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1952-06-09 第13回国会 参議院 法務委員会 第51号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年六月九日(月曜日)    午前十一時四十二分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     小野 義夫君    理事            宮城タマヨ君            伊藤  修君            一松 定吉君    委員            左藤 義詮君            長谷山行毅君            岡部  常君            内村 清次君            吉田 法晴君            片岡 文重君            羽仁 五郎君   政府委員    法制意見長官  佐藤 達夫君    刑 政 長 官 清原 邦一君    法務検務局長 岡原 昌男君    法務特別審査    局長      吉河 光貞君    法務特別審査    局長      関   之君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君    常任委員会専門    員       堀  真道君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○破壊活動防止法案内閣提出、衆議  院送付) ○公安調査庁設置法案内閣提出、衆  議院送付) ○公安審査委員会設置法案内閣提  出、衆議院送付) ○本委員会運営に関する件   —————————————
  2. 小野義夫

    委員長小野義夫君) それでは只今より委員会を開きます。  引続きまして破壊活動防止法案外二案を便宜一括して議題に供します。吉田君に先ず発言を許します。
  3. 吉田法晴

    吉田法晴君 実は質問事項を用意いたしましたところ、特審局活動について、或いはあらかじめ基礎となりました破壊活動の実体については別に聞くというお話でございましたので、若干質問が、論理的な順序は合わないかと思いますが、その点はお許しを頂きたいと思います。  法案審議をいたしまして感じますことでありまするが、特審局法案立案せられ、そして法制意見長官もお目通しになつた。或いは閣議決定を経てここに出て来たのでありますけれども法案審議過程で私どもが感じますことは、立案をせられました所が、案ができまして後もこの法律運用をせられるわけで、そこで立法とそれから行政関係が、建前はとにかくといたしまして、事実上三権分立主義、或いは新憲法の下におきます行政権の行使を法律による。その法律国民の意思を代表した最高機関である国会がきめて、そしてそれを行政府をしてこれを行わしめる。そうしてその行政権の、何と申しますか、専断と申しますか、行過ぎがないようにするというのがこれが民主主義建前だと思うのであります。それが法案の性質にもよりますけれども、こういう極めて概括的な或いは抽象的な規定を以てしては濫用が極めて心配される。こういうことが民主義の下においてやすやすとして容認ぜらるべきであろうかどうかということが考えられるのでありますが、その点について法制意見長官のこの法案立案、それから現実の姿、これからの運営とあるべき姿等を対比してどういう工合にお考えになりますか、先ず承わりたいと思います。
  4. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 只今お尋ねはなかなかこれ深い高い問題に繋がつていると思います。と申しますのは、突き詰めて申しますというと、一体法案提案についての政府立場国会立場との関係、更には憲法の精神というようなところまで私は及ぶ問題だろうと思います。ただ申すまでもなく、現実の問題といたしましては、この法律国会で御発議になりまして、国会そのもので初めから終りまでお作りになるものと、それから政府から提案をいたしましてそれによつて審議を願うものと二通りあることは申上げるまでもないことであります。まあ国会唯一立法機関ということから申しますと、国会自身が初めから御立案になつて法律お作りになるというのが或いは望ましいことであるかとも存じますけれども、いずれにいたしましても最終の御審議、御決定国会でなされることでございますからして、政府提案いたしておるのは、結局その素材を御提案申上げているということになるだろうと存じます。従いましてこの政府法案現実にどこで立案したかというような問題についてのお尋ねでございますけれども、これも広くあらゆる部面法案について政府提案の成立ちというものをお考え願いますれば、例えば農林関係のことについてはおのずから農林関係責任当局者がその立案に携わり、その他の行政部面につきましても大体そのおのおのの行政をあずかつておる者が、自分の知識と経験をできるだけ集中いたしまして原案を作るというのが、普通の今までの行き方でありますし、又今後もさようになると思います。それを法制意見局と申しますか、私のところで各省のものを全部、国会に出しますまでには法律的な角度から、或いは立法技術角度から審査をいたしまして閣議にかける、こういう実情をとつているわけであります。従いまして国会に出ましたあとで、政府案については政府立案当局として責任を持つております立場からいつて立案者責任を質すべきいろいろなお尋ねに対して、十分なる御納得を得るように努力はいたすわけであります。これは当然なことでありますけれども、それはこの間からたびたびお叱りを受けておりますような、何も押しつけがましい態度、熱心の余りそれは強い発言を申上げることもありましようけれども国会に対して押しつけがましいような態度であるべきではないりのであつて又我々としてもさよう態度はとつていない。ただあるべき姿を十分御説明申上げているということであります。最終の御判断は国会でなさるという、まあ筋を辿つて申上げますればさようなことであると思うのであります。
  5. 吉田法晴

