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1952-04-23 第13回国会 参議院 法務委員会 第28号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年四月二十三日(水曜日)    午前十時五十二分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     小野 義夫君    理事            伊藤  修君    委員            加藤 武徳君            左藤 義詮君            長谷山行毅君            内村 清次君            吉田 法晴君            齋  武雄君            羽仁 五郎君   政府委員    法務政務次官  龍野喜一郎君    法制意見長官  佐藤 達夫君    法務法制意見    第二局長    林  修三君    法務法制意見    第四局長    野木 新一君    法務検務局長 岡原 昌男君    民事法務長官総    務室主幹    平賀 健太君    法務府民事局長 村上 朝一君    中央更生保護委    員会事務局長  齋藤 三郎君   事務局側    常任委員会専門    員       長谷川 宏君    常任委員会専門    員       西村 高兄君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○検察及び裁判運営等に関する調査  の件(平和條約発効に伴う恩赦に関  する件) ○平和條約の実施に伴う民事判決の再  審査等に関する法律案内閣提出、  衆議院送付) ○平和條約の実施に伴う刑事判決の再  審査等に関する法律案内閣提出、  衆議院送付) ○日本国アメリカ合衆国との間の安  全保障條約第三條に基く行政協定に  伴う民事特別法案内閣提出、衆議  院送付)   —————————————
  2. 小野義夫

    委員長小野義夫君) これより開会いたします。  前回に引続きまして平和條約の実施に伴う民事判決の再審査等に関する法律案平和條約の実施に伴う刑事判決の再審査等に関する法律案及び日本国アメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定に伴う民事特別法案を一括して議題に供します。御質疑のあるかたは……。   —————————————
  3. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 ちよつと緊急質問があるのです。その日程に入る前に緊急質問を許されたいと思うのですが、今朝の読売新聞に大赦、特赦、減刑などに関する政府の詳細な発表があつたようですが、これらの問題について本委員会委員各位が十分御承知のごとく、重大な関心を以てしばしばそれらの問題について政府に向つて質疑をしておつたのですが、あらかじめこの委員会に御説明なく突如として発表せられたことは政府方針なのか、それとも新聞関係者の非常な手腕によつてああいう材料を早く入手されたのか、それらの問題についてはまあ暫くおくとして、一応今朝読売新聞発表されましたものについて政府の側の説明をこの際至急伺つておく必要があるのではないかと思うのですが、如何でしようか。
  4. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 私の承知しております範囲の事実を申上げますが、実は私個人も今日まつすぐこちらへ参りましたので、詳しいその本庁のほうとの連絡はとつておりませんけれども、これは政府発表でないことは間違いのないことである。これだけは私申し得ると存じます。
  5. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 正式の発表でないというふうにおつしやるのですが、併し全文が掲載されています。で、勿論私は言論報道の自由という意味から、新聞社がそれらの重要な問題について、詳細な資料を入手されるということに対しては深く敬意を表するものであります。併しながら同時に国会が、立法者が、そうして而も国民のかなり、決して少数とは言えない数多いかたがたの運命に関する問題について、すでに重ねてこの委員会でしばしばその方針実施についての政府方針を質し、又我々としても審議をして来たことは御承知通りである。そういう問題について勿論いずれを先にすべきかということを申上げるのじやないのですが、併し或る程度まで詳細な原案ができたならば、何故にそれを我々の委員会に報告されることを惜しまれるのか、その点についての第一に釈明を求めたいと思うのです。又今後にも関係することでありますから、或る程度原案ができて、そうして新聞社がそれを入手することができるというような状態に到達しているのに、国会は全然それについて何もタッチされない、これは私は或いは取越苦労かも知れませんが、場合によつちや政府がそういうことをやつて国会の権威なり、国会に対する国民の信頼なりというものを落そうとする陰謀を或いはその企てつつある、或いはそれを煽りつつある、それらの端緒じやないかというふうにさえ考えざるを得ない、これが第一です。それから第二には今意見長官は、これについてお打合せがないというふうにおつしやいましたけれども、併し新聞にこんなに詳細に全文発表される以上、御説明の用意がないとは信ぜられないので、直ちに説明をせられたい、この二点について委員会の多数のかたがたが御賛成下さるならば、委員長を通じてお願いしたいと思います。
  6. 伊藤修

    伊藤修君 今の羽仁さんの御意見は御尤もなんです。ただ意見長官をいじめても始まらんから、これは法務総裁若しくはそれを代理するところの政務次官出席を午後劈頭に求めて頂きましてこれに対する御説明をお願いするということにしたら如何でしよう。
  7. 小野義夫

    委員長小野義夫君) では伊藤さんの御提案の通り法務総裁若しくは政務次官出席を求めて説明を聽取することにいたしましよう。
  8. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 そうしてその際、委員長にお願いしておきたいのですが、これらの重要な案件について我々委員会法務総裁の所見を質さなければならないものがたまつておりますが、併し法務総裁はいろいろな御用事もあつて出席にならないのでしようから、それは審議の上に重大な影響があるというふうに思います。それらの点も併せて、いろいろ御多用でありましようけれども、委員会の活動につき協力せられんことを希望します。
  9. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 午前若しくは午後において、この開会中に必ず責任者の御説明を承わることにいたしたいと思います   —————————————
  10. 小野義夫

    委員長小野義夫君) それでは委員会の本題に入りまして、先ず伊藤委員よりこの日本国アメリカ合衆国との間の安全保障條約第三條に基く行政協定に伴う民事特別法案に関する質疑を願います。
  11. 伊藤修

    伊藤修君 本法の第一條によりまして損害が職務を行うことによつて発生したとか否とかの争いは日米両国間では合同委員会で最終的に決定することになつているようですが、その決定判決とが異る場合にはどういうことになるのですか、先ずこの点について……。
  12. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 行政協定の十八條の第四項に、公務執行に従事していたかどうかを決定するについて所属国政府が第一次の権利を持つということを規定しております。なお他方の当事者がこの決定同意しなかつたときには、協議のためにその問題を合同委員会に付託するということになつているのでありますが、この規定によりましても明らかであります通り、この第一次の決定、これはもとより終局的なものではないのでありまして、相手国同意を必要とするわけであります。なお同意ができませんときは、合同委員会に付託されますが、合同委員会において協議いたしましても問題を解決することができない場合におきましては、この二十六條の第三項により、「適当な経路を通じて、その問題をそれぞれの政府に更に考慮されるように移すものとする。」、こういうことになつているのであります。所属国政府の第一次の決定なり、合同委員会に付託するということが最終的な唯一の決定方法ではないことは窺われるのであります。で、裁判所判断と食い違うことも理論的には起り得ると思うのでありますが、裁判所が先ず裁判をいたしまして、公務執行中の行為であるかどうかという判断をいたしましたならば、この十八條第四項の決定に関與いたします政府機関といたしましては、その裁判所判断を尊重してその衝に当ることになりますので、裁判所判決と異なる結論に到達する、異なる決定が行われることは先ずないことと考えるのであります。反対に、裁判前に十八條の第四項で、両国間におきまして、これを公務執行中でないと判断いたしました場合に、被害者が、これは公務執行中の行為であるということで日本国政府相手として訴訟を起しまして、裁判所も又公務執行につき行われた不法行為であると判断いたしまして、国の賠償責任を求める判決をいたしました場合は、政府といたしましてはその判決に従わなければならんことになるかと思います。ただ十八條第三項(d)によります、合衆国政府からの分担金の請求ができないことになるということに帰着するのではないかと思います。それから逆の場合に、即ちこの第四項の決定が先ず行われまして、公務執行について生じた損害であると判断いたしました場合には、被害者といたしましては政府被告として訴えを起すなり、或いは示談の交渉をすることが普通だと思われますので、これは又裁判所判断と食い違うということも実際上は殆んどないことではないかと、かように考えるのであります。結論といたしましてこの十八條第四項の政府機関及び相手方の機関によりますところの決定というものは、日本裁判所判断を拘束するものではないと、かように解釈いたしております。
  13. 伊藤修

    伊藤修君 そうしますと、第一條及び第三條ですね、何々の場合の例により、国がその損害を賠償する責に任ずるという書き方ですが、そうすると要するに国家賠償法を準用するという意味になるのですか。国家賠償法のどの程度の例によるということになるのか。
  14. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) この合衆国軍隊構成員又は被用者の行為、或いは二條の場合におきましては、占有し、管理する工作物の設置が国家賠償法に言います権力行為に相当するものである場合、或いは公の営造物に相当する場合である場合には、国家賠償法規定によりまして国家賠償法が全面的に適用されて、それによつて責任の有無が定められる。それから国家賠償法に該当しない非権力的行為の場合には民法の七百十五條なり、七百十七條等規定が適用される、こういうつもりであります。
  15. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると国家賠償法の第四條乃至第六條も準用するという意味になるのですか。
  16. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 第四條乃至第六條も適用があるということになります。
  17. 吉田法晴

    吉田法晴君 この平和條実施に伴う民事判決、それから刑事判決の再審査等に関する法律案、これは再審でございますので、民事訴訟法の四百二十條それから刑訴四百三十五條を何と言いますか、準用するという言葉が書いてございましたが、そういう言葉がございましたが、この両法律案、これは一つ訴訟手続規定実体法ではなくて手続法だと考えられるのでありますが、民訴四百二十條とそれから刑訴四百三十五條と両案の関係を御説明願いたい。
  18. 野木新一

    政府委員野木新一君) 只今の御質問にお答えいたします。先ず民事関係から申上げますと、民事訴訟法の四百二十條、これは民事訴訟法自体における再審事由規定したものであります。この民事舟審査法律案第三條におきましては、民事訴訟四百二十條とは別個に一つ再審事由規定したことになるわけです。平たく申しますと、四百二十條のほかに一つ再審事由をこの再審査法で設けておる、そういう関係になるわけであります。従いましてこの再審事由と四百二十條とは直接に関係はありません。つまりこの再審事由自体はこの本法案規定したので、民訴の四百二十條はその限りで本法案には被つて来ない、そういう関係になるものと考えております。なお刑事の再審査法案と新刑事訴訟法の四百三十五條、旧刑事訴訟法も大体同趣旨條文になつておりますが、これとの関係只今民事について申上げましたのと同じようでありまして、即ち刑事の再審査法案第三條にこの法律に定める再審については、この法律規定によるほかとありまして、再審事由についてはこの法律案規定してありますので、この刑事訴訟法四百三十五條再審事由は、被つて来ない関係になる、そういう建前になつておるわけであります。
  19. 吉田法晴

    吉田法晴君 そうしますと民事判決の再審査等に関する法律案によつて第三條に何と申しますか再審理由が書いてあるわけでありますが、民訴法第四百二十條の中に再審理由としてこの今審議をいたしております再審査等に関する法律案によつて謳つた理由が、別に加つたと同様に解していいとこういう御説明と了解していいのでありましようか。で例えば先般来の質疑を通じまして、再審理由についても、或いは押つけられた云々ということではなくて、原告又は被告として事件について十分なる陳述ができなかつたときと、こういう原告又は被告として事件について十分なる陳述ができなかつたことを再審理由として上げるのであります。そのほかにこれは講和條約から参ります或いは勝つた国、敗けた国ということがありますけれども、法理上は一応第三條に掲げてあります事由が問題になるだけだと思います。そうすると或いは民訴の四百二十條によりますと、似たような点と言いますと、或いは三号の「法定代理権訴訟代理権ハ代理人カ訴訟行為ヲ為スニ必要ナル授権欠缺アリタルトキ」といつたような同じでありませんけれども、似たような事項が掲げてあるわけでありますが、両方を通じて言いますと、民訴或いは刑訴再審理由にこの両法案による再審事項一つ加えたというような恰好になると、こういうように了解していいのでしようか。
  20. 野木新一

    政府委員野木新一君) 大体そういう趣旨に了解してよろしいと存じます。
  21. 吉田法晴

    吉田法晴君 そうしますと、大体両方とも本質的に手続であるという工合に了解されるのでありますが、私読んでおりまして若干納得の行きかねますのは、平和條約の実施に伴う民事判決の再審査等に関する法律案の中には、流通証券についての期間、これは勿論條約から参つておりますが、これは或いは時効等と同じ法律関係であると考えますし、双方の民事刑事についての手続規定でないものがこの法律案一緒に入つてきておる、こういう感じがするのでありますが、この点は如何でしよう。
  22. 野木新一

