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1952-07-22 第13回国会 参議院 文部委員会 第50号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年七月二十二日(火曜日)    午前十時四十二分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     梅原 眞隆君    理事            白波瀬米吉君            相馬 助治君            木内キヤウ君    委員            木村 守江君            石黒 忠篤君            高良 とみ君            高橋 道男君            堀越 儀郎君            山本 勇造君            荒木正三郎君            矢嶋 三義君            岩間 正男君   衆議院議員    若林 義孝君   国務大臣    外 務 大 臣 岡崎 勝男君   政府委員    地方財政委員会    委員      菊山 嘉男君    地方財政委員会    事務局長    荻田  保君    文部省初等中等    教育局長    田中 義男君   事務局側    常任委員会専門    員       竹内 敏夫君   説明員    外務事務官    (国際協力局勤    務)      甲斐文比古君    文部省初等中等   教育局庶務課長  内藤譽三郎君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○教育及び文化に関する一般調査の件  (奈良文化財保護に関する件)  (東京水産大学校舎に関する件)  (教育環境整備に関する件) ○義務教育費国庫負担法案衆議院提  出)   —————————————
  2. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) これより文部委員会を開きます。  外務大臣が御出席になりましたから、御質疑のあるかたから御質疑を願います。
  3. 堀越儀郎

    堀越儀郎君 行政協定に伴うて駐留軍使用する施設区域決定が外務省の国際協力局先方とにいろいろ予備交渉をなされ、近くきまるのであるか、きまつたか、すでにそういうふうな情報でありまするが、そういう場合に、先方との交渉において、国内事情十分考慮せられること勿論でありますが、殊に政治、経済、文化の面について十分の考慮を拂われるというふうに承わつておりますが、文化の面についてはそういうふうな考慮をお拂いになつて交渉に当られたか、概括的にお伺いしたいのでございます。
  4. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 文化の面に特にこういうふうにしなければならんというきまつた方針というほどのものもないのでありまするが、要するに文化言つてもいろいろありますが、史蹟或いは名勝というような場所、それから今現にやつておる学校等の問題、これらについては勿論史蹟名勝は保存するし、学校については通学の便を図るとか、或いは勉強の邪魔にならないようにするとかいうようなこともあります。それから一般には風紀問題等もありますので、こういう点も考慮しなければならん、これは当然であります。これらの見地から個々の施設区域についてその土地実情等考えていろいろ実際に当つてそういう方面で支障のないようにという趣旨で、できるだけやつておるわけであります。
  5. 堀越儀郎

    堀越儀郎君 この前に参議院で国会の総意の決議教育施設確保ということが決議せられ、その点を十分考慮を拂われておることと思うのであります。日本で一番大事だと思われる古文化財確保只今史蹟名勝というような言葉で御答弁頂いたのでありまするが、当然古文化財確保ということもお考え頂いておることと思うのであります。その点について具体的の一つ例を申上げて見たいと思うのでありますが、これは実際に具体化するのか、或いは單なる一つ風評であるか、或いは内交渉でも進めておられるのか、その点わかりかねるのであります。戰時中でさえも爆撃先方の好意によつて外された奈良京都日本の重要古文化財の多数を保有しておる奈良京都戰禍から免れたその奈良飛行場が設けられるやの風評が立つておる。これは單に奈良という問題だけでなしに、日本の立場から、又日本文化財だけでなしに、戰禍から免れたということは、世界の非常に大事な文化財だという関心の下に行われたと思うのでありますが、更にそういう点に考えて、危殆をかもす虞れがあるような飛行場の設定とかようようなことについては、どういうふうに御当局はお考えになつておるか、その点もはつきりして頂きたいと思います。
  6. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 奈良を例に引いておつしやつたのでありますが、奈良爆撃を免れたことは事実でありますが、それは重要なる文化的ないろいろのものがあるということも、その理由の大きな一つであるには違いありませんが、同時に爆撃する必要もなかつたという実際の事実も考えなければならんわけであります。併しいずれにしても、爆撃を免れたのでありますが、理窟から言いますと奈良飛行場を設けるということが、それじや今度奈良爆撃される理由になるかというと、これは直ちにその二つのことを結び付けるわけに行かないと思います。又仮にこれは理窟だけになりましようが、奈良でなくても奈良の極く県境大阪なり、どこなりの県境飛行場を設けたらどうなるかということにもなるのであります。飛行場を設けるということは、その飛行場爆撃される。従つてその奈良附近文化財が破壊されるというふうにすぐに結論を出すことは私は間違いであろうと思つております。実際の話といたしましては、奈良飛行場を設けるというようなことは、アメリカ側からは一度もまだ言つて来たことはありません。従つて我々のほうでも一度もそんなことを考慮したことがないのでありまして、恐らくいろいろ大阪附近伊丹飛行場についていろいろ陳情があるものですから、その換地でも探すのじやなかろうかというような臆測からそういう噂が出たかも知れませんが、事実上は今のところ何も話はありません。又仮に話が将来出たとしましても、政府としてはこれは具体的にどんなものであるかわかりませんから一概には言えませんけれども、奈良等にはそういうものを設ける必要はなかろうと考えておりますので、その方針で、仮にそれが出たとしてもするつもりでありますが、今のところ全然こういう話はないのであります。
  7. 堀越儀郎

    堀越儀郎君 今の御答弁でよくわかるのですが、飛行場ができても、すぐに爆撃の的になるものでないという御答弁、これも一部さようにも考えられるのでありまするが、当然基地ができれば、万一の場合は爆撃の的に真つ先になることも考えられますのと、もう一つは従前からの経験から見ましても、又今月に出ております文芸春秋のあの飛行機の話なんかをお読み頂いてもわかりますように、旅客機については非常に十分なる注意をされているが、軍用機、戰闘機については進歩の途中にあつて更に前進するので、危險な飛行というようなことも考えられます。現在立川の飛行場においてもよく事故があることを聞いておりますので、單に爆撃ということだけでなしに、普段の事故ということをよほど考えられなければならん。こういう点も御当局十分考慮せられて万一そういうような場合には重要な日本文化財を守るという意味において、できるだけの一つ考慮を拂われることを希望いたしたいと思うのであります。
  8. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私は教育施設の問題と、それから伊丹飛行場擴張の問題について外務大臣にお尋ねをいたしたいと思います。初めに教育施設の問題でございますが、アメリカ駐留軍に対して提供する施設の中で、教育施設は除外されるものと我々は考えておるわけなんですが、現在政府はどういう態度でアメリカと折衝しておられるか、その点を先ず伺いたいと思います。
  9. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 教育施設は除外する方針で話をいたしております。
  10. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 そういたしますと、現在なお相当の数に上る教育施設接收をされておるわけです。こういう施設はそういたしますと、近い機会解除になると、かように了承して差支えがないかどうか。
  11. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 近い機会という期日もいろいろ考え方があると思いますが、大体において今入つておる場所換地と言いますか、それに代る建物ができれば移る、こういうことです。
  12. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私の考えでは、駐留軍に提供する施設について取極めが近く決定されるのじやないかと思います。その決定の時期においては、接收解除、或いは施設提供についてそういうふうになるべきだと考えておりますが、そういう時期において教育施設が返還されるものだというふうに考えるのですが妥当であると思うのですが、そういう意味合ではないのですか。
  13. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 今話合いをしておるうちにもずつと駐留軍のおる限り継続的に使用したいというのと、代りができるまで一時的に使用したいという二つ種類があります。教育施設でも今すぐにあけられない、ほかに持つて行くところがないというようなところは、一時使用の場合もあり得るわけであります。
  14. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 そうすると永久的に使用したい、こういうふうなアメリカ側の意向のある施設があるわけなんですね。これに対しては政府はこれに応じない、こういうふうに了解して差支えございませんか。
  15. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 永久的というと少し言葉が大げさなんですが、元来日米安全保障條約というのは暫定的なものであります。早く先方引揚げたいと思つておるのですから、永久的というのは無論ありません。日米安全保障條約に基くアメリカ軍隊の駐屯が続く間はいたいという種類施設、その中には教育施設、これは教育施設言つても広義に解釈すれば軍の使つてつた教育施設というようなものもあり得るわけであります。そうでない普通の教育施設というものはこれは除外いたしたい、こう考えております。
  16. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 教育施設の問題につきましては参議院においては決議にまでなつておりますので、これは行政協定に伴う細目決定に当つては十分善処せられることと思うのでありますが、速かに教育の用途に使用できるように一つ御配慮頂きたいという希望を申上げておきます。  次に伊丹飛行場の問題でございますが、この前に関係の農地部長でございましたか出席を求めて質問いたしたのでございますが、結論が明白でございませんでしたので、重ねて大臣にお伺いしたいと思います。最近の新聞によりますと、駐留軍に提供する施設のうちの飛行場施設、これについては一部閣議決定を見た、こういうふうに報道されておるのでございますが、これはどういうふうになつておるか、先ず伺いたいと思います。
  17. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) まだ施設については一つ閣議決定を見ておりません。
  18. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 そこで私のお尋ねしたいのは、伊丹飛行場の問題でありますが、これは地元当局の者或いは一般市民代表者たちがしばしば政府に対して陳情をいたしておりますので、その内容はすでに十分御承知のことだと思うのですが、伊丹飛行場は非常に特殊な位置を占めておりまして、池田市、豊中市、伊丹市という三つの衛星都市の中間に設けられておるわけなのですが、今度この飛行場擴張されるのではないかということで非常に地元では心配しておる。心配しておると申しますのは、擴張によつて非常にいろいろ影響するところが大ないわけであります。農村に対してもそうですが、或いは教育方面に対する影響或いは風紀の面から考えあすこはああいう三衛星都市真ん中に挾まつておるのであつて、殆んど擴張は困難な事情にあるというふうに考えられるのでありますが、この問題について政府のほうではあすこ擴張することに同意せられないと私は考えておるのですが、どういう経緯になつておるか御説明を願いたいと思います。
  19. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) すべての飛行場は最近ジエツト飛行機ができてから、これらは非常に速力が早いものでありますから、滑走路の長さが、前のものでは皆短くなつてしまつた。そこで飛行場滑走路を長くしなれば使いものにならんという実情であります。そこで伊丹飛行場滑走路を長くする必要があるのであつて、それがためにいろいろ測量等をして見ますと、かなり農地があるところですが、やればできないことはないという状況であります。ところが地元のほうはこの農地というものは非常に集約的にやつておるので、ほかの農地とは違い、又そこには非常に重要な水路があつて、この水路滑走路のために中断されてしまうとこれ又非常に困る。又ジエツト機等は非常にやかましいものだから、これが始終飛ばれては、学校で授業するにもやかましくて差支えがある、まあいろいろの理由から困るという話は御承知通りであります。そこで我々のほうから言えば、実は日本の安全を守つてもらうための軍の施設でありますから、必要とあれば犠牲を拂つて当然この施設を提供すべきが政府のやるべき仕事であります。ただ若しそういうような都市真ん中にあつて、いろいろの事情がある。そういう場所であるならば、はかに替地があつてそこでも差支えないというならば、できるだけ移つてもらうか、或いは今の飛行場はそれだけにしておいて、ほかにもつと必要なものを建設するか、いづれかにしてもらいたいと考えるのはこれ又当然であります。でどの程度伊丹飛行場必要度があるか、そうしてこれを補うべき他に適当な地域があるかどうかということで、只今いろいろ調査をいたしております。我々の考えでは駐留軍の機能を損失しない範囲で他に替地があり得るならば替地を求めて、伊丹は少くとも現状以上には擴張しないで行きたいとこう考えて、いろいろ各方面調査を進めておるような実情であります。
  20. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私から詳しくあそこの事情説明する必要はないと思いますが、特に考慮してもらわなければならない問題は、この池田豊中伊丹という三衛星都市文化的ないわゆる住宅地帶として発展しておるわけです。又教育都市としても非常に成果の上つておる都市なんであります。そういう点からあの狭い所に、丁度町の真ん中と申してもいいと思うのですが、そういう所にそういう飛行場擴張するということは、やはり人心に與える影響も決して私はよくないと思う。そういう配慮も当然せられなければならないというふうに考えておるわけなのです。それから教育施設の問題といたしましては、あの飛行場の周辺には相当数学校があるわけであつて、今後ジェツト機相当あれを使用するとこういうことになれば、殆んど授業も十分できないのじやないか、こういう状態に私はなると思う。そういうふうにあの飛行場というのは、先ず都市真ん中にあると考えてもいいと思うのです。そういうところを擴張する、こういうことは他に方法を求めて、そういう擴張は避けてもらいたい、こういう私の考えであります。私も豊中市に住んでおりまして、その実情はよく知つておるわけであります。これは十分考慮をして頂きたいということを申上げて質問を終ります。
  21. 高橋道男

    高橋道男君 奈良にR・R・センターが現在ありますが、そのことについて地方から陳情があつた場合に、伊關局長がその移転について考慮してもよろしいというような御内約があつたようなことを地方新聞で見たのでありますが、そういう事実があるのでございましようか。あればどういう対策をしておられるのでございましようか、それを伺いたいと思います。
  22. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) このR・R・センターと言いますのは、朝鮮から帰つて来た軍人たち休養設備でありまして、レスト・アンド・レクリエーシヨン、休養と何と言いますかレクリエーシヨン、そのためにR・Rと書いておるのですが、その中心になつておる。そこで相当数人々奈良に帰つて来るわけであります。これら朝鮮戰線でかなり長い間働いておりまして、月給がいわばそのまま残つておる。従つて一人当り相当大きな金額を持つて帰るわけであります。そこでその金を狙つてと言つちや語弊があるかも知れませんが、いろいろ接官婦が来たり、ぽん引きが来たり、いろいろな連中が集つて来て、そのR・R・センターを取巻いてやつておるわけであります。これはアメリカ側でも非常に弱つておるのであります。何とかしてて日本側取締つてこういうあやしげな人々を近付けないでもらいたいという希望は前々からあるのであります。ところが日本法令ではどうも取締るということもなかなか困難で、これは警察なりその市町村が特に力を入れればできないことはないのでありますが、とかくその取締りが十分でない。片方は金を持つておる兵隊で、短期間日本に来てゆつくり休養して楽しもうという人々でありますから、どうしてもそういうのが来れば、それに引つかかつてしまうというので、風紀の問題も出て来るような事情でありますが、これはR・R・センターという性質から言つて、何もない山の中にポツンと建てたところで、これはそれじや朝鮮にいても同じことじやないかということになるので、やはり文化的な施設があり、景色のいい所、或いは休養設備もあり、ほうぼう見て歩いたり、和やかな気持で朝鮮戰線の苦労を忘れるという意味でありますから、どこかそういうような所に設けなければならないわけでありますが、どこへ設けても、そこへわつとやつて来るものでありますから、日本側取締相当徹底しないと、どこへ行つても同じような苦情が出るわであります。従つて奈良地方人々陳情は、これは誠に同情すべきことであり、そこにおる人は何も罪はないわけであります。ただそこにたまたま休養兵隊が来て、そこへ日本中からいろいろな人が来るものだから、厄介なことになる。それでできればよそへ移すということも考慮してやりたいと思つております。おりますが、よそへ持つて行つても、同じような條件の所に持つて行けば、同じような苦情がやはり起るのであります。そこで日本側においても、これは相当程度取締つて余り無茶なことのないようにしなければならない。これはお互いの問題であつてアメリカの側だけが惡いというわけにも行かないのであります。そこで最近殊に多勢の人、日本側のこういう接客婦その他の人々が集りまして、大分問題を起しておるよう……、問題というのは特に大きな問題はないのですが、風紀上いろいろの点で困つたような状況も見られますので何とかいたしたいと思つております。奈良という特殊な事情もありますから、ほかに適当な場所があれば換えたいとも考えておりますが、果してどうなるか、これは向うと話合いもしてみなければわかりません。まあそういうふうに両方のほうの取締注意によりまして、余り厄介な事態にならないように努力いたすつもりでございます。
  23. 高橋道男

    高橋道男君 R・R・センターは今日本で数はどのくらいあるのですか。
  24. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私はよく数は知りませんが、そうたくさんはないと思います。
  25. 高橋道男

    高橋道男君 そのR・R・センターについてのいろいろな細かなことを伺いましたが、その駐留軍に対する、或いは内地の接客業と申しますか、そういう方面に対することも、やはり行政協定のうちに含めて御交渉できるのでございますか。それは先方先方、それからこちらの日本人日本人、別々の取締り対策を、これは行政協定以外として考えねばならん問題なんでございますか。
  26. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 合同委員会話合いをしまして、併し取締り日本側のものは合同委員会等ではできないのであります。行政協定でも無論できません。日本側法令に基いて日本側取締るわけであります。
  27. 高橋道男

