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1952-06-05 第13回国会 参議院 法務委員会 第49号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年六月五日(木曜日)    午前十時四十一分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     小野 義夫君    理事            宮城タマヨ君            伊藤  修君            一松 定吉君    委員            加藤 武徳君            左藤 義詮君            玉柳  實君            長谷山行毅君            岡部  常君            中山 福藏君            内村 清次君            吉田 法晴君            鬼丸 義齊君            羽仁 五郎君   政府委員    法務政務次官  龍野喜一郎君    法制意見長官  佐藤 達夫君    法務法制意見    第一局長    高辻 正己君    法務法制意見    第二局長    林  修三君    刑 政 長 官 清原 邦一君    法務検務局長 岡原 昌男君    法務特別審査    局長      吉河 光貞君    法務特別審査    局次長     関   之君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君    常任委員会専門    員       堀  真道君   説明員    法制意見参事官    (法務法制意    見第三局勤務) 真田 秀夫君   —————————————   本日の会議に付した事件破壊活動防止法案内閣提出、衆議  院送付) ○公安調査庁設置法案内閣提出、衆  議院送付) ○公安審査委員会設置法案内閣提  出、衆議院送付)   —————————————
  2. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 只今より委員会を開きます。破壊活動防止法案及び関係法案一括議題に供します。本日は先ず昨日までの各委員の御質疑に対して、政府におきまして答弁を留保いたしておりました事項につき項目別政府答弁を願います。なお御質疑はそれぞれ先に御質問をなさいました委員にお願い申します。ちよつとここで申上げますが、伊藤委員より八項目に亙る質問書政府に提出されておりまして、先ずその御答弁を願うのでありますが、これに関連して同一質問は同じ意味に、他のかたにも答弁いたしたことにお考えの上、伊藤委員の再質問に対する関連質問をそのときに挾んでして頂くような順序にいたして頂きたいと思います。それではどうぞ意見長官
  3. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) それでは伊藤委員お尋ねになりましたもののうちで、一般法制に亙るような問題を便宜私からお答えを申上げたいと思います。  第一に、団体に対する規制処分と、それから破壊活動行為者に対する刑事事件との関係につきまして、お尋ね趣旨は、規制処分が確定した後において、当該規制原因なつ暴力主義的破壊活動行為者に対する刑事被告事件のほうが無罪判決があつたという場合に、その規制処分はどうなるかというようなことであつたように承知いたします。この点につきましては先般来少しずつ触れてお答えはしておつたのでありますが、一応改めて申上げたいと存じます。この種の問題は、他の一般立法例の中にもたくさんあり得ることでございまして、先日もちよつと触れました例えば風俗営業取締法というような営業関係取締法規には、殊にそういう条項が多いのでありまして、業者法律違反行為をやつた場合に、許可を取消すというような場合に、その違反に対する罰則の適用関係処罰関係許可の取消の処分効力問題というようなことが多く生ずるのであります。そういうようなことを通じまして我々の考えておりますところは、結局この刑事処分そのものと、それから規制処分というものとの本質の違いの問題になつて来るわけであります。一方は申すまでもなく司法上の刑事処分であり、一方は行政上の何と申しますか、一種の保安的な見地からの処分であるということになつております。又その手続につきましても、刑事処分のほうは刑事訴訟法手続によるわけであります。行政処分のほうにつきましては、行政事件特例法系統で、民事訴訟法手続がかぶつて来るというようなことになつておりまして、手続のほうからもこれは別々のことになる。従いましてお尋ね場面は当然出て来るわけでございますけれども、今のように本質が異なることでございますから、これは別個のものであつて、相互にこの犯罪事件について無罪判決があつたからといつて法律上当然には規制処分効果のほうには影響を及ぼさないと言わざるを得ないと存じます。これらについての判例がたくさんあつたはずだと思つて調べたのでありますが、時間がありませんで調べることができませんでしたが・一つこれは行政裁判所時代に、これは結局行政事件とそれから司法事件との牽連関係において、お酒のほうの酒造税関係違反事件について行政裁判所判決がございました。課税事実の認定というものは、収税官庁の職権に属するものであつて司法裁判所判決に拘束されるものではないというようなことを言つております。今の理窟の筋から申しますというと、さようなことに相成らざるを得ないように存ずるのであります。その点についてのお答えはその程度にいたしまして……。
  4. 伊藤修

    伊藤修君 どうも今のお答えには納得しかねるのです。第一に本質ですが、成るほどお説のように他の行政処分の場合においてそういうことはあり得るかも存じません。併しそれは飽くまでその行政処分の一枠内においてなされることである。一般的なものではない。範囲が違うのです。例えば古物営業に対するところ行政措置ということになりますれば、少くとも古物営業自体にその範囲が限られております。でありますから、その及ぼす影響というものはその業者のみ、その業に携わる個人のみに限られておる。それが古物営業取締のために必要な措置として当然そのときに行われる。後日他の国家意思によつてつてつたということが判明いたしまして、それに対するところ救済規定が与えられていないというのは、法の不備であるのです。又仮にそれが正しいという見解に立ちましても、飽くまでそれはそうした狭い範囲においてのみ、国家行政措置として必要であるという臨機の措置であると言わなければならん譲歩して考えましても。この場合はそうではなくて、本件の場合は、本質行政処分とは言いながら本質司法処分である。準司法処分であることはお認めになつておる。この法律効果の及ぼす範囲というものは全国民に及ぶものであつて一般的のものである。これは軽々に単なる行政処分という言い方だけであなたが言い遁れようということは、あなたの常識に反すると思うのです。若しそういう考え方ですべて今後の立法措置が行われるとするならば、何をか司法処分として行われるものがあり得るか、すべて行政的処分で以てなし得る、斬り捨て御免だという、国家は如何なる間違つたことをやつても差支えないのだ、それを国民は甘受しなければならん、こういう結果になる。さようなことはあり得ないと思うのです。又肯定できない。国民としてさようなことは納得できないのです。先ほども申しましたごとく、風俗営業をやつておる者がたまたま行政処分を受けた、併しそれが他面司法処分において、その認定された基本であるところの事実が無罪なつたといつて、先の風俗営業取締規則によるところ行政処分間違つてつたという結果になつて、本来ならばそれに対して救済規定を与えるのが当然なんです国家としては。併し今日の法律体系の上においてはそれが上つていないという場合においても、それはその及ぼす範囲が狭い。従つてそれを取消して云々するということよりも、そのままそれに対して規制を甘受せしめるという国家のミスを国民にそれだけ押付けておるに過ぎない。若しその人が当然その当時訴訟手続によつて行政訴訟によつてそれに対して異議を申立てておりますれば、それを或る程度まで救済するチヤンスは得られたにかかわらず、古物営業だとか風俗営業取締だとか、いずれもこれは弱い商売なんです。警察に常に頭の上らない商売です。叱言を言えば次の制約を受けることのほうが大きいから、御無理御尤もで泣き寝入りするという業態なんです。そういうものを引例いたしまして、直ちに以て本法解釈根拠とすることは不合理も甚だしいと思うのでありまして、これが本質論であります。  それから手続の点を御指摘になりましたが、手続はこうした場合において止むを得ないということはそれは国家として不親切です。御承知の通り刑事民事手続に二通りあるわけでありますから、その場合において刑事民事判決結果が矛盾しないように訴訟法は或る程度までこれを救済する方法を、矛盾しないように取扱うように法律手続はしているわけであります。ただたまたま行政事件司法事件との矛盾の場合におけるところの今日手当規定がないというのであつて国家としては当然こうした基本的な手当規定を原則的なものを定めなくちやならないのです。不幸にして国家の怠慢によつてそれをなしていないからと言つてなしていないことを正当ずけて、それを正しいという根拠の下にそういう議論をお打立てになることは、これは国家政策として誤つた根拠を正しい根拠として議論を押付けになることは、これは根底において誤まりがあるのです。だからおよそ国家というものは、昨日も一松さんがおつしやつたごとく国家意思二途に出るということはあり得ないのであります。国家といえども一つ法人格を持つている。その意思が甲の場合においては否定し、乙の場合には肯定するという二つ意思表示をなすということは根本的な条理に反するのです。およそ国民を統治して国民のために国家の政治を運用する場合において、国家意思二途も三遂にも出るという在り方はあり得ないのであります。  又、第四に申上げれば、今日の憲法建前から申しまして、国家最高意思というものは、又最終意思というものは最高裁判所意思を以てこれを定めるということの観念であることは明らかであります。政府といえども最高裁判所最終的意思決定に対しましては服従せざるを得ないのであります。これに服従しないというやり方は政府自身破壊活動を行うことになるのです。そういうようなことがあつて国民に対しまして政府の言うことを正しいと言つてどうして指導ができるのでしようか。政府機関といたしましても個々において意思決定をいたしている今日の状態におきましては、その個々機関がたまたま甲乙異なつた意思決定をされた場合において、その意思決定を最終的に判断し決定するのは最高裁判所であると言わなくちやならんでしよう。その場合においてたまたま本法において行政的の措置によつてつた判断がなされ、或る意思決定がなされる。そうして最高裁判所において最終的にそうでないという意思決定がなされた場合においては、これに国家が従うべきは当然のことであります。これを認めないと言うのですか。さような認めないというような御議論は恐らくあり得ないと思うのであります。お認めになると思うのであります。お認めなつた場合においては、それに対してすでになされた、国民に対する被害というものに対して救済をするという政策をおとりになることが当然のことであります。仮に私の言う議論が薄弱であるといたしましても、政策論から考えましても当然さような場合においてはこれを救済するという措置をとることを法的に賄つて置くということは国家として当然なすべき政策的考え方です。  だから今のあなたの御議論に対しましては四点につきまして私は誤つていると思うのであります。重ねてもう一度お伺いいたします。
  5. 一松定吉

    一松定吉君 ちよつとそれに関連して、今のお答えをする前に伊藤さんの趣旨に私はちよつと補充したいと思います。  今詳しいことは伊藤委員から申上げた通りであります。私の解釈としてはあなたの解釈は正しい解釈だと私は思つております。そこでそれをどうするかということが私の問題なんであります。行政措置でこういう決定をした、司法措置でこういう決定をした。現行法のままではその二つ決定が生きていると言うのです。それはあなたの解釈認める。そこでそういうことでは国家意思二途に出るということになるから、これを調節する手段方法を講じなければならんじやないか、伊藤委員の御趣旨もそこにあると思うのであります。現行法において解釈二つ結論を得ておるのは、結論は得ておつて最高裁判所決定によつて行政機関決定が当然消滅するということは、今の現行法のままでは言えないのですが、私もそれは思う。それをどうするかという調節の制度を設けなければならんじやないかということの伊藤委員の御趣旨であろうと思う。私もその意味で昨日お尋ねした、だからしてあなたのお答えは、いろいろ調べて見たところがこういうことになつている、そこで政府としてはどうするか、それはあなたの言うように国家意思二つ意思が出てはいけないから、一つのものにまとめるような方法、調節する制度考える、そういう態度に出なければいかん。それについてお答えを願いたい。
  6. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 私も先ほどお答えは、委員各位お気に入らぬことは十分承知しておるのであります。お気に入るような答弁をしようと思えば、良心に反した答弁はできるかも知れません。やはり私どもが純粋な理窟として考えまして、理窟はどうもこうであろうということを申上げて、そうして更に一松先生のおつしやるように、それじやその理窟も成るほど尤もなところもある。それを合せ考えて、大きな角度から見て満足されるような方法考えて下さるということについては、勿論私何ら異存がある筈はございません。従いましてあまり繰返すことはいたしたくございませんけれども、ただ私ども理窟で、つまらぬ理窟だとおつしやればそれきりでございますが、こだわつておりますのは、今の国家意思一つとおつしやいますけれども一つ個人刑事責任を追求するという場面国家意思なんであります。一つ組織活動危険性を排除するという意味の点からする国家意思というものであつて、非常に精密といいますか、潔癖に分ければ私は事柄が違うのであるから、その間に国家意思二つに分れても、それは必ずしも致命的なものとはいえないのじやないか、理窟に大変走つた考え方で申訳ございませんけれども、さような気持を以て一応申上げたのであります。
  7. 伊藤修

    伊藤修君 今の点ですが、それは成るほど片方刑事責任を追うている、片方行政的措置をとる、大要においてはそう言われます。基本的な原因についての認定については同一であるのですか、刑事事件にとり上げられました事案の原因が即ち破壊活動だとこう認定されたことによつて、この本法に言う行政的処置が講ぜられるわけですか、同一原因に基きましてこの行為の結果、個人としては刑事責任を問われ、団体としては行政的処置をとられるわけであります。処置については相異なる、目的については相異なる、併し原因同一であることは疑いないわけであります。その原因についての認定に関する国家意思二途に出ると、こういうのです。さような矛盾は肯定できないとこういうのです。この点は今一松委員仰せなつたように、現行法上では自分の考え方正しいのだと仰せになるならば、然らばその欠点をここにおいて是正するかどうか、是正することに政府も吝かでないという御意見かどうか、それは反対だとおつしやるか、その点を最後に伺つておきます。
  8. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 国会の御審議におきまして、最も適当であるという結論か出ました場合には、政府側として何らの発言もすべき立場にないことは申すまでもございませんか、私の考え方といたしましても、先ほど触れましたように、我々が理窟一点張で考えておるところとの調和か保たれるような角度における、立派な解決案ができれば、これは非常にうれしいことだと思つておるのであります。
  9. 吉田法晴

    吉田法晴君 ちよつと伺いますが、行政処分と、それから刑事処分本質が違うのだ、こういうお話でございますが、現実に眼の前にあります法律は、一方行政処分もそれから司法処分も同じ法律の中に入つてつて、相関連しております。そこで全然これが別の法律であるというならば、理窟の上から言つて、そういうことが言い得るかということも一つの考だと思うのですが、相関連した、そうして一つ法律で二段構えになつておる点は、私ども見遁すわけには参らんと思います。それからもう一つ、そういう法律解釈について、行政権とそれから司法権とに、法律解釈の機能が二つに分かれる。これを認め立場から議論か進められておると思うのでありますが、そういう点に、行政訴訟特別裁判所認めなかつた憲法のこの基本精神違反するところがあるように、私は考える。一つ法律解釈するについて、行政権にも一応解釈権能があり、そうして司法権かそれをどういう具合に解釈しようと、行政権行政権解釈権能があるのだ、こういう基本的な考え方があるやに考えるので、それと新憲法下における行政訴訟を特別の機関認めなかつた憲法精神から言うならば、そういう考え認められぬのではないか。この点についてはどういうふうに考えられますか。
  10. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) この点は先ほど申しました司法裁判所の権限に属しておる事件についてすらもあり得ることである。刑事事件として同じ事件刑事の面から刑事裁判所にかかつておる。民事の面から民事裁判所にかかつておるというようなことを考えますと、司法権の分野においてすらもあり得るのじやないかというふうに考える。現に又そういう例があつたわけです。
  11. 吉田法晴

    吉田法晴君 これは個々裁判所においては、そういうことがあり得るでしよう。併し最高裁判所なら最高裁判所で統一されます判例なら判例として、或いは判例法とも言われますけれども国家意思裁判機関においては、一つになる建前になつておることは問題ないと思います。個々裁判所において二つに分れておるから、司法権においても意見二つになり得る、こういう考え方間違つておると思います。
  12. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) それは先ほども触れましたようにこの民事訴訟手続きというものと、刑事訴訟手続きというものを一本にまとめて頂けばそれはそうなりますけれども、これは狙い民事訴訟刑事訴訟狙いが違うことを前提にしまして、訴訟手続きも違つておるのでございます。従いまして最高裁判所に行きましても、やはり最高裁判所刑事事件刑事訴訟手続きで、民事事件民事訴訟手続きで終りにならざるを得ないものですから、結局問題は民訴の手続き刑訴手続きをどうするか、非常に深い問題になつて来る。そこで非常に迷つておるわけです。
  13. 一松定吉

    一松定吉君 今の我々の質問に対しまして、ただ御自身意見をただ固執して、どうして打開策考えるかということについてあなたの意見がないことを我々は遺憾に思つておる。それは結局こうなるのじやないか。今吉田君が言われたように、この破壊活動防止法の第四条の第二項ですね。「前項の処分効力を生じた後は、何人も、当該団体役職員又は構成員として、その処分趣旨に反する行為をしてはならない。但し、第一項第三号の処分効力を生じた場合において、当該役職員又は構成員当該処分効力に関する訴訟に通常必要とされる行為をすることは、この限でない。」この法文からすると、この行政処分効力が生じた後に司法処分を求むるということはこの限でない、こういう規定です。ですからこの二項の規定は、第一項の一、二、三の禁止という行政処分は、これに対して異議のあるものは司法処分を求めることができる。その司法処分効力発生するまではこの禁止効力を停止する、こういうように吉田君の言う通り一つ法文の中に行政処分司法処分の抵触を是正することができるのですから、そういうようなことはあなたのほうでなさるということであれば、そういうもの、そういうように政府が出すことが困るなら委員修正案を出そう、こうなるわけです。修正案委員が出さなければ政府がそういうように修正してもよい、こうなるわけです。それは話合いでできるわけです。それを無理に行政司法と分けてしまつて国家意思を三つに矛盾することが存在するようなことはいけないのだから、それを調整しようじやないか。調整するのにはどうすればよいか。これはこの四条の今のそういうような法律について行政処置を、司法処置がきまるまで効力発生を停止して置けばできるわけです。そういうことを私は考えておりますが、如何ですか。
  14. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 非常に私は悩みを強く打明けて申上げましたために、如何にも固執するようにお考え頂いたことは甚だ残念でありまして、ただ私共は今のような調整方法というものについてもとよりこれは考えましたけれども、それについてはかような深い悩みを持つて遂にこのような形で提案せざるを得なかつたという趣旨で、併しその悩みは私は間違つている悩みじやないと思いますから、その点もよくお採入れ願つて、よい方法があつたらこれはこれに越したことがないという趣旨で申上げておるのでありますからして、その点は十分誤解のないようにお願いいたしたいと存じます。今の一松先生お話もいろいろ考えられますが、ただ私はつきり承ることができませんでしたけれども、この規制処分迅速性を尊ぶということも、これは十分御考慮に入れてお考え頂きたいというふうに考えるわけです。
  15. 一松定吉

    一松定吉君 迅速を尊ぶのは結構です。迅速を尊ぶのは、一時かりに労力が発生している。効力発生条件をつけている。裁判所判決がきまつたら、その条件が廃止されるというなら、一時効力発生したいという政府意思は満足できる。法律の運用については、如何ようにも、条文についてはどうにもなる。お互いが立法者なんだから。そういうふうに考えて頂けば、よろしいではないかと考えます。行政処分に対して条件をつける。裁判があるまで効力が生ずる。裁判があつた時分に、その行政処置が悪かつたならば、効力は消滅する、こういうことにすればよろしいわけです。それはどうです。
  16. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) それを裏返しにしまと、この訴訟でいろいろ取消しになりますということになれば、この規制処分は駄目になるのですから。
  17. 一松定吉