    政府委員野木新一君) 只今質問は御尤もな点でございます。民事の再審査法の第五條流通証券呈示等のための期間、この五條規定は、平和條約第十七條(b)項の規定に基く民事判決の再審査の点とは異なりまして、別に議定書というものがございまして、議定書C第二項におきまして「流通証券引受若しくは支払のために呈示され」云々「なければならない期間が戦争中に経過し、且つ、証券呈示し、」云々「なければならない当事者がそれを行わなかつた場合には、呈示引受拒絶云々、「することができるように本日署名された平和條約の効力発生の日から三箇月以上の期間が與えられなければならない。」という一つ規定がありまして、この規定は前の大戦のときにも同様な規定がありまして、そのときの法的の措置といたしましても、この民事審査法案の第五條と同趣旨規定を設けた先例があるわけであります。即ち三ヵ月以上の余裕期間を與え、三ヵ月以上何ヵ月が適当かと言いますと、先例もありますし大体六ヵ月くらが適当だろうというので、議定書C第二項に基きまして呈示のための期間を六ヵ月にするという規定を設けた次第であります。御指摘のような第五條実体規定でありまして、民事の再審査二條乃至四條までの規定と少し趣旨が異なることになつております。
  23. 吉田法晴

    吉田法晴君 この両再審査等に関する法律案手続規定であつて、その手続規定の中に一カ條だけ実体規定が入つておる。これは一昨日頂いたのでありますが、法制意見局長官に伺いますが、これは立法技術手続規定実体規定一緒にするということは、これはまあ手間を省く意味という点から言いますとこれは別でありますけれども、それでありませんと別にはつきりせらるべきだろうと思う。  それからもう一つ、この前の委員会時効の問題について論議がなされましたが、時効の点についてはこの両手続規定の中にはないのが当然でありますが、講和條約の十八條なり、或いは今流通証券についてお話になりました根拠といいますか、元の議定書のCの項にございますが、その前にBとして時効期間もございます。この講和條約の時効に関します條項は別に実体規定として日本法律の中に全然出ておらんわけであります。そこで日本法律としては、いきなりこの両再審査等に関する法律案によつて運営して行く場合に、日本法律でなくて條約そのままを持つて来る、こういうことになるような感じがいたすのでありますが、別に法律を作る必要があるのじやないか、言い換えますと手続規定手続規定で一貫する、それから実体規定実体規定で別に作る、而も時効に関する分は不勉強かも知れませんが、別にないように思われる、こういう点についてどういう工合に考えられますか、法制意見長官意見を伺います。
  24. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 第一点の問題につきましては、これはもう御推測の通り技術上の問題でございます。仮にこの議定書関係において規定すべき條文がもう少し、例えば十條ぐらいあるというような場合でありますれば、或いは別の法案といたしまして御審議願つたかも知れません。又逆にこの民事判決の再審査関係刑事判決の再審査関係立法事項がおのおの二ヵ條ずつぐらいしかないという場合でありますれば、恐らく民事刑事一本にしまして御審議願つただろうと思いますが、そういう点から見まして今の議定書C関係は御覧の通りヵ條しかございません。その理由は又後の御質問にも触れるのでございますけれども、とにかく我々としては立法事項としては一ヵ條しかありませんから、これに便乗させました。而もこれは民事関係には間違いありませんから、民事判決関係のほうの法案に載せまして表題に民事判決の再審査等、等の字を付けてそれを含んだつもりでございます。これはもう御指摘通り技術上の問題でございます。  それからそのあとにおつしやいました問題は、これは大変むずかしいと申しますか、大きな問題であると思います。というのは條約が一体そのままの形で国内的にどういう効力を持つものであるか。條約を実施するためにはすべてそれを盛り盡さなければ、国内立法としてすべて條約というものが動かんものであるという根本問題に触れる問題なんですが、併しここでこの問題について長々と御説明するつもりはございません。ただ現実の従来の扱いを申上げるにとどめたのであります。今野木政府委員から申しました例えば前のベルサイユの平和條約の関係、あのときにとつた政府の態度はこれは旧憲法時代でありましたけれども、なお且つ條約の国内法的の効力というものを認めまして、そうして條約の條理上働き得るというものはそのまま條約に委せてしまう。ただ今のように半ヵ月を超えない期間とか、半ヵ月以上ということを條約自身で一応基準をきめて具体化しておらないという部分を取出して立法しております。これは大正九年でございましたか、法律第一号として前の平和條約について出ておる立法例でございます。その例をそのままここにとつて来たわけでございます。條約の国内法的の効力の問題は旧憲法時代よりもこの新憲法のほうがなお説明がしやすい。というのは御承知のように九十八條国際條約を遵守する義務はつきり憲法自体で謳つてありますから、ますますそのほうの論拠になつて来たということで、これは事実を申上げて御参考に資するわけでございます。
  25. 吉田法晴

    吉田法晴君 そうすると今の御議論で、この手続規定については法律を作つたけれども、時効関係のものについてはやはりそのままで別に立法措置は講じない。そうすると流通証券の場合についても同じことが言えるわけでありますが、その辺の矛盾はどういうふうな御説明になりますか。
  26. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) ちよつと私漠然とお答えしたのですが、私は平和條約そのものの議定書のことを頭においてそれだけにとらわれて御説明したのですが、吉田委員のお尋ねは恐らくこの間一松委員ですか、この再審査関係に関連して実体的の時効の問題がこの間、話に出ました。その問題とすればこれは今私は議定書にとらわれて説明した説明とは又別の問題で、これはこの間野木政府委員が恐らくお答えしたと思いますが、或いは解釈上無理であるという結論になれば、この間最後の何條でありましたか、この民事審査で言えば四條の四項ですか、別に法律で定める。その法律立法的に解釈いたしますということにしておるわけであります。でありますから私の先ほどの御説明はその点には実は触れるのを忘れておつたということでございます。
  27. 吉田法晴

    吉田法晴君 それからもう一つ立法手続上ですが、議定書先ほど議定書を頭においてそれだけにとらわれてお答えを頂いたということでございますけれども、議定書の中で流通証券の問題はこれは三ヵ月以上と、六ヵ月と違いはありますけれども、同じ実体規定としてCに掲げたものだけをこちらに移して規定した、片一方の時効関係のほうは何もしない。そうして條約が国内法としても有効なんだ、こういう御説明なんですが、そうすると矛盾するのじやないですか。手続規定の中に実体規定を入れることがおかしいならば、別にそういう実体規定をまとめて、これは或いは民法といいますか、刑事法にも関連しますが、時効の問題、それから流通証券といつた問題を或いは切り離すか、切り離さないかは別問題ですが、同じ議定書にBとCとあつて一つだけを手続規定の中に盛込む、こういうことをどうしてなさるのか、その点について御説明を伺いたい。
  28. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 先づ範囲議定書に限りまして、この議定書を見渡して問題になるのは、Cの第二項の最後のところに「本日署名された平和條約の効力発生の日から三箇月以上の期間が與えられなければならない。」と書いてあります。三ヵ月以上の期間を與える義務がありますが、三ヵ月以上何ヵ月ということはこちらの斟酌です。即ち立法に任されておる。これは丁度対独平和條約の三百一條の第二項にやはり三ヵ月の期間を下らないと、下らないということになつておりますから、法律に別に出しまして六ヵ月というふうにきめた。それと平仄が合つておるわけでございます。
  29. 吉田法晴

    吉田法晴君 そうするとCの項は別に三ヵ月以上というのだから、別に法律作つて六ヵ月なら六ヵ月という規定をしなければならないから法律に出した。時効のほうはその点、別に事務的に規定する必要がないから別に法律を作らないで條約そのままでやる。こういう御説明なのですか。
  30. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) その通りでございます。
  31. 吉田法晴

    吉田法晴君 これは手続的な問題、法律上の問題ですから、大して議論する必要はないかも知れないと思いますけれども、一応民事の再審査等に関する法律案を見ても、そういう矛盾が感ぜられる。その矛盾を解くことについてもう少し考えたらどうか、こういう意見としてとどめたいと思います。  それからこれは羽仁委員からしばしば御質問なつ相互主義の問題について考えよう、こういうことでありましたが、たまたま議定書或いは講和條約に遡つて時効或いは有価証券等について読直しておりますと、はつきりそこに相互主義が現われている。そうすると條約で調われた相互主義を、尤も何と申しますか、賠償関係での相互主義の例外もありますが、原則は一応相互主義、その相互主義をこの再審査等法律案において考える場合には、相互主義を、これは必要以上に遠慮したというか、或いは考えないで現わさなかつた、こういう感じがするのであります。この條約上は認められた相互主義をこの再審査等に関する法律に関連して生かす方法、それから時期、考慮いたしましようということではいつまでも考慮されんかも知れんし、或いは永久に考慮のしつ放しかも知れん。その点もう少し具体的に一つ承わりたい。
  32. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 考慮いたしましようと申上げたのは、私の記憶では向うの裁判にかかつた日本人の関係のことのように思うのですが、今吉田委員のおつしやるのもそういう趣旨でありましようが、これは私どもの立法、立案についての根本の態度は、少くとも條約上必然的に国内立法を要する事項というものを極めて理論的に当つて見まして、その限度においてこの法案を整えたわけであります。條約そのものに出ておらなくて、或いは今後の外交上の話合いに任されるといいますか、話合いの問題になるような事項というようなものは、今回のこの立案には全然取入れておりませんからして、その程度でこの立案趣旨と申しますか、それについて御了解を願えるのじやないかと思つております。   —————————————
  33. 小野義夫

    委員長小野義夫君) ちよつと……、この問題はなお継続することにしまして、あとにも質問者があるのですが、今龍野次官が来られたから緊急質問に対して一応一つ説明を願いたいと思います。  それで今龍野次官にお尋ね申上げる前に、法務総裁は今日登院しておられないので電話でいろいろと交渉したのですが、今日はやはりのつぴきならざることで出られないからというので龍野次官がお出でになつたのですが、龍野次官に対して今この委員会の模様を申上げますが、本日の読売新聞に大赦、特赦に関する内容が発表せられて、非常に法務委員、これはいわゆる一般国民も驚き且つ喜んだかもわかりませんが、ともかく非常に意外に考えたのでありまして、このことに関しての政府の責任というか、当局の責任は別問題といたしまして、只今意見局長官としてはこれはもう絶対に政府の公表したものにあらずというだけは御証言があつたのですが、さて政府は公表せずといえども、これはまんざら伝聞、根拠のないものでなく、相当の根拠に基いて発表されておるとすれば、かかる立派なものがすでに政府でできておりながら、この国会法務委員会等に対して、仮に極秘としても或いは秘密会とか、いろいろな手段方法はあるのである。かかる方法をもとらずして、突然そういう取材が外に出たということは一体どういうわけか、甚だしくこの法務委員の存在を無視するような恰好にも見えるのであるが、そのことについてその問責の問題はともかくとして、大赦、特赦に関する政府の具体案をここでその大要を梗概でいいから説明されたい。
  34. 龍野喜一郎

