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1952-04-02 第13回国会 参議院 法務委員会戦争犯罪人に対する法的処置に関する小委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年四月二日(水曜日)    午後一時四十三分開会   —————————————   委員の異動 四月一日法務委員長において加藤武徳 君を委員に指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     岡部  常君    委員            加藤 武徳君            長谷山行毅君            宮城タマヨ君            伊藤  修君            羽仁 五郎君   委員外議員            須藤 五郎君   政府委員    刑 政 長 官 清原 邦一君    法務矯正保護    局長      古橋浦四郎君    中央更生保護委    員会事務局長  齋藤 三郎君    中央更生保護委    員会事務局少年    部長      池田 浩三君   事務局側    常任委員会專門    員       長谷川 宏君    常任委員会專門    員       西村 高兄君   —————————————   本日の会議に付した事件軍事裁判被告の釈放に関する請願  (第五三八号) ○平和條約第十一條による刑の執行及  び赦免等に関する法律案(内閣送  付)   —————————————
  2. 岡部常

    委員長岡部常君) これより小委員会を開きます。  昨日、請願陳情の審査をいたしました継続として、請願五百三十八号について紹介議員の御説明を求めます。
  3. 須藤五郎

    委員外議員須藤五郎君) 昨日、この請願五百三十八号に関しまして、私がここに出まして説明をいたしたわけなんでありますが、この請願が出されたのがすでにもう二カ月以前でありまして、この事件の審議の上に非常に変化がありまして、この事件はもう数日中に結審になるような状態になつておりますので、以前出しました請願内容と非常に変つて参りましたので、私はこの請願者の本人に会いまして、意見を聞きましたところが、改めてこの請願趣旨とするところをこの委員会において述べて、重ねてお願いして欲しいという意見でありましたので、本日改めて皆様の前にこのお願いをいたしたいと思います。この請願者飯田ひで意見を私が代つてここで述べさして頂きたいと思います。  この請願の真意は、講和ができまして、占領終つたならば、政令第三百二十五号違反事件等によつて刑執行を受けておるもの、又は取調べ中のものに対しまして同情ある特段措置をおとり下さるようにお願いいたします。これが請願者の本心でありますので、こういうふうにこの機会に訂正さして頂きまして、どうぞ皆さんこの請願を採択して頂きますように、御配慮を重ねてお願いいたしたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
  4. 岡部常

    委員長岡部常君) これに対して政府の御意見ございましたら……。
  5. 清原邦一

    政府委員清原邦一君) 平和條発効後におきまして、現在連合国軍事法廷において審判中のものに対する措置につきましては、平和條約十一條の、いわゆる戰争犯罪人に該当いたしておりませんから、別途にその措置を講ずる必要があろうかと存じます。この点につきましては、或いは連合国側においてその身柄が釈放せられるのかどうか、私まだ十分承知しておらないのでありますが、仮に釈放せられた場合に、多くのものはそのまま国内的には不問に付せられるのではないかと考えます。ただ少数例外のものにつきまして、改めて国内法的にこれを訴追する必要があるかどうか、そういう点については目下考慮中でございます。現在の段階におきましては、その程度しか進行いたしておりません。
  6. 岡部常

    委員長岡部常君) 只今政府の御説明もございましたが、のちのちのことについても御説明がございましたし、大体の趣旨紹介のおかたにもよくおわかりのことと存じます。御説明趣旨といたしましては、本委員会はこれを採択して内閣に送付することを適当だと思いますが、皆さんに御異議がございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 岡部常

    委員長岡部常君) それではさよう取計らうことにいたします。
  8. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 この際関連しまして一言だけ、これは政府に向つて要望いたしたいと思うのでありますが、すでに本委員会におきましても、講和條約第十一條発効に伴う戰争犯罪人に関しまする件と併せまして、政令第三百二十五号など占領政策違反等占領期間中に起りました事件についても、或いは請願を受け、陳情を受け、又当時各委員からも御発言がございましたが、先日岡部委員からも御発言がございましたように、第一には空前の喜びである講和喜びはできるだけ広く分つべきである。第二には、人を咎めることよりも人を許すことによつて、一層その法の期待しておる目的を果すことができる。第三には、なかんずく共産主義運動関係して起つております事件については、国会として共産主義者人々が同じく最大限に合法的手段を盡されるということを期待するという意味からも、この際稀なる機会でありますから、しばしばこういう機会があることではございませんから、こういう機会に、この法によつて国の将来の幸福と平和とを守つて行くという意識を高められることを期待するという意味におきましても、この際独立、そうして平和という喜びをこれらの人々に対しても吝しみなく分たれるということが妥当ではないかというような、以上の御意見が多々各委員から御発言があり、私も誠にこれに同感に堪えないものであります。政府におかれてはさまざまの御苦心の点が多いことと思いますが、以上の趣旨は、これは誰が考えても全くその通りであり、而も容易に、又二度とあり得べきことではない唯一機会である。この唯一機会にそうした意味において、最も高いスタンダード、標準を持つた処置をおとり下さるという趣旨で、この講和成立独立という喜びをできるだけ広く、そしてできるだけ深く及ぼされたいということ、そしてそういうための具体的な御努力をして下さるように要望しておきたいと思うのであります。
  9. 須藤五郎

    委員外議員須藤五郎君) 有難うございました。   —————————————
  10. 岡部常

    委員長岡部常君) 次に平和條約第十一條による刑の執行及び赦免等に関する法律案を議題といたします。質疑をお願いいたしますが、第一に伊藤委員より御通告がありましたから、伊藤委員より御発言を願います。
  11. 伊藤修

    伊藤修君 先ず第一にお伺いいたしたいのは、本法の第二條の二号において「刑前條に定める極東国際軍事裁判所及びその他の連合国戰争犯罪法廷の科した刑をいう。」と、こういう説明になつておりますが、これだけではいわゆる本法に言う刑と、国内法に言う刑というものとの区別が明確ではないのではないかと思われます。いわゆる本法に言うところの刑というものは、通常我々が国内生活において使用しておるところの刑の概念とはおよそかけ離れたものであるということは、容易に了承されることでございますが、そういうことをもつと明確に打ち出すべきではないかと思うのですが、この点に対して政府の御見解を伺いたいと思います。
  12. 古橋浦四郎

    政府委員(古橋浦四郎君) 御質問趣旨は誠に御尤もだと拜聽いたしたのでございます。ただその心持は全く同じでございまするが、表現方法におきまして、他に適当なる方法がない。結局平和條約第十一條規定から考えまして、一応これを刑と見るほかはない、そういう言葉を使うほかないと考えましたので、その言葉使つたのでございます。内容におきましては、只今指摘のございましたように、全く国内で使われておりまする刑法の定めまする刑罰とは全然違つたものという心持を以てこの用語を規定したつもりでございます。
  13. 伊藤修

    伊藤修君 私はどこかにそれを定義として明らかにすべきが、又は冒頭において刑の執行赦免及び軽減並びに仮出所等はすべて本法によるというな原則でも定めておくほうが、その点に対する解釈を明らかにするものではないかと思うのです。ただ今の御説明だけでは、後々これらの刑の執行によつて相当法律的に疑義を生ずるのじやないかと思うのです。従つてこの際それをなおはつきりさせておきたいと思うのです。いわゆるこの国際裁判によつて受けた刑というものの本質は、日本国内法における刑とはどれだけの違いがあるか、言い換えますれば、この国際裁判によつて受ける刑というものの本質を一つ明らかにして頂きたいと思うのであります。
  14. 古橋浦四郎

    政府委員(古橋浦四郎君) この法案の第一條におきまして「連合国戰争犯罪法廷が科した」という言葉はつきり出しました点において、その趣旨が明らかになつておるのだと私ども考えておるのでございます。條文の都合によりまして、この程度でその目的は達し得られると、かように考えておるのでございますが、若し必要あれば、この委員会速記録或いはその他におきまして、御趣旨の点をもう少しはつきり出しておくという方法があろうかと思うのでございまするが、第一條と第二條との関連によりまして、御趣旨の点は一応明らかになつておると思うのでございまするが、それで御了承願いたいと思うのであります。
  15. 伊藤修

    伊藤修君 私はただそういうことをお伺いするゆえんのものは、将来こうした国際裁判を受けた人が、いわゆる前科となるかどうかということにも影響して来ると思うからです。国内法的にいわゆるそういう前科を持つた人は、結局他の法令においていろいろの就職その他の制限をも受けるし、いろいろな面において制約をされることは申すまでもないのです。従つてここに言う刑というものは、国内法と違う刑だということを明確にする必要があるのじやないかと思う。言い換えますれば、ここの刑というものは何を指すのかということをお伺いしておきたいと思います。
  16. 古橋浦四郎

