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1952-05-15 第13回国会 参議院 文部委員会 第33号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年五月十五日(木曜日)    午前十時五十二分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     梅原 眞隆君    理事            高田なほ子君            相馬 助治君            木内キヤウ君    委員            川村 松助君            白波瀬米吉君            高橋 道男君            堀越 儀郎君            山本 勇造君            荒木正三郎君            矢嶋 三義君            岩間 正男君   衆議院議員            若林 義孝君   国務大臣    運 輸 大 臣 村上 義一君   政府委員    文部省大学学術    局長      稻田 清助君    文部省管理局長 近藤 直人君    運輸省船員局長 山口  傳君   事務局側    常任委員会專門    委員      竹内 敏夫君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○小委員長報告義務教育費国庫負担法案衆議院送  付) ○連合国及び連合国民著作権特例  に関する法律案内閣提出) ○国立学校設置法の一部を改正する法  律案衆議院提出)   —————————————
  2. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 只今から文部委員会を開きます。  最初教育費国庫負担の小委員会報告を承わりたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) それでは小委員長に御報告を願います。
  4. 堀越儀郎

    堀越儀郎君 それでは教育費国庫負担に関する小委員会の御報告をいたします。  小委員会は三月二十八日に設けられまして、それ以来昨日まで七回会を重ねて参つたのでありますが、大体結論を得ましたので、事務局のものに朗読して頂くことにいたしまするが、御参考までにお手許に差上げておりまするから十分御覽頂きたいと思います。勿論これは義務教育だけでなしに、適用の範囲を拡げておりまするが、教育費のあり方としてはかくありたいものだという我々の希望でありまして、現実の問題において、日本財政状態などと睨み合せて、その他諸種の事情を勘考いたしまして、これでなければならないという結論というよりも、二十七年度予算はすでにきまつておりまするので、二十八年度以降将来においてもかくあるべきものであるという姿を我々の小委員会として見出したのであります。勿論これは我々の強い希望を表現したのでありまするが、これによつて小委員会の各党、各派或いは各委員の御意見を束縛するものではないのでありまして、すでに衆議院においては義務教育費国庫負担法を上程することになつておるのでありますが、近く本委員会においてもその審査をいたす順序となることでありまするが、我々参議院の小委員会が、教育費というものはかくあるべきものであり、又かくありたいものであるという希望を持つておるということを睨み合して御研究願えれば幸いであろと存ずる次第であります。お手許に差上げてはおりまするが、事務局のものに一応朗読して頂くことにいたします。なおそれ以後に御質問なり、又委員長として報告以外に漏れている点がございまするならば、他の委員から補足して頂くことにいたしたいと思います。
  5. 相馬助治

    相馬助治君 非常に立派な刷り物のようですし、又一通り見ると非常に明快なようですから、これを速記録に載せることにして、了承できないでしようか。
  6. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 相馬君の御提案に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) それではプリントを速記録に載せることにして朗読を省略さしてもらいます。   —————————————
  8. 梅原眞隆

