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1952-06-06 第13回国会 参議院 法務委員会 第50号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年六月六日(金曜日)    午前十時四十四分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     小野 義夫君    理事      宮城タマヨ君            伊藤  修君            一松 定吉君    委員      加藤 武徳君            左藤 義詮君            玉柳  實君            長谷山行毅君            岡部  常君            中山 福藏君            内村 清次君            吉田 法晴君            片岡 文重君            羽仁 五郎君   国務大臣    法 務 総 裁 木村篤太郎君   政府委員    法制意見長官  佐藤 達夫君    法務法制意見    第一局長    高辻 正己君    刑 政 長 官 清原 邦一君    法務検務局長 岡原 昌男君    法務特別審査    局長      吉河 光貞君    法務特別審査    局次長     関   之君    法務特別審査    局次長     吉橋 敏雄君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君    常任委員会専門    員       堀  真道君   —————————————   本日の会議に付した事件破壊活動防止法案内閣提出衆議院  送付) ○公安調査庁設置法案内閣提出、衆議  院送付) ○公安審査委員会設置法案内閣提出、  衆議院送付)   —————————————
  2. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 只今より委員会を開きます。  破壊活動防止法案外関係二案を便宜一括して議題に供します。先ず宮城君に発言を許します。
  3. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 今日は法務総裁がお出まし下さいまして安心いたしました。実は毎日法務総裁お倒れにならないかしらと思つて御案じ申上げておるところなのでございますけれども、私どもも健康を破壊するかも知れない、この法案でうんと頑張つているのでございますが、私はこの参議院始つて以来五カ年間もう法務委員として徹頭徹尾やつております。そしてこの委員会で随分法律審議もいたしましたけれども、今度のように多くのかたから反対陳情をされた法律案は始めてでございます。それで文化団体学術団体労働団体、その他各層の団体からの陳情は、これにまあ然るところでございましようけれども、私が大変驚いておりますことは、婦人団体挙つて反対立場に立つております。恐らく法務総裁のところにも陳情に参りました者もございますと思つておりますけれども、例の公安委員でいらつしやつた植村環さんなんかの率いていらつしやる、あれは日本女子基督教青年会でございますか、これは宗教団体でございまして、そのほか日本大学婦人協会日本婦人平和協会日本婦人有権者同盟日本基督教矯風会といつたような、とにかく国際的な団体を初めとしまして、その他たくさんの婦人団体、それから又驚きますことは地域婦人団体、つまりPTAでございますとか地区の婦人たち、つまり母親立場に立つておりますところの婦人たちが非常にこの法案の成立いたします日を心配いたしまして、ということは後にも申上げますけれども、我が子に、我が家に火がつきはしないかという心配で、そしてまあ多い日は、今日持つて来たいほどでございますが、千通以上の陳情が参つておりますようなことでございまして、中には実にこの前の例の治安維持法ひつかかつて、そうして自分子供がめちやちやなつたような例もございますし、又一人の息子ひつかかつたために、兄弟が折角結婚が成立しておつたのに、それが取止めになつたために、一家もう挙つて治安維持法のために亡ぼされたという例もございまして、勿論今度の破壊活動防止法案があの治安維持法と違うことは私どもも十分了解しておりますけれども、非常なお母さんたち心配運動でございます。ところがこの法律問題の一問一答によりまして、だんだんその法案内容が明らかにされて参りまするにつれまして、私も又母親立場に立ちましたときに非常に心配になつて参りました。そこでもうこの法律論は尽きております今日でございますが、私は母親立場において数点につきまして法務総裁から一つお教えを願いたい。そうして私の立場で又多くの婦人団体、殊に地域婦人団体のかたに説明をして、納得の行かぬ点がございましたらそれにも努めたいと思つております。そうしてどうしても納得が行かなければ、それは止むを得ないと思つておりますのでございます。  そこで私は伺いたいと思う最初のことは、先だつてどなたかの質問に対しましてお答え頂きましたことで、このやかましい輿論の非常に激しい法案をお作りになるときに国民輿論は調査しなかつたというお答えがあつたように思つておりますが、それでございましたにしましても、この長い審議中に何か一般国民が十分に了解するだけの工作をなさいましたかどうか、その点が一つ伺いたいと思つております。
  4. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 只今宮城委員から切々のお言葉がございました。特に婦人団体かたがた自分のいとし子のことについて非常に御心配になつているというお話も承わりました。その点につきましては、私はできることなら婦人団体かたがたにもお目にかかりまして、十分この法案趣旨お話し申上げたいのでありまするが、機会を得ませんだことは誠に残念であります。ただ先般国家公安委員をやつておられます植村村環さん、キリスト教婦人会でありまするが、三名の代表者を同伴されまして、私と親しく話をしたのであります。その席上私はこの法案趣旨を丁寧懇切にお話し申上げました。又値村さんからも、現下の情勢においてはこの法案も又止むを得ないじやないかということを御納得なつたはずであります。同伴されました婦人のかたは勿論名刺を出されたのであります。私は今記憶しておりませんが、立派なかたがたでありまして、さような趣旨でこの法案を提出いたしたのでありまするから、その点については十分お答えいたしました。併し何分にも前の治安維持法においていろいろなかたが非常な迷惑をこうむつている。そういうようなことの再び繰返されることのないように何とか処置をして頂きたいというようなお話でございます。誠に御尤もであります。それにつきましては、この法案において私は一番初めから心配しているのはその点であります。この法案の立て方が昔の治安維持法とは全然その趣を異にしているのであります。その点なんかを御説明申上げました。併し何分にもこれを運用するのは人でありますから、お話の点は十分私は参考といたしまして、いやしくも皆様の御心配になるような点については十分の考慮を払いまして、慎重な措置をとるようにいたしたいということをお話し申上げて別れたのであります。さような次第でありまして、私は自分面会を求められるがたがたに対しては十分に御納得の行くような説明をする。心中御納得行くか行かんかは、これは別問題でありますが、自分のできる範囲において説明を申している次第であります。そのほかにも相当数のかたが面会に来られまして私はお話を申上げました。大体において私は御理解を得ているものと、こう考えております。  なおこの法案作成前において一般世論に問うたかどうかというお話でありまするが、広く世論は今回は私は聞きませんでしたが、併しこの作成につきましては相当数の人にいろいろ意向を聞いたのであります。而して幾たびかこの法案になる前に、どういう次第でありまするか、新聞紙上にいろいろ取上げられまして、その方面からの意見も十分汲み入れまして、最後的に案を出すまでには相当の意見を調整いたしたつもりであります。これがいずれの面から見ても必要最小限度だということを我々は考えましてこの成案を得たような次第であります。今お話のように広く世論に問うたかどうだつたかということについては遺憾ながら一般的のさような処置はとらなかつたのであります。或いはその点についての審議が足りないと仰せになるならばいたし方がございませんが、併し今申上げましたようなこの法案作成については相当の考慮払つた次第であります。
  5. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 その法務総裁がお会いになつ婦人かたがたが、団体の長のかたがたが一昨日までもたびたび足をお運び下さいまして、まだ十分に不安も去らないで今以て猛烈な反対運動をなさつております。丁度二週間ぐらい前と思いますけれども、朝の放送を聞いておりましたところが、こういうことを申しております。それは一人の母の声としてでございましたが、新宿の十二社の出来事で、多分新宿辺のがただと思つておりますが、自分息子が苦学いたしまして、それで仕事のためにビラを頼まれて貼つておりましたが、どういうわけかわからないけれども、後から警官に射たれて、そうして瀕死の状態になりましたのを病院に担ぎ込まれて、そうして三日間ぐらい殆んど人事不省で、そうしてその挙句に、母親がここに参りましてから、一番初めにお母さんと言つたことからだんだん気が付いて、今はまあ病院先生方の非常な努力の結果命だけはとりとめましたがというような意味のことを、もう実に哀れつぽく放送いたしております。それで私どもの台所を手伝つておりますような若い娘たちは、パンを焼き味噌汁を煮ながらかわいそうがりまして、乏しいお小遣いの中からでもお金を持つて行きたいというくらい、その放送一般人たちを刺激した放送つたのでございますが、私なんかそれを聞きまして、だけれどもそんな安価な同情をすることはできない。一ぺん調べて見るからまあまあと言つて、実はどういうわけでアルバイトか何かのためにビラを貼つておりましたものを警官が後から射ち殺そうとしたなんということも非常に変な話なんで、併し私は忙がしいことにかまけてまだそれを警察のほうに連絡して調べることはいたしておりませんのでございますけれども、それはおかしいぞと思わない一般母親でも、この放送を聞きましたときに、丁度破防法がかかつて世間が騒いでおります時でもございますし、一層私心配に拍車をかけているのじやないかというように心配いたしましたのでございます。少し筋は違いますけれども特審局あたりはこの事件何かおわかりでございましようか。新宿の十二社でございます。
  6. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 今ラヂオ放送お話を承わりました。若しも事実であれば、私は相当の考慮を払わなくちやならんと思つております。問題は、果してさような事実があつたかどうか世の中には相当デマが飛ぶものであります。今宮城委員お話のような、必ずしも一から十までこれを信用していいかどうか、甚だ疑問であります。さようなことが若し事実であれば、これは相当の手続が私はとれると思います。殊に近頃においては人権擁護委員も各所におられるわけでありまするし、そういう人の御協力を願えば、これはむしろその調べは検事局においてもするのにやぶさかでないのであります。我々のほうでもさような事実が事実あつたかどうか、又どういうことにそれが起因したかということを一応は取調べたいと考えております。そういう場合に実は何の何某で、我々はどういうことをやつているのだという身分をはつきりされてそうしてラヂオでも放送願えれば、それを端緒にして我々のほうでは調べるのであります。ただ漠然自分息子がこれこれというのではちよつと調査のしようがございません。万一そういう事実があれば責任を以てこれは公表されるということでありますれば、我々はそれに基きまして十分の手当はいたしたいと、こう考えております。
  7. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 それは、朝の国民の声は毎朝三人ずつきまつておりましてそれで放送局のほうは住所も姓名もわかつていると思いますから調べることは極く簡単だろうと思います。  それから次にでございますが、勿論私も団体組織によりまして破壊的の暴力活動をいたします者につきましては、もう厳罪を以て臨んで頂きたいということにおきましては人後に落ちないものでございますが、実は破壊活動防止法案構成として政府から提出されましたものの中にいろいろございますが、その第二の所に、団体組織による破壊的暴力活動の危険を有効に防止し得るものであること。それからその次には法案構成濫用の危険を持たないものであること。従つて破壊的暴力活動思想的背景に立ち入つてつ過去における思想統制に亙るがごとき危険を避けると共に、運用機関の編成についても、警察国家を再現するがごとき慮れを防止することに努めたということが政府提出のものにございます。そこで私が一番伺いたいことは、今度の法案法律として制定されましたときに、私ども本当に望んでおります、今地下活動をしております例えば徳田球一氏ほかのかたがたでも、一日も早く地上に引出して、そうして制裁を加えられるというようなことにこの法律が役立つというお見通しはございましようか、どうでございましようか、法務総裁の御意見を伺います。
  8. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 我々のこの法案の狙いは、いわゆる国家治安確保の面からでありまして、それが何が一番危険であるかと申しますと、国家基本秩序暴力を以て破壊せんとするその活動であります。この国家基本秩序暴力によつて破壊されるというようなことでありますると、日本治安というものは一朝にして崩壊するわけであります。これは何よりもそういうような破壊活動は防止しなければならん。又一面において自分主義主張というもの、殊に政治上の主義主張ということは、これは民主国家においては国会を通じてやるべきであります。国民大多数の意思を代表すべき国会で以てやるべきであります。然るに刑法に所定されました極めて好ましからざる兇悪な犯罪行為を以てさようなことを推進しようというようなことを、これ又国家治安維持の面から見て防止しなければならん、さような次第で、かような点からいたしましてこの法案作成されたわけでありまして、ただ今地下に潜つておられる共産党員、それなんかを個々の者を対象としているわけではないのであります。無論その人たち地下におつてさような破壊活動をするという危険もありましよう。併しさような個々的の者ばかりを対象にいたしておるわけではございませんので、大きく国家的治安確保という面から見てこの法案作成したような次第であります。勿論暴虐破壊行為をするような者は、何としてもこれは一日も早く明らかにして、何とかこれに対する処置も講じなければならんことは勿論であります。この法案はどこまでも大きな面から取上げてやつておる次第であります。
  9. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 法務総裁お話を聞いておりますと、いつでも私ども安心したような気になりますけれども、私も法律家でないから十分に理解しない点もございますかも知れませんが、併しだんだんその審議が深まつて行きますにつれて、常識的かも知れませんが、非常に心配になる点がたくさんの個所に出て来るのでございます。それで特定のということでなくて、団体的な破壊活動をする者ということではございますが、もつと明らかに言つて見ますと、共産党や一部分には極右の者があるかも知れませんけれども、私はどうもそういう両極端の者に対してはこの法律本当に有効かしらと思うのです。そうしてこんな法律を作つて見ても、あの人たちにはそう大した影響がなくて、実際影響があつてつているのは、その左と右との中間にございます広巾なつまり文化人でございましたり、知識人でございましたり、一般の平和を提唱しておりますような、本当意味国家思つておりますような人たちがむしろこの法律のために縛られるような結果になりまして、そういう人たちが……、私は現にこういうことがございます。それは四月でございましたか、或る十数名の婦人団体の者が集りまして、これは勤労婦人に対するいろいろな研究をして、殊にそのときに問題になりましたのは、生理休暇のことについて熱心に討論をされ研究もされておつたのでございますけれども、そこにも私服が非常にたくさん来ておりまして、その会が終りましてからも各団体に尾行がついたのでございます。そうしていわゆる植村環さんの団体のYWCAのほうにも三日間ほど私服がついて歩いたのです。でございますからそういうことで平和を提唱するような、それから又民主主義を生活に取入れて行こうといつたような者や、殊に青年層、又青年層子供を持つ母親たちがここで震え上りまして、みんなが口をつぐんで、そうしてその日暮しをして、嘘ばかり言つておりましたら、私は結局その両方の本当に抑えたいというものが今度はじかに現われて来まして、それがもうぢき革命になるのじやないかというような、私のこれは本当常識論でございますが、そういう心配がある。それで私はこの法律は実際申しますというと、どういうことになるだろうか、私にはまだ納得できない点があるのでございます。それで本当はよい法律を作ります責任を私ども国会で持つておりますが、そのよい法律を作れば国民の大多数は皆協力する。そうして国民協力するところにおいて初めて私は政治もうまく行くのだろうし、又この法律で目指すような、或いは今の国情の心配されているようなことも大部分拭い去られるのじやないかというように思つております。この法案につきましてはいろいろな意味心配いたしているのでございますが、法務総裁見通しといたしましては、これをこのまま押し切つていらつしやつても、国民協力が得られるというお考えでございましようか。
  10. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) その点について私は申上げたいと思います。只今いずれの法律にしても、国民協力がなければこれは立派に運営して行けないのじやないか、御尤もであります。私は全力を挙げてその御意見には賛成いたします。前にも申上げましたように、国民信頼がなければ国の政治というものは立派に行えないのであります。国民信頼つてこそ初めて立派な政治は行われるものだと我々は確信しておるのであります。御承知の通り一つ法案についてもそれに対する国民信頼がなければいけない、御尤もであります。そこでこの法案についてでありまするが、私はこの法案本当趣旨とするところを御理解下さるならば、私は必ずや国民が信用して下さることと考えております。今お話のこの民主国家を建設して行くのには、我々国民が自由な議論をする、お互に自分の思つたことを言い合う、そうして結論を出す、こうでなくちやいかん。いわゆる民主政治というものは説得政治であります。お互に議論をして、そうして一つ結論を出して、それに基いて我々は行動し、これを政治面に移す、こうなければならんのであります。婦人団体でもよろしい、文化団体でもよろしい、各団体においておのおの十分に論議する。時には政府施策に対して批判する、或いは又抗議することもありましよう。これでなければ私は立派な政治というものは行われないと考えております。それは議論は自由であります。又そうなくちやならんと確信して疑いません。これは民主政治の常道であります。併しながら一国の基本秩序暴力を以て破壊するということにおいては、私は民主政治においてこれは逆コースだと確信しております。そこでそういう団体においては議論は御自由であります。政治の批判も自由であります。ありまするが、今申上げましたように暴力で以て自分らの主義主張を推進しようじやないかということになると、これはまさに民主主義破壊である。いわゆる一国の基本秩序を我々は内乱を以てこれを覆えさなければならんということに至つては、私は行過ぎの大なるものと考えます。  又例をとつてみます。この政府のやつている施策はいかん、我々の施策を推進するにはどうしてもかれこれを殺さなくてはいかん、又あそこを行く汽車を転覆させようじやないか、或いはあの建物に放火しようじやないか、そこまで行つて国家基本秩序破壊によつて紊れるのであります。そういうことでは国家というものは維持することはできませんから、十分我々は未然においてそういうことを防止しなければならん、これを我々は責任考えております。そこで政治を批判したり、十分に我々が話合つたりするということと、さような暴力によつて一国の基本秩序破壊するというようなこととは全然私は別問題のことと考える。そこを十分に私は判別して頂きたい。これはもう各団体において政治上の議論は十分おやりになつてよろしい。これはそういうことについては何らこの法案対象になつておらない。ただ今申上げましたように暴力によつて自分主義主張を推進するというような団体を規制し、又個人についての刑罰の規定をしようというのでありまして、決してこれはさような文化団体婦人団体が御心配になるような点は毛頭もないと考えております。
  11. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 その点はもうたびたび伺つておりまして、よく納得ができておりますけれども、私恐れます点は、つまりその大きい団体を罪する前に、人間のことでございますから、一松委員言葉を借りれば神様でないから、それでちよつと本を持つてつたとか、或いはちよつといわゆる扇動したというような、おだてたというような者が、ちよつと来いと言つて縛られて、そうしてその容疑者として留置されるという……そうして留置されましてから、もう調べてみたらお前は無罪放免だと言つて無罪放免されますと、それでもういいようなものですけれども、私ども母親心配いたしますのは、たとえ二日にしても警察にとめられ、二十日にしても刑務所に入れられるということが我が子のためにならんという意味で、つまり私は法律面は立派で、そんな破壊活動をするものは本当にそれはもう死刑にも値いするもので、私どももやつて頂きたいと思いますけれども、その前に個人がやられるのじやないか。こういう団体の前に個人が引張られて、そうして無罪放免になつてももう追つ付かないということ、その点を私ども非常に案じているのでございますけれども、その点も今と限らずいろいろ御説明願つておりますから、それ以上は私ども申しませんのでございます。  次にお伺いしたいと思いますことは、この破壊活動防止法案の構想のときにありましたように、政府警察国家の再現を虞れているということが、それでその点に努力したということがございましたが、これはやはりこの公安調査庁設置ということと、その公安調査官の問題に私は恐らくかかつていると思つております。ところが政府は今度の機構改革の中で人権擁護局を廃止して人権擁護課に格下げをしておりますのです。このことは私は非常におかしい。職権の濫用ということを虞れておりますこの破壊活動防止法を施行しようといいますときに、その人権擁護局を大きくしてもらいたいのに、それを小さくするということについて私非常に不思議で、矛盾した考えでございます。これは調べさしたことなんでございますが、人権擁護局で取扱つたところの人権侵害事件受理件数を調べてみましたところが、二十三年は僅かに四十八件でございます。それから二十四年は一躍五千件になつております。二十五年は六千件、二十六年は一万五千件という数字が出ております。この受理件数が、取扱われる件数がだんだん多くなつて、大いに人権擁護局仕事が殖えて参りますときに、而もこういつた法律に逆行いたしましてそういうことがありますということは一体どういうわけなんでございましようか。
  12. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) この人権擁護についてのことにつきましては我我も非常に関心を持ちこれを強化しなければならんという考えを持つているのであります。今度の機構改革について人権擁護局民事局に統合されまして、民事局の一課としてこれを取扱うことになつたのであります。これはもとより国家のほうの機構の面から考えたのであります。併しながらその内容については決してこれは縮小する意思はありません。従来の人員をそのまま使つて参ります。又地方の委員かたがたも殖やしこそすれ、これは縮小することはない、私はこう考えているのであります。一体人権の侵害ということについては二通りある。・一つはい  わゆる社会人として、いわゆる国民国民の人権を侵害する、そうして役人が国民の人権を侵害する場合と二通りある。それで国民国民との間の侵害問題、これは役所で取上げてよかろうと思います。公平な立場からこれは実際十分調査する。ところが役人の国民に対する人権侵害については役所でやるより、これは一つ民間において大いに役所の不法を鳴らして、本当意味においての人権の尊重を期することが私は最もいいのじやないか。それで御承知の通り私も人生のもう殆ど大部分在野法曹におり、今度役人になつたのは極めて短期間であります。我我も終世在野法曹として私は行く考えを持つております。もとよりこの人権を擁護しなければならん立場にあります。  そこで私の構想といたしましては、これは是非とも在野の有力なる言論機関が、これが根幹となつてやるべき仕事であろうと考えております。私も多年第一東京弁護士会に所属いたしまして、第一東京弁護士会におきましては早くより人権委員会というものを作つております。これは大きな問題について、殊に役人が国民に対して不法に人権を侵害したという場合に活躍しております。相当な成績を挙げているのであります。この間も私は日本弁護士連合会長と会いまして、これもできているのでありまするが、日本弁護士連合会においてもこの人権擁護の問題について是非大きく取上げ、そうして国家の手を借りずに、独自の見解において十分な発達をしてもらいたい。それには私は、そのときの話にも出たのでありますが、国家補助ということもあります。国家から補助をもらつてやるということはおれは大嫌いだ、これは私が言つた。民間人から金を集めて、民間人独自の一つの大きな機関を以てこの問題を推進することが当然じやないか。これは長野君も大いに賛同されておりました。私もその点については大いに関心を持つておる次第でありまして、ただ現在の機構改革におきましては、いずれからの面から見ても簡素化するということが只今の急務であろう。ただ人権擁護局そのものは民事局にこれを統合することになりましたが、内容においては従来のまま人員も減少いたさない、こういう建前をとつて、実質的には私は将来も十分なる活躍をさせるようにいたしたいと、こう考えておる次第であります。
  13. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 屋台が小さくなつて内容はますます充実して下さいますというお話、安心いたしましたが、今のお話は曾つて委員会でも伺いましたのでございますけれども、やはり今の段階では官尊民卑といつた気持が多うございますから、野でこの人権擁護をしようということはなかなか困難であろうと思つておりまするので、どうかこの内容の充実を図つて頂くようにお願い申上げます。  次には公安調査庁のことでございますが、これを先だつてから伺つておりますというと、随分莫大な予算が必要なようでございますし、それから又調査活動するに、情報集めをするにつきましても、かれこれ一ヵ年に八千万円以上も必要としているというようなことを伺いますというと、私の考えでは、今ここに新たに公安調査庁というようなものを立てて、そうして警察や検察庁と併行して二本建に行くということは、もつと本質的に考えましたら不必要じやないかというような感じがいたしますけれども、こういう点について立法のときに何かございましたでしようか。
  14. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 十分その点も考慮はいたしました。その公安調査庁におきましての主たる役割は御承知の通り調査であります。この調査を警察官にやらせるということになりますると、私はそれこそ警察力の集中と考えております。公安調査官には強制調査権は持たせないのです。ここが私は非常に考慮したことなんです。全くの調査であります。捜査じやないのであります。調査であります。これを警察官に任せるということになりますると、いわゆる警察力の集中ということが私は非難されるもとになるのじやないか。又実情においてさようなことはやらしてはいかんのだ。こう考えております。  それから費用の問題でありまするが、御承知の通りいろいろの調査、これは強制調査をしないのでありまするから、いろいろな面においてこの機械設備が要るのです。思わんときにこれはもう優秀なカメラも要りましようし、或いは通信機も要りましようし、なかなか近頃の文明の利器を使用するということについては金がかかるのであります。全国的に亙つてそういうことをやるということについては相当な費用を見込まないといかんのであります。一見相当多大の費用のようにお考えになりましようけれども、我々は十分にこの点については節約に節約を重ねる。併し近代的な機械を持つて、十分その機能を発揮して行くというようなことにいたしたいと思います。
  15. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 立法の建前は今仰せになりましたようになつておりまして、捜査と調査とははつきり区別されておりますことはとてもいいことだと思いますけれども、併しだんだん伺つて見ますというと、尾行だとか張込みだとかいうようなことも調査官にできる。それから家宅捜索のときなんか、つまり家に踏み込むというようなときに調査官が立会うというようなことになつておりますというと、これを受けますほうから言いますというと二重な圧力が加わるというようなことになるのじやございませんでしようか、それを私は心配しております。ですからむしろこれは今の警察がもう実に或る人は命がけでやつていて、国民としては大いに感謝しなければならないと思つておりますけれども、中には又本当にどうかと思うような警察官もございますので、この調査庁を作るこの莫大な費用と、又経営費用、これを私は検察庁や警察に加えまして、検察官や警察官の質をよくして頂きましたならば目的は達するのじやないだろうかというように思つております。  実際は私どもみたいな一般の糠味噌婦人は殊にでございますけれども警察官も検察官もみんな同じように思つておりまして、世間ではこういう役人のことを称して不浄役人と申しております。それで私なんかも不浄役人の親分で、もう亡くなりまして十年たつても、まだ不浄役人の奥さんですと言つて軽蔑されているのでございます。そういうことは私は誠に残念なことで、何とかこれはこの質を上げさえすれば、そういう不浄役人という軽蔑の言葉を以て国民から侮辱されることはなくて、大いに私感謝されなくちやならない。殊に私はこの政治の最末端でございますこの警察官が、本当に殴る手でなくて愛の撫ぜる手にどうしても私は変つてもらわなければならん。実際私ども政治の上に立ちまして、本当に私は愛の法律を以て私どもは徹底しなければならないということを、もうそれこそお題目のように考えておりますけれども、それをまるで反対の侮言がされるということは、結局政治の最末端である警察官が質の当を得ていないからであるというように考えておりますが、この際どうか警察官の質を上げたい、そうして検事も、まあ副検事の制度なんかも早くとつて頂かないと、これが又私はやはり不浄役人と言われても止むを得んと考えるのであります。そこで私はこのことは二本建でなくて、つまり行政と司法でなく、司法一本で行くことにしましたならばどうでしようかということを考えておるのでございますが、併しもう今更さらつと一つ法務総裁に出直して頂きたいと言いますこともこれはできないことだと思つておりますので、大体そういう考えを持つておりますことを一つ申上げておきます。  そこで私は今度は特審局長に伺いたいのでございますが、今公安調査官としては、現在千二百人の者がおるのでございますか、調査官という勿論名前ではございませんけれども、現在の者を動員すれば、それは千二百人あるのでございますか。
  16. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) お答えいたします。現在の特別審査局の職員は全部で千二百名近く、正確には千百二十名おるわけであります。
  17. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 それはその人たちにつきまして、これを直ぐ公安調査官のほうに振り向けても、この人たちは大丈夫人権を蹂躪しないという保証がおつけになりましようか。
  18. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) 只今おりまする約千二百名の職員のうち、調査に従事している職員はその中で約半数でありまして、他の職員は事務に従事しております。公安調査庁におきまする公安調査官につきましては、十分なる選考をいたしまして、その選考に合格した者は初めて公安調査官に任命して行きたい。そのかたわら研修所を設けまして、識見、技能等につきましても十分に訓練をいたしまして、間違いのないように運用をして行きたいと考えておる次第であります。
  19. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 これから新たに採用なさる人はざつと五百人くらいでございますか。そうしてその五百人の人選でございますけれども、私はこの法律を運営して行きます一番最初でそうして一番大事なところは調査官だと思つております。ところがこの人選がよろしきを得ないで、昔の特高を復活させて見たり、或いは又失業者の救済にというような結果になりましたら、これは私は由々しきことだと思つております。そこでこの人選について十分な御用意がございましようか。そうして又これを今から研修させるとか何とかいうようなことをしておりますというと、一体この法律はいつ頃から本当に運営されて行くのでございましようか。
  20. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) 幸いにしてこの法案が成立いたしました場合におきましては、現在特別審査局におりまする調査官のうち、選考いたしまして、十分に間に合うような見込の者を公安調査官或いは心得として仮に任命いたします。それから又新らしく採用する約五百名の職員につきましては、これを一挙に採用することもできませんので、徐々に採用し、十分なる選考をいたしまして、訓練をして行きたい、かように考えておるわけであります。
  21. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 私は、今までこういう仕事に関係した古手という者を今度全部御廃止下さいまして、本当に新たな教育的な考えを以て、そうして一方には社会事業なんかもよく理解しているような者で、自分の行為に対してとにかく責任を持てる者を私どうしても入れて頂かなければ、国民が非常に迷惑すると思つております。この点をどうぞお見通しを御返事願いたいと思います。
  22. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) 誠に御尤もな御質問でございまして、研修につきましては先ずその点に非常に重点をおきたいと考えております。  なお公安調査庁におきましては、職員の行動につきまして監察制度を事実上設置いたしまして、厳重にその職員の監察をして行きたい、監察指導をして行きたいと考えておる次第でございます。
  23. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 大体足並みを揃えて、これで大丈夫だという出発はいつ頃のお見込みなんでございますか。
  24. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) 五百人を新たに採用する、新職員を採用いたしまして、研修を加えます。逐次採用して行きますと、五百人の増員が終るのは恐らく今年一ぱいだろうと考えております。又従来の職員に仮に公安調査官仕事をさせまするが、かたわら研修を続けて行きたいと思つております。この調査官の研修も一回だけでは相済みませんので、何回も繰返して行きたい、かように考えております。第一次、第二次くらいの研修が終るの 本年一ぱいであろうと考えております。
  25. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 その研修の内容でございますけれども、私はやつぱり法にも愛がなければならないと、こう思つておりますので、そういう人たちを研修なさるときに、ただ法律論や技術論でなくつて、そこで本当に人間を叩き直すというような研修をして頂きたいと願つております。  それから公安調査官がつまり調査をし、情報活動をし、立証責任を持つておりますということは勿論でございますが、その情報でございますけれども、私どももそこで集められた情報を随分破防法の審議が始りましてから伺いましたのでございますけれども、それを聞いておりますというと、あなたがたのほうからお出しになつた材料につきましても、これはなかなか頼りない材料が出ているのじやないかというようなことを、本当に私は疑つてみる点があるのでございます。勿論このインチキな情報を持つて来るというようなことも、これも止むを得ないことで、これは検事局にしてもそういうことがあつたと思うし、あると思つております。又人情といたしまして、疑義の点はございましても、併しこの情報を獲得して捜査に着手しなければならないというようなときは、それは十分とは言わないまでも、やり始めなければならんということも、私はこれは法の運営上必要なときも十分あると思つております。けれども人間のすることですから、神様でない以上それは検挙にも間違いはございましようし、そこで非常に人に迷惑をかけるということもございましようが、先ほどから言いましたようにその容疑者として迷惑を受けたところの者が、拘留の期間が切れたから無罪放免だよと言われまして受けるところの被害に対しまして、その係官としてもいろいろ職権濫用についての法的措置とかいろいろなことがございまして、国家賠償とか或いは裁判によるというようなことが勿論ちやんと規定にはございますけれども、実際たくさんの被害者の立場に立ちまして考えますときに、そんなことをして国家に賠償をしてもらう、その金の問題じやなくつて、これは長くだらだらと裁判をしておつて、その挙句に国家から金を僅かにもらつてみたところで、それで私は補償されたということでないと思つております。でございますから、私が望みますことは、今度の新しい調査庁ができ、調査官ができまして、それが正しい活動をしてくれますときに、どうかして私は責任を明かにするという一つの方法を設けて欲しいと思います。それは法律の上でなくて、法律は十分に手当がしてあるというのですけれども、何か道徳上の責任と言いますか、人情的の責任と言いますか、これはやり損なつたということを誰か一つ頭を下げて下さるならば、国民は非常に納得する点があると思つておりますが、殊に私は特審局長の返事を聞きとうございます。
  26. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) 誠に御質問の通りであります。
  27. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 質問は御尤もだけでなくて、それに対してどういうふうなお考えを持とうかというような一つまあ手当をすべきだ、そうしてしようというような御意図でもございましようか、それを伺わせて頂きます。
  28. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 今宮城委員からいろいろお話を私は聞いておりまして、非常に考えさせられたのであります。さような場合におきましては、私はこれは刑罰法規だとか或いは今国家賠償法というようなもの以外に何とか考えたらいいじやないかというお考えは至極私は御尤もです。これは道徳的に考えなければなりません。従来もその点については私は実にそういう場合の態度というものがよくなかつたことを率直に認めます。我々も多年在野法曹におりまして、そういう点について非常に遺憾を感じております。  例えばこれは甚だ話は余談になりまするが、汽車で負傷した、或いは殺されたという場合に、単純にそれを賠償したらいいじやないかというそんな考え方ではいかんのであります。ここにおられる委員のかたで或いは会社あたりに御経験のあるかたも随分いらつしやると思います。若しも私鉄会社で或る人が電車に轢かれた、その事故がいずれの責任に帰しようと、先ずそこの社長なり専務なりが行つて、誠にお気の毒でしたと、これでいいのです。本当に心から遺憾の意を表し、その事故の責任がいずれに帰するやという問題は別にしてやるべきであろうと私は考えております。それで今の問題の法案の取扱い方で、若しも行過ぎのことがあつて発見すれば、率直に悪かつた、どうぞお許し下さいと、そうして赤心を披瀝して私はその間の処置をとるべきだと考えております。これは金の問題じやありません。それらの点につきまして将来万一さような行過ぎの点があれば、我々も十分に考慮して納得の行くような処置をとりたい、こう考えております。
  29. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 有難うございました。法務総裁初め政府委員のかたも、それから又国会の議員も高い立場に立ちまして父でございますし、私ども国家の母の立場に立つて国会に出ております。そこで法務総裁に伺いたいことなんでございますが、今日この教唆、扇動というこの文字がこの法律案審議します上に非常に問題になつておる。教唆や扇動する者も困つたことでございますが、私どもが案じておりますことは、この教唆や扇動に乗る若い層、青年層或いは学生層の問題なんでございます。こういう人たちが、それはもうたとえ若いと申しましても、強い信念を裏付けましたしつかりした思想に立つておる人は、その思想を守り抜こうというためには、私はこれは命を取られても満足する青年であり、学徒であろうと思つております。けれども宙ぶらりんで、まだそこまで行つておらない程度の、非常に若さの至りで血をわかせまして、そうして又一方から申しますというと、今日の社会悪に対する同情心もありましようし、又反抗心もございましたりいたしまして、そういうところから、まあ言つてみれば、本当にかわいらしい人間の愛情を以て、若さの至りでやるというような者に対しまして、私は今日政府がとつております手当というものに対して非常に不満を持つております。これは文部省の責任も随分あると思いますけれども、そうでなくて、私これは政府全体の責任として、今まで一体こういう問題について考えられたかどうか。つまり教育の過程にあります。そういう若い人たちに対しても、今日の世界情勢がこうだ、国家情勢がこうだから、もうちよつとしたことで尾行をつけてみたり、それからもう身動きができないように、一生いい意味でか悪い意味でか守り通されるというようなことで、結局ずつと赤に染つてしまうというような子供も私たくさんあるだろうと思つております。それでございますから、教育の過程の対象として置かなければならない子供たちを、先ず私は刑罰の対象として考えるということを一ぺん払拭してみて頂きたいということを願つているのでございます。それでこの法案を立案なさいますにつきましても、一体こういう教育の問題について、青年層、学徒の取扱いというものが問題になつたのでございましようか、内閣では何か考えておるでございましようか、御答弁頂きたいと思います。
  30. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 誠にこの少年、青年の教育問題は重大であります。私も少年、青年時代を送つて来た一人でございます。若かりし頃には随分人一倍反抗心を持つていたことを率直に認めます。青年につきましては特に正義の反抗心というものは附物であります。これがなければ私は青年の本質はないものと考えております。それをうまく導くということが国民、又政府のこれは重大な問題であろうと考えております。家庭におきましても、一般国民政府においても、一丸となつてこの青年の正義心、反抗心をよく導いてやるということが一番必要であろうと、私はこう考えておるのであります。そこでここで問題になるのは、こういう正義感に燃えておる人たちをうまく導くにあらずして、これを別の方面に導くというような問題がこれは重大な問題であります。いわんや思想の固まらん者を破壊活動にこれを導いて行こう、これを扇動して行こうということにここに問題があるのであります。我々は本当民主国家民主政治のあり方というものを十分に青年に理解せしめ、その本義を悟らしめて、この下において我々は一個の社会人として将来国家に重きをなすんだという一つのプライドを与えるということが一番必要であろうと考えております。政府におきましても、その点につきましては終始文部大臣などと話合いをしまして、今後の青年問題をどう取扱つて行こうか、又如何なる施設をして行こうかということについて時々協議しておるわけであります。
  31. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 最後にお尋ねいたします。この間メーデーの事件で検挙されまして、今家庭裁判所に廻つております者がちよつと七十人おります。そうしてそのうちの十数人が検察庁のほうに逆送されております。この七十人の身柄のあり場を今調べて見ましたところが、大部分が小菅に置かれて、そうして逆送されました人たちは騒擾罪というようなことで起訴されますと思つておりますが、やはり騒擾罪とか内乱罪とかいうような、本法に定められましたような集団的な犯罪につきましては、審理の統一を図るというような名目で、これは少年法によつて保護される年齢にありながら、大人の人と一緒の審理を受けるのではないかと心配いたしておりますが、その点は如何でございましようか。
  32. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) その点については実は私はまだ研究いたしておりません。よく事情を調査いたしまして、裁判所に対してもどういう意向であるかということを聞いてみることにいたしましよう。
  33. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 どうか、折角この二十歳以下の子供は少年法によつて保護され、矯正教育を受けることになつておるのでございますから、ほかの法務総裁ならともかくも、現法務総裁は非常に保護矯正教育に御理解がございますし、こういう際でございますから、格段のこの保護矯正教育の面に私は力を入れて頂きたいということを本当に願つておきます。  私の質問を終りたいと思います。
  34. 左藤義詮