    一松定吉君 それは駄目になつてしまう。その行政処分間違つておるならば、それを是正するために裁判所があるので、裁判所意思表示によつて是正されるのだから間違つてつたということは、いわゆる伊藤君の言う最高裁判所判決に任せなければいかん。それが国家最高意思なんだから、それを撤回されると行政処置が面目を失するとか何とかということになればよくないことで、やはり国家最高裁判所にこれが正しいということで意思表示をしたら、それは行政処分というものは任せなければならん。
  18. 伊藤修

    伊藤修君 今佐藤さんが吉田君の質問に対してお答えなつた、いわゆる刑事民事のうちにおいてもそういうことはあり得るのじやないかということ。これは民事の再審に関する規定においても明らかに帰一するように努めておるのです。第四百二十条の八号において「判決基礎トリタル民事ハ刑事判決其ノ他ノ裁判ハ行政処分カ後ノ裁判又ハ行政処分ニ依リテ変更セラレタルトキ」とはつきり云つておるのです。又その他の事由の場合も想定して掲げている。例えば四号において「裁判関与シタル裁判官カ事件ニ付職務ニ関スル罪ヲ犯シタルトキ」これもそういう趣旨が含まれるでしよう。又第五号の「刑事罰スヘキ他人行為因リ自白ヲ為スニ至リタルトキハ判決影響及ホスヘキ攻撃ハ防禦方法提出スルコトヲ妨ゲラレタルトキ」こういう。又第六条の場合でも、第七条の場合でもそうです。これは帰一するために努める趣旨からこれを掲げられていることは明らかです。刑訴のほうにおきましても、刑訴の第四百三十五条の第四号に「原判決の証拠となつ裁判確定裁判により変更されたとき。」この趣旨はやはり判決の統一を図るべく努めていることは両訴訟手続法において常にこれを企図していることは十分窺えるのです。これは最善を尽している、現在の我々の考え方の最善を尽しているわけです。して見ますれば本法においてもそうした手当に努むべきだという考え方は私は当然ではないか。単なる一業者に対する行政処分じやない、全国民がひとしくこの処分を受ける立場に置かれるのですから、して見ますれば一般法規としては当然さような考慮の下になさるべきである。先ほどあなたがちよつと一松さんの質疑応答の際におつしやつたように、行政処置が取消されては困る、自分のやつたことが取消されては困るという便宜だけで、国民に迷惑を甘受させるという独裁的な頭があなたに潜んでいるとすれば歎かわしくなると思う。(「異議なし」と呼ぶ者あり)
  19. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) まさか本当のお気持をお述べになつたとは思いませんけれども先ほど来申しますように、何もそういうような考え方から固執しているのではございません。その点は御了承願いますが、ただお尋ねの点については、一応説明員がおりますから、よろしうございますか、真田説明員からただ説明だけをいたさせます。
  20. 伊藤修

    伊藤修君 もう一つ附加えておきます。これは刑訴の四百三十五条の第五号に「特許権、実用新案権、意匠権又は商標権を害した罪により有罪の言渡をした事件について、その権利の無効の審決が確定したとき、又は無効の判決があつたとき。」こう明らかにこれは行政審判に刑事手続矛盾を帰一させる法律狙いがここにも現われているのです。そういうことに我々が考え及ぶ場合においては、常にそういうことには考慮されているはずです。
  21. 真田秀夫

    説明員(真田秀夫君) 委員長のお許しを得まして私から御説明申上げます。  只今の刑事裁判民事裁判との食い違いを是正する方法が講ぜられていると伊藤委員おつしやいましたが、誠にその通りでございまして、いろいろ民事訟訴法の再審の理由とか、刑事訴訟法の再審の理由においてその規定が見受けられるのでございますが、先ほどお述べになりました民事訴訟法の再審の事由の中に「判決基礎トリタル民事ハ刑事判決其ノ他ノ裁判ハ行政処分カ後ノ裁判又ハ行政処分ニ依リテ変更セラレタルトキ」と、これは誠にその通り再審の事由になつているわけでございますが、例えば私がここで想定いたしますのに、例えば刑事事件におきまして横領なり誣告事件があつたといたします。それはつまり人を騙して金を借りたというので、横領事件があつたといたしまして、そうしてその貸借を理由といたしまして貸金の返還請求の民事訴訟が起つたといたしまして、民事訴訟においてまさしく貸した事実があるというので原告に勝訴の判決が確定いたしまして、その後に刑事事件のほうで借りたというほう、被告人に対する詐欺の被告事件において、そういう貸借の事実が認められない、こういう事実の認定の下において無罪判決なつた、そういう場合にはこの民事訴訟法の四百二十条の再審の事由には当らないように解釈されるのでございます、と申しますのはここにおいては判決の基礎となつ裁判その他の行政処分とございまして、今の設例で申上げました場合の刑事判決無罪なつたものは、それは民事判決の基礎となつ裁判ではございませんので事実認定権をそれぞれの機関に与えております場合に、その事実認定が違つた結果になつたという場合のことを想定して申上げたのでございます。その点ちよつと御説明申上げて置きます。
  22. 伊藤修

    伊藤修君 何のために説明されたか知らんけれども、これは一つ一つの事案についてですよ、再審の事由になるかならんかという、今ここで、法廷じやないのですよ、あなたの説明は何のためにされたかわしには意味がわからんが、私の質問している趣旨先ほど佐藤さんが民事手続刑事手続においても二途に出る場合があるじやないかと、こうおつしやつたから、それは違つているのだ、両訴訟手続によつてその精神も帰一させるべくあらゆる努力を払つているという趣旨言つているのです。一つ一つ完全無欠にすべて帰一できるとは考えていませんよ。
  23. 吉田法晴

    吉田法晴君 その今のお話に関連してですが、それは違う場合があるかも知れません実際問題としては。その帰一させようという努力、或いはこれは当然裁判官がいつもやつておられる、或いは国全体としてやつておられるでしよう。そういう事実があるから違つてもいいのだ、或いは法律として違わせるべきだと、こういう議論には恐らくなるまいと思うのです。今の議論はそういう意味においてこれは意味がないと思うのですが、基本的に行政権の判断、これをとにかく固執しようというところに問題があるのです。刑事裁判と或いは行政処分とが違つてよろしいのだというお話になりますと、先般来のこの参議院のあれは細川氏でしたか、の事件を思い出すのですが、そういうことを今後もとにかく当然のこととしてやつて行こうと、こういうお話になると思うのです。そこで調整の方法として一松委員の言われるように或いは行政処分ならば行政処分効力をあとの裁判の結果に待つと、こういうことは佐藤さんは聞いておられなかつたか知りませんが、滝川先生が公聴会の場合に言われました。そういうことを考えられるならば別でありますけれども、飽くまで行政処分の独自性、これを認めて参りますならば私はまあ行政フアツシヨと言うか、そういう方向が出て参ると思うのです。どうしてもその点は認めることができんし、それから新憲法精神に反すると思うのであります。具体的なこの解決方法について御意見があるならば一つ承りたいと思います。
  24. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 先ほど来たびたび繰返しますように決して固執する意味で申上げておるのじやないので、むしろいろんなことを申上げることによつて我々の悩みが知何に深かつたかということを認識して頂きたいという気持が或いは表に出過ぎましてその固執するような形になつたかも知れません。それは大変遺憾に存じます。先ほど来申上げますようにもとよりその間の、常識的に見てもこれは不合理だとおつしやいますが、確かにそれはおつしやることはわかることでありますからして、いい解決方法があればそれに越したことはないという気持は十分持つておるわけであります。
  25. 小野義夫

    委員長小野義夫君) どうですかこの程度で、つまりこれは大体立法論と解釈論の違いだと私は了解しておるのだが。まだありますか。
  26. 一松定吉

    一松定吉君 これは私の言うのはこういう矛盾したことがあるのはいかんと言うのです。前提があるのですよ、行政処分でやつたことと司法処分でやつたことが国家意思二つになることはいかん二つあり得ることは私は肯定したのです。さつきこの二つになるのがいかんからこれを今伊藤委員の言うようにとにかく国家意思一つに調整するような制度を設けにやいかんじやないかというのが我々の主張なんです。それをあなたがた行政処置のやはり決定が、裁判公判上矛盾して対立することはよろしいというその根本の精神いかんのだ我々から言えば。だからそれは一つにまとめて、一つにまとめることについては、而もこれは認めるが……、一つの法令の中にこれはすぐできることなんです。だからしてこれを一つの法令の中に今私の言うたような話で条件付きに行政処置効力を停止して置くか、効力発生せしめて置いて、そうして司法裁判で今度発生した効力司法裁判行政決定を否認した時分には仮に効力発生しておつたやつをやめさせることにすれば国家意思は調整できるのじやありませんか、そういうようにしなければいかんではありませんかと、こういうのです。それができんということになると、国家矛盾した意思二つ対立することはよろしいのだということになると、それはいかんのです。それを一つ考えになつてはどうですかと、こういうことであつて、今あなたの、政府委員の説明になりました民訴の再審のなんだね、四百二十条の八の場合もそうですよ。八の場合も、こういうことがあつた場合に再審ができる、再審して一つに結果をまとめようということがあるじやありませんか。二つ対立せしめるというか、対立しておつてはいけないから四百二十条によつて、そういうときには再審によつて結論一つにしようという趣旨なんです。我我の主張も、それですからして、そういう意味にお考えを願わなければいかんと、私はこう思う。やつぱりどうしても行政措置司法措置を対立せしめなければならんという有力な根拠があり、それが国家のために利益であるということがあつたらそれを一つお示し頂きたい。
  27. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 国のために利益とか何とかそういうところから申上げることではこれはございません。これははつきり申上げておきます。
  28. 一松定吉

    一松定吉君 法律は我々国民の福利を増進するために必要な法律です。社会の秩序を維持するための法律です。それが二つ対立しておるというようなことはよくないのだから、それを一つにまとめるということが我々国民生活にとつて最も必要なことであつて立法者は常にそこに頭をおかなければなならない。ですからして対立することが悪いというなら然らば対立させないように国家意思を調整しよう、調整するについてはどうしたらいいかということについてお互いが意見を交換しておるのですから、そういう意味において答えて頂かなければなりません。
  29. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) その趣旨お答え申上げておるつもりであります。
  30. 伊藤修

    伊藤修君 今一松さんの御質問に対しまして、特段の理由はないのだということになりますれば、政府のほうにおいてこれを維持するところの特段の理由がなければ、国民のほうにおいて重大な理由があるはずです、というのは先に吉田さんが指摘されましたごとく、一例は細川君の場合のごとく、いわゆる事案の根柢となつ原因は除去されて、追放だけはそのまま有効に成立しておる場合もあり得るのです。又今後におきましても、例えば私が演説した場合において、その演説が過激に亙つた、それが数度に亙りますれば、特審局、いわゆる今度の公安調査庁にまで報告が参ります。たび重なりますれば、どうも伊藤破壊活動を意図しておるのだろう。こういう認定の下に調査され、そうして審理される、その資料報告書をまとめてそうして委員会に持込まれる。委員会はその書面の範囲内において、資料の範囲内において決定をなされる。容易に私は破壊活動者として認定される。そうして私は議員たるの職を失う。又社会的な地位を失う。生活的な根拠を失う。その後に裁判によつて私が無罪なつた場合において、もう取戻しが何もできないじやないですか。して見ますれば、こういうことを想定いたしますれば、いわゆる公安調査庁の意思如何によつて、かの政治家は捕えて以て失脚せしめようと意図しますれば容易になし得る。この途をここに開いていると言つても過言じやありません。その結果国民に及ぼすところの大きな基本人権の制約というものに対しまして、その害と、国家がこの治安を維持するところの必要性と比べまして雲泥の相違です。その意味からついたしましても、これに対するところの適切な、帰一せしめるところの法的措置を必要とするということを申上げておるのです。
  31. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) よく了解いたしておりますので、そういう角度からの何か改善案というものがございますれば、非常に結構であろうと思います。
  32. 伊藤修

    伊藤修君 そう出れば結構でございます。
  33. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 今の問題についての政府の最終的な態度は、今意見長官が明らかにされましたから、この問題について伺うのじやない。併し意見長官の今の問題についての御答弁の間に、そういうようなお考えがあるのじやないかという疑いがあるので二、三の点について伺わせて頂きたいと思います。
  34. 小野義夫

    委員長小野義夫君) ちよつと今質問順序が伊藤君の八項目についての順序でやつておりますから、そのほかに関連質問が出るのじやないかと思いますから、問題は今の点だけであとに廻して頂きたいと思います。今の問題は行政権司法権との衡突じやないでしよう。
  35. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 その問題に関連するのです。結論は出ているのだから、その点においては私満足してもいいのですが、併し今後同じような答弁を繰返されて行くとそのたびにしなければならんと思うので、伺つておきたい。簡単に伺うのでございますが、今の御答弁の間に起つた第一の疑問は、こういうような法律政府提出の法律案で出て来るということについての御反省を常に念頭に置いて頂きたいと思うのです。それは言うまでもなく、これはまあ一種の刑法的な規定を含んだ法律ですが、マグナカルタ以後今申上げるごとく、つまり国民行政権によつて不当な制限を受けた場合には、必ずそれが救われるという保障がなければならないという原則は、たとえあなたが行政府を代表しておられても無視できることじやないと思うのです。それがさつきの、理窟を言うならばああいうふうになるというような御答弁ところに、あなたが行政府を代表しておられるためにそういうことをおつしやるのじやないかと思うのですが、今後その点についていやしくも国民が不当な処置を受けたことについて救済方法がこの中になくていいのだ、或いはないのは止むを得ないのだというようなお考えでそのお答えを頂くということは非常に困ると思うのです。それから第二は、この特別法について、この前刑訴特別法の場合にも御意見を伺つたのですが、特別法を作る場合にですね、そのやはり行政的な考え方、立法的な考え方とがどうか混同しておられないようにして頂きたい。それでやはり立法である以上は、あなたが行政府を代表しておられようと、それが立法に関する意見である以上はその特別法において生じて来る、つまり臨時に起つて来るそうした事件についての人権が擁護されるということが常に念頭になければならないと私は思う。従つてその特別法の中で、一般法において措置されていないものはそれでいいという考えで行くべきでは当然ないと思う。わざわざこうして特別法を出して来る以上は、一般法において、例えばさつき御説明になつたような抜け道があるのは、一般法でもそうなんだからこれでもいいのだという考えでは私はいかない。この特別法の中でそうした抜け道が、行政権力の人権に対する不当な圧迫というものの抜け道ができるような、そういうものを特別法の中でもやつて行くということは私は許されないと思う。特別法の中でその措置はちやんとやつて行くべきだ。やがてそれは一般法の中にも入つて行く。今の伊藤委員の問題にされておる点ばかりではない。今後におきまして同じ問題がたびたび出て来ますよ。併しその場合にも今のような御答弁じやないような御答弁を頂戴したいと思う。それから第三の問題は、あなたは基本的人権というものが一様に制限される、公共の福祉によつて制限されるというお考えの上に立つておられる。これはあなたの学問的な良心というものにどのくらい基礎しておるのかということは別といたしまして、併しあなたといえども基本的人権というものといわゆる制度上の人権というものと二種あるという学説があることは御承知であろうと思います。その点については異論の余地がないということはまさかあなたは御承知ないとは言えないだろうと思う。そうすれば少くともその点について虚心担懐に基本人権の中に絶対に制限されないというように考えられておるものもあるということはお認めになつて頂くほうがいいと思う。従つてそうした学説によつては絶対に制限されることのできないというような解釈もあり得るところ基本的権利に対する制限というものと、それからいわゆる制度上の権利、移転の自由であるとか、学業の自由であるとか、そういうものと同じような考えで今後答弁なさるということはどうかやめて頂きたい。これは今伊藤委員の言われたような風俗営業その他の場合を例に引かれて。それから、これはこの場合だけではありません。ほかの場合、団体の解散というものについてややもすれば政府は、株式会社なり法人なりの場合を引かれる、或いはいわゆるプフイオル・レストレイント、予防的な措置というものに、ややもすれば少年法であるとか精神衛生法であるとかいうものを引かれる。その場合一々これを政府に質すのは煩に堪えないんですから、どうかその点についてそうした意味答弁をあなたが繰返されて行くということは、一つ避けられるならば避けて頂きたい。つまり基本的権利にあなたは一種しかないとお考えかも知れませんが、併し有力な学説としては二種ある。その制限されがたいほうの制限ですね、これについて或いはつまり制限され得る権利と同じような措置でいいんだという、これは実際上の措置になりますから、その点についてははつきり分けてお答えを頂いておきたいと思う。  それから第四は、行政上の速度を尊ぶということは勿論です。併しながら速度が絶対でないことは、あなたも言うまでもなく御承知だろうと思う。それでその速度はどの程度まで許されるかという限界がありますね。従つてどうかあなたは、そのいわゆる単なる行政上の立場、或いは政治上の立場というものから、行政上の処置には速度が必要だということだけでいいというふうな御答弁ではなくお答えを頂いて見たい。  それから第五には、問題はこの法は納得されることにやはりあるのです。納得されないものがあれば、法の期待した効果は上らないんです。だから納得されるかどうかということを断えず念頭に置いて答えて頂きたい。  それから第六には、この法は暴力を防ごうとする目的を持つておれば、暴力に代るものをできるだけ制限すべきでないことは言うまでもない。これは我々は歴史の発展によつて暴力に代るいろいろのものを作つて来たんです。その一つの重要なものには、団結権というものがあり、或いは争議権というものがある。そういうものを制限して行けば、これは論理上当然もつと原始的な暴力というものが出て来るということがある。その意味でさつきの制限されがたい、絶対に制限できないと言われている基本的権利というものがそれに属するのですから、だからこの法律が本当に暴力を防止しようと思うならば、暴力に代つて発達して来ているところの近代的権利というものの制限について、極度の慎重な態度をとらなければならない。その点についての御考慮が今の御答弁の中にも十分現われていなかつたように思うので、お願いしておきたいと思う。  最後にこれだけは伺つておきたいのですが、これは第七に伺つておきたいのは、今伊藤委員からも吉田委員からも御発言がありました前参議院議員細川嘉六君についての処置について、これは国民が納得するような措置であるというようにお考えになるのか、それとも若しそこに少しでも納得ができないものがあるというならば、その責任はどういうふうにおとりになつたのか、その点について伺つておきたい。最後の点は私が繰返して今までの質疑の間に言つておりましたように、いわゆるパーマネント・ピウロクラツト、常傭の政府の官吏というものは、政治上の責任を負うことができないのに、政治上の処置をとらなければならないというところ矛盾から来ている大きな問題です。ですから最後の点についてどういう責任をおとりになつたのか、又はおとりになろうとしておるのか、又はとるべきだとお考えになつておるのか、お答え願いたいと思います。
  36. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 大部分は私にとつて非常にありがたいお言葉であると思います。最初にお述べになりましたようなことにつきましても、先ほど来御質疑に対して私どもお答えしておりますところも、むしろ行政的な考え方というよりも、純粋な法律的の考え方を率直に申上げたのであつたと私は考えております。包まず隠さず現行の制度がどうなつておるということを申上げて、お叱りを受けることは当然覚悟の上でということで申上げたのは、そういう趣旨からでありますので、御了承願いたいと思います。  基本的人権についてのお考えも、十分私それについてお答えする機会がございませんでしたから、或いは又この場所におきましても長い時間は許されないと思いますけれども、簡単にお答え申上げますが、私もこの基本的人権の中に居住、移転、職業選択というような条文と、それ以外のもの、これは現実的に言えばそう申上げたほうが便利である、その間に私は違いがはつきりあると思つております。従つて今のお言葉を以てしますならば、この絶対的に制限されないということは、私ども現実の立場に立つておる者としては申しにくいのでありますけれども、今のお言葉にありました制限しがたいものという意味においては、全く司感でございます。今現実的と申しましたのは御承知のように言論等の関係におきましても、すでにもう最高裁判所判例もございますし、又立法等におきましても、公職選挙法なんかにおいて或る種の言論の制限とか、表現の自由の制限というものもなされておりますから、そういう現実から、私は現実に立つて仕事をやるわけであります。私どもといたしましては絶対に制限できないものというようにはどうも申上げられない。制限しがたいものというふうに御了承願いたいと思います。  それからその他の点において、例えば速度を尊ぶけれども、それが絶対でないということ、それはもう当然のことであります。あらゆる場面との調和、殊に公共の福祉等の基本的人権等の調和においてそれは律せられなければならないことは、おつしやる通りに存じております。  それからすべて法律とは納得されるところにあるということは、これはもう民主主義の原則そのものが私はさようであるべきであると考えますから、これもお話通りと存じます。その他暴力に代るものの制限というようなことも、これも御推測通り、そういうことも考えております。  なお最後の点は、ちよつと私法律関係立場の者がお答えすべきものではないと思いますので、私はお答えを差控えたいと思います。
  37. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 どなたがお答えなさるのですか。
  38. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) これは私どもの所管ではございませんので、事務的には総理庁がお取扱いになつたことであります。
  39. 伊藤修

