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1952-05-08 第13回国会 参議院 文部委員会 第30号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年五月八日(木曜日)    午前十時五十四分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     梅原 眞隆君    理事            高田なほ子君            相馬 助治君            木内キヤウ君    委員            木村 守江君            白波瀬米吉君            高橋 道男君            堀越 儀郎君            山本 勇造君            荒木正三郎君            矢嶋 三義君            岩間 正男君   衆議院議員            若林 義孝君   政府委員    文部政務次官  今村 忠助君    文部省大学学術    局長      稲田 清助君    文部省社会教育    局長      寺中 作雄君    文部省管理局長 近藤 直人君   事務局側    常任委員会專門    員       石丸 敬次君    常任委員会專門    員       竹内 敏夫君   説明員    文部省管理局著    作権課長    柴田小三郎君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○産業教育振興法の一部を改正する法  律案衆議院送付) ○連合国及び連合国民著作権特例  に関する法律案内閣提出) ○図書館法の一部を改正する法律案  (内閣提出)   —————————————
  2. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 只今から文部委員会を開きます。  先ず産業教育振興法の一部を改正する法律案について、発議者衆議院議員若林義孝君から提案理由説明を求めます。
  3. 若林義孝

    衆議院議員若林義孝君) 只今議題となりました産業教育振興法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を御説明申上げます。  産業教育振興法は御承知通り、先の第十国会において成立したのでございますが、これが実施後の情況に鑑みまして、この法律目的を達成するためには、更に次の諸点につきまして改正を加える必要があると考えられるに至つたのであります。  その第一点は、第二條の「(国の任務)」の内容が、地方公共団体に対する奬励ということに重点がおかれ、国自体責任として、国立学校等に対する任務のあることが明瞭を欠く形となりまして、誤解を生ずる虞れがありますので、この点を修正し、明示しようとするものでございます。  第二点は、「第三條の二」として新たに條文を起しまして、学校における産業教育関係実験実習から生ずる收益を尊重し、これを従来の予算の外にそれだけ増額して、その実験実習に必要な経費、又はその実験実習に従事する生徒学生厚生経費に充て得るようにしようとするものであります。と申しますのは、産業教育実験実習が生命でありますから、その効果を十分ならしめるためには、これに相当の経費を充当しなければならないのでありますが、現在これに対する予算は、一般に極めて不十分であるばかりでなく、実験実習から生ずる収益は、国又は地方公共団体の收入にくみ入れられ、どの程度学校、又は生徒のために還元支出されるかは不明でありまして、生徒学生努力の意欲をそぐこと甚だしく、中にはこの収益予算を過大に見積られる結果、教育幾多の弊害を見つつあるのであります。  又一面には、生徒自身実験実習のために、被服、器具、或いは消耗品費等、相当大きい負担を余儀なくされるものであり、夏期においては又著しい空腹を伴うものであります。これは特に農・工・水産の学校において著しいのであります。これらの事情に顧みまして、この收益を成るべく多くその実験実習のための経費、更に進んでは生徒学生のための厚生費に充て得るようにいたしまして、実験実習教育効果をできるだけ高めようとするものであります。  次に第三点は、「第三條の三」といたしまして産業教育に従事する教員資格定員及び待遇に関し、特別の措置を講ずることを規定するものであります。産業教育技術教育が重要な部分を占め、実験実習重点がおかれておりますため、優れた技術と経験とを持つ教師を、比較的多数必要とするのでありますが、現在その資格定員及び待遇について、特殊性がなお十分に認められておらないのであります。そのため他の学科に従事する教員に比して、その勤務内容も、又時間的にも苦労が多く、優秀な教員がなかなか得がたいのであります。産業教育振興のためには、優秀な教員を得ることが最も重要なことでありますので、これらの特殊性に応じた特別の措置を講ずる必要があるのであります。ただその具体的な措置については、幾多の法令の改正に待たなければなりませんので、ここには先ずその基本的精神だけを掲げて、今後の方向を指示することといたしたのであります。  最後に第四点といたしましては、「第三條の四」として、この種教育に要する教科用図書編修検定及び発行等についても、特別の措置を講じようとするのであります。即ち、産業教育はその内容が多種多様であり、これに要する教科用図書はその種類が極めて多いのにもかかわらず、その各種教科書所要部数は比較的に少いのを常としております。このためにその編修検定及び発行には特別の措置を講じなければ、部数の少い教科書は多くは発行されず、たとえ発行されてもその価格は甚だしく高価となり、教育目的を果す上に、著しい支障となるのであります。  以上その主要な点について申上げたのでございますが、各位の十分な御審議をいただきまして、成るべく速かに本法案を成立せしめられますようお願いする次第であります。   —————————————
  4. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 次に国立学校設置法の一部を改正する法律案総括質問を行いたいと思いますが、御異議ございませんか。
  5. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ちよつと委員長議事進行について。ちよつと速記をとめて下さい。
  6. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 速記をとめて。    〔速記中止
  7. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) それでは速記を始めて。次に著作権に関する法律案議題といたします。文部省柴田課長おいでになつておりますから、質疑のあるかたから御質疑を願いたい。
  8. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 先般條約局長が来たときに若干聞きたいと思つたのですが、條約局長がお帰りになられて、本日もお見えになつていないようですから、文部省課長にお伺いいたしますが、この平和條約の中に盛られておる著作権に関する分について、日本側として有利に行かなかつたという点については、岡崎国務相に遺憾の意を表明したことは御承知通りでございますが、一体條約締結交渉しておる段階において、文部省は一体どの程度努力したかということは、それは課長には少し無理かと思いますが、一応承わりたいと思う。と申しますのは、現在列国著作権の問題というものは非常に重要視しておるということを承わつておるわけですが、ほかのことならともかくも、こういう文化的問題については、少くとも他国と、私は例はイタリアの場合もありますが、対等のものが認められないということは、私は考えられない。こういう結果を招来したのは、恐らく文部省当局努力も不足であつたろうし、外務当局との連絡も不十分であつたろうし、殊に賠償とか駐留軍とか、こういう防備的な方面ばかりに気を捉われて、我が国が指向しておる文化国家としてこういう著作権のような問題、文化的方面に関しての私は関心日本政府に薄かつたのじやないかというように考えるのは非常に遺憾に思つておるわけですが、課長答弁できる範囲内において答弁願いたいと同時に、こういうものを招来して今後これを如何にこの不利を解決して行こうとしておられるかというところの文部省側の決意を伺いたい。
  9. 柴田小三郎