    政府委員龍野喜一郎君) 本日読売新聞に載つておりますことは、これは決して政府が公表いたしたわけではないのでありまして、如何なる経路によつて読売新聞がその取材を入手したかは不明でありますが、決して政府が進んで、或いは又重大なる過失によつて記事に掲載せられたわけではないということは私も確言いたす次第でございます。何と申しましても、我々といたしましては講和発効の当日にこの恩典を間違いなく分ち與えたいという趣旨の下に、それがために成案を得るに至るまで諸般の準備を進めなければなりません。従いまして成る程度の案を地方の検察庁或いは刑務所或いは又国警本部その他に送付いたしておるのであります。その数は千以上に上つておるのでありまするが、これは飽くまで講和発効の日まで極秘にする條件を以て送付いたしたのであります。併しながら如何なる経路でありましようとも、すでに新聞に載りました以上は、政府といたしましてこれを飽くまで秘密であるという意味で以て今後とも押し通すという態度は如何かと考えられますので、本日はこの問題の取扱いにつきまして法務府部内に緊急会議を開きましてその対策について研究いたしたのでございます。もともと私どもといたしましては、国権の最高機関である国会方面の協力を得ずしては何事もなし得ない、この恩赦令はこれは恩赦法に基く政府の行政事務ではありまするけれども、併しながらこれの実施に当つては、どこまでも国会方面の協力を得たいという前提の下に、たびたびの私的会合と申しますか、そういう席上におきましては、十分に国会方面の御意見を取入れたつもりでございます。でこの取扱い方につきましては、私どもといたしましては少くとも新聞発表のある以前に、その成案を国会殊に法務委員かたがたに示して、御了承を願うという態度を今日まで堅持いたしておつたのであります。そこで先ず二十八日が講和発効日と予定されておりますので、遅くとも二十七日には成案を示すという段取りを以て進んでおつたのでありますが、事今日に至りましてはその方針を堅持するわけにも参りません。従いましてあの新聞に出ておりまする記事そのものがその通りの案文でもございませんので、至急この草案を整備いたしまして、一両日のうちに皆様方の前にお示ししまして、いろいろ御協力を仰ぎたい、その機会を政府としては持ちたいというふうに今日決定して参つたような次第でございます。そこで目下その政府案の案文の整理中でございます。そこで今申上げましたような次第で一両日に、できるだけ速やかにこちらとしましてはお示しするつもりでありますので、それまで暫くお待ち願えれば甚だ幸いと存ずる次第であります。
  35. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 政府に向つて所見を質したいと思うのですが、私は本日本委員会緊急質問を以てこの問題を伺いました第一点は、政府は果して国権の最高機関としての国会を尊重せられる意思があるのか、その端的な現われとしては本日読売新聞に詳細が発表せられた。こういう詳細なる案ができているにもかかわらず、それに対して何ら国会に対してそれらの知識を與えない、この点です。それで、私は新聞社新聞の自由によつて、自由なる取材活動をせられて、これらの材料を入手せられたということに対しては深く敬意を表するもので、これについては何ら問題にしようとするものじやないのです。併し政府の態度が、新聞社が或る程度のまとまつた形においてその材料を入手するような段階に到達しても、なお且つ政府国会に向つてそれらを秘密にするという態度について問題があるのじやないかと思うのです。これは問題が他に亘りますれども、例えば国立国会図書館法で以て国立国会図書館が行政府における資料を収集し、整理するという場会の規定のときにも問題になつた問題であつて、これは政府において一定の形においてまとめられた資料というものは国立国会図書館がそれを政府に向つて要求することができるようになつています。その趣旨は、いわゆる行政が立法に対して不当に優越する、或いは不当に優越的な影響を及ぼすというようなことがあつてはならない、これは政務次官も御同感だろうと思うのです。事実上においてこの大赦特赦乃至減刑について国会国民の利益或いは国民の希望というものを代表して先般来しばしば質疑を繰返しておることは御承知通りです。然るにこれは今の問題と関連してですが、当面の責任者である法務総裁は本委員会において出席を要求いたしましても、いろいろ御多忙でなかなか御出席にならない。でそういうような状況の下においてこのように詳細な点に亘つてまですでに原案ができている。で、まだそれは決定的な原案ではないというふうに言われるかも知れないが、併し一応まとまつた形においてできておることは事実なんです。それについて何故に国会に対して秘密の態度をおとりになろうとされるのか。それに然るべき理由があるならば勿論我我も喜んで了承するものでありますが、併し一般にその場合に然るべき理由がなくして秘密の態度をおとりになる、或いは逆に然らざる理由があつて国会に対して秘密の態度をおとりになる、この三つの場合があると思う。第一の場合ならばあえて追及する意思はないのでありますが、第二乃至第三の場合はあるのではないか、これは今回の大赦、特赦、並びに減刑に関する政府の計画というものだけではないのです。例えば破壊活動防止法案というようなものに対しては、昨年の八月以来前法務総裁がしばしば或いは正当なる理由に基くのではないのではないかというふうにも考えられるような方法新聞社に向つて原案発表される。これも新聞の自由の活動としては私は大いに敬意を表し、大いに期待するものでありますけれども、併しながらそれとは全く別に国会がそれらの問題に対して重大な関心を持つている、それに対して何故にその秘密の態度をとられるのか、又今後もそういうふうになさるおつもりであるか、で、法律案に対しては勿論のこと、行政の範囲に属する政令の問題につきましても、国会はそれらに重大な関心を持つておる際にも……、今後もそのように秘密の態度をとられるのか。そして又当面の責任者である法務総裁はこれらの問題について我々が質疑しなければならないと思うものが多々ある場合にもとかく出席せられない。そしてそれらの間に相当の成案ができ、従つて優秀なる新聞記者の取材活動の自由によつてそれらが新聞発表されて我々が甚だ驚くようなことを今後も続けられるのでしようか。その点を伺つて置きたいと思います。
  36. 小野義夫

    委員長小野義夫君) ちよつと御発言中でございますが、本会議で採決があるというので、ちよつと休憩してすぐに本会議のほうへ行きたいと思いますが……。これは採決が済んでから後なお三十分くらいやるかも知れませんが、一つそう御了承願いたいのですが……。それではちよつと休憩いたします。    午前十一時四十五分休憩    —————・—————    午後十一時五十四分開会
  37. 小野義夫

    委員長小野義夫君) それでは引続き委員会開会いたします。先ず龍野次官から発言を求められました。龍野次官。
  38. 龍野喜一郎

    政府委員龍野喜一郎君) 只今羽仁委員から従来の政府の能度が立法府を、国会方面を軽視しているような嫌いがあるというような趣旨の御質問があつたのでありますが、もともと政府と申しましても国会に基礎を置いている政府でございまして、国会を軽視し或いは無視をするというようなことは全然考慮の中にないし、無論国会を中心に政治というものは運営さるべきである、行政も運営さるべきであるという信念にはいささかの動きもないのであります。併しながら這般の事情等を考えて見ますると、たびたび国会方面において御審議を願う以前に新聞等において発表され、国会議員としてはあとでそれを知るというような不体裁なようなこともあつたようでありますが、これは誠に申訳ないことでございます。このたびの恩赦令の問題につきましてもさようでございまして、この点は甚だ申訳ない点でございますが、私どもといたしましては飽くまで国会を中心に進みたいという念願には変りはないし、又その通りでなければならんと思ております。従いまして先ほども申しました通り、今度の恩赦令の起案に当りましても、非公式ではありまするが、できるだけ法務委員その他の方面の御会合におきまして御希望も承わり、御意見も承わつて、それを織込んで立案に当つたような次第でございます。今後とも少くとも法務府におきましては、法務委員会の皆様がたの御意見は十分取入れて行政の実際に当りたいということは私ども言うまでもないところであろうと思います。  なお、法務総裁が当委員会出席することが少いというようなお言葉でありますが、これは私の責任でございまして、誠に申訳ございませんが、御承知通り法務総裁政府法律顧問的地位にありまして、各種の方面に引つ張りだこになつておりまして、非常に多忙を極めておりまして、法務委員会の重大なことは十分承知しておりながらも、その時間がなく、従つて委員会等に出席することが極めて少ないということは私も誠に申訳なく思つておりますが、今後はできるだけ私の責任を以ちまして法務総裁にも出席を求めたい。昨日もその問題については、特に法務総裁に私よりお願いしたような次第でございまして、多忙の中を割いて十分出ようということを言つておられましたから、その点はお伝えしておきます。
  39. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 羽仁委員に申上げますが、この問題はなお午後に適当の時期に問題を……大赦、特赦、その他に関するものについて政府から説明を願うことにいたしまして、その際になお質問は続行することにいたします。
  40. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 今の御釈明に対して一言発言させて頂きたいと思います。
  41. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 簡単に……、あと法案審議をもう少し継続したいと思いますから……。
  42. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 只今御釈明があつたのですが、その最初に国会を軽んずるということは……国会を軽んずるというような野暮なことは私言うわけではありません。軽んずる人があれば、それは国会のほうが悪いので、そんな野暮なことを言つておるのではない。そうでなくて、国会は国権の最高の機関である。その機能を発揮することを政府に妨げられる虞れがあるのではないかという意味で、もつと実質的の意味で申上げておるので、そういう意味で御釈明になつたことだと了承しますか……。  第二に伺つておきたい。今のことに関係したことなんですが、いわゆる政令というものは政府の行政部の権限でなされておるのですが、勝手にやつていいとお考えになつておるのですか。恐らくそうでないと思う。それはその政令の基礎になつたところの立法なり、その政令の関係する立法上の方針というものに忠実に従わない政令というものはないはずだろうと思うのです。従つて政令を出される場合にもこれは政府部内で勝手にやられるのだ。国会に対しては何も意見を取つて聞く必要はないという態度をおとりになることはないと思う。併し過去においてそういう慣習があり、又現在においてもそういう弊風が残つておるとすれば、これは現在主権在民の憲法の下において政府は努めてそういう弊風を一掃されて、そういう疑いを我々が少しも感じない、国民もそういうことを少しも感じないようにせられることだろうと思います。  それから第三に、今朝発表されたのは、まだ成案じやないというふうに言われますから、ですからこれが成案になる過程において、是非私として、政府がそういう点において努力をせられるかどうか伺つておきたいことが一点あります。それは今我々が審議しておる平和條約の実施に伴う刑事判決の再審査等に関する法律案、これについて昨日最高裁判所側からも御出席を願つて意見を伺つた際にも、この裁判の独立というものを確立することが、その裁判国民が心服する唯一の方法なんです。ところが戰時中は、いわゆる日本の軍の圧力というふうなものにより、それから特に問題になるのは、この占領期間中は、占領軍の権力というものによつて憲法を度外視した、いわゆる超憲法的な措置がだんだんとられておる。これについて昨日最高裁判所の御意見を伺つたところが、これらは新らしい日本裁判の独立、この裁判の独立を確立する上に甚だ問題であるという御意見があつたのであります。ですから今この大赦、恩赦、減刑等をなさる場合に、この占領期間中に、日本国憲法及びその保障するところの言論、集会、結社、政治的自由、これらのものが日本国憲法を、その占領期間中、占領下においてどうすることもできない力によつて、超えた力でなされたようなものが継続するということになると、私はそこに二つの重大な問題が起つて来ると思う。第一は日本国憲法に対する国民の信頼というものは、それによつて傷つけられる。即ち裁判の独立ということに対する信頼が高められない。第二に……。
  43. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 御発言中ですが、簡単に……
  44. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 もう少しで終ります。第二には、占領の継続という実感が国民の間に湧いて来る。この二つの点です。裁判の独立なんというけれども、日本裁判は独立していないんだ、然らば裁判以外に向つて別の力を加えられるほか方法ないんだというような誤つた考え方が出て来たら大変です。それから第二に、やはり独立したとは言いながら、占領の継続なんだ、現に占領期間中に無理やりにやられたようなものは、今度の大赦なり何なりでも、そういうものはそのまま存続するじやないか。これは占領の継続で、何ら独立じやない、何ら平和條約じやないという感じが起つて来てしまつては、これ又收拾すべからざることになるだろうと思う。而もこれは單に弊害というものじやない、本質的な問題に関係して来る。ですからここに読売新聞によつて発表されたものが成案でないと今言われるのだから、だから成案ができるまでの過程において、只今の点について政府は十分な考慮をなさる、或いはなさつておられるのか、その点について伺つておきたいと思います。
  45. 小野義夫

    委員長小野義夫君) それは一つ午後四時に改めて今の御答弁を兼ね、それから今の提案の過程にあるところの綱領について御説明を願いたいと思います。そういうことで一つ本問題に返りまして、吉田さんの御質問を御継続願います。
  46. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 今のは今御答弁がなくても午後に御説明になるときに今私の申上げたような点が何ら疑念なく解決されるものであれば、私は勿論それで満足するものです。それからさつき吉田委員から御質問のあつた点について私も若干関連する問題があるのですが、関連する質問を許されるならば……。   —————————————
  47. 小野義夫

    委員長小野義夫君) それでは吉田さん。
  48. 吉田法晴

    吉田法晴君 先ほどのやつは、條約に謳われておる相互主義を、この再審査等に関する法律案二つに関連してどうして考慮せられなかつたという問題が途中で切れたのですが、その前に遡ることをお許し願いたいのですが、時効問題ですが、時効問題、もう一遍むし返しをすることになりますが、やはり考えてみても條約に誰つてあるから條約を適用されたがよろしいと、こういう理窟ですが、手続法については、これは疑義もございましたろうが、民訴刑訴手続規定の一部を変更する、いわば民訴法刑訴法を、この両案によつて改訂をする。こういう手続をとる。それから有価証券につきましても、流通証券についても、一応入れて、ここに国内法として実体規定ちよつと入れる。そうすると時効の問題だけこれに関連いたしますけれども、時効の問題だけ條約そのもの、こういう点は日本民法なり或いは刑法なり、その他実体規定について、それは條約によるんだ、こういうことでは、これは或いは民法、商法或いは刑法の場合等でありますが、今まで法体系で参つておるのです。それを、それは條約の部分をそのままつて来るのだと、こういうことにいたしましては、一応関係者といいますか、国民ととても若干戸惑いをするといいますか、そういうことはこれは私どもとしても條約をもう一遍ひつくり返して見て十分納得が行つたと、こういうことになりますが、その辺が実情だろうと思います。一方やはり日本法律としてあつたほうがベターだということは言えるだろうと思います。まあこれはしなかつたのだという御説明ですが、反省をせられる必要はないかどうか。私は別に規定したほうがベターだという感じがするのであります。重ねてもう一遍。
  49. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) おつしやることは、確かによくわかるのであります。この立法のやり方の問題としては仮に條約そのままで当然働き得るものでも、そのまま引写しにして、国内法にしたらどうかという考え方は当然あり得ることでありまして、今お話のこれはそのやり方の問題であろうと思います。そういうことが法令上不可能のものであることは決してない、そのほうがベターじやないかという意見も当然起り得べきものである。これは承認いたします。併しながら今の実際のこの立法措置をとります際には、なかなか例えば平和條全文丸写しなどという非常識のことはできません。その中でどうしても或る種の選択をしなければならんということが当然出て参ります。そういうことから申しまして、過去の先例等もございます。丁度今の御指摘議定書関係ではベルサイユ條約が、例えば今の時効期間についても同じような條文がございます。その際は立法措置をとつておらないというようなこともございましたし、我々としては御提案申上げた形によつて十分であると確信いたしておりますけれども、そういう御批判はこれは成立つと思います。
  50. 吉田法晴

