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1952-04-27 第13回国会 参議院 法務委員会 第32号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年四月二十七日(日曜日)    午後一時二十七分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     小野 義夫君    理事            伊藤  修君    委員            寺尾  豊君            長谷山行毅君            岡部  常君            内村 清次君            吉田 法晴君            羽仁 五郎君   政府委員    法務政務次官  龍野喜一郎君    法制意見長官  佐藤 達夫君    法務法制意見    第二局長    林  修三君    刑 政 長 官 清原 邦一君    法務検務局長 岡原 昌男君   事務局側    常任委員会専門    員       長谷川 宏君    常任委員会専門    員       西村 高兄君   —————————————   本日の会議に付した事件日本国アメリカ合衆国との間の安  全保障條約第三條に基く行政協定に  伴う刑事特別法案内閣提出、衆議  院送付)   —————————————
  2. 小野義夫

    委員長小野義夫君) これより委員会を開きます。前回に引続き日本国アメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定に伴う刑事特別法案を議題に供します。  先ず伊藤委員から御発言願います。
  3. 伊藤修

    伊藤修君 先ず六條関係についてお尋ねいたしたいと思います。ここに「公になつていないもの」この意味について先ほど説明がありましたが、例えば日本及びアメリカ等においては公になつていないがすでにソヴイエト、中共においては公になつておる、というようなものに対してはやはり公という概念が入るかどうか。
  4. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) どこでも結構でございますが、さような場合には公にいたした場合には公にいたす、さよう趣旨でございます。
  5. 伊藤修

    伊藤修君 又この種の事案が取上げられまして裁判進行中において知り得るよう事項については、やはり公ということが言えるかどうか。
  6. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 進行中といいますとどういう意味でしようか。
  7. 伊藤修

    伊藤修君 いわゆる裁判審理中において法廷においてこの種のことが取上げられて、その文書若しくは供述の上においてたまたまそういう事項に触れて来るというような場合があり得ると思うのです。
  8. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) それは勿論このことの積極、消極を判断する基準は犯罪ということになるわけでございます。
  9. 伊藤修

    伊藤修君 今のお答えじや私はちよつとわかりかねます。私はそういう法廷において現われた事実は、それは公の概念の中に入るか入らんかということを聞いておるわけです。
  10. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 「公に」というのは要するに多数の者にその事実が知れた、簡単にいえばさようなことでございまするが、公開法廷において、自由な傍聴の下に審理がされたような場合には勿論公になるものと私は考えます。ただ職務上の若干の小範囲のものにおいてこれを知つておる程度のものについてはこれはならん。極端な場合を申しますると、成る秘密について最高幹部だけが知つておる、その幹部の数名或いは十数名の間においてはこれはもうみんなわかつておるというふうなことがすべて公だということになれば、およそ秘密というものはなくなる、この本條の関係ではなくなる。これはさようなことになりますので、事の性質上さようなものは入らんというふうに理解しております。
  11. 伊藤修

    伊藤修君 どうも明瞭でないのですが、勿論法廷において裁判官がその事項について読上げますれば、私は公になることは疑いないと思いますが、そうでなくしてこの本法の第六條関係においてこれが機密なりや否やということを裁判所が判定しようというのには、恐らくこの運用上、裁判所が直接若しくは外務省を通じてアメリカ軍隊照会いたしました結果、それが機密なりや否や若しくは重要な事項なりや否やということを先ず調べなくちやならんと思います。そうした照会文書若しくは知り得たことが記録の上にある場合において、記録は勿論公開はしませんが訴訟関係人は見ることができると思うのですが、そういう場合において記録にあるものは公になるかどうか、ということを聞いておるわけです。
  12. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 先ほどから申上げまするように事の性質からものを論ずるということは法律のあらゆる概念に通ずることでございます。即ちその法律趣旨に従いまして公けにされたもの或いはなつたものというものはどういう点までこれを含むべきかということは、おのずからその公になつたものを除外する理由からしてこれを判断しなければいかん。さよう趣旨先ほども申したように、軍の最高幹部級において十数名、或いは二十数名でも結構ですが、相当多数の者に作戰計画なら作戰計画というものが連中の間でははつきりしておるというようなことがございましても、それをもつて公になつたものといえないと思います。それと同様のことでございまして職務上或いは事の性質上当然公にされる或いは公になる場合はこれは別でございます。その他の場合には然らざる場合があるということを申しておるのでございます。
  13. 伊藤修

    伊藤修君 説明が、抽象的のことを聞いておるわけじやないのです。具体的な事実を摘示して聞いておるのです。それがなるかならんかという御答弁だけで結構でございます。
  14. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 事は具体的に申しますと、具体的な事件においてこれを判断するのが妥当だと存じます。つまりこれは法律解釈として。
  15. 伊藤修

    伊藤修君 言つているのはそうじやない。今私が聞いておるのは、裁判所照会して裁判記録綴つた場合においてそれが公かどうかということを聞いておるのです。
  16. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) つまりそれを二つの場合に私は区別して先ほど申上げました。さようのことが公開法廷において裁判官が外部にこれを公にした場合、並びに事の性資上これを成るべく内密にやりたい、つまり非公開でやる場合と二つあるだろうと存じます。これは憲法の規定からそのどちらにすべきかということは裁判所判断できまる問題でございまして、その際にその前者でありますればその際の公になるということでございましようし、その後者であれば事の性質上これはならない、かよう説明する次第でございます。
  17. 伊藤修

    伊藤修君 それは非公開の場合においてその記録法廷において読まれたという場合に、訴訟関係人職務知つたということは職務関係者は言い得るでしようが、当事者について若しくは参考人として出頭しておる者、証人として出廷しておる者がたまたまそれを知り得る場合においては職務上とは言えないと思います。だから非公開であろうと少くとも法廷においてそれが読上げられますればそれは私は公ということに入ると思います。問題はそうでなくて照会で来た文書がそのまま記録に綴られた場合に、記録にあるうちが公という概念に入るかどうかということをお聞きしておるのです。又それが公でないとすれば裁判官はそれを他に漏らすことができないし、裁判官もそれにひつかかることになるのじやないですか。
  18. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 問題が六條一項の問題と二項の問題がこつちやに論ぜられておるように私は思います。その六條一項の探知、收集につきましてはさような公になつていないものを探知收集するということで、それは事の性質上、職務上不当な方法或いは特殊な目的を有せずして了知する場合がございましよう。さような場合にこれを漏らすという問題になりまするとこれは二項の問題になつて参るのでございます。二項に関する限りこれは通常不当な方法によらなければ探知し又は收集することができないようなというふうなことがございまするので、それから非公開になるわけでございます。
  19. 伊藤修

    伊藤修君 私は手段のほうを開いているのじやない。手段のほうはたまたまこれを例示したに過ぎないので、公の概念として入るか入らんかということを聞いているのです。そのポイントだけを一言おつしやつて頂けばいいのです。
  20. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 單に機密裁判所記録に記したということのみをもつてしてはこれは公になつていないものと私は思います。そのほかの要素が加われば別でございます。
  21. 伊藤修

    伊藤修君 そういたしますと公になつていないものということになりますればそれを訴訟の上において取扱うことができないことになりはしませんか。若しくはそのことを判決文の上に摘示するわけにも行かないということになるでしようが、訴訟進行上非常に不都合を生ずるのじやないでしようか。
  22. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) それが只今申上げました二項とごつちやに考えておられる点じやなかろうかと存じます。
  23. 伊藤修

    伊藤修君 私の聞いているのは基本的に公になつているということとなつていないことが先ず問題なのです。公になつていれば如何よう取扱つても問題がないのです。先ず根本的には公になつているかいないかを先に定めて、そして公になつていないというならば二項及び一項の後段によつてこれが措置せられるということになるのですか。
  24. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) その点は先ほどお答えした通り二つに場合を分けて考えるべきであるけれども、單に記録の中にそれがある、職務裁判所記録にそれを綴つたということは公になつたものと考えない、かよう趣旨でございます。
  25. 伊藤修

    伊藤修君 いわゆる軍当局から裁判所にさよう関係書類を送つて来た場合においては、少くともアメリカ合衆国軍隊としては自分のいわゆる作戰計画から外へ出しておるのですから、私はそういう場合においては公とみなすべきでないでしようか。公になり得るところの可能性も十分持つておるのじやないでしようか。そこにしても公の性質がまだ持続しておると考えることは余り狭きに失するのではないでしようか。
  26. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) それは逆の方面から考えて頂きますればよくおわかりと存じますが、事の機密なるや否や、公にされたものであるか、或いは別表に該当するものであるかどうかという判断はそれは日本裁判所が証拠に基いてすべきでございます。さりながらこれをやるについていわゆるわかり易い事例で申しますと、いわゆる偽情報というものがございます。この偽情報に基きまして如何にも御尤もらしい情報が現れて来る。これはどうも誰が考えても機密らしいということでこれを罰しては大変でございます。そこで果してこの流された情報なるものが客観的に機密であるかということは一応向う側の意見もたたいてみなければならんわけでございます。向うでさようなものがたとえあつてもこれは機密じやないということになりますればごれは問題ではない。又根底にさようなものはないということでございますればこれ又偽情報としてとんでもない間違いである、結局事件にならない。さような点からしてこれは確めなければいけないということに相成るわけでございます。さような場合に向うからそれについての返事が来たからといつて直ちにそれが機密でない、向うとしてはそういうことについて野放しにするという意思表示があつたものと考えることは少し行き過ぎじやないかと私は考えます。
  27. 伊藤修

    伊藤修君 その点はどうも御説明では納得できないのです。
  28. 吉田法晴

    吉田法晴君 それじや関連しまして、この解説書によりますと新聞にのつたものについてはこれを公になつたものと解されておるようであります。そのほかの事例として裁判所記録にのつたものを今伊藤委員から質問されたのではつきりしないままに問題を移して行こうというふうに思うのですが、第一点はこの解説書新聞にのつたものはこれは公になつたものだと解しましても、それがこの第六條の解釈についてどこまで、何と申しますか有権的なものになり得るか、これは勿論一応有権的な解釈として相当強いのであるということはわかりますけれども、併しそれが法文の上に客観的に現われる、或いは政令なり何と申しますかこの法そのものでなくても法関係において現れますならばはつきりといたしますが、その解説書解釈の持つ何と申しますか法上の保障について第一点に伺いたいと思います。それからなおあと具体的にお尋ねをいたして参りたいと思いますけれども、先ずそれから伺いたいと思います。
  29. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) すべての法案につきまして同様でありまするよう法案の立案する際にどういうことを考えてこれが作られたか、又今後の運用方針も如何あるべきかということが立案者の一応の意思というものを明かにする必要がある。そこでかよう解釈を下すわけでございます。併しながらこれは御承知でもございましようが、あらゆる法律その他憲法も含めまして最高判断裁判所のなすべきものでございます。一応の行政解釈として御理解願いたいのでございます。
  30. 吉田法晴

    吉田法晴君 そこで例えば施行規則、その他に現れますならばこれは裁判所解釈いたします材料になるわけでありますけれども、一応行政府の解釈、立法の場合の解釈そのもの裁判の唯一の或いは中心的な法律解釈の基礎にならないだけにその他の法上の保障方法について御考慮がありますかどうかを伺つたのであります。
  31. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) これ又すべての法律に通ずる原則でございますが、事を細かにあらゆる場合を想定してこれを並べて行くということは相当困難なことでございます。そうしてこのたとえそれが相当細く規定いたしましても今度はそれに抜けた場合には反対解釈としてそれは除外されるか、かようなことに相成つて来るのでございます。そこで一つ解釈というものはその具体的な事案に応じて裁判所が最も妥当な法律判断を下し、これに最も妥当な裁判をするというのがやはり原則だろうと私は考えます。
  32. 吉田法晴

    吉田法晴君 問題は立案措置について考慮する意図があるかどうかを伺つておるのでありますが、その点について法上の保障をもつと明かにすべきであるという意見にとどめて具体的な事例についてお尋ねをいたしますが、新聞にのつたものについては解説書に出ております。それから不特定多数の人に知られておる場合もそれが公になつているものであると解すると、こういうお話でありまするが、例えばこれは前提でございますが、施設及び区域の中に軍の管理工場ようなものが入るかどうかという問題とも関連いたしますが、例えば軍の管理工場一つ施設又は区域の中に入つたとして、その中で例えば工場の殆んどすべての人が知つておる或いは同様のことが例えば一地方と申しますかもつと区切つて一地区或いは一地域におて例を上げて言いますと、或る所に高射砲陣地が作られておる或いは作られた、その地方の人はこれは事実見聞きして知つておるわけであります。こういうものをいわれるような不特定多数の人に公になつておると、こういうよう判断されまするのかどうか。
  33. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 不特定多数ということは従来判例ではいろいろ言われておりますが要するにたくさんの者がこれを知つておると、誰でも知つているといつたよう程度のものを申すのでございます。従いましてちよつと目に触れる、誰でもわかるといつたようなのは当然これから除外される、かよう趣旨でございます。
  34. 吉田法晴

    吉田法晴君 それでは大勢の者が知つておるのと、それから具体的に高射砲陣地の問題を申しましたが見聞きして或る程度の者が知つておるという場合に、具体的に或いはその限界についてお示しを頂きたいと思います。
  35. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 要するにこのすべての法律概念というのは具体的な事案においてその適用が違つて来るのでございまして、つまりこの法律の制定した理由とそれからそれによつてこれに違反となるかならぬかという具体的な事件審理とによつて解釈がきまつて来る、これが従来のあらゆる判例に通ずる態度でございます。でございまするからして具体的な事件に応じてそれを判断すべきものであるかように存ずるものでございます。
  36. 吉田法晴

    吉田法晴君 先ほど伊藤委員の御答弁に対しても例を上げられたが、その例について抽象的な言葉で応答されたと、先ほど私は一工場の例を上げ或いは一高射砲陣地の例を上げてお話をいしたので問題は具体的でございますはが、裁判なつて来なければわからたぬ、それではここで論議する必要はない、そのときに裁判所判断するだろうと、こういうことで問題はすむのです。その裁判になる前の法律解釈の問題で、法律解釈するとして常識的に或いは裁判所判断をする場合に、こういう具体的な事例の場合にはどうなるか、こういう御質問を申上げたのですからもつと具体的に一つ答弁願いたい。
  37. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) つまりその合衆国軍隊において現に機密として取扱い、それが公になつておるかなつておらぬかという問題だけを中心にして考えるといたします、そういう條件を付けておきますがさような場合おきましてはこの一つ施設なら施設というものが或る場所に存在すると、それが普通その辺の道路を通つていてまあ誰でも見えるというふうなものはこれは恐らく私どもがいつても見れるということになるのでございましようからして公になつているものといつて差支えないかと思います。但しその具体的なものが見えると申しましても何か非常な奥の奥にこうありまして、どつか中をこうのぞいてみなければよく見えないと、向うじや隠すつもりで板塀でもやつてあるような所からずつと中に入つて見ると、併し行つて見ればすぐ見えるといつたような場合にはおのずから又これは違つているのじやないか、かよう趣旨でございます。
  38. 吉田法晴

    吉田法晴君 今の御答弁の中に多くの人に見えるようなつておるかどうかという御説明と、それから合衆国軍隊機密としておるかどうかと、こういうお話がございましたが、一応今の場合衆国軍隊機密としておるかどうかと、この問題を離れて客観的に公になつているもの云々という点について御質問申上げたわけでございますが、若しもう一つ合衆国軍隊において機密としておるかどうかと、こういう点が支配的になつて参りますると、條文に書いてございます客観的な標準或いは裁判所が法に従つて判断するということも結局は合衆国軍隊に聞かなければわからぬ、そして合衆国軍隊機密であるとするものはすべて機密になる、こういう合衆国軍隊の何と申しますか意思如何にかかわるということになりますならば、これはこの條文を作られましたときの意図或いは客観的な標準を作ろうとせられた意図というものは全くこれはなくなつてしまうと思うのであります。その辺この合衆国軍隊において機密とせられる点の要素のウエイト、それから問題は客観的なものについて論議をしておるかと思うのでありますが、これについての御意見を承わりたいと思います。
  39. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) でございますから最も簡単な例で軍管理工場というものが向う機密であるといたしますれば、さようなものが道路の中からそこにどういう工場があると、どういうまではわからないかも知れませんがやはりどういう所かわかるとこれは機密なつて来ないのじやないか。つまりそういう点が先ほど申上げた点なのでございます。つまり別表に記載されたということが一つ問題がありますが、單に公であるかどうかという点から判断だけをいたしますれば誰でも見れるような所であつたならば公になつていると、かよう趣旨だと申上げたのでございます。
  40. 吉田法晴

    吉田法晴君 そうすると軍の管理工場なら管理工場を例に取つてみますと軍の管理工場がどこそこにある、これは中に入らなくても外から見える、それは公になつておるもの、こういうまあ御解釈で、但し中の問題については別表に関連する事項はこれは公になつていないと、こういう今の御説明であつたかのように思うのでありますが、そうするとその中の問題について例えばその中で或いは航空機兵器弾薬その他の軍需品修理しておると、こういうことになりますとその中で修理をいたしております航空機兵器弾薬その他の軍需品の或いは形或いは機能そういつたものについてはこれは軍機に触れるものがある。併し私が先ほど申しましたようにその工場の中ではどういう航空機なり或いは軍用のトラツクなりそういうものを修理しているというその程度については全部周知をしておる、こういう事実が現にある、或いは今後もあり得るわけです。この場合にその工場の人が全部知つておるからということで公になつておるということにはならないのでございますか。こういう具体所な例についてもう一つお尋ねしておきます。
  41. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 先ほど第一段の所で軍管理工場が外から見えるから、そういう場合には直ちに公になつたものとこう簡単に私申上げたのじやないのでございまして、先ず軍管理工場内容別表に掲げるようなつておるか、別表に掲げる事項に触れるかどうかということが第一の問題である。それが解決されればそれについては公の問題もあり得る、かように申上げたのでございます。而して今度はその中においてというのは第二段の問題でございます。そこでその第二段の点を申上げますと、先ほど裁判所において繋属してその際に審理上いろいろ援用された文書お話がございましたがこれと同じようなことでございます。機密は事の性質上、職務上それにたずさわる者はやはりその間においては機密にされる、それは機密性質上当然でございます。従つて、それにたずさわる者が数名おりましてもこれは未だ公になつたものとは言えない。さようなふうに御理解を願いたいのでございます。
  42. 吉田法晴

