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1952-02-13 第13回国会 参議院 本会議 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年二月十三日(水曜日)    午前十時三十四分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第十一号   昭和二十七年二月十三日    午前十時開議  第一 罹災都市借地借家臨時処理法第二十五條の二の災害及び同條の規定を適用する地区を定める法律案衆議院提出)(委員長報告)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。      ——————————
  3. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) これより本日の会議を開きます。去る二月六日、英国皇帝ジョージ六世陛下が御逝去あらせられましたるにつき、議長は、七日、英国代表部を訪問し、弔意を表し、同日、英国貴族院議長宛次のごとき弔電を発送いたしました。    謹ミテブリテン国皇帝ジョージ第六世陛下ノ御逝去ヲ哀悼ス  これに対し、八日、シモンズ貴族院議長より次のごとき謝電を受領いたしました。    貴下御懇切ナル弔詞ニク感銘シ我等ノ大イナル損失ニ寄セラレタ貴下ノ御懇篤ナル同情ニ対シ、本職及ビ貴族院議員一同深甚ナル謝意ヲ表シマス  右御報告いたします。      ——————————
  4. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) この際、お諮りいたします。櫻内辰郎君から病気のため八日間請暇の申出がございました。これを許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつて許可することに決しました。      ——————————
  6. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 日程第一、罹災都市借地借家臨時処理法第二十五條の二の災害及び同條の規定を適用する地区を定める法律案衆議院提出)を議題といたします。先ず委員長報告を求めます。法務委員長小野義夫君。    〔小野義夫登壇拍手
  7. 小野義夫

    小野義夫君 只今上程されました罹災都市借地借家臨時処理法第二十五條の二の災害及び同條の規定を適用する地区を定める法律案委員会における審議経過及びその結果について御報告いたします。御承知のように、罹災都市借地借家臨時処理法は戰災のみならず戰後発生した火災に関しても適用することができるもので、借地借家関係を処理し、災害地の復興に資せんとするものであります。本法案は、昨年十二月十六日に三重県松阪市に発生した火災につきまして、同地区にこの法律を適用せんとするものでありますが、その理由とするところは、松阪市の燒失地域松阪市の中心商店街でありまして、人口稠密借地借家関係が錯綜しているばかりでなく、市の公課負担中心地となつているのであります。従いまして、この地域が復興し、元の住民がもともと通り営業できるようにしなければ、松阪市の財政にも大影響を與えるという実情にありますので、人口及び戸数におきましても少いようでありますが、特に本法の適用を必要とする次第でありまして、これを一般の前例とすべきものではないというのであります。  当委員会におきましては愼重審議をなし、伊藤、岡部、吉田羽仁の各委員より、主として焼失戸数同市全戸数に比して僅少であるという点について質疑がありました。討論に入りまして羽仁委員より希望を付して賛成の意見の開陳があつた後、討論を終結し、採決いたしましたところ、全会一致可決すべきものと決定いたした次第であります。  右御報告申上げます。(拍手
  8. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  9. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 総員起立と認めます。よつて本案全会一致を以て可決せられました。      ——————————    〔相馬助治発言の許可を求む〕
  10. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 相馬助治君。
  11. 相馬助治

    相馬助治君 私はこの際、地方財政窮乏打開に関する緊急質問動議を提出いたします。
  12. 高橋道男

    高橋道男君 只今相馬君の動議賛成いたします。
  13. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 相馬君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  14. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつてこれより発言を許します。相馬助治君。    〔相馬助治登壇拍手
  15. 相馬助治

