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1952-06-18 第13回国会 参議院 法務委員会 第59号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年六月十八日(水曜日)    午後一時五十六分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     小野 義夫君    理事            宮城タマヨ君            伊藤  修君            松浦 定義君    委員            加藤 武徳君            左藤 義詮君            玉柳  實君            長谷山行毅君            岡部  常君            中山 福藏君            内村 清次君            吉田 法晴君            片岡 文重君            紅露 みつ君            羽仁 五郎君   委員外議員    大野 幸一君   国務大臣    法 務 総 裁 木村篤太郎君   政府委員    内閣官房長官  保利  茂君    法務政務次官  龍野喜一郎君    法制意見長官  佐藤 達夫君    法務法制意見    第一局長    高辻 正己君    法務法制意見    第二局長    林  修三君    刑 政 長 官 清原 邦一君    法務検務局長 岡原 昌男君    法務特別審査    局長      吉河 光貞君    法務特別審査    局次長     關   之君    法務特別審査    局次長     吉橋 敏雄君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君    常任委員会専門    員       堀  眞道君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○破壞活動防止法案内閣提出、衆議  院送付) ○公安調査庁設置法案内閣提出、衆  議院送付) ○公安審査委員会設置法案内閣提出  衆議院送付)   —————————————
  2. 小野義夫

    委員長小野義夫君) これより委員会を開催いたします。  確壞活動防止法案公安調査庁設置法案公安審査委員会設置法案、以上三案を便宜一括して議題に供します。伊藤君に質疑を許します。
  3. 伊藤修

    伊藤修君 法制意見長官もお見えになつておりませんから、私は一つ特審局にお伺しておきますが、去る四日、九州の久留米において浮羽事件というものがあつて、それの拘留理由開示の法廷が開かれたそうです。その際、福岡特審局員と称する木下某という者が、福岡特審局の平方氏の紹介状を持つて地検を訪れて、当日の警備状況その他を調査して行つたそうであります。然るにその木下某という者は、成るほど特審局にはそういう人は存在するのですけれども地検を訪れた木下某とかいうものは存在しないというのであります。いわゆる木下何某というものは替玉であつたと言わなければならんと思います。特審局一体検察庁までも調査しなければならないほどの今日の検察事務あり方というものに対して疑惑を持つておるのかどうか、又そういう事実があるのかないのか、又そうした木下を派遣した経緯をお伺いしたいと思います。
  4. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) 私ども検察庁動向を調査するというようなことはいたしておりません。で、又木下某事件は大変申訳ございませんが、まだ私自身今まで報告を聞いておりません。で、特審局職員は大体常時検察庁ともいろいろと事務連絡をしておりまして、大体顔のわかつている者もあるかと考えるのであります。又特審局職員には必要な証票を携帯させておりますので、その身分を明らかにする証票を携帯させておりますような次第であります。木下某事件は私どもはまだ報告を聞いておりませんが、早速本局に問合せて、判明いたしましたならば即座にお答えするようにいたしたいと考えます。
  5. 伊藤修

    伊藤修君 一体特審局は四日に起つた事件を今日まで報告を聞いてないで、それで恬然としておれるのですか。そんなことで日本国内における全体の思想動向、或いはこうした破壞活動を調査する能力があるのですか。みずからの仕事に対してすらすでに半月以降経つておるのに今日なお報告がない、そんなあり方で今後この破壞活動防止法を運営して行く能力があると考えられるのですか。
  6. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) 報告を聞いていなかつたことは誠に申訳ありません。
  7. 伊藤修

    伊藤修君 申訳ないで済まない。私は一体それで能力があるのかないのかということなんです。全国に対しまして特審局の出張所、若しくは出張員というものが全部配当されておるはずです。これらとの緊密な連絡というものは日常とつていないのですか、一体……。
  8. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) 支局を中心に管下の各府県には駐在官を配置しておりますが、只今質問の点につきましては私は報告を聞いておりませんが、本局の部課の部長或いは課長が報告を受けておるかどうか、早速問合せて調べることにいたします。
  9. 伊藤修

    伊藤修君 そんなことは各支局から当然その日に即刻報告され、又下僚の人が上官たるあなたに直ちに報告さるベき筋合いのものであろうと思うのです。そのくらいの緊密な連絡がなかつたならば、到底特審局が今後公安調査庁となつて仕事をなさる場合においても、私はその機動性というものは疑わざるを得ない。徒らに莫大な予算を使つて資料の収集にのみ没頭するというなら、資料課を置いて事足りると思うのですが、如何ですか。
  10. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) 職員能率並びに役所の能率の改善については今後大いに努力するつもりであります。
  11. 伊藤修

    伊藤修君 本庁に報告があるのかないのか、すぐお調べを願つてお答え願いたいと思います。
  12. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) 承知しました。
  13. 伊藤修

    伊藤修君 第三條列挙の暴力主義的破壞活動というものが本法施行前においてなされた、又はなされておるという事実を捉えまして、本法施行後これを適用するのかどうか。いわゆる法律遡及原則がここに適用あるかどうかという点をお伺いしたい。
  14. 關之

    政府委員關之君) この点につきましては先にも御質問があつてお答えした点かと記憶しておるところでございますが、行政的措置條件としての暴力主義的破壞活動というものにつきましては、本法施行前のものも一応條件となり得るというふうに考えておるわけであります。そこでさような過去に行われた暴力主義的破壞活動に対しまして、将来において継続又は反覆してという條件によつて四條、六條が発動する場合も考えられるというふうに考える次第でございます。
  15. 伊藤修

    伊藤修君 先ほどそういう御答弁はあつたとは思わないのですが、仮にあつたといたしましてよろしい。併しどうして遡及するという法律上の根拠が出るのですか、その法的根拠をお伺いしましよう。
  16. 關之

    政府委員關之君) 遡及しないということは、これは一般刑事法上の問題として考えられている法理、だろうと私ども考えておるわけでございます。一般行政法上の措置といたしましてはこれがその刑事法上の面とは別に考えられまして、遡及すると申しましようか、法律施行前の或る條件もその中に考え行政上の措置をとつて来られるというのが一般的な行政法上認められておるところであると、かように考えておる次第であります。
  17. 伊藤修

    伊藤修君 司法上に対しましては厳として法律遡及原則は守られておるのです。これは私はここでくどくどと説明しなくても十分おわかりのことと存じます。問題は行政法上不遡及原則を守るべきかどうか、この点に対しまして、あなたは無制限に不遡及原則は守られなくてもよいのだというお考えのようですが、果してそういう御答弁政府の御答弁として伺つてよろしいですかどうか。
  18. 關之

    政府委員關之君) この問題につきましては今までお答えしたようなふうに考えておる次第でございます。
  19. 伊藤修

    伊藤修君 あなたは、それは政府答弁として伺つてよろしいですか、あなたの答弁を……。
  20. 關之

    政府委員關之君) さように了承して頂いて結構と存ずるのであります。
  21. 伊藤修

    伊藤修君 行政法的に不遡及原則が例外を認める場合、それは即ちその行政措置が以て国民の利益に帰着するという場合においては考えらるべき筋合いです。併しその行政法規内容国民権利を制約する場合においてこれを遡及せしむるということは、それは法理の観念にも合わないし、国民権利を、行為を当時適法行為であると認められておることが、後に制定された法律によつて適法行為となり、以てそれが規制される、こうしたあり方は、憲法の全精神から考えましてもさようなことは容認できない結論であろうと思うのです。それを政府意見としておこがましく断言的に仰せになるということは、今日の法律秩序というものを政府みずから破壞すると言わなければならない。にもかかわらず飽くまでそういう見解をおとりになるかどうか、先ずそれをお伺いしておきましよう。
  22. 關之

    政府委員關之君) 今日の行政法上の問題といたしますれば、法律論考えて行きますと、只今私がお答えしたようなことに解釈されるというふうに考えざるを得ないのであります。それはほかにも、例えば各種の資格の問題とかいろいろの問題につきましても、すでに立法例のある点でありまして、法律解釈といたしましてはさようなことに相成らざるを得ないというふうに考える次第であります。
  23. 伊藤修

    伊藤修君 そういたしますと、今日法治国家として、国民法律の下に生活を営ましめるというこの基本的な大原則というものが打ち壞わされることになるのです。行政庁が容易に国民権利を後日の法律制度改廃によつて適法生活というものが不法生活に変えるという危険な状態に置かれることは、当然な結果ではないかと思うのです。さようなあり方が私は是認できるとは考えられない。それは単なるその処置によつて国民の公共の福祉が、それによつてもたらされるという場合ならともかく、又国民権利が大幅に、若しくは多少ともそれによつて守られるというような場合はともかくとして、そうでなくして、国民が今日の法律秩序においては正しいと考えて、その行政処置の下に服しておつた。その下に法律生活を営んでおつたと、こういう場合において、あに図らんや、後日の法律改廃によりまして、今日正しいことが不正な結果をもたらす。而もその不正なものであるとして後日これが規制される。而もこの規制処置というものは、本法においては準司法的なものであることは異論のないところである。かような規定遡及せしめて、法律遡及原則をここに破壞してなお且つ規制しようというところ法理的根拠は、政府に私は矛盾があるのではないか、又繁るものではないかと思う。私たちが少くとも今日まで法律生活を営んで来たところにおいてさような大きな変動というものは到底承認しがたい問題ではないかと私は思う。重ねてこの点見解をお伺いしたい。
  24. 關之

    政府委員關之君) この問題につきましては、私どもといたしますれば法律上の問題として、今日の一般行政法その他の法律上の問題として考えますれば、どうしてもそう只今お答えしたようなことに相成ると考えるのでありまして、そこでこの法案におきましては、過去において、それだけを以て直ちに規制條件とするわけではないのでありまして、要するにさようなものは将来におきまして法律施行後におきまして、「継続又は反覆して」破壞活動を行うという、そのことを認定する一つ條件といたすのでありますが、そこで結局将来この法律施行後におきまして或る団体が暴力主義的破壞活動をなす、ただそれだけで認定はできない。要するにその団体が過去においてかようなことをやつた。それに「継続又は反覆」という橋を架けまして、そうしてそこに認定條件を絞つたのであります。これはむしろこの認定の慎重さを期するという意味におきまして、今申上げたような法理上の解釈になるのでありまするが、この点はさような意味において慎重を期したものであるというふうに私ども考えておる次第であります。
  25. 伊藤修

    伊藤修君 これは絞つた仰せになりまするけれども、例えば常習賭博の場合、常習犯の場合において、過去の  一つの事実があることによつて継続又は反覆した場合を、過去の一つの事実というものが、その常習犯として認定されるところ構成内容になることは私が説くまでもないことです。してみますれば、それがその罪の軽重、それを規制するところの判断の内容ともなり、破壞活動者として認定するところの大きな條件になる、いわゆる犯罪行為要件であると言うても過言ではないと思う。それに匹敵すべき一つ條件である。かような條件法律遡及して、法律施行後、その以前に、施行前になされた行為をも合せて施行後の事実認定一つ資料にし、條件にし、要件にするというあり方は、それ自体遡及することになるのだ。そうして以て行政的な措置が講ぜられる。而も行政的措置というものが、御承知通り刑事実体規定と何ら変らないような行政実体規定がここに置かれるのですから、してみますればさような法律規定あり方によつて国民不測損害をこうむる結果になることになる。国民にさような不測損害をもこうむらしめても、今後の政府立法政策としては当然だというふうなお考え方かどうか、その点お伺いします。
  26. 關之

    政府委員關之君) これはこの法案におきましては基本的な考え方といたしまして、団体におきましてかような第三條に規定するがごとき危険中の危険な破壞活動を行う、将来さような虞れがある場合、それを除去するというのが、この法案の基本的な考えになるわけであります。そこで単にそれだけ百では極めて認定上甚だ問題があるわけでありまするからして、そこで過去においてやつたと、さような「継続又は反覆して」という條件を以て絞つたのであり事。それがたまたま法律施行のこの時におきまして、その過去にやつたことが法律施行前にあつたというような問題にからむわけでありまするが、これも要するに「継続又は反覆して」というその危険性を考うるところ條件に絞つたのでありまして、繰返して申上げるような次第でありまするが、その反覆又は継続して将来かような破壞活動を行う危険というものの認定條件として絞つたのでありまして、私どもといたしましてはこの認定が前段に行われない。要するに過去においてこのようなことをやつた団体でなければ容易にこの規制にはならないという意味合いにおきまして、人権を尊重し軽々にこの発動をしないという意味合いにおきまして、この規定はやはりさように考えて相当なものであると考えざるを得ないのであります。
  27. 伊藤修

    伊藤修君 それは絞つた仰せになりますけれども、それが絞り方が絞りにならない。例えば今日破壞活動に類する行為がここにあつたとする。施行後一回あつたと仮定いたします。不遡及原則がここに厳守されるならば、その一回の行為だけでは破壞活動者として認定されない場合もあり得るのです。その後やらなければ、若しくはやる慮れがなければ、そうしてそれが十分に認められるという條件が備らない限りは破壞活動者としては認定されない。従つて第四條、第六條の適用はない、こういうことになるのです。それが遡及するものであるということになりますれば、今日は別にそれが合法行為とは申しませんが、少くともそれに対しまして何らの取締規定がない、放任行為であるという今日のあり方で、その法律構成の下に社会人として国民として生活をしておる。それが一たびこの法律ができますれば、その人はもう今後はなさないであろう、してはならないと、翻然としてそういう行為をみずから中止することもあり得ると思うのです。その場合においてたまたま誤つて一回犯したそういう行為があつた、それに類する行為があつたという場合には、その誤つた行為と今日なされた行為とが結び附いて、あなたは絞つたと言うけれども、直ちに規制されるということになる。非常に不合理ではないでしようか。それだけ国民は大きな制約を受けることになるのですよ。今日何ら処罰されない行為が、この法律ができたためにそれをも取つて以てその規制内容として処罰されることになる。規制されることになる。そういう結果をもたらすのであります。従つて遡及効果というものは当然及ぶことになる、それから法理上から申しましても、この法律の場合においては司法法規の大原則たるところ法律遡及原則を確立すべきものであると私は思うのです。これはあなたたち見解とは絶対に反対である。而もこの法律自体内容が準司法的であり、もたらすところ法的効果というものが至大なものであるという観点に立ちますれば、形式的には本法規制の面は行政的法規であるといえども、その内容が本質的に司法的処分である以上は、当然同一原則は確立されなくちやならんと思うのです。仮にこれを一歩譲りましても、およそ行政法規によつて国民規制される場合に、国民権利助長、保護という面において遡及する場合はともかくといたしまして、然らざる場合、国民権利を制約するような法的措置というものが遡及するということは、行政的法規においても認めがたいと私は考えます。いわんや先ほど申しましたごとく、実際の例から申しましてもさような不合理な結果を招来するのではないか。これに対するところの適当な措置考慮というものが政府として当然考えらるべきものだと思うのです。あなたたちがその立場に立つて御覧なさい。今日適法にあなたたち官吏として存在する、若し法規によつてその官吏たるために死刑に処するというようなことがあり得るといたしますれば非常な迷惑至極である。そういう点をも考え合せるならば、この点に対するところ政府考慮が何らかあつて然るべきだと思う、如何です。
  28. 高辻正己

    政府委員高辻正己君) 法理の面からだけにつきまして一応私の考えを申上げてお教え願いたいと思いますが、過去の一定の事実のみを基礎にいたしまして、それによつて国民権利制限し或いは義務を課することは、只今仰せになりましたような一つ遡及の問題として問題になり得る余地があると存じます。併しながらこの点につきましては關政府委員からお話申上げましたような、規制処分は、過去に行われた破壞活動の責任を追及するものではございませんので、まさに将来の虞れを除去するための、まあ言葉は普通に言われております言葉を使いまするならば、保安処分であることになろうと考えるのであります。ただ本案は、これは将来虞れのあるすべての団体規制をかけるというのではいけないので、少くとも過去に破壞活動をした団体でなければ規制をしないという、いわゆる絞りをかけた点を御指摘になつているのであろうと考えるのであります。それでこの点につきましては法理問題としては、一定官職に就く、これは例は悪いかも知れませんが、官職に就いたという場合に、その官職には一定の刑に処せられた者或いは例えば禁治産とか準禁治産とかいうような法律関係に立つた者、事実があつた者等につきましては一定就任能力制限されるというようなことも現行法では許されておるのでございまして、それと同一だとは申上げませんけれども、やはりそういう点は法律の立て方として許されないことではない、こういうふうに考える次第でございます。
  29. 伊藤修

    伊藤修君 今あなたは法制局にいらつしやるに似合わない言葉をおつしやるのですね。今のあなたの出された例はそれは任用資格就任資格であつて、それは過去の事実を捉えて以て今日の地位についたものの適否條件にするのです。これは当然なことですよ。我々が年令二十歳にならなけば何々はできない、二十歳になればこれこれの事実を取上げて適否條件にする、これはあり得るのです。私ども申上げるのはそうじやなくして、過去においては適法であつて何ら罪にならない、少くとも処罰行為でない、認容されておつた行為である。国家秩序の上からいつてもそれは当然なし得るところ行為である、許容された行為である。こういうようなものをこの法律、この法律に限らん、或る法律があり、そうしてその法律遡及してそれは非合法になるということは、国民として何によつて生活するのか。およそ我々が今日一時間、今一分生活するのでもすべて法律の下に生活しておる。今日の法律が正しいというこの性格の範囲内において私たち生活を営んでおる。然るにそのあり方が後日の法律によつて正しからざる性格になつたということは、国民全体の生活基盤というものが根本的に破壞される結果を招来するというのです。そういうあり方立法措置としては努めて避けるべき筋合いのものである。それで關政府委員が今言われるごとく、行政法として遡及する場合、例えば今月、給料を改訂した、この改訂は四月に遡つて改訂する。これは與えるほうだから、国民は余分にもらえるという立場に置かれるのです。それによつて今日の生活は傷つけられるのでなくして、今日の生活がより以上裕りをもたらされる。こういう場合においては行政措置として遡及して効力を認めることは当然考えられる。こういう考え方も御承知通り戦前にはなかつたのです。戦後非常の場合において初めて、経済の進行法律制度進行とが相一致しないから、これを調和するためにこれを遡及せしめてその事実上の調和を図ろうとして、法律技術の便宜の面から考えられたことであつて、即ち法理論としては筋の通らない考え方なのです。それがとつて以国民生活に寄與する場合であれば容易に認容される。そうじやなくて、これが遡及して過去の行為を問われるというような法律を作る場合においては、私は立法者として考えるべき筋合いのものである、こう申上げておるのです。
  30. 高辻正己

    政府委員高辻正己君) 只今伊藤先生の御意見は私にはよくわかつているつもりでございます。ただ只今の引例は、必ずしもこの場合に適切であるかどうかわからないとうふうに附けて申上げたわけでありまするが、それはやはりその法理の、冷やかなる法理の面からだけ申上げまするならば、これはやはり過去の事実ということもありまするけれども、それは将来の虞れというものがなければ処分はできないのでございます。実はそこにこの第四條なり第六條なり制限があるわけでございます。一応そのことだけお答え申上げます。
  31. 伊藤修

    伊藤修君 法律を冷やかなものと考えることはよくないと思う。私は法律は涙あり血あり、熱情を持つものである、常にこう考えておるのです。ともすると一般国民は、法律は冷やかなるものである、無情のものである、こう考えるのです。このあり方はよくないと思う。法律で定めるそういう規範、準縄というものは、これ自体が我々の生活を幸福ならしめるものだ。従つて法律に親しむ、法律の下に生活することが、より以上国民生活を幸福ならしめるものである、こういう考え方の下に法律は執行すべきものだ。法律は冷やかなものである、厳格なものである、鋭いものであるという、こういう考え方は私は立法者として回避すべきものであると思う。又今御説明の、この場合にはあとにおいて、いわゆる施行後犯された行為によつて批判する、そうして過去を振返つて見るだけであるから、だからそれによつて著しく国民権利を制約するものではないではないかというような御説明の、そこまではおつしやらんけれども、そういう御趣旨の御答弁のようですが、私の申上げるのは、勿論この法律施行後なされた行為によつて規制されることは当然です。それがなければ規制されません。併しその場合ですよ、遡及しないという原則が打ち立てられてりおますれば、施行後一回なされた場合においては、それによつて直ちに規制されるかどうかわかりませんが、この法律自体は又規制されないのが多いというふうに御説明の御趣旨にも出ておるのです。して見ますれば、本来ならば規制されないという事実上の行為が、過去のことを振返るという原則がここに認められるから、遡及するという原則が認められるとするならば、それがとつて以てその一部をなして規制される結果になる。そのとき国民はその基本的人権を制約されるのではないかと、こう申上げるのです。だから全部が遡及するというのではなくして、一つ行為のうち半分だけは遡及されて、この断罪の法制要件の半分をなすのじやないか、厳格に言えばですよ、それはよくないじやないかと、こう言うのです。だからその点に関するところ遡及原則をここにも厳守するのだという御答弁を得ればともかくとして、それができないというならば、それは国民生活を著しく制約する 不合理なものである。少くとも国民がこの法律を、仮にこれが施行されまして守られる、守られなくてはならんという場合においては、国民はこの法律施行の日から過去を改めてこの法律の下に生活することに考え及べばいいのです。その過去においてなした行為によつて、それをもとつて以てこの中に注ぎ込んで、取入れて、そうしてそれを規制しようというお考え方は、私は政府において血も涙もないやり方だと思う。一口に言えばだから法務総裁が、そういうことは先ずない、こういう御答弁でも伺えれば多少、法理論は先ず第二として、私は法務総裁の行政的の責任措置としては納得できるのですけれども、さもなければ納得できない。法務総裁の御意見を伺いたいと思います。
  32. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) 只今伊藤委員仰せになつたことをつぶさに伺つてみました。一応の御議論として拝聽いたしました。  そこでこの法案の骨子をなすものは、要するに暴力的破壞活動を行なつて国内の治安を擬乱しようとするような団体規制することがその目的であります。過去において破壞活動をなした、無論法規に違反せざるものといえども壞活動をすること自体は私はよくないと考えております。併しさような団体でありましても、これはそれだけの事実で以てその団体規制するわけではないのでありまして、今政府委員から申しましたように、骨子は将来の危険性、いわゆる反覆継続して暴力的破壞活動をなす団体規制するということが主なる目的であります。ただ過去に振り返つて、果してその団体が正し行き方をしておつたどうか、これが一番に考えられる点でありまして、過去においても暴力的破壞活動をなしたのだ、そういう団体は、振返つて過去を見又現在を見てもやはり反覆継続して破壞活動をするのじやないか、そういうことは許されることはできないのであるから本法において規制しようとするものでありまして、要は現在を直視し、将来果してその団体が暴力的破壞活動をなすかどうかということに目的があるのであります。ただ過去を振り返つて、それを参考にしてこの規制をすべきや否やということをきめるのであります。過去においてさようなこともありましても、将来反覆継続して破壞活動をするような危険のないものはこの法案の対象となるものではないのであります。この法案の実際の運用につきましては十分にその点を考慮いたしまして、今伊藤委員仰せになりましたような点につきましては慎重に取計らつて行きたいと、こう思います。
  33. 伊藤修

    伊藤修君 法務総裁の前段の御説明はしばしばお伺いした点であつて、十分よく了承しております。法律の目的はもうすでに繰り返されているのですから、それをお伺いしたいとは思わないのです。ただ私は先ほどから提示している問題についての取扱について、ここに第四條に、「継続又は反覆して将来さらに」と、こういうことは、この表現自体が過去を指していることは十分です。その過去を法律施行後の過去に私は置き換えベきだ。少くとも法律運用の上においても法務総裁がそれだけの考慮を払われることのほうが却つていいんじやないかと思うのです。だからこれを具体的に私は申上げますと、例えばこの間のメーデーの例をとれば、メーデーに参加してあれによつて違法行為者として起訴されている、これらの人々は何々団体に属する人である。そうするとその団体の構成員であつて、而も場それが無論どういうふうな調べになつているか存じませんが、調べた結果、或る会合において、仮にメーデーにおいてこういうことをしようというような決議があつたといたしますれば、正に第四條に言う「継続又は反覆して将来さらに」という、その前に持つて来てこの標準に加えられて、直ちに本法施行規制されるということになるのです。これはその当事者としては思わざる結果を招来する。これから悔い改めるという、まああなたがたから言わしめれば……。我々から言わしめますればそうではないのですが、あなたがたから言わしめれば、これから悔い改めて行こうとしている矢先に、あに図らんや、過去のことをとつて以てこの法律によつて規制されるという非常に不合理な結果になる。国民をして不測損害をこうむらしめる。あなたがたから言わしめれば折角善に帰ろうという気持をますます向うへ押しやつてしまうということは政策上から言つてもよくないと思います。この点は法務総裁としても政治的にお考えになるべきじやないかと思いますが、如何でしよう。
  34. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) 申すまでもなく団体規制するということは、これは各方面に影響するところが重大であります。軽々にやるべきではないと思います。過去の実績についても、これは一度間違つたら直ぐ将来もやる危険があるというようなことは決して我々も考えておりません。過去の事柄についても十分に注意を払いまして、その点については措置して行きたいと考えております。今の御引用になりましてメーデー事件のごとき、我々はあれだけの事柄を以て直ちに過去の実績と考えるかどうかということについては相当の考慮を要するものがある、こう考えております。
  35. 伊藤修

    伊藤修君 まあ最近の問題としてはメーデーですが、相当の考慮なくしてメーデーのごときは当然考えないというお言葉がほしいですね。又もう一つの例を以ていたしますれば、例えば特審局において目に角を立ててやつていらつしやるいわゆる共産党に対しては過去において幾多の例がある。それをとつて以て直ちに規制するというようなことも考えられるのですね。これはいいか悪いかは別問題としまして、そういうことも考えられる。でありまするからこの問題は私は重要な拠点をなすものであると思うが、重ねて法務総裁の善処方についての私は政治的御意見の明確なるものを求めたいと思います。
  36. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) 只今伊藤委員の言われましたように、この運用につきましては相当政治的な考慮を払つて万違算のないようにいたしたいと思います。
  37. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 今の問題に関連いたしまして法務総裁に伺つておきたいのですが、前回に私がお伺いしたときに、本法はいわゆるナチ立法的なものではないという確信を伺つたのでありますが、ナチの立法は御承知のように法制定以前に遡及するという原則を含んでおります。甚だしきに至つてはその人の出生、生まれたときにその人がユダヤ人であつたということまでをも問題にする、こういうようになつております。これは今のお答えが一応伊藤委員に対する答えということになつておりますが、問題はその法制定以前には破壞活動というものはない。この法によつて初めて破壞活動というものがここに規定されるのです。ですから法制定以前のところにまで遡つて、そうして法制定以前にあつた何らかの行為が、法が制定された後に破壞活動とされて、その破壞活動そのもが今後繰返されるかどうかというふうにそこから始めるというところにはナチ立法に共通したものがあるという批判を受けざるを得ないと思うのです。この点について私はこの際法務総裁が高邁なる識見を持たれて、いやしくもナチ立法に類するのじやないかと言われている批判を一掃されて、この法制定以前についてのものについてこれを破壞活動認定する、そうしてこの法を適用するということはしないというお答えを頂くほうが、本法を今後運用される上において明朗な空気がここに生まれるというような法務総裁の御趣旨とも相一致するのではないか。そうしませんと、先ず本法についてこれがナチ立法に類するのじやないかという疑いを生じて来ます。それから続いては政府は今後そういうことを盛んにやるのではないかというような疑いが発生して来ます。従つて伊藤委員が繰り返しおつしやるように、いわゆる法治国として、民主主義国として、国民が安心して、そうして絶えず改善の方向に向つて行くというような意味の努力がふみにじられることになりはしないかという点が第二に加つて来ると思うのです。  それから第三に、これはやや場合が異る場合ですが、これは先日もどなたか多分澁澤さんであつたと思いますが、澁澤さんが、昔一高に徳富蘆花が見えられて、そうして謀反論という講演をされた。そうしてそれはまさに幸徳秋水の事件があつたときだけれども、併し蘆花が演壇に立つて、吉田松陰にしてもいわゆる当時は謀反ということで処刑された人だ、併し今日は志士となつている。幸徳秋水という人も神が支配する社会になつたらば志士ということになるかも知れないという講演を幸徳秋水事件の直後にされて、深い感銘を與えられたというのですが、そういうところに私は高い政治的な、そして民主主義というものを発展さして行くという積極的な我々の方向があるのじやないか、そういう点から第一には、ナチ立法というものの疑いを一掃されるという意味で、本法制定以前の行為に遡つてそれでこれを破壞活動となす、そしてこれが今後反覆して繰返されるかどうかというふうにそこから始めることをやめて、本法制定以後破壞活動をなした者は、一回それをやつたとして、その後それが継続反覆されるかというように適用されるのが、これが公正な適用の方法だというようにお考えになつているのじやないかと思うのですが、この点を明らかにして頂きたいと思います。
  38. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) 先ず申上げておきたいのは、私が繰返して述べました通り本法は決してナチの立法とは異にしておるのであります。御承知通り、ナチスの立法というものは、全体主義政治を推進するために作つた法律であります。これがナチスの法律の私は主流をなすものと考えております。そこで非常な無理があつた。今羽仁委員仰せになりましたように、過去の行為に遡つてこれを罰しよう、或いは追放しようというような乱暴なことまで行われたのであります。この法案におきましては繰返して申上げました通り、つまり日本の憲法に定められました国家の基本秩序並びに刑法に所定されました凶悪なる犯罪を行い、又将来行わんとする団体規制し、又これに基く刑罰法規を補整することを目的としておるのであります。でこの第四條におきましても、要は国家の基本秩序を破壞するような暴力主義的団体規制することが主なる目的であります。これは反覆継続して行われるということになりますと国家の基本秩序が維持できない、いわゆる治安が確保できない、それでそういう団体規制するのでありまして、過去における行為そのものをとつてその団体を毫も規制するというわけではないのであります。ただ過去においてそういうことを行なつた団体は将来においてもこれを行う危険があるのじやないか、この危険性を反省してみるについて重要な資料になる。それをとらまえておるのであります。併し実際のこの法案の運営につきましては、今伊藤並びに羽仁委員仰せになりましたように、過去の事柄についてはこれは一切放擲して、現在の行為、活動のみを目的とすればいいじやないかと……、一応の私は御議論だと思いますが、最もこの法案の運用につきましてはさような点につてい十分考慮を払つて行きたい、こう考えております。ただ過去に行われたものでも、これはこの法案の運用につきまして必要な一つ資料になるのであります。それがどこまでこれを対象として行くかということについては重大な点でありまするから、それらのことにつきましては法案実施の曉において政治的に私は十分考慮を払つて、主として現在如何なる危険性を持つておるかということに重点を置いて行きたい、こう考えております。
  39. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 今の点で……。
  40. 小野義夫

