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1952-04-23 第13回国会 参議院 本会議 第32号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年四月二十三日(水曜日)    午前十時二十八分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第三十一号   昭和二十七年四月二十三日    午前十時開議  第一 急傾斜地帶農業振興臨時措置法案衆議院提出)(委員長報告)  第二 主要農作物種子法案衆議院提出)(委員長報告)  第三 ポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する件に基く建設省関係命令措置に関する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第四 海上保安庁法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第五 道路運送車両法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第六 日本国アメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定実施に伴う所得税法等臨時特例に関する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第七 日本国アメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定実施に伴う関税法等臨時特例に関する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第八 日本国アメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定実施に伴う国有財産管理に関する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第九 日本国アメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定実施に伴う国税犯則取締法等臨時特例に関する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第一〇 日本国アメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定実施に伴うたばこ專売法等臨時特例に関する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第一一 特別調達資金設置令の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第一二 米海軍接收に伴う補償の請願委員長報告)  第一三 東京京橋商業高等学校接收校舎返還に関する請願委員長報告)  第一四 東京月島第三小学校接收校舎返還に関する請願委員長報告)  第一五 横浜市の接收解除に関する陳情(三件)(委員長報告)  第一六 東京月島第三小学校接收校舎返還に関する陳情委員長報告)  第一七 商船大学東京分校接收校舎返還等に関する陳情委員長報告)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。      ——————————
  3. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) これより本日の会議を開きます。  この際、日程に追加して、中央更生保護委員会委員の任命に関する件を議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。  去る十日、内閣総理大臣から、犯罪者予防更生法第四條第二項の規定により、土田豊君を中央更生保護委員会委員に任命することについて、本院の同意を求めて参りました。本件に関し同意を與えることに賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  5. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 過半数と認めます。よつて本件同意を與えることに決しました。      ——————————
  6. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 野田国務大臣から、鳥取市の火災による災害について発言を求められております。この際発言を許します。野田国務大臣。    〔国務大臣野田卯一登壇拍手
  7. 野田卯一

    国務大臣野田卯一君) 今回の鳥取大火は、御承知のように、四月十七日午後三時頃鳥取永楽通り動源温泉附近から発火し、極度の乾燥と風速十五メートルに達する烈風のために、且つ又水道の水圧の低下、道路狭小等により、消火作業意のごとくならず、ために遂に市の繁華街中心として市街地の約六割を燒失するという大損害を生じ、翌十八日午前三時五十分頃鎮火したのであります。  被害状況につき、取りあえず鳥取県庁等資料に基いて御報告申上げますと、先ず人的損害につきましては、罹災人員は二万四千百四十三名、このうち死者一名、重傷者二名、軽傷者三百十二名を算しております。物的損害につきましては、被害総額は百九十三億二千万円と見積られ、燒失面積は約五十万坪に達しております。その内訳を申上げますと、住宅店舗等一般民家につきましては、市の総住宅戸数  一万二千戸の半数に近い五千二百二十八戸が全燒し、その被害額個人財産の損失を含めて一応百八十二億六千万円程度と見積られております。次に、官公衙学校等公共施設につきましては、鳥取郵便局ほか十三官公衙県立盲学校ほか四校、県立中央病院ほか四院等が全燒いたしまして、これらの被害額は約五億八千万円となつております。その他、銀行百貨店等につきましても十数カ所が燒失し、その被害額は約四億八千万円と見積られております。  次に今回の大火に対してとられました応急措置について申上げます。現地におきましては、鳥取県庁は直ちに臨時県会を招集すると共に、災害救助対策本部を設け、災害救助法を発動し、鳥取市その他関係機関と協力いたしまして、迅速な応急措置を講じております。即ち災害救助法の発動と同時に、罹災者小学校寺院等七カ所に收容すると共に、市内十八カ所で炊出しを行い、罹災世帯に対しては、被服、寝具、生活必要品及び学校用品給與を行なつたのであります。罹災者医療につきましては、市内十カ所に救護所を開設し、伝染病予防及び一般施療に当りました。応急仮設住宅建設につきましては、旧連隊跡に五百戸の仮小屋を急造することにいたしました。又罹災者生活困窮せる者に対しましては、差当り生活資金を供與し、又失業者対策を講じまして、救護措置についても中央と連絡の上これを進めておる次第であります。又鳥取、岡山、京都、兵庫、大阪等の隣接各府県よりも、医療班派遣救援物資の発送その他救済に当つておりますので、罹災者応急救助は万全の態勢を以て推し進められつつあります。中央における応急措置といたしましては、即日厚生省よりララ救援物資二万一千人分を発送すると共に、総理大臣より米子警察予備隊に対し救援のため出動を命令し、又直ちに関係各省より係官を現地派遣し、災害実情の把握に努め、災害の翌日、四月十八日の朝の閣議においては、鳥取大火災害対策本部を総理府に設置すること、鳥取県市の復興事業に対する繋ぎ資金として資金運用部より二億円の融通をすること、住宅金融公庫による二億円の特別融資をなすこと等を決定し、直ちに実行に移すことにいたしました。  次に復興対策といたしまして緊急な事項は、住宅建設学校その他公共施設復旧及び区画整理事業中心とする都市復興事業並びに罹災市民生活を速かに安定させることであります。これがため政府といたしましては、先ず第一に住宅については、只今申上げました住宅金融公庫の二億円の特別融資による住宅建設のほか、公営住宅法に基きまして被災住宅約五千戸の三割に相当する千五百戸の公営住宅建設したいと考えております。第二に、今回の大火経験に鑑み都市不燃化を促進する必要が痛感いたされますので、目下国会において御審議中の耐火建築促進法成立次第、同法に基き防災建築帶指定し、該地域内の耐火建築補助金を與えてこれを助成したいと考えております。又燒失いたしました学校図書館等復旧につきましてはできるだけ不燃構造とし、速かに再建を図りたいと考えております。なお今回の火災経験に鑑み、鳥取市を今後火災に対し強靱性のある都市として復興させるために、罹災面積五十万坪を対象とする区画整理事業を急速に進めさせると共に、すでに街路その他の基本を決定、建築線を指示し、現地測量、燒跡の整理を促進せしめております。第三に、被災家屋等建築資材としてこの木材の入手を容易ならしめるため、鳥取、島根両県の木材協同組合をして早急に供給させるよう目下折衝中であり、又国有材の拂下について手続を進めております。第四に、罹災した市長の生活の安定のため、国民金融公庫、商工中央金庫その他一般金融機関を動員し、罹災者の生業の再開に必要な資金の供給を図りたいと考えております。  なお今回の大火に伴う県及び市の財政上の打撃並びに負担については、これが対策につきできるだけの考慮を拂いたい、と考えております。  顧みますれば鳥取市は昭和十八年地震並びにこれに伴う火災により市街の大半を烏有に帰し、次いで昭和二十二年大火災をこうむり、今回又戰後最大火災に見舞われ、重ね重ねの災難に対し衷心より同情申上げるものであります。併しながら、市民諸君がこの甚大なる災厄にもめげず蹶然復興に立ち上つておられることは、誠に心強く、深く敬意を表するところであります。又県市当局その他現地の諸機関においてもすでに果敢に復興対策に邁進されておりますので、政府といたしましては、これらと十分提携協力し、その救済策復旧策及び復興策に万全を期し、強力に推進いたしまして、禍を転じて福となすべく念願をしておる次第であります。  最後に申上げたいことは、進駐軍の好意に満ちた救援であります。即ち在日兵站司令部南西司令官代理ソムピアス中佐及びストライカト軍医大佐が去る十九日朝飛行機で現地を訪れ、県当局の要請する救急物資につき打合せの結果、携帶食二十五万箱、毛布一万枚、ミルク五百箱及び注射薬品等を百二十台のトラツクを以て急送され、罹災者の急速な救援に大いに役立ちましたことは、政府といたしまして誠に感激に堪えないところであります。  以上を以ちまして私の報告を終ります。(拍手