    吉田法晴君 そうすると例えば軍管理工場についてでありますが、その軍管理工場別表に関連するかどうか、或いはそれがどの程度知られておるか。これは国会でも論議されたことでありますが、例えば日鋼赤羽工場においてこの兵器修理をされておる、このことはこれは殆んど国民の大部分が或いは国会議員においても知つておると思うのでありますが、或いはそこの中でどういう軍器修理されておるか、そこまではまあ国民の大多数が知つておるかどうかわかりませんが、併し赤羽工場兵器その他が修理されておることは国会でも論議されたし、それから新聞紙においても例えばこれは経済関係と申しますか、或いは日鋼なら日鋼の株の値段の問題に関連しても恐らく知つておることと思います。そうすると赤羽工場兵器修理しておる、こういう事実は公になつておると一応いうていいかと思うのでありますが、そうするとその限度においては問題はない。その中でどういう兵器修理しておるか、職務上少数のものが知つておるということだけでは公になつておるというわけにはいかんと、こういうお話でありましたが、実際問題として例えば労働條件維持改善のために、或る工場でどういう兵器修理しておるか、或いは今後生産もされるでありましよう生産をしておるかということは、その請負の單価或い製造修理のこの契約の問題にも関連いたします。そこから出発してその例えば單価の場合には單価いくら従つて賃金いくらになるべきだと、こういうことでそこで何を修理しておるか、いくら修理を請負つておるか、或いは生産の場合も同様でありますが、そういうことがおのずからその工場の中では明らかになるわけです。又明らかにしなければ賃金交渉というものはできて参りません。そうすると何をそこで修理をしておるかということはその工場で全部明らかになつて参ると思うのであります。その場合にもこれは先ほど言われたようなその工場の中では知られておるが公になつていないものだと、こういう工合になるかどうか。
  43. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 赤羽日鋼ですかその工場において兵器修理をしておるということが公知の事実であれば勿論その点は機密には相成ならんわけでございます。具体的にその兵器内容が如何なるものであり、その構造、性能或いは修理の能力といつたような具体的な問題がここに問題になつて来るのでございます。そこで只今御指摘のよう労働争議があつて労働條件改善についての具体的な資料としてそれが心要なつて来る、さようなことになりますると、その範囲においてはその当事者間におのずからわかつて来る、さような場合もあろうかと思います。その場合は昨日法務総裁からもお話がありました通り、その正当な業務行為範囲内においてことが論ぜられる限りにおいては、これは刑法第三十五條の相当働いて来る余地がございます。さような点からしてこれはおのずからそういうような別個の解決方法ができて来るということになります。
  44. 吉田法晴

    吉田法晴君 刑法三十五條が働いて来る、それから別個の云々ということでありましたが、問題は公になつておるかどうかということもございます。それから実際には「通常不当な方法によらなければ探知し、又は收集することができないようなものを他人に漏らした者」とこういう二項にも関連いたして参りますが、一応それが軍機であるかどうかという点は、一項の部分として公になつているかどうかということで、その関係者に公になつておるという点を認めになりましたけれども、それではその軍機であるかどうかという問題が二項の場合にどういう工合になるのか、その辺ぼかされているので……。
  45. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 機密性質そのものについては一項と二項とは若干違つて来ることは、このことは法文の形式からいつてもおわかりだと思います。ただこの機密そのものを純客観的にこの括弧でくくつてある、この点については同じでございます。二項においてはただその機密が「通常不当な方法によらなければ探知し、又は收集することができないようなものを他人に漏らした者」ということで更にしぼつてある、さように御理解願いたいと思います。ですから刑法三十五條の議論としては全く同じでございます。
  46. 吉田法晴

    吉田法晴君 括弧の中から……従つて軍機にはならないと従つて……それを漏らした者についても処罰の対象にはならない、こう理解していいと思いますが、如何ですか。
  47. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) この第二項におきましてかような用語例を使いましたのは御承知のこれは余りいい前例じやないかも知れませんが、軍機保護法におきまして、例えば業務上の漏洩とか過失による漏洩とか或いは多少目的があつた場合の多少の漏洩とか、そういうふうなことを以てこの合衆国軍隊機密を知るのまで入れるのは我が国民に対して重きを強いるゆえんではないだろうか。さようなことからいたしまして我が国民が通常常識的に判断いたしましてたいてい間違いがないと思つたものは間違いがないと、少し俗になりましてこれは法律用語じやございませんが、そういつたような気分でこれを立案したのでございます。従いましてその「通常不当な方法によらなければ探知し、又は收集することができないようなもの」ということでこの我が国民の健全なる良心において判断する限りにおいて事はひつかからん、かように御理解願えればおわかりだと思います。
  48. 吉田法晴

    吉田法晴君 そうすると先ほどちよつと日鋼問題の関連してお尋ねいたしましたけれども、国会で論議せられたもの或いは質疑せられたものと言つてもよろしいかと思いますが、これは公になつたものと解して差支えないと思いますが如何ですか。
  49. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 国会において論議されました場合におきまして、これが普通の傍聽人がおりましてみんな聞いておるわけでございますから勿論公になつたものと思うのでございます。ただその点は質疑ということに相成りますと、質疑の内容が果して機密であるかどうかという條件が更に附加されることも併せて附加える次第でございます。ちよつと附加えて申しますと、どのことに基いて質問した場合にはこれは機密の問題が起らんということでございます。
  50. 伊藤修

    伊藤修君 次に「合衆国軍隊の安全を害すべき用途に供する目的をもつて」とこうあるのですが、これは「害する目的をもつて」とこう表現することとどれだけの差異があるのですか。
  51. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) まあ「害すべき」というのは害するようなといつたよう意味でございます。
  52. 伊藤修

    伊藤修君 害するような用途に供するとここに特に用途という文字を入れた趣旨は。
  53. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) つまりそういうふうな用い方によつてその害悪が発生するような、そのような目的をもつてという、かよう趣旨でございます。
  54. 伊藤修

    伊藤修君 そうするとこれは主観、客観の要件となるのですか。どういうのですか。
  55. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 主観、客観という意味ちよつとわかりませんですが、客観的にこれを結果的にと申しますか、害する必要は勿論ございません、併し主観としてはかような目的を意思の中にはつきり持つていることが必要であると、かよう趣旨でございます。
  56. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると客観的においてはそういうことが用途に供する目的があり得るというふうに想像されましても、行為者の主観においてそういう用途に供する目的がなかつたならば本法にいうこの「害すべき用途に供する目的」ということに入らないという解釈でよろしいのですか。
  57. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) ここに書いてございます目的は、この用語の成立といいますか、用語の立て方からいいましても意欲目的と私どもは考えておりますもので、只今のような場合は入らんとかよう趣旨であります。
  58. 伊藤修

    伊藤修君 そういたしますと、新聞記者あたりが取材いたしましてそうしてこれらの機密事項として書かれている事項を書かれた場合において、それが勿論新聞に公示される以上は、中共なりソヴイエトなり或いは仮装敵国に知り得ることがあり得ると思うのです。そういう場合においては主観的においてはその意欲目的はないのですから犯罪が構成しないと、こういうことになるのですか。
  59. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) さような場合には入らんというふうになつておるかと思います。なお新聞記者等につきましては別個に業務行為という概念もございますので、従いましてこの目的その他を判断するにつきましても例の刑法第三十五條というものが、御承知の通り非常に漠然たる概念ではございまするが、その漠然たる故をもつて非常に違法性阻却の場合が強くなることがあり得るわけであります。具体的に申しますと、新聞記者がその職務範囲内において、而もそれが正当なる業務の性質に反しない程度において事をなすときにおいては、この本條違反の問題は起らない。かよう趣旨でございます。
  60. 伊藤修

    伊藤修君 正当なる範囲内においてということは、新聞記者はいわゆる取材活動をする意味においてすでに発表されたことを発表するというようなことはあり得ない。新しいものを出そうとこれ努めるのですがそういう場合において出されたいうことが認容されるということになりますれば、結局すべての機密がないことになつてしまうのではないのですか、あなたの解釈において行けば。
  61. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) この新聞記者が正当な業務の行為と申しましたのは、この正当という点において先ほど三十五條とひつからげて申しましたのは、新聞記者は新聞記者としてのやはり業務の範囲があるわけでございます。その正当性というものはあらゆる場合において同様でございまするが、例えば御承知の三十五條はちよつと漠然といたしますから三十六條でこれを申上げますが、「急迫不正ノ侵害ニ対シ」云々という急迫不正、これらすべてが妥当性の問題にひつかかつて来るのは御承知の通りでございます。而もその新聞記者の業務取材の範囲或いはそれを取材携帶するその自由の範囲というのは、やはり正当という範囲内においてこれを認めるべきであります。それが客解的に誰が見てもこういうのは妥当ではないといつたよう判断が下される場合におきましては、これは正当にあらずという判断が下される場合もあり得るものと私は考えます。これは理論上はさようでなければならないと思います。さよう趣旨でございます。
  62. 伊藤修

    伊藤修君 三十五條の正当性をここに引用して参りますれば、広く解釈いたしますれば、いわゆるここで掲げられた機密事項というのはすべて新聞のニユース材料となるはずであります。そうすると新聞業務の正当性はそういうことを主たる目的としておるはずなんです。又あなたのお説からいけば、全部三十五條によつて正当行為としてこれが皆認容されるがごとき結果を招来するのではないでしようか。
  63. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 何度も繰返して申上げるようでどうも違法性の講義をするつもりでございませんけれども、違法性阻却の原因につきましては非常に客観的な、あるものがある、要するに具体的な事案に応じまして、これが果して違法性を追求するかどうかという問題は、そのときの客観情勢によつてそれを具体的な事件に応じて、裁判所が妥当な常識をもつてこれを判断するというのが終局的な判断でございます。逆に申しますと、その程度のことは新聞記者の範囲であつたら誰でもいいじやないかというふうに、一般の人が見れば、これは少し平易な言葉を用いましたので正確ではありませんが、さよう程度のものはこれを勘弁するというのが刑法三十五條の趣旨でございます。さよう趣旨からしておのずからなる原因がある、こう申しておるわけでございます。
  64. 伊藤修

    伊藤修君 この本條によるところの機密として別表に掲げられておる事項、例えばこの運送の場合でもそうでありますが、イの場合においてその運送の実施の状況というものをニユース材料として報告いたしまることは新聞として当然あり得べきごとであります。そうすると今の御議論で行けば結局これは正当性によつて本法によつては取締られないということになつているのですね。
  65. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) でございますから、この正当性をどこまで捧げるか、或いはこれを如何よう判断すべきかは具体的の事件に応じ三十五條の働く余地があるかないかというような問題になるのでありまして、これを全般的にここでこれはすべて駄目だとか、これはすべていいとかということはこれは言い得ないことは三十五條に関する従来の結果から申しましても当然だろうと思います。そこで具体的に少しその例をひつぺがして、今いつたように軍事輸送の点についてこれを限定して考えますると、軍事輸送の実体が非常に局限された者のみに知られておる、而も恐らくその衝に当つている数名或いは数十名或いはもう少し広がつても、事の性質上広くはわかつていないというような場合については、なお且つ機密として申すべき場合はあると思います。又それが広く誰でもわかる、今日は品川の駅を何人ほど通つたという程度のことで問題にならん場合と、これ二つございましたが、あれだろうと思います。その前者につきまして更にこれを新聞記者が如何ように取材活動をしてこれを新聞にのせたかということになりますると、その場合には具体的の事案に応じて更にそれを書くことが正当性の範囲内であるか否かという更にもう一つ判断が加わるわけでございます。ちよつとむずかしくなりましたが、さようなことに御了承願います。普通の常識で判断すればひつかからないものと、かよう程度に御理解願えれば刑法第三十五條の理論は一応おわかりかと思います。
  66. 伊藤修

    伊藤修君 併しあなたが新聞記者の業務実体というものを把握していらつしやることと私は存じております。してみますれば新聞記者が取材活動をするという点についてはあらゆる活動をなしうることは想像にかたくないのであります。ことに社会において起り又起り得るところのものをいち早く報道しようとつとめておることもこれは新聞記者の職務性質上当然考えられることであります。その場合においていわゆる業務の正当性ということから考えますればまさにこれを認容しなくちやならぬ。してみますれば少くともこういう言論機関に関する限りにおいては普通知り得るような状態においてなされるごとについて、例えば今の輸送のごときのものは数人と言つたところが、それは輸送指揮官が知つておるというわけではないでしよう、それに関與するところの鉄道職員も駅員も又或いはすべての多数の人が知り得る状態にあるのですから、するとこれはすべてこの場合における機密ということにはならないということになつてしまうのじやないですか。
  67. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 機密性質のみについてこれを論じますれば何度も申上げるようでございますが、事の性質上この機密というものが非常に限定された特殊な範囲内にある者、特殊の職業に或いはその件に関する特殊の職責に任ずる者のみの間において右左していることは依然として機密であろうと存じます。さような次第でそれがいつから外部に行つたかということになりますと、その機密の種類によりまして、おのずから性質上この程度のものは公にされたものというふうにだんだん変つてくるだろうと思います。そこで機密のものをその点からこれを外す、その限定されたものの間に右左している間においては、これはかまわないという趣旨でございます。
  68. 吉田法晴

    吉田法晴君 ちよつと関連してでございますが、その具体的な例を申上げます。朝鮮事変であの北鮮、中共なりが釜山の近くまで来るということでございます。そのときに朝鮮にありました軍が引揚げて軍の品物を日本で輸送する、それはこういうことからも問題が起つたのであります。石炭が九州或いは常磐から送つて来ないために工場で石炭が品が切れる、そこで石炭輸送のための特別の貨車の配慮をしてもらいたい、石炭輸送問題、或いは石炭輸送の貨車の問題であります。なぜ石炭が東京、大阪に来ないか、その原因に関連して今の軍の輸送問題が起つてきたのであります。そうすると具体的に言いますと、その軍の輸送問題については或いはどの程度に当時知られておつたか知りませんけれども、石炭輸送の梗塞の原因がどこにあるかということでおのずから軍事輸送という問題が起つて来たのであります。そうすると、その駅で輸送に関係しておられる人だけでなくて相当多数の人が或いは石炭関係の経営者にしても或いは労働組合にしても或いは運輸省の人たちにしてもそれを知つた、こういう事例がございました。その場合の我々なり或いは石炭関係或いは輸送の中心部にあります者についても石炭輸送の極寒の原因という限りにおいて問題を知つたわけであります。そういうものが今の輸送関係で軍機になるかどうか、これは具体的な事例を挙げて一つお尋ねしたい。
  69. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) その程度のことでございましたらこれは勿論問題にならぬと思います。その趣旨は、すでにさようなことは国民の間でわかつておることでございます。別に取上げる問題でもございません。
  70. 伊藤修

    伊藤修君 この点も又他の御質問が多々あると存じますから次に進みますが、後段において「又は不当な方法で、」という表現をしておるのです。してみまするとこの間の御説明にもありましたごとく、こういう目的を以て收集をしたものはそれによつて判断処理する、そういう目的でなくても「不当な方法で、」探知、收集すればこれを処罰する、こういうことになるわけですね。「不当な方法で、」という独立罪ですね、これをこういう幅を広くするという考えはどうですかね。或いは違法又は不法という程度で絞つておいては賄い切れないですか。広汎な「不当」という表現で以てすべてこれを賄おうとする考え方は、あなたの一方的お考えとして先般お伺いしたのは、成るべく日本国民に被害を與えないようにというお考えの下になされたとするならば、もう少しこれを狭めたほうがいいんじやないですか。
  71. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 「不当」という文字を使いますと、この性質法律又は命令、さようなものに具体的に違反していなければなりません。これを逆に申しますと、例えば物を窃取して探知、收集した場合、住居に侵入をした、さような犯罪を犯した、さようなことに相成るわけでございます。さようなことになりますと、これは非常に限定され過ぎまして殆んどその実効を收めることができない。つまりこれを保護することができない。さようなところまで行かなければそれは一切野放しということにはこれは行かんだろうと思いまして、通常、ということはありませんがとにかく大体の人がこれはどうもまずいなあと、盗み聞きしたりなんかするのは、これは普通の人はやらんのだからさようなことをするのはまずいということを知りながらこれをやるといつたようなのは、やはりこれを取締らなければならんのじやないだろうかとというのがこの趣旨でございます。
  72. 伊藤修

    伊藤修君 この規定から見ますと我我の日常生活まで立ち入つて制約しようという考え方から出ているのじやないかと思いまして、あなたの説明書を見ますと、例えば喫茶店において他人が話したと、それを意欲せずして耳に入つたという場合には本條に適用しないという御説明なつておりますが、そうすると、それを果して意欲しておつたかどうかということは判定がむずかしいのです。或いはそういう機会をことさらにとらえて尾行して行つて、隣の席を占めて、そうしていろいろな片言隻句洩さず聞き取ろう、その中から自分の目的を達しようという場合もあるでしようが、その区別が少しもできないのではないでしようか。
  73. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 社会通念に照しましてそれが不当であればどうであるという判断ができますし、その程度は妥当だと、或いは不当にあらずと、妥当であるというのと不当にあらずというのとは若干違うと思いますが、その判断によつておのずから判断が出て来ると、かように考える次第でございます。
  74. 伊藤修

    伊藤修君 あなたの例示されておるような喫茶店において盗み聞きする場合には不当であるということは社会通念上言い得ないのじやないですか。従つて、あなたの説明でもそういう場合には入らないとおつしやつておる、今の御説明によると入る場合があると思うのですが。
  75. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 同じ喫茶店において向うのひそひそ話をしている人まで行きまして、そうして向うがいやがるのに追いすがつて聞くのもやはり通常の、一般のコモンセンスからいいますと工合が悪いのじやないだろうか。そういう場合もあるだろうからというので実は控え目に申上げたので、一般の場合には入らんことは当然でございます。
  76. 伊藤修