    左藤義詮君 只今宮城さんの御質問の中に、アルバイトをしておつた自分の愛児がビラを貼つてつてピストルで射たれた、こういうお話、実は一昨日宮城さんからお話を伺つて私は驚いたのであります。そのような放送が何百人もの耳に入りますと、非常にそれに動かされることは当然だと思うのでありますが、特審局には千二百人からの人がおいでになり、ラジオもお聞きになつていると思いますが、そういうことがそのまま放置されているというような答弁でありますが、この前にも私質問しましたが、この法案国民と共に作るのだ、国民本当に理解してもらうのだという意気込みが足りなかつたというお答えがありましたが、爾来それをお改めにならない。今の宮城さんの御質問のように国民大衆は或る程度動いている。破防法というものもそれと同じような気持で反対に駆られている。これは私は非常に大事な問題だと思うのでありまして、今の法務総裁のお答えでは、住所がわかつて、所在氏名がわかつたら云々というお話でありますが、毎日放送局放送しているのでありますから、耳に入れば即座にそういうことは明らかになると思う。むしろこの際この機会に国民の破防法の認識を深めるように努力なさらなければならない。どうもそういう点が、先日私の質問しました印紙の偽造の問題にしましても、国民の納税観念、遵法観念に非常な影響を与える。私やかましく質問したのでありますが、法務総裁代理の政務次官は全く御存じない。いろいろ一松さんからも調査方法についての御意見が出たのでありますが、もう少しこういうことについては国民の中に飛び込んで、本当に民主的にやつて行く、ただ法律さえ作れば、それであとは自分たちがやつて行くのだというような独善的な気持が、私は今の宮城さんの非常な御心配なつたようなことが起るのでありまして、この点につきましては、只今の問題については速かに一つ御調査になつて処置をなされ、これを機会に全国民にその実情をよく徹底なさり、それと共に私の申上げた印紙の問題等につきましても、私はこの前答弁を保留されておるのでありますから、積極的に一つ明らかにされることを特に希望しておきます。
  35. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 今の御質問誠に卸尤もであります。実は私も不注意でありますが、実はラジオを聞いておりませんで、今初めてその話を承わりました次第でございます。早速その点については調査をいたします。  又印紙の問題につきましても、実は率直に申上げますると、何らの報告も受けてないのでありますから、その点につきましても実は……これは速記をとめて……。
  36. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  37. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 速記を始めて。
  38. 左藤義詮

