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1952-02-06 第13回国会 参議院 本会議 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年二月六日(水曜日)    午前十一時五分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第十号   昭和二十七年二月六日    午前十時開議  第一 両院法規委員辞任の件     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。      ——————————
  3. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) これより本日の会議を開きます。  日程第一、両院法規委員辞任の件を議題といたします。  去る四日、溝淵春次君から両院法規委員を辞任いたしたいとの申出がございました。これを許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつて許可することに決しました。      ——————————
  5. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) つきましては、この際、日程に追加して、両院法規委員補欠選挙を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。
  7. 菊川孝夫

    菊川孝夫君 只今両院法規委員補欠選挙は、成規の手続を省略いたしまして、議長において指名せられんことの動議を提出いたします。
  8. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私は只今菊川君の動議に賛成いたします。
  9. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 菊川君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつて議長両院法規委員小野義夫君を指名いたします。      ——————————    〔曾祢益発言許可を求む〕
  11. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 曾祢益君。
  12. 曾禰益

    曾祢益君 私はこの際、東亜における賠償問題と国交調整に関する緊急質問動議を提出いたします。
  13. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私は只今曾祢君動議に賛成いたします。
  14. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 曾祢君動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  15. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつてこれより発言を許します。曾祢益君。    〔曾祢益登壇拍手
  16. 曾禰益

    曾祢益君 私は東亜賠償問題と国交調整に関する問題につきまして、若干の点を吉田総理大臣に御質問申上げたいと存ずるのであります。  第一は、アジア諸国に対しまする賠償問題の処理についてでございまするが、対日平和條約の結果、政府は目下、インドネシアフイリピン等との間に賠償に関する交渉を行なつておられるのでありまするが、関係国態度は、平和條約、特に第十四條(a)の1の規定にもかかわりませずに、役務賠償のほかに現金賠償を固執いたしましたり、更に又、日本経済維持原則を無視いたしましたような巨額な賠償を要求しておるのでございます。本日の毎日新聞記事によりましても、フイリピン国賠償関連を持つておりまする一人のかたが言われておるそうでありまするが、依然として「フィリピン国現金賠償を要求する。而して十四條の規定に抵触しない方法において、例えば日本予算一定額を対フイリピン賠償特別勘定に繰入れまして、このうちからフイリピン国が商品を日本から買うというような方法があるではないか。更には又、振替可能のポンドの外貨を以て拂う。」かようなことを示唆或いは固執しているようでございます。で、これは一体どういうことに起因するかと申すならば、言うまでもなく、政府が去る昨年九月におきまするサンフランシスコ平和会議におきまして、この賠償問題につきまして十分に日本立場を主張しなかつたその結果ではないかと存ずるのであります。然るに政府におきましては、当時から、又今日におきましても、依然といたしまして、誠意を以て交渉するならば打開の途がある、かような極めて一方的な楽観的な放送をしているのであります。併し国民といたしましては、この問題の成り行きは、日本国民の、而して勤労大衆生活水準に対しまして、非常に大きな暗影を投じておるものでございまするので、非常に深く憂えているのでございます。果して政府は如何なる成案を持つておられるか。この点につきまして明確なる方針を伺いたいと存ずるのであります。インドネシアとの中間賠償協定案がすでに政府から公表されておるのであります。その公表を見ましても、依然といたしまして、賠償総額、或いは時期、かような重要点は何らの協定に達しておらない。このことは極めて明白になつておるのでございます。又フイリピンとの交渉におきましても先ほど申上げました通りで、この大きな総額の問題、時期の問題、従つて日本の総体的の負担の問題については非常に危險な状態がそのままになつておる。このことは、はつきりしておるのでございます。而してこの賠償総額問題及び時期の問題につきましては、いずれかの日にはこれをきめて行かなければならないことは明々白々たる事実と存ずるのであります。果してこれに対して如何なる成算がありますか。事、予算に関する点につきましては大蔵大臣の御答弁を願いたいと存ずるのであります。果してインドネシアとの中間協定におきまするようなことが、他の諸国との個別的な交渉におきまする一つの雛型として考えてよろしいのであるか。この点も外務大臣から伺いたいと存じます。更には又台湾における国民政府との講和の草案というものにつきましても、同じく本日の毎日新聞記事が出ております。それによりますると、将来国民政府が本土を回復した後において、賠償について改めてサンフランシスコ條約に従つて協議するというふうになつております。これは勿論新聞の記事ではございまするが、果して政府はこの点を国府との関係において如何に考えておるか。否、中国全体を代表する政府との関係において賠償問題を如何に考えておられるかについても、明確なる総理大臣の御意見を伺いたいと存ずるのであります。日本経済自立のためには、東南アジア諸国との貿易、経済提携拡大強化ということが、非常に大きな意味を持つておることは申すまでもないのでございまするが、平和條約第十四條のごとき、総額の定めもなく、年限の制限もないような不特定債務を残しておくことは、日本とこれらの諸国との間の円満なる政治的経済的了解のために非常な障害になつておることは申すまでもないと存ずるのであります。(拍手政府は、従いまして、この賠償に関する平和條約の條項そのものをむしろはつきりと改訂する意思はないかどうか。この点を伺いたいと存ずるのであります。(拍手アジア諸国との政治的の、否、アジア諸国政治的解放並びに経済的地位の向上は、日本経済自立のためのみならず、世界の平和の基礎を確立するために不可欠の條件であるのであります。従いまして、私たちは、日本といたしましても、過去の債務の弁償、賠償、かような見地を離れまして、又離れまするならば、進んでアジア後進国開発援助のために、日本の分に応じました貢献をなすことは当然と、かように考えておるのであります。而も多くのこれらの諸国におきましては、過去の西ヨーロツパ諸国或いは日本の帝国主義的な経済侵略に懲りておるのであります。従つて国対一国の基礎におきまする開発援助には非常に躊躇をしておる傾向があるのは、これ無理からぬ点であると存ずるのであります。政府は、従いまして、この東南アジア開発援助、この問題につきましては積極的に考えて行く意向はないか。更に又そのやり方につきましては、一国対一国というぺーシスでなくて、もつと応い世界的な規模において、例えば国連の機関、アジア極東経済委員会等を通じまして国際的な総合的な開発援助計画を推進し、そのうちに日本援助もプールして行くようなお考えはないかどうかを伺いたいと存ずるのであります。