    政府委員(古橋浦四郎君) この法案におきまして定めまする刑は、極東国際軍事裁判所及びその他の連合国戰争犯罪法廷が科した刑でございまするから、全く国外裁判の刑でございます。従いまして一般の刑法による刑罰と違いますことは、前科等にもなりません。又公職等選挙権等の公権に関する身分上の制限になるものでもないのでございます。そういうような点は、この第一條及び第二條において表現しておるという工合解釈いたしまして立案いたしたものでございます。
  17. 伊藤修

    伊藤修君 そこまでの解釈は出て来ないと思うのです。勿論これは連合国言渡した刑を言うということは、この第一條、第二條によつて了承できますけれども、果してその刑というものがいわゆる国内法の刑と相違するかどうかということは、これだけでは出て来ないと思うのです。今の御説明によつて初めて解釈されると思うのです。今の御説明にありましたいわゆる外国における裁判という概念ではまだいけないと思うのです。いわゆる外国におけるところの裁判、いわゆるアメリカにおいての裁判、或いはフランスにおいての裁判とかいうことに、これを解釈してよろしいですか。いわゆる各国刑事裁判判決と同様に解釈していいというように解釈されて来ると思うのです、今の御説明では。それとも違うというふうに解釈すべきかどうか。その点を明らかにして頂きたい。
  18. 古橋浦四郎

    政府委員(古橋浦四郎君) 先ほど申上げました外国裁判と申上げました意味は、日本裁判と違うという意味で申上げたつもりでありまして、それが各国におきまする裁判と同様な工合な誤解を招くような言葉を申し上げたのは、私の誤まりであります。これは全然特殊な裁判でございます。
  19. 伊藤修

    伊藤修君 そういたしますと、いわゆる国内法に言うところの裁判によるところの刑罰でもなく、又外国国内におけるところの刑事判決によるところのいわゆる刑罰でもない、特殊な刑罰である、こう仰せになるのですが。どうもその刑罰外郭からの御説明だけで刑罰本質について何かはつきり述べられるような定義か、意義というものを御記憶になつていらつしやらないんですか。若し今御用意がなければ後にお考え下さつておいて、やはりはつきり打出しておいて頂いたほうが後後の人のためになると思うんです。
  20. 古橋浦四郎

    政府委員(古橋浦四郎君) これはポツダム宣言の受諾に伴いまして、戰争犯罪人の処罰に関する事項の十項として国際法廷が設立されました。又各国法廷がそれぞれこのたびの戰争に対する犯罪者を処罰したものでございまして、その内容につきましては、いろいろな種類犯罪とせられるものが中に含まれておるのでございます。従いまして、それを一概に規定することはできません。勢い形式的に極東国際軍事法廷並びに連合国戰争犯罪法廷におきまして言渡されました刑という工合に申上げるほかはないのでございます。なお更に説明の不足の点は十分研究いたしまして、足りないところがございましたら、又あとから補足さして頂くことにいたします。
  21. 伊藤修

    伊藤修君 いや、私が申上げるのは、この刑というものがいわゆるこの度の戰争若しくは第一次戰争ですかの世界戰争において初めてこういう国際法上こういう取扱いがなされ、その結果こういう種類刑罰というものが初めて人類社会に浮び上つて来たのですが、その本質というものをこの際定義付けて置く必要もあるのじやないか、こう思うからこの刑罰本質を明らかにして置きたい、こう思うのです。今の御説明外郭から、国際裁判がなしたところの裁判に対する刑罰であるからその内容はいろいろある、内容はいろいろあつたところが、それを一括してやはり刑ですから刑罰である、それはどういうものかということを私はお尋ねしたわけです。だから今お答えができなければ明日でもよろしいから定義を一つ明らかにして頂きたいと思います。  それではそこにとどまつておると進みませんから次の問題に移ります。この法律では死刑について全然規定がないのですが、死刑は大体軽減できるのかどうか、又将来外国に現在拘置されておるところの死刑囚日本に送還された場合においてどうなるのか、それに対しては政府はどういうお考えを持つていらつしやるか。
  22. 古橋浦四郎

    政府委員(古橋浦四郎君) この法案では死刑の場合を予想していないのでございまして、これは日本へ引渡されて日本執行する場合のものでありまするから、勢い死刑囚の引渡しはないということを前提といたしたものでございます。併しながら現在外国におりまする戰争犯罪者の中には死刑言渡を受けた者もおるのでございまして、この人たち日本側に引渡されて、自由刑として変更せられて引渡されるということについては当局もそれを熱望しておるのでございますが、この法案建前も、外地におきまする戰争犯罪人日本に帰りましたときに、條約第十一條の資格を備えることによりまして、日本側執行できるという建前で草案いたしておるのでございます。
  23. 伊藤修

    伊藤修君 いや建前は私もよく読んで知つております。だからこの建前ではいわゆる有期刑若しくは無期刑のもののみを処理することはこの法律でできると思いますが、死刑囚日本において引継がれた場合においてどうするかということにおいて、万一引継がれたらどうする人でしようか。又我々は死刑囚をそのまま引継がれて日本においてその人の助命考えるということが最も好ましいあり方だと思うんです。
  24. 古橋浦四郎

    政府委員(古橋浦四郎君) 私ども心持では無論死刑囚といえども日本側に引受けることを得まして、そうして刑の軽減等の勧告をいたしまして、自由刑執行に移して頂くような努力をいたしたい、かような建前でこの法案を立案しているのでございます。
  25. 伊藤修

    伊藤修君 然らばその死刑囚をそのまま引継いだ場合におけるところの軽減とかいうものに対してどうするか。若し軽減を受けなかつた場合には、その死刑囚執行するのかどうかということに対して、本法において処理する規定を設けて置かなくちやならんのじやないでしようか。又仮にそういうことを考えないと抑せになれば、それは迂濶過ぎると思う。現在世界各国に散在している日本の拘置された人々にうちには死刑囚がないというならこれは構いません。條約が発効する前に皆殺してしまうというならこれはよろしいのです。けれども恐らく私はそういう非人道的なことはやらないと思うのですよ。少くとも最近講和條約が発効して日本独立国家になる。條約十一條によつてこれらのものはできるだけ日本に引渡すという考えは持つていると思う。その場合にそのまま日本に引継がれて、いわゆる助命のチヤンスを與えるということが人道的だと思う。恐らくそういう手段に出ると思う。そういう場合にこれを受けて立つて処理するところの規定を私は設けて置かなければならないと思う。それが全然今世界中にどこにもないというならよろしいのですが、その点一つ重ねて御答弁願いたいと思います。
  26. 古橋浦四郎

    政府委員(古橋浦四郎君) この法案の一応の建前は、條約第十一條で、日本国において拘禁されているものというような條文がございましたので、それを先ず第一番の建前としてやつたのでございます。従いまして外地において死刑囚として拘禁されているものの処置につきましての規定は、御指摘通り実はここに出ていないのでございます。併しながらその法律全体の建前といたしまして、将来引継がれるもののあることを予想いたしまして、各條文におきましてもその関係国から引継がれるものを受取る場合の手続きも定めているのでございます。この條文を別な立場で、私どもとしましては現在外地におりまする死刑囚である戰争犯罪人の帰還を促進することについては努力をいたしているのでございます。さような含みでこの條文を立案しているわけでございます。
  27. 伊藤修

    伊藤修君 私の質問お答えにならないと思いますね、この條文自体を見ましても、そういう現に日本で拘禁しておるものばかりでなく、将来引継がれることを予想して、この條文が立てられておるのです。して見ますれば、引継がれるうちには死刑囚をも引継がれるべきはずなんです。若し相手方が死刑囚死刑に処して、死骸だけを引渡すというならこれはいざ知らず、仮にそういう考え方があつても、それは日本の外交によつて日本にそれは引継ぐべきことを要請して、その実現を図るべきはずなんです。そういうことを予想してこの法律をやはり立てておかなくてはならんと思うのです。従つて死刑囚をも引継がれ得るということを前提にして本法はやはり起草しておかなくちやならんはずなんです。然るに、死刑囚については何らの規定を設けなかつたということは、私はちよつと政府として余り條約十一條真正直に受けて立つており過ぎると思うのです。そういう点はもう少し考えて頂きたいと思うのです。
  28. 古橋浦四郎

    政府委員(古橋浦四郎君) 御指摘の点は、確かにこの條文の中にはつきりと明記いたしてはおらないのでございまするが、この法案の第五條におきまして、刑の執行につきましては、監獄法を準用し得ることにいたしておりまするので、死刑の者の引継ぎを受けました場合にも、これによりまして收容をいたしまして、そうして監獄手続を踏むことができる、そうして減刑のされるまでは受刑者に対する規定を準用いたしまして、処分することもできると考えるのでございます。
  29. 伊藤修

