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1952-04-28 第13回国会 参議院 本会議 第34号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年四月二十八日(月曜日)    午前十時三十四分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第三十三号   昭和二十七年四月二十八日    午前十時開議  第一 信用金庫法の三都を改正する法律案衆議院提出)(委員長報告)  第二 米穀政府買価格特例に関する法律案衆議院提出)(委員長報告)  第三 十勝沖地震による農林業災害復旧資金融通に関する特別措置法案衆議院提出)(委員長報告)  第四 公務員等懲戒免除等に関する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第五 日本国アメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定実施に伴う地方税法臨時特例に関する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第六 日本国アメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定実施に伴う郵便法特例に関する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第七 日本国との平和條約の効力発生及び日本国アメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定実施に伴う道路運送法等特例に関する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第八 日本国アメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定実施に伴う水先法特例に関する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第九 戰争犠牲者国家補償法制定等に関する請願(九件)(委員長報告)  第一〇 戰争犠牲者援護等に関する請願委員長報告)  第一一 母子福祉法制定に関する請願(十二件)(委員長報告)  第一二 戰争犠牲者遺族援護強化に関する請願(八件)(委員長報告)  第一三 戰争犠牲者遺族国家補償に関する請願(三件)(委員長報告)  第一四 身体傷害者福祉法中一部改正に関する請願委員長報告)  第一五 戰ぼつ者慰霊祭参加に関する請願委員長報告)  第一六 戰傷病者国家補償に関する請願委員長報告)  第一七 未復員者給與法に関する請願(四件)(委員長報告)  第一八 恩給および一時金受給者に未復員者給與法適用等請願(二件)(委員長報告)  第一九 重度せき髄損傷傷い者の医療に関する請願委員長報告)  第二〇 重度せき髄損傷傷い者の住宅建設に関する請願委員長報告)  第二一 未復員者給與法中一部改正に関する請願委員長報告)  第二二 日本赤十字社殉職看護婦遺家族援護に関する請願委員長報告)  第二三 日本赤十字社殉職救護員等遺家族援護に関する請願委員長報告)  第二四 元傷い軍人待遇改善に関する請願委員長報告)  第二五 未帰還抑留者および留守家族援護対策に関する請願(十件)(委員長報告)  第二六 未復員特例患者医療給付に関する請願委員長報告)  第二七 戰争犠牲者遺族等国家補償に関する請願委員長報告)  第二八 元満州開拓青年義勇隊取扱に関する請願委員長報告)  第二九 元陸軍毒ガス工場軍属援護対策に関する請願(二件)(委員長報告)  第三〇 原爆犠牲者遺族援護に関する請願委員長報告)  第三一 戰傷病者戰沒者遺族等援護法案中一部修正に関する請願委員長報告)  第三二 戰傷病者戰沒者遺族等援護法案適用範囲拡大に関する請願委員長報告)  第三三 戰争犠牲者遺族援護費に関する請願委員長報告)  第三四 未復員特例患者医療保障に関する請願委員長報告)  第三五 第十東予丸遭難死沒軍人遺族戰傷病者戰沒者遺族等援護法案適用に関する請願委員長報告)  第三六 戰沒動員学徒遺族等戰傷病者戰沒者遺族等援護法案包含請願委員長報告)  第三七 戰争犠牲者援護強化に関する請願委員長報告)  第三八 戰傷病者戰沒者遺族等援護法案適用範囲拡大等に関する請願委員長報告)  第三九 戰沒船員遺族戰傷病者戰沒者遺族等援護法案中に包含請願委員長報告)  第四〇 戰争犠牲者国家補償法制定に関する陳情(二十件)(委員長報告)  第四一 戰争犠牲者遺族および戰傷病者補償に関する陳情委員長報告)  第四二 戰争犠牲者遺族国家補償に関する陳情(二十件)(委員長報告)  第四三 戰争犠牲者遺族等援護強化に関する陳情委員長報告)  第四四 戰争犠牲者遺族援護強化に関する陳情(十三件)(委員長報告)  第四五 母子福祉法制定に関する陳情委員長報告)  第四六 戰ぼつ船員遺族援護強化に関する陳情委員長報告)  第四七 船員遺族援護に関する陳情委員長報告)  第四八 元満州開拓青年義勇隊取扱に関する陳情(三件)(委員長報告)  第四九 元傷い軍人等医療費全額国庫負担に関する陳情委員長報告)  第五〇 未帰還抑留者および留守家族援護対策に関する陳情(二件)(委員長報告)  第五一 未帰還者留守家族援護に関する陳情(二件)(委員長報告)  第五二 元傷い軍人国家補償に関する陳情委員長報告)  第五三 未帰還者留守家族国家補償に関する陳情委員長報告)  第五四 戰傷病者戰沒者遺族等援護法案修正に関する陳情委員長報告)  第五五 戰沒船員遺家族戰傷病者戦没者遺族等援護法案中に包含陳情(二件) (委員長報告)  第五六 未復員特例患者医療保障に関する陳情委員長報告)  第五七 戰争犠牲者未亡人援護に関する陳情委員長報告)  第五八 未復員特例患者医療給付等に関する陳情(二件)(委員長報告)  第五九 開拓団等傷病者死没者遺家族戰傷病者戰沒者遺族等援護法案適用に関する陳情委員長報告)  第六〇 引揚者の国家補償に関する陳情委員長報告)  第六一 戦争犠牲者遺族等国家補償に関する陳情委員長報告)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 諸般の報告朗読を省略いたします。      ——————————
  3. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) これより本日の会議を開きます。  この際、議員派遣変更についてお諮りいたします。去る四日決定いたしました国立病院地方移管に関する実地調査のための議員派遣中、派遣期間本月十五日から本月末日までのうち七日間を本月十五日から今期国会開会中七日間に変更いたし、第三班派遣議員河崎ナツ君を追加いたしたい旨、厚生委員長から要求書が提出されております。委員長要求通り議員派遣変更をすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつて委員長要求通り議員派遣変更の件は決定いたしました。      ——————————
  5. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 参事報告いたさせます。    〔参事朗読〕 本日議員大屋晋三君外百九十五名から委員会審査省略要求書を附して左の議案を提出した。  平和條発効に伴う決議案      ——————————
  6. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) この際、日程に追加して、平和條発効に伴う決議案大屋晋三君外百九十五名発議)(委員会審査省略要求事件)を議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。本決議案につきましては、大屋晋三君ほか百九十五名より委員会審査省略要求書が提出されております。発議者要求通り委員会審査を省略し、直ちに本決議案審議に入ることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつてこれより発議者に対し趣旨説明発言を許します。大屋晋三君。    〔大屋晋三君登壇拍手
  9. 大屋晋三

    大屋晋三君 先ず只今上程になりました決議案朗読をいたします。    平和條発効に伴う決議   平和條約は本日をもつて発効し、我が国がいよいよ独立国家として国際社会に復帰するに至つたことは、日本国民として衷心喜びに堪えぬところであり、われわれは友好諸国に対し深甚なる感謝を表するものである。  一 日本は一貫して世界平和の維持と人類の福祉増進に貢献せんことを期し、国連加入の一日も速やかならんことを希う。  二 日本はアジヤの諸国善隣友好関係を樹立し、もつて世界平和の達成に貢献せんことを期する。  三 日本領土の公正なる解決を促推し、機会均等平等互恵国際経済関係確立を図り、もつて経済自立を期する。  四 日本国民はあくまで民主主義を守り、国民道義を昂揚し、自主自衛の気風の振興を図り、名実とも国際社会の有為にして責任ある一員たらんことを期する。   右決議する。  私はここに右決議案を提出いたしました発議者を代表してこの趣旨を申上げたいと存じます。  待望の対日平和條約はいよいよ本日その効力を発生いたします。ここに七ヵ年間占領の夜は明けて、独立の黎明を迎えたのであります。日本国民として誠に御同慶に堪えないところであります。併しながら我が国の前途には、政治的に、経済的に、或いは社会的に、今後幾多の難関が横たわつております。これを克服し、切り開いて、真に国際社会に確固たる地歩を築き上げますことは、なかなか容易な事業ではないのでありますが、これを達成すると否とは国民一致協力如何にかかわる問題であります。国権の最高機関である国会に席を有する我々といたしましては、この点に深く留意して、先ず国民思想統一強化に力を注ぎ、国民基本的進路を明らかにし、国民自主独立立場と心構えを確立いたしまして、内を固めますると共に、外は世界平和の達成に貢献いたしたいと念願する次第であります。  この趣旨に則りまして、我々は、独立日本の歩むべき方針として、次に申します四つの目標を定め、これが貫徹を期する次第であります。第一には、(「警察予備隊」と呼ぶ者あり)今後の日本は飽くまで世界自由連邦との協力態勢を強化して行かなければならないのであります。(「予備隊は」と呼ぶ者あり)そのためには国際連合に加入する日の一日も速かならんことを希うものであります。第二には世界一環としてのアジアにおける日本の地位を確立することであります。(「どうやつて確立する」「孤立じやないか」と呼ぶ者あり)真に善隣諸国との友好関係を保ち、アジア平和確立に貢献すべき日本立場を明らかにせんとするものであります。(「アジアとはどこだ」「台湾か」と呼ぶ者あり)第三に、日本は今次の戰争によりまして実に四割の領土失つたのであります。戰争犠牲と申せばそれまででありますが、失いました領土の中には歴史的に見て日本領土一環と考うべきものもあります。(「沖縄に小笠原だ、よく覚えておけ」「その通り」と呼ぶ者あり)世界関係国との間に今後の折衝を重ねましてこれが公正なる解決を図ると共に、国際経済の分野におきましても、(「遠慮しないで言え」と呼ぶ者あり)機会均等思想に則り、日本経済平和的国際進出の機を得られることを希うものであります。(拍手最後国内関係につきましては、日本国民が今後ますます民主主義原則に徹し、国際社会に立つて恥かしくない教養を身に付けますると同時に、(「フアツシヨだ」と呼ぶ者あり)自主独立達成するためにあらゆる努力を傾倒せんことを期してやまない次第であります。なお、外地にあつて祖国日本を思いつつも未だ帰還し得ない同胞が一日も速かに帰還せらるるよう、関係諸国配意と援助とを切望するものであります。  以上申述べましたことは日本国民平和的発展基本原則であります。(「あべこべだ」と呼ぶ者あり)何とぞ満場の御賛同を期待いたす次第であります。(拍手、「後世の笑い草だよ」「思想統一」には反対」と呼ぶ者あり)
  10. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 別に御発言もなければ、これより本決議案採決をいたします。本決議案賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立〕    〔「思想統一には反対」と呼ぶ者あり〕
  11. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 過半数と認めます。よつて決議案は可決せられました。(拍手)  只今決議に対し岡崎国務大臣より発言を求められました。岡崎国務大臣    〔国務大臣岡崎勝男登壇拍手
  12. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 本日、平和條約が発効に至りますことは、誠に御同慶に堪えないところであります。これ、ひとえに国民一致努力の結果であります’。(「何を言つているのだ」と呼ぶ者あり)未調印国中立国等との国交回復につきましては、すでに多くの国々と話合いを進めており、本日以後直ちにこれが実現するものもありまするし、又遠からずして国交回復の途にあるものも多数あります。(「あさましいぞ」と呼ぶ者あり)国連加入の促進、世界平和の達成経済自立達成自主自衛等、(「屈辱的だよ」と呼ぶ者あり)只今決議されました講壇につきましては、政府といたしましてもいずれも全く同感下あり、政府におきましては、右の決議趣旨を尊重いたしまして、これらの諸項の達成に今後も鋭意努力を続けて参るべきことをここに確言いたします。(拍手)      ——————————
  13. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 日程第一、信用金庫法の一部を改正する法律案衆議院提出)を議題といたします。  先ず委員長報告を求めます。大蔵委員長平沼彌太郎君。    〔平沼彌太郎登壇拍手
  14. 平沼彌太郎

    平沼彌太郎君 只今上程されました信用金庫法の一部を改正する法律案大蔵委員会における審議経過並びに結果を御報告申上げます。  本案は、第一に、中小企業金融を円滑化するために、信用金庫会員資格を拡大し、事業者の常時使用する従業員の数を百人より三百人に引上げようとするものであります。第二に、会員のためにする有価証券の拂込金の受入等の業務ができることとしようとするものであります。第三に、大蔵大臣の認可を條件といたしまして員外貸出を認めることとしようとするものでありまして、その範囲を、地方公共団体に対する貸付、コール・ローン等にとどめようとするものであります。  本案審議の詳細は速記録によつて御承知願いたいと存じます。かくて質疑を終局し、討論に入り、小林委員より修正案が提出されましたが、その要旨は、信用金庫法第五十三條の改正規定は、会員以外の者に対する資金貸付又はこれらの者に対する手形の割引をなし得ることになつておりますが、その範囲地方公共団体又は銀行その他の金融機関に対する資金貸付に改めようとするものであります。採決の結果、小林委員提出修正案全会一致を以て可決せられ、次いで修正部分を除く原案についても全会一致を以て可決すべきものと決定し、本案修正議決いたした次第であります。  右御報告申上げます。(拍手
  15. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 別に御発言もなければ、これより本案採決をいたします。本案全部を、問題に供します。委員長報告修正議決報告でございます。委員長報告通り修正議決することに賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  16. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 総員起立と認めます。よつて本案全会一致を以て委員会修正通り議決せられました。      ——————————
  17. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 日程第二、米穀政府買価格特例に関する法律案日程第三、十勝沖地震による農林業災害復旧資金融通に関する特別措置法案、(いずれも衆議院提出)以上両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  18. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。先ず委員長報告を求めます。農林委員長羽生三七君。    〔羽生三七君登壇拍手
  19. 羽生三七