    吉田法晴君 一般的なお答えを頂いたのでありますが、一般的な立法のあるべき姿というものの中で、この法律立案権、それから法律執行という問題について、こういう立案をされる所が執行機関であります。そうしてその執行する機関立案をいたしました法律が大した修正もなくして通るということについては危險がある。而もこの法律のように非常に大きな疑問が残る、或いは一般的な規定或いは抽象的な規定で濫用せられる虞れを含んでおる、而もそれが国民基本的権利に非常に大きな影響を持つておるものについては、若し執行をいたします機関意見がそのまま通るということでありますれば極めて危険であり、或いは望ましいことではない。民主主義建前から望ましいことではない。こういうことが一般的にも一つ言えるんじやないかと思います。それから質疑を続けておりまして、法制意見長官も、例えば公安調査官の必要な取調をすることができるという規定に関連して、規定が不十分だということもお認めのようでございます。それから手続規定につきましても代理の問題に関連いたしまして行政手続法というようなものを考えておる。併しそれはまだできておらん、こういうお話でございます。この手続規定についても一般的に行政手続法というものがないとするならば、この法律の中でもつと詳細な手続規定を作るべきであろう、これははつきりはおつしやいませんでしたけれども、そういう意見も出ておる。なお又この法案を作ります場合に殆んど法務府内、特に特審局で終始案を練られて、或いは法制審議会等にも諮つておらんということも明らかになつたわけです。具体的にこの法案というものを手にし、審議をして、そうしてこの法案が案としてでき上るまでに政府部内においてももつと愼重立案さるべきであつたということが明らかになつつたように思うのであります。これらの事実に基いて法制意見長官としてどういう工合にお考えになるか、二点一つお伺いします。
  6. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) いろいろなお言葉がございましたが、例えば行政上の手続についての問題、これは誠に傾聽いたします。私どもかねがねこのいろいろな営業取締法規、その他近頃出ております法律の中には聽聞というような慎重な手続を経て行政処分をやるようにという趣旨からそういう関係條文いろいろ出ております。或いは又委員会内部における審議手続というようなものも各委員会公正取引委員会なり電波監理委員会なり、それぞれにおいて細かいルールを作つておるわけであります。それらのものをもつと統一的な見地から、ばらばらにならないような角度行政手続法というような一般的の法律を作つたらどうだということで去年から我々研究をやつております。やつておりますが、その点は確かに私どもも又国会の御協力も得てそういうものを作りたいと思いますけれども、ただ具体的にそれではこの法律案破壊活動防止法案にある行政手続規定がこれは不備なんで、そういうものを立派なものを作ればもつとよいものが作れるのだというような御懸念だとしますと、私ども考えておるのとはちよつと違います。  それはこの破壊活動防止法案における手続慎重性を期しておるいろいろな條文というものは、これはこれで整つたものであると考えております。ただ今一般法としての行政手続法についての考え方ということが、そういうふうに各個の法律ばらばらにに挟んでおるということをもつと統一的に、例えば民事関係訴訟法規のような形、そこまでは実質的には行きませんけれども体裁上はそういうものの統一的な法制上の体裁というものが欲しいという気持で検討しておりますということを一応申上げておきたいと存じます。この愼重でなければならんというようなお話も、これは当然のことでございますが、これは特審局立案の作業を始めましてから今日までかかりました大変な日数というもの、或いは又その間におるいろいろな内容の変化というものをお考え願えますれば、これは慎重にやつた、その慎重のやり方にもそれはいろいろ理想はございますけれども愼重にやつたということには決して間違いないというふうに信じておる次第でございます。
  7. 吉田法晴