    吉田法晴君 これは実際にもう少し具体的な問題を考えてみないとわかりませんけれども、時効の中断、それから時効の開始、細かい点については問題が起つて来るのではないかという感じがしますので、そういうことを申上げたわけです。  それから先ほどの、元の問題に返りますが、條約上はつきり認められておる相互主義、特に民事関係についてはそうだと思うのですが、これはそうその議論をしていいかどうかわかりませんが、或いは用意せられた條約文に調印しているかも知れんけれども、その條約においてさえ認められておる相互主義、それを日本国内法立法をする場合に、その相互主義が取入れられないで、連合国人の場合だけについて立法をする、こういうことは何としても納得が行かないのであります。例えば刑事関係でありますけれども、戦犯の問題については戦犯関係の小委員会作つてここで論議をしておるわけであります。その際の政府の御意見等を承わつておりますが、それは一つ再審の問題、実情に見まして精神は特赦或いは減刑云々ということを言われておりますけれども、その中に流れております気持は若干そういうものがあることはこれは否定することはできないと思います。そうすると民事上の問題について、これは当然立法措置し得ることと考えます。それから刑事上の問題についてもそうでありますが、可能な日本人、特にこれは再審といいましてもこの二つの法律案の中に入つておるものについては戦争中のものが大部分であり、それから日本の場合になりますと、これは戦争後の占領期間中ということに実体はなるかと考えます。それについてなし得る手続規定をなぜなさらなかつたか。御説明は今の時効問題についてもその他につきましても、こういう法律案を出して来た、或いはしなかつたものについては、それは法制局としても関知しているので、将来考慮するからそれでいいのだ、こういう御答弁だけしか頂かないのでありますけれども、もう少し法制意見局長官としても御反省を願つて、可能なる方法については時間的に考慮するということだけでなくて、併行的に本来はなさるべきものであつたものを、今出て参つておりませんから近い将来と申しますが、その辺についてもう少しはつきり御答弁頂きたいと思うのであります。
  51. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) ちよつと御趣旨をつかみかねますが、その最後のお言葉にありましたのは、その別に法律で定めるというこの問題でございますが、併行してという、併行して何らかの措置をというお話はその併行しての措置ということはどういうことをお考えになつてのお話ですか。
  52. 吉田法晴

    吉田法晴君 條約に認めたる相互主義その相互主義が出て来ておるのが一方だつた、片つ方の日本人の刑事民事に関します問題、特に占領中の問題については、この法律案の基礎になつておる條約の相互主義というものを考えるならば、併行して考えるべきではなかつたか。併行して立案し、御提出すべきものではなかつたか、その併行が今のところ片ちんばになつておりますから、近い将来において考慮するということでありますから、近い将来において考慮するということでなくて、もつと具体的の立案の手続を進めるというこういう御言明を願えないか、こういうことであります。
  53. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) もう一度確かめさせて頂きますが、お話の問題はこの占領中とおつしやるところからみますと、占領中に向うの軍事裁判所日本の国内でいろいろな違反事件裁判するそれでございますか。
  54. 吉田法晴

    吉田法晴君 それは一つの例ですね。
  55. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) ほかにどういうものがありますか。それはそれで御説明を申上げましようか、それについてはよくわかります。それについてこの間来二回ばかりお尋ねがございましたのですが、その占領中に向うの軍事裁判所がやつた裁判の効果というものは、これも又法理論としては当然効果を継続するかどうかという根本問題がございます。ございますけれども我々としては一応占領の終止と共にそれは終る。従つて野放しになつてしまうということを前提に考えまして、ただ併し具体的の案件を洗つてみますと、その中には殺人もあるし、強盗もある。たまたま向うの裁判にかかつただけで、事柄によつて日本裁判所で厳罰に処せられるようなものもあるわけなんです。そういうものについての取扱い方法としてそれじやどうするかというと、むしろ一応白紙に返したその上で、法的に放任したものをどうするかという立場で今のところ考えておるわけであります。それじやそれをどう処理して行くかと言えば、今の刑事訴訟法なり刑法なり実体法との組合せによつて、今の手持の国内法によつて新たなる起訴なり何なりという措置をとつて行こうというのであります。過去における軍事占領裁判所で処刑された者の前科の問題とか何とかこういうものは前科にも何にもならないという頭で出ておるわけであります。その点はむしろ御心配はないのじやないか。別に立法措置は、勿論立法措置も考えたことはありますけれども、必要はないという結論で今のところおるわけであります。
  56. 小野義夫

    委員長小野義夫君) ちよつと速記をとめて。    〔速記中止〕
  57. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 速記を始めて。それではこれにて午後一時半まで休憩いたします。    午後零時二十二分休憩    —————・—————    午後一時五十二分開会
  58. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 午前に引続きまして、これから開会いたします。
  59. 左藤義詮

    左藤義詮君 民事特別法案の第一條に「日本国内において違法に他人に損害を加えたとき」と、違法というのは故意又は過失を意味するのですか。
  60. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 違法にとありますのは、国家賠償法の第一條にありますのと同じ意味に使つたのでありまして、故意又は過失とは別の意味なんでございます。即ち不法行為について、一般に必要とされております違法性を意味するわけでございます。故意、過失という主観的條件が必要かどうかという点は、結局国の公務員又は被用者がその職務を行うについて違法に他人に損害を加えた場合の例によるということで、国家賠償法なり民法不法行為規定によつて賄えることになる。従いまして原則として故意、過失が必要なわけでございます。
  61. 左藤義詮

    左藤義詮君 実例を挙げて頂きたいのですが、例えばB二九が墜落をして非常に損害が生じたというようなときは違法と認めるわけですね。
  62. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 一般に違法性があると認められる場合が多いと思います。その搭乗員、操縦者の故意又は過失によつて墜落したというような場合、違法性があると認められる場合が必要であろうと思います。
  63. 左藤義詮

    左藤義詮君 参考に伺つておきますが、この前の占領中でありますが、航空機が、B二九が落ちて損害があつた場合がありますが、あの場合には占領中ですが、被害者に対してどういうような措置がされておりますか。
  64. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 占領中における占領軍の航空機の墜落による被害につきましては、法律的に申しますと、日本政府は責任を負う筋合はないわけなんであります。併しながら占領軍としても賠償の責任を負いませんので、政府におきまして見舞金として被害者に一定の金額を送つたのでございます。この見舞金の制度は、最初昭和二十一年五月に閣議決定で、そういう場合に見舞金を支給するということを定めまして、その後数回その内容が改められまして、最後の基準は昨年の四月に定められた基準でありますが、これによりまして死亡の場合には幾ら、傷害の場合には幾ら、家財、住宅の場合には幾らという一定の金額を定めまして、その金額によりまして、被害者損害に対する見舞金を支給して参つたわけであります。
  65. 左藤義詮

    左藤義詮君 その基準が、今後国が賠償する場合の金額の算定等に何らかの連関を持ちますか。全然それは無関係なものですか。
  66. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) この法律案によつて、国が損害賠償の責任を負う場合は、これは法律上相当因果関係のある一切の損害を賠償するということになります。損害の額等は示談で定まらない場合は、結局裁判所の認定によるということになつております。従いまして先ほど申上げました閣議決定による基準にはとらわれないことになるわけでございます。
  67. 左藤義詮

    左藤義詮君 こういうような違法に損害を與えたその合衆国の軍隊の構成員又は被用者に対して、国家賠償法にございます求償権というものは成立たないのですか。
  68. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) その点はこの加害者が公務執行中の軍隊の構成員であり、又被害者日本側の政府の職員であるという場合は、行政協定八條の第一項によつて国としては請求権を放棄しておりますので、求償権の問題は生じないと思いますが、その他の場合におきましては求償権はあるわけです。日本法律としてあるわけですが、ただ行政協定の十八條の六項の(a)によりまして、合衆国軍隊構成員として日本国にある間は日本裁判権には服しないということになるわけであります。
  69. 左藤義詮

    左藤義詮君 日本裁判権に服しないとすれば、事実上求償権というものは成立しないというふうになりますか。
  70. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 構成員としての身分を失つて続いて日本にいる場合には、成立するのです。軍隊の構成員としての身分を以て日本にいる間は服しない。併し実体上は求償権もある、こういう関係になつております。従いまして一私人の資格で再び日本場へ参つたというような場合に求償権を行使し得るのであります。
  71. 左藤義詮

    左藤義詮君 そうすると、軍隊の一員としておる間は求償権は十八條の六で成立しない。併しながら軍服を脱いだら、或いは被用者であることの身分から離れたら、そのときには求償権は成立するのですか。発動し得るのですか。
  72. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 求償権はあるわけでありますが、裁判上それを請求することができないわけであります。裁判権に服しないことになる。その身分にある間は裁判上はできないのですが、実体上求償権はあるわけであります。
  73. 左藤義詮

    左藤義詮君 この第一條には、国家賠償法を恐らく予想したものと思うのですが、「の構成員又は被用者が、その職務を行うについて日本国内において違法に他人に損害を加えたときは、国の公務員又は被用者がその職務を行うについて違法に他人に損害を加えた場合の例により、」と、この例によりながら、国家賠償法一條の第二項のほうは実体上は遡及し得ないということになるのですか。
  74. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 国家賠償法の例によるわけでありますから、第一條第二項の適用があるものでありまして、故意又は重大な過失があるときには求償権はあるのでありますが、行政協定の十八條第六項(a)の解釈といたしまして、合衆国軍隊の職務執行についての不法行為に基く請求につきましては、日本裁判所日本国において訴えを提起されることがないということになつておりますので、求償権はありまするけれども日本裁判所に訴える  ことができない。
  75. 左藤義詮

    左藤義詮君 それではどこの裁判所に訴えるというのですか。アメリカあたりの軍の裁判所に訴えることができるというのですか。実体はあつても全然これは空文になるわけですね。
  76. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 行政協定の六項の(a)は、合衆国軍隊構成員である間に日本裁判所に訴えを起されるということを否定しているだけでありますから、構成員たる身分を失つて再び日本に来たというような場合には、求償権を日本で行使し得ることになるので、全くの空文に帰するということでもないと思います。
  77. 左藤義詮

    左藤義詮君 一度帰つて二度来なくとも、日本で除隊になるとか或いは被用者がそれを免ぜられるというような場合には、直ちにそれが賠償を請求し得るわけですね、国は……。
  78. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) そうであります。
  79. 左藤義詮

    左藤義詮君 そのことをもう少しこの法律はつきりして頂きたいと思うのですね。「場合の例により、」国家賠償法というものを予想してこの法律作つてあるのですから、行政協定の十八條六項の(a)があるからとおつしやればそれまででありますけれども、その点が今お尋ねをしてはつきりしたわけですが、而もはつきりと申しましても、その地位にある間はいけないので、地位を離れれば請求できるということは、非常に私おかしいのじやないかと思うのです。求償権が若しないならばしないのですけれども、私はこれは国として職務上の重大な過失或いは損害の場合には、どんな重大な過失も損害日本国が全部ひつ被つて、それに対して何らの求償権も持ち得ないということは、非常に屈辱的だと思うのですが、その点をもう少しはつきりこの法律にしておいたら……。
  80. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 民事に関しましては、合衆国軍隊構成員日本国裁判所裁判権に服しない場合は、行政協定八條の六項の(a)に掲げてある場合だけでありますが、この点を條文に明らかにするかどうかという点につきましては、この行政協定規定自体によりまして、我が国の裁判所裁判権が制限されることになるのでありまして、一般に條約とか国際慣例上、その他国際法上の原因によつて裁判権その他の国家権力の行使が制限されます場合は、この点について特に国内立法をしない例になつておりますので、その例にならつたわけであります。
  81. 左藤義詮

    左藤義詮君 その例と申しまするのは、国際的にそういう例がありますのですか。
  82. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 一般に條約なり国際慣例によりまして、裁判権に服しない場合について逐一これを国内法規定することをしない例になつておりますから、その前例にならつたわけであります。
  83. 左藤義詮

    左藤義詮君 そうすると、もう一度確認しておきたいと思いますが、合衆国軍隊構成員又は被用者が、重大な過失を以て他人に損害を與えたときには、日本国は、一その損害を賠償しなければならない。そうしてそれに対して、その重大な過失をなした者に対しては求償権というものは実体上は存在するけれども、その過失者が合衆国軍隊構成員又は被用者という身分を持つておる間は請求ができない。そうすればその身分を離れた瞬間に国は求償権を行使すると、こういうことになるのですか。今一応……。
  84. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 合衆国軍隊構成員が、職務上重大なる過失ある行為によつて日本国民に損害を加えました場合には、第一條によつて日本国政府が先ず賠償するわけでありますが、合衆国政府関係におきましては、行政協定八條の第三項の(d)によりまして、別に両国政府が合意する條件でその賠償額を分担するわけです。これは合衆国政府日本国政府との関係でありますが、加害者個人に対する求償権の問題に対しましては、只今お話の通りであります。
  85. 左藤義詮