    羽生三七君 只会議題になりました米穀政府買価格特例に関する法律案農林委員会における審議経過及び結果を御報告いたします。  食糧管理法規定によつて供出せられる米穀政府が買上げるに際しまして、米穀政府買価格は、通常、供出の始まる時期から相当遅れて決定せられるのでありまして、買入価格が決定せられるまでに供出せられたものに対する代価支拂につきましては、一応政府が定めた仮価格支拂をなし、買入価格決定後において決定価格と仮価格との差額が追加支拂せられる実情になつておりまして、この追加支拂額に対しまして、従来は利息支拂うことになつていないのでありますが、昭和二十七年産米から仮の価格支拂を行うことを制度化すると共に、その差額について政府において利息支拂うことに改めようとするのが本法律案の狙いであります。即ちその差額について、仮価格による支拂のときから差額支拂われるときまでの期間に応じて、大蔵大臣銀行一般貸付利率を勘案して定める率を下らない率によつて算出した利息差額と共に支拂うこととなさんとするものでおります。  委員会におきましては、早場米に対する措置、麦の代価支拂の場合の取扱、及び本決施行のための予算措置等について質疑が行われ、続いて討論に入り、別に発言もなく、採決の結果、全会一致を以て原案通り可決すべきものと決定いたしました。  次に、十勝沖地震による農林業災害復旧資金融通に関する特別措置法案につきまして報告いたします。  本法律案は、先に成立いたしました十勝沖地震による漁業災害復旧資金融通に関する特別措置法と同類のものでありまして、その題名によつて明らかでありますように、過ぐる昭和二十七年三月の十勝沖地震によつて農林業者がこうむりました農舎、畜舎、サイロ、炭窯、その他政令で定める農林業共同施設復旧を円滑にするため、これら復旧に必要な融資について政府損失補償及び利子補給を行うこととなさんとするものでありまして、而して本法適用を受くべき融資は、本法施行の日から昭和二十八年三月三十一日までになされたもので、且つその償還期限昭和三十三年三月三十一日以前のものに限ることとなし、総額二億円を限度とし、損失補償限度融資総額の三割、利子補給の基準は年四分ということに規定されているのであります。  委員会におきましては、提案者及び政府当局に対して、先に成立した同種法律による漁業災害に対する復旧資金融通総額六億円と本法案による農林業施設復旧に対する融資総額二億円との釣合いの適否、すでに融通せられたものに対する遡及適用の可否及び本法施行のための予算措置等に関して質疑が行われたのでありますが、これが内容会議録に讓りたいと存じます。かくして討論に入り、別に発言もなく、次いで採決の結果、全会一致を以て原案通り可決すべきものと決定いたしました。  右御報告いたします。
  20. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 別に御発言もなければ、これより両案の採決をいたします。両案全部を問題に供します。両案に賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  21. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 総員起立と認めます。よつて両案は全会一致を以て可決せられました。      ——————————
  22. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 日程第四、公務員等懲戒免除等に関する法律案内閣提出衆議院送付)を議題といたします。  先ず委員長報告を求めます。人事委員会理事宮田重文君。    〔宮田重文登壇拍手
  23. 宮田重文

    宮田重文君 只今議題となりました公務員等懲戒免除等に関する法律案につきまして、人事委員会における審議経過並びにその結果を御報告申上げます。  先ず本法律案提案の理由は、政府説明によりますれば、従来国の慶弔時に際して、一方で恩赦が行われると同時に、他方で公務員及び公証人弁護士等について懲戒免除等が行われるのを通例としておるのでありますが、今回の平和條約の発効に際して政府としても広く恩赦を行うべく別に準備を進めておるのであり、この際、先例に鑑み、公務員等懲戒免除及び弁償責任免除をも同時に実施したいというのであります。併しながら旧憲法の下にありましては、これらはいずれも天皇の大権事項として勅令により実施せられていたのでありますが、新憲法下の今日におきましては、いずれも特別の立法措置を要するものと考えられるので、ここに本法律案提案せらられて来たものであります。  次にその要旨について申上げますれば、第一に、従来の例によれば、懲戒免除及び弁償責任免除は、その実施の都度それぞれ別個の勅令によつて行われていたのでありますが、本案においてはこれらの措置を單一の法律にまとめ、且つ恒久的な制度として確立することとし、その内容としては基本的な事項規定することとし、実施についての具体的な必要事項政令又は地方公共団体條例で定め得ることとしております。第二に、懲戒免除についてその対象となるのは、国家公務員地方公務員日本国有鉄道及び日本專売公社の職員のほかは別に政令で定めることとし、これはおおむね先例従つて公証人弁護士その他を指定する予定となつております。第三に、弁償責任の減免につきましても、懲戒免除と同様、その考え方はおおむね従前の例を踏襲することとし、ただ従前弁償債務はすべて一律に全免される建前であつたものを、本案では弁償債務の一部免除の場合を含め、「減免することができる」と規定しております。第四に、懲戒効果につきましては、従来と同様に既成の効果変更されないことを明確に定めております。次に、公務員公証人などは、懲戒免職となりますれば、その後一定期間は再びその職又は特定の職につく資格を失うこととなつており、懲戒免除によつてそれらの資格を回復するのか否かにつき従来は何の規定もなく、実際の運用において回復するものとして取扱われていたのでありますが、本案においては、懲戒免除により、それらの資格は当然回復する旨を明記いたしております。最後に、懲戒処分等に関する訴訟、訴願等の不服の申立等につきましては、懲戒免除又は弁償責任免除を受けても影響されないことを明らかにいたしております。  次に本委員会における審議経過についてでありますが、その詳細は会議録に讓ることとして、問題となりました点のみを御報告いたします。即ち、本法律施行により懲戒免除等が行われます場合、すでに懲戒処分を受けた者と、まだ懲戒処分を受けていない者との間に著しい不均衡が生じて来るのではないかという問題であります。本法律案第二條により、まだ懲戒処分を受けていない国家公務員等に対しては懲戒を行わないことができることになつており、これに対してすでに懲戒処分を受けた国家公務員等は将来に向つてその懲戒免除されることにはなつておりますが、具体的な事例としては、懲戒処分により喪失した恩給受給資格については、これは回復するものではないとの政府説明があり、又懲戒免職処分を受けた国家公務員等は、今回の懲戒免除により当然元の官職に復帰するものではないのであつて、事実上両者の間に著しい不公平が生じることになるので、この点、何らかの救済措置は考えられなかつたかとの質問が行われたのでありますが、これについては、政府としても或る程度の不均衡の生ずることは認めるが、これは止むを得ないものと考える旨答弁がありました。  質疑終了後、討論に入りましたが、宮田委員より、政府は本法律案施行に当つて均衡の生ずることをできるだけ避けるように十分考慮せられたいとの要望を附して賛成千葉委員より、本法律案提案は、講和條発効を国の慶事と考えず弔事に基く措置として行われたものであるとの前提に立つて審議行なつたものであり、その内容にもいろいろの不公平を生ずる等の問題を含んでおるが、この際、政府がとつて来たところの公務員等に対する非民主的な措置に対しての政府の贖罪という意味において本法律案賛成する旨の討論があり、採決の結果、全会一致を以て本法律案は可決すべきものと決定いたしました。  以上御報告申上げます。(拍手
  24. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 別に御発言もなければ、これより本案採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  25. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 過半数と認めます。よつて本案は可決せられました。      ——————————
  26. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 日程第五、日本国アメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定実施に伴う地方税法臨時特例に関する法律案内閣提出衆議院送付)を議題といたします。  先ず委員長報告を求めます。地方行政委員長西郷吉之助君。    〔西郷吉之助君登壇拍手
  27. 西郷吉之助

    ○西郷吉之助君 只今議題となりました日本国アメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定実施に伴う地方税法臨時特例に関する法律案につきまして、地方行政委員会における審議経過並びに結果を御報告いたします。  今回内閣がこの法案を提出した理由は、日本国アメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定が締結されたのに伴い、その実施の円滑を確保するため、合衆国軍隊等に対する地方税法適用について若干の特例を設ける必要があるというのでありまして、法律案内容はおおむね次の通りであります。  第一点は合衆国軍隊等に対する地方税の非課税に関する規定でありまして、その一は合衆国軍隊に対するものであります。即ち合衆国軍隊の所有する自動車、自転車、荷車及び固定資産に対しては、自動車税、自転車税、荷車税及び固定資産税を、その使用する電気及びガスに対しては電気ガス税を、又日本国内において所有し若しくは使用する財産又はその移転に対しては法定外普通税をそれぞれ課さないこととするのであります。  その二は、合衆国軍隊の軍人軍属及びこれらの家族に対するものであります。即ちこれらの人々が合衆国軍隊の直接管理する食堂、社交クラブ、劇場等へ入場し、若くはその施設を利用し、又はこれらの場所で遊興飲食する場合においては、入場税又は遊興飲食税を、これらの人々が使用する電気及びガスのうち合衆国がその料金を支拂うべきものに対しましては電気ガス税を、又これらの人々が合衆国軍隊に勤務すること等以外の理由によつて発生する所得を有しない場合においては市町村民税を、それぞれ課さないこととし、更にこれらの人々が合衆国軍隊又はその公認し且つ規制するPX、食堂、社交クラブ等における勤務又は雇用によつて受ける所得、及び一時的に日本国内で所有し若しくは使用する動産又はその移転に対しましては、法定外普通税を課さないこととするのであります。  その三は、合衆国において合衆国軍隊のために合衆国政府と結んだ契約を履行することのみを目的として日本国に滞在する合衆国人、換言すれば合衆国人である合衆国軍隊の請負業者等に対するものであります、即ちこのような者がその契約の履行のために行う事業に対しましては事業税を、その契約に基いて受ける所得以外の所得を有しない場合には市町村民税を、又その契約の履行のためにのみ所有する償却資産、例えばブルトーザーのようなものに対しては固定資産税を、それぞれ課さないこととし、更にその契約を履行するため一時的に日本国において所有し若しくは使用する動産又はその移転に対しては法定外普通税を課さないこととするのであります。  その四は、合衆国軍隊が公認し且つ規制するPX、食堂、社交クラブ等のいわば軍人用販売機関というべきものに対するものであります。即ちこのような販売機関等が合衆国軍隊の軍人軍属等の利用に供するためにのみ行う事業又は業務に対しましては事業税及び特別所得税を、又軍人軍属等の利用に供するために行う商品の販売及び役務の提供に対しましては法定外普通税を、それぞれ課さないこととするのであります。  第二は、合衆国軍隊の軍人軍属等が個人として所有する自動車又は自転車に対する自動車税又は自転車税の徴収方法に関する規定でありまして、合衆国における自動車税がいわゆるライセンス・タツクスであることに鑑みまして、当該自動車の登録等を行う際、証紙によつて徴收することとするのであります。  委員会におきましては、先ず岡野国務大臣から提案理由の説明を聞き、更に政府委員から法案内容につきまして説明を聞いた後、質疑に入りましたが、その主なるものを述べますと、中田、吉川、若木の各委員から、この法律の立案したよりどころ、法律施行による税收の増減見込、諸外国の立法例等について質疑が行われたのに対し、政府委員から、米英、米比、米伊問の協定等について説明があり、税收の増減見込については、電気ガス税の減收が三億八千七百万円で、自動車税の増收が二億六千百万円で、遊興飲食税の増收が一億五千百万円で、差引二千五百万円の増收となる見込であるとの説明がありました。なお質疑応答の詳細は速記録によつて御覧を願います。  以上を以て質疑は終了したので、討論に入りましたところ、先ず若木委員は日本社会党第四控室を代表して「そもそも日米間の行政協定は戦争誘発の危險があり、治外法権的であり、経済的特権を與え、日本の自主性を喪失するものとして反対であり、これに基く本法案は外国人に対し無期限に税の治外法権を與えるものであり、その内容は外国の例に比して不利益に立案され、而も課税、非課税の識別が困難であつて日本経済に不利益を與えるから、この法案反対する」と述べられ、次に吉川委員は、先ず若林委員と安全保障條約に対する態度の異なる根本主旨を述べて「党がこの條約に反対したのは、時期尚早であり、行政協定内容が明確となつた後に審議すべきであるとしたことに存する」ゆえんを説いた後、「講和條発効国連加入を認め、にせの平和主義に反対して米軍の駐留を認める以上は、これくらいの非課税は認めるべきである。尤も外国の立法例に関する説明は不十分であるが、一応当局の言明を信用し、後日改正案を提出するやも知れないことを申し添えて、原案に賛成する」との意見を述べられました。これにて討論は終局したので、採決に入りましたところ、多数を以て原案の通り可決すべきものと議決した次第であります。(拍手)  右御報告いたします(拍手
  28. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 本法案に対し討論の通告がござにいます。順次発言を許します。若木勝藏君。    〔若木勝藏君登壇拍手
  29. 若木勝藏