    吉田法晴君 慎重にやつたという点は、特審局立案をせられまして、二十何回と練り直しをしたということであろうと思います。その事実を私も否定するわけではない。併し普通の法律の場合にも、相当影響の大きい重大な法律については、或いは民間意見を聞くとか或いは法制審議会にかけるとかいう手続がとられておるわけでありますが、慎重さは特審局なり或いは法務府内の一部にとどまつてつたと私どもは了解せざるを得ないのであります。そういう意味においてこれだけの国民基本的権利、義務に関係のある法律立案せられるに当つては、もつと広い見地から慎重にやられるべきではなかつたか、その慎重という意味をただ抽象的に慎重と申すとそれだけにとどまるのですが、その点が一つと、それから手続法について行政手続法というようなものを考えておる、或いは考えたほうがいいということですけれども、それはそれとして、この法律における手続が不備であるとは考えない。その不備であるとは考えないということは、今までの審議過程意見長官自身答弁せられて来たところから見ますと、私はどうも少し強弁のように承わるのであります。例えば先ほど引きましたけれども、二十一條修正になりました「審査のため必要な取調をすることができる。」こういう際にはこれだけの條文で、伊藤委員質問に答えて、職権で以て取調をする、或いは職権の発動を促すことができる。併し法文の書き方としてそれ以上ないということについては、これは不備であるといいますか、不十分であるという点は私は認められたように記憶している。  それから公安調査庁での審理の手続をいたします場合に五名の代理人であるとか弁護人であるとか、或いは公開と申しますか、新聞記者を入れるとか、こういう手続は今度の公安審査委員会の段階にはそういうことが不十分だという点も明らかになつて参りましたし、この手続法として一応まとまつたものであるといいますか、完備したものであるとは……私は今までの質疑或いは応答を聞いて、これは意見局長官といえども大体認められて来られたところではないかという気がするのです。例えば同じような問題について、労働委員会なら労働委員会運営について一応規定がございます。これは私ども行政手続法として一応今まであるものの中では相当、完全とまでは申しませんけれども、或る程度法の上でも或いは運営の上でも民主的に一応まとまつておるものだと考えるのであります。それらに比べて見てこの法案手続規定が極めて見劣りがする、或いは前後矛盾が感ぜられる、或いは先ほど申しましたような不十分さがあるということは、これは意見局長官といえども今までの答弁のあれからしまして大体認められたところじやないかと、こういう工合考える。その点重ねて御答弁願いたい。
  8. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 最初のお尋ねお答えしました私の気持は、誤解しておつたかも知れませんが、行政手続法というようなものができなければこれが動かん程度……動かん程度というのは言葉が過ぎますけれども、完全に動かない程度手続なのではないか。即ち行政手続法というようなものの支えを待たなければならんものじやないかというお疑いがあると、これは大変なことだという気持が先立つておりますから、さようなことを申上げましたが、只今お尋ねのように、例えばこれは今の委員会調査権はこれは衆議院で御修正になつたのだから我々は存じません。こういうことは申上げません。従つてそういう点についてのいろいろの御質疑を承わつておりますと、これを更に、成るほどこう改良する余地はあるなということは、気持がおのずから動いて来ます。従つて私は正直でございますから、その気持を申上げるわけであります。勿論更によくして頂くことは少しもかまわない、そういう一点に盡きるのでありますから、そこは御了承願つておきたいと思います。
  9. 吉田法晴