    伊藤修君 総理庁の誰が責任です、総理大臣が……。
  40. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) さようであります。
  41. 伊藤修

    伊藤修君 総理大臣の出席を求めよう。
  42. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 総理大臣の出席を求めます。今の点はこの法律案全体に関係して非常に重大な問題であります。私がパーマネント・ビウロクラツトというものを申上げると、すぐお笑いになるけれども、アメリカのFBIの問題についても非常に重大になつている点、この政治上の責任をとることのできないいわゆる常勤の公務員、これが政治上の問題についての処置をとることができるのかできないのかということは非常に重大な問題で、従つてこれはこの法律案についてのその問題は、我々が解釈して行く上に、最近に起りました事件として、その問題についてはどういうふうに処理され、そうしてどういうふうに考えられているのかということについてのはつきりした知識が審議上必要であると考えますので、どうかそのことをお答えになり得る資格のあるかたが、ここへおいで下すつてお答え願いたいと思います。今のお答えでは、総理大臣ということでありますから、至急総理大臣の御出席を願つて、この点についてお答えを頂きたいと思います。言うまでもなく伊藤委員からしばしばおつしやるように国民の多数の投票によつて当選せられました国会議員が、明らかならざる理由によつてその職を失うということが今後もあるならば、或いはすでに行われたことについても明らかにされないままで行くならば、国民は投票権の行使についての誠意を失いますので、即ち破壊活動によるよりほかはないだろうということになつて来る。我々の投票によつて我々の政治上の理想というものを実現できるのだという希望を高めるのか低めるのか、その点について重大な問題でありますから、是非総理大臣の出席を求めてお答えを頂いておきたい。折角投票した者が忽ち追放されるということで、どうして投票についての熱意を持つことができるとお考えになるか。
  43. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 細川君の問題は、この前僕も聞いたんだけれども、保留しておいて次の問題に一つ入りたいと思います。
  44. 玉柳實

    玉柳實君 只今の伊藤委員一松委員から御質疑になりました同一事案に対して行政処分司法処分の食い違いがあり得るから、あらかじめこれに対する行政的の措置を講ずる必要があるではないかということについて意見長官から苦しい御答弁があつたわけでありますが、この問題について考えて見ますると、いやしくも団体の活動として暴力主義的破壊活動をやり、而もこれに対して規制を加えるという場合においては、その破壊活動が継続文は反覆して行われる危険性の多い場合でもございまするので、たつた一つの事案が取上げられ団体規制処分が行われるということは先ずないと考えるのであります。ただ一回の暴力主義的破壊活動におきましても、例えば甲の警察署が襲撃され、乙の警察署が襲撃され、丙の税務署も破壊された、或いは丁の地点において殺人行為があつた。こういうふうに同時に多数の犯罪行為発生する場合が多いと思うのであります。殊に継続反覆云々の条件もありますので非常にそういう事案が多くて、従つて検挙者の数も相当数に上るということがこれは通例であろうと考えるのであります。従いまして多数検挙者の中には或いは一部裁判の結果無罪になる者も出て来ることもありましようけれども、その全部が無罪になつてしまうということは先ずあり得ないことじやないかと考えるのであります。従いまして全部の容疑者について司法処分の結果を待つまでその団体規制処分も停止して置かねばならんということになりますと、その間におきましてその団体の暴力主義的な危険性が相当進行する虞れもあり得ると考えるのでありまして、たとえ調査の必要を認めた場合におきましてもかような点は十分に考慮しなければならんと、かように考えるのでありますが、意見長官といたしましてはどのようにお考えになりましようか。
  45. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 先ほど一松先生お答えしたところとも共通することでございますので、一松先生の御了承を願つた点もあつたと存じます。さような考え方一つの基準として取入れられてお考え頂きたいと事柄であると考えます。
  46. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 次の問題を意見長官、第二点。
  47. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 次は一事不再理の原則と規制処分関係というようなお尋ねでありました。  これについては実は伊藤先生のお尋ねは私限られておつたように拝承いたしましたが、他の委員からも更に広い範囲お尋ねもございましたから、併せましてむだがございましても一通り申上げますから、又御批判をお願いいたします。  この法案におきましての審理手続でございますが、これは先に触れたこともございますように、普通に一般行政官庁がやつております処分よりもこれはよほど慎重な手続になつて、準司法的な手続ということは申すまでもございません。ただ一方から見まして再審省略ということもやつておりませんし、訴訟の前身というような性格は持つておりません。それから又訴訟のような三者合同の手続を採つているわけでもありませんので、この本案における処分の確定力と申しますか、まあ訴訟式に言えば既判力と申しますか、確定力がどこにあるか。どういう形のものであるかということを考えますについては、今の二つの面から照らしまして大体この中間的なものだろうと私は、私と言いますか、我々は思うのであります。でありますから、場合を一応ならべて見まするというと、勝手な取消変更ができないということは、これは一般行政処分についても同様なこと、申すまでもないことでありますが、手続の際に瑕疵がある或いは又処分が行われた後における事情の変更によつて、そのままその処分を継続するということは公益上の必要もなし、或いは又規制上にも変化を与えない、ただこの不利益を受けたほうの側の関係で、それを取消すことが有利である、或いは有利に変更するというような場合におきましては、これは私は許される、可能であるというふうに申上ぐべきであると思います。それからその池の場合に、即ち相手方に対しての利益に事を変更するという、今申しました以外の一般関係におきましては、変更撤回等は簡単にはできませんが、伊藤先生の例に出されました破壊活動を行つたという事実について、仮に相手方の出した重要な証拠、それによつて事実なしという決定を導いたというようなものにつきまして、これが全然虚偽であつたというような非常に重大な事実が発見されたというようなことがあれば、これはその点につきまして更にヒヤリングと申しますか、初めから捜査手続をやつて、そうして一旦棄却されたものを再び請求するということは、これは可能でありましようけれども、それ以外の場合においても一旦なされた処分の取消変更というものは、これはできないというふうに考えておるということを一応申上げます。
  48. 伊藤修

    伊藤修君 今の御説明だと、みずからなされた処分に対するところ変更する権限ありや否やという点が主として御説明になつたのですが、私はそうでなくして、私の質問している重点はいわゆる既判力、まあ訴訟法で言えば既判力、この場合において手続ではありませんが、既判力的なものがあるのかどうかという点なんであります。要するに一度その事案についてなしという決定をしたという場合においては、それを再びとつて以て次の機会に又同一事案を審理できるかどうか、調査官は調査することはあるでしようけれども、それを次の段階に審理官の手に渡すということがあり得るかどうか。いわゆる又委員会にそれを持出すことができるか、一事不再理の原則がこの場合にも採用されるのかどうか。こういうことをお伺いしたわけであります。不告不理の原則は採用されておるように伺えるのですが、一事不再理の原則をも採用するのかどうかという点を主として伺つたのであります。
  49. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) この一時不再理の原則或いは既判力、或いは確定力、いろいろな言葉で表わすことができると思いますが、さようなものはもとより存在するのであります。全然それがないということでは決してありません。そういうものはございます。但をその程度と申しますか何と申しますか、柔軟性と申しますか、そういうものがあるわけでございます。併しながら一口に申上げますれば、普通の行政処分は柔軟性が非常に広い、併し先ほど触れましたように、これは普通の行政処分とは違いますから柔軟性がよほど限られている。併し訴訟法の場合ほど限定をされていない、その中間であるということを申上げるのであります。
  50. 伊藤修

    伊藤修君 どうもそれはちよつと佐藤さんの御答弁とは伺えないのであります。中間では分り兼ねるのであります、どつちへつくのかさつぱり分らない。私は率直にお尋ねしているのです。一事不再理の原則を適用するかどうか、これだけでいいのです。その原則を守るのだ、準司法処分だから守るんだとおつしやつて頂けば何をか言わんやです。
  51. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) それは一事不再理の原則はあります。併し先ほどお話申しましたように、当事者に有利のための変更というような場合は許されますと私申上げたのです。そういう意味でその柔軟性があるということであります。
  52. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) 伊藤先生の御質問は或る団体が過去において或る暴力主義的破壊活動を行なつたという事実を一つ原因として、公安調査庁から公安審査委員会規制の請求をした場合に、委員会で審理をして、その結果こういう事実がないという認定の下に棄却された、そのときに又公安調査庁のほうでその事実を蒸し返して、原因といたしまして委員会に持込めるかという御質問でありました。この点につきましては公安調査庁としては持込むべきものではない、持込めないと解釈するのが条理上当然であろうと考えております。
  53. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると、吉川君の今の御答弁によりますると、少くとも公安審査委員会決定がなされた後においては一事不再理の原則は適用すると、こう伺つてよろしいのですね。
  54. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) その場合一事不再理というと非常に、私もよくわからないのでございますけれども、御質問の場合只今お話なつたような御質問の点について。
  55. 伊藤修

    伊藤修君 お話なつたような御質問じやなくて、私の申上げておるのは同一事実に対して再びそれを蒸し返してやるということはできるかどうかということを聞いているのです。
  56. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) もう一つだけちよつと……。ただ委員会で制限的な規制処分をした、で六カ月なら六カ月或る種の活動を禁止した。ところがその団体は再び又将来も継続、反覆するような……。
  57. 伊藤修

    伊藤修君 別の事実が加われば問題ないですよ、それは。
  58. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 厳格なこの一事不再理の基本原則は、例えば成立に瑕疵もなく、事後の事情の変化も何にもないという下においてそれを変更することは許されないというのが原則であります。
  59. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると委員会の場合はそれで問題は解決したと、こう私了承いたしますが、いわゆる一事不再理の原則は適用するのだと、こういうふうに了承いたしますが、よろしいですね。
  60. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 今私の申しましたような意味の原則が根柢になつておるという意味で御了承願いたいと思います。
  61. 伊藤修

    伊藤修君 そういうあなたの逃げるような言葉では国家国民としては非常に迷惑するんですよ。だから同一事実に対するところ決定に対しましては再びそれを取上げないんだ、こういうはつきりしたことをお伺いしているのです。
  62. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) その通りでございます。
  63. 伊藤修

    伊藤修君 それから次に同一問題で、同じ問題で審理官の手においてこれは取上げないという決定をなされた場合にはどうなるか。第一段階ですよ、最後まで行つた場合じやないのです。本法によつて審理官の手においてこの事実はならないという決定がなされて、暗がりの中に放り込まれてしまつたというような場合においてはどうですか。
  64. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) その場合は一事不再理は働きません。
  65. 伊藤修

    伊藤修君 働かない……。その場合働かないという理由はどういうわけですか。
  66. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) それは行政庁の内部のただ単なる準備手続と申しますか、事前手続でございます。
  67. 伊藤修

    伊藤修君 ここに言うところの審理官の手続は内部手続なんですか。少くとも公開性を持ち、それに弁護人もつくし、いわゆる口頭弁論とまでは行かないけれども、審尋手続程度手続を予想されておるのですが、そうしてなされた審理というものはそんなに権威がないのですか。
  68. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 私の申します内部手続と申しますのは規制処分決定される最後の段階というものは申すまでもなく委員会における決定でございますからして、その事前手続でございまして、国家意思と申しますか、そういうものの決定の手前の段階であるという趣旨でございます。
  69. 伊藤修

    伊藤修君 いわゆるこの審理官の手続というものは、検察庁と予審とを兼ね合わしたようなものである。調査官が検察官といたしますれば審理官は予審判事である。そうしてなされたところの内部的決定というものに対しまして拘束されないのですか。いわゆるこれは不起訴にするという検察庁の決定があつた場合において、それは後日又その人間を取上げて同一事案について起訴するということがあり得るのですか、どうですか。その意味におけるところの一事不再理を聞いているのです。
  70. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 起訴の場合と私は理窟は同じであろうと思います。不起訴ということによつて今後その事件について起訴ができないかどうかという問題は理論上はできるということになるように考えております。
  71. 伊藤修

    伊藤修君 それは法律上はできますよ。法律上はできますけれども、いわゆる検察庁においても一旦不起訴と決定したものを取上げて再び同一事案について手続を開始するということはあり得ないことです。即ち検察庁においても一事不再理の理念というものはこれは守つておるのが現状ですよ。この場合においてはそういう精神を体して審理官手続というものがなされないのか、こういうことを聞いているのです。
  72. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 関係者に対して不当の迷惑をかけることが避くべきことであることは当然であるわけであります。今の起訴の場合につきましても今のような運用上の原理はおつしやる通りの原理で働いておると思うのであります。従いましてこの場合におきましても実際の運用におきましてはそういうことになろうと考えております。
  73. 伊藤修

    伊藤修君 そういうことになろうじやいかんですよ。そういう精神を以てこの審理官手続というものを運営するかどうかということを聞いているのです。
  74. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) お答えいたします。起訴猶予事件、これは不起訴の一つでございますが。
  75. 伊藤修

    伊藤修君 猶予の場合ではない、不起訴です。
  76. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) 起訴猶予は不起訴処分になるのです。
  77. 伊藤修

    伊藤修君 起訴猶予と不起訴とは違います。起訴猶予は、事実はあるけれども諸般の事情によつて起訴を見合せようというのです。不起訴の場合には犯罪が成立しないと一応認めたから不起訴にすると決定するのです。私の聞いているのは起訴猶予の場合でなくして、それは又あとに反覆して行う場合においては、前に伏せてあつたものを生かして来るということはこれは一応考えられます。又当然なされなくちやならないと思います。それは私は是認いたします。おやり下さい。結構なことです。部内において審理官という制度が設けてあるのだから、その審理官制度によつて慎重に審理されて、これは罪はないのだと、こう決定した場合においてそれが再び後日何らかの感情のもつれか何かで以て取上げて来て、それを生かして又起訴するということがあり得るかどうか、いわゆるこの調査制度、審理制度の中においても一事不再理の精神というものは堅持されるかどうかということを聞いているのです。
  78. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) 検察庁内部におきますいわゆる不起訴の再起訴の問題が問題になりましたので、一応実情だけ申上げて置きますが、検察庁におきましては事件を調べました上でその犯罪の疑義ありと思料し、起訴に価しない案件につきましては起訴猶予或いは微罪等の処分にいたします。それからなお犯罪が嫌疑が認められない、証拠不十分であるという場合に、証拠不十分或いは嫌疑なしというふうな決定処分でいたします。それらをすべて不起訴と申しております。従いましてちよつと今不起訴という語義で少し論争がございましたが、一応の取扱いといたしましては起訴猶予、微罪、嫌疑なし、そのほかに中止その他もございまするが、一切不起訴ということにいたしております。ただ伊藤先生のおつしやる不起訴、つまり嫌疑なしで事件を落した場合の再起訴の問題はないかというふうな点でございまするが、これも稀にはあるのでございまして、現に検察審査会制度というものがございまして、検察庁において嫌疑なしと思料して事件を不起訴に処しました場合に、関係人その他が、どうもおかしいじやないか、もう一度よく調べてくれというようなことで、検察審査会に持つて参りますと調べ直して起訴する案件が年間相当ございます。大体実情はさようになつております。御参考までにちよつと……。
  79. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) 伊藤先生にお答えいたしますが、一度審理を開始いたしまして、審理手続を終りまして、これを請求しない、規制処分を請求しないというような場合につきましては、この十八条で当該団体にこれを通知する、この審理手続によつて得た結果については、規制をしないという通知をする、そういう建前になつておるのであります。従いましてよほど重大な事情の変更がそのあとに生じない限りは、それを再び蒸返すようなことはこれはしないということになつております。
  80. 伊藤修