    ○若木勝藏君 私は日本社会党第四控室を代表して、只今議題となりました日本国アメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定実施に伴う地方税法臨時特例に関する法律案反対の意見を表明するものであります。  平和、安保両條約に引続き政府が締結した行政協定は、日本が、世界の危機、なかんずくアジアの危機に立つて、特定国の軍事基地化されまして、全国的には多数の土地建物が無償で使用されたり、又形式は如何様であれ、実質的には、国鉄を初め、気象、電信、電話、電力、港湾等の公共施設が駐留軍の軍事目的の管理下に入り、公共的役務の常時優先的に利用されるなど、一たび戦争が起つた場合は、我が国土と国民は直ちに悲惨極まる原爆の危險にさらされる慮れすら伴つていることは、すでに論議を盡している通りであります。更に協定には、裁判管轄権、逮捕捜査権等、実に広範囲の治外法権を許すと共に、広範囲な免税、国有財産の無償使用等の経済的な特権を與えているのであります。これらは当然日本経済に重大な影響をもたらすことが予想されるのであります。かくのごとく、これは全く日本の行政、経済等に強大な支配権を駐留軍に許し、独立主権に義務と制約を受けるものでありまして、まさに日本の自主性を喪失するものとして、我々はこれに強く反対し、行政協定の破棄を要求して参つたのであります。  本法律案は、関税法、所得税法、たばこ專売法、国有財産管理法等の臨時特例に関する法律と同様に、この行政協定の一つの内容として、合衆国の軍人、軍属、家族、商人等に、無期限、無制限に亘る、いわば租税上の治外法権とも言うべき特権を広範囲に付與するものでありまして、日本の自主性の確立経済自立等の立場から基本的に反対せざるを得ないものであります。国民として日本独立を期待しないものはないでありましよう。併しその独立の実質如何はおのずから別問題であります。先に平和、安保の両條約は多くの不満の声を浴びて両院を通過し、更に行政協定は、政府国会審議権を無視した違憲的な独断により、隷属、不利な内容を以て締結されたのでありますが、今回本法案のごときが制定施行されるに至つたならば、やがて国民はその欲するところの機会均等の国際的関係経済面に破綻を生ずる態様に直面いたしまして、ごうごうたる批判が吉田内閣に集中され、その失政に対して糾彈の鋒先を向けずにはおかないということを、我々は断言して憚らないのであります。(拍手)  これを本法案内容について検討して見まするに、先ず総体的な立場から見まして、合衆国軍隊、合衆国軍隊の構成員、軍属及び家族、商人、軍人用販売機関というような広範囲の対象に対して、事業税、特別所得税、入場税、遊興飲食税、自動車税、自転車税、市町村民税、固定資産税、電気ガス税、法先外普通税のごとき多種に亘つて免税になるのでありまして、その総額も多大なものになるのであります。政府の答弁におきましては、これらは国際慣例によつたものであると言われておるのでありますが、米英協定、米比協定、北大西洋條約当事国間の協定等における場合と比較検討いたしてみましても、遙かに広範囲に亘つて不利な條件の下に規定されておるのであります。苛斂誅求に悩まされつつある国民は、この治外法権的な法律に対して批判せずにおかないことは勿論でありまして、隷属的な協定の実態を知つて、いよいよ吉田内閣に対し不信の叫びをたぎらすことは予想にかたくないところであります。更に細部に亘つて検討してみましても、契約上所定の資格を有するアメリカの商人が、合衆国において合衆国軍隊のために合衆国政府と結んだ契約に基いて行う事業又は業務については、その商人に、事業税及び特別所得税、固定資産税を免除することになつておるのでありますが、これら商人の行うところの事業、業務が果して当該のものであるかどうかということの認定は、従来の幾多の事例に徴してみましても極めて困難であることが予想せられるのであります。たとえ税法の違反事件であつたとしても、今回制定された国税犯則取締法の臨時特例や裁判管轄権等の関係から、迅速に全き措置がなされることは甚だ困難でありましよう。これらが関税特権等と相待つて横流し等の基因を作り、日本経済の撹乱を招く虞れなしとしないのであります。次に自動車税及び自転車税の徴収について、合衆国軍隊の所有する自動車又は自転者のうち、專ら合衆国軍隊以外の者が使用するものについては、その使用者に対し課税することになつておるのでありますが、これには公用又は公共の場合を除外するという但書が付いておるのであります。公用又は公共でないとの識別が果して付くでありましようか。まさにこれは烏の雌雄を知らんとするよりも困難なことでありましよう。この但書で、事実上徴收しないということを裏書したようなものでありまして、この條項はいわゆる地方税賦課の原則を無視した一種の御体裁に過ぎないとの批判は免れ得ないところであります。この辺にも如何に政府行政協定に当つて消極的な意図を持つておつたかということが窺われるのであります。  以上申述べました通り、本法案行政協定の隷属的な一面を如実に現わし、日本自主独立に対しまして暗影を残すものであるとして、私はここに反対を表明する次第であります。(拍手
  30. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 吉川末次郎君。    〔吉川末次郎君登壇拍手
  31. 吉川末次郎

    ○吉川末次郎君 私は日本社会党第二控室を代表いたしまして、只今議題となつておりまする法律案に対して賛成の意を表するものであります。  反対者との意見の相違点は、この法律案が日米安全保障條約に基く行政協定に伴うところの法律案であるということによりまして、日米安全保障條約並びに講和條約に対するところの態度の基本的に異なつておるということから出発いたしておると考えますので、それについて若干敷衍して先ず申さなければならないと思うのであります。我々は講和條約に対しましては、先に、日本独立の契機を把握して現在の軍事占領下から解放されるということのためには、この條約に賛成するのほかなきことを考えまして、講和條約に賛成いたしますると同時に、それとの関連性を持つておりまするところの日米安全保障條約に対しましては、この議場におきまして青票を投じて反対をいたしたのであります。併しながら、日米安全保障條約に対して反対はいたしましたけれども、それは、先に西郷委員長から報告がありましたごとく、第一に我々は、講和條約の発効に伴つて米国に対するところの対等の関係が生じた独立国となつた後においてそれが行われるべきところのものである、又当時においては日米安全保障條約第三條規定行政協定内容が明確になつておらぬ、この二つの理由に基きまして我々は反対の青票を投じたのでありまするけれども、同條約の基本といたしておりまするところの、いわゆるその前文に規定いたしておりまする説明においては、日本独立国となつても、なお、無責任なるところの軍国主義の侵略があとを絶たないので、その間、米軍が日本に代つて日本に駐留する、米軍が日本に駐留するというその根本趣旨に対しましては、我々はあえて反対ではなかつたのでございます。(「そんなこと誰が言つた、おかしいじやないか」と呼ぶ者あり)世間、説をなす者がありまして、日米安全保障條約に基いて米軍の日本におけるところの駐留を承認するということは、平和主義に反するというところの説をなすものがあります。平和主義を守り、国際平和を実現するということの熱意につきましては、我々はあえて如何なるところの人たちにも劣らないところの熱意を持つところのものであります。これらの説をなすところの人の第一の理由といたしておりまするところは、即ちいわゆる日本を軍事的な真空状態に置いても、日米安全保障條約前文が規定いたしておるような無責任なる軍国主義の侵略というものはあり得ないというところの仮定の上に立つものでありまするけれども、我々は、かくのごとき仮定の上に立つての日米安全保障條約に反対する、即ち米軍の駐留を日本の国土のうちにおいて認めないという見解は、非現実的なるところの私は幻想であるということを断ぜざるを得ないのであります。(拍手)それは、共産主義というものが最後の目標を暴力革命によるところの世界の共産主義化に置いておりまする以上は、それが明らかに幻想であるということを繰返し断言して私は憚らないのであります。(拍手、「自由党に入つたらどうだ」と呼ぶ者あり)又そういうところの幻想的な平和主義を抱いているところの人たちは、たとえ、そうした共産主義的な侵略があつた場合においても、日本国民がその共産主義の侵略に対して手を挙げて、あえて反抗しなかつたならば、日本の平和は守れるのではないかということの仮定の上に立つところのものであります。(「それが幻想じやないか」と呼ぶ者あり)併しながら、それは、我々が一時も早く加入することを要求いたしておりまするところの国際連合憲竜が、かかる無責任なるところの侵略者、即ちアグレツサーに対して、国連軍がこぞつて反撃することをば規定し、それが世界平和を維持するところの有力なるところの方法であるということを認めておる。我々がそれを承認いたしまするならば、そうした、この共産軍の軍事的な侵略に対して手を挙げて、あえてそれに反対しないことによつて日本の国土の平和を守ることができるというがごときことは、これ又非現実的なるところの、極めて実際より遊離したるところの幻想であります。かくのごとき幻想的なる誤まれる平和主義こそ、私は、日本の国土というものを再びあの惨澹たるところの戰場の巷に化する最も捷径であるということを、この機会に断ぜざるを得ないのであります。(拍手)以上のような見解に基きまして、私は、それらの説をなすところの人たちに対しまして、我が党として反対いたすものであります。  なお、この機会に附言いたしたいことは、先に本会議場におきまして否決されましたところの、行政協定憲法七十三條によるところの承認を要するという決議案に対してであります。これは本議場において否決せられたのでありまするけれども、併しながら、憲法の法理的解釈に基きまするならば、これは日本憲法学界におきましても最初のケースでありますから、いわゆる職業的な憲法学者の中にも自信を持たないところの人があつたのでありまするけれども、明らかに憲法七十三條によつて行政協定は、先ずかくのごとき法律案政府国会に提出いたします前に、包括的に七十三條に基くところの国会の承認を要するものでありまして、政府のそれに対してとりましたところの、吉田首相或いは岡崎国務相等の、私たちに対するところの法理的な答弁というものは、明らかに憲法違反であるということを、私は繰返してここに断言いたしたいと思うのであります。かくのごとき明々白々たるところの憲法違反の行動に対しまして、ひとり與党と言われておるところの諸君のみならず、緑風会の諸君も(「脱線脱線」と呼ぶ者あり)この違憲的な行為に賛成して、あの決議案を否決されましたということは、我が参議院が日本の憲政史上において憲法違反の行為をなしたということに、くみせられたところのものでありまして、日本の憲政史上におけるところの、私は拭うべからざる汚辱の記録をとどめられたものであるということを申上げて、緑風会の名のために深く遺憾とするものであるということを申し添えておきたいと思うのであります。  なお、法案内容に関しましては西郷委員長よりいろいろ大体の御説明がありました。で、我々は先に若木君が申されましたように、又西郷委員長からお話がありましたように、(「精神分裂だ」と呼ぶ者あり)諸外国において例えば日比協定或いは北大西洋條約に基くところの協定、或いは英国におけるところの米軍の駐留、或いはイタリアにおけるところの米軍の駐留等の前例において、かくのごときところの非課税とする或いは免税とするようなことが行われておるかどうかということをば調べたのであります。このことは極めて重要なことであると考えるのでありまするが、残念なことには、衆議院においてはそうした審議は少しも行われなかつたのであります。我が参議院の地方行政委員会におきましては、私などから発案いたしまして、特にそれに対するところの資料を当局より求めて、そうして調査をいたしましたけれども、只今の若木君の反対論のうちに言われておりますようには、我々は実際上それは見なかつたのであります。大体におきまして、これらの国際的な諸外国におけるところの、現在米軍駐留の諸地域におけるところの例を参照いたしましても、大体似たり寄つたりで、大した相違はなく、特に日本がこれについて不平等なるところの取扱を受けておるという実例を、若木君が言われるようには発見することができなかつたのであります。これを一言申述べておきたいと思います。  要するに、本案はそれほど複雑なるところの法案ではありませんが、約言いたしまするならば、登壇最初申上げましたごとく、(「賛成ならあつさり賛成しろ」と呼ぶ者あり)我が日本社会党は、本法案に対しましては賛成するものであるということをば結言いたしまして、私の討論を終るものであります。(「マイナスだ」と呼ぶ者あり、拍手
  32. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) これにて討論の通告者の発言は全部終了いたしました。討論は終局したものと認めます。  これより本案採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  33. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 過半数と認めます。よつて本案は可決せられました。      ——————————
  34. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 日程第六、日本国アメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定実施に伴う郵便法特例に関する法律案内閣提出衆議院送付)を議題といたします。  先ず委員長報告を求めます。郵政委員長岩崎正三郎君。    〔岩崎正三郎君登壇拍手
  35. 岩崎正三郎

    ○岩崎正三郎君 只今議題となりました日本国アメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定実施に伴う郵便法特例に関する法律案について、委員会における審議経過並びに結果を御報告申上げます。  本法案は、先般締結せられました日本国アメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定の第二十一條におきまして、合衆国は、合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族が利用する軍事郵便局を、日本国内において合衆国軍隊が使用する施設及び区域内に設置し及び運営する権利を有することに定められましたが、郵便法第二條においては、郵便事業は国が行う事業であつて、郵政大臣がこれを管理する旨を規定し、且つ同法第五條において、何人も郵便の業務を業としてはならないことを規定しておりますので、右の行政協定実施するためには、前述の郵便法第二條及び第五條の規定に対する特例を設ける必要が生じましたので、本法律を制定せんとするものであります。  本法案につきましては、委員会において、合衆国軍事郵便局の設置標準如何、日本国内に設置せられる合衆国軍事郵便局と日本郵便局との間における郵便物の交換は、如何なる規定に基き如何なる方式によることとなるか、合衆国の軍事郵便物が日本側の逓送機関に託送せられることがあるか、若しありとすれば行政協定を必要としないかなど、政府当局との間に熱心なる質疑応答があつたのでありますが、その詳細は速記録によつて御了承を願いたいと存じます。かくて質疑を打切り、討論に入りましたるところ、別に発言もありませんので、直ちに採決の結果、多数を以て可決すべきものと決定した次第であります。  以上御報告を申上げます。(拍手
  36. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 別に御発言もなければ、これより本案採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  37. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 過半数と認めます。よつて本案は可決せられました。      ——————————
  38. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 日程第七、日本国との平和條約の効力発生及び日本国アメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定実施に伴う道路運送法等特例に関する法律案日程第八、日本国アメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定実施に伴う水先法特例に関する法律案、(いずれも内閣提出衆議院送付)以上両案を一括して議題とすることに御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  39. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないものと認めます。先ず委員長報告を求めます。運輸委員長山縣勝見君。    〔山縣勝見君登壇拍手
  40. 山縣勝見