    左藤義詮君 非常に破防法に熱中の余り政府委員が大分グロツキーになつているように聞いたのですが、併し法務総裁が一人でラジオを聞く聞かんということではないのでありまして、たくさんの部下をお持ちになつておるのですから、若し法務総裁自分でラジオを聞いて、自分で全部措置をしなければならんということでは大変なんです。そういうふうにたくさんの部下をお持ちになつている、千二百人もいる特審局でそういうことに考慮しない、そういう問題について頭を使わないで、法務総裁一人が右往左往しておられて、国会が終らなければ仕事ができないというようなことではいけないのでありまして、言葉尻を取るようでありまするが、もう少し政府職員と言いますか、特にこういう法務仕事、或いは将来公安調査の仕事に当る人が、私は一方には先ほど宮城さんが言われたような道徳的責任、人間的な責任を感ずると共に、仕事に対してもつと私は打ち込んで行かなければ、幾ら法律を作つても駄目なんでありまして、今法務総裁が一人で孤軍奮闘しておられるような表現でありますので御同情申上げます。もう少し全員が法務総裁の意を体して、国民に対しこの法案に理解協力を徹底せしめるように重ねて私は要望しておきます。
  39. 一松定吉

    一松定吉君 議事進行についてちよつと。大部議事も進行をいたしましたので、法務総裁並びに特審局のお係のかたがたの御心労に対しては非常に感激をしているのでありますが、私は文部大臣にも一つ出て頂いて、学生の行動に対しての影響が非常に本法は多いのでありまして、そういうことについての意見も聞きたいのです。一つ適当なる時期に文部大臣にも出席を促して頂きたいということが一つ。それからいま一つは、私の考えとしては、調査庁、審査委員会というものを設けるのがいいのか、警察官並びに検察庁を一層この方面にも働いてもらうのがいいのかということについてはまだ結論を得ておりません。私自身はこういう点につきまして法務総裁並びに特審局の皆様からは、この原案に対して、正しいのだというお考えは承わりましたけれども、一応この破防法の運用に関しまして警察方面、検察庁方面の意見を聞きたいのですが、警視総監、それから国警本部長官並びに検事正というかたも一つ参考のために御喚問賜るようにお願いいたします。
  40. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 今週は御承知のようにもう……。来週適当の時期にさよう取計いたいと思います。ちよつと速記をとめて。    〔速記中止〕
  41. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 速記をつけて。
  42. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 宮城委員の御質問についてですが、これは法務総裁にお願いしたいのです。私は実際自分自身微力であつて国会議員の職責を完うすることはできないというふうに感じております。法務総裁も先日もお答え下さいました、その誠意におかれまして、又その人格におかれまして、御自身誇られるまでもなく、私どもとして尊敬をしております。でありますからどうか本日の宮城委員のような御質問に対しては、法務総裁のお言葉を拝借しては恐縮でありますが、命がけでお答えを願いたいと思うのです。これはお願いでありますから、別にお答えを頂戴いたしませんで結構であります。
  43. 小野義夫

    委員長小野義夫君) それでは午前はこれで休憩いたします。    午後零時七分休憩    —————・—————    午後一時五十五分開会
  44. 宮城タマヨ

    ○理事(宮城タマヨ君) 午前に引続きまして委員会を再開いたします。  先ず岡部委員にお願いいたします。
  45. 岡部常

    ○岡部常君 本法案審議もいよいよ終りに近付きまして、大体の大筋は出尽したように思います。私はこの際に駄目を押しておきたいことがありますので、一、二の点についてお伺いしたいと思います。本法案は従来各委員いろいろ所見を述べられましたように、法案としては必ずしもいい点数はつけられないと思います。いな、大分落第点をつけられておるように私も感ずるのは甚だ遺憾であります。  それはともかくといたしまして、この法案審議に当りまして、我々が各方面の意見徴しましたりしたその結果、輿論、或いは我々の手許に参りまするとこるの文書のごときものによりましても不要であるということは確実であります。併しながらそういういろいろな世評がありましても、又我々の机上に積まれまするところの葉書が山をなしますとも、又電報が何通来ますとも、それらの通信が筋を辿つてみますと、その地域々々によつて理由とするところが局限されておりまして、必ずしも我々を納得せしむるものばかりでもないのでありまして、何らかそのところに相当意図されているところのいわゆる扇動があるのではないかとさえ思われるのであります。  それはともかくとしまして、それらの意向が如何ようともあれ、それのみによつてこの法案の点数を私はつけようとは思わないのであります。併しながらそれは別としましても、ずつと法案を見まして、どうも少くともこの頃の法律の立て方としましては難解の点があるんじやないか、或いは少くとも法律家の独断に陥りはしないか、不親切な点があるのではないかという疑いが濃いのであります。最初政府の提案理由におきましていろいろ説明があつて、一応そういう点は解決されておつたかのように思います。又更に数次の質問応答において漸次その疑点は解決されたところもあるように思いまするが、それにしましてもますます疑いの濃くなる点が相当残つておるように思います。私はそれを一々挙げませんが、その中の著しきものを一、二拾いまして政府の意図のあるところを伺つておきたいと思います。  第一はこの法の最大の目標としておるところは、提案理由の初めから縷々お述べになつておるごとく、行政措置たるところの団体の規制ということと、それに随伴して起るところの刑罰規定の調整というようなところに分れておることは漸次明瞭になつて来たように思うのでありまするが、私はこの点については世間の誤解が非常に多いと思います。世間の誤解の生ずる主な点は、この根本的の法の立て方によつて生れて来たかのような感じがするのであります。その点は専門の法律学者はそういう誤解はありませんが、そのほかの学者にしても識者にしても、その他の各界の人々の意見、殊に一般の大衆の間における誤解が、この点がはつきりしなかつたところに淵源しておるように思うのであります。私は何故にこの立法体系として、初めからこの行政措置と刑罰調整の措置とがもつとはつきり立てられなかつたか、その点に甚だ遺憾の点を認めるのでございますが、この点につきましてはたびたび質問も重ねております。前々回でございましたか、前之園議員がその点を特に指摘しておられて、私もその点は同感でありますが、この点に関する政府の立法の衝に当られたかたの御意図、それからそれに対して立法技術の点でこうしなければならなかつたというようなところを、実はざつくばらんに聞かして頂きまして、そうして誤解の根源を私はできるだけ明らかにして頂きたいと思うのでございます。私はこの際もう最後でありますが、どうも今までの質疑応答ではなお足りない点があつたように思いますので、念のため伺います。
  46. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 立法の形式等の関係にも触れてのお尋ねでございますから、便宜私からお答え申上げます。  今のお話の中に出て来るところ一々御尤もであろうと存じますが、    〔理事宮城タマヨ君退席、委員長着席〕 その一つとして拝察いたしますのは、この罰則規定を別建にすべきではないか、むしろそのほうがわかりよいではないかという点が一つ内容になつておるように拝承いたしましたのでありますが、この点は先にも触れたことがございますのですが、要するに一つ考え方として、刑罰規定の補整にかかる部分は刑法の中に加えるべきではないかということになると思います。これは申すまでもございません。刑法は刑罰関係の基本的の法律ということになつておりますのですが、それに対しまして今回の法律案でこれを補整せんとする部分は、国家百年の刑罰としてこれを存置すべきだというようなものとは我々は考えておりませんので、その意味で別建に便宜この法律案に盛り込んだということでございます。  もう一つ今のお尋ねに含まれておりますのは、この刑罰と団体に対する規制処分という行政措置とのこの絡み合いの問題について誤解がありやしないか、これは大変御尤もだと思います。その点につきましては、仮にこの形を、第四条なり第六条において、曾つて危険な活動をやつた団体というように書いておけば危険な活動をやつた団体という、その危険な活動というものは一切法律で限定をしないという形になつておれば、これは非常にわかりよい形となるのでございますが、我々といたしましては、その危険な活動といつたところで極めてあいまいでございますから、これを極力限定いたしまして、誰が見ても危険だと思われるところにその条件を絞つて行こうということから、たまたまその条件としては、やはり刑法で処罰されておるような事柄の中から更に危険なものを拾つて列挙しようということで、この三条の列挙が現われて来たわけであります。従いましてでき上りの形を見ますというと、皆この刑法第何条というような刑罰規定が列んでおる。それから更に誤解が出て来まして、これは団体に対する処罰じやないかというようなお気持が世間に見受けられますのは、これは私も無理のないことであろうとは一応考えられます。併しながらこの法律の意図は、只今申しましたようにこの危険性の標準というものをぎりぎり結着にはつきりと最も典型的なものに絞り上げようというところの手段として、この刑法の処罰の条文を三条に掲げたという趣旨でございまして、この点はこれからも又十分一般に対する啓蒙と申しますか、そのほうに努力しなければならんと思いますが、これは説明を十分いたしますれば御理解願えることではあるまいかというふうに考えておるわけでございます。
  47. 岡部常