    説明員柴田小三郎君) 私の答弁できる範囲内の程度のことをお答えいたします。この平和條約の締結の際に必ず著作権に関する條項も入ることを私たちイタリア平和條約の内情からも考えられるものでございましたから、正式に文部省から外務省に申入れるという形はとりませんでしたけれども、私、いわゆる著作権課から当時その事務をやつておりました国際協力課にしばしば行きまして、どういう條項が入つておるのか、イタリア條約とはどういうふうな関係のものがあるのか、その点を再三交渉したのでございます。そのとき私の交渉した相手方はやはり課長でございましたが、その課長も細かい内容については知ることはできない、又上からも知らされていない。こういうことでございました。この平和條締結の際は著作権條約がどういう形に挿入されるかという、そういうことについて文部省としましてはかなり注意を拂つたわけでございますが、外務省のその課長あたりでも、なお上のほうから知ることができないというふうなことだつたのでございます。それでそのほか重要なことについては各省に連絡をしていろいろ條約の内容外務省としても検討したようでございましたけれども、その著作権については別に外務省の意向も向うから問合せがなかつたのでございます。  それから第二の御質問のこの不利の点についてどう処置されるか、こういうことでございますが、平和條約第十五條によりますと、解釈によりまして日本側は非常な不利な目に会うこともあり得る、それでございますから今度特例法を作りまして、例えば金の二重取りをされないことだとか、期間の延長をできるだけ少くしたいとか、或いは又連合国人以外の手に渡つた著作権保護する必要はないとか、これは向うのガヴアンメント・セクシヨンのある間に解釈として決定しておき、十五條だけは非常に不利に持つて行かれるものを有利に解決しておきたい、こういうふうにして特例法を第十五條については設けたわけでございます。それからなお平和條約十四條について日本著作権の外国にあつたものを有利に取扱う、この問題につきましても、この間からたびたび外務省から答弁もありましたように、文部省外務省連絡をいたしまして、今後各国のその情勢を知りたいと思つております。今のところは例えば戦時中にどういうふうな著作権に対して特例法を設けているかどうか、各国のそういう処置もまだ知ることができない始末ですが、それについてなお十四條の有利に取扱つてくれるかどうか、これをなお調べて行きたい、そういうふうに思つております。
  10. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 あなたは外務省課長話合をしたが、正式には文部省からも外務省からも話合がなかつたという答弁ですが、主管課長として天野文部大臣に何らかの進言なり要望をしたのかしないのか、大臣は更に條約交渉に当つている方面にそういう交渉大臣としてやつたのか、やらないのか、その点どうです。
  11. 柴田小三郎

    説明員柴田小三郎君) 外務省との交渉につきましては、一応私は局長とは相談いたしました。併しそのことについて外務省文部大臣から特に交渉するというふうなことはしなかつたようでございます。
  12. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 政務次官にお伺いいたしますが、この法案審議に当つては、文部大臣一遍もお見えになつていないのです。本日もおいでにならんわけですが、政務次官見えになつておりますからお伺いいたします。本法案は御承知のように平和條約の著作権の事項を具体化した法律案になつているわけですが、平和條約に盛られている著作権部分我が国において不利であつて誠に遺憾であつたということは、岡崎国務相も先般本委員会で表明されたわけであります。そこで事務当局に伺つてみますと、この條約締結に当つて著作権の問題については、何ら外務省文部省との正式交渉もない、大臣も何ら意思表示をされなかつた。專門家に承わりますというと、列国では最近著作権の問題を非常に取上げている、我が国では駐留軍の問題とか、賠償の問題とか、そういう方面ばかり條約締結に当つて專念されて、こういう文化的な方面について非常に放置されておつたという点は非常に遺憾だと思うのですが、今後これを如何に有利に展開して行くかという問題が今後残ると思うのでございます。その点についてお伺いいたしますが、平和條約の第十四條に「有利に取り扱うことに同意する。」云々と表現されておりますが、こんなものは私は頼りにならないと思う。ついてはこの「有利に取り扱う」を具体化する意味において何らか通商條約でやるとか、或いは文化條約というようなものを結ぶというようなお考えはないかどうか伺いたいと思います。
  13. 今村忠助

    政府委員今村忠助君) 只今文部大臣衆議院文部委員会に要求されて出席いたしております。従つてこの條約締結折衝の最中文部大臣外務当局から何らかの交渉を受けたや否やについては私よく存じておりません。なおこの不利であると思われる点について文部当局として将来考慮されておるかどうかということでありますが、この点についてもまだ具体的に今日省議として諮つたというようなことは今のところありません。但し御指摘の点等は速かに研究いたしまして今後善処すべきところはいたして参りたい、こう考えております。
  14. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 次にお伺いいたしたい点は、一九〇五年の十一月十日に東京において調印された日米間著作権保護に関する條約、これは生きるのか生きないのか、と申しますのは、平和條約の第七條の(a)項によつてその末尾に「日本国にこうして通告されないすべての條約及び協約は、廃棄されたものとみなす。」というのがあります。そこでこれは向う様との交渉で通告をして、そうして今申上げました日米間著作権保護に関する條約が対等の立場で結ばれているのでありますが、これを生かして約束になつているのかいないのか。
  15. 柴田小三郎