    ○山縣勝見君 只今上程になりました日本国との平和條約の効力発生及び日本国アメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定実施に伴う道路運送法等特例に関する法律案につきまして、運輸委員会における審議経過並びに結果を御報告申上げます。  先ず本法律案要旨を申上げますると、第一は、日本国アメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定実施に伴いまして、我が国に駐留するアメリカ合衆国軍隊の自動車に対し、道路運送法及び道路運送車両法中、検査、登録、保安基準等に関する規定適用を除外する特例を設けたことでございます。第二は、この法律施行の際、連合国占領軍の軍人軍属等の私有する車両に対しましては、平和條約の効力発生後は、当然道路運送法及び道路運送車両法が適用されることとなります。よつてこれらの自動車につきまして、切替の際、直ちに検査、登録等、所定の手続をなすことを緩和するため、一時これらの事項適用について六ヵ月間の猶予期間を與えることにいたしたことでございます。以上が本法律案の骨子であります。  委員会審議におきましては格別の質疑もなく、討論を省略して採決に入りましたところ、全会一致を以ちまして原案通り可決すべきものと決定いたしました。  次に、日本国アメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定実施に伴う水先法特例に関する法律案について、運輸委員会における審議経過並びに結果を御報告申上げます。  本法律案は、行政協定においてアメリカ合衆国によつてアメリカ合衆国のために、又はアメリカ合衆国の管理の下に、公の目的で運航される船舶は、強制水先が免除される旨の規定がありますので、行政協定の條項を実施いたしますため、かかる船舶の船長に対しまして、水先法第十三條の強制水先に関する規定適用を除外する特例を設けたものであります。  委員会審議におきましては別に質疑もなく、討論を省略して採決に入りましたところ、全会一致を以ちまして原案通り可決すべきものと決定いたしました。  以上御報告申上げます。(拍手
  41. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 別に御発言もなければ、これより両案の採決をいたします。両案全部を問題に供します。両案に賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  42. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 過半数と認めます。よつて両案は可決せられました。      ——————————
  43. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 日程第九より第三十九までの請願及び日程第四十より第六十一までの陳情を一括して議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  44. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。先ず委員長報告を求めます。厚生委員長梅津錦一君。    〔梅津錦一君登壇拍手
  45. 梅津錦一

    ○梅津錦一君 只今上程されました請願七十三件、陳情七十八件につきまして、厚生委員会における審査の経過並びに結果について御報告申上げます。  これらの請願陳情は、いずれも戰争犠牲者遺族援護強化、元傷痍軍人援護母子福祉法制定等に関するものでありまして、特に引揚問題並びに遺族援護に関する小委員会に付託いたしまして、愼重なる審査をいたし、小委員長報告を求め、なお本委員会におきましても更に審査を重ねました結果、いずれも願意は妥当なものと認め、議院の会議に付して、内閣に送付を要すべきものと決定いたしました次第であります。  以上御報告申上げます。(拍手
  46. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。これらの請願及び陳情委員長報告通り採択し、内閣に送付することに賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  47. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 総員起立と認めます。よつてこれらの請願及び陳情全会一致を以て採択し、内閣に送付することに決定いたしました。  議事の都合により、これにて暫時休憩いたします。    午前十一時三十九分休憩      ——————————    午後三時五十四分開議
  48. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 休憩前に引続き、これより会議を開きます。  参事報告させます。    〔参事朗読〕 本日委員長から左の報告書を提出した。  ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く厚生省関係諸命令の措置に関する法律案可決報告書  ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く外務省関係諸命令の措置に関する法律案修正議決報告書  外国人登録法案可決報告書  日本国との平和條約第十五條(a)に基いて生ずる紛争の解決に関する協定の締結について承認を求めるの件議決報告書      ——————————
  49. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) この際、日程に追加して、ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く厚生省関係諸命令の措置に関する法律案内閣提出衆議院送付)を議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  50. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。先ず委員長報告を求めます。厚生委員長梅津錦一君。    〔梅津錦一君登壇拍手
  51. 梅津錦一

    ○梅津錦一君 只今議題となりましたポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く厚生省関係諸命令の措置に関する法律案につきまして、厚生委員会における審議経過並びに結果を御報告申上げます。  先ずこの法律案提案理由につきまして御説明申上げます。日本国との平和條約の効力が発生いたしました場合、昭和二十年制定の勅令第五百四十二号、ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基いて制定されました諸命令について、然るべき改廃等の措置を講ずる必要があるのでありまするが、厚生省関係のこれらの命令といたしましては、引揚援護庁設置令、有毒飲食物等取締令、陸軍刑法を廃止する等の政令第七條、死産の届出に関する規程、伝染病届出規則及び引揚者の秩序保持に関する政令の六種の命令があるのでありますが、これらのうち、最後のものを除く五命令は、日本国との平和條約の効力が発生いたしました後におきましても法律としての効力を持たせる必要がありますので、ここに法律としての効力を有するものとして存続させようとするのであります。但しこれらのうち引揚援護庁設置令及び死産の届出に関する規程につきましては、字句等について所要の改正を行うことにいたしてあるのであります。又引揚者の秩序保持に関する政令は、制定当初の目的をほぼ達成いたしましたので、将来法律としての効力を持たせ、存続させる必要がなくなりましたので、この際これを廃止することにいたしたのであります。  厚生委員会におきましては、政府当局より本案提案理由その他につきまして詳細なる説明を聴取いたしてのち、慎重審議をいたし、委員と政府当局との間に熱心なる質疑応答が交されましたが、その詳細は速記録によりまして御承知願いたいと存じます。かくて質疑を打ち切り、討論省略の上、採決いたしました結果、全会一致を以て本案政府原案通り可決すべきものと決定いたした次第であります。  以上簡單に御報告申上げます。(拍手
  52. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 別に御発言もなければ、これより本案採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  53. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 総員起立と認めます。よつて本案全会一致を以て可決せられました。      ——————————
  54. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) この際、日程に追加して、ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く外務省関係諸命令の措置に関する法律案、外国人登録法案、(いずれも内閣提出衆議院送付)、日本国との平和條約第十五條(a)に基いて生ずる紛争の解決に関する協定の締結について承認を求めるの件、(衆議院送付)以上三案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  55. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。先ず委員長報告を求めます。外務委員長有馬英二君。    〔有馬英二君登壇拍手
  56. 有馬英二

    ○有馬英二君 只今議題となりましたポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く外務省関係諸命令の措置に関する法律案につき、外務委員会における審議経過と結果を御報告申上げます。  この法案は、平和條約の発効に伴ういわゆるポツダム命令の措置一環として外務省関係の諸命令を改廃せんとするものであります。政府説明によれば、外務省関係のポツダム命令は、出入国管理令、入国管理庁設置令、外国人登録令、北緯二十九度以南の南西諸島に本籍を有する者の渡航制限に関する臨時措置令、朝鮮人、中華民国人、木島人及び本籍を北緯三十度以南の鹿児島県又は沖繩県に有する者登録令の五件でありまして、右のうち出入国管理令及び入国管理庁設置令は一部改正の上存続し、外国人登録令は廃止の上これに代るものとして外国人登録法を制定し、他の二件は廃止するのが本案趣旨でございます。  次に本案の要点を簡單に説明いたしますと、  第一、出入国管理令の一部改正は、連合国最高司令官による外国人の入国許可制その他占領に附随する諸規定平和條発効に伴う措置として削除されております。又新たに「在留資格の取得」という一條を設けて、本邦丙における外国人の出生等に対して在留資格の新規取得を認め、なお平和條発効に伴い日本の国籍を離脱する台湾人と朝鮮人のために、その在留資格及び在留期間は別に法律で定めることとし、差当り條約発効後も引続き居住を認めるという経過規定を定めております。即ちこれらの台湾人、朝鮮人は、出入国管理令の適用については、原則としては一般外国人と同等なのでありますが、国籍の転換に際して適当な経過措置が必要と考え、これらの人たちを二つに分類し、昭和二十年九月二日以前から引続き在留しておる者については、別に法律で定めるまでそのまま在留資格を定めることなく在留せしめる、その法律というのは日韓会談等によつて措置が定まつてから制定するというのであります。又同年九月三日以後入国した者については差当り六カ月引続き在留資格を認め、この法律施行後三カ月以内に在留資格の取得の申請をなすべきことを定めておるのであります。  第二に、入国管理庁設置令も一部を改正するのであります。これは管理令の改正及び登録法の制定に伴う條文の整理と札幌市に出張所を設置するための改正であります。  第三に、北緯二十九度以南の南、西諸島に本籍を有する者の渡航制限に関する臨時措置令は、平和條発効後においては、西南諸島との関係を考慮し、将来この地域よりの内地渡航の自由を確保したい趣旨から撤廃するものであります。  本委員会は、本案が法務委員会の所管とも関連いたしますので、四月三日、十五日、十七日、二十二日及び二十四日の五回に亘り法務委員会と連合委員会を開き、引続き二十五日、二十六日及び本二十八日の三日に亘り外務委員会を開き、通計八回の委員会において文字通り愼重審議をいたしたのであります。  次に質疑の主なものを御説明いたしますが、本案と関連する外国人登録法案も一括審議に付したことを御承知願いたいと存じます。  質疑において最も論議せられましたのは、出入国管理令についてであります。即ち同法令は昨年十一月より一般外国人の出入国を管理するために施行されたものでありまするが、この管理令が平和條発効と共に外国人となる数十万に及ぶ在留朝鮮人並びに台湾人に適用されることになり、管理令に定むる居住、強制退去等の規定がこれらの人々に如何ように適用され運用されるかが質疑の焦点になりました。  先ず連合委員会の模様を申上げますと、羽仁、伊藤、吉田諸委員等より、「容疑者の違反調査を入国警備官の判断に委ねておるのは法の濫用に陥る虞れはないか。又入国警備官は違反調査に当つて地方裁判所から許可状の交付を受けるが、令状に等しい許可状を交付する際、裁判所に拒否権がないように解される規定は、司法権の独立を害する虞れがあること、容疑者収容の意味如何。通計六十日の收容期間を認めておるのは、刑事事件における通計二十三日に比し苛酷ではないか。密告者に対する報償金の制度。登録に際して指紋を強制するがごときは善意の外国人に悪感情を與える結果になりはしないか」等、主として管理令の規定に基本人権を侵害するようなものが多いことを指摘されたのであります。これに対し政府側より、「この法令は、米国、カナダ等諸外国の立法例をも参酌し、国際慣習に則つて作成したものであり、その運用は十分民主的に行うものであること。裁判所が許可状を交付するに当つては、提出された資料によつて判断するもので、この制度は行政権の濫用を防止するに効果があり、不当に行政権の責任を裁判所に負わせるものではない。六十日の收容期間は容疑者の救済手続に必要な期間をも含めたもので、処罰の観念ではなく、飽くまでも行政措置の建前であること。密告者に対する報償金の制度は潜在不法入国者発見のための止むを得ざる措置である」等の答弁がありました。  次に最も論議されましたのは、管理令二十四條に列記せられた強制送還に関する規定についてであります。例えば「四項のハ、ニ、ホにおける貧困者で生活保護法の適用対象になつておる者や癩患者等は直ちに退去せしむるのか、オ、ワ、カ、ヨに規定する政治活動に参加する者の退去は如何なる国内法を根拠としたのか。国内法で違法とせぬ者を單に好ましくない者として退去せしむることは納得ができない。破防法等よりも更に行き過ぎの規定ではないか」との質問に対し、「貧困や癩患者であるという理由だけで送還するつもりはない。悪質の者を送還する途を開いておくためで、運用には十分注意し、徒らに不安を與えないようにする。オ、ワ等に規定した者が外国人として在留することは日本に甚だしく迷惑であるという観念からの行政措置で、国内立法との関連はない。要するに二十四條は制裁の趣意ではなく、日本立場から見て在留されては困る人々の退去を求める途を開いておく行政措置である」との答弁がありました。「又、朝鮮と中国が現在二つの政権に分れておる現実から見て、在日朝鮮人、台湾人に対する登録の施行は、大韓民国と台湾の中国政権の国籍を強制するのではないか」との質問に対し、「国籍は相手国の国籍法が決するものであり、日本立場で左右し得るものではない。ただ現在のところ、交渉の相手は、例えば朝鮮については大韓民国であるので、韓国籍を欲する者は韓国籍をとるであろう。併しそれを欲しない人もあろうから、登録に当つては便法を設け、朝鮮という表現も認めて、その居住を許し、日韓会談の結果によつて永住の問題も解決するのである」との答弁でございました。  かくして四月二十四日、五回に亘る法務委員会との連合委員会を閉じ、二十五日より外務委員会に移り、二十六日、二十八日に亘り続開いたしたのであります。二十五日には岡崎国務大臣の出席を求め、岡田、曾祢、杉原、兼岩各委員の質問が行われました。その要点は、「管理令第二條の六項の経過規定は終戰前から本邦に居住する朝鮮人等に永住を認める趣旨であるか。若し認める趣旨であるならば法文に明らかにすべきであり、併せて関係者に安心を與えるために別に政府声明等を発する必要がある。占領中に制定した政令の一部改正として管理令を提出した理由はどうか。何故に登録法のごとく法律案として提出しなかつたのか。」その他管理令二十四條の運用方針等につき質問があつたのに対し、「管理令第二條六項の規定は大体永住を許可する含みである、ただ永住の條件等は日韓会談中の議題であつて、相互主義の建前もあり、法文に明示は困難であること。管理令は講和後の事態を予想して作られており、現在においても修正の個所も極めて少いので、一部改正として提出したこと。管理令第二十四條については十分運用に注意し、末端機関の行き過ぎを監督する方法を講ずる」旨を答弁したのであります。  続いて二十六日には、更に問題の主要点を検討するために、各派代表委員各一名を以て小委員会を構成し、午前午後に亘つて熱心に討議いたしました。小委員長報告によれば、小委員会においては、管理令第二條六項の表現を明確にし、終戰前より居住する朝鮮人等が簡易手続で引続き在留し得ることを法文に盛ること、強制退去の場合、本人の希望を徴して送還先を決定すること、第二十四條の規定中の不適当なものの削除等について研究いたした趣きであります。小委員会終了の後、外務委員会を続開いたし、小委員長報告があり、更に審議の後、質疑は終了いたしました。  本二十八日討論に入りましたが、討論においては、民主クラブ大隈委員より、附則第一項但書の修正案が提出されました。これは、入国管理庁札幌出張所が四月一日より設置される旨の原案を講和発効の日よりとするための日附の関係より生ずる機械的な修正であります。大隈委員は右の修正を除き原案に賛成されました。  次いで社会党第二控室曾祢委員より修正案が提出されました。その趣意は、終戰前より本邦に居住する朝鮮人等に引続き居住を認める政府の意思であるならば、その趣意を明文化すべきで、管理令第二條六項の経過規定はこの点明確を欠くので、これを削除し、別に附則として簡易手続による在留を認めて、その者の在留資格と在留期間は別に法律で定めること、又強制送還に当つては、その者の国籍又は市民権の属する国につき特別の事情ある者については、本人の希望を徴して送還先を決定する趣意を織り込んだものであります。  次いで自由党平林委員より原案に賛成発言があり、次に岡田委員より、社会党第四控室、第一クラブ、共産党を代表して、修正案を提出されました。その趣意は、管理令第二條六項の規定は、在留を認める趣意が不徹底であるから、これを端的に、「別に法律の定めるところにより本邦に在留することができる」と改正すること、管理令第二十四條の送還規定は別に法律で定めるまで適用しないこと、又送還先については大体曾祢委員と同様、本人の希望を徴すること等であります。  以上で、討論を終り、採決に入りましたところ、多数を以て政府原案中附則を修正の上、その他の部分は原案通り可決いたした次第であります。  なお審議の結果、委員会の空気を総合いたしますと、一般的に見て、出入国管理令の改正及び登録法案については、平和條約の発効に伴い日本国籍を喪失する人々の間に、日本政府は大量の強制送還をするのではないかとの非常な危惧を生ぜしめたことは事実で、この点は甚だ遺憾なことであります。併し委員会の席上、政府の屡次の説明によつても明らかなごとく、これは全くの誤解又は曲解であつて政府は何らさような無法なことをもとより意図するものではないと考えます。従来同胞として本邦に永住した善良な人々は、依然として安んじて本邦にとどまることができるよう意を用いてあるものと認められるのであります。但し政府としては、前述のような危惧や誤解が完全に消え去るよう、又立法の公正な趣意が末端まで徹底するよう、今後十分の措置をとられるよう政府に要望すべきであることは、委員会の一致した見解であり、本日の委員会において、大隈、平林両委員よりも特にこの点につき強い希望が述べられましたので、政府のとらんとする態度を表明せられんことを望む次第であります。  以上御報告申上げます。  次に只今議題となりました外国人登録法案の外務委員会における審議経過と結果を御報告申上げます。  先ず本案内容を御説明いたします。終戰後、政府は、外国人を管理するために外国人の登録とその出入国を規制して参りました。その根拠法は、昭和二十二年五月のポツダム勅令による外国人登録令、昭和二十六年十一月より施行の出入国管理令の二つであります。ここに提案された法案は、現行の外国人登録令が講和発効後の事態に不適当になりまするので、これを廃止して、新たにこれに代る内容を有するものであります。即ち平和條約の発効後は、朝鮮人と台湾人は日本の国籍を喪失し、外国人として出入国管理令の適用を受けることになりまするので、現行登録令中の連合国最高司令官の入国許可等の規定が不必要になること、又登録関係規定内容も整理する必要があるために、新たに外国人登録法を立案したものであります。この法案の主なる点は、一、ポツダム政令たる現行の外国人登録令を廃止し、新たに在留外国人の登録の手続を定めたこと。二、出入国管理令の規定と登録との関連を付けたこと。三、在留外国人は一定期間内に市町村長に登録を申請すること。四、市町村長は外国人の呈示する旅券に基いて正規入国者たることを確認の上、登録証明書を交付すること。五、登録証明書の有効期間を二年としたこと。六、指紋押捺の規定を設けたこと等を規定しておりますが、多くは手続に関する事項でありますので、説明は省略し、その詳細はお手許に配付いたしました資料につき御承知を願いたいと存じます。  外務委員会は四月三日以来法務委員会との連合委員会を五回、外務委員会を三回、計八日間に亘つて審議をいたしたのでありますが、その経過の詳細は、関連上、本案と一括審議いたしましたポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く外務省関係諸命令の措置に関する法律案についての委員長報告中に一括併せて御報告いたしましたことを御了承願いたいと存じます。外務委員会は四月二十八日の委員会において討論を経て採決いたしましたところ、多数を以て政府原案の通り可決いたした次第であります。  以上御報告申上げます。  次いで只今議題となりました日本国との平和條約第十五條(a)に基いて生ずる紛争の解決に関する協定の締結について承認を求めるの件につき、外務委員会における審議経過と結果を御報告いたします。  政府説明によりますると、平和條約第十五條(a)の規定は連合国財産の返還及び補償に関するものであり、補償のためにはすでに連合国財産補償法が制定されております。併しながら同條約に基いて返還又は補償措置を講じても、関係国に満足を與えず、紛争を生ずることが予想されるのであります。かかる場合を予想して、平和條約第二十二條は、その紛争の解決を特別請求裁判所への付託又は他の合意された方法に委ねておるのであります。政府はこの二十二條の規定に基いて、かかる紛争を、日本政府が任命する委員一名、当該連合国政府が任命する委員一名及び両政府の合意によつて任命される第三の委員の三人の委員からなる委員会に付託して解決するための手続を設定する協定を、平和條約の署名国のうち希望するものとの間に締結せんとするものであります。法案は九條からなり、委員会に対する紛争付託の手続、委員の任命方法、委員会の決定方法、委員会の拘束力等を規定しております。  外務委員会は四月二十三日に予備審査、次いで二十八日に質疑討論を経て採決を行いましたところ、多数を以て原案通り承認すべきものと決定いたしました。  以上御報告申上げます。(拍手)    〔議長退席、副議長着席〕
  57. 三木治朗