    高橋道男君 先ほど堀越委員質問に関連するのでありますが、奈良には飛行場は設けないという方針のように伺いましたが、これは單に飛行場だけ設けないという意味に解すべきか。或いは作戰基地としての一つ軍事基地を設けない、R・R・センターはこれは別ですから別に考えなければならんでしようが、そういう作戰基地は設けないという広い意味に解釈してよろしうございますか。
  28. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 現在奈良ではアメリカ側のキャンプがありまして、これは昔の軍の連隊司令部、それからその練兵場、又岐阜の航空整備学校奈良の分校、それから元の陸軍の射撃場及びそれに附属する住宅地区街これだけ使つております。この程度のものはやはり依然として必要であろうと考えております。これは大して問題になるような地域ではないのであります。それ以外は別に奈良においては特に必要なものはないだろうと思つております。
  29. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 外務大臣にお伺いいたしますが、駐留軍使用する陸海空軍用接收地は、講和條約発効後九十日の満了である本月二十六日まで全部最終的に決定いたしますかどうか。
  30. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは全部最終的に決定しない場合も考えまして、行政協定のときに万一きまらないものがあつたならば、きまるまで暫定的に現在の地位におれるということにいたしておりますが、事実上は決定はいたし得ると思います。最終的といいますか、とにかく決定はいたし得ると思いますが、ただその決定の中でこちらからこちらへ移る予定のところが、こちらの建物がまだできておらないというようなものは、一時的にこちらにいるというような決定になると思いますが、とにかく決定はできると思います。
  31. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それでは陸上演習場或いは飛行場の問題で、新たに接收されるのじやないかとか、或いは地域が覆えされるのじやないかと随分心配しておる向きの土地があるようでございますが、本月二十六日を経過したならば、先ず新たに接收されるという懸念はないと、こういうふうに考えてよろしうございますか。
  32. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 原則的にはそうお考えになつていいと思いますが、これは行政協定にもはつきり書いてありますように、今これは接收という言葉は惡いので、もう接收ではありませんが、米軍使用しておる施設なり区域なりでも、合同委員会で常に注意をしてこれを観察しまして、不必要になればいつでも日本側に返還する。それから又将来新らしく必要なものがあれば、これは双方会議の上提供することがあるということになつておりますから、一遍きめたらもうそれきりだということじやありません。そのうちでも返つて来るものもあれば、又新らしく要るものもあり得る理窟であります。併し原則的には今度きまればまあ当分はそれでいいであろう、そう新らしく又必要な土地が急に出現するということも今のところ考えられないのであります。
  33. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 殊に九州あたり朝鮮戰線の戰況が非常にその都度々々影響するようでございますが、私は外務大臣にこの際お聞きいたしたい点は、現在合同委員会を通じて折衝中であり、すでに又接收済みのものもあると思うのでございますが、それらの陸海空駐留軍使用地というものは、数及び面積の点において、曾つて日本陸海空軍使つた数及び面積との大体の割合というものはどうなつておりますか。ということをお伺いするわけは、ともかく我々が想像している以上に武器が発達している。従つてその陸上演習場にしても、或いは飛行場にしても、或いは海上の演習地域にしても、非常に広大に使用されて、そのよつて来るところ生活権というものは非常におびやかされるのじやないかということを国民は懸念いたしておりますので、数の面から、更に面積の面からお伺いいたしたいと思います。
  34. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私は今ここで資料を持合せておりませんから、元の日本軍隊使つていたものと、今のものと比べるわけにはちよつと行きませんが、これはどこか前のものを調べてみないとわかりません。が、この占領中にアメリカのみならず、これはいわゆる占領軍使用しておりましたいろいろの施設或いは区域、いろいろなものがたくさんあるわけであります。それは私の知る範囲では、ただ一軒の家とかなんとかいうのを除きますと、大体数にして三千幾つあつたかと思います。それが数にしますと勿論三分の一以下に減つていると思います。これは数にしてでありまして、例えばなんといいますか、家屋接收解除家屋が例えば何千軒あつたとしまして、そのうちの接收解除したのが何千軒であるというような数を勘定しての話でありまして、演習場練兵場等はかなり今まで使つてつたものを使うことになつておると理解しております。併しいずれにしても、占領中のものよりは相当程度つておることはこれは事実でありまして、その半面、先ほども申した通り飛行機の新した型ができましたために、滑走路はいずれにしても延ばさなければならんというようなこともありまして、一部擴張したものもあるわけなんです。それを比べてみてどうなりますかというと、これはもう占領中よりは減つていることは無論明らかでありますが、今ちよつとどの程度つておるか。ここにはその数等は持合せておりませんが、今これも記憶でありますから正確じやありませんが、一般施設区域等は従来は三千五百余りです。それが今度は約七百ということになつたという話であります。大体今私の申した程度だと思いますが、ここに資料を持つておりませんから詳しいことは申上げかねます。
  35. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 もう一つお伺いいたしたい点は、陸上並びに海上について、それぞれ分科委員会を持たれて、相手方と交渉をされているようでおりますが、一つ演習場の問題が起つた場合に、地元駐留軍交渉をいたしますというと、地元駐留軍は、これは東京でやるので我々地元の意向というものは全然取入れられないし、我々にもわかつていない、こういう回答を日本側にするわけです。今度は中央に来て承わるというと、実際その演習場を使うのは出先の駐留軍が使うのであるから、現地部隊の意向を重く取入れて、そして決定されるのだ、こういうように中央で言われて、一つの問題が起つた場合に、国民はいずれに当つてつたらいいか迷つているわけです。それともう一つは、合同委員会は、一対一で取扱わるべき性格のものになつているわけですが、どうも海上についても、或いは陸上についても、向うさまが相当に強くて、日本側の折衝は一対一に行つていないらしいというような不安を国民は非常に持つているのですが、一つの問題が起つた場合に、国民はどういうルートを通して国民の意思というものを十分反映さしたらよろしいのか、その点一般的な演習地が使用されるとか擴大される結論に到達するまでの経過というものを一応ここで御説明願いたいと思います。
  36. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは占領終了直前頃に、参議院の外務委員会等でも問題になつたのでありますが、現地の部隊が、急にここが要るのだと言つて地域占領中でありますが、独立直後に接收したり、又占領軍地元の連中に話をして、ここのところは提供しろというようなことをやつたりしていろいろ弊害がありましたので、現地部隊は一切そういうことに口を出すことを禁ずるように要求いたしまして、先方でも現地部隊が地元に対して何とか言うことはすべて禁じております。問題は中央で決定する、合同委員会決定する、ほかでは一切そういうことをやるべきものではない。但し合同委員会地元、つまり現地の国民のほうの意見も十分取入れて考える、又そこにおる駐留軍の必要ということも十分取入れて考える、現地の日本側の意見は合同委員会日本委員がこれを十分考慮してやる、軍側の意見は、アメリカ合同委員会委員がこれを代表して話をする、そこで話をいたすわけであります。これにつきましては、更に合同委員会委員だけでもわかりませんから、それが農地である場合には、農林省の局長等を分科会に入れまして、そうしてやるし、又それが海でありますすれば水産庁の代表者を入れて、そうして漁民の利益を代表してそこで十分発言をさせる、こういうことにしてきめるわけであります。なお一対一になかなか行かんというお話でありますが、それは若しできるだけアメリカ施設を提供しないという考えでやるとすれば、そうは行つておりませんからあなたのおつしやるような意見になるかも知れません。併し我々は日本を守つてもらうためには、できるだけアメリカの必要な施設は提供いたしたい。そうしてここで十分機能を発揮できて、万一の場合には十分にその実力を発揮できるようにいたしたい。こう考えておりますから、できるだけアメリカの必要とするものには応じる考えで協議をいたしております。従つてそういうやり方をとつておりますから、日本側委員は弱腰であるとかいうようなことになるかも知れませんが、それは事柄の性質が日米双方の協力によつて成立つものであるという点をお考えになれば、これは強腰とか弱腰とかいう問題ではないと私は考えております。
  37. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 今の岡崎外務大臣の発言は、それぞれの立場において批判の余地もあると思うのですが、政府は少くともそういう根本的な立場に立たれておるならば、全国各所に起つておるところのうこいう駐留軍使用地の問題について、その政府のとつておる基本的態度というものを国民によく了解できるように、周知方に私は特に努力して頂きたい。それによつて政府はどういう基本的態度を持つて臨んでおるかということがわかるのでございましようし、又それに対する国民の運動、その土地使用されることについての或いは陳情、或いは反対の運動に対する一つの私は方向も得られると思いますから、是非私は政府のそういう方針がよく末端まで滲透するように方法を講じて頂きたい。それほどに政府が基本的な立場に立たれておるということを末端の国民諸君は知らないで、私は動かれておる人が多いと思いますので、その点要望いたしまして私の質問を終ります。
  38. 岩間正男

    ○岩間正男君 先ほどのお話だというと、大体駐留軍に提供する施設区域というものは、二十六日までに大体きまるということでありますが、昨日の毎日新聞を見ますと、殆んど合同委員会結論は出ておる。そうして二十二日の閣議にかけていずれ発表される。こういうことになつておるのですが、二十六日までにこういうものがはつきりわかりますか。公表の方法をとられますかどうですか。
  39. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 毎日新聞に出ておるのは何ら根拠のあるものではありません。ただ誰にでもこれは当然調べればわかるような大きなところだけを引つ張り出して作つた作文だと思つております。あれは数を勘定されてもそうたくさんはないのでありまして、もつと数は多いわけであります。そうして二十二日の閣議新聞にあつたと言われますが、これも根拠のないことは、現に本日が二十二日であります。本日の閣議には提出しておりません。併し恐らく二十七日ですか……。
  40. 岩間正男

    ○岩間正男君 二十六日です。
  41. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 二十七日と思いますが、とにかく九十日の期間内には決定を見ることと信じております。今急いでやつております。発表はこれは又別問題で、一日や二日遅れることはあるかも知れません。が、我々として遅れないでできるとは思つております。いずれにしてそういう予定で進んでおります。  なお、先ほどお話のありましたこれらの問題をできるだけ周知方然るべきということは、これは尤ものお考えであります。我々もそういたすつもりでおりますが、現に合同委員余に出ております国際協力局へは実は何十という陳情団が毎日ずつと来ておりまして、殆んど事務に差支えるくらいたくさん来ておるのであります。併し我々はできるだけ地元希望も聞く、希望を容れるかどうか、これは別問題でありますが、できるだけ地元の意向を聞く、そういういい機会でありますから、陳情団が来ることは決して拒まないのでありまして、殆んどあらゆる施設について陳情団、これはまあ極く小さなものは別ですが、聞いておるのであります。それらはすべて記録して研究の材料にいたしております。
  42. 岩間正男

    ○岩間正男君 それではまあ近いうちにこれは公表されるわけでありますね。そのとき今まで占領軍接收されておつたものが解除返還されると思うのですが、こういうものは返還されることになるのでしようか。これは当然九十日以内に、まあ一、二のそういう引つかかりのところはあり得ると思いますが、原則的には殆んどこれは占領時代のもので合同委員会の議題にのらなかつた。こういうものは返還されるとこういうふうに原則的には了解されると思うのですが、そういう点はどういうことになりますか。
  43. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 合同委員会で合意に達したものを発表するのであります。合意に達したものだけが駐留軍の用に供せられ、それ以外のものは用に供せられない、こういうことになります。
  44. 岩間正男

    ○岩間正男君 そうすると合意に達しないものは全部解除されるとこう考えていいわけですね。で、その期限は原則的にはもう二十六日とそういうふうに了解していいわけですね。
  45. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 原則的にはその通りであります。ただ実際問題としてそこには或る、例えば家を立退く……、ところがそこにいろいろの家具その他人が住んでおるというと、それは立退く期間も何日かありましようし、それをどこへ持つて行くかという施設を作らなければなりませんから、そこに多少実際明渡し等につきましては時日のズレがありましようけれども、原則的にはきちんときまるわけであります。
  46. 岩間正男

    ○岩間正男君 そうすると、まあいろいろ今話されたような都合で二十六日までに返還されないものに対して、今度日本側としてはこれに対して返還の要求をする発言権が擴大するとこういうふうに解釈していいわけですね。
  47. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 今のはちよつとはつきり御質問の趣旨がわかりませんが、このきめた中には、先ほど申したようにもう行く先がきまつておるのだけれども、まだ移れない。その先が全部はできていないというのは、一時使用という形で、できるまで置くということが協定のその中にあるわけであります。こんなのは移つてしまつていればそれきり。であるから合意に達したものだけが結局最終的には残るのである。それは我々の合意に達したものである。もう一つは、合意は合意であるけれども、一時的にはここに置くということであつて、どこか行く先ができたときには、速かにそこに移るというそういう合意のものもある。そのほかのものは一切従来の接收はなくなつてしまう。
  48. 岩間正男

    ○岩間正男君 そうしますと大体合同委員会で本ぎまりに……、まあそこのところはこれは恒久的に、まあ半永久的と言いますか、そういうふうに使用するのだという了解に達したものと、それから一時使用、そして而もその線から今の合意に達したものが外れておりまして、而もその行く先がまだきまらない、こういうために大多数知つておらない、こういうものに対しては日本側としては早くそれを返してもらうように発言する可能性は擴大して来るわけですね。
  49. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これはもう発言の擴大も何もないので、例えば一つの例を申してみますと、そこの近所に大蔵省のビルデイングがあります。大蔵省の建物はこれは当然よそへ移ることになつておりますが、その移るものができておりません。従つてこれは移るほうの建物は例の五百六十億の安全保障費の中から建設したりするのであります。こつちを早く作りさえすれば、できさえすればこれはできる。従つて発言の擴大とか何とかということはありません。当然あり得ることになつておる。早く作りさえすればいい、こういうわけです。
  50. 岩間正男

    ○岩間正男君 それでは具体的にお聞きしますが、返還の施設の中で、この前から問題になつておりますところの月島とかその他あつたわけですが、特にここでお聞きしたいのは、海軍経理学校です。品川のこの海軍経理学校の分校をこれを水産大学に充てたいということで、御承知のように水産大学の行く先の問題は、現在予備隊に取られておるところの越中島のあの施設になつておるわけです。それを長期間に亘つて折衝したのですが、うまく行かない。そこで最近海軍経理学校が返還されるということで文部省が非常に乗気になつて、これの促進方を現にこの委員会においても大臣は表明しておるのです。それから大蔵省の管財局でもこれは優先的にこれを水産大学に充てるとこういうことを言われておる。それで国際協力局としてはこれはどういう実情になつておるのでありますか、この点先ほどの質問と関連しまして見通しですね、いつ頃これがこちら側に返還されることになつて、そしてまあ今の希望が達せられるかどうか、こういう点について伺つておきたい。どうなつておるのですか。
  51. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは私も前から聞いておりましたが、ただ聞いておる内容が多少違うのは、元の月島の学校、これが駄目だからこつちへくれというのじやなくて、あれよりも品川のほうがいいからあれはどうなつてもいいが、とにかく品川を確保してくれという話でありました。そこでこの問題を先方と話しまして、合同委員会では原則的にはもう返還に話合いがついております。従つてあとは時期の問題でありますが、これにつきましては、その移転先等の準備の進捗にもよろうと思います。その点はどうなつていますか。ここに次長が来ておりますから、次長から御説明いたします。
  52. 甲斐文比古

    説明員甲斐文比古君) 品川の経理学校でありますが、只今大臣から御説明いたしましたように、返還についてはすでにアメリカ側の了解を取つてございます。ただこの移転先を具体的に申上げますと、世田ヶ谷の用賀に一つ国有財産がございます。そこへ移転する予定になつております。ただこれは同じく文部省所管の衛生試験所が一部使つておりますので、この話がまだはつきりと付かないために実はこの移転が遅れておる。この経理学校解除が遅れておるという現状でございます。世田ヶ谷の衛生試験所のほうとは現在交渉中でありますため、早急にそちらの問題が片付くと思いますので、その上でこの施設を補修して引越すことになると思いますので、まだはつきりしたことは申上げられませんが、この間半年か半年以上かかるという予定でございます。
  53. 岩間正男

    ○岩間正男君 大分今のお話をお聞きしますとこれは長い話になると思う。我々も現地を視察したのですが、現にボイラー修繕をしておる。これはどうもおかしいな、間もなく返されるのだろう、こういうことで視察して見ますと、ボイラーを修理しておる、こういう形でありますから、おかしいなと思つて実はお伺いしたのですが、そうしますと衛生試験所が、これが移つて世田ヶ谷の用賀のその施設が明渡しにならなければ移れないとこういうことになるわけですね。
  54. 甲斐文比古

    説明員甲斐文比古君) そういうわけでございます。
  55. 岩間正男

    ○岩間正男君 どうも話がおかしいと思つておる。というのは水産大学の問題はこれは非常に緊迫した問題で、昨年の今頃問題が起りまして、我々も視察したわけです。それからこの委員会の決議によりまして、文部大臣とそれから予備隊の担当の大橋国務相も視察を願つたわけです。ところがこれは全くひどい施設なんです。御承知のように便所を改造して研究室に二、三個所も充てておる、こういう恰好なんです。予備隊に七割も施設を取られて三割のところに押込められておる。而も今年度は人員を増員して一千人もそこに收容しておる。こういう形で非常に事務に影響するところが多い。殊に予備隊と学生との間に対立が起つて来る点が多いので、この点はまずい。こういう形で我々も昨年の夏に大橋国務相の出席を求めて大体まあ六月頃にこれを解決して欲しい、こういうことで大体の了承がついておつたのです。ところが本年の六月になつて一向解決の途が講じられそうもないので、又問題が非常に具体化して来たのでありますけれども、そうしますと今のような形でやつて行くというと、まだ半年後かも知れない、半年後も余り当てにならないと、こういうことになりますと、私は非常に影響するところは大きい。大体水産大学のほうでは新学期開始ぐらいまでに返されるということを了承で進んでいると思うのですが、そこに随分大きなズレがあるのですが、私が先ほどお聞きしたのは、つまり合同委員会で一応これは返還するんだと、こういう了解点に達したものについては、少くともこれは行政協定によりまして、若しくは日米安全保障條約によりまして当然九十日後における発言権というものは、少くとも日本側の発言権というものははつきり主体的な性格を持つていいじやないか。当然九十日までに原則的に返還される、こういう形になつておるのでありますから、二十六日以後は従つてどうしてもこれは日本の大学教育、殊にまあ一つしかない水産大学、而も現状は今お話がありましたように今非常に困つておる。これは国民感情としても又学生の思想的な立場から考えてもうまくない。こういう形で要求されておるので、これを何とかもつと具体的に国際協力局のほうではこれを解決する、こういう方策はないものでありましようか、この点岡崎さんに伺いたい。もう少し……、私はあえて発言権の擴大といつたのを、あなたは先ほど発言権の擴大も何もないのだということで一笑に付されたようだけれども、これは一笑に付されるものではない。今聞いてみると半年後、而も問題は非常に迫つておる。こういう問題に対して御決意をしつかりしてこれを返されることに努力されることが、今や教育的に見て、国民感情的に見ても非常に重要だと私は考えておる。それであえて質問しておるのですが、この点に対してどういうふうに取扱われるか、大臣の決意を伺つておきたいと思います。
  56. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) これは今次長からもお話があつたように、アメリカ側の問題ではないのでありますから、決意の披瀝の仕様がないのでありますが、要するに文部省の世田ヶ谷における施設が早く移転さえすればそれで解決する。従つて国内の問題であります。
  57. 岩間正男