    説明員柴田小三郎君) この日米間著作権條約の関係は、非常にデリケートな段階になつておりまして、不可侵條約とかそういうふうなものは、開戰と同時に形式内容共に消滅する。但しこういうふうな著作権というようなものは、二国間が交戰によつてどういうふうなことになるかということは前例がない。今度の日米間著作権條約についても果してそれをどう処置するか、それについていわゆる平和條約第七條を設けたようなことになつたわけでございます。それで一年間以内において有効であるか否か向うから通告して来る、こういうふうな形になりまして、その間はいわゆる二国間のそういうふうな文化的條約は形式だけは存在しているが、併し実効はない、そういう形になつていたわけでございます。ところがアメリカ国務省のほうからこの日米著作権については、これを一応破棄して置いて、平和條約第十二條によりましていわゆる内国民待遇向うから宣言すると、十二條によつて日本は当然内国民待遇をしなければならない、こういうふうな処置をしたい。そういうふうなことを向うから今のところ指示されております。その日米條約を破棄するという点だけの意思は四月二十一日に外務省に来ております。現在それを明確に若し説明するとすれば、一応二国間條約は保護することは今のところはない。併し近いうちに第十二條によつて内国民待遇向うのほうで與えると言えば、それによつて日本も内国民待遇を與えなければならない。こういうふうな形になる。こういうふうに解釈されておりまする
  16. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 日米間の著作権保護に関する條約は失効するということはそれでわかりました。この條文を見ますと、これは内国民待遇と私は同一内容のものになりはしないか、こう思うのですが、この條約を廃棄して内国民待遇をする、その差はどうなりますか、有利になるのか、不利になるのか、どういう点が有利になり、どういう点が不利になるか、私はこの條約は内国民待遇ということの一語に盡くされるのじやないか、こう思うのですが、專門的な立場で伺いたい。
  17. 柴田小三郎

    説明員柴田小三郎君) 従来の日米著作権條約は内国民待遇を原則にした條約でございます。併しただ一カ所翻訳に関してだけは翻訳は自由である、こういうのが内国民待遇をとつていない個所が一カ所あります。日米著作権條約ではそれが眼目になつておる條約でございますが、今度平和條約十二條によつて相互に内国民待遇を與えるということになりますれば、その翻訳の自由という規定は除かれまして、日本著作権法の第七條による翻訳権保護は発効後十年間だけを保護してやらなければならない。そういうふうな義務日本のほうに来ますから、やはり十二條による純粋内国民待遇日本のほうは翻訳の点で不利になる、こう解釈されます。但し純粋内国民待遇をとるということは二三なお日本国として、例えば保護期間の点或いは著作権保護を與える種類、そういうふうなものについてなお考慮しなければならないところがありますので、十二條の内国民待遇向うのほうが要求した際に、日本政府としてはなおそれについて保護期間相互主義、そういうふうなものを交渉すべきではないかと事務当局考えております。
  18. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 日米間著作権法に関する條約における翻訳権の自由というものが喪失されるということは、これは業界において私は非常な痛恨事であろうと思います。こういう文化的な面で過去に現存しておつたものが今後も継続されないどいうことは和解と信頼の関係として非常に遺憾に思いますが、それはそこで一応切つて置きまして、更にその翻訳権についてお伺いいたしますが、政令二百七十二号で、相当不当な取扱方を受けておるのがあつたと思うのですが、そういう処理はどうするか、その中で特に翻訳権で、翻訳したものがその権利原著作者へ移籍するというふうになつてそのままになつておるわけですね、そういうものはこれは翻訳権で非常に重要な問題だと思いますが、どういうふうに取扱われるのか、それを伺いたい。
  19. 柴田小三郎

    説明員柴田小三郎君) 実はこの点につきまして、私たちも非常に遺憾に思つております。二百七十二号は覚書によつてできました政令でございますけれども、それは一つの私契約に対する二重の公法的な義務を負わしたものでございまして、その前に使用者とそれから権利者との間に翻訳者の、いわゆる日本人に新らしく発生した翻訳者の第二次的著作権原権利者に移転する、こういうようなことは誠に妙な契約でございまして、そういうふうな契約をしたことについては非常に遺憾に思つております。それにつきましてそういうふうなことを聞いた直後、文部省としましては、文部大臣からマツカーサー元帥に対しまして日本著作権者が非常にかわいそうである、であるからその立場を考慮して翻訳者権利日本人に又返してもらえないか、こういうふうなペテイシヨンを出したことがございます。それが取上げられませんでしたので、なお引続き文部省としては、民間側と懇談しまして、官民一体になつて翻訳者保護をこの点に図りたい。これはくれぐれも相談して来たことでございますが、遂に実を結ばずに現在に至つて来たわけでございます。併しこのことについてはなお努力したいのでございまして、一説に聞きますと、フランス側ではすでにこの翻訳者権利は返してもよろしい、こういうふうなことを言つておることを聞きました。なお政府としましてもいろいろこれから大使館あたり交渉しまして、戰時中に特にこういうふうに、このような特殊な扱いを受けたものは正常な形に返してもらいたい、これを交渉したいと準備しております。
  20. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 そういう戦時中に不当な取扱を受けた者については、イタリア條約の場合には抗議する方法があるわけです。日本の場合にはそれを抗議する方法がないわけでしよう……答弁して下さい。それから政務次官が次にどういうお考えであるか、一体條約締結に当つて文化的な方面にどれだけの関心文部省は持つてつたのか。そういう答弁政務次官からお伺いしたい。
  21. 柴田小三郎

    説明員柴田小三郎君) この翻訳者権利原権利者に移転するという契約は、いわゆる民間人たち権利者との間にいわゆる合意によつてなされた契約、一応表面はそうなつております。それでこの翻訳者権利原権利者に移す、こういうような條項を入れた契約に判を押さなければ、いわゆる私契約を結ばなければ、当時としては翻訳出版物を出すことができない、そういうふうな形に追込まれていたわけでございますから、少くとも表面は私契約、そういうふうなことになつていたわけでございます。こういうふうなことにつきましてGHQのほうはそういうふうな條項を入れる契約書を交換し、又民間側もそれに調印した。調印する場合政府としては殆んどそれを関知することができませんでそのことが行われた。暫らくあと文部省としてもわかつたわけでございまして、その直後それについて適当にそういうふうな條項は削除すべきである、こういうふうなことは民間側にも極力望みましたし、又民間側としては止むを得ずできるだけ早く翻訳出版物を出したいということで、こういうふうな契約を交したものと解釈されるのでございます。先ほども申上げましたように……。
  22. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それは不当な扱い日本人は受けたわけですね。
  23. 柴田小三郎