    委員長小野義夫君) その次に、もう何ですから……。
  41. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 じや簡単にしますか……。
  42. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 簡単に要点だけおつしやつて下さい。
  43. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 本法制定以前の行為についても破壞活動認定されるというようなことになりすといろいろな問題がそこに出て来ます。例えばどこまで遡るか、これは明治時代にまではまさか遡らないでしよう、今言う通りに……。併し大正時代、昭和時代にも遡る。そうすると大正時代に治安維持法で引つかかつた人というのは、それはやはりその事件によつてこれを破壞活動というふうに持つて行く。それかどの辺まで持つて行くかということについてどの辺でそれを切るということは法理論上できないですよ。そうでしよう。ですからこの法の不遡及という民主主義の原則というものは、飽くまで尊重せられるのがいいのであつて、若干の場合においてそれらが、さつきから伊藤委員が繰返しおつしやるように、それらが国民の利益となるという場合においていろいろな場合があり得るにしても、本法のごとく基本的人権制限するということの制限が、憲法違反にならない、又法務総裁がおつしやるようにナチ立法に類するようなものにならないといういうなことであれば、原則的に本法制定以前の行為を破壞活動認定することはできないというようにして出発されることが、これが実に当然のことじやないかというふうに思うのですがどうでしようか。
  44. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) 只今この過去の破壞的活動行為がどこまで遡るかというような御議論でありまするが、それは現在反覆継続して、さような破壞活動をするという団体規制する目的に立つのでありますから、この繋がりはさように古くあるべきはずは常識から考えてみてもないはずであります。我々のこの考え方といたしましては、重点はどこまでも現在を考えておるのでありまして、ただ過去においてどういうことをやつたかということは、十分これは反省し、これを考えてみなけりやならんのであります。その繋がりの点に重点を置いておるのであります。過去の破壞活動行為そのものを以て直ちに規制しようということは毛頭これはないはずであります。ただ将来さようなことを反覆するということについての危険性を反省してみたい、こう考えておるのであります。運用の点につきましては十分に考慮を払つて行きたい、こう考えております。
  45. 片岡文重

    ○片岡文重君 これに関連してもう一言聞いておきたいのですが、この運用の面において十分なる考慮を払われるという回答が恐らくなされるだろうと、私はこれから御質問しない前から回答がわかるような気がするのですけれども、例えば過去における行動を今後における規制の参考にされるという点で、今までの結論が導き出されておつたようでもありまするけれども、御承知のように団体というものは、常に創設されてから終始理事者が、代表者その他が一貫しておるわけではございません。特に労働組合等においては、内部が複雑した場合には、早ければ一カ月、二カ月、少くとも一カ年以上の任期を以て今日行われておる、代表者が一カ年以上の任期を以て執行の衝に当つておるというところは少いと思う。当然一年経てば、たとえそれが実際には再任され或いは留任するような場合があつたとしても、それは組合がノーマルな進行を続けておる情勢にある。組合が複雑な内容になつて参りますれば、終始代表機関というものは変動して参ります。従つて今日行われた行動が今後における規制の参考資料になるというようなことには直ちにはなり得ない。なぜなればその機関の、その団体の指導機関というものが変つて来る、実質的には。そういう点から考えてみますれば、過去に遡つてその団体の行動をそのままこの規制の参考にする、少くともその過去の行動を以て規制をするということにはならない。今の団体の過去における行動を以て今後の処分を行うということは極めて私は乱暴だと思う。で、今日例えば不幸にしてこの法案に触れるような行動が、少くとも被疑行為がなされたとしても、それはその機関のその時の決定に従つてなされたかも知れないが、団体自体は多くそれに反対をしておるという場合も当然考えられるのです。そういう場合に一体どうしてそれじやそれらの制定を下すのかということも当然考えられるのであつて、複雑した団体の行動というものを考えるなら、過去における……今までの政府委員各位の御答弁になつたような考え方で行くならば、健全な団体が、民主的な団体が、不測の拘束を受ける、規制を受けるということが十分考えられるのでありますけれども、そういう点についても、そういう点をお考えになつてもなお今までの御答弁について変更はなされないのかどうか、一つ法務総裁の御意見を私は伺つておきます。
  46. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) 只今の御議論は実際に即した御議論だと考えております。全く私は尤もなことだと思います。併し団体の首脳部が変つた、過去において破壞活動行為をやつた、併し今は団体はもう全部首脳部は変つておるということになりますと、もうこれは問題はないのであります。現在破壞活動をやる団体があるとする、併し過去においてその団体が首脳部こそ違つておれ、やつた事実がある、こういう場合どうかということであります。首脳部が変つておりますれば、自然その団体の構成というものが変つておるわけであります。それらの点につきましては十分この規制をするときに考慮に入れらるべきは勿論のことであります。ただ漠然と過去において破壞活動行為を行なつたからということだけでは、私は直ちに以てその規制の対象とすべきものではない。過去においてやつたその活動の範囲とか或いは首脳部はどうであつたか、いろいろな点から考慮いたしまして、そうしてその団体が現在破壞活動をやらんとし、やる危険がある。その結びつきにおいて十分な考慮を払わるべきものと考えておるのでありまして、さような点についての私は御疑念はないとこう考えております。実際の運用においては十分にそれらの点について慎重にやるべきであると、こう考えております。
  47. 伊藤修

    伊藤修君 次の問題に入れる前にちよつと一言申しておきたいのですが、どうも法務総裁とお話申上げておりますと、お人柄もありますけれども、私に対して同じことをおつしやるのですね。例えば今の本法は兇悪なる犯罪者を取締るのだと、こうおつしやるのですが、それはよくわかつておるのです。では我々がかくも長い日にちですよ、あなたに御述惑をかけて、職務の執行を妨害しておるわけですから甚だ申訳ないと思いますが、且つかくも長い日にちをかけて、微に入り細に入つて質問申上げるゆえんのものは、この法律の構成が余りにも杜撰なのです。失礼ですけれども、余りにも杜撰なのです。だからそういう兇悪犯罪をあなたは取締ると、これは間違いないのです。そうではなくして、そういう目的は本法においては達せられなくて、むしろ徴々たるものに、本来ならば適法行為であるというものをもいわゆる破壞活動者認定される。極印づけられるという慮れが多分にある。これを恐れるからあえて御質問申上げておるのです。さつきから例えば文書、図画の問題にしてもそうです。人を殺す、汽車を顛覆させる、内閣を破壞するという意図は本人はないのです、併しその人の言葉の言い廻しによつて、過激に亘りまして、そう推定し得るような言論がなされる場合は十分あり得るのです。又日常茶飯事として見受けられるのです。これは法務総裁においても、私は常識の豊かなおかたとして十分御肯定になると思うのです。又新聞記事においても然りであります。又第三條第二号のリの場合の公務執行妨害を一例にとりましても、たまたま集会、結社をされまして、集団行動があつた場合において、何らかの感情の行違いで以てこれを取締るところの警察官といさかいがある。肩がすれた、手がすれた、足を踏んだ、擦過傷ができた。こういう事実が現出いたします。たまたまその団体は、団体の行動を表示するために党旗なり団体旗なりを持つてつたといたしますれば、その団体旗たる旗竿は本法に言う兇器に当るのです。旗竿であるという本来の性質が、そうした事態が惹起いたしますれば、これが法的に今度は兇器に変るのです。そうすると正にごのり号に規定するところの兇器を携えて公務員に暴行をなした、公務執行妨害をなしたという認定を受けることは十分考えられるのです。又煽動の場合でもそうです。而しそれが調査官というレベルの低いかたの一応認定によつてその事件が取上げられる。その取上げられた結果ですよ。最統段階において無罪となり、破壞活動者でないという認定を受けても、その段階に至るまでにすでにその人の政治的生命、社会的生命というものを失うのだ。こうしたものまでが容易に本法においては取込まれる虞れが十分認められるが故に、我々はこれに対して、あなたたちの貴重な時間を費し、我々も貴重な時間を費してこの審議に当つているわけです。あなたのおつしやるように兇悪なる破壞活動というなら何をかいわんやです。それだけの規定なら、ああどうぞと言つて、一分間で決定して差上げます。そうではない、そういう点がたくさんありますから、声を大にしてあなたに御質問申上げておるのですから、その意をよく体して御答弁願いたいと思うのです。如何ですか。
  48. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) この法案の骨子をなすものは、しばしば申上げました通り、先ず第一に国家の基本秩序を暴力を以て破壞せんとする者、又は政治上の主義若しくは施策を推進し、若しくはこれに反対せんがために刑法所定の兇悪なる犯罪行為をなし、なさんとする団体規制及び刑罰規定の補整であります。  只今伊藤委員仰せられました三條の公務執行妨害の点であります。これも私は非常に考慮いたしておるわけであります。要は兇器若しくは毒劇物を携えて、多衆が共同してやる行為であります。そこで今極く些細な問題でありますが、旗竿のことを御引用になりましたから申上げるのであります。このメーデーのときを見ましても、これはもう目的は単純なる旗竿ではありません。これは伊藤委員にお見せすれば十分御了解を願えると思います。検察庁に押収しておるものもあります。警視庁に押収しておるものもあります。私は見て愕然としたのであります。実にこれは我々は予想もしなかつたような兇器であります。表面は或いは旗竿と申してよいか或いは旗と申していいんですか、その内容に至りましては到底我々の普断想像しておつた以上のものであります。さようなものを持つて行つたり、或いはこの毒劇物を携えて多衆が共同してやつたり、そういう行為はこれはどうしても治安維持の面から見て捨てておくことはできん。これであります。ただそこらでデモをやつそうして旗竿を持つて騒いでおる。それがたまたま巡査と衝突してやるというようなことは、これはこの法案の決して対象としておるところではありません。要は内容的にこれを十分見まして、さような人々を多数殺傷したり或いは劇毒物で以て人の体をこがしたりするようなものを携えて、いわゆる暴動的な行為をやるようなことを規制して行く、こういう次第でありまして、普通の我々が散見するようなああいうような集合的の行動については毫もこの規制の対象となるものでない、我々はかく確信しておるのであります。要は繰返して申しまするように、国家秩序から見まして止むを得ざる集団的破壞活動に関する問題を対象としておるのであります。
  49. 伊藤修

    伊藤修君 後段のほうでいいことをお伺いしましたが、その前段の、いわゆる旗竿類似のものでもいわゆる兇器というようなものにこしらえ上げたものを往々使つておることは私も知つております。神戸あたりの大衆行動の場合においても竹槍式のもの、仕込式のもの、いわゆる兇器と直ちにそれ自体認定し得るものを使用しておるものもあります。こういうものはその物件そのものを見ても、ここに言う兇器を携えるといつたことになることは、これは当然のことと思います。私はそういうものは指していない。又劇毒物を携えて来れば、これ又容易に認定できると思うのです。そうではなく真に旗竿として持つて来るというのが通常のあり方です。それはたまたま旗竿を以て殴つたからと言つて、それは判例の上から言えば、その場合は旗竿変じて兇器となるのです。そういうものをも兇器としてここに包容して、直ちにこの條件が完備するものとして、破壞活動として認定することは非常に心配になる。今法務総裁のお答えによりますれば、そういうようなものは当然取締らない、ここには認めないと仰せになりますれば、私はその点は安心いたしましよう。先ず旗竿の点だけは、これは従来の御見解だというと、これをも含むようなお答えがしばしばあるのです。こういう場合においては私はそういう旗竿は兇器として取扱わないのだ、いわゆる兇器とみなされておるもの、兇器として使用し得るもの、そういうものを指すものだという法務総裁の御答弁伺つておきたいと思います。
  50. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) 今伊藤委員仰せになる、全くその通りであります。私はそう解釈しております。一見直ちに人を殺傷し得ることが客観的に見てもわかるもの、私はそう解釈しております。ただ我々の経験するところによりますると、これがあるのです。表面全く普通の旗竿である、旗竿と申しては語弊がありますが、旗と変りがないものがある、或いはプラカードと違わないものがある。それが一かさめくれば兇悪なる兇器となる場合がある。表面はわかりません。そういう場合にどうして取扱つて行くかということは一つの問題であります。併し私はそれが使用されるもの、現場においていわゆる状況においてこれが兇器となるかどうかということは私は一つの大きな観点になる、こう考えております。普通にそういうものを持つてつても、これは直ちにそれを以て兇器とは言えないが、一たび乱闘となつたときに、それが変貌して人を殺傷することが直ちにわかり得るようなものは。これは兇器と言つて差支えなかろう。伊藤委員仰せになりましたような普通の旗竿、これを振廻したところでこれは私は決して兇器になるものではない、こう考えております。
  51. 伊藤修

    伊藤修君 本法のりの場合におけるところの兇器とは。いわゆる通常その用途において旗竿であり或いはステッキであるというような場合には、いわゆる本法の兇器には入らない、この兇器とは、そのもの自体において十分人を殺傷し、傷つけ得る、そういうものを指すのである、こう解釈することにこれは一致してよろしいですね。  次に第二点としてお伺いしたいのは、本法の第一條、第四條、第六條中に「団体の活動として」と、こういう表現が用いられている。これに対しましては各委員からしばしば御質問がありましたのですから、その点は重複を避けます。私の本日確めておきたいことは、従来の答弁によりますると、いわゆる団体の意思決定ということが基本的に考えられて、その下に御答弁がされておるように伺うのです。少くともこの「団体の活動として」ということは、団体の意思決定があつた場合を指すのであるという答弁に一致しておると思います。いろいろ言い廻しがありますけれども、そういうように一致しておると思いますが、如何ですか。
  52. 關之

    政府委員關之君) お尋ねの通りでございます。団体の意思決定があつて、それに基いて行われた行為団体の活動に相成るのであります。
  53. 伊藤修

    伊藤修君 それでは基本はそれで確定しておきます。そういたしますと、団体の意思決定は公然或いは非公然においてなされることがありましよう。少くとも団体活動としてなされる以上は、他の委員からも御質問がありましたごとく、会議の体制というものは規約その他によつてこれが絞られて参りましよう。そうしてなされた合法的な意思決定であるということについてはりこれも異論はないのですね。
  54. 關之

    政府委員關之君) 合法的と申しましようか、とにかく団体の各種の規定乃至はその団体の組織上の條理によりまして、それが団体の意思決定であるというふうに認められるものがありまするならば、それが団体の意思決定になる、かように考えるのであります。
  55. 伊藤修

    伊藤修君 條理においてという言葉ですがね、そういたしますと、瑕瑾のある意思決定というものは、條理に含むのか含まないのか。
  56. 關之

    政府委員關之君) 意思決定の瑕瑾は、そういう意思決定があつたかなかつたかという問題に関連する問題でありまして、その瑕瑾の程度によりましては、それは団体の意思決定ではないということに相成るかとも思います。
  57. 伊藤修

    伊藤修君 瑕瑾の程度と言いますと、例えば規約に違反し、若しくは会議形体をなしていないというようなこと、或いは規約にはないけれども、その会議の常識に反する、例えば多数決ということは、会議の規約になくてもこれは常識でありますが、意思決定の常識として認められるところあり方、こういうような瑕疵があつた場合においては如何ですか。
  58. 關之

    政府委員關之君) 大体お尋ねの通りと存ずるのであります。
  59. 伊藤修

    伊藤修君 そういう場合は意思決定がないというふうに御説明になるわけですか。
  60. 關之

    政府委員關之君) お尋ねの点は、団体について多数決によるとかよらないとかいうことがきめてない、その場合に多数決によつて或る団体全体としての或ることをきめたという場合に、それが団体の意思決定となるかどうかというふうに拝承いたしたのであります。さような場合には団体の意思決定があるものであるというふうに考うべきものと考えております。
  61. 伊藤修

    伊藤修君 それは当然であります。その場合は当然です。私が聞いておるのは、そういう場合に多数決によらずして、一、二の強力なる意思表示がその多数を制して決定した、いわゆる規約にはないが、條理には反するわけですね、常識にも反する、そうした瑕疵のある意思決定はこの場合において認めるか認めないかということです。
  62. 關之

    政府委員關之君) お尋ねの問題でありまするが、その一人が勝手に自分一人で似て、これが団体の意思というようなことになつて来ますると、それは勿論団体の意思ではないのであります。併しながらやはり団体の、今申上げたような設例におきますれば、団体の討議にかけて、それが多数決によつてきまつたということに相成りますれば、それはやはり団体の意思決定ということに相成ると思います。
  63. 伊藤修

    伊藤修君 私の質問をよく聞いて下さい。多数決なら問題はない。又一人がやれば問題はない。そうでなくして、一人の強力な意思表示が他の者を制圧して、多数決によらずしてそれが決定された場合、本来ならば決定じやない。決定されたという形式的形骸を残して、それが多数の意思決定として発動した場合に、即ちその意思決定は瑕疵あるものと言わなければならん、本質的には……。そういう瑕疵ある意思決定もなお団体の活動としてという意思決定に入るのかどうか、こういうことを聞いておる。
  64. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) 御質問のような場合は、意思決定がないと認められる場合が多かろう、問題は、具体的な事実につきまして判断さるべき問題でありまするが、少数の者が威迫いたしまして、多数の者が反対しておるのにかかわらず、威迫して少数意見団体の多数意見と仮装するような場合、これは意思決定はないと見るのが当然じやなかろうかと思います。
  65. 伊藤修

    伊藤修君 それは余り論議しても仕方がないが、要するにあなたがたの基本的な解釈としては、団体の活動としてと、こういう表現は団体の意思決定があつた場合を指すのである、こういうふうに確定的にこれは解釈をしてよろしいですね。
  66. 關之

    政府委員關之君) お尋ねの通りであります。
  67. 伊藤修

    伊藤修君 そういたしますと、判例によりますと、共謀共同正犯というものは今日は動かんところの判例ですね。こうした場合におけるところの会議形態によつて意思決定がなされば、そこに列席しておつた者は少くとも共謀共同正犯として、正犯行為として処罰できるのじやないですか、この点如何ですか。
  68. 關之

    政府委員關之君) その謀議の内容如何、そうして刑法の條件に合致する場合ならば、お尋ねのように犯罪として共謀共同正犯として処罰する場合もあるだろうと存ずるのであります。
  69. 伊藤修

    伊藤修君 お互いに質問しておるのですから……、前提は犯罪あり、犯罪事実に対するところの会議を開いておるという前提の下に話しておるのです。犯罪事実がなければ問題にならないじやないですか、初めから……。そういうことでなくして、事実に対して、こうした会議をして団体の意思を決定する、こういう場合を想定してお尋ねしておるのです。その場合においては、なるのかならんのかということです。
  70. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) 或る団体におきまして多数の者が或る犯罪を共謀するということがあるわけでございまするが、お尋ねの共謀共同正犯と申しますのは、恐らくその犯罪を実行するにつきまして、各人が共謀し、且つこれに同意し、而もその実行を分担したという場合であろうかと存じます。そこで刑法上の問題といたしましては、かような場合には勿論全員共同正犯として刑法六十條の適用があるのでございます。従いまして只今お尋ねの点につきましては、若しそのうち数個の者が反対した場合どうなるかということを当然お含みだと思いますが、さような場合におきまして、数個の者がその犯罪の決議をする際に、自分は反対だ、従つておれはいやだ、やらないという場合には、これは当然犯罪から除外されるわけでございます。
  71. 伊藤修

    伊藤修君 それじやそれで明確になりました。
  72. 小野義夫

    委員長小野義夫君) ちよつと伊藤君に御相談申上げますが、昨日宮城委員より御質疑がありまして昭和十六年十二月八日朝の共産党転両者検挙事件について刑政局長より答弁をいたしたいということですが、よろしうございますか。
  73. 伊藤修

    伊藤修君 それはあとで、質問中でなく、関連がないから……。  それじやお尋ねしますが、今の岡原検務局長の御答弁によつてそれは明確になつた、その点は結構です。そうするとその反対した者は勿論共謀共同正犯にはならん、又それに参加しない、欠席した者は勿論ならんことは当然で、言うを待たない。然るに本法の場合におきましては、これらの反対した人も、又参加しない人も、共にこの四條乃至六條の行政規制を受けることになるのですか。何ら責任を負わないところの者が、本来ならば刑事上の実体規定法的効果として、その反射的な効力を行政のほうへ持つて来て、とつて以てこれを基盤にして行政的措置を行う、こういう結果になるのですか。何らの責任のない者が責任を負う、いわゆる無過失責任になる、こういうことが言い得るのですが……。この点に対するところ見解を法的にお伺いしたいと思います。これは佐藤さんに伺いたいと思いますが……。
  74. 關之

    政府委員關之君) 法制意見長官がまだお見えになりませんから、私からその問題についての政府考え方を申上げて見たいと思うのであります。  この法案は緩返し今まで御説明申上げた点でありまするが、要するに団体を基盤として暴力主義的破壞活動が行われる、将来においてそれが継続反復して行われ、明らかに危険がある、それを公共の安全の確保に資するためにこれを規制するという考え方なのであります。そこで私どもとしましては、団体活動として将来さようなことが行われる、そのことが公共の安全に極めて危険である、そういう意味から団体の活動を四條、六條によりまして規制するわけであります。その規制の結果としてお尋ねのごときことにも相成るのでありまするが、これは団体の活動としてさような危険な行為が行われるという上から見て、誠に止むを得ないところのことであると私ども考えておるのであります。
  75. 伊藤修

    伊藤修君 止むを得ないということになれば、人を殺しても止むを得ないということになる。これは皆止むを得ない事情がある。自分の夫たる巡査をばらばらにするということも止むを得ない事情があると思うのです。そんなことを言つたら無茶ですよ。止むを得ない事情があるけれども、その止むを得ない事情によつて規制される団体はそれだけの責任がある。原因もある、又国家においてもそれが必要だとおつしやるのだからよかろう。併し何らあずかり知らない、関與もしない善良な人が、その国家の目的のために犠牲になる、無過失責任をここに負わなくてはならんという法的根拠、又日本の立法例、そういうものをお伺いしたいと思うのです。今後もそういう考え方で立法せられるのかどうか。
  76. 關之

    政府委員關之君) そのお尋ねの点につきましては、誠に御尤もなお尋ねの点でありまするが、私どもとしましては、第四條におきまして、又第六條におきまして非常に條件を絞りまして、その団体が暴力主義的破壞活動を殆んど性格的になす、さような団体にまでなつているもののように思われるものを規制するわけであります。繰返すことでありまするが、過去において暴力主義的破壞活動をした。それが将来において反覆又は継続してかような活動をするということに相成る、そういうような條件でなければこれは規制をかけないわけであります。そういたしますと殆んどそれらの団体は、いわば暴力主義的破壞活動をなすことが一つ性格化したというような団体に相成るのであります。言葉は或いは適当ではないかも知れませんが、少くとも継続又は反覆という点におきましてそういうことが殆んど性格化した団体である。それでかような団体をそのままこれを放任しておきますならば、将来におきまして恐るべき結果が生ずる。その結果を待つて手を下すよりも、公共の福祉を保持するために、必要止むを得ない措置としてこれに規制をかけるわけであります。さような関係におきましてなす措置としてやるのでありまして、その措置の結果といたしまして、或いは反対した者もあつたでしようが、とにかく団体全体として危険な活動が将来あるわけでありますからそれを規制する、そういう建前で行くというようにこの法案は建前をとつておるわけであります。
  77. 伊藤修

    伊藤修君 輝々詳細に法案の建前を今更聞こうとは思わなかつた。これは五十日も伺つておるのですからよくわかつておるのです。法案内容は眼光紙背に徹するほど我々は研究しておるのです。だからそれを改めて伺う必要はない。私の聞いているのは、何のために行為のない人が責任を負うのかと、こういうのですよ。その法的根拠をお伺いしたいというのです。又今後も政府はこうした無過失責任を法律の上で認めるという一つ立法例をここに作るかどうかということを伺つておるのです。何でこれの責任がない者に対して免責條項を入れなかつたかということです。具体的に言えば……。それを十把一からげにして、正にあなたのおつしやる、政府の意図せらるる通りそうした好ましかざらる暴力団体に対して規制をするということは仮にこれを是認するといたしましても、必要であるとして是認するといたしましても、その者がどんな規制をされようと、死刑にされようとどうしようと、それは政府考え方だからどういうふうにおやりになつてもかまいませんが、そうした何らの行為、責任を持たない人に対しましてもそれを一律に及ぼすという、無過失責任を認めるという法的根拠を私は伺いたい。又そうした考え方を今後の立法の上に打立てるのかどうか。この場合だけ特例で立法措置がなかつたのだというのか、或いはそれはミスで、そういうものに対して考慮を払わなかつたことは我々の至らざる点だと言つてあなたが頭を下げるのかどつちです。三つです。
  78. 關之

    政府委員關之君) 団体の活動としてかような、本法案規定するような、かような危険な破壞活動を行う明らかな可能性がそこに見出されるということに相成りまして、その団体の活動に四條及び六條においての規制を加える。そういたしますと、その団体の構成員について所要の規制が加わり、その団体の構成員が規制された活動をしてはいけないということに相成るのは、私は団体規制考え方からの当然のことだろうと思うのであります。お尋ねの点は特に第六條の問題かと思うのでありまするが、その以前の段階であります第四條におきましては、例えば第四條の三号におきましてはこの暴力主義的破壞活動に関與した特定の役職員のみでありまして、その他何らかような活動に関與しない者につきましては規制をかけ得ないことは、第四條の規定上当然と相成つているわけであります。なおこの団体の問題につきましての今日の立法例といたしまして、例えば団体が公共の秩序に反する行為をいたした、これは会社の解散などに一つの原因として挙げてあるようでありまするが、そのときにはその会社の中の特定な者がさような行為をしたが、それはやはり団体の、会社の行為と認められるというような場合に強制的な解散が行われるのであります。これに全然関與いたさなかつた者でありましても、或いは反対いたした者でありましても、会社の解散というその結果はすべての者がそこに受けるのであります。それはやはりさような会社をそこに存立させておくことが、公共の秩序を維持する上にいけない。従つて解散をされた限りにおきましてはすべての構成員、役職員がその結果に従わなければならないということに相成つているわけでありまして、団体規制する、その危険な活動を防止するという考え方から申しますならば、その処分がありまするならば、四條、六條のこの條件に従いまして、構成員、役職員がその規制に従うということは、これは当然のことであると私ども考えるのであります。
  79. 伊藤修

    伊藤修君 今の引例されました場合におけるところのものは、いわゆる本法の第五條のごときことはないのですか。再びその人は団体を作つても差支えないのですか。その団体は、行政的に公共の福祉の観点からしてこの会社を解散させられたといえども、自分が新たに同一名義で以て会社を作ることは許されておるのですよ。その人の権利を十分保護されておる。然るに本法の第五條の場合においては、当該役職員でなくして、「団体の役職員又は構成員は、いかなる名義においても」云々と、こう書いてあります。一たびその団体に属しておつた以上は、それと同様な団体を作ることはでき得ない。而もそれらの違法行為には初めから反対しており、賛成をしていないという人をも同一規制されておるのじやないですか。何ら規制していないとどうして言えるのですか。又第四條の場合でもそうです。組合なり団体なりが機関紙、印刷物を発行するということは、その破壞活動をした当該役職員、構成員の一人の専権のものじやないのです。その団体員、組合員全体の権利である。全体が持つところの利益である。それがたまたま一人の行為つて、自分らは中央公論なら中央公論という雑誌を発行できないということになる。できないだけじやないですよ。例えば中央公論とか改造とかいうような題名はこれは売込んでおる。この題名を使用することは何百万円、何千万円に財産的にも評価できるのです。そういうことも考えられるのです。そうじやないですか。題名は簡単なものだとおつしやるかも知れないけれども、それか一つの老舗です。それが権威があるのです。そういうものが一朝にしてもう使用できないということになる。而も、その原因を作つた人はそれは当然でしよう。原因を作らない人、私なら私の利用するところ権利というものを剥奪されるじやないですか。少しも権利を制約しないと言つているのに制約することは明らかです、本法において……。こうした大きな財産的に、精神的に持つところ権利を容易に無過失責任の下に剥奪されるという法の立て方というものは私は行過ぎであると思う。今日の立法例として稀に見るところの悪法であると言つても、この一点を指しても言い得ると思うのです。これはあなたたちの思い上りですよ。特審局なら何でもできるという考え方の下にこういう無茶な法律を作つたのです。如何です。
  80. 關之

    政府委員關之君) いろいろお叱りを受けたのでございますが、結局私どもといたしましては、団体を基盤として暴力主義的な破壞活動が行われる。これは現下の事態に鑑みて極めて危険である。その団体の活動に規制を加える。或いは四條におきましてはこれは制限的な規制、六條におきましては解散の措置ということになりますと、その危険性を除去することが公共の安全を確保することのためにどうしても措置しなければならない。これは手を供いて見ておりますならば恐るべき実害がそこに発生する。これを防止するという上におきましての措置といたしまして本法案第四條、第六條の規定を設けるようにいたした次第であります。公共の安全に対して危険であり、それをどうしても防止しなければならないというこの建前からいたしまして本法案のごとき程度の規定が最も必要であると考えるのであります。なお第五條におきましては、これはこの脱法行為を禁止したものでありまして、その団体の役職員、構成員の脱法にあらざるその他の一切の団体活動は、これはすべて自由でありまして、新らしい団体を如何にお作りになつても、およそいやしくもそれが脱法と認められない限りにおいてはこれは自由になるわけであります。
  81. 伊藤修

    伊藤修君 これは法の目的はよくわかつているのですよ。その法の目的をよく達成するために何らのあずかり知らん者に対して制限を負わしめるということがよくないのです。そうした法的根拠というものは我々は説明できないのです。その点を言つているのですよ。僕はあなたのおつしやる点は十分わかつているのですよ。脱法行為の第五條の場合においてもそうですよ。ほかの団体を作ることは何ら禁止しないと今仰せになるのでありますけれども、例えば共産党のか、たが他の党名をお作りになつてつても当然それは脱法行為と見られるのですよ。又私が作つておる団体が禁止された、その場合において私の意中の人、私に心服する人が他の団体を作れば、やはり脱法行為とみなされるのです。この人は全然関與してなかつたとすれば、理論的においてできると言つても、事実の上でできないことは明らかじやないですか。又そういうことを抑えようとしてこういう法律を作つているのですから、そんなものを一々あなたたちはかまつた法律はちつとも運用できませんよ。それを抑えようと思つてこの法律を作つているのじやないですか。あなたのおつしやること……、具体的になればこの法律はちつとも動きやしない、如何ですか。
  82. 關之

    政府委員關之君) これは又言葉を繰返すことになるのでありまするが、この法案規制考え方といたしましては、できるだけ第四條の制限的な規制処置で行くということが建前であるわけであります。それで第四條の制限的な規制措置は、団体の活動の部分について規制をかけるのでありまして、その全体がそのためにどうこうする、全体の活動をどうこうするということは考えていないのであります。必要に応じまして、例えば第四條第三号は、これは繰返して御説明するところでありまするが、要するにその暴力主義的破壞活動に関係した最小限度の人を、将来の危険的な活動を除去するために、必要且つ相当の限度においてそれらの役職員、構成員に対して規制をかけて行くというわけでありまして、その他の人はこれは全部自由に活動できるというのがこの法案の建前になるわけでありまして、かような措置を前提といたしまして、なお且つその団体の活動がどうしてもこの制限規制措置をいたさなければいけないという場合にこの六條の解散の指定という措置に出るわけでありまして、それらの点は四條と六條のこの條件の適切なる解釈運用によりまして十分に合理的妥当に賄い得るものであると、かようなふうに考えている次第である。
  83. 伊藤修

    伊藤修君 あなたの御説明だけでは、いわゆる無過失責任についての責任の法的根拠というものはまだ明確でないと思うのです。これは佐藤さんにあとで法的措置を少しお伺いしたいと思う。  もう一つ私は問題をお伺いしたい点は、一体この法を運用なさる場合において、先ほど前提においてお聞きしたごとく、意思決定があつた場合にのみ規制するのだ、こうあるのです。すると恐らく汽車を転覆しよう殺人をしよう、内乱を起そうという意思決定を会議の席上でなされる場合はあり得ないと思うのですよ。これは常識に反すると思うのですよ。あなたも刑事事件をお取扱いになつたことで御存じのことと思いますが、そんな馬鹿な犯罪人はないのです。そういたしますと、そうした合法的な意思決定があつたという基本の下に本法の運用をお考えになりますれば、一つも破壞活動をする団体はないという結論に到達すると思うのです。それでは本法を作る意味がなくなつてしまうのです。然るに本法を遮二無二通そうとなさつているあなたたちのお立場から考えれば、結局はこういうことになるのじやないですか。結果が生じた、汽車転覆という結果が生じた或いは公務執行妨害という結果が生じたと、そういう結果から今度は原因に遡つて、意思決定があつたであろうという推定の下に事を判断するという取扱いになると思うのですが、如何ですか。
  84. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) この点につきましては、先般来法務総裁からも御答弁申上げている通り、今日合法的に活動されておられる大衆団体が正常な活動としていろいろな覇をおやりになつておりまするが、そういう団体只今質問のように内乱とか汽車の転覆とか、殺人というようなことを正常な会議の、席上で決定するということは到底考えられない。誠に御尤もな仰せでありまして、私どもといたしましても、団体がさような活動を正常な会議において決定するというようなことは今日考えられないとではなかろうか。併しながら破壞的な団体がかような活動を団体の活動としてやろういうことを決定するということはあり得るというふうに考えているわけであります。合法的な大衆団体が何か間違いを起しました場合に、その結果から手繰り寄せて、無理にその団体の活動としてそういう行為が行われたということを押付けるというようなことは絶体にこの法案の運用としては行うべきものではないと考えております。
  85. 伊藤修