  9. 若林義孝

    衆議院議員若林義孝君) 義務教育費国庫負担法案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。  申すまでもなく、義務教育憲法に定められた重要な国民義務であり、同時に権利であります。従つて国といたしましても、この義務教育につきましては、その一定の規模内容とをすべての国民に対して保障すべき責務を負つているものと言わなければなりません。そしてこの責務を果すためには、先ず国が義務教育について確実な財政的裏付けをすることが何よりも必要であると考えるのであります。  従来義務教育費に対する国の保障といたしましては、義務教育費国庫負担法という法律がありました。この法律は、周知通り地方財政において最も大きな地位を占める義務教育費地方のみに委ねることが、結局は義務教育の進展を阻害するのみならず、地方財政を危くする慮れがあるという認識に基いて、昭和十五年に別に法律をもつて義務教育に従事する職員給与都道府県負担とするとともに、この法律によつてその半額を国が負担することを定めたものであります。  この制度によつて、それまで教員の俸給の不払、遅払等の事態があつたものが解消され、爾来この制度義務教育の支柱となつてきたものであります。ところが、この制度シヤウプ使節団勧告に基いて、地方財政平衡交付金制度が創設されるに及び、遂に昭和二十五年度から廃止され、現在に至つているものであります。即ち現在は義務教育については財政上国の特別の保障というものはないのであります。その反面義務教育費はどうなつているかと申しますと、再三の給与ベースの改訂及び物価の上昇等によりまして飛躍的に増大しているのであります。特に教職員給与費は、昭和二十四年当時の二倍以上となつており、都道府県一般財源に対して三五%から四五%に膨脹し、地方税収入の七五%を占めるに至つたのであります。このため地方公共団体独自の税収入義務教育費を賄うことのできるのはわすかに九都府県に過ぎず、中には義務教育費税収入の二倍、三倍に達している県すら少くないことが報告されているのであります。そこで各府県間の教員の待遇及び定数は益々不均衡が甚しくなるとともに、全般的に低下の傾向が顯著となつているのであります。  他方学校維持運営費につきましても、その三分の一は父兄寄附金に頼らざるを得ないのが実情であり、しかも漸く建物はできてもその中味が伴わないのが六三制の現状であります。これでは憲法保障する義務教育の無償も、またシヤウプ使節団勧告に基いて、寄附金を解消するために大幅な市町村税の増税を実施した意図も有名無実となつているというよりほかはないのであります。  更に学校建物につきましては戰時中は荒廃のまま放置され、また戰災によつてその多数を失い、その上六三制の実施によつて戦後校舎の不足は大きな政治問題化したことは周知通りであります。現在すでに耐用年数四十年をこえた校舎は実に二百八十万坪の多きを数え、そのうち使用禁止を命ぜられている危険校舎が四十四万坪にも達 しており、なお年々これが累増の傾向にあるという憂うべき状態にあるのであります。  このように重大な段階にある義務教育につきまして、その財政的な裏付けをする制度は、いわゆる六三制建築補助及び若干の補助起債を除けば、平衡交付金制度のみという状態であり、これでは到底この緊急の事態を解決するわけには参らないのであります。そもそも平衡交付金制度と申しますのは、ニユーヨーク州の教育平衡交付金制度の構想を日本において地方行政全般に及ぼしたものでありまして、この制度アメリカで成功いたしましたのは、單に財政力の相違からばかりでなく、これが教育費のみを対象としており、而も教育費算定税収入の測定も容易だからであります。ところがわが国におきましては地方のすべての行政費対象としており、複雑な地方税体系のもとで国がその行政全般について財政上の責任を負うという制度でありますので、そこにはどうしても無理と欠陷が伴い、交付金の額の決定は常に政治問題化し、義務教育費のような額の大きい、しかも重要な経費が圧迫されるという結果を招来しているのであります。従つて義務教育費のように、憲法上国がその最終的責任を負うことを要請されており、しかも地方財政において極めて大きな地位を占めている経費につきましては、どうしても平衡交付金制度とは別に、国庫がこれを補償する制度を確立し、義務教育の妥当な規模内容とを国民のすべてに対して保障いたしますとともに、地方財政の安定を図ることが必要であると考えるのであります。  以上がこの法律案提案理由であります。次にこの法律案骨子を申述べますと、先ずこの法律案は、昭和二十八年度から実施すべき義務教育費国庫負担制度等につきまして必要な規定を設け、附則において、この趣旨を実現するため昭和二十七年度について差当り地方財政平衡交付金制度特例に関して所要規定を設けております。御承知のように本年度はすでに予算も定まり、また国庫負担制度実施いたしますためには、なお相当の準備も必要でありますので、このような方法とつたわけであります。  次に逐條御説明いたします。  先ず第一條は、只今説明いたしましたようなこの法律案の基本的な理念及び目的を定めてあります。  次に第二條は、教職員給与費及び教材費国庫負担について規定してございますが、その第一項には、国が義務教育費のうち、現在都道府県負担している義務教育に従事する教員寮母及び事務職員給与費及び市町村又は都道府県負担している教材費につきまして、それぞれその総額の二分の一を下らない額を負担することを規定いたしております。第二項は教職員給与費総額算定方法を定めてありますが、それは教職員一人当り給与費平均單価教職員総数を乗じて算出するという方法をとつております。教職員総数は、先ず全国公立小学校兒童数に五十分の一・五を乗じて小学校教員数を算出し、次に全国公立中学校生徒数に五十分の一・八を乗じて中学校教員数を算出することになつております。この五十分の一・五、一・八という数字は従来の義務教育費国庫負担制度においても用いられて来たものでありますが、これは実際に一学級について教員が一・五人或は一・八人必要であるということを意味するものではなく、一学級兒童生徒数を五〇人と仮定した場合の数字でありまして、実際には一学級平均兒童生徒数小学校で四十四人弱、中学校では四十五へ弱となつております。またこの教員数のうちには、校長、養護教諭、産前産後の教員及び病気、事故、研修等補充教員も含まれているのであります。次に全国公立盲学校及びろう学校小学部兒童数に十分の一・五、中学部生徒数に十分の一・八を乗じてその教員数を算出し、又全国公立盲学校寄宿舎に寄宿する兒童及び生徒五人に一人、全国公立ろう学校寄宿舎に寄宿する兒童及び生徒八人に一人の割合で寮母の数を算出することにいたしております。更にこうして算出いたしました義務教育学校教員及び寮母の数に百分の二・四四六を乗じて結核教員の数を算出いたします。従来の国庫負担制度におきましては、この率は百分の一・三三となつておりましたが、その後の結核教員数の増加によつてこの率を変更する必要が生じたのであります。最後結核教員を除いた教員及び寮母の数に三十分の一を乗じて事務職員の数を算出いたします。この数は大体現在置かれている事務職員の数を基準にしたものであります。  以上の算出方法によつて算出される教職員数昭和二十八年度の推定は、教員約五十三万四千人、うち結核教員約一万二千七百人、寮母約千五百人、事務職員約一万七千入となる見込であります。又教職員給与費総額は、昭和二十八年において約九八〇億円程度となる見込であります。  第三項には、教材費算出方法規定してあります。教材費内容は、図書、地図、掛図、オルガン、顯微鏡、映写機、幻燈機その他国語、算数、理科、音楽、保健体育等の各教科の学習に必要な教材教具のすべてを含みその総額は、教職員給与費に百分の十を乗じて算出することにしてあり、昭和二十八年度におきましては約九十八億となる見込であります。第四項は、国庫負担金の各地方公共団体に対する配分基準その他その配分に関し必要な事項法律で定めることを規定しております。国庫負担金は多額にのぼり、地方公共団体財政に重大な影響を与えるものでありますので、それを如何に配分するかは、地方税改正と関連して考慮しなければならないので、後に法律で定めることにしたのであります。  第三條は、教職員給与費平均單価算定方法規定いたしております。その方法は、笹年度国立学校教職員の例に準じて給料、諸手当等教職員一人当り平均單価を合理的に算出し、これらを合算して算出するのであります。  第四條は、義務教育学校校舎建設に係る地方債に関して地方財政法特例規定し、毎年度老廃朽校舎を順次更新できる途を開いております。先ず第一項は、地方財政法五條において地方債を発行できる場合が限定されておりますので、義務教育学校校舎建設事業費はその特例として扱うものであることを定めております。第二項は、その地方債総額算定方法を定めております。即ち小学校は一・一坪、中学校は一・四六坪、盲学校及びろう学校は八・一八坪にそれぞれ全国公立学校の兒童、生徒数を乗じて算出した坪数を五十年で更新するものとして、五十分の一を乗じた坪数を建築するために必要な額によつて起債総額を算出するという方法をとつております。なお各学校坪数は、各学校に必要な最少限度の教室その他の建設坪数を合理的に算出し、これを兒童生徒一人当りに換算したものでありまして、盲ろう学校におきましては、教育上欠くことのできない寄宿舎坪数を含んでおります。こうして算出されました地方債昭和二十八年度における総額は約九十億円となり、毎年約四十万坪の校舎が更新できる見込であります。第三項は、この地方債をもつて賄われるべき校舎建設に関する事業計画基準その他必要な事項、即ち危険な校舎とか使用年数の古いものから順次地方債を認めるというような基準法律で明確にいたしまして、地方債の効率的な使用を図ろうとしております。  第五條は、戰災及び災害を受けた校舎復旧費について国がその半額負担することを規定しております。この措置によりまして従来復旧が遅れ、義務教育実施に支障を来していたような事態が解消されることが期待されるのであります。  次に附則におきましては、先ずこの法律のうち、第二條から第五條までの規定昭和二十八年四月一日から施行し、第一條の基本的な理念に基いて昭和二十七年度地方財政平衡交付金制度特例を設け、第三項から第六項までにおいて、義務教育に従事する職員給与に関する基準財政需要額の合理的な算定基準を定めると共に、第七項において、地方財政委員会が各都道府県基準財政需要額算定する場合には、あらかじめ文部大臣に協議することといたしたのであります。次に、第八項におきましては、盲ろう学校義務制が現在小学部の五年までとなつており、これが昭和三十一年に完成することになつておりますので、その経過措置規定しております。第九項におきましては、当分の間第四條に定める地方債のほかに、六三建築補助に伴う地方債が存続するわけでありますから、その点を明らかにいたしております。最後に第十項におきまして、この法律の施行に伴い地方財政法改正を加える必要がありますので、所要改正を行うことにいたしております。  以上がこの法律案骨子であります。この法律案は、教職員給与費を確保することにより教職員の生活を安定させ、教職に専念せしめると共に、教材費の確保により、校舎はできたが中味の整わない学校教材を整備し、百億に上るPTAの寄附金を解消し、千三百万への父兄の要望に応え、起債によつて二百八十万坪に上る老朽危險校舎の解消を図り、市町村長及び住民の熱烈な要求に応えんとするものであります。従つてこの法律案最少の国費を以て最大の効果を挙げるものであります。独立日本の門出に当り憲法保障された義務教育が国策の根幹であることを明かにし、防衛力漸増と相並んで、教育文化を尊重するゆえんを中外に宣明するもので、その意義は極めて大なるものがあると確信するものであります。  議員各位におかれましては、義務教育重要性地方財政実情を十分御理解を頂き、愼重御審議上速かに御可決下さるよう御願い申上げます。
  10. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) ちよつと速記を止めて。    〔速記中止
  11. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 速記を始めて。
  12. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 連合国及び連合国民著作権特例に関する法律案を議題といたします。本案に対する御質疑のあるかたは御発言を願います。  本案に対する御質疑は終了したものと認めて御異議はございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  13. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 異議ないと認めます。  それではこれより討論に入ります。御意見のおありのかたは賛否を明らかにしてお述べを願います。なお修正案の御意見もございましたらこの際お述べを願います。
  14. 木内キヤウ

    木内キヤウ君 私はこの案に修正案を提出いたします。  先ず修正案を朗読いたします。連合国及び連合国民著作権特例に関する法律案の一部を次のように修正する。  附則を次のように改める。  この法律公布の日から施行し、日本国との平和條約の最初効力発生の日から適用する。  以上でありますが、修正理由とするところは、この法律案は、日本国との平和條約の規定に基くものでありまして、日本国との平和條約の最初効力発生の日から適用されることが必要なのでありますが、然るにこの法律公布の日が日本国との平和條約の最初効力発生の日より遅れておるので、この法律適用の期日について明らかにする必要がありますから、修正案提出いたすのでございます。
  15. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 速記をやめて下さい。    〔速記中止
  16. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 速記を始めて下さい。それでは今の修正案に対して御意見がございませんか。
  17. 高橋道男

