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1952-04-25 第13回国会 参議院 法務委員会 第30号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年四月二十五日(金曜日)    午前十一時二分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     小野 義夫君    理事            宮城タマヨ君            伊藤  修君    委員            加藤 武徳君            長谷山行毅君            岡部  常君            内村 清次君            羽仁 五郎君   国務大臣    法 務 総 裁 木村篤太郎君    労 働 大 臣    厚 生 大 臣 吉武 惠市君   政府委員    法制意見長官  佐藤 達夫君    法務法制意見    第二局長    林  修三君    法務法制意見    第四局長    野木 新一君    法務検務局長 岡原 昌男君    民事法務長官総    務室主幹    平賀 健太君    厚生省公衆衛生    局長      山口 正義君   事務局側    常任委員会専門    員       長谷川 宏君    常任委員会専門    員       西村 高兄君   説明員    文部省社会教育    課長      高橋 真照君   —————————————   本日の会議に付した事件ポツダム宣言受諾に伴い発する命  令に関する件に基く法務関係諸命  令の措置に関する法律案内閣提  出、衆議院送付) ○日本国とアメリカ合衆国との間の安  全保障条約第三条に基く行政協定に  伴う刑事特別法案内閣送付)   —————————————
  2. 小野義夫

    委員長小野義夫君) これより委員会を開きます。本日は先ずポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する件に基く法務関係命令措置に関する法律案を議題に供します。発言のおありのかたはお願いします。
  3. 伊藤修

    伊藤修君 この法案審議に際しまして先に二回ほど質疑をいたしたのでございますが、その際法務総裁及び関係大臣の御出席を求めておりましたが、遺憾ながら数回これが流れて今日に至つた次第であります。委員会として誠に遺憾に堪えない次第です。  つきましてはこの問題について先ず法務総裁にお伺いいたしたいことは、御承知通り日本がいわゆる人身売買をあえてしておるというような国際認識の下に、ポツダム宣言においてこの不名誉極まるところの烙印を押されたごとく指示を受けておるのであります。従つてこのポツダム宣言降伏条件として承認した日本といたしましては、これに対するところ国内処置としていわゆる勅令九号を以て先ず一時的に糊塗をなされた次第であります。この勅令九号のみによつてはつまりこの種の事案に対して完璧を期し得られないということは恐らく当局においても御承知のことと存じます。従つてこれを補正する意味におきまして、先に売淫行為取締法というものを立案されて国会に提出されている。これと相待ちまして風俗営業取締法性病予防法、この三法を以ていわゆるこれらの業態に対するところ取締目的を達成しようと図られたと考えるのでありますが、不幸にして当時の国会におけるところ情勢は、政府当局において若しその法案を制定した場合におけるところ受入態勢というものが果してできておるかという点に政府の確信あるところの御答弁を得ないために、この種の法律を制定してその結果もたらすところの、これらの業に携わるところの数十万の人々の生活というものを無視するわけに行かない、これらの手当についていろいろ研究をしなければならないというので遂に両院とも審議未了終つた次第でありますが、その後数年経て今日に至るまで政府においてはこの問題に対して一体関心を持つておられたのかいられないのか、政府においてそれらに対するところ処置を講じておられたのかどうか、私はこの点に対しまして先ずお伺いしたいと思うのです。元来今日のごとき状態においたならば日本は依然として人身売買というものを認めておるということになるのではないかと思うのです。或いは法律上許していないのだと言うのでありますけれども政府当局においてもすでに赤線区域青線区域というものを認容されておる。してみますれば広義の意味において認めなくても事実行政執行の上においてこれを是認してその前提の下にこれらの業者の運営を監視しておるというような行き方である。これでは私は単に頭を隠して尻隠さずというようなことで国際間におけるところの我々の公約というものにみずから私は違約しておるのではないかと思う。ただそういう形式的の問題ではなくして本質的にこれを掘り下げて、而も憲法にいうところ国民保健目的を達するのについてこの種の業態のあることは誠に好ましからざることは私は容易に認識し得るものと思う。例えばいわゆる散娼と称する街の女の流す害毒というものは国民保健の上に大きな病毒を流しつつあることは公知の事実であります。これらをとつて以て検診いたしますれば大体三〇%乃至七五%の病毒率を持つておる。これは将来日本国を背負つて立つところの今日の青年階層にこの病毒が侵透するならば、憲法に企図するところ国民保健というものはこの面においても根底から破壊されて行くことになる。又今日の集娼の面におきましてもいわゆる従来の公娼制度の残存としての集娼制度の面から見ましても、成るほど病毒感染率においてはその率は低いと言われておりますが、いわゆる彼らの業態の実績を徴しますれば三%乃至五%と言われております。併しこれは勿論彼らの業者からの報告であつて必ずしもこの病毒率の数字というものは信じ得るものとは言い難いと思うのです。いわゆる措信し難しというても私は差支ないと思う。その実質の他の専門家の調査によりますると三〇%もあると見ておるのです。してみますればこれらの一体をなすところ婦女子が持つところ病毒の及ぼすところの影響というものは国民保健の上において重大なものではないかと思うのです。でかような意味から申しましてもこの点に対しまして国内的に何らか措置を講じなければならないと私は考えるのです。  又先ほども申上げました国際関係の面から見ましても当然のことであります。してみましたならば政府といたしましては、当然この占領治下において一時的に臨時的に措置されたところ勅令九号のごときは、それをこのまま法律に引直すということをせずしてこの際断固として完璧を期した法律を制定し、以てこれを廃止して私は処置をとるべきものじやないかと思うのです。現に政府みずからお出しになつところのいわゆる出入国管理令の二十四条のヌの規定によりますれば「売いん又はそのあつ旋、勧誘、その場所提供その他売いんに直接に関係がある業務に従事する者」こうしてこれらの関係者はいずれも入国を禁止し、又は現におるものは退去命令を強行し得る規定となつておる。外国人に対してすらかような厳格の規定を設けておるにもかかわらず、日本国内においてはこれらの行為をなした者に対しましては何ら可罰行為としてこれを認めず、やつて行くというあり方は、私はこの点から申しましても、先にポツダム宣言によつて日本がこれを受諾した趣旨は全くほごに帰せられておるということを言わなくてはならない。いわゆる国際信義にもとるのも甚だしいと言わざるを得ないと思うのです。政府委員答弁によりますればいわゆる勅令九号において、これらをも賄い得ると仰せになるかも存じません。又さような趣旨の御答弁もあつたようでありますが、併し勅令九号において御承知通り第一条において「婦女を困惑させて売淫をさせた者」これが一つ、第二条において売淫行為内容とするところ契約をなした者を処罰すると、この二つのほかはない。いわゆるこの出入国管理令の二十四条のヌに規定しておるごとく、あつ旋行為勧誘行為場所提供行為及びこれらを内容とするところ業務行為、こういうものに対しては何らの処置を講じてないのです。先に政府が提案されたところ売淫等取締法によりますれば、これらのものに対して一々その処置が講ぜられておる。現在これらの業態を通じて日々に行われつつあるものは事実上の人身売買であるのです。いわゆる金銭貸与ということが、直接その業者間において貸与がなされていなくとも、他のいわゆる第三者名義を以て呉服屋とか、或いは金貸とか、或いは親戚とか、その他第三者名義を以て婦女子金銭貸与し、以てその業務に服せしめる形式をとつている、いわゆる脱法行為です。でありますからその場合にはいわゆる勅令九号の第二条には真向から適用にならない、免れてしまうのです。然るにこれらの業に携わるところ婦女子は、この第三者から受取つたところの債務に拘束されまして、事実上その売淫行為を強いられる、強いられないまでもこの義務を履行すべく、目に見えざるところ義務並びにその人身を拘束されておることは事実であります。    〔委員長退席理事宮城タマヨ委員長席に着く〕 若しこれを破棄して逃走するようなことがあるといたしますれば、その業界におるところのいわゆるボス、用心棒、町のならず者、ばくち打こういうようないわゆる目附役が、これらに対しまして常に監視の手を延べておる、外部からこれに圧迫を加えておることはこれも事実である。かようないわゆる旧態依然たるところのこの種の業をそのまま放置しておくというあり方というものは、私は如何にこの国家がこの受入態勢ができないといえども、これは今日の民主主義国家といたしましても、ポツダム宣言受諾してこの義務履行完璧を我々は期しておる日本国民といたしましても、とるべからざるところ処置ではないかと思うのです。私は政府において少くともこの講和条約発効独立国家となる際において、この法律正義図つて以独立の第一歩を歩み出すべき筋合ではないかと思うのです。法務総裁はこのたびいわゆる独立国家を維持するために破壊活動防止法を制定せんといたされ、これによつて日本民主国家の確保を図られるという遠大な理想に燃えられているのであるが、こうした外面的な暴力行為を阻止し是正して行くことよりは、内面的に存在するところのこれらの国民の身体の破壊を企図されるところのこういう行為自身を先ず以て我々は防がなくちやならんと思うのです。又この行為によつてもたらされるところのか弱い婦女子人身売買というような非文明的な十九世紀的なこの悪風習というものを根絶しなくてはならんと思うのです。現に行われておるところのいわゆる暴力者暴力を否定することは、勿論それ以前においてこうしたものに対してこそ私は先ず以て手当をすべきものじやないかと思うのです。ここに思いをいたさずしてこれを看過してただ漫然これをこの種の不備な規定を以てこれを形式的に賄つて行くというあり方は、少くとも私は為政者としてのとるべき態度ではないと思うです。虚心坦懐に今日の民主国家というものの再建を我々は身を以て守ろうとするならば、こうした根柢に横たわるところのこれは大きな問題です。それらは我々は過去のいろいろな文学とか、教育とか、社会情勢とかいうものによつて、いわゆる吉原、或いは花柳界におけるところのあの人情話というようなものから受けたところの感化からして、この種のものに対するこうした内面的悲劇というものに余り関心を持たないせいかもわかりません。成るほど或いは三千歳であるとか、或いは揚巻であるとか、或いは夕霧伊左衛門であるとか、この種の劇を見ておりますればその美しい点において首肯し得るところもあります。人情の点においては首肯し得るものもあります。併しその彼らの生活の裏にひそむところのあらゆる人身を拘束するところの、この新らしい文化の面に反逆するところ行為に対しましては、飽くまで為政者としてこれを処置をとらざるを得ないと思うのです。賢明なる法務総裁がこれをも無視されましてただ今日の暴力行為のみに没頭されることはその意を得ないと思います。政府におきまして果してこの法律を制定する意思ありや否や、あるとするならば速かにされるのかどうか、又私が申しますようないわゆるあつ旋、勧誘場所提供、若しくはこれらの如何なる名義を用いましても、これらの業を内容とするところの、又は内容とする虞れのある金銭貸借契約行為というものを処罰するところの、完璧を期した法律を制定する意思ありや否やということを先ず法務総裁にお伺いし、厚生大臣に対しましては若し法務総裁において私の主張するがごとき法律制定の意思ありといたしますれば、その結果これらの業に携わるところ全国二十数万の婦女子の身の振り方について、如何なる受入れ態勢考えておられるか。若し考えられていないとするならば、今後考えてこれを実現する意思ありや否やという、この二点を両大臣にお伺いしたいと思うのです。
  4. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。只今伊藤委員からの御質疑誠に当を得て感銘深く私は存じます。売淫行為並びに人身売買は、これは国家保健見地からも又いわゆる基本的人権尊重見地から見ましても、当然かようなことは国家から一日も早く消滅させるべきものであろうと考えております。それについてはただ法律面ばかりではなく社会厚生、或いは生活安定という面からも考えなければなりませんが、先ず以て法律的にこれを取締ることも非常な意義深いことであろうと思います。政府におきましては、先ず講和条約発効と同時にあらゆるポ政令は消滅に帰しまするので取りあえず政令九号というものを生かしておいて、そうして応急の処置を取計らつたわけであります。只今伊藤委員仰せられましたあらゆる面からのこれを取締つて行く法規、これを制定するの用意ありや否やということでありますが、私といたしましてはできるだけ早くこれらの法律を作りまして万違算のないようにしたいと、こう考えております。法務府におきましては只今それらについて研究過程にあります。いずれ成案を得ましたら来るべき機会において各位の御審議を願いたい、こう考えております。
  5. 吉武恵市

