○羽仁五郎君 その問題に関連するのです。
結論は出ているのだから、その点においては私満足してもいいのですが、併し今後同じような
答弁を繰返されて行くとそのたびにしなければならんと思うので、伺
つておきたい。簡単に伺うのでございますが、今の御
答弁の間に起
つた第一の疑問は、こういうような
法律が
政府提出の
法律案で出て来るということについての御反省を常に念頭に置いて頂きたいと思うのです。それは言うまでもなく、これはまあ一種の刑法的な
規定を含んだ
法律ですが、マグナカルタ以後今申上げるごとく、つまり
国民が
行政権によ
つて不当な制限を受けた場合には、必ずそれが救われるという保障がなければならないという原則は、たとえあなたが行
政府を代表しておられても無視できることじやないと思うのです。それがさつきの、
理窟を言うならばああいうふうになるというような御
答弁の
ところに、あなたが行
政府を代表しておられるためにそういうことをおつしやるのじやないかと思うのですが、今後その点についていやしくも
国民が不当な
処置を受けたことについて
救済の
方法がこの中になくていいのだ、或いはないのは止むを得ないのだというようなお
考えでその
お答えを頂くということは非常に困ると思うのです。それから第二は、この特別法について、この前
刑訴特別法の場合にも御
意見を伺
つたのですが、特別法を作る場合にですね、そのやはり
行政的な
考え方、立法的な
考え方とがどうか混同しておられないようにして頂きたい。それでやはり立法である以上は、あなたが行
政府を代表しておられようと、それが立法に関する
意見である以上はその特別法において生じて来る、つまり臨時に起
つて来るそうした
事件についての人権が擁護されるということが常に念頭になければならないと私は思う。
従つてその特別法の中で、
一般法において
措置されていないものはそれでいいという
考えで行くべきでは当然ないと思う。わざわざこうして特別法を出して来る以上は、
一般法において、例えばさつき御説明に
なつたような抜け道があるのは、
一般法でもそうなんだからこれでもいいのだという
考えでは私はいかない。この特別法の中でそうした抜け道が、
行政権力の人権に対する不当な圧迫というものの抜け道ができるような、そういうものを特別法の中でもや
つて行くということは私は許されないと思う。特別法の中でその
措置はちやんとや
つて行くべきだ。やがてそれは
一般法の中にも入
つて行く。今の
伊藤委員の問題にされておる点ばかりではない。今後におきまして同じ問題がたびたび出て来ますよ。併しその場合にも今のような御
答弁じやないような御
答弁を頂戴したいと思う。それから第三の問題は、あなたは
基本的人権というものが一様に制限される、公共の福祉によ
つて制限されるというお
考えの上に立
つておられる。これはあなたの学問的な良心というものにどのくらい基礎しておるのかということは別といたしまして、併しあなたといえ
ども基本的人権というものといわゆる
制度上の人権というものと二種あるという学説があることは御承知であろうと思います。その点については異論の余地がないということはまさかあなたは御承知ないとは言えないだろうと思う。そうすれば少くともその点について虚心担懐に
基本人権の中に絶対に制限されないというように
考えられておるものもあるということはお
認めにな
つて頂くほうがいいと思う。
従つてそうした学説によ
つては絶対に制限されることのできないというような
解釈もあり得る
ところの
基本的権利に対する制限というものと、それからいわゆる
制度上の権利、移転の自由であるとか、学業の自由であるとか、そういうものと同じような
考えで今後
答弁なさるということはどうかやめて頂きたい。これは今
伊藤委員の言われたような
風俗営業その他の場合を例に引かれて。それから、これはこの場合だけではありません。ほかの場合、
団体の解散というものについてややもすれば
政府は、株式会社なり法人なりの場合を引かれる、或いはいわゆるプフイオル・レストレイント、予防的な
措置というものに、ややもすれば少年法であるとか
精神衛生法であるとかいうものを引かれる。その場合一々これを
政府に質すのは煩に堪えないんですから、どうかその点についてそうした
意味の
答弁をあなたが繰返されて行くということは、
一つ避けられるならば避けて頂きたい。つまり
基本的権利にあなたは一種しかないとお
考えかも知れませんが、併し有力な学説としては二種ある。その制限されがたいほうの制限ですね、これについて或いはつまり制限され得る権利と同じような
措置でいいんだという、これは実際上の
措置になりますから、その点についてははつきり分けて
お答えを頂いておきたいと思う。
それから第四は、
行政上の速度を尊ぶということは勿論です。併しながら速度が絶対でないことは、あなたも言うまでもなく御承知だろうと思う。それでその速度はどの
程度まで許されるかという限界がありますね。
従つてどうかあなたは、そのいわゆる単なる
行政上の
立場、或いは政治上の
立場というものから、
行政上の
処置には速度が必要だということだけでいいというふうな御
答弁ではなく
お答えを頂いて見たい。
それから第五には、問題はこの法は納得されることにやはりあるのです。納得されないものがあれば、法の期待した
効果は上らないんです。だから納得されるかどうかということを断えず念頭に置いて答えて頂きたい。
それから第六には、この法は暴力を防ごうとする目的を持
つておれば、暴力に代るものをできるだけ制限すべきでないことは言うまでもない。これは我々は歴史の発展によ
つて暴力に代るいろいろのものを作
つて来たんです。その
一つの重要なものには、団結権というものがあり、或いは争議権というものがある。そういうものを制限して行けば、これは論理上当然もつと原始的な暴力というものが出て来るということがある。その
意味でさつきの制限されがたい、絶対に制限できないと言われている
基本的権利というものがそれに属するのですから、だからこの
法律が本当に暴力を防止しようと思うならば、暴力に代
つて発達して来ている
ところの近代的権利というものの制限について、極度の慎重な態度をとらなければならない。その点についての御考慮が今の御
答弁の中にも十分現われていなか
つたように思うので、お願いしておきたいと思う。
最後にこれだけは伺
つておきたいのですが、これは第七に伺
つておきたいのは、今
伊藤委員からも
吉田委員からも御発言がありました前参議院議員細川嘉六君についての
処置について、これは
国民が納得するような
措置であるというようにお
考えになるのか、それとも若しそこに少しでも納得ができないものがあるというならば、その責任はどういうふうにおとりに
なつたのか、その点について伺
つておきたい。最後の点は私が繰返して今までの
質疑の間に
言つておりましたように、いわゆるパーマネント・ピウロクラツト、常傭の
政府の官吏というものは、政治上の責任を負うことができないのに、政治上の
処置をとらなければならないという
ところの
矛盾から来ている大きな問題です。ですから最後の点についてどういう責任をおとりに
なつたのか、又はおとりになろうとしておるのか、又はとるべきだとお
考えにな
つておるのか、
お答え願いたいと思います。