    相馬助治君 一国の運命を一人の最高主権者の掌中に託し、或いは一党の運命を一人の首領にかけるということは、絶対主義的旧式政治体制の著しい特色であると私は存じます。而してかかる絶対主義的旧制度は新憲法下民主政治の敵であるとすることも又異論のないところであろうと思うのであります。ヨーロツパにおきましては、中世紀以降の治乱興亡の歴史は、現実の教訓として、我々に対しまして、ただ一人の最高主権者の手に一国の運命を託するの愚を明らかに教えておるものでありまして、あらゆる反動的支障を克服して、主権在民の確信は国民一人一人の胸の中に揺ぎなき信念として今日成長しておると言われておるのでありまするが、これに比較いたしまして、我が国の現状は果して如何でありましようか。新憲法下の重要なる一つ規定でありまするところの地方自治の原則におきましても、最近、心なき政府の手によりまして、意識的に無意識的にこれが破られ、今日、地方自治確立精神は蹂躪されつつあると言つても過言ではないと思うのであります。現吉田内閣政策政治の動向は、我々の持つこの憂愁を一日は一日ごとに現実のものとしつつあるのであります。地方自治は誠に民主政治の基盤であります。両ういたしまして、民主主義政治というものが、国民の一人一人の幸福を祈念するものであるといたしまするならば、当然国民の一人一人の生活の場でありまするところの地方自治体確立精神というものを、当然、中央における政府は重要なる一つ仕事としなければならないと思うのでありまして、今日の憂うべき国際情勢下におきましては、動乱の余波は、いつ我が国民をその渦中に巻き込むとも図り知れません。国民大衆生活地方におけるその生活圏の強固なることによつてのみ初めて保障せられるものでありまして、この意味におきまして、地方自治は誠に国民大衆生命線であると言い切ることができるかと思うのであります。地方自治根本たる問題は地方財政の問題でありまして、地方財政の問題の重要性はここにおいて政治問題といたしましては最も基本的なものであるとすることができるのであります。従いまして、現政府は、とらわれることなく、今日、明敏なる眼を以て、地方自治体の、地方財政実態を見てみる必要があろうと思うのでありまして、地方自治地方財政について、現内閣政策がともすると新憲法精神に逆行していることを先ず私は第一に指摘いたしますると共に、以上の観点に立ちまして、この際、先ず池田大蔵大臣にお尋ねしてみたいことがございます。  先に国会におきましては、衆参両院におきまして、昭和二十六年度平衡交付金千百億に加えて若干の増額をすべきことを要求いたしました。我が参議院地方行政委員会におきましては愼重に審議の結果、増額二百億を必要とする旨を自由党の諸君を含めて超党派的にこれを決定し、これを要求したのであります。最近に至りまして、地財委の調査ではどうしても二百億の不足という数字が挙げられ、府県の主張する赤字は四百億であると言われております。地財委はこれに対しまして今日一応百八十億という数字を査定いたし、どうしてもこの際九十億は国としても何らかの措置をなすべきものであると、この九十億だけは特に府県分最低額として国家措置しなければならないということを主張いたしております。これを市側において見ますならば、二百六十八の都市の中で八十三都市は明らかに二進も三進も行かない赤字決算となつて現われておるのであります。従いまして、政府は昨年衆参両院において決議された平衛交付金増額要求が約半額に削減された折に、財源不足額に対しましては短期融資を行う旨を委員会において言明したのでありまして、この繋ぎ融資が一体如何なる形になつておりまするか。即ちこの際、地方赤字を救う意味合いにおきまして、短期融資増額をどの程度とし、どういう形においていつ頃措置せんとするものであるかということを、先ず第一点としてお伺いしたいと思うのであります。  第二点は、短期融資というのは当然返さなければならない金でありまして、これは会計年度末においてこれを清算しなければなりません。従いまして真実の意味においては地方財政窮乏打開とならないことは、大蔵大臣又これをよく知るところであろうと存じます。従つて昭和二十七年度平衡交付金及び地方起債というものによつてこれを肩替りできるような措置を試みられる気持があるかどうか。これらにつきましても重要な問題であるのでお尋ねしておきたいと思うのであります。  第三点は、この地方赤字というものは当然公共事業というような仕事に関しましては非常なる影響を持つておることは御案内の通りであります。而も県民によつて公選されたる知事も、起債の枠がないために、やらんとする仕事もできないというような歓声を洩らしつつあることは、すでに御承知通りでありまして、この際、地方自治体の振興を期する意味におきまして、起債の枠というものをもつと地方実態に即して自由にする御意思はないかどうか。勿論、関係筋方面等との交渉その他があり、大蔵大臣におきましても、その点について今日まで鋭意努力しつつあつたことは私も知るところでありまするけれども現実の問題としては、この起債の問題というものは、今日は地方側の著るしい不満を買つておるものでありまして、これに対しまして大蔵大臣は今日如何なる御見解を持つのであるかどうかをお尋ねしたいと思うのであります。  これに附加して申上げたいと思いますることは、今日災害復旧費の問題はまるでこれは賓の河原であると言うことができると思うのであります。即ちこの程度の高さの土手がある、水が来てこれが打ち壊わされた、作られるものは又その程度土手である。これでは何年たつてみても全く賽の河原で泣きながら石を積む子供の仕事に似ておるのでありまして、別に言いますならば、国費を濫費しておるものに等しいと言わざるを得ないと思うのであります。従いまして、これに対しましては積極的な意味において補助その他というものが考慮されるかどうか。この点を伺いたいと思うのであります。  なお最後には、義務教育費というものが今日地方財政に対しまして重大なる圧迫をなしておることは大蔵大臣よく御承知通りであります。従いまして、これはそういう面から申しましても当然でありますると共に、文化国家建設という意味合いからいたしましても、教育費は当然として全額国庫を以て負担すべき筋のものであろうと存じます。但しこれは無い袖は振れぬということもございましよう。そこで、税法改正を行なつてでも、これらの問題について大蔵大臣は何か積極的な御構想があるかどうか。これはいずれ文部大臣等にもお尋ねするのでありまするが、その財布の元締でありまする大蔵大臣がこれに対しまして積極的に御理解を欠く場合におきましては、我々の希望は達し得ないので、あえてこの際、大蔵大臣の明敏なる御判断になる積極的なる答弁を私は期待するものでございます。  次に岡野国務相にお尋ねいたしたい。先ず岡野国務相の占める位置は、大蔵省地財委によつて代表される地方側との間に立つて微妙なる立場を占めつつあります。そこで申上げたいことは、平衡交付金制度地方団体の必要とする一般財源について必要最低額はこれを国から支出する制度であると書かれておるにもかかわりませず、この平衡交付金の額をめぐつて年間を通じて常時地方団体政府との間に論争が繰返され、或いは知事の坐り込みというようなことまで報ぜられておるのでありまして、かかる論議の跡を絶つことを予定せる制度にしなければ、この問題は根本的解決がないと思うのでありまするが、現在の平衡交付金に対する基本的なる岡野国務相の御見解をお尋ねしておきたいと思います。  第二は、今日地方財政欠陷は、一つには現在の地方税制欠陷であります。特にこの問題に関しましては府県税制において極めて欠陷があると指摘せざるを得ない。政治は全県下に対する行政であるにもかかわりませず、県側において取りまする税金は、殆んど都市中心税制であることは御承知通りであります。府県税制について、更に入場税或いは遊興飲食税等、誠にその税率は苛酷であり、而も取るところの税金というものは、その全県から徴收でき得ないという、この不合理なる姿を我々は今日見るのでありまするが、これらの問題に対しましていわゆる地方税法抜本的改正用意ありや否や。この用意なくしては当然今日の地方財政は救い得ないと私は断じたいが故に、かかる質問を発するのであります。  次に国家法律の制定に伴いまして地方側においては多大の義務支出が余儀なくされております。先般神戸委員会より行政配分に対しまして答申が行われておるはずでありまするが、この際二重行政を廃止し、行政の一元化を図るというような必要を私は認めるのでありまするが、これに対する岡野国務相見解如何。特に大蔵大臣に私が尋ねた赤字の問題に対して岡野国務相としては如何なる見解を持つものであるかどうか。勿論大蔵大臣が私を満足せしめる答弁をすると思うのでありまするが、立場を変えて地方自治庁長官立場から本問題について明答され、今日財政難に苦しむところの地方側勇気と自信とを與えて欲しいと思思うのであります。  次に地財委について承わりたいことは、昨年の平衡交付金増額要求について、今回参議院においては西郷委員長を初めといたしまして関係方面にも再三再四の折衝をいたしました。その際、我々が聞いたところによりますると、地財委が出さんとしたところの必要計数資料を故意に大蔵省関係妨害したやに伝えられておるのでありますが、かかる事実ありや否や地財委に対する見解を承わりますると共に、特に地財委勇気を要求するものでございます。なお、地財委努力にもかかわりませず、昭和二十六年度平衡交付金不足しております。従つてその枠で抑えられた範囲内においてこれを如何に分けるかということについて、基準財政需要の見方において、特に府県側に比較いたしまして市町村側に対して苛酷であると今日伝えられておりまするが、地財委見解は如何であるか。これをお尋ねいたします。  第三には、義務教育費国庫負担に関して、地財委は何が故でありまするか、強硬に反対していると巷間伝えられておりますが、如何なる理由であるか。これについてお伺いしたいと思います。  最後文部大臣にお尋ねいたしたい。義務教育費は当然地方財政圧迫となつている現況に鑑みますると共に、積極的に文化国家建設立場から  これを全額国庫負担に任せるべきでありますが、先般文部大臣は本会議において、一部は地方に負担せしめたいという意味のことを発言されております。一応御尤もであります。従つて、これはどのぐらいな割合政府が負担し、どのぐらいな割合地方側が負担するのをよしとするか。御見解あらば承わりたいと思います。第二は、義務教育費国庫負担法を立案中と聞いておりまするが、私は大蔵地方自治庁地財委との交渉経過を承わつておきたいと存じます。第三は教育職員給與問題は今日大きな問題となつておりまするが、世論に逆行して人事院において三本建給與考えていると伝えられておりまするが、如何なることに相成つておるのであるか。文部大臣見解を承わつておきたいと存じます。なお、国庫負担法と重大なる関係を持ちまする教育委員会制度に対しまして、その財政権賦與であるとか、或いは公選制の是非であるとか、こういう問題に対しまして基本的な御見解あらば、この際、明確に御答弁を願いたいと思うのであります。(拍手)    〔国務大臣池田勇人登壇拍手
  16. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お答え申上げます。  地方財政の問題につきましていろいろ御質問がございました。地方財政は御承知通りに、地方税收入雑收入、そうして国家から平衡交付金、そうして又別に事業関係を主といたしまして地方債の発行、こういうので賄つております。而して昭和二十六年度におきまして、自然増收もなく、財政が困つた場合におきましては、お話通り短期融資をいたしているのであります。従来から短期融資制度は行われておつたのでありまするが、昭和二十六年度地方財政状況から考えまして、私は二十六年度におきましては相当程度短期融資年度を越したい、こういうことを委員会で言明いたしましたが、そういう方針の下にやつております。従いまして短期融資につきましてはお話のように限度がございません。必要な金は出すということであります。第二の、短期融資の肩替りが可能なりや否や——短期融資性質によりまして、地方起債に肩替れるものは肩替りいたします。又歳入等の増加によりまして必要がなくなつた場合におきましては肩替りいたしません。  短期融資融資先性質によつて考うべき問題だと思います。  次に、起債の枠をもつと自由にする考えはないか。——私は地方債起債、そのうち特に資金運用部で引受けます地方債は、昭和二十六年度の五百億円を来年度は六百五十億円、百五十億円増額いたしまして、そうして又必要に応じましては市或いは県におきまして自分で市債或いは県債を発行なさることも止むを得ないのじやないか。こういう考えを以ちまして、初めからこれを釘付けにする考えはないのであります。預金部のほうで財政が、預金部のほうの資金が自由になれば年度の途中でも殖やしていることは相馬さん御承知通りでございます。私は初めから窮屈には考えておりません。  次に災害復旧につきまして改良工事をなすべきではないか。——お話通り改良工事をいたしております。公共事業費のうち約二〇%ばかりは改良工事に使つているのであります。木の橋を、或いはセメント、鉄橋にする場合も相当あるのであります。  次に義務教育費全額国庫負担にしてはどうかというお話でございまするが、これは従来義務教育費市町村事務考えられておつたのであります。ときに義務教育費の一部を国庫負担した場合がありまするが、大体の考え方といたしましては市町村事務考えております。従いまして全額国庫負担するという考え方はございません。何と申しましても、国の費用にいたしましても、地方費用にいたしましても、国民のふところから出るのであります。お話のように税制改正をやつて全額国庫負担にしたらどうかというお話でございまするが、趣旨としては私は飽くまで市町村事務、併し国の状況によりまして成る程度国庫負担にしたらどうかという議論がありますので、只今地方行政委員会或いは地方財政委員会検討を加えているのであります。    〔国務大臣岡野清豪登壇拍手
  17. 岡野清豪