    伊藤修君 私は、これは前段の意欲目的と後段の大要とを連結した方がいいのです。むしろその方が目的を達するのじやないか、又あなたの立法的根本の考えも守られるのじやないでしようか。ここにおいて非常にあなたの考え方がくずされているように思うのですが。
  77. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 私が当初にできるだけこの立法の範囲を少くしと申上げましたのは事実でございますが、そのために立法の根本の趣旨がくずされるということはこれは如何なものかと思います。そこでこの二つを「又」でいたしまして「及び」とか「で且つ」とかいうような言葉を使いませんでしたのは、この両方の場合はいずれもそれ自体よくないことである、そのどつちを見てもよくないのでその両方の要件が重なつて、どつちから見ても悪いというふうな程度の極悪なものといいますか、最も悪質なものだけを取締るということになりますと、殆んどこういう場合はないかもしれませんし或いはありましてもそれをそれだけに限るというふうなのは狭くはないだろうかというふうなことで、これを「又」でいたした次第でございます。
  78. 伊藤修

    伊藤修君 一体これらの規定を設けて、いわゆる軍機を保護しなくちやならんという目的はいわゆるこの前段に「害すべき用途に供する目的をもつて」ここに主たるねらいがあるのじやないでしようか。ここに中心が置かれるわけです。その手段として收集、探知する場合においてこそ初めて取締るところの必要性を感ずるのです。そうでなくてこういう目的も何もないという者に單に盗み聞きしたと、單に收集したということになつた場合においてそれだけでもつて果して軍の危害が想像されるでしようかどうか。この結果又漏らすとかいうようになれば又別問題ですが、これは次の二項でもつてつておるからよろしいのですけれども、單にそうでなくてそれを私が收集して知つておるというだけまで独立犯罪としてこれを認めるという必要性が果してあるでしようか。それは日本軍隊を維持する場合においてはどうかしれませんが、いわゆるアメリカが好意でもつて日本に駐留してやる、日本人はその好意を受けておるかおらないかは別問題として、少くともそういう過渡的な状態にある駐留軍に対しまして何ら実害もまだ生じない状態をも犯罪として処罰する必要がどこにあるでしようか。
  79. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 軍機密保護の根本は要するにその機密が外務に漏れた際にもう取返しがつかん。いくら追かけても戻つて来ないというふうな性質をもつておりますもので、これを未然に防止するというのが全体の建前になつております。さりながらこれを具体的な事案に当てはめて考えてみまして、あらゆる場合に旧軍機保護法時代のように何らの制限なく探知、收集したる者は懲役何年ということになりますると、ちよつとしたことが皆引かかると、それであつてはならないので、これを特殊な目的のある場合又は不当の手段方法によつた場合に限ろうかというような考え方でございます。そこでそれではこの特殊な目的がたいていあるだろうから両方かぶせてもいいじやないかということになりますると、これは特殊な目的がなくともおのずからこの機密が漏れて次々と行く場合があるわけでございます。その第一段階で防ぐというこの考え方はこの法案全体に一貫した思想でございまして、これは昨日もお答えいたしました通りその事前段階の処罰規定でございます。第七條においてその趣旨が現われておるのでございます。それと丁度うらはらの考えでございます。と同時にこれも当初たしか逐條説明の際に申上げたと思いますが、第八條においてかような探知、收集が事前の段階において自首のあつた場合においてはこれを又許してやろう、それは又許してやろうというのは減軽又は免除でございますが、さような場合においてはその探知、收集した機密に対しての事後の動くことを防止するであろうし、又さようなことを扇動或いは教唆いたしましても、それがその段階にとどまればあとはそれから事は進行しない、さようなことからして機密が保護されるであろう、従いましてこの七條、八條、この考え方は全く今の点が一貫した考え方として載つているわけでございます。
  80. 伊藤修

    伊藤修君 まあ一貫した考え方かも存じませんが、基本的にあなたのお考えになつたいわゆる旧軍機保護法がこういう点を取上げてやつていることは非常に広きに失するから、このたびは制約したのだという考え方から来れば、いわゆる前段の目的をかぶせてそうして後段のを働かせる、一つの犯罪としてこれを絞るほうが私は適切ではないかと思うのです。あなたの立法趣旨もそれで貫かれると思うのですから。ところがここに来てすぱつと腰が抜けていわゆる旧軍機保護法におもねて、それに見習つている形が如実に現われているんです。折角あなたが御苦心になつたことがここに水泡に帰したのです。(「その通りだよ」と呼ぶ者あり)それでこの点があなたのおつしやるように悪いことをするという人のみを中心にして考えますればまさにおつしやる通りかもわかりません。多少首肯できる点もあるでしよう。併しこの後段の規定に引かかるのは本来悪いことをする人が引かからない。例えば新聞記者がニユースをとろうと思つて塀を乗越え塀の上に首を出して見ようとすれば、塀を乗越えるというそれ自体は不当の方法です、通常の常識で考えたところがいわゆる不当な方法であります。そしてその軍機を見たということをそれ自体で犯罪になるのです。我々がちよつと珍らしい話をしておるなと思うものだから耳をそばだてて隣の席で話しているやつを聞こうということは、人の話を盗聞するということは通常においてそれは許されるべき行為じやないのです。それは不当の方法である。附まとうて聞くということは或いはそこまで積極的な行動に出ますれば容易に不当だということになるでしよう。何らの目的ないいわゆる好奇心からしてそういうことを聞きたい、いわゆる興味のためにそういうことを聞きたい、知りたいというそれだけでもつて犯罪になる、そういう場合にそれが活用されるのです。ですから共産党員の人とか或いはソヴイエトの関係のスパイの人とかそういう目的をもつてやる場合においては勿論これは処罰しなくちやならんと思うのです。それらにおいては前段の目的があるから処罰する必要がある。そういうことがない場合にはこの後段によつて主に活用されることが予見されるのです。そういうような危険な規定を旧軍機保護法において十分問題となつて知つておることなんです。それを特段にここで取入れてしなくちやならんということは、あなたの立法的考え方は非常にここで大きな矛盾を承認しているのじやないかと思うのです。
  81. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 旧軍機保護法におきましては、お言葉ではございますが、あらゆる形態の手段方法、目的を問わずして全部違反になつたのでございます。そこでさようなことであつては少しひど過ぎるではないかというので、このような特に一般の人が考えても悪いなというやつを取上げたのでございます。  それからなお新聞記者が塀にまたがつて、上から見るのはどうかということでございまするが、これは要するにその場合々々の具体的な事案に対する新聞記者の判断が、それが新聞記者がそんなことは当り前だというふうに考えるか、或いはそれを又一般の人が見てこの程度新聞記者だから止むを得ないと、こう見るか、或いはその新聞記者がそれはちよつとまずいけれどもこの際取材活動のためにこの程度のことはやつてようじやないか、不当と知りつつやるか、或いは更にそれを一般の人が判断して、本人はそれは悪いと思つてもまあそれくらいはいいだろうということになるかということによつて事がきまるかというのは、先ほど違法性の問題についてちよつと申しましたように、不当とか違法とか妥当というような文字が使われた場合にはそういうような問題を包蔵しておるのでございます。従いまして、これはすべて常識的に事を判断すれば足りる、法律的には少し不正確でございますが、我々はさように理解しております。
  82. 伊藤修

    伊藤修君 お答えの全般を通じておりますと、立法上において不正確があつても、それはそのときの事案において裁判所が適当にやつてくれるのじやないかと、裁判所まかせのようなお答えが根本をなしているようですが、裁判所に行くまでが迷惑です。裁判所へしよつちゆう引張られて、そしてとにかく一応は刑事被告人として裁きを受けんならんということは非常に迷惑なことであつて、そういう疑義が起らんよう法律を作るということはすべて我々の責任じやないか。あいまい模糊たる法律を作つて国民をして法の下に嘆かしめるというあり方はとるべきじやないと思うのです。立法者としてはなるべく明快に事を規定するあり方が一番正しいのじやないかと(「その通りだ」と呼ぶ者あり)あなたのお考えは多少あいまいでもそれは裁判所が良識をもつて判断してくれるだろうとおつしやるけれども、裁判所判断してくれる、判断してしまつて無罪であると言われてからではそれは大きな迷惑なんです。人は無罪だと思やしません。新聞に摘発されたときに、あの人はスパイだという折紙をつけてしまう。それは永久に死ぬまであの人はスパイ活動をしたという印象を與えてしまうのです。こういうことによつて今後知名の人が相当ひつかかると思うのです。あなたが責任を負わんならん、立法者として、又道徳上の責任を負わんならん、刑法上の責任はなくても。そういうふうなあり方は我々は慎しむべきじやないかと我々は思うのです。
  83. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 刑法の中にもいろいろな「故なく」とか「不法に」というふうな言葉が使われてございます。この「故なく」の点につきまして、従来刑法第三十五條との関係においてこれが違法性阻却の場合であるか、或いは構成要件として正当な理由のあつたのは除外すべきであるという趣旨であるかどうかということについて論争の起つたことは御承知の通りだろうと思います。併しながらこの「故なく」と書いてある場合、つまり正当性があるというふうなことになるかどうかという判断の場合におきましては、従来とても一般の検察庁或いは裁判所が適当にといいますか、法律的に妥当にこれを律して参つたのでございます。で、この本法案の第六條或いは第七條等につきましても事は全く同一でございまして、或る一つ事件が起きます場合に、まあ事件が起きるかどうかか第一、問題なのでございますが、一つの事実がありました場合に、これを不当であるか、正当であるか又は妥当であるかないかというふうな判断は恐らく第一線の警察官がやるのが最初だと思います。まあその他にいろいろの場合がございますが、さような場合にこれを警察官が不当であるというふうな認定で検察庁に送る場合もございましよう。さような場合にその不当とか妥当とかいうふうな判断が違つておると検察庁が認定する場合においては、検察庁がこれをその判断に従いまして事を処理する。又検察庁において一旦これを積極につまり不当であるというふうに解しましてこれを罪にする、起訴する。起訴した場合に裁判所では終局的な判決、判断をするというようなことになるだろうと思いますが、さような点につきましては軍機保護法の運用の際にも、この法規の中に何か特殊な用語例を使つたらどうかというふうな問題も出たように聞いております。しかしその場合におきましても、これを前のように何でもかんでもひつかかるように書いてございますれば、それはいろいろ考えてみなければならんと思うのでございますが、今度の法案ように特殊のさような目的を持つているとか、或いはさようなことは一般の人が考えても悪いなあというふうな方法でやる場合とか、さような場合だけに限定して探知、収集を律しておるのでございまして、さような御心配はないかと存ずるのでございます。
  84. 伊藤修

    伊藤修君 今の前段の御説明は私は当てはまらんと思います。違法とか何とかいう法律用語を使つておることは十分わかるのですが、それは国内法においての刑法一般理論としての総則的な規定としては当然認められることです。これは特別法なんですから特別法を定める場合におきましては、少くともその犯罪構成要件というものは明確にすべきであるのです。特別法でもつて一般刑法理論の総則的なものをここで定めるということは立法体系としてはよろしくないと思うのです。(「その通り」と呼ぶ者あり。)だから特別法は特別法らしく具体的にはつきりさすべきである。今又後段の御説明によりましても、そういう目的がある場合だけだというような違つた答弁がありましたが、私の聞いているのはそういう目的ではなくして後段においてはただそういう行為があれば、それ自体が取締られるのだ、広きに失するのではないか、もつと絞るべきじやないかと、こういう御意見を申上げておるのです。
  85. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 目的があつた場合とは申上げなかつたつもりでございますが、若し間違つておりましたら訂正いたします。さような目的がある場合、又は特段な手段方法をもつてする場合、かよう趣旨でございます。
  86. 伊藤修

    伊藤修君 次に二項のこの「通常」という言葉です。「通常不当な方法によらなければ探知し、」この「通常」という言葉はこれは提案理由の御説明によりますれば、これによつてつたと言うのだけれども、私は却つて絞らないことになるじやないでしようか、あいまいになる虞れがあると思うのです。
  87. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) ここに「通常」と書きましたのは單に「不当な方法によらなければ探知し、又は收集することができないような」機密というのはこれは勿論故意犯でございまするからして、さようなことの認識を必要とするわけでございますが、さようなことの認識だけで事はいいだろうか、やはりそれは客観的に見てもそうであるということがはつきりしたほうがいいだろうというふうな趣旨で「通常不当な方法によらなければ」というようなことを謳つたわけでございます。つまり誰が見てもこれはまずいなというふうな方法でなければ手に入らんような「探知し、又は收集することができないような」機密、かよう趣旨でございます。
  88. 伊藤修

    伊藤修君 だから「不当な方法で」といきなり私ははつきりこれは書下ろしたほうがいいのじやないか。「通常」ということを特に入れなくちやならん必要は認められないのです。
  89. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) つまり「不当な」ということは正当、妥当或いは不当、不妥当、さようなことに対しての問題になつた人の主観になるわけでございます。さような主観がそれだけでは当てはまらん、当てはまらんといいますか一般に通用しない場合があり得るのでございます。さような場合においては、やはり事は一般の通常人を判断の対象にして常識上普通の人もそれはまずいなあ、不当だというふうに考える方法によつてというふうな趣旨でございます。つまり單に主観だけで事を律するということは妥当ならざるものと考えまして、一般の人が誰が見てもというふうな意味でございます。
  90. 伊藤修

    伊藤修君 だからそういう解釈は第一項のほうの「不当な方法で」という場合においても、通常何人が見ても不当な方法であるという客観的解釈も含まれるのじやないでしようか。この場合においてもやはり不当な方法と言えば、そういう解釈がとられることになるでしよう。してみますればあえてここで「通常」という必要は認められない。かえつてこの言葉があるためにいろいろ解釈上紛糾を招く虞れがあると思う。又あなたの通常そういう不当方法という例があるならば示して頂きたい。
  91. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 前段は構成要件に関するのでございまして、構成要件、つまり犯罪の行為の内容方法で以て規制してあるのでございます。後段は機密性質を限定したものでございます。従いまして前後は單なる行為の態様と申しますか、手段方法を規制し、あとの第二項のほうは機密性質を裏のほうから限定したと、かよう趣旨でございます。
  92. 伊藤修

    伊藤修君 通常不当な方法によらなければ探知し得ないというよう事例一つ挙げてもらいたい。
  93. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 例えば私が、ちよつと例が悪いかも知れませんが、或る重要な機密漏洩事件についてこれを起訴すべきかすべからざるかというふうなことを判断すべき地位に立たされたといたします。さような場合に自分としてはこんな機密があるかないか知らんし、これをやはりあちら側に確かめたほうが確かだろうというので軍の当局者に確めてみたところが、それは機密であるというふうな回答が来たといたします。その機密ちよつと見たところ、これはどうも合衆国としては相当高度の機密としてこの外部に洩れることを極力防ぎたいものであろうというふうなことが推定される場合といたします。そうしてさような推定が下される以上は、その機密というものがどこにもここにも普通の目にさわるような所にあるものではなくて、やはり金庫の奥にしまつてあるとか或いは最高幹部級の間に口伝てでそれが伝わつておるというものであろうというふうな推定が出て参ります。さような場合に、そうしますと私としてはさよう機密を手に入れようとすればやはり何か特殊な方法を使つて、業務上で行つたから向うのほうじや教えてくれたのだろうけれども、普通ならばこれはちよつとやそつとじや知らしてくれまい。やはり向うの高級将校なら高級将校のかばんを盗んでみたり或いはその高級将校に賄賂でもつかつてこつそり知らしてもらつたり或いは何か特殊なマタハリ式な手を用いるなり、或いはその他こつそりつけて行つてそばから聞く、何かそういつたようなことでなければ普通のあれではこつちの手には入らんなと、さようなことを知つておる、そのよう機密を、といつたよう趣旨でございます。
  94. 伊藤修

    伊藤修君 そういう御説明だとすれば、主にこういうことを、いわゆる機密を知り得るところの地位にある人と、職務関係にある人ということに限定されて来るじやないでしようか。してみますれば、むしろこれは公務員が、とはつきり誰つたほうがいいんじやないでしようか。
  95. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) その例を申しましたから公務員というふうにお考えであろうと思いますが、これは機密が特殊のその地位に応じまして、例えば公務員にあらずして特殊な作業に従つた者、それがその作業の性質上例えば青写真の趣く機密なものを手にしたと、例えば請負人なんかこれだけは外部に見せんでくれというふうなことで請負の内容たる青写真をもらうことがあり得るだろうと思います。これはまあ想像で……。さような場合も入つて来るだろうと思います。
  96. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると公務員以外においては特殊な業務に携わる者がその業務上知り得たということになりますればまだ規定の仕方もあるでしよう。業務上知り得たとか、職務上知り得たとかいつてつたほうがいいんじやないでしようか。(「そうそう」と呼ぶ者あり)
  97. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) それだけではないのでございまして……。(「だからどういう場合があるかを」と呼ぶ者あり)
  98. 伊藤修

    伊藤修君 あらゆる場合を……。
  99. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 順次一つずつ申上げておるのでありますが……。
  100. 伊藤修

    伊藤修君 小出しに言わずに全部……。
  101. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 思いつくままに申上げておるのでございまするが、例えば先ほどちよつと喫茶店においてたまたま耳にしたというふうな場合が考えられます。喫茶店におきまして何気なく隣りの外人の話を聞いておつたところが、どうもこれは大変な機密らしい、たまたま耳に入つた。併しこの機密内容からいたしまするとどうも普通のことでは手に入らん、これは何か不当な方法でなければ手に入らんだろうというふうな、たまたま偶然のことで知り得たというふうな機密であつて、本人がこれは高度の機密であつてこういうふうな方法でなければいかん、手に入らんというような認識があればこれも入る、かよう趣旨でございます。
  102. 伊藤修

    伊藤修君 喫茶店で聞いたことまで責任を負わされるのですかなあ一体……。それは言うたほうが悪いんじやないでしようか。こつちは機密かどうかもわからない。又そういう場合においては、日本人としてはあの軍関係の人が言うているんだから、それはもほや公けの事実だ、言うても差支えない事実だ、機密じやないんだと、こう考えるのが常識じやないんでしようか。(「政府委員は頭をよく水で冷やして来たらいいよ」と呼ぶ者あり)常識に反するような規定をして、広く縛るという考え方はあなたの根本的な考え方と矛盾して来るんじやないでしようか。
  103. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 具体的な例を次々と申上げて大変恐縮でございまするが、例えば向うの高級将校か特殊な軍機の内容或いは動員計画を記載したような書類をどこかに落した、そうしてそれが何ら悪意なしに誰かが拾つて見たところが今のようなことが書いてある。さような場合におきましてはやはりこれも向うの責任ではあるだろうけれども、やはりそれはこの機密の保護という点から言いますれば、やはり遺失物として届けまして……、そこまでは問題ないのでございます。これを外部に洩らすについてやはり一つの制限があつて然るべきじやないだろうか、かようなことでございます。
  104. 伊藤修