    国務大臣吉武惠市君) 只今の御質問人身売買の遺憾な点は私も同感でございまして、一日も早くこれらの問題が解消することを希望するものでございます。只今法務総裁からお話がございましたごとく、現在の法で不備な点は新たに法律によつて完璧を期したいということにつきまして私も又同感を持つております。従いましてそのあとの身の振り方等につきましての御意見でありますが、これ御尤もであります。終戦直後のあの混乱の際に婦女子のかたで生活に困られて勢いそういう方面に走られたかたが相当おありになつたと思うのでありますが、私ども職業紹介機能を挙げましてこれらの気の毒なかたに生業につかせるための努力は十分いたすつもりでございます。
  6. 伊藤修

    伊藤修君 法務総裁は私の意見と同じとの意を表せられましたが、お言葉は速かにというふうに伺つてよろしいかどうか。時間的に申しますれば私は次の国会までにというふうに考えたいと思うのですが、これはどうか。  それからその内容につきまして、いわゆる勅令九号にいう二つ行為のみではなくて、いわゆるこれらの状態を絶滅する、若しくはこれらの婦女子を解放するというのには、やはり問題は結局これをあつ旋するもの、勧誘するもの、及び場所提供するもの、こういうものを取締らなければ本末顛倒である。ただ売淫行為そのものズバリにこれを取締ろうと思つても到底取締ることは不可能である。そういう点をも規正するところのお考えありや否やということをこの際法務総裁の御意見として明確にして頂きたいということが一つ。  それから厚生大臣におかせられましては、これに対しましてその後の受入れ態勢に対しては十分考えられるというのでありますが、その業に携わるものの本態についてお究めになつていらつしやることは私は存じますから、あえてここでくだくだと申上げるまでもない。これらに携わるところ婦女子はみずからいわゆる戦後におけるところ道徳廃頽のこの社会風潮に巻込まれまして、みずからの身を何らの、無自覚の下にこの社会に投じて行くいわゆる戦後派婦女子もあります。併しその中には約三〇%というものはいわゆる戦災によるところのやむを得ざる過程によつて落込んだ婦女子もある。或いは戦争未亡人がその残されたところの遺児を教養するためにみずからを犠牲にしてこの苦界に身を沈めておる不幸な気の毒な婦人もある。これらの者に対しまして私は単なる形式でなくして実際にこれらの婦女子独立して生計を営めるように、且つ戦争犠牲によつて残されたところの子女の教養費をも賄い得るような適当な施設を設けて、これに職業補導をなすというような有効適切な私は厚生施設をなさるべきものだと思うのです。これはいわゆる戦争中、戦後におけるところ国家の償いとしての私はなすべきものではないかと思う。又将来の婦女子の導きの手として厚生省は当然なさるべき仕事だと思う。これに対しまして私は相当の予算を獲得されて実現に努力される意思ありや否や。ただ形式的に言葉で或いはその他の既成の社界事業団体にこれを導き入れるという程度ではこの問題は解決しないと思う。そういう積極的な意思があるかどうか。又予算に対するところの御自信ありや否や。他のいろいろな予算もお使いになることと存じますけれども、こういうことは厚生省として根本的な問題だから十分これに対して熱意を以て予算獲得に御努力願わなくちやならんと思うのです。この点重ねて両大臣にお伺いいたします。
  7. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答いたします。只今伊藤委員仰せになりましたような事項につきましては十分取入れて成案を得たいと考えております。各方面の有識、達識のかたの御意見を伺いまして十分の手当はいたしたいとこう考えております。而してこの成案を得次第成るべく早い機会において私はこれは提案をいたしたいとこう考えております。
  8. 吉武恵市

    国務大臣吉武惠市君) 重ねての御要望でございますが、私といたしましても、この婦女子職業のあつ旋及び補導につきましては、従前以上に予算その他におきましても努力いたしたいつもりでございます。    〔理事宮城タマヨ退席理事伊藤修委員長席に着く〕
  9. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 今日少し声が出ませんのでおわかりにくいと思いますが、今伊藤委員のお尋ねになりましたことで私のお尋ねしたいことも大体尽きたと思いますが一、二点についてちよつと。実は今度講和条約発効いたしますについて随分いろいろな各面で恩典が拡げられておりますことは大変喜んでおりますが、そのときに私はあの売春窟の中に落ちております而もやむにやまれない未亡人たち母子たち、母がその子供を連れておりますあの生活苦に追われまして落ちておりますようなものが、何とかして救い出されないものかと思つて、実は今度のポ勅令によつて発せられる法律、あのポ勅の九号のようなものは今度廃して頂き、新しい構想によつて時宜に適した法律を制定して頂きたいということを非常に念願いたしたのでありますけれども、事ここに至りまして止むを得ぬと思つております。  そこで伺いたいことは、この公娼廃止には今なつておりますけれども実際におきまして戦前、以前に増して集娼やそれから散娼も勿論のことでございますが非常な数を増しております。例えば東京の吉原を調べてみましても現在ざつと千三百人以上従業員がおります。そうしてこの様相は実に驚いたものがあるのでありますが、そういうことが一体今後いつまで許されるものか、つまり風俗営業という看板を掲げましてこの営業をもう公々然と許しておる。又赤線区域青線区域といつたようなものが、これ全く考え方によりますと警察も協力をしてやつておるというようなふうに見えるところまで行つておるのでございますが、一体こういうことはいつまで許されておるのでございましようか。これについて法務総裁のお考えを伺いたい。つまりあそこにおりますこの従業員の一部分は実は終戦直後に慰安婦として政府が集めましたその人たちがまだ随分残つておる。それでその人たちは実に大手を振つて威張つてこの仕事に従事しておりますのでございます。政府からもお招ばれしているんですよということをまだ言つておるのです。それで一つどうしても早い機会にこれは何とかしてほしいのでございますが、これにつきまして政府の御意見は如何でございましようか。
  10. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 赤線青線区域、実は甚だ不敏にして私はその点は余りよく存じないのであります。これからよく研究いたしまして今度のいま伊藤委員から仰せになりました法案作成のときにおきましては十分その点についても研究いたしまして万遺憾のないように処置いたしたいと思います。
  11. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 勿論今のポ勅九号で事が足りるとお考えになつていないということも十分わかつておりますのでございますけれども、私は実にこういう点に対して手当が薄いと思つておりますのは、調べてみましたところこれは二十五年度の統計でございますが刑法の百八十二条でつまり淫行の勧誘ということ、あの条文でございますがその事件が僅かに百四件、それで起訴されておりますのは十五件、それから労働基準法十七条の違反でございます、前借の法規でございますがこれは僅かに全国で十九件、起訴が五件。それから児童福祉法の三十四条の違反が二十六年度で千九百三十件、起訴が六百四十八件ということ、これは法務府のほうの統計によつて調べたものでございますが、これは実にこの児童福祉法のあの適用が一番数の上では多うございますけれども、まだまだ全国でたつた僅かにこのくらいの程度でございますし、それから勅令号違反を調べてみましたところがこれは二十六年度の統計でございますが全国僅かに千二百五十、そうして起訴された者が二百三十九件で本当に実刑を科せられております者は僅かに三十七件でございます。如何にこの法律を抜けましてたくさんの業者が利得を得ておりますかという件でございますが、殊に児童福祉法によりますものが一番有効に今適用されておるような事情でございますが、それにしましてもこれは労働省婦人少年局報告によりますと、大体八歳、九歳、十一歳といつたような者がこれは人身売買事件として挙げられておるのでございますけれども、この小さい子供から十八歳未満の者が昨年の九月の数を見ますと六百七十四、そうして男の子の大部分労働に従事しておる。女の子の大部分は九歳あたりから売春させられておる。これは実に由々しい問題でございまして、そうしてその総数から申しますと、これは推定数でございますけれどもどうしても二十五万、三十万の者がおるとされております。そのときに実に今設けられておりますこの刑法によりましても、労働基準法児童福祉法、それからポ勅の九号なんというものはまあこれは本当に形のものだけであつて、殊にポ勅の九号なんというものはまあないよりはいいくらいだということでございますが、どうしてもこれは先ほど伊藤委員質問に対して法務総裁はできるだけ早い機会にと仰せでございましたが、そのできるだけ早い機会は、一日も早いほうが私どもすべてのものが、その道に入つております者も勿論でございますが、これは性病の問題だけでなくて教育の面から、社会問題といたしまして大変な問題を救済する上に大事な事件でございますから、どうかその早い機会を最も早い機会にして頂きたいとお願い申上げておきます。
  12. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 大体伊藤委員の御質問の要旨と同様に私思いまするが、これは我々といたしましても誠に御尤もな御意見考えます。殊に今承わりますと少年少女人身売買で非常に困惑している、かようなことを承われば、ますます早く成案を得てそういうものの人権を保護する手当はいたしたいと、こう考えております。
  13. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 厚生大臣にお伺い申上げます。この売春取締の問題につきまして、勿論これは先ほど伊藤委員仰せになりましたように更生施設を設けまして今落つこちておりますものを救い上げますということが非常に必要でございます。と同時に落つこちないようにするということが、つまり落つこちないようにするということは生活の最低安定を与えるということでございますから、これはただ何とか予算措置をして行くというような軽々しい問題でなくてこれには私は非常な予算を要すると思つております。それで第一番にお伺いしたいのは、今まで厚生省でこういう点についてどういう構想を持つて、どういう予算措置をとろうとなさつたことがございますでしようか、それをお伺いしたいのでございます。
  14. 吉武恵市

    国務大臣吉武惠市君) 勿論女子に対しましても青年に対しましても、補導所を相当全国的に作りましてそこに入れまして一定の職業を授ける。腕に覚えなくしては職業といいましてもなかなかむずかしいということで補導所を相当たくさん作つております。中に入つておられる過半数は殆んど女子青年のかたでミシンその他の方法をやらしておるわけであります。ただ先ほど伊藤さんもお話がありましたように、今日までの女子の売春的な状況というものは御指摘のように終戦直後の非常な混乱状態に食つて行けない、従つてそういう道に入らざるを得なかつたという事情は私はあると思つております。これはだんだんと日本の国力が回復し秩序が維持されて行くと共にだんだんと解消して行くものであると私は見ております。従つて先ほども申しましたように、従来も補導その他におきましてはやつてはおりますが、女子につきましてなお一層補導所等を設けまして、シンその他女に適当なる職を授けて行くという途を講ずることが必要じやないかと、かように思つております。
  15. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 それは今仰せになりますことは児童福祉法による措置でございましようが、実は今年の予算を拝見しましたところが、児童福祉法のほうの予算措置は非常に外れております。どういうわけでございましようか。
  16. 吉武恵市