    国務大臣岡野清豪君) お答え申上げます。  交付金制度の問題でございますが、これは私といたしましては大変いい制度だと思つております。併しながら何を申しましても実施まだなお日が浅うございますし、同時に国並びに地方を通じまして非常に財政が逼迫しているときでございまして、運用がうまく行かない。こういうことになつております。でございますが、併し今御指摘のように、過去一年半ばかり私が担当いたしております間に、平衡交付金をめぐりましていろいろ問題が起きたのでございます。この点につきましては私は十分検討して、平衡交付金制度というものを或る程度まで拡充し、同時に改正して行きたいと存じております。まあいろいろ考え方もございますが、国の收入と比例しまして自動的に彈力が出て来るというような方向も一つ考えられるのでございますが、併しまだこれは結論に到達しておりません。これは地方税法とも併せて考うべきものと考えておりまして、折角検討中でございますから、御了承願いたいと存じます。  それから地方税法根本的な改正用意がありや否や。これは交付金制度考えておりますと同様に、地方税法もやはり考えなければなりません。あの地方税法は、御承知通りに非常に科学的と申しますか、我々の考えから申しますというと少し手続が繁雑過ぎはせんかという点もございますし、又御指摘のように都道府県とそれから市町村とに割振りが公正を欠いているのじやないかというような御指摘がときどきありまして、我々もそれを反省しておる次第でございます。この地方税法根本的な改正を加えることは、平衡交付金制度と併せて、我々は非常な研究をしておるのでございますが、まだ抜本塞源的の成案を得るまでには至つておりません。この国会ではただ一部の手直しをするだけの法案を今用意しつつありますから、いずれ皆様方の御審議を受けることと存じております。  それから国の法律によりまして地方事務が増加しますというと、これが私の過去一年半の経験によりますと、地方財政にしわ寄せをする、こういうような情勢になつております。これは、やはり法律でやりましても、地方事務として必要やむべからざるもの、即ち地方住民の民生の安定とか福祉増進とかいうことになることなら、無論地方がやつて行かなければならんのでございますけれども、矢継ぎ早に中央法律ができまして、そうしてまだ先ほど御指摘のように平衡交付金制度とか地方税法のうまく運営ができておりませんときに、地方に過当の圧迫を加えるというような情勢もないではございません。この点は十分注意いたしまして今後処置したいと思います。  それから繋ぎ融資の点につきましては、只今大蔵大臣が御答弁申上げた通りでございまして、只今地方財政委員会とか大蔵省とか自治庁あたりで十分検討しておりますが、まだその結論は得ておりません。結論を得ましたら大蔵大臣が申上げました通りの処置をいたしたいと存じております。お答え申上げます。(拍手)    〔国務大臣天野貞祐登壇拍手
  18. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) この義務教育費につきましては、現在のままではどうしてもいけないと私は思つております。それで全額国庫負担というものも確かに一つ考えだと思いますけれども地方分権という立場から言つても、又教育に対して直接関係している地方の持つ関心という点から言つても、これはやはり一部分は、地方が、地方の財力によるところの応分のものを持ち、又国がそのあとの全部を持つて、全体として義務教育費を支弁するということがよいのではないか。それではどれだけのものを持つかというなら、現在地方が持つているくらいのものを地方が持つてあとを全部国が持つというような、ここで新らしい一つ義務教育費国庫補償制度というようなものを私どもは研究いたしておるわけでございます。  又その次にお尋ねになりました教員の給與のことにつきましては、文部省では従来から教育職員特殊性に鑑みて、その給與をよくしたいということについて非常に努力をいたしておることは御承知を頂いておることと存じますが、その一つの現われとしては、昭和二十五年十二月には教育職員級別推定表の全面的な改正を行なつたのでありますが、併しなお新らしい給與準則を立てて行きたい、別表を作つて行きたい、そういう考えを持つておりますが、その際にどういう標準でやるかというなら、私は、学歴とか資格、勤続年数等でその待遇を十分考慮して行くということが、やはり教育職員全般運営を滑らかにするゆえんではないかという考えでございます。(拍手)    〔政府委員木村清司登壇拍手
  19. 木村清司

    政府委員木村清司君) お答え申上げます。  地方財政委員会が何か大蔵省のような方面から妨害を受けたようなことはないかというようなことの御質問でございますが、そういう事実は絶対にありません。又、私どものほうでは委員会の下において公正な事務をとつておりまして、何ら妨害を受けている、そういう事実はないことを保証いたします。  第二点の本年度平衡交付金配分について、府県側に有利で市町村側に苛酷ではないかという御質問でございますが、相馬さんのお説にもありました通り地方税中、市町村税が、住民税、固定資産税等、普遍的であり且つ割合に豊富な財源を持つております。これに反して府県は、都市集中の入場税、遊興飲食税或いは事業税等であります。又この財政需要から見ましても、義務教育費の教員俸給を府県が負担しておる結果、人件費の占むる割合が、府県市町村よりも多い結果、財政需要の増加が多い。こういう事情から見まして、一般交付金におきましては、市町村よりも府県のほうが多く占めるということは当然出て来ることでありまして、これは止むを得ないことと存じております。併しながら特別平衡交付金につきましては、市町村のように千差万別の形態のものでありまするから、特別平衡交付金配分につきましては、でき得る限りむしろ市町村の側に有利にしたほうがいいのではないかというように考えておる次第でございます。なお義務教育費の負担関係につきまして、地方財政委員会といたしましては、文部省の只今考えになつているような考え方には、只今の段階においては賛成しておらないのであります。その理由は、地方団体は、府県市町村教育というものに非常に熱心な総合的自治団体である、そういう意味から言いまして、この総合的自治団体を育成する趣旨から言いまして、特に教育費だけ分けてそういう特別な負担関係法律を設くることは、総合的自治団体の育成という見地から見まして如何かというような基本的な考え方を持つておりまして、私ども地方自治の育成の立場からいたしまして、現在の平衡交付金法をむしろますます基礎を強固にし、増額して行くのがよいのではないかというように考えておる次第でございます。(「政治問題」「軍事費に食われているがどうだ」と呼ぶ者あり)     —————————————  なおついでに申しますが、一月二十六日の本会議におきまして、吉川さんから地方財政委員会の存廃について意見をお問いになりましたが、当委員会としては存廃に関してまだ何ら意見を聞いておりませんから、ここでお答えする段階に達しておらぬことを申上げます。(拍手)      ——————————    〔小林孝平君発言の許可を求む〕
  20. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 小林孝平君。
  21. 小林孝平

    ○小林孝平君 私はこの際、匿名供米免税に関する緊急質問動議を提出いたします。
  22. 高橋道男

    高橋道男君 私は只今の小林君の動議賛成いたします。
  23. 佐藤尚武

    ○職長(佐藤尚武君) 小林君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  24. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつてこれより発言を許します。小林孝平君。    〔小林孝平君登壇拍手
  25. 小林孝平