  8. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 只今国務大臣発言に対し質疑通告がございます。発言を許します。門田定藏君。    〔門田定藏登壇拍手
  9. 門田定藏

    門田定藏君 私は日本社会党第四控室を代表いたしまして、今回の鳥取市の大火災に当りまして、建設大臣並びに大蔵大臣質問を試みたいと存じます。  質問に先だちまして、今回の鳥取市の大火災に際しまして、議会並びに政府におかれましては適宜な処置をとつて頂きまして、これがために市民のこのたびの罹災に対して大いに助かりましたことを、厚く厚く感謝申上げる次第であります。  次に、只今建設大臣より鳥取市の火災について報告がなされ、政府対策も承わることができたのでありますが、鳥取市は昭和十八年の震災によつて殆んど全滅に近い被害を受け、それ以来鋭意復興努力をいたして参つたのでありますが、鳥取市の財政も、又住民の経済も、復興のためにすべてを投資しているのであります。然るに今日の火災による災害をも重ねて受けるに至りまして、極めて困難なる事情に立つているのであります。政府においても御承知通り鳥取県は経済的な立地條件にも惠まれず、工場等もなきに等しく、地方財政は貧困を極めております。以上申上げました事柄からも、鳥取市の災害に対する対策は、一般的なものと同様な施策で以てはこれは足りないことが判明すると思うのであります。従つて政府対策も、これらの実情十分考慮の上になされるべきであると思うのであります。この際、建設大臣からの今回の鳥取大火災対策は、私の只今申しました通り実情に沿う特殊なその措置が必要であると認められるのであります。どうかこれに対して建設大臣のこの特殊な事情に対する御所見が承わりたいのであります。  次に大蔵大臣にお尋ねしたいのであります。それは罹災者に対する金融措置であります。罹災者の多くはその家屋担保として約九億の資金を借りているのであります。併しながら今回のこの災害によりまして、殆んど担保に入れているものは燒失しているのであります。保險金は入るのでありますけれども、今度の災害に対して担保がないために罹災者は一厘も融通を受けることができないのであります。この点を御考慮になりまして、この際、国の預金を銀行に対して融資して頂きまして、これを銀行から罹災者融通することでなくては、鳥取罹災者の立ち上りは到底不可能なことなのであります。この点に対しまして大蔵大臣の御所見が承わりたいのであります。  以上極めて簡單でございまするが、災害に対する私の質問を終りたいと存じます。(拍手)    〔国務大臣野田卯一登壇拍手
  10. 野田卯一

    国務大臣野田卯一君) 只今お話のございました鳥取県及び鳥取市の特殊の事情につきましては、十分なる考慮を拂いまして措置いたしたいと考えております。
  11. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 大蔵大臣答弁は他日に留保されました。これにて質疑通告者発言は終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。      ——————————
  12. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) この際、お諮りいたします。只今野田国務大臣から報告のありました鳥取市の火災による災害について、本院といたしましても、その被害状況を調査するため、同市に五日間の日程を以て議員五名を派遣することとし、その派遣議員の指名は議長に一任せられたいと存じます。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  13. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつて議員派遣の件は決定いたしました。      ——————————
  14. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 日程第一、急傾斜地帶農業振興臨時措置法案日程第二、主要農作物種子法案、(いずれも衆議院提出)以上両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  15. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。先ず委員長報告を求めます。農林委員長羽生三七君。    〔羽生三七君登壇拍手
  16. 羽生三七

    羽生三七君 只今議題となりました二法案につきまして、農林委員会における審査の経過及び結果を報告いたします。  先ず最初に急傾斜地帶農業振興臨時措置法案について申上げます。  本法律案は、先に第十国会において成立いたしました積雪寒冷單作地帶振興臨時措置法とその類を同じくするもので、急傾斜地帶農業は極めて劣悪な條件の下に生産を続けているにもかかわらず、従来国において一定の体系の下に特別な施策を講じた例がなく、農業行政の盲点というべきであつて、かかる特殊環境下農業に対して、その生産基盤整備と苛烈な労働條件の緩和を図ることが、これら地域における農業生産力の向上と民生の安定のための要務であるとの趣旨を以て提案せられたものでありまして、その内容の大要は、第一に、農林大臣は急傾斜地帶農業振興対策審議会の議決を経て、都道府県單位該当地帶指定し、その指定を受けた都道府県知事農林大臣の定める基準従つて市町村單位該当地帶指定し、第二に、指定を受けた市町村長及び都道府県知事並びに農林大臣は、それぞれ所定の手続によつて農地保全及び改良農業用道路整備、その他過重労働の軽減、農業技術改良及び農業経営合理化、並びに農畜産物の加工、販売、その他処理についての共同施設等に関する事項内容とする急傾斜地帶農業振興計画を定めることとなし、第三に、農林大臣の定める農業振興計画実施に要する経費に対する予算及び資金に関する措置について、政府の責任を明らかにし、第四に、本法運用のため、急傾斜地帶農業振興対策審議会を設置することとなし、而してその組織及び権限等事項規定せんとするものであります。  委員会におきましては、提案者又は政府当局に対して、かかる惠まれない特殊地帶について従来殆んど見るべき施策が行われていなかつたことの理由、並びに本立法人道的意義によるものであるのか、或いは経済的意義によるものであるか、その狙い、又、先には積雪寒冷單作地帶振興臨時措置法が制定せられ、近くは特殊土じよう地帶災害防除及び振興臨時措置法成立し、更に今回本法案が提出せられ、かくして各種特殊地帶に対してそれぞれ各様の立法措置が講ぜられることになるのであるが、かかる特殊立法意義並びにこれが適用及びその調整、本法案対象とするいわゆる急傾斜地帶範囲及びその限界、本法案の「かなめ」とも言うべき農業振興計画実施するために必要な経費予算並びに資金融通又はその斡旋に関する政府決意及び準備農業振興計画内容及びこれが具体的実行方法、並びにこの種振興計画によつてかかる地帶が果して救済せられ得るか、その能否、更に、適地適作或いは林業漁業等、他の産業との関係、又は税制等に関する考慮、急傾斜地帶農業振興対策審議会組織農地保全農地拡大との関係、本法案国土総合開発法との関係、本法案規定せられている農地範囲積雪寒冷單作地帶振興臨時措置法制定後におけるこれが成果、その他の問題について、熱心な質疑が行われたのでありまして、これが詳細については会議録に讓ることといたしたいのでありますが、併しこれら多くの問題の中においても、重点は特に次の点に注がれたのであります。  即ち第一は、かかる特殊立法特殊立法意義を果すためには、その適用は飽くまでその意義に合致したものでなければならないとの趣旨を以て、本法案適用対象であるいわゆる急傾斜地帶範囲及びその限界が究明せられたのでありますが、併し政府において未だ十分な資料を欠き、問題の解明はなお今後に残されたのであります。  次に第二の点は、かかる立法が一片の作文に堕し、且つ又、空文と化し、有名無実となることを嚴に警戒しなければならないとの考慮から、本法中、特に農林大臣の定めるこの種地帶における農業振興計画実施するために必要な経費支出及び資金融通斡旋に対する政府熱意準備を確かめるため、池田大蔵大臣及び大蔵省主計局長等の出席を求めて、その意図が質されましたところ、本法案に対しては賛意を持つているものであり、而して差当り審議会に要する経費については既定予算又は予備費を以つて支出することとなし、農業振興計画実施に要する経費については、今後審議会の結論に従い、財政の許す範囲において国家的見地に立つて善処したい旨答弁せられたのであります。  