    伊藤修君 そういたしますと、本法の適用なんということは殆んどあり得ないと私は思う。そのまま今のお言葉をあなたが忠実に実行なさるとすれば、本法を適用する場合は恐らくないと思う。必ず結果から押上げて断定するということに私はなつて行くと思う。まあないとおつしやるようならばそれでもよいのですが、然らば破壞活動をこういう意思決定機関において決定してなしたということがあり得るとおつしやつたが、あり得るとはどういうものがあつたのであるか、あつた事例を一つお聞かせ願いたいと思います。
  86. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) この問題につきましては、我々は今日この法案規定されているような破壞活動団体の活動として行われている疑いを持つているということにつきましては、先般来御説明申上げた通りであります。まだその団体の実態を把握いたしまして、証拠を似てこれを立証してお目にかけるという段階には至つておりません。
  87. 伊藤修

    伊藤修君 そういたしますとあり得るということは、現実にあつた問題ではないのですね。あなたがたが想像してあり得るだろうという前提の下にこの法律を作られたと、こういうことになるのですか。
  88. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) ここで御答弁申上げておりまするのは、この法案解釈の問題でありまして、事実の想定といたしましては、只今申上げました通り団体の活動として暴力主義的な破壞活動が行われているという疑いを持つているというふうにお答え申上げた次第であります。
  89. 伊藤修

    伊藤修君 法務総裁からもしばしばお話がありましたごとく、およそ法律を作る場合においては、今日の段階においてその行為、不行為を取締るという必要が国家においてあるという場合においてこそ初めて法律を作る必要に迫られるのです。過去において何らのそうした事例がないということになりますれば、果して法律を作る目的が、そこに必要性があなたの言うこの二條、三條の必要性、正当性というものが認められるかどうか、正にあなたが自分で言つている言葉は、ただそういうことがありうるだろうという想定の下に法律を作るというお考えか、その点をお伺いしたい。あなたの過去の御経験によつて、どこそこの団体はそういう決定をしてこういうことをした、こういうこともやつた、ああいうこともある、これを取締らなければいけないという意味で立案されているのか、あなたたちの今日までの職務の経験上そういうことがあり得るだろうという想定の下に立案されたのか、その点をお伺いしたい。
  90. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) 団体組織を以て暴力主義的な破壞活動が行われているという疑いを持つ、この疑いは決して我々の主観的な疑いではなくて、客観的な根拠のある疑いである、この点につきましては資料を調えまして先般来御説明した次第でございます。
  91. 伊藤修

    伊藤修君 その資料によつて、それが破壞活動なんであるという事例にはなつていないのです。要するにあなたの疑いの事例になつていることが、果してその疑いが正鵠を得ているかどうかということは容易に認定できないのです、幽霊がある、幽霊があるという下にそれに対するところの対策を立てておると、こういうことになるじやないでしようか。
  92. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) 私どもは決して幽霊とは思つておりません。
  93. 伊藤修

    伊藤修君 然らばその実体はどうだというのです。幽霊でないというな、その実体があるかと聞いているのです。実体はわからないと言つている、わからない下に法律を作るのかと、こう聞いているのです、あなたも責められてはたまりませんでしようけれども、そうしたまあ御使命なんですからお答え下さい。
  94. 關之

    政府委員關之君) 口を替えまして私からお答えいたします。(笑声)当委員会の御審議に御参考までに提出いたしました各種の資料によりまして、かようなものを想像いたしまして、団体組織によつて本法規定するがごとき暴力主義的破壞活動をなす、さような疑いが存在している、私どもはかようにその事態を考えまして、この事態に対処するにはかかる法律が最小限度として必要なものであると確信している次第であります。
  95. 伊藤修

    伊藤修君 まあこれは、この点を伺つておりますと、結局幽霊と押問答しているような形になりますから、この問題はこの程度にしておきます。
  96. 片岡文重

    ○片岡文重君 まさにこの質疑に対する御回答を伺つておると、この法案が如何に杜撰であるかという感じをますます深めるのでありますが、国鉄の曾つての総裁下山氏が自殺をされたのか轢殺をされたのか今以てわかつておらない、御遺族のかたを初め我々知友としては誠に心残りであります。更に日本共産党の有力、有能な指導者である志賀さん徳田さんを初めとする人たちは追放せられて、今どこにおるかわからない。こういう状態の警察、特審局能力を以ていたしますると、この法案の適用される場合を考えて、ますます以て私は世人が不安を感じ、恐怖の念に駆られるのであろうということはどうしても払拭することはできない。今の伊藤委員の御質疑を伺つておりまして直ぐに考えられることは、今或る民主的な団体がたまたまこの法案によつて規制されるような破壞活動を行なつたといたします。その場合にそれがどのような経緯を以てされたといたしましても、たとえそれが調査にどんな困難を感じたといたしましても、明らかに機関の正式決定を以てなされた場合には、これはこの法案の適用を受けるのでありましよう。又それがどんなに形式的には完備しておるかのごとく見えても、それが正式機関の決定でなかつたということが確定されますならば、この法案規制は受けないでありましよう。問題はその決定が果して機関の決定なりや否やの判断がなし得ないで、而も行動はなされておる、行為はなされておる、意思決定が正式であつたかどうかはわからない。こういう場合には一体この法案の適用を受けるのか受けないのか、団体の活動としてなされたかどうか不明な場合にはどうなるのか、その点について。
  97. 關之

    政府委員關之君) これは結局今までのお答えした点を繰返すことに相成るのでありますが、或る暴力主義的破壞活動団体との関係でありますが、それは団体の意思の決定に基いてこの役職員、構成員が行うという客観的な関係が客観的な証拠によつて認定されなければならないのであります。調査いたしましてそういうことに相成らなければこの規制はかけられないということに相成るのであります。
  98. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 簡単に願います。
  99. 片岡文重

    ○片岡文重君 団体がこの行動を行なつておるんでしよう。現実に行為は行なつておるんでしよう。先ほど伺つておると、行為を行わなくても、例えばそこの扇動とか教唆とかいうようなものは、その扇動され教唆された事実が行為となつて現われても、なお且つこの処分を受けなければならない。然るにもつとこの血を流すような大きな惨事がこの或る団体によつて惹起されたといつた場合に、その団体が行なつた行為の意思決定をどこでしたかが不明である。団体が行なつたことは事実ですけれども、その意思決定の機関がどこでなされたか、正式であるかどうか、又団体の意思なりや否やが不明だ。併し行動がなされているという場合に、その団体はこの法律の適用を受けるのかどうか、その点をはつきり伺いたいのです。
  100. 關之

    政府委員關之君) それも結局或る暴力主義的破壞活動団体との間に今申上げたような疑いがありましても、団体の意思決定に基いて行われたものではないというふうに認められまするならば、又意思決定に基いて行われたものであるという客観的な証拠によつて断定できなければ、これは団体行為として、活動として規制はかけられないということに相成るのであります。
  101. 片岡文重

    ○片岡文重君 団体の意思決定であるか否かがわからないということになればこの適用は受けない。よろしゆうございますね。そうするとその前に今暴力主義的破壞活動を目的とする団体とその行動を行つた間の関連が云々という前置きが今あつたようでありますけれども、私のお尋ねしておるのはそういうことではない。この団体だけの関係において行われた場合を今尋ねておるのです。だからその今の御答弁は前置きがあつての話なのか、前置きがなくて、この独立した団体の独立行為としてなされた場合に、その意思決定がはつきりしなかつた、はつきりしないで行われたこの場合にもなおこの適用は受けないのか、それをはつきりしてお聞きしたい。
  102. 關之

    政府委員關之君) 調査の結果団体の意思決定があつたか否かはどうしてもわからないという場合には、勿論この法の規制は及ばないのであります。
  103. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 今のに関連して。今の幽霊問答、それから現実の破壞活動団体との関連なんですが、実は法務総裁のおられない席上でお尋ねをして参りましたが、さつき片岡君から下山事件等が挙げられましたけれども、いずれも一番最近の事例としてはメーデー後の宮城前の広場の事件というのは、私は政治的に利用してはおらんというお話でありましたけれども、その後の文書を示してのお話等からいたしまして、この破壞活動防止法を制定する必要の一事実として政府考えられて来た、或いは国会にも説明されたということは、これは否めない事実であるかと思うのであります。それを否定せられるなら別であります。そこでメーデー後の事件の真相につきましては特審局長は見ておられるということでありますけれども、世に出ております雑誌「世界」であるとか或いは雑誌「社会主義」等にこの問題について第三者の見聞記が載つております。これを見ますというと、もう法務総裁が本会議でなされました事実と非常に違つておるということを私ども感ぜざるを得ないのであります。それでもなおこれは団体の意思決定とそれから破壞活動、メーデー後の事件との間に必然的な関連があるとして、法案の必要の事例に数えられるかどうか。  それからもう一つ、この問題について昨日馬場検事正の御出席がございました際に、これはまああとからの印象では、口が滑つたのかも知れませんけれども、あの使用を禁止せられた場所に入つたということが、一地方の静謐を害する原因になつたかのように御答弁があつたのであります。そうすると宮城前広場の使用云々という点は、これは行政処分もありますけれども、裁判の問題で争われている問題だ、ただ入るということ自身が騒擾になり得るかどうかということはこれは問題だ、こういうことも申上げて参つたのでありますが、それから先は逃げられましたけれども法務総裁御出席の際でありますので、明らかに一つ答弁を頂きたいと思います。
  104. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) この法案はかねてから立案に準備したのでありまして、メーデー事件とは何ら関係はありません。これは私も繰返して申上げたはずであります。ただただこの法案は現下の情勢に鑑みまして、日本の秩序維持のために作成したものにほかなりませんのであります。  それから今御引用になりました「世界」その他の雑誌においての見聞記が云々されましたが、必ずしもその見聞記は真実とは私は考えておりません。真実の点もありましよう。併しながら只今検察庁において鋭意その事件の原因その他について取調中であります。日ならずしてその事実は判明することと考えております。
  105. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 第二点は……。
  106. 小野義夫

    委員長小野義夫君) それでは次に刑政長官より昨日の宮城委員質問に対して簡単に御答弁願いたいと思います。
  107. 清原邦一

    政府委員(清原邦一君) 昨日宮城委員よりお尋ねのございました昭和十六年十二月八日の開戦の直後でありまするが、一齊検挙をした事実はないかということでございます。私ども早速御趣旨に従いまして、昨日小林杜人氏のところ職員を伺わせたのでありまするが、事実を承知しておられるという小林さんがあいにく御旅行中でございまして、お目にかかることはできませんでしたが、当時の職員で調べました結果、多分開戦時の直後だろうと思うのでございまするが、警視庁の管内で非転両者と認められる人々のうち、反戦的の言動のある嫌疑で、数は正確でありませんが、約六、七十名を検挙した。ところが結局証拠不十分でありましようか、それを釈放した、かような事実はあるので、このことだろうと存じます。実は御期待に副いたいと思つていいろ調査したのでございまするが、何分相当日時がたつておりまするのと、戦災のためかどうかは存じませんが、当時の記録が役所のほうにもございませんので、甚だ遺憾でありまするが、この程度の御答弁しかできかねるのでございます。
  108. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 丁度今日は法務総裁もお見えになつておりますので……。実は昨日でございましたか、私がちよつと発言いたしましたのは、丁度大東亜戦争の勅語を拝しました日の朝、つまり昭和十六年の十二月八日の朝、日本全国、数はわかりませんけれども、非常に大量の一齊検挙がございました。今東京で六、七十人とおつしやつたのでございますか。
  109. 清原邦一

    政府委員(清原邦一君) そうです。
  110. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 実はその前の日に今まで長く警察に入れられておりました者が、急に都合があるから出て行けと言つて出された。どういうことだろうと思つたら、翌日そういう者が皆入れられたというわけでございます。その入れられました、警察に引張られたという者は、いわゆる転両者と言われておりました者、その転両者になりましたということは、甚だ自分のことを申しましておかしいのでございますけれども法務総裁も御存じの夫宮城が、治安維持法で随分長い間人を縛りまして、そうして苦労もしておりましたようでございますが、まあその埋め合せか何かわかりませんが、どうしても思想犯を転向させて、中道を歩む人間を作らなければ申訳ないといつたような考えをいたしましたので、更新会に思想部というものを置きまして、思想犯を転向させて、いろいろ面倒を見ておりました。全国に一万人以上ございまして、その当時は大変お褒めを頂いたりして、陛下からも金杯を頂いたようなこともございましたのでございますけれども、そうして折角正しい歩みを守つているつもりでおりましたら、十六年の十二月八日の朝検挙されたという報道が、先ず東京でも七十人もおりましたのでございましよう、朝からどんどん縛られた縛られたということがございまして、そうしておりますうちに地方からも電話が来る、電報が来る、あつちでもこつちでも縛られた縛られたというので、私ども大変心配いたしましたことがあつたのでございます。それで私はそういう経験を持つておりますから、今度のこの法案に対しましても非常に私恐れているのでございます。そのとき縛られました一つの例でございますが、これは名古屋でいわゆる転向いたしまして医者になつておりましたので、その当時名古屋におりました検事と私とで、いい結婚をさせようといつて相手を見付けておりまして、殆んどきまつておりましときに検挙されたのです。その名前もわかつておりますけれども。それがそのために結婚は勿論駄目になりましたのでございますが、困つたことには長く警察に繋がれておりますうちに、下宿しておりました家の総領娘が、少し年も行つておりましたけれども、せむしでございまして、結婚はできない、そういう娘がおりましたのが、警察に縛られたというので非常に同情しまして、毎日差入物を持つて行つた。そういうことがございまして警察から、さあ何カ月でございましたか、随分たちまして、許されましてから到頭その娘と結婚いたすごとになりました。それがせむしの、とてもそれが又背の低い、極端に体裁の悪いせむしでございましたが、とにかく家庭を持ちまして、私どもも勿論その背後におりまして面倒を見ておりましたのでございますけれども、子供が大勢できまして、その医者が亡くなりましたのであります。それで私はその家族を今以て面倒を見ております。私もそういう問題、まあそれは単なる一例でございますけれども、それもありこれもありいたしますもので、実はこの扇動或いは所持という言葉につきまして非常に私は心配し、案じている一人なのでございます。  実のところは昨日馬場検事正にも申上げましたけれども、私も少しは検察のほうの仕事もわかつているはずなんでございますので、この扇動という言葉を抜きました場合、その面の人たちが或いは仕事が鈍るだろうなんという点も私は十分にわかつているつもりなんでございます。その意味で私は全国の検察陣容その他につきまして、少しでも仕事が鈍るようなことをいたしますということは、その点におきましては甚だ私本意でないと思つておりますけれども、又そのためにそれこそたくさんの人が人権を蹂躙されまして、そうして思うことも言えなくなつて、本当にその場限りの生活をするというようなことになりましたら、これは天下の由々しい問題であるというような立場で、止むを得ず私は扇動或いは所持という言葉がございます以上はどうしてもこれは反対しなければならないというように、いよいよその信念を固くいたしたわけなんでございます。  正しい生活をいたしておりました人たちがまあ東京だけでも七十人も縛られまして、全国ではどれくらい縛られたかわかりませんけれども、この人たちが、一例を似て今申しました医者のみならず、みんなそれぞれ私は被害を受けて人権蹂躙、殊にそれこそ殺人にも値いするような結果になつておりますということを思いまするのでございますが、併しこの法律の建前といたします表看板にしてあります点につきましては十分私はやつて頂きたい、集団的な暴力破壞活動をするような者に対しましてはもう遺憾なく私は壞滅して頂きたいと思つておりますけれども、ただこの法律が一部修正されまして通りまして、その曉に私はどういうことになるだろうかということを今非常に案じております。そこで法務総裁に今日は最後のお願いでございますから申すのでざいまするがどんないい法律でも、それを運営いたしますところの人によりまして活きもしますし死にもいたします。でございますから一番今案じておりますところの点は、私は今までの特審局で働いておつた人が即公安調査庁のほうに移るということが非常に心配でございます。でございますからどうかこの際十分に法務総裁におかれまして詮議して頂いて、そうしてこの人なら託されるという人を以て編成して頂きたい。いろいろございますけれども、時間がございませんから、たつた一つ私ののお願いを申上げておきます。
  111. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) 宮城委員の亡くなられました御主人、故宮城司法大臣は私の畏敬せる大先輩でございます。そのかたが刑余者、殊に思想犯についているいる御苦心なさいましたことに対して、私は曾つてを思い出しまして誠に感謝に堪えないのであります。その未亡人であらせられる宮城委員から切々たるお言葉がございました。誠に感慨深いものがあるのであります。殊に扇動の文字について申されましたが、私はこの扇動の文字についていささか宮城委員に御了解をお願いいたしたいと思うのであります。  私も子供があります。又私は幸いにして幾多の若い青年の知己を持つておるのであります。これらの人と日夜私は交りを深うして語り合つております。この人たちこそ本当に今後の日本の再建に努力して頂きたいと常々語り合つておるのであります。私はこの法案を作るにつきましても、決して若い人たちに誤りのなからしめるように深き考慮を払つておるのであります。私は今一番心配しておるのは、若い純真な人たちが多くは扇動に乗ることであります。人に扇動されて動くということであります。日本の民主主義を確立するについては、どこまでも個人が自主性を持たなければいかん。扇動されるようなことではいかんのである。私は前々から言つておる。どこが一番民主主義のあり方において必要であるか。個人で申しますれば、いわゆる責任感と自主性であります。アメリカの或る人はいみじくも言つております。アメリカの将来を繁栄させるのはいわゆるリスポンシビリテイとデシジヨンだ。みずからの責任においてみずから決定し、みずからの力によつて行動する、これがなくつちやいかん。ところが不幸にして今の青年はこの自主性が欠けております。人の扇動に乗るのです。この扇動ほど危いものはありません。而もこの法案において目指すところは、いわゆる日本の基本秩序を乱すような兇悪な犯罪、殊に刑法に所定されました暴力的犯罪、これらを若い人たちが扇動に乗つてやるということになりますと救えません。この扇動に私は一番重点をおかなくちやならんと思います。扇動する青年はありません。扇動される青年があるのです。その青年を我々は救いたいのであります。ここに私はこの法案の重点を置きたいと思います。扇動ほど恐しいものはありません。この扇動が国家の秩序を破壞する最大原因と私は確信して疑わない。この法案において扇動を抜くということになりますと、これは骨抜きになつてしまう。扇動こそはこれは何としても対象にしなければいかん、こう考えておるのであります。どうぞ我々の意のあるところを十分御了解を願いたいと思います。(「コ扇動しちやいかん」と呼ぶ者あり、笑声)  而して特審局の調査員、今度の公安調査庁あり方について申されました。我々は今後この公安調査庁を構成すべき陣容については深き考慮を似て取計らつて行きたい。いやしくも世間の疑惑を招く、世間の信用を失墜するようなことはあつてはなりませんので、この点については十分考慮を払いたいと、こう考えております。
  112. 伊藤修

    伊藤修君 今宮城さんの御質問に対して法務総裁が、扇動こそはとおつしやつたのですけれども、若し扇動こそは本法の主眼であるというならば、刑法の中に一つ扇動に対すところ法律をお作りになつてつたなどうです。本法は要らないじやないですか。それほど扇動に対して御執心がおありになるなら刑法のほうで一つ堂々と書いたらどうです。
  113. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) かねがね申上げておるのでありますが、私は刑法のうちに扇動罪を加入していいと思つております。併し刑法はいわゆる基本法であります。これは容易に手を入れるべきものじやないと考えております。かるが故に私は只今刑法の改正というものは問題にしていないのであります。少くとも国家の基本秩序を維持せんとするこの法案におきまして扇動を入れるということを考慮したのであります。
  114. 伊藤修

    伊藤修君 刑法は基本法であるから刑法を改正することは容易にすべきものじやない。従つてそれほどの重要なものを特別法で規定するということは根本において矛盾があるのじやないですか。本法の場合においては扇動罪を独立罪とし、且つ又予備、陰謀、幇助、そういうものに対するところの扇動まで拡大して行くということは、刑法の基本理念を私は破壞するものだと思います。これはすでに繰返されておりますから、あなたに対して更めて御答弁を得ようとは思いませんが、これは御反省になるべきであると思う。法務総裁は非常に敬愛するお方であるけれども、如何にも扇動に促われ過ぎておる。扇動を一遂に扇動されるということは余りに扇動し過ぎると思うのですね。(笑声)もう少し頭を冷静にして頂きたいと思う。  次にお尋ねしたいのは、第三條の第一項第二号のイからヌまでの行為ですね、これが今までの御答弁趣旨から申しますれば、具体的にその意思決定がなされた場合だけであるか、或いは抽象的にその意思決定がなされた場合をも含むのか、これが明確でないのです、総合いたしまして。この点をはつきりしておきたいと思います。
  115. 關之

    政府委員關之君) 団体の意思決定の内容の具体性の問題でありますが、これはやはりこれが団体の活動として展開されて行くわけでありまするから、そこは全く雲をつかむような抽象的なものということは考えられないのでありまして、相当程度具体性を帯びたものであつて、客観的にやはり団体の責任ある意思決定であるというようなふうに認められるものでなければならないと思うのであります。お答えは大変抽象的なものでありまするが、概括的にはまあさようなふうに申上げるより方法がないかと考えておるのであります。又実際的に、例えば或る一つの意思決定があつた、そうしてそれの具体的内容というような問題になりますと、それは具体的な個々の問題におきまして只今申上げたような基準によつて判断して、そうしてこれは明らかに団体の意思決定であるというふうに考えて行くべき筋合いと思うのであります。
  116. 伊藤修

    伊藤修君 今の御答弁ではわからないのです。今までの御答弁でわからないから、この点を具体的な意思決定を要するか、抽象的な意思決定でも足るのかということをお伺いしているのです。勿論判例においては大きな争点になると思いますけれども立法者としてどう考えているかということは判例に及ぼすところの影響も多大だと思うのです。佐藤さん如何ですか。
  117. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) ここに挙げられましたような現実の行為を導き出す程度の具体性がなければいけないと考えております。
  118. 伊藤修

    伊藤修君 そういたしますと、イからヌまでに掲げられておるところ行為を導き出すところの具体的なものでなくてはならん、だから単なる抽象的なものでは、ここには解釈上取入れることができない、こういう結論になるのですか。
  119. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) その通り考えております。
  120. 伊藤修

    伊藤修君 そうするというと、一例を以ていたしますれば、これは一番わかりやすいのです。例えばリの場合において劇毒物若しくは凶器を所持するところの認識を要するのですか、認識を要しないのですか。
  121. 關之

    政府委員關之君) リの凶器又は毒物を携える公務執行妨害でありますが、これは団体の意思決定としてかようなことをやるということになるわけであります。従つて団体の意思決定の中に凶器を携え或いは毒物を持つて行けということが入つていなければ、りの行為団体活動として行われたということには相成らないのであります。
  122. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると、どうせ今日は警戒厳重だから相当これらと闘えという程度の意思決定では駄目であつて、これは闘うのには旗竿を以てすべしとか、或いは竹槍を以てすべしとか劇毒物を以てすべしとかというような点までその決定がなくてはならんというふうに解釈していいのですか。
  123. 關之

    政府委員關之君) お尋ねの通りでありまして、要するにかような要件団体の意思決定としてなして、そうしてこれが団体の活動として行われたときがそれが団体の活動になる、かように相成るわけであります。
  124. 伊藤修

    伊藤修君 ここで疑いを待たんと思いますが、念を押して置きたいと思うことは、先にもあつたかも存じませんが、はつきりして置く意味においてお尋ねしておきますが、およそ団体は民法なり或いはその他の法律に基いてその団体が結成されるということは、これは疑いを待たんと思います。それからそうした団体がここに第三條に掲げておるような行為を目的として決議をするということは、それ自体団体の目的に反する行為でありますね、従つてそれは定款なり或いは規約なり、若しくは規約がないといたしましても、不文律において認めがたいところ行為であります。そうすると本質的においてはそれ自体団体の正しい合法的な行為であるとは考えられないのですね。それをも団体の意思決定だとして、団体の責任をそこに負わしめるというそこの根拠を御説明つておきます。
  125. 關之

    政府委員關之君) お尋ねの点は団体の問題に関して大変むずかしい御質問でありまして、私どもとしましては、この法案の建前は、要するに団体が、共同目的を達成するための団体が、その団体の意思決定に基いてこの暴力主義的破壞活動をなすという、この基本の筋をここに考えまして、お尋ねの今ここに正常な目的を持つているこの団体があつて、仮に暴力主義的破壞活動をなすという決議、これは団体の目的以外の行為であるという場合でありまするが、これはお尋ねのごとく正常な例えば法人がありまして、或いは法人でなくとも正常な団体がありました場合に、たまたまその団体が仮定の問題としましてかような破壞活動を決議いたした、而もそれが団体全体としてやろうということに相成つた、この場合に私は考え方は、やはりそれも団体の活動である、その団体の活動であるということにつきましては、これは伊藤先生もすでに御承知のことと思うのでありまするが、例えて申しますならば、今日の各会社の法人の解散の制度におきまして、法人はそれぞれ特定固有の合法的な目的を持つているわけであります。ところがその法人におきましても解散の事由として、或いは法人が公共の福祉を害する行為をしたものであるとか、或いはその役職員などが団体行為として犯罪を犯したものであるとか、或いは法令違反の行為をしたものであるとかいうふうに、現行の法律制度におきましても、法人のごときものがその目的の範囲外のさような各種の不法な活動をなし得るということが法律の中に書いてあるわけであります。それはやはり正常な目的と関連して、そうして各種のここに不法な活動をなし得るということは、従来現行法的にも私は認められておるものではないかと思うのであります。又すでに御承知だと思うのでありまするが、例えば政治資金規正法であるとか、或いは各種の団体に対する届出乃至は行政上の命令を掲げた各種の法令があるのでありまするが、それらのほうにおきましても、団体としてそれらが違反するということはすでに法令上考えられているわけであります。それらはやはりここに団体というものがあつて、その団体が社会的に適法行為も、又それに違法な活動も団体の活動としてなし得るということが現行の法律制度の上においても私は認められているところと思うのであります。そこで今お尋ねの法人がやつた場合に、その法人とか、或いは正常な、特定な正しい目的を持つた団体がさような活動をいたした場合に、それが団体の活動、その団体の活動として認められるかどうかというような問題は、今まで申上げたような各種の事項につきまして考察いたしまして、それが団体全体としての意思決定に基いて、そうして団体の活動として行われるということに相成りまするならば、やはりそれは団体の活動ということに相成る、かように考えるのであります。
  126. 伊藤修

    伊藤修君 只今の御説明の中に法令上違法行為をすることを認められておるという御説明はちよつと間違つておると思います。私はそういうこともなし得ることを法律は予想しておる、その建前の下に立法措置が講じられておるという御説明でないと、ちよつとこれは国民がそういうことが認められておるということになると、法人の不法行為が認められるということになるから、その点は訂正願いたいと思います。
  127. 關之

    政府委員關之君) 大変言葉が走りまして申訳ございません。  お尋ねの通り団体がさような違法なる行為をなし得るという前提の下に法律が、現行法が立てられているものが多々あるというふうに考えております。
  128. 伊藤修

    伊藤修君 その点法的に団体がそうした法律規制する範囲を逸脱して違・法行為をなすというその行為自体一体本質的に団体行為であるかどうか、これは佐藤さん一つ説明して下さい。私の研究のために高邁な御意見伺つておきたい。
  129. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 只今關君のお答えに対しまして伊藤先生の貴重なる補正を頂きまして、私はそれで完全な答えになつておると思うのでありますが、結局その法人の能力と申しますか、その法律の枠できめられておる本来の目的というものとその法人が事実上やるいろいろな行為能力という問題を分けて考えて、今まで關君が述べましたように、諸般の立法制というものは、本来の目的というもの以外の一種の能力言葉はどうもお教えを頂かなければなりませんが、そういうものを認めて、それを前提にしていろいろな立法をしておるというように考えておるわけであります。
  130. 伊藤修

    伊藤修君 立法者としての考えはわかつています。そういうことも予想されますから……、ただ法律上の根拠ですね、法理論的にどう説明するのかということを後学のために伺つておきたいと思います。団体がそうした不法行為をするところの本質を備える、これは事実です。現実の問題です。それが一体団体にそうした法律的な本質があるのか、能力があるのか、それは法律は容認しているのか、本質論ですね、それを伺つて置きたい。
  131. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) これはこの問題とは違いますけれども、例えば瀧川先生のお得意の犯罪行為能力というような問題にも関連いたしまして、深く掘り下げればいろいろむずかしい問題があると思います。ただ我々は従来の立法を通じまして、現実的に見まして、そういう面を促えて諸般の立法がなされておるということをここで申上げれば私の責任は足りるのじやないかと考えます。
  132. 伊藤修

    伊藤修君 折角の薀蓄をここで傾けて頂いて、我々後学の資に供したいと思うのですから、あなたの持たれるところの御研究の一端をお漏らし願いたいと懇請する次第です。ただ事足りるではお役所式ですから……、そうでないのです。一つ簡単でよろしいのですから……。
  133. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 本案につきましては只今答弁によつて御了承願えると思います。なお高邁なる原理の問題につきましては、むしろ伊藤先生から一つお教え願いたい。いずれその機会をお待ちしておるということにして頂きたいと存じます。(笑声)
  134. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 佐藤さんにちよつと伺つておきますが、警視庁の予備隊が早稲田に出動して、神楽坂署の警官が早稲田の学生に包囲されている、それを救い出せということを、これは団体の行動としてとつたわけなんですね。そうして行つた場合に、その警官が静かに坐つている学生の頭を棍棒で打つてそれで流血させというような場合ですね。これはいわゆる団体に対して刑罰乃至規制をかけ得るかという理論上の問題と関連していますけれども、今それは伊藤先生の質疑の途中ですから理論上の問題は省きますが、それが警視庁の、団体としてやつた活動に属するか属しないかという点です。警視総監はそのときに元気がよ過ぎたんだという言葉で表現されているのですね。それで前の治安維持法時代の判事の出で、治安維持法がやはり一つ団体に対する取締というものを含んでいるということの関係で、司法省でお出しになつた司法研究というのですか、司法省の中でいわゆる団体に対する刑罰或るいは取締という問題についての学問院の研究をされております。その中に団体心理学の学者によつて証明されたさまざまの例を挙げておるのです。団体が活動しておるときには団体の決定とは無関係ではないのですね。無関係ではなく、そして又個人の責任に帰せ円れるべきものでもなくして、而もその団体の活動にも帰することもできず個人の活動にも帰することのできない、そこに結果が現われて来る場合を法理論上認めておられますが、そなたはそれをお認めになりますかどうですか。今の政府はそういうことを認めるかどうか。
  135. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) 差出がましいことでどうせ落第点かと存じますが、羽仁先生が御指摘になりました群衆心理とか団体心理とかいうものが社会現象としてこれはあり得るというふうには考えております。併しこれを刑罰法令の面で如何ように取上げるか、これは重大な問題であります。これはひとり日本だけでなく国際的にも多年論議され、いろいろな問題として取上げられております。又犯罪構成要件の問題としてもそれが研究されると同時に情状論としても群衆犯罪における処遇というような面につきましても非常に重要な問題として取上げられるのであります。この法律におきましてはまだそこまで踏切つておらんのでありまして、犯罪行為能力団体には認めておりません。そこまで踏切れません。国際的に学者によりましては、犯罪行為能力団体に認める一派の学説もないわけではございませんけれども一般に現行の刑法はそれを認めておりません。従いまして私といたしましてもこういう問題には踏切ることはできない。ここでは行政上の問題といたしまして、多数の自然人が結合いたしまして、そこに共同の目的を達成するためにその自由意思に基いて結合がなされ、その目的を達成するために相協力して活動される、その面から、個人の意思とは離れた団体の意思というものを決定されまして、その意思に基いてこれを実現するために活動するということは、一つの社会的な事実として承認してもいいのではなかろうか。こういうふうに自然人多数が共同目的の下に結合いたしまして、それが団体意思というものを決定いたしまして、その意思の決定に基いて動くという社会的な事実があれば、これはそこに只今伊藤先生から御指摘になつた暴力主義的な破壞活動がその意思決定の内容として取上げられて、そしてそれが構成員なり役職員がその意思決定を実現する活動としてそういう暴力主義的な破壞活動をやり得るということは、当然自然的な可能性として考えて差支えないのじやないかというような立て方で、大体団体規制団体活動というようなものを考えた次第であります。非常に未熟な意見でございますが、なおこの点につきましてはいろいろ御薬を賜つて勉強して行きたいと思います。
  136. 伊藤修

