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1952-03-27 第13回国会 参議院 本会議 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年三月二十七日(木曜日)    午前十時三十六分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第二十四号   昭和二十七年三月二十七日    午前十時開議  第一 昭和二十七年度一般会計予算委員長報告)  第二 昭和二十七年度特別会計予算委員長報告)  第三 昭和二十七年度政府関係機関予算委員長報告)  第四 優生保護法の一部を改正する法律案谷口弥三郎君外九名発議)(委員長報告)  第五 昭和二十六年十月の台風による木船災害復旧資金融通に関する特別措置法案衆議院提出)(委員長報告)  第六 捕獲審検所検定の再審査に関する法律案内閣提出)(委員長報告)  第七 商船管理委員会解散及び清算に関する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第八 船舶運営会船員退職手当に関する交付金船舶所有者に交付する法律廃止する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第九 漁船損害補償法案衆議院提出)(委員長報告)  第一〇 漁船損害補償法施行法案衆議院提出)(委員長報告)  第一一 ポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する件に基く水産関係命令廃止に関する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第一二 所得税法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第一三 法人税法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第一四 相続税法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第一五 物品税法の一部を改正する法律案衆議院提出)(委員長報告)  第一六 砂糖消費税法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第一七 一般会計の歳出の財源に充てるための米国日援助物資等処理特別会計からする繰入金に関する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第一八 財産税等收入金特別会計法廃止する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第一九 資金運用部預託金利率の特例に関する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第二〇 漁船保險特別会計法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第二一 漁船保險特別会計における漁船保險事業について生じた損失を補てんするための一般会計からする繰入金に関する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第二二 ポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する件に基く労働省関係命令廃止に関する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第二三 失業保險法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第二四 国立学校設置法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第二五 農林漁業資金融通法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第二六 農業改良助長法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第二七 閉鎖機関日本蚕糸統制株式会社が積み立てた繭糸価格安定資金処分に関する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。      ——————————
  3. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) これより本日の会議を開きます。  この際お諮りいたします。曾祢益君から海外旅行のため十日間請暇の申出がございました。これを許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつて許可することに決しました。      ——————————
  5. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) この際、日程順序を変更して、日程第一より第三までをあとに廻し、日程第四、優生保護法の一部を改正する法律案谷口弥三郎君外九名発議)を議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。先ず委員長報告を求めます。厚生委員長梅津錦一君。    〔梅津錦一登壇拍手
  7. 梅津錦一

    梅津錦一君 只今議題となりました優生保護法の一部を改正する法律案に関しまする厚生委員会における審議経過並びに結果の御報告を申上げます。  本法案は本院谷口弥三郎議員ほか九名提出にかかる法案であります。先ず提案理由及びその内容について要点を申上げますと、優生保護法は、不良な子孫の出生を防止するという優生上の目的と、妊娠から生ずる母体健康障害を防止するという母性保護目的とを有しているのでありますが、今回の改正案はこの二つの目的を一層完全に達成することを企図いたしまして一方においては優生手術可能範囲に必要な是正を加えると共に、他方においては人工妊娠中絶の手続の適正化を図り、又受胎調節に関連する條項を整備することを主な内容とするものであります  先ず優生手術に関しまして、本人精神病者精神薄弱者である場合、本人保護のため必要があるときは、保護義務者の同意と都道府県優生保護審査会審査條件として優生手術を行えるようにいたしました。そのほか、婦人が妊娠又は分娩のためにその生命に危險を及ぼすようなものであつて、而も本人手術を行うことができない場合には、その配偶者優生手術をすることができるように改正したのであります。  次に優生保護法施行以来の実績に徴しますと、同法によらない人工妊娠中絶が跡を絶たない実情にあります。その推定政昭和二十五年度において十二万から五十万と言われております。このような闇による人工妊娠中絶は、一面では拙劣な技術による中絶手術によつて母体の健康を害し、他面、多額の手術費用を取られるために経済的浪費を伴つておるのであります。これらいわゆる闇の人工妊娠中絶が行われる根本的理由としての国民経済力人口との問題もさることながら、優生保護法による手術が煩瑣に過ぎるということもその大きな理由の一つになつておるのであります。即ち母体保護の見地から優生保護法適正化を図ることによつて、闇による人工妊娠中絶を合法的な線に乗せて行くことが必要であります。このために健康上の理由とか姦淫されて妊娠した場合の人工妊娠中絶については、従来のように、他の医師又は民生委員意見書の添付、審査会審査を要せず、指定医師の認定だけで行い得ることといたしました。これが改正の第二点であります。  次に、受胎調節出生抑制方法としては人工妊娠中絶に優る一層望ましい方法であります。厚生省におきましては、今年度から積極的な受胎調節指導を行うことになつております。この行政措置による受胎調節奨励策に便乗して不徳義な業者が介入いたしますならば、折角のよい意図もその目的を達することができなくなるのであります。そのために知識技能に欠くる者の受胎調節に関する実地指導を禁止することといたしました。これが改正の第三点であります。  そのほかには、優生結婚相談所名称を改めてその設置に関する條項を現実に即するように改正したこと、及び届出の期日及び方法、過料及び罰金の額の是正等改正であります。  以上が今回の改正案の大要でありますが、厚生委員会におきましては、二月十六日以来五回に亘り打合会を開きまして、鋭意検討を重ねて参り、今回の改正案提出する次第となつたものであります。三月二十五日の厚生委員会におきましては、谷口弥三郎議員より提案理由説明がなされました後、質疑に入りましたところ、別に発言もないので、谷口議員より政府に対しまして次の五点につき要望いたしました。  第一点は、従来優生保護法については府県衛生部並びに保健所の民間に対する指導が普及徹底しておらぬ憾みがあるから、今後は十分徹底せしめること。  第二点は、従来旧法第十二條によつて人工妊娠中絶を行なつた場合には、妊娠三カ月以内の者については届出を必要としなかつたが、人口動態を知る必要上から、それらの手術数を明らかにするため、母性保護医協会がこれを集計して府県衛生部又は厚生省提出していたところ、今回の改正案により、すべての者を一カ月ごとに取りまとめて届出をなすべき旨定めたのでありますが、事務簡捷上より、母性保護医協会をしてこれに当らしめ、最後の集計を厚生省統計調査部においてするよう十分な措置をとること。  第三点は、受胎調節実地指導せしめるため、今回、医師のほかに、都道府県指定を受けた助産婦保健婦又は看護婦をして行わしめることとなつたのであるが、これに必要な講習会基準厚生大臣が定める場合には、少くとも助産婦は一週間、保健婦は一カ月、看護婦は二カ月程度講習を行わしめること。これら指導者名称優生保護指導員など適切な名称を考慮すること。なお保健婦助産婦看護婦法第三十七條にいう薬品を投與指示してはならぬという点については、十分考慮の上、指導者が安心して仕事のできるよう措置されたいこと。  第四点は、受胎調節を徹底するには、生活保護法の適用を受けている者に対しては器具及び薬品を無料或いは軽減された価額を以て與えることができるよう、今後政府において予算を組み、この面に支出されたいこと。  第五点は、優生保護相談所設置並びにその運営に要する経費に対しては、政府は今後引続き必ず補助すること。又このような相談所相互病院並びに指定医にも容易に設置し得るよう、その設置基準を簡易にすること。  以上の要望に対しまして、政府当局より、「只今の御要望に対しましては、行政運営上十分留意いたしまして御趣旨に副いたく、なお、予算につきましては、今後強力に御趣旨に副うよう努力いたしたい。又講習基準については、講習期間に対しましては御要望と同様の考えを持つておりますが、細部につきましては專門家の意見を聞いた上決定いたしたい」との答弁がありました。  かく質疑を打切り、討論を省略いたしまして採決に入りましたところ、全会一致を以て原案通り可決すべきものと決定いたしました。  以上御報告を終ります。(拍手
  8. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 別に御発言もなければ、これより本案採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  9. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 総員起立と認めます。よつて本案全会一致を以て可決せられました。      ——————————
  10. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) この際、日程第五、昭和二十六年十月の台風による木船災害復旧資金融通に関する特別措置法案、(衆議院提出) 日程第六、捕獲審検所検定の再審査に関する法律案、(内閣提出日程第七、商船管理委員会解散及び清算に関する法律案日程第八、船舶運営会船員退職手当に関する交付金船舶所有者に交付する法律廃止する法律案、(いずれも内閣提出衆議院送付)以上四案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  11. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。先ず委員長報告を求めます。運輸委員長山縣勝見
  12. 山縣勝見

    山縣勝見君 只今議題となりました昭和二十六年十月の台風による木船災害復旧資金融通に関する特別措置法案ほか三法案につきまして、運輸委員会における審議経過並びに結果を御報告申上げます。  先ず昭和二十六年十月の台風による木船災害復旧資金融通に関する特別措置法案でありまするが、本法案衆議院議員關谷勝利君ほか一名の提出にかかるものでありまして、その目的といたしまするところは、昨年十月のルース台風による木船災害復旧に必要な融資を円滑にいたすということであります。法案要点は、政府ルース台風による木船災害復旧資金融通をする金融機関融資総額三億八千万円を限度といたしまして損失補償利子補給契約を結び得ることとすることでありまして、この損失補償の金額の限度当該金融機関融資総額の三割相当額利子補給は年四分と定められており、又この契約ルース台風による木船災害復旧のためすでに行われた貸付につきましても結び得ることとされております。本決案質疑におきまして、一委員より、木船災害復旧については木船保險制度の確立によつて措置すべきであり、現行制度に不備な点があらば早急に修正すべきではないかとの質疑がありましたが、これに対し政府委員は、現行法改正を準備中であるとの答弁がありました。次に討論を省略して採決に入りましたところ、本法案は原案通り可決すべきものと全会一致を以て決定いたしましたのであります。  次に捕獲審検所検定の再審査に関する法律案につきまして、運輸委員会における審議経過並びに結果を御報告申上げます。  平和條約第十七條(a)項は、日本国政府に対し、旧捕獲審検所検定国際法従つて審査することを義務付けておるのでありますが、本法案はこの再審査目的としているのでありまして、その主なる点を申上げますと、第一は、再審査機関として運輸省の外局として捕獲審検審査委員会を設けていることであります。この委員会関係行政機関職員及び国際法に広い知識を有する者のうちから内閣総理大臣が任命する委員長及び委員六名を以て組織され、委員会の任務の性質上、委員長及び委員職権行使独立性について規定されております。第二は、委員会が旧捕獲審検所による検定の取消の決定をしたときは、所有権検定時に遡及して権利者に回復されることを規定しております。運輸委員会における質疑の主なるものを申上げますと、平和條約第十七條あ項に規定する捕獲審検所検定に対する連合国の再審査要請には期限が付されていないのにもかかわらず、本法案においてその存続期間を條約発効後三年と規定したのは如何なる理由かという質疑でありましたが、これに対し政府側答弁は、再審査事務を促進する消極的意味を持つに過ぎないということでありました。次に討論に入りまして、一委員より、回復された所有権のその後の処理については、平和條約第十五條の規定に基き連合国財産返還等に関する政令の一部改正案が別途提案されておるので、本案は適切なるものと認めるという賛成意見が述べられました。かく採決に入りましたところ、本法案は原案通り可決すべきものと全会一致を以て決定いたしました次第であります。  次に商船管理委員会解散及び清算に関する法律案について御報告申上げます。  商船管理委員会は、国家総動員勅令である戰時海運管理令に基き設けられた特別法人でありますが、終戰後におきましては、占領軍の指令によりまして、占領目的遂行のための機関として運営されて参つたのでありますが、占領終結を間近に控えました現在、政府はその存続をもはや必要がないと認めまして、本月末を以て解散命令を発することといたしておるのでありまして、この法律案は、商船管理委員会解散及び清算に関しまして、清算人決定清算方法残余財産の帰属、清算事務監督等を定めようとするものであります。本法案につきまして質疑の後、討論を省略いたしまして採決に入りましたところ、本法案は原案通り可決すべきものと全会一致を以て決定いたしました。  次に船舶運営会船員退職手当に関する交付金船舶所有者に交付する法律廃止する法律案につきまして運輸委員会における審議経過並びに結果を御報告申上げます。  廃止いたさんとする法律は、船舶国家使用制度昭和二十五年四月一日から定期用船制度に切替えられましたので、帰還輸送及び米国與船関係船員以外のすべての船員船舶運営会を退職することとなりますが、これらの船員は直ちに船主雇用されまして、失業することとなりませんから、退職金船舶運営会退職の際支給しないで船主に交付しておいて、これらの船主船主との雇用関係が消滅したときに船員に交付するように法律を以て規定するよう、関係方面から指示を受けまして立案された経緯を持つものでありますが、平和條約の発効を間近に控えたこの際、又関係船員のかねての要望にも鑑み、この法律廃止しようとするものであります。本法案質疑におきまして、委員より、船主の預かつている退職手当船員厚生施設運用されているが、この法案により直ちに船員に支給することにより支障を来たさないかとの質疑がありましたが、これに対しまして、政府側より、船主の支出する文化費その他の経費運用により、従来の厚生施設は継続して行けることと思われるとの答弁がありました。次に討論を省略いたしまして採決に入りましたところ、本法案は原案通り可決すべきものと全会一致を以て決定いたしました。  以上四法案について御報告を申上げます。(拍手)    〔議長退席、副議長着席
  13. 三木治朗

    ○副議長三木治朗君) 別に御発言もなければ、これより四案の採決をいたします。  先ず昭和二十六年十月の台風による木船災害復旧資金融通に関する特別措置法案全部を問題に供します。本案賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  14. 三木治朗

    ○副議長三木治朗君) 総員起立と認めます。よつて本案全会一致を以て可決せられました。      ——————————
  15. 三木治朗

    ○副議長三木治朗君) 次に、捕獲審検所検定の再審査に関する法律案商船管理委員会解散及び清算に関する法律案船舶運営会船員退職手当に関する交付金船舶所有者に交付する法律廃止する法律案、以上三案全部を問題に供します。三案に賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  16. 三木治朗

    ○副議長三木治朗君) 総員起立と認めます。よつて三案は全会一致を以て可決せられました。      ——————————
  17. 三木治朗

    ○副議長三木治朗君) この際、日程順序を変更して、日程第二十一、ポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する件に基く労働省関係命令廃止に関する法律案日程第二十三、失業保險法の一部を改正する法律案、(いずれも内閣提出衆議院送付)以上両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  18. 三木治朗

    ○副議長三木治朗君) 御異議ないと認めます。先ず委員長報告を求めます。労働委員長中村正雄君。    〔中村正雄登壇拍手
  19. 中村正雄

    中村正雄君 只今議題になりましたポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する件に基く労働省関係命令廃止に関する法律案につきまして、委員会におきます審議経過並びに結果につきまして御報告申上げます。  本案は、平和條約の効力発生に伴い、ポツダム宣言受諾に伴い発しまする命令に関する件が廃止されるにつき、政府において労働省関係命令存続すべきや否や検討いたしましたところ、これら諸命令存続する必要がないので廃止しようといたすものであります。廃止せられまする命令は、昭和二十年厚生省令第四十一号、労務充足に関する件、昭和二十一年厚生省令第二号、労務者の就職及び従業に関する件及び昭和二十一年厚生運輸内務省令第一号、労働に関する団体の主要役職員への就職禁止等に関する件、以上三件であります。委員会におきましては、これら諸命令内容及び廃止理由に関しまして、政府委員に対し説明を求めて質疑を行い、討論を終了いたしました後、採決に入り、多数を以て原案通り可決すべきものと決定いたしました。  次に、議題となつておりまする失業保險法の一部を改正する法律案につきまして御報告申上げます。  先ず失業保險法の一部を改正する法律案提案理由及びその内容を申上げます。一昨年の朝鮮動乱以来、雇用情勢を反映して、失業保險金の支出は減少の傾向を示し、保險経済状況が著しく好転いたしましたから、従来の実績に基き、将来の保險経済の推移を考えても、現行保險料率引下げは可能であるから、これを二割引下げ、千分の十六とせんとすること、及び保險料延滞金免除規定は従来極めて限定されておりましたが、これを国税徴収法規定に準じて拡大し、保險料滞納処分の執行を停止し又は猶予した場合及び保險料を納付しないことについて止むを得ない事情があると認められます場合にも免除することとし、保險料徴収事務の改善を図らんとするものであります。本委員会におきましては、将来の失業情勢保險経済の見通し及び保險給付期間延長等について熱心に質疑応答を繰返した後、討論に入りましたところ、椿委員は社会党第四控室を、堀委員労働者農民党をそれぞれ代表いたしまして、保險経済の好転に伴い、更に給付期間延長料率引下げ等につきまして今後の善処方要望して賛成する旨討論がありました。次いで採決の結果、全会一致を以て原案通り可決すべきものと決定いたしました。  以上御報告申上げます。(拍手
  20. 三木治朗

    ○副議長三木治朗君) 別に御発言もなければ、これより両案の採決をいたします。  先ず、ポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する件に基く労働省関係命令廃止に関する法律案全部を問題に供します。本案賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  21. 三木治朗

    ○副議長三木治朗君) 総員起立と認めます。よつて本案全会一致を以て可決せられました。      ——————————
  22. 三木治朗

    ○副議長三木治朗君) 次に、失業保險法の一部を改正する法律案全部を問題に供します。本案賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  23. 三木治朗

    ○副議長三木治朗君) 総員起立と認めます。よつて本案全会一致を以て可決せられました。      ——————————
  24. 三木治朗

    ○副議長三木治朗君) この際、日程第九、漁船損害補償法案日程第十、漁船損害補償法施行法案、(いずれも衆議院提出)、日程第十一、ポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する件に基く水産関係命令廃止に関する法律案、(内閣提出衆議院送付)以上三案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  25. 三木治朗

    ○副議長三木治朗君) 御異議ないと認めます。先ず委員長報告を求めます。水産委員長木下辰雄君。    〔木下辰雄登壇拍手
  26. 木下辰雄

    木下辰雄君 只今議題となりました漁船損害補償法案及び漁船損害補償法施行法案水産委員会における審議経過並びに結果について御報告申上げます。  先ず提案理由法案内容について申上げます。そもそも漁船漁業上不可欠の用具であることは申すまでもありません。又漁業者にとつて重要な財産であることは申すまでもないことであります。従つて漁船について不慮の事故により損害を受けた船主は深刻な打撃をこうむり、漁業経営の安定を脅かされ、延いては漁業生産上にも重大なる影響を及ぼすことになるのであります。このような場合に対する特別なる制度としては、昭和十二年六月から実施されて来ました現行漁船保険法による保険制度があるばかりであります。この制度は創始以来漁業者に或る程度の貢献をして参つたものでありまするが、この保険を利用する者は甚だ少かつたのであります。即ち全国漁船が約四十三万隻あるうち、現在保険に加入している漁船は僅かに三万隻に過ぎないという現状であります。この原因はどこにあるかと申しますると、先ず四十三万隻の漁船が、一隻平均トン数僅かに四トン足らずの小型船であつて、これが全国に散在しておるという状況であります。又漁民には資力が乏しいという悪條件の下にありまするから、保険経営業務費増嵩を来たし、漁民保険料負担が過大となり、従つて保険の普及とその経営が極めて困難になるのであります。然るに現行漁船保険制度漁民大型商船の持主と同列に取扱い、漁船保険事業経営保険会社並み独立採算制を強いているところに根本的な問題があると思うのであります。そこで、この零細なる漁業者には、農業における農業災害補償制度と同様な社会保險的性格を持つ制度の必要を認め、第十国会以来、参衆両院水産委員会政府及び業者と共同いたしまして研究いたしました結果、漁船相互保険を、国の財政的援助の下に、漁民保険料負担を軽くし、誰でも簡易に利用することのできるような制度にしようというのであります。これがこの法律案提案理由であります。  次にこの法律案内容を申上げますると、先ずその骨子は、各地方の漁船保険組合が行う漁船相互保険に対しまして政府が再保険をなし、その事業費を国庫が負担又は補助すると共に、一定の漁船について義務加入制を設け、保険料の一部を国庫が負担するというのであります。  第一に漁船保険組合でありますが、この組合は現行制度と同様に漁船の所有者を以て組織いたしまして、組合員の所有する保険目的たる漁船につき相互保險としての損害保険事業を行うのであります。それで、この漁船保険組合を業態組合と地域組合との二種といたし、業態組合は特定の漁業に従事する大型漁船のみを保険目的といたしまして、その所有者を以て組合員とするのであります。地域組合は、業態組合の保険目的となつていない漁船保険目的とするのでありまして、その区域は原則として都道府県の区域を区域として、国の財政援助は主としてこれに注がれることになつております。而して漁船保険の行う保険は普通保險と特殊保險との二種とし、そのおのおのの内容は現行の漁船保險と同様であります。  第二に義務加入制でありますが、これはこの制度における最も特徴とするところのものでありまして、漁業協同組合の区域内に住所を有する一定の漁船を所有する者の三分の二以上の同意があつたときは、これらの者のすべてがその所有する一定漁船の全部につき普通保險に付する義務を有することになるのであります。この一定漁船というのは、昭和二十七年度におきましては、取りあえず総トン数二十トン未満のもののうちで義務加入に適当なるものを政令で定めることになつております。  第三は政府の再保險でありまするが、これは殆んど現行漁船保險制度と同様であります。  第四に保險料等の国庫負担でありますが、先ず義務加入をする地区に住所を有する者の所有する総トン数二十トン未満の漁船で、保險価額の半額以上の保險金額を普通保險に付したときは、国庫はその保險価額の半額に相当する保險金額に対する純保險料の二分の一を負担することになつております。而してこれらの義務加入等の漁船について、漁業協同組合が保險料を取立てて、その組合員に代つて漁船保險組合に拂込をいたしたときは、これに対して漁船保險組合は漁業協同組合に一定の事務費を交付するのでありますが、国庫はその一部を補助することになつております。又政府の再保險については附加再保險料を徴收せず、その業務取扱費はその全額を国庫が負担するのほかに、漁船保險組合に対してもその事務費に相当大幅の補助が行われることになりまして、昭和二十六年度に比較いたしまするとその約八倍の補助金が交付されることになつております。  第五に、新たに、漁船保險組合は、漁船保險事業の健全なる発達を図るために、全国に一つの漁船保險中央会を設定することができるようになつたのであります。  次に漁船損害補償法施行法案につきまして申上げます。  現行漁船保險法を廃止して漁船損害補償法を施行することにつき必要な経過措置等を規定しておるのであります。即ち漁船保險法に基く漁船保險組合は、漁船損害補償法の施行後八カ月以内にその定款を変更して、漁船損害補償法に基いた組合を作り、旧組合の権利義務を継承することができるのでありす。而して旧組合が若し八カ月以内にこの措置をとらなかつたときは解散することになつております。以上が両法案の概要であります。  次に水産委員会における審議経過を申上げます。  この法案は前にも述べました通り第十国会以来すでに衆参両院水産委員会で研究をいたし立案したものでありまするから、調査研究は十分になされておるのでありまするが、更に本国会におきましては予備審査をいたし、更に衆議院が可決いたしまして送付いたして参りましたものを三月二十六日の委員会で愼重審議をいたしましたが、これは速記録によつて御了承願いたいと思います。その主なる事項を一つ申上げます。即ち秋山委員から、第一に、特殊保險の再保險に関し、百十六條には再保險金額は保險金額の百分の九十とするよう定められてあるが、戰争、変乱その他国際関係の不調和によつて漁船が襲撃、拿捕、抑留せられることは、むしろ国家の外交責任に帰するものと思わるるから、全額再保險にするよう近い機会に実行されたい。  第二に、小型漁船の建造費積立満期保險について、業者から国会にしばしば請願陳情があつたものがこの法律にないが、二十八年度からこの要望を実現するようにいたしたい。  第三は、保險料の国庫負担については、本法では漁船の保險価額の半額の純保險料の二分の一とされているが、これは保險価額の半額以上を保險にかけた場合でもその二分の一を国庫が負担すべきであるというように将来改めたいというような要望がありました。これに対しまして提案者側も政府当局も協力して実現に努力する旨が述べられました。  然る後、質疑を打切り、討論に入りましたところ、松浦委員から、本法案賛成するが、左の点について最も近い将来に実現するよう要望されました。即ち第一は、中央会の経費は單に組合の賦課金のみによらず、その責任の重大性に鑑み、政府の補助の途を開くこと。  第二に、異常災害、拿捕による特殊保險については特別の措置を講ずること。第三に、水産業協同組合の責任も重大であるから、その育成強化を図る方策を講ずること。  第四に、保險組合の再建整備、財政援助を政府において速かに講ずることなどであります。その他、秋山、玉柳両委員からも同様の要望がありまして、討論を打切り、採決の結果、両法案とも全会一致を以て原案通り可決すべきもの決定といたしました。  次に、ポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する件に基く水産関係命令廃止に関する法律案水産委員会における審議経過並びに結果について御報告申上げます。  先ず本法案内容並びに提案理由を申上げます。これは、先に調印をみました日本国との平和條約の効力発生に当り、昭和二十年勅令第五百四十二号、ポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する件を廃止する必要があるため、この勅令に基く命令につき、これが改廃等の措置法律を以て行うものであります。  第一は漁業法の罰則の特例に関する勅令の廃止であります。これは母法たる旧漁業法の失効に伴いすでに実質的にはその機能を失つておりますので、今回の措置は單に形式的に整理するに過ぎないわけであります。  第二は漁船の操業区域の制限に関する政令の廃止であります。これはいわゆるマツカーサー・ラインの根拠法規として重要な意味を持つていることは御承知の通りでありますが、占領行政の終結に伴いこれを廃止するのであります。  次にこの法律の施行期日は日本国との平和條約の効力発生の日となつております。而して水産委員会におきましては、数回に亘り政府当局質疑を重ね、愼重審議いたしましたところ、別に意見もなく、討論採決の結果、全会一致を以て本法案は原案通り可決すべきものと決定いたしました。  以上御報告申上げます。(拍手)    〔副議長退席議長着席
  27. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 別に御発言もなければ、これより三案の採決をいたします。三案全部を問題に供します。三案に賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  28. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 総員起立と認めます。よつて三案は全会一致を以て可決せられました。      ——————————
  29. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) この際、日程第十二、所得税法の一部を改正する法律案日程第十三、法人税法の一部を改正する法律案日程第十四、相続税法の一部を改正する法律案、(いずれも内閣提出衆議院送付日程第十五、物品税法の一部を改正する法律案、(衆議院提出日程第十六、砂糖消費税法の一部を改正する法律案日程第十七、一般会計の歳出の財源に充てるための米国対日援助物資難処理特別会計からする繰入金に関する法律案日程第十八、財産税等収入金特別会計法を廃止する法律案日程第十九、資金運用部預託金利率の特例に関する法律案日程第二十、漁船保險特別会計法の一部を改正する法律案日程第二十一、漁船保險特別会計における漁船保險事業について生じた損失を補てんするための一般会計からする繰入金に関する法律案、(いずれも内閣提出衆議院送付)以上十案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  30. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。先ず委員長報告を求めます。大蔵委員長平沼彌太郎君。    〔平沼彌太郎君登壇拍手
  31. 平沼彌太郎

