国軍隊の防衛作戦上支障を生ぜしめる虞のあるもの」を附加するという修正の御意見でございまするが、これは軍の機密の意義を成るべく局限せんとする趣旨には副うかも知れませんけれども、本條運用の実際の面を考えると、かような要件を加えることになれば、機密保護の趣旨は全く没却されてしまうのでございます。実際の運用面からみて、その適用の余地は殆んどなくなるのではないかと私どもは思うのでございます。その理由は、かような要件を加えることになれば、その機密が果して防衛作戰上支障を生ぜしめる虞れがあるかどうかを、我が国検察庁、裁判所において立証し、判断せねばならんことになります。従つて、これを立証判断するのには、公開の法廷において何が軍の重要なる機密であるかを明らかにせねばならんことになりまして、その結果、公判審理の過程において軍の機密が更に漏洩暴露されなければならんという結果を招来することになるのであります。かような実際面から考えまして、本條の趣旨を全く骨抜きにし、死文にも等しくするような本修正案には、賛成できないのでございます。  第四点といたしまして、第六條第一項の「又は」を「且つ」に改める点であります。政府が本條第一項の機密の探知收集罪について、旧軍機保護法が單なる探知收集行為をも犯罪としていた建前を排しまして、一定の目的を以てする場合と、一定の方法による場合のみに限定したこと、並びに本條は故意犯のみを罰して過失犯を処罰しない建前をとつたことは、誠に諒とするところであります。従つて、これを更に立法上本條の構成要件を限定して、常に加害の用途目的と不当手段の二要件を附加することは、本條の規定を全く動き得ないようにいたしまして、本條制定の趣旨をそこなうものと言わざるを得ないと思うのでございます。この点は、近時における諜報活動の実態を見れば十分に納得されることであると思うのであります。即ち近時の諜報組織は極めて複雑化しておりまして、幾段階にも手足を使い、その縦の関係において、末端で直接その機密を探知收集する者については、かかる加害の用途に供する目的が立証できない場合が極めて多いと思われるのであります。これに関連して、新聞等の報道機関が取材活動の際に本條に該当する場合が生じないかとの危惧の念を持たれる向きつもありまするが、本條は故意犯のみで、過失犯は処罰されないのでありますし、又刑法第三十五條の正当業務行為として違法性阻却の法律が適用される余地のあることを考えますると、最も常識豊かな新聞言論等のかたがたがその良識を以て行動される限り、本條に触れるようなことは起り得ないと思われるのであります。  次に、第六條第二項に「加害用途に供する目的」を附加するとの修正点であります。このような目的を立証することは、最近の複雑極まりない諜報活動の状況からいたしまして、その立証が極めて困難であります。このことは前に述べた通りでありまして更にこの機密が一旦他に漏れて公けになつてしまえば本法にいう機密に該当しなくなること等も考え合せますると、機密保護の趣旨から原案の規定は止むを得ないと考えるのでございます。併し、その運用については当局において事案の内容を十分検討され、不用意に機密を漏らした者の処置については愼重に考慮し善処されんことを望むものであります。  次に第七條第二項の「せん動した者」を削るとの修正点であります。機密保護の本旨が飽くまでも機密漏洩の未然防止にあることは勿論であります。而うしてその意味において事前にその段階における各般の危險な行為取締る必要のあることは十分了解し得るところであります。今日の社会情勢について見まするに、大衆に対し、その一時の感情に訴えて、大衆行動によつてかかる犯行を犯さしめようとするいわゆるアジ行為に出る者のあることは、本日ここに木村法務総裁報告されたる先般の騒擾事件等の例から見ましても想像に難くないところであります。(「デマだ、あんなものは」と呼ぶ者あり)かかる者の取締に欠けるところがあつてはならないと考えるのでございまして、この規定が不当に言論の圧迫に濫用されたり、いやしくも国民の自由や基本的人権が侵害されることがあつてはならないことは勿論でございまして、本法の運営については、駐留軍の安全確保と日本国民の自由、入権の保障との調和を図つた本法案の立法の趣旨に副うように、十分意を用いられんことを当局に希望してやまないのでございます。次に、第十九條の処分を裁判官の許可にかからしめることは、何を基準として裁判官が許否の決定をするかの点において本質的な障害があるのであります。即ちこの場合、処分の必要性は合衆国の要請がある以上判断の余地がないのであります。この点、第十八條第二項において裁判官がその資料によつて判断し得る場合とはおのずから異なるのでございます。かかる見地からこの修正点にも賛成いたしかねるのでございます。  最後に附則の施行期日の修正点であります。これは本法施行のためにはその修正の必要あることは勿論でありますが、長谷山君ほか三十名より別にこの点の修正案を発議提出されておりまして、それによつてその目的も達し得るのでありますから、伊藤議員の提出されましたるこの修正案には賛成することはでき得ないのでございます。以上現段階における国際情勢と国内事情とを考慮したる結果、長谷山議員等提出の修正案並びに原案に賛成するものでありまするが、先輩として尊敬する伊藤議員の修正案でありますけれども、遺憾ながら以上の理由によりましてこの修正案には反対し、長谷山君等提出にかかる修正案並びに原案に賛成いたしまして、私の意見を終る次第であります。(拍手
  62. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 岩間正男君。、    〔岩間正男君登壇拍手
  63. 岩間正男