    ○副議長(三木治朗君) 岡崎国務大臣から発言を求められております、発言を許します。    〔国務大臣岡崎勝男登壇拍手
  58. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 只今報告せられました諸法案のうち、外国人登録法及びポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く外務省関係諸命令の措置に関する法律の二件に関連いたしまして、政府として一言所信を申述べたいと考えます。  この二つの法律案委員会における審議に当り一番問題となつた点は、終戰前から本邦に居住している外国人、特に平和條発効に伴い新たに外国人となる朝鮮及び台湾の人たちが、出入国管理令上如何ように取扱われるかという点であります。かねてからこれらの人々は、平和條約が発効した後は引続き本邦に居住することができなくなるのではないか、或いは又出入国管理令第二十四條の規定適用により大量的に送還されるのではないかという二点について、疑問と不安を感じておつたようであります。政府としましては、今日まで機会あるごとに、善良なる人たちに対し、その居住を否定したり、送還したりする意思のないことを言明して参つたのであり、又委員会における審議に当りましても、十分政府の運用方針を明らかにして来たのであります。併しながら、只今この二つの法律案が再決せられました機会に、更に政府としてこれに関する方針を表明いたします。即ち政府は、終戰前から本邦に居住しているこれらの人々に対しては、特殊の事情を考慮しまして、何らかの方法で引続き居住を認める方針であり、又送還の問題につきましても、一定の刑罰を受けた者とか特に悪質の者は別として、これが適用については、いやしくも非人道的な結果を生ぜしめないよう、運用上愼重な取扱をいたして参る考えであります。又この趣旨及び方針は末端の行政機関にも徹底し、遺憾のないように十分の措置を講ずる所存でございます。(拍手
  59. 三木治朗

    ○副議長(三木治朗君) ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く外務省即係諸命令の措置に関する法律案及び外国人登録法案に対し討論の通告がございます。順次発言を許します。岡田宗司君。    〔岡田宗司君登壇拍手
  60. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 私は日本社会党第四控室を代表いたしまして、ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く外務省関係諸命令の措置に関する法律案並びに外国人登録法案に対しまして反対をするものであります。  平和條約の効力発生に伴い、どうやら形だけでも独立国となりました以上、外国人の出入国並びに登録に関する法律が整備されることはもとより当然のことでありますが、この二つの法律案は、單なる外国人の出入国の管理登録に関して技術的な規定をしておるだけではなく、今日の日本にとりまして極めて重要な内政上の問題、国際的な関係の問題に触れておる点があるのであります。問題は昭和二十年九月二日以前から引続き日本に在留しております朝鮮人、台湾人の問題でございます。これらの人々は戰前までは日本の国籍を持つておりました同胞でございました。そうして多くの人々は長い間本邦におきまして日本人と同様に暮し、又日本人を妻とし、子供さえ、もうけておるかたも多いのであります。又、中には、自由意思で日本に参りまして居住し職業を得たのではなくて、戰争中徴用等によりまして強制的に連れられて参つた人々もあるのであります。これらの人々は普通外国から入つて参りました外国人とは甚だ異なつた社会的性格を持つものでありまして、直ちに一般の外国人と同じに取扱うことは、政治的、経済的、社会的に見まして、又国際的に見まして、問題があるのであります。政府もこの点につきましては若干の考慮を拂い、ポツダム宣言の受諾に伴い云々の法律案の第二條にそれらの規定を設け、又只今岡崎国務相よりの言明もあつたのでありますが、これでは決してこれらの人々を公正に処遇しておるものとは言えないのであります。第二條の第六項には、「別に法律で定めるところによりその者の在留資格及び在留期間が決定されるまでの間、引き続き在留資格を有することなく本邦に在留することができる。」云々と定めてありますが、これでは、例えば大韓民国との取極ができるまでで、それから先のことはわからないことになり、著しく朝鮮の人々に不安を與えておるのであります。私どもは、先ず原則的にこれらの人々が本邦に永住することができるということを認めまして、然る上にその條件を定めるというのが、従来同胞でありましたこれらの人々を処遇する公正な途であると確信するのであります。  第二の点は、強制退去の問題であります。ポツダム宣言云々の法律に基き今後も法律として効力を有することになる出入国管理令第二十四條の規定を上記の人々に適用する問題であります。もとより法に違反する者が罰せられることは当然でありますが、長年内地に在住し、日本に生活の根拠を有する者、日本人を配偶者といたしまして子供を持つておる者を、今後直ちに一般の外国人と同じに取扱い、行政官の認定だけで直ちに強制退去を命ずることは、幾多の社会問題を起す虞れがあるのであります。この法律施行されるという不安から内地在住の朝鮮人の間に非常な不安が生じ、そのために騒擾さえ起つておるのであります。私は、この法律をこれらの人々に直ちに適用することなく、別に法律を定めて運用することが、今後引続き内地に在住するこれらの人々との関係を調整して行く上に必要であると信ずるものであります。  更に内地在住の朝鮮人中国人の不安の種となつておりますものは、強制送還の問題であります。今日朝鮮は二分され、二つの国が激しく対立しておりますが、日本は南鮮の大韓民国を唯一の正当の政府と見ておるのであります。そうして岡崎国務大臣らの説明によりますれば、今後日本に住む朝鮮人は、すべて、大韓民国政府を認めようが認めまいが、大韓民国民として取扱うというのであります。そうなつて参りますというと、北鮮政府を支持する者が何らかの理由で強制送還される場合に、日本政府は大韓民国に強制的に送り付けることになるのであります。今の朝鮮の状態からいたしまして、これらの人々が大韓民国によつてどういう取扱を受けるかは想像にかたくないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)即ちそういう人々は政治上の理由から直ちに投獄されるか或いは殺されるという場合も予想されるのであります。こういう可能性があります場合に、法の定めるところであるとして大韓民国に送り付けることは誠に人道上の重大なる問題であります。又台湾にある蒋介石政府を認めない中国人の場合についても同様のことが生ずる虞れが多分にあるのであります。かかる特別の事情のある場合には、如何なる国又は地方に送られるかを本人の希望するところによつてきめるのが妥当であろうと信ずるのであります。然るに本法にはその規定が設けられてないのでありまして、これ又本邦在住の朝鮮人、中国人の間に非常な不安の種となつておるのであります。  この両法、特に出入国管理令には更に幾多の反対すべき理由があるのであります。即ち第二十四條のオ、ワ、カ、ヨの規定のごときは、先の団体等規正令と同じ内容を持つものであります。今国会に提出されております破壊活動防止法案以上に、政治活動、言論の自由を侵害する規定でございまして、これの濫用は恐るべきものがあろうと思われるのであります。又出入国管理令第二十四條第一項各号の一に該当すると思われる外国人に対しまして、入国警備官は刑事訴訟法に定められた手続によらずして、違反調査、臨検、捜査、押収等を行うことができ、甚だしきは入国警備官はその所属官署の主任審査官の発付する收容令書だけで容疑者を三十日も收容することができ、更にそれを三十日間更新することができるのであります。かくて入国警備官なる下級官吏によりまして、容易に人の身柄を六十日も拘束することができるように定めてあるのでありまして、これらは行政官に過当に広大な権限を與え、全く憲法に定められた基本的人権の精神に相反するものであると言わなければなりません。(「その通り」と呼ぶ者あり)私は以上述べました理由、及び時間の都合で申述べませんが、なおその他の理由によりまして、両案に対して反対するものであります。  政府が戰前より引続き在住する朝鮮人、中国人に対しまして、これらの法律適用して従来のステータスを著しく変え、又朝鮮、中国の現在の政治的状態を考慮せず強制送還等を行うことは、本邦に在住する朝鮮人、中国人に不安の念を與え、いろいろな事件の発生する種を蒔き、又日本国民との間の感情上の融和を阻害することになるのであります。これは国内的に見ましても甚だ有害なことであります。将来日本が特に善隣友好関係を結ばなければならぬ中国、朝鮮との関係を考慮するとき、誠に憂慮に堪えないものがあるのであります。李承晩政府や蒋介石政府の将来などはわかつたものではないのであります。アジアにおける諸国の動向をもつと長い目で且つ広く見ますときに、私は、在日朝鮮人、中国人につきまして、何ら特別の考慮を拂わず、将来面白からざる結果を生ずる慮れのあるこれらの法律案に対しましては、反対をせざるを得ないのであります。  これを以ちまして私の反対討論といたします。(拍手
  61. 三木治朗