    ○平沼彌太郎君 只今上程されました所得税法の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案及び相続税法の一部を改正する法律案の大蔵委員会における審議経過並びに結果を御報告申上げます。今回政府が三法律案提出した趣旨は、国民の負担の軽減と調整とを図るため、先に施行になりました所得税法の臨時特例に関する法律で行われた措置を平年度化しますほか、所得税及び相続税について更に一層の負担軽減を図ると共に、課税の簡素化及び資本の蓄積等に資する措置を講じようとするものであります。以下法律案の概要について申上げます。  先ず所得税法の一部を改正する法律案は、極めて多岐に亘る改正を行おうとするものでありまして、改正の第一点は、基礎控除額及び扶養控除額を引上げ、又最高税率の適用せられる所得階級を引上げ、これに応じてそれぞれの税率階級区分を緩和し、更に不具者、老年者、寡婦及び勤労学生等の所得控除を税額控除に改めますほか、生命保險料の控除限度額を引上げたことであります。改正の第二点は、青色申告書を提出する事業の專従親族に支拂つた給與額を、年五万円を限度として必要経費に算入することとしたことであります。改正の第三点は、退職所得につきましては、その收入金額から十五万円を控除した後の半額に税率を適用して、他の所得と分離して課税することとし、又山林所得、讓渡所得、一時所得については、その金額から十万円を控除して課税することとし、なお変動所得の平均課税の範囲を拡張し、相続の場合の讓渡課税を行わないこととしたことであります。改正の第四点は、源泉徴收制度を拡大して、新たに医師の社会保險診療收入、弁護士などが法人から受ける報酬、並びに制限納税義務者が支拂を受ける持許権使用料等に対して源泉徴收ウ行うこととすると共に、従来の源泉徴收税率を引下げたことであります。改正の第五点は、近く行われる外国との租税協定とも関連して制限納税義務者に対する課税所得の範囲を拡張したことであります。次に法人税法の一部を改正する法律案は、法人が他の法人から受ける利子又は配当について源泉徴收せられた所得税額を法人税額から控除し切れないときはこれを還付することとすると共に、法人税の半額について三カ月間徴收を猶予する場合の利子税を引下げようとするものであります。次に相続税法の一部を改正する法律案は、相続税の各種控除額を引上げ、税率を引下げると共に、延納の場合の利子税を引下げようとするものであります。  さて、右三法案につきましては、公聽会を開きまして意見を聽取するなど、愼重に審議をいたしたのでありまするが、その質疑応答の主なるものについて申上げますと、「今回医師の受ける社会保險診療報酬や、弁護士、公認会計士などの法人から受ける報酬が源泉課税となるが、源泉徴收の範囲を拡げて行く趣旨はどこにあるか、今後更にその範囲を拡張して行くか」との質疑に対し、「申告納税等の状況を見ると、できる限り源泉課税を拡張することが、納税者、政府双方に便利と考え、源泉課税ができるものはできる限り範囲を拡張する趣旨で、今回その一端として提案した」との答弁があり、又「社会保險診療報酬の源泉徴收については命令で金額の制限を設けられることになつているが、これはどの程度にするか」との質疑に対し、「三万円から四万円の範囲で、余り過納にならないように決定したい」との答弁があり、又、「基礎控除、扶養控除等が物価上昇に関連して引上げを考えられたのに、ひとり勤労控除の最高が三万円に据置かれているのはなぜか」との質疑に対し、「控除についてはいろいろな問題が残つている。勤労控除の問題のほかに、社会保險料控除をどうするか、農民の控除をどうするか、事業所得一般についても控除すべきではないか等の問題もあつて、これらを併せて考えるべきであると思うので、この際は勤労控除の最高はそのままとした。次の機会には研究することとしたい」との答弁があり、更に「勤労控除の最高を引上げることと、社会保險料を控除することと、農民の控除を認めることのいずれを優先的に考えるか」との質疑に対しては、「勤労、社会保險料、農民の順に控除を考えるべきであると思うが、基礎控除の引上げは、これらのものよりも更に優先して考うべきである」との答弁がありました。その他詳細は速記録によつて御承知願いたいと存じます。  質疑を終了し、三法律案を一括して討論に入りましたところ、木村委員から、「今回の税制改正は高額所得者に有利な半面、低額所得者、殊に源泉徴收せらるる給與所得者に著しく不利であつて、その結果、投資過剰となる半面、大衆の購買力が過小となること、給與所得者が他の所得者に比して過重な税負担となること、及び当局が安易な気持で将来の減税を考えていること」の三点を挙げて反対意見が述べられ、又菊川委員から、「前国会にて所得税法の臨時特例に関する法律審議した際、強い希望を付して賛成したのであるが、この希望が少しも考慮されておらぬこと、税制が複雑であり、而も国情に副わない点が多いので早急に改正を要すると考えるが、その準備がなされていないこと、及びその徴收せられた租税が国民生活に還元せられないこと」の諸点を挙げて反対の意見が述べられ、又大野委員から、「所得税については低額所得者の税率を低くすると同時に、高額所得者の税率は引上げるべきであること、法人税については累進制度か超過利得税の制度をとるべきであること、及び相続税については軽減の措置が極めて大ざつぱであること、最高税率は引下げの要のないこと、農家資産のごとき特殊資産についての特別の考慮が加えられなかつたこと」等を挙げて反対の意見が述べられ、更に波多野委員から、大野委員意見に附加えて、勤労控除の引上げが行われていないこと及び遺家族の所得税について特別な考慮か拂われていないことの二点を挙げて反対意見が述べられ、又木内委員から、給與所得者と申告納税者との間の課税の不均衡の是正につき特に考慮すること、及び今後税制の簡素化に格段の努力を拂うことの希望を付して賛成意見が述べられ、又小林委員から、「所得税法案については、社会保險料を控除し、勤労控除の最高限度を引上げる修正案を用意した。この修正案には多数の賛成を得られることと考えるが、時間的関係から提出に至らなかつた。若し政府がこの改正案提出しないならば、国会でこれを提出する考えであるから、政府は右の事情を十分考慮に入れて、速かに改正案提出すること」を強く希望して賛成意見を述べられ、採決の結果、多数を以て原案通り可決すべきものと決定した次第であります。  次に物品税法の一部を改正する法律案について御報告申上げます。  本案衆議院提出にかかるものでありまして、我が国農家の主要作物たる「いも」類に対する需要を確保し、その価格の低落を防止し、農家経済の安定に資するため、水飴、葡萄糖等に対する物品税を廃止しようとするものであります。  本案質疑の後、討論に入りましたところ、大野委員及び油井委員からそれぞれ賛成意見が述べられ、採決の結果、全会一致を以て原案通り可決すべきものと決定いたしました。  次に砂糖消費税法の一部を改正する法律案について御報告申上げます。  本案は砂糖の配給及び価格の統制が来たる四月一日から廃止せられる事情等に鑑みまして、砂糖消費税の税率の引上げを行おうとするものであります。  本案政府提出にかかるものでありますが、政府原案によりますと、分密糖に対する税率を百斤につき千七百円に、氷砂糖等に対する税率を百斤につき二千五百円に、糖水に対する税率を百斤につき千三百円にそれぞれ引上げることとなつておりましたが、物品税法改正によりまして、来たる四月一日から水飴、葡萄糖等の物品税が廃止せられることになりますので、このため生ずる昭和二十七年の物品税收入の減少を補うため、分密糖に対する税率を百斤につき二百五十円引上げて千九百五十円に、糖水に対する税率を百斤につき二百円引上げて千五百円にすることに衆議院で修正せられたものであります。本案質疑の後、討論に入りましたところ、森、油井、大野各委員からそれぞれ希望を付して賛成意見が述べられ、採決の結果、全会一致を以て衆議院送付の原案通り可決すべきものと決定いたした次第であります。  次に、一般会計の歳出の財源に充てるための米国日援助物資等処理特別会計からする繰入金に関する法律案について御報告申上げます。  米国日援助物資等処理特別会計昭和二十七年度における歳入歳出予算としては、歳入において、在庫援助物資の売拂代及び未收金の回收による收入等で合計六十億六千百七十六万一千円となりますが、事務取扱費及び援助物資輸入諸掛費等を合せて歳出は二十億六千百七十六万一千円となり、四十億円の剰余を生ずる見込でありますので、本特別会計の処理状況に鑑みまして、これを一般会計に繰入れて、その歳出の財源といたそうとするものであります。  本案質疑の後、討論採決の結果、全会一致を以て原案通り可決すべきものと決定いたしました。  次に、財産税等收入金特別会計法廃止する法律案について御報告申上げます。  財産税等收入金特別会計においては、現在までに約七百八十四億円の徴收決定等が行われ、この特別会計法の廃止の結果、一般会計へ繰越される未済分としては十五億円前後を算するのみと予想される状況となり、もはやこの特別会計を存置する必要はなきものと思われます。従つて今回、財産税等收入金特別会計法昭和二十六年度限り廃止いたし、この会計の資産及び負債を一般会計へ引継ぎ、その後の経理は一般会計において行うこととするほか、引継ぎの時期について所要の規定を設けようとするものであります。  本案質疑の後、討論採決の結果、全会一致を以て原案通り可決すべきものと決定いたしました。  次に資金運用部預託金利率の特例に関する法律案について御報告申上げます。  本案は、昭和二十七年度から実施を予定される郵便貯金の利率の引上げ等に伴いまして、郵便貯金特別会計において支拂利子等の経費が増加し、明年度以降当分の間、同会計の收支の不均衡を生ずることが予想されますので、郵便貯金特別会計から資金運用部に預託された資金で約定期間五年以上のものに対しては、資金運用部資金法の規定により、年五分五厘の利率で利子を附しておるのでありますが、明年度以降当分の間、資金運用部資金法の規定による利率で利子を附するほか、年一分以下の範囲で特別利率を設け、その利率による利子を附加することといたすと共に、その特別利率は毎年度政令で定めることといたし、又昭和二十八年度以降は前年度より低く定めることといたそうとするものであります。  本案質疑の後、討論採決の結果、全会一致を以て原案通り可決すべきものと決定いたした次第であります。  次に漁船保險特別会計法の一部を改正する法律案について御報告申上げます。  本案は、今国会において別途審議いたしております漁船損害補償法の制定に伴いまして、漁船保險特別会計法に所要の改正を行おうとするものであります。即ち漁船保險特別会計に、新たに普通保險、特殊保險及び業務の三勘定を設け、それぞれその経理を明確にし、各勘定の歳入及び歳出について規定いたすと共に、普通保險勘定及び特殊保險勘定において決算上生ずる剩余金又は不足金の処理方法並びに業務勘定における決算上の剰余金の処理方法について規定するほか、必要な経過規定等を設けようとするものであります。  本案質疑の後、討論採決の結果、全会一致を以て原案通り可決すべきものと決定いたした次第であります。  次に、漁船保險特別会計における漁船保險事業について生じた損失を補てんするための一般会計からする繰入金に関する法律案について御報告申上げます。  本案は、昭和二十六年度において、拿捕、抑留等による保險事故が異常に発生したため、漁船保險特別会計における再保險金の支拂財源に約八千万円の不足を生ずることとなりますので、その事故の性質に鑑みまして、一般会計から八千万円を限り繰入れ、その不足金を補填しようとするものであります。なお、この損失補填金は、別途審議いたしております漁船保險特別会計法の一部を改正する法律により、この特別会計に新たに設けられます特殊保險勘定に繰入れようとするものであります。  本案質疑の後、討論採決の結果、全会一致を以て原案通り可決すべきものと決定いたしました。  右御報告申上げます。(拍手
  32. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 所得税法の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案相続税法の一部を改正する法律案、以上三案に対し討論の通告がございます。順次発言を許します。菊川孝夫君。    〔菊川孝夫君登壇拍手
  33. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 私は社会党第四控室を代表いたしまして、只今議題となりました所得税法の一部を改正する法律案法人税法の一部を改する法律案相続税法の一部を改正する法律案、以上三案につきまして反対の意見を申述べます。  第一に、税はすべて公平であつて、成るべく簡單でなければならないということを、先般十二国会におきまして所得税の臨時措置に関する法律案が上程されました際に我々は強調いたしたところであります。政府は速かに講和條約の発効があるのだからその際に是非とも根本的な改正を用意すべきであるという点を主張いたしたのでありますが、政府の内部に私設的な税制懇談会を設けて懇談をしておられるようでありまするが、未だに根本的な改正までまだ着手の準備が整つておらない模様であります。特にこの際申上げなければならないのは、税金を納めるに当つて余りにも複雑であるために、一々税務代理士の御厄介にならなければならないというので、今では税務代理士の門前が市をなすような状態で、税金を納めるにわざわざ人にこれを頼んでやつつてもらわなければならん。而もこの税務代理士の介在によりまして、税務代理士を利用する力のある連中は、或る程度税務代理士の利用によりまして税金を軽減できる何らかの利益があるということは、巷間伝えられているところでありまするし、又そういうこともあるだろうと思うのでありますが、それをなし得ない連中は、一〇〇%の捕捉率において担税をさせられているということを我々は忘れてはならないと思うのであります。(拍手)特にこの際申上げなければならんのは、給與所得におきましてはすべて所得額から源泉徴収いたされまするために、一〇〇%の徴税率でございまするけれども、その他の個人所得にいたしましても、法人税にいたしましても、必らずしも一〇〇%とは行つておらないのであります。最近発表されました大蔵省の資料を見ましても、二月の二十日現在におきまして、源泉徴収される所得税はすでに目標の一〇三%になつておるにもかかわらず、その他は四四%程度なのであり、未だ半額にも満ちておらない。勿論これは納期の関係もございましようけれども、何といつても源泉徴収を受ける労働者は最も苛斂誅求に会つておるといつても過言ではないと思うのであります。その点につきまして、我々といたしましては、せめて今回の臨時特例を本法の改正に引直すに当りましては、第一に勤労控除の最高限度を三万円から六万円程度に引上げるべきであるという主張をし、且つ社会保險、これは何といつても必要経費でありまする故に、課税の対象外とすべきであるという主張をいたしました。これだけは最少限度取上げらるべきであるといつて強く要望しておきましたにもかかわらず、それも取上げておられない。従いまして、我々はこの所得税法の一部改正案に対しましては、労働者に極めて重いという一点から反対いたすものであります。  なお法人税法の一部を改正する法律案につきましては、この法人の税負担力は未だある、もつとあるという観点から、私たちは十二回国会におきましては、五〇%に引上ぐべく修正案を用意いたしまして、関係方面と折衝をいたしたのであります。政府の四二%に対しまして、我々は五〇%案を以て関係方面の折衝に当つたのでありまするけれども、遂にこれが了解を得られなかつたために、止むを得ず、若しも私たちがその当時政府の原案に賛成いたしませんとするならば、当時一部にはこの政府の原案よりも低い三五%の据置を主張する空気が相当あつたために、四二%への引上げさえも実現不可能になる情勢にありましたので、止むを得ず、次回におきまして政府において特別な考慮が拂わるべきであるという條件の下に賛成いたしておきました。ところが法人税は税法上は成るほど増徴されることになつておりますけれども、税法の改正によつて、従来所得として計上したものを損金に廻したり、或いは特別償却の許可などによりまして、実は法人所得は、今回の発表されました政府の二十七年度の国民所得におきましても、二十六年度法人所得は五千十億、二十七年度は五千九十億で僅か一・五%の増加になつております。全般といたしまして四兆六千億が、二十七年度は五兆三百億になり、その増加率は八〇%であり、勤労所得の増加は一〇・八%、個人業種におきましても五%になつておるにもかかわらず、法人所得の増加は一・五%になつているということは、法人税法改正によつてこれらの税法上の増徴はされまするけれども、一方抜け道を用意されておるということを言い得ると思うのであります。このような観点から、我々は法人税の現行のままの税率によるところの改正につきましては反対せざるを得ないのであります。  次に所得税法の先ず十三條の税率についても申上げなければならんと思うのでありますけれども、大体四十万円で三〇%取られる、二百万円以上で五五%に据置になつておるのでありますが、二百万円以上の所得のある人が五五%の税金を取られるその打撃と、四十万円で三〇%の所得税を取られる者の本人の生活その他に及ぼす打撃におきましては、二百万円以上の場合は軽いことは当然なのであります。従いまして我々といたしまして、この税率につきましても、もつと小刻みにすると共に、更に五五%よりも六〇%ぐらいまでは伸ばしてもいいのじやないか、こういう主張を持つておつたのでありまするけれども、それもされない。以上のような観点からいたしましてこの所得税法法人税法は、何と言つても未だ税の公平なる負担が、担税力に応じてなされる構想に近付きつつあると言いながら、まだ極めて不十分であるという第一点から、この両案に反対せざるを得ないのであります。  第二点といたしまして、徴收されました税金は、でき得る限り国民生活に還元されるようにされなければならない。今年の税金の性格はその点において最も遺憾な点が多いのであります。と申しまするのは、政府は自衛力の漸増だと言つておりますが、明らかに再軍備のほうへ今年取られた税金が大幅に廻されまするが故に、当然国民生活に還元される或いは失業対策費、公共事業費或いは義務教育の国庫負担、更には遺家族の援護、社会保障制度の拡充等の面に還元されるのであつたならば、多少重い税金もお互いに忍んでこれを納める気持になるのでありますけれども、その二三%以上までは再軍備的性格を持つた費用に当てられるとするならば、我々勤労者が苦しんで納めても補償をされないということになりますので、この税の使い途、用途という点からも、第二点として両案に反対せざるを得ないのであります。  次に相続税法改正案につきましては、若干緩和されましたと申しながら、アメリカの相続税の制度をそのまま日本に持つて来ることは無理なのでありまして、特に田舎へ参りますと、地方へ参りますると、相続税を取られるなめにその一家が殆んど分散沒落せざるを得ないような相続税のかけ方をせられている。従いまして、日本の家族制度を、この相続税の苛斂誅求によつて破壊をする虞れが極めて多いのでありますから、これが緩和方はどうしても必要であろう。こういう観点から、私たちは相続税法改正に当りまして、特にこの点を強調いたしたのでありますが、多少緩和されたといえども、まだまだ不完全であるという点から、相続税法の一部改正についても我々は反対する次第なのであります。  以上申上げましたような理由から三法案に反対いたすのでありまするけれども、最後に申上げておきたいのは、何といつてもシヤウプ勧告に基くところの税の体系というのは日本の実情に合わない面がたくさんある。これはお互いに認めなければならんと思うのであります。従いまして政府におきましては、速かに根本的な税制改革を行いまして、国民が納得して税金を納めるように、その処置を講ぜられんことを強く要望いたしたのでありますが、現在政府が設けておりまする税制懇談会は、非公式のただ單なる吉田総理大臣の茶飲み相手の連中を集めておられる。例えば昔の追放解除者であるとか、或いは曾つての中外商業において健筆を揮つた連中あたりを集めておるのでありますが、その狙つておるところを見ますると、極めて時代離れのしたような税制懇談会が持たれて (拍手)ここで税制の改革案が練られて出されるとするならば、時代のズレが相当あるということを言わざるを得ないと思うのでありまして、この際、今、時代の最も主流になつている連中を広く各階層から集めまして、この税制改革につきまして各階層の意見を聞いて、国民が納得して税金を納めるような体制を速かにとられるように我々は強く要望をいたしまして、特に労働者の中から、一〇〇%以上の把握率によつて徴税をされ、且つその税金の納め率も最もいい、常に一〇〇%以上をオーバーしているような我々の労働階級の代表を、この税制懇談会の中に必ず入れまして、その意見を取上げるようにせられんことを強く要求いたしまして、この三法案に対しまして反対の意見を申述べる次第であります。(拍手
  34. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 大野幸一君。    〔大野幸一君登壇拍手
  35. 大野幸一

    ○大野幸一君 私は日本社会党第二控室を代表いたしまして、只今上程されております所得税等の三税法改正法案に対して反対の意思を表するものであります。  政府は、この税法改正を通じて負担の軽減と合理化を図ると申しておるのでありますが、我が国経済の現勢並びに我が国民生活の実情に照らして徹底を欠き、且つ、妥当ならずと考えられる点が多々あるのであります。  先ず所得税についてでありますが、基礎控除や扶養控除等の引上げに関し、本案は先に臨時措置法において認められた金額をそのまま踏襲し、それ以上の負担軽減を断念しておるのであります。政府は一方において、我が国の生産水準がここ一両年来順調に上昇して来て、戰前に比し四、五〇%も高まつたと報告しておるのでありまするけれども、国民の生活水準のほうは未だに七〇%内外に停滯しているという事実を示しておるのであります。従つて、戰後産業の回復が十分でなく、止むなく国民の消費生活に大きく食い込まざるを得なかつたような税制の仕組は当然改めらるべきであるにもかかわらず、政府はこれに対し、将来に亘つて何ら配慮を加えている傾向がないのは極めて遺憾とするところであります。我々は平和回復後における諸負担の増加の止むを得ないことは率直にこれを認めまするけれども、併し、それならそれで、国民負担内容についても根本的な検討が加えらるべきものであつて、従来の課税方式のまま、若干の経減措置を年々繰返すことを以て満足すべきではないのであります。例えば戰前の国民負担状況に比較いたしまして、所得税の控除の程度は極めて少く、今日平均給與ベース以下の收入しかない人々の所得からも所得税を徴收することは妥当でない。そういう意味において我々は、基礎控除は七万円、扶養控除は三人まで一人二万円ぐらいが適当であり、その半面、政府が今までやつて来た低額所得者の税率を低くすると同時に高額所得者のそれをも大幅に引下げるごとき累進率の緩和をやめて、今日は却つてこれを殖やす方針を以て臨むべきであると考えるのであります。  法人税についても、最近における大事業会社の法人所得の増加の実情に鑑み、臨時措置法によつてすでに徴收している程度の引上げにとどめることなく、累進制を採用するか、イギリス保守党が再び問題としているごとき超過利得税をこの際取上げることが必要であると我々は信じておるのであります。政府は何かといえば直ちに資本の蓄積を云々するのでありまするが、税制に関する限り、従来の実績に徴するに、それが直ちに資本蓄積に役立つというより、むしろ脱税の口実となつておる感があることを留意すべきであつて、資本の蓄積は蓄積として、税制はともかくその他の施策と共に総合的に考究せられねばならぬものであります。  第三に、相続税についても政府の軽減措置は極めて大ざつぱな感があり、控除の最低限度を引上げることは勿論賛成でありますけれども、最高額の累進率の引下げは時代の通念よりして不必要な措置と言わざるを得ないのであります。又農家資産のごとき特殊な資産についてこの際特別の考慮を加えられなかつたことも我々の最も不満とするところであります。  特に反対の理由に附加えまして、所得税について戰争遺家族に対するところの所得税に関して何ら考慮が拂われていないこと、及び農業勤労所得、我が党は従来これを主張して来たのでありますが、我々の主張するこの農業勤労所得に対する税制上の何らの配慮が拂われていないことを考えまして、我我は所得税を初めその他の二案について、以上の理由を以ちまして反対の意思を表せざるを得ないことを申上げまして、討論を終る次第であります。(拍手
  36. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) これにて討論の通告者の発言は全部終了いたしました。討論は終局したものと認めます。  これより十案の採決をいたします。  先ず所得税法の一部を改正する法律案相続税法の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案、以上三案全部を問題に供します。三案に賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  37. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 過半数と認めます。よつて三案は可決せられました。(拍手)      ——————————
  38. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 次に物品税法の一部を改正する法律案一般会計の歳出の財源に充てるための米国日援助物資等処理特別会計からする繰入金に関する法律案財産税等收入金時別会計法を廃止する法律案資金運用部預託金利率の特例に関する法律案、以上四案全部を問題に供します。四案に賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  39. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 総員起立と認めます。よつて四案は全会一致を以て可決せられました。      ——————————
  40. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 次に砂糖消費税法の一部を改正する法律案漁船保險特別会計法の一部を改正する法律案漁船保險特別会計における漁船保險事業について生じた損失を補てんするための一般会計か命ずる繰入金に関する法律案、以上三案全部を問題に供します。三案に賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  41. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 総員起立と認めます。よつて三案は全会一致を以て可決せられました。      ——————————
  42. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 日程第二十四、国立学校設置法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)を議題といたします。  先ず委員長報告を求めます。文部委員長梅原眞隆君。    〔梅原眞隆君登壇拍手
  43. 梅原眞隆

    ○梅原眞隆君 只今議題となりました国立学校設置法の一部を改正する法律案につきまして、文部委員会におきましての審議経過並びに結果を御報告申上げます。  法案に盛られました改正内容の骨子を要約して申上げまするとおよそ三点でございまして、第一点は、従来国立大学の中に包括されて来ました旧制度の学校のうち、專門学校、高等師範学校等二十九校を、それらの在学生徒の卒業によりまして昭和二十六年度限りで廃止いたしたことであります。第二点は、昭和二十七年度から北海道大学には獣医学部、茨城大学には農学部、岐阜大学には工学部をそれぞれ新設いたしたことであります。第三点としまして、小樽商科大学短期大学部、福島大学経済短期大学部、千葉大学工業短期大学部という三つの国立短期大学部を設置し、いずれも夜間の授業を行い、勤労青年に対し大学教育への途を開こうといたしております。なお、このほか附属学校及び教育施設又は研究施設の設置、整備につきまして、或いは大学附置研究所の合併廃止等につきまして、更に又昭和二十七年度予算に伴う国立学校の職員定員につきまして、それぞれ若干の改正規定が設けられております。  委員会審議におきまして、本法案に関する質疑のうち主要な問題点を列挙いたしますると、第一、国立大学の設置或いはその構成について政府の基本方針はどのようになつているか。又この基本方針の決定に当つて政府の諮問する機関は何か。第二、教員養成を主要目的とする学芸大学の現状は極めて不十分であるが、政府のこれに対する所見如何。第三、勤労青年に対して向学の途を開いている短期大学は現在なお甚だ不足しているが、政府は将来どのような基準でこれを増設して行くつもりであるか。第四、大学附置研究所は極めて貧弱な予算のため苦しんでいるが、これは更に充実すべきではないか。第五、国立学校のうち、戰災校或いは罹災校に対する政府の財政援助の基本方針如何等の諸点でありましたが、その詳細は会議録に讓りたいと存じます。  かく質疑を終了いたしまして、荒木委員からは、短期大学の拡充について政府は将来更に十分なる措置を講ずること、及び旧制学校の廃止に当つてはその職員の身分について必要なる考慮を拂い、職場の不安を與えないよう要望して、原案賛成意見を述べられ、矢嶋委員も、今後、大学の新設、学部の増設に当つては、我が国全体としての需要を考慮すべく、濫りに政治的なものに動かされてその決定をなすべきではないこと、研究機関の施設は更に拡充強化すべきこと、及び附属学校については教育の機会均等という見地から再検討の必要があること等を強く希望されて、同じく原案に賛成意見を述べられ、結局本法案委員会において原案通り全会一致を以て可決されました。  以上を以て御報告といたします。(拍手
  44. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 別に御発言もなければ、これより本案採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  45. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 総員起立と認めます。よつて本案全会一致を以て可決せられました。      ——————————
  46. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) この際、日程第二十五、農林漁業資金融通法の一部を改正する法律案日程第二十六、農業改良助長法の一部を改正する法律案日程第二十七、閉鎖機関日本蚕糸統制株式会社が積み立てた繭糸価格安定資金処分に関する法律案、(いずれも内閣提出衆議院送付)以上三案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  47. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。先ず委員長報告を求めます。農林委員長羽生三七君。    〔羽生二七君登壇拍手
  48. 羽生三七

    ○羽生三七君 只今議題となりました農林漁業資金融通法の一部を改正する法律案の農林委員会における審査経過及び結果を御報告申上げます。  この改正法律案内容は極めて簡明でありまして、現行農林漁業資金融通法におきましては、農業倉庫の造成のため貸付を行う資金の利率は最低年七分でありますが、これを昭和二十七年度において食糧関係倉庫の造成のため貸付する資金の利率については年四分に引下げんとするものでありまして、かかる改正を行わんとするゆえんのものは、御承知のように農業倉庫は米麦の集荷配給上欠くことのできない重要施設でありますが、近年資金及び資材不足のため、新設は勿論、災害の復旧及び老朽化の補修さえ容易でなく、そのため収容力が不足を来たし、これが改善を図りますことは当面の急務とされております。然るに、農業倉庫は一般の営業倉庫と異なつて、営利を目的とするものでないため、過去において農業倉庫の建設については国庫から多額の補助が行われていたのでありますが、今は補助は廃止されておりますので、これが急速な新設を期待するためには、融資額の増加と共にこれが金利を特に低率とする必要があるとされております。  委員会においては、政府当局に対して、本年度農林漁業資金の貸付状況、農林漁業資金貸付対象の拡大及び貸付方法の改善、農業倉庫の建設計画並びにこれが建設及び運営の助成、倉庫金融の疏通、今回の金利引下げ措置の実施期間及びその対象等の問題を中心として質疑が行われたのであります。これが詳細は会議録に讓りたいのでありますが、そのうち一、二の問題についてこれが大要を申述べますならば、今回の金利引下げ措置を食糧関係倉庫に限定した理由については、金利の引下げは広く各貸付対象に及ぼしたいのであるが、農林漁業資金融通特別会計成立の経緯に徴してその実行に困難がある。但し食糧関係倉庫にあつては、曾つてはこれが建設に対して国庫補助が行われていたが、現下の情勢はその復活に期待できない事情に鑑み、本特別会計の特例として今回の措置をとるに至つたのであつて、乾繭倉庫については将来他との均衡において考慮したい旨が述べられ、又今回の措置昭和二十七年度において貸付を行うものに限られている理由については、所期する農業倉庫の建設は速かに完了する必要があり、而して昭和二十七年度において建設が完了できるよう資金的措置も講ぜられているためであるとの答弁でありました。  続いて討論に入り、飯島委員から、前国会において繭糸価格安定法案審議の際、参議院農林委員会から繭価の維持安定に対して政府の努力を要請して申入れがなされたところ、これに対して政府からは善処したい旨の回答が参つておるのであつて、かような経過に鑑みて、繭価の維持安定のため極めて重要な施設である乾繭倉庫の整備普及のため、この際、乾繭倉庫造成資金の金利についても特別の考慮を拂うべきであるとの趣旨によつて修正が提案せられ、採決の結果、全会一致を以て衆議院送付案に飯島連次郎委員提案の修正を加えて可決すべきものと決定いたした次第であります。  次に農業改良助長法の一部を改正する法律案について御報告いたします。  本改正法律案内容は大要次のようであります。即ち第一は、現行法におきましては、農業に関する科学的試験研究を助長するため、国から都道府県その他の試験研究機関に交付する補助金又は委託金等のいわゆる資金について、これが交付を受ける試験研究機関の数は毎年度全国を通じて七十五を超えることができないことになつており、更に又都道府県の試験場以外の試験研究機関が交付される資金は、資金の総額の二割以内でなければならないことに規定せられておりますが、最近にわかに増加いたしました新制大学等における有用な試験研究に対しても適切な助成を行うため、かような規定を削除して、かかる制限を除去せんとするものであり、第二は、現行法において明文を欠いております農林省の試験研究機関都道府県農業試験場との関係を明確に規定して、都道府県農業試験場に対する農林省試験研究機関の協力態勢を確立せんとするものであり第三は、都道府県が農林省と協同しその補助を受けて行う協同農業普及事業の範囲を拡大して、農民に対する教示及び展示の手段として、講習会の開催及び器材の利用等を追加すると共に、改良普及員或いは農村青少年団体の指導者等の養成、研修又は育成等の施設にまで及ぼすこととなさんとするものであり、第四は、農業改良助長事業の「かなめ」ともいうべき専門技術員及び改良普及員等の専門指導員の身分及び任務について、現行法においてはその規定を欠いておりまして、優秀な人材を登用するための職階制の確立等に困難が感ぜられておりましたので、ここにこれら両者の身分及び任務を明文にしてその活動を一段と促進せんとするもの等であります。  委員会におきましては政府当局に対して、専門技術負及び改良普及員の整備充実、及び活動促進並びに地位の安定及び待遇の改善、巡回指導施設の拡大、農村青少年団体の育成、農業に関する試験研究機関の拡充その他の問題を中心として質疑及び主張が行われたのでありますが、これが詳細については会議録に譲ることといたしたいのであります。  かくして質疑を終り、討論に入りましたところ、小林孝平委員から、折角農業改良助長法が制定せられており、而も農業改良普及事業の「かなめ」は政府からも述べられているように専門技術員及び改良普及員であり、而して協同農業普及事業の補助金の大部分がこれら専門指導員の給與の補助に充てられている実情にかかわらず、これら指導員の身分及び地位の確立に関して従来法律上何らの規定がなく今日に至つていたことは甚だ遺憾とするところであつて、今回の改正によつて一応身分及び任務が法律規定せられたのであるが、地位の確立については未だ十分な考慮を欠いているようであつて、地位を確立するための一つとして、これら指導員の給與に対して国から補助することを法律規定によつて明確にする必要があるとの趣旨を以て原案の修正が提案せられ、続いて採決の結果、衆議院送付案に小林委員提案にかかる修正を加えて可決すべきものと決定いたした次第であります。  引続いて、閉鎖機関日本蚕糸統制株式会社が積み立てた繭糸価格安定資金処分に関する法律案につきまして御報告申上げます。  本法律案内容とするところは、第一は、日本蚕糸統制株式会社、これは昭和十六年五月設立された特殊法人でありまして、昭和二十一年三月解散になり、昭和二十三年八月閉鎖機関指定され、現在清算中でありますが、この統制会社が、旧蚕糸業統制法第四十二條第一項の規定に基いて、繭及び生糸の価格の安定を図るため積み立てた繭糸価格安定資金は、蚕糸業法附則第九項の規定によつて、統制会社が解散したときは、全国を地区とする蚕糸業会で主務大臣の指定するものに引渡さなければならないことになつているのでありますが、併しこの規定にかかわらず、これを過般制定された繭糸価格安定法によつて政府において行う繭糸価格安定制度の実施に伴つて国に引渡すこととなし、第二は、これを引渡すに当つて、旧法人税法及び旧営業税法により法人税及び営業税を課するについては、それぞれ清算所得及び清算純益の計算上、この資金を残余財産の価格から控除するという課税の特例を設けんとするものでありまして、委員会におきましては適当な措置と認め全会一致を以て政府原案通り可決すべきものと決定いたした次第であります。  以上御報告申上げます。(拍手
  49. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。  先ず農林漁業資金融通法の一部を改正する法律案全部を問題に供します。委員長報告は修正議決報告でございます。委員長報告の通り修正議決することに賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  50. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 総員起立と認めます。よつて本案全会一致を以て委員会修正通り議決せられました。      ——————————
  51. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 次に農業改良助長法の一部を改正する法律案全部を問題に供します。委員長報告は修正議決報告でございます。委員長報告の通り修正議決することに賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  52. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 総員起立と認めます。よつて本案全会一致を以て委員会修正通り議決せられました。      ——————————
  53. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 次に閉鎖機関日体蚕糸統制株式会社が積み立てた繭糸価格安定資金処分に関する法律案全部を問題に供します。本案賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  54. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 総員起立と認めます。よつて本案全会一致を以て可決せられました。      ——————————
  55. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) この際、先に本院の議決に基き北海道地方の震災の被害状況調査のため派遣いたしました議員団の報告を求めたいと存じます。廣瀬與兵衞君。    〔廣瀬與兵衞君登壇拍手
  56. 廣瀬與兵衞