    説明員柴田小三郎君) 併し出版者契約をしなければ契約しなくても済んだわけでございます。
  24. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 契約させられた……。
  25. 柴田小三郎

    説明員柴田小三郎君) 必ずしも覚書や何かによつて民間人契約させられたのではなくて、やはり任意な契約になつております。それで契約者権利原権利者に移すことは契約としては一つの形だろうと私は思います。併し翻訳者立場も一応考慮されなければならないので、そういうことを聞いたあと文部省としてそういうふうな処置を講じたわけでございます。
  26. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 あなたはそういうふうに言われているが、日米間著作権法に関する法律翻訳権は自由だというのが、條約を結んで生きて来たわけです。そういうふうになつている。それで不利な取扱を受けたとは言えないでしようかね。
  27. 柴田小三郎

    説明員柴田小三郎君) CIEがこういうふうな行政を行なつたのは、いわゆる著作権の存否とか、そういうふうな点でやつたのでは、ございませんので、御承知のように一応出版物検閲をあそこはしたわけです。いわゆる検閲のために日本翻訳物をどういうものを流すか、それについてこの著作権を利用したもの、こういうふうに解釈されます。
  28. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 政務次官、さつきの答弁を求めます。
  29. 今村忠助

    政府委員今村忠助君) この問題について詳しい研究はいたしておりませんが、占領下におきます差別的ないろいろな点が若しあつたといたしますならば、今後研究いたしまして独立回復後の日本といたして極力これが是正に努めたいと考えております。
  30. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 これから努力されるという点は多といたしますが、條約を締結する前に、私は文部省としてはやつて頂きたかつたわけです。この條約は非常にそういう面からいつて不満なものだということを岡崎国務大臣自身認められておるわけですから、そういう條約を結んだ、そういう交渉をした政府にその責任があると思うのですが、おそまきながらもこれから文部省が褌を締めてそうしてこの解決に政務次官第一線に立つて頂きたい。これは私は強く要望して、ほかのかたも質問があるようでありますから、このくらいで……。
  31. 相馬助治

    相馬助治君 文部省へ伺つておきますが、この委員会岩間委員から外務事務を担当していた岡崎国務大臣質問があつて、この著作権に関して日本側が不利でないのかという質問に対して、最初條局長その他は、何ら不利にはなつていないというような詭弁を弄していたんですね。現に事実は如何ともすることができず、遂に西村條局長は兜をぬいで曰く、誠に不利であつて私もこれを極めて遺憾としますと、こういうようなわけだつたのです。そこで私が伺いたいことは、この立法に当つて政府側外務省意見をよく叩き、外務省の今後の肚をよく確かめていなかつたのではないか。逆に言いますと、外務省は條約を締結する前の作業の面において、文部省側意見というものを確かに聞いていなかつたのではないか、こういう憾みを私どもは今日非常に深くしているわけです。そこでですね、私は具体的な問題を担当の課長から伺つて念を押しておきたいと存じます。  第一点は、この法律日本国内において連合国並び連合国人が持つている著作権について拡大解釈されることのないように作られたものである、こういうふうに今私は了解して、先般は外務省に向つて質問をしたわけです。そういう意味から言えば、この立法は必要なのだ、私のその解釈は誤つていないかどうかを、順序が逆になつたけれども、文部省側から承わつておきたいことが第一点。それから第二点は、現実の問題として一人のアメリカ人が著作権を持つている。それをイギリス人に譲り渡した。或る日本の出版会社がその事情を知らずしてアメリカ人に契約金を拂つて著作権翻訳権でもよろしい、この場合……それを譲り受けた。あとでこのイギリス人から抗議が出た。こういう紛争に関しては、最終的にはこの国内法だけで片付けてしまうことができるのであるかどうか。果してこの法律だけで以てこういうトラブルが起きたときに、日本人のこの出版会社の利益というものが守られるのかどうか。こういうことを具体的に承わつておきたいと思います。  その次の問題は、御承知のように平和條約によれば、ロシア、中共、こういう国々とは結んでいない。而もロシア文学というものが日本の文学に占めておる領域というものは広いし、又量的に見ても、重いものです。こういう翻訳の問題等について現実の問題としては、文部省としてはどういうふうに取扱つて行くことに相成るか。具体的に言えば、ロシアとこの種の條約が結ばれていないのを奇貨として、道義心の欠けた或る出版会社があつて、そうしてこのロシア文学の極く最近のものでも翻訳して、これをどんどん出版して、その利益を独占するというような現実の問題が起きた場合には、一体どうするのだ、ロシアの者共は我々と平和が回復していないのだからかまわないというようなわけに行かんことは、これは国際信義上はつきりしておると思うので、そういう具体的な問題についてはどういうふうに相成るか。どういうふうにするつもりですということを聞いておるのじやなくて、私の言うのは、この法律が施行された場合にはどういう取扱になるのだということを、極めて事務的に聞いておるのであつて一つ担当の課長から明快な、素人の私も納得するような表現で一つ御回答願います。
  32. 柴田小三郎

    説明員柴田小三郎君) 第一の御質問でございますが、この特例法平和條約の第十五條(C)項の條約違反にならない程度において規定されたものでございますから、拡大解釈はされていない。第二点の問題でございますが、これは第七條によりまして、第三者の対抗要件を持たない権利者に対しては、日本使用者はその紛争に巻き込まれない、こういうように解釈します。  それから第三番目のロシアとの関係でございますが、翻訳、演奏その他は自由でございます。
  33. 相馬助治