    伊藤修君 まあ六條関係についてはまだまだたくさん質問がありますが、余りこればかりにこだわつておると少しも進行しませんから先へ進めることにいたします。従つて只今の御説明だけではまだ納得し得ないとして……。  次に、昨日ちよつとお尋ねいたしましたが、教唆者に対する教唆はこれは罰する、再教唆の場合においてはいわゆる六十一條の適用によつてこれは罰することになるのでしようか、それはどうですか。
  105. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) この法案の教唆、これが独立罪ときのう申上げましたが、これに対する刑法六十一條の一項の教唆更にその二項の教唆という御質問だと思います。従いまして独立罪の教唆の教唆というものは刑法の一般理論に従いまして教唆の教唆も教唆とするということで独立罪の教唆の教唆も教唆とする、かようなことでございます。
  106. 伊藤修

    伊藤修君 そういたしますと、犯罪を実行した場合においては、本法の第七條の第三項の後段の規定と相待ちまして、実行した場合においては第三者まで及んで来ないということになるんじやないですか。
  107. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 実行しました場合には、ここの法案七條第三項の規定によりまして、刑法の教唆の規定が動いて来るわけでございます。
  108. 伊藤修

    伊藤修君 でありますから実際実害を生ずるごとき重大な結果を招来した場合においては、教唆の教唆でとまつちやうんですよ。そうでなくしてこの第六條関係で以て第七條において教唆した場合においては教唆の教唆の教唆まで来るわけですよ。これは罰するのですか。そこに矛盾があるんじやないか。
  109. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 七條三項をよく読んで頂きますとわかると思いますが、「前項の規定は、教唆された者が、教唆に係る犯罪を実行した場合において、刑法総則に定める教唆の規定の適用を排除するものではない。」と排除するものではないのでございます。刑法の教唆の規定の適用もできまするが、それは実行した場合においてその刑法の規定が動いて来る程度までは刑法の規定の適用を排除するものではない、かよう趣旨でございます。
  110. 伊藤修

    伊藤修君 排除するものではないということになりますから結局実行正犯があつた場合においては、いわゆる刑法の総則の六十一條の二項が適用されて教唆の教唆までほか処罰できないということになるんじやないですか、そうじやなくして本法によつてならば、教唆者は独立犯になる、その教唆は刑法の六十一條の第二項によつて罰し、その教唆も罰するとこういう結果を招来して権衡を失するのじやないでしようか。
  111. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) これは刑法との、法定刑との関係でかような規定を特に置いたのでございまして、実行があつた場合におきましては一般の原則に、刑法の原則に従いまして、六條一項の十年以下の懲役という刑が盛られて来るわけでございます。それが教唆の規定の適用を排除するものではない、こういう趣旨でございまして、今度はそれが実行されない場合においてどうなるかと申しますと、これは先ほど申上げました通り、七條の條二項の教唆という独立罪に対する刑法第六十一條一項の教唆がかぶりまして、この一項に対して二項の教唆がかぶつて教唆の教唆の教唆ということになるわけでございます。
  112. 伊藤修

    伊藤修君 だから実際の結果から見ますと、犯罪を犯した場合においては、教唆の教唆までほか来ない。そうでなくして本條にいうところの数唆の場合においては、教唆の教唆の教唆まで来るという不権衡をここに現しているのじやないかと、こう言うのです。
  113. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 先ほど申した通り、法定刑の関係でことの性質上、刑法で行くべきものは刑法で行くことになる、さよう趣旨からして、その他のものにつきましては、この本條がそのまま働いて来る。従つて五年以下の懲役ということの問題が出て来るわけです。結果が発生したら、その場合は重くなる、これは一般の場合もまあ教唆のいわゆる六十一條の教唆については同じでございまするが、それを独立罪として特に取立てても考える場合にはきつくするのが普通の考え方であろう。さようなことからいたしまして、その独立罪に対する刑法第六十一條の二項の教唆の教唆、これは別個にあり得る、かよう趣旨でございます。それに対しては、刑法の六十一條二項が働いて来まして、一項並びに二項が働いて来まして、七條の一項に従いまして、五年以下の懲役に処する、さようなことになりまして、権衡を失していないのでございます。
  114. 伊藤修

    伊藤修君 そのことはわかるのでございますが、わかりますけれども、実行された場合においては、教唆は勿論罰せられる、その教唆の再教唆も罰せられると、そこまででとまるのじやないでしようか、それ以上は処罰されないのですから……。
  115. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 先ほど何度も申上げました通り、七條三項は排除するものではないというので、排除されない限りにおいて、この七條の一、二、三項がそのまま動いて来るのでございます。権衡を失しないわけでございます。
  116. 伊藤修

    伊藤修君 そういたしますると、結局正犯が実行した場合においても、教唆の教唆の教唆も罰するということになるのですか。
  117. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) さよう趣旨でございます。
  118. 伊藤修

    伊藤修君 どうもその点納得しかねるので、このままあとに残しておきましよう
  119. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 理論のことをお尋ねでございますから、理論の点だけで申上げておるのでございますが、これは実際問題として教唆の教唆の教唆、問題は実際問題としては殆んど考えられない。要するに一つのものを実行者を予定しておりまして、これに対して教唆することを教唆することを教唆するというふうなことは、理論的には考えられましても、実際問題としては考えられないかよう趣旨でございます。
  120. 伊藤修

    伊藤修君 それは実際問題として考えられぬことが往々にして起つてくるのです。又運用する場合においては、そういう理論を推し進めて運用されて行くことが事実なんですから、それで心配してお尋ねするわけであります。  十二條によつてこういうようにして逮捕され又は拘禁せられて処置されるのであります。この場合において、無罪の裁判を受ければ、いわゆる二十條によつて刑事補償法の適用を受けるということになりますが、無罪にならん場合には、問題ないでしようが、裁判がないと言つて日本がこれを受取つて釈放した場合においては、拘留、逮捕されつ放しということになるのでしようか。それに対する手当は考えていないのでしようか。
  121. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 向う側との具体的な打合せによりますると、大体間髪を入れずして、向うから引渡しがある。向うの手に一刻もとめておきたくない。そういうような打合せになつておりますので、その引渡しに関する書式も一定の様式を以て、もうすでに打合せができましてそれにちよつと書き込めば、身柄の引渡しが簡単にできるというふうな手続きをいたしておりますので、実際問題としては、殆んどその間に何時間と或いは何日と、勿論何日というふうな問題は起きないような打合せになつております。そこで万が一何かそういうことがあつたらどうかというお尋ねだと思いまするが、さような場合に向う側に何か悪意でもありましたら、そのときには、又故意によつてつたことに対する責任を負う。国家賠償民事の特別法によりまして事を律するという場合もあろうかと存じます。
  122. 伊藤修

    伊藤修君 民事特例法により国家賠償法を運用するということは私はできないと思いますが、佐藤君できますか。
  123. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 今のお尋ねは、一応こう私は考えますが、行政協定の十八條の三項でありましたか、公務執行、向うの軍人が公務執行中に第三者に対し與えた損害のことが規定されておりまして、それに関連してこの間御審議を頂きました民事特別法におきまして、日本の法令の例によつて賠償関係を処理する、こういう條項がございますので、それにこれが当てはまるというふうに考えております。
  124. 伊藤修

    伊藤修君 それは朗らかに向うの官憲というか軍隊がこういう故意若しくは重大な過失を以てした場合においては、そういう解釈も出て来るかも存じませんが、そうじやなくて、形式的においては職務執行行為として為された場合であつて日本国民から考えますれば、不当に長く拘禁されるとか、不当に逮捕されたというような場合でも形式的においては、それは逮捕権の行使、拘留権の行使と、いうことになつて、それが日本の官憲に引渡されて、それから調べて見たところが何でもないという事案はこの占領治下において往々に見受けられたことであります。今後もそういうことはあり得ると私は考える。その場合において、何らの救済規定か、保護規定というものが欠けてないじやないのでしようか。要するに民事特例法と刑事補償法との間に対する処置というものが考えられていないということに私は不満を抱きます。
  125. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) その点については他の分野につきましても理論上あり得る問題でございます。この具体的の問題につきましては結局この行政協定の十七條第三項の運用の問題でありまして、今岡原政府委員からお答えいたしましたように、向うとの打合せによつて一刻も猶予なしに、直ちに引渡すという話合いにいたして措置することになつておりますから、現実にそういう問題はないと存じますが、万一あるということになりますれば、先ほど申しましたように一般の問題として折衝の、外交折衝の問題になるか、或いは国内的の日本側の措置として適正なる始末をつけるということになると存じます。
  126. 伊藤修

    伊藤修君 これは行政協定において賄われるということになると思いますが、政府の行政事務として処理されることかも存じません。併しよりどころがないということは、我々国民としては非常に不安心です。行政協定そのものは法律であるという佐藤さんの御見解ならこれは別問題ですが、又問題は行政協定に入つて来てしまうことになるのですが、そうではないと私は思うのです。そうすると行政協定にどういう取極めがありましても、やはり国民の権利義務を保護するところの措置というものは一応法律的に考えなくちやならんと思うのですが、成るほど只今非公式にお伺いいたしますれば、それに対するところのお考えはあるようでありますけれども、それのみをもつては安心できるかどうか。拘留の場合においてはそうでもあろう、それによつて或いは処理できる。だから差支えないという御考えなんでしようが、併し時間的にもつと切り詰めて行きますれば、たとえ二時間でも、三時間でも拘留されておるのです。又逮捕ということは現実に行われるのです。この日本官憲に逮捕された、拘留されたという場合においては、国民としては安心感を持つている。併し日本国民がその外国軍隊に逮捕されたというと、非常に心配するですよ。命があるかないかわからんという考え方を持つのです。あの日野原節三君あたりですら、身柄をとにかくアメリカ軍に引渡された。自分の命はどうなるのかわからんと言つて述懐しておるのですよ。あれほど良識を持つておる人間ですら恐れるのです。藤井孝君でもそうですよ。況んや一般の日本国民の知識程度の低いものにとつては、そういう大きな不安を與えるがごとき逮捕若しくは拘禁されたものが、日本の官憲に引渡されて、何でもなかつたと言つてすぐ釈放されることがあり得ると思うのです。そういう場合に何らの補償もしないということは、国家としてその点に対する手当が足らんのじやないかと思うのですが、何らか考えられる意思があるかどうか伺つておきたいと思います。
  127. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 行政協定の本質の問題つきましてはいろいろ御議論もございますが、私どもといたしましては、日本側もアメリカ側も双方とも国内的にやはりこれは拘束力を持つておる、こういうふうに考えておるものであります。今の施設区域の中の問題につきましては、第一には施設区域というものは非常に限られた狭い所を指すものであり、又現実にもさようであると考えておりますから、その中でこういう十二條に書いてありますような事態がどの程度に多数に起るかどうか、これは殆んど実際問題としては稀な事例であると存じます。併しながら、関連上は当然予想されることでありますから、ここにも出て来ているわけでありますが、今御懸念のような、具体的に甚だ不穏当な事態を生ずるということがありますれば、先ほども触れましたように相互の折衝の問題にもなりましようし、日本側としても十分それは考えなければならんことである。これははつきり申上げられると思います。
  128. 伊藤修

    伊藤修君 佐藤さんともあろう人が狭い範囲だからそういう事例は起らないというお考え方は、常識の豊かなあなたに似合わないお言葉だと思いますが、この六年間に日本国民が嘗めたところのあのMPの行為に対して信頼がおけるかどうか。気に入らぬから直ぐ引張つて行く……、今後も起り得ることですよ。アメリカ軍が必ずしも日本の官憲以上の知識、常識を持つているとは考えられない。やはり末端の機関、それに携わるところの人々というものは、我々が考えておるようなアメリカの一般の常識を備えた立派な人とは考えられないですよ。こういう人が実際の実務に当るのです。だから容易に自分の感情によつて逮捕することが従来しばしば行われておるのですよ。元来、一体この施設及び区域範囲内というものは、実に不名誉極まるところの租借的本質を持つているのですが、私はこの事態に対しても実際不満に堪えられない。併しこうなつた以上は止むを得ない。して見ますれば、その中に起り得べきごとを、これは幾ら範囲といつたところが一坪や二坪じやないのだから、何千坪という間において行われるのだから、その間に日本国民が居住しておるということは当然のことなんですから、これらに対して常にこういうような不安な念を抱かしめるということは好ましくないと思うのです。若し万一誤まつて、往々に行われると私は思うのですけれど、あなたのお言葉を借りてはつきり言つても、万一誤まつて行われたためにこういう手当はすべきであるという国家的の考えを持つてなくちやならんと思うのです。少くとも本法においてこれに対するところの処置を考えてもいいのじやないか。若し本法において考えないならば、特別に考えるべきである。又根本的において行政協定国民を拘束するところの力を持つということに対しては、私は異論があります。又あなたのお考えの通りに、仮に持つといたしましても、それのみによつては賄い切れないと考えるのですが、政府のお考えを伺つておきたい。
  129. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) おつしやることはよくわかります。御同感すべき部分が非常に多いと考えておるのでありますが、先ほどちよつと触れましたように、実はこの種の今御懸念のような問題は、もう少し広い問題として私は考えなければならんことだと思つております。例えばしばしば問題になつております漁業の関係でですね、違法行為ではない。併しそれによつて損害を受ける人が多数に出て来るというような問題もやはり今御指摘の問題と共に併せて考えるべき私は大きな問題だと考えております。従いまして、それらの点につきましては立法措置を考えたこともございますけれども、立法措置或いは少くとも財政上の措置によりまして万全を期したいというのが政府の考えでおるところでございます。
  130. 伊藤修

    伊藤修君 佐藤さんのお考えも結構でありまして、私は本法を主にしておりますから本法の範囲において伺つておりますが、今度の行政協定に基いていわゆる合法行為と目された行為が、後においてそれが取消され若しくはそうでなかつたという場合においての何らの補償が與えられていないのでしようが。これは本来なら臨時特例法において賄うべきであつたかも存じませんが、併しあの際、民事特例法においてこの財政的に影響すべき事項をも考えるとなれば非常な至難の問題であると考えておつたのでありますから、我々はその点に対して非常に重大な関心を持つている次第ですから、将来において、又近き日において政府においてはこれら総合的にこの点を財政と睨み合せてお考えになつて、少くとも立法措置を講ずるか或いは行政的な規範を定むべき計画をして頂いて一般国民に安心感を與えて頂きたいと思うのです。これは特にお願いしておきます。  十三條についてもう一点お伺いしたいのは、この本條によつて合衆国軍隊の嘱託によつて行われる捜索、差押又は検証の結果得たところの証拠物の証拠能力についてどういう御見解を持つていらつしやるか。お伺いします。
  131. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 証拠物の証拠能力につきましては、これ全然日本の刑事訴訟法と同じように考えております。
  132. 伊藤修

    伊藤修君 考えておるとおつしやるのは、それは、その根拠を明らかにして頂きたい。
  133. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 別段の規定がない以上は、全部刑事訴訟法の規定が、つまり刑事に関する手続法規が全体として適用がある、かよう趣旨でございます。
  134. 伊藤修

    伊藤修君 そういたしますと、ここに定められておるところの捜索、差押、検証等はすべて刑事訴訟法によるところのこれらのものに該当すると、こういう解釈でよろしいですね。
  135. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) その通りでございます。
  136. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると、今度は裁判所又は裁判官が嘱託をして検証をした場合において、その検証調書の能力はどうなるのですか。
  137. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 検証調書ということになりますると、これは調書の一般的な能力の問題になりまして、それは刑事訴訟法第三百二十一條以下の適用があることになります。
  138. 伊藤修

    伊藤修君 この嘱託して行わしめるところの検証及びその検証の結果たる調書というものは、日本の刑事訴訟法の規定によつて行われるのですか。その点はどういう約束になつているのですか。
  139. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) この点の打合せは日本の刑事訴訟法そのものちよつと向うのMPに働いてくる余地が少いのでございます。その趣旨に則つて調書なら調書を作りまして、その調書の能力が只今申した三百二十一條になつて来る、かよう趣旨に御理解願いたいのでございます。もう少しちよつと砕いて申上げますと、(「成るべく具体的に」と呼ぶ者あり)具体的にですか。こちらからこういう考の検証が必要である、例えばこういう点が問題になつておるから調べて頂きたいと、そういうふうな書面を出すといたします。向うのほうでそれを受取りますると、大体どういう点が事件の上で問題になつているだろうかということがわかりまするからして、その点を中心にして伺うの調査書みたいなものを作りまして、こちらで申しますと検証調書になるわけでございます。これを向うの権限ある者が作りまして署名してこちらに送り返してよこす、そうしまするとその調書の能力につきましては一般のこちら側の訴訟法による、調書の能力と同じように律して行く、かよう趣旨でございます。
  140. 伊藤修

    伊藤修君 十五條についてお伺いします。この十五條について昨日でしたか、一昨日でしたか、いわゆる刑事訴訟法の百四十四條乃至百四十九條の証言拒否権は、この問題は適用ない、というよう伺つたのですが、それはその通りでよろしいのですね。
  141. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) この点はあちら側の手続が、この前から申しまする通り、若干こちらと違うものもあるだろうと思いますので、一応手続としては、向うの手続に乗つてくるわけでございます。つまり向うの軍事裁判において、是非この証人は調べたい、調べなければ事件の真相がわからない、さような場合に、若しその証人が出て行かないということになりますると、殊に日本人が被害者等の場合におきましては、事件の真相が全然わからんということになりまして、折角起訴された事件も処罰ができないという場合もあり得るわけでございます。そこでさようなことのないようにというので、こちらから証人を提供することについて先ほど行政協定の第十七條三項の(E)の趣旨に則りまして、協力をいたすわけでございますが、その際に向う側としては、向う裁判所の手続によりまして、手続を進めて参りまする関係上、向うの手続で証言を拒否し得るものは、これは証言の拒否ができる。ところが向うのほうで証言の拒否し得ない場合でも、日本では証言を拒否し得る場合もあろうかと存じます。さような場合におきましては、事の性質上我が国民にそれだけ強い義務を課するのは如何かというふうなこともございまして、実際の運用としては、若しそういうようなダブルもの、お互いに行き過ぎ、或いは足りないところというのがありましたならば、その合致する範囲内において、これを処罰するというのが大体行政協定の十七條三項の(E)の趣旨であろうとさように読みまして、実際の運用としてはさようにいたすつもりでございまするが、いずれにいたしましてもさよう事件向う側の裁判所で律するわけではございません。全部こちら側の事件として処理されることに相成つて参ります。それにしましても向う側の手続に慣れないものが、すぐに行つて何か事件を惹起す、ということではかわいそうでありますので、行政罰として過料……、罰金というような問題にせずに、過料というようにいたした次第であります。
  142. 伊藤修