    ○岩間正男君 文部省の内部だけで、内部からの自己矛盾みたいですが、そういうふうに解釈していいですか。向うとは少しも何もない、こういう解釈ですか。
  58. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 先方は世田ヶ谷の施設が空いて補修はやりますけれども、補修さえできればいつでも引越す、従つて世田ヶ谷の施設を空ける、つまり文部省の施設を空けるということがこれが問題です。
  59. 木村守江

    ○木村守江君 ちよつと関連して文部省に聞きますがね、あの衛生試験所はこれはどこに行くことになつておるのですか、文部省から……。(「いたちごつこじやないか」「そういうことは一遍も言わんね、怪しからんね」と呼ぶ者あり)文部省に少し教えて下さいよ。
  60. 岩間正男

    ○岩間正男君 その間にもう少しお伺いしますが、先ほど占領中の施設のほうに接收されたのと、それから駐留軍時代になつてからの接收の件数は非常に減つておる、こういう話だつたんですが、これはまあ具体的にデーターがないのでわからないというお話ですが、実はデーターを出して頂きたいと思いますが、演習地のような点はこれはどうなつておりますか。最近非常に演習地が擴大されて、それも日本の旧陸軍時代の演習地の規模ではないようです。非常に広範囲な大陸訓練のような、厖大な高原地帶のようなものがいろいろ要求されているように聞いておるのでありますが、これはどうなつておりますか。つまりそういうような駐留軍に提供する施設面積というようなものは、そういう点はどうなつておりますか。これは件数と言つたら何ですか。家なんかもやはり一件ということで入つておるのですか。これも件数という勘定をすれば三千五百から七百と言えば如何にも多く返されたようでありますが、問題は今度今お話がありましたジエツト機の来着によつて航空路を延ばす、従つて飛行場の擴大、農地の取上げの問題とか、更にもつと大きな演習地が、広汎なものが要求されておる。こういう点から考えてこれはどうなつておりますか、お伺いしたい。
  61. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 私から原則的な説明をいたしますと、占領軍という性格の場合には、日本政府なり、国民なりに占領政策を強行するために必要な軍隊であります。で、国内には武器等を持つことを禁止せられておつたのでありますから、従つて日本政府なり国民なりに強圧を加える必要の施設というものはこれは一定の限度があつて然るべきものであります。それと限度において違うかどうか、これは実際は別問題でありますが、安全保障條約に基く駐留軍日本が独立後において軍備を持たないその真空状況に対して外部からの侵略を防ごうという性格を持つておるのでありますからして、もうすでに占領軍駐留軍ではおのずから性格が異る。従いまして演習その他の問題も違つて来る場合もあり得るわけであります。併し具体的にどうなつておりますかは、今材料があるかどうかわかりませんが、次長から御説明をいたします。
  62. 甲斐文比古

    説明員甲斐文比古君) 只今大臣から原則的な御説明がございましたように、講和発効後大多数の施設は戻るのでありますが、大多数と申しましたのは、米軍使用いたします一般施設は非常に圧縮されるのでありますが、ただ飛行場演習場はその例外をなす、飛行場につきましては、先ほどから御説明のあつた通りであります。又演習場につきましても、米軍の性格が占領軍から駐留軍に変つた。言わば行政部隊から作戰部隊に変つたというために演習が強化されておる。そういうために従来使つておりませんでした演習場も新たに必要になつて来る。そういう状況になつておりますし、それでこの七月二十六日までには新規のものにつきましては、極く一部のものを除いて殆んど日米間には合意に達しておりませんので、ただ従来日本軍が使つておりましたものについて引続き提供するということが決定される予定であります。新規のものにつきましては、全然新規のものそれから従来の演習場を或る程度擴張する必要のあるもの、この擴張部分並びに新規のものにつきましては、将来引続き日米間で、先ほどもお話がありました陸上演習場につきましては、日本側農地局長を委員長といたしました陸上演習場分科会というものがございます。それから海上演習場につきましては水産庁の漁政部長が委員長になつております海上演習場分科会、これで引続き検討を加えて行きまして、できるだけ農地或いは水産業、漁業に被害を少くして、而も駐留軍の目的に合致するようにという方針で進んで行くつもりでございます。今はつきりした面積はちよつとここでは申上げられませんが、まあ若干演習場につきましては面積が殖えるということは止むを得ないという状況でございます。
  63. 岩間正男

    ○岩間正男君 若干殖えるという……これはデーターを頂けましような。さつきの合同委員会のやつはいずれ官報か何かで公表されると思うのですが、一応それは了解に達した、併し了解に達しないで、これからなお協議を持続して接收されるものもあると思うのですが、そういうものについては一応国会の審議上非常に重要な問題だと思います。今の岡崎外務大臣のお話では、これは占領軍と、それから駐留軍というのは性格は違うのだ、無論これはその通り、行政部隊から作戰部隊に変つた。併し国民はこれはこの條約を結べば、戰後の国民の了解しておる線では今日今お話のような点で了解しているかどうかということは非常に私は疑問だと思う。少くとも平和條約、安保條約を結べば、非常に日本はよくなる、現状よりももつと楽になる、そして單純に考えれば全部いろいろな施設占領軍がなくなれば返されるものと、演習場なんかは擴大されるとは夢にも思つていなかつたと思う。ところがその後聞くところによりますと、富士山麓とか、阿蘇山であるとか、或いは新たに又いろいろな所が候補に上つておる。これはさりげなくあなたがたはおつしやるけれども、農民からみれば、これは非常に生活権をおびやかすところの重大な問題だと思う。單に耕地がなくなる、或いは今まで旧軍の使用地を折角開墾して漸くそばやさつまいもがとれるようになつた、それを更に取り上げてしまう。更に農民は高原地帶なんか取られますと、採草地、こういうような所まで取られてしまう、これは大変なことになる。又米軍の演習のために砲彈が打ち込まれて立入りできない、山はどんどん燒けている、燒けているのを見ても、その火を消しに行くに行けない、こういうことは至るところにあつちもこつち起つていると思う。こういうことを考えまして、我々その立場から考えて行きますと、今岡崎国務相が、日本がこれは要求して、お願いして駐留してもらつたのだから、これについては国民は了解しなくてはいけないと言われるのですけれども、私はそういう了解があつてこういう條約を結ばれたかどうかということは、私は非常に疑問があると思うのでありまして、そういう事態が起るということになれば、やはり合同委員会に対する政府のはつきりした、少くとも国民に政府は闡明し、或いは宣伝し、こうなるのだ、こういつた線ぐらい守り抜くということは非常に大事だろうと思うのですが、その点遺憾ながらやはり私は現状から外れていて、やはりその被害を直接こうむるところの農民、そういうところでは非常に大きな問題になつて生活権をどうするかという問題になつていると思うのですが、こういう点は今言つたような形で何らか手放しの話では了承しかねる、この点如何ですか。
  64. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 政府も国内の食糧の自給ということは非常に重要な関心を持つております。農民或いは漁民、その他各種の産業についてはこれを阻害しないようにでき得る限りの考慮を加えますし、又米軍側でも、その事情はよく了承しております。従いまして実際に決して大きな、こういう方面に障害の起るようなことはいたさないつもりでございます。又そのために特に農林省なり、通産省なりから専門家を入れまして十分検討を加えた上で、差支えないものについては同意を與えますけれども、差支えのあるものについては同意を與えない方針で進んでおりますから、その点は余り御心配ないようにいたすつもりでおります。
  65. 岩間正男

    ○岩間正男君 もう一つ、先ほど矢嶋君から話があつたのですが、こういうふうな局地的の問題は局地で解決しないで、全部合同委員会決定される、こういうことになるようですが、そうなると、実際は現地で起つておるいろいろの問題も米軍側に責任があると思うのですが、米軍ははつきりそういうことを了解しておるのかどうか。幹部は了解しておつても、末端においてはどういうふうになつておるか、この点を明確にして、日本の国民の側においても、そういうふうな現実のいろいろの問題には直接応じない、こういう態度を明確にされると、現在起つておる紛争なんかもこれは相当緩和されるのではないかと思うのですが、こういう点は政府は官報か何んかではつきり国民に告示し、知らせる措置をされることが重要だと思う。米軍側に対しましては、現在こういう紛争が起つておるが、今は占領軍の時代の性格とは非常に違うのだということを、はつきりこれは協定の線を確守すべきだということを米軍側に告示せしめるような手段を当然外国にとるべきだ、こういうふうに思うのです。こういうことを明確にされる決意を外相持たれますか、この点伺つておきます。
  66. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 現地等で直接交渉しないような方針につきましては、政府米軍も今お話のように十分了解いたしております。ただ官報なんかは性質上そういうことを告示するのはどうかと思いますが、併し例えば本委員会において私からこういうことを言えば、これもはつきりすることであります。又各府県等には十分その意味を通じてありますが、若し更に必要があれば適当な方法を講ずることは決してやぶさかでありません。
  67. 岩間正男

    ○岩間正男君 米軍側には……。
  68. 岡崎勝男

    国務大臣岡崎勝男君) 米軍側は各部隊に対して告示をいたしております。
  69. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 甲斐次長に一点お聞きしておきたいのですが、先ほど岩間委員質問に対して、品川の元の経理学校におる占領軍は世田谷の衛生研究所に移るようですが、これは厚生省の所管のようですが、そうなると国際協力局はそこまではタツチしておらないかも知れないと思うのですが、この厚生省所管の衛生研究所はこれは駐留軍が入るためにあけるような話合いがついておるのかどうか、それを御存じかどうか。それから更にこの世田谷の厚生省所管の衛生研究所をあける、あけないというのは、どの省とどの省と交渉してどういうふうになつておるのか、或いは見通しは立つておるのか、その点の経緯を一応承わつておきたい。
  70. 甲斐文比古

    説明員甲斐文比古君) 世田谷の衛生試験所につきましてこれを米軍に供與するということにつきましては、国内関係各省との間にすでに原則的の了解がついております。ただ具体的にやはり家をあけるということになると、やはりいろいろ障害がありますので、非常に小さな問題でございますが、例えばその中に五家族人間が住んでおるとか、或いは道路の付け方を軍側はこうしてくれというし、それから衛生試験所も一部そのまま残るわけでございますから、その衛生試験所の都合で、いやそれでは困るというようなことでまだ最終的の決定に達しておらないのでありますが、これにつきましては勿論国際協力局が中に入りまして、国際協力局の仕事としまして、米側とそれから関係官庁との間の対立を調整しております。併し関係各庁の一層の御協力を得なければ、これは促進されないという実情でございます。
  71. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 今の御説明によるというと、衛生研究所を縮小されるわけなんでございますね。それを又厚生省も止むなしといたして国内の関係機関も原則的に了解の点に達しておるという御説明でございましたが、厚生省も了承しておる、こういう意味でございますね。
  72. 甲斐文比古

    説明員甲斐文比古君) 衛生試験所が現在使つておらない部分が相当あるわけでございます。それでその部分を提供することになつております。
  73. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 その解決に今後六カ月かかるお見込だというのですか。
  74. 甲斐文比古

    説明員甲斐文比古君) その解決はやがて付くと思いますが、これが解決しないと、それだけ遅れるわけでございまして、それが解決してから米軍が補修をしたり、引越したり、やはり半年くらいなければならないというのが実情でございます。
  75. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ではそうすると半年経てばその解決するということは、約九〇%程度は間違いないというわけですね、あなたたちの原則的という意味は……。
  76. 甲斐文比古

    説明員甲斐文比古君) 現在の見通しといたしましては恐らく半歳くらいのうちに解決できるという見込でございます。
  77. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) ちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  78. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 速記を始めて下さい。  それでは暫く休憩いたします。    午後零時一分休憩    —————・—————    午後一時四十八分開会
  79. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) これより文部委員会を再開いたします。  ほぼ総括質問が済んでおりますので、これから国庫負担法の逐條審議に入りたいと思います。御質疑のあるかたから御発言を願います。第一條について御質疑のあるかたはございませんか。
  80. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 これは提案者にお伺いしたほうがいいかと思うのですが、義務教育無償という意味ですね、憲法に義務教育は無償でなければならんというふうに謳われてあるのですが、その意味を提案者はどういうふうにお考えになつておるか、提案者がおられないから文部省でも止むを得ないと思いますが……。
  81. 田中義男

    政府委員(田中義男君) 義務教育の無償の内容につきましては、私どもは文字通りに解釈いたしまして、義務教育に要する教育費、用はこれは無償とする。従つて義務教育を受けさせますために要する費用は一切個人的な負担をせしめないというのが、これが最も理想的な立場であり、なお法はそれを期待いたしておるものと考えておるのでございまして、ただ一部には、法律においてその授業料について規定がございます。それをとつて、或いはその意味は授業料を取らないことだというように解釈する向もあるようでございましたが、併しこれはすでに教科書等についても、法定をいたした例もございまして、私どもは非常にこれを広い意味考えておるのでございます。
  82. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私も今述べられた文部省の見解であるところの個人的な負担は一切しない、こういう意味に解していいと考えておるわけでありますが、そういたしますと義務教育無償という中には具体的に申上げますと、授業料は言うまでもないことでありますが、更に教科書、それから学用品、それから実験用資材の購入、そういうものは当然入つて来るものであるというふうに考えておりますが、文部省の見解を伺つておきたいと思います。
  83. 田中義男

    政府委員(田中義男君) 只今お述べのような事柄は私どもは入つて然るべきだと思つております。
  84. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 この際提案者がどういうふうにこれを考えておられるか、義務教育無償の意義ですね、ちよつとお伺いしておきたいと思うのですが。
  85. 若林義孝

    衆議院議員(若林義孝君) 過日来有効適切な要点を衝いての荒木委員の御質疑に対しては深甚な敬意を表しておるのでありますが、只今義務教育無償の原則についてのお尋ねでございますが、同様財政力の許す限り只今お述べになりました範囲まで擴大して行くべきだ、アメリカなどにおきましてはスクール・バスで通わしておるそうでありますが、私たち青少年が受けております素質を十分に伸ばし切つて又社会の福祉というものは、人生の恵みと申しますか、神から與えられておりますところの人間の生活を有意義にし、又より幸福を、福祉を高めて行くという点を目標といたしまして、いわゆるスクール・バスを通わして通学をせしむるようなところまで行かなければならん。これがいわゆる義務教育というものに対する無償の原則の大理想であろうと考えておるものであります。
  86. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 そういたしますと、新制中学を建設するに当つて、いろいろ半ば強制的に寄附などもあつて、いわゆる父兄から寄附をせしめて、それで建築をやつた、こういう場合も少くないのですが、こういうことはやはり義務教育無償の原則に照らして、どういうふうにお考えになつておりますか。或いはPTAの会費で教材を購入する、或いはまあ極端な例になるか知れませんが、教職員の給與の若干をもこれで補いをつけて行く、こういうようなことは事実あるわけであります。こういうことは憲法に言つておる義務教育は無償とする、こういう原則から見てどういうふうにお考えですか、伺つておきます。
  87. 若林義孝

    衆議院議員(若林義孝君) 別にこの終戰後という言葉をよく使うのでありますが、この点に関しましては戰前からも私は教育というものに対して国家行政面を担当いたしておりますところは、他に比較いたしまして非常に薄かつたのではないか、我が国全体でこの教育面に対しての重要性は認めつつも、施設、その他諸施策というものが、他も低いが特に教育は他に比してやはりその熱度というものは高かつたということは言えないと思うのであります。かてて加えて、敗戰後の日本の混乱のときに、ともすればこの教育費というものが圧迫を受けようとするさ中に、低いにもかかわらずここに六、三制という新教育制度の確立が早急に行われたために、只今仰せになつたようないろいろな寄附又は或いはPTAの協力というようなことによつて補われて来たのでありますけれども、これは甚だ遺憾なことであると考えておりまして、終戰後独立復興過程のさ中にあつたためで、万止むを得ないとは思いますけれども、義務教育無償の原則から申しまして極めて遺憲なことであると考えておる次第であります。
  88. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 提案者のお考えもそれから文部省の御意見も私も同意見であります。これは将来にその実現を図つて行くべきである。こういう見解のように伺つたのですが、その意義の解釈についてはこれで終ります。  それから第一條の中でそういう原則によつて国が費用を負担して、そうして結局は教育機会均等と、その水準の維持向上を図りたい、こういうところにあると思うのですが、教育機会均等という意味はこれはいろいろとあると思うのですが、現実の問題といたしまして、義務教育において最も教育機会均等を図らなければならない問題の一つとして、私は僻地教育の問題があると思うのです。これは文部委員会で視察をした際にも、その他私どもが地方に出張いたした場合においても、教育委員会なり成いは教職員の立場から、僻地教育が非常に粗末に扱われておる。そのために僻地教育というものの水準が極めて惡い、こういう話をよく伺うのです。私も僻地に参つたことがありますが、電灯つない或いはラジオも聞けない、新聞も殆んど見られない、こういう文化から隔離されたような僻地が相当まああるわけなんです。この僻地の教職員の非常に気の毒な状態ですね、従つて僻地には有能な教員が殆んどおらないというのが現状だと思うのですが、こういう点教育機会均等を図つて行きたいという提案者のお考えとしては、僻地教育について全然考慮されてこの案にはおられないわけですが、そういう点どういうふうにお考えになつておるか、御意見を承わつておきたいと思いますが……。
  89. 若林義孝

