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1952-03-19 第13回国会 参議院 本会議 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年三月十九日(水曜日)    午前十時十一分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第二十二号   昭和二十七年三月十九日    午前十時開議  第一 昭和二十六年十月の台風による漁業災害復旧資金の融通に関する特別措置法案衆議院提出)(委員長報告)  第二 ポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する件に基く全国選挙管理委員会関係命令廃止に関する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第三 ポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する件に基く警察関係命令措置に関する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第四 農業共済保險特別会計歳入不足を補てんするための一般会計からする繰入金に関する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第五 韓国人らい患者強制退去に関する請願委員長報告)  第六 安全保障條約締結に伴う佐世保駐留地域決定に関する請願委員長報告)  第七 アメリカ駐留軍国立文教地区内ホテル等利用に関する請願委員長報告)  第八 安下庄港災害防除工事施行に関する請願委員長報告)  第九 八木港修築工事継続に関する請願委員長報告)  第一〇 久慈避難港築設促進に関する請願委員長報告)  第一一 新潟県長岡市に測候所設置請願(二件)(委員長報告)  第一二 北海道入舸ニマンボ海岸燈台設置請願委員長報告)  第一三 網走港修築工事促進に関する請願委員長報告)  第一四 北海道香深村に燈台設置請願委員長報告)  第一五 北海道香深修築工事促進に関する請願委員長報告)  第一六 函館港第二号ふ頭完成促進に関する請願委員長報告)  第一七 裏日本航空路開設等に関する請願(二件)(委員長報告)  第一八 北海道入舸ニマンボ海岸燈台設置等請願委員長報告)  第一九 東支那海警備艦艇配備請願委員長報告)  第二〇 船舶向け気象無線通報独立強化に関する請願(二件)(委員長報告)  第二一 八戸港修築工事促進に関する請願委員長報告)  第二二 島根県惠曇町風見山に燈台設置請願委員長報告)  第二三 公有水面埋立免許料港湾管理者收入とするの請願委員長報告)  第二四 水難救護法中一部改正等に関する請願委員長報告)  第二五 だ捕舶船および乗組員返還に関する陳情委員長報告)  第二六 神奈川県辻堂元海軍演習地を進駐軍演習地指定反対陳情委員長報告)  第二七 アメリカ駐留軍国立文教地区内ホテル等利用に関する陳情委員長報告)  第二八 在外同胞救出に関する陳情委員長報告)  第二九 奄美大島および沖繩、小笠原各諸島に日本行政行使陳情委員長報告)  第三〇 田子浦修築工事施行に関する陳情委員長報告)  第三一 国庫補助による定期命令航路設定陳情(二件)(委員長報告)  第三二 宮崎市赤江飛行場民間航空路に編入の陳情委員長報告)  第三三 鷹巣港を避難港に指定陳情委員長報告)  第三四 日本海浮流機雷に関する陳情(二件)(委員長報告)  第三五 長岡市に国立測候所設置陳情委員長報告)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。      ——————————
  3. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) これより本日の会議を開きます。  この際お諮りいたします。労働委員長から、繊維関係中小企業を中核とした経営不振による企業労働者労働條件低下実情を実地調査するため、石川県及び福井県に村尾重雄君を、石川県に早川愼一君を、本月二十六日から五日間の日程を以て派遣いたしたい旨の要求書が提出されております。委員長要求通り、これら二名の議員を派遣することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつて委員長要求通り議員を派遣することに決しました。      ——————————    〔羽仁五郎発言許可を求む〕
  5. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 羽仁五郎君。
  6. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 私はこの際、防衛力漸増問題に関する緊急質問動議を提出いたします。
  7. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 私は只今羽仁五郎君の動議に賛成いたします。
  8. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 羽仁君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつてこれより発言を許します。羽仁五郎君。    〔初仁五郎登壇拍手
  10. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 今日、日本の置かれている極めて困難なる状況の下にあつて政府が当面の問題の解決について苦心している実情に対しては、我々も同情に堪えないけれども、眼前の問題の処理に拘泥して民主主義原則を破壊することは許されない。憲法には、ああ書いてある、併しそれはこうも考えられるのだというようなことが、世間で通用するようになつてしまうならば、かかる事態を導く首相並びに我々国会議員は重大なる責任を免れ得ない。政治家をして法の前に責任あらしめねばならない。これこそは、第二次世界大戰の悲惨な経験の中から、ニユールンベルグ及び東京の国際法廷の憲章及び判決、その絞首刑以下の刑罰の執行、これらを通じて、今日、国際の法の進歩において確立された原則ではないか。戰争、そのほかのさまざまの最も悲しむべき事件というものは、諸君、忘れるなかれ、決して一朝突如として起つて来るものではない。当初はそれほどの問題でないと考えられていたものが、次々と重なり合つて行つて国民事態の重大に気付いたときには、すでに、もはやこれを阻止する余地がないという状態に到達しないために、今日、首相は、我が憲法平和主義を、最も忠実に、身命を賭して擁護するか否か。これが本日、本員の首相に対する質疑の第一点である。これに関連して、いわゆる防衛力の問題につき三点、行政協定につき二点に亘り、首相の所見を質さなければならない。  戰力にあらずしてこれに類似するものが戰力になつて行く力というものは、首相自身が曾て苦痛を以て体験したところからもおのずから知らるるように、非常に強いものである。従つて、それがいやしくも手遅れとなる前に、これを阻止するあらゆる努力を、要点において、主要の各條件においてなさなければならない。現在戰力に類似する力が、我々の統整することのできない戰力というものに近付いて行くには、あらかじめさまざまの兆候を現わして来る。本員は只今首相が、この戰力に類似するけれども戰力でないとするものが、戰力となつて行くことを、厳重に監視する責任を持つ、客観的に必要にして十分なる、欠けてはならないそれぞれの條件、これだけを気を付けていれば大丈夫であるというそれぞれの條件を、ここに国民の前に列挙して明示され、国民に確信に基く安心を與えられることを希うのであります。諸君、誠に我々の先輩といえども、必ずしもその決意において能力において我々に劣つていたとはされ得ない。然るに、日本の過去の政治家たちは、何故に遂に軍閥の前に膝を屈したのか。日夜厳重に監視して守らなければならない諸條件を、的確に列挙明示して、国民と共にこれらを飽くまで守つて行くという努力を怠つた点に、我々の先輩の重大なる責任が遂に生じて来たのではなかつたか。現在、国民が混迷し、憶測し、従つて心痛し、国会が論議しているいわゆる戰力の問題について、これらの要点について、首相は飽くまで責任を負い、国民と共に必ず守つて行かなければならない條件として、一、徴兵制及びこれに類似する強制が許されないこと、二、日本警察予備隊防衛隊治安隊などが外国戰力の下に置かれて動かされることが許されないこと、三、日本警察予備隊などの海外進出が許されないこと、これらの三点を最も厳重に監視せねばならないことを首相は明確に認識するか。これらの点を憲法改正によつて解決し得ると首相考えているのか。我が憲法の本質、その前提たる基本原則に触れるならば、それはもはや憲法改正ではなく、実に憲法廃止であることを、首相は認識しているのか。民主主義平和主義とは我が憲法の最高二大原則であるが、これらの二大原則を外して天皇制のみが存続すると首相考えているのか。日米安全保障條約及び行政協定が、日本国憲法改正要求するようなことが起るならば、それはアメリカによる日本内政干渉、否、日本に対する侵略行為とされねばならないが、首相はその責任を負うのか。曾て東洋平和のためと言つて日本軍が大陸に侵略したようなことも決して忘れることを許されない。如何なる名義を以てしても、日本の武装された力が国外に出動することは断じて許されないのである。日米行政協定について、国民従つて国会首相に対して最大の不安を感じているのは、首相がみずから外相として、技術上の外交秘密理由に隠れて、現代民主主義、即ち主権在民原則の下において、如何なる意味においても許され得ない原則上の秘密外交をあえてし、国会の知らない間に、国民の知らない間に、国民運命を決定しつつあるのではないか、従つて我が国会が我が国民と共に同意することなくして、日本駐留する米軍日本国外に出動し、又は、日本同意なくして、米軍により日本原子爆撃の基地がいつの間にか置かれるような事態が発生し、日本国民がみずから、同意することなくして、第三次世界戰或いは何らかの戰争に巻き込まれるのではないか、この二点であります。政府外交権などというものは国民委託物に過ぎないのである。現在、政府はすでに日米行政協定による軍事的予算を本国会に提出し、同協定第二十三條によつて日本駐留する米軍安全保障に関する立法と称するものを提案しようとしているけれども、外交又は軍事上の機密を理由として国会の審議を制限し、国民言論、報道、新聞、出版などの自由を脅かし、国会及び国民同意なくして日本運命を決定するがごとき方向を許すことが如何に恐るべき危險を招来するか、首相は自覚しているか。最近特に内外世論の警告するこれらの危險、即ち新たなるフアシズムの危險に対し、首相は如何なる認識と決意とを我が国民の前に示し得るか。これが、本日、本員の首相に対する緊急質疑の第二の問題であります。  新井白石言つたように、鼠を打とうとして名器を毀つことを古人も戒めている。政府が、政府のいわゆる不穏分子取締ろうとして、特審局の拡張など、検察警察官僚権力慾の野心に乗ぜられ、思想言論集会、結社の自由を圧迫して、これらを踏みにじるならば、政府みずからが民主主義を破壊するものとされねばならないのである。首相は、思想そのものが如何なる意味においても取締の対象とされてはならないことを確認しておられるか。これが第一。  第二に基本的人権について。政府は、ややもすればこれが公共福祉によつて制限され得るなどと言つているが、若し果して然りとするならば、旧日本帝国憲法と新らしい我が日本国憲法とはどこが違うのか。