    高橋道男君 私は只今提出されました本法律案に対する修正案と、これを除いた原案とに賛成をいたします。但し、この法律案につきましては、いろいろ実際上の問題として微妙な問題がなお残されておると思うのでありまするが、これは平和條約から起因して起つて来る問題でございまして、平和條約において日本のために最も万全を期された十分な條文が起草されていなかつたために、こういう一面不利と思われるような法律案ができざるを得なかつたということで了承いたしたいのでございます。但し、この法律案によつて、今後起つて来る実際問題につきましては、文部当局その他において、万全の方策、方針を以て善処されることを希望して本案に賛成するものでございます。
  18. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 他に御意見はございませんか。
  19. 相馬助治

    相馬助治君 反対討論を先にやつたほうがいいだろう。
  20. 岩間正男

    岩間正男君 私はこの法案反対です。反対の第一の理由は、第一、平和條そのもの和解信頼、こういう形で進められたにもかかわらず、その具体的な姿を一つ一つ見ますというと、まさに和解信頼に違反するような一方的な行為によつて規定されておる。こういう実態がもろもろの法案に出て来たわけであります。そういう例は枚挙にいとまありません。この法案もまさにその具体的な一つの姿を現わしている。この平和條約を結ぶに当つて、若し対等の立場で、これは和解信頼の精神を徹底するというふうなものであつたならば、こういうような文化面の問題についても当然十全なる努力外務省がこれはやつて、そして今後文化交流に対するところの日本のそういう権益を十全に守り得ると、こういうような点について重大な努力をすべきであつたと思うのであります。然るに本委員会外務省関係者を招致しまして、意見を求めてみますというと、岡崎外務大臣のごときは殆んどこの事態についての認識がない。更に当時の関係者でありますところの西村條局長意見によりますというと、この條約によつて今まで占領治下の規制的な不利な問題、これを変更することが非常に困難だ。そういうようなことがこの平和條約の交渉の中に因果を含められた、いわばその因果を含められたものをやむなく了承したということをここで告白しています。こういう形によつて、いわば押付けられたところのこのような平和條約、その平和條約の第十五條によりまして、このような法案をいわば下請的に日本政府作つて、その結果はどうなるかというは、しばしばここで論議されましたように、日本著作者並び出版業者、そういう関係者が非常な不利な立場にこれは導かれる。みすみすこういうようないわば国内立法を強いられたというような形でこの法案ができているのであります。こういう点から考えまして、私たちは無論平和條約にこういう点からそもそも反対して来て参つたのでありますけれども、まさに平和條そのものの性格がこういう形にはつきり現われておる一つの具体的な例としまして、私は断じてこれには先ず第一に賛成することができないのであります。従つてこういう法案は、止むを得ず大前提が認められたのであるから、それに従うところの措置だから止むを得ない、こういう形で、先に、外務省がどのように一体今後国民権益を守られるんだかという具体的な一つの確証並びに見通し、こういうものに対する我々の見究め、こういうものなしに、こういう法案が易々として通過されるということになつたならば、これは平和條約によつていろいろ不利に押付けられましたものが、いつ一体どこでこういうものを回復するのであるか、こういう点を考えますというと、非常に不安なきを得ない。従いましてこの條約はイタリア條約の平和條約なんかと考え合せましても、イタリア條約のこれは附則には明らかに、この占領期間中にいろいろな不利な條件或いは歪んだ條件、こういうものがあれば、一年間の期間を置いてこの條約を更改する、これを改める、こういう期間が認められておるのでありますが、日本の條約にはそれがないために、明らかにこういうところに落されている。従つてイタリア平和條約と比べましても、この文化面におきましても非常に不利な條件日本政府はこれを甘受したということになるのであります。尤もいろいろそこに外務省説明を聞きますというと、日本イタリアのように途中で戰争を放棄しなかつた最後までこれは敵対国であつた。そういう点で同等には扱えない。こういうことを言われておるのでありますが、併しいやしくもこれは和解信頼ということを堂々と謳つておる。世界の電波に乗せておる。こういう形で以てやつておりながら、実質におきましては、はつきりイタリア條約よりもこれは徹底的に不利なんだ。こういう形で、いわば欺瞞の形で進められておるところの條約につきましては、我々はこういう実態に賛成することはできないのであります。  殊にこの中で一番大きな問題になつて関係者が心配に堪えないのは、この経過規定の問題であります。占領政策中にいわゆる政令二百七十二号、こういうものによりましてこの日本著作権者、そういう人たちがいろいろな制限が設けられまして、又占領期間中のいろいろな條件の中におきまして、仲介業者立入つて、そしてその仲介業者が不当に日本業者を圧迫するという事実ができて来ている。この前も例を挙げたのであります。例えばシートンの「動物記」のごとき問題であります。これを内山賢次氏が翻訳した。そしてこれに対しまして原著者シートン夫人交渉した。著作権の保管につきまして、これはイギリスのクリステー・モーア社に対しまして譲渡権交渉して承諾を得た。この場合の印税は七分五厘、こういうことで承諾書が書かれているのであります。然るにここにアメリカ仲介業者のトーマス某なる者がこの中に入つて、そうしてここに交渉権を獲得して、そして内山賢次氏からこの承諾書を借りたままいつの間にか取上げてしまつた。その後の折衝によると、その承諾書を受取つた覚えはない。こういう形におきまして、印税は七分五厘から実に九分に引上げられた。こういうようないわば非常に歪められたところの形で、これは一例に過ぎないのでありますが、出版業者、飜訳者が非常に不当にこれは抑圧されている。こういうことでは少くとも和解信頼の精神には大きく違反するのでありまして少くとも講和が発効した、こういうような形におきましては、これを当然昔の正常な姿に戻す。少くともその講和の精神のところに戻してこれは文化交流を対等的にやつて行くということが必要なのでありますけれども、こういうような占領治下に起りましたところの不在み或いは不当の抑圧に対しましては、全くそれが継続ざれる形になつて行く。そうしていつ一体どこでそれが具体的に解決されるのであるかという見通しは、文部当局は無論のこと、外務省におきましても何らこれはない。そういうことになりますというと、今後この業者間の混乱或いはこれをめぐるところの紛争、こういうものは非常に処置しようがなくなつて来る。こういうことが出てくるのであります。これは当委員会におけるところの参考人の公述におきましても、はつきりこういう事態に対するところの心配が出ておる。従いまして著作権協会の意向としましては、むしろこういうような條約によるところの止むを得ないところの下請的な国内立法をするよりも、むしろ問題の焦点であるところの占領治下における経過規定、この経過規定をどのように是正し、どのようにこれを改変するかというところにこの法案の主眼を置いて欲しい。こういうような一つ意見さえ出ておるのでありますが、これは御尤もな意見だと私は思うのであります。若しも民族の利益というものを本当に代表し、そして国会も政府もそういうような点におきまして、講和後の日本の態勢を確立するという一つの確信を若し持つならば、本当に独立したところの日本人の確信を持つならば、私はそういう点においてこういう立法がなされることが国会の当然の任務であろうと思う。然るに先ほど申述べましたように、この法案というものは、止むを得ず原則がきめられたのだから、その原則に従つて飽くまでその下請的な立法をやらざるを得ないという形、而もこの法案につきましては、恐らく当時占領中でありましたところのGHQ当局とこれは交渉して原案が作成されたのであります。従つてそういうような法案でありますから、決してこれは日本業者に有利なわけはないのであります。こういう形でできました法案、而も業者を本当に保護するということに徹していない、こういうような形の法案に対しましては、私は断じて賛成することができないのであります。従いまして以上簡單に二、三の例を挙げたのでありますけれども、こういう点から私たちはこの法案に賛成することができない。  なお反対理由点としまして追加を加えますと、これは講和條約を結んだ国々との規定について書かれてあるのでありますが、講和條約に調印しなかつたこういうような国々、殊にはつきりこれは申上げますと、ソヴイエツトロシヤ、或いは中国であります。こういうところとの今後の一体著作権の問題をどうするのであるか、而もこういうところは非常に実質的に交流が多いし、殊に文学面から見ますと、ロシヤ文学のごときは日本の文学の非常に大きなところの一つの要素になつておる。従いましてこういう点において果してどういうふうな対策をとるのか、全然これは不明であります。現在のような、或る一国に対しまして文化的な封鎖をする、経済的な封鎖をやつておるのであります。政治的な封鎖をやつておるのでありますが、これを文化面におきましても封鎖をして行くということになりますと、こういう点から私は非常に今後不利が起るんではないか。我々は少くとも世界に対して限を開いてその真相を見て行く。文化的にも、そういう点で決して我々は精神の栄養失調に陷つてはならん。一方的なものだけを食べて、そうしてビタミン欠乏症で、自分たちの精神栄養の失調を起すということは非常にこれは私としては重大な問題でありますが、こういう問題については何ら解決されていないのであります。こういう点でも併せて私はこの法案に対する反対理由を挙げる。もう一つ申述べますと、日本の受ける、今後これに対して負わされる義務、こういう面の規定は多いのでありますけれども、日本における海外のそういう権益についてはどのように守るか、こういうような面の規定というものはこれはない。  以上私は、直接この法案の中に内在した問題ではありませんが、これと関連したところのいろいろな理由から挙げましても、どうしてもこの法案には賛成することができないのであります。
  21. 相馬助治