    伊藤修君 吉河さん余り遠慮なさらんでいいのですが、今日は堂々とやつて頂きたいと思います。  次に小さい問題ですけれども質しておきたいのですが、第三條の第一項第一号ロ及び第三十七條第二項中に頒布という文字がありますね。これは刑法の百七十五條、猥褻文書頒布等の罪、これと対比いたしますと、刑法の中では「頒布若クハ販売」と明確に規定しております。こちらの立法例で行きますとただ頒布と指しているのです。これを対比いたしますと、解釈上無償の場合だけと解釈が出ないとも限らない。この立法趣旨と立法体裁を一つお伺いしたい。それから解釈と三つをお伺いしたい。
  137. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) 頒布と申しますのは、普通の場合有償無償を問わずして、或る物を特定又は不特定人に配る。簡単に言いますとさようなことになります。販売の場合はこれが大体売る、つまり有償で、代価を得て配る、こういうことになるだろうと思います。刑法におきましてさような言葉が使われておりますのは、要するに有償無償のあらゆる場合をその当時の概念でまとめ上げたと言いますか、拾い上げたと言いますか、さような趣旨だろうと思うのでございますが、私どもは頒布の現に使われております意味を本にいたしまして、発売形式のみならず、有償無償のいずれを問わず全部入れる。成るべく簡単な概念を以てそれを包含させるというふうな趣旨もございまして頒布というような文字を使つたわけでございます。
  138. 伊藤修

    伊藤修君 この点に対するところの判例はどうなつておるか、それもお伺いしたい。頒布に対する判例はどうなつておるかお伺いしたいと思います。なお用語例ですね。頒布という場合は有償無償を問わないという用語例に一定しておるかどうか、これもお伺いしたいと思います。
  139. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) 細かい点でございますので直ちに調べて御返事いたしたいと思います。
  140. 伊藤修

    伊藤修君 早急に御返事を願わなければならん、明日はもうないのですから。その他大体第三條は随分論議されておりますから重ねて質問申上げることは避けますが、この第八條ですね、「いかなる名義においても、同條の規定による禁止を免れる行為をしてはならない。」と、こういう表現が用いられております。その結果脱法行為禁止について団体同一性ということが問題になるのです。この点については概念的には質問もありましたけれども、結論がはつきりしていないと思うのです、今までの質疑応答では。団体同一性に対する基準というものをこの際明確に伺つておく必要があると思うのです。
  141. 關之

    政府委員關之君) この第八條におきまして「禁止を免れる行為」これは団体といたしまして第二団体的なものを脱法的に作るというような場合がこれに当るものと考えられるのでありますが、お尋ねの同一性の問題は、先日来御示唆を得ました機関誌紙の同一性というような問題と比較し得るようないろいろなデリケート高察私はあると思うのであります。そこでどの程度に至つたときにこの禁止を免れる第二団体的な脱法的な団体であるかという問題になるわけでありますが、これは私どもとしましてはなかなか認定はむずかしいと思うのでありますが、要するにその団体、新らしくできた団体が、団体全体として見たときに、過去の解散を命ぜられたその団体の役職員、構成員が主要なる役職員、構成員の部分を占めていて、全くその活動が前と同じようなふうにやつているというような場合はこれに当るものではないかというふうに考うべきものと思つておる次第であります。
  142. 伊藤修

    伊藤修君 今の御説明ではちよつとわからんのですな。それでは国民も困りますよ。もう少しこの基準を明らかにして頂きたいと思います。
  143. 關之

    政府委員關之君) ここでもこの第七條によりまして一応解散の指定を受けるのでありまするが、それらの構成員、役職員がこのような破壞活動をやらない、全く公正な団体を結成することは全く自由であるわけであります。従つて同一性の一つ認定の基準といたしまして、その団体が解散を命ぜられたようなそういう破壞的な性格というものをどの程度受け継いでいるかという点が一番基本になる認定基準ではないかと思うのであります。すべての役職員、構成員がそのまま他の団体を作りまして、それが全く過去の団体と違つて正常な正しいことをやる団体であるというならば第八條にはかからないのであります。要するに第八條におきましては、第七條におきまするようなさような暴力主義的な性格を持つた団体、そういう団体を又別個に作る、さような又そこで同じような活動が展開されやしないかという点が第八條の認定上問題になるのでありますが、又その範囲に限定すべきものでありまして、そういうようなことを基準といたしまして認定すべき問題と思つておるのであります。
  144. 伊藤修

    伊藤修君 第二団体がただ破壞活動をなす性格を持つておるという基準だけで同一性を認定するということは不可能じやないかと思うのですが、あなたの今の御答弁だけで行きますと、少くとも第二団体が破壞活動をなし得る性格を持つておるという認定は時のずれがあると思うのですよ。第二団体が今日できる、而してこの団体は従来の第一団体と同様に破壞活動をなすような性格を持つておる団体であるということは、これは日にちを経過しなければわからないはずですよ。性格を持つておるかどうかということは、それがみずからその外界に意思なり行動にして現われて来なくちや認定できないはずですよ。ここにおいて初めてあなたの言う基準が現われて来るのです。時の経過がずつとかかるのですね。それでよろしいのですか、それだけで……。それでは私は認定は不可能だと思う。実にその認定は漠然たる認定に過ぎない。だからそういう破壞活動かなされる団体、なされた団体、又なされる虞れある十分なここでも理由を容易に認識し得る場合に限ると、こうなさるのか。そうしますと、少くとも客観的においてそういうことが認められるところの状態が現われて来なければならん。それでは私は多分これは困るのじやないですかね。それだけでよろしいのか。
  145. 關之

    政府委員關之君) いわゆる第二団体が果して第七條の脱法的な団体と認め得るかどうか、その認定のプロセスにつきましては伊藤先生が御指摘のような私もプロセスをとらざるを得ないと思うのであります。それはやはり単に団体ができたということでは認定ができないのでありまして、客観的な証拠によりまして明白にかような性格を持つ団体であるということは証拠によつて認定されるわけでありますから、そこにお尋ねのような時間のずれは生じます。その上で認定して、そうして問題の処理を考慮するというようなことになろうかと存ずるのでございます。
  146. 伊藤修

    伊藤修君 勿論その構成員の同一性或いは名称の同一性、そういうもの、それから団体員の大多数の同一性ということは基準になるのですか、ならないのですか。
  147. 關之

    政府委員關之君) 同一性を認定する一つの基準になろうと思うのであります。
  148. 伊藤修

    伊藤修君 そういたしますと、そうした基準の上に、それに加うるにその団体が破壞活動をなし若しくはなすところの十分な客観的資料を備えておる場合において初めて第二団体としてこれを認める、同一性を認める、こういうふうに伺つてよろしいのですか、それで間違いないのですか。
  149. 關之

    政府委員關之君) お尋ねの通りであります。構成員、名称その他の要素に加えまして、前の団体と同じような破壞活動をそこに展開するという危険性があるということであります。
  150. 伊藤修

    伊藤修君 私はそれに対して何かまだ基準があり得ると思う。あなたは突然ですからその基準をお考えになつていらつしやらないが、法律を作るときにはこのくらいのことは考えておかなければならん。自分が作るのだから今度はどう説明したらいいのかということで、あらゆる場合を想定しておかなければならん。とにかく立法する場合にはあらゆる場合を想定してお考えになつておかなければならん。今の場合ではいかんと思う、よろしいかね。
  151. 關之

    政府委員關之君) 一応私としてはさような條件を検討して認定し得ると思うのでありますが、若しそのほかに基準がございましたらお教え願いたいと思います。
  152. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 今の伊藤委員に対するお答えは、政府の唯一の正式にしてそうして動かない答弁ですか。念のために親切に申上げますが、団体の役職員、それの顔触れですね、そういうことも基準になるという御答弁ですか。
  153. 關之

    政府委員關之君) 同一性を判定する條件といたしましては、役職員、構成員、そうしてそのほかに先ほど来申上げたような解散の指定を命ぜられた団体と同じような性格があるのかどうかという可能性の問題、さような点が基準になると思うのであります。
  154. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そうするとこの法律は憲法違反という非難を免れないと思います。これは佐藤さんに伺いますが、今伊藤さんの質疑中ですから成るべく私は遠慮しますが、これは団体の役職員に対する検閲をするもの、だということになります。これが破壞活動の危険、明白にして完全なる危険という限りでは、あなたの言われる行政措置ということも、私はその理論は認めるかどうかは別として、一応筋は通りますが、今のように団体の役職員かどうかということを基準の対象にするということは、これは機関紙誌の場合も同様ですが、憲法違反という問題が起ることは覚悟の上ですね。
  155. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) この憲法で言つております検閲ということの観念の問題に触れて来ると思います。これが第一に対象としてこういう役職員の顔触れというものが検閲の対象になるかどうか、憲法の文字に即して見れば、憲法の精神からはどうだというのがお尋ねの趣旨だと思うのですが、これは今の答弁にもありましたように、できたところの形を見るのでありますから、他の機関紙の問題とも同じことになるわけであります。検閲の観念にはその点からも入らないと考えております。
  156. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 今の……。
  157. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 伊藤委員質問を先にして、最後になお納得の行かない点は……。
  158. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 納得行きません。答弁を保留しておきます。
  159. 伊藤修

    伊藤修君 今の問題ですが第三條の第二号において、「政治上の主義若しくは施策を推進し、」と、こういう表現が用いられておるのです。でありますから、少くともその団体性格の中には政治上の主義若しくは施策というものが重要な拠点をなすものと思うのです。従つて第一団体と第二団体同一性の区分の基準というものは、その団体が主張するところの政治上の主義、施策というものも重要な一つの要素をなすのじやないかと思うのです。この点は顧みないというお考え方ですか。
  160. 關之

    政府委員關之君) 御指摘の第三條の第二号の政治上云々の言葉団体との関係でございまするが、これは暴力主義的破壞活動をなすその目的が政治上の目的になるわけであります。そこで結局団体としてこの第八條の第二団体は、第七條でかような暴力主義的破壞活動をなしたというさような危険性を承継するというところ認定の実質的な基準があると思うのであります。そこでその危険性認定の中には、お尋ねの政治上のということがそのままその団体が本来政治的団体であるかというような意味合いにおいては私は基準にはならないと思うのでありますが、要するに危険性を承継した団体であるというその危険性の中には、この破壞活動がかような政治上の目的を持つたものであるというふうに絞つてありますから、そこでそれはその意味においてならばそういうことは承継されているだろうと、こういうふうに思うのであります。
  161. 伊藤修

    伊藤修君 承継されているだろうじやない、その説明じや足らんですね。一体壞活動の承継だけではこれに規制されませんですよ。単なる破壞活動だけならこの法律に適用にならんですから。ですからそこに冠するに政治上の主義施策ということがあつてこそ初めて破壞活動になるのじやないですか、基本的においては。先ず破壞活動の前に、暴力の前に政治上の主義、施策というものが頭に乗つて来て、これを支持し、推進するために暴力が行われる。従つてその暴力の承継の前にそれらのイデオロギーの貫徹を期してこそ初めて暴力はなされる。その場合を規制するわけです。そこで単なる暴力団とか、あなたの御答弁だと、例えば博徒の暴力或いはテキ屋の暴力というものは本法規制しないと言つている。してみれば暴力の危険の承継のみでは本法同一性を町分することはできないのですが、私が教えて上げているのにあなたはそれを肯んじないというのはどうういことですか。
  162. 關之

    政府委員關之君) お尋ねのような御趣旨でありますならば、大変言葉をお返しして恐縮でございますが、私の前のお答えの中には、要するにこの破壞活動というのは政治的な目的のためにテロ的な暴力的な行為に出てはいけない。暴力を廷子として政治目的を達するというのが破壞活動の第三條の趣旨でありますからして、要するにそういうような危険性を承継するというような意味合いにおきましては勿論政治上云々という、その性格上そういうこともその団体が持つている、或いはそこへ随伴して来るということが言えると思うのであります。
  163. 伊藤修

    伊藤修君 どうもまだ随伴して来るとか何とか言つておるけれども、中心になるのですよ、それは。行動主義を唱えておる人間と共産主義を唱えておる人間とは同一性ということが言えるか、その場合に。そうでしよう、その場合には同一性でないことは明らかですよ。あなたが同一性だと認定したつてそれでは判決で破れますよ。してみますればこの一点だけではつきりして来るじやないですか。むしろ重要なる一同一性の区分の基準であるということを肯定して差支えないと思うのです。又そういう取扱をなすつたらなすつたで、あなたはめちやくちやに手当り次第に同一性だと言つて破壞してしまうから、それで基準をはつきりしておこうと思うのですよ、如何ですか。
  164. 關之

    政府委員關之君) そのお尋ねの点につきましては、私どもとしましては、その団体が或る主義があるとか或いは或る特定の政治上の主張とか、そういうことを主としてこの団体規制、破壞的団体というようなものを考えるのは相当ではない。やはり客観的に第三條に規定するようなかような暴力主義的な行動、こういうものを中心としてその行動がなされたかどうか、その前に団体がどういう主張を持つておるかという点を考察するのは、そういうことを考えるのは、横に行過ぎやいろいろな問題が生じやしないか。やはり客観的ないろいろな行動、第三條に掲げた以外の行動は、これは団体規制なんというものは何も考えない、それはおよそ如何なる主義、主張であろうと、それを或いは考えてみますといろいろなここに問題が出て来るわけであります。それでやはり客観的に出たこの暴力的な活動だけを中心に考えて行つて、そうしてその団体の活動というふうに考えて行つて、そうしてやるのが最も公正妥当、法案の実体の運用として見て適切にそれが運用できるのではないか、かように考えまして御説明いたした次第でありまして、お尋ねのような、結局において社会的な一つの事実としての事柄の判断は、かようなプロセスをとるかと思うのでありますが、法案考え方といたしましては、団体のかような暴力主義的な活動、その活動を中心にして事を処理して行きたいと、かような私の気持から今のような御説明を繰返している次第であります。
  165. 伊藤修

    伊藤修君 それは第三條の建前としては、行動主義であろうが共産主義であろうが同一です。その場合においてはあなたのおつしやる通りですよ。併し第一団体と第二団体との同一性を区分するところの基準というものはそれではいけないと思うのです。同一なりや否やということを認定する材料ですよ。その場合において全然天理教がキリスト教だという場合において、それが同一団体ということは常識に反しますよ。それは認定があつて然るべきじやないでしようか、その点を言うておる。同一性云々についての基準を聞いておるのですよ。
  166. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) 伊藤さんの御趣旨よくわかります。団体同一性を認定……一般的に団体同一性を認定する場合には、団体の目的なり団体性格的なものがやはり抽象的には取上げられる。ただそれだけで以て同一性を取上げるということはこの法律ではできない。やはりそこに第二団体が暴力主義的な破壞活動をなすような性格なり或いは態度なりを想定しているという点が取上げられなければならない。こういう意味におきまして、伊藤委員只今の御指摘を理解しておるのであります。
  167. 伊藤修

    伊藤修君 だから私が言つているのは、あなたのおつしやる通り、破壞活動をなすというその点が重点に取上げられておることは肯定します。ただその前提において主義、主張、政策というものも基準になり、役職員同一性というものも基準になる。名称の同一性は勿論基準になる、当然のことです。形態の同一性という点が基準になつて、それに加うるに破壞活動をする性格を持つておるという点が基準になるのではないか、先ほどの御答弁だけでは足らないのではないかということを私申しておるのであります。これは明らかにしておかんというと、あなたのように同一性、同一性と言つてどんどんおやりになるから、その基準が、法廷に現われた場合において明確になつてないと、立法する趣旨がわからないから、はつきりさせておく意味です。
  168. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) よくわかりました。その御趣旨で参ります。
  169. 伊藤修

    伊藤修君 その問題はこの程度にします。  これは小さな問題ですが、飛んで二十三條第二項の決定書の謄本の送付とは如何なる方法でせられるのですか。これはちよつと本法では明確でないですよ。なぜこんな小さな問題をお尋ねするかというと、これは御承知通りこの條章によつて、二十四條第一項によつて決定の効力発生要件になつておるわけです。そうすると非常なポイントになるわけですね。重点になるのですから、その送達方法というものが明確でないというと重要な大きな問題が出て来るわけですね。これがポイントで、効力がいつ発生するか、この送達方法というものが本法では明確にされていないのですが、而もその決定書によつて重大な結果を招来するのです。してみますればその送達が如何にしてなされるかということがはつきりしておかんというと、規制の最統段階の基準ですから、この点はどういうお考えの下に本法の上に掲載する必要がないか、欠除しておるのか、又欠けておるすれば如何にして賄うつもりか。
  170. 關之

    政府委員關之君) 決定の効力の発生の問題でありまするが、これは次の第二十四條でありまして、「処分の請求を却下し、又は棄却する決定は、決定書の謄本が公安調査庁長官に送付された時」と、そうして「第四條第一項又は第六條の処分を行う決定は、前條第三項の規定により官報で公示した時」、そのときに効力が発生することに相成つているわけです。そこで二十三條の二項でありまするが、これはかような措置によりまして決定が効力を発生するのでありまするが、それに加えて、この二十四條のすべての場合におきまして調査庁長官と当該団体に決定書を送付して行う。この送付の方法につきましては、法律の建前といたしましては、郵便とか或いは使いを派して届けるとか、各種の便宜な方法がここに考えられるのであります。これらの点につきましては委員会のルールにおいて適当に又最も送達が適切に行われるような方法が規定されると存ずるのであります。
  171. 伊藤修

    伊藤修君 そのときにおいてやるのでは困るのですね。それはどうするかということを聞いておるのです。少くともその謄本の送達によつて効力を生じて来るのですから、官報の場合は問題ありません。官報で公示した場合は、謄本の送付によつてこの効力が生じて来るのですから、送付の責任は、手続は、認定の場合における手続のような規定がどこかに必要であると思うのです。これは本法において賄わないけれども、ルールによつてその適切な確実な方法を明確に規定するというならばいざ知ら、ず、そういう考えだけでは困るのですね。
  172. 關之

    政府委員關之君) 送付されたときに決定が効力を生ずるのは二十四條の一項だけの場合でありまして、公安調査庁長官に処分の請求を却下し、棄却の決定が送付されたときに効力が発生するのであります。この場合は公安調査庁長官でありまして、役所としてすでに場所的には近接した場所にありましようし、相当なる方法がとられて、過ちなく事が行われると思うのであります。その他の当該団体に対する送付でありまするが、これも先ほど申上げたことくに送達されるような適当な方法によつて行われる。かような点はルールにおいて定められるものと思うのであります。大変言葉が同じような御答弁になりましたが、さようなふうに只今ところ考えている次第であります。
  173. 伊藤修

    伊藤修君 思うだけじやいかんというのです。されるのかされないのか、聞いておるのです。今私が指摘した通り、あなたが御答弁になつた通り、第二十四條の一項の場合においては、その送達ということが重要な意味を持つて来るのですから、ルールのうちで必ず規定するというならば、これは本法において賄わないけれども、ルールのうちで必ず規定するとおつしやるなら非常に肯けるのです。ただ思うだけでは困るというのです。
  174. 關之

    政府委員關之君) これは委員会のルールにおいて当然規定せらるべきことである。かように考える次第であります。
  175. 伊藤修

    伊藤修君 第二十四條の第二項の決定の取消し、又は変更の規定、これは第六條の規制と第四條の規制とを振替えることもあり得ると思うのです。それは当然規定で予想していると思うのですが、第四條の第一号乃至第三号を互いに変更するという場合も含むのかどうか、これはちよつと疑問なんです。
  176. 關之

    政府委員關之君) 決定につきましては、この法案の建前としてすべて委員会が自主的に決定される。公安調査庁の長官の請求はただ四條か六條を区別してやる、そうして六條を区別した場合に四條だけができる、その四條を請求した場合には六條の処分委員会はできない。かような制限以外、委員会におきまして審査の結果、その條件の範囲内において自分の適当と思つた規制ができるわけであります。そこで一号、二号……或いは公安調査庁長官のほうにおいては一号の処分が適当で……これは非常な極端な例でありますが、適当であつた場合にも、これはそういうことには拘束されないで、委員会におきまして二号処分が適当である、かように考えれば二号処分委員会ができる。要するに委員会が自主的にできるというふうに相成るわけであります。
  177. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると四條の規制の場合において、委員会で適当と認める場合においては、一号という請求があつても二号若しくは三号と、自由に適当な規制ができる、こう解釈してよろしいですね。
  178. 關之

    政府委員關之君) 法案の建前としましてはさようなことに相成るのであります。
  179. 伊藤修

    伊藤修君 第三十四條に、「公安審査委員会の決定の全部又は一部が裁判所で取り消されたときは、」こうあるのですが、これは決定の一部の取消しということがここで示されているのですが、どういうわけですか。
  180. 關之

    政府委員關之君) これは行政事件訴訟特例法に裁判所にその取消し又は変更ということが書いてあるのでありまして、その趣旨から申しまして、その取消し又は変更というけれども、これは一部の取消しだというようなことなのでありまして、さような場合が訴訟特例法の上から見て考えられますので、それをここで三十四條にかように表現をいたしたのであります。  具体的の事例といたしますならば、第四條の処分におきまして、例えて申しますならば二号の機関誌紙を四月の期間内において規制処分を加えた場合に、裁判所におきまして一切の証拠によつて四月は相当でない、これを一月が相当であるような場合には、やはり一部の取消しであつて行政事件訴訟特例法の変更というのに当るであろう、かように考えるのであります。
  181. 伊藤修

    伊藤修君 そうするとそういう取消しは、私は法文の上では二十四條の第二項の場合だけを指すのかと思つてつたが、そうでない、それ以上を含むわけですね。それ以外の場合も含むわけですね。あらゆる場合が想定される、こういうふうに解釈していいのですか。
  182. 關之

    政府委員關之君) あらゆる場合と申しましようか、結局行政事件訴訟特例法の第一條に「取消又は変更」ということが書いてありまするからして、変更の意味があの場合は三十四條でも含まれておる、かように考えておる次第であります。
  183. 伊藤修

    伊藤修君 この決定に対しては官報で公示することになつているが、そうしたら変更のあつた場合には官報の公示をするのかしないのか、本法では明らかでない。これはどうですか。
  184. 關之

    政府委員關之君) 今の御説明言葉が不足していたのでありまするが、一部の取消しはこれは変更に当るのではないというふうに考えておるのであります。そこで裁判所において取消し、変更をしたすべての場合を三十四條は含んでいる。或いは統一されたほうが適当であつたかとも考えられますが、一応これで賄えやせんか……。裁判所において取消し又は変更されたすベての場合に三十四條で公示いたすごとになります。
  185. 伊藤修

    伊藤修君 今の御説明はちよつと無理じやないですかな、三十四條の表現で一部……、どこに入るのですか。一部が裁判所で取消しされたとき、これに含めるというのですか。変更ということをこれに含めてしまう解釈をとるということですね。ちよつとそれは得手勝手じやないかな、佐藤さんそういう用語例があるかしら。
  186. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) これは私たしか用語例があつたかと思つております。要するに行政事件訴訟特例法に言う変更ということは、言い換えれば一部の取消しのことであるということは大体通念となつておるのであります。
  187. 伊藤修

    伊藤修君 それは一部の取消しという用語例は、私はそういう意味に使わないのです。それでは変更したということは意味をなさんことになる。やはりこれはあなたが例を挙げて、支持するという意味でおつしやつているのでしようが、あなたが仮に立案するとすれば、当然法制局としては、一の取消し又は変更ありたる場合に、こういう表現を用いなくちやならんと思います。立法論としてはそうすべきじやないでしようか。あなたが立案すれば実はきつとそうお書きになると思います。これで賄うというのは賄うで仕方がないのですけれども、私はそういう立法例はちよつと不親切だと思うしそういうことはあり得ないと思うのです。
  188. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 私の申上げましたのは、丁度最近この関係のことを書いた論文がありまして、この行政事件訴訟特例法に言う変更ということは一部の取消しのことであるというようなことが一般の学者の考えのようになつておると思いましたので、当然なことだ、決してそれは間違つたことではないと思います。ただ表現のやり方、言葉の使い方はいろいろ御批判があると思います。
  189. 伊藤修

    伊藤修君 こいはまあ質問じやありませんが、先ほどから大野君がちよつと五分ばかり委員質問をしたいとおつしやるので、ちよつと私も五分ほど休憩します。
  190. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 大野君から委員質問の要求がありました。これを許すことに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  191. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 御異議ないと認めまして、大野君。
  192. 大野幸一

    委員外議員(大野幸一君) 家は本日法務総裁に対して一つお尋ねしたいことがあるのであります。  久しい間どうも私は不満に思つておりましたのは、去る五月六日の参議院本会議場におきまして法務総裁は例のメーデー事件報告をなされました中に、先ず速記録によつて読上げますると、国務大臣木村篤太郎君登壇されまして、「去る五月一日のメーデーにおきまする騒擾事件の概略並びに被害状況、その後の取締状況並びに背後関係について御報告申上げたいと思います。」とありまして、中略いたしまするが、その中にこういうことをあなたが言つておいでになる。「先ず東京都内におきまする騒擾事件の概況について申上げます。今回の中央メーデーは、明治神宮外苑絵画館前を会場といたしまして、午前十時三十分頃からいわゆる統一メーデーとして催され、極めて盛大な行事が行われましたが、大会の中途におきまして、石川島労組員三十名を初めといたしまして、全学連、職安細胞員ら約百名が突如相次いで演壇に殺到し、不法にもスピーカーを占拠し、参会者に対し、実力を以て人民広場へ行こうなどと激烈な口調で煽動いたしました。」こうあなたはおつしやつておる。ところがこれを聞いておりました全議場の同僚議員恐らく一人も残らず、これは特にあなたは「スピーカーを占拠し、参会者に対し、実力を以て人民広場へ行こうなどと激烈な口調で煽動いたしました。」とおつしやつたのでありまするから、素直に聞きまして、多数の参会者に煽動するためには、とてもああいうメーデーのような大会場で口頭で言つたつて、スピーカーなくして扇動なんというものはなかなかできるものではありませんから、あなたが「不法にもスピーカーを占拠し、」と言つた言葉は、これはスピーカーを使用して、そうして参会者に対して人民広場へ行こうと扇動した、私はそう思つたし、同僚皆に聞きましてもそう思つたのである。  ところが丁度幸運なるかな、第一の質問に立ちましたのが社会党第四控室の重盛君であつたのであります。彼はその点についていろいろその報告についての反駁をいたしまして、初めて我我はああそうであつたかと思つたのであります。彼はこう言つておるのであります。「もう一つ、先ほど報告せられました神宮外苑におきまするところ  のメーデーの演壇を占拠して、そうして一部不穏分子が宮城前広場を使用することを叫んだと言われておりますけれども、どこでお調べになつたか知れませんがこれは事実無根でありましてたまたま私は、当日の木村法務総裁のいわゆる暴徒と言われる石川島労組を初めとするところの全学連の一部が壇上に押しかけて参つたときに、たまたまメーデー実行委員の一人として議長をしておつたのでありまして、これらが壇上に上りまして、壇上の器物で破壞したり或いはマイクを奪わんとした事態が起つたことだけは明瞭でございますけれども、」この次です。「マイクを奪つて、そのマイクによつて宮城前広場を使おうとして行動したということは全く偽わりでございます。」こう言つているのである。法律家じやなくてに、占拠という意味を、重盛君は労組の出身者であつて、決して法律家でないでありましよう。併し彼はこういうように受取つている。「マイクを奪つて、そのマイクによつて宮城前広場を使おうとしたということは全く偽わりでございます。」これはこの通り解釈するのは当り前なんです。全同僚議員皆こういうふうに解釈した。  ところがあなたはそれに対して何と答えられたかというと、「それからマイクによつて皇居広場へ行けというようなことを煽動した事実」云々と、「私はマイクと言つたのではないのでありまして、マイクを占拠したのである。マイクをこわしたのである。こうして一部の者が皇居前広場を占拠しておるということを明白に言つておる事実があるのであります。」こういうふうに言つている。あなたはマイクをこわしたということを、マイクを占拠した、こういう言葉で言つている。あなたが法律家でなければ、いたしかたないかも知れない。ところが占拠という事実、法律家である者は、占拠という字は、そもそも人の支配権を奪つて、支配を排除して、その支配を自己の支配内に置くごとでありましよう。マイクを占拠したというのなら、人が使つていたマイクの支配を排除して、自己の支配内に置くのならば、それは使用したと思うのは当り前でしよう。あなたはこういう言葉を用いられておるので、これは長年あなたも弁護士として、裁判所をごまかして、或いは偽証にかからない程度で、裁判所に対して偽わりを言つていると聞いていた。裁判官だつて、確かにマイクを使つたものだと思われる。  天網恢々疎にし漏らさず、それが丁度一の質問に立つたのが、重盛君だつたからよかつた。これは違うじやないか、こういうように私は思う。そういうあなたのようなテクニックが、この破防法を通じてなされていやしないかということなんです。先ずこの占拠の意味ということはどのように解釈しているか、それとも申訳なかつたというのか、それともあなたはマイクをこわしたのであるということをちやんと言つていながら、堂々とマイクを占拠して参会者云々ということを言われたのか、どつちなのか、事実を知つて言われたか、それをちよつと承わりたい。それから破防法を全委員がこれほど熱心なる質疑応答を通じて、こういうテクニツクはありやしないか、それをあなたに伺いたい。
  193. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) メーデーの事実については、私は見聞したことはないのであります。はつきり申上げます。私自身はあの広場へ行つていません。すべてその当時の調査すべき者が行つた、その報告によつてつておるのであります。一応の報告であります。或いはあなたの仰せになつたように、事実は相違しておるかも知れませんが、ただ私は責任大臣としてとにかく部下の報告によつてそれによつて議会に報告したのであります。それで占拠という文字は勿論今御指摘の通り、そこにある自分のものでないものを使つたという意味であります。自分が持つてつてそれを使つたのでなくてそこにあるものを使つたという意味であります。さように御了承願いたいと思います。
  194. 大野幸一