    ○岩間正男君 日本共産党は、この人類史上稀な悪法刑事特別法案に対しまして、野党側の修正案には賛成、修正部分を除いた原案には断固反対するものであります。  この法案が破壊活動防止法案と共に国会の通過が急がれているこの日本の実情、特に衆議院では僅か三日間の審議で本会議に上程され、而もその出席定数が足りなかつたために採決を一日延ばしの醜態をあえてしたのであります。ところで、当参議院におきましてはどうかと言いますに、これも委員会の本審議はわざわざ日曜を潰し僅か三日間、去る二十八日與党自由党は強引にその通過を策したのでありますが、それが成功しない。遂に本日まで持ち越されたのであります。なぜにこのように、日本国民の首に繩をかけ、その手足をもぎ取るような馬鹿げた法案が急がれねばならないか。殊にも和解と信頼を表面の口実とした講和発効祝賀の空騒ぎのほとぼりがまだ消え去らないこの日本の一方では、このような悪辣極まりない法案が無理やりに押付けられようとしている。この欺瞞に満ちた講和の実相こそは極めて象徴的であり、日本国民と世界の平和愛好人民とはひとしくこの事実を見逃さないでありましよう。それはなぜであるか。言うまでもなく、それは、このたびの平和條約が平和とはおよそ名ばかりの見せかけであり、実際は戰争條約にほかならなかつた何よりの証拠であります。又安全保障條約の安全とは似ても似つかぬ不安全條約であつたことを雄弁に物語つているのであります。(「ノーノー」と呼ぶ者あり)そして、その不安全條約の結果としての行政協定、この行政協定に基いてこのような悪法が用意されねばならなかつたのであります。私は過般の二十七年度予算審議に当りまして、日本共産党を代表して、この刑事特別法案が如何に日本国民の基本的人権を侵犯し、言論の自由を完全に封殺して、平和と独立への一大障壁となるであろうかということを、再三再四指摘したのであります。而も更にその及ぼす実害が、駐留軍という軍事的権力によつて背後から支配される関係上、曾つての軍機保護法や只今問題となつておりますところの破壊活動防止法案などに優るとも決して劣らない悪法であることを又指摘して来たのであります。而も今具体的にこの法案の内容を検討するに及びまして、その指摘が如何に正しかつたかを思い、今更慄然たるものを禁じ得ないのであります。たとえ破防法が院内外の民主勢力の一大反撃によつて撤回されることがあつても、今その間隙を巧みに縫つて本法案が成立するならば、吉田政府並びにその主人公どもの意図の大半は達成されるであろうことは言を待たないところであります。要するに、かかる未曾有の悪法は、その成立のために努力した人々の名前が今後長く長く国民の記憶から消そうにも消すことができないほどの歴史的な意味を持つ悪法であることを銘記すべきであります。(拍手)東條時代における軍機保護法が、如何に国民の良識と言論の自由を奪い、手足をがんじがらめにして、破滅的な戰争へ戰争へと国民を駆り立てたかは、我々の記憶にまだなまなましいところであります。而もこの刑事特別法がアジア侵略のための外国駐留軍の安全と軍機保持とを名目として、実は日本国民の基本的人権を完全に売渡すことにおきまして、吉田政府日本国民に対し二重の犯罪を犯すことであり、(「ノーノー」と呼ぶ者あり)許しがたい破廉恥と言わなければならないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)現に最近の北京放送は、この間の事情に触れるかのように、「アメリカ帝国主義者は吉田政府を通じて日本国民を弾圧するだけでは不安なので、かの悪名高いアメリカ連邦調査局を東京に設け、彼ら自身の手で公安調査局の全活動を直接監視しようとしている」と述べていることでもその一端が窺われるのであります。このようにして、日本国民は破壊活動防止法と刑事特別法の二本建によつて文字通り軍事警察のテロル的支配下に置かれ、まさに有史以来の民族的危険にさらされようとしているのであります。  次に、私は本法案の危險極まりない一、二の性格を指摘してみたいと思います。  先ず第一に、本法案は、政府の説明によれば、アメリカ軍隊に対して現に敵対関係にあるもの、及びさして遠くない将来敵対関係を生ずる可能性のある国、その他米軍の安全を害する意図あるものに機密を知られることは、その安全にとつて危險なので、その機密保持のために提出されたと言われております。これは誠に驚くべき説明であると言わねばならない。ここに現に敵対関係にあるもの、及びさして遠くない将来云々とは、具体的に言えば中共、ソ連、北鮮等を指すのでありましようが、これらの国々を仮想敵国視して今後の政策を推し進めることは、日本並びにアジアの平和のために危險極まりない暴挙と言わねばならないのであります。而もそれは何ら日本の必要によつてではない。アメリカ軍の必要のみによつてかかる立法が行われることは全く沙汰の限りと言わねばならないのであります。  更に驚くべきことは、その軍機なるものの内容であります。これは本法案の別表として例示されているところでありますから、諸君もその内容については詳しく御承知のことでありましよう。これによれば、防衛の方針、計画の内容、実施方針は言うに及ばず、アメリカ部隊の隷属系統、部隊数、その兵員数、装備、任務、配備、行動、又軍事施設の位置、構成、設備、性能、艦船、航空機、兵器、彈薬等の種類、数量、構造、性能等の一切に及んでいるのであります。無論軍事輸送や通信等についてもその例外ではないのであります。而してこれらの事項及びこれらの事項にかかわるところの文書、図書若しくは物件で公けになつていないもの、即ち新聞、雑誌、ラジオ等で公表されないものを探知收集し、又は他人に漏らした者は、十年以下の懲役に処することになつており、又その未遂者、陰謀者、更にこれを教唆した者、煽動した者等に対しては五年以下の懲役に処することが規定されているのであります。これは一見すれば誠に尤もなことのようで、実際は甚だ尤もでないのであります。なぜならば、例えば我々の頭上を朝夕飛び交うところのあの飛行機が一体B二九であるか、或いはB三六であるか、或いはジエツト機であるか、又その性能がどうか、一体その機数がどれくらいあるか等について会話を交えたとする。そうして、こうしたことは今までの日常茶飯事にあつたことでありますが、こうした事実すらも、取りようによつては直ちに軍機に触れるというので処断される結果になるのであります。又原子爆彈が果して日本に置かれているのかどうか。或いは細菌戦の恐怖が最近しばしば伝えられております。現に今朝ほどのラジオのニユースを聞きますというと、フランスのギヨリオ・キユリーが、国連軍が細菌戰を使つたということは全くこれはいろいろの論証によつて確認されると伝えているのでありますが、果してこれが行われたのかどうか、その計画がどこでどのようになされているか等々、これらの問題につきましては、日本国民にとつてはこれは深い関心事であります。何せアメリカ国民にとつては八千キロの海を隔てた対岸の彼方の問題でありましようが、我々日本国民にとりましては直接生命に関するところの問題でありますから、決してこれに対して無神経であることはできないのであります。こういうことについても、今後これについて語り、その賛否を論議することは非常に差しさわりがあるというので、国民は勿論、新聞、ラジオも口を縅して語ることを避けるという結果になるのであります。又通勤の電車や路上で、ナパーム彈や、戰車や、或いは軍需品を満載したトラックが移動する光景は、これまでしばしば我々の目撃しているところでありますが、これらの話題については無論絶えず防諜の目が光るのであります。