    相馬助治君 私は只今議題に相成つておりまする連合国及び連合国民著作権特例に関する法律案に対しまして、社会党第二控室を代表して賛成の意思を開陳いたします。  本法律案は、平和條約発効に伴いまして、その平和條約の規定のみにおきましては一般国民の理解に不十分な点もあり、且つ又実施上の細目についても欠けるところありとして、政府提案を以てここに議題に供せられておるのでありまして、この根本的な趣旨におきましては、只今共産党を代表されまして討論されました岩間氏の所説には、聞くべき多くのものを持つておると思うのでございます。併しながら現実に平和條約は発効いたしまして、この関連下におきまして、今後予想せられまする著作権の国内及び国外における諸問題というものを勘案いたしまするときに、当然といたしまして、この段階においてその実施上の細目規定をすることは、立法府にある我々といたしましても当然の責務であろうと思うのでございます。ただ政府の提案理由その他をお聞きいたしまして我々が討論の過程において、外交交渉並びに平和條約締結当時における著作権の擁護に関して、政府が十全の努力をされたかどうかという点に関しましては、多大の疑念と多大の遺憾の点を我々は発見したのでありまするけれども、現実の問題といたしまして、私は次の二点において本法案の必要性を痛感するものでございます。  先ず第一点は、平和條約の発効に伴いまして、戰時中及び戰後におきまして放置せられておりましたるところの日本人の持つ著作権日本における連合国及び連合国民の持つ著作権なるものが如何なる條約によつて保護されるかということが戰時中におきましては放置されていたことは御案内の通りであります。それが平和條約の発効に伴いまして、ベルヌ国際條約によつてこの問題が律せられることとなるのであります。勿論ベルヌ国際條約によつて保護せられるといたしましても、この條約そのものについて私どもは多少の不服を持つものではございますけれども、今後日本がこの著作権の問題に対して、例えば飜訳等について国際的な規模において事をなさんとする場合におきましては、平和條約の発効に伴うベルヌ国際條約の復活を見たということは一応の拠り所を得たと思つて、このことは高く評価されなければならない現実であろうと思うのであります。  第二の問題は、本法によりまするというと、連合国及び連合国民著作権に関する譲渡について厳粛に規定を定めております。即ち著作権法に定める原則通りにこれを登録しなければその権利を第三者に対して対抗できないことと相成つておりまして、その登録については連合国及び連合国民に対しても登録税を課すると規定されておるのであります。勿論これは討論の過程において私もたびたび触れたのでありまして、相手のあることでありまするが故に、今後外交交渉折衝に待たなければならない具体的なトラブルの起ることは予想せられるのでありまするけれども、日本人自身が連合国民著作権についてその相続或いは譲渡、質入、こういうような具体的なことが起きた場合におきまして、第三者たる日本国民はその事情を知る由がないのでありますが、この国内法によりまするならば、少くとも日本人におきましては、この第三者に対する対抗要件の規定が存在するということは一応の強みであろうと思うのであります。そういうような意味におきまして、私は平和條そのものについても多大の不満を持つものでありますが故に、その根本趣旨におきましては、只今岩間君が触れられました通りイタリア平和條約等に対照いたしまして、著しく不利でありますることを認めると同時に、これは西村條局長言明の通りではありまするけれども、この問題の審議に当り外務事務を担当しておりまする岡崎国務大臣並びに文部当局説明等に  よりまして、今後十分なる注意を以て折衝にも当り、且つ又外国の事情等も研究の上に、日本人の外国に持つところの著作権というものの保護のためには十分なる努力を払う用意のあるということを一応信頼いたしまして、本法案に賛成するものであります。  問題はなお岩間君も触れました通りに、未調印国との問題、その他この国内法というものが正しく外国に認識せられるかどうかという、外交実力を裏付けとする諸問題が残されておるのでありまして、この際政府の自信を持つた努力を要望いたしまして、根本趣旨には二、三の不満は存するのでありまするけれども、実施上の細民法案として必要欠くべからざるものであるという観点に立ちまして私は賛成の意思を表明するものであります。
  22. 高田なほ子

