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1952-04-17 第13回国会 参議院 文部委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年四月十七日(木曜日)    午前十時四十八分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     梅原 眞隆君    理事            高田なほ子君            相馬 助治君            木内キヤウ君    委員            木村 守江君            白波瀬米吉君            高橋 道男君            山本 勇造君            矢嶋 三義君            岩間 正男君   政府委員    文部省管理局長 近藤 直人昇   事務局側    常任委員会專門    員       石丸 敬次君    常任委員会專門    員       竹内 敏夫君   説明員    外務省条約局第    三課長     重光  晶君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○連合国及び連合国民著作権特例  に関する法律案内閣提出)   —————————————
  2. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) これより文部委員会を開きます。  連合国及び連合国民著作権特例に関する法律案総括質問をお願いいたします。質問のあるかたから御発言を願います。
  3. 山本勇造

    山本勇造君 外務省のかた見えておるのですか。
  4. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 重光さんが見えております。
  5. 山本勇造

    山本勇造君 それでは平和條約の中で、第五章の十四條の2の(V)は、「日本の商標並びに文学的及び美術的著作権各国一般的事情が許す限り日本国に有利に取り扱うことに同意する。」という條項があつて、これから審議する著作権の問題に非常に関係があるわけですが、それのこういうものが入つたこと、又入るようなふうになつたいきさつと、或いはどういうふうなあれでこういうふうになつて来たか、それらの点を一つちよつと御説明を願いたいと思います。
  6. 重光晶

    説明員重光晶君) 只今の御指摘の十四條2の(V)の規定でございますが、今までの先例から申しますと、例えばイタリーの條約等におきましてはこうした戰敗国即ちイタリー文学的及び美術的著作権はこの十四條の2の(1)に規定してありますように、戰勝国即ち連合国が「差し押え、留置し、清算し、その他何らかの方法で処分する権利」からはつきり除外されております。それからヴェルサイユ條時代の例を考えて見ましても、條約の規定は別といたしましても、実際の取扱におきましては、当時戰勝国戰敗国著作権没收したというようなことはないのでございます。日本の場合のこの(V)の規定は單に「有利に取り扱うことに同意する。」ということでありまして、その点は残念ながらイタリー平和條約に比べますと日本にとつて不利であると言わなければならないのは非常に残念でございますが、イタリーの場合と日本の場合と、單にここではございません、一般に、殊に傾向から申しますと個人の私権に関する取扱、即ち日本人私権イタリー人私権取扱に関する傾向から申しますと、イタリーのほうが日本よりも有利に取扱われておるわけでございます。御指摘條文をも含めまして一般的にこうした私権取扱については、一般国際法上、私権というものは従来の観念から申しまして相当手厚く保護されなければならないというのが一般国際慣例であつたわけですから、私たちといたしましてもこれは何とか私権没收だとかいうことをやめて頂きたいという話はしたように私は聞いております。併しとにかく結果として現われだところは、イタリーの條約よりも不利になつたわけであります。どうしてなつたかということは勿論私自身この條約の細かい交渉にタツチしておりませんでしたから申上げることもできないわけですが、非常に抽象的に申しまするならば、イタリーの場合は日本と違うところがいろいろあると思います。根本的に申しまして。先ず政治的に申しますと戰争終つてから平和條約が結ばれるまでの期間が非常に短かかつたことでございます、イタリーの場合は。それからもう一つは、イタリーという国が連合国から見て旧敵国敵国でございましたが、中途からいわゆる共同交戰国というような地位を獲得したこと、この二つが非常に違うところであろうと存じます。従いまして出て参りましたことは、例えば賠償というようなものにつきましては、日本のほうが有利であると一応解釈はできるわけでございます。ところが私権に対する取扱については、その共同交戰国であるというイタリー立場からイタリーのほうが有利になつた。まあ結果論として申しまするというと、こういうことになつたのではないかと私どもは考えております。具体的に十四條の御指摘の(V)の條文交渉経過については、実は私はタツチしておりませんし、恐らく当時の係官のかたでないと細かいことは申上げられないと思いますが、私が申上げられることは少し抽象的になりますが、以上でございます。
  7. 山本勇造