我々はかように国際的な枠において取上げるならば、ここにアメリカポイント・フオア・プログラム、又相互安全保障法に基く援助、或いは更にコロンボ計画等をも総合いたすことができまして、一層有効な、多角的な、相互に利益するような計画をなすことができるのではないかと存ずるのであります。この点に関する吉田総理の御見解を伺いたいと存じます。  第二の問題は韓国との国交調整でございます。日本韓国との間の国交調整に当らなければならないことは当然でございまして、これは当然に外交関係設定開始通商航海の問題の基礎をきめること、このような問題がありまするが、これに附随いたしまして在留韓国人の国籍の問題、又、韓国籍を取得する在留外国人即ち韓国人の一部を送還する問題、日本及び日本国人韓国に残しましたるところの財産請求を含む両国債権債務処理の問題、更には又サンフランシスコ平和條約にも規定されましたような漁業協定等の重要問題が取上げられなければならないと存ずるのであります。政府はこれらの問題に対しまして如何なる方針と如何なる態度を以て日韓国交調整に当らんとするか。この方針を明確にお示し願いたいと存ずるのであります。同じく本日の毎日新聞を引用いたしまするが、日本在外財産韓国側日本に対する請求権とを相殺して行こうというような方針があるやに伝えられておるのであります。果してさような御方針であるかどうか、この点につきまして明確なる意思を伺いたいと存ずるのであります。更には又、先に日本全権が送られることになつたという記事がありましたにもかかわらず、これが沙汰やみなつたのは、一体如何なる理由であるかも、この際明らかにして頂きたいのであります。最後に、韓国政府におきましては、一切の国際法及び国際慣例を無視いたしました一方的な宣言を発しまして、いわゆる公海、オープン・シーに対しまして、韓国漁業保護及び国防の見地から保護海域を設定する旨の意思を発表したのであります。これに対しましては外務省からいわゆる声明戰をやつておられまするが、かかる声明戰をやつたのでは問題の解決には断じてならないのであります。(拍手)果してこの問題につきまして如何なる態度を持つておられるか、又如何なる見通しであるか、明確に伺いたいのであります。私たち日米加国漁業協定の條約の交渉に当りましてもこの点をはつきり申上げたのであります。この三国間の漁業條約は決してその三国だけの関係にとどまらない、必ずや東亜諸国太平洋諸国から見まするならば一つ先例になる、従つて日本の絶対守らなければならないところの公海の漁業自由の原則はつきりこの際押し通して頂きたい、このことを申上げたのでありまするが、さような点につきまして、その他最近におきまする中国政府選択問題等に関しまして、政府が相変らず自主性のない外交の結果、このたび、この韓国政府宣言に現われたごとき無謀なる態度が現われたのではないかと存ずるのであります。従いまして今後政府が深く反省すると共に、韓国政府に対しましてもその反省を求めてこの問題の、日韓国交調整に当つて頂きたいと存ずるのであります。御意見を伺いたいと存じます。  多少時間はありまするから、御答弁如何によりましては再質問をお許し願いたいと存じます。(拍手)    〔国務大臣吉田茂登壇拍手
  17. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えいたします。  賠償問題の処理についてお尋ねでありますが、賠償問題の原則は、平和條約第十四條でありましたかに原則はきめております。即ち日本経済自立なり、日本経済根抵を動かさない範囲においてできるだけ誠意を以てこれに応ずるというこの原則は、今後ますます堅持いたすつもりであります。これに対してフイリピン政府からは、お話のように巨額な要求がありますが、これは今後交渉の間にどうなりますか、交渉の主要の問題の一つであります。  又台湾国民政府に対してのお尋ねでありますが、これは私の書簡において明らかにいたしておきました通り、いわゆる善隣関係を十分に樹立いたしたい。而して今後とも両国の間は親交な関係に進むために條約関係に入る。こういたしたいと考えております。その内容は、今後如何なる條約ができるか、如何なる問題が生ずるか……賠償については、全権フイリピンに到着した上で交渉の……すでに到着いたしておりますが、これに対して今両国全権の間にいろいろ交渉は進めております。併しながらその交渉内容については、政府が今日ここで言明いたすことは、交渉にも差支えがありますから差控えたいと思います。  賠償に関する平和條約の規定を改訂する考えがないかということでありますが、今賠償問題の交渉がわずかに始まつたわけでありまして、その結果については未だ全然不明であります。又賠償問題については、賠償全額について政府としては決定する………ただにフイリピンのみならず、その他の国との間の賠償全額について考えるべきこともありますから、直ちに一国だけに対してこういう承諾を與えるということは、これはできないことであります。各国に対する賠償全額について考慮いたして愼重にこの問題は解決いたしたいと思います。併しながら誠意を以てこれに当るということは前申した通りであります。故に十四條の改訂ということは今日考えておりません。この原則は誠に公平なものと考えますから、飽くまでもこの線で参りたいと思いますから、改訂する意思はございません。  又東南アジアについてのお尋ねでありますが、東南アジアとの関係も、これ又善隣外交の上からいつてみて互いに相援助する、互いにその経済援助し合うという考えで進んで参りますが、その具体案についてはまだ話合いもできておりません。又これは單に日本だけの問題ではなく、連合国英米等の国の関係もございますから、英米等の諸政府意見も聞いた上で以て態度を決定いたしますが、併し趣意としては飽くまでも経済相互援助に参りたいと思います。  韓国については、韓国政府との間には予備的な話合いは進めておりますが、併しながら全権を送るというまでの予備交渉が進んでおりません。或る程度交渉が進めば、自然、全権を送つて、御指摘のようないろいろな問題について討議するということになりますが、御意見通り韓国との間の問題はいろいろ複雑な関係もあり、その主なるものの問題の一つとして漁業問題もあります。ありますが、これは今後の交渉に属することでありますからして、もう少し進んだ交渉段階になつて説明をいたす時期が参りましたらば十分御了解の行くように説明をいたしたいと考えます。その他は主管大臣からお答え申上げます。(拍手)    〔国務大臣池田勇人登壇拍手
  18. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 賠償の問題につきましては只今総理大臣から詳しくお述べになつた通りであります。いずれかの日、どれだけかの額を、どういう期間において拂うということをきめなければなりません。而してその額、支拂方法は、飽くまでも日本国民生活水準を下げないように、日本経済の存立を可能ならしめる範囲においてきめられるべき問題と思います。而してやはり一国とだけ取極めてもいけないことで、やはりその他全体の国々との話合い一体として付けられるべきものだと考えております。(拍手)    〔曾祢益発言許可を求む〕
  19. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 再質問でございますか。
  20. 曾禰益

    曾祢益君 再質問をお許し願いたいと思います。
  21. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) どうぞ。    〔曾祢益登壇拍手
  22. 曾禰益