    ○小林孝平君 私は日本社会党を代表いたしまして、このたび政府が実施せんとしている匿名供出制度と、それに関連する二、三の問題について、政府の所信を質したいと存ずるものであります。  最近、政府はその施策の遂行の過程においてしばしば国会を軽視し、国会における與党の多数の議席を背景に、国民の基本法である憲法を無視し、その精神を蹂躪せんとしている点が多々あるのであります。その端的な現われとしては、過日吉田総理並びに木村、大橋各大臣は、警察予備隊を拡張して、これを保安隊又は防衛隊として実質的に武装せしめ、軍隊と同様な内容を持たせておきながら、なお、これを軍備ではないと言つていることであります。これは明らかに憲法違反であり、政府の独裁的な傾向の現われであると言わなければなりません。我々はここに民主国家の危機を感ずるものであり、これを極めて遺憾とするものであります。  今回政府の実施せんとしている匿名供出の問題についても、この問題の取扱い方は、政府がその政策の破綻を彌縫するため、憲法精神に背き、近時ますます顯著になりつつある独裁的傾向を一層強むるものであると言わざるを得ないのであります。食糧の統制は、我々といえどもでき得ればこれを緩和し廃止したいと考えるのであります。ただ現下の我が国の食糧の需給関係、更にこの急迫せる国際情勢の下においては、なお当分その統制の継続の必要あることを認め、我々は民主的な供出制度を主張して来たのであります。併しながら供出制度自体は、農民に対しては少からざる負担を與え圧迫感を與えることも又事実であります。従つて、一方においては適正なる米価を決定する等の措置を講ずると同時に、供出制度自身をも十分これを民主化し、改善いたして、農民の労苦に報ゆることを忘れてはならないのであります。この意味からいたしまして、超過供出、匿名供出等に対する報奨的措置については当初から制度として考えられるのが当然であつて、我々は従来からこの主張を続けて来たのであります。然るにこの制度は、事前割当制の廃止と同時に、現政府によつてすでにその必要なしとして、昨年の春一旦廃止されることになつたのであります。かかる経過から見ても明らかなるごとく、今回の超過供出、匿名供出は、政府が農民の労苦に報ゆるという良心的なものではなく、何らの準備もなく統制撤廃を声明するがごとき軽挙に基く現政府の食糧政策の破綻の彌縫策であると断ぜざるを得ないのであります。政府は昨年米麦の統制撤廃を強硬に主張し、その結果、生産者、消費者を含む一般大衆の強い反対に会い、遂に自由党の一枚看板であり政府の重大政策であつたこの主張が実現できなかつた経緯については、ここで改めて申上げる必要はないと存ずるのであります。その政府の統制撤廃に関する無責任の声明が、二十六年産米の收穫不況と、更に一般農政に対する政府の不誠意と相待つて、著しく農民の供出意欲を鈍らせた事実は、政府といえどもこれを認めざるを得ないところであろうと存ずるのであります。且つ外国食糧の輸入も予想通りに進まない今日、国内における従来の米食率を維持し、これを円滑に配給するための主要食糧の需給関係を保たしめるためには、政府が今日までとつて来た食糧政策の破綻を彌縫するために、超過供出或いは匿名供出という、全く従来の政府の自由主義政策根本的に違つた方針をとらざるを得ない羽目に立ち至つたのであります。これは明らかに政府政策の崩壊と言わざるを得ません。且つそれを実施するための課税免除ということは、それが税法改正しない限り実施できないことであつて、若しも税法改正を行わずに行政的に行うということであれば、これ又政府の独裁的な傾向の顯著な現われであると見なくてはならないと考えるのであります。  以上の観点からいたしまして、私は第一に、今日まで自由販売を主張して来た政府が、何故に超過供出を督励し、且つ過去において経験済みの匿名供出の方法をとらなくてはならないのか、その根本的な理由について農林大臣にお伺いいたしたいのであります。  次に匿名供出に関する課税免除と所得税法関係であります。匿名供出制度に対する免税の問題は、過去において、即ち昭和二十三年に一度計画されたことがあるのであります。当時これは比較的農民の協力を得まして、五十万石余の供出を見たのでありますが、当時諸般の情勢から、その結果は必ずしも農民の期待に副うことができなかつたのであります。その後も超過供出に対する課税免税の問題はしばしば論議されたのでありまして、その際は常に税法改正を必要とするとの見解であつて、又実際税法改正の計画もあつたのでありますが、いろいろな関係でその実現を見なかつたものであります。ところが今、政府は今までの見解にかかわらず、独自の方針を以て、税法改正によらず、行政運用によつてこれを行わんとすると言うが、実際その実施の自信があるのかどうかをお尋ねしたいのであります。およそ現在の税法が存する限り、それが匿名であろうと超過であろうと、その名称は別といたしまして、課税はその收穫に基く所得に対して適正になされることになつておるのでありまして、若しも税法改正なく、大臣間の話合いできめるということでありましたら、これは明らかに法律軽視であり、而も嚴粛であるべき税法を無視し、政府みずからが脱税行為を強いることになるわけであります。供出を急ぐために一時的な措置として問題の解決を将来に残すとした場合には、今日までの政府の性格からいたしまして、免税の美名に隠れて農民を再びだます結果になるわけであります。従つて匿名供出に対する課税免除については、政府が匿名供出の実施を声明すると同時に、堂々と税法改正について国会に提案し、議決を経て、その公約を果すべきであると考えるものでありますが、政府はその意思があるかどうかをお尋ねいたしたいのであります。若しもかかる方法をとらない場合には、憲法第七十三條の規定、即ち内閣法律を誠実に執行するという規定に違反すると考えるものでありますが、どう考えられますか、お尋ねいたしたいのであります。この点について明確に池田大蔵大臣の御所見をお伺いいたしたいのであります。  第三として、匿名供出は二月以降に行われた供出について行われるのでありますけれども、それならば二月以前に行なつた、即ち十二月、一月に行なつた超過供出等については如何なる取扱いをなされるのであるか。すでに新潟県を初めとして、東北、北陸その他早場單作地帯は、今日までに相当多額の超過供出を行なつております。仮に匿名供出に対する免税の措置が行われるならば、これらの二月前に行なつた超過供出についても当然免税の措置がとらるべきだと考えるのでありますが、これに対する農林大臣、大蔵大臣の御所見を承わりたいと思うのであります。  最後に、今回の匿名供出に関する免税の問題について、高橋国税庁長官は、「これは飽くまで所得税法改正なくしては実施できない」と述べているのであります。この反対に対しまして、廣川農林大臣は、「大臣同士で話をきめたのであるから、とやかく言う役人があれば処分するよりほかはない」と極言しておられるのであります。私はこの高橋国税庁長官の態度は、法の執行に忠実なるべき官吏の態度としては誠に当然であると存ずるのであります。近時、政府並びに與党には、自己の政策が法の執行に忠実なる官吏の反対に会うや、これを不逞の輩のごとく取扱い、不当なる強圧を加えるの風潮があり、甚だしきはこれを罷免するの例さえあるのであります。かくて法が政府及び與党の御都合次第で適当に運用されるということになれば、法の秩序は根抵から覆り、独裁政治の胚胎はここに始まるのであります。我々はかかる風潮に対し、これに嚴重なる警告を発すると共に、政府に対しその猛省を求めてやまないのであります。(拍手)    〔国務大臣廣川弘禪君登壇拍手
  26. 廣川弘禪