    山本勇造君 この委員会が今日要求したことは、この問題を初めから申上げてこの点をはつきりさせないと、今我々のほうにかかつておる法案は審議して行くのに非常に困るし、又先の見通しも立たんのでその点を実は御要求したわけなんですが、これは改めて要求できますか、できますかと言つても、当然できると思うんですが、何かこれはもう少しはつきりしないと我々はこの法案を審議して行けないのですがね。
  8. 重光晶

    説明員重光晶君) と申しますのは、この(V)の御指摘條文に関する交渉経過を詳しく報告申上げるということでございますか。
  9. 山本勇造

    山本勇造君 それだけでなしに、またいろいろその後どういう経過であつたかということ、将来において有利という言葉が、どれだけ我々のほうが活用できるかという点が我々の大きな問題なんです。例えばイタリーのほうの場合だと、附属書の百十二頁の第十五の一の(ハ)の所ですが、イタリー特例が設けられております。この特例は随分便利な特例だと思うのですが、日本にはこれが全然ないのです。あなたか今言われたように、イタリー日本は或る点では違つておる、それは勿論自然でありますし、今お挙げになつた二つの点は私は了解するのですが、併しながらとにかくイタリー枢軸国で殆んど同じような立場であつたということ、途中から寝返りは打ちましたけれども、とにかく大部分は日本と同じ立場であつた一つのこういう前例が前にあつたにもかかわらず、今年はあとで以つてやる場合に、どうしてこれか抜けておるのか。そうするようなものがどうしてないのかという点が我々非常に不思議に思う点なんですが、この点も伺いたいと思います。又何で抜けたのか、抜けたとすれば何かこれに代るようなことができ得るかどうか、そういうふうな点が我々のほうの質問の要旨なんです。
  10. 岩間正男

    岩間正男君 今山本さんのお話のように、この点が解決されないと大変だと思うのですが、これは何ですか、課長さんは今の問題はお答えできますか。私らは経過をお聞きしたいのだが、そのほかにいろいろ平和條約との関連の問題、今後どうなるか、これはもう少しわかる……岡崎さんは出られないのですか、それが出られないとこの問題は解決できないのです。これは少くとも條約局長ぐらい出ないとわからない話がつかないのです。どうですか、今後の見通し……、これは結論は課長じや答えられないでしよう、どうですか、若しそうだとすればそれを要求して下さい。
  11. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) 今日は実はこつちのほうからこの著作権のことに関して一応説明のできるお方というのでお願いして来てもらつたのです。まあ問題がもう少し根本的な問題になつて来れば然るべきかたに来てもらうというほかに途はないと思いますが、今のに関して一応重光さんのお話を聞いては……。
  12. 山本勇造

    山本勇造君 それは併しお答えができるかどうか、相当……。
  13. 岩間正男

    岩間正男君 私は関連して……。一例を申しますが、例えば今度の條約は和解信頼言つておるのです。そうしたら今そういうあなたが挙げられたような二つ條件はあるけれども、そういうことはなしにこれは結ばれなければならないのです。そういう精神から行くとイタリーに与えられておるものが日本に獲得できないというのは、これはどういう態度外務省はとるか、こういう場合に。それを今度国内法で具体化するときにそういう努力をしないのか、そういうことの了解がつかないで、そういう点については何ら明らかにしないで結ばれてしまつた。こういう問題を一つお聞きしてもあなたはお答えできますか。そういうものに繋がつて来るのです、実際問題として。
  14. 重光晶