    曾祢益君 総理大臣の御答弁では、先ず日本負担全額がきまらなければ各国との間の全額がきまらないように承われるのでありまするが、さようなことをして行くのならば、いつまでたつてもそれぞれの各国満足を與えることはできないのではないか。で、そういうやり方をするならば、むしろ正直に言うならば、国際会議を開いてそうして総額をきめて、それからやつて行くという方式がとられなければ、これは正直ではございません。併し日本としては、各国別交渉して行く限りにおきましては、成るべく日本立場に合致するような先例を作つて行くというような外交方式が当然に考えられると思うのでありまするが、その点が非常に不明確である。果して真に誠意を以て当つておられるのであるか否や。いつまでも総額はあなた方の出して来られた勘定書だけではきまらない。きまらない、きまらないで引つ張つて行くというようなことは、東南アジア諸国との日本政治的経済的提携上、却つて私は累を残すのではないかと、かように思うので、いま一応伺いたいと思います。  更に又中国政府の問題については明白な御答弁がございませんでしたが、私の伺いたいことは、政府の限定的な国民政府承認との関連におきまして、果してその国民政府との関係において賠償問題をこの際おきめになるのであるか、それとも、それは延ばすのであるか、この点は国民政府承認意味に関しまする非常な重大なポイントでありまするから、はつきり伺いたいと存じます。  池田大蔵大臣只今答弁がございましたが、甚だ簡單にして要を得ないのでありまするが、池田大蔵大臣は、大蔵大臣といたしまして予算の作成に関する当然の主管者であられる。して見れば、いつまでも各国との間に総額をきめて行かないというようなやり方をしておられるときに、日本の現在の予算との関係において如何にこれを処理する自信をお持ちであるかどうか。現在予算に計上されているような腰だめを以て総額をその中に織り込むだけの自信をお持ちであるかどうか。この点をはつきり伺いたいのであります。更に又一カ年の予算の問題ではございません。一カ年の負担が百億程度というふうに仮に考えましても、これが一体何年続くのであるか、何十年続くのであるるか、この点に関するやはり総額の問題を我々は考慮しなければならん。従いまして、やはり全体としてこの総額の問題は非常に重大な関係があるので、大蔵大臣が如何なる成案をお持らであるかを、今一応はつきりと伺いたいと存ずるのであります。(「なぜそんな平和條約に社会党の君たちは調印したのかい」「答えられやせんよ、総理大臣は」「何と答える」と呼ぶ者あり)    〔国務大臣吉田茂登壇拍手
  23. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えいたします。私の答弁では満足の行かぬようにお伺いしますから、岡崎主管大臣から詳細お答えいたさせます。(「総理、見ろ、答えられやせんじやないか」「君たちはなぜそんな條約に賛成するのか」「うるさいぞ」と呼ぶ者あり)    〔国務大臣岡崎勝男登壇拍手
  24. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 第一の御質問は、賠償について総額がきまらないということで各国を徒らに引張ることはよろしくないではないかという御質問のようでありますが、我々は、講和條約におきましてちやんと十四條の規定がありますので、この規定に基いて誠意を以て交渉をいたす考えでおりまするし、我々の誠意のあるところは関係国でもすでに認めてくれておると信じておりますから、これによつて、我々のほうでただ引張つていい加減にしておるのだという印象を與えることは万ないと思います。で、恐らくそのうちには両方の意見がだんだん合致して来まして、円満な話合いができると考えております。  なお吉田書簡関連しまして、中国賠償の問題についてのお尋ねでありますが、これは多年外交交渉に経験のおありの曾祢君などはとくに御承知のことと思いまするが、只今これから話合いをする際でありまするから、我々のほうに仮にいろいろの案がありとしても、これを事前にこういう所で公表することは差控えたほうが適当であろうと考えておりますから、総理のお答えのように暫らく御猶予を願いたいと思います。(拍手、「真劍に」「議会を侮辱してはいけない」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)    〔国務大臣池田勇人登壇
  25. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 大蔵大臣答弁簡單にして要領を得ないというお叱りでありまするが、(「その通りだ」と呼ぶ者あり)我々は第十四條の規定によりまして誠意以てやるのであります。而して、今、大蔵大臣総額どれだけの賠償なら応じる成算がある、こういうことを言うべきではないと考えます。(「再々質問」と呼ぶ者あり、拍手)      ——————————    〔棚橋小虎君発言許可を求む〕
  26. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 棚橋小虎君。
  27. 棚橋小虎

    棚橋小虎君 首相の防衛隊創設声明に関する緊急質問動議を提出いたします。
  28. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私は只今棚橋君の動議に賛成いたします。
  29. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 棚橋君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  30. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつてこれより発言を許します。棚橋小虎君。    〔棚橋小虎君登壇拍手
  31. 棚橋小虎

    棚橋小虎君 私は日本社会党第二控室を代表いたしまして、総理大臣防衛隊創設に関する声明について御質問いたしたいと思うのであります。  過日、総理大臣衆議院予算委員会におきましてなされた、来たる十月を期して警察予備隊防衛隊に切換えるという声明は、八千万国民の間に非常に大きな衝撃を與えたことは事実であります。これはいつも現内閣がされるように、殊に平和條約並びに安全保障條約の締結当時にもなされた通り国民に対して事実を隠して、そうして、あらかじめ国民理解を與えるという親切がなく、いつも非民主的に独断的に事を運ぼうとする過まちでありまして、この責任は全く政府にあると考える次第であります。自衛力漸増計画ということが最近頻りに政界方面に唱えられておるのでありますが、この言葉の出所がわからないし、自衛力漸増計画というものが一体どういう内容を持つたものであるかということも一向明らかになつておらないのであります。日米安全保障條約によりますと、「アメリカ合衆国は、平和と安全のために、現在、若干の自国軍隊日本国内及びその附近に維持する意思がある、但し、アメリカ合衆国は、日本国が、……直接及び間接の侵略に対する自国防衛のため漸増的に自ら責任を負うことを期待する。」こういうことが書いてあるのでありまして、更に第四條には、「この條約は、……日本区域における国際の平和と安全の維持のため充分な定をする国際連合措置又はこれに代る個別的若しくは集団的の安全保障措置効力を生じたと日本国及びアメリカ合衆国政府が認めた時はいつでも効力を失うものとする。」ということになつておりまして、日本国自衛力漸増ということはアメリカ方面から強く要請されておることであります。殊に先頃のダレス氏の来朝は、この問題に関する大きな打合せのためであつたと思うのであります。又先頃の行政協定話合いにおきましても必ずこの問題に触れたことは明らかなことであるのでありまして、最近国際情勢緊迫化によりましてアメリカ方面自衛力漸増に対する要請はますます強くなつて来ておるということは考えられることであります。こういう状態でありまするからして、政府は必ずこの自衛力漸増計画に対しましては、今日はつきかした方針と、そうして、その計画というものをお持ちになつておることであろうと信ずるのであります。今日まだ政府がこれに対するはつきりした計画を持つておらぬ、或いは方針を持つておらぬということでありまするならば、これは政府の大きな怠慢である、失態であると言わなければならぬと思うのであります。その政府が確かに持つておられるところのその計画を、今日、政府は更に国民の前にそれを明らかにしないのでありまして、これが今日国民に大きな不安を與えておるのであります。そこで私は政府に対して、この政府の持つておるところの自衛力漸増計画がどういう内容を持つておるものであるかということを、国民の前にはつきりと政府が示されて、そうして国民理解と判断に待つてその計画を進めらるべきであると私は考えるのでありまして、今日ここに政府がその計画を隠すところなくその全貌をお示しを願いたいと要求する次第であります。(「少し変な質問だな」と呼ぶ者あり)  第二に私の申上げたいことは、今度警察予備隊防衛隊に切換えるというのであるが、その切換えということは、警察予備隊をただ延長して行くだけのことであるか、名前だけの変更であるか、若しくはこれは政府の持つておるところの自衛力漸増計画の一段階といたしまして、ここに新らしい軍備を創設するための、その第一歩かどうであるかということをお尋ねしたいのであります。その理由は、警察予備隊は、その警察予備隊令に示されておるように、明らかに国内治安を維持するための機関でありまして、決してこれは軍隊ではないのであります。ところが最近、創設以来僅かに一年半ばかりの間に、警察予備隊は非常に強化されまして、その人数においても今度は十一万人になる。