我が憲法基本的人権制度的権利自由とを明記して区別し、財産権等制度的権利の自由の使用についてのみ公共福祉による制限が許され得べき場合を明記しているけれども、思想及び良心の自由、勤労者の団結する権利及び団体交渉そのほかの団体行動をする権利、これらの基本的人権については公共福祉制限を認めてはいないのであります。本月五日、木村法務総裁は、検事会同に臨んで訓示して、「いやしくも思想そのもの取締に押入つたり、憲法保障する基本的人権を侵害するようなことがあつてはならない」と嚴に戒めている。本月六日、英字紙ニツポン・タイムスが、日本政府の最近の構想として発表されたいわゆる特別保安法を批判して、政府が少数の非合法的分子活動に対する取締というものが大多数の一般国民基本的権利に対する圧迫となる危險を自覚していない点に猛省を促して、「法は常に明白にして的確であることを要し、広い解釈を許すべきでなく、官吏判断によつて人民の自由を制限する武器となつてはならない」。「治安に名を借りて、いやしくも基本的人権を侵し、政治的活動の自由又言論の自由などを脅かすことは許されない」と警告し、「何ら有害なる具体的行動がないのに、これを企てていると言つてこれを取締ろうとすることは、個人の自由を圧迫する重大の虞れがあり、言論、又集会の自由、又民主主義そのものに対する官憲の弾圧の発生する危險を含む」と指摘して、痛論している。首相は、治安警備に名を借りて、犯罪の予防を口実とし、官吏判断の如何によつて人民の自由の取締に便宜のように制限することのできるような、広汎な授権を含む立法が、民主主義と両立すると考えておられるか。  第四、首相は、最近内外世論が指摘している日本における警察国家復活危險を如何にして防止するか。中央集権化された警察は、日本の過去の独裁制の特徴である。戦前十カ年間、日本軍閥の最も強大なる武器は、中央政府都道府県庁を支配して行使した思想警察及び憲兵隊伴つた絶対的な権力である。日本はこうして全く警察国家であつた。一九四七年九月、連合国日本占領軍司令官マツカーサー日本首相に與えた書簡に指摘されていた日本の過去の警察国家の事実を、吉田首相はまさか忘れ得まい。全国的の問題は、政治的に政策によつてのみ処理し解決されるものである。政策の貧困を警察力で押え付けようという方法は、民主主義以前の方法である。首相は、治安維持のためと言つて警察ばかりに頼り、自治体警察を中心とする趣旨を覆えし、国家警察を主体とする動きを許すならば、首相民主主義を覆えして警察国家を出現しようとする責任を負わなければならない。  第五、首相は、大学そのほか、学問、研究、教育を警察の下に置こうとするような動きは許されないことを確認するか。封建時代に、寺社奉行が僧侶を呼ぶこと奴隷のごとしと熊沢蕃山が批判している。最近、東京大学の事件に関し、朝日新聞がこの三月三日特に社説を以て述べているところも首相は読まれたと思います。曾つて明治初年に谷干城政治警察の悪弊を批判して、「反対党を彈圧して政権をとるは、暗夜に兵をやるごとく、敗北必至である」と痛言しております。政府が、共産党機関紙そのほかの合法的活動を認め、共産党動き、その政策、その実力、その方向国民と共に明らかに知つて、これに対して堂々と自己政策実力方向とを以て闘うことこそ、民主主義政党が政敵に対するあり方ではないのか。福沢諭吉言つているように、「新聞紙を制限して言路を塞ぎ、間諜を用いて世情の動静を探索するは、その状あたかも活物を密封して空気の流通を絶ち、傍らよりその死生を窺うがごとし、何ぞそれ卑劣なるや」と言つている。広島の学生新聞に投書して言つている。「電車の中で二人の予備隊の若い隊員が僕たち本を手にしている学生に向つて貴様たちは今のんきに遊んでいやがるが、もう少したつて見ろ、もりもり鍛えてやるぞと言うのです。この言葉は何を意味しているでしようか。思つただけでも恐ろしい言葉です。」首相は何とお答えになるか。  第三の問題、最近、「英国が、社会保障福祉国家厚生国家となつて、貧富の差と生活程度の差が少くなるに伴い、治安がよくなりつつあるので、警察官の職業上の危險は非常に減つて来ている」とロンドンから長嘉吉郎君が通信している。社会真実治安国家真実防衛、そのために政府が第一に着手すべきは国民生活の安定ではないのか。これが、本日、本員の首相に対する緊急質疑の第三。  最後の問題であります。本月六日、米国大統領トルーマンは、テレビジヨンを通じ全米に向つて行なつた放送において何と言つたか。「共産主義の拡大は武器のみによつて防止することはできない。」安全保障と称して、アメリカと、旧日本帝国政府が議会に諮ることなくして結んだ日独伊防共協定以上の無定見なる軍事協定を結び、軍事費によつて国民生活費圧迫して顧みない政府は、現代歴史に逆行しようとするのか。日米安全保障條約とその行政協定主要目的米国の安全にあつて日本の安全にないことは、自明の事実であります。(「ノーノー」「何を言つているのか」「その通り」と呼ぶ者あり)最近、ギリシア、フランスなどにおいてまで、米国内政干渉が問題となつている事実を、朝日新聞も報道しているではないか。日本紡績協会阿部孝次郎会長さえもが、「行政協定占領継続の色彩が濃い。日本主権を確立するため、今後是非とも修正せねばならない」と言つているではないか。政府は、日本駐留する米軍兵力量、又原子爆彈などをも含む兵器の種類、又その駐留の期間が日本側動きによつて制限されないという了解事項を、国民の眼から隠しているのではないか。現在国会に上程されている来年度予算案についても、外資導入主要條件として自主性の全くない予算国会通過を要請しているが、真相は最近のいわゆるマーカツト声明によつても暴露されたが、首相は、アメリカの資本が日本においてその欲する利潤を挙げ得るように、これ以上に日本労働賃金を引下げ、国民生活を低下させて、米資導入を可能ならしめようとしているのか。(「何を言つているのか」と呼ぶ者あり)一方には学童給食費一百億円を削つて、他方には警察予備隊六百億を増額する。何たる無残なる政府であるか。国民の最愛の子女を飢えさせて予備隊を太らせる、このような防衛力は何を防衛するのであるか。(「頭が悪いぞ」「どつちが悪い」と呼ぶ者あり)総予算の四分の一にも上る非生産的の防衛費、即ち軍事費が頭を出したということは、破局的なるインフレーシヨンの最も恐るべき原因が頭を出したということではないか。防衛するに値いする国、社会保障あり、生活の幸福の希望ある国を作らずして、徒らに愛国心強制しても、愛するに足る生活の実体のないところにどうして真実愛国心がおのずから湧き上つて来ることができましよう。国民生活を守ることによつてのみ国家国民によつて守られるのに、政府国民を犠牲にし、国民を裏切つておいて、外国の軍隊の下に自己の安全の保障を感じているような政府の養成しているいわゆる防衛力は、何を防衛するのか。何かの役に立つと首相は信じているのか。(「愚論はもうやめろ」「自由党やかましいぞ」「時間だ」と呼ぶ者あり)  ダレス特使アメリカ特権的利益のためにイギリスを裏切つたか否か、本員の関知するところではないが、首相外国政治業者を信じて日本国会国民を信じないとすれば、これは重大な問題であります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)現在のアメリカを支配している帝国主義の意向がどうあろうと、現在すでにイギリスそのほかの多くの国家が正式に承認した中華人民共和国が国際連合において議席を承認される日が遅かれ早かれ将来の現実となるであろうと推定されねばならないのであります。首相は、日米安全保障條約や行政協定などによつて、ひたすらアメリカに依存することをやめ、警察国家危險を冒してまで法律のみによつて治安を維持しようとするようなことをやめ、事実上においてアメリカ防衛のためのものに過ぎない日本防衛力軍事費のために、学童の血を吸い、女性の血を吸い、病人の血を吸うようなことをやめて、第一に、児童に食を與え、大衆に住宅を與え、病人に病院を與え、失業者に職を與え、国民生活の安定のために、社会保障のために、日本経済が自然の要求として要求する中国貿易復活図つて日本経済の自立を容易にすべきではないのか。(「終り」と呼ぶ者あり)歴史進歩に逆行しようとするものの前途には滅亡の運命のほか何ものがあり得ましようか。
  11. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 羽仁君、時間が過ぎておりますから……(拍手吉田内閣総理大臣。    〔国務大臣吉田茂登壇拍手〕    〔「答弁の要なし」と呼ぶ者あり〕
  12. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。  平和主義に徹するか徹しないかということは、これはここに私が再言するまでもなく、これは当然のことでございます。憲法にもその趣旨は明瞭に書いてあるのであります。然らば(「首相としての答弁ではないぞ」と呼ぶ者あり)防衛力漸増によつて徴兵制度を布くか、或いは、いつの日にかに防衛力戰力に移行するというようなことがありはしないか、或いは又外国警察予備隊等を派遣することがないかというお尋ねでありますが、これはしばしば申しております通り徴兵制度は布く考えはないのであります。再軍備は未だ考えておりません。又防衛力をいつの日にかに戰力になす、これは、再軍備をしない以上は、いつの日にかに戰力に移行することは断じてないはずであります。又外国日本予備隊等を派遣するということは、これはしばしば申しておる通り政府としては考えておりません。そういうことはいたしません。又警察国家にするのであろう、これは警察国家にする考えは毛頭ないのであります。ないために今日警察機構等については十分検討を加えております。(「ちよつとおかしい」と呼ぶ者あり)国民の安定或いは国の安定が第一である、その通りであります。併しながら今日は、往々にして安定を害するような、政府の所言或いは事実を曲げて国民の安定を害するような議論をいたしておることを私は遺憾といたします。  又、安全保障條約及び行政協定はつ決してアメリカによつてのみ国の独立安全を守るのではないのであります。再軍備はできない。然らばしない。然らばどうして独立した日本独立安全を守るか、ここにおいてか安全保障條約を作つたのであります。(拍手)又この安全保障條約を実行するために行政協定ができたのであります。而もこの行政協定は相互の間に理解と信頼とを以て作り上げた。私は、今日までできた行政協定において、これほど立派な行政協定はないと考えるのであります。(拍手)一体どこが悪いのか。憲法がどうとか、戰力がどうとか言うことだけであつて行政協定の内容がよろしくないということを少しも指摘してないのであります。のみならず、これを以て戰力なりとし、或いは又アメリカのみによるとが、或いは日本独立失つたとか、或いは日本に対して対等でない、圧迫によつてできたのだとかいろいろ言を左右にし、或いは言を飾つて、この協定なるものの真価を曲げようとしておるのが、反対党諸君言論であると私は思うのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)これこそ国民の安定、国情の安定を害する第一のものであろうと私は思うのであります。  次に外資導入について申上げますが、現在の予算外資導入を基礎として予算を立てているのではないのであります。外資導入ができれば日本産業経済は一層安定すると申しているのであります。故にこのために政府は極力努力いたしております。又中共貿易がなければ国が立たないと言つておらるるようでありますが、(「その通り」と呼ぶ者あり)今日まで過去六年、七年の間、中共貿易なくして現に存立しているのみならず、日本経済はますます繁栄して来ているのであります。  その他は主管大臣からお答えいたさせます。(拍手)      ——————————    〔吉田法晴発言許可を求む〕