    左藤義詮君 その分担した損害に対しましては、米国政府は求償権を行使しますか、しませんか。
  86. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) それはアメリカの国内法によることになります。
  87. 左藤義詮

    左藤義詮君 若し、米国政府は求償権を行使する、重大なる過失をした者に対してその損害を賠償せしめる、日本は対等な立場で賠償をしておきながら、一時的に賠償をしておきながら、合衆国軍隊構成員であるがために、日本としては求償権の行使ができない、実体はあつても事実上できないということになると、非常は日米間に不平等、不公正になると思うのですが、如何ですか。損害日本とアメリカと両方の国が賠償しておきながら、アメリカはアメリカの国内法によつて求償権を行使する、日本のほうは実体はあるけれども、事実上は裁判はできないということになれば、日米間の負担に非常な差別ができるわけですが、如何ですか。
  88. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) これは日米両国政府の負担した額に比例して結局求償することになるかと思いますが、行政協定第六條、十八條六項(a)の関係におきまして合衆国軍隊構成員として日本において職務上行なつたことにつきましては、その身分を有する間裁判権を行使できないということになるのは止むを得ないかと思います。
  89. 左藤義詮

    左藤義詮君 もう一つくどいようですが、そうしますと、第一次的には賠償は日米両国が分担しておいて、その分担した分について米国のほうは求償権を行使して、重大な過失をしたものからその賠償を取る。日本のほうは極端に言えば泣き寝入りだ、そういう差別があることは止むを得ない、敗戦国の日本だからこれは行政協定があるから止むを得ない、こういう御解釈ですか。
  90. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) こういうことじやないかと思いますが、今のアメリカのほうの側で求償権を行使するかどうかという問題は、これは向うの立法によるということを村上君が言つたわけでありますが、現実にそういう立法がありますか或いはありませんか存じません。必ずアメリカのほうでその求償権を行使するということは、必ずしもそのまま前提になるとは思いません。これは向うの御都合次第で、向うの御自由であるという趣旨で申上げたのだろうと思います。そこで今のこの国家賠償法の例の求償権の問題は今申しましたように求償権という実体があり、且つその求償権に基いてその償いをしろということは勿論求償権に基く主張としてでき得ることだと思います。それに相手方が応ずればそれで求償権は満足させる。相手方が応じなかつたときに今度は裁判に訴える段階になりますが、そういう段階になりますと、今の十八條の六項が働いて来まして民事裁判権に服しないという関係に出て参りますので、その人が軍人或いは軍属たる身分を失うものは訴訟ができないということに筋途は一応なると思います。従いまして残る問題はこの件に関する限りにおいて少くとも日本裁判所民事裁判権に服しないというこの條文が一体どうだ、面白くないじやないかという問題が重点になると思うのであります。これは思いまするに、まあ大体或る国の軍隊が他の国に駐留しておるという事態のある場合に、その軍隊が一体派遣された受入国の関係の法制上どういう立場に立つものかという国際法の原理の問題に一応なるわけでありますが、御承知通りにその場合に治外法権を持つということはどの国際法の本にも書いてあるわけであります。治外法権の関係において裁判権の問題が当然出て来る。併しこれは抽象的にそういう治外法権があるということは言われておりますけれども、その範囲の問題は実はおのおの特定のこの協定なり條約によつて具体化されてその幅が出て来るわけであります。従いまして幾多の駐留関係の……幾多でもございません、まあこれは最近の傾向でございますから数えるほどしかありませんが、おのおのその協定なり條約においてこういうことをはつきり書いておるわけであります。今回のこの協定におきましても六項という関係でこの民事裁判権の問題を除外しておるわけであります。これもまあ一般国際法の原則として漠然とあつた一つの原則が一つの形として現われて来たということになると思います。而してこの場合は妥当か不妥当かという問題になりますというと、何分向うの軍隊の構成員なり、文民たる被用者というものは公務上の立場においてやつた行為についての問題でございます。個人的な行為についての問題ではないわけでございます。その点において若干この裁判権の例外ができるということは、それほど不妥当なものではないのじやないかという一つの考え方が十分成り立ち得るのじやないかというふうに思うわけであります。
  91. 左藤義詮

    左藤義詮君 只今の御答弁の第一段であります米国では求償権を行使するかしないかわからないというお話でありますが、あれほど権利義務はつきりした国でありますから、一応お調べになりましたら、重大な過失で損害を與えた場合には、恐らく私はアメリカのほうは知りませんが、必ず求償権を私は行使すると思うのであります。それを仮定とおつしやいますが、私はさように信ずるのであります。それでなければ、こういう日本国家賠償法のような法文は意味をなさないのでありますけれども、そうしますと、損害を分担をしておきながら一方の米国はそれに対して求償権を持ち、日本のほうは事実上持ち得ない、只今の第二段の御答弁では、話合の上では賠償するかも知れないが、しない場合には裁判に訴えられる。併し裁判に訴えられるという最後の処置がありますからこそ話合いに応ずるのであつて裁判に全くかけられないものということがわかれば、恐らく私はあなたのおつしやつた話合いもできないと思うのです。そうすれば同じように損害を分担して置きながら、勝利国のほうは重大な過失であるならばそれを求償をし得るし、敗戦国は分担をして泣寝入りになつてしまうということは私は非常にこれは大きな差別じやないかと思うのです。
  92. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) おつしやることは非常によくわかります。又常識的に私の申上げますところに対して又違つた感じをお述べになりましたことも誠にその通りであろうと思います。ただ理窟から申しますと、私の言つたことも間違つてはおらないと存じます。  それからなお、この敗戰国というお言葉ちよつとありましたけれども、これは実は行政協定関係でございまして、平和條約の関係とは私は別に考えております。考えておりますが、然らばこの実体が何故にそれが妥当であるかということになりますと、根本問題はその勝ち敗けの問題でなくして、この安全保障條約の根本精神の問題になつて参りまして結局日本の安全を保障するために駐留しておる軍隊だということがその基礎になつて考えなければならん。甚だ不十分ではございますけれども、一端の気持を述べればそういうことでございます。
  93. 左藤義詮

    左藤義詮君 勝敗云々は私もこだわりませんが、日本が安全保障して頂くのだから、重大なる過失について損害を與えたときには日本のほうは求償権を捨てて、ただ極端に言えば無條件に国家賠償する、米国のほうは求償権を行使する、そういう差別ができることもこれは止むを得ない、こういう長官の御意見と承わつてよいのでございますか。
  94. 小野義夫

    委員長小野義夫君) ちよつと申上げますけれども、今のは一方がまだ不確定の事実、求償権ありや否やという……。
  95. 左藤義詮

    左藤義詮君 その点はそれじや……。
  96. 小野義夫

    委員長小野義夫君) それですから、それを前提に今の結論に入ることができないだろうと思いますけれども……。
  97. 左藤義詮

    左藤義詮君 併し長官に私はお聞きしておるのですから。
  98. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 結局結論を申上げますと、この正当なる理由によつて向うの駐留をここで認めたということから始まるわけでありますが、それについて先ほど触れましたように、正当な根拠に基いて外国の軍隊が或る国に駐留する場合にどういう特権を受けるかということになりますと、これは抽象的に一種の裁判権上の治外法権があるということが学者の本に書いてある。その裁判権についての特権の幅ということが実は漠然とはそういうふうに原則がきまつておりますけれども、具体的の場合については、やはりおのおのの当事国の條約によつてその枠をはつきりしておるというのが今までの扱いで、そしてこの第六項が出て来たわけであります。普通の今までの例がたくさんあると先ほど申しましたけれども、例えば北大西洋條約というものがございます。そういうようなもので、それじやどうなつておるかということになりますと、やはりこういう扱いをしておるのでありますからして、その点はこの平等、不平等というような観念から全然外れまして、純粋に外国軍隊がよそへ駐在する場合の特権の幅としてそこにできておるというふうに御了解願わなければならんのじやないかと思います。
  99. 左藤義詮

    左藤義詮君 願わなければならんと言われますが、一応は了承いたしますが、もう一度長官に念を押しておきますのは、求償権は構成員又は被用者という身分を持つている間は事実上は空文であつて、その身分を離れたときに国がその人に対して損害の賠償を要求することがあり得るというふうに承わつてようございますか。
  100. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 事実上空文というところまで御同感申上げるには……、私先ほど述べたような純理論から言いますと多少気が引けるのでありますけれども、大きく考えましてその通りと申上げておきます。
  101. 左藤義詮

    左藤義詮君 それは一応そうしておきますが、その損害を賠償する場合の予算はどういうような款項目から支出されるのでございますか。
  102. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 予算は防衛支出金の中から駐留軍のための不動産を借上げました場合の賃貸料とか、補償金、その他一般の賠償金、この法案による賠償金等を含めまして、約九十二億円が予定されております。
  103. 左藤義詮

    左藤義詮君 第五條のほうに合衆国の軍隊が使用する施設又は区域内の動産に対して強制執行する場合の引き渡しを求めます場合に、これは軍隊が使用しておるのだからと言うて断わられることが予想されるわけですが、それがいやそうじやないんだというようなことは、一切執行裁判所では論議する余地はない、向うが、これは事実上そんなことはないかも知れませんが、軍国時代の日本の軍隊がやつたように、これは軍が使用しているものだからと言うて断わられたら、もう無期限にそれは引渡しをしてもらえないというような心配はないのでございますか。
  104. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) これも行政協定の十八條第六項の(b)においてはきり約束されておるところでありますし、合衆国軍隊理由なく引渡しを拒むということはまあないことだと考えております。
  105. 左藤義詮

    左藤義詮君 私の今お尋ねしているのは、その点は行政協定に書いてありますが、これは軍隊が使用しておるものだと、こう一言の下に言われたならば、それに対しては構成員の自宅にあるものであつても、もう向うの機関の言われる言葉だけで無條件に引下るべきものかどうか。これに対して何らか認定に対して異議を申立てる余地はないのでありますか、如何でありましようか。
  106. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 執行裁判所のほうで債務者個人のこれは所有であるものと認めて引き渡しを要求したにかかわらず、合衆国軍隊のほうで軍の用に供するものであるという理由で、引渡しを拒みました場合には外交手段によりまして、この法定の履行を要求するということによつて解決するほかはないと思います。
  107. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 内村さんあなた何かあるのじやないですか。
  108. 内村清次

    ○内村清次君 只今民事特別法の問題ですが、第二條にですね、「合衆国軍隊の占有し」と、こうありますね。この占有の問題はこれは例えば占領治下におきましての私有の財産を接収するんだと、こういうような形態のこれは字句ですか、接収をするという……。
  109. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 講和條約発効後でありますから、今国会で御審議になつております土地等の使用等に関する特別措置法によつて、将来私有の財産が駐留軍の用に供するために使用されるという場合もあるわけであります。又政府と所有者との任意の契約によりまして政府が借上げて、これを合衆国軍隊の使用に供するという場合もあるわけであります。合衆国軍隊日本政府なり或いは個人の所有の工作物等を借りて使用しておる場合、これは占有している場合に該当するのであります。
  110. 内村清次

    ○内村清次君 この占有している場合のときにおいてこれを又返還をするという事態は出て参りますか、この法律の内容として、返すというようなことが出て来ることに対しても適用されているのですか、どうですか。
  111. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) この法律の第二條は、占有中にその工作物その他の物件に瑕疵がありまして、例えば石垣が崩れたというようなことで他人に損害を與える場合があります。その場合の被害者に対する賠償の問題でありまして、例えば建物を所有しておつて、それが駐留軍の用に供せられているという場合に、その建物の所有者に建物を返す場合の損害賠償の問題、これはこの法律範囲外であります。先ほど申上げました土地等の使用等に関する法律なり或いは合意によつて政府が借上げました場合には、政府と所有者との間の契約内容に従つて処理されるということになるわけであります。
  112. 内村清次

    ○内村清次君 こういう場合はどうなりますかね、例えば家の占有、これは個人契約、承諾を以てしたが、例えば今あなたがおつしやつたような占有中に石垣が崩れた、それよりもむしろ家屋の構造を変更したのだ、変更した場合のときにおいてその家屋の価値いわゆる価格価値と申しますか、それが非常にどちらかと言えば、価値は上つたかも知れない、そこに向うさんの好みのような改築改造がなされた。が併しながら実際においては日本人としてはそういう様式にはないような改造がされたという場合のときに、こちらとしては損害賠償の、国家賠償の法律によつて、別の法律によつて訴えるようなことができるかどうかという問題です。
  113. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 政府が所有者との契約によりまして建物を借上げて、駐留軍の用に供するという形が最も普通だと思われますので、その場合についてお説明申上げますと、特別に別段の合意がない限りは、民法の賃貸借契約の規定によりまして、借りた人はみだりに賃貸借の目的物の原値を変更することはできないのであります。若し原値を変更した場合にはもと通り戻して返す義務がある。それを若しもとの状況に戻すことができない場合は、賃貸借契約上の債務不履行による損害賠償ということになるわけであります。ただその政府を所有者の間の賃貸値契約の内容といたしましては、民法の賃貸借に関する規定と異つた特約がありますれば、その特約に従つて処理いたします。そういうことになると思います。
  114. 内村清次