    国務大臣(廣川弘禪君) お答えいたします。匿名供出についてのだんだんのお話でありますが、この匿名供出は、曾つて二十三年にやつたことがございますのですが、そのとき何か税務署等の手違いから農民に非常に迷惑をかけたというので、二年ほどこれをやめておつたのでありますが、その点、大蔵省と了解が付きましたので、これを実施したようなわけであります。  それから、統制を廃止すると言いながら、どうしてこういうことをやるのかというお尋ねでありますが、統制は、麦については今国会に是非法律を出して廃止するようにいたしたいと思います。それから米につきましてはなかなかそうは行きませんので、これは愼重にやりたいと思つております。これは準備をいろいろ十分してからでないとできないので、あなたの考えのように私も思つております。  それから、どうして一体超過供出なんかさせたり匿名供出をさせるのかということでありますが、これはあなたのおつしやるように、米食率を下げないようにするためにやるのであります。なお又本年の作柄を見ますと、東と西とは全く対蹠的に違つているのでありまして、東のほうは非常に作柄がよろしいのであります。又、西のほうが非常に悪いのであります。而も西のほうでは、米食率を下げるなと言うて炭鉱労働者諸君が盛んに我々のところに参りますので、これは米食率を下げないように、そうして又西のほうの農家に負担の過重をかけないように、こういう制度を設けてやつているのであります。超過供出について、普通の超過供出をやつたほかに、なおまだ米があるようでありますので、特にこの集荷手数料を増しまして、そうして農民の協力を願つているのでありますが、各県を歩いて参りますというと、非常に政府に協力をして頂きまして、どんどん出て来るようであります。これについての課税の問題でありますが、これは大蔵省とよく打合せておりますので、大蔵大臣から事細かに御答弁があることと存じます。(拍手)    〔国務大臣池田勇人登壇拍手
  27. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お答えを申上げます。  小林さん御承知通り、又只今も御質問の中にありましたように、この農業所得は、ほかの所得と同じように実際の收穫高に課税するのであります。従いまして理論的に申しますと、超過供出であろうが或いは匿名供出であろうが、できた出来秋の收穫高に課税する、こういうのでございます。而して農家のかたがたが自分の保有米を匿名供出された場合に、若し匿名供出の数量に課税したならば、二重課税になります。これは理論上その通りでございます。だから私は、匿名供出が如何ほどの分量、どういうふうな方法で行われたかを見なければ、課税、非課税の問題は起らない。で、今議論の余地ありとすれば、米価七千三十円を九千三十円に売られた二千円について、收穫高は、はつきりしておるけれども、この二千円をどうするかという問題であります。で、これは匿名供出して二千円たくさんもらつて所得税を納める農家が相当ある。所得税を納める農家について今年もらう二千円についてどうするかという問題は、昭和二十七年度分の所得税において考えるべき問題であるのであります。そういう点から申しまして、私はお話通りに、(「それはわかつておる」と呼ぶ者あり)政府法律を適正に執行する、今の税法の範囲内において匿名供出の実際を見たときに、税法の適用上行政措置でできる部面は行政措置でやる。而してこれが匿名供出が非常に多くて、税法の執行上行政的にはできないというときには、当然立法措置を講ずるわけでございます。ごまかしてやるということは、私は生来嫌いでございますので、適当に行政措置か或いは法律措置かをとりたい。従いまして、二月以前のものをどうするか、こうするかという問題ではございません。実際を調べまして適当な措置を講ずる。  なお、高橋長官について云々でありますが、私と廣川君と高橋君の意見は完全に一致いたしました。昨日も各税務署へ私が今お答えをいたしたような通牒を発しておるのであります。(拍手)      ——————————    〔小酒井義男君発言の許可を求む〕
  28. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 小酒井義男君。
  29. 小酒井義男

    ○小酒井義男君 私はこの際、戰争犠牲者援護に関する緊急質問動議を提出いたします。
  30. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 私は、只今の小酒井義男君の動議賛成いたします。
  31. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 小酒井君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  32. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつてこれより発言を許します。小酒井義男君。    〔小酒井義男君登壇拍手
  33. 小酒井義男

    ○小酒井義男君 私は日本社会党を代表しまして、戰争犠牲者である傷痍者及び遺族の問題を中心に政府の方針を伺いたいのであります。  本件につきましては、去る一月二十九日の本会議で、山下、紅露の両議員からも一般質問の中において質された問題でありますが、大蔵、厚生両大臣とも極めて形式的な答弁でありまして、多くの戰争犠牲者は言うに及ばず、国民はひとしく具体的な方針の明示を求めておるのであります。なお、本国会におけるところの各大臣の答弁も、今日頃からは非常に真摯なまじめさが見られますが、今までは非常に不まじめなものがあることが国民の批判の的となつております。(「その通り」と呼ぶ者あり)私はこの際、特に具体的な答弁のなされるよう要求をいたしておきます。  我が国は軍国主義者たちによつて多くの国々に多大の損害を與えながら、而もその賠償さえ支拂う力を持つておりません。従つて国内にあるすべての戰争犠牲者を満足させる対策の不可能であることは認められなければならないのであります。併し占領政策下にあることを理由にして七年間に近い長期を苦境のどん底に取残されていた戰争犠牲者は、吉田内閣によつて、講和條約の調印即ち我が国の独立であり、政治の自主権は確立するものであると教え込まれております。今年こそ日本政府の手によつて補償の手が差延ばされるものと信じておるのであります。我我は、戰争の犠牲となつて、働く能力を失つた傷疾者や、一家の支柱を失つた遺族の生活は、当然国の責任で補償すべきものであり、これは我々国民の責任、義務であると信じておるのでありますが、大蔵大臣は二十七年度予算を編成するに当つて、軍事力強化にのみ重点を置いて、財源の余りを以て戰争犠牲者を遇するのごとき印象を與えておりますることを我々は指摘しなければならないのであります。かかる国内事情を無視する予算編成は、これは吉田内閣によつて自主的な判断の下に行われた結果であるかどうかということについて大臣の御答弁を要求いたします。これが若し吉田内閣の方針によるものであるといたしましたら、今後吉田内閣は民生安定を口にする資格のないことを宣言したに等しいものであります。(拍手)  当事者は言うに及ばず、八千万の国民は二十七年度予算に対して不満と不安を持つております。国民にとつて二十七年度予算は絶望の予算であると言わなければなりません。更に一月二十九日の山下議員の質問に対して、大蔵大臣は、只今政府措置が暫定的なものであるかのような答弁をされております。私はこのことについて質問をいたしたいと思つておりましたが、今日の質問を前にして、昨日の閣議において、私の質問いたしたいと思つておりますことが暫定的であるということがきまつたかのように一部新聞が報道をいたしております。私は本会議場において、あの報道が事実であるかどうかということと、その内容について御説明が願いたいと思います。  次に戰死者遺族への弔慰金の問題でありまするが、政府は昨日の決定におきましても、やはり一柱五万円ということを決定されておるやに伝えられております。併し極めてその内容が画一的でありまして、実情が取入れられておらないという感を深くするものであります。国家権力によつて徴用され或いは動員された国民であつて、而も公務のために死亡した者は、当然同様な取扱をいたすべきであると思いますが、それの区別をされなければならない論拠が承わりたいのであります。又この問題は決して金額の多少によつて解決のできる問題ではありません。併しながら、それであるからといつて、今日五万円の金で生きたものを買うとしたら、どの程度のもが買えるかということを想像される場合に、私は一柱五万円というところの弔慰金は極めて妥当性を欠いておるのではないかと思いますが、大蔵大臣はこれに対して再考慮をされる御意思がないかどうか。お答えを願いたいと思います。  次に、私は厚生大臣に対する質問をいたします。我が国では、明治三年以来、いわゆる特項症に該当する傷痍者は一般の一・五倍の恩給を出しておつたのであります。それは特項症には必ず附添人が必要であるととが考慮されておるものだと思います。我々も最近箱根の国立療養所を視察いたしまして、あの脊髄障害者の人たちがどうしても家族の附添が要るという事実を見て参つております。私はああした附添人の絶対必要なところの傷痍者に対しては、傷痍者の医療の終身国家保証と、そうして家族の生活の全額保証をするに足るところの制度がきめられて然るべきであると思つておりまするが、今回の先に政府の発表しましたところには、何らそうした考慮が拂われておりません。この点について厚生大臣の御所見をお聞きいたしたいと思います。  次に、働く意思と能力を有する傷痍者や戰争未亡人或いは遺兒が優先就職のでき得る、例えば強制雇用法とでも言うべきものを制定することの必要についてお尋ねいたします。政府は民間産業に対して傷痍者雇用の通牒を出したと承わつておりまするが、現状は働きたくても職場は決して開放されておりません。むしろ遺兒や傷痍者にはいろいろなむずかしい問題が横たわつておるのが実情であります。従つて、諸外国の例にもありますように、民間産業だけでなしに、国や或いは地方公共団体等にも能力に応じた職場に優先雇用させるということの法制定の必要があると私は思うのでありまするが、これについて政府はその意思があるか、又ありとすれば、それらの法制定の時期等についてお考えがあれば承わりたいのであります。次に、私の知る限りにおきましては、我が国の遺家族数は約百六十五万世帯と承知いたしております。その中で生活保護法の適用を受けておるものは大体八万世帶に過ぎない実情であります。これは遺家族が救済や援護を求めておらない、その遺家族の精神的な考え方に基いて、こうしたことであるのが実情であるのであります。従つて遺家族に対しての問題は、生活保護法とは切り離して、国家によるところの補償の制度でするべきであると考えますが、厚生大臣は如何お考えになりますか。お答えが願いたいと思います。  次に、昨年末でありますか、住宅問題について厚生省から傷痍者等に対する優先的な居住の通牒が出されておるやに承わつております。その結果、それではどれだけの人が優先的に住宅に入ることができたかどうかということを厚生大臣は御存じになつておるか。それが一片の通牒によつて解決ができるというふうにお考えになつておるかどうか。更にこれの根本的な解決には如何なる御方針を持つておいでになるかということをお伺いいたしたいのであります。  私の最後質問いたしますことは、政府の本問題に対する今後の対策であります。前にも述べました通り、戰争犠牲者は決して昨日や今日突然発生したのではないのでありまして、すでに七年近くの長期に亘る問題であり、吉田内閣も相当長期に亘つて政局を担当しておるのでありますから、本件にとつては十分の対策が樹立されていて然るべきだと信ずるのであります。若しそれがないとすれば、政府の無責任を追及されることにならざるを得ません。本院は昨年六月の第十国会末期において、傷病者対策審議法案を制定することを議決して、衆議院に送付しております。若し政府にこれを実行する熱意があつたならば、與党の院内勢力によつてこれを可決することができたはずであります。併し今更政府の無責任を追及しておつてもいたし方がありませんが、これ以上この問題を遷延させることは、三歳の童子であればだますことができるかもわかりませんが、十二歳の国民を僞わることはできないと思うのであります。従つて国会中に当然根本的な対策を打ち立てるに必要な法律を提出しなければならないと思いますが、大体政府はいつ頃これらの法案を提出される御意思であるかということが承わりたいと思います。この問題につきましては、その後、政府は約一億円の調査費を出すことを予算に組んでおりますが、そうした申訳的なものではなく、根本的な対策を樹立しなければならない。時期をすでに失しておるのでありますから、この際、私はこれに対しても政府がどのような考え方でこの問題を解決しようとしておるかということをお尋ねいたしたいと思います。  更に、最近硫黄島或いはその他において、多くの遺骨の問題がそのままに放置されておることが我々国民の大きな悩みとなつております。これの引取り、或いは未だ外地におつてそうして引揚をいたしておらないところの未帰還者に対するところの引揚促進について、如何なる方針をお持ちになつておるかということを附加えて御説明願いたいということを要求いたしまして、私の質問を終ります。(拍手)    〔国務大臣吉武惠市君登壇拍手
  34. 吉武恵市