何せアメリカ軍がいるのでありますから、いろいろなこういう事態を隠すことはできない。我々の目に日常生活の中でこれは触れる。だから、若しこういう危險は困るというなら、これはアメリカの軍隊に帰つてもらうよりほかないのであります。この根源を基にしないでこういう法案を作つて日本国民を彈圧しようとしている。殊にも行政協定がいよいよ実施されれば、国民生活は今までより多くの圧迫と破壊にさらされることは必至であります。軍管理工場の労働者はその劣悪な條件に堪えかねるでありましようし、今後ますます頻発する農地の取上げや漁区の立入り禁止に対しては、農民や漁民はその生存権を守るために反対鬪争を組織せざるを得ないであろう。これは又労働者、農民の権利であります。ところで、その反対鬪争に当つて、どこそこの工場ではどんな兵器が作られ、どこそこにはB三六発着の飛行機が作られつつあるということを訴えるに至ることは、これは当然自然の成り行きであります。而もこのような止むに止まれぬ基本的権利を守る鬪いすらも忽ち軍機に触れ、その処断が要求されることになるのであります。無論、新聞やラジオは事の真相を伝え、その賛否を論ずることはできなくなるのであります。学者、評論家の論評が又忽ち当局の忌諱に触れることになるのは明らかであります。もはやこうなれば、新聞やラジオのニユースは、一々米軍の許可を受けるか、又その提出奨励にかかわるものだけを取扱うことになるのであります。これでは日本国民は事の真相を知り世界の情勢を刻々に判断する一切の権利が奪われ、我々の知らない間にあの東條時代のような重大な段階に追い落されるのであります。これがアメリカ駐留軍に対しまして、その国防分担金としまして、なけなしの血税の中から六百五十億もの巨額な費用を支出したところの日本国民に與えられた唯一の報酬なのであります。尤も本法案の第六條によれば、本法案の適用は「合衆国軍隊の安全を害すべき用途に供する目的をもつて、又は不当な方法で」軍機漏洩を企てた者を罰する建前には一応なつております。併しこれを判定する者は、先ほどから問題になりましたように、誰かと言うと、言うまでもなくそれは米駐留軍当局であり、又その下請の日本警察であります。労働組合運動や農民組合運動彈圧のために、これらの悪法が常に拡張解釈され、不当極まる適用を見たことは、まだ我々の記憶になまなましい事実であります。否、初めからこうした人民彈圧の目的を以て作られているのが本法案の真の狙いであると私は断ぜざるを得ないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)而も不当極まる戰争條約の遂行によつて講和発効後の国内態勢に絶えずおびえている現政府は、これら悪法の悪用をこそ唯一の頼みの綱として国民の反対を彈圧する態度を強化するであろうことは、今までの例並びに今朝ほどからの政府の諸公の答弁によつて極めて明らかであると言わねばならない。「壁に耳あり」、いや「屋根裏に盗聽器あり」という日本の現状から察知しますならば、この上、政府は何をやり出すかわかつたものではないのであります。こうして「もの言えば唇寒し秋の風」、「無理が通れば道理が引つ込む」、「出る杭は打たれる」、「長いものには巻かれろ」、「さわらぬ神に崇りなし」というふうな、この馬鹿げた日本の隷属奴隷的な状態を現わす諺は多いが、こういう心理は基本的権利の要求をさえ石のごとく沈黙させてしまうでありましよう。こうして、ひとり軍事警察、秘密警察の恐怖組織のみが日本の隅々までも支配することになるのであります。  第二に私の指摘したいのは、米軍軍事裁判に呼び出される証人が出頭しなかつた場合、及び証言拒否、証拠湮滅、変造等に対する処罰であります。証人不出頭の場合には、米軍事裁判官の拘引状によつて日本の警察職員が逮捕できると明記してあるのであります。併し更に重大なことは、他人の刑事事件に対する参考人までが、取調や実況検分の名の下に身体の拘束及び捜査を行われ、又書類の提出を要求される。若しこの処分を拒み、妨げ、忌避した者は一万円の過料であります。証人や参考人に対するかかる規定は、全く世界にその例を見ないところであります。これに対して米軍の場合はどうかというに、日本の裁判管轄の適用除外、つまり治外法権の適用を受ける者は、現に服役中の米軍とその軍属はもとより、米軍に雇用され、又はこれに勤務し、更にこれに随伴する者、家族等、いわゆる軍の公的、私的を問わず、殆んど一切の関係者を含めているのであります。それらの者が受入国たる日本に対して犯した犯罪に対しましては、日本の裁判権から完全に除外されているのである。これを前記の日本側の証人や参考人に対してまで人権無視の罰則を設けているのと比較するときに、その屈辱的條件が如何なるものであるかについて、むしろ我々は唖然とするものであります。言うまでもなく、これは米英、米比、北大西洋基地協定等に全くその例を見ないものでありまして、吉田内閣が如何にアメリカ軍の御機嫌を取り結ぶために日本国民とその基本的人権を人身御供に供して顧みないかが、余りにも明らかであります。  以上は本法案の示す特徴を二三指摘したに過ぎないのでありますが、このような悪法によつて果して日米両国間の今後の友好と信頼が増進されるか否かは極めて明らかであると思うのであります。現にアメリカ国内でも、このような軍部專制が一国を支配する場合に、民主主義は完全に死滅し、その結果は戰争による破滅へ突入せざるを得ないことが警告され、大審院判事ウイリアム・ダグラス氏を初め、批判の声は日に日に高くなつているのあります。殊に最近の人民広場における事件に対しては、あのような事件を生んだ最大の原因がアメリカ軍の日本駐留にある点を極めて重視し、この上は一刻も早く米軍は日本を撤退すべきであるという輿論が良識ある人々の間に盛り上つていることは、諸君もすでに御存じでありましよう。(「知らない」と呼ぶ者あり)知らないのですか。これは不勉強ではないか。侵略主義者たちが如何なる口実を設けようが、八千キロの海の彼方にあるアメリカが、共産国の侵略を口実として、講和後も永久に日本に軍隊を駐屯し、そのあらゆる国土を基地化し、その人的、物的資源のすべてを挙げて防共の手段に供しようとする理由は成り立たないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)その道理に反した不合理については、一昨年の国連会議におきまして中共の伍修権代表が喝破したように、「若しアメリカが国内の南北戰争を戰つているときに、遥かに海を隔てた外国の軍隊がフロリダ州に上陸し、それはアメリカの侵略からアメリカを守るためであると弁解したら、アメリカ国民はそれを黙認するであろうかどうか。