    ○内村清次君 そうするとこれは民法の、即ち原状回復のこの項によつて損害賠償を請求するのであつて、この第四條ですが、第四條の規定には適用しないというわけですね。
  115. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 先ほど申しましたような場合は、この法案の第二條範囲外でありますので、従いまして第四條の適用もないわけであります。一般の民法の原則に従うわけであります。
  116. 伊藤修

    伊藤修君 さつき左藤さんからお尋ねがありましたが、さつきのお答えでは簡単にお答えになつておりますが、違法という概念ですね、ちよつとわかりにくいのは、なぜ国家賠償法に故意又は過失という言葉を入れているのに、ここでは抜いたのか。例によるというのでわかるという考え方で抜いたのか、ちよつとその私がわかりにくいのですがね。
  117. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 御指摘になりました通りに、故意又は過失によるという点は、例によるということで国家賠償法なり、民法規定で賄えるというつもりなのでございまして、特に違法にというごときを書きませんでも、国家賠償法や、民法不法行為規定が要件としている以上は同様なことになるのでありますが、第一條條文不法行為上の責任であることを明らかにする趣旨におきましてわかりやすく書くつもりで、この国家賠償法の第一條の書き方を踏襲いたしまして、「により」という字を特に入れたわけであります。
  118. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると、ここに言う違法ということは不法にというような意味になるのですか、どうですか。
  119. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 国家賠償法に言つております違法にというのと同じ意味でありまして、不法にと言いましても同じことだと思うのであります。
  120. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると、軽過失の場合はどうなるのですか、含むのですか。
  121. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 国家賠償法におきましても、国の賠償責任は、重過失のみならず、軽過失の場合も含んでおります。求償権だけにつきまして重過失に限つておりますので、この法案の第一條の場合にも同様の解釈になると思います。
  122. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると、故意若しくは過失があつても違法性がなければ責任を負わない、こう両面に解してよろしいのですね。要件としては、いわゆる故意若しくは過失と違法性、この二つの要件を備えてなければ賠償の請求はできない、こういう解釈になるのですね。
  123. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) そうであります。
  124. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると故意又は過失があつても違法性のない場合というのは、どういう場合を想像するのですか。
  125. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) これは例えば一般の不法行為についても言われますように、正当防衛であるとか、緊急避難であるとか、その他不法行為一般について違法性がないと言われております場合がこれに該当する、さように考えております。
  126. 伊藤修

    伊藤修君 そうしますと、アメリカ軍の軍規に基いてなされた行為というふうなものに対してはどうですか。それによつて生じたところの損害について日本国民が請求できるかどうか。
  127. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) アメリカ軍の規則に従つて行われて、故意若しくは過失もないという場合には、無論第一條の適用はないことになります。
  128. 伊藤修

    伊藤修君 いや故意、過失がなければ問題ないのですが、故意過失はあるのです。アメリカ軍規に基けばそれが許された行為だという意味においていわゆるそれが責任を負わんでもいいのか、いわゆるここの違法という概念の中には、日本法律で言うところの違法性とアメリカ軍の言うところの違法性とがあると思うのですが、その場合においてアメリカ軍の場合の違法性については要件になるのかならぬのか。
  129. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 違法性のほうは、日本法律の解釈としての違法性つまり国家賠償法なり民法不法行為規定の解釈上違法であるかどうかということで定まるわけでありますが、必ずしも合衆国軍隊の規則によつて許されていると申しましても、違法性がないと限つたものではない、かように考えます。
  130. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると、日本国内法に基いての違法性であつても、それがたまたまアメリカの法律若しくはアメリカの軍規によつては違法性にならぬ、適法行為だという場合も請求できるという仰せですね。そうなると、その場合におけるところの賠償請求があれば、国家はそれに責任を負わなければならぬ。そうすると、求償権の場合において日本国だけ責任を負うという場合には、アメリカだけが無責任になるということになりはしないか。そういう点はどうも不合理じやないですか。
  131. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 行政協定にも十八條の三項の(a)でありますが、「日本国の被用者の行動から生ずる請求に関する日本国の法令に従つて云々とありますし、日本国の法令により違法性がある場合には、政府が賠償の責に任ずることをこの行政協定は定めておるわけであります。そうして行政協定によると、日本政府が支払いました賠償額の一部、一定の割合のものをアメリカ合衆国において負担することになつておりますので、必ずしも不公平なことにはならない、かように考えております。
  132. 伊藤修

    伊藤修君 そういたしますと、この場合において職務を行うというような場合において、立証問題についてアメリカ軍としては、それは職務行為じやない、こちらでは職務行為だという認定ができるのですか、そういう場合にはどうですか。
  133. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 午前中に申上げましたように、十八條の第四項によつて両国政府機関の解釈を成るべく一致させる措置を先ずとるべきでありますが、日本裁判所に係属いたしました事件につきましては、日本裁判所は職務執行についての行為であるかどうかという判断は独自の判断をすることができる、かように考えます。
  134. 伊藤修

    伊藤修君 そうすると、その場合においてはアメリカ軍が職務行為でないというような判定をしても、それに拘束されないということははつきり言えるのですね。
  135. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) この十八條の第四項は、この四項の規定による決定が唯一のものでないことは午前中申上げたのでありますが、而もアメリカ側で職務行為でないと判断いたしましても、日本側がその判断同意いたしませんときには、その四項による決定というものは成立しないことになります。従いまして日本政府機関或いは裁判所としましては、アメリカの解釈に拘束されることなく措置できるものと考えます。
  136. 伊藤修

    伊藤修君 あとの御質問もあるでしようからもう一点だけ伺つておきますが、先ほどちよつと左藤さんからお尋ねになつたお答えの中で、飛行機が墜落した場合において、第一條によるのですか、第二條によるのですか。
  137. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) この飛行機の乗務員その他その飛行機の整備等に関係しております駐留軍要員の職務上の故意、過失に基く行為によつて当該事故が発生した場合には、第一條の適用があります。又これら駐留軍要員に故意、過失がない場合におきましても、飛行機そのものの構造なり装備なり或いは修理等に不完全な点があつたために事故が生じた場合であれば、第二條の適用があるわけであります。
  138. 伊藤修

    伊藤修君 その前段の場合はよろしいでしよう。後段の場合に、どういうところでそれは適用できるのですか、飛行機そのものの瑕疵に基くというような場合において第二條で賄えるという根拠ですね。
  139. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 第二條に「土地の工作物その他の物件」とございますが、これには只今申しましたように飛行機も包含する趣旨でございます。
  140. 伊藤修

    伊藤修君 この書き方ですね。「この土地の工作物その他の物件」その他の物件の中にこれは入るでしようか、それはそう解釈できるのですか。
  141. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 実は国家賠償法の第二條にあります公の営造物という言葉にも飛行機とか自動車とかいうものが入るかどうかという問題があるわけでありますが、一般にそういうものも入ると解釈されておるようであります。従いまして、この第二條の物件の中にはこれらのものも包含する趣旨で立案いたしたわけでございます。
  142. 伊藤修

    伊藤修君 国家賠償法審議の際にも非常に問題になつたのですが、その場合と又これは違つて、この場合においては広い言葉になつて来る。殊に前に受ける言葉との関係上そういうものが皆入るということには解釈しにくいようですが、佐藤さんどうですか。
  143. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 その他の物件とは独立した概念なのか、上から受けるのですか。
  144. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 今の国家賠償法との比較と言いますというよりは、むしろこつちのほうが具体的に却つて航空機などは入りやすいように読めるのではありますまいか。
  145. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 これは上のは受けないのですか、土地の工作物その他の……。
  146. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) それは土地の工作物もその他の物件の中に含まれているのです。
  147. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 土地、その他の物件というふうに受けるのじやないのですか。
  148. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) それは土地の工作物、その他の物件と……。
  149. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 そうするとこの二條は、土地の工作物というあとに句読点が入つて、その他の物件とは独立した概念だというふうに解釈されるのですか。それから立つたついでに伺いたいのですが、これはちよつと国語政策上の問題に関係するので、瑕疵というのはいずれも制限漢字以外だろうと思うのだが、もう少し仮名で「きずがあつた場合」とか、或いは「欠点があつた場合」とかいうように……、前にもあつたかも知れないが、前にもあれば尚更ですが、制限漢字を法務府は無視するという御方針ですか。
  150. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 今の前段のほうは、これは点はございませんが、土地の工作物とそれからその他の物件でございますから、今の問題はそれで消滅したと思いますが、次に瑕疵の問題ですが、これは私も実は国語審議会の委員をやつておりまして、その方面に非常に関心を持つております。持つておりますが、一般の国語、文学に使われる国語、少くとも通常の用途に使われる国語の問題と、それから法令に使われますときの漢字の使い方、或いは仮名文字の使い方というものは一番苦労しておるところでありまして、例えば懲役、禁錮という錮の字が金扁に固まるという字で、新聞などで金扁を取りまして固いという字を使つておりますけれども、私どもそこまで踏み切つたらよいかという気を持つておりますけれども、併し普通の今まででき上つておりますところの禁錮という観念と違つた観念が又生れて来る危險性があるのではないかと、そういう臆病と言えばそれきりでございましようけれども、潔癖な心配をしております関係上、この瑕疵というようなことも、今まで御承知のように使われておる言葉でありますものですから、まだ踏み切るだけの勇気を持つておらない段階であると率直に申上げなければならないと思います。こういう点は今現に十分研究を進めております。
  151. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 法令は周知することが必要だということは民主主義の原則です。こんな字は学校では教えていないのです。従つて国民はこれを読んでも何のことかわからないのです。現にわかりません。わからんものを含んで、而もそれについていろいろな損害賠償なり何なりという権利が発生するというのでありますから、そんなことはいさぎよく踏み切られて、法令をして国民に周知せしめるという御趣旨に徹底されるように、これは至急修正せられることが当然だろうと思う。弁駁の余地はないのです。
  152. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 御激励については、大変感謝いたします。
  153. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 今伊藤委員質疑中で、まだ途中のようですが、ちよつと出られてお留守のようですから、どなたか……。
  154. 吉田法晴

    吉田法晴君 第一條の「職務を行うについて」ということですが、その職務を執行しておるかどうかは、行政協定八條第四項で、各当事者決定する権利を有すると、こういうことが書いてございます。そこで、日本裁判所が職務の執行中であるかどうかということを判定するわけですが、実際問題としてそれが職務の執行であるかどうか、これはまあ証人を喚んで聞くということになるのだと思うのですが、行政協定の初めのほうには……、「合衆国の当局は、日本国裁判所における民事訴訟のため証人及び証拠を提供することについて、日本国の当局と協力しなければならない。」というのが六項の中に入つて、前のほうにはないわけです。いわゆる執行中でない場合の六項の場合に書かれておるように感ずるのでありますが、この「民事訴訟のため証人及び証拠を提供することについて、日本国の当局と協力しなければならない。工という点は、一切の場合にこれは入ると、こういう工合に解釈せられるのでありましようか。
  155. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) この証人及び証拠の提供義務に関する規定は、六項に入つておりますけれども、この訴訟手続に関することでありますから、六項に(a)、(b)、(c)と一まとめに書いたのでありまして、十八條の全般に亘つて規定であると、かように解釈いたしております。
  156. 吉田法晴

    吉田法晴君 実際問題として例えば道路をジープが走つておる。そこで轢き殺した、或いははね飛ばして怪我をさしたという例が多いわけです。でそれがこれは田舎のほうへ参りますというと、事故が起つても顛倒して番号が何番であつたかというようなことも実はわからん場合が大部分であろうと思うのです。そうすると何と申しますか捜査と言つてはおかしいのですが、事実の調査も非常に困難で、恐らくこれで行くとその所属しておつた部隊を探して、その部隊の上官と申しますか或いは監督者に証言を求めると、こういうことになるかと思いますが、実際問題としてはなかなか容易でないように思うのですが、併しまあ事実問題になりますから、法律問題を若干離れるかも知れませんけれども、その辺についてどういうような方法がとられるであろうと考えられますのか、その点承わりたいと思います。
  157. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 主として実際問題としてどういうふうに動いて行くであろうかという点について御説明を申上げますが、この行政協定の十八條によりますと駐留軍要員の職務上の事故による場合には国が賠償する。そうしてアメリカの政府がその一部を負担する。一方職務外の行為であります場合には、行為者自身、アメリカの兵隊自身が個人として責任を負うわけであります。個人として責任を負う場合には、日本裁判所裁判権に服するわけでありますけれども、これはなかなか実行は事実問題として困難であろうと思うのであります。只今指摘のように自動車の番号もわからん、又行為者の名前もわからない、所属部隊もわからないというような場合も起るかと思うのでありまして、そこで又一面におきまして被害者が駐留軍の軍人個人を相手がたとして日本裁判所訴訟を起すということは、両国国民感情融和の上から申しましても余り望ましいことではないわけであります。その点の考慮だろうと思うのでありますが、この第五項に先ず被害者のほうから日本政府機関にその事件を申入れますというと、当該官庁がその事件に関するすべての事情を調査いたしまして、衡平且つ公正に請求、即ち賠償額を審査しましてその事件に関する報告書を合衆国側の当局に提出するわけであります。それに基きまして合衆国の当局のほうでは加害者個人に代つて慰謝料を払うか払わないか、又払うとすれば幾ら払うかということを申出て参りまして、その申出でた額に被害者が満足すれば合衆国の当局が加害者個人に代つて支払うということになるわけであります。そこで被害者といたしましてはこれらの事件を取扱いまする政府側の機関に申出ますというと、その機関におきましてこれは日本政府において賠償すべき場合であるか、或いはこの行政協定八條第五項によつて合衆国の当局に慰謝料の支払いを請求すべき事件であるかということを調査いたしまして場合によればこの第四項による合同委員会に付託する手続等も経ました上で、若し政府で支払うべきものとなりましたならば政府の予算からそれを支出する。それから若し個人で負担すべき個人の不法行為であるということになりましたならば、先ほど申しましたような十八條第五項の手続によりまして合衆国当局に加害者本人に代つて支払つてもらうように請求する手続をしているわけであります。かように被害者と加害者との間に立ちましてさような斡旋をし、又事情を調査し、公正な賠償金額を査定する等の事務は只今特別調達庁で取扱うことになりまして特別調達庁のほうでいろいろ手続等も研究中のようてあります。
  158. 吉田法晴