    ○副議長(三木治朗君) 曾祢益君。    〔曾祢益君登壇拍手
  62. 曾禰益

    ○曾祢益君 私は日本社会党第二控室を代表いたしまして、只今提案されました二つの法案に対しまして反対の意見を述べるものでございます。  すでに外務委員長から、相当詳細に亘りまして外務委員会におきまする両案の審議につきましての御報告がなされたのであります。これを要しまするに、問題点は、先ほど岡田君も御指摘になりましたように、大体二点に盡きたのであります。第一は、朝鮮人、台湾人の諸君に対しまして居住を認めて行く、これが政府の原案では極めて明確を欠いておるために、これをいま少し明確にしておくべきではないか。それから第三点は、強制送還に関しましてどの程度の手心と人道的な取扱をなすべきか。又これを如何に法令上明らかにして行くか。更に又、法令上以外にも、これを政府の声明或いは管外等を以て明らかにし得るものは成るべくこれを明らかにしなければならない。この点に関しましては、大体におきまして、外務委員長の御報告にもありましたように、委員会の各派代表を以て構成された小委員会の意見も一致しておつたと言つて決して過言ではなかつたのであります。然るに我々の主張にもかかわりませず、政府においては原案通りにこれを主張する、ここに問題があるのであります。  第一、これらの問題は、政府説明によりましても明らかなように、政府が韓国との交渉或いは台湾政権との交渉、これらのことに非常に荏苒日を送りまして、殊に韓国との交渉においてはこれが講和発効の時までできておらない。このことができておらないために、原案にありまするような、別に法律を以て定める云々というこの基礎條件が成立しなかつた。しなかつたことによつて、不当に又不必要に関係者に不安を與えておるのじやないか。この責任は決して看過されてはならないと思うのであります。私は、これらの朝鮮人、台湾人の諸君が……相互主義の原則に基いて、日本国民にして朝鮮、台湾等に平穏に居住された同胞が、原則として同様に、朝鮮、台湾等において居住権を認めらるべきであるという主張を持つておるものでございます。併しこれは現実におきまして、現に多くの人が送還されておるのであります。従いまして、この現状を考慮しましたときに、我々、一方的にいたしましても、日本に引続き在住されておるこれらの諸君に対しまして事実上居住権を明確に與えて差支えない。政府も大体そのつもりでおる。こういうふうになつておるにかかわらず、韓国との交渉がまだできておらないためにその内容が言えない。かような形式的な論理の下に余計な不安を持たしておるのではないか。醸しておるのではないか。然らばその点をもつと明確に法令を以てその不安を除去するのが、これは少くとも議会の権能として各派が超党派的にこれを支持すべき当然の理由があると考えるのでございます。然るにかかわらず、この点につきまして政府が原案を改めようとしない。従いまして我々としては遺憾ながらかかる法案に対しましては反対せざるを得ないのであります。  第二の点は強制送還の問題でございまするが、二の点も二点に分れると思うのであります。  第一は、強制送還をすべき種類、いわゆる入国管理令の第二十四條をどの程度に解釈し、各項目に該当すべき人たちに対して、朝鮮人、台湾人についてどのように運用して行くか、この問題でございます。この点につきましては岡崎国務大臣から只今説明がありましたが、これ以上にもつと詳細に、而も明確に人道的な見地から、貧困等の理由により国又は公共団体に負担をかけておる人たち、或いは癩病その他の理由によつて病院に入つておる人たち、精神病患者、これらの諸君に対しては、はつきりと適用を除外するということをいま少し明確にすることが当然に必要であると思うのであります。私は同時に、強制送還の問題は、朝鮮、台湾との協定ができるまでは全部これをストツプしておく、適用しない、かような考え方は理論的にもおかしいと存じます。而うして、さような現わし方をするならば、却つて朝鮮、台湾との間の話合いが付いた後は一体どうするのだ、この不安をやはり関係者に残すでありましよう。従つてさようなことは私は賛成いたしませんが、少くとも政府がこの際もう少し明確に不安を除去するような措置をとるべきだと存ずるのであります。法律を犯したいわゆる悪質なる者に対して特にこれを仮借するようなことは断じて不可であります。併し人道的な国民として待遇すべき気の毒な人たち、これに対する処遇はもつともつと明らかにして何ら差支えないでありましよう。これが私たちの主張であります。  第二の点は、強制送還に関連いたしまして先ほど岡田君からも指摘されました送還先の問題でございます。この点につきましては政府の今日までの答弁は全く一つの法理論にのみ立つているのであります。即ち朝鮮人につきましては韓国政府が当然の管轄権を持つているから、その送り先もすべて韓国政府でいいはずであるとの主張でありました。私たちは岡田君のお説と違いまして、韓国政府が現状におきまして国際連合が認めておる唯一の合法政府である、この立場日本としてもとるべきだと存じます。併しながら事、送還に当りましては、実際問題として韓国政府に渡すことが、韓国政府の支配地域に送還することが現に明白な人道上適当ならざる場合があるやに存じます。さような場合にただ法理一片を以ちましてこの問題を処理すべきではないことは申すまでもないと私は考えるのであります。話は横道にそれるようでありますが、現に朝鮮の停戰協定の話合いにおきまして、国連側は、北鮮捕虜に対しましても、現実に南鮮側に寝返り打つた人たちを北鮮に送り返すことは、非常な人道問題であるから、それはできない、かような立場をとつておることは御承知の通りであります。そのこと自体の是非は別といたしまして、我々日本政府として、国会といたしまして、同様な人道的な考慮を拂うべきは私は異存のないところである。然るにそれに対する政府説明は全く不十分である。不安であります。又同様に台湾人、旧台湾人についても同様でありまして、台湾政権が当然旧台湾人に対する管轄国である、所轄国である、これらの理由のみを以て台湾人送還問題を取扱うことは断じて不可であります。更に又戰前から中国人として日本におつた諸君につきましても、これらの人がそれぞれ中国本土或いは台湾に送還されるような場合に同様な人道問題を起すことは明白でございます。従いまして、私たちといたしましては、これらの送還に当りましては、送還の原則は、先ほど申しましたように人道上の運用で手心を加うべきものは別とし、送還はすべきであつても、送還先については人道上に支障を来たさないような措置、具体的には本人の意向を徴した上で決定すべきだ、本人の意向により決定するということは、これは行き過ぎでありましよう。いずれの政権におきましても、自分の政権のみが全国民に対する管轄権を持つておるのだ、日本が勝手に送還先を本人の意向のみによつて決定されては困る、かような問題を生ずるとは思います。従いまして、本人の意向を徴してこれを決定する、これこそ正しい行き方ではないか。さような見地におきましていろいろ政府の意向も徴したのでありまするが、遺憾ながら我々の意見は容れられなかつたのであります。  甚だ遺憾でありまするが、この状況におきまして原案をそのまま通過させることには我々としては良心的に賛成できかねる。かような意味におきまして、ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く外務省関係諸命令の措置に関する法律案委員長報告の案に対しまして反対いたします。同時に外国人登録法も、その関連におきまして、遺憾ながらこれに対して反対することを申上げる次第であります。(拍手
  63. 三木治朗