    委員外議員(大野幸一君) そうすると重盛君が、このマイクを奪つてこれによつて宮城前広場へ行こうとして行動したというように解釈しているのは、そう解釈されても止むを得ない、又多数の同僚議員がこう解釈しても止むを得ないということだけは、お認めになりますか。
  195. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) 無論重盛君はその場に行き会つてつてそれを見聞されたでありましようから、又私の報告も私は架空のものではないと考えております。すべてその当時行つた者がつぶさにその当時の事情を見聞しして報告しているのであります。併しここで私は率直に申上げますと、いずれが真なりやわかりません。併しながら重盛君が議長としてその席におられたのでありまするから、その見聞は私は偽わりとは申上げません。恐らく事実であらうかと思います。そこに相当齟齬を来しておるわけであります。併し私はその当時全く見聞はしていないということは事実であります。ただ部下の報告によつてそれを申上げたというに過ぎないのであります。
  196. 大野幸一

    委員外議員(大野幸一君) 自分は見聞していないし、部下の報告によつて本会議に報告したということですが、それじやあなたがこの報告中に「スピーカーを占拠し、参会者に対し、」と言つたときの気持は、自分はやはりスピーカーを使つてつたんだという気持で報告していたのでしよう。
  197. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) 無論そうであります。その報告に基いてやつたのだから、それは真実なりと考えたのであります。
  198. 大野幸一

    委員外議員(大野幸一君) マイクを使つてつたものだとあなたは誤解されておつたのでしよう。
  199. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) それはマイクを使つてつたという報告がありましたから、それに基いて言つたのであります。
  200. 大野幸一

    委員外議員(大野幸一君) 然らばどうしてあなたは答弁に際して、「私はマイクと言つたのではないのでありまして、マイクを占拠したのである。マイクをこわしたのである。」なぜこの占拠の意味を、こわした意味にあなたは誤解されたか、そのときなぜあなたは素直に、初めはそういうつもりであつたけれども、重盛君がそう言えばそうであつたでしようと、それだけの素直さ分があつていいんじやないか。議場の者は皆ごまかされておるということになります。参議院議員を皆ごまかして而もあなたは詭弁を弄して逃げたということになる。自分もマイクを使つてつたというつもりで報告したつて、それを突かれたときには、マイクをこわしたのである。こう言つて平然として答弁をするということはない。その正直さのなかつたことに私は非常に不快を感じたのである。  私は大体この前、本会議のときに、講和国会の代表質問の場合に、大橋法務総裁は私から言わせれば、暴力団的なこわさを持つている、だからあの法務総裁だけは代えてもらうという念願を持つてつた。そうして私は強く迫つて幸いに弁護士のあなたがなつたことは、よりよくベターになつたと思つていた。ところがあなたは今度は、智能犯を犯すような人に思う。そこでどうもこの破防法を通ずるところの全部の質疑応答がこの式のテクニックがあつてはいかん。長年の間裁判所へ出入りされて裁判所をごまかすことはあつてもいいけれども、我々をごまかされたり、将来もこの立法のやりとりの言葉をごまかされては困るから私は言うのです。どうも恐縮だと思いませんか。それを言つてもらわなければいつまでたつても腹の虫がおさまらん。(笑声)
  201. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) あとの言葉は私は誤りであつたと今率直に申上げます。事実は私は見聞していない。ただ部下の報告によつて申上げたのです。重盛君の答弁に対して誤りあつたことであれば、私は率直にそれは誤解であつたと申上げます。(「五分間が大分長いようですが」と呼ぶ者あり)
  202. 大野幸一

    委員外議員(大野幸一君) そう急ぎなさんな。今日で上る。(笑声)
  203. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 我々は直接審議に関係しておることなら拝聴するけれども……。
  204. 大野幸一

    委員外議員(大野幸一君) これほど大切なことはない。言葉のやりとりは多いけれども、これほど大切なことはない。これから問題になるのはこれですよ。  それから報告した人は誰でありますか。報告されたのは誰でありますか。こういう重大なる総裁の報告書を書かれた人は誰であるか、ろくずつぽ調べもしないで。それは一つ明らかにしておいてもらいたい。  あなたは最後にメーデー事件とは関係がないとおつしやるけれども、最後に臨んで結論としては「穏健な労働運動或いは大衆運動はもとよりこれを保護助成すべきでありまするが、これに便乗して陰に陽に治安を撹乱せんとする破壞分子に対しましては、治安機構の充実強化と適切なる立法措置とによつて、」云々と言つて、暗にこの破防法に対するところのあなたはあのときのあいさつをされておるのです。だから私達から言わせれば、扇動ということはあなたこそ上手な扇動者だと思うのですよ。国会議員を全部扇動する、破防法賛成に追込むところの扇動者、実にうまいと思う。先ほど宮城先生にお答えになつておるのを聞くと、こんなことで婦人議員を味方に入れてもらつては困る。地下の亡夫も泣かれるだろうと思う。最後に、私委員長から注意されたからもう聞きませんが、法務総裁に対して原稿を送つて事実調査して来た報告者は誰かということだけ明らかにしてもらいたい。そこに並んでおる方、私だつたと言える正直さはありませんか。
  205. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) それは私の所に、なんぴとであつたかということはわかりませんが、警視庁、国警、検務局その他の名によつて取調べた結果を私の所に報告して来たのであります。なんぴとが私に報告して来たか申上げることはできない。合同の調査報告であります。御了承願います。
  206. 大野幸一

    委員外議員(大野幸一君) この辺で打切ります。どうも有難うございました。    〔内村清次君発言の許可を求む〕
  207. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 五分ですか。(「委員長、ときどき入れることはいいですよ」と呼ぶ者あり)
  208. 内村清次

    ○内村清次君 五分も要らん。
  209. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 一分……。
  210. 内村清次

    ○内村清次君 今の大野君の質問にマイクの問題が出たのですが、実は私もあの演壇に上つてつたのです。その情景はよく知つておるのです。あの本会議での法務総裁の報告のうちにマイクを使用したと、こういうことは、これは非常に重大な問題だと私思うのです。それは人民広場に行こうという緊急動議を提出するような一群だつたわけです。この一群に対して議長団はこれは防衛した。そうして重盛君は特に当時の関係者としてマイクを使用をしなかつたと、こう言われた。そうすると、人民広場の緊急動議の問題は、これは民主的に動議を採上げるということでなくして、自分であれを使用したということになる。あのメーデー参加の人方にあれを一つ放送してごらんなさい。これは大きな問題。その大きな問題を総裁がこれを本会議に報告になり、而もその報告の事項というものは、あなたの部下がやつた。これをあなたが信じた。そうすると、議場にこれを諮つたときにおいて、議場の議員はこれはマイクまでとつて人民広場ということを言つたかと、こういう考が生れて来る。これと同じことのように、調査官が審理官に渡す、審理官がこれを審理する、そうして調査庁の長官がこれを認定して公安審査委員会のほうにこれを提起するというようなことになつたときに、公安審査委員会認定というものは、これはやはり丁度あなたが今報告につき信じたような結果に相成る。ここに私は破防法の非常に危険さがありはしないか、こう思つておるのです。ただ今日は率直に総裁としてはその見解を謝まられたわけでございますからいいものの、この団体規制の場合のときにおいて、そういう一方的な調査によつて審査委員会の決定というものが非常に誤つた決定に相成るということにこの破防法の欠陥がありやしないか、その点についてはどうお考えになりますか。
  211. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) 破防法につきましては、さような誤りのないように、あらゆる観点から証拠を集める、殊にその対象となるべき団体につきましてはみずから利益になるべき証拠を提起することになつております。今の私が謝つておるような、あなたが利益になる反対の証拠を出されて私が誤つておれば誤つておるということになるのでありまして、この法案においてはさような危険は毛頭もないのであります。有利な証拠はどんどん出し得るのであります。
  212. 伊藤修

    伊藤修君 どうも先程の佐藤君の御答弁はちよつと見解が間違つておると思うですね。行政事件訴訟特例法の第十一條によりましても「処分を取り消し、又は変更すること」とあるが、こう規定しておつて、変更の場合は、一部取消ということはそういう表現の中には入らないと解釈することは私は当然じやないかと思うのです。ただ法律がこういう規定をして無理に変更の場合もここに含めて解釈しようというお考え方だろうと思うのですが、できておるものだからなるべくこれを修正しないようにというお考えでしようけれども、立法としてはちよつと無理の解釈じやないかと思うのですが。
  213. 高辻正己

    政府委員高辻正己君) 只今の問題でございますが、只今意見長官ちよつと席を外しておりますので、私が代つてお答えを申上げます。行政事件訴訟特例法には、御指摘のように、「行政庁の違法な処分の取消又は変更」というふうに変更という文字がございますわけでございまするが、この変更という文字の意味はこれは一部の取消ということに判例上も又学説上も異論がないということを承知しております。従つて佐藤長官がおつしやいましたのも、そういうことを基礎において仰せになつたことだと存じております。
  214. 伊藤修

    伊藤修君 従つてあなたの御答弁通りに我々は法律解釈しているのです。ですから変更の場合は一部の取消をも含むのですよ。今度は逆に一部の取消の場合に変更を含むと即解釈できるかというのです。変更の場合は一部の取消の場合も含んでいる。これは学説、判例できまつている。だからといつてこんどは一部の取消という場合に変更も含むという解釈は出て来ませんよ、論理上。そこに無理があるのじやないか。そういうふうに解釈するなら解釈するでよろしいがそこに無理がある。法制局ともあろうものが無理な解釈をこじつけてはいけない、無理があるならあるで、不備があるならあるでこれは私は率直に了承しますけれども、そういう先ほどから問題になつているのを詭弁を弄していけない。法制局ともあろうものがそういう無理な解釈とつちやいかん。いかに法律を通そうといつても、これは大したことじやないけれども立法技術においてちよつと欠けるところがあるということを指摘しておきます。
  215. 高辻正己

    政府委員高辻正己君) 御尤もな御質問でございますけれども、これは変更に一部の取消を含むということじやなしに、変更というものは一部の取消である、こういうのが学説、判例上の一定見解であるというふうに申上げたつもりであります。
  216. 伊藤修

    伊藤修君 少くとも新憲法下におけるところの立法形態というものは、なるたけ国民にわかるように作るというのが今日の立法の技術のあり方なんです。どこまでもそういう考え方をもつて難解な表現方法はお用いにならんほうがよろしいという意味です。  次に第二十七條及び二十九條、ここに司法警察員とこういう表現があります。これは司法警察職員等指定応急措置法に定めるところの特別司法警察官も含む趣旨ですかどうか。
  217. 關之

    政府委員關之君) この司法警察員の中にはいわゆる特別司法警察官は入つていないというふうに解しております。
  218. 伊藤修

    伊藤修君 それははつきりしておいて頂かんと、若し入つているという解釈ならば刑訴の百九十條のごとき規定をおかなくちやならんと思うのですが、入らないという解釈ならそれでよろしいです。  これはまあ関連して、そういう点に触れておつた質問もあつたように記憶するのですが、これははつきりしておきたいと思うのですが、第二十九條には公安調査官が司法警察官の行政処分に立ち会うことができるとこう規定しているのですが、その場合におけるその公安調査官が他人の住居に入ることができるかどうか。当然職権をもつて入ることができるかどうかということですね。この点を明らかにして頂きたい。
  219. 關之

    政府委員關之君) この第二十九條の立ち会うことができるという規定によりまして、公務といたしまして入り得るとかように考えているわけであります。
  220. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると他人の住居、船舶、土地、そういうものに当然この規定だけで侵入できるということになるのですね。
  221. 關之

    政府委員關之君) 司法警察員が暴力主義的破壞活動からなる犯罪に関して行う押収、捜索、換証そういうようなものが人の住居において行われる場合にそこに行つて立ち会うことができると、これはこの法案でそういうことが認められておる、かように相成るのであります。
  222. 伊藤修

    伊藤修君 そうするとこの場合はその基本たるところ司法警察官が令状を持つて行つた場合に限るのですね。現行犯その他には適用はないとこういうことになるのですか。
  223. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) 刑事訴訟法二百二十條におきまして令状によらないで差押、捜索、検証が許される場合がございます。それから刑事訴訟法百九十九條によりまして被疑者を逮捕する場合、又はは現行犯人を逮捕する場合に、必要な場合は左の処分をなすことができるというので、その中に差押、捜索、検証がなし得る場合が限定されますが、規定がございます。その場合においてはやはりこの二十九條が同様に働いて来るのではないかと考えます。
  224. 伊藤修

    伊藤修君 だからお尋ねしておるのです。令状のある場合だけだというように御説・明になると、刑訴の場合において令状によらない差押、検証、押収というものがある、この場合においてもなおこれを拡張解釈してできるという御答弁をしたいんでしよう。併しちよつと無理ではないですかね、そこまで拡大してこれを予想して書いてあるわけですか。
  225. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) 実際の場合といたしましては殆ど行われないのではないかと思うのであります。現行犯人を司法警察官が逮捕する場合は、非常火急の間に行われるような場合でありますので、実際問題とした殆ど行われないのではなかろうかと思います。
  226. 伊藤修

    伊藤修君 実際の問題は行われないかも知れませんが、行えるという法的解釈をおとりになつておれば行い得るでしようし、行うでしよう。又行うことが必至と私は考えるのです。だからその点は明らかにしておかんと問題を生ずると思う。そもそもこの法律規定されたことが、それは根幹として最初はあなたたちのお考え方は調査員に強制権を持たせておつた建前ですが、従来の二十七條は。で、この中には旧来の二十七條というものは外して書いてありませんけれども、そういう基本的観念の上に書かれてこの條章というものがあつたわけです。二十七條は外してその根幹としてこれだけ残したものであるからそういうところに少し私は無理があるのではないかと思うが、考え方としたそこまで及ぶということなら私は明確にしておかなくてはならんと思う。立入権があるということは、これは重大な問題ですよ。我々が憲法に保障されたところの住居の安全、居住権というものがやはりここで侵されることになる。令状によらない人が来てみだりに立入るということは、居住の安全というものがその点において根本的に蹂躪されると言つても語弊はないと思うのであります。この点のお考え方、経過等はどうだということであります。
  227. 關之

    政府委員關之君) 二十九條につきましては、公安調査庁長官ではすべて強制権は認めない、公安調査官にはすべて強制権は認めない。併し証拠の価値判断上での証拠がどういうような状態においてあつたか、或いは現実にどういうようなそこに施設があり状態を形成したかということを現実に目で以て見ることは、証拠の価値判断上それは極めて必要である。さような意味におきまして強制調査権は認めないが、その証拠に現実的な価値判断を與うるために、現実に実検の権限を持たせることがどうしても必要じやないかというようなことから第二十九條が出て来たのであります。  そこで考え方といたしましては、司法警察員が適法に押収、捜索、検証をなす、この押収、捜索、検証は刑事訴訟法のこれは強制権として行われる場合だけに限られるのであります。そこで警察吏員が適法になす、かような場合に調査官がこれの跡をつけて行つて、そうして立会つて見聞する、こういうのが二十九條の趣旨に相成るのであります。
  228. 伊藤修

    伊藤修君 いや、私のお尋ねしているのは、あなたがたが強制権を用いる場合において、共に立会つてできるというその御説明です。然らば令状による場合じやないか、こう言うのです。そういう結論になつて来るでしよう。そういう場合じやなくて刑訴の二百二十條の場合をも含むのだということになると令状によらない場合も含む、こういうことになつて来るのでその点を明確にして頂きたい。
  229. 關之

    政府委員關之君) この法律の建前といたしましては、警察員が令状によつてなす場合はもとよりでありますが、それ以外に適法に強制的になし得る場合も含んでいるというふうに考えているわけであります。
  230. 伊藤修

    伊藤修君 そういう意味でだんだん拡張解釈されるというとますます不安に堪えられないということになるのです。そこで調査員がおよそ自分があそこの家に入つて行こうと思えば、司法警察員を連れて来て現行犯でありとして、容易にこの二百二十條を利用してできるということになつて来る虞れもあるし、又犯罪ありとして令状をとつてやる場合も、これは濫用される虞れが多分にあるのです。個人の居住権の安定ということは期しがたい、こう思うのであります。そういう意味で拡大解釈されることは我々としては好まないということをはつきりと申上げておきます。  それから第三十條です。この規定によりまして、規定だけで行けば無期限の領置ができることになるのでありますが、これは先にも質問がちよつとありましたが、究極的にきめてないように思われますが、この点もはつきりして頂きたいと思います。
  231. 關之

    政府委員關之君) その領置の期限の問題でありますが、これは結局その事案を処理するに必要且つ相当の限度ということに相成ると思うのであります。その期限につきましては個々の具体的な事案によりましていろいろの長短があるだろうと思うのであります。
  232. 伊藤修

    伊藤修君 それは長短はあるだろうと思う。それは実情ですよ。だからどうするのだとこう聞いているのです。人の物を預つてつて勝手放題に義務者が任意のときに還していいのかどうか。権利者の意思にかかわらず義務者たる国家が自由意思によつて決定するというあり方か。必要がなくなつたらば直ちに返還するというのか。その点が法律では明確じやないのですが、どうするのかとこう聞いているのです。国民はあなたたちに勝手に取られたとして取られた物はいつ還つて来るかわからんというあり方じや困るのです。それはどう措置なさるかということを聞いているのです。
  233. 關之

    政府委員關之君) 物件の領置は要するに相手方の承諾の下に行う領置であるわけであります。この相手方が、然らば提出いたしますということの承諾が前提になるわけであります。従いましてそのことから、若し相手方がどうしても用があるから返してくれ、こういうふうな要求がありましたならば、これは勿論返さなければならん問題だと思うのであります。そこで領置は三十二條におきまして、さつき申上げた特に事件の処理に当りまして必要がなくなりますれば、これは速かに御本人に返却するということになるのであります。
  234. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると承諾のある場合において、提出するときにおいては、いつ幾日までに返して下さいという條件付で提出ができますか。
  235. 關之

    政府委員關之君) すべて相手の承諾、希望條件に基いてやるのでありますからして、さようなことも勿論、若し十日間に返せと言われれば返さざるを得ないと思うのであります。
  236. 伊藤修

    伊藤修君 それではあなたたちの職務執行の場合においては国民はそういうことは、お上様が召し上げるということに対しては、従来御無理御尤もとして、易々諾々として提出する習わしになつている、不幸にして日本の場合は。その場合において今あなたが御答弁になつた趣旨を一々記してそうして領置されますか、そういうお取扱なさいますか。
  237. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) その点につきましては、只今質問のような趣旨を職務規範等において徹底さしたいと考えております。
  238. 伊藤修

    伊藤修君 なお還付の期日はいつ幾日に返すということは事実上できないことです。やはり必要なくなつたら直ちに返還するということは、ルールの上においてはつきりしておくべきだと私は思うのであります。だからそういう処置をあなた方に促しているわけであります。あなたたちは、そう思うとかそうしよう、こういうだけじやいかんから、国民に約束する上においてルールの上にそういう点は明確にしておいて頂きたいと思うのであります。
  239. 關之

    政府委員關之君) 大変結構な御趣旨で明確にその点をいたしたいと思うのであります。
  240. 伊藤修

    伊藤修君 この質問のうちにちよつと片鱗が出ておつたのですが、本法の第三十八條、刑法にある予備、陰謀、教唆又は扇動を罰するということになつているのですね、これらは未遂罪を罰しないという、それを伺つておきます。
  241. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) 予備、陰謀、教唆、扇動を罰して、これらの未遂罪を罰しない理由は、刑法では大体その手当がしてございまするので、ここには刑法の規定以外のものを取上げて規定した。かような趣旨でございます。
  242. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると本條の各罰則についての未遂罪以外は賄う必要はない。こういう基本的な考えですね。  次にお伺いしたいのは予備、陰謀、教唆、扇動の未遂というものは考えられるのですか、考えられないのですか。
  243. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) 観念的にはいろいろございますと思いますが、実際問題としては殆んど考えられないのではないかと、かように私は考えております。
  244. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると予備、陰謀、教唆の未遂の状態にあるものは放任行為ということになるのですね。
  245. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) 予備、陰謀については未遂は問題ございませんと思いますが、教唆、扇動についてこれを独立罪として規定した場合において、この独立罪に対する教唆或いは未遂或いは従犯の観念があり得るかということについては、観念上はあり得る、但し実際問題としては例えばその教唆というふうなものが、刑法六十一條の関係でそうなるのか、或いは教唆自体が、もうすでに独立として考えられるのかという問題になりますと、理論としては二つにわけて考え得ると思いますけれども、実際問題としては実益のない事柄である、かように存ずる次第でございます。
  246. 伊藤修

    伊藤修君 じやここで認めたところの教唆又は扇動罪ですね、これは独立罪となりますけれどもその場合において、刑法の総則の教唆がかぶつて来るかどうかわかりますか。
  247. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) この問題は刑事特別法の際にも同じ問題が提起せられましてお答えいたしておいたのでございまするが、理論的には勿論かぶつて参ります。但しそれが実際問題としてどうなるかということになりますると、刑法第六十一條第二項の規定解釈上すでに大体において判例上統一したことに相成つておりまして、教唆の教唆は教唆とするという見方については、ほぼ一定した被判上の見解でございます。
  248. 伊藤修

    伊藤修君 そうするとこの本法にいう教唆に対しまして、刑法総則の教唆が成立し、且つ又刑法総則にあるところのその教唆も成立するということが理論上出て来るわけですが、そういう解釈でいいのですか。
  249. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) 理論的にはそういうことに相成ります。
  250. 伊藤修

    伊藤修君 実際罰するところの事例を一つ伺いたい。
  251. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) およそ教唆というものがどういう性質を持つているかという問題にかかわつて来るのでございまするが、一つ犯罪行為を誰かをしてやらさせようという意思がある、本人の意思のみならず行為によつて外部に表現される、この段階からして本人の危険性が具体化し同時に現実なものとなつて来るわけでございます。それが一人の段階を経て或いは二人の段階を経て、結局実行行為までなる、つまり実害が生ずるかどうかという問題に関するわけでございまするが、この点につきまして、いわゆる刑法上二つの議論がございます。そこで私どもは刑法上の議論が如何ようともあれ、とにかく一つの重大なる犯罪につきまして、本人の危険性が外部に顕著に表現されたその段階を以て、単に内心的な思想の傾向という問題ではなくてこれが外部に具体的に現われたというその段階において、事を律するのが最も妥当であろう。従つてそれが時の経過に従い或いは事情の前後に伴いまして一人又は二人、三人を通して実行される場合もあり、或いは実行されない場合もあるわけでございまするが、それらについて観念的には先ほど申しました通り、いろいろ教唆の教唆の教唆といつたようなことが考えられるのでございまするが、実際に本人の主観的な要件としてこれを見まする場合には結局一つでございます。
  252. 伊藤修

    伊藤修君 それは一番問題になる基本の教唆、刑法の総則にいう教唆が基本になりました場合は、或いはそういうことも言い得るかと思うのです。即ち正犯が実行行為をしなかつたならばその教唆は成立しないのですから。そうでなくして、本法の教唆というものは、正犯が実行行為をすると否とにかかわらず、独立罪として教唆が成立するということは、そうした危険の内衣を持つところの意思表示が外界に現もれたということが犯罪構成要件になろわけですね。それだけで以て本法においては直ちに教唆罪が成立する。而してこれに総則の教唆というものがかぶつて来る。この教唆は第一教唆の意思表示をしたということが正犯、実行行為ということになると思うのですが、そうではないですか。そうしてこの教唆の又教唆、総則でいう教唆の教唆、第三段階の教唆というものはやはりこれにかかつて来ると思うのですが、そうですが。
  253. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) つまり独立犯たる教唆というものが、刑法の六十  一條のいわゆる教唆というその性質上若干の違いがある。と申しまするのは、この教唆に基いて或る実行行為がなされない場合においても、これが処罰され得るという点について差別があるわけでございますが、その教唆に対する教唆の教唆、或いはその教唆に対する教唆といつたようなことになりましても、事は結局刑法第六十一條の二項又は一項の解釈の問題になるわけでございます。これは主観的な要件から申しますると、全く先ほど申しました通り、その本人の危険性というものが外界に現われた段階が一人の人を経てやろうが、或いは二人の人を経てやろうがそれは結局同じことだということからして、現在において判例がとつております六十一條第二項に関する態度が出て参るわけでございます。従いまして、只今のような場合もすべて統一して律すべきものと、かように考えるのでございます。
  254. 伊藤修

    伊藤修君 そういたしますと、問題は今後基本の犯罪として扇動という場合において、扇動の教唆の教唆というものが認められるわけですね。これも理論上認められると思うがどうでしようか。
  255. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) 理論的な問題としてはさようなことに相成るわけでございます。
  256. 伊藤修

    伊藤修君 そうした場合において、最後の教唆、教唆の教唆、扇動の教唆の教唆、この教唆者が処罰される犯罪構成要件というものは何になるか。
  257. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) その扇動の教唆の教唆、二度目の教唆の教唆と申しますのは、恐らく刑法六十一條二項の関係の教唆の教唆だろうと思いますので、これにつきましては従来の判例に従いまして、これは扇動の行為が具体的に発生した場合において初めて律し得る、かようなことになるわけでございます。
  258. 伊藤修

    伊藤修君 そうするとその扇動の行為、いわゆる事実的にいいますれば、最初の意思表示と最後の教唆との間に不一致があつて因果の関係が認められない、或いは類推して認められうる場合もあるでしようが、どの点まで認定できますか。
  259. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) その場合は全く刑法における六十一條第二項の関係で、例えば或る者が或る犯罪を教唆した、然るにその者が何か誤解するが、或いは何かの事情でその犯罪態様を変えたという場合にどうなるかという問題と全く同一でございます。結局その間に本人と意思の連絡があるかないかということを具体的に判定してこれをなす、かようなことになろうかと思います。
  260. 伊藤修

    伊藤修君 意思の連絡というのは、最初の教唆者の意思に基いてその通りの意思の連絡が最後に到達するという必要を生ずるのか。最初の教唆者の予期しない最終扇動者のところへその意思が伝達されておつて、自分の企図していない予想もしない人が扇動された場合にはどうなるのですか。
  261. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) この問題は教唆者が中に入りました場合の因果関係の中断、因果関係の中断ということは言葉としては不正確だと思いますが、俗に因果関係の中断として論ぜられておる問題でございまして、その中断において或る別の意思が働きまして、その犯罪の本質的なものに影響をもつてくる、例えば人を殺すとかという犯罪について教唆した場合に、あいつは憎いから殺すのだ、殺してくれと言われたが、本人は憎いけれども火をつけてやれというような場合においては、これは教唆が全然成り立つてこない。かような場合でございまして、ただこれを殺してくれというのが或いは本人を含めて一家皆殺しにしようということになつた場合に、この教唆が成立するかしないかという問題と同じような関係になるかと存じます。
  262. 伊藤修

    伊藤修君 それではこういう場合はどうですか。その教唆の教唆者が甲という人間に扇動をなさしめようとした、ところが教唆の教唆者の考えておる人間とはずれて、団体の構成員その他の人が、団体の構成員というのはたくさんあります、他の人がこれを扇動したという場合にはどうなりますか。
  263. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) 教唆の内容が具体的に例えばこの人間でなければ犯罪をやつては困るというふうな教唆の仕方の場合もございましようし、或いは誰でもよいから一つつてくれというような教唆の場合もあると思います。それで最初の教唆者の主観的なものといたしましては、これは誰がやつてもとにかくあいつが、例えば殺人ならば被害者が死ねばよいというふうなことであつた場合には、これは本質的なものではございませんし、又そうでない場合には本質的なものとして、この教唆の意思の中断があるという場合もあろうかと思います。
  264. 伊藤修

    伊藤修君 あろうかではちよつとわからない。
  265. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) 具体的な事情によつて違いますから……。
  266. 伊藤修

    伊藤修君 その場合において結局今あなたの説明の中に実行行為があればこれは問題ないのです。実行行為でなくして扇動行為というものが独立罪として認められる以上、その扇動の行為内容が教唆者の教唆の意思と一致しておればよろしいですよ。一致してない場合にはこれは問題だと思うのです。又その相手方が団体に属しておる、団体の何者がやつてもよいという場合には、包括的にそれは扇動の教唆として認められるかもわかりませんが、その団体の中の誰それというような考えをもつてつたところが誰それが都合が悪くて或いはそれが中止したというような場合には他の者が行うというようなことがあります。その場合はどうなるか。
  267. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) それは当初に申上げました、要するに当初の教唆者がその誰それというものが必ずやるということを前提といたしまして、それ以外の者がやつた場合にはおれは責任を負わんというようなつもりにおいてこれをやつたというふうな場合において、それがはつきりいたしますれば、勿論その教唆の責任は繋つて行かない、かような趣旨でございます。
  268. 伊藤修

    伊藤修君 いずれにしても、この扇動罪を独立罪とし、教唆罪を独立罪とするという結果、理論上広範囲に犯罪人ができるということが予想されるのです。理論ばかりの問題でなく実際上の具体的事案に対してましては、あらゆる拡大して法網の下に全部一網打尽にできるというあり方だということを私は明らかにしておく意味でお尋ねしているのです。特審局はどうです、その点に対して、そのくらいの考えを持つてつているのじやないですか。
  269. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) 只今検務局長が、理論上の問題として刑法の一般共犯例が扇動罪に適用される形を御説明申上げたのでありますが、私どもといたしましても、教唆者がみずから扇動をやらずして他人にやらせるという行き方はやはりいかんと、これはやはり刑法の規定がその教唆に適用されて然るべきものであると考えている次第でございまして、すべての人をできる限り処罰したいという行き方ではなくして、実際にみずから扇動をやるということの代りに他人をしてやらせるというような行き方は、やはりその教唆行為についても科罰性ありというふうに考えているわけでございます。
  270. 伊藤修

    伊藤修君 特審局もそこまで拡大して運用されることを希望しておらるるように考えられるのですが、その考え方自体本法に対する国民が危惧の念を抱く大きな原因の一つともなろうと私は思うのです。元来かような犯罪に対しましては、刑法典おいて定めるところの教唆といい、予備、陰謀、幇助というように、あらゆる場合を想定して刑法が規定しているにかかわらず、本法において刑法の根本的概念を破壞して、そうしてここに教唆、扇動の独立罪を設けて、従つて刑法の総則がこれにかかつて来て、より以上拡大されてこれが運用される虞れが十分あるという点を私は指摘しておきたいと思う。  次にお尋ねしたいのは、この法律の建前として証拠関係について認定基準というものが少しも明らかになつていないのです。ところが、本法によつて証拠関係が認定される、それによつてすべて規制されるということになつておるのですが、例えば唯一の自白を認めるとか、或いは唯一のスパイの証拠を以てこれを規制するとかいうことに対するところの適切な基準というものがこれに設けられていないのですね。極端な場合を想像いたしますと、特審局員の人が馴れ合いで以て誰それは破壞活動をしているという供述をすると、その唯一の証拠を以てその団体が破壞活動団体認定されることも想像されるのです。又本人の自白が唯一であると、他に何もないという場合も考えられるのです。そうした場合においてそのいわゆる唯一の証拠でこの規制が行われるかどうか、立法趣旨がどこにあるのか伺つておきたい。
  271. 關之

    政府委員關之君) 証拠の問題はお尋ねのごとくこの規制におきましても重要なる問題であるわけであります。併しこの法案におきましては行政処分処置として行われることと、そうしまして又結局においてこの訴えは民事訴訟法によつて行われるというような建前に相成るわけでありまするからして、それらの点から考察いたしまして、特にお尋ねのような刑訴その他に規定されるような厳格な制限というものを設けなかつたのであります。併し実際の問題といたしまするならば、かような活動があつたのだというふうに認められる証拠は、もとよりそれは合理性がなければならないのでありまして、さような合理性に基いてすべての証拠の種類、判断というものが與えられて規制が行われるということに相成るのであります。
  272. 伊藤修