かくして質疑を打切り、討論に入りましたところ、三橋委員から、本法によつて日本農業構造上重要な課題である畑作の振興が推進せられ、悪條件の下窮乏に堪えて刻苦その業に励みつつある農民救済せられ、且つ急傾斜地帶農業生産力が増強せられることとなるから、これが成立希望するものであるが、本法施行に必要な経費予算を十分に計上して、定められた期限内に所期の成果を達成することができ名よう各般事項亘つて抜本的対策を確立すべきである旨を要望して賛成があり、三浦委員から、本法成立の上は、本法が惠まれない急傾斜地帶農民の期待に真に副うことができるよう政府熱意を持つてこれが執行に当り、経費支出についても、いやしくも既定経費の犠牲において行われるがごときことを嚴に愼しむべきである旨の希望を附して賛成があり、西山委員は、自由党を代表して、本問題はかねて参議院農林委員会において重大な関心を拂い、特に現地調査を行なつてその対策の確立に努めて来ていたもので、今日大体の素地ができたことは欣快に堪えないところであつて本法施行については政府熱意を持つてこれに当るべきである旨を希望して賛成があり、最後岡村委員から、本法執行には大きな困難を伴うものと思われるが、政府は不公平のないよう、十分な決意と構想の下に最善の努力を以て本法執行に当るべきである旨を希望して賛成があり、かくして討論を終え、採決の結果、全会一致を以て原案通り可決すべきものと決定いたした次第であります。  次に主要農作物種子法案について報告いたします。  本法律案は、稻、大麦、はだか麦及び小麦等主要食糧農作物の優良な種子を確保し、その普及を促進して、以て国内における食糧の増産に資するため、都道府県はこれら主要農作物種子生産者の申請に基いて、種子生産圃場指定し、指定極子生産圃場経営者、即ち指定種子生産者に対して、都道府県農林大臣の承認を受けて定めた基準及び方法によつて、立毛については圃場審査を受けるべき義務を課すると共に、指定種子生産者に対し、主要農作物種子生産するために必要な経費の一部を国から補助し、且つ、都道府県をして、市町村農業団体又は指定種子生産者に対して、主要農作物の優良な種子生産及び普及のため必要な勧告及び指導を行わしめ、これが経費に対しても国から補助することとなす等、これら圃場審査及び国の助成に関して規定せんとするものでありまして、なお指定種子生産圃場において生産された米麦については、別途食糧管理法に基く供出を免除することが予定せられているのであります。  委員会におきましては、提案者及び政府当局に対して、主要農作物品種改良優良種子生産及び普及対策並びにその実行方法優良種子生産のため指定種子生産者に交付する補助金額の適否、優良種苗改良生産功労者顯彰種子現品検査及びその実行方法指定種子生産圃場において生産せられた優良種子の流通、本法適用範囲拡大本法農産種苗法及び農産物検査法との関係、その他の問題について質疑が行われたのでありまして、これが詳細は会議録に讓ることといたしたいのでありますが、特に附言いたしたいことは、本法案優良種子生産については一応の考慮が拂われているのであるが、その普及についての考慮を欠いていることを遺憾とし、この点について提案者及び政府の善処が求められましたところ、これに対し、提案者及び政府から、その不備を認め速かなる機会に善処したい旨の意思が表明せられたことであります。  続いて討論に入りましたところ、滝井、岡村、加賀及び三橋各委員から、本法不備を速かなる機会に改正すること、主要農作物品種改良事業を刷新拡充すること、本法によつて種子現品検査をも行い得るよう措置すること、主要農作物種子普及対策を確立すること、本法適用を「いも」類、大豆及び菜種等主要農作物にまで拡大すること、品種改良及び優良種子普及に関し、広く各種民間機関を活用すること、優良種苗改良生産功労者顯彰する方途を講ずること等の希望を附して賛成があり、続いて採決の結果、全会一致を以て原案通り可決すべきものと決定いたした次第であります。  右御報告いたします。(拍手
  17. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 別に御発言もなければ、これより両案の採決をいたします。両案全部を問題に供します。両案に賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  18. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 総員起立と認めます。よつて両案は全会一致を以て可決せられました。      ——————————
  19. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 日程第三、ポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する件に基く建設省関係命令措置に関する法律案内閣提出衆議院送付)を議題といたします。  先ず委員長報告を求めます。建設委員長廣瀬與兵衞君。    〔廣瀬與兵衞登壇拍手
  20. 廣瀬與兵衞

    廣瀬與兵衞君 只今議題となりましたポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する件に基く建設省関係命令措置に関する法律案について、建設委員会審議経過及び結果を御報告いたします。  本法律案は、空中写真利用等に関する政令平和條発効後も法律としての効力を有せしめようとするものであります。右政令は、政府連合国最高司令官から貸與された空中写真建設省地理調査所において保留し、これを戰災復興経済再建事業のために、国、地方公共団体又は測量法による公共測量実施する者が広く利用できるものとするために、保管利用等について必要なる規定を設けているのであります。これらの空中写真は今後も引続き利用を認めることが適当でありますので本法案が提出された次第であります。  委員会審議の詳細は速記録によつて承知を願いますが、空中写真保管利用状況等について地理調査所長の説明を聽取しましたほか、熱心な質疑応答が重ねられました。特に、政令の罰則は平和條発効後におけるものとしては嚴に過ぎることはないかとの点については、法務府当局の意見も徴されたのであります。建設大臣初め当局は、政令内容については、将来他の法令とも見合せ改正について適当に措置したい、更に根本的には空中写真を当方に讓渡を受けるために十分に努力する旨の答弁がありました。  かくて質疑を終了、討論を省略、採決の結果、全会一致原案通り可決すべきものと決定いたしました。以上御報告申上げます。(拍手
  21. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案に賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  22. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 過半数と認めます。よつて本案は可決せられました。      ——————————
  23. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 日程第四、海上保安庁法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)を議題といたします。  先ず委員長報告を求めます。内閣委員長河井彌八君。    〔河井彌八君登壇拍手
  24. 河井彌八

    ○河井彌八君 海上保安庁法の一部を改正する法律案につきまして報告を申上げます。  本案に盛られておりますところの改正の内容は、大きく分けて二つになるのであります。その一つは、現行の海上保安庁の機構の一部改正であり、他の一つは、新たに海上保安庁の附属機関として海上警備隊を設置せんとするのであります。この二つの点であります。  その概要について申上げますると、現在の機構の一部を改正する点は、従来総務部の所掌に属しておりますところの経理補給関係の事務を総務部から切離しまして、経理補給部という独立の一部を設けようとするのであります。従いまして、これまで六部で以て組織せられておりましたものが七部となる次第であります。海上保安庁は、現在約一万三千の職員と約五万トンの船舶を持つておりまして、そのほかに沿岸各地に多数の航路標識を施設しておる等の関係がありまするので、この経理補給関係の事務は極めて複雑厖大でありまするし、而も迅速に処理をする必要がありまするために、これらの事務を能率的に專門に所掌せしむるために独立の一部を設けるというのが、只今申上げました経理補給部を設ける理由であります。  その他、海岸線の極めて長いこの海上をパトロールいたしますためには、船舶と併せまして今後航空機を十機使用してパトロールせんとすることを企てまして、その必要な規定が入つたのであります。そのほか保安庁の次長と警備救難監の権限を明らかにする。即ち、次長は行政を行い、警備救難監は行動的の仕事をするということに重きを置くというその点をはつきりする点。それからもう一つは、海難審判理事所というものを設けまして、その海難審判の事務を明確にする、而してこれがためには海難癖判理事官を置くというような点、これらの点が一般機構の改革であります。  次に第二点、即ち最も大きな改正点と相成りまするのは、海上保安庁にその附属機関として新たに海上警備隊を設置せんとするものであります。海上警備隊設置の目的は、「海上における人命若しくは財産の保護又は治安の維持のため緊急の必要がある場合において、海上で必要な行動をするための機関とする。」というのであります。海上警備隊の隊員の数は六千三十八人といたし、職務の性質上これを国家公務員法第二條の特別職として、その任用、免職、叙級その他職務上の必要な事項は海上保安庁長官が行うことといたしまして、これに関する詳細な規定を設けておるのであります。その他、海上警備隊員である海上警備官に対しては、海上における職務の遂行の必要上、従来の海上保安官に準じて、立入検査権、武器の携帶及び使用を認めること、刑事訴訟法上のいわゆる緊急逮捕の権限を與えること、なお海上警備官のうちで部内の秩序維持のために必要限度の司法警察権を與えておること等の規定が設けられてあります。そのほか、海上警備隊の職員に対しましては、一般の国家公務員の例にならいまして、労働組合法、労働関係調整法及び労働基準法の適用を除外すること、船員法の一部の適用を除外すること、又海上警備隊の船舶には船舶安全法及び船舶職員法の適用を除外すること、海上警備隊の移動無線局に対しましては、電波法による免許、検査及び無線従事者に関する規定適用を除外すること等が規定されてあるのであります。