    ○副議長(三木治朗君) 大山郁夫君。    〔大山郁夫君登壇拍手
  64. 大山郁夫

    ○大山郁夫君 議長並びに議場の皆様、私は第一クラブを代表してというわけではありませんが、第一クラブは、言論寛容の精神から、私に、ここに立つて今問題になつております法律案に対して私の個人的意見を述べることを許されたので、そういう意味でここに立つているものであります。  法律案の題名が非常に長いので、ちよつと言えませんが、ともかくポツダム宣言の受諾に伴い云々の法律案、その中でも殊にこの出入国管理令並びに外国人登録法案、それを私の主題にしようと思つておりますが、而も私はあの出入国管理令のうちにある強制送還の規定のみに私の問題を限ろうとしている。又強制送還に関しましてはすでに二名のかたからも反対意見を述べておられるので、成るべく重複しないように、違つた角度から私の意見を述べてみたい、こういうふうに考えております。殊に私は、今日、日本の対世界態度の進路を決定する上において非常に大きな意味を持つているこのアジア問題、その立場からこの強制送還の問題を見てみたいと思うのであります。  今日におきましてアジアに、非常に大きな連帶性の問題がアジア人を刺激している。アジア諸民族間の連帶性の問題、今日のアジアの大問題はこれであるし、又従来のアジアを統治しておつた帝国主義の諸国家が、アジア問題が限りなくむずかしさを加えて来たというふうに考えているのも、やはりアジアにおいてこの連帯性の意識というものが猛然と頭を持ち上げて来たところから来ているものであると思うのであります。アジアにいろいろの人種があり、又アジアにはさまざまな政体が行われているし、又、所によつていろいろのイデオロギーで支配されている民族もあるのだが、併しそういうような政体であるとか、又人種或いはイデオロギーとか、そういうものを超越して、今アジア人は一つの連帯性の意識によつて刺激されている。その連帯性の意識というものが一体どこから来たものであるかということは、アジアの各民族が、過去二世紀間アジア人を虐げて来た帝国主義支配或いは植民地的支配から最終的に解放されたい、その念願から来ているものであるということを我々は信じているのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)このイデオロギーということを全然超越している、例えばあのインドのネール首相、あれは本国においては共産党と争つているのであるが、併しながら国外に対しては、第一、中華人民共和国を認めている。そうして又国際連合にこの中華人民共和国を入れなければならないということを主張している。或いは又カイロ宣言によつて台湾問題というものは解決せられるべきものであるということも主張しているのでありますが、こういうことは、皆、彼のアジアの連帯性の意識から来ているものであると私は考えるのでありますが、殊にこのネール首相は、あのサンフランシスコ会議の問題が盛んなときにこういうことを言つておつた。ヨーロツパの政治家に向つてこういうことを言つておつたのである。即ちアジアにおいて、コロニアリズム、植民地的の搾取、植民地的の支配というものが除去せられない限りは、アジアの不安というものは永久に残るであろうということを彼は言つておつたのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)こういうようなことを考えるときに、如何に今日においてアジアの連帯性意識というものが猛然と頭を持ち上げているかということがはつきりするのであります。それでこの強制送還の問題は、私は、ただ日本に在留しているところの六十万の朝鮮人諸君とか、或いは又同じく日本に在留している四万何千かの台湾系の人々、まだ日本人だそうでありまして、今日からその国籍を失うのだということを聞きましたが、とにかくそういう人だけの問題ではない。又そういう人の背景をなしているところの全朝鮮、全中国だけの問題ではない。この問題の関連するところは実にアジア全土に及ぶものであり、そうして、この問題というものはアジアの十億の全民衆に関係するところの大きな問題であると我々は考えているのであります。(拍手、「そうだそうだ」と呼ぶ者あり)その点からこの問題を把握してみたいと思うのであります。  この強制送還の條項は、非常に非人道的であり、非民主的であり、反動性を帯びているものであると同時に、極端に反アジア的性質を帯びているものであるということを我々は断言するのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)  それで、先ず第一に、今まで我々の手を取つて日本人として生活していた朝鮮系の人々、台湾系の人々、中国系の人々が、もう講和條約の発効というその原因だけによつて、自己の責任だけでなく、いつの間にか自分の日本の国籍を失つてしまつている、そういう人々をつかまえて、そうして或る場合にはこれをあの大韓民国政府の手に引渡そう、いわゆる強制送還によつて、大韓民国と申しますか、それの政府の手に引渡そうとする、或いは又台湾のほうへ引渡そうとする、こういうようなことをしておる。勿論これは第一に世界人権宣言の精神に背いておる。幸福を追求する権利とか、或いは国籍を選択する権利というものはもう脚下に蹂躙しておるから、非常に重大な問題であるが、更に我々はその反アジア性を見なければならない。私は多くの朝鮮人諸君から、若し彼らが朝鮮へ強制送還され、李承晩政府の手に渡されたならば、その結果がどういうものであるかということをしばしば私に語られた。その中にこういうことも彼らは言つておつた。さつき誰か、岡田君から申されましたが、或る場合には投獄され或る場合には死刑に処せられ、又多くの場合においては韓国軍隊の中に編入される。そうして訓練されて職場に送られる。こういうことを恐れておる朝鮮人がたくさんある。こう申しますると、そういう朝鮮人は、これはその軍隊に編入されて、職場に送られて殺されるかも知れないのが恐いのではないか、こういうふうにお考えになるかも知れないが、併しながらその朝鮮人は、そういう浅はかな考えからそういうことを憂えておるのではないのであります。彼らは考えておる。若し彼らが韓国軍隊に編成されて、そうして職場に送られるときに、一体、誰と戰うのであるかということを恐れておるのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)即ち彼らの相手は、戰争の相手というものは韓国の兄弟たちであつて、或いは中国の義勇軍でありますから、同じくアジア人同士であつて、彼らはアジア人としていわゆる殺し合うというような残虐な運命を見て、非常に戰慄しておるということを我々は同情しなければならないと思うのであります。(「そうだ」「その通り」「よく考えてみろ」と呼ぶ者あり)日本人だつてやはり同じような憂えを持つておる。再軍隊がそうである。この再軍備によつて作られる兵力というものは大陸に向つて送られようとしておる。こういうことはずつと前からあつて、私がまだ外国に亡命中、前の占領が行われておるときに、連合国軍の一将官がこういうことを言つておつたということを新聞で見て驚いたのである。その将官はこう言つた。「日本人の智力、体力、精神力、そういうものから比べてみれば、日本人は非常に立派な兵隊になれるのだ。私はこういう日本人を軍隊に編成して、これを指揮して戰つてみたい」と、こういうことを言つておつたということが新聞に書いてあつたのでありますが、こういう場合に日本人は一体誰と戰うのであるかと思つて、あの新聞を読んで私は大きなシヨツクに打たれたのであります。併しそういう昔のことを我々は言わなくても、もつとま近にいろいろの例がある。例えば去る三月二十四日の東京のさまざまの新聞に書いてあつたのだが、あの新聞を読むと、総司令部の外交局長シーボルド大使がアメリカに帰られた。そうしてカソリツクの団体であるところのナイトオブ・コロンバスのその会合で演説した。その演説の中で彼はこういうことを言つておつたと書いてあるのであります。即ち八千七百万の人口を持つておる日本国民というものは、日本国民の人的資源というものは、連合国にとつて偉大なる財産であるというようなことは彼は言われた。それを読んでも、私は、勿論これを言われたところのシーボルド大使の意味は私は何か知らないのだけれども、併しながら我々はこれを読んで、日本の人的資源というものは、どういう目的に対して、どういう目的のために用いられようとしておるのかということを考えざるを得なかつたのであります。ところが二日を経てあのニツポン・タイムスの記事を読んで見ると又こういう記事があつた。(「素直に考えろ」と呼ぶ者あり)第八軍の司令官であるところのヴアン・フリート将軍が、ユナイテツド・ステーツ・ニツーズ・アンド・ワールド・リポート、それに対するインタービユーを與えておる。そのインタービユーの中でこういうことを彼は言つておるのであります。即ち第一に、彼は、あの朝鮮人は世界中どこに押し出しても決してひけを取らないような立派な軍隊を作つて、そうして近代的武器を用い得る能力があるということを褒めそやしておつて、そうして、その中にやはりこういうことが書いてあつたのであります。即ち今後アジアの共産主義というものを征伐するにはこういう人的資源を用いなければならない、こういう意味が書いてあつたので、若し朝鮮人諸君がこういうことを読んだらば、彼らは彼らの不安というものが決して杞憂でないということを十分に知ることができるであろうと私は考えるのであります。(拍手)そういうような例は幾らでもありますが、ともかくこのアジア人同士相殺し合うということに対して、我々はもう今後そういうようなことをしない、いわゆる不戰アジアの誓いということは、今後日本人がとらなければならない非常に重大な立場であるということをかねがね主張しておつたのでありますが、この点からやはりこの強制送還の問題を我々は見ておるのであります。  それからもう一つは、この強制送還の問題、即ち朝鮮人或いは台湾人の国籍選択の権利を奪うということ、この半面は、やはり内政干渉主義、ところが今日アジアの人々は内政干渉主義ということに対して非常な厭悪を感じておる。世界で今平和運動に従事しておる人々は、やはり同じことを言つておる。今日の世界の戰乱というものは、帝国主義列強による内政干渉主義が最後の原因になつておるということを盛んに言つておるのでありますが、殊にアジアの人々はそうです。なぜならば、アジアの今日の戰乱というものは、やはり同じように内政干渉主義ということに関係がある。今日アジア人は心の底から平和というものを望んでおるとにかかわらず、而もアジアに戰乱が絶えない。朝鮮は二つの朝鮮に分れておる。中国のほうは人民政府とそれから国民政府とがある。ヴエトナムにやはり戰乱が行われておる。イラン、イラク、あの方面も決して平穏でない。そしてすべてが皆内政干渉主義の結果である。内政干渉主義というものは裸かで行われておるのじやない。いろいろな擬装を施されておる。例えばあの帝国主義列強からアジアに向つてなされる武器援助、財政援助、軍事援助であるとか経済援助であるとか時とすれば未開発地域の開発のための援助とか何とか、こういうようなものを皆我々は或る程度において内政干渉主義の上に施されてある擬装であると考えておるのであります。我々は、今日あの台湾における蒋介石の政権というものが、若しこの経済援助、武器援助、財政援助とか、こういうようなものがなかつたならば、今余命を繋いでおるなんということは考えることもできないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)同じく李承晩の政府つて同じことを考える、どうかすると、我々があの安保條約から行政協定の條文を読み、そうして吉田政権のことを思うというと、吉田政権もやはり同じラインの上におるのではないか。それで、今この東亜の現代史の上に、蒋介石政権、李承晩政権、吉田政権のこの三幅対がその醜い姿を現わしておるという事実も、それから生じたと思うのであります。(拍手)こういうことは我々に堪えることができないことなんであります。それで内政干渉主義に対して、我々はこの強制送還、強制送還というようなものは内政干渉主義の産物であるということを我々は信じておる。  それからもう一つ最後に一つ附加えておきたいことは、(「時間だ」「まだまだ」と呼ぶ者あり)これは吉田内閣の政策というものは、今日のアジアの情勢、朝鮮の情勢とか、そのほか一切のアジアの情勢というものが永久にもう固定化しておるものであるという建前から出発しておるのでありますが、併しながら、今日のアジアの情勢ほど不安定なものはなく、そうして又今日のアジアの情勢ほどもう直ぐに変ろうとしておるものはないのであります。朝鮮の状態がいつまでも固定しておるというふうに考えるのは大間違いで、これはこの頃あの連合軍の方面のほうから盛んにそのことが言われるようになつて来ておる。朝鮮の戰乱のあの状態というものは、あの、その辺のジエツト・プレーンであるところのミグが出現してからすつかり変つてしまつた。そうしてこの問題が今社会主義生産とか或いは資本主義生産の優劣ということの問題までも引き起しておるのでありますが、ともかく非常に変つておる。そればかりでない。丁度私が数日前四月十一日附の英文毎日を読んでいるというと、ロバート・S・エレガントという連合国の通信記者であつたと思うが、その人の記事が載つておつた。その人は、「南鮮において、今日、米の收穫が非常に悪かつた。税が非常に高い。そうして社会的不安が増大してゲリラがだんだん加わつておる。」ゲリラと言えば北鮮と言われておつたが、あの記事を見るというと、忠清北道の或る所から出された、南鮮のあの穀倉と言われるそこから出されたものでありますが、「今だんだんだんだんゲリラが盛んになつて来ておる、こういうような状態では、殊に経済的な大混乱並びにその銃後におけるところの人民のこの不安とか動揺というもの、こういうものがだんだん醸成される。この結果としては、連合軍が共産軍の新らしき攻勢が防げるか防げないかということさえ大きな疑問があると思われるようになつた」ということを書いておるのでありますが、こういう記事を連合国側の記者が書くのはよくよくのことがあつたと思うのであります。  それから朝鮮の問題と関連して台湾の問題であるが、台湾の問題も、今日の状態が永久的に続くものであると考えておつたのだが、併し今日はアメリカの帝国主義的な評論家すらそれは期待できないということを書いておる。最近のあのニツポン・タイムスに転載されておつたウオルター・リツプマンの一つの小さい論文にも書いてあつたのでありますが、「我々は朝鮮の問題を何とかしなければならない。あの休職会談を何か現状のままで置いておくことは罪悪だ、併しそれに関連して他の大きな問題がある、殊にあの台湾の問題を解決しなければならない、ところが台湾の問題は選挙の年に解決するには余り大きいけれども、解決しないでおかれないような事情もある」、そういうことを書いておる。彼はこういうことを書いておる。「第一に、先ずあの蒋介石の軍隊の士気から、もはや問題が生じそうになつて来ておる。その次には、台湾の住民の蒋政権の政治に対する態度、この方面から非常に大きな問題が生じようとしておる。もう一つは、又この台湾の」……(「本論々々」と呼ぶ者あり)「それから第三は、台湾政府の要人の中にもいろいろな陰謀があり、その陰謀は丁度あの中国の本土へ送られた中国の軍隊がなしておる行動と非常によく似たものであるというような、こういうわけで、もう一日もこれを放つておけない。」その解決策として彼はこう言つておるのである。即ち「カイロ宣言を尊重して、人民政府のスーゼレンテイ即ち宗主権、台湾に対する宗主権というものを、これを認めなければならないが、その宗主権の下において、又台湾の処分をしなければならない、即ちあの台湾の住民が中国の本土からこれまで治められたことがないというこの事実を参酌して、そうしてこの事実を参酌して台湾を一つのオートノマス・ステート、自治国家として存続せしめて、それを国連によつてその存立を保障する。そうして又蒋介石及び蒋介石の家族というものは、これは台湾に置かないで、どつか安全な所へ避難させる。持つて行く。避難所へ持つて行く、できれば極東でないその外の避難所へ持つて行くべきものであり、そうしてその軍隊というものは、これを徹底的に解散してしまわなければならない。」こういう解決案を漏らしておる。こういうところを見れば、極東の情勢というものは如何に変化の多いものであるか。吉田内閣が考えてるような李承晩、蒋介石、吉田三幅対がいつまでも永久に残るということは考えられない。そういう意味において、強制送還の相談相手を李承晩の政府と蒋介石の政府としておるところに非常に大きな反動性がある。歴史の歯車を逆転せしめようとしておるものである。(「時間々々」と呼ぶ者あり)こういう反動政策には我々は断固として反対しなければならない。こういう結論を持つておるということを申上げて、私の今日の演説としたいと思うのであります。(拍手)(「困つた存在だよ」「つらいだろうが、聞いておきなさい蒋介石「耳が痛いだろう」と呼ぶ者あり)
  65. 三木治朗