    伊藤修君 不起訴処分のうちの内容は、岡原君の御説明の通りであります。その不起訴処分のうちの、私は犯罪事実なしという部類の点をお伺いしておる。本法の場合においては、今御指摘になりました十八条によつて、審理官の決定というものを当事者に通告することになつておるのです。だから通告をなされたあとにおいて、同一事案について再びするかどうかということになるわけです、私の質問は……。ところが今吉河君の御答弁によりますと、よほど重大な事項のない限りは変更しない、こういう御答弁ですが、その重大な事項ということはあなたたちの認定なんですから、そうすると結局一事不再理の原則が適用されずに、蒸返してするということになつてしまう。それを聞いておるのです。一旦決定して、国家意思として、当事者に、お前は罪はないのだ、規制するところの事由はないのだといつて通知したにもかかわらず、再び同じ事案を取上げて蒸返すということはどうかと思います。この場合にもやはり一事不再理の原則は適用すべきだ。新らしい事実があればこれは別問題ですよ。又反覆してやればこれは別問題です。同一事情の下に、事実の下に、再び繰返されるかどうか。そういうことはないのだとおつしやるならばそれでよろしいが、よほど重大な事項のない限りは、こういうような但書をつけられたのでは承知できない。
  81. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) 答弁の言葉が足りませんので御指摘を受けたのでありますが、新たな事実とか、或いは審理手続によつて有利な証拠として提出された証拠が偽造であつたとかいうような事実が後日判明いたしました場合には、改めて審理手続をやり直す。で、一度終つた審理手続を請求をしないという通知を出しました以上、よほど重大な事情が後日生じない限りは審理手続も繰返さない、若しよほど重大な事情が発覚いたしました場合におきましては、改めて手続をやり直すという建前でございます。
  82. 伊藤修

    伊藤修君 あなたの言うのはどうも手続観念をおわかりにならんのですね。改めてやり直すということがいけないのだ。それを聞いているのです。改めてやり直すことができるというならば一事不再理の……。
  83. 小野義夫

    委員長小野義夫君) ちよつと速記をとめて……。    〔速記中止〕
  84. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 速記を始めて……。
  85. 関之

    政府委員(関之君) お答えいたします。これは前のお答えを繰返すようなことになるかも知れませんですが、私どもといたしましては、既判力、或いは一事不再理というようなことは、これは裁判、主として裁判所判決について考えられる、第一問題であると考えられます。申すまでもなく裁判判決においては、あのような慎重な手続従つて国家意見裁判上の意見として、それに対しての一事不再理であるとか、或いは既判力というような問題が出て来るわけでございます。そこで特に今の審理官の点でありますが、法律上としましては、一事不再理の……、裁判上によつて意味するような一事不再理という原則は働いていないというふうに私ども考えているわけであります。併しこの運用の問題といたしましては、すでに十八条によつて相手方は通知しておりますからして、全く同じことを再び蒸返すと、同様な理由で、同じことを蒸返すということは勿論運用としてはいたしません。併しそれが一事不再理という原則ではやらないのでありまして、運用上におきましてそういうことを蒸返すことは相手方の迷惑になるからやらない、こういうふうに考えているわけであります。
  86. 伊藤修

    伊藤修君 あなたの言葉はみずから墓穴を掘りますよ。審理官手続は不十分なものだということを自分自身が述べていることになります。あなたたちの今日までの質疑応答の結果から見ますれば、慎重にやつて、いやしくも誤まりはないのだと言つて、繰返し法務総裁も、あなたたちも強弁していらつしやるのじやないですか。然るに今の答弁によりますというと、裁判手続ほどのことは考えていないのだということは、安易に、手易く、心易くだね、こういう重大事項を規制するという手続が運ばれるということは、あなたの御答弁からもう想像に難くないところです。さようなことでは、本法によるところの審理手続なんというものは我我信用できがたいことになつちやうのです。  それからいま一つ訴訟法によるところの一事不再理の原則は、ここに適用を考えていない、手続が違うのだ。勿論手続が違うことは百も承知でお尋ねしているのです。そうした原則がここで採用されるかどうか。採用すべきじやないですか。それをとやかくあなたたちは答弁によつて保留して行こう。蒸返してやるということを考慮しておるから、そういうことを言おうとするのです。公正な行政官の立場を維持されるならば、いやしくも一つの事案に対しまして、一たびそうでないと決定した以上は、再び同一事案を取上げて、又ぞろその組合の団体なり、或いは構成員なりに迷惑をかけるようなことをやるということは考えられないと思うのです。そういうことはやらないという言葉をおつしやつている。然らばその原則として一事不再理をこの際においても堅持いたしますと、これであつていいのじやないでしようか。
  87. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 委員会まで行つてきまつたあとのことは、これは勿論問題外ということは当然でございますが、その委員会まで辿りつかない前の段階における問題といたしましては、純粋の理窟から申しますと、これは起訴の扱い方の段階における関係と全く同一であろうと思います。従つて起訴の場合にさような蒸返しということはみだりに行われておりませんのと同様に、この場合においても当然さようなことは行われないというふうに考えるわけであります。
  88. 伊藤修

    伊藤修君 そうするとこの十八条の決定に対しましても、一事不再理の原則を堅持する、こういうふうに伺つてよろしいのですか。
  89. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) それはそういう趣旨ではございません。この今の刑事訴訟の場合における起訴の場合と同様でございますからして、この十八条のこの場合に、法理上全然更にそれを再びやるということは、これでできないということには、私は率直に申上げてならないと思います。その点は起訴の場合と同じであろうと考えております。
  90. 伊藤修

    伊藤修君 いや、私の聞いておるのは、これでするというのじやない。この決定ですよ。この決定がなされた後においてこの決定を又蒸返すことができるかどうかということを聞いておるのです。それを聞いておるのですよ。十八条によつて決定したときは速かにこれは当該団体に通知しろと、こういうふうにその決定に盛られた事項を再び蒸返しすることができるかどうかということを聞いておるのですよ。
  91. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) 決定を取消したり、蒸返しするようなことは完全に同一事件についてはあり得ないと考えております。
  92. 伊藤修

    伊藤修君 あり得ないではない、するかしないかということを聞いておるのです。あり得ないということじやない。
  93. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) それはしない建前になつておるのです。
  94. 伊藤修

    伊藤修君 建前じやないですよ。できないと、こういうのかどうかということを聞いておる。建前とか、そんな訓示じやないです。心がまえじやないですよ。
  95. 関之

    政府委員(関之君) これもお言葉を返すようになつて恐縮でありまするが、要するに一事不再理というような考え方はとつていないのでありまして、法律上からいたしまするならば、これは極論しますならば、一応事件も取上げて再審査をして、そうして手続を繰返してやることができるということになるわけであります。併しこれはさつきも申上げたように、同じような事情の下であつて、新なた証拠が出ない、或いは前に一応申上げたような、調べたところの証拠が偽造であつたようなことがわからず、真正のものであるというようなことになれば、そういうことはいたさないと、こういうふうに私は法理上そういうことに相成ろうと考えておる次第でございます。これは検察庁の起訴事件についても全く同じでありまして、裁判のような段階まで行きますればそういうようなことまでも考えまするが、一応規制の請求をするかどうか、証拠の収集の段階におきましてはやはり裁判所におけるがごとき一事不再理というような原則は立たないのではないか、立たないのが相当であるというふうに考えております。
  96. 伊藤修

    伊藤修君 今三人三様の御答弁です、結局。関君の御答弁は皆さんの御答弁を覆えしております。そういうあり方はないと思うのです。(「研究不十分だ」と呼ぶ者あり)これは又本質的に考えますれば、予審決定ですよ、いいですか、刑事手続で言えば、司法手続で言えば予審決定ですよ。予審決定をみずから取消すのですから、新たな事実、その他の事情が存在する場合はこれは別です、これは同一事項についてすでになされたみずからの決定を取消して、若しくは取消さずして再び同一事案の進行手続を開始するということは、私は条理上としても反すると思うのです。だからこの場合、決定をなされた以上はやはり一事不再理の原則を適用すべきだという御説明があれば、このあれには納得いたしますけれども、若しそうでないというなら、ここで縛らなくちやならないのですよ。同一事案に対しましては再びすることができないという条項を入れないと、これは我々としては是認することができないのです。(「危なくてしようがない」と呼ぶ者あり)そういうことになつてしまうのですよ。ですから私はお伺いしているのです。
  97. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 三人三様と申されますけれども、結局この十八条を中心としての問題といたしましては、この法理の上から、この法律案の上からは一事不再理ということは出て参りません。これは正直に申上げます。
  98. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると結局公安調査庁におけるところ決定については一事不再理の原則はとらない、こういうふうに伺えるわけですね。さつき吉河君はとるようなことを言つたのです。今度は佐藤さんはとらんと、こう断言するのですが、悪くないですか。
  99. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) 法律上の解釈につきましては、只今意見長官お話なつ通りであります。併しいやしくも公安調査庁でそういう決定をした以上はそれは尊重されなければならない。従いましてよほど重大な事情が新たに発生した場合でなければこれは蒸返しするというようなことはさるべきものではないと、かように考えております。
  100. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると原案に対するところの法理論としては採用されない。併し事務当局はその精神を飽くまで体して行く。それはあなたがたのおる間は体して行くが、いなくなると体さなくなるから法律ではつきり縛つておかなければならんと、私どもはそういうふうに考えます。
  101. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 ちよつと意見長官の御意見を私は伺つておきたいのですが、一事不再理ということの法的に確立せられているところの法的な意義でなくて、そういうことの意味はどういうところにあるとお考えですか。
  102. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 一旦国の意思としてきまつた事柄が何らの事情の変化も或いは瑕疵もなしに変更されることはない、或いは覆えされることはないということであると思います。
  103. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 さつき念のために六つの原則について特に意見長官の注意を促しておいたのですが、一事不再理の原則の意義はそういうところにある。ありませんよ。そうではなくてあなたは実際に幸福に成長せられたからそういうようなお答えができるのです。どういうふうにして国民が苦しめられるかということを念頭に置いて頂きたい。要するにこの法の最高の使命は、国民が不当に苦しめられるということを絶対に避けるように法律を作つて行く、それよりほかに法律の使命はないでしよう。一事不再理の僕は法理上のことは知らない。伊藤さんがあんなに問題にされておるというのは私は体験のほうからよく知つておる。それはどういうことをやるのかというと、要するに個々の証拠についてはいずれも不十分なんだ。そこでこの法が、あなたもよく御承知のように、幾ら政府が御説明になつても、決してこれは誤解しておるのではないのですよ、前最高裁判所裁判官までが濫用の危険があると言うのを法務総裁は、それは法律も又現在の日本社会の現状の認識が足りないというのは、お言葉が少し過ぎると思う。そうでしよう。然るになぜ法律的にも、又現下の日本の状況が火焔びんが飛んでおるかどうかということについても、相当の認識を持つておられるかたが、濫用される虞れがあると言えば、今の御答弁によつてもまさにこれは濫用の虞れが多分にあるということになる。なぜそうかというと、法務総裁の御答弁だけを伺つてみますと、暴力主義的破壊活動乃至は汽車、電車の顛覆とか、殺人とか、放火とか、そういうものでも、はつきりと刑法上の罪になつておるものを団体がやろうとしておる場合を我々はこれで飽くまで阻止しようとしておるのだ、決して思想の圧迫とか、或いは一般的な国民の権利の侵害ということは、それこそ絶対に許されないのだというところに絶対という言葉をお使いになるようですが、ところがこれは現実に法がどういうふうに運用されるかといいますと、本当に内乱を計画して扇動をやつておるということの証拠は、これは挙げることはなかなかむずかしいということは質疑応答の中に政府はお認めになりましたよ。それはむずかしい、実際。極めて困難である。極めて困難ですから、行政権力の側としてはどうしてもそこに拡張解釈をやらざるを得ない。
  104. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 羽仁君にちよつと申上げますが、来週に入りましてから高邁なる御議論を拝聴するということにして、今日は疑点だけに限定したいと思います。それでもう時間ですから、この辺で休憩にして、あとは午後に持越したいと思いますが……。
  105. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 発言を制限されることは欲しませんから、終るまで簡単に述べますが、要するに本当に内乱を計画し、或いはそれを扇動して、つまりこの厖大な、法務総裁が御説明になるようなことが明らかに証拠に現われて来るものに限られるのです。そうですよ。ところがそれが甚だ困難なものですから、そうした目的と、そうしてその証拠と、これは特審局長もしばしば言われるが、そうした目的に関する証拠が明らかにあるという場合でない場合ですね、つまりそうした目的についての証拠が不十分な場合というものを幾つか重ねて来るのです。そうしてその個々の証拠としては、証拠力が不十分なものを幾つか重ねて来てですね、そうしてそこに証拠力が発生するような努力をなされることがあり得るということはお認めになるだろうと思う。わかりますね、そこまでは。そこでですよ、そこでその個々の証拠力の不十分なものを幾つか集めて来て、それをその証拠があるというふうに、これは判断になつてしまう、実際に。ですから、そこまではまだいいとして、それを今度は或る一定の時期を置いてそれを又持つて来るということをやつて来る。これはこの法案が明らかに示しているところのその目的及び目的に関する証拠が明らかであるということと、大分離れて来ることをお認めになるだろうと思う。そうして、だからそれは直接この規制なり刑罰なりのところへはどうしても持つて行けないんですが、併し絶えずその事実を蒸返して、その個人なり団体なりの自由な活動を脅やかす道具にされるんです、事実上。これは今委員長の御注意もありましたから、私は自分の体験した実例をここで申上げませんが、これは実に悪辣なものがありますよ、而もその悪辣なものはその司法警察官なり検事なり、或いは今度できる調査官なり審理官の個人を悪辣だと決して言うのではないのです。そうではない。行政権力が立法上チエツクされていない場合にはその権力の性質上そういうふうに動いて来る。それを我々は立法上あらかじめ阻止しておかなければならないという問題がそこにあるんです。だからこの一事不再理というのは単に法定上の一つの原則というのではなくして、その背後になぜそういう一事不再理というものが生れて来たかということを考えて頂きたい、それはつまり一旦……、而もここで十六条で調書ができているんだ。調書を作るときに相手が意見を述べるんです。こつちからも意見を述べる、そうしてそこでできたものが、それが一定の結論に到達しているものですね、それを、それだけでは物にならないんですが、その中のものを絶えず一つの或る調査活動を開始する根拠にする、ですからさつき伊藤さんがかなり上のほうまでのところを言われたが、やはりもつと遡つて調査活動をやるということについてもそのお考え法務総裁からでも結構ですが、はつきりしていないと、この調査活動というものが必要にして相当の限度に飽くまで限定されるという御言明が信用できないということになります。つまり何年か前にそういうことをやつた人間というものは一生つけ狙われるということになります。私の調べた司法警察官のごときは、ジヤンバルジヤンのジヤベルという刑事がおる、自分はジヤベルだというのです。だから僕はジヤベルがどういうふうになつたか、私はあの小説を読んだかと聞いたんです。終りまでは読んでいないのです。ジヤベル自身が自殺をしておるというところまでは読んでいない、だからこれは調査のところまでそれは及んで来るのです。従つて単に法定上の原則というものじやない、その法定上の原則の背後にどうしてこういうものが生れて来たかということについてのお考えを伺つておきたいと思うのであります。これは時間ですから午後伺つておきたいと思います。
  106. 伊藤修

    伊藤修君 今の決定に対するところのいわゆる公安調査庁の決定に対するところの一事不再理の問題について午後にもう一遍再考して下さい。一時間の間に一つ再考して頂いて、それにも原則が適用されるという答弁があるように私は希望しております。
  107. 吉田法晴

    吉田法晴君 一番最初に佐藤法制意見長官から訴訟の前審ではないから云々というお話がございましたが、これは一事不再理の原則と、それから規制手続の行使と関連すると思いますが、曾つてこれは意見長官じやなかつたかも知れませんけれども、前審であるという言明ではなかつたかも知れませんけれども、併し前審的なものであるということはお認めがあつたと私は記憶するのです。これは速記録を調べなければわかりませんが……。(「そう言いましたよ」と呼ぶ者あり)問題はそこから一事不再理の原則の関連の問題にも入つて来ると思いますので、この点も一つ何というのですか、はつきりしながら議論を進めたい、こういう工合に私考えます。これはあとに……。
  108. 小野義夫

    委員長小野義夫君) ではその答弁は午後にするとして、一時半から再開いたします。ではこれで休憩いたします。    午後零時二十六分休憩    —————・—————    午後二時一分開会
  109. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 午前に引続きまして、委員会を再開いたします。  先ず政府委員より保留事項についての答弁を願います。
  110. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 午前中保留になりました問題につきましては、相当重要なる問題と思いますので、なお十分研究いたしたいと思いますので、明日まで御猶予をお願いいたしたいと存じます。
  111. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 次の問題について……。
  112. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 順序は多少狂うかも存じませんが、法律案の第二十一条第一項が衆議院の修正によりまして変りました関係上、それについて委員会の「審査のため必要な取調」の範囲はどうなるかというお尋ねがあつたのであります。これにつきましては衆議院の当局とも打合せて見たのでございますが、この公安審査委員会の審査は、処分の請求書、それから証拠及び調書並びに当該団体が提出いたしました意見書について行いまして、この審査の結果に基いて決定を行うのでありますが、審査はこれらの文書について行うことが建前になつておりますけれども、その内容等を明らかにいたします上に一応必要であると認められます場合には、補充的に必要な取調べをすることができるというふうに考えるのであります。従いましておのずからこの取調べの範囲は、一つにはこれらの文書の内容を明らかにすること、二つには、証拠能力の有無を確かめる、三つには請求に関する手続が適法に行われたか否かを調べるということにあると存じます。又このたび必要がございますれば、新らしい証拠も補充的に取調べることができると思います。その取調べは勿論必要と認め方法をとり得るというふうに考えているのであります。なお以上の資料によつて請求の原因たる事実が認められないというような場合には、勿論委員会は、請求を棄却するということになるわけでございます。
  113. 伊藤修

    伊藤修君 今御説明になりましたことは言わずもがなということであつて、いわゆる必要な取調べといううちには当然含まれることであります。与えられた証拠に対するところの取調べはここに書いてある通りであつて、これは問題ないのですよ。私のお尋ねしたいということは、衆議院が特に必要な取調べがなし得ると、こう規定した以上は、与えられた請求原因を立証するところの各種の証拠、調書等によつて、必要な取調べができることは当然のことだと思うのです。そうでなく、なおそれだけで以ては心証を得ることができないという場合において、積極的に、つまり進んで委員会が証人を喚問することができるか、検証をすることができるか、その他必要なあらゆる坂調べをなすことができるか、こういう見解をお尋ねしたのです。勿論本人を喚問して本人の審訊ができるかどうかということをも併せてお尋ねしているわけです。
  114. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 先ほどその方法については適当なものを取り得るということを申上げましたのは、そういうものも含めての意味でございます。
  115. 伊藤修

    伊藤修君 そういたしますと委員会の権限というものは、非常に拡大されて参りますのですが、僅か十人や十二人の職員では到底私は賄い切れないと思います。それからそういう点に対するところの構想も従つてつて来なくてはならんと思いますが、そういう点はどうですか。
  116. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) 衆議院でこの条項につきましては御修正になりましたときに、只今申上げたような取調べを行うのにつきまして、補充的にこういう取調べを行うわけでありますが、まあ最小限度この事務局に盛られた程度の職員があれば、大体賄えるだろうというような御趣旨から、約十名の定員をお認めなつたわけであります。で、大体補充的におやりになるというような建前でありますから、最小限度この程度の職員があれば賄えるのではないかと考えているわけであります。
  117. 伊藤修