    相馬助治君 その前段の質問に対する答えですが、この法律案は大体対日平和條約第十五條(C)項を国内立法化したものです。そこで日本側に有利なように解釈するためにもこの立法が必要だ、こう言つておるけれども、これは相手のある話です。その外国側が果して我々が考えておるように好意を持つてつてくれるかどうかが問題なんですね、その場合……。従つてそういう具体的な問題が起きたときには大丈夫なんだ、こう言うけれども、現実の問題として、国際的なトラブルになるわけですね。そうするとどういう機関で如何なる條約によつてこれが解決されるのだからという答弁を聞かないことには、大丈夫だというあなたのお話ですが、私は安心するわけには参らないわけです。従つてそのことを私は聞いておるのです。国内的には問題がないとして、相手のあることですから、日本人がそういうトラブルには巻き込まれないとあなたはおつしやるけれども、先ほど私が挙げた実例の場合にも、日本人自身の意思如何にかかわらずそういうトラブルに巻き込まれる危險性なしと断定できない。従つてこれらの関連を私は事務的に伺つておるのです。事務的な解釈を伺つておるのです。
  34. 柴田小三郎

    説明員柴田小三郎君) 国際條約の解釈について紛争の起きたときは、国際裁判によつて解決されるわけでございます。併し私たちがこの特例法を現在作つたから、一方的に日本政府だけが勝手に解釈して作つたのではなくて、いわゆるGHQの承認を得て作りた。こういう形になつております。この国際裁判においてそれがどう解釈されるかということは、いわゆる連合国人が一応承認した、こういうような国内法の形がその際非常に有利に働く結果を持つものとするわけです。
  35. 相馬助治

    相馬助治君 速記をとめて下さい。
  36. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 速記をとめて。    午前十一時四十九分速記中止    —————・—————    午後零時二分速記開始
  37. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 速記開始。
  38. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 議事進行について。今日は質疑も一応終つたようですから、この程度質疑を打切つて、明日又やることにしたらどうかと思います。
  39. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) それでは図書館法に少し入つて頂けませんか。これは相談ですが、どうですか。図書館法一つ総括質問を願われませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  40. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) それでは図書館法の一部を改正する法律案について、総括質問を願います。質疑のおありのかたは質疑を願います。
  41. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 お伺いいたしたい第一点は、図書館法を制定されて以来の概況については、一応資料で頂いておりますが、その概況を骨子を承わりたい。  それから第二点は、明年度の予算案を見ますと、公立図書館の運営費補助は、約二百三十万円ほど減額になつているのですが、これはどういうわけか。本法律案提案理由を見ますと、図書館の拡充強化のためには、延いて社会教育振興のためには、これに従事するところの職員の量的並びに質的な確保が重大である。その立場からこの法案は提案されているわけでございますが、図書館への運営補助費なんというのは、むしろ増額されることが社会教育振興の一端になるのではないかと思いますが、相当厖大な額が減額されているようですが、その理由を承わりたい。
  42. 寺中作雄

    政府委員(寺中作雄君) 図書館法施行以来の図書館の現況について申上げますと、図書館の現在の館数は、大体九百四十四館でございます。それから蔵書の数は、昭和二十六年三月におきまして、八十二万五千冊になつております。それから利用者でございますが、利用者はやはり昨年三月で三千三百十万人くらいでございます。この昭和二十五年から六年の一年間に大体図書の数は二十八万冊ほど殖えておりまして、又利用者は百七十五万くらい殖えておるのであります。なお図書館の整備された坪数、これは現在八千九十七坪になつております。以上のような状況でありまして、図書館の事業は漸次充実しつつあるのでございますが、併し館数のほうは、これは実は殖えていないのでございます。従来図書館と申しましても、いわば図書室に類するような設備の不完全な、單に名目的に図書館と呼んでおつたようなものも図書館の数の中に入れておりましたので、千五百館くらいあつたのでありますが、それを図書館法の基準によつて更に整理をいたしますと、即ち真に図書館と称するに足るものだけを数えますと、現在九百四十四館ということになつた次第であります。そういう関係で、実は図書館に対する補助金が二千万円が二百三十万円くらい減額になつておるのでありますが、これはこの補助金が館数を基準にして計上しておりましたので、館数が減つた関係で二百万円くらい減つたという関係になつておるのであります。
  43. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 館数は減つても、全体の図書館としての実質面においては拡充されていることは、局長今報告された通りだと思うのです。それを館数が減つたからというので、それを簡單に呑んで予算の減額を了承するというのは、ちよつと理解に苦しむわけですが、大蔵省との交渉のときはどういうふうに運ばれたのでありますか。図書館協会あたりでもこの点については遺憾の意を表明しておるようでございます。利用人員が問題でしよう。
  44. 寺中作雄

    政府委員(寺中作雄君) 私どももこの補助金の額が減りましたことは非常に遺憾に思つておるのでありますが、館数が減りまして、その基準になる計数が変つて、いわばほんの計数の整理の関係上減つたという程度でありまして、非常に重大なる減額をしたようには思つておりません。一方公民館或いは博物館、博物館も博物館法ができまして、新らしい補助金を計上するような関係もございまして、そういうような公民館、図書館、博物館を通ずる全体の睨みとして整理的な意味で極く僅かの減額を見たという程度でございますので、まあ止むを得ない、今度だけは止むを得ないと思つておりますが、来年度からはこの方向に向つて、この補助金の増額に向いましてできるだけの努力をいたしたいと思つております。
  45. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 これは私十分調査していないので記憶違いがあるかとも思うのですが、私は公民館の場合もそうだと思いますが、図書館については運営の補助費を出して、公共団体が設立する場合にはその設立補助金というのは出していないように思うのですが、私は若しそれが私の記憶が間違いないとすれば、公立図書館を相当数設置する意味から、運営費のみならず公共図書館を設立する場合には若干の補助金を出す。更には適当なブロツクを定めてモデル的なものを、一度にできなければモデル的なものをこしらえて、そうして図書館の質的な向上を図るということが私企画されて然るべきではないかと考えるのですが、その点についての御答弁を煩わしたいと思います。
  46. 寺中作雄