    吉田法晴君 そうすると実際問題としてはこの審議しております民事特別法によつても、実際の手続は、被害があつた、それから日本機関に申出る、日本機関で、ふるい分けてこれは公務中のものである、或いは公務外のものである、そうして公務中のものはこの法律によつて裁判にかける。或いは裁判にかからぬものもありましようが、裁判にかけ得ると、こういうことになる、こういう御答弁であつたと理解してよろしいのですか。
  159. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 只今申上げましたのは実際上の動きがどういうふうになるかということを御説明申上げたわけでありまして法律論といたしましてはそれらの手続を経ると経ないとを問わず、この法律によりまして日本政府に対して損害賠償請求の訴えを直ちに起し得るわけでございます。
  160. 吉田法晴

    吉田法晴君 これは法律を読めばその通りだということはわかりますけれども、例えば先ほど申しましたように相手がわからん、或いはどこの部隊に属しているかわからん。そうすると訴状を書こうにも書きようがない。そういうことで実際には日本政府機関の厄介にならなければならんじやないかと、こういうことをまあお尋ねしておつたわけであります。例えばエアー・ベースがあつて、その近所で、近所の農民が柵に近付いたといいますか、入口に近付いた。それが中に入ろうとしたのか、泥棒に入ろうとしたのか、或いは間違えて近付いたのかわからんけれども射殺されたという事件が相当ございますけれども、これは実際に今までそういう事例の場合でも泣き寝入りであるか、或いはもらつても従来は涙金であつたことも事実でありますが、それがこの法律によつて訴訟を提起し得るかどうかということには、そこまで実際には行つていないのが今までの実情で、今後にしてもそれは相当多いだろうと思います。そうすると実際問題として法律手続になります前には、一応特別調達庁といいますか、日本政府機関で事情を調査して公務執行中であるかどうか、相手方がどうかということを確かめまして云々と……。そうすると証人その他の点については十八條の六項でこれは訴訟手続になつて証人云々ということになれば、これは当然六項の(c)項なら(c)項で証人が呼べると、そうするとその前の場合にはこれは事実上協力を求めるというか、調査に協力を求めることになるのですが、そういうことで調べる。そうしてふるい分ける。それから訴訟になるものはなる。公務執行外のものにしてもそうですが、そこで実際上片付けるか、或いは裁判になる場合には裁判になる、こういうことになるのじやないでしようか、その辺もう一度。
  161. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) その通りだと思います。要するに六項の(c)はこれは裁判所における手続に対する協力規定であります。裁判所外における協力につきましては明文はございませんが、事実上協力を求めるということになります。
  162. 吉田法晴

    吉田法晴君 それからもう一つ、これは協力しなければならないと書いてあるから、恐らく協力が得られる、言い換えると証人なら証人を喚んで聞くことができると思いますが、従来の例から言いますと、その辺に若干のじやない、相当の危惧があるわけですが、それから先は協力ということで、いわば道義的な義務のような感じがするので、得られなかつたときにはどうなるか、こういう疑問が起つて参ります。或いは証言なら証言にしても、正常な訴訟関係が進められるような証言が得られなかつた場合にはどうなるか。この点についてはこれはどういうことになるのでしようか。法規がございませんので、その点一つ……。
  163. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 行政協定の十八條六項(c)には極めて抽象的な形で書いてございまするが、具体的にどういう方法で協力してもらうかという点につきましては、御承知かと思いますが、予備作業班の裁判権に関する委員会というものができまして、そこで両国関係者が集りまして逐次具体的内容を打合せつつあります。証人として喚び出した場合には公務に支障のない限りは出頭し、若し出頭しない場合或いは虚偽の証言をしたような場合にはアメリカ側の軍規に従つて処置するという意向のようであります。この協力義務の具体的内容につきましては、なお今後も継続いたしましてその委員会で逐次できるだけ具体的に定めて行きたい、かように思つておるわけであります。
  164. 吉田法晴

    吉田法晴君 今の話合いの結果は、何になるのでしようか、法律になるかならんかということもございますが、何と申しますか、申合せというのですか、どういう性質のものになりますのか、承わりたいと思います。
  165. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) それは法律というような形でなく、合衆国当局が日本側に対してどういう方針で協力するかということをはつきりしてもらうというだけの趣旨であります。国民の権利義務を直接どうするという法律を以てするような事項を定めるわけではないのであります。
  166. 吉田法晴

    吉田法晴君 これは道路でジープが人を轢いた、撥ねた、それぞれからエアー・ベースの近くで先ほども申しましたような事故がある、それからB二九が落ちたなんという例は、これは明らかでありますけれども、それ以外の事故が相当多いわけであります。或いは例えば朝鮮事変に関連いたしまして、飛行機が飛んで行く、帰える、その途中で補助タンクなり何なり落す、そういうことで漁場の損害がある、或いは演習その他で漁場に損害がある、こういう例が相当ございますが、従来の例はそれが泣き寝入りの場合が非常に多い。これは講和後こういう法律もでき、それから行政協定によつても正当に賠償をされて参ると思うのですが、今までどの程度にございましたか、これは数字が出ておりますものよりももつと倍も、その上も実際にはあつたと思うのですけれども、お手許に参つております数字等について御調査になつたものがありますれば、伺いたいと思います。
  167. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) それじや私からちよつと御説明申上げます。進駐軍関係の事故が実際どれくらいあるかということは、日本側としてはよくわかつていないのであります。ただ先ほど御説明申しましたように、進駐軍関係の事故によつて損害がありました場合には、見舞金を支給しておりまして、その見舞金を支給した件数はわかつておるのでございます。それによりますと、昭和二十一年から二十五年までの分がわかつておりますが、件数にいたしまして合計三千八百五件、それから見舞金の支給額でありますが、合計が約三千三百万円ということになつております。実際の進駐軍関係の事故がこのほかにどれだけあるかということは、ちよつと私どものほうではわかりかねるのでございます。
  168. 吉田法晴

    吉田法晴君 これは希望になりますけれども、実際に三千八百五件やそこらではないと思います。例えば、これは私の乏しい知識から言いましても、福岡県なら福岡県だけをとつてみましても、二十一年から二十五年なら二十五年の期間にしても、出ております数字の何割か相当多数の案件だと思います。正当に賠償をせられる、或いは取扱われるように、これは私どもも努力をいたしますけれども、これはどこの所管になるか知りませんけれども、或いは人権擁護局あたりになるかも知れませんけれども、相当指導をしないと、例えば見舞金の件数について言いましても、先ほど言いましたような或る所での漁場の演習による被害等については見舞金を出されておるけれども、朝鮮事変に関連した補助タンクの投下その他による漁場の被害には全然見られておらん。こういう事例のほうが多うございます。それから例えばジープではねられた云々というのも、私の知つておる限りでは、見舞金をもらわなかつたほうが多かつたというのが実情だと思います。そこでこの法の運用については、これは私どもも考えなきやならんと思いますけれども、法務府においても十分御留意を願わなければ、法は折角作つたけれども、その運用については円滑に行かんということもあるだろうと感ぜられます。その点希望として申上げておきます。
  169. 小野義夫

    委員長小野義夫君) ここでちよつと休憩いたします。    午後三時九分休憩    —————・—————    午後三時五十一分開会
  170. 小野義夫

    委員長小野義夫君) それでは再開  いたします。
  171. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 主として刑事判決の再審査等に関する法律案についてでありますけれども、それに並ぶ民事判決の再審査等に関する法律案、それから民事特別法案、これらに共通する問題でありますが、すでに繰返し質疑をしました。私自身質疑し、又各員からも質疑があつたのでありますが、まだ氷解できない点の要点について改めて、政府の見解を伺つて置かざるを得ないのでありますが、それは言うまでもなく講和後の政治的影響に関係することでありますが、この講和條約及びそれに伴う行政協定などから発生して来る法律案というものが、原則的にいわゆる勝者の敗者に対する命令というものの印象があるべきものでない、原則的にそういうものはあるべきものでない。又あるとそれは必ず収拾すべからざる状況を発生して来る。この点についてはもう異議がない問題だろうと思うのであります。これについて勿論これは原則上の問題であるとしましても、併し現実の上においても極力その方向に向つての努力を政府はなさるはずだと思うのです。これが第一点です。従つて少しでもそういう点を必要以上に譲歩されるということはあり得べからざることである。止むを得ない場合は必要にして十分な限度にとどめるべきであつて、いやしくも必要にして十分な限度を超えてこの日本側の立場というものを縮小せられるということはあつてはならない。又現にここにあるものはこれを除き、或いは将来それを救うという努力を重ねらるべきであろう、これが第一点であります。それで吉田委員からの御質疑の点も、直接にこの刑事判決の再審査等に関する法律案なり、或いは民事特別法案なりに関係しているんじやないんですけれども、併しそれらの背後に、又これらとの関連においての立法上の態度、又それの更に背後をなすところの政府の政治的態度としていずれであるのか、そういう公平並びに対等、又相互という関係を極力努力するという態度にあるのか、或いはそうでないのか、又仮にそうであるとするならば、現に今質疑を行なつております法律案においてもそう理解されない点があるではないかという点に関することだと思うのです。これが第一点です。従つてそれに派生して来る問題としては、再審査に関する法律案に関しては、第二に日本の過去の戦争中において裁判の独立ということを害せられたような事実があるのじやないか、或いはそういう印象が與えられているんじやないか、これは直接には裁判ではなくして、私はむしろ検察なり警察なりの関係において日本がサード・デイグリー的であるという印象が與えられていたんじやないか。それが不幸にしてそれら検察及び警察については救済の方法がないものですから、判決の再審査という救済の方法がある方面についての要求というものになつて平和條約にこれが現われて来ておる。この第二の点について果して政府はこういう不名誉な、或る意味においては昨日でしたか最高裁のほうからの御意見を伺つたときにも現われておつたように、日本裁判の独立という点から、現に最高裁判所においてこれらの法律案を決して喜ばしい法律案と考えていない、こういう結果がここに発生して来ておることについて、第一にはさつきの平等の原則の実現に努力する、第二にはそうした平等の原則の実現に努力することが妨げられる一つ理由としては、日本側においてもこれは或いは直接に裁判じやないかも知れない、検察乃至警察においてであつたかも知れませんが、併しその禍いが裁判に及んで、そうして過去の日本裁判の名誉を低くし、そうして又今後の日本裁判の独立という上にも好ましからざる影響を與えて来る、これらの点について政府はいま少し率直に反省をせられる必要があるとお考えになるならば、率直にその反省の態度を示されることを期待したんですが、今までのところではそれは十分に感じなかつた。昨日も最高裁としても、裁判に関する限りそういう権威を低くせられるような原因があつたというふうには考えられない。むしろ検察なり警察においてそういうふうな憂うべき事実があつたんじやないか、過去においても現在においても今後においても重大な関心を持つというふうに言つておられますが、これらは最高裁判所から手を着けることのできるものじやない。法務府自身の責任に属することですから、それらにおいて、検察乃至警察の関係において生じて来るレベルの低い慣習というものが、日本裁判の独立並びにそれに対する国際的な印象というものの上に悪い影響を與えるようなことについて、過去について反省せられ、現在及び将来について努力を集中されるということのその誠意を我々にお示し下さることができるのかできないのかということが第二点であります。  それから第三点はこれらと、それから大赦などとも関連して来ることでありますが、その前に今の第一の点に関係して吉田委員からも御質疑があつたように、戦争中日本人が外国において若し不当な取扱いを受けたということについてその救済を求められる場合に、それらに対して政府がそれらに協力するという点があつたと思うのです。この第三の問題は今申上げていたのと同じ趣旨において、占領期間中に日本裁判の独立ということ、それから日本憲法の尊厳ということが如何なる意味においても高められたというふうには解釈できないで、或いは低められ、或いは制限せられ或いは一時停止されていたという状況において裁判が、日本側でもそれからアメリカ側においても行われたというような印象を與える事実があります。これもやはり最高裁の御意見として占領期間中に超憲法的な力によつて行われたことが日本裁判の独立及び憲法の尊厳ということにとつて喜ぶべきであるとはいうことのできない影響があるということをお認めになつたんです。それらの解決が今平和條約の発効の際にあらずんば再びその機会を失う。この平和條約発効の機会においてそうした超憲法的な力によつて日本憲法の保障するところの自由というものが制限されていたような裁判、これは外国の裁判とそれから日本国内の裁判両方においてでありますが、これらはこの際一掃されるという努力をせられることが当然ではないか。そうでありませんと我が憲法の尊厳それから裁判の独立ということについて国民が確信を持つて、そうして今後この憲法の下に安心して生活し、今後裁判に対してそれを完全に信頼して裁判を受けるということが困難になりはしないか。そのために裁判所侮辱制裁法案というようなものを出されることは、いよいよ裁判の権威を低くすることである。鞭を伴つてでなければ維持できないような裁判所の権威というものは高いものとは言えない。そういう鞭、鞭というのは罰するという……、裁判所が侮辱制裁法というものを持つていなければ、裁判がやれないという状況になるというようなことは、裁判に対する国民の信頼がないからである。なぜ裁判に対する国民の信頼がないかと言えば、占領期間中に或いは日本側の裁判所に訴えても、それは管轄権がないからといつて却下せられたり、或いは日本憲法で保障せられておる自由が制限せられたりしていたのですから、だからこれらが殆んど唯一の機会である講和発効の際に一掃せられるという努力をせらるべきであるというふうに考えるのでありますが、政府はどういうふうにお考えになるのか。大体以上の三点についてすでに繰返し伺つたことであり、本来政治上の問題にも関係することでありますから、法務総裁自身がお答えを下さることが当然だと思うのでありますけれども、意見局長官が法務総裁に代つてそれらの点についてお答えを頂くことをお願いする次第であります。
  172. 佐藤達夫