    伊藤修君 監獄法を援用されるということになつて参りますれば、その死刑囚日本に引継がれて、それに対して減刑をする、いわゆる無期にすると、或いは長期、五十年にするというようなことは、どの法文によつて賄うのですか。
  30. 古橋浦四郎

    政府委員(古橋浦四郎君) それは、赦免、刑の軽減等につきましては、第二十八條によりまして、その申請をいたしまして、その手続によりまして、各国政府に勧告いたすことになると思います。
  31. 伊藤修

    伊藤修君 有期刑についてこういう詳細な規定を設けておいて、私が質問して辛うじてそこに持つて行つて解釈上出そうというのですが、そういう行き方をせずに、なぜ堂々と、有期刑に書かれる以上は、死刑についてお書きにならなかつたのですか。お書きになるということについて司令部のほうで何とか文句を言つたのですか。はつきりそこをお答え願いたい。
  32. 古橋浦四郎

    政府委員(古橋浦四郎君) その点につきまして、司令部の意向を確かめたわけではございませんです。
  33. 伊藤修

    伊藤修君 今のお答えでは、私はまだ満足しませんが、只今の御説明で果して賄えるかどうかは、なお研究してみます。ですからこの点に対する質問はなお保留しておきます。  次に小さい問題ですが、第八條関係ですが、満刑の日が休日になつた場合にはどう取扱うのですか。
  34. 古橋浦四郎

    政府委員(古橋浦四郎君) その日の午後六時ということになります。
  35. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると、休日にも釈放するということになりますね。
  36. 古橋浦四郎

    政府委員(古橋浦四郎君) そうでございます。
  37. 伊藤修

    伊藤修君 第十一條の七項の関係ですが、刑期計算は、変更前の分は変更前の刑期により、変更後の分は変更後の刑期によるとするほうが合理的ではないですか。この点に対する政府の御見解を伺つておきたい。
  38. 古橋浦四郎

    政府委員(古橋浦四郎君) これは減刑されましたあと期間計算方法のやり方によりまして、例えば同じ十年の刑の者の刑期の繰上げ方についていろいろと違いが出て参るのでございます。即ち長い刑に処せられた者がその後短かく軽減されたという場合におきまして、若し長い刑の時代の計算方法を以ていたしますると、非常に短くなつて、他の者との権衡を失するというような事態が起きるのでございます。そこでその点の刑の権衡の問題からかような規定にいたしておるのでございます。
  39. 伊藤修

    伊藤修君 次に、第十二條関係で、善行特典の剥奪は、在所中の者を、出所についての特典を剥奪する方法で行なつておるようでありますが、むしろこれは将来一定の期間特典を與えないという行き方のほうがいいじやないでしようか。この点はどうですか。
  40. 古橋浦四郎

    政府委員(古橋浦四郎君) これは運営方法によりますれば、いずれでも差支えないような筋になるのでございます。つまりすでにもらうことになつておりまする特典を或いは全部とか、或いは一部剥奪する、又それを與えることをやめておるというようなことができまするので、その運営が適正にできますれば、その間におきまする問題はないと、かように考えておるのであります。勿論その運営につきまして、十分注意するような方法を講ずるのでございますが、さような含みでこの條文ができております。
  41. 伊藤修

    伊藤修君 私はこういう戰犯者に対して温い手を差し延べるという日本国民の感情がこの法律に盛り込まれておると思われるのですが、できる限り、能う限り在所者に対して有利に考えるべきじやないかと思うのです。従つてすでに善行があつてそれによつて特典既得権として把握されているのですから、それを剥奪するよりは、若しそういうような故障が起つた場合は将来に向つて或る一定期間與えない、過去における善行によつて生じた特典というものはやはり保持させるという行き方のほうが在所者に対して利益であり、好ましいのじやないかと、こう考えます。
  42. 古橋浦四郎

    政府委員(古橋浦四郎君) 私どももさような心持ちでこの草案を作つたのでございますが、これは只今巣鴨刑務所におきまして慣例としてすでに実施いたしておりまするものを参考として定めたものでございます。この運営につきましては、十分御趣旨を尊重したような運営をするつもりでおります。成るべく将来に向つてつてしまうというようなことは私どもとしてはやりたくない、又止むを得ず剥奪するような場合もすでにあるものだけをとつて、将来は成るべくやらんようにいたしたいと考えております。又その回復も十分できるような途も考えておるのでございます。又運営につきましては收容者立場考えまして、こういうような場合が全く起らないようなことにいたしたいと考えておるのでございます。
  43. 伊藤修

    伊藤修君 この第二項に善行特典回復事項が定められておりまして、この回復をするのに情状によるという表現で賄つておるのですが、どういうような基準を予想されておるのですか。
  44. 古橋浦四郎

    政府委員(古橋浦四郎君) その後の所内の生活におきまして、間違いなく経過しておるというようなことが、それが情状と見るのでございます。情状により回復するのでございます。
  45. 伊藤修

    伊藤修君 特に善行とか、或いは回復という條件は、ただ在所者が平穏無事に在所しておるというだけで情状ということの基準に置かれるのですか、それとも特段にその人の在所状態が、いわゆる民主主義に副うような理念にその人がなつたとか、或いは労働の、これは強制的にはかけないように承わつておるんですけれども、そういうような日常生活のあり方というものを標準にするのか、他の模範囚となり得る行状を基準にするのか、或いはそうじやなく今言つたようにただ日常生活が平穏無事に在所しておるというだけで、いわゆるそこで言う情状ということに基準を置かれるのか、その点をはつきりして頂きたい。
  46. 古橋浦四郎

    政府委員(古橋浦四郎君) この場合情状につきましては、特段善行というのでなくて、内におります生活が規則を遵守し、平静に刑罰に服しておるということを以て善行特典の基礎にし得るという工合解釈する方針でございます。
  47. 伊藤修

    伊藤修君 例えば未だに軍国主義的な日本国というものを忘れずして、その理念に燃えている人が、在所者に対してこういうような行動をとつて、そういうような思想の普及をしておる。一朝時あらば風雲に乗じて日本を再び軍国主義にリードして行こうというような思想の下に日常生活を営んでおる、行動の上においてもそういうことが現われておる。但しその人の在所成績というものは平穏無事であり、獄則をよく守つておるというような人に対してはどうなんですか。名前を指して申上げると橋本欣五郎氏のようなものはどうですか。
  48. 古橋浦四郎

    政府委員(古橋浦四郎君) 内におきまして、他の者にいろいろさような影響を與えるような行動というようなものを起し、積極的に指導のあります場合は、これは別に考えなければならんと思うのでございます。ただそういう思想を本人が捨てないで持つておるというだけではこの條文で除外することはどうかと考えるのでございます。
  49. 伊藤修

    伊藤修君 その積極的ということは勿論思想の過程においてはこれを取締るとか、これに対して云々するということはあり得ないと思います。それが形の上に現れて在所者に対してそういう行動をとつておられるというような場合においては、これは情状の中には斟酌されないことになるのですね。
  50. 古橋浦四郎

    政府委員(古橋浦四郎君) そういう場合は規則違反になると解釈いたします。
  51. 伊藤修

    伊藤修君 次に第十三條に疑義を質すということについて規定されておりますが、これは疑義があるときはどういう手続になるのでしようか。
  52. 古橋浦四郎

    政府委員(古橋浦四郎君) これはまだ成案を得ておりませんが、目下準備中でございます。手続は書面を以て所長を経由して法務総裁に出すという手続になるのでございまして、監獄法に情願という方法がございますが、この戦争裁判につきましては更にいろいろ事情がございますので、特にこの條文を置いたわけでございます。
  53. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると、それは何か細則なんかでお定めになるつもりですか。
  54. 古橋浦四郎

    政府委員(古橋浦四郎君) 施行細則において定めることになつております。
  55. 伊藤修

    伊藤修君 施行細則は法務府令ですか、更生委員会のほうの細則に讓るのですか。
  56. 古橋浦四郎

    政府委員(古橋浦四郎君) 法務府令で定めることになつております。
  57. 伊藤修

    伊藤修君 次に第十九條の四項ですが、「平和條約第十一條に定める勧告の手続をとることを相当とするか否かについて決定しなければならない。」とあるが、私はこの基準がなければならんと思うのですが。この点に対してどうですか。
  58. 齋藤三郎