    説明員重光晶君) 私の了解するところでは御指摘になりました問題が二点あると思うのです。一つは十四條の問題ではなくてイタリー平和條約の附属書の十五の中の一の(ハ)ですね、あれに関連したものが日本側にない。或いはあつても違つておる。日本側に不利になつておる。それがどうしてイタリー平和條約と日本の條約がそう違つて来たのか、理由の説明をしてもらいたいとおつしやつた点が一つと、それからもう一つは、十四條の最初に御指摘になりましたでき得る限り、事情が許す限り日本国に有利に取扱うことに同意するという、有利に取扱うことに同意するのだが、一体この内容はどういうものになるのであろうか、この二点だと私一応了解いたしましたのですが、先ず第一の問題は、ちよつと先ほどの私の説明は非常に拙劣であつたと思いますが、イタリーの條約と日本の條約と、イタリーの條約の先例があるからイタリーの條約と同じような、即ち有利なところは全部日本の條約に入れて行きたかつたのでございます。それが実現し得なかつたということは実に残念に思つております。併し先ほど私が直接申しまして御了解を得たと思うのでありますが、イタリー平和條約というのは、前文にも書いてあります通りに、共同交戰国であつたという一般平和條約、即ち敵と味方との平和條約の例から申しますと、前代未聞のような妙なステイタスイタリー平和條約の文章そのものによつても与えられておるわけですが、この点は日本としましても、前文を比べて頂くとわかると思いますが、イタリーのほうはイタリアは元来枢軸国であつた、併しその後共同交戰国になつたのだと書いてあります。日本のほうは敵であつたということを書く段取りになつたのであります。ところが敵であつた、即ち戰争責任者日本であつたという普通のきまり文句文章はこれは何とかして勘弁して頂いたのでございますでございますから前文だけを見ますると日本連合国関係は、日本戰争を始めたのだという文章はなくなりまして一応将来の、これからの日本連合国とは平等の協力関係に立たなければならんという前文だけになつたと思いますが、そういうふうに、併し一緒に戰争をしたというイタリーステイタスは、いろいろな條文内容についてどうしても残つて参つたのであります。これは結果論でございます。これ以上は、若し当時の細い事情なり或いは政治的にどういう手を打つたかということは、勿論私は事務当局でございまして、これ以上私が申上げることはできません。これ以上は若し御要求があれば要求して頂きたいと思います。  第三の点でございますが、有利に取扱うということに同意するという、その有利の内容がこの條文ではわからないのでございます。現在までのところ、法律的意味におきましてこの有利な取扱が決定ておる国はないのでございます。これは当然でございます。平和條約が発効してまだいないわけでありますから、ただ今までの非常に、非常にと申しますとおかしいですが、本当に非公式な話合いだけのことを申上げますと、アメリカとの間には相当今まで文部省と連絡いたしまして、非公式な話を進めて来たわけであります。御承知のようにアメリカとの間には著作権に関する古い法律がございます。アメリカ側はこれをそのまま残すことはどうしてもいやだという意向であります。それは一九〇五年でありますからアメリカ事情も違つております。いわば当時はアメリカ文化輸入国でございまして、最近は逆になつております。そういうような関係だろうと存じますが、あれは平和條約のこの規定に基いて回復させる措置はとらないぞ、然らば新らしい著作権に関する條約を結ぶかという点を只今交渉中でございます。これは我々どもがその交渉で得た印象でございますが、印象から申しますと、アメリカにおける日本著作権取扱と、日本におけるこの平和條約によつてきめられた日本取扱とは大体これは細かくは勿論違いがあると存じますが、大体平等と言えるかと存じます。それからそういうような全般的に講和発効後の著作権に関する協定を作るとか、全般的な問題ではございませんが、個々のケースについて交渉する例はございます。例えばイギリスとの間において、戰争中日本著作権取扱について有利に取扱うというのは、この点についてどういうふうにしてくれるのかと、そういうふうなケースでございます。併し全般的に有利に取扱うということが、各国別にどういうふうにきまつておるかということになりますと実はまだきまつていないわけでございます。大体今までのところは只今申しましたようなまだはつきりしない状態でございます。
  15. 岩間正男

    岩間正男君 まあ私先ほどお聞きしたらば、只今和解信頼で、押付けられた平和條約でないというように言われるのです。だがら日本のいろいろな権益についてはこれは対等の立場まで戻してもらえると、こういうようなことが非常に政府によつて実は宣伝されているわけなんです。そうしてこれだからもうお祝いだ、五月三日にはお祝いだと、こうのいうことまで謳つて国内でそれに非常に酔い痴れている。ところが今あなたの御説明のようなところを聞きますと、明らかにこれは敗戰国としてのいわば城下の誓いのような態度はつきりとつて結ばせられた條約だということは今の説明で明らかなんだ。そこの食い違い、これは非常に大きいのです。だから若しも政府の宣伝というようなものを聞いている人から見ますと、なぜ例えばイタリーで認められているような権益が、著作権に関する限りにつきましても日本ではそういうことがなぜ認められなかつたかということにつきましては、これはなかなか了解できないのですよ。そうするとこの問題について今後どういう態度でどういうふうに交渉するか、どういうふうに打開するかという問題は非常に大きい問題になつて来る。これは課長さんのお答えの領域の以外になると思います。私はこの点まで課長さんにお聞きすることはできないわけです。そういうようになりますと、いろいろなまあ事務的なことをお尋ねするのはいいのですけれども、結局その問題にしよつちゆうつつかかるわけです、今から審議を続けて行くと。そこでどうしても責任のあるかたが同時にいないといかんと思いますね。私はこれではちよつと展開できないと思います。そうなると一つもう今の説明そのものがそれで引つかかつちやうのです。
  16. 山本勇造