    伊藤修君 そこのところちよつと聞き逃しできないところですが、補充的というところに重点が置かれると、ちよつとこの修正の趣旨が非常に狭くなつてしまうと思うのです。若しくは委員会において必要と認められた場合においては、補充的であろうと根本的であろうと私はでき得るものと考えるのです。それは如何でしようか。
  118. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) 第二十一条の建前が、只今法制意見長官からお答えになりました通り、公安審査委員会は、公安調査庁長官が提出した処分請求書、証拠及び調書並びに当該団体が提出した意見書について行う審査について必要な取調べをすることができるというふうな立て方をしておりますので、補充的にさような取調べをされるものと考えております。
  119. 伊藤修

    伊藤修君 私がお尋ねしているのは、ここに二十一条の「公安審査委員会は、公安調査庁長官が提出した処分請求書、証拠及び調書並びに当該団体が提出した意見書」について審査を行わなければならない、これはもう当然のことである。この場合においてその全体について更に全部一遍聞いてみなくちやならんということになれば、それは必要な調査じやないですか。これに盛られている以外のことを調査で吏るんだというふうになると非常に狭くなつてしまうのですね。この意見書が仮に一つ当該団体から意見書が出ているという場合において、その意見書に書かれていることがどうも呑み込めないということになれば、意見書について更に本人を呼んで全部審訊できるだろうと思うのです。又証拠物についても、出されている証拠について更にその証言をもう一遍確認し、本人に直接に耳を以て聞かなくちやならんという場合においては、私はできると思うのです。すでにある証拠以外のものが必要であるというふうには考えられないですね。いわゆる補充的というふうには考えられない、あらゆる面について私は必要と考えれば更にできるのじやないかと思うのです。言い換えますれば、ここに掲げられてあるところの、基本となるところ処分請求書とか、証拠とか、調書並びに意見書、こういうものについてもなお且つできるのではないかと思うのです。
  120. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) 御質問のような立て方でありまして、原則としては提出された処分請求書や証拠、調書及び当該団体意見書を検討いたしまして審査をするのでありますが、必要とあれば只今御質問のような取調べはもとよりできるものと考えております。そういう意味におきまして原則としては提出された書類に基いて審査を行うのでありますが、必要と認めた場合はこれを補充するというような意味におきまして、と言うと語弊がございますが、必要な取調べをすることができるというような建前になつておりまして、別にどこまでの取調べしかできないというようなわけではございません。
  121. 伊藤修

    伊藤修君 そこのところは御趣旨は大体わかりますが、又それでよろしいと思うのですが、いわゆる原則としてとか、補充的とかいうような、制約するようなお言葉は除いて頂きたいと思うのです。成るほど審査委員会が審査する対象はこれに基いてする、それはすべてその請求原因が真実なりや否やということについて心証を得るためにはあらゆることがなし得る、それにこだわらないのだと、いわば独立不覊の立場においてこれはなし得るのだという考え方なんですか。だから補充的とか原則とかいうことは私はこの際言葉の綾としても除いておいて頂きたいと思うのです。すべてできるんだという簡明率直なお答えで結構です。
  122. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 弁明をする必要はございませんけれども、当然公安調査庁長官が一応責任を以てやつたことでございますから、それを全然外にしてこつちは又白紙で初めからやるのだという趣旨ではないという意味で補充的と申上げたのでございまして、お言葉と同じでございます。
  123. 吉田法晴

    吉田法晴君 今の修正文の点について、伊藤委員から御質問がございまして、それに対して特審局長から御答弁になつております。これについて私は疑問が起るのですが、こういう形に対して。というのは成るほどそれは特審局はこの立案者かも知れません。ところが公安審査委員会はこれは何といいますか、公安調査庁とは独立の機関になると、こういうお話、而もその公安審査委員会の何と申しますか、審査の内容について衆議院で修正が行われた、いわばこれは前審的というお話でありますが、検察側に対して公安調査庁に対して裁判をすべき公安審査委員会を設けたと、こういうお話でありますが、それに原告側と申しますか、公安調査になられる特審局のほうからその運用についてこういうことになるだろうという、こういうお話は私少しそのあり方について疑問を持つのですが、若しこの公安審査委員会の審査のやり方について公安調査庁のほうでこうあるべきだと、こういう御説明があつて、そしてそれが権威あるものになるというならば、この公安調査庁と公安審査委員会のあり方そのものが問題になるような感じがするのでありますが、或いはこれらは原案立案者ということで御説明になつておると思うのですが、そこで審査のために取調べをするその内容そのものについても、これは佐藤意見長官からその修正の中身、或いは今後運用について御答弁になることは私は当然だと考えますけれども、特審局長がこれはこういう内容であるだろう、こういう御答弁は、これは私はいささかどうかと思うのでありますが、若しそうして特審局長解釈がこの運用についてこれが支配的になつて参りますならば、これはちよつと一応建前上おかしいのではないかと思いますが、如何ですか。
  124. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) お尋ねでございますが、私個人といたしましては、公安調査庁の職員に入るかどうかこれはわかりませんが、現在におきましては政府委員としてお答えしておりまして、公安調査庁の立場からお答えしておるわけではございませんので、御了承願いたいと存じます。
  125. 吉田法晴

    吉田法晴君 多少そういう点で、政府委員ということで御説明ではございましようけれども、実際に特審局が公安調査庁になられることは、これは今までの御説明で間違いないことでしようし、法の運用、今後にかかる運用の中身について御説明を頂くことは私はこの場合ちよつと意見長官からお話を願うことのほうが妥当ではないかと考えるのでありますが、如何でございましようか。
  126. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 御尤もと思われるような節も多分にございます。只今特審局長から答えましたことは私も横におつて聞いておつたのでありますが、私がお答えするにいたしましても同じことであつたというように感じております。
  127. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 今の政府委員お答えは、要するに質問趣旨に表面からお答えになつていないと思うのです。公安審査委員会というものが信頼に値いするものでなければならないということは法務総裁が繰返して御答弁になつておるところなんです。従つてそれに対して、その公安審査委員会の審査というものに何らかの制約というものが如何なる形においても附せられるならば、これが行政権の側における最終的な責任者であるという性格を持つことができないじやないか。これはお認めになるだろうと思う。そうして、今度はその次に、それだけの使命を持つたものとして、そうしてこの問題に関する限り一応最高の権威を持つて国民を納得させなければならない、そうしてその処分を行われた人々に対しても納得を与えなければならないというだけの使命を持つた機関の活動が、この陣容を以てなし得るかということに伊藤委員の御質問はなつておるわけです。ところが、人数のほうの説明になつて来ると、その仕事は限られておるからこの人数でやれるというような御説明をなされた。委員会の使命のほうを伺えば、それは絶対に信頼してもらつて差支えないものだというふうにお答えなつた。これは本法律案全体について私はもう一遍伺つておきたいと思います。政府の態度は絶えず動揺しておる。その政府の態度が本法律案の立案の趣旨、そうして本法律案の目的、こういうところにおいても動揺しておる。従つてこの公安審査委員会についてのお考えも絶えず動揺しておる。一方から権威あるものだというふうに言う。他方からはこの十人くらいの人数でやれるというふうにお考えになる。これはどつちに御解釈になるお考えなのか、その点をはつきり伺つておきたいと思います。
  128. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 申すまでもなく、今の論点は衆議院の修正によるものでございまして、私どもはその修正について法理的にこういうふうに解釈する場合運用がこうなるということを申上げておるわけであります。それに関連いたしまして、この本体として、この審査委員会にかような調査権が修正によつて加えられたということは、私は大変結構なことだと考えます。ただ問題は、十人となつておるじやないか、これでやれるかというお話でありますが、これは衆議院の修正でありますからと申上げればそれきりでございますが、私どもはやはりこれは、先ほどちよつと触れましたように、公安調査庁のほうで十分の審理の手続を尽しておるのでございますから、まさか審査委員会のはうで全然白紙の立場で御審査になるということはないでありましよう。従つて補充的という言葉を使つて語弊を生じたのでありますけれども、こういうところから考えまして十人あればそれで一応の仕事はできるでございましようという趣旨お答えしているわけであり、又そうお答えをせざるを得ないわけでございます。
  129. 伊藤修

    伊藤修君 本条の「必要な調査」の解釈は明らかになつたのですが、その「必要な調査」は職権であるか、申請によつてもなし得るかどうかという点を明らかにして頂きたい。
  130. 関之

    政府委員(関之君) この第二十一条の衆議院によりまして修正になりました条項の調査は、委員会の職権の調査になるわけであります。
  131. 伊藤修

    伊藤修君 併しここに委員会がそういう広汎な職責を持つということが基本的に認められている以上は、利害関係人が、若しくは当事者が、当該団体が、その職権の発動を促すという意味においても、私は申請がなし得ると思うのですが、如何ですか。
  132. 関之

    政府委員(関之君) お尋ね通り、その職権の発動を促す申請はなし得るものと考えるのであります。
  133. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると、そのなし得るという御答弁でありますと、それは申請としてなし得るのか、上申としてなし得るのか……。
  134. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) その発動を促す行為は、これは事実上の行為としてなし得るものでありまして、法律上の請求し得る権利とかいうようなものではないと考えるのであります。
  135. 伊藤修

    伊藤修君 併しおよそ行政官庁若しくは委員会というものがさような職権を持つている以上は、当然その職権の発動を促す、求める権利が国民のほうにも与えられなくては、私は片手落ちだと思うのです。それをとつて調査をするかしないかということは、まさに職権の範囲内において取捨できると思いますが、少くともかような規定を補充された以上は、それを有効適切に活用し得る途を開いておく必要があると思うのです。如何ですか。
  136. 関之

    政府委員(関之君) この二十一条によりまして、取調べの範囲その他について先ほど法制意見長官からお答え申上げたごとくに、審査のために必要な取調べでありまして、その取調べが委員会側の職権として取調べるということが、この法案建前になつているわけであります。従いまして、繰返すようでございますが、その発動を促す意味においての上申といいましようか、そういうことはできるのでありまするが、そういうような建前になつているわけであります。
  137. 伊藤修

    伊藤修君 私の言うのは、お尋ねするのは、一方にそういう職権を認めておる以上は、国民の側にもその職権の発動を促すところの申請権というものを与えなくてはならんじやないかということです。歎願の意味じやないのです。法律認めところの職権の発動を促すのですから…保釈権がある、保釈を受けるところの権利がある。それを保釈請求をするという、一方に国民に権利を与えているわけです、それを保釈するかしないかということは、まさに裁判所認定によつて自由に決定すればいいのです。それと同様に本法の二十一条の場合においても、そうした職権事項があれば、その職権の発動を求めるという私は国民に申請権を与えていいと思うのです。これはルールで賄えると思うのですが、そういうふうにお書きになるつもりはないですか。
  138. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) 私どもは、先ほど申上げました通りに、この取調べが職権事項になつておりますので、国民の側から、或いは当事者の側から、いろいろ事実上調べの発動を促すような行為が行われても一向差支えないものである。さようなことによつてこの取調べが円滑、適正に行われるということは非常に好ましいことではありますが、職権の発動を促す特に権利までも認める必要はないではなかろうかと考えております。
  139. 伊藤修

    伊藤修君 いや、権利というと余り四角張りますから、私権利という言葉を除いてもよろしいのです。併し私の憂えるのは、それが事実上事実行為として黙認するというあり方では、門前からさような申請はできないのだ、さような要求は不適法だといつて却下される虞れがありますが、さようなことができるのだ、併しその申請の趣旨に副うか、副わんかということは、まさに職権事項で取捨すればいいのであつて、若しそれができないということになれば、そういう仮に申請しても、上申いたしましても、それはその形式自体を排除される虞れがあると思う。そんなものを受付ける法的根拠は何もないからそんなものは受付けない、こう言つて文句を言うと殻を閉じます。あなたの御答弁の御趣旨から言いますれば、そういうものはできるのだというならば、できる途を開いておいても差支えないではありませんか。別にそれによつてこれが触れるわけでもありません。それだからルールの上で賄つておいたらどうだと、こういうのです。
  140. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) まさにそれはお答えしようと思つてつたのでありますが、ルールにおきまして十分さようなことを定め得ることであると思います。又それは望ましいことでもあろうと思います。これは併し委員会がきめられることでありますから、ここで入りますということは申上げられませんけれども、それを期待いたしております。
  141. 伊藤修

    伊藤修君 委員会がきめるということは勿論でありますが、併し国会の意思は、そういう意思があつたということは、やはりルール制定の場合においてこれを尊重するというあり方にして頂きたい。委員会が勝手にルールの制定権を持つているから、自由自在に国民の希望を制約するというあり方は好ましくないと思う。やはり国会の審議の過程において、国民の希望はこういう点にあつたということは、ルール制定の上にも反映されなくてはならんと思います。だから委員会がやることだから委員会に任せておくというのでは納得できませんから、ここでやはり佐藤さんに、ルール制定の場合においては必ずそういう途を開いておくというお言葉を伺つておきたいのです。
  142. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) さつき吉田委員から叱られたような経緯でございまして、御遠慮申上げたのでございますけれども、全くおつしやる通り考えております。
  143. 吉田法晴

    吉田法晴君 ルールで賄うという御答弁でございますが、先ほど来の質疑応答を聞いており、或いはやつておりまして、佐藤意見長官……この衆議院の修正は、これは結果においてこういうことになつておりますが、その精神から考えまして不十分であるという工合にお考えになるか……。例えば今の問題についても、ルールに任せる、ここは裁判ではないけれども裁判に準ずるような構成と権威を持ちたい、こういうことであるならば、むしろこの法条にもつとはつきりさせるべきではないか、こういうことが言い得るわけでありますが、そのことは、これはまあ基本的に先ほどちよつと触れましたけれども、立案者が特審局である、そこでその特審局の現在の意見というものを、この法条の運用に強く反映して行く、或いは支配して行くということは、これはあつては相成らんと思います。そのことを先ほど申上げたのであります。或いはこの修正案では千七百十名の中から、審査委員会に十名廻す。そうすると今千二百ほどの人が特審局におられる、それに五百名殖やすということでありますが、一応原案から考えますならば、今の特審局の中から十名を公安審査委員会に十名廻す、そうするとその十名の人の核心をなすものは今の特審局から行かれるでしよう。そうすると事務上においても事務局のあれについても公安審査委員会の自立性といいますか、独立性をどこまで保障し得るかということは非常に疑問があります。非常に立案の上からも、法の解釈からも、特審局なら特審局の意見というものが支配するならば、先ほど心配するような点が起つて参りますが、衆議院の修正が、審査のために必要な取調べをすることができるというように修正された、その意思から考えますれば、現われて来た修正では不十分である、その意思を尊重するならば、もつと考えなければならない、我々はもつとこれは基本的なあれを持つておりますけれども、少くとも衆議院なら衆議院の修正の精神から考えて見ても、例えばルールならルールに任せるというようなことでは、この法条の保障というものが不完全であるということから不十分だとはお考えになりませんか。
  144. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 勿論ルールでできますことを法律に明らかにして頂くことは、悪いということには決してなりません。これはもう国会における御審議にお待ちするほかはないと思います。
  145. 吉田法晴

    吉田法晴君 ところが今の伊藤委員の御質問で御答弁になりましたルールというのは、公安審査委員会が自分できめられる何と申しますか、手続規定意味でルールというお話であります。そこで私の申上げておるのは、今のところでは、公安審査委員会が国会の意思を尊重してルールをきめられることを望む、或いはその点は佐藤意見長官としては了承したというお話でございますが、それなればもつと前に、この法律の上にもつとはつきりしたほうがいいのじやないか、こういう意見についてはどうですか。
  146. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) それも立派に成立ち得る御意見であろうと考えるわけであります。
  147. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 次の問題に移ります。
  148. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) 機関誌紙の同一性について、前に伊藤先生からも御質問がありました。その後いろいろ検討をいたしたのであります。大体私どもといたしましては、機関誌紙の同一性につきましては、第一、題号の面一性、第二は、紙面に現われた編集方針の同一なりや否やという点で判断さるべき問題ではないだろうかという結論に達した次第でありますが、編集と申しますると、御承知の通り、二種類以上の文書、図画等の著作若しくは演説、講義の筆記等を一定の方針の下に収集結合して、独創的な形式を与える一つの著作的なものを作るというように、大体常識的には言われております。この一定の方針というのが、只今申上げたような編集の方針と言われるものであつて、これが紙面に現われた点において判断されると考えておる次第でございます。
  149. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると問題、題号ということは、これは形式的におつしやつたのでしようつが、題号は当然同じ題号を持つて参りますれば、これは同一であると一応とにかく概念的に定まるのですが、ただ編集方針、紙面に現われた編集方針だけで同一認定ということはどうですか。
  150. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) 大変どうもむずかしい問題でありまして、いろいろ検討しての末の大体の結論でありますが、又いろいろ御指摘の御注意を賜わる点がございましたならば、御教示願いたいと考えておるわけであります。
  151. 伊藤修

    伊藤修君 編集方針の同一性ということは、結局記事の内容に基準を置くのですか。
  152. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) ここでは紙面に現われた編集方針によつて判断されると解釈いたしております。
  153. 伊藤修

    伊藤修君 いや、私がお尋ねしておるのは、編集方針に形式的方針と実質的方針とあるのですね。実質的方針のほうへ主点が置かれるのか、形式的方針のほうへ置かれるのかということ……。
  154. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) 実は編集方針につきましては、形式的な方針と実質的な方針と言われましようか。その辺の区別は実はよく私どもまだ十分な理解を持つていないのでありますが、結局新聞のようなものを例にとつて考えて見ますと、新聞の論説とか、社説とか、主張とかいうものがあります。一方におきましていろいろな解説記事も載るし、事実の報道も組合せられ、更には他人名義の論説もそこに掲載されるというようなことで、こういうものを一体といたしまして、一つのまとまつた新聞というものが作られ、それが一つの方針に基いておるというふうに、極く常識的に見まして言われておるのであります。こういう紙面に現われた編集の方針というものによつて、その同一性を判断して行くよりほかないのではないだろうかと考えておる次第であります。
  155. 伊藤修

    伊藤修君 今の御説明だと、主として形式的方針ですね。いわゆる新聞を一つ編集する場合において、論説を書く、又雑報を書く、或いは文化面を書くという一つの新聞構成の形の上に重点を置かれるのですか。これになるとどの新聞も同一性、全国あらゆる新聞は殆んど同一だと言つて差支えないことになつてしまう、そういうところへ標準を置かれますと……。
  156. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) 実は只今申上げましたのは、二種以上の著作物に組合される外形的な事実について申上げたのでありますが、こういう組合せにつきまして、編集の方針が現われて来る、それは実質的に現われるというふうに解釈しておるわけであります。
  157. 伊藤修

