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羽仁五郎君 午前問題に
なつたあの
吉田委員の御
発言に基く問題は、あらかじめ
外務省からの答を頂いてそれから
法務総裁に対する
質疑を行われるのだと思うので、その点については
吉田委員が後ほど御
発言になることだと思います。
私から
法務総裁の御意見を伺
つておきたいのは、どうもこの
刑事特別法案なりそれから又破壊活動防止
法案なんという
ような
言論、集会、結社その他団体行動などを制限する
ような
法律案が、
国民の自由を制限する上において非常に重大な
意味を持
つている
法律案である。
従つて国会としてはこれらを最も重要視し、そうしてこれについて
審議はいやしくも遺憾のないことを期しているつもりなんでありますが、
政府では或いはそういう点について、これらの例えば我々が今
審議しております
刑事特別法案についても、これらが
国民の自由を制限するものであり、又濫用された場合は恐るべき結果を生ずるという点について、十分この重大な関心を拂
つておられないのじやないかという疑いを持つのであります。その第一の点は
吉田委員からの御
発言の点でありますから
吉田委員の後ほどの御
発言に待つことにいたしまして、第二の点で私が伺いたいのは、これはこういう
ようなこの
刑法以外の特別法を制定されて、そうして基本的人権を制限するという
ような態度に出られる場合には、これと相待
つて若し
政府が基本的人権の尊重ということにおいてはいささかも欠くるところがあ
つてはならないというお
考えであるならば、そちらの
手当を十分なさらなければならないと思う。この点で
法務総裁に伺
つておきたいのは、前に一度お伺いをいたしましたが、その後の情勢を見ておりますと依然として解決されない
ように
考えられます人権擁護局の問題であります。で、こういう
ような
刑事特別法案であるとか、或いは破壊活動防止
法案であるという
ようなものが、
国会において若し万一今
政府が提出されている
ような原案で成立いたしますと、これは
法務総裁も恐らくは或いは基本的人権の制限において濫用に亘る
ような場合があ
つてはならないという点では深甚の関心をお持ちにな
つていると思う。
従つてそういうことがないために勿論これらの
法案の
審議を
愼重にしなければならないと同時に、他面において人権擁護において一層今日以上に意を用いられるということがあ
つて初めて
世論がこれを納得するのではないかと思う。幸いにして
法務総裁がその後御苦心の結果、人権擁護局というものは決して現状よりも如何なる
意味においても縮小されるものではないという
ようなお答えが頂けることができるならば、私も誠に安心をするものなんでありますが、或いは存外まだ多々困難があるのではないか。昨日もこの
委員会が散会いたしました
あとに、
日本弁護士連合会を代表せられまして各位が見えられまして、
委員長初め各
委員に向
つて人権擁護局を存置せられることについて強硬なる申入れがございました。で
日本弁護士連合会においてもそういう点において深甚の関心をお持ちにな
つておられる。私もその問題についてその後些か研究をしてみたのでありますが、人権擁護局の現状は
法務総裁よく御承知の
ように中央においても十四名これは
局長それからそのほか三人の課長それから給仕、小使さんというのを含めて十四人、ですからこれを課へお下げになりましてもまさか全部整理なさ
つても十四人の整理にしかならない。それから地方におきましては人権擁護局
関係において職員がいなければならない
場所が大よそ五十カ所あるのであります。大よそ五十カ所に対して定員が大よそ六十名です。つまり一カ所について一人何分しかお出にならない。これを削
つてまさか一カ所に半人置くこともおできにならないと思う。そうすれば中央で十四人、全国で六十人これだけの陣容で今人権擁護局という仕事をされておる、これは行政整理をするということは
政府の側では人権擁護についての仕事は
責任は負わないということにな
つてしまうのではないか、これが第一点、ですからこの第一点については極端な
言葉を用いれば羊頭狗肉をや
つておられる、それを今縮小せられて狗頭狗肉にせられる必要がどうしてあるだろうか。それは勿論羊頭狗肉で満足するものではありませんが、併し少くとも羊頭狗肉である現在それを狗頭狗肉にするということが
法務総裁の御在任中に行われる
ようなことは私としては甚だ納得できない。
それから第二は、たとえ課に下