  13. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 吉田法晴君。
  14. 吉田法晴

    吉田法晴君 私はこの際、自衛戰力に関する緊急質問動議を提出いたします。
  15. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私は只今菊川君の動議に賛成いたします……誤まり、吉田君の動議に賛成いたします。
  16. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 吉田君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  17. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。吉田君の発言を許します。吉田法晴君。    〔吉田法晴登壇拍手〕    〔「予算委員会と同じことを言うな」と呼ぶ者あり〕
  18. 吉田法晴

    吉田法晴君 予算委員会は、総理の失言と前言取消に関連しまして、戰力論議をいたしましたので、本会議においてこの緊急質問をなすべきか否かについて反省をしたのでありますが、総理取消政府の強弁とにもかかわらず、再軍備はなしくずし的に進められており、本年度予算が通過いたしますと、予備隊保安隊は、人員、装備共に強化せられ、海上保安隊の中から生れる海上警備隊のごとき、フリゲート艦という駆逐艦を持つに至るものと信ぜられておりますし、近く政府警察予備隊海上保安隊の法的基礎をポ政令から国内法に切替える措置なり、両者を統合所管し国防省に相当する保安庁設置法を提出して来ると信ぜられております。言い換えますと、治安目的ではなくして、自衛目的を持つ明瞭な国防軍、自衛軍が実現するのでありますが、それまでじつと待つべきではなくして、憲法第九十九條によつて憲法尊重擁護の義務を持つている国会議員としての当然の責務を今日果すべきであると、こういう意味においてこの緊急質問をなす次第であります。(「そうだそうだ」と呼ぶ者あり)  従来、吉田総理は、憲法改正問題に関しましては、しばしば憲法改正はいたさないのでありますと言明されて来られました。(「言を左右にする」と呼ぶ者あり)去る三月六日に本院予算委員会における私の質問に答えても、「憲法改正の今日意思はないのであります。再軍備はいたさないつもりでおりますから、それ故に憲法改正の必要はないと私は思います。」と明言されました。然るにその同じ六日の午後、岡本委員の質問に答えては、「憲法は自衛手段としての戰力を禁じているわけではない」と、問題になつ発言をせられました。この発言が第九條に違反すると騒がれたため、三月十日訂正をせられました。然るにそのすぐ直後、又、「自衛のための新たな戰力を持つや否やを成るべく早く国会国民に問われることが必要ではないか」という岡本君の質問に答えては、「大体御意見の通りであります」と、これを肯定、憲法改正と、これを国民投票に任せることを確言しておられます。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)総理発言を速記録で辿つてみますというと、前後矛盾撞著、(「分裂症だ」と呼ぶ者あり)いずれに真意があるのか捕捉困難でありまして、極度に心神困憊をしておられるのでなければ、頗る不誠意、不まじめ、日本国民と共に、国家の名誉にかけ、全力拳げてこの憲法の崇高な理想と目的を達成することを誓い、憲法第九十九條によつてこの憲法を尊重し擁護する義務を有する総理大臣とは思えないのであります。そこで先ず第一に吉田総理にお尋ねしなければならんことは、以上の御発言のうち、いずれが真意あるものであるか、失礼であるけれどもはつきり承わりたい。併せて、この憲法を公布せられたその吉田総理は、憲法前文の末項及び第九十九條の憲法尊重擁護の義務をどう考えておられますか、承わりたいのであります。  第二点は、憲法第九條の解釈についてであります。この條文成案の経緯、英訳文、憲法学者の多数の意見、政府の当時の説明等を総合して、異議なかつたところのものは、一つは無條件の交戰権否認であつて、自衛戰争を放棄するということでありました。このことについては、一、二の反対意見がございますが、それは極めて少数であること周知の通りであります。マツカーサー元帥が憲法改正について民政局に與えられた重要な三点の一つには、次の一項がありました。即ち「国家主権権利としての戰争廃止する。日本国家の紛争解決のための手段としての戰争及び自己の安全を保持持するための手段としてのそれをも放棄する。」繰返しますが、「自己の安全を保持するための手段としてのそれをも放棄する。」「以上のことは、世界防衛と保護につき、今や世界を動かしつつある崇高な理想に依存するものである。」このことは、吉田総理は、第九十帝国議会において、みずから「戰争放棄に関する本條の規定は、直接には自衛権を否定してはおりませんが、第九條第二項において、一切の軍備と、国の交戰権を認めない結果、自衛権の発動としての戰争も放棄したものであります。」と明言しておられるのでであります。他の一つは、「その他の戰力」、英語で言うアザー・ウオア・ポテンシヤルというのは、潜在的戰力であつて、人の集団、物たる兵器及び兵器の製造施設の三つを含むということであります。このことは金森国務相も第九十帝国議会の答弁で明白に認めておられます。然るに前者は、吉田総理によつて、第七回国会以来でありますが、「自衛のための戰争はしないと言つた覚えはない」と覆えされ、後者は、木村法務総裁によつて、今国会において覆えされ、甚だしい場合は「原子爆彈であるからと、それのみを以て戰力とは言えぬ。これを運ぶところの飛行機も要れば、これを操縦する飛行士も準備しなければならん。これらのものを総合して一つの武器となる」と言つて、曾つての人の集団、物たる兵器、兵器製造の施設、その一つ一つが潜在的戰力であるとされた憲法制定当時の解釈とは全く違つております。かくのごとく憲法の解釈が勝手に変更できるものでありましようか。或る新聞が、「日本国員の総意によつて創定された憲法に対して、時の政府が便宜的た解釈を下したり、事実の上で背反したり、結局憲法を軽視するようなことがあれば、法治国家とは言えないことになる。」と申しておりますが、国民に先んじて憲法を尊重し擁護すべき総理大臣なり国務大臣が、勝手に憲法を解釈して、憲法を破壊し、立憲政治を覆えすことが許されるかどうか、総理及び木村法務総裁に承わりたいのであります。  お尋ねする第三点は、現在問題になつている警察予備隊海上保安隊、この漸増が期待せられておる自衛力は、戰力ではないかという点であります。今国会を通じて最も多く論議せられた戰力問題は、上述の政府憲法第九條を勝手に曲げてする解釈、なかんずく、戰力は総合的なものでなければ戰力とならぬという詭弁と、そして警察力戰力との差を挙げず、「戰力には一定の定義がありません。その時と場所によつてその戰力のあり方が違つて来るだろうと考えております。」という逃げ口上で終始して来られました。併し戰力については果して一定の定義をなし得ないでありましようか。警察戰力の限界はないでありましようか。戰力の要素、そして戰力警察力と区別する要素として挙げるべきものは、三つあると考えられます。第一は組織であります。即ち、いわゆる軍隊組織を持つているかどうかであります。それには、強力な指揮命令の系統、階級制度、戰闘のための訓練を含み、徴兵制度或いは予備役制度等の身分束縛を伴うか否かであります。第二は、その有する武器の性質であります。如何なる武器を持つことによつて警察力から戰力に移行するかは、時代と環境とによつて左右せられるところではありますが、不特定多数の国民を殺傷する武器を持つことは警察には許されないのでありましようし、且つ、日本が敗戰後、ポツダム宣言により戰争能力を破摧され、そして軍国主義の復活が実定法によつて警戒されて来たこの現実の事態をも忘れてはなりません。第三は、その目的使命であります。警察は国内の治安維持を目的とするから対内的であり、これに反して、戰力は対外的に、自国を防衛し、或いは他国を制裁し、又は侵略することを目的とし、国の外に向うことを本質としております。或いは警察と軍隊の本質的区別を、それが人を殺すことを当然のこととして承認されているか否かに求めんとする意見もございます。然るに警察予備隊等はどうでございましようか。全隊員が総監の下に旧陸軍類似の階級に分れて統率され、兵営類似のキヤンプに牧容されて、外出も自由ではありません。訓練内容は、白兵戰、渡河作戰、敵の上陸に備える障害物構築等、全く戰闘のためのものであります。その訓練を演習と言い、新聞に伝えられる保安庁設置法要綱によれば、保安隊、警備隊の総監の下には、幕僚があり、管区隊長の下に部隊がある。指揮命令の系統はこれを統帥と言う。士官学校という言葉が飛び出したり、国防軍という言葉がつい出るのは、語るに落ちたものでなくて何でありましよう。(「そうだ」と呼ぶ者あり)兵器はカービン銃、ライフル銃、その他自動小銃、迫撃砲、バズーカ砲等であると公表されております。近代的装備を持ち、ジエツト機、原子爆弾を持つ外国軍隊に対して十分戰い得る戰力でないと政府によつて強弁されておりますが、世界のどこの国の警察が、国内治安維持のために迫撃砲やバズーカ砲を持つて、多数の国民を殺戮しようとしておるものがございましようか。なおポツダム宣言第九項に謳われた武装解除に関する方針は、「降伏後の対日基本政策」の中にも、武器の製造所有を禁止した指令第三号の中にも、具体的に規定されております。国内法としての昭和二十年勅令五百四十二号に基く兵器、航空機等の生産制限に関する件を待つまでもなく、兵器の製造は明らかに憲法違反であります。警察予備隊及び海上保安隊が如何なる目的に使われるか。国内治安維持のほか、自衛のために使われることが明らかにせられて参りました。即ち日米安全保障條約による自衛力漸増の具体的姿が、警察予備隊なり海上保安隊の増強であります。この自衛ということは、海外からの侵略、或いは外からの脅威を與えんとするものに対して、日本独立安全を守るということであると説明されましたが、このことは、即ち予備隊保安隊が対外的な使命を持つておるということであります。なお又行政協定第二十四條によつて日本区域において敵対行為又は敵対行為の急迫した脅威が生じた場合には日本区域の防衛のため共同措置をとると規定されているが、共同措置をとる一方がアメリカ戰力であるならば、他の日本の自衛力も戰力ではないかということは、当然のこれは理論であります。  以上、戰力の要素と、自衛力と称せられる警察予備隊及び海上保安隊の実体を比較検討いたしましたが、吉田総理、木村、大橋両大臣とも、なお依然として理由も挙げずこれらは戰力でないと抗弁せられるのでありましようか。理由を挙げてお答えを願いたいのであります。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)なお、この自衛の現実の姿として、政府は、「予備隊の外敵の防衛に任ずることは……これは自衛権の行使でありまして、予備隊と言わず、消防隊と言わず、或いは我々一介の国民と言わず、誰でも自分の国が侵されんとするときは当然自衛権を行使してこの国を守るのであります。」と答弁しておられます。