    伊藤修君 私はこの法律の建前として、少くともかような重大な事項を決定する以上は、唯一の自白若しくは唯一の証拠を以てしてはならないという規定が欲しいと思うのです。不幸にしてこの法律の面にそれが現われておらないようですから、この点に対しましては私は今日の段階としては、修正されるならばともかくとして修正されないとすれば、これはやはり事案その他の上において厳としてこれは慎まなければならないと思う。単なる一つの証拠ですべてを決するというやり方はよくないと思いますが、これはどういうふうに御処置になるおつもりですか。
  273. 關之

    政府委員關之君) 証拠のほうの問題につきましては、さつきも申上げたように、基本としては大体民事訴訟法の原則、これが結局におきまして民事訴訟法によるのでありまして、かような趣旨によつてその判断をする、この証拠の問題を考慮するということに相成るのでありますが、今お尋ねの唯一の自白というような問題でありまするが、もとよりこの規制などの重大な問題についての認定といたしましては、ただそれだけで以てかようなことをするということは、私どものほうとしてもこれは運用上におきまして考えることができないのであります。誰が見ましても合理的にこれだけの証拠があれば認められるという証拠でなければ、とてもこの規制はかけられないものというふうに考えているのであります。
  274. 伊藤修

    伊藤修君 そういうお考え方はわかるのですが、お考え方をどう国民に約束されるかということを聞いているのです。
  275. 關之

    政府委員關之君) 唯一の証拠、唯一の自白というような問題につきましては、御趣旨の点を規則その他に明示したい、かように考えております。
  276. 伊藤修

    伊藤修君 まだ不十分でありますけれども、何らかの方法によつて明示されますれば一つの職務執行の基準になりますから、それでもつて一応この点を了承しておかざるを得ないのであります。  公安審査委員会設置法第十二條の委員補佐の任命は誰がやるのですか。
  277. 關之

    政府委員關之君) これは国家行政組織法の規定によりまして公安審査委員会委員長がいたすことに相成るのであります。
  278. 伊藤修

    伊藤修君 そうするとこの委員補佐というものは一般職ですか、特別職になるのですか。
  279. 關之

    政府委員關之君) これはこの任命の方法から見まして、非常勤の一般職ということに相成るのであります。
  280. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると国家公務員法が適用になるわけですか。
  281. 關之

    政府委員關之君) 原則として服務その他については公務員法の適用があるのであります。
  282. 伊藤修

    伊藤修君 これはこの間秘密会においていろいろ御説明を聞いたのですが、そのとき聞き漏らしたのですが、たしかおつしやらないと思いましたが、情報提供者のうちで、公務員若しくはその他の者でもありましようが、例えば警察官が情報を提供した、これには謝礼を出しますか、出しませんか。
  283. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) 警察官を一般の情報提供者として取扱つたことはございません。
  284. 伊藤修

    伊藤修君 いや、若し情報を提供した場合には出すか、出さんかというのです。
  285. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) 遠慮したいと思います。出さないようにしたいと思います。
  286. 伊藤修

    伊藤修君 今遠慮とか出さないようにしたいとかいうことは、「したい」と思うだけであつて、するかも知れないのだと思う。そこはあなたも検事をやつてつたからそういう言葉ではちよつと了承しない。しないというのか、できないとこういうのか。
  287. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) いたしません。
  288. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 先般の答弁が違つているように思う。
  289. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 吉田君簡単に願います。
  290. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 先般お尋ねをいたしましたときには委員調査費の名目であつたかと思うのでありますが、警察との協力関係について私は出すこともあるというように答弁を伺つたように思うのです。今の場合にはないというお話でありましたが、答弁が食い違つているかのように了解しますがどうですか。
  291. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) 極く簡単にお答えいたしますが、個人として情報を提供したことの問題ではございません。先般は自治体警察が情報を我々に提供された場合につきまして、若し実費を要しておつたという場合におきましてはその役所に実費を弁償いたします。
  292. 伊藤修

    伊藤修君 もう一点その点についてこの間お話がなかつたのですが、又私も聞き漏したのですが、情報の価格決定権は誰にあるのですか。
  293. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) これは現実にそういうものを取扱う調査官が適当に評価して渡しております。
  294. 伊藤修

    伊藤修君 危険ですね、第一線の調査官がその情報の価値判断をするということは。あなたも仰せ趣旨から申しましても、その価値判断はあなたたち高級の役職員のかたがなさるべき筋合であり、又なさるとおつしやつてつたのです。然るに第一線のそうした軽い地位にいる人々が直ちに主観的にその価値を決定するということは、国家の尊い費用を浪費すると言わなくちやならん、みだりにそれを濫費するものと言わなくちやならん。それでは国家財政が幾らあつても足りませんよ。私はそんなひどいあり方はないと思うのですが如何ですか。
  295. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) 過当な実費を弁償しないように、一般的な指導、それから個別的な指導はいたしておりますが、出す場合におきましてはいちいち私どもの指揮命令を受けて出すような立場はとつてもおりません。率直に申しまして、公安調査官が出すものでありますから、これが過当な支払にならないように一般的に又事後においても指導しまして、絶えず改善して行くように努めております。
  296. 伊藤修

    伊藤修君 これは今後もこの組織は拡大されて行くのですが、十分お考えにならなくちやいかんと思うのですね。第一線の人が勝手に価格決定権を持つてつて、それによつて国費がどんどん支払われて行くということになると幾らあつても足りませんよ。それは勿論予算の範囲内ということになりますが、出るべからざるところの費用が予算の限度において当然費やされるという不合理な結果になります。濫費と言うて差支えないと思います。これはあなたたち責任のある人がやはり決定権を持つて、これに対して一々どのくらいのものかという格付をなさるのが当然のあり方ではないかと思うのです。それと、第一線の人は自分が営営としてその情報を取つて来た、その人は自分の指揮命令によつて提供者から取つたわけでしよう、これは。してみれば自分の職務の誇りを格付するためにも、より以上高い価格にこれを認定することは人情の当然ですよ。それは幾ら予算があつても足りません。そういう点はあなたは今後運営なさる上において、やはりあなたたちが誰か見てやるという考え方が一番いいのじやないですか。
  297. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) 御指摘の点重々気をつけたいと思つております。実際の場合におきましても、やはり自分の直近上司に相談する場合も非常に多いと考えております。又私のところまではやつて来ませんけれども、現場におきまして直近の上司と相談するという場合が多いということは事実であります。なおよくこの点については戒心したいと考えております。
  298. 伊藤修

    伊藤修君 くどいようでありますが、直近上司という人はどういう人を指しているか知りませんけれども、いわゆる情報局長というような人を指しているのですか。
  299. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) 現在までの状況におきましては課長とか或いは係長とかいうようなものがそれぞれ監督しておりますので、そういうような者と相談をするということになつております。
  300. 伊藤修

    伊藤修君 もう一つ関連してお尋ねしておきますが、そうした内容によつて収集された情報の中で無価値のものも私はあると思うのですが、いわゆる国家の費用を支弁して獲得した情報のうちでこの間御説明になつた、約七〇%くらいだとおつしやつたのです、その余の三〇%というものは無価値なほどに金を支払つたという結果になるのじやないのでしようか、如何ですか。
  301. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) 全然無価値とも申せませんが、御指摘のような価値のないものもある。こういう点につきまして、今後においてもそういう情報につきましては実費弁償の方法をとるように改善して行くという建前をとつております。
  302. 伊藤修

    伊藤修君 私はあなたが特審局という一つの事業会社を経営してみるという一つの想定をして三割も無価値のものを買入れておつたのでは原子時代には先ず根本において損してしまうのです。その事業は成立たない。国家の費用だからいいのですが、国民が負担してそれは損失を補つて行くからこれは賄えるのですが、ここに委員長も事業をなさつているのだが——その事業のなさり方において仕入れ資材というものが三割も使用に堪えない資材を仕入れられたら購売係というものは忽ち首にしてしまうのですよ。これは恐らく小野さんでもやられると思うのです。ですから、そういうあり方はよくないのです。これは十分一つ御戒心下さつて国家の費用は有効にお使いになるということに考えて頂かなくては困ると思うのです。大体そういうあり方も私は基本的には賛成しないのですよ。経費支出の面について一言申上げておきたいと思います。
  303. 關之

    政府委員關之君) 位置を変えて私からもお答えいたしたいのでありますが、その点につきましては私どもといたしましてもこれが国家の税金によつて賄われておる金であるということをすでに肝に銘じておりますので、できるだけ有効に合理的に気をつけてそれを使うという方針に日夜苦心しているわけであります。御了承を願いたいと思うわけであります。
  304. 伊藤修

    伊藤修君 關さんあなたが忠実におやり下さるのですから過ちないと思いますが、どうか一つその点は十分一つうまく運営して頂きたいと思うのです。巻間伝えるところによると、どうも元の大橋法務総裁の機密費に特審局から皆出ておるのだ、こんなことがまことしやかに伝えられておるのですよ。そんなことは私は信じたくないのです。臆説に過ぎないと固く信じておりますけれども、そういうことをも流布されるような疑いを受けるということはあなたたちもこの法律の第六條ですか、そういう疑いを受けるに十分足りるところのものがあるということになつてしまうのですから、どうか一つ十分戒心して頂りきたいと思うのです。
  305. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 その点についてこの間法務総裁の私に対する御答弁を保留されておりますが、得られるものと…。
  306. 小野義夫

    委員長小野義夫君) あとで……。
  307. 伊藤修

    伊藤修君 公安調査庁の研修所というものが今度できるのですね。これは具体的にどんなことを教えるのですか。
  308. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) この点につきましては先般労働委員会との連合審査におきましてもお答えいたしたのであります。先ず第一に、これは関係法令或いは調査技術とか情報技術というようなことについて教えることは当然でありますが、一番の眼目はやはり民主主義というようなものにつきまして十分なる識見を與えたい。なおそれにとどまらずこれに関連する各種の面、政治、経済、社会の面につきましても一応の、一応と申しますと語弊がありますが、できる限り識見を養わせるように振向けて行きたい。このためには現在いろいろ民間の講師のかたをお呼びして時間の合間にやつておりますが、立派なかたをお招きして講師になつて頂くつもりであります。
  309. 伊藤修

    伊藤修君 そのあり方はよろしいのですが、ただ名目的に民間の講師を、一、二お願いしてたまに聞くというあり方ではよくないのですよ。やはりこういう職に携わる人は広く視野を広めなければなりませんから、その意味においてもあらゆる思想関係の人を呼んで第三者の地位に立つて聞くべきである。かたよつて自由党の御意見ばかり聞いておつてもだめだ、社会党の意見も聞き、共産党の意見も聞いてそうしてあらゆる政治理念というものをはつきり把握する、そうして自分の基本的な考え方というものがそこに養われるというあり方にしないと、偏した人間を作つたのではますます非難の的になるのです。それだから講師は佐藤さんのような人も呼ばなければならないし、共産党の人も呼ばなくちやならない、そうして円満な常識の備わることに努めなくちやいかんと思うこれも一つ希望しておきますつそうするとこの教授課目の中には尾行、張込、調査、こういうようなことは教えないのですか。
  310. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) 実は捜査の技術でありますが、私の卒直な気持では日本における捜査技術は非常に進んでいる。捜査技術は過去の歴史的な期間相当高度なものに発達しておつた考えるのであります。ただ遺憾ながらこれに伴う十分な科学的な施設がなかつたということはあつたと思うのです。こういうような歴史的にも蓄積された経験は、飽くまで基本人権を尊重する意味におきましてその限度において利用せらるべきものであらうと考えるのでありますが、調査技術につきましても、新聞記者諸君の取材活動の技術も一つの立派な技術であるのであります。或いは税務官の担税能力の調査につきましてもそこに非常に高度な技術面がある。各面の技術を検討いたしまして立派な調査技術を建設して行きたいと考えている次第でございます。
  311. 伊藤修

    伊藤修君 私は具体的に聞いたのですが、その調査技術のり中には張込みや尾行、そういうことも教えるのですかと、こう聞いているのです。
  312. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) 必要止むを得ない限度においては、(笑声)やはり新聞記者のかたがたと同じような意味で、(笑声)或る程度のことはやることは止むを得ないと思います。その場合に相手がたの名誉を傷つけたり、或いは自由を侵したりしないようにすることは十分に注意したいと思います。
  313. 伊藤修

    伊藤修君 尾行を新聞記者に範をとつても駄目ですよ。新聞記者諸君の尾行は自動車に乗つてたたつと走つて見えるのですが、こんな尾行では役に立たん。だから尾行の模範は新聞記者では駄目だ、もつとほかに範をとるところがあると思う。張込みにしたところが新聞記者の張込みは相当上手でいらつしやるけれども併しまだまだ範にするに足らんと思う。一体そんな古い捜査のあり方というのは、ここで再び訓練いたさなくちやならんのでありましようかな。もつともつと高度の科学捜査ということに重点をおかれるということの根本的な考え方を持つて頂きたいと私は思うのです。私の質問したいのはそこが重点なんです。旧来の日本で行われた徳川時代以来の野村胡堂氏のガラッ八程度の張込みじや困るのです。
  314. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) 誠に御尤もつな御指摘であります。科学的な調査技術というものを建設して行かなければならないということはお説の通りでありまして、この面につきまして十分努力して行きたいと考えます。
  315. 伊藤修

    伊藤修君 近くあなたのほうで以てアメリカかなんかにそういうために派遣するというような計画はあるのですか。
  316. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) 現在のところそういうことは聞いておりません。
  317. 伊藤修

    伊藤修君 予備隊ではそういう方面を何か、まあその方面じやないけれども、別な意味においてすでに派遣されたということ、あなたのほうではそういうことを考えておるのですか。
  318. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) 現在そういうことを聞いておりません。この法案が通るかどうかということもあります。(笑声)幸いにして公安調査庁ができましたら、その科学的な調査技術を、(「アメリカでなくイギリスへ行つて見て来なさい」と呼ぶ者あり)その線を十分に……。
  319. 伊藤修

    伊藤修君 私はただ科学捜査という面について十分陣容を整えて頂きたい。若しおやりになるなら、そうしていやしくも基本人権を阻害するがごとき古い形の捜査方法というものはこの際清算すべきだ。而も別に併せて行う場合もあり得るでしよう。併しそういうものに基準をおかずしてもつと進歩的な点に基準をおいそれは従たるものにするというあり方に私は考え直すべきじやないか、そういう意味で教習科目をお尋ねした。その意味においてはアメリカのFBJとか英国だとかその他の各国の捜査機能を一つ御調査になつてそういうことを判定していいことは取入れてなさるべきであると思う。(「岡つ引学校を作らんように」と呼ぶ者あり)  この間政府の御説明特審局は朝連に対して解散したと詳しく伺つたのですが、その解散したあと再び同種類の朝連の団体がどんどんできておるのです。これはこういう現実の問題から推し進めて考えると、今後やはり解散しても結局同趣旨なものが、……先ほど同一性ということについては論議しましたが、それを潜つて、あなたたちの判定の範囲内に入らんように上手にいろいろのものができるのじやないかと思うのですが、結局「はえ」を追うような考え方になるのじやないですか。本法の目的を達成しないじやないですか。これは確信を持つてできるのですか。
  320. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) この法案におきましてもそういう場合の可能性を予想いたしまし先ほど第八條でありますか脱法行為の禁止規定などをおいておるのであります。絶対に一たび解散した団体の再建団体とか承継団体が発生しないということは断言できない。むしろそういう場合もあり得るのではなかろうかと考えられる次第であります。
  321. 伊藤修

    伊藤修君 この法律の立て方として、基本的に破壞活動という刑事司法事件があつてそれを基礎にして破壞団体認定するわけですね。それからそういう刑事事件の起らない場合でも四條によつて認定される場合も少しはありますし、これはわかつておりますが、大体においてそうした犯罪行為があつた場合において初めて破壞活動として認定されることが大多数なんです。してみますれば、これはあなたたちの手によらずしてむしろ検察庁にこれを行わしむるという行き方のほうがよいのじやないか、又そういう考え方もあるのです。これに対しましては権力集中の虞れがある。或いは検察庁が第三者の立場に立つてこれを考えたい、こうゆういろいろな考え方もあります。併し本法の建前を通覧いたしますればむしろそのほうが便宜であるのではないか。こう考えるのですが、又一松さんのお説を以てすれば費用も節約できるのじやないか。あなたたちが今日まで職務をおとりになつた上において、やはり独立してなさらなくちやならんという大きな理由はどこにあるのですか。
  322. 關之

    政府委員關之君) お尋ねのこの団体規制事務を行う役所の立て方をどうするかという問題でありまするが、これにつきましてはこの委員会の御審議においてしばしば従来御質問があり政府立場をお答えしたところであるのであります。又これを繰返すようなことに相成るのでありまするが、結局目前に団体の活動としてこの第三條に掲げるような危険な活動がそこに展開される虞れが、十分に認められる客観的証拠によつてさようなものが認められる、その虞れを除去するたりめにここにかような規定をする、こういうことがこの法案の基本の線になるわけであります。これはかような治安の根本幹線で、政府が全責任を以て行政的に措置できることが最も目的を達成するのに相当なことであるというつふうに考えこて、この法の建前を規定しておるわけであります。権力の集中ということも勿論警察或いは検察庁にかような措置を行わせない一つの理由でありますが、もともとこの事務の本質が、検察又は裁判にかけてやるのに対し、このやはり危険性を除去するということを行政権が責任を以て先ず遂行をしなければならないことであるということが、この事務の本質から見まして、私たちとしましてはどうしてもやはり行政上の処分としてこれを行うのが必要であり且相当である、これが基本の考えかたになるわけであります。
  323. 伊藤修

    伊藤修君 まああなたの基本の考え方行政権優越主義ということから出ておると思うのですが、私は現行の日本の法律の建前からいつてもいわゆる検事というものが公益を代表するという面が多分にあるのです。不幸にして今日までの検察制度というものが犯罪捜査、犯罪起訴という点にその仕事の大部分費やして、公益代表の面が等閑に付せられている。むしろ検事の本職でないように考えておる。国民も又検事というものは起訴するものだ、ひつくくるものだ、こう考えておる。然るに検事の本来の職責の本質というものは、公益代表、公益を維持するための面が多分に活用されなくちやならんと思うのですが、この面が等閑に付せられて、各種の法律規定の上においても、この意味において検事が公益を代表して遂行するという規定が諸所に散見せられておるのですが、これが多く活用されていないというのは、誠に遺憾だと思います。本法の場合においてもこうした面を考え合わせるならば、従来の検事の本質から考えてこの面を大きく取上げてむしろ検事にこの公益を代表せしめそうした不合理な、好ましからざるところ団体規制をする、一面においては起訴し、それで起訴したという一つの確実な証拠の信念に基いて団体規制する、こうして行くならば、過ちが十のうち殆んどこれがないという状態にも私は賄えると思うのですが、いろんな心配も多く除去されると思うのですが、こういう面の活用はお考えにならなかつたのですか。
  324. 關之

    政府委員關之君) 立案のプロセスといたしましてはもとよりいろいろの形態を考えてみたのでありまして只今伊藤先生の御意見のようなことももとより一つの案としては考えられる点と思うのであります。併しいろいろ今まで御説明申上げましたような各種の事情を考慮いたしまして、今日の憲法を基礎として問題を考えまするならば、やはり本法案のような機関の構成をとるのが最も妥当であるというふうに考えてかような建前といたした次第であります。
  325. 伊藤修

    伊藤修君 これはこの前質問の過程において、いわゆる適用がない、法務総裁がおつしやつた、又あなたたちもそれに補足してお答えがあつた、即ち今日の俗にいう暴力団、街のごろつき、テキ屋、博徒、こうした者の団体が暴力行為行つた場合においては本法は何ら規制をしない、適用もしないという不合理がここに存在するのです。但しそれが政治的目的を持つておれば、勿論これは本法規制を受けるでしよう。然らぎる場合には本法によつては賄われない。それは一般刑法典でその他の法律によつてこれを取締るという目的だつたのですが、私はこの点において非常に本法は片手落であつ全部の暴力団体を恐れ暴力行為を絶滅するという政府考え方は、この一端において外れておると思うのです。むしろ大部分外れる、今日こそ暴力団は鳴りを潜めておりますよ。曾つての、終戦後におけるところの日本のこの種の暴力団というものは、日本の暴力団暴力行為の全部を占めておつたといつても過言でないですよ。当時共産党はその意思を自由に国会に表明し、国民にもその意思を表明し得る自由があつたからあえて暴力には訴えていなかつた。最近この共産党に対するところの弾圧、干渉というものがきつくなり、遂には暴力に追込まざるを得ないという形をとつて来たのであります。これは一面私は政府の政治のあり方について考うべき点じやないかと思うのです。然るに先ほど申上げましたごときこの種の共産党を除いた他の暴力団に対しましては何らこの法律は関與しないというのでは、今後必ず私はこれは続出すると思うのです。最近までこれが続出してとつて以てこれを調査するに枚挙にいとまがないほどあつたのです。幸いにして今日はなりをしずめておる。併し機を得れば必ずこの種のものが働きかけることは当然考えられることです。その場合に、そういう前提の下に、この親分、子分の組織のあり方というものを御調査になつて、その知識を得ておられるかどうか存じませんが、共産党とは又違つたあり方で、親分のために子分は身を投げ出すのです。これは徳川以来のかれら団体あり方なんです。親分が明示しなくても、親分がこう思つておるだろう、親分の黙認の形を十分明示の意思表示と考えて、子分が親分の意思を忖度して相手方を殺すということは十分考えられるのです。現にあなたが解散したころの林田のあの組織においてもそうです。山田親分は何ら明示していない、黙つている。子分の林田はこれに対しまして、親分がごうあろうと思つてネンマの加藤というものを叩き斬つた。又山田が今度は村木に叩き斬られた。これも村木一家が山田を殺すという決議も何もない。常に村木一家の上に山田一家がかぶさつて勢力をはびこらしているからさぞかし親分は無念であろう、こういう意思を忖度して子分が一致団結して相手方の統領たるところの山田をピストルを以て射殺した。こういうのがこの種社会のあり方なんです。そういう場合において親分が政治的意図を持つている、これは明示しませんよ、自分は社会党に籍を置いている、若しくは社会党の大なることを欲するために、この選挙区において相手方を倒すというようなかれら一流の考え方を以て実力行為に出るということもあり得る。併しそれ自体は政治的意図ははつきりしていないが窮極の目的はそこにあるという場合において、子分がその相手方の政敵を倒したという場合においては本法においては全然賄われない。ただ刑事法規によつて賄われる。こういうことが今後利用される虞れが十分あるのです。ここにあけてあるために、この法律において規制しないために、その面を活用する面が多分に包蔵されている。これはもう必ず起つて来るからそのときあなたがたにそれ見たことかと言つて差上げます。現に平事件等においても起つておるのです。現実の問題としてたくさんあり得る。不幸にして本法はその面については頬かむりしておる。目を覆うておる。ただ共産党のみに対して汲々としてこの法律を立案しておる。こういうあり方は法の立て方としては私は大きな欠点であると言わざるを得ない。法務総裁が日本の暴力行為をすべて否定しようというならばそこまで考うべきが当然ではないですか。然るにその暴力行為の中の大部分と言つてもいいのです、私は譲歩して申上げても半分はこの種の暴力行為です。残る半分だけは規制するが半分は規制しないというのがこの法律あり方なんです。それで本法の目的が達成できると思うのですか。私か申上げた設例のごときは本法では賄えないと思うのですが如何でしようか。この二点をお伺いしたい。
  326. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) 御指摘の点非常に御尤もであります。この法案は先般来御説明申上げました通り、政治目的完徹のために暴力を行使する団体規制する、国家社会の基本秩序を守るという立て方で立案されたものであります。併しながらその他面におきまして、いわゆるギャングと申しますか街の暴力団と申しますか、これらのものが持つ害悪ということについても十分に考慮しなければならない問題であろうと考えております。この点につきましては別途研究を進めて行きたいと思いますので、伊藤先生におかれても十分御指導を頂くようにお願いしておきます。
  327. 伊藤修

    伊藤修君 我々も御協力申上げてもいいですけれども法務総裁のお考え方は戦後におけるところの日本の暴力行為の実態というものを十分把握していらつしやらない。これは私はあなたに先輩として、先輩か後輩か年はどつちが上かわからないですけれども、とはかくあなたは不幸にして戦後におけるところの日本の暴力行為の実態というものを十分把握していらつしやらない。それでかるがるしくその面を本法から外されたということは、本法をあなたが生死を賭けて作ろうという考え方に大きな私は穴があると思うのですよ。本法に生死を賭けられるというならそこまでも規制すべきじやないかと思う。
  328. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) 私は前から繰返して申しておるのでありますが、民主主義社会において最も我々は考慮を要しなければならないのは暴力の否定であります。そこで今街の暴力団のことが問題になつておるのでありまするが、勿論街の暴力団を我々は放置する考えは毛頭もありません。そこで具体的に申しますると街の暴力団もいろいろあるのであります。我々の最も大きな関心を寄せているのはいわゆる組織によつて国家の基本秩序を破壞しようというものであります。右翼の暴力団でありましても勿論大きな組織を持つてやるということはあり得るのであります。そこら群小の続出しておりまする街の暴力団、これはこの法規によつて直ちに解散させるべきであるかどうかということは、具体的にその暴力国が団体の意思をもつてつたかどうかということの一に証拠による認定に待つほかないのであります。そういうものは個々の具体的の行為が対象となつて直ぐ我々は対処して行けるものと考えております、群小のいわゆる街の暴力団は。大きな組織をもつてやるものについては、その思想の右たると左たるとを問わず、この法案の勿論対象になるのであります。具体的の事実について果して個々の群小のいわゆる暴力団がこの法案によつて規制されて行くべきかどうかということは、その事実を十分に把握しなければわかりませんが、併しさような群小暴力団は規制以外にでも十分に私はこの法案の目指すところとなつて処分して行けるものとの確信を持つておるのであります。
  329. 伊藤修

    伊藤修君 それはあなたが確信を持つていらつしやつても実際はそうは行かないのですよ。御承知通り群小とおつしやるけれども共産党の今日の姿より大きな組織を持つているものがある。例えば瀬戸一家、或いは中部地方におけるところの飯田一家、東北における松尾一家、これらは各ブロックごとに数県に亘つてその勢力を持つている。こういうものをやはり等閑に付しておかれるということは、今後のこの種の問題を規制しようというあなたのお考えのうちの大部分というものは顧みられていないというこの法の欠点を指摘して、あなたの将来のお考えについて示唆を與えておきたい、こう思うのであります。その点を十分考えられて、暴力を否定するというふうなその目的のためにのみこそ初めて考えられるのである。この法律がそうでなくして他の大きな目的、いわゆる共産党に対するところ一つの対策として考えられるもの、それがこうした世の疑惑を招き心配を招く法律となつて現れているわけであります。その点にこの法律の大きな欠点がある。真に暴力のみを規制しようというのならば、刑法の附則なり或いは暴力に関することのみを目的とした独立法規とすれば足るのであります。その他その種の暴力団体規制しようと思えば他の方法によつて賄える。十分賄える方法もあり得ると思うのであります。あえてこの法律を固執されるゆえんのものは別の意図があるからそうした問題を生じたと思うのであります。その点は十分お考えになつて将来の施政の問題に一つ考慮して頂きたいと、かように思うのであります。  今の博徒の問題にちよつと関連いたしましてさような親分と子分との間に黙示の教唆、黙示の扇動というものが十分令日まであつたのであります。これは小説の上でも十分そういうものは書かれたのであります。その場合においてその黙示の扇動、黙示の教唆というものは認めるかどうか。これは検務局長一つ伺いたい。
  330. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) 或る犯罪行為を教唆又は扇動いたします際にその扇動或いは教唆行為の態様につきましてはいろいろあるわけでございます。そこで黙示というものがどの程度であるものか、具体的な事案によつてつて来ると思いますが、少くとも本人がそりういうようなことを扇動したい、或いはさようなことを教唆したいという意思が相手方にその通り伝わる程度において、駄示というものが合致しなければならないという限度においてはこれは成立すると、こういうようなことでございます。結局具体的な事案によつて相当違つて来るのじやないかというふうに存じます。
  331. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると黙示の教唆、扇動を認める場合もあり得る。具体的の場合は別として理論的にはあり得るという考え方ですね。
  332. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) その通りでございます。これは従来の教唆或いは従犯等についても同様な議論があるわけであります。
  333. 伊藤修

    伊藤修君 ないかも知れないですが、あるといかんから、……黙示の場合はならんとしておかんといかんからはつきりしておいた。次の点で伺いますが、外国に団体の本部が置かれておつてそこで以て意思決定がなされた。そうして日本国内において破壞活動がなされておるという場合においてはどうするのですか。
  334. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) 国外に本部が置かれまして、その構成員なるものがわが日本国内におきまして一つ団体を作つて国外からの指令を受けてその指令を実現する、その場合に団体活動として行われる場合におきましては、その出先の国内の団体規制される場合があり得ると考えております。
  335. 伊藤修

    伊藤修君 それは外国に本部があり日本国内に支部があるとか、若し支部と名を付けなくても、日本国内に組織を持つて団体的活動をしている場合には言うを待たず本法の適用はあります。私のお尋ねしているのはそうでなくして、本部の意思決定機関は外国にあつてそれが直接日本に構成員を持つている、その構成員に指示を與えて構成員によつて壞活動を行なつた場合においてはどうなるか、本法の適用はないかあるか。
  336. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) その場合におきましては、国外の団体には規制は及びませんのでできません。
  337. 伊藤修

    伊藤修君 従つて外国の団体については、本法の適用ないことはこれは言うまでもない。従つて、その指令に基いて破壞活動をしたものに対しましては本法の適用ないというとになるのですよ。
  338. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) 個人として、刑罰法令に触れる場合におきましてこれを取締る、こういうふうに相成ります。
  339. 伊藤修

    伊藤修君 それから私のお尋ねするのは刑罰法規で適用されることはこれは当然です。本法の適用があるかないのかだけを明らかにして頂きたいと思うのです。
  340. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) ございまん。
  341. 伊藤修

    伊藤修君 それじやよろしいです。これは吉田委員その他からしばしば質問されたのでありますが、結局においてどうもはつきりしていないように思うのですが、要するに、本法の内乱罪の場合において朝憲紊乱というものが内乱罪の内容をなしている。それをそのままこの法律は受けて立つて壞活動としてこれを認めておる。この法律のこの立法時期のずれによつて起るところ解釈問題、これは佐藤さんもしばしば御説明になりましたが、一体今日の憲法の下におけるところの朝憲紊乱ということを、即刑法典の朝憲紊乱ということにそれを当てはめて解釈することができるかどうか。ということは私は非常に刑法の規定そのままを拡張解釈して、若しくは類推解釈して本法でこれを賄おうという行き方は少し無理があるのではないか。殊に本法においては内乱というものは一つの重要な拠点をなしているから、そういう意味においてもこの点は基本的に先ず刑法のほの改正を本法の附則その他において賄うべきじやないかと思うのですが如何ですか。立法論として。
  342. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 前回伊藤委員御欠席の際に吉田委員にお答えしたのでございますが。立法論としてはこの間も触れたのでありますが、刑法の中にはちよつと普通の人では読めないようなむずかしい字がちよいちよいありまして、さような点についてももとより遺憾な点がごございます。なお全般的に刑法を改正しなければならんという点は重要な問題として実は私、どもは宿題と考えておるわけであります。ただ朝憲紊乱という言葉自身の問題とといたしまては、たびたび御説明いたしましたように判例等におきまして国の政治の基本細り織ということであり、その言葉自体意味は私はさようであろうと思います。従いましてその言葉意味がさようである以上は、国の政治基本組織というものは、もとよりすべて国のある限りはあるわけでありまして外国においててもそれがある、又日本においてもあり、且つ又それが憲法の改正等によつて基本組織がどうなるかということは、それによつて又変つて行くものであろう。それを受けておる言葉でございますから、今日刑法のこの国の政治の基本組織という文字を理解するにつきましては、今日の憲法に照してそれを見きわめて行かなければならないというふうに考えておるわけであります。
  343. 伊藤修