    吉田法晴君 今の答弁で聞きましたこの法律立案政府手続としても、或いはもつと民間意見を聞き、或いは法制審議会と申しますか、これは名前はとにかくといたしまして、これだけの輿論の反対或いは批判の事実に鑑みても、もつと立案過程愼重というよりも、むしろ民主的に手続をやるべきではなかつたか、この点についてはどうですか。
  10. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) それについては、実は私からお答えすべき立場ではないのでありますけれども、かねて法務総裁もこの席上でお答え申上げましたように、又私が横から見ておりましたところから見ても、これは今の審議会とか何とかいう形のものには確かにかけておりませんけれども新聞の論調或いは個々にいろいろな関係のかたがたの御意見を伺つておることは、これは事実であるように私は考えております。
  11. 小野義夫

    委員長小野義夫君) ちよつとここで先ほどの報告事項がありますから、各党のかたがおいでのようですから、今朝委員長及び理事打合会におきまして委員会運営について協議決定いたしたことを御報告申上げます。  破壊活動防止法案外関係二案の審査につきましては、十九日の本会議に上程することといたしまして、委員会におきましては十八日中に三案の討論採決を行うことにいたします。本日より十七日までは、毎日午後委員会を開き三案の逐條審議を行います。又明日は政府の用意ができますれば秘密会を開きまして、特審局における予算使用状況の詳細及び共産党の実態について説明を聽取いたしたいと思います。以上が打合会におきまして決定いたした予定でございます。この打合会決定通り委員会審査を行うことに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  12. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 御異議ないと認めましてさよう決定いたします。  なお他に審査すべき法律案只今のところ三件あります。又請願陳情が若干ございますが、これらは破防法審査の間に委員長において適当に挿入して審議を頂くことにいたします。ちよつと速記をとあて。    〔速記中止
  13. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 速記を始めて。
  14. 吉田法晴

    吉田法晴君 それではこれは質疑過程で一応明らかになつたようにも思うのですが、この法律臨時立法であるかどうかという点です。参議院では、少くとも法務総裁その他から臨時立法であるというように伺つて参りました。この点を一つ明らかに法制意見長官から伺いたいと思います。
  15. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) この臨時ということを法律的にどうかと言われますと、これは今の普通の臨時法というのは、臨時特例という表題が附いておつたり、或いはこの法律は何月何日まで効力を有する、何月何日から効力を失うというようなことが書いてありますから、それは正にいわゆる法律的意味における臨時でありますが、これは実質上であります。そういう嚴格な意味での法律上の意味でなしに、実質上今日の当面の事態からいつて必要を生じたのであつて、まさかこれが国家的な関係をここで定めたものとは誰も思わないという趣旨に重点を置いて考えれば正に臨時法考えます。刑法がいわゆる刑罰根本法だというのに比べまして。
  16. 吉田法晴

    吉田法晴君 或いは刑法の改正も考えられて、刑罰規定補整も含んで、今のような実質において臨時法、恒久的なものじやない、なお更にこの法案を作られました客観的事実の中に、或いは情勢がいわゆる革命的な情勢にあるかないかといつた議論もありましたが、それはともかくといたしまして、臨時法という点は一応今御説明伺つたのでありますが、そうしますと、これは我が国の先例ではございませんけれども、ドイツの社会民主党がございました一八七八年頃からの問題で、たしか効力がなくなりましたのは一八九〇年であつたと思うのでありますが、このいわゆる社会党鎮圧法なるものは三年ごとの、三年に有効期間を一応持つてつたと承知をいたしておるのであります。社会党鎮圧法については私はここで詳しく申上げるまでもございませんけれども本質においては同じような本質を持つてつたと思うのであります。或いは又社会党鎮圧法社会民主党のみならず、いわゆる政治的には進歩的な資本家、或いは進歩的な中産階級をも牽制した役割等はここで申上げませんけれども、この種の法律について期限を附けるべきではないか、こういう意見が有力に存在し得ると考えるのでありますが、この点についての意見をお伺いしたいと思います。
  17. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 御尤もだと思います。私はこの法律の理窟の上からいいましても、こういう法律について例えば十年とか十五年とか、そういうような期限を切ることも勿論可能であり、考え得る、成立ち得るものであろうと思います。ただもう少し高い角度から見ますると、とにかく国会唯一立法機関として厳然としていらつしやるから、しよつちゆう目を見張つて監視しておられて、もう必要はなくなつたと思われる法律は、もう期限の定めがあろうとなかろうと、即時にそれを御廃止願つて、少くとも法令輯覧ペイジ数を減らして頂きたいと私ども考えております。そういう角度から見ますと、結局それは同じことになるのじやないかとかねがね思つておる次第でございます。
  18. 吉田法晴