    国務大臣(吉武惠市君) お答えをいたします。  私に対する御質問の第一点は、特項症に対する特別の処置についてであつたかと思います。お話のごとく、特項症につきましては、従来特別の考慮が拂われていたのであります。終戰後一部恩給を補正をして適用をしておりまして、その点が従来のように考えられてなかつたことは遺憾だと思うのであります。今回の援護処置につきましても、傷痍者につきましては相当考慮を拂いまして、従来の恩給の一部を施行いたしましたよりは相当額上げて考慮を拂つております。(「今まで安い」と呼ぶ者あり)そうして特項症につきましては、なお若干の考慮を拂いたいと考えております。  それから次に傷痍者及び遺兒に対する就職の件でございますが、御尤もでございまして、私どもといたしましては、特別の考慮を拂つてこれが斡旋に努めたいと思います。法律を作つて強制的に雇用さしたらどうかという意見はございます。併しながら、こういう問題は法律で強制をして雇わしたといつて済むものではないのじやないだろうか、それよりも我々の努力により、そうして相手の理解によつて就職をさして行くことが望ましいのじやないか、かように存じます。それがためには先ず腕に職を覚えさすということが必要であるということで、今回の予算処置では、従来六ヵ所の補導所を持つておりまするが、なお又特に傷痍者のために二ヵ所の補導所を増設いたしまして、それぞれ適切な職業を授け、そうして一方就職の斡旋に努めよう、かように存じているわけであります。従来といたしましても、私どもの機関を通じて、特にこれらのかたがたに対しましては十分気を付け、相当の就職の斡旋の成績を收めているわけであります。今後特に又努力を拂いたいと思います。(「国みずからが」と呼ぶ者あり)  それから今回の援護処置と生活保護法との関係のお尋ねでございましたが、生活保護法の適用を受けられているかたが若干ございます。お話のごとくそれ以外にもあるであろう。併し生活保護法の適用を受けることを実は遠慮され、或いは好まれなくて、実際はお気の毒だけれども受けないのがあるだろうということにつきましては、私どもも、さような感じを持つているわけであります。従いまして、生活保護法の適用なくして、全部がそれ以上の援護の処置が講ぜられれば、これは勿論望ましいところでございまするが、若しさようにいたしまするというと、相当多額の援護費を要するのでございまして、到底今日の日本の財政状態を以ていたしましては困難な事情でございます。従いまして、先般の閣議におきまして予算措置を決定いたしましたごとく、援護処置としては、一時金五万円としての八百八十億と、それから年金としてのその他の予算が二百三十一億というふうな程度でございます。これは先日も申しましたごとく、極めて不満であろうとは重々承知はいたしておりまするが、現在の日本の状態として止むを得ぬので、暫らく御猶予を願いたいと思うのであります。  なお住宅につきましては、特に遺族のかただけにという住宅政策もとれませんが、第二種住宅につきましては、これらのかたがたをお気の毒だからできるだけ優先的な取扱をするようにということで取扱つて来ている次第でございます。今後の援護処置につきましては、できるだけ早い機会に援護に関する法律を提案いたしたいと、かように存じている次第であります。  それから最後の硫黄島等の遺骨の引揚の点でございますが、これも実は御承知のような事情で、今まで実は処置がとれなかつたことは甚だ私どもといたして遺憾に存ずる次第であります。先般漸く関係方面の了解を得まして、硫黄島には職員を派遣をして目下調査をさせている次第でございまして、その他の地域につきましても最近次々に御了解が得られそうでございまするので、できるだけ早く調査と引揚の処置を講じたいと存じている次第でございます。(拍手)    〔国務大臣池田勇人登壇拍手
  35. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お答え申上げます。  軍人遺家族戰傷者に対しまする補償と申しまするか、敬弔のための予算が少いというお話でございます。お説の通り、実は我々もこれでは十分ではないと考えておるのであります。御承知通り戰争被害者は相当あるのであります。これを国際的に申しまして、中国、フイリピン或いはインドネシア等の所はさておきまして、国内的に申しましても、今問題になつておりまする軍人遺家族等以外において、当然もらうべかりし軍人恩給も停止になつております。又数年或いは数十年間外国で働いて、そうして全財産を拠つて帰られた引揚者もあるのであります。(「命には代えられません」と呼ぶ者あり)又在外財産がなくなつてしまつたのもあるのであります。国内的に申しましても、空襲その他で数十万のかたが亡くなつておられまするし、又経済的に言つても、保險にかけたのは大部分切り捨てられ、粒々辛苦して預金したものも相当切り捨てられまして、戰争犠牲者は相当あるのであります。併し我々は何をおいても、今回軍人遺家族のかたにつきましては、できるだけの措置を講じたいというので、本予算を組んだのであります。八百八十億円の一時金、二百三十一億円の年金にいたしましても、今は二百三十一億円ですが、来年度になりますと、これが三百四、五十億になることは必定であります。こういうことを考えましても、又来年、再来年度におきましては、軍人恩給の問題も解決しなければなりません。いろんな点がありますので、私は講和後の独立国家として治安確保の必要さと、そうして先ず以ていたさなければならない戰争犠牲者中特にお気の毒な軍人遺家族のためにできるだけの措置をとつたのであります。勿論生命を補償すると申しますると、こういう金では少いことは我々も十分わかつております。わかつておりまするが、今の財政状況と将来の国民の租税負担のことを考えますると、只今のところ遺憾ながらこの程度で我慢して頂かなければならん、こういうふうに吉田内閣の方針として只今のところきめておるのであります。今後の財政状況或いは国民租税負担の状況につきましては、我々は戰争犠牲者特に軍人遺家族に対しまして敬弔の念をもつと表すべく努力をいたしますが、只今のところ、こういうところであります。而うして一柱五万円、五万円でどういうものが買えるかというお話でございまするが、我々は生命を補償するのに金でどうこうという気持はない。(「しらじらしい」と呼ぶ者あり)これは私はあなた方が間違つておると思います。財政状況或いは又将来の国民負担から、又戰争犠牲者全体のことを考えて、只今のところこれでやつて行きたいと、吉田内閣で再三再四検討の上、閣議決定いたした次第であります。吉田内閣の方針であります。(拍手)      ——————————    〔山花秀雄君発言の許可を求む〕
  36. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 山花秀雄君。
  37. 山花秀雄