    政府委員(齋藤三郎君) 仮出所につきまして、一定の基準を設けてやるということはできますれば望ましいことでございますが、いろいろの要件がございますので、一定の基準を作るということは困難であつたのでございます。結局本人の所内の成績、或いは家庭や保護の関係や、或いは関係国の状況といいますか、そういうことも一応勧告についての決定をするについて考えなければならないことではないかとかように考えましたので、仮出所の審理に当りましては、十分諸般の事情を調査の上、最も妥当なるものについて勧告する、こういうことに考えておるのでございます。
  59. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると、公正妥当なるものという何か基準がなくては、何を以て公正妥当とするか、勧告する基準というものをやはり国内法規において明確にすべきじやないでしようか。挙げてこれをこの取扱官吏に任してしまう。そうすると任された人もその人の感情によつてどうでもなるということになつてしまいます。一にかかつてその人の考え方によつて、これはしないのだということも言えるし、又あつてもなくてもみんなやつてしまうということもできるし、その人が公正妥当な人であるということは私たちも期待してやまないのですけれども、若し不幸にしてそういうことでなく、その人が感情をまじえるような人であつたならば、申請するほうも一体何を基準にして申請するのかちよつとわかりかねるでしよう。仮に法文にお書きになるとすれば、その基準の点を抽象的でなく、どういう理由があつたら勧告して頂けることに値いするかどうかということをやはり明確にする必要があるのじやないかと思いますが……。
  60. 齋藤三郎

    政府委員(齋藤三郎君) 結局基準を作りましても、関係国が決定をしなければ実際には効果がない、こういうことになりますので、こちらだけで基準をきめるということは非常に困難でございまして、いろいろな事案、いろいろな人について一定の基準を作るということができなかつたという点もございますし、又関係国のほうで決定がなければできないということもございます。只今お話のような当事者のできるだけ公正、適正な、而も常識に富んだ、感情に走らないような立派な人が当られるようにしたいと思つておりますし、更にやはりそういつた個人処理であるということになりますると、いろいろな点が心配される、又事実そうでなくても、審理を受ける人にとつて何か自分が感情でそういうことがあつたのではないかということがあつてもなりませんので、委員会、会議体で適正にこれを判断してやつて行く、こういうことにいたしたいと思つております。
  61. 伊藤修

    伊藤修君 勿論こちらが幾ら要件を定めたところが、相手国がこれに応じなければ何にもならんということはよく了承しております。併し、だからといつて日本国内法として何らの基準も置かずしては、漫然ただ申請すればいいのだという形になつてしまうのじやないでしようか。そうするとこれは在所者全部申請できるということが当然予想されるわけですね。何らの基準もないのですから、申請するところの資格を持つているわけですね、それに対しまして審査される基準が、日本国民をこの際救うという考え方が全部よろしい、OKということで勧告するということになつてしまう。だからどういう理由があれば勧告に値いするのかという目安を置くということは私は必要じやないかと思うのですが、こう広くして置けば便宜には違いありません。併しなかなか雲を掴むような話になつて、理事者のほうもやはり雲を掴むような考え方ではないかと思うのですが、それならそれで率直に伺つておけばよろしいのですが、何か理窟があれば理窟をはつきり伺つておきたい。およそものをこういうことにしてくれと要求する以上は、要求するものに対しましてもその目標をあてがわなくちやならん、そうしなければ自分はこれに適応するのだということがはつきり認識できないのです。そういうふうにする必要があるのじやないでしようか。又それを審査に当られる人も、何を基準にして一体審査するのか、全部減刑してしまうという一般的概念の下にやればこれは別問題です。そうじやなくてここに法文に掲げられているように、愼重な手続を以てその手続を運んで勧告に至らしむるというならば、それには何か拠りどころが必要じやないのか、こう思うのですがね。
  62. 齋藤三郎

    政府委員(齋藤三郎君) 国内法の仮出獄の場合は、刑法規定で「改俊ノ状」ということがございまするが、これは古橋局長からもお話がございましたように、国内法の罪では全然ございませんので、「改俊ノ状」ということも不適当であろうと考えまして、できるだけ可能なものについては仮出所の実現を図りたいということを考えまして、かようなことにいたしておる次第でございます。
  63. 伊藤修

    伊藤修君 だから一番初めに聞いたわけです。一体本法による刑というのは、何が値いするのか、本人に対して刑罰を科するというのは国内法裁判でもない、外国裁判でもないのだ、特殊ないわゆるこのたびの戰争によつてかもし出されたところの刑罰である、その本質というものが明らかでない以上は、その刑罰を減免し、若しくはなからしむるというような場合において、その基本がはつきりしないから、ここでも結局はつきりしないことになつて来るわけです。これが本人に関する改過遷善、社会への適応性を作り上げるというならば、刑法にいうところの本人の改俊の状顯著なる場合においてはと、こういうふうに謳えるのですが、これが明確でないから、ここで謳えないことになる、漫然ただここで申請する、それで漫然決定する、それで勧告する、こういうことになる。誠に信念のないやり方で、日本国民はかような意味において釈放すべきことを要請するのだという勧告を外国に発せられるはずなんです。その場合においてやはり何かここに基準というものが必要じやないか、かように考えるのです。私はこの取扱が非常に安易な考え方の下に起草されていると思うのです。ただ形式的に受取つて、そうして審査という形を経て、そうして勧告する、その場合に勧告は一体どういうことの勧告になるのか、本人の家庭の事情がこうであるとか、本人の所内におけるところの成績はこうであるとかいうことのみで、千遍一律に勧告状を発して、果して勧告を受けた諸外国がそうかといつて意思を翻えしてそれに ○Kして来るところまで行けるかどうか、そういう点を私は憂うるのです。
  64. 齋藤三郎

    政府委員(齋藤三郎君) お説の通りでございまして、基準を作るのは非常に困難であるという点、従つて勢い形式的になるというような形が起るかも知れませんです。併し私どもが非常に困難な仕事である、よほどの信念と、よほどの資料と調査と又準備とをしなければ、なかなか実現は困難である、又そういつた固い信念を持つてこの仕事に当りたいと、かように思つております。
  65. 伊藤修

    伊藤修君 いや、お気持の点はあなたと我々と同様なのですが、やはりそれを何か根拠付けるものがなかつたならば、どうも糠に釘のような感がしてならない、頼りなさ過ぎるのです。これはやはり先ほどの基本問題の刑の本質考え併されまして、なお一遍御研究を願つておきたいと思います。これはこの点につきましては、別に中央更生委員会で以て細則を定めるという考えもないのですね。
  66. 齋藤三郎

    政府委員(齋藤三郎君) 現在まだそこまで至つておりませんです。
  67. 伊藤修

    伊藤修君 若しそういう点を定めるということになりますれば、これは細則に讓るべきことでなくして、本法において考うべきことだ。これは重要事項でありますからそう考えます。  次に仮出所に関しまして、仮釈放審査規定というようなものがあるのですか。これはどういうふうになされるつもりですか。
  68. 齋藤三郎

    政府委員(齋藤三郎君) 規則は手続で書くことにいたしておりますが、現在まだ研究いたしておりまして、具体的にどういう手続にするかということは決定に至つておりませんです。ただ委員会が事前に十分調査をし、申請書並びに申請書に添付されて参りますプリズンのいろいろな記録等、或いは家庭の関係、その他関係国の決定を得るに足るようないろいろな資料も作りまして、それから委員が巣鴨に参りまして、本人からも十分事情を聞いてそうして決定をいたす、こういうことに相成ると思います。
  69. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると、規定は設けないのですか。
  70. 齋藤三郎

    政府委員(齋藤三郎君) 先ほどいろいろお尋ねの基準につきましては、現在そういう基準はできないだろうし、又それを規則で書くということは私も不適当だと存じておりますが、この形式的な手続につきましては、その概要を委員会の規則で作りたい、かように考えております。
  71. 伊藤修

    伊藤修君 私は委員会の規則でさような基準をお作りになるということは、これは重要なことですし、これは基本人権の根本に関係することである、規則で制定する事項じやないと思うのですが、これは御承知のことと思いますが、若しそういうお考えであるとするならば、これは明らに法律事項であることは申すまでもない。その人の身柄を釈放するかしないかということに関しての基本問題でありますから、そういう点をも規則で、これはあとでお伺いするつもりでありましたが、規則で賄おうとするのはよくないと思います。一体規則制定権がちよつと広過ぎる。あなたにこれは質問するのですが、そういう点を規則で賄おうというお考えは是非これは排拆してもらいたい。だから私は先ほどからお伺いしているのですが、若し必要であるならば、本法で定めなければならん。法律事項でありますから……、私はそう考えます。
  72. 齋藤三郎

    政府委員(齋藤三郎君) この実体をきめます基準というものについては規則で作るべきものでないと存じておりますが、形式的な方法といいますか、手段といいますか、そういう手続的のものは概要を規則で作つていいのではないか、こう考えております。
  73. 伊藤修

    伊藤修君 それは手続は規則でお作りになつても結構です。それは本法では賄うべきことでないと思う、複雑になりますから。併しその基準というものはその人の身柄を釈放するかしないかということでありますから、規則事項じやない。そんなことが規則事項だつたら大変です。それは法律事項です。それを取扱う方法についてのいろいろな規定をお定めになることは規則事項としてこれはきめて差支えないのですが、如何ですか。
  74. 齋藤三郎