    伊藤修君 でありますから、私はその内容について、いわゆる実質について同一性というところ基本を置くべきではないかと、こう思うのですが、いわゆる形式の面では、編集が同一な形を持つておるというならば、新聞の場合だけを例にとりますれば、あらゆる新聞は始んど同一と言うても差支えないのです。論説欄があり、その他の欄がありということは、どの新聞でも一応とるべき形です。そういう形式的編集方針を言うのか、そうじやなくて、形式はどうであろうとも、その紙面に盛られたところの実質が同一視される場合を、紙面に現われた編集方針というのか、どつちかということをお聞きしておきたいと思います。
  158. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) よくわかりました。只今御質問通り実質的な意味解釈しております。
  159. 伊藤修

    伊藤修君 そうするとあなたのお説から行けば、私は補足して申上げますれば、題号、それから新聞の形式的編集方針、もう一つ同一認定の基礎になるでしよう。重要な点は、実質的に同一性を判定するところの基準が置かれるという結果になると思うのです。そういたしますと、今度は実質的の問題についてお尋ねいたしたいのですが、それは思想傾向で判定するのか、或いはその論調だけで判定するのか、いわゆる文字の表現だけで判定して行くのか、文字の中に含まれておるところの思想的傾向、一つのイデオロギー、そういうもので同一性を認めて行くのか、或いは主張しておるいわゆる意示表思の形において同一性を認定するのか、先ず三つを伺つておきます。
  160. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) この編集方針と申しましても、テーゼのように書き上げられた方針がはつきり認められるものでもないだろうと考えております。結局それは一つの編集の性格と申しますか、編集に対する態度と申しますか、そういうようなものになるのではなかろうかと考えております。
  161. 伊藤修

    伊藤修君 私のお尋ねしていることにお答え願いたい。私は態度を聞いているのじやない。私は三つの例を挙げているのですが、三つの基準に対して実質的な同一性の認定の基礎になるのかならんのかということを聞いているのです。
  162. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) お答えいたしますが、結局思想という意味はどうなりますか……、思想と言うよりもむしろ傾向なり態度というような言葉で現わしたほうがぴつたりするのじやなかろうかと考えているわけであります。
  163. 伊藤修

    伊藤修君 どうもその点があいまいですね。あいまいだから私はお尋ねしたのです。これによつて記録されるのですから、今後あなたたちがお取扱いになる場合においては、そういうようなあいまいな態度では取扱ができないと思います。そのときに主観的なものによつてこれは臭いなと思うとそれをすぐやつちまえとするのです。それを恐れているから国民は心配しているのです。殊に言論界の人が心配されているのです。その基準というものははつきり法文の上ですべきはずであります。法文で不幸にしてなされていないから解釈を伺つているわけであります。今の三点について一つそれはなるのかならんのか伺いたいのであります。態度については又あとで聞きますが……。
  164. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) なおよく御質問の点を検討しまして後にお答えいたします。
  165. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 今の問題について意見長官に御意見を伺つておきたいのです。  この問題は何も今初めて起つた問題ではないのです。明治以来日本におよそ民主主義のその萌芽が出て以来起つて来ている問題です。そうして現在の自由党の名誉ある前身であるかどうかその点は歴史上考証を要するけれども、板垣退助の自由党の内閣の時代から常に起つて来た問題で、日本における民権と官権の争いの最も重要な問題であります。この問題は恐らくあなたは今の特審局にお任せして涼しい顔をしているとは思つていないが、あなたはこの問題に十分参加されて次回において留保したこの点については立派な答弁をして頂きたい。およそ新聞というものはそのものが害をなすかなさんのかという重大問題であります。これは尾に鰭をつけ言えば別でありますが、新聞が直ちに害をなすのかどうか、従つて第四条において六カ月に亙つて停止するということが現在の憲法において許されているかどうか。検閲の禁止矛盾しないかどうかという問題と含めて、而もその禁止されたものとは別に発行される新聞をそれと同一の新聞とみなして同じような措置をとるということは果して許されているのか。それをやろうとしているのならばどういう根拠に基いて行くのかというような問題を含んでいる問題でありますから、どうか今のような甚だ……、そう言つちや失礼だが子供だましのような御用意で以て二度とここにおいでにならないようにお願いいたします。
  166. 伊藤修

    伊藤修君 私の質問が誤解されちやいけませんから附言いたしておきますが、私はこの問題については、これは結局は検閲禁止制度というようなものにからんで参りまして、それは逐条審議の場合にもお尋ねするのでありますが、この問題はただ単に同一性ということについての御意見を伺うというところに帰着するのでありますから……。
  167. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 次の問題を願います。
  168. 関之

    政府委員(関之君) これは伊藤先生からのお尋ねで留保した分の一つでありまするが、審理手続において当該団体の代理人の代理権の範囲というような問題につきましてであります。この法案におきまして第十二条によりまして、「事件につき弁護士その他の者を代理人に選任することができる。」というふうになつておりまして、団体は代理人を出して、そうして審理官に対して事実及び証拠に基く意見を述べ、有利な証拠を提出することができることに相成つているわけであります。そこで代理人は勿論一般の原則に従いまして、当該団体のために有利な、団体の側におきましてこの人が自分の利益を代表する意味において、最も適任者であるというふうに認めて、そこでは御選任になつて、そうして審理官の前に出て来るわけであります。そこでその代理人が行える権限の範囲は、この法律におきましては第十三条におきまする弁明の期日に出頭して、当該団体の名において事実及び証拠につき意見を述べ、更に有利な証拠を提出することができるということが一つ、十六条の第二項の調書について意見を述べてそうして審理官にその旨の記載をなさしめる。第十七条のこれは団体側の手続の証拠書類の謄本の請求をなすことができる。という三つのことがこの法案において行える代理人の権限になるわけであります。そこでそれにあるだけのことが代理人になし得るわけであります。その代理人が、その中でどういう意見を述べ、或いは陳述をなし、審理官に対して弁解をいたしますその一切のことが、団体を代理して弁解をなしたということに相成ると思うのでありまして、その範囲につきましては、仮に不利益なことを言つた場合に、それは代理権の範囲ではないというふうには考えていないのでありまして、そういうことも団体の代表者としてその代理人が言つたものであるというふうに、この法案では考えているわけであります。
  169. 伊藤修

    伊藤修君 私が質問してから幾日経つか知らないけれども、とにかく相当の日にちが経つている。今の御説明では法文の字句の説明に過ぎないのです。私の聞いているのはそうじやないのです。法文に書いてあるのですから、あなたの御説明のことは法文を見ればすぐわかるのです。その場合において、代理人が本人と意見が相違している場合、例えば具体的に言えば、調査官の主張するところの事実を代理人が肯定した場合、本人が出て来ている場合でもいない場合でも、本人の意思とは違う場合もあり得ると思うのであります。いわゆる食い違つた場合において、それは代理人の権限の範囲内に属するか、言い換えて申しますれば民訴の場合において、この終結結果は民事訴訟手続によつて審理判決されるのですから、そうするとその基本となるところのこういう段階においても、いわゆる認諾ができるかどうか、認諾として認めることができるかどうか、進んで言えば……それをお尋ねしているのです。
  170. 関之

    政府委員(関之君) 先の御説明で言葉が不十分でありましたが、仮にその代理人が審理官の前における弁解において、団体側に不利益な弁解をいたしましたとしても、それはこの法案建前におきましては、やはり団体の代表として言つたものであるということに相成ると思うのであります。もとよりその場合におきまして団体側の他の構成員役職員が出て参りまして、その前に代理人がこう言つたが、これは自分のほうはこうだというふうな訂正もできましようが、民訴における認諾というようなことは、ここの上では考えていないのでありまして、審理官は、又長官は、その団体役職員などが訂正いたしますれば、そういうものも総合的に考戴いたしまして、果してどちらが真実か、そしてそれに関連しての証拠は全体がどうなるかということを考察することに相成ると思うのであります。
  171. 伊藤修

    伊藤修君 それはますますあなたの御答弁で昏迷してしまうのです。どちらが正しいかということをそれに基いて判断すると、こういうことですね。そうすると代理人の言うたことと、本人の言うたことと矛盾した場合においてどちらをとるかということは、まさに審理官の自由裁量になつてしまうのです。そうすると代理権の範囲というものは不明確になつてしまう。勿論後において本人が出て参りまして、代理人の言うたことを取消、訂正すればこれは問題ないのです。そういう場合は問題ないのです。これは基本的に、私の言うておることは、代理人は本人の意思に反した程度まで事実に対して認否することができるかどうかというのです。認諾と言つては余り重きをなすから、そういう程度でよろしいです。
  172. 関之

    政府委員(関之君) もともと代理人はその団体において、この人が自分の団体の弁解をしてくれるのに最も適任者だと言つて一切をお任せになつて、そうしてそこに出て来て、そしてこの法案規定する行為をいたすのでありまして、その代理人がなす利益、不利益の行為は、一応はやつぱり団体を代表しておやりになつたものであると、勿論その効果は、どういうふうに考えるかということは、長官なり、長官が請求されたときには長官、又委員会におきましては委員会が御判断になることであろうと私は思います。
  173. 伊藤修

    伊藤修君 あなたは私の言うことをはつきり聞いておいて頂きたい。頭の中でよく整理してお答え願いたいと思います。その代理人及び本人の言うたことに対しての認否とか効果ということを聞いておるのじやないのです。代理人がそこまでできるかどうかということを聞いておるのですよ。およそ信任関係に基いて代理人を選定した以上は、その人の言うことをすべてこれは有効なものとして審理の基本的対象にこれを取入れることができるというならそれでもよろしい。代理人は本人の意思にかかわらず、あらゆる本人に代つて認否ができるのだと、こういう御見解ならそれでもよろしい。それに対して我々は利害を検討すればいいのですから、それとも本人の意思に反してはできない、いわゆる民訴の場合におけるところの認諾というようなことはできない、又本人の意思に反する供述はできないということに制約するのか、その点をはつきりさして頂きたい。代理人の権限を聞いておるのですよ。言うた結果を審理官がどう審理するかということは聞いておるんじやないのです。それが基本的に認められるということになれば審理官はとつて以ていずれの主張を正しいと認めるかは、それは自由ですよ。そこを聞いておるのじやなくして、基本的な代理権の範囲を聞いておるのです。
  174. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) お答えいたします。代理人の為し得る行為は、意見の陳述だけでありまして、自白とか請求の認諾というような行為認められておりません。
  175. 伊藤修

    伊藤修君 そんなことはわかつておる。さつきも言つておる。そんなことは法文に書いてあるのですよ。食い違つた場合にどうするかと、こう聞いておるのですよ。
  176. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) 代理人の述べた意見が、当該団体にとりまして利益であるか不利益であるかということは、団体の側で御判断になりますが、これが果して公安審査委員会におきまして団体の利益にとられるか、不利益にとられるかということは、公安審査委員会認定によるものであります。団体の側におきまして、代理人の言うたことが、自己の団体に不利益な意見であるというような場合におきましては、これに反対な陳述をする機会も当然認められておるわけでありますが、その代理人が述べた意見はやはり団体意見として取扱われるのであります。
  177. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると、今の最後の言葉、前のほうの言葉は今まで聞いておることで、法文のことを言つておるのですが、最後の、団体意見として取上げるということになると、この代理人の権限というものは、無制限だと、こういうことになるのですね。
  178. 関之

    政府委員(関之君) この十三条、十七条の規定に基く代理人の、審理官の前における弁解については、内容的に見てこれは無制限であると思うのであります。
  179. 伊藤修

    伊藤修君 佐藤さん、それでよろしいか。
  180. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) この法案におきましては、さように相成つております。
  181. 伊藤修

    伊藤修君 一体代理人が本人の意思に反して不利益な供述をすることをこの法案において認め、この法案に関する限りにおいては、そういう解釈をとらざるを得ないというのは、佐藤さんとしては御尤もでしよう。立案されていないのだから、できた法案に対して責任を負わされているんだから、これは仕方がない。そういう御答弁になるでしようが、一体それでいいでしようか。およそ代理制度認めた今日の日本の法律体制から考えますれば、代理人が本人の意思に反して、不利益な供述をした、それをとつて以て判断の材料になし得るんだという考え方で、一体真の公平な審査決定というものがあり得るのですか。そういう無責任な立法体制ならば、根本的に考え方がめちやめちやですよ。それは、そういう点に対するところ法律手当が通らんというならば、率直に認めて、それに対して適切な手当をするのだというなら納得が行きますれども、無制限にそんなことを許しておくということは、そうして不利益な材料は代理人の言葉といえども、とつて以てその団体規制するところの材料に供するのだというような、無責任極まる御答弁は、承服できがたいですよ。
  182. 関之

    政府委員(関之君) これは代理人というものの本質に対しては、これはもう伊藤先生に今更申上げるまてもないのでありますが、要するに団体との委託、信任の関係にあるのでありまして、団体がそこへ出て弁解をしてくれというような関係にあるので、その代理人の請求にどういう意味の制限も加えるということは相当でないと私は考えるのでありまして、その信任委託関係があつて、その範囲内において代理人が委員会に参りまして、各種の弁明をなす、それはその通り代理人は団体を代表したものであるというふうにとるのが素直なことではないかと私ども考えておるのであります。
  183. 伊藤修

    伊藤修君 冗談言つちやいかんですよ。民訴の場合に何のためにそんな規定を置くのですか。認諾の場合においては特別授権行為が要るんじやないですか。本人の意思に反して認諾するようなことは、本人は期待していないのです。そういう場合に特別授権行為が必要じやないですか。いわんやこの法案の場合において、本人の意思に反しまして、代理人は調査官の言うことが正しいと思つて認諾するということもあり得るのです。信任関係に基くといえども、代理人は飽くまで公平な立場に立つておる、本人のためにすべてなされるのが常識です。併し代理人も又人でありますから、本人の意思に反して、誤解して認諾する場合もありましよう、又故意に認諾する場合もありましよう。必ずしも本人のために全部的に行われるとは考えられないですよ。本人の予期せざるところ意思表示がなされた結果、その事案に対するところの不利益な決定をもたらされるということになれは、これは本人の予期せざるところの結果に陥ることになるのですよ。これはあなた民訴の授権行為の場合も特に明らかにしておるじやないですか。だから私はこの場合においても、重大な請求原因に対するところの基礎となるところの事案について、事実についてその意見、弁解がたまたま本人の意思に反した場合に、それはあなたが言うように、信任関係に基くのだから、一応不利なことを陳述するようなことはあり得ないというのは、これは常識ですよ。併し法律を制定する場合においては、あらゆる場合を考えてしなくちやならん。恐らく今後これが事案として取上げられる場合においては、そういう場合があり得ると思うのです。本人と代理人との意思が不一致する、供述が不一致する場合があるのです。その場合には本人の供述を似て正とするという行き方をするか、少くとも事実に対するところ基本的なものに対して影響を及ぼす場合は、さような認諾とか、承認とかいうことは認めないとするのか、そうしなかつたらば本人の権利の保護ということは全きを得られないと思います。そんなむちやな考え方はないと思います。
  184. 関之

    政府委員(関之君) この法律案におきましては、公安調査庁長官が一切の責任を持つて証拠を収集すると、そうしてその証拠によりまして、四条の条件がありますものと認めるならば請求することになるわけであります。そこでその審理の手続過程におきましては、民訴における認諾とか、或いは自白とかいうような点は、これはないのでありまして、仮に代理人におきましてそういうことを申しましても、それが果して真実や否やということは、これはもうそれですぐ効果が生ずるということはないのであります。一切のことによりまして、長官が責任を持つて事実を考えて見るということに相成つているわけであります。それでそのことから考えまして、相手方が信頼した代理人につきましては、特段の内容的に見て、この制限を置かないというのが内容的に見てよりいいのではないかと考えている次第であります。
  185. 吉田法晴

    吉田法晴君 今の御答弁だと、結局これは生地が出たのかも知れませんが、長官の責任においてやるのだから、代理人が何をしやべろうとも或いは本人が何をしやべろうとも、その効果は一切長官が責任を持つて取捨選択するのだと、こういう御答弁、これがまあ本心かも知れんと思うのでありますが、一応この代理人の規定が設けてある場合に、その代理の法条の効果がどうなるかという御質問本質であつたと思うのですが、そこで伊藤委員の御質問の途中で甚だ恐縮でありますが、佐藤意見長官にお伺いしたいのでありますが、これは法律の上に代理人が出て来た、この代理人の代理の法律上の関係、事実上の関係を今言つておられますが、法条の関係についてはこれはどういうものなのか、それを一つお伺いしたい。
  186. 関之

    政府委員(関之君) 吉田先生、いま一度お尋ねを頂きたいと思います。
  187. 吉田法晴

    吉田法晴君 代理という関係がここに出て来ている。これは法律上の問題でありますから法律上の関係が生じましよう。その法律上の関係がどうだという御質問が大体中心だと思うのであります。並びにこの手続関係が何であるかということもこれは問題ですけれども本質は法条の関係が、事実関係でなくして、この代理関係というものはどういう、とにかくこの関係なのであるかということを佐藤意見長官一つ伺いたい。
  188. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) この基礎となつております関係は、民法の委任関係でございます。
  189. 吉田法晴

    吉田法晴君 民法上の関係ですと、これはそうすると私法関係ですか。
  190. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) その代理人の今度は行使する権限のほうに変るのでございますが、これはもとより公法関係の部面の事柄で、民事上の民法関係の問題ではないと思います。
  191. 吉田法晴

    吉田法晴君 それは民法総則の代理でなくして、今委任と言われましたが、この代理とか、委任とかという法律上の基本的な考え、その民法総則の原則が、或いは公法上に、或いは私法上にどういう工合に働くかということについては私も多少佐藤意見長官の言われんとするところについて理解せんことでもございません。併しながら問題はこの手続、これは一つ手続規定だと思いますが、その手続規定の中においてこの代理人の法律的な法的な関係がどうだ、こういう場合に民法の委任関係がここに働くのでありますが、民法上の規定をそのまま持つて来て、これに法的効果を、或いは法的の関係がそこに来るんだという御説明ではこういうことは御説明にならんかと思うのでありますが……。
  192. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) その代理人と本人との関係の基礎は、これは先ほど申しましたように民法上の委任関係であるわけで、従つてその本人との信任関係に基いているという結果がそこから出て参ります。その代理人、本人が行動する行為の性質は何かということになりますと、これは先ほど申しましたように、申すまでもなく公法上のいろいろの行為をやるということになるわけであります。
  193. 吉田法晴