    ○廣瀬與兵衞君 去る三月四日北海道及び東北地方を襲いました十勝沖地震の災害に対し、本院の議決によりまして慰問並びに被害状況視察のため派遣せられましたが、その経過につきまして一行を代表いたしまして私から御報告申上げます。  今回派遣せられました議員は、自由党の大谷瑩潤君、緑風会の井上なつゑ君と三浦辰雄君、社会党第二控室の小泉秀吉君、社会党第四控室の小笠原二三男君、民主クラブの木内キヤウ君、改進党の山崎恒君、第一クラブの千田正君、労働者農民党の水橋藤作君、それに私と、以上十名でございました。一行は三月八日に東京を出発いたしまして、先ず札幌に参り、北海道庁におきまして、知事を初め札幌にありまする中央出先機関並びに各種地方機関の代表者と会見いたし、参議院としての衷心よりのお見舞の言葉を述べて後、地震当時の状況、被害の状況及びこれが対策要望等につき詳細な説明を聽取いたしましたのであります。それから現地視察のために釧路地方の浜中村、霧多布、厚岸町、床潭、釧路市、十勝地方の浦幌村、池田町、豊頃村、大津村、日高地方の浦河町、荻伏村、三石町、靜内町等、被害の最も甚大であつた地方の市町村を順次歴訪いたし、お見舞の言葉を述べると共に、つぶさに現地視察を行いました。北海道の視察を終りましてから、更に青森、岩手の両県を訪問いたし、同様に慰問並びに現地調査を行なつたのであります。以上の地方はいずれも甚だ積雪深く、寒気も激しく、且つ交通不便の地でありましたが、日程と交通の許す限り広範囲に亘り詳細に現地の視察を行い、気の毒な多数の罹災者に対し慰問激励をいたしましたが、いずれも衷心より感謝の意と旺盛な復興再建の決意とを示されましたことは、深く感銘いたしました次第であります。  今回の地震は北海道としては未曾有の大地震でありまして、札幌管区気象台の調査によりますと、震源での発震時は三月四日午前十時二十二分四十四秒で、震源地は北海道日高国襟裳岬東方七十キロの海底と推定され、これから、この地震を十勝沖地震と名付けられたのであります。この地震の規模は、昭和五年十一月二十六日の北伊豆地震、それから二十三年六月二十八日の福井地震の約四倍、大正十二年九月一日の関東大地震とほぼ同様で、昭和八年三月三日の三陸津浪地震の三分の一程度と言われております。地震発生と同時に津浪を惹起し、震央と最近距離にある十勝海岸では地震発生後十分前後で第一波の来襲があり、津浪の高さは一メートル半乃至二メートル程度であり、又一時間乃至一時間半後には釧路国沿岸に津浪の到来があり、而もこの方面は流氷を伴つたのであります。なお、この時刻に十勝沿岸及び日高沿岸には再度津浪が押寄せ、各所で異常干潮を示し、津浪現象は十六時まで数回反復されたそうであります。今回のこの地震のため極めて広汎な地域が災害をこうむり、その災害は殆んど全道的に亘つておりますが、特に十勝、釧路、日高、胆振の地方は被害甚大であります。これら地域の全面積は合計約二万五千平方キロで、四国全島に山口県を加えたほどの面積、又関東地方より栃木県を除いた面積にほぼ相当しております。直接、地震により、或いは津浪、高潮等のため、住家、学校、病院、診療所、倉庫等の建物が倒壊、流失、破壊され、又道路、河川堤防、海岸、港湾等の土木施設、鉄道、通信施設の破壊、農林水産業、鉱工業等の各種産業のこうむりました被害は甚大であります。一方、人的にも多数の犠牲者を出し、十一日正午までに判明いたしましたところによりますと、死者二十八人、行方不明一人、重傷七十七人、軽傷五百四十四人となつております。罹災戸数七千六百七十三戸、罹災者三万八千三百七十二名、又住家の全壊せるもの千六百十五戸、半壊五千四百四十八戸に及んでおります。北海道全体といたしまして各種被害の状況は実に百五十四億七千四百万円に上つております。住家を奪われた罹災者は、寺院、学校等に一時収容され、又倒壊した家屋を寒風の吹きまくる中で片付けておりました。これら罹災者等の気の毒な姿を現地で見るにつけても胸打たれるものがあります。無残に倒壊した学校や、雪に蔽われた農耕地に、大きな口を開けた亀裂や陷沒等を眼のあたりに見ますとき、災害の奥深いことを痛感されたのであります。  なお今回の災害におきまして注目すべきことは、地震に付きものの火災が始んどないことでありまして、これは道民が平素から火災の防止に留意し、地震発生と同時に火の始末を行なつたためでありまして、殊に日高地方の浦河町の高等学校の生徒のごときは、燃えさかるストーブを素手で屋外に運び出し、みずからは手に火傷を負いながらもよく学校を火災から守つたとのことであります。学校の被害は甚大でありますが、いずれも校長以下全職員が、兒童の避難、安全のため万全の措置を講じており、十勝地方の浦幌村の或る中学校におきましては、二十余歳の若い男の先生が、生徒を全部避難させた後、最後に避難せんとした瞬間に、倒壊した校舎の下敷となつて殉死された不幸なことがありましたが、誠に感銘深いものがあります。又浦河町にある日赤病院は、その建物の大部分が大破壊、傾斜して倒壊寸前にありますが、地震と同時に看護婦さんたちの目覚ましい活動により、多数の入院患者を無事に避難せしめ、一人の負傷者も出さなかつたということは、美談の一つになつております。この日赤病院は同地方における唯一の総合病院でありまして、これが復旧は焦眉の急を要するものと思われます。  次に、これから被害の主なるものについてその概要を申上げます。鉄道関係の被害概算額は七億五千万円、通信施設につきましては烈震及び強震地区に架けられている裸線に対する被害が主であつて、その被害額は約五千万円と推定されております。電力施設につきましては相当の被害を受けましたが、発電、変電施設の被害が非常に軽微で、その復旧も迅速に行われ、大体配電可能の状況であり、その被害額は約一億円であります。土木施設は被害二十二億八千万円と推定され、農業関係の被害総額は約十五億円、林業施設は木炭窯の被害が最大で総額一億三千万円、水産関係は総額十五億一千八百万円、商工業及び鉱工業関係施設の被害総額は九億六千三百万円、商業関係は、店舗、商品等の被害が五億一千八百万円、保健衛生並びに公共施設といたしましては、道立病院と一般病院の被害三億一千四百万円、住宅関係は全、半壊、流失七千五百七十三戸、中小破一万五千戸で、その被害総額は実に四十二億七千万円、文教関係諸施設の被害額は十一億二千五百万円の多額に達しております。その他、罹災者の家具、什器等の被害の総額は約九億八千万円と推定されております。かくのごとく各種被害を総合いたしますと、被害総額は三月十一日現在で百五十四億七千四百万円に上り、この復旧総額は国費直轄の施行分を含め、応急対策費として十四億一千万円、恒久対策費として百二十五億八千五百万円、合計百三十九億九千五百万円の概算となつております。  なお、今回の被害地域は広大であり、積雪今も深く、且つ交通、通信機能の杜絶等のため、被害実態の把握は困難であり、更に余震の被害も累増しつつある状態でありますので、今後の調査の進展に伴い或る程度の数字の増加が予想されるのであります。  次に、災害の発生に対し、道庁並びに関係機関は直ちに応急の措置を講じておりますが、無線電話の活用、現地調査班の派遣等により被害状況の把握に努め、緊急対策として知事を本部長とする十勝沖震災対策本部を設置し、釧路支庁、十勝支庁及び日高支庁の管内十四カ町村に対し災害救助法を発動し、一方、道を中心に、開発局、鉄道局、郵政局、電気通信局、営林局、国警等、現地政府機関は緊密に連絡して緊急対策の実施に当つております。救急措置といたしましては、食糧、衣料、衛生、居住について極めて適切なる措置が講ぜられており、目下のところ赤痢等の伝染病はまだ発生しておりませんが、上水道、井戸の施設が破壊されて、飲料水が不自由な状態でありますので、伝染病の誘発が憂慮されております。  一般治安につきましては、関係機関の民心安定措置と住民の努力により極めて平静であり、各地における消防団の活躍はめざましいものがあり、又警察予備隊が調査並びに救援のため出動いたしておりますが、いずれも関係地元民から深く感謝されておりましたことを附言いたしておきます。  又各方面からの救援、慰問等が行われていますが、三月八日には宮内庁長官を通じ、天皇、皇后両陛下より災害復興資金の一部に御内帑金を下賜され、慰問激励の言葉があり、又震災発生直後リツジウエイ連合軍総司令官及び騎兵第一師団長ハロルド少将から援助申出があり、米軍出先部隊の救援措置、輸送機の便宜供與、衣料、食糧及び医薬品等の救援が行われておりますなど、関係機関の協力は感激に堪えません。  次に、この災害の復旧対策について現地の要望を申上げますと、被害総額は百五十四億七千四百万円であり、応急対策費としては十四億一千万円、恒久対策費としては百二十五億八千五百万円となつておりますが、このうち鉄道通信及び国の直轄施行に属する土木関係施設並びにその他の国の施設分を除くと、その復旧費総額は百三十六億四千八百万円に達しております。併し、道の財政は昭和二十六年度は八億五千五百万円の赤字となつており、市町村財政も同様逼迫しており、特に震災地は農漁村及び開拓地が多く、財政的に非常に窮乏を告げておる実情にあるところへ、今回の震災に遭遇して多額の災害対策費を支出しなければならないので、災害復旧に関し財政上政府の適切な措置要望しております。その主なるものを申上げますと、応急対策費としては、生業資金について、二千六百十二戸に対し、国民金融公庫を通じ六億五千三百万円の生業資金を、又千百二十三戸に対し更生資金三千三百六十九万円を特別枠として融資せられたい。又公共施設の復旧、応急収容施設の建設、緊急收容施設の補助等について、繋ぎ資金並びに補助金の交付方を配慮せられたい。又復旧用木材について特段の配慮を願いたいとのことであります。恒久対策としては、土木施設、土地改良施設、教育施設、医療施設、商工鉱工業施設、水産業施設、農業協同組合施設、林業施設、畜産、開拓並びに住宅等の復旧費について、資金的に特別の措置を講ぜられたく、又失業対策、自作農創設維持及び公営質屋の資金等についてもそれぞれ財政的援助要望されたのであります。又公共土木、住宅、水道復旧、農林水産業、伝染病予防、義務教育、災害援助等、災害復旧に関する諸種の法令についてもそれぞれ臨時特例の制定を行い、復旧に必要な措置を講じ得るようせられたいとの強い要望がありました。以上北海道における概況について申上げました。  次に青森県の被害状況について申上げます。地震は大体中震程度でありまして、これによる被害は殆んどなく、ただ青森市の水道管に相当破損を受けているらしいとのことが去る十五日に至つて探知されたようですが、詳細はまだ不明です。被害はむしろ地震の後に襲来した津浪のため、八戸港、八戸漁港、種差漁港、大畑漁港施設に被害をこうむつております。これらの被害総額は約四千三百三十万円と見積られております。八戸港において、船舶、河口埋沒等の被害がありました。現在商港の重要地域の約六〇%を接収されておるため、施設の不足狹小による輻輳混雑を極めている実情に加えて、この災害で、石炭、コークス、硫安、セメント等、約二十万トンの海上輸送に支障を来たし、生産面に及ぼす影響もかなりに深刻であると見られますので、早急な復旧が必要とされておる次第であります。  次に岩手県について申上げます。二月四日午前十時二十三分岩手県下に突如強震来襲し、津浪警報が発せられて、三陸沿岸に相当強大なる高潮の襲来を見たのであります。震源地は宮古市東北の約二百五十キロで、いわゆる十勝沖地震であります。震源地に近く、久慈港においては高潮二メートル九十、宮古港においては高潮二メートル八十に達しております。このため港湾施設や建物の損傷、道路の決壊、艦舶の流失損傷、漁場施設の流失等、特に水産関係及び沿岸に相当甚大な被害を與えております。ただ、幸いなことに、白晝の地震であつたことと、前日があたかも昭和八年三月三日の三陸強震津浪記念日で、記念行事として模擬津浪の避難訓練を行なつたばかりでありまして、四日、強震の襲来に伴う津浪予報が発せられますや、沿岸住民は順次火災予防に留意しつつ退避したため、火災及び人畜の被害が比較的軽微に食いとめられておることは注目すべきであります。  被害総額は、三月七日現在の調査によりますと総額二億七千三百五十三万四千六百円となつております。その内訳を簡單に申上げますと、水産関係におきまして総額約一億九千七百万円、農業関係は海水の冠水による田畑の被害等約一千四百万円、林業関係は炭窯の崩壊等により約九百万円、土木建築関係は約五千万円、民生関係の被害約一千百万円となつております。これら災害復旧に対する措置として国庫の助成及び融資の斡旋等が要望されておりますが、その要望のうち主なるものについて申上げますと、水産関係の対策として、漁港船溜施設の被害に対しては、公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法及び農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律を適用するほか、地方債の枠の増大及び農林漁業資金融通法に基き、融資金の増額を緊急措置せられたい。又漁港船溜附帶施設の被害については災害復旧事業として四割の国庫補助並びに融資の途を講ぜられたい。のり、かき及び海藻類の増殖施設についても、国庫補助、魚田開発補助又は農林中央金庫からの特別融資の途を講ぜられたい。漁船漁具、船具についても、同様、特別融資利子補給を行い、水産物の流失等については災害補償制度の制定を行い、罹災者の生活安定を図られたいとのことであります。農業の関係としましては、塩等の除去、鉄不足、肥料流失等、海水の冠水被害に対して全額国庫補助を願いたい。又大麦等作物の被害については、農業共済制度の適用を図り、又農業倉庫の復旧については特に二分の一の国庫補助を願いたい。林業関係としては、炭窯崩壊について築造費として二分の一程度の国庫補助を願いたい。山地崩壊についても百分の六十五の国庫補助を願いたい。又土木運輸関係としては、復旧全額の三分の二程度の国庫補助を願いたい。又臨時的措置として、速急に資金運用部資金により特別融資の途を講ぜられたいとのことでありました。  以上今回の十勝沖地震による北海道及び東北の災害について申上げましたが、これが復旧につきましては、地元市町村当局を初め関係地方の財政窮乏の実情に鑑みまして、容易ならざるものがあると考えられます。殊に零細農漁民等、個人の住宅、生業資金、生産手段等の回復並びに学校の校舎の建築等は、法令的にも救済の途が殆んどないのであります。幸いに罹災者の復興意欲は極めて旺盛なものがありますので、地元市町村、道、県当局、政府一体となつて努力をいたしますならば、復興は必ずしも困難ではないと考えられますので、参議院としても、政府を鞭撻して、これら関係地方からの要望の速かな解決に努力する必要があると存じますので、何とぞ諸君の御協力をお願いいたす次第であります。  以上を以て私の報告を終ります。(拍手)、
  57. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) これにて午後二時まで休憩いたします。    午後零時四十七分休憩      ——————————    午後三時二十四分開議
  58. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 休憩前に引続き、これより会議を開きます。  この際、日程に追加して、国家公安委員の任命に関する件を議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  59. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。去る十七日、内閣総理大臣から、警察法第五條第二項の規定により、花井忠君を国家公安委員に任命することについて本院の同意を求めて参りました。本件に関し同意を與えることに賛成諸君起立を求めます。    〔「反対々々」と呼ぶ者あり〕    〔賛成者起立
  60. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 過半数と認めます。よつて本件に承認を與えることに決しました。      ——————————
  61. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) この際、日程第一、昭和二十七年度一般会計予算日程第二、昭和二十七年度特別会計予算日程第三、昭和二十七年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  62. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。先ず委員長報告を求めます。予算委員長和田博雄君。    〔和田博雄君登壇拍手
  63. 和田博雄

    ○和田博雄君 只今議題となりました昭和二十七年度一般会計予算昭和二十七年度特別会計予算及び昭和二十七年度政府関係機関予算予算委員会における審査経過並びに結果を御報告いたします。  申すまでもなく昭和二十七年度予算平和條約並びに日米安全保障條約の発効に備えて編成されたものでありまして、この意味において画期的な予算であるばかりでなく、同時に又それと関連するいろいろの点で未だ曾つてない重大な問題を含んだ予算であるということが、予算委員会における審議経過を通じていよいよ明白となつたのでありますが、先ず順序といたしましてこの予算の主なる内容を申上げます。  先ず一般会計歳出総額は八千五百二十七億円でありまして、これを前年度と比較いたしますと五百九十億円の増加となつておりますが、この歳出総額の約四分の一は平和回復に伴う経費の占むるところとなつております。即ち防衛支出金六百五十億円、警察予備隊経費五百四十億円、海上保安庁警備救難関係費七十三億円、安全保障諸費五百六十億円、連合国財産補償費百億円、平和回復善後処理費百十億円、以上総計二千三十三億円でありますが、その大部分は防衛関係費でありまして、合計千八百二十三億円に上り、歳出総額の二一%を占めているのであります。  防衛支出金は日米安全保障條約に基いて駐留する米軍の必要とする経費の一部を我がほうにおいて負担するための経費でありまして、行政協定第二十五條によりまして、日本は米国が使用する施設及び区域を米国負担をかけないで提供することと、米国が輸送その他の必要な役務及び需品を日本で調達することに充てるため、年額一億五千五百万ドルに相当する額の円貨を提供することの二つの義務を負うこととなつておりますので、前者の不動産賃借料等に必要な経費九十二億円と、後者の米ドルに相当する円貨五百五十八億円とで合計六百五十億円となるのであります。而してこの五百五十八億円は日本政府によつて四半期ごとに米国特別勘定に繰入れられ、米軍の使用に供せられることになつているのであります。  警察予備隊につきましては、現在の人員七万五千人を十一万人に増員し、装備の強化、施設の充実を図ると共に、十月よりこれを保安隊に切替える予定でありますが、経費総額五百四十億円のうち、現在の七万五千人に対する分は三百五億円、新期増員の三万五千人に対する分は二百三十五億円となつております。  海上保安庁につきましても、警備関係業務に従事する現在の人員七千六百人のほか更に六千人を増員し、これに必要な船舶武器等はアメリカから貸與を受けまして、新たに海上警備隊を創設する予定となつております。  安全保障諸費は、防衛支出金並びに警察予備険及び海上保安庁に計上された経費のほかに設けられた特段の防衛関係費でありまして、その使途として予想されておりますものは、例えば、一、平和條約の発効後米軍が大都市の中心部から周辺地区に駐留場所を移動する場合、これに伴う営舎、住宅等の建設に必要な経費、二、右の移動に伴う有線、無線通信施設、その他営舎関係諸施設乃至附属工場、各種荷役設備等の建設に必要な経費、三、巡視船等の装備の強化、監視施設の充実に必要な経費、四、治安に関する機構の整備、学校その他教育訓練機関設置に必要な経費等が挙げられるのであります。この経費の内訳は今後米軍の移駐等が更に具体化するのを待つて初めて確定する性質のものでありますが、一応の目安として予定されておりますのは、営舎等の建設に三百七億円、通信施設、工場施設、荷役設備等の建設に百十七億円、道路の建設補修、港湾の整備等に百二十三億円、巡視船等海上保安庁関係に十億円、治安機構等警察予備隊関係に三億円、合計五百六十億円ということになつております。  連合国財産補償費は、連合国財産について戰争の結果生じた損害に対し補償を行うために必要な経費でありまして、補償金の総額は約二百七十億円に上るものと見られておりますが、連合国財産補償法第十九條において一会計年度における支拂限度を百億円と定めておりますので、二十七年度には百億円の計上にとどめたものでございます。平和回復善後処理費は、連合国に対する賠償、対日援助費の返済、外貨債の償還その他対外債務の支拂及び占領によつて損失をこうむつた我が国民に対する補償等に充てることを予定いたしておるのでありますが、その金額が僅かに百十億円という少額にとどまつたのは、対外的な経費については交渉等の関係上年度の当初においては支拂を必要としないこと、及び二十六年度補正予算に計上した百億円が二十七年度に繰越されること等によるのであります。  以上が平和回復に伴う経費二千三十三億円の内訳でありますが、この経費を二十六年度予算に比較いたしますと四百五十七億円の増加となつております。  平和回復に伴う経費を除きましたその他の経費、いわゆる内政費は総額六千四百九十四億円でありまして、二十六年度予算に比して百三十五億円を増加いたしております。以下内政費の主なるものについて申上げます。先ず食糧増産対策費として四百三億円を計上しておりますが、これは前年度に比較いたしまして約九十四億円の増加となつております。公共事業費は千二百三十七億円でありますが、これは前年度に比し二百四十二億円の増加であります。出資及び投資につきましては六百九十七億円を計上いたしており、前年度に比較いたしまして六百五十五億円の減少となつておりますが、これは主としてインベントリー・フアイナンス、の著しい減少によるものでありまして、インベントリー・フアイナンスは二十六年度の九百三十七億円に対して二十七年度は三百五十億円と六百億円近くの減少となつておるのであります。なお、この一般会計のほか、資金運用部資金及び見返資金を合せまして、財政投資による産業資金の供給は千百八十五億円を予定いたしておりますが、前年度に比し二百五十億円の減少となつております。民生安定のための主なる経費といたしましては生活保護費、社会保険費、結核対策費、失業対策費等でありますが、これら経費の合計は五百二十七億円で、前年度に比し約六十七億円の増加となつております。戰歿者遺族及び戰傷病者に対する援護費につきましては、戦歿者遺族に対する遺族年金、遺族一時金に充てられる交付公債の利子、旧軍人軍属に対する傷害年金、その他厚生援護諸施設等に要する経費として総額二百五十七億円を計上いたしておるのでありますが、この制度に伴いまして、未復員者給與費、生活保護費等二十六億円が減少となりますので、戰歿者遺族等の援護に伴う純増加額は二百三十一億円ということになるわけであります。なお、遺族に與えられる交付公債は約八百八十三億円と予定されておるのであります。地方財政につきまして、平衡交付金を前年度の千二百億円から千二百五十億円に増額いたしますと共に、別途資金運用部資金による地方債引受の枠を前年度の五百億円から六百五十億円に拡張いたしておるのであります。  以上は歳出に関するものでありますが、次に歳入につきましては、租税及び印紙収入六千三百八十一億円、専売益金千二百五億円、雑収入等六百七十二億円、前年度剰余金受入、二百六十八億円、合計八千五百二十七億円となつております。歳入総額の七五%を占める租税及び印紙収入につきましては、過般の第十二回国会を通過した税制改正を平年度化しまするほか、更に今回も税制改正を行いまする結果、税法上七百五十八億円の減税と相成るにもかかわらず、国民所得の増加を見込みまして、前年度に比べて約七百七十四億円の増収を見込んでおるのであります。以上が一般会計予算の主なる内容でありますが、特別会計予算及び政府関係機関予算につきましては説明を省略いたしたいと思います。  以上述べました一般会計、特別会計及び政府関係機関を通じまして、総合的に収支の均衡を図り、いわゆる総合予算の均衡を保持することに努めておるのであります。即ち対日援助の打切りによつて見返資金は四百六十五億円の支拂超過となるのでありますが、他方、資金運用部における収入の増加と金融債三百億円の引受中止等の運用計画の調整とによつてこれを相殺するごとといたしておるのであります。なお、昭和二十七年度予算は、財政法、会計法等の財政関係法律の一部を改正する等の法律案趣旨従つて編成せられましたため、予算科目等の改正が行われているほか、新たに継続費が設けられておりますことは特に注目を要する点であります。  さて、本案は一月二十三日予備審査のため委員会に付託されたのでありますが、当時、財政法、会計法等の財政関係法律の一部を改正する等の法律案はまだ本院において継続審査中でありましたのみならず、特に継続費等につきましては予算審議の立場から極めて重大な問題でありまするので、予算内容審議に入るに先だち、委員会におきまして検討の結果、二月九日、本委員長より、委員会を代表いたしまして、大蔵委員長に対し、継続費の設定については、止むを得ないと認めらるる場合にも、戰前における継続費運用上の弊害に鑑み、その対象、期限又は金額につき適当の節度を保持し、いやしくも予算審議権を阻害する等悪用せらるることのなきように処置方を特に申入れました。この財政法等改正法律案は、その後、本申入れの趣旨を取入れて修正議決せられたのであります。二月十八日池田大蔵大臣より提案理由説明を聞いた後、あらかじめ周到に考慮された計画に基いて重要事項別に殆んど連日予備審査を行い、次いだ二月二十七日衆議院よりの送付を待つて審査の段階に入つたのであります。そこで、先ず三月四日、五日の両日に亘つて公聽会を開きまして、各界、各方面の学識経験者等十二名の公述人からこの予算に関する意見を聞いたのでありますが、今回の公聴会の顯著な特色は、予算に対する専門的な批判と関連しつつ、この予算の性格を再軍備予算  であるとしてその重大性を指摘した公述人が少くなかつたということであります。  予算委員会におきましても、この再軍備の問題並びに行政協定の問題とも関連いたしまして、この予算に違憲の疑いがあるとし、先ずこの予算と憲法との関係を明らかにすべきであり、憲法違反の有無を明らかにしてから初めて本審査に入るべきであるとの主張もあつたのでありますが、すでにこの予算は衆議院を通過して本院に送付されておることでもあり、又予算審議の過程においてこの問題もおのずから明らかになつて来るであろうとの見地から、先ず総理大臣に対する総括質疑を行い、その終了後において今の問題をどのように取扱うかを改めて協議するということで、三月六日からいよいよ本審査に入つたのであります。然るに当日の委員会におきまして、自衛力を漸増すれば戦力となるが、そうなれば憲法違反ではないかとの質疑に対しまして、吉田内閣総理大臣より、自衛のための戦力は違憲でないとの答弁を繰返し行われましたので、委員会は極めてこれを重大視いたしまして速記録をも調べて慎重に検討を加えたのでありますが、同時に政府側より本件について特に総理大臣の発言を求めて参りました。かくて次の三月十日の委員会におきまして、吉田内閣総理大臣は前回の答弁を訂正されまして、たとえ自衛のためでも戦力を持つことはいわゆる再軍備であつて、この場合には憲法の改正を要するとの発言がありました。当日の委員会質疑は專らこの訂正発言についての質疑に終始したのでありますが、これらの質疑応答を通じて明らかとなつ政府側の見解は大体次の三点に帰着するのであります。即ち先ず第一に、警察予備隊は、国内治安確保のためのものであり、近代戰を有効且つ適切に遂行し得る装備と編成とを持つたものではないから、憲法第九條の戰力に該当しないということであります。第二に、政府は飽くまで現行憲法の許す範囲内で自衛力の漸増を図るつもりであるが、併し自衛力の限界がどこにあるかは具体的には答えられないということであります。第三に、日本が戦力を持つか持たないかということは、全く国民の自由意見によるべきものであつて、日本の経済力がこれを許し、又外部の情勢もこれを必要とするに至つたような場合には、憲法に従つて国民投票なり憲法改正なりをするが、差当つてのところはまだその時期に至らないということであります。以上は戰力或いは再軍備に対する政府の見解でありますが、同じく憲法に関連いたしまして、日米安全保障條約第三條に基く行政協定につきましても、委員会における質疑に答えまして、行政協定は、若し安全保障條約がなければ、憲法第七十三條による條約として国会の承認を経べきものと考えるが、政府としては当初から安全保障條約第三條によつて行政協定は国会の承認を求めないことを言明した上で安全保障條約の承認を得たのであるから、行政協定は事前に包括的承認を受けたものと解するとの、政府の最終的、確定的な見解を明らかにしました。三月十七日、委員会は、三名の憲法又は国際法学者に参考人として出席を求め、戦力及び行政協定について意見を聞いたのでありますが、これら参考人の意見は、いずれも政府の見解とは全く趣きを異にして、警察予備隊又は保安隊は戦力に該当するものであり、又行政協定は国会の承認を求めるべきであるという結論でありました。翌十八日を以て、去る六日以来五回に亘る総理大臣に対する総括質疑を一応終了いたしましたので、改めて協議の結果、引続き予算内容審議を進めつつ、この予算と憲法との関係を明らかにするため小委員会を設けまして戦力及び行政協定の問題を再検討することといたしました。  さて、次に予算内容審議についてでありますが、前後二十六回に及ぶ委員会の論議は極めて広汎多岐に亘つたのでありますが、ここではそのうち特に基本的な問題を重点的に取上げて御報告いたすにとどめ、残余の問題につきましての質疑応答は速記録に譲りたいと思います。  先ず第一には、この予算の基盤であるところの日本経済の自立に関する問題でございます。「吉田内閣総理大臣はその施政方針演説において外資導入の必要を力説したのであるが、三月十一日マーケツト経済科学局長の声明は外資導入が頗る困難であるということを明らかにしている。施政方針演説で、一に外資導入に待つにあらざれば急速の進展は期しがたいと言つている我が国自立経済はこの外資導入に失敗したことによつて、その達成が不可能となつたのではないか」との質疑に対しまして、池田大蔵大臣より、「マーカツト局長の声明は外資導入の條件を示したものであつて、その可能性を否定したものではない。又外資導入が必要だというのは、外資が導入されれば急速に自立経済の達成ができるが、これがなければ時間を要するというに過ぎないとの答弁がございました。又この問題に関連して「講和後防衛や電源開発に必要な莫大な資材を国内で調達するため輸出が少くなり、従つて食糧原料等の輸入力が減るのを外資導入で補うのでなければ、貿易及び生産の縮小と国民生活の低下は不可避であるが、政府はどのようにしてこれを防止するつもりであるか」との質疑に対しまして、池田大蔵大臣より、「まさにそのために外資導入に努力する必要があるのであるが、併しながら当面の問題としては、国民の労働力或いは国内の生産物によつて外資はどんどん殖えており、十億ドル以上も溜つた外貨をどのように有効に使うかが差当りの問題になつている。従つて手持外貨の活用を図ることが先決問題であり、外資導入はむしろそのあとの問題である」との答弁がありました。併しながらポンド過剰問題に対してどういう根本的な対策を持つているかとの質疑に対しましては、高橋通産大臣より「ポンド過剩対策は非常にむずかしい問題で、輸出の抑制であるとか金融措置であるとかいうことも対策の一つではあるが、率直に言つて根本的な対策というのはなかなか見当らない」との答弁でありました。  第二には、この予算の基本的性格に関する問題であります。即ち「この予算は表面的には総合予算の均衡を保持し、一見健全財政のように見えるが、併し実際には、千八百二十三億円の不生産的な防衛費、それ以外の間接的な防衛支出、インベントリー・フアイナンスの大幅な削減、八百八十三億円の交付公債等、夥しいインフレ要因を含んでいるばかりでなく、一種の赤字財政ではないか」との質疑に対しまして、池田大蔵大臣より、「予算執行上物費面に不当な影響を及ぼさないよう、十分留意する必要はあるが、均衡予算であるからインフレにはならない。二十六年度予算補正に際しても、インフレ予算であるとの一部の非難もあつたが、当面はむしろデフレ傾向に悩んでいる実情である」との答弁があり、又この最近における経済界の沈滞傾向に対する打開策はどうかとの質疑に対しまして、同大臣より「最近経済界は整理過程にある上、財政の引揚超過が甚だしく、景気が沈滞しようとしているので、積極的な景気振興策を講じなければならないと思う。その金融対策として差当り三月中に国庫余裕金から百五十億円の指定預金を行い、そのうち五十億円を中小企業方面に振り向け、百億円は現在予算上の計画から除外している金融債の引受に充てる方針である」との答弁がありました。次に、「政府は防衛費その他平和回復に伴う諸経費負担にもかかわらず、内政費は圧迫されていないかのように説明しているが、物価騰貴を考慮すれば、内政費は実質的には減少となつているではないか」との質疑に対しまして、池田大蔵大臣より、「内政費全体を物価騰貴の割合で殖やすことはできないから、重点的に考えるほかはない。而して公共事業費、食糧増産対策着筆の重要な内政費は、いずれも相当増加している」との答弁がありました。更に「政府は二十七年度国民所得を前年に比し八%増の五兆三百四十億円と見込み、租税収入において七百七十四億円の自然増収を見積つているが、経済情勢の変化に伴い、安本でも二十七年度の経済見通しを修正する必要を認めている現在、三乃至四%を普通の増加率とする国民所得が八%も増加するというのは過大ではないか。又インフレによることなしに予定の自然増収を確保できるか」との質疑に対しまして、周東経済安定本部長官及び池田大蔵大臣より、「昭和二十七年度国民所得は、昭和二十五年度の国民所得実績推計を基礎として、これに雇用、賃金、物価、生産の推移を見込んで算出したもので、過大な見積りではない。なお安本としては絶えず経済情勢の検討を続けているが、まだこの予算の基礎となつた計画を修正するような段階には至つていない。又二十七年度租税収入は、成る程度の経済的変動があつたとしても十分確保し得る見込である」との答弁がありました。  第三には防衛力漸増と防衛費についての問題であります。「日米安全保障條約によつて防衛力の漸増ということは国際的に約束されたのであるが、その具体的計画は一体どのようなものであるか。二十七年度予算に計上されている防衛費は、いわば氷山の一角に過ぎないものであるから、防衛力漸増計画の全貌がわからなくては、国民が安心ができないのではないか」との質疑に対しまして、池田大蔵大臣より、「二十七年度は防衛力漸増の第一年度であるが、併しながら同年度においては防衛費は一千八百二十三億円を最大限度とし、これ以上に殖やす考えはない。而して二十八年度以降においてどうなるかはそのときの情勢によることで、まだ具体的な計画はないが、要するに国民生活の維持向上を図りつつ且つ増税をしないで防衛力を漸増して行くのであるから、具体的な防衛漸増計画が示されなければ国民は安心ができないというわけのものではない」との答弁がありましだ。又「防衛費一千八百二十三億円のうち安全保障諸費五百六十億円は主として米軍の移駐費等に充てられる臨時的なものであるから、二十八年度以降は当然不要となるべき性質のものである。そうすると、二十八年度以降は防衛費は減少すると解してよいか。又三月二十一日のリツジウエイ最高司令官の言明によると、米軍移駐に伴う諸費用は一切米国側で負担し、日本側からの支出は鐚一文も求めていないとのことであり、従来の池田大蔵大臣の説明は全くこれと食い違つているが、その点はどうか」との質疑に対しまして、同大臣より、「安全保障諸費は臨時的経費ではあるが、必ずしも二十七年度限りで全部なくなるとは限らない。それに自衛力の漸増ということもあるので、将来一千八百二十三億円の防衛費が減るという約束はできない。又リ最高司令官の言明は個人的希望を表明したものと思う」との答弁がありました。  第四には、この予算の国民生活に及ぼす影響に関するものであります。「政府は国民生活の維持向上を図りつつ、賠償その他の対外債務を支拂い、防衛力を漸増すると言つているが、このような不生産的な支出をしながら、どうして国民生活の維持向上ができるか。現に政府みずから二十七年度の国民生活水準を自立経済計画の八六%から二%下廻つた八四%と予定しているが、国民生活を更にこれ以上低下させないという保障ができるか」との質疑に対しまして、周東経済安定本部長官より、国民生活水準は長い眼で見れば徐々に向上している。国民生活の低下を防ぐ基本的な対策としては、何と言つても生活必需物資の生産増加、殊に食糧、衣料の量的確保と価格の安定を図ることが肝要であるが、これらの点については政府として十分努力している」との答弁でありました。次に、「今回政府決定した戰歿者遺族援護対策は、その金額において、又方法において、甚だしく不十分不満足であるが、これは暫定措置であるか、又国会が修正を要望した場合受入れる用意があるか」との質疑に対しまして、吉武厚生大臣より、「二十七年度限りの暫定処置ではないが、本格的な制度が確定されるまでの暫定措置である。修正については予算限度があるので、実行不可能なものは受入れるわけには行かない」との答弁がありました。  第五に、中央財政と地方財政との関連についての問題であります。「政府は二十七年度の財政規模は、その国民所得に対する割合が同じく一七%であるから、前年度と同様の大きさであると言つているが、総合予算として中央地方を合せた場合には、その割合は二十六年度二三%から二十七年度二五%へと増大している。このような財政規模の拡大は国民経済或いは国民生活に対する圧迫となるのではないか」との質疑に対しまして、池田大蔵大臣より、「中央財政については極力財政規模の圧縮に努めているが、地方財政に対しては制度上大蔵大臣の権限外にある。併しながら地方財政の現状に対しては、政府も地方公共団体も一緒になつて根本的な検討を加え、歳入の確保を図ると共に、経費の節減及びその効率的使用に努力することが必要である」との答弁がありました。又「昭和二十七年度地方財政計画によると、財政規模は七千億円であるが、そのうち地方税は四二%を占めているに過ぎない、国税を増税しない方針であるとすれば、そのしわ寄せが結局地方税の増税となるのではないか、又二十六年度地方財政の赤字二百二十一億円を補填するために地方債の枠を八十億円拡大し、そのうち三十億円は資金運用部引受でなく公募によるとのことであるが、今後は公募債を認める方針か」との質疑に対しまして、岡野国務大臣より、「地方の税源を確立するため、国税地方税を通じて税制の調整を図る必要を認めているが、このような地方行財政の根本的改革については近く地方制度調査会を設けて諮問することになろう。又地方債は従来国家資金だけで賄つて来たが、独立を控え漸次常道に復帰する意味で、一定の限度内で公募債を認めることとした」との答弁がありましだ。以上のような質疑応答の間におきまして、委員長は、委員会における審議経過に徴し、特に緊要と認めて一つの事項について政府に対し要求をいたしました。即ち、政府が現在持つている自衛力漸増計画を明らかにすることは予算審議上是非とも必要であるから、若し具体的な計画がないとしても、大綱なり構想なりを審議に間に合うよう示してもらいたいということでございます。これに対しまして、三月二十四、五両日、政府より自衛力漸増計画についての資料が提出せられ、大橋国務大臣よりこれに基いて説明があつたのでありますが、要するに、警察予備隊と海上保安庁とにつきまして二十七年度予算に計上されている範囲内における人員、編成及び装備の増強計画を明らかにし、これ以上の増強については今後の治安及び財政事情を考慮して決定したいと言い、二十七年度中においても更に増強することあるべきを暗示したのであります。  先に申上げました昭和二十七年度予算と憲法に関する小委員会は、三月二十三、四日の両日に亘つて、戦力に関する憲法第九條の解釈及び行政協定と憲法第七十三條との関係について再検討を行なつたのでありますが、翌二十五日、小委員長楠見義男君から詳細な経過報告がございました。その詳細は速記録によつて御承知を願いたいと存じますが、極めて簡單に要約して申上げますと、小委員会では委員会における審議を更に深めて検討を行なつた結果、いろいろの点が明らかとなつたが、併しながら問題の根本的な点については二つの見解が対立したまま何ら新らしい展開を見なかつた。従つて当初から戰力及び行政協定に関連して憲法上の疑義を持つておつた者にとつては依然として疑義を明らかにするに至らなかつたということであります。  かく質疑を終局し、討論に入りました。先ず吉田法晴君より社会党第四控室を代表して反対、石坂豊一君より自由党を代表して賛成、山下義信君より社会党第二控室を代表して反対、杉山昌作君より緑風会を代表して賛成、岩木哲夫君より改進党を代表して反対、駒井藤平君より民主クラブを代表して賛成、東隆君より第一クラブを代表して反対、木村禧八郎君より労働者農民党を代表して反対、岩間正男君より日本共産党を代表して反対の旨を述べられました。よつて討論を終局し、採決の結果、本委員会に付託せられました昭和二十七年度予算は多数を以て可決すべきものと決定いたしました。  以上御報告申上げます。(拍手
  64. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 三案に対し討論の通告がございます。順次発言を許します。内村清次君。    〔内村清次君登壇拍手
  65. 内村清次