それからバズーカ砲である、戰車である、大砲であるというものを以て装備されまして、今日では軍隊であるか警察予備隊であるかということの区別がないようになつておるのであります。而もこれは先頃の一月二十日の朝日新聞の記事でありますが、政府は二十八年度においてはこれを三十一万人に増員するということに対して、マーカット局長と池田大蔵大臣の間には明らかにはつきりした意見の一致を見たということが新聞に記載されておるのであります。政府はそういう新聞記事には責任持ち得ないと言うかも知れませんけれども、その新聞記事を裏付けるかのごとく今度の防衛隊創設の問題が起つてつておるのでありまして、更に大橋法務総裁は、この十月の切換えにおいては、今後隊員は自由に退職することができない、新たに予備役制度を作りまして、一朝事ある場合には応召の義務に応ずるようにするということまで申しておるのであります。こうなりますというと、隊員の身分というものは單なる警察公務員ではありませんので、これは全く軍隊と同じものになつて参るのであります。更に今年、昭和二十七年度の予算案を見ますというと、警察予備隊費として五百四十億円、それから海上保安庁費といたしまして七十四億円が計上されておりまするが、そのほかに安全保障費といたしまして五百六十億円というものが計上されておる。ところが、この安全保障費につきましては何ら具体的な費途が明示されておらないのでありまして、一種の予備費的な性質を帶びておるものであります。これは警察予備隊が防備隊と切換えられまする際には、その費用に使われる含みを持つておるものと想像されるのでありまして、かような一連の事実を総合して考えてみまするというと、政府は確かにこの十月の切換えにおきましては再軍備の第一歩の踏み出しをするのであろうということは、国民誰も想像するところであります。総理大臣は再三今日まで再軍備はしないということを声明しておられるのでありますけれども、かかる事実はことごとく首相の声明を裏切つておるのであります。私はこの際、政府は、はつきりと、今度の防衛隊切換えというものが今までの警察隊のただ延長であるのか、或いは再軍備の段階に突入するその第一歩であるのかということを、ここに、はつきりと明言されたいと要求する次第であります。  警察予備隊は軍隊であるか警察であるかという問題は、やかましく論ぜられておるのでありますけれども、木村法務総裁は衆議院の予算委員会若しくは本会議におきまして、原子爆弾を持つておらないところのものは、これは如何に飛行機や戰車やいろいろなものを持つてつても、これは軍隊ではないということを答弁されておるのであります。併しながら、このような人を馬鹿にした答弁というものは、社会通念において受入れられることができないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)私はかような答弁は問題にならないと考えるのでありますが、更に大橋国務相はどういうことを言つておられるかと申すと、その目的が国内治安の維持を目的とするものであれば、たとえ原子爆彈や飛行機を以て装備されておるところのものであつても、これは軍隊ということができないということを衆議院において申されておるのであります。(「本当ですか」と呼ぶ者あり)大橋国務相の御意見では、憲法第九係の戰力というものは国内治安維持を目的とするものであるならば、どのような強力な装備をしておるものであつてもこれは軍隊ではないと言われるのであろうと考えるのでありますが、憲法第九條は、日本国民は武力の行使は永久にこれを放棄する、国際紛争解決の手段としての武力の行使は永久にこれを放棄する、「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戰力は、これを保持しない」ということを明定しておるのであります。これは、「前項の目的を達するため」というのは、つまり武力を行使しないというその目的を達するために、陸海空軍の戰力を保持しておつたのでは、いつ何時それを武力行使に使用するかもわからんから、こういう戰力は保持しないということをきめておるのでありまして、若しかような強力な戰力を持つておりましては、幾ら国内治安維持ということが目的でありましても、目的転換をして、いつ何時それを直接侵略に使用することが起るかもわからんのであります。こういう点で戰力の保持は日本の憲法第九條は禁じておるのである。(拍手)大橋国務相のように、目的さえ国内治安維持ということであるならば、どのような強力なものでもこれは戰力ではない、軍隊ではないと言われることは、如何にもこれは国民を愚にした御答弁であると考えるのでありまして、(「その通り」と呼ぶ者あり)木村法務総裁にいたしましても、或いは大橋国務相も、共に法律家でありますから、この憲法第九條の解釈に対しては相当に考えて御答弁なすつたことであろうと思うのでありますが、かような国民を愚にした御答弁では誰一人国民は納得することができないのであります。私どもはもつとこの点に関するはつきりした御答弁を求めます。かような強力な戰力を持つたところの警察隊は明らかに軍隊であつて、それは日本国憲法第九條が嚴存する限りは、これを改正しない限りは、かようなものを創設することはできないということは、誰しも考えるところであります。この点に対する木村法務総裁、大橋国務相の御答弁をいま一度我々は要求したいと思うのであります。  戰力、軍隊ということの解釈は、社会通念に従うべきものでありまするけれども、政府はかような独断的解釈を以ちまして、そうしてこの自衛力増強計画を秘密に付して、そうしてその独断的解釈の下に強引に自衛力漸増計画を再軍備の方向に推し進めつつあるのでありまして、かくして既成事実を作り上げて、そうして知らぬ間に日本の再軍備をしようとしておるのではないかと我々は考えるのであります。これは現在日本の置かれておりまするところの国際的のいろいろな環境、又国内的にいろいろな困難点があるので、恐らくそういう事情に対して政府は相当苦慮しておられることは我々も同情に堪えないのでありますが、併しかような国民を無視した非民主的独善的態度を以ていたしましては、到底この再軍備問題のような大問題を解決できないことは明らかであります。政府はこの際よろしく従来の秘密独善的の態度を一擲し、そうして国民の前に真実を吐露し、国民を信頼して、国民と共にこの重大問題を解決する誠意を披瀝すべきものと信ずるのであります。この点につきまして、私は、首相は今日どういう御見解を持つておられるかということをいま一度首相にお尋ねをいたしたいのであります。  これを以て私の質問を終ります。(拍手)    〔国務大臣吉田茂登壇拍手
  32. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。  警察予備隊を十月に至つてこれを治安隊でありますかに切換える、これは国民に衝動を與えると、こういうお話でありますが、警察予備隊は二カ年の期限を以て急速に設置したという事情は当時御承知の通りであります。故にこれを今年の十月に至つて解散いたしたところが、国民に衝動を與えるはずはないと私は思います。又漸増という文字について御質問でありますが、これはしばしば申した通り日本の今日の国力において再軍備をするというがごときことは国力の堪えないところであるということはしばしば申しておるのでありますが、併しながら国外における共産勢力の日本に対する威嚇というものは、或いはその他の国に対する威嚇は日に日に激化いたしておるということも御承知の通りでありましよう。この激化した共産勢力等による国内の治安或いは国の安全或いは独立を保障するためには、国としては十分考えなければならんのであります。国力においてこれを考えるよりほか仕方がないのでありますが、そこで安全保障條約という機構によつて国の安全独立を一応維持しよう。即ち日本の国力によつて他日みずから独立を維持するだけの力を養うまでの間は日本としては再軍備はしない。安全保障條約で以て、つまり攻撃に対する集団的防禦の方法を講ずるより仕方がない。併しながら米国側から見れば、長く日本に兵隊を駐留するということは、これは希望せざるところであり、従つて漸減することを考えております。アメリカの軍隊の兵力が漸減するに従つて日本防衛力が漸増する、この考え方は当然なことであります。漸増という文字は今のような意味合いであります。又再軍備云々については、政府は絶えず再軍備はいたさないといたしておるのであります。(「確かか」と呼ぶ者あり)たとえ警察予備隊に代る力ができても、これは再軍備の一歩ではないのであります。これはしばしば政府が断言いたしておる。然るにもかかわらず、これを再軍備なりと言い、又再軍備の一歩なりと言うことは、これこそ国民を愚にした言葉である。(笑声、拍手、「ごまかし」「おかしい議論だ」「年だからね」と呼ぶ者あり)    〔国務大臣木村篤太郎君登壇拍手