    吉田法晴君 社会党鎮圧法お話を申上げることは、期限を附けることについて原則的に異議はない、ただあと法律は成るべく少いほうがいい、これは中山委員からでしたか、法三章の一例を引いてお話がございました。そこになりますとこういう法律が必要であるかないかという基本問題に関連いたします。私ども根本的にこの点が、こういう考え方について反対であることは申述べて参りましたが、問題は臨時法とそれから法律期限の問題について私の意見と、それから期限はあつてもいいが、或るべく国会が早くやめてくれるべきだ、こういう御答弁伺つて先に進みたいと思うのですが、一番この法律で問題になりますのは、団体の規制等行政処分規定と、それから刑罰法規を一緒に含んでおるという点、この点が一番問題になる。それからこの学問的なと申しますか、或いは刑法理論から、或いは憲法理論から、或いは行政法理論からも非常に問題になるところであると思うのでありますが、その二つが混在するためにどういう議論が行われておるかということは、これはもう私が申上げるまでもなく、土曜日の懇談会等においても特審局長を初め政府側も聞いておられる、それから各委員も聞いておられることでありますから、ここで繰返しませんけれども、この法律の最大の欠陷を除く意味において、この法律行政処分なり或いは行政手続法と、それから刑罰法規との二つに分けてしまう。こういうことについて私どもは除くべきだと思うのであります。二つに分けるべきだと思うのでありますが、その点について佐藤意見局長官はどういうふうにお考えになりますか。
  19. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) この間も他の委員からそういう趣旨お尋ねがございまして、一応お答えをしたのでありますが、このわかりにくいという外形は、これは何分多数の條文を持つておりますからしてわかりにくいということは否定できないかも知れません。ただ今の分けるということによつてどの程度にわかりよくなるかどうかという問題は、これは技術上の問題だろうと思います。この間お答えしましたことを繰返すことを仮に許されますならば、一応根本論としては、刑罰法規は全部刑法の中にぶち込むという分け方が一番はつきりすると思いますが、これについては前に説明したような事情もございますからして、仮にそれをやめた場合に、もつとわかりよくする方法はないかという点についてお尋ねがあつて、そのときにお答えいたしましたのは、要するに第一條というのは規制罰則補整と両方にかぶる。これは共通の部分はすべて第一編総則の中に入れる。それから第二條の字句、あとはこれは行政規制手続でありますから、第二條の前に第二編規制措置というような編を一つ置く。最後に罰則の前に、第三編刑罰法規規制というようなことを書けば或る程度は私は率直に言つてわかりよくなるのではないかというような気持がする、こういうようなことをこの間申上げたのであります。せいぜいその程度でありまして、結局十分御覧頂けば、第一條ちよつと外して総則というような一編にするというだけのことで、大体の條文の並び方は今御覧になつておりますようにその趣旨で並んでおりますから、比較的小さな技術的な問題になるのじやないかという気持は一方において持つておるわけです。大多数の方が一番見やすいようにということならば、或いはいろいろな考え方が成り立つでしようけれども、これはこれとしてわかりよく、そうしたのとそうしないのとどれくらい違うかというと、大したことはないのじやないかという気持を持つておりますということを申上げておきます。
  20. 吉田法晴