    政府委員(寺中作雄君) 図書館の施設費補助に関しましては、これは全然ないことはないのであります。誠に少額でありまして申上げるのも恥かしいくらいでございますけれども、公民館、図書館、博物館というものを通じまして九百万円の補助がございます。でありますから一館当りにいたしますと大して助けにならない程度でございますが、これも又六・三制の整備等いろいろと設備補助の問題がたくさんございますので、その中に食い入つて辛じてこれだけ獲得したという程度でございます。
  47. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 その新たに設立するような場合の補助をするというようなことはどういうふうにお考えですか。更にモデル的なものですね、その点について答弁を煩わしたい。それは一つ振興策の、又地方公共団体一つの大きな差し水になるのじやないかと、こう考えるのですがね。  更にもう一つお伺いしたいのは、図書館と博物館と公民館と合せて九百万円ということですが、図書館だけで九百四十館余あるが、これはどういうふうに使つているのでしようかな。使い方を念のために伺つておきたい。
  48. 寺中作雄

    政府委員(寺中作雄君) 施設費補助に関しましては、只今申しましたように公民館、図書館、博物館が一括されて考えられておりまして、各府県においてその三つの社会教育施設のうち何か一つその県として最も力を入れるもの一つだけをまあ推薦して申請してもらいたい。それを又私どものところでいろいろな観点から審査いたしまして、そうしてまあ大体二県に一つくらいの割合で図書館と、博物館、公民館、いずれかに五十五万円、或いは三十万円内外の補助金を出してやるというような現状になつております。
  49. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 政務次官にお伺いいたします。学校教育と社会教育が車の両輪云々ということを私はここで申上げるのは政務次官に対して釈迦に説法となるから申上げませんが、社会教育振興という立場から図書館とか或いは博物館とかは、これは立法化されたわけであります。その立法の精神を十分生かすためには、施設もさることながらそこに勤務される職員を確保されることは大事である。その職員の確保の一つ方法としてこの法案が出されておるわけでありますが、予算面については今寺中局長から答弁された通りでございまして、これを傍でお聞きになつて政務次官どういうふうにお考えでいらつしやるか。その御所見と今後の決意をこの際承わつておきたいと思います。
  50. 今村忠助

    政府委員今村忠助君) 矢嶋委員のおつしやられる通りでありまして、学校教育のみならず社会教育もやはり相伴つて力を入れて参らなければならんものと信じております。ただ御承知のような敗戰後の経済崩壊時代を通つて来たという現段階において、公民館或いは図書館、博物館等全般に亘つて十分の力のいたすことのできないのを遺憾に思うのでありますが、先ほど局長より説明申上げましたように、各都道府県においてこれらの三つの施設のうちどれかを推薦して頂きますと、矢嶋委員仰せの通りモデル的に仕上げるというような意味も含めて、僅かではありますが、補助を與えて努力しておる、こういう段階であります。将来におきましてはできるだけこの社会教育面の施設にも十分力をいたして参りたいと、こう考えておるのであります。これは国家財政との関連において考えなければならないということでありまして、できるだけの努力はして参りたい。こう考えております。
  51. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 もう一言政務次官から国家財政という言葉が出ましたので、もう一言発言せざるを得なくなつた。と申しますのは、我が国文化国家を指向しておるわけですから、予算の性格というものも文化的な性格を私は持たなくちやならんと思うのです。それが一つ。それから地方公共団体が設立するところの図書館は公立図書館だから国立とは若干違います。勿論国立の図書館なり博物館は数は少いけれども、相当なものが我が国にもあることはあります。併し国家財政を言えば、国の直営事業である例えば刑務所とか税務署、こういうものは鉄筋コンクリートで津々浦々たくさんございます。立派な建築物がなされておるわけです。これは政務次官も地方をお歩きになつて十分御承知と思いますけれども、ところが公共団体を設立するとは申しながら、文化国家を指向していながら、地方に行つて公民館の看板のかかつておるとか、図書館の看板のかかつておるのを見て身ぶるいをするようなのがあるわけです。で、国家財政は確かに窮迫しておる。この使途については相当頭を悩まされると思います。我々が指向しておるのは文化国家であるという点を頭に入れられまして、政務次官は特に自由党の御出身ではありますし、公務員として、勿論政務次官としても今後この方面に格段の御配慮を切に要望いたしておきます。
  52. 高田なほ子

    高田なほ子君 去年は一千百人の図書館に勤務される職員の講習が終つて、本年は二千名の講習を受けられるというような準備をなされておるというお話を提案理由の中から私伺つておるのですが、それに対するこの財政的な裏付でありますが、ちよつとそれを、数字を聞かしてくれませんか。
  53. 寺中作雄

    政府委員(寺中作雄君) 今年度の図書館職員講習のための経費は二百万円を計上しております。
  54. 高田なほ子

    高田なほ子君 この二百万円の経費で講習を受けるかたの負担はどういうふうになりますか。全額負担になるのですか、交通費とか宿泊費とかいろいろあると思いますが、その割合をちよつと聞かして下さい。
  55. 寺中作雄

    政府委員(寺中作雄君) これは講習実施のための経費でございまして、講習生の旅費等はこの中に入つていないのであります。
  56. 高田なほ子

    高田なほ子君 その旅費はどこからどんなふうに出されるのですか。
  57. 寺中作雄

    政府委員(寺中作雄君) 原則としては実は自己負担の形になつておりますが、各府県等において特にこの仕事の重要性を考えて旅費の一部を地方公共団体で負担してもらうというところも相当あるようであります。
  58. 高田なほ子

    高田なほ子君 そうすると資格を得るためには、原則として旅費が自己負担になるということになるのですか。そういうことはこれはいいことなんですか、悪いことなんですか。どう考えられますか、困つておるのじやないですかね、講習を受けられるかたが。その実情を少し聞かしてくれませんか。
  59. 寺中作雄

    政府委員(寺中作雄君) 正式の図書館職員として、まあいわばみずからの資格を高め、みずからの力を付けるためでありまするから或る部分はこれは自己負担でやるべきかと思いますが、併しまあ同時に国全体として図書館職員の素質を向上するという目的があるわけでございまして、地方公共団体において負担できる限りはして頂いたほうが有難いというふうに考えております。
  60. 高田なほ子