つてもそれだけの人員を置いておく、それだけの仕事はなされるという
ようなお
考えであるかも知れませんが、人権擁護という特殊な仕事の性質上これはどうしても独立の局というものがなければ行えないものだろうと思う。その
理由としては二つ
考えられるのでありますが、第一若し課になりました場合には勧告がなされるというとき課長から警察その他に向
つて外部に向
つて勧告がせられるということは恐らくできないと思う。それなら民事
局長から勧告をなされるということになる。そうすると民事
局長は元来民事局の仕事というものはこの人権擁護とは直接
関係がない、戸籍とか供託とかそういう仕事をしておられる
ようです。そうするとそれを受取
つた警察なり何なりでは縁のないところから勧告が来た
ように
考えざるを得ない。これはどうしても人権擁護という仕事がこれは
法務府に様々おありになる、そういう
関係の仕事の中でも人権擁護という仕事が
政府の仕事の中でも特殊の仕事であるから、どうしても或る
程度までの独立性というものを持つことによ
つて、その
趣旨が貫徹せられるのじやないか、これが第一点であります。
それから第二の点は、この第二点と申しますか、その点が私は独立の局として存在しておることの必要があるのじやないか。たとえ人員は現在以上にお殖やしになることができないでも、せめてこれを独立の局として置かれることによ
つて初めてそうした特殊の性質を持
つた人権擁護の目的を果し得るのではないか。
第三の点は、この前
法務総裁の
お話にございましたが、こういう仕事は
政府でやらないで民間の弁護士連合会などにおいてして頂く、そういうために或いは
政府は予算上の補助その他を
考えることもできるのじやないかという
お話もあ
つたんですが、これは事実上例えば最近起
つた亀有で警官が少年を射
つてしま
つた、少年が外套
一つを持
つて逃げて行
つて、友達の家に逃げ込んだのを障子の隙間からピストルを挿入れて射
つてしま
つた、この
事件について弁護士連合会、自由人権協会、民間側から深甚の関心を持
つて警察に行かれて、それで調査をし
ようとしたのですが、警察署長も面会されないというので、なかなか民間の側から調査もできない。人権擁護局から行かれると調査の目的が達せられた、これが現状です。
それから第三は、
日本弁護士連合会において、人権擁護の特殊のすでに機構をお持ちにな
つておるならば、或いはそれにかなりの部分をお委せになることもできるかも知れませんが、現在そういうものができておるわけではない、そうすると今人権擁護局のほうを縮小されますと弁護士連合会がそういうものを機構を充実するまでの間には空白が生ずることにもなると思います。それから仮に弁護士連合会のほうでそういう機構を拡充せられるとしましても、人権擁護という
ような仕事は民間とそれから
政府と相待
つて行われて初めてその目的を達するのであ
つて、
政府側でそういう
ような
責任を軽くお
考えになることができるという筋合のものではないという
ように思うのです。以上三点、第一には縮小せられる実益は全くない、そうして第二、第三の
ような点で縮小することによ
つて失うところが実に多大です。独立の仕事としての権威を失
つてしまう。そして又民間でこれらの仕事を民間だけでやるということはできない。そういうふうに得るところ実益を得られる点は全くなく、失われるところは多大であるという点から、どうもこれは弁護士連合会その他今朝の朝日新聞にも投書でこの問題が取上げられておる
ようですが、一般に
世論がこれについて了解に苦しむ、或いは
政府はそういう意思ではないかも知れないが、これが更に一般には人権擁護という
ようなことも結局一時の空念仏に終
つてしまうのではないかという不安を抱くこともその
理由なしとしないのです。いわんや最初申上げました
ように、今我々が
審議しております
ような
刑事特別法案なり或いは
政府がすでに衆議院において御
説明にな
つておる
ような破壞活動防止
法案こういうものによ
つて人権が制限される虞れがあるのじやないかということも
世論が指摘しておる際でありますから、どうか
法務総裁が格別なお力を、御苦心をなさいまして、この人権擁護局が課に格下げになる
ようなことのない
ように御盡力を頂かなければならない。これはこれらの
法律案を
審議いたしますときにもこういう
法律案が
通り、而も他面人権擁護局が課に縮小されるという
ようなことであると、一層これらの
法案の
審議に我々は不安を感ずるので、その
理由から今の点についての御所見を承わらして頂きたいと思います。