    ○副議長(三木治朗君) 堀眞琴君。    〔堀眞琴君登壇拍手
  66. 堀眞琴

    ○堀眞琴君 私は労農党を代表いたしまして、只今議題となつておりまするところのポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く外務省関係諸命令の措置に関する法律案並びに外国人登録法案に対しまして反対をいたすものであります。  外国人の取扱につきましては、原則として、先ず第一に、世界人権宣言に則り、人道主義的にこれを取扱わなければならん。如何なる外国人に対しても排他的であつてはならない。例えば人種である、或いは種族である、或いは宗教であるというようなものに関して、そこに何らの差別を設けてはならないということが第一の原則と考えられるのであります。第二の原則として考えられるのは、国際慣行上それぞれ相互主義的でなければならないということであります。つまり日本が外国人に対して與える取扱は、日本人が外国において與えられるところの取扱と同じでなければならないということであります。この二つの原則が專ら行われなければならんのでありまするが、併し更に我々は、第三の原則としまして、特殊な関係を持つところの外国人につきましては特別な考慮を拂わなければならないということを考えなければならんと思うのであります。この二つの法案において專ら対象とされておりますところのものは中国人並びに朝鮮人であります。勿論、その他の外国人も、この二つの法律案によりまして、その対象として考えられているのでありまするが、併し私が第三に指摘いたしましたところの、特殊な関係を持つ外国人という考え方から申しますというと、主としては中国人であり朝鮮人であると申さなければならんのであります。ところで、中国人、朝鮮人でありますが、いわゆる平和條約が本日から発効されると申しまする、これによりまして、本日から、曾つて日本の国籍を持つておつたところの朝鮮人それから台湾人は、いよいよ日本の国籍を失うのであります。それから又、特殊な関係にある外国人として大陸系の中国人が考えられます。朝鮮人及び台湾に籍を持つておつたところの中国人は勿論のこと、この大陸系の中国人につきましても、永年に亘り、ときには明治の初年から数十年に亘つて日本に在住するのでありまして、その生活も日本人の間に融け込んでおり、特に日本人を配偶者として持つような中国人も多々おるのでありまして、中には息子、孫というような世代にまで至つて在住している者がたくさんいるのであります。    〔副議長退席、議長着席〕  この特殊な、台湾系の中国人、大陸系の中国人並びに朝鮮人に対しまして、その特殊な関係を考慮に入れて、我々は、十分、人道主義的な、排他的ではないところの、世界人権宣言に副うところの取扱をいたさなければ、恐らく日本アジアにおいて永久にアジアの諸民族から排撃を食うという結果になるでありましよう。従つて我々としては、ここに上程されておりまするところの二つの法案につきまして、その内容について詳細に検討いたしまするときに、これが私の挙げたところの三つの原則を少しも満たしておるものでないということを論証いたしまして、反対せざるを得ないのであります。  先ず第一に、各條項について見まするというと、例えば出入国管理令第二十二條によるところの永住許可に関する規定であります。この規定の中には三カ條の條件を挙げて永住許可を與えるものといたしておるのでありまするが、その條件は極めて抽象的であり形式的であります。これを具体的に実質的に規定しなければ、到底日本にこれまで在住いたしておりましたところの中国人や或いは朝鮮人に対して、その生活を安心して営むことができないようにする結果になるだろうと思うのであります。  第二に強制送還の問題であります。これは各議員からそれぞれ述べられたのでありまするから、私はこれについてはここには取上げることをいたしません。ただこの二十四條に挙げられておるところの諸規定がその範囲が極めて広く、且つ人道上極めて苛酷であるということを申上げるにとどめようと思います。次いで強制送還の手続であります。この規定は第二十七條以下に述べられておるのでありまするが、基本的人権を無視した規定であることは、これを詳細に審議するならばおのずから明らかになつて来るころであります。特に二十七條以下に、第二十四條第一項各号に該当すると考えただけで、違反調査は勿論、行政措置によるところの容疑者の収容ができることになつておることは、全く基本的人権を無視したものと申さねばならんのであります。又、臨検、家宅捜査、押收などは、令状なしに、單に裁判所の許可だけで行い得ることになつております。これらは当然刑事訴訟法の規定に従つて裁判所の令状を以て行われなければならんと思うのであります。然るに人種的な差別が認められておることを我々は認めざるを得ないのであります。  それから送還先であります。これは五十三條に規定されておるのであります。規定には明確に、本人の希望によりこれを送還する、併し実際に送還することができない場合には云々として、幾つかの條項が掲げてあるのであります。つまり現実には、中国には亡命政権下の台湾、それから人民政権下の中国本土とがある。朝鮮には大韓民国と北鮮人民共和国とがある。政府説明するところによりますと、朝鮮人はすべてこれを大韓民国に、又中国人中台湾人はこれを国民政権下の台湾に送還するということであります。先ほどこの問題についても各同僚から述べられたところでありますが、朝鮮人の中には必ずしも大韓民国の側に賛成しておる者ばかりではありません。恐らく日本在留六十万の朝鮮人の大半というものは、李承晩の政権を支持しておらないのであります。それから又中国人の中にも、殊に台湾系の中国人と申しましても、必ずしも国民政権下の台湾を……国民政権そのものを支持しておるとは申上げることができないのであります。恐らく四万何千かの中国人の大半の者は、蒋介石政権に対してむしろ批判的な乃至は反対の態度をとつているものと認めざるを得ないのであります。若し本人の希望を以てこれを送還先を決定するということになりまするならば、台湾系の中国人といえどもこれを台湾に送還するのではなくて中国本土にこれを送還する、或いは朝鮮人についても大韓民国ではなくて北鮮に送還するということが認められるならば、私は必ずしもこれを不当とするものではないのでありまするが、併しながら、先ほど申上げました通り政府の側においてはこれを一方的に決定し、本人の希望を殆んど無視しているという現状だと申さなければならんのであります。国籍取得の自由につきましては、世界人権宣言十三條にもこれを自由として認めなければならんということを規定しているのであります。その意味におきまして世界人権宣言の精神にも反するものだと申さなければなりません。なお、六十二條、六十六條には、通報報償金の規定を設けております。これは、人道上の見地から申しまして、又人権尊重の立場から申しましても、不当と言わなければならんのであります。いわばスパイを奨励している、こう申しても過言ではないと思うのであります。而もこれらの規定によりまして、ただ今日、朝鮮人或いは中国人に対しまして不当なる取扱をいたし、強制送還をなし、送還先の決定についても今申上げたような不当なる取扱をなすならば、結局日本在住の中国人、朝鮮人は、日本に対して好感を持たないばかりではありません。單にひとり日本在住の朝鮮人や中国人だけの問題ではないのであります。これは中国本土に在住する四億数千万の中国人の問題であり、又朝鮮半島に在住する全朝鮮人の問題であります。而もそれは又同時に全アジア民族の問題でもあり、我々としては、アジアの諸民族と手を繋いで今後進んで行かなければならんときに当りまして、アジアに在住する数億の諸民族と今や手を結ぶどころか却つて背を向け合わなければならん(「その通り」と呼ぶ者あり)ということになりますならば、果して日本独立自主というものが回復することができるのでありましよか。アジアから離れた日本の存在はないと申さなければならんのであります。曾つて我々の先輩岡倉天心は、インドの問題に関しましては、アジアは一つでなければならんということを叫んだことがあります。これは、インドが帝国主義的な支配から脱するためには、どうしてもアジアの諸民族……植民地的な支配の下に苦しめられている、帝国主義的な支配の下に圧迫されているところのアジアの諸民族がお互いに手を握り合つて立たなければならんということを申した言葉だと解さなければならんのでありますが、我々は今こそアジア諸民族と一つになつて、帝国主義的な支配、植民地的な搾取に対して飽くまでも鬪わなければならんと思うのであります。  この意味におきまして、私どもはこの二つの法案反対をいたすものであります。(拍手
  67. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 兼岩傳一君。    〔兼岩傳一君登壇拍手
  68. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 私は日本共産党を代表して両案に断固反対いたすものであります。  一昨年朝鮮事変が起き、アメリカが国連軍の名の下に干渉戦争に乗り出すのと相前後いたしまして、在日朝鮮人の或る者が行方不明になり、自宅から、或いは病院から、CIC、日本警官等によつて逮捕され、その数は百余者に達しました。そうして家族、身内の者は、逮捕された理由もわからず、音信不通で、死んだか生きたかわからないで暗い不安にかられておつたのであります。ところが翌年の五月十一日になつて、占領軍最高司令部は、これらの人々は日朝スパイ団として占領軍及び日本警察の所在数、装備等に関する情報を集めていたという理由で、軍事裁判にかけたので、初めて事件の全貌がわかつたのであります。それ以来翌年一月十七日まで約九カ月に亘つて苛酷なる審理が続けられた結果は、三十人名に対して合計八十二年六カ月の重労働と、七千五百ドルの罰金が課され、そのうち五名に対しては服役後強制送還、他の六名は無罪の形で釈放しながら、そのうち四名は外国人登録令違反として南鮮へ強制送還をいたしました次第であります。  ここで私が問題にしようとする金宝聖君は、その四人のうちの一人でありまして、その年の六月、警視庁の軍事法廷で、検事側から、韓国の某高官の要請によつて金君は起訴を却下されたいという動議があつて、裁判長はそれを認めて即時釈放いたしましたが、釈放と同時に警視庁では密入国の疑いがあるとして再逮捕の形をとり、昨年の十月出入国管理庁の決定として本国へ送還になつたのであります。同君は戰前から日本に長く在住していた人物であります。同君が朝鮮へ送還されてどうなつたか、その後、杳として消息がわからなくなつたところ、本年自由法曹団の青柳弁護士に次のような手紙が参つて、その消息が判明いたしました。要点だけを朗読します。  「陳者は甚だ唐突ながらここに青柳氏の御助力を懇願いたしたく、この書翰を差上げるのです。  かつて昨年六月二十二日、小生は共産党日本工作隊の嫌疑者として裁判に附された結果、青柳先生!あなたの助力によつて無罪釈放になりましたが、其の後外国人登録令違反の疑いで本国に送還されました。  その時、何の書類一通も持たせないで、ただ簡單に、日本の住所氏名年令と備考欄に「反動分子」と書いた一片の紙を渡されただけでした。  ところが本国に着くと韓国のポリスたちは、火責め水責め、さては梯責めに至るまで責め立てられ、如何なる結果ではあつたにせよ、無意識の中に拇印を押されました。そして裁判が開かれました、裁判開廷当日は、判事をはじめ、検察官に至るまで、何も証拠がないということは火を見るよりも明らかであるにかかわらず、前に申しました日本工作隊十二人のうちの一人だという一方的な主観のもとに裁判を進行させ、判決は死刑であります。  勿論、多くの弁護人は検察官と論戰はいたしましたが、彼らは官選であり政府から給料をもらつてつて、死刑の道を開いたに過ぎなかつたのであります。  裁判中も日夜区別なく拷問をくり返し、否応なく無実な罪を作りあげ、今日、死刑の宣告を言渡されました。  勿論、小生が如何に弁明をしても、あのような、野蛮な、而も度重なる拷問では、どうすることもできず、今は、余命幾ばくもなく、諦めておりました。  ところが、この度「窮すれば通ず」で、右に申上げました青柳先生担当の日本工作隊事件を思い出しました。その当時小生が無罪になつた。東京日日新聞、読売、その他各社の新聞によつて発表された無罪の記事が、今となつては唯一の証拠となるのみです。  同じくフアツシヨ的国家である日本さえも無罪にした事件を、韓国の裁判所は死刑を宣告しています!  青柳先生!死刑執行日が迫つて参りました。たとえ一個人の生命は奪う事ができようとも、平和と独立をめざして鬪う人々の力は打消せません。最後の勝利を確信し、皆様の健闘をお祈りいたします。」  これが手紙であります。日韓会談において大韓民国代表の言う受入体制とはこれであります。朝鮮の平和的統一を支持した右翼の巨頭金九氏を暗殺し、又世界のすべての人が支持した停職提案を支持する朝鮮人は誰でも叛逆者として嚴罰にすると警告を発しているところの李承晩政権に引渡すことがどういうことであるかは、金宝聖君の例によつて極めて明らかであります。只今上程されている出入国管理令の第一條によると、この政令は、如何にも講和発効の日が基準になつて、これから入つて来る外国人、これから出て行く外国人の取扱規定するようになつているのでありますが、ところが事実はそうでなくて、在日六十万朝鮮人と四万五千の華僑、これらの人たちに対してイタリアの平和條約に見られるような愼重な配慮をすることなく、南朝鮮又は台湾に強制的に送り返そうとするものであります。  本令第二十四條によりますと、癩病者、精神病者、微罪で懲役を受けた、ストライキをやつた、デモ、ビラ、何にでも引つかけて強制送還できるようになつております。特にひどいのは、貧困者という理由で、できることであります。戰争中に日本軍国主義は、朝鮮、台湾から三十余万の労働者を強制的に連れて参りましたが、この人たちが如何に貧困な状態において終戰を迎えたかは言葉を費す必要がない。然るにその後、歴代の政府、特に吉田政府は何の面倒も見なかつた。就職、生業資金、住宅の世話、税金の減免、何一つやつていない。これで費用者以外に如何なる道が残されているというのか。(「やつたのは彈圧だけだ」と呼ぶ者あり)これでもまだ足りぬと考える政府は、同じ第二十四條で、外務大臣が日本国の利益又は公安を害する行為を行なつたと認定するだけで強制送還できることにしている。これは曾つて日本国天皇が持つていた権限よりも大きな生殺與奪の権限を一大臣に與えるところの條文であつて世界人権宣言の趣旨に違反し、人種、皮膚の色、言語、宗教、政治的見解の如何にかかわらず平等であるとするところの規定に真つ向から違反しているのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)  而も吉田政府は、他方において、曾つて日本の軍国主義に協力した戰争犯罪人、日本の侵略戰争を助けたところの民族の叛逆者、例えば「かいらい」注精衛政府の国防部長であつた揚仲華は、昨年密入国で入つて来て検挙されたにもかかわらず、法務府の責任において現在在日居住許可を得て東京に住んでいる。それのみか「かいらい」満州国政府の閣僚、而も終戰当時の経済大臣たる韓雲楷も同様な方法によつて東京に安住させており、最近は中華人民共和国の反動分子数十名を迎え入れて保護を加えており、幾万のアメリカ人に至つては、日本人以上に自由に出入国し、自由に闊歩している。然らば何のために政府はかかる法案を出したか。それはアジア諸民族と日本民族との友好と親善を阻み、中華人民共和国との経済的文化的提携を断ち切り、平和運動を彈圧して、以て将来のアジア侵略戰争に必要な排外思想の植え付けを行わんがためであります。これによつて日本民族は何を得るか。日本国民の得るところは、大戰争に巻き込まれて国土と国民の生活を破壊するだけである。他民族を圧迫する民族は所詮自由ではあり得ない。現に日本人はアメリカの特権階級の自由のために押し付けの再軍備の負担に喘えぎ、植民地的な不自由に置かれております。この法案は、この不自由から日本人を解放するどころか、更に不自由を強化するものである。(「落ちついてやれ」と呼ぶ者あり)政府は單独講和発効の今日、白々しくも、世界人権宣言、国連憲章に真つ向から違反したこの法案を通過させんとしておるのであります。  かかる法案の強行に対し、その自衛措置として正当防衛として起るあらゆる将来の騒擾の責任は、吉田政府と自由党は勿論、緑風会、民主クラブ、改進党等々、これに同調される各派議員が一切負うべきであることを言明しておく次第であります。(拍手
  69. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) これにて討論の通告者の発言は全部終了いたしました。討論は終局したものと認めます。  これより三案の採決をいたします。  先ずポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く外務省関係諸命令の措置に関する法律案全部を問題に供します。委員長報告修正議決報告でございます。委員長報告通り修正議決することに賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  70. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 過半数と認めます。よつて本案委員会修正通り議決せられました。      ——————————
  71. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 次に外国人登録法案全部を問題に供します。本案賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  72. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 過半数と認めます。よつて本案は可決せられました。      ——————————
  73. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 次に日本国との平和條約第十五條(a)に基いて生ずる紛争の解決に関する協定の締結について承認を求めるの件を問題に供します。委員長報告通り本件に承諾を與えることに賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  74. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 過半数と認めます。よつて本件は承認を與えることに決しました。  議事の都合により、これにて暫時休憩いたします。    午後五時四十二分休憩      ——————————    午後六時四十八分開議
  75. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 休憩前に引続き、これより会議を開きます。  次会の議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時四十九分散会      —————————— ○本日の会議に付した事件  一、議員派遣変更の件  一、平和條発効に伴う決議案  一、日程第一 信用金庫法の一部を改正する法律案  一、日程第二 米穀政府買価格特例に関する法律案  一、日程第三 十勝沖地震による農林業災害復旧資金融通に関する特別措置法案  一、日程第四 公務員等懲戒免除等に関する法律案  一、日程第五 日本国アメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條   に基く行政協定実施に伴う地方税法臨時特例に関する法律案  一、日程第六 日本国アメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定実施に伴う郵便法特例に関する法律案  一、日程第七 日本国との平和條約の効力発生及び日本国アメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定実施に伴う道路運送法等特例に関する法律案  一、日程第八 日本国アメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定実施に伴う水先法特例に関する法律案  一、日程第九乃至第三十九の請願  一、日第四十乃至第六十一の陳情  一、ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く厚生省関係諸命令の措置に関する法律案  一、ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く外務省関   係諸命令の措置に関する法律案  一、外国人登録法案  一、日本国との平和條約第十五條(a)に基いて生ずる紛争の解決に関する協定の締結について承認を求めるの件