    衆議院議員(若林義孝君) この法案は、大体大理想は先ほどお話の節々にも見えるのであります。又提案者の気持もよくわかると仰せ下さつておるのでありますが、そういう気持は十分あるのですが、現在の段階においてこれをこの法案によつてどうこうするというところまで立至つておりません。私は少くともこの法案が永年文部省で、ものにすべく努力をしておつたのができなかつた。で漸くこの気運が向いて来たのと、衆参両院における委員各位の教育問題に対しての熱意が現われて来た結果が、先ずここまでこの法案が陽の目を見るに至つたのだと思うのであります。この間岩間委員からも御質問がありましたときに申上げたのでありますが、この僅かな條文の中に、この大理想を一つ織込んであるのでありますので、いわゆる粟粒のごとき、顯微鏡でなければ見られんものも将来皆様がたの御懇篤なる協力によつてつて行きたい。恐らく国会のそこの並木に生えております銀杏の木も、もとは一粒のものであるけれども、恐らくこれは国会の塔よりは高くはなりますまいけれども、我々の生きておる間にはあの道から国会の建物が見えんようになるくらいに繁茂するのじやないか、こういう気持でおるのでございますので、機会均等ということ、それだけを取上げて見ますというと、今荒木委員が仰せになつたのはまだまだ非常に遠慮せられた表現を用いられておるが、私も曾つて敦賀で市長をやつてつた経験があるのでありますが、冬になりましたならば、四里の海上を通わなければならんような僻地であります。電燈もなければ、陸続きではあるけれども風波を、いわゆる危險を侵してでなければ主要な町との交通も絶えるというようなところで、古くからあるお寺の一室を使つて、而もささやかな教材で、而もここで生涯をこの子供たちの教育のために捧げておられるというような姿を目撃いたしておりまして、御発言になりました趣旨は十二分に察するのであります。私たちできればそういう僻陬のところのものは、環境のいいところへ一大寮を作つて楽しみつつ、均等の教育を受けられるような施設が施せたらというような気持を持つておるのでありますが、遺憾ながら條文に現われておりますのにはその気持を盛上げる、表面に現わすことのできなかつたのを甚だ遺憾に思つておる次第であります。
  90. 内藤譽三郎

    説明員内藤譽三郎君) 只今若林先生からお話がございましたが、荒木さんの御質問の趣旨は二條のほうで実現できるのではないかと思うのですが、二條の中に、市町村長、学校教職員給與負担法とございまして、その給與負担法の中には、特殊勤務手当がございます。この特殊勤務手当の中に今のお話の僻地手当が載つておるわけです。ですから僻地手当を今の給與体系の中では額が少なくて月七百五十円くらいになつておる、これを目下人事院のほうで検討しております。今度給與準則は相当上るのではないかと思います。この僻地手当の支給の額を増額することによりまして僻地におる教員の待遇の改善を図りたい、かように考えられるのであります。
  91. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私は教育機会均等の問題に関連して僻地教育の問題をこの際お尋ねしておきたいと思つておるわけであります。必ずしもこの法案はまだまだ提案者のおつしやつたように、入れたいのはたくさんあるが、そこまで手が届かない。このなにはよくわかつておるのですが、併し僻地教育の問題は、現在の事情から言つて決してなおざりにできない問題のように思つております。そこで内藤さんの御説明でございますが、僻地教育にはいろいろなすべきことがあると思いますけれども、その一つは僻地に勤務しておる教職員の待遇をやはり考慮すると、こういう問題が大なき問題であろうと思います。これは第二條で若干そういう点は考慮できるだろう、こういうお話なんですが、これはそのように了解していいかどうか。私は昨日も人事院総裁に会いまして僻地手当の問題について人事院がどのように考慮されておるか、いわゆる給與準則と関連して相当これが増額を図る考えがあるかどうか、こういうことを聞き質しましたところ、今そういう考えはないと、こういう私に対するお答えでありました。今内藤さんのお話ではかなりそれが改善されるのじやないかと、こういうお話でございましたがどうも人事院総裁との間の何が食い違つておるように思います。
  92. 内藤譽三郎

    説明員内藤譽三郎君) この僻地手当の関係は従来教職員が国の公務員であつたとか、官吏であつた当時は国のほうできめたのでございます。このときに主としてきめたのは国の施設を中心にしてきめましたので、例えば燈台とか、そういう僻地にある、或いは緯度観測所とか測候所、こういう非常に僻地の場合を標準にきめられましたので、教員に対しては必ずしも実情に即さない点があつたわけであります。ところが昭和二十四年から教員は地方公務員になりましたので、地方公務員になつたから当然に公務員の給與体系をそのまま準用するという形をとらなかつたのです。そこでその府県の実情によつて支給して頂くようにという通牒を出したのであります。そこで各府県でいろいろと特殊事情によつて操作されたのですが、その当時私どもは国庫負担金の操作の上からは、国の基準で一応きめてありますから、その国の基準によつて限度をきめましたけれども、各府県はそれぞれ事情が異つております。今度の負担法の建前は地方が出したものの二分の一を出すという、実績の二分の一でございますから、地方が大いに取上げて出して頂いて出すならばその二分の一が国から出される、こういうことになつております。現に私どもこの点については非常に憂慮しておりまして、各府県の実態も調査しておりますが、これはまあいろいろございまして、非常にいいところもあるし、非常に惡いところもある、ですから二千円くらい出しておるところもあり、五百円ぐらいもある。私どもはできるだけ高い線のほうに持つて行くように努力したいと思つております。ですからこれは必ずしも国家公務員のほうが如何ようにきまりましても、必ずしもこれに拘束されない。併し現実に教員の僻地手当については非常に実情に即さないでこれはきめておる、私は当時の事情については恐らく荒木さん御存じと思いますが、非常に実情に即していないので私どもとしては改訂したい。併し特別に国のものに副う必要はないのだ、それですから国のほうの必要性よりはむしろ地方学校の必要性からこれはむしろさように考えておりますので、御趣旨の点は十分尊重いたしまして地方に僻地手当については何らかの手を打つて参りたいと考えております。
  93. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 そういたしますと、何ですか、僻地手当というのは、市町村立学校職員給與負担法でいうところの特殊勤務手当というところに該当するわけですか。
  94. 内藤譽三郎

    説明員内藤譽三郎君) その中に入つておるのであります。
  95. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 そうすると、この僻地手当というのは国家公務員の場合は中央できめられていますが、地方公務員の場合は、都道府県で斟酌できるように私はなつていると思う。そういう意味で当然半額を地方が負担すれば、その半額はこれによつて負担される、こういう意味であるとこう解釈していいわけですね。
  96. 内藤譽三郎

    説明員内藤譽三郎君) さようでございます。
  97. 岩間正男

    ○岩間正男君 多分荒木君からもこれは質問なつたと思うんですが、この中で「義務教育無償の原則に則り、国民のすべてに対しその妥当な規模と内容とを保障するため、」こういう規定があるんですが、大体提案者としては現実的にはこの法案で実現することができないにしても、妥当な規模と内容というものを、これに対する一つの観念を持つていられるか、どの程度考えておられるのですか。義務教育を果す、そして義務教育無償の原則で而も妥当な規模と内容と、こういうことになりますと、どの程度まで行けばこれは妥当なものと、適正だと、こういうふうに考えておられますか、その点一応伺つておきたい。
  98. 若林義孝

    衆議院議員(若林義孝君) 大体いろいろな基準につきましては、この法案の狙つておりましたところは、原案でいろいろ具体的に並べて表示いたしてあつたのでありますが、大体その辺に目標を現段階には置いておつたわけであります。
  99. 岩間正男

    ○岩間正男君 あの原案は、まあ詳しく我々も検討はしておりませんが、最小というべく、最低というく、余りに貧しいんじやないかというふうに我々は見て来たわけです。それでそのために我々は具体的に参議院の小委員会におきましては、一応我々の見た最低です、無論これは憲法における義務教育無償などということはならんと思う。それ以前の最低案なんですが、そういうものを具体的にだして見たわけですね。これとは非常に開きがあると思う。こういう我々の案についてどういう見解を持つておられますか。それは今まで御覧になられないかと思うんですが、要点だけ出してみますというと、職員の給與費の中では教員ですね、小中学は四十五名、それで教職員の定員は理論学級算定法式四十五名、それから幼稚園は三十名としまして、教員の配置は小学校に対して一・二五人、中学校は一・八人、それから盲聾学校学校教育施行規則並びに理療科認定基準による結核教員は職員数の二・七%、産休が一・三%、それから養護、事務、こういうものにつきましてはすべての学校に一名必要とし、児童生徒一千名を超えるごとに一名増す、幼稚園は一・二五人、高等学校のほうはありますが、まあ高等学校は一応抜きにしまして、大体こういう基準ですね。それから教職員の給與單価は、資格及び勤務年数を基礎とし、国立学校の教員の俸給算定法式に準じて平均給與單価を定める、而もこの前引かれました三百七十五円を引上げて計算する、これは我々としては現状において少くとも義務教育を維持する最低の線だということで、数回の会合で以て検討した結果一応きめられたのですが、こういうような内容のものですね。こういうものが大体教職員の給與費につきましてはこれが妥当な規模と内容ということになるのである。具体的にこういう案についてどういう見解を持たれるか、提案者に聞きたいと思います。なお我々の案によりますというと、そのほかに学校維持運営費、学校建築費、災害復旧費、義務教育費の無償と、こういうような点も合せて考慮しておるのでありますが、これは続いてあとでお聞きしますが、この教員の給與費につきましてはどういう見解を持たれておりますか、先ずお聞きしておきます。
  100. 若林義孝

    衆議院議員(若林義孝君) 参議院における小委員会の御作成になりましたのは、私がここへ提案理由説明に伺いましたときに御発表になつたのでありますが、逐一拝見をいたしております。なお御審議の過程における小委員各位の御苦心のほどもよく察知いたしましております。我々はこの今回提出いたしました原案作成の際にも、その参議院で御作成になりつつあります目標を心に置きつつ折衝を重ねたのでありますが、その折衝の過程におきまして我々の力足らざることもあつたと懸念はいたしておるのでありますが、先ず原案に盛りましたところのものが今日の段階において妥当である、こういうように思いまして、で、より以上の理想案は将来において実現を期すべきではあるけれども、折衝の過程におきましては、現在では少し他のものとの均衡から見まして無理ではないかというような事柄が感知されたのであります。そうして時日をもう少し費すことができれば、或いは今一歩前進することができたかも知れませんが、非常に会期その他の関係があつたものでありますので、不完全ながら又不本意なる案を出したのでありますが、なおそれを基として折衝いたしておりましたが、甚だ困難性に到達いたしましたので、又甚だ申訳ないことであり、私たち自身も不本意と心得ておるのでありますが、あの修正案を提出せざるを得なくなつたのであります。事情はそういうことでありまして、御質疑になりました我々の提案者の心持も参議院の小委員会の御作成になりましたこの案を将来目標としてこの法案を一つ擴大して行きたいと、こう考えておる次第でございます。
  101. 岩間正男

    ○岩間正男君 私は現状いろいろ止むを得ず財政との関連で今のところに辿り着いた、こういう御説明は、これはまあ私たちも今までお聞きしておる。ただ私はこの法案に謳つておる妥当な規模と内容、最小限のこの義務教育を果すというような内容としてどういうふうにこれは考えておるか。そこのところは非常に重要だと思うのです。どうせこの法案というものは大変中味をごまかした饅頭みたいなものだ。第一條は皮で、大変皮はおいしくできておるようだが、中味の餡は話にならない餡だと我々は見ておるわけです。せめて皮だけでもこういう立派な効能書を謳つておるのだが、どういうふうに考えてこの効能書を大体どのぐらいの限界において把握してそこで考えておられるのか、非常に重要になつて来るわけであります。そうでないとこれは実際中味のない皮だけの饅頭みたいなものになるわけであります。事実そうだと思います。そういう点から、せめて皮というものをどういうふうに考えておるかということをお聞きしておるわけなんですが、こういう点について文部省はどうです。参議院の小委員会案と、この前に出た原案というものがあつたわけでありますが、そういう点からこの法律に謳うとすれば、「義務教育無償の原則り、国民のすべてに対しその妥当な規模と内容とを保障する」、こういうことを仮に謳うとしましたならば、これはどちらが近いというふうに文部省当局考えておられるか、我々としてはそれでもとてもこんなに謳えないとさえ思つておるのであります。義務教育無償の原則を果し、それに近付けて行くためにやるんだと謳うのは、我々の案でも冒涜のような気さえするんです。併し文部省としては我々の案と原案とこういうものを対比して考えられるときに、この第一條の精神から言えばどちらが近いというふうに考えておられるか承わつておきたい。
  102. 田中義男

    政府委員(田中義男君) お話のように第一條は理想を掲げたような大原則でございまして、それに比べまして第二條以下の内容は誠に距離のあるものだと考えるのでございます。従いまして第一條に副うための案はいろいろ立ち得るわけでございまして、いろいろ提案者のほうからも御説明がございましたように、この修正案の第二條以下は甚だ不十分な、又非常に第一條から申しますと距離の遠いものだとは考えるものでございますが、結局いろいろな事情から直ちに実行できる案として止むを得ざる事柄に相成つておるようでございます。当面の問題として本当に実施に移される可能性ということを問題外にいたしまして考えます場合には、参議院においていろいろ御研究御作成になりました案のほうが、案としては確かに前進したものであるとは考えておるのございます。
  103. 岩間正男

    ○岩間正男君 非常に弁解が先に立たれるようでありますが、私たちはやはり一つ教育改革、或いは苦しい国家財政の中で教育を守ろうということが現実の当面した問題になつておるわけです。それを果そうとするために我々が文部委員として責任を感じておるんです。そういう点から一体どの程度に水準を置いて考えるか、どこまで一体引つ張り上げればいいのかという一の理念の設定の仕方というのが私は問題になると思います。いろいろ若林さんのお話を聞きましたけれども、若林さんの考えておられる引つ張り上げる一つの理念と、それから我々は少し上廻つて考えておるわけでありますが、併しこれは大体いろいろ科学的な研究をしなくちやならんと思いますが、そういうものもあつて、少くも憲法というものがあつて義務教育の條章まで謳つてある。そうしたらそれについて具体化しなければならん。どこまで行くかという線は一応はつきり持つていないと、今後漠然としたことで、都合が許せば、事情が許せばここまで上げたいんだ、ここまで上げたいんだという、その上げる限度というものがわからない。そういうことはやはり義務教育でありますから、特にここに書いてあります国民のすべてに対して適用される義務教育でありますから、今の国民の経済状態、收入の状態、経済生活の内容、こういうものによつて非常にものが変つて来ることが考えられますが、併しこれを国家が保障して行くという建前に立ちましたときに、最低どこまで行くか、少くともここまでは行かなければ、少くとも義務教育国庫負担法という名前は謳えないこういうことは科学的な限界として出て来ると思います。ところがこの法案では、この前も私は申したのでありますけれども、どうも非常に立派な目標は謳つておる。併し現実は余りに開く。そうすれば量と質はない。余りにこんなに開いておるのに、名目だけは、看板と掲げておる目的だけは非常に高い、こういうことになると、法案そのものも内容のない一つの欺瞞的なものになると思います。そういう点からお聞きしておるんですが、文部省あたりでは一つの義務教育を果すという見当を最低どこに置くが、こういう点についてどういうふうにこれは調査をされ、そうしてそういうような一つのデーターを持つておられますか。これがありましたら伺いたい。
  104. 田中義男

    政府委員(田中義男君) 私どもは現在の事情の下におきまして、少くとも最低の線として維持したいと考えておりましたその具体的なものが実は原案であつたのでございまして、あの程度のことが実現させて頂きますなら、先ず今のところそれを足場として将来の発展を期待し得ると一応考えておつたのであります。
  105. 岩間正男