    高田なほ子君 これは教員の講習の場合にも非常に問題になつた点であるので、社会教育だからといつてこれを看過するわけには私いかないと思う。現に今のお説のように、旅費その他の宿泊費、つまり資格を獲得するために自己負担の仕方で行われているということになれば、これは折角の資質向上というお考えはその人の非常な犠牲の上に行われるということは非常に遺憾千万だと思う。これに対して文部省としても、こういうことはいいとはお考えになつていらつしやらないとは思いますが、将来こういう資質向上のための費用というものは何らかの形で組む意思を持つておられるのか、どうですか、そこらをお聞かせ願います。
  61. 寺中作雄

    政府委員(寺中作雄君) 政府の財政が許すならば、政府としてできる限りのいわゆる旅費の補助というようなこともすべきであると思うのでありますが、こういう種類の講習も現在いろいろたくさんの種類がございまして、そこまでに手が及ばないという現状であります。私どもとしましては、できる限り国としてもそういう補助ができるように努力してみたいと思つております。
  62. 高田なほ子

    高田なほ子君 次に次官にお伺いしたいのですが、お説によれば現在図書館は増加しておりませんけれども、社会教育の重要性に鑑みて本年度は昨年度よりも大幅な人員の養成のための費用さえも組んでおるわけであります。こういうことは私大変結構だと思うし、逐次そういう方向に行かれると思うのでありますが、教員の場合はむしろ数を減らすというような方向に行つているようですけれども、社会教育とこの教育問題というのは切離すことができないにしても、社会教育のほうに少し力を注ぐと全般の教育というものに少しマイナスが来るということになつて行くのは甚だ遺憾だと思うのですが、この車の両輪の関係をどうお考えになりますか。逐次にずつと殖やして行くのでしよう、次官に一つ……。
  63. 今村忠助

    政府委員今村忠助君) 御質問の点でありますが、この学校教育教員という点につきましても必要の数は当然維持するのに努めなければならんと考えるのであります。社会教育は先ほども申すように、まあ進歩の度合から申せば学校教育あとなつたという点は私どもも認めておるのでありますが、今順次経済的事情等の許す範囲内においてできるだけの努力を続けているわけであります。ただ社会教育に力を入れたから学校教育方面が劣つたというようなことのないように努めるつもりでおります。本年度の予算の上で、学校教員の数が多少減じたという向きが事実であつたといたしましても、それは社会教育に力を入れた結果からだというような関連性のあるものと考えないのであります。この点は将来両々相待つて充実するように努力いたしたいと考えております。
  64. 高田なほ子

    高田なほ子君 図書館の職員を殖やす等については、提案理由の中に、早急の問題が生じて参つたとあるわけなんですが、その早急の問題ということが、私は余りはつきりわからない。これを読んでもわからない。そうして、誠に皮肉な伺い方をするようで恐縮なんでございますが、先頃の講和條約発効に際しての決議案を、参議院の本会議で以て決議したわけです。百五十二名ですか、九名ですかの多数で。議員提案による決議、あの中で、大屋晋三さんが第一番に提案理由説明の中で言われたことは、国民の思想統一の強化を図りという言葉があつた。社会教育の普及ということについては、私はこれは当然しなければならない問題だと思いますが、あの提案理由説明の、国民思想の統一を図るための……強化である……というような、これは大変皮肉な見方なんですが、一連の繋がりを、私たちは太平洋戦争の体験から感得しておるわけなんですけれども、ここでそうだと言うわけには行きますまいけれども、そこらの関連をどうも申上げにくいのですが、そういうものに関連が一体あるのかないのか、ないならないと言つてもらいたいのです。(「ないと言うのだろうね」と呼ぶ者あり)
  65. 今村忠助

    政府委員今村忠助君) 仰せの通り、全く関連はありません。いわゆる必要からということは、年々この図書館利用者の数が非常に殖えつつあるという点から考えるのでありまして、やはり一般に、社会的に図書館の利用度というものは高まつてつたと思うのであります。これに対処すると申しますか、応ずるために人の養成もする、施設もする、こういう努力を、まあいたしておるわけでありますが、なお不十分なものがあるということは我々も認めておるのであります。
  66. 木村守江

    ○木村守江君 この司書及び司書補の有資格者が多くなつたということは学校図書館の運営上非常にいいと思うのです。ところが、ここをちよつと伺いたいのですが、『「職員」の下に「(大学以外の学校に附属する図書館の職員』とありますね。この図書館の職員というのは、現在どういう人がなつておりますか。
  67. 寺中作雄

    政府委員(寺中作雄君) この大学以外と申しますと小、中学校、高等学校でございますが、そういうところで図書室或いは学校図書館を持つておるわけでありまして、先生のうちの特に図書館事業に興味を持ち、又その方面技術を持つておるようなかたが関係をしていろいろ図書の世話をしておられる次第であります。
  68. 木村守江

    ○木村守江君 そうすると、学校図書館では司書教諭というのがありますが、司書教諭というものは傭員ですか、今のお話は……。
  69. 寺中作雄

    政府委員(寺中作雄君) 司書教諭と仮に呼んでおるかも知れませんが、司書教諭という正式の法律的な資格のものは現在ないのでありまして、司書教諭という制度をこの際図書館事業充実のために作る必要があるという議論が相当ございまして、その方面について研究を進めておる次第であります。
  70. 木村守江

    ○木村守江君 私はやはり図書館運営の上からいつてもやはり司書教諭という職制化を図つたほうがいいと思いますので、参考までに意見を……。
  71. 岩間正男

    岩間正男君 この一定の資格のない者はこの講習を受けられないという理由はどういうところにあるのですか。図書館の職員の司書と司書補がそういう講習を受けるのですね、一定の資格が出ておりますね、資格がなくて受けられない、それはどういうのですか、どういう意味なのですか。
  72. 寺中作雄