    吉田法晴君 佐藤意見局長官からそういうお話を聞きますことを大変私どもは意外に思います。これだけの批判がなされており或いは意見が出されておる。恐らく佐藤意見局長官は御存じであろうと思います。そこで細かいことを申上げないで参つたのですが、或いは公述その他の中にもございましたけれども専門家と申しますか、或いは学者の意見等は私は細かく聞いて頂いておるものだと思つてつたのですが、どうもそれを全然念頭にないようなお話を承わつて大変予想外に感じたのであります。或いは白ばくれておられるのかも知れませんが、例えばこれは條文についても一々これを今挙げて行くということは大変だと思いますけれども、一例を挙げてみますというと、例えば第二條規制の基準というのは、これは行政処分だけにかぶつておる。例えば刑罰補整をこの法律はやるのだということを一條規定しておりますけれども、この法律による刑罰補整規定運用については全然入つておらん。これはどうして落したのであるかという疑問を感ずるのであります。例として挙げますから、まあ若しおわかりにならないというか、或いは意見について聞いておらなければ、挙げて行くよりほかに仕方ありませんけれども……。それから刑罰法規にいたしましても、例えば一番わかりやすいところで、これは衆議院でも指摘されましたけれども刑法の各本條の処罰と、それからここに掲げてあります教唆、扇動、或いは予備、陰謀、或いは文書、図書の印刷、頒布、所持、その刑罰刑法條文と比べ合せてみるとバランスが取れておらんこともこれは一目瞭然で別に書き拔いておらない。で、刑法に移して見るとアンバランス・が余り明らかであるから、一応ここに書いておるのじやないか、こういう議論さえ行われておるのでありますけれども、これは例を挙げないと話が進まないのでありますから、挙げるのでありますけれども、言われるようなただ一編、二編という分け方をしたかせんかという問題ではないと思います。重ねて御答弁一つ願いたい。
  21. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) どうも今のお話は形式というよりも実質に絡まつてお話ではないか、例えば第二條について、なぜ犯罪捜査の面における基準を設けないかというお言葉ですが、これはかねがね承わつておるところでもあります。併しそれに対しては犯罪捜査の面では、刑事訴訟法にもこれに相当するあらゆる犯罪についてのそういう根本規定がありますから、ここには入れませんでしたというお答えをしておるわけです。それから今の罰則の軽重の問題も、これは或いは検務局長からお答えすべきことでありましようが、一々弁明はしておるわけです。この編別の問題というようなことには私は直接関係のないことではないかと思います。白ばくれておるとおつしやいますけれども、その点においては決して私は白ばくれておりませんので、むしろ私の経験では、そのわかりにくいというのは、三條に挙げてある事柄と規制の基準との関連がおわかりにくいという人が一番多いのじやないか、率直に言つて……。これは三條に刑罰規定ばかり列べておるものですから、その規制というのが如何にも団体についての制止じやないかというような感じを一抱かせるというようなことが、私はむしろ一般に誤解されておるのじやないかという気がいたします。これは何ともいたし方ありませんのは、三條を余り潔癖に絞つたものですから、誰が見ても悪いことならば、おのずから刑罰規定に触れることになるので、この刑罰規定を絞つたのは止むを得ないことなんで、それはどうしても建前を、現在はこれ以上は崩せないのです。漠然と危険な活動をやつた者と書いて頂けば書けますけれども、そうは行かないのでかように書いた。これは止むを得ないことと御了承を頂かなければならない。そういうことで、むしろ今のお尋ねの点は白ばくれているのじやなくて、実体についてのお尋ねじやないかと思います。
  22. 吉田法晴