    政府委員(齋藤三郎君) 実体を決定する基準というものについては、規則で定めるべきでないと考えております。
  75. 伊藤修

    伊藤修君 その点はなお後にして先の根本の刑の問題と関連して明日でもお答えを願うことにいたします。  次に第十七條の二項の二号ですね、この「戰争犯罪に問われた事実、共犯者との関係及びしやく量すべき情状」とこうあるのですが、御承知の通り私が申すまでもなく、この判決と事実というものは往々にして食違つておる。殊に戰争裁判においてはその例が私は多いと推察しておるのですが、そうした場合においていずれをその基準にしてお考えになるか、この場合一つ御見解を伺つておきたい。
  76. 齋藤三郎

    政府委員(齋藤三郎君) 條約の正面からは受諾をすると、こういうことになつておるのでありますが、私は戰争犯罪に問われた事情というものを十分考慮に入れると、結局いわゆる形式的な事実に重きを置かないで、問われた事情も十分考えなければならないではないか、かように考えております。
  77. 伊藤修

    伊藤修君 そうしますと、二号の戰犯、戰争犯罪人に問われた事実とここに重点を置いて、本人の状況その他を十分お聞き合せになつて、形式的な判決ということにとらわれずして、事実を基礎にして手当をなさるお考えですね、そう伺つてよろしいですか。
  78. 齋藤三郎

    政府委員(齋藤三郎君) 十分表裏を見て、そうしてただ形式でなく実際に合うようなふうに運用をすべきであるとかように考えております。
  79. 伊藤修

    伊藤修君 その点は本法を生かして行くという上において重要な点であるから、單に條約文の表現にとらわれずして、よく事実というものを聞いて、それを十分とり入れて本法の活用を私はお願いしておきたいと思います。  二十二條四項の仮出所が、善行特典回復するのはどういうような基準によつてなされるのですか。
  80. 齋藤三郎

    政府委員(齋藤三郎君) 二十二條の四項で仮出所の処分が委員会で取消されますと、善行特典日数の全部失われる、そうして取消された人は巣鴨に收容されて、そうしてそれが十二條の二項の規定によつてその後の情状によつて刑務所の長が回復することができると、こういうことに相成つております。
  81. 伊藤修

    伊藤修君 それから第三十條の五項、これによると赦免及び刑の軽減について適格性の制限がなく、出願の要件も審理の基準も定められてないのですが、実際上どう運用するつもりですか。本法において無制限になつておると、細則で制限を設けることができないのではないかと私は考えるのですが、この点は先ほどのお話の点と同じような疑義を抱くのですが、如何ですか。
  82. 齋藤三郎

    政府委員(齋藤三郎君) 赦免及び刑の軽減というものにつきましては、この法律案におきましては、形式的な制約をしないで、それぞれの事情に応じて融通無碍にできるだけ活用いたしたい、かように考えております。
  83. 伊藤修

    伊藤修君 どうもこの点も融通無碍という言葉がやはり私は……、先ほどの場合と同じようにお考えになつて、それが非常に便利ではあるし、結構であるとは思うが、余り融通無碍過ぎて、申請し得るものではあるが目標がないのですよ。だから一にかかつて融通無碍の状態において取扱われる人、その人を得ないと非常な危險に曝されるわけです。先ほどの御説明のように、立派な人をそこに据えるかというお考えであるように伺うのですけれども、まあ人間のやる仕事ですから、そう我々期待するほどのこともできないとも思うのですが、それから余り融通無碍過ぎて却つて弊害を残すのじやないか、又在所者としても、在所者に関連を持つところの友人、知己、親戚というものも、何らかそこに目標なしでお願いするという形をとらざるを得ないわけです。自分はこういう適格性があるから少くとも釈放減刑を受け得るという期待を持つて、少くとも権利的観念を持つて申請し得る標準がないのですね、これじや余りお任せ過ぎる。勿論日本国民をお助けになるつもりで十分御活用になるとは信じて疑いません。がこれはこの法律によつて救済を受けようという本人若しくは関係者一同としては余りにその目標がなさ過ぎると思うのですが、やはりこの場合にも何らか私は基準、若しくはその目標を明らかにするということが必要ではないかとこう考えるのです。重ねて御意見を伺つておきたいと思います。
  84. 齋藤三郎

    政府委員(齋藤三郎君) 私ども委員会で、今日まで総司令部で仮出所なつた七百何名かの人の面倒をみておりますが、未だ一件も事故はございませんです。それで私は融通無碍と申しましたが、家は悲しいかな、関係国の決定という大きな制約がございます。その上に国内的にいろいろな制約を設けるということは余り避けたいと、こういう考えでございまして、これを活用し過ぎて御迷惑をかけるということはなかろうかと存じて、かような形になつたのでございます。
  85. 伊藤修

    伊藤修君 私は何も制約しろと言つておるのではないのですよ。それは誤解しないようにして頂きたい。私の気持は、何か拠りどころを與えて希望を抱かせておきたいとこう思うのです。ただ一にかかつてその扱う人のお気持によつて左右されるというあり方よりは、何か基準を與えたほうがよいのではないかとこう思うのです。それでは重ねてお伺いしますが、今日まで連合国において釈放されたのは、どういう基準でおやりになつているか、釈放された理由を全部一つ一つ御承知になつておりますか。そうすると、若し御承知になつておりますれば、そこに一つの何らかの基準が出ておるのではないでしようか。所長の心持によつてどんどん出しておるのではなかろうと私は思うのですが、そういう点は御承知になつておりますか。なつておるとすれば、何らかの大体の基準というものがあり得ると思うのですが、この点はどうですか。
  86. 齋藤三郎

    政府委員(齋藤三郎君) 私ども司令部の内部の書類を見ておりません、又見せてもらつておりませんので、どういう基準があるか存じませんが、仮出所なつた人の話によりますると、自分のしたことが本当に悪かつた、申訳なかつたということ、改俊の状ということが一つの要素になつておるようでございます。それは先ほど申上げましたように私ども考えで、この法案の中に入れたくなという考えで、かようなことになつた次第でございます。
  87. 伊藤修

    伊藤修君 そういたしますと、そこにやはり先ほどの刑の内容というものが、ここに言う刑というものはいわゆる人道の敵である。これに対して制裁を加えているのだということになつておるのじやないでしようか。そういう点において、いわゆる心からこういうことは悪かつたというので改唆したということを本人が認めて、この国内法の改俊の状顯著という言葉とは違いますけれども、違つた意味において改俊されたということを認められて、初めて軽減ということが基準に出て来るのじやないでしようか。それを表現することのいい悪いは別問題です。それを表現しろとは言いませんが、何か拠りどころがあるのじやないですか。漠然としてただ申請すると軽減するのだ、勧告するのだというのでは、ちよつと私は法文の立て方としてもおかしいと思う。まだ早々の折柄そこまで御苦心が足らなかつたと思いますからそれは了承します。了承しますが、やはり法文というものは何かそういう一つのポイントを置かんと、……今日まで我々取扱つて来た法文としてもちよつと例を見ないんです、こういう漠然たるものは。若し国内法だつたらこれは問題ですよ。事案が戰争犯罪人と限られた者に適用する法律ですから、仮に重視しないといたしましても、法体系としてはちよつと私は異例の体系だと思うのです、如何ですか。
  88. 齋藤三郎

    政府委員(齋藤三郎君) 只今のお説の通り、この人道上の改俊というようなことが理論的には考えられると存じます。ただ仮出所なつた人の話でも、自分は全然覚えはないので、如何にもその委員会の面接を受ける場合に、その部屋の前まで、自分はそういうことを言わなければ出られないということがわかつていながら、本当に言う気があるが、口に出ない。ここまで来たのが喉から言葉が出ない。それで大変不利益を受けたということを聞いておりますので、どうも智慧が足らないせいでございましようが、こういうことに相成つております。
  89. 伊藤修

    伊藤修君 この問題はあとにしておきましよう。  次に赦免又は刑の軽減をどういうときに行うか。例えば英国の戴冠式というようなことをも取り入れるんですかどうですか。
  90. 齋藤三郎

    政府委員(齋藤三郎君) そういう場合も……機会にいたしたいと考えております。
  91. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると、例えばアメリカにおけるところの何かの慶事、フランスにおける何かの慶事というものもやはり取り入れて考えられるということもなされますか。
  92. 齋藤三郎

    政府委員(齋藤三郎君) 当然考慮されるだろうと存じます。あらゆる機会に、可能なる機会において恩赦といいますか、機会を利用してこの活用を図りたい、かように存じておる次第でございます。
  93. 伊藤修