又同じように、アメリカが国内戰争で戰つているときに、どこかの国の艦隊がハワイを占領したら、アメリカ国民はこれを了承するであろうか」という意味のことを述べまして、朝鮮戰争並びに台湾におけるアメリカ第七艦隊の行動を世界の良識に訴えたことでも、すでに明らかであろうと思うのであります。安保條約と行政協定並びにそのために作られた刑事特別法のごときも、一切は、外国がその侵略目的のために他国を依然として占領し、隷属的な戰時態勢の下に置くことから来ていることは明らかである。かかる陰謀は絶対に成功するはずはないのであります。アメリカの侵略主義者とその手先吉田内閣が如何なる悪法を作り、その軍事的秘密警察を督励して、恐怖政治を日本に布こうとも、これに反撃を加える日本国民の解放闘争を抑圧することはできないのであります。挑発と彈圧やデマは、たとえ一時は有効であろうとも、その故にこそ却つてその崩壊を早めざるを得ないことは明らかに歴史の示すところであります。  今や世界では、その総人口二十三億八千万のうち、その過半数十五億が戰争を心から憎み、平和を求めて戰つており、その勢力は日一日と盛んになつておるのであります。こうした大勢に反逆することはできない。今更非理法権天の譬えを言うまでもなく、理は非に勝つ、法は理に勝つ、而して権力は法ならぬかかる悪法を制定せしめんとするものであるが、併し如何なる権力も天の攝理に勝つことはできない。日本共産党は、天の攝理に全く矛盾した講和、安保の二條約並びに行政協定の廃棄のため戰い続けると共に、かかる悪法を断固粉砕するために戰い抜くものであります。(拍手
  64. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) これにて討論の通告者の発言は全部終了いたしました。討論は終局したものと認めます。  これより採決に入ります。  先ず日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定に伴う刑事特別法案の採決をいたします。  本案に対する伊藤修君外五十六名提出の修正案のうち、附則の修正部分と長谷山行毅君外三十名提出の修正案とは共通でありますから、その共通部分を除いた伊藤修君外五十六名提出の修正案全部を先ず問題に供します。表決は記名投票を以て行います。修正案に賛成諸君は白色票を、反対の諸君は青色票を、御登壇の上御投票を願います。氏名点呼を行います。議場の閉鎖を命じます。    〔議場閉鎖〕    〔参事氏名を点呼〕    〔投票執行〕
  65. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 投票漏れはございませんか……投票漏れないと認めます。これより開票いたします。投票を参事に計算させます。議場の開鎖を命じます。    〔議場開鎖〕    〔参事投票を計算〕
  66. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 投票の結果を報告いたします。  投票総数百六十九票。  白色票六十五票。  青色票百四票。  よつて共通部分を除いた伊藤修君外五十六名提出の修正案は否決せられました。(拍手)      ——————————    〔参照〕  賛成者(白色票)氏名 六十五名       重盛 壽治君   山花 秀雄君       門田 定藏君   清澤 俊英君       三橋八次郎君   若木 勝藏君       小酒井義男君   栗山 良夫君       梅津 錦一君   深川タマヱ君       荒木正三郎君   内村 清次君       羽生 三七君   紅露 みつ君       松浦 定義君   高田なほ子君       吉田 法晴君   和田 博雄君       山崎  恒君  深川榮左エ門君       岩男 仁藏君   菊川 孝夫君       岡田 宗司君   河崎 ナツ君       堀木 鎌三君   岡村文四郎君       椿  敏夫君   木下 源吾君       金子 洋文君   野溝  勝君       岩間 正男君   兼岩 傳一君       千葉  信君   木村禧八郎君       堀  眞琴君   水橋 藤作君       岩崎正三郎君    大野 幸一君       千田  正君    東   隆君       松原 一彦君    田中  一君       加藤シヅエ君    山田 節男君       羽仁 五郎君    矢嶋 三義君       村尾 重雄君    永井純一郎君       吉川末次郎君    カニエ邦彦君       島   清君    小林 亦治君       松永 義雄君    相馬 助治君       中村 正雄君    山下 義信君       赤松 常子君    小松 正雄君       伊藤  修君    小泉 秀吉君       三木 治朗君    波多野 鼎君       原  虎一君    下條 恭兵君       片岡 文重君     —————————————  反対者(青色票)氏名     百四名       藤森 眞治君    藤野 繁雄君       中山 福藏君    早川 愼一君       野田 俊作君    徳川 宗敬君       常岡 一郎君    伊達源一郎君       高橋 道男君    高橋龍太郎君       高瀬荘太郎君    新谷寅三郎君       西郷吉之助君    小林 政夫君       小宮山常吉君    楠見 義男君       木下 辰雄君    加賀  操君       岡部  常君    小野  哲君       梅原 眞隆君    飯島連次郎君       井上なつゑ君    赤澤 與仁君       赤木 正雄君    結城 安次君       山川 良一君    村上 義一君       森 八三一君    青山 正一君       小滝  彬君    島津 忠彦君       上原 正吉君    岡田 信次君       石原幹市郎君    中川 幸平君       九鬼紋十郎君    大矢半次郎君       郡  祐一君    廣瀬與兵衞君       岡崎 真一君    城  義臣君       植竹 春彦君    山本 米治君       古池 信三君    小杉 繁安君       石川 榮一君    木村 守江君       西山 龜七君    山田 佐一君       大谷 瑩潤君    一松 政二君       深水 六郎君    草葉 