    国務大臣吉武惠市君) 児童福祉でございませんで、労働省のほうの補導所の予算として相当やつておるわけでございます。児童福祉法のほうは保育院でありますとか母子寮でありますとかそういう方面予算でございます。これらは御指摘のように今年の予算は若干減つております。それは逐年増加の予算だけで維持費が減つておるわけではございません。逐年増加をして参りましたが過去五年の間に相当増設をして行つたから従来通りのカーブで増設というわけに行かんから、それは若干の増強にして行こうという意味で前年度に比べると減つておりますけれども、それは施設を減すわけではございませんで施設は依然として増設するはかりでございます。
  17. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 職業補導ということは勿論大事でございますけれども、それよりもつと手近に必要なことは母子の最低生活をさせる母子寮ということが私一番大きい問題だろうと思う。この法律を作るのには多大の母子寮を設備しなかつたならどんな立派な法律を作つても運営することはできないと思います。それでこれは当法務委員会で調査いたしておりますのでございますが、二十四年の十二月末、少し古いのでございますけれどもこの調べましたものは、集娼だけにつきましては七千四百人、その七千四百人の実に七八%つまり五千九百五十九人というものはもう全く生活難から落ちておるのでございます。そうしてこの集娼たちのいろいろな面を調べてみますと子供を持つておる人が三〇%くらいおるということを言つております。併しこれは実に内輪に言うておることでございますが、私ども実態調査をいたしましたときに殆んど半分くらい、或る所では半分以上母親だつたのでございます。このことは私由々しい問題だと思つております。こういう者に対して縛る法律を作つてみるよりもどうしてもこれを救い上げて行かなければならないし、転落さしちやならんということが第一番に手を打たなければならない。そうしてこれはかかつて私は政治の責任だと思つております。でありますからこの生活難から来ておりますもの、そうしてむずかしい法律でもできたらやめることができるかということを聞いてみましたところが、どんなことがあつたつて今の状態ではお役所にすがつても仕方がないからやめられないと申します者が六六%でございます。やめることができるだろうというのが僅かに二八%、そのほかもございますけれども、どうか私はこれは一つこの法務府が立法の案をたてるといたしましても、どうしてもその前に厚生省がしつかりして頂いてこの生活の最低保障をして頂かなければこの法律を作つても駄目なんでございますから、そのことをお願いしたいと思つております。殊に立法に当りましてはどうしても国家的な総合的な施策によつてやる以外にはないものでございますが、実はこの前ちよつとそういうことを伺つたのでございますけれども厚生省法務府、それから文部省、労働省というような直接関係のある各省が一つ共同で研究して頂きたい、それを切に願つておるのでございます。それにつきまして内閣に設置されております中央青少年問題協議会というものが、これは内閣の直属でございますが、そこで一体どういう調査か、研究か、何か手が打たれておるのでございましような、法務総裁でも厚生大臣でもどうぞお答え願いたい。
  18. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) 研究はしておるのでございますが、併しまだ十分でないと考えております。今御趣旨の点はよく了承いたしました。今後関係各省との間に緊密な連絡をとりまして、十分善処いたしたいと考えております。
  19. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 文部省に純潔教育委員会というものが設けてございまして、純潔教育についての調査研究がなされているかに伺つておりますが、その実情はどういうことでございましようか。
  20. 高橋真照

    説明員(高橋真照君) 昭和二十二年の二月四日に三十五名の委員を以ちまして純潔教育委員会というものを組織いたしまして、純潔教育につきまして調査研究をして頂き、いろいろと文部省の行政施策の上におきまして助言を頂戴しておりますが、社会教育法ができまして社会教育審議会という法制の上に認められた審議機関ができましたので、その専門の分科委員会といたしまして再編成をされました純潔教育分科審議会ということになりました。今日まで引続きその活動を頂いております。最初に純潔教育の実施の大綱といつたような純潔教育基本要綱というものを作つて頂きまして、その後主として純潔教育の中心の課題が性教育という問題になりますので、特にアメリカでいろいろと実践的な実施がなされておりますので、その関係の資料の収集ということをやつておりました。併し男女の間の正しい関係というものを確立することが望ましいということで、男女交際のエテイケツトとも申すべき新しい男女のあり方といつたような研究の成果も発表して頂きました。只今教育は非常にむずかしいので学校、家庭、社会ともども関心を持つて行かなければなりませんので、その性教育あり方につきましてまだ日本の学校も、社会も、家庭におきましても十分な正しい考えが打ち建てられておりませんので、性教育のやり方につきまして幼年期、少年期、成年期というふうに分けまして研究を頂いております。只今幼年期、少年期が大体脱稿に至りまして青年期に今入つております。青年期までのコースができ上りましたならばこれを発表いたして世間の御批判を頂きたい、こういうふうに考えておるのでございます。主として委員のメンバーは医者のかたがたと心理学者、教育学者、その他学校教育で実際にお扱いになつているかたがた、社会教育家というようなメンバーによりまして御研究を願つておる次第でございます。
  21. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 私自身もあの甚だこの文部省のこの性教育の問題、取扱われておりますこと、或いは社会に出て指導していらつしやる、そういう点につきまして何か日本ばなれがしたような、それから地に着いていないような、非常に高いところに理想をおいていらつしやるようでありますけれどもどうもしつくりしないという感じを持つている。又世間もそういう批評をいたしております。それはまだまだこれから大いにおやりになるところだろうと思つておりますが、その問題は文部省にこういうものがありそうして文教の府に当りこれに心血を注いでいらつしやる人たちが、どうして風俗を乱すような営業の看板をただ見過していらつしやるのだろうか。それから又東京には十三とか十七とか言われておりますあの赤線区域については文部省はなぜ黙つていらつしやるのか、何か研究しているのですか。
  22. 高橋真照

    説明員(高橋真照君) すでにこれはPTなどで特に学校の環境との関連におきまして幾つか各地方で問題が起りまして、一つ国民運動としていろいろと学校環境の浄化ということで闘いまして成果を挙げている実例もございます。文部省の関係から申しますれば、少くとも学校教育の環境だけでもせめてもよりよい環境を与えたいという気持を持つております。併しながら文教といつたような問題につきましても教育の立場ということも勿論でございますけれども、世間一般の風潮と申しますかその風潮に抗し難く、十分な成果を挙げ得ないところもございまして、今日御指摘のように十分な成果を挙げていないことを残念に思つている次第でございます。一層環境の整備ということに対する国民全体の関心を高めて参りたい。これは社会教育の無力につきましては誠にざんきに堪えない次第でございますが、心がまえといたしましては環境浄化に一層の努力をいたして参りたい。こう考えている次第であります。
  23. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 一番社会教育で今困つておりますのは、表は普通の商売屋のような、普通のしもたやのような恰好をしておりまして中では皆間貸をやつております。それがもう日に日に数を増しておりましてそのことがこの子女の教育に大変大きな影響を及ぼしている。例えば山中湖でございますとか、或いは何々県といつたような進駐軍のあの駐屯しておりますような場所は勿論のことでございますが、そうでございませんでも一般の新宿あたり、上野のあたり、浅草のあたりは一度お調べ下さいましたら実に心が寒くなるような状態でございますが、そうしてそれを見ております子供たちは元は東京でパンパンごつこが大変はやつておりましたが今は地方津々浦々パンパンごつこがはやつている。よく地方に参りますとこれを取締る方法はないだろうかと申しておりますのですが、これは非常に深遠な性教育や或いは純潔教育なんかのうわついた指導をなさるよりも、もつともつと私は手近なところでこういうことを阻止する運動を一つお起し頂いて、こればかりではございません、これに準じた子供教育の点から特にこの委員会のみならず文部省が手を打つて頂きたいと思つております。  それからもう一つはこれは今月の七日の読売新聞に、御承知だろうと思いますけれどもアメリカの一将校から日本へ寄せられました手紙でありますが、日本の女性よ、フジヤマのような純潔の美を取返せというこの切々たる一文は、遠くアメリカの某大学を出て政治学を専攻した日本びいきの一米国将校から読売新聞社宛に送られましたものでございます。その内容を読んでみますと、その兵隊が進駐して参りましたときに、日本の女性こそ命を以て貞操を守るものだと思つて実は考えておつた、日本の女性にはこの朝鮮人や支那人や南洋の女性と違つて用心しなければいけない。誠に日本の女性は針を隠しているのだ。それで武器は針であつて心臓部に針を突つ込むからそれで用心しなさい、しなさい、と言われて進駐してみた。ところがあに計らんや、日本の女性くらいもろいものはなかつたということをこの新聞の手紙のみならず、あの当時の兵隊が申しておりました。ところがこの朝鮮人よりも支那人よりも南洋の婦人たちにも劣つた日本人がますますこういう深みに落ちていつて、そうしてその結果、この手紙によりますと、日本女性の印象としては日本という国は品性も道徳もわきまえない動物的な女性ばかりの国だというふうに皆思つていると書いてあるのであります。もう貞操観念の認識されております今日これは非常に残念なことでございますが、勿論私どもこの政治の面にあります女性も又家庭の母たちも気をつけますけれども、殊に私は今日は文部大臣においで願いたいと考えましたことは、もつと根本的なことについてお伺いしたいと思つて、そうしてどうしても文部省が一つこれに力を入れて噴きたい。私どもと共に力を合せましてどうしても、どうしてもこの法律の売春処罰法を制定しますについての裏付の実行を一つ推して頂きたいということをお願いいたしまして私の質問をやめます。
  24. 高橋真照

    説明員(高橋真照君) 只今の宮城先生の御希望を大臣にお伝えすることにいたします。
  25. 伊藤修

    理事伊藤修君) 他に御質疑ございませんか。なければこの程度で休憩いたしたいと思います。午後は一時半から再開いたします。    午前十一時五十九分休憩    —————・—————    午後二時三分開会
  26. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 委員会を開会いたします。  日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定に伴う刑事特別法案を議題に供します。御質疑のおありのかたは御発言願います。
  27. 伊藤修

    伊藤修君 先ず政府にお伺いいたしたいのは、第一条の行政協定意味をお伺いいたしたいと思います。
  28. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) 第一条第一項におきまして、行政協定は「日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定」という定義を下しまして、この法案の全体を通じて行政協定という短い言葉でこれが数回出て参るわけでございます。
  29. 伊藤修

    伊藤修君 そうするとこの行政協定は条約として国民がこれに服するところ義務を持つのか、行政協定法律的の効果はどういうことになるのか。
  30. 林修三

    政府委員(林修三君) この行政協定の性質につきましては、すでにこの行政協定が締結せられました直後におきまして、国会においても累次いろいろの御意見なり、政府側の答弁があつたことと存ずるわけでございます。これは御承知のように安全保障条約第三条に基きまして、安全保障条約において日本に配備されることになりましたアメリカ軍の配備の条件を規律する協定でございます。その意味におきましてこれは実質的に申せば、その内容から申しますと、両国間の国際約束、実質的に申せば一種の条約的なもの、こう申して差支えないものではないかと、かように政府としては考えておりますし、又そういう御答弁を申上げたと存ずるわけでございます。
  31. 伊藤修

    伊藤修君 実質的においては条約的な性質を持つておるのだとおつしやるのですが、そういたしますと条約として国民はこれに服する義務を根本的に先ず持つのですか、その点を明らかにしたいのですが……。
  32. 林修三

    政府委員(林修三君) これは行政協定が締結せられましたあとの国会におきまして、政府側といたしまして何回か御答弁申上げておると存じますけれども、この行政協定に基きまして国民を拘束するような事項につきましては別途皆立法措置をとりまして、国会の御審議を経る、こういうことに方針を政府側としては何回か御答弁申上げておると思います。又この行政協定の条文の中にそういう趣旨が盛られておるわけでございまして、そういう意味におきまして立法措置が幾つかこの国会に御提案申上げておる、かようなことと存ずる次第でございます。
  33. 伊藤修