    吉田法晴君 まさにそれは佐藤意見長官御指摘の通りであります。ただ例の引用が余り妥当でなかつたということになると思いますが、その点をもう少しそれじや伺いたいと思います。第三條によつて第四條或いは第六條の活動の制限なり或いは解散をやる。で、それは一回破壊活動をやつただけでなくて、継続反覆してという御説明、それから三條に挙げられました行動は、これは危険中の危険だという、こういう御説明でありますが、三條の行動があつた場合に……、それは破壊活動を行なつたということでありますが、その破壊活動を行なつたというのは、それは誰がやるのか、今までの御説明では公安審査委員会破壊活動を行なつたと認定することになる。而もその公安審査委員会の事務局にいたしましても、特審局から行かれる十名の人たちがやられて、公安審査委員会特審局の入体の意向というものを体してまあやられるかのような危険性を感ずるのであります。そうしてその団体の規制が行われて後に刑事処分がなされる可能性が出て来るかと考えておるかというと、そうでなくて、刑罰法規刑罰法規で別でありますから、例えば第三條一号ハの文書を所持しておつても処罰せられる、こういうことになつて参ります。そうして例えばそれじや文書を持つてつた、例えばアカハタならアカ八タを持つてつた、そうすると頒布の目的で持つておるかどうかということが問題になりますが、例えばこれは、その持つておる人によつてつて、或いは共産党員が持つておれば、一枚持つてつてもこれは頒布の目的だと認定されるかも知れない。或いは学者の場合でも、二枚持つておれば、一枚はそれは或いは学問上、或いは政治学なら政治学の立場から、それは関心を持つておると言うかも知れないけれども、二枚持つておれば、頒布の目的を持つて所持したと、こういう認定がされるのじやないか、この点に今のお話の三條とそれから刑罰法規との何と申しますか、非常な複雑な関係がある。そうしてこの法律による基本的人権の制限なり、或いは学問、出版、集会の自由が制限せられる心配が起つて来ると、こういう主張になつて参る。その点をもう少し御説明を願いたいと思います。
  23. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 先ほどからの御質疑、又それに対するお答え趣旨は、私はやはりそれは実体に触れての問題になると思います。私の申上げたのは繰返す必要もございませんが、この三條に書いてある基準というものが四條から離れておる、或いは六條から離れておるということから来る見やすくない、見にくさという点を申上げたのであつて、今のお言葉は、これは実体に触れたお言葉であり、且つ前から御説明も一応しておることでありますから、先ほどのお話の続きとしてはかようにお答えするよりほかないと思います。
  24. 吉田法晴

    吉田法晴君 勿論形式的に分けるべきであると、こういう議論の中には勿論実体が入つておる。形式的に一つになつておるということが、実体的に繋がつておればこそ一つの中に入つておるので、形式的に全然分離しろという主張の中には、ひとり形式だけでなくて、実体論も勿論入つております。そこで一番問題になります予備、陰謀、教唆、扇動、或いは文書、図書の所持云々、そうしてそれが形式的に刑法なら刑法の各本條と比べてみた場合に、刑罰の点においても、或いは構成要件の点についても根本的な違いが出て来る。刑法総則をも改正するような法律をこういう臨時立法なら臨時立法でやることはこれは間違いではないか。或いは憲法によつて保障されておる裁判を受くる権利、それを事実上侵害するような規定をこしらえてそうしてそれを運用して行くならば、これは或いは刑法なら刑法運用する刑事訴訟法の原則がこわれて来るじやないか、こういうことで議論を進めておるのでありますが、まるで形式的なものだけで切離してしまつたらどうだと、こういう議論では勿論ないのであります。その点は若し最初の質問なり意見というものが不十分であつたら、そういう印象を若し間違つて與えておるとするならば、訂正をいたします。そういう実体に関連しても、この行政法或いは刑事法が一緒になつておる法律の中から、刑罰法を刑罰法として別に出して、或いはこれはまあ刑法の改正という問題もありますけれども刑法の改正というものがすぐにできないとするならば、刑事法としてはつきり別に取出すべきじやないか、そうすると刑法総則なり或いは刑法の各條章とのバランスということも考えられるだろうし、或いはそれを運用します場合の刑事手続にしても、心配されるような濫用なり或いは人権の蹂躙というか、或いは裁判を受くる権利を奪われるということはなくなるじやないか、こういう議論を勿論しておるわけであります。
  25. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) その点は自然犯的なものにつきましても、例えば暴力行為等の処罰に関する法律というようなものは、一応これは刑法の実体と脈絡を有する実体を持つた法律でございましよう。併しそれは単独の法律で出ておることは御承知の通りであります。その場合にも刑法と別系統になつておるから、刑法のことは全然見ないで、それとのバランスは無観してその刑罰を盛込むかどうかということになりますと、これは我々審議に当ります当局においては勿論のこと、国会においても同様でございますが、飽くまでもたまたま系統がの法律になつておるからといつて、その連関を無規してやることはないのでございまして、従いまして刑法の或る場合の犯罪、最も近い種類の犯罪とのバランスはどうするか、これはあらゆる法律についても出て来ることであり、この法案につきましてもそういうところから検討しておるわけでありまして、そのことについてのバランスの問題についてお尋ねがありますれば、かねても検務局長のほうからお答えして申しておるように、バランスは決して失してはおりませんというお答えができるわけであります。又そうあるべきはずのものであると考えております。
  26. 吉田法晴