なお、海上警備隊の組織につきましては、海上警備隊は総監部及び地方監部を以て組織いたしまして、総監部の内部組織、地方監部の名称、位置及びその内部組織等は運輸省令で定めることとなつておるのであります。かようにいたしまして、海上警備隊設置に関しまする改正は、第二十五條の二から三十七條まで、三十六カ條を加えてあるのであります。最後に、この法律施行期日につきましては、附則第一項におきまして、昭和二十七年四月一日から施行すること、但し航空機に関する事項に係るものは昭和二十七年四月一日又は平和條発効の日のいずれか後の日から適用するものという規定になつてあるのであります。そして、この経費予算によつて調べてみますると、およそ三十億円が計上されておるということであります。  内閣委員会におきましては、先ず運輸委員会並びに地方行政委員会との連合委員会を開きまして、又地方行政委員会とは更に二回の連合委員会を開きまして審査を行いまして、更に内閣委員会といたしましては三回開会いたしまして、愼重審議をいたしました結果、只今申上げました施行期日に関する個所に所要の修正を加えまして、多数を以て本案を修正可決すべきものと議決いたしたのであります。  そこで、只今申上げましたごとく、運輸委員会及び地方行政委員会との連合会、又は内閣委員会におきまして、種々本案の内容を検討いたしましたのでありまするが、主として問題となりましたのは、海上警備隊なるものの設置の目的及びその運用方法に関する点であります。なお海上警備隊を編成するために要する六千三十八名の職員の配置等でありました。政府はこれに対して、海上保安庁の創設以来四年間における実績に鑑みまして、海難の救済、殊に天災等における突発的の且つ大規模な災害が生じた場合におきまして、海上の治安を確保するためには、海上保安庁の現在の船舶人員を以てしては到底満足なる救援の目的を達し得ないものであつて、海上保安庁の任務遂行のためには、どうしても警備救難の手配を強化する必要がある。講和條約発効と共に任務を遂行すべき水域が一段と拡大される点を考慮いたしますれば、なおこの面の応急の措置に意を用うる必要がある。そして海上警備隊を新設するために六千三十八人の職員を要するということにつきましては、保安庁の持つておりまする船舶は、七百トン級が四隻、パトロールのできる五十トン級の船舶が百五十隻しかない。一万マイルに亘る海岸線を警備するために一隻当りの受持区域が七十海里に及んでおるというわけでありまして、先般の十勝沖の震災による海難発生の場合のごとき突発的な広範囲なる海難の救済は到底手の下しようがない状態である。その他、平常においても、密漁であるとか密貿易であるとか密入国などの取締においても事を欠いておる実情でありまするので、アメリカ政府に対しまして日本政府から船舶の貸與方を要請中であるというのでありますが、アメリカ政府はこの要請に応じまして、千五百トン級の船舶十隻、二百五十トン級の船舶五十隻、これだけ貸與してくれることになつておるのであります。その千五百トン級の船舶は、大体において速力が十七ノツト乃至十八ノツト、三インチ砲を一門又は二門備えておるということであります。で、これらの船舶を貸與を受けましても、直ちにこれを操縦するために、或いは先ず乗組ませ、これを操縦するために、どうしても六千三十八人が必要であるということであります。千五百トン級の船舶の乗組員は一隻につきまして百六十七名、二百五十トン級の船舶の乗組員は六十三名を要するので、その結果六千三十八名を必要とするという説明でありました。もう一つここに大切な点は、この今度の改正によりまして、海上警備隊というものが日本の兵力の再建の端緒となるではないかという点につきまして、委員諸君から熱心な質疑が出されたのであります。これに対しまして政府は、どこまでもこの警備隊の目的は、海上における人命、財産の保護、それから海上における治安の確保というものに、その目的の範囲内に行動するのであつて、その以外には行動しないということを強く主張いたしたのであります。  なおもう一つ、この案の審査の途中におきまして政府は警察予備隊令の一部を改正する等の法律案国会に出しまして、そうして近く根本的機構の改革を考えておりまして、総理府の外局といたしまして保安庁なるものを設置いたし、これに警察予備隊並びに海上保安庁に新設されるところの海上警備隊を統合いたして、治安機構の一元化を図らんとする構想が現われて参つたのでありまするために、海上保安庁法の一部を改正する法律案もその見通しを無視して審議を進めるわけに行かない情勢と相成つたのであります。で、運輸委員会及び地方行政委員会との連合会におきましても、保安機構の担当大臣であるところの大橋国務大臣の出席を求めまして十分その構想を聞き質しました。又近く保安庁設置に関する法案国会提出を待たずに本案の審議を進めることの可否についてもいろいろ意見が出たのであります。併しながら、近く政府から国会に提出することが予想されておりまするところの総理府の外局としての保安庁設置に関する法案は、政府においてその実施期日を大体早くとも七月一日或いはその後となるもののごとくに予定しておりまするが、一方、海上警備隊新設の問題は、警備隊員の募集並びに訓練に相当な時日を要する事情もありまするし、又他方アメリカ政府から貸與するところの船舶が近々到着するという関係もありまして、その間三カ月或いはそれ以上もこの法案審議未了のままに置いておくということは困難なことであるという政府の説明があつたのであります。  内閣委員会におきましては愼重審議の結果、以上の点を明かにいたしまして昨日討論に入つたのであります。楠見委員からは緑風会を代表いたしまして、「この法律案内容は、海上保安庁の附属機関として海上警備隊を新設する点、これが最も重要な点であるが、このことはすでに二十七年度の予算審議の際においても十分愼重な審議を遂げましてこれを可決したのである。」楠見委員はその立場においてこの案に対して賛成をいたすという意見を述べられました。併し施行期日に関してはこのままで置くことはできないのであるから、それに対する修正案を提出せられたのであります。  即ち附則第一項は、「この法律は、昭和二十七年四月一日から施行する。但し、改正後の海上保安庁法第四條、第六條の二、第七條、第八條、第九條及び第三十二條の規定中航空機に関する事項に係るものは、昭和二十七年四月一日又は日本国との平和條約の最初の効力発生の日のいずれか後の日から適用するものとする。」とありまするのを、「この法律は、公布の日から施行する。但し、改正後の海上保安庁法第四條、第六條の二、第七條、第八條、第九條及び第三十二條の規定中航空機に関する事項に係るものは、日本国との平和條約の最初の効力発生の日から適用するものとする。」に改めるという修正動議が出たのであります。その理由につきましては、まさに四月一日はすでに経過いたしておりまするから、当然の結果としてかような修正案が出たのであります。  次に、これに対しまして三好委員からは、「この案の内容について反対するという意味ではないけれども、併し少くとも憲法第九條の第二項の精神に違反するものであるから、その意味において本案には賛成することができない」という反対討論があり、上條委員からは、「六千三十八人の海上警備隊の新設は、その目的は所詮従来の警備救難部の性能を強化拡充せんとするものであるから、海上保安庁の各管区に船舶、人員を配分せしめることが適当であると考える。然るに海上警備隊は二三の旧軍港に集中しておつて、旧海兵団のごとき訓練を施し、緊急有事の際に出動せしめるというのであるが、これは戰力化させるという感を深くするものであつて、やはり憲法第九條の精神に反するものと思う。又近く保安庁設置の問題が提案せられるのであるから、治安機構の問題については、十分に国民に周知徹底させた上において、海上警備隊員の募集等はその後に行なつてもいいのではないかという意味を以て本案には反対である」という意見を述べられたのであります。鈴木委員は自由党を代表いたしまして、楠見委員の修正を加えての本案に賛成であるという意見を述べられ、これに対しまして更に成瀬委員は、三好委員、上條委員と同様に、憲法第九條に違反するという点を強調せられまして、その他この各項の法文について不備な点を述べられまして反対をせられたのであります。この反対の御意見は、三人の委員とも、いずれも海上警備隊の新設に対しての反対が主であつたのであります。  かくのごとくにいたしまして討論を終り、採決に入りました。先ず楠見委員の動議にかかりますところの附則第一項の修正について採決を行いましたところが、多数を以て可決すべきものと決定いたしました。次に修正個所を除く法案全部を採決に付しましたところ、多数を以て可決すべきものと議決いたしました次第であります。(拍手
  25. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 本案に対し討論通告がございます。順次発言を許します。上條愛一君。    〔上條愛一君登壇拍手
  26. 上條愛一