隆圓君       左藤 義詮君    大島 定吉君       黒田 英雄君    小林 英三君       中川 以良君    川村 松助君       寺尾  豊君    溝口 三郎君       前田  穰君    堀越 儀郎君       小野 義夫君    野田 卯一君       重宗 雄三君    入交 太藏君       宮田 重文君    西川甚五郎君       宮本 邦彦君    杉原 荒太君       松本  昇君    秋山俊一郎君       鈴木 直人君    石村 幸作君       長谷山行毅君    堀末  治君       鈴木 恭一君    安井  謙君       平林 太一君    平沼彌太郎君       竹中 七郎君    有馬 英二君       菊田 七平君    小川 久義君       溝淵 春次君    團  伊能君       池田宇右衞門君    駒井 藤平君       林屋亀次郎君    油井賢太郎君       北村 一男君    中山 壽彦君       白波瀬米吉君    岩沢 忠恭君       大屋 晋三君    泉山 三六君       黒川 武雄君    石坂 豊一君       境野 清雄君    木内キヤウ君       谷口弥三郎君    稻垣平太郎君      ——————————
  67. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 次に、伊藤修君外五十六名提出の修正案のうち附則の修正部分及び長谷山行毅君ほか三十名提出の修正案を問題に供します。本修正案に賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  68. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 過半数と認めます。よつて本修正案は可決せられました。(拍手)      ——————————
  69. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 次に、只今可決せられました修正の部分を除く残り全部を問題に供します。残り全部に賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  70. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 過半数と認めます。残り全部は可決せられました。(拍手)  よつて日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定に伴う刑事特別法案は修正議決せられました。      ——————————
  71. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 次に、ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く法務関係命令措置に関する法律案の採決をいたします。  先ず長谷山行毅君ほか三十名提出の修正案全部を問題に供します。本修正案に賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  72. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 過半数と認めます。(拍手)本修正案は可決せられました。      ——————————
  73. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 次に、只今可決せられました修正の部分を除く残り全部を問題に供します。残り全部に賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  74. 佐藤尚武

    ○護長(佐藤尚武君) 過半数と認めます。(拍手)残り全部は可決せられました。  よつてポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く法務関係命令措置に関する法律案は修正議決せられました。      ——————————
  75. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 参事に報告いたさせます。    〔参事朗読〕 本日委員長から左の報告書を提出した。  一般職の職員の給與に関する法律の  一部を改正する法律案修正議決報告書      ——————————
  76. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) この際、日程に追加して、一般職の職員の給與に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)を議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  77. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。人事委員長カニエ邦彦君。
  78. カニエ邦彦

    ○カニエ邦彦君 只今議題となりました一般職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、人事委員会における審議の経過並びにその結果を御報告申し上げます。  先ず本法律案の提案理由について、政府の説明によりますれば、政府職員の勤務地手当の支給地区分に関し、本年二月十二日人事院より国会及び内閣に対して意見の申出がありましたが、政府におきましてもその意見を検討いたしました結果、支給地域の追加又は引上げを行うその内容を適当と認めまして、これを昭和二十七年度より実施すべきであるとの結論に達して、本法律案が提案せられたものであります。  本法律案は、去る二月二十七日内閣より提出せられ、同日、本委員会に予備審査のため付託となり、三月十一日に衆議院より送付せられて参つたものであります。勤務地手当の改定に関しましては、かねてより全国各地の都道府県又は市町村より多数の請願及び陳情が提出せられておるものでありまして、本委員会としてもこの問題については一昨年の給与法改正以来引き続き研究と調査とを続けていたものでありますので、直ちに提案理由の説明を求めると共に、慎重審議を行い、又その及ぼす影響が単に国家公務員のみにとどまらず広く政府関係機関職員及び地方公務員にまで及ぼす実情に鑑み、それぞれ関係政府委員又は参考人等の説明を求め、意見を聴取する等、審議の遺憾なきを期した次第であります。  