    伊藤修君 その場合は、まあその関係国国内においても恐らく大赦、恩赦というようなものが行われるのですが、そういう意味において広く行うつもりですか、その場合においては特殊なその国の関係犯罪者のみに行うつもりですか、その場合には在所者全体に行うという考え方をするのですか。例えば英国において裁判を受けた者のみに英国の戴冠式の慶事の恩典に浴さしめるという形式にいたされますか、いずれにいたされますか。
  94. 齋藤三郎

    政府委員(齋藤三郎君) そのときになつてみなければわかりませんですが、この法案では赦免は必ずしも特赦、個人ばかりでなくして一般的な赦免もこの法案によつて活用できると考えております。実際にそういう場合に全部に及ぼすか、或いは当該国関係在所者だけにやるかということにつきましては、そのときどきの事情によつてなされるであろうと、かように存じております。
  95. 伊藤修

    伊藤修君 するとその点はまだあなたのほうとしてもお考えになつていないのですから、近く戴冠式が行われると思いますが、これは絶好のチヤンスですから、その場合においては英国関係だけを恩典に浴せしめるというお考えか、個別的にするというお考えか、やはり今からはつきりしておいて頂いたほうがいいと思うのですね。その他若し、広い世界ですから、いろいろ各国に慶事が行われると思うのですが、そういう慶事に際しまして、できるだけこれを利用して……、利用するという言葉は語弊があるかも存じませんが、そういうチヤンスをとらえて、そしてこれを在所者にその恩典に浴せしめるという行き方になさるつもりか、当該関係国だけのものに限るというお考え方か、はつきりお伺いしておきたいと思います。
  96. 齋藤三郎

    政府委員(齋藤三郎君) これは減刑の勧告については日本国の権限でございますので、決してその慶事のあつた当該国に限らなければならないということは考えておりませんです。ただ実際にその際にやるかやらんかということをお尋ね下さいますると、それについてはそのときの事情で、やつたほうがいいという場合にはやりますでしようが、余りこう日本が不当に無茶をやつておるというふうな印象を與えることも避けなければならんのではないかと考えておりますが、そういつたいろいろな実際情勢を検討の上活用する、こういうふうに考えております。
  97. 伊藤修

    伊藤修君 私は無茶をやつているというふうな感じを抱くということは恐らくないと思います。一体日本人は引込思案ですから、余り相手方の言うことを斟酌し過ぎるのです。言うべきことはどんどん言うて、権利を主張すべきである。そしてチヤンスを、機会をとらえるべきです。だからそういう卑屈なことではなく、どんどん要求すべきことは要求して、それで勧告でいけなかつたら元々なんですから、だからできるだけ私はそういう場合を広く活用するように私は要望しておきます。  次に関連しまして、この法律によつて今後拘束を受けるところの巣鴨の在所者に対しましては、国内法のいわゆるこの恩赦は適用されるかされないか。
  98. 清原邦一

    政府委員清原邦一君) 現在考えております恩赦は、勿論国内法によつて処罰された人を対象にいたしておりますから、いわゆる戰争犯罪者はその対象外になつております。ただこの機会にいわゆる戰争犯罪者に対し如何なる措置をとるかということは、一にかかつて連合国側の意図にありますので、この点につきましては、私ども事務当局として直ちに責任ある御答弁ができかねますが、いろいろ目下折衝中であろうかと考えております。
  99. 伊藤修

    伊藤修君 私はそれだから前の外国の慶事の例を引いたのです。外国の慶事ですら御適用になろうというお考え方なら、いわんや日本の重大慶事の場合において、これを国民的慶事としてその恩典に浴せしめるということは、筋が立つわけですから、決してこれを濫用して紊りにどんどん釈放しようという日本人のあり方だとは相手は考えないと思います。御尤もだ。そういう慶びがあるならば、この戰争犯罪人に対しましても、やはり国民の一人として恩典に浴せしむべきことは、これは諸外国の人だつてやはり私は納得すると思うのです。これは原則的には私は日本の慶事に対しましては、当然この巣鴨の在所者に対しその恩恵に浴せしむべきだ、そういう考え方の下に諸外国に勧告するのだというお答えを得たいと思うのです。外国の慶事にすらそういうお考えがあるとするならば、当然私は国内における慶事においても、そのあり方に立つて今後勧告するのだ、こういうお答えをこの際頂きたいと思うのですが、研究だなんて生ぬるいことをおつしやらずに……。そのような馬鹿なことはないですよ。
  100. 清原邦一

    政府委員清原邦一君) 御趣旨のほどは私ども誠に同感に堪えないのでありまするが、平和條発効前におきましては、この問題につきましては、いわゆる今後審議願つておる法案における勧告のような権限は、日本政府側に與えられておらないのであります。ただ可能な範囲内におきまして法務総裁も目下折角努力されておるような次第でありまするが、それ以上の段階につきましては、私も未だ承知いたしておりません。御趣旨のほどは総裁にもお伝えいたしたいと思います。
  101. 伊藤修

    伊藤修君 勿論今審議しておるのは、これは講和條発効前の審議ですが、今しろと言つているのではないのです。この法律が効力を生じた場合においては、この法律に基いてそういうことをば行うかどうかということを今お聞きしているのです。今お伺いするのじやないのです。この法律案を我々審議して、採決して、法律としてこれが効力を生じた場合において、その扱い方について政府のお考え方をお聞きしているのです。その場合において、先ほどから伺つておりますけれども、諸外国の慶事に対しましてもそういう勧告の手続をとるというお考え方であれば、そのときにおいては日本独立した慶事を国民一般に分ち與えるという考え方があることは、すでにもう確定の事実であるのです。その場合においてはやはり同様にこれらの者に対してもこれを分ち與えるように政府努力し、勧告するのだということを今から言い切れん理窟はないと思うのですが、私はお伝えするなんて生ぬるいことをおつしやらずに、出てこの責任の答弁の衝に当られておられるのですから、それくらいなことは一つ責任を以てお話頂きたい。
  102. 清原邦一

    政府委員清原邦一君) 只今のお話は、私かように御質問を理解したのでございます。只今この法案の成立前に、現段階において即時その措置をとれ、そういうふうな御質問かと、御意見かと拜聽したのでありまするが、この法案成立後におきまして、又一面恩赦令が実施される場合には勿論政府当局としましても、その線に沿いましてできる限り連合国側に対して勧告をするであろうということは申すまでもないのであります。私のお答え申上げましたのは、即時恩赦と並行してこの平和條約の成立前にその措置関係当局にとれというふうに拜承しましたから、お答え申上げただけであります。
  103. 伊藤修

    伊藤修君 御趣旨はよくわかりました。勿論この法律講和條約が成立すると同時に効力が発生します。それと時間的には幾分かずれて恩赦令が発せられることはもう理論上わかつているのですから、従つてこういう法律に基いて勧告の手続を今とるということは、時間的に余裕があるのですから、そういう御趣旨でおとりになることを私この際強く要求してやまないのであります。  この第三十六條ですね、この「法務府令で定める。」こうありますが、そうすると従来の法務府令は全然ここに引用しないのですか、独立しだものをここで法務府令をお出しになるつもりですか、これは……。
  104. 古橋浦四郎

    政府委員(古橋浦四郎君) 独立した府令を以て臨むことになります。
  105. 伊藤修

    伊藤修君 すると、三十七條で、委員会において細則を定める権限を與えでいるわけですか。この細則と法務府令との関係はどうなるのですか。
  106. 古橋浦四郎

    政府委員(古橋浦四郎君) 法務府令のほうは、第二章の刑の執行に関する部分だけを定めまして、委員会規則のほうは、その残余の点についての細則を定めるということにしたいと思います。
  107. 伊藤修

    伊藤修君 そういたしますと、この三十七條によつて委員会において独立してルールを制定する権限をここに委任するのですが、その権限が仮に踰越しで、法務府令において定める事項をも制約するということが若しあつた場合においてはどうなりますか。又できるのかどうか。又矛盾したものがあつた場合にはどうするか。この関係を明らかにして頂きたいと思います。
  108. 齋藤三郎

    政府委員(齋藤三郎君) 委員会で定めまする規則は、この法律委員会の権限に属した事項でございまして、執行関係法務総裁、赦免、刑の軽減それから仮出所、一時出所とこういつたものについて委員会が権限を持つております。それで重複いたしておりませんので、相矛盾したり又重複するということはなかろうかと存じておりまするし、又実際府令なり規則をきめる場合には、関係局とは十分協議をして万間違いのないようにいたすつもりでございます。
  109. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると、この委員会のルールにおいては、單に手続規定のみを法務府令の範疇に、枠内においてのみ規定せられると、法務府令によつて規定される部分まで踰越するということはあり得ないのですね。
  110. 齋藤三郎