    ○岩間正男君 どうも頼りないと思います。どうも止むを得ないから原案通りに行つたんだということをしばしば言われたが、今お話を聞きますと、現状では仕方がないから最低の線である、こういうふうに言われると、頼りなくなつて文部省に対する不信を増します。少くとも文部省は義務教育無償の憲法があり、そうして現実をよく調査すれば出て来るだろうと思います。そういう線をこれだけは達せられるか達せられないかわからない。併しこういうことは一つの理念があるかないかによつて我々の熱意も違つて来るだろうし、主張の仕方も違つて来るし、努力の仕方も違つて来る。こういう点から考えて、あなたのお話だと参議院の小委員会案はややましだけれども、大体この前衆議院の出された原案ぐらいのものが最低だ、現状々々と言われますけれども、現状を離れてもそんなに心配されることはない、現状の問題は又別にやります。少くとも憲法で謳つて、そうして日本は平和国家になつて今度は教育を重視するんだ、そうしてりアメリカの管理政策の中でも、日本教育に対する指令というものが一九四五年の十月だと思いますが、出ております。この中には相当高いことを言つておる。実際問題として義務教育費の国庫負担の問題なんかも、今までは例えば教育費負担が地方の財政によつていろいろむらがある、教育機会均等は守れなかつた従つてこういうことを解決することをがちやんと言われております。大幅に国庫負担にしなければならん、こういうことを、私今條文は忘れておりますけれども、占領軍日本教育に関する覚書の中にはつきり出ております。そういう点から考えて、これに対して当然文部省は調査を開始して、私は少くとも最低の線で科学的に考えて、日本の国民経済との連関において考えて、こういう線は要るんだ、こういうことが出て来ると思いますが、これはお持ちにならないというんですか。その点をお聞きしますが、現状との関係はどうだということは、これは又別である、こういうものはもう少くとも憲法で言つておる限りは、最低目標はこのくらい要る併し現状はこうだということになつておるなら話はわかりますが、これがなくて現状でということは、これは動揺し続けておる。こういうことだと教育の基本的な政策というものは出て来るはずがない。我々やはり一番恐れておるのはそのことなんであります。そういう科学的研究をして、はつきりデーターを出して、そうしてその上から出たところの一つ教育財政に対するその中における義務教育の占める財政負担分というものはかくかくあるべきだというような理論的な根拠というものを打立てなければ、永久に教育改革というものは水泡である、私はそのことを感じておる。終戰前の教育から戰後への教育の転換、そうしてそういうような戰前の教育の欠陷がどこにあつたか、そうしてそれがどこで一体打立て、我々は今改革をしなければならないかという一連の理想の中にそういうような一つ教育行政に対する財政面の検討をはつきりさして今の最低限の、最低限というのは少くとも憲法で規定されておる面を実現し得るだけの財政的な裏付の意味です。こういうものをちやんと打立てていない限りはこれは何年言つてもやはり弱い教育部面では絶えず情勢に流されまして、そうしてその情勢に流されたものが、それがまるで一生懸命に達しなければならない水準だというふうに考えて行つたんでは、これは百年河清を待つようなものであります。そういう点どうなんですが、文部省はそういうものを調査されようとし、又それを打立てるということですでに成案を得ておられるのか、或いは研究中であるのか、或いは着手されないで、まだそういうところまで手が届かないでおるのか、そういう点を伺いたいと思います。
  106. 田中義男

    政府委員(田中義男君) 只今お話のような点についてのお答えとして、数字等によつて具体的に私ここでお話するだけの実は用意がございませんが併しいろいろお話のような点について文部省の調査局を初めそれぞれの機関において常に調査をいたしまして、そのための具体策の作成に努めておるわけなんでございます。それでただ一つ私どもの執務をいたして行きます場合の考え方といたしましては、ここに第一條でも先ほど来いろいろ申上げましたように、この無償の原則というものを非常に理想的な立場において非常に高く広く考えておりまして、個人に負担をかけないような本当の意味での国家の補償による無償の義務教育を施すことができるようにという、そういうふうな考え方で、それに能う限り一歩一歩ともかく前進して行く、こういうふうなことでいろいろ計画を立てて進めておるのでございまして、なお先ほどこの修正になりました原案云々と申しましたが、更には私どもが当初本国会の初の頃におきまして、原案よりももつと実は充実した案を持つておりまして、実はそれらによつて一応実現したいと考えていたことも具体的に掲げておつたようなわけなんでございます。
  107. 岩間正男

    ○岩間正男君 これははつきり伺いたいのですが、大臣からでもいいのですが、或いは今日文部省内のいろいろの会議のときでもいいのですが、そういうものを一応財政面との検討とか、そういうことを抜きにしましても、現状から調査しまして、そうして少くとも最低限度の義務補償の負担というものはこうあるべきだということについて研究をしよう、こういう課題を與えられるとか、そういう課題に向つて作業を開始したとかいうことはあるのでありますか、ないのでありますか。どうも今のお話でははつきりしませんが、いつでも現状を睨み合せてということを言うのであつて、これはよく天野さんにも我々は申したのでありますが、それではどこに到達するか、到達の限界がない。そういうことを今まで作業の中でやろう、こういう決意をされたとか、これからやろうとかいうような指示は文部省で大臣からあり得なかつたんですか。
  108. 田中義男

    政府委員(田中義男君) 私自身の知る限りでは特にそういう指示の下に作業をしたということはございませんが、併し日頃の教育調査をやつておりますその調査は、いろいろお話のような線に沿つての実は具体的な資料を出すための調査であるはずなんでありまして、それらの調査はかなり具体的の資料を続々まとめつつあるのでございます。
  109. 岩間正男

    ○岩間正男君 まだ結論は出ないというわけですか。
  110. 内藤譽三郎

    説明員内藤譽三郎君) お話のそういう計数についてはこれは具体的に私どもに資料はありまして、この前当初に出ました文部省の案でも、給與費に対して維持費をどの程度に見て行くか、或いは建物の減価償却をどう見て行くか、或いは教科書を全部無償にした場合幾らに見るか、学用品全部を無償にした場合には幾らか、こういう細かい資料はいつでも差上げることができる段階にあります。
  111. 岩間正男

    ○岩間正男君 できておりますね。それではそういうものを一応大まかでいいのですが、出して見てもらいたいと思います。無償ということですから、先ほど申しました教員の給與費、維持運営費、学校建築費、それから災害復旧費、これは臨時的なものになると思いますが、そのほかに義務教育無償の教科書、若しくは給食、そのほか通学費のようなもの、こういうようなものは一体どの程度まで文部省は考えておられるか、そういうものはありますか。
  112. 内藤譽三郎

    説明員内藤譽三郎君) あります。
  113. 岩間正男

    ○岩間正男君 それはまとまつてもらえますか、何とか大まかでもいいのですが、どういうふうにどの程度考えておるか。これがはつきりしないと、我我は文部省の意向を質して置かないとまずいと思います。これは明日にでももらえますか、これは是非出して頂きたいと思います。  その次にお聞きしますが、教育機会均等の問題、これは先ほど荒木君から御質問がありましたが、荒木君は主として僻地の問題として言われておるわけであります。これはやはり非常に重要な問題で、我々も例えば北海道、東北の僻地なんかを見ますと驚くものがある。とても教育機会均等というものはその何歩前かに彷徨しておるというような姿であるわけであります。こういう問題も一つありますし、それから何と言いましても教育機会均等を本当に達成するには、この父兄の大衆負担というものを撤廃させるために国家がこれを見て行く、こういうことだと思うのですが、これはやはりこういうことですか。これは全くこの中では私は教育機会均等ということに努力するということは先ほど内藤庶務課長が説明されたが、もう少しも上げるということにはならないと思うのですが、これはつけたりになるのですか。教育機会均等ということはほかにどういう具体的なことがあるのですか。
  114. 内藤譽三郎

    説明員内藤譽三郎君) 教育機会均等がこの法案の中でどういうふうに現われておるかというお話のようでありますが、教育機会均等は第一教員の質と量の問題でありまして、第二に教材の整備の問題、第三に建物の問題が一番大きな問題であろうと思います。そこで第一の教員の給與につきましては国が半分を負担する、あとの半分を平衝交付金で補助する。こういう建前になつておりますので、各地方において必要な教員数と必要な質を備えた教員が確保できる、かように考えるのであります。  それから第二に、教材の問題でありますが、この教材が六・三はできたけれども中味が整備されていない。又小学校の場合には非常に古い教材がたくさんございまして、日進月歩の今日において役に立たない、新教育の線に沿わない教材もありますので、そういう意味から教材の整備を図る意味において国がその一部を負担するということを明らかにされておるわけであります。この教材の考え方が只今のところは学科の教材、教具、図書費等を含んでおりまして、そういう一切の教材を含んでおります。従つて更に今後この教材を擴張解釈しますならば、教科書、学用品も入つて来る余地があるのであります。そういう意味でこの一條、二條、三條によりまして教育機会均等が実現できると私どもは考えるのであります  それから更に建物の問題につきましては、これは附帶決議にもあつた通り地方財政法を改正して計画的に建物の更新ができるようにという趣旨でございますので、これは他日の機会においてその実現に努力したい、かように考えるのであります。
  115. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは併し大体現状とそう変りはないと思うのです。この法案の内容ではいろいろ細かい技術的な点で変つておると思いますが、大体変りない。ところが現状では、教育を受ける側から考えますとどうなつているかというと、非常にやはり義務育教さえも完全に果せないという様相が出て来ていると思うのです。その点はこれは最近中学校あたりで随分不就学が多くなつて来ておる。それから折角入つたけれども、今度は学校に来られない、やめる、家庭の家事手伝いをやつておる。そういうことで不良化、又は学校にはなかなか行かせることができないというので、不良化の傾向が起つておることはしばしば問題になつておることでも明らかだと思うのであります。そういうような面で、一つ学校の例えば給食費だとか、それから教材費ですね、こういうような負担、こういうものがこの法案で一体どれだけ果されるかという問題が一つ。それからPTAなんかを通じまして、これはいろいろ寄附とかその他の形で取られておる。そういうつまり負担ですね、いわゆる何と申しますか、教育費という形で義務教育拂つている大衆負担、こういうものをどういうふうに賄われることになつておるのか、この点が非常にやはり重要だ。教育機会均等ということを言うときには、少くとも貧富の差なく、これは貧しいとか富めるとか、富めるものも貧しいものも一つ並に国家の負担によつて教育を受ける、平等に受ける、こういうことが非常に言うまでもなく必要なことなんです。日本の、我々の見当では大体中学校におきまして、戰前では百人のうち二十人しか行つておりません、女学校、中学校に……。こういうことで、その行けない八〇%の中に人材がたくさん埋もれておつたわけです。そのために実は相当優秀な人間の素質が教育によつて十分にこれが成長して、そしてそれを国家の一つの大きな発展のために使うということができなかつたという面が非常に多かつたと思う。戰争になつたやはり一つの原因だと思う。そこで一方では官僚閥の風潮が滔々と日本の社会を支配いたしまして、だから例えば相当学歴がある、こういうことのために相当いい地位を占めておる局長や課長の下に、実は必ずしも人材がいないかというと、相当に人材がいるのだが、その人材が本当に学歴がないために使われない、そつぽを向いておる、又少し出過ぎたことをすると、すぐに官僚の制度の中では叩かれる。むしろ黙つて事なかれ主義で、椅子に何年か掛けてこつこつと御用を足しておるほうが無難だということで、日本では滔々として、我々から見ましても、明治維新のあの改革時代から考えますると、どうも人物的にも低下しておる、こう思われる。これは教育的にもやはり日本の敗戰の原因だというふうにも考える。そういうような私見は別といたしましても、教育機会均等を打立てるということは、そういう面において大きなメスを入れ、そうして貧しい者も富める者も等しく教育をする。大衆の中に今まで埋もれておつたところの人材を大きくここで発見する、これを育成する。そうしてこれを新らしい次代の日本の発展のために大きくこれを利用して行く、活用して行く、ここに私はあると思う。こういうことを考えなければ教育機会均等ということを口先で言つたつて意味をなさない。形式的な教育機会均等ということは意味をなさない。そういう方向に努力するかのように見えましたところの日本教育改革というものは、現在においては全くこの法案を出さなければならないということが明らかな証拠でもあるように、道を封鎖されて、再び逆転の方向に動きつつあることは明らかであります。ということは、最近もPTAの会費が出せない、給食費を持つて行くことができない。いわゆる大衆の生活が非常に崩壞して苦しくなつて、とてもこれは学校にやるどころではないということで、先ほども申しましたような情勢が出て来る。少くともこの問題を解決するという努力なしには、全額国庫負担とか、教育機会均等ということを言つたつて、これは空念仏なんです。形の上だけの問題なんです。こういう点で私は非常に今の大衆生活に深く入つて、少くとも教育費中味の問題を解決して、国家の手によつてもつとこれは貧富の差なく、教育機会均等ということを本当の意味で確立する、こういうことでなければまずいと思うのですが、こういう点について一体この法案ではどこでそういうことが果されるのか。今の内藤課長の説明では一応現状を技術的に少し変えた、そういうような点の御説明があつたのですが、私のお聞きしたいのは、もつと別のところで、むしろ教育を受ける側における教育費の負担、そういうものをどういうようにして国会に諮つて、そうして一つの大きな国策として新らしい世界に即応するところの人材を養成するということに問題がかかつておるのですが、これは一つ若林さんにもお伺いします。
  116. 若林義孝

    衆議院議員(若林義孝君) その点対象をお掲げになつたのでありますが、一部分生活保護法などによりましてその点の欠陷を補うておると思うのであります。それからこの法案を我々は元といたしまして、今仰せになりましたような他の補助で補つておりまするものなどもこの法案に一つ抱括をして、そうしてより以上細い線を太くして行くと、こういうような面も将来は一つ考えて見なければならんのじやないか。この法案を物足りないとお考えになりますのは、先ずこの八〇%国庫負担といい、或いは全額国庫負担といい、二分の一全額国庫負担といい、その税制その他の日本の国家財政の建て方もに相当影響があると考えるのであります。父兄が負担しない場合、国家が全部負担いたしますとしたならば、どういう形式でこれが国家に財源を求めるか、こういうようなことから考えまして、そこまで大きなことを根本的に考えるいとまがありませんので、この程度の法案にとどまつておるのでありますが、将来教育というものの財政確立、憲法の無償の原則を確立するために、或いはこの教育に関してのみ一つの何といいますか、教育税その他なりを考慮することによつてその目的を達成するのも一つの案ではあろうとは思うのでありますけれども、今日そこまで手を伸ばして行くということができなかつたのでありますが、先ずこの程度で将来その大理想を一つこの法案を骨子といたしまして実現をいたしたい。仰せのことにつきましては我々全幅的に賛意を表しておる次第であります。
  117. 岩間正男

    ○岩間正男君 具体的に申しますと、少くとも大衆負担として大きく出されておるのは、六三建築に対する寄附の問題、その次にすぐに追つかけて老朽校舎百六十万坪、とりわけそのうち四十万坪、これは六・三とどつちとも言えないくらいの問題、こういうようなものがこれは起債におきましても十分に果せない。仮に衆議院の文部委員会の附帶決議案を見ましても完全にこれが果されないのであります。更に教科書、給食、通学費その他まあ実はゴム長靴とか、それから雨具とか、こういうものまで大衆においては、今の教育を完全に果すには、そこまで行き詰つておる。雨靴がないために学校に行けない。傘がないので学校に行けないというので、ひどいところになるというと二〇%くらい休むのであります。農村や経済のよくないところはこういう実情が出ておる。こういうのも又してやらなければ、そこまで立ち入つて行かなければ、我々はとても問題にならないと思うのです、教育機会的均等を本当に確立するのには……。そういうものに対する計算も、最位どのくらいかというような計算も文部省としておりますか、先ほどの質問と関連もいたしますけれども……。
  118. 内藤譽三郎

    説明員内藤譽三郎君) 今お話の点もすべて文部省でも計算はできておりまして、これは私どもは今のところは現在厚生省と打合せまして、生活保護法の中の教育扶助の中で一応見て頂いておるのであります。その比率が五%程度なので非常に少いのですが、これは生活保護の枠の中であります以上止むを得ないのですが、この中には教科書、学用品、給食費、それから今お話の通学用品、こういうものを全部見込んでおります。ただ、その総人員が現実に生活保護の対象になつておるものが中心でございますので、それとそれ以上に生活保護は受けないけれども、支給の必要のあるという数字も私どもつかんでおるのですが、そこに若干の開きがございますので、全部こういう人たちを対象にはまだできないのですが、或る程度までは生活保護のほうの教育扶助のほうででき得るという見通しを持つておるのであります。これが大体本年度予算で二十数億見込まれておるのであります。
  119. 岩間正男

    ○岩間正男君 これはデーターに出ますね、もらうデーターの中で……、全体に若し支給するというような何はできていないのですか。全体の原則として義務教育費をそういうところに支給するというような……。
  120. 内藤譽三郎

    説明員内藤譽三郎君) そういうデーターはあります。
  121. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 先ほどちよつと忘れておつたのですが、義務教育無償の意味についてはよく伺いました。私も同意見でありますが、そこでこの法案は義務教育無償の原則を実現して行きたい、これは今こういうことにあるというふうに提案者も説明されておつたわけですね。そこで現実の問題として義務教育無償の原則は現実にどこで破れておるかという点ですね。これは先ほども私も質問しましたし、岩間君も質問されたのですが、一番義務教育無償の原則が破れているのは個人の負担になつているものですね。それはやはり学用品とか、教科書、そのほかにPTAの寄附、まあいろいろあると思うのですね、給食費とか……、ここでは教職員の給與というものが土台になつておるのですが、これは私非常に結構だと思うのですけれども、無償の原則というものを考えた場合に、やつぱり第一に考えなければならん問題は、個人の負担になつている費用を若干でも考えて行くということが一番初めに来なければならないのじやないかと思うのですよ。そうしなければ義務教育無償の原則を少しでも実現して行こう、それに近ずけて行こうということは出て来ないわけです。教職員の給與は大体が地方費であろうと、国費であろうと、これは公費を以て負担されておるのですから、これについては義務教育無償の原則から外れておるということは私はないと思う。これを強く考える以上は、直接に父兄の負担になつておるものを救つて行こう、こういう点に着目をしなければならないのじやないかと思うのです。そうするとこういう点については教材費の面で若干考えられておりますけれども、その大部分は考えられておらないという点については、これは第一條の一番大きな目的をこの中味において外しているのじやないかという感じが非常に深いのですが、そういう点提案者はどういうふうにお考えですか。
  122. 若林義孝