    伊藤修君 刑法典の改正が当然なされるべき筋合のものをなされずして、そのままこれを引用して本法の拠点とするというところに私はこの解釈上のそういう説明をせざるを得ないという欠点があるのじやないかと思うのですが、それよりはなお進んで積極的にこの点をここに引用して来る以上は、内乱罪の内容というものを明確に刑法典においてすべき筋合じやないかと、こう申上げるのです。なぜ、それをなさらずにそのまま漫然ただ新憲法下において朝憲の何たるかを判定すればいいのだと、国民はそれによつてはわからないのです。縛られる国民はわからない。やはり立法者としてはそのくらいの親切があつていいのじやないかと思うのですが、如何ですか。
  344. 佐藤達夫

    政府委り員(佐藤達夫君) 御趣旨は非常によくわかるのでありますけれども、私の先ほど申上げましたのは、例えば臓物罪のところに故買という字が使つてある。故買という字は今一般の人の常識つから言いましてわかり易い言葉かどうかというような意味の面から行きましてすらも、刑法全体について書き直さなければならんじやないかという議論は十分立ち得ることであろうというようなことから申上がつたのであります。併しこの故買というものの実質上の観念、或いは朝憲という言葉の観念というものは、これは先ほつど申上げましたように判例上きまつておるのでありますから、それをここに引用することについて決してそれが聞違いであるとか悪いことであるとかいうことは申し得ないものと考えております。
  345. 伊藤修

    伊藤修君 故買の場合におきましては一つの態様でありますけれども、朝憲紊乱の場合においてはその内容というものは非常な複雑なものであつて素人の解し得ないものである。故買の場合においてはそのこと自体において十分、言葉の表現はむずかしいのですけれども、そのことにおいて簡単にその事案というものは察知できる、それとこれとは同一にできないと思います。そういう形式でなく私は実質の問題を申上げているわけです。実質的に朝憲紊乱というだけで以て時代のずれを解釈によつて任して行こう、これは一つあり方でありますけれども、こういう重大な法規を作るというならば、なぜそれに対して手当をしないのだ、こういうのです。作らん場合は勿論百年前の法律でもやはり解釈でこれを補う以外に方法はないのです。一たびその條章をここにとつて以てそれを本法の基幹とする拠点とするという以上は、それに対してやはり明確な表現をなさるべき筋合ではないか、こう言うのです。
  346. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 仰せになることはよくわかります。わかりますが、先ほども触れましたように、朝憲とは何ぞやということは、国の政治の基本組織、翻訳すればそういうことになるのだということが判例できまつておるわけでございます。その基本組織とは何ぞやということがきまつておりますれば、そのときの憲法によつてそれを判断できるというふうに私は考えておるわけであります。
  347. 伊藤修

    伊藤修君 そういたしますと、この間からの御説明では、結局基本組織、例えば議会制度、内閣制度、そういうものを破壞するものはいわゆる朝憲紊乱だ、こういう判例の趣旨を御説明つたのですが、併し憲法の全精神を通覧いたしますれば、私がここで申した議会政治の存置ということは勿論その一つの場合でしよう。内閣制度の組織もそれでしよう。司法制度のあり方もそれでしよう。三権分立の構成を憲法の上において強く打立てられておるということは、これはいわゆるその中に含まれるでしよう、併しそれよりももつと大きな憲法の大精神即ち民主主義、基本人権の保障乃至は平和主義の徹底、附随しては再車備を否定する、こういうものは憲法の大黒柱だと思う。これなくしては憲法は崩壞するのです。その下に憲法は打ち立てられているということは私は否定されないと思うのです。そうしたものこそむしろ今日の解釈上から行けば、機械的に過去の大審院の判例が示しているがごとき観念よりは、今日の解釈としてはむしろその朝憲紊乱の中にはそうしたものをも含めて考えべきではないかと思うのですが、如何ですか。
  348. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) その点も御尤もなお尋ねでありまして、且又吉田委員或いは羽仁委員から或いはおちえを拝借したこともございましたが、私の考えかたは、この内乱罪というものの本質というものはやはり政治の根本の組織体を崩すということを狙つているというふうに思います。政治の組織のみならず邦土の潜竊というような言葉を使つておりまして、この政治の行われかたの原則というのでなしに、その根源を突いてこれを崩そうというところを守つているのではないか。この間引用いたしましたが、ドイツの最近できました刑法でも内乱罪というところに政治組織を破壞すること、或いは邦土を潜籍するというような意味のことを條件にしておりますところから見ましても、私はその政治の行われる根本組織、これは申すまでもなく国民主権がそれに含まれますことは当然のことでございますけれども、そのいうものと考えておりまして、この法案の問題といたしましては今お言葉にありましたように、政治の行われかたの根本の原則と申しますか、やりかたということの秩序の破壞という点は、むしろ第三條の第二号のほうの問題に私は入るのじやないかというふうに考えているわけであります。
  349. 伊藤修

    伊藤修君 私はあなたが指摘されましたところのいわゆる国民主権であるとか或いは議会制度や内閣制度、そういうものも勿論一つ内容をなすものと考えられますけれども、今日の日本の憲法は世界各国に対しまして誓約してその後に打立てられたものであります。その基幹は日本がポツダム宣言において強く約束付けられたいわゆる民主主義の徹底を基幹としている、基本人権の保障を基幹としているということはおおうべからざるところの日本国民の義務であり、日本国の義務であると思います。その上に打立てられているところの組織であるのです。この組織を破壞しようという若し考えかたがあつたならば、私はそれをも含むという広汎な考えかたを解釈上取つても然るべきではないかと思うのですが、行き過ぎでしようか、どうですか。
  350. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) これは又拡張解釈の心配が出て来るわけでありますが、私は自分の気持としては、今申しましたようないろいろのよその立法例からも照し合せまして、この内乱罪そのものは先ほど申しましたようなことじやないだろうか、これはどうもそれが正しいのじやないかというふうに考えているのであります。
  351. 伊藤修

    伊藤修君 そうするとこれは再軍備の問題は入らんとか言つて説明のようですね。そうですね。そうすると天皇制云々の問題は入るとかいうのですが、これは天皇制を廃止するとかいうことは入るべきですね。この間の御説明では入ると伺つて来ましたがどうですか。
  352. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 天皇制という言葉が又誤解を生じましてこの間ちよつと困つたのでありますが、天皇制度、内閣制度とか、議会制度、それに並べての天皇制……。
  353. 伊藤修

    伊藤修君 天皇制度……。
  354. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) それは入るのです。
  355. 伊藤修

    伊藤修君 入る。然らば天皇の統治権というものを認めるというのはどうですか。その中に入るのですね、天皇制をやめるとかやめないとかいうことは入るのですね。天皇に今度は統治権を與えるとかいうことはどうですか。
  356. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) それはもう明瞭なことでございまして、国民主権主義を根本からひつくり返そうとするのですから、これはまさにこれに該当する……。
  357. 伊藤修

    伊藤修君 入るのですね。
  358. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) はあ。
  359. 伊藤修

    伊藤修君 まだ私の質問はこれは一つの二十五点だけ済むのですが、もう二十五点ここにあるのですが、お約束した時間がありますから、あとは委員長考慮に委すことにいたします。
  360. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 速記をとめて下さい。    午後七時十六分速記中止    —————・—————    午後七時二十八分速記開始
  361. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 速記をつけて下さい。お預かりしておるところの質疑に対する答弁を願います。
  362. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) 先ず羽仁委員からの御希望の点について申上げます。もとよりこの法案実施の暁におきましては、憲法にきめられました基本的人権を最も尊重しなければならないということは当然なことであります。その意味におきまして、この調査の衝に当りまする調査官なんかの人選につきましては十分に考慮を払いたいと考えております。ただ、只今従事しておりまする役員、これをどうするかという問題であります。これは中には立派な人格識見を持つた者もおります。又世間から見て非難さるべき人もあるかもわかりません。これらの点につきましては十分考慮いたしまして、将来世間に不安疑惑を抱かせるようなことのないように慎重にその人選をいたしたいと、こう考えております。  第二の問題でありますが……。
  363. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 私お願いしましたのは、簡単に申上げますが、その情報提供者というものをお持ちになり、それから情報をお買いになることをなさいますと、その情報を買つてもらおうというふうになる、特審局に関係なくして、九州大学なんかに現われた偽特審局員というのも結局は情報を買つてもらおうというふうに思つてあつちこつちうろうろしまして、捕まれば特審局員だと言つて詐称したり、それで特に大学関係などで不安に堪えない。で、お買いにならんということになればそういう人が動かなくなります。今日新聞社にしても情報を買うということは一切なさらない。なされば情報等でかたつてゆすりをするようなことになりますから、どうか本法が仮に成立しました暁に、これが暗い日本を作らないように、明るい日本を作るように、多少御不便がありましても情報提供者を使わない、又情報は買わないということをおつしやつて頂ければ、その点だけでもどれぐらい暗くなるか明るくなるかが違うと思いますので、お願いしているわけなんです。
  364. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) 今羽仁委員から仰せになりましたその情報の点でありまするが、私も率直に申しますると、いわゆる情報屋というものは用いるべきものじやないと考えております。正確なるこの民間の情報を得まして、そうしてできるだけの確実さをこれはなにしなければならん。ただ私の考えでは調査官だけではこれは調査については不十分な点があるかと考えております。民間の人々のやはり努力も待たなくてはならない。併し今述べますように故意に情報を売込みそれを買うというようなことについては十分警戒しなければならんかと考えております。幸いにこの法案が通過いたしまして実施の曉には、その点においては我我は十分警戒いたしまして、情報を売込むなんということについては相手にしないようにいたしたいと、こう考えております。
  365. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 世の中が非常に下劣になりますのでお願いいたします。
  366. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) 柿沼博士の変死事件であります。これはすでに新聞紙上においても現われておる事実であります。四月二十六日の午後二時過の出来事であります。御承知通り柿沼博士は内科の医者として最も技術の堪能であり、人格識見において申分のない人であり、誠にその人の死は遺憾極まりないものであると思います。この人は当日の午前中に東大の自治会で学生が二十八日に集会をやるということについての、その許すべきか許すべからざるかということが教授会で論議されたそうであります、その席上で柿沼博士が最も強く許可すべきでないという議論を吐かされた、それを二十六日の正午頃に出まして一時から三十一番整形教室において新入学生歓迎並びに卒業生の送別会があり、それへ参りましてそうしてそれを済ませて、その後鉄門クラブと申しますかそこで岡教授の還暦祝があるというのでその部屋から出て行つて参ります途上の出来事であります。約十名ばかりの学生が追つかけて行つて先生を取巻いて、その朝の先生の強硬な態度に対していろいろの抗議を申込んだということであります。その結果先生は丁度弓場の前において生徒と口頭でもつて言い争いをしておるうちに突然先生は倒れた。丁度その時に一足先に美甘教授が出て参つたのだそうであります。その美甘教授があとを振り返れば突然柿沼教授が倒れておつた。そうしていろいろ手当をしたが遂に不帰の客となつたということがこれは事実であるのであります。私の申上げたいのは、その原因の如何を問いません、私は必ずしもその学生に取りまかれていろんないさかいがあつたということが直接の死因であるかどうかということは、私はこれは別問題に考えておるのであります。併し教授を取りまいていやがるのを無理に言い争いをするということのみならず、先生が倒れてそのまま一、二の者がおつたか知れませんが大多数の者はその場にいなかつたということであります。これは私は道義地に落ちたと考えております。死因が如何ようであろうともそういう場合に恩師が倒れたのをなぜ介抱しなかつたか、その点について私は非常に遺憾を感じております。それで美甘教授は某最高検察庁の友人にその事実を話されたそうであります。そこでその友人もこれは死因の如何を問わず、とにかく調査すべき問題じやないかということで、只今そのことについては調査中であります。いずれ事実は判明するであろうと考えます。
  367. 片岡文重

    ○片岡文重君 今法務総裁の御説明伺つてつた中で、私の意見を申上げる前に、新人生、卒業生の歓送迎会が行われた、そしてそれから更に某氏の還暦祝の席に出られる途中の出来事だ、こういうお話だつたのですが、その通りですか。
  368. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) 事実はわかりませんが、私のところへ見えて、報告と言つちや語弊がありますが、私は報告はとりません、私に聞かせられたことはさようになつております。
  369. 片岡文重

    ○片岡文重君 とにかく、事情の如何はともかくとして、倒れられた先生をそのままに介抱もしないで引揚げられたという学生の態度に対して遺憾の意を表され、法務総裁のお考えと私は全く同感です。その点についてはたとえ主義、主張が違おうとも、たとえ考え方が違おうとも、どのような間柄にあろうとも、倒れられた先生をそのままにして介抱もせずに帰られるという学生が若しあつたとするならば、これは誠に遺憾に堪えないことであります。私どもはこういう考え方を持つ学生の思想というもの、人間性というものに対して、これはむしろ文教の府にある者が十分な責任を感ずべきであります。二度とこのような話を聞くことのないように私どもはしてもらいたいと思います。  ただ併し、その点については私は法務総裁も恐らく同感であろうと思うのでありますが、先だつて法務総裁のお話には、愛する学生のために大学の教授が殺されたという言葉をお使いになつた。そこで私は特にその調査を正確にされて責任ある御返事を頂きたいということを申上げたのであります。今お話を伺つておりますると、確かにその議論の席上において倒れられたというその法務総裁の御答辯が真実その通りであつたとしても、新入生、卒業生の歓送迎会において酒やアルコール類が出されたかどうか、先生がそれを召上つておられたのかどうか或いはそれまでにどのような疲労の状態にあられたか、或いはどういう病気を持つておられたか、たまたま……
  370. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 片岡君にちよつと申上げますが、本法案審議の上に余り、絶対関係はないことはないでしようけれども大分論議が外れて来ておるように思うのですが、時間が何しろないのですから、一つその問題はいずれよく取調べて適当な時期に片岡委員に御報告を願うことにしたいと思います。
  371. 片岡文重

    ○片岡文重君 時間は余りとることは考えておりません。実に併しながらこれは大きな問題じやないかと思うのです。今後の学生を指導して行く面ということは、日本の将来がどうなつて行くかということに繋がる重大な問題であつて、同時に又この破壞活動防止法案によつて規制団体が受ける場合には、しばしば指摘されておるごとく、全く無幸の構成員がその規制を受けることになつて来るのであつてその審議の過程において提起された問題なのですから、これはやはり十分に私は考えて頂かなければならないし、むしろ私は自分みずから、うどの大木と申しますか、見かけは強そうですけれども非常に弱い体を持つておるのです。もう疲労に堪えないくらいに感じておるのです。ですから余り長いことはしやべりたくない。併し今のお話は決して私ばかりではなく、恐らく各委員ともが軽々に聞き逃すことのできない問題であろうと思いまするから、あえて一言申上げておくのですけれども、私は少しく法務総裁の言葉は過ぎておつたのではないかと思うのです。ただ併しそれは真相が更に究明されてからでなければいずれが非なりともわからんでしようけれども、いやしくも神聖な学校の校内において、そうして而も師弟の間においてなされたということについては、現内閣の責任ある立場にある法務総裁としての過日の言葉というものは多分に行き過ぎではなかつたかと私は思う。むしろ今日その調査が途上にあるというのであるならば、その結果を待つて発言されて然るべき言葉であつて、これは今日の段階における法務総裁の言葉では私はあり得ないと考える。そういう点を考え合せまするならば、本法案の今後における総裁の善処等については、今日まで私は善意を似て総裁その他の政府委員諸君のこの御答弁について、必ずやこの法案による被害が拡大されないであろうことを信じたいという気持で参りましたけれども、特にここに出された法務府令要綱案等のずさんな点からいつて、又先ほど大野委員からも一言御注意があつたようでございますが、今又こういう問題に直面をすれば今後のこの法案の実施に当つて少からざる危惧の念を抱くのであります。こういう点非常に私は遺憾と思いますので、この点については更に法務総裁の私は善処をお願いしたいと思うのであります。
  372. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) 昨日伊藤委員から御質疑のありました逮捕状の発行を受けた数並びにそのうち検察庁に送致したもの等についての統計を御説明申上げます。この点につきましては資料が非常に入手が困難でございましたが、幸い昨年の十月一日から三十一日までの間、丁度満一カ月におきます全国の警察のその関係の統計がございましたのでそれを御紹介申上げます。  実は全国につきましてここに持つて参りましたように相当複雑な資料を取りました関係上、それを一年間全部通じてとることが困難でございましたので一カ月間だけとつたのでございます。  それによりますると、逮捕状の発行を受けた数が二万六千二十五名でございます。右のうち検察庁事件の送致がありましたのが一万九千四十五名、従いまして検察庁に送致しなかつたものは六千九百八十名でございます。更にその検察庁に送致しなかつた六千九百八十名の内訳を申上げますと、逮捕状の発行を受けたけれども身柄が手に入らなかつた、逮捕できなかつたものがその大部分の六千六百十八名、家庭裁判所に送致したものが百四十五名、児童相談所に通告したものが二十九名、なお十一月の末までに警察において釈放して事件が結局まだ検察庁に十一月の末までには送致になつていなかつたものが百八十八名、かような統計になつております。  なお先ほど御質疑のありました頒布という用語例でございますが、公職選挙法の百四十二條におきましてこれが使つてございます。「選挙運動のために使用する文書図画は、左の各号に規定する通常葉書の外は、頒布することができない。」これは有償無償を含んでの趣旨と解されます。なお衆議院規則の例の速記録の配布並びに頒布という文字が二百七條に使つてございまして、これは官報によります頒布でございますから勿論有償ということになるわけでございます。従いまして従来の頒布の用語例といたしましては有償無償、そうして特定不特定とを問わず頒布とする、かような趣旨に理解しているのでございます。
  373. 伊藤修

    伊藤修君 今の前のあれですね、これはどこの報告ですか。
  374. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) これは人権擁護局におきまして全部書式をここにあるように一定いたしまして、全国の警察にこれを配布いたしまして集めたものでございます。その調査の方法といたしましては勿論警察を経由してあるわけでございます。
  375. 伊藤修

    伊藤修君 そうするとこれは一カ月の二万六千ということは年間約三十一、二方ということになるのですか、ちよつと統計が違うのですが。とにかくあした調べてみますが、前にあつた統計とは全然違うと思いますが、どこから出て来たのかね。
  376. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) この統計は先ほど申上げました通り十月一カ月でございまして、実はこの月を特に選びましたのは当時刑事訴訟法の改正等も考えておりましたし、それから人権擁護局におきましても実際の全国の逮捕状の実施状況を、あの当時何か問題があつたと思うのでありますが、その資料にとりたいという話がございましてその様式について詳細な打合を検務局もいたしましてかような相当細かい様式にいたしまして全国に配つたような次第でございます。なお若し一年間の統計と若干の食違いがございましたならばその点は私のほうで又検討をいたします。
  377. 伊藤修

    伊藤修君 これはいずれ刑事訴訟法の審議の際に改めてお伺いいたしますが、私はこの統計は違うと思うのですが、少くとも百万近い数があると思う。そしてそのうち三十万程度有効に使用されていないように私は概略的に覚えておるのです。当時私は地方においてその意見を発表したら警視総監やその他が反駁の意見を出しておつたようですが、そういう記憶もありますが、その基本的な数字はその反駁においても認めておつた。要するに警察官から逮捕状請求権を奪つてしまうのは信用できない、検察庁を通してすべきだと、こういう意見を私は発表したことがある。そうしたら私は旅先であるから、警視総監がそれは困ると言つてやつきになつて反駁の意見を述べておることを繰返し新聞の電話で聞いて、向うで知つたのですが、その当時数字はたしか争わなかつたと思います。まあこれはいずれ刑事訴訟法の場合に質疑いたします。
  378. 小野義夫

    委員長小野義夫君) お答えは大体之れで済んだと思いますが、最後に私総理大臣の御出席を今日まで仰ぐことができなかつたということは、閣僚又官房長官その他のかたがたにも一つ出席して頂きたいということは申入れたのでありまするが、本日までに御出席を得られなかつたことは一に私の微力無能のいたすところでありますから、どうぞ一つ皆さまにおいて御了承を願いますと同時に、この運用なりその他の心得でもいわゆる治安立法に対する基調の考え等につきましては、適当の機会において首相から声明若しくは発言をして頂くように重ねて私は申請申上げたいと思いますけれども、どうぞその点御了承を得たいと思います。
  379. 内村清次

    ○内村清次君 只今のお話では、総理のこの問題に対するいろいろのお答弁は別の機会においてやる、こういうお話でございますが、別の機会というのは一体いつでございますか。勿論これは総括質問を私と吉田君とやりました際は、もうすでに二十日ばかり以前です。その間に委員長はお答えになつた、必ず適当の機会に総理に出席してもらう、こういうようなことをお答えになつた。これはもう速記録に明らかなんであります。その点に対しての釈明がありましたのでございますが、過去のことはもうどんなに追求いたしましても只今委員長の釈明で終つたわけであります、併しながらこの法案に対するこの総理の所見というものはこれは私たちとしては聞き逃すことはできません。これは是非一つ聞かなくちやならん。国民のために聞かなくちやならん。而もこの労働三法が出ましたときには、労働委員会は総理の出席に対しては、当然官房長官を通じて委員長が総理の出席を要求した。これは最初の要求の時期には総理の出席がなかつたか知れないかとにかく今日まで労働委員会には出席があつているのです。内閣委員会がその通りです。そうすると私はここの破防法の及ぼす問題とその範囲、それと私は労働法の及ぼす範囲ということが、どちらが比重が多いかということは私はここで申しません。これはもう賢明なる委員長も各委員のかたがたも、よく御存じの通りです。恐らく私はこの破防法の影響というものは国民全般である、而も労働者も或いは文化人のかたがたも、新聞人のかたがたも又一般国民もこの問題については、これはもう非常な関心を持つているのです。そうしてみればこれは委員長といたしましては、是非総理大臣のここに御出席願つて、各委員のやはり質問を受けるという態度こそ、時の行政府のとるべき私は途ではなかろうかと思うのです。同時に又この法務総裁や、これはここにおられるところの何と申しますか、事務関係のかたがたでさえも実はこの法案だけでは治安の問題というものは樺かに出たものを取締るところの一部でしかないということをはつきり言つておられる。又大きな狙いというものは、この法案に対するところの対策というものは又別にやるのだ、この点は率直に認められているのです。そうしてみれば法務総裁はやはりこれは司法関係の責任者であつて、恐らく経済その他の責任者ではないはずでございます。そうしてみればその行政の責任者であるところの総理がこの問題に対して来られて、いわゆるこの取締ばかりでできない治安の問題を一体どうされるかというところの総理の態度を明らかにすることは、これは当然過ぎる当然と思います。  又重大な点は、治安維持法の出たときには時の内閣総理大臣は若槻禮次郎さん、今速記録を一つ見て下さい。あのときの殆んど答弁は若槻さんがやつておる。時の総理大臣がやつているのですよ、各委員に対して。これよりなおひどいのだと国民は思つている。こういうような立法に対して、総理が一度もおいでにならんということは、私はこれは委員長、あなたが正論を推して官房長官が言うことをきかないなら直接総理におつしやつて、そうして、委員会の円滑なる審議のできますようにして頂きたい。これは委員長の方針としては水の流れるごとく今まで一貫した方針です。それに協力して来たのです。そうされるとするならば、会期の問題は明日、明後日でございましよう、一応のそれに対するプランはお作りになつておりましようが、併しあのプランというものに拘束されないということははつきり速記録に載つているのです。あなたも確認されている。決して私たちは会期を延ばそうだとかこれを流そうというようなことは今考えておりません。考えておりませんが、水の流れるような審議に対して今のような重大な問題ですから、総理の問題だけは解決してもらわないと……。
  380. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 速記をとめて下さい。    午後八時四分速記中止    —————・—————    午後八時十三分速記開始
  381. 小野義夫

    委員長小野義夫君) それでは速記を始めて下さい。
  382. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) 直ぐに電報で現地に問合せましたところが、六月四日浮羽事件の拘留開示が行われたので、その傍聴のために九州の福岡支局の寺下という事務官が地検久留米支部に参りまして、同支部の検察事務官が寺下という特別審査局の事務官を木下と感違いをしてしまいまして、そうしてそこに居合せた西日本新聞久留米支局の武森という記者に対しまして、これを特審の木下という者が来ているという話をされたようであります。その西日本新聞の久留米支局の記者が、それ重松副検事に確めずに、重松という副検事は寺下という事務官と会つているのです。それを確めずにそのまま新聞に載せた、こういうようなことで行き違いが起きた。この事件は、これは結局寺下事務官というのが公判の傍聴に参つたのです。それを感違いをされまして、西日本新聞久留米支局の武森という記者がそのまま確認をせずに新聞に載せたというような報告只今つております。なおよく事情は取調べて、更に次の適当な機会に必ずお答えいたします。
  383. 伊藤修

    伊藤修君 お取調べになることは十分なさらなければならんと思います。局長の談として載つておる新聞記事を見ましても、そういう紹介状を書いておるというのですから、事務官の紹介状を書く理由はないのですから、紹介状を書くのは違つた人である。なお…。
  384. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) 検察庁へ初めて行きましたので何か紹介状をもらつてそれで行つたものらしいのです。
  385. 伊藤修

    伊藤修君 そういう場合には、あなたが御説明になつたように身分を証明する何か証票を持つているはずですから、いちいち紹介状を見なくちや活動ができんということもおかしいと思うのです。
  386. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) 更にそのほかに支局長は検事でございまして、同僚の現在知合いのかたがありますので紹介状を書いた、こういうような次第でございます。
  387. 伊藤修

    伊藤修君 少くとも特審局検察庁をも調べなければならないというようなあり方はよくないと思う。だからそういう点は十分報告をよく聞いて事前に処理なさらなければいかんと思います。
  388. 吉河光貞

    政府委員吉河光貞君) よくわかりました。
  389. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 総理大臣の点なんですが、国家公務員法の改正の審議の際にも、ああいう国家公務員から争議権を奪うという重大なときにも総理大臣は遂に最後までおいでにならなかつた、私は委員長の御責任というよりも国会権威のためにこれはどうか善処して頂きたい。先日私が聞きましたときに、総理も非常に尊敬しておられる古島一雄さんが、亡くなられるまでこの破防法という法律を出すということを非常に悲しんでおられたということを私は聞きまして、世論のこれだけの知識人の反対を押切つて国会を通そうとする限りは、私は総理大臣はその責任においてこの審議の前に審議の過程において国会に対して、又国民に対して自己の所信を述べられるということが私は民主主義を尊重するということが本心であるならばそうあるのが当然だと思います。本法案は民主主義を擁護すると言いながら専制主義を擁護するのじやないか、或いはナチズムを貫くのじやないかという疑いさえ抱かれているのですからこの際どうか慎重な処置をして頂きたい。
  390. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 羽仁君の御意見はよくわかりました、ともかく九時までそれでは休憩いたします。    午後八時十八分休憩    —————・—————    午後九時二十六分開会
  391. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 委員会を再会いたします。先ず総理大臣の出席に関して政府連絡の結果を保利官房長官よりお話を願います。
  392. 保利茂

    政府委員(保利茂君) 先ほども木村法務総裁から総理大臣の当委員会における御出席方を連絡するようにということで、私早速総理大臣の下に伺いまして、できるだけ当委員会の御希望に副うようにいたさなければならないということで連絡を申上げました。この一両日来総理大臣にはとりわけ所労になられて、一両日の国会登院は如何にも私自身酷に見受けました。当委員会の総理大臣の出席は私自身としまして困難に見受けました。併しながら総理大臣の当委員会における議案の関係につきましては、木村法務総裁と毎日のごとくお打合せをせられて法務総裁の御答弁も総理大臣の御意見を体せられて答弁をせられておるような事情もございますので、一応連絡の結果は以上の次第でございました。御審議上非常に御無理かとは存じますけれども、御了承の上御審議をお進め頂くようにお願いを申上げる次第であります。
  393. 内村清次

    ○内村清次君 只今の官房長官のお話では、総理と連絡をとつた、こういうお話でございますが、総理がどこにおられたときに連絡をとられたのでありますか。この点を一つ聞きたいと思います。
  394. 保利茂

    政府委員(保利茂君) 元の外相官邸で私九時二十分前からそこで……。
  395. 内村清次

    ○内村清次君 只今でも外相官邸におられますか。
  396. 保利茂

    政府委員(保利茂君) 只今は私は存じません。
  397. 内村清次

    ○内村清次君 只今のお話では、そうすると連絡機関は電話でされたのですか。行かれたのですか。
  398. 保利茂

    政府委員(保利茂君) 只今申上げますように、九時二十分前に私お目にかかりまして連絡をいたしました。
  399. 内村清次

    ○内村清次君 そうしますと、総理の所労という御認定はあなた自体がされたのであつて、総理は委員長の切なる、委員会の空気からして法案の円満なる審議の状態を考えて来られた委員長として、今後の又審議も円満にして行こうというような気持からしての、休憩前のあの何と申しますか、法務総裁とも打合せて、各委員の熱烈な総理出席の要求に対するところの気持を、あなた自体は総理のほうには言つてないわけでございますね。総理の直接なるそれに対するところの御返事は聞いておられないわけですね。どうですかその点。
  400. 保利茂

    政府委員(保利茂君) 私が独断で所労と認定いたしておるわけではございません。総理からもくれぐれそういうふうにお話ございましたし、私もお見受けいたしまするところ、そう感じておりましたということを申上げます。
  401. 内村清次

    ○内村清次君 そうすると総理はあと二日は国会の御出席はできない、こういうことに確認していいわけですか。
  402. 保利茂

    政府委員(保利茂君) 今明日の御登院は困難であろうかと存じます。
  403. 内村清次

    ○内村清次君 それから法務総裁が総理とよくお打合せになつて、総理の気持を含んだ法務総裁としての答弁がなされておるからどうか審議を続けてもらいたい、こういう御意向のようでありますが、これは速記録にも法務総裁の答弁ははつきりしておりまするように、総理自体に私たちがお尋ねをして、そうして総理の責任におけるところの御答弁と、法務総裁のこの法案に対する直接の責任者としての御答弁の範囲というものはですね、おのずからはつきりしているようであります。総理も、法務総裁の御答弁というものに、総理の気持は法務総裁の所管に対するところの御答弁のみでありまして、私たちが又総理に聞くところ質問というものとは異なつておるわけです。勿論この集中点はこの法案に集中はしてきますけれども、その角度の点につきまして、これはおのずから範囲が異なつておるわけです。こういうような関係からいたしまして、私たちは総理がこの重大法案に対しまして御出席をして、そうして是非とも総理の御所見を聞かないと、この法案の審議というものに対しては一大支障がくる、こういうような考え方を持つているのです。そうしますると、総理はまあ今日か明日というところは、どうしても御出席ができないと、こうすれば、おのずからですね、これは委員長として一つ考えて頂きたいのです。勿論これは保利官房長官に対しましては他の委員のかたがたの御質疑もありますから、私は委員長に対するところの御質問を保留いたしまして後にすることにいたします。まあこの点を一つ……。
  404. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 最初に私が総理の出席を要求しましたのは、先月の二十四日であつたと思います。そのとき委員長は、今日は差支えがあつて来られないけれどもそのうちに出席するように取計らいましよう、こういうことで、それから官房長官にお話になつたということです。その後他の委員から出席を要求されまして、その際の質問は留保せられたのであります。その委員長の二十四日の言明に基いて、官房長官を通じて出席を要望せられましたけれども、差支えがあつたのか御所労であつたかも知れませんけれども御出席がなかつた。で法務総裁も先ほど来官房長官の御答弁のように、総理と打合せの上答弁をしておるのだから、総理は出てこなくてもよろしい、こういう御答弁の御趣旨でありますが、先般来私どもが問題にしておりますのは、法務総裁としての御答弁、或いは御意見だけでなくて、総理としての御答弁を願いたい。又私どももそれを要望しておるわけであります。私が申上げるまでもありませんけれども、治安維持法の場合については、総理大臣或いは内務大臣から纂謹なつおる。いろいろ論議がございますけれども、私どもにすれば、治安維持法以上に破壞活動防止法は範囲が広範で適用の範囲ももつと広くなるのではないか、こういう考えを持つておりますので、是非とも総理の御出席を願いたい。それに対して、法務総裁にしても或いは官房長官にしても、法務総裁が打合せて答弁しているからそれでよろしいのだという御答弁では満足することができないのであります。今日も所労ということでありますけれども、先ほど来外務大臣官邸におられましたかどうか知りませんが、先ほどまでおられて大磯に帰らつたということも伺うのでありますが、今の折衝は、或いは総理大臣に対する取次は従来と同じようなお取次であつたとしか考えられないのであります。所労と言われますけれども、たつて所労と言つて国会に出られないで展覧会その他に出られたこともございます。これは官房長官自身の御認識だと思うのでありますけれども、破壞活動防止法が普通の法律だとしかお考えになつておらん。従つてどうしてもこの委員会に出て総理に御答弁を願わなければならん、こういう御認識ではない。私は破壞活動防止法について官房長官自身の御認識が極めて低いとしか考えられないのであります。従来のいきさつからしまして、そうでなくてどうしても総理に御出席を願わなければならんということで、私は御折衝を願つたようには思われないのであります。官房長官に重ねて一つ答弁を頂きたいと思います。
  405. 保利茂