    ○岡部常君 今お述べになりましたすでに総裁からも私は承わつて大体了解をいたしております。私のお尋ねしたいのは、最も技術的の面で、なせあの行政処分とそれから立法措置とを截然として条文の上で章を変えるとか或いは条を変えるとか、少くとも項を変えるというようなことはお考えなつたかどうか、それは恐らく素人はあれをずつと書き流すことによつて昏迷を来たす。私はこの第一条は行政司法の昏迷があると、それがこの問題を大きくした一番もとであると、私はつくづくこの質疑応答、即ち世論の動き方、私らの机の上にこんなに堆高く来ます投書によつて私はそれを見ておる。そういうふうな技術的の点も、打明けたところこういうところは困難だと、こういう立て方をしようと思つたができなかつたというところを御発表になつたらどうか。そういうほうが皆さんの了解を得られるのではないかと実は思つておるので、苦しそういうことがなければそれはしようがありませんが、若しありましたならば、そういうところも一つお示しを願いたい。どうも私ら素人の考えとしては、章を別にするとか条を別にするとか、少くとも項を別にするというようなやり方もあつたのではないか、そういうふうにちよつと感じますかし、その点を……。
  48. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 或いはお尋ねの趣旨と外れますかも知れませんが、私の了解するところによつてお答え申上げます。  今の御趣旨は、恐らく行政規制措置に関する部分と罰則に関する部分とを截然と分れるように、はつきり見えるようにしたらどうかということではなかつたかと存ずるのであります。成るほどさように伺いますというと、今丁度お言葉に出ましたように、第一条はこれは両方に跨つておるわけであります。これは誠に御尤もだと存じますが、それ以外の点につきましては、或いは第一条というところを、全般的の第一章総則とございますのを、第一篇総則といたしまして、第一章の中の二条から第二章も第三章も皆含めたものを第二篇規制手続と、こういうふうにやりまして、最後に罰則の所を第三篇罰則の補整というような組立にいたしますことは、今のお話を伺いまして、一つの行き方であると私思いました。ただたまたま今問題になりますのは第一条のあり場所ではないか、これは御尤もではないかと思いますけれども、それ以外の点につきましては大体この条文が固まつておりますので余り実は……本当に正直に申しまして、おつしやるようなところには、そこまでの気持は及ぼしておりませんのでございます。
  49. 岡部常

    ○岡部常君 大体お気持はわかりましたが、先ほど宮城委員からも、政府のあらかじめの用意が足りなかつたのではないか、宣伝が足りないという御意見がありまして、私も同様に感じますので、先ほど長官がおつしやつたように、若しこの法案通りますれば、どうぞ世の中の誤解を解くようにこれこそ宣伝をして頂きたいと思います。  それから次に私がお伺いしたいことは、これも本法案審議の重大なる点になつていると思います扇動という文字です。この文字につきましてはいろいろ論議せられましたが、私は回顧いたしますると、昔学校で英法をやりましたときに、イギリスのコンモン・ローにおきましてフエロニー、つまり重罪犯についてはやはり扇動ということが認められておつたように記憶いたします。御承知のようにコンモン・ローでありまするからいつ制定されてというのでなく、自然に発生して判例等となつて今日に至つているのであります。これは歴史も深いし根拠も私はあるものだと思いますが、若し私の記憶にして誤りなしといたしますれば、それはどういうふうになつてつたか、実は私も調べようと思つてコンモン・ローを繙いて見ましたら、もう暫らくそういうものを習いませんからよく探し出せませんでした。併しどうもうろ覚えでありますからはつきりしませんが、どうもあつたように思いますから、その点を伺いたい。同時に恐らくこれは英米法にありますれば、恐らくそれが反射的にドイツ法系にも現われ、或いはラテン法系のほうにもそういうものが現われるということは、これはまあ通常であります。そういう点が若しお調べになつてあればそれをお示しを願いたい。これはまあ比較法学的に見て相当意味があると私は思います。今までそういう御説明がなかつたように思います。又今までどうも御質問もなかつたように思いますから、私は補足的の意味においてその点をお伺いします。これは何も直接ここでお答え下さいませんでも、一つ資料でも早くお示し下さいましても結構であります。併しここで御説明できれば、時日がないことでございますからすぐ承わればなお結構だと思います。
  50. 関之

    政府委員(関之君) お尋ねの点につきましては、私ども立法するに当りまして、外国ではどういうことになつているかという点を一応調べて見た次第でございまして、十分ではございませんが、一応立法の資料に供しました僅かな範囲について私の知つているところを申上げて御参考に資したいと思うのであります。  お尋ねの最初の英国でありまするが、これは岡部先生の御記憶のように、英米におきましてはこのフエロニー、これは重罪でありまするが、犯罪を叛逆罪と重罪と軽罪の三つに分けて考えておりまして、叛逆罪と重罪についての犯罪を惹き起させるような言葉、これは日本で申しますと或いは教唆になり扇動になるかも知れませんが、要するにそういう言葉は、それ自体がもう結果の起ると否とを問わず犯罪として処罰されている、これが普通法上の原則であるわけであります。従つて何ら法律制定を要せず、今申上げたような叛逆罪的なもの、そうして重罪的なもののこの教唆、扇動というふうに、それを起させるような虞れのある言葉自体が犯罪として処罰されているわけであります。これは考え方が私の調べによりますると、大陸法系と全然異つておりまして、とにかく大陸法系では或る言葉があると、それが実行が行われなければその言葉を処罰されないという建前になつておりますが、そこが英法は非常に異なるのであります。この叛逆罪と重罪に関する教唆、扇動のような言葉は、それ自体で処罰するという考え方が、これが米国に受継がれているわけであります。米国におきましてもこの英法の基本の流れを汲みまして、そうして叛逆罪的な行為、そうして重罪的な行為は全部これをその言葉自体で、結果が起らずとも違法としてこれを処分しているわけであります。そこで問題になりますのは、そういうような英法的な立場から見てこの破壊活動防止の本法の第三条に挙げるような各行為が、これが英法の立場から見てどうなるかという比較的な問題が大きな問題になると思うのであります。そこでこの第三条に掲げました各行為につきまして、英米法の立場から見てみますると、第三条の一項、一号のこの内乱的な行為、これは向うから申しますといわゆる叛逆罪的な行為でありまして、当然これらを惹き起させるような虞れのある各種の言動は全部このままで犯罪として処罰されているわけであります。これは言葉といたしますればアージであるとか或いはアドヴオケートであるとかいろいろの言葉が使われておりまして、一律ではございませんが、とにかくその結果を惹き起させるようないろいろの言葉を、そのまま結果を見ずとも犯罪として処罰するということになつているわけであります。  で、この第二号のほうでありまするが、この第二号のイの騒擾の規定、これはアメリカの各州を調べてみますと、或る州によつてこれが重罪として扱われ、或る州によつては軽罪として扱われる。従つてこの部分につきましては、或る州ではそれらの教唆、扇動的な言辞はそのまま犯罪になるが、或る州によつてはなつていないということになるのであります。それからロの放火の罪、次のハの激発物破裂の罪、汽車、電車顛覆の罪、殺人、強盗、そうして爆発物の使用と、そうして凶器又は毒劇物で多衆共同して検察官、警察官等に公務執行妨害をなす、これは英米法の立場から見ますといずれも重罪に当るものであるというふうに、私は調査をしてさように思つているわけであります。従いましてかような行為につきましては、英米法の立場から見ると、その教唆とか扇動とかいろいろの言葉がありまするが、とにかくそれを惹き起させるような虞れのある行為或いはそういうような危険を来すような虞れのある行為、そういうような言葉はすべて今日において犯罪として処罰されているということはすでに常識的なことになつているわけであります。  なおこのほかに最近の傾向といたしまして、特にアメリカにおきましてはこのよう行為のほかに、いろいろの言葉による犯罪の教唆とか扇動とかいうような行為を広く処罰することに相成つているわけであります。最近の立法例を調べて見ますると、これはアメリカの例のスミス法であるとか或いは各州におきまする無政府主義者の取締法であるとか、或いは国内安全保障乃至は動乱の教唆とか、或いは軍に対する妨害行為の取締法であるとか、各種の立法例を調べて見ますと、次のような言葉言葉それ自体で結果が惹き起されず、犯罪として処罰されているわけであります。それはアベツト、アドヴオケート、インサイト、エンカレージ、プロヴオーク、アージ、カウンスル、アドヴアイス、テイーチ、こういうような言葉がそれ自体で、何ら実行行為が随伴されず処分されているわけであります。これらの言葉日本語に訳してみますと、或いは扇動となり教唆となり幇助となり、或いは騒擾となつたり、或いは激励する或いは鼓舞する、或いは奨励する、勧告する、教える、助言するという、いろいろこういうような言葉に訳されているのでありますが、要するにかような一切の言葉がそのままでも犯罪となるというふうに規定されているのであります。これはなせこのように随分いろいろな言葉を挙げたのだろうか、この立法の理由につきましては、議会の説明書が手に入りませんので調べて見ませんが、一応私どもの推定といたしましては、要するに犯罪者が、お前はアドヴオケートしたのだというと、俺はそうじやない、エンカレージしたのだというふうに遁辞を設けていろいろ逃げてしまうから、それでいろいろの言葉を羅列して、そしてそのような一切の犯罪が惹き起される行為を全部押えてしまうというような考え方ではないかと思うのであります。これが米英法における概要であります。  次に第二点でありまするが、ドイツとかフランスの大陸法系におきましては、この犯罪の教唆とか扇動とかいう言葉につきましては、第一の原則は、それらが正犯が実行しなければ処罰しない。だから犯罪を教唆いたしましても、正犯が実行しなければ処罰しない。丁度日本の刑法第六十一条の原則でありまして、そういうことが長い間の原則であつたのであります。ところがその後この英米法の考え方が移入されまして、どうもそれだけでは不足であるからして、重い罪については教唆とか扇動とかいろいろ、とにかくそういう言葉でそのような重い罪が惹き起されるような虞れのある行為は、実行が伴わなくても、直ちにこれを犯罪として処分するという考え方が大巾に入つて来たのであります。それで例えばドイツで申しますと、日本の刑法第六十一条のような教唆に関する規定のほかに、先ずこの重罪を扇動するということは、それを独立に処罰するわけであります。又公然大衆の面前又は文書によつて法令又は官憲の命令に服従しないことを扇動すること、これはそのこと自体で犯罪として処分しているわけであります。そうして又一般に犯罪を扇動することは、結果が起きた場合と結果が起きない場合によつて刑に若干の差別を設けて、そういう行為を一般に処罰しているわけであります。従つて結論から申しますと、一般に犯罪を扇動することは、結果が起きなくても、そのこと自体で処罰するということに相成つておるわけであります。  次に昨年の八月ドイツにおきましては占領軍の進駐と共に内乱罪に関する一切の規定が削除を命せられまして削除しましたが、平和条約の発効を見越して昨年の八月に刑法の改正をいたしまして、内乱に関する部分の規定を挿入いたしたのであります。そしてその中には以上の原則のほかに、この内乱罪に関する文書、録音盤、絵画、若しくは制作物の出版、制作頒布又は頒布目的の所持というものを処罰するという規定を新たに一条加えているのであります。又そのほかにかかる内容を有する表示物若しくは制作物の映画、放送、無線電話、若しくはその他の光学的複製によつて頒布するものを又同様に処罰しているわけであります。従いまして内乱罪につきましては、その扇動、教唆というふうな犯罪を起す虞れのある言葉、かようなことを書いてあるところの文書、録音盤とか図画、若しくは制作物とかいうような出版、制作物の頒布及びかようなものの放送、電信電話、若しくは光学的複製によつてやる頒布、こういうような広汎なものが犯罪として処罰されているわけであります。なおこのほかドイツの昨年の改正におきましては、国権の執行、従つて国会であるとか或いは大統領であるとか、或いは行政府或いは憲法裁判所というような、そういう国権の中枢、最も重要な機関に対する各種の政治的意図を以て品位を傷けるような名誉毀損的な行為、そういうようなものも広汎に犯罪として処分する規定を設けているのであります。これが大体ドイツにおける今日の現状であるわけであります。  次はフランスでございますが、フランスは刑法の教唆の規定は日本の現行刑法と建前は一致しておるわけであります。即ち犯罪の教唆、扇動でありましても、その結果が起らなければ、その言葉自体では処罰しないというのが刑法の建前であります。ところがこの建前も一八八〇年代に崩れました。そうしてその後におきましては言葉自体で処罰するという方向に進んでいるわけであります。そうして現在の刑法の中では、政府の転覆若しくは変更、又は公民若しくは住民を扇動して政府に対して武器をとらしめるというようなことを目的とする違法行為は重く処罰するという規定があるのであります。これはかなり前からあつたようであります。併しその後こういう方面に対する言論出版のようなものの取締の法律を新たに制定いたしまして、今日におきましては公けの場所又は集会においてなしたる言論又は公けの場所若しくは社会において頒布する文書、印刷物等によつて重罪又は軽罪を直接に扇動することは、方法は多少限定されておりまするが、フランスにおいても広く犯罪として処罪されるわけであります。そうして次には窃盗罪、故殺罪、略奪罪、放火の罪及び爆発物使用の罪、こういうようなものの罪とか或いは内乱罪でありまするが、これらの罪及び外患罪、こういうものにつきましては、直接扇動した方法の如何を問わず、扇動した者を処罰しているのであります。又次には今の故殺とか略奪、放火とかの重罪若しくは窃盗の罪、若しくは爆発物使用というような重罪を賞揚すること、これは扇動でなくて、それを賞め上げるというようなことも、これも独立罪として処罰されているわけであります。こういうようなことがフランスの現在の刑法やその他の刑事取締法規に現れておりまして、この破壊活動防止法案と比較されれば参考立法と相成るかと思うのであります。  極く概略でありまするが、御説明した次第であります。
  51. 岡部常