    衆議院議員(若林義孝君) もう同感以上なんであります、私提案者としましては……。これは大きく考えて見まして、私は日本の政治というものが行政面において、この教育行政というものに対する関心が、いわゆるこの教育というものは現実にすぐに成果の現われるものでなしに遠く将来に期待するところのものが大きいというので、軽んじてはいないのだけれども、手が廻りにくい。そうして橋が落ちる、火事があつて家を建てるというような方面は現実のこの眼の前のことであり、或いは食糧増産その他にいたしましても、人間の直に命にかかわることであるから急を要するというような意味で、このほうは相当、十分ではないけれども教育に関するものと比較いたしますというと、その予算その他においても取りやすい。又見る者も、教育面というものは極めて地味なものでありまして、ほかの面に比べると軽んじやすい。同時に橋をつけ道をつける政治家と、教育に関係する政治家とどちらを重く見るかと言えば、皆様がた痛切に感じておられるだろうと思いまするが、遺憾ながら土木その他のほうが非常に働きがあるように思われる。こういうような空気全体が教育というものを予算面において御憂慮になつておりますような空気にしてしまつたのじやないか。ところが幸いにして新憲法で義務教育無償の原則というような大原則が憲法にも立てられましたし、又これに関心を寄せられる熱意ある、又これのみを目的として国会に御活躍なさるかたたちが年々殖えて来ておりますので、私は少くともこういう法案が、先ほど申しましたように陽の目を見るに至つただけでも、幾分国家の政治面に教育というものの重要性が認められつつあるのじやないか。こう考えるのでありまして、先ほど仰せになりましたような大理想に向つてより以上これに関心を持つ議員各位がお互いに励まし合いつつ一つ進みたい。この法案が、不満足ではございますけれども、提案理由説明のときにも申しましたように、一つの橋頭堡となつて行けばという気持であるのであります。仰せになりましたお気持自身というものは全幅的に私たち賛意を表するのであります。行く行く教材費その他につきまして、最初の原案は教材費におきましても二分の一というのが三分の一程度に退歩いたしておるのでありまするが、より以上皆さまがたの何を得ましてこれを増額して行きたい。或いは建築その他につきましても、これは恐らく今度の成案にはなりませんでしたけれども、併し原案として一度国会に提出して、大体これは政府の認めるところともなり、又附帶決議におきましても、衆議院ではこれは附帶決議として裏付をして頂いたのであります。参議院におきましても一つより以上この法案に対する強力な政府への圧力を加えて頂く何らかの措置を講じて頂きますならば、なお結構と思うのであります。
  123. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私のお伺いしておるのは、義務教育費を国庫で負担して行こう、こういうことであれば、義務教育費の中で最も大きな部分は教職員の給與の問題であろうと思うのです。だからそれが当然第一に考えられて行くべきである。併し提案者はなおそれに義務教育無償の憲法の原則、これを実現して行きたい、非常に大きな抱負があるわけです。そこでこの憲法の義務教育無償の原則を実現して行きたい、こう考えるならば、私はむしろ現在父兄が直接負担しておる教科書、或いは学用品、或いは学校給食費、そういうものをもつと比重を高くとつて真先に取上げて来ないと、義務教育無償の問題は全く実現されないということになつて来るわけです。そこに私は第一條に若干ずれがあるのじやないか。義務教育費を国庫で負担して行こうと、こういう線が強いのか、或いは義務教育無償の原則というものをこの法案でできるだけ実現して行きたいのだと考えておられるのか、そこに若干私は明白を欠いておる点があると思うので、もう一遍その点を説明して頂きたいと思います。
  124. 若林義孝

    衆議院議員(若林義孝君) もうありていに申しますと、今お述べになつたようなものを盛りたい気持はやまやまあるのでありますけれども、併しこの法案はそのような具体的な方面に対しての具現を目的とするよりも、義務教育費というものは国庫において最終的に持つのであるという大原則を先ず打出したのに過ぎん。でそれの例を挙げれば、もうその給與費については別問題として教材の一部のごときも当然負担すべきであるというようなものを謳つたに過ぎないとまで世間では考えておられるのでありますけれども、御発言になりましたのも相当これは御遠慮になつておられる。私がここにおらなければもつときつく仰せになつたのであろうと思うのですが、併しその言外にお持ちになつておる気持をも十分私たち提案者として持つておる次第なのでありまして、この点を一つ十分御了承を願いたいと思うのであります。
  125. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 だから第一條のこの目的はですね、非常に私は大きなものを含んでいると思うんですよ。もつとこれを率直に義務教育費を国庫で負担して、そうして教育の水準の維持向上を図つて行くといのようなこの内容で或る程度私は達成し得ると思う。ところがここで義務教育無償の原則を実現したいというなら、これは教員の給與費以上に父兄の負担しておる教育費を国庫で負担して行く、こういう線が出て来なければならないと、こういうふうに私は言つておる。
  126. 若林義孝

    衆議院議員(若林義孝君) これはこの教材費の面において先ほど、少し出したということを申したのでありますが、今これは将来の大理想として一つは私は各位の御協力を得ましてその大精神に従いたい。それから過般御審議を願いました、一年生に入学いたしますものの教科書の無償のことでですがね、これは甚だ我々微力であつたのでありますが、一年生の国語と算数の、これは無償の原則で立てたと思うのでありますが、事実表面は先ずお祝いの程度に過ぎないのでありまして、まあこれも私は少くとも画期的の精神においては、金額においては非常に問題になりませんけれども、精神においては画期的の線を各位によつて打出してもらいたいと思うのでありまして、一歩一歩前進という意味で御了承願いたいと考えるわけであります。
  127. 岩間正男

    ○岩間正男君 結局今まで御質問申上げたんですが、こういうことが明らかになつたように思うのですが、第一條については、これは結局この法案によつては、第一條の目的はまあ殆んど達成できない。ただ将来こういうことを希望するという法案なんで、こういうことにこれは受取つていいわけですか。修正するとすればこの法律は義務教育について、将来義務教育無償の原則に則つて、国民のすべてに対しその妥当な規模と内容とを保障するために、必要な経費を負担すること等により、教育機会均等とその水準の維持向上を図ることを目的とする。こういうことにはつきりとこの法案の性格をぴたつと言い当てるように思うのでありますが、これは如何でございますか。
  128. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) ちよつとお諮りしますが、相当御意見が出ましたが、御意見は御意見として各條について時間がありますので、一つ第二條にお入り願つてこれは御意見としてここで承わつておきまして、第二條にお入り願つたらどうですか。
  129. 岩間正男

    ○岩間正男君 入る前に第一條の今のは締括りみたいなものですから御所見を承わりたいのです。
  130. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) ここでは要らんでしよう。
  131. 岩間正男

    ○岩間正男君 じや結構です。
  132. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 第二條を一つ議題に取上げますが、第二條について御質問のおありのかたから御質問願います。
  133. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 初めに非常に細かいことですが、それは市町村立学校職員給與負担法ですね、これが基になると思うのです。そこでこの中に超過勤務手当が入つていない。それから夏季手当ですね、そういうものも入つていない。ところが今年は夏季手当を政府も出し、地方も出しておるわけですね。それから超過勤務手当は近く人事院が給與準則を出す、あの原案の中にあるわけです。そうするとそれと市町村立学校職員給與負担法と内容が少し違うわけですね、そういう点はどういうふうになるのか伺つておきたいと思うのです。
  134. 内藤譽三郎

    説明員内藤譽三郎君) 夏季手当の分につきましては、これは市町村立学校職員給與負担法を改正するいとまがございませんで、取りあえず年末手当の内拂いという形で支給するようにということで通知をいたしました。これは地方財政委員会と打合せ済みでございます。ですから一カ月分の年末手当を財源的に組んでおりますから、その内拂いとして〇・五カ月分を支給するようにこういうことにしたのであります。それから教員の超過勤務の問題につきましては、これはいろいろと問題がございまして、従来文部省の考え方としては、一般事務職員と違つて教員には特別な職階、特別な給與待遇をすべきであつて、別表で解決するというような基本的態度であつたわけであります。そこで日直、宿直の分は従来通りでございますので、これは職員給與負担法の中に入つております。超過勤務の問題を教員にも準用すべきであるということが、法制上明らかになつた場合は、この給與負担法のほうを改正するようにしたいと考えます。
  135. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 小さいことばかりお尋ねしますが、恩給負担金ですね、それから共済組合負担金ですね、これはまあこの負担法にはないのですが、これについても半額をやはり国庫が負担する、こういうことになるわけですか。
  136. 内藤譽三郎

    説明員内藤譽三郎君) 恩給負担金のほうは半額というような形をとらないで、それは従来郵便局でやつておりますので、逓信省所管のほうに昔の国家公務員、昔の官吏の恩給については普通逓信省のほうに財源措置がされております。ですからこれは教員でなくて全部昔の官吏であつたものに対する財源措置というもので行われておるのであります。ですからこれは従来通りでございます。それから共済組合の負担金につきましては、これはこの国家公務員の共済組合法がございますので、その国家公務員共済組合法の八十六條でしたか、ちよつと條文を記憶しませんが、八十何條かに教員の共済組合については二分の一を補助するという規定が生きておるのであります。ですから平衡交付金になりました際にもこの規定は落さないで残しておりますから、この国家公務員共済組合法の規定の適用を受けて二分の一補助と、こういうことになると思います。
  137. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それではこの第二條は実際にどういうふうにこれでなつて行くのか、その点がかなり重要な問題であると考えて、前にも相当お尋ねをした点であります。大体の様子はわかつたのですが、結論的に言つて第一項、第二項を通じて結論的に言つて経済的に余裕のある都道府県ですね、そういうところは第二項によつても大して圧迫を受けないと言うのか、まあ差障りがない。併し経済的に余裕のない府県はかなりこれによつて差障りを起して来るのじやないか。こういうふうにも考えられますので、そういう虞れはないのか、どういう理由でないか、説明一つして頂きたいと思うのですが。
  138. 内藤譽三郎

    説明員内藤譽三郎君) 大体経済的に困つておる府県のほうは、一般的な基準よりは低目にあるのが従来の例でございます。ただ若干例外もございまして、例えば鳥取県とか或いは和歌山県というような数県、例外もございますが、大部分の府県は一般基準よりはむしろ低目にあつたのであります。ですからこの政令がきめられるような場合には、むしろそこまで引上げられるという有利な点も出て来る、お話のように経済的に非常に惡くて教育に熱心な府県がこれで妨げになりはせんかという御心配でありますが、この点については政令のきめ方如何によると思うのでございます。ですから政令のきめ方のきめる際に実績を十分考慮して貧弱な府県で教育に熱心な県が支障がないようなきめ方もできる、かように考えるのであります。
  139. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 その問題はもう少し私尋ねたい点がありますが、そこで先ず最初に伺つておくのがいいと思うのですが、第二項ですね、前項の各都道府県ごとの国庫負担の最高限度は政令できめる、こう言うのですが、これを文章から受ける解釈は各都道府県ごとに最高限度はきめる、こういうことは都道府県ごとにきめるわけですが、最高限度は……。
  140. 内藤譽三郎

    説明員内藤譽三郎君) これは、きめる場合には政令は御承知通り何県に何ぼというふうなきめ方はできないわけでございます。ですから予算はきめるわけでございませんので、或る一つの基準をきめるわけでございますから、政令のきめ方については例えば原案になつたようなものが全国的基準、全国的基準を今度は配分する場合には、この原案の附則にあつたような、ああいうふうに各府県の実情に合うような理論学級なら理論学級、こういうような一つの算定方式を用いるわけでございます。ですからその方式によつて全国的地方実情に即するような一つの配分基準を作りませんと、その配分基準できめますから、そこで計算をした場合に何県に何ぼということに結果はなると思いますけれども、政令の文面からは何県幾らというふうな形にはならない。飽くまでも地方実情に即した全国基準で政令をきめて行く、こういうことになると思います。
  141. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 そうすると第二項の書き方ですね、これは、この取り方は、私今の説明のようにはなかなかとりにくいと思うのですがね。これだと各都道府県ごとにきめられて行くように思うのですが、今の説明であれば全国一本できめるのだと、こういうことなんですね。そうして都道府県ごとに、おのずからそうするとその基準に照らして最高額がきまつて来るわけなんですね、そうするとこれは都道府県ごとに最高額をきめるのじやなしに全国一本の基準をきめる、こういうことになるのじやないですか。
  142. 内藤譽三郎

    説明員内藤譽三郎君) 併しこの負担金の配分分問題でございますから、結果においては各府県ごとに幾らという計算が出るわけでございます、結果においては……。一つの線を地方実情に即するような基準で政令はきめます。併しそれを計算しますと、何県幾らということには結果においてなる、こういう意味でございまして、実際国庫負担額を出す場合にはその額の基礎にしなければいかんと思うのであります。
  143. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それで最高限度をきめなければならん、こういう事情ができて来たという、これを考えましてその際の政令というものはどういう大体基準を考えておられるのか、その点を承わつておきたいと思います。
  144. 内藤譽三郎

    説明員内藤譽三郎君) これは附帶決議にもございまして、私どもはできれば第一項だけで済ましたい、併し特別な事情で政令をきめなければならんというような場合には、附帶決議の線に副つて、原案の趣旨が是非実現できるような程度までこの單価を認めて頂くように努力したい。その場合にどういう配分方式をとるかというお話でございますが、大体まあ二十七年度の平衡交付金の算定についての特例がございますので、ああいうような若干修正しなければなりませんでしようが、ああいう地方実情に即したような算定基準によつて政令きめて行きたい、かように考えておるわけであります。
  145. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 そうすると何ですか、原案というと、初め衆議院に出されたものですか。
  146. 内藤譽三郎

    説明員内藤譽三郎君) この前、最初に衆議院から提案されたものでございます。
  147. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それでは大体政令をきめるということは原則でないしするし、それでできるだけこれはきめないのだ、こういうことなんですね。ところが止むを得ずきめなければならない事情が起つた場合はどういう基準できめるか、こういう問題についてはいわゆる原案に出ておつた基準というものが一応基準になつて来るのだ、これよりも惡いものを基準にするという考えはないと、こういうことなんですか。
  148. 内藤譽三郎

    説明員内藤譽三郎君) できるだけその線で努力したいと思つております。
  149. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 これは将来の問題ですが、実際重要な問題ですから、やはり甚だ失礼ですが、課長さんでは工合が惡いと思うのですが、一つ……。
  150. 田中義男

    政府委員(田中義男君) 只今内藤課長が大体申しました事柄が私ども考えていることでございまして、この事柄の沿革なり性質上、ともかく現在困つている事態に即しましてよくしようというのがこれがすべての條理であり、狙いでございます。そういう点からいたしまして、先般衆議院において提出されましたあの原案の基準というものが少くとも現状を維持する、或いはこれを向上するための一つの最低基準と私どもは考えておるのでございまして、従つてこの第二項を具体的にいたします場合にも、私たちはその少くとも最低線としてその基準は維持さるべきであり、できるならそれよりももつと上廻つた線においてこれを解決するのが妥当であると、実は固く考えておるのであります。
  151. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 そういたしますと、第二項の問題でございますが、これは非常に教育に理解のある政府であれば、無理に抑えて行くという点はないと思いますがね、そうばかりは言えないのですが、そういう保証ですね、みだりに政令できめて抑えて行く、こういうことはしないのだという保証ですね、これは得られますか。
  152. 田中義男

    政府委員(田中義男君) 私どもの立場において、それを保証をいたしますことは誠に困難でございまするけれども、実はこの事柄について只今まで従来からいろいろ御意見を伺い、御論議を伺つておりましたその結果の、実はこれは私の感じでございますけれども、非常に私どもの方についての御信頼が非常に薄いのでございまして、これは何ともいたし方ないところでございますけれども、併し私どもとしては今後教育を良くするための、まあ殊にこのような法案ができる機会に、いろいろ申上げましたようなことについては一つ全責任を負い、全力を盡して教育の維持発展のために努力したいとひそかに決意をいたしておるものでございまして、さよう一つ御了承頂きたいと思います。
  153. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それではその次に平衡交付金とそれから国庫負担との関係の問題ですね。この半額は平衡交付金で財政需要額が見られることになると思うのですがね。その平衡交付金で半額が見られる場合の基準ですね。その基準は大体どういうふうになつておるのですか、一つ説明を願いたいと思います。内藤さんでも結構です。
  154. 内藤譽三郎

    説明員内藤譽三郎君) 国庫負担金と同額のものを平衡交付金で見て行く、国庫負担金はこの第一項から行きまするならば、実績の半額負担でありますから前年度を基礎にいたしまして、当該年度を推定いたしまして、予算を組む方針でございます。その少くとも同額のものを平衡交付金の單位費用として見て行くということであります。
  155. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それでは内藤さん答弁が違つておるのではないでしようか。内藤さんの説明では、いわゆる教育費の半額は国庫で負担する、その同額を平衡交付金で見て行きたいとこういうのでしよう。これはそういうことは私はできるとは思われないのですが、どうしてそういうことができますか。
  156. 内藤譽三郎