    ○上條愛一君 私は社会党第二控室を代表いたしまして、海上保安庁法の一部を改正する法律案の骨子をなす海上警備隊の設置に反対するものであります。  今回の海上警備隊六千三十八人の増員は、現在の海上保安機構の拡充であつて、従来の警備救難部の任務と同様とされておるのであります。ただ警備救難部は、常時パトロールして、人命、財産の保護と海上における保安と治安の任を果すに対しまして、新設せんとする海上警備隊は、平素は横須賀その他二三の旧軍港で集団訓練を受け、緊急必要なる場合、例えば先般の十勝沖の震災のごとき大規模の災害や、重大なる海上秩序の撹乱等に際してのみ出動するという差異があるのであります。而して海上警備隊設置の必要は、現在の海上保安庁は約一万三千人の人員と約五万トンの船舶を有するのでありまするが、以上を以てしては、四面海に囲まれる我が国といたしましては、海上における人命、財産の安全を保護し、更に海上の治安を確立して、海上の秩序を紊すような事態の予防鎮圧には不十分であるから、今回六千三十八人の人員を増加し、米国から千五百トン級の船艦十隻、二百五十トン級五十隻を借入れんとするのであります。而して運輸大臣の説明によりまするも、従来の海上保安庁の任務は、海難救助、密入国、密貿易、密漁業等の防止が主たるものであります。然りとしまするならば、今回増員する六千三十八人の人員と、米国から借入れる、船艦は、これを現在の全国九つの海上保安管区の警備救難部に配置いたしまして、常時パトロールの任に当らしむることが適切であると信ずるのであります。例えば、普通の海難の場合において、又密貿易、密入国、密漁業等の発見の場合は、直ちにこれが対策処置を講ずることが緊要でありまして、一々遠方の旧軍港に駐在する海上警備隊の出動を求むるがごときは不可能なることは明白であるのであります。ただ先般の十勝沖の震災のごときは稀に起る天災地変でありまして、かくのごときに際しましては、九つの海上保安管区の船舶を動員すれば可なりと信ずるものであります。然るに本案改正による海上警備隊は、従来の海上保安庁の機構とは全く別個に設置しまして、六千人の人員と、米国から借入の大砲二門を備える千五百トン級船艦十隻と、二百五十トン級五十隻は、これをことごとく横須賀を初め佐世保、舞鶴等の旧軍港に集中配置して、平素は旧海兵団と同様の集団訓練のみを行わしめんとするものでありまして、これは明らかに戰力化の第一歩であつて、憲法第九條に抵触するものと断ぜざるを得ないのであります。(拍手)これが私の本改正案に反対する第一の理由であります。  第二の理由は、海上保安庁は運輸省の外局であつて、又政府当局のしばしば説明するところによりますと、海上警備隊は東京警視庁の警備隊若しくは大阪警視庁の機動部隊のごとき機構なりとしておりまするのに、一方、政府は陸上の警察予備隊と海上警備隊とを合せて新たに保安庁を総理府に設置せんとしつつあるのでありまして、若し保安庁が設置せられるといたしますれば、明らかに自衛力の増強を目的とし、軍備を前提としましたものであるのでありまして、海上警備隊の戰力化の性格を更に裏付けるものであると言わざるを得ないのであります。のみならず、前述のごとく、政府は今日海上警備隊についての機構と性格に関しましては未だ確固たる決定を見ておらないのであります。かくのごとき状態において本案を審議することは意義をなさないのでありまして、我々は、海上警備隊についての政府の最終的決定を見た上に、これを検討審議することが当然なりと信ずるのであります。  以上の見地に立ちまして、私は本案に反対の意を表する次第であります。(拍手
  27. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 三好始君。    〔三好始君登壇拍手
  28. 三好始

    ○三好始君 私は改進党を代表しまして、海上保安庁法の一部を改正する法律案に対して反対の趣旨を明らかにせんとするものであります。  民主主義の最小限度の保障は法を守ることでなければなりません。法を曲げ、法を無視して憚からない国家は、民主主義の最低水準にも達しないものであることは、何人といえども否定できない事実であります。私は只今上程せられておる海上保安庁法の一部を改正する法律案が、国家の基本法であり且つ最高法規である憲法に抵触する虞れがあるものであり、政府みずからの手によつて法秩序混乱の温床を作らんとしておる事実を警告しなければならないことを遺憾に思うのであります。(拍手)本法律案の注目すべき点は、海上保安庁に現在の警備救難部とは別個に海上警備隊を新設せんとするところにあるのでありますが、海上警備隊の性格が如何なるものであるかについて、村上運輸大臣と大橋国務大臣との間で答弁に重大な食い違いがあることを指摘せざるを得ません。これは政府部内において、憲法との関係で如何にこの自衛問題について無理な辻褄を合せようとしておるかの一端が現われておると言えるのであります。即ち村上運輸大臣は、「海上警備隊の性格は警察予備隊の性格とは全然異なり、東京警視庁の予備隊或いは大阪警視庁の機動隊に相当するものであつて、これが目下成案を急ぎつつある保安庁に統合されたのちには性格が変るだろう」と述べておるのであります。これに対して大橋国務大臣は、「実質的にも形式的にも、警察予備隊と海上警備隊とは、いずれも国内治安を目的としてできておる点では同一のものであつて、この大きな目的が変らない限り、保安庁ができても海上警備隊の性格は変らない」と明言いたしておるのであります。而して大橋国務大臣は、従来、本会議委員会を通じてしばしば、予備隊等は外敵侵入に際し、本来の目的ではないけれども、その実力を以て自衛行動をとることを肯定する旨を言明しておるのであります。ところが海上警備隊に関して村上運輸大臣並びに海上保安庁長官は、この点について言葉を濁し、或いは外交交渉に訴えるという表現を用いたりして、消極的に答弁をせられております。私はここに旧日本陸軍の主戰論と海軍の自重論の再現を見たような感じがいたしたのであります。  いずれにいたしましても、政府の意図するところは、海上警備隊の新設によつて自衛力増強の一環を満さんとしておることは明らかであると言わなければなりません。私は個人的には村上運輸大臣の善意を理解するにやぶさかではありませんが、現実的には、海上警備隊は台風とか十勝沖震災のような大規模な海難に際して機動的に出動するというようなる言葉でカムフラージユしながら、なし崩し的に事実上の軍備を進めつつあると認めざるを得ないのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)かかる手段は政治的にも自衛力を保持することの是非の問題とは無関係であり、現行憲法の下においては断じて許されるものではありません。(「そうだ」と呼ぶ者あり)憲法第九條は、たとえ改正せらるべきものであつても、今日の段階においては断じて守らるべきものであります。それが民主主義の最小限度の要請であることは冒頭において私が指摘した通りであります。(「破防法で縛れ」と呼ぶ者あり)今日においては、外国より実力強制を受けた場合、これに対して国家として自衛のための組織的な抵抗をすることは憲法上不可能であり、このような組織的抵抗力を持つことは憲法改正を待つてのみ可能であります。現在までに明らかにされたところでは、政府は近代戰をなし得る能力が戰力であるとの戰力相対性の立場を主張して、憲法第九條違反を糊塗し、予備隊や警察隊は国内治安の維持が本来の目的であつて、自衛の必要のある際にその実力を利用されるのに過ぎないとの説明によつて違憲性を免がれ得るとの態度をとつて来られました。このような論旨は新制中学の模擬国会においても通用しないことであることは、憲法と国際法に通ずる者の常識であります。戰力相対性の立場は、憲法第九條第二項から戰力の二字だけを抽出して、こじつけの解釈をしておるのに過ぎないのでありまして、憲法の平和主義的構造、少くとも第九條全体の論理乃至精神に目を蔽うものであります。全くナンセンスというよりほかはありません。又予備隊、警備隊等は、外敵侵入に際し、本来の任務としてではなく、国内治安維持の必要から自衛手段に出るのに過ぎず、違憲ではないという立場は、窮極的には現行憲法の下において自衛戰争を是認する思想を示すものにほかなりません。憲法が問題にしているのは、主たる任務が国内治安の維持にあるか外敵防衛にあるかではありません。海外に出動するか否かでもありません。有効に防衛の目的を果し得る戰力を持つかどうかでもありません。名称の如何にかかわらず、程度の如何を問わず、外敵に対し国家としての一切の組織化された抵抗力を持たないということが、憲法の明々白々たる内容であります。この間の政府の憲法違反性につきましては、予算委員会における自衛戰力の論議を通じても決して明瞭にされてはおりません。やがて内閣委員会において保安庁機構の審議の際に、私はこの点を徹底的に明瞭にする用意があることをここに明らかにしておくものであります。  私は、海上保安庁法の一部を改正する法律案は、細部に亘つて論及する以前にすでに根本問題として憲法違反性を帶びていることを主たる理由として、これに反対するものであります。(拍手
  29. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 成瀬幡治君。    〔成瀬幡治君登壇拍手
  30. 成瀬幡治

    ○成瀬幡治君 私は日本社会党第四控室を代表いたしまして、只今議題となました海上保安庁法の一部を改正する法律案に対しまして反対いたすものでございます。  本法案は一部改正となつておりますが、実は内容は実質的に一変されておるのであります。即ち、吉田内閣は今までもたびたび再軍備はしないと言明しておりますが、その半面、原爆を持つていなければ軍備ではないと言つてみたり、二千億ばかりの予算では軍隊はできないとか、憲法第九條は自衛戰力を否定していないと言明してみて、又これを慌てて取消してみたりしておるのであります。実は再軍備はしたい、併し憲法はこれを認めていない、憲法改正、再軍備と打ち出せば、平和を愛好するところの国民の総反撃を受けることは必然であるというので、「おたまじやくしは蛙でない」式の論法を以て国民の目をごまかしつつ既成事実を作り上げて、以て子の目的を達成しようと意図しているのであります。何となれば、今回の改正におきましては、たとえアメリカから船舶千五百トンが十隻、二百五十トンが五十隻の貸與があつたからといつて、ピストルを大砲に替え、基地を商港から旧軍港に移し、隊員を新たに特別職として六千三十八名を増加することは、明らかに再軍備への第一歩であり、憲法第九條に違反するものであり、反対する第一の理由であります。  次に法文についてでありますが、海上保安庁が今までにたびたび汚職事件を出したことは周知の通りであります。これが防止に当つて機関の監査を今まで通り五名で、経理補給部の一部門としていることは、購入、支拂、監査をただ一人で行うのに等しいことでありまして、数百億の予算を費すこの国民の血税に対して何と考えているのか了解に苦しむ点であります。次に第二十五條の二十一は居住制限をしておるのでありますが、その運営如何によつては兵営を再現することになる憂いがあるのであります。又第二十五條の二十には、「隊員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も同様とする。隊員は、法令による証人、鑑定人等となり、職務上の秘密に属する事項を発表する場合には、海上保安庁長官の許可を受けなければならない。その職を退いた後も同様とする。」とあり、これに関連して二十五條の三十五に、「左の各号の一に該当する者は、一年以下の懲役又は三万円以下の罰金に処する。一、第二十五條の二十の規定に違反して、秘密を漏らした者」と、こうあるのでありますが、問題は「証人、鑑定人等」という字句であります。仮に隊員が退職後講師などとなりまして、たまたま秘密事項に言及したからといつて罰則規定適用を受けたり、或いは国会委員会などに証人として喚問され、証言したことで罰せられては、大変なことになるのであります。罰則規定のあるものを最もあいまいな「等」という字句で表現していることは、如何にこの法案が馬鹿げたものであるかを端的に表現しているものと言えるのであります。  以上立案の趣旨は、何と政府が強弁しようと、それは再軍備への第一歩であり、憲法違反である点、法文の内容不備であり、拡大解釈、運用如何によつては危險極まりないものの二点から反対するものであります。(拍手