    ○山花秀雄君 私はこの際B二九墜落事故に関する緊急質問動議を提出いたします。
  38. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 私は只今の山花君の動議賛成いたします。
  39. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 山花君の動議に御異議ございませんか    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  40. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつてこれより発言を許します。山花秀雄君。    〔山花秀雄君登壇拍手
  41. 山花秀雄

    ○山花秀雄君 私は日本社会党第四控室を代表して、最近頻々として発生せる占領軍使用の飛行機事故による我が国民に與えられたる生命財産の損失問題に関し、これらに対する政府の補償対策及び今後のこの種問題に対する政府の所信をお尋ねするものであります。  昨年十一月十八日、東京都下横田航空基地附近の北多摩郡砂川村においてB二九が墜落し、積載せる爆彈の破裂によつて多数の人命と家屋及び家財を損失したることは、諸君の御承知のところであります。越えて本年一月二十九日、川崎市馬絹の宮前小学校裏山の畑地にB二九が墜落爆破し、これは幸いにも墜落場所が畑地なりし故、人命の損傷はなかつたのでありますが、今月七日、埼玉県入間郡金子村にてB二九の墜落は、多数の人命と家屋、財産の損失を見たのであります。このように横田航空基地管下における飛行機事故は僅々三ヵ月間に三回及んだのであります。現在占領軍による航空基地はひとり横田基地のみではありません。私は寡聞にして横田基地管下における只今申上げました飛行機事故しか存じませんが、何か九州福岡地区においても相当大きな事故があつたことを聞いているのであります。  そこでお尋ねいたしたいことは、現在占領軍によつて飛行基地として使用されている個所は何ヵ所ぐらいあるのであろうか。これらの基地は講和條約発効後、占領支配の終了と共に当然閉鎖されるものと思うのでありますが、伝えられるところによれば、日米安全保障條約の締結の結果、これらの飛行基地が名目を変えてそのまま残されると言われておりますが、我々は、戰争遂行のために、多量の爆彈を積載して、而も平和国家として再建出発せんとする我が領土の上空を自由に飛来することは、不慮の災害だけでなく、万が一にも外国軍隊の攻撃の的になり得る危險性を感ずるのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)よつて我々はこの種の飛行基地の残されることは反対であります。(「異議なし」と呼ぶ者あり、拍手政府はこの問題に関する事情を国民の前に明らかにされたいのであります。又今日までこの種の飛行機事故及び占領軍を相手方とする交通事故等によつて相当の人命及び財産の損失をこうむつていると思うのでありますが、この件数並びに損害の実質を、今後の対策確立の参考上明らかにお示しを願いたいものであります。  なお前国会の十一月二十日開議されたる予算委員会の席上において、砂川村の被害事件の質疑中、池田大蔵大臣は、占領軍を相手方とするこれらの被害は、責任の如何にかかわらず、占領軍はその被害に対して賠償の責に任じないと声明があつたのではなかろうかと記憶すると発言され、そのとき和田予算委員長より、そういう声明があれば、材料としてお出し願いたい。事態をはつきりさせるためにお調べ願つて、その声明を出すように取計らつて頂きたいと委員長要求のあつたことは、池田大蔵大臣の知るところであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)その後この声明を提出されたか、私は聞きませんが、我々は国民の代表としてこれらの諸問題を審議する重要なる参考となりますので、即刻提出し得るや否や、お答え願いたいものであります。又その席上で当時の大橋法務総裁は、「占領軍の行動に対して日本政府としてその責任を問うという途は許されておらないのであります。そうしてその占領軍の行動によりまして、そこに何らか国民に対して損失が生じましたる場合におきましては、もとよりこの損失というものは、日本国政府立場として、国民に対してできるだけ手厚くこれを解決するということが、それが当然なことだと思います。従いまして政府といたしましては、当然そうした問題のありました場合においてはできるだけ手厚い解決方法を措置するということは当然と考えるものであります」と発言されたのであります。占領下にある我々日本人のすべてはその占領政策に服従することは、ポツダム宣言を受諾した日本国民として当然の義務であります。我々はそのことを十分了承しておりますが故に、今日までその占領政策を忠実に守つて来たのであります。併しながら他国の戰争に戰争遂行を目的とした爆彈を山積した飛行機が飛来しつつあることが正当なる占領政策の行為であるや否や、我々は疑念を持つものであります。(「そうだ」「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)これらの行為が正当なる占領政策の行為であるか、又は占領政策の枠外にある行為か、この際、政府の率直なる見解を質すものであります。若し政府が正当なる占領政策の枠外にある行為であると認識されました場合、当然の処置としてその被害者の損害を占領軍当局に賠償を支弁されるよう折衝に当られるのが政府のとるべき任務と存ずるものであります。政府はその任務を遂行する決意を有しておられるや否やをお尋ねする次第であります。従来ややもすれば占領軍の事故による被害は一種の天災のごとく扱われて、その損害を賠償支弁する責任の所在も明白ならず、それ故に政府より終戰処理費及び平和関係善後処理費から支弁されていると聞いているのであります。その支弁される金額は御見舞程度という極めて僅少なものであり、当面を糊塗しておるのであります。政府は、講和調印後の事態と最近の国民の輿論に鑑み、昨年十二月その支弁額の改正を見た閣議決定の「占領軍の事故により被害を受けたものに対する見舞金に関する件」によるも、なお且つ僅少の誇りを免れない程度のものであります。これらの事故は、特に飛行機墜落による事故は絶対に被害者の責任ではないことは明らかであります。その責任の所在は明白であります。それ故に、政府は思い切つて被害者が納得し得る損害賠償の措置をとられる意思を有しておられるや否や。その所信を発表せられんことを願うものであります。又現在協議中の行政協定も近日中に終了するやに伝えられているのであります。この協定項目のうちに駐留軍関係との事故発生による紛争の解決項目も審議せられておりますや否や。若し審議されておりますならばその條件をここにお示しを願いたいものであります。この際、政府に御注意申上げたいことは、たとえそれが不十分なる見舞金の支弁でありましても、すべての被害者に公平に配分されなくてはなりません。併しながら、過日の砂川村の一例によつても明らかなごとく、実際生活に困る人々が見舞金の支弁なく困つているということであります。即ち住居損傷の場合その補修費として四万円を基礎に支弁され、これを上廻る場合はその実損の五〇%支弁されることになつているのでありますが、被害者は農家所在地の砂川村においても全部家持ちではないのであります。そこには若干の借家人がおりますが、家主は補修金を受取りそのまま家屋の修理をいたさず、現在に至つても破壊されたままの家屋に住み、困窮を極めている実情であります。支弁されたる金額は家持ちに対する見舞金でなく、飽くまで家屋の補修費として支弁されたもので、この金額は家主がひとり所得する性質のものではありません。併しこのような事態の起きることの原因の一つは、破損物に対する支弁金額が少いところから来るものと考えなくてはなりません。これらの実情に鑑み、今後の家屋損傷の補修費は如何なる形で支弁されますや。砂川村に起きたこの実例に徴し、政府はどうお考えになり又どう処理されまするや。お尋ねするものであります。更にお尋ねいたしたいことは、これまで占領軍との事故による場合の損害は、極論すれば全くの泣き寝入りのごとき扱いを受けていたのであります。政府は、講和條約発効後の措置として、駐留軍関係との事故処理に関する新らしい協定事項に基く條件が定められましたる場合、その條件をこれまでの事故犠牲者に対して遡及して支弁されるお考えを持つておられまするや否や、お尋ねするものであります。最後に一言いたしたいことは、砂川村にB二九が墜落したとき、乗務員は全員難を逃れて、消火救援に赴いたところの基地に働く日本人労務者が爆彈の破裂のために殉職したと言われているのであります。このことは、率直に我々の感情を申上げますと、否、日本国民の感情を吐露いたしますと、何かしら割り切れない後味の悪いものが残るのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)なぜ乗務員の全員が助かり、勇敢にも危險を顧みず消火救助に赴いた者が死んだのでございましようか。この悲惨事を未然に防止することができなかつたのだろうか。その場合緊急の措置がとれなかつたのであろうか。(「そうだ」と呼ぶ者あり)あの場合の災害の実情をもつと詳しくはつきり調査されたことだろうと思いますから、この席上において、はつきりして頂きたいと思うのであります。埼玉県金子村の事故につきましても、東電飯能営業所の佐島満三氏は同じく危險を顧みず送電線切断作業に赴いたばかりに殉職されたことが新聞紙の報道によつて明らかにされているのであります。政府は、このように勇敢にして犠牲的精神を発揮し職に倒れた、その他不測の事故によつて生じた犠牲者に対して、「占領軍の事故により被害を受けたものに対する見舞金に関する件」という一片の閣議決定の僅少なる見舞金で片付けるのは、何としても我々の承認できないところであります。最高の弔慰金と損害の全額賠償の措置を至急とられんことを要求し、ここに、これらの不測の事故によつて尊い生命を失われた日米両国の犠牲者に対して謹んで哀悼の意を表し、私の質問を終るものであります。(拍手)    〔国務大臣岡崎勝男君登壇拍手
  42. 岡崎勝男