次に本委員会における審議の経過についてその概要を御報告いたします。本委員会の審議過程における論議の主なるものは、本法律案の施行に伴う所用経費の財源の問題、人事院規則にゆだねられた官署指定の問題、公共企業体職員及び地方公務員等に対する勤務地手当の支給の問題、そうして最後に地域間の不均衡是正の問題等であります。  先ず本法律案の施行に伴う所用経費の問題に関しましては、政府側より、「国家公務員に対する所用経費の約七億円については、建前としては人件費の既定予算で賄い、足りなければ流用等を行なつても、この法律案に伴う給与額は是非措置したいと考えているものであり、又地方公務員についても約七億円を要するが、本年度の地方財政諸計画の範囲内で処理できる見込である」旨の答弁がありました。  次に官署指定の問題でありますが、これは人事院規則に委任せられているものでありまして、これについて人事院より、「現在各方面の希望を聞き、資料をとりまとめて検討中で、結論としては相当多数の官署を指定する必要があり、本法律案の施行と同時に実施すべく準備中である」との答弁がありました。なおこれに関連して、「国家公務員の官署が指定された場合、同一地域内に所在する地方官署についてこれをどう取扱うか」との質問がありましたが、これに対し、「地方公務員の給与が国家公務員の例によつている場合、国の指定官署と同じような状況にある施設であれば、当然地方団体がその官署を指定すべきであると解釈されるものであり、地方公務員の場合も国にならつて官署指定ができるよう配慮している」旨答弁がありました。  次に国鉄職員の勤務地手当の問題についてでありますが、「今回の改正措置は、国鉄の場合も国家公務員に準じて実施できる見通しに立つて行われてものと解してよいか」との質問に対しては、国鉄当局側より、「国鉄においては直接にこの法律の適用の対象となるものではなく、又給与体系も若干異なつており、配分の方法等についても団体交渉において組合側と協議して定めることになるが、今回の場合も国家公務員の例を十分に参考にして考えたい」と答え、これについては政府側よりも、「協議事項等についても十分国鉄当局と協力してこの主旨の実現に努めたい」旨の答弁がありました。  最後に、地域間の不均衡の問題については、現在全国各地に亘つて地域給支給についての不公平が認められ、且つこれに伴つて人事交流その他に著しい障害を惹き起こしているのでありますが、本法律案によりましても、なお、それぞれ現地の実状より見て未だ不十分の点が多く、各府県、各市町村の間に、不均衡、不合理の認められる場合が少なくないという意見が多かつたのであります。  かくして三月二十日の委員会に至り、「今日まで国会に対して多数の請願が提出せられており、その内容にもいずれも尤もな点が認められるので、これらについて各党派の意見を取りまとめてその調整を図り、そのまとまつたものを修正案として議題に供したい」との提案がなされて、委員会としても、本法律案についてはなお慎重な検討を加え、所用の修正を行う必要があるとの全会一致の結論に達しましたので、直ちに修正案の検討に着手いたしたのであります。即ち先ず大蔵省、人事院、地方財政委員会、地方自治庁等の関係政府委員の出席を求めて、それぞれ所用の説明を聴取して質疑を行い、次いで数回に亘り委員懇談会を開き、各党派より提案せられた修正案を中心として、その間の意見の調整、修正を要する地域についての検討、或いは再調査等、全国各市町村に亘り、連日且つ終日に及び、昼食の時間をも惜しんでの熱心な審議が行われたのであります。かくて五月一日の委員会に至り、委員会の修正案についてほぼ各委員の意見の一致を見るに至りました。  その要旨は、勤務地手当の支給地域をさらに追加して、三百余の市町村についてそれぞれ支給率を昇格せしめ、或いは新たに一級地として指定し、且つ本法律案は二十七年四月一日より適用せしめようとするものであり、これに要する経費は政府原案に対して約六億八千万円の増額を要するものであります。  なお本修正案は次のような考慮の下に作成せられたものであります。即ち勤務地手当に対する抜本的改正は全国的な給与ベース改訂の機会に待つことといたしまして、今回の改正は、取りあえず従来からあつた不均衡の可及的減少を図るにとどめたこと、従つて今後とも引続きその合理化のための努力を怠つてはならないという見解に立つものであることがその第一であります。次は修正の方法でありますが、原則的には勿論政府原案を尊重しておるのでありますが、その不備と認められる点の是正は、今日まで委員会の手許に集まつた陳情請願及び委員の現地視察等に基く資料によつたものであります。更に本案の実施に当たりましての経費予算の膨張はでき得る限りこれを避ける考慮を払つたものであります。  本法律案の審議に関しましては、五月六日委員会の質疑も終了したものと認め、討論に入りましたところ、委員長より先に五月一日の委員会において決定した内容の修正案が提案せられ、次いで木下委員より、先に提案せられた全般的改正案であるいわゆる第一案、又は未支給地全部を新たに支給地として指定する第二案の実現の実現の近きを信じて賛成し、千葉委員より、本修正案が完璧なものとは思わないが、将来、よりよき完全な修正のために努力するという前提に立つて賛成され、宮田委員よりは、最近における実情に副う努力の成果であるとの意味において賛成、紅露委員よりは、なお将来における合理化に待たなければならないが、取りあえず賛成、最後に溝口委員より、給与体系全般についての改正を要請して賛成の旨、それぞれ討論があり、採決に入りましたところ、全会一致を以て本法律案を修正議決すべきものと決定いたした次第であります。  以上御報告申し上げます。(拍手
  79. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。本案全部を問題に供します。委員長の報告は修正議決報告でございます。委員長報告通り修正議決することに賛成諸君起立を求めます。   〔賛成者起立
  80. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 総員起立と認めます。よつて本案は全会一致を以て委員会修正通り議決せられました。(拍手)      ─────・─────
  81. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) この際、先に本院の議決に基き鳥取市の火災の被害状況調査のため派遣いたしました議員団の報告を求めたいと存じます。石川栄一君。   〔石川栄一君登壇拍手