  31. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) これにて討論通告者発言は全部終了いたしました。討論は終局したものと認めます。  これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。委員長報告は修正議決報告でございます。委員長報告通り修正議決することに賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  32. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 過半数と認めます。よつて本案は委員会修正通り議決せられました。      ——————————
  33. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 日程第五、道路運送車両法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)を議題といたします。  先ず委員長報告を求めます。運輸委員長山縣勝見君。    〔山縣勝見君登壇拍手
  34. 山縣勝見

    ○山縣勝見君 只今上程になりました道路運送車両法の一部を改正する法律案について、運輸委員会における審議経過並びに結果を御報告いたします。  本法律案の要点は、一、軽自動車と二輪小型自動車の登録を省略して自動車の登録制度を簡素化し、又軽自動車、原動機付自動車及び旅客軽車両について検査を省略して自動車の検査制度を簡素化したこと。二、検査証の有効期間が従来一律に一年間であつたのを、旅客を運送する自動車運送事業の用に供する自動車にあつては九カ月、貨物の運送の用に供する自動車にあつては従来通り一年、その他の自動車は二年としたこと。三、自動車検査手数料を二輪の小型自動車は百円以内、その他の自動車は二百円以内において徴收することにしたのがその要旨であります。  本法律案に対する質疑におきましては、検査及び検査証の有効期間等につき質疑応答がありましたほか、格別の質疑もなく、続いて討論を省略いたしまして直ちに採決に入りましたところ、全会一致を以ちまして原案通り可決すべきものと決定いたしました。  以上御報告申上げます。(拍手
  35. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案に賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  36. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 総員起立と認めます。よつて本案は全会一致を以て可決せられました。      ——————————
  37. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 日程第六、日本国アメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定実施に伴う所得税法等臨時特例に関する法律案日程第七、日本国アメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定実施に伴う関税法等臨時特例に関する法律案日程第八、日本国アメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定実施に伴う国有財産管理に関する法律案日程第九、日本国アメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定実施に伴う国税犯則取締法等臨時特例に関する法律案日程第十、日本国アメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定実施に伴うたばこ專売法等臨時特例に関する法律案日程第十一、特別調達資金設置令の一部を改正する法律案、(いずれも内閣提出衆議院送付)以上六案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  38. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。先ず委員長報告を求めます。大蔵委員長平沼彌太郎君。    〔平沼彌太郎君登壇拍手
  39. 平沼彌太郎

    ○平沼彌太郎君 只今上程されました日本国アメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定実施に伴う所得税法等臨時特例に関する法律案ほか五法案の大蔵委員会における審議経過並びに結果を御報告申上げます。  先ず日本国アメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定実施に伴う所得税法等臨時特例に関する法律案は、アメリカ合衆国軍人軍属又はその家族が、軍隊又は軍人用販売機関等から受ける給與所得等について、所得税を課さないこととするほか、法人税、相続税、富裕税、通行税、印紙税、物品税及び揮発油税についてそれぞれ免税するために必要な措置を講じようとするものであります。  次に、日本国アメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定実施に伴う関税法等臨時特例に関する法律案は、アメリカ合衆国の公用船に対しとん税を免除すると共に、合衆国軍隊、その公認調達機関、軍人用販売機関、軍人軍属又はその家族等が輸入する特定物品について、関税及び内国消費税を免除するほか、関税及び内国消費税を免除された物品の横流れを防止するために必要な措置を講じようとするものであります。  次に、日本国アメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定実施に伴う国有財産管理に関する法律案は、アメリカ合衆国日本国有の財産の無償使用を許すと共に、その用途又は目的を妨げない限度において他の者にその使用又は收益を許し、又その返還に当り原状回復又はこれに代る補償を請求しないこととする等の措置を講じようとするものであります。  次に、日本国アメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定実施に伴う国税犯則取締法等臨時特例に関する法律案は、国税犯則取締法、関税法等により、アメリカ合衆国軍隊の使用する施設及び区域内において臨検、捜索又は差押を行う場合は、合衆国軍隊の権限ある者の承認を受けるか、又はこれに嘱託して行うこととしようとするものであります。  次に、日本国アメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定実施に伴うたばこ專売法等臨時特例に関する法律案は、アメリカ合衆国軍隊、軍人用販売機関、軍人、軍属、その家族等が、製造たばこ、製造たばこ用巻紙又は塩を、專売公社の委託又は許可を受けないでも輸入できることとすると共に、その相互の間でこれらのものを讓り渡し又は讓り受けることができることとしようとするものであります。  次に、特別調達資金設置令の一部を改正する法律案は、日本国アメリカ合衆国との間の安全保障條約の締結に伴い、特別調達資金を同條約に基いて駐留するアメリカ合衆国軍隊の需要に応ずるための物及び役務の調達に要する支拂資金として使用できるよう、所要の改正をしようとするものであります。  委員会における審議の詳細は速記録によつて承知願いたいと存じます。質疑を終了して六法案を一括して討論に入りましたところ、木内委員から、「内外の情勢下、安全保障條約によつて外国軍隊の駐留を認めなければならない今日、この程度のことは止むを得ないことで、甚だ遺憾ではあるが、外国軍隊の駐留が一日も速かに終止して、かくのごとき法律の必要のないようにすることを期待すると同時に、政府において実施状況を見て、できるだけ速かに不都合な点は改めて行くことを前提として賛成する」との意見が述べられ、木村委員から、「これらの法案を具体的に検討すると、安全保障條約及び行政協定の日本経済に及ぼす影響が如何に重大であるかがわかり、経済的面からだけ見ても経済が独立したと言えるかどうか疑われる。特に三点を指摘して反対せざるを得ない。その第一は、これらの法案は国際慣例にならつて制定したというが、北大西洋條約に関連する協定、米英協定、米比協定に比べて極めて不利である。