    ○内村清次君 私は日本社会党第四控室を代表いたしまして二十七年度予算案に反対をいたします。而うしてその根本的な組替を要求するものであります。  反対理由といたしまして次の三点に集約し論述いたします。即ちその第一点は、本予算案は再軍備予算であり、日本国憲法に違反する予算であります。第二点は、本予算は非生産的な純軍事予算額が自立経済の再建と国民生活を圧迫する予算であります。第三点は、本予算は、国際情勢、国際経済の影響を受けて、その予算構成の基礎が根底から崩れ、安易杜撰の亡国予算であることであります。  すでに本予算案が両議院で審議せられておりまする約六十日間のうち、国を挙げて論議の焦点となりましたことは、警察予備隊等をめぐる再軍備が憲法違反であるか否かの戦力論争でありました。更に日米安全保障條約に基く行政協定が国会の承認を要するか否かの問題でありました。このことは実に本予算案の本質がどこにあるかということを雄弁に物語つておるものであります。(拍手)この論議の過程におきまして、再来年中には三十万の隊員を擁し、戰前の師団に劣らない軍編成を行うと予想せられ、すでに現在カービン銃、自動小銃、迫撃砲、バズーカ砲、車両三千等を持つ予備隊が、而も又今年の十月からは名称も保安隊又は防衛隊と言われる予備隊が戰力でありますことは、日本の朝野は勿論、外国の評論雑誌を見ましても一点の疑いのない事実となつております。(拍手)これを否定するただ十数人の閣僚のうち最も中心となつておられる吉田総理にいたしましても、過日の本院予算委員会では、自衛のための戦力は憲法違反ではないと、みずから戦力を認めざるを得なかつたほど明白な事実なのであります。而もこのような重大なる事実を臆面もなく取消すというがごときは、一国の責任ある総理大臣といたしまして不見識も甚だしいものであると言わねばなりません。(拍手)然るに、政府の肚を知つておりまする国民の間では笑い話の題材とされておるような戰力違憲の問題を、なおも政府が固執いたしますることは、政府みずからが国法を無視して、国民を欺瞞し、公然と戦力漸増計画を進めている政府のこの態度は、政治道義全く地を拂い、民主主義議会政治の威信を誠に失墜するものでありまして、明白なる国民への反逆行為であると断ぜざるを得ないのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり、拍手)而もこの平和憲法を公然と蹂躪いたしました再軍備が、実は日本の自衛のためというよりか、外国のための、アメリカの対中ソ極東戦略の一環としての再軍備であることを我々は大胆率直に明らかにせざるを得ないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)そうしなければ、いつかは私どもの家族や子孫、日本の老若男女、いたいけな幼兒等がすべて悲惨極まる太平洋戦争に数倍するところの戰禍に直面いたしましたときに、国論の直接衝に当つております私どもの責任が果し得ないと信ずるからであります。(「その通り」「自由党よく聞け」と呼ぶ者あり)あえて更に申しますと、例えばアメリカのコリヤーズ誌の有名な世界戦争予想号では、日本の警察予備隊はジヤニパーズという固有名詞を付けられて、アメリカの駐留軍の第一線歩兵部隊として惨澹たる戦争に引つ張り出されておる画が猫いてあるのであります。更に又、野党は勿論、與党の間ですらも、行政協定の裏にある了解事項といたしまして、緊急事態における米軍の指揮の問題を、これを問題にしておるようでございまするが、現に警察予備隊の指導教官は外国の将校団であります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)その武器一切は外国から貸與せられておるのであります。極めて率直且つ端的に申しますると、このような米軍の対ソ爆撃基地を守る傭兵歩兵部隊は憲法九條に違反し、日本人自身の血の出るような税金を以て賄う必要は断じてないと私は思うのであります。(「そうだ、そこをしつかりやれ」と呼ぶ者あり)我々は断固この予算に反対するものであります。我々は平和憲法擁護の立場から、更に又、日本の真の独立を守り、国民生活を防衛する立場から、警察予備隊費五百四十億円、海上保安庁費七十四億円等の再軍備費には絶対反対であります。  更に又この予算案には、行政協定に基く防衛分担金、安全保障諸費、即ち米軍の軍事駐留並びに基地化の費用が千二百十億円計上せられております。この行政協定それ自身がすでに国会で論議の中心となりましたごとく、日本人の生命財産及び独立主権に重大な影響をもたらすものでありますることは今更申すまでもありません。国民の身近に迫る重大問題であります。これを国会の承認を求めることなくして、政府の強引なる白紙委任に放置するがごときは、主権国民の政治常道から考えて明らかに憲法違反であります。(「そうだ」「その通り」と呼ぶ者あり)私ども国会の多数が先日これを拒否いたしましても、直接被害を受けるであろうところの多数の国民は正しい審判を必ずいたすことを断言して憚らないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)日本の軍事基地化の費用の半分を日本人自身の税金で賄い、これを促進するということは、我々は率直に、極めて愚かな屈辱的な外交の結果であると思うのであります。更に又同時に、去年で対日援助費も打切られ、今までの援助費中のガリオアは平和回復善後処理費におきまして年賦償還で返済せねばならない。更に過日のマーケツト代将の帰国報告では、大幅の外資導入の政治借款は望まれず、民間外資の望みも極めて薄いと言われております。このようなことでは日本は何を得ようとするのでありますか、何も得るところはない。(「だまされている」と呼ぶ者あり)ただ、得るところは、一方的に、日本占領当時よりも更に重いところの財政負担と、貿易さえも自由にならず、軍国主義を復活させ、国際対立を激化させ、アジア隣邦の警戒心を増大し、原爆の脅威も身に迫り、戦争への道をひた走りに走り続けて行きまして、どうして日本経済の自立がなされるでありまようか。どうして日本の平和と独立を全うすることができるでありましようか。(「その通り」「そこをしつかりやれ」と呼ぶ者あり)このような日本将来の運命を左右する重大なることが、次々とまだ独立もしない占領期間中に自主性もなく取極められているのであります。一にかかつてこれは両條約がもたらした悲惨な結果であります。日本人といたしまして、誠に早くも再度めぐり合せました日本民族の悲劇であると断ぜざるを得ないのであります。(拍手)私は、吉田総理初め自由党の諸君、條約賛成派の議員の諸君が、この点に思いをいたされまして、賢明なる猛省を促すものであります。(「まだ遅くない」と呼ぶ者あり)と同時に、又本予算案に対しましては、断固反対の投票によつて、国民の切実なる期待に報いられんことを切に期待してやまないものであります。  次に、以上述べました非生産的な純軍事費千八百四十五億円が実に財政総額の二一%であり、当然国内経費、特に経済再建と国民生活を圧迫するものである点を指摘いたしたいのであります。政府はこのような批判を避けまするために、例えば公共事業費や地方財政交付金を名目的には若干の増加を図るとか、食糧増産費の少しばかりの増額を図る等の四苦八苦の数字の魔術を行なつておるのであります。(「元気がないぞ」と呼ぶ者あり)併し、実際の物価の上昇、経済の推移と見通しを勘案いたしてみますると、それは増額どころか、実質的には減少となることは明らかでございます。(「そうだ」と呼ぶ者あり)そればかりではありません。もつと重大なることは、本予算案が衆議院を通過いたしましてから以来、未だ一カ月もたたない昨今におきまして、内外経済情勢の推移は、明らかに、本予算案が基礎といたしておりまするところの生産、国民所得、貿易収支、物価等、あらゆる基本的條件がすでにすつかり崩れつつあることであります。即ち最近の諸新聞では、一齊に今年度日本経済の悲観的な見通しを強調いたしております。又経済安定本部自身が二十七年度の輸出見通し十六億一千百万ドルを大幅に削減をいたしまして、十二億七千万ドルにとどまると見ておるのであります。その理由といたしまして、アメリカにおける国防インフレの中だるみがなおも続くこと、西欧における軍拡の重荷から生じましたポンドとフランの危機、思惑の反動、国際価格の下落傾向等が動かしがたい資本主義経済の危機となつて現われておる点であります。すでに我が国でも一億ポンドに上るポンドの手持過剩に対しまして、ポンド圏への輸出抑制策がとられて参つておりますが、このような消極政策は国際収支を悪化するのみであります。又綿紡の四割操業短縮を初めといたしまして、化学繊維、人絹、薄鉄鋼板、ゴム、ソーダの諸工業におきましても操業短縮が行われようといたしております。このような不況と減産は、当然、政府予算の基礎といたしておりまする生産と国民所得の一割増大というものを完全に崩壊させるものであります。経済安定本部の再検討におきましても、当初予想いたしました一四〇・六の予想生産指数に対しまして、三乃至五%下廻ると算定いたしておるのであります。このような生産停滞の見通しは当然国民所得の水増しをより明白に架空のものといたしておるであります。この架空の国民所得を基礎といたしました本予算案は、特に税収入に重大な危機をもたらしております。政府は国民所得を、四兆九千億であつたものが、国会では一夜にいたしまして五兆三百億に水増しをいたしております。そこで租税収入も二十六年度よりも七百五十八億円の自然増収を見込んで歳入面の辻褄を合せておるのであります。今回の安定本部で再検討をいたしまして、若し生産指数及び国民所得が下廻るものとなつて参りましたならば、それは明らかに水増し増税となることはもはや確定的な問題でございます。増税をやらないで軍備ができるかのごとき油田大蔵大臣の数字の魔術は、すでに予算案が成立する以前に、遂に砂上の楼閣といたしまして音を立てて崩れておるのであります。更にこの七百五十八億円に及ぶ水増し課税の多くを国民の中で誰が負担するかと申しますると、それは中小企業者や農家の大衆負担となるのであります。弱い者をいじめるところの資本主義の本質が、大蔵大臣の数字の魔術と、安易な自由放任の財政経済政策の犠牲の上に築かれておることは、我々は断じて許容することのできないところであります。(「その通り」「牽強附会」と呼ぶ者あり)今国会に諸税法の改正案が出されておりまするが、これらの殆んど全部が、相続税の減免、大資本合理化資金の減税、無記名預金の復活等、いずれも大資本の資本蓄積のための減税であることは明白であります。  このような経済界の不況の見通しがある一方、又非生産的な軍事費一千八百二十四億円の支出、更に又、外国為替特別会計への政府出資金が去年に比較いたしまして四百億円削減せられましたこと等々は、日本経済に著しくインフレヘの弾力性と抵抗力を失わせたものと言わなくてはならないのであります。かくのごとく、不況の見通しにいたしましても、インフレの要因にいたしましても、この予算案がもたらすものは、国民生活にただ暗澹たる不安定極まる前途しか與えておらない。全くお先まつくらの勤労大衆いじめのさみだれ予算と断ぜざるを得ないのであります。(拍手)  この国防インフレの中だるみから来ますところの不況に堪えて行くには、我々は軍需一辺倒ではいけない。あらゆる国との平和的な貿易の拡大、特に国際価格の下落よりも割高な日本品の価格引下げのために、設備の合理化や近代化を図らなくてはならないのであります。これは当面我が国経済にとりまして緊急の課題でございまするが、本予算案には残念ながらこれに対する熱意が見られておりません。産業や中小企業等への財政投資を削減しました結果は、見返資金や運用部資金へのしわ寄せとなりまして、そのため運用部資金において引受けるはずであつた一般金融債券三百億円が削減せられておる。それが一般金融への圧迫となつて現われております。このような産業圧迫や、国際収支の見通しにおきまして、ドル一辺倒、軍需経済一辺倒に日本経済を追い込ませて、これでどうして日本が生きて行かれますが。亡国的な戦争経済の深淵に支えられてどうして日本人が安閑としておらるるでありましようか。日本国民はこの六カ年の間、切実にポツダム宣言を守つて参りました。平和的な貿易の拡大と経済の自立を望んで堪えて参りました。然るに吉田内閣によつて與えられたものはかくのごとき亡国予算であります。自主性のない予算であります。我々はかくのごとき亡国予算に断固反対するものであります。  更に又、本予算案の内政費を圧迫するところは、戦後我が国における社会問題の重要なものとして皆さんもすでに御承知のように戦争犠牲者の国家補償の問題であります。政府予算案の内容は、公債において八百八十三億円、一柱に対しまして五万円というものを一時金として支給する。更に現金は、妻即ち未亡人に年間一万円、子供と父母、福父母、子孫は、それぞれ一人について年間五千円でございまして、合計二百三十一億円を計上いたしたに過ぎないのであります。三百二十一億円は全予算額の僅か二%二七であります。全くお燈明料であります。戰時中国家の犠牲となり、戰後七年間も放置され、苦しい生活を営んで参りました全国八百万の遺家族のかたがたが憤激することも又当然であると言わなくてはなりません。西ドイツは、全予算の二〇%、二千二百五十億円が遺家族の援護費に充てられて、而も占領政策のうちから、二年も前からこれが実施されておることを思いましたならば、如何に吉田内閣が無気力な外交と無情な性格によつて国民に君臨しておるかが窺われるのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)而も我々が見逃しできないことは、常々指摘いたしておりまするように、再軍備の一環として巧みに国民思想を利用誘導することでありまして、我々は勿論断固反対するのでありまして、政府の陰謀に対しましてはどこまでも追及いたすのでありまするが、国民も又、硫黄島数万の累々たるあの骸骨と無言の地下の霊と共に強く反対することを信じて疑わないものであります。  更に社会保障費は予算の七%、国民所得の僅か一%である、僅か一%、文教費は僅かに三%の支出がなされておるに過ぎません。どこに憲法二十五條の最低生活の保障があり、民主主義暢達の文教政策があるでありましようか。政府は、毎朝の新聞に賑わつておりまする親子心中や、自殺や家出、殺人、強盗等の社会問題には目を蔽いまして、底なし沼の官吏の汚職や公金の横領を粛正もせずに、責任もとらずに、これを奨励しておるかのごとき態度は、(「恥を知れ、恥を知れ」と呼ぶ者あり)古今に稀な厚顔無責任な内閣と(「泥棒だよ」と呼ぶ者あり)断じても過言ではないと存ずるのであります。(拍手)  文教政策費は、文部省が切に要求いたしたにもかかわらず、義務教育費国庫負担は全額削除せられております。六三制の建築費も最低見積額の半分にしかならないのであります。国立大学や高校の財政窮乏は救われずに、大学授業料は一・七倍の値上げとなつて、勤労者の子弟の門は固く閉ざされようとしております。住宅対策も百三十万戸の要求が僅かに二万三千戸建築の半額国庫補助であるに過ぎないのであります。  なお、地方財政の窮乏はますます深刻でありまして、最低二百億円の赤字が上つておるにかかわらず、僅か五十億円の増では、どうして地方財政が確立されるでありましようか。国土災害の復旧にいたしましても、二十六年度末の所要経費が二千八百億円に対しまして、僅かに四百二十億円の計上では、国土の荒廃と地方財政の窮状は、全く百年河清を待つがごとき惨憺たるものと言わなくてはならないのであります。  最後に特に強調しておきたいことは、吉田総理はその施政演説におきまして、労働者に対する協力を呼びかけております。然るに、実際行わんとするところは、これとまさに反対でありまして、国の生産を担う重大な使命を有します労農大衆に対しまして、或いは国家地方公務員のかたがたや教職員のかたがたに対する給與を物価上昇にかかわらず、これを予算化せず、低賃金と低米価に放置し、あまつさえ、憲法に保障せられました基本的人権と団体行動の基本権の自由を、独立後においてさえも、これを剥奪せんとする超反動政治を企図いたしておることでありまして(「その通り」「そうだ」と呼ぶ者あり、拍手)まさに、口に美名を唱え、行いにおいて刃を以てする、極めて悪質なるフアツシヨ内閣と断ぜざるを得ないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)  以上述べました理由によつて、我が党は本予算案に断固反対し、次のごとき根本的な組替えを要求するものであります。即ち第一に、本予算案にある警察予備隊等の再軍備費並びに防衛関係諸費を削減しまして、以上のごとき諸経費合計一千九百三十六億円を、地方財政平衡交付金の増額、公共事業費の増額、電源開発、国鉄、海運の増強等、食糧増産、遺家族援護費の大幅増額、社会保障費、文教費の増額、更に大衆負担の減税に充てるべきことを強く要求いたします。要するに、吉田内閣は過去三カ年の間、民主政治を壟断し、行政機構の簡素化も、米の自由販売も、減税による税負担の軽減も、すべて国民への公約を裏切り、秘密と独善外交を以て、今や日本国憲法を無視するところの再軍備、軍国主義の復活を企図し、日本国民をして再び悲惨なる戰争を暗澹たる国民生活の低下に誘導せんとする諸政策は、到底重大なる今日の時期になお政局を担当し本予算案を組替える機能と資格をすでに失つたものであると判断せざるを得ないのであります。 (拍手)  我が党は、吉田内閣がその政治的責任を明確にし、議会政治の確立を厳正にするために、速かに退陣せられんことを要求いたしまして、本予算案に断固反対いたすものであります。(「余計なことを言うものではない」「上出来上出来」と呼ぶ者あり、拍手
  66. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 愛知揆一君。    〔愛知揆一君登壇〕    〔「よく聞け」「しつかりやれ」「何を言うのだ」「まあ社会党よく聞くんだ」と呼ぶ者あり、拍手
  67. 愛知揆一