    伊藤修君 その場合において、日本国民が向う裁判進行のために協力するわけなんですね、やはり証言の義務を果すわけですね。ところが日本国民はアメリカの裁判に証言する義務が一体根本的にあるのかどうか。まあ行政協定からそれがあるということになれば、それは又別もんですか、その場合においてですよ、国内法によつては拒否権があるんだというにもかかわらず、たまたま向うの国内法によつては拒否権がないんだというものに対して、今の御説明趣旨のごとく、過料で賄おうという、少なくとも過料を課するということは刑罰ではないとしたところが、行政罰を課せられるという一つの制裁が與えられるのですから、まあ仮に一万円くらいなら簡單だ、月給の半分だとおつしやるのならともかく、まあ幾らにしたところで、かけられるということはどうかと存じます。それによつてしたくない証言をせざるを得ない、間接強制の結果を招来するのじやないですか。
  143. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 行政協定の十七條の三項の(E)、後段の方でございます。後段の最後にこれを犯したものに対する裁判権を有する裁判所そのものが、当該裁判所に対して、これが罪を犯したものとみなとて、これが裁判にする。さよう裁判手続上の違反が、違反と言いますか、一つ趣旨に反する事実がありました際には、それが日本裁判所において、なしたものと同じような効果においてこれをなす、さようなことになるわけでございます。そこでこの実際の問題としては、先ほど申したように、このアメリカの軍事法廷において、取扱つておる手続が、こちらの手続と違うことがあり得るわけでございます。さような違う範囲内においては、この十五條の二項は、この行政協定十七條三項の趣旨から外れて参る、かように読むべきものと考えております。
  144. 伊藤修

    伊藤修君 そういたしますと、いわゆる国内法において拒否権がある場合においては処罰されないと、こういう結果になるのですね。
  145. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) その通りでございます。
  146. 伊藤修

    伊藤修君 そうなればよろしいですけれども、それが先ほどの御説明みたいのように、処罰されるような御説明があつたのですが、それじやどうも納得できんから……。細かい問題ですけれども、その際の証人出頭日当はどうなるのですか、もらえるのですか、もらえないのですか。
  147. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 向うの手続によりますと、やはり証人の出頭した際には、何がしかの金が出るそうでございます。
  148. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると日当及び旅費というものは、向うの規定に基いて支拂われるのですか。
  149. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 日本と同額というふうに、大体打合せができております。
  150. 伊藤修

    伊藤修君 第二項を拝見しますと、日本の場合に比べて非常に過料が多いのじやないですが、どうしてこう多くしたのですか。
  151. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 刑事訴訟法百五十條と百五十一條を対比して見ますると、この百五十條のほうは五千円以下の過料ということがございまして、百五十一條において五千円以下の罰金又は勾留というふうに規定がいたしてございます。なお状況によりますと、罰金、勾留を追加することができる、かような規定になつておりまして、過料の場合とそれから罰金又は勾留の場合とがあるわけでございます。そこでこの罰金に処するのはかわいそうであるが、罰金に相当するような、日本ならば罰金でやりたいよう事件もあるかと思う、さような場合においては過料でできるけれども、額が少し高い、かよう趣旨でございます。どこまでも行政罰で貫きたい、かよう趣旨でございます。
  152. 伊藤修

    伊藤修君 この十八條と比較いたしまして、單に十九條の場合ですね、このあなたの説明書によりますと、いわゆる行政処分的のものであるから、差支えないとこういう御説明なつておるのですが、簡單な説明なつておりますが、これは十九條に定められておることはですね、本来ならばこの日本の刑事訴訟法から申しても、司法的処分であることは疑いないのです。政府はとかく最近何でも行政処分だからと言つてどしどし片付けて行こうとするのですが、それは少くとも法務関係にいらつしやるおかたがそういう考え方で立案されるということはどうかと思うのですね。かよう事項について行政手続で以てやるということになれば、全く刑法の精神というものは根本から、刑事訴訟法の精神が根本から破壊されてしまう。延いて以て憲法の精神にも反すると思うのです。これは裁判所の許可を得てと、こう絞るべきじやないでしようか。
  153. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 過料が行政庁だけでおできになるようにお考えになるようでございます。御承知の通りこれは非訟事件手続法によりまして裁判所が出すものでございます。なお行政的な処分の違反と申しましたのは行政処分に違反する、つまり行政罰ということでございます。いわゆる刑事罰と区別して申上げた次第でございます。誤解のないようにお願い申上げます。
  154. 伊藤修

    伊藤修君 私はその点は先のお答えの補足として伺つておきます。私の今質問しておるのは、令状も何も持たずして、十九條において「参考人を取り調べ、実況見分をし、」「実況見分をし、」というのは検証のことです。「又は書類その他の物の所有者、所持者、若しくは保管者にその物の提出を求めることができる。」と、これはいわゆる領置の規定ですが、こういう取り調べ権、及び検証する権利、物を領置するの権利を行政的処置として当然行われるがごとき規定というものは、法務府にいらつしやるあなたたちとして非常な考え違いじやないでしようか。(「憲法違反」と呼ぶ者あり)少くともこれに対しては、裁判所の許可を得て、というふうに書くべきじやないでしようか。十八條の場合、向うの要員に対してすら「許可を得て、」とこういう制約を設けておるのですから、十九條からこれを外して事実上憲法の精神を蹂躪するというあり方は好ましくないのじやないでしようか。
  155. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 行政庁が或る処分をいたします場合に、その処分の内容におきまして、或いは裁判所の許可を得てやる場合もございましようし、又或いは行政庁独自の処分といたしましてやる場合もございます。そこで本件についてこれを考えますると、これは十八條、第十九條を通じまして、いずれも「日本国の法令による罪に係る事件以外の刑事事件」つまり日本の刑事実体法規では事件にならないけれども、あちら側の事件において、あちら側の法令において刑事事件なつた、さよう事件に関しての協力でございます。そこでさような際には向う側におきまして恐らく犯罪事実が確定いたし、且つ多くの場合は被疑者等も確定いたして事件が具体化した場合が多いだろうと思います。その事の如何はともかくといたしまして、それは我が国のほうとしては何らの資料がないわけでございます。つまり事件向うで起きた、向う同士の事件、普通簡單に申すとさよう事件でございます。日本の法令でこれを判断することができない全く向う側の法令違反であつて、早く云えば向う同士の事件、さようなことになりますので、これを私どものほうで、我が国のほうで判断するということは、事の性質上殆んど不可能になつて来る。さようなことでこれを裁判所にかけるといたしまして、も、裁判所においてもこれを如何よう取扱つていいかわからなくなつてしまう。つまり裁判所の許可を得るという裁判所判断する限りではない、さようなことになつて来る事件がこの十八條、十九條関係だろうと思います。そこでこの十九條につきましては、向う側から特に事件を指定し、かつ具体的に調べるべき事項、或いはこの提出すべき物、証拠になるべき物等について具体的に皆申して来るはずでございまして、それに関連する一切の物ということはなしに、こういうふうな書類、或いはこういうふうなことの証人、その証人はこういう点を知つているはずだがどいつたようなことを恐らく持つて来ると思います。さようなことでございますので、これが濫用されるとかいうふうなこともあろうと存じまするので、その点については我が国の検察官又は司法警察員の判断において、その事件に必要な範囲内において、その点を調べてやつたり、或いは保管者に物の提出を求める、さようなことになろうかと思います。つまり向う側の、純然たる向う側の事件であつて、こちら裁判所では判断のできない事項であるというふうなことからかようなことになつたのでございます。
  156. 伊藤修

    伊藤修君 そういたしますればですよ、前の十八條の二項の場合において、「人の住居又は人の看守する邸宅、建造物若しくは船舶内にいることを疑うに足りる」場合は裁判官の許可を得てこれを捜索することができる、こうやつているんですよ。それだから邸宅の場合はそうやつている。人の基本人権に影響するいわゆる人を訊問する、物を領置する、又場所を検証するということは許可なくともできるということなんです。あなたのお説によると事は一つ事件に、一つ事件の中の或る事項に限られてこれは要求して来るでしよう。併しそれ自体はわかるはずなのです。十八條の場合にはわかるはずなのです。だから「裁判所の許可を得て」というのです。伊藤なにがしにこういうことを聞いてくれと云つて来るのですから、その事項裁判所に提示して、裁判所は然らばそれに対して尋問すべしであると、こういう許可を與えてもいいのじやないでしようか。又そういう手続をとるのが当然じやないでしようか。
  157. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 十八條と十九條が御指摘のように書き分けてございます。そこで十八條のほうはいわゆる直接強制と申しまして、否応なしは入つて行く場合でございます。否応なしというと少し語弊がございまするが、向うから指名の手配がある。そしてそれが書類によると大体そうであるけれども、この入られるほうい否応なしにこれを入られると、これでは單なる十九條における間接強制では目的が達しないのでございます。つまりそこに犯人がおることがはつきりしておつて、そしてそれを捕えたい。併しながらあの入ることについて過料か何か知りませんが、そういうもので強制するというふうな建前になつて行きますと、逮捕それ自体もできなくなつて来る。結局目的が達しない。そこでさような場合に、それでは何でもかんでもその家に入つてしまつて、何といいますか、踏みにじるというふうなことがあつてはこれ又大変でございますから、果してそういうふうな特定の人間がその家におるかどうかというふうなことを裁判所判断させるのが十八條第二項の「裁判所の許可を得て」というふうに書き分けた趣旨でございまして、裁判所としては果してその指定された人間が、指定された場所、住宅なり建造物の中にいるかどうかということを判断する余地がこれは残されておるわけでございます。その判断をいたしまして許可状を出す。若しそういうふうな判断の結果、どうもそんな所にいそうもない、折角向うで言つて来たけれどもそんな者はいそうもないというふうな場合には許可をしないでやると、かよう趣旨でございます。つまり繰返して申しますと十八條の二項のほうはいわゆる直接強制であるからして裁判所の許可にかける。十九條のほうはいわゆる間接強制でことを律するかよう趣旨でございます。
  158. 伊藤修

    伊藤修君 私は十八條の場合はこれはまあ尤もだと思うので、別にこれに対して攻撃したわけじやないのです。併し十九條の場合は間接強制だから差支えないのだという考え方は、それ自身が私は大きな誤つた考え方じやないかと思うです。一体現在のこの政府の考え方というものは、折角我々があらゆる犠牲を拂つて獲得したと言うても過言でない憲法の定める基本人権の保障というものを、こういう点から崩しつつあるということは非常に遺憾に堪えないのですよ。(「その通り」と呼ぶ者あり)殊に司法に身を置かれるあなたがたといたしまして、身を以てこういうことは守つて頂きたいと思うのですが、にもかかわらず、間接強制なるが故に行政措置で差支えないという考え方は、これは他の行政官庁において言うならばともかくとして、少くとも司法の飯を食つて今日に至られた皆様がたとしてはそういう安易な考え方で以て基本人権の保障というものがその一角がむしばまれて行くということは阻止しなくてはならぬと思うのですよ。間接強制であろうと何であろうと、少くとも我々の基本人権がこれによつて少くとも侵害されるという場合においては、やはり裁判所の許可を得てこれに保障を與えるというあり方が一番正しいのじやないですか。これは拒んだ場合においてはこういう罰金がされるのだと、過料がされるのだというだけだからいいじやないか又特定事項を定めて来るからいいじやないかと、特定事項を定めたところが、それによつて尋問されるのです。呼出しされるのです。それによつて、その物を提供しなくちやならない。してみますれば事の大小にかかわらずやはり我々のひとしく基本人権を侵害されることに何ら相違はないのです。私は多少の差はあるといたしましてもやはり憲法に言うところの保障というものは  ここでも與えて置くべきじやないかと思うのですが……。
  159. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 全般的に成るべくこういうふうな殊に向う側の手続きにつきましてこちらの協力するについて過料とか何とかいうのを課さないほうがいいんだという考え方も成立つかと存じますが、ただここで考えておりますのは、さようなこちらのほうでは犯罪にできないけれども、その実体法規がないために日本側では犯罪として取扱うよう事件でなくとも、向う側としてやはり何かの不埓なことがあつて向うの刑事事件として取扱つている事件でございますので、恐らく日本の国内の治安を何らかの意味で紊すような不埓な行為であるだろうと思います。さよう事件でございますので、その不埓な行為のあつた者が事件になりました以上は、やはり日本国民としてさような不埓なことをやつたということを知つておる人たちは、進んでというと少しあれですが、その刑事裁判に協力する意味で証拠物をやつて或いは知つている程度のことをしやべつて、そうしてその事件が正当に完結するように協力すのが妥当だと存じます。そこでその際に裁判官の或いは裁判所の許可を得て、というふうに書きませんでしたのは、この十九條のほうはその事実を知つておる者或いはかけ替えのない証拠物を持つている者、かような人たちでございましてこれは余人を以て代え得ないのでございます。どうしてもその人たちが何かの意味でしやべつてくれるなり、物を出して頂きませんと、その刑事事件というものが進行しない或いは適正な裁判が下されない、さようなことに相成りますので、さよう趣旨からいたしましてこの程度の過料は止むを得ないものと考えるのでございます。なお立法例といたしましては、この種の行政的な、一つの処分に対して拒み、妨げ又は忌避したものは云々というような例は若干ございまして、これが、一万円という程度は実はそう重いほうではないと私は思つておりますが、いずれにせよ趣旨はさような点にあるのでございます。
  160. 伊藤修

    伊藤修君 私は過料のことをとやかく言つているのではないですよ。基本的にアメリカの要請があつたならば、日本国民の基本人権を侵害しても、行政措置として侵害しても差支えないという考え方がいけないと、こう言うのですよ。(「その通り」と呼ぶ者あり)その点を意味するのですよ。よつて以て過料で以て間接強制ですることがいいか悪いかということも起つて来るでしようけれども、今の私の質問している重点は何がためにそういうことの例外的規定を設けなくちやならんかと、今の御説明趣旨から行けばそういう事案はやはり取調べてもらわなくちやならぬ。ひいて以てそれが日本の治安の維持の上においても好結果をもたらすということは、これは首肯できます。だからこれに対して協力することは何も私は否やつているのではないですよ。協力することは結構だが、協力する手段としてアメリカさんのお話があれば直ちに受けて以て、行政官庁が日本国民の基本人権を侵害してもいいんだというあり方はよくないというのです。殊にこの処置は一般行政官庁でない司法に関係する司法的処置であるのですから、司法処置をとる人がこの場合に限つてはアメリカさんの事案に限つてはできるんだという考え方は根底から誤つているというのですよ。日本裁判所がやる場合に、日本の検察庁がやる場合においては、いろいろな各種の條件が備えられているのですから強制して物を聞くことはできないですよ。強制して物を領置することはできないことは、私はここで説明するまでもないですよ。本質はそういうよう内容を持つているのに、この場合に限つてアメリカ側が特定の人間を指示して来た場合に限つてはできるという考え方はよくないのではないかと、なぜこれに対して裁判所の許可という一つの枠をはめないのかと、こう言うのですよ。
  161. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 裁判所の許可という枠をはめませんでした趣旨は、先ほどちよつと触れて置きましたが、事件そのものが日本国の法令による罪に係る事件でございませんので、つまり日本の実体法規のない事件ということでございます。簡単に申しますと、向うのアメリカの……、
  162. 伊藤修

    伊藤修君 その点はわかつておりますよ、その点は実体法規でない……。
  163. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 違反でございまして、従いまして……、
  164. 伊藤修

    伊藤修君 向う事件なんだから……、
  165. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) こちら側としては……、
  166. 伊藤修

    伊藤修君 その事件を楯にして日本人の権利を基本人権を侵害する、その点が問題だ。
  167. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 罪の内容が問題じやない、人を呼んだり、物を取つたりする  ことができるか。
  168. 伊藤修

    伊藤修君 向う事件のことはこつちは言つていないのだ。向うが必要と思えば向う国内法で以て処罰しなくちやならぬというその事件判断するのに、こういう協力を求めたいというその協力を求めるに唯々諾々としてああさようでございますかと言つて調べると、調べる人はいいか知らぬけれども、調べられる国民はたまつたものじやないと、こういうのですよ。何のために憲法保障されているか。こう言いたいのですよ。(「憲法を忘れたのか」と呼ぶ者あり)この場合に限つてはできるのだというあり方は延いて以て将来すべての法律において皆こういう行政措置で何でもできることになつてしまえば折角憲法保障したことは根底から崩れて来ることになる、こういうことを申上げるのです。又それは煩わしいことでもないのですから、前の十八條でも許可を得てと言つているのだから十九條でもその事件を含めて差支えないじやないかと、こう言つているのです。
  169. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) この十八條と十九條との関係においてその性格は違いますことは、只今岡原政府委員から申上げた通りであります。今の御指摘のこの十九條についてでありますが、十この十九條の対象となつております事柄、事件はこれも今政府委員が申しましたよう日本の法令による罪以外の事件でございますからして、結局非訟事件と申しますか、刑事事件ではないわけであります。先ず形式論を先に申上げますが、従つて形式的にはこれは行政と申しますか、行政的の性格の事柄であるということは前提として申上げ得ると思います。ただ問題はこの一般の行政上の目的を達成いたしますために、かような人の権利に関係のあるような措置をとるについて今の憲法関係が出て来るわけであります。そこで憲法関係といたしまして、まあ憲法は刑事事件に関しましては直接細かい條文を置いております。然るにこの行政関係の処置につきましては、憲法自体はそういう條文は置いておりません。併しながら我々としては、もとより憲法趣旨に従いまして人権の保障に遺憾なきを期したいという態度でおりますことはこれは当然のことでございまして、従いましてこの十八條のごとき許可云々の許可状と申しますか、條文も入れておるわけであります。この十九條の関係につきましては、これは実は伊藤委員からかねて御意見を承わつておりまして、いろいろな行政上の取締の必要から来まするかような処置についての御意見がございました。十分傾聴いたしておるのであります。この場合もそれと同じことでございますが、今触れましたように現在までの立法は行政関係におきましての臨検と申しますか、立入り検査或いは調査報告というような事柄については実はかような建前でやつて来ておるわけであります。而してそれは間接強制、そうして正当の理由なくしてというような形での制裁規定を置いておるということで参つておるわけです。この方式もまさにその形をとつておるのでありますが、ただ今後そういう形について反省を加える必要があるのじやないかというお言葉は御尤もであります。まあ根本論になつて参りまするというと、憲法の三権分立の建前に触れての問題が実は出て参りますので、私どもその点をも考えて苦慮はいたしておるのでありますけれども、御趣旨の方向に向つて今後更に反省を加えて行きたいということを十分感じておる次第でございます。
  170. 伊藤修

