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羽仁五郎君 今
齋藤事務局長から御説明下す
つたことは、これは全く
政府の
権限内に属することで、我々の特に立入
つて言うべき問題ではないのであります。私が申上げているのは、さつき
法務総裁に対して申上げたのは、これらを除外した根本的な精神に関する問題であります。これはあなたは専門家だからなお一層よくおわかりになると思いますが、
大赦をする場合には、
日本の
憲法や
法律上の
根拠のある罪を
大赦して、
日本の
憲法や
法律上の
根拠のない罪を、それを
大赦をしないということは、
日本の
独立なり或いは法の公正なりという点からこれは批判を免がれません。現に今朝の
朝日新聞に、これは
自由党だからこういうものを除外したのだ、
社会党内閣であ
つたら除外しなか
つたかも知れない。
社会党はとんだところで非常に得をしておるわけなのだが、
自由党はとんだところで非常に損をするという、僕は必ずしもその
批評が直ちに当
つているというのじやないけれども、併しそういう
批評を免がれない。現に今朝そういう
批評がありました。それはあなたが専門家として恐らく遺憾にお
考えになる点であろうと思う。ですから原則的にこういう(イ)から(ヘ)というものを除外なさるということが、余りにどうもレベルが高いお
考え方だというふうには見えない。ところがこれを除外しない理由として
占領軍のほうでどんなことを
考えておるか、それは別としまして、
日本側の
政府で恐らく拘泥したのだろうと思うのは、徳田球一、野坂參三というような前
衆議院議員の諸君の問題だろうと思う。これは併し政治上の問題を抜いて、純粋に法的な問題として
考えれば、そういう人たちに対しても現在
大赦が行われる。そうしてそういう人たちが合法的に政治的に
活動することができるようにするということと、それから今言
つたような法的に
バランスのとれない方法で以て、そういう人たちが依然として非合法
活動を続けざるを得ないようにして行くことと、法に対する
国民の大きな
意味の
信頼が高くなる、合法的な手段を盡すということに対して
国民を激励する
ゆえんであるか、或いはやはりああいうものは駄目なんだね、そうすれば潜
つてやるよりほかしようがないのだねというような
気持を與える、政治的なものは一切抜いて、このいずれが法の
尊嚴を維持する上から大事であろうか。私は極論すればある
意味において徳田前
衆議院議員なりそれらの諸君がこの際
大赦にせられるということのほうが、或る場合には共産党にと
つては不利であるかも知れない、
考え方によ
つては……そうすると共産党のほうのそういう潜
つたかたがたは却
つて困るでしようということも
考え得るかも知れない。ですから政治的に
考えて見れば利害得失それぞれあるので、ただひたすらああいうかたが今無罪にな
つて、そうして表面へ出て来られるということは工合が悪いということは、工合が悪いというふうにお
考えになる
考え方は私は余り大きい
考え方ではない。こせこせした
考え方ではないか。最もお困りになる場合ですらそうです。極端な例をとりましてね……。いわんやそれらの他の例は先にあなたがおつしや
つたように非常に不当な、まあ毎日、朝日、読売なんかの
新聞記者に対してなされたいわゆるレツド・パージ、これは
裁判に訴えても、
裁判所でもお困りにな
つて、管轄権がないというふうになさ
つておる。そうすると
日本で管轄権がないとい
つて控訴も許されない。それで最初の
裁判で
覚書に基いてなされた罪がそのまま残る。それは個々の事情をお調べになるまでもなく、一昨年朝鮮において事件が起
つた、それと、北鮮軍というものが共産軍としてアメリカ軍或いは国連軍と戰争を交えて、そういう戰時
状態において、戰時的な
意味において軍機の秘密が漏れるというような
意味で
最高司令官の
覚書が出ておるんでしよう。ですからそういう
状態がなくな
つてしまえば、原則的に言いまして存続すべきものではないのです。ですから当時事実参議院の本会議でも緊急質問で申上げたのですが、院内で毎日
活動をしておられた優秀な
新聞記者は、そういう
意味で、
如何なる
意味においても危険だというふうに
考えられないかたが、全く不当にあのとき解職されて、現にまだ復職せられない。併しやはり
新聞記者として例えば
活動せられたいと思
つて議院の周囲を往来しておられます。そういうかたがある。例としそあのとき挙げたのは、例えば牧野博士の令息などもそういうふうにな
つておる。そういうふうに非常に多数のかたが非常にお気の毒な
状態にな
つておるというのが、これが或る
意味においてその当時一時の必要というものはあ
つたかも知れないが、併し長きに亘
つての妥当と
考えられる措置ではない。今申上げたように、最も困る例を挙げましても、それから多数の例を挙げましても、これらが納得しかねるということは、私が納得するかしないかということは別としまして、納得しかねる人たちにと
つて納得しかねる相当の論拠がある、こういうものをここに原則的にお残しになる。而もこれは速記にもとめて頂いて述べるほうがいいのかも知れないのだけれども、そういうような問題が将来において発生した場合に、それらに対する措置というものをとろうとする
立法は、現在の
政府が着々
準備して
国会に提出せられて、それに僕が賛成するかしないかは別とし、通過するかしないかは別とし、そういうことがあるのだから、この際空前にして縄後、
日本がなすべからざる戦争をして敗れて
占領され、そうして今度
独立する空前絶後、唯一のチヤンスの際に、法の公正、法は共産主義者の上にも公正を誇ることができるということを発揮せられることが、法に
関係する者の
希望だろう。こういうことはたびたびあるわけのものではない。せめてこういう場合にでも共産主義者が非合法的な手段に訴えるのは正しくないのである。なぜならば現在法は合法的な面において共産主義の人人が合法的に
活動する最大限の寛大さを持
つておるのであるということを示し得る唯一のチヤンスではないか。そういう
意味からもこれらの(イ)から(ヘ)に亘る者を除外されておるということは、私はハイ・ポリシーとは言えない。又法の公平にして
尊嚴、皆さんは法の
尊嚴とか
裁判の
独立とかいうことを
本当に信じでいるのかと僕は思う。或いはそういうことを口で言うだけで、内心はそんなに信じていないのじやないかというような疑いさえ、甚だ失礼な疑いさえ持たざるを得ない。僕は何とかして法は公正であり、何とかして
裁判の
独立ということを
日本に実現したいということを切願いたします。これは決してあなた上り僕のほうがそう思
つているというふうな失礼なことを申上げるのではないのですが、併しどうか一つ
日本人は余り過去において法は
本当に公正だとか
裁判は
本当に
独立だとかいう
確信を與えられたことはないので、この千載一遇のチヤンスにそういう
確信を與えられたらどうだろうという
意味で
政府の
意見を伺
つているわけなんです。