    ○愛知揆一君 私は自由党を代表いたしまして、只今上程せられました昭和二十七年度予算名案に対し賛成の意を表するものであります。以下その理由を申述べたいと思うので分ります。  終戦後七年になんなんといたしまする占領下の状態を脱しまして、国民待望の平和條約はいよいよ旬日のうちにその効力を発生せんといたしておるのであります。(「とんでもないことだ」と呼ぶ者あり)昭和二十七年度予算の編成は、かくして占領下において行われた最後のものであります。同時にその施行は独立日本の第一年度として行われるものでありまして、まさに歴史的なる予算として、極めて意義深きものと存ずるのであります。又それ故にこそ、これが編成につきましては、幾多の困難な事情と條件とが存したことは想像にかたくないのであります。即ち條約の発効と共に、我が国は、独立国としてみずからの力と、みずからの責任において、内においては経済の自立を達成し、国民生活を充実し、且つこれに応じて自衛力を漸増的に強化いたさなければなりません。外においては平和回復に伴ういろいろな責任を果たしますると共に、正義、自由、進歩を基調とするところの自由諸国家との緊密なる協力を図りつつ、世界の平和と繁栄とに貢献いたさなければならないのであります。この我が国に課せられたる内外の諸要請こそ、新日本の運命と進路とを方向づけるものでありまして、昭和二十七年度予算は、まさにこの観点から総合して編成せられなければならないからであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)而して我が吉田内閣は、我が国の與えられた現状の制約、殊に国際的な諸條件と困難の下に、これらの諸要請を巧みに調整按排し、間然するところなき予算の編成に成功せられたのであります。(「八百長だ」「その通り」と呼ぶ者あり)私は政府の苦心と手腕とに対しまして、先ず以て敬意を表するものであります。(「総理大臣苦笑いしているよ」「冷汗が出る」と呼ぶ者あり)  さて、本予算案の特色の第一点は、財政の規模を国民経済力限度にとどめたことであります。独立の高揚せる意識の下に、各方面の要望が極めて広範囲に且つ多額に上つたことは当然でありまするが、これらを調整按配いたしまして、財政の規模を二十六年度と同様に、国民所得に対して一七%の限度にとどめた点は高く評価いたさなければならないのであります。(拍手)本予算案は、いわゆる財政膨脹の危惧を完全に拂拭いたしたものと考えるのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)第二点は、我が国の経済力、国力を勘案しつつ、独立国として治安維持力を増強すると共に、安全保障の精神に即しまして、防衛に関する諸経費を計上したのでありまするが、これと内政に関する諸経費との振り分けを極めて適切ならしめまして、防衛のために民生の安定を圧迫するがごときことなからしめたことであります。防衛費と内政費との関係は、現下の国際情勢の下において、各国を通じて最も深刻なる問題でありますることは改めて指摘するまでもないところであります。然るに本案においては、防衛に関する諸経費予算総額に対する比率を二一%にとどめ、又国民所得に対する比率は三・六%でありまして、本格的に再軍備を進めておるような諸外国における軍事費のそれとは全く比較にならず、遙かに低いことは御承知の通りでございます。本予算案は、防衛のために国民生活を圧迫するという懸念を見事に拂拭いたしておるのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)私は、これこそは吉田内閣総理大臣が心血を注いでその締結に成功せられましたところの安全保障條約の財政面における偉大なる成果でありますることを(「その通り」と呼ぶ者あり)固く信ずるものであります。(拍手)(第三点は、平和回復に伴う諸経費及び内政費を多額に増加いたしました反面において、よく増税に訴えることを避けたのみならず、却つて前年度の減税措置を引続き踏襲いたしまして、むしろ国民負担の軽減、適正化に更に一歩を進めておることであります。(「それは確かですか」と呼ぶ者あり)(第四点は、財政収支均衡の方針は従来通りこれを堅持し、金融面の施策と相待ちまして、国民経済の健全なる運営を確保し、その合理化と充実発展を図つておる点であります。第五点は、内政費につきまして、前年度以上の金額を確保いたしまして、これを経済力の増強と民生の安定に振り向け、その効率的な活用と重点的な配分に努めておる点であります。以上述べました本予算案に関する五つの特徴こそは、我が国が経済的にみずからの力と責任において独立を維持し、前に申述べました内外に亘るもろもろの要請を、よく一つの体系の中に具現せしめたものでございまして、私どもが本予算案に賛成いたしまする根本的な理由をなすものであります。  私はここに本予算案の審議において、特に問題となりました数点について、野党側の論点を批判しつつ、我が自由党の見解を披瀝いたしたいと思うのであります。その一つは、いわゆる自衛力が漸増、我が国の防衛の問題であります。そもそも独立国としての我が国は、みずからの安全と平和をみずからの力を以て守るべきは当然のことであります。併しながら、自衛力の根本は国力の回復充実と国民生活の維持向上にあります。これらと相待つて実情に即しつつ、漸次防衛力を増強するというのが最も着実なる段階であり、最善の方策なりと信ずるものであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)而も国内の治安状況はどうでありますか。かの白鳥事件等を初め、全国的に起りつつある警察署或いは税務署等々に対するテロ的事件のごとく、政治的、革命的意図を背景とする暴力行為が頻々と起つておるではありませんか。(「どうだ共産党」「しつかりやろうじやないか」と呼ぶ者あり)この現状、いわゆる間接侵略の危険なきにあらざる現状に対しては、相当に強力なる治安組織が、量質両面に亘つて整備確立せられなければならないのでありまして、これこそは、まさに本予算案に警察予備隊等の増強費が盛られたゆえんであります。かかる自衛力の漸増が、憲法第九條にいわゆる戰力に該当せざるは理の当然でありまして、若しそれ、憲法第九條の戰力という言葉の範囲を不当に拡張して、いわゆる潜在戰力の名を借りて論ずるごときに至りましては、煎じ詰めれば我が国は民間航空も商船も持つことができないというのでありましようか。勢の赴くところ、更には国民の存在すらをも否定することになるのではありませんか。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)又一方、我が国力の回復未だ十分ならざればこそ、安全保障條約に基いて我が国の防衛のために駐留する米軍に対して、負担の可能なる限度内において所要の支出をなさんとすることは、これ又当然のことであると思うのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)かかる考え方を非なりとする論議は、意識するとせざるとにかかわらず、結果において間接侵略のお先棒をかつぐこととすらなると思うのであります。(拍手)而もこの問題に対する野党各派の態度を見ますれば、或いは自衛力漸増そのものに反対するもの、或いは自衛力の漸増を生ぬるしとして再軍備の主張を思わせるもの、その他多種多様でありまして、その意識と歩調とは全く一致していないのであります。これらの態度は、いずれにいたしましても、現実に政権を担当して、国民の休戚を担う責任ある政府と我が與党との断じてとり得ざるところであります。(「その通りだ」と呼ぶ者あり、拍手)  次に、野党諸君の問題とする行政協定と憲法第七十三條との関係については、すでに一昨二十五日の本議場において、野党提案の決議案は完膚なきまでに論破され、否決せられましたので、あえてこれを繰返す煩を省きたいと思うのであります。  次に、私は更に防衛関係経費の内政費に対する関係について、これを敷衍してみたいと思うのであります。今仔細に防衛関係費の規模と内容とを検討いたしますれば、野党諸君の言われるがごとく、民生の安定を圧迫する厖大なものでは断じてございません。二十七年度の国民所得は五兆三百四十億円であります。これは金額において前年度の八%増でありますが、物価はCPIで四・四%、東京卸売物価指数において二・一%の上昇であり、賃金の増加一〇%、又人口は一・四%の増と推定されておるのであります。これらによつて国民一人当りの所得を算定いたしますれば、二十六年度には五万五千七十四円であつたのであります。同じ水準に引直して二十七年度には五万六千七百九十七円となりまして、約千七百円の所得の増加となるのであります。他方、安全保障及び終戦善後処理費の合計は、二十六年度において約千二百六十五億円、二十七年度において約千八百二十億円、これを前同様の計算で国民の一人当りに計算をいたして見まするならば、二十六年度は千四百九十七円、二十七年度は三千百二十六円であります。これを簡單に要約いたしまするならば、成るほど防衛費のために国民の一人々々は五百六十一円の負担の増加になつておるのでありまするが、半面において一人々々の所得の増加は千七百円あるのであります。従つて国民一人々々の消費乃至資本の蓄積に充当する分は千百円以上増加するということになるのであります。この計算によりまして、最も端的に防衛費が国民生活に対し過重負担とならないということが明瞭になるのであります。(「どつから出て来た」と呼ぶ者あり)なお又国民負担の軽減についても、野党側は例によつて、或いは歳入の見積りに、或いは特に少額所得者の取扱について何とか難癖を付けておられるのでありまするが、私は贅言を省きまして、二十四年度における国税の納税人員が千九百十一万九千人であつたのに対しまして、二十七年度のそれは千百九十三万人、その間実に七百二十万人の国民が直接国税より解放せられたる事実を以て、何よりも雄弁にこれを反駁せんとするものであります。(拍手)  一方歳出における内政費の増加を見ますれば、食糧増産を初めとする産業振興費、国土保全開発費、社会労働保険費、教育文化費、この四つの合計では前年度に比し約千億円の増加となつておるのであります。しかのみならず、これらはCPI、物価指数、賃金等の加重平均をとつて総合指数を算出いたしますると、物価の変動を考慮に入れて、なお且つ右の各費目ごとに一番少いもので二%、次は八%、次は一四%、更に二五%等というような実質上の歳出の増加になつておるのでありまして、物価が上るから実質的に歳出は減ずる、或いは事業量が減ずるというがごとき野党側の論難は全く当らないのであります。(拍手)  次にインベントリー・フアイナンスの問題であります。昭和二十六年度までの予算審議の際は、野党側はこれを一般会計から繰入れることを以て超均衡のデフレ予算なりと断じ、これに強く反対する態度を諸君はとつておられたのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)本案においては、国際収支計画に照応してその額を大幅に削減し、その結果内政費の増額に貢献しておるのであります。誠に適切なる措置と言わなければなりません。然るに今日は逆に野党側から、この計上が少きに失するからインフレの一原因になり、当を得ずとする御意見を現に開陳されておるのであります。野党側の主張はかくのごとく定見がないのであります。(拍手)又本案におきましては、遺家族の各位に対しまして、敬弔の誠意を披瀝せんとする経費が計上されてありますることは御承知の通りであります。然るにその趣旨には賛成することを前提といたしながら、この補償措置のうち交付公債八百八十三億円はインフレの要因になり、赤字財政となる旨の冷い意見を開陳せられた野党の委員もあつたのでございます。このインベントリー又は交付公債についての論は一、二の例に過ぎないのでありまするが、如何に政権に縁の遠い小会派の御意見であるにいたしましても、前後撞著したり、或いは又評論的な、余りに評論的な御意見であり、延いて反対のための反対なりとの批判は免れがたいのであります。  さて、私は国民経済を充実し、特に金融の正常化とその疏通を図る方策の一つは、現状においては財政資金の大幅投資であると考えるのであります。本予算案においては財政投資の総額は千百八十五億円でありまして、前年度に比し減少いたしておるのでありますが、これとても仔細に検討すれば、開発銀行、輸出銀行、農林漁業資金特別会計、国民金融公庫、住宅公庫等のいずれにおいても、現実の貸出計画は前年度に比し相当多額になつておるのであります。私は政府が迅速にこれらの資金の活用をせられまして、或いは更に積極的な措置を講ぜられまして、基礎産業はもとより、特に中小企業の救済と育成とに更に万全の措置を講ぜられたいと思うのであります。  ここに特に申添えたいのは、産業の基礎條件でありまする動力源の問題であります。我が党はすでに政府と緊密な連絡の下に、差当り新規出力二百五十万キロワツト造成のために、電源の総合開発促進に関する法案をすでに国会に提出の運びといたしているのでありまするが、この計画に所要の資金約千二百億円中、二十七年度の所要財政資金六百億円余りは本予算案に関連する資金計回に計上されておりますることは、誠に我が意を得たるものがあるのであります(「選挙対策としてね」と呼ぶ者あり)私はこの計画の実施を基礎といたしまして、昭和三十年において、国民生活は戦前の九二%、鉱工業生産指数は戰前の二〇〇%、国際収支の受拂それぞれ三十億ドルに近い国民経済発展の規模を計画設定し得るものと確信いたすものであります。私はこの際、政府におかれても長期に亘る経済自立計画を立てられ、その計画の上に世界経済の偶発的影響に左右せられることのないような機宜の調整を行い、進んで日米経済協力、東南アジア経済計画に成果を挙ぐるごとく一段の努力を傾けられんことを切望いたす次第であります。(「夢物語」と呼ぶ者あり)私は本予算案についていろいろの角度からこれを検討して参りました。而して我が国の置かれたる環境と内外の諸要請を顧み、本予算案に満足の意を表し、あえてフルマークを以て賛成をいたすものでございます。(拍手)  諸君、本月の十一日、イギリスにおきましても来年度の予算案の審議が始められた模様でございます。英国民多数の支持によつて成立いたしましたチヤーチル内閣が、バトラー蔵相の財政演説によつてその財政政策を展開いたしたのであります。このことは奇しくも昭和二十四年、過ぐる総選挙によつて大勝を博しましたる我が党が、吉田内閣の下、同年四月池田大蔵大臣の財政演説によつてその財政政策の全貌が明らかにせられたときと相似るものが甚だ多きを感ずるのであります。当時我が吉田内閣は終戦後の混乱、わけても前内閣及び前々内閣の失政のあとを受け、すでに起りたる滔々たるインフレを収束することに(「みつともないぞ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)その政策を集中し、新たに單一為替レートを設定し、これを通じて国際経済のうちに入つて行く目標を明らかにいたしたのであります。今日イギリスにおけるチヤーチル内閣は、防衛と民生安定の二大問題に悩みながらポンドの価値回復を図り、国際収支を改善し、まさに起らんとするインフレ抑制に懸命の努力を傾けつつあるのであります。私は彼我を対照し、又過去数年間の実績を顧みまして、吉田内閣の功績の偉大なりしに思いをいたさざるを得ないのであります。(拍手)  私は平和條約の発効を迎える今日、二十七年度予算案の適実なる実施を第一歩として、我が吉田内閣は独立回復に伴う自主的見地に立つて、新日本建設のため内外の諸施策に亘つて総合的な長期計画を設定し、国民の向うべき希望を明らかにされ、長く政局を担当して盛んに経綸を行い、ますます国民の期待に副うごとく勇往邁進せられんことを(「もう直きわかる」と呼ぶ者あり)心から所念いたしまして、私の討論を終ります。(拍手
  68. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 波多野鼎君。    〔波多野鼎君登壇拍手
  69. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 今愛知君の長講舌を承わりまして非常に感銘いたしました。(「その通り」と呼ぶ者あり)物も見方どいうことがありますが、ああいうふうにも物は見えるものかという点を感心したのであります。(拍手)不幸でありますが、私は愛知君の(「あれは茶坊主だよ」と呼ぶ者あり)所論には反対であります。そうして社会党第二控室を代表いたしまして、政府予算案にも反対せざるを得ないのであります。(「誠に因果だな」と呼ぶ者あり)  今度の予算案を見ておりまして、一番問題となりました戦力の問題であります。これにつきましての政府の解釈は甚だ不統一であります。最近まで明確な解釈を示しておりません。只今愛知君は、自衛力は戰力じやないということを頻りに言われましたけれども、これは日本国憲法第九條第二項をよく勉強しておられない証拠だと私は思います。(拍手)更に又この日本国憲法が制定されましたときの衆議院並びに貴族院における速記録をよく御覧になれば、今の愛知君のような議論は出て来ない。(「その通り、その通り」「よく勉強しなさい」と呼ぶ者あり、笑声)予算委員会におけるこの問題についての政府答弁を見ておりますと、例えば最初は原子爆弾やジエツト機がなければ、これは戰力じやないと言つておつたかと思いますと、今度は二千億円程度経費では戦力にはならない、こう言う。更に又三転いたしまして、近代戰を有効適切に遂行する力でないから戰力じやないと言う。更に又陸海空軍と同じ力でないから戰力じやないと言う。どこが政府の確定的な意見であるか、捕捉するに苦しむのであります。私が……、(「総合的に」と呼ぶ者あり)私が予算委員会においてグロムイコソ連代表がサンフランシスコにおいて平和條約に対する修正案を出した。その修正案の中に、日本の自衛のための軍備として認めるべきものとして挙げたあの数字を挙げまして、これは果して近代戰を有効適切に遂行する力であるか、日本国憲法に言う戰力に当るのか、当らないのかという質問に対しましては、何ら答え得ないのであります。かような不明確な、非常に動揺的な憲法解釈を以てこの警察予備隊、海上保安隊の増強を図ろうとしております。誠に国民を愚にするものだと考えざるを得ない。(「ノーノー」と呼ぶ者あり)  元来日米安全保障條約を結びましたときに、すでに自衛力漸増の約束をしてしまつた。而して米国駐留軍が日本におることになるのは、日本に戦力がなければその独立と安全とが保たれないから日本に駐留するのである。併し長く駐留することは米国も、米国民も好まない。できるだけ早く引揚げたい。併し日本には戰力がなくちやならん。その引揚げたあとの戰力の穴埋めは日本でやる約束をした。それが即ち自衛力漸増ということなんです。自衛、力というものは、だからあの日米安全保障條約の精神から言えば、アメリカ駐留軍の力と同じ力なんです。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)これでなければ日本の独立と安全は保たれないという認識に立つてあの條約を結んだはずであります。私どもが自衛力の問題について如何に政府に尋ねましても、言を左右にし、三百代言的な言辞を弄して明確な答弁を與えないのであります。こういう態度そのものに我々は非常に不満を感ずるのであります。私どもを含めて国民一般は、警察予備隊、海上保安隊が増強されます、これはもう明らかに戰方だと皆思つておる。そう思つていないのは自由党の諸君政府当局である。(「国民全体」と呼ぶ者あり)  この国民の良識に対して政府予算委員会において挑戰をしておるのであります。烏を鷺と言いくるめておる。良識に挑戦し、良識を無視した政治というものは民主政治ではありません。(「その通り」と呼ぶ者あり)民主政治は国民の良識の上に立たなければならない。ごまかしの上には民主政治は成り立ちません。ごまかしの上に立つ政治は専制政治にほかならん。(「良識は独断でない」「もう一遍言つてみい、わからなかつたよ」と呼ぶ者あり)昔秦に趙高という人がありました。この人は鹿を指してこれは馬だと説明いたしました。これから馬鹿という言葉が起つたことは皆さん御承知の通り。(拍手)私は吉田総理は、(「それがわかつたろう」と呼ぶ者あり)主権者たる国民に向つて、鹿を指して馬だと強弁しておると私は思います。秦の趙高と同じだ。(「その通り」と呼ぶ者あり)かように国民を愚弄して、どうして民主政治が発展いたしますか。国民と共に民主政治をやらなければならん。国民の良識と合致した政治をやらなければならん。私はかような意味においてこういう警察予備隊、海上保安隊の経費を含む予算には反対せだるを得ないのであります。  更に又二十七年度予算案の基礎となつております行政協定そのものについても問題があつた。併しこれは政府も結局においてはあの行政協定は條約であるということを認めたのであります。條約であることを認めたが、併し憲法第七十三條によつて国会の承認を経るを要しない條約だと逃げたのであります。(「これも馬か鹿か」と呼ぶ者あり)これも非常な詭弁である。日本国憲法は主権在民の精神に立つております。主権者たる国民に相談しないで国と国との約束を結ぶということは、これは日本国憲法の精神に反する。憲法第七十三條には、国会の議を経ないでよろしいなんという條約は認めておりません。ただ残念ながら我が参議院におきましては、この問題について一つの態度を決定いたしました。即ち行政協定は條約であり、国会の承認を求むべしという決議案を否決いたしました。非常に残念なことであります。併しそういう意思が決定しました以上、私どももそれに従わなければならない、民主主義の悲しい約束であります、これは……。ただ、私どもの恐れるのは、後世の歴史家が、ここに専制政治への第一歩と主権在民の権利への冒涜を発見するのではないかという点であります。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)  行政協定に基く支出の中で、安全保障諸費の中で、四百数十億に上る経費は駐留米軍の移動の費用であると大蔵大臣は説明しております。然るに先ほど委員長報告にもありましたように、リツジウエイ総司令官は、米軍の移動の経費は日本側には少しも負担させないということを言明したと新聞に報ぜられております。果してどちらが真実であるか、これは今後の推移によつて我々が的確につかむでありましよう。大蔵大臣が嘘を言つたのか、リツジウエイ司令官の声明が違つておつたのか、今後の推移によつてはつきりつかめましよう。ただ併しここではつきり言えることは、すでにあたかも米国側の意向として、警察予備隊は十八万に増員したいという要望があつたということも報ぜられておる、この点につきまして、政府は二十七年度中には決してこのような措置はとらないと言明いたしました。この言明は一応信用いたしましよう。併しながら我々が考えなければならんことは、二十七年度の安全保障諸費の中には、もうすでに警察予備隊の経費が忍び込んでおるのであります。他方、財政法の改正によりまして繰越明許の制度を拡大いたしましたのであります。これらのことを併せ考えますと、二十七年度の安全保障諸費のうち、四百数十億円に上る米軍移動費はこれを使用しないままに二十八年度に繰越して、二十八年度において十八万人への増員の目的を達せんとしておるのではないか、そのような疑いが起るのは当然であります。これを疑問としないのはどうかしていると思うのです。このようなごまかしの予算に、我々はどうしても賛成することはできない。池田大蔵大臣は誠に外国に対しましては寛仁大度であります。惜しみなく與える人であります。米国の対日援助費、これは日本の債務であると了承いたしますということを進んでアメリカ政府に申出ております。今又総司令官が、米軍駐屯費は日本側に負担させないという意向を漏うされたにかかわらず、断じて日本側において負担いたしますと申しております。(拍手、「自由党何とか言え」と呼ぶ者あり)他方軍人遺家族援護費は削減いたしまして、そうして厚生大臣に詰腹を切らせた。このようなことを思い合せて考えますと、大蔵大臣は一体何を考えているか、何をなさんとしているのか、国民が奇異の感を抱くのは当然のことであります。  第二に、二十七年度の予算案は民生圧迫の予算案ではない、内政費を圧迫しておらないということを愛知君も力説しておられました。併しながら政府が歳出予算の主要な内容として説明しているところをよく読んで御覧なさい。前年度に比べて二十七年度予算の増額は五百九十億円であります。その増加の大部分、これはいわゆる平和回復諸費に当てられてしまつている。内政費を圧迫しておらんと言いますが、成るほど食糧増産の経費は三百十億から四百三億円へ、約九十三億円増加さしております。これは選挙が近いからであります。(拍手)併し産業投資のほうはどうであるか。これは千四百三十五億円から千百八十五億円へと二百五十億円の減少であります。而も産業投資千百八十五億円のうち二百三十億円は、これは一般会計から出したものではない、資金運用部からの出資であります。だからこの分を差引いて一般会計からの歳出だけを見ますと七百五十五億円、二十六年度の一般会計からの産業投資はこれは千三百五億円でありましたから、一般会計から出ておる産業投資は昨年に比べて正味五百五十億円の減少であります。民生安定費は四百六十億円から五百二十七億円へと僅かに六十七億円の増加、文教の振興費に至りましては五十七億円から五十億円へと七億円の減少であります。政府が歳出の主要内容として誇つておる説明を見ただけでも、如何に内政費が圧迫されておるかということがわかる。更に政府機関予算を見ますと、この点は一層明白になる。例えば施政方針演説においても総理は住宅の問題を取上げられました。非常に結構な着眼点であると我々も感心しておつた。ところが住宅金融公庫、これへの出資を御覧なさい。二十六年度には一般会計から八十億円出しておりました。二十七年度には五十億円であります。三十億円減らしておる。運用部資金から二十七年度に百億出しておりまして、それで二十七年度は総計百五十億円の住宅金融公庫への出資になりますが、この運用部資金から借りて参りましても二十七年度の百六十億よりは十億円少いのであります。ただ本年度回收金が十七億円見込んである。去年は七億円だつたという。ここでやつと辻褄を合せまして百六十七億円、昨年と同じだというところへ持つてつている。非常に苦心いたしております。更に国民が非常に困つている金融の問題、国民金融公庫への出資分、これを見て御覧なさい。これも昨年と全く同じなんです。而も更生資金貸付分につきましては、昨年二十六年度は三億円を出しておりましたけれども、三十七年度にはゼロになつております。一文も出さないことになつております。更生資金の出資はない、国民金融公庫から更生資金を借りようとしても借りられないといつたような形に現われて来ておるのであります。内政費を圧迫しないというようなことの如何に詭弁であるかということは、これらのことを見ただけで明白なんです。  更に第三に、二十七年度予算案の基礎條件がすでに変化いたしております。この点も政府は頬かむりしておるのはいけないと私は思う。政府がこの予算を組むに当つて見通しておりました重要経済指標の中で、鉱工業生産指数、これは二十六年度の一二八・七に比べて二十七年度には一四〇・六になる、即ち九・二%の増加になると見込んで予算を組んでおります。併しながらこの鉱工業生産指数の上昇ということは、日本経済の基本的な性格から言いまして、外国貿易に依存する度合が非常に高いのであります。原材料の輸入がなければ鉱工業生産指数の上昇はあり得ない。そこで、然らば二十七年度の貿易を政府は如何に見て予算を組んだかというと、輸入の面におきましては、二十六年度の十九億ドルに対して二十七年度には二十一億ドルと、即ち一二%輸入が増加すると見込んでおつた。輸出のほうについては、二十六年度の十三億ドル強に対しまして、二十七年度は十六億ドルを見込んでおります。即ち約二〇%の増加を見込んでおります。こういうことが基礎になつて予算が組まれておるのだ。ところが世界の情勢はどうだろうか。ドル地域への輸出は貿易障害がだんだん多くなつてつております。取引は決して甘いものじやない。取引は決して外交辞令ではないのであります。で、ドル地域への輸出に関する将来を見ましても、皆さん御承知の「まぐろ」の罐詰、アメリカ側がこの罐詰の関税の引上の動きを示しておる。更にこれに引続いて陶磁器の輸入関税の引上が計画されておる。自転車の輸入関税の引上が企てられておる。更にミシンの輸入関税の引上が企てられておる。問題は次から次へと日本のドル地域への輸入が困難になるような問題ばかり出て来ておる。(「心配することないよ」と呼ぶ者あり)ボンド地域への輸出はどうなるか。イギリスが今や、先ほどバトラー蔵相の功績を讃えられたようでありますが、とにかくイギリスの経済は非常な苦境に立つて参つた。手持金並びにドル為替手形の総額がすでに十七億ドル、十七億ドルですよ、十七億ドルに下つておる。二十億が危險線だと誰でも言つておる。その危險線を割つて十七億ドルに下つて来ておる。この危機に対して、イギリスとしては対外収支を改善する方法として、どうしても輸入の削減をやらなければならん。これはもう定石なんだ。そこで日本からのボンド地域への輸出ということが非常に困難になつて来ておる。そればかりじやない。イギリスを中心とするイギリス帝国ブロツクなるものが次第に頭をもたげかけて参つております。第二次大戰の前夜とまさにひとしいようなイギリス帝国ブロツクの結成が伝えられておる。我々が昨年から要望しておりましたGATT、通商及び関税に関する一般協定への加入も、イギリス側の反対によつて、この加入の見込が薄いということは政府側もはつきり言明しておる。ところだが、このGATTに加入ができないと、日本商品に対する差別待遇を封ずる途がないのであります。GATTへの加入を許さんということは、日本商品に対して差別待遇をするという意思を表明したことなんだ。昨年結びました日英支拂協定の大失敗、これは私がこの席上でもこれは失敗であるということを警告したこともありますが、この大失敗のことが今日現われている。九千方ボンドを超ゆる手持のポンドに手を焼いておる。そうしてこの対策としてボンド地域への輸出を抑制するといつたような、まさに自殺的な貿易政策をとつておるのだ。大蔵大臣はポンドの手持が多いことを誇るかのごとき口吻を漏らしておりました。使えぬ貨幣がどんなにあつたつて役に立ちません。使えぬ札束を数えて喜んでおるのは守銭奴のやることでありまして(「本当だ」と呼ぶ者あり)一国の財政を切り盛りする蔵相がそんなことを考えては駄目であります。(拍手、「その通り」と呼ぶ者あり)日英支拂調整会議も物わかれになつたということを新聞は報じておる。日本の弱腰を見すかされておるのであります。ボンドの実勢相場と公定相場の開きが今日のごとくあるときに、日本だけが正直にポンドの公定相場にしがみついているようなことで、どうしてこのボンド過剰の問題が解決できましよう。ポンドの実勢相場によつて取引をする途を開くべく政府は強硬な態度を以て臨まなければならない。而もこれは国際信義にちつとも反しないと私は思う。なぜなら昨年日英支拂協定を結んだときの情勢、特にイギリス側のイニシアテイヴによる情勢の変化が著しいのでありますから、我がほうとしてはそのことを会議に持出して日本側の主張を改めて出すべきだ。それを出し得ないで物わかれになつておる。そんなことをやつてつてどうして貿易の前途が打開できましよう。貿易の前途が打開できなければ、この鉱工業生産一四〇・六という、予算編成の基礎になつたこの見通しは崩れて行くのであります。現に安定本部においてはもうすでにこの作業を始めたと言われておる。そうして一四〇・六にはならない、一三〇・六ぐらいのものだろう、こんなふうに新聞にも報ぜられておる。すでにこのような情勢の変化があれば、現在の予算においては根本的な改訂、修正が加えられなければならない。現に皆さん御承知のように綿業においては何割操短だ、化学繊維においては何割操短だ、ゴム工業は何割操短だ、更に鉄鋼業に至るまで操短の問題が起きておる。今まで外国の闇市場、いわゆるグレイ・マーケツトに輸出しておつたところの日本の鉄鋼業……、外国の闇市場、グレイ・マーケツトが消滅して、公定価格でなければ買わないということになつて来ると、グレイ・マーケツトに依存しておつた日本の鉄鋼業は上つたりであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)これも操業短縮をやらなければならないと言つておる。失業者が続出いたします。こんなことをやつておれば法人税の収入なんか入つて来ない。国民所得は減るばかりだ。こういつたような諸問題を考えただけでも、政府は本当に良心があるならば、この予算案の審議においてこういうた情勢を国民と共に考え、それこそイギリスの政府がやつておるように国民に本当のことを訴えてですよ、そして国民の協力を求むべきなんだ。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)それをいつまでも烏を鷺と言いくるめる詭弁を弄し、国会を乘切ろうという、全く非民主的な態度に終始いたしております。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)このような基礎條件が壊れた予算に我々は賛成しようと思つて賛成はできない。我々は国民の代表として、議員といたしましての責任においてこれは否決しなければならんと思う。(「その通りだ」「反対の内容がちつともわからん」と呼ぶ者あり)皆様がたの……(「お茶坊主政府じやないか、パンパン政府じやないか」と呼ぶ者あり)我々は、参議院が本当に政治的な良心を振い起しまして、政府に一大警告を與えるべきときは今であると確信いたすものであります。これを以て反対演説を終ります。
  70. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 小林政夫君。    〔小林政夫君登壇拍手
  71. 小林政夫