  82. 石川榮一

    石川榮一君 今般院議によりまして、緑風会の井上なつゑ君、社会党第二控室の田中一君、同第四控室の河崎ナツ君、民主クラブの小川久義君及び私の五名は、先般鳥取市に発生いたしました大火災に対しまして、慰問及び被害状況並びに災害後の実情視察のため、去る四月二十六日より五日間に亘りまして現地に派遣せられましたので、一行を代表いたしましてその概要を御報告申し上げたいと存ずるのであります。  我々の視察団一行は、四月二十七日現地に到着し、直ちに県庁及び市役所を歴訪いたしまして、地元当局の理事者側及び議会側の代表に対しまして、本院を代表いたしまして衷心より深甚なる御見舞いの言葉を申述べたのであります。次いで災害の概況及びこれに対する当局の措置等につきまして説明を聴取いたしました後、被害現地についきまして、つぶさにその実情を視察したのであります。翌二十八日は再び県庁に参りまして、県及び市当局にあらかじめ当方より提示しておきましたる調査項目に基きまして詳細なる調査及び懇談を遂げたのでありますが、その間、現地における金融並びに住宅等の機関の責任者をも招致いたしまして、これとも懇談を遂げたのであります。次いで鳥取市周辺に散在しております校舎及び寺院等十余ヶ所の主要なる罹災者収容所を歴訪いたしまして、一般罹災者の生活及び被害官公衙従業員の執務状況等を視察すると共に慰問激励いたしました。又特にこれら罹災者との直接懇談の機会も設けまして、隔意のない罹災市民の声もじかに聞いて参つたのであります。これに対しまして、現地当局者及び罹災者は、いずれも深甚なる謝意と旺盛なる復興債権の決意とを表明されましたことは、我々一同の深く感銘いたしたところでありまして、この際、特に御報告申上げておきたいと存じます。  火災の状況について申上げますと、四月十七日午後二時五十五分、鳥取市内山陽本線沿いの市営動源温泉附近から発火いたしまして、折柄の南南西の風速十メートル乃至十五メートルの強風に煽られ、更に加えまして発火当時は二八%という低湿度のため、火焔は急速に燃え拡がりまして、市の中央を貫く唯一の防火線とも頼むべき袋川の線も防ぎ得ませずして、ついに市の中心繁華街を壊滅させ、火勢はますます猛烈を極めまして、市の最北端にまで達するに至つたのであります。翌朝二時頃、風の方向が転じて参りまして、その頃から風勢が衰え、小雨が降つて参りましたので、漸く午前三時に鎮火したような状況であります。この間、強風の中で実に十二時間に亘りまして燃え続けたのであります。この大火災のため、鳥取市経済の中心部でありまする商店街は全滅し、中央郵便局、県立中央病院を初め、保健所、学校、検察庁、銀行等の主要なる建造物を一夜にして烏有に帰してしまつてのであります。この間、県下及び他県から来援したところの消防団、警察警察予備隊等が全力を挙げて鎮火に協力したのでありましたが、火勢の募るに及びまして如何とも施す術もなく、専ら避難者の防護、警戒、救助作業等に尽力したのであります。地元の調査によりますと、その罹災面積は約五十万坪であり、個人の被害は焼失家屋五千二百二十八戸でありまして、市内総個数の約五十%に当たるのであります。又罹災世帯数は五千五百五十八世帯であります。罹災人員は二万四千四十三名に及んだのであります。幸いに昼間のことでありましたので、死者二名、重傷者二名にとどまりましたが、軽傷者は三千九百六十三名の多きに達しております。又、公共施設の被害は、官公衙十四、学校五、病院その他厚生施設五でありmす。その他、銀行八、百貨店、多数の工場等が罹災しておる次第であります。  今次災害の被害総額は、個人約百八十三億一千四百万円と称せられ、官公衙その他の損害は十一億三千九百七十余万円に達します。総計いたしますると百九十四億五千三百七十余万円ということに相成つておるのであります。  今次の鳥取大火が、かくも大火に至りました要因といたしましては、発火当時の湿度の関係もありまするが、都市計画上の不備、消防上の欠陥の二点が大きく指摘せられるのであります。即ち都市計画の見地から考えられます点は、一、都市計画が不完全で区画整理が徹底を欠き、防火の実を果たしていなかつたということ、一、上水道の水量、水圧がいずれも不十分であつたということ、一、防火水槽の配置が偏在し、且つ水量も不十分であつたこと、一、市の中央部を流れる袋川に沿つた引揚者のバラック建マーケットが火災地域拡大の媒介をなし、且つ延焼速度を非常に増大せしめたということ、又、消防機能が非常に偏在しておつたということ、耐火建築物が少かつたこと等であります。又、消防の面より考察いたしますと、先に都市計画的見地から指摘いたしました消防上の欠陥の上に、主として財政の貧困に起因するところの消防力の不足、即ち消防ポンプ及び消防職員の数が国家消防庁の示す基準を遙かに下廻つてつた。又破壊消防についての機材、訓練の不足から、最も絶好なる場所考えられる袋川の線で破壊消防の措置が講ぜられなかつたということ、又、消防長不在等のため全般に対する消防指導の不統一であつたということ、以上のごとく、都市計画及び消防の観点から指摘いたしました諸原因が、当時の風速及び低湿度と共にその被害を甚大ならしめたものでありますが、なかんずく今次災害の重要要因とも言うべき点は耐火建築の少なかつたことであります。特にこのたびの場合におきましても、熱海の大火と同じく、富士銀行が耐火建築であつたため、その後背地に所在した県庁及び市役所を初め広大なる市街地が灰燼から免れ、又焼跡の真唯中に二十坪程度の耐火建築の個人住宅がただひとつ無傷健在で残つていたのでありますが、これは当時の風速、猛火等から推察いたしまして、まさに驚異的事実でありまして、耐火建築の造成が如何に不燃都市の構成に重要であるかを示唆したものと言うべきものであります。従いまして、鳥取市のごとく屡次に亘る受災都市に率先して、安価にして且つ簡易なる耐火建築の方法を以て市街地を再建されることの必要を痛感した次第であります。又右に関連いたしまして、現行公営住宅法によりますと、罹災戸数の三分の一が木造第二種公営住宅として国庫三分の二の補助があるのでありますが、かかる多数の木造小家屋が集団的に建設されますことは、不燃都市建設の観点からしまして再考を要する重要な問題であると考えられる次第であります。  次に、この災害の発生に対しましては、県、市並びに関係機関は直ちに応急の措置を講じております。