    高田なほ子君 社会党第四控室を代表いたしまして、この法案に対して反対意見を申述べます。  私どもは、世界の真実の平和を求めるために、最後まで中立という立場を取つて参りました。特に本法案は、文化の交流という面について大きく考えなければならない法案であることは今更申上げるまでもございません。世界のどの国もが文化国家を標榜いたしまして、いろいろな施策を議じておりますが、この文化交流という面についていずれの国もかこれは考えなければならないことは、対等の立場においてお互いの文化をお互いに交流し合つて、世界のすべてのものは手を繋ぎ合つて高い文化に進んで行くということを、これを原則的に考えなければならないと思うのであります。然るに本法は、未調印国八カ国を除きまして極めて、八カ国との今後の処置については殆んど見込がないというような当局の御見解がありまして、而もその懸案については殆んど手が差延べられておらないということが明確になつたのであります。日本としては、これらの国国に対して門戸を閉鎖する意思はない。こう言つておるのでございますけれども、併しこの法律そのものがそういう趣旨とは相反する方向に行くということは、これは一目瞭然でありまするが故に、私は文化の広い交流に対して阻害を提起するような法案に対しては、先ず反対をしなければならないのであります。  第二点といたしまして、非常にこの法律は片務的の規定であります。この片務的の規定でありますものに対して、今後の見通し、今後の確約、そういうものがこの法律案討論の過程においても、西村條局長或いは岡崎国務相の言を借りましても、明確に認識されておらないのであります。日本は非常に特殊な立場に立つておりまして、十年間という長い不利な既成事実ができておるのであります。この既成事実を明確に打開する、こういう方向がとられておらなければならないのにかかわらず、イタリア平和條約におけるような、占領下の不利な條件を回復するための特例というふうなものが何らここに認められておらないのであります。こうした片務的な規定を私どもはここに確認をして、そうしてそれによつて起る今後の紛争の原因を除去するという明確な規定がないこの法案に対しては、賛成することができないのであります。  簡單でありますが、二つの理由を述べまして反対意見を表明いたします。
  23. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 私は連合国及び連合国民著作権特例に関する法律案について反対理由を表明いたします。反対する理由は、各委員の賛成並びに反対討論を承わりましたが、私の反対する理由は、審議の経過から言つて結論的に申上げまして、臨時国会も恐らく開かれるであろうし、近い機会に審議する機会もあると思います。すでに平和條約発効をしておる現在、もう一回再検討して審議して頂きたい。これが私の反対する理由です。と申しますのは、これは先ず本法律案の審議に当つて非常に長時間に亘りまして一貫した審議をしなかつた関係上、誠に不見識な話でありますが、本員は、これに確信を持つて何人も納得させるような反対理由、並びに賛成理由を述べるのに苦慮するものでございます。ただはつきりした点は、相馬君が指摘しにように、平和條約の施行に当つて日本政府はこういう文化的の著作権の問題については非常に無関心であつたと同時に、その折衝に当つては、当事者と文部省との連絡も不十分であつた。こういう点と、それからこの母法である平和条約の一五條(C)がそもそも不利にできておる。然らば平和條約が発効しているから、それに立脚して、いたし方ないじやないかということになりますが、そうなりますと、平和條約の第十四條に、御承知のように、「許す、限り日本国に有利に取り扱うことに同意する。」この一点にすべてを託しているようでございまするが、すでに正式外交交渉も発足したことなれば、これを足がかりにして再検討すべきものだと、こういうふうに考えるものでございます。他の委員も指摘されましたが、たとえ平和條約十五條(C)を承認いたすにいたしましても、この表現に不明確な点があります。例えば具体的にもう申上げますというと、著作権の発生の問題を取上げましても、不明確な表現がなされております。更に先日の政令二百七十二号の不利益な処理、それらについても明確な点がなされておりません。経過的処理も不十分であります。更に文化のことでありますし、平和條約を締結しなかつた国との関連というものも私ら納得するまでに至つておりません。更には文化という立場から、近く文化條約みたいなものを締結して、そうして今後進んで行くというような点につきましても、外交交渉が再開された今日、私は更に努力すべき点があるのではないか。こういう立場から、恐らく近く開かれるのであろう次の機会までに、政府において民間の意思も十分聴取して、国会において再審議をする機会を持ちたい。こういう立場において、私は本法律案反対の意を表明するものであります。
  24. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 他に御意見はございませんか……。別に御意見もいようでございますから、討論は盡きたものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  25. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 御異議ないと認めます。  それではこれより採決に入ります。連合国及び連合国民著作権特例に関する法律案を議題といたします。先ず討論中にありました木内君の修正案を議題に供します。木内君提出の修正案に賛成のかたは御起立を願います。    〔賛成者起立〕
  26. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 多数でございます。よつて木内君提出の修正案は可決されました。  次に修正の部分を除いた原案を議題に供します。修正の部分を除いた原案に賛成のかたの御起立を願います。    〔賛成者起立〕
  27. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 多数と認めます。よつて連合国及び連合国民著作権特例に関する法律案は多数を以て修正議決せられました。  なお本会議における委員長の旦頭報告内容は、本院規則第百四條によつて、あらかじめ多数意見者の承認を経なければならないことになつておりますが、これは委員長において本案内容、本委員会における質疑応答の要旨、討論の要旨及び表決の結果を報告することとして御承認願うことに御異議ございませんか。   (「異議なし」と呼ぶ者あり)
  28. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 御異議ないと認めます。  それから本院規則第七十二條によりまして委員長が議院に提出する報告書につき、多数意見者の署名を附することになつておりますから、本法案を可決することに賛成されたかたは順次御署名を願います。   多数意見者署名     相馬 助治  木内キヤウ     川村 松助  白波瀬米吉     高橋 道男  堀越 儀郎   —————————————
  29. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) それでは次に、国立学校設置法の一部を改正する法律案を議題に供します。御質疑のあるかたから御質疑を願います。
  30. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 時間がございませんので、簡単にお伺いいたしたいと思います。運輸大臣の所管において、船員の再教育機関として神戸に海技専門学院を持たれているわけでございますが、それらの実情については大臣御承知と思います。それで実情を私はお伺いいたしませんで、大臣は下級船員の再教育というものについてどういうふうにお考えになつていらつしやるか、その点伺いたいと思います。
  31. 村上義一

    ○国務大臣(村上義一君) 船員の再教育問題は常に必要なことでありますし、特に現在御承知のごとく、日本の商船隊を急速に編成、増強しなければならん現段階におきまして、ここ三年或いは四年間は急速な船員の養成を必要とする次第であります。従いましてこれについて、種々運輸省としてはでき得る限りの方途をとつておるような次第であります。
  32. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 船員局のほうでは、今大臣も肯定されましたように、船員の再教育は非常に重要である。従つてあの海技専門学院の施設の一部或いは全部を商船大学として使用せられる曉においては、船員の再教育に支障があるから反対である。こういう意思表示を早くからなされておられたのを私は承知いたしておるわけでございますが、このたびの商船大学の設立についての案を承わりますというと、現在の海技専門学院の一部を文部省所管の商船大学で使用される。更に場合によれば、あなたの所管の海技専門学院とそれから文部省所管の商船大学とで併用されるというように承わつているわけでございますが、そういうことで責任ある再教育は行われると大臣はお考えになつていらつしやいますかどうか。その点をお伺いいたしたいと思います。
  33. 村上義一

    ○国務大臣(村上義一君) 船員の素質向上のために、又上級免状を取得したいという向上心を満たすためにも、船員の再教育は絶対に必要なことであるのであります。自然先刻申述べましたごとく、将来に対しましてもこれは持続して行かなければならん問題であります。殊にこの三年間は、船腹の増強に対応して船員の再教育は極めて必要なのであります。で昨年度までは、大体三百名を定員としておりました神戸の今御指摘になりました海技専門学院においての定員が、二十七年度においては六百十名ということになつております。なおそれ以外に、昨年度から二ヵ年間の教育を施す組、これが五十名ありますので、六百六十名を定員として予算措置を講じたような次第であります。そういう次第でありまして今御指摘になりましたように、商船大学が深江で設置されるという場合に、両方を混合して教育して行くということは、これは非常に種々の点において支障を来す次第であります。或る程度においてこれは載然と区別を立てて行かなければならんものであります。特に監督官庁も異なつております。その点につきましては十分最初から考慮をいたしておるのであります。ただ衆議院文部委員会におきまして、昨年来非常に熱心に神戸に商船大学の設置を必要とする御意見がありまして、文部委員会は数回現地視察もせられたようであります。その結果に基きまして、昨年衆議院文部委員会のかたがたが運輸省の責任当事者、又は文部省の責任当事者と協議をした結果、覚書ができておるのでありまして、その覚書の内容は甚だ簡単でありまするが、深江の設備は商船大学を設置される場合には文部省に移管をする。但し船員の再教育は絶対に必要であつて、それにいささかも支障は与えないということに相成つておるのであります。商船大学が法律が決定せられて設置せられまするときには、現在運輸省の所管の深江の諸施設を、つまり管理権は文部省のほうに移管する約束に昨年なつておるのであります。併しながら深江において今運輸省が行なつており、又この三年間、或いは四年になるかも知れませんが、特に急速に船員を再教育せなければならん、その再教育につきましては、いささかも支障を与えないというこの約束に基きまして、使用は運輸省がして行くということに相成つておる次第であります。海技専門学院の再教育には何ら支障がないと考えております。
  34. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 取交わされたいさきかも支障がないという作文を大臣は信頼されておりますが、大臣にその点私さつきお尋ねしたのですが、今後も責任持てますか。
  35. 村上義一