    伊藤修君 形式論はわかるのですよ、私のお伺いするのは、一体行政協定に基いて国内法規を作り、国民の権利義務を制約しようというのでありますが、その基本となるものが条約に基いて出て来るものか、単なる行政的な処置に基いてその必要上出るという意味か。行政協定そのものに対して国民はこれを規律されるところのものであるかどうかというその本質を伺つておるのです。条約であるということならば、我々は条約としての先ず前提に立たなくてはならん手続をとるべきじやないかと思うのです。条約でないということなら、一体それに基いてどういう根拠があるのか、その点をお伺いしたいのです。
  34. 林修三

    政府委員(林修三君) これは安全保障条約第三条におきまして、この駐留軍の配備を規律する条件は両国間の行政協定によつてきめる。こういうことが規定されておるわけであります。この安全保障条約国会において御承認を得ました際に、行政協定につきましてもそれを含めて御承認を得たと、こういうことに政府側としては解釈いたしておりまするし、その点は何回か国会におきましても政府側から御答弁申上げたことと、私記憶しているわけでございます。そういう意味におきまして、これが実質的には、これが単独で問題になりますれば先ほど申しましたように実質的な国際約束であるということは、これはそう申上げていいものだと存ずるわけでございますが、そういう安全保障条約というものがございまして、これに基きまして、この安全保障条約が又国会の御承認を経ている。こういうことに基きまして、形式的に憲法によるところ国会の御承認というものは安全保障条約に基いて得られている。こういう解釈でこの行政協定に対する国会の御承認ということはなくても済むのじやないかと、こういうことで只今まで政府としては御答弁申上げた、かようなことではないかと存ずるわけであります。
  35. 伊藤修

    伊藤修君 従来の政府答弁では我々としては納得いかないし、従来の御答弁によれば、それに基くところ国民の権利、義務を制約するものは、国内立法でするという意味において御答弁はなつておるのですよ。然らばその国内立法をする基本たるところのこの安全保障条約に基くところ行政協定というものが、いわゆる安全保障条約内容をなすものか、或いは安全保障条約の委任によつて行政協定というものができたということになるのか。若し委任によつてなつたとするならば、一体安全保障条約国民の権利、義務を制約するところの事項をも委任したのかどうか。当時の速記録を拝見いたしますれば、いわゆる安全保障条約を施行するに当つて、いろいろの手続的規定行政協定においてなすんだというような御答弁があつたはずであります。然るに、この行政協定内容を拝見するならば、ことごとく国民の権利、義務を制約するところの重要事項であつて、本来ならば条約を以て定めなければならないような事項をも行政協定によつてつているわけです。してみますれば、行政協定そのものが一体条約であるというならば納得が行くが、そうではなく単なる行政の協定であるということでは我々として納得行かないわけです基本的に……。その点を今までの形式的な説明ではなく、本質的に行政協定というものがなんであるかということを、ここで明らかにしておきたいと思います。
  36. 林修三

    政府委員(林修三君) これは第十二国会でございましたか、この安全保障条約がこの国会において御審議されておりました経過におきまして、政府としても何回かこの行政協定において国民の権利、義務に直接関係する、或いは予算を要することにつきましては、別途予算案なり法律案として御審議願うということも申上げておつたわけだと存ずるわけであります。それからこの行政協定が安保条約によつて委任されたものかどうか。これは言葉の問題でございますが、何と申しますか安全保障条約において、第三条におきまして、この駐留軍の配備を規律する条件は行政協定によつてきめると、こういうことを安全保障条約で定め、それについて国会の御承認を経ておる。こういう関係で駐留軍の配備を規律する条件につきましては、当然この安全保障条約一つ内容をなしている、かように考えられるのではないかと思うわけでございます。この配備を規律する条件を逸脱しているかどうかという問題でございますか、これは行政協定の締結に当りましては、勿論この安全保障条約第三条の範囲内におきまして、すべて駐留軍の配備を規律する条件の範囲内で締結せられたものと私ども考えておるわけでございます。又これにつきましてはこの行政協定国家間におきましてのお互いの約束であることは先ほど申しましたようにこれは間違いないことだと思うわけでございます。これを実施する上におきまして、国民に対して権利を拘束し、或いは義務を課するという点につきましては、何回か政府側が御答弁申上げております通りに、別途立法をいたす、こういうことになつております。この立法手続が或いは不成立に終るという場合には、この行政協定を実施する面におきまして、その通り実施できない部面も起る、こういうことは考えられるわけでございますが、これは併し安全保障条約がああいう内容を以ちまして国会の御承認を得ております関係上、政府としてはさようなことはなかろう、かように考えておるわけでございます。一応只今申上げました通りに、行政協定は実質的にはこれは国家間の約束であろう、さように考えます。ただ先ほど申しましたように、行政協定自身におきましても、お互いの国におきまして、立法を要するものにつきましては立法措置をとるということもお互いに約束をしておるわけです。そういう意味におきましては、これを実施するに当つて国民の権利を拘束し、義務を課するということにつきましては、お互いに立法措置をとることを約束しておるのであります。それが成立しない場合においては、安全保障条約の実施上やはりそこに問題が残るということになろうかと存ずるわけでございます。
  37. 伊藤修

    伊藤修君 あなたの説明の全趣旨から申しますと、行政協定なるものは、いわゆる国家間の約束であるという御説明の御趣旨に拝聴いたしますが、してみますれば当然これに基きましていわゆる行政協定内容をきあるについては、安全保障条約によつてこれは或いは委任しておるかも存じません。併し少くともその内容を定めるに当つて、いわゆる国家間の約束であるということになる以上は、憲法に定めるところのいわゆる本質的条約として国会の承認を得ることは当然のことじやなかろうか、然るに国会の承認を経ない行政協定に基いて本法を作るということは、基本的においてそれは誤りがあるのではなかろうか、この点はどうでしようか。
  38. 林修三

    政府委員(林修三君) この点は、只今仰せられました点は、安保条約の御審議の場合にも、或いは行政協定につきまして国会においていろいろ御質問がありました際にも、政府側としては御答弁申上げておると思うのでございますが、この行政協定は安保条約第三条に基きまして両政府間の行政協定によつてきめる、こういうことにつきまして国会のほうにおきましてそういう内容を持ちました安保条約第三条を御審議になり、それを御承認になつた範囲内において結ばれたものである、かように考えます。この意味におきましては、この行政協定を含めまして安全保障条約について憲法上の国会の御承認を得ておる。政府としてはそういう解釈をいたしておるわけでございます。この点はすでに政府の責任の大臣からも御答弁申上げてあつたことと私は記憶しております。
  39. 伊藤修

    伊藤修君 どうも今の御説明だけでは、従来の御答弁をそのままあなたはおつしやるだけであつて、私があなたに伺つておることは、法制意見局長官の下におられるいわゆる法律専門家としてこの点を明らかにして頂きたい、こういう趣旨伺つておるのです。政府の政策的な意見を今聞いておるわけではない、あなたが法律家として良心に従つて御説明を願つておきたいと思うのです。
  40. 林修三

    政府委員(林修三君) 只今申上げました点は、これは法制意見当局におきましても、この安全保障条約締結の際、或いは行政協定締結の際におきまして、かような解釈の下にこれについて意見をきめておるわけでございます。それに基きまして内閣のほうにおきましても御答弁があつたことと存じておる次第でございます。
  41. 伊藤修

    伊藤修君 例えばこの行政協定によりますれば、この法案の第十二条は、合衆国軍隊が日本人を逮捕することを前提としておる。然るに合衆国軍隊が日本国内日本人を逮捕することができることが行政協定第十七条の(b)項及び(C)項によつて認められておる。その場合においては行政協定そのものが日本国民をその条項によつて覊束することになるのではないでしようか。そうすると行政協定そのものが国民に対する一つ法律的基盤になるような形になつて来るのではないでしようか。そういうような事項もあるのですから、私は行政協定というものは一体条約として効力を持つのか、法律的意義がどこにあるのかということをお尋ねしなくちやならんと思うのです。
  42. 林修三

    政府委員(林修三君) 行政協定の性質につきましては、実は何回か御答弁申上げたわけでございますが、その実質的意味におきましては国と国との間の約束でございます。安全保障条約の広い意味における一部をなすものである、かように考えられるのであります。その範囲はもとより安全保障条約第三条において認められた範囲を出でておるものではないと考えられるわけでございます。広い意味におきましてはその範囲を出でておるものではない、かように考えておるわけです。この刑事特別法は、行政協定を国内において実施するために必要な立法手続というものを定めたものであると、かように私ども存じておるわけであります。
  43. 伊藤修

    伊藤修君 そういたしますと、只今私が指摘いたしました十七条の(b)項及び(C)項によつて認められておる権限は、そのまま行政協定に基いてこれが施行できるですか、国民はこれによつて覊束されることになるのですか。
  44. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) その点はそのまま適用があると、かように解しております。
  45. 林修三

    政府委員(林修三君) その点補足して申上げますが、かような刑事特別法におきまして、こういう行政協定に基くことを前提といたします立法がそこでとられれば、当然それと併せましてここに国民を拘束すると、こういうことに相成るかと存じます。
  46. 伊藤修

    伊藤修君 只今私が指摘しました場合は、本法では賄つていないのですが、そうすると本法では賄つていないような、行政協定においてそのまま国民の権利義務を制約できるという御答弁になるわけですが、そういたしますと、結局条約的本質を持つということになるのじやないですか。従つて、そういうような国民の権利義務行政協定そのものを以て制約するということになりますれば、国会の承認を経なければ国民に対してこれが効力を持たないというふうに考えられるのじやないでしようか。あなたの御説明のように、本法においてこの点を賄うというのなら又別ですけれども、本法において賄わないということになりますれば、行政協定がそのまま直ちに国民行為を制約するところの条項となるのではないでしようか。
  47. 林修三

    政府委員(林修三君) この行政協定の性質につきましては、先ほど御答弁申上げました通りに、安全保障条約の御承認がありまして、その御承認の内容として、こういう意味の配備を規律する条件を内容とする行政協定を結べる、従つて又その行政協定内容につきましても国会の承認を得ておると、そういう意味のことにつきましては、何回か政府として御答弁申上げておると考えるわけでございます。そういう意味におきまして、この内容が先ほど申上げましたように、実質的な条約的な内容も持つておるということは、何回か御答弁申上げた通りでございます。その立法措置を要する事項につきましては、只今この刑事特別法に規定しております事項は、こういう行政協定を実施するためのものでございます。その意味におきましては、行政協定を実施するための、こういう行政協定にその内容があるということを前提といたしまして、それを具体化する立法手続を定めておる、そういうことになつておるわけであります。
  48. 伊藤修

    伊藤修君 そういたしますと、本法に定めてないもので、行政協定にのみあるものは、国民はこれによつて制約されないでもいいのですか、それを守らんでも差支えないわけですか。
  49. 林修三

    政府委員(林修三君) これは何回か政府のほうとして御答弁申上げたと思いますけれども国民の権利義務に直接関係いたすこと、いわゆる駐留軍の構成員なり軍属と国との間の関係につきましては、或いはこの行政協定で賄い得ると考えられておる部分もございますけれども国民の権利義務に関する部面におきましては、大体ほかの立法手続におきましても、或いはこの立法手続におきましても、大体それを形式的にも国内立法の形にいたすという手続がとられておるものと考えております。
  50. 伊藤修

    伊藤修君 今の御答弁だけではどうもこの点は納得行かないのですが、これは他の委員からも御質問があると思いますが、その御質問によつては又あとで補足的に質問いたすことにいたします。  次に第一条の「日本国内及びその附近に」とありますが、その附近という意味ですね、これはまあ説明書ではいろいろ書いてありますが、一応ここで御説明願いたいと思います。
  51. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) この附近とございますのは、日本国内、つまり本土並びに領水並びにその極く近いところを申すのでありまして、と申すのは、軍隊が若干移動ずる場合に、領水の外へ一歩出ればこの性質が変つて来るというのも困る次第でございますので、それだけの範囲は駐留軍の性質は失わないと、かような趣旨でございます。
  52. 伊藤修