    伊藤修君 まあ佐藤さんのお言葉は了承できるのですけれども、併し佐藤さんがそういうふうにお考えになつて御努力下さつても、現われて来る法律の上においてはその趣旨がいつも壊されておるのです。何も憲法が刑事事件のみに限つて基本人権を保障しているということでないと私は承知します。これは憲法上のことになつて参りますけれども、新憲法に謳うところの基本人権保障の精神というものは、行政であろうと司法であろうとあらゆる面においてこれは私は守らなくちやならん、憲法全体の精神から言つても私はそう言い得ると思うのです。行政措置だから基本人権は侵害しても差支えないんだ、何事もできるんだ、そうすればやはり斬り捨て御免ということと同じことですよ。旧憲法時代、徳川時代と何ら異ならん時代が現出することになつてしまう。折角憲法が我々の基本人権保障に対するところの規定を設けて、以て基本人権の保障の完璧を期したゆえんのものは、私はあらゆる面においてこの精神というものは貫かれなくてはならんと思うのです。ともすると最近の傾向というものは行政措置ならばすべて賄えるんだ、憲法は司法処分についてのみ規定しているだけであつて、然らざる場合においては何でもできるんだという考え方は、こういう点から増長して来るのです。これはあなたも今おつしやつたように誡しめなくちやならん問題であると共に、我々はそういうものを見た場合においては努めてこれを是正して行くという方向に行かなくちやならん。殊にこの本法の場合においては私はここで取上げて申上げるまでもなく、十分に皆様において御承知の通りだと思うのです。この性質は純然たる行政措置じやない、むしろ純然たる司法処分だ、現に検察官がこれを日常行なつておるのです。それと何ら変らないことをアメリカの関係事案だから特にそれは差支えないんだというあり方はよくないです。これが対象がアメリカ人だつたら又いいでしよう。あなたのお説も又かまわないと思うのです。併し対象は日本人だから、だから協力を求めて来るんだ。その場合に事案がアメリカだ、だからそうして指定していることだから、単なる間接強制だけだ。だから差支えないという考えかたはよろしくないと思うのです。これは虚心坦懐、私はやはり十八條と同様に許可を得てということに私は御同意願い百たいと思うのです。
  171. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) ちよつとお言葉にかかずらうようでございますが、私は現実問題としての十九條の運用の面につきましては、もとより日本人の関係者ということもこれはあると思いますけれども、アメリカ関係のみのこれは犯罪事件でございますからして、アメリカの軍隊に属しておらない  アメリカ人と普通の市民であるアメリカ人その他の外国人というものが私は現実にはこの問題には相当入つておると思います。これは何も本質に触れた問題じやございませんけれども、現実の考え方を一応御参考に入れたいと存じます。その程度に一応……。
  172. 伊藤修

    伊藤修君 その程度だというと、これは対象はアメリカ人ばかり若しくはアメリカ人も多いということもこれは考えられるでしよう。併し私はむしろこれは相手方は日本人だ、この條文によつて受けるところの被害者は日本人が多いのじやないかと思うのです。殊に日本の内地において行われることであるから、関係者は日本人であるからこそ向うが協力を求めて来る、こういうあり方だ。それを予想して立案されておることだと思う。して見ますれば、日本人の基本人権というものはこの面においてはとにかく保護されていないということになるんじやないかと思う。そう手数じやないんだから裁判所の許可を得てということに御同意になつて私は然るべきだと思う。
  173. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 事柄自身は先ほど来申上げましたように、この正当の理由によつて拒むことは当然法が予想しておるのでございますからして、この十八條の場合と本質が異るということは十分御了承願つておきたいと存じます。従いまして間接強制というような強制という言葉もこれは正当な理由のない場合の制裁を伴うという意味でございますからして、実質が直接の人権侵害ということには私はならないと存じますけれども、併し今のお話ようにこの人権に関係のある、関係の深いことでございますからして、これは今申しましたような角度から将来について研究をしたいと存じておるわけであります。
  174. 伊藤修

    伊藤修君 私の質問は一応この程度にしまして、その他の御質問がありませんか。
  175. 吉田法晴

    吉田法晴君 ちよつと今と関連して……、今の佐藤意見局長官の御答弁を聞いておりますと、将来について考慮いたしたいとうことでありますが、将来について考慮いたしたいということは、この法律についても将来考慮したいという意味にもとれるのでありますが、この法律については今のこの案のままで参りますと、その問題は残るわけでありますが、どういう工合にお考えになつておりましようか。
  176. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 先ほどちよつと触れましたように、かような例というものは従来行政関係の取締りに関係しての立法においては、ずつとこの形で参つておるわけであります。而して伊藤委員の仰せられましたような角度からの御批判というものも今まで耳に入つておりますから、従来かねがねその点についての研究はしておつたわけでございます。ただこの行政事件というこの事件の性格、例えば十九條に挙げてありますような事柄について申しましても、この裁判所の許可ということにして、それが裁判所判断に適する事項かどうかという問題がすべての問題に通じて、行政関係のものについて一つの基準として考えられなければならんわけです。裁判所判断に適しないよう事件について仮にすべて許可料を取るというような建前にいたしますと、極めて率直に私の心の中にあります悩みを申し上げますが、この行政権と司法権との間の責任関係憲法で立てておる三権分立上からの責任関係から見て、逆に申しますれば、行政権が本来自分の責任で処置すべきことを、裁判所が許可を出さなかつたからとか、許可を出したからというように責任関係が紛更されて、裁判所の責任に押付けるというような場面もこれは十分理論上は考えられるところであります。率直に申しましてそういう点を私の悩みとして心に置きながら、何とかして万全を期する方法はないものかという方向で研究しておるわけであります。今なおその研究を真剣に続けておる段階でございます。でありますから率直に言えば、これはこれとして従来の通り一応お通し頂いて、今のような意の存するところをお汲み取り願つて、又こちらから御協力願つて、立派な制度を考えて行きたい、こういう趣旨でございます。
  177. 吉田法晴

    吉田法晴君 そうするとまだ問題は本質的に残るわけでありますが、事件日本法律による刑罰問題ではない。そこで向うの要請に従つて検察官並びに司法警察員が一時動くことになる。それは間接強制であつて、行政罰で以て臨まれるのだから或いは断わることもできる。こういうことに行政罰を覚悟するならば断わることもできる云々ということになりましようが、実際問題としては国民がこうした検察官或いは司法警察員の要請がありました場合に、国民は正当な司法権の発動として書類の提出を求められ或いは取調べを受ける場合と、国民の受ける場合は同じだと思います。実際問題としては。そこで憲法三十五條による或いは住居の侵入について、或いは書類及び所持品についての押牧について、正当な理由に基いて発せられ、或いは捜索する場所、押収する物件を明示する令状がなければ侵されないという憲法に規定するものについて、行政法上の要請はどうなるのでしようか、こういう点になるわけであります。皆さんのほうは、実体法の根拠が国内的にはないということからする行政法的な手続だと、こう言われるのでありますが、受ける国民のほうからいたしますと、この法律上の場合とそれから刑事訴訟法による場合と実際が同じになるのが実体なんです。そこのところを問題にしているわけでありますが、十八條の場合も問題がございますけれども、十八條の場合には裁判所の許可という事項があるので一応了解はできるけれども、十九條の場合はそれがない。それについて入れたらどうか、こういう御議論になつております。実体から考えまして、理窟ばかりでなくして実際から考えて、その国民の権利義務を保障する方法はどうか、こういう議論をしておるわけであります。その点を一つ重ねて……。
  178. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 私の観念を整理いたしますために、不要の言葉を多少挟みますが、この御指摘になりました三十五條は、先ほど触れましたように私どもの考えでは、問題の範囲は刑事事件ということと、もう一つ重点はその立入り或いは捜索等、これは直接強制、本人の、相手かたの意思にかかわらず直接強制で行われるということを規定した事柄、條文であると考えております。そこで問題のこの法案は、私どもは刑事事件ではないので、刑事事件以外の普通の行政の事件であると、併しながらこの十八條の場合におきましては、先ほど触れましたように、これは直接に強制を及ぼすものである、住居を直接に侵害するものである。従つてこの刑事事件ではありません。従つて三十五條直接の要請とは考えませんけれども、事は今丁度お話通りに同じごとじやないかと、受けるほうの側から言えば、従つて十八條を受けまして裁判所の許可ということを入れたわけでございます。ところが十九條の問題になつて来ますというと、今の事柄の性質の問題、それから直接性の問題、この両方がずつと違つて来るわけでございます。従いまして先ほど説明申しましたことがここから出て来る、そういう前提から出て来るわけでございます。
  179. 吉田法晴

    吉田法晴君 十八條の場合についての直接性、それから十九條についての間接性、それは一応わかるのでありますが、国民が受ける印象と申しますか、この場合については十九條といえども同じではないかと、受取り方、従つてそれは事が行政上の問題であるから国民として応じなくてもいいんだ、或いはそれは行政罰を受けるだけだ、こういうお話でございまするけれども、実際に国民が受ける場合には直接強制の場合と、或いは十九條による間接強制の場合と、国民の受けるのは同じじやないか、実際問題としてこれは或いは十九條に対します心組と申しますか、或いは感じと申しますか、それは国民の中の極めて少数の者が考えるだけであつて、実際には直接強制の場合と間接強制の場合の差別というものは国民の大多数にはわからないんでしよう。そうするとそこで実際三十五條に言う直接強制の効果は国民に及ぶのじやないか、その救済方法を考えたらどうか、考えるべきじやないか、こういう意見であつたのでありますが、性質が違うからやはりこれでいいのだという御意見でありますか。
  180. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) これでいいかどうか、これは先ほど触れましたように、なお私はあらゆる角度から実は悩みを持つて考え抜いておるのでありますから、それを留保いたしまして、この十九條の問題は、結局十八條の問題と根本の立て方の違つておること、この点は先ほど触れました通り、従いましてこれは結局運用の問題に私はなるのじやないかと思います。例えば十九條によつて検察官、司法警察員がこの見分をすると、或いは参考人を取調べるというときに、そのとるべき態度の問題じやないかと思います。今日はこういう理由で私は実は都合が悪いのだ、こういう理由で下見分は困る、調査のための見分は困ると申出たときに、これは正当な理由であるということになれば、それで当然その申出を聞かれなければならんことだと思います。でありまするからして結局実際の運用の問題、或いは運用の衝に当る人の態度の問題ということになるのじやないかと思います。
  181. 小野義夫

    委員長小野義夫君) ちよつと十分休憩いたします。    午後四時十四分休憩    —————・—————    午後四時四十分開会
  182. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 委員会を再開いたします。  続いて質疑を継続します。
  183. 吉田法晴

    吉田法晴君 さつきの十八條、十九條の問題に関連してでありますが、十九條は間接強制であるから、直接強制の場合のような強制を聞かなければ…間接強制されるだけだ、こういうお話でありますけれども、これは例を申上げますが、私どもが今度の国会で関知しました東大事件の場合のように、あとでこれは人権擁護委員会の活動がございましたけれども、刑事訴訟法に基いてでさえも令状が示されないで逮捕がなされたと、こういう事態が生じておる今日でありますので、十九條に基いて要請がありましたときに、国民が受けます被害、人権蹂躙の被害というものは、これを防止することは極めて困難だと考えられます。で十八條の場合には、裁判官の許可を得て許可状が示されるかと思うのでありますけれども、その場合にも刑事訴訟法に基きますような令状が示されることが要件にはなつておりません。まして十九條に基いて行政措置として要請がなされます場合に、この人権蹂躙に対します保障というものが何らないということになると考えるのでありますが、この人権蹂躙を防止する具体的な案がございますならば承わりたい。問題はそれを法上保障せられることを要求するけわけでありますが、御答弁を頂きたいと思います。
  184. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 先ほどこの十九條につきまして私は要は運用の問題であろうということを申上げました。恐らくそれに関連してのお尋ねであろうと存じます。運用の問題といたしましては申すまでもありません。この十九條は向うの要請があつた場合についてすべてこの「取り調べ、実況見分」というような措置をとるわけでは勿論ございませんので、その際よく先方と打合して、必要の止むを得ない限度に、そこをいわゆる裁定をいたしまして、その限度において日本の当局者がこの措置をとる、これはもう当然のことでございます。更にこの実際の運用につきまして或いは職権濫用が行われるということになりますれば、もとより職権濫用の犯罪の問題になりましようし、又違法の行為によつて損害を相手方に與えたということになりますれば、又これ国家賠償等の問題にもなるわけです。又個々の検察官、司法警察員に対する懲戒の問題ということが出て来ることもこれは申上げるまでもないことであります。更に大きく申上げますれば、これは行政の責任においてなすことでございますからして、一にこれは議院内閣制の原則に則りまして、国会の政府に対する監視、監督の下にこれは行われるものであるということを申上げたいと存ずるのであります。
  185. 吉田法晴

    吉田法晴君 行政の監督についても、国会の一般的の原則に基いてせられたらよろしい、こういうお話でございますが、それでは、今の行政の専制と申しますか、或いは行政権の強化による人権蹂躙の傾向に対します保障が法上ないじやないか、こういうことを申上げておるのであります。この点はこれ以上論議をいたしましても切りがないと考えますが、御説明を聞いておりましても、実体法が国内法ではない、従つてアメリカ側の要請に基いて行政的な措置としてする云々、こういうことで、いわばアメリカ軍側の事情に基いてこういう規定が規定される或いは運用せられる、その結果、これは過去の事柄から考えましても、最近のこれは傾向と申しますか、そういう危険な傾向が出て参つておりますけれども、行政権の運用の結果、人権蹂躙が殖えつつある現状に鑑みまして、国民の権利を擁護するために、憲法上の権利が保障せられるために法的な措置を講じなければならん、法上の保障はつきりしなければならん、こういう要望につきましては、これは考慮いたしましようとか、或いは考慮したいとかいうことでなくて、法上の問題としてここで考えなけりやならん、こういう意見を申述べて、その点は次に移りたいと思うのです。  前に返るのでありますが、今の十八條、十九條の質問がございましたからその次の点をお尋ねをいたします。二十條の刑事補償、これは、「合衆国軍事裁判所又は合衆国軍隊による抑留又は拘禁は、刑事訴訟法による抑留又は拘禁とみなす」こういうことでございますので、アメリカの軍事裁判所或いは軍隊による抑留、拘禁について刑事訴訟法による抑留、拘禁とみなして国家補償を行う。言い換えますとアメリカ軍或いは裁判所による補償について日本でその補償をすると、これはこういう規定であると考えるのでありますが、その通りであるかどうか承わりたい。
  186. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) その通りでございます。
  187. 吉田法晴

    吉田法晴君 この点も民事特別法の場合もそうでありますけれども、向う側の行為によつて損害が生じた、或いは人命、身体について影響がある場合に、日本側が出すことについても、一部出すことについても納得しがたいということを申して参つたのでありますけれども、この場合には全額日本が、日本国民が負担するということになるので、何としても納得しがたい点だと思いますが、これは論議をしても仕方がございませんから質疑をやめまして、今の答弁で明らかになりましたから、その点はもうこれ以上質問をいたして参りません。それからもう一度第六條に返りますが、伊藤委員から細かく御質問を頂きましたので、内容については余り質疑を重ねる必要はないかと思いますが「不当な方法」といつたような抽象的な規定でございますと、先ほどの論議を聞いておりましても、それが常識的な判断の結果に基く、そうするとこれを運用いたします者が検察官なり或いは主として警察員なり警察職員ということになりますというと範囲が擴大せられて参る、或いはかつての軍機保護法時代のような運営になる危険性につきましては、これは何人も否定するわけには参らんと考えるのであります。法務府から出されました解説書によますと、その点は解説書の中では相当緩和せられておるがごとくでありますけれども、これを法文の上に明かにいたしませんと、解釈趣旨が法上保障せられないということになるわけであります。もつとこの六條その他について擴大せられない保障方法についてもつと御考慮ないのかどうか、その点重ねて申上げたい。
  188. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) ここに「不当な方法で」と用いましたのは、実はこれによつて保護しなければいかんよう機密の種類並びにその行為、それと又一般に普通の人が機密等に接した場合に、それをみんなすべて処罰の対象にするようなことがあつては困るというふうなその二つの調和をどこに求めようかというので、実は相当苦心したのでございます。その結果前にちよつと申上げました旧軍機保護法におきまして何も制限を加えずに、とにかく軍機なるものを探知、收集すれば何でもかんでも方法の如何を問わず、又目的の如何を問わず処罰されて、特殊な方法又は目的を持つた場合には特に重く処罰されるというふうな考え方であつたのは不当であろう。そこでこれを制限しなければならん。そこでこれを如何に制限するかということにつきましていろいろみんなで研究いたしました結果、この「不当な方法で」という結論に達したのでございました。これを先ほど伊藤さんからお話のありました際に申上げました「不法な」というふうなことにいたしますると、非常に範囲が限定され過ぎまして、何か法律乃至命令においてその方法が禁ぜられておるというようなことが前提になりまして、機密保護の性質上欠くるところがあるだろう。そこでそれを「不当な方法で、」つまり妥当ならざる方法でというふうなことにいたしますれば、その両方の調和が取れるだろう、さよう趣旨でこのような文字を使つた次第でございます。
  189. 吉田法晴