    山本勇造君 今の御説明がありましたししましたけれども、勿論イタリー枢軸国であつたけれども、途中でああいうように寝返つたのですから日本の場合と違います。違うから或る程度有利だ、併し又一方、考えますというと、賠償その他のほうではイタリーよりも日本がよくなつている。だからその点では或いは岩間さんから批判されたけれども和解信頼の点がどつかには出ているかも知れません。それでどつかには出ているかも知れませんが、併しながらこの著作権のような問題についてはそうではない。而もこれのほうは、イタリー先例があるにもかかわらず、それがイタリーだけに出なかつたというのはどうも僕にはちよつと了解に苦しむ。ですから今日は僕は皆さんが御同意ならこの点ぐらいにして置いて、あともう一度僕は責任者のかたに来て頂いて説明を伺いたいというふうに僕もして頂きたい。なおあと速記を取らないで少し話をする時間を今持てれば、懇談的に僕は話をして見たいと思うこともありますけれども、今日はこの問題についてはこれくらいになさつたらどうかと思うのです。
  17. 相馬助治

    相馬助治君 今岩間さんが言つたように、課長に聞く範囲を超えておるからということについては私も同感ですが、外務省にやはり一言課長さんに申し伝えて私はこの議案審査の上で便宜ならしめたいと思いますことは、この前の委員会で、問題になつたのは全部政治問題なんです。いわゆる連合国民著作権日本にあるものをこれを面倒を見てやらなくちやならたいということについては異議がないが、それに見合つた形日本人が外国に持つておる著作権保護がどういうことになるのかということについて文部当局としては、文部省の仕事の範囲外であるから、それに対して自信あるこうだああだということは言えないわけです。そこで一方においては、日本国内においてはこういう立法はよろしい。我々もこれを作ることはよろしい。併しこれに見合う日本人の持つ著作権保護ということを外務省が積極的にすることが前提でなければ、我々としてはこんな法律を今急いで作つて、何も御機嫌を取る必要はないというのが我々の本意なんです。いわばこれは政治問題だと思つておる。そこで今度は国務大臣なり局長なんかにこういう問題を聞いて見ても、今度はあなたよりなおわからないかも知れない。何のことやら突然言われて、今度はあなたに教わつてぼつぼつり答えるかも知れません。それでは困る。それで課長さんから今日議論になつておる焦点をよくよく今度来る責任者に言聞かせて、こういうことが問題になつておるのだということで、腹がまえをして来てもらわないことには全然意味がない。そのことをしかとあなたにお伝えして、そういう態度外務省は来てもらいたい。その態度が明確でない限り、我々はかかる法案は反対である。その態度が明確になれば本法案の作成に協力するものなんであります。従つて問題は、我々は文部省立場文部省のなす責務を離れて、挙げて外務省の腹がまえにあるということなんですから、ちやんと承知して下さい。
  18. 岩間正男