    吉田法晴君 ですから例えば委任の民法上の関係というものは、法律上の常識としての委任関係、具体的にありますのは、これは公法上のということですか、その公法上とか、どういうとにかく法律関係になりますのか、そうしてそこに働く、ここでは代理人ですが、今は委任関係と言われましたが、委任関係なら委任関係というものが具体的にどういうとにかく関係になつて来るか。伊藤委員訴訟法上の原則で以てどうなんだと、こういうお尋ねでありますが、問題は細かくこの法律での関係になつて参りますから、ただ法律上の常識だけで委任関係だというわけには参りません。これはこの手続関係なり、或いはそこに出て来る関係が公法上のと言われまするけれども、ただ一般的な公法上のということでは困るまるのです。或いは前審であるとか、前審でないとか、その具体的関係もまだはつきりして参りませんけれども、それに関連して参りますれば、そこでの公法関係、或いは委任関係というのはどういう法律によつて具体的に働くのか。これを一つお示し願います。
  194. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) だんだんわかつて参りました。さような委任関係に基きまして代理人ときまつた人は、先ほど公法関係と申しましたのは少しあいまいな表現でございましたが、この法律に掲げておりますこの行政手続に参加、関与する、期日に出頭して意見を述べるとか、有利な証拠を提出するとか、というようなことをやるということになるわけであります。
  195. 吉田法晴

    吉田法晴君 その場合に働きます信任関係ですが、代理関係の基礎になります一般的な法律関係、これは例えば訴訟法によるとか、或いは何によるのか知りませんが、どこにどういう法律によりますのか、その点を一つお教え頂きたい。
  196. 関之

    政府委員(関之君) いま一度吉田先生にお話頂きたい。
  197. 吉田法晴

    吉田法晴君 伊藤委員の御質問の、法理的な関係はそこになつて来ると考えますから、お尋ねをいたしますけれども、これが事実上の関係だというのなら、別問題です。併し少くとも法律の問題ですから関係の委任関係なら、委任関係でもいいのですが、民法による委任関係で以て、これはこの民法の委任関係のほうが働きますということは、これはならん。何と言つたつてこれは民法の総則の原則です。法律上のこれは常識ですが、そこで実定法上代理関係、委任関係の法的の基礎というものは、これは必要でしよう。或いは民事訴訟法なら民事訴訟法的な手続でやるというなら民事訴訟法刑事訴訟法なら刑事訴訟法、或いは私法関係なら私法関係、そういう場合における代理関係、公法上のというなら公法上の関係における代理関係の基礎になります法律関係一つお示しを頂きたい。
  198. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) その基本になつておりますところの委任の関係は、これは個人同士のいわゆる私法上の関係であろうと思います。かくして選ばれました代理人がこの行政上の手続に参加して種々の活動をするという関係が出て来るわけであります。その仕事はこの法律手続上の仕事ということになるわけでございます。最初の出発が私法上の関係で出発しているからというその影響は、その人のその場面における行政手続上の活動には直接関係のないことであります。基礎がたださような基礎に基いているというだけであります。
  199. 吉田法晴

    吉田法晴君 そうすると答えになりませんが、私法上の委任関係から出発した、そこが問題じやないと思います。この法律の上における代理関係はどういうものなのか、どういう法律的な効果があるか、こういうことになりまするならば、この手続上における代理関係のその法的な根拠、これがどこにあるか、これは公法上なら公法上、このとにかく条文に書いてあること以外に、それではその代理関係規制する基本関係はどういうところにあるのですかと、こういうことをお尋ねしているんです。これは私が申すまでもありませんが、法律上の効果を生ずるのです。代理人なら代理人の効果を、そうすればその代理人と本人なら本人との関係、公法上の関係としてここに規定していないのだから、規定がしてなければどこかに法文規定があるでしよう、或いは訴訟法上……。ところがこの関係では訴訟法でもない、或いは何でもない、こういうことで参つておりますが、そこのところを明らかにしてもらわなければなりませんけれども、その関係における、この法律関係或いは公法上の関係というなら、公法上の関係のこの代理関係の基礎になつた法理関係一つお示しを頂きたい。
  200. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) 横から差出がましいことを申上げるようですが、この法案における代理制度は、この法案によつて創設されているわけであります。で、これはもう当然でありまして、刑事訴訟法におきましては、刑事訴訟法の代理関係刑事訴訟法規定されております。民事訴訟法においても同じであります。この法案十二条には「前条第一項の通知を受けた団体は、事件につき弁護士その他の者を代理人に選任することができる。」という点から出発いたしまして、この法律に与えられた権限を代理人は行使すると、それだけでございます。そして当該団体と本人との関係先ほど申しましたように、委任契約ということによつて賄われると考えている次第であります。
  201. 吉田法晴

    吉田法晴君 本人と代理人との委任関係、民法上の委任関係はここでは問題にならないと思います。問題は今特審局長はこの法律によつて作られた代理関係と……、ところがこの法律によつてできた代理関係がはつきりせんから御質問が出ている。どういう法律的な効果が及ぶのか、或いは法律関係がどうなるのかこれに書いてないからそれじやどういうふうにどこに書いてございますか、こういう質問を申上げているわけであります。法律関係を、手続でありましようとも、何でありましようとも、公法上の関係ということでありますが、公法上の関係それ以上に行かん、それが或いは行政処分、或いは訴訟手続、或いはそれも民事刑事か、こういうことになりますが、その関係の中において本人と代理人との法律関係があり、その代理人の行為が本人に対して法律上の効果を及ぼす、その効果を及ぼす態様というものがこれにはつきりしておらなければ、それならどこに書いてあるか、訴訟法なら訴訟法の原則を持つて来て言うなら、訴訟法上にちやんと代理関係が書いてあります、それがここに働いて来る、こういうことになりますけれども、この問題については別に法条の関係一般的に規定されておりませんから独得のものだ、こういう御説明だとするならば、その独得なものをここに書いてある以外にない、こういうことならばわかります。ところ先ほどお話のように、その利害関係のはつきりしておらんところは全部長官が認定するのだ、新らしく作つて行くのだ、こういうことであるならば別であります。少くとも法条の問題であるならば、法律上とにかくはつきりしておかなければならんじやないか。そこでこの法律関係とこの手続における法律関係の中の代理関係というものがどういうものであるか、その公法上のと言いますか、もつと詳しく言つて、この手続における代理関係をもつとはつきりしてもらいたい。或いはそれが書いて、ないからはつきりしないというならばそれでも結構であります。
  202. 関之

    政府委員(関之君) これは前の御説明を繰返すことになりまするが、十二条によつて選任されました代理人のなし得る行為は、十三条の規定で、これは弁明の期日に出頭して、当該団体の名において事実及び証拠について意見を述べ、並びに有利な証拠を提出することができる、第十六条二項の調書について意見を述べること、第十七条の謄本の交付、この三つのことが代理人はなし得る、かようなことになつているのであります。(笑声)
  203. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 大分こんがらがつてるな。
  204. 伊藤修

    伊藤修君 いや、頭に入らないんだ。
  205. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 伊藤君、それじや問題のなにをもう少しわかりやすく……。
  206. 伊藤修

    伊藤修君 わかりやすく言つてるんですよ。強いてそれを逃げようとするんですかな。結局だから代理人の意思表示に全的に法律効果認めて行く、こういう考え方からそれを譲らないのです。どうも特審局の考え方はそういうように思えるのですね。こんなことにこだわるのは先ほど吉田さんが、私が民訴についてお尋ねしていると言つておられたが、私は何も民訴についてお尋ねしているわけじやないのです。いわゆるこの法律についてお尋ねしているわけなんです。民訴の中においても八十四条ですね、「訴訟代理人ノ事実上ノ陳述ハ当事者カ直ニ之ヲ取消シ又ハ更正シタルトキハ其ノ効力ヲ生セス」、こう言つて矛盾を避けているのです。民事手続においてはそういうようにあらゆる手当をしている。この場合においては漫然とあなたが先ほどおつしやるように繰返して十三条、十六条、十七条と、こういうふうに挙げている。権限はわかつているのです。代理人がなし得る事実はわかつているのです。その事実の結果ですよ、私の聞いているのは、そこまではいいのです、何遍も聞かしてもらわんでもわかつているのだから、その事実の結果、本人の言うことと代理人の言うことと矛盾した場合においてどうするのか、若し矛盾して本人に不利益な供述をした、例えば極端に考えれば認諾する、その事実を認めるということも想像できるじやないか、こういうところまで権限があるのかどうかと、こういうことを聞いているのです。その場合においては本人が直ちにそこにおつてその取消更正を求めるということになれば、これは言うを待たないのだから、これは常識的に考えれば当然本人の供述を正しいものとして取上げることは当然のことですよ。そうでなく、本人がたまたまいない場合もありましようし、又本人のよく知らん場合もありましよう。書面でも出し得るのだから代理人は本人の知らざるうちに、本人のおよそ意思に反した事実を調査官が認定するのに、非常に都合のいいような事実をも加えて意見の陳述を書面その他の方法でなされた場合に、それがこの基礎的材料になるのかどうか、いわゆる法律効果を持つのかどうかということを聞いているのですよ。これはそういう本質的な認諾のごとき、本人に不利益な供述をも代理人の権限として認めるかどうか、民訴の場合においてはそういう場合においては特別に授権行為が要るのじやないか。この場合においてはおよそ代理人であろうが、本人であろうが、勝手にしやべらしておいて、そうして自分の都合のいいことは全部取上げるという考えか、それでは代理関係基本的な信任関係というものを法律自身が無視することになるのじやないか。新らしい代理関係法律的疑義をここに作り上げることになるのです。これは由々しい問題になつて来るのです。又事実の認定においても大きな誤りを生じて来るのですよ。一番よく知つておるのは本人なんですから、その本人の意思と相反する代理人のほうをとつて以て断罪の資料にするというあり方はよくないと言うのですよ。だから結局基本的の問題となるのは代理権の範囲如何と、こういうことなんです。代理人の法律認めた仕事の範囲はこれはわかつている。そんなことは何遍も説明を受けなくてもわかつております。又その結果認定するということも当然あるのですから、これもわかつているのです。問題はそこだけです。簡単なんです。
  207. 関之

    政府委員(関之君) 御趣旨はよくわかりました。代理人と当該団体のものとの間に意見の食い違いがある、而もそれが代理人の側における意見当該団体のために不利益であるというような場合の処理でありまするが、これにつきましては、この法案の市会におきましてそういう場合に審理官の調整、どちらが本当かということを明らかにし得るような措置を市会において規定いたしまして、さような措置を審理官にとらせるようにいたしたいと存ずるのであります。
  208. 伊藤修

    伊藤修君 さような重要な事項はルールに任されませんですよ、それは。これは事案に対する基礎をなす重要な事項についての意思表示ですから、その意思表示をどちらをとるかというようなことまでルールに任せるということはできませんです。それは佐藤さんあたりお聞きになつてもそれがルール事項じやないことは明らかなんです。
  209. 小野義夫

    委員長小野義夫君) どうです、この問題は保留したらどうですか。ちよつと速記をとめて。    午後三時二十三分速記中止    —————・—————    午後三時四十二分速記開始
  210. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 速記を始めて。  次の答弁に移ります。
  211. 関之

    政府委員(関之君) お尋ねの点は、第六条の第二号におきまして、「その実行に着手してこれを遂げず、」という中に、障害未遂のほかに中止未遂が入るかというお尋ねの御趣旨と拝承いたしますが、これはこの中には中止未遂も入つておるというふうに考えておる次第であります。
  212. 小野義夫

    委員長小野義夫君) もつと詳しく。
  213. 関之

    政府委員(関之君) 御質問趣旨は、第六条の第二号に「若しくはその実行に着手してこれを遂げず、」ということが書いてあるのであります。この中には、これは中止的な活動になつておりますが、その中止的な中には障害的な未遂のほかに、みずからの意思で放棄したような場合の中止的な場合も入つておるかというお尋ねでありまするが、この中には、その二つが入つておるのというふうに考えておる次第であります。これは第四条の関係もそのようになつておりまするが、要するに或る団体がありまして、一回暴力主義的破壊活動をなした、その破壊活動の継続又は反覆してなした場合に、この六条の措置もとり得るのでありまして、その第一の前提条件であるところ暴力主義的破壊活動というものの中には、この「実行に着手してこれを遂げず、」この行為も二号によつて入ることになるわけであります。そこでこの中の障害的なもののほかにも中止的なものまで入つておる、それが前提条件となりまして、第四条、第六条の関係におきまして、条件が該当する場合には、やはり団体に対して規制一つ条件となり得るというふうに考えておる次第であります。
  214. 伊藤修

    伊藤修君 これはこの前質問を申上げたときに、この三十七条の三項によつて、内乱の場合においては、自首した者はその刑を軽減し、又は免除することができるというのにかかわらず、三十八条、三十九条の場合にこの規定を欠いておるがどうかという質問を申上げた。その場合三十九条の場合は、結局刑法一般総則の四十三条の適用によつてつて行くということが非常に不権衡じやないかという質問を申上げた。それと関連するわけです。それでみずから中止したという場合においては、少くとも本法によつてやはり三十七条の三項と同様に、これが軽減又は免除するという立て方をとることが私は公平で正しいと思うのです。この場合にのみ四十三条に委ねるということは、非常に不権衡だ、基本的には、而もこのままで参りますと、三十八条、三十九条によつて、三条の第二号のイからリまでに関する犯罪に関しては、刑事手続においては軽減又は免除される、規制処分の面においては、それをとつて以て団体規制して解散まで持つてつてしまうということは非常に不権衡じやないかと思うのです。又実際刑事政策の面から言つても、この種の行政行為政策面から考えましても、むしろそういう事前に反省して中止した者に対しても追討ち的行政的処罰をかけることは余り行過ぎじやないかと思つておるが、まあこの問題に対しましてはどなたかからの質問にあつて、和田さんでしたかね、どなたかから質問があつて、いわゆるこの自首を奨励することはスパイ行為を助長せしむる趣旨ではないかというような反対質問もありますが、そう悪く解釈しなくとも、権衡上私は非常にこれは矛盾があると思うのです。又政策の面から言つても私の申上げかたは好ましいのじやないかと思うのです。個人に対しましては全然免除してしまう、団体にのみ追討ちをかける、而も本人が反省してやめてしまつたというのにもかかわらず、なおこの六条第二号ですかを適用するということはちよつと行過ぎじやないかと思うのであります。
  215. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) 御尤もな御質問だと思いますが、ここに中止的な未遂がございますが、これは刑法のほうの建前といたしまして、自己の意思によつて犯罪の実行に著手していながらこれを中止した者、自己の意思により中止した者となつているのであります。この場合にその犯罪を犯す決意を完全に放棄した、道徳的な悔悟等によりまして完全に決意を放棄したという場合だけではなくて、自己の都合によつて一時延期するというような場合もやはり中止の中に含まれていることは学説等におきましても大体一致している意見でありまして、かような一時中止は自己の外部的障害ではなくて自分の意思によつて一時犯罪の実行を中止するという場合も含まれているわけであります。ところで第六条の適用につきまして、完全にこの犯意を放棄した者は、すでにこれの予備陰謀は終つて実行にまで著手した場合に、完全にその団体が暴力主義的な破壊活動を行う意思を実行に著手した後放棄してしまつたという場合におきましては、将来又は、殊に継続又は反覆して団体が行うということも極めて稀である、殊に継続して行うというような適用は殆んど稀であろうと考えて、実際におきましては規制処分が行われないというように相成るものと考えております。かような点で調節ができると考えておりますので御了承を願いたい。
  216. 伊藤修

    伊藤修君 あなたたちの取扱において、そういう場合には手心を加えるということは飽くまであなたたちのお考えで、法律の上ではそういうことにならない、いわんやこの場合においてイからリに至るまでの扇動をみずから中止したその中止の動機は、反省によつて中止した場合もありましようし、今時期でないからやめるというそういう理由によつて中止する場合もあるでしよう。扇動行為をやめようといつても実害も何も生じて来ないのであります。そういう場合も想像できるのじやありませんか、イからリまでということになりますと。
  217. 関之

    政府委員(関之君) リは入つておりません。
  218. 伊藤修

    伊藤修君 リ号は適用しないのですか。
  219. 関之

    政府委員(関之君) 御説明いたします。これは局長の御説明を補足いたすことに相成るのでありますが、この一号、二号、三号のここに挙げた行為は、団体が過去において行なつ破壊活動に当るわけであります。過去においてとにかくかような行為がありましたときに、それは一応規制認定する一つ条件として、そうしてそれに継続して、又は反覆してということに相成るわけでありますから、このことですぐ追討ちがかかるということにはならないわけであります。そうして次に三号のほうでありますが、単に団体が第二号の予備、陰謀、教唆、扇動にとどまる場合には、この一号、二号でなくて三号に当るわけでありまして、これはここには入つていないわけであります。
  220. 伊藤修

    伊藤修君 いずれにいたしましたところが、結局理由の如何にかかわらず、みずから中止いたしますればその後又やるということもあり得るかも知れません。悪く解釈すれば……。併しそういうものまで規制しなければならんでしようか。障害未遂の場合には本人の犯意というものは継続しているから、放棄したわけじやないからそれはあなたたちの規制の対象になるということは一応考えられますが、併し原因の如何にかかわらず本人がみずからやめようと言つてやめた場合も、この規制の対象になるということはちよつと私は行過ぎだと思うのであります。どういう必要があるでしようか。だから障害未遂とやはり中止未遂とを区別すべきであるのであります。そういうことをこの法律の或る点においては区別しているのでありますから……。
  221. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) 誠に御尤な点もあるのでありますが、先ほども申上げました通り、犯罪の実行を一時延期するというようなものも中止的な未遂の中に含まれるのでありますが、実際の法案の適用におきましては、その道徳的な悔悟等によりまして犯意を絶対に放棄してしまつたような場合におきましては、たとえその原因認められましても将来再び暴力主義的な破壊活動を行うというようなことは認められない事態に相成りますので、両者を含めて考えてもお差支えはないものと考えます。
  222. 伊藤修

    伊藤修君 どうもそれだけでは結局特審局が、若し今後できるところの公安調査庁というものが、あらゆる場合をやはり引括つてしまうという基本的なそういう考え方の下に、すべて細大漏らさずここに書き上げようという思想が、ここにも現われているということになるのですね。私はそういうものまで根ほり葉ほり重箱の隅を突付くようなことをしなくても、むしろそうすることのほうが却つてこの種の団体を絶滅するのにはいいのじやないか、反省を促す機会を与えるということのほうが、国家のためにも大きな利益をもたらすのでないかと思うのであります。一旦そういうことを決意した以上は、自分が中止しようが中止しまいが結局は引括られるのだ、結局は規制されるのだということになれば、毒喰えば皿まで喰えというふうなところまで追いやつてしまうことになる。政策のよろしきを得ないと思います。立法政策としても御反省になる余地はないのですか。
  223. 関之