その第二は、経済的治外法権の範囲が広汎で、所得税、関税等の免除、国有財産の無償使用、国税犯則取締法、たばこ專売法等の特例を認める結果、日本の自主性は確保できない。その第三は、講和後これらの法律に基いて日本経済が運用せられる場合、特に直接調達方式を中心として運営せられる場合、日本経済は駐留軍経済の従属的立場に置かれて自主性がなくなる。以上の三理由から反対する」との意見が述べられ、小林委員から、「木内委員と同様の気持で賛成するものである、なおジヨイント・アカウントの運用に当つて、特別調達資金のような回転基金を設けなくてもやれるように、日本官吏に出納事務の委任等ができるよう、強力に合衆国に折衝することを希望する」との意見が述べられ、下條委員から、「政府の独立国家建設に対する熱意と気魄に欠けるものがあるように思われて甚だ不満である。反対の理由は本会議において述べたいので詳細は省略するが、所得税、関税の免税の範囲が広汎であり、又国有財産の使用の目的並びに範囲を明確にし、契約解除などについても十分補償を與えるような具体的な規定がないのは甚だ遺憾であるから反対する」との意見が述べられ、野溝委員から、「これらの法案は、合衆国に財政上の特権を提供するものである。日本の内政に独立後も依然として干渉が続けられ、且つ自立不可能の現状にある日本の財政を一層困難ならしめるような法案は、日本の自主性を無視するものであるから反対する」との意見が述べられました。  よつて法案を一括して採決の結果、多数を以て原案通り可決すべきものと決定いたした次第であります。  右御報告申上げます。(拍手
  40. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 討論通告がございます。発言を許します。菊川孝夫君。    〔菊川孝夫君登壇拍手
  41. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 私は社会党第四控室を代表いたしまして、只今議題となりました日本国アメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定実施に伴う関税法等臨時特例に関する法律案ほか五法案に反対の意見を申述べます。  これらの法律案は、その名が示すように、安全保障條約と行政協定の締結に伴つて立法を余儀なくさせられた法律案であります。我々は平和條約と安全保障條約の批准に当つて国会の承認を求められた際に、これはアメリカが講和條約という餌を見せて安全保障條約の締結を要求しているものであつて、不用意に飛びついたなら、日本の独立を達成し、その安全を保障するどころか、戰争の渦中に巻き込まれ、再度原爆の洗礼を受けなければならないようなことになるかも知れないから、即ち起るかも知れない第三次大戰或いは拡大するかも知れない極東の極地戰に日本の人的資源を動員する必要から安全保障條約を締結することが主目的であつて、講和條約は従たるものであるとして、あらゆる中傷や妨害、犠牲を乗り越えてこれに反対して来たのであります。(「済んだ、そんなものは」と呼ぶ者あり)又、行政協定報告を受けた際にも、これによつて日本は永くアメリカに隷属することになり、一方ソ連側を刺激して、対抗的に北鮮、満州、樺太等に軍事基地を設け、厖大な兵力を集中することになる結果、日本海を挾んで米ソの対立が一層尖鋭化して、極東の一角に一触即発の危險地帶を生じるであろうし、又、中国やフイリピン、インドネシア、ビルマ等のアジア各国からは、日本がアメリカの手先となつて再び侵略して来るのではないかという猜疑心を起させ、日本をアジアの孤兒化する虞れがあるとして反対し、且つ国内的には憲法の規定従つて国会審議を経るべきであると主張したのであります。我々はこういう見解と主張が正しいことを確信し、その立場を寸毫も改める必要を認めないどころか、今後、より積極的に平和條約の修正と安全保障條約の廃棄の鬪いを推し進めて参る決意を固めておるのでありまして、この両條約締結の結果、立法を余儀なくせられるこれらの法案に反対する次第であります。これら諸法案はいずれも税法的には国家内に国家を認めるもので、自主権喪失法案であると言い得ると思います。  先ず関税法等臨時特例に関する法律案を見まするに、合衆国の軍隊、軍人、軍属及びそれらの家族、請負業者やPX等の軍人用販売機関が輸入しまするところの一切の物品、引越荷物、携帶品、自動車についてとん税も関税も免除し、且つこれらの物品に対するところの内国消費税を一切免除しようとするものであります。最も極端なのは、軍人軍属は申すに及ばず、その家族や請負業者が私用に供する自動車までも免税することであり、又今後軍事郵便局を通じて合衆国の本国から送られて来る衣類、家庭用品等も免税されることになるのであります。衣類及び家庭用品については勿論「通常且つ相当量」という立法上の制限を設けてありますが、この運用は極めて困難であるために、実際的にはすべて免税されることになつてしまうと思うのであります。勿論その他の物品についても、証明手続等、一応立法上体裁は整えられておりまするけれども、一国の軍隊が外国において発行する証明等は極めてルーズに流れがちなものであることは、過去のいずれの実績でも明らかにこれを物語つておるのであります。従つて、独立後もアメリカから各種の物品が関税特権によつて日本に持込まれ、それが横流しされて、日本経済を撹乱することは明らかであります。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)これが終戰直後のように物資が不足しておるときには、一応潤滑油的な役割を果すかも知れないけれども、今では国内においても若干生産過剰の気味であるために、その影響は深刻なるものがあると思います。こうした横流れについては、讓渡だとか讓り受けの制限規定を設けてありまするけれども、次の制裁という段になりますと、いわゆる属人主義によつて裁判が行われますので、結局罰せられるのは日本人のみであるという結果になるのではないかと思うのであります。  次に、所得税法等臨時特例に関する法律案は、合衆国の軍人、軍属、その家族、それから請負人、軍人用の販売機関に対しまして、所得税も、法人税も、相続税も、富裕税も免除しまして、なお軍隊に対しては通行税、軍隊及び軍人用販売機関に対しては印紙税、公認調達機関や請負業者が日本で調達する物品に対しましては物品税、揮発油税等をそれぞれ免除しようとするものでありますが、これは今後何年続くか、又幾人に対して供與されるかわからない、無期限、無制限に亘る租税上の治外法権設定でありまして、思えば実に高価な代償を拂つた講和條約であるという感を深くするのであります。(拍手)  苛斂誅求に悩んでおりまする国民の批判がこの治外法権的法律に集中されるでありましようことは申すまでもないのであります。(「ノーノー」と呼ぶ者あり)それがやがて猛然たる民族主義運動に発展いたしまして、吉田内閣の屋台骨を揺がさずにおかないであろうことを、我々はここに断言し得ると思うのであります。(「もう動いているのだ」と呼ぶ者あり、拍手)  次に、たばこ專売法等臨時特例に関する法律案でありまするけれども、これは合衆国の軍隊やPX等の軍人用販売機関が無税でたばこ及び塩を輸入することを認め、且つ專売法の規定にかかわらず、これらの物品を合衆国の軍人や軍属、その家族、請負業者等に自由に配給、販売させようとすることがこの法律の眼目でありますが、又軍人、軍属、その家族、請負業者が入国の際に携行したり、軍事郵便を通じて取り寄せまするところの二百本又は二百グラム以内のたばこ及び相当量の塩を無税とするものであります。併しながら、現在我が国の各地の高級料理店や喫茶店等におきまして、外国たばこは極めて容易に入手できるのであります。これらは大抵占領軍関係者の非合法的横流しによるものでありまして、その額は專売公社の言明によつても四十億に達すると推定されていますが、私はそれ以上に上るのではないかと思うのであります。特に残念なことは、国会議員や公務員までが平然として洋モクをくゆらしている姿をときどき見受けるのでありますが、これが我が国の財政上、又社会教育上に極めて悪い影響を及ぼすことは申すまでもないことでありまして、本法律案の制定によつて、独立後も合衆国軍隊にこうした專売法上の特権を供與することによつて一層甚だしくなるのではないかと憂慮するものであります。  次に国税犯則取締法等臨時特例に関する法律案についてでありますが、本法案は国税犯則事件又は関税法、煙草專売法、アルコール專売法、噸税法、保税倉庫法及び地方税法等の違反事件があつたと認められる場合、施設及び区域内の臨検、捜索又は差押は合衆国軍隊の承認を受けて行うか、又は合衆国軍隊に委嘱して行うことにして、その他の軍人、軍属、その家族の身体、財産又は合衆国軍隊の財産については、收税官吏又は税関吏がこれを行うことができる旨を規定しようとしているのであります。併しながらアメリカ人の日本人に対する人種的偏見は極めて根強いものがあることは、あの埴原大使当時の移民法以来、我々が幾たびか苦杯を嘗めて来たところであります。それが戰勝国と戰敗国の関係において、六カ年間の長きに亘つて占領軍として君臨して来た軍隊に、果して本法律が完全に運用されるかどうかということを本当に危惧せざるを得ないのであります。(拍手委員会答弁におきまして、岡崎国務大臣は相互信頼を、それから池田大蔵大臣は独立自尊を強調されましたが、アメリカの世界政策の前に完全に屈服して、向米一辺倒に日本民族の運命をかけようとしている現政府は、本法案を單なる国民に対する僞裝とするに過ぎないのではないかと疑うのは、我々のみではないと思うのであります。(「然り然り」「僻み僻み」と呼ぶ者あり)  次に国有財産管理に関する法律案は、合衆国軍隊に国有財産を無償で使用させることにしようとするものでありまして、具体的に何を提供するかを明らかにせず、無償提供、原状回復請求権の放棄、一時使用の許可等の原則を明らかにしているに過ぎないものであります。これによつて実際的には、政府が合衆国政府の要求に応じて、どしどし提供して行くことになるのであります。