    ○小林政夫君 只今議題となつております昭和二十七年度予算三案については、それが單に講和発効に伴い完全な独立国としての第一歩を踏み出す最初の予算として重要であるということにとどまらず、独立回復に伴う今後の国政運営の基本的方向を示す予算として、即ち将来の国政の(「賛成か反対か」と呼ぶ者あり)進路を示す指標として重大な意義を持つものとしてこれを重要視しなければなりません。(「賛成か反対か、どつちか」「默つて聞け」と呼ぶ者あり)このような立場から、政府提出の原案については幾多の疑問と欠陷を認むるものでありますが、(「反対か」と呼ぶ者あり)平和條約の発効その他重大な国際事情を慎重に考慮して、次に述べる若干の警告と要望を附して、緑風会を代表して賛成をいたします。(「大分苦しいね、賛成が」「若いんだから反対せい」と呼ぶ者あり、拍手)  先ず第一に、二十七年度予算において大きな部分を占めるいわゆる平和回復に伴う諸費に関する問題であります。即ち一般会計歳出予算総額八千五百二十七億円の約四分の一に当る三千三十三億円が計上されておりますが、この経費が二十七年度以降どのような規模において処理せられるかは、我が国民経済上の重大な関心事であります。日米安全保障條約に基いて、政府は自衛力漸増方針を持しており、他方、今後賠償義務の具体化等によつて、本経費は漸増の傾向が予想せられるのであります。従つて勢の赴くところ、将来著しく内政費を圧迫するに至るのではないか、或いは増税の懸念はないか、ひとしく憂慮せられるところであります。政府は二十七年度の内政費について、外国為替資金に対するいわゆるインベントリー・フアイナンスを除外すれば、二十六年度に比し五百八十五億円増加しておると言つておりますが、その増加額は二十六年度の外国為替資金に対するインベントリー・フアイナンスを除いた内政費五千五百五十九億に対して一〇・五%に過ぎないのであります。更にこれを政府提出の「歳出予算の分類書」によつて物価変動の影響を受ける費用のみについて細かく検討をして見ると、即ち二十七年度予算は、二十六年度補正予算とは同じ物価水準に塞ぐといたしましても、それは二十六年度当初予算編成時の物価水準に比べて二五%方騰貴しておるので、二十六年度当初予算額に一・二五を乗じたもの、即ち二割五分増額したものに補正予算額を加えたものと、二十七年度予算額を比較して見ますと、教育文化費において一二%、産業振興費において一七%、物価安定費において一六形、国土保全及び開発費において三男それぞれ減少しておるのであります。僅かに社会労働保険費において八%増加しております。而もこれは後に述べる不十分な遺家族援護費が計上ざれたために増加したのであります。なお先ほども問題になつておりましたインベントリー・フアイナンスを除いた政府資金の産業等への投資について見ますと、二十七年度の総額は千二百億円、二十六年度は補正予算を含めて千四百八十億円であります。開発銀行、輸出入銀行、国民金融公庫、住宅金融公庫の回収金による投資増加額は、二十七年度三百二十七億円、二十六年度七十五億円であり、これを新規投資分に加えれば二十七年度は千五百二十七億円となり、二十六年度は千五百五十五億円となるのであります。二十七年度はノミナルな金額においても二十六年度に比し減少をしております。物価水準の相違を考慮すれば、実質的には著しい減少であると言わなければなりません。(「その通り」と呼ぶ者あり)これを要するに、三十七年度の内政費は実質的には二十六年度に比し、すでに圧縮されておるのであります。政府は飽くまで民生安定、国民生活水準の向上を第一義とし、もの基礎の上において自衛力の漸増、治安の確保を期し、又賠償問題についても同様の考えであること、及び増税は行わぬ旨を言明せられたのであるが、二十七年度の内政費が二十六年度に比し実質的に圧縮されている点にも鑑み、なかなか言うは易くして行いがたいのであります。(「反対理由ばかりだ」と呼ぶ者あり)言うまでもなく民生の安定あつてこその治安の確立であり、民生安定なきところ如何に治安機構の整備が行われても砂上の楼閣に過ぎんのでありますから、政府はこの点篤と銘記し、万難を排してその言明通り実行されたいのであります。  第二に、自衛力漸増が如何なる規模において、又テンポにおいて行われるかは、憲法第九條の戰力の問題とも関連して極めて重大なる関心事であります。予算委員会における質疑応答を通じての結論は遺憾ながらこの点については明確にならなかつた。このことは将来に対する不安を持つと共に、二十七年度における警察予備隊及び海上警備隊の増強も、実は無計画な、場当り的な増強というそしりを免れないのであります。政府は速かに計画を具体化し、これを明らかにするの措置をとられたいのであります。又同時に自衛力の戰力化については憲法改正を必要とするのであるから、漫然と今日のごとき状態で推移することなく、速かに戰力と戦力ならざる限界を明確にし、必要に応じ憲法改正についてあまねく国民の総意に問うの措置も考慮せられたい。政府のあいまいなる弁明や措置は、自衛のためには戦力保持もやむなしと思つておる向きにとつても、一面これがために曾つての軍閥政治或いは警察国家の再現等により、民主政治の根底が破壊されることになるのではないかという甚だしい危惧の念に駆られるのであります。  第三に、民生を安定し、国民の生活水準の向上をも図りつつ自衛力を漸増し、賠償等講和に伴う諸経費を賄う途は、産業及び貿易を大いに振興する以外には途はありません。然るに今年に入つて国内市場は需要の増大が期待できず、特に繊維産業の操短を初め、一般的に縮小生産の傾向が顕著に現われております。仮に下半期に景気が上昇したとしても、電力需給の実情から見て大幅な増産は到底期待し得ないでありましよう。海外の諸情勢、特に米国では軍拡計画の遅延等により、従来不足していた鉄鋼を初め重要物資の需要状況も緩和の傾向にあり、一般物価も横這い乃至下り気味で、消費者の購買力も緩み、民間の投書活動が全般的に鈍つて来ております。一方スターリング地域の輸入制限措置内容及び日英支拂協定の調整措置の如何によつては、同地域との貿易縮小が憂慮されるのであります。マーカツト声明の真相の詮索は別として、外資導入の望ましいことは何人も異存のないところであります。政府は粘り強く障害を克服して、電源開発、船腹増強等の資金確保に努力すると共に、敏速果敢にあらゆる施策を産業及び貿易の振興に集中さすべきであります。百五十億円くらいの政府資金の撒布で意を安めではならない。特に産業及び貿易政策においては、時、タイムこそが最も重要な要素であります。最近ポンド累積対策として為替措置乃至輸出抑制措置が講ぜられておりますが、輸出市場の開拓は一朝一夕になるものでなく、長期間に亘る不断の努力を必要とするものである。我が国としては常に貿易の拡大を基本方針とすべきであり、為替面や金融面の一時的必要によつて貿易振興の根本政策を曲げることは当を得た措置ではないのであります。海運の増強は貿易振興の必須條件であり、自立経済達成のため必要とする国際収支改善の先決要件でもあります。然るに政府は今日なおこれに関する基本的政策を確立することなく、二十七年度における造船量すら未だ確定し得ざる状況であり、誠に寒心に堪えないのであります。政府は諸外国における海運政策の動向に留意し、少くとも我が国海運力を国際的水準に維持せしめるため、各般の施策につき速かに確固たる方針を決定実施すべきであります。  第四に農林漁業施策について。食糧増産対策費を相当大幅に増額したことは多とするのでありますが、肝腎の米麦の価格について十分なる考慮が携われておらないのは遺憾に堪えない次第です。増産の重点は価格政策にあるのでありますから、米価審議会を可及的速かに開催し、米麦の価格を根本的に検討すべきであります。米麦の価格については、ノミナルな価格引上は消費者の負担増となるからできるだけ避けなければならない。然るに農業経営費の中心をなす肥料、飼料は統制撤廃後急激に上昇し、これが農業パリテイ上昇の原因となり、米価引上を招来しておるにもかかわらず、これらの農業生産資材の価格調整については殆んど放任されておるのであります。農業生産を確保し、生産費を引下げる見地から、より積極的な考慮が望ましいのであります。又主食の需給計画は必ずしも楽観を許さない。麦の統制撤廃問題は法案提出の場合別途慎重に審議することでありますが、政府の需給計画は甘過ぎるのではないか。本年の供米数量は近来にない減少であり、麦の作付面積は七万町歩の減反であります。外米輸入計画も昨今の情勢から簡單には行かないはずである。真剣に検討し、政策実施に愼重を期すべきであります。  次に北洋漁業について。この母船出漁が中途で駄目になつたことは政府の無定見の暴露であり、徒らに業界を騒がしたに過ぎない。講和発効と共に我が水産業は飛躍期に入るのでありますが、李承晩ラインの問題、ソ連、中共の漁船拿捕等、将来は必ずしも明朗でない。政府はこの際態度を明確にし、業界が安心して積極的に操業し得るよう万全の措置を講ずべきであります。第五に社会保障施策について一言します。学校給食費の削減、国立病院の地方移管等、社会保障施策の後退の傾向が見えることは甚だ遺憾に存ずるのであります。学校給食については、教育扶助費の増額と食糧管理特別会計の負担において或る程度の善後措置が講ぜられ、又国立病院の地方移管は必ずしも強制的には行わないとのことでありますが、これらは経費自体も全体の予算規模の下においては大した負担とも考えられないのでありますから、予算施行の上において善処せられたいのであります。  第六に、戰歿者遺族及び戰傷病者等の援護措置については、政府提案は薄きに過ぎるために、我々は他会派の同調を得て、未亡人、扶養者のない老年者に対する遺族年金の倍増、身体障害者のうちで特項症より第二項症までの障害程度の重き者に対する障害年金の増額、一時金交付の範囲の拡大等をなし、政府提出の歳出予算総額の枠内において可能な最小限度として六十億円の増額を企図し、その見返財源として政府機関運営費より四十億円、予備費より二十億円を捻出せんとしたのでありますが、残念ながら関係当局の了承が得られなかつた。政府は我々の意のあるところを汲んで、速かに戰歿者遺族及び戰傷病者等の援護に手厚い措置を講ずべきであることを強く要望するものであります。(拍手)  第七に地方財政について。政府は地方財政を軽視する傾向がある。財政規模の検討に当つて政府は常に国と地方とを併せ考え、国の財政のしわを無責任に地方自治体に寄せることがあつてはならないのであります。よし国の財政規模を縮小し、国税を軽減し得ても、他方、地方の財政が膨脹し、地方税が重課されるとするならば、国民としては何らその負担を軽くするゆえんでないことは三歳の童子といえども明らかなところであります。いわんや国の財政が膨脹化の動向を示しているときに嚴に戒心されなければならないのであります。例えば先に述べた国立病院の地方移管のごときは、政府の社会保障施策の後退でもあるが、又国の財政のしわを地方に寄せんとするものであり、又二十六年度の地方財政の赤字対策として認めた起債八十億円のうち、五十億円は二十七年度に予定された起債額六百五十億円のうちから繰上げ発行せしめようとし、而もこれがために生ずる二十七年度起債の不足五十億円の穴埋めをどうするか、はつきりした見解を示しておらない。このことは政府の地方財政軽視のテイピカルな事例であります。政府は地方自治の基本たる地方財政の確立のために、地方財政の実態把握の的確を期すると共に、地方税制の改革、地方行政機構の簡素能率化等、その措置に遺憾なきことを期せられたいのであります。  以上私は七項目に亘つて政府に対し警告乃至要望を附したのでありますが、その間における政府施策の解明によつても一部窺われるごとく、我々が予算審議に際して痛感させられたことは、政府の諸施策は著しく計画性に乏しく、極論すれば場当りであり、その日暮しである。産業経済施策においても、災害復旧、公共事業等においても、防衛力の漸増計画においても、明年度の計画が示されたのみで将来の目標乃至計画については殆んど説明せられていない。自立経済達成のためには、これらの諸施策につき総合的な長期計画を樹立し、国力の許す最大限度において一歩々々前進して行くことが絶対に必要であります。而して国の財政計画は、むしろこれらの諸施策の遂行を最も有効且つ急速ならしめるためにこそ樹立せらるべきであります。占領行政に慣れた成行き任せの態度は、講和発効と共に完全に放棄せらるべきごとを最後に強く要望いたしまして私の賛成討論を終ります。(拍手、「それで賛成になるのか、緑風会は」「良心的じやない」と呼ぶ者あり)
  72. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 堀木鎌三君。    〔「定足数を欠くぞ、これは」「改進党がいないよ」と呼ぶ者あり〕    〔堀木鎌三君登壇拍手
  73. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 私は改進党を代表いたしまして、昭和二十七年度一般会計予算特別会計予算及び政府関係機関予算に対し、反対の意を表明いたすものであります。(拍手)以下主なる反対の理由を申述べたいと思います。反対理由を申述ベますに当つて(「改進党三人しか来ていないぞ」と呼ぶ者あり)自由党の愛知君の議論は私も波多野君と同様の感を深ういたしますと同時に、今の緑風会の小林君の議論に対しましては、私は殆んど以下反対の理由が同じなんであります。然るに一方においては予算案に賛成し、一方においては反対せざるを得ないのは、どこにその差があるかを深くおのおの考えるべきであると思うのであります。(拍手)  反対理由の第一は、予算案の基礎となるべき諸前提條件が頗る不確定であり、見通しの的確性を欠くことであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)予算規模は歳入歳出共に八千五百二十七億円で、対前年に比しまして、五百九十億円の増加を示し、国民所得推計五兆二百七十億円に対しまして、前年同様一七%という数字を示しておるのでありますが、この予算書に載りました国民所得推計そのものが頗る過大見積りであるのであります。この点につきまして、愛知君は、この国民所得推計そのものを丸呑みにして、その上に立つて議論を進められたのでありますが、私はここでこの国民所得推計の過大見積りでありますことを詳述する時間的余裕を持ちませんが、多数の学者がこれは過大見積りである、こう言つておるのであります。そうして安本自身が最初国民所得推計をいたしましたときよりは、予算をいよいよ編成しますときには更に増額いたしました一事を指摘いたしましても、多いことがわかると思うのであります。それはともかくといたしまして、この国民所得推計五兆三百億刊を支えておるところの二つの大きな柱がすでに変化しておりますことは、先に社会党の左右両派が指摘いたしました点、今又小林君が指摘されました点と同じであります。その一つは国際収支であります。二十七年度において輸出二十四億ドル、輸入二十三億ドル、差引き一億ドルの受取超過となつておりますが、その内訳を見ますと、実際の商品貿易輸出が十六億ドルでありまして、輸入二十一ドルから差引きますと、実に千億ドルの赤字となつておるのであります。これを特需の三億三千万ドル、貿易外の二億六千万ドル、計六億ドルの受取超過によつて漸くカバーしておるという状況であります。而もこれを地域別に見ますときは、ドル地域では一般輸出輸入は七億ドルの赤字でありまして、特需、貿易外合せた六億ドルで補填しておつてもなお且つ一億ドルの赤字であります。明年度、二十七年度に関する限りは明らかにドル不足を示しておるのであります。又ボンド及びオープン・アカウント地域に対しては、輸出が十三億ドル、輸入十億ドルで依然受取超過であつて、これではポンドがますます累積せざるを得ないのであります。この傾向がすでに現在現われておりますことは、先ほど波多野委員が詳述せられたところで、省略いたしたいと思うのでありますが、結論的に申しまして、貿易規模の変更、縮小を免れ得ないということは万人認むるところであると思うのであります。(「それは違うよ」と呼ぶ者あり)更にこの状況を、一方国外はどうであるかということを考えて見ますと、英国は六億ポンドの輸入削減をいたしております。濠州も又五割の輸入削減をいたしております。ニユージーランド、インドネシア、タイ等、いずれも輸入制限の措置をとつておるのであります。而も肝腎の米国の景気は横這い傾向を続けておりますことを考え合せますと、貿易規模の縮小は必至とみなさなければならないと思うのであります。他の国民所得を支えております鉱工業生産指数につきましては、各委員から詳しく述べられまして、その過大見込を指摘されたのでありますが、私も同様にこれは過大見込であると考えなければならんと思うのであります。アメリカを初めとする軍拡テンポの緩慢化と、海外需要の減少によるところの輸出の減退、国内購買力の減少、国内投資活動の沈滞等によつて政府が予定しておりますところの鉱工業生産指数は、基準年次に比しまして、一四〇%六ということを見込むことは過大であろうと考えるのであります。すでに本年度においてこの徴候が著るしく現われて参つたことは波多野議員の指摘するところでありますので、再び繰返すことを避けますが、結論的に言いまして、この国際収支の点及び鉱工業生産の点から見まして二十七年度予算の前提條件はすでに崩壊しておると言わねばならんと思うのであります。然らばこれらをカバーするところの日米経済協力、東南アジア開発計画ということはどうなつておるかということを考えますと、これらについて政府からすでに聞き及ぶこと一年余を過ぎておるのでありますが、その実績は遅々として挙つておらないのであります。又外資導入につきましても、吉田総理が施政方針演説において述べられたところであり、又その他の機会においてもしばしば言明されておるのでありますが、事実は国民の期待を裏切る結果となつておるのであります。  次に、反対理由として問題にせざるを得ないのは防衛関係経費であります。二十七年度防衛関係経費が千八百二十三億円に及んでおつて、これは安全保障條約に基き、「直接及び間接の侵略に対する自国の防衛のため漸増的に自ら責任を負う」ところの約束に従つて計上せられましたものであることは、総理大臣及び大蔵大臣も明らかにしておるところであります。これらの経費に該当いたしますものは、二十六年度予算でどうであつたかと申しますと、終戦処理費九百二十億円、警察予備隊、海上保安庁経費等合せまして千二百六十五億円であつたのであります。二十七年度の経費はこれに対比して見ますと、実に急激なる膨脹を示しておるのであります。そのうち防衛支出金六百五十億円と安全保障諸費五百六十億円の殆んど大部分というものは、米軍の駐留に伴いまして我がほうにおいて分担いたしますところの経費であります。昨年、二十六年度終戦処理費九百二十億円に対比して考えて見ますと、この終戰処理費に対しましては、約一億ドルの裏付があつたのでありますが、これがなくなつてしまつたことと考え併せますと、実質的には我がほうの負担が大幅に増加しているものと言わねばなりません。又警察予備隊の経費は、二十六年度の初めの予算は実に僅かに百六十億円に過ぎなかつたものであります。それが平和、安保両條約を締結いたしますと同時に倍額になり、更に二十七年度においては五百四十億円となつたのであります。これも又急激に増加しておるものと言わねばならないのであります。而もこれら防衛関係経費千八百億円は、二十七年度の先ほど申上げました国民所得推計五兆三百億円に対して三分五厘の割合を占めておる、予算総額に対して二一%を占めておるのであります。戦前の我が国において軍備がありました当時におきましても、普通の場合におきましては、予算総額に対して占むる割合でありますとか、国民所得に対して占めております割合というものは、ほぼこの程度であつたのであります。で、欧州諸国におきましても、デンマークでありますとか、スウエーデン等の例を調べて見ますと、大体この程度の財政上の規模を占めておるのであります。従いまして私どもとしては、かく急激に増加して参りました、而も国民負担の割合も多くなつておる外国の諸例に比しても同じような割合であるということとなりますると、これと国民生活との調和をどうすべきか、その経費内容は果して妥当なるものであるかということを愼重に考慮する必要があるのであります。吉田首相及び池田蔵相は、口には敗戰後の日本経済の脆弱性と国民生活の維持向上を常に説かれるのでありますが、(「その通り」と呼ぶ者あり)驚くべきことは、どうして国民生活と防衛費を調和さすべきかの、その具体的方策が何らないことであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)軍事費と国民生活との調和こそは、今全世界を挙げて共通の悩みとなつておるのであります。無論その調和をすることの如何に困難なるかは十分察知することができますが、独立日本の第一歩に当つて、而も安全保障條約を締結した吉田内閣、講和前後政局を安定し、善後措置をその責任においてしなければならないと豪語しておるところの吉田内閣が、最も最初に取上げなければならない問題は、この問題でなければならないと思うのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり、拍手)然るに防衛関係経費において何ら将来の見通しと計画とを持つておらないのであります。予算委員会における審議経過を通じましても、吉田総理は、二十七年度防衛関係費千八百億円は最小限度と言われるのでありまして、大蔵大臣はすぐ慌ててそのあとから最大限度であると、こう言つたのであります。更に大橋国務大臣は、先に安保條約批准に際しましては、警察予備隊及び海上警備隊の増員は考慮しておらないと言いながら、今回は警察予備隊三万五千人を、海上警備隊六千人を増加し、なお二十七年度予備費中から海上警備のため小型航空機十機、乗員二百人を予定しておる。更に今後財政の許す限り増強しなければならないと言つておるのであります。又憲法第九條の戰力と自衛力漸増との関係において、木村法務総裁は「近代戰を遂行し得るに適切且つ有効なる装備編成を持つ総合的な力」であると、(「元気がないぞ」と呼ぶ者あり)こう言つておるのであります。大橋国務大臣も「近代戰を遂行するに足る軍事力」であると、こう言つておるのであります。如何に各大臣がこういう見解を持つておるか、こういう思想を包蔵しておるかということは、これらの問題から当然私は帰結できると思う。そうして、こういう見解から言いますと、近代戦を有効に行い得るまでは憲法を改正せずして戦力を持とうとしておるのでなかろうか。かく疑うのも当然と私は思うのであります。而も戦力をかくのごとく解釈した学者は未だ新憲法制定以来一人もないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)吉田内閣にして初めて事実の前に案出した解釈であります。(「正しければいいのだよ」と呼ぶ者あり)而もこの自衛力強化の第一年度として二十七年度予算提出しておきながら、年次計画を何ら示さない。将来に対して国民生活との調和を如何にし、その生活を如何に保障するか。何らの具体的計画がないというに至つては、私は国民に対して無責任であると共に、外国との約束に対しても不誠実なものと言わざるを得ないと思うのであります。更に防衛関係経費は、その内容について見ますときは、防衛支出金六百五十億円は、行政協定に基く経費でありますが、この行政協定が如何なる性質のものであるかは、波多野議員より指摘されましたので、私はここに繰返すことを避けます。(「もうやめなさい」と呼ぶ者あり)警察予備隊の経費五百四十億円のごときは、戰力にあらざることを掩い隠すに汲々たる余り、安保條約を結び、行政協定二十四條において共同措置を約束しながら、直接これと何ら関係なきごとく装おつて、その使命、目的を的確にしていないのであります。その編成装備に何ら自主性がないのであります。又アメリカから武器の貸與を受けながら、その契約の方針が何ら定まつていない、ただ何となしに貸し與えられておるという無責任なる状態であります。これではいずこの国の自衛力であるかと言わざるを得ないのであります。(拍手かくのごとく使命、目的について的確でなく、編成装備についても自主性なきものに、徒らに多額の経費を計上して、果して治安の目的を達し、直接侵略に対し力を発揮し得るや、全く意味のない無駄な経費と言うべく、むしろこの際将来に対し的確なる使命、目的に基き、具体的方策を研究樹立するこそ現下なすべきものと考えざるを得ないのであります。  安全保障諸費の五百六十億円中、五百五十億円近くは殆んど進駐軍の移駐の経費でありまして、これらについて詳しく申述べますことは、前議員の所説を繰返すことになるので、これ又省略いたします。(「みんな同じだ」と呼ぶ者あり)併しいずれにいたしましても、これは今後具体的事実が起つた場合に使われる経費であつて、まだ腰だめの予算、見込予算に過ぎないのであります。池田大蔵大臣は、従来この問題に対しては、どうして予算に計上しないのだ、こう尋ねますと、それは予算に計上する以上必ず具体的事実が確定し、計算ができるまでは予算に計上ができないのだと言うのが通例であります。然るに今回はかくのごとき腰だめ予算が起つておるのであります。以上防衛関係経費のほかに、外貨債の償還、賠償の支拂、対日援助費の返還等に百十億円と前年度繰越と合せて二百十億円しか計上していないのでありますが、外貨債の償還につきましては、すでに期限到来したものだけを拾い上げましても、元利合せて八百七十一億円に上つておるのであります。かれこれ防衛費の膨脹と外貨債その他の問題とを考え併せますと、今後追加補正を要し、国民生活はいよいよこの種の経費の圧迫に悩まなければならないということが考えられるのであります。  反対理由の三は、内政関係の経費でありますが、防衛関係経費の膨脹は必然的に内政関係経費の圧迫となつております。この点は自由党の愛知君が如何に強弁いたしましても、緑風会の小林君、自由党の最も御信頼になる小林君の意見においてもはつきりしておるのであります。蔵相の言によりますと、二十七年度内政費は六千四百九十四億円でありまして、二十六年度の六千三百六十一億円に対しまして百三十三億円の増加となつておるというのでありますが、これが物価騰貴の二五%、遺族援護費の二百三十億等を考慮すれば、何人も実質的に減少しておると言わなければならないのであります。従つて特定の費目に対して重点的な配分をいたしておるのであります。そうして常にこの点を挙げて、公共事業費で相当額殖やした、食糧増産対策費で相当殖やした、こういうことを言われるのであります。併し公共事業費が二百四十二億殖えましたのは何であるか。過去における災害が非常に多くて、その復旧ができていない。そうして国庫が負担すべきものを負担していないということから、而も全額は到底これをすぐに支出することができないから、先ず初年度三分の一を計上しようというので三百七十二億円を充当しておるのであります。無論せざるに遙かに増しであります。殊に今後の災害に対処すべきものとして当然するのはいいのでありますが、併しながらこれを以て実質的に公共事業費が殖えたごとく言うのは誤まりであります。更に食糧増産対策費二十六年度三百八億円に対しまして四百二億円を計上して、約百億を殖やしたとよく言われるのであります。併しこれを米価について考えますと、昨年の米価に対して僅か百八十四億円の増であります。そして食糧管理特別会計に対しましては、百億円のインベントリーを削つておるのであります。(「時間々々」と呼ぶ者あり)こういうふうな点から考えまして、すでに米価のパリテイ指数が予定の二五五に対しまして二五八・五九となつております。肥料、飼料の値上り等を考えれば低きに失するものと言わねばならないのであります。即ち一方においては食糧増産対策費で百億を増し、一方においては低物価で供出によつて百姓より百億以上のものを搾取しておるのであります。(「以てのほかだ」と呼ぶ者あり)遺家族援護につきましては、六年間全く顧みられなかつた人々に対する国家的な取扱の不公平を回復しよう。我が党といたしましても、先ほど緑風会の小林議員の言われると同様に、共同提案として修正いたさんといたしましたが、遂に不幸実現を見るに至らなかつたのであります。ただ指摘いたしたいことは、この問題について根本的対策が何も立つていない。而も暫定対策についても閣議決定を変えること二回であります。そして一人の大臣を犠牲にしておる。如何に私は誠意なきかということを感ぜざるを得ないのであります。(「解釈の相違」と呼ぶ者あり)更に財政投資に至つては非常な減少を来たしております。先ほど愛知君はインベントリーは野党の諸君はみんな反対したのだ。今更これを云々するのはおかしいというのです。ところが我我が反対したのは、一般税収入で以て大衆から財政資金を取上げておいてそうして超均衡予算を作りながら、一方においてはそれに何倍かする尻拭いを日銀の信用追加でやつておるから反対したので、單純な、簡単なことを考えることは許されないのであります。私はこういう財政投資、融資が少くなつて参りまして、而も自由党の一枚看板でありますところの電力開発、造船、石炭等に対しまして国家の投資金は非常に少い。従つて大部分を民間に求めなければならない状況であります。で、これはどういうふうにこれからなつて参るか。そうすると、こういう重点産業に少い資金を以て重点的にどうしても充てなければならない。そうすると、一般金融を圧迫するのであります。そうして一般金融の犠牲になるものは中小企業であります。更にこういう重点産業に対しましても、日銀追加信用をしなければ一般金融の途は付かないのであります。で、この傾向は現に著しくなつておりまして、すでに最近に至りまして、池田蔵相が百五十億を資金運用部資金の余裕金を以て金融債の引受をし、前貸百億、中小企業に対して五十億の追加融資をしたのであります。  更に最後に申上げたいことは、国民生活の維持向上を図ると言いながら、先ほど小林君の指摘したごとく何らの総合計画がないのであります。安本長官は常に産業の振興、貿易規模を拡大すれば、そのまま国民生活の向上を伴うごとく言うのでありますが、事実それが何ら解決策にならないことは、朝鮮事変以後鉱工業生産指数が上り、貿易規模が拡大したにかかわらず、国民の生活水準が低下したのを以ても明らかであります。(「時間々々」と呼ぶ者あり)  以上述べました理由によりまして、私は本予算案に対して反対するものでありますが、今指摘いたしましたように、防衛関係経費の計画は立たず、ポンド対策は立たず、手持外貨の使用方針は立たず、行政機構の改革は立たず、遺家族援護関係の方針は立たざるままに二十七年度予算審議を我々に求められたのでありますが、そうして而もそれば憲法に違反した予算であるということは学者の一致したところであります。(「ノーノー」と呼ぶ者あり)これでは我々に賛成しろと言われても(「もうわかつたよ」「時間々々」と呼ぶ者あり)賛成することができない予算であるということを附言いたし、これを以て私の反対理由といたします。(拍手
  74. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 駒井藤平君。    〔駒井藤平君登壇拍手
  75. 駒井藤平

    ○駒井藤平君 私は民主クラブを代表いたしまして、只今議題になつておりまする昭和二十七年度予算各案に賛意を表するものであります。(拍手)  我が国は平和條約の効力に伴い、独立し、同時に経済的にもみずからの責任と力によつて生き、国際義務を果し、更に積極的に国際社会に貢献すべき重大なる使命を負うことになるのであります。(拍手)併しながら或が国の経済は、御承知のごとくその基盤極めて薄弱であり、且つ占領六年有余の連合国の援助によつて跛行的回復をなして参つたのでありまして、再び独立国家として自立して参るに当りましては、幾多の困難を予想せざるを得ないのであります。この重大なる問題の処理は、二十七年度の予算如何にかかると申しましても過言ではありません。本予算案は占領下において、幾多講和発効後起るであろう諸般の情勢を考慮に入れつつ作成せるものと判断せられ、困難なる予測を克服して苦心して作成せられた点につきましては、政府の労を多とするところがあります。(拍手)併しながら本予算案を編成した当時と現在は非常に、僅か半年を経たずして変つてつているのであります。即ち朝鮮動乱の一時的平靜化、世界的軍拡の停滞、更に輸出の激減、停滞等でありまして、我が国の置かれている情勢は日進月歩、変転万化極まりないものでありまして、この予算案に対し、政府の方針施策には満足しがたき点が多々あるので、本来ならば政府に対し組替を要求せざるを得ないのであるが、諸般の緊急重大な問題の集積せる現状に鑑み、(「その通り」と呼ぶ者あり)且つ未だ占領下にあり、又敗戦国であるという冷厳なる現実を直視し、我々はここに厳重なる警告を附して本案賛成する次第であります。(拍手)  さて、今後の経済運営における課題は、国民生活の向上を終局の目的としつつ、国際関係から生ずる諸問題、経済の充実、発展のための要求及び民生の安定という見地からの要請を如何に按配するかにあると考えるのであります。又財政金融政策といたしましては、国民経済の正常にして能率的な機能をできる限り生かしつつ、必要な限度によりてこれに調整を加えて行かねばならんのであります。特に昭和二十七年度は我が国の経済が存立を維持し、発展し得るか否かを決する岐路に立つ年であります。経済の運営は一層堅実に且つ真劍に行う必要があるのであります。これを要約いたしますると、国民はひとしく我が国の経済、そして又自分たちの生活はどのようになるのであろうかということについて耳をそばだてて聞こうとしておることであります。これにつきましては、総理の施政演説、大蔵大臣及び安本長官のそれぞれの演説によつて、又私が同、諸演説に対する質疑、更に予算委員会等における同僚議員諸君質疑等によつて明らかにされたごとく、国民には耐乏生活を要望せられながらも、明るい見通しと希望を期待し得ることが明らかにされたのであります。これは国民として世情の混沌の中にあつて一抹の疑問を持ちながらも、今後政府のこの公約の忠実なる実施を期待し、待望しておるのであります。  然らば本予算案が実行に移されたならば、どのようになるかについて若干検討を加えて見たいと存じます。先ず第一に、予算総額八千五百億余円は、二十七年度総国民所得から考えるときは大体妥当な額と考えられるのでありまするが、本年度予算総額に比して五百九十億余円の増加を見込んであることは、国民総所得額の増加に比すれば若干少い憾みもあるのではありますが、この五百九十億余円の増加が何ら増税措置に基かずになされたことは、国民生活の向上を考慮に入れてなされたものと断ぜざるを得ないのであります。  第二に、平和回復に伴う支出総額を二千億余円見込んだことは、予算編成当時の客観情勢を考慮するならば、政府の苦心も察せられるのであり、日米安全保障條約の精神に基き、進んで相互安全保障の責任を果し、且つ国内治安力を確保増強する必要、又賠償、外債の支拂等の当然の義務的経費としては、最小限度のものとして認められるのであります。  第三に、内政費についてでありますが、先ず経済力増強のため食糧増産に重点を置き、人口増加、国際収支の観点等からする食糧自給度の向上を図るため、本年度の約三百億余円を四百億余円に増額し、国土資源の開発維持については、いわゆる公共事業費において約七百七十六億円を約九百八十九億円に増加し、配分の重点を災害復旧、治山治水事業に重点を置いており、更に河川事業については、電源開発を兼ねた総合開発事業として推進し、且つ確保すべく継続費を組んでおり、又更に道路整備の促進のため、アメリカにある賃取り道路の形式を特定道路整備事業特別会計として設ける等の措置をなし、ほかに経済基礎の充実を図るため、各予算案を合し、約一千百八十五億円を産業投資に見込み、経済力増強を強く推進せんとしているのであります。又民生の安定及び文教の振興のため約四百六十億円を約五百二十七億円に増額し、戦死者遺家族及び戰争傷病者援護措置及び遺族年金、交付公債の措置が新たに財政限度内において組まれておるのであります。又文教費についても配慮の跡が見えるのでありますが、甚だ不満足であります。特に戦争傷病者援護措置及び遺族年金、交付公債の僅少なることには我々甚だ不満足を抱いておるのであります。又地方財政については、平衡交付金を五十億円、資金運用部資金地方債引受枠を百五十億円それぞれ増額しておるのであります。  以上は、これまでの本会議及び委員会を通じて予算案に盛られておる政府の意図を了察するものであるが、本案自体について、その運営に当り日本の国力の充実に資することには不十分であると考えるのであります。ただ私は、本予算案の編成当時の客観情勢と現況が著しく変化しておるごとく、二十七年度の予算を順次施行して行くに当つて、その情勢はますます変化して行くのに即応するごとく、真劍にその運営を考慮して行かねばならんと思います。然らざれば我が国として重大なる危局に陥れられる虞れがあるのであります。そこで私は政府について本予算案執行に当り警告を與えたいと考えるのであります。  即ち本予算案は変化の激しい国際経済、日本経済に対する見通しに若干の誤謬があつたかに考えられ、自慰的安易な編成が多々なされておる点が見受けられるのであつて、この点、予算執行に当つての留意が必要であります。平和回復に伴う経費につきましては、この費用は根本的に消費傾向のものであり、而も全予算の四分の一にも及んでいることは、いわゆるインフレーシヨンの要因を持つておるのでありまして、使途節減について講和後独立国家として特に交渉に当つては、政府の大勇猛心を発揮することを強く要望するものであります。この費用が生産活動の阻害、更に国家経済破壊とならんよう配慮すべきであります。平和回復善後処理につきましても、昨年に比しまして結局百十億円の増加にとどめているが、フイリピンの賠償の要求状況或いは厖大な外債の処理を思い合せまするとき、政府の交渉に対する勇猛心が染まれるのであります。我々はこれらの点につきまして、国政調査権を絶えず発動して、而もその監視を怠らないように附言しておきたいのであります。  更に、本関係費を予算案に一括計上提出したことは、当時の情勢からしてすべて見込予算であつたので、予算審議の途中においてその大体の全貌が判明した段階において予算案から切離し、追加提出或いは詳細なる説明をすべきであつたと考え、この点については国会の無視、憲法に対する疑義を残す結果となつたことは誠に遺憾とするところであります。  次に、講和後における日本の経済自立に対する見通しは、政府として占領の夢に眠り、実に甘く、国際経済も又政府の考えるような甘いものではなく、深刻且つ暗澹たるものがあるのでありまして、政府は貿易政策、産業振興政策等について長期且つ確実なる方策樹立が必要であるのであります。又予算収入において大蔵大臣はむしろ増収が予想されるよう説明がありましたが、今日のごとき金融政策を継続されるならば、果して予算面における収入を確保することが期待されないかも知れない。例えば日本輸出の対象である繊維品の製造業者は国際的な影響を受けて、紡績工場は四割の操短、その他化繊等においても大幅の操短を余儀なくされている現状であります。又貿易商社の大手筋も三品の値下りを動機として大整理を余儀なくされ、一面中小企業者の倒産相次ぐ現下において、果して予定の増収を確保できるかどうか疑われるのであります。これに対し政府は早急に善処さるることを要望するのであります。  次に、海運関係について差当り二つの点について申上げたいのであります。先ず造船資金に関することであります。船腹の増強ということは我が国経済自立の最大前提條件でありまするが、御承知の通り見返資金の先細り、国内金融の引締め等による資金枯渇のために船主の造船資金融資の途は極度に圧縮されまして、我が海運界はこの面から重大な危機に当面いたすわけであります。そこでこの造船金融の抜本的解決策としましては、海事金融制度の確立が久しき以前から論議され、要望されて来ましたが、この際船舶金融について別個な制度を設けることが、資金的にも又運用の面から申しましても、最も望ましいと存ずるのであります。又見返資金の割合は、六次造船以後漸次減り、市中銀行借入の比率が増加して、七次造船におきましては、見返資金約四割、市中銀行借入が約六割で、而も市中銀行借入は三年返済になつております。元来船価の約六割にも及ぶ巨額の金を、この情勢下にある海運業者においてこれを三年で返済せんならんということは無理な話であります。政府はこれらを勘案し、船腹増強の決議もされております。でありまするから、この際政府は速かに善処して実現されんことを強く要望するのであります。私は予算収入面において過大見積り乃至は一ぱい一ぱいの見積りをしていることを見逃すことができないのでありますが、大蔵大臣はむしろ増収を予想するがごとき説明でありました。私は今日のような金融政策を実行して行かれるならば、必ずや収入増どころか、その確保も如何かと考えるのであります。大臣の言葉を信ずるならば、私はその増収を内政費に重点的に確保すべきであることを特に要望するのであります。電源開発は、目下国会において審議中の促進法案を更に推進するためのみならず、治山治水、産業振興の面からしても、どうしても増強し、早急に実現を期さなければならんと考えるのであります。又地方平衡交付金にいたしましても、政府自体地方財政の根本的検討を加え、行政事務の刷新、歳入の確保、経費の節減及び効果的使用等について、特段の工夫と努力が肝要だと言つておるがごとく、最近の地方財政は毎年膨脹の一途を辿り、財政窮迫の状況であります。本年度の一千二百五十億円程度では、全く何ら地方は発展的事業はなし得ない実情であります。この点も、増収は是非これに投入せらるべきものと考えるものであります。  以上、独立日本は多難の途を迫るのであります。我々は耐乏生活は敗戦から来たとは覚悟しながらも、よりよき生活にいたしたく努力し、政府がもつと積極的であることを強く要望するものであります。最後に、財政政策、経済政策、更に予算と金融との噛み合せに十分留意し、且つ運用を誤まらないことを希望いたす次第であります。本案運用につきましては、前述のごとく愼重に執行せられまして、そうしてこの日本再建、振興に資するように予算面を再編成、再提出されんことを希望いたしまして、私の賛成討論を終ります。(拍手
  76. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 東隆君。    〔東隆君登壇拍手
  77. 東隆