  33. 木村篤太郎

    国務大臣(木村篤太郎君) お答えいたします。  申すまでもなく憲法第九條の精神は戰争防止を目的としての規定であります。そこで九條第二項の「陸海空軍その他の戰力」、「その他の戰力」とは何ぞや。これは近代戰においての戰争を遂行し得る有効適切なる兵力、こう解釈すべきであると考える。(「東條もそう言つた」「その通り」「李承晩」と呼ぶ者あり)そこで今棚橋君が、ジエツト機や原子爆彈を持たなければ戰力と言えない、こういうことは私は言わないのであります。現在原子爆弾やジエツト機を持つておる国すらあるじやないか、こういうものに対して日本の警備隊は何のものの役に立つか、鎧袖一触、ものの役にたたないのだ、私はこう申しておるのであります。(「同じことだ」と呼ぶ者あり)そこで、日本は原子爆彈もジエツト機も何も持たない。そんなものは予備隊にねない。(「勝てなきや軍隊と言えないのか」と呼ぶ者あり)予備隊はただ單に日本の内地の治安を維持するに足るだけの装備を持つておるだけだ。この編成装備というものは、絶対に戰争を遂行し得る適切なる能力を持たない。こう断言するものであります。ただ單に日本の治安確保のためにするのだけのものに過ぎない。こういうことに過ぎないのであります(拍手)    〔国務大臣大橋武夫君登壇拍手
  34. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 警察予備隊は專ら国内の治安を確保いたすものでございまするから、これがために必要欠くべからざる装備を持つということは当然であると考えております。(「二重煙突」と呼ぶ者あり)私が衆議院におきまして、治安確保のためならば原子爆彈を持つてもよい、こういうことを申したということでございましたが、さような事実はございません。国内治安のための予備隊でございまするから、その装備はその目的に必要な程度に限るべきは当然であるし、又その程度の装備は持つことが当然である、こういうことを申した次第であります。而して現在の警察予備隊の装備はこの目的上必要な範囲を逸脱しておらないということを申したわけでございます。(「参議院じや通らんよ」と呼ぶ者あり、拍手)      ——————————    〔中田吉雄君発言許可を求む〕
  35. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 中田吉雄君。
  36. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 私はこの際、防衛隊創設等に関する緊急質問動議を提出いたします。
  37. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私は只今の中田君の動議に賛成いたします。
  38. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 中田君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり)
  39. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつてこれより発言を許します。中田吉雄君。    〔中田吉雄君登壇拍手
  40. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 私は日本社会党を代表いたしまして、(「どつちだ」と呼ぶ者あり)防衛隊創設等に関する諸問題につきまして、吉田総理並びに関係各大臣に御質問いたしたいと存じます。  先ず第一に、自衛力漸増に関しまして憲法を改正する意思があるかどうかということをお伺いいたしたいと存じます。日本国憲法はこの国会において制定されたものでありますが、同時に米国の指導によりましてできたことは、多言を要しないところであります。特に憲法制定当時、米国におきまして、天皇制、軍隊及び財閥を温存して行くというグルー元大使の一派と、天皇を象徴といたし、戰争を放棄し、軍備否認の立場をとりました当時国務次官補であつたアチソン、現在の国務長官であるアチソン一派との激しい対立がありましたが、アチソン一派が勝ちを占めまして現行平和憲法が成立いたしましたことは、いろいろな問題を考えます際に極めて意味の深いことであります。(「新聞情報だ」と呼ぶ者あり)然るに━━━━━━━━━━━━━━の指導者より現行憲法を否定しますような再軍備が公然と要請されていますことは、平和の党としての我が党が了解に苦しむところでございます。今にして思いますならば、新憲法によつて武器を捨てさせられましたことは、結局米国によるところの対日占領を容易にするものであつたのでありましよう。これ又世界情勢の変化によるといたしますならば、憲法制定以来僅か数年を出でずいたしましてこのようなことになるといたしますなら、━━━━の世界政策を我々は問わなくてはなりません。(「その通り」と呼ぶ者あり)かかる━━━なる便宜主義を以つていたしましては、到底共産主義と対決することはできません。(「そうだ」と呼ぶ者あり)それはともかくといたしまして、総理は対米交渉におきまして、アメリカ責任者は、日本憲法をどう取扱つておられるか、この憲法は飽くまで存続すべきものとしているか、或いは再軍備のための憲法改正は全く自信がないので、再軍備を自衛力漸増にすり替えまして、あたかもヒトラーがヴエルサイユ條約を無視いたしまして、ヒトラー親衛隊を作り、(「その通り」と呼ぶ者あり)一九三五年、軍備の制限とラインランド非武装を中心とするところのヴエルサイユ條約を破棄した方式に倣おうとするのでありますか、総理アメリカ責任者と会談されたはずでありますが、その真相をお知らせ願いたい。更に吉田内閣といたしましては、将来に亘つて憲法を改正される意思は絶対ないか。本議場を通じまして国民に明確にいたされたいと思う次第であります。(拍手)  第二番目に、日米安保條約と太平洋防衛協定との関係をお伺いいたしたいと存じます。太平洋には今三つの安全保障條約があります。その一つは日米安保條約であり、その二つは米比安保條約であり、その三は米国、オーストラリア、ニユージーランドのそれであります。トルーマン大統領はサンフランシスコ会議におきまして、更に自由党の責任者たる増田幹事長は去る三十一日の公式の記者団会見におきまして、太平洋防衛協定に言及されていますが、これらの三つの相互安全保障條約はどういう関係にあるものであるか。それらは、やがて太平洋防衛協定に集約されまして、日本もそれに加入するような秘密協定はないのであるか。我我の見るところによりますると、濠洲やニユージーランドを侵略するような国があるとは予想されません。それにもかかわらず、それらを含めましたところの防衛協定を結ぶことは、国連憲章の地域的な集団保障の美名の下に、日本を━━━━━━━━━の最も危險な配置につかせるための一つの犠牲であると断ぜざるを得ないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)イギリスのノーベル賞をもらいました、原子物理学者であるブラツケツトは、「米ソの間に挟まれたところの日本のような原子爆彈の戰略基地は、将棋盤に例えて言うと、あたかもアメリカの王将を守るための歩のようなものである。賢明なる国民は、アメリカの安全保障のために将棋の駒になることは、よもやいたさないであろう。」こう言つていますが、まさにその通りであります。(「反共の名においてね」と呼ぶ者あり)、我が党はかかる協定に断固反対するものでありますが、太平洋防衛協定に対する吉田総理の御所見を承わりたいと存じます。  第三番目に、政府は再軍備或いは自衛力の漸増の是非を国民に問いますために、国民投票をおやりになる意思はないか。この点をお伺いいたしたいと存じます。先般総理防衛隊に関しまする言明以来、国会の内外におきまして閣僚各位がなされているところの言説は誠に驚くべきものがあります。原子兵器などを具備しない現状では軍隊でないとか、或いは甚だしきに至つては、ジエツト戰闘機や原子兵器を持たない、持つたとしても国内治安の確保のためであるなら軍隊でない、こういうような、米ソ以外には軍隊がないというような国際通念の上から絶対通用いたさないところの戰力の規定をなされていますが、これは世界を欺き国民を愚弄するもこれより甚だしいものはないと言わなくてはなりません。(拍手、「その通り」と呼ぶ者あり)併しながら、明年度予算八千五百億のうち二一%にも及ぶところの予算を組みながら、これを予備隊と言いましようが、或いは保安隊と言いましようが、明らかに軍隊であります。明らかに再軍備の準備であります。