    ○国務大臣(村上義君) 私は飽くまで責任を以てこの約束を守つて行きたい、こう考えておるのであります。実は、なお詳しく申しますと、深江は大体直接の教育の機関、芦屋にこれに必要な寄宿舎が現在あるのでございます。相当これも大きい設備を持つておるのであります。只今は專ら寄宿舎使用いたしております。深江のほうにおきましては、現在教室は十七教室あります。六百名余りの船員の再教育をしまするいろいろの段階がありまして、教室としては二十二教室を必要とするのであつて、現在の教室というのも、予定通りに進行すれば五教室足りないのであります。それで大きい教室に間仕切りをいたしまして、二十二に改造しまして、そして要請に応ずることにして行くという考えであります。それで現在の深江の設備は殆んど全部再教育機関である海技専門学院の使用に供してもらわなければならんという実情であるのであります。なお教員室でありますとか、図書室とか、研究室とかいうようなその他の機関がありまするが、こういつたような機関につきましては、できる限り共用をして行つてこれは差支えないと思つております。ただ、商船大学が設置せられました場合におきまして、私の伺つておるところでは八十名程度の定員で先ず新制高等学校の卒業生を採用するという御計画のように聞いておるのであります。だからそれに必要なる教室その他の設備を新たにぜられるということに相成つておるのであります。予算等の措置も恐らくそういう前提で措置せられておることと思います。
  36. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 大臣、八十名というのは百二十名の間違いでありますから、念のため、申上げておきます。大臣はいささかも支障はないとこう言われますけれども、御承知のように商船大学の学生と海技専門学院の学生とは年齢層が全然違うわけであります。それから学習する内容も相当の差がありますし、卒業後における資格も違うわけなんです。而も監督者が別である。こういう人が同じ教具を共用し、同じ場所において十分円満な教育が行えるかどうか、これは私は常識の問題だと思うのであります。大臣は再教育は絶対に必要である。それから独立施設並びに設備が必要であるということを言外に示唆されておるわけでありますが、この段階において再教育が重要である、それに支障があつてはならないと、こういう立場に立たれるならば、どういうわけでこの再教育機関の独立設備並びに施設を強力に要望されないのでありますか。要望されたのでありますか。或いは今後要望されるおつもりなのでありますか。如何でございますか。
  37. 村上義一

    ○国務大臣(村上義一君) 甚だ理窟つぽい話になつて恐縮でありますが、実は白紙において考えまするならば、私としても意見があるのであります。併しながら運輸省としまして、衆議院の文部委員のかたがた又は文部省のかたがたと昨年すでに只今申しましたような覚書ができ上つておるのであります。後任の運輸大臣としてはこれを尊重することが妥当だと実は考えましてなお、その覚書の内容におきまして、前刻申しましたように船員の再教育に対してはいささかの支障も与えないということが條件に相成つております。で運輸大臣としましてはこの覚書條件を頼りにして進んで行きたい。ただここで申上げますが、前刻も申述べました通り、船員の再教育ということは恐らく永久的に必要なことだと思うのであります。今三年間くらいは大量に再教育をする必要がありますので、深江の設備を殆んど全部使用せなければなりませんが、常態に復した場合には、芦屋のほうで以前分教場が設けられておりましたのを今寄宿舎にこれを使用しております。でその芦屋の今の設備を更に教室に復元いたしまして、将来常態に復したならば、もう少し縮小した規模で再教育をしてもよろしい、先ず三年以後は寄宿舎を一部改造して教室にしまして、芦屋で独立した海技専門学院にして再教育を進めて行きたい、こういう考えを持つておる次第であります。
  38. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 海技専門学院の一部を商船大学に振り替えて、そうして大学ができるということについて、運輸省の船員教育当局並びに前任者の大臣は反対の意思表示をされたと私は聞いておるのであります。で只今の大臣の答弁によりますと、自分にも一つの案がないわけではないが、前任者の云々という発言から承わりますというと、ここに提案されておる現状において神戸商船大学が誕生するということは、下級船員の再教育という立場からは十分納得できないということを、私は言外に表示しておるものと、こういうふうに了承するわけでございます。従いまして、その再教育に対するところの対策というものは、私は責任者である運輸大臣としては当然果されなければならない。ただそのいささかも差支えないというような作文、それだけでは私は再教育を受けようとしているところの下級船員の立場、身の上になつて見ますというと、なかなか納得できないものがあるわけであります。更に伺いたい点は、今ちよつと大臣が触れましたが、それを意味しておるのかとも私は思いますが、昨日実は質疑応答の段階においては、発議者を代表しましての平島さんが、再教育と大学の教育との共有施設関係について質問申上げましたところが、運輸大臣は再教育は必要がなくなるのだ、だからあの海技専門学院の施設を大学が使つても差支えないのだ、こういう発言をされてそれは運輸大臣がそう話した。こういうわけでございます。それに列席しておりました船員局長に伺いますと、船員局長は三百人は是非とも必要であつて、今後平永久的に船員教育を続けて行く必要があると、こういうように、その発言は食い違つておるのであります。私は食い違つておるのじやないかという質問をしましたところ、どうも船員局長は非常に遠慮しておつて、何か肚に持つておるようで、本当のことを答弁すると叱られる、叱られそうだといつたような非常に心配されて答弁に立たれておるように私は見てとりまして、非常に気の毒に感じたのでありますが、その点重ねて大臣に私はお伺いいたしたい。
  39. 村上義一

    ○国務大臣(村上義一君) 昨日のお話は私伺つておりませんでしたが、恐らく運輸省は、船員の再教育の必要がなくなる、必要でない時期が来ると言われましたとしますれば、その意味は今最も船腹の増強を急速に図つておる。三年、先ず三年を目途にいたしておるのであります。今後この三年間を経過しますれば非常に縮小し得ると、そして芦屋のほうへ移転し得る。芦屋の設備だけで再教育の機関としては十分だと、こういう意味のことをお話になつたのじやないかと思うのであります。運輸省の方針としましては、再教育の必要性は殆んど永久だと私は考えておるのであります。それで今船腹増強の目標について三年間に是非到達したいと努力いたしておる次第でありますが、目標通りに三年間に船腹が増強しますれば、そのあとは常態に復し得ると思うのであります。この三年間はどうしても他に持つて行く場所はないのでありますから、それで昨年の覚書に明記されてありまする再教育にはいささかの支障も与えないという約束に従いまして、管理は文部省のほうへ移管いたします。併し教室などは殆んど全面的に再教育のために使わしてもらいたい、こう考えておるのでありまして、又そういう話も文部当局との間にもできておる次第であります。
  40. 若林義孝

    衆議院議員若林義孝君) ちよつとそのことについて……昨日平島氏が提案者の一人としての、代表としての答弁と非常に大臣の只今の答弁と食い違つているように御認識になつておりますけれども、いざさかも相違はいたしておりません。私も提案者の一人といたしまして、いわゆる大量に再教育を必要とするのが三年間であります。あとはいわゆる恒久的の再教育を行われるのでありまして、これは村上大臣も明確に再教育を運輸省がやつて行く必要のあることは認められておるわけであります。ただ、全国的にあの場所を使つておられますが、三年後には全面的にあれを使う必要はない。その間は大学を設置いたしましても、定員の三百何十名というのが一時に入つて来るのじやありません。四百何名というのが百名ずつ年々殖えて行くのであります。三年後には大体大量の再教育を海技専門学院としては終了するわけでありまして、その後は恒久的の、いわゆる規模から言えば小規模の再教育をせられるのでありますから、そこで運輸省といたしましても、この講習と教育という、学校教育と講習教育ということの差異は明確に認められておるわけでありまして、飽くまでも再教育は応急的の措置である、そうして船という国家の一つの大きな国の財産を預かる重要な者を養成するのにはどうしても学校教育に主眼を置かなければ相成らんということは、これは村上運輸大臣も運輸省の意見として明確に申されておるのでありまして、で、この大量の、とにかく当座の応急的措置としての再教育はここ三年で運輸省は終る、そうして恒久的の、非常に船舶に関係する勤労者の将来に輝かしき希望を与えるという非常に温かい心持の矢嶋委員の御発言のありましたように、いわゆる立身出世の将来への進歩の窓口を開くという意味で、又必要に応じてその規模の大小はあるでありましようけれども、再教育をやられるという運輸省のこの御意見と、そうしてその学校教育の必要性とを組合せまして、十分この教室の割当、その他教育計画というものを大学審議会にもかけておりまして、その点は今大臣が言われましたような支障のないような行き方にしようということになつております。で、昨日の半島委員の答弁は言葉が簡単でございましたので、ここに誤解が生じたかも知れませんけれども、今村上大臣が十一月の二十三日、やはり三年間は必要であるが、これは大量に必要なんで、あと値常的の、いわゆる恒久的の再教育というものはやはり必要であると、これは両方とも噛み合せてでありますから、誤解のないように釈明いたしておきます。
  41. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 只今若林議員から御説明がありましたが、それに対する質疑は時間の関係でいたしません。  第二の点。二十分の約束をしましたので、あと一回お伺いして質問を打切りたいと思いますが、それは二点でございます。明快な御答弁を願いたいと思うのでございますが、将来再教育の設備並びに施設を独立させる必要と、それをやるお考えはないかどうか、それが一つ。  それからもう一つは、このたび神戸の商船大学がこの法律案が通過して設立され、それから海技専門学院がそこにあつて同居すると、こういうことも考えるときに、更に昨年度五つの商船高等学校を運輸省所管から文部省へ移管したわけでございますが、これらと相関連して考えて、将来船員の再教育機関を現在の運輸省所管から文部省所管に移すお考えはないかどうか、並びにそれに基くところの理由、その二点を伺いたいと思います。
  42. 村上義一