    政府委員(齋藤三郎君) 委員会の規則が法務府令の中ということではなかろうと存じます。法務府令は要するに塀の中、委員会の規則は塀の外と、こういう関係で、権限が相異なつておりますので、重複することはない建前になつておるし、又実際に府令なり規則をきめる場合には、関係局と両局の間で十分御協議をして万間違いのないようにいたすつもりでございます。
  111. 伊藤修

    伊藤修君 この場合において、委員会独立にルール制定権を持つというのは、法務府と何かその関係……協議とか何かするのですか、実際問題として。せずして單独にどんどん細則みたいにルールを制定して行つて、自分のほうの権限もだんだんこれによつて拡大して行くと、延いて以て法務府令を侵すようなことがあり得るということも予想されるのですが、そういうことの実際の扱いはどうなんですか。
  112. 齋藤三郎

    政府委員(齋藤三郎君) 今日まで委員会がいろいろの規則を出しております。その中には委員会内部だけの規則、例えば観察所の観察免除だとか、そういつたものについては古橋局長のほうと御相談いたしておりませんが、この刑務所に関連する場合は古橋局長に十分連絡いたしてやつております。
  113. 伊藤修

    伊藤修君 そうするというと、内部関係については独自の権限の下に独自の構想でお定めになるわけですね。法務総裁とか、その他法務府の各いろいろな関係があるでしようが、そういう所に協議の上決定されるのでなくて、独自に御決定になるのですか。
  114. 齋藤三郎

    政府委員(齋藤三郎君) 建前独立ということになつておりますが、関係するような場合にはできるだけ関係局に御相談いたしてやるのであります。
  115. 伊藤修

    伊藤修君 念のために伺つておくのですが、若しそのルールを制定なさる関係官の各資格の方はよく存じませんが、若し誤まつた場合においてどうなるのですか。権限を踰越して法務府令なり、本法趣旨に反するがごときルールを制定された場合においてはどうなさるのですか。
  116. 齋藤三郎

    政府委員(齋藤三郎君) 私は委員会のルールは法律以上のものではなくして、法律の下のものであると考えますので、法律に違反した権限のないことについては、その超越した分は無効である、効力がないと、かように考えております。
  117. 伊藤修

    伊藤修君 三十四條ですね。これは條文の立て方から見ますと、又あり方から申しましても至極尤ものように思えるのですが、ちよつと深く考えると、日本日本国内機構として今度特殊な監獄法の中にこうした刑務所を……、名前はいい悪いは別として刑務所的なものを設ける、いわば日本国内の機構の一つであるこれに対しまして、なお外国のこうした監督下に置かれるがごとき感を抱かしむる條文をここに置くゆえんのものが私には理解できないのです。これは関係国の要求によつてこうしたものを入れられたのか。或いは日本政府が、若しくは皆様が向う様の御機嫌を伺うためにこういうことをお入れになつたのか、又必要欠くべからざるものであるか、この点一つ伺つておきたいのですが……。
  118. 古橋浦四郎

    政府委員(古橋浦四郎君) この條交におきましては、関係国も勧告その地の都合がありますので、必要なときには中を見せてもらつたりする、或いは勧告するという必要がありますので、先方も要求いたしております。又日本といたしましても、赦免減刑、仮釈放等の事務が成るべく円滑に参ることが得策かと考えられます。最後の決定権を各関係国が持つているのでございますので、そういうような事務の円滑なる運営を図るための連絡として要求せられた場合は、これを許すべきが至当であろうということであり、その事項に限つてかように許可をすることにいたしたのであります
  119. 伊藤修

    伊藤修君 仮にこの條文がなかつた場合においてはどうなるのですか、一般のいわゆる外人に対する面接、視察というものを許さない意味ですか。
  120. 古橋浦四郎

    政府委員(古橋浦四郎君) その場合には監獄法の準用ということになりまするから、参観を許すか許さないかという問題になります。
  121. 伊藤修

    伊藤修君 まあ従来のあり方から見ますと、いわゆるこうした外国から視察に来る、状況を見たいという場合においては恐らくお許しになる。その長は監獄法によつてお許しになると思います。特にこうして許さなければならないというこういう法律をここに設ける必要が監獄法と相対照して必要ですか、なくても私は賄えると思います。こういう規定を置くことは、日本の内治に対していつまでも連合国のいわゆる指揮下に監督を受けて行政を行なつているがごとき感を、こういう法律の一部にその片鱗を残しておるというあり方は、私はよくないと思うのですが、必要でなければ、又ほかの法律で賄えるならば、あえてかような法律一條設ける必要はないと私は考えるのですが、如何でしようか。
  122. 古橋浦四郎

    政府委員(古橋浦四郎君) 誠に御尤もな趣旨ではございまするが、戰争裁判という国際的に関係のある裁判執行をいたしますのでありまして、而もこの釈放等に関する事項につきまして最後の決定権を向うが持つておる。従いまして、先方がこの執行に対して全然無関心であり得ない。かような点につきましても、各関係国からの要望もございますので、必要なる最小限度においてその便宜を図る必要があろうと考えておるのでございます。
  123. 伊藤修

    伊藤修君 最小限度の便宜を図るというのは、別に特段に、今の国内法で以て監獄の参観及び面接を特に禁ずるという趣旨のものはあり得ないのだから、国内法で賄えるのですから、こういう形のものを残すより、国内法にこういう規定があるのだから、これによつて十分あなたたちの見たいと思うときにいつでも見られるのですと、視察したいときにはいつでも視察できるのです、個人に面会しようと思うときにはいつでもできるのですから、これによつて御了承願いたいと言えなかつたのか。ただ向うにコンネクシヨンをつけるという意味においてか、おもねるという意味においてか、こういう條文を置くということはそれは考え方としては結構ですよ、結構ですけれども、国民に與えるところの、将来においてこうした戰争による残存的なものを残すということはよくないと思うのです。賄えるならば説明で私は賄つたほうがいいのじやないかと思う。どうしても置かなければならんのですか。
  124. 古橋浦四郎

    政府委員(古橋浦四郎君) その点につきまして先方とも協議はしたのでございますが、この程度條文が必要ということになつたわけでございます。
  125. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 私一点だけちよつと。第十條は重病人に対しましての病院移送の規定でございますが、この「伝染病その他の疾病にかかり」というその他の疾病ということは、これは常識的に考える疾病というふうに解釈してよろしうございますか。第十條でございます。
  126. 古橋浦四郎

    政府委員(古橋浦四郎君) さように考えております。
  127. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 随分入監者の中には高齢のかたがありますが、老衰病ということでございますね、これは重病者という言葉は常識的じやない、老衰病が重病者とは言えないとは思いますけれども、併し重病患者にも等しいような場合も考えられると思うのでございますけれども、どこか仮出獄のほうにでも何かそういうかたがたをこう救い出すようなことはないかと思つていろいろ調べましたが、何も手がございませんようですが如何でしようか。
  128. 古橋浦四郎

    政府委員(古橋浦四郎君) 監獄法によりますると、老衰者等を病人として取扱うことができる條文がございますのであります。従いまして、それの老衰の程度によりましては、或いは重病者として取扱うことが可能な場合もあり得ると思うのでございます。さように考えられます。
  129. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 この法律案をお作りになりますときに、特にそういうことを重くみてお取扱いになつたわけではございませんのでございますね。監獄法のみによつて処置しようというお考えでございましようか。
  130. 古橋浦四郎

    政府委員(古橋浦四郎君) この法律建前では、一応老衰者もこの中に特に入れるというような意図ではございません。この監獄法に該当する場合に、その取扱をなし得るという方針でございます。
  131. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 この監獄法で申しております老衰者ときめるその内容は、大体どういうことなのでございましようか。私の申しますのは、老衰病というようなものは甚だ常識的のものとして取扱わなければならないようなものが多いと思うのでございますけれども、何か監獄法規定の大体の内規というようなものがございますのでしようか。
  132. 古橋浦四郎

    政府委員(古橋浦四郎君) その内容につきましての今までの基準は、私まだ承知いたしていないのでございまするが、これは一応社会の通念から考えてきめるべきであろうと思うのでございます。
  133. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 これは希望でございますけれども、非常に刑期の長いうちにだんだん老齢になられるかたが多いと思いますが、一つ何とかそういうかたがたを效済するようなものが含められないかという感じがいたしますけれども、今のところではそういうお取扱はなかつたと承知してよろしいんでございますね。
  134. 古橋浦四郎