    吉田法晴君 質問に対する答弁が全く的を外れておりますが、もう少し端的に申上げますと、解説書の中には相当法文の解釈としてしぼられておる、その点は認めますが、解説書だけでは裁判のこれは材料になりますまい。そこで法文にもつと具体的に書くか、或いはその他の方法でこれは保障せられなければ、かつての軍機保護法時代のよう運用なり或いは裁判になりかねぬ、特にこれが警察職員なり警察員の場合においては特にそうです。それを防ぐ方法を具体的にどういうものを考えておられるか、それをちよつと……。
  190. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) この運用につきましての御意見御尤もでございまして、その点は私どもとしても十分戒心しなければいかんと思いまして、実はこのような「不当な方法で」といつたような用語の実際の適用の面につきましては、この解説書に書いてあるよう趣旨、これを十分徹底させるためにはやはり通牒等で一応こういうふうな趣旨なんだ、或いはこれに類似する程度を出てはいかんということを明かにいたしますと同時に、又さよう趣旨が單に検察庁のみにいつたのでは何もなりませんので、更に検察庁においてこれを末端の、末端のと言いますか、全国の警察官或いはその他この法規に關與するような人々にできるだけ周知徹底いたさせまして、この「不当な方法で」といつたような表現がいやしくも国民の権利義務に侵害を與え、又は徒らにこの法律を濫用するようなことのないように十分手配をいたすつもりでございます。
  191. 吉田法晴

    吉田法晴君 具体的に通牒その他で濫用せられないようにという御答弁を頂きましたので、その点は了承をいたします。少くとも先ほどの御答弁ようなことでございますと、この辺の第六條関係につきまして本来のこの條文の目的とするスパイを捕えるのか或いは良民を捕えるのか、こういう点になりますと極めてあいまい、恐らくスパイを捕えるよりも良民を捕えるほうが多かろうと、こういうように感じますので、通牒の点は有難いのでありますが、もつと具体的に法上においてもこれは考慮されなければならんと思うのです。それから解説書條文とを比較いたしまして一点お伺いをいたしますが、それは一項も二項もそうでありますが、「不当な方法で探知し、又は收集した、」これが二項には「通常不当な方法によらなければ探知し、又は收集することができない」と、こういうことが書いてございますが、その認識がなければならんと書いてございます、解説書には。併しこれはいわゆる故意、過失とは故意とは関係がなくて、行為の何と申しますか、状況になるかと思いますが、法文上こういう書き方で、その認識がなければ処罰対象にならんということが保障せられる根拠については、若干理解に苦しむのでありますが、その点お示しを頂きたい。
  192. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 先般もちよつと触れたかと存じまするが、一般にこの或る犯罪の構成要件が定められております場合には、特に過失ということが断つてない限りは全部故意犯と相成るわけでございます。そこで故意犯につきましてどういう点が構成要件かと申しますると、この例えば六條についてこれを申上げますれば、「合衆国軍隊機密を」ということについては、先ず軍隊についての別表に掲げる事項或いはひれらの事項にかかる文書とか若しくは物件であるとかいう認定が必要となつて参ります。次には公になつていないというような認識も必要でございます。それからその次にはこの犯罪の行為につきまして探知する、探り知るというふうな、つまりうつかりしていたらそれが入つて来たのはこれは問題になりませんので、探知するという積極的な行為或いは收集したという行為についてそれぞれ認識と申しますか、それを知つてつておらなければいかん。それからなおそれに更にそれをやるについて方法が不当であるとか、或いは合衆国軍隊の安全を害する用途に供する目的を以てという特殊な目的が必要になつて来る。そこですベて何も断りがなければ全部故意犯、つまり構成的な要件の全部についての認識が必要になつて来る、この一つが欠けましても結局犯罪にはならない、かよう趣旨でございます。これは法文上当然読めるわけでございます。
  193. 吉田法晴

    吉田法晴君 今の御答弁だと「合衆国軍隊の安全を害すべき用途に供する目的、」それから「不当な方法で、探知し、收集した者、」これはいずれも要件になつて来る。そうすると「又は」という文句がなくなつてしまつた、取つた説明ように私は聞くのであります。その点はどうですか。
  194. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) それは実は構成要件の最初の機密の御説明をしてから行為の御説明に移りまして、その行為をするについては「合衆国軍隊の安全を害すべき用途に供する目的」があるか或いは「又は不当な方法で」とか、「合衆国軍隊の安全を害すべき用途に供する目的をもつて、」という場合は「不当な方法で」ということについての認識が必要でないし、又「不当な方法で」ということで問題になりました場合には「合衆国軍隊の安全を害すべき用途に供する目的」という目的のほうは要らなくなる。かよう趣旨に当然なるわけでございます。
  195. 吉田法晴

    吉田法晴君 余り御答弁を取消される必要もないので……、結局一番問題になりますのは「不当な方法」ということについての行為云々でありますが、先ほどの御答弁の中にありました、或いはカフエーの列、或いは新聞記者の取材の場合等についての「不当な方」法について、これは一応あなたの御説明は御説明で、併し常識でと、こういう結局御答弁なつております。そうするとこれは結局は裁判所の常識になります。或いは本来はその裁判所の常識も国民の常識ということになると思うのですが一実際には例えば手続の場合でもそうですけれども、従来の例から考えまして、多く警察職員なり警察吏員なり或いは警察官の常識に引きずられる、これが今までの実際であります。そこで「不当な方法」の客観的な規定と申しますか、これがどうしても必要になつて来ると思うのでありますが、あなたの説明を聞いて、それが例えば法律上にちやんと出ている、或いは通牒になるといたしましても、先ほどような質疑、答弁程度では、これは客観的な標準にはなりかねると思うのです。結論的には常識で云々ということになります。これをもつと具体的にする方法についてもう少し一つ承わりたい。
  196. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 実は御手許にお配りしました解説書はかなり取急いで作りました関係上、その当時までにいろいろ考えました具体的な事例を述べて見たわけでございます。そこで勿論このほかにもいろいろ事例が考えられるわけでございまして、又この国会においていろいろ御審議になりました、御質問になりました諸点等も大変参考になりましたので、それらの点は全部書き分けまして、この程度のものはよろしい、それからこの程度のものはいかんというふうなことをはつきりいたしまして、全部流すつもりでございます。実は大体の線は勿論引いて、その程度で間違いないというふうに、観念的と言いますか、考えたのでございまするが、いろいろ御審議もございましたので、その具体的な例を全部列べまして、そうして第一線の警察官等におきましてもその誤りなきを期するようにいたしたいと思う次第であります。
  197. 伊藤修

    伊藤修君 ちよつと一点聞き漏らしたことがありますので、その点について。本法の第六條の機密の定義に関しまして、勿論法廷で争いになつた場合においては、恐らく裁判所として合衆国軍隊の当局のほうへこれを機密なるや否やということを照会することになると思いますが、その場合においてこれに対するところの規定が本法において賄われていないのですが、こういう点はどういう考え方を以て規定しなかつたのか、伺つておきたいのです。
  198. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 大体この特別法の刑事手続に関する部面は、こちら側の官憲においてなすべき事項を中心にして、刑事訴訟法の規定でどうしても賄えない点だけを作りおいたわけです。そこで今お尋ねような点になりますると、刑事訴訟法では單に照会することができるというふうな簡単な條文がございますけれども、合衆国軍隊ということは別に触れておりません。併し性質上当然そういうことになろうかと思う。又実際上今度は向うのほうで照会状を受取りました際に、これをどの程度まで回答するかという問題になりますと、これは又刑事訴訟法のほかの問題になりますから、実際問題といたしまして、向う側の、あれは何と申しますか、正式に言いますと合同委員会の小委員会の刑事部会というのがございます。そこにおいてその問題を取上げまして、かよう照会があつた場合には向うから回答をよこす。かような取極になつております。
  199. 吉田法晴

    吉田法晴君 関連しまして、そうすると、これは全部を通じて心配されることでありますが、この軍機であるかないかということも、結局決定的には向う側で判断せられると、こういうことになるのかどうか。言い換えると條文が具体的でない、例えば「不当な方法で」というように非常に総括的な規定になつておる。そうすると実際の中味は日本法律なり或いは日本裁判所できめられるのではなくて、最後にはと申しますか、決定的な要素になるものは、向う側の軍機であるかどうかという問題になる。こういう工合に考えられるのでありますが、その点一つはつきりして頂きたい。
  200. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 最終的な決定はこちら側の裁判所でいたすことになろうと思います。それで問題は、問題になりました事項別表に掲げるものにぴつたり合うかどうかということが第一問題になります。その点についてはあちら側の意見が相当に参考になろうかと存じます。それから今度は公になつているかなつていないかという点につきましては、いろいろな場合がございましようと思いますが、或る場合においてはもうあちら側のほうでは公になつていることで、これは問題にしてもらわんでもいいというような回答がある場合もございましようし、或いはこれは未だ曽つて発表したこともないし、自分のほうでも公になつていないものと了承するというような書面が来る場合もあるだろうと思います。併しその場合におきましても、こちらの裁判所があちらではあんなことを言つているけれども、こちらの裁判所には顯著なる事実として公になつているのだという場合には向う判断を排しまして、こちらのほうで証拠によつてそれは機密にあらずというよう判断ができるのも当然だろうと思います。なお向う側の機密というのはいろいろ段階があるという話です。その段階によりまして取扱いが違うそうでございますが、恐らくその点等についてもあちら側から何と言いますか、回答の中には触れて来る場合もあろうかと思います。
  201. 吉田法晴

    吉田法晴君 そうすると別表の場合についても或いは公になつているかいないかと、具体的に公になつておるかどうかという、或いは軍機の程度について段階があると、こういうお話でありますが、そうすると結局公になつておるかどうか、軍機であるかどうか、こういう問題についても若干日本裁判所判断せられるものもあるかも知れません。それは日本の国内で公になつておるかどうかと、こういうものについては、言われるよう新聞なら新聞に載つておるとか何とかいうことで一つの尺度があるかも知れませんけれども、そうでない部分のほうが多いでしよう。そうすると結局は向う側の意見と申しますか、判断というものが決定的になると、こういうように感ぜられますが、如何ですか。
  202. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 段階と申上げましたのは分けになつ程度の段階ではございませんので、機密として向う側で是非ともいいますか、非常に最高機密として取扱つているものと、それからまあ普通の機密と、そう大したものでもないものといつたような段階があるそうでございます。そこで今段階によつて返事がその点まで触れて来る場合もあろうかと実は申上げましたのは、その非常に限定した高度の機密についてはやはり量刑等の際に考慮すべきこともあろうかと思いまして、さような点について触れて来ることもあろうかということを申上げた次第でございます。分けになつているかいないかにつきましては、これは機密の段階の如何にかかわらずして問題は同じでございます。なお御参考までに申上げますと、その段階といいますのは、一番高い機密がトツプ・シークレツトと申すのだそうでございます。二番目がただのシークレツトで、三番目がコンフイデンシヤル・インフオーメーシヨンというふうな区別がありまして、それぞれ例えば金庫をどういう状況で保管しろとか、或いはその金庫に鎖を附けて動かぬようにしておけとか、いろんな取扱いが違つておるそうでございます。これはまあほんの御参考でございます。
  203. 吉田法晴

    吉田法晴君 そうすると軍機保護法の場合でさえも一般的な電機でなくて、機密なつておるかどうかという点が考慮に入つてつた、少くとも日本の過去のこういう軍機保護関係の法規においてもなつておつた。ところがこの法律の建前からしますならば、軍機なら軍機一本、その軍機が今段階について三段階ほど言われましたけれども、そのいずれに属するかといつたようなものについてさえも何ら規定がない。結局は量刑の場合に参考にされる、日本の警察なり或いは検察官が国民を捕える場合にはそんなことは一向おかまいなしに捕える。こういうことになりますというと、曽つて日本の最も軍国主義華かで、而も軍国主義時代の軍機保護のために行われた取締りよりももつと広いものに事実上なるような感じがするのでありますが、立法技術的にもその辺に何と申しますか、広汎さを感ずるのでありますが、これらの点はどうですか。
  204. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 向う側にそういうふうな段階的な機密の取扱いがあるということによりまして、こちら側でいろいろ法定刑を違えて律するということも一つの考え方であろうと存じます。たださようなことにいたしますると、今度はそれに一つ一つ今度は認識がやはり必要になつて来るわけでございまして、日本国民としてはそれがトツプ・シークレツトであろうが或いはコンフイデンシヤル・インフオーメーシヨンであろうが、そういうことは実際わかりませんので、それによつて事を律するのはちよつと酷に失しはしないだろうか。それからもう一つ考えましたのは、法定刑を盛ります際に、私ども考えましたのは、大体軍機を取つて来る最もテイピカルな例は、机の上にあつた書類を持つて来るとか或いは向う側の会議録をちよつと盗んで来るというふうな場合が、何といいますか、最もテイピカルな例だと思いますが、さような場合でございますると大体窃盗に比すべきものでございます。窃盗の法定刑が懲役十年以下というふうに相成つておりますので、大体窃盗保度のことはやはり法定刑としては列べておかなければならんのじやないだろうか。そういたしますると、今申上げました段階を設けてこれを考えるということになりますると、どんな軽い窃盗的な書類を盗んで来るとか、何とか、そういつたものが懲役十年以下ということになりますと、段階を設ければその上のほうに段階を設けて行かなければならない。これでは懲役十五年とか或いは無期なんという非常に、丁度元の軍機保護の時代には特殊な目的を持つた場合に、或いは業務上の場合とかいつたような場合に過重の刑を盛つておりますけれども、それでは大変だ。ですから一番のテイピカルな例で、最低限窃盗程度のものというので法定刑を律しようというふうなことから一本にいたして、私どもとしては軽い刑で盛つたつもりでございます。
  205. 吉田法晴

    吉田法晴君 これはいずれ別の問題ですが、行政協定に伴うということですが、行政協定の中の区域及び施設の点は、例えば施設又は区域を侵す罪として、「施設又は区域であつて入ることを禁じた場所」云々というような條項がございます。ところが行政協定を見まするというと、これは十七條の三項(C)号でございますが、「施設又は区域の近傍で」という言葉がございます。これは原文、原文と申しますか、英語が手許にございませんからわかりませんけれども、この両者の食い違いで、例えばこれは前にもお話を申上げましたけれども、施設或いは区域の近くに近寄つた、今まではそういう場合に誰何したり或いは又されたりする、それで言葉が通じないため或いは射殺された等の事件もございます。それについて補償も十分されて参らなかつたということになるわけでありますが、若しそういう施設又は区域の近くでその安全について云々という問題が起ります場合にはつきりした規定がございますならば、これについてこの法上の規定に基いて処理されるということになりますけれども、若しそのままで放置せられますならば、或いはこの刑事特別立法以上の事実上極刑その他が科せられるといつたような虞れがあるのでございますが、この行政協定の本文とそれからこの法案との食い違いと、それからそれに伴つて起る犠牲の救済についてどういう工合にこの法の建前としては取扱われるのか、その辺を承わりたい。
  206. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 行政協定第十七條第三項(C)の場合でございますが、これは施設又は区域のすぐそばで当該施設又は区域の安全に対する犯罪、つまり例えば施設に対して攻撃を加えよう、害を加えようというふうな者があるわけでございます。それが施設の中に入りませんでも、施設のすぐ道路を隔てた向い側から害を加えて来るという場合もあるわけでございます。さような場合におきまして施設の中だけに事を限つておきますと、この多くは施設の管理官といいますか、そこに人がおるのが、相手方のアメリカ側の人がおるのが普通でございます。そこにたまたま警察官がおらないという場合もむしろ多かろうと思います。さような場合に何かあつたら悪いことをする奴が道路の向いにおるからといつて日本の警察を呼ぶということになりますと、これは現行犯でございますからちよつと間に合わない、さような場合には仮にその人が中から出て来て捕えられる、かよう趣旨でございます。そこでこれがこの法案の第二條に移つて参りまして、第十二條の「検察官又は司法警察員は、行政協定第十七條第三項」、この中の(C)でございますが、「(C)による引渡の通知があつた場合には、」というので、この場合にはこちら側としては正式の逮捕状によつてその引渡しを受けに行くという手続を規定している、ここから普通の日本の刑事訴訟法の規定が完全に残つて来るわけでございます。さよう趣旨でございます。  なおこれによつて何か濫用といいますか、向う側で近傍以外に出て捕えた或いは全然問題にならん奴を故意に捕えたというふうなことがございますれば、これは又以てのほかでございまして、先ほど法制意見長官からも御回答申上げました通り、故意又は過失の程度によりまして民事特別法が働いて来る場合があろうかと、かよう趣旨でございます。
  207. 吉田法晴

    吉田法晴君 十二條による引渡しの通知があつた場合はわかります。わかりますが、実際問題として今まであつた例はこういう穏当なと申しますか、純理に基いた措置じやなくて、今までは基地の近くにおいては近づいた、誰何した、言葉が通じないから逃げた、そこで射殺したとこういう事例が多いのであります。それはこの法律にはかかわつて来ないと言えばそれまででありますが、こういう法律ができた以上、そういう問題は今後ないものと私信じておりますが、或いは例えばこの條文によりましても、立入りを禁止した区域に入つてつた場合には一年以下の懲役云々ということでありまするが、例えばベースならベースの中で、これはベースにしても或いは工場にしてもそうでありますが、そこで働いておつた者が倉庫の中に入りかけるとか或いは入つた、そしたらこれはこの法規によつて捕えて云々と、こういうことになりましよう。或いは調べを受けるということになりましようからこの法律の建前はわかります。法律の建前はわかりますが、従来のように倉庫の中に入つたからいきなり有無を言わさず射殺するということは絶対にないはずだと、こういう工合に感じますから、その点についての、これは法の内容はここに書いてありますような問題の場合に、そういう事態に対してはこれはこの法律従つてそういうことはないはずだ、或いはあつた場合には引渡しを受けて自分の法律で処罰すると、こういうことになるかと思うのでありますが、その点についての取扱いについてもつとはつきりしておいて頂きたいと、こういうことであります。
  208. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 今の御懸念の点は私どももとより万々ないことと信じておりますけれども、万一あつた場合、即ち不当に射殺されたというような場合のことを考えますれば、第一には先ほど申上げました例の民事の賠償の問題にこれは入つて参ります。それから第二には、その犯人の結局刑事上の処置の問題になりますが、これは行政協定では原則として先方の裁判権に、それが軍人であります以上は先方の裁判権に属するのでありますけれども、只今吉田委員御指摘の通りにその裁判管轄権をこちらに渡してもらうという措置もございますから、それらの措置をいろいろ組合せまして、結局においては穏当な結果を得るものと考えておるわけであります。
  209. 吉田法晴