    ○国務大臣(村上義一君) 将来船員の再教育機関の設備を独立せしむるという必要を認めております。そうして、それは是非実施して行きたいと考えております。  それから第二点の、再教育機関を将来文部省に移す意思がありや否やという御質問だと思いまするが、これが意思は全然ありません。なぜならば、この再教育というものは、現在御承知の通り働いておる船員であり、相当の年配にも達しておる。高等学校を卒業したばかりの学生を集めて教育するものと一緒では不適当じやないかという御指摘もありましたごとく、現に船員をしておりまする者を再教育して行くということは、これは現に船舶行政を処理しておりまする運輸省が最も適当な機関であると私は確信いたしております。
  43. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 これで終ります。只今の第一問に対する答弁と第二問に対する答弁とが実践の面において矛盾することが将来ないように、特に大臣の御奮起を要望いたしまして、質問を打切ります。
  44. 相馬助治

    相馬助治君 私はこの際村上大臣に二点お伺いします。  第一点は、船員の養成というものは近代国家としては非常に大切だと思う。曽つて大正年間に、船員が国民外交というような立場から諸外国に使いして日本のためにいろいろ動いたことははつきりしております。それにもかかわらず、最近は海上保安庁の要員のためには多大なる国費を支出いたしまして、全額国費を以てこれが要員を養成しております。そうして、その海上保安庁のいわゆる船乗り連中のやる仕事は何であるかということに相成りますれば、これは議論は分れまするけれども、極めて問題が存すると思う。従つて運輸省としては、その海上保安庁関係の船員養成等を睨み合せて、この際抜本的に船員養成のためには多大の国費を割く用意が将来なければならない。特にこの再教育については、今のような状態の再教育では、船員局長から繊々御説明がありまして、我々もその実態を承知したんでありまするが、今のような再教育方法では、そしてそういう財政措置では十分なことのでき得ないことははつきりしておりまするので、これら一連の問題を大臣はどういうふうにお考えになるか、所見を承わります。  第二点は、神戸に商船大学を作ることがいいか悪いかということを考える一つのポイントとして、提案者が我々にその理由として説明しておるところによりますれば、昭和三十年度に大よそ三百八十万トンの船舶ができるという見通しに立つて、しかじかかようなわけで神戸商船大学が必要であると、こう申しております。ところが、同じやつぱりその提案理由説明によりますと、情勢によりましては必ずしもこの目安の通りに実現し得ない云々というようなことで、俗な言葉を以ていたしまするならば、巧みに逃げを打つております。従つて、これは政府当局としてはこの造船計画をどういうふうに考えておられるか、又自信を持つておるかどうか、即ち昭和三十年度に至りますれば三百八十万トンは必ず造る予定であるか、或いはそれを上廻る予定であるか、或いは再軍備費用その他のために造船計画がそこまで行かないとか、そういうことに対して一つ見通しをこの際承わつておきたいと思います。
  45. 村上義一

    ○国務大臣(村上義一君) 船員の再教育の必要であることは、前刻も結論的に申上げたんでありまするが、今御指摘のごとく、現在の再教育制度で運輸大臣としても非常に不満を、不十分な感を懐いておるのであります。例えば、以前は授業料も徴しておらなかつたのを現在は徴しております。又寄宿舎の費用のごときも全免すべきものであると考えておるのであります。これは見方によつていろいろの御意見もおありだと思いまするが、何分家族をつておる人が多いのでありまして、そういう船員を再教育する必要があります。一面、船主は給料は支払つてつてくれるんでありますが、併しながら他の特殊手当はこれは支給しておりません。本俸だけしか船員には支給しておつてくれません。自然にその中から家庭の費用も割き、そうして授業料を納め、寄宿舎経費を払うという必要があるために、志を立てておる船員も、又優秀な実質を持つておる船員も、その面からチエツクされるという今日の実情であることは否めないと思うのであります。で、そういうことを、更に又制服貸与の制度でありますとか、いろいろ考慮せんならん点が少くないのであります。現在、育英制度のようなものを作りまして、大体三千二百万円ほどの基金で入学の時に限つて一万円を貸与するという制度がありまするが、これとて政府は全然、ただ斡旋をしてこういう制度を作つたに過ぎないので、全く特殊の篤志家の醸金によつて辛うじて三千二百万円ほどのフアンドを持つておるに過ぎない。要するに、御指摘の通り極めて大事な船員を向上せしめる、技能を充実せしめ、人格を立派なものにするという目的を持つた船員の再教育の現在の施設としては、甚だ運輸大臣としても不満を持つておるのでありまして、今後あらゆる機会に充実をして行きたいと念願いたしておる次第であります。この機会に皆さんの御協力を附加えてお願しておく次第であります。  それから第二点につきまして、三百八十万トンと御指摘になりましたのは、実は私としてもそういう目標を持つておる次第であります。この二十六年度末におきまして外航船舶の貨物船は百五十万総トンに達しております。これが大体現在の輸出入物資の三割二分程度を日本船で運んでおるに過ぎない。それから油送船は三十四万トンであります。これは日本に輸入して来ます油のタンク・ボートと言いますが、五割一分ほどの分量を日本船によつて転送しております。併し今政府として持つております日本商船隊の再建の目標というのは、輸出入物資の五〇%を本船で運ぶ。油につきましては大体九〇%を運ぶという目標で進んでおるような次第であります。で現在発注してなお未完成の船が約五十万トン余りあります。それから二十七年度、二十八年度、二十九年度、この三カ年間に新造船と買船、優秀な素質を備えた船なりば、船主の金融手当がみずからできますならば、買船も若干認めるということに相成つておるのであります。この買船も加えまして、一年間四十万トン、三十万トンは総理大臣の本国会の当初に当りまして施政方針演説にもありましたことですが、とにかくすべてを加えまして一年に四十万、ここ三年間に百二十万トンという見込を立てておるのであります。それから三十年度には大体二十万トン程度を作つて行けばいいの、じやないか。そうしますと、今大体申述べました数を加えますと、三百八十万トン近くのものに相成るのであります。恐らくこの数字をお述べになつたことと思うのであります。で必ずこの通りやれるかという御指摘もありましたが、是非運輸大臣としては実現したい。若し可能ならば更にピツチを早めたいということを念願しておる次第であります。
  46. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) ちよつと速記をとめて下さい。   (速記中止
  47. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 速記を始めて下さい。
  48. 岩間正男

