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伊藤修君 広島県の呉における
英濠軍が、事実上
呉地区に駐留しているにもかかわらず、今日に至るも
日英間の協定が成立せず、無
条約状態にあるため、呉においては独立後六月二十五日までの間に八十八件、強盗四件、強姦四件、同未遂二件、窃盗二十四件、詐欺七件、暴行十二件、傷害十件、
器物毀棄二十三件の日本人に対する犯罪が発生した。これがため
呉市民は非常な
恐怖に陥
つている。かような
状態でありまして、呉市及び呉市附近におきましては、今日は
恐怖の街と化しておるような次第であります。これらに対する
国内法と、又これら
駐留軍との関係における
属地主義、
属人主義に対する
法的措置、それらについて当
委員会においては重大な関心を持たなければならんと思います。又かねがね当
委員会におきましては、
検察及び裁判の運営に関する調査として、
基本人権の
擁護ということに全力を尽しておる次第でありますから、この際
委員を
派遣いたしまして、この実情を調査する必要があると存じますので、よろしくこれを採上げて調査せられたいことを希望いたします。
なお、その際、岐阜県の海津郡の
海西村の
長良川の
堤防が
ダイナ台風のために
決壊いたしたのでありますが、この
決壊が
自然現象としての、不可抗力としての
決壊であるならば、問題はないと存じます。併し
長良川のこの
海西村におけるところの
農業用水の取入品の
工事の
瑕疵に基きまして、この度の風水害を契機として
決壊いたしたのでありまして、この
瑕疵は当時農林省においてこれを主管して施工したのであ
つて、その
現場官吏の
不正行為によるものであるということが今日
検察の対象とな
つておる次第であります。およそこうした
官吏の
汚職が
国民に対し、若しくは
国家に対して蒙らしめるところの
損害につきましては、今日まで多くの事例を認めておるのでありますが、かような一
官吏の
不正行為が多くの住民、多くの
財産、
国民の
財産を毀損せしめるような大
洪水に至らしめたということは、以て他に例がないのであります。一般の
汚職行為とはその本質を異にする次第です。元来この
長良川堤防というものは、御承知の
通り奈良朝時代以来の水利問題のやかましい所でありまして、殊に
宝暦年間におきましては、
薩摩義士が多くの犠牲を払
つて築き上げた三大
河川の
堤防であ
つて、その後明治維新以来今日に至るまでこの三大
河川の
治水工事というものは
国家事業として成し遂げられて、このほど漸く完成したものであ
つて、これによ
つて濃尾平野におけるあの
米穀産地というものは築き上げられた。かような長い歴史を持つところの
治水工事の中において、たまたまこうした一
官吏の
汚職行為によ
つてこれらの現実に築き上げたところの
堤防が
決壊され、それによ
つて海西一円が
洪水になり、水稲においても何百町歩が壊滅するに
至つたのでございます。又道路、
建物及び橋梁、その他の損失を合算いたしますれば、数百億に達する。或いは
建物の面におきましても、六億何がしかの
損害に達しておるというような次第でありまして、これらに伴う
国家賠償に関する
措置をも
国家としては考えられなければならんと思います。殊に
国家賠償法に対しましては、当
委員会において非常に熱心に検討せられ、憲法第十七条の
附属法規として制定された当時、
国家の、若しくは地方自治体の
工事に対する
瑕疵によ
つて国民が蒙る
損害に対しましては、当然責任を負わしむべき規定を設けておるような次第で、当
委員会においてその点は原案を修正してまでも強く打出したのである。こういうような点を考えまして、この際この
国家賠償、並びに
汚職行為に基くところのかような大きな
損害に対する原因、その他について調査せられんことを要望してやまないのであります。以上二点に対しまして、
議員派遣を要望するものであります。