即ち県におきましては、火災の拡大に際し直ちに災害救助法を発動いたしまして応急救護に当つたのでありますが、更に十九日の夕刻に至り、この応急対策と平行して、知事を本部長とする鳥取市火災復興対策本部を設置し、又東京には中央各省庁との連絡を図るため同東京本部を設置する等、応急対策の実施に遺憾なきを期したのであります。一方、鎮火当日の十八日には緊急臨時県会を開会して、災害対策特別委員会を設置いたしまして、理事者側に協力して復興対策を推進しておるのであります。又、市におきましても災害対策本部を設置して、罹災者の収容、その他応急措置に努め、又十八日には緊急市会を開催して、復興対策のため、都市計画、住宅、金融の三特別委員会を設置して活動を続けております。又建設、厚生等、中央関係官庁におきましても、調査の結果を検討して対策措置を考究中であります。救護措置といたしましては、災害救助法による国、地方公共団体、日本赤十字社、その他団体及び国民協力により、医療及び収容施設、生活必需品、労力奉仕、学用品の供与等のほか、罹災世帯数の二五%に対し、一世帯五千円の生業資金の貸付並びに罹災戸数の二0%の範囲において一千戸の応急仮設住宅の建設等、逐次時宜に即した措置が講ぜられており、又米国の厚意ある措置により多量のララ物資及び米軍救援物資等も到着配分しております。  次に厚生の見地より少しく申上げますと、県立病院が焼失したため、入院患者は鳥取大学に収容されておりますが、結核患者のうち軽症者は自宅療養の止むなきに至り、特に本県の結核死亡率が全国においても上位にあることを考えますと誠に憂慮すべきものがあります。二十六日現在の伝染病患者は、赤痢、同疑似、疫痢等八名が発見されており、防疫班は、検診、予防接種等に多忙を極めておりますが、中央保健所が焼失し、且つ向暑、梅雨期に向かいまして完全防疫設備のないことは、誠に寒心に堪えないところでありまして、保健所、病院等の保険衛生施設及び保育所等の福祉施設の再生は、住宅、文教施設等の急速完備と共に焦眉の急を要する問題でありまして、地元におきましてはこれが実現の一日も速やかならんことを挙つて待望していることを特に申上げておきます。一般治安につきましては、簡易派出所の設置、情報及び弘報活動による民心の安定措置と住民の努力と相待ち、極めて平静に復旧作業が行われております。  今次災害の地方財政に及ぼした点、地元の要望について申上げますと、復旧に伴う歳出増加額は、応急対策費として県二億八千六百万円、市三千百五十五万円、復旧費として県十億三千六百万円、市六億四千八百万円となつておりまして、その総額は、県十三億二千二百万円、市六億七千九百五十五万円、計二十億百五十五万円に達しております。加えて今回の災害によりまして県固有財源の減収見込額は約一億二千六百万円、これに今後の財源需要見込額を合わせますと約十八億余円の多額に上るのであります。又、市におきましては、市固有財源の減収見込額は六千二百四十三万円、国民健康保険収入の減収が九千二百二十九万円に見込まれ、これに復旧所用費を加えますと約八億三千四百二十七万円となり、更に今後の財政需要額を合わせますと相当な額に上るのであります。鳥取県の全国における財政的位置は御承知の通りでありまして、極めて自主性、弾力性に乏しく、その財源の約八0%を国庫に依存している実情でありますので、地元といたしましては災害復旧に関し財政上政府の特別な措置を熱望し、これに加うるに住宅、学校、保健所、病院等、最も緊急を要する復旧財源、即ち起債、融資、国庫補助の交付等の財政措置は可及的迅速果断に措置せねばならぬことを特に強調いたしたいのであります。  次に地元の要望の主要なるものについて申上げますと、一、罹災者の借地及び借家権について紛争を生じているので、罹災都市借地借家臨時処理法第二十五条の二に基く災害及び同条の規定を適用する地区を定める法律を早急に制定せられたいというのであります。本件につきましては、我々一行が現地に出発直前その実情について承わり、これが立法措置を準備中でありましたが、幸い衆議院に提案されましたので、速やかなる成立をお願いする次第であります。要望の第二は、県及び市の財政状態逼迫の折柄、今次災害に遭遇したのであるが、特に文教、衛生、厚生等の公共施設については緊急の復興を要し、而も耐火建築とすることが肝要であるので、財政補強措置として九割程度の国庫補助が行われるよう臨時特別法を制定せられたい。第三は、県債及び市債償還費の高率国庫負担の措置を講ぜられたい。第四は、公共施設の復旧等総額二十八億七千八百万円を要するが、目下決定されている二億円の短期融資は、公営住宅復旧及び罹災救助による短期融資に限定されているので、更に繋ぎ資金として八億七千万円の増額措置を講ぜられたい。第五は、地方財政平衡交付金について格別の措置を講ぜられたい。第六は、商工業復興資金として政府資金又は日銀斡旋の融資をせられたい。第七は、農林関係資金といたしましての融資及び国庫補助の措置を講ぜられたい。第八は、復興用木材として国有林の払下げ及び隣県よりの援助措置を講ぜられたい。第九は、防火建築帯の指定を早急にせられたい。第十は、国民健康保険に対する特別措置を講ぜられたい。その他、厚生資金、住宅金融公庫住宅等についての要望がありました。  鳥取市の今次災害は、昭和九年の函館の大火、同十五年の静岡の大火に次ぐ戦後わが国最大の火災でありまして、その惨状たるや全く目を覆わしめるものがあります。又これに基因する生産並びに貯蓄の消耗等、間接的損害も甚大なる額に上がるものと考えられ、住民の受けましたる物心両面の打撃はまさに言語に絶するものがあるのであります。殊に本県は昭和十八年の大震災、同二十二年の大火災等、過去における災害復旧の途上にありまして、その痛手未だ癒えざる今日、又々今次の災害をこうむつたのでありまして、誠にお気の毒に堪えない次第であります。而ういたしまして、これが復興は一日もゆるがせにすべからざるものでありまして、地元の財政能力を考えますとき、誠に寒心に堪えないものがあるのであります。幸いに罹災者諸君の復興意欲は極めて旺盛でありますが、国会、政府、地元当局の協力なくしては再建は容易ならざるものがあると存ずる次第であります。本院といたしましても、政府を鞭撻して、地元の要望に対し災害復旧に関する臨時特例その他財政措置等最善の考慮を払いまして、一日も速かに復興をいたさせねばならぬと信ずる次第であります。  以上を以ちまして御報告を終わります。(拍手
  83. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 本日の議事日程はこれにて終了いたしました。次回の議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十二分散会