これは予備隊が外敵に当る戰力であるとの証拠でありますが、そのほか政府は、万一外敵の侵入があつた場合、国民の老幼婦女にも竹槍を持たせて一億玉砕主義を再び繰返すつもりであるかどうか、お伺いしておきたいと思います。  第四には、政府日米安全保障條約によつて、直接及び間接の侵略に対する自国の防衛のため、漸増的にみずから責任を負うことを約束し、その自衛力漸増計画については、ダレス氏が昨年の十二月来朝、吉田首相と協議決定せられたと一般に理解せられており、米英初め世界の輿論のみならず、日本新聞、雑誌、特にこの問題についての輿論調査までが、「日本軍の再建はもう始まつている。」と言い、三月六日の首相自衛戰力に関する発言取消してみても誰も信用しないのに、首相初め政府は、何故飽くまで強弁し、憲法違反の疑いを反省しないのでございましようか。それは吉田総理が秦の趙高の例に倣つて、その左右や学者に鹿を馬と言わせようというのでありましようか。或いはアンデルセンの「裸かの王様」のように、町の子供たちに「裸かの王様だ」と笑われても、なお美しく立派な着物を着ていると言い張るつもりでありましようか。占領下現在の憲法の下においては、国内治安維持を任務とし一朝有事の場合外敵に対し国家防衛する警察予備隊を強化し、その数と訓練装備が如何に強化されようと、これを警察と強弁し、機の熟するを見て、日本国憲法は曾つて上から與えられたものであるが、今は客観情勢が変化し、その筋の要請が異なるとして、憲法の修正ではなくして、憲法そのものの否定、憲法の変革にほかならないところの第九條の変更をなされようというのでありましようか。  日本国憲法は、その理想の高さにおいて、民主主義社会化の要素を取入れた点において、ワイマール憲法に幾多相似た点を持つております。第一次欧洲大戰後のドイツの辿つた運命は、日本の我々が今歩もうとする道に極めてよく似ております。ワイマール憲法は一九一九年に誕生して、一九三三年ヒトラーの政権獲得後公然と蹂躪せられて行きました。我が日本国憲法は、昭和二十一年十一月公布、翌二十二年五月施行せられたことは、まだ日本国民の記憶に新たなところであります。実施満五年分記念日を迎えんとする今日、当時の総理大臣兼外務大臣吉田茂その人によつて、事実上の変更と、そして改正変革が行われるのでありましようか。  民主憲法、平和憲法の骨抜きによつて育つ軍国主義の亡霊は、旧軍人を中心に、それを育てる大橋国務相を乗り越え、吉田首相と自由党をもテロと彈圧の対象とするのでありましようが、日本運命を、ドイツのそれのごとく、再びフアツシヨ支配に任せ、そして戰争と、(「時間々々」と呼ぶ者あり)民族の再び起つ能わざる滅亡に推し進めないではおかないでありましよう。吉田首相の心境と決意を承わりたいと思います。(拍手)    〔国務大臣吉田茂登壇拍手
  19. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。  この国会において憲法を尊重するかというお尋ねは余り馬鹿げておつて、私は私自身の耳を疑うのであります。(拍手憲法を尊重するのは当然であります。誰が尊重しないと申しますか。若し尊重しない者があれば我々は飽くまでも鼓を鳴らして攻めざるを得ないのであります(「その通り」と呼ぶ者あり)  又、自衛権と交戰権、又戰力は、これは私が誤解を生じたから訂正をいたしたのであります。この訂正を率直にお読み下さつたならば、理解せられたならば、只今数千言を費してお述べになつたことに対して、この訂正文が最も明らかに答えると思いますから、ここにお答えはいたしません。(拍手、「理解できない」「怒るな怒るな」と呼ぶ者あり)    〔国務大臣木村篤太郎君登壇拍手
  20. 木村篤太郎

    国務大臣(木村篤太郎君) 吉田君にお答えいたします。(「こつちの吉田君に」と呼ぶ者あり)  憲法第九條第二項の解釈については私がしばしば述べた通りであります。この「陸海空軍その他の戰力」、これは陸海空軍というような完成された形の戰力を言うのであります。従つて、その他の戰力というのは、(「完成でなくても戰力だ」と呼ぶ者あり)その名称の如何を問わず、この陸海空軍と同一の力を持つた総合された力と解釈すべきが相当であると信じて疑いません。(「陸海軍いろいろあるのだ、内容について」と呼ぶ者あり)従つて警察予備隊がかような戰力を持つていないということはしばしば述べた通りであります。いわゆる警察予備隊は、内地の治安確保、即ち平和と秩序を維持するために設けられたのであります。併しながら、一たび外国の干渉と教唆によつて擾乱が起つた場合には、これは警察予備隊は出勤しなければなりません。従つて、それに備えるべき力を持たせることは当然のことであります。決して憲法第九條の戰力を持つているのではありません。ただただ内地の平和と秩序のために殺げられ、それに備えるべき装備をしたものに過ぎない。かように解釈すべきである考えます。(拍手)      ——————————    〔永井純一郎君発言許可を求む〕
  21. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 永井純一郎君。
  22. 永井純一郎

    ○永井純一郎君 私はこの際、外資導入に関する緊急質問動議を提出いたします。
  23. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私は只今の永井君の動議に賛成いたします。
  24. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 永井君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  25. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつて発言を許します。(「大蔵大臣いないぞ」と呼ぶ者あり)永井純一郎君。    〔永井純一郎君登壇拍手
  26. 永井純一郎

    ○永井純一郎君 私はこの際、日本社会党第二控室を代表いたしまして、外資導入を中心といたしまする日米経済協力の問題につきまして、総理大臣以下関係大臣に質疑をいたしたいと存じます。  総理は本国会当初におきます施政方針演説におきまして、我が国の経済自立のため必要なるものは、産業の合理化、施設の改善、霊力源の開発、外航船の増強であり、これによつて生産の増強と貿易規模の拡大を図ることであり、そして、このことたるや、一に外資の導入を待つにあらざれば発展を期し得られないと説明をいたしているのであります。即ち吉田内閣は講和後の政策の基調をこの外資導入に置いていると見られるのであります。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)ところが去る十一日、司令部から発表されましたマーケツト談話によりますると、この総理の期待は全く覆えされたと見られるのであります。この談話を要約すれば、一つは、日本の或る事業が外国借款を受けるほど経済的価値があれば、先ず日本政府予算又は民間筋から国内融資をなすべきであるという点であり、二つには今日の日本経済援助を正当化するような財政状態にあるとは思われないという点であります。第三点は、米議会は財政支出に極めて愼重であつて米国から與える借款に政治借款といようなものはないというのであります。政府の言ういわゆる政治借款が何ら具体的な進行を見ていないことが明らかにされたのであります。政府は先に経済協力促推連絡会議なるものを設置いたしまして、去る二月一日、外相官邸で初会合を行なつたのでありまするが、同会議に提出された「経済協力の推進について」なる資料によりますると、「経済協力のための資金供與の要請」として、電源開発資金としては、鋼材、アルミ等、対米協力輸出のための所要電力に充当される分の資金三億ドル、それから協力輸出のための設備資金に要する資金といたしましてアルミ、石油及び石油化学製品、航空機、造船設備資金等五千万ドル、東京—神戸間高速度自動車道路建設資金といたしまして三億ドル、外航適格船建造資金として五千万ドル、その他鉄鉱石、石炭、石油等、原材料の輸入クレジツト、以上五つの事項を要請することとなつておつたようでありまするが、外資の導入が望みなしといたしますならば、この最も大なる電源開発計画を初めといたしまして、設備合理化、外航船建造等に重大なる影響を與えるに至りますると共に、政府の言ういわゆる対米協力も不可能となると思われるのであります。  更には又今後の政府の日米経済協力に対する期待或いは見通しも誤まつているものと思われる点があります。即ち、外資導入が望みがないとすれば、東南アジア開発乃至は特需の増大に望みを託しているようであるが、財界においても、本年当初唱えられた上期沈滞、下期好況の見通しが訂正されつつありますように、軍需景気への簡單な甘い期待は裏切られておるのであります。すでにマーカツト談話におきましても、米国が融資の能力を持ち、米国は、場所、価格の如何を問わず、何でも買付ける意思があるとの間違つた考えは、急激に根抵から覆えされつつある。更に「米国議会は国際的交渉に使用される米国資金の需要が内外に及ぼす影響に当然重大なる関心を抱いており、日本における調達にはまじめな関心が拂われている。」このように述べているように、すでに現在破綻に瀕しつつあるポンド・フランの救済に対しましても、大幅な援助が與えられないのであり、日本においても一層拒否される可能性が強く、而も一方においては米国軍事支出は抑制され、月額五十億ドルの枠がはめられて、再軍備計画の完成は一九五五年に延期されておる実情であります。かくて政府は、国民が到底了承し得ないところの屈辱的な安全保障條約、行政協定の重大なる失政から、国民の目を蔽わんとして、(「その通りだ」と呼ぶ者あり)政治借款、外資導入という甘い餌を高々と掲げまして、ひたすら米国外資導入軍備拡張への便乗を以て政策の基本といたしているのであります。即ち、真の日本経済の自立を忘れた政府のこの安易な政策は、従属国になることを肯んぜないとするならば根本的に崩壊せざるを得ない危險を持つものと言わなければならないと思います。(拍手、「その通り」と呼ぶ者あり)ここにおきまして、私は次の諸点について詳細なる答弁を求めたいのであります。  第一点は、吉田総理は二月上旬米国外資導入のための書簡を送つたと言われておる。而してその内容は、一つは、国民政府との條約締結によりまして対中共貿易は行われなくなり、これが国際收支の上に與える打撃が大である。第二点は、日本は二十七年度において約二千億に及ぶところの国防費を負担することになるという点であります。第三点は、以上のごとく不利な負担をしながら対米経済協力をして生産力を拡充するのである。そのためには電源開発が先決問題である。従つて電源開発のための外資を含めて約十億ドルの外資を要請する。以上の、ごとく伝えられているが、事実かくのごとき書簡を送つたのであるか。又その内容を詳細に総理から説明されたいのであります。而して又、その書簡は一体どこの誰に送つたのであるかという点を明らかにされたいのであります。(「トルーマンだ」と呼ぶ者あり)なお又今度のマーカツト談話はこの書簡に対する回答と思われるが、書簡を送つてからマーカツト談話が発表されるまでの交渉の経緯を明らかにされたいのであります。池田大蔵大臣は本日お見えになつておらないようでありまするが、このマーカツト談話に関し、外資導入が駄目になつたのではなくして、コンマーシャル・ベースでの導入はできるのだとの答弁予算委員会でいたしておるようでありまするが、中共貿易杜絶等の條件下に置かれている日本として、コンマーシヤル・ベースでの導入が不可能に近いからこそ、総理はいわゆる政治借款を米国政府要求したはずであると考えるのであります。