    伊藤修君 極く近いというのはどのくらいを指すのですか、例えば朝鮮は近いといううちに入るのか、沖繩は近いといううちに入るのか、奄美大島は近いといううちに入るのか、そういうことをはつきりしておかなければ、それによつて処罰されるのですから、あなたの言うのではどのくらいを近いと指すのかわからないのです。
  53. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) 先ず日本国内と申しますのは、この行政協定の性質上、駐留軍が日本国民或いは行政機関等と接触を保つ範囲内ということになろうかと思いますので、さような範囲と申しますると、大体主権の及ぶ範囲というよりは狭い概念でありまして、行政権の及ぶ範囲というふうに解釈いたしまして、更にその附近と申しますのは、その範囲から若干移動した際に動くだけのことを考えておるのでありまして、従いまして、沖繩、朝鮮等は入らないと、かような趣旨でございます。
  54. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると、この附近ということは全く意味をなさんことになるわけですね。
  55. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) この第一条に書いてありますのは、合衆国の陸軍、空軍及び海軍で日本国内及びその附近に配備されたと、要するに軍隊の性質を規律しておるものでございます。若しこれを国内だけに配備という言葉を使いますると、例えば海軍の小艦艇などが沿岸の警備等に当りまして、領水から外に出たときにはとたんにこちらとの交渉がなくなると、例えば日本の漁船との間に何か事が起きましてもこの法律が動かなくなる、かようなこともあろうかと思います。そこで、そういうふうな性質はこれを持つたまま、そしてどこで働くかというと、結局日本国内においてそれが接触を持つて来る場合に働いて来ると、つまり軍隊の性質はそのまま動かんけれども、実際に行政協定並びにこの法案において事が生じて来るのは日本国内にある間のものだけと、かような趣旨でございます。この用語は行政協定の一番最初の前文にその文字がございまして、安保条約の第三条を受けて「合衆国の軍隊の日本国内及びその附近における配備を規律する条件は」云々と、こう書いてございますが、それから由来しておるのでございます。
  56. 伊藤修

    伊藤修君 ところが、安保条約は憲法じやないのですから、安保条約にこだわる必要はないと思いますが、これは国内法であつて国民のこういう行為、不行為を規律するものですから、よつて批判される対象というものがはつきりしないと、国民は迷惑なんですよ。だから陸軍で以てこれを予想いたしますれば、附近というものは殆んどあり得ないのです。あなたの今の御説明によつても、沖繩も入らなければ恐らく硫黄島も入らんということになる、朝鮮は入らんのはその通り。一体どこが附近だということになるのです。そうすると、ただあなたの今例示されました海軍の場合が想像されます。海軍の場合におきまして領海から離れたところの何浬までが附近といわゆる推定されるか、任意に附近でないと思つて、このことについて、ここに定めたような事項について国民が喋つたとか、或いはそれを漏らしたとか、こういう場合においては、それは日本の領海でないのだから、いわゆる硫黄島の沖合にアメリカの艦隊が今いるのだとこういつた場合において、それが直ちに処罰されるかどうか。そうすればその沖合というのは一体どこまで指すのか、水平線の向うに、彼方に堂々と煙を吐いて通行する軍隊のことを喋つたといつたら、直ちにそれは引つかかるのか引つかからないのか、大きな問題ですよ。例えば新聞記者がそういうことを、たまたま大島あたりにでも行く場合において、見た、望見した、望遠鏡で望見した、それをニユース・ソースとして直ちに報告してそれが記事になつた、こういう場合においてこれは大きな問題だと思うのですよ。だからそんな漠とした規定では日本国民として非常に迷惑至極くであるのです。そういう観念はやはりはつきりして頂かなければ困るのです。例えば航空機の場合でもやはりそうでしよう。航空機の位置というものは我々素人ではわかりません。領土の上を離れておると思つてもそれが領土内であるかもわからないし、そういう点はやはり明確にしておく必要があるのではないでしようか。これは重要な基本点ですから、ただ安全保障条約にそういう文字があるからそれを受けて立つたのだというのでは不親切だと思うのですね。
  57. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) その点御尤もな御質問でございまして、ただ先ほどからちよつと申上げました通り、合衆国の軍隊の性質といいますか、本来日本国内に配備されまして、それがその警備の関係上少し領水を離れることがあり得る、主として海軍でございましよう。これは空軍もございますが、さような場合に、これをやはり駐留軍の性質は失わない、かような趣旨でこれを言つておるのでございます。そこで問題は具体的な事例で只今御指摘のように若干海の上を飛んで行つて離れた飛行機が、果してこれに当るのか当らんのかという問題が具体的に生じて参ると思います。御指摘の六条以下の関係についても起り得る問題でございます。さような場合におきまして、先ず第一に私ども考えました手段、手当は、軍人、軍族その他身分を持つておる、つまり個人的な資格の問題につきましてはこれを身分証明書ということで解決して行く。それから軍隊そのものにつきまして、只今御指摘のような点につきましては、具体的にその都度その当該の問題の起つた事案ごとにあちら側と打合せまして、その正確を期する。かような打合せになつておる次第でございます。
  58. 伊藤修

    伊藤修君 その点を聞くと、ますます日本国民は危険極まるのですよ。法律というものは国民行為、不行為の規範であるのです。その規範自体が日本国家の法律を維持して行く政府関係者において判断ができずに、アメリカさんの判断によつて意見通りというふうでおつて日本国民が覊束されたら、国民は迷惑至極くの話ですよ。我々は一言半句も喋れない。少くともかような範疇に属する限りは箝口令を布かれたということになるのですよ。自主的に日本の裁判所が判定するというなら又別ですけれども、向う様の御説に従つてそれが判定されるということになれば、我々が合法的だと思つて……、沖にアメリカ軍隊が堂々と出て行つた。朝鮮へ行くのだろうか、日本を警備しておるのだろうか、こういうことを喋る。又いいニユース・ソースですから、恐らくそういうことは新聞に書かれる。又個人でも喋るでしよう、珍らしいことですから……。そういう場合において、それが今いうこの「附近」におるという対象、アメリカ合衆国の軍隊というものになるということになりますれば、直ちにそれが処罰されることになるのですから……。
  59. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) その点は御尤もでございますが、結局これは認識の問題にかかつて来る問題でございます。つまりそれが日本国の附近に配備されたということの認識がなければ、つまり例えば、今御指摘のように、非常に海の向うのほうにそういうものを見かけた、どこからどこに飛ぶのか知らんけれども日本国内を配備する軍隊ではなかろうということであれば勿論入らないわけでございます。それから若しもそれが、日本内地の警備のものがたまたま出て来てここで見付けたのだ、本人がさように思いましたときには、それが問題になり得る、なり得るという問題でございます。さような場合におきましてそれが客観的に如何なるものであるかということは、向う側に一々確かめて見なければわからん。要するにさような飛行機なら飛行機、艦艇なら艦艇が何月何日の何時何分頃に東経何度、北緯何度におつたのは、これは果してどういう性質のものかということは、客観的に判断する場合には、向う側に聞かなければならない。併しこれは認識の問題とからみ合いまして、最後には裁判所の判断の問題になります。裁判所の判断する際の資料としてさようなものが出て来る、かような趣旨でございます。
  60. 伊藤修

    伊藤修君 それは少くとも国民行為、不行為を覊束する場合において、客観的にこれが認定し得るような規範を、規律を定めておかないというと、主観によつて左右されるというほど危険なものはないと思うのです。あなたも法律家として、主観によつて我々が覊束されるということになれば、これほど危険なものはないと思う。例えば飛行機が群をなして、サイパン島から厚木の飛行場へ編隊で来る。その場合において日本に配備されたものか、或いはそれが演習のために行われたサイパンの飛行隊であるか、容易に我々には区別はつかないのです。併しそれは日本国土の上においてこそ処罰されるのだというならば、例えば伊豆半島の上に来た、上空に来たと認められる場合には、喋つてならんと思う。たまたま小笠原列島の沖合上で以て散見したというならば、これは覊束されないのだという、容易に私は国民の認識というものが得られると思うのです。それと同時に、海軍の場合でもそうではないでしようか。日本に配属された駐留軍の行動か、或いはたまたま機動演習のための行動か、客観的にはわからないのですよ。して見れば、それを何か規律するものとしては、この条文の前段にあるごとく、日本領土の範囲若しくは領土から接触したいわゆるその附近という接触した概念をここで明らかにする必要があるのじやないでしようか。必要があるとするならば、少くともあなたの説明の上においても、通常常識で以て領土と接触した範囲であるから、三浬、領海は三浬ですか、三浬なら三浬に接触したいわゆる一浬とか二浬、常識的にそれが接触とみなされる海域に限るというような御説明があるならまだ納得が行くけれども、あなたのような漠然としたあれだというと、どこまで引つかかるかわからないのですよ。
  61. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) 只今も御説明いたしました通り、前段に申しておりまするのは、配備された軍隊の性質の問題でございまして、それからその適用の問題になりますと、「日本国内にある間におけるものをいう。」というので、ここで又しぼりがかかつてあるわけでございます。  それからもう一つ、すべて主観で事を律するのは間違いというか、非常にあやふやというふうなお話でございまするけれども、これは刑法の全体を通じまして、先ず本人にその主観がなければ処罰はできない、本人がさようなものではないというふうに思つておれば、これは処罰ができないというふうな原則からいたしまして、やはり主観というものが第一に大切でございます。若しもこの主観的にはさように思いましても……。
  62. 伊藤修

    伊藤修君 私の聞いておるのは、アメリカの主観によつて覊束せられては困るというのです。行為者の主観のことを言つておるのではない。
  63. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) 客観的に見ましてさようなことがなければ、これ又問題になりません。そこで客観的にこれを判断するにつきましては、果してその軍隊が如何なる性質のものであるかということは、一応諸般の証拠によりまして認定しなければならんのでございまするが、その認定の有力な資料としては、やはりその軍隊を動かしているアメリカの当局というものが、一応の有力な意見を述べ得るのではないか、これが先ほど申した趣旨でございまして、若し私の言葉が足りなかつたらこの点附加いたします。なお当初申上げました通り、「日本国内にある間におけるものをいう。」というのでしぼりがかかつておりますが、ここで実際問題としては余り問題がなくなるのではないかと、かように存じております。
  64. 伊藤修

    伊藤修君 そのしぼりがかかつておることもわかつておりますが、そのしぼりがかつておるところのけつが抜けているのですよ、お尻が抜けているから私は言うのです。その附近に配備されたアメリカ合衆国の陸、海、空軍とありますが、海軍の範囲の問題においてあいまいにぼけてしまう。だから一体どこまでの範囲においてこの法律適用されるかということについて我々は明確を期せられないという不備があるのではないか、一にかかつてアメリカさんのお考え通りということになるのじやないかと、その点に危険性を持つということを申上げるのです。
  65. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) 重ねて言葉を返すようで恐縮でございまするが、先ほど申上げました通り、軍隊の性質を客観的に確定いたしまするには、やはりアメリカの軍隊が如何なる所に、如何なる性質で来ておるかということを向う側の意見を第一に聞くのが一番の便法であろう。かようなことからこの法案にもかような趣旨に書いた次第でございます。実際問題として領海外での軍の行動についての何といいますか、機密の漏洩というふうなことは、これは本法とは直接の関係はないことになるのでございまして、又国内にたとえおりましても、この附近に日本国内又はその附近に配備されたものでなければ、これ又この「合衆国軍隊」という概念からは外れて参る次第でございます。さようなまあ二重性質を持つておりますので、この二つの要件が揃つて初めてアメリカ合衆国軍隊、かような性質になるものでございます。
  66. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると元来は、公海における軍隊及び公海の上空におる軍隊は、常識的において「日本国内及びその附近」という文字のうちには入らないと、極く常識的に、接触したもの以外には入らないと、こういうように解釈してよろしいのですか。
  67. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) さようでございます。その通りでございます。
  68. 伊藤修