    国務大臣(岡崎勝男君) お答えいたします。いろいろ御質問がありましたが、第一は占領軍の飛行基地は幾つあるかということのようでありましたが、これは占領軍の機密に属しておりますので、我々申上げる立場にもないし、又確実には知つておらないのであります。(「とんでもない大臣だ」「それで大臣か」「番犬か」と呼ぶ者あり、笑声)飛行基地は講和條約発効後はなくなるべきであるというお話でありますが、我我としては日本を防衛するための安全保障條約の遂行上は飛行場も必要だろうと考えております。(「日本人が皆死んでどこが安全保障だ」「何が安全保障だ」と呼ぶ者あり)なお他国の戰争の遂行のために爆彈を積んでいる飛行機が日本の上空を飛ぶことは云々というお話でありましたが、(「勿論困るよ」と呼ぶ者あり)国連軍は戰争をいたしているのではないのであります。国連軍は国際警察軍として侵略行動を防遏しておるのであります。従いまして、日本は国連協力の趣旨より申しまして、これにできるだけ協力するのは当然と考えております。(「三百代言」と呼ぶ者あり)行政協定で今後事故発生の場合の補償方法が協議されておるかという御質問でありますが、行政協定中において、こういう問題を取上げて討議をいたしております。(「しつかりやれ」と呼ぶ者あり)これは従来とは全く違つた立場におきまして、独立後のことを協定しようとしておるのでありまして、その趣旨は、国際的な慣習がありますので、その慣習に基いて正当なる取極めをいたそうと考えておりますが、まだ何分にも話合いの途中でありますので、いずれそのうち確実なお答えができると考えております。なお、今までの被害について、独立後これを遡及して補償するかという御質問でありますが、これは性質が全然違うのでありまするから、過去のものは過去のもの、今後の独立後のものは独立後のものとして別の方式で処理いたしたいと考えております。(拍手)(「終戰後だつていいじやないか」「日本人の答弁じやないよ」と呼ぶ者あり)    〔国務大臣池田勇人登壇拍手
  43. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お答え申上げます。  占領軍の行為に基く損害に対しまして、請求権は我がほうにないと心得ておりますという答弁をしたことは、その通りであります。その後調査いたしましたところ、昭和二十一年九月十一日付連合軍最高司令官覚書第千百九十五号に明示されております。而してこのことは平和條約第十九條によつても明らかにされておるのであります。併しお話通りに、誠にお気の毒でございまして、占領軍による被害につきましては、昭和二十一年五月閣議決定で一応見舞金を或る基準で出そうというので出しております。その後基準を改訂いたしまして、而して昨年の初めに福岡県における醤油醸造業に対しまして墜落による相当の損害があつたのであります。このことが問題になつておりました後に、お話の、十一月に立川附近で被害がありました。そこで我々がこれをどういうふうに処置したらいいか、今までのような見舞金では誠に少なすぎてお気の毒だというので、十二月四日の閣議決定で新たに基準を設けまして、今までにも増して相当の額を出すことにいたしたのであります。実際の損害額を基準にして、そうして生命と或いは身体傷害と、そうして家財と家屋、こういうふうに区別いたしまして、今正確な数字は覚えておりませんが、家財にいたしましても二万円までは全額、二万円を超える場合におきましては超えた金額の半額、家屋につきましては四万円までは全額、(「なぜ半額にするか」「どういう根拠によるか」と呼ぶ者あり)それで、それを超えた場合につきましては半額、何が根拠になつておるかということは、財政の事情、今までのやり方を考え政府が決定しておるのであります。それが当か不当かは、適当か不適当かは、国民が判断して下さると思います。(「犠牲者に何の罪があるか」と呼ぶ者あり)従いまして、その基準は九月の八日後において影響する。九月八日調印前の分についてはどうするか、即ち先ほど触れました昨年の初めの福岡の分はどうするかというところで問題になりましたが、九月八日の基準によるとできない。併しそれを参酌して適当な見舞金を出そうということになつておるのであります。  その他の問題は岡崎国務大臣答弁した通りであります。(拍手)    〔国務大臣吉武惠市君登壇拍手
  44. 吉武恵市

    国務大臣(吉武惠市君) 私の関係につきましてお答えを申上げます。  損害に対する見舞金の関係は、只今大蔵大臣から答えた通りでございまして、従来少いということで、昨年の暮に改訂をいたしまして、増額をしておるような状態であります。それから御質問の御趣旨の中にも窺われまするのは、家屋に対する見舞金が出ておる。そうするとその家屋の見舞金は、家屋の所有者が取つて、実際に住んでおる人がもらえないために、気の毒な事情が出るということであろうと思うのであります。或いはそういうこともあろうかと思うのでありますが、見舞金は、先ほど池田大蔵大臣が申しましたように、怪我をした場合の傷害の見舞金と、亡くなられたときの死亡の見舞金のほかに、今の住宅の見舞金と、なお、その住んでおる人の家財に対する見舞金もあるのであります。ただ家屋の見舞金は、やはり今日の法律の事情といたしましては、その所有者に対し見舞金を出すのは、これはまあ、しようがないわけであります。その家屋の所有者が見舞金をもらいながらこれで補修をしないというところに問題があるんだと思うのでありますが、これはその家屋の所有者等に話しまして、できるだけ補修をさして、元の居住者に住まわせるというのが至当であろうと思うのでありますが、そうかといつて、どうも家屋の見舞金を、住んでおる人にやるということにも参らないのであります。これらは占領軍の関係ばかりでなしに、一般の場合にもあり得ることだと思うのでありまするが、今後十分気を付けて遺憾なきを期したいと思います。(「どうするんだ」「責任を感じないのか」と呼ぶ者あり、拍手
  45. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 次会の議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時十七分散会      —————————— ○本日の会議に付した事件  一、議員の請暇  一、日程第一 罹災都市借地借家臨時処理法第二十五條の二の災害及び同條の規定を適用する地区を定める法律案  一、地方財政窮乏打開に関する緊急質問  一、匿名供米免税に関する緊急質問  一、戰争犠牲者援護に関する緊急質問  一、B二九墜落事故に関する緊急質問