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)この問題は、先日の予算委員会におけるマーカツト談話に関する無責任なる総理答弁の次第もあることであるから、この際、明瞭に国民の前にされたいのであります。  第二には、マーカツト談話は、政府の要請は杜撰で具体性がないと言つておる。而してマーカツト談話で政治借款はやらないと発表しておいて、すぐそのあとを追つかけて、武器彈薬製造禁止の解除の発表を司令部はいたしたのであります。(「そこそこ」と呼ぶ者あり)即ち米国が求めているものは、安全保障條約に基く防衛力漸増計画、即ち再軍備計画と、これに伴う軍需品生産の具体的計画である。これが示されない限り、外資の導入をしないと言つているのではないか。再軍備せざれば外資導入せず、これではないのかということを国民考えます。総理はこの国会において常に再軍備はしないと言明をし続けて来られました。而して今後もなお再軍備せざるの毅然たる態度を持するものであるならば、右のごとき明らかなる再軍備を外資の導入と見合いにして強要せられるにおきましては、その職を擲つてその毅然たる態度を米に示し、再軍備反対の国民の意思に応えるべきであると思うのであるが、総理の率直なる所信のほどを承わりたいと存じます。  第三点には、二十七年度予算は五兆三百億という厖大なる国民所得を基礎といたしまして組まれているのでありまするが、この国民所得には約一〇%以上の水増し所得があると思われます。その証拠には、前年五月を境といたしまして、雇用は約五%弱、生産は約五%強、減じているのであります。且つ物価はほぼ横這いを続けております。然るに何故五兆三百億円もの国民所得を見込んだのかと言えば、明らかに外資の導入を見込んで計算に入れているからであります。そこで大蔵大臣に質したいのは、予算編成に当つては、司令部が最も重要なる事項といたしましてこれにあずかり、ドツジ氏が干渉し、米政府がタツチしているのでありまするが、その際、外資導入については如何なる話合いがあつたのか。米政府の最も忠実なる番頭である池田大蔵大臣にお尋ねをいたしたいのであります。なお、外資が入らざる場合、この八千五百億円余に上る二十七年度予算は根抵から崩れ、組替えなければならんと思うが、その際どう処理せんとするのか。併せて承わりたいのであります。  第四点には、マーカツト談話は、或る事業が円投資を賄うのに外国借款をするほど経済的価値があるならば、政府予算又は民間から国内融資をせよと言つている。それならば国民は言うでありましよう。先ず二千億に余る厖大なる国防費を、尤も総理大臣は軍事専門家が笑うほどの少しばかりのものだと言つておりますが、国民から言えばこの厖大なる二千億の国防費を先ず削除せよと言うでありましよう。予算編成に当つて政府は、国防関係費は米国要求のままに計上し、且つ主権を大幅に譲り渡した屈辱的な行政協定を締結したその代償として、政治借款をもらおうとした甘い夢を見ていたものと国民は思つておるのである。ところが行政協定は強行され、調印が済まされると、そのあとで政治借款はやる気はございませんと突つぱねられておる。(「やらずぶつたくりだ」と呼ぶ者あり)くだらない餌に釣られまして、鋭い針に引つかかつておるその醜態は、国民の目から到底見るに堪えないものがあります。総理はその責任をどう感じておられるのか。我が国が真に自主的に経済自立を達せんとするならば、むしろアメリカ一辺倒の依存主義を捨てて、国防費を削減し、これによる厖大なる経費を、電源開発、食糧増産、中小企業の振興、減税、国民生活の安定へと持つて行くべきであります。即ち総理は、あなたの責任で行なつ行政協定調印後、あなたの頼みの綱とする米国から、すげない打つちやりを食つた恰好であるが、それでは一体今後如何ようにして経済自立達成のための日米経済協力を進めんとするのであるか、その考え方を承わりたい。かように存ずるのである。  第五点には、マーカツト談話は、外資優遇の諸條件が揃わなければ導入は無理だとの意味のことを言つております。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)政府は外資法を如何に改正せんとしておるのか。伝えられるところによれば、株式の乗り替えを認め、株価の値上りによるところの、ふくれ上つた分の配当金、及び三年経過後には元本をも海外送金を認めるというごときもので、かかる寛大なる外資優遇は他国にその例を見ざるものと思われるが、周東国務大臣からこの点説明せられたいのである。  以上五点を挙げまして私の質問を終ります。(拍手)    〔国務大臣吉田茂登壇拍手
  27. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えいたします。  外資導入がなければ、この本年度現に提出しておる予算は、その根抵が覆えるかのごとくに言われておられますが、外資導入とこのたびの予算は何も関係はないのであります。ただ外資導入さるれば日本経済復興が促進せられるということを、私が施政の演説の中に申したのであります。又協力会議の決議として云々ということがありましたが、これは私も携わつておりました。いろいろな場合、問題を研究はいたしましたが、かくのごとく何億アメリカ政府に要請しようなんというようなことはいたしておりません。  又外資導入が……私が政治借款云々と申したとか、或いは二月上旬に書簡を米国政府に送つたというような事実は毛頭ないのであります。従つて又、マーカツト少将の談話が私の書簡と関連したというようなことは全然ないことであります。書簡を送らないのでありますから、マーカツト少将の談話とは何らの関係はないのであります。  再軍備外資導入があたかも関連しておるようなふうにお話があり、且つ又武器製造が許されたから、これが即ちその証拠であるというように言われておられましたが、併しながら、これは日本の産業に加えられた制限が解かれただけであります。再軍備とも又外資導入とも何らの関係はないのであります。  その他の点については所管大臣からお答えいたします。     —————————————  この際、三月十日の本会議におきまして松浦議員から御質問があつたそうでありますが、これに対してこの際答弁をいたしたいと思います。  その質問は、我が国の漁業の発展に当つて、公海操業の自由の原則に基くべきものであるというお尋ねでありますが、公海の自由は一応国際法上曾つて認められておりますが、近来は、最近においては、水産資源の保護という見地から、各国がお互いに協約を結んで、或る程度の公海漁業の制限を設けております。これは即ち各国の水産資源を保護するということが結局お互いの利益であるという考えから、こういう制限を加えつつあるのであります。三国漁業條約もその見地から締結されんといたしておるのであります。お答えをいたします。(拍手)    〔国務大臣周東英雄君登壇
  28. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) お答えいたします。  只今の御質問の中で、外資導入というものを見込んでの産業計画等を考えておるので、二十七年度において国民所得の見積りも水増しが相当できておるが、これがなくなれば駄目じやないかというような御趣旨の御質問であつたと思います。私どものほうで立てておりまする五兆三百億余円というものについては、計算の基礎としては非常に堅実に立てておりますので、現在まででも、農業、鉱工業の増加して参りまする指数というものを将来に増加推定いたしまして、鉱工業九%、農業生産三%、賃金一〇%、雇用数一%というような大体の確実な増加趨勢を織り込んで計算いたしまして、五兆三百億円が出ておるのであります。若し外資導入というものが、今日まで民間からの外資導入が着実に年々増加して参つておる実情でありますが、それが更に増加して来るならば、むしろこの指数との関係はもつと殖えた形になるものと考えます。(「でたらめだ」と呼ぶ者あり)  第二の点でございますが、外資法の改正に関して、諸外国にその例を見ない甘いようなことになるのじやないかという御心配のようでありますが、只今考えておるのは、当然戰争前になされたのであろう諸外国の投資に対しまして、元本の送金保証、利息の送金保証、又は国内において株式社債等の譲渡された場合におけるその得た金で又更に投資をすることは、自由であつたはずであります。特別な会社法人に対して制限を課した以外は自由であります。これが戰後において制限されておつた。そういう点は投資される者に対しては非常に不利益な恰好でありますので、そういう点を進んで今度改正するわけであります。決してほかの国に見ないような甘いことを考えておるわけではありません。
  29. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 大蔵大臣の答弁は他日に留保されました。      ——————————
  30. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) この際、日程に追加して、教育施設確保に関する決議案(梅原眞隆君外十七名発議)(委員会審査省略要求事件)を議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  31. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないものと認めます。本決議案につきましては梅原眞隆君ほか十七名より委員会審査省略の要求書が提出されております。発議者要求通り委員会審査を省略し、直ちに本決議案の審議に入ることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  32. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないものと認めます。よつてこれより発議者に対して趣旨説明の発言を許します。梅原眞隆君。    〔梅原眞隆君登壇拍手
  33. 梅原眞隆