    岩間正男君 時間がないようですから簡単にお聞きします。私はこの商船大学を作るかどうかという問題は、日本の船舶行政と深く関係しておる。この船舶行政を決定するのはやはり日本の貿易政策、こういうものと深く関連を持つているように思うのです。そこで具体的にお聞きしたいのですが、神戸に商船大学を作るのであるが、これは地域的な立地條件が非常にいいということが非常に一つの大きな根拠になつておる。そこで私は今政府のそういう造船計画などを伺つたのでありますけれども、こういうものは現在の政府の飽くまで貿易政策に重点があるかと思うのでありまするが、日本の現実から見ますと、これはやはり大陸、殊に中国との貿易、それからソヴイエトとの貿易、こういうものが非常な大きな話題になつている。又こういう現実の要求は今や覆うことのできないやはり要求だと思うのであります。これは私がくどくここで申上げる必要はない。関西に我々も予算委員会で参りまして、財界のかたがたともお目にかかつて懇談したのであります。まあ、新三品の問題、並びにその後起りましたところの繊維の大操短の問題、こういうものから考えますときに、日本の滞貨をもつと有効に、而も手早くこれを解決する、こういう問題になりますと、どうしてもこれは今申しましたような最も近接した地域との貿易というものをこれは促進しなければならない。従つて関西においてはそういう要求が非常に強いし、又従来の実績からみましても、神戸港というものはこの中ソ貿易というものが非常に大きなウエイトを占めておつたのじやないか。又その要求も非常に現在において熾烈になつている、こういうふうに考えられる。そうしますと、こういうような計画というものを一体今後の船舶行政の中に考えておられるのかどうか、又考えておられないで、吉田内閣の貿易政策によつて造船計画を進めておられるというと、このような現実的な要求が実際今や覆うことのできないように下から盛り上つて来ていると思うのです。これは日本の経済の根本的な矛盾の解決として当然こういうような問題が明日の日程に、いや現在の日程にこれは上つている。こういう問題をどういうふうに今後考えてやはり船舶行政なんかを今後遂行されるか、この点この商船大学を作るかどうかという問題を我我が判断する上におきまして、一国の総合計画の中で我々はものを判断する場合に、これは運輸大臣がどういう見解を持つておられるかということは非常に重要でありますので、特にお聞きしたいと思います。
  49. 村上義一

    ○運輸大臣(村上義一君) 只今御指摘になりましたソ連、特に中共との貿易につきましては、現在の船舶建造計画には前提としておらないのであります。併しながら全然考えないかと言えば、第二段においては考慮しているのでありまして、それはどういうふうに考えているかと申上げれば、今ソ連、中共等と若し貿易を再開し得るという段階に相成りますれば、現在の航路は非常に短距離に短縮される次第であります。それで相当貿易量が増加しましても、船腹としては賄つて行けるということを第二段において考えている次第であります。
  50. 岩間正男

    岩間正男君 私たちが心配しますのは、三年後ということで、これは一九五六年までに大体三百八十万トン計画をなされているようでありますが、その後いろいろそういうような現実的な要求と睨合せますと、今の貿易というのはどうしても再開される機運が非常に醸成されつつあり、又それを実現しないとやり切れないところに実際参つている思います。くどくど申上げますと、そういう現状は至るところで指摘することができる。そういうことになりますと、輸送量は、貿易量は非常に短距離であるからたくさん増加できる。同じ三百八十万トンでも、一航海のこれは距離が短かいのでありますから、日数が非常につまつて来る。そうしますと、そこにやつぱり船腹を作る造船計画と関連を持つていると思うのです。そういう場合は、例えば学校で今度は商船大学を一つ創設する。そうしてたくさんそういうものを養成するということになつたならば、そういう船腹と船員の関係なんかこれはよほど考えておかないと、卒業して見たが、いざという場合において失業者を出す、こういうような時代遅れなことが今後の動向によつては超るかも知れんし、或いは足りないという問題も起るかも知れない。併し今はそういうようなことは不確定要素であるから、全然そういう要因については考えていない。飽くまでこれは吉田内閣のいわゆるそういうような共産主義圏との貿易というものは遮断する、殊にバトル法の適用によつて、ああいうような対中共禁輸というような形で行くところまで進む、こういうようなことを前提としてとにかく進めておられるのです。この政策というものが先へ行つて現実的な修正に出会わないかどうか、こういう点については運輸大臣は先ほどの見通しをどういうふうにしておられるか、この点お聞きしたい。なお、このことは同時に今後の商船大学そのもの教育の方針にも関連すると思う。非常にこれは教育内容と関係が深い。世界に対してどういうふうに目を開かせるかということ、それからどういうふうに貿易というものを持つて行くか、この性格につきましても、現在のようにアメリカの下請的な日本の貿易の性格というものをやるか、或いは又平和的な平和産業を根幹としたところの貿易政策を大きくとつて行くか、こういうようなものはやはり私たちは検討する必要があると思う。一応これは吉田内閣の閣僚であられますから、そういう点を強力に進められるとして、そういう現実的修正というような事態が起るのか、起つた場合に、これはやはり今から政府も考えておかなければ間に合わないのじやないか、こういう点を考えるのです。こういう点は如何ですか。
  51. 村上義一

    ○国務大臣(村上義一君) 只今も申述べました通り、ソ連貿易、又中共貿易は今全然考えてないのでありますが、こういう未確定要素を基礎にして具体的な案を立てることはできないと思いまするが、前刻も申述べましたごとく、第二段に若し日本として御指摘のようなソ連貿易、中共貿易を開始できるということに相成りますれば、目標である輸出入物資の五〇%が五五%になる、或いは六〇%を日本船が輸送し得るということに相成る次第でありまして、お話のような船員を遊ばすとかいうようなことには全然ならんと思うのであります。
  52. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 時間がありませんから簡単に一つ
  53. 岩間正男

    岩間正男君 まあこの点、これは理論に亘りますからやめます。問題は私は別な、総合的に検討しておくことが実際においては日本の貿易政策並びに船舶行政という上においては必要だと、こういう考えを持つのでありますけれども、これは議論に亘りますが、只今のような御答弁では非常に機械的だと思う。そうじやない、もつと総合した研究を願わなくちやならない。例えばもつと近い隣接した、距離の三分の一、五分の一という所には貿易を従前も約三八%から四〇%を持つておるのであります。そういう所が重点になつて来れば、従つて外航船のずつと遠い分野の線については当然これは影響を持つて来るわけであります。そういうものを総合的に考えないと、例えば一方において日ソ、それから中ソですね、こういうような貿易量が増加されるということになりますと、それほど遠くのほうに対しまして多くの犠牲を払い、そうして船賃が馬鹿に高い、又押付け的な物資というものを、御承知のようにコストが非常に高いそういうものをわざわざ遠くから犠牲を払つて一体貿易する必要があるのかどうか。こういうことを考えますと、只今の御答弁では非常に機械的で、今五〇%あつたからそれに五%を加えて五五%になるかも知れん、これではまるで政策的に了承できない。こういうことについて議論しておりますると、時間がなくなりますから、もう少し総合的にそういう態勢について考えられるか、又一方においてそういう計画をも考えているかというような、そういう点はないのですか。全然そういう点については問題が起つてからやるのですか。それから第二の方法としては、お話程度くらいですか。そういう点をお聞きしたい。
  54. 村上義一

    ○国務大臣(村上義一君) 岩間委員が申しました通り、現段階においては中共、ソ連の貿易はアンナウン・フアクターでありまするが、この舶腹の増強政策につきましては、考慮に入れておらないのであります。併し第二段で前刻申しました通り、考慮はしておるということを申上げた次第であります。
  55. 岩間正男

    岩間正男君 そうすると神戸あたりの、関西あたりの要求というものは具体化されない、そういうことが少くとも計画の中に入つていない、こういうことになるのですね。
  56. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) ちよつと速記を止めて下さい。   (速記中止
  57. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 速記を始めて下さい。  これより休憩いたしまして、文部・外務連合委員会散会後に開会いたします。    午後零時四十八分休憩    —————・—————    午後四時二十五分開会
  58. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 休憩前に引続いて委員会を開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十六分散会