    吉田法晴君 実体の議論になりまして、バランスをとつておるということになりますと、問題はないわけであります。量刑或いは刑の長期の点についてもアンバランスがあるじやないか、或いは暴力行為等取締法が刑罰規定であつて、そうしてそれと刑法との関係考えられた、或いは刑罰法規についての一般的な原則或いは総則等の原則が働くことは私も否定するわけじやありません。実際にそう運用されておると思うのでありますが、そこで例えば刑法総則の従犯の規定を変更するような本質的な問題を含んだ刑罰法規をこういう恰好で入れるから、その問題がうやむやのうちにまあ葬られるとは申しませんけれども、或いは一松先生その他からも指摘されておりますけれども刑罰法規を別にしてそうして刑法総則との関連なり或いは刑罰法とのあれを考えるべきじやないか。勿論その中には形式だけじやなくて実体も入つておるわけであります。その立法政策上の問題を実質を含んで議論を進めておるわけであります。本質になりますと、例えば刑法総則の従犯の規定をこういう法律で以て変更する、こういうことはこれは刑罰法規全体を紊すものだ、臨時法だと言われるういう法律で以て、刑法総則を変更することは何事であるか、こういうことになるのでありますけれども、そういうものを含んで立法技術についてお尋ねをしておるわけであります。
  27. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) それは御承知の明治初年の爆発物取締罰則ですか、それ以来刑法総則にない形のものをずつとやつて来ておるわけであります。それから近時御承知の公職選挙法で扇動というものを独立罪として罰しておるというようなことに、立法例を申上げればたくさんございますと言い切れるわけであります。ただそのようにいろいろな立法例が出てて来るということになつたら適当な時期に刑法を直して、そういうことを刑法の中に語い込んでもいいじやないかというお気持は、これは十分私納得できるわけであります。前に刑法の大改正で委員会を作りまして、偉い学者の連中が集つて、一応仮案でございましたが、草案でございましたが、作つてありますが、これには教唆、扇動も独立罪として罰するというようなことの根本的規定を、これはもうあらゆる問題について独立罪として罰するということを入れております。ただそこまで行くのがいいか悪いか、これは又問題でございまして、やはり個々に見て適当と思われるものをその都度その法律の中で、例えば公職選挙法でおやりになつておるように、これについては扇動を独立犯とじて罰する必要があるとおつしやる見地からお入れになるということも、これは一つ立法の行き方であつて、必ずしも刑法の中にそれを盛りこまなければならんというものでもなく、いろいろな種類の犯罪に亘つてそれをやるということは、これは又行過ぎであるというような議論も出て来るのじやないか、これはよほど検討しなければならん事柄だろうというふうに考えておるわけでございます。
  28. 吉田法晴

    吉田法晴君 まだ途中でございますけれども、時間も十二時半を廻りました。私どもも会派で用事がございますので、この辺で一応……。
  29. 小野義夫

    委員長小野義夫君) ちよつと速記をとめて。    〔速記中止
  30. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 速記を始めて。本日はこれにて散会いたします。    午後零時三十八分散会