    ○梅原眞隆君 只今議題となりました教育施設確保に関する決議案について、(「長講一席」と呼ぶ者あり)発議者を代表いたしまして趣旨の弁明をいたしたいと思います。  最初に決議案を朗読いたします。    教育施設確保に関する決議   新日本国の再建が、教育の力にまたなければならないことはいうまでもない。   今や講和條約が発効せんとするにあたり、連合軍の接収にかかる教育施設は、当然返還されなければならない。   然るに、これら教育関係の被接収施設は現に四十数件の多きに上り、また既に解除されたものについても、その後警察予備隊等の使用に当てられているものは数件に達し、これがために生じている教育上の障害は極めて大きい。   この際、被接收教育施設が最優先的に速やかに返還されるよう、最善の努力を拂うことは固より、警察予備隊等が使用している教育施設についてもまた、速やかに返還措置を講ずることを、政府に対し、強く要望するものである。   右決議する。    (拍手)  この決議案につきまして提案の理由を説明いたしたいと存じます。  今や講和條約の発効は目前に迫りましたが、この條約の発効に伴い、現在連合軍によつて接収されておりまする土地或いは施設等が果してどのような原則の下にどのように接収解除されて行くかにつきましては、国民は極めて深い関心を持つて見守つているわけであります。ここに特に議員各位の御注意を喚起いたしたいことは、これらの被接収物件の中に夥しい学校施設が含まれているということであります。即ち現在学校施設の接収されているものは、校数においては、国立、公私立を合せて約四十五校、その建物の総坪数三万五千余坪、土地において二十一万坪に達しております。終戦以来ここに約七年、これらの学校関係者はすべてひとしく一日千秋の思いで接収解除の日を待ち望んで来たのでありまして、僕たち、私たちの学校を一日も早く返して下さいという、これら校舎のない児童たちの悲痛な叫びは、新聞紙上においてもしばしば報道されていることは皆様の御承知の通りであります。連合軍による学校その他の教育施設の接収は、占領当初の事情においては、緊急なる必要に基いて或いは止むを得なかつたものと考え得るでもありましよう。併し、今や講和條約の発効、行政協定の実施と共に、占領軍は駐留軍に切替えられ、すべての接収関係が一応原則的に解除さるべきことになつたときにおいて、なお若し学校教育施設にして依然として返還されないものがあるといたしましたならば、それらの学校の学生生徒或いは児童に與える心理的影響は如何に深刻且つ憂慮さるべきものであるかは、政府当局も十分察知され得るところでありましよう。  次に御注意頂きたいことは、警察予備隊も又相当多数の学校施設を現在使用いたしている事実であります。我々の承知するところによりますれば、その学校数およそ十五校、建物において約四方三千坪、敷地は約二十二万坪に達しております。而もこのような学校施設の警察予備隊による使用は、将来予備隊の拡充によつて更に増大するやも測られない情勢にあると考えられます。いずれにいたしましても、このような施設濫用によりまして如何に学校が不便と困難を忍んで来たかということは、接収による場合と何ら異なるところがないわけであります。勿論、予備隊使用の教育施設の返還は、今回の講和條約の発効とは一応関係のない問題ではありますが、今般駐留軍の駐留地域及び施設が全般的に調整整備される好機に当り、政府は施設転用その他適当な措置を講じ、一日も早くこれらの学校施設の返還を図られるよう、特に要望いたさざるを得ない次第であります。  学校施設の確保につきましては、政府はすでに昭和二十四年、学校施設の確保に関する政令を制定し、学校施設が学校教育以外の目的に使用されることを防止し、以て学校教育に必要な施設を確保することに努力されて来たのであり、今次の国会には、更にその政令を今後法律としての効力を有するものとしようとする法律案政府から御提出になつております。このような法令の精神から申しましても、接収解除に際して学校施設の返還が最優先的に行われるべきことはもとより当然なところであります。況んや国内において警察予備隊の使用する学校施設の返還さるべきことも又論を待たないものと申さねばなりません。なお今次の行政協定の実施に当り、土地その他の施設を強制収用するため、将来何らかの立法措置を講ずるような場合におきましても、かような強制収用法規は絶対に教育施設にはこれを適用しないことを、この際更に附加えて政府に強く要望する次第であります。  今や新日本国の再出発とも申すべき講和條約の発効を好機として、希くば政府は、教育施設の最優先的返還とその確保のため万全の措置を講ぜられんことをここに深く要望いたし、以て本決議案の提出の理由といたします。  何とぞ満場一致の御賛成をお願いいたします。(拍手
  34. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 本決議案に対し討論の通告がございます。順次発言を許します。木村守江君。    〔木村守江君登壇拍手
  35. 木村守江

    ○木村守江君 只今上程されました教育施設確保に関する決議に対し、私は自由党を代表して賛意を表せんとするものであります。  委員長が先に朗読いたしました通り、本決議案は、昭和二十年九月、連合軍が本土に進駐して以来、逐次接収されました学校その他の教育施設を、又更に警察予備隊に使用されておりまする同施設を、でき得る限り速かに返還してもらうよう要請する趣旨のものであります。  申すまでもなく、新日本が真に民主的に、世界的文化水準を保持せんがためには、教育こそ何ものにも代えがたい最も大きな原動力であります。さればこそ終戦後の日本の教育は、あらゆる角度から研究し検討され、その結果といたしまして、或いは義務教育の年限の延長となり、新学制の制定となり、或いは教育委員会制度の確立となり、又は新大学制度の制定となり、教育基本法によるいわゆる教育の機会均等の精神が尊重せられ、実施されるに至つたのであります。然るに、この新教育を実施するに当りまして最も先決必須の要請は、教育施設の充実整備でありまするが、未曾有の大戦によつて荒廃の極に達し、疲弊のどん底に陥りました我が国力を以ていたしましては、如何に国民の異常なる熱意を以てしても誠に容易ならざるものがあるのであります。あまつさえ、この期間を通じまして、連合軍の進駐により、大学を初めとして、高等、中学、小学校等の校舎並びに施設の接収されましたものは実に六十数件に及んでおるのであります。これらの学校におきましては、或いは他校の一隅を間借りして母校を知らぬ教育を受け、又は旧校舎の狭い一角に蟄居して不自由なる教育を受けておるのであります、或いは急造バラックによつて辛うじて雨露を凌ぐ状態は、誠に見るも気の毒なる状態でありまして、これがため生ずる教育上の障害は誠に測り知れざるものがあると存ずるのであります。勿論爆撃のために焦土化しました我が国に進駐いたしました連合軍が、応急臨時の措置といたしまして焼け残りの教育施設を接収いたしましたことは、当時の状況といたしましては事情止むを得ざるものがあつたかも知れませんけれども、進駐以来すでに六年有半を経過いたしました今日、而も近く講和條約の発効により我が国が文字通り独立国として発足せんとするのとき、独立日本の将来を双肩に担うべき次代の国民の教育に欠くべからざる教育施設をかかる状態下に置くことは、誠に由々しき問題であると存じまして、速かに返還いたさせねばならんと考えるのであります。  教育関係施設返還の要望に関しましては、ひとり教育者のみではありません。いたいけな小学の児童のうちにも漲つておりまして、先般私ども文部委員が、月島小学校の実情は実に涙なくしては見得なかつたのであります。これらのことはすでに総司令部にも陳情書が山をなしておると言われております。私ども文部委員会におきましても陳情書が殺到しておる次第であります。これらの陳情書の内容を総合判断いたしまするときに、第一に、学制改革によりましてさなきだに不足している我が国の教育施設より、建坪において三万五千三百九十九坪、土地二十一万三千六十六坪が接収され、或いは引続き警察予備隊に使用されている事実は、盛り上りつつある我が国の教育振興に大きな重圧となつていると考えるのであります。第二の理由といたしましては、学業の不便と困窮とより、学生児童に駐留軍に対する不信或いは反感を植えつける危険性を持つことであります。この点は、日米安全保障條約が締結せられ、友情と信頼の下に日米両国が協力して我が国土を防衛せんとする現段階において、大きな障害となることを恐れざるを得ないのであります。私は曾て支那事変に際し一召集兵として支那大陸に駐屯いたしましたとき、日本軍が現地の教育施設を接収いたしましたことが、如何に児童の心理を悪化せしめ、如何に現地の民心を悪化せしめて、日本軍に対する不信の原因となつたかを思い起しますとき、思い半ばに過ぐるものがあるのであります。これらの事実は、諸君が関係者に直接お会いいたし、又は関係者の気持になり、児童の心境を御察知下さるならば、その重大なることは今更申上げる必要はないと存ずるのであります。又折角連合軍より返還を受けました教育施設が引続き警察予備隊に使用されるにおいては、徒らに国民感情の悪化を来たし、極めて憂慮すべき事態を生ぜざるを保し得ないのであります。申すまでもなく、アメリカ駐留軍にいたしましても警察予備隊にいたしましても、国土防衛を以てその本務とすることは今更申上げる必要はないことでありますが、国土防衛は民心の把握なくしては成り立つものでないということを承知せねばならないのであります。特に以上の接収によつて不便と苦痛を感ずるものが青少年であることに思いをいたしたとき、面して青少年は大局より世情を判断することなく、目前の皮相的な事実と感情とより物事を判断することを考えたときに、誠に憂慮に堪えざるものがあるのであります。かかる観点から私ども文部委員会におきましては、本問題が提起されるや、政党政派を超越して、本問題の重大性を痛感し、審査を省略して本会議に上程した次第であります。  どうぞ諸君におかれましても、本趣旨に賛成下されまして、満場一致、本決議案を御採択下さると共に、将来日米行政協定に基き駐留軍に不動産を提供する場合にも、教育施設についてはこれを除外せらるるよう御協力をお願い申上げまして、私の賛成演説を結びたいと存じます。(拍手、「文部大臣の出席を要求する」と呼ぶ者あり)
  36. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 高田なほ子君。    〔高田なほ子君登壇拍手
  37. 高田なほ子

    ○高田なほ子君 只今上程せられました教育施設確保に関する決議案に対し、野党各派の御意向をも含め、日本社会党第四控室を代表いたしまして、衷心より賛成の意を表するものでございます。  一九四九年二月一日、ポツダム宣言受諾に伴い、政令第三十四号学校施設の確保に関する政令において、学校施設が学校教育の目的以外の目的に使用されることを防止し、以て学校教育に必要な施設の確保が図られております。このことは、開くところによれば、前総司令官マツカーサー元帥以来の占領軍の方針といたしまして、教育、宗教、教育関係の施設は接収しないという具体的な施策であることを強く信頼いたしまして、爾来六年有余を経て今日を迎えたのでございます。然るに諸般の事情万止むを得ないとは申しながら、本決議案にも申しておりますように、今日なお四十数校の施設が教育の目的を果し得ない実情に置かれております。我が国の教育民主化への重大施策である六三制実施に伴う義務教育の年限延長、自然増に対する施策の不備は、最低基準によつてもなお三十九万余坪に上る厖大なる不足坪数を示しており、老朽危険校舎、戰災校舎の解決すら未だ道遠しの感がございます。大東京都の真中においてさえ、今日なお電車の車体に机を並べたいわゆる電車教室、都営住宅と同居いたしまして校庭に翻翻とおむつの飜つているおむつ中学校、採光不十分ないわゆる暗箱教室等々、二部、三部教授は申すに及ばず、小さい者を取り巻くこれらの一連の痛ましい環境には誠に胸を割く思いをいたすのでございます。  更にこれに加えまして、終戦以来接収のために隣接校に同居を余儀なくされました中央区の月島第三小学校のごときは、物置と同居している教室、さては衝立仕切りのために音声が交錯いたしましてどうにも授業ができない教室、玄関をベニヤ板で囲つた職員室など、全く教育の困難は言うに及ばず、児童の学力低下、躾けへの面に大きな悪影響を與えつつあるということは、何としても見逃すことはできないのでございます。更に泰明小学校に間借をしている京橋高等商業のごときも、一坪の運動場さえもなく、直立したまま一歩も動くことのできない屋上の運動場に、成長盛りの学童たちが青空を眺めて嘆いている姿、まつ暗い地下室のボイラー室を改造して、僅かに電気の光で勉強するなど、保健衛生の面にも大きな悪影響を與えるということ、これ又憂えざるを得ないのでございます。更には、警察予備隊に本館を接収され、その一隅に押込められた日本でただ一つしかない久里浜の水産大学、大学とは名ばかりで、板張りと暗箱の連続である教室ならざる教室に押込められ、およそ世界にも類例のない便所を改造した実験室に孜々として研究にいそしんでおります。