    政府委員(関之君) これも前からの御説明を繰返すことになりますが、この法案規制考え方としましては、団体はとにかく前に一回は破壊活動をやらなければいけないわけであります。その一回やつた破壊活動を、継続又は反覆をしてやつた場合にこの規制措置が動いて来るわけであります。そこで過去において一回やつたという破壊活動を前提としているわけでありますから、その破壊活動が仮に団体の中止的な考えでやめた場合でも、とにかくやつたという事実は消し得ないのであります。そのうちに、それは継続ということはむずかしいかも知れませんが、反覆してそれをやつたということになると、これになるわけであります。それに関連して将来かような危険性が生じますならば、やはり規制の必要があるものであると、かように考えているわけであります。
  224. 伊藤修

    伊藤修君 もう一つ申上げておきますが、人間というものは過ちがあるのです。ふつとここに言う扇動、扇動によつてふつと乗つて過ちを……一遍犯した過ちをいつまでもお宝のようにとつておいて、次に行うかしら行うかしらと思つて待ちかまえているという考え方はよくないのじやないですか。あつた過ちは、みずから反省してやめたならば、若しくはその他の故障によつてやめたならば、理由の如何を問わず、みずからやめるという決意をしているならば、それはやはり免除すべきじやないでしようか。それをいつまでも過去の一つの歴史としてとつておくというやり方は、次にやはり第二回目もやめた場合には手心で以て、勿論規制をなさらないとおつしやるけれども、第一回にやろうと思つていた、どうも天気都合が悪いというと障害未遂になるでしよう。併し今時期でないと思つて国民のあれがそういう動向に向つて、大衆がそういう動向に出ていない、時期でなしとしてみずからやめた、第二回も計画して見たがやめたという場合には、実害が対外的に現われて来ないのですから、本人の内心的意思ですね、故意です、内心的故意が何らかの方法によつて、調査官がそういうことを掴んで来たというだけで規制してしまうということになるのです。恐らくはあなたたちの考え方では、三回四回こういうことを繰返したならば規制してしまうでしよう。これは人の心理状態にまで立入つて来ることになるのですよ。外界に現われればもう予備、陰謀になつてしまうのですから、この場合に外界に外形的事実として現われて来ないのですよ。事実を想像いたしますれば、人の心理状態にまで、こういう或る範囲ですね、それが二回、三回と企画されたというだけで以つて、これは規制してしまうということになるのですか、それなら企画が外の外形的事実として現われれば予備、陰謀になつてしまうのでしよう、そうじやないですか。
  225. 吉河光貞

    政府委員(吉河光貞君) 実はここで掲げてありまするが、立て方は「団体の活動として第三条第一項第二号イからリまでに掲げる暴力主義的破壊活動を行い、若しくはその実行に着手してこれを遂げず」というように書いてありまして、予備、陰謀の段階は過ぎまして、すでに実行行為に着手して、そうしてこれを中止した場合を規定しておるのでありまして、外界にははつきりと実行行為の着手が現われているような団体を捉えたものであります。
  226. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 意見長官の御意見を伺つておきたいのですが、今特審局長のほうから御説明がありましたいわゆる見合せたという場合ですね、これは問題がどういう性質の問題かということは、御承知のように申上げるまでもない。つまり政治上の主義主張を談じ、又はそれを反対しようというふう思つて、恐らく必ずや合法的な手段を尽されるでしよう、そうして合法的な手段を尽され、その合法的な手段の尽きた、言葉尽き、筆尽き、情尽き、理が尽きたという場合なんでしよう、そういう場合に見合せるということは決して軽々しいことじやないですよ。特審局長はそれを非常に軽々しく今ふつと見合せよう、工合悪いから明日でもやろうかというのじやない、その場合、若し見合せるということがあれば、つまりそれはその政治上の反対者ですね、政府なら政府というものの出方によつて、それは永久に見合せることになる場合があるのです、その場合が可能だということは御想像になれますね、そういう場合を禁止してしまうということは、この法のおつしやつておるような目的ということとは相反するのじやないですか。つまり暴力活動を阻止するのが目的だ、場合によつてはこの法は実行しないでも、これによつて暴力活動に対する急進的な意見を持つておる人々に非常な反省を与えて、若し日本に現在暴力革命云々ということを考えておるかたがあるといたしますれば、それに対する非常な反省を与えるということが私は恐らく法務総裁のお考えになつておる、或いは政府のお考えになつておる第一の動機だろうと思う。これを実行したいというふうに思つていないのだろうと思います。それはタフト・ハートレー法にしたつて、何にしたつて基本的人権を制限するような法というものは、一般に国際的には容易には実行されないものです。従つて私は現在特審局関係のかたがたは、直ちにこれを実行しようと思つておるかも知れないが、政治家としては、或いは政府としては、こういう基本的人権を阻害する虞れの多分にある法というものは、軽々に実行しようとするものではないだろう、そういう基本的な関係をよくお考えになりまして、今の場合、中止という場合です、いわゆる中止、未遂というこれは、決して今日はちよつと気分が出ないからやらないなんというような問題じやないですよ。そうでしよう。やるべきだというふうに思つたが併し政府も、或いは世論に鑑みて、そうして反省するかもわからない、或いは我々の決定というものを世論は支持していないとか、というような関係もあり得る、その点が一つなんです。それから第二の点は、こうした解散を行う、或いは歴史を持ち、容易ならざる努力を以て築かれて来た一つの組合なり政党なり、その間には間違いもあつたでしよう、併し又正しい方向にも行つたかも知れない。我々の頭の中と同じですよ。間違いも考えるが、併し正しいことも考える、或いは左に行き、或いは右に行く、それこそ大勢の人の汗と膏によつて築き上げたこの団体を解散させるという場合、これは明白にして完全な危険がなければならん、それとの制限の関係というものは極めてデリケートなものだということも御了承願えるだろうと思います。その関係がこの判断の際重大な第二の基準にならなければならないと私は思うのであります。それから第三には、この法律はつまり暴力的な破壊活動をいやしくも挑撥するようになつちやならん、この法自身が、従つてその人が吉河君の言うように、道徳的というところまで立ち行つて行くことは到底できませんよ。併しその意思が、少くともそこで中止されている、根本的な意思というものは、これは政治上の主張ですね、つまり現在の政府というものは、これは暴力によつて倒さなければ駄目だというのは、これは一種の政治行為というか、非常に長い、又高いレベルにおいて考えられることなんです。だからそれは残つているかも知れない、併しながらここに一つ破壊活動というものを行うところ意思というものは少くとも中止する、それが併し同じように規制される、団体が解散されるという第二の点を思い出して頂きたいのですが、つまりここで中止をしても自分の党なり自分の組合なりというものは解散されてしまうのだということならば解散を賭してでも闘うと言う。つまり中止の意思は恐らく私は起るまいと思う。世論は支持していない、又政府はことによれば態度を変えるかも知れない、併しながらすでに実行に着手しているのだから実行をすべきだというので、中止すべきでないという方向へ入つて行くということは、この法律趣旨ではないだろう、相反するものじやないか、そういうデリケートなところまで行つて破壊活動は起らないことを期待するのが本法じやないか。以上、三つの点から考えて下すつて、今の点が最初に政府がお考えになつておるようなことでよろしいかどうかということをお答え頂きたいと思います。
  227. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) よくわかりました。御趣旨は御尤もだと同感いたしております。今問題にされております二号で実行に着手して遂げずというところについての中止、未遂ということに二色あるということはもう皆さん御指摘の通りでございます。一日延ばす、二日延ばすというものが中止未遂でありますが、又完全に放棄した将来絶対にやらないという意味の場合もこれはあるわけであります。その後の場合についての特に御懸念だろうと思つて御同感申上げたのでありますけれどもただ実際上の問題として考えますると、これは結局現実のその団体の態度というものをあらゆる角度から検討して、そうして結論を得なければ、果して延期であるのか完全なる放棄であるのかという認定は私つかないだろうと思うのであります。従いましてこの問題は、この六条で申しますると、六条の本文の「当該団体が継続又は反覆して将来さらに団体の活動として暴力主義的破壊活動を行う明らかなおそれがあると認めるに足りる十分な理由」という方向の、今度は認定の問題がまさにそこに来るわけでありますから、本文のほうの認定から言つて、そういう場合は落ちてしまうのじやないかと、私個人は安心しておりますが、御懸念の点は十分御同様の意見を持つておりますけれども、そういうことに結局なるというふうに私は考えております。
  228. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 くどいようですけれども、中止、未遂というのは、いやしくも破壊活動をやるというのですから、相当の準備がしてあり、そうして政府の施策に対して合法的な手段を尽して最後の手段としてやつて政府はどうしても合法的にそれを変えないのだという認定があり、そうして自分のほうでも相当の準備をし、犠牲者も相当覚悟をし、ちよつとした横丁で小便するような話と全く違いますよ、而も世論もこれを支持しているかどうかということを、いやしくも政治家として私は見極めて、それを実行に着手しているという場合に、中止するということは、今おつしやるような、全くその意思を放棄しているという場合と、それから今日やめて明日やるかも知れないという場合にも十分の問題があるというのです。全くその意思を放棄してしまわないで今日やるか明日やるかと思つて十年の年月を待つ政党なり組合なりというものがあり得るということを私は言うのです。そうしてそれをこれによつて、今三つ挙げましたが、三つの関係のようなデリケートを含んでおり、そうして御指摘のようにこの第六条の本文と言いますか、前のほうでもそれを反覆して行う明らかな虞れがあるというふうに認めるに足りる十分な理由がありというものにまで絞つて行くとすれば、私はこの中止未遂というものは当然、今外されるというふうにお答えになりましたが、事実上において外されるのみならず、この法の解釈においても中止未遂までを障害未遂と同じように解釈するということには多大の問題がありはしないか。最初は割合に簡単に中止未遂は入るというふうにお答えがされたけれども、そこに問題がありやしないかということなんです。事実上それは落ちるだろうということはお認めなつたわけです。併しそれはそれならば解釈の上でもそれは落すべきだ、そうすることがむしろ暴力活動というものを未然に防ぐという本法の根本的な精神というものに合致するゆえんじやないかというふうに思うのですが、どうでしようか。
  229. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 私の悩みと申しますか、それは結局中止未遂全体ということではなくて、中止未遂の中に只今お話に出ましたように二色あるうちのそのあとの分と申しますか、その分についての問題になるものでございますから、何と申しますか、理窟の問題と申しますか、形式の問題と申しますか、そういう点から言つて割切れない問題が残るわけなんです。そこで先ほども触れましたように、六条全体から言つてそういうことは規制されるという結果にならないということを申上げるほかないわけなんでございます。
  230. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そういう悩みがあられる場合に絶えず思い起して頂きたいのは、これは非常に重大な基本的権利を制限するものである。又それが眼前の明白な危険というものにあらざれば、そういうことはこれは絶対に許されないことである、従つてどつちにしようか、こつちにしようかという簡単なお気持ではないのですけれども、併しそこで悩んで行く場合に或いは特審局では、さつき伊藤委員もおつしやつたように、そういう場合も隠れるようにして行こうという気持が若しあるとすれば、それは意見長官において必ずしもそれに私は同意されることが御職務に忠実なゆえんじやないのではないか。重大な基本的権利を制限するものであり、且つその眼前の明白の危険というけれども、これは政治的判断というふうなものが多分に両方に加わつて来ます。ですからそこで良識が発揮されて暴力的な破壊活動が防がれるという方向に向つて行くほうがいいので、暴力主義的な破壊活動を権力によつて括るという方向に行くべきでないということは御諒察願えるんじやないかと思います。
  231. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) この審査委員会の設置法の関係におきましての審査委員会の定足数の人数の問題と、それから三人以上は同一政党に属してはいけないというその関連において御懸念がありまして、誠に御尤もだと思います。その際一応のお答えは申しましたんですけれども、なおその後いろいろ調べましたので、一応の御説明を聞いて頂きたいと存じます。この間も触れたのでございますけれども委員の任命については特に法律の第五条におきまして団体規制に関し公正な判断をすることができるものという条件がはつきり掲げられており、而もそれについては両議院の御同意を得るのでありますから、その公正な判断をなし得るかどうかということについても、両議院で御判断を頂くという建前としておるわけであります。従いましてその方向から申しますならば、実は同一政党のかたが何人あろうと心配はないということが、或いは言い得るかも知れないということになるわけで、実際上調べて見ますというと、他の委員会等におきましても特に同一政党所属のものの数の限定を全然置かないで任命そのものにすべての信頼をかけている例もあります。併しながらこれもこの間触れましたけれども、そうは申しますけれども、同じ政党の人がたくさん固まるということは、どうしてもよそから見ますというと、いわば色目で見られてその信頼性を失うだろうというわけであります。所属の人数を限定するという考え方が出て来ておるので、実際の例から申しますとその人数を制限している立法例がたくさんございます。ただその場合に、この委員会というものが全員一致ですべて活動するという鉄則を貫きますれば問題は起りませんけれども、これは又生きた人間の寄合の機関でありますからして、やはり或る場合には事故の生ずる場合もあるということから、又定足数何人というような定めをしなければならんということで、又殆んどすべての委員会において定足数の制限規定を設けまして、その数が集まれば委員会が開けるということになつておるわけです。ところで今度はこの今の同一政党所属のほうの限定の問題です。その定足数の問題とがからみ合つて来て、まさにこの間私の良心を疑われるような御疑念が起つたのでありますが、これは御尤もな御疑念だと思いますけれども、申上げたいのは、これはその両方の制約から挾まれての苦しい結局調整ということになりますので、恐らく他の立法例の場合においても同様と思いますけれども、例えば公益事業委員会などが五人の構成で、そうして同一政党の禁止は三人以上と、これと同じになつております。そうして定足数はやはり三人以上、それからまだそれと同じものが、中央更生保護委員会もそうでございますし、それから文化財保護委員会も同様になつております。それから国家公安委員会、これはしばしば例に出ておりますが、これも同じ例になつております。この定足数と同一政党所属の禁止との関係は非常に表面的な御説明になりますけれども、さような調整の苦しい解決として、今までの多くの立法例においてさようになつておるのであります。特にこの案につきまして私が良心を疑われるというようなことは、これはむしろ十分御了解を願えたことだという意味で一応御説明を申上げたのであります。
  232. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 この今お答え下さいました関係ですね。三人で委員会を開ける、そうしてその二人までは同一政党に所属する人であり得るという規定があなたがあなた御自身の自由の意思法律案を立案するという場合に、そういうことをあなた御自身でなす、なし得るというふうにお考えになりますか。
  233. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 恐らくこの法案につきましても、私は審査をした立場におるのでありますからして、さようなことも考慮に入れて、これはこの間も申上げたと思いますけれども、これに同意をしておるわけです。ただそれを正しい、天下の鉄則なりとして決して押しつけがましいことは申上げません。又別途の立派な解決方法がございますならば、勿論それをむしろ尊重して行きたいという気持を持つているということは、先にもちよつと申上げた通りでございます。
  234. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 よくわかりました。それについて、これがたびたび政府側から最初のうちは繰返されておつた絶対に濫用の虞れがないという規定じやなく、濫用の虞れが多分にある規定だと、従つて国会の判断によつてこれが修正されるということはむしろ喜ばしいことだと考えるというふうなお答えつたと思うのです。で、念のため申上げておきますが、国家公安委員会だとか、或いは公正委員会というような委員会とは性質が全く違いますね。この公安審査委員会というものは、政党を解散し得る委員会です。その意味で、国家公安委員会なり、或いは公正委員会なりというものとは全く性質の違うものだということは、さつき御説明では何かそれと同じ性質のようなふうに伺いましたけれども、まさかそうお考えになつているのじやないと思う。端的に言えば、これは自由党なら自由党が共産党を解散し得るという、そういう任務を持つ公安委員会ですね、或いは共産党が自由党を解散し得る、私はいずれの場合でも、その政党を弁護する論拠の上に立ちたいと思つているのです。現在の問題ばかり我々は考えているのじやないのです。どういう場合にも、政治結社の自由というものは食くまで尊重されなければならない。従つて、それに対して規制が行われる場合、いわんや解散というたびたび各委員からも言われておる死刑にも等しい処置がとられる委員会ですから、列挙せられましたような委員会とは性質が違うと私は思う。そうして、若しこれを、場合によつては臆測を加えるならば、ここに一つの陰謀が隠されているというように推測されることをも防ぐことはできないのです。破壊活動防止法案並びにそれに関係する二つ法律案というものは、実はナチスが国会に放火をしたのと同じような意味における一つの全体主義の計画の第一歩だと、それはここに隠されておる、三石の委員委員会を開き、それによつて一つの政党或いは組合を解散することができる、その委員会の二名までが、つまり絶対の多数が同一政党のメンバーによつてなされ得るというならば、そういう陰謀をも許す、それを防ぐことはできない。若しそういう陰謀をなす人があつて、それをなすということをこの法律は少くとも防いでおりません。これは本法が飽くまで民主主義を守つて行きたいというように御説明になる趣旨とは全く反対ではないかと思う。而も、それは決してそんなに複雑な問題ではない。この法案が立案される過程において、私のような素人でさえすぐわかる問題なんですから、専門家が御覧になつて、成るほどこれは三人でやれると、そうして二人の同一政党の委員がそこに列席をして決定をすることができる、そうして一つの政党を解散することができる、これが非常に濫用される虞れがありはしないかということは、当然どなたが御覧になつつて私はそこまで行くと思う。私はこの問題については、いろいろな点から考えて頂かなければならない点があると思う。一つは、この法律案の立案の過程においていわゆる秘密主義がとられたのではないか。それはこの法律案全体の性格の上に、又この法律案が法として成立した土にも、その運営の上に秘密主義の慮れがあるのではないかというような点からも考えて見なければならないことだと思う。これは、さつき御説明になつたような理由は、二義的の御説明としては伺います。けれども、併し本質的には、こういう危険な規定を許しておくということは、本法政府の宣言せられる趣旨から言つて、私は許されることじやないと思う。私は必ずこれは国会において修正せられて、そうした危険な場合が起り得るような法文をそのままにしておくことはないというふうに思うのですが、今申上げた点については、これは法案全体にも関係して来る点でありますから、今後もそれらの点について、又個々の場合について御意見を伺つて行かなければならないというふうに思います。で、結論としては、今意見長官がこれは問題がないというふうには考えられない、従つて、それについて更に優れた解決の方法がなされることが、実行されることが喜ばしいことだというふうにお考えになつておるというふうに伺つておきます。
  235. 小野義夫

    委員長小野義夫君) お諮りします。本日はこの程度で如何ですか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  236. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十六分散会