    説明員内藤譽三郎君) ちよつと荒木さんのおつしやる、できると思われないという理由を先に聞かして頂きたいと思うのです。
  157. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 この間そのために地財委の何に来てもらつたのです。地方財政委員に……。地方財政委員説明はこれは速記録にも出ておるわけですからよく続んで頂きたい。平衡交付金で教育の需要額を見る場合に、国庫負担額とは無関係に見る、或る基準によつて平衡交付金の中において教育需要額を見るのだ、こういうお話であつた。その平衡交付金で見られた教育財政需要額というものは、国庫負担金より多いこともあろうし、少いこともあろう。併しこれはあとになつて何らの訂正をなさるべき性質のものでない、こういう説明がなされておるわけであります。私もその通りになると思います。今の平衡交付金の制度であれば……。これに国庫負担で半額負担とそれと同額を平衡交付金で見るのだということは、全然考えられないのですがね。
  158. 内藤譽三郎

    説明員内藤譽三郎君) 私はあのときの木村委員の御説明を伺つておりまして、多少荒木さんとは受取り方を異にしておるのでありますが、確かに各府県に行く国庫負担金と平衡交付金で補償した額とは食い違つて来ると思います。なぜかと申しますならば、国庫負担金のほうは、これは各府県の実績の半分ですから幾ら出したかというものの半分が行くわけです。ところが平衡交付金では一定の額をきめて行きますから、その場合にそれより上廻わる場合もあるだろうし、上廻わる場合もあるだろう。これはお話の通りなのです。ただ総額をどこできめるかということが問題なのです。総額のきめ方は国庫負担金がきまつて来れば、少くともそれと同額のものを教育費の基準財政需要額と見る。それを生徒一人当りに還元して單位費用を出すか、成いは現在の学査、学級、兒童という三本建をとるか、それはいずれかの形態になると思います。確かに前半のお話のように、各府県の国庫負担額は実績で行きますから精算拂いになります。併し一応平衡交付金で單位費用を、例えば生徒一人五千円と見た場合は、四千円のところもあるし、六千円のところもある。併し国庫負担金とは無関係、ここまでは私どもは正しいと思う。その前提があなたの受取り方と私の取り方が違うわけです。前提は国庫負担金と少くとも同額のものを教育費の基準財政需要額として見るというのが、半分国が持ち半分地方が持つという精神である、かように考えております。
  159. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 内藤さんの言われるところはわかりました。それで内藤さんの説明は予算を立てる場合の話だろうと思のです。ですからその意味においてはわかりましたが、そこで結局実際問題としてこれで教育費が確保ができるかどうか、こういう問題になると、やはり平衡交付金をきめる。その基準が私は実際上としては一番重要な問題になつて来るのじやないかと思うのです。そこで平衡交付金を決定する基準ですね、その基準は何ですか。従来のものによるのか、或いは衆議院でかなり詳しいものを出された、これを新らしく取入れて行くのか、こういう点を伺つておきたいと思います。
  160. 内藤譽三郎

    説明員内藤譽三郎君) それは今後どうするかという問題で、地方財政委員会と十分協議しなければなりませんが、半分の分は国庫負担ですから、これははつきりしております。あとの半分の見方は、平衡交付金の中の小学校費、中学校費の單位使用をどう見るかということであります。この場合に原案にあつたような配分方式は、ちよつと今の平衡交付金の体系では取りにくいと私は思う。そこで結局單位費用を幾らに見るかということになつて、今の平衡交付金の建前は、学校、学級、兒童という三本建であります。この三本建がいいかどうか、私は非常に疑問に思つておるのですが、これを学級なら学級ということで押えて学級当り幾ら或いは生徒当り幾ら、こういう形になると思うのです。その單位費用をどこできめるかということは、国庫負担金の総額と睨合せて、その国庫負担金を割増生徒数で総額を割りますと單位当りの費用が出る、理論学級で行きますと、理論学級で総額を割りますと、学級当りの單位費用が出ると思います。ですからそういう方向に大体、私はなると思つております。
  161. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私はよくわからないのですが、まあ教員の数の問題にいたしましても、教員の給料の單価にいたしましてもいろいろ問題があるわけなんです。例えばこの原案には結核教職員の数をかなり実情に近いところまで見ておるわけです。それから産前産後の婦女教員の問題を見ておるわけなんです。今はそういう点を全然見ていない、見ていないか、非常に惡いわけであります。結核教員の問題につてもこういう実情なんです。そういう点はこの法律が通つても何ら改善されないということになりますが……。
  162. 内藤譽三郎

    説明員内藤譽三郎君) これは少し荒木さんのお考えの中に実績の半額国庫負担というものと定員定額のお考えが一緒になつておるように私は見受けられますが、この法案の趣旨は飽くまで実績の半分負担でございますから、そういう算定基準を持出しますと、これは政令できめる基準であるか、或いは平衡交付金の單位費用の基礎に使うか、何か基準というものが出て来た場合にお話のように結核教員数をどう見るか、或いは産前産後をどう見るかというような問題が起きて来るのです。併しこの法案の趣旨は飽くまでも実績の二分の一でございますから、都道府県の実績が物を言つて来ますので、国庫負担はその実績の二分の一、それから平衡交付金の教育費の財政需要頭の総額はやはりそれと同等のもの、こうなると思いますから、そういうような算定基準は政令をきめる場合かに起きて来ると思いますが、そうでない場合は起きないというふうに考えるのであります。
  163. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私は平衡交付金を算定する場合に、こういう基準を使うのではないかということを言つておるわけです。それから先ほど、国庫負担分と同額のものを平衡交付金で見る、こういうお話があつたのですが、それは逆になるのではないのですか、平衡交付金で見た額と同じものを国庫負担分で見る、こういうふうになるのではないでしようか。
  164. 内藤譽三郎

    説明員内藤譽三郎君) それは飽くまでも先ず予算折衝の過程を申しますと、国庫負担が先にきまるわけであります。そのきめ方は前年度の実績を基礎にして、当該年度を、翌年度を推定して国庫負担額を幾らときめる。ですから国庫負担額がきまりますと、平衡交付金の中で考えなければならない義務教育費の基準財政需要額を一応それと同じように見るわけであります。ですからそこで今度は地財委のほうではそれをどう配分するかということになりますと、單位費用というものできめて来るのであります。飽くまで国庫負担が先でございます。
  165. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それで大分私にもわかつて来ました。そういたしますと、先ず前年の実績というものを基礎にして、そうして教育費というものを集計して行くわけですね。それを基礎にして国庫負担額をきめる、いわゆる二分の一をきめる、あとの二分の一は平衡交付金で見て行く、こういうことになるわけですか。
  166. 内藤譽三郎

    説明員内藤譽三郎君) さようでございます。
  167. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それで大分私も明らかになつて来たわけなんですが、そうするとこういうことが次に起つて来ると思いますが、初年度はそういうふうにして決定し、翌年度においては若干増減があると思います。そうするとその翌年度においては増減を基礎にしてやろう、国庫負担額をきめよう、それと同額の平衡交付金を見て行く、こういうことになりますか。
  168. 内藤譽三郎

    説明員内藤譽三郎君) 国庫負担額については見て行きますけれども、平衡交付金のほうは見ない、こういうことになるのであります。
  169. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 ちよつと質問意味がとれていないのですが、それは前年度の平衡交付金の分については見ないけれども、翌年度に平衡交付金を算出する場合には見て行くということになるわけですね、さつきのように国庫負担額をきめて、それと同額の平衡交付金を出して行くのだということであれば、初年度はそれで行きます。ところが翌年度は大体それよりも国庫負担額というものは精算拂になりますから、地方が頑張ればそれで殖えるわけであります。十億なら十億殖えたということになれば、翌年度は十億教育費が殖えて来るのであります。そうすると十億の二分の一の五億というものが殖える、そうすると、翌年度においては平衡交付金の額というものは五億殖えたものが基礎になる、こういうふうになつて来ると思いますが、どうなんですか。
  170. 内藤譽三郎

    説明員内藤譽三郎君) さようでございます。
  171. 岩間正男

    ○岩間正男君 今のお話はこれは第一項に関してそういうことになるとすると、第二項との関連でどうなるんですか。
  172. 内藤譽三郎

    説明員内藤譽三郎君) 第一項が適用になつた場合を今申上げておるのでありまして、第二項が働く場合には一つの基準がきまるわけであります。国庫負担額の限度がきまつておりますから、翌年度で精算拂という形は起きないわけであります。只今私が申上げたのは第一項なんですが、働く場合には翌年度で精算拂になりますから、翌年度予算に前年度の追加分として別に過不足分が計上される、二項が働く場合にはその過不足分は働かないで限度をきめますから、精算拂でなくて打切補助になるわけであります。打切補助になる場合に限度をどこできめるかという先ほどから問題になつておりますが、その限度のきめ方如何が問題になりますので、先ほど局長からもお話のように、附帶決議の線に副つて原案の趣旨が貫徹されますれば実績を下廻らないで済む、かように考えております。
  173. 岩間正男

    ○岩間正男君 どうもそこのところがさつきから話を聞いております第一項に関しての説明が同時に働らくわけですけれども、それでそこは努力をする、こういうことでありますが、これが確保せられますか。どうも我々の見るところでは非常にこれは危いというふうに思います。第二項が設けられる、そこで若林さんにお聞きしたいんですが、どうして第二項でこういうふうに原案より大修正を加えなければならなかつたか、その内輪話を少しやつてもらいたい。どうして第二項でこういうものを設け、こういうふうな修正をして、この前も申上げましたように、実は保護法案的性格のものが逆に制限法案になるような危險性があるのであります。この経緯をお聞きしないとわからないので、ざつくばらんにお聞きしたいと思います。
  174. 若林義孝

    衆議院議員(若林義孝君) 算定基準は、我々の見るところでは文部省の算定基準と、それから大蔵省の算定基準とは大体同じであつたと思います。それから地財委のほうの計算の基礎には、教育財政面から言えば少し不利な見方をせられておると思うのであります。これが原案による算定基準で行くと、人員が百万だつたですか、殖えるというような非難を地財委から浴せた理由であつたのですが、どこがどう違つてつたかということについては、一つ内藤課長からあとからお聞きを願いまして、この算定基準について大蔵関係と、それから地財委とに食い違いがある、この打開が甚だ困難であるというのが一つであります。それよりも大体第二條の精神におきましては、原案自体は平衡交付金制度の精神によつて各府県に配分をする。だから平衡交付金の行つておるところへは行きますが、平衡交付金の行かないところへは行かなかつた、こういう配分の仕方になつておるのでありますが、これをまあ一律に二分の一、行つておるところと行つてないところとに関係なく明確に二分の一ということにする。そうなりますというと、これは大蔵省なり地財委のほうの案というものは、この自主性を尊重するという点から言つて地方財政平衡交付金の算定基準にはなつているけれども、義務教育費国庫負担という制度から行くならば、甚だ困難性がある、そこで全額国庫負担であるか、或いは半額国庫負担か、こういうことが地財委のほうで言われておつたわけでありますが、地財財委は飽くまでも二分の一の国庫負担ということを主張いたしておつたのであります。この間もちよつと私は説明を加えたのでありますが、飽くまでもこの国庫負担法案それ自体に地財委は反対はしていなかつたわけであります。算定方法と配分方法において地財委は一律に二分の一、そのほうが算定なり補助を與えるにの公平に行くことができる、こういう意味合いで二分の一というところの線を強く出しておるわけであります。そうなりますというと、もう非常に財政豊かなところもありますし、豊かでないところもありますし、又非常にこの基準が違つて来ておりますから、そこでその自主性を尊重するという意味において、実支出という文字で算定基準というものを調節いたしまして、おのずから基準はあるけれども、実際これを適用する点においては実支出額というものの二分の一と、こういうことになつたのでありまして、この点は私は基準を設けて行くよりは、一歩前進をして自主性を尊重しておると、こういうように考えておるのであります。原案と修正案との違いというものは、ありのままを申上げたのでありますが、いわゆる地財委案に重点を置いた修正案になつておると、こう考えるわけであります。財政平衡交付金の配分の精神をここでこわしておるわけでありますから、おのずから地方財政の根本的の改革ということが前提にならざるを得ないわけであります。だから一律に原案では、東京などへは配分が来ないと思つているときに、正直に実支出額の二分の一が来るわけであります。その行つただけは税制改革によつて国家により多く、地方税として入るべき金が国家のほうへ入るような地方税制の改革が企図せられる、こう考えておるのであります。
  175. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 この第二條と教育委員会との関係をお尋ねいたしたいのでありますが、その前にこれは具体的な問題を聞くわけなんですが、都道府県で負担しておる半額を国庫で負担する。こういうことになるわけですが、そうするとこういう問題があるわけです。地域給の問題ですね。東京、大阪は国家公務員に支給している地域給よりも、あれを基準にしないで別個に立てているわけです。都道府県の独自の立場において地域給を支給している。そういうものについてもやはり半額は見て行こう、こういうふうに解釈すべきであると思うのですが、どうでしようか。
  176. 田中義男

    政府委員(田中義男君) それはお話の通りだと思つております。
  177. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それでは教育委員会との関係ですね。衆議院の文部委員会では市町村に教育委員会を置こう、こういうことになつて来ておるわけなんです。本会議ではまだきまつておりませんが、多分文部委員会で自由党の委員が満場一致できめられた。こういうことになれば、私は本会議ではよほど事情が変つて来ない限り前途は楽観できないと思うのです。そういう意味で市町村に教育委員会が置かれた場合、給與の問題、これはどういうふうになつて行くのですか。やはり都道府県で給與の問題は一本に扱うのか、市町村にまで下りて来るのか、そういう点について、現行では市町村にまで下りるということにはなつていないわけです。併しいろいろ問題が起つて来るのじやないかと思いますが、その点について文部省の所見を伺つておきたいと思います。
  178. 田中義男

    政府委員(田中義男君) 市町村に教育委員会ができました場合における給與費の問題、まあいろいろこれは問題でございまして、ただ現状のままというわけには行かないと考えております。そこで市町村にまで下ろしてこれを処置いたしますか、現状のままにおいて、而もなお市町村の教育委員会との間において調整をとるような措置を講じますか、いずれかの措置を講じて、そうしてその間の調整を図る必要があると考えておりますが、只今ここでどういうふうにいたしますということを申上げるまでのまだ結論を得ておりません。
  179. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 これは提案者は、特に教育委員会を町村にまで設置すべきだという見解を以てあの法案が議決されたようでありまして、そうしてこの法案の提出者でありますから、その関係をどういうふうに考えておられますか、伺いたいと思います。
  180. 若林義孝

    衆議院議員(若林義孝君) 私自身事務的のことに過ぎないものだと思つておりますので、原則としては現在の県にこれを任すべきであつて、市町村まで下ろすと、従来の折角この義務教育費の国庫負担法のような精神で教育費について心配をさせないという気持でおるのに、若し貧弱な市町村へ持つて行つて、ほかへ流用されるようなことになつたら、米の遅配欠配と同じようなことのないようにする点から言つても、これは現状のままのほうがいいのじやないかという気持を私個人としては持つておるわけであります。併し若し市町村に下ろすということがあれば、これはそういうことのないよう万全の措置を講じた上で然るべく取計ろうべきことだとこう考えております。
  181. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それで教育委員会の仕事というものはいろいろあると思うのです。それは教職員の任免というような問題も私重要だと思います。同時に教職員の待遇の問題をきめる、こういう問題も重要な職責だと思うのです。ところが給與の問題は都道府県の教育委員会がやるべきである、町村まで下ろせば非常に困つた問題が起きて来る、こういうお考えですね。一方では教育委員会は町村にまで下ろしたほうがいいのだという考え方と、私は若干ここに矛盾をして来るのじやないかというふうに思うのですがね。こういう点、一つ御見解を承わりたいと思うのです。
  182. 若林義孝

    衆議院議員(若林義孝君) この点今御発言になりましたことと同感を感じております。だから給與の責任を持つところへ、公務員の地位を上げて行くか或いは今まででも地方公務員であつて市町村の吏員である、これだけを特別に給與のああいうところへ上げておけば県の公務員ということになつて、国庫が半額負担するのであるから、それより国家公務員にしたらどうか、これを少し、余り事理を明確にせんほうが御関係者の御趣旨に副うのじやないかというような気もするわけであります。私がじや県の公務員にしたらどうかと言えば、そこが言いたいところなんでしようと、そうして選挙運動の関係があるのじやないかと思われるのです。私たちそういうことは、私個人は一つ考えておりません。できるだけ安心をして教職を御担当願い、それからなおとにかく日本教育というものを根本にして考えての措置でございます。余りこいつを事理を明確に筋道を通さんほうが今日ではいいのじやないか、こういうふうな気がするわけであります。
  183. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私は筋道をちやんと通して行つて何ら差支えないと思うのでありますが、現在教職員の身分というものは市町村にあるわけなんです。これを県に移すということになれば、これは大改革になつて来るのじやないかと私は思うのですがね。と言うのは小学校、中学校を全部建築しなければならないし、町村立においておつて、給與を單に県の委員会が支給しているから身分を県に移す、そんなべら棒なことは私はないと思う。それは市町村立学校を建築から全部都道府県立に移して行く、一切を市町村から取上げて県に移して行くというふうなことができるかどうか。私はそんなことはとてもできないと思う。従つて教職員の身分を都道府県にまで、都道府県に持つて行くということは到底できる話じやないのです。これをしようと思えば根本的に変えて来なければならん問題があるわけです。そういう問題じやなしに、私が言つているのは、どうも町村に教育委員会を置こうという考えと、都道府県で給與はやはりきめて行こう、こういう考えと、考え方に若干ずれがあるのじやないかということを考えておるわけなんです。そこで私のお尋ねしたいところは、町村に教育委員会ができても、教職員の給與は市町村には移らないのだ、こういうふうな提案者も文部省も考えであるかどうか。その点移らないのだと、こういうふうにお考えになつているかどうか伺いたいと思うのです。これは端的に伺いたいと思います。
  184. 若林義孝