    伊藤修君 然らば、この「配備」という一つのしぼりがあるのですが、この配備の関係において、只今、先ほど私が申上げましたように、例えばサイパンから軍隊を配備のために移動して来るという場合においては、それは配備になるのか、私は法律考え方、解釈から行けば、厚木に到着して初めて配備に就くと、こう考えるのですが、その中途においては配備と言い得ないと思うが、これはどうでしよう。
  69. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) 「配備された」と、過去完了みたいな形になつておりますが、配備命令に基いて日本国内に来つつあるもの、而も日本の国の領水のすぐ附近まで来たものと、かような程度に了解しておる次第でございます。
  70. 伊藤修

    伊藤修君 そうなると結局、一切ワシントンのあの国防省から出た命令ができた時から、その配備という性質を持つことになるのではないでしようか。
  71. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) その点だけを見ますとさようになりますが、「日本国内にある間におけるものをいう。」というのでしぼりがかかつて来る次第でございます。
  72. 伊藤修

    伊藤修君 でありますから、先ほど私が憂えたように、いわゆる公海の上空にあるものといえども、それがワシントンからの指令に基いて配備のために飛んで来る場合においては、少くともこの法律に指すアメリカ軍隊に適合することになる。そうでしよう。それだから今度は土地の制約がそこにつく。土地の制約が又大切になつて来るわけです。そういうことになりはしませんか。土地の制約がそこで今度は大切になつて来て、領土の上、領海の上ということに限られればいいが、そこで領海、公海の間で、「その附近」というあいまい模糊たる地帯をこの法律で設けようとするところに私は非常に危険性を持つと、こういうふうに申上げるのです。
  73. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) ちよつと何か後段の読み方を少し軽く読まれておるのではないかというような気がいたしますが、前段は軍そのものの性質を申しまして、行政協定で「合衆国軍隊」というのは、つまりこの法律適用されるのは、「日本国内にある間におけるものをいう。」、つまり日本国並びにその領水内になければ問題にはならんと、かような趣旨でございます。結局さようなことになるのでございますが、ただ軍隊の性質はかようなものであると前段に一つございまして、そうしてそれが「日本国内にある間におけるものをいう。」というので、又しぼりが一つかかつて来るわけであります。
  74. 伊藤修

    伊藤修君 あなたの言うことはよくわかるのですけれども、ここでそういう法律で明らかにしておるような、はつきりしておる場合は問題ない。或いははつきりしないで、国民がそういうものであるかないかということがわからんような場合が往々あり得るのですから、又想像もできるのですから、そういう場合において本法の適用において、基本的に国民が非常な迷惑をこうむるのではないかという点を指摘しておるのです。
  75. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) そういう御指摘は大変御尤もな御指摘でございますし、実際問題として、かような法律を運用する面につきましては、いろいろ只今御指摘のような点を注意しながら運用しなければならないと思う次第でございます。そこで私どもといたしましても、実際にこの法律趣旨の徹底を図りまして、さような点について一般の国民が無用なる制約を受けないように、十分私ども会同、或いは講習その他をいたしまして趣旨の徹底を図りたいと、かように存じております。
  76. 伊藤修

    伊藤修君 この法律を全体通覧いたしますと、今の第一条のそんな簡単なことですら大きな問題を生ずるのでして、まあ言わざる主義で以て一言もアメリカ軍のことについては口を開かないということがこの法律を守る上において一番望ましいことである、そういう御趣旨の下にこれが立法されておると思う。だから言わせないというのでしようから、我々としては納得行かない。憲法で折角言論の自由を認めておるのですから、その言論の自由がいわゆる公共の福祉を害するような場合に至つてはいませんが、そうでない部門をもこれで制約することになつてしまうと、結局昔の軍国主義時代のことと何ら変りのないような事態がここで私は再び繰返されるということは非常に不愉快な気持がする。そういう意味においてお尋ねしているわけです。  まあその問題はその程度にしておきまして、次に通過する軍隊は入らないというような御説明であるように説明書を拝見しましたが、そうですか。
  77. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) その通りでございます。
  78. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると、その通過する軍隊の行動、内容、一切しやべつて差支えないのですか。
  79. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) 純然たる通過軍隊につきましてはこの法案の関する限りではない、かように私ども立案いたしております。
  80. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると、通過する軍隊たりや否やということは、いわゆる客観的に見てはわからん場合が多いと思いますが、日本国民としては通過するのだと考えておつたところが、作戦計画が従前からそういう通過するのだという表面的性質を持つてつて、その本質は、軍の機密ですから、その本質はそれを朝鮮なら朝鮮へ送るとか満州へ送るとかいうことがあり得ると思うですね。これは恐らく軍隊の行動としては敵を先ず欺く意味においてもあり得ることは想像にかたくないのです。そういう本質的にはいわゆる駐留の目的であつて形式的には通過軍隊であるとかいう仮装しておる場合においてはどうなるのです。
  81. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) 結局第六条関係で御質問でありまするが、さような観点から申上げまするが、結局客観的通過軍隊、つまり日本の配備のために来たものでないという軍隊につきましては、明らかにこの第一条で除外されて参りますので、さような関係はこの法案では絶していない。ただ実際には通過軍隊でないのに通過軍隊を仮装する、或いはその逆の場合もございましよう。さような場合につきまして、これはいわゆる事実の錯誤という問題にもかかつて来るだろうと思いまして、本人の認識と客観的な事実との間の食い違いがどの程度にあるか、又それが本質的なものであるか、過失と故意との関係はどうなるのか。過失はいずれにしろ本法案においては罰しておりません。さような法律問題が出るだけであろう、かように考えております。
  82. 伊藤修

    伊藤修君 その点も非常に私は本法においては危険だと思います。次に第一条の第五項ですね、五項によりますと、家族は配偶者、子、父、母の観念は合衆国の本国法によつて決定されることになつておるようですが、合衆国の本国法によれば、内縁関係の配偶者、養子、養母、配偶者の父母等も本法において家族とみなすのですかどうですか。
  83. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) 実は国際私法との関係で例の法例第二十二条でございますか、ちよつと聞いてみたのでございますが、はつきりしておりませんけれども、いわゆるこちらで言う内縁関係というのは入らないように聞いております。
  84. 伊藤修

    伊藤修君 入らないように聞いているというが、これは非常にやはり我々としては大きな影響を持つのですが、入るのか入らないのかはつきりしておいて頂きたいですね。
  85. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) この点はアメリカ各州の民法と申しますか、親族法と申しますか、さようなものを一々検討してみなければならんことに相成るわけでございますが、向うで配偶者という言葉を使う場合には、全部正式に挙式をして、何か私もよく知りませんが、式を挙げましてたしか届出の要件も揃つていると思いますが、さような場合にだけ配偶者の取扱を受けているようでございます。なおこの点が事実問題として非常に私どもにもわからん点がございましたので、取扱の実際はどうするのかというふうなことを向う側と交渉いたしましたところが、全部身分証明書に英文と和文と両方つけまして写真を添え、本人の資格、それから軍人軍属との関係、扶養の二分の一以上かどうかといつたような関係まではつきりする。つまり裁判管轄権までわかるような身分証明書を出す。かような打合せができております。
  86. 伊藤修

    伊藤修君 形式的においては今の御説明において容易に認識できるかもわかりませんが、問題となつた場合において基本的にその人が対象としてのいわゆるアメリカ軍人軍属であるかどうかということが争いになることもあり得ると思うのですが、その場合において本国法によつていわゆる内縁関係をも夫婦と認められる場合においては、いわゆる家族としてこれを取扱うかどうかという点を明らかにしておいたほうがいいと思います。
  87. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) その点は結局問題の起きた人の出身の州の親族法を取寄せて検討するということになるのじやないかと思うのでございますが、なお或いはフエデラルの全般的な親族法があるかも知れませんが、これは或る程度私のほうで手を廻して調べてわかりかねたのではございますが、なお調べて間に合いますれば早速翻訳の上提出したいと思います。
  88. 伊藤修

    伊藤修君 その点は、我々がいわゆるこれらの随伴して来るところの家族について手が触れるか触れんか、殊更触れる者もありますまいと思うが、若し誤つてそういう問題を起した場合において、やはり相当の制約を受けるわけですから、私はできるならばアメリカ合衆国の各州のこういう親族関係のあれを明らかにお願しておけば結構だと思いますが、その場合において、家族であるかどうかということの認定は、日本裁判所の認定によるか、或いはアメリカ合衆国側のほうの認定が優先するのかその点はどうですか。
  89. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) 結局わが国の裁判所の認定によつて決すると、かようなことでございます。
  90. 伊藤修

    伊藤修君 そういたしますと、アメリカ合衆国側の軍当局ですかの者が、それは国内決では家族だと言つても、その法律なり規則なりを取り寄せまして日本裁判所が判断して、それらが入らないと認定した場合においては、日本裁判所の判断が優先する、それは明かですか、よろしいですか。
  91. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) 結局事件が起きました際の判断はわが国の裁判所においてこれをなすということになるわけでございます。なお、若しそれにつきまして更にアメリカ側が不服があるという場合も想像されるわけでございますが、さような場合におきましては、裁判所の認定は認定でそのままほかにこれを取消すとか何とかいう方法はございませんから、それで確定いたしまして、なお今後さような問題が起り得るかも知れんということについての合同委員会の協議事項にはなるかと存じます。なおさような場合について合同委員会でも話がまとまらんという場合には、一般国際法の原則に従いまして、例えば国際司法裁判所とか、或いはそこまで行くかどうか知りませんが、常設国際仲裁裁判所でございますか、さような機関においてこれを処理する、さような場合もまあ最終的には考えられるわけでございます。
  92. 伊藤修

    伊藤修君 第一条に関連しまして、一体本法において規律せんとすることは、いわゆる安全保障条約に基く行政協定に定めたところの基本的な定めに私は非常に逸脱しておるのじやないかと思うのです。この点はどうでしようか。あなたのほうとしては逸脱していないという御答弁であらうが、一体そこまで安全保障条約ですかによつて私は表現しておるかどうか。率直に一つ安全保障条約の文字をお読み下すつてそこでどういう文字からそれが出て来るか、一つ文理解釈をお願いしたい。
  93. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) どうも大変な難問でございまするが、私どもは安全保障条約というものは非常に簡単なのでその趣旨を汲んで見なければわからん。で、その趣旨によりますると、日本国に現在何らの防備がないので、その安全を保障するために合衆国の軍隊が或る程度駐留するのも止むを得ない。さようなことになりますると、この軍隊と日本の行政権なり裁判権との間にいろいろな接触の問題が出て来る。さようなものをスムースに解決するための行政協定であろうと、かように読んでおりまして、その趣旨に則つた、我々のほうの関係で第十七条或いは第二十三条といつたようなものは大体その趣旨を逸脱せざるものと、さように理解しております。
  94. 伊藤修