    政府委員佐藤達夫君) 最後の三点としてお述べになつた点については、これはいろいろな問題を含んでおると思いますが、昨日ここで最高裁判所のほうの側から言つておりました、占領中却つて間接管理の主義がとられたために、裁判所の権威というものが却つて不利益な形になつた、おかしな形になつたというようなことを言つておりましたが、そういう点は尤もだと思います。併しいずれにしましても平和が回復しますれば、ここでもう新らしく日本が生まれ変つたような立場に立つわけですから、実際もう心気を一新して新たなる、生まれ変つた気持ですべての施策が講ぜらるべきであろうと思います。後のほうから申上げて恐縮でございますけれども、最初に申されましたような第一点、第二点などは、殊に私心に思つておるようなことを、きれいなと申しますか、立派なお言葉で表現して頂いたというような気持を持つくらいでありまして、当局者の心がまえとしては当然おつしやるようにあるべきものというふうに信じております。
  173. 吉田法晴

    吉田法晴君 一、二点法理上の問題をお尋ねしたいのですが、民事特別法案の第五條の「合衆国軍隊が使用する施設又は区域内にある動産に対して強制執行する場合には、執行裁判所は、債権者の申立により、合衆国軍隊の権限ある機関に対し債権者の委任した執行吏にその物を引き渡すべきことを求めなければならない。」、この「物」に対する日本裁判権が及ぶかどうかという点でありますが、人間については行政協定の十八條六項に公用でない場合については「日本国裁判所民事裁判権に服する。」という文句がございます。それが(a)項、そうして(b)項にこの五條と同様の規定がございますが、この五條に書いてあります「物」と日本裁判権の関係をお尋ねいたします。
  174. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 「物」に対する裁判権と申しますか、合衆国軍隊の施設又は区域内にある財産でありましても、債務者の所有である限り強制執行の対象となるわけであります。ただ「物」が施設又は区域内にあります関係上、それを差押えいたしますために、執行吏が施設、区域内に立入る必要がある。それで施設区域の長が同意した場合は無論直接執行吏が立入つて差押えすることができるわけでありますが、施設、区域内に執行吏が立入ることが合衆国軍隊にとつて支障がある場合もありますので、執行裁判所の要請によりまして合衆国軍隊の長がその「物」を差押えて執行吏に引き渡す、そういう手続行政協定規定したわけであります。第五條はそれをそのまま受けて規定いたしたわけであります。
  175. 吉田法晴

    吉田法晴君 説明は、何と申しますかその通りでいいのですけれども、法理関係を聞いておるのですが、今の御答弁の中に施設或いは区域の中にある動産に執達吏が入つて「物」を押えることが許されるならば、できる、そうでなければ持ち出さして押える、こういうことになるかと思いますが、その「物」に対して直接及ぶかどうか。言換えると施設ならば施設及び区域の中にあるから、それは治外法権的に日本裁判権と申しますか、「物」に対しても日本の統治権は及ばん、こう解すべきかどうか。今の御答弁の中にありますように、許可を得て入つて押えることができるならば直接及ぶのじやないか、それを持出さなければ、施設なり区域の外に持出さなければ及ばないのか、そういう点をお尋ねしておるのです。
  176. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 強制執行の対象となる意味におきまして民事裁判権が及ぶと解していいかと思います。
  177. 吉田法晴

    吉田法晴君 そうすると條件付きで及ぶ、こういうわけですか。本来及ぶ、但しその発動に当つて同意を要する、こういう発動の面での若干の制限がある、こういう御答弁ですか。
  178. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) 大体そういう趣旨であります。執行吏が立入るについての成る程度の制限があるということであります。「物」そのものに対する裁判権の問題、裁判権の制限という問題ではないと思います。
  179. 吉田法晴

    吉田法晴君 それからこれはついでにお尋ねして恐縮でありますが、人の場合についても直接この法律関係ございませんけれども、その行政協定八條六項の(a)というのですか、公務執行でない場合は日本国裁判所民事裁判権に服する、これは人について裁判権に服するとこういうことになりますから、そうすると民事関係でも特に公用でない場合、公務執行でない場合については、先ほどの物の場合と同様に人に対しても裁判権が、その施設の中であると外であるとを問わず及ぶと、こういう工合に解すべきだと思いますがそうでしようか。
  180. 村上朝一

    政府委員村上朝一君) その通りであります。
  181. 小野義夫

    委員長小野義夫君) それでは他に御質疑もなければ、只今問題といたしております三法案に対しては質疑は終了したるものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  182. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 御異議がないと認めます。よつて次回に討論採決を行いたいと思いますが、これ又御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  183. 小野義夫

    委員長小野義夫君) 御異議がないと認めさよういたします。   —————————————
  184. 小野義夫

    委員長小野義夫君) ここでちよつと速記をとめまして、それから次の大赦、特赦に関する政府説明を聽取いたします。ちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  185. 小野義夫

    委員長小野義夫君) それでは速記を付けて下さい。
  186. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 今まで我々は刑事判決の再審査に関する法律案、それから民事判決の再審査に関する法律案、それから民事特別法案などを審議して来たのですが、政務次官もよく御承知のように、判決の再審査ということをするということは決して名誉なことでないのです。それからこれは相互的なことじやないのです。日本だけがやるので、向う側ではやりはしないのです。それはよく認識されておられることだと思うのです。それでこういうような法律案を一方において出されるということは、講和発効に伴つて生じて来る日本の状態というものが、完全なる独立と平和という状態ではないという印象を與える慮れがありますよ。いいですか、それで、そこへ以て来て今度大赦の場合に、法律上の何の根拠もない、日本憲法に基く法律上の何の根拠もなくして、いわゆる超憲法的な力で以て、占領期間中の特別な状態においてそれが罪とせられ、そうしてそれに対して裁判が行われた。つまり占領軍によつて日本人に対して行われた裁判です。これに対して、一方においては戦争中日本において外国人に対して行われた裁判で不当なことがあるならば再審査をするというこつちか態度をとるのです。今こつちが戦争中日本人が外国において不当な裁判を受けたから再審査をしてもらいたいとは要求しないのです。併し占領期間中において日本憲法に根拠を置かない、そういう意味において法的な根拠のない、そういう状態で日本国民が占領軍の要求に基いて日本側の裁判所裁判を行なつた。これは日本側の裁判所としてもこれに憲法上の根拠がないのだから、だから日本側の裁判所においてこれについての自由にして独立の裁判が行われなかつた。これらがこの大赦の際に、その他の大赦の各項はいずれも法的な根拠があつて、そうして罪が犯されたものに対してさえも大赦が行われておる。ところが他方においては憲法上の根拠のない、法的根拠のない、そうして占領期間、占領政治下においてそうした異常な状態の下に罪として、日本側の裁判所裁判が求められ、日本側の裁判所裁判したものを大赦しないというようなことは、これは第一にはバランスを失しています。第二には、憲法に対する信頼というものを低め、第三には、占領の継続という感じを與えることがあつても……、これは政務次官よく聞いて下さい。私そういうことを希望しておるのではないのですよ。そういうことがあつてもこれはなかなか弁解に苦しむということになる。そうすると、そういう問題は何らかの政治的意図を持つて扇動の材料となります。アジテーシヨンの材料となりますよ。そうしてそこに紛擾が起つて来る。そうすると又それを警察的、検察的に取締つて行かなければならん。そういう状況に追い込んで行くことは、私は実に悲しむべきことだと思うのです。ですから、政務次官御自身も立派な政治家であられるから、その点について政治的な判断をなさり、又法務総裁にもそれらの点について高邁な政治的判断をなされて、仮に若しもいわゆるOKというものが得られない、そのためにここにこれが除外されておるのだというようなことがあるならば、それは向うに伺つて、こういうものに対してOKをお出しにならないということはどうしても納得できない。そうでしよう、こういうものに対して……、ですからね、最後の瞬間において、或る意味においてこの機会を失すれば、再びその機会は得られないのだから、だからこの際日本政府としては、最後の瞬間に、占領軍に対して、これら日本国憲法を尊重し、日本裁判の独立に対して国民の信頼を高めて、今後の日本の政治的治安状況というものが平穏に行くという大目的からして、こういうものに対してもOKの出し惜しみをされるというようなことには服せないという態度を最後の瞬間においてとつて頂きたい。これは私は決して一党一派の立場に立つというようなふうに聞いて頂いては甚だ心外であつて、そうではない。そのために特に立つて、私は恐らく法務総裁も高邁な政治的識見を以てお考えになればそうであろうと思うので、その点についてどうか愼重にお考え下さり、至急に御考慮下さるということができるかどうか、それを伺つておきたいと思うのです。事実重大な問題です。
  187. 龍野喜一郎

    政府委員龍野喜一郎君) 只今のお説は我々も同感でございます。この恩赦令の立案の根本精神も全く以てお説の通りの立場から立案されておるわけでございます。但しこの立案が如何にもその筋の圧力の加わつたごとき御意見もあつたようでありますが、これは全く以て政府の全責任において、又政府の確信において立案したところでございます。この恩赦令の対象となるものにつきましては、要するに国民感構というものがその基準の大もとになるものでございまして、その国民感情として、かかる者は当然恩恵が及ぶべきであるというようなものについては余すところなく網羅しておるつもりでございます。さような意味におきまして、非公式ながらしばしば国会方面等の御意見も承わつて、大体において国民感情として恩恵を及ぼすべき罪については網羅したつもりでおりまするが、いずれ後刻その詳細については係員から説明すると思います。従いましてその際に又具体的な罪名その他につきましては御質疑願いたいと思いまするが、我々の立案の根本趣旨はその辺にあるということを申上げる程度にとどめたいと思います。
  188. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 大体私の申上げた趣旨には御同感というふうに今お答え下すつたのですが、これはどこを指すかということは特に申上げなくてもおわかりと思うのですが、占領目的阻害行為処罰令に関係しての、率直に眺めまして法的根拠があつた罪に対して今大赦の措置がとられる。然るに法的根拠のない罪に対して大赦の措置がとられないというような状況が事実現われて来ますと、そこにはどうしても問題が発生して来ると思います。そういう問題が発生しないような措置をおとりになることが政府の賢明な方針じやないか、私は決して占領軍の圧力とか何とかいうふうに、その点を申上げておるのじやないので、要点はそこにあるのですから、どうかその点をもう一応御考慮下さるようにお願いします。
  189. 龍野喜一郎

    政府委員龍野喜一郎君) 十分考慮し、又御意見の点は法務総裁にも申伝えるようにいたします。
  190. 小野義夫

    委員長小野義夫君) ちよつと速記を止めて。    午後四時三十九分速記中止    —————・—————    午後四時四十四分速記開始
  191. 小野義夫

    委員長小野義夫君) それじや速記をつけて。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十五分散会