    ○岡部常君 只今最後のところは、フランスの法制では特別法の場合をお引きになりましたが、そのほかの場合は大体一般の刑法と承知してよろしうございましようか。
  52. 関之

    政府委員(関之君) アメリカの場合は、これはすべて単行法の形になつているわけであります。日本のような刑法的な一本の形でなくて、いろいろの単行法で出ているわけであります。ドイツの場合は、これは私の調べたところでは刑法の範囲でございます。フランスにおきましては、今申上げました言葉の場合には特別法になつておりまして、政府の転覆、扇動のみを刑法に取入れているわけであります。
  53. 岡部常

    ○岡部常君 それじや英国の場合はどういうふうになつておりますか。
  54. 関之

    政府委員(関之君) 英国の法律はいわゆるコンモン・ローになつておりまして、制定法で刑法的な法典は少いようであります。そこですべてが判例で、これこれの場合にはこうなつているというふうにして固まつているのであります。
  55. 小野義夫

    委員長小野義夫君) ちよつと速記をとめて。    〔速記中止〕
  56. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 速記を始めて。政府委員において保留された答弁を願います。問題を明らかにして言つて下さい。
  57. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) 昨日保留になりました答弁のうち、伊藤先生から御指摘になりました破壊活動防止法案第十八条に関連する問題でございますが、この点についてお答えいたします。  公安調査庁長官が公安審査委員会に対しまして処分の請求をしない旨の決定について一事不再理の原則が適用されるかという御質問の御趣旨でございますが、このような決定の基礎となりました同一の事実につきましては、証拠関係が同一である場合に限り再び請求しないということでございます。この意味におきましてはいわゆる一事不再理の原則が適用されるものと解している次第でございます。
  58. 小野義夫

    委員長小野義夫君) よろしうございますか……、では次の問題。
  59. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) 次に機関誌紙の同一性についてやはり伊藤先生から御質問がございました。この点についてお答えしたいと思うのであります。  機関誌紙の同一性は実質的な編集方針を中心として判定されるという私どもの答弁に対しまして伊藤先生から、それは紙面に現われた機関誌紙の編集方針の同一性ということは、結局思想的な立場と申しますか、それから第二といたしまして主張、第三点としまして記事の公正、これらの問題について判定をされるのかという御趣旨の御質問がございました。結論から申しますと、これら三点のいずれもについても判定されなければならないというふうに考えておる次第でございますが、その理由につきまして大変粗雑な考えでございますが、私どもの見解をお答えいたしたいと思うのであります。機関誌紙は、この法案でも書いてありまする通り、「団体がその目的、主義、方針等を主張し、通報し、又は宣伝するために継続的に刊行する出版物をいう。」というふうにありまして、この出版物が今日一般の普通の新聞の形をとることが大体多いのでございます。かような新聞の形で機関誌紙が発行されますると、機関誌紙といたしましては、当然これを発行する団体の重要な活動の一環としてかような機関誌紙が発行頒布されるということになりまして、その団体の目的なり主義、方針を主張し、通報し、又は宣伝するということのために使われるという建前になるものと考えております。従いまして機関誌紙の編集方針は、その当該団体の思想的な立場、或いは砕いて申上げれば政治、経済、社会問題に対する基本的な立場というものが当然その基礎となつて来る。更に進んではその機関誌紙の編集とその立場が当然機関誌紙の編集方針の一般的な思想的な立場として現われて来ると考えるのであります。かような点がどういう点にそれでは新聞の紙面を通じて現われるかという点につきましては、第一の点は、新聞には社説とか主張とかいうような、その機関紙の主観的な主張を打出して来る面があるのでありまして、ここに最も強くかような思想的立場が現われて来るのみならず、更に進みましては記事の選択、それから編成並びに記事につきましての言葉、見出し等につきましても一般的に現われて来る。かような次第で、思想的な立場は社説を初め主張その他の点を中心としまして広く紙面全般に現われて来るのではないだろうかと考えておる次第でございます。  次に現われて来る点は、記事の選択、記事を選択する主観的な取捨、捨てたり取つたりする取捨という点に現われて来るのではないだろうか。先ず第一は多数の記事の素材や多数のニユースの中から一定の選択標準によりまして記事が選択されまして、これが紙面に組み込められるという点につきまして、機関誌紙の編集方針がそこに現われて来るのではなかろうかと考えておるわけであります。次には記事の書き方の主観的な改変と申しますか、選択した記事に文章的な表現をつける方法、その様式の問題でありまして、これらの文章の現わし方によりまして、これを読んで受ける影響が変つて参ります。かような点に編集方針というものが現われて来るのではないだろうか。次には紙面の配列の主観的な構成と申しますか、紙面における記事の割当てという問題でありまして、トツプ見出しをつけて、大きく打ち出して来るとか、或いは要項を頭につけまして、その概要の重点を特に取上げて打出して来るとか、或いは大小の小見出しをつけるとか、いろいろな技術的な行き方を通じまして、その内容として実質的な編集方針が現われて来るのではないだろうか、かような点に編集の実質的な方針が打出されて来、こういう面から編集方針の同一性というものを判定せざるを得ないのではないかと、かように考えておるわけでありまして、結居昨日伊藤先生から御指摘になりました問題に帰着することになるわけであります。これらいずれもについても、これを総合的に検討いたしましてその同一性を判定すべきものではなかろうかと考えておるわけでございます。
  60. 伊藤修

    ○伊藤修君 そういたしますと、昨日御答弁になりました、いわゆる材料及び紙面の表に現われたところの編集方針というものによつてこれの同一性を認定する。而して紙面に現われた編集方針というものを細分いたしまして、形式的編集方針と実質的編集方針とにこれを区分し、形式的編集方針については今詳細に御説明なつたような、いわゆる見出しのつけ方、小見出しのつけ方、或いは紙面におけるところの取扱い方並びに記事の大小の扱い方、そういうような構成についてこれを同一性を認定する。実質的にはその思想と及びその思想の表現、即ち主張の同一性並びにいわゆる取扱われた記事の構成、或る種の記事を特段に集中してそれを取上げて行く、そうして以てその団体主義主張というものを人に知らしめる、こういうような点を標準にしてこの同一性を判定する。こういうふうに御意見が決定したわけですか。大体私が申上げたことに準じられるようなことになつているのですが、そのほかにはないのですか。
  61. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) ほかにはありません。
  62. 伊藤修

    ○伊藤修君 そういたしますと、それはそれでよろしいのです。そういう御見解に決定いたしますれば、一つのよりどころができますから、機関紙を発行する上においてこういう点を基準にして考えて、同一性なりや否やということの、その面におけるところの社会生活の方針を立てることができると思います。そういたしますと、いわゆる羽仁さんの先だつて申されましたように確信犯のようなかたがたに対しては、勿論それが再び取上げられて、調査の対象になるということを覚悟の上にやられますから、これは多く問題ないと思います。善良な組合員は一たびその構成員の中で過つてこういうような規制処分を受けられた。その後の組合活動として違つたものを出して行こう、そういう場合におきましては、その法に触れることを非常に厭う意味において、こういうものを出したいからこういう記事ではどうかという、いわゆる公安調査庁に事前にその内容の検閲を受けるという方向に進まざるを得ないという結果になりはしないかと思われるのです。そうすることによつていわゆる事実上の検閲制度というものがそこに復活するのではないかと思うのです。それに対しましてあなたたちの職務執行の上において何らかの基準というものをあらかじめ知らしめる……、さような検閲制度の復活に似たような、実質的に検閲制度の復活に似たような方向に行くことを阻止する何かお考えはあるかどうか、その点をお伺いいたしたい。
  63. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) 只今の伊藤先生の御質問誠に尤もだと思う次第でございます。只今お答えしまして、なお先生からも重ねて御指示がありましたが、こういう解釈を明確にいたしまして、それぞれの機関紙を発行されているような団体、或いは日本新聞協会等を通じまして十分に趣旨の徹底を図つて行くようにいたしたいと考えております。
  64. 伊藤修

    ○伊藤修君 この問題は本法の三条の一号の他の場合においても起り得る問題でありますから、そういう点については重ねて次の機会において逐条審議の際お尋ねすることにいたします。
  65. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 今の御答弁を聞いて一般の新聞界のかたがた納得されるかどうか、それは世論の批判に待ちましよう。そうして世論が今の御答弁で納得しなかつた場合には、勿論政府もそれを無視されるということはしないだろうと思う。  私からもちよつと伺つておきたいと思いますが、今のお答えに関する限りでも、この審査庁は如何なる憲法上の権限に基いて新聞の編集に対して干渉する権利をお持ちなんですか。
  66. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) 権利は持つておりません。
  67. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そうすると今言われた編集方針について判断をして、そうしてそれに対して行政上の措置をとる権限はないというのですね。
  68. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) それは只今伊藤先生にもお答えした通りでありまして、これは干渉ではないと考えておりますが、御質問の趣旨がはつきりいたしませんが……。
  69. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それでは順序立てて伺つて参りますが、第一に、この第四条の二項は、これは意見局長官に伺つて置きたいと思いますが、この出版の自由或いは新聞の自由、もつとはつきり言うと、新聞の自由を制限していますね。でこれは同一性ではなくて、先ず同一性のもう一つ手前の「当該暴力主義破壊活動が機関誌紙によつて行われたものである場合においては、六月をこえない期間を定めて、当該機関誌紙を続けて印刷し、頒布し、又は頒布する目的をもつて所持することを禁止すること。」というのは、この機関誌紙の発行、即ち一般の新聞の自由ということに対する制限ですね。これはお答えして頂くまでもなくわかると思う。これの憲法上の根拠を伺つておきたいと思います。
  70. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) そのことによる危険性という観点から来る調整と申しますか、そういう点から来ておるものだと思います。
  71. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 これは昨日念のために申上げて置きましたように、基本的人権というように一般に総称されておるものに制限を与えられるものと……、それは我々の見解によれば絶対に制限できない、あなたのお考えでは制限されがたいというもの、この両者をひつくるめて、そういう制限されがたいという見解と、それから絶対に制限できないという見解とを二つ含んだ一種の基本的権利というものがある。新聞の自由はそのいずれに属するものですか。
  72. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) それは勿論制限されがたいほうに入ると思います。
  73. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 我々の見解によれば絶対に制限できない、今の政府の御見解では制限されがたいもの、即ち第一の制限、公共の福祉によつて制限されるということが憲法においても考えられているような種類のを普通に学問上には制度的権利というように言うが、本来の意味における基本的人権と性質を異にするものとは違つて、これは本来の意味における基本的人権であり、制限されがたい、或いは絶対に制限されることの許されないという解釈も成り立つものに属する、新聞の自由は……。従つて百歩譲つて、これが制限される場合においては有名なホームス判事の原則を持つて来るまでもなく、眼前の明白な危険というものによつてのみ制限されるものだろうと思う。そうすると眼前のということについて先ず伺いますが、眼前のというのは時間的にどれくらいのことを指すのですか。
  74. 小野義夫

    委員長小野義夫君) ちよつと羽仁さんに申上げますが、今日はいわゆる保留された答弁だけに限局されてやつて、来週の逐条的な審議のときに今のような問題をもう一ぺん取上げて御発言願つたらどうでしようか。
  75. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それでは逐条審議の際に十分に時間を与えられることを確信いたしまして……、今申上げましたのは、政府がこの問題についてさつきの伊藤委員に対する吉河特審局長の御答弁のような、そう申すと甚だ失礼でありますが、安易なそうして場合によつては絶対に制限されないとも考えている、而もそれは有力な見解である、基本的権利をやすやすと制限できるようなお考えに基いて答弁をなさるということでは到底我々は納得できないので、その点については十分に御研究下さいまして、逐条審議の際にお答え下さるようにお願いいたします。大体の私の質疑を終ります。
  76. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 関連して、伊藤委員の……これは特審局の意見として一応承わる、こういうことでございましたが、私は特審局長の御説明を聞いておつて大きな疑問を感じますので、一つ承わりたいと思うのであります。それは大体編集方針の同一性ということで思想、主張、それから記事の構成と、この三つを分けて、そうしてあと解説されたように思うのでありますが、思想を編集方針の同一性について挙げられるということは、これは思想の自由について関与することに相成るかと思うのでございますが、思想についてこれは同一性の基準とせられるということは、これは私は問題だと思うのであります法制意見長官はどういう工合にお考えになりますか、お伺いいたします。と申しますのは、一応思想、主張、記事の構成と三つに分けられました、その主張の中でも、社説であるとか或いは論説であるとか、名前はとにかく、これを同一性の基準になるものとして再び思想的な立場ということを言われました。そうすると思想も主張も記事になるものは思想じやないか、今の御説明を承わつているとそういう感じがするのであります。  それからその思想の中身として政治、経済、或いは社会に対する基本的立場と、こういうことを述べられたのでありますが、編集方針の同一性の中における思想ということが中心になつている点に鑑みて、私は思想を編集方針の同一性として選ばれることはこれは不当じやないかと考えるのでありますが、意見長官はどう考えておりますか、伺いたい。
  77. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 思想と言いましても、これは今特審局長の答えられましたのは、恐らく思想を取締るとかというような御疑念のような立場からのものではなくて、この同一性を判定するについては要するにあらゆる客観的事実の総合観察によらなければならない。要するに客観的に現われた思想をいろいろと捉えて総合的に判断しなければならん。客観的事象として何が現われて来るかというと編集の方針、言換えれば編集の指導原理というものが客観的に文字の上で現われて来ると思うのであります。そういうものを総合観察して判定するという意味で申上げておつた考えます。
  78. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 ただ思想を、政治、経済、社会の基本的立場という言葉を使われたと思のでありますが、そういうことでは私は思想に関与することになる。それでしまいのほうに形式的な紙面の割当とかいうことを言われましたけれども、具体的なこれは破壊活動に関連するのでありますから、具体的な破壊活動を前の新聞が、この法律言葉で言いますと恐らく扇動者、具体的にその破壊活動趣旨主張しよう、これが紙面に具体的に現われた、こういうことならばいいので、ところがそれを思想として、抽象的に政治、経済或いは社会の基本的立場ということを言われますと、例えば例を挙げますと、労働組合の機関紙で、前の機関紙の場合も、これは労働組合、労働者のことでありますから、資本主義を否定して社会主義を実現すべきである。こういう思想を持つていたかも知れない。これはその次の新聞にも題号は違つても或いは出て来るかも知れない。その場合に思想が有力な、例えば三つ挙げられた思想、主張の中において、その実現の方法はとにかくとしても、社会主義なら社会主義というものは同じように思想が表われている。こういうことで前の新聞とあとの新聞が同一だということになりますれば、これは私はその社会主義が悪いのだ、こういうことになるから、思想ということが、或いは思想、主張と言われた三つの要素の中の二つの中にも入るというようなことは、これは妥当ではないじやないか、それが思想干渉の一つの態様になるではないか、こういうことを申上げているのであります。
  79. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 今おつしやいました通り趣旨で申上げておるのであります。今御疑問になつているようなことは勿論含まない趣旨で申上げておるのであります。
  80. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 含まない趣旨で申していると申されましても、述べられた説明は、思想、主張、記事の構成ということで詳しく述べられた、その述べ方が、私が先ほどのような疑問とそれから反問するような述べ方であつたから申上げておるのであります。そこで結論から申しますと、折角たくさん述べられたけれども、問題の回答にはなつていないのじやないか、或いは同一性の標準として、物差として、これはあなたのあれで言うならば客観的な物差として出されて来たけれども、客観的な物差でなくして、多分に主観的な物差になつているということを、こういうことを申上げているのであります。それはそういう工合に考えられると思う。私はまあ今の御説明では、同一性を判別すべき客観的には物差にはなつておらんように解釈される。
  81. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) 昨日からの私どもが答弁いたしておりまする経過を申上げますと、結局編集方針、題号の同一性と編集方針の同一性、而もその編集方針は抽象的な編集方針ではなくて、紙面に現われた編集方針の同一性ということによつて判定されるべきものではなかろうか。それではどういう点にその編集方針の同一性が判定されるのか、一口に紙面に現われたというだけでは漠然としておるではないかという点が問題になりました。編集方針の同一性というのはどういう点に現われるものであろうかと申しますと、実質的な編集方針といたしますと、結局新聞の社説とか主張とかというような欄がございまして新聞の具体的な意見が、強く具体的な大小幾多の問題について打出されて来るわけでございますが、これはその時々にくるくる変るのではなくて、やはり背後の団体立場なり編集スタツフの立場、補充的一般的な立場というものがそのベースになつて参りまして、一つ政治、経済、社会その他の問題についての基本的立場というものがその主張の裏に滲み出して来る。もとより新聞でありますから日常起きる重大問題、或いはその他の問題につきまして具体的な編集方針は立てますが、そのほかに一般的な編集原理と申しますか、編集の基本方針というものも当然あり得る。かようなもの、両者が主張の欄に強く打出されて来る。補充的には天声人語とか補充的な論説欄に打出されて来る。こういうようなことによりまして、前にあつた新聞とあとにあつた新聞を比較して見まするときに、その点も一つの標準と申しますか、同一編集方針の紙面に打出された点を比較する重要な部面になるのではないだろうか、かような意味で申上げたのでございます。
  82. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 依然として言葉は思想という言葉でございませんけれども政治、経済、社会に対する基本的立場ということで思想が出ております。思想を同一性の場合に挙げられる、これは削られるべきだと思うのです。さつき例を挙げられましたけれども、前の新聞も、或いは書いた編集方針の基本的なものに思想が出ていたり、或いは次のやつにも思想が出るでしよう。思想は私はこの場合の同一性の基準にはならんと思うのです。なすべきではないと思うのです。具体的な破壊活動の方法、まああなたたちで言うと宣伝と言いますか、とにかく方法について同一であるかどうか、これが問題になるべきだと私は思うのです。そのことを先ほど申上げ、思想を同一性の中に織込まれるということになるならば、それは口じや思想について関与をしないと言われるけれども、自然に関与することになるじやないかということを申上げておるのです。もう少し具体的に書いたものでも頂かなければ検討がなかなか困難でありますけれども、少くとも今口頭で述べられましたものについてもその点は私間違いないと確信をいたします。
  83. 小野義夫