    伊藤修君 この第三条に「アメリカ合衆国の軍隊の日本国内及びその附近における配備を規律する条件は、両政府間の行政協定で決定する。」とこうあるのですが、「その附近における」、これはさつき問題になり、お答えもあつたのですが、「配備を規律する条件」というのですね、この「配備を規律する条件」というこれだけの文字の中に一体本法のごときことをも予想しておるのでしようか。配備を規律する条件でしようか、これが……。
  95. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) 只今申上げました通りこの配備、つまり向う側が軍としてこれを配備しておく、そういたしますと駐屯といいますか、駐留の関係からいたしまして、いろいろ国内の行政権なり司法権なりその他の関係が接触して参るわけでございます。さような接触点を如何にスムースにいたすかということも一つの規律すべき条件と申しますか、事柄となつて来ると思いますので、従いまして安全保障条約第三条の趣旨はそこまで考えて読むべきものであろう、かように理解しておる次第でございます。
  96. 伊藤修

    伊藤修君 どうも政府考え方は非常にアメリカさんの思わざる点まで私は思い過して、至れり尽せりのお手当をなさつておるように思うのですが、そういうお考え方の下に国民犠牲は甘んじてこれを投げ与えるというような御趣旨じやないかと思うのですが、ですから必要以上にあなたたち御心配になつて、悪い言葉で言えばおもねておるということになるのじやないですか。もつとアメリカ軍隊が日本に駐留することに直接害悪、いわゆる向うの不利益、軍隊の駐留に不利益になることのみに限定して、かような過去における軍機保護法にふさわしいような、匹敵するような法律まで作つて、徒らに国民感情を私は制約して行くということは、却つてアメリカ軍が日本に駐留してくれるという厚意を国民の間において非常な私は悪感情にむしろ導いて行く、駐留の目的が却つてそれがために阻害されるのではないかと思います。もう少し大まかに駐留の本来の目的、いわゆるこの第三条に言うこの言葉を率直に受けて簡単明瞭にこれを規律するという行き方のほうがいいんじやないか。余り神経質的にこの点はどうだ、あの点はどうだ、こういうことまであなたがお考えになつて、あなたが立案されたのですか、誰が立案したか知らんけれども、非常に忠実に立案されておるようですが、それはアメリカから勲一等か何か来るかも知れませんが、どうも日本側からは勲一等を差上げられないということになるので、その点どうですかね。
  97. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) 別にアメリカから勲一等をもらうつもりで立案したのじやございませんけれども、実はこの安全保障条約第三条というのは御指摘の通り非常に簡単な条文でございます。でそれが実際に具現したのが行政協定であろうかと。それで行政協定と安全保障条約との関係では大体この程度のことは実際上いろいろな接触が出て来て、止むを得ない規定であろう。併しながらこの行政協定の、私どものほうの関係で申上げますれば十七条或いは二十三条、主としてその二つの条文の関係においても、なお且つ私どもがこれは立法しなくともいい面があるだろう、さような点を先ず第一に考えまして、第二にはこの前逐条説明の冒頭の際にちよつと申上げました、できるだけ日本の国内法令を全般的にかぶせる、そうしてどうしても日本の従来の法令では律し切れない新たなる事態については、その橋渡しと申しますか、若干の交渉規定というようなものを入れようかと、実体的な規定につきましても、従来の刑事実体法規において賄えるものは極力これで賄おうという態度をとつたのでございます。そこで只今少し余計なところまで心配しておるのじやないかというお言葉でございましたが、実は私どもといたしましては、このほかにも立案の過程においてはもうあらゆる事態を考えましていろいろ検討いたしました末に、ほかの関係は全部これを落しました。例えば公文書として保護する必要があるかないか、或いは公印、公の印、これを保護する心要があるかないか、或いは公務員に対する職務執行妨害といつたようなことを書く必要があるかないか、或いはその他全般的にまだまだ規定すべきものがあるのではないかというふうなことも考えましたけれども、一応現在の法規の範囲内においてさようなものが或る程度まで賄えればこれはこれでよかろう。で、どうしてもこの十七条或いは二十三条の関係で必要なる最小限度これを立案の対象に落して来たわけでございます。さような関係からいたしまして、結局私どもといたしましては本案の骨だけの立案と、さように考えておる次第でございます。
  98. 伊藤修

    伊藤修君 どうも御答弁によりますと、非常に謙遜な意味においてお書きになつたようですけれども、これは尾も鰭もつけておる。どうも要らんことまでたくさん書き連ねておる。どうもあなたは非常に謙遜で、この間の御説明もそう伺つたのですけれども、どうも私ども見ると尾鰭をつけておるように思う。非常に我々国民としてはこれに脅威を感じておることは輿論であることは御承知通りですから、立案者はそういうお気持かも知れんけれども、どうもこれは私は拡大しておると思うのですが、今の立案の過程において公印、文書偽造、そういう文書に対する安全保障をお考えなつたということ、これは以てのほかです。そこまで至つたんじやアメリカの主権というものを我々は頂くことになるのですから、日本の主権とアメリカの主権と二つを我々は背負つて行かなくちやならんというようなあり方は屈辱的だと思うのです。できる限り我々はそういうものは排して行くという考え方であるから、そんな考え方が若しあるとするならば、きれいさつぱり忘れて頂きたいのですが、今後そういうようなお気持があるとするとまだまだあとから出て来るのであります。そういうお気持はお若いあなたですから、どうも抜いて頂かんと困るのですが、あなたがたがそういうことをお考えになると、法務総裁はそういうことを受けて立つてしまうのですから、信用しておるのですから、あなたたちを……。それだけはここで厳に一つお願いしておきます。  それから第二条について、この第二条の区域ということですが、これも場所的の問題ですが、これは基本観念ですからやはり明確にして置かなければいかんと思いますが、これは勿論射撃場とか飛行場とか演習場等、そういうものが入ると思うのですが、これはこの問の御説明で棒を立てて明示するというのですが、それがたまたまその棒が接着して立てられておればいいのですけれども、非常な広範囲であることは常識的に予想される。又あそこの入口に一つここの入口に一つというふうに、英文と日本文と両方立てると思いますけれども、これをぐるり一周して、これは入れるか入れんかと行つて見て入る者もそう恐らくあり得ない。どう吐こういう演習場というものは広い区域ですから、そういう場合において私はこれを犯すことが相当あると思うのです。だからこういう場合において、この区域を設定するについては、官報その他において明示するのかどうか、若し明示しないとするならば、これを犯した場合においてどうするか、この点を先ず伺いたい。
  99. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) 勿論この施設又は区域の範囲が決定いたしますれば官報で広告することになるだろうと思います。それから具体的に、或る人がその施設又は区域内に入る際に立札が見えなかつたという場合も事実あろうかと思います。知らずに入つた者は、勿論犯意がございませんから処罰ができない、かようなことになると思います。
  100. 伊藤修

    伊藤修君 この区域というものは、私は固定的の場合もありましようが、移動する場合も想像にかたくないと思うのですが、移動した場合においてはどうなるのでしようか。
  101. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) ちよつと区域の移動ということは、こういう場合でございましようか、例えば一つの区域が設定されまして、後にそれに追加されるというふうな場合でございましようか、さような場合でありますれば、新たに又それに対しての追加の手当がされると、かようなことになりまして、又これも知らなければ問題にならない、かようなことになろうかと思います。
  102. 伊藤修

    伊藤修君 私のお尋ねするのは、こういう場合も一つあると思うのですが、例えば富士の裾野で臨時に演習する、ここに入つてならん、こういうことがあり得ると思う。だからそういう場合においては、即時に官報、新聞等で広告することも不可能だと思う。
  103. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) そういうふうな演習場がその日その日によつてつて来るから、区域が違つて来る、かような場合はないはずでございます。つまり一定の地域に区切られまして、その中で事実上今日はこちらで演習する、明日はこちらをということはございましても、それはやはり区域として一応全体の告示が出まして、それからの問題になるだろうと思います。それからなお単に区域だけではないのでございまして、その中に入ることを禁じた場所というふうに制限がしてございますので、事実問題としてどういうことになるのでありますか、その棒杭でも立つて、鉄条網でも張つて、針金線でも張るということに事実上はなるのじやないかと、かように考えております。
  104. 伊藤修

    伊藤修君 これは日本軍隊の場合は、長年の間我々はならされておりまして、常識的にもよくわかりますが、根が外国人のことでありまして、向うの慣習があるのですから、例えば射撃場を或いは臨時の演習場を裾野に設けたという場合において、それは入つてならんもんだ、司令官が禁ずる命令を出すかもわかりません、そういうことは保障できないと思います。あなたとしても……。それはそのときに今おつしやるように鉄条網をずつと作つて区域を設定するということもあり得ないと思うのです。そういう場合は入れないという見解をとつていいのか、私は少くとも官報及び新聞にこれは告示すべきものだと思うのですが、どこそこは演習場でそこに入つてはならんとか、或いはラヂオで以て国民に知らしめるべきものだ、周知徹底の方法は事前に私は先ず講ずべきものじやないか、それを指示すべき意思ありや否やという点と、又そういうふうに司令官が立入禁止を指示した場合において、そのときからこの禁止区域という法律概念が出るかどうか、この二点を先ず伺いたい。
  105. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) 実際問題といたしますれば、施設又は区域についてはあらかじめこれを明らかにするということになるだろうと思いまするが、具体的にこの立入禁止の場所というものは又その中の一部になることがあるだろうと思います。これはお話の通り司令官或いはその部隊長というものがその都度、今日はこちら明日はこちらというふうに変る場合もあり得るのでございます。従いましてさような場合に一般の国民が、昨日はこつちでやつていたから今日はこちらはよかろうと思うて入るような場合もあるだろうと思いますが、さような場合に若し立札もなし、単に司令官が自分の一存でそうきめたということでは、これは勿論この二条の違反の問題は生じないとさように御了承願いたいのでございます。それからなお立入禁止について一つ一つ広告したほうがよかろう、或いは新聞にも明らかにしたほうがよかろうという点は御尤もでございまするが、この立入禁止が今も御指摘のように、例えば射撃場等におきましては今日はこちらの射撃場、明日はこちらということもございましようし、それを一々載せるのも事実上非常に煩わしいということになりましようから、むしろそれよりもわかりやすく現場に成るべくたくさんの立札を立てまして、それを一般の人がそばに行けばすぐわかるというふうにしたほうが親切じやないだろうかと思いまして、大体さような取扱いにしまして打合せが進んでおる次第であります。
  106. 伊藤修

    伊藤修君 それは現場に行つてそれを目で見て認識して、それによつて知り得るという方法も一つ考えるべきが当然でしよう。それから私は周知徹底ということはやはり為政者として大切じやないかと考えます。だから少くとも、例えばよくあります、今日は伊良古岬何海里の範囲においては通航を禁止するというようなラジオ放送がありますね、これはひとり陸上ばかりじやない、海上の場合も想像できると思いますが、やはりそういうことは新聞、ラジオ、官報、少くとも私はこの三つの方法で以て事前に周知徹底するようにこれは合同委員会、或いは政府政令等で以て、先ず広告するという考え方を基本的に謳つて頂かなくちや困ると思うのです。
  107. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) 大変御尤もな御意見でございますので、そういう方向に案を進めて行きたいと思います。
  108. 伊藤修