    政府委員(保利茂君) 私の申の上げておることにお疑いを持たれればこれはいかんともいたし方ございませんけれども、先ほど内村さんにお答え申し上げました通りの事情でございますから、どうぞ繰返し申上げましても同様のことでございますから、内村さんにお答えいたしたところによつて御了解を頂きたいと思います。
  406. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 質疑は繰返ししませんけれども、今のような答弁では官房長官の誠意が認められません。破壞活動防止法についての認識にしましても、これは極めて軽くしか考えられておらん。二十四日の交渉の際とそれからさつきの交渉のお気持にしても、全く私は同じだとしか考えられません。質疑を繰返しませんけれども、誠意とそれから責任を果すべき責任感なり或いは認識というものは、官房長官極めて不十分だということを申上げるにとどめます。
  407. 片岡文重

    ○片岡文重君 もう出席云々ということについてはお尋ねいたしません。併しどうですか委員長、どうしても出られない場合には適当な機会において総理の決意を表明するよう取計いたいということを先ほどおつしやつておられたようだつたが、官房長官はこの点については御連絡を受けておらんのかどうか。それから御連絡を受けておらんとするならば、今明日は総理大臣は出られないであろうという今の御答弁のように伺つたのですけれども、今明日中に御登院なさることが困難であるとするならば、その次の最短機会においてそういう機会をお作りになる意思があられるのかどうか、又総理はそういうことについて約束をしておられるのかどうか、その点を一つお聞きしたいのです。
  408. 小野義夫

    委員長小野義夫君) まだこのことにつきましては官房長官にも先ほどのことでありますから連絡いたしておらんもので、官房長官も今突如として実はこの言葉を承わつたの、だと思うのであります。私はまだそこまでに御出席を願うという連絡を申上げましたのですから、先ほど申上げた私の考え方はまだ通じておりませんですが、なおこのことにつきましてはあとから官房長官に御趣旨のあるところと私の考えておるようなを申上げて、できるならばさように取計らいたいと存じます。
  409. 松浦定義

    ○松浦定義君 私はこういうような問題が起るから先ほどまあ僭越だと思つたけれども申上げたわけなんです。こういう問題が起つて、その後において総理の出席を確かめるために官房長官わざわざ行かれた、こういう話なんです。そのときにまだそれが伝えていないということであれば、先ほど委員長が適当な機会においてこれは何とかしようというように考えておると言われたことは、これは本当にそういうことを考えておられたのか、或いは又ただ委員質問に対して何とかこれはもち官房長官が今度総理のところへ行つてその結果においてこれは納まるのだ、こういうように何と言いますか軽く考えておやりになつたかと私は了承するより考えられないのです。(「その通り」と呼ぶ者あり)従つて今これから官房長官に新らしく耳に入れ、そうしてこれをやろうということになりますれば、恐らく私はこの問題は解決せんと思うのです。そういうようにあれほど問題になつたものを特に私は御注意申上げておいたはずなんです。若しそうだとすれば例えばですね、委員長の先ほどのお考え方からすれば、本問題が本会議にかかるその前に討論の前にその意思を発表したいというようなお考えが先ほどあつたように聞いているのですが、その後どうしてもやらなければならん責任が委員長として私はこの際当然あると思うのです。だから私は申上げておいたのです。それにもかかわらずその問題を通じないで、先ほど申上げましたように、当然の問題はこれで解決つけるんだというような軽い考えのことでお運びになつたということは、委員長として私は誠に無責任な態度だとかように考えるわけです。その点について一つ委員長としてどういうふうに解決されるか承わりたいと思います。
  410. 小野義夫

    委員長小野義夫君) お答え申上げます。先ほど私は官房長官と連絡をして是非総理の御出席を願いたい、こういうことを申上げたのでありまして、若しお出でがなければかくかくかくというようなことはその際申上ぐべきでないから、それを申上げて連絡を計つて私は時間が参りましたからここに出席しておりまして、それであとから先ほど官房長官がおいでになつたような次第でありますから、お叱りの点はよく了承いたしますが、時間的にさようなことを條件的に私が交渉したのではないのであります。その点悪しからず御了承願いたいと思います。
  411. 内村清次

    ○内村清次君 そこで委員長にお尋ねいたしますが、委員長はこの破防法案内容につきましても、又審議の各委員の熱意につきましても、政府の又これに対する御答弁の影響性につきましてもよく御存じです。そこでこれは又一つのこれは大きな戦後における歴史的な法案でもあります。こういうような重要法案に対しまして、総理が御出席にならないうちにこの審議というものが打切られるものであるかどうか、その点に対しましてはこれは率直な委員長のお考えを披瀝して頂きたい。私は委員長は先ほどのこのお気持からすると、どうしても一つ委員のこういう一致した気持に対しては、何とかして一つ総理に出て頂こうというお気持だろうと私は察しますがこの点どうですか。
  412. 小野義夫

    委員長小野義夫君) お答えいたします。総理の出席は願わしいということでありまして、その旨すでに官房長官にもお願いして、目のあたり先刻御交渉を願つたのであります。その結果は官房長官からお答え申したような次第であります。さような次第でありますから、これがために総理の出席を條件として今日の例えば質疑、或いは討論、採決等を延ばすというようなことは今までの打合せには出ておらんわけでありまして、従いまして私はその問題とは切り離して本案の審議を進めて行きたいと、そう存ずる次第であります。
  413. 内村清次

    ○内村清次君 これは重大な疑点があなたの御発言のうちにはあるようですが、それは気持は是非一つ総理に出席してもらいたい、そのために官房長官にも頼んだ、こうおつしやつておりますね。ところがその総理の出席がないことによつてこの法案の審議を続けて行くか、或いは又実は約束によると、約束というよりも拘束されない約束によると、とにかく質疑を打切ろうと一応の理事会での話ですね。こういうような状態を今の段階ではそれを一つつて行こうというようなお気持のようにも拝察されるわけですが、これは一つ明確にして頂きたいと思うのですけれども、これは本当に私が先ほども申しまするように、歴史的な法案審議ですよ。委員会の権威を委員長自体が守つて行くか守つて行かないかという私は重要な段階であろうと思うのです。でこの点は一つはつきりと、もう何か奥歯にもののはさまつたような言い方ではなくて、正しい判断の下に発言して頂きたいと思うのです。
  414. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 私はさようにあなたが強く御主張になればこれは多数の委員諸君に伺つてきめるほかはないのでありますけれども、これは内村さんも御承知通り、審議過程において先ず日程時間等もそれぞれきめてそうして今日までに来ておるのだから、総理が来なければこの問題はどこまでも審議を継続するとか、或いは討論をしないとかいうような大問題にまで発展すべきものではないように考えるのであります。
  415. 内村清次

    ○内村清次君 これはとんでもない委員長のお考え方であつて、もう先ほども言いましたように、総括質問の二十日ばかり前にあなたお約束なさつておる。そのときには保利官房長官にも通達したということをおつしやつていらつしやる。そうすると二十日間に総理の御出席ができないはずはないはすです。これは先ほどもつたように労働委員会にも出ていらつしやり内閣委員会にも出ていらつしやる、国会には土曜から月曜日には御欠勤かも知れません。これは常例ですからいつも私たちが言つておりますように日曜を挟んだ三日間というものはいつも大磯に行つていらつしやる。併しそのほかの日にちは来ておられるはずです。そうしたならば委員長に熱意があつたならば、中間でもよかつたんですよ、総理が出て頂けるなら。この約束を果しておられない、今までに。ただ総理がそういう自分の約束をお果しにならずにおいて、そうして総理の出席によつてこの委員会に諮つた約束をまげてでも、これは総理が出席されんでも一つつて行ごうというようなお考え方は、私は少し委員長の平素のお考え方と違いはせんかと思う。これは本当に国民委員長だ、而も参議院の権威を守りつつその国民のための法案を審議しているところ委員長たということよりも、何か私は奥歯にものの挾まつた、制約のためにあなたは言つておられないか、この点を私は悲しむんですよ。若しその点であつたならばどうかこれは公明正大に委員長は職責を守つてもらいたい。そうしてこれは各委員のかたがたの約一時間前、休憩前のお気持だつたならば、私はここに動議を出して委員の決議を要求する。それはどこの委員会でもやつたことでありまするが、こういう動議を出したときには、これは新事態じやないんですから、前々の約束の続きですから、恐らく私は各派の委員のかたがたもこの動議には御賛成になるだろうと思う、権威を守るためにですね、私はこう思うんですよ。それならば私はやつてもよろしい、そうして国民の前に正しい、即ち道についての判断を私はしてもよろしいのです。又参議院の委員会の今後のありかたにつきましてもやはりはつきりとした法務委員会のこの態度を闡明してもよろしいのですよ。併しそういうようなことでなくして、委員長一つ委員長の権威を保つために、委員会の権威を又上げるために、又この法案を本当に生かすために、審議して十分総理の気持もわかつた国民がわかつたというようなことで審議が尽されたというような形で私はこの法案の審議の質疑を打切りたい、こういう念願にすぎないのです。この点に対してどうですか、委員長
  416. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 内村君の御意見は御尤もだと思います。さように考えますけれども時間的に間に合わないものであるから私は止むを得ないものと考えます。
  417. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 官房長官に伺つておきたいのですが、私は今思い出すのは、この一九四五年の八月に出島に原子爆弾が落されたときにトルーマンは声明を発して、この原子爆弾を落すことによつて将来受けなければならない責任は自分が負うという声明をされています。で、この破防法というものがどういう法律案であるかということはあなたもよく御承知だと思う。内乱が起るかも知れない、それを防ぎたい、そのために基本的人権、言論、集会、結行の自由、これをも制限するの止むなきに至つているんだ、法務総裁は私に向つて誠に悲しい法律案である、一刻も早くこのような法律案が姿を消すことを願つておるというようにおつしやつています。内乱が起るかも知れない、だから法律案を通してくれというのは私は政治家の言うべきことではないと思います。内乱が起るかも知れないというような事態をそのままにして法律案を国会に出して、内乱の起る事態を作つておる責任というものは私は総理大臣にあると思う。それを、内乱が淘るかも知れないような事態があると政府の御説明になることが本当であるならば、よくもまあ総理大臣がそんなことを言われて、そうしてこうした法律案をお出しになつて、それでここへ御出席もしないということができるかどうか。私は或る人が語つたのを聞いて実際心を悲しくしたのですか、これは余りそういうことを言うのは私も好みませんが、例えば陛下が御旅行になる、そういうときには総理大臣は実に忠実にそういうところへおいでになる。併し国会で破防法のように、こうして、或いは東大の矢内原学長なり、その他日本の現在の最高の知識を代表しておられるかたがたその他が非常に憂慮を表明しておられ、世論が挙げてこれに対して憂慮している、そういう重大な法律案に対して、この委員会委員長を信頼して最初からお願いをして今日までお待ちをしていたのです。もつと早くお出になることを強硬に尊求すればよかつたんです。併し我々は委員長や又首相を信頼して今日に至るまで強制的に出席をお願いしなくても必ずこの審議の最後まではたとえ一時間でも御出席になるだろうと思つた。今日まで決して催促がましいことを申上げずお待ちしていた。それがついに今日まで御出席ならない。今日に至つては今おつしやるようにいろいろな御無理な御事情もおありになることでしよう。併し今申上げたような重大な事態で、内乱が起るかも知れない、そうしたものに対して、この際国民の言論、集会、結社の自由をも制限することを忍ばれたいというようなそういう悲しい法律案である、一刻も早く消え失せてほしいと、そのためには社会政策上又言論、集会、結社の機能の健全なる発達の上で十分政府も努力なさるということが私は当然おつしやられ、言明さるべきはずのことであり、又現在挙げてこの法律案に対して表明されている世論の不安というものに対して、今あなたはどういうふうに御判断になりどういうふうに善処なさるか、どうか一つこの際最善の処置をとつて頂きたいと思うのであります。
  418. 保利茂

    政府委員(保利茂君) 破壞活動防止法案に対しまする政府及び総理大臣の御意見は、木村法務総裁から今日まで繰返しお答えになつているところと信じます。現に保障せられておるところ基本的人権を不当に制限せざるように本法案の立案に当りましては絞りに絞つているのであります。併しながら現在の治安状況と申しますか治安上の性格に鑑みまして、それはかような法律を持つということは決して好ましいことではございませんけれども極めて最小限度の立法措置として是非国会に御協力を仰ぎたい。もとより政府の施策においていわゆる治安取締という観点からでなしに、総合的に社会不安を醸成せしめざるような施策を講ずるということは、これは政治の第一義であると存じます。従いまして羽仁委員のお話のごとく、或いは社会政策諸施策を一方に強力に推進しつつ、併しながらさればとてかくのごとき法案が必要でないかと申しますれば今日の治安の状況から見まして止むを得ないと、こういうふうに考えておる次第でございます。
  419. 片岡文重

    ○片岡文重君 すでに今総理は大磯に帰られたということを聞いております。で今ここで官房長官、或いは委員長の釈明を伺つてつてもらちがあかない。私はそこで一つ今日はもう討論に入つたところで今晩は上らんと思う。で明日一つ官房長官並びに委員長法務総裁各位において総理と折衝して頂いて、午前中に出席ができないならば午後でも一つ出席して頂くということに今一番の努力をして頂くことのお約束をして頂いて、今日はこれで散会ということにしてもらいたい。
  420. 左藤義詮

    左藤義詮君 関連して。只今片岡委員の御発言でございましたが、官房長官のお話ではまだ明日は総理は出席できないということでございます。総理のこの法案に対する意図は官房長官を通じて緊急連絡をとつて答弁になるということを法務総裁も官房長官も申しておるのであります。で、相当審議を尽して参りましたので、この際質疑を打切つて予定通り討論採決に入られることの動議を提出いたします。どうかお諮り願います。
  421. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 今関連して左藤さんの発言は片岡君の質疑に関連するという  ことでしたが……。
  422. 左藤義詮

    左藤義詮君 いや、議事進行についての動議です。
  423. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 それでは初めの約束と違います私は今申上げたんですが、これは官房長官、法務総裁おられますけれども、先ほど来休憩前の委員会委員長が相当窮地に陥られたということは、これは法務総裁は見ておられます。私は再開してから後に聞いても、法務総裁或いは官房長官が、委員長を窮地に陥れるようになるのを黙つて見ておられるのは、これは私は党は違いますけれども、與党の委員長政府は見殺しにされるようなことについては、私はこれは野党の議員ですけれどもつて見おるわけに行かん。そもそも二十四日を初め、委員長から、この委員会なり連合委員会なり総理の出席を実現するに他日を期待いたしてよろしうございますかと言つたらよろしうございますという御答弁であつた。その委員長との約束を実現する上にどれだけとにかく努力しておられたか。法務総裁なり官房長官の御答弁を聞いておりますと、法務総裁は私が伺つて答弁したんだからそれでいいじやないか、官房長官も御同様の御答弁、それでは責任をこれは持つたとは言えません。どれだけとにかく今まで努力して来たか官房長官に承わりたい。  それからもう一つこれは官房長官は御存じないけれども法務総裁は若し今日御出席が願えなければそれじや本会議ででも御答弁、御答弁と申しますか説明を承わろうかという議論も出ておつたということは御存じの通りです。そういうことをしたらそれじや重要法案については全部そういう方法をとるかと言われてもこれは弁解の方法はないと思います。ここまでは御承知になつておるところです。そうして打合わされて私ども聞いておると、もうおらんにこしたことはないということで大磯にお帰りを願われたというふうにしか私どもには受取れない、これは甚だ以て無責任である、又不誠意だと思うんです。  それから法務総裁に聞き合わせて答弁して来られたと言われますけれども、今官房長官の言われる民生の安定というか、或いは社会保障の完備について努力しておるという答弁法務総裁はされました。併しながらそのとき私は反駁をいたしませんでしたけれども、最近の政府の施策或いは今年の予算に関連して政府のとられております施策についても、これは甚だ失礼でありますけれども政府を代表して御答弁するのには甚だお粗末な私は御答弁であつたと思うんです。もつとこれは政府を代表した立場から御答弁があつて然るべきだと思いますけれども、その点を今と申しませんけれども要望に応えてそうして総理に御出席を願つて答弁を願うような努力はこれは当然せられるべきであつたと思うんです。官房長官の先ほどの御答弁伺つておりましても、その誠意や或いは委員長を窮地に陥れまいという努力がなされたとは考えられませんけれども、それらの点についても法務総裁或いは官房長官は努力をどれだけなされておられたか、その点承わつておきたいと思います。
  424. 木村篤太郎

    ○国務大臣(木村篤太郎君) 私は委員長を窮地に陥入れるというような考えは毛頭ありません。又陥しておらんと私は確信しております。御承知通りにこの法案の重要性は我々は十分あらかじめ予想して、而うして連日私もこの委員会に勉強して出て来ておるのであります。ほかの委員会へ出て行かなければならん場合もあるのでありますが、それすら私は断つてこの委員会にできる限りの努力をして今日まで参つて来たと思うのであります。この方法についての審議も又ほかの法案の審議とはおよそ格段の相違がありますけれども委員諸君においても連日この法案涙案について熱心に御討議を下さることは私は感謝しておるのであります。而うしてこの法案に対する総括質問並びに逐條審議については伊藤委員においてはまだ少し残つておられるようでありますが、大体において私は尽きておると考えております。而うしてその審議の過程においても私は国務大臣として大所高所からいわゆる私はこの審議の答弁に当つておるつもりであります。民生の安定のことについて只今吉田君から甚だお粗末だという御批評がありましたが、私は一国の国務大臣として自分の信ずるところを述べておるつもりであります。而うして審議の過程において十分に私は自分らの考えのあるところを申述べたつもりであります。ただ総理大臣がここに御出席下されば各種の質問が或いは出るかもわかりませんが、総理に対する御質問の点についても、これまでの審議の過程を見ますると、私は相当の熱意を以てお答え申上げておるつもりであります。この上総理が出られて答弁されるということは誠に望ましいことでありますが、私が先刻長官と連絡をとりましたところでは、不幸にして所労のために出られないということであれば万々止むを得ないと私は考えております。これまでの過程において我々政府委員は全力を尽してごの審議に当つているつもりであります。どうぞ御了承願います。
  425. 片岡文重

    ○片岡文重君 さつきの私の質問に対する御答弁はできないのですか。
  426. 左藤義詮

    左藤義詮君 発言を許されましたから……。先ほど緊急動議のつもりでありましたが御了解になりませんでしたが、只今吉田委員からも委員長が窮地に陥つておるのを與党として答弁していないとかいろいろ論議が尽されましたが、吉田君の御了解を頂きまして、只今法務総裁の申されたところを了とせられてこの際質疑を打切られることの動議を提出いたします。(「賛成」と呼ぶ者あり)
  427. 片岡文重

    ○片岡文重君 動議の出る前に私のした質問に対する答弁はないのですか。
  428. 左藤義詮

    左藤義詮君 動議をお諮り願います。動議は先議ですから。
  429. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 動議をお諮りいたします。左藤君の動議に賛成の諸君の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕    〔「少数」「懇談々々」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し〕
  430. 内村清次

    ○内村清次君 少数否決だ、委員長は宣言なさい。
  431. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 少数と認めます。それでは質疑を継続します。
  432. 松浦定義

    ○松浦定義君 私は昨日から実はこの委員会へ出たわけなんです。ところが昨日も今日も委員長か時間々々ということばかり言つておられるのであります。今日のこの時間になつたのは、今問題が起るというようなことはすでにもう二十日前にわかつておるはずであると思います。それをわかつておりながら委員長がこの時間ということを言うということは、早い話が只今の動議によつて私ははつきりしておると思うんです。こういうことのないようにというのでまあいろいろに各委員が苦労をしておるわけなんです。先ほどの休憩するときには伊藤委員の発言で休憩をしたわけなんです。その間に十分手を打たれたと思つておりますが、結果的にはやはり手を打たれていない。而もその打たれていない証拠にますます委員長は時間を言つておられる。更に又只今のような動議が出て、動議が否決になつても更に又懇談をしようとしておるんです。動議が否決になつた場合に懇談をする、しないということは、やはり又これは全部の各委員の多数の賛成があつて初めてそれができると思うんです。いずれにいたしましても、私は今日はむろんこれはもう時間がないということははつきりしておりますので、ただ先ほど片岡委員から官房長官に対して質問があつたわけなんです。明日出られるか出られないか、果して出ることに努力するかしないか、こういうことについての御質問があつたにもかかわらず、それをあえてしないで、動議をお取上げになつて結果的にはこういうことになつておるんです。そこで私はやはり官房長官のお話では今明日は所労がひどいので出られないと、こういうふうにはつきり言つておられるのでありますから、片岡委員が御質問された場合にはつきりその線を再確認するような御努力をされる意思が何故ないか、更に又委員長としても官房長官の答弁をみずから要求されなければならないと思いますにもかかわらずそれをしないでおいて、動議を採択して、而もこのような結果になつてしまつておる。委員長は私は與党の委員長考えておる、そういうようなことは與党間の中において取計らわれないということは私は余りにもこれは権威のない委員長のやりかただと私はこういうふうに申上げざる得ないのです。それで先ほど片岡委員から御質問された問題について官房長官から納得の行く一つ御回答を願つて、それで御了解が願えたならば今日はこれを以て一応打切つて頂く、そうして明日改めて十時なり適当な時間から再開して頂いて進められるように私は特に……。
  433. 片岡文重

    ○片岡文重君 今の問題でちよつと私は申し上げたいことがある。私は決して議事を遷延しようとかそれから紛糾せしめようという意思は毛頭ない。むしろやはりお互いに紳士的な態度で成るべく約束を守つてこの議事を進めて行きたいと考えております。ですから先ほども申しました通り総括質問の点については伊藤委員に代表願つて私はしておらない。且つその後における逐條審議においても私はまだまだ多分に自分としては納得の行かない点がたくさんあるけれども、それは又あらかじめ予定された日にちが今日までということでありますからこれ又遠慮いたしておる。こうしてですよ、自分の質疑したい点をすら差控えて御協力を申上げて来たつもりです。今日併しながらこの法案の重要性に鑑み、又影響するところの甚大な点に鑑みて、少くともこの委員会にはこの法案に関する限り総理は出席あつて然るべきものだと私考えましたから、総理に対する質疑については留保するということはお約束申上げてあるところであるし、委員長又それに対して応諾されておるはずである。従つてこの点については十分なる工作がなされて然るべきだ、私は委員長に申上げたい。で併しながら今日この場に至つてそれをなお繰返しておつてもせんないことですから、官房長官も今日ここに御出席になつて総理が所労のため今明日御出席できないと言われる。これ又止むを得ないと思うのです。ここに至つてそう言われてもそれは納得するわけではありません、納得する意味では毛頭ありませんが、ともかくこういう事態ではどうすることもできない。特に総理は今日もう国会の近くにおられないという事態ではどうにもならない。併しながら所労のためでは今晩休養されて、更に明日午前中休養なさつて、そうして明日の午後になつて、それほど委員会において委員各位の熱心な要求があるのであるならば、又法案の重要性というものを認識されるならば、いずれにしても出席するというようなことに吉田総理おつしやらんとも限らんと思う。少くとも総理が老齢であつて忙しい政務に携わつておられるのですからお疲れになるということは私十分に御推察申上げるのにやぶさかではない。併しながら官房長官初め政府委員各位が、だからといつて我々の推察申上げる同情に甘えた態度では私は断じていかんと思う。やはり我々の希望するところ法案審議に当つてのどうあるべきかの態度については十分な何度があつて然るべきであるし、そういう点から、そうして又せんない論議を続けることも避けたいと思うから、先ほどあえて妥協のように考えられるかも知れないが、こういう論議を繰返しておるよりは仮に効果はなかつたとしても一応の努力はなさつて然るべきではないかと考えられるから、出られる出られないはともかくとして、明日いま一度その努力をなさつてみるつもりはないのですかということを私は伺つておるので、又その努力はあつて然るべきだと考えるのですが、徒らに動議を出して紛糾させる意味でなく、むしろ円満に紳士的にお互いに気持よく議事を進めるように委員長も御努力願いたい。官房長官も今申上げる点に御理解が行くならば一つ誠意ある御答弁を頂きたいと思う。
  434. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 私は與党でも野党でもございません。皆さんのおつしやること一々御尤もでございますが、徒らに紛糾いたしましても困るし、私どもこの間理事会でやつぱり予定を立てましたことにも一部責任がございますから、それで明日官房長官に総理にお会い願つてその様子をよくお伝い下さいまして、総理の御意思を明日中にでも午後にでもできるだけ早い機会にお伝え願つて審議を進めるということにいたしたらどんなものでございましようか。
  435. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 官房長官にお伺いしたのは、別に私は官房長官から説教して頂こうと思つたわけではないのです。どういうふうに善処なさるか、今の善処をして頂きたいというようにお願いしたのですが、それに対して何か私の善処をして欲しいという理由に対して反駁のようなことをされただけですが、それでよろしいのでしようか。それとも善処をされるということを、或いは善処をしないというか、どういうことでしようか。お答えがなかつたように思いますが……。
  436. 保利茂

    政府委員(保利茂君) 私が聞き違えておるかも存じせんが、刑仁さんの御質問のようでございましたから、御質問の趣意は私取り違えておつたとすれはこれはもう恐縮でございますけれども、私は大体御質問の趣意に対してお答えを申上げたつもりでございます。何ら他意は持つておりません。だんだん皆様の御意見を同つて先ほど片岡さんが私お答えをしなかつたと……、故意に避けたわけでもございませんし、議事の運びから申上げる機会……、片岡委員の御意見といい、只今の宮城委員の御意見と申し、私も更にお話のように明日午前中にも総理大臣にお目にかかりましてこのことをお伝えいたし、そうして願くば御出席を取運ぶようにいたしたいと存じますが、万一にも御出席が困難である場合におきましては御意見は十分皆様にお伝えするように責任を以て取運びたいと存じます。
  437. 伊藤修

    伊藤修君 私は先ほどからのいろいろな論議をお聞きしておりまして、只今隣の羽仁さんに耳打いたしまして、法案に対する修正と、それに対するところの総理の国会に対するところの責任というものを端的に申上げて、総理がここに出ておいでになれない理由は一応了承するとしても、少くとも国会に対しまして陳謝の意を表せられるという、その道行く先を羽仁さんに発言して頂くようにお願いしたのです。然るにどう思い違いされたか知らないけれども、官房長官はこともなげにただ議論をなさつて、そのことを不幸にして左藤さんから動議として御提出になつたということがこうした事態をかもし出した。一応委員会において正式に採決がなされた以上、これは五年間を通じて初めての採決で私は誠に悲しき事態だと思うのです、法務委員会としてはそのような前例は得たくなかつたのです。併しできた以上は止むを得ません。この事態を解決する一つの方法は先ほど宮城さんがおつしやいました方法以外にないと思います。この段階においては明日にこれを繰越しまして、明日の午前中に善処なさるべきことを私はここで動議ではなくして意見を申上げておきます。私も理事の一人として宮城さんと同様その責任を感じておりますからそうして御解決になることを切望します。それで本日はこの程度において御散会あらんことを希望いたしておきます。
  438. 小野義夫

    委員長小野義夫君) ちよつと総括して。各委員のお話を傾聴いたしましたのでありますが、私は御覧の通り甚だ委員長としては不馴れなる委員長であり、行届かんところ委員長でありますが、これは老練なる先輩諸君、殊に理事諸君の御意思を尊重して今日まで議事を進めて来たのであります。先ほど松浦委員からの御意見もありましたが、これは今日この十八日ここに至るの経過というものについては、松浦委員は御存じがないと思うのですが、十三日に上げようという最初の提案がなされまして、それは十三日は余りに早過ぎるから十六日にしよう、ところが一松委員が、十六日は手前は個人的な理由を以てこれを延ばすことは甚だ遺憾であるが、いろいろの事情もあつて、自分が最後の十九日、明日の本会議には必ず出て討論をしたいから、それで十九日まで待つてくれ。そういう御了解の下に理事諸君の先ず大部分の御意見として再三確認されてここに参つたわけでありまして、今ここで先ほどからのようないろいろな問題が撃て今日の質疑が打切りにならんということは私は審議の要領というものは大体において終了されているものと感ずるのでありますから、これは重ねて一つ何かの御方便を生み出すように、特に伊藤氏に対しては一つお願い申上げるほかないのでありましてこれがためにこういつた時間がかかりましても休憩を宣して再び開きたいと思いますから、三十分間休憩することは如何ですか。
  439. 紅露みつ

    紅露みつ君 私どもは松浦委員と共に昨今の委員でございまして、従来のいろいろのいきさつは存じませんけれども、とにかくこの重大な法案に対して総理大臣が御出席でなかつたということは、これはもう昨今にしましても、従来の引続いてのかたがたにいたしましても、遺憾なことは十分これは歴然たるものだと存じます。併し又これまでお出にならなかつたという点は、これはまあ官房長官の責任もおありになりましようし、非常に遺憾なことでございますが、併し総理は非常な御老齢でもおありになりますし疲労がひどいということの御発言もありましたので、さようなことであればこれは万止むを得ないことではないかと存じますけれども、併し先ほどから各委員から御発言がありましたように、疲労がひどいということであればいたしかたございませんけれども、せめてこの最後の機会に御出席になるように、せめて最後の御努力を要望しているのでございますから、その点はどうぞ昨今の委員でございましても、従来引続いての委員でございましても、これは同じ気持でございますので、どうぞそういうことはこの際おつしやらないほうがよろしいと私は存じまして、最後の御努力を官房長官に要望するものでございます。どうぞ、徒らに紛糾することは好ましくないという宮城委員からの御発言でございますが誠に同感でございますので、善処せられんことを切に要望いたします。
  440. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 善処するためにそれでは三十分間休憩して再開いたします。(「休憩する必要ないじやないか」と呼ぶ者あり)    午後十時三十分休憩    —————・—————    午後十時五十分開会
  441. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 委員会を再開いたします。先刻来各委員からの御要望により、官房長官において更に総理の出席に関して努力をするということでありますから、本日はこれを以て散会いたします。明日の議事につきましては、いずれ理事と委員長において相談の上やります。大体開会は午前十時であります。  では以上で散会いたします。    午後十時五十一分散会