    吉田法晴君 穏当な処置が講ぜられると思うというのでは工合が悪いので、当然の措置が講ぜられるようにこれは私ども望むわけであります。その措置をこの法律に関連をして強く希望をして置きたいと、こういうことであります。話の趣旨は御了解を頂いたと思いますので、それは希望を強く要望することにとどめまして、なお本條の各規定については相当詳しく質疑を願いましたし、まだ残つておりまするけれども、余り触れられなかつた別表の問題について幾らかお尋ねしたいと思うのです。  これはこの法律の建前からいたしまして、別表につきましてはこういう規定の仕方しかなかつた、この別表の中味については先ほどあちら側の意見も相当入るという御答弁もございました。それをこの本條の中で相当絞ろう、本條でも絞り足らないで、解説書で相当絞ろうとした苦心はわかります。苦心はわかりますけれども、実際にはこの別表というのは運用上相当大きな意味を持つこと参はこれは間違いがないと思いますので、その別表に関しまして、これは十分に質疑をいたします時間があるかどうかという点を心配するのでありますが、先ず第一の防衛に関する事項、で防衛に関する事項の防衛はアメリか軍に対します直接の点だけでなくて、日本の直接或いは間接侵略についての防衛にも関連するということは、これは解説書その他で明らかなことでありますが、そうしますとこういう疑問が起つて参るのであります。今日本吉田内閣の方針に従つて自衛力の漸増計画が実際にどんどん進められて参つております。そうすると日本の自衛力とそれからアメリカ軍との関連というものはこれは編制上と申しますか、或いは人間的組織的な繋りもございます。或いは配置についてもこれは関連がございます。或いは演習場についても共同に使用する云々ということ、これは予算委員会その他でもり明らかにせられたところでございます。そうするとその防衛に関する事項、この中に書いてございます防衛に関する事項ばかりでなくて、編制、装備に関しましても、或いは運輸、通信に関しましても、日本の自衛力に関しまするこれらの問題とアメリカの軍隊に関しますこれらに関する事項とはこれは繋りがございます。何と言つてもそこで日本の警察予備隊或いは海上保安庁、こういうものについての事項というものとは関連があるように考えられるのでありますが、これの点についてどういう工合に考えておられますか、ちよつと伺いたいと思います。
  210. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) ここで防衛の方針云々と書いてございますのは、合衆国軍隊についての事項でございまするので、従つて事実上はいろいろと関連があることは御指摘の通りでありますが、この本條に関する限り、この法案に関する限りはこれは無関係事項でございます。
  211. 吉田法晴

    吉田法晴君 原則的に無関係であることは了承を私も初めからいたしております。ところが先ほど例を挙げましたけれども、演習地なら演習地、これを共同で使用する。或いはこれは予備隊の長官か或いは次長であつたかと思いますが、各部隊ごとに希望せられる演習地が持たれないで、アメリカ軍で従来使用された演習地を暫く共同使用するというような実態になるだろう、こういうことであります。そうすると警察予備隊だけが使用する演習地なら問題はないけれども、共用するということになりますと、例えばどこそこの演習地はこれは警察予備隊でも使うけれども向うでも使う。共同使用すると、こういうことにいたします限りにおいてはこれは相関連して参ることはあると思うのでありますが、そこでそれは警察予備隊の演習地であると、こういう話だけを、その点をはつきり意識して使うものはむしろ別でありますけれども、無意識的にそれが両方に関連するがごとく或いはしやべつたと申しますか、漏らしたということになりますと関連して来ると、こういう工合に考えられるのであります。この点は予備隊に関してだけというならばこれは関連がない、こういうまあ今の御答弁でございますけれども、実質的には相当関連して来るということはこれは心配せられる点でありますが……。
  212. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) この御指摘の一つの例の演習地が機密に当りますかどうか、恐らくこれは分けになつておるものが多いと存じますし、又別表にはまるかどうか、これは別といたしまして、お話の全体に出て参ります関連性と申しますか、国内関係向う軍隊との関連性の問題は、これは事実問題としては或る程度は御指摘の通りだろうと存じます。ただ先ほど岡原政府委員から御説明申上げました通りに、ここでこの法律案で賄つております事柄は、第六條の今の文章の中に、「合衆国軍隊についての別表に掲げる事項」というふうに特に謳つておりまする通りに、飽くまでもこれが合衆国軍隊についての部分をはつきり関連上取り分けておるわけでありますが、御懸念のようなことはないと考えておるわけであります。
  213. 吉田法晴

    吉田法晴君 それではこういう点は如何でございましようか。この「防衛の方針若しくは計画の内容」といつたようなことに関連して参りますけれども、従来は北海道を日本の防衛の第一陣だと考える。これは外国の雑誌等には或いは北海道とか或いは朝鮮とか北九州といつたものが第一線である云々ということは載つておりますが、これはまあ向う新聞雑誌に載つておると、こういうことになりますと、先ほどこれが公になつておる云々ということになりますけれども、それを一応外しますと、例えば従来から言いますと、これは新聞にまあ或る程度載せ得たわけでありますけれども、北海道なら北海道その他を日本防衛の第一線と考えるそこで先般来のような州兵を北海道に送る。こういう点はそれが今の場合にはそれが新聞に載つたか載らんかということは一つこの「合衆国軍隊についての別表に掲げる事項」であつて公になつておるかいないか、いわゆる保護せらるべき軍機に関連するかどうかのただ一つのこれはふるい分けの基準になりますけれども、その点を外しますならば、恐らく今まで新聞には書かれたけれども、先ほど申しましたような北海道へ移して、或いは州兵を北海道に送るというようなことは、まさに一のイになるかのような感がするのでありますが、具体的な例を挙げましたからこの点について一つ説明願いたいと思います。
  214. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 今お言葉に出ました程度のことでありますならば、これは具体性というものがいわゆる熟しておらない事柄と考えますので、この問題には入らないというふうに考えております。
  215. 吉田法晴

    吉田法晴君 そうすると今の具体性が熱しておるかどうかという点、どこにこの分別の基準がありますのか、もう少し伺いたいと思つております。
  216. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) これは事の性質の方面から判断しなければなりませんが、例えば北海道においてどのくらいの兵力を置いてどういう施設をするというようなことが、今のはつきりした……、推測では勿論問題になりませんが、はつきりしたその基本になつている文書なり何なりというものを探知、収集する場合にはこの関係の問題になり得るのじやないか。裏から申上げればそういうことであるわけであります。
  217. 吉田法晴

    吉田法晴君 そうすると具体的な数字その他云々というお話でありますが、これも例を挙げて参ります。私ども公務員の給與問題に関連いたしまして、地域給という問題をお互いに使つております。そうするとその地域給の中で朝鮮事変後新たなる事態の生じました所については地域給の格上げを考慮してやるべきじやないか、例えばそこにその町の中に或いは周辺に施設或いは区域ができた。そこにアメリカの軍隊なり何なりが駐留するわけであります。或いは演習をするわけであります。そうするとパンパンが密集する。そのパンパンなりをめぐつて物価が上ると、こういうことなんですが、直接そこに何名の軍隊が集まつたかということはなかなか容易に知り得るところではございませんけれども、併しパンパンが何名集まつたかということは、これはわかるわけであります。それからその結果物価がどのくらい上つたかということも事実出て参ります。そうして逆に言いますと、物価が幾ら上つた、パンパンが何人おる。パンパンの数からしましてアメリカの兵隊が何人おると、こういうことはそこに正確な数字が出て参りませんかもわかりませんけれども、逆算すれば当らずといえども遠からざる数字がこれは計算しようと思えば出て来ぬこともないかと思うのであります。こういう場合にどういう工合に判断されるか……。(「重要問題だ」と呼ぶ者あり)
  218. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 只今のような場合には或る一つの事実に基く推測ということに相成ろうかと思うのであります。機密範囲には入つて来ないわけでございます。
  219. 吉田法晴

    吉田法晴君 話を具体的にすることが好きであるわけではありませんけれども、具体的な数字を挙げませんと、事例を挙げませんと判断の材料になりませんから申上げたわけなんです。それではこういう事例は如何でしよう。これはたしか電車の中か汽車の中かであつたかと思いますけれども、朝鮮事変の何と言いますか、盛んな頃と言いますと語弊がありますが、戰闘が相当熾烈であつた当時であると思いますが、商売人が落下傘用の羽二重の注文を受けました。数量はわかりませんけれども、大体金額にいたしまして二億相当の金額だという、それを注文を受けて集めておる、ところが日本の現在のようにこういう落下傘なら落下傘を作るよう工場がない、そこで揃わない。これは非常に困難だといつたような話があつてつたのであります。そうすると今の羽二重が二億程度と、こういうふうになりますというと、これは逆算いたしまして落下傘が幾つとこういう数字は出て参ろうかと思うのであります。これのごときは如何でございましよう
  220. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) いずれも別表のどの事項にも当つて参りませんので、勿論問題にはなりません。
  221. 内村清次

    ○内村清次君 先ほど「防衛に関する事項」のうちの部隊の部隊数ですね、これは第三項の「運輸又は通信に関する事項」と関連、そのイと関連いたしますが、例えば部隊の数にいたしましても、輸送計画の上からして、車両編成が六両編成だと、そうすると一車両に対して隊員はやはりはつきり八十名乃至七十四名ということはきまつておるのですね、そうするとやはり日本軍隊にいたしましても、あの太平洋戰争中においてもこれは今の終戰後の乗客のように詰め込みやしないのです。やはり座席を與えてやつておりますると、編成車両だけでわかつて行くのですね、部隊数は。そういう点もこの部隊数の中に入るかどうか、或いは又切離して第三項の「輸送の計画の内容」という点に入るか、そういうことをまあ例えばその関係職員が話しておつたと、この列車は何両編成である、編成だけでそれを探知したところの或る人が他に漏らした、こういうことになるし或いは又職員自体が言つてつたことが他から聞かれた、こういう事態になつたときにこの別表内容に適用するかどうか、この点はどうですか。
  222. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) 別表の一の御指摘の部隊数というのは、大体例えば何師団、何大隊といつたようなことを予想しております。で、そのあとのほうに「部隊の兵員数」というのがございますが、これが具体的に例えば何大隊何千名といつたような数の点でございます。で、今みたいに一両に何十人詰まると、そうするとそれが何両編成の汽車であるから、一列車で大体何千名と、それが何列車通つたから何万名といつたような推測はできる場合もございます。問題はその輸送計画と部隊数、部隊兵員数の問題であると同時に、先ほどちよつと申上げました公になつているかなつていないかという点にむしろ関係があるのじやないかと思います。と申しますのは、この「運輸又は通信に関する事項」の輸送の計画の内容と申しますのは、勿論その部隊の何名を今日運んで、何名を明日運ぶかというふうな具体的な計画の内容ということにも入つて来ますが、同時にそれが今御指摘のように、例えば品川の駅でこう見ておればわかることが多いのでございます。さようなものはこの際これで以てすべて律するというのは如何なものであろうかというふうなことから外れて来るのじやないだろうか、さように考えております。
  223. 吉田法晴

    吉田法晴君 それでは先ほどちよつと御質問をいたしましたけれども、今後P・D工場なり或いは新特需によりまず日本工場で、軍需品修理するのみならず生産するということが出て参ると思うのです。この内容は、これは実際これから日本国民が多く関連する問題であると思うのですが、先ほど労働組合が経済的な要求をします場合に、知り得た程度のものはこれは軍機ではない、或いは別表に提げた程度のものではない、こうお話でございましたが、あの御説明だけではまだ心配が抜けませんです。例えばその別表のホの「部隊の使用する艦船、航空機兵器、彈薬その他の軍需品の種類又は数量」ですから、種類及び数量ならば、これは非常に大きな数字ならばともかくでございますけれども、部隊の使用します数量全部であればとにかく、例えば或る工場が一カ月に何台の兵器修理するか生産するかということは、これはわかりますけれども、部隊の使用します数量全部はその工場からは窺い知ることはできませんでしようが、「種類又は数量」となつておりますから、その軍需品の種類だけは少くとも修理生産する限りにおいては知り得ることになると思うのです。この点はもう少し具体的に御答弁を伺わないと安心するわけには参りません。
  224. 岡原昌男

    政府委員岡原昌男君) ここで「種類又は数量」と申上げましたのは、種類が機密として保護すべきものである場合があるのであります。又その幾らできるかという、或いは幾らあるかというこの数量がやはり機密といて保護さるべき場合もございます。例えば或る一つの物が、最もはつきりした例を言いますと、原子兵器とか或いは今まで日本で考えられないよう一つの新兵器一つでも来たということは、何かの大きな軍機になるであろうと思います。さような場合に、ただそういうものが一つでも入つて来たということが一つ機密になる場合がございますので、その数量が幾つであるかわからんでも、やはり保護する必要がある場合もあろうか、これが種類と数量を書き分けた次第でございます。ところで問題はこの軍需品修理又は生産する工場におきましてそれを業務上知り得る場合にどうなるかという問題がございまするが、これは先ほどこの全般的に業務行為或いは正当業務行為としてお語いたしました通り、たといこれに当りましても、刑法三十五條等の関係で違法性が阻却される場合があるということでございました。これと結局別な観点から事を書き分けたわけでざいます。
  225. 吉田法晴

    吉田法晴君 これはあなたの答弁を伺つておると、相当広い範囲においてこの法律の適用を受けないのだ、こういう御説明を聞くのですが、これは伊藤委員からも触れられましたけれども、例えば二條とそれから解雇せられた者との関係、これはそういう心配がないというお話、それからこの労働関係については、これは経営者とそれから労働者の関係です。この法律の関知するところではない、こういうお話でございますが、実際にはこれは労働大臣と折衝いたしましてもその建前はそうだと、こういう御説明なんですが、実際には工場におります或いは工場に参つております向うの兵隊さんでありますか、監督官であるかわかりませんけれども、こういう人たちによつて指示が実際なされておるという実情がある。これは法上の建前からしますならば、経営者と労働者との関係にある。そのほかに政府にいたしましても、或いはアメリカの国は勿論入つて来る関係でないということは、これは勿論言えます。そこで法の建前とそれから実際の場合、二條なら二條の場合、あなたのような論理で割り切れればこれは問題でなくなる。実際には例えば、工場の場合にこれが軍機になるかならんかという問題は、裁判所が出て来る前にその工場の中で実際に問題になる。で例えばこの争議まで行かなくても、経済的な條件改善の場合には、その大要を先ほどお話申上げましたけれども、幾らで受けてそしてそれを幾ら作つているか、労働條件もその中で幾らと、例えば一個当り幾ら、そしてその中で賃金幾らと、こういう計算になつて来るわけであります。そうすると数量にいたしましても或いは單価にいたしましても、請負單価にしても出したくないのは事実です。そこでそういう問題はこれは軍機であるからということで出されないようにしようとする意図だけはこれは十分おわかりになると思う。尤もこれはそういう法律関係じやない、それは軍機を漏洩したと言いますか、或いは不当な方法で探知したかどうかという軍機法の観点からこの法律で処罰される、こういうお話になりますけれども、その以前の関係のほうが実際には相当多い。そうすると二條の場合でもそうですが、條文を一応読んで、関係の諸君は心配をするのはこれは当然であります。そこで問題は、法律の建前を説明するだけでなくて、もつとこの法律法律の制定の仕方というものが、早く言いますれば国民の大多数の者にわかりやすく規定せぬことには、幾らここで皆さんが明快な答弁を頂いても、現実はなかなかそうならない。或は伊藤委員からもしばしば言われましたけれども、裁判になるまでに警察官なら警察官がどういうように取扱うか、或いは現地なら現地の工場先ほど工場のことをお話ししましたけれども、工場なら工場におる監督官その他という者が、どういう工合に取扱うかということにはそう大きな保障にはなりかねますから、その点についてはこれは御考慮を願わなければならんと思います。或いは裁判なり警察官については先ほどように通牒その他で考慮するということでございますが、できればもつと法上に、法文上に明確にされる必要があるように私どもは思うわけです。別表の規定の仕方について全体相当問題があると思いますが、今の場合について具体的な事例を挙げて御説明をしたわけでありますが、こういう問題についての立法上の経緯について承ることができれば…。
  226. 佐藤達夫

    政府委員(佐藤達夫君) 私からお答え申上げます。私ここでいろいろ伺つておりまして、例えば先ほどの「不当な方法で」という言葉の問題も出て参りましたし、今又この別表の問題につきまして、立法のやり方のことをいろいろ御指摘になりました。誠に御尤もと拝承しておつたわけでございます。ただ併しこの立法のやり方というものにも限度がございまして、私ども、今まで少くとも私が考えておりますことは、註釈書の要らない法律を作りたいということが本当の念願でございます。併しながら御承知のように小さな法律でありましても註釈書というものは非常に部厚なものになつてしまう、のみならず極めて大事な所はその他云々ということで皆できております。例えば今の「不当な方法」の問題にせよ或いは別表の問題にせよ、細く書くことは、思い当るものとしては一応書くことができます。併し立法の理想としては、それに匹敵するような同等な事柄が漏れてはこれは又大変なことになるわけであります。従いましてどうしても立案者の態度といたしましては漏れてはいけないという心配が出て参りまして、仮にこの「不当な方法」という場合に、御指摘の、ここに説明書に書いてありますようなことを三つ、四つ思い当るところを拾いましたところで、やはり万一の場合を考えましたところで、「その他不当液方法」ということで締括りをしておりますのが従来の態度でございます。立法技術の何と申しましようか、これはどうしても止むを得ない限界があるというふうに御了承願うほかないと存ずるのであります。従いましてできるだけの限度に。いてはつきりここに現わしたというのが本旨でございまして、あとは今まで御説明申しましたよう趣旨において立派に運用されるものというふうに考えておるわけであります。
  227. 小野義夫

    委員長小野義夫君) ちよつと休憩いたします。    午後五時五十八分休憩    —————・—————    午後六時四分開会
  228. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 委員会を開会いたします。  この程度で今日は散会いたします。    午後六時五分散会