これを再軍備と言わずいたしまして、予備隊、防衛隊、或いは保安隊と言うことは、日華における戰争を戰争と言わずして日華事変と言い、ガダルカナルの敗北を転進と言い、敗戰を終戰と言い、占領軍を進駐軍と言い、経済の下請的な隷属をコーポレーシヨン、下請はコーポレーシヨンやアライアンスでもなく、実にアメリカ経済へのインテグレーシヨンでありますが、これを日米経済協力という名によつて国民をごまかしていますが、誠に巧妙極まるところの智能犯と言わなくてはなりません。(「そうだ」と呼ぶ者あり、拍手)併し国民の誰もこれを再軍備でないと思う者はありません。私は吉田総理が再軍備はこれをいたさないと申されました点については深く敬意を表していた次第であります。併しそれは今や(「裏切られた」と呼ぶ者あり)対米交渉を有利にするための一つのゼスチユアに過ぎなかつたことがはつきりしたわけであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)そして今やそれは憲法違反を合法化し国民を欺瞞する言葉に変りましたことは、吉田総理の晩節を全うされるために誠に遺憾に思う次第であります。政府はよろしく国会を解散いたしまして、自衛力漸増の是非を国民に問うべきものと存じますが、御所見をお尋ねいたしたいと存じます。又廣川大臣の言明に鑑みまして、解散権の所在について、木村法務総裁の、政府の統一いたしました見解を拜聽いたしたいと存じます。  第四番目に、警察予備隊の精神的な支柱と天皇制との関係をお伺いいたしたいと存じます。名称はどうありましようとも、目下進行中の地上軍は全く傭兵再軍備でありまして、その精神的な支柱を求めることは極めて困難であります。そこで国民の天皇に対しまする忠誠心を利用いたします。こういう見解があるわけであります。併し現天皇の命令によりまして戰争に動員され、国民は多くの被害を受けていますので、今の天皇ではどうにもならない。そこで天皇は、條約の発効と共に讓位をお願いし、皇太子を擁立するという立場であります。我が党は、天皇の地位は、現憲法の規定を妥当とするものでありまして、それ以上に出ずべきではないと考えております。この神格化に反対するものでありますが、特にアメリカにおきましてはかかる見解が非常に多く、例えばレイモンド・モレー氏のごときはその代表的な人物であります。政府は讓位などということは考えておられませんか。若しそういうことがありとするなら、現行憲法では天皇の崩御を條件としているわけでありますが、皇室典範を改正するような必要も生れるわけでありますが、政府はそういう計画は絶対持つていないかどうかということをお伺いしたいと存じます。  第五に、予備隊の義務制並びに海外派遣について大橋国務大臣にお伺いしたい。大橋国務大臣は一日の自由党総務会におきまして、予備隊令の欠点を改正いたします立場から、入隊者は任期中は任意にやめさせず、更に退職後も不時の際には召集の義務を負うように改める構想を発表していられますが、新憲法第十八條並びに第二十二條との関係をどうお考えであるか。旧憲法である大日本帝国憲法は、その第二十條に「日本臣民ハ法律ノ定ムル所ニ従ヒ兵役ノ義務ヲ有ス」とし、更に戰時にありましては国家総動員法に基いて国民徴用の制を認めていましたが、新憲法におきましては、かかる規定は(「ないぞ」と呼ぶ者あり)全然ございません。第二十二條には職業選択の自由を定め、更に第十八條には、「何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。」とある。任期中にやめようがやめまいが、或いは応召を拒絶しようがしまいが、全く憲法に保障されたところの基本的人権であります。(拍手政府は、憲法第九條の軍備或いは戰力に関しましては、解釈を二、三にいたすことができるかも知れません。併し第十八條並びに第二十二條が嚴存いたします限り、保安隊に関する大橋構想は崩壞せざるを得ません。(「フアツシヨだ」と呼ぶ者あり)我々はこの憲法を残してくれました先輩各位に対しまして満腔の感謝を表すると共に、青春と母性を戰争から守る党の立場はつきり表明いたしまして、保安隊の義務制と憲法との関係をお伺いいたしたい。かかる構想の発表は明らかに憲法違反であります。法務総裁はかかる憲法違反の閣僚を直ちに予防拘禁をする意思はないかどうかお伺いしたい。(拍手、「でなければ法務総裁と言えんぞ」と呼ぶ者あり)  更に保安隊の海外派遣の問題についてお伺いしたい。講和條約第五條の(a)項の第三には、国際連合が憲章に従つてとる如何なる行動についても国際連合にあらゆる援助を與えるという義務を規定しています。我が党の言ういわゆる無制限協力の義務を負つておるわけであります。若しこの條約が発効いたしまして、未だ朝鮮戰争が終つていない際には、警察予備隊或いは保安隊の朝鮮派兵はこの規定からして拒み得ないと思うが、大橋国務大臣の御所見をお伺いいたしたい。又拒絶し得るといたしまするならば、それは如何なる法的根拠によるものであるか、お示し願いたいと思うわけであります。  更にこの援助義務からいたしまして、原爆基地の貸與も拒み得ないと思うが、政府のこれに対しまするお考えはどうでありましようか。米国極東司令部はこの四日、東京地区の米軍属とその全家族に対しまして、原爆と細菌戰に対する防衛手段の講習会に出席するように嚴命を発したと報告いたしておりますが、政府はこれについて通牒を受けているのでありましようか。かかるものものしいところの講習から見ますならば、あらゆるその否定にもかかわりませず、或いはすでに我が国に原爆が持ち込まれているかも知れません。若しかかる事態が政府意思に反しましてあるといたしますならば、政府国際法の事情変更の原則に則つて講和條約の第五條、六條並びに安保條約の廃棄を以て、原爆基地の拒否を貫く用意があるか。(拍手)岡崎国務大臣のこれに対するはつきりした御所見をお伺いしたいと存じます。  最後に、私の記憶にして誤まりありませんでしたならば、孔子は、政治の要諦につきまして尋ねた門弟に対して、重大なる事態に対して何を最初に放棄すべきか、こういう質問に対して、先ず最初に武備を捨てるべきだということを言つています。更にその次には何を捨てたらいいかという際に、食を捨てなさいと言つております。併し如何なる場合にも政治に対する国民の信頼を捨てては絶対にならないと孔子は教えているわけであります。然るに孔子の教えとは全く逆に、吉田総理国民の信頼を、再軍備いたさないという言明を裏切つて、最初に八千万同胞の信頼を失つたわけであります。更に八百万の遺家族に対しましては、燈明料として、戰争犠牲者の食を先ず捨てているわけであります、そして武備をとつていられるが、この点は極めて重大であります。イソツプのたとえにもありますように、弱い国民を川端まで連れて行くことはできるでありましよう。併し水を飲ませることは絶対できません。武器を持たせましても実戰には役に立たないでありましよう。我が国は無條件降伏ではありますが、ポツダム宣言に基いています。ポツダム宣言には、日本が民主化いたしましたならば、連合国は直ちに撤退すると規定しているわけであります。(「議長、時間だ」と呼ぶ者あり)
  41. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 中田君、時間が来ています。
  42. 中田吉雄

    ○中田吉雄君(続) もうすぐです。従つて、我が国だけでなしに、アメリカも明らかにポツダム宣言責任を負うところの双務協定であります。(「その通り」と呼ぶ者あり)かかる点からいたしまして、我々は、我が国が完全に独立いたしましてから、国民の自由なる意思に基きまして、国民があらゆる世界情勢を見極めて、そして我が国の安全保障を如何なる方法によるべきかということを決定するのが妥当であるという態度を表明いたしまして、政府の明確なる御答弁をお願いする次第であります。(拍手)    〔国務大臣吉田茂登壇拍手
  43. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 日本の我が新憲法なるものは、この国会が自由なる意思によつて自由に制定いたしたものであります。そのここに至る由来とか、渕源とか、学説とかいうことは問うところでないのであります。従つて又この新憲法に対して米国政府は、これは尊重はいたしても、これに対して何ら干渉がましいことはするはずはないのであります。かくのごとき行動は曽つてないのであります。  又太平洋防衛條約と安全保障條約との関係如何というお尋ねでありますが、全然関係がないのであります。(「大嘘だ」と呼ぶ者あり)又太平洋防衛條約が今後どうなるか。これは今後のことでありまして、今日まで政府は何らこの問題について交渉を受けたことなく、又秘密協定等は全然ないのであります。  憲法改正について国民投票に問う意思がないかというお尋ねでありますが、再軍備はいたさないと申す以上は憲法を改正する必要はない。従つて国民投票に問う考えはない。解散もしない。  天皇の御地位等については憲法の明らかに規定いたしているところであります。これに対して何ら我々は疑いを持つておらないのであります。従つて皇室典範の改正等は毛頭考えていない。(「解散」と呼ぶ者あり、拍手、笑声)    〔国務大臣木村篤太郎君登壇拍手