水産日本をやがて背負つて立つであろうこれら若い学徒の一日の憩いを求める寄宿舎は、雨風さえも吹込む荒れはてた室内に荒莚を敷き、これに床をのべて明日の勉強を支えているではございませんか。本大学視察に参りましたとき、議員の中でも、網走刑務所以上だと、この窮状を断じ、声も立てずに忍びに忍んでいる学徒たちの上に思いを馳せるとき、瞼の熱くなるのを抑えることができないような次第でございました。自由党の秋山俊一郎議員も、男ながら幾度もハンカチを険に当て、この窮状に非常に強い批判を持たれたのでございます。これに引き比べまして、警察予備隊は幹部宿舎の新工事がどんどん進んで、余りにもこの対蹠的な態たらくは、日本教育の縮図を見る思いがいたしました。こういう占領軍に便乗するがごとき予備隊の傾向、この悪い傾向に対しまして、断じて教育を守る者の立場に立つて許し得ないことでございます。  過般本議場におきまして我が党の荒木議員の質問に対しまして、岡崎国務大臣は、講和発効後は当然接収は解除されることを言明されました。併しながら、岡崎・ラスク書簡によりますれば、施設又は区域でそれに関する協定及び取極が平和條約の効力発生の後なお九十日以内に成立しない場合には、それらの施設を継続して合衆国に使用させるという確認をされております。この使用継続につきましては、日米行政協定原則である学校図書館等に使用されている公共施設の速かなる返還を誠意を以て実現いたしまして、純真な青少年の魂に、かりそめにも排米的な要素を與えるべきでは断じてないと思いますし、更に軍事基地提供によつて一層教育施設等に大きな影響を持つであろうという不安にさらされている国民大衆の危惧を一掃して、国民の意思に応えるべきでございましよう。まして、プールや運動場は教育そのものには関係がないというような極めて浅薄な考えの下に、学園のオアシスというべきこのようなものを他に転用することを許すがごときは、誠に無神経極まりないものであつて、その見えざる影響の甚大さを思うとき、この問題の解決についても万全を期さなければならないと思うのでございます。「私たちの学校に帰れる日はいつの日」と歌のように歌つている小さい子供たちの希望の夢を、私たちは断じて破つてはならないのでございます。国民道徳や漢文で青少年に背骨を通すというふうなことよりも、先ず彼らに必要なものは明るい教育環境でございましよう。過日の映画の「ヨーロツパの何処かで」という一節の中にもございましたが、戰禍のために荒れすさんだ浮浪児たち、この浮浪児たちを裁こうとしていきり立つ大衆の前に立つて、この浮浪児の悪いということは、決して浮浪児自体が惡いのではない、これらはみんな大人の責任ではないかと叫んでいるあの老音楽師の叫びこそ、全世界の大人の胸に訴える真実の叫びではないでございましようか。まして、戦後の青少年の学力の低下、そして不良化は、当面する今日の日本の実に重大な社会問題でございます以上、日本中の大人たちの責任において、本決議案に盛られた内容が一日も早く実現し、明るい明日の日本建設のために、本当に全大人の良識とそしてその実践に訴えられんことを切に祈りまして、私の賛成の言葉に代えるものでございます。(拍手)  最後に、この子供たちを守ろうとする重要な本決議案の上程に際しまして、政府当面の責任者である天野文部大臣の出席がここに見られないということは誠に遺憾千万であるという意を表しまして、一言ここに附加えて終ります。(拍手
  38. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) これにて討論の通告者の発言は全部終了いたしました。討論は終局したものと認めます。  これより本決議案の採決をいたします。本決議案に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  39. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 総員起立と認めます。よつて本決議案は全会一致を以て可決せられました。      ——————————
  40. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 日程第一、昭和二十六年十月の台風による漁業災害復旧資金の融通に関する特別措置法案衆議院提出)を議題といたします。  先ず委員長の報告を求めます。水産委員長木下辰雄君。    〔木下辰雄君登壇拍手
  41. 木下辰雄

    ○木下辰雄君 只今上程されました昭和二十六年十月の台風による漁業災害復旧資金の融通に関する特別措置法案につきまして、水産委員会における審議の経過並びにその結果を御報告いたします。  本法案は、参衆両院の水産委員会におきまして十分審議の上、衆議院側から発議されたものであります。  先ず本法案提出の理由を申上げます。昨年のルース台風による漁船漁具及び養殖施設に対する災害復旧資金の融通を円滑にするのがその趣旨であります。そのために、農林中央金庫等の融資機関が漁業者に対して復旧資金の融資をなす場合において、政府は損失補償及び利子補給に関して金融機関と契約を結ぶことができるようにいたしたものであります。  次に、この法律案の内容について簡単に申上げます。その第一は、法案の第一條にありまする通り、漁業者が昭和二十六年十月の台風によつて漁船漁具又は養殖施設について受けた損害を復旧するために、政府がその復旧に要する資金の融通について損失補償及び利子補給を行うことを目的としております。第二は、その損失補償と利子の補給でありまして、政府は、農林中央金庫その他の金融機関が漁業者又は漁業者の加入する水産業協同組合に対して災害復旧のために融資をするときは、それによつて受けた損失に対し、その三割以内を補償し、又四分の利子補給をなすのであります。融資の限度は十五億円でありまして、その期間は昭和二十七年四月一日から昭和二十八年三月三十一日までの一カ年間でありまして、且つその償還期限が昭和三十三年三月三十一日以前のものに限るのであります。第三には、水産業協同組合が組合員に対する貸付の規定、債権保全及び回収並びに法令等の違反に対する措置などが規定してあります。  本委員会におきましては、本法案の立案に当り最初から関係をいたしておりましたが、なお愼重に審議を重ねたのであります。その詳細は速記録によつて御承知を願いたいのでありまするが、その主なる質疑応答について申上げます。その第一は、「日本世界に稀なる台風国であつて、その都度、水産施設のこうむる被害は他産業に比して甚だしいものがある。それでこの法律を農業の保険制度に倣つて速かに恒久的なものにする必要があるが、これに対してどう思われるか」という質疑に対しまして、「発議者側といたしましても同感であるから、参議院の水産委員会と協議をいたして、速かに恒久的の法律を作る手配をいたしたい」という答弁がありました。その第二は、「この法案の対象は、漁船、漁具、養殖施設となつているが、漁業の生産に直接関係のあるその他の施設も包含すべきではないか」という質疑に対しまして、「発議者側も至極賛成であるが、今回はこの程度にして、恒久的法律を立案する場合には是非さようにいたしたい」という答弁がありました。その第三は、「水産業協同組合が融資機関から融資を受け、その組合員に貸付ける場合の利率は、当該融資機関から受けた融資の利率を超えてはならないということになつておるが、事務費等の名目で多額の手数料を取るようなことがあれば政府の利子補給も無意味になるが、政府は本法の運用に当り如何に考えるか」という質疑に対しまして、「政府当局としても同様に考えるから、融資事務の円滑を欠かない範囲内で手数料なども十分節約するよう指導いたす所存である」という答弁がありました。  かくて質疑を打切り、討論に入りましたところ、秋山委員より重ねて、災害復旧に対するこの法律趣旨を恒久的なものにする必要があるということを強く述べられて賛成があり、又玉柳、青山両委員からも同様の趣旨で賛成され、採決の結果、全会一致を以て原案通り可決すべきものと決定いたしました。  以上御報告いたします。(拍手
  42. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  43. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 総員起立と認めます。よつて本案は全会一致を以て可決せられました。      ——————————
  44. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) この際、日程第二、ポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する件に基く全国選挙管理委員会関係命令廃止に関する法律案日程第三、ポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する件に基く警察関係命令措置に関する法律案、(いずれも内閣提出、衆議院選付)以上両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  45. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。地方行政委員長西郷吉之助君。    〔西郷吉之助君登壇拍手
  46. 西郷吉之助

    ○西郷吉之助君 只今議題となりましたポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する件に基く全国選挙管理委員会関係命令廃止に関する法律案につきまして、地方行政委員会における審査の経過並びに結果を御報告いたします。  ポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する件に基く左の三命令、即ち一、昭和三十年勅令第七百二十一号、政府犯人等の資格回復に関する件に基く衆議院議員選挙人名簿の特例に関する件、二、昭和二十一年内務省令第二十二号、衆議院議員選挙人名簿の特例に関する件、三、昭和二十三年内務省令第二十五号、公選による候補者の届出又は推薦届出の期限の特例に関する件は、共に全国選挙管理委員会関係のものでありまするが、これらの諸命令はいずれも当時の必要に応じまして臨機の措置を講ずるために出されましたものであり、すでにその目的を達して現在は適用されることのないものでありますので、この際、本法律案は、平和條約の最初の効力発生と共にこれらの命令廃止いたしまして、形式上整理しようとするものでございます。  地方行政委員会におきましては、本法律案付託以来、政府より提案理由の説明を聞いたほか、格別重要な質疑応答もなく、三月十八日討論採決を行い、採決の結果、全員一致を以て本法律案はこれを原案の通り可決すべきものと決定いたしました。  次に、議題となりましたポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する件に基く警察関係命令措置に関する法律案の地方行政委員会における審査の経過並びに結果につきまして御報告いたします。  銃砲刀剣類等の取締につきましては、昭和二十五年政令第三百三十四号、銃砲刀剣類等所持取締令という名称のいわゆるポツダム政令によりまして措置せられておりまするが、その内容は、銃砲及び刀剣類は、法令に基き職務のために所持するとき、美術品として価値あるものとして文化財保護委員会の登録を受けたものを所持するときなどの場合を除きましては、これが所持を禁止することを骨子とすると共に、これに必要な諸手続等を規定しております。