    伊藤修君 それから今の場合はこの入る場合ですが、今度逆に退去不応罪、国内法で言えばそういう場合も想像されるのですね。いわゆる例えば、今日この地域は全体演習場として設定する、アメリカ軍がそう決定した場合、合同委員会もそう決定した場合、その地域内において農民なり住居民なりがおると、自分の生活権を根柢から失うのだと言つて出て行かない、それはやはり民事特例法によつて賠償を、或いは建設委員会にかかつておる土地使用に関するあの法律適用について公訴するというような場合があり得ると思うのですが、これが本法に言うこの第二条によつて退去不応罪になるかどうか。
  109. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) この点につきましては住居侵入並びに退去不応罪関係につきまして、実は我が国の学説判例の余りはつきりしないところでございます。そこで実はこの点衆議院の法務委員会につきましても問題の提起がございまして、一応、一応でございますよ。理論といたしましてはかような考え方はできまいか、と申しますのは、この一つの土地に入つて住居を持つておる、この住居に対して侵害があつた場合には住居侵入罪が成立する、若しもその住居が不適法なる理由によつてそこに設定されてありましても、その住居権は保護しなければいかん、さような建前からやはり侵入罪は成立する、これは従来学説判例が大体一致しているところでございます。そこで問題はこれを逆にいたしまして、一つの土地なり住宅なりに人間が住んでおる。その土地又は住宅が本人の所有から離れ、或いは賃借権の期間が満了し、或いは契約が解除された。結局そこに住む権限がなくなつた、或いは只今御指摘の土地収用に関する特例等のことで、やはりその権限がなくなつたといつたような場合にどうなるか、ここで問題が出て来るわけでございます。さような点につきまして実は大分、一応衆議院の法務委員会で積極説を唱えて御答弁申上げておきました。つまりさような場合につきましても、本人が無権限でそこにおる限りにおいては、その無権限なる居住なり或いはそこにおる、介在ということは許さるべきものではない、つまり正当な理由はないというふうなことからして、それに対しては退去不応罪というものが成立するのではないかというふうに実は申上げておきました。その後ざつくばらんに申上げますと相当問題な点がある。なお衆議院の法務委員会でもその点は理論的にはそうなるだろうけれども、実際問題としてはさような場合は余りないだろう、それから若しさような事例があつても、検察庁で起訴するとか、そういう問題にはなるまいと思うけれども、理論としてはそういうことが考えられると御答弁申上げました。そこで研究いたしました結果、実は私の反対説が相当あるのでございます。そこで皆で議論をいたしました結果、理論的にはそういう説もできるけれども、そういう場合において土地収用法なり或いはその特例法等によつて適式にこの土地家屋等の引渡しを命ずる、そうしてその上で本人を退去させるというのが筋じやなかろうか、そこでこの不応罪を以て律するのは如何なものであろうかということの意見のほうが全般的には多かつたのございます。そこでこの点は理論的には相当疑いがあり、日本の学説判例に実は一つも触れておらない点なのでございますが、暫く消極的に疑いを存して従おうか、かような態度を実はとつておるのでございまして、この点実はお教え願いたいとむしろ私のほうで思つておるむずかしい問題なのでございます。
  110. 伊藤修

    伊藤修君 私が聞いておるのだからこつちから教えるというわけにはいかんが、立案者の考え方が那辺にあるかということを私はお尋ねしているのであつて、あなたの積極説ということになると、いろいろな点において私は異論を持つ、少くとも従来の学説判例においてもそこまで行けるかどうかということも考えられなくてはならん。今日の国民生活の面から見ても、むしろあなたのような積極説をおとりになるとするならば、非常な問題を私は投げかけると思うのですが、いわんやこの法律によつてそういう積極説をとるということになりますならば、これはむずかしい問題だと思う。そういう事例はあなたはないとおつしやるが、少かろうとおつしやるが、むしろたくさんある。今後或る地域を演習場に設定する射撃場に設定するという場合において、そこに先祖代々永住しておつたところの農民の耕作権を奪われ、その居住権は奪われる。その確定によつてあなたの言うように積極説をとれば、そのときから理由なきものとしてこの適用を受けるということになれば、むずかしい問題です。生活の根底を失い、且つ又本人は刑務所に行かなければならないという事態が生ずるものですから、これは従来とも異論はたくさんありますけれども、少くとも消極説のほうが強いと私は考えるのですが、この点は法律で明確化するか、解釈上明確化して置く必要があると思うのですが……。
  111. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) 実は立案の当初にはその具体的な事例についての研究と言いますか、そういう場合は起るまいという、ちよつと言葉をお返しするわけですが、考え方が先に立つていたために、理論的な検討が足りなかつたということは率直に認めます。そこでどうして起るまいかというその点でございますが、土地収用の実際の手続といたしまして、本人が納得してその土地を明渡してどこかへ出て行く、そのあとで区域又は施設として立札を建てる、立入禁止もそのあとでやるというのが、実際の今度の打合せの大要なのでございます。つまり若しもその中に人なんかがおるということになりますと、それに対して立入禁止というのも意味がないのでございまして、さようなことはこれをせんで、全部きれいにしてから施設又は区域というふうな手続をするというふうな取扱いになり、殊に立入禁止の点になりますと、更にその点がはつきりして参ります。さような場合は実際起らんというような話の下に実は簡単に考えておつたのでございます。衆議院の法務委員会のときにもその点咄嗟の御質問でございまして、一応理論に走つて、実際上いささか穏当を欠くような結果にもなつたのでございますが、その点はその答弁のときにも、さような際には十分違法阻却の問題だとかそういう点で別に律する余地があり、そうしてそういう場合が多かろうということは附加えておいた次第でございます。そこで只今の御注意もありますし、この点は私どもとしては消極説で行くということでこの前話をきめた次第でございます。
  112. 伊藤修

    伊藤修君 これはあなたが事態を甘く見ていらつしやるのですが、御経験がないかも存じませんが、今日私の聞いておるところでも、例えば米子附近におけるところの演習場ですか何ですか、アメリカ軍が接収しようとしている。現にそれの闘争を開始している。あの辺で相当問題になつているように、私が山陰地方に行つたときに聞いた。これは従来の農民の姿であればあなたのようなことが想像せられますが、併し今日は少くとも共産党の人々らは、得たりかしこしで抗争をするにきまつております。そうするとその一軒なり二軒なりの農村の人は、これらの人の指示によつて立退かない。併し軍の使用に供する場合において、その一軒があつてもなおほかの場所でできるのでありますから、そうすると一軒はそのまま真ん中に置いて、それを演習場として立入禁止をする。その場合には幾つか問題が起つて来る、又現に起りつつある。これは一つの闘争、いわゆる反米的な闘争の一つの課題としておるのですから、いわゆる戦術として今日とられておる。これはもうすぐ起つて来る問題ですよ。これは共産党は撲滅するのだからそれは差支えないと言うけれども、それは共産党でない人が、善良な農民がそういう指示に基いてそれを合法化すべくそこに居坐つている人がある。それが直ちに本法によつてそれを退去不応罪で以て、いわゆる本法の第二条で処罰するということになりますと、これは非常に国民としても迷惑至極なんです。これは違法阻却、いわゆる犯罪が成立する後に違法阻却で以てこれを解消するという考え方でなく、最初からそれは犯罪が成立しないのだという私は解釈で行くべきではないか。あなたのさつきの答弁というものは、いわゆるそれが間違つたとは申しませんが、一つの学説ですから、そういう学説は本法のような場合においては、とらないのだ、消極説であるのだというようにはつきりして私は置かれるほうがいいと思うのですが。
  113. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) 御説の通りども只今考えておる次第でございますが、これは消極説に解するつもりでございます。なおさような場合に別に土地収用法の準用を受けます、例の建設委員会にかかつております法案におきまして、土地収用法はさような場合に、行政関係が全部きまりまして、収用と確定した以上は、その物件を引渡さなければいけない、そういう規定がございまして、その引渡しをしない場合には罰則がかかつておる、さような規定がございますので、さような場合においては引渡さざりしという点において別個の問題は出ても、この本条の問題にはならない、かように理解する次第でございます。
  114. 伊藤修

    伊藤修君 その場合において法律的引渡しか、事実上の引渡しを要するのですか、どつちですか、細かいところに入りますけれども
  115. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) 土地収用法の関係でございますね。
  116. 伊藤修

    伊藤修君 ええ。
  117. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) 大体事実上の引渡しではなかろうかとかように存じております。
  118. 伊藤修

    伊藤修君 ちよつとその点、なかろうではいかんな、どう解釈するか、あの法律の解釈。
  119. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) 実は主として民事関係でございますので、自信のなさそうな言葉で表現いたしましたけれども、土地収用法の性質上から言いまして、その物件が引渡しを完了しなければ収用の目的が達せない、さような趣旨でございますので、これは実質上の引渡し、さように理解するほかないかと存じます。
  120. 伊藤修

    伊藤修君 これは事実上の引渡しということになりますれば、結局その中に居住しておる者は皆退去しておるということになりますか、それから後は結局退去不応罪になる、こういう見解になつておるわけですか、どうなんですか。
  121. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) 先ほどのように消極説を唱えて、それに確定いたしますればさような問題は起きないのでございます。その前後にかかわらず、引渡しだけの問題になつて参ります。結局事実上その土地なり建物なりを引渡さないという点だけが土地収用法の問題になつて来る、かような次第でございます。
  122. 伊藤修

    伊藤修君 その場合において土地収用法によつて事実上の引渡を完了したという場合においてなお且つ抗争をして、その附近に、自分の従来の家敷内において小屋掛けをしておるとか、或いは納屋に寝ておるとか、或いは軒下で寝ておるというような場合において、退去不応罪が成立するかどうか。
  123. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) さような事実になつて参りますと、まだ現実に引渡しを終えたということにはならないだろうと思います。つまり本人の支配を離れまして、そういうものから全然手を引く、簡単に申しますと手を引くということでなければ、まだ引渡しを完了しない、かように解するほかないと思います。
  124. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると、要するに本人の、従来の所有者若しくは居住権者の支配に属すると客観的に認められる場合においては、まだ引渡しがないものと、こういう解釈してよいのですね。
  125. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) つまりその土地の上に新たに小屋掛けをするとか、或いは軒下に住むということになりますると、その土地に対する事実上の支配権がまだ残つております。支配権というと法律上のあれになりますが、事実上の支配が残つております。さようなことになりますると、やはり土地収用の本来の目的が達せられませんので、さような場合はまだ完全なる引渡しが済んでない、かようになつて来ると思います。
  126. 伊藤修

    伊藤修君 私のお尋ねする最後のことは、いわゆる法律上の支配権はなくなる。併し事実上の支配は存在するという場合においては本法の適用はないということになるわけですね。
  127. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) 本法と申しますと、この二条は、第二条はつまり只今申しました通り全然土地収用法との関係はないのでございまして、只今お話のように、そこに引続きおる限りにおいては二条の問題はない、例えば引渡しを終えた後又改めて入つて来るといつたようなときはこれは二条違反の問題が出るにいたしましても、引続きおるという場合においては土地収用法の罰則の問題は起きましても、こちらの問題は起きて来ない、さような趣旨でございます。
  128. 伊藤修

    伊藤修君 だからその場合において、事実上支配力を行使してそこにおるという場合においては、入つておるということなのですから、而も禁止区域を設定してしまつたときに、設定しなければ問題はない、そういう事態を承知しつつ禁止区域に設定してしまつたという場合に、なお且つ事実上の支配力を行使して、自分の所有若しくは自分の居住しておつたところに事実上の支配力を行使しておるという場合において、いわゆる入つておるもの、入つたものということになると思うのですが、そういうものは本法においていう、国内法で言えば退去不応罪にはならない、本法においても入つたものとしてこれを処罰しないということになるわけですね。
  129. 岡原昌男

    政府委員(岡原昌男君) 引続き入つておる限りにおきましては、新しく侵入行為はないと同時に、先ほど申したような考え方で、その点についての退去不応罪はない、かような趣旨でございます。
  130. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  131. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 速記を始めて。それじや今日はこれで散会いたします。    午後三時四十二分散会