    岩間正男君 もう一つ論点として研究して置いてもらいたいのは、つまり連合国でない国、平和條約に調印してない、殊に日本と翻訳的の関係なんかでは非常に深いソ連、中国、こういう所にどういうふうに、今度はこういうものが一方で作られますが、それとの関連で、どういうふうにこういう問題を解決するように進めて行くか。成るほど平和條約は結ばれていないわけですけれども、これは文化的な交流というものは考えなければならない。そうしてまさか鎖国をとるわけじやないでしよう、鎖国政策じやないでしよう。経済的にはどうも鎖国政策が、共産主義国というものに対しては反共とかそういう態度をとつておる。文化的にはなかなかそうはいかんのです。そうしますと無條約時代にはどうするか、無論條約が結ばれれば新たな問題として来るでありましようけれども、現実的にはこれは日本世界文学輸入立場から見ますというと、フランス文学ロシア文学というものと日本文学とは切つても切ることのできないところの大きな関連にあるわけです。中国人においても新たにそういう関係が今後ますます大きく起つて来るでしよう。そうしますと、こういう現実的の問題をどう解決するか。どういうふうの態度を以て外務省としては臨むかという問題も文化政策の上において非常に大きな問題になつて来る。従つてこの條約が私たちはこういうような法案を作るというと、一方的にはこつちのほうの権益保護するということになるけれども、一方においては無條約国に対して排他的な要素が出て来て、逆に今言つた経済政策に関する鎖国政策みたいな方向に行つて、むしろ向うのほうの文物に対してこれを拒否するというような傾向が当然今の政策の進行に伴つて進められるのじやないかということを危惧する。この点について外務省としては一体どういうふうな独立後の態勢をとるのか、これは非常に重要でございます。従つてこの点について十分にこれは研究して答えてもらいたい。私の質問一つの要点はそういうところにもありますから、こういうふうに含んで置いてもらいたい。相馬君がいい注意をしてくれたものですから、それに附加えて。
  19. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) ちよつと第三課長にお尋ねいたしますが、このイタリー平和條約の第十五の附属書、これの一応御解説をお願いしたいと思います。その附属書の中に、著作権に対して一年間のなにするということが書いてあるのですが、これをちよつと読みましても我々のほうではつきりわからないので、一応解説がてらこれを一遍お話願いたいと思います。
  20. 重光晶

    説明員重光晶君) このイタリー平和條約と書いた印刷物の百十二頁でございますが、この一の(ハ)の所に、要するに連合国は一年の期間内に戰争中に起つた著作権の侵害に対する訴訟を起すことができるという規定でございますが、一般戰争遂行関連した請求権、即ち例えば連合国財産で、イタリーにあつた財産を敵産管理した。イタリー国政府がその敵産管理下にあつた連合国の私人の財産が或るイタリー人の行為によつて損害を受けた、こういつた種類のものは、いわゆる戰時請求権言つておりますが、戰争の終了するときに、平和條約によつて相互に放棄することになつております。連合国のほうは日本の條約の第十四條(b)によつて、それから日本のほうも第十九條によつて放棄しております。ところがこの著作権については、戰時請求権関係がないことになるのでございます。即ち著作権については、敵国人著作権の敵産管理日本ではしておりませんのです。イタリーもしておらなかつたものと思われます。即ちこれは黙つておると連合国放棄しないのであります。ただこの附属書の十五の一の(ハ)によつて放棄はしないけれども放棄はしないということは、いつでも損害賠償請求権その他の訴訟を起し得るということでございますが、それを一年間に限つて行使する、こういうことを謳つたのがこの規定意味でございます。これに対応いたしまするのは日本のほうの平和條約の議定書でございます。議定書のBの時効期間というのがございますが、これに関連した問題でございます。即ち日本のほうは連合国人訴訟期間を一年と限つておりません。そこが不利と言えば不利、違うと言えば違う点でございますが、日本のほうは普通一般訴訟の時期を戰争の継続した期間だけプラスしております。ですから單に一年間を限つただけでなくて普通の私契約に関する訴訟と同じように取扱う、日本のほうではそうなつております。大体イタリー平和條約の意味はそういうことであります。
  21. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) それでなおもう一遍お尋ねしますが、この前も問題になつたのですが、つまりイタリーのほうでは一年間、こう見る、こつちのほうでは戰争期間というものを加算するということになる、そういうことでやはり何か損得というと変ですが、多少の差等がある、それがイタリーのほうは一年というようなふうに言つたほうがよかつたのじやないかといつた議論参考人の中にあつたように思います。そういうことに関して何かそういう一年間ということをイタリーがやつたというのは、イタリーだけを多少有利に見てやるという意図があつてこうなつたのですか。
  22. 重光晶

    説明員重光晶君) その点は最初の問題に帰ると思うのでありますが、具体的にどういう話があつたかということは実は私承知しておりませんので、事務的には答えられない問題でございます。それからちよつと念のために申上げますが、イタリーのほうにも一般的に時効期間に加算するという規定がございます。ただこの著作権については特別のような恰好になつております
  23. 梅原眞隆

    委員長梅原眞隆君) それではこれにて今日の委員会は散会いたします。    午前十一時二十五分散会