    政府委員(寺中作雄君) 資格がない者といたしましては、いわゆる臨時免許状だけを持つておる者だけを除外しておるのでありまして、図書館の世話をするためには、やはり正式の教育課程に相当通じておる必要があるのでありますので、臨時免許状の者だけを除外しておる形でございます。
  73. 岩間正男

    岩間正男君 そこまでこの制限をやはりする必要はありますか。そういう人材があればどんどんそれを道を開けて行けるような組織にしたほうがいいと思うのです。不便は実際起りませんか。そういう資格はないけれども、実際は非常に図書館の中でいろいろ町の人たちと接触を持つておる、そうしていて運営もなかなか慣れている。こういう人も事実あり得ると思う。私たち推測ですけれども、そういう人たちがそういう考えでやつて行けば図書館は社会化されて行くなにを持つておると思う。ところが一方資格というてどんどんそういう資格免状で芋蔓式に辿つて行く、そうすると職階制を強化する、問題になる点はさつき高田君が問題にした。これを政務次官はそういうような関係はない。こういうことを言われておりますが、私たちは社会教育法並びに図書館法審議の際二年ぐらい前から問題になつて来ておる。そういう役人臭い、役人の系統下において、そうして何かやはり地方から合流するために非常に便利な態勢の方向にだんだん持つて行く。そういう方向が多いので、もつとやはり地域社会なら地域社会のそこに本当に同化したところの、独自の方策をそこに打立てて特色のあるものを、個性のあるものを郷土に作つて行くという方策が、却つてこういうことによつて阻害されて、統一されて国家統制の方向に向いつつある、こういうこともやはり司書、司書補の今の資格の問題にも現われていると考えるのでありまして、こういう点はどう解釈されますか。誰でもいいじやないですか、資格がなくつたつて。私は力さえある者なら受けるべきだ、こういうふうに思うのだが、なぜそういう資格ということで限定するのですか。特にこれは社会的な関連を持つ図書館であります。そうして而も発生においては少くとも社会的な社会教育というものはこれは国民の教育だ。下からのそういうような民主的な形によつて発生したということを建前にしたのです。実際はどうだか知りませんが、そういうことを建前にして大宣伝の上やつておる。これは日本文化国家一つの具体的な現われとしてやつたのです。そういうものがいつの間にか官僚統制の方向に向いつつある。高田君は内輪に言つたようですけれども、私はこういう一つの機構の中にすでに現われている、こう思うのですが、この点どういうふうに説明されますか。この点だけ伺つておきましてあとは保留しておきます。
  74. 寺中作雄

    政府委員(寺中作雄君) 臨時免許状はこれは一年限りのものでございまして、やはり教員が足らない、それの補充としてなつておる者で、臨時免許状を有する者がたくさん学校にいるということは、本来の本旨ではないのであります。そういう性質の教員でございますので、この図書館職員、司書或いは司書補になりますにもやはり教員としての相当の教科課程に通じた教養の上に、図書館職員としての教養を持つた者を專門職の司書、司書補にするという趣旨でございますから、ですから仮免許状の者はこれは当然講習を受ける資格を持つておるのでありまして、こういうふうに法制化をいたしまして図書館職員の資格を向上させようという趣旨から出ております。この法律の本旨から言いますとやはり臨時免許の者は一応除外したほうがいいんじやないかと考えます。
  75. 岩間正男

    岩間正男君 私は去年の暮矢嶋君と九州を廻つて宮崎へ行きましたら宮崎の図書館長は非常に特色のある作家の中村地平君がやつている。よく話を聞いて見ませんけれども、で非常に個性のある、そういう人で、恐らく日本の図書館の中でも宮崎の図書館はいろいろな意味で注目する余地があると思うんです。本の冊数にしても、いろいろ映画の試写のルームを持つているとか、録音の、いろいろレコードを聞かせる部屋を持つているとか、その他採集とか、そういう方面から見ますと非常に特色がある。雰囲気も非常によい。そういうふうな人を仮に司書に、これはやはり資格とか何とかということで来るというとね、僕はどうも官僚的な匂いで、今の図書館というのはそういう個性豊かなものに行かない。私はあれを見て来て、時間の関係上から中村君と懇談することはできませんでしたけれども、流石に作家の中村地平という人の匂いというものは全館の中に溢れている。こういうものを見たときに司書とか系統付けて、今日こういう資格で免許状がなければいけないということになると、本当にこれは日本の図書館というものを本当に運営する道はあるのかどうかということと、根本的な問題も多くなる。これは一つあなたたち研究して頂きたい。單に体系付けて昔の学校の何か片割れみたいなものにしなければ、そういう系統的な官僚的なものをおかなければ日本の図書館はできないということは逆に伸びるものにマイナスになる。本当に文化的な豊かさを持つて伸びるものが逆に抑えられて、或る制限の下におかれるということは非常に私は憂える。具体的に私はそういう面でいい例を見て来たものでありますから、中村君のような人がどんどん教授になつて日本の文化のために後進の指導に当るということは大いに発展の方向にこれは個性を発揮させ、その智性そのまま育てる手を大きく加えることになる。余りにこういう中央統制的な手を加えるということは日本の民主主義の一つの逆コース以外にならないと考えます。この点は研究する余地があると思うんです。是非これは寺中局長あたりはこういう点で非常に造詣深いんですから是非一つ考えてもらいたい。
  76. 相馬助治

    相馬助治君 残余の議事は取扱を理事会で適当に考えることとして、本日はこれを以て散会せられるよう動議を提出いたします。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  77. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) ちよつと皆さんにお諮りします。明日午後文部省設置法の一部を改正する法律案について内閣委員会と連合委員会を申込んでありまして明日に取つてもらつたんです。明日午後はこれをやつて、明日の午前は今日の国立学校設置法の一部を改正する法律案と、今日ここに取つてもらつた図書館法の一部を改正する法律案著作権特例法案を一つ審議を願う。こういうことに明日は御了承願いたいと思います。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  78. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 速記をとめて。    〔速記中止
  79. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 速記を始めて。それでは散会することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  80. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 散会いたします。    午後零時三十九分散会