一方、政府よりは、別途ポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する件の廃止に関する法律案が提出されておりまして、これによれば、前に申上げました銃砲刀剣類等所持取締令は別に法律廃止又はその存続に関する措置がなされない場合におきましては、同法施行の日から起算して百八十日間に限り法律としての効力を有するものとせられております。併し政府の主張によりますれば、この銃砲刀劍類等取締令は、我が国社会公共の秩序を保持する上におきまして、平和條約の最初の効力発生の日以後も法律としてそのままの内容で存続させる必要があるというのでございます。  地方行政委員会におきましては、本法律案の付託以来、数回に亘りまして各委員と政府委員との間に質疑応答を重ねまして審査を行いましたが、次に質疑応答の主なるものを二三御紹介いたします。  即ちその一つは、未登録の刀劍類に対する取扱い方はどうかとの質問に対しましては、政府側より、「善意で拳銃刀剣類を持つていた者に対しましては、届出があれば処罰しない。刀剣類に対しましては、できるだけ寛大な標準で例外なく登録することに措置する方針である」旨の答弁がありました。その二は、「平和條約発効後において刀劍類を占領下におけると同様に取締る必要がどこにあるか」との質問に対しては、政府側より、「いわゆる集団暴力行為を行うであろうと考えられるような場所を捜索する際に、数多く出て来るのは刀剣類であつて、現在の治安状況はこれらの方面に対する厳重な取締の必要を感ぜしめる」旨の答弁がありました。その三は、「最近の集団暴行事件等の頻発する傾向に鑑み、現在、銃砲刀剣類等所持取締令の対象になつていないものに対しても同様の扱いを考うべきではないか」との質問に対しては、政府側より、「お説御尤もと考えるが、今直ちに悪質の催涙ガスのごときものの製造又は所持そのものを禁止することを立法化することの可否については目下研究中である」旨の答弁がありました。  かくて三月十八日討論採決に入り、採決の結果、全員一致を以て本法案はこれを原案通り可決すべきものと決定いたしました。  以上御報告申上げます。(拍手
  47. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 別に御発言もなければ、これより両案の採決をいたします。両案全部を問題に供します。両案に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  48. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 総員起立と認めます。よつて両案は全会一致を以て可決せられました。      ——————————
  49. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 日程第四、農業共済再保険特別会計の歳入不足を補てんするための一般会計からする繰入金に関する法律案内閣提出衆議院送付)を議題といたします。  先ず委員長の報告を求めます。大蔵委員長平沼彌太郎君。    〔平沼彌太郎君登壇拍手
  50. 平沼彌太郎

    ○平沼彌太郎君 只今上程されました農業共済再保険特別会計の歳入不足を補てんするための一般会計からする繰入金に関する法律案の大蔵委員会における審議の経過並びに結果について御報告申上げます。  本案は、昭和二十五年度において台風水害等の異常発生に伴い、農業共済再保険特別会計の農業勘定における再保険の支拂が増加し、その支拂財源に七億一千七百八十七万五千円の不足を生ずることになりましたので、昭和二十七年度予算においてこの財源の不足を補填することといたしておりますが、均衡財政の見地より、借入金によらず、これを一般会計からの繰入金によつて補填しようとするものであります。なお、この繰入金につきましては、その性質に鑑みまして、将来、農業共済再保険特別会計の農業勘定の経理状態が健全となり、決算上の剰余を生ずる場合には、この会計の再保険金支拂基金勘定に繰入れるべき金額を除き、これを一般会計に繰入なければならないものとすることであります。委員会における審議の詳細は速記録によつて御承知願いたいと存じます。かくて質疑を終了し、討論、採決の結果、全会一致を以て原案通り可決すべきものと決定いたした次第であります。  以上御報告申上げます。(拍手
  51. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  52. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 総員起立と認めます。よつて本案は全会一致を以て可決せられました。      ——————————
  53. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) この際、日程の順序を変更して、日程第五より第七までの請願及び日程第二十五より第二十九までの陳情を一括して議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  54. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。外務委員長有馬英二君。
  55. 有馬英二

    ○有馬英二君 只今議題となりました請願三件、陳情五件につきまして外務委員会の審議の結果を簡單に御報告いたします。  請願第六百号は、韓国人の癩患者は出入国管理令の規定により強制退去を命ぜられる慮れがあるが、今後も引続き永住し、療養できるよう取計らわれたいとの趣旨であり、請願第六百五十五号は、安全保障條約締結に伴う佐世保における駐留地域の決定に当つては、佐世保港が国際貿易港として存立することができ、且つ駐留軍の目的をも妨げないように配慮の上決定せられたいとの趣旨であります。次に請願第八百八号は、アメリカ駐留軍が国立文教地区内のホテルに出入するのを禁止して欲しいとの趣旨であります。次に陳情第二百九十一号は、愛媛県竹芳水産会社の所有船が昨年十一月中共側に拿捕されたので、その船舶と乗組員の返還を要望したものであります。陳情第三百八号は、神奈川県辻堂元海軍演習地を今後進駐軍の演習地に指定されることがないようにとの要望であり、陳情第三百四十五号は、前述の請願第八百八号と同趣旨のものであります。陳情第三百七十五号は、今なお敗戰を信ぜず南方諸島にある同胞の救出促進方を切望いたしており、次に陳情第四百三号は、奄美大島沖繩諸島及び小笠原諸島は、他日、日本の行政下に復帰することが約束されているが、これらの島々に日本の行政を及ぼす範囲と権限を取りきめ、且つこれらの諸島に財政的援助を図られたいとの趣旨であります。外務委員会は、二月二十六日、二十八日及び三月六日の委員会においてこれらの諸件を審議いたしましたところ、いずれもその願意を妥当と認め、議院の会議に付し、且つ内閣に送付すべきものと決定いたした次第であります。  以上御報告申上げます。(拍手
  56. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。これらの請願陳情委員長報告通り採択し、内閣に送付することに賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  57. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 総員起立と認めます。よつてこれらの請願及び陳情は全会一致を以て採択し、内閣に送付することに決定いたしました。      ——————————
  58. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) この際、日程第八より第二十四までの請願及び日程第三十より第三十五までの陳情を一括して議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  59. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。先ず委員長の報告を求めます。運輸委員会理事岡田信次君。
  60. 岡田信次

    ○岡田信次君 只今上程になりました運輸委員会に付託の請願及び陳情につきまして、委員会の審議の経過並びに結果を簡單に御報告申上げます。  請願第十一号、同第三十二号、同二十三号、同第百九十一号、同第二百三十六号、同第二百四十六号、同第五百五十七号及び陳情第十九号は、いずれも港湾修築工事の整備促進を図られたいというのであります。次に請願第百六十号、同第四百二十二号、同第二百三十五号、同第六百九十二号は、いずれも海難防止のため燈台を設置せられたいというのであります。次に請願第三百五十七号、同第五百五十九号、陳情第百四十三号は、いずれも日本の航空路ローカル線開設の請願並びに陳情であります。次に請願第百三十五号、同第八百四号、陳情第二百三十五号は、長岡市に国立測候所設置の要望であります。次に請願第五百十八号、同第六百八十号は、船舶向け気象無線通報独立強化に関する要望であります。次に陳情第百六十七号、同二百六十五号は、日本海浮流機雷に対する船舶の安全確保、港湾作業の危機対策の要望であります。次に請願第百二十号、水難救護法中一部改正等に関する請願請願第四百二十三号、東支那海警備艦艇配備請願請願第八百八十六号、公有水面埋立免許料港湾管理者の収入とするの請願陳情第百五十四号、鷹巣港を避難港に指定陳情等であります。以上請願二十件、陳情八件は委員会におきまして愼重に審議の結果、いずれも願意を妥当であると認め、議院の会議に付するを要し、請願第百二十号の一件を除き、内閣に送付するを要するものと決定をいたしました。  以上御報告申上げます。(拍手
  61. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。これらの請願及び陳情委員長報告通り採択し、日程第二十四の請願のほかは内閣に送付することに賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  62. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 総員起立と認めます。よつてこれらの請願及び陳情は全会一致を以て採択し、日程第二十四の請願のほかは内閣に送付することに決定をいたしました。  本日の議事日程はこれにて終了いたしました。次会の議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時十四分散会      —————————— ○本日の会議に付した事件  一、議員派遣の件  一、防衛力漸増問題に関する緊急質問  一、自衛戰力に関する緊急質問  一、外資導入に関する緊急質問  一、教育施設確保に関する決議案  一、日程第一 昭和二十六年十月の台風による漁業災害復旧資金の融通に関する特別措置法案  一、日程第二 ポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する件に基く全国選挙管理委員会関係命令廃止に関する法律  一、日程第三 ポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する件に基く警察関係命令措置に関する法律案  一、日程第四 農業共済再保険特別会計の歳入不足を補てんするための一般会計からする繰入金に関する法律案  一、日程第五乃至第七の請願  一、日程第三十五乃至第二十九の陳者  一、日程第八乃至第二十四の請願  一、日程第三十乃至第三十五の陳情