岡崎国務大臣は、この点に関しまして「合意によることになつているから、日本として都合の悪いものは合意しなければよい」と言つておりますけれども、軍の作戰というものは政治に優先することになりがちなものでありまして、特に大国が小国に対してそれが一層露骨に現われて来るものでありまして、恐らく合衆国軍隊からは、作戰上の必要に応じて、至上命令的に要求されることになつて政府は合意せざるを得ないことになると思うのであります。今後、民有又は公有の土地建物についても、要求があり合意した場合は、借上げ、買收又は強制收用等の処置が講ぜられて、国有財産としてそれが提供されることになるのであります。本法案には、史蹟であるとか、或いは文化財である重要建造物、天然記念物についての除外規定がございませんので、場合によつてはこれらも含めて提供される場合もあり得るのでありますが、米比協定では、墓地であるとか歴史的建造物についてはフイリピン人の権利を留保しているのであります。岡崎国務大臣は、これについて「合意しなければいい」と言われましたけれども、岡崎君のような立派な外務大臣がこの法律実施期間中在任されるわけでもありませんので、法律に史蹟、文化財、天然記念物等を除外する規定くらいは設ける自主性が欲しかつたと思うのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)最後に重要な点は、第三條の原状回復権の放棄でありまして、非常事態が発生いたしまして、合衆国軍隊が戰略的な撤退を行う場合、敵に利用させないために施設及び区域をみずからの手で爆破することがあり得ると思うのでありますが、(「朝鮮を見ろ、朝鮮を」と呼ぶ者あり)そうした場合に生じた損害までも請求しないことになつています。岡崎国務大臣は、「そんなことがないようにするのが安全保障條約の目的であるから、そういうことが起らないと信ずるし、仮に万一起つたとしても別途に考慮するよりいたし方がないんだ。」こう極めて楽観的且つ独善的な(「何で仕方がないのだ」と呼ぶ者あり)見解を表明いたしております。我々はこの点を最も重視するのであつて、遠くはバターン半島、近くは朝鮮の例に鑑みまして、是非とも非爆破の、爆破しないという保障を要求し、万一爆破された場合には正当な補償を請求する権利を留保すべきであると思います。(「当然だ当然だ」と呼ぶ者あり)なお特別調達資金設置令の一部を改正する法律案でありますが、これは安全保障條約の発効と同時に、従来占領軍の要求によつて使用されて来た特別調達資金を、同條約に基いて駐留するところのアメリカ合衆国軍隊の要求に応じて行います物及び役務の調達に要する支拂資金として使用するための改正案でありますけれども、我々は基本的には安全保障條約の破棄を主張しておりますので、その改正を必要としないという立場から反対するものであります。なお、この法案は、一見しますると、單に占領軍から駐留軍への切替に伴いますところの法律処置に過ぎないようでありますが、背後にはいわゆる直接調達か間接調達かという我が国経済にとつて極めて重大な問題が控えておるのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)行政協定の十二條によると、駐留軍に要する物資、役務、工事の調達は、米国側の直接調達という線が強く打ち出されており、予備作業班の交渉過程から見ましても、今後労務を除いては合衆国軍隊による物資、役務、工事の直接調達という態度が示されています。で、駐留軍の経費は、防衛分担金として日本が負担する六百五十億円のうちから、土地、建物の借上料九十二億を差引いた五百五十八億円、即ち一億五千五百万ドルを「どんぶり」予算として米国側にそつくり渡した金と、米国側が負担する一億八千万ドルで、これを合計しますと千三百億円になり、そのほかに予想されます特需千数百億を加えますると、総合計が約三千億に達する厖大な金額になるのであります。これは二十七年度の一般会計歳入歳出総額の三五%になる巨額なものでありまして、これが米国側の独自の構想で日本で使用されるといたしましたならば、底の浅い我が国の経済実情から見て、これがために物資の不足を来たし、国民生活を圧迫し、或いは生産を阻害する結果を招来するのではないかと思うのであります。で、軍隊の地位に関する北大西洋條約当事国間の協定を見ると、受入国の政府機関を通ずる間接調達方式を探つているのであります。我々もこういう見地から、せめて間接調達方式ぐらいは岡崎君主張すべきであつたと思うのであります。  以上申述べましたごとく、これらの諸法律案は、いずれも講和條約、安全保障條約、行政協定と一貫した現内閣の向米一辺倒の外交政策に基いて日本をアメリカの衛星国化するものであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり。)このコースは当面は現実への安易な妥協の道かも知れませんが、決して日本の独立を守るものでもなく、又日米両国間の百年の大計を図るものでもなければ、世界の平和に寄與するものでもないことは断言して憚からないと思います。  私はかかる観点に立ちましてこの六法案に反対する次第なのでございます。(拍手
  42. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) これにて討論通告者発言は終了いたしました。討論は終局したものと認めます。  これより六案の採決をいたします。六案全部を問題に供します。六案に賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  43. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 過半数と認めます。よつて六案は可決せられました。      ——————————
  44. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 日程第十二より第十四までの請願及び日程第十五より第十七までの陳情を一括して議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  45. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。先ず委員長報告を求めます。建設委員長廣瀬與兵衞君。    〔廣瀬與兵衞登壇拍手
  46. 廣瀬與兵衞

    廣瀬與兵衞君 只今議題となりました日程第十二から第十七まで八件の請願陳情について、建設委員会審議の結果を御報告いたします。  請願一件は、近々駐留軍の使用に供するため接收を予想される佐世保市外旧軍用地の補償に関するものであります。同地区約六十万坪はすでに農地として個人の所有に帰しておりますが、その接收については行政協定によつて処理すること、全面買收とし、補償は時価を基準とすること、そのほか補償については地元民の窮状を十分考慮して処置されたというのであります。陳情中三件は、横浜市の重要地区の接收を速かに解除し、請願二件、陳情二件は、教育上甚だしい支障を来たしておるものとして、東京都京橋商業高等学校月島第三小学校及び商船大学東京分校の接收校舎を速かに返還されたいと要請するものであります。  以上いずれも願意おおむね妥当なものとして、院議に付し、内閣に送付すべきものと決定いたしました。右御報告申上げます。(拍手
  47. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。これらの請願及び陳情委員長報告通り採択し、内閣に送付することに賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  48. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 総員起立と認めます。よつてこれらの請願及び陳情全会一致を以て採択し、内閣に送付することに決定いたしました。  本日の議事日程はこれにて終了いたしました。次会の議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時二十四分散会      —————————— ○本日の会議に付した事件  一、中央厚生保護委員会委員の任命に関する件  一、鳥取市の火災による災害に関する野田国務大臣報告  一、議員派遣の件  一、日程第一 急傾斜地帶農業振興臨時措置法案  一、日程第二 主要農作物種子法案  一、日程第三 ポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する件に基く建設省関係命令措置に関する法律案  一、日程第四 海上保安庁法の一部を改正する法律案  一、日程第五 道路運送車両法の一部を改正する法律案  一、日程第六 日本国アメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定実施に伴う所得税法等臨時特例に関する法律案  一、日程第七 日本国アメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定実施に伴う関税法等臨時特例に関する法律案  一、日程第八 日本国アメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定実施に伴う国有財産管理に関する法律案  一、日程第九 日本国アメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定実施に伴う国税犯則取締法毎の臨時特例に関する法律案  一、日程第十 日本国アメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定実施に伴うたばこ專売法等臨時特例に関する法律案  一、日程第十一 特別調達資金設置令の一部を改正する法律案  一、日程第十二乃至第十四條の請願  一、日程第十五乃至第十七の陳情