    ○東隆君 私は第一クラブを代表して、只今上程されておる昭和二十七年度予算三案に対し反対をするものであります。  この際私は、私の反対討論に老宰相を初め各閣僚が傾聽をされることに敬意を表するものであります。(笑声、「八百長だな」と呼ぶ者あり)  各位も御承知の通り、本予算案は違憲の疑い濃厚な中身を持つておるのであります。與党の多数を以て強引に行政協定締結を前にして、衆議院の諸君は行政協定の報告すら受けずに無理押しに通過せしめられたそのものであります。(「そんなことはないよ」と呼ぶ者あり)参議院における予算決定権は、政府が十分に承知しているように、衆議院優先でありますから、本予算は非立憲、多数党横暴の上に通過して(「ノーノー」と呼ぶ者あり)来たものである。(「大多数の支持だ」と呼ぶ者あり)政府の陋劣なこのタクテイクスによつて予算の国会の審議権は完全にスポイルされていると言わざるを得ません。(「その通り」と呼ぶ者あり)アメリカでは行政協定の締結を待つて、初めて上院は平和、安保の両條約を批准している。主権に制約を加えられているのはどこの国か。アメリカではない。米軍の駐留する日本、我が国にほかならないのであります。はつきり国民に中味を明らかにし、国会の承認を受くべきものが行政協定であり、予算はこの上に立つて審議されなければならんものであります。自衛力漸増の中味も、行政協定も明らかにせずに、衆議院を無理やりに通過して来た本予算は、将来国民がこの内容を知ることによつて政府の処置に対して明らかに判定を下すものと私は確信をするものであります。(拍手)この汚点を印せられた予算が独立第一年目の予算であることを悲しみつつ、反対の第一点と私はいたします。(拍手)  違憲の疑いのある予算案は、故意か偶然かは知りませんが、御案内のように首相の失言に端を発して、重要な総理に対する一般質問は三日間で終了すべきものが、三月の六日から十八日に至る十三日を要しました。その間首相の出席は五日間であつて、余すところは十日を割つてしまつたのであります。これこそ政府によつて審議が完全にデイスターブされたと言わざるを得ません。而も政府は憲法第九條に関連する自衛力漸増に関する計画を定かにはしません。参考人の意見はこの間において政府意見とは完全に相反したものであり、政府説明が三百代言以外の何ものでもないことは、與党の諸君もそう思つておるのに違いはないと思います。(「ノーノー」「やれやれ」と呼ぶ者あり)又政府の狭量によつて行政協定は国会の承認を求むるに至らず、この憲法違反の内容を持つ戰力並びに行政協定に関する質疑は最後まで続けられ、質疑を打切つて後においても、なお質すほどの熱意を示したのでありますが、政府は言を左右にして真実を語らないのであります。本予算の今日に至る過程において、このような重大な瑕疵を持つていることについては、良識ある者はこの予算に対して反対せざるを得ないでありましよう。(「その通り」と呼ぶ者あり)これが反対の第二点であります。  政府が国民生活を圧迫していないと言つていることであります。果して政府の言うがごとく国民生活を圧迫していないでありましようか。私は内政費の各項目について見たのでありますが、成るほど各項目について少しずつ増額をして、一見内政費に重点を置いているかのようでありますが、仔細に見ますと、これは二十六年度の出資投資を二十七年度大幅に減らして財源を得たうち、大部分を防衛関係費に振向け、残りの百六十億円程度を各項目に振当てたに過ぎないのであります。而もそれらの増額は、物価二割の値上りを計算に入れまするならば、実質的には却つてつていると言わなければなりません。ここに注意すべきことがあります。それは政府はあらゆる機会に本予算はインフレを促進する予算ではないと言つております。大蔵大臣はその財政演説において、私はこの際国民諸君がインフレーシヨンを是認し、インフレーシヨン謳歌の政策が如何に口に甘く身体に害のあるものか、そのことを十分に理解せられることが大切であると思うのでありますと言つて、インフレーシヨンには反対のようでありますが、出資投資を大幅に減らし、大部分を防衛費に振向けたのでありますから、これは完全に消費的なもので、インフレーシヨン高進の役を勤めるに相違ありません。(「その通り」と呼ぶ者あり)更に外為を初めとして出資投資が中止されることによつて、日銀依存の面がそれだけ現われ、それが通貨の膨脹となつてインフレーシヨンを倍加するということは火を見るより明らかであろうと思います。顧みて他を言う政府はみずからインフレーシヨン政策に踏み込んで、国民には白々しく、口には甘く身体に害のあるものと訓言を賜わるのは相当な心臓だと言わなければなりません。(拍手政府は国民を欺瞞している。これがこの予算に反対する第三点であります。  次に、独立後の予算において自衛力漸増のための経費こそ自主的なものでなければならん。然るに政府はこの中味を明らかにしようとはせず、自衛力漸増の将来の計画については口を緘して語りません。警察予備隊の武装は近代戰争に耐え得る武器に比較すると、まさにおもちやのピストルでありましようけれども、併しこの種の装備も国内治安のみならば、すでに行過ぎであると断ぜざるを得ません。アメリカの駐兵費は六、七千億円だと大蔵大臣は発表をいたしました。我が平和回復の経費は二千億円程度であるから、吉田総理のようにただの二千億程度で再軍備をすることはできんと申しても、国民は容是に首肯しないでありましよう。(「古い」と呼ぶ者あり)我々の考え方は、事前に社会的な防衛体制を確立しないで、軍事的な防衛体制を考えることは早計である。各位は考えて見るとよいと思うのであります。国内に通信施設が整備されないで、ただ予備隊や国警等のみが多少の通信施設を持つたとしても、治安の確保上如何なる働きをするのでありましようか。トラツクが縦横に通れないような土地に防備のために警察予備隊を増強したとしても、治安の撹乱者は都合よく予備隊の所在地のみからは現われて来るものではありません。我々は予備隊を増員する前に先ず道路をよくし、必要な所には道路を開設せよ、トラツクの通れぬ木橋では、陸地の中の孤島の兵力のようなものでありまして、先の戰争に、太平洋の孤島の我が陸軍の精鋭がどんな運命を担つたかを想起すればよくわかることであります。物資の輸送が平和のときでも困難なところに予備隊の増強をしても、予備隊自体が不平を言い出すでありましよう。又そのような区域に居住する住民は、必ずしも政府の進められまする政策に満幅の賛意を表さないのみならず、道路を造つてくれ、鉄道を敷いて欲しい、学校を頼む、医者を送れ、電灯をつけてくれと言うでありましよう。その上で警察予備隊とこれは小さい声で言うに違いない。治安という面から特に予備隊を必要とする北辺に住んでいるものはかく語ることを私は確信するものであります。これらは今次の十勝沖震災が治安について我々に教えるところであります。  大蔵大臣は財政演説で、「而も我が国経済はあらゆる面で蓄積の不足という重大な弱点を持つております。山林の濫伐、河川、道路の損傷、鉄道、通信、港湾施設等の修理不足、地力の低下その他国土資源の荒廃は未だ甚だしいのであります。」、併しこの表現は飽くまで消極的なものであり、年々起る災害の復旧費は、その基本的な治山治水に力を入れることが少いため、増加の一途を辿つておると言わざるを得ません。国土資源はまさに荒れに荒れているのでありますから、公共事業費、平衡交付金、地方債の枠の拡充等は大きく手を打つべきであると思うと共に、いささかも積極的面を示さないこの予算案に反対をするものであります。これ反対の第四点であります。  次に、我が国が自立するためには食糧の自給度を高めなければなりません。政府は食糧の自給度を高めるために、土地改良を初めその他に五百数十億を計上しています。併し農地改革後における農地は国が所有しているようなもので、農家は農地の使用収益権、即ち完全な耕作権を持つているようなものであるから、国家が農業の基本的なものを整備するために支出をすることは当然であると思うのであります。而も政府の誤まつた食糧政策は、国内産の麦の生産を大きく減産に導き、今又甘藷、馬鈴薯の減産を来たそうとしています。これではいよいよ輸入に依存せざるを得ざらしめ、食糧の自給度を高める政策には断じてなりません。更に米価と肥料の価格を見るに、その間に予算措置が何ら講ぜられておりません。徒らに海外高の肥料価格に幻惑をした肥料業者の輸出希望の声に右顧左眄しておるのが現状でないかと思うのであります。食糧政策に根本的な転換を策すべきときであります。私は以上警告を発して政府の猛省を促し、第五の反対理由とするものであります。、  次に、中小企業家に対し現政府が極めて冷淡であるということは定評のあるところであります。大企業家の諸君は市中銀行を十分に利用し、郵便貯金とか、簡易保險の積立によつてできておる資金運用部の金を勧銀その他を通して使つておるのであります。これに反して中小企業家に対する政府措置は頗る冷やかではあるが、この弱い中小企業家が我が国工業生産品の相当部分を生産しておることは政府も十分知つておるところであります。私は端的に申します。政府はこの際中小企業家の協同組合に対して大きく力を注いで中小企業家の生産を高め、生活を安定するために、その商工業政策を転換する必要があると思うのであります。何ら中小企業家には手が打たれておりません。中小企業信用保險特別会計に本年十億円投資したものが、二十七年には五億に減額されておることは、政府の中小企業家に対する政策の貧困を雄弁に物語つておる一例であります。(「その通り」と呼ぶ者あり)私は中小企業家に対する施策の貧困なこの予算に反対をいたします。これが反対の第六点であります。(「何点だ」と呼ぶ者あり)  次に、私は橋本前厚生大臣が辞職をされた原因の遺家族援護費のことに触れます。政府は非常に少い金額を計上して国民の愛国心を狙つておりますが、西ドイツその他の国々が戰争の犠牲者に如何に手厚いかは政府も十分知つているはずであります。私は気の毒な古い軍人が懲罰にも等しいポ政令で、終戰後七年たつて、独立と共にその悪法が当然失効して、保証された当然の待遇が復活するものと信じたものを、法律によつてこの悪法をなお一年延ばし、生活保護費にも値しない給與を援護の名を以てごまかし、米駐留軍に奉仕しようとしているのは肯けないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)これでは自衛力漸増に如何に国が金を使つても、国民の盛り上る自衛の熱意は出て参りません。もつとこの不幸な同胞に対して惜しみなく政府は手を差し延ぶべきであると主張し、その内容を持たない本予算に反対をするものであります。これが反対の第七点であります。(「何点まであります」と呼ぶ者あり)  自由主義経済に立つ現政府に、社会保障に力を注ぐべきであるとか、庶民生活の安定には消費生活協同組合を奨励すべきであると申しましても、これは木によつて魚を求めるようなものであるかも知れません。併し殊に福祉国家はこの基本的なことに力を注がなければ、政府のいう福祉国家がやるせなさを訴えるのであります。社会保障は救貧制度、即ち貧乏をなくする制度の基本をなすものであり、協同組合は協同の力によつて生活を向上するのであります。この消極と積極の方法は民主主義的な組織を通してなされるとき最も効果を挙げるもので、日本経済の民主化を進めるには、日常の生活を通して、つまりこれらの組織を通して民主化を進めなければ本当の国民大衆の生活の向上は望まれません。社会保障については審議会の答申等もあり、政府は力を注ぐかのごとくでありますが、国立の病院に対して独立採算制を要請したり、国立病院を地方に委讓したりすることは、政府に社会保障の熱意のないことを物語るもので、厄介なものは、金の支出を伴うものは国は成るべくやらないという、これは一例に過ぎないけれども、一事が万事、社会保障は却つて害なわれていると言わなければなりません。協同組合も生み放し、これが今回の予算が示す意味であります。これでは大衆の生活は犠牲にされて、特定の者のみが文化の惠沢に浴することになります。こんな予算には反対せざるを得ません。これが反対の第八点であります。  次は歳入面のことでありますが、直接税に根幹を置いている現在の税収には非常に不合理なものがあります。俸給生活者や農民等はその所得が明らかにされ、なかなか收税吏は容赦なく、遺漏なく徴收をしているようでありますが、大きな社会その他には古手の税務署吏員が高給で雇われている等によつて合理的脱税が行われているというのであります。我々は奢侈税その他の間接税を設け、一は以て資本蓄積を進めると共に、購売力を持つている者から税収を挙げることが賢明な策であると思うのであります。間接税の弊害は生活必需品に課税するところにあるので、これを避ければ国民は決して反対をしないと思います。独立日本の予算編成が依然としてシヤウプ勧告を中心にして、直接税に重点を置き、專売益金増収を目的として、未成年者の喫煙に断を下し得ず、酒税の増加のために、これ又未成年者の酔いどれに対してすら断をやり得ない租税体系こそは、悲しむべき租税体系であると言わざるを得ません。これ本予算に反対する第九点であります。  最後に、政府は行政機構の改革、地方制度改正を目論んでおりますが、目下の状態ではいずれも龍頭蛇尾に終ろうといたしております。併し多数をたのんで強行する、非民主的なことが実現することになりますと、占領下ではありますが、とにもかくにも平和憲法の下に作り上げられた地方自治法を初めとする民主的な諸制度は、非民主的なものに改悪される虞れが多いのであります。政府の意図が那辺にあるかは私どものよく承知しているところであります。すでにこの傾向は各種の法規の改廃を通して、労働法規にも団体法規にも現われようとしております。この傾向と政府の好む自由主義的経済の指導原理とは、中央と地方、都会と田舎の間に経済的にも、社会的にも、文化的にも大きな溝を作ろうとしております。端的に言うならば、国民が平等にその惠沢に浴すべき国家的施設乃至は公共的事業は、徒らに独立採算制という営利企業の原則に禍いされて、その公的性格を失いつつあるし、当然公的な企業として発足すべきものが営利企業家の手に委ねられようとしておるのであります。これらの傾向は現政府の続く限りますますその濃度を高めるでありましよう。これでは真の自立日本ではなく、中央は地方の犠牲の上に立ち、都市は田舎の甘い汁を吸つて肥大するのであつて、決して健全な国家を構成することにはなりません。このような傾向を積極的に進める性格の本予算に反対をするものであります。  以上十点に亘る反対の理由を述べて予算三案に対し断固反対の意思を表明するものであります。(拍手
  78. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 木村禧八郎君。    〔木村禧八郎君登壇拍手〕    〔「しつかり、しつかり」と呼ぶ者あり〕
  79. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 私は労働者農民党を代表いたしまして、二十七年度予算案に反対をいたします。  反対理由の第一は、この予算案が(「何でも反対だな」と呼ぶ者あり)憲法に違反し、財政法の精神に違反しているということであります。即ち憲法につきましては、九條、七十三條三項、十四條に違反しております。財政法につきましては、予算総則の九條、十三條の精神に違反しておると思うのです。違反の事実は審議の過程におきましてすでに明らかになつておりますし、予算委員会において参考人として意見を聽取しました三人の学者が三人とも違反の事実を認めておるのであります。これによつても明らかであります。詳細なことはすでに同僚議員諸君が述べましたから、私は省略いたします。(「その通り」「うるさいぞ」と呼ぶ者あり)USニユーズのジヨセフ・フロム記者は三月三日の読売新聞の紙上におきまして、日本の警察予備隊をロンドンでもニユーヨークでも軍隊とみなしており、世界中でこれを軍隊と見ていないのは日本だけである。日本だけがただ一つの例外であるということを指摘しまして、そうして次のような意味のことを書いているのであります。万一憲法を改正せずして警察予備隊の名によつて軍隊を作るという憲法違反の事態が許されるようなことがあれば、それこそ、もう新らしい軍隊が憲法政治そのものを破壊するような権力を握るのを防ぐために憲法を改正しようとしても手遅れであるかも知れない。それどころか若し再軍備の問題で憲法をごまかせるとなれば、日本の民主制度の保持にとつて同じように肝要な他の問題についても容易にごまかせるのである。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)フロム記者の指摘しているように、我が国の平和と民主化を規定した憲法は、今まさに蹂躪されようとする重大な危機に直面していると思う。我々国会議員は憲法九十九條に基いて憲法を尊重し、擁護する義務を負つているのであります。義務を負つているばかりでなく、日本民族の一人として子孫に対して憲法を守る責任を持つていると思うのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり、拍手従つて憲法違反のこの予算案に反対し、憲法を守ることこそが、我々の当然の義務であり責務であります。この予算を認めることは、それ自身が憲法違反である。この予算案に現われている重大なる憲法違反をこまかし、容認するならば、他の重大なる憲法違反も容易にごまかされ、違憲を責める資格を我々は失うに至るのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)物事は第一歩が大切であります。過去において第一歩を誤まつたために今日の不幸を招いた、いわゆる独立の第一歩が、かくのごとき政府による憲法違反を以て踏出されるということは、日本民族の将来にとつて極めて不幸なことであります。(「その通り」「「ノーノー」と呼ぶ者あり)この憲法違反の事実を容認する人たちの我々子孫に対する責任は重大であります。この責任は日本の今後の歴史に永久に記録されると思うのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)  反対理由の第二は、この予算案の内容が著しく不健全であるという点にあります。政府予算案の提案理由におきまして、この予算案は健全なる均衡予算であると説明しておりますけれども、(「でたらめだ、この予算は」と呼ぶ者あり)その不健全なる事実は次の五つの点に最もよく現われております。その第一は、財政規模が国民所得に対して過大であり、国民生活を一層圧迫するということであります。(「いつも同じことを言つている」と呼ぶ者あり)政府は、二十七年度一般会計予算八千五百二十七億は、国民所得五兆二百七十億に対しまして一六・九%で、二十六年度の一七%と同様である、こういうことを言つております。そうして国民所得に対する財政規模は大きくなつていない、こういう大蔵大臣は説明しているのであります。(「心配はなくなつた」と呼ぶ者あり)この説明は事実に反し、これはごまかしであります。(「毎年同じことを言うのじやないよ」と呼ぶ者あり)財政規模を見る場合には、我々は国税と地方税とを両方納めているのでありますから、(「よく聞け」と呼ぶ者あり)池田大蔵大臣がよく主張されますように、中央地方を通ずる総合予算を問題にしなければ意味をなさないわけであります。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)ところが大蔵大臣は、今回に限つて総合予算を問題にしないで、殊更に中央財政だけを問題にしているのは、俗にいう頭隠して尻隠さずであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)一般会計予算八千五百二十七億円と平衡交付金及び政府補助金を除いた地方財政四千八十五億円を加えました二十七年度総合予算は一兆二千六百十二億円でありました。これを国民所得五兆三百四十億円に比較しますと、その比率は二五・一%でありまして、二十六年度の二三・七%に比べまして一・四%の拡大となるのであります、膨脹になるのであります。更に二十七年度の交付公債八百八十三億を加えて計算すれば、二十七年度総合予算の国民所得に対する比率は二六・八%となりまして、二十六年度に比して三・一%の膨脹となる、国民所得に対して一挙に三%以上膨脹するということは非常に大きな増加であります。(「その通り」「どうだわかつたか」と呼ぶ者あり)それにもかかわらず、蔵相はこの事実に触れないで、二十七年度一般会計予算と国民所得との比率だけを二十六年度と比べて、財政規模は拡大していないと説明している。総合予算の国民所得に対する比率二六・八%は、丁度インフレで国民が困つた二十三年度の国民所得と予算との比率と同じであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)この事実は隠蔽することはできない。更に防衛力漸増、国際通貨基金加入費の増加などの追加補正を考慮に入れますならば、財政規模は一層過大となり、国民生活を更に圧迫することは疑いないのであります。  この不健全なる第二の事実は多くの不生産的インフレ要因を内包しているということであります。その第一は八百八十三億円の交付公債、これを計上している。愛知君は先ほど、私が旧軍人遺家族に交付公債八百八十三億を與えるということは、これはインフレ要因であると指摘しているのに対し、愛知君は、それは旧軍人遺家族に対して冷酷な意見である、こういうふうな途方もないことを言い出した。(拍手)私は改進党及び緑風会が提案されました六十億の遺家族の援護費増額に賛成しているのであります。(「然り」「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)而も池田大蔵大臣は、二十六年度に三百億の自然増加が見込まれると言つているから、六十億よりも百億円ぐらいに増加できるのではないか、こういう意見を私は述べている。(「その通り」と呼ぶ者あり)交付公債を出すということと軍人遺家族に冷酷であるというどこに論理的な関連があるのでありましようか。(「わからん」と呼ぶ者あり)これがいわゆる官僚経済学というのです、或いは行政経済学。私の経済学は国民経済学であります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)赤字公債を出してインフレになつたら、(「官僚たちにはわからないよ」「奴隷経済学」「パンパン経済学」「その通り」と呼ぶ者あり)交付公債を出してインフレになつたならば遺家族援護費の購買力が減りまして、お燈明代はお線香代にも足りなくなるのであります。これは貨幣錯覚を利用して、そうしてこれをむしろ欺くものです。むしろ交付公債によつてインフレを起したのでは、遺家族援護費はお燈明代でも実質価値においてはお線香代以下になるということを指摘することこそ親切なのである。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)西ドイツにおい工は社会保障費は(「何を言つているんだ」「默つて聞け」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)予算の五〇・四%ではありませんか。日本では六・四%で、(「とんでもないことを言うな」と呼ぶ者あり)ドイツでは国民所得に対して社会保障費は九・九%、日本はたつた一%であります。(「寝言を言うな」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)こういう如何に権力に便乘するとは言え、このような無責任な発言をするものじやない。私は愛知君は旧官僚として優秀な官僚として尊敬しておつたが、(「その通り」と呼ぶ者あり)こういうようなはつたりを言うようでは、これはまじめではない、私は反省を促します。(拍手発言する者多し)  第二の不健全性は(「愛知君の茶坊主経済学」「できもしないことを言うな」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)防衛費その他の講和関係費であります。防衛費は千八百二十億で予算の二一%、こうなつておりますが、これは表面に現われました数字に過ぎない。このほかに公共事業費中の道路、港湾費、国鉄、電通特別会計、或いは地方財政における間接的防衛支出、或いは防衛物資生産のための投資を考慮に入れますならば、その我が国経済に及ぼす影響は深大であります。例えば昭和二十六年度の終戰処理費による物資調達の例に見ますれば、石炭の総生産四千五百五十万トンに対して、終戰処理費による調達は二百万トン、朝鮮向特需は百万トン、国鉄の石炭消費量六百五十万トン、火力発電の石炭消費量七百五十万トンを比べまして如何に大きな数字であるか。又終戰処理費による電力消費は全消費の六%乃至七%、ガス、水道の消費は五%乃至七%、国鉄貨物の輸送は一一%を終戰処理費で占めている。更に土地の借上は民有、国有合せて二億七千五百六十六万坪に達している。目下準備中のものは一億四百七十八万坪に達している。賠償指定機械工場も優秀なものは進駐軍に利用される、二十六年度さえこのような状態。而も二十七年度におきましては、防衛関係的な不生産的支出は二十六年度に比し五百億円増加している。更に二十六年度には五百八十億のアメリカの援助がありましたけれども、二十七年度から援助がなくなり、これを総合すれば約千億円近いところの非生産的物資負担の増加となるのであります。更に進駐軍の調達方式は直接調達となりまして、こうしてそれはアメリカの軍需調達規則によつて行われる。又折角納入した品物はアメリカの再協議法、リ・ネゴシエーシヨン・アクトによりまして、そうしてあとで原価計算によつてこれは高過ぎると、こういうので今紛争が起きている。例えば東京螺子、東亜紡織にこの事件が起つておるのであります。このように安保條約及び行政協定に基く日本経済に対する不生産的影響というものは極めて大きいのであります。予備作業班が、具体的に予備作業が進められるにつれまして、この影響は決して少いものではないということがだんだんわかつて来ている。財界でもだんだんとこれに注目を拂つて来ておるのであります。(「知らないのは自由党ばかりだ」と呼ぶ者あり)この予算はまだ実行に移されておりませんから、比較的楽観的に見られておりますが、実施されるに及びまして、国民はその影響の大きいのに驚くに違いないと思うのです。更にこの予算の不健全性の第三は、インベントリー・ファイナンスを減らしていること。これについても官僚経済学、行政経済学の愛知君は(笑声)これがインフレ要因にならないということは実証できないで、ただ野党が前にインベントリー・ファイナンスはこれはやつちやいけないと言いながら、今度政府がやらないようになると、これを攻撃している、それだけであります。これでは反駁の論にならない。これがインフレの要因にならないということは実証しておらない。我々はこのインベントリー・ファイナンスをやめるについては、その他の対策が必要なんです。第一に貿易計画をきつちり立てること、オーバー・ローンを整理しなければ駄目であります。こういう対策をやらないで、ただインベントリー・ファイナンスをやめるというのでは、これでは信用インフレを激化させるだけであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)二十六年度予算の基礎となりました外貨ポジシヨンの推定は六億二千百万ドル、そこで二千百四十三億円の円資金を計上したのであります。ところが二十七年、本年三月末におきまして、外貨ポジシヨンは十億四千六百四十八万ドルに達しまして、差引き約四億円増加します。そこで円資金が一千五百億円も不足したのであります。そこで政府はどうしたかというと、二十六年度予算に計上してある国際通貨基金加入費二百億円を流用している。ガリオアの未拂分を使用している。更に二十七年度のインベントリー・フアイナンスに予定されている三百五十億円と、二十七年度に七百億から一千億円に、即ち三百億円増加される日銀からの借入金、これを担保にしまして日本銀行から八百億円のスワツプを行なつておる。もうすでに二十七年度のインベントリー・ファイナンスを担保として使つてしまつておる。これでどうする、二十七年度は……。結局外国為替を今後買う場合には、貿易計画をきつちりやらない以上は、日本銀行から金を借りて、それで買わざるを得ない。これは信用インフレを激化させる原因になることは明らかであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)この事実は愛知さんも銀行局長をやつておられましたのでよくわかつているはずであります。(「わかつたか、よく勉強しなさい」と呼ぶ者あり)わかつていて否定することはこれは余り良心的ではありません。  更にこの予算の不健全性の第四は、安全保障條約と交換條件として予定しました外資導入が困難になつたということであります。このため自立経済計画に大きな狂いを生じております。特に自立経済計画の根幹である電源開発は、当初二億八千五百万ドルの外資援助を前提として立てられたと思うのであります。外資の援助なくして電源開発を強行すれば建設インフレが起つて生活水準は下ります。これを下らないようにするためには物資面、資金面から電力計画は実際にはできないということになる。こういう前提に基いて経済計画を立てようとするのであります。  更に不健全性の第五は、国際収支、これが極あて不健全である。特に中国経済、中国との貿易を遮断しまして東南アジアを過大評価して、そうして自立の基礎をここに求めようとしておりますが、これはなかなか困難であります。その結果は米国の軍需生産の下請、そうして更に駐留軍の消費によつて国際収支のバランスを合せる、それよりほかにないわけです。(「情ないこつちや」と呼ぶ者あり)二十六年度の対米国際収支を見ますと、輸出が二億九千七百万ドル、貿易外の收入が十億ドル、この貿易外の収入のうち四億ドルは特需であります。この特需は低賃金の臨時工の搾取の上に立つて得られるところの特需収入であります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)特需外の收入は六億ドルであります。このうち約一億ドルに近いものは、アメリカのアプトン・シンクレアという小説家が書いているあのプラス・チエツク、貞操切符によるところの收入であります。二十六年度の対米輸出の最高は雑品でありますが、三千三百九十九万ドル、貞操切符の外貨收入はその三倍、(「パンパン収入だ」と呼ぶ者あり)鉄鋼の輸出は二千三百四十七万ドル、貞操切符の外貨收入はこの約四倍であります。生糸の輸出は千八百十一万ドル、この約六倍が貞操切符によるところの外貨收入、まさに世界に珍しい驚くべき事実であります。ドル地域からの輸入を中共地区に振替えますと、どのくらい外貨が節約されるか、粘結炭において二十七年度二千八百四十万ドル、鉄鉱石において千五百万ドル、塩において五百九十万ドル、豆粕百五十万ドル、雑穀四百万ドル、その他合せて六千九百三十五万ドルの節約ができるのです。それだけドル地域から高いものを買つておる。昭和三十一年度におきましては一億一千三百七十六万ドルの節約ができるのです。大体この中共貿易遮断による損失六千九百、約七千万ドルの損失を貞操、肉体の販売によつてカバーしておる、そういう勘定になつておる。この損失はお金の見積損失ばかりではありません。(「その通り」と呼ぶ者あり)教育、文化上における損失、(「そうだ」と呼ぶ者あり)延いては民族的な堕落をもたらすものであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)この損失は非常に莫大なものであります。(「いい加減にしろ」と呼ぶ者あり)  反対理由の第三は、内政費を犠牲にしているということであります。例えば回復したとは言え、エンゲル系数は五四%、これはボヴアーテイ・ライン、貧乏線であります。吉田首相の言うごとく自立困難なる状態の下で防衛費を予算の二一%、千八百二十億円も計上したため、社会保障費は国民所得の僅か一%、成るほど二十七年度の社会保障費は五百五十一億です。二十六年度よりは七十五億殖えております。(「大蔵大臣こつち向いてよく聞け」「余計なことを言うな」と呼ぶ者あり)併し人口増加、物価騰貴を考えれば実質上の増加とは言えません。先ほど触れましたけれども、西ドイツにおける社会保障費は予算に対して五〇・四%、イギリスは三八・一%、スウエーデンは三〇・五%、アメリカは一〇・五%ソ連は一五・四%に対して日本は僅かに六・四%、西ドイツは五〇・四%であります。而も大蔵大臣はよく税率から見ると日本はまだ諸外国より税率が安い、こう言つています。成るほどイギリスは三六・九%の地方税及び国税を拂つております、国民所得に対して……。併しながらこれから社会保障費を差引いたならば幾らになるか、二五・九%、アメリカアの税負担は二六・六%でありますが、社会保障費を引けば二三・九%、日本の場合はこれに対して社会保障費を引いては一九%、この差は大した差ではありません。社会保障費はこれは税金を一応国民に返すものである。ちつとも社会保障費に返さないで、そうしてただ税金の比率だけを比較して諸外国よりも日本のほうが低いと、これは一種の詭弁であります。今結核患者は全国百五十万、年々十四万五千人死んでいる。少くとも三十万の病床が必要である、而も今十万しかない。その上に九十九カ所の国立病院のうち六十カ所を地方に委讓しようとしている。それによつて社会保障費を節約して防衛費のほうへ振向けようとしている。人身売買が盛んになつております。住宅は百五十万戸も不足しております。この状態なのに予算の二一%を防衛費に充てまして、そうして六・四%しか社会保障費に充てていないのです。これで健全なる予算と言えるでしようか。福祉国家の予算ではなく、再び軍事国家、特高と彈圧との警察国家へ移行せんとする予算であると思うのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)  第四の反対理由は、税制面でありますが、この点については詳しいことは省略しますが、ただ一つ、政府は余りに資本蓄積の名によつて勤労者を圧迫し過ぎておる。高額所得者を優遇し過ぎておる。その結果はどうなつたかといえば、投資過剩」に陷つておる、オーバー・インヴエストメント、投資過剩」をなしておる。そうして過剩」生産になつておるけれども、大衆から余りに購買力を吸上げ過ぎておるから、これが売れない。こればかりが原因ではありませんけれども、これも最近の不景気の一つの有力な原因になつておると思うのです。税制面から投資過剩」を招いておる。資本蓄積、資本蓄積、その名目によつて極めて不合理な不均衡な税制を行なつておるのであります。  以上述べましたような非常に高価な経済的犠牲を拂つてかち得るものは何でありましよう。外資援助と国民生活の向上の代りに、日本の軍事基地化と戰争に巻き込まれる危險と独立の喪失とアジアからの孤立化、これであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)以上がいわゆる寛大にして対等なる條約の帰結であります。  民主憲法を守り、世界の平和、日本民族の安全と独立、額に汗して働くものの生活の安定向上、こういうものを実現するためにこそ、我が党はこの予算案に反対するものであります。(拍手)二十七年度予算が実行に移され、その影響が具体的に現われて来ますならば、本日この予算案に賛成された人といえども、こんなはずではなかつたと必ずや私は反省されるに違いないと思います。そのときに当り、いや、そのとき以前に、全国諸君はこの予算案に賛成された人たちをきびしく私は批判されるに違いないと思う。(「そうだ」「恨む」と呼ぶ者あり)そうして我々は又友党の反対党諸君がなぜ強くこの予算案に反対したか、その本当の意味を正しく理解されるに違いないことを私は確信いたしまして、反対討論を終る次第であります。(拍手、「緑風会の功績甚大だよ」と呼ぶ者あり)
  80. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 岩間正男君。    〔岩間正男君登壇拍手
  81. 岩間正男