    委員長小野義夫君) ちよつと文書で……吉田君にちよつと注意いたしますが、いずれ文書で渡すことにしてこれは今幾ら議論しても解釈と言いますかね、ちよつと今すぐここで論議はできんと思うのですが……。
  84. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 それじや文書に書いてもらうことにしますが、今の御答弁を聞いておつても、佐藤意見長官と吉河特審局長の間に私は意見の食い違いがあると思う。
  85. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 書いてそれから一つすることにいたしましよう、意見になりますから……。
  86. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 私には意見の食い違いがはつきり感じられますよ。
  87. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それはありますよ。
  88. 小野義夫

    委員長小野義夫君) そういうことを一つ承わつておいて、文書にして……。
  89. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 ちよつと……。
  90. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 何かそういうことは簡単に一つ
  91. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 その点について法務総裁お忙しい中でありますから、逐条の際に御出席を願えるかどうかわからないので、今の点について極く簡単にお聞きしておきたいと思うのです。  それはいわゆる新聞の自由に関する問題なんです。第四条の二号に暴力主義破壊活動が機関紙で行われた場合に、その機関紙を六ヵ月を超えない範囲を定めて「当該機関誌紙を続けて印刷し、頒布し、又は頒布する目的をもつて所持することを禁止する」という問題についてなんですが、これについてこの一般新聞界が非常な不安を感じておることの理由は二つあると思うのです。簡単に申上げますと、その一つは、果してこういうことをなさつて、それでこの破壊活動をなすところの新聞というものを防ぐという実効があるかないかという問題が一つなんです。これはもう詳しく申上げません。これについては特審局に経験を持つておいでになりますから、如何にそれが効果がなかつたか、結局その結果は次から次と別の新聞が出て来る。次から次とそれを抑えて行くという、まあ何と申しますか、実に乱暴と申上げないまでも乱雑になります。そうなると次から次と出て来るものを次から次と抑えて行くということになると、折角法務総裁のお気持でここに立ててある、飽くまで暴力活動というものを中心にして行くという考えからだんだんその判断が乱暴になりまして、大体同じものだろうというふうに行く虞れがあるのではないか、これが一点であります。それから第二点は、そうしますと最後にその破壊活動的な仮に機関紙というものも、今度は第二では別に何らの団体というふうな或いはその目的というふうなものを明らかにしないで、一般紙と非常に似通つた形のものが出て来ることが予想されるわけです。それでこれも法務総裁御自身は、それは直接破壊活動を曾つて行い又反覆するということにはひつかかつて来ないということになるようでありますけれども、併しそれが今申上げたように非常に混雑した状況において出て参りますと、そうしますとそこに今ちよつとお引きになりましたように、最後には編集上の方針ということでやつて行くほか仕方がないということになつて来る。そうしますとこれは明瞭に或る団体が、破壊活動を機関紙において一ぺんやつた団体のものじやない、そういうことも何も書いてない、誰がやつているのだかよくわからない、形は一般紙の形をとつている。併し実質的にはこれは破壊活動を一ぺんやつた団体が再び繰返そうとして出されている機関紙だというように認定をせざるを得ないですね、これはどうしても……当局としてはそういうふうに進んで参ります。例えば第二の点がどうかするとそれは一般紙において或る論調が現れているのが、その一部分的な現れではないかというふうに見られる虞れが起つて来るのじやないか。これは戦争中にもそういうことが起りまして、毎日にせよ朝日にせよ、そういう点で、朝日全体がそういうふうになつているわけじや勿論ない。併しながらその一部分に戦争に反対或いは共産主義的な目的を以て、当時の考え方ではやはり一種の破壊的な活動をする者が入つて行つてこういう記事を書くのじやないかというふうにまでなつてしまう。これは勿論これらは直接そういうことになるのじやないのですが、その点は御了解頂けると思いますが、混雑になり、混乱して行く場合に、そういうことが起つて来やしないか。そのために朝日なり毎日なりの、朝日新聞や毎日新聞が、こういうものが該当するということはこれは勿論心配しないのです。そういうことでなく、その朝日なり毎日なりの紙面に現われている或る部分的な活動においてこれらと関連があるのじやないかというように疑われる場合が恐れられるのじやないかという点の心配が主な心配だと思うのであります。今申上げた二点につきまして法務総裁もそういうような御心配が起り得るかも知れません、こういうようなふうに御想像して頂けると思うのでありますが、そういう点をも含んだ問題でありますから、どうか一つ後にこれは今委員長の御注意で逐条で伺つて行くことになるのでありますけれども、それらの点について、即ち新聞の自由というものを飽くまで尊重する、これはもう法務総裁の御意思はよくわかつておりますから、それがこの条文によつていやしくも犯されて行かないようにあらゆる面をお考え下さいまして、それを政府側からの御答弁のうちに現わして頂きたいというふうにお願いしてお聞きしたわけであります。
  92. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 次に保留されました代理権云々の問題、あれの御答弁を……。
  93. 関之

    政府委員(関之君) これも伊藤先生からのお尋ねで留保してあつた問題でありますが、当該団体の代理人が審理官の前におきまして各種の弁解をいたすのでありますが、その際に団体の役職員等との間に供述の食い違いがあつた場合に、特に代理人が不利益な供述をしたというような場合の措置でありまするが、この扱いにつきましては、昨日来の伊藤先生の御注意誠に御尤もでありまして、その趣旨のことを法務府令に明らかにいたしたいと、かように私ども考えている次第であります。この点で御了承を願いたいと思うわけであります。
  94. 伊藤修

    ○伊藤修君 その点にお気付願えますれば、その基本的な問題はそれで片付くのです。ただそれの扱い方として法務府令で賄えるか、或いは本法において賄わなくちやならんかは、なお私のほうも検討いたしまして、いずれ意見を申上げたいと思います。
  95. 小野義夫

    委員長小野義夫君) なおありましたかね。
  96. 関之

    政府委員(関之君) それだけです。
  97. 伊藤修

    ○伊藤修君 もう一つ昨日答弁を要しないと、こういうようなことを関君に申上げておいたのですが、速記録によりますと、そのときたしか関君か吉河君が御答弁になつて法務総裁考え方はわかりませんがというふうなあれがあつたのです。要するに第二条において調査官に対するところの訓示的規定が置かれているわけです。その本法によるところの対象というものは、調査官によるところの行政処置に関するところの調査に関する職務執行もありますが、又半面においては判事手続が本法運用の関係においてやはり大部分をなすでしようから、その場合において捜査官もやはり本法の趣旨を体しなくてはならんのではないか、そうすることが本法の完全なるところのものになるのじやないか、なぜこれを入れなかつたか、入れる必要があるのじやないか、こういう意味です。
  98. 小野義夫

    委員長小野義夫君) ちよつと速記をとめて。    〔速記中止〕
  99. 小野義夫

    委員長小野義夫君) それじや速記を始めて。
  100. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 今の御質問は調査官とそれから直接に捜査を行ういわゆる警察官ですね、それどの扱いはどうか、調査官については第二條に規定があるが、いわゆる捜査官についてはどうするのかという御質問のようでありますが、捜査官につきましては刑事訴訟法について、第一条ですか、はつきり規定いたしておりまするから、この第二条には謳わなくてもいいのじやないか、こういう考えであります。
  101. 伊藤修

    ○伊藤修君 それは刑事訴訟法にはありますけれども、本法の構成趣旨を、いわゆる濫りに濫用しないとか、或いは逸脱してはならないとかというの第二条の趣旨を捜査官にもこれを義務付ける必要があるのじやないか、こういうのです。それは刑事訴訟法において逸脱した行為をなしてはならんということ、それは職権濫用罪になつて来るのですから、そういう場合は他の法律で規制されて来ますので、本法運用について捜査官もやはり基本的な立場においては一部タツチするわけですから、本法の趣旨が少しも制約されないのかどうか、自由自在に勝手にやつてもいいのか、本法の趣旨は俺たちに何も義務付けられていないのだからかまわないんじやないか、こういうことが考えられる、反対的に、これは第二条を反対考えると……。だから捜査官にもやはり本法の趣旨を体してやはり捜査をしなくちやならんということが当然義務付けられるのじやないでしようか。謳う謳わんは別問題として。
  102. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 大体において本法の規制に当るのは調査官でありますが、併しまあお説の通りいわゆる警察官といえどもそれにタツチしないわけではないので、その警察官といえどもこの本法の施行については十分なる注意をし、又本源の所定する趣旨に従つて行動をすべきことは勿論であります。それらの点につきましては、我々はいよいよこの法案が実施されるときに十分に訓令をいたしまして、万過ちのないようにいたしたいと考えております。
  103. 伊藤修

    ○伊藤修君 それから法務総裁がさようにこの法律趣旨を、第二条に盛られてあるところの趣旨を捜査官にもひとしくこれを遵奉せしむるというお考え方ならば、やはり本法の上において賄つたほうが正しいのではないか、又国民も安心するのじやないかと、かように考えるのですが、如何ですか。
  104. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お説御尤もであります。十分に一つ考慮して参りましよう。
  105. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 さつきの代理権の問題について……。
  106. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 実は法務総裁ちよつと用で出て行かれるので、王柳君の通告によつて御出席になつたわけですから、先にちよつと。
  107. 玉柳實

    玉柳實君 先日私がお伺いいたしました質問の中で、あとで総裁からお答えすると保留になつた問題が二、三あるのでございますけれども、その点につきましては今日それには触れません。ただ一点政府委員から御答弁がございましたが、それが不十分でございましたので、而も時間の関係等でこれを打切りました問題がございます。それで本日法務総裁御出席の機会に重ねてお伺いを申上げまして、疑問の点を明らかにして頂きたいと、かように考えましてお尋ねするわけでございます。  お尋ねいたします。この問題の要点は、御承知のように現在労働組合が破防法の反対或いは労働法規改悪反対等のいわゆる政治ストがすでに第二波、第三波と繰返され行われておるわけでございまするが、かような場合にこの破防法の適用は絶対にないものであるかどうか、状況によりましては適用される場合もあり得るのでないかどうか。この点に対する疑問を少しでも明らかにして置きたいと、かように考える次第でございます。従来法務総裁は本法は労働組合の正常な活動に対して何ら影響を与えるものではないという御説明をたびたびなさつております。まさにその通りだと私も考えるのでございます。併しその都度法務総裁は正常な活動をという言葉を附加えることをお忘れになつておりません。半面から考えますると、若し労働組合が不法な活動をした場合には必ずしも本法を適用しないぞという保障を与えたものではない。かようにもまあ解釈できるわけでございます。そこで現在の労働組合が繰返しやつておりまするいわゆる政治ストの点でございまするが、これにつきましては私どももかねてから違法なるストであると、かように考えておつたのでございまするが、今朝の各新聞を読みましても、昨日労働省から東京都知事の照会に対しまして正式にこの政治ストが違法であるということを通達をし、その写しを各県の知事に対しても通達をされておるようでございます。全部は長くなるので読みませんけれども、その中には「国会の立法に反対するようなストはいわゆる政治ストに該当するもので、憲法第二十八条で保障する団体行動権の範囲を逸脱した行為である。かような政治ストには労働法上の不当労働行為、刑事上、民事上の免責等の労働者に対する保護は与えられない。」又他のほうには「政治ストについては刑事上の免責はないから、その行為が刑法その他の刑罰法規の規定に該当する場合には処罰を免がれ得ないものである。」ということも明記されてございます。総裁も政府の一員でございまするので、恐らくこの労働省の通達に御賛成のことと考えるのであります。私も又賛成なんでございますが、ただそれに対しまして新聞記事によりますと、総評の長谷部法規対策部長の談といたしまして、「憲法二十八条の解釈は当然に一般的仕合的慣習によつて行われるべきもので去り、国際的にみても労働者の争議行為は適法であることに間違いがない。従つて、この意味から今度のストに対しても憲法に裏づけられている労働三法の保護は当然受けるものである。」、かような談話がございますし、別な新聞にも同長谷部さんの談話といたしまして、「労闘の今度のストは、労組希賃金要求をするため憲法に認められた労働基本権を制限しようという諸法宝に対する反対意思表示である。従つて政治ストではなく、労働者の権利のための闘争である」と、かような談話も載つておるのでございまするが、今回のこの国会の立法行為を阻止しようといういわゆる政治ストは違法な行為であると、かように思いまするが、質問の順序といたしまして、一応この点について総裁の御見解を伺つて置きたいと思います。
  108. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) この政治ストの問題でありまするが、政治上の主義主張を貫徹するためにストライキをやることは、まさに私は労働法規の保護を受けないストライキであろうと思います。申すまでもなくスト権は労働組合が争議解決の手段として求めるのであります。併しスト権の行使は労使関係において、労働関係についての争議が起つた場合に、その解決の手段として最後に用うべき手段であります。いわゆる資本家でいえば、これはロツク・アウト、労働組合側においてはスト権の行使、これであります。つまり労使が対等の立場において互いに主張を貫徹するという場合でありまして、いわゆる政治ストは労使の間において何ら関係がない。労使間において、労働関係についての争いがない、然るにかかわらず、一つ政治上の目的で以てやろうという場合に、これは当然労働法規上の保護を受けるに値いしないものであろうと我々は考えております。まさに労働省が発表した見解の通りであります。而してその場合に本法の適用があるかどうかという最後の問題でありますが……。
  109. 玉柳實