  44. 木村篤太郎

    国務大臣(木村篤太郎君) お答えします。  解散権の所在につきましては、憲法は御承知の通り天皇の国事に関する行為の一つとして、天皇はこれを内閣の助言と承認によつて行うものと規定されておるのであります。即ち内閣で解散をするや否やを決定するのであります。ただ天皇の名においてこれを行うに過ぎないのであります。而してこの解散権の理由でありまするが、これは両説のあることは諸君御承知の通りであります。この両説いずれも根拠があるのであります。併し政府としては未だ統一的の見解をきめていません。    〔国務大臣大橋武夫君登壇
  45. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 予備隊の精神的支柱について御質問でございまするが、予備隊といたしましては、広い基盤に立ちました国家及び民族に対する高い愛情を育て上げて、これを精神的支柱とすべきものであると、かように考えております。  次に予備隊の隊員の退職制限等につきましては、現在具体的構想はまとまつたわけではなく、研究中に属する事柄でありまするが、それについて憲法第二十二條との関係はどうであるかと、こういう御質問でございまするが、憲法第二十二條に違反しないように実施いたしたいと考究をいたしております。(拍手)  第三番目に、国連に対する協力義務として予備隊を海外に派遣するようなことがないかという御質問でございまするが、国連に対しまする我が国の協力義務といたしましては、もとより国内法上許された範囲に限らるる趣旨でございまするから、かような問題が問題となる余地はないと心得ております。(拍手)    〔国務大臣岡崎勝男登壇
  46. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 原爆基地云云のお話でありますが、そういうことは全然聞いておりません。又ラスク特使は、特に新聞に対して、そういう話を日本側としたことはないということを言明しておられます。この占領軍が、原爆、細菌戰争等の防衛の講習をしておるというお話でありまするが、占領軍がその軍隊の必要上如何なる講習をしようとも、これは全く自由でありまして、我々の干渉するところではありません。(拍手)      ——————————    〔岩間正男君発言許可を求む〕
  47. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 岩間正男君。
  48. 岩間正男

    ○岩間正男君 私はこの際、再軍備に対する首相言明変更に関する緊急質問動議を提出いたします。
  49. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私は只今の岩間正男君の動議に賛成いたします。
  50. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 岩間君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  51. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつてこれより発言を許します。岩間正男君。    〔岩間正男君登壇
  52. 岩間正男

    ○岩間正男君 私は日本共産党を代表して、過般行われた吉田総理防衛隊建設問題について質問するものであります。  吉田総理はこれまで我が党を初めとする全国民の追及に対しまして、あたかも馬鹿の一つ覚えのごとく、「再軍備はしない」、「予備隊は軍隊でない」と繰返して来たのであります。(「その通。」と呼ぶ者あり)現に一月二十九日の参議院本会議では、私の質問に対しまして「予備隊軍隊というがごときは馬鹿の一つ覚えである」と答えておるのであります。私は、日本の今置かれておる立場を憂い、国民を代表して、幾つかの根拠を挙げてこれを総理に質したのでありまするから、総理が若しそれを否定するなら、それだけの理由を挙げて、これを反駁すべきであるにかかわらず、何らの理由もなしにこれを揶揄するがごときは、極めて不謹慎な態度と言わなければなりません(「その通り」と呼ぶ者あり)私といえども、政治的応酬とかユーモアを解さぬものではないのでありますが、問題が問題だけに、国民がこれは承知しないのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)総理は又、愛する日本の学童たちから給食を取上げたり、数十億の遺家族援護費を予算面から削つておりながら、僅か二千億に足らざる国防費を以て再軍備と言うがごときは何を以て再軍備とするか、愚の骨頂であると断言しておるのであります。更に木村法務総裁のごときは、原爆とジエツト機を持たなければ軍隊でないと放言しておるのであります。これが吉田内閣の法務総裁であるかどうか果してこんな馬鹿げた三百代言が世界に通用するであろうかどうか。(「しないしない」)と呼ぶ者あり)我々は日本と国会の権威のためにも絶対にこのような詭弁を許してはならないと思うのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)予備隊が軍隊であるかないか、或いは防衛隊だとか、いや保安隊だなどという名称の論議に国会が日を送つておる間に、裏口では一体何が行われておるか。吉田政府とその主人公は一片の政令を口実としまして着々軍備を作り上げ、更に厖大な再軍備拡張に乘出しておるのであります。これは何よりも今次の予算が雄弁にこれを物語つておるのであります。吉田総理が、経済が許さないから今は再軍備はしないという口の乾かないうちに、軍事費はすでに二倍以上の増強であり、而もこれは氷山の一角に過ぎないのであります。こうして今や如何なる強弁も間に合わないのである。ここに端なくも防衛隊の設置について総理が口を滑らしたことから、我々は日本民族とアジア並びに世界の平和にとつて実に由々しいものを感知するのであります。  それならば、今回の総理発言意味するものは何か。それには二つほどあると思うのであります。その一つは、アメリカを中心とする最近の世界軍備の拡張の日本への圧力であり、その二は、この要請に応えんとする国内輿論を再軍備のほうに挑発しておることであります。先ず第一の問題につきましては、言うまでもなく、一カ年半に亘る朝鮮戰争に失敗したアメリカは、この失敗を補わんがために目下急速にアジアの軍事態勢を強化する必要に追られておるのであります。このために、一方においては、フィリピン、オーストラリア、ニユージーランド等と軍事協定を結び、更に他方においては、台湾日本韓国の連合軍を作り、これらのすべてを挙げて太平洋軍事同盟に結合することがその急務となつておるのであります。このことについては、目下ラスク特使と日本政府の間に推し進められている会談こそは最も注目すべきものであります。即ちラスク特使の今次訪日の目的は行政協定の締結ということになつているのであります。併しこれは表面のことで、隠されたもうつの狙いは、日本を太平洋軍事同盟の一翼に編入することであると言われておるのであります。あたかもこれを裏書きするかのように、二月四日の産業経済新聞は、ロンドンのデーリー・メールの東京特派員バーナード・カプランの報道を伝えております。即ち同報道によりますれば、「この会談では重要な取決めが結ばれるだろうが、その一部は公表されまい。会談当事者、特に米国側では、会談について批評を加える場合、会談は純粋に技術的なものだといつているが、これは、真赤な嘘で、ラスク氏が現在トルーマン大統領の特使であること、この肩書は普通の技術的協定の代表には與えられないものであるという事実が、この日米交渉の重要性を何よりもよく証明している」と述べているのであります。ここで特に我々が注目しなければならないのは、曾つて講和條約が秘密裡に日本アメリカ政府との間に成立したときに、ダレス氏来朝の肩書が特に大統領特使であつたということを思い起す必要があるのであります。政府はこのような秘密協定国民や国会に諮ることなく目下推し進めている事実があるかどうか。吉田総理はつきりとした答弁が承わりたいのであります。