    衆議院議員(若林義孝君) 現在の段階におきましては御発言になつ通り考えております。
  185. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 文部省は……。
  186. 田中義男

    政府委員(田中義男君) 文部省といたしましては、そういうふうにはつきりなつた場合にどちらが教育をやつて行きますのによろしいか、実はいろいろ話合つておるところなんです。それで現状を変改するということは相当困難かと思いますけれども、さつき申しましたようにいずれかのとにかく調整を必要とするであろうということで、実は文部省としてのいろいろな考え方を今まとめておりますので、結論として申上げることに至つておりませんです。
  187. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私、若林さんのおつしやつたことですね、非常に現段階においてという言葉がありまして、それでは私の質問のし方を変えまして、給與を町村に下したほうが教育のためにいいのかどうか、或いは県に置いておいたほうがいいのかどうか、そういう見解を、提案者の見解を私は伺つておきたい。
  188. 若林義孝

    衆議院議員(若林義孝君) 私らはまあ県に置いておいたほうがいいと考えております。
  189. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私はもう全く同感なんです。町村に教育委員会ができるといたしまして、給與がそこから支拂われるということになれば、非常に困る問題が幾つも出て来ると思うのです。ですからこの問題については都道府県に置いておくべきである、こういう考えを持つているからなんです。併し県に、町村に教育委員会ができますね、そうして任免権は町村の教育委員会が任免をして行く、給與は又別の委員会がやつて行く、任免と給與の支給と別別の人がやつて行つて、その間うまく行けるかどうか、私は非常に疑問に思つているのですがね。
  190. 若林義孝

    衆議院議員(若林義孝君) 私はこれは運用の如何によるのじやないかと思いますけれども、法的に考えますと、現在大学などにしても、文部大臣も国家も自由にならない。大学の管理法という正式なものはありませんけれども、おつずから大学の中にあるところの管理法によつてつておるわけです。而も給與は国家が拂つております。そういうような意味で私は運営は円滑に行くのじやないかと、こう考えます。
  191. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 そうですかね。まあそういうふうに任免は市町村の教育委員会がやる、結與の責任は府県の教育委員会が持たなければならん、こういうことになれば、而もその教育委員会には上下の指導関係、上下関係というものはないわけです。それで独立した機関であるということになれば、給與におかまいなしに地方教育委員会は任免できるわけです。それを全部国が拂わなければならん。こういうことになると、かなりこれは面倒な問題が起つて来ると思うのですが、そういう問題は別といたしまして、この際私はこの問題に直接的な問題ではありませんが、やはりこの間の衆議院で若林さんたちがおきめになつたあの考え方というものは、本当はやはり実情にそぐわないのじやないかと思うのですが、一つ十分実情に即してお考えを頂きたい。この際こういうことを申上げて甚だどうも相済まんわけですが、一つ附加えさして、頂きたいと思います。これでこのくらいで私の質問は終ります。
  192. 岩間正男

    ○岩間正男君 今の問題ですが、これは市町村の教育委員会というのは何をやるのですか、つまり財政権は、もう重要な問題というのは県に預けておく、こういうことになりますと具体的にどういう仕事をやるのですか。今の任免の問題と関連して巧妙に大学の例を引いて逃げられたのですが、実情は非常に違うと思う。大学の数は非常に少い、ところが一県が実際問題として担当している学校というのは大きいのになると千近くも学校があるわけです。少くとも四、五百はあるだろうと思う。そういうことになりますと非常にこれは煩瑣であり、その運営ということがとても大学と文部省との関係、こうした関係のようには行かないと思う。こうなりますと、任免権は持つておると言うのだが、実際は裏付けがないというと任免権そのものが有名無実になる。そうすると給與に関する力を持たない任免権す実は有名無実だ、そうして作られた市町村の教育委員会は実際何をやるかをお聞かせ願いたい。
  193. 若林義孝

    衆議院議員(若林義孝君) それは二十三年に教育委員会法を御審議になりましたかたが多勢おられると思いますので、そのかたに一つどうぞ……。
  194. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) どうです、一つ次に第三條に……。
  195. 岩間正男

    ○岩間正男君 名答弁をされたようでありますが、(笑声)まあこれ以上言いませんが、現状が変われば、やはり現実に合せてやつて行く、現実問題として修正する必要が出て来た、名答弁ですが、(「妥協性があるな」と呼ぶ者あり)そこでそれはそれとして第二項をこれは今さつきのお話によりますというと、まあ地財委と文部、大蔵と、こういうような各官庁間の考えを一応何とか妥協させるような恰好で全部を作られた。又平衡交付金の現在のこの精神と、それから第一項との関連として、こういうような條項が必要になつて来た。こういうお話なんですが、この第二項の将来これがまあ單独に離れて来ると思うのです。この修正されたときの気持はそうかも知れんけれども、この法案は法案として生きるわけですね、特にそういう場合にこの最高を抑える、こういう形になつて来ると、これは今後の国家財政の関連等も非常に考えられることですが、教育費がやつぱり大きくこのほかの現実的な支出のために食われる、そうして非常にこれを保つて行くことができないというようなときに、逆にこの項が惡用される心配がある、濫用される心配がある。政令を変えて或いは物価水準や給與のベースの変動によつていろいろな変動が起るのでありますけれども、併しこの基準というやつは、その基準を抑えておく、そのままにしておく、こういうことによつて今のような教育財政に対するしわ寄せを合理化するという、こういう方面に惡用される心配はないか、この点非常に大きいのです。どうですか、この点について見解をお伺いしたい。
  196. 若林義孝

    衆議院議員(若林義孝君) これはこの法案に関しましていろいろ御発言がありました主要部分が、今岩間委員から御心配の点であつたと思うのでありまして、大体まあ言い盡しておると思うのでありますが、先ほど内藤課長からも説明がありましたように、まあ私たちとしては、これが不必要な條文に終ることを期待いたしておるようなわけでありまして、飽くまでもこの実質額という妥当な線に沿うたものならば、飽くまでもこの実質額という点に根拠を置くべきである、で過般御説明申上げましたように、他の府県との均衡、或いは同府県内におきましては、他の公務員との均衡を破らざる限り、この第二項は発動すべきものではないと、こういうふうに心得ておるのでありまして、この精神において、この政令を国会を通じて監視しつつ行くべきじやないかと、こう考えております。
  197. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 第二條の項に何かこのほかに質疑のかたはありますか。なければ第三條……。
  198. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは何ですか、ほかの諸君は今日議運のほうに出ておるのですが、この諸君については認められるわけですか、第一條第二條について……。
  199. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) あとでたくさん時間を取ります。
  200. 岩間正男

    ○岩間正男君 認められるのですか、認められるならば、大体この程度で明日やられたらどうですか。
  201. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) ちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  202. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 速記を始めて下さい。それじや第三條について質問を願います。
  203. 岩間正男

    ○岩間正男君 それじやこの経費の一部を負担するというのですが、これは実際要る額は、さつきデーターが出て来ないとわからないのですが、大体何十分の一になるのですか、聞かして頂きたい。
  204. 内藤譽三郎

    説明員内藤譽三郎君) 大体従来の慣例でありますと、義務教育費については一部を負担するという場合には二分の一でありますが、二分の一又は三分の一ということもあり得るわけです。
  205. 岩間正男

    ○岩間正男君 これはどう解釈するのですか。
  206. 内藤譽三郎

    説明員内藤譽三郎君) これはその負担率は、予算できめられますので、生徒一人当りの額が政令できまりますので、それが二分の一になるか、三分の一になるかによつて生徒一人当りの額が政令できますることになつております。
  207. 若林義孝

    衆議院議員(若林義孝君) 折衝の過程を一つ詳しく申して、将来又御協力を願いたいと思います。原案は御存じの通り二分の一という線が出ております。この二分の一の線を出しました基準は、給與額の十分の一の二分の一というのが原案に明確に出ておつたのでありますが、これが折衝の過程におきまして、こちらまでこういうように修正したわけであります。その狙いはまあその三分の一を下らざることということになつております。この給與費の十分の一ならば、ひとりでに給與がベース・アツプすれば上る。財政当局から言えば、これを恐れるわけであります。そこで一定の限度をそのときどきによつてきめることができるという意味において、生徒一人当り幾らということに基準を置いて政令できめる。まあその限度は今内藤課長が二分の一乃至三分の一であるということを言われておつたのでありますが、最低三分の一を下らざる範囲内においてこれを認めるということで折衝を続けたのでありまして、我々といたしましては、その限度を一人二百円当り、三十数億を予想いたしておるのであります。これで大体の三分の一……。
  208. 岩間正男

    ○岩間正男君 年額ですね、二百円というのは。これで間に合うか……。どういうことになりますか。教材というものの内容は年額二百円で賄うということになると、大体具体的にはどういうものですか。
  209. 内藤譽三郎

    説明員内藤譽三郎君) これは掛図、実験実習用具、その他各科の教材、教具費を整備いたしまして、大体目録で検討いたしますと、約百億かかるのであります。その百億は十年償却という計算でございます。十年償却で毎年度百億、そうすると約一千億、十年償却で……。その百億の二分の一でございますれば五十億、それから三分の一ですと三十数億ということになりまして、一人六百円が予想されておるのですが、三分の一ですと、今若林先生のお話のように二百円になるわけです。二百円を下らないようにいたしたいと思つております。
  210. 岩間正男

    ○岩間正男君 教材費というものは、教材教具費と考えているわけですか。
  211. 田中義男

    政府委員(田中義男君) そうでございます。
  212. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 そこで私は十分な資料があるわけじやないのですが、教材費が大体百億だという算定された基礎ですね。私はかなり疑問を持つておるわけなのです。この間も地方へ行つたときに関係者にちよつと聞いたわけなのです。そうするとまあ三分の一で二百円になるのだ、そうすると六百円にならん、それじやとても足らない、そんなものじやない、こう言われておるのです。百億というのはPTAの会費から算定して来られたのか、どこから算定して来られたのか、どこから算定して来られたのかお伺いしたいと思います。
  213. 内藤譽三郎

    説明員内藤譽三郎君) これはよく小学校や中学、或いは大学の先生がたの専門の委員会で十分検討しておりまして、理科設備にはどの程度のものが今学習指導要領で要求されておるかという点を検討いたしまして、少くともそのうち何個要るかというように個数と品目を整理いたしまして、どの程度の価額であるかということを調べたわけであります。ですからこれによつて、毎年どういうふうに償却を見ておるかということにもよると思います。ですから総額で約一千億ですから、一学校当りの経費は大体三百万円ぐらいになると思います。ですからその十分の一を見て行くという形ですから、一年間に三十億程度の教材を整備する、こういうことでありまして、別にPTAの寄附金のほうから来たわけではございません。
  214. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 それは厖大な調査の仕方ですが、それであれば私は若干資料を頂きたいと思うのですがね手取り早い方法は実際にどれくらい学校では一年教材費として使つておるか、こういうところから集計すれば私は出て来ると思うのです。それをやつておられないようですがね。それをやらないで、大体教育をして行くのにはこれこれの設備が、教材と教具が要ると算定すれば、私はとてもそんなものじや足らないと思う。今実際使つておるものはそういう必要なものよりも遥かに下ですよ。それで大体これの勘定で行くと、一千人の学校の教材費というものは、この勘定で行くと六十万円になるのです。一人二百円ですから、二十万円、その三倍ですから六十万円ですが、そうじやないのですね。大体それくらいの学校ですと、百万円くらいに超しております。そうすると、私は二百円という單価は、実際今日使つている教材費の六分の一くらいしか当らない、こういう大体の概算ですよ。それが地方、所によつては違うと思いますが、大体実情に近いのじやないかというような教育の実際に当つている人の見解なんですがね。そこでもう少し実情を調べて三分の一くらいは補助するのだということであれば、最小限度三分の一補助するということであれば、二百円ともうきめてしまわないで、もう少しここは実情を調べて、そうして三分の一なら三分の一、三分の一から二分の一の間でするというなら、その点でやつぱり單価を抑えて行くべきじやないか、私はそう思うのですが……。
  215. 内藤譽三郎

    説明員内藤譽三郎君) 決して私のほうは、実際の調査をしていないというわけじやございませんが、現在市町村で教材、教具にどの程度出しているかいう調査は勿論いたしておるのですが、非常にラフな計算で相当多めに見て、大体市町村から出しておるのは七十億程度であります。それからPTAの寄付金等で見込まれている分が百億のうち約四十七億程度が教材費と見られるのであります。そのうちには勿論消耗品が全部入つております。ですからそれを含めまして百二十億程度今私どもが理論的に一つ学校にどれだけのものが必要であるかという学習指導要領が要求するところの教材、教具、図書、そういう備品の類について十分検討しておりまして、ただお話の中には私は備品の机とか或いは簟笥とかそういうものが入つておる点もあるのじやなかろうか、それから消耗品をどの程度見るか、消耗品は学校によつてばらばらでありまして、或る学校では父兄から取つておる所もあるし、学校で出しておる所もあります。紙のような類でありますが、そういう点の見方の相違は私はあると思うのですが、要するにどれだけの教材、教具が学校に最低限度必要であるかというリストを今作成中でありますので、それが非常に素案なものは勿論ありますけれども、できましたら一つ御覧類いたいと思います。
  216. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私も十分資料があつて言つておるのではない、大体聞いた程度でありまして、それははつきりしない点もあります。併し私の聞きたいのは一人当り二百円と抑えて行くのか、或いは教材品の三分の一乃至二分の一というところで抑えて行くのか、どちらに基礎を置くのかということをお聞きしているのです。
  217. 内藤譽三郎

    説明員内藤譽三郎君) 教材費の額が総額のほうが先ずそれによつてきまつて来るわけであります。その額から生徒一人当りを還元して来るわけであります。ですから生徒一人当り二百円ときちつと出るわけではありません。そこが今予算折衝によつて今若林さんのお話の線は二百円を下らない額ということで大蔵大臣とお話し合つたというように私は記憶しておるのであります。
  218. 若林義孝

    衆議院議員(若林義孝君) 内藤課長から説明せられましたように、総額の三分の一を下らざる額というので交渉いたしておるのであります。それを兒童一人当りに割つたとすれば大体二百円見当になる、こういうことであります。
  219. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 そうですか。
  220. 岩間正男

    ○岩間正男君 これはさつきのお話のように、消耗品とかそういうものの取り方、それからもつと具体的に言えばいろいろの手工の用具とか、それからまあ図画の用紙とか、クレヨンとか、筆とか、こういうものを入れるのですか、入れないのですか、これは学用品ということでこういうものは入れない、教材、教具だけですか。
  221. 内藤譽三郎

    説明員内藤譽三郎君) 私どもが今やつておりますのは、成るべく消耗品のほうはむしろ避ける、将来は消耗品は入れなければならんと思つておりますが、現在検討しておりますのは、どうしても備えなければならない図書、掛図、教材、教具、そういう各教科の教材、教具、こういうような点で搾つております。
  222. 岩間正男

    ○岩間正男君 ここのところが非常にさつきの若林さんのお話で大事なところであります。消耗品というのは非常に馬鹿にならないものであります。ところが現在はPTAで負担しておる。そのほかに子供たちが毎日三十円、五十円と持出す、これを入れるととても今のような額には抑え切れないと思います。教材、教具、図書、掛図、実験用具、音楽機械とか、そういうものだけでこれは総額一千億、大体年間百億という形である、消耗品を入れると三百億円くらいに最低なるだろうと思います。そういう恰好になる。そういう基本的な抑え方によつて非常にこれは違つて来ると思うのですが、この際は今の大体内藤課長の説明の線ですね、そういうことで了解したのですが、それともう一つなぜ三分の一というものは入れなかつたのですか、一部というようなことであいまいである。非常にこれはやはり情勢によつて変り得るのではないですか、法案ですから一部などというあいまい模糊としたもので、これは一時立法のときに了解を得たというようなことで将来の線を維持することは困難だと思う。なぜこれは二分の一なり三分の一というものではつきり抑えなかつたのか、この点如何ですか。
  223. 若林義孝

    衆議院議員(若林義孝君) 大体この産業教育の法案を御審議願つたときにも、この点が或いは問題になつたのじやないかと思いますが、我々といたしましては二分の一というものを目標に置いておつたのです。ところが産業教育に関する義務教育以外の分については三分の一が原則であるということで、六億六千万円というものが三分の一を大体予定されたのであります。同時にこの義務教育については二分の一乃至三分の一ということになつておるわけであります。折衝の過程は三分の一を下らざるということになつておるのでありますから、それは折衝の過程における様子を御覧願いましたならば、三分の一で承知したのだから三分の一と、こうしてしまつたほうが得か、二分の一という原則が根本的にあるのなら、それを明記せずしてやるほうが得かということに勘案いたしましたときに今日のこの修正案となつたわけでございまして、なおこれは各位の御協力によりまして二分の一の線まで、又教材費の解釈におきまして相当大幅な解釈をすることによつて有利に一つこれを展開して行きたい、かく考えておる次第であります。
  224. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) ちよつと御相談申上げますが、今日はこれで散会して御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  225. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) それでは散会いたします。    午後四時二十七分散会