    玉柳實君 併し総裁、最後に私の言うのを聞いてから結論を出してもらいたいと思うのですが……。
  110. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) この際は私は労働法上の保護を受けないものである、こう考えております。
  111. 玉柳實

    玉柳實君 只今の御説明によりまして、最近の破防法或いは労働法規反対のいわゆる政治ストが違法なストである。総裁がしばしばお話になります労働組合の正常な活動ではないということが判明いたしたのであります。私もその点は同感なんでございますが、而してこの違法なるストは、御承知のごとく労働組合の正式な機関によりまして決定され、組合員もそれを納得してストの実行に出るのでございまするので、従いまして本法第一条にいういわゆる「団体活動として」という定義にも該当するのでないかと考えるのでございます。それから本法の第四条には、団体規制のためには、更に団体が継続又は反覆して将来の危険性が明らかに感ぜられる場合に規制せられることに。なつておりまするが、今回の法案反対のストは、すでに四月十二日に第一波が行われ、十八日には第二波が行われ、明日は第三波のストが行われる。更に本月十七日には第四波ともみなすべきストが行われるというすでに方針が決定しておるようでございます。従いまして今回のこれらの政治ストは、第四条にいう継続反覆の概念にもおおむね該当するのではないかというふうに考えられるのでございます。而してこの犯罪の内容の点でございまするが、これはこの点につきましても総裁は従来の御説明において、しばしば労働組合がこの第三条各号に規定しているような凶悪な犯罪をあえてするということは毫も考えないというお話もございましたし、又私もさように考えるわけでございます。併しながら問題は初めからかような凶悪なる犯罪を起すことを意欲してやつた場合にあらずして、私から御説明するまでもなく、犯罪構成要件の犯罪ということは、必ずしもその結果を意欲して行なつた場合に限らない。結果に対する事実の認識があれば足りるということになつております。かようなことをすればかような結果が生ずるという事実の認識があれば犯意ということになる。而も確実にかような結果が発生するという確定的な認識がない場合においても、かようにすればかような結果が発生するかも知れないし、或いは発生しないかも知れない。未確実な結果に対する認識であつても、いわゆる刑法上未必の故意として犯罪を構成するということになつておりますることは、これは刑法学上初歩の問題でございます。そこで私の疑問の点をはつきりして頂きたいという点も、その未必の故意に相当する場合の問題なんでございます。それでこの政治ストをやる、それからそれに従つてデモも行われます。そうしますと、例えば国鉄なり私鉄でストをやる、或いは駅頭に群衆が激昂の余り駅員に対して脅迫、暴行が行われる。或いは群衆同士の間において暴行脅迫がある。或いは又列車、電車に対して投石破壊するというようなことも行われやすい問題でございまして、そうして又最近のストに伴うデモの実状を考えてみましても、デモ行進をやりますると、先を竹槍のように殺いだ旗竿を持つて加わる。或いはプラカードを持つて、いつでもそれが武器に転用できるというような物を持つて行く。或いは棍棒を携えてる者もありましようし、火炎壜を密かにポケツトに入れて臨む者もございましよう。これは最近のデモ行進にはよく見られる事実でございます。従つてストなりこれらのデモをやればそうなりまして、結局これを警戒する警察官との間に衝突して、双方の間に非常な激突を見て、相互に負傷者を見るというようなことは最近のデモの場合に事実上見られた問題でございます。従つてかようなストをやればかような騒擾にも似た行為、或いは警察官に対する職務の執行妨害なり強要のような行為も必ず、或いは必ずと言わなくてもいい、随伴するということが容易に私は予見できると考えるのでございます。それが故にこそ警察におきましてはストが行われようとする際にはあらかじめ厳重なる警戒態勢をとります。去る五月三十日のデモ事件に際しましても、東京都の警視庁管内においてのみでも二万三千人からの警官を厳重に配置して、終夜厳重な警戒を続けたということでございます。従いまして法務総裁がしばしば繰返し言われますように、労働組合は三条各号に規定するような凶悪な犯罪行為を起すということは毫も考えられないというようなことで、一つも警戒をしないでストに臨んだとして御覧なさい、どのような結果が発生するかも知れない。又これでは治安責任もとれませず、恐らく最近のストの実情から見て、木村総裁も傍観して、無警戒の態勢においてよろしいとお考えになるはずはないと思うのであります。従いまして違法なストをやれば、結果としてかように騒擾なり職務執行妨害その他放火なり、或いは往来の危険、電車の転覆その他の危険なことが発生するかも知れんという予見は十分にできる。警察においてできるのみならず、一般家庭においてもストの当日は非常に警戒をいたします。若い娘なんかには新宿とか日比谷とか、そういう所でうろうろしては危いから早く帰りなさいよというふうにお母さんたち心配する。従いまして労働組合におきまして、ストをやる場合にはさような結果が随伴して起るかも知らんという危険性は私は予見しないことはないと思うのであります。又確実に起るということを予見しなくても、或いは起るかも知らん、起らんかも知らんという程度の認識であつても同じことであることは先ほど申上げた通りであります。かように考えてみますると、この最近の破防法反対、労働法の改悪反対等のために違法なるストが繰返し繰返し行われることは、本法に規定する各条の条件にぴつたりと当てはまるのではなかろうかという疑いがあるわけでございます。従いましてさような場合に本法は絶対に適用がないものである、或いは場合によつては適用され得ることもあり得るのではないか。この点につきまして若干の疑問を感じましたのでお尋ねを申上げる次第でございます。
  112. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 本法案におきまして団体を規制しようといたしますのは、団体が自己の意思を決定して、その意思が本法第三条に規定しておりまするような凶悪なる破壊活動をなそうとする場合であります。今仰せになりました労働組合は、さような確定的な意思決定をしない場合と私は患つております。そういう意思決定をした場合にはもとよりこの法案対象になることは当然であります。併しさような意思の決定のあるなしにかかわらず、そのうちの或る者が破壊活動をなした。いわゆるこの間のメーデー事件のような騒擾を起した者がある。この場合におきましてはもとより或いはその団体の首脳者はさようなことであるかも知らんという、未必の故意はあつたかも知らん。併しそれは問題にならないと私は考えております。要するに当該事故を起した者が個々の犯罪として刑罰の対象になることはもとよりであります、その間において団体がそれがために本法の規制を受けるということはないと考えているのであります。
  113. 伊藤修

    ○伊藤修君 今までの答弁と違いますよ。未必の故意は本法において処罰するということは確定しているのです。団体がそういうことを未必の故意を以てする場合においては、それは結果的において処罰されることになるということに見解は一致している。
  114. 玉柳實

    玉柳實君 総裁の今の御見解は解消したわけでありますが、そういたしますと、破壊活動防止法の刑罰規定的な問題は、一般刑法におきまして、いわゆる未必の故意として犯罪の要件を構成するという観念と違つた概念を持つておるものと、かように解釈すべきものなのでございますか、さように受取れたのでございますが……。
  115. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私の申上げましたのは、団体団体意思決定によつて、かような凶悪なる破壊行為をなそうという場合でありまして、団体がさような意思決定をしないにかかわらず、たまたまその中の或る者が破壊活動をしたという場合においては、それはなした者の個々の責任でありまして、団体としては本法の規制の対象にはならん、こう申上げたのであります。
  116. 玉柳實

    玉柳實君 私としましても、結果におきましては総裁のおつしやるようなことであつて欲しいと考えるのでございます。従いまして違法な政治ストをやる、違法な政治ストをやれば、その結果において、先ほど申上げましたような騒擾或いは職務執行妨害上の行為が随伴して起りやすい…最近の実情はことごとく起つておると申してもいいわけでありまするから、それを承知して団体意思として正式にストを決定したわけであります。而も又その決定を組合にずつと流せば、組合員はそれを了承して、事実上デモ行為に参加したわけであります。従つて団体の行為として直接の狙いは、かような破壊活動をやる狙いでは勿論ないわけであるけれども、その結果としてさような結果がいわゆる随伴し、未必の故意として行為者は一般の行為と同じように刑事上の責任を負わなければならんというふうに考えますると、どうも総裁の只今のような御答弁でよろしいかどうかにつきましてなおいささか疑問を感ずるわけでありますが、只今の御答弁で絶対に間違いございませんでしようか。
  117. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) ただやるかも知れんというようなことだけでは本案の対象にはならんのでありまして、これが団体で以てそういうことをやろうじやないか、又やるということは、そういう事実が起るということを十分に予見してそれをやらせるというようなことになりますると、本法の対象になるのはもとよりであります。或いはやるかもわからんというようなことでは本法の対象にはならんと思います。
  118. 玉柳實