    ○岩間正男君 私は日本共産党を代表して、只今議題となつている昭和二十七年度予算三案に対しまして、断固反対するものであります。  吉田総理は、先に締結されたサンフランシスコ條約を和解と信頼の條約であると称し、米国が日本に対し何を考え、何を企らんでおるかをひたすら国民の前に隠蔽せんと憂身をやつしたのであります。然るに同じ日に吉田総理がただ一人で調印した安全保障條約によつて、早くもその尻尾を覗かせていたのは誠に笑止千万であつたと言わなければなりません。而もその安全保障條約すら一つの飾り物に過ぎないのであります。その真の中身である行政協定を見るに及びまして、もはやアメリカ帝国主義者の意図は完全に白日の下にさらけ出されたと言わねばならないのであります。ウオール街を先頭とする国際帝国主義者は、朝鮮の干渉戰争に大敗北を喫したことに性懲りもなく、その世界制覇の夢を捨てるどころか、ますます軍拡に狂奔しておるのであります。戰後米国予算に計上された軍事費総額は、実に千八百億ドルという史上未曾有のものでありますが、約その半額九百億ドルはまだ使われないままに棚ざらしになつておるのであります。だがウオール街の主人公たちは血眼になつておるのであります。なぜならば、彼らの超過利潤は勤労人民大衆の血を戰争の祭壇に供する以外に保証できないということを誰よりもよく知つておるからであります。朝鮮戰争直後、即ち一九五〇年の第三四半期には、アメリカの独占資本の挙げた利潤は年率にしまして一挙に二百五十八億ドルという厖大なものであります。これは前年同期に比べまして約五〇%の激増であります。この中でもゼネラル・モータースは八十三割四分、USスチールは二十一割五分、デユポンは三十割七分という戰時超過利潤を挙げておるのであります。米国独占資本はこの味が忘れられないで、昨年十月マリク提案の成功を妨害し、今又停戰協定がまさに成立しようとする土壇場に当つて、人道と国際協定に挑戰して、憎むべき細菌戰術を開始したことが伝えられておるのであります。この事実は国際民主法律家協会の調査団一行によつて確認されたことは、最近のUP電が報じておる通りであります。これは停戰談判を破裂させて、朝鮮戰争を引延すのみか、更に進んで新たな戰争を企んでおる証拠と言わねばならないのであります。彼らはこの野望達成のために、西欧においては西ドイツをその戰略拠点として北大西洋軍事同盟を結成したのでありますが、極東、アジアにおきましては、アメリカ作戰軍の統卒の下に太平洋軍事同盟の結成を企て、その最大拠点として日本を選んだのであります。このことは━━━━━━━が占領下の圧迫的支配條件と、見せかけの甘い言葉によつて日本に押し付けたこのたびの日米行政協定が何よりも雄弁にこれで物語つているのであります。言うまでもなく、行政協定は、先ず第一にアメリカ軍の無制限且つ無期限駐屯と軍事基地の無制限且つ無期限設定を認め、更に日本を足場として広汎な極東、アジア地域への作戰行動を確保するために、日本の制海、制定権を完全に掌握し、又日本領土への出入を完全に保証するものであります。  第二に、又それは軍人、軍属は勿論、家族、御用商人、諜報部員に至るまで、基地の内外を問わず治外法権を享受し、日本の国土と人的資源と物量の一切を挙げて何どきでもその軍事目的に徴発、徴用、調達する権利を與えているのであります。而も行政協定は新たなこの特権階級である米駐留軍の権益を保護するために、軍の機密と財産の安全を保障するという名目で日本国民の言論、行動に苛酷なる制限と処罰を加える国内立法をさえ予定しているのであります。  第三に、行政協定は米軍の作戰に従属的に奉仕させる傭兵としての日本軍隊を予定するものであります。而も一方において米軍並びにその傭兵である日本軍の作戰に必要な兵器その他の軍需品を格安に調達するために、日本の生産、施設、能力を優先的且つ最も有利に使用せんとしているのであります。どこに平和條約に言う日本主権の完全な独立があるでありましようか。ここにあるものは米帝国主義の軍事的植民地以外の何ものでもないのであります。この期に及んでもなお和解と信頼を口にする吉田総理の態度こそは、まさに奴隷のそれと言わざるを得ないのであります。而も更に驚くべきことは、これら日本国民の手かせ首かせである行政協定の実行に要するところの一切の費用を徹頭徹尾日本国民が負担しなければならないということであります。本予算案こそは、まさに行政協定を実行に移すための最初の裏付にほかならないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)これは本予算案の構成を見れば余りにも明らかであると言わなければならない。先ず第一に本予算案は、米軍のアジア━━作戰に奉仕する直接軍事費を中心として組まれ、予算全体が隅々までこれに従属して組立てられていることであります。即ち防衛支出金六百五十億円、安全保障諸費五百六十億円、合計千二百十億円は直接アメリカ駐留軍への支出であり、予備隊費五百四十億円、海上保安庁費七十四億円、合計六百十四億円は米軍に従属するその傭兵としての日本軍の直接軍事費であります。言うまでもなくアメリカのドル支配者は、その長期作戦の足場固めのために日米両軍の第一期分の費用として、差当り先ず一千八百二十四億円を日本国民の肩に押付けて来たのであります。併しながら、今回の予算案の特徴は公然たる軍事費を計上しただけにとどまらず、他の名目の費用も実際には補助的軍事費、乃至は隠された軍事費の役割を帯びているのであります。例えば一般公共土木事業費一千八十四億円は軍事基地の建設、基地と基地とを繋ぐ軍用道路、港湾の軍港化に使用される比重が著しく増大し、又建設の営繕費に至つては予備隊兵舎の建設費がその中心を占めているのであります。更に千二百五十億円に上る地方平衡交付金にしましても、地方自治体が中央から押付けられる軍用道路、その他軍事的経営に用いられる割合は圧倒的となり、そのために地方民に真に必要な公共土木事業、災害復旧等が実行不可能に陥つているのがその実情であります。これを金融方面について見ましても、見返資金に代つて登場した開発銀行への政府出資金を初め、国民の零細貯蓄からなる資金運用部資金も軍需生産への投資に集中され、明らかに間接軍事費の役割を持つものであります。開発銀行への政府出資金百二十億円のうち、その半額六十億円が巨大軍需工場の自家発電設備資金に使用されるがごときは、米軍拡、日本再軍備のための軍需生産コストを国民負担によつて切り下げ、軍需独占資本に超過利潤を保証せんとするところの現われにほかならないのであります。 このように本予算案は米軍並びにその傭兵、日本部隊拡充のために、直接間接の軍事費並びに政府資金の撒布を挺子として日本産業を軍需的に再編成し、日本を否応なく再軍備の軌道に追い込むものであります。そもそも日本の大資本家は米軍の朝鮮━━以来、米国独占資本の収撃にかかる超過利潤の分け前にあずかつたことは事実であります。即ち昭和二十六年上半期の利潤率は、紡績十五社は四十九割、石油精製七社三十二割、石炭四社十八割、鉄鋼六社四十三割、非鉄金属五社三十割に達しまして、その配当も四割乃至八割にも及んだのであります。日米両独占資本のこの法外な利潤の源泉は、言うまでもなく労働者の低賃金と殺人的な労働強化にあることは言を待たないところでありますが、それにしてもウオール街の主人公が日本の資本家に余りにも獅子の分け前を多く與え過ぎたと考えているということは、ドッジ氏の言葉によつても明らかであります。米国独占資本は大規模軍拡計画の挫折による軍需利得の減少を、賃下げ、首切り、或いは両三度に亘る大衆増税を通じ、自国の労働者、勤労大衆の犠牲によつてカバーすると共に、日本の群小資本家に対する収奪強化によつてカバーしたのであります。最近の特需、新特需の契約條件を見ればこのことは明瞭であります。それは独裁的、高圧的な押付けでありまして、一方では中日、日ソ貿易の禁止によつて安い原料入手を阻み、自国の高い原料を押売りをすると共に、それらの製品を他方ではいわゆるコンマーシヤル・ペースの名の下に全くコストを割る安価で買い叩いているのであります。例えば先年日立製作所と米軍スコツト大佐との現地調達にも示されましたように、労働者一人一時間当りの製品単価は僅か四十八セントであり、これでは資本家側の採算点を最小限度に押えましても、労賃として残されるものは一時間八セント、月五千円に満たぬひどいものであつたのであります。その後日本特殊鋼管に対する新特需契約に至りましては、同様の単価二十四セントという強奪的なもので、これでは労賃部分はどこからも出でころはないのであります。而も米軍直接管理工場においては、更に更にひどいものがあります。東日本重工業下丸子工場にしても、小松製作所にしましても、労働者の基本的諸権利は一切剥奪され、軍事━━さながらに、米軍監督官を初め七重八重の職制の監視と、━━━の━━の下に作業に服しているのがその実情であります。これら日本法律並びに法慣習を蹂躪し、企業採算を全く無視した押付け契約に対しましては、小松製作所、富士自動車、ビクター・オート、その他進駐軍関係自動車委員会所属の全経営主たちは、連名を以て抗議的陳情を行い、資本家の集団たる経済団体連合会要望書を提出しているほどであります。 アメリカ独占資本は占領制度を利用して、日本の対外貿易に制限を加え、日本国民が機会輸出で漸く貯えた外貨を勝手に管理し、割当操作の実権を握ることによつて、アメリカの原料価格が比較的割安の時期には外貨の割当を押え、高くなつた反動期にはこれを買えと言わんばかりに外貨割当を殖やし、日本の蓄積価値を大幅にごつそりと収奪して来たのであります。昨年三月顕著に始まつたゴム、皮革、油脂等のいわゆる新三品、又このたびの繊維の危機は、このためにほかならないことはもはや周知の事実であります。而もこれらの危機は、米国の軍拡経済の行詰りに伴いまして、漸次繊維から鉄鋼、非鉄金属、セメント等の材料部門、更には造船、機器等の全産業部門へと波及拡大せんとする現状にあるのであります。アメリカ独占資本に隷属する日本産業の脆弱性、不安定性がここに完全に露呈されておるのであります。これら諸部門の少数独占資本は、朝鮮動乱景気で儲けるときは儲け放題に儲けながら、一たびアメリカ独占資本の圧力を受けるや、忽ち操業短縮、人員整理の挙に出で、その負担を徹頭徹尾、中小企業と労働者に転嫁せんとしつつあるのであります。繊維のごときはすでに四割の操短を強行し、数万の労働者を一挙に首切るという暴挙をあえてしておるのであります。 以上述べたように日本産業の危機は、アメリカ軍のアジア━━作戦のための占領制度の継続と軍拡経済の矛盾によつて生じたものであり、而して日本産業復興の途は、占領制度の撤廃と通商の自由、具体的には中ソ両国の広大無限なる市場との取引を含む世界各国との互惠平等の貿易によつて、平和産業の無制限拡大を図る以外にないことは今や余りにも明瞭であります。(「その通り」と呼ぶ者あり)然るに一握りのウオール街の金融支配者は、性懲りもなく軍拡の失敗を再び戦争によつて打開せんとして、西欧並びに極東日本の資本家を道連れにしようとしているのであります。伴しながら西欧の資本家は、英国にしましてもフランスにしましても、アメリカの軍拡とテンポを合せることは、自国産業の全き破滅の途であることにだんだんと気が付き、最近は急速にアメリカから離反しつつあるのであります。今やアメリカが最後の頼みとするところの西ドイツにおいてさえも、国民輿論の九割八分までが再軍備に反対しているのであります。このようにして、アメリカは西欧諸国からさえ急速に孤立しつつあるのである。然らば彼らが最も興し易しとみくびつている日本の資本家たちはどうであるか。今の今までアメリカの援助による危機打開の幻想を持つていた日本の資本家の中から、アメリカ独占資本の飽くなき貪慾と横暴に憤激し、進んで中ソ両国との交友関係の回復に危機打開の活路を見出しつつある有力者が増加しつつある事実は、ウオール街とその政権を憂慮せしめているのであります。それ故にこそ、米当局とその傀儡吉田政府は、世界平和委員会が差し伸べたモスクワの経済会議への招請に欣然参加せんとした代表者たちに対しまして、旅券の下附をすら拒み、もともと鉄のカーテンがどちら側にあつたかを白状したのであります。日米両政府が、いやがる日本資本家をして無理やりに再軍備のための兵器生産に追い込むことは、もはや尋常一様の手段を以てしては不可能であります。(「議長、議場を取締れ」と呼ぶ者あり)彼らは今までは蓄積資本の少い日本の資本家を対日援助資金を以って釣つて来た。併しこの援助資金の役割は、日本の金融機関と石炭、電力、鉄鋼、アルミなどの重要基幹産業を支配し、鉄道、電信、電話などを戦略的に握り、更にこれを梃子として、全日本の産業を植民地的に支配する目的のものであつたことは、今や紛れもない事実であります。而も今後は、米当局はこの呼び水すらも提供し得ないのであります。吉田総理は、本国会の施政方針演説において、明らかに米国政府資金として大規模の外資導入の可能性を国民に期待させようとしたのであります。そうしてその裏付として導入される外資は、軍需生産用の電源開発や、東京、神戸間の弾丸道路のような、直接米軍の作戦に役立つ用途にのみ集中する旨を述べて、飽くまで米当局の気を引こうと努めたであろうことは、ほぼ推測するにかたくないところであります。然るにどうでしようか。マーカット局長は、その前に跪いて懇願する吉田総理を、全くこれを軸にするかのように、政治借款としての外資導入はあり得ないと言明するに至ったことは、哀れというも愚かな次第であります。(拍手、「笑うべきだ」「何を言つているか」と呼ぶ者あり)併しこのことは、米国がもはや日本を見限つたことを意味せず、むしろその反対に、今後ますます本格的に長期的に日本に根を下し、日本をアジア━━作戦の主要な足場にしようというのであります。軍需生産用の電源開発や弾丸道路をやめようというのではない。それは必ずやらせる。但し今後は一滴の呼び水すら日本には與えず、徹頭徹尾日本自身の負担において賄わせる。そのためには国民は一層の困苦と窮乏に耐えるべきだというのであります。再軍備は是が非でもやらせる。併しその費用は日本国民が賄え、そのために国民の一層の耐乏生活は当然覚悟をしろ。若しそれに耐え切れず反抗する者は容赦なく━━する。これがアメリカ式和解と信頼の講和の実体であります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)本予算案は、低米価、低賃金ベースの据置きを前提とし、中央地方の行政機構を軍事的に再編成するため人員整理を予想して組立てられたのであり、その出発点において労働者、農民、官公吏に犠牲的負担を押付けるものであります。一般会計当初予算のみをとつても八千五百余億円に上る厖大な再軍備予算は、六千五百億に上る直接税、二千億以上の間接税と、ピンからきりまで大衆課税の収奪によつて裏付けされるものであります。前国会で池田大蔵大臣の誇称した税法上の減税が若し本当なら、二十七年度は一千億円の税収減にならなければならない計算であるが、実際には一般会計の税収のみでも二十六年度より七百億円の税収増加見積りになつているのであります。従つて二十七年度は二十六年度よりも一千七百億の増税であると言わなければならないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)国民にとつて脅迫と強奪と考えられることが、ダレスと吉田政府にとつては和解と信頼である。同様に国民にとつては千七百億の大増税であるものが、池田大蔵大臣にとつては減税であつたのであります。併しながら七年間の占領制度の下でだまされ続けた国民大衆は、みずからの苦い体験を通じて事の真相を悟り始めているのであります。大衆は予算案に切盛りされたややこしい費目は知らない、ましてや行政協定や平和、安保両條約の條文は見ていない。だが併し、両條約と行政協定とそれを裏付ける予算案は、大衆の足元に、大衆の生活苦の中に具体的な形を以てなまなまと現れているのであります。大衆は━━が目の前にうろつき、パンパンを買い、高級車を走らせているのを見ている。銀行ギャングや自動車強盗をやつても日本の警察は指をくわえて見ているのを知つているのである。日本国土の到る所に日本人立入るべからずの立て札が立ち、うつかり近づくとMPにつかまえられるのを知つている。軍事基地のために耕作地は二束三文で取上げられ、漁区は潰されている。B二九が爆弾を積んで墜落し、家屋を焼かれ、日本人が殺されても、米軍から一文の賠償も受けられないことを知つているのである。予備隊に入つてみたら米軍の傭い軍隊に過ぎなかつたことを知つている。他方において吉田自由党政府が、自由主義だ、自由経済だ、米の統制撤廃だというかけ声と比例して、貿易はますます不自由になり、言論、集会、結社は抑圧されて来たことを知つている。安本が生産は戦前より五割も増したと言つているのに、中小企業はばたばた倒れ、日銀券が四千億円も出ているというのに、金詰りで首も廻らん業者が激増しているのである。池田蔵相が減税だというのに、税金苦で一家心中は殖えている有様であります。米当局と吉田政府が如何に欺瞞的言辞を弄しましても、大衆の生活体験をだますことはできないのであります。相模原では基地による百四十町歩の土地取上げに反対して、農民たちは土地の返還と補償を要求し、みんな一人一人が佐倉宗吾郎になるんだと闘つております。PD工場の労働者は━━━の━━にも屈せず、軍令馘首に対し断固闘つているのであります。基地周辺を中心に軍事指定工場の労働者と耕作農民とは提携して闘い始めております。現に足元の東京都では二十三区の区議会は、区長を任命制にせんとする地方自治法改悪に対して、家の子朗党の自由党の議員までが挙げて反対し、吉田内閣の土台骨を足元からゆすぶつているではありませんか。(拍手)米当局と吉田政府の邁進しつつあるこの途はフアシズム、即ちヒトラーの歩んだ墓地への道以外の何ものでもありません。このことはますます広汎な大衆を、望まないと否とにかかわらず、吉田政府とその主人公への反撃に結集せしめるのみであります。売国両條約と行政協定に断固反対した我が日本共産党は、本予算案に絶対反対するのみでなく、この予算実行によつて苦しめられる全国民大衆と共に、この予算案を一片の反古たらしめるために飽くまで闘うことを誓うものであります(「スターリンに誓え」と呼ぶ者あり、拍手
  82. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) これにて討論の通告者の発言は全部終了いたしました。討論は終局したものと認めます。 これより三案の採決をいたします。三案全部を問題に供します。三案の表決は記名投票を以て行います。三案に賛成諸君は白色票を、反対の諸君は青色票を、御登壇の上御投票を願います。氏名点呼を行います。議場の閉鎖を命じます。 [議場閉鎖] [参事氏名を点呼] [投票執行]
  83. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 投票漏れはございませんか……投票漏れないと認めます。これより開票いたします。投票を参事に計算させます。議場の開鎖を命じます。(拍手) [議場開鎖] [参事投票を計算] [「これにて緑風会は解散いたします」「黙れ、やかましい」「ざまを見ろ」「帰つて伜に叱られるぞ」「民主主義の結論だよ」「青が勝つたな、これは」「よかつたな、木村君安心したな」「家には息子があるのだろう」「伜に怒られるぞ」「共産党の同調者だ」「やかましい」「黙れ」「誰だそんなことを言つたのは」「そのうちに共産党も自由党に同調するときが来るよ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し]
  84. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 投票の結果を報告いたします。 投票総数二百十四票。 白色票(即ち三案を可とするもの)百三十五票。(拍手) 青色票(即ち三案を否とするもの)七十九票。 よつて三案は可決せられました。(拍手)      ——————————  賛成者(白色票)氏名    百三十五名       藤森 眞治君    藤野 繁雄君       中山 福藏君    早川 愼一君       波多野林一君    野田 俊作君       西田 天香君    徳川 宗敬君       常岡 一郎君    伊達源一郎君       館  哲二君    竹下 豐次君       高橋 道男君    高橋龍太郎君       高田  寛君    高瀬荘太郎君       高木 正夫君    田村 文吉君       杉山 昌作君    新谷寅三郎君       島村 軍次君    西郷吉之助君       小林 政夫君    小宮山常吉君       楠見 義男君    木下 辰雄君       河井 彌八君    片柳 眞吉君       柏木 庫治君    加賀  操君       岡本 愛祐君    岡部  常君       小野  哲君    梅原 眞隆君       飯島連次郎君    伊藤 保平君       井上なつゑ君    赤澤 與仁君       赤木 正雄君    山川 良一君       村上 義一君    森 八三一君       青山  正一君    小滝  彬君       島津 忠彦君    上原 正吉君       岡田 信次君    石原幹市郎君       玉柳  實君    中川 幸平君       九鬼紋十郎君    大矢半次郎君       郡  祐一君    廣瀬與兵衞君       岡崎 真一君    松平 勇雄君       楠瀬 常猪君    加藤 武徳君       城  義臣君    植竹 春彦君       山本 米治君    古池 信三君       小杉 繁安君    石川 榮一君       木村 守江君    西山 龜七君       山田 佐一君    大谷 瑩潤君       一松 政二君    深水 六郎君       加納 金助君    仁田 竹一君       草葉 隆圓君    徳川 頼貞君       左藤 義詮君    大島 定吉君       黒田 英雄君    小林 英三君       中川 以良君    川村 松助君       寺尾  豊君    溝口 三郎君       三浦 辰雄君    前田  穰君       堀越 儀郎君    小野 義夫君       野田 卯一君    重宗 雄三君       大野木秀次郎君    入交 太藏君       宮田 重文君    西川甚五郎君       宮本 邦彦君    平井 太郎君       杉原 荒太君    田方  進君       松本  昇君    秋山俊一郎君       鈴木 直人君    石村 幸作君       長谷山行毅君    高橋進太郎君       堀末  治君    鈴木 恭一君       愛知 揆一君    安井  謙君       平林 太一君    長島 銀藏君       平沼彌太郎君    竹中 七郎君       有馬 英二君    菊田 七平君       小川 久義君    溝淵 春次君       團  伊能君    瀧井治三郎君       前之園喜一郎君    駒井 藤平君       中山 壽彦君    林屋亀次郎君       白波瀬米吉君    岩沢 忠恭君       鈴木 強平君    木内 四郎君       大屋 晋三君    泉山 三六君       黒川 武雄君    横尾  龍君       石坂 豊一君    境野 清雄君       大隈 信幸君    木内キヤウ君       谷口弥三郎君    稻垣平太郎君       池田七郎兵衛君     —————————————  反対者(青色票)氏名     七十九名       重盛 壽治君    山花 秀雄君       門田 定藏君    江田 三郎君       小林 孝平君    三橋八次郎君       若木 勝藏君    小酒井義男君       栗山 良夫君    梅津 錦一君       深川タマヱ君    荒木正三郎君       内村 清次君    羽生 三七君       紅露 みつ君    石川 清一君       松浦 定義君    高田なほ子君       森崎  隆君    吉田 法晴君       和田 博雄君    山崎  恒君       深川榮左エ門君    岩木 哲夫君       岩男 仁藏君    菊川 孝夫君       岡田 宗司君    河崎 ナツ君       一松 定吉君   堀木 鎌三君       岡村文四郎君   小笠原二三男君       椿繁  夫君   木下 源吾君       金子 洋文君   野溝  勝君       須藤 五郎君   岩間 正男君       兼岩 傳一君   千葉  信君       木村禧八郎君   堀  眞琴君       水橋 藤作君   鈴木 清一君       岩崎正三郎君   大野 幸一君       上條 愛一君   千田  正君       東   隆君   松原 一彦君       田中  一君   加藤シヅエ君       山田 節男君   齋武  雄君       大山 郁夫君   羽仁 五郎君       矢嶋 三義君   村尾 重雄君       永井純一郎君   吉川末次郎君       カニエ邦彦君   島   清君       佐々木良作君   小林 亦治君       松永 義雄君   相馬 助治君       中村 正雄君   山下 義信君       堂森 芳夫君   小松 正雄君       伊藤  修君   棚橋 小虎君       小泉 秀吉君   三木 治朗君       波多野 鼎君   原  虎一君       下條 恭兵君   松浦 清一君       片岡 文重君      ——————————
  85. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 本日の議事日程はこれにて終了いたしました。次会は明日午前十時より開会いたします。議事日程決定次第公報を以て御通知いたします。  本日はこれにて散会いたします。   午後八時二十一分散会      —————————— ○本日の会議に付した事件  一、議員の請暇  一、日程第四 優生保護法の一部を改正する法律案  一、日程第五 昭和二十六年十月の台風による木船災害復旧資金融通に関する特別措置法案  一、日程第六 捕獲審検所検定の再審査に関する法律案  一、日程第七 商船管理委員会解散及び清算に関する法律案  一、日程第八 船舶運営会船員退職手当に関する交付金船舶所有者に交付する法律廃止する法律案  一、日程第二十二 ポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する件に基く労働省関係命令廃止に関する法律案  一、日程第二十三 失業保険法の一部を改正する法律案  一、日程第九 漁船損害補償法案  一、日程第十 漁船損害補償法施行法案  一、日程第十一 ポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する件に基く水産関係命令廃止に関する法律案  一、日程第十二 所得税法の一部を改正する法律案  一、日程第十三 法人税法の一部を改正する法律案  一、日程第十四 相続税法の一部を改正する法律案  一、日程第十五 物品税法の一部を改正する法律案  一、日程第十六 砂糖消費税法の一部を改正する法律案  一、日程第十七 一般会計の算出の財源に充てるための米国日援助物資等処理特別会計からする繰入金に関する法律案  一、日程第十八 財産税等収入金特別会計法を廃止する法律案  一、日程第十九 資金運用部預託金利率の特例に関する法律案  一、日程第二十 漁船保険特別会計における漁船保険事業について生じた損失を補てんするための一般会計からする繰入金に関する法律案  一、日程第二十四 国立学校措置法の一部を改正する法律案  一、日程第二十五 農林漁業資金融通法の一部を改正する法律案  一、日程第二十六 農業改良助長法の一部を改正する法律案  一、日程第二十七 閉鎖機関日本蚕糸統制株式会社が積み立てた繭糸価格安定資金処分に関する法律案  一、北海道地方の震災の災害状況調査派遣議員の報告  一、国家公安委員の任命に関する件  一、日程第一 昭和二十七年度一般会計予算  一、日程第二 昭和二十七年度特別会計予算  一、日程第三 昭和二十七年度政府関係機関予算