    政府委員(古橋浦四郎君) 今の在所者の中に非常に高齢なかたがおられまして、老衰の程度も相当なかたもあるのでございます。その取扱につきましては、私どもも前々からいろいろ考えて参つたのでございます。併しながらその取扱として考え得られることは、結局仮釈放等の條件の発生しておるということに見ることが一番具体的な解決方法ではないかという工合考えておるのでございます。
  135. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 私は伊藤委員の御質問を伺い、又それに対する政府からのお答えを伺つておる間に、特に重要な点であると思うので、政府のお考えを伺つておいたほうがいいのだと思う点が二、三ありますので、恐らくはこの法律案を修正するということはなかなか困難でありましようし、従つて何かの機会政府側が公式にお述べになる機会があるならば、そういう機会見解を明らかにして頂きたいと思う点を二、三申上げておきます。時間も遅くなりましたので簡單に申上げますが、第一に伊藤委員の非常に論理的な御質問を傾聽しております間に、そうして政府の御答弁を伺つております間に、どうしても納得できないのは、やはりこの法律によつて対象とするところの刑の性質であります。これは今日政府側でお答えになつているような答え方では、伊藤委員が御心配になるように、今後問題が起るんじやないかというふうに思うのであります。私はこれは私見でありますが、参考に申上げ、政府が同じお考えであれば非常に結構だと思うのでありますが、第一には平和に対する罪、人道に対する罪というものはこれは單に国際及び各国軍事法廷において判決として與えられたばかりでなく、日本国憲法及び平和條約によつて日本がこれを公式に認め、そうして同じ確信の上にあるものであると私は信じて疑わないものであります。この点についてあいまいの態度を存して置くということは非常に問題があるんじやないかと思います。これはこの委員会でも参考人のかたがたの御意見を伺いました当時からもいろいろ討論がありますが、すでに国際法上この平和に対する罪及び人道に対する罪、そういうものに対する個人的な責任というものについての原則は確立している。まさか現在の政府がこれを覆えされるという御意思はないだろうと思います。従つてこれに対しての態度というものは確信を持つてはつきりおきめになるべきものである。その目的は言うまでもなく平和を絶対に守つて行きたい、又民主主義を守つて行きたいということだと思うのです。この点について我々はすでに刑の赦免等の及ばない絞首刑を執行されたかたがたのこともあるし、それらの非常な極刑というものの意義があいまいになるようなことは絶対に許されないだろうと思います。そういうかたがたに対して取返すというようなことは絶対にできない刑の執行のそれの意義ということから考えましても、平和というものを守つて行くために、平和に対する罪、人道に対する罪というものは再び侵さないし、そうしてそれに対するそれを刑罰の罪と考え、それの刑罰が行われ、個人的な責任を問われたということに対する態度があいまいになるということは私は許されないだろうと思うので、この点についての政府はつきりした見解をこの際明らかにせらるべきだと思うのでありますが、これが第一点。第二の点は、然るに現在平和條約というものが成立をして、そうして日本に関して戰争状態が終結して平和の状態が発生し、日本がこの占領状態から脱却するということは、又これは他に軽く比較することのできない特殊な非常な喜びであり、これに対しては日本国民はもとより国際社会も最大の祝福を送られる、従つてこの際にそうした一方においては平和に対する罪、人道に対する罪としてその刑として嚴格な執行をしなければならないという一面、と同時に他面においてそれらについてその理由の存する限り寛大にして、友愛の精神に充ちた処置がとられなければならないということも、これ又同じく俯仰天地に愧じない意味において、確信を持つて政府においておつしやるべきことじやないかと思うのです。この二点については伊藤委員が縷々御質問になりました御趣旨も全くそういうところにあつたんじやないか。然るに本日の政府側の御答弁はどうもいずれもそれに対して立派なお答えがなかつたので、或いは今日の速記録などを誤解して読みますと、その両方が何だか非常にあいまいになつて、それで行くようなことがあると私は非常に後日において嘆くべきことになるんじやないかと思いますので、この二つの点につきまして、本日はもう時間が遅くなりましたことですから、次の機会にどうか政府において最も立派な態度を示して頂きたい。それでいわゆる先日岡部委員もおつしやつた咎めるということと、許すということが両方がごつちやになつてしまうことはいけない、一方において咎めなければならなものは飽くまでも咎めるということと、他方において併し又これが許すべきときには、又その理由がある場合には許すということをはつきりしておかないと、何だか戰争犯罪というものはあいまいなものだということになつてしまつて、実に嘆かわしいと思うので、今の二点を申上げて政府の所見を伺いたいというふうに思うのであります。  それから第三点は、同時にこの法律案が作られますときに、残念ながら伊藤委員の御質疑に対する政府の御答弁を伺つておりますと、この法律案が、こうした特殊な法律案がこの際明らかにすべき模範的態度というものが現れていなかつたことを、我々が質疑応答の間に伺いまして、残念に堪えないのです。で、それはこういう法律案というものは実際單に事務的に処理せられるべきものではない、こういう機会にこの刑或いは行刑というものについての政府の新らしい、そして高いお考えというものが出るそれこそ絶好のチヤンスであつたのに、そういう点が余り出ませんで、そうして事務的に考えられているという印象を拂拭することができないことを非常に遺憾だと思う。なかんずくその際にこの第三の点としてお考えを頂いておきたいのは、さつき申上げましたように、ここに問題になつている刑は平和に対する罪、人道に対する罪という罪でありまして、で、その他のいわゆる刑というものと性質が違うのです。併しそこには又共通するものがある。それで刑の執行或いは赦免というものについての我々の考え方というものは、この機会に又前進して行くべきものであるというふうに思うのです。従つてここに模範的な態度が現れて来ることが又従来の日本の刑の執行及赦免に関する法律なり規定というものに対して、いろいろといい影響を與えて行くということが当然期待されることと思う。  それで時間がないので細かい具体的な点は申上げませんけれども、例えば巣鴨のプリズンにおいてすでに確立されている慣行というものがある。その慣行の中には、我々が先日見学した中にも非常に立派な慣行であるというふうに考えた点が多々あります。例えば現在のデヴイス所長はお会いして、私が所長としてどういうことを最高の任務とお考えになつているかというふうに質問したときに、デヴイス所長は、自分の最高の使命はここに入つている人が毎日幸福に、そして健康に暮すということだというふうに答えられた。又そういう趣旨従つて、先日もちよつと申上げましたが、あそこには暖房が設置してある。或いはその他従来日本では見られなかつたようなさまざまな進歩的な方法というものが講ぜられているこういう慣行というものは今後十分尊重されて行くべきである。それは特に平和條約十一條の刑の執行及赦免に関して新らしいそうした進歩的な措置がとられて行く。同時にそれが今度一般の刑の執行及赦免に対してもそうした進歩的な新らしい考え方というものが影響を及ぼして行くべきであろうと私は思うのです。  以上特にこの際この法律案の審議の過程において明らかにしておきたいと思うものは、さつき述べました一と二の点でありますけれども、第三の点につきましても、適当の機会政府の所見を伺いたいと思うのであります。
  136. 伊藤修

    伊藤修君 私もさつき答弁は明日でもはつきりお伺いしたいというのは、いわゆる刑の本質ということはまさに今羽仁委員の第一の点と一致しておるのです。私は先ほど来縷々御説明がありましたけれども国際裁判所においてなされた判決だ、刑だという説明では後日に大きな禍根を残す。いやしくもこうした判決というものが一体世界共通の上においてどういう意味の刑であるのか。いわゆる人類の仕合せを破壊するところのものに対してなされたところの刑罰である。そうしてその本質はどうだというその点をもつと納得の行く、後日に残るような御答弁を十分検討してなして頂きたい。今日あえて先ほどの御答弁を繰返して頂こうとは思いませんが、明日でも明後日でもよろしいですから、是非その点は基本的に明らかにして頂かんと、先ほどの私が保留してあるところの冬標準というものについての、何を標準にするのかということが結局出て来ないことになつて来るのですが、そうするとこの法律の運用の中枢が動かなくなる。お扱いになる人々もそういう考え方の下にお扱いになつて頂かなくちやならんと思うのですが、それがあいまいの中にただ事務的に処理すればいいという考え方で以て一体巣鴨にああいう人を拘禁しておくことは、一体何の意味があるということになつて来る。これは結局国民に将来知らしめる必要がありますし、世界に対しても日本はこういう考え方の下に受継いで執行しておるのだということをやはり認識させる必要があると考えるので、是非それは答弁をよくまとめて頂いて、して頂きたいと思います。
  137. 岡部常

    委員長岡部常君) ちよつと速記をとめて……。    〔速記中止〕
  138. 岡部常

    委員長岡部常君) 速記を始めて下さい。
  139. 清原邦一

    政府委員清原邦一君) 只今の御意見御尤もと存じます。最近の機会にこの委員会におきまして、その点につきまして十分検討の上政府側の意見を申上げたいと存じます。
  140. 岡部常

    委員長岡部常君) じやこの程度で本日は散会いたします。明日は午後一時から続行いたします。    午後三時四十四分散会