二度ならず、三度ならず、こうした圧迫に屈して、故もなく日本国民を犠牲の手段に供することは決して許さるべきことではない。  次に第二の問題、つまり再軍備の国内世論挑発については、吉田総理発言をきつかけとして、再軍備推進運動なるものが政界の一部に巻き起されつつある現状が何よりも雄弁にこのことを物語つているのであります。いわゆる再軍備のためには日本憲法を改正すべしという論議であります。只今も聞いた論議である。予備隊が軍隊であるかないかというあいまいな論議で政界がその日暮しをしている間に、事態は一足飛びにここまで導かれた感があるのであります。吉田総理とその主人公にすればまさに思う壷のことでありましよう。元来再軍備についてこれまでの煮え切らない政府態度も、その真の狙いとするところは、かかる世論の挑発によつて日本国民を欺き、日本の再軍備をやすやすとやり遂げることにあつたのであり、これらの「てあい」は、いわば同じ一つ穴の「むじな」であるということが言えるのであります。併しこのような陰謀が果して許されようか。胸に手を当ててよく考えてみるがいい。今や日本では、平和憲法を飽くまで守り拔かんとする者が絶えず彈圧され、反対に憲法を蹂躙して憚らぬ者が法的に保護されようとしているのであります。吉田総理はこの事実を何と見るか。いやしくも新憲法下の国務大臣として、憲法九十九條の憲法遵守の規定とも関連して、かかる再軍備促進運動に対して、如何なる見解を有し、又今後如何なる措置を行わんとするのであるか伺いたい。はつきりとした態度を伺うものであります。又木村法務総裁のこれに対する意見をも併せてお聞きしたいところであります。明らかにこれは平和憲法への反逆である。今更言うまでもなく、我々があの敗戰から起ち上り、戰争放棄の悲願を世界のすみずみまで宣言したについては、多くの数限りない民族的生命の犠牲を拂つて来たのであります。最近硫黄島の白骨は声なき声を我々の骨髄に響かしている。硫黄島のみか、南洋の島々、磯の崎々、バシー海峡、沖縄その他あらゆる太平洋の海域から、これらの声が未だに聞えて来るのであります。広島、長崎の惨禍については、もはや私はここで多く繰返す必要はない。我々の愛する同胞が、その夫が、息子が、弟が、兄が、これら肉身の悲憤にも似た悔恨の情を持たない日本人が果して今日一人でもあるであろうか。これらのかずかずの犠牲によつてかちとつた平和への願いをやすやすとここで放棄し、悲痛のまだ乾かない遺家族に向つて、再びその子弟を、遺兒を兵隊に送れとは、一体何の権利があつて誰がこれを言い切れるかどうか。これを伺いたいものであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)若し再軍備を強いる者があるなら、その再軍備論者こそは真先に身を軍隊に投じてみるのがいいと思うのであります。而もこのたびの再軍備こそは、日本民族の意思によることなく、外国の傭兵として、その手先として、民族を帝国主義者の祭壇に供せんとする陰謀であることにおいて、政府は二重の罪惡を国民の前に犯しているのであります。  次に私の質したいことは防衛隊の海外派遣の問題である。政府はしばしば防衛隊は海外に出さないと言明していますが、一九四八年すでにニユーズ・ウイークの評論家レイモンド・モーレーは、「日本には役に立つ兵士が二三百万いる。又何方という訓練された将校がおり、これを養い維持するのは安上りだ」と言つており、又元韓国軍事顧問団長ロバート中将は、「私は最後の土壇場になつて初めて白人をアジアに送るべきだと思う、我々は白人の軍隊の代りに現住民を利用できるだろう。この軍隊は一月五ドルと一杯の米をやればよい」と言つておるのであります。この安上りの兵隊についてはその他多くのアメリカの要人がしばしばこれを口にしておるのであります。  以上によつても明らかなように、又このたびの朝鮮戰争の実態が何よりもこれを示しているように、━━━━の戰争屋どもは、明らかにアジア━━のために、アジアの青年、殊にも我々の愛して止まない日本の青少年の血を使おうとしておるのであります。こうした白羽の矢が立つている矢先、防衛隊は海外に派遣しないなどという政府の言明が一体何の役に立つであろうか。而もこれは平和條約第五條、安保條約並びに吉田・アチソン交換文書によつて公式に義務付けられていること、又最近の台湾における━━━━が腐敗してその大部分が使いものにならない現実とを併せ考えてみるとき、日本兵をこれら太平洋軍事同盟の中核として朝鮮又東南アジアに出兵させないという保障は全く期待されないのであります。それはあたかも再軍備はしないしないと繰返しながら蔭でそれを強行しておると全く同じであります。若しそうでないとするならば、政府は今現実に進行しつつあるところの行政協定の全文について余すところなく国民の前にこれを公表すべきであると思うが、これに対する吉田総理の見解は如何でありましようか。(拍手)伝えられるところでは、日本軍は、陸軍三十万、海軍五万、空軍十万と言われ、その建設費は一兆以上に上ると言われております。この軍隊に警察関係を加えれば、十八歳から二十四歳までの日本の青少年を外国侵略者のお傭い兵として、国連軍の協力の名の下に、今まで最前線で戰つている黒人兵の更にもつと前線で血を流さなければならない事態が起ることは明らかだと言わなければなりません。現在朝鮮に徴用されている日本人海員についてこれを見るとき、その病気治療の順位が人種別に第六番目であるという事実が何よりもこのことを示しているではないか。これが吉田内閣によつて目下作られつつある日本軍の将来の運命であります。  最後に伺いたいことは、予備隊であれ、防衛隊であれ、このような再軍備の陰謀が目下アジア並びに世界各国に與えつつある影響についてであります。日本の再軍備については、ソ連、中国はもとより、日本帝国主義侵略の脅威より未だ覚め切らないインド、ビルマ、ヴエトナム、インドネシアフイリピン、更にオーストラリア、ニユージーランドの太平洋海域の諸国は、極力これに反対しているのであります。こうした海外の情勢について吉田総理日本国民の前にその真相を明らかにすべきであると思うのでありますが、どうでしようか。このようにして、国際信義を失い、日本を再び起つ能わざる泥沼に落し込み、民族を全き破滅の淵に導くような暴挙が許されるであろうか。すでに吉田文書によつて、当然に中国領土である台湾中国から切り離し、敗残將政権と結んでアジア━━野望の片棒をかつごうとしている吉田政府に対して、世界の審判の鐘は鳴り渡つているのであります。アメリカ本国においてさえ、吉田書簡は日米関係を惡くするものだとワシントン・ポストは評しており、又これは吉田自身の政治的腹切りの最後的ゼスチユアであると、ニユーズ・ウイークは批評しているほどであります。而もこのことは日本国民が何ら関知するところでなく、吉田総理とその一味が、あらゆる国民の反対を押し切つて、平和への止むなき希望を踏みにじり、歴史への反逆と独裁的専断秘密外交によつて企らまれているのであります。  我々日本共産党は、民族の前衛として、かかる再軍備の暴挙に断固反対し、あらゆる世界並びに日本の平和を愛好する全国民と共に、これらの野望粉砕のために囲い抜くことを誓つて吉田総理答弁を求めるものであります。(「明快なる答弁を求める」と呼ぶ者あり、拍手)    〔国務大臣吉田茂登壇拍手
  53. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私は、再軍備はいたさない、この言明を変更する何らの理由を見ません。(拍手、「変更してるじやないか」と呼ぶ者あり)    〔国務大臣木村篤太郎君登壇拍手
  54. 木村篤太郎

    国務大臣(木村篤太郎君) 再軍備のための改正論を論議したことは憲法違反になるかどうか、そういうことは普通の頭では考えられない。(「もつと嚴格な態度で」「運動は」と呼ぶ者あり)運動は同じくそうであります。九十九條をはつきり解釈をすれば明瞭であります。
  55. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 次会の議事日程は決定次第……(「議長あんな質問でいいのか」「質問か」「議長はロボットか」と呼ぶ者あり)再質問の時間はありませんから再質問は許されません。次会の議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時四十一分散会      —————————— ○本日の会議に付した事件  一、日程第一 両院法規委員辞任の件  一、両院法規委員補欠選挙  一、東亜における賠償問題と国交調整に関する緊急質問  一、首相の防衛隊創設声明に関する緊急質問  一、防衛隊創設等に関する緊急質問  一、再軍備に対する首相の言明変更に関する緊急質問