    玉柳實君 只今の御見解によりまして大体わかつたのでございます。その結果として、先ほど例示したような行為が起るかも知れんし、又中には起してやろうというような意図を以て最初からやつたとすればこの適用は免かれない、この適用を免かれないであろうというようなお話があつたわけでございます。そこでいわゆる状況によりましては極めてデリケートな、微妙な関係が生ずる場合が起りやしないかも知らんということを憂慮する次第でございます。例えば組合が初めからかような凶悪な行為をやることも認識し、十分認識してなおあえてやつたという場合は、もはや正常な労働組合の活動ではないのだから、ここに規定する暴力活動に含むべきものであるというふうに考えられる場合におきましても、さように認定するのは誰かと言えば、公安調査官なり審査委員会というようなことになつて、これを軽卒に認定するようなことがございますれば、政府と労働組合との間にそれこそ非常な対立を来たして、不測の事件が起きないとも考えられません。これは政治上から考えても誠に憂慮すべきものだと考えるのでございます。従いまして本法の適用につきましては、これが指導に十分と御注意を頂きまして、さような微妙な問題が起り得ることが予想される場合におきましては、十分に御留意の上、政府と労働組合との間に無用の対立、抗争を行わないように十分な御配慮を願い、又これの取締の第一線に当る調査官等へも御注意を喚起せられるような御配慮を特にお願い申上げまして、私の質問を打切りたいと思います。
  119. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 極めて重大な質疑応答が行われましたので、関連してお尋ねをいたしたいのであります。  その前にこれは玉柳さん個人の御意見或いは御質問であつたと思うのでありますけれども、正常な労働組合活動につきまして、これを非合法或いは違法と認めて、給与の方法に対します労働組合の活動破壊活動防止法を適用しようというような御意図は、これは私は自由党のために極めて悲しむものであります。或いは衆議院等でも破防法審議に関連しまして、速記録によりますと、或いは団体の問題に関連をいたしまして、そういう概念に関連をいたしましても、或いは法の解釈に関連をいたしましても、自由党の議員のかたの御意見に、自由主義的でない御意見に特審局のほうで若干靡かれるんじやないか、こういう疑問を持つような答弁がございましたことを私は遺憾に思つてつたのであります。その点は木村法務総裁の御答弁と、それから良識を以て律して行こうという御態度に信頼をいたして参りたいと考えるのであります。労闘のいわゆる第三波と言われますものについての法的な解釈の問題で、法務総裁は違法なストである、或いは政治ストであるからこれは違法なストである、こういう御答弁がございました。この点は本会議におきましても私は先般治安維持に名をかる政府の諸政策について御質問をいたしましたときに、労働大臣からも最後に答弁があつて、あと再質問の機会がなかつたのであります。この点にも関連をいたしますが、憲法第二十八条に労働者の団結権が規定をせられております。その中に「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利」云々という言葉がございます。この条章の中において、団体行動をする権利が認められておりますが、その団体行動をする権利、団体行動権の中にスト権が認められておることも、これは御承知の通りであります。この点は論議の余地がございません。破防法につきましては今玉柳委員から、公務執行妨害に関連して例を挙げてそういう危惧があるじやないかというお話がございましたが、これらの点について従来の実例から、この破壊活動防止法が労働組合の正常なデモ、その他に適用せられる危険性を感じております。それからなおこれは御否定になりますけれども、労働法の改正にいたしましても、緊急調整を中心にいたしまして改正が企てられておりますけれども、この緊急調整によつて労働組合の活動、特にいわゆる公益事業と言われる炭労、電産、私鉄、こういう現在争議権を持つております組合が、事実上争議権を奪われるのではないか、或いは奪おうとする意図があるということを感じ取つております。従つて労働組合の活動が、これらのいわゆる治安立法或いは労働法の改正によつて制限せられて参りまするならば、これは次の機会に、或いは給与の問題につきましても、これから夏から秋にかけて給与の問題がそれぞれの組合において問題が起るでありましようけれども、組合活動を完全に制約してしまう結果が起るのではないか、こういう危険性を極めて強く感じておる。労働組合の活動が制約され、その力が骨抜きになりますれば、これは自分の生活或いは経済的な地位を守ろうといたしましても、それはその力がなくなる。憲法に与えられた団体行動の権利、或いはそれから来ますところの自分主張、身を護ろうとする力がなくなつてしまうというところに、労働組合が或いは治安立法について或いは労働法の改正について反対している点があることは、これは木村法務総裁御存じのところであると思います。今度の問題について、これが法案に関連するから政治ストになるのだ、こういうお話でありますけれども政治の問題について国民が主権者としての主張をなすことは、これは何ら問題はないと考えるのであります。或いは労働組合が賃金の問題にいたしましても、例えば国鉄或いは専売、その他公務員にいたしましてもそうでありますが、給与の問題に関連して、或いは給与に関する法律或いは夏期手当に関する法律、こういう法律の問題に関連をして参りますが、この法律について意見を述べ、或いは許されておる団体活動或いは団体行動をすることについて、それが違法であるとは恐らくおつしやらないだろうと思う。そのそれぞれの組合が、或いは一つの組合が給与の問題について行動をいたします場合に、本法において争議権が制約されることは事実であります。そこでその行動について公企労法上の、或いは国家公務員法上の判断がなされるということは、これは私は否定するものではございませんけれども政治的な主張を持つておるから、或いは政治的な主張を含んでいるから、それが政治ストであり、それが禁止されるべきものである、或いは違法であるというのは、私は憲法の精神に従いまするならば、これは解釈が間違つておると考えざるを得ないのであります。基本的に或いは政治的な主張をなし、或いは政府を交替せしめる、この権限はこれは国民に与えられておる民主主義上の基本的な原則だと思うのでありますが、それを制約するということは、私は新憲法の下においては許されない。従つてこのたびのこの法規改正問題或いは制定問題について、許されておる行動の範囲において或いは集会をいたします、或いはデモをいたします、或いはストライキをいたします等が違法であるという理由は何ら私はないと考えるのであります。木村法務総裁の賢明なる、或いは民主主義的な憲法を復調せられました木村法務総裁の御見解を承わりたいと思います。
  120. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。労働組合が政治上の意見を発表することは、これはもとより適法で、何ら口を差挾む余地はないのであります。自由に制限内においてその意見を発表されてよろしいと考えております。然しながらこのスト権の行使については、これは制約を受けておるのであります。御承知の通り憲法の下に制定されました労働関係調整法第六条におきまして、明確に規定されてあります。いわゆる労働争議の定義をはつきりしております。労働関係者において労働問題について意見の不一致が生じた場合に、その意見を遂行する目的を以ていわゆる労働争議に入るわけなのでありますが、要するに労使の関係において意見の不一致があつたということが労働争議の根本の建前になつておるのであります。申すまでもなく労働組合において、労働組合法第一条において明確に規定されておりまするように労働者の生活の向上、経済上の地位の確保、その他いわゆる労働者の生活問題について、その地位を確保するために組合を組織して、そうしてその活動を容易ならしめるということになつておるのであります。どこまでも法の建前といたしましては、労働者の地位の向上、生活の改善、これを目的として労使間においての調整を図るということであります。その場合に労使関係に意見の相違があつてまとまらない場合において互いに、労働組合はストをやる、経営者側においては工場閉鎖というような、最後の手段に出ずることができることになつておるのであります。政治上の問題については、全くこの労使間において何ら意見の不一致がない場合であります。その場合にスト権を行使する、始めて労使間においての意見の不一致のときに行使するのであります。労使間に何らの意見の不一致かない場合に、政治上の目的を以てスト権を行使するということは、これは法規上認められない行為であります。さような場合においては、労働法規の適用は今後受け得られないのであります。これはまさにその通りであろうと我々は確信いたしておるのであります。
  121. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 憲法二十八条には何らお触になりませんでしたが、これは新憲法の下においては基本的な関係、特に国家権力の制限として憲法が制定せられた、その中で労働者の団結する権利或いは団体交渉をする権利等を憲法で規定しておる。あとは個々の労働関係を規定するものとして或いは労働組合法がある或いは労働関係調整法、或いは一般の労働者の中から公務員だとか或いは公共企業体であるとかは別に抜き出されて規定される、これは事実であります。併しながら問題は労働組合の或いは労働者の活動をどういう工合に憲法で考えるか、日本の国として全体的に考えるかということは、私は憲法が謳つたところと思うのであります。労使間において意見の不一致ということがない場合云々と言われますけれども、給与の問題につきましても、先ほど例をとりましたように、或いは国において雇われておる者についてはこれはその給与も法律になつております。だから政治的な性質を帯びるし、或いは法律に関連することは当然であります。それからもう一つ、この労働組合の場合に、労働組合法或いは労働関係調整法を御引用になりましたけれども、その場合に、労働者と或いは資本家というのは、個々の一つの工場、或いは炭鉱、或いは職場だけとは恐らくおつしやるまいと思うのであります。或いはこれを全国的に拡げますならば、一つの単位産業において全国的な組織をそれぞれ持つてつて団体交渉もやる、これもお認めになるだろうと思います。それから労働関係法規の改正について、或いは治安立法というものについて、或いは日経連その他から意見が出て、そうして労働関係法につきまして、労働関係の緊急調整制度を設ける云々ということが日経連から言われ、そうしてそれがあの改正案の中に入つてつたということも事実であります。そうすると、労働組合の活動について労使間に意見の相違がある、そうしてその問題が労働関係法に現われて来た、これは政府としては、両方の意見を聞いた上でと言われるかも知れませんけれども、その問題については、緊急調整なら緊急調整という問題については、労使間の意見が分れ、そうしてそれが法案になつて現われて来たという事実、これは御否定になるまいと思う。そうするとその労働関係法の問題について意見が分れた場合に、他のあらゆる方法を以てやつたけれどもその主眼が十分容れられて参らなかつた。残る方法として最後にストライキをやる云々ということについては、私は賢明な木村法務総裁はそれは二十八条違反である、こういう工合には御答弁にならないと期待いたしておつたのであります。先般の十八日のストの問題につきましても国際的にどういう反響を呼んでおるか、或いは外国新聞、雑誌がどういう工合に論評しておるか、これは木村法務総裁といえども御存じであろうと思うのであります。あの問題についてエコノミストだつたかと思うのでありますけれども日本で最初の大きなストライキが行われたけれども、それは日本民主主義の発展の結果であつて喜ぶべきである、これに対して政府が弾圧をするというような、蛮勇という言葉が使われておつたかどうかわかりませんけれども、こういう弾圧をするような、抑えるような蛮勇を振わなかつたことは極めて賢明であるということが書いてございます。これらの点から考えましても、或いは諸外国のこの種の問題についても、私は民主主義の建前から、二十八条と同様の解釈が行われて来ておると解しておるのであります。今の御答弁について、木村法務総裁は御反省になる意図はないでありましようか、一つ承わりたいのであります。
  122. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私の先に申上げました意見は、自分の確信に基いて申上げたのであります。もとより憲法第二十八条においては労働者の団結権、交渉権、その他行動権が保障されておるのであります。憲法というのは、これは基本法であります。この基本法に基いてあらゆる毎度から検討して種々の法律が出るのであります。もとより団体交渉権などにつきましてもこれは自由でありまするが、これが個々の場合に如何に取扱うかということについて、別に法律を以てこれを制定しておるわけであります。ただ憲法に保障されておるからといつてそれは無制限に行使することができるわけではないのであります。憲法の下に制定されました法律に準拠して各種の行動はとらるべきものである、こう考えております。その憲法の下において作られました法律がストについての定義を下しておるのであります。そのスト権の範囲において労働組合は行動すべきであろうと確信して疑いません。この政治ストにつきましては、我々は終始一貫、この労使間において何らの争いなきにかかわらず、法律の制定その他のものについてストをやるということは労働組合の行き過ぎである。これは、私はその建前を終始とつておるのであります。労働組合といえども、もとより政治上の意見を述べ、その主張を貫徹するためにいろいろな方法をとられるでありましようが、スト権の行使ということについては、私はまさに許すべからざるものであろう、こう考えております。
  123. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 成るほど、労働関係諸法規で、労働関係諸法律の諸関係を規定しておることは、これは認めますけれども、問題になりました場合に、或いはこれを新らしく論議をいたします場合には、これは民主主義の原則に帰つて、或いは憲法の精神に帰つて論議すべきが当然ではないか、その点を申上げたわけであります。この問題につきまして、これは第二波と申しますか、十八日にストライキがございました前後、日経連等において意見が出されて参つたことは御承知の通りであります。政府がこういう事態の下において日経連そのままの、意見を持ち出される。或いはその主張を言われるようなことは、私は国として、或いは木村法務総裁として甚だ遺憾に存ずるのであります。言わば国が資本家の代弁であるがごとき立場をとられるということについては、これは労働組合に対しても極めて遺憾な態度であると私は考えざるを得ないのであります。その点を一つお伺いをしたい。それからもう一つ先ほど世界の民主主義的な輿論のことを申上げましたけれども、私は木村法務総裁ともあろう人が世界の常識を外れて、まあ勇敢にと申しますか、という意図を以て立ち向われることを極めて遺憾に思うでのあります。これは最近の事例を述べて私は申上げますけれども、こういう態度、或いは若しそれを更に拡張して、先ほど、甚だ失礼でありますけれどもお話がありましたような、破壊活動防止法をも労働組合運動に適用するような動向に参られますならば、これは労働組合についての、而もその労働組合の中で合理的に、合法的に、民主的に自分主張を述べてやつて参りたいという労働組合に対する私は真正面からの挑戦だと考えるのであります。この破壊活動防止法の問題につきまして先般、土曜日でありましたか、百二十何万という署名を持つて参議院に参ろうとしたのであります。そのときに、これは警視庁の情報が間違つてつたか知らんと思うのでありますけれども、二千名近いデモ隊が国会に参るかも知らん、こういう予想の下に警視庁の予備隊が動員されまして、前日警視庁の要望によつて国会にはデモが参らない、四谷に行つて解散するということで、二十名の代表が院内に入ろうとされたにかかわらず、門のところで入れる入れんということで二時間も待たして、門を閉めて門を入れる入れんで、或いは二百名近い人たちがたつた二十名の代表者を、而も何も持つておらん代表者、襷をかけて代表者であるということを表示している人たちを二時間余りも威圧しながらこれを阻止された。こういう事態が起りました。これはどうも情報の間違いのようでありましたけれども、この民主的な手続き、合法的な、許されておる手続をやろうというこの行動に対して、方向に対しまして、これを真正面から力を以て抑えつけて行く、或いは阻止して参ろうというような態度をとられますならば、これは先ほど申しますような私は挑戦になり、或いは大きな挑発になつて参ると思うのであります。この方向の参りますところは、私は極めて危険な方向へ或いは警察で、或いは政府で追いやられる危険性が極めて大きいと思うのであります。これらの点に鑑みて、私は法務総裁がもう少し反省をせられて、答弁について何と申しますか、民主的な御答弁を頂きたいと思うのであります。
  124. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私は決して反民主的な答弁をしておるとは思つておりません。極めて民主的であろうと私は考えております。そこで今、日経連のお話が出ましたが、政府は決して日経連の意思に左右されるようなことは断じてありません。そのことは私は責任を持つて申上げます。この政治ストについての見解は日経連が意見を発表されるよりも遥かに前に持つております。日経連の意見に左右されるものではないということをはつきり申上げます。  それから外国の新聞のお話が出ましたが、私は不敏にしてその新聞を拝見いたしておりませんが、私の聞知するところによりますと、アメリカあたりにおいては法案の阻止についてのストをするとか、政治上の問題についてストを起したということは聞いておりません。労使関係において事実賃金の値上げ問題、生活の向上についての問題だとか、そういう問題について意見の不一致があつた場合に初めてスト権を行使するのであります。政治上の問題についてストを起したということは、私不敏にしてそういう事例は聞いておりません。私は労働組合の健全なる発達をどこまでも希う、日本の再建は労働者の手によつてなされるべきであることを私は深く確信いたしております。労働組合の育成をして行かなければならんということはもとよりこれは申すまでもないのであります。労働組合が健全なる発達をきれることを私は本当に衷心から願うのであります。ところがややともすると一部の分子でありましようが、実に激越なることをやられるのであります。それが本来の労働組合がこれは批判される。立派にやつて行こうという労働組合が一部分子のためにさようなことがあつては批判の的になつている。実にそれは悲しむべきことであろうと思うのであります。労働組合の幹部諸君はこの点について十分御考慮があるだろうと考えております。だんだんそういう点についての問題について考えられまして、立派な労働組合を育成されることを希つておるのであります。そういうふうに次第に各位の御努力によつてつて行くことについて我々は実に感謝をいたしておるのであります。
  125. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 実はこの治安立法、それから労働関係法の改正について労働大臣と総評労闘の代表が会われたことは木村法務総裁も御存じであります。私は例えば政治ストに、政治ストと言いますか、第三波なら第三波、いわゆる政治ストは好ましくないと政府思つておられることはこれは察知しております。併しながらこういうとにかく問題について、それでは政府として十分その言うところも聞き、そして法案についても修正の用意もあつて、そうしてこれは民主主義は話合いの政治だということはここでもしばしば言われて参りましたが、胸襟を開いて話合いをし、そうして修正の要望については十分聞いて参るという態度をとられるならば、私はこういう事態は起つて参らんと思うのです。その後、或いは国家公務員の給与の問題についても官公労の諸君が官房長官にお目にかかりたいと申しましても会つてはもらえんのが最近の実情であります。或いはこれらの法案についてもそういうような態度を随分見て参りました。この点はこれは私はひとり労働組合が批判さるべきではなくて、政府としてお考えになるべき点があると思うのであります。  なお外国の例を私も言い、或いは法務総裁も言われましたが、アメリカにおいて同様の政治的な性質を持つておるストライキがあるとかいうことは私は申しません。併しいわゆる西欧の各国において同様の問題がしばしば行われておることは間違いないと思います。それに対して市民の諸君が、或いは鉄道がとまつた、電車がとまつたというときにも黙々として歩いている、民主主義の伝統については頭が下る気持が私しております。問題はそういう事態に対してどういう国民が判断をする、或いはこれは民主主義の発達の問題だと思うのであります。政府としてもそれを或いは違法なり或いは非合法なりとしてやられることは、それは民主主義的ではない、そうでなければ私は蛮勇であり、或いは挑戦をして行かれることになるのではないかと、その結果が恐れられる。私はこれらの点について政府として基本的に考え直され、そうして民主主義の話合いなら話合いの原則を貫くように御努力になるべきである。今まで努力をして来たけれども、その主張も希望も殆んど容れられずに参つて、そして労働組合の基本的な存立が問題になる場合に、残念だけれども、最後の方法としてこういう方法をとるというときに、私はこれに対しては政府としての、少くとも民主主義を守るという木村法務総裁であるならば、或いは政府であるならば違つた態度があるべきではないか。これは心からそう思うのでありますけれども、なお考えられると申しますか、反省される余地はないか、重ねてお尋ねをして、これから先は議論になる点は御遠慮いたしたいと思います。御反省はお願いいたしたいと思います。
  126. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) この法案の経過につきましては、私は労働大臣と共に総評の幹部の人々と率直に意見を交換した事実があるのであります。そのときもいろいうな意見が出まして、私もしやべらしてもらいました。率直に申しますると、この強制捜査権なんかを持たせないがよろしかろうという結論を私は得たので、強制捜査権を持たせないようにしたのであります。率直に聞いております。その後この労働三法につきましても吉武労働大臣はしばしば労組の人々と会合をして、率直な意見の交換をしておるということは聞いておるのであります。ただ不幸にして意見がまとまらんということになつております。甚だ不幸であります。併しこれは結局国民の輿望を担われた国会において審議されて決定されることになろうと、こう考えております。
  127. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 簡単に願います。
  128. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 この労働者、それから経営者団体、特に日経連です。この間に意見の食い違いがあつて今まで参つた、そして政府の今朝の新聞に出ましたような通牒は……。
  129. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 簡単に一つ、要領だけ……。
  130. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 どういう意味を持つかということを考えましたときに、これは或いは首切り、或いは損害賠償を請求したいという気持を持つていることは御承知の通り、そういう中にこの経営者団体を何と申しますか、あの行動を合法化し或いはインカリツジするような声明の出し方は、私は極めて遺憾であると思うし、先ほど否定されましたけれども、木村法務総裁の意図と違つたような結果になることは遺憾であります。この点についてはこれは御反省なり、或いは労働大臣の所管になるかも知れませんけれども政府において考え直される用意はないか、その点承わります。
  131. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) よく労働大臣にその点は伝えておきます。
  132. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 法務総裁は前からちよつと時間が約束されて……。
  133. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 簡単に一言だけ申上げて……。今アメリカには法案に対するストがないというふうにおつしやつておられましたが、これは必ずしもそうではないのであります。タフト・ハトレー法案反対して行われた政治ストライキは最も有名なものであります。法務総裁はああいう法案について労働者がストライキをやるということは勿論これはあり得ない、ただその労働者に利害が密接な法案について……すべての法律案について労働者がスト権を持つて国会を脅かすことは私も勿論賛成しません。併し労働者がその直接の利害関係の深い法律案に対して、そうしたあらゆる手段を尽して、最後の手段としてストラキに訴えるという場合については、その点は考慮さるべきでないかと考えるのですが、如何でしようか。
  134. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 私はこのスト権というものは、労使関係において労働問題についての意見の不一致があつた場合に初めてスト権が行使されると、そう思うのです。政策その他法律の問題については、これは国会を通じてやるべきものだという考えを私は持つておるのであります。
  135. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 意見長官に伺つておきます。法務総裁は今原則的な概括的なことを言われたにとどまつて、吉田委員からの御質問に答えているというふうには私は傍から伺つていても伺えないのです。
  136. 小野義夫

    委員長小野義夫君) それはこの次にもう一度よく考えて、今の政治ストというものと、労働組合のなし得べき範囲と、いわゆる政治ストというのは俗名であると思うのですが、その限界についての政府の又考え方をこの法務委員会で取扱うようになれば、一つ明らかにして頂きたいのでありまして、本日は一つ……。
  137. 内村清次

    ○内村清次君 それは明確にしておいてもらわんと、この破防法と関係があるのですから、第三条の政治上の主義だとか施策の推進だとか、ああいう問題と労働組合とがタイアツプしてそうしてストをやると、その政治ストの範囲で……、これは法務府の見解と労働省との見解を私たちは確めたいのです。これは重要な問題と思いますからね。
  138. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 労働大臣の政治ストというのは俗語だと思うのです。
  139. 伊藤修

    ○伊藤修君 この問題は本法についての重要な問題だと思うのです。だから更めてやりましよう。
  140. 小